337nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/17(金) 23:24:03.17XvRnwEjbo (9/9)

可愛がりって確かに相撲のほうの可愛がりだったなw
美琴はヒロインを張れるだけのキャラだけに、これからも俺にはハードな可愛がられ方をするのかもしれん。

>>329
漫画電磁法と原作小説は結構矛盾なく行ってるね。アニレーが一番矛盾を抱えてる。
まあ、漫画にも春上さんが出てきて、乱雑解放編は書かれなかっただけで正史扱いはするみたいだけど、
問題は光子さんの登場時期と、あとはもう一個だなー。
別にみんな気にしてないんだろうけど、先を見据えるとこちらで新しい解釈を与えてやらないと矛盾が生じるポイントがあるんですよ。

>>332
光子さんは一般人だからあんまり話の中心に来ないよねぇ。むーん。
それと猫マジこええw俺飛び上がるわ

>>333
まあ、ガチの再構成モノをやってるつもりなので、ある程度は必要だよね。
いずれは当麻さんも男女平等パンチをあわきんとか誰かにお見舞いするかもだし。

さー今日中にもうちょっと書けるかな。


338VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/17(金) 23:30:55.73MM1T7Q7Io (1/1)

乙ですた
物知らんことが恥ずかしいですだよー
でも勉強になるですだよー

思うことは一つ。
ああ、光子さんと上条さんの絆は尊いなあということ。
潜った修羅場は確実に彼らを結び付けているな、と。
やっぱりそこいらへんがここの魅力だなあとおいらは思うのです。
いいなあ、こういうカップル。

そして黄泉川せんせーの安定度合いもいいですね。
年少者をあくまで守りながら上条さんに頼みごとをするというのがもうたまりません。
大人の仕事だと思い切ってるのにねえ。
彼女が(自分はお相手いないのに)微笑ましいカップルにできるだけ負荷をかけないようにする姿は美しいですね。

登場人物にそれぞれ見せ場があり、リスペクトがあるこのトンデモワールドが大好きです。

次回も楽しみにしてますよー


339VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/06/17(金) 23:33:40.076zmDHx300 (1/1)

乙乙! この辺りで斬られるとちょっと生殺しだったから嬉しいですわ^^


340VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/06/17(金) 23:58:13.31+EQgZ1fj0 (2/2)

乙っす。
エカテリーナ共和国並みに重要人物がこの病院に集まってくるな。


341nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/18(土) 00:28:14.770GMF2Bq4o (1/2)


「お、おい御坂! 大丈夫かよ?!」
「御坂さん! あの、御坂さん!」

二人で声をかけるが、一向に目を覚ます気配はない。
眠っているというよりは、完全に意識を失っているらしかった。
ただ、幸い呼吸は確かで命に別状は内容に思えた。

「どうしてコイツ、ここにいるんだ?」
「さあ、私にも分かりませんわ。朝と服が違いますし……」

さらに分からないのは、美琴の横たわるストレッチャーが、一般の病人からは見えないところ、
なんとトラックや救急車用の搬入口に置かれていることだった。
治療をする医師もいないし、これから病室に運ぶという様子もない。
先ほどから騒がしいことと関係があるのかもしれない。

「そこで何をやっている!」

敵意に近い警戒感のある声が、廊下の奥から飛んで来た。
パワードスーツ用のアンダーウェアを纏った男だった。MARの退院だろう。
鍛えてあるらしく体つきは良かったが、目つきが陰湿だった。

「この子、俺達の知り合いなんです。どうして気を失ってるんですか?」
「さあ、詳しいことは知らないね。さあ、退いた退いた」
「お待ちになって。御坂さんは今からどうなりますの?」
「それはお前等の知ったことではないよ」
「待てよ。知り合いだって言ってるだろ?」

「彼女は他の病院で治療することになった。詳しいことは、目が覚めてから本人と連絡を取ってくれ」

露骨にチッと舌を鳴らして、その男は面倒くさそうに当麻を睨んだ。
そしてもう話は終わったと言わんばかりに、男は美琴の乗ったストレッチャーをトラックに載せようとした。

「待てよ!」
「……病人の移送を邪魔するなら、警備員に通報してもいいんだぞ?」
「そっちこそ通報されて大丈夫か? 春上さんを無事に運びたいんだろ?」

当麻は、それでカマをかけたつもりだった。情報の一つでも引き出せればいいと思ってのことだった。
だが、効果は覿面すぎた。

「ほう。随分と困ったことを知られたものだ」
「な?! が……っ!?」
「当麻さん?!」

当麻は突然飛んできた拳を腕でなんとか受け止め、数歩後退した。
光子は突然の荒事に硬直した。
その二人の隙を突いて、男は美琴の乗ったストレッチャーを近くに控えるトラックのほうへと押し始めた。

「どうせ今日の夜にはコトは全部終わってるんだ。証拠隠滅も、適当でいいよな。
 ――おい! このクソガキをさっさと積み込め! これが最後の車両だ。遅れると所長に殺されるぞ!」

その返事を聞いていたのだろう、トラックから運転手らしい男が降りてきて、後部のコンテナ部分を開いた。
後部のドアが開くタイプではなく、車両のサイドの壁が持ち上がるガルウィングドアで、
中にはパワードスーツが一着、積み込まれていた。
男はそれに飛び乗り、手馴れた仕草で起動する。

「さて。お前たち二人もこれから怪我人になる。我々と一緒に目的地まで行こうか」
「簡単にそれを許すと思いますの?」
「ああ、思っているよ。なにせ学園都市で三番目に貴重なサンプルでも、このザマだからな」
「えっ?」

男は躊躇わずに、病院の敷地全体に届くスピーカーのスイッチを入れた。
圧倒的なスペック差をつけた状態で蹂躙するのが好みだった。



342nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/18(土) 00:29:40.690GMF2Bq4o (2/2)


――――キィィィィィィィ

当麻はその不快な音に眉をひそめた。長く聞いていると気分が悪くなりそうだ。
……その程度では、光子はすまなかった。

「あ……あ、う。これ、は――」
「光子? お、おい大丈夫か?」
「当麻さ、ん……頭が」
「突然に、どうしたんだよ」
「『キャパシティダウン』さ」
「何だと?」
「能力者のみに作用する、ジャミングの音響兵器だ。効果はすさまじいよ。そちらのお嬢さんのようにな。
 それにしても、レベル4の能力者に付きまとう男が無能力者とは、みみっちいと自分で思わないのか?」

当麻はその言葉に取り合わなかった。
ただ、光子の体に右手で触れても、耳や頭に触れても様子が変わらないことを確認した。

「音を止めろ」
「ああ? お前ももう少し実力差を考えて言葉を選べよ。ほら!」
「クッ!」

ひどく緩慢な動作で、男はパワードスーツの腕を振り回した。
生身の人間より遅いそれをかわそうとして、軌道の先に光子の体があることに気づいた。
光子を退けるように、抱いて横に運ぼうとする。
――幸い、光子には当たることはなかった。

「が――――は、ア?!」
「当麻さん? 当麻さん……!?」
「ほう、これは謝罪せねばならんな。すまない少年よ。君は中々高潔な人じゃないか」

わざわざこの構図を狙って作っておいて、男は慇懃に笑いながら当麻に謝った。
この方式を気に入ったらしい。

「さて、第二撃だ。彼女は動けないぞ?」

光子は状況把握も正確に出来なくなった脳裏で、歯噛みする。
力が使えないどころか、当麻が傷つく、その理由にされるなんて。

「ゴハァッ!」
「当麻さん……!」

ダメージは運動量に比例する。速度は遅くとも、大質量の鉄塊は充分な威力だった。
そしてダメージの蓄積部位は速度に依存する。
高速な物体ほど体の表面を壊し、遅い物体はダメージを体に浸透させる。
たった二撃で、当麻は足元が覚束なくなった。
そして三撃目。当麻を目掛けて繰り出されたそれは、鋭く腹部に突き刺さった。

「あ……が……」

当麻は必死に打開策を考える。逃げるのは可能かもしれない。でもそれは自分だけならだ。
そして超能力なんて使えない自分は、パワードスーツなんて相手と戦うのは、そもそも不可能だ。
学園都市のパワードスーツは発火能力者や発電系能力者を意識して作られているに決まっているのだから、
そこらからガソリンを拝借して火をつけたくらいじゃどうにもならない。
トラックで轢いてやればダメージはあるだろうが、そんな悠長なことは出来ないし、そもそも運転も出来ない。

「く、そ……」
「さすがに三発でギブアップか。さて、時間がないのが悔しいところだな。
 隣の彼女が傷つく様をなすすべなく見る彼氏、という構図は中々に悲劇的で悪くないが、
 生憎凝った事をする余裕がなくてね。……本当に残念だ。生身なら触り甲斐もあったろうね」
「やめろ! 光子に触るな!」
「と言われても。言っただろう? 君もこの子も、学園都市の裏の世界についてきてもらわなきゃならないんだよ。
 何、どうせここで私が手を出さずとも、遠からずこの子は慰み者になるさ。レベル4がそうそう価値もない」

パワードスーツの腕で、抵抗の出来ない光子を男が掴み挙げた。
そして肩に担ぐようにして、トラックへと運ぼうとする。

「くそっ、待て! 待てよ!」

足が言うことを聞かない。倒れないように必死に二歩三歩と進むうちに、男はずっと先へと進んでしまう。
どうすれば。何をすれば光子を助けられる?!
当麻は、なす術のなさに頭を真っ白にしかけた。
その瞬間だった。

「みつこ!!!」
「やれやれ、上条当麻。君はこの状況じゃ本当に使えない男だね」

聞きなれた女の子の声と、小憎たらしいどこぞの赤髪の神父の声がした。



343VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/18(土) 00:34:26.68Jx6K4hQ9o (1/1)

なにこの燃える展開。
ヒロインたる光子さんの危機になにもできない上条さんとかいいよ!
普通にほんとに、役立たずである自分の無価値さを感じるとか最高!
こっからの巻き返しが期待できるなんて、ナイスな展開じゃないか!

そしてシリーズを通して無能扱いなすているがここで頼りになりそうというのはすごいわww

これは次回を楽しみにせざるをえないww

乙ですたー!


344VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/06/18(土) 01:18:31.52407HcC290 (1/1)

この状況はどう考えてもステイル無双と言う俺得な状況デス。
本当にありがとうございます!


345VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県)2011/06/18(土) 01:21:13.80FYVw8jZQo (1/1)

ペロッ、これは格好いいステイル!


346VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/06/18(土) 01:31:51.19n6flvYSAO (1/1)

>>345
ステイル「あぁスマン、ちょっと待っていてくれ。今ルーンを張っているんだ」ペタペタ


347VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/18(土) 07:24:45.95wP6PqDjDO (1/1)

乙!
戦場が指定できるときのバーコードさんは強いからなぁ


348VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)2011/06/18(土) 07:43:08.69ya9C/dnvo (1/1)


そういや光子と年一緒だな、ステイルww


349VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/06/18(土) 08:15:40.348rN04grvo (1/1)

だがステイル登場前の駆動鎧が火に強いがうんたらかんたらのせいで一抹の不安を拭えないwwwww


350VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/06/18(土) 09:30:31.15PBTIFPq30 (1/1)

俺らのイノケンさん舐めてんじゃねーぞ。
モブキャラ程度に防げる火力じゃねぇんだよ。

科学の力の前じゃ手も足も出ない上条さんの心境とかいいな。こういうの好き
次回も楽しみにしている。


351VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/18(土) 10:47:24.70xbBG6WEio (1/1)

頑張れステイル!
かっこよく決めればインさんの好感度大幅アップだ


352VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/18(土) 13:38:33.43Ppp+SOveo (1/1)

ステイル活躍フラグッ!これは期待するしかない


353VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)2011/06/18(土) 23:33:52.43SX4dhmR+o (1/1)

そしてやってくるかおりん。


354VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/19(日) 09:32:54.74+NfMKOlSO (1/1)

>>353

あれ?ステイルが噛ませになる未来が見えてきたぞ?


355nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/19(日) 12:30:23.14LTHCXpTDo (1/5)


「おや、新手かい?」

男が余裕ありげに振り向いた。
光子がどさりと美琴と一緒のトラックに載せられたところだった。

「能力者が束になるとかなりの脅威なんだがね。今はキャパシティダウンの稼動中だ。
 その間に動ける君達は、つまりレベル0なんだろう?」

2メートルを越す身長の男は、生身なら脅威かもしれない。だがパワードスーツを着ている限り肉弾戦では敵ではない。
後ろにいる銀髪と金髪の二人など論外だった。
むしろ、憐れみすら覚えた。どちらも逃がすわけには行かない。
と言うことは、今しがたトラックに載せた女と同様、この二人にもそう明るい未来は残されていまい。

「レベル0というのは、確かこの都市の能力者のランク付けのことだったね?」
「ん?」

その物言いからして、目の前の赤髪の神父は学園都市外の人間らしい。
尚更、脅威と見るに値しない存在だった。
だがその事実を理解していないのか、神父は悠長に煙草をふかしている。
目の下のバーコードや過度に纏いすぎたアクセサリの数々が、
オカルトというでも信奉しているような、蒙昧な印象をかもし出している。

「僕は超能力者ではないからね、レベル0で合っているのかな」
「開発どころか検査も受けていない人間にレベルは与えられないさ」
「ああ、それもそうか。……ところでインデックス。僕は、科学<かれら>に能動的に干渉することは禁じられているんだけど」

インデックスは、ステイルの言っていることが魔術師としてごく常識的であることは理解していた。
だけど、そんな悠長なことを言うような場合では、ないのだ。
放っておけば、光子がさらわれかねない状況だから。
光子を助けようと走り出したインデックスを止めたのがステイルだった。
そんな原則論を持ち出すのならなぜ自分を止めたんだと、インデックスは非難を込めた目で見つめ返した。
う、とステイルが怯んだ。

「……僕が言ったのは正論だよ。まあ、どうせ彼は僕らも逃がす気はないだろうしね。それで合っているかい?」
「そうだな、反論はしないよ。君に「需要」はないが、後ろのお嬢さん達には価値がある。さあ、寝ていろ」

男は当麻を無視して、ステイルと、その奥にいるインデックスとエリスの方を向いた。
そして無造作にステイルに腕を振り上げた。それを見て、ステイルは口の端を釣り上げた。
フィルター前までしっかり吸いきった煙草をピッと指で投げ捨てる。
こちらから露骨なアクションは取れなくても、反撃なら許されるのだ。

「仕事だよ、魔女狩りの王<イノケンティウス>」
「なっ?!」

煙草の吸殻を基点に、爆発的にオレンジがかった光が広がる。
それはあっという間に人型を成し、人の身長を越える。ちょうど、パワードスーツを来た男といい勝負のサイズだった。

「やれやれ、不穏な空気を感じてあらかじめルーンをバラ撒いておいたのが役に立つとはね。
 さて、一応聞くけど。その機械仕掛けの鎧から降りて、降伏する気はないかい?」
「貴様。なぜ能力を使える?!」
「さあ。どうしてだろうね」
「くっ!」



356nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/19(日) 12:31:25.24LTHCXpTDo (2/5)


ブゥン、と一度止めた腕を男は振り下ろした。魔女狩りの王がそれを受け止める。
その二者の接触面が軋みをあげ、猛烈な勢いでパワードスーツのセンサーがアラームをかき鳴らした。
異常な熱を検知した報告だった。すぐにこれでは腕が駄目になる。
炎の塊から遠ざかるために男は反射的に後ろに下がって、そして愕然とした。
重さを感じさせない炎の塊が、自分の腕を掴んだままついてくる。
なのに振り払おうとすると、今度はパワードスーツの力に負けない強さで、その動きに逆らう。
その間も、腕はあっという間に熱を持って、その温度を見過ごせない温度にまで上昇させていく。

「その装甲。何度まで耐えられるんだい? さすがは学園都市製と、もう充分褒めるに値する健闘ぶりだけど」

魔女狩りの王の内部温度は、三千度程度。
それは温度で言えば、タングステンやダイヤモンドなど、強靭な物質を溶融させるにはやや心もとない温度だ。
だが、魔女狩りの王が司るのは熱ではない。酸素の存在を暗黙の前提とする、「燃焼」という現象だ。
酸素雰囲気下の三千度。それだけの条件で解けも燃えもしない物質は、学園都市のどんな生産プラントでも作れない。
この世に存在しない物質を作れる、ある男を除いては。
勿論パワードスーツの装甲はそんな物質ではなかった。

「は、離せ!」
「どうしてだい? まずはお互い、分かり合うために対話をしようじゃないか」

炎の恐怖に顔を引きつらせる男に、ステイルはゆっくりとした動作で語りかける。
目の前で怯える人がいて、それに微塵も流されない。

「くそっ!」

男が何かを決心した顔で、開いた腕に銃をマウントした。そして、それをステイルに向け、引き金を引いた。
魔女狩りの王がステイルを庇い、腕を離した。

――ガンガンガン!!

それはもう、周辺にいるあらゆる人を警戒させるに足る音だ。
速やかに、この神父を制圧しなければならない。
炎の塊に阻まれて神父がどうなったのか見えないが、これが消えないと言うことは。

「残念。その程度の口径の銃が魔女狩りの王を貫通することは出来ないよ。
 以前、高速度の飛翔体に対する対策を考えさせられる経験があってね。
 魔女狩りの王にはかなりの粘りを持たせてある」

ステイルがチラリとうずくまる光子に目をやって、そう呟いた。
魔女狩りの王の中身は木炭や石炭の溶けたものだ。もちろんそれは魔術的、象徴的な意味であって、物理的な正しさはない。
三千度の炭の液体などというものが実際に存在するはずもないが、もしあれば、それは水よりさらりとしていておかしくない。
温度が上がると粘度が下がるという物理法則に、魔女狩りの王が従う必要は無かった。

「にしても、面倒だな。君を殺すのはちょっと問題がありそうでね。出来れば無力化したいんだが」
「うるさい、死ね!」
「ああ、会話にならないのか。君に科学を講釈するのは釈迦に説法というやつかも知れないけれど。
 ――――熱膨張って知ってるかい?」



357nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/19(日) 12:33:10.20LTHCXpTDo (3/5)


ステイルに向けられた銃の機構部分を、魔女狩りの王が優しく掴んだ。
恐怖にやられたのか、男は自動小銃をフルオートで打ち始めた。
だが、それも長くは続かない。

――――バンッ!!!
「うあっ! な、なんで――」
「この温度で銃が正しく動作するわけがないだろう。さあ、魔女狩りの王。そろそろ戯れは終わりだ。彼に熱い抱擁を」
「止めろ! 止めてくれ!」
「それを言った上条当麻に君はどんなリアクションをとったっけね? ――やれ」
「うわぁぁぁ!」

男は、緊急脱出用のコマンドを躊躇いなく実行した。
そしてもぬけの殻になったパワードスーツの外骨格に、魔女狩りの王が絡みついた。
弾性を維持するために熱に弱い関節から順に、あっという間に破損していく。
そして装甲が発火したところで、ステイルは魔女狩りの王を引き離した。

「クソ、なんでこんな――」
「よう」
「え?」

先ほどとは打って変わって、腰を抜かした男はいつの間にか当麻の足元にいた。
当麻は手加減なんて微塵も考えなかった。
全力のストレートを、男にぶち込んだ。

「寝てやがれ!!!!」
「ガハァッ!!!」

ガツンと頬骨が折れる音とともに、男が吹き飛ばされて転がった。
そして当麻はすぐにトラックの運転席で事態を怯えながら見つめていたMARの隊員を睨んだ。

「今すぐこの音を止めろ!」

魔女狩りの王がすっとトラックの前に立つ。逃げ切るより自分が殺されるほうが早いと悟ったのだろう。
当麻にぶちのめされた男よりも小心か、あるいは根が腐っていないのか、コクコクと頷いてキャパシティダウンを止めた。
すぐさま当麻とインデックスが光子の下に駆け寄る。

「みつこ! 大丈夫?!」
「ええ……。頭痛はもう消えましたから。すぐに良くなるとは、思いますわ」
「ごめんな、光子」



358nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/19(日) 12:34:22.58LTHCXpTDo (4/5)


当麻の表情を見て、光子は切ない気持ちになった。
何も出来なかったことを悔いている顔だった。当麻はレベル0だ。こんなとき、何も出来なくたって誰も責めやしないのに。
自分を庇って、助けようとしてくれただけで、恋人の自分は充分に満足なのに。

「当麻さん、気になさらないで。本当に別に、私何ともありませんから」
「ああ……」
「まあそういう感傷的な事は後にまわしてくれないか」
「っ」

面白くなさそうに煙草をケースからとんとんと取り出しながら、ステイルが後ろで呟いた。
エリスはステイルからも離れて所在なさげにしている。

「悪い。ステイル、助かったよ」
「別に君たちが被害にあうだけなら止めなかったけどね。この子に手を出すと宣言したそこの彼にでも感謝したらどうだい」

不調でうずくまる光子を見ても全く容赦のないステイルだった。
だが恨みがましい目でインデックスに見られると、居心地悪そうに目線を外した。

「なあ、ステイル」
「なんだい?」
「さっきの運転手を操るとか、そういうことって出来るのか」
「……そんなことを何故聞くんだ?」
「光子」

ステイルに取り合わず、当麻は光子を撫でた。
それだけで、光子は当麻の言いたいことを全部理解した。
そして答えに言葉を尽くす必要なんてない。

「私は当麻さんについて行きます」
「おう。じゃあステイル、頼んだ」
「状況くらいは説明しろ」
「インデックスの友達の一人、春上さんって言うんだけどな、その子がこいつらに誘拐されてる。今から、助けに行くぞ」

運転手を操った上でトラックを運転させ、前方の車両に追いつく。当麻が考えているのはそういうことだった。
事情を確かめるように、戸惑ったステイルはインデックスを見た。
懇願する目で、コクリと頷いた。

「魔術師として、この学園の超能力者と戦うのは駄目なんだよね。そういうのは、しなくていいから。
 だからお願い、ステイル」

ろくに吸ってもない煙草を投げ捨て、足でグリグリと踏みにじる。
正義を語るようなおこがましい趣味はステイルにはない。だが、そういうインデックスの顔には、弱かった。

「ああもう、僕は知らないぞ」

この場の全員に聞こえる大きな舌打ちをして、ステイルは運転手のほうへと向かった。


359VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/06/19(日) 12:35:11.20lihwo6nro (1/1)

ねぼしきたー!


360VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/06/19(日) 12:36:01.94WU1Q02KAO (1/1)

ねぼし北―――――!


361nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/19(日) 12:37:31.91LTHCXpTDo (5/5)

なんか俺の意図を超えて突然にステイルがねぼしった。
格好よく書けたかなー
これで『Intersection of the three stories: 其処に集う人達』おわりっと。
今までで最長の話かな。さークライマックス目前だ。



362VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/19(日) 12:38:31.57y347MPzLo (1/2)

ステイルー!!
イノケンさんかっこいいよ!


363VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)2011/06/19(日) 13:35:13.12cSJ7Pexuo (1/1)

これが真ねぼしか……


364VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2011/06/19(日) 13:40:16.034sMvFqNj0 (1/1)

このねぼしは正しいww


365VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県)2011/06/19(日) 13:43:14.02y347MPzLo (2/2)

まあ3000°Cで掴まれたらさすがにねぼしっても不思議じゃない気がするな
まさに真ねぼしww


366VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/06/19(日) 14:04:38.10WJtjH84ho (1/1)

ステイルがかませではなく本当にかっこいいいとは…
真・ねぼしも見られるとはww


367VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/06/19(日) 14:33:01.21BDYUsd5AO (1/1)

イノケンさんはかっこいいなぁ


368VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/06/19(日) 17:15:03.64+IsSgkEQ0 (1/1)

乙。
これが教皇級の力をもつイノケンさんから繰り出される真ねぼし、か。
やはりイノケンさんは、ただものじゃないっすね。
あと、美琴は大丈夫か?


369VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/06/19(日) 19:39:52.72yqNakjvS0 (1/1)

乙乙! 対魔術対策してない科学は辛いなぁ。
ステイルさんかっこいい!抱(イノケンティウス


370VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/19(日) 20:05:21.01CQ+elfLYo (1/1)

素晴らしいねぼしだった


371nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/20(月) 12:03:23.61VthU6ESKo (1/4)


カタンカタンと、トラックが高速道路の継ぎ目を通るたびに規則的な音が室内に響く。
簡易ベンチに当麻と、光子にインデックスが座り、ストレッチャーに乗せられた美琴が横にいる。
三人から離れ噛みタバコを噛むステイルと、その全員から離れたところにエリスが座っていた。

「まったく。僕にも用があって、ここに来たんだけどね」

ハッとため息をついて、ステイルが肩をすくめた。
そういう文句はもうこうなってから、三度目くらいだ。

「いやだから、来てくれるのはありがたいけど、来いって言ったわけじゃないだろ?」
「別に僕は君達に用はないから、あそこで別れても良かったんだけど」
「ごめんね。でも、私にとっても、他人じゃないもん」

ステイルはインデックスに謝られて向ける矛先を失い、フンと鼻を鳴らした。

「それにしても、追いつくのに時間が随分と掛かるね」
「この辺は高速が狭くて追い越しとかほとんどねーんだろうさ。差がついちまってるんだから、仕方ないだろ」

当麻たちを乗せたトラックは今、春上を乗せたトラックを追いかけている。
差がついているのは、当麻たちがパワードスーツを着た男と争ったのもあるが、
その後にトラックから予備のパワードスーツを下ろすのに手間取ったからでもあった。
走っている途中で遠隔操作で自爆なり脱出ポッドの強制排出なりをされてはたまらない。
だが、あんな重い機械を手で運べるはずもなく、手間取ったのだった。

「もっと彼女が、早く手を貸してくれていれば良かったんだがね」

そう言ってステイルが、エリスを横目で見た。
インデックスが不安げな顔をする。一人、エリスだけが皆から離れているのは、ステイルの采配だった。




――――MARの病院で、ステイルが運転手を操ったところでその事態は起こった。
エリスは一般人だ。ついて来たところで足手まといになるのは明らかだった。
当麻がそれを心配したのがきっかけだった。

「エリス。ここからは危ない。悪いけど、近くの通りまで出て、タクシーで帰ってくれないか」
「上条君……。インデックスは、構わないの?」
「ステイルの魔女狩りの王<イノケンティウス>、見ただろ? インデックスはそういうのが出来る連中の一人なんだ」
「まあ戦力外だろうけどね、今回に関して言えば」
「そんなことないもん!」

ステイルの揶揄にインデックスがむっとした顔を返す。
それは心配の裏返しだった。魔術師の中でなら、インデックスは驚異的な力を発揮する。
だが、彼女の能力は超能力者の中にあっては、一般人と大差が無かった。
あらゆる信仰を論破するインデックスをして、太刀打ちできないのが科学だった。

「君が行かなきゃ、僕も行かなくて済むんだけど」
「……別に来てくれなんて、言ってない」
「だけどさっきみたいなことがあれば、君の保護者二人はまた戦力外になる。
 彼らが怪我をするのは僕の知ったことじゃないが、インデックス、君に関しては違う」
「じゃあ、ステイルは私と一緒にここに残って、
 とうまとみつこが怪我をするのが一番いいって言うんだね?」
「それは……」
「私も行く。それは私が決めたこと。ステイルがついてこないのは自由だけど」

春上とは、少し話した程度の間柄だった。
夏祭りに行った日に話したのだが、その時も主に世話になったのは浴衣を着付けてくれた佐天で、
ほとんど春上とは接点を持たなかった。
でも、もう春上は、インデックスの友達の一人だ。
苦しんでいるところを見過ごすことの出来ない、そういう相手に入っていると思う。
それは当麻にとっても、光子にとっても同じことのようだった。
デートしているときに突然、自分の家のベランダに引っかかった女の子を助けて、
そしてずっと一緒にいてくれるようなお人よしなのだ。
インデックスは、自分の決断を間違っているとは思えなかった。



372nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/20(月) 12:05:27.34VthU6ESKo (2/4)


「ああもう。分かった、行くよ」

ステイルはざっと髪をかき上げ、エリスに目をやる。

「君にも、親切で一応言っておくと、着いて来ない方が良いと思うよ。
 いざと言うときに、足手まといが要ると困るからね」
「ステイル! そんな言い方しなくてもいいでしょ!」
「事実だよ。……さて、上条当麻。トラックに積まれた機械の鎧が邪魔だな。
 動かして車の外に出してくれ」

ステイルは無理と分かっているのだろう、当麻はその嫌味に苛立ちを覚えた。
この場で当麻は、今のところ何も出来ていない。

「無茶言うな。こんなモン、ロックが掛かってて部外者には動かせねーよ。
 手で動かすには重すぎるしな。さっきの運転手にやらせるか?」
「不可能じゃないけど、時間が掛かる。僕の魔女狩りの王は動かすのは可能だけれど、
 トラックも壊しかねないし、あまり作業には向いていない」
「じゃあ、私がやるよ」
「エリス?」

意を決したように呟いたエリスに、インデックスが戸惑いながら尋ねた。

「やるって、どうやって?」
「エリスさんは、それほどレベルは高くないんでしょう? できますの?」

美琴のストレッチャーの隣で座り込む光子がそう確認する。
トラックから地面まで1メートルくらいの段差がある。
エリスの能力なんて良く知らないが、空間移動、念動力、
そういう能力でこのパワードスーツを動かすにはそれなりのレベルが必要だった。
どうする気なのかと尋ねる光子に、エリスはあっさりと、自分の秘密を打ち明けた。

「ううん。私、ホントはね、超能力者じゃないんだ」
「え?」

驚くインデックスに、エリスは微笑んだ。
それは仲のいい知り合いに、また一つ嘘をつく後ろめたさを隠すための笑みだった。
エリスは、本当は超能力者でもある。
だがその「でもある」をきちんと目の前の皆に説明することは出来ない。
だからこの場では、エリスは自分の超能力者としての側面を隠した。

「あの、エリス……」
「ちょっと待ってね」

エリスはポケットから、印鑑入れのようなケースを取り出した。
それを開くと、中には白いチョークのようなものが入っている。
その質感から、インデックスはそれが微細な塩を油とワックスで固めたもの、オイルパステルの一種だと推測した。
エリスはかがんで、そのチョークめいた白色の棒で地面に紋章を描き始めた。
超能力者の、わけの分からない理屈ではなくて、むしろ自分の良く知った理論に沿って。

「エリス……嘘、どうして」
「ごめんね、今まで、言わなくて」

それはいい。だって、インデックスだって自分が魔術師だなんて一言もエリスに言わなかった。
もちろんindex-librorum-prohibitorum、すなわち禁書目録というフルネームを見れば、
魔術師ならインデックスが何者かなんて言わなくても分かるだろうけれど。

「私の可愛い土くれシェリー。あのトラックの上のパワードスーツを、どけて頂戴」



373nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/20(月) 12:07:16.29VthU6ESKo (3/4)


エリスが一言そう呟くと、硬いコンクリートの地面が突然、ぐにゅりと音を立てた。
コンクリートがひび割れ、その下から茶色い泥が、人の形を作るようにぬるりと這い上がる。
そして割れたコンクリートを身にまとい、ステイルより一回り大きい程度の人形、ゴーレム=シェリーが完成した。
作り方を親友に教えてもらった、魔術師エリスの最高位の技。もちろん、魔女狩りの王となんて比べ物にならないが。
親友の名を冠したゴーレムに、エリスは笑いかけた。
シェリーがこれを見れば、自分と同じ名前をいかついゴーレムにつけたエリスのことを一体どう思うだろう。

「……ふうん、君は魔術師だったのか」
「うん」
「インデックスに近づいた目的は?」
「逆だよ。あの子が私のいる学校に来なければ、私からコンタクトすることなんて無かったもの」

すこし寂しそうに、エリスがインデックスに笑いかけた。
その微笑には表裏が内容に感じられて、インデックスは、エリスを信じたいと思った。
だけど、魔術師同士であるということは、そう簡単には埋められない距離があることを意味していた。

「エリスは、どうしてこの街にいたの?」
「……インデックスには、話してもいいよ。もう帝督君には教えちゃったから」
「じゃあ」
「でも今は、嫌だな。インデックスの知り合いだからって、誰にでも喋りたいことじゃ、ないから。
 ……例えばステイルさんは、私に学園都市に来た理由を話せるの?」
「まさか。どの結社に所属する魔術師かも分からない相手に、そんなことができるものか」
「だよね。ほら、これでおあいこ」

ステイルの言い分はもっともだった。
とある錬金術師が、「吸血殺し」という究極の対吸血鬼集蛾塔のようなものを手に、
本気で吸血鬼を集めようとしているなどという話が知れたら、
普通の魔術師なら何を差し置いても、「吸血殺し」か吸血鬼の横取りを目論むだろう。
だがエリスは、ステイルが内心で考えていることなんて当然知りえない。
シェリーを見上げ、トンと触れた。

「さあ、早く仕事をなさい。急がなきゃいけないから」

シェリーは物も言わず、重たげな音を立てながらパワードスーツを退けに掛かった。
――――そんな経緯で、シェリーはステイルの警戒心を買い、インデックスから離れて座っているのだった。




トラックの中の沈黙を、インデックスが破る。

「ねえ、エリス」
「何かな?」
「また、落ち着いたら。一緒に遊べるかな」

ステイルのほうを、エリスはチラリと見た。返答は無言だった。

「私はこれからもあの学校にいるし、インデックスが通ってくるなら、一緒に遊ぶこともあるよ」
「うん、そっか」
「インデックスこそ、私を避けたほうがいいのかもしれないよ?」
「……そうだね、ステイルは、そんな顔してる」
「なあエリス。お前はさ、友達としてのインデックスを、裏切る気なんてあるか」
「ないよ」
「じゃあ、俺らから聞くことはもうねーな」
「……ありがと、上条君」

光子が当麻の手を握って、当麻と一緒にエリスに笑いかけた。
そして目線を横にやると、ストレッチャーの上の毛布が、もぞりと動いたのに気がついた。

「御坂さん?」
「ん……」

美琴が、意識を覚醒させたらしかった。



374nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/20(月) 12:08:17.64VthU6ESKo (4/4)

すげーねぼしが好評でわらってしまったw真ねぼしって表現いいなあ。
さて今回はエリスの番でした。まあ、基本彼女は技術的には低スペックな魔術師・能力者です。


375VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/20(月) 13:28:31.085DQDBRu+o (1/1)

シェリー死んでるのか?


376VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/06/20(月) 14:29:24.35c4FLJ955o (1/1)

互いが互いの名前をゴーレムにつけてるのか
泣ける……ブワッ


377VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/06/20(月) 17:03:27.60EuvKyCPFo (1/1)

乙です、しかしイノケンさんに銃を握られたら熱膨張しなくても溶けるか変形するかしそうですね
それ以前に銃弾が暴発するかなww


378VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/20(月) 17:54:27.142Cmf/P0T0 (1/1)

乙です。
お互いにゴーレムの名に親友の名前をつけているのか……
はやくエリスとシェリーが再会するところを見たいです。


379VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/06/20(月) 18:06:46.56Zu68KF3f0 (1/1)

美琴と魔術組のかなり早い邂逅がどう影響するのか、佐天たちがどう動くのか楽しみです^^


380VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/20(月) 18:28:53.10OkZ8sWMQo (1/1)

乙ですた!
ねぼしってなにかわかんねえからぐぐったら笑ったww

自分の無力を責める上条さんとそれを気遣う光子さんに悶え苦しんだ。
[ピーーー]気かー!
やっぱこの二人の絆はいいわ。

さて、ビリビリが目覚めてどうなるかわくわくですな。

次回も楽しみにしてますよー


381VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/06/20(月) 18:30:27.64xMTrl7Jdo (1/1)

美琴が早い段階で魔術サイドと接触か……皮被りさん大歓喜ですね!!


382VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(秋田県)2011/06/20(月) 22:27:57.23AlcL/Ivwo (1/1)

>>381
原作の上条勢力は上条さんが魔術サイドと科学サイドの両方に顔が利くだけで、科学と魔術が直接協力なんてしてなかったからな。
このSSだと思いっきり協力することになりそうだから、上条勢力の危険度も増大。
アステカ仮面にも監視じゃなくて最初から抹殺命令が下るかも。
あれ? そうしたら美琴に惚れる時間がなくね?


383nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/21(火) 01:24:07.312Y3LuJj4o (1/4)


誰かの話し声が気になって、美琴は目を覚ました。
はじめに目に映ったのは、頼りない感じのするベッドと、灰色の壁だった。
ここ、どこだろ。
そんな暢気なことをぼんやり考えていると、御坂さん、と知っている誰かの声が背中にかけられた。
誰だっけ、知り合いの声なのは確かだけど。そう思いながら、気だるい体を横に向ける。
初めに目線を合わせた相手は、ツンツン頭の、見知った高校生だった。

「御坂、大丈夫か?」
「え……?」

どうして、コイツが?
理由は単純だった。美琴のストレッチャーの隣に当麻が座っていたから。
もちろん美琴にそんなことが分かるわけがない。
心臓が、トクリと高鳴った。目を覚ましたときに、傍にいてくれるなんて。
今この状況も、数時間前の記憶も、そういうものへの理解をせず、
美琴の心は当麻の気遣う声が聞こえたことを、素直に喜んだ。
……それは決して、幸せではないことなのに。

「御坂さん、大丈夫ですの?」
「え? 婚后、さん……」

肺が苦しい。ギチギチと、急に呼吸が苦しくなった。
なんで、って。そうだ。今朝、話をしたんだ。コイツと婚后さんが、その、付き合ってるって。
よく見れば、確かインデックスとエリスという名前の美人の外人さん二人組に、知らない赤髪の人までいた。
呆然とする美琴に、当麻が立ち上がって手を触れた。
おでこに、当麻の温かみが広がる。夏だからか美琴は額に汗がにじんでいて、触られるのが恥ずかしかった。

「お前、熱あるだろ」
「え?」
「さっきからお前、『え?』って言ってばかりだな」

きっと普段なら、美琴が弱みを見せたらまずはそこを攻めにかかると思う。
いつも倒す倒されるみたいな話ばっかりしてたから、今だってそうだと思った。
なのに、馬鹿だな、なんて顔をしているのに。当麻の笑みの中に美琴をいたわるような優しさが合った。
それは、隣に光子がいなければ、どうしようもなくなるくらい嬉しいことのはずなのに。

「ほら、喋れるか?」
「……ば、馬鹿にしないで」
「だったらちゃんと喋るんだな。こうなってるお前に無理言う様な事して悪いけど、
 聞かなきゃいけないことがあるからな。……お前、どうして倒れてたんだ?」

当麻の顔が、真面目なものになった。
それでようやく美琴も、自分の意識がなぜ飛んでいたのか、思い出した。

「私、テレスティーナさん……テレスティーナにやられた。スタンガンで」
「あれ、お前、そういうの平気だっただろ?」
「なんか、あの音でおかしくなって」
「キャパシティダウンだっけか。そうか、お前もアレにやられたってことは、能力者であれば即アウトか」

美琴が首をさすり、傷を探した。
手に触れると、ざらりとした感触があった。ズキンと痛みが走って、そこがひどいやけどになっているのが分かった。



384nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/21(火) 01:26:43.752Y3LuJj4o (2/4)


「痛っ……」
「ひどいな……それ。跡が残らないといいけどな」
「残ると吸血鬼っぽくて嫌ね」
「冗談言ってる場合かよ」
「いいでしょ、それくらい。なんでアンタが私の心配するのよ」
「しちゃいけないか?」
「……うん。駄目」
「そうか」

アンタには、婚后さんって彼女がいるでしょうが。
……それを、声に出すことは、現実を認めてしまうことになるから、言えなかった。
もうその現実が覆らないことは、薄々分かっているけれど。

「今、これ車に乗ってるんだよね?」
「ああ」
「どこに向かってるの?」

それも、聞いておかなければならないことだった。
規則的な振動から、どうもこの車は高速道路を走っているらしいとわかる。
しかも医者らしい人は乗っていなくて、救急車じゃなくてもっとゴツい、トラックのような車だった。
美琴のために別の病院へ、という感じではなかった。

「……体調悪いお前には悪いけど、この車は、春上さんを乗っけたトラックを追いかけてる」

やっぱり。
美琴は自分の予想が正しいことを確認して、そしてこう、思ってしまった。
私は、こんなことしてる場合じゃ……
そしてすぐに自分を責めた。
今、自分は春上と妹の命を天秤にかけて、優先順位を決めようとした。
それは、やってはいけないことだと思う。
そんな風に命に値段をつけるということをやってしまえば、妹達には、
どうしようもないほどの客観的な値段がついている。
それが許せなくて、自分は動いているはずなのに。
……だけど、妹達と一方通行の作り出したあの惨劇が脳裏にこびりついていて、
それがどうしようもなく美琴の焦燥感を掻き立てるのだ。

「朝から悩んでたの、この件だったのか? とりあえず、警備員の知り合いには連絡してある。
 どれくらい切羽詰ってるのか、詳しいことは御坂に聞きたいんだけどさ、
 ここにいるヤツはみんな、荒事に付き合ってくれる気で来てる。
 だからまあ、頼れよ」
「……うん」

美琴は当麻の勘違いを正さなかった。
やっぱり、あれは当麻にも話せることではないと思うから。
そして、いつか美琴がどうしようもなくなった最後には頼れる、そんな希望が感じられるから。
もう、それで良いと思った。今は、春上を助けることに集中しよう。

――不意に、当麻が美琴の髪をくしゃりと撫でた。
その感触に美琴は目を瞑ったのに、当麻の手は名残を見せずにすっと美琴から離れた。



385nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/21(火) 01:30:31.392Y3LuJj4o (3/4)


「ごめんな」
「えっ……?」

不意に、謝られた。意図が分からなかった。

「お前、朝から随分追い詰められてたよな。もっと、ちゃんと聞いてやればよかったな」
「……別に、アンタに聞いてもらったって何も変わらないわよ」
「そうか?」
「そうなの。ったく、お人よしにも程があんのよ。そんなんじゃ、アンタ」

美琴はそこではじめて、ようやく、光子のほうを見た。

「婚后さんにすぐに愛想つかされるわよ」
「御坂さん……」

それは、敗北宣言だった。
だって、当麻はもう光子の恋人で、自分の居場所はそこにはないんだから。
友達としてなら、当麻の傍にはいられるように思う。だから、もうそれでいいじゃないか。
年上の、なんだかお互いにじゃれあいたくなるような、仲のいい男友達。

「愛想つかされるって、別に光子は」
「御坂さんの言うとおりですわ。当麻さんは、もっと反省してくださいませんと」
「え、光子?」

戸惑う当麻に光子が僅かに咎める視線を送った。
美琴はその光景を見ていられなくて、腕で、視界を覆い隠した。

「お、おい御坂。変なこというから」
「当麻さんはあちらに座ってらして」
「え、ちょっと、光子」

光子が強引に、当麻を自分の席に押しやった。
美琴の体がわなないて、何かを堪えるように唇がきゅっと横に引かれたのを見て、
光子は当麻に見えないよう、美琴の頬にハンカチをそっと押し当てた。

「婚后さん……?」
「これが、嫌味なことに思えるんだったら、ごめんなさい。朝は、私もつい……ごめんなさい」
「いいよ。別に婚后さんは、悪くない」
「ええ、それは私も、譲れません。でも御坂さん、私、御坂さんとお友達でいたい」
「え?」

光子はそれ以上、言葉を重ねなかった。
ただ、美琴の気持ちに共感するように、空いた美琴の手をとって、ぎゅっと自分の手を重ねた。
覆った腕の隙間から、美琴は光子を見た。
真摯な目で、優越感とかそういうのとは無縁に、美琴を慰撫してくれる表情だった。

「……ありがとね、婚后さん」
「お礼なんて」

美琴は光子の手を握り返した。
優劣がついて、明暗が分かれて、蹴落とした側と蹴落とされた側になったのに。
今この瞬間が今までで一番、美琴と光子が友情を交し合えた時だった。



386nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/21(火) 01:35:02.562Y3LuJj4o (4/4)

>>375
死んでるわけじゃないのよー。単に>>376が正解。

>>377
銃表面の溶融
銃部品の熱膨張による銃身の変形
装填された火薬の自然発火
この三つの兼ね合いだから、意外と複雑なんだよな。
ねぼしじゃない暴発だった可能性は否定できないね。

>>379 >>381-382
アステカのお兄さんの行動はちょっとよく考えないといけないね。確かに。

>>380
光子さんがいい子過ぎて書くのが辛い……なんでリアルでおらんのんや

さて次あたりから佐天さん来るかなー


387VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/21(火) 04:01:19.24WJJFxHjDO (1/1)

シェリーとエリスは互いの近況を知らないはずだからな。シェリー襲来が楽しみだ。

この婚后さんはアニメとは違う声で喋ってる感じがする。もうちょっとおしとやかな声が聞こえるよ。


388VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/06/21(火) 06:50:41.62IycmGt760 (1/1)

美琴にはこれから新しい恋を見つけて欲しいっす。
光子ちゃんと美琴にはいい友情を育んでもらいたい。
そして吸血鬼の前で吸血鬼みたいって。
吸血殺しのときは頑張ってほしいっす。


389VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/21(火) 08:34:05.28aNUL76En0 (1/1)

>そして吸血鬼の前で吸血鬼みたいって。
無神経、とかじゃなくて、そういう“すれ違い”“行き違い”を丁寧に描き込んでてスゴイなあ、と思います。


390VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/22(水) 20:35:15.37g7SklrL0o (1/1)

乙ですた

…あちらでもねぼしは好評で笑ってしまったっすわww

さてここで光子さんとビリビリの関係に一応の決着。
なかなか気持ちのいい関係になりそうでこれからの描写に期待。

ところで、今さら感はすごくあんだけど、上条さんと光子さんの馴れ初めはこれ以上描写はないのでしょうか。
幾度目かの再読でそこが一番もやもやしてたんだけど。

次回も楽しみにしてますよー


391nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/23(木) 03:04:22.25lnPqWcnSo (1/1)

ちょっと続きを書く暇がここんとこないなー。すまんす。

>>387
うん、おしとやか路線を強調しすぎてるかなあという思いはたまに抱いたりする。
このへん難しいんだよね。脇役として書かれたアニメのキャラづくりじゃ脇役にしかなれないというか。

>>388-389
あざといかなと思わなくもないんだけど、こういうすれ違いがあるとニヤッと俺はしていますw

>>390
んー、実はその馴れ初めの加筆ってのはやろうかどうか悩んでる。
漫画版のほうで光子さんのバックグラウンドがかなり厚みを持ってきたので、
書こうと思えばかけるかな、と最近思い始めてたり。
でも書くとなると一ヶ月くらいはストーリーが進展しなくなるので、
読んでくれる人が離れちゃったりする心配ががが。
光子との馴れ初めをキンクリしちゃってることを不満に思うコメントを頂いたことも何度かあって、
書いたほうがいいのかなと気にはなっています。


392VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/06/23(木) 05:09:18.28/RMtVbPAO (1/1)

一つエピソードが一段落したら、次との合間に挟むのはどうだろう。

いや、俺が読みたいだけなんだども。


393VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/06/23(木) 09:35:17.23G6wwFzlC0 (1/1)

書いてくれた方が俺は嬉しいっす。
この三つの話を終わらせた頃にでもやってほしいっす。


394VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/23(木) 11:51:42.24BfshROhDO (1/1)

是非とも読みたいす
ニヤニヤしたいす


395VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/06/23(木) 19:33:26.65L1i28h1S0 (1/1)

一か月もかかるとか、なんという大長編・・・


396VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/23(木) 21:23:51.71nC4Y3Oe/o (1/1)

おー、当初は構想になかったのですか。
是非ともあの鈍感の極みである上条さんを光子さんがどうやって陥落したのかが読みたいです。
我は求め訴えたり!



397VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/23(木) 21:52:37.80lQBU+OFDO (1/1)

妹達編が終わってから書いたらどうでしょうか?


398VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/23(木) 23:06:53.80qdSa8srNP (1/1)

色々一段落ついてからなら、佐天さんあたりにせがまれて馴れ初めを語らせられるとかそういう流れで書けそう


399VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/06/23(木) 23:25:03.76yfHa47tao (1/1)

佐天さんが軽い気持ちで馴れ初め聞いたら婚后さんの一ヶ月にも及ぶ大オノロケ発動ですね。分かりますん


400VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/23(木) 23:37:12.49Yl3ARSCg0 (1/1)

乙です。
美琴と光子の関係、かなりしっかりとした所に落ち着いてくれて一安心です。
ここでうやむやにして後々で修羅場に発展すると、どう転んでも美琴がますます追い込まれることになりそうだからなぁ。
しっかり自分の中で決着をつけて、みっともないことにならないように意地も通して。格好いい失恋をできた美琴さんは立派だと思います。
しかし、御坂関連の問題は、まだまだ山積みなんだよなぁ。


401nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/24(金) 00:09:00.68yQ67roNoo (1/9)

まあ一ヶ月ってのはちょっと多めに見積もってますけども。
読みたいって人はやっぱいるよねえ。
光子の設定が色々出てて、作中でお盆になるより前に一度修正が必要なのは把握してたから、
妹達編が終わったら書こうかな。っていかん。プロット考え出すと書きたくなってきた。
あと、書く時は回想じゃなくて、やっぱりprologueに差し込みたい。
初めから読み直すと、光子さんが世間知らずの女の子だったのが、だんだん当麻とかの影響でいい子になって、
インデックスとの邂逅でお姉さんになって、みたいな感じに成長していくのが分かるようにしたいなと。


402VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/06/24(金) 00:28:51.06kbmzMfXy0 (1/1)

上条流マイ・フェア・レディ、だと・・・詩菜さんが息子の将来を不安がる気持ちが分かるわー


403nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/24(金) 00:31:50.12yQ67roNoo (2/9)


「初春、何をしていますの?」
「なんだか、前を走ってるトラックの台数がおかしい気がして……」

木山の運転するスポーツカーで移送中の春上や枝先を尾行している最中、
助手席で端末を操り始めた初春に、白井がそう声を投げかけた。
病院を去るときに見たトラックは4台だった。
死角にいて見落としたかもしれないが、それならもっと多いことになる。
目の前を走るトラックは3台、数が合わない。
……もちろん全てのトラックが春上や枝先の輸送に絡んでいる保証はないので、
数が合わないことが即、異常というわけではない。
だが、例えば今追っているトラックは実は全く別の目的のトラックで、
自分達が勘違いしてる、なんて事があっては困る。
それで、下っ端警備員の権限でも閲覧できる監視カメラの映像を漁っているのだった。

「――我々がミスリードされている、と?」
「え? ああ、そういうんじゃなくてただ勘違いで、ってことです」
「そうか。君もそういう危惧を抱いたのかと思ったのだが、違ったか」
「え?」

木山が吐露した懸念に、佐天は首をかしげた。
トラックは百メートルほど先を車の流れに乗って走っている。
高速道路の上だから突然いなくなることはないし、そもそもあの巨体だ、隠れることは無理だろう。

「何かおかしなことでもあるんですか?」
「おかしなことではないかも知れないがね。目の前のあのトラック、相当の重量のものを積んでいるようだ」

軽い段差にタイヤが差し掛かるたび、積荷に衝撃が行かないようスプリングが揺れを緩衝する。
その揺れの周期が、どうにも重たげだった。トラックに詰めるだけ子供達を積んでも、あれほど重くはない。

「確かになんか、重そうですね」
「ああ。……そしてね、普通あの仕様のトラックに積むのが何か、君達は知っているか」
「えっと……」

考え込む佐天の隣で、風紀委員の白井はその答えがパワードスーツであることを知っていた。
それを告げようとしたところで、白井の携帯電話が音を立てた。
ディスプレイを確認すると、見慣れた同居人の名前。

「お姉さま?!」

慌てて白井はコールに答えた。
そして美琴の声からはかけ離れた、野太い声がしたことに戸惑った。

「よう、白井か」
「……誰ですの?」
「悪い、上条だ……って言って分かるか?」
「上条さん……ああ、婚后さんの彼氏、でしたわね」



404nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/24(金) 00:35:33.63yQ67roNoo (3/9)


さん付けでなどほとんど呼ばない相手をそう呼ばざるを得なかったことに僅かに顔をしかめながら、
白井はいったいどういう状況なのか、確認に努める。なぜ、婚后光子の彼氏がお姉さまと?

「わかってくれてよかった。ちょっと御坂のヤツに携帯借りてるんだ。聞きたいことがあってさ」
「あの、お姉さまは?」
「んっと、実は今ちょっとダウンしてる」
「ダウン?! 何がありましたの?」
「えっと、その御坂の件と俺の聞きたいことが関連してるんだけど……いいや、先に答えたほうが早いな。
 御坂のヤツ、それと後から俺と光子……婚后もだけど、あの病院の関係者に襲われた」
「えっ?!」

白井の驚きは二つあった。
いままで足繁く通った病院の関係者が、こちらに牙をむいたこと。
そして、それによって、学園都市最強の発電系能力者である美琴が、やられたこと。
その不穏な雰囲気を察したのだろう。後部座席、すぐ白井の隣にいる佐天はもちろん、
前にいる初春と木山の二人も聞き耳を立てた。
それを見て音量を上げつつ、白井は心を落ち着かせながら、情報の把握に努めた。

「そっちも病院に言ったって聞いた。大丈夫だったのか?」
「ええ。少なくとも、私達が病院に伺ったときには、暴力的なことはありませんでしたわ。
 ただ、春上さんやそのお友達の枝先さんという方たちが病院を移るから、
 面会をすることは出来ないと一方的に通告されましたの」
「そうか。御坂はそれを止めようとしてやられたらしい。
 んで、俺達はやられた御坂がどっかに連れて行かれかけたところに出くわしたんだ」
「そう、ですの。……まずはお礼を。上条さん、お姉さまを助けてくださってありがとうございます」
「……俺は礼を言われるほどのことは出来なかったけどな。それで、今はどうしてるんだ?」
「私達は今、MARのトラックを追跡しています」
「え? そっちもか」
「ということは、上条さんたちも?」
「ああ。かなり離れてるが、MARのトラックを一台かっぱらった」
「そうでしたの。あの、お姉さまに替わっていただけませんか?」
「そうだな、いきなり俺がかけて悪かった」
「いえ、緊急時ですから」

謝罪もそこそこに、上条は受話器を美琴に返してくれたらしかった。
荒事の真っ最中だが、当麻はちゃんと落ち着いていて、話し合えるいい相手だった。
携帯から耳を離さずにいると、程なくして美琴の声が聞こえた。

「……黒子」
「お姉さま! ご無事ですの?!」
「ああ、うん。アンタのキンキン声で耳が鳴ってる以外は平気」
「そんな言い方、つれないですわ」
「で、私に替わってって、何かあった?」
「いいえ。お姉さまのお声を聞いて、黒子の励みにしたかっただけですわ」

本心は違っていた。声を聞いて、美琴が大丈夫かを確認したかったのだった。
白井の『お姉さま』は普通に戦って傷つくような実力の人ではない。
だからそれが折られたとなれば相当な事態だと思えるし、安否はきちんと聞いておきたかった。
もちろん、ストレートに心配なんてしたら、この天邪鬼のお姉さまは大丈夫だって言い張るに決まっているのだ。

「……そ。ならもう補充したわね。またアイツに替わればいい?」
「ああ、待ってくださいお姉さま。出来ればもっと黒子を優しく励ましてくださいまし」
「ったく。世話の焼ける。ほら、頑張んないと夏休み後半の予定、アンタ以外の知り合いと遊ぶので埋めるわよ」
「え、ちょっとお姉さま、そんな酷い――」
「白井か? また替わった。それで、これからのことなんだけど」

美琴にもう少し言い募ろうとしたところで上条にまた替わってしまった。
当麻には聞こえないようにはあとため息をついて、もう一度その声に応える。

「なんですの?」
「行き先とか、そっちは把握してるかって――」
「白井さん! 御坂さんたちにも教えてください! 前のトラック、多分ダミーです!!」
「えっ?!」

当麻との会話を遮るように、助手席の初春が突然に叫んだ。



405nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/24(金) 00:36:27.53yQ67roNoo (4/9)

>>402
詩菜さん書きたいなー


406nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/24(金) 01:42:56.31yQ67roNoo (5/9)


「初春! どういうことですの?!」
「今、MARの病院近くの監視カメラの映像にアクセスしたんですけど、私達が前方のトラックを追ってから、
 後発のトラックが別方向に向かってるんです! それに前のトラック、私達が追いつくまでかなり低速運転してます。
 見た感じ、あっちが本命ですよ!」
「そちらのトラックの行き先は?!」
「えっと、高速に乗って初めの分岐で曲がってますから……」
「人も少ないし、病院も少ない学区のほうだな」
「そうですね」
「……木原幻生の、研究所がある。そちらには」
「え?!」

まさか、と初春は思った。
木山と枝先たちが巻き込まれた悪夢を取り仕切った研究者。
そんなところに、転院するはずの枝先たちが、行くはずがない。

「おい白井! 今木原って名前が聞こえたけど」
「え、ええ」
「それテレスティーナの親類か?」
「え!? どうしてですの?」
「あの人のフルネーム、パンフレットで見た。テレスティーナ・木原・ライフラインだ」
「そんな……」

ガンッ! と木山が力任せにハンドルを殴りつけた。
けたたましいクラクションが鳴って、何事かと周囲の車が不審げな挙動をとる。
その中、木山は周りの迷惑を一切意に介さず、乗客三人に光告げた。

「舌を噛まないように気をつけろ!」
「え?!」
「反対車線に出る!」

言うが早いか、木山が高速道路の真上で、駐車でもするときのように非常識な角度までハンドルを捻った。
タイヤがギャリリリリリリリとアスファルトに爪を立てた。。

「うわわわっ!」
「きゅ、急すぎますわ!」
「へ、えぇぇぇぇぇっっ?!?!」
「お、おい! 大丈夫か?」

上条が悲鳴に反応してこちらをうかがう。未だ続く横殴りの加速度に抗いつつ、白井は怒鳴り声を返す。

「今から木原の研究施設に向かいます! お姉さまの携帯……いえ、
 佐天さんの携帯から婚后さんの携帯に目的の場所を転送しますから!」
「わかった! ……ってそっちは青のスポーツカーか! コッチから無茶苦茶な車が見えた!」
「それですわ。こちらも一台きりのMARのトラックを確認しました。難しいでしょうが、
 上条さんたちも早く引き返してくださいませ!」
「ああ、わかった。とりあえず用件は済んだけど、しばらく繋いでるぞ」
「ええ。話があれば私がすぐに出ますから」

白井は当麻にそう告げて、車と車の間をすり抜けていく木山の横顔を見つめた。
大切な生徒の、無事を願う顔だった。



407nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/24(金) 02:32:46.47yQ67roNoo (6/9)


当麻は白井との話を一旦打ち切って、ステイルに声をかけた。

「ステイル、こっちのトラック、後発の癖に先発のダミーを追いかけてる!」
「そんなこと僕に言われても知るものか」
「責めてるんじゃねえよ。すぐに行き先変えてくれ!」
「チッ……どう指示すればいい」
「どうって」
「行き先の名前は? それも分からずあの運転席の男に命令するのは難しいぞ」
「行き先はこちらです!」

光子が佐天から送られてきた情報をステイルに渡す。
すぐさまステイルがトラック前部の男に話しかけ始めた。

「上条さん! 聞こえています?」
「なんだ白井」
「ダミーのトラックが!」

当麻はその言葉に反応して、ステイルの隣から前方を覗いた。
3台のMARのトラックが、強引に車を止めていた。
そしてハッチを開き、その重たい鋼鉄製の積荷を開帳した。
合計、九台のパワードスーツ。対テロ制圧用クラスの重装備で、
普通の学園都市の生徒など相手にもならないレベルだった。

「マジかよ……」

当麻はうめくように呟いた。トラックではこの込み合った高速でスピードも出ないが、
高機動パッケージを積んだパワードスーツなら白井たちのスポーツカーにも追いつけるかもしれない。
そして、鈍重なトラックしかない自分達など、到底逃げ切れないだろう。
当麻の後ろで、光子が美琴に歩み寄った。

「御坂さん」
「婚后さん?」
「御坂さんは、レベル5の、常盤台のエースでしたのね」
「へ?」
「私、つい最近まで存じ上げませんでしたの。ごめんなさい」
「それはいいけど……」

突然のその言葉に、美琴は戸惑った。
どこか、美琴を試すように、あるいは勇気付けるように、光子が挑戦的な笑みを美琴に向けた。

「ねえ御坂さん、このトラックから、対向車線を走るあの車に、取り付くことはできますの?」
「え?」
「一番の戦力が、こんなところで足止めなんていうのはおかしな事ですわ」
「……」
「あの邪魔な追っ手なら露払いを済ませて起きますから、御坂さんは白井さんたちと先に行って頂戴」
「婚后さん……」



408nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/24(金) 02:34:34.63yQ67roNoo (7/9)


美琴は改めて、自分に問う。
こんなことを、自分はしている場合だろうか。
ここで力を使って、テレスティーナを止めても、妹達を助けるのに何一つためにはならない。
だから、この事件は誰かに任せて、自分は自分のことをすべきだろうか。
美琴は自分を見つめる光子から視線を外して、光子の、彼氏の背中に目をやった。
赤髪長身の、ステイルといっただろうか。その人といがみ合いながら必死に打開策を練っている。
ふっと、それを見て美琴は笑った。
今、ここを離れても、自分は絶対に後悔するのだ。枝先や春上たちを放っては、やはりいけないのだ。
それが、御坂美琴という人間なのだと思う。後で後悔だってするかもしれないけれど、それでも、動くのだ。

「ありがと、婚后さん」
「お礼なんて要りませんわ」
「うん」

それだけ言葉を交わし、美琴は当麻のほうに近づいて、乱暴に押しのけた。
このトラックのハッチを開くボタンがそこにあったからだ。

「お、おい御坂、なんだよ」
「邪魔。……私、行くから」
「へ? 行くって?」
「ありがと、と、と、とう、ま」
「え、なんだって?」
「なんでもない! じゃ!」
「あ、おい!」

光子の顔は見なかった。小声で言ったから気づかれなかったかもしれないし。
もう、能力は本調子。
ちょうどおあつらえ向きに迫ってきた、見覚えのあるスポーツカーに向かって、美琴はダイブした。
相対速度は、時速100キロくらいあった。

「光子、御坂のヤツ」
「あれでいいんですわ。ステイルさん、車のターンはまだですの?」
「今、減速しているだろう。もう少し待つんだね」
「……ということは、運転手の方への指示は済みましのね」
「ああ。済んだけど」
「それは重畳」

クスリと笑って、光子はステイルの背中に優しく触れた。
気味悪げに、ステイルが光子の顔を見た。

「なんだい」
「みつこ?」

光子は当麻とインデックス、そしてエリスの顔を見渡した。

「当麻さん。可愛らしい女の子二人だからって、変な気はくれぐれも起こさないで」
「へ?」



409nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/24(金) 02:37:04.82yQ67roNoo (8/9)


当麻に、自分が浮かべられる飛び切りの笑顔にちょっとだけ嫉妬を混ぜて、気持ちを伝える。
そしてまだ疑問顔のステイルに、光子はため息をついてやった。
光子の能力で気絶さえしたことが有るというのに、触れられて無頓着とは、どういうことか。

「婚后。君は一体何を――」
「私達は口より手を動かすのが先ですわ」

そう言って、自分とステイルに蓄えていた気体を、光子は噴出させた。

「うわっ!」
「みつこ!? ステイル!」
「インデックス! こちらは私達に任せて!」
「君は一体何を! 僕がいなくなったらトラックの行き先は変更できないんだぞ!?」
「大丈夫! 私が何とかするから!」

超能力者エリスは、人の心を操ることが出来る。
魔術師としてのエリスを知る他の面子は、エリスが魔術でそれをするものと思い込んだ。
勘違いをエリスは正さない。

「光子……」
「当麻さん。適材適所、ですわ。私はここで、あちらの方々を制圧します」
「……無茶するなよ」
「あら、それは当麻さんこそ自分で自分にお言い聞かせになって」

トラックがギヤを入れ替え、アクセルを踏んだのが分かった。
名残を惜しむ場面でもない。しばし光子は当麻と見詰め合って、そしてすぐさま目の前の課題に集中した。
ステイルはさすがに荒事には慣れていた。やれやれという風にため息をついて、起動を完了させたパワードスーツを眺めた。

「ひどい無茶をやってくれたものだ」
「あら、そうは思いませんわ。超能力者の事情には関われないのでしょう?」
「もうとっくに巻き込まれているだろう」
「目の前のあれは、超能力とは全く関係のない、ただの最新鋭のブリキのおもちゃですわ」
「それにしては随分と攻撃的だ」

それに取り合わず、光子はステイルの腰に腕を回した。

「遠距離戦では周りに被害が出ます。とりあえず肉薄しますから、さっさと必要なビラ配りは済ませて頂戴」
「ビラとは失礼な。それと、準備は5秒で事足りるよ」

光子はステイルを引き連れ、敵地へと赴いた。
自分達がパワードスーツの連中を見逃せば、インデックスに危害が及ぶかもしれない。
インデックスを人質に取っていることになるのは不本意だが、
ステイルが本気で目の前の連中を足止めするだろうことには、光子は自身があった。

炎の魔術師と風の超能力者、それに対するは9機の学園都市製パワードスーツ。
気に食わない相棒だが、相性は悪くない。
光子はステイルを信頼して、今この瞬間は、背中を預けることに決めた。

「行きますわよ!」
「ああ!」


410nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/24(金) 02:38:32.68yQ67roNoo (9/9)

話数的にこの辺で切ろうかな。
佐天さんがまだ動いてくれんかった。

あと、バトルは勢いで書かんと勢いが出ないので、ちょっと情報不足があるかも。
Arcadiaの段階ではきちっと修正します。ごめんよ。


411VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/06/24(金) 07:02:38.18Yq55mI5AO (1/1)

イノケンさんの中の人はよく働くなぁ


412VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/24(金) 07:41:18.16/Z79ZrNIO (1/1)

このタッグ…かっけぇなぁ


413VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/24(金) 09:40:59.41KyStswpN0 (1/1)

マジかっけえ。ハイウェイの見せ場がどうなるのかと思ってたけどこう来たか。



414VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/24(金) 10:20:14.82QfwN3eLco (1/1)

光子がんばれー


415VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/06/24(金) 10:53:49.905bYkxDyX0 (1/1)

またイノケンさんの活躍が見れるのか。しかもこの二人という異色のタッグ。
こりゃ見逃せんわい。
前にも言ったことあるかもしれないが、白井の上条さんへの対応が普通で、逆に違和感を感じてしまう。



416VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/06/24(金) 11:29:51.60xYXMfgDRo (1/1)

黒子は上条さんが光子と恋仲であることを知ってる上に、
その二人が浮気するような人間じゃないと考える程度には信用してるんじゃね?

逆に美琴が二人の関係を知らなかったことを知らなくて、
まさか憧れのおねえさまが横恋慕なんてすることもあるまい、と。

そういう前提なら黒子にとって上条さんは只の高校生でしかないわけで、
良い意味でも悪い意味でも特になんとも思ってなさそうだ。
まあ光子の恋人っていう意味でいろいろ呆れるところとかはあるのかもしれんが。


417VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県)2011/06/24(金) 18:03:57.84xE5OKHOZo (1/1)

上条さん、光子がいない間に女の子の集団に放りこまれるのか・・・
フラグ乱立しちまうぞwwwwwwww


418VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)2011/06/24(金) 18:39:25.22ZMIOZXLPo (1/1)

>>417
本気で言ってるなら病院へゴー



419VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/06/25(土) 00:50:09.044MguiaFAO (1/1)

たとえフラグが立っても光子さんが根こそぎへし折るから問題無いさ


420VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/25(土) 04:30:19.86KuzSN5Dao (1/1)

上条体質ならフラグ建築もあるだろう。
だけんども、相手がいると知っていると心構えが違うのではなかろうか。
光子さんや禁書がばっさばっさとへし折るだろうし。
黒子が光子さんと和解(?)するきっかけになるかもしらんしね。

しかしかつて矛を交えた二人がタッグを組むとか熱い展開やね



421VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/06/25(土) 06:56:00.881lHWy2xAO (1/2)

おお暴れするイノケンさんと
ステイルミサイルとマグヌスボンバーで奮闘するこんごーさんか。

ハイウェイが熱くなるな


422nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/25(土) 12:26:59.46yJN/4XUmo (1/5)

ハイウェイの見せ場を考えてるうちに、このタッグは自然と決まったな。
ベタベタの王道ネタだけど、こういうの好きです。

>>415
まあ、>>416の言うような感じで、俺はこういう普通な対応だと思うのよー

>>419
光子さんがそれ本気でやりだしたら結構怖いよね。自分でそういう描写しといてなんだけど。

>>421
もうやめて! ステイルのHPはとっくにゼロよ!



423nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/25(土) 12:28:07.48yJN/4XUmo (2/5)


木山がスポーツカーのアクセルを踏み、美琴たちの乗ったトラックとすれ違おうとしたその時だった。
白井は窓の外に、とんでもない無茶をやる美琴の姿を見た。

「お姉さま?!」
「えっ?」

戸惑う佐天と初春をよそに、白井は窓を開け、身を乗り出す。

「ちょっと、み、御坂さん?!」

呼吸が苦しいのか顔をしかめた美琴が、加速中のスポーツカーに追随していた。
もちろん足で走ってのことなどではない。
糸で繋いだタコのように、スポーツカーの斜め上に浮いているのだ。
糸の正体は、美琴の生み出した磁力だった。

「くっ、お姉さま! 無茶にも程があります!」

白井は窓を前回にして、ほぼ半身を乗り出す。
佐天は驚いて、白井の下半身に抱きついて支えた。

「手を! お姉さま!」

無言、というか返事する余裕のない美琴に手を伸ばす。
レベル5の面目躍如というか、力任せすぎる出力でスポーツカーとの距離を詰め、
そして白井の伸ばした手に自らの手を重ねようとする。
だが美琴の体を時速数十キロの突風が乱流で上下左右に振るせいで、なかなか繋ぐことが出来ない。

「ああもう!」

相対速度がこれだけ近ければ問題ない。白井はそう判断して、シュン、と車内から姿を消した。
そして美琴の隣に現れ、首根っこにしがみついた。

「お姉さまっ」
「黒子?!」
「戻りますわ!」

高速で走る車からのテレポート、そして空気抵抗で減速する前に帰還。
それを一瞬で済ませ、黒子と美琴は後部座席に返り咲いた。

「いたっ!」
「ちょ、ちょっと白井さん。危ないですよ!」
「何を仰いますの佐天さん。レベル4の空間転移能力者として、この程度は当然可能なことですわ」

フッと白井はそう不敵に笑って、そして美琴へのスキンシップを再開した。

「もう! お姉さまったら昨日の夜からどちらにお出かけしていましたの?
 黒子はそれはそれは心配しましたのよ」
「……ごめんね、黒子」
「え? あ、はい。分かっていただければ……」



424nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/25(土) 12:30:06.80yJN/4XUmo (3/5)


素直な美琴の態度に、白井は面食らってしまった。

「あの、それで何をしてらっっしゃいましたの?」
「ちょっと、ね。この件の調べ物をしに木原幻生の研究所に忍び込んだんだけど、空振りでさ」

美琴はそれ以上を語るつもりは無かった。
そしてポケットの軽さに気づいて、美琴は携帯を忘れてきたことに気がついた。

「携帯はあっちに置いてきちゃったか」
「ああ、そういえば上条さんにお渡ししたままですわね。お姉さまの携帯とまだ、繋がってますけれど」
「じゃそのままでいいわ。あのバカに、後で延滞料金つきで返しに持ってきなさいって言っといて」
「はあ。……あのバカ、さんにですのね?」
「え?」

白井は美琴の不用意な一言で理解した。美琴の言う「あのバカ」が一体誰なのかを。
言われてみれば、なるほどという気はしないでもない。
レベル0の癖にこんな厄介ごとに首を突っ込んで、無茶をやっているなんて、確かにバカそのものだろう。
そういう意味では、光子よりも美琴のほうが、相手として納得が行くかもしれない。あの上条当麻の連れ合いとしては。
だって、いつだって自分の大切なこのお姉さまは、見過ごせないものを見過ごさない、カッコいい人なのだ。

「なんでもありませんわ。後で上条さんにお伝えしておきます。それで初春、この車なら追いつけますの?」
「追いつくのは無理です。距離が離れすぎてますから。でも、行き先は分かりますから問題はそこじゃありません」

前方の景色と手元の端末の映像とに忙しく視線を往復させながら、初春はそう返事する。
問題は、追いつけないだとかそういうことではなかった。

「木山先生、春上さんたちを乗せるのにトラックって何台必要ですか」
「二台もあれば事足りる」
「……白井さん。追いかけてるトラックは、四台です。ちなみにさっきのトラックには、
 一台あたり三機のパワードスーツが積まれてました」
「つまり、六機にいずれ襲撃される、と初春は言いたいんですのね」
「はい」

しばしの沈黙が、車内にエンジン音を響かせる。
美琴がその懸念を、ハン、と鼻で笑った。

「上等。邪魔するなら、退場してもらうだけね」
「ですわね。で、あちらとの接触はどこになりそうですの?」
「あっちがどう動くかによります。すぐにじゃないと思いますけど、正確なことはわかりません」
「じゃあ皆でしっかり周りに注意してろってことだよね」
「はい。木山先生は運転に集中してください」
「ああ、分かっている」

美琴が割り込んで白井と絡まっていたのを強引にはがし、窓側に座る。
白井は何かがあっても自力で逃げられるし、こちらから手を出す際にも窓際にいる必要がない。
美琴は反対の窓側にいる佐天を見つめた。

「御坂さん?」
「何度かチラッと見ただけだけど。佐天さん、もう充分に戦力になるよね」
「えっ?」

そう言われるのが嬉しくて、佐天は思わず胸を高鳴らせた。
レベルなんて勿論関係なくお付き合いしているが、美琴は、誰もが憧れるレベル5の人だから。



425nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/25(土) 12:32:04.06yJN/4XUmo (4/5)


「無理はしなくていい、ってか出来ないだろうけど。ノーマークの能力者がいるって、それだけで脅威だから」

美琴も、そして風紀委員の白井もある意味有名人だ。その二人についてはあちらも警戒しているだろう。
そこに、空力使いが紛れ込むことは、決してマイナスではない。
断片的に見た佐天の能力者としてのセンス、そして光子から伝え聞くそのポテンシャルの高さ。
レベル3相当なら、少なくともかく乱には充分使える。

