273 ◆DAbxBtgEsc2011/06/02(木) 20:37:52.58khmnQkzHo (10/10)

--------------------
書込み中・・・
--------------------
ERROR!
ERROR - 593 25 sec たたないと書けません。(1回目、25 sec しかたってない)

あと0秒経てば書けるようになるです。連投スクリプト対策です。

(Samba24-2.13)


え?















ええ?
こんなの絶対おかしいよ!
滝壺可愛いよ!?
あと一番最後、それに無言でついて行った。で脳内補完お願い。尾張なんで

短めだったけど、続きは明日か明後日


274VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県)2011/06/02(木) 21:07:35.51hwcSA6/80 (1/1)


ああ…滝壺はかわいいな


275VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/02(木) 21:54:04.81VfBxSODL0 (1/1)

執拗なまでの滝壺アピールにちょっと笑ったww
アイテム勢はどう関わってくるのかねえ。
コミュメンバーか、仲間か…はたまた。
乙!


276 ◆DAbxBtgEsc2011/06/03(金) 07:30:08.57BHgbFR2Ko (1/1)

番外編:上条当麻の華麗なる日常と題して、幻想殺しに家出された上条が、魔術サイドにどうやって介入するのか?
そんなのを妄想しようとしたら、初っ端のエンゼルフォールで挫折した。


277VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/03(金) 08:02:33.98bMobaRfAo (1/1)

上条さんは幻想殺しないとただの正義感強い高校生だからなあ


278VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/03(金) 11:36:46.86z8M42s5K0 (1/1)

特級フラグ建築士の免許もあるじゃないか


279VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県)2011/06/03(金) 14:28:00.29JEZf9nMy0 (1/1)

二重人格の人みたくペルソナと入れ替わったりとか


280 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:42:27.10t+fNUzNho (1/36)

正義 上条当麻
愚者 仮称特別捜査隊
戦車 妹達
剛毅 黄泉川愛穂

ちょっとメモ用に。やっぱ女多いな
今から投下する。


281 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:45:34.60t+fNUzNho (2/36)

芳川桔梗が提示した情報は、一方通行を少なからず驚かせた。


長点上機学園所属・布束砥信が失踪した。


布束の資料を見た時、テレビの中に入った時に見つけた写真と同一人物だという確信をもった。
テレビ、で思い出したが、おそらく絹旗は声だけテレビの中で聞いたはずだ。
だとすると、絹旗ないしはアイテムが何かしら実験に関与していた、と言う事か。


何にせよ、テレビが一枚かんでいる事は間違いないだろう。
そう考えた一方通行は御坂美琴と上条当麻に連絡を取ろうとしたのだが。

御坂は電話に出ないし上条は通話中らしい。
常盤台で別れた後なにかあったのだろうか。考えても仕方が無いので思考は布束へとむかう。
一方通行の勘が告げている。ほぼ確実に布束とテレビは関係あると。
ならばテレビに今すぐにでもいきたいところだが。

何があるかわからないのに、戦力が無い状態でテレビに行くのは自殺行為だ。
今にして思うと初めてテレビに入った時は無謀も良いとこだっただろう。

兎にも角にも、今は布束について情報をもっと集める必要がある。
布束について情報を集める事で、自分達以外にテレビについて知っている人物が居るかどうかわかるかもしれない。
そう考えた一方通行は、芳川の研究所にある情報端末から、布束について調べることにした。


282 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:47:16.31t+fNUzNho (3/36)

―――布束砥信。長点上機学園3年に在学中。幼少時に生物学的精神医学で頭角を現す。
第七薬学研究センターの研究機関にて研究を重ねた後、長点上機に復学した。

9982号によると、学習装置にて妹達に知識を植え付けたと言う。
ただ、布束にあったことのある個体は19090号のみで、
その時の19090号の記憶はミサカネットワークにも流れていないそうだ。


軽く調べただけだが、簡単なプロフィールのみで、これ以上の情報は出ないと一方通行は判断した。
探そうと思えば探せるのだが、更に情報を突き詰めようとすると、更に深く潜る必要がある。
そうなると芳川にも迷惑がかかるかもしれない。

それならば、布束に近しい研究を行っている人間を洗えばいい。
生物学的精神医学に連なる、バイオ関連を研究する人物から何か話が聞けるかもしれない。
そう考えた一方通行は、生物学的精神医学だけでなく、
遺伝生物学、神経生化学、精神薬理学、脳生理学など、多岐にわたる分野を調べ、片っ端から連絡を取って行った。


しかし、これと言っためぼしい情報は得られず、研究者の名前ばかり無駄に覚えるだけに終わった。

危険を覚悟して『書庫』へハッキングしてしまおうか、とも考えるが、それは最終手段としてとっておくべきだろう。
何せ学園都市には『守護神(ゴールキーパー)』が居るのだから、下手なハッキングは命取りだろう。


ここで、改めて生物学的精神医学について考えてみる。
生物学的精神医学とは、自然科学の方法論に則り、脳科学の方面から、精神異常を研究する。と、言うものである。

脳科学から心の異常を調べる。

ならば脳内での生理的な出来事を研究する脳生理学の研究者などを更に突き詰めていけば良いだろう。
脳生理学の分野を更に詳しく調べる。

すると、一人の女性の名が目に入った。


283 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:47:59.50t+fNUzNho (4/36)

―――木山春生。大脳生理学専門チーム所属。AIM拡散力場制御実験にて、実験を成功させる為、
置き去りの子供達に教鞭をふるい、子供達の成長データを仔細に取っていたとされている。


AIM拡散力場制御実験。
これの実態は確か、木原幻生を主導者とした暴走能力の法則解析用誘爆実験だったはずだ、
と、一方通行は記憶している。

何にせよ、この女性には連絡を取っていない。ならばとりあえず連絡先を知らねば、
と思ったが、どうやら既に大脳生理学のチームからは去っているようだった。

どうしたものか、と考えていたが、木山春生は水穂機構病院の院長から招聘されたらしい、と言う事を知り、院長と連絡を取った。
すると丁度良いことに、木山春生はその病院に入院しているそうだ。


それならば、と見舞いがてら話を聞きに行くことにした。


284 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:49:05.54t+fNUzNho (5/36)

・・・

木山春生は暴走能力の法則解析用誘爆実験で意識不明に陥った置き去りの子供たちを治すために、幻想御手を開発した張本人だ。


そんな木山は今現在、絶賛入院中である。


それはなぜか。それを説明するためにも、
ここで木山春生が開発した幻想御手について話をしよう。

幻想御手は能力者のレベルを上げる、という触れ込みだが、
その実脳波のネットワークを構築する、というものだったのだ。

なぜ能力のレベルが上がるのか?
それは同じ脳波のネットワークに取り込まれることで、
演算速度が向上及びその幅と演算能力上昇が見込まれるのだ。

また同系統の能力を持つ者同士が思考パターンを共有することによって、
より効率的な能力の使用が可能となった。


285 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:49:56.94t+fNUzNho (6/36)

一見これだけならば良い事尽くしじゃないか、と思われるが、それは違う。
脳波と言うものは、それこそ妹達の様にクローンでなければ各個人でそれぞれ違う。
その違う脳波の上に、ある特定の(今回は木山春生の)脳波を上書きするとどうなるか。


そう、体がその脳波に合わずに拒否反応を示し、結果として意識不明の状態に落ち込むのである。


そして、複数の人間の脳を繋げた「一つの巨大な脳」状のネットワークを構成することで、
高度な演算能力―樹形図の設計者に匹敵する程のもの―を持った演算装置が出来上がるのだ。

それを用いて意識不明になった置き去りの子供達を救う方法を調べさせようとしたのだが、御坂美琴によって阻止されてしまう。

しかし後に、御坂達と協力し、テレスティーナ・木原・ライフラインとの交戦を経て、
子供達を救う事ができたのだ。
その際怪我をした為、子供達と共に入院していた、と言う訳だ。


286 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:50:26.93t+fNUzNho (7/36)

そんな木山は物憂げな表情で溜息をついている。
黙っていれば美人なのだが、それを自覚していないのが残念でならない。

科学者らしいといえば科学者らしいのだが、基本的に自身については無頓着で、
服が汚れたりすると、男性の前だろうと汚れた服を脱ごうとするのだ。
そんなん俺の前で脱いでほしいわ。おっとごめんよ、理后も可愛いよ。


閑話休題。


何故木山は物憂げな表情なのか。
それは周りでキャッキャと無邪気な笑顔を浮かべつつじゃれついてくる子供達だ。
とても可愛らしい子供達なのだが、如何せん以前と比べ成長しているため、少し重たいのだ。

だが、じゃれついてくる子供達を振り払うような事はしない。子供達は、そんな木山を見て喜ぶ。

失った時間を取り戻そうとするかのように。

足りないものを補うかのように。

木山の元から離れない。

あんな非道な実験を子供達に施したと言うのに、未だに子供達は彼女を信じている。
ならばそれに応えて、子供達に与えなければならない、愛を。教えなければならない、優しさを。

この子たちが大人になるまでは、休む時間はなさそうだな、と子供達を撫でながらクスリとほほ笑む木山。

するとそこに二人の来客がやってきた。
その二人を見て少し驚いた表情を浮かべる。


287 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:51:32.78t+fNUzNho (8/36)

木山「一方通行に、超電磁砲か。……君には、世話になったな」


木山は9982号をちらりと一瞥すると、子供達を救ってくれたことに感謝をする。
しかし、9982号が装備している軍用ゴーグルを見て顔をしかめた。


木山「ん……?そのゴーグル……君は、本当に超電磁砲か?」


流石科学者、やっぱこいつ頭良いなと思いながら、9982号は一方通行にアイコンタクトを取る。

正体を明かすべきか否か。
しかし嘘をついても下手な嘘は見破られそうだ。そう考えた一方通行は素直に話す。


一方通行「クローンだ、超電磁砲の」

木山「そうか、絶対能力者進化実験……成程、クローンか……」


木山は一人納得するが、一方通行達を見て、子供達は不安そうな表情になる。
そんな子供達を安心させる為に、木山は穏やかな表情で子供達を撫でた。


一方通行「今回、9982号の事は関係ない。……率直に聞くが、布束砥信と言う名に聞き覚えは?」

木山「布束……ああ、学習装置の開発者か。以前装置を開発している時に一度だけ会ったことがある、その程度だな」

一方通行「布束砥信が研究していた内容については?」

木山「……残念だが、生物学的精神医学、と言う分野を研究していた、と言う程度しか知らないな……
   私が彼女と会う事になったのも、私が大脳生理学を専攻するチームに所属していて、
   それぞれの分野に共通する項目について議論するためだったしな」


話を聞く限り、嘘をついている様子はない。本当に知らないのだろう。


一方通行「そォか……それならもォ聞く事はねェ。精々養生しろォ」


じゃあな、と告げ、一方通行達は見舞いの品として持ってきたのだろう、紙袋を置いてあっさりと立ち去った。


288 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:52:51.00t+fNUzNho (9/36)

・・・

9982号「結局、大した情報は得られませんでしたね。と、ミサカは精神的疲労を露わにします」


一端芳川の家に帰り、休憩をとることにした二人。
9982号はソファーに深く座り込み、溜息をついた。


一方通行「とりあえず手づまり……だなァ」


コーヒーを飲んで一息つく一方通行。
ハッキングと言う手段があるが、実力が未知数な『守護神』を相手取るよりも、テレビの中を探索する方がまだマシなように思える。

ただでさえ科学者達に連絡を取って暗躍しているのだ。
これ以上目立つ行為は避けたい。

とりあえず、テレビに入るのは明日でも構わないだろう。
外を見るともう日が落ちそうになっていた。
夕飯を食べながらでも情報はまとめられる、と言う事でやっぱりいつものレストランへと向かう。



そしていつものレストラン。
いつもの席に案内されようとしたが、またいつもの席には先客がいた。
しかしいつもの店員はいつも通り席に案内するので、どういうことだろうと首をかしげつつもそれについていくと。


289 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:53:34.89t+fNUzNho (10/36)

上条「よぉ……来てくれると、信じてたぜ……」


虚ろな目で横たわっている上条当麻が居た。


9982号「どうしたのです、そんな世界の終りみたいな顔をして。
    と、ミサカは明らかにおかしい様子の上条当麻を心配します」

一方通行「いや、それよりもだなァ……」


ちらりと、上条の正面を一瞥する。
そこにはオムライスを頬張っている白い修道服を着た少女が居た。


インデックス「もご、もごご、むぐもぐもご!」

一方通行「食べながらしゃべるンじゃねェよ行儀悪ィ」


インデックスは何か言おうとしたのだが、初対面の相手に行儀を注意されたため、
一方通行の言葉にうなずくと、再びオムライスを相手にし始めた。

飲み込んでからしゃべるのかと思っていた一方通行はその様子を見て溜息をつく。


一方通行「こいつが噂の居候って奴かァ」

上条「ああ、そうだ……」


科学の街で修道女。どう考えても訳有りだろう。
それを匿う上条は相当なお人よしであったが、そんな上条の顔は今も暗い。


290 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:54:19.95t+fNUzNho (11/36)

一方通行「こいつを連れてきてるってことは……」


何か込み入った事情があるのだろう。そう考えた一方通行は、上条の発言を待つ。


上条「いや……インデックスは関係ない」

一方通行「インデックス?あァ、そいつの名前か……
      それじゃあ、なンでまたそんな深刻そうな顔してンだ」


インデックス、おそらく偽名か何かなのだろう、訳有りだし。
と一方通行はあたりをつけ、あからさまに変な名前に関してはスルーして本題に入る。


上条「課題が……全く終わってねえんだ」


重々しく、消え入りそうなほど小さな声で、それでいて確かに聞こえる声で、上条は話す。


「「は?」」


ここまで思わせぶりな態度を取っておいて、夏休みの課題とは何事か。
というか御坂美琴はどうした。一方通行と9982号はその疑問をぶつける。


上条「いや……お前らと別れた後さ、色々あって……その、一個もやってねぇんだ……」

9982号「つまり……お姉さまとにゃんにゃんしてたから、課題はしてないと?」


ジト目で上条を見つめる9982号。その視線には呆れと若干の批判が乗せられていた。
それを察し、上条は気まずそうに眼をそらす。
まァ、何かあったのだろうな。こいつお人よしだし。一方通行はそう考え、助け船を出した。


一方通行「大方変な事件に巻きこまれたンだろ。お前結構運悪いもンなァ」

上条「ああ、そうだ……最近はあんまり不幸だって言う事は減ってきたんだけどなあ」


291 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:55:13.43t+fNUzNho (12/36)

幻想殺しは神の加護すら打ち消しているのでは、とインデックスが予想したが、
どうやらその予想は当たっていたらしく、幻想殺しを失ってから、不幸な目にあう事が減っていたのだ。
と言っても、上条自身幻想殺しがあろうとなかろうと、どちらかと言えば運の悪い人間だった、というのは余談である。


それはさておき、上条が幻想殺しを宿していた頃、魔術師と大立ち回りを演じた名残で、魔術師から命を狙われることもしばしばあった。
今回も、その名残の一端だったのだが、上条はそこまでは言わない。

科学が全てのこの街に、『魔術』などと言う非科学の代表的存在を受け入れられるとは思わない。
故に訳有りシスターを匿っている、という事だけを伝えるにとどまった。


しかし、そんな上条の思惑(幻想)は、オムライスを完食したインデックスによってぶち殺された。


インデックス「とーまはいっつも私に隠れて厄介事に首突っ込むんだよ!!
       今日だって私の知らないところで魔術師と戦って!!」


その言葉を聞いて一方通行と9982号は首をかしげる。

まじゅつし。

魔術師。

魔の術師。

魔術の師。

魔術……?

そんな非科学が存在するのか。

何も知らない学園都市の住民はインデックスの発言を一笑に付すだろう。
上条自身も、魔術を目の当たりにするまではそういった態度だった。


しかし一方通行と9982号は、すでに「テレビの中」と言う非科学を体験していたので、割とあっさり受け入れた。


292 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:56:13.99t+fNUzNho (13/36)

一方通行「へェ、超能力の他に異能を操る人間がいたンだなァ」

9982号「まぁ確かに、学園都市の軍事力を相手に、普通の力をふるっていたのでは勝機なんてありませんしね。
    と、ミサカは学園都市ないしは日本を相手にする諸外国を想像します」

上条「あ、あれ……?学園都市の人間がそんな非科学、信じちゃっていいんでせう?」

一方通行「じゃああのテレビをお前は科学の結晶だ、とか言うのかァ?ありえねェありえねェ」


まァ、あンなテレビがありえてるンだから、魔術の一つや二つあるだろ。と一方通行は言う。


9982号「そうですね、それなら日本にも陰陽師とか居るんじゃね?
    と、ミサカはテンプレっぽい平安の服装をした人物が妖怪を滅する様を妄想してみます」

インデックス「ふふーん、とーまと違ってこの人たちは頭が柔らかいみたいだね!」


ドヤ顔で話すインデックス。上条はぐぬぬと顔をゆがませるが。


一方通行「魔術は別にイインだけどよォ。インデックス、っつったか?
     お前のその修道服の安全ピン、ひょっとしてなンか魔術的な意味みたいなもンがあるのかァ?」


一方通行が聞いてはいけない質問をしてしまい、上条の顔はピシッと固まった。


上条「い、いいいやそそそれはの、ののっぴきききならねねぇ事情ってものがでですね……」


言い訳を考えながら話したため、どもる。


インデックス「聞いてくれる!?ホントは安全ピンなんて要らないし、
        ホントはこの修道服、強力な防護がかかった結界だったんだよ!!」

9982号「ほお、それは素敵ですね。ですがその口ぶりだともう失われてるようですね。
     と、ミサカは安全ピンが刺さった元強力な防護結界を見て同情します」


一方通行はインデックスの発言で大体の顛末を把握したが、インデックスの口からそれを聞くことにして、黙っている。
続いて9982号も察したのだろう。インデックスに同情して、話の続きを促した。


293 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:56:54.93t+fNUzNho (14/36)

インデックス「それでね、それでね!とーまったら魔術の事全然信用してくれなくて、
       それでこの結界、『歩く教会』って言うんだけど、この歩く教会の事話しても全然信用してくれなかったの!!
       そしたらとーま、「俺の右手は異能なら神の奇跡だろうと打ち消せる」とか言ったの!!
       私もそんなバカな話あるわけないじゃないって思って歩く教会にその右手を触らせたの!!
       そしたら歩く教会が……バラバラになったの……!!」


一気に捲し立てて疲れたのだろう。インデックスは手元の水を飲んで落ちつく。


一方通行「成程なァ……つまり、上条はか弱い幼女の服をひんむいたことを反省して、
      アンチスキルの元へ行こうとしたが、その前に懺悔しに来た。そう言う訳か?」

上条「違いますよ!!?」

9982号「駄目ですよ、罪を犯したら償うものです。さあ早く自首するのです。さすれば神もお許しになられるでしょう。
    と、ミサカは目の前の性犯罪者を汚らわしいです、近寄らないで妊娠させられちゃうという本音を暴露します」

上条「違う、違うんだ……あれは、事故だった……不慮の事故だったんだよ……
   まさかあんなことになるとは思わないじゃないですか……
   大体あの頃は魔術なんてもの知ってるわけないじゃないですか……
   だからあんなことになるなんて思いもよらなくて……」


ぶつぶつとうなだれながら呟く上条。

と、ここで上条当麻は記憶喪失だから、そんなこと知らないのでは?という疑問が浮かんだことだろう。
その通りだ。上条はその時の事は記憶にない。
しかし、上条が記憶喪失してからしばらくしたとき、上条も一方通行と同じ疑問をインデックスに抱き、質問したのである。


「なあ、なんで安全ピンなんてしてんだ?変過ぎるだろ」


294 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 13:58:12.23t+fNUzNho (15/36)

覚えてないこととはいえ、それをした張本人からそんなことを言われて黙っている程インデックスはお人よしではない。
こっぴどくかみつかれた揚句、普段の愚痴も含め1時間ほど正座させられて事の顛末を細かく説明されたのだ。
インデックスはそんなことを疑問に思う間もなく頭に血がのぼっていたのだろう。
ゆえに上条は安全ピンの話題はインデックスの前でしないよう心掛けたのだった。
と言っても、安全ピンの話題が浮かぶ事などなかったのだが、今日までは。


何にせよ、追い詰められて逃げ場のない上条は机に突っ伏して頭を抱えた。
その様子を見て流石にからかいすぎたか、と一方通行と9982号は反省する。


一方通行「まァ……なンだ、わざとじゃないンだろ?
      上条もこうやって反省してることだし、この話題はこの辺で終わらせよォじゃねェか」

9982号「そうですね、流石にミサカも言いすぎました。と、ミサカは素直に謝罪します」

一方通行「俺もまさかこンな事になるとは思ってなかったンだ。
     そォだ、謝罪の意もこめて、今日の飯は俺が奢ってやるよ。インデックスの分も含めてな」


いつも一方通行が奢っていたのだが、一方通行の言葉に上条は感激する。
感激のあまり課題の事など頭の隅のタンスの奥へとしまいこまれた。
そしてインデックスの方はと言うと。


インデックス「こっからここまで持ってくるんだよ!あ、ご飯は洋食セットがいい!」

店員「は、はあ……お言葉ですがお客様、そんなに召し上がられるのでしょうか……?」

インデックス「問題ないんだよ!心配ならメニューにある順で一品ずつ持ってくるといいかも!」

店員「か、かしこまりました……では一品ごとにメニューを追加して行く、という形で注文を取らせていただきますね」


全部一気に注文をとって、食べきれないとなると常連のお客様が困るだろう。
そう考えた店員は手間がかかるのを承知で完食するたびに注文を追加して行く、という機転を利かせた。
そんな配慮は無駄だった、と知るのはインデックスが腹2分目辺りに到達した頃であったそうだ。
それはさておき、当のインデックスは、


インデックス「了解だよ!」

容赦なく注文していた。


295 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 14:00:15.67t+fNUzNho (16/36)

>>294
上から3行目訂正:インデックスは、上条はそんなことを覚えていないのか、と言う事を疑問に思う間もなく頭に血がのぼっていたのだろう。


296 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 14:00:58.64t+fNUzNho (17/36)

結局、インデックスはメニューを二周させたところで、久々にお腹いっぱい食べれたんだよ!ありがとう!と、笑顔で感謝を示した。
ここまで遠慮なしだとむしろ清々しいくらいだ。

一方通行は、なんだかすごい見世物を見た、そんな気分で伝票を開く。


一方通行「……ファミレスでの会計で、そこいらの料亭で支払う金より多い金を払う事になるとは思わなかった」

上条「その……なんだ……すまん」


インデックスの胃の限界を知る代償は大きかった。
これならバイキングでもいった方が良いのだろうが、そんなことをしたらバイキングがつぶれてしまう。
そう感じさせられるほどの、食べっぷりだった。


297 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 14:02:02.03t+fNUzNho (18/36)

・・・

結局、課題の一つもこなさずに、ただダラダラと駄弁っていた。
ここで、上条当麻はトイレへ行くと告げ、席を立つ。
9982号も新しいドリンクを開発すると告げ、席を立つ。
こうして、そこには一方通行とインデックスが残った。


インデックスはデザートのパフェをパクパクと食べ進めている。これで5杯目だ。
初めは、先ほどお腹いっぱいだ、と発言したとは思えないほどのインデックスの食べっぷりに感心していたのだが、いい加減あきた。
かといって特に話題も無いので一方通行は黙ってコーヒーを口にする。

すると、インデックスの方から話を振ってきた。


インデックス「とーまは、私に何か隠してるみたいなんだけど、あなたは何か知らない?」


おそらく上条は、基本的に厄介事に首を突っ込む事を、インデックスには隠しているのだろう。
学園都市で修道服を着ている、と言う時点で目立つのだから。
上条とともにインデックスまでもが厄介事巻き込まれたら、更に面倒なことになるはずだ。


一方通行「……いや、俺は何もしらねェ」


インデックスを巻き込むまいとする上条の意図に沿い、一方通行もしらを切る。


インデックス「そうなんだ……ところで、あなたもこの街の能力者なんだよね?」

一方通行「……その通りだ、一応この街で一番の超能力者をやってる。一方通行と呼べ」

インデックス「あくせられーた……うん、あくせられーただね。分かったんだよ。
        それでね、あくせられーた……突然だけど、とーまの事を……守ってほしいの」

一方通行「あァ?なンでまたそンなこと」

インデックス「私は……魔術の事なら何でも分かるけど、この街の超能力に関しては門外漢なの。
       だからとーまを狙う魔術師の力を知れても、
       この街にとーまが狙われたら、きっと守ることができないと思う。だから……」



力を、貸してほしいの。



インデックスは真っすぐ一方通行を見つめる。
その瞳は何処までも綺麗で、果てしなく澄んでいた。


298 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 14:02:48.38t+fNUzNho (19/36)

一方通行「……そォだな、それくらいなら、かまわねェよ」


その言葉に、インデックスの顔は綻ぶ。
ああ、上条はこの笑顔を守るために、動いているんだろう。
そう感じさせるほど、インデックスの笑顔は美しかった。
この笑顔を守るためなら、力くらい貸してやろう。一方通行は、そう思った。


インデックス「ありがとう、なんだよ」

一方通行「気にすンな。事のついでだ」

インデックス「……やっぱり、今も何か厄介事に首を突っ込んでるんだね」


インデックスはジトっと一方通行を見つめる。
一方通行は口を滑らせた事にしまった、とした顔をしたが、インデックスは身を引いた。


インデックス「まあ、いいんだよ。魔術側は私がなんとかするから、科学側はあくせられーたがなんとかしてくれるんでしょ?」


あって間もないと言うのに、それはいささか信用が過ぎないか?そう感じた一方通行はそれをそのまま質問した。


インデックス「大丈夫なんだよ、だってあくせられーたって、とーまと似てるもん」


そう言ってインデックスは、一方通行に笑いかける。


一方通行「はっ、あンなお人よしとこの俺の何処に共通点があンだよ」

インデックス「んー……優しいところ、とか?というか、何となく似てると思っただけだから、気にしなくていいかも!」

一方通行「あァ、そォかい。つゥかパフェ溶けてンぞさっさと食え」


一方通行の言葉に、インデックスは驚き溶けきる前にパフェをかきこむのだった。

以下略

一方通行は、「魔術師」属性のコミュニティである「インデックス」コミュを手に入れた。


299 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 14:03:44.35t+fNUzNho (20/36)

・・・

一方通行とインデックスが話をしている間、いつまでも帰ってこない上条当麻と9982号は何をしていたかと言うと。


上条「なあ何であいつらのとこ戻っちゃいけないんだ?」

9982号「それはですね、インデックスの真の目的を知るためですよ。
    と、ミサカはインデックスの動向に注目してみます」


2人は一方通行とインデックスの会話に水を差さないよう、ドリンクバーの前でたむろしていた。
ドリンクバーの前でたむろするのは、周りの人たちに迷惑なので、良い子も悪い子も真似しないように。

どうやらインデックスが、大量の食事を取る最中に、一方通行のことをチラチラうかがっていたのを9982号は察知していたらしい。
そのためあえてインデックスと一方通行を二人きりにすることで、インデックスの行動を監視しようと目論んだのだ。
と言っても、そのたくらみを考えたのは上条がトイレに行くと言って席を立った時思いついただけなので、かなり行き当たりばったりである。

実際、ドリンクバーからでは会話はうかがえない。
しかし、どうやらその会話は終わったらしく、インデックスはパフェに手をつけ始めた。


9982号「ふん、ボディタッチの一つも無いのですか。まあどうせ反射されるでしょうが、
     どちらにせよその程度でヒロインの座を狙おうとは片腹痛い。
     と、ミサカはインデックスの事を非ライバル認証します」

上条「何のことかよくわからねーが……そうだな、あいつら二人とも白いし、意外とお似合いなんじゃねえの?」

9982号「なっ!その発想はなかった。ですが見た目で全てを決めたら駄目です!
     と、ミサカはありえる未来を想像して身をふるわせます」


一方通行とインデックスに関して、見当違いな勘違いをしていた。


300 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 14:05:14.09t+fNUzNho (21/36)

尾張。

木山さん幻想御手について長々と説明した割にl今回はチョイ役。
今後再び出る予定はあるけども。
つーか展開遅すぎワロチ

魔術師コミュは、インデックスさんにしました。
俺の中でのthe・魔術師はステイルさんだったんだけれど

絡ませ方が分からなかった。でも上条さんコミュ、インデックスさんコミュで絡んでくるはず。きっと。


301VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/04(土) 17:23:13.68td6IawjR0 (1/1)

乙!
白コンビかわいいよかわいいよ



302上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:24:51.59t+fNUzNho (22/36)

番外編を勢い余って書いてきました。
その導入部です。ですが番外編なので下げて投下です


303上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:25:38.38t+fNUzNho (23/36)

上条当麻が自身の『影』と遭遇してから1週間ほど経過した。

現在彼とその居候のインデックスは、ドナドナと学園都市外部へと運ばれている。

何故、そんなことになったのか。

それは「学園都市第一位・一方通行」と「たかが無能力者」とつるんでいる、という噂から、
その「無能力者」を盾に打倒一方通行を掲げるスキルアウトが増大したからだ。


将を射んと欲すればまず馬を射よ。と言う訳で、大幅な無能力者狩りが発生したのだ。


一方通行を狙うスキルアウトを探すよりも、ほとぼりが冷めるまでその無能力者を学園都市外部へ放り出した方が早い。
と判断されたため、無能者狩りの事態を重く見た学園都市の上層部が、
「落ちつくまでどっか行ってろ。その間に情報統制をおこなうから」という判断を下したわけだ。


本来学園都市は、学生からの情報流出を避けるため、余り学園都市外部に学生を出すことを好まない。


もし仮に外部に出る事を希望したとしても、3枚の申請書に直筆サインを書き、
保証人を用意して、更には血液に微小の監視用機械を注入して初めて外に出られるのだ。

それほど外に出すことに対して厳しい学園都市が、自ら「外に行ってろ」と命令するパターンは大変珍しい。
上層部がそれほどまでに迷惑した、と言うことだろう。


それはさておき。正式な手続きの元、堂々と出所した上条と違い、インデックスはそうではない。

この白いシスター、元々学園都市に密入国した魔術サイドの人間であり、そんな人間が正式な手続きなど踏める訳もなく。
故に「インデックスはお留守番。
ただし飯は小萌先生のとこに行け」と説得を試みたのだが、
インデックスはなみだ目でカチカチと口を開いたり閉じたりしていた。


304上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:26:04.94t+fNUzNho (24/36)

このままでは出国する前に骨の髄まで食いつくされると危惧した上条は、こうしてインデックスを密出国させようとしているのだ。
と言っても、タクシーで外に出るための「門(ゲート)」を通過するときに、後部座席で横になって隠れるという、随分お粗末な隠れ方だったが。


案の定インデックスは門を通過するときにアンチスキルに見つかった。
さらば学園生活、こんにちは臭い飯生活。と上条は思ったのだが。


何故かインデックスに対して「仮ID」が発行されていたため、事なきを得た。

仮IDも発行するには正式に手続きを踏まねばならず、やはり密入国者であるインデックスにそんな芸当は不可能なわけで。


一体誰がそんな親切を?という一抹の疑問を残し学園都市を後にした。

・・・

海。夏と言えば海である。
上層部が上条当麻に提示した避難先は、海のある町だった。

学園都市は内陸部に存在する。そのため基本的には海とは縁が無い。
といっても、海に近い水質のプールはあるのだが、それでも本場とは気分が違う。

そういうわけで割とワクワクしていた上条は、町に到着してさっそく海へ向かった。


しかし、海水浴客が一人もいない。


どういうことだと考えたものの、夏休みも残りわずかだから最後は家ですごそうとか考えてる人が多いのか?
などと考えつつも、とりあえず旅館へと向かった。


305上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:26:44.22t+fNUzNho (25/36)

・・・

良く言えば老舗。悪く言えば古ぼけた旅館。


上条当麻とインデックスの前には、木造の古い旅館があった。
台風が来たらビニールハウスのごとく吹き飛ぶのではないか、と言うほどボロボロな旅館を見て、上条は上層部のケチっぷりに泣いた。

とはいえ、わざとではないにしろスキルアウトを騒がせる、という事態の原因の一端を担う上条を無料で旅行させているのだから、文句は言えまい。

何にせよここに泊まることは規定事項なので、さっそく中へと入る。


「あのー、予約してた上条と申しますー。誰かいませんかー?」


旅館に入った上条は、人の姿は見えなかったので、誰かいないか確認を取った。


「誰もいないんだよ」


良く言えば老舗。と言うだけあって、外観はザ・日本っぽい旅館を見て大いに喜んだインデックス。
しかし誰も出迎えない従業員、埃のたまった棚、その上に乗れば抜けてしまうのではないかと思ってしまうほど脆そうな床。
マイナスポイントが次々と発見され、更にはその間プラスポイントが一個も見つからない事に不安を覚えた。


しばらくすると、旅館の亭主らしき人が現れ、二人は部屋へと案内される。
やたらと体の弱そうな亭主で、しきりにせき込んでいたので、客のはずの二人が亭主を気遣っていた。


306上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:27:14.83t+fNUzNho (26/36)

「そういえば、海水浴客が誰も居ないのはどうしてなんですか?」


素朴な疑問を解消するため、亭主に聞いた。


「ああ、それはですね……ゴホッ実はゲホッ今年はクラゲが謎のゲホゴホ大量発生いたしましてなあガッハゴエエ!!」


疑問は解決したが、これ以上亭主に口を開かせないようにしよう、と二人は思った。

クラゲのせいで海水浴はろくに楽しめそうにない。
その上学園都市外部へ行くには保証人―詰まる所両親―の同行が必要で、明日にでもこの旅館に到着するそうだ。
高校生にもなって何が悲しくて両親とクラゲの居る海水浴を楽しまねばならないのか。
残念過ぎる海水浴に、不幸だ、とつぶやいた。

そしてそこまで考えると、これはひょっとして上層部の仕返しか何かなのか、とすら邪推をしてしまう。それが事実なのかどうかは不明だが。

兎にも角にも、部屋に荷物をまとめて、さあ遊ぶぞ!などと意気込んだところで、特にする事は無いため、部屋でインデックスとダラダラ過ごすのであった。


307上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:27:41.51t+fNUzNho (27/36)

「むむ、このちゃぶ台におかれている煎餅は食べての良いのかな!?」


ちゃぶ台の上には、湯呑が何個か逆さまにおかれている。
その隣にはポットと急須、煎餅が皿の中にあった。


「なんだか食べるのに不安を感じるのはわたくしだけでせうか……?」


まあ、インデックスなら大丈夫だろ。と思い、食べたいなら食べたらいいじゃん。とある種の毒見を促す。


「むっ、なんだかとーまの目線があやしいかも!」

「いやいや、そんなことはないですことよ!さあさあ、こちらのお茶もどうぞ!俺は腹減ってないしな!」

「とーまにしては気が利くね!」


噛みつき攻撃が来る前にお茶を勧めることで気をそらす。
そしてインデックスはバリバリと煎餅を食べ始めた。


308上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:28:08.57t+fNUzNho (28/36)

「このお茶と煎餅、すっごく食べ合わせいいかも!!」


ニコニコと笑顔を浮かべながら煎餅を咀嚼するインデックス。

その勢いは破竹。

煎餅を取る手は止まらない。

その様子をみて、最初は「ああ、ちゃんと食えそうだなー」などと能天気なことを考えていたが。


「……(いくらなんでも食べすぎじゃない?)」


そう、目の前に居るシスターの胃袋は宇宙。

そんなインデックスが食べ物を目の前にして残すなどありえない。


「待て待て、俺の分は?」

「だって、とーまはおなかすいてないんでしょ?」


迂闊。圧倒的迂闊。インデックスの興味をそらすための発言が裏目に出てしまう。
こうしている間にも煎餅はその数を減らしている。
これはどうしようもないな、という結論に至る頃には、煎餅は絶滅していた。


「……(インデックスの魔法名はblackhole000―大食女な子羊は食べ物を喰らう―とかいいんじゃね?もしくはdelicious000)」


309上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:28:48.74t+fNUzNho (29/36)

魔法名はラテン語を使うものだが、ラテン語など知ってるわけも無い。
そんなわけで英語でインデックスに似合いそうな英語を考える。

dedicatus545がインデックスの魔法名らしいので、綴りが似ているdeliciousとか良いのでは、いやでもインデックスは美食家ではなく大食らいだし、とか結構失礼なことを思い浮かべた。
インデックスはそんな上条の思考を感じ取ったのか、


「……とーま、何か失礼なこと考えてない?」

「え?いやいや、そんなこと考えてるわけないじゃないですか」

「むう……それならいいんだけど」

そしてインデックスはあっさり煎餅を完食すると、他にはないのかな?と上条に聞く。

「oh……gluttony000……」


上条は思わずグラトニー、すなわち暴食の罪の名を呟いた。


310上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:29:15.16t+fNUzNho (30/36)

「むう~!それひょっとして魔法名のことかな!?だとしたら失礼かも!
 そもそも魔法名と言うのは己の信念を英語ではなくラテン語にして魔法名に込めるもので……」

「いや、でもインデックスって滅茶苦茶食うじゃん」

「そっ……それは10万3千冊の原典がカロリーを求めてるのかも……」


上条の突っ込みに思わずうろたえるインデックス。
それを見て自身の優位性を感じ、畳みかける。


「だって俺、インデックスが魔術師として働いてるところをあんまり見た事ねーし……
 どっちかっていうと食ってるとこの方が多いって言うか」


するとインデックスはプルプルと震えだす。
しかし調子に乗っていたため、その様子には気付かない。


「つまり食べる事に関する言葉を魔法名にしたら良いと思うんだ。
 例えば、大食い選手権とか、時間内にこれを食べたら賞金出します、みたいなときに名乗ればいいと思う」

「うがー!!!」


堪忍袋の緒が切れたのだろう。上条に向かって飛びかかってきた。

インデックス は かみつく こうげき を くりだした!
きゅうしょに あたった! こうかはばつぐんだ!


「うっぎゃあああああああ!!!!」


上条の悲痛の叫びは、クラゲの多い海に沈む太陽と共に消えて行った。


311上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:29:44.86t+fNUzNho (31/36)

・・・

<???>

影は溜息をついた。

影がいるその空間には何もなかった。

ただし、周りにはシャドウだけはいっぱいいたが。
どうやら人間の姿をしている自分が、最近持ち場を荒す人間だと思われているらしい。


「やれやれ……幻想殺しは幸運すら打ち消すんだったか」


やってられん。影はひとりごちるが、よくよく考えると、幸運を打ち消すからとはいえ不幸になるのはおかしい。
となると、不幸なのは体質なのだろう。不幸を回避する、という幸運が幻想殺しによって打ち消された。そう考えるとつじつまも合う。


「こういうときは、こう言えば良いんだったよなー」


間延びした緊張感の無い声で、叫ぶ。


「ふーこーうーだー!!」


そして一息つくと、ギラっとした目をシャドウ達に向け、獣のような唸り声をあげる。


312上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:30:22.41t+fNUzNho (32/36)

「……オマエラがなぁああ!!」


跳躍。空中で宙返りし、回転した勢いでかかと落としをシャドウのうちの一体に喰らわせる。
かかとを叩きこまれたシャドウは、グチュリとグロテスクな音をあげる。
すると体液だろうか、黒い何かが、バケツの水を床にぶちまけたかのように辺りに広がった。


それを皮切りにシャドウ達は声かどうかよくわからない音を上げ、影に向かって魔法を放った。


「はっはあ!お前らみたいな脆弱な攻撃に幻想殺しなんぞ使う必要はねえんだよ!!」


シャドウが放つ炎や雷などの異能を目の当たりにして異能を打ち消す幻想殺しは不要と断じ、攻撃の全てを回避行動のみで避けて行く。

それらを避けたことにより、流れ弾が別のシャドウに直撃した。
影がひるんだシャドウ達に体術を叩きこむと、それを食らったシャドウは、一様に消滅して行く。


「ひゃっはー!!バカどもが!勝手に自滅してんなよ!!」


世紀末のモヒカンのような叫び声をあげる。
続いてもっと楽しませろよ、と獰猛な笑みを浮かべ、挑発する。
知能があるのかは不明だが、その挑発を見て一斉に影へ襲いかかるシャドウ達。


313上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:30:49.00t+fNUzNho (33/36)

「はっ、この空間はもう、てめーらの現実じゃなく、俺だけの現実なんだよ!!」


上条は再び跳躍し、どういった原理か不明だが、そのまま空中にとどまる。


「俺だけの現実には、てめーらみたいな雑魚は存在しねえ」


消えろ。と一言つぶやくと、影は右腕を掲げた。
すると右腕から火、水、雷、風などありえないほど大量な現象が発生し、それらはシャドウを蹂躙して行く。


全ての減少がおさまった時、辺りには影しか存在しなかった。


「ははっ、雑魚ばっか」


空中から降りた影は、先ほどまで存在したシャドウ達を馬鹿にする。
それほどまでに力の差が存在した。
子どもと大人、と言うレベルでは無い。もはや神とその他の有象無象と言っても良いだろう。それほどまでに圧倒的な差だった。


「はぁ、ひまだなー」


314上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:31:25.48t+fNUzNho (34/36)

この世界には基本的にはシャドウしかいない。

一方通行達というイレギュラーが居るが、いつもいるわけではないので、こうやって自我をもった存在は今現在、影しかいないのだ。


「海水浴とかしたいなー」


一人で泳ぐのってどうなんだ、と影は思うが。
何にせよ何も考えずに何かに没頭するのは悪くない。
そう考えた影は何もない空間。その中心(と言っても何処が中心かはわからないが)らしき位置に立つ。


「自分だけの現実<妄想>が支配する世界、か」


心の集大成。すなわち自分だけの現実の集まり。影がそれを理解するのに時間はかからなかった。
そして、それをする必要があるかは不明だが、片足を上げ、ダンッと地面を踏み抜く。
すると影を中心にして、周りの地面が水で埋め尽くされた。
半径100m程度だろうか、綺麗な円形の湖に、その端には砂浜が広がっている。


「海の完成っと」


影は水、もとい海の中心から飛び立ち、砂浜へと着地した。


「……いや、実際目の当たりにしたら別に泳ぎたくはないな……」

クラゲとか居そうだわ、と呟く。
偶然にも、影と光は、同時に海に対して残念な感情を抱いたのだった。


315上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/04(土) 20:33:28.13t+fNUzNho (35/36)

尾張。
影サイドで何かについての考察が出ました。
考察についていろんないろんがあるかもしれないですが、
ここではそういうものだとなっとくしてください。


本編の合間に書いて行こうかなと思います


316VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/04(土) 20:52:22.223sT9rI5No (1/1)


ああ、なんだかんだで影も上条さんなんだなぁ、とww


317VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/04(土) 20:58:16.56t+fNUzNho (36/36)

>>313全ての減少×→現象○


318VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/05(日) 14:59:21.263Bs76gkHo (1/1)

この上条さんって今能力開発すれば能力発現するかもしれない貴重な上条さんじゃないの


319 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 14:19:01.28vKM9F3iGo (1/16)

ある程度書きあげたら投下するわ


320 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:36:06.71vKM9F3iGo (2/16)

透過するわ


321 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:37:27.95vKM9F3iGo (3/16)

9月1日。
全国的に始業式である。

故に学生は夏休み気分の抜けない体を気だるげに学校へと向かって行く。
その中で、学校へ行くどころか私服姿で街中を歩いている一組の男女が居た。

9982号「……やはり常盤台の制服でないと、落ち着きません。
    と、ミサカは自身の体を眺めてそわそわします」

一方通行「我慢しろォ。学校が始まった今、平日の日中に制服姿で街中うろついてたら怪しまれンだろォが」

どちらにせよ、平日の昼間に見た目中高生位の男女が外を出歩いているだけで相当怪しいのだが。
私服姿になるのは単なる気休めだろう。常盤台の制服でなければなんでもよかった、そんなところだ。

9982号「しかし暇ですね。と、ミサカは男なら率先してエスコートしろよと一方通行を批判します」

一方通行「うるせェ、こうして街中連れてきてやってるだけ感謝しろォ」

そう。本来上条当麻と御坂美琴の始業式が終わり次第テレビの中に行く予定だったのだが、
それまで空き時間があるので、9982号が出かけたいと駄々をこねたのだ。
一方通行は嫌々ながらも時間になるまで出かけることにしたのだが。

9982号「かといって街に出て何をしたいかなんて、ミサカにはおもいつかないんですけどねー」

一方通行「……そォだな、俺らに年相応の遊び方なンぞ知ってるはずもねェ」

能力を鍛える事だけを考えてきた。

能力を鍛えさせるためだけに生きてきた。

そんな2人が集まったところで何をするかなど分かるはずもない。

仕方が無いので、結局いつものレストランで上条当麻と御坂美琴を待つことにする。
2人はそのうち上条と御坂に普通の学生の暇つぶしの仕方を教えてもらおう、と思った。


322 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:39:04.26vKM9F3iGo (4/16)

・・・

9月1日。
始業式を終えた上条当麻は、いつものレストランへ向かっていた。
もちろんテレビの中へ行くためだ。

インデックスには帰って来るのが遅くなるかもしれない事、
昼飯・晩飯は冷蔵庫に入れてある事、
もし全部食べてしまった場合は月詠小萌を頼る事、この三点を伝えた。
一応小萌先生にも三点目に関しては了承を得ている。

と言うのも、今日から姫神秋沙が上条の通う高校に転校してきたのだが、姫神は訳有りで小萌先生の住むアパートにやっかいになっていた。
そして転校した際、学生寮へと移住していたのだ。
そのため、小萌先生自身も一人きりのアパート暮らしは少し寂しいと感じていたらしく、
上条の頼みを喜んで聞きいれた、と言う訳だ。


自分の我儘―影を取り戻すこと―でインデックスには寂しい思いをさせてしまうのが申し訳なく感じる上条だが、
普段のインデックスとは思えないほど上条のお願いを快く受け入れていた。

こういった時、インデックスなら「またとーまは私だけ除け者にして!」みたいな感じでかみつく攻撃を繰り出すはずなのだが。
と、上条は疑問に思うのだが、インデックス曰く、


「あくせられーたが、とーまを守ってくれるから」


と言って笑顔を投げかけた。
おそらく昨日のレストランでの会話はこの事だったのだろう。
それにしても顔合わせは昨日が初めてだったはずだと言うのに、インデックスは随分一方通行の事を信頼している。
上条はそんな2人を少しだけ嫉妬しつつも、一方通行と9982号が待ついつものレストランへと向かうのだった。


323 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:39:53.73vKM9F3iGo (5/16)

・・・

9月1日。
御坂美琴は現在困惑している。


とりあえず、「現在」という時間軸から遡り、時は8月31日。
この日は色々ありすぎたせいで、寮へと戻った後、寮監にこっぴどく叱られた。
叱られた際の肉体言語によって、気づけば朝になっていた。

ひょっとして1週間くらい気絶してた?などと考えてしまうが(それ程恐ろしい折檻だった)そんなことはなく、一晩気絶しただけだった。
一晩気絶すると言うのもすさまじいが、何にせよ朝と言う事は、もう少ししたら始業式がある。

まだ始業式まで時間はあるが、とりあえず着替えようと思い布団から出ようとした。
しかし何やら布団が自分の体の面積よりも広くこんもりしている。

死んだように気絶していた私、人の気配を感じさせない隣の布団。
この二つの符号意味するものは……一つ……!


御坂「黒子ォォ!!」

白井「ヘブンッ!!」


自身の布団を思い切り引っぺがすとそこには白井黒子が丸まっていた。
それだけなら小動物的な意味で可愛らしいのだが。
その姿は黒いネグリジェであり、黒の布地であってもものすごく薄い布地で、いろんな部位が透け透けであった。
そんな白井の姿をみて思わず能力を発動させてしまう。白井は電撃を喰らって変な声を漏らした。


白井「な、何をなさるのです!?お姉さま!」


お姉さまがお望みならこういうプレイも……と言ったところで御坂が白井の発言を阻止した。


324 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:40:53.27vKM9F3iGo (6/16)

御坂「あ、あ、あんたって奴は私が気絶してるのを良い事に何してるのよ!!?」

白井「あら?私、こんな格好ですけどお姉さまを介護した後に添い寝しただけですわよ?こんな格好ですけど。
   ひょっとして、私とめくるめく夜をご想像なされて、照れ隠しに愛の鞭を……!?」


お望みでしたら、いつでもウェルカムですのに。と白井は言うが。


御坂「そんなわけないじゃない!!てか起きたら自分の布団の中にネグリジェ姿の人がいたら誰だってビビるわ!!」

白井「では普通のパジャマなら潜り込んでも良いのですわね?」

御坂「んなわけないじゃない!」

白井「それならば、どうやったら私とお姉さまは結ばれるんですの!?物理的に!」

御坂「物理的にって何よ!」


ぎゃーぎゃーと口論を交わす二人。朝から騒いでいると、奴が来る事を忘れて―――


『何を騒いでいる』


ででんでんででん。ででんでんででん。ででんでんでー(にゃあ)。
そんなBGMと共に部屋の扉が開かれた。


寮監「御坂、貴様反省が足りないようだな……?」

御坂「イエ、深く、実に深く、ハンセイしてオリマス。ダウラギリの谷よりも深く」

寮監「ならば何故騒いでる?白井もだ。何か弁明はあるか?」


背後に鬼が見える寮監の気迫に圧倒された白井は、部屋の隅に思わずテレポートしてしまった。


寮監「ほう、寮内での能力使用は厳禁だ、と言う事を忘れたか?それとも……」






―――抵抗する気か?


325 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:41:29.17vKM9F3iGo (7/16)

寮監の冷たい目が白井を貫いた。

その鋭い殺気のみで白井の戦意は根こそぎ奪われてしまう。

いや、別に白井は戦うつもりなど到底なかったのだが。


白井「あ……ああ……」


放心状態。

ジャッジメントとして最前線に立ち続けた白井がひと睨みで震え上がった。

白井は御坂の前では変態だが、ジャッジメントとしては一流だ。
どんなに凶悪な犯罪者相手でも一歩も引かないその姿は他のジャッジメントに勇気を与えいるそうだ。

兎にも角にも、そんな白井が、寮監の威圧のみで恐怖にかられたのだ。
寮監の実力はそれだけで説明可能だろう。

さて、寮監の注目が白井に行っている隙に、御坂はゲコ太パジャマのままソロリソロリと部屋を脱出しようとしていた。

寮監「おや、寝間着のまま何処へ行くと言うのだ?」

御坂「いや……ちょっと自分探しの旅に行こうかと……」

寮監「ほう、自分を探しにな……ひょっとして、記憶喪失か何かか?
   だとしたら頭に衝撃を与えたら自分を見つけられるかもしれんぞ?」


326 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:42:19.87vKM9F3iGo (8/16)

嗜虐的な笑みを浮かべて、指ポキする寮監。
絶望的な笑みを浮かべて、涙を流す白井。
諦念的な笑みを浮かべて、その場にしゃがむ御坂。


ここが地獄か。そう思った瞬間には、意識がブラックアウトした。




御坂「はっ!?」


気付いたらまたもや自分のベッドの上だった。時計を見るとそろそろ部屋を出た方がいい時間だ。

御坂は基本的に化粧などをあまりしない。
それゆえ、自身の身だしなみを整えるのに時間はさほどかからないのだ。
白井も目を覚まし、騒がないようにそそくさと着替えを始めたのだった。


327 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:42:56.56vKM9F3iGo (9/16)

・・・

そして時は「現在」へと戻る。

最初にも言ったが、御坂美琴は困惑している。
始業式を終え、教室へ帰った御坂に、女生徒達が群がっているのだ。

基本的に、御坂はレベル5と言う事で、周りが気を使って御坂を敬遠している。
別に御坂は嫌われているわけではない。むしろ多くの同輩後輩達が羨望の眼差しを送っているくらいだ。

しかし白井が「輪の中心に立つことは出来ても、輪に混ざることはできない」と評している通り、多くの生徒が恐れ多いと感じてしまう為に、本当に仲のいい友人は数えるほどしかいない。

そんな御坂が何故か女生徒達に囲まれていた。

「昨日の殿方とは如何なさったのです!?」

「寮監様に真っ向から逆らうほど心酔なされてるのですね……」

「今朝も寮でひと悶着あったらしいですわね、それも昨日の事で寮監様に逆らっての事ですか?」

「「キャー!」」

御坂をおいてけぼりにして騒ぐ女生徒達。やはり女学校だからだろう。
こういった恋愛話は大好物なのだ。しかし御坂と上条は残念ながらそういう関係では無い。


328 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:43:31.65vKM9F3iGo (10/16)

昨日だって、御坂に対する告白まがいの言葉を海原に扮した謎の人物に上条は吐いていた。

が、それを上条が意識して言ったわけではない。と言う事を御坂はよく理解しているため、
周りの女生徒達の質問攻めにうまく答える事が出来なかった。

そんなわけで御坂は女生徒達の制止を振り切って常盤台中学を走り去った。
向かう先はいつものレストランである。


「成程……流石の御坂様も恥ずかしがっておられますね」

「嗚呼、照れる様の何と愛らしいこと……」

「それにしても、御坂様をあそこまで惚れさせた殿方と言うのも一度お顔を拝見してみたいものですね……」


御坂が派手な逃走をかましたため、誤解は更に深まったのだった。


329 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:44:26.35vKM9F3iGo (11/16)

・・・

かくして、4人はいつものレストランへ集まった。
とりあえずテレビの中へ行く前に情報を整理することにした。


上条「えーっと、その布束?って人を調べにテレビの中行くんだよな?」

一方通行「あァ、そうだァ。」

9982号「あ、上条クゥン、ちみは実戦も兼ねて射撃の練習もしますから覚悟しといてください。
    と、ミサカは戦力を増やすために鬼軍曹になります。
    そんなわけで、後で渡しますが、鋼鉄破りに何かあった時の為にハンドガンを懐に忍ばせといてください」

上条「うえっマジかよ……いや、まあそうだよな……」


力不足だもんな、と呟く。


御坂「そんなことないわよ!何かあったら私が守るから!」


御坂美琴が上条当麻をフォローする。
しかし上条の表情は暗い。やはりテレビの中を体験したというのに、力不足を理解したうえでテレビの中に行くのは躊躇われるようだ。


一方通行「お前はあの影を取り戻したいンだろォが。そのために強くなりてェならいくらでも頼れ。
     お前が力をつけるくらいまでは守ってやるからよォ」

上条「ああ……ありがとな!」

一方通行「さて、布束砥信についてだが……」


さて、元気を取り戻した上条だが、一方通行はそれをさっくり流して話を続ける。


一方通行「こいつは、妹達に知識と人格を植え付ける『学習装置(テスタメント)』ってのを開発した奴だ。
     そして以前テレビに入った時、あの研究所にあった名簿の中にこいつの名前があった」

御坂「つまりその布束って人がテレビと何か関係ある可能性が高いってことね」

一方通行「あァ、その通りだァ。さらにこいつは19090号とも関連がある」

9982号「布束砥信がテレビの中に居るとしたら、うまいこと接触しなければなりません。
    と、ミサカは真実に近づく為の一歩を踏み出します」


布束砥信に関する事を軽くまとめた後、4人はテレビの中へと向かう。


330 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:45:30.85vKM9F3iGo (12/16)

・・・

4人が地面に着地すると、クマが待ちわびたかのように出迎えた。


クマ「いやあ遅かったクマね!寂しかったクマよー」


一応レギュラーだけれど、久々の登場である。


一方通行「あァ、色々情報を集めてたもンでなァ」

クマ「クマ?つまり何か情報を得たからここに来たってわけクマ?」

御坂「まあ、そういうことね。それで、ここ最近放り込まれた人は居る?」


御坂がクマの質問に首を縦に振った。
そしてここ最近は雨が降らずマヨナカテレビを見れていなかった為、誰かテレビの中に来てないか確認を取る。


クマ「いやー、それらしい気配は無かったクマよ?あ、でも普通の人とは違った気配は感じるクマ」


その言葉に上条が反応した。


上条「そ、それって何処から反応するかわかるか?」


普通の人とは違う反応。上条はそれを自身の影の事かと思ったのだが、
クマが言うには「普通の人とは違うけど、人の気配であることには変わらないクマ」だそうだ。

ゆえに可能性としてそれは布束である可能性が高い、と言う事で上条は少しがっかりした。


一方通行「普通の人とは違うってのはどういう事だァ?」

クマ「いやさ、何だか普通の人にしては力を感じるクマよ」


『力』という言葉に反応する一同。この場で『力』というと答えはそう多くない。
4人は頭に思い浮かんだ単語を思わず口にする。


「「ペルソナ……?」」


布束の影、と言う可能性もあるが、今までとは違う反応を示したクマを見て、その可能性は薄い、と全員が考えた。


クマ「まあ何にせよ、力の感じるところまで行ってみないと分からないクマよ」


クマは大まかな気配を察するだけで、そこまで索敵能力は高くない。
結局その場まで行かないと何も分からないのだ。

一方通行「それもそォだな……そンなら、とっとと行くぞォ」

一方通行がリーダーとして仕切る。

「「了解!」」

こうして、仮称特別捜査隊(未だに正式名称は決まってない)の多分布束救出大作戦がスタートした。


331 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:46:08.87vKM9F3iGo (13/16)

・・・

<不思議な忍者からくり屋敷>

屋敷。どうみても屋敷だった。
観光に来た外国人が見たら「oh!ニンジャフジヤマHAHAHA!」とか言いそうなくらいの昔ながらのジャパニーズ屋敷だった。

江戸時代によく見られる長屋門、その入口に立つと、木彫りの看板には「砥信流忍術屋敷」と書かれている。


一方通行「これはどォ見ても……」

9982号「布柄砥信ですね……と、ミサカは忍術ってどういう趣味してんだと突っ込みを入れます」

御坂「同名の人……は無さそうよね、「砥信」なんて名前そういないでしょうし」

クマ「おお!これが噂に聞くジャパニーズニンジャでーすクマー!?」

上条「お前はどこのミーハー外国人だよ……」


入口の門の前に立つと、勝手に門が開く。
何と言う自動ドア、江戸時代の様式の建物にはオーバーテクノロジーだろとか学園都市組の4人は思うが、クマは大興奮であった。
開いた門の先、そこには屋敷まで真っすぐ通路が伸びていた。

しかしその通路の左右は、


上条「うわっ!何だこりゃどこの厳島神社だっての」


海で覆われていた。屋敷のまわりは長屋門で囲われていた為、屋敷の上層部しか見えなかったので気付けなかった。
それでも門が開かれるまで、潮の匂いすらしないと言うのは奇妙であるが、テレビの中なら仕方ない。
仮称特別捜査隊の一同は屋敷の敷地内へと足を踏み入れた。


332 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:48:07.60vKM9F3iGo (14/16)

9982号「いやあ、実に面白い造りをしてますね。と、ミサカはわざわざ門の内側を海で覆う事の無駄さに笑います」

御坂「そうよね、普通外堀と内堀だけで十分よね」

一方通行「テレビの中の建造物に突っ込み入れるなよなァ……」

クマ「へー、これって人間にとって普通じゃない建造をしてるみたいクマね」

一方通行「つゥかこういう場所って、放り込まれた奴にとっての現実、っつってなかったかァ?」

一方通行の疑問の声をあげる。

上条「そうだぜ、こんな建物みたことねーよ」

テレビの中に降りたった時に渡された鋼鉄破りをいじりながら、上条も一方通行の疑問に便乗した。

クマ「あっちにある建物が必ずしも出てくるわけではないみたいクマよ。
   あくまでも『その人にとっての現実』なんだクマ」

御坂「じゃあ極端な話、その人自身の妄想とか願望が、『その人にとっての現実』になるってこと?」

『その人にとっての現実』。その言葉の意味を考えた御坂はクマに聞いた。

クマ「そう!そうクマよー。美琴ちゃんあったまいー!」

どうやら正解だったらしく、素直な称賛を浴びて、御坂は少し顔を赤くして照れている。

9982号「では今回は、布束砥信の願望か何かが具現化したと言う事ですね。
    と、ミサカは結論を述べます」

とここで、屋敷の扉までたどり着いた。

クマ「皆準備は良いクマ?無線も持ったクマ?」

一方通行「あァ、つゥか無線持ったか?っていう確認はクマが一番しねェといけないンじゃねェの?」

クマ「むむ!失礼クマねーちゃんと持ってるクマ!」

全く、失礼しちゃうクマね!とクマは無線を手にずんずんと扉の中へと進んだ。
クマが屋敷の中へ足を踏み入れた瞬間。


クマ「あれ?」


クマの立つ床がパカッと開いて、クマは物理法則に従って落ちて行く。
床が閉まりそうになったので思わず一方通行が床の中へと飛び込んだ。
バタン、と床が閉じた時、再び床を開ける事は出来なかった。


上条「あ、あれ……?」

9982号「いきなり分断されましたね。と、ミサカは現状をまとめます」

御坂「ま、まあ……一方通行もいるし、大丈夫じゃない……?」


残された3人は、その床を避けて屋敷内へと足を踏み入れた。


333 ◆DAbxBtgEsc2011/06/06(月) 15:50:10.43vKM9F3iGo (15/16)

尾張。
不思議な忍者屋敷でした。
やっとテレビの中だよ……

>>318その辺後々出てくるかもしれん。手にあまりそうだったら開発しても無能力者って言う設定で行くけども


334VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/06(月) 15:56:59.83vKM9F3iGo (16/16)

>>325
真ん中らへんのジャッジメントに勇気を与えている
に脳内変換な


335VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/06(月) 19:30:24.08VmDnuBHDO (1/1)

乙!
次は布束さんか…これは期待。既にペルソナ持ちなのか?

上条さんの能力は、出すにしても扱いが難しそうな。
無双されても萎えるだろうし…まあ、なんとなく大した能力は持たなそうだけど。


336VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/06(月) 21:15:38.26xuGzfohh0 (1/1)

一匹+一人で落とし穴生活、ありきたりだが串刺しと水攻めで笑いをとる?


337VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/07(火) 11:46:37.74v8+ZIZiH0 (1/1)

能力はいらないんじゃね?
上条さん右手無しでも十分チートだしペルソナ目覚め(るかどうかは>>1次第だけど)たらいらんだろ
ってか上条さんがそげぶ以外にも能力あるとか違和感がパネェ


338 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 13:01:31.22HjS62ufeo (1/18)

           |
       \  __  /
       _ (m) _ピコーン
          |ミ|
        /  `´  \
         ∧ ∧
        (・∀ ・)
        ノ(  )ヽ
         <  >

       \     /
       _ `゙`・;`' _バチュ--ン
          `゙`・;`
        /  `´  \
         ∧ ∧
        (・∀ ・)
        ノ(  )ヽ
         <  >


         ∧ ∧
        (・∀ ・) <何だっけ
        ノ(  )ヽ
         <  >


夜にまた来る。その時投下る。

>>337これからの展開考えてるけど、上条さんはやっぱ無能力者で行くと思うわ


339 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:41:34.76HjS62ufeo (2/18)

投下するよ!!!!!!!!!!


340 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:42:26.40HjS62ufeo (3/18)

<一方通行・クマside>

周りが海なのに落とし穴があるってどォいう事だよ!と内心突っ込みを入れつつ、
一方通行は先に落ちたクマを何とか抱えて着地した。

しかし着地した先は、牢屋だった。

とりあえず一方通行は、自分達が落ちてきた天井を見据え、軽く跳躍し拳を突き刺そうとする。
しかしベクトル操作を以っても、天井は傷一つつかなかった。

自分達が落ちてきたところを逆走出来れば簡単に戻れると思ったが、そこまで甘くないらしい。
仕方が無いので、目の前の木でできた牢を壊そうと試みるも。


一方通行「……ハァ?ンだこりゃ」

クマ「牢屋クマね」

一方通行「ンなもン見りゃわかるっつゥの。問題はここが開かねェってことだ」

クマ「つまり……閉じ込められたクマね!」


一方通行「なンでそンな悠長に構えられるかねェ……能力が阻害されてるとはいえ、
      この俺の能力ですらこじ開けらンねェって異常だぜェ?」

クマ「まあ今のとこシャドウがいる感じはしないから問題ないクマー」


現状どうしようも無いと判断したクマは、その場に座り込んで無線を取りだした。


一方通行「あァ、そういや無線で連絡とらないとなァ」

クマ「クマクマ。今回のクマは前回のミスを反省してるクマよ!」


ドヤ顔で話すクマにイラッとするが、クマが無線で話そうとする前に残った3人から先に連絡が来たので話すことにする。
クマはちょっと残念そうな顔をしていた。


341 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:43:19.74HjS62ufeo (4/18)

御坂『あんた達無事?こっちは一応3人そろってどっかの一室に居るけど』

一方通行『おォ、こっちは無事だ。なンか俺の力でも出られねェ牢屋の中に居るけどなァ』

御坂『そう、とりあえずあんた達の事は何とか見つけるから、何とか耐えててね』

一方通行『任せたぜェー。こっちもなンとか出られねェかやってみるわ』

御坂『了解。出られたら連絡頂戴。こっちも何かあったら連絡入れるから』


了解だァ、と言って無線を切る。クマは恨めしそうにこちらを見ている。
無視しますか? はい← いいえ


クマ「クマ!クマの貴重な活躍シーンだったのに!!」

一方通行「おいおい、お前はあンなンで満足だってのかァ?
      こっからの脱出方法考えるとかよォ、もっとあるじゃねェか!」

クマ「……クマ!?そうクマね!クマ頑張るクマ!」


一方通行の言葉に奮起したクマは、木の牢の前に立ち、体当たりを始めた。
しかし こうかはないようだ……

一方通行も何とか現状を打破するために周りの壁や床をペタペタ触って抜け穴でも無いかと調べてみるものの、
人を閉じ込めておくための牢屋の為に抜け穴があるわけが無い、と納得する。

よくよく考えると、周りは海のはずだ。
それならこの地下牢の周りはそこまで複雑な構造では無いはず。

ならば目の前の牢を何とかした方が良いだろう。
一方通行もクマと同じく牢の前に立ち、ペタペタと牢の構造を解析していく。

こうして一方通行とクマは、しばらくの間牢屋で過ごすことになった。


342 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:43:52.69HjS62ufeo (5/18)

・・・

<上条・御坂・9982号side>

目の前で2人が罠の餌食となった。

とりあえず無線も通じて無事は確認できたものの、流石忍術屋敷と言ったところか。罠が満載の様だ。

3人はこれからどうするかを考える。


上条「とりあえず無事は確認できたけど、まずは一方通行達の救出に向かった方がいいのか?」

9982号「助けに行くと言ってもここの構造を全く把握してませんしね……」

御坂「うーん、地図でもあればいいんだけど……そうね、構造を把握するついでに地図でも無いか探すってのはどう?」

上条「それしかなさそうだな」

9982号「そうですね。では探索がてら上条に銃の扱い方を教えましょうか。
    と、ミサカは上条にこちらのハンドガンを構えるよう指示します」


ハンドガン、と聞いて上条は9982号に質問をする。


上条「鋼鉄破りじゃないのか?」

9982号「これは随分とじゃじゃ馬なので、上条にも渡してはいますが、今はまだトレーニング用の重り、という認識で良いですよ。
    と、ミサカはまずは初心者コースをお勧めします」

上条「成程なー。分かった、じゃあこれは背中にくくって行けばいいってことだな」


先頭を御坂、その後ろに9982号と上条がハンドガンを構えて並列した隊列となり、3人は探索を開始した。

別に9982号にそんな気はないのだが、上条に手とり足とり拳銃の扱い方を教えている様子を見た御坂は。


御坂「……(あんなにべたべたして……いや、別にうらやましくなんかないんだけどね!)」

軽く嫉妬していた。

御坂は考える事すらツンデレ。

どうせなら頭の中くらいデレデレすればいいのに。


343 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:44:54.49HjS62ufeo (6/18)

・・・

<不思議な忍者からくり屋敷F1>

3人は通路内を慎重に歩いている。

通路は複雑に入り組んでおり、気を抜いたら何処から来たのか忘れそうになる。
しかし、御坂美琴は自分達の来た道を完璧に覚える程度には記憶力があるので、そこは問題ない。

問題は仕掛けられた罠だ。

例えば床の通路に足跡が刻まれていて、明らかに怪しいのでそれを避けて通ろうとすると、
横の壁から竹やりが飛び出してきたり。

慌てて避けたが今度は足跡を踏んでしまい、何か来ると思った3人は身を構えるものの、何も出てこなかった。
どうやらその足跡を踏んで行けば罠が出ないようだ。

安心してその足跡をたどって曲がり角を行ったすぐ先に今度は落とし穴があったり。
どうやら曲がり角の直前まで行けばもう竹やりは出てこないようだった。

しばらく罠も無く安心して通路を行くと、またも足跡が刻まれていた通路があり、今度は逆に足跡が罠かも?
と思った御坂はポケットに入れていたコインを足跡の上に乗せると足跡から刃が飛び出してきたり。

警戒しながら歩いていると、躓いて倒れそうになった上条が、体を支えようと壁に手をついたら、その壁がスイッチの様にへこんだ。
何も起きないからどういう事だと思ったら、ゴゴゴ、と屋敷全体が揺れ始めた。

しかし揺れただけで3人に被害は一つもなく、不思議に思った3人が辺りを見回すと、
何と屋敷の地形が変わったらしく、引き返そうとしても知らない場所だった。
これは拙いと思ったが、もう一度へこんだ部分を押すと、屋敷が元の形に戻った。


344 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:45:41.07HjS62ufeo (7/18)

紆余曲折を経てようやく地図らしき紙が置かれている部屋を発見し、嬉々としてその紙を取りに行こうとする上条。

どう見ても罠だろ、と突っ込みを入れる間もなく上条は地図を手にする。

すると部屋の襖が勝手に閉まり、開かなくなったと思ったら壁がクルリと回った。
そこから太った猿に警官の服装をさせたかのようなシャドウ「収賄のファズ」が7体程現れた。

シャドウを見て御坂と9982号はすぐさま戦闘態勢へと入る。
続いて上条もハンドガンを構えつつ手に取った紙を開くと、



      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
      |                    |
      |                    |
      /    ̄ ̄ ̄ ̄      /
      /             . /
    /    は ず れ(笑) ../
    /              ./
   /   ____     / 
  /             ./
/             ./
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


と書かれていた。
これにキレた上条は、紙をぐしゃぐしゃにしてシャドウへ放り投げ、紙ごとシャドウを打ち抜いた。

この時の事を、9982号は「あの時の上条の射撃には目を見張るものがありましたね」とコメントしている。


345 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:46:30.42HjS62ufeo (8/18)

上条の見事な射撃で収賄のファズは残り6体。その6体は3人を囲うような形で円陣を組んでいる。

ここで、御坂がなにやらトライアングル・フォーメーションだー!とか叫ぶ。
上条と9982号は何言ってんだこいつとか思うものの、言いたい事はわかったので、3人はシャドウの陣の中心で三角形にならんだ。

それにしてもこの御坂、ノリノリである。


9982号「いやしかし、上条は中々筋が良いですね。と、ミサカは素直に腕前を称賛します」

上条「へ?いやあ、夢中だったからなー」


この分なら鋼鉄破りの扱い方を教える日も近いな、と9982号は思う。

戦力はあって越したことにない。
早く上条にも鋼鉄破りを笑いながら振り回すくらいにはなってもらわねば。
どうやって鍛えてやろうか考える9982号は、それはそれは嗜虐的な笑顔だったそうだ。

こうしてる間にもじりじりとシャドウ達は円陣を縮めて行く。
3人はぎりぎりまでシャドウを引きつける。


御坂「今よ!一斉掃射!!」


御坂の号令を聞いた瞬間、上条のハンドガン、9982号の鋼鉄破りから火を噴くように銃弾が飛び出す。
シャドウ達が3人との距離を縮めていたため、銃弾を当てるのは非常に容易であった。

号令を出した御坂も2人に負けじと電撃を放つ。
それだけでシャドウのうち3体はあっという間に沈黙した。


346 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:47:13.94HjS62ufeo (9/18)

9982号「ふん、雑魚どもめ。と、ミサカはさっきのシャドウを他愛も無いと切り捨てます」

上条「あー……よかった、当たって……正直ひやひやしたぜ。先走って打ちそうになったしな」

9982号「よく我慢できましたね。と、ミサカはリーダーの指示をしっかり聞く事は良いことだとほめたたえます」

御坂「まだ出てくるかもしれないから、警戒は怠らないでね」


何だか急激に仲が良くなっている上条と9982号を見て何だかやきもきした御坂は、2人に警戒を促す。
上条は了解了解、と再びキリッとした表情になるが、9982号は何やらニヤニヤした表情をして御坂を見ていた。
そんな9982号の視線を感じ、御坂は思わず声をあげる。


御坂「な、なによ」

9982号「お姉さま、ひょっとして妬いてます?と、ミサカはお姉さまも銃撃講座初心者編を上条と学びますか?と尋ねます」

御坂「ややや妬いてねーし?別にあんなの何とも思ってねーし?」


9982号の指摘にあたふたする御坂。
やっぱお姉さまって面白!と9982号は思いつつも、ツンデレってやっぱ損気だよなあ、としみじみ思った。


347 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:48:37.96HjS62ufeo (10/18)

下らないやりとりをしている間に、シャドウ達は3人へと襲いかかってきた。
御坂と9982号はそれぞれオオヒルメとワカヒルメを現出させる。


御坂「へっへー、これ見てよ、これ!新技新技!……マハラギ!!」


御坂はマハラギ―敵全体にアギを喰らわせる魔法―を唱えた。
すると3体の影は炎によって焼かれる。しかし、火ダルマになりながらも3人へ向かうシャドウ。

9982号「根性だけは認めましょう。ですが、これで終わりです。
    と、ミサカは電光石火と言う名の新技を放ちます」


御坂に続いて9982号も電光石火―全体に1~2回小ダメージ―を放つ。
ワカヒルメは電光石火の言葉に反応し、9982号の体力を贄に、
目にもとまらぬ速さで火ダルマになっている3体のシャドウを殴り、蹴り飛ばした。


上条「す、すげえ……」


上条はペルソナの圧倒的な力を前に感嘆の念を表す。
その力を前に、少し自信をなくしそうになるが、自分が御坂達に見合うくらい強くなればいい、と考え再び奮起した。
奮起したがシャドウはもう居なくなっていたため、少しがっかりした。


348 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:49:09.75HjS62ufeo (11/18)

しばらく周りに気配が無いか探る。
しかしシャドウは居ないようだったので、警戒レベルを下げてその場に座って、休息をとることにした。


上条「はあ……それにしても何だよ外れって……馬鹿にしてるだろ畜生……」

御坂「ていうかどう見ても罠じゃないの、どうして引っかかるようなことしてんの」


9982号「ま、まあ落ちついてくださいお姉さま。
     『はずれ』と言う事はどこかに『あたり』なる紙が存在するはずです。
     と、ミサカは『あたり』が地図だったらいいなあ、という願望を露わにします」


上条「てことははずれ引くたびに戦闘になるってことか?」

御坂「今回の事を考えると、そういうことになりそうね……今回は7体だけだったから何とかなったけど……」

9982号「当たりを引いたら更に強敵が出てくるかもわからんですね……
    と、ミサカは一層気を引き締めます」


結局手掛かりは『あたり』の紙を探すしかなさそうなので、再び探索を始めるのだった。


349 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:49:51.83HjS62ufeo (12/18)

・・・

<不思議な忍者からくり屋敷・地下牢>

詰んだ。

一方通行とクマは本気でそう思った。

だって、出られないんだもん。

仕方が無いので何かアクションが起こるまで牢の中でダラダラしよう、と言うのが一方通行とクマの結論なのだが。


一方通行「なァンでお前がいるンですかァアァ!!?」

影「何だよ、そう邪険にすんなよー」


牢を挟んだ閉じ込められてない側、そこには日本の城には似合わない洋風のテーブルで紅茶に砂糖を入れる上条の影がいた。


一方通行「これもお前の仕掛けた事かァ?」

影「んにゃ、俺は場所を提供してやっただけだぜ?」


ここまで造り上げたのはアイツの力だ。と影は言う。
アイツとは、布束のことだろうか……?