「私、頑張ります!」

佐天がそう宣言した直後だった。
初春と木山が見つめる前方、高速道路が別の路線へ分岐するポイントで。

「バリケード!?」
「MARのマークが入っている! 封鎖でこちらの足止めか!」
「御坂さん! あれ壊せますか?」

初春が振り返って美琴に訪ねる。

「止まらないと無理。レールガンじゃ、あれは壊せない」
「時間が、惜しいのに……」

目前、あと200メートルに迫るバリケードは、赤い三角コーナーとプラスチックの棒で出来たような粗末なものではない。
鋼鉄製の骨子が格子状に組まれ、トラックでも止められそうな頑丈なヤツだった。
恐らくは鉄製だから美琴の磁力は通じるから、至近距離に近づけばどうとでもなる。
だが、ポケットの中のコインくらいでどうこうできる質量ではなかった。
悪態をついて、木山がブレーキに足を伸ばした。
それを。

「待って!」

佐天が止めた。
バリケードの張られたジャンクションまで、もう100メートル。

「あれ越えよう!」
「佐天さん?! 私と黒子じゃ無理!」

白井のテレポートはこの車を動かすだけの力はない。
だから美琴たち二人には無理なことだった。
ただ、佐天の言葉は他力を願う響きではなかった。

「大丈夫です! 私が飛ばします!」
「佐天さん?!」

初春が驚いた目で佐天を見つめる。

「木山先生! スピード上げて! 時速150以上!」
「……分かった。君を信じる」

時間を惜しんで、木山は自分の納得を脇に放り投げた。
佐天がさっきの白井みたいに、初春のいる助手席に割り込んで、そして窓を開けて半身を乗り出す。



426nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/25(土) 12:34:33.21yJN/4XUmo (5/5)


「初春、支えててね! お尻触ってもいいから」
「さ、佐天さん! こんな時に何言ってるんですか!!」
「こんな時だからだよっ! ――――いくよっ!!」

佐天は、突き出した左手に、ありったけの空気を集めた。
この車が、スポーツカーでよかった。
鈍重なトラックや風の流れに無頓着なファミリーカーなら、こんなマネは出来なかった。
美琴は車内から佐天の能力を見つめる。空力使いではない自分に佐天のしていることは目に見えない。
だが、その威力の大きさはすぐ実感することになった。

「なっ?!」

バリケードの直前で、木山は慌ててハンドルにカウンターを当てた。
佐天のいる助手席側に、車が急に曲がっていったからだ。原理は野球の球が曲がるのと同じ。
問題は、佐天の手のひらの、たった数センチの渦が車を動かすだけの出力を誇っていることだった。

「先生! 絶対ブレーキ踏まないで!」
「失敗すれば死ぬのは君だぞ!」

バリケードは格子状だからしなやかだ。恐らく、車内の四人はぶつかっても生き残れる。
半身を乗り出した佐天はどう足掻いても無理だった。
だが、そんな状況に、佐天は一向に不安を抱いていなかった。
だって、コレは、自分ならできることだから。賭けだとか、そんなんじゃない。
渦流の紡ぎ手たる自分が、こんなことを出来るのは、ごく当たり前のことだ。

「佐天さん……!」

バリケードが迫る。もう、ブレーキを踏んだって衝突を回避は出来ない。
初春が祈るように佐天の名前を呟く。

「はああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

佐天が車のボンネットに、いや、その少し先に向かって、何かを投げつける仕草をした。
――直後。
ブワッという鈍い音がして、木山のスポーツカーの鼻先が、バリケードの少し上まで持ち上がった。

「きゃっ!」
「佐天さん! 車! 落ちちゃう!」

幅跳びをする選手のように、スポーツカーは絶妙な高さでバリケードを越えた。
そして車内で誰かが悲鳴を上げたとおり、高さ1メートル50センチまで持ち上がれば、上がった分だけ落ちるのだ。
佐天はすでに次の渦を、手元に用意している。数は、四つ。
こっちのほうが、むしろ佐天は不安だった。
――――渦の同時生成はもうできる。けど、問題はその四つを独立に制御すること!
乱暴に持ち上げ、そして突風にさらされたスポーツカーは、タイヤを綺麗に地面にむけていない。
真っ直ぐ落ちれば佐天の後ろの助手席側後輪が一番に落ちて衝撃を受けることになる。
こうした問題を調整するには、それぞれのタイヤの下にクッションとして置く渦を、独立に操らないといけない。
佐天は目を凝らしタイヤと地面の位置を測る。
そして五感で検知できない風の流れを読み取って、いつ、どんな出力で渦を解放すべきか、決定する。
その演算能力は、実用レベルとされる水域に、充分に達していた。

「ふっ!」

まずは左後輪。そこに置いた渦を、佐天は歯を食いしばって維持する。
トンのオーダーに迫る重量の車重に耐えるのは、酷くコントロールを要求されることだった。
そして、その間に残ったタイヤの下に三つの渦を配る。
真っ先に落ちてきた左後輪の対角にある右前輪の渦だけ出力を落とす。
これなら、細工は流麗、なんて言ってもいいだろう。

「後は仕上げをご覧あれってね!」

威力を丁寧に振り分けた渦が四つ、同時に破裂した。
スポーツカーは車体の傾きを直しながら、四つのタイヤで見事に接地を果たす。

「わっ! これ、大丈夫!?」
「オフロードはもっと酷いよ。大丈夫だった。やるじゃないか」
「へへ。私、役に立てましたよね」
「やりますわね、佐天さん」

車内に戻ってバサバサになった髪を直す佐天を軽く横目に初春は見つめる。
ちょっと置いていかれて悔しい感じは擦るけれど、眩しい笑顔が、格好よかった。
そして再び、ディスプレイに目を落とす。
自分の戦う場所は、ここだ。まだすべきことが終わったわけじゃない。
遭遇するかもしれないパワードスーツの部隊との接触に備え、情報を集めることが必要だった。



427VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/25(土) 12:45:53.61W8PKfYqX0 (1/1)

マッハ号かwww


428VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/06/25(土) 12:48:06.50BeN+EF0I0 (1/1)

佐天さんのお尻を支える役目は任せろ―(バキバキ
でもこれでレベル3とか高レベル能力者の凄さが半端ない。

原作は魔術サイドのトンデモが多いですしね


429VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/06/25(土) 13:00:48.16E7CWrU6Zo (1/1)

スーパー佐天さんタイムが格好良すぎて師匠である光子さんより凄そうに見えるから困るww
成長していく過程とかも読んでる分描写の濃さが光子さんより多いせいかなぁ
ステイルと光子の共闘にも期待してます!


430VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/06/25(土) 13:08:28.674d/4+97a0 (1/1)

乙かれ。
皆それぞれできることがあるっていうのはいいことだな。


431VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/06/25(土) 15:18:43.451lHWy2xAO (2/2)

おい初春そこ代われ


432VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/25(土) 15:42:07.15CMURiMjF0 (1/1)

佐天さん「お尻触ってもいいから」
サワ ヾ(//▽//)ノ゛ サワ

お疲れ様です
盛り上がってきましたねー!


433VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)2011/06/25(土) 15:44:41.31tZNvrkSJo (1/1)


なんのかんのいっても黒子は気の利く良い子だねえ


434VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2011/06/26(日) 06:15:45.478MJ+FbaYo (1/1)

茶店さんより黒子のすごさがやばい


435VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/26(日) 11:02:40.948gYGFlsFo (1/1)

お尻触ってもいいからアッー!

…ふぅ


436VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/26(日) 11:11:44.42LIHNWpSjo (1/1)

まあ、初春はサービスマンレベルに露出してるからな


437nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/28(火) 02:39:03.64rzbHFZ1No (1/1)

みんな佐天さんのお尻が好きなんかw

次ちょっと戦闘シーンで難産だ。。。
ちゃんとキリの良いとこまで書かないと展開の全修正がありえるからなあ。バトルは。
明日には書きあがるかなー



438VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方)2011/06/28(火) 03:01:01.44MHvF4lFio (1/1)

ああ、お尻は大好きであるが何か問題あるのであるか?
待ってる


439VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/06/28(火) 07:13:04.54HH5bVQ4AO (1/1)

お尻が嫌いな人なんていません!


440VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/28(火) 12:14:26.82qttiOGmC0 (1/1)

佐天さんの心も顔も胸もお尻も全部好きですがなにか?


441VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県)2011/06/28(火) 17:45:09.19u2JeP1Jc0 (1/1)

佐天さんのお尻とか超好物です


442VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/28(火) 23:13:24.064fv6JWpvo (1/1)

よく考えたら小学生に毛が生えたような尻だな佐天さん
まだ中一になって半年だし


443nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/29(水) 00:23:34.175HY5pH0go (1/8)


ステイルと光子が九機のパワードスーツの元へとたどり着くのと、
あちらがスタンバイを済ませたのはほぼ同時だった。

「早く準備をなさって」
「人使いの荒いことだ。分かっているよ」

ステイルは文句を言うより先に、すでに手を動かしていた。ルーンを刻んだカードが、
意志を持ったように周囲の壁という壁に張り付いていく。
パワードスーツの一団は、六機が高機動パッケージを装備し、残り三機がこちらの相手をする腹積もりらしい。
もちろん光子は、一機たりとて逃がすつもりはない。

「いつでもどうぞ」
「ご苦労様ですわ」

光子はステイルを労うと、まるで無警戒に、パワードスーツに近づいた。
ここからさっさと立ち去り、当麻や美琴たちに迫ろうとしているほうの一機だった。
そのパワードスーツは光子の行動の意図を読めなかったのだろう、警告すべきか、無視すべきか、
戸惑いをその動きに反映させた。
その機体の太もも辺りをコンコンと叩いて、光子は中の人間に声をかけた。

「常盤台中学二年、婚后光子と申します。春上衿衣さんを誘拐した件についてお伺いしたいのですけれど?」

慇懃に、光子は笑いかけてやる。
当麻の目の前ではこんな底意地の悪い顔をしたことはないが、今は別だ。
返答が、スピーカー越しの声で帰ってきた。

「誘拐とは何のことだ? 我々は彼女を看ている救助隊の者だが」
「その救助隊が一体どうして高速道路の往来でそんな物騒なものをお出しになっているの?」
「言わなくてもそちらが知っているだろう。すまないが、話をする暇はない」
「そう。強引に突破するというなら、お友達の皆さんを守るために、私達はあなた方を制圧します。正義がどちらにあるか、ちゃんと理解なさっていますわね?」
「ああ。若さゆえの過ちというのは誰にでもある。幸い君の歳ならまだ前科もつかないだろう。後で社会の常識をきちんと学ぶといい」

ステイルは先ほどから、このやり取りに興味がないのかそっぽを向いてタバコを吸っている。
それが決して油断を意味しないことを、光子は分かっていた。流れてきたタバコの臭いが鬱陶しくて、軽く扇子で払った。
……良くない傾向だ、と思う。ステイルといると、なんだか悪役<ヒール>めいた笑顔を浮かべたくなってくるのだった。
あくまで楚々と、自分らしい仕草や身のこなしで悠然と振舞いながら、光子は瞳の中にだけ侮蔑を込めて呟く。

「暴走能力者を利用して体晶の投与実験を行おうとするあなた方が、常識を語りますの? 本当、社会になじめないクズほど、臆面もなく開き直りますのね」

クズ、という表現を光子は生まれてはじめて使った。
自分の中の攻撃的な側面が、それでカチンとスイッチが入ったように動き始めたのが分かる。
つい一ヶ月前までは純粋培養のお嬢様で荒事なんてまったく経験が無かった。
当麻と二人でインデックスを助けるために危険に身をさらし、そして今、戦うためのメンタリティというものを光子は身につけつつあった。
暴力を振るうことは良くない、という金科玉条を抱いてきたこれまでの光子には考えられない変化だった。

「……君は物知りだね。さて、我々は患者の安全を守るため、君達を排除する。抵抗しなければこちらも酷いことはしないよ」
「それなりに面白い冗談だ。君の同僚が僕らの前で、秘密を知った人間は元の世界には帰さないって言った後だから尚更ね」

ステイルがフィルター前まで吸いきったタバコを地面に捨てた。
それが、合図になった。



444nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/29(水) 00:24:23.225HY5pH0go (2/8)


ギュアッ、とアクチュエーターの音を鳴らしながら、パワードスーツが光子に腕を伸ばした。
今光子と話をしていたのとは別の、ここで光子たちの相手をする気の一台だった。

「ステイルさん!」

その相手を、光子はしない。
一言ステイルの名を叫ぶと、光子の変わりに魔女狩りの王<イノケンティウス>がパワードスーツと力比べをする格好になった。

「なっ!? クソ、発火能力者<パイロキネシスト>か」
「さあ、それはどうだろうね」

ステイルがそう嘯く。その隣で高機動パッケージを積んだほうのチームが動き出した。

「かなり遅れをとっているんだ。追いつけるうちにさっさと行くぞ」
「させませんわ!」
「退け。怪我をしたくないならな」
「別にあなた方の進路に身をさらしたりなんてしませんわよ?」

声色に笑ったような響きを込め、光子はトントンと靴のつま先で地面を叩き、ローファの履き心地を確かめた。
そして最後にもう一度、ステイルと視線を交わした。

「ステイルさん、では、はじめましょうか」
「手短にやろう」

そんな短い一言を交わして、光子は扇子をぱたんと閉じた。
そして先ほど迂闊にも光子に接触を許したパワードスーツに仕込んだ、風の噴出点を開放する。

――――ゴウァッッッ!!!

「うわっ! な、なんだ?! お、おおおおぉぉぉ!!」

高機動パッケージを積んだ六機の先頭にいたパワードスーツが、突然自分の太ももから噴出した突風に、体の制御を失った。
尻餅をつくようになすすべなく後ろにこけて、同僚を巻き込む。
その隣で魔女狩りの王と取っ組み合いをしていた一機が装甲を溶かす熱量に怯えながら毒づいた。

「クソッ、いい加減に離れろ!」
「わかった。離れよう」

ステイルが新しいタバコを胸元から取り出しながら、応用に応じた。
突如として、魔女狩りの王はそのパワードスーツの前から消え去る。

「何?!」

驚いた声を出しながらも、目の前の恐怖が去ったことに、一瞬パワードスーツの仲の男は安堵を覚えた。
だがその油断が、まさに余計。
魔女狩りの王が突如として男の後ろに現れ、機体に抱きついた。
計器がエラーをがなりたて、男は一瞬にして混乱の渦に落ちていく。



445nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/29(水) 00:25:19.115HY5pH0go (3/8)


「ヒッ?! ああっ?! 嫌だ! 火が、火が! 誰か離してくれ! 背中に火が!」
「脱出用の仕組みがあるんだろう? 別に君が死んでも僕は……ああ、今回は死なないでいてくれたほうがありがたいのか。
 おい、頑張って助かりなよ」

いかなる存在であっても、学園都市の人間を殺すのは魔術師ステイルにとっては剣呑だ。
インデックスを傷つけると明言した相手だから、超能力者でないこの男達はどのように扱っても揉み消すのも無理ではないが、
要らぬ貸しを作るのは面倒だった。

「クソ、おそらく連中はレベル4だ! アレを起動しろ!」
「ステイルさん!」
「分かっているよ」

連中がキャパシティダウンを起動させようとしているのは、すぐに分かった。
ステイルとて9対1は御免こうむりたいので、光子の指示に従う。
キャパシティダウンは見た目はただの大型スピーカーだ。
ハッチを開きっぱなしなので、それを積んでいるトラックは一目瞭然だった。
魔女狩りの王は、ルーンで決めた領域の中なら顕現する場所を好きに決められる。
パワードスーツ部隊の誰かがキャパシティダウンを鳴らすより先に、
ステイルは魔女狩りの王をそのスピーカーに触れさせた。

「!? 起動しません!」

隊員の一人が叫ぶ。取り乱した隊員とは別の隊員が、ステイルに銃口を向けて檄を飛ばす。

「あの赤髪が無防備だ!」
「させませんわよ」

光子はパワードスーツの連中の注意が自分から逸れたのを利用して、トンと地面を蹴って飛躍した。
目の高さより上にあるものを人は中々認識しないものだ。
そんな高さを滑空し、光子はタンタンと二機の頭部を足で踏みつける。
優雅なステップだったが、その足取りはスケートリンクの上の踊り子よりずっと速い。

「馬鹿が! あのメスガキに触られるな!」
「えっ?!」

光子の能力発動のトリガーが接触であることに、隊員の一人が気づいた。
だが察しの鈍かった二人はコレでリタイアだった。
バシュゥゥゥゥッッッッ!!
銃もその他装備も満足にあったのに、二機はそれを活用することなく、メチャクチャな縦回転をしながら吹き飛ぶ。

「えええああああっっ?!」
「なんだ?! おい、うわあああああ!!」

特にカーブもない、ストレートな高速道路だから壁の高さも強度も無かった。
二期はぐしゃんと透明のプラスチック壁に衝突し、それを壊しながら下に落下した。
学園都市の安全機構なら、アレでも死なない位のことはやってのけるだろう。
戦闘機動は取れなくなるだろうことにも、光子は確信があった。

――――あと、五機。

後ろを振り返ると、一般人が車を乗り捨て、走って逃げていた。
無理もない。20メートル先でこんな大立ち回りを去れれば誰だって身の危険を感じる。

「余所見をするな!」

ステイルのその叫びで光子はハッとなる。
目の前には、ようやく反撃の体制を整えたパワードスーツが、こちらに銃口を向けていた。
ステイルがいつの間にか光子の隣を駆けていた。
目指す先は誰かの乗り捨てた大型のワゴン。



446nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/29(水) 00:27:27.235HY5pH0go (4/8)


「バリケードを!」
「分かりました!」

魔女狩りの王が仕事を追えてステイルや光子とパワードスーツの間に顕現する。
狙いを定めるのが速かった敵との射線をそれで塞ぎ、えられた一瞬で光子はワゴンの扉に触れて横に倒した。
そして防壁の役目が済んですぐさま、魔女狩りの王を敵に襲い掛からせる。
銃は振り回すわけにいかない武器なので、魔女狩りの王に狙わせやすい。
ひと握りで銃を無力化し、戸惑う一機を後ろから再び抱擁する。
コレで四機。足の速いのはこのうち三機だった。

「おい! 逃げられるぞ」
「大丈夫。人を積んだ装置が出せる加速度なんて高が知れていますもの」

射線とワゴンの間から、身を低くしつつ光子は人のいなくなった乗用車の間に走りこんだ。
そこは、光子にとっての弾頭置き場みたいなものだ。
お決まりのデザインの軽トラックに、黒いセダン、赤のワンボックスカー。
何処にでもある普通の車にトントントン、と手のひらを押し当てていく。
エンジンが掛かっているかどうかなんて関係ない。ついでに言えば重さもほとんど関係ない。
光子が集積した気体がゴウッと噴出し、車は本来の前方などお構いなしに、
適当な方向と角度を向いてパワードスーツに飛び掛った。

「え? ……うわぁ!!」

3Dグラスをかけて見た映画みたいに、パワードスーツを着た隊員たちの目の前に乗用車が文字通り飛んでくる。
高機動パッケージの加速より、それは速かった。当然だ。
光子の能力によって実現できる最大速度は分子の平均速度そのもの、音速の1.3倍程度なのだ。
パワードスーツといえども受け止められないだけの運動量を持った鉄塊が、隊員たちの背中に衝突する。
三機のうち二機が乗用車に跳ねられ、下敷きになった。
残り一台も、光子が進路を車で障害物だらけにしたせいで立ち往生した。

「あっけないものですわね。この程度ですの?」
「そういうのは勝ってからにするんだね……上だ!」
「えっ?!」

気がつくと、静かにパリパリパリと空気をはためかせる音がしていた。水平なプロペラを回転させて飛ぶ機体、軍用ヘリだった。
光子はその音に気づかななかった。ヘリが、こんなに静かにこちらに肉薄するとは思っていなかったのだ。

「まずい! 早くアレを打ち落とすんだ!」
「ええ!」

光子は手ごろな弾を探して動こうとし、突然ステイルに腕をつかまれた。
動こうとした先が、蜂の巣にされた。
高機動パッケージを搭載した最後の一機と、本来光子たちを足止めするはずだった最後の一機、
その二機のパワードスーツの援護射撃だった。
ヘリとあわせて三方向から銃を向けられるのは不利だ。今いる、往来のど真ん中はまずい。



447nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/29(水) 00:29:04.885HY5pH0go (5/8)


「あちらに!」

光子がステイルの腕を掴んで走り出した。
無策に見えるその背中に一瞬ステイルは怯んだが、感じた恐怖をかみ殺して光子の後を追う。
向きを整えたヘリがこちらに照準を合わせた。地上の二機もそれに習う。

ザリザリリリリリリリッッッッ
ガガガガガガガガガガガガッッッッ

断続的な発砲音がステイルの後ろで鳴り響いた。緊張に背中がこわばる。
だが、同時に聞こえた鋼鉄とアスファルトの奏でる不愉快な擦過音のせいか、ステイルに直撃は無かった。
後ろを振り向く。

「うわっ!」
「何を驚いていますの! これは私が制御しています!」

横倒しになったMARのトラックが、ステイルのすぐ後ろを追っていた。
逃げる先に弾除けがないから、弾除けを併走させればいい。
数トンの質量を平気で操る人間の、まさに暴力的な発想だった。
ドン、とステイルと光子は高速道路の壁にぶつかって体を止めた。
追随したトラックがちょうど、二人の目の前で止まる。隙間は2メートルなかった。

「このトラック以外の弾は取りにいけませんわね……」
「これを空に飛ばせるかい?」
「可能です。でも、重力に逆らう方向には動きが遅いですから、避けられますわね」
「つまり君に対空兵器はないと」
「ええ。……ヘリが、問題ですわね」

ヘリが二人の真上を取るために動き始めている。
もう数秒しか安息の時間はない。

「ヘリは僕が引き受ける」
「えっ?! ……わかりました。では私が地上を」

光子は引き寄せたトラックにもう一度触れた。気体が集積していく。ただ飛ばすだけだから、能力に衰えはない。
これを飛ばせば、一機は無力化できる。だが共倒れを危惧して離れている二機を、同時に落とすことは出来ない。
こちらに銃を構え今か今かと待ち構えるもう一機を、光子は生身で倒すしかなかった。

「合図で動こう。スリー、トゥ」
「ワン、ふっ!」

最後のワンカウントを光子に奪われ、ステイルはフンと笑った。
辺りに撒かずに手元に残したカードを三枚、くしゃりと右手で潰す。

「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ
 それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり
 それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり」



448nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/29(水) 00:30:54.945HY5pH0go (6/8)


自分に、あるいは世界に言い聞かせるように、ステイルは決まりの言葉を口にする。
違うのは、ここから。

「その名は炎、その役は鉄槌
 限りなき願いをもって、災厄の緒元をなぎ払わん

魔女狩りの王は、ステイルが決めた世界でしか動くことが出来ない。
だから例えば、空を飛びまわる相手を落とすことは出来なかった。
かつて煮え湯を飲ませてくれた敵は不思議と今自分の隣にいるのだが、
ステイルは足りないものを足りぬままに放置することは、しなかった。

――――魔女狩りの王にして淫蕩と私欲の教皇、インノケンティウス八世。
その生涯に残した、ヨーロッパ全土に激しく広がる魔女狩りの、短所となった回勅。
ステイルがその名を冠した、それは。

「『魔女に与える鉄槌<マレウス・マレフィカールム>』!!」

ステイルの傍に侍っていた魔女狩りの王<イノケンティウス>がその形を溶かし消え去る。
それと同時に、重質の真っ黒い油が棒のように延び、ハンマーを形作った。

「はあああぁぁぁぁぁ!」

ステイルはヘリを見据え、『鉄槌』を真上へなぎ払った。。
魔女狩りの王と同質の素材からなるその槌は、柄を湾曲させながらしなやかに伸び、ヘリに襲い掛かった。
ヘリが照準を合わせ、引き金を引くのより僅かに速く、それはヘリの窓ガラスに届いた。

「火あぶりでどうこうなるかよ! ハッ!」

ステイルに聞こえない声で、ヘリの中の隊員が笑う。
高速回転するプロペラが健在だし、いかな高温の炎といえど、この一瞬の接触で学園都市の兵器が壊れるわけがない。
……そう思っていた。

「な、なんだ?!」
「魔女狩りを象徴するこの炎が、そんな淡白なわけないだろう? もっと粘着質だよ」

サッと消え去る炎かと思いきや、そんなことはない。
ジクジクとその炎は勢いを保っていた。気がつくと、皮膚が熱い。
ガラス越しにこれほどの輻射熱を伝える温度は、無警戒で済ませられるものではない。

「ヤベェ! お、おいこれ消せないのか?! 消化装備とかないのかよ?!」

並ぶボタンを一つ一つ目で追いながら、隊員は必死に打開策を探す。
救急隊でありながら、火災現場になど行った事もないし、そんなことを考えたこともなかった。
だから、あるはずの装備を探せない。
戸惑う隊員を下から眺めて、ステイルは『魔女に与える鉄槌』を肩に構えなおした。
タバコをその火で付けようとして、あっという間に先が炭化してしまって渋い顔をした。

「もう一発、いくかい?」

ステイルが『鉄槌』を振り上げるのと、ヘリの乗組員がヘリを脱出するのは同時だった。



449nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/29(水) 00:32:25.435HY5pH0go (7/8)





ステイルの動きの裏で。
光子は飛ばしたトラックでパワードスーツを一機落とすのと同時に、もう一機に迫っていた。
射線をステイルから外すために、一旦折れ曲がった経路を光子は走った。

「く、寄るな! 死ね!」

救助隊員にあるまじきことを口走りながら、男は光子に照準を合わせようとする。
この時点で、光子は一つ賭けに勝っていた。
もしステイルを狙ったなら、それを阻害するためにコインで相手の銃を狙わなければならなかった。
打ってからも照準の微調整が出来るのが光子の能力だが、細かい演算が必要で、自分のほうが足を止めてしまう。
その心配無しに走れるのは、とりあえずは僥倖だった。
だが賭けに勝ったから安全というわけではない。むしろ、自身の身をさらすという意味ではこちらのほうが危ない。
光子は自分に真っ直ぐ銃口が向いたところで、能力を限界まで使ってブーストをかけた。
目標は、相手の少し上。肩口にでも手が触れられれば良かった。

――――ガガガガガッッッ!

パワードスーツが引き金を引いた。
当麻が見ていたらきっと卒倒くらいはするだろう。
ほとんど水平になった光子の体の下、1メートルくらいのところを銃弾が交錯した。

「はああぁぁぁぁっ!」

――タンッ!
光子の反撃は、始まりはいつも静かだ。能力の性質上、かならずチャージを必要とするのがその理由。
銃を持つ右腕の付け根、肩当ての部分に光子は手を触れさせて、そのままパワードスーツの後ろへと飛び去る。
光子の体にはもうチャージがない。だから自分の足で走って逃げるほかない。
そして自分の体も、相手の体も、吹き飛ばすにはあと3秒はチャージが必要だった。
その間を、光子を取り逃がして焦るパワードスーツは逃さない。

「逃げるな! 死にな!」

男が振り向いて、光子に照準を合わせに掛かった。あと2秒のチャージタイムは、余裕で光子を殺すだろう。
男も光子にチャージが必要なのを理解しているらしかった。動きの端々に、勝者の余裕、いや油断を見て取った。
光子は不敵に笑った。
腰と肩の関節をぐるりとやって、銃口が光子の方にあと少しで向くという、その瞬間。

――――バギン!
パワードスーツの間接が、音を立てて壊れた。
鈍重な装甲を生身の筋力では支えきれず、男はそのまま銃を腕ごとだらりと下げた。

「な、なんだ?」
「膨潤応力<ソルベイション・フォース>ってご存知?」
「はぁっ?」
「あらゆる材料には微細なヒビがある。その隙間に滑り込んだ流体は、その隙間を押し広げるように力を加えますの。
 その力って、条件によっては1000気圧に届きますのよ? 金属材料でも、これには抗えません」

何も、固体の表面に空気を集めてぶっ放すことだけが光子の得意技なのではない。
表面に集めた空気は容易に超臨界流体となり、液体の表面張力と空気の拡散速度を持った流体として、
ほんの少しの亀裂や、あるいは亀裂でなくても金属材料の結晶粒界に滑り込み、それを拡張し、
材料の剛性を著しく損ねさせることが出来るのだった。
脆化した関節は、ほんの少し操縦者が振り回しただけで破断し、そして目の前の結果に至ったのだった。

「本当、トンデモ発射場なんて不本意なあだ名は、止めていただきたいんですけれど。
 貴方に言っても詮のない愚痴でしたわね」

光子は足元から砕けたコンクリート塊を拾い上げ、数個、男に向かって飛ばした。
集中的に健在だった左肩を攻撃され、攻撃能力を失った男は戦意を消失させた。
ふう、と光子はため息をついた。

「そっちも済んだかい」
「ええ。で、この方に運転してもらえばよろしい?」
「そうだね。とりあえず機械の中から出てもらおうか」

光子に合流したステイルが、病院でやったのと同じく、半壊のパワードスーツの中にいる隊員に暗示をかけた。
今から追いかけたのでは、先行した二台に追いつくことはないだろう。

「当麻さん、インデックス。それに御坂さん達も。……無事でいてくださいませ」

日が傾いて、夕暮れの雰囲気を出し始めた空を仰いで、光子はそう呟いた。



450nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/29(水) 00:35:24.125HY5pH0go (8/8)

ようやくステイル光子のシーンが書きあがった。ふう。
ちょっと光子の活躍シーンが短いかもなー
次はもっかい佐天さん出番ですね。テレスティーナさんマジ待ちぼうけ。

>>442
佐天さんのお尻に毛なんて生えてません!

じゃあそのうち佐天さんのお尻回かくわ。
……嘘だよ!


451VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/06/29(水) 00:38:17.60Q5JMB+4AO (1/1)

>>450
嘘かよ…、鬱だ死のう…


452VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/06/29(水) 01:44:52.63q/BOpFyro (1/1)

何だうそか…


453VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/29(水) 02:19:03.72GSvMTjQX0 (1/1)

そんなこと言っといて、事件が一段落したらみんなでお風呂でキャッキャウフフを描いてくれる、って信じてる。


454VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/29(水) 03:55:46.62zGq2U1jDO (1/1)

乙です。

新たな名台詞ソフご誕生!真ねぼしに続きいい台詞ですな。


455VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/06/29(水) 07:33:42.82Z5LxIoEAO (1/1)

イノケンさんもこんごーさんもかっこいいじゃない。


456VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/29(水) 07:44:44.74yx/OppfDO (1/1)

1には失望した。

鬱憤を晴らす怒涛の攻防とはまさにこの事。
上条さん、このままだととどめ専門のマジヒロイン枠入り


457VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/29(水) 21:06:06.18Gmvy7x3z0 (1/1)

乙です
婚后さんと14歳さん、なかなかいいコンビだねー
佐天さんのお尻回は諦めるが…OVAの銭湯…お胸回は期待していいんだよね?ね??

>>456
上条さんの能力は対能力者や魔術師には強いけど、純粋な武器や科学の前だと一般人と大差が無いのは仕方ない
何にでも強い完璧な能力じゃないからいいんだ。


458VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/06/29(水) 22:50:04.05GHqZ+L5Mo (1/1)

原作だとそげぶのほうが目立つせいであんまりそういうシーンないよね
主人公を目立たせないといけないから仕方ないんだろうけど


459VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/29(水) 22:56:51.202xorv/TAo (1/1)

真ねぼしかっけー!
有効な戦術だね!
こんなにイノケンさんが使えるなんて…
そして戦闘モードの光子さんが格好いい!

おにゃのこが制服で戦うとか、素敵やん?


460nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/06/30(木) 01:21:47.19RNmfv+bio (1/1)

みんなお尻回希望ですかw
確かにレールガン組がお風呂でキャッキャウフフはやりたいかも。
……ちょっとね、シリアスの書きすぎでほのエロが書きたくなってきた。
短編でも書いてどっかに投下しようかな。

>>454
ソフって略は無理あるなw
バトルはカッコよくてナンボなので、カッコよく思ってもらえてるといいなぁ。

>>457
ステイル・光子コンビってこのSSくらいにしか出てこないよな、と思いながら書いた。
OVAは知らないんだけども、ちゃんと日常は日常で描きたい。お風呂も。

>>458
考えてみると、原作は上条さんが無力なシーンに出会わないように結構気を使ってあるね。


続きは明日やなー。ごめん。どうしてもバトルが遅筆になる。


461VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/06/30(木) 11:01:09.57eNAT3ONc0 (1/1)

お嬢様から戦士にジョブチェンジした光子ちゃん。
ステイルやら聖人やらペンデックスと対峙したからこの程度はお茶の子さいさいかいな。
イノケンさんマジ惚れる。

日常シーンには期待してるぜい。


462VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/30(木) 11:16:08.22Qn8UsbwS0 (1/1)

上条勢力にデコっぱちコンビ爆誕す


463VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/06/30(木) 11:26:41.729H5Lvv1AO (1/1)

イノケンさん、みっちゃんにぶっ飛ばされたことがよっぽどトラウマになってんのかwwww


464VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/06/30(木) 21:37:46.98ia3OUeF10 (1/1)

科学と魔術の共闘って原作でもほとんどやらないネタだから見ててどれも楽しい^^
超能力戦隊レベルファイブVSローマ四天王神の右席とか誰かやんもんかww


465nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/04(月) 01:11:22.13J8JwmIWDo (1/3)


「ええいクソッ、こんなときに部隊の出し渋りなんて、それじゃあたしらは何のためにあるじゃんよ!!」

警備員<アンチスキル>部隊が運用するトラックの中で、黄泉川がガンと壁を叩いた。
周囲の同僚達が何事かと振り向く。
きっと上に、圧力が掛かっているのだろう。テレスティーナ・木原・ライフラインが体晶を使ってやろうとしている何か、
それは随分と、学園都市のお偉方に気に入られているらしかった。

「高速道路の封鎖許可まで出すとはな……親玉はどんだけ上なんだか」
「あの、黄泉川先生。先行している学生というのは……」
「常盤台の高レベル能力者を中心に10名弱、だそうじゃんよ」

今、黄泉川が上層部から受け取った命令は、先進状況救助隊を襲撃しようとする学生を止めて来い、というものだった。
馬鹿馬鹿しいにも程がある。なぜあの子たちが動いたのか。どれだけMARがいかがわしいのか、調べればすぐ分かることなのに。
学生達の名前を聞いて、黄泉川はやっぱりなとしか思わなかった。
春上の元にたびたび訪れていた初春たち、そして光子や当麻にインデックス。自分の見知った学生達であった。
ため息を一つついて、黄泉川は自分の苛立ちを整理した。警備員になって数年。こうしたことには、常に悩んできた。
不良の起こす瑣末な事件になら、警備員は完璧に対応できる。その子達自身とも向き合える。
だけど、こうして時折学園都市の暗部とでも言うべき事件が起こると、
むしろ自分達はその暗部の体のいい手先として、使われていることがあるのだ。
今回だってそうだ。排除すべき相手を守り、守るべき相手を排除する、そんな仕事を任される。
体晶に、子供達が食われそうになっていて警備員がそれを見過ごすなんて、絶対にあってはいけないのに。
子供達を非行から救い上げ、どうしようもない暴力から守り抜くのが、自分達の仕事なのに。
――せめて、やれることを。
黄泉川はそれを言い訳と分かっていながら、自分にそう言い聞かせるほかなかった。

「さて、我々の任務はMARに協力して子供たちを止めることですか?」

隣に座っていた同僚が、黄泉川に問いかけた。
薄く、ニヤリと笑った顔。黄泉川の考えていることを、分かっている顔だった。

「あのバカ連中にはお仕置きは必要じゃんよ。荒事なんて、首を突っ込むべきじゃないからな」
「それは、そうですね」
「でも、それは後でできる。あたしらが一番にすべきことは、先進状況救助隊が、
 体晶を使った実験をしようとしているって噂の事実確認からだ」
「それがもし事実だったなら?」

黄泉川が顔をキッと挙げて、虚空を睨みつけた。

「先進状況救助隊の実験阻止を最優先に動く」
「まあ、この装備じゃ高速道路に展開した数部隊を止めるので精一杯ですけどね」

黄泉川が動かせたのは自分の所属する支部の隊員と、そして懇意にしている数支部の隊員だけ。
テレスティーナからは相当遅れた場所にいて、あちらが実験を始めるのに間に合わない可能性が高い。
この一件で、最も攻撃的で最も先行しているのは、学生達だった。
実験の阻止に失敗し彼女達も癒えない傷を負う、そんな最悪のシナリオも充分ありえるのだ。
光子や当麻に電話をかけて止まれと言ったところで、絶対に止まらないだろう。
学生を先鋒にするなんて最低の大人だと思いながら、黄泉川は結局それを受け入れ、行動するしかなかった。



466nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/04(月) 01:12:54.28J8JwmIWDo (2/3)