クマ「ちゅーか、なんでここに居るクマ?」

影「いやさ、初っ端の罠にハマった馬鹿の顔を見にな。
  あれだけは自作なんだよねー。上出来だろ?」


350 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:50:19.60HjS62ufeo (13/18)


影はドヤ顔で語る。一方通行はその顔にイラッと来るが、逆らったところで何にもならないのでグッとこらえる。
「つうかてっきり上条の野郎が落ちたかと思ったんだが」と、影は厭味ったらしく一方通行を眺めた。


一方通行「はン、悪かったなァ。上条よりも不幸で」

影「はっは、むしろここの方が安全って考えたら上に残ってる3人の方が不幸かもなー」

一方通行「……あいつらになンかあってみろォ……!
      全身引き裂いて海の底に沈めてやるからなァ」


ギンッと眼に力を込め、影を射ぬく。
しかし影は意に介さず、飄々とした様子で紅茶をすすった。


影「言ったろ?あの落とし穴以外は知らねえよ。まあ罠の設計図を見たらすげええぐいなとは思ったがな。
  つっても、布束の元に行きたいなら、あんな罠くらい鼻歌交じりで通過出来ないとな。やっぱ話になんねえよ」

一方通行「じゃあ、初っ端で引っかかった俺らは不合格ってかァ?」

影「あっはっは、そんな事ねえよー。ここに来たのは……
  まあなんだ、敗者復活のチャンスみたいなのをもってきたんだよな」


351 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:51:13.27HjS62ufeo (14/18)

牢の前に立ち影は鍵を2人の目の前にぶら下げる。


影「こっから出るための鍵だ。要る?」

一方通行「……どォいう風の吹きまわしだ」


不自然すぎる。確かに現状手づまりで何もできないとはいえ、影の提案を受け入れるのもどうかと思う。


一方通行「……(と言うか、影に借りを作るのが嫌だっつゥの)」

影「まあ、俺としてはどっちでもいいんだが、あのままならあいつら確実に死ぬだろうしなー
  力バランスをとるためにもお前らにはあいつらと合流してほしいんだよな。
  そっちのが見てて楽しいし」


気の抜けた口調だが、物騒な内容を吐く影の言葉に、一方通行は驚愕した。


一方通行「ハァ!?どォいう事だよ!?」

影「そのまんまの意味だよ。あいつらじゃ布束には勝てねぇっての。
  俺もそれなりに楽しい戦闘をさせてもらったしな。
  楽しませてもらった礼として、この空間貸したんだしなー」


ニヤニヤと一方通行へ向け笑みを浮かべる影。


352 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:51:47.17HjS62ufeo (15/18)

影の戦闘力は未知数だが、確実に強いだろう。おそらく、今の一方通行よりも。
そんな影が認めた力だ。弱いはずが無い。それを理解できてしまう一方通行は、

一方通行「……こっから出してくれ。頼む」


迷わず素直に頭を下げた。


影「ハハッ……イイね、ちょっとでも俺に頭下げるの迷うようなら鍵はあげなかったけどよ、」




―――イイ悪党だ。




影はガチャリ、と牢を開ける。

影「じゃ、もっと俺を楽しませろよー」

2人に一言残して、光(かげ)も形も無く消え去った。

一方通行「……なンだったンだ、あいつ」

クマ「いやーあいつって実は良い奴クマ?」


2人は牢を出た。

すると影の残したテーブルの上に1枚の紙が置かれていた。
その紙には『あたり』と書かれていて、裏面にはこの屋敷の見取り図と思われる図が描かれている。


353 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:52:28.45HjS62ufeo (16/18)

一方通行「……見取り図?」

クマ「この屋敷の地図っぽいクマね」

一方通行「まァ、参考程度にした方がイイだろォな。それが罠かもしれねェし」

クマ「そうクマね、とりあえず美琴ちゃん達に連絡した方が良いクマ?」

一方通行「どォしたもンかなァ……」


今連絡を取って大丈夫なのだろうか。影の口ぶりなら、まだ無事なはずだが。
隠密行動をしている時に無線の声で敵に居場所をばらす、なんてことになったら笑えない。
今は3人の力を信じるしかないと判断し、牢を出た2人は罠が無いか調べるが、ここはあくまでも牢屋。
人を閉じ込める事を前提とした場所に罠など仕掛ける必要はないと言うことだろう、罠らしい罠は無かった。
そして地図を見るまでも無く、上へ向かう階段は一つしかなかったので、2人は階段を上っていった。

・・・

<???>

「finaly、あなたは彼らに力を貸すのね」


屋敷の一室、茶室と思われる部屋で、和風の部屋に似合わないゴスロリの服を着た少女は、
茶杓で茶器から抹茶をすくい、茶碗に入れる。
続いて抹茶にお湯を加え、茶碗の中でかき回して均一に分散させている。


「そういうなよ、俺はいい勝負が見てえんだ。虐殺は趣味じゃねえ」


先ほどまで牢屋に居た影は、その少女前で胡坐をかき、ぶっきらぼうに言い放つ。


「but、あのままでも相手はあの『超電磁砲』。良い勝負は見れたと思うけど?」


お茶が完成したのか、手慣れた動きで優雅にお茶を影へと差し出した。


「俺はこういうのよりコーヒーとかのが好きなんだけどな……ああ、結構なお点前で」


コーヒーの方が好みらしいが、社交辞令として賛辞の言葉を述べる。


「それはどうも。……anyhow、彼らの力を知りたいからね。
 therefore、こうやって罠とかいっぱい仕掛けたんだけど」

「はっ、よく言うぜ!殺す気満々だったじゃねえか!」

「indeed、その通りよ?……死んだらその程度だった。それだけのことなのよ」


……出来れば、力を貸してほしいのだけれど。
少女の小さな願いは、果たして届くのか。


354 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 18:53:52.17HjS62ufeo (17/18)

尾張。
上条・御坂・9982号の当たりの紙を探す頑張りは無駄です。


355VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/07(火) 19:24:39.55yL78N5QSO (1/1)

>>1乙
なんだか影の言動が一方さんっぽく感じる…ような気がする


356 ◆DAbxBtgEsc2011/06/07(火) 19:28:25.76HjS62ufeo (18/18)

イメージとしては明るい一方さんなんだ
と言うのは言い訳で、かいててキャラが安定しなry


357VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/06/07(火) 22:11:17.49o3NFZncAO (1/1)

主の方針なら仕方ないけど、なんでもいいから上条さんにペルソナ欲しいなあ。タケミカヅチとか合いそう。


358VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/08(水) 01:21:27.56ltI7eAaNo (1/1)

乙乙
上条さんのガン=カタが炸裂する日も近い


359 ◆DAbxBtgEsc2011/06/08(水) 23:11:33.37l7TWSmgAO (1/2)

家かえったら投下するわ
遅くても2時間後くらいに


360 ◆DAbxBtgEsc2011/06/08(水) 23:13:06.23l7TWSmgAO (2/2)

上げちまったァ
すまン


361VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)2011/06/08(水) 23:14:19.01pvbI3vTqo (1/1)

最初の投下は上げてくれ


362VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/08(水) 23:17:49.30JZYGvstGo (1/1)

>>1ならageても構わんよ


363 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:10:20.33J0t8MhH5o (1/38)

今回、>>1の中途半端な化学やら物理やらの知識が用いられます。
そのためねぼし的な理論が展開されますので注意

では透過するよ


364 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:10:49.87J0t8MhH5o (2/38)

<不思議な忍者からくり屋敷F2>

1階は調べ尽くした。それどころか変なボタン押す事で屋敷内が変形した後も探索し尽くした。
内部構造が変わっただけで、基本的に部屋の中自体に変化はなく、
よってはずれの紙すら見つけられないので、再びボタンを押して屋敷を元に戻した。

そして2階。2階も1階と同じような罠ばかりで、最早慣れた。
罠自体には慣れたのだが、普通にシャドウの数が増えた。
それも以前の研究所で戦ったシャドウ達よりも数段強力なシャドウだ。

しかしそれすら3人にとっては、戦闘の練習台に過ぎないようだ。

上条当麻はたどたどしい手つきで敵を打ち抜き。
9982号は手馴れた様子で敵を蹂躙し。
御坂美琴は作業の様に敵を焼きつくした。


―――そして10枚目のはずれを手にした時、数えるのを止めた。


もはや3人には当初の目的―布束砥信と接触すること―は無い。

『あたり』を見つけるその時まで、布束の事など頭の片隅にzip形式で圧縮されてることだろう。


上条「ふぅ……俺らって何で戦ってるんだっけ……?」

9982号「え?『あたり』を見つけるついでに上条を鍛えるんじゃなかったでしたっけ?
    と、ミサカは当初の目的をおさらいします」

御坂「あれ?そうだっけ?なんかあった気がするんだけど……」


本気で忘れている。布束どころか、一方通行達の事すら頭にない。
もはや『あたり』を引くまでバーサーカーモードが続くことだろう。
3人は再び屋敷の探索を始める。


365 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:11:31.81J0t8MhH5o (3/38)

・・・

<不思議な忍者からくり屋敷・離れ>

一方通行とクマはようやく外に出られた。
……と思ったら屋敷から少し行ったところに位置する離れ屋敷に出た。


クマ「あっちに最初通ったところが見えるけど、ここの事も調べとくクマ?」

一方通行「そォだなァ……なンかあるかもしれねェしな……」


御坂達から何かしら連絡があるまで下手に動かない方が良いかもしれない。
とはいえ御坂達の身に何かあれば連絡できるはずもなく。


一方通行「しばらくこン中調べて、連絡が来なければ屋敷の方に戻る、ってのはどォだ?」

クマ「むむ、これからの采配をクマに託すクマ!?これはクマ大活躍の予感クマ!」

一方通行「成程わかった、ならとりあえずこの離れを調べることにしよォか」

クマ「あ、あれ……?聞いといてそういう事言っちゃうクマ?」


クマは不満そうな顔をするものの、最初から一方通行の考えに文句は無かったらしく、離れを調べることにした。

……と言ってもこの離れ、その辺にありそうな二階建の一軒家みたいな感じで、
調べるところどころか、そもそも罠の類すらなかった。


一方通行「……あっという間に調べること無くなったなァ」


366 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:12:25.36J0t8MhH5o (4/38)

シャドウも居ない、罠も無い。むしろ住めるレベル。
と言ってもここにあるのは2階へ向かう階段と窓と壁だけだから住めるか?
って言われたら家具とかないと住めないって答えちゃうけど。

とりあえず本当に何もない空間だった。

確かにこれだけ何もないと安心して休憩できるな、とは思うが。


クマ「逆に怪しすぎるクマよね」


何かを隠蔽している可能性すら感じられるほど、
テレビの中とは思えない平和さだった。


367 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:13:33.96J0t8MhH5o (5/38)

・・・

<不思議な忍者からくり屋敷F2>

特筆すべき事が無い。

それほどの作業ゲー状態だった。

『はずれ』の紙を引いてデストロイ。
『はずれ』の紙を引いてデストロイ。

目標をセンターに入れてスイッチを入れる少年のごとく、
レイプ目でシャドウを倒す作業に明け暮れた。

そして今現在。
目の前には今までのシャドウとは一線を画したシャドウが存在している。

ボディビルダーも裸足で逃げ出すほどの鍛え抜かれた筋肉。
そしてそれを見せつける為の服装なのか、海パン一丁の半裸。「闘魂のギガス」だ。

それは部屋の中央でポージングをしていた。
こちらにも気付いているはずだが、動く気配はない。
ふと「闘魂のギガス」の足元を見ると、『はずれ』とも『あたり』とも書かれてはいないが、何やら文章が書かれている。
これは確実に何かあるだろう、と3人は思うものの、目の前には筋骨隆々としたシャドウ。
なんだか妙に胸板がテカテカ光っていて、余り近づきたくない。
とはいえ、話を進めるには紙を拾うしかなさそうだ。


「「「じゃんけん、ぽん!」」」


じゃんけんで拾いに行く人を決めることにした。


368 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:14:16.89J0t8MhH5o (6/38)

 


上条「うあああ!いやだ!!お近づきになりとうない!!」


案の定上条当麻が負けた。上条はどっちかって言うと不幸だからね。
嫌がる上条を前に、2人はニヤニヤしながら筋肉ダルマの元へと行かせようとする。


御坂「なによー、言いだしっぺが負けたんだから弁明のしようがないじゃないの」

9982号「そうですよ、男なら覚悟を決めなさい。と、ミサカは激励します。あー良かった負けないで」

上条「御坂妹は本音が漏れてんぞ!ああ畜生やってやる!」


大体ダッシュで拾ってダッシュで逃げれば問題ないじゃん、と上条は覚悟を決め、
ギガスの元へ駆ける。
そして紙を拾い上げ再び御坂達の元へと逃げ帰ろうとする。
しかし、今まで無言でポージングをしていたギガスの顔が、グルンと上条の方へと向いた。

上条からするとホラー以外の何物でもない。
実際に「闘魂のギガス」がそんなこと言ったわけではないのだが、
上条の耳には「やらないか」という幻聴が聞こえてきたそうな。

それはさておき、上条の方を向いた「闘魂のギガス」は、おもむろに自身の両腕を持ち上げる。


369 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:14:51.74J0t8MhH5o (7/38)

 


そして、こぶしを床へと叩きつけた。


畳の床は簡単に貫通し、その穴からは下の階が覗かれる。

畳に穴が開く、という結果から上条は避けられた、と言う事がわかるが、間一髪のところであった。
上条もそれを理解していたため追撃が来るかと思ったら、再びポージングをして動かなくなる。


上条「し、しぬかとおもった……」


冗談抜きであんなパンチもらったら千切れると思った上条は、心を落ち着ける為に何度も深呼吸をする。
「闘魂のギガス」との距離はおよそ20m。3人にとっては射程圏内だが。


御坂「なんでアイツ攻撃してこないのかしら?紙は取ったのに……」


いつ攻撃が来るかもわからない為、上条は紙の内容は見ないでポケットにしまう。
攻撃してこないなら放っておいて逃げたいところなのだが、やはり襖は閉ざされて開かない。


9982号「やっぱあいつ倒さないといけないんですね。と、ミサカはガチムチを見て溜息をつきます」


手の内が読めない。あのポージングに何の意味があるのか。
近づいたら攻撃を仕掛けてくるのか、はたまた一定の時間過ぎると攻撃を仕掛けてくるのか。


上条「何にせよ、後手後手に回ったんじゃ勝てるもんも勝てねえよな」


上条はハンドガンを構え、「闘魂のギガス」の足をめがけて銃弾を放った。


しかし、カキンッと甲高い音が鳴り、はじかれる。


370 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:15:19.35J0t8MhH5o (8/38)

上条「え?何あれ」

9982号「たまにいるんですよね、魔法とか物理攻撃を反射する奴。と、ミサカは敵の能力を分析します」

御坂「てことは、あいつも反射持ち?」

上条「なんだそれ反則だろ!どこの一方通行だよ!!」


しかし本来、「反射」持ちのシャドウに反射が有効な攻撃をした場合、その攻撃が自分に帰って来るはずだ。
だが、今回の上条の攻撃は反射はせずにあらぬ方向(見えたわけではないが)へと銃弾は飛んで行った。

続いて御坂がオオヒルメを出し、アギを唱え、御坂自身も電撃を放つ。
これらは普通に当たった。相も変わらずポージングをしているのでダメージの大きさは不明だが。


御坂「うーん、何か体力がバカ高いってだけな気がしてきたわ」

上条「筋肉か!筋肉が悪いんか!!」


これじゃ俺いる意味ねーじゃん!と叫ぶ上条。そんな上条を御坂がなだめる中、9982号が提案する。


9982号「そうですね……ならばこれはどうでしょう。と、ミサカは鋼鉄破りを構えます」


371 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:16:07.82J0t8MhH5o (9/38)

鋼鉄破り、今持てる物理攻撃の中では一番強力な武器だ。
しかし、鋼鉄破りが火を噴く前に、「闘魂のギガス」は再び動き出した。
狙いは鋼鉄破りを構える9982号。

9982号の顔よりも大きなこぶしは、真っすぐその体をとらえようとしている。
思わぬ攻撃に動けない9982号は、鋼鉄破りを盾にした。
この鋼鉄破りはその性能を発揮するために、最早鈍器と言えるような鉄の塊と化している。
しかし、「闘魂のギガス」のこぶしは、そんな鉄の塊すらへし折った。

9982号は、殴られる直前に後方へジャンプしていたため何とか衝撃を殺すことが出来たが。


9982号「次殴られたら為す術もなくちぎれますね、物理的に。と、ミサカはあの攻撃力を目の当たりにして恐怖を覚えます」


そして再びポージングを始める。


御坂「どうやら、一定時間過ぎると攻撃してくるみたいね」

上条「あのポージングにも何か意味があるのかもな」


ほら、お前らのペルソナだって攻撃力上げるタルカジャとか言うのあるじゃん。と上条は言う。
2人は、その発想は無かった、と言う顔をした。


372 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:16:46.27J0t8MhH5o (10/38)

9982号「成程、そう考えたらつじつまも合いますね。攻撃力上げてから殴る」

9982号の言葉に合わせて御坂も続ける。

御坂「ただし攻撃をしたら攻撃力は元に戻るってことね」

上条「なら今のうちに総攻撃しようぜ。鋼鉄破りならもう一丁あるんだし」


と、上条は9982号に鋼鉄破りを渡した。
今度はちゃんとぶつけられる。そのための時間は「闘魂のギガス」自身が与えてくれるからだ。
9982号は鋼鉄破りを構え、狙いを定める。
「闘魂のギガス」はポージングを止め、再び動き出す。


9982号「跪け!と、ミサカはシャドウの足を止めさせます!」


9982号の放った強烈な銃弾は、「鋼鉄のギガス」の膝を砕き、その場に倒れ伏せさせた。
強力な筋肉の天然アーマーを装備していたとはいえ、
流石に鋼鉄破りの威力には勝てなかったのか、見事に膝を打ち抜いた。
しかし、足を止めたとはいえ、まだ戦えるはず。9982号は今度は頭に狙いを定める。

だが、まだ「闘魂のギガス」は動くことが出来た。


373 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:17:28.60J0t8MhH5o (11/38)

片膝だけでで立ち上がり、そのまま跳躍した。
その跳躍は、足に重傷を負っているとは思えないほどだ。
そしてそのまま9982号へ向かってこぶしを叩きつけようとしている。

9982号は突然の出来事に迎撃をしようとするが、鋼鉄破りを空中にいる敵に向けるのは難しい。
鋼鉄破りを持って避けるのは不可能と判断し、鋼鉄破りを放棄。

「闘魂のギガス」は鋼鉄破りを破壊し、再びポージングに戻った。


9982号「すみません……最終兵器がやられました。
     と、ミサカは後はお姉さまの超電磁砲しかなさそうです、と言う事実を告げます」

御坂「テレビの中じゃ本来の威力を出せないから不安があるんだけど……」


御坂は不安そうにポケットからコインを出すが、それでも攻撃するからには気合いを入れてコインを空中にはじく。


御坂「吹っ飛べ!!!」

御坂の叫びと共にコインが射出される。
強力な電気を帯びたそれは一直線に「闘魂のギガス」へと向かい、
その直線状にある全てのものを巻き込んで消失させた。
あまりの衝撃に煙が立ち上がり、辺りを覆う。


374 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:18:01.76J0t8MhH5o (12/38)

・・・



煙が晴れた時、3人は愕然とした。



上条「まだ……生きてやがるのかよ……」


上条は思わず弱気な口調でしつこい奴だ、と言う。
「闘魂のギガス」は、全身ボロボロではあるものの、未だにポーズをとっていた。


9982号「マズいです、また攻撃が来ますよ!と、ミサカは2人に警戒を呼びかけます」


再びその巨体は動き出す。
身近にいる敵を殴り飛ばすため。
そして今回のターゲットは。


御坂「うげっこっちくる!」


足を引きずりながらもズシンズシンと御坂のところへやって来る。
逃げられれば良いのだが、この室内に逃げ場など無い。
直前で避けるか、迎え撃つしかない。その2つしかない選択肢に御坂は。


御坂「どんとこい超常現象!!」


迎え撃つ事を選択した。


375 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:19:10.41J0t8MhH5o (13/38)

・・・

あれ?なんだか急に静かになった。


目の前には迫りくるこぶし。



スローモーションになる世界。




そして。






御坂「あれ……走馬灯ってやつ?これって」


もうこぶしは目と鼻の先だ。しかし一向に御坂の端正な顔がグシャグシャになる気配はない。


御坂「ちょっとまってよ、まだやらなくちゃいけないこといっぱいあるんだけど」


などと軽口を頭の中で叩くものの、時間は遅い。
研ぎ澄まされた集中力によって圧倒的なまでに時間が濃縮される。


御坂「走馬灯が流れる時間あるなら、敵を倒せばいいじゃん」


どうやって?御坂は自問する。


御坂「劣化版とはいえ超電磁砲すら耐えきった奴なのに」


耐えた、とはいえ体力は削れたはずだ。
それなら、出しうる最高の力で電撃をお見舞いしてやるしかない。


御坂「といってもなー、より大きな電流をお見舞いするには、何か媒体が欲しいのよねー」


より効率よく電流を相手にぶつけるにはどうしたらいい?
今手元にはコインとアギによる炎の力、そして自身の電気を操る力。これだけしかない。


御坂「……いや、これだけあれば十分じゃない」


最早これが効くかは一種の賭けだ。

出来る出来ないではない。やるしかないのだ。


生き残るために。


御坂「うぅ……あぁああぁあぁあああぁあああああぁあぁぁぁ!!!!!!」


御坂の咆哮と共に、最後の攻撃が放たれた。


376 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:19:50.04J0t8MhH5o (14/38)

・・・

致死性のある電圧の大きさとはどれくらいなものだろうか。
100V?はたまた1000V位だろうか?

答えは否(と言っても一般的には余裕で危険な電圧値なのだが)。
どちらかと言えば電流値の方が重要であり、致死に当たる大きさは50mA程だ。
というのも一般的には電気抵抗、と言うものが存在するためだ。

電圧=抵抗値×電流というオームの法則は、
学校の授業や、どこかの教育番組で聞いたことがあるはずだろう。

電圧1000Vに対してこの抵抗値の数値が非常に大きな値、
例えば10万Ωとしよう、の場合、電流値は10mAである。
これではまだ致死性を持った電気とは言えない。

と言っても、10mAの電流を喰らうと随意運動が不能になる程の威力はある、と言うのは余談であるが。

逆に電圧値10Vに対して抵抗値が小さい値だと(例えば10Ωとする)、
電流値は1Aとなり、簡単に死に追いやってしまう。

故に大きな電圧を持った電撃を作るのも重要なのだが、
それよりも周囲の環境を、電気を流すのに適した状態にする方が重要だったりするのだ。

さて、そのための環境作りなのだが、ここで「炎」という現象に着目する。
実は、炎と言うのは電気を通す性質を持つのだ。
何故かと言うと、「燃焼」という現象を起こす際に火炎はイオンや自由電子を持つことになるからだ。

つまり、何が言いたいのかと言うと、普通の空気に電気を流すよりも、
炎の中に電気を流した方が、効率よく高い電流値を持った電気を流す事が出来る。
(というか空気は基本的にほぼ絶縁体と考えても良い。)

とはいえ、ただなんとなく蝋燭にでも火をつけてそこに電気を流すのでは話にならない。
プロパンやブタンなどで起こす、温度が高くて強い火炎でないと抵抗値は小さくならないわけだ。

ちなみに、炎には一定方向にしか電流を流さない性質があって、早い話が炎には整流作用がある、
というのは完全に余談であり、ここでは取り上げないことにする。


377 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:20:21.74J0t8MhH5o (15/38)

さて、「電気」と「炎」について説明が終わったところで、
御坂美琴が行った事は大体お分かりいただける事だろう。

そう。

御坂はアギによる炎で電撃に確実な指向性を持たせ、
その上で電撃の威力を最大限に向上させる、と言う所業を成したのだ。

電気は抵抗の低い方に流れる性質があるため、
空気よりも炎の方に電流が行くので、うまく炎を操れば周りにも被害は出ない。

炎と電気の性質を理解した上で、その作戦を一瞬で思いつき、
確実に電流を流すための炎を作成して電撃を放った御坂の知識と、
そんな不確かな作戦に身を委ねた御坂の胆力に軍配が上がった、と言うことだろうか。




アギによる炎も相まって、「闘魂のギガス」は炭化し、ボロボロと崩れ去った。




上条と9982号は一瞬の事に唖然としている。
そんな中、御坂が声をあげた。


御坂「……死ぬかと思った」


あの研究所で騎士と戦った一方通行も、こんな気分だったのだろう。
「何だあの筋肉んの耐久力、反則でしょ」と、御坂は思った。


9982号「お姉さま、一体何をやったのですか?
     と、ミサカはあの電撃は明らかにあちらの世界の電撃よりもすさまじかったと感嘆の念を表します」

上条「すげー!流石レベル5だな!つーかこのテレビの中って能力阻害されてるとか言ってなかったか?
   なのにあんな威力の電気出すとかマジですげえよ御坂!」


あの筋肉ダルマとの戦いで走馬灯が見えたりと激戦を繰り広げた為御坂はとても疲れていたが、2人の称賛の言葉に素直に喜んだ。

でも御坂の貴重なデレシーンはカットします。


378 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:20:53.72J0t8MhH5o (16/38)

・・・

上条「で、この紙には何が書いてあんだろうな」

9982号「と言うか、あたりともはずれとも書かれてませんね。と、ミサカは目の前の文章を眺めて何これと感想を述べます」

御坂「何々えーっと……」



有の世界から離れた場所に無の世界がある。

そこには東西南北4つの穴がある。

無心になって穴の下に潜り込め。

その中で持ちうる破壊の力をふるえ。

さすれば新たな道が開かれん。

p.s. わなびー「おーる」でぃすわーるど by布束砥信 



「「「……暗号?」」」

紙の中には謎の暗号文?が書かれていた。
と、ついでに布束砥信という存在を思い出した。


379 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 00:22:31.66J0t8MhH5o (17/38)

はい、尾張です。
闘魂のギガスのポージングはチャージ→リベリオン→タルカジャです。
調子に乗ってわざと攻撃喰らってみたら酷い目にあったのを思い出しました。


一応最後の暗号は、なぞなぞみたいなものです。
結構なこじつけなところがあるンで別に解かなくてもいいです


380VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/09(木) 02:07:07.15ADsGSLcp0 (1/1)

なぜデレを省略したwwwwww
ねぼし的理論も割とよかったと思う。乙!


381 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 17:27:14.79J0t8MhH5o (18/38)

話を上手く切れないんでちょっと短いけどその分だけ透過するわ


382 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 17:28:20.83J0t8MhH5o (19/38)

<不思議な忍者からくり屋敷F1>

「闘魂のギガス」を倒した後、一方通行達と連絡を取った3人は、屋敷の入り口で落ち合うことにした。


御坂「あんた達無事だったのね。てかあたりの紙やっぱ地図なのね……」

御坂美琴は一方通行の持つ地図をみてガックリとうなだれる。

9982号「というかその紙何処で見つけたんですか?と、ミサカは激戦の数々を思い出してうなだれます」

一方通行「……まァ、この紙見つけたのは偶然っつゥか必然っつゥか……」


この時一方通行は、上条の影と遭遇したことを伝えるべきか迷っていた。
特に上条当麻に伝えたら、独断専行してしまう恐れがある。
しかし、クマはそんな空気を読めなかった。


クマ「クマクマ、上条の影が塩を送ってきたクマよ!何か良い勝負見てえーとか言って!!」


クマの言葉に3人は驚愕し、一方通行は頭を抱えた。
一方通行はクマに、上条がこれで勝手な行動に出たらどォすンだ!と、ヒソヒソと怒鳴る(←?)。
クマもその事に気づいてしまったと言う顔をするが、上条は。


上条「そうか……あいつがここに……」

意外と冷静だった。

一方通行「……いいのか?」

あまりの冷静っぷりに思わず尋ねた。

上条「ああ、いいんだ。……まだ、な。今行っても力不足でお前らに迷惑かけるだけだし」

一方通行を見据え、上条はそのまま続ける。

上条「……もっと強くなって、足手まといにならなくなったら……あいつと話に行くよ」


成程、既に上条当麻は捜索隊の一員としての覚悟を持っていると言う事か。
ならばこンなことを聞くのは野暮だった、と一方通行は思う。


一方通行「……そォか、そンなら、言う事はねェ」

上条「それよりよ、その地図見る限りじゃ多分大体回ったはずだからさ、後はこの暗号だけなのですが」

上条達は謎の暗号文を一方通行に読ませた。


383 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 17:30:00.97J0t8MhH5o (20/38)

御坂「「無心になって穴の下に潜り込め」、これは多分窓の事だと思うのよね」


「穴」の下に「ム心」すなわち「窓」と考えたようだが、他の部分がわからないようだ。


一方通行「有と無の世界……『何か』がある世界から離れた所に『何か』がない世界が存在していて、
     そこに東西南北四方向に窓があるから、それを壊せってことか……」


この時点で一方通行は、答えが大体分かった。
後は事実を一つ確認するだけである。


一方通行「俺ら、牢から出た後、この屋敷とは違う『離れ』に出たんだよなァ。
     で、その『離れ』には本当に何もなくてよォ……なンだこりゃって思ったンだが……
     この屋敷、『罠』でいっぱいだったろ?」


御坂と9982号は理解したようだ。3人は「離れ」の存在を知らないため、
暗号が解けなかったのもうなずける。


御坂「う、うん……ってまさか『わなびー「おーる」でぃすわーるど』の『わな』って……」

9982号「『wanna』ではなく『罠』と言う事ですか?それで「おーる」は「有」と言う言意味でしょうか?
と、ミサカは何と言うダジャレに苦笑いです」

上条「……ああ、成程!」

御坂と9982号の言葉でようやく上条も理解したようだった。

一方通行「さっき俺らが居た「離れ」にある窓をブチ壊せば良いって事だな。
     そしたらなんか有るはずだァ」

クマ「そうときまれば、クマについてくるクマ!」


こうして、仮称特別捜索隊は再び「離れ」へと向かうのだった。


384 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 17:30:43.41J0t8MhH5o (21/38)

・・・

<不思議な忍者からくり屋敷・離れ>

離れに到着した。

上条当麻と御坂美琴、9982号は、その罠も何もない空間を見て納得した。
ここが暗号文に書かれた「無の世界」であると。


御坂「本当に何もないわね……」

9982号「窓も一階と二階合わせて4か所、東西南北として考えられる位置にありました。
    と、ミサカは離れを調べた事実を述べます」

一方通行「それなら、クマを除いた4人で窓をぶっ壊す。これでどォだ?」

クマ「クマー!クマはおいてけぼりクマ!?」

御坂「クマは戦えないじゃない」

9982号「こないだミサカとぶつかった時倒れて立ちあがれませんでしたよね?
    と、ミサカはあの時の間抜けな姿を思い出して笑います」

フルボッコである。しかし事実なのでクマは言い返せない。

上条「クマは攻撃力が……残念と言うか……」

そして、上条からすらフォローがもらえなかったクマは。

クマ「もう良いクマ……この辺でおとなしくしとクマ……」

部屋の中央でいじけた。

一方通行「……クマはほっといて、各自窓ンとこ行くぞォ」


「「「了解!」」」



行動開始。
4人はそれぞれ窓の前に立ち、各々の持つ力をふるう。
一方通行はシナツヒコによる風を。
御坂美琴はオオヒルメによる炎を。
9982号はワカヒルメによる蹴撃を。
上条当麻は、


上条「あれ、銃弾ねえし!!もうこれ一般人だろ俺!」

仕方ないと、覚悟を決める。
そして上条は右ストレートを放ち、ガラスを砕いた。


385 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 17:31:31.24J0t8MhH5o (22/38)





クマ「おろ?」


窓が破壊された瞬間。
部屋の中央に鎮座していたクマの下の床がパカリと開く。
クマは物理法則に従って、下へと落ちて行った。

あまりにもデジャヴな光景だったが、開いた床は開きっぱなしだった。
おそらくは降りてこい、ということだろう。

一方通行「……行くしかねェだろォな」

一方通行の気だるげな言葉に、御坂が気合いを入れて応える。

御坂「虎穴にいらずんばなんとやらって奴ね!」

しかし、どのくらい深いのかわからない。何も考えず飛び下りれば上条などは特に危ないだろう。
仕方が無いので一方通行が3人を抱え、下へと飛び降りた。


386 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 17:32:30.91J0t8MhH5o (23/38)

・・・

<不思議な忍者からくり屋敷・地下茶室>

3人を抱えた一方通行は、能力を使って衝撃を殺し着地した。
クマは先に落ちたせいであおむけに倒れ、起き上がれないでいる。


クマ「起こしてほしいクマー!助けてクマー!」


緊張感の欠けるクマの姿に苦笑いしつつも上条当麻がクマを起こした。
そんな様子をクスクスと笑いながら眺める少女が居た。


一方通行「お前が布束砥信、だなァ?」

布束「indeed、私が布束砥信よ。ここまでよくたどり着いたわね」


語頭に接続詞をつける変わった口調の少女は、のんびりとお茶を作っている。


御坂「あんたは、絶対能力進化実験やこのテレビについて何か知ってるんでしょ?
   それを教えてほしいの。というか何でこんな場所に居るの?危ないでしょうに」


御坂が代表して聞きたい事を尋ねる。


布束「そうね、ここに来たのは不本意ながらだけど。
   but、事情を教えるには、あなた達が私の力になれるかどうか知らないといけないわ」


その言葉に一方通行と御坂が反応する。
御坂は超能力者としてのプライドが傷つけられた気がして、頭から電気をビリッと出した。


一方通行「へェ……目の前に居るのが誰か分かってねェよォだな……」


387 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 17:34:33.51J0t8MhH5o (24/38)

一方通行と御坂の脅しにも気にせず、布束は歌うように話す。

布束「indeed、学園都市第一位と第三位を相手にして勝てる道理はないわ」

however、と布束は逆説の接続詞をつけて続ける。

布束「このテレビの中では、その道理は捻じ曲げられる。それはあなた達はよく知ってるはずよ」


お茶が完成したのだろう。しかし、そのお茶は一人分しかない。
誰が飲むのか、と何となしに上条は思うが。
次の瞬間、上条の表情は驚愕の色に染められる。


影「だから、お茶は苦手だっての。まあ、結構なお点前で」

気がつけば、目の前には上条の影が存在した。

上条「お、お前……」

影「よお、上条君元気かなー?」


お茶を一気に飲み干して、影はニヤニヤしながら挨拶をかわそうとする。
しかし上条は驚きのあまり何も言えない。


影「さあさあ、こんなところまでやってきて、お前は一体どうしたいんだ?
  俺を連れ戻したい?どうやって?力づくで?」


矢継ぎ早に質問をする。しかし答えは聞いていない様子だ。


上条「俺は……多分お前が戻って来るにふさわしい人間じゃない。
   だから……このテレビの中でお前は好きにやってろ。俺はいずれお前を認めさせる」

影「はは、そうかい。それなら特に言う事はねえ、後は高みの見物と行こうかね」


上条の言葉や、決意に満ちた目を見た影は満足そうに言って、布束の後ろへと飛んだ。


布束「well、力比べをしましょうか」


布束はおもむろに拳銃を取り出す。

拳銃を見た4人はさっと身を構えるが。



布束は、



その拳銃を、



自身のこめかみにつきつけ、




「「「!!?」」」



迷わず引き鉄を引いた。


388 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 17:35:21.79J0t8MhH5o (25/38)

3000字といつもの半分くらいの投下でした。
かけたらまた夜に投下するかも


389VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/09(木) 17:58:52.03uz55ZyS7o (1/1)

乙乙
P3方式きたわぁ


390 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 18:39:00.25J0t8MhH5o (26/38)

ごめん、オリジナルペルソナのつもりがぜんっぜんオリジナルじゃないわ、布束さんのペルソナ。

布束さんこれ合うだろっひょーい!wwwwwwwwww
とか言ってたら既存のペルソナでショックを受けましたが、私は元気です。書きためてきます


391VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/09(木) 18:49:39.00xsVpOWuYo (1/2)

ペルソナ召喚はP3式が一番好きだ


392VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方)2011/06/09(木) 20:08:26.46LbZNzaVAO (1/1)

P4もいいが、やはりP3の召喚はかっこいいな


393 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 20:52:32.32J0t8MhH5o (27/38)

さて、vs布束たんです


394 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 20:54:39.22J0t8MhH5o (28/38)


布束砥信は言葉にする。

この世界で力を行使するための「合言葉」。


布束「ペルソナ……!!」


布束はこめかみにつきつけた拳銃を下ろす。
その背後には薄手の布をまとった女性のようなペルソナが居た。


布束「アトロポス……!」

―――アトロポス(atoropos)。曲げられない女。人々の運命を決める女神の3柱のうちの1柱。
運命を「糸の長さ」で表し、3柱はそれぞれ糸を「割り当てる者」、「紡ぐ者」、「断ち切る者」にわかれた。
アトロポス(変えられない者、という意)はそのうち「断ち切る者」に当たり、割り当てられた糸を断ち切る役割を果たした。
オリジナル造ろうと思ったら既存のペルソナでした。悲しいけどこれって現実なのよね。


クマ「やっぱり……ペルソナを扱えるクマね……」


クマは納得しているが、やはり他の4人は混乱を隠せていない。


395 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 20:55:21.07J0t8MhH5o (29/38)

布束「ふふ……どうして?って顔をしてるわね……
   anyhow、これが現実よ。ペルソナを扱えるのはあなた達だけじゃない」


but、あなた達みたいに天然じゃないけどね。
と、小さくつぶやく。その表情には若干影をさしている。
その言葉を一方通行は聞き逃さなかった。


一方通行「……何にせよ、ここで戦るってンなら、やってやるよォ!!
      (天然じゃない……?人工的にペルソナを扱えるようになるってンのかァ……?)」


獰猛な笑みを浮かべ威圧的な口調で叫ぶものの、頭の中では冷静に布束について考察した。

しかし情報が足らない。

布束が知っている事を教えてもらうしかないらしいと判断し、思考は戦闘にのみ集中する。

しかし、布束は動く気配が無い。
そして布束はぽつりと一言、


布束「……『コンセントレイト』」


コンセントレイト。日本語訳で「濃縮する」。
すなわち次に放つ魔法を濃縮する事で威力を大幅に向上させるスキルだ。
そして、今まさに強力な魔法を放つために、布束は集中する。

コンセントレイトを知らない一方通行達は、布束の出方を見るためか、一向に動く気配がない。
しかし、「闘魂のギガス」と戦った上条が布束の様子に嫌な予感が頭の中を廻った。


上条「おい……あれって、さっきの筋肉と同じようなことしてるんじゃねえのか……?」


396 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 20:55:49.29J0t8MhH5o (30/38)

「闘魂のギガス」を知らない一方通行は何のことやら、と言った顔をするが。
御坂美琴と9982号はギョッとした顔をする。


御坂「だとしたらヤバい!一方通行!ひょっとしたらあいつ、攻撃力を大幅に向上させるスキル使ってるかもしれない!」


御坂のその言葉を聞いて一方通行も事態を把握したのか、布束に向かってガルを放つ。


布束「私の目的に気付いたみたいね……but、もう遅い」



―――マハ、ガルーラ。(敵全体に疾風属性で中ダメージ―ガルより強力―を与える)



暴風、吹き荒れる。
この部屋には茶道具くらいしかなく、巻き込まれるのはその茶道具と。



「「「~~~ッッ!!!」」」



仮称特別捜索隊のメンバーのみだった。

全てを蹂躙する風が止んだ時、その場に立つことが出来たのは……

攻撃を放った布束と。

布束の後ろに控えていた上条の影。

そして、


一方通行「……」


一方通行のみだった。


397 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 20:56:17.36J0t8MhH5o (31/38)

布束「well、流石は第一位と言ったところかしら。ガル……いえ、ガルーラかしら?
   anyhow、疾風属性の攻撃を能力で操って壁を作ったみたいね……
   however、周りを守りきれるほどの壁はつくれなかったみたいだけど」


一方通行の後ろには、ピクリとも動かず倒れ伏せた仲間達が居た。


一方通行「クソったれがァ……!」


明らかな力量差。それを理解してしまう。
1対1なら確実に完封されるだろう。しかし、全員が揃えば何とか出来たかもしれない。

後手に回った時点で、負けが決まったようなものだ。
だが、まだ確定したわけではない。
一方通行にはまだ手札があった。その手札を切るのは今だろう。

為さねばならない理想があった。
そのためには生き延びねばならない。
ならば考えなければならない。

一方通行が行動を起こす前に、御坂と9982号はゆっくりだが、確かな意思を持って立ち上がった。
これはほとんど意地みたいなものだろう。例えギリギリでも、戦う意思を持って、布束と相対する。


398 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 20:56:57.15J0t8MhH5o (32/38)

御坂「ハァ……こんなところで、倒れる予定はないのよ……!」

9982号「まだ……終われません……我が同胞の為にも……」


そんな2人を値踏みするように眺めて、布束は小さく笑みを浮かべる。


布束「根性はあるみたいね……incidentally、ツンツン頭の男の子は、もうダウンかしら?」


布束の言葉に反応し、御坂と9982号はゆっくりと上条の方を向く。
おそらくペルソナを所持してない為に、御坂達と比べ、耐久力に差があったのだろう。
頭から血を流し、目覚める気配が無い。

動かない上条を見て御坂は。


御坂「ううぅ……うぁあぁぁあぁあああぁあああ!!!」


逆上した御坂は「闘魂のギガス」の時と同じく、炎を媒体とした電撃の威力を向上させる―火炎整流器とでもいおうか。―技を放った。
しかし、迫りくる強力な電気を保った巨大な炎を目の前にしても、布束は慌てる様子も無く。


布束「undoubtedly、手持ちのカードで電気を効率よく扱う、と言うのはとても良い考えね。
   but、これでは炎を退けるだけで電気もその炎に追従してしまうわ」


399 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 20:57:27.16J0t8MhH5o (33/38)

生徒に教える先生の様に丁寧な説明をしながら、布束は電気を帯びたアギをガルで逸らす。
アギはそのまま空中に霧散し、電気も一緒に消えて行った。
しかし御坂の攻撃はそれだけに終わらない。
あえて消耗を無視して巨大な炎を作る事で、それを眼隠しとしたのだ。

御坂は既に自身の代名詞たる『超電磁砲』を放つ準備は完了していた。

攻撃力なら、火炎整流器の方が高いだろう。
しかし、速度なら。圧倒的に『超電磁砲』に軍配が上がる。

そして御坂は高い攻撃力を持った上で高い速度も持った最大限の攻撃を布束へと放つ。
御坂が攻撃を放つその瞬間。


布束の口元は。



―――笑っていた。


400 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 20:58:01.21J0t8MhH5o (34/38)

・・・

超電磁砲は、直撃した。


御坂美琴は自身の攻撃が確実に当たった、と確信をもった。


だがしかし。


この言い知れぬ不安は何だ?


そうだ、「闘魂のギガス」よりも強いだろうと思われる少女相手に。




―――ただ一度の攻撃で倒れるわけがないじゃないか。




煙が晴れた時、布束砥信の服は、腹部が裂け、裂けたその部分からは血が噴き出していた。

明らかな致命傷である。

それでも布束の目は全く死んでいない。
それどころか口元には笑みが浮かんでいた。


布束「……イイ攻撃ね……but、こんなに激しいと、彼氏さんも大変じゃないかしら?」


401 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 20:58:30.48J0t8MhH5o (35/38)

敢えてもう一度言おう。明らかな致命傷である。
だが、布束からは軽口を叩くほどの余裕が見られた。

最大限の威力では無い、とはいえ生身の人間に初めて超電磁砲を直撃させた御坂は。


御坂「な……なんでそんなに、余裕なの……?」


自身の手で人間を傷つけたことによる恐怖と、目の前の布束の態度に対する戸惑いを隠せなかった。


布束「unfortunately、この世界では……回復スキル、と言うものが存在するのよ」



―――ディアラマ。ディアの強化版。体力を中回復する。



布束が『ディアラマ』を唱えると、腹部の傷はみるみるとふさがって行き、超電磁砲によって乱れた服装以外は綺麗に回復した。
そんな回復スキルを間のあたりにした一方通行達は驚愕した。


一方通行「成程……『ディアラマ』ならその程度の傷は完治出来るわけか……」

布束「but、回復量は能力に依存するけどね。
   therefore、『ディア』ですら使い手によっては、
   他の人間が使う『ディアラマ』よりも強力な回復スキルになることもあるわ。」


一方通行の言葉に、布束は聞いてない事まで丁寧に答える。
実を言うと、一方通行だけはこの回復スキルの存在を知っていた。

しかし、それを使う事はなかった。
「あたらなければどうということはない」という言葉もある。
どのくらい回復するのかわからないスキルに頼って攻撃を喰らうわけにはいかない。
そう考えた一方通行は、御坂達に攻撃が当たらないように今までは配慮していたのだ。

だがしかし。それもついさっき破綻した。

今更手札を出し惜しみしても仕方がない。
だが、通用するかはもはや賭けだ。


一方通行「……ペルソナチェンジ」


他のペルソナ使いとは一線を画した特殊な能力。
『ワイルド』たる一方通行は、それを存分に発揮することにした。


402 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 21:00:47.50J0t8MhH5o (36/38)

・・・

「ここは……?」

確か忍者屋敷の地下で布束砥信と相対していたはずだが。
そして、布束の攻撃に倒れたはずだ。

「……ようこそ、ベルベットルームへ」

ツンツン頭の少年の前には、一方通行の前に現れた長鼻の爺と、金髪の女がソファーに座っていた。


403 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 21:01:21.81J0t8MhH5o (37/38)

尾張。
上条さんにどんなこじつけでこんなことになったのか。
それは次回。


404VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/09(木) 21:02:06.49xsVpOWuYo (2/2)


まさかのワイルド×2クルー?


405VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/06/09(木) 21:58:38.32Dvy72b1AO (1/1)

上条さんはヌラリヒョンとかどうでしょうか(笑)
まさにワイルドって感じだし。


406 ◆DAbxBtgEsc2011/06/09(木) 23:16:38.50J0t8MhH5o (38/38)

何かテンションあがって今日だけでSS合計1万字すすめそうだ
何やってンだろう


407 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:32:11.205DeiJsCBo (1/13)

おっしゃー投下すんぞこらー!

注意点
・多分予想と違います
・ペルソナに関してねぼし的な理論が展開されます

以上の事を御理解いただけたうえで読んでいただくようお願いします


408 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:33:12.815DeiJsCBo (2/13)

戦力は拮抗していた。いや、拮抗しているという表現は正しくないだろう。
布束砥信は、疾風スキルを得意としている。ならば疾風無効の力を持ったペルソナに変えればよい。

今現在の一方通行の手持ちのペルソナには、その力を持ったペルソナが1体いる。
と言っても、火炎、氷結、雷、疾風の、4属性それぞれを無効のペルソナを1体ずつ用意していたのだが。
敵の得意な属性に合わせてペルソナを変えていく、という作戦は前々から考えており、今回はそれを実行したのだ。

しかしこの作戦には問題が一つだけあった。

どのペルソナも、シナツヒコに比べたら火力が無かった。と言うより鍛える時間が無かった。
故に今装備しているペルソナは『法王・アンズー』なのだが、イマイチ決定打に欠ける。(というか全く鍛えてないので、布束との力量差が著しい)
だがしかし、疾風属性が効かない布束も決定打に欠けるのは同じ事で、互いににらみ合いの状態になっていた。

隙をついて一方通行がシナツヒコに戻し攻撃を仕掛けるのが先か。
はたまたそれを見切って布束がカウンターを仕掛けるか。

均衡状態は、長引きそうだった。


409 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:33:56.695DeiJsCBo (3/13)


・・・

所変わって、こちら車の中。

上条当麻は困惑していた。
それもそのはず、先ほどまで和室の中で暴風に吹き飛ばされた。……はずだったのだが。


上条「えーっと、どちらさまで……?」

イゴール「ふむ、お取り込み中のところをお呼び立てしてしまったようですな……」


これは申し訳ない、と鼻爺は謝罪する。
しかし上条が欲しいのは謝罪ではなく、情報だった。
そんな上条の気持ちを察したのか、イゴールは続けて話す。


イゴール「申し遅れましたな。私の名はイゴール。こちらに控えておるのがマーガレットでございます」

上条「ああ、そりゃご丁寧にどうも……ってそんなこと知りたいわけではないのでございますよ!?」

イゴール「おっと、そうでしたな。本来、貴方様はこちらにお呼び立てする事はなかったのですが……
     『イレギュラー』が発生しましてな」


ふっふっふ、と思わせぶりな笑みを浮かべる。
しかし上条には話が理解できない。何にせよすぐに皆の元へ戻らねばと思うが。


イゴール「貴方様は現在『イレギュラー』によって『自身の片割れ』を失われておられます……
     そのような状態で皆さまの元へ戻っても……」


言いたい事はわかる。その通りだ。
力のない自分が行っても足手まといにしかならない。
だが、力がなくたって、目の前で仲間が苦しむのを許容できるほど上条の諦めは良くない。


410 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:35:00.715DeiJsCBo (4/13)

上条「例え俺が行くことが無意味でも……何か出来る事があるかもしれねえ!あいつらの盾にだってなれる!
   力が無いからって……守ることを諦めて良いことにはならねえだろうが!!」

イゴール「確かに。その通りでございます……ですが、少し落ち着きなされ。
     私がここにお呼び立て致したのには、ちゃんとした意味があるのです」

上条「意味……?」

イゴール「然様でございます。しかしながら、『力』を与えられるわけではないのですが……」

上条「『力』?ペルソナの事か?」

イゴール「その通り。『力』は与えられませんが、『力』の使い方をお伝え致すことができるのです」

上条「どういうことだ……?俺は俺の『片割れ』を失ってるんだから、ペルソナは使えないんじゃ……?」

イゴール「確かに、お客人は『片割れ』を失った状態にあられる。
ですが、『心』とは複雑怪奇……貴方様の『心』もまた、『片割れ』だけが全てではないのです」

上条「つまり……俺でもペルソナの能力を使う事が出来るのか?」

イゴール「然様。ですが悠久の時を漂う『心の海』では、貴方様の『片割れ』の代わりを成せる『力』を見つける事は困難……
     その『力』を引き出すための道具が必要なのでございます」

上条「道具……?」

イゴール「ふっふ……先ほど、あちらでご覧になられたはず」

上条「あっちで……?」


道具、道具。そんなもの使ってる奴……そういえば一人だけ、居た。
成程!と言おうとした瞬間、世界が暗転した。
再び薄れゆく(覚醒していく)意識の中、イゴールが言う。


イゴール「『片割れ』を失った状態で『心』を御す事は困難……
      さて、お客人はどのような選択を為し、進んで行くのか……
      いずれにせよ、自身のご選択に後悔のあらぬように、
      よくよくお考えになられますよう、お願いいたします」


411 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:35:44.455DeiJsCBo (5/13)

・・・

上条当麻は目を覚ました。しかし、体は既にボロボロで、頭がやたら重たい。
どうやら倒れてる間に血を流し過ぎたようだった。
しかし、軽い応急処置は為されていた。御坂美琴と、9982号によるものだ。

そして目を覚ました上条を見て、その2人は少し安心する。


御坂「よかった……目を覚ましたのね……」


御坂は軽く涙目である。9982号も、無表情であるがホッとした様子であった。


9982号「全く、情けないですね。男が女を心配させるなんて。
    と、ミサカは男の甲斐性無しは話にならんと説教します」

上条「ああ……悪いな……心配かけた」


体は重たいが、まだ動かせる。
後は召喚器だが……


上条「やっぱ、彼女が持ってるあれを何とか奪い取れなきゃなあ……」


よくよく考えると、布束砥信の持つ召喚器を奪い取れたなら、最初から上条にはペルソナは必要ないはずである。
だと言うのに、あのタイミングでイゴールが召喚器について話したのは何か意味があるのだろう。
そう考えた上条は、体力を温存するために、一方通行と布束との戦いを静観することにした。


412 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:36:11.145DeiJsCBo (6/13)

・・・

さて、一方通行と布束砥信との対峙は、未だに拮抗している。
どちらも動くに動けない状況だ。
そんな2人を遠目に眺める上条の影は、新しいおもちゃを買ってもらった子供のように非常に楽しそうな顔をしている。


影「おっ、上条君が目を覚ましたか……」


しかし上条の雰囲気を見て、影の表情が曇る。


影「ちっ……『力』の御し方を理解したか……?
  まあ、使いこなせるかどうかは別なんだけどなー」


どこのどいつだ、『ペルソナ』の扱い方を教えたのは。と影は憎々しげにつぶやき、
再び一方通行達のにらみ合いを眺め出した。


影「こいつらもこいつらでまどろっこしいなあー」


いい加減にらみ合いにも飽きが来たのだろう。
しかし、それでも何故か影はにらみ合いを眺める事を止めない。


影「俺を楽しませてくれた『あれ』、出てこないかなー。
  『あれ』の時の布束自身は記憶になかったっぽいけど」


あの時の『あれ』、そろそろこないかなー。と、影はニヤニヤしながら眺め続ける。


413 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:36:40.255DeiJsCBo (7/13)

・・・

一方通行「なァ……いつまで睨みあい続けンの?」

布束「well……私も疲れてきたわ……」


互いに何か何で戦ってるんだろう?とか疑問に思うようになった。
ホントに何で戦ってんのこいつら。


布束砥信は一方通行達の力を知りたかった。

一方通行達は布束砥信から情報を聞き出したかった。


ある種の利害が一致したと言うべきだろうか。
戦うべくして戦ったのだろうが、『闘魂のギガス』を撃破した3人に、『ワイルド』の力を以って布束とにらみ合いを続ける一方通行。

布束はもう十分に一方通行達の力を知ることが出来たはずだ。
クマは……よくわからない。

布束は戦いを止めるタイミングを逃していた。
ペルソナも結構な時間発動させていて、疲労も蓄積している。


414 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:37:54.915DeiJsCBo (8/13)

ところで、布束は最初に言った通り、一方通行や御坂美琴、9982号とは違って、
『自身の影』と向き合って、『自身の影を認めることの恐怖に打ち克った』わけではない。
拳銃型の召喚器を頭につきつけ、引き鉄を引く事で『恐怖に打ち克ち』、ペルソナを引きずりだすのだ。

『恐怖に打ち克つ』すなわち擬似的に『自身の影を認める』行為を成すことにより、
ペルソナを扱う事が出来るようになるのだ。

この『恐怖に打ち克つ』と言う行為は、前者と後者で全然違う。
前者は『自分にとっての根本的な恐怖を受け入れている』のに対し、
後者はただ単に、『恐怖を飲み込む』だけなのだ。

故に後者の場合、『召喚器』が無ければペルソナは扱えないし、
一歩間違えれば文字通り『恐怖に飲み込まれる』結果になる。



この『恐怖に飲み込まれる』結果と言うのは、
先ほど上条の影がひとりごちた『あれ』のことである。
それはすなわち。







影「おっと……来た来たっ♪」








―――ペルソナの『暴走』だ。


415 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:38:48.735DeiJsCBo (9/13)

布束「ッ!!?……あああッ!!ううッああぁああああ!!!!」

「「「!!?」」」


それは突然訪れた。
突如として布束は頭を抱える。何かにもだえ苦しむようだ。
布束の背後にいたアトロポスも苦しそうに喉をかきむしっている。
そんな様子を一方通行達は呆然として眺め、上条の影はワクワクした顔をしている。


影「これこれ、これだよ俺を楽しませてくれた『力』は!」


アトロポスの背中から、蝉の脱皮の様に、『何か』が現れた。

それは天使の様で、悪魔の様でもあり。
女神の様な微笑みを浮かべ、死神のような叫び声をあげた。

明らかに異様なその光景を前に、誰も動く事は出来なかった。
布束は諦念した顔で目の前の『何か』を見上げた。


この『何か』の狙いは。

布束砥信の。

『存在』そのものだ。


『何か』は布束へと手を伸ばす。
自身が布束と成り変る為。そのためには布束の存在は邪魔だ。
この行動はまさに、御坂や9982号の時と同じだった。
『宿主』から抜け出し、『自身を認めない宿主』を殺す。



―――すなわちペルソナは、シャドウへと堕ちた。


416 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:39:36.565DeiJsCBo (10/13)

そんな布束と、布束の影を見て、一方通行はいの一番に動いた。
布束の影を止めるためだ。

しかしそんな一方通行を見据え、布束の影は嗤う。


布束の影「what’s up?邪魔する気?ぶち殺すぞ?」

一方通行「何言ってンだ、そりゃこっちのセリフだっつゥの。俺はそいつに聞きてェ事がある。
     だからそいつに手ェ出されちゃ困るンだよ」

布束の影「why?何言ってんの?これは当然の報いだよ?
      私の事分かった気になって調子にのっちゃってまあ……」


布束の影は布束を、心底憎い、と言った目で射抜く。


布束の影「『あんな計画』に利用されてこんなところにまで追いやられちゃってまあ……
     all very well but、 もう我慢できないよね。過程はどうあれ、この『私』をいっぱい使いやがった」


借りたものは清算しないといけないよね?と布束の影。
『あんな計画』が何のことかわからないが、話を聞くためにも布束を保護しなければ。
そう考えた一方通行は布束と布束の影の間へと入った。


布束の影「after all、君らは私の邪魔しちゃうんだね」


そっちがその気なら、こっちもこの気で行くからね。と布束の影は嗤う。


布束の影「我は影…真なる我…」


一呼吸置いて、叫んだ。


布束の影「邪魔をするなら、ぶっころす!!」


こうして、風の力をもつペルソナ使いとシャドウは激突する。


417 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:40:07.295DeiJsCBo (11/13)

・・・


影「さあて、面白くなってきたなあ!
  あの時は力の片鱗だけ見てから速攻制御剤飲ませたからなあ……」


今回は全力を見られそうだ、と楽しそうに呟く。


影「つか、この場所って実質海の中なんだよな……」


これ以上暴れると、この室内は間違いなく崩壊するだろう。
この事を伝えるべきかな。いや、別にいいや。


影「そっちのが、イイリアクション見れそうだしなー」


それはまるでドッキリを計画するスタッフのような、悪だくみをおもいついたいたずらっ子の笑みだった。


418 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 00:40:45.285DeiJsCBo (12/13)

尾張。
上条さん覚醒は次回。
というかワイルドじゃないです。ごめン


419 ◆DAbxBtgEsc2011/06/10(金) 19:45:31.005DeiJsCBo (13/13)

今日は等価無しです
でも息抜きに禁書SSスレで短編書きました。
気が向いたら読んでください。と言っても4レスしかねェけどなァ

ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305991024/868


420VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/10(金) 23:02:54.015fsnbFvOo (1/1)

続き楽しみにしてます


421 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 00:57:39.55KMhRWGEJo (1/23)

ゴメン3レスしかないけどこれだけ投下したかった


422 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 00:58:19.89KMhRWGEJo (2/23)

一人と一体が放つ風は、互いに互いを屠るための威力を伴っていた。
そして2つの暴風は、互角。風がぶつかるたびに互いを打ち消した。

しかし。


布束の影「まだまだまだああああ!!!」


一体は余力を残していて。


一方通行「ゼッ……ハァ……オオァアァアァアァアアアアァァ!!!」


一人は全力を出していた。


布束の影「heyhey what’s up?もう限界?まだまだ行けるんだけどなー」


布束の影は軽口を叩きながらガルーラを放つ。
一方通行はそれを抑えるのに精いっぱい、と言ったところか。
このままではジリ貧なのは火を見るより明らかだった。

そんな一方通行を見て御坂美琴と9982号は支援しようとするが。


布束の影「邪魔すんなよコラァ!!」

御坂・9982号「「きゃあ!!?」」

一方通行「!?御坂ァ!!9982号ォ!!!」


布束の影は御坂と9982号の攻撃ごと、一方通行ですら抑えきれない暴風を以って吹き飛ばした。


423 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 00:58:53.16KMhRWGEJo (3/23)

・・・

上条当麻は布束砥信の持つ召喚器を見つめていた。
ふるえる手でその拳銃を手にする。

銃口は樹脂か何かで防がれていた。
銃弾は出るわけがない。それは分かっている。

なのに。


上条「なんで引き鉄が引けねえんだよ……!」


黄昏の羽根。『死』の象徴たる『月』から届けられたオーパーツ。
それを組み込んだ召喚器は、人間の根源的な恐怖を刺激する。

その恐怖を飲み込んで初めてペルソナを引きずりだすことが出来るのだ。
故に拳銃から弾が出ないことが分かっていても、
こめかみにつきつけて引き鉄を引く事は自殺することと同義である。

上条がこうやって逡巡している間にも、3人は布束の影に蹂躙されて行く。

・・・

クマはあわあわと上条と一方通行達を見てキョロキョロしている。


クマ「どうしよう……どうしてクマには何も力が無いクマか……?
    力どころか、どうしてクマには中身すら無いクマ……?」


力が欲しい。

だが、クマの願いは、届かない。


424 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 00:59:26.58KMhRWGEJo (4/23)

・・・

絶対的な『死』がそこにはあった。
この拳銃を躊躇いなく引ける布束が不思議でならない。それが上条の見解だ。

『死』を踏破してでも、力が欲しい。
目の前で窮地に立たされている3人を前にこうして黙って座り込んでいることがもどかしい。
目の前で苦しんでる仲間を目の前にして、どうして手を差し伸べられないんだ。

今までだって、死ぬかもしれないと分かった上で様々な困難に立ち向かっていたではないか。

それなのに、どうして今それを発揮できない。

どうしてこんなに怖いんだ。
どうしてこんなに力が無いんだ。
どうして、どうして、どうして―――




すると、唐突に何かを理解した。




嗚呼、そうか。
今までは、この恐怖を『あいつ』が肩代わりしていたんだな。
今までは、この恐怖を見て見ぬふりして、押しつけていたんだな。

最低だ。
何が苦しんでる奴を目の前にして手を差し伸べないと、だ。


こんなに苦しんでいた奴が目の前どころか自分の中に居たと言うのに。

上条は考える。「俺は一体、今まで何回あいつを殺してきたのだろう」と。
ここまでされて愛想を尽かさないわけがないじゃないか。
それを理解して、自嘲の笑みを浮かべた。
自身の影には謝らなければならない。


上条「だけど、それはそれ、これはこれだ!!」


仲間を助けたい。この気持ちは本物だ。
ならば今からでも、乗り越えてやろうじゃないか。『死』への恐怖を。


上条は召喚器をこめかみにつきつける。
もはや手は震えていない。


銃を綺麗に構える必要はない。
標準を定める必要もない。
鉛もそれを飛ばすための火薬だって必要ない。



―――ただ、そこに決意の弾丸を込めればいい。




今なら自身の影に、本気で言える。




―――ごめんな。




上条当麻は、引き鉄を引く。


425 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 01:00:44.73KMhRWGEJo (5/23)

と言う訳で、次の投下で覚醒します。
と言うか、この3レス、昨日の投下にしとくべきだった


426VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/11(土) 01:29:09.28hG/sjL+Co (1/1)

乙乙
イイネイイネサイッコーダネェ!!


427VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/11(土) 09:22:19.68WadUH83Wo (1/1)

キタキタキターーーーーーー!!!!!!!!!


428 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:41:41.24KMhRWGEJo (6/23)

投下するよ


429 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:42:16.50KMhRWGEJo (7/23)

どうする、どうする、どうする。

一方通行は考える。

せめて仲間達だけは逃がせないか。
しかし出口は自分たちが落ちてきた天井の穴しかない。
そこを通るには隙を見つけなければならない。
だがその隙がない。

逆に、布束の影を打倒できるだろう方法は一つだけあった。

―――プラズマの生成。

これが出来ればおそらく行けるはずだ。
だが、大技を放つ隙があるはずもなく。

布束の影の風を抑えるだけで、無為に体力が削られて行く。

あと手札をもう一枚あれば―――


一方通行「ッ……!!?」


唐突に『力』を感じた。
しかし自分からでは無い。
思わず『力』を感じる方向に振り向いた。
致命的な隙を自身で作ってしまったが、布束の影も攻撃を止め、茫然とその方向を見ている。


一方通行「上、条……?」


一方通行は上条当麻に尋ねる。
目の前の人間は本当に上条なのか。
いや、確かに上条だ。そんなことは見ればわかる。


だが、しかし。


上条の背後に居るのは、何だ?


430 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:43:00.39KMhRWGEJo (8/23)

・・・

『力』を感じる。

これが『ペルソナ』か。

これが『力』か。

勝てる。そんな確信が持て……る……

上条の意識は、暗転する。


上条「お……あ……」


だが、意識を失ってもなお、上条は動き続ける。
何かに操られるように。
何かに縛られているように。

布束のペルソナの時のリプレイを見るかのように、
上条が出したペルソナから、『何か』が這い出てくる。


431 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:43:39.85KMhRWGEJo (9/23)

・・・

<???>

そこには男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』がいた。
培養液の中に逆さまになって浸り、目をつむりながらも、どこかを眺めているようだった。


「『天空神・ウーラノス』を屠った存在である、『クロノス』……
 『神浄』の拠所たる上条当麻なら召喚できて然り、か……
 むしろ『天空神』そのものを召喚してもおかしくは無いんだが……」

「……しかし、完全に支配下に置くには力が足らないと言ったところか……」

「と言っても、あの調子なら次に召喚する際、再びクロノスが顕現する可能性は薄いか……クロノスと彼では、性格が合うまい」

「まあ、何にせよ『片割れ』が上条当麻から抜け出したのは正解だったな……」

「間違いなく、このイレギュラーは私のプラン短縮の要因となるだろうな」

「くくっ……今後が楽しみだ……」


『人間』は、心から楽しそうに笑う。


432 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:44:22.50KMhRWGEJo (10/23)

・・・

影は上条から現れた『何か』を見て、驚きつつも笑う。


影「なんだありゃあ!上条クンはとんでもねーもんだしやがったなあ!!」

影「だが、力量差を考えずにあんなもん出すから使役するどころか逆に操られちまってるところが抜けてんだよなあ……」


普段の小馬鹿にした笑みではなく、出来の悪い弟を慈しむような笑みを浮かべる。


影「……いつまでもこんなところに居たらあれだな……この場所が崩壊しちまう」


海に沈む前にさっさと消えちゃおう。
上条の影は、もう十分に楽しんだ、と言う事であっさりと消え去った。


433 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:44:49.02KMhRWGEJo (11/23)

・・・

布束の影は初めて恐怖する、目の前の人間に。
明らかに目の前の人間は『支配権』を『ペルソナ』に奪われている。
だと言うのに、『ペルソナ』は『宿主』を殺すどころか、布束の影を見据えていた。


しかし、『ペルソナ』は動く気配がない。


―――本当に、『支配権』は奪われているのか?


434 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:45:17.35KMhRWGEJo (12/23)

・・・


どこだ、ここは。

何も見えない。暗い。昏い。冥い。闇い。
だがしかし、すぐに確信を得た。


上条「ここは俺の中だ……」


と言う事は、表には『片割れの代わり』が出ているのか。だとしたら拙い。
初めてのペルソナ召喚なのだ、布束砥信と同じく暴走していたっておかしくない。



上条「俺が勝手に呼び出しといてあれなんだけど……」



―――邪魔を、するな!!!



上条は右手をのばす。

何かをつかむように。

何かを引きずり降ろすように。



上条のペルソナから這い出てきた『クロノス』。
そこから更に上条のペルソナがクロノスの体の中から右手が突き破ってきた。


435 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:45:54.17KMhRWGEJo (13/23)

・・・

一方通行も、気絶から覚めた御坂美琴と9982号も、布束砥信も、布束の影すら。
目の前の光景に、息をのんだ。

そんな中、上条当麻は、自身のペルソナの名をつぶやく。


上条「……オケアノス」

―――オケアノス。ウーラノスとガイアの間に生まれたティーターン一族の長兄。海の神で、オーシャンの語源とされている。
謀略を嫌う性格とされ、ウーラノスとガイアの間に生まれた末弟たるクロノスがウーラノスから王位を奪った時には、ティーターンの中でも、謀議に加わらなかったという。


一方通行「上条……お前、それは……」

上条「一方通行……俺が、時間を稼ぐ」


一方通行の言葉を無視して、上条は一方通行が望む「時間稼ぎ」を申し出た。


一方通行「ハァ?お前、いきなりそいつを使って……大丈夫なのかァ?」


確かに、プラズマを生成する時間を稼いでは欲しかったが。
先ほどまで上条の背後に居た『クロノス』は、非常に危険な力を秘めていた。
すなわち、上条のペルソナが暴走した時、止められる術は、無い。
そんな一方通行の懸念を察したのか、上条は笑う。


上条「大丈夫だ、あいつはもう出てこねえよ。なんつーか多分……性格が合わねえ」


根拠のない上に要領を得ない答えに、一方通行は首をかしげる。
しかし、その言葉には、何故か大丈夫だという確信が持てた。


上条「それに……今の俺なら、全力で攻撃を放てばあいつを倒せるかもしれないけど……
   むしろそっちの方が危ないんだ。多分、制御しきれねえと思うから……とどめは、頼んだ」


上条の言葉に、一方通行は首を縦に振る。


一方通行「分かった。……それじゃ、技を放つまでの盾役を頼むぜェ……!」


一方通行の言葉に、上条は無言で応えた。


436 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:46:36.87KMhRWGEJo (14/23)

・・・

上条当麻は、布束の影の前へと降りたつ。
もはやその目には『死』への恐れはない。
あるのは目の前のシャドウを、どうやって足止めするかの算段だけだ。


布束の影「は、はは……あははは!!!」


突然の布束の影による狂った笑い声に、上条は眉をひそめる。


上条「どうした、何か面白いことでもあったんかよ?」


上条は軽口を叩く。
別にペルソナを使って戦わなくても、時間さえ稼げれば良いと言わんばかりに。


布束の影「what’s going on!?嗤わずにはいられねえっての!!
     え?何それ?マンガみたいなご都合主義の覚醒とか!」


ありえないっつーの!と布束の影。


上条「覚醒なんてしてねーよ。ただ……」


一つ、学んだだけだ!と上条当麻。


布束の影「anyhow、あんたの後ろにいる白いのが何かする前にあんたを倒せば私の勝ち、
      出来なきゃあんたの勝ちってことでしょうが!!」

上条「まあ、その通りだな!!」


一人と一体は、戦いの渦の中へと潜り込んだ。


437 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:47:05.43KMhRWGEJo (15/23)

・・・

布束の影「そこをどけええぇえぇぇええぇええええ!!!!」


布束の影は、一方通行のプラズマ生成を阻止すべく、上条当麻に向かってガルーラを放つ。


上条「だぁれがどくかぁあぁあぁあぁあ!!!!」


しかし、上条は目の前の暴風をブフーラ(氷結属性のスキル・ブフの上位スキル)を放ち、氷の盾を作りだした。
上条の氷は、暴風の前に崩れ去るものの、暴風も氷の前に霧散する。

先ほどは、一人は全力を出し、一体は余力を残していたのだが。


布束の影「くそおおおおおおおお!!!!」


一体は全力を出し。


上条「それで終わりかああぁあぁ!!!!」


一人は余力を残していた。


438 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:47:37.02KMhRWGEJo (16/23)

そんな戦いを、布束砥信はただ茫然と眺めていた。
その布束の元に、御坂美琴と9982号が近付いてきた。


布束「……何か、用かしら?」

御坂「……何よ、あれ」

布束「何、とは?」


御坂の端的な質問に、布束はとぼける。
そんな布束に御坂は食ってかかった。


御坂「ふざけんじゃないわよ!!あんたがペルソナ召喚に使ってた拳銃、あれは一体なんなのよ!?
   あいつは、自分の『影』を無くして、ペルソナ出せないんじゃないの!?」

布束「well、目の前の事実を信じたくなくても、事実は事実よ。
   「どうして」なんて事情を追及するよりも、「どうやって」現状を打破すべきか考えた方が良いんじゃない?」


まあ、私の召喚器は彼の元にあるから、私は協力できないけど。と布束は残念そうに言うが。


9982号「とは言っても、貴方の影とミサカ達の力量差は明白……
    と、ミサカは援護したくてもできない事実を述べます」


9982号の言葉に、御坂も9982号自身も悔しそうな表情を浮かべる。
しかし、布束の表情は変わらない。


布束「indeed、先ほどまでの戦いで分かるように、私の影は結構強いみたいね。
   だけど、弱点はあるわ。あれは私自身なんだから、弱点なんてよくわかるもの。
   ……炎よ」

御坂「炎?でも、私のアギじゃ簡単にかき消されちゃう……」

布束「well、あなたの炎ではあの影は倒しきれないわ。
   but、影に攻撃が当たろうと、影が攻撃を防ごうと、必ず隙が出来るわ。
   because、あくまでも『火炎属性』は弱点なのだから」

9982号「成程、分かりました。あなたを信じましょう。
     と、ミサカはミサカがお姉さまの攻撃を放つ隙を作りますと宣言します」


9982号の言葉に御坂は耳を疑う。
それもそうだ。自分の大切な妹を一人であの影の前に立たせたくない。
御坂の思いを9982号も察したのだろう。9982号はクスリと微笑む。


9982号「大丈夫です、お姉さま。私が出るのは、上条ですら抑えきれなかった場合のみですから。
    と、ミサカは急激に成長を遂げた上条に期待します」

御坂「……分かったわ。でも、無茶はしたら駄目だからね!」


こうして、2人は再び上条達の戦いをハラハラしながら眺め始めた。


439 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:48:05.77KMhRWGEJo (17/23)

・・・

布束の影は焦っていた。このままではプラズマの完成を許してしまう。
それを阻止するにはどうしたらいいか。考えても答えは出ない。
いや、そもそも答えを出す時間を、目の前のツンツン頭が許さない。
布束の影は、現状を打破するべく、再びガルーラを放つ。


上条当麻は焦っていた。布束の影の攻撃は言わずもがな、苛烈なものである。
それを抑えられるレベルのスキルを放つ事はできるのだが、気を抜いたら『飲まれそう』になるのだ。
やはり、本来使役するはずのペルソナではないからだろうか。
この戦いが終わったらペルソナの扱いを学ばねば、と本気で思った。
上条当麻は、布束の影の放つガルーラを抑えるべく、再びブフーラを放つ。


一方通行のプラズマは、未だに完成しない。
それもそのはず、一方通行は布束の影との戦闘により、既にボロボロなのだ。
プラズマの形を成すのに精いっぱいで、それだけでは布束の影を倒せる程の威力は見込めない。


戦闘は、長引きそうである。


440 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:48:40.99KMhRWGEJo (18/23)

・・・

布束の影「はぁ……はぁ……」

上条「はぁ……クソ……まだか……」


布束の影も上条当麻も、既に限界が近かった。
このままだと布束の影が自棄になって何か仕掛けてくるかもしれない。
しかし、一方通行の方を一瞥すると、もう少し待てばプラズマは完成しそうな雰囲気だった。
あと一息。そう感じた上条は気合いを入れ直す。


すると布束の影は。


布束の影「ははっ……あははははは!!!!」


笑った。

突然狂った笑い声をあげる布束の影にギョッとする上条。
すると布束の影は、ガルーラを上条に向けるのではなく、壁に向けて放った。

上条はその行動を不可解に思うが、すぐに理解した。


上条「てめっ……!この部屋を……!!」

布束の影「あははは!やっと気付いた!?」


こんな部屋、海で埋めてやる!と笑いながら壁を破壊していく。
壁はその破壊の力に耐えきれず、次々と決壊して海の水が流れ込んできた。


上条「海の神を相手に海の水が効くと思ってんじゃねえええ!!」


上条は全力で海の水をせき止めるための魔法を放つ。マハブフーラだ。
そのマハブフーラによって決壊した壁から流れる海の水が一瞬にして凍りつくものの。


上条「ッ……!!」


布束の影にはなっていたスキルよりも明らかに強力なスキルを使った事により、上条の負担が増える。
ペルソナの発動を止めなければ今すぐにでも『暴走』しそうだ。


布束の影「ははは!!さっさと自分に飲まれちまえ!!」


布束の影は再びガルーラを壁に向けて放ち続ける。
上条は、もはや海の水をせき止めるので精一杯であった。


441 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:49:19.38KMhRWGEJo (19/23)

・・・

9982号「やべえ、アイツ自棄になりやがった。と、ミサカはお姉さまにタルカジャかけてアデュー」


9982号はふざけた口調で御坂美琴に攻撃力上昇のスキルをかけると、
布束の影の元へと向かおうとする。


御坂「……無茶はしないでよ!!」

9982号「……お姉さまこそ、隙作るから逃さないでくださいよ」


9982号と御坂美琴は互いにこぶしをコツンとぶつけ、布束の影へと向かって行くのだった。


442 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:49:54.57KMhRWGEJo (20/23)

・・・

立場は再び逆転した。
上条は最早この部屋が水に埋もれないようにするのに精いっぱいだった。
後は一方通行のプラズマをつぶすだけでチェックメイトだ。
それを察して一方通行は、「クソが……」と声を漏らす。
しかし愚痴をこぼしたところでプラズマは出来ないし攻撃も止められない。

そんな一方通行と布束の影の間に、9982号が躍り込んだ。


一方通行「なっ!?お前なにやってンだよ!!下がってろォ!!」

9982号「うるさいですね、一方通行は黙って元気玉つくってりゃいいんですよ。
    と、ミサカは目の前の影はミサカ達に任せろとアピールします」

布束の影「what's wrong?お涙頂戴の3文芝居してる暇はないんじゃないのかな?」


一方通行と9982号のやりとりにニヤニヤと嗜虐的な笑みを浮かべながら茶々を入れる。


9982号「うるさいですね、貴方は黙ってボコられてなさい。
     と、ミサカはワカヒルメに攻撃を指示します」


9982号の声に同調して、ワカヒルメが布束の影へと向かう。
それを余裕の表情で待ち構える布束の影。

しかしワカヒルメは途中で立ち止まり、床のボロボロになった畳をひきはがして布束の影へと投げ飛ばした。
この行動に布束の影も驚いた。
と言っても、はっきり言ってダメージにならないのでその畳を軽く叩いて退ける。
すると畳を目隠しにして、後ろからワカヒルメが飛び込んできた。


布束の影「はっはあ!目隠しは悪くないけど!そんなんじゃ倒せるわけないでしょ!!」


ガルーラなど必要ないと言うことだろうか。
軽くガルを唱えるだけでワカヒルメを吹き飛ばした。
だが、そんなワカヒルメに目が行っていたせいで、気付かない。


―――御坂美琴が、布束の影の背後から、火炎整流器による炎と電撃を放っていたことに。


布束の影「ぐっがぁあああぁああ!!!」


焼ける背中に反応し、背後に向かってガルーラを放った。
御坂は既にその場から離脱していた為当たらない。
そして布束の影に出来た大幅な隙を、上条当麻が更に広げる。


上条「おっらあああああ!!!!」


海の水を抑えるのを一旦止め、布束の影にブフーラを放つ。
それによって、海の水が今にも流れ込みそうになるが、再びそれを抑えつけた。


布束の影「がっはぁ……!!」


後一撃。これで決まる。


「「「一方通行!!」」」


全ての視線が、一方通行へと注がれる。


一方通行「ッ……!!良い仕事してンぜお前らァ!!」


感謝の気持ちをプラズマの完成を以って表す。
そして、両手に掲げたプラズマが圧倒的なまでの破壊の力で、布束の影を蹂躙し尽くした。


443 ◆DAbxBtgEsc2011/06/11(土) 19:51:48.46KMhRWGEJo (21/23)

尾張。

布束の影撃破しました。
書きあげるのに苦労したわあ


444VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/11(土) 19:54:03.65Oj1+Yk+DO (1/1)

リアルタイム乙


445VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)2011/06/11(土) 19:56:29.35X6Y7fHaso (1/1)

中の人的に閣下かハディートかと思いきやクロノスとは意外なところやな
乙した


446VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/11(土) 20:04:30.33KMhRWGEJo (22/23)

>>434の最終行、
そこから更に上条のペルソナが、クロノスの体の中から右手を貫き出てきた。
的な感じで脳内変換してくれ。

上条さんのペルソナはマジで迷いました。
て言うか最初は天空神をペルソナにしようかなーとか思ってたけど、
それにまつわるエピソード見てクロノスすらアウトだなって思ったから結局オケアノスになった。
まあ氷結属性を扱う人居ないし、周りが海だったから丁度イイやと思ったのはここだけの話


447VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/11(土) 20:05:43.26KMhRWGEJo (23/23)

後クロノスってP2に出てるみたいだったので……
初代ペルソナと2はやったこと無いねんて…・・・にわかですまぬェ


448VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/06/11(土) 20:40:41.61P1+7Z1bAO (1/1)

むしろ初代と2しかやった事無いがこのSSは楽しく読ませていただいてます。


449VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 00:36:56.06Dma92uqbo (1/1)

2のクロノスは時間神としての面が強いね
農耕神のほうも一応含んでるけど


450VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/12(日) 06:18:55.71Xp2EXB3l0 (1/1)

>>1乙 楽しく読んでるぜ。


451VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/06/12(日) 14:52:37.77b/U9qkUmo (1/1)

へー、P2のクロノスってそんななんだ。
ググってみたら確かにそんな感じだった。

元々は二柱のクロノスは別々の神様だからな。
ティーターンの王の方がKronosで、時間神の方がKhronos。
と言っても当のギリシャ人すら混同することがあったみたいだけど。


452 ◆DAbxBtgEsc2011/06/12(日) 15:00:33.29dAAlNo4yo (1/14)

>>451マジかよ完全に混同さんだったわ
だったら上条さんが暴走して召喚したクロノスはP2とは別物ってことで頼む


453VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 15:06:39.02dAAlNo4yo (2/14)

言い訳させてもらうと
ttp://matome.naver.jp/odai/2126183457317309601/2126209703921237303
にある
「我はクロノス…
虚勢の鎌持ちて、天父を弑せし暗黒の太陽…
宿命を制する時の業、しかと見届けよ…」
って部分をみてティターン一族の方かと思っちまったのよねー
虚勢の鎌ってウーラノスのちんこ切ったって意味で去勢かと思ったし天父ってどうみてもウーラノスだし。

あーでもP2のクロノスは両方を含んでるから同じでもいいか……?