光に透かすと赤く輝くその結晶。手のひらにおさまるくらいのガラス製の円筒に入ったそれを、テレスティーナは優しげな瞳で眺める。
15年位前から、それは彼女の宝物だった。
大好きな祖父で、敬愛する研究者である木原幻生。その人が、テレスティーナに残してくれたものだから。
――――お前は学園都市の、夢になるのだよ。
テレスティーナの脳から体晶を抽出・精製するその直前に、祖父が残してくれた言葉がそれだった。
嬉しかった。大好きな祖父の力になれることが。学園都市の追い求めるものへと、なれることが。
……結果は、失敗だった。
テレスティーナが1年近くかけてようやく目を覚ましたとき、そこにはもう祖父はいなかった。
遺されたのは、自分から取り出した体晶。
何度か祖父に会おうとしたが、祖父の秘書なのか、誰とも分からない人々に多忙を理由に無理だといわれた。
テレスティーナはそれをむしろ、当然だと思った。
思い通りの結果が出たなら、自分はまだ祖父の隣にいることだろう。そうではなかったのだ。
テレスティーナから作った体晶では、駄目だったのだ。だからきっと、祖父は自分の手元に体晶を遺してくれたのだ。
自力で高みに登ってきなさい、と。きっと祖父はそうメッセージを、この体晶に込めてくれたものだと思っている。
テレスティーナは自分と体晶が等しくゴミとなったからまとめて捨てられたのだという、その事実に達したことは一度も無かった。
体晶を使った暴走能力者がレベル6に至ることはないという、樹形図の設計者<ツリーダイアグラム>の結論を、テレスティーナは知らなかった。
ひとしきり宝物を眺めて心を落ち着けたところで、身につけたパワードスーツからザッと無線の入った音がした。

「イエローマーブルよりマーブルリーダー。現着しました。これより搬入を開始します」

テレスティーナは最速で現地入りし、すでに実験のスタンバイを整えてある。
今の連絡は、枝先を初めとした13人の暴走能力者と、テレスティーナに成り代わって学園都市の夢になる春上衿衣が、
ここ、第二十三学区の木原幻生の施設研究所へと到着したことの連絡だった。
ここまでは予定通り。問題は、こちらを追っている木山春生と常盤台の学生、そしてオマケの数名だ。

「パープルマーブル。そっちの首尾はどうだ?」
「こ、こちらパープルマーブル。警備員<アンチスキル>がこちらに疑いをかけてきて、その、交戦中です!」
「あぁん?」

戸惑いと焦りにしどろもどろとなった部下の言葉を、テレスティーナはいぶかしむ。
たしか首尾としては、警備員はこちらの行動を最低でも黙認はしてくれるはずだ。
無線の向こうにも聞こえるよう、チッ、とテレスティーナは舌打ちした。
そういえば、警備員には黄泉川という名の、面倒くさそうな女がいた。
この件の警備員側のとりまとめなのだし、体晶という言葉にも心当たりがあるようだった。
おそらくは、あの女の働きなのだろう。面倒なことをしてくれる。

「警備員なんてどうせ殺傷装備も持ち合わせてない雑魚だろうが。三分で殺れ」
「は? やれ、って。警備員を敵に回すなんてそんな無茶な」
「テメェは私と警備員とどっちを敵に回したいんだ? 言われたことはさっさとやれ!」
「りょ、了解――」

返事を聞くより先にスイッチを切る。
パープルマーブル隊は、追ってくる木山達の排除に配置した部隊だ。
それが機能しないとなると、ここまで連中が素通りでやってくることになる。

「ドイツもコイツも無能ばっかりじゃねぇかよ。
 レベル6にたどり着く人間以外、全部どれもこれもゴミなんだ。踏みにじるのに躊躇なんざしてどうする。
 イエローマーブル隊! 指示が無くても手順は分かるな?! 私はアレで出る」
「了解しました」

テレスティーナはパワードスーツのバイザーを下ろし、きちんと武装をする。
そしてそれを着たまま、パワードスーツより二回り大きなその機体に、目をやった。
無骨な足腰、そしてニッパー状の両手。パワードスーツの上から着る仕様の、工作機械だった。
ブルーカラーの労働力が慢性的に不足する一方でエネルギーとテクノロジーが余っているこの街では、
建設にはこうした機体が借り出されることがよくある。
祖父、木原幻生はこの研究所の建設・メンテナンスのためにという名目で用意したのだろうが、
建築と工作に必要な高出力以外に、俊敏さまで備えた整備と改造が施されている。
木原幻生も単に、工作機械としてコレを導入したのではないことは明白だった。

「邪魔な羽虫はさっさと潰しておかないとな。プチっとよぉ」

テレスティーナは上機嫌に、大きな機体のコックピットを目指した。
十年来の夢が、今、叶うのだ。

「お爺様。私が、学園都市の夢を叶えて見せますから……!」

人知れず、テレスティーナは純真な少女のように、そう一人呟いた。



467nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/04(月) 01:26:53.66J8JwmIWDo (3/3)

ごめん。。。土日ですすまんかった。

>>461
アツい展開になるかと思って3ストーリー重ねてみたけど、
一度佳境に入ると日常シーンがとおいってデメリットがあるんやね。
若干それも苦しいモンですね。

>>462
デコっぱちてw光子さんはおでこオープンしてる人だけどw

>>463
彼は出来なかったことはちゃんと対応してくる優等生なんですよ。

>>464
原作は両方に手を出すのが当麻とせいぜい一方通行だけだしねー


468VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/04(月) 23:30:50.31MEOQCYz+o (1/1)

乙ですた!
ああ、ここの黄泉川せんせー大好きだわ。
きっちり大人をされてます。
色々なものを背負って、それでもきちんと子供を守る大人をされてます。
組織で働いてると彼女の選択がどんだけハイリスクかってわかるわー。

これで煙草を吸わなければお付き合いを前提に結婚を申し込むのに・・・ww

こちらの大人たちが魅力的すぎて、彼らの邂逅なんかも見たいですね。
ビリビリママとか詩菜さんとか、絡ませたら面白そう。

ほんと、すごく面白かったです。

次回も楽しみにしてますよー


469nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/07(木) 01:30:47.32XGIYn1Jko (1/4)


無人の高速道路を、木山の駆る青いスポーツカーが疾走する。
あちらが高速道路を勝手に封鎖してくれたのは幸いだった。
おかげで開いていた差を、かなり詰められた。

「あと10分くらいで高速の出口ですね。降りてからはすぐです」
「そうか。その10分というのは、あちらの邪魔が一切入らない場合の数字だな?」
「はい」

初春が言ったのは単純に距離を時速で割っただけの数字だった。
木山が気にしているそのとおりに、おそらくは妨害があることだろう。

「急ぎだし、時間通りの進行でいきましょう」
「だね」

茶化して言った佐天の言葉に、美琴が同意する。
カタカタとキーボードに数値を打ち込んだり映像を複数再生したりと忙しない初春が、
よしっ、と呟いて顔を上げた。初春なりの、解析結果が纏まったらしい。

「向こうは、高速出口の手前にある、別の線とのインターチェンジで待ち構えているみたいです。
 そこを塞げばこちらに逃げ道ないですから」
「バリケードはあるの?」
「金属の格子で作ったバリケードはありません。
 さっきと違って、脇道のほうじゃなくて本線を走りますから」

先ほどバリケードで塞がれたのは、別の線へと乗り換えるための一車線の道だ。
確かに、三車線ある本線を丸ごと封鎖は出来ないだろう。

「じゃあ、この広い道をどうにかして塞いでるってことかな」
「二台のトラックを横にして道をかなり塞いでますね」

初春のディスプレイには、一車線ぶんくらいの隙間を残してトラックが道を塞ぎ、
残った隙間にもパワードスーツが展開している光景が映し出されていた。
それを見て、美琴は木山に問う。

「パワードスーツが塞いでる隙間なら、抜けられる?」
「可能だ。こちらの時速を見れば向こうは回避するだろう。でなければ死ぬ」
「無人機で塞いでたら?」
「その場合は君達の援護がいるな」
「私が超電磁砲<レールガン>で隙間をこじ開けるか、佐天さんに飛ばしてもらうか、二択ね」

佐天はその発言を受けて、すぐさま軌道の演算に入る。
パワードスーツの高さは2.5メートル近くだ。それを飛び越えるのは先ほどより大変だが、可能だろう。

「御坂さん」
「何?」
「銃弾、止められますか?」
「金属ならね。この車にむけて飛んでくるヤツ程度なら防ぎきれる」
「じゃあ御坂さんの仕事はそれですね」
「ま、そうなるわね。一番の懸念はそれだし」
「銃弾、というが。レベル5の君はある意味で人質みたいなものだろう。
 おいそれと君を死なせるような判断をするだろうか」



470nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/07(木) 01:32:06.29XGIYn1Jko (2/4)


その木山の考察を、つい昨日までの美琴なら真剣に受け止めて考えもしただろう。
だが、あの忌まわしい計画の、名前を知ってしまったら。

「テレスティーナは別にレベル5に執着なんてしないわよ。
 今から、それ以上の高みを、アイツは目指す気でいるんだから」
「それ以上……?」

美琴の言っていることを理解できないのか、ぼんやりと佐天が復唱した。
レベル5は、学園都市がこの数年でようやくたどりついた高みだ。
レベル4までの能力者とは一線を画す、天賦の才の持ち主。
それより上なんて、それは。

「佐天さん」
「は、はい」
「さっきみたいに乗り越えられる?」
「私なら大丈夫です。御坂さん。アレくらいのことなら、あと10回はいけますから」
「10回ね。それだけあれば充分でしょ。……佐天さん、レベル3はあるね」
「そうですね。自分でも、自覚はあります」
「うん。頼りにしてる」

美琴が佐天に、ニッと笑いかけた。その笑みが、美琴の隣に立てたことが、嬉しい。
佐天は、自分の実力を謙遜しなかった。さっきだって、窮地を脱する力があることを証明できたから。

「御坂さんは防御に専念してください!」
「わかった。初春さん、あとどれくらい?」
「ちょうどですね。もうすぐ、見えてくると思います」

美琴と佐天は、シートベルトを外した。急ブレーキでも踏もうものなら、きっと大変なことになるだろう。
だがそういう危険に目を瞑り、二人は、来る一瞬に備える。
運転手の木山が声を上げた。目視で、敵方を捉えたらしい。

「見えたな。あれか……」
「はい。最後の追撃部隊ですね」
「トラックの数がおかしくないか?」
「えっ?」

初春は、慌ててディスプレイの情報と目の前の光景を照合する。
監視カメラからの映像は一分くらいはタイムラグがあるのだろう。
どうやら一台、つい今しがた増えたらしい。



471nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/07(木) 01:33:54.25XGIYn1Jko (3/4)


「MARじゃない……?」
「そのようですわね。あれは警備員のロゴですわ」

どういう状況なのかと白井はいぶかしんだ。
敵なのか、それとも見方なのか、それが問題だ。
不意に、ピリリと携帯がコールを訴えた。
上条を保留にしてそちらに出る。

「はい」
「白井か? 警備員の黄泉川だ」
「黄泉川先生?」
「そっちからあたしらの車両がみえてるじゃんよ?」
「え、ええ」
「手短に済ます。これは警備員として言ってはいけないことだけど。
 ……頼む。あの子たちを、助けてやってくれ。目の前の連中はコッチで何とかする」

苦渋がにじみ出たような、そんな声だった。
学生に危険分子排除の尖兵をさせるなんて、確かに警備員の理念の間逆だろう。
でも、レベル5の能力者を擁するこちらのほうが、確かに駒として上だった。

「一人の教師である黄泉川先生が、学生をそうやって案じてくださることを嬉しく思います。
 背中は預けますから、どうぞこちらを信頼してくださいまし」
「ああ、頼む」

白井はそれだけで、会話を打ち切った。
もう、パワードスーツの部隊まで200メートルくらいだったから。

「木山先生、車、右に寄せてください」
「右? それはいいが、どうする気だ?」

三車線ある高速道路の両端を、トラックが塞いでいる。
そしてトラック同士の間にあいた隙間を、パワードスーツの部隊が固まって塞いでいる状態だった。
トラックよりはパワードスーツのところのほうが背は低いのだし、そこを狙うものと木山は思っていた。
佐天の答えはシンプルだった

「対向車線側にはみ出します」
「佐天さん!? あっちは封鎖されてませんから、対向車と正面衝突しかねませんよ?!」
「大丈夫。べつに、対向車線を走るわけじゃないから。ちょっと説明してる時間ない!
 木山先生、言う通りにしてくれますか?」
「壁に向かって走るというのは中々精神的に負担のかかる行為なんだがね」

フウ、と木山が呼吸を整えて、正面を睨みつけた。

「速度は?」
「さっきと同じで」
「わかった」

多くを木山は問わなかった。
ただ、アクセルをクラッチみたいにガンと踏みつけて、中央分離帯に向かって車を加速させた。



472nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/07(木) 01:35:36.91XGIYn1Jko (4/4)

>>468
考えたら黄泉川先生って当麻や光子より詩菜さんに近い世代だよね。
確かに絡ませるの面白そうかも。


473VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/07(木) 16:38:17.87MjdjEM3Lo (1/1)

おつ
黄泉川無理して負傷しそうな勢いだな
死なない程度にがんばれー

>>472
「じゃーん!じゃーん!」

「あらあらあらあら」

こんな風景しか見えません!


474VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/07(木) 17:51:29.94HaIuAjbIO (1/1)

>>473
「じゃーん!じゃーん!」

ゲェッ関羽!?
かとおもた



475VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/07/07(木) 19:51:13.46VKDL/nOv0 (1/1)

上条親子からすれば詩菜さんも関羽も同じようなものだろう。
ん?誰か来たみたいだな。


476VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/07(木) 21:48:30.93s2JhGPVE0 (1/1)

黄泉川先生はやっぱりいい先生だ。
しかし、どうにも原作でアンチスキルは噛ませ犬ポジションだから、実行力が伴ってない言葉っぽく聞こえちゃうんだよなぁ。
まあ有志の教師によるボランティアなんだから、ある意味当然なんだけど。暗部だの魔術師だのが関わってくるのは、問題のレベルが違うだろうし。
どっかでアンチスキルの名に相応しい、対能力者戦闘のスペシャリスト、みたいなとこを見てみたい気もする。木原くんみたいに。


477VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/08(金) 01:12:36.810leyUIHWo (1/1)

>>472
あれだよね。
禁書と光子さんの身元引受人だし、普通に挨拶くらいはありそうだよね。

大人世代の邂逅とか、新しいかもしれんね。

上条の嫡男を連れ合いに選ぶとはこういうこと!
とばかりに無双する詩菜さんとかいいかもww



478VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/08(金) 10:37:51.01byTuSG11o (1/1)

>>475
.       ,、r '''''''――----.、
.      /           ヽ
     /   ,  ----- 、,  ヽ
     / ,、ィ         ` 、 |
    ,'''゙             .ヾ,
.    i .,'      _,,,ャィ'^ヽォ  !
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    ハ_,、-‐‐'フ'_´_    ̄``'''ー-!
   / |;;;;;;;;;;i'゙-‐‐-`tュ、   ,、r:,zζ
.  / ,'、;;;;;;;'   -ェェュ、''  r'ニ,ニ、i'''´
  /  l '',`!;;!         ',`゙゙゙´ |
 /  :ヾ, (,l;;|      ,、、  ',   !
./  ::::::ヾ':l      `,''' - '  ,'
゙  .:::::::::::゙i''',    .,ィンニ、、,ヾ,、.λ あらあらあらあら
  .:::::::::::::| ヽ、_ィィ/´ ̄二`ヾV ',  刀夜さん、またですか?
  .::::::::::/ゝ,  ヾ;'|;;|  ,ノヽ l;;|  ',
 .:::::::::/  `'-、 ヾ|;;|;-;;゙;;;;;;;;;;;゙ハ;l  .',
.:::::;、r<     `'‐|;;ト、;;;;;;;;;;;;;;;| ';|  i
''´   ` 、    'i;;l`|;;;;;;;;;;;;;;;| l;|  ',
       ` 、  !;;゙;l;;;;;;;;;;;;;;;l l;;ト、 ',
.         ` 、 ヾ;i;;;;;;;;;;;;;;;;゙;;;| '‐、'、
.           `'‐'l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|   `'ー


479VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/08(金) 12:50:32.81gR/o38lDo (1/1)


                 _      _
             r土 ̄ _」┬┬ ト.、 _」      \_WWWWWWW_/
             |   ||== ⌒=||       ≫       ≪
           _|‐ ' ´  ̄ ̄O ̄ |        ≫     げ ≪
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           l::l.l:::/     `''´ ヽ:!、       ≫      っ ≪
.            !::|l::〉 /⌒_' ........,'⌒'| ',     /     菜    ≪
          /ヽ!l| "::::'´ o.!::::::::l´o.}:! |     ̄≫         ≪
         | 9.|l u   ̄    .| ̄ |! |     /~MMMMMMM~\
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            | ',   〃,.-―-jl,'
           .| ヽ  {l '-一-'.,i′
.           ,rv'   ` .'l  .,;;;,./
          _/ハ::::::\    `ヾ;;;/ハ
      /::ノ:::ヽ:::::::::`:..、.  `/:::::\


480VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/09(土) 00:43:40.49k2HbBXyV0 (1/1)

>>478-479
お前ら仲いいな


481nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/09(土) 13:03:39.056g6geXOKo (1/3)

パワードスーツを着た男が、焦った表情で黄泉川に怒鳴りつける。

「だからあの車を止めるのが任務だと言っているだろう!」
「学生の乗った車を銃撃するような真似を任務にする部隊は学園都市にはない!」

黄泉川は自分の言が嘘だということを知っている。そんな非道な部隊くらい、きっと学園都市には山ほどある。

「学生だとはいうが、能力でバリケードを越えてくるテロリストだぞ!? こちらの安全を考えてくれ」
「お前等の何処に大義名分があるって言うんだ! さっさとテレスティーナ・木原の計画について聴取を始めるぞ!」
「勝手に所長を呼び出してやってくれ! こっちは仕事があるんだ!」
「おい! パワードスーツを動かすな! そっちがその気なら、こちらも動くしかないじゃんよ!」
「いいからやれ! 所長にどやされたいのか!」

リーダー格の男が、黄泉川から視線を外し、部下のほうに振り返って指示を出した。
封鎖した高速を走ってくる青いスポーツカーは、もうすぐそこに迫っている。
あれを止めねばここにいる全員、すなわちマーブルパープル隊はテレスティーナに殺されかねない。
町の公権力よりも、自分達のボスの非道さのほうが恐ろしいことを隊員達は理解していた。
躊躇の感じられる動きだったが、それでも5機のパワードスーツは、銃を持ち上げるのを止めなかった。
それを見て黄泉川は、さあっと瞳に怒りを走らせた。
学園の名を冠するこの都市に、こんな出来事があってはならない。
子供達が夢を叶え幸せになるための町なのに、それを弄ぶような人間は、いてはいけないのだ。

「パワードスーツの連中を制圧する! 子供達に怪我なんてさせちゃいけない!」
「了解」

黄泉川の後ろに控えていた警備員達もまた、黄泉川と意志を同じくしていた。
町を巡回する美観・治安維持用ロボットを先行させて盾にしつつ、警備員のメンバーは
パワードスーツが狙う美琴たちとの射線の間に、自分達の体を割り込ませた。

「あっちは子供に銃を向けてるんだ! 遠慮なんて要らないじゃんよ!」
「当然です!」

パワードスーツに乗った隊員たちがスポーツカーに照準を合わせようと、警備員を振り切るよう鬱陶しげに動く。
だが局地戦で細かな動きでマーカーを振り切るのに、パワードスーツは不都合だった。
慣性の法則を捻じ曲げる力は、超能力者にしかない。
パワードスーツを着るということは、慣性を増やし、鈍重になるということだ。
それをもちろん出力で補ってはいるが、細かなストップアンドゴーにおいては、生身にパワードスーツは叶わない。
警備員達は、盾を用意しているとはいえ生身だ。パワードスーツから発砲されれば無事ではすまない。
だが、隊員達はその選択肢を選べなかった。
警備員は、警備員を傷つけた相手を、決して許さない。それが学生なら話は別になる。
だが、学生に仇(あだ)なし、そして警備員にも仇なした相手には容赦がない。
上からの指示で今はこの目の前の数人以外は押さえつけられているが、
この数人に手を出せば、あっという間に自分達を追い詰める猟犬が100倍に膨れ上がる。
それを隊員たちが恐れているのを知っているから、警備員達は自分の身を、果敢にさらしているのだった。

「クソッ……近いぞ! 抜けさせるな!」
「やらせるか!」


482nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/09(土) 13:04:40.036g6geXOKo (2/3)


スポーツカーは、もう視界の中で充分な大きさを主張している。
ここに到達するまで、もう数秒だ。
黄泉川は目の前のパワードスーツに、非殺傷用の銃弾を躊躇わず発砲しながら、僅かに振り返ってその車の動きを見た。

「くっ、邪魔するな!」
「お前らこそ子供に銃なんてむけるんじゃない!」
「ガキは使い潰すもんだろうが! それが学園都市だ!」
「そんなこと、あたしが許さない!」

ギャリっと、タイヤが歪みながらアスファルトを蹴りつける音が聞こえた。
突然直進していたスポーツカーが、中央分離帯に向けて進行方向を曲げた音だった。

「なっ?!」

黄泉川は一瞬、それに絶望する。タイヤが銃で狙われ、パンクしたのだと思ったからだ。
このスピードでその事故は、あまりに致命的だ。
パワードスーツなど何の関係もなく、それは搭乗者を死に至らせる。
バカにしたように、ハンとパワードスーツに乗った男が笑った。
――――だがそれは、ただの勘違い。


スポーツカーから、髪の長い女の子が、上半身を出した。
黄泉川はその姿を見て、駄目だ、と叫んだ。
突然の出来事に、おかしな行動をとったのだろうか。
駄目だ、あんなことをしては、助かるものも助からない。
そんな黄泉川の心配をよそに、その少女、佐天涙子は目を細めて真っ直ぐ前を見詰めていた。
呼吸すらままならない風速に耐えながら、佐天が手を虚空にかざした。
黄泉川も、そして隊員も、判っているようで判らないことがある。
超能力者とは、つまり自分達とは違う、パーソナルなリアリティに生きる人間なのだ。
同じ世界を共有しながら、それを見るためにかけた眼鏡が全く違うのだ。
空力使い<エアロハンド>の佐天が生きる世界においては、佐天の行動は奇異なものでもなんでもない。


――――ガッ、と空気の軋む音がした。


「なっ?! そんな、空力使いだと?!」

隊員が驚きながら、そう叫んだ。無理もない。黄泉川だって知らなかった。
あそこに、あんな高位の空力使いがいるなんて。
そうか、アレが婚后の教え子か、と場違いに黄泉川は感心した。
スポーツカーが、その巨体をものともせず、跳躍した。

「どうする気だ!?」

黄泉川は思わず叫んだ。
MARが封鎖したのは、こちらの車線だけ。スポーツカーが向かう先には、沢山の対向車。
黄泉川の視界の先で、佐天が地面に向けて何かを放った手を、再び振りかざした。
空気を吸い込み、集めるように。掃除機なんかよりずっと暴力的に。
見えない壁を佐天が掴んだみたいに、スポーツカーの軌道が、直線ではなくなった。
その軌跡はブーメラン。中央分離帯という仕切りを斜めに飛び越え、
MARのトラックという障害物を回避して、そして再び空中で方向を歪めながら、
そのスポーツカーは元の車道上へと、その進行方向を戻した。

「なん……だと? クソッ、抜けられた! 追え!」
「無茶言わないで下さいよ! コッチには高機動パッケージはないんです!」
「それでもやれよ! 所長に殺されたいのか?!」

黄泉川の前で隊員たちが失敗に歯噛みしていた。
スポーツカーは、速度を一度も緩めなかった。
一秒で40メートルを走破するその速度によって、あっという間に銃の射程外へと逃げたのだった。

「……やるじゃん」

自分の心配が杞憂だったのを、黄泉川は軽く笑った。

「すまん。学生を前に出すなんて、駄目な警備員だ」

聞こえないのを判っていて、黄泉川はスポーツカーに乗った子供達に、そう謝った。
せめて、自分はここの後始末をきっちりつけないと。
混乱する隊員達に銃を向け、黄泉川は自分が次にすべきことを、為し始めた。



483nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/09(土) 13:08:27.796g6geXOKo (3/3)

>>473
じゃーんじゃーんって銅鑼の音かと思ったw

>>474-475
お前らのせいで古代中国の先生達が出てきちゃったじゃないかw
>>478-479
お帰り下さい。

>>476
>アンチスキルの名に相応しい、対能力者戦闘のスペシャリスト
なんかそれいいアイデアかも。出す場所を考えてるわけじゃないけど、そういうのいいね。

>>477
俺も詩菜さん無双書きたいな。うん、夏はやっぱり帰省だね。
光子さんの実家の設定もいろいろ明かされたし、
キンクリした馴れ初めの部分をちゃんと書いてお盆は光子と当麻に帰省してもらうべ。


484VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2011/07/09(土) 16:14:57.59hktOBeCc0 (1/1)

ブーメランスネイク……だと!?



485VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/09(土) 16:25:16.12nKFjoxJEo (1/1)

乙ですた!
うあー!
黄泉川せんせーすてきー!
結婚してー!

ああ、組織の論理につぶされない意志を持つ人って素敵!
惚れてまうやろー!

そして、警備員がボランティアであるが故のモラールの高さがここで凄味を出しましたね。
いやあ、サテンさんのブーメランスネイクもそうだけど、すごくカタストロフィでした。

こっからさらにクライマックス。
楽しみです。

そして詩菜さん無双、ものっそい楽しみです。
ハーレム体質の主人公を勝ち取った女の凄味を味わいたいです!
そして光子さんが詩菜さんにフラグブレイカーを伝授されるのが楽しみ!




486VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/09(土) 17:29:12.77Q8hAKmpr0 (1/2)

佐天さんの進化を目撃できて幸せ


487VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/09(土) 17:56:03.13wzHrKkrv0 (1/1)

そろそろ中ボスのご登場といったとこですか


4884752011/07/09(土) 18:17:33.16IJlkZPUf0 (1/1)

作品の舞台裏では頑張ってるはずなんだよなぁ警備員。
それが出たのが6巻ぐらいなだけで。

ブーメラン佐天さんいいな。
成長度マジパネェ。


489VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/09(土) 19:04:49.07aRkeyvUK0 (1/1)

佐天さんスゲー。
2トン位あるスポーツカーに対してあんな動きさせるなんて
レベル4位の実力があるんじゃなイカ。

これだけ高位超能力者になったと考えると佐天さんの常盤台転校
なんて話も面白いかも。柵川中学で高位超能力者って存在が浮き
そうだしね。


490VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/09(土) 19:29:53.28TVBmXCL7o (1/1)

初春と佐天さんが常盤台に入って「超電磁組」結成か!(婚后組だと「女王」がねえ…)

美琴も婚后先生の授業受けてくれないかなあ…汎用性が売りなのに力任せが多すぎてもうねえ…


491VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/07/09(土) 19:47:31.71EcLi2z1AO (1/1)

>>489
こんごーさんは12tトラックを空に打ち上げてる


492VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/09(土) 20:03:23.24Q8hAKmpr0 (2/2)

佐天さんは今のところは、LEBEL4に近いLEBEL3じゃないかな?
これからの実戦でLEBELの壁を乗り越えてほしいね。


493VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県)2011/07/09(土) 20:43:37.36LH+5WA+5o (1/1)

>>483
乙!
>>492
LEBELでぐぐったら頭髪化粧品だったでござる



494VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/09(土) 20:47:08.693K2kwJqFo (1/1)

夏休み明けに合わせて転校かなこれは
能力を伸ばすことが楽しいわけだし


495VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県)2011/07/09(土) 20:48:54.50IuyKZ1E4o (1/1)

少なくとも論文をスラスラ読んで理解できないとレベル4は届かないんじゃないかな?
このSSじゃ意図的にそう書いてるし。

逆に固法先輩みたいに、伸び悩む時期が来て苦悩する佐天さんを婚后さんが導くってのも読んでみたい気もする。
最近は佐天さんも賢くなって講義する機会も減ってるしねwwwwww


496VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2011/07/09(土) 21:03:13.12mQfA5+Xbo (1/1)

もうやったじゃんそれ


497VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/09(土) 23:59:26.56v8/HE/Oo0 (1/1)

いやまあ、有志の教師によるボランティア、ということを考えれば、事件の中心に関われないのはむしろ当然なんだけどね、警備員。
もし学園都市に侵入した魔術師が普通に警備員に逮捕されたら、それはそれで非常に困ったことになるだろうし。

むしろ、そういう政治レベルの話が関わる事件に感情だけで突っ込んでいって介入できちゃう個人が割りと沢山いる、てのが学園都市の問題な気もする。
佐天さんもそんなとんでも個人の仲間入りを果たしたっぽいなぁ。


498VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/10(日) 00:52:58.49mNF2Iu0WP (1/1)

法に則った対応が不可能だから
友人知人殺されてぶち切れた個人が介入、と言う結果なんだと思う
暗殺や人体実験が横行で親船とか良識派は無力、と言うのが学園都市の実態だし

良識派が主流ならそもそも上条さんや御坂の出る幕は無かった筈



499VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/10(日) 13:21:35.29ORKiX8000 (1/1)

法も常識も意味を持たない・・・なんだ、ただの世紀末救世主伝か


500nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/12(火) 03:03:08.31gtvU7gjdo (1/1)

>>484
それ思い出しながら書いた。

>>485
苦みばしった大人の格好よさはあんまりかけてないかもだけどね。。。
若者とは違う苦悩があるし、それはそれで書いてて面白そうだけども。

>>490
美琴がテクに走ると微妙だなってのもあると思う。
一方通行相手なら応用力を十全に生かして挑むのも格好いいけど、
そういうところ以外では、主人公らしくパワー型でシンプルに魅せる要請があるというか。

>>492
Levelなんだぜ。

>>499
実態っていうか日常レベルで世紀末なのに学園都市に子供が集まるっておかしいよね。


んーごめん、続き2レスくらい書けたけど納得できないんで明日あげます。。。
なんか日曜にちょっと浮気して吹寄SS書き始めたらそっちが楽しくて時間とっちった。
そのうち総合スレかどっかに上げようかな。


501VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/12(火) 04:03:27.24JUWfoqaM0 (1/1)

Level に応じて奨学金もらえるからなぁ。
Level 0 の高校生である上条でさえ、仕送りとあわせてインデックスと2人食べていける額貰ってるみたいだし。
お金を払って普通の学校に行かせるのと比較して、学園都市を選ぶ家庭も多かろう。
それにしても、仮に約115万人いるLevel 0に毎月5万円出すと、それだけで6090億円/年。
残りの半分にはさらに多額の奨学金、寮、学校設備、etc
☆はどうやって資金調達してるんだ…


502VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)2011/07/12(火) 06:43:55.86RaV/5uMAo (1/1)

>>501
技術の切り売りや特許料じゃね
あと、武器輸出


503nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/13(水) 02:01:22.90srZnSgCXo (1/10)


「佐天さん、グッジョブ!」
「へへ。木山先生、車、大丈夫ですか?」
「ああ。少なくとも残りを走りきるのに不安はなさそうだ」

ドキドキと心の高鳴りを伝える心臓を沈めながら、佐天は美琴に微笑を返す。
車にも、あまり負担をかけずに済んだようだ。
調子がいい、と佐天は思った。
別にいつもとそれほど出力や制御がいいわけではないが、いつもどおりを土壇場でやれるのは、絶好調だと言えるだろう。
このドライブの目的は春上たちを助けることで、失敗すれば、沢山の不幸を招くことになる。
だから楽しいなどと思うのはきっと不謹慎なのだが、佐天は逸る心を抑えるのに必死だった。

「あと、残ってる部隊はある?」

美琴が初春に問い直す。
コレで終わりなら、ほとんど消耗せずに本拠地に乗り込める。
あまり本調子ではない美琴にとっては、ありがたいことだった。

「結構調べましたけど、多分あれで終わりだと思います。
 ただ、木原幻生の私設研究所のほうに装備があれば、何かしてくるかもしれませんけれど」
「そう。とりあえずは、しばらく体を休めてればいいのかな」
「そうですわね――――?!」

ズガンッ!!!!!
白井が相槌を打つより先に、突如、重たい音と振動がスポーツカーに伝わった。

「一体何?! パワードスーツは振り切ったはずじゃ」
「違いますわ! お姉さま、後ろ!」
「え? ってなによアレ?!」

衝撃は、コイツの着地音だったのだろう。
スポーツカーの後ろを、巨大な二足歩行型のロボットが走っていた。
距離は50メートルくらい、後方だろうか。
安全第一と書かれた外装をまとい、カニバサミ型の手を持っている。
見かけはよくある、学園都市製の建築・工作用機械だった。

「ったくよォ、使えねえ部下を持っちまうと、苦労するよなぁ」
「この声、テレスティーナ!?」

スピーカーから響いた声で、その大型機械の搭乗者が誰なのか、美琴は理解した。
佐天が、窓を開けて後ろを覗き込む。

「あれが、テレスティーナ……?」
「ええ。たぶん、あの口調が地なのよ」

美琴を除く四人は、汚い口調のテレスティーナの声を聞くのは初めてだった。
つい昨日まで、優しげに接してくれた人の声とは到底思えなかった。

「ほんっと、ちょこちょこといつまでも付きまとう羽虫ったらうぜーよなぁ。
 ここまで来た事は褒めてやるからよ、テメェらさっさと、逝っちまえや!!」



504nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/13(水) 02:02:13.57srZnSgCXo (2/10)


聞こえないだろうから当然だが、テレスティーナはこちらの返事を待たなかった。
工作機械がその腕を振りかぶる。こちらからの距離はかなりあるし、腕が届く距離には見えなかった。
だが。

「佐天さん! アレ、飛んでくる!」
「御坂さん止められますか!」
「っ……地上なら、そりゃなんとか。でも車の上は結構キツい。佐天さんは?」
「私も威力を落とすのは出来そうですけど、完全に止めるのは無理そうです」
「じゃ」
「二人でやりましょうか!」

後部座席、左右の窓から美琴と佐天は身を乗り出した。
スピードを落とせばそれだけ時間のロスになるから、木山にはブレーキを踏ませない。

「ほうら行くぞ。上手く避けないと、ブッつぶれちまうぞォ?」

笑いながら、テレスティーナはそう宣告した。
振り上げた腕を、すっとこちらに向けて振り下ろした。

「そォ、れっ!」

バン、という音と共に、1メートル近い鋼鉄のアームがスポーツカー目掛けて飛んできた。

「佐天さん!」
「――はい! 止まれぇぇぇぇっっっっ!」

能力をフルに解放して、佐天は気体を集めていた。それを、飛んできたアームの正面で、解放する
ボワァァァァァン!
初めに、膨らむような音がした後、すさまじい破裂音が美琴の耳を叩いた。
音速に近い勢いで膨らんだ空気が音を鳴らしたのだった。
いつか佐天が、初春と春上に倒れ掛かる電灯を払いのけた時には、佐天は渦を手元で制御していた。
この場合は佐天の腕にも破裂の衝撃が行くが、今みたいに、体から離して使えば被害は減らせるのだった。
だが気体の膨張仕事を逃がす先が多い分、エネルギーのロスは多くなる。
止め切れなかったアームが、スポーツカーに伸びてきた。

「佐天さん、ナイス」

防壁は、二段構えだ。美琴はアームに向けて手を伸ばした。
美琴から放射状に形成された電磁場が、美琴とアームの間に斥力を生み出す。
馬鹿にならない質量だったが、スポーツカーの手前で、アームは相対速度を失った。
ガランガランと地面を転がりながら、スポーツカーからアームが遠ざかる。

「ほぉ、頑張るじゃねぇか。それなら、真上からはどうだ?」

受け止められたほうのアームを有線で回収しながら、もう片方をテレスティーナは投げつける。
狙うはスポーツカーの上空、そして充分に飛んだところで、アームの回収ワイヤを引き寄せた。
放物線が歪んで、大体真上からアームが落ちてくる。



505nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/13(水) 02:03:23.61srZnSgCXo (3/10)


「くっ! 邪魔!!」
「さぁ二発目はどうだぁ? お、やるじゃねーか」

佐天が歯を食いしばって渦を巻き、アームにぶつける。
アームそのものがそこまで鈍重でなくて良かった。これで車並みに重ければ、どうしようもなかった。
佐天がアームの落下速度を殺したところで、美琴が電磁場を操ってそれをスポーツカーの横に逸らして落とす。
背後から一直線に襲われても、投げ落とされても、どちらも防御に掛かる労力は大差なかった。
……大差ないというのは、どちらにせよ何度もしのいでいる内に疲弊していく点では同じ、ということだ。

「初春! あとどれくらいでつくの?!」
「このスピードで10分です!」
「そんなに?!」
「佐天さん、厳しい?」
「だって、このままじゃ1分に4発ペースですよ!」
「そうね」

とはいえ、あちらが一方的に有利というわけではない。
高速を降りればこの工作機械は身動きがとりにくくなる。つまり、美琴たちを高速道路上で仕留める必要があるのだ。
一方、美琴たちは疲弊してしまえばただの女子中学生になる。
研究所に立ち入って春上たちを助けるには、演算を続ける集中力を残しておかねばならない。

「私と佐天さんじゃ、止めるのが目一杯か」
「お姉さま」

白井が美琴に声をかける。
美琴は、その声に含まれた響きだけで、白井の言いたいことを理解した。

「……私が、最後にあのアームを止めればいい?」
「! はい! 要は回収用のあの釣り糸を切ればよろしいのでしょう?」
「そうね。でもアンタ、乗り物の中から物を狙うの、苦手でしょ」
「ええ。でも、私だって日々進歩してますもの」
「そ。じゃあ、任せたからね」
「はいですの!」

白井は美琴に愛想良く返事をして、佐天を視線を交わす。
美琴の相棒は譲らない、そんな不敵な笑みを浮かべていた。佐天も白井に同じ笑みを返す。
そして視線を戻すと、テレスティーナが、また腕を振り上げていた。

「あぁ、面倒すぎる。まったく、お爺様ももっとちゃんと武器は残して置いてくださったらよかったのに。
 そら、さっさと潰れろよ! ちょっと変化つけてやるからよぉ!」

テレスティーナが先ほどと同様、こちらに向けてアームを構える。
そして先端にある二本の鉤爪を、グルグルと回転させた。
触れると危険なくらいの回転速度になったところで、再び射出した。

「くっ……一発!」



506nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/13(水) 02:04:59.28srZnSgCXo (4/10)


佐天は、右手に蓄えた渦を、アームに突き出す。
流れをかき乱すその動きは、佐天の渦の威力を半減させるものだった。
テレスティーナもそれを見越してやったのだろう。
その渦だけでは、アームはそれほど速度を落とさなかった。

「二発目!」

佐天の左手から、蓄えていたもう一発が解き放たれる。
一発だけより制御が甘いから一発の威力は落ちるが、二発分なのでトータルではさっきを上回れる。
もちろん、精神的疲弊が大きいのとの、引き換えなのだが。

ボワァァァンッッッ!!!

今度こそ、アームは回転も推進力すり減らして、ふらふらと美琴たちに近づく。
補足するのは簡単だった。美琴が、磁束を手のように伸ばして、それを捕まえる。

「黒子!」

美琴の呼びかけに、黒子は返事をしない。
そんな余計なことにリソースを割かず、黒子は車の床につま先を立て、膝を座席に触れさせた状態でじっとアームを見据えていた。
理由は簡単。車が伝える地面の振動を、つま先と膝をクッションにして目と脳に伝えないためだった。
白井黒子を初めとするほとんどの空間移動能力者<テレポーター>は、ある絶対的な縛りを課せられている。
それは、かならず自分自身を原点にとらなければならない、という制約だ。
その制約は、いくつかの条件下では、かなりのマイナス要因として働く。例えば車内にいる今がそうだった。
白井は車と一緒に、地面に対して揺れている。
その白井を原点に採るということは、つまり地面こそが揺れている、と演算式上では扱われるということを意味している。
ただでさえ蛇のようにのたうつワイヤーに、自分自身の揺れまで加算して、演算しなければならない。
50メートル以内ならミリ精度で飛び道具の行き先を調整できる白井をして、ワイヤーの狙撃を困難にするファクターだった。

「――ふっ!」

呼吸を止めて、白井は手元の金属棒を空間転移させる。
手元に弾はたっぷりある。惜しまず、10本をまとめて転移させた。

「どうです!?」

結果を白井は美琴に問う。後部座席中央では、その成果は良く見えない。
キンキン、と澄んだ音と共に白井の愛用する武器が金属ワイヤに食い込んだ音が、美琴の耳には届いた。
それを合図に、美琴はアームを無造作に投げ捨てた。

「御坂さん!」
「大丈夫」

テレスティーナがアームを回収しかけたところで、バツン、とはじけるような音と共に、アームがワイヤーから引きちぎれた。

「あ? なんだよ」
「やった!」
「黒子。ナイス」
「黒子に掛かればこの程度、お茶の子さいさいですわ」



507nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/13(水) 02:05:46.88srZnSgCXo (5/10)


ガランガラン! とすさまじい音を立てながらアームが後方に流れていく。
高速で追いかけっこをしながらのことだから、落としたものはすぐさま消えていくのだ。

「もう一回いける? 黒子」
「当然ですわ!」
「あー、ったく、往生際の悪いクソ虫どもだ。まだこっちには一発残ってるんだよォ!」

テレスティーナがスピーカー越しに愚痴を呟きながら、残る片腕を、工夫無く振り上げた。
そんなもの、美琴と佐天、そして白井の敵じゃない。

「今更すぎんだよ! とっくに実験は始まってるし、もうすぐ春上は高みにたどり着く。
 テメェらにもう出番なんざねぇんだよ!!」
「嘘です! 枝先さんたちを運び入れてまだ15分です。まだ実験なんて始められるわけありません!」

テレスティーナの言葉に、初春がすぐさま否定を返した。
その声はテレスティーナ自身に届くことは無いが、佐天や美琴には届く。

「落ち着いてあれを落としてください! テレスティーナがいなければ、どうせ実験なんてまともに進まないはずです!」
「それは、まかしといて、初春」

それは初春の願望も混じってはいた。だが、断言してしまえば、人は自ずと前に集中するものだ。
初春に佐天が笑って言葉を返した。
目の前で、テレスティーナが残った左腕を飛ばした。

「来ます!」
「うん!」
「了解ですわ!」

佐天が、再び両手に蓄えた渦でアームの威力を殺ぐ。そして美琴が電磁場でそれを留め、白井が切断する。
もう一度、綺麗な連係プレーが成立してアームは本体から断裂した。

「やった!」
「! 違います御坂さん!」
「なっ!」

三人の努力の裏を掻くように、テレスティーナは速度を上げ、機体をスポーツカーに肉薄させた。

美琴は、咄嗟にポケットからコインを取り出そうとした。それが、一番威力があって、一番速く出せる技だから。
だがスポーツカーのウインドウから半身を乗り出した、不自然な格好からはコインが上手く取り出せない。
まごついた数秒は、命取りだった。

「詰めが甘かったなぁ。本体を沈黙させてないのに、やったぁ、は速すぎんじゃねぇの?」

ニヤニヤとした、テレスティーナの嫌味な笑み。
美琴の不手際の間に、テレスティーナの駆る工作機械は、肘より上しかない腕を振り上げた。

「アンタにはやらせない!」



508nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/13(水) 02:06:41.81srZnSgCXo (6/10)


テレスティーナは佐天を眼中に捉えていなかった。それはレベルの問題もあるだろう。
美琴が身動きできない環境を用意すれば、勝ちだと思って無理は無い。
もちろん、それはテレスティーナ側の慢心だった。
佐天は、車と工作機械のコックピットの間、僅か3メートル位の空間で、最大出力の渦を打ち放った。

――バァァァァァァァンン!!!

ビリビリと後部座席の窓が震える。
思わず白井と初春は目を瞑り、木山は車のスリップに備えた。美琴も吹き飛ばされない努力で精一杯だった。
突然のその一撃から、白井は立ち直り、周囲を見渡す。
気づくと、佐天がいるべき座席のところに、その体が見当たらなかった。

「佐天さん……佐天さん?!」
「えっ?!」
「な、まさか?!」

前方にいる木山と初春が、佐天の姿が見えないことに戸惑った。
状況をつかめない三人をよそに、美琴がぽつんと呟いた。

「飛んでる……」
「え?」

白井は、窓越しに後ろを見た。
爆発に巻き込まれ、また工作機械は十数メートル車から離れていた。
そして、その車と、テレスティーナの間に佐天は飛んでいた。

「そんな……佐天さん! 危険ですわ!」

こんな無茶、レベル4でも早々はやらない。いや、やれない。
バサバサと髪を、セーラー服を、スカートをはためかせながら。
佐天は、空に浮いていた。

「佐天さん! 戻って! この距離ならレールガンで!」

だがその声は、遠く離れた佐天には届かなかった。
それにレールガン一発でどうなるものでもないのも事実。
佐天が、何をする気なのか、それが美琴には読めなかった。

「ふぅっ!」

佐天は、息を整えて、前、いや後ろを走るテレスティーナを見つめた。
いつ似なく、神経が研ぎ澄まされているのが判る。
何しろ、今佐天には、床にカーペットが見えるくらいだから。
車という物体は気流をかき乱し、その後方に連なった渦を生成している。
カルマン渦と名づけられたそれは、束ねた孔雀の羽模様みたいに渦の目を鈴なりに作るのだ。
佐天はその全てを一つ一つもぎ取り、自分の渦にした。
それだけでもう、空力使いの自分にとってのカーペットが、空に出来上がる。
飛翔は、苦手だろうと佐天自身も思っていた。渦で空を飛べれば苦労しない。
だが、応用次第では空を翔ける少女になら、なれるのだ。
ダンダン!と踏み締めるごとに渦を消費しながら、佐天はテレスティーナに肉薄する。



509nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/13(水) 02:08:23.46srZnSgCXo (7/10)


「あん? テメェ、殺されたいのか?」

爆発に振り回され、一時的に視界を失っていたテレスティーナが再び見たものは、アップで映る佐天の姿だった。
それを見て、テレスティーナは戸惑った。低レベルの能力者が、一体この工作機械に近づいて何をする? 何が出来る?
そのテレスティーナの混乱を、慢心とは言うまい。
佐天の伸びを正しく理解しているのは、この世でただ二人、佐天自身と婚后光子だけだった。

「――――ふ、やぁっ! ……ったぁ」

推進力を持たず、空気抵抗によって減速するのは佐天だけだ。
僅かについた工作機械との相対速度を、機体から出た落下防止用の手すりに掴まることで強引に殺す。
どう考えても、明日は腕の筋肉痛で苦しむことになりそうだ。
今、佐天がいるのは腰の辺りだった。
すさまじく大きな機体だけあって、佐天が掴まって体を落ち着かせるだけのはしごがついている。

「そんなところにいて、テメェ、休憩する余裕あんのかよ?」
「ほっといたら御坂さん達、着いちゃいますよ?」
「テメェを始末するのに時間なんかいるかよ。乳臭いガキが英雄気取りか?」

短くなってしまった腕でも、充分に届く位置に佐天はいる。
腕で自分の腰を叩けば工作機械は傷つくだろうが、人間を引き裂くのに必要な力なんて大したことは無い。
テレスティーナは腕を振り上げた。その一瞬のロスで、佐天には充分だった。

――――ガタガタガタガタン!

突然、テレスティーナが振り上げた腕が酷い振動を起こし始めた。
コックピットの中にまで、その異様さがはっきりと判るほどの騒音が鳴り響く。
テレスティーナは何事かと腕を止めた。むしろそれが命取りだった。

――――ガタガタ、バキン!

右腕が、肩から先を折って吹き飛んだ。あっという間に後方に流れ、機体は佐天へ干渉する術を失った。

「何?!」
「渦流共鳴<ボルテクス・レゾナンス>とでも申しましょうか、なんちゃって」

ちょっと高飛車な感じの師の口癖を真似て、佐天はそんな風に言った。

「おうちに帰ったらタコマ橋でググってみるといいですよ!」

カルマン渦は、固有の振動数を持っている。それが対象物の持つ固有振動数と一致する場合、
渦は物体と共鳴を起こし、すさまじい応力を物体にかける。
それは、かつて川にかけたコンクリート製の大橋すら崩壊させた現象だった。
高速で走る複雑な形状の物体、つまりこの工作機械にはうってつけの技だった。
振り上げた腕にまとわりつくように渦の巻きや直径をコントロールし、
佐天は自然の力を利用して工作機械の太い腕をへし折ったのだった。



510nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/13(水) 02:09:49.83srZnSgCXo (8/10)


「テメェ……殺す手段が他にないと思うなよ?」
「そっちこそ、あたしがコレやりたくてこっちに来たと思ってんの?」
「あぁ?」
「春上さんたちのところに、あなたを行かせない!」
「雑魚がいっちょまえに吼えてんじゃねぇよ!」
「学園都市の学生を見下すことしか出来ないあなたには、成長って言葉の意味は判らないんだね!」

佐天は、カルマン渦を使って、また同時に複数の渦を生成した。
腰というのは、機体の重心なのだ。それは二足歩行するシステムの基本だ。人間でもロボットでも代わらない。
そして、重心には重たいものが来る。
人間で言えば太い胴に詰めた内臓、特に膀胱であり、このロボットにおいては、エンジンだった。

「学園都市でも、コレだけ大型の機械を動かすための動力に電気は使わない。
 さっきからディーゼルが排ガス出してるもんね。じゃあ問題です。
 エンジンにきちんと空気が供給されなくなったら、どうなると思う?」

返事を佐天は待たない。
エンジンの吸気口付近で、佐天は渦に大量の空気を食わせた。
弁によって負圧となり、エンジンに流れ込むはずの空気が、渦に取り込まれてきちんと供給されなくなる。
酸素が無ければ燃料なんてただのガスだ。
すぐに、工作機械がスピードを落としたのがわかった。

「テメェ、止める気か! やらせるかよ!」

腕と出力がなくなっても、テレスティーナが切れるカードがなくなるわけじゃない。
テレスティーナはガンと片足についたブレーキを蹴りつけた。
ギャリギャリと音を立てながら、工作機械は円舞を踊りながら、急ブレーキをかけた。

「うあっ! う……く……!」

遠心力が、佐天を振り回す。
髪やスカートが引きずられ、手すりを掴んだ指に佐天の体重がのしかかる。
佐天の腕は、その加速度に耐えられなかった。

「あっ……!」

あっけなく、佐天は機体から引き剥がされた。
地面まで、5メートルくらい。そして自分は時速50キロくらいで吹っ飛ばされている。
何もしなければ、死ぬのは確実だった。
だけど佐天は、その心配をしない。それより先にすることがあるから。

「あばよ。さて追うかぁ」
「いってらっしゃい」



511nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/13(水) 02:11:25.46srZnSgCXo (9/10)


クスッと冷淡に笑い、小声でそっとそう呟く。
渦で吸気を絞りあげることなんて、永続的には出来ない。
むしろ本題はこっちだったのだから。
佐天は、ありったけの渦を、さっきは妨害をした吸気口に、全弾ブチ込んだ。
エンジンの排気量なんて、たかだか50リットル。
それは佐天の作る渦の体積と、ほとんど変わらない。
そんな狭い空間に、100気圧の渦を解放して気流を流し込めば、一体どうなるだろう。
答えは、ガウゥンッ!と、エンジンが吼える音だった。

「なんだっ!?」

テレスティーナは、加速するためにレバーをいつもどおり倒しただけだった。
エンジンはその入力に対応しただけの動きをするはずだった。
だが、あまりに過給気になったエンジンは、その出力を暴走させた。
人間の顔が引きつるくらいの加速を、工作機械が始めた。
もうテレスティーナの制御など、受け付けない。ブレーキすらも意味など無い。

「お、おい。止まれ! クソッ、壁が――。くあぁぁぁぁぁぁッッ!!」

両腕を失った、木原幻生の工作機械。
スポーツカーを凌駕する加速度でそれは高速道路のフェンスに突き進み――

ガッシャァァァァァァァァァァ!!

――すさまじい破壊音と共に、高架下へとダイブした。

「最後っ!」

佐天はそれをほとんど見届ける暇なく、自分のためのクッションを用意する。
スポーツカーを支えたノウハウがあるから、衝撃吸収にそんなに不安は無かった。
一番面積のある背中を下に向けるのにやや抵抗を感じつつ、佐天は渦を自分と地面の間で破裂させた。

バン、バン、バン。

断続的に渦を破裂させ、何度もバウンドしながら位置エネルギーと運動エネルギーを殺してゆく。
100メートルくらいかけて、佐天はようやくアスファルトの上に、どすんと落ちた。

「いったぁ……てか地面熱っ。でも、へへ」

微笑が、止まらない。
自分はやれたんだという思いが、佐天の中ではじけていた。
気づくと、青色のスポーツカーが、キュっと自分の傍で止まった。

「佐天さん! 佐天さん! なんて無茶するんですか!」
「あ、初春。急いでるんだから。私もすぐ追いかけたのに」
「そんなこと言ってる場合ですか! ほら、こんなにすりむいて」
「擦り傷はすぐ治るよ」
「他に怪我はないですか?」
「うん。まあ、ちょっと腕が痛いけど、骨折とかはなし!」
「良かったぁ……」

涙目の初春を、佐天は撫でてやる。
目線を挙げると、美琴と目が合った。

「すごいね、佐天さん」
「あたし、頑張りました、よね?」
「これだけやれるレベル2なんて、詐欺もいいところですわ。レベル3かも疑わしいと言いますか」
「もしそうなら、白井さんに並びますね」
「さあ、そう簡単には抜かせませんわよ。さ、急ぎましょう」
「はい!」

まだ、なすべきことがある。春上たちを助け出すまでは止まれないのだ。
随分と疲弊して、今後に問題があるのは間違いなかったが、
充足感で満ちた佐天は、それをものともしないくらい、気分が乗っていた。




512nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/13(水) 02:14:24.12srZnSgCXo (10/10)

あー、やっと書けました。お待たせしてごめんなさい。
『ep.2_PSI-Crystal 09: 渦流共鳴 - Vortex Resonance -』おわりってことで。
バトルは書き直しの不安からどうしてもまとめて投稿になっちゃうねえ。
またコメントいただけると嬉しいです。

>>501
学園都市の経済はあんまり考えちゃ駄目な気がするので考察してないw
まああんまり経済のこと知らないんだけどさ。


513VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/13(水) 04:04:40.13IDHfgNKdo (1/2)

佐天さん無双かもしれない、で乙

ああ....美琴の見せ場が消えてゆく....
まあコレはこれでアリだが


514VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/13(水) 04:25:32.00IDHfgNKdo (2/2)

>>508

うーん。渦から渦へ、次々に飛び移っていると思えばいいんでしょうか?

一瞬、一方通行の「黒翼」を連想したけど、やはり飛んでいるのとは異なるのかな。


515VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/07/13(水) 09:30:57.29lMOCBgXz0 (1/1)

とんでもないもの生み出しちゃったよ光子ちゃん。
かっこよくなりやがって

>>500
そ、それはもてたの方で話題になった吹寄ssのことですかな?


516VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/13(水) 10:36:57.49h7SijcePo (1/1)

おつ

>一番面積のある背中を下に向けるのに

一番体積があるところなら胸だったんだが…残念だ
いやおしりか、またおしりなのか!


517VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/07/14(木) 16:57:39.40FllGYWwAO (1/1)

お尻なら仕方ないな


5184762011/07/14(木) 23:43:29.00LXuLrtRu0 (1/1)

>アンチスキルの名に相応しい、対能力者戦闘のスペシャリスト

おう、作中でネタにしていただけるなら、こんなに嬉しいことはない。
しかし忘れてはならない。このフレーズとほぼ同じ名乗りを上げたキャラが、既に原作にいることを。
そう、我々は忘れてはならない。学園都市の闇が生んだ都市型モンスター、内臓潰しのモツ鍋さんのことを。
……モツ鍋さんの対能力者戦闘術ってどんなんだったのかなぁ。


519VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/14(木) 23:47:08.14UxzF75Z1o (1/1)

乙ですた!
いやあ、怒涛のバトル、かっけー!
サテンさんかっけー!
アホの子扱いだったのにくすりと笑って攻撃するとか師匠に似てきたーww

いや、能力をいかに使いこなすかという意味では師匠筋ですね。
持てる武器を最大限に活かす。素敵ですやん。

次回も楽しみにしてますよー


520VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/15(金) 00:28:20.11GYspGX670 (1/1)

超乙です
威力は婚后さんに劣るけど、能力の汎用性は超えてるかもしれないね
佐天さんの身体検査⇒レベル判明⇒転校?が気になるところ


521nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/15(金) 13:57:08.01OBy97OHQo (1/2)

>>513
美琴の見せ場は減るわなぁ。。。このSSでは主人公ではないわけで。
まあ、モブに成り下がるわけではないのですよ。
活躍の場が変わるということで。

>>514
そのとおりです。渦を足で蹴ってるので、空を飛んでるわけじゃない、という解釈ですね。
まあ地面に足着いてないんだから飛んでるともいえるけど。

>>515
もてたと同じスタート地点ではないです。というか全然違うところからひらめいて書いたからさ。
あとおっぱい成分濃い目で短い予定。もてたは長かったからな。

>>516-517
お尻スキーが釣れたwあんたがた佐天さんのお尻と胸に執着しすぎやw

>>518
どのキャラか分からんかったぞw SS2の人か。

>>519
不肖の弟子が師匠越えなるか。佐天さんは伸びまくりですね。

>>520
その話は作中のお盆の頃にやる予定ー


522VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/07/15(金) 14:36:39.37aMnzsUmAO (1/1)

こんごーさんもやり方次第でまだまだ伸びしろ有りそうだけどなぁ。
触らなきゃいけないのは制限でも有るけど、色々応用利きそうに思える


523VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/15(金) 16:29:20.37qGEjYxnSo (1/1)

おー 佐天さんエンジンの研究手伝ってた甲斐があった。

私事でいっぱいいっぱいで散漫な万全とは言えない
御坂の不足を十二分に埋めてくれそうで期待


524VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2011/07/15(金) 22:30:31.93N5AAWmQQo (1/1)

圧縮比せいぜい10くらいのエンジンに100気圧の圧搾空気叩き込んだら
暴走する前にエンジンのヘッドが吹っ飛ぶと思うの(´ヘ`;)



525VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/07/15(金) 22:33:50.09cvC0p+QFo (1/1)

そこはあれだよ、学園都市製のエンジンはヘッドが飛ばずに暴走しちゃう優れものなんだよ


526VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/15(金) 23:20:11.00ZxnQt6eIO (1/1)

さいせんたんのかがくぎじゅつってべんりだね!


527nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/15(金) 23:24:06.40OBy97OHQo (2/2)

>>524
機械は実はあんまりよくわからんので頑張って調べたんだけど、
エンジンブローの原因になってるのってデトネーションによる機械的破壊か、異常加熱による溶損なんよね?
吹っ飛ぶってのはシリンダー内が100気圧の空気押し込まれて異常な圧力になったことで、
機械的に破壊されるってことだと思うんだけど、100気圧程度ならしばらくは耐えるんじゃね?
弾性限界を迎える応力って気圧に直すともっとでかい数字だし、
実際デトネーションで出る衝撃波が加える応力って、瞬間的だけど1000気圧はあるみたい。

……だから5メートルくらいは故障する前に大暴走するのも無理はない、って主張するのは無理かな?w


528VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/15(金) 23:32:03.662QuEmTqlo (1/1)

面白ければよし


529VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/15(金) 23:44:08.54u9I4F3dt0 (1/1)

20~30年くらい進んでるから、そこまで問題にはならないんじゃね。

でも考えてみたら、ちょっとしょっぱい未来技術だな。
[たぬき]に辿り着くには1世紀半以上かかるし^^;


530VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/15(金) 23:52:17.89sOffP8KDo (1/1)

30年進んでいるならあれは原子炉じゃなくて核融合炉だったのかしらん


5315242011/07/16(土) 00:23:21.16zMXVPzVro (1/1)

>>527
いつも楽しく読ませてもらってます。佐天さんの活躍をみて初春さんも一念発起するのかなぁと妄想しつつ、今後の展開にwwktkしております。


 いやはや、自分自身は文系で自動車弄って遊んでるようなレベルの人間なんで具体的な数字出されるとチョッと
苦しいところ、あくまで経験則的なところから導いてるんで、実際どうなるかはやって見ないと判らないといった感じです。
 自分が想像してたのは暴走するのではなく、緩やかに停止するような感じで、
エンジンブロック自体が歪みはすれど大きな損傷を受けず、異常な高圧の空気を突っ込んだことによって
バルブか折損してエンジン終了か、それだけに留まらずバルブ自体が吹き抜けてヘッドカバーごと吹っ飛ばすんじゃないのかな・・・・?
といった感じです。まぁブロックとシリンダが無事なら高圧の圧縮空気で蒸気機関車のごとく動きそうですが・・・・(´ヘ`;)


532VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県)2011/07/16(土) 00:52:48.02TXjAhoH4o (1/2)

単車でやらかした経験からしたら
異常過給によるブローなら普通はヘッド飛ばない
ピストン破損してコンロッド突き出して
それでもまだ圧がアレならバルブが飛んでタンクに刺さる

今回の描写だと
ブローしてるのにに暴走だから
ディーゼルの利点生かしてスーチャー的な感じで
排気からも動力とっててそれが異常高圧拾っちゃった…みたいな


533VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県)2011/07/16(土) 00:58:09.62TXjAhoH4o (2/2)

あと思い出したんだけど
多気筒の同時ブローの場合
トラブったエンジンを分解する時
分解しやすくするために吸気側から
無理やり水圧かけてちょっと回すこともある
これはボート以上船未満のやつのケース


534nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/16(土) 01:38:00.54gKHRPC68o (1/4)


二人っきりのトラックのコンテナ内。
当麻の傍に寄り添うインデックスが、そっと声をかけた。

「とうま」
「ん?」

シャツの袖をくいっと引っ張られ、当麻はインデックスのほうを向いた。
インデックスの瞳に現れていたものは、戸惑い。

「エリス、ちゃんと運転手を操ってるみたい、だね」
「だな。ちゃんと封鎖されてた道のほうに進んでるみたいだし、進路はあってるらしいな」
「そうだね」

当麻とインデックスは、エリスと三人で、先行する美琴たちを追いかけている。
車の運転なんてできない三人は、MARの隊員に魔術で暗示をかけて運転させているわけだが、
当初その役を受け持っていたステイルは今、後方で光子と別働隊の足止めに借り出されている。
だから、その代わりをエリスが引き受けているのだった。
きちんとトラックが正しい道を走っているということは、エリスが魔術を使えるという証明だ。
だから、それがインデックスにはショックで、不安の種なのだった。

「……エリスは、どうして学園都市に来たのかな」
「さあな。気になるか?」
「うん。私は必要悪の教会<ネセサリウス>の人間だから。エリスの所属してるところとは、相容れないかも」

それが、インデックスの不安だった。
必要悪の教会はイギリス清教に仇なすあらゆる怨敵を滅ぼす機関だ。
エリスがイギリス清教に与さない魔術師だったなら、つまり自分とエリスは敵同士だということになる。
……魔術を持たない人となら、こんな心配は要らないのに。インデックスは内心でそう苦悩した。
魔術世界の歴史は嫌になるほど遠大だ。それは人類の歴史とイコールで結ばれる。
その長い時間の中で、あらゆる魔術結社が互いにしがらみを作り、憎しみあっている。
インデックス個人には、簡単に解きほぐせるようなものではない。

「なあインデックス」
「何? とうま」
「さっきエリスには聞いたけど。エリスがもし必要悪の教会の敵だったら、お前はどうするんだ?」
「どう、って」
「殺し合いをするのか?」
「そんなの、やだよ。せっかく……友達になれたと思ったのに」
「なら、それでいいじゃねーか。エリスはお前を裏切らない、エリスはそう言ったぞ」
「うん……」

内心に抱える悩みは、エリスへの疑念ではなかった。
そんなことじゃなくて、もっと二人を縛るしがらみが、敵対することを強制するような、そんな不安。
自分は、確かに好き勝手に誰とでも仲良くして、おいそれと何処へでも行っていい存在じゃない。
魔術世界の最低最悪の兵装、禁書目録<インデックス>なのだから。
ぽふん、と当麻に頭を撫でられた。

「むー、また叩いた」
「難しいこと考えすぎだろ。エリスはいいヤツだ。彼氏はぶっちゃけ口の悪い野郎だけど。
 なにか一緒にいるのに問題が生まれるんなら、その時は皆で頑張ってなんとかすりゃいい。
 それだけだろ?」
「うん、そうだね」



535nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/16(土) 01:39:09.45gKHRPC68o (2/4)


冷房の効いた室内で、インデックスはベンチに座ったまま当麻の二の腕に頭を預ける。
インデックスの大好きな当麻は、基本的にこういう人だ。
物事をなんでも楽観的に考えていて、問題が生じたら自分でそれに立ち向かう人。
きっと、今当麻が言ったことを、何かあれば当麻は実行するだろう。
今、知り合いの春上に起きたことを、解決するためにここにいるように。

「とうま」
「ん?」
「とうまって、ホントに変な人だよね」
「……なんだよそれ」

急にそんなことを言われて顔をしかめた当麻にインデックスは微笑む。
自分とエリスは、春上たちの求め向かう最前方の魔術師だ。ステイルはかなり遅れている。
きっと、自分達にも役目があるだろうという思いがインデックスにはあった。

「手遅れにならないうちに着いて、なんとかしなきゃ」
「ああ」
「そういえばとうま。さっき、みつこが苦しんでた音なんだけど」

インデックスには、ずっと引っかかっていることがあった。
その言葉を受けて、当麻が病院での出来事を思い出した。
光子を助けられなかったことに、ズキリと心が痛んだ。
それをインデックスに気取られないよう、表情を変えずに答えた。

「ああ。キャパシティダウン、だっけか」
「あれってどういう仕組みか、とうまはわかる?」
「いや。さっぱり。っていうかあんな便利であぶねえモン、もっと有名でいいと思うんだけどな。
 それに他人の能力に干渉するのって、結構難しいことのはずなんだけど」

当麻は首をかしげた。キャパシティダウンの仕組みがわからないのは勿論だが、
それよりもインデックスの言いたい事がわからなかった。
インデックスが学園都市のテクノロジーに興味を見せるのは珍しい。
鋭い目つきであの音を反芻し、インデックスは端的に自分の考えを口にした。

「たぶん、あれには魔術が使われてるんだよ」
「は? 魔術?」
「それもすごく原始的なものだね」
「いや、だってあれ学園都市製だろ? まさか学園都市に魔術師がいて、そいつが作ったって言うのか?」
「ううん。もしそうなら、もっと酷いものを作るんだよ。超能力者に魔術を使わせれば、死なせることは簡単なんだから。
 まあ、そんなことをすればきっと超能力者と魔術師が正面衝突することになって、酷い争いになるからやらないだろうけど」
「お前の言ってることが、全然判らないんだが」
「魔術っていうのは、結構簡単に起こっちゃうんだよ。必要な手続きを踏みさえすれば、誰でも使えるんだから。
 極端に言えば主や聖母マリアに祈りを捧げているだけでも、発動するものなんだし。
 なんのきっかけかは分からないけど、きっと試行錯誤の中であの音楽が出来ちゃったんだろうね。
 たぶん、あの音を聞いたら、すごく原始的な魔術が発動するんだと思う。
 私達魔術師にとっては無意識に防御できちゃうくらいちっぽけなのだけど」

インデックスが、心配げに前方を眺めた。もちろん壁で何も見えないのだが。
ついさっきここにいた美琴や、白井、初春、そして佐天。
皆、超能力者のはずだ。無事でいてくれることを、インデックスは祈った。



536nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/16(土) 01:45:31.42gKHRPC68o (3/4)



エリスは、トラックのコンテナ内で交わされた当麻とインデックスの会話を、助手席で聞いていた。
後部の音はマイクで拾われ、運転席に聞こえているのだった。
こちらの声も、伝えようと思えば伝えられる。だがエリスはそうしなかった。罪悪感が、それを邪魔した。
今、運転手を暗示にかけているのは、魔術ではない。エリスの使える超能力だった。
もちろん、そんなこと言える訳がない。さっき、ゴーレムのシェリーを見せてしまった。
超能力と魔術を同時に使えることを、知り合いに明かすのは怖かった。
ザッ、と無線の入る音がする。

「こちらイエローマーブル隊。マーブルリーダーおよびマーブルパープル隊、応答願う!」

何度も繰り返された呼びかけだ。リーダーというのは、何度か話に出たテレスティーナという人だろうか。
一向に呼びかけに応じないというのは、どういう事なのだろうか。
そう思いながら、エリスは前方に目を凝らした。ふと、無人のはずの高速道路上に大きな何かが見えたから。

「何だろ、あれ……? ちょ、ちょっと止めて!」

それがなんなのか、シルエットがはっきりしたところで、エリスは慌ててトラックを静止させた。

「上条君! インデックス」
「どうした? エリス」
「ハッチ空けるから、外に出てみて! なんか大きいのが」
「わかった」

エリスも助手席の扉を開き、慎重に足場を固めながらトラックから出た。
すぐさま、二人と合流する。

「大きいのって?」
「あれ」

エリスは当麻に問われ、さっと指を差した。そこには、高さ1メートル強の鉄塊が転がっていた。
二人には、どことなく見覚えのある形状。

「これ、建設現場でよくある機械の……」
「腕、だな。でもなんでこんなトコに?」
「とうま、エリス! こっち!」

気づくとインデックスが少し先へと走っていた。
そちらを見ると、高速道路の側壁が、ごっそりと破壊されて外の世界をのぞかせていた。

「コレやっぱり、交戦の後か」
「下に何かあるんだよ!」

当麻とエリスはインデックスに追いつき、恐る恐る、下を覗き込んだ。
そこにあったのは、先ほど二人が想像した、建設現場の工作用機械の本体だった。
ただもちろん、高速道路から落ちた分の衝撃で、下半身が酷く壊れていた。

「中に乗ってたのが、あいつらって事はさすがに無いよな……?」
「そりゃ、こんなのに乗ったってメリットないしね」

エリスとそう頷きあう。
ならば、乗っていたのは恐らく、MARの人間なのだろう。
そう思いながら、ふと当麻は気づいた。
工作機械は、股関節が破壊され上半身が前につんのめった形になっている。
その背中、人が入るにしては大きいハッチが、あまり壊れていない状態で解放されていた。
人が死んでいないのは関係すべきことかもしれないが、それでも、無人なのは気になる。
搭乗者は誰で、一体何処に行ったのか――

「とりあえず、見に出たはいいけど、何にもなさそうだね」
「うん。とうま、早く戻って追いかけよう!」
「お、おう」

二人に促され、当麻はふたたびトラックに戻った。
――――それが、佐天たちが目的地である木原の私設研究施設を制圧したのとおよそ同時刻だった。



537nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/16(土) 01:49:15.68gKHRPC68o (4/4)

>>531
あ、ごめんなさい。つい理系のノリで……。
まあ、好意的に解釈すれば作中みたいな挙動を起こさないとも言いきれないので、
テキトーに言い感じに脳内補完して置いてください。
しかし自動車弄るってスゲェな。そういう、自分の手を動かして何かできるんはいいですね。

>>532
うーん、ごめんなさい。
専門用語が多くてちょっとイメージがしにくいんですが、
まあ、良いようにとれば暴走もありかも、ってことでいいでしょうか。



538VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/16(土) 09:04:41.77kJbSYDewo (1/1)

>>537
魔法の言葉をどうぞ
っ【仕様です】


539VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/16(土) 12:23:13.20oeJ2N5yD0 (1/1)

エリスのフラグが積み重なっていってるようにしか見えないけど、その分、ていとくんの活躍が楽しみでござる


540VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/07/16(土) 22:45:28.4869UXrDjAO (1/1)

まあマッハ2で飛行する戦闘ヘリに比べればこのくらいは…


541VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/07/17(日) 02:30:15.73Ixxzs49M0 (1/1)

今はていとくん雌伏の時だ後に見せ場が来るそうだよね作者さん。

吹寄スレがたってて俺狂喜乱舞


542VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/07/17(日) 12:04:51.34tBJk62yAO (1/1)

そういや時速1000キロ以上でるバイクもあったな
ほんとなんでもありだな学園都市


543nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/17(日) 19:21:19.04F2SCVadmo (1/1)

>>539 >>541
ていとくんが頑張ってくれなかったらエリスはすごく不幸になるしなぁ。きっと。
今は登場してないけどそのうち頑張ってくれるはず……!

さて、最近浮気してまして。
吹寄「上条。その……吸って、くれない?」
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310749926/
エロい吹寄さんが書きたくなってカッとなってやった。


544VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/17(日) 22:11:38.37ZgFhmalZ0 (1/1)

佐天さんとテレスのガチおっぱいバトルが始まると聞いて(ry


545VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/17(日) 22:33:30.64j9e9GvTQ0 (1/1)

吹寄と聞いて(ry
早速読ませてもらいます!