454 ◆DAbxBtgEsc2011/06/12(日) 22:26:30.30dAAlNo4yo (3/14)

エピローグ・プロローグ。
投下終わったら、すっかり忘れてry上条さんの番外編の方をちょこちょこ投下しようかな。


455VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 22:30:41.95dAAlNo4yo (4/14)

風が止み、煙が晴れた。
そこには、ボロボロになった布束の影が横たわる。

その布束の影の元に、布束砥信はフラフラと近づいて行った。
そんな布束に対して、影はかすれた声で、自嘲する。


布束の影「……はは、家出は、終わりってところかなー……」

布束「well、我がままは止めて、さっさと帰ってきなさいな。
   ……お帰り、『私』」

布束の影「……ただいま、『私』」


布束の影は青白い光と化して、布束の胸元へと還る。
その神秘的な光景を前に、一同は息をのんで見守る。


御坂「ハタ迷惑な家出だったわね……」

9982号「……そうですね」


御坂美琴と9982号は、ようやく終わった戦闘に溜息をつくものの。


上条「あのーいつまでもここに居たら海に沈んじゃうのですが……」


456VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 22:31:27.34dAAlNo4yo (5/14)


もうペルソナ出すの無理、と弱音を吐く上条当麻。
そんな上条に空気読めよと9982号が突っ込みを入れるが。


一方通行「上条のペルソナが暴走する前に帰ンぞ」


一方通行の言葉に一同は恐怖してさっさと帰ることにする。
出入り口が天井にしかないと思っている一方通行は、
一同を風で地上まで飛ばそうとするが。


布束「come、こちらにエレベーターがあるわ」

「「「えっ」」」


エレベーター。
まさかの文明の利器。


布束「……この部屋に、私はどうやって入ったのかしら?」


布束の尤もな言葉に理解はするが、何となく納得できない。
屋敷の入り口にあった自動ドアならぬ自動門もそうだが、
なんだかオーバーテクノロジーであるが、テレビの中でそれを言うのは野暮だろう。

何にせよ、地上に戻る手間が省けるのだ。こんな場所からはさっさと帰るに限る。
そんなわけで一同はエレベーターに入るのだが。


一方通行「……おいクマァ。さっさと帰ンぞォ」


457VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 22:31:59.32dAAlNo4yo (6/14)

クマはボケーっと崩れそうな壁を眺めていた。
何か考え事をしているようだ。


クマ「……どうして力が、どうして中身が、クマには無いクマか……?」


先の戦闘で、目の前で傷つけられて行く仲間を前に、
何もできなかった無力感を噛みしめ、悔しさで、悲しさで、眼から涙をこぼしている。
『力』も『中身』も持っている一方通行には、クマの思いは分からない。

だが。


一方通行「……いつかお前がどういった存在かわかったとしても。
      ……俺たちは、お前の仲間だ。少なくともそれだけは変わらねェよ」


一方通行は言う事は言った、と言う事でエレベーターへと乗り込む。
クマもそれについて行くが、その顔は先ほどまでの悲しみに暮れていた表情ではなく、
初めて褒められた子供のようにはにかんだ表情であった。

以下略
一方通行は、「星」属性のコミュニティである「クマ」コミュを手に入れた。


458VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 22:32:38.49dAAlNo4yo (7/14)

・・・

さて、時間もかなりいい時間になってることだろう。
と言う事で、さっさとテレビの中から抜け出すことにした。

流石に全員疲労も限界に達していたようだった。

布束砥信の処遇についてだが、本人たっての希望でテレビの中に残ると言うので一同の顔は驚愕の色に染められた。
何やら訳有りでテレビの中に逃げ込んだらしく、詳しい事情は一方通行達が再びテレビに来た時に話すそうだ。
クマと一緒にいつもの広場で待っているそうなので、今日は帰って休もう。と言うのが一同の総意だった。


布束「well、帰る前に適当に食べ物放り込んできてほしいの。
    こっち来て何にも食べてないのよね」

上条「ああ、任せとけ……ってああ、そう言えばこの召喚器返しとかないとな」


上条当麻は手に持ったまま返しそびれていた召喚器を布束に渡すが。


布束「……あー、それあげるわ」

上条「へ?だってこれないとお前がペルソナ使えなくなるんじゃねえのか?」

布束「今まではそうだったわ。
    but、私も今さっき『影』が帰ってきた時、召喚器無しで召喚できるようになったみたいなのよね」


次来たら召喚器でペルソナ扱う時のコツを教えてあげるわ。そう言って再び上条に向かってポイっと投げ返した。
上条はわたわたと召喚器を受け取る。


布束「次来た時に話すわ。ここに来た理由も、召喚器がある理由も、何故ペルソナを使えるのかも。
    so、貴方達も今日はもう帰った方がいいと思うわ」


布束の言葉にウソはないだろう。そう感じた一同は今日のところは帰ることにした。


459VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 22:33:11.06dAAlNo4yo (8/14)


・・・

テレビからようやく戻ってきた一同。
そこには、芳川桔梗が待ち構えていた。


芳川「今日は結構な時間潜ってたわね。と言うか、その服装何とかした方がいいわ。
   特に御坂さんは常盤台でしょう?その状態で帰ったらこってりしぼられるんじゃないかしら?」


4人はぞれぞれ顔を見合わせた。
一方通行はまだマシだが、他の3人はボロボロだった。
この格好で外に出たら、間違いなく通報されてしまう。
御坂美琴の場合、それだけではなく、寮監に更なるトラウマを植え付けられてしまう。
そう感じた4人は芳川に着替えを借りて帰ることにした。もちろん、適当な食料を放り込む事も忘れずに。



一方通行「なァ……なンで男物がry芳川「うるさい」」


460VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 22:33:54.99dAAlNo4yo (9/14)


・・・

辺りは既に暗くなり始めている。

御坂美琴はこの間寮監に折檻された事を思い出し、一人で猛ダッシュして帰って行った。

上条当麻は月詠小萌に連絡を取ったところ、
インデックスが小萌先生の元に居るとのことなので、そちらに向かって行った。

そして残った一方通行と9982号は。


一方通行「……飯、食うか」

9982号「……そうですね。さっさと食って寝ましょう。と、ミサカは一見ぐーたらな感じの発言をしてみます」


いつものレストランへと向かうのだった。

・・・

そしてこちら、一方通行達の背後30m地点。


「……居た居た。ってミサカはミサカはドッキリさせる為にMNWは切って追跡してみたり!」


そこには小さな少女がアホ毛を携え、一方通行の元へと向かっていた。


461VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 22:34:29.99dAAlNo4yo (10/14)

・・・

そしていつものレストラン。
いつもの店員が案内にやってきたところ、
「妹さんですか?」と9982号に質問してきたので、一方通行が代わりに「あァそォだ」と返した。

店員は別に気にした様子も無くいつもの席へと案内する。
さて、その「妹さん」と言うのは。


打ち止め「いやあ、初めてのいただきまーす!ってミサカはミサカはハンバーグに下鼓をうってみたり!」

一方通行「……で、このちンちくりンが妹達の上位個体ですかそうですかァ」


かちゃかちゃと、慣れない手つきでハンバーグを食べて笑顔を浮かべる少女。
その少女は成程、どこか御坂美琴の面影が見て感じられる。


9982号「……ミサカ達に万が一の反乱を防ぐための上位個体が扱いにくいと駄目ですからね。
    と、ミサカは上位個体のちんまさの説明をします」


ちんちくりんだのちんまいだの、どう聞いても馬鹿にしてるとしか思えないが、
打ち止めはハンバーグ(チーズイン)に夢中で気付かない。
こんなのが上位個体で大丈夫なのか?と言う一方通行の質問に、9982号は何も答えられなかった。


打ち止め「いやあごちそうさまでしたってミサカはミサカは行儀よくあいさつしてみたり!」

一方通行「……口周りにソースついてンぞ」


462VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 22:34:57.44dAAlNo4yo (11/14)


行儀よく、と言う割には口周りも汚いし、ハンバーグのあった鉄板周りも汚い。
と言ってもこれが初めての外食なのだから仕方ないのだろう。
とりあえずそのソースで汚れた口をナプキンで拭きとる。


打ち止め「むうう」


打ち止めはされるがままであった。
やはり一方通行は、子供の扱いが上手な気がする。


9982号「ところで、上位個体はわざわざMNW切ってまで何しに来たんですか」


9982号の尤もな質問に、拭かれ終わった打ち止めが答える。


打ち止め「いやあ、実験が中止されたってことでミサカは調整中の段階だったんだけど、
      外に放り出されちゃったってミサカはミサカは嘆いてみたり!
      あ、MNW切ってたのはドッキリだよ!」


よよよ、と崩れ落ちるその姿からはおよそ緊張感が感じられない。
しかし、調整が終わってないと言うのはいささか危ないだろう。
そう考えた一方通行と9982号は芳川の自宅へと打ち止めを連れていくことにした。


463VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 22:35:28.97dAAlNo4yo (12/14)


・・・

芳川「あら?ここに連れてこられても私もう研究者首になってるんだけど」

「「えっ」」

芳川「研究所から資料とか荷物とか持って帰ったらあの研究所とは完全に縁切りですが」

「「なにそれこわい」」

芳川「絶対能力者進化実験は結構金かけてたからねえ。
   中止になったことによる損失で研究者達は軒並み首になったのよね」


まあ貯金あるしやってることは外道だったし別にいいんだけど。と芳川桔梗。
しかしあまりにあっさり首になった宣言をするもので何だか申し訳なく感じる一方通行。


芳川「気にしないで良いわよ。どっちかって言うと首になった事で自棄になる研究者達に気をつけた方がいいと思う」


と言うと?と相槌をうつ9982号。芳川は続けて話す。


芳川「研究者ってのは自分の研究を自分の子供か何かと勘違いしてる人とかいたりするからね。
   研究がおじゃんになる位なら周りを巻き込んでーなんて考える人も居るのよ。
   そうなると危ないのは誰だと思う?」

一方通行「成程、打ち止めか……」

打ち止め「ミサカ?」

芳川「上位個体としての権限を利用して、世界中の妹達を暴れさせるなんて事も可能でしょうしね」


芳川の穏やかな口調に反する穏やかでない内容の話に一方通行は眉をひそめる。


464VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 22:36:11.79dAAlNo4yo (13/14)


一方通行「……お前は違うンだろォが」

芳川「私はそう言うめんどくさいのはお断りだから。
   まあ明日辺り研究所行こうと思ってたし、調整の機材を勝手に借りるわ」

一方通行「……任せたぞ」

芳川「ええ、まかされたわ」

打ち止め「じゃあ、よろしくお願いしますってミサカはミサカは丁寧にお願いしてみたり!」


話はまとまった。
これでようやく帰って眠れる。

そう思った一方通行と9982号はフラフラと部屋へと向かって帰るのだった。


・・・

一方通行と9982号が芳川の部屋を出たのを確認すると、
研究者風の白衣を羽織ったその男は舌打ちをする。
そして自身が乗っている車を運転し、どこかへと走り去った。


465VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/12(日) 22:38:29.78dAAlNo4yo (14/14)

尾張。
上条さん番外編をかきてとうかします


466上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:09:11.980nWfPeTOo (1/17)

>>310
番外編です。


467上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:09:44.480nWfPeTOo (2/17)

>>310
上条当麻は極度の不幸体質だったが、最近はどちらかと言えば運の悪い部類の人間。と言う程度に落ち着いていた。

そのため、自分から首を突っ込まない限りは変に不良に襲われたりとか、歩いてて靴紐千切れるとか、財布落としたりとか、携帯トイレに流したりとか、そういうベタな不幸はそうそう起こる事はなかった。

そんな上条は今現在、絶賛頭を抱え、「不幸だー!」と心の中で叫んでいる。

上条の身に一体何があったのか?
実を言うと、上条の身自体には、何も起きていない。



何かがあったのは、周りの人間全てだった。


468上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:10:23.110nWfPeTOo (3/17)

・・・

上条当麻の朝は遅い。
と言うのも生活習慣が悪いと言うか、夏休みの影響でだらけているだけだ。
故になれない旅館の布団でもなんのその。日が昇って結構な時間がたつが、未だに眠っている。

するとそこに元気な声で、上条にのしかかり攻撃をかまして上条を起こす少女が一人いた。

「ふごっ!?」

思わぬ攻撃を食らった上条は肺から空気が漏れる。

「おきろおきろおきろー!!」

のしかかりをした少女は、声を聞く限りどうやらインデックスでは無い。
眠気まなこをこすりながら目の前にいるだろう少女が何者かを確認する。

「んなっ!?御坂!?」

そこには御坂美琴がいた。

「むうっ、御坂って誰だー?ひょっとして、寝ぼけてる?
可愛い妹分の前で他の女の子の話なんて許さないからな!」

おかしい。

そんなはずはない。

学園都市を出る前に、御坂は「あんたが外行ってる間にテレビで鍛えてるわ」などと非常に頼もしい発言をしていた。

そんな御坂がわざわざこんな僻地まで来るはずが無い。

目の前の事態を受け入れられない上条は、思わず御坂(?)に突っ込みを入れた。


469上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:11:15.280nWfPeTOo (4/17)

「いやいやいや、いつ俺がお前の妹になった!!?」

「そりゃあ、私が生まれてきた時?」

「最初から!?」

「ていうかどうしたの?朝からテンション高すぎない?」

「そりゃ高くもなるわ!!」

「あー、成程なー。私に会えたのがうれしかったんだー!」

頬に手を当てながらイヤイヤをする御坂(?)。

「ホワイ?何故?いや別にうれしくないなんてことはねーけども!!」

「はいはい、とりあえず目が覚めたなら一階に降りといでよー」

上条に朝ご飯の用意が出来ている事を告げ、御坂(?)はパタパタと下へ降りていった。


470上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:11:42.300nWfPeTOo (5/17)

「……(わっつごーいんおん!?どういうこと!?意味分かんねーっ!!)」

目の前の現象に頭を抱える上条。
落ちついて考えると、御坂も学園都市上層部から追い出されたクチなのか?とか思ったりするものの。

「いやいや、俺がここに来た理由は『無能力者』だったからだろ……?」

御坂はその条件には当てはまらない。と言うかレベル5を倒すためにレベル5を狙うっておかしな話だし。
それなら後者のレベル5を最初から狙えばいーじゃん、とか思ったりする。
しかし、死屍累々とした不良たちの中に一人立つ、頭から電気をビリビリだしながら魔王のような笑顔を浮かべる御坂が思い浮かんだ。

「……やっぱ御坂がここに居るのはありえねーよな……」

でも実際にありえていた。
ありえないなんてことはありえないと言う名言を思い出したが、何にせよこの空腹を解消しなければと思い、着替えた後、一階へと足を運ぶ。


471上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:12:15.200nWfPeTOo (6/17)

・・・

そして時は冒頭へと戻る。

先ほど不幸の一端を垣間見た上条当麻だが、一階へ降りた時の衝撃は桁違いだった。
赤髪ロン毛の、イギリス清教の魔術師、ステイル=マグヌスが、あたかも旅館の亭主のような服装をしている。
修道服ばかりきていた白シスターは何故か薄緑のワンピースで上条の母を名乗っている。
御坂美琴は相も変わらず妹キャラで、亭主の女房役みたいな御坂妹。

訳がわからない。


これは壮大なドッキリなのか?と思うほどだ。


その中で上条の父、上条刀夜だけは上条の知り合いの顔をしていなかった。


改めて説明しておくと、上条当麻は記憶喪失である。
友達も、思い出も、自分の名前も、産みの親すら忘れてしまっている。
そのため両親と会うのはこれが初めてである。


どうやら上条刀夜だけは事前に写真を見たとおりの姿をしているようだった。


とはいえ、それ以外は全員知り合いの顔してはいるものの、中身は違う。と言った様子だった。
訳がわからないまま朝食を取ろうとするものの、そこに白い修道服を着た男が現れた。
あえてもう一度言おう。白い修道服を着たお・と・こが現れた。

「とーま!私を置き去りにしてご飯食べようなんてどういうつもりなのかな!?(テナー)」


472上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:12:53.920nWfPeTOo (7/17)

青髪ピアスだった。
見事にインデックスを演じきっている青髪ピアスだが、正直言って吐き気がする。
テレビの中、という珍事を体験していた為そこまで困惑することは無かったのだが、流石にこれは反則だ。

「ッ……うっぎゃあああああああああああ!!!!」

思わず叫び声をあげ、朝食をかきこんだ上条は旅館から全力ダッシュで逃走する。

「あらあら、当麻さん的には朝食後には運動をしたい派なのね」

と、自称母のインデックス。

「元気ですねぇ……うらやましい限りですゲホッ」

と、自称亭主のステイル=マグヌス。

「何であんな朝からハイテンションなのかな?やっぱり久々の再開だからかなー」

と、自称妹(実際は従妹)の御坂美琴。

「むうう、話はまだ終わってないのにー!」

と、自称インデックスの青髪ピアス。

カオスが、そこにはあった。


473上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:13:34.950nWfPeTOo (8/17)

・・・

上条当麻は今現在絶賛ランニング中である。
現実から逃げるため。しかし現実はベン・ジョンソンよりも、タイソン・ゲイよりも高速で迫ってきている。

逃げられるはずが無い。

街中にある電器屋をふと見る。ショーケースにはテレビが並べられており、その中のニュースを何となく眺めていると。

「えー、それでは続いてのニュースです」

小萌先生がニュースキャスターとして本日未明がどうたら言っていた。

「……」

最早驚くまい。理解した。
この超常現象、心当たりがあった。

「……おのれ魔術師!!」

そう、魔術師だ。
自分がこんな目にあうのは多分最近魔術師と関わり合いがあったからだ、間違いない。
悪いのは魔術師だと責任を丸投げしたところで気分が楽になった。
何にせよ情報が無い。

かといって魔術師に知り合いなんていない。
いやインデックスがいるのだが、正直インデックスの格好をした青髪ピアスが自称インデックスだ。話しかける気にならない。
どうしたものかと考えていると、携帯にメールが届いた。

『今から海に行くから、お前も旅館に戻って準備して浜辺まで来てくれ by父さん』

成程。海か。泳いで頭を冷やすのも悪くない。
と思ったがクラゲがいるから止めておこう。
何にせよ、来いと言うのだから行ってやろうじゃないか。


474上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:14:10.440nWfPeTOo (9/17)

・・・

時間は上条当麻をおいて進む。
さっきのあれは夢だったのではと思い、一縷の望みを賭けて海へと向かうが。


「とーまー!とーまー!たのしいよー!(テナー」


現実は無常である。
思わずその場を走り去った。
後ろからは野太いテナーボイスが響く。
その声を聞くまいと耳をふさいで全力走行をする。
その走りはウサイン・ボルトよろしく運動科学者高岡英夫が認めた『トカゲ走り』のフォームだったという。

全力で走ったところで「あー、やっぱ運動って良いなあ!ストレスたまった時なんて特に!」などと一人すっきりしていると。

「にゃー!こんなとこにいたんだにゃー!」

擬似猫ボイス。
何だ猫かと思って振り返るとそこには、

「何だ土御門か」

土御門元春。同じクラスメイトだった。
いや、見た目は土御門、心は別人かもしれない。と思って気を引き締めるが。


475上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:14:49.310nWfPeTOo (10/17)


「そこいらににゃーにゃー言う擬人化猫が居てたまるか!!」

つまりお前は、土御門元春本人だ!!と、どこぞの名探偵のようにズビシと指をさす。

「いやあ見事な名推理だにゃー。そうです私が土御門ですってにゃー」

「やっぱなー。いやあ別人じゃなくてよかtt……いや!何でお前が『外』にいるんだよ!!」

そんなホイホイ外に出られてたまるか!と上条は突っ込みを入れる。

「とりあえずその口ぶりからすると、カミやんは俺の事「土御門元春」に見えてるぜよ?」

「はぁ?何言ってんだお前当然だろ。他の奴らはおかしいが」

「なるほど、なるほどにゃー。とりあえず話は他でしようか。
ここにはねーちんが近付いてきてる。もうすぐここは戦火に包まれることだろう。そう、一人の聖人によって」

ねーちん?成人?何を言っているんだこの金髪エセ猫は?

「良いから早く来るぜよ!狙いはカミやん、お前なんだにゃー!!」

「狙い?!やっぱり……俺の周りがおかしいのも……!って何でその事をお前が知ってんだ!!?」

「何だか物分かりが良いカミやんは不自然だにゃー!まあいい!にげrッ……!」

土御門は突如諦めたようにうつむく。
慌てたり諦めたり忙しい奴だなと上条は首を傾げる物の、上条の背後からズシン!という音と共に砂浜の砂が舞い上がった。

「上条当麻……見つけましたよ……!!」


476上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:15:25.160nWfPeTOo (11/17)

オーガがそこには居た。
何やら親の敵と言うか恋人の敵と言うか、とにかく憎々しげな視線を上条へとぶつける。
しかしこんな巨乳で変な服装の女性に恨まれるような事をした記憶はない。
と言うか初対面だ。(記憶失う以前に会っていたのかもしれないが)

「ええっと、そちらのサムライガールが『ねーちん』?」

ひょっとして記憶失う前になんかやったのか?
ヤることヤったのか?おれ?と自問する上条。
そんな上条をみて土御門は注釈しておく。

「あー、大丈夫だぜよ、カミやん。カミやんに落ち度はない」

落ち度はない!?何かこう……酔っ払った勢いで何かやっちゃったのか!?
だとしたら男として……腹をくくらないわけにはいきますまいて!!

「男・上条当麻!既に覚悟はできておりまする!!」

上条の言葉に巨乳で変な服装の女は怪訝そうな表情を浮かべる。

「成程、よくわかりませんが、罪を認めると言う事ですね……」

「安心しろ!こう見えて今年誠実そうな男ナンバーワンを獲得するんじゃないかと言う声が上がって止まないこの俺だ!
 お前の事、一生幸せにしてやるからな!!」

土下座。見事な土下座をかましてプロポーズをする。
土下座をしながらプロポーズなんて前代未聞だ。
土御門は笑いを何とかこらえているが、女の方が顔を真っ赤にして七閃とつぶやいたところで、一人爆笑の渦にのまれていた。

「うわ!なんで!?不幸だー!!!」

幻想殺しを失ってもなお。その不幸さに衰えは見られない上条当麻であった。


477上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:16:09.650nWfPeTOo (12/17)

「上条当麻、何か申し開きはありますか?」

巨乳で腰に刀を携えて、ジーンズの片方を太ももの付け根まで千切っている奇抜なファッションセンスをしたサムライガールは、上条当麻を砂浜の上に正座させて問うた。

「えーと、酒とかあんまり飲まないんですけど、ひょっとして酒の勢い余って色々やってしまったらしく、非常に、非常に申し訳なく思っております。
 つきましては未だ学生の身分であれど、あなたを幸せにするという覚悟はできております。」

土御門は爆笑している。
サムライガールはぽかーんとしている。

上条が勘違いしていると気付くのに、時間はかからなかった。


478上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:16:36.530nWfPeTOo (13/17)

・・・

「で、この新ジャンル「侍女」な女性は何者でせう?」

「まったく、やれやれです。そんな安っぽい演技でこの私をだまそうなどと。
 先ほど貴方も私の事を「ねーちん」と呼んだではないですか。
 と言うか、以前一度だけ相まみえましたよね?もうお忘れですか?」

こんな奇抜な格好をした女性を忘れるわけがない。
しかしそんなことを言うと刀でバッサリ行かれそうなので何も言わない事にする。

「(記憶を失う前の俺は何をやったらあんな女性と知り合いになるんだ??)」

しかし、その心当たりは一つあった。

「……魔術師」

上条の答えに女は頷く。

「そうです。『必要悪の教会』の魔術師、神裂火織です。お久しぶりですね」

『必要悪の教会』。確かインデックスや、吸血鬼騒動のときに共闘したステイル=マグヌスが所属していた対魔術師専用の特殊部隊みたいなやつだ。
それがここに居ると言う事は。

「やっぱり、この騒動の原因は魔術師か」

「その通りです。と言うか私は貴方を疑っています」

神裂のその言葉に上条は驚愕した。

「はぁ!?俺?!魔術なんて知らねえよ!つうか俺魔術の反対に位置する超能力者養成都市の住人だぜ?!」

……つーか、と付け加え、土御門の方をジロリと睨む。

「何でその魔術師と、土御門がお知り合いなのか、俺はそっちの方が気になって仕方ねえよ」

「そりゃあ俺も『必要悪の教会』所属の魔術師だからだぜよ」

土御門が、爆弾を投下した。


479上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:17:22.660nWfPeTOo (14/17)

・・・

土御門元春が言うには、こうだ。
・本来学園都市のスパイとしてイギリスからやってきた魔術師。
・能力開発を受けたせいで魔術使うと体はボロボロになる。
・今回の事件でも、その影響を逃れるために魔術を使ったせいで体は既にボロボロ。
・しかも魔術を使っても、完全にはその影響を逃れられなかった。

確かに、科学と非科学が相容れるわけがない。
それなら敵地にスパイを送り込むのは当然だ。
ものすごく身近に非日常があるんだなあ、とぼんやり思っていると。

「カミやん。俺の事は別にいい、それよりも解決すべき問題が目の前にあるんだぜい?」

なんか気づいてる事あるだろと土御門。
なんかも糞も無いだろ、と上条当麻。

「いや、見た目と中身が合わないだろ。お前らは魔術でそれをかわしたんだろ?
 だったら俺は何d……」

何で魔術の影響を逃れたのか、それを聞こうとしたところで上条は言い淀む。
難を逃れた原因に一つ思い浮かぶ単語があった。

『幻想殺し』だ。

しかしそれは既に失われた。それを言っても良いのだろうか。

今、インデックスは上条当麻の保護下にある。と言う事になっている。
それは『幻想殺し』なら魔術師から守りきれるだろう、という判断の元それが認められたのだと思う。

もし、その力を失ったとしられたら?

いや、むしろインデックスを守りたいなら、上条は手を引いた方が良いのだろうかと考える。

だがそれでインデックスの心はどうなる?

『必要悪の教会』は、インデックスの心も守ってくれるのだろうか?
何となく、それは無いんじゃないか、と思う。自惚れかもしれないが。
何にせよそれならば、上条自身が力をつけなければ、と考えるのだった。

上条が『幻想殺し』に関して言葉に出来ないため、口をもごもごしていると。

「それで、ねーちんは『中身』と『外見』が入れ替わる『御使堕し(エンゼルフォール)』、
 こんな大魔術をシロートたるカミやんが引き起こせると思うか?」

口をもごもごしていたが、その言葉を聞いて上条はピシッとかたまった。


480上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:18:00.540nWfPeTOo (15/17)

「まてまて、さっきから聞いてりゃ疑いやがって!魔術なんて使えねえっての!」

当然の怒りを2人にぶつけるものの。

「こんな大魔術の中、一人何もしないで難を逃れるなんて、怪しいとしか言いようがありません」

「むむ」

確かにそれはそうだ。だが、自分は犯人じゃない。と言う事は自分で理解している。
しかし、そんなことを言ったところで信じてもらえるわけがない。

「カミやん、何か言わんと冤罪押しつけられちまうぜい?」

「冤罪とはなんですか?現に御使堕しの影響下で一人無事じゃないでs―――」

「ちょっと待てよ、さっきから言ってる御使堕しってなんだよ?それがこの事件の原因の魔術ってことで良いんだよな?」

「その通りだにゃー。で、その魔術がカミやんを中心に展開されてて、それのせいで容疑者がカミやんになっちまってんだぜい」

「その通りです。さあ認めなさい早急に罪を認めなさい、そして元に戻しなさい」

神裂は上条の肩をつかみ、ぶんぶんと揺らす。しかしそんなことを言われても困る。

「だ、だ、だから!し、しらね、え、もん、は、しらねえ!!」

上条は必死になって否認する。
例え無い罪をあると言ったところで、魔術が無くなるわけではない。
実際には魔術なんて使ってないのだから。


481上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:18:50.240nWfPeTOo (16/17)

「まー何にせよ、『御使堕し』は未完成らしいからな。止めるなら今しかないんだにゃー。
 カミやんの『幻想殺し』でも、燃えた後の灰を元に戻すことが出来ないように、
『御使堕し』が完成したら最後元には戻せないんだぜい」

土御門のその言葉に事態を理解するも、土御門が耳元でぼそりと
「と言っても、カミやん、今は『幻想殺し』を失ってるから関係ないだろうけどにゃー」
と言ったことにより、表情が一変する。

「な……お前……」

「こっちもこっちで色々調べて知ってるってことだぜい。三沢塾も、禁書目録に関しても。……『テレビ』に関しても。
ま、『幻想殺し』についてはトップシークレットってことで誰にも言わないから安心してほしいんだにゃー」

「……この際なんでそんなことまで知ってるのかは聞かねえ。
何にせよ、どうしたらこの事態を解決出来るんだ?」

「一つは術者を倒す事。もう一つは儀式場を崩す事。
時間制限もあるし、カミやんがぼこられる事で無罪の証明をしてもいいんだが……」

流石に冤罪で気絶するほどフルボッコは嫌に決まってるよにゃー?と土御門は言う。
当然だ。そんなわけで、否応なしに事件の解決の協力を余儀なくされてしまった。
と言っても、『幻想殺し』は無いので、協力できそうにないのだが。


・・・


「そういや、完全に魔術から逃れたわけではないっつってたけど、どういうことだ?」

上条は2人に尋ねる。

「あー。俺らやカミやんを例外として、他の『入れ替わった』奴らには俺らが『入れ替わった』ように見えてるみたいだぜい?」

「成程……誰に見えてるんだ?俺は土御門は土御門に、神裂は神裂にしか見えないんだけど」

「……一一一(ひとついはじめ)だにゃー」

「……ステイル=マグヌスです」

「えっ。あのアイドルと魔術師?」

「そうだにゃー!しかも一一一は最近人気女優との交際をすっぱ抜かれてたせいで!
 俺は知らない女から釘バット片手に追われるハメになってんだぜい!!?」

「私は!やたらと日本語が上手な!赤毛外国人神父に見られてるんですよ!!」

2人の必死な形相に、上条は思わずたじろぐ。

「あー……なんだ……その、事件解決を目指して、頑張りましょう……」

「「当然!」 だにゃー!」


482上条当麻の華麗なる日常 ◆DAbxBtgEsc2011/06/13(月) 01:21:22.910nWfPeTOo (17/17)

尾張。

なんだこれ誰得?読む人いてはる?居なくても書くんだけどねー。
御使堕し編を終わらせたら布束と上条の影の慣れ染めを書こうと思うます。


483VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/13(月) 01:36:35.69wL2qc9wUo (1/1)

エンゼルフォールでしっかりと姿が違う事を認識できている……
ペルソナ効果? それとも今は失くしてるけど幻想殺しの影響?
前者なら学園都市で「なンだなンだよなンなンですかァァァァああああ!?」と誰かの絶叫が響いているだろうなww


484VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2011/06/14(火) 06:48:39.51frcK0Halo (1/1)

>>483
もし前者だったら打ち止め木原とか非常にカオスなことになってそうだな…


485 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:41:23.530YmrLuQ3o (1/28)

投下するわー。
会話回なので話はほとんど進みません。
でも次回か次々回の投下で完結出来るようにしたいね


486 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:42:21.950YmrLuQ3o (2/28)

>>481
・・・

さて、『中身』と『外見』が入れ替わる大魔術の完成を阻止すべく、
上条当麻は必要悪の教会からやってきた魔術師・神裂火織と
魔術師兼クラスメイトの土御門元春と共に行動を開始するのであったが。

「……一介の学生たるわたくしめが参戦したところで、何の意味もありませんよねー」

これと言った進展はなく、既に晩御飯のお時間になるのであった。
一応、上条当麻を中心に魔術が展開されていたことから、
上条当麻に誰かしら接触する可能性を考慮して、神裂が護衛役をつとめることになったのである。

「いやあ、こんな外国の方とうちの息子が仲良くなるなんて、国際化がすすんでますなあ」

お近づきのしるしに、エジプトで買ってきたお土産いります?と瓶詰めにされたスカラベを取り出す上条刀夜。
和気あいあいとした食卓でふんころがしの死骸を出すとは何事かと上条は注意をするのだが、
神裂が、「これは魔術的意味がうんたんかんたら~」といつもの口調で懇切丁寧にお土産としての価値を解説した。
上条はどうでもいい豆知識としてへー、そうなんだー。と4へぇ位へぇボタンを押した。

とはいえ、他の人からしたら神裂は『流暢な日本語(ただし女性っぽい)を話す赤ロン毛の外国人』なわけでありまして。
散々上条ファミリーにやれ「大柄な男性の割に柔らかい所作ですね」だの、
「女性から習ったのか知らないけど、日本語が女性っぽい話し方になってるからちょっとずつ矯正した方がいい」だの、好き放題言われた次第であります。

そんな神裂は堪忍袋の緒が切れる前に風呂へと逃げるように向かうのだが。

「……見張っておいてもらえませんか?」

周りから男に見られても、精神的には女。
ぞろぞろと男どもが風呂に入って来るとストレスがマッハだろう。
上条もそれなら仕方ないか、と思い、見張りを請け負う事にした。


487 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:43:22.770YmrLuQ3o (3/28)

・・・

見張りと言ってもそんなに人が来るわけでもないので、風呂場の入口にしゃがんでぼけーっとする上条当麻。
そんな上条の元に抜き足差し足忍び足でやって来るアロハシャツが一人。

「……土御門か、今はこの辺にはだれも居ないみたいだからそんな安っぽい隠れ方しなくていいと思うぞ」

顔の部分に葉っぱが生い茂った木の枝をもってくると言う、何ともベタな隠れ方をして上条の元へと近づく土御門元春は、その枝をポイっと捨てると上条の隣にしゃがみ込んだ。

「いやー、人に見られないのが仕事みたいなところあるんだけど、
ここまでバレないように気をつけたのは久々だぜい?」

そう、今現在土御門は御使堕しによる影響を回避しきれなかったために、
周囲の人間から国民的アイドル「一一一」と認識されてしまっているのだ。
そのためただでさえスパイとして人目につかないようにしないといけないのに、その風貌のせいで更に人目に気を使うハメになってしまっている。