テレスティーナのおっぱい見たいと思わないから
佐天さんのおっぱい大勝利。


546VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/07/18(月) 07:39:00.40IduVwwyAO (1/1)

あちらではおっぱいを
こちらではおしりを


547VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/18(月) 09:52:48.54Unt5PSrDO (1/1)

おしり対決なら、美琴も黒子も初春も参戦だな。

読み返してて、転校なら試験ネタもあるのかな


548nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/18(月) 16:56:47.40EBQJ1zI1o (1/8)


カツカツと、佐天たち五人は階段を下りる。
研究所にたどり着いてすぐ、佐天達は研究員達の無力化を済ませた。
武装をほとんど道中に配置したせいか、この施設にはパワードスーツの一体もいなかったので制圧は容易だった。
その後すぐに初春が電源の管制室をハックして調べた結果、施設の最下層の消費電力が不自然に多かったため、
五人はそこへと向かっているのだった。

「この下に、春上さん達が……」
「きっとね」
「無事で、いてくれ……!」

先頭を走るのは木山だった。
五人の中で飛びぬけて最年長というのもあるが、普段全く体を動かさないのだろう。
一番息が切れて辛そうだった。だがそんな体の都合なんてお構い無しに、木山は誰より先を急ぐ。
その努力をするかしないかで、自分の教え子達がまた悪夢の泥の中に沈んでいくなんて、想像するのも恐ろしい。
カツカツとパンプスのかかとを響かせ、木山は無骨なつくりの階段を駆け下りた。

「これで終わりか」
「着きましたの?」

五人とも息を整えながら、最下層の入り口をくぐって、辺りを見回した。
天井が随分と高い。壁際には鉄骨がむき出しになっていて無骨な作りをしている。
おそらく、そこはさっき佐天が退けたあの工作機械があったのであろう。
床は全て金属板の打ちっぱなしで、おそらくその広さは普通の学校の体育館より大きい。
明かりらしい明かりが無く、全て計器類の放つ光だったから、視界がかなり限定されていた。

「あの子たちは……!」
「木山先生、あっち」

佐天が、入り口から横手のほう、10メートルくらい離れたところに何かを見つけた。
皆でそちらを振り向く。どうも、横たえられた筒のようなものが見えた。
そちらに早足で近づくと、それが人を中に横たえた、シェルターなのが判った。
そして、中に誰がいるのかも。

「春上さん! 春上さん!」

初春が駆け寄り、アクリルでできた透明のカバーをドンドンと叩く。
中で、春上はベージュの病院着を着て静かに眠っていた。
初春の呼びかけか、あるいは衝撃音か、それに反応して春上がうっすらと目を開ける。
ういはるさん、と唇が動いたのが、初春の目に見えた。
良かった。春上さん、おかしくなってない。
わっと喜びが心の中を駆け巡る。
そして音が聞こえないのに気付いて、慌ててカバーを外そうとあれこれ見回す。
その初春を優しく見つめ、木山は春上の寝かされたシェルターより先の、手すりで遮られた先にある闇に目を凝らした。

「これがライトのスイッチかな、っと。……お」

遠くで、ぱちりと佐天がスイッチを押した。
初春たちがいる入り口近くに小さな明かりがいくつか灯り、そしてそれと逆に、
木山の見つめていた先が、大きくライトアップされた。
急な光量の変化に目を薄くしつつ、木山と、そして近づいてきた四人がその先を見つめた。

「あ、みん、な。よかった……!」

心の底から教え子を案じた、木山の漏らした声がフロアに響く。
学生の四人もそれを聞いて、嬉しくなった。
そうやって学生のことを心から好きでいてくれる先生がいるというのは、やっぱり嬉しいことだから。



549nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/18(月) 16:57:31.10EBQJ1zI1o (2/8)


「木山先生、すぐシステムをハックします。はやくあの子たちを助けてあげましょう!」
「あ、ああ。そうだな。この施設になら、体晶のファーストサンプルもあるかもしれない」
「じゃあ私達はそれを探します!」

しばらくすれば、当麻たちも追ってきてさらに人では増えるだろう。
黄泉川にしかるべき相談をすれば、体晶の捜索を警備員に手伝ってもらえるかもしれない。
開けた未来に心を軽くして皆がなすべきことをなそうと、決意した。
――――その瞬間だった。

「佐天さん! 後ろ!」
「えっ?」
「……この、クソ餓鬼どもが!」

破損の酷い紫のパワードスーツ。そしてスピーカー越しに何度も耳にした、その声。
工作機械と共に退けたはずの、テレスティーナがそこにいた。
佐天たちに見えないところで、カチンとある装置のスイッチを入れる。

「――っ! あ、ぐ?!」
「さっきの礼だ!」
「がっ!!」

パワードスーツの回し蹴りが、佐天の胴をなぎ払った。
1メートルくらい飛んで、さらに地面をごろごろと転がる。
その痛みに、佐天は意識が飛びそうになった。息が苦しい。横隔膜が、きちんと働いていないらしかった。
そして何より、頭が痛い。ズキンズキンと痛みを訴え、あらゆる演算が滅茶苦茶になる。
背後で、キィィィィィィィィィと、耳障りな音がしていた。

「これ、さっきの――くっ」

壁に手を着いて、美琴がテレスティーナを睨みつける。
美琴にはこの音に、聞き覚えがあった。

「あぁ、お前は知ってるだろ? キャパシティダウンさ。
 まさかここにはないと思ってたのかぁ? お花畑はほどほどにしろよ?」
「貴様ぁ!!!」
「あん?」

キャパシティダウンに、学生達四人は苦しんでいた。
白井が最も酷く、立てなくなって地面に膝を着いている。
初春もシェルターに手を着いて耐えていて、なかの春上が心配そうに呼びかけているらしかった。
佐天は特別テレスティーナに気に入られたのか、さらに弄ばれようとしているところだった。
そして残った木山が、生身でテレスティーナに挑みかかる。

「馬鹿かよ」
「ぐ、あ、ガハッ!」



550nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/18(月) 16:58:40.75EBQJ1zI1o (3/8)


パワードスーツを着ている時点で、生身の木山との間には大きな開きがある。
ましてテレスティーナはある程度格闘のたしなみもある身だ。
お勉強ばかりの研究者に、負ける要素など無い。
なんの衒いも無い前蹴りを木山は喰らって、佐天とは別の場所に蹴り飛ばされた。

「さて、お前、たしか佐天って名前だったよなぁ」
「――う」
「ちゃんと返事くらいはしろよオラ!」
「あ、ぎ、ぎ」

テレスティーナが横たわる佐天の頭の上に、パワードスーツの足を乗せた。
鉄板の地面との間で佐天の頭蓋がギシギシと歪んだ音を立てる。
その音に、心がすくむ。このまま頭を壊されてしまうんじゃないかと、不安が募る。
何より楽しそうなテレスティーナの声が、佐天の勇気を奪っていく。

「はい、お名前を教えて頂戴? じゃないと、次は内臓潰しちまうぞォ?」

ガン、と肩を蹴りつけて、佐天を仰向けにする。そして腹の上に足を乗せ、踏み潰し始めた。

「さて、ん、さん……!」

美琴は殺すくらいの視線で、テレスティーナを睨みつける。
それに気付いたテレスティーナが、涼しげにその視線を受け止めた。

「まあ落ち着けよ。次はテメーを潰してやるからよ。
 コイツは大金星を挙げたんだ。私がお爺様に頂いたあの機械をブチ壊すってマネをよぉ」
「うあぁぁぁ!」

グリ、とテレスティーナが足を捻る。不自然に腹に食い込んだその足に、佐天は悶絶した。

「やめなさい……!」
「なら止めてみろよ。ったく、レベル5のテメェを警戒してたのが仇になったぜ。
 伏兵にやられるなんてよ。このガキは褒めるに値するから、ちゃんとご褒美をやらねーとなぁ。
 ……にしても、テメェのショボさにはむしろ文句を言いたいくらいだ。余計な警戒しちまったからな。
 『場の統合者<インテグレータ>』の開発コードが泣いてんぞ?」
「インテグ、レータ?」
「……あ?」

聞きなれないその響きを、美琴が反芻する。
知らなさそうな素振りにテレスティーナも首をかしげた。



551nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/18(月) 17:00:40.68EBQJ1zI1o (4/8)


「お前、絶対能力進化<レベル6シフト>の計画知ってるんだろ? 自分の開発コード名も知らねえのかよ。
 まあ、序列の第三位ってのに比べて、絶対能力進化のプランの中ではお前は絶望的な落ちこぼれ扱いだがな」
「何を言ってるの?」
「隣に11次元を観測する能力者が侍(はべ)ってるのだってそれが理由だろ?
 あらゆる場を統合するにはそれだけの次元に渡って能力を展開する必要がある」
「え? 黒子は、そんな――」
「まあその辺りはどうでもいい。テメェは汎用性っつう素晴らしい特徴があって、学園都市に愛されてるんだ。喜べよ。
 お前のコピーが一番使いやすいってのは、いろんな意味で真実だからなァ」
「――っ!」

そう言って、テレスティーナは美琴が心に負った傷を抉る。
なぜ、体細胞クローンの作成の対象となったのが自分だったのか。
それはテレスティーナの言うとおり、発電系能力者<エレクトロマスター>という能力の普遍性にあるだろう。
能力の素性がわかりやすいし、応用も幅広い。それが仇となったのだろうということは、わかっていた。
そしてふと、テレスティーナの言ったことが耳に引っかかった。
――いろんな意味で、とはどういう意味だ?
美琴の顔を見てテレスティーナは満足したのだろう。佐天を踏みつけるのを止めて、壁際へと悠然と歩いた。

「コレ、なんだかわかるか?」

左手に、大振りで細長い砲身を持った何かを装着して、テレスティーナがニヤニヤと美琴のほうを見た。
銃の先を誰かに突きつけるでもなく、見せ付けるように全体を美琴の視界に入れる。
その砲身に刻印されたアルファベットに、美琴は気付いた。
『FIVE_Over
 PROTOTYPE_"RAILGUN"』
「それ――」
「プロジェクト・FIVE_Over。そういうのがもう始動してるのさ。
 テメェに拮抗するには必要かと無理矢理横流ししてもらったんだが、別に必要なかったな。
 ま、テメェのお友達は全部コレで殺してやるから、喜べよ。
 お前の能力はホント、大量殺戮に向いた良い能力だよなぁ」
「!? そんなの、させない――!」
「んなこたァ自分で動けるようになってから言えよ」

その武器は、おそらく、自分の能力を元にして開発された最新の兵器なのだろう。
美琴は、その刻印で悟った。
また、だった。良かれと思い必死になって磨いてきた自分の能力。
誇りにさえ思っていたのに。知らないところで、誰かがそれを利用している。
それも美琴の望まない、最悪の応用方法で。
それが、たまらなく悔しくて、怖い。自分の能力で、友達が死ぬなんて。
睨む美琴など眼中になく、哄笑を撒き散らしながら、テレスティーナは春上のほうへと近づいた。
進路上の白井と木山を蹴り飛ばし、シェルターの前に進む。

「やらせ、ません……!」
「ったく、メンドクセーんだよ」
「あ、ぐっ!」

開いた右手で初春を掴み、横に投げ飛ばした。

「お前、春上と仲良かったよなぁ。先に死なせるのは興ざめだな。
 ちゃんと、春上がこの学園都市の夢になるところを、見届けてから死にな」

カタカタと片手でテレスティーナがコンソールを操作する。
シェルターの中に何かが噴霧され、くたりと春上が意識を失って倒れた。



552nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/18(月) 17:01:48.42EBQJ1zI1o (5/8)


「春上、さん……」

誰も、動けない。誰しもが動け動けと、体に言い聞かせているのに。
その悔しげな顔を、テレスティーナは愉快そうに見下ろしている。

「やめ、なさいよ……学生は、アンタ達のモルモットじゃない!」
「いや? モルモットだろ? 一番弄ばれてるお前が一番わかってるんじゃねーかよ」
「私は……そんなの認めない!」
「別に認めてくれとは言ってねえよ。モルモットを実験に投入するのに本人の意思確認なんてするわけ無いだろ?
 さて、準備は出来ちまったぞ? ほら、コレで暴走能力どもから神経伝達物質の抽出が始まった。
 春上に届くまで、もうちょっとだ。喜べよ。お前らは、レベル6が生まれる瞬間に立ち会えるんだ」

タン、と始動キーを押して、プレゼントの包装をあける子供みたいにワクワクとした目でテレスティーナは前を見つめる。
心の中で、髪を撫でてくれる優しい祖父を思い出す。またきっと、これで会える。また褒めてもらえる。また愛してもらえる。

「お爺様。不肖のテレスティーナですけれど、これでお爺様と私の夢を叶えて見せますから……!」

喜びに、体中が震えそうなくらいだった。
このときのために自分は生まれて来たのだと、テレスティーナは思った。

「あの子たちにそんな衝撃を与えたら、覚醒してしまう……!」
「えっ?」

木山がガクガクと足を震わせ、必死に立ち上がろうとする。だがまるで下半身が反応していなかった。
無理もない。パワードスーツに痛めつけられたのだから。佐天も、同じ境遇だった。
頭を踏みつけられたせいで、首が不自然な痛みを訴えている。動かすとビキリと痛みが走る。
内臓を踏みつけられたせいか、体全体が酷く重い。血を吐かずに済んだのは、行幸なのだろう。
木山の発した言葉に、テレスティーナが反応した。

「ああ、そういやコイツラ、そういう面倒があるんだっけな」
「早く、止めないと……」
「別に良いだろ。レベル6が誕生すれば、学園都市なんざどうなったって」
「え?」

呟いた佐天を、テレスティーナが見た。
ヒトを見つめる、視線ではなかった。

「この街は実験動物の飼育場だろ? テメェもそういや木山のモルモットだったらしいじゃねえか」
「それは……」

木山が、反論を失ったように歯噛みし、テレスティーナから視線を逸らす。
否定できない事実だった。確かにそんな風に、木山は学生を私欲のために使ったことがあった。
……その表情を見て、佐天は思う。あれが、学生達を実験動物扱いした人のつくる表情だろうか。

「違う」
「お?」
「木山先生は、アンタなんかと違う。人をモルモット扱いして笑ってるアンタなんかとは――!」
「まあ、そうだな。私のほうが、ずっと高みにいるからな。さて、しばらく暇なんだ。
 もう一回相手してやるよ。その生意気な目をさっきみたいに怯えさせるのは、楽しそうだ」
「くっ……!」



553nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/18(月) 17:03:36.04EBQJ1zI1o (6/8)


ガシャガシャとパワードスーツを揺らし、テレスティーナが跪く佐天の前に立つ。
ゴルフグラブでも振るように、左手に装着した砲身で佐天を殴り飛ばした。

「あがっ、う……。い、あ、あぁぁぁぁぁ!!!!」

転がった佐天の右の腱に砲身を突きたてグリグリと踏みにじる。
激痛が体を走り抜けて、嫌なのに、抗いたいのに、顔から鼻水と涙がこぼれて視界が乱れた。

「そうそう! その顔! 良いねぇ、もっとやれば命乞いでもし始めるか?」

折れるもんか、と佐天は強がる。
そうしないと、折れてしまえば、どこまでも自分が卑屈になる気がした。
痛いものは痛い。怖いものは怖い。そう開き直るのは、甘美な誘惑だった。
次の一撃が来るのに耐えていると、ふと、テレスティーナが視線を上げた。

「きた! 早いじゃないか。よし、お前も春上の晴れ姿、見たいだろ?」
「うぁ! あああ!」

ブチブチと髪が嫌な音を立てる。
パワードスーツの腕が無理矢理佐天の髪を引っ張り、佐天を引きずっているのだった。

「さてん、さ……」
「お前も特等席だ」
「あっ!」

どさりと、佐天は初春と一緒に春上のいるシェルターの前に転がされた。
中で、春上は静かに気を失っている。

「ほら、見てみろ。あの無痛針の中にある液体に、体晶が溶け出してるんだ」

宝物を自慢する子供のように、あるいは自分の仕事を自慢する親のように、
テレスティーナはシェルターの中の様子を佐天と初春に解説する。
胴を押さえつけられ身動きの出来ない二人は、それを眺めることしか出来ない。

「……春上さん! 目を開けて! 逃げて!!!!」

もう、そんな悲鳴を上げることくらいしか初春には出来なかった。
どうにもならない現実だけが、淡々と時間を勧めていく。
すっと、春上の首元に、無痛針が押し当てられた。

「あ……そんな」
「さぁて! やっと、このときが来た! ほら春上、さっさと目覚めな!」

喜色満面で、テレスティーナが声をかける。
防音性の高いシェルター越しにその声が届いたはずも無いが、ぱちりと、春上が目を開いた。
ぼんやりと、天上を見つめる。

「どうだ? 新しいお前のための世界は、一体どんな風に見える? なあ春上」



554nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/18(月) 17:04:58.47EBQJ1zI1o (7/8)


テレスティーナが、聞こえもしない春上に、そんな優しい声をかけた。
母親なのだ、テレスティーナは。そんなつもりで、彼女は春上に声をかけていた。
そっと半身を起こして、春上はテレスティーナを見つめ、そして初春と佐天に目をやった。

「春上さん!」
「私です、初春です! わかりますか!」

その呼びかけに、春上はまるで反応を示さない。
やがて、なにか自分の体に違和感を感じたようにうつむいて、そして。


どろりと、鼻や口から、血をこぼした。


「春上さん!!」
「大丈夫!?」
「なんだと!? おかしい、こんなはずじゃない!」
「こんなはずって、春上さんを止めて!」
「指図してんじゃねえよクソガキが!」

春上が、シェルターの中で咳を続ける。そのたびに押さえた手の隙間から血がこぼれた。
空いた手で握り締めたシーツが、あっという間に赤く染まる。

「クソッ! 何でだ! ちゃんと全部、プランは上手く行ってた!」

コンソールを叩き、実験を中止しようとするテレスティーナ。
そこに、けたたましいアラームがなった。

「なんだ? ……地震か! クソ、この面倒なときに……!
 まあいい。あの連中の体晶は用済みだ。死ねば地震は止まるんだし、もうお払い箱でいいか」
「やめろ!!」

木山の悲痛な叫びが響く。気付けば回りで、低く唸るような音が始まっていた。
一体、どれほどの人間を巻き込んで、ポルターガイストが起こるのだろうか。
あの子たちを、絶対に死なせたくない。
それが木山の願いだ。だけど、それが酷く空虚に聞こえる。

「こんなの、ひどいですよ……」
「初春」
「何処から止めたらいいのか」
「泣いちゃ駄目だよ。出来ることを、探さないと」
「でも、この音が」

それが、一番問題だった。
これがある限り、木山以外はまともに歩くことさえ出来ない。
そして行動を何も起こせなければ枝先達がテレスティーナに殺される。
春上だって、テレスティーナの手に負えないかもしれない。死んでしまうかもしれない。
そんなのは、絶対に嫌だ。
佐天は、シェルターの縁に手をかけて、必死に立ち上がる。
チャンスが欲しい。今一瞬だけでいいから、皆が幸せになれるためのチャンスが。

「――佐天!!!!」
「えっ?」

その時。どこかで聞いた男の人の声が、フロアに響いた。
たしかそれは、ツンツン頭の高校生の。
上条当麻の声がした。



555nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/18(月) 17:08:58.97EBQJ1zI1o (8/8)

『ep.2_PSI-Crystal 11: 踏みにじられる想い』おわりっと。
さて、次辺りフィナーレっすね! やっときた!

>>544
おっぱいとかそんな雰囲気じゃねーだろばーかばーか
……ごめん、さすがに期待はされてなかったと想うけど、こちらはガチバトルです。


556VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/07/18(月) 17:30:03.55ayE88P/eo (1/1)

乙~
きゃー、マジ上条△(棒)


557VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/18(月) 19:07:20.41twKkJFr80 (1/1)

上条さんはシステムを壊す代わりに自爆装置を起動させそうで困る。
原作よりすごいことになってきたな


558VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/18(月) 19:54:50.89uNaz5ucTo (1/1)

原作は佐天さんだけが動けたからキャパシティダウンをどうにかできたんだったな

上条さんはキャパシティダウンを止めろとどんだけ言ってもテレスティーナに殴りかかりに行きそうな気がするが


559VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/18(月) 21:09:52.72sYsFAGGgo (1/2)

上条説教パンチ→テレス吹っ飛ぶ→キャパシティダウンにぶつかる
これね!


560VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/18(月) 21:50:56.94FALzyjW6o (1/1)

パワードスーツ着たただの人相手じゃ上条さんは役に立たんだろう


561VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/07/18(月) 22:15:10.92WoIBuZB8o (1/1)

乙です
インデックスさんがキャパシティダウンのことを魔術だって言ってたしインデックスさんの活躍が来るかな?
しかし皆がピンチな時に駆けつけるのはやはり王道でカッコいいな


562VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/18(月) 23:03:35.79sYsFAGGgo (2/2)

そういえばそんな伏線があったな
上条さんがいるだけで音の波長が歪んで効果を発揮しなくなって
復活した能力者連中にフルボッコとかそんなんだろうか


563VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/07/18(月) 23:34:27.56Z3OdbXo7o (1/1)

いいところで切るなあ…
次が凄い気になる


564VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/19(火) 02:50:08.49MbAWhOp30 (1/1)

まとめから一気読みしてきたぜぃ
なんか誰かとくっついた上条ちゃんって段階で面白い。

あとひどい話だがこれだけ報われてないのに、どこの美琴より可愛いと思ってしまったw
次回も期待


565VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)2011/07/19(火) 07:42:30.38Gf7IrI8Ro (1/1)

>>561
インデックスも活躍ほしいね


566VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/07/19(火) 12:17:34.46QUw2HTcv0 (1/1)

バカって言ったそっちの方がばーかばーか

乱雑解放終わったらエリス&ていとくんのターンだな


567VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/19(火) 14:21:36.22gzpC4ZIN0 (1/1)

> 「――佐天!!!!」
こんなときでもスルーされる美琴たんww


568VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/07/19(火) 18:15:51.44bgKBCf8Ao (1/1)

今のところ描写を見る限りで一番重傷を負ってそうなのが佐天さんだからじゃないかな<美琴スルー


569VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/19(火) 18:21:22.856c6gPKhIO (1/1)

>>554

あ~アレだ。こちらのSSの伏線からだと、上条さんが触れている能力者はキャパシティダウンの影響からは逃れられそうだが、能力自体が使えなくなるので本末転倒だな。はたして上条さんに見せ場があるのだろうか。インデックスたちに期待。

キャパシティダウンの働きがあくまで音波(振動?)なら、空力系の能力者は自分自身ぐらいなら防御できそうな気がするが……。無理?


570VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/19(火) 19:29:08.34Y444SHO00 (1/1)

超乙!
佐天さんの大切な体が心配過ぎるぅー
この状況、上条さんはわからないけど…インデックスとエリスがキーポイントになりそう


571VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/19(火) 22:28:32.82PTmSJCbf0 (1/1)

佐天さん重傷で流石に妹達編介入は無理かな。
妹達と遊ぶ佐天さん達とか見てみたかったが・・・


572VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/19(火) 22:58:45.89LfWpWt5Mo (1/1)

夏休みは佐天さん転校準備とかもありそうだしなぁ


573VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県)2011/07/19(火) 23:26:49.68ati8Z8rU0 (1/1)

それでも冥土帰しなら、冥土帰しならきっとなんとかしてくれる…!


574VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/20(水) 19:01:19.77zyqH1B9S0 (1/1)

>>570
 トラックの中でのインデックスと当麻の会話でキャパシティダウンの事を
 「私達魔術師にとっては無意識に防御できちゃうくらいちっぽけなのだけど」
 というのが気になる。
>>571
 一方通行のプラズマを婚后さんと佐天さんの師弟コンビがが吹き飛ばすんですね、わかります。
 妹さんの出番が…姉妹揃って空気になりそう。

>>572
 実際に常盤台に転校するとしてレベル4の奨学金で常盤台の学費&寮費払えるのかな…
 まあ、その前に常盤台の授業に佐天さんがついていけるかわかりませんが
 よく他のSSで美琴が当麻の家庭教師やる話があるけどこの場合は左天さんの家庭教師やるかも。
 黒子のセクハラに耐えかねて佐天と美琴が同室、というのも面白いかも。


575VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/21(木) 00:10:20.49pRSlNiqB0 (1/1)

>>573
冥土帰しなら全治三日ぐらいで治しそうですね。

>>574
>レベル4の奨学金で常盤台の学費&寮費払えるのかな…
あれだけの施設を学費だけで運営できるとは思えないから逆に学費や寮費は格安か無料なんじゃないかな。


576nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/21(木) 02:03:20.21lJO/VxKRo (1/1)

んーこっちも更新したかったが時間が無かった。すまん。

>>574
レベル4なんて常盤台でも希少だし、お金を理由に学生を弾くことはないっしょ。

>>567-568
描写が不足してたね。ごめん。後で直します。
一番スポットライトの当たってるのが春上のいるシェルター付近で、
そこでテレスティーナから初春と春上を庇う感じに佐天が立ってるので、
上条さんは佐天さんを呼んだ、というのが真相。美琴は影にいたのよ。

>>564
ご新規さんいらっしゃい。嬉しい。
美琴を可愛く思ってもらえてありがたいです。あれだけ美琴の扱いが鬼畜なのにw


577VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/21(木) 03:00:29.41kbKaIxI/o (1/2)

佐天さんは完璧レベル4扱いか


578VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/21(木) 19:45:00.93rkyAAbzc0 (1/1)

公的にはレベル2、実質はレベル3くらいじゃないかな。
でも竜巻を作りだせるなら限定的な天候操作・・・むむむ


579VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/21(木) 22:23:42.86HE+f1o7qo (1/1)

空力系というか渦を操る佐天さんの場合、彼我が高速で移動している状況は自分に都合のいい戦場で、レベル以上に戦果があったのだと思う。同じ空力系でも婚后のように能力の条件が違うと、こう上手くはいかない気がする。


580VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/21(木) 22:36:43.86aPajcBH+0 (1/1)

>>576
 常盤台には約200人中47人がレベル4らしいのでそんなに珍しい訳では
 無いけれど、学園都市から見たら貴重なレベル4ではあるよね。
 なあ、学園都市からの奨学金+学校からの奨学金でなんとかなるかも。
 (ちなみに現実の世界で慶応大付属中学で年間約150万だそうです)
>>578
 渦作って空を飛んだ段階でレベル4な気がするな。
 


581VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/21(木) 23:26:04.76kbKaIxI/o (2/2)

レベル5の希少性と金持ちっぷりから逆算すると
レベル4ともなると子供の手には多すぎるくらいの給料出ると思う


582VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/07/21(木) 23:30:42.44LhIr5tkHo (1/1)

それに、光子経由で実験に参加すればその分の謝礼も入るし、ゆくゆくは独自プロジェクト打ち立てられることもあるし
奨学金以外でもどうにか金稼げそうだ


583nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/23(土) 23:02:23.39Bel3T35Uo (1/6)


「上条さん! 音を、止めてください!」

スピーカーから響く当麻の声に、佐天は自分が出せる精一杯の声で返事をした。
このキャパシティダウンさえ、これさえ消えれば、戦況はきっとひっくり返せるのだ。

「チッ。時間をかけすぎたか」

僅かに内省を込めた声で呟いたテレスティーナが、佐天を殴り飛ばす。

「うぁっ」
「面倒なことになる前に、とりあえずテメェら三人、始末しといてやるよ」

佐天が殴られた頬に手を当てながら振り向くと、さっきから地面に這いつくばったままの白井や美琴が、
ちょうど佐天とテレスティーナを結ぶ直線の延長上にいた。
テレスティーナは右手に構えたレールガンの銃口を三人に向け、見下ろしながらニタリと笑った。

「恨むんならこんなテクノロジーを開発したそこのレベル5を恨むんだな」

大型の馬上突撃槍みたいな、円錐型の尖ったフォルムを持ったその大砲が、その真の形を展開した。
砲身の周りを覆っていた滑らかな円錐が均等に裂けて、パラボラアンテナ様に広がった。
美琴は、そのレールガンが周囲の時空に干渉し、『レール』を作り上げていくのをその目で見た。
その機構はまさに、美琴のそれと同じだった。
なんら機械的機構を必要とせず、プロジェクタイルに通電してローレンツ力を印加し銃弾となす、
言わば砲身自体も電磁場で構成してしまうのが美琴の超電磁砲だ。
テレスティーナの持つそれは明らかに金属製の砲身を持ってはいるが、加速を行う砲身は、
美琴と同様に機械部分よりも先、佐天の体を突き抜け、美琴のすぐ傍まで真っ直ぐに伸びていた。
三人まとめて殺す気なのが、良くわかった。問題は、美琴の体が動かないことだけだった。
動くのなら、止めようだってあるのに。

「させない……! 絶対に!!」
「佐天さん! 動けるなら射線から離れて!」

佐天が笑う膝を叱咤しながら、中腰くらいまで立ち上がった。
爛々とその目がテレスティーナを睨みつける。心は、折れていなかった。
だって、当麻が、きっと音を止めてくれるはずだから。
それは信頼というには独りよがりだったかもしれない。
別に、佐天は当麻にそれほど親しみがあるわけじゃない。どれほど信頼できる人かは知らない。
だけど、ここに来て、苦しむ春上たちを助けようとしてくれた人だから。
きっと、状況を打開してくれるものだと、信じている。
その希望的観測を、テレスティーナが鼻で笑った。

「いい顔しちゃってよぉ、自殺願望でもあんのか?
 まあいい。それじゃあ逝ってらっしゃい、ってなァ!」

テレスティーナがトリガーに手をかけたのが判る。
もう、このままでは三人の命は、数秒で終わってしまうのだろう。
だが、佐天は希望を捨てない。それは、最後まで機会を逃さぬ意志の表れ。

「さてん、さん――逃げて」
「やめろ! ……お願いだ。止めてくれ」



584nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/23(土) 23:06:13.71Bel3T35Uo (2/6)


遠くで、木山と初春がうめくようにそう叫ぶ。
地面の奥深くから聞こえてくるような地鳴りが、酷くなる一方だ。
佐天からは見えないけれど、きっと春上もまた、シェルターの中で苦しんでいるのだろう。

こんな、酷い「終わり」なんて許さない。
あっていいわけない。
学園都市は、沢山の子供達の夢と希望を詰め込んだ、世界一幸せな場所じゃなきゃいけないのに。
こんな悪夢を、あたしは絶対に認めない!

テレスティーナが笑みをひときわ強くした。
邪魔な佐天たちを排除できると、確信の笑みを浮かべたその瞬間だった。




先ほど、上条が佐天をよんだそのスピーカー越しに、三声聖歌<シンフォニア>がフロアに響き渡った。




「えっ?」
「……あん?」

互いに主題を変奏し掛け合わせながら、女声が二声、主奏と助奏を入れ替えつつメロディを奏でていた。
まるで教会の中でしか聞けないような、聖歌のように。
佐天が、そしてそこにいた全ての能力者が、そのメロディに聞き覚えを感じていた。
そして、漠然と理解する。
通奏低音のように間延びしたトーンでメロディを奏でている三声目、
その音こそが、この場でずっと自分達を苦しめてきた音であることに。
それは奇妙なハーモニーだった。
頭にギチギチと食い込んで、ずっと自分を苦しめていたはずのその音が、
まるでその役目を忘れたみたいに、綺麗に残る二声と唱和している。
それが実際に、インデックスとエリスによって為された、
魔術のキャンセルであることには誰も気付かなかった。
戸惑う佐天の後ろで、先に美琴が、「その事実」に気付いた。

「佐天さん!」
「えっ? あ!」
「な、動けるのかよ!? うぜぇんだよテメェら!!!!」

美琴はなすべきことを、もう理解していた。
佐天と白井を庇うために、テレスティーナの射線から身をかわす。
白井がたぶん演算をまだ回復できないこと、佐天はもしかすれば動けるかもしれないこと、それくらいは脳裏にあった。
ちらと視線をやると、佐天も射線から身をずらし、的を分散させていた。
美琴は息をつく。これで全滅はもうない。
誰かにテレスティーナが銃弾を浴びせても、残り二人が絶対にテレスティーナを食い止めてくれる。
そして、きっとこの破滅的状況は、なんとか打開されるだろう。
美琴はポケットからコインを取り出した。
たぶん、これでテレスティーナが狙うのが、自分に決まるだろうから。



585nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/23(土) 23:07:27.17Bel3T35Uo (3/6)


「レールガン対決か、面白いじゃねェか!」

案の定、テレスティーナは一番の脅威が御坂美琴だと見て取って、レールガンの照準を合わせた。
その裏で、ようやく体の自由を取り戻した佐天が、為すべきことを探して視線をめぐらせる。
美琴と目が合った。その視線に、佐天はいぶかしんだ。
――ごめん、後は頼んだから。
そんな風に、美琴の目が言っているみたいだったから。

「えっ?」

おかしい、と佐天は思った。
美琴の手のひらの上のコイン。レールガンを打つときは、確かもっと、その腕の周りに火花が散っていたはずなのに。
今はただ、力なくコインが乗っかっているだけのように見えた。
それもそのはずだ。いかな御坂美琴とて、あれほど手ひどくうけたキャパシティダウンの影響から、
たった5秒で超電磁砲の複雑な制御を可能とするところまでは、回復できない。
そのコインは、友達を巻き込みたくなくて美琴がとった、ブラフだった。
打てて、チャージの足りない生半可な一撃だけだろう。
美琴は、何も自己犠牲のつもりでそうしたのではない。
誰かが傷つくのを、横で黙って見ているような真似が出来ない、損な性分なだけ。
美琴は改めてテレスティーナを睨みつけた。刺し違えてでも、絶対に止める。
意識の矛先をテレスティーナに収束させた美琴には、瞬間的な佐天の動きが、見えなかった。

「御坂さん! 駄目です!」
「!? 佐天さん、こっちに来ないで!」

佐天は美琴の意図を汲み取った瞬間、気付かないうちに足を動かして美琴のほうへと走りこんでいた。
美琴と同等の威力のレールガンを打とうとするテレスティーナに、自分が一体何を出来るかなんて、考えもせずに。
だって、佐天だって、大切な友達が苦しんでいるのを、横で指をくわえているのは嫌だったから。
能力を、不可能を可能にする奇跡の力を手に入れたのだから、傍観者に甘んじることなんて、絶対にしない。
間に合ってと願いながら、のこるほんの1メートルを、必死に埋める。

「くっ……!」
「それじゃあな、あの世で元気にやってろよ!!」

見下したテレスティーナの目が美琴を苛立たせる。
早く、アレを止めなきゃ! 佐天さんを巻き込んじゃう!
なけなしの出力じゃ何の意味も無い。
美琴には時間が足りなかった。
テレスティーナの右手に装着したその砲身が赤熱し、プロジェクタイルの投射準備が整った。
そして絶望的な、ガチンという、電気二重層キャパシタが落雷に匹敵する大電流を砲身に流し込む音が聞こえた。

「御坂さん!!!」



586nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/23(土) 23:09:23.70Bel3T35Uo (4/6)


白井が割り込めない理由は、空間移動<テレポート>という大能力と引き換えに得たその演算の難しさだった。
美琴が立ちすくんでいるのも、また同じ。強力な能力の代償を演算コストという形で支払う二人には、この状況は致命的だった。
だけど、佐天は違う。
佐天は稚拙な能力者だ。応用なんて、ほとんどない。自分は渦しか作ることが出来ない。
だけど、ただそれだけなら。
毎日毎日、それが楽しくて、寝ているとき以外ならほとんどいつでもそれをやっていたから、
ただ渦を作って、テレスティーナのレールガンを逸らすことくらいなら、自分には出来る……!!

「あああぁぁぁぁっ!! 止まれえええぇぇぇぇぇぇ!!!!」

ギッと、テレスティーナの砲身のその目の前に、佐天は己の能力で渦を作る。
もっと強く、もっと大きく……!
キャパシティダウンの影響か、稚拙な巻きをした、児戯に等しい渦しかできない自分に発破をかける。
銃弾の大敵は空気抵抗だ。威力さえ落とせば、きっと美琴が何とかしてくれる。
そう心を定め、佐天は渾身の力を持ってただ風をかき集める。
それでもなお、状況は絶望的だ。白井が、来るべき未来を覚悟して、目を瞑った。
絶望的な目で木山と初春はこちらを眺めている。
その後ろには、血まみれで生死をさまよう春上と、
学園都市を巻き込んだ超巨大地震を引き起こしながら、覚醒を始めた13人の少年少女たち。
美琴は、まだ希望を捨てていない。
そして佐天の目は、目で銃弾を押し返さんばかりに強く、銃口を睨みつけている。
そんな中。テレスティーナの放った真っ赤に焼けた弾丸が、佐天の渦に、直撃した。
佐天の口元が、僅かに笑みを形作っていた。
恐怖に、では無い。
いつだったか、常磐台中学で光子に指導して貰った時にケロシンの燃焼熱を丸ごと喰らったあの時と同じような印象を、受けていたから。
佐天涙子は知っている。御坂美琴の、超電磁砲<レールガン>の威力を。
それと同等の力を持つ、テレスティーナの一撃。
それを佐天は。
――――『喰える』、と思ったからだった。
赤熱が白熱に変わって、そのフロアにいる誰も彼もが、一斉に眩しさに目を瞑る。

「……あ」

誰かの、間の抜けた声がフロアに響き渡って。




――――無音。




その、突然の静寂に、辺りは一瞬呆然となった。

「あはは」

佐天の上げた笑い声に、美琴がぎょっとして振り返った。



587nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/23(土) 23:12:22.24Bel3T35Uo (5/6)


「なん、だと……?!」
「できた、できた……!」

今度は、音も漏らさなかった。ほんの少し、ジリジリと弱い光が漏れているが、これ位ならいいや。

「嘘……」

美琴が驚きに目を見開く。
佐天の渦が虚空に揺らめいていた。だがそれがただの空気で作った渦ではないことを、美琴の感覚が告げている。
それはそうだ。金属弾と、そしてそれを音速の8倍以上の速度で飛ばすだけのエネルギーを食った渦なのだ。
内部に金属蒸気どころか電離した流体を内包して、プラズマ渦流になってたって何もおかしなことはない。
おかしいのは、そこに存在する渦のエネルギー密度が、佐天のレベルなんて軽く凌駕していることだけ。
佐天は逸る気持ちを抑えて、渦の取り扱いを冷静に考える。不思議なくらい、頭の中がクリアだった。冷徹でさえある。
きっと、これをいつものようにあちこちにブチ撒けてしまえば、大変なことになる。
じゃあ、どうすればいい? どうやってこれを解放すればいい?
佐天は、美琴に声をかけた。すべきことが、瞬時に脳内にプランとして組みあがった。

「御坂さん! コントロール!」
「え?」
「荷電流体なら、御坂さん操れますよね?!」
「……!」

美琴は返事をしない。ただ全速力で、佐天の渦のもとへと走りこむ。

「チッ、この死に損ないどもが!」

テレスティーナが、二発目の装填を始めた。あれが解き放たれる前に、決着をつける――――!
だってそうしないと、あんなものを跳ね返されて無事でいられるわけがない。
チャージに必要な数秒が、ひたすらテレスティーナを苛立たせた。
その猶予を最大限に生かして、美琴が佐天の渦に肉薄し、手を添えた。
準備はそれで充分だ。美琴は、電場を使って何かを加速したり寄せ集めたりする必要は無い。
手のひらで、正確には手のひらに展開した電磁場で、制御するだけでいいのだ。

「電界は添えるだけ、ってね!」

佐天にニッと笑いかけ、美琴は渦の周りに、一箇所だけ口のあいたケージを作る。
勿論その口は、テレスティーナに向いている。
その渦流の制御を、佐天が手放した。それだけでプラズマが出口を求め、美琴の作ったケージの中で荒れ狂う。
一瞬を置いて、高エネルギー荷電流体がテレスティーナに向けて一直線にほど走った。

「フザけんな! 私は、この街の夢を叶えるんだ!」
「そんな悪夢(ユメ)、絶対に認めない!!」
「この、クソがァァァァァァァァァ!!!」

慌ててテレスティーナがチャージも未完のままレールガンを解き放とうとする。
だが、自らが放った最大出力の一撃をそのまま鏡面反射したその一撃には、それでは太刀打ちなどできるはずもない。
佐天の渦は回収したエネルギーの全てをプラズマアークに変え、テレスティーナに突き刺さった。

ジィィィィィャァァァァァッッッッッッ!!!!