「つーかそんな悠長に構えてていいのか?時間制限がどのくらいあるのかもわからねえってのに」

「まー焦ったって仕方ないって。今はそれより別の話があるんだにゃー」

上条の意見ももっともなのだが、現状動きようがない。
それに土御門が何か話があるらしい。どうせ暇なので聞いてやろうと思ったのだが。


「テレビの話とねーちんを覗く話、どっちが良いと思う?」


488 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:44:25.030YmrLuQ3o (4/28)

いつになく真剣な表情を浮かべ、『テレビの話』の部分を聞いた瞬間上条の顔も固くなったのだが、
『ねーちんを覗く話』と真面目な口調で言うものだから力が緩んだ。

「お前は真面目な顔して不真面目なこと言ってんじゃねえよ!!
 アンバランスすぎだろうが!!」

「まーまー落ちつけってカミやん。せっかく肩の力抜いてやろうと思ったのにー」

へらへらと語るその顔からはおよそ緊張感は見られない。
上条もそんな様子に気を抜くが。

「カミやんはもうテレビの中に入っちまってる。最早当事者と言っても過言ではないだぜい?」

急に真面目な表情になる。おかげでペースが乱されっぱなしであるが、こう言った話術もスパイとしてのスキルなのだろう。
土御門の話に聞き入る。

「……そして、テレビの中でカミやんは『幻想殺し』を失った」

「……ああ、その通りだ」

「……」

土御門は急に黙りこむ。ひょっとして何か『幻想殺し』に関して重大なことを知っているのだろうか。
上条は次の言葉を待つ。


489 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:45:08.250YmrLuQ3o (5/28)

「……まあ、未だそれだけしかわかってないんだけどにゃー!」

「えっ」

「メインは『ねーちんを覗く』ことですからにゃー」

「なにそれひわい」

拍子抜けだった。何にせよ、土御門は上条の置かれている立場を理解している。そういうことだろうか。

「まあ何にせよ、カミやんはこの得体のしれない『テレビ』の中に足を突っ込むんだろ?
 俺もなんか分かれば知らせるつもりだが……気をつけろ、言いたい事はそれだけだにゃー」

気の抜ける語尾だが、その言葉は本心からの言葉で、上条の事を心配していると言う事がよくわかった。

「……ああ」

上条は、小さくうなずくだけだった。
そして土御門は話は終わりだ、と言わんばかりに立ちあがると。


490 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:46:04.290YmrLuQ3o (6/28)

「さあ覗くぜい!」

「バカ野郎!!」

友人の犯罪宣言に黙って入られない上条は、土御門の自殺行為を必死で止めようとするのだが、
何処からともなく床を歩く足音が聞こえてきたため、土御門は忍者のように素早く飛び去って行った。

そんな土御門を見送った上条は、
「(見た目はアイドル中身は変態な土御門だから人目を避けてたんだっけかー)」
などとのんきに考えていると。

「おや、当麻じゃないか。何をしてるんだこんなところで」

上条刀夜が現れた。

「へ!?いやいや、何もしてませんことよ!?」


491 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:46:54.890YmrLuQ3o (7/28)

思わぬ登場人物に動揺して思わぬ事を口走ってしまう。
しかし、神裂の入浴に誰も介入しないか見張りしてますなんて言ったところで、
男同士裸の付き合いがうんたらかんたらとか言って風呂場に連行されるだろう。
そうなったとき、神裂のことだ。七閃とか言って刀を振りまわすに違いない。

これは非常に拙い。

脳内加速装置を発動させて思考を加速させるが、空回りするだけでちっとも打開策は見つからない。
どうするよ俺、どうする!?と自問しながら手札のライフカードを見てみても、手札には「諦めたら?」としか書かれていない。
成程、どうせ諦めるなら盛大に散れ。そういうことか!!
そっちがその気ならと好きなことしてきたしー♪
と、幸せについて本気出して考えながら風呂場に突入する。

―――しかし、そこには既に着替え終わった後の神裂さん。

刀夜は「やあ、良い湯でしたかな?」などとマッタリとした面持ちで話しかける。
神裂さんはチラリと上条の方を一瞥し、ちょっと溜息をついてから「ええ、良い湯でした」と返答した。

神裂の上条に対する評価がちょっぴり下がったものの、裸を目撃するよりかは、よっぽどマシだと上条は本気で神に感謝した。


492 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:47:41.140YmrLuQ3o (8/28)

・・・

「こうやって親子水入らずで風呂入るなんて何年ぶりだろうなあ」

のほほんと上条父こと上条刀夜は上条当麻に話しかける。
しかし上条は記憶喪失なのでそんなことは覚えていない。
よって身も蓋も無い言い方をすると、
「お前がそういうんならそうなんだろう。お前ん中ではな。」になってしまうのであいまいに笑ってうなずくことしかできなかった。

「それで、どうなんだ?学園都市での生活は」

「え?ああ、それなりに楽しいよ」

上条が記憶を失ってからと言うものの、周りは基本同年代の学生しかいなかったのでそれなりに距離感を保つ事は出来ていたのだが、
こうやって親と対面すると、申し訳ないことに歳の離れた大人、という印象が大きすぎて距離感を測りかねてしまう。
そんなわけで刀夜とこうして腰を据えて話すと言う事を躊躇っていると、何やら刀夜は、

「……すまないな、父親である私がふがいないばかりに、苦労をかける」

何故か謝罪された。


493 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:48:22.780YmrLuQ3o (9/28)

「……え、何が?」

思わず素で尋ねる。本当に何のことだ。

「……昔から、お前は『不幸』だと言われ続けたな」

何やら独り語りが始まった。無視するのもあれなので、聞くことにする。

「何とか普通の人と同じ幸運をもたらせないか、なんて考えて世界各国のお守りとか集めてみたりして……
 結局、何も変わらなかった。最後は藁にすがる思いで、学園都市に送り込んでしまった」

嘆くように、懺悔するように、刀夜は心の内を吐きだす。
上条はただ、黙ってそれを聞く。
すると刀夜から、頬から一筋の水滴が流れ落ちた。

「私は……逃げていただけだった……!
見てられなかったんだ、どんな目に遭っても、どんな言葉を吐きかけられても、
 それでも前を見て、笑うお前から」


494 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:49:31.030YmrLuQ3o (10/28)



刀夜は微笑んでいる。
しかしその笑みからはマイナスの感情しか読み取れなかった。
そんな刀夜をみて、上条は。

「わぷっ!」

手で水鉄砲を作り、お湯鉄砲攻撃を刀夜にかました。

「な、何をするんだ!」

刀夜は思わず抗議する。
しかし上条はそんな抗議を完全にスルーして口を開いた。

「俺の知らないところで、父さんがどんな思いをしてたかは知らねえけど……」

一拍置いて、声のトーンを上げる。

「俺は、今まで生きてきて、本気で不幸だなんて、思った事はない!」

まあ、不幸だは口癖になっちまってるけど。と笑いながら上条は語る。

「……多分信じられないだろうけど、俺は今、父さんの言う『不幸』、それの根幹を失った状態なんだ」

不幸の根幹。もちろん『幻想殺し』の事だが、そんなことは刀夜は知らない。
上条もその事について話すつもりはなく、独白は続く。

「だけど俺は、それを取り戻したいと思ってる」

「……確かに、このまま普通に生きていけば、俺はおおよそ『不幸』とは言えない程度の生活は送れるだろうな。
 だけど……」


495 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:50:01.500YmrLuQ3o (11/28)




「俺は、『あいつ』が居て初めて『俺は俺』だって断言出来るんだ!!
 『あいつ』が居ないと、それだけで『俺は俺』じゃないんだ!!」

上条は叫び、心の内をさらけ出す。
刀夜がそうしたように。
上条の言葉は要領を得ないものだったが、刀夜には痛いほど伝わってきた。
「周りがなんと言おうと、俺は不幸なんかじゃない」、と。
そして、理解した。
「当麻は既に一人前の男になっていた」、と言う事を。

刀夜はつきものが落ちたかのように、晴れやかな顔だった。

「何だ……私がしてきたことは余計なお世話だったってことか」

「まあ、そこまで思ってくれるってのは息子冥利につきますことよ」

「はは、よく言うよ。……てことは家に置いてる108の魔術的お守り群は廃棄だなー」

「あんた無駄な事に金使うな!!俺が学園都市のやっすい奨学金でどんだけやりくりしてたと思ってやがる!!」

「何をいうんだ、当麻。お前はもう一人前の男だ。親からの援助なんていらんだろう?」

「うるせえ!お土産買う金あるなら仕送りくれ!!」

最初に勝手に感じていた刀夜との距離感は、『普通の親子』にまで縮まっていた。


496 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 01:51:42.580YmrLuQ3o (12/28)

尾張です。
神裂さんの裸を目撃しなかったのは、幻想殺しがないからです。
おかげでラッキースケベの回数も減ります。フラグは立てるんだろうなあとは思うけど


497VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/15(水) 20:47:52.950YmrLuQ3o (13/28)

日が変わるまでには投下する……!投下するんだっ……!!


498VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/15(水) 21:02:37.12seINY/O+o (1/1)

クマ参戦したらナビはアニェーゼになるのかな


499 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:22:18.060YmrLuQ3o (14/28)

中の人的にですかそうですか
レーダー候補いるっちゃいるんだけど、圧倒的男不足だわ
未だ書きため途中だけど、キリの良いとこまで投下する。
多分深夜の間にはえんぜるふぉーるは完結するはず


500 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:22:50.380YmrLuQ3o (15/28)

>>495

同日、24時。神裂火織は砂浜に居る。何やら考え事をしているようだ。
そんな神裂の背後から金髪アロハサングラスの土御門元春がやってきた。

「どうしたんだにゃー、ねーちん。そんな考えこんじゃって」

「……土御門ですか」

神裂は土御門の事を一瞥もせずに、ひたすら思考を重ねている。
そして、意を決したかのように口を開いた。

「上条当麻は、確かに『御使堕し』を行った張本人ではなさそうです」

「まあ、実行する理由はないしにゃー」

「ただ……『幻想殺し』が無いのに、上条当麻に『御使堕し』の影響が行っていないのが気になります」

「……いつ気付いた?」

「先ほど、上条当麻が風呂場で彼の父に向かって『幻想殺し』が失ったと思わせる言葉を吐いていました。
 まあ、確証はありませんが」

あいつは何を叫んだんだ、と土御門は思うものの、否定しても仕方が無いので神裂をからかう事にした。

「へー、ねーちんは親子水入らずの会話の中に裸の付き合いで混ざって行ったってことか?」

「ぶっ!!そんなわけないじゃないですか!風呂場の入口まで声が響き渡ってたんです!!」

「ふむふむ成程、入口の戸に耳をひっつけて盗み聞きしtぎゃあああああああああ!!!」

かんざきの こうげき!
アイアンクロー!
こうかは ばつぐんだ!

「こっちは真面目に話してんですよ!!そっちも真面目になりやがれ!!」

聖人の力を存分に発揮し、ぐるんぐるんと土御門を振りまわす(物理的に)神裂。
流石の土御門もふざけ過ぎたと思わず謝罪する。

「いたいいたいいたいぜよ!!わかった!わかったから放してほしいんだにゃー!!」


501 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:23:36.790YmrLuQ3o (16/28)


「次ふざけたら……千切ります」

ゴゴゴゴ、と背景から効果音を鳴らし、本気で威嚇する。
千切るという言葉に過剰反応した土御門は股間を隠し恐怖に震えながらも突っ込みを入れた。

「ナニをです!?」

そんな土御門を見て溜息をつきながら、汚いものを見るかのような冷たい目をして告げる。

「嫌ですね、ちぎるではなくせんきるですよ?」

「そんなに切られたら死んじゃうぜよ!!?」

1000回も切られたら出血死もしくは途中でショック死してしまう。
そういう問題でも無いが。

「大丈夫です、千キルですから」

1000回切るのではなく一騎当千宣言だった。

「もっとひどくなったぜい!?どこぞの吸血鬼並みの生命力ぜよ!?」

「……はあ」

土御門との下らない掛け合いをしている間にも、時間制限は迫っている。
だと言うのに捜査は最初から。溜息も付きたくなるだろう。

「どうしたんだにゃー?そんな溜息ついて」

「捜査が振り出しに戻れば溜息くらいつきたくなります」

「カミやんの周りにもあんな魔術かける理由ありそうな奴は居ないっぽいしにゃー」

インデックスと言う魔導図書館があるため、正しい手順さえ踏めば御使堕しを為す事は可能だろうが、
上条当麻はもちろん、周りの人間もそれを為す理由があるとは思えなかった。
というより、インデックスがそれを許さないだろう。

「やはり、上条当麻の『幻想殺し』が無い状態で『御使堕し』の影響を受けなかったというのがヒントになってると思います」

「確かに。カミやんのみ選択して『御使堕し』から除外したと考えたらありえる話だにゃー」

「ならば、何故上条当麻なのでしょうか?」

「ふむ……確かに『中身』と『外見』が入れ替わるこの魔術で、カミやんだけその対象から除外する理由がわからんぜよ……
 何にせよ、今はカミやんの周りを洗うしかなさそうだにゃー」

引き続き、上条当麻の周辺を調べて行くしかなさそうだ、と結論付け、明日へと備えることにした。

「あー、そうそう。明日ここに『殲滅白書』の人間が一人よこされるらしいぜい」

土御門の言葉にピクリと反応した神裂。

「ロシアの誇る『幽霊退治』のエキスパートですか……」

殲滅白書。ロシア成教の内部組織。
『御使堕し』を解決するには宗派がどうたらなどとは言ってられない。そういうことだろう。
何にせよ人手も増えるに越したことはない。
とりあえずいつまでも砂浜に居ても仕方が無いので2人は、今日はもう寝ることにした。


502 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:24:33.310YmrLuQ3o (17/28)

・・・

一方その頃

「バカが!今日は家族水入らずで川の字で寝るとしようじゃないか!
 俺は真ん中だ!!きさんは隅っこで布でもかぶってろ!!」

確かに、確かに父と母の情事に口をはさむのは子供としてはあれだろう。
しかし、上条当麻からしたら見た目はインデックスなのだ。もちろんそんな真似はさせられない。
よってなりふり構わず全力で阻止にかかる。

「なぬ!?当麻貴様私達の睦言の交わし合いの邪魔立てをするというのか!?」

上条のあまりに大胆な行動に、刀夜も思わず本音を出す。
刀夜の本音を聞いてしたり顔をする上条。

「はん!この俺の目が黒いうちは触る事すらゆるさねぇよ!」

「カラコン買ったら触っていいか?」

「駄目だ!!」

「あらあら、当麻さん的には久々に私達に甘えたい年頃なのね」

いつ来るかわからないタイムリミットが近づいて行く中、能天気なやりとりをしていた。

・・・

翌朝。
夏の朝の空気と言うのは、爽快感にあふれており、清々しいものであった。
しかし、上条当麻の体は重たい。
それは昨夜、見た目はインデックスな母と父のめくるめく夜を阻止するために夜通し刀夜を通せんぼし続けたためだ。

そんな上条は、眠たいながらも何とか起きて外へと向かう。
何やら援軍として魔術師さんが来たので紹介したいらしい。

とりあえず旅館に居ても、見たくない顔(青ピ)が居るので奴が起きる前にさっさと外へ向かう事にした。
上条のどんよりした様子に神裂火織は心配をするのだが、実質一睡もしてないわーという話を聞いてジトっと上条を見る。
こんな時に何やってんだと言う神裂からの批判の目を浴び、気まずい雰囲気のまま援軍魔術師の到着を待った。


503 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:25:27.520YmrLuQ3o (18/28)

・・・

そして上条当麻と神裂火織は、1人の少女を迎え入れていた。
ちなみに土御門元春は、どうやら個人で行動をとっているらしい。

ミーシャ=クロイツェフと名乗るその少女は、全身を拘束具で身をまとい、
人類の最終兵器『バールのようなもの』を携え静かに佇んでいる。
上条は「何このカッコ」とか思った瞬間、ミーシャはそのバールをふりかぶり、
上条へ向かって振りおろした。

思わぬ奇襲を受けた上条だが、刀夜との攻防で一睡もしてない。いや、寝てたとしても反応できなかっただろう。
しかし神裂は、それを見た瞬間に素早く上条とミーシャの間に入り込み、刀でバールを受け止めた。
ガキィッ!!と甲高い音が鳴ると、ミーシャは怪訝そうな表情を浮かべる。

「問一。何故邪魔をするのか」

「彼は『御使堕し』の犯人ではありません」

神裂の言葉を聞き、一応話を聞く気があるのか、ミーシャはバールを下ろす。

「問二。それの証明は可能か」

ミーシャはチラリと上条の方を向く。
その瞳からはおおよそ感情は感じ取れなかった。
何を考えてるかはわからないが、その場しのぎの嘘をついても仕方がないだろう。

上条は正直に答える。

「証拠はねえけど……『御使堕し』の解決に協力する……っても大した力なんてねーし魔
 協力するってのでそれの証明にならないか」

上条の言葉にミーシャは首をかしげた。
神裂はここで言い争うのももったいないと感じ、助け船をだす。

「一応、イギリス清教必要悪の教会の公式解答なら提示できますが?」

その言葉に反応し、ミーシャは続きを促した。
まず、超能力養成所である学園都市の学生たる上条当麻にとって魔術は毒のはずなのに、
その影響が出ていないと言う事。
次に、上条当麻は『御使堕し』の影響を受けていないが、
それは魔術を行使した張本人が何かの目的を以ってそれを為したのではないかと予測していて、
それの裏付けを今から行うと言う事。

「確たる証拠はありませんが、今ここで上条当麻に危害を加える事は私が許しません」

神裂がそう締めくくると、ミーシャは何やら考え込み始めた。

「評価。30・4・28・2。総評64。信用とまでは及ばないが、様子を見る価値はあると判断する。
 ただし、その少年の容疑が晴れない場合は、白か黒、それをはっきりさせる為に実力行使も厭わない」

「……わかりました」

神裂の言葉に納得したのか、ミーシャは軽く上条に謝罪を入れ、話題を変えた。
流石の上条も謝罪表明を地の文で軽く流されるのには納得できないのだろう。
抗議しようと声を上げようとしたが、神裂が話をややこしくすんなと言う目を上条に向けた。
上条はうぐぅと呻き、そのまま黙りこむ。


504 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:26:15.370YmrLuQ3o (19/28)

「問三。今回の事件の中心点は確かにこの場にある。仮にそこの少年が犯人じゃないとして、他に犯人の心当たりはあるか」

あくまでもマイペースを貫くミーシャ。
上条は「ああ。マイペース娘。なんだなーなるほどなー」と一人納得し、ここから先は専門家の話だろうから、口を開かないようにした。

「先ほど申し上げました通り、上条当麻の周辺をもう一度洗い直してみるところです。
 その作業は現在、土御門が行っています」

「問四。現在、すべき行動はあるか」

「今は有りません。強いて言うなら魔術の中心点、上条当麻に何らかのアクションがある可能性があるので、
 土御門が戻るまでは護衛兼監視をするのが当面の活動指針です」

まだ疑われている事に上条はムッとするが、無罪の証明法も無いのでやっぱり黙りこむ。
ミーシャは少し考え込んで、再び口を開いた。

「問五。護衛も監視も、貴方が居れば十分なはず。よって私の個人行動は可能なはず」

「それでも構いませんが、貴方は元々『幽霊退治』専門の人間のはず。
 『人間狩り』には慣れていないと思われます。
 ならば『人間狩り』の専門たるイギリス清教の人間をガイドにつけておく方が後々有効だと私は考えます」

「……賢答。その申し出に感謝する」

ミーシャはおもむろに手を差し伸べる。
思わぬ行動に神裂は面食らうが、どうやら握手を求めているらしいと分かり、
クスリと微笑んで握手に応じた。

「さて、今後の方針が決まったところで……とりあえず、土御門の報告を待つしかありませんので、上条当麻は部屋で休んでいてください。
 ミーシャと私は続けて協議を行いますので。結果は追って沙汰します」

「何か……良いのか?俺だけ休んでいて」

「良いも何も、私や土御門だったら仮眠はしっかり取っているので体力に関しては何も問題はありません。
 むしろ貴方が一睡もしてないのが問題なのですよ。有事の際眠くて動けないじゃ話にならないでしょう?」

神裂の最もな意見にグゥの音もでない。でも仕方ない。
見た目インデックスの母の寝込みを襲おうとするおっさんが居たらそれは止めるだろう。

だが今更そんなこと言っても言い訳にしかならない。
なので申し訳なく思いつつも神裂の申し出を受け入れ、仮眠をとることにした。


505 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:26:52.380YmrLuQ3o (20/28)

・・・

仮眠をとるはずだった、とるはずだったのに。

「おきろおきろおきろー!!」

上条当麻が仮眠で布団に入ってから5分もしないで
御坂がフライングヘッドバッドを上条の腹に炸裂させた。

「寝させろ!!」

「何言ってんのおにーちゃん!朝だよ!」

そう。ミーシャ=クロイツェフを迎え入れたのは朝の6時。
1時間程度話しただけなので、旅館に戻っても朝なのだ。

「うるさい!夏休みに惰眠を貪らずしていつ貪るというのだ!!」

「せっかくの旅行で惰眠を貪っちゃ駄目だと思うんだけど!?」

「ええいクラゲしかいないバカンスなんて惰眠にも劣るわ!!」

「そんなこと言わないで遊んでよお」

「ふん!そんなぶりっこ作戦なんて通じぬわ!」

「じゃあいいもん!私も寝るから!!」

そう言って御坂は上条の布団へと潜り込んできた。

「何をする!」

「何をするじゃないよう!構ってくれないのが悪いんだから!!」

どうやら御坂は意地でも起こしたいらしい。
一睡もしてないのに起こすという表現もおかしな話だが。
何にせよそっちがその気なら意地でも寝てやろう。そう決心して毛布をかぶった。

しかし、毛布をかぶった事で、奴の現出に気付けなかった。

「あー!とーまったら私の知らないところで女の子とイチャイチャしてー!(テナー」

しまった。反応が遅れた。
そのせいで奴がこちらに向かってダイブするのをよける事は出来なかった。


結果として、神裂が起こしに来るまで気絶していた上条だった。


506 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:28:02.740YmrLuQ3o (21/28)

・・・

突然だが、上条当麻率いる魔術師御一行は上条邸へとやってきている。

それは何故か。

とりあえず今現在、全く浮かび上がらない容疑者に、二つのパターンが考えられる。
一つ、敵魔術師が巧妙に隠している。とはいえ、術者までもが魔術の影響下にあるとは考えられないし、この可能性に関しては十二分に調べたのであまり高くないと言えよう。

二つ、偶発的に魔術を発動させてしまったパターン。
こちらの可能性の方が、前者より圧倒的に薄いものだったのだが
(それも当然だ、本来秘匿するべき魔術がこんなホイホイとおおっぴらに使われるはずもない)、
前者がほぼ無いという結論になり、こちらの方が可能性としてありえるものとなってしまった。

何にせよ、偶発的に発動させるにも安定した術式を敷く必要がある。
魔術の素人にその辺の道端にそんな術式を敷けるわけがない。
ならば術式は何処に?

それは、上条刀夜の『お土産』に答えはあった。

刀夜は、上条の為に『お守りになる変なお土産』を大量に集めて家に置いているのだ。
それならば、そのお土産の中に『魔術的意味をもつお守り』が存在し、それらが偶発的に陣の形成と魔力の生成が為され、
何らかのトリガーで発動されていてもおかしくはない。
それに、よくよく考えると、上条はこの町に来る前、すなわち『御使堕し』の発動以前に、上条夫妻の顔写真を確認していたのだ。
上条詩菜は発動前後で姿が変わっていた。

それに対して、上条刀夜は。


何も、変わってはいなかった。


しかし、上条刀夜からおおよそ悪意の欠片も見られなかった。
もしあれが演技だとしたら相当な役者だ。
おそらく、本当に偶発的、それこそ宝くじで一等が当たるより低い確率で発動させてしまったのだろう。

そんなわけで、この考えの裏付けを行う―あわよくば術式破壊をする―為に上条邸へとやってきたわけだ。

こんなに展開が早いのも、ひとえに上条が写真を確認していたおかげだろう。
と言っても今の今までその事を忘れていたわけだが。

「にしても、事故で魔術を発動ってどんだけだよ」

上条は気だるげにつぶやき、玄関のカギを開けた。
どうやって家の鍵を入手したかというと、「我が上条邸に友達(魔術師)を案内したいんだ」という何ともそれっぽい嘘で見事鍵を入手したわけだ。

しかも都合の良いことに、つい最近引っ越したらしく、「当麻は新居の場所をしらんだろう」と言う事で地図まで用意してもらった。
この態度を見るからに、やはり魔術は偶然のものだと思われた。

そして玄関の扉を開くと。


507 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:28:54.850YmrLuQ3o (22/28)


「……これは悪趣味だろ……」

「見事なまでに置物それぞれに魔術的に見て意味を持たせてありますね」

「ひょっとして、半端に調べて半端な知識で半端に置物を並べてしまった結果かもしれんにゃー」

思わず上条は頭を抱えた。
亀だのトラだのトーテムポールだの、様々な置物が家のいたるところにおかれていた。
魔術がどういう原理で発動するか知らないが、置物全てに『魔術的な意味をもつ』のであれば、
偶然『術式の形』になってしまってもおかしくはないと思ってしまうほどだった。
と言っても、こんなケースは珍しいどころか奇跡的なパターンだと、土御門と神裂は口をそろえて話していた。

そして4人は、各々置物の位置を調べて行くのだが、
調べれば調べるほど、話がややこしい方向へと向かう事になるのだった。


508 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:29:56.550YmrLuQ3o (23/28)

・・・

土御門元春と神裂火織は二階に上がって行った。
上条当麻に魔術の知識はないため、下手に置物はいじるなと厳命されたので、
今現在手持無沙汰な状態である。

そんな中、黙々とミーシャ=クロイツェフは置物を調べて行っている。
正直言って気まずい。かといってミーシャを一人にして二階に行くのも何か気が引ける。

何か話題でも無いかなと思うが、年齢もわからない(パッと見インデックスくらい?)上に、
ロシア出身の少女相手に何話せばいいんだと頭を抱えてうんうん唸るものの、何も思いつかない。

当然と言えば当然だが、本気で気まずい。どうしようかと思ってじーっとミーシャの背中を眺めていたら、

「問一。何か用か」

ミーシャの方から話を振ってきた。とはいえ、特に用は無い。
かといって馬鹿正直に何も無いと言ったら会話は二度と為されない気がする。

「えーっと、これ、食うかい?」

仕方が無いのでお近づきのしるしにポケットに入っていた板ガムで餌付けを試みた。

「問二。これは食べ物なのか?」

「食べるけど飲み込みはしないものだ」

「??」

何やらとんちみたいな言い回しになったが、とりあえず口に含んで良いものだと言う事は理解したのだろう。
そろそろと手を近づけ、ちょん、と板ガムをもつ上条の右手に触れながらも、そろそろとガムを手に取った。

そして、ガムというものは初めてだったのだろう。
銀紙をさわさわといじり、中身があることがわかると、中のガムを銀紙からとりだした。
しかし、そのまま食べるのかと思いきやフンフンの匂いを嗅ぎ、次に舌でチロチロとガムを舐め始めた。

どうみても警戒されてます。本当にありがとうございました。

毒味が終わったのか、手に持ったガムを口の中へと放り込んだ。
モグモグと咀嚼して行くうちに、実は美味しいと言う事に気付いたのだろう、もう一個頂戴と言わんばかりに手を差し出してきた。
上条はようやく気まずさから逃れられた!と思い板ガムを再び取り出すのだが、ミーシャはそこで先ほどまで口に含んでいたガムを飲み込んでしまった。


509 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:30:29.700YmrLuQ3o (24/28)

「あー!ガムは飲み込んじゃ駄目なんだぞ!口の中で噛んで、味を楽しむだけのもんなんだ!」

その言葉に何か拙いことをしてしまったのか、と言わんばかりに、

「問三。飲み込んだらあぶないのか?」

と、恐る恐る尋ねてきた。
そんなミーシャの事がちょっとかわいいと思いつつも、
一枚飲み込んだ程度なら大丈夫だろうと伝えてやると安心した表情を浮かべた。
そうこうしてるうちに、二階から土御門達が降りてきたので、術式について何かわかったのだろうと思い、上条は2人が口を開くのを待つことにした。

「術式を破壊するには―少しくらいの誤差は大丈夫ですが―ほぼ同時に全ての置物を破壊する必要があります」

置物が調べ終わったと思ったら、神裂火織は、上条当麻に向かって口を開いた。

「そんなこと出来るのか?」

魔術なら出来そうだなー、と魔術万能説を頭の中でとりあげていると、

「はっきり言って、この家ぶっ壊すくらいしないと無理だにゃー」

あっけらかんと言い放つ土御門に、上条は驚愕した。

「なあ、新居って言ってたよな……?ひょっとして、壊しちゃう系?」

「まあ確かに壊しちゃう系路線で行くのは忍びないけどにゃー。
 とりあえずは、最後の手段、ってことにしとくぜい」

「そうですね……それにしても、偶然とは思えないほどの出来なんですよね」

どこか一つを動かせば、全体に影響を及ぼす。
そんな互いが互いを支え合うような術式だ、と神裂は説明した。

「成程な……」

上条は、昨日の風呂場での会話と合わせて考えると、何となくこの事件の全容を理解できた。


510トンデモ理論注意 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:32:12.330YmrLuQ3o (25/28)

このお土産達は、『上条当麻』の為の物だ。
すなわち、『どういう内容』の魔術かはさておき、『上条当麻』の為の魔術なのだから、
その中心に『上条当麻』が居ると言うのは当然と言うことだろう。

しかし、それでは『上条当麻』に術式の影響が無かった理由が説明できない。

これは魔術の素人たる上条当麻個人の見解なので、あてにはならないが、上条は以下のように考えた。

『御使堕し』は『上条当麻』を中心に展開された。その効果は『中身』と『外見』を入れ替えると言うもの。
いや、自身の『外見』と他人の『外見』を入れ替えるものと言った方が良いのだろうか。

そしてそれの効果範囲は、日本からイギリスにもわたっていると言う。もし仮に、地球全土が効果範囲内であるとすると、その効果範囲内の広がり方は、どういうものだったのだろう。

おそらく、『円状』に広がる、と言うものだと思われる。
すなわち、魔術の効果範囲の円周に触れた瞬間に魔術が発動し、
誰かの『外見』と自身の『外見』が入れ替わる。

つまりその円周状に居た人間と入れ替わるのではないか、と言う事だ。

この時効果範囲の広がり方は高速なため『円周』と言うよりも普通に『円』と考えていいだろう。
それでも、中心点である『上条当麻』は効果範囲が『点』だったため、『入れ替わる相手が居なかった』のではないか。

そして、術者である『上条刀夜』には普通に影響が及ばなかった。
と言っても、あの様子を見ると、『外見』は変わらなくても、『周りが変わったこと』には気付いていない。
言わば土御門達と間逆の状態と言うことだろう。どういう理屈かは知らないが。

とはいえ、やっぱり魔術は素人なのでこの理論には穴しかない。
例えば『入れ替わる相手が居なかった』としたが、『術式は今現在も発動しているのだから、誰かと入れ替わらないはずはない』とも考えられる。
が、結局『上条当麻は上条当麻のまま』だったのだから、そんなこと考えても仕方ないだろう。

なんにせよ、『上条刀夜』が『上条当麻』に『幸せ』になってもらいたい、
という気持ちだけは痛いほど理解できたので、これ以上この事件の原因を思考する事はしなかった。

ただ、『術式にかかった者たち』から見て『神裂火織』は『ステイル=マグヌス』に見える。
それに対して『上条当麻』から見て『旅館の亭主』は『ステイル=マグヌス』に見える。
この『術式にかかった者』と『かかってない者』との情報の齟齬は一体どうなっているのだろう。

などと真面目に考察を重ねて見るも、やはり魔術の素人にそんなことが理解できるはずも無く。
やっぱりまあいいや、と納得した。


511 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:33:27.130YmrLuQ3o (26/28)

「何が成程なんですか?」

1人納得する上条に神裂が尋ねた。

「いんや、なんでもない」

上条はそんな神裂に対して、意味深な笑みを浮かべる。
神裂はなんだこいつと言う顔をするものの、軽くスルーした。

「それで、結局どうしたらいいんだ?下手に物動かして発動中の魔術が変な事になったら駄目なんだろ?」

「おお、カミやん理解が早くて助かるぜい!」

すると、ここまで黙って聞いていたミーシャは、

「解答一、自己解答。標的を特定完了、後は解の証明のみ。行動を開始する」

術式がどうにもならないのなら、標的―間違いなく上条刀夜―をどうにかするつもりだろう。
上条達が止める間もなくミーシャは窓から庭へと飛び立ち、そのまま走り去ってしまった。

「おいおい……まさか……!」

上条はすぐに理解した。ミーシャの行動を。

「父さんが危ない!!」

うろたえる上条に、土御門は声をかける。

「カミやんとねーちんは、上条刀夜の元へ行け。この場は俺に任せろ」

「な、なあ!父さんは、父さんは大丈夫なんだよな!?」

とはいうものの、偶発的とはいえこの大事件の原因だ。
無事で済むわけないんじゃないだろうか。

「大丈夫だぜよ。殺さずにすむ方法があるなら、俺はそっちをとる。
 今回だって例外じゃあない。ミーシャの奴はちと早計過ぎる。
殺せばそれで済むと考える人間の典型だな」

殺さずに済む方法をとると言うなら、それで一端は安心したものの、
殺せばそれで済む。土御門の言葉に上条はぞっとした。
これが裏の世界、殺し殺されが当たり前の世界か。
何にせよここでうだうだしている暇はない。
すぐさまタクシーを拾って、上条と神裂は旅館へと急ぐのだった。

・・・

ミーシャ=クロイツェフは途中で車を拾わなかったのだろうか、ミーシャより先に旅館へと戻れた。
上条当麻と神裂火織は上条刀夜の元へと急ぐ。
旅館に戻り、最初に目に入った御坂に刀夜の居場所を尋ねたところ、海の方に向かっていたと答えた。
上条達はそれだけを聞くと、一目散に砂浜へと向かう。
御坂はこの旅行で全然かまってもらえなかったのが不満だったのか、何か言おうとしていたが、上条達はそれを完全無視して走り去った。

砂浜にたどり着いた時、既にミーシャと刀夜は相対していて、ミーシャが何か一言口を開くと、バールを思い切り振りかぶった。
刀夜は思わず後ずさりし、足を引っ掛けて転んでしまう。しかしそのおかげで初撃をかわすことが出来た。
続いてミーシャは再びバールを振りかぶるが、それは神裂に受け止められた。
神裂は上条に刀夜を連れて逃げろと言う。
上条は逡巡するも、自分に力が無いと言うのはテレビの中でよく理解していたため、すぐに刀夜の手を引いて走った。
刀夜は訳がわからないと言った表情を浮かべているが、それを説明している暇はない。
上条が走るその数十m後ろでは、既に戦闘が始まっていた。


512 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:34:10.960YmrLuQ3o (27/28)

・・・

上条当麻は走る。
何処に行けばいいのかもわからず、何となく旅館に向かって走った。
するといつ戻ってきたのか土御門が並走していた。

「土御門!ミーシャは一体どうしたんだよ!!」

「いやあ、まず名前からしておかしかったんだにゃー!」

土御門はミーシャの行動に理解していたらしく、獰猛な笑みを浮かべ上条に事情を説明する。

「ミーシャってのは、ロシアにおいて男性に使われる名前なんだよ!偽名にしちゃもう少しまともな名前があるだろう?」

「は?それってどういう……」

「つまりあいつも、『術式の影響を受けた側』だったんだ!!」

上条の言葉を待たずに、土御門は続けて口を開く。

「ロシア成教に問い合わせをしたんだが、『サーシャ=クロイツェフ』ってのだけは居るみたいなんだ。
 つまり、そいつと『ミーシャ=クロイツェフ』が入れ替わってんだろ!」


理屈はわかった。


しかし、それならばロシア成教・殲滅白書所属・ミーシャ=クロイツェフと言うのは、一体誰だ?


「居るんだよ、この世には。男性にも女性にもなれる存在、神によってつくられた存在ってのが」

神。急に話がうさんくさくなり眉をひそめる上条だったが、

「忘れたのか?カミやん、この魔術の正式名称<エンゼルフォール>を」

丁度旅館にたどり着いた。
その瞬間、神裂と対峙していたミーシャの目が、カッと見開かれる。

ドン!と言う巨大な音と共に地面が大きく揺れた。
上条は思わぬ揺れに目をつむってしまったが、すぐに揺れは収まったので目を開くと、

夕焼けに染まったオレンジの空は、いつの間にか暗く星の輝く夜景へと変貌を遂げていた。

すなわち、地球ないしは他の惑星を魔術によって動かした、と言う事だ。
それを理解した上条は土御門に叫ぶように尋ねる。

「魔術ってのは星を動かしたりなんてとんでもねえことができんのかよ!?」

「『人間』じゃあ無理だ!!言っただろ!?この魔術の正式名称は、エンゼルフォールだと!!」

エンゼル。

エンジェル。

天使。

フォール。

落ちる。

堕ちる。

「ま、さ、か……!!」

「その通りだぜい、カミやん」


土御門は一息つく。
刀夜は未だに状況を理解できていない。それも仕方のないことだが。


「『ガブリエル』。左手に『神の力』を携えし大天使が一人だ」


上条達の背後からは何かが崩れるような、低くくぐもった音が響き渡った。
戦闘は、最早ただの人間に介入できるレベルではなくなっていた。


513 ◆DAbxBtgEsc2011/06/15(水) 22:36:14.100YmrLuQ3o (28/28)

とりあえず一端投下尾張。
ガブリエルさんvsかんざきさんじゅうはっさい、書きあげたら投下します。
今回の投下でエンゼルフォール編は終わらせたいです。つーか番外編だし。4巻丸々再構成なんて無理ィ


514VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/16(木) 00:22:14.234aqEntO6o (1/1)

乙、個人的には番外編より本編が早く見たいっす


515 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 00:52:51.64OzzV5K4xo (1/24)

全く、中途半端に番外編とかするからこんなことになるんだよね

本編の方は何となくどうするかっていう予定はたってるンで遅くても金曜か土曜には本編投下できまうs
あと20分ほどしたら投下してエンゼルフォール編完結します


516 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 01:06:38.44OzzV5K4xo (2/24)

マジで無駄に長くなったわと反省しました。


517 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 01:08:26.67OzzV5K4xo (3/24)

・・・

「成程、わざわざ空を夜に成したのは、自身の属性強化の為ですか。
 『夜』で、『月』を主軸に置いているところを鑑みると……
 水の象徴にして青をつかさどり、月の守護者にして後方を加護するもの。
 すなわち、『神の力・大天使ガブリエル』」

土御門元春と同じ結論を導いた神裂火織は、ミーシャ=クロイツェフだったものを眺める。

だったもの、という表現は正しい。
先ほど天体操作によって夕方を夜へと変貌させた際、ミーシャの背中から、天使の様な羽根が生え、その双眸からは異様な光りが見て取れた。

神裂はいつ攻撃を来ても良いように刀を構えている。
ミーシャは、月を背に上空へと飛び立つ。そして誰にも聞こえない声。いや、音だろうか。
確かにそれを発した。





―――ペ、ル、ソ、ナ。





ガブリエル。
確かに土御門と神裂の解説は、正しいものだっただろう。

しかし、ここでは違った。

別に、天使が堕ちてきたわけではないのだ。
魔術の素人がたまたま造ってしまった術式に、そんな大仰な意味は宿らない。

しかし、目の前の現象が、余りにも本物の大天使のそれと似ていたため、気付けなかった。

いや、知らなかったと言った方が正しいだろう。



ペルソナ、と言う心の仮面を。誰にでも宿る人間の心の裏側を。

そう、ガブリエルと言うペルソナが、誰かの心の中から抜け出したのだ。
そして、ガブリエルは本来の宿主の元へと戻るべく、術式の解除の協力をしていた。

それだけのこと。

ガブリエルは宿主の元へ帰るべく、それの邪魔をする目の前の人間を排除する。
敵の排除。それを為すための力を発動させる。

ガブリエルを中心に半径50m程、真っ白な光に包まれた。
そして、その光の範囲内には大量の氷の塊が出現する。



―――アイスジハード



ガブリエルがそうつぶやくと、その全ては神裂へと殺到した。

流石の神裂も防戦を強いられる。いや、元々時間を稼げたらそれでいいのだろう。
土御門が、上条が、きっと何とかしてくれる。それを信じて、神裂はひたすら刀を振るう。
目の前の光景に、一抹の違和感を感じながら。


518 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 01:08:53.86OzzV5K4xo (4/24)


・・・

何か膨大な光が生じ、そこから何かが地面へと殺到するのを上条当麻はただぼんやり眺めていた。
最早手に余る。そう感じさせる光景だった。
しかし、それでいいのだろうか?

力が無いから、力がある奴に任せる。
成程、実に合理的だ。

改めて自問する。しかし、それでいいのだろうか?
力が無い奴は、立ちあがってはいけないのだろうか。
今までの俺は、そんな些細なことを気にして動いていただろうか。

違う。

そんな理屈をこねて動く人間じゃない。
もっと単純に、自分がどうしたいか、それだけを考えて動いていたはずだ。

ふと、『影』の言葉を思い出す。
「俺がそいつの心ん中で何回殺されたと思ってやがる?
 俺は怖い、辛い、痛い、止めろ、って何度も何度も叫んでたってのによぉ」
その言葉を思い出して、失われた『心の片割れ』がチクリと痛んだ気がした。

だが、再び空が白く輝いたことで、その痛みは霧散して行った。

「土御門!!」

上条は叫ぶ。

「入院費は何とかしてやる!!死んでなきゃ何でも治せるとかいう医者も紹介する!!
 だから頼む!父さんを助けてくれ!!」

上条は、魔術の行使による術式破壊を土御門に頼んだ。
本来、それは上条当麻にとってありえない行為だ。
誰かを助けるために、誰かが犠牲を払う事を上条は病的なまでに嫌う。
その上条が、超能力者たる土御門に、魔術の行使を頼んだ。

たしかに、最良の策かもしれないが、上条の望む最高では無いのは明らかである。
だがしかし。上条の望む最高を演出する事は出来ない。そんな力はない。
だから頼るべきところは頼る。

「俺は、今から神裂のとこまで行ってくる!!盾位にゃなれるだろうから、俺や神裂が死ぬ前に何とかしてくれ!!」

上条の心からの叫びを、土御門は笑って受け取った。

「任せろ!!さっくり終わらせて、笑って入院してやろうぜい!!」

「入院確定かよ!!!」

上条と土御門は、ハイタッチをして別れた。


519 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 01:09:20.93OzzV5K4xo (5/24)



・・・

目の前の現象が全く理解できなかった。
だが、これだけはわかる。私の息子は、今から死地に赴くと言う事。
それを止める事は出来ない。なぜなら既にあいつは一人前の男だからだ。
親としては危ないことはしてほしくないが、子供と言うのはいずれ親を超えて行くもの。
それが今なのだろう。ならば私は、笑って見送らねばならない。
ただ、今までもこんな風に当麻は戦っていたのだろうか。何にせよ、そのうち武勇伝を聞かねば。

上条刀夜は、旅館の入り口で立ちつくしたまま、連続で発せられる謎の光を、ただ茫然と眺めるだけだった。

・・・

上条当麻は走る。
ガブリエルとやらと神裂火織が対峙している砂浜へ向かって。
何が出来るか?と聞かれたら何もできないだろう。『幻想殺し』だって存在しない。
盾どころか神裂の邪魔にしかならないかもしれない。

だがそれでも動かずにはいられない。
我動く、故に我あり。上条当麻が上条当麻たるゆえんだろう。

砂浜へとたどり着いた時、そこは最初の地形を保ってはいなかった。
数え切れないほどの氷の塊が地面に突き刺さっている。
その氷の上を淡々と移動する影が一つ。
ガブリエルはと言うと、最初に浮いた位置から全く移動せずに、ひたすら氷を生成し、操作していた。

それを見ていて「天体を操作できる」などと言う人間では不可能な業をもっているというのに、どうしてこの程度で済んでいるのだろうか、と。

その気になれば、術者の上条刀夜ごと、この地を消し去る事くらいたやすいはずだ。
しかし、それをしないのはどうしてだろうか。

手加減をしているのか、それとも……

「神裂ぃ!!」

思わず神裂を呼びとめようとする。しかし、目の前には氷が飛び交う戦地。
神裂に上条の言葉は届かない。

そもそも、呼び立ててどうするつもりだと上条は自重した。


520 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 01:09:47.67OzzV5K4xo (6/24)

・・・

上条当麻が叫び声をあげた事で、ガブリエルがゆっくりと上条の方を向いた。
神裂はガブリエルの視線が変わったので何事かと思い、視線の先を追うと、そこには上条が居た。
こんなところで何をやってるんだと思うが時すでに遅し。
ガブリエルはふよふよと上条の方へ向かって行った。
神裂は拙いと思いつつも降り注ぐ氷のせいで前に進めない。
しかしガブリエルはゆったりと上条の方へ飛んでいく。

神裂は逃げて下さい!と叫ぶが、上条は茫然自失としてその場から動かない。

次の瞬間には、上条はその氷でバラバラに吹き飛ぶ。そんな図が脳裏をよぎったのだが。

「……?」

ガブリエルは、何もしなかった。ただ、ペタペタと上条の頬を触る。
上条はその間、されるがままだった。神裂もあっけにとられていた。

すると、ガブリエルから音が発せられた。

―――心を識る者がこんなところに居るとは思わなかった。

―――そなたならば、信用してもいいかもしれない。

―――我を、我が主の元へ

それだけ伝えると、ガブリエルから生えていた羽根はナリををひそめ、
宙に浮かんでいた氷も、地面に刺さっていた氷も、全てが消失した。
キラキラと星が輝いていた夜空は、
そしてミーシャ=クロイツェフに、戻った。

「……何だったんでしょうか……?」

「なあ、さっきのって、本当にガブリエルだったのか?」

「私も疑問に思っていました。魔法名も名乗っていない状態でしたのに、意外と何とかなったのは、手加減してもらっていたのか……
 それとも、偽物だったのか」

心を識る者とは、ペルソナやシャドウの事だろうか。
心当たりと言うとそれしかなかった。そんなことをぼんやりと考えていると、一閃の光が上条家の方向へ向かって行くのが見えた。
おそらく、土御門が術式を行使したのだろう。それならばすぐに助けに行かなければ。

塗り替えられた世界は、再び元に戻った。
その瞬間に、全ての人間は元に切り替わり、ようやく終わったんだな、と嘆息をついた。

・・・

影は海の上で小舟に寝転がり、嗤っていた。

「ったく……偶然出来た術式が、どうしてこの世界に届くんだっての」

そう、入れ替わりの術式は、上条当麻も例外では無かった。
ただ、入れ替わる相手に『異能を打ち消す』右手があった。
そのために、入れ替わる事が無かったのだ。

しかしそんなことは上条当麻は気付かない。影も知る必要はないと思っている。

結果的に未曾有の入れ替わり術式は不発だったのだから、それで良いだろう。

影は、砂浜に現れた待ち人を見て喜びを示した。


521 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 01:10:19.60OzzV5K4xo (7/24)

・・・
NGシーン

一方通行の朝は早い。(最近は)
特に今日は、反射の膜に何か違和感を感じて目を覚ました。しかし周りを見渡してもいつも通り荒れた部屋。
昨日から上条は外に出ていると言うので、一方通行は1人でトレーニングをすることになる。
9982号はまだ寝ているようで、毛布を頭からかぶっていた。
起こすのも忍びないので、もそもそとジャージに着替えて台所で歯を磨き、ランニングを開始する。
やはり日が昇り始めの時間帯は丁度良い温度で涼しい。
とはいえこれから徐々に熱くなるだろう。キリの良いところで部屋に戻るとしよう。

一方通行は淡々と走る。

そろそろ一般人も活動を開始する時間になったのだろう、ぽつぽつと通行人が見え始めた。
ところが、何かがおかしい。明らかに男なのに、女性がきる服を着ていたりする人間をやたら見かける。
1人ないしは2人くらいまでなら、「あァ、そういう趣味かァ」で済ませたのだが、ここ10分で10人は多すぎる。
どういうことだろうと思いつつも、とりあえず暑くなってきたので部屋に戻ることにした。

部屋に戻ると、9982号の姿はなかった。置き手紙には「ちょっち病院行く」と書かれていた。
調整が残っていたのだろうか?何にせよ腹が減った。
そう感じた一方通行はベクトル操作で汗をはじき(シャワーを浴びようかと思ったが、何だか面倒くさかったらしい)、
私服に着替え、いつものレストランに向かう事にした。

いつものレストランに向かうと、いつもの……店員では無かった。
ウェイトレスの格好をしたガチムチのおっさんだった。
ウェイターの格好をした、以前アンチスキルのトレーニング所で御坂美琴と一緒に居た白井黒子の姿もあった。
話しかけようかと思ったが、そんなに仲も良くないのでスルーした。
向こうもスルーしていたのでそれでいいのだろう。

かくして、ガチムチウェイトレスは一目散にいつもの席へと案内した。
どう見ても初めて見る店員なのに、どうしていつもの席を知っているのだろうか?一抹の疑問を感じつつ、いつものメニューを頼んだ。

明らかにおかしいと感じたのは、アンチスキルのトレーニングジムについた時だ。
今日は冷やかしに芳川桔梗も来ると言っていたので、黄泉川愛穂か芳川のいずれかに会えるだろうと思ったら、一向に会えなかった。
どういう事だと首をかしげていたら、頭に花を乗っけた少女がじゃんじゃんと黄泉川の口調でなれなれしく話しかけてきた。
なンだコイツと思ったが、何やら黄泉川っぽいことを話している。
「さあ今日もボコボコにするじゃん」とか「さあ今日もヘトヘトにするじゃん」等だ。
こんな語彙力のなさはどう見ても黄泉川だった。しかし見た目はお花畑。


522 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 01:11:01.70OzzV5K4xo (8/24)

よくわからないままにトレーニングを命じられた。
納得いかなかったが、いつも通りのメニューだったので、黄泉川の代理でも頼まれたのか?と判断し、いつも通りメニューをこなす。
ゼェゼェ言いながら、腕立て伏せをしていると、何やら自分のそばでニヤニヤしながらしゃがみ込んでいる9982号がいた。
見せもンじゃねェ、帰れと言うと、つれないこと言うわね、とか言いながらトレーニングが終わるまで居座っていた。
お前もトレーニングの一つでもしたらどォだ?と忠告してやったら、頬を膨らませて悪かったわね、太ってて。みたいなことを言われた。
別に太ってはいねェよ、とフォローしておいたが、妹達の一人称って「ミサカ」だったような気がする。
まァ、どォでもいいか。

トレーニングが終わり、今日は黄泉川いねェし終わりかァ?とか思っていたら、黄泉川の真似をしている少女が「じゃあ実戦するじゃん?かかってくるじゃん!」と身構えていた。
はいはいワロスワロスと思いながら腕を伸ばすと、見事に一本背負われた。
この技の切れ、動きのよどみなさ、どう見ても黄泉川のそれだった。

まさか、黄泉川の愛弟子!?だとしたら好都合だ、まずは愛弟子からボコボコにしてやろう。
一方通行は意気込んで攻撃を繰り出すが、いつもの黄泉川のように軽々とあしらわれる。
愛弟子どころか黄泉川そのものと戦っているような錯覚に落ちる。

さて、結局お花畑にボコボコにされて、いつも通りフラフラしながらいつものレストランで晩飯を食べに行く。
いつもの店員はやっぱりいなくて、服装のおかしな連中は居た。
ちょっとさみしいと思いながらいつものメニューを食べ、部屋へと戻った。
9982号はやっぱり戻っていなかったが、携帯にメールは届いていた。
「今日は、病院に泊まる」とのことだった。
成程、なら今日はベッドを独り占めできると言う事か。
それなら存分に寝てやろォ、と言う事で体の汚れをベクトル操作し、ゴロリとベッドに横たわる。
眠りに落ちるまで、時間はかからなかった。

次の日、昨日はめんどくさかったからシャワーを浴びていない。
ベクトル操作があるとはいえ、精神衛生上何日もシャワーを浴びないのは気持ち悪い。
なのでフラフラと脱衣場へ向かうのだが。

「ハァ!?木ィィィィ原くゥゥゥゥンなァァにしちゃってンですかァァァ!!!?」

鏡には、木原くンがいた。
これは悪い夢だ、と思うが、ほおをつねると痛い。
思わず黄泉川に連絡を取り、今日は頭が痛いので休ませてほしいという旨を伝える。
すると昨日聞いた花畑の声でわかったじゃん、養生するじゃんと返答が来た。
黄泉川は電話すら愛弟子に任せているのか、と思いつつ、現実を逃避するために布団をかぶるのだった。


523 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 01:12:24.21OzzV5K4xo (9/24)

>>483を見て、NGシーンを書きたいがために番外編をがんばって完結させたようなものです

次回からは本編戻って、とりあえず布束さんの身に何があったのかから書いて行くよていです


524VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/16(木) 01:21:42.18OzzV5K4xo (10/24)

皆既月食を見たいんですけど、雨降ってるんですけど


525VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/16(木) 01:24:10.03OzzV5K4xo (11/24)

誤爆なンですけどー


526 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 17:56:48.15OzzV5K4xo (12/24)

>>464


布束砥信は研究者である。

生物学的精神医学の分野でその才を見出され、第七薬学研究センターの研究機関に招聘されたのだ。
その際、妹達の『学習装置(テスタメント)』の開発を担当しており、量産型能力者計画に参加していた。

一度は研究チームから離れていたが、妹達が絶対能力進化計画に引き継がれた際に再び呼び戻されることになった。
布束はこれを「自身は研究が挫折した時の責任を転嫁するためのスケープゴート」なのだと感じつつも、
妹達を何とか救えないかと考え絶対能力進化計画に参加することを決める。

そして進みゆく実験の中、実験が行われそうな人目につかない路地裏などにマネーカードをばらまく事で、それを集める一般人による監視の目を作ってみたりした。
妹達に感情・心を植え付ける事で、一方通行の心を動かせないかと画策したりもした。

研究所のデータ移送作業に乗じてそれを19090号に行おうとしたが、それを察知されて逆に襲撃されてしまったのだった。
何とか隙をついて感情のインプットを行ったものの、上位個体の命令以外は受け付けない仕様になっていた為、それは為されなかったが。


そして捕まった布束は、別の研究所の地下に拘束されてしまう。

何とか脱出できないかと思考錯誤するものの、部屋には壁に埋め込まれているテレビしか存在せず、
食事やトイレなどの生理行動は全て誰かしらの監視の元行わされていた為に、
ドラマとかでよく見る「針金をひそかに持ち込んでうんたら」みたいな事は出来なかった。

というかあのセキュリティを針金ごときで解決できるわけがない。
部屋に戻るたびに金属探知機だの身体検査だのされると言うのに。
どんだけ脱出するのを不可能にしたいんだよ。

何にせよ、学園都市相手にプリズン・ブレイクをかますのは不可能だった。

そうこうしているうちに、情報も得られないまま地上では話が進む。
9981号が何者かに拉致された言う話を聞き、どういうことだと布束は思う。
実験を阻止するため?はたまた別の目的があった?その辺はよくわからないようだった。

しかし、不測の事態が発生したからか、実験は一時中断となったらしい。
そのまま中止にならないかとは思うが、それはないだろう。
何にせよ、妹達の1人が拉致される事で実験が中断、と言うのは何とも複雑だ、と布束は思うのだった。


527 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 17:57:52.75OzzV5K4xo (13/24)

・・・

明くる日の昼の事である。

この時間は食事の時間だったはずなのだが、急遽研究所に呼ばれることになった。
ついに終わりの時が来たか、と思い諦念しながら連れて行かれる。

たどり着いた実験場には研究者達がいた。
成程、自分は実験が中断された責任を取ると言う処分を受けた後は実験材料として使われるのか。
外道な研究者の末路としては上等だろう。と、布束砥信は無感情に思った。

実験の代表者と思われる白髪の男は、ニコニコと穏やかな笑みを浮かべている。
『自分だけの現実』と『心』の関連を調べるそうだ。

「その実験の被検体として選ばれたと言う訳だ」

「well、覚悟は既にできてるわ。するならさっさとして」

「良いだろう、君に『力』を与えようか」




―――狂気を目に宿したその男は、『ペルソナ』を布束砥信に植え付けた。




どうやってとか、何故ペルソナを知っているとか、どんな背景があったかはわからない。
しかし気がつけば、布束は心の仮面を植え付けられていた。
そして訳がわからないままに再び部屋へと放り込まれる。

チクリと痛む心と共に。


528 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 17:58:28.90OzzV5K4xo (14/24)

・・・

実験が進むうちに『自分だけの現実』が変質しているのを感じた。

心に何か別のものが存在している。
そしてそれは虎視眈々と布束の主導権を奪おうとしている。

しかし、どうやらその『力』を行使するには特定の状況下でないと出来ないらしい。
まず、『召喚器』が無いと何もできない。
次に、実験場で何かの装置を作動させ、その実験場内に居ないと『召喚器』を使っても何も起きないようだった。

どうやってその状況を作りだしているのかは知らないが、その実験場で『力』を発動させられ続けた。

『力』を使うたびに自分の中が侵されて行っている、そんな奇妙な感覚に陥る。
何にせよ、五体満足で生きられているのだ。諦めるにはまだ早い。
布束砥信は絶望的な状況の中、必死になって召喚器をこめかみにつきつけ、ペルソナを出し続けた。


529 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 17:59:02.04OzzV5K4xo (15/24)

・・・

いつものように頭に電極をさして、いつものように実験場でペルソナを発動させていた。
心は既に限界に近かった。頭痛が酷く、布束の顔は死人のように血の気が引いている。

いつもはこのようになる直前で終わるのだが、今日は引き続き実験が行われた。
いつもより酷い頭痛に耐え、ひたすら力を出し続ける。

実験は終わらない。

力を出す。

実験は終わらない。

頭が痛い。

実験は終わらない。

力を出す。

実験は終わらない。

心が痛い。

実験は、終わらない―――


「あぁああぁぁぁあぁあぁあ!!!!」


そして布束砥信は、初めての『暴走』を迎えた。

布束の背後に居た『ペルソナ』は、布束から『支配権』を奪おうと布束に手を伸ばす。
布束はそうはさせまいと心を御そうとして頭を抱える。
布束の必死の抵抗を前に、『ペルソナ』は更に『暴走』した。

そんな布束の様子をガラス越しに見ている実験の代表者は、嗤っていた。
『心』の可能性に。『力』の強大さに。嗤っていた。
しかし、これ以上暴走されてはたまらないのだろう。『制御剤』の投薬をさせ、布束の『暴走』を鎮圧した。


530 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 17:59:54.83OzzV5K4xo (16/24)

・・・

布束砥信が目を覚ますと、知らない天井だった。医務室か何かだろう。
布束を看ていたと思われる研究員に、何が起きたのかと言う事を聞くと、
どうやら布束のペルソナが暴走したらしい、と言う事がわかった。

どうやって鎮圧したのだろうと疑問を浮かべていたら、それを察したのか制御剤がある、と言う事を教えてもらった。
そんなものがあるのか、と感心しながら、布束はいつも閉じ込められていた部屋へと連れて行かれる
まだ目覚めたばかりだったが、まだ眠たかったので再び眠りについた。


531 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 18:00:30.54OzzV5K4xo (17/24)

・・・

目を覚ますと辺りは暗かった。どうやら消灯時間は過ぎているのだろう。
とりあえずもう眠くはないが酷く喉が渇いている。
暗くて何も見えないが、何とは無しに飲み物は無いかと視線を泳がせていたら、
突如として壁に埋め込まれていたテレビから映像が流れだした。

今まではいくらテレビをいじっても電気が通ってなかったらしく何も映らなかったのだが、
どういうことだろうとその映像を眺める事にする。

テレビには誰かが映っている。
何となく見覚えのある人影だったが、その人影は酷く苦しげだ。
はっきり誰かとはわからないが、余りに苦しそうだったので思わずテレビに触れた。


すると、テレビの中にずるりと手が潜って行った。


吃驚してすぐに手を戻してしまう。
人影の映っていたテレビは、それを境に消えてしまった。
一体何だったのか、と首をかしげつつ、もう一度手を伸ばすと、手は再びテレビの中に入ろうとする。
今まではそんなこと無かったのに、どういうことだろうと考える。
思い当たることは一つしかなかった。

『ペルソナ』だ。

ならばテレビの中に入った先には確実にこの『力』と関係するものが存在するはず。
自分は今囚われの身だ。助けも無いだろう。ならば自分で動くしかない。
だが手元には召喚器も、暴走した時にそれを抑えたと言う制御剤も無い。
ならば何としてでもそれらを手に入れるしかない。
どうやって言い訳を考えようか、そればかりを考えて朝を迎えた。


532 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 18:01:08.91OzzV5K4xo (18/24)

・・・

いつものように実験を終えると、絶対能力者進化実験が半永久凍結なされたと言われた。
はっきり言っておかしい。本当に実験をする気があるのだろうか?
そんな簡単にあきらめるとは。いや、諦めてくれることに越したことはないのだけれど。

ここまで来ると別の目的の為に妹達を生み出したのではと勘繰ってしまうほどだ。
とはいえ実験の責任は全て自分に回って来るのだろうなあ、
とここまで完璧に拘束したことに対する感想を抱いた。

だが、この完璧な包囲網にほころびがある。
もちろんテレビの事だ。

布束砥信は召喚器と制御剤をもたせてくれないか画策しようとしていたのだが、それはあっさりと覆された。
何と研究所側から召喚器と制御剤を渡されたのだ。
制御剤は合計で8錠。召喚器も、偽物ではなくいつも使っていた召喚器だった。
もし部屋に居る時何かあったらそれを飲め、と言われた。

どうみても怪しすぎるのだが、どうせ使いつぶされて死ぬのなら、虎穴に入ってやろうじゃないか。



―――布束はその日の夜、失踪を果たした。


533 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 18:01:37.24OzzV5K4xo (19/24)

・・・

テレビの中へと降りたった布束砥信は、ある確信を得た。
「この空間内なら、ペルソナが出せる」と言う事だ。
試しに出そうと思ったが、暴走されてはかなわないので何かあった時自衛の手段で出す飲みにしようと決めたのだが。


目の前には異形が数体うごめいていた。


どうみても敵意しか感じ取れない目の前の化け物を見て、布束は溜息をつきながら召喚器をこめかみにつきつけ、引き鉄を引く。



結果から言うと、召喚器も制御剤も本物であった。
何だかこのテレビの中に入る事すら予定調和だったのではと勘繰ってしまう。
あの狂った研究者どもだ、それくらいやってもおかしくはない。

何にせよ、布束以外にペルソナを扱える人間が居ないのならば、追手はこないだろう。
その点だけは安心できる。

しかし、制御剤の数が心許ない。


534 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 18:02:03.77OzzV5K4xo (20/24)

・・・

やはり、制御剤の数が少ないんです。
そう感じたのは数えるのも億劫に成程シャドウを殲滅した後だった。

どうやらこの空間だと、布束の中に居る者は更に暴走しやすい状態らしい。
御蔭さまで今制御剤を飲んだので、残りはあとひとつになってしまった。
これは拙いと思うものの、シャドウは待ってはくれないので、しばらくの間は逃げの一手に集中する事にした。


535 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 18:02:30.70OzzV5K4xo (21/24)

・・・

走って、走って、走り続ける。
そして、一見湖に見えるのだが、その水は海水で周りも砂浜という奇妙な場所へたどり着いた。
また、その湖(?)の中心には小舟がプカプカと浮かんでいた。

誰かいるのか?と布束はその船に向けて声をあげたところ、人の姿が見て取れた。
その人間は小舟から飛び立つと、どうみても人間の跳躍とは思えないほど、
というかほぼ飛行と言っても良いだろう。
何にせよその人間は、布束のすぐ近くにまで飛んできた。
しかし、目の前でその人間を見た瞬間、ある事を感じ取ってしまう。


これは、人間ではない。


人間改め人間では無い何かは、布束を見るとニヤッと笑うと、足を地面に踏み抜く。
瞬間、大量の砂が舞い上がり、辺りの視界を埋め尽くした。
何か来る、と布束は反射的にガルーラを唱え砂を払った。

しかし、目の前にはすでにその非人間の姿は無かった。

どこにいるのか辺りを見渡しても姿は見られない。
しかし、最初の跳躍を思い出し、すぐに上を向いた。
そこには巨大な太陽の様な、おそらくプラズマだろう。それを掲げている姿が見て取れた。
なりふり構わずペルソナを発動させる。しかし、それだけでは足らない。

もっと力を。

もっと風を。

もっと、もっと、もっともっともっと―――

瞬間、ペルソナは再び『暴走』した。


536 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 18:02:57.03OzzV5K4xo (22/24)

・・・

「いやあ、久々に人間と巡り合えて、ちょっと遊びたいなあとか思って調子にのっちまったんだ。すまん」

影は布束砥信の肩を叩きながら、笑って謝る。
しかし当の布束からしたらたまってものでは無い。
遊びでペルソナを暴走させられたこっちの身にもなってほしい。
しかもおかげで数少ない制御剤が底を尽きてしまった。

「まあ、無くなったもんは仕方ないさ。なんなら俺が匿ってやってもいいぜ?」

と、影は魅力的な提案をして来た。
確かに、影の力は先ほど十分味わった。しかし、信用しても良いのか迷う。
だが既に命を一度諦めているのだ。それなら世話になられてやろうじゃないか。

布束は影の提案を受け入れると、影はオーケストラの指揮をとるように腕を動かした。
すると海の中から建物が現れた。どういう原理でそんなことに、なんて思うが、
影が言うにはテレビの中にそんな理屈は要らない、だそうだ。
それならこっちの好きなように作ってもらおうじゃないか。

布束は、影に本格的な忍者屋敷の設計を頼んだ。忍者屋敷なのは布束の趣味らしい。


537 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 18:03:26.57OzzV5K4xo (23/24)

・・・

布束「……とまあそんなわけで、上条くんの影から貴方達の話を聞いたから、
そのうち屋敷まで来るだろうと思って待ってたのよね」

布束砥信は、一方通行が持ってきた食料のうちの一つ(カロリーメイト・チョコ味)をもさもさと食べながら話を締めくくった。

一方通行「……成程なァ、やっぱり学園都市の中で既に『ペルソナ』に関しての研究は行われていたってわけか」

一方通行は、布束の話を聞いて『人工的にペルソナを扱える人種』がまだいるのだろうな、とあたりをつけた。

9982号「しかも下手したらこのテレビの中まで調べられているかもしれません。
    と、ミサカは学園都市の異常さを改めて思い知ります」

9982号は、学園都市の異常性について再認識させられた。

上条「……こんなん、絶対おかしいぞ」

上条当麻は、どこかの魔法少女みたいなことを言う。

御坂「本当、狂ってるわね……」

御坂美琴は、9982号と上条の言葉に同意する。

布束「so、私は貴方達の力を貸してほしいのよ。
   probably、テレビの事もこの街は知っているはずだから」

一方通行「あァ、なンの力も無い奴がテレビの中に放りこまれたら間違いなく死ぬ。
     お前が力を貸してほしいってンなら喜んで手伝う」

まァ、既に2人やられちまったンだけどなァ……と、一方通行は自嘲気味に言い放った。
その言葉を聞いて布束は眉をひそめた。

布束「ひょっとして、夜中にテレビに映っていた映像は……」

御坂「……その映像、見てたのね?……あれは、妹達の一人よ」

9982号「おそらく、9981号と19090号のどちらかの映像を見たんだと思います。
    と、ミサカは推測します。ちなみに、ミサカ達は19090号の方だけ見ました……」

御坂と9982号の言葉を聞いて、布束は静かに涙を流した。

布束「そう……あの子が……あの子たちが……」

妹達を守ろうとして来て、誰一人守れなかった。
挙句、19090号も死んでしまった。
これ以上学園都市の魔の手が妹達へ向かわないようにしなければ。
布束砥信は決意を新たにし、仮称特別捜査隊へと加わった。

・・・

布束「仮称特別捜査隊ってどうなの?」

御坂「ゲコ隊がいいなあって思ってるんだけど」

一方通行「別に名前なンざどォでもいいだろ」

上条「でも何とか隊って名前をつけるのは男のロマンだと思うんだ」

9982号「ミサカも別に何でもいいのですが、ゲコ隊はねーでしょう。
    と、ミサカはお姉さまのセンスを真っ向から否定します」


538 ◆DAbxBtgEsc2011/06/16(木) 18:05:10.90OzzV5K4xo (24/24)

尾張です
学園都市ってどう考えてもP4よりP3の方が近いよね。


539VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/17(金) 01:07:09.06Bp2Mm3oLo (1/1)

乙!このSS読んで面白そうだったから
P4買ってしまった

スキル変化で勝利の雄たけび出そうとしてリセット地獄になってる


540VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/17(金) 17:21:54.44VlQvFMu60 (1/1)

名前…捜査…ベクトル捜査隊…これしかねえな


541 ◆DAbxBtgEsc2011/06/17(金) 18:36:47.85X/Ke13DGo (1/11)

P4では相棒はタムリンです。
たまにカルティケーヤとかキュべレ使います。
スキルより可愛いペルソナ優先!P3だとアリスとティターニアだた

ベクトル操作で捜査とかだれうまwwwwww


そして今日の投下はできるかわからんです。


542VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/17(金) 19:27:36.12X/Ke13DGo (2/11)

すごいはすごいけどwwwwwwww


543 ◆DAbxBtgEsc2011/06/17(金) 19:59:25.90X/Ke13DGo (3/11)

誤爆してた死にたい
悔しいから4000字とちと短いけどキリが良いとこまで投下する


544 ◆DAbxBtgEsc2011/06/17(金) 20:00:22.77X/Ke13DGo (4/11)

平日である。

夏休みも終わり、平日の日中に外をフラフラする気にはならない一方通行は、
アンチスキル・ジャッジメント共用トレーニングジムで筋トレをしていた。
9982号も特にする事がないようでそれについて行って、一方通行のトレーニングぼけーっと眺めている。

こうやって一方通行が真面目にトレーニングしているのを見るのは、9982号にとって初めてのことだった。
確かに初めて一方通行に会った時よりも線が太くなっている気がする。
何よりどんなに息切れをし、どんなに汗を流そうとも淡々とトレーニングをこなす一方通行に思わずドキドキしてしまった。
と言っても、一方通行は黄泉川愛穂にボコボコにされるのが嫌だから必死こいて鍛えているのだが。

どうやら一通りトレーニングが終わったようで、一方通行は入念にストレッチをしている。
9982号はそれをみて、何となく「今この白いのと肉弾戦をしたらどっちが強いのだろう」と言う疑問を抱き、心の赴くままに手合わせを申し込んでしまった。
「筋トレで疲れた相手になんてこと言うんだ」と9982号はすぐさま訂正しようとするが、一方通行はまさかの乗り気。
それどころかかかってこいよ、と人差し指をちょいちょいして挑発してきた。

一応、9982号は軍用クローンと言う事である程度の近接格闘術も『学習装置』にてインプットされている。
そんな相手に疲れた体で挑む(と言っても喧嘩売ったのはこちらだが)とは何と愚かな。
9982号は軽くぶっ飛ばしてやると言う心持ちで手合わせに臨んだ。


545 ◆DAbxBtgEsc2011/06/17(金) 20:00:55.49X/Ke13DGo (5/11)

・・・

ふたを開いて見てみると、9982号は一方通行に良いようにあしらわれていた。
9982号は流れるようなコンビネーションで打撃技をくりだすのだが、それの事ごとくを受け流されるのだ。
それどころか、その受け流した力をそのまま流用し、9982号へと跳ね返って行く。
ベクトル操作したんじゃね?とか思うものの、この技術はどう見ても合気のそれだった。
どうやら、相手の力を利用すると言う合気道が一方通行の性に会っていたらしい。
だがそれでも、まともにトレーニングを始めてまだ一月もたっていないと言うのに、随分と綺麗な動きである。

何だかあっさり自身の近接格闘術を破られて9982号は納得のいかない顔をした。
そんな9982号に対して、一方通行は軽く汗をぬぐいながら告げる。

一方通行「頭ン中に『戦い方』がインプットされてても、それを扱う『身体』が出来てなきゃ意味ねェだろォが……
      それに、このくらい出来なきゃ……一方的にぼこられるンだよ……
      『一方通行』の名を冠するこの俺に対して暴力の一方通行を行うあの女によォ……」

どんよりとした雰囲気でボソボソと呟いた。
よっぽど酷い訓練(リンチ)なのだろう。思わず合掌した。

9982号「成程……一方通行の能力だけでも十分かもしれませんが……
     合気の動きと併用することで更に効率のいい能力の運用が見込めそうですしね。
     と、ミサカは上から目線で褒め称えます」

一方通行「そこまで考えてなかったけどなァ……だが、『体の動かし方』を学んだのはデケェと思ってる」

9982号「だが……弱点が一つだけあると言ったらどうする……?」

9982号のしたり顔に一方通行は眉をひそめ、尋ねる。

一方通行「……どォいうことだ?」

9982号「ふん、知れた事。相手の攻撃を利用する『合気道』……。
     ならばこちらから仕掛けなければいい」

さあ、かかってこい!と9982号は床に横になった。

一方通行「……」

一方通行は、道端に落ちてる犬の糞を見るかのような目線を9982号に落とし、足蹴にする。
9982号は痛い痛いゴメンゴメンと必死で謝っていた。


546 ◆DAbxBtgEsc2011/06/17(金) 20:02:29.34X/Ke13DGo (6/11)


・・・

上条当麻は今現在補修を受けている。
本来今日は短縮授業で昼には終わるはずだったのだが、上条は夏休みの課題を一つもしていないのだ。

故の補修である。

そしてその補修には上条・土御門元春・青髪ピアスの3人はもちろん受けている。
まさに3馬鹿(デルタフォース)にふさわしいと言えよう。

それどころかクラスの3分の2が補修を受けてる有様だ。
皆一様に小萌先生が好きだからだ!と言いながら補修を受けてるのだが、上条にはそれが信じられない。
小萌先生人知れず泣いてるんじゃないのかと思ってしまうほどだ。と言っても上条自身も補修を受けているので何も言えない。

その3馬鹿を含めた生徒たちは皆、席に座ってぼけーっと小萌先生の講義を聞いている。
上条と土御門は自分の席に座っているのだが、青ピだけは何故かクラスメートたる吹寄制理の席に座っている。
何となくそれだけで青ピの変態度がわかってしまう気がする。心なしか青ピの息もハァハァしている気がした。
青ピが吹寄の席に座っている事で、上から見ると3人は丁度正三角形の頂点に位置していると言うのは余談である。
まさに馬鹿のバミューダトライアングル。

そのトライアングルの一角、上条当麻は思考の渦にのまれている。
もちろん授業内容ではない。テレビについてだ。
何となくついて行ったら何やら学園都市の暗部なんてものを知ってしまった。
知らなきゃ大食いシスターを匿うただの高校生として過ごせたのだろうか。
いや、変なシスターを部屋に置いてる時点でただの、という評価は正しくないが。


だがしかし、もう知ってしまった。
自分がへらへらして過ごしている間に、学園都市によって使い潰される人がいると言う事を。

だがしかし、もう知ってしまった。
自分がへらへらして過ごしている間に、上条当麻によって使い潰される心があると言う事を。


テレビの中ではいい思い出があるとは言い難い。
とはいえ、自分の心と真に向き合う機会を与えてくれたという点では感謝している。

だがしかしテレビの中での経験を考えると、いずれ自分の影と戦う事になるかもしれない。
確かに、今の自分には、ペルソナを扱う『力』を得られた。
それでもそれを扱う上条自身は、戦闘においてはまだまだ素人だ。
今日も鍛えてもらおう、そう思った瞬間。


547 ◆DAbxBtgEsc2011/06/17(金) 20:02:56.06X/Ke13DGo (7/11)



青ピ「せんせー!カミやんが小萌せんせーの話を聞いてなさそうでーす!!
   これは由々しき事態やでえ~!」

あおピが かみじょうを こくはつした!

小萌「むう……」

こもえせんせいは いかっている!

小萌「先生の授業、つまらないですか……?」

こもえせんせいの なきごえ(泣き声) こうげき!

上条「す、すいませんでしたーっ!!」

かみじょうの りょうしんが ゆさぶられた!
ちなみに つちみかどは ねむっていた!(サングラスで めもとが みえない!)
クラスメートたちの フルボッコ こうげき!
こうかは ばつぐんだ!

その日、小萌先生の小さな泣き声と、上条当麻の断末魔が響き渡ったという。


548 ◆DAbxBtgEsc2011/06/17(金) 20:04:14.62X/Ke13DGo (8/11)

・・・

御坂美琴は溜息をついていた。

それもそのはず。この間上条当麻との関係を追及された際、劇的な逃走劇を繰り広げたために常盤台の女生徒達は更に盛り上がり、
意地でも御坂と上条の関係を明らかにしようと躍起になっているのだ。

故に常盤台中学の敷地内に居ると誰もかれもが「御坂様!あの殿方とはうんぬんかんぬん」と話しかけてくる。
昼休みはもちろん、授業と授業の合間や放課後にまで追手は迫って来た。

ちなみに、白井黒子も今回ばかりは御坂の敵だ。
「あんなウニ頭知らない、愛してるのは黒子だけよ」という言葉を聞くまで白井は敵で有り続けると宣言していた。
御坂はその言葉に対して、「だったらあんたは生涯敵よ」と言われて白井は灰と化した。

そして今、校舎の屋上で一人、溜息をついている。
もそもそと菓子パンを食べるその姿はさながら小動物のようである。ちなみにその隣にはだれも居ない。
確かに人望はあるのだが、高翌嶺の花と言うべきか、能力者のピラミッドの頂点に位置すると言うか、隣にならび立ってくれる人間がいない。


よく言えば孤高、悪く言えばぼっちだった。


まともな付き合いがあるのは黒子と捜査隊一同位だなあと思う。

一応御坂は、白井から派生して行った友人は居るのだが、あくまで白井という緩衝材が居たから仲良くなれたと言える。
そういう意味では自然と仲良くなれたのは白井と捜査隊一同しかいない、と言う訳だ。

御坂「どっかに友達おちてないかなあ……」

何とも言えない不思議な現象を、独り言葉にする御坂であった。


549 ◆DAbxBtgEsc2011/06/17(金) 20:04:51.38X/Ke13DGo (9/11)



・・・


その少女は街をさまよっていた。

行く当ても無く、知る人も無く。

霧ヶ丘の制服を着たその少女は。

ただただ陽炎の街を歩き続ける。




―――人はその少女を『正体不明(カウンターストップ)』と呼んだ。


550 ◆DAbxBtgEsc2011/06/17(金) 20:05:46.06X/Ke13DGo (10/11)


・・・

インデックスは街中をうろついていた。
上条当麻が学校に行っていて、やることも無いので仕方がない。
一方通行は現在トレーニングに励んでいるのだが、そんなことは知る由も無い。

そんなわけで愛猫・スフィンクスを胸に抱き、散歩に勤しんでいる、というわけだ。

インデックス「暇なんだよ……」

スフィンクス「にゃあ」

インデックスはスフィンクスに話しかけるように独りごちる。
スフィンクスはあくびをするように返事(?)をした。正直暑いので放して下さい、と。
そう。インデックスは常に全身を覆う白い修道服。暑いに決まってる。
これが黒かったら救いようのないほど暑い思いをするだろう。

そんな白いインデックスは、フラフラと公園にたどり着いた。
どうせ涼むなら図書館にでも行けばいいのだが、スフィンクスがいるのでそれは叶わない。
仕方がないので木の影で涼む事にした。

しかし、その前に自販機を発見してしまった。
一応上条から「昼飯+足らなかった時の飯代1000円」を受け取っている。

昼飯は既に食べた。少々足らなかったけど。

後は1000円。如何にこの1000円でおなかいっぱいになるか、そればかり考えていたのだが、暑い。喉乾いた。目の前には自販機。

吸い寄せられるように自販機の元へ行く。
が、しかし自販機がお札を認識してくれない。
何度入れてもゲロゲロと野口さんを吐きだす。

成程、これは試練だ。
この炎天下の中飲み物を買うまでその暑さに耐えきれるかどうかの。
それなら耐えきった上で飲み物もgetしてやろう。

インデックスが腕まくりをして、くしゃくしゃになった野口さんを再び自販機にいれようとしたが、自販機は活動拒否をする。
そんな自販機に嫌気がさしたのかインデックスは頬を膨らませ無機物相手に説教をかました。

「あのー、大丈夫ですか……?」

その言葉にインデックスはパッと振り向く。
そこには学生服を着た気弱そうな少女が居た。

インデックス「だれ?」

おずおずと尋ねるその少女に、インデックスは質問する。

風斬「えっと、風斬氷華ていいます」

インデックス「そうなんだ、わたしはインデックスっていうんだよ!
       それでね、この機械の飲み物が欲しいのに、この機械がいじわるするんだよ!!」

風斬「えっと……この自販機はちょっと古いみたいだから……
   こうやって、お札をピーンと伸ばした方がいいよ」

風斬氷華と名乗ったその少女はインデックスから野口さんを受け取り、
野口さんを二つに折りたたみ自販機に通した。
するとあっさりと野口さんを受け入れ、ジュースの模型の下にあるボタンが赤く光自己主張し始めた。

インデックス「ひょうかすごいんだよ!一発でこの機械が言う事聞いた!」

キャイキャイと喜ぶインデックスを見て風斬もクスリと微笑む。



これが真っ白な修道女と、正体不明の少女の出会いだった。


551 ◆DAbxBtgEsc2011/06/17(金) 20:06:14.81X/Ke13DGo (11/11)

尾張。
嵐の前の静けさ。


552VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/06/18(土) 11:55:30.39BUSQgNU9o (1/1)

嵐来るのか


553 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 04:10:42.89vQMDCEgEo (1/14)

土日、結局書きためいっこも出来てませんでした。
今書いてますんで多分今日投稿できるはず。
嵐は…来る、かも。


554VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/20(月) 05:15:20.928OHxwafD0 (1/1)

>>553
嵐は、今晩来る?


555VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/20(月) 08:27:51.58vQMDCEgEo (2/14)

そンなに嵐でもなかったわ……死にたい……


556 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 08:46:39.25vQMDCEgEo (3/14)

午後12時。

9982号は一方通行と軽く手合わせしただけだが、一方通行に関しては既におよそ3時間みっちり筋トレをしていた。
一方通行は、基本的には1日筋トレ2日合気道の型を学んでいる。
『超回復』と言う科学的理論に基づいて、だ。

だと言うのに黄泉川愛穂は「根性出すじゃん」とか言ってエブリデイヤングライフ筋・ト・レ♪を強要して来る。

流石にそれは非効率だろ、と抗議をしたところボコボコにされた。
曰く、「自分の限界を自分で決めないように、限界を越えて自身を追い込むじゃん!!」と真顔で言われた。


成程。


学園都市の能力者は、簡単に言えば『自分だけの現実』、すなわち『思い込みや妄想』の強さで能力の強度も変動する。
そう考えると、こういったトレーニングで『自身の限界』はまだまだこんなものではないと『思い込む』事で能力の強度が上がるのかもしれない。
と言っても飽くまで予測にすぎないが。

とはいえ、『学園都市第一位・一方通行』に対してそれを言っても仕方がないだろう。
能力開発に関しては、自身が色々された分だけそこいらの教師よりも詳しい自信がある。
どれだけ能力開発に時間を費やしたのだろうか。一方通行の半生は『一方通行』無しには語れまい。

と言うかそもそもトレーニングをしているのは純粋に身体を鍛えるためだ。
ならば科学的に効果が見られるトレーニングをした方がいい。

そんなわけで一見黄泉川に従っているように見せかけて黄泉川が居る時は合気道を学び、
居ない時に筋トレor合気道をすることで黄泉川の目を欺き続けている。
ばれたら多分ボコボコにされるだろう。しかしいつもボコボコにされてるので、そンなン怖くなンかねーし、と一方通行は語る。


そして一方通行と9982号はなんやかんやでトレーニングを終え、いつものレストランへと向かっていた。


557 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 08:47:05.34vQMDCEgEo (4/14)

9982号「あ」

一方通行「あン?」


9982号が何かに気づいたように突然立ち止まる。
本当に唐突で一方通行も思わず足を止め、疑問を顔に浮かべた。


一方通行「どォした?」

9982号「いやさ、上位個体が暇だっつって研究所から抜け出して迷子になったみたいです。
    と、ミサカは何やってんだあのロリと愚痴ります」

一方通行「あァ……」


本当に何をしてるンだ。自分の立場をわかっているのだろうか。
一方通行は無表情相槌を打ちつつ内心舌打ちをする。


9982号「探しに行きましょうか。と、ミサカは上位個体に周りに何があるかとそこから動くなと伝えておきます」


この街で一人さまようのは危険だ。一般人なら裏路地に行かない限りそうでもないが、打ち止めは違う。
機密性の高い実験の要だったのだから、変な研究員に狙われてもおかしくはない。
一方通行はめんどくせェと頭を掻きつつ、2人は打ち止めを捜索に行くのだった。


558 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 08:47:32.13vQMDCEgEo (5/14)

・・・

御坂「はい?学芸都市?」

御坂美琴は現在職員室に居る。別に悪さを働いたとかそんなわけではない。
なにやら御坂と白井黒子に連絡事項があるらしく、2人でのこのことやってきたわけだ。


先生「あぁ。何か広域社会見学として複数の学校から何人かアメリカの学芸都市へ行ってもらうらしいんだが……
うちからお前と白井が抽選で選ばれたってわけだ」

白井「それで、いつから学芸都市へと向かいますの?」

先生「あ?聞いて驚け、明日だってよ」

「「はぁ?」」


いくらなんでも急すぎる。思わず聞き返したほどだ。
2人は驚きのあまり多くの言葉を口に出すことは出来なかった。


先生「いやさ、こっちもあんまり急でビビったんだけどな。
   まあ夏休みが1週間伸びたと思って遊んでこいよ」


教師とは思えない発言が飛び出してきた。一応社会見学という名目なのだから遊び呆けるわけにはいくまいて。
何にせよ決定事項で覆せないとのことなので、御坂は渋々頷いて職員室を後にした。


白井「お姉さま……お姉さまとのバカンス……うふ、うふへへ……」

白井は何やらだらしない顔でぶつぶつ言っている。御坂は何言ってるのか大体わかったので何も聞かないことにした。


559 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 08:48:26.02vQMDCEgEo (6/14)

白井「おや」

御坂「んん?」


すると2人の携帯にメールが受信された。中身は「初春と私は明日から1週間アメリカいきまーす!」というお知らせだった。
差し出し人は御坂と白井の共通の友人たる佐天涙子。どうやらその友人の初春飾利も一緒らしい。


白井「これは何とも……」

御坂「すごい偶然ね……。まあ黒子と2人はちょっとあれだしよかったわあ」

白井「ひ、ひどいですの、お姉さま!!」

御坂「常盤台の寮なら、管理人が最強だからある程度安心(と言っても油断ならないが)出来たけど、
   それが居ない状況だとどうなることやら……」

白井「ううっ」


白井の今まで犯してきた罪状は数多……。(ナレーション:立木文彦)

覗き!猥褻行為!盗み(下着)!脅迫(猥褻行為の強要)!(ナレーション:立木文彦)

罪状の一部を明らかにしたが、これらは全て御坂美琴に対して白井黒子が行った罪の数々である!(ナレーション:立木文彦)

己が罪に自覚があるのか!白井、反論できず!(ナレーション:立木文彦)

純然たる事実を前に!!白井、反論できず!!(ナレーション:立木文彦)


閑話休題。

それにしても、1週間もこの地を離れるのは痛い。おそらくその間にもテレビの事件は進んで行くことだろう。
何もなければ良いのだが、そう言う訳にもいかないだろう。


御坂「……(まぁ、一方通行達が何とかするか)」


一方通行達なら大丈夫だろう。
それに、アメリカなら『学園都市第三位』の肩書も無い。それこそ等身大の私(笑)を見てもらえるはずだ。

友達とか、出来ないかな、えへへ。

御坂の頭の中はテレビからリアル友達百人出来るかなへと移行して行くのだった。


560 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 08:49:22.29vQMDCEgEo (7/14)

・・・

上条「やっと終わった……」


小萌先生の涙、クラスメイトからの苛烈なる総攻撃。それらを乗り越え、上条当麻はようやく補修から解放された。
そんな上条の元に2人の紳士(へんたい)がやってきた。


土御門「かっみやーん!べんきょー終わったし遊びにいこうぜい!」

青ピ「今日はわいもバイトも休みやし、ラウンドファイナルで遊びまくろうやないかー!」


土御門元春に青髪ピアスである。
普段ならこの誘いに乗って、最近流行ってる新型対戦3D格闘ゲーム「ストリートブレイギルティーブラッドvsサムライヴァンパイアオブマーベルファイターズ」に興じているところだ。


「ストリートブレイギルティーブラッドvsサムライヴァンパイアオブマーベルファイターズ」略してストファイ。

このストファイは、全ての格ゲーファンが一度は妄想する「他会社の格ゲーキャラ同士の対戦」を完璧に網羅しているものであり、格ゲー製作会社側も一度やってみたかったのか利益や利権関係全てを無視して、手を取り合って本気で製作に取り掛かった。


561 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 08:50:34.61vQMDCEgEo (8/14)

その心意気に学園都市が悪乗りして資金及び技術提供をしてしまったが為に、
他格ゲーキャラ同士の火力差を考慮した完璧なゲームバランス、2Dだったキャラの美麗3D化、
格ゲーにありがちな初心者狩りを避けるために完全会員制(登録費無料、年会費無料)でログインする際、指紋による生体認証にてログインし、
オンライン対戦を重ねる事でランクアップを果たし(店内対戦ではランクアップ無し)、
対戦をする際は基本的には(設定変更可)同ランクのものとしか戦えないという初心者に対するフォロー。
もちろん最初は初心者と上級者が同列になるため荒れるかもしれないが、しばらく稼働したらそれも減ることだろう。

更には対戦相手を決める前に使うキャラを選択しておき、あらかじめ「このキャラと戦いたい」という設定を行っておく事で、
指示したキャラを使う同ランクの対戦相手を選ぶことが出来る。

しかしそれでは自分にとって有利なキャラを選ぶことが出来るのでは?という意見もあるだろう。
そんなことが無いよう、そちらに関してもあらかじめ「『このキャラと戦いたい』という設定をした相手とは対戦しない」設定をしておくことが出来るのだ。



そんなわけで総製作費310億という途方も無い値段で製作されたそれは全てにおいて完璧である。
プロゲーマー・桜原小吾も「今世紀この格ゲーを超える格ゲーは出ない」とコメントしたことも相まって、
学園都市に投入された試作品段階で爆発的な人気が出た。

それにより晴れて完成版を全国へと送りだすことが出来たのだ。
ちなみにこのアーケード版は結果として大成功で、来年春には家庭用に移植されるらしい。

上条も土御門も青ピも、このストファイに関してはかなりうるさい。
実はかなりの猛者であり、「殴りの上条」「投げの土御門」「変態の青ピ」という名前は、
行きつけのゲーセン「ラウンドファイナル」においては結構名の知れたものである。

しかし、そんな上条も放課後はトレーニングをしなければ黄泉川愛穂にぶちのめされてしまう。しててもぶちのめされるが。
そう言う事だからトレーニング休みの日以外でゲーセンに行ける事はないだろう。

上条は、結局泣く泣く2人の誘いを断り、学校を発つ。


562 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 08:51:01.48vQMDCEgEo (9/14)

・・・


打ち止め「うー、まだかなーってミサカはミサカは待ち飽きたって叫んでみたり!」

打ち止め「ひまひまー!早く来てよってミサカはミサカは抗議してみる!」

打ち止め「えー?もう少ししたらつくから待て?一方通行居るんだから能力でひとっ飛びじゃないの?
ってミサカはミサカは疑問に思ってみたり!」

一見すると独り言を言っている不審な迷子にしか見えない少女、打ち止め(ラストオーダー)。
打ち止めはMNWを用いて9982号と一方通行に迎えに来させようとしているのだが、如何せん打ち止めの説明が下手と言うか、何処に居るのか特定できていなかった。
それもそのはず、「ビルがいっぱいある!」じゃ誰もわかるまい。

何にせよ、いつまでも同じ場所で何もしないでいるのは暇すぎる。
打ち止めは見晴らしのいい場所に行くと9982号に伝え、再び歩き出すのだった。


563 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 08:51:40.24vQMDCEgEo (10/14)

・・・

インデックス「それでね!とうまったらひどいんだよ!」

風斬「へえ、そんな人も居るんですねえ……」


インデックスは、先ほど公園で知り合った少女・風斬氷華に向かって愚痴を吐く。
風斬はそれをいやがるどころか、インデックスの話を穏やかな笑みを浮かべ聞いている。
たまに入れる相槌も、インデックスの事を考えたもので、普通の人なら初対面の相手にいきなり愚痴を聞かされるのは嫌なものだと思われるが、風斬はそんな様子をおくびにも出さない。

本当に楽しそうにインデックスの話を聞き入っていた。

そんな2人は今現在、街中を歩いている。公園でヤシの実サイダーを買い、それを2人で分け合った後、互いにする事が無いようで、何となくぶらぶらしていた。


インデックス「そうだ!とうまにひょうかを紹介しなくちゃね!」


インデックスはごそごそと胸元を探り、携帯電話をとりだした。
しかし、電池は切れていた。充電の仕方もわからなかったので電池が切れて以来充電していないらしい。

真っ黒な液晶を眺め、適当にボタンをぽちぽちおすが、携帯はうんともすんとも言わない。
インデックスが軽く涙目になったところで、風斬が電池切れのせいだ、と言う事を説明した。


インデックス「じゃあ、とうまの家で待っていればいいんだよ!」


突然の提案に、風斬は戸惑う。流石にそれはあれだろう。と言うか「とうま」なる人物は話を聞く限りじゃ男だ。
だと言うのにいきなり家に上がり込むのはどうなんだ。かといって理由も無く断るのも失礼だ。
風斬はどう断ろうか、と考えていたのだが、そこに1人の人物が現れた。


「あれ?インデックス?……と、どちらさま?」


ツンツン頭の高校生。
インデックスの言う「とうま」なる人物であった。


564 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 08:52:43.17vQMDCEgEo (11/14)

・・・

「くそ!くそが!!畜生!!!どうして猟犬の奴らに狙われるんだ!!?」


白衣を着た男は必死で車のエンジンをかけようとする。
しかしかからない。必死になってかける。逃げなければ。殺される。
何度か鍵を右にひねるとようやくエンジンがかかった。
これで逃げられる!男は嬉々としてサイドブレーキを落とし、ギアを入れ、アクセルを踏み込んだ。
ハンドルを握る手は震え、汗によって掌はベタベタになっている。


しかし、ようやく走りだした車の前に、一人の男が立ちはだかった。


「天井くーん、テメェは一体何しようとしてくれてんだあ?仕事増やすなっての」


その男は頬に刺青を入れ、必死に逃げようとする男と同様に白衣を着た研究者風であった。
そんな刺青の男を前に『天井』と呼ばれた男の嬉々とした顔は一転して、恐怖に歪ませる。
天井はギアを変えアクセルを更に踏み込む。そのまま引き殺さんとばかりに。

しかし、加速する車の前に立ちはだかった刺青の男は、後1秒もしたら轢かれるだろうと言うのに全く気にした様子も無く、ただただめんどくさそうに頭を掻いている。
瞬間、車のタイヤは何処からか狙撃されパンクし、車の軌道は一気にずれて、男の隣を通過した。
いきなり車の操作を乱されたために、それを制御しようと天井はハンドルを右へ左へ回すが、
そんな天井を馬鹿にするかのように、ふらつく車体をものともせず、正確無比に残りのタイヤ3つが打ち抜かれた。
制御を完全に失い、道路沿いに敷かれている金網の柵へと車は突っ込む。
天井はすぐに車を脱出して逃げようとするが、刺青の男はそんな天井へと近づいた。


565 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 08:53:50.66vQMDCEgEo (12/14)

「おいおいおーい、天井くーん。テメェ、自分のしよーとした事わかってんだろうなー?」

「ひっ……!違う、違うんだ……!私は何もしていない!!」

「そーだな。確かに見た感じ『未遂』だなぁ。だが、放っておいたら何かするんだろ?
 だったらぶち殺しとかないとな!汚物は消毒するに限るってもんだ」


この時天井からしたら目の前の男は死刑執行を担当する死神にしか見えなかっただろう。
こうなった時点で、天井の命はもう終わったも同然だった。しかし、天井は無様に抵抗する。
そんな天井を刺青の男は鼻で笑う。


「つーか何もしてないっていうけどよお。だったらこれ何だよ?」


刺青の男は白衣のポケットからUSBメモリーを取りだした。
それを見て天井はぎくりとした顔をするが、すぐにその表情を消し、知らないふりをする。
そんな様子を見て刺青の男は表情も変えずに天井の太ももを拳銃で撃ち抜いた。


天井「ぐあああ!!!!」


天井は太ももを打ち抜かれた事でその場にしゃがみ込み、太ももを抱える。
刺青の男はそんな天井をニヤニヤしながら眺め、あまつさえその太ももを踏み抜いた。
あまりの痛みに天井は更に叫び声をあげるが、刺青の男は全く気にした様子では無い。


「なあ、『これの中身』も『誰がこれを作った』かも、『これを誰に使う』かも全部わかってんだぜ?」

天井「ぐうう……!!」


もはや痛みで天井は何も聞こえていない。既に天井の周りは包囲されて、逃げる事も出来ないだろう。

刺青の男はもう話すことも無いと、どこからか武装兵がやってきて、天井を連れて行った。
その兵士達の装備を見る限りでは、どうやらこの兵士達が車のタイヤを打ち抜いたようだった。
連れて行かれる天井の背を眺めつつ、刺青の男は誰かに連絡を取り始めた。


「おー、こちら猟犬部隊。天井亜雄の捕獲かんりょーしたぜえ。
 ったく、なんでたかだか研究者なんかの為にうちのクソどもを使わなきゃなんねーんだよマジで」

刺青の男はぶつぶつと電話の相手に文句を言う。どうやら本来今日は非番だったらしく、いきなり命令されたため渋々天井亜雄の捕獲に当たったようだ。


「いやいや……すまないね。彼が秘密裏に研究していた事を下手に誰かに知られたら面倒だからねえ。
 この研究については木原一族ですら君と私しか知らなかったというのに……
 全く、彼は何処から知ったのやら」

「まぁ、天井に関する資料を見る限りじゃ、研究者としては優秀らしいからなぁ。
 あんだけ妹達に近い立ち位置で研究してんだ。気づいたっておかしくはねーだろうよ」

「くく、何にせよ、彼はもう「知ってしまった」。彼についてはこちらで処分しておくよ」

「へいへい。俺ぁもう帰って寝るからなぁ……。俺の休日、これ以上邪魔してくれんなよ」

「また何かあったら呼び出させてもらうがね」

「うるせえ俺は寝だしたら誰にも止められねーからな」


刺青の男は携帯を切り、近くに控えていた兵士にその携帯を投げ渡す。


「あの爺に目をつけられるたあ、天井君も運が無いねえ」


刺青の男は、黒いバンの後部座席に乗り込み、発進させるよう指示を出す。


木原数多。
その刺青の男は、猟犬部隊という暗部部隊の隊長であり、それと同時に研究者でもあった。


566 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 08:54:24.10vQMDCEgEo (13/14)

そんなに嵐でも無かったわけでした。
夜にまた投下出来たら投下する


567VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/20(月) 15:50:16.43JH/xq/wHo (1/1)




568 ◆DAbxBtgEsc2011/06/20(月) 22:42:21.46vQMDCEgEo (14/14)

「」の前に名前ってつけてたほうがいい?
にじファンで投下してるのにはつけてないんだけど、最近○○「」って表記するのが面倒になってきてるのよですが


569VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/20(月) 23:23:33.29Ezr/Azf6o (1/1)

>>1の好みでいいんじゃね?
俺は地の文有りなら名前無し、地の文無しなら名前有りがいいけど


570VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/06/21(火) 00:32:00.44rDKWJ9bLo (1/1)

識別できるようにしてくれればどちらでも

訳が分からなくなるのが一番たちが悪い


571VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/21(火) 08:06:20.22b5NWtqMx0 (1/1)

>>1 乙
嵐の直前の、日常。第三位のDNA達が嵐の原因?


572VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/21(火) 23:16:26.00QqP8dSF6o (1/1)

青ピの一人称はボクやで~


573 ◆DAbxBtgEsc2011/06/22(水) 03:19:44.15PipSGV+Mo (1/12)

うあ、やっちまった。
次出てくるときからボクで行くんで脳内補完しといてくれ

じゃあしばらく名前なしで行ってみるわ。読みづらかったら言ってくれ
妹達がどう絡んで行くかはまあ……お楽しみにと言うことで

今日の朝か夜に投下するわ


574 ◆DAbxBtgEsc2011/06/22(水) 04:04:25.81PipSGV+Mo (2/12)

一方通行と9982号は今現在、空中を飛びまわっていた。

打ち止めが迷子になったからだ。9982号がナビゲートし、一方通行が足役というわけだ。
しかし見つからない。と言うか「ビルがいっぱい」でわかるわけがない。
そんなわけで打ち止めが移動することを許容した。というかどっか行くの止められないし。

徒歩の打ち止めは研究所からそう離れた場所には行けないはず。
2人はそう考え、第七学区を中心に捜索を続けていた。
一応、目立つのを避けるため光学迷彩の要領で2人の姿は見えないようになっているので安心だ。

「チッ……マジでめんどくせェ……」

「せっかく昼ごはんの時間だったのに……と、ミサカは上位個体に愚痴っ……
 何?未だ食ってないなら後でレストラン連れてけ?張り倒す」

こうして打ち止めとのんきにMNWを介して話が出来ているのが救いだろう。
少なくとも打ち止めの身に何かあるというわけではなさそうだ。
それでもさっさと見つけた方が良い。そんなわけでひたすら風を切り空中散歩を続けている。

そんな中、一方通行の携帯にメールが入った。御坂美琴からだ。
ひょっとして、たまたま打ち止めを見つけたけど、対応に困っているとかそんなのだろうか。
いや、それなら9982号にMNWで伝わるはず。一体何の用だ?

『拝啓、御坂美琴です。残暑の厳しい今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか?
 私は夏バテもすること無く、元気に過ごしております。これも日々のトレーニングの成果と言う事でしょうか。
さて、本日はどうしても伝えたいことがありまして筆をとらせていただきました。
と言うのも、明日から一週間、アメリカに社会見学することになったのです。
 テレビの事が気になるので、本当はあまり気乗りしないのですが、
 どうしても避けられないようなので、仕方なく、本当に仕方なく渡米いたします。
 私がいない間捜査隊一同の無事を祈っております。敬具』

メールを見て、思わず携帯をへし折りそうになった。何だこのくどい文章は。


575 ◆DAbxBtgEsc2011/06/22(水) 04:04:58.03PipSGV+Mo (3/12)

「……誰からですか?」

9982号はギリギリと携帯を握りしめる一方通行を見て、怪訝そうな表情を浮かべ尋ねた。
人がイライラしている時にあんなメールを送られたら誰だってキレる。
て言うか絶対アメリカ行くことに対して乗り気だろ。

「……明日から1週間、御坂の奴はアメリカでバカンスだとよ。
 良い御身分だぜ全く……」

一方通行は、そのメールを無言で削除し、「楽しンでこい」という一文だけ返信した。
キレながらも返信はきっちりするあたり律義である。

「はぁ、そいつはうらやましい限りですね。
 ミサカもそのうち世界各国に滞在するミサカ達の元に旅行行きたいです。
 と、ミサカは願望を露わにします」

旅行。確かに学園都市の外に言った記憶は全くと言っていいほどない。
色々落ちついたら外を旅してまわるのも面白いかもしれない。
外に出る手続きが面倒……と言うか下手したら一方通行という能力の価値の高さから、外に出してもらえない可能性はあるが。

「……そのうちなァ」

「ありがとうござぶぶぶ!!」

せめて9982号の願望はかなえてやろう。
一方通行は正面から来る風の全てをちょっと強化して、それを9982号へと向けながら空を飛び続けた。


576 ◆DAbxBtgEsc2011/06/22(水) 04:05:44.23PipSGV+Mo (4/12)

・・・

一方、打ち止めは。

「ミサカは助っ人さいきょーぐん!ミサカは助っ人さいきょーぐん!
 きょーうもこの街かっぽするー!きょーうもこの街かっぽするー!
 ミサカー、ミサカー、ミサカー、サンハイ!ミサカー、ミサカー、ミサカー!
 ちょうのうりょーく!ちょうのうりょーく!たーのしーなー!」

打ち止めは何で知ってるんだという歌の替え唄を口ずさみ、何処から拾ってきたのか木の棒を振り回して歩いていた。
それだけなら非常にほほえましい光景なのだが、歩いてる場所がまさかの路地裏。
ロリコンが居たら間違いなくさらわれてしまうだろう。
というか「見晴らしのいい場所」に行くと宣言していたはずなのだが、すっかり忘れて替え唄を考えるのに夢中になっていた。

なんというNOPLAN。

「前略!ミサカネットワーク上より!」

セイヤ!セイヤ!と打ち止めの路地うライブは佳境を迎えていた。

「きょうも管理者ぶってます、わざとー20000号処罰するー♪」

何やら物騒な内容の替え唄だが、その声を聞いてどこからか数人の人間が遠巻きに打ち止めを眺めている。
75%がスキルアウト風のメンツだが、その組み合わせは中々に個性的だ。


577 ◆DAbxBtgEsc2011/06/22(水) 04:06:38.33PipSGV+Mo (5/12)

「何?あの子。大体、どっから来たのかな。にゃあ」

フワフワした金髪に真っ白な肌。それに透き通った海の様な青い瞳。
その少女はまさしく人形の様な風貌で、特徴的な語尾を持つ少女だった。

「……ほぼ確実に、迷子か何かだろう」

その少女を肩に乗せる大男は、その体躯とごつい顔に似合わず陰鬱な口調で、変な替え歌を歌う打ち止めの事を評価した。

「ほら、新たな幼女が目の前にいるんだぜ……助けなくてどうするんだ?駒場さん」

「……浜面。お前とは一度じっくり話し合わねばならんと思っていた」

天然で金髪の少女とは違い、人工金髪なジャージを着たいかにも不良ですみたいな恰好をした男は、
大男の事を『駒場さん』と呼び、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら駒場をからかう。
しかし駒場は、額に青筋を浮かべ、金髪ジャージ・浜面に対して背後から鬼がスタンドとして出てきそうな覇気を飛ばしている。

「はっは!今のは浜面が悪い!いいぞ駒場のリーダーやっちまえ!あ、でも迷子のロリはヤっちゃ駄目だぜ?」

「半蔵……お前もか」

浜面と駒場のやり取りを爆笑しながら聞いていたバンダナを巻いた少年・半蔵は軽薄な口調で、駒場に対する追撃の茶々を入れた。
基本的に浜面、半蔵の2人は駒場の事をネタにいじる機会が多いため、どちらかが駒場をいじると、ついついもう片方も一緒になって駒場のことをいじってしまう。
そんなわけで半蔵も駒場のターゲットへとなってしまい、しまったと言う顔をするが時すでに遅し。
駒場の掌は半蔵にも迫っていた。しかし、救いの女神(幼)は居た。


578 ◆DAbxBtgEsc2011/06/22(水) 04:07:43.62PipSGV+Mo (6/12)

「むう……大体、先にあの迷子(?)を保護すべきじゃないの?にゃあ」

「…….それも、そうだな。それなら舶来…….あの子の歳に一番近そうなお前が話しかけてこい」

「わかった!!」

「「死ぬかと思った……」」

「舶来」と呼ばれた少女の話題転換により事なきを得た2人は安堵のため息をつく。
とてとてと、その金髪幼女は打ち止めの元へ話をかけに走って行った。


「おいつーめらーれて20000号!あとはー処罰のタイミング!
 罪がーかぶーったどうしよう。どうにーかなーるさ、ごまかーしーてー!」

セイヤ!セイヤ!と歌の終りが見えたところで、金髪幼女は打ち止めに話をかける。

「にゃあー」

丁度いいタイミングの合いの手を入れた形で。

「え?何?ってミサカはミサカは丁度イイ合いの手を入れてくれた声の方を向いてみたり!」

「こんなところで、大体、何をしてるの?」

「え?んー……道に迷ってるかも!ってミサカはミサカは照れながら話してみたり!」

「そうなんだ!あっちに私の友達がいるからその人たちに、大体、案内してもらえばいいと思う。にゃあ」

「いいの?ありがとう!ってミサカはミサカは感謝の気持ちを露わにしてみたり!」

「じゃあ行こ!」

「うん!」

幼女と幼女が交わる時、物語は始まる―――


579 ◆DAbxBtgEsc2011/06/22(水) 04:08:20.40PipSGV+Mo (7/12)

・・・

「んで、インデックスと風斬はわたくしの家に行こうとしたところでタイミング良く俺が現れたってわけか」

「そのとおりかも!」

「あ……でも、初対面の方にそんな迷惑は……」

上条当麻は現在、インデックスに、インデックスが出会った少女・風斬氷華の2人とわいわい雑談していた。
インデックスは風斬と遊びたいらしいが、上条は今からトレーニングに行かねばならない。
よっぽどの事情じゃない限り、黄泉川愛穂のトレーニングを休むことは許されないのだ。

インデックス達をジムに連れて行ったとしてもする事が無いだろうし、そもそもこの街の学生でないインデックスがアンチスキル・ジャッジメント共用トレーニングジムに行くのは自殺行為だろう。
間違いなく不法侵入で臭い飯エンドだ。
いや、学園都市なら臭くは無く、むしろ上条家よりも上等なものが食べられそうな気がする。
いや、駄目だ駄目だ。そんなことしてみろ、インデックスを狙う魔術師が襲撃に来るに違いない。
Koolになれ、上条当麻。お前はいつも冷静沈着、頭脳明晰で口先一つでちょちょいのちょいだったじゃないか。

なんて思考が着実に脇道へ逸れて行ってるところでインデックスから声がかかる。

「とうま?どうしたの?」

「へ?いやいや、なんでもございませんことよ!?」

思考の渦にのまれていた上条は突然その思考を遮られた事で声を上ずらせながら返答する。

「やっぱり、迷惑ですよね……」


580 ◆DAbxBtgEsc2011/06/22(水) 04:09:33.93PipSGV+Mo (8/12)


風斬はちょっとションボリとしていた。そんな庇護欲を掻きたてる風斬の表情を見た上条は、

「いやいやいやとんでもないです!むしろバッチ来いっていうか?!」

「ふぇ!?」

「とうま!またそうやって女の子に言い寄って!!」

「ああ!違う、これは違うんだ!!別に俺ん家来ても良いんだけど、俺この後用事があるから俺は居られないんだよ!」

「用事?また知らない女の子と遊ぶとかじゃないの?」

「違う違う、確かに相手の性別は女性だけどあれは違う」

「結局女の子だよ!とうまったら!!」

上条は、ジト目で上条を疑うインデックスに何とか弁解しようと言い訳を重ねるものの、墓穴っている。

「ええいトレーニングジムで体を鍛えてんだよ!!」

にっちもさっちもいかなくなり、上条は正直にこれからの予定を暴露した。

「体を……?」

何で、という疑問がインデックスの頭をよぎる。
しかし、聞いてはいけないものだ、とインデックスは何となく思った。


581 ◆DAbxBtgEsc2011/06/22(水) 04:10:01.05PipSGV+Mo (9/12)

「……わかったんだよ、とうま。頑張ってね」

「へ?お、おう」

あまりにあっさりと引きさがったインデックスに拍子抜けをする上条。
しかし、簡単に納得してくれるのはありがたかった。

「まあ、することねーなら風斬と一緒に俺んちで遊んでたらいいさ。
 俺んちもなんにもねーけどな」

インデックスの事よろしくな、と上条は笑いながら右手を差し出した。
風斬は、おずおずとその右手を握り、握手をする。

「え、ええっと……よろしく、お願いします」

「おう!」

上条は手を上下にぶんぶんと振りまわした。
風斬は振りまわされる腕以上に、上条の右手に注目していた。

「……?」

何かが足りない。
風斬は何となくそう思ったが、その考えは一瞬で霧散した。

「……(まあ、いいか)」

風斬は、インデックスに手をひかれて上条家へと向かう。
上条は、2人の背中を遠目に眺めていた。


582 ◆DAbxBtgEsc2011/06/22(水) 04:11:43.86PipSGV+Mo (10/12)

・・・

天井亜雄は目を覚ました。起き上がろうとするものの、診察台の様な所で拘束されていた上、足から鈍痛がする。
それもそのはず。天井は木原数多に捕獲される際に太ももを打ち抜かれたのだから、痛くない方がおかしい。
とはいえ、その足には治療された後が見られた。
一体誰が?そんな考えが頭をよぎった瞬間、目の前にはニコニコと穏やかな笑みを浮かべた研究者が居た。

「……あなたは……!!」

「おや、私の事を知っているのかね?」

「知ってるも何も……」

研究者の間では、『その名』は有名も有名だった。

先進教育局・木原研究所所長。胤河製薬・特別顧問。鎚原病院・木原研究室教。U.E.G.F・特殊客員教授。特殊学問法人RFO・会長。学園都・脳科学特別研究員。
その男の役職を軽く列挙したのがこれだ。しかもこれらは有名だった主な役職であり、まだまだ沢山の重役を担っている。


木原幻生。


『木原一族』という研究者達の中でも特に異端な存在の1人。
特にこの木原幻生と言う男は、天井も馴染み深い存在である。

と言うのも、幻生は数ある研究の中でも『レベル6』に至る道を熱心に研究していたため、天井も絶対能力者進化実験を行うに当たって幻生の研究に関していくつか調べた事があるのだ。
しかし、幻生は暴走能力の法則解析用誘爆実験以降、行方をくらませていたはずだ。

それが今、目の前に居る。天井は驚かざるを得ないのもうなずけるものだ。

「さて、君には『ある場所』へと行ってもらう」

「は……?」

そうだ、私は猟犬に捕まってここに来たのではないか。どう考えても私を処分するためだろう。
天井は現状を打破する策を考えるが、これはどう見ても詰みの状態だった。

「頑張ってくれたまえ。運が良ければ助けてもらえるから」

「は?……!!!?」
                         ・ ・ ・ ・
天井の言葉を待たずして、幻生は天井を堕とした。
そして、残ったのは幻生に張り付いた薄っぺらな笑顔だけだった。