「くっ!」
「目が……」

アーク放電によるすさまじい光量が周囲を襲う。誰もその一撃を直視することは出来なかった。
ただひたすら、鉄が沸騰する音を聞きながら、その一撃が終わるのに耐えた。



588nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/23(土) 23:15:52.69Bel3T35Uo (6/6)

うーん、加速感が出てないかもと一晩悩んだけど、あんまり上手いこと改定でけんかったかも。

>>580
>>579の言うとおり、やっぱり自分に対して空気が結構な相対速度で流れてる場に佐天さんは強いね。
そういうのを差し引くとまだまだそこまで高レベルじゃなかったかもしれないけど、この最後でどこまでいったかなー


589VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/23(土) 23:54:07.68Wd3kRJ8Q0 (1/1)

乙乙! キャーサテンサン!電磁砲組の組み合わせやばすぎww

そんな中で上条さんマジ空気、バットないから装置こわせんから仕方ないが・・・
夜に期待しておくか、禁書目録&未元物質無双な気がしないでもない気がするけど


590VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県)2011/07/24(日) 00:02:40.15zSmnbht8o (1/1)

この佐天さんレベル4余裕でいってそうww
どこまで伸びるんだろう


591VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/07/24(日) 00:22:59.932WxqdUzoo (1/1)

上条さんェ…


592VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/24(日) 06:44:24.76A/IKLaPWo (1/1)

うっわー。
サテンさんうっわー。

「食える」

この一言に鳥肌立ったわ。



593VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/07/24(日) 10:58:34.8886JcDLKAO (1/1)

みっちゃんもそろそろレベルアップしないと立場無いな


594VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)2011/07/24(日) 11:05:47.28jSUZCcOoo (1/1)


インデックスとエリス、佐天と美琴スゲーww


595VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/24(日) 11:52:31.28uTo/X2IWo (1/1)

この合体技はえげつない威力だなww


596VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/24(日) 12:48:04.87PjJe6Js0o (1/1)

このシーン、テレビで見たら映像映えするだろうなあ…。


597VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/07/24(日) 14:56:35.352s4OYdSlo (1/1)

でも映像だとこの作者の魅力でもある薀蓄語りが上手く表現できないだろうなぁ
しかし佐天さんとインデックスさんが見せ場を持っていってしまって、上条さんは一体今何をしているんだろうか……


598VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/07/24(日) 15:12:25.37ECqb8CNzo (1/1)

ヘタレさん轟沈させるために透明の竜王さんと懇ろってます


599VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/07/24(日) 16:46:38.24NmghOEAAO (1/1)

何この荷電粒子砲wwww
佐天さん凄すぎる


600VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/24(日) 20:09:14.736ulzWMlF0 (1/1)

やっと御坂にも出番が。
白井が完全に空気だなあ。原作でもそうだったけど。
しかしこのスーパー佐天さんっぷりにはにはまいった!

光子は何にも無いところからのパワー、佐天さんは応用力が強みか、
どっちが上位かと言われると普通は後者なんだけどね。


601VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/07/25(月) 00:51:53.94b8yN3JKE0 (1/4)

上条さんおいなにしてんだよ


602VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/25(月) 01:10:36.02txGNKzsDO (1/1)

このままだと、某スレのそげぶミサイルくらいしか目立つ手段が


603nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/25(月) 01:18:03.04DpZ7UGQso (1/8)


当麻は急いで階段を駆け下りる。
随分と地下最下層は遠いのだが、エレベータの一つも見つけられなかった。
テレスティーナや美琴、佐天の声を頼りにそちらに向かっていると、たどり着く直前に、
すさまじい発光と音がしたのを、当麻は聞いた。
それ以上加速は出来なかったが、走りを緩めずにその場に当麻はたどり着いた。

「佐天! 御坂! 大丈夫か!?」

扉をくぐり、開けたフロアを一瞥する。
何かの焼けた異臭が立ち込め、煙が広がっているせいで視界が良くない。
一番近くに倒れていた女の子のところに近づく。白井だった。

「白井!」
「私なら大丈夫です。それより、お姉さまと佐天さんは?」
「私はこっち」
「あたしはこっちです。って御坂さん、お互い随分と吹き飛びましたね」

しゅうしゅうと煙が立つ一角から数メートル離れて、二人はバラバラに倒れていた。
手ひどく痛めつけられた佐天はともかく、美琴はそう酷い怪我はない。

「私がバックファイアをせき止められるのは電導性のあるものだけだからね。
 普通の爆風はどうしようもなかったし」
「あ、ごめんなさい。それってあたしの仕事ですよね」
「別にいいわよ。ただの風なら、そんなにヤバくはないんだし」

美琴が防いだものの中には、金属蒸気が冷えて出来た微粉末があった。
冷えて尚高温のそれを浴びていたら、かなりの火傷になっていただろう。

「で、無事解決なのか? その割には揺れが収まってないけど」
「! そうだ。まだ春上さんを何とかしなきゃ! あの子たちも!」

テレスティーナは、フロアの片隅で完全に沈黙していた。
鋼鉄のレールガンを大破させ、パワードスーツも脇の下辺りが溶解して完全に機能停止しているらしかった。
恐らくは死には至っていないと思うが、それを確認するより、先にすべきことがあった。
初春と木山が、もう春上や枝先たちを助けるために、動き出していた。
シェルターへのハックを済ませ、カバーを開く。
むっと、むせ返るような血の匂いがした。それはもう、死の匂いといってもいいのかもしれない。
あれほど酷く喀血していながら、まるでそれに気付かないで、嗚咽を漏らしながら頭を抱えている。
そのヒトらしさからかけ離れた振る舞いに、初春は反射的にゾッとなって半歩後ずさった。

「はる、うえさ、ん……」
「ねえ木山、何とかする方法わからないの?」
「……無理だ!」
「え?」



604nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/25(月) 01:19:07.08DpZ7UGQso (2/8)


美琴が木山に尋ねると、ガンとコンソールを殴りつけて木山が叫んだ。

「この子に投与されたのはあの子たちからの抽出物と体晶のファーストサンプルを混ぜたものだ。
 成分がわかれば時間をかければ何とかなる。だけど、この子はそれに耐えるだけの時間がない」
「そんな!? けど!」
「あの子たちも……」
「えっ? アンタ、あの子たちなら助ける方法知ってるんでしょうが!」
「ファーストサンプルならきっとあの女が持っているだろう!
 だがそれでも駄目なんだ。暴走を始めて、もうかなりの能力者と共鳴を始めている。
 ああなってしまったら、止めようが無いんだ!」
「無理だ無理だって、そんなこと言ってないで打開策考えてよ!」
「科学はそんなに万能じゃない!」

何が、大脳生理学の権威だ。
木山はそんな肩書きを僅かでも誇ったことのある自分を罵った。
今、この場でこの子達を救えないものに、一体何の価値がある?

「御坂」
「何よ?」

当麻が、美琴に声をかけた。今は一刻を争うのだ。状況の飲み込めていない男の相手なんて、している暇はない。
そっけなく美琴が返した返事に、ひどく真面目に当麻が言葉を返す。中身はいつもどおり、突拍子もなかった。

「アレ、止めればいいのか?」
「え?」
「この地震、ポルターガイストなんだろ?」
「う、うん。そうだけど」
「ならそれは任せろ。先生……アンタはその後のことを頼む。
 それと、春上さんのことも、何とかできるヤツがもうじき降りてくるはずだ」
「えっ? それって」
「科学が駄目なら、別のに頼ればいい」

戸惑う佐天に、当麻がそんな良くわからないことを呟いた。
そういえば、いつの間にかあの歌声は聞こえなくなっていた。
もちろんキャパシティダウンと共にだ。
恐らくは、うまく止め方を見つけたのだろうと思う。
あの歌声には聞き覚えがあった。佐天がいつだったか、浴衣を着付けてあげた、二人の声。

「ちょ、ちょっとアンタ! 地震を止めるってどうやる気よ?!」

春上に必死に声をかける初春の裏で、美琴はそう当麻に詰め寄った。
ポルターガイストを止めるなんて、そんなことをやれる人間なんて聞いたこともない。
実体の無いものに干渉することは非常に困難だ。学園都市で一番の精神干渉系の能力者でも、こなせるかどうか。
だが当麻は、いぶかしむ美琴に至極あっさりと返事をした。



605nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/25(月) 01:20:31.32DpZ7UGQso (3/8)


「アレを止めればいいんだろ?」
「だから、アレって何よ!?」
「よく俺にもわからねーけどさ。別にいいだろ、御坂。嫌な夢なんて誰も見たくない。
 あの子達の上に浮かんでるアレが学園都市の悪夢(ユメ)だっていうなら、俺はそれをぶち壊すだけだ!」

当麻はそれだけ告げて、覚醒を始めた少年達へと走り出す。

「――アイツ、AIM拡散力場が、見えてるの……?!」

呆然と美琴はそう呟いた。だって、そうでもなければ。
一体アイツは、何を殴りつけるというんだ?

「おおおおおおおおおおおおおォォォォォォォォォ!!!!」

当麻が自分よりも背の高い打点に向かって、拳を振り上げた。
そして体のバネを使って、打ち下ろすように腕を振りぬく。
何か、ぶよぶよとしたものに当たったような不自然な抵抗を見せて、

――パキィィィィン、と何かが割れるような音を響かせた。

それをきっかけに、地震の揺れが速やかに減衰していく。
ポルターガイストを阻止したのは、明らかだった。

「木山!」
「もうやっている!」

美琴が振り向くと白井がテレスティーナの体から体晶を探り当て、木山に渡していた。
そこからはもう、何度も何度も頭で反芻し、練習してきた手続きだった。
ここからならもう、木山は自分の研究の全てをぶつけて、あの子たちを救うために動ける。
体晶の組成をチェック。充分に予想の範囲内だった。
そのまま、解析をしてワクチンを作成し、あの子たちに投与する。
木山はそのためのプログラムのバッチファイルを起動させた。
あとはただ、無事目覚めてくれることを祈るのみ。

「とうま! 大丈夫?!」
「インデックス、エリス! こっちに来てくれ! 春上が!」
「えっ?!」
「お願いです! もし方法があるんだったら、春上さんを助けて……!」

初春が涙でぐしゃぐしゃになった顔でインデックスにそう懇願する。
もう救急車なら呼んだ。警備員も呼んだ。そして待っていればきっと助からないことも、分かっている。
人を癒せる能力なら良かったのに。初春は、そんな無いものねだりをする自分を叱咤する。
希望を捨てたり、有りもしないものに縋ったって、春上を救えたりはしないのだから。



606VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/07/25(月) 01:20:58.18b8yN3JKE0 (2/4)

初リアルタイム


607nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/25(月) 01:21:26.23DpZ7UGQso (4/8)


「初春さん、だよね?」
「え?」
「祈ってあげて。祈るって行為はね、どんなに苦しい人にも等しく許された、とっても尊い行いなんだよ」
「……わかりました」
「エリス」
「わかってる。インデックス、さっきもそうだけど、いまは所属がどうとか関係ないよ。友達を助けるためだから」
「うん。それじゃ、術式の行使はエリスがやって。私は、今だけエリスの魔道図書館になる」
「いいよ」

インデックスは呼吸を整え、血まみれの春上に躊躇いなく触れた。
呼吸と脈拍を測り、瞳孔を調べる。医術は決して魔術と無縁ではない。
インデックスには、そうした心得があった。

「――解析完了。大丈夫。与えられた毒が何かはわからないけど、それは最悪のものじゃない」
「助けられる?」
「助けてみせる。エリス、さっきみたいに、私の歌うとおりに歌って」
「うん」

呆然と、佐天や美琴、そして白井がその光景を見詰める。
隣では時折春上に視線を送りながらも、木山が枝先たちのバイタルデータにずっと注意を払っていた。
そして初春はインデックスとエリスを疑わなかった。
そんな非科学的なことに何の意味もないのに、手を組んでただ春上のために祈っていた。

「ごめんね、とうま」
「気にするなよ。俺は離れてる」
「うん、ありがと」

謝る当麻に微笑を返して、インデックスは声を、フロアに響かせた。
決して声質や声量が優れているわけではないのに、それは聞くものの心にすっと染み込んだ。
エリスが、インデックスの紡ぐメロディに抗わず、その位置とリズムを巧みに同期させながら、同じメロディを輪唱した。
手持ち無沙汰という理由も、あったかもしれない。
いつしか佐天も、白井も美琴も、そっと組んだ手を胸元に当て、うつむいて目を瞑った。
そうさせるだけの神秘的な何かが、そこにはあった。
魔術の臭いなんてほんの少しも感じ取れないその五感でいながら、皆、感じ取っていた。
――救いと呼ばれる、何かを。


朗々とした詠唱が三分ほど続いたところで、メロディがフィナーレを結んだ。
ふう、とインデックスとエリスが息をつき、こめかみを滴り落ちる汗をエリスが手で拭った。

「終わった……の?」

美琴が、インデックスに声をかけた。
半信半疑のその顔に、インデックスはコクリと静かな頷きを返した。
それに弾かれたようにして、初春が春上の元に駆け寄った。
シェルターに横たわる春上の様子を、何も見逃さないつもりでスキャンするように眺める。
血まみれなのは当然血まみれなままだった。血が消えるようなことはないらしい。
だが、さっきまで見たいな開いた瞳孔で何処を見ているのか判らないような様子はない。
目を瞑り、おだやかな呼吸をしていた。とりあえず、その様子にほっとする。
美琴たちも集まって様子を眺めると、やがて春上は目を覚ました。



608nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/25(月) 01:22:14.54DpZ7UGQso (5/8)


「あ……ういはる、さん……?」
「ぁ……春上さん! よかった。よかった……!」

こらえられない様に、初春の目じりに一杯に涙が浮かぶ。
伝えたい言葉はいくつもあるはずなのに、せいあがってくるのは嗚咽ばかりだった。
だけど、悪いことじゃない。だってその嗚咽は、嬉しさのせいで出てくるものだから。
涙ぐむ初春のとなりで、コンソールがアラームを奏でた。
それは、体晶によって能力を暴走させられていた、
置き去り<チャイルドエラー>の子供達の治療が終わったことを示すものだった。
パシュ、と軽い音を立てて、子供達が寝かされていたシェルターの蓋が開いた。

「あ……」

ふらふらと、足取りも不確かに木山が子供達の方へと歩み寄る。
こんな目にあわせた張本人だから、罵られるかもしれない。恨まれるかもしれない。
それでも良かった。この子達が、再び目を覚まして、太陽の下を歩ける日が来るのなら。
手近なベッドに眠る子の顔元に、木山は近づく。頬にそばかすの浮いた女の子、枝先だ。

「ん……せん、せ」

一体、それは何年ぶりに発した声だったろう。
すっかり弱って、記憶にある張りのある声からは程遠い、か細く弱った声だった。
でも、それでも。その声は、その顔は、紛れもなく枝先のもので。

「ああ……」

頬が自然と上がって、笑みを形作っているのが判る。
おかしいな。自分は無表情で、素っ気無いのが普通の、駄目な教師のはずなのに。
視界がもう、まともに確保できない。
涙の粒がこぼれるたびに一瞬だけ戻る視界の中で、枝先もまた、微笑んでいた。

「先生、助けてくれたの」
「……助けただなんて、私は」
「ありがとう」

この子達には、きっと土下座をしたって許されないことをした。
助けてくれたなんて勘違いはすぐにでも糺して、自分がいかに酷い人間か、教えてあげるのがフェアだろうに。
嬉しい。ただ、この子達が目を見開いて呼びかけてくれることが嬉しい。
はっとなって、木山は立ち上がった。

「他の子たちも、見てくるよ」
「うん」

枝先は、自分が何故ここにいるのかも判らない状況にいながら、それほど酷い混乱を覚えなかった。
目を覚ましたその瞬間に、木山先生がいてくれたから。
そして、ずっとずっと混濁した意識の中で呼び続けた大切な友達が、すぐそこにいることに気付いたから。



609nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/25(月) 01:23:35.87DpZ7UGQso (6/8)


――――衿衣ちゃん

心の中で、そっと呼びかける。
起き上がる力もない自分からは姿は見えないけれど、春上に、その声が伝わったことに枝先は自信があった。
数メートル離れたシェルターの中で、初春に見つめられたまま春上が目を瞑る。
嬉しい。ただただ、嬉しい。
その声が聞けるだけで満足だった。大切な友達が、ずっと会いたかった友達が、声をかけてくれたから。

「絆理ちゃん……」

枝先に聞こえるほどの声ではない。だけど、きっと思いは通じた。
自分と枝先は、深い絆で繋がっているから。

「枝先さんも、目を覚ましたんですね」

我が事に様に喜んでくれる初春をみて、春上は嬉しくなった。
そうだ、元気になったら枝先を紹介して、皆で遊ぼう。
引っ込み思案で友達なんてほとんど作れなかった自分だけど、そうやって、
枝先と一緒に、初春と一緒に、沢山の友達を増やしていくのだから。


初春たちからは少し離れたところで、当麻はインデックスの頭をぽんと撫でた。
そうやって労われて、インデックスは素直に嬉しそうな顔をする。
魔術は人を幸せにするものだ。
現実はしばしばそんな牧歌的な考えを打ちのめすが、
こうやって幸せのために役立てることがあると、
救った側もまた、救われるものだ。
隣にいるエリスと、当麻がハイタッチを交わした。

「ありがとうな、エリス」
「お世辞なんて。水臭いよ、上条君」
「そうだな」

だって、エリスもあそこにいるみんなの友達なのだから。
しがらみだとか、そういうもののことを考えるのは野暮だった。

「ありがとうございました、上条さん」

かけられた声に振り向くと、白井が皆から離れて上条のもとに来ていた。

「おう。まあ、礼なんていいさ。水臭いだろ」
「今のお礼は、お姉さまを助けていただいた分のものですわ。
 前日から、少々無理を重ねていたようですから。
 あちらの病院でお姉さまを救っていただいたことには、御礼をしませんと」
「こっちも成り行きで助けただけだからな。気付かなきゃ、そのままだった」

美琴のほうを振り向く。佐天と、なにやら話しているらしかった。



610nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/25(月) 01:25:39.01DpZ7UGQso (7/8)



佐天はどっと出た疲れに耐えかねて、どすんとその場に腰を落とした。
行儀が悪いのは百も承知だが、そのまま床に寝そべることの魅力に抗えなかった。

「なんとか、できましたね。御坂さん」
「そうねー」

あちらも同様につかれきっているのだろう、美琴が佐天の隣に座った。

「あたし、がんばれました、よね?」

佐天が美琴にそう尋ねた。
誰かにそれを確認したかったのだ。
だが、予想に反して美琴の沈黙は長く、佐天を戸惑わせた。

「あの、御坂さん?」
「うん。佐天さんの活躍は、それこそレベル2なんて肩書きを持ってるのがおかしいくらいだった」
「あは」
「レベル3でも、おさまるか判らないわね、もう」

そこで言葉を切り、美琴はテレスティーナのほうに視線をやる。
アーク放電がもたらした破壊は美琴のレールガンのそれを上回っていた。
それを、佐天はどうやってもたらしたんだったか。

「まさか佐天さんに止められちゃうなんてね」
「え?」

それは佐天を馬鹿にした物言いのつもりはこれっぽっちもなかった。
だって。

「あれ、止めたのはまだ二人しかいなかったんだけどな」

学園都市第一位の能力者と、学園都市唯一の風変わりな無能力者。
その二人だけだったのに。
佐天涙子が、三人目として美琴の脳裏に刻まれた。
仲間だから、決して敵視をするつもりなんてない。
だけど、さっきのあの瞬間から、美琴にとって佐天は見過ごせないだけの実力の能力者となっていた。

「ま、私の研鑽がもう終わったわけじゃない。影は踏ませても、本体にはまだまだ届かせないわよ。
 ……佐天さん、お疲れ」
「はいっ!」

パン、と今日一番の功労者二人が、タッチを交わした。
能力者として美琴の隣にいることというのは、きっと大変なことのはずだ。
うぬぼれかも知れないが、佐天は美琴の隣にいて、きっと自分の能力は恥じることなんてないと、
そう思えるようになっていた。

「さて、あたしも、これからのことちゃんと考えなきゃね」
「これから?」
「明日、あの屋台のクレープとうちの近くのアイス屋がセールするんです。
 どっちにするか、ちゃんと考えないとってことですよ」

美琴にそんな冗談を返して、佐天は初春のほうを見つめた。
迷いは、吹っ切れていた。
自分の可能性を信じて、これからも真っ直ぐに進んでいきたい。
実技もそうだが、きっと猛勉強しないといけないだろう。
美琴や白井、そして光子と同じ学校の生徒になるならば。

「あいたた」
「佐天さん?」
「結構痛めつけられたんで、しばらくは病院通いかなぁ」

たぶん、クレープもアイスも明日は無理そうだった。
でもそんなこと、気にならない。
ここにいる誰しもの頬に、笑みが浮かんでいる。
きっとまた、皆で幸せな日常を過ごせる。
そんな「当たり前」を取り戻せたことが嬉しくて、佐天は顔一杯に笑みを浮かべた。



611nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/25(月) 01:30:33.68DpZ7UGQso (8/8)

『ep.2_PSI-Crystal 12: 渦流の正しい使い方 -Advance in Implosion Vortex-』終了、
そしてこれでepisode2の体晶編が終了だっ!!! よっしゃっ!!!
はー、やっぱり一つストーリーが纏まると感慨もありますね。
作中ではすぐにまたクライマックスなんですけども。

>>上条さんスルーを嘆いたみんな
上条さんがいないと地震がそげぶできなかったのよ。そういう関係で、こうなりました。
微妙な活躍だったかな?w

あと、佐天さんと美琴の連係プレーに燃えてくれたみんな、ありがとう。
BGMにアニレーのOPかけながら勢いで書きました。
>>596
そういうコメはなんか嬉しい。ちょっと気恥ずかしいけど。


612VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/07/25(月) 01:36:26.90b8yN3JKE0 (3/4)

つまり体晶編をまとめると佐天さんのレベルアップストーリーだったと。
実際異能力者という肩書は詐欺。
次は待ち望んだていとくんとエリスのターンか


613VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/25(月) 01:38:50.65YVnHe6tio (1/1)

乙!!
さーて次のお話も楽しみにしてるんだぜ


614VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/07/25(月) 06:22:06.912pklZ5WAO (1/1)

セロリ編では一緒に圧縮圧縮空気を圧縮出来そうな佐天さん


615VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/07/25(月) 13:47:09.70b8yN3JKE0 (4/4)

佐天さんがカ行笑いするのか


616VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/25(月) 14:15:53.70LhJTxFRqo (1/1)

実に充実した投下だったよ。おつ


617VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/25(月) 19:26:06.06VICR81OF0 (1/1)

乙乙! 超電磁砲組は笑顔が似合うわあ。佐天さんは治療と受験勉強でお休みかー。

テレスさん即死したと思ったが、プラズマ直浴びしてよく生き残れたもんだ。
あれか、やっぱりジジイの怨念ならぬご加護があったのだろうか


618VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/26(火) 06:13:10.819oBgYiiS0 (1/1)


ついに佐天さんも常盤台転校を決意したか
初春の事を気にしていたけど自分の将来を優先したんだろうね
ま、初春もすぐに追いかけてきそうだけど、そのとき春上さんはどうするのかな?。


619VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県)2011/07/26(火) 22:15:41.77FHmu4IYE0 (1/1)

乙!
もう初春も春上さんもりっちゃんもまとめて光子さんに師事すればいいと思うよ!


620VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/26(火) 23:02:44.18rj+WdRt0o (1/3)

佐天さんもいよいよ転校かー
アニメで常盤台の制服着た事あるから
どういう姿かは想像が付くな
そういや眉毛ちゃんって出てきたっけSSで?


621VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/26(火) 23:04:02.40rj+WdRt0o (2/3)

佐天さんもいよいよ転校かー
アニメで常盤台の制服着た事あるから
どういう姿かは想像が付くな
そういや眉毛ちゃんって出てきたっけSSで?


622nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/26(火) 23:43:26.32qBH1HaPIo (1/1)

>>612
その通りだったね<レベルアップストーリー

>>616
ありがとう!!

>>617
ジジイは全然テレスに愛情ないけどなw
美琴が本心からは笑えない状況にいるけど、まあやっぱり四人のときは笑顔がいいよね。

>>618
もとより初春のために渋ってたわけじゃないのよん。
急激な環境の変化に対する臆病って誰にもある、というだけです。
今回の事件がなくても、いずれは転校していたでしょうね。

>>619
絆理のりをとってりっちゃんかwまぁしゅがの声はわかりやすいから言いたい事は良くわかるけども。

>>620
眉毛ちゃんのせいで光子が入院したシーンならある。
あのへん加筆する予定だけど、書いたプロット見直しても全然彼女は存在感がない。

さて、次のプロットを固めるのでちょちょっと時間を下さいな。
プロット無しで書ける吹寄のおっぱいのほうはコツコツ書きますんで、よろしければ>>543もよろしく。


623VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/26(火) 23:54:27.39rj+WdRt0o (3/3)

佐天さんもいよいよ転校かー
アニメで常盤台の制服着た事あるから
どういう姿かは想像が付くな
そういや眉毛ちゃんって出てきたっけSSで?


624VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/07/26(火) 23:59:41.54Zo41IEiKo (1/1)

落ち着けよwwwww


625VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/27(水) 00:15:01.34NAD+tZ5no (1/1)

ブラウザがバグってたっぽいなww
一回しか送信ボタン押してないんだが


626VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/27(水) 01:33:40.46TV0JXhXIO (1/1)

>>1って何者?ほんとに半端ないssだと思う


……俺も理系に進もうかな


627VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)2011/07/27(水) 08:00:04.16qlwNIN/4o (1/2)

重福さん、可愛いのに……



628VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/27(水) 11:26:35.84/MbDr/xD0 (1/1)

一息ついたところで>>1に聞きたいんだけどさ。
ss速報で3つスレ建てて全部上条さん主人公の恋愛ものじゃん。
その3人の上条さんって設定上でなんか違いとかある?
例えば上姫の上条さんは原作より鋭いとか。


629VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/07/27(水) 11:58:29.65G4zmy7yAO (1/1)

四つじゃね?


630nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/07/27(水) 12:46:11.997AkAoLCc0 (1/1)

>>626
ありがとう(´;ω;`)もっと褒めてもいいのよ
科学ネタの濃さに関しては、人より相当長く勉強してるからだな。大学入ってからもう8年だし。
文理選択は「好きなほう」で選ぶのがいいよ。理系の学問が「苦手」だから文型、というパターンだけは勧めない。

>>627
どうしよう、あんまり重福さんに萌えてない……

>>628
俺の中では根っこは全て同じ上条さんだな。
特にそこを変えようと思ったことはない。
ただ、付き合ってるヒロインとの掛け合いの中で、
それぞれ違いはあるだろうと思う。
読者のみんなの見え方はまた、書き手とは異なるしね。

>>629
立てたエピソードが三つ、スレが五つだな


631VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)2011/07/27(水) 12:58:55.99qlwNIN/4o (2/2)

>>630
メインにからむ黒子ですら薄いから仕方ないさ
脇の百合っ子は不憫なのが宿命



632VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/07/27(水) 17:39:17.178H0fjyQAO (1/1)

追いついた
追い付いてしまった
佐天さんがかっこよすぎる


633VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県)2011/07/27(水) 18:18:49.01NTlnNW4bo (1/1)

このssの光子ちゃんは、「あ、ちぎってはな~げ、ちぎってはな~げ」なんて自慢話するのは似合わないなww


634VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/27(水) 20:39:03.01YR+xwxyG0 (1/1)

上条さんに褒めて褒めてと話す姿の方が似合ってるな。
ところで、佐天さんの初春パンツはいてるかチェックはどこまで進化するのだろうか


635VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/27(水) 21:33:19.04Ge0tmaYx0 (1/1)

遠距離から双眼鏡を覗き、狙撃手のように渦を飛ばし
初春のスカートだけをめくって
携帯で『今日のぱんつは水玉か~♪』



636VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/27(水) 21:56:20.23nOlqaX8jo (1/1)

竜巻で上空に持ちあげて下からじっくりと観察
「今日は白黒のしまぱんかぁ~♪」


637VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/27(水) 22:29:32.43n2v0tFsIo (1/1)

常盤台中から竜巻を発射して柵川中の初春のパンツをめくるくらい朝飯前だよ


638VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/27(水) 23:23:45.17J2aetcZSO (1/1)

初春の部屋を盗撮すればいいんじゃねぇの?
違うか


639VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/28(木) 00:13:27.33U+I7YP5IO (1/2)

能力を使ってというのが味噌


640VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/28(木) 01:52:46.29CNkbaXWM0 (1/1)

能力でめくろうとして下着が吹き飛ぶのか
「今日のパンツは、えっ!?」


641VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/28(木) 08:57:03.805/xtk39q0 (1/1)

空気中の光の屈折率を変化させて、こう、スカートをめくらずに……ってそれじゃ意味ねー!


642VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/28(木) 12:12:05.59RpnitqXIO (1/1)

お前らほんと初春のパンツと佐天さんのおしり好きな


643VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/07/28(木) 14:54:56.98Mm1fsj4AO (1/1)

何度でも言います

お尻が嫌いな人なんて居ません!


644VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/28(木) 18:49:46.03OAFy/RcIO (1/1)

>>610
ここ佐天さんは、個人的に 抱かれたいキャラNo.1 になってる。
ーーー『喰える』にはゾクッとした。
そして佐天さんの笑顔で結ばれて、乙。

すっかり佐天さん話が続き、このSSが、上条さん×婚后、だということを危うく忘れるところでした。

上条さんの見せ場と役割には納得でしたが、上条さんにAIM拡散力場を知覚することは可能でしたか?たしか能力者でも通常は知覚することは無理だった気がする。

過密なまでにパラレルで話が進行していたので、原作での上条さんや美琴の役割を垣根、エリス、婚后や佐天さんが分担して事を解決してゆくと予想していましたが、『超電磁砲』の終盤はほぼ全キャラ総当たりで意外でした。


645VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/28(木) 19:36:17.04y7VvBIC20 (1/1)

>>644
上条×婚后じゃなくて婚后×上条じゃないかな?w

このSSは上条さんが婚后さんと付き合うことで
周囲の運命的なものに影響して、行動や結果がどのように変化するのか
ってところが面白いよね。だから主役はその時、活躍する誰かだって認識してる。




646VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/28(木) 19:36:57.77qD1vH4ENo (1/1)

初春のパンツを足元に設置した渦で引き下ろして確認だな 毎朝。


647VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/28(木) 19:49:02.87d1Q/W9nMo (1/1)

>>646
パンツ引き下ろして確認したあと、渦を解放してスカートめくるのか
股間が熱くなるが流石に同性でも犯罪になるな


648VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/28(木) 20:20:01.618xD8xccjo (1/1)

>>645
>上条×婚后じゃなくて婚后×上条
カップリング表記って「攻め×受け」だからあってるんじゃないか?


649VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/28(木) 21:46:31.86U+I7YP5IO (2/2)

どっちでも正しいんだよ



650VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/28(木) 22:50:47.93tB1nuxgn0 (1/1)

うむ、この二人ならば石破ラブラブ天驚拳(そげぶver)を必ずやマスターするだろう


651VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2011/07/28(木) 23:15:10.05YSuARcgRo (1/1)

そんなエスカレートした佐天さんのスキンシップに耐えかねて、初春さんが対抗できるようにレベルアップできるよう頑張るのが頭をよぎった


652VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/07/29(金) 01:38:03.22jf3h8kpjo (1/1)

>>651
保温機能が温度調節自在になって、頭のお花がビオランテですね分ります


653VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県)2011/07/29(金) 18:46:10.20B1xBwkclo (1/1)

ふと思ったが、プロットなしで吸ってくれないか書けるとか、作者は相当なドエロだな。


654VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/29(金) 22:49:39.00/Y2zHwn2o (1/1)

>>650
ここはあえて超級覇王電影弾!


655VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/30(土) 10:56:42.696TDqZaD20 (1/2)

>>654
それは佐天さんだろ、うずまき的に考えて


656VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)2011/07/30(土) 11:25:19.96FTW4Tz6Ko (1/1)

佐天さんが上条さんを発射・・・・


657VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/30(土) 12:41:39.14S8RhOnxMo (1/2)

婚后さんでも噴射点を複数にしてヘイルロケットみたいにすればできるぞ


658VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/07/30(土) 18:47:11.496TDqZaD20 (2/2)

ロケットか、これでいつベツレヘムの星が浮上してもそげぶできるな!
あと残るはイタリア編の水中そげぶのみ・・・


659VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/07/30(土) 22:20:06.13S8RhOnxMo (2/2)

水中は湾さんと泡さんに頼んで下さいしあ、空力使いに水中は鬼門だわ
美琴で電磁推進って手もあるけど全部まとめて電撃で片付けようとしそうで困る・・・


660nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/01(月) 01:57:57.02uUtS2c0Uo (1/1)

ごめん、気がついたら一週間も更新してないのか。
あ、明日こそは……。

>>632
それなりに長いSSになってきたけど、新規の方がいるってのは嬉しいな。

>>634
それ採用

>>644
おー、燃えてくれる人がいて嬉しいな。熱いシーンって読んでる人を白けさせてないか、やっぱ不安なもんでね。




661VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/03(水) 01:52:47.83ktQD5f1+o (1/1)

待ってるんだぜ


662nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/03(水) 02:17:09.83Xj7Z416Lo (1/1)

今日も帰ってきたらこの時間やった。。ごめん。
明日は研究中間発表→飲み会で、明後日から三日ほど学会行ってくる。
更新は先になりそうやなぁ。


663VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/08/03(水) 02:55:55.53KnWAQfUJ0 (1/1)

乙ー
無理せずnubewoさんのペースで更新しておくれ


664VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/08/03(水) 10:49:06.85ap/yYkpL0 (1/1)

ゆっくり行こうぜ


665VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/03(水) 23:29:11.09eIDeN8u70 (1/1)

主さんのペースで頑張って下されー
ここの佐天さんは格付けでレベル5認定受けてても不思議じゃないなww
6位になったりしてね


666VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/04(木) 13:50:29.76PSGzfjaIO (1/1)

>>665
お前はいろいろ間違えている


667VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/08/04(木) 21:48:54.34hJnA3X6Ko (1/1)

>>665
おおぅ・・・


668VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/08/06(土) 23:42:21.54/BkAXI5R0 (1/1)

週末に学会とか大変だなぁ


669nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/08(月) 11:43:27.10VhUH4pfVo (1/5)

>>668
まあしゃーないね。とはいえ今日も学校に行くので休みががが。
今日は夜に続きかけると思うー


670VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/08/08(月) 21:55:29.11/tprKMmz0 (1/1)

お疲れ様ー。楽しみにしてますね


671VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/08(月) 22:19:06.496W4d0XRIO (1/1)

期待


672nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/08(月) 22:54:28.40VhUH4pfVo (2/5)


「ただいまー、っと」
「ただいま戻りました」

誰もいないマンションの一室、慣れ親しんだ黄泉川家に向かって当麻と光子は声をかけた。
リビングには西日が差し込んで、テーブルからの照り返しが目にまぶしい。
二人で目を細めながら中に進んで、定位置にあれやこれやの荷物を片付ける。
先進状況救助隊(MAR)の付属病院から回収した衣服を詰めたキャリーケースは、近日中に光子の部屋になる予定の一室に置いた。
主に当麻が頑張って片づけをしたおかげで、そこはもう黄泉川の私物はほとんどない。

「はー、なんか長い一日だったな」
「そうですわね」

スーパーの袋に入れた夕食の材料を冷蔵庫に仕舞いながら、キッチンで肩をくっつけて微笑みあう。
夕日にさらされた光子の髪が綺麗だった。さっき褒めたら、暴れて埃まみれになった後だったので逆に怒られた。
決してお世辞ではなく、当麻は本心でそう思っていたのだが。

「晩飯の用意は……まだでいいか」
「そうですわね。インデックスからも黄泉川先生からも、まだ連絡がありませんし」

インデックスはステイルと会う用事があって今はいない。
夕食はもしかすれば二人で摂るかもしれないし、連絡するようにと言ってある。
必要なら当麻が迎えに行く用意もしなければならない。
黄泉川先生は、今日の午後に起こったMARによる学生の略取および非合法な人体実験に関する事件の後処理に忙殺されている。
病院でほんの一瞬だけ会ったとき、被害者の子供達が全員、いずれは元通りの日々を送れると聞いて笑った顔が印象的だった。
こんな仕事で忙しいんなら大歓迎じゃんよという言葉を遺して、颯爽と仕事に戻ってしまったので、
今日の夕食をどうするのか、こちらも聞きそびれた。

「二人とも帰ってこない、なんてことはないよな」
「……黄泉川先生はわかりませんけれど、インデックスにそれを許す予定はありませんわ。
 偉そうな態度をとれる歳ではありませんけれど、インデックスもまだ子供なんですから、夜遊びなんて」
「だな」
「誰かさんは、深夜まで女の子とお戯れになったそうですけれど」
「え?」
「……そうやってすっとぼけるのは、本当に心当たりがないからですの?」
「い、いや、その」

美琴が誰のことを好きなのか、光子は知っている。
そしてその美琴が思い人とどんなことをしたのかも、聞き及んでいる。
どうやら自分と付き合う前のことらしいので責めるのはお門違いと分かってはいるが、
一度もそんな遊びに誘ってくれたことがないのを根に持っている光子だった。

「御坂さんとはして、私とは嫌なんですのね」
「違うって」
「じゃあなんですの」
「あれは、ただ追いかけられてただけだって。それに、光子と街中を夜歩くのはちょっとな」
「どうして?」
「面倒くさいのに絡まれるのは御免だ。光子となら、こうやって部屋でくっつけるし」
「それは、そうですけれど……」
「光子」
「え、あっ……」



673nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/08(月) 22:55:53.38VhUH4pfVo (3/5)


言い訳を言葉でするのが面倒くさくなって、当麻は光子を抱き寄せた。
背中が棚にぶつかって、中の皿がかちゃんと音を立てた。

「ちょっと先の話だけど」
「はい」
「ナイトパレードは、二人っきりで見ような」
「あ……」

大覇星祭と呼ばれる、学園都市全体で開催する巨大な体育祭。
その最終日には学園都市の電力という電力をすべて光に変え、盛大なライトアップを行う。
学園都市の住人の多くがカップルでそのイベントを過ごすことに憧れ、
直前の時期にはあれやこれやとイベントが起こるものだ。
光子も当麻も、当然恋人とその時間を過ごすことを夢見てきた。

「はい! 当麻さん、嬉しい……!」
「すぐの事じゃないし、インデックスには悪いことするけど、やっぱし恋人同士のイベントだからな」
「ええ。やっぱり、当麻さんと二人でいたいときも、やっぱりありますから」
「インデックスには……沢山弁当でも用意してやればいいか」
「もう。あの子は確かに良く食べますけれど、それでつるような言い方をしてはまた怒られますわよ」

くすくすと光子が笑って、レジ袋から野菜を取り出すのを再開した。
最後にじゃがいもと玉ねぎを冷蔵庫の脇のカゴに入れて、思い出したように呟いた。

「そうそう当麻さん」
「ん?」
「絶対に、他の女の方とおかしなことになって遅れるようなことは、なさらないで下さいましね?」
「へっ……?」

冷蔵庫の冷気に当てられたのか、不意にヒヤッとしたものが背中を伝う。
当麻の身長で背中に冷気が当たることはないと思うのだが。
髪に隠れて僅かしか見えない光子の横顔が、薄く笑っているように見えた。
なぜか、どうしてもそれがいつもの朗らかなそれに見えないのだった。

「さっきだって当麻さん、私と二人っきりだって言うのに、あの巫女服の方と……」
「い、いやいや光子さん? 別に姫神とはなんでもないって」
「なんでもない方の、どうしてお名前をご存知なの?」
「そ、そりゃ教えてもらったから」
「教えてもらった……? あらあら当麻さん。困りますわ。当麻さんったらまた、また、
 また無自覚にそうやって女性の気を引いたり名前をお知りになったりしましたのね。
 一度ちゃんと言って聞かせたほうがよろしいのかしら……? 私、とっても嫉妬深いほうだって」
「ごごご、ごめんって! 別に変な意図はないんだよ!」
「悪気がないのが尚更悪いですわ」

ふう、と光子はため息をついた。
この家にたどり着く前、駅前で二人は姫神に会ったのだった。
もちろん光子のほうは姫神を知るわけもなく、上条の女友達と出くわすという最悪のシチュエーションだったわけである。
インデックスにお菓子を奢ってやった関係でちょっと姫神の態度が気安くなっていたのが災いした。
そのときは一言、小言を言われただけだったのだが、どうやら許したとか気にしなかったとか、そういうことではないらしい。
どうもピリピリした光子の空気に居心地が悪くなって、つい当麻は逃げた。



674nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/08(月) 22:57:46.27VhUH4pfVo (4/5)


「お、俺、黄泉川先生にとりあえず電話するわ」
「……ええ、じゃあお願いしますわ」

チロリと向けた視線に怖いものを感じて、当麻はキッチンから逃げ出す。
ソファに座って、黄泉川の携帯を呼び出した。
夕日を眺めながら、コールを数回待つ。

「はい黄泉川」
「あ、先生。上条です。今日の晩御飯どうします?」
「あー、悪い。食べられるような時間には帰れないな」
「じゃあ作り置きしておくってことでいいですか」

キッチンに目をやる。買ってきた食材から考えて、それは問題なかった。
帰ってきて軽く暖めれば食べられるだろう。

「そうしてくれると助かる。悪いな」
「いや、いいですよ。それで帰りはいつ頃に?」
「わからん。日付は変わるだろうな」
「俺、帰ったほうがいいですか」

一応、お伺いを立てておく。黄泉川がいない日には、当麻は深夜になるまでに帰ることになっているからだ。

「……いや、あんな事があった日だ。お前も婚后もインデックスも、あまりバラバラは落ち着かないだろう。
 泊まっていいぞ。ただ、婚后と間違いは犯すなよ」
「わかりました。約束します」
「ん。じゃあな」
「はい。それじゃ」

携帯の通話をきり、一息つく。
キッチンの片付けも済んだのか、光子が隣に来て、スカートを調えながら腰掛けた。

「黄泉川先生は、なんて?」
「今日は午前様だとさ。いろいろあったし、今日は俺も泊まっていいって」
「えっ?」

淡々と当麻が伝えた言葉に、光子はドキリとなった。
今ここには、光子と当麻の二人きりだ。
もちろんいずれはインデックスが戻ってくるのだろうが、
今日はこれから随分と二人っきりの時間を過ごせる上に、
夜まで当麻と触れ合って、話し合って、そしてすぐ近くで眠れるのだ。
それがなんだか無性に嬉しい。ほっとする。

「嬉しい。ずっと当麻さんと、一緒にいられますのね」
「寝る布団は別だけどな」
「もう、それは当然です! 部屋だって別なんですもの」

口で当麻を拒絶するようなことを言いながら、光子は当麻の肩にそっともたれ掛かっていた。

「当麻さん。大好き」
「俺も好きだよ、光子」
「ふふ」

見詰め合って、そのまま軽いキスを、二人は交わした。
暗くなり始めた部屋の中で、二人の影が重なり合う。

「光子」
「はい?」

当麻がソファから体を起こして、光子を抱き寄せる。
何をするのかと光子が不思議がっていると、当麻がソファの背もたれに手をかけて引き寄せ、カチンと留め金を外した。
完全に、それで背もたれが真横に倒れる。

「あ、これ」
「ああ、こないだ気付いたんだけど、背もたれが倒れてベッドになるんだよな」
「当麻さん……?」
「嫌だったら、嫌って言えよ」

もう一度、当麻がキスをした。
そしてそのキスでそのまま、光子の体を押し倒していく。
当麻が何処までする気なのかわからないし、抗うべきだと光子の理性は訴えていた。
だが、これまで何日も溜め込んでいたもの、そして今日の出来事で感じた不安、疲労、
そういったものが抗うことを光子に躊躇わせる。
当麻と、触れ合いたかった。撫でて、抱きしめて、キスして欲しいと思っていた。
少しくらい、深いところまで行っても自分を止められないような、そういう気がしていた。




675nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/08(月) 22:59:57.61VhUH4pfVo (5/5)

とりま今日はここまでで。
ひさびさに光子さんとイチャイチャするシーンかけて作者が嬉しい。
長いことかけて育てたヒロインだけに。


676VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県)2011/08/08(月) 23:33:44.64GdK6xGwbo (1/1)

乙!
いいとこで終わらせやがって、このやろう!
これは大覇星祭もやるつもりということなのか?


677VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/08/08(月) 23:38:29.35XYf715fi0 (1/1)

超絶に乙!
2828が止まらん、早く続きが読みたいー!


678VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/09(火) 00:56:40.447VtBYdaDO (1/2)

乙乙! 俺も嬉しい


679VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/08/09(火) 09:53:27.03RvegmvcA0 (1/2)

頬の筋肉が全く動いてくれないんだが、どう責任とってくれるんだよ


680nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/09(火) 11:45:03.31KftB2l8go (1/6)


「あ、あの当麻さん」
「ん?」
「その、今日は汗をかきましたから……」

髪を撫でる当麻に、一応そうやって抗ってみる。
実際、シャワーを浴びてからのほうが、匂いの心配はしなくていい。

「そっか、まあ俺もだ」
「え? そ、そうですわね」

当麻が光子の髪から手を引っ込めた。
もっと強引に来てくれるものと思っていたので、光子は肩透かしを食らった気分になる。
伺うように当麻のほうを見ると、いたずらを思いついたときの顔でニッと笑っていた。

「一緒にシャワー、浴びるか」
「え、えぇっ?! そ、そんなの、いくらなんでも急ですわ!」
「嫌か?」
「い、嫌ってことはありませんけれど、でも、そんな」
「じゃあ、行くか」
「えっ?」

突然の展開にあたふたする光子を尻目に、当麻がソファから立ち上がり、光子の背中と足の下に手を差し入れた。

「ふっ!」
「あ、きゃっ!」

結構気合の入った掛け声を出して、当麻が光子を持ち上げた。
当麻と光子の身長差はそれほどないので、当麻にとって結構光子は重かったりする。
とはいえ持ち上げておいてそんなことを言うのは万死に値すると当麻も分かっているので、根性でなんとか体を安定させる。

「意外と、できるもんだな」
「これ……」
「光子、俺の首に手を回してくれ。支えがないときつい」
「あ、はい」

腕を当麻の首に絡めると、二人の顔がぐっと近くなった。
キスだってしたことがあるのに、なんだか物凄くドキドキとするのだった。
当麻に体の全てを預けて、抱かれている。
ちょっと首を傾けると当麻の胸に耳が触れて、心音が伝わってきた。

「当麻さん……」
「痛くないか?」
「ううん。大丈夫。当麻さんこそ、重くありませんこと?」
「まあ、羽根の様に軽いとは行かないな。ごめん、力なくってさ」
「そんなことありませんわ」

一瞬、それまでの経緯を全て忘れて、光子はうっとりとなった。
結婚式のことに思いをはせたりして、なんだか嬉しくなるのだ。
……すぐさま、当麻が何を思ってこれをしたのかを思い出させられる羽目になるのだが。

「それじゃ、浴室まで行こうか」
「え? あっ……! 当麻さん、そんな」



681nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/09(火) 11:45:55.92KftB2l8go (2/6)


この姿勢は光子に移動の自由がない。自力で降りられる姿勢でもない。
当麻が笑ってなくて、真剣にこちらを見つめているのが一層の混乱を加速させる。
もしかして、当麻さんは本気で言ってらっしゃるの……?

「駄目、ですわ……」
「俺と一緒は嫌か?」
「そういうことじゃありません。恥ずかしいの」
「光子の裸、見たい」
「っっ!! 駄目……駄目です」
「なんで?」
「だ、だって」

恥ずかしいに決まっている。そんなの。
だいたい、今日まで病院で不健康な生活をしていたのは誰だと思っているのだ。

「もう一週間くらいも、外に出ないで不摂生していましたのよ。
 そんなときに体のラインを見せるなんて……」
「光子、それって普段ならアリだって言ってるのか?」
「ちち、違います! もう、当麻さん、嬲るのはおよしになって」
「ごめん。光子が可愛いからつい、な。さて、浴室に到着っと。
 自分で脱ぐか? それとも、脱がされるほうがいいか?」
「えっ?! あ、あの、当麻さん。本当に、一緒に入りますの……?」

光子は高鳴る心臓を押さえ切れない。半分以上、当麻が本気なんじゃないかという気がしてきた。
心の準備は、正直に言ってない。裸を見せるなんて、恥ずかしいの一言に尽きる。
だけど嫌なわけじゃない。そして当麻の希望を裏切るのも心苦しい。
好きな人にだから、全てを捧げても良いという気持ちも、どこかにはある。

「光子」

名前を呼んで、当麻が光子の体をそっと下ろした。足を着いて、光子は自分の体を自分で支える。
二人ともいくらか服が着崩れていて、そして、密着していた。

「当麻さん……」
「好きだよ」
「んっ……!」

二人で見詰め合う。キスをするタイミングを理解して、磁石で惹かれあうみたいに、互いの体を引き寄せあった。
そしてくちゅりと、舌と舌で濡れた音を立てる。

「ん、ん、ん」

当麻にくいくいと舌を吸い込まれる。同時に当麻のほうから唾液が流れ込んできて、咽そうになる。
必死になって息を吸い、僅かな余裕でコクリと口の中に溜まったものを嚥下する。
唇はもうベタベタだった。クーラーなんて全然効いてないし浴室はそもそも暑い。
当麻のこめかみから伝った汗が口の中に入る。しょっぱい感じはするけれど、嫌だとは光子は思わなかった。



682nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/09(火) 11:47:00.79KftB2l8go (3/6)


「ごめん」
「全然、気になりません」

それよりもキスを中断されたほうが不満だった。もっとして欲しい。
目を見てそれを感じ取ってくれたのか、当麻がもっと激しく光子の口を吸い上げた。

「んんっ」

両手で当麻が、光子の背中とお尻を撫でる。
そのちょっと乱暴なくらいの仕草が、今の光子の気持ちの高ぶりに良く合っていた。
今までで、一番エッチな手つきだと思う。
お尻を撫でるとかそんなんじゃなくて、全体をぐっと手のひらに収めて形を楽しむような触り方だった。

「当麻さん、手がいやらしいですわ……」
「そうかな」
「ええ。当麻さんは、いっつもエッチなんだもの」
「そんなつもりはないけどな」
「嘘を仰っても駄目ですわ」
「……ならもっと、正直になろうか?」
「えっ?」

至近距離で囁くのを止めて、少しだけ当麻が上半身の距離を離す。
そして、お尻を触っていた手を滑らせて、光子の胸のすぐ下、横隔膜の辺りに添えた。
それが意図するものを、光子はすぐに察した。

「あ……」
「駄目、か?」
「恥ずかしくて、その……あの」
「ん?」

光子の表情が、明確なノーではないことに当麻は気付いていた。
ただ、服を脱がせて直接触るようなことは拒否される気もしている。
光子を傷つけないギリギリまで、当麻は行きたかった。

「光子、可愛いよ。光子が彼女になってくれて、ホントに良かったって思ってる」
「わ、私もですわ。……でも当麻さん、急にそんな話をしても、はぐらかされませんわ」

そうでもなかった。結構単純な光子は、そうやって褒められるとついつい当麻に甘くなる。

「胸、触ってもいいか?」
「……」

潤んだ瞳で、光子が当麻を見上げる。
もう一押し、というところだろうか。

「光子の綺麗な体のこと、全部知りたいんだ」
「当麻さんのエッチ。何処でそんな言い方、覚えてきますの」
「覚えてきたとかじゃなくて、本音だって」
「莫迦……」



683nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/09(火) 11:47:41.84KftB2l8go (4/6)


トンとごく軽く、光子が当麻の胸を叩いた。可愛らしい抗議の仕草だった。

「じゅ、十秒だけ……」
「え?」
「十秒だけ、ですからね……?」

それが光子の妥協できる限界だった。
だって五分も十分もされたら、どうなるかわからない。
恥ずかしすぎて自分は死ぬかもしれない。
当麻はその提案に乗るか、検討する。
まあ、今回はこんなところだろう。

「両手で触っていい?」
「そ、そんなの知りません! でも、ちゃんとキスをしてくれないのは、嫌ですわ」
「わかった」

胸に興味があるからと胸ばかり弄ばれるのは絶対に嫌だ。
そういうのは全然嬉しくない。
当麻はそれを察してくれたらしかった。
壁際に、光子は押し付けられる。そして両手を当麻に繋がれて自由を失う。
そのまま当麻が覆いかぶさって、光子を文字通り押し倒すようにしながらキスをした。

「ん! ああ……」

キスをしてすぐに、首筋を舐められる。
ゾクゾクとした何かが体を這い上がって、腰が砕けそうになる。
思わず目を瞑ると、平衡感覚も失いそうになった。
執拗に当麻に攻められる。光子は理性を全部失うんじゃないかと、不安になるくらいだった。

「それじゃ、触るな?」
「あっ……」

当麻が与えてくれる快感に陶然となっていると、待ちかねたように当麻がそう宣言した。
心理的な抵抗は、もう随分と磨り減っていた。
当麻は、安心させるためにもう一度、優しくて軽いキスをする。
恥ずかしそうにしながらも、僅かに笑った光子の表情が可愛かった。

「光子、愛してる」
「私も……。ふあぁ……」

ふにゅりと、両手で当麻は光子の胸をすっぽりと包み込んだ。
その温かみだけで、光子が可愛らしい声を上げた。

「すげ……」



684nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/09(火) 11:48:54.94KftB2l8go (5/6)


重みがしっかりあって、手のひらにおさまりきらない。
中学生を恋人にしておいてこう言うのもなんだが、スタイルが良すぎるような気がしないでもない。
なんだか不思議な感動を感じながら、ハッと当麻は我に帰る。
今、何秒使った?
勿体無いという気持ちが猛烈にこみ上げてくる。
なんというか、もっとこう、こねくり回さないと。

「あっ! あ、当麻さん、駄目、んんっ! あぅ、ん」

パンでも捏ねるように、両手で当麻は光子の胸の形を変える。
下から救い上げ、押し上げるように。
抗議を上げる光子の口をキスで塞ぐ。行き場を失った光子の手が当麻の肩に触れる。
当麻を押しのけるような力を光子はかけたりしなかった。それを確認して、さらに続ける。

「んーっ! んんん……んは、ん」

苦しげに光子が息を吸う。そんな余裕すら与えたくなくて、ひたすら当麻は胸に触れ続ける。
親指で、その胸の先端あたりの布をこする。何かその『痕跡』を見つけたいのだが、
ブラ、ワイシャツ、サマーセーターと三重に防御策を張り巡らせた常盤台の制服は、
中々『それ』の存在を当麻に悟らせなかった。
仕方ないから、摘むようにして先端を執拗に攻めてみる。

「はぁぁん!」

吐息や鼻声じゃなくて、光子がはっきりと甘い声を漏らしたのを当麻は聞いた。
そのびっくりするくらいの色っぽさと女らしさに、むしろ当麻のほうがやられそうだった。
可愛い彼女だし、大好きだったけれど、こんな風に自分の手で女としての側面をさらけ出したところは、初めて見た。
その生々しいリアクションに、当麻のほうがドキドキしてどうにかなりそうだった。
だがどうやら光子は自分で自分のした事に気付いていないらしく、
手を動かすのもキスをするのも止めてしまった当麻を不安げに見つめていた。

「当麻さん……?」
「あ、悪い」
「ん……」

なだめるようにキスをすると、光子が安心した顔をした。
なんとなく、それで当麻も胸を触るのを止めることにした。
もっと、こんな一足飛びな感じじゃなくて優しく光子を導いてやりたい。

「光子、大好きだよ。光子が可愛すぎて、どうにかなりそうだ」
「嬉しい……。当麻さんに喜んでもらえるのが、私、一番嬉しいの」

光子が当麻の首に腕を回した。
それに応えて、当麻も光子の背中と腰をぎゅっと抱いてやる。
汗が混ざり合うのも気にせずに、二人は深く深く、キスをした。
夕日が存在感を失うくらいまで浴室の暗がりで、ずっと。



685nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/09(火) 11:50:32.65KftB2l8go (6/6)

>>676-679
πタッチまで行っちまった。時々このカップルは暴走するね。
大覇星祭までいけるといいなー。いつになるやら。。


686VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/09(火) 12:32:43.75TFzOIqIIO (1/1)

おっぱい

じゃなかった>>1おつ


687VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/09(火) 13:31:36.777VtBYdaDO (2/2)

乙π。

早速約束破るもげじょーさんは先生に鉄拳制裁もといお説教されてしまえ!


688VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/08/09(火) 14:25:07.44RvegmvcA0 (2/2)

パイは投げられた。乙

上条さんは光子ちゃんのをもんだので、自分は上条さんのをもぎます。


689VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/08/09(火) 15:23:50.84PDrdh+LAO (1/1)

そしてサジは投げられた!

おつー。


690VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/08/09(火) 17:55:38.74tDKbOrmAO (1/1)

乙。
確かにみっちゃんはスタイルいいよなぁ。


691VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/08/09(火) 19:09:00.14WD9K1Ays0 (1/1)


でも上条さんが男前過ぎてなんか違和感あるな


692VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/08/09(火) 19:17:52.31MqZpsptWo (1/1)

あれだ、記憶破壊されてないからって考えればいいのさ


693VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/09(火) 21:07:35.523EG4qJ5bo (1/1)

なるほど初代か、まあ確かに男前にすぎる感じはあるな。彼女持ち故かな
インデックスの記憶保持をどう扱うかが個人的には楽しみ


694VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福井県)2011/08/09(火) 22:14:10.25u0tDrR+qo (1/1)

乙ー
上条さんの下条さんはイマジンブレイクしろ!


695nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/10(水) 11:39:31.36mygNeroMo (1/7)


「あたたたた……」

佐天は体のあちこちに出来た擦り傷が染みるのに耐えながら、ぬるいシャワーを浴びる。
警備員の、たしか黄泉川という先生の紹介で案内された病院で、
佐天は今日一日の汚れを落とし、治療を受けるところだった。
各種測定で、骨折や内臓損傷などの深刻な怪我はないことがもうわかっている。
足の腱が一番の大きな怪我だったが、きちんと治療すれば後遺症もないと聞いている。
そんなこんなで一息ついて、経過観察のために今日は入院なのだった。

「佐天さん……大丈夫ですか?」

間仕切りの向こうから、初春の声が聞こえる。
初春自身の怪我は佐天よりさらに軽いが、あちらも経過観察入院だった。
美琴と白井は、今診察を受けているところだ。

「染みるのは擦り傷だけだから、別に問題はないよ。
 まあ、痛いのは痛いんだけど」
「……」

シャワーの音の向こうで、初春が痛ましそうな顔をしたのがなんとなく佐天にはわかった。
たぶん、怪我の程度の差を、初春は申し訳なく思っているのだと思う。
春上たちを助けるために体を張った度合いが自分は少なくて、役に立てなかったとかそんな気持ちを感じているんだろう。

「怪我、早く治りそうですか?」
「なんかゲコ太っぽいあのお医者さんが言うには、全治一週間だって。完治までは二週間くらいかかるってさ」
「そうなんですか」
「しばらくは食べ物は少なめで、優しいものをだってさー。困っちゃうよね。直るころにはお盆も終わっちゃってるし」
「でも、こんなこと言ったら何ですけど、それ位ですんで良かったです」
「あはは、まあそだね」

地味に、髪があまり傷つかなかったのは嬉しかった。肌と違って元通りになるのに時間も掛かるからだ。
シャンプーをとって、髪を泡立てる。爪を立てないように、髪の根のほうからきちんと汚れを取るように指を動かしていく。

「ねえ初春」
「なんですか?」
「ホント、良かったよね。みんな無事でさ」
「そうですね。春上さんも、ひどくないみたいですし」

声に安堵と喜色を込めて、初春が頷き返した。
一番の重症と思われた春上も、検査の結果は予想外に良好で、
失血による一時的な眩暈や疲労を除けば後はそれほど時間も掛からず復調するとの事だった。
口や首、胸の辺りを血まみれにして呻いていたあの時のことを思えば、信じられない結果だ。



696nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/10(水) 11:41:39.14mygNeroMo (2/7)


「アレは、一体なんだったのかな」
「え?」

問い直してから、初春は自分で佐天の言わんとしたことに思い当たった。
インデックスとエリスが、春上に一体何をしたのか。とても、超能力とは思えなかった。
そもそも他人の人体に干渉して、医者以上の結果を叩きだせる能力者なんてそうはいない。
佐天が不思議がるのはむしろ当然だった。

「祈りが届いたんですよ」
「え?」

だが、なんだか初春はあの時起こった出来事に、
科学的な見方をわざわざ持ち込んで不可思議だとか言うのは、野暮な気がしていた。

「なんとなく、判らないままっていうのが一番正解に近い気がします」
「……ふーん」

佐天はそういう姿勢をあまり受け入れられなかった。
あの時、真っ先に春上のために祈りを捧げた初春との、差がそこにはあったのかもしれない。
佐天はまあいいかと思って、シャンプーを洗い流し、トリートメントをつける。

「佐天さん」
「んー?」
「今日の佐天さん、すごかったですね」
「……ありがと」

褒められるのは、勿論嬉しい。だけどなんだか佐天は寂しくもあった。
初春と、距離が開いてしまったようで。

「佐天さんは、システムスキャン、また受けたりしないんですか?」
「退院したら受けようかな、って思ってる」
「きっと、またレベル上がりますよ」
「そだね。……偉そうに聞こえたらごめんだけど、たぶん、上がると自分でも思ってるんだ」
「そうなれば柵川中学でトップですね。レベル3以上は、うちには一人もいませんから」
「うん……」

初春が朗らかにそう言ってくれるのが、寂しさの裏返しのように聞こえた。
柵川中学でトップというよりは、事実上、もう転校するべきレベルだということを、意味しているから。

「ねー初春」

トリートメントを洗い流し、スポンジを手にして佐天は初春に声をかける。
なんですかと返事が来るより先に、間仕切りを迂回して、初春のシャワールームに乱入する。

「えっ、ちょ、ちょっと佐天さん!?」
「んー、可愛いお尻だね」
「ひぁっ?! な、なんで触るんですか!!」
「え、駄目? あたしのも触っていいけど?」
「別に触りたくないです! っていうか狭いところに二人って無理がありますよ」



697nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/10(水) 11:42:33.03mygNeroMo (3/7)


一人分のスペースしかないところにいるものだから、肘や膝や、
太ももや上半身のきわどいところなどが時々触れたりする。
そのたびに彼我の戦力差というか、女らしい佐天の体つきに、初春はくっと呟いてしまうのだった。
身長は7センチ差なのに、バストはそれ以上差があるって一体どういうことなのか。

「ほら、洗いっこしよ」
「え? さ、佐天さん。それ本気で言ってます? それとも私をくすぐる口実ですか?」
「どっちも正解かなっ」

ボディソープをスポンジにとり、お湯を含ませ揉む事でしっかりと泡立てる。
口ではくすぐるようなこともほのめかしたが、実際は特にそういう気はなかった。

「あっ……」

初春の背中に、そっとスポンジを当てる。
傷がないかをよく確認しながら、怪我のない部分をこしこしとこすっていく。

「どう初春? 気持ちいい?」
「え、えっと……。なんか落ち着かないですけど、気持ちいいです」
「そりゃ良かった」

弟を風呂に入れてやったときの要領で、佐天は腕、首筋などを続けて洗ってやる。
あっという間に初春が文句を言うのを止めて、佐天の優しいタッチに身を任せていた。

「佐天さんって、やっぱり格好良いなって思います」
「もう、突然どしたの?」
「同級生にこう言うのは変ですけど、なんだかお姉さんな感じで、優しくて」
「こ、こら初春。照れるでしょ。ほら前向いて」
「え?」
「洗ったげるから」
「い、いいです! そこは自分でやれます!」
「まあまあ。ほら、初春の全てをお姉さんにみせてごらん?」
「そのお姉さんって表現はいかがわしいですよ……」

胸を隠すように腕を前に回した初春に、佐天は笑ってスポンジを渡してやる。
やっぱり初春をからかうのは、楽しかった。
初春がそそくさと体の前を洗うのを見届けると、初春が振り返った。

「じゃあ次は、私ですね」
「ん。お願いね」

初春はソープを足して、少し泡立てなおした。
そして自分よりちょっとだけ背の高い佐天の背中に、そっとスポンジを当てる。

「んっ、たた……」
「あの、ごめんなさい佐天さん」
「いいって。さすがに染みないように洗うのは無理だしね。一思いにやっちゃってよ。ゴシゴシと」
「ゴシゴシって、そんな洗い方しませんよ」



698nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/10(水) 11:43:19.29mygNeroMo (4/7)


傷に直接触れることは避けながら、初春は佐天の綺麗な肌に泡を付けていく。
時々目に入る紫色の痣が痛ましかった。
快活ではあるけれど、やっぱり佐天にこんな傷まみれの肌は似合わない。

「もう、なんて顔してんのよ、初春」
「だって……」

どれくらい痛かったのだろう、と想像すると、眉が自然ときゅっとなってしまうのだ。
そんな初春の様子を、佐天は気にした風もなくあっさりと笑う。

「別に気にしてないよ、あたしは。だってあの時、心は折れなかったから。
 怪我はしても、ずっと前向いてたから。だからこの怪我は勲章なんだ」
「男の子の言い分ですよ、それ」
「大事な人を守れた人の言い分なんだよ、正しくは。……ってちょっとカッコつけすぎか」

てへっと笑う佐天に、もう、と仕方なく初春は笑い返した。
確かにあの時、佐天はとびきりに格好よかった。
美琴に引けをとらず、どうしようもないとすら思った状況をひっくり返して、
ハッピーエンドを強引に手繰り寄せた。
きっと自分は、そんな佐天に憧れているのだろうと、初春は思った。

「ん、ありがと。じゃあ前よろしく」
「……はい。いいですよ。佐天さんがして欲しいなら、してあげます」
「え? ちょ、ちょっと待って! もう、恥ずかしがってくれなきゃ困るでしょ?」
「恥ずかしいですけど、別に嫌って訳じゃないですから」
「え、えっ? ……ごめん初春。あたしが恥ずかしいので、スポンジを下さい」
「もう、だったら最初から言わなければいいんですよ」
「だって初春からかうの、好きだからさ」

照れ隠しに、さっと佐天も体の前を洗う。
初春が洗い流すシャワーを用意しようと、コックに手を伸ばした。
そこを、佐天はもう一度急襲する。

「ひゃっっ?! ささささ佐天さん?」
「大好き、初春」
「なななな何を言ってるんですか?」

ぬるりと、肌が石鹸膜越しに触れ合う感触がする。
素っ裸で、二人っきりのシャワー室で、初春は佐天に抱きつかれていた。
背中にピッタリと、佐天のおなかや胸が張り付いた感触がする。
ここまで来るともうなんだか、友達の一線を越えちゃうんじゃないかっていうくらいのスキンシップだ。

「さ、佐天さん?」
「……」
「あの」



699nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/10(水) 11:44:27.95mygNeroMo (5/7)


初春を抱きしめてからしばらく、佐天は言葉を発さなかった。
その雰囲気が、なんだか真剣なのに気付いて、初春は言葉を急かしたり、暴れたりするのを止めた。
やがて、ぽつんと佐天が言葉を漏らし始めた。

「初春や春上さん、クラスの皆と柵川中学で過ごすの、楽しいよね」
「……そうですね。もし、佐天さんがいなかったら寂しいですね」
「そう、かな。寂しがってくれるかな」
「当たり前じゃないですか。佐天さんは明るくて、クラスでも人気ありましたし」
「……じゃあ、二学期からはそんな感じで行こうか」
「もちろん、大歓迎ですよ」
「そっか」
「……でも。佐天さんは、別の選択肢のことも、考えてるんですよね」
「うん」

初春から、佐天の表情は見えない。だけどわかる。だって自分は佐天の親友だから。

「佐天さんは、どっちの道を進みたいですか?」
「あたしは……」

心の中で、もうほとんどは、決まっていることだった。
だけど寂しくて、忘れられそうで、初春の前ではなかなか、それを口に出来ないでいた。
決定的なことを言うのが、怖かった。

「応援してます!」
「う、初春?」

突然、ぐっと拳を握って初春がそう叫んだ。

「私、佐天さんのこと応援してますから!
 佐天さんはもっと伸びるに決まってます! そのために、できることはきっとあります!
 転校したら、一緒に遊べる時間は減っちゃうかもしれませんけれど、別にいつだって会えるんです!
 だから、だから……っ」

勢いの良かった初春の声が、だんだんぐすぐすと鼻声に替わっていく。
なんだか、その雰囲気に佐天も中てられそうだった。

「ちょっと初春。なんで泣くのよ。こっちまでなんか変になるでしょ」
「電話もします。メールもします」
「あたしだって、するよ」
「だから、あのっ……!」
「うん」

初春を抱いた腕を放し、正面を向かせる。
そして、初春の目を見て、佐天は初めて、きちんと自分の決心を伝えた。



700nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/10(水) 11:45:34.08mygNeroMo (6/7)


「あたし、転校するね。もっと自分の能力を伸ばせる場所で、もっとビッグになってくるから」
「……はい、っ。がんばっで、さてんさん。ふえぇぇ」
「あーもー、泣いちゃだめでしょ。後ろ髪引かれちゃうじゃない」
「だ、だって、覚悟はしていましたけど、やっぱり佐天さんから聞いちゃうと、本当なんだなって……!」
「うん。あたしも、初春に言ったら、なんか寂しく……っ。ほらもう、もらい泣きしちゃったじゃない」
「佐天さぁぁぁん」

シャワー室でわんわんと涙をこぼしながら、佐天は初春と抱き合った。
悲しいだけではない。何でこんなことになったんだと二人で変に爆笑しながら、また泣いた。
佐天のもらい泣きが一通りおさまって、冷たいシャワーをぶっ放してクールダウンさせるまで、初春は泣き通しだった。
強い子だと思っていたからなんだかそれが意外で、そういう側面を見れたのもきっと親友だからだと思って、佐天は勇気付けられた。
二人でバスタオルを巻いて、脱衣所へと戻る。

「初春、落ち着いた?」
「……はい。佐天さん、冷静になるのが早いです」
「って言われても。初春は泣き虫だったねえ」
「だって佐天さんが転校するって言うのに……!」
「あーほらもう、また泣いちゃ駄目でしょ。あたし、転校できなくなっちゃうよ?」
「駄目ですっ。佐天さんは、頑張らないと」
「そだね。まずは初春に勉強教えてもらわなきゃ」
「もう、それじゃ全然足りないですよ」

文句を言い合いながら、二人でおそろいの下着を身につけていく。
ちなみに可愛げのまったくないオーソドックスな中学生用下着だ。
縞模様の青いヤツだった。病院が用意してくれるのは、これしかないらしい。

「んー、可愛いお尻だね」
「もう、さっきもずっと見てたじゃないですか」
「下着を着けてるところをみると、安心するね」
「毎日ちゃんと履いてます!」
「これからも、忘れちゃ駄目だからね」
「なんで忘れると思うんですか……」

そして上から、病院着をすっぽりかぶる。下はハーフパンツ状だった。
夏真っ盛りなこともあって、軽い素材だった。

「初春がスカートじゃないと、めくれない」
「当然です! 言っておきますけど、ずり下げたりしたら絶交ですか、ら……う」
「あーもう、自分で言って自爆しない」

絶交なんて、このタイミングでは聞きたくない言葉だ。
また初春の目じりに涙が浮かぶ。

「大丈夫だって。転校したって、また普通に会えるから。白井さんや御坂さんともちょくちょく会ってるでしょ?」
「白井さんは風紀委員で一緒ですから……。でも、なんでお二人の話が?」
「あ、あたしが受けるつもりの学校、まだ言ってなかったね。
 って言っても、受かるかどうかわかんないし、相当無茶やってるのは、自分でもわかるんだけど」

言うべきときは、今だと思う。
まだ誰にも、断言はしてこなかったこと。
最初に初春に言えるのは、嬉しかった。

「あたし、常盤台中学、受けるつもりだから」

それで覚悟は決まった。
いい顔をして宣言した佐天に、飛び切りの笑顔を初春が返した。



701nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/10(水) 11:54:16.15mygNeroMo (7/7)

『ep.2_PSI-Crystal 13: 幸せな結末』でした。これで体晶編は完結っと。次話のタイトルは
『ep.3_Deep Blood 03: 不幸せな結末』を予定しています。エリス、ていとくん……(´;ω;`)

>>>>691-693
惚れた女にカッコいいこと言うくらいは甲斐性あるでしょ、ということでひとつご勘弁ください。
誰とも付き合ってない原作上条さんとはちょっとくらい差があってもいいかなー、とか。
上条さんって意外と原作らしさを出しにくいんですよ。

あと誰かのリクエストに応えてお風呂会にしてみた。
四人組じゃなくてごめんね。


702VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/08/10(水) 12:09:07.32X4tEby5AO (1/1)

お尻お尻ハァハァ


703VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/08/10(水) 12:33:40.40Ay3n89tb0 (1/1)

乙。
佐天さんマジかっけぇ


704VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県)2011/08/10(水) 12:53:25.34Q3o2mPL10 (1/1)

佐天さんのお尻回がと仄めかされていたら初春のお尻回だったでござる。どっちも大好きですけど!
しかしこの二人、見ようによっては上条さんと光子さんより進んだカップルに見えてしまうな


705VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/08/10(水) 18:56:11.73dxmvJYcH0 (1/1)

乙乙! 佐天さんも初春もどっちも可愛いよ!

>>701
それでもイケメルヘンなら・・・イケメルヘンなら常識を覆してくれる!


706VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/08/10(水) 19:20:45.14m0M+lrwU0 (1/1)

ていとくんのターン、来たああぁぁぁぁ!
原作では日の目を見なかった第二位の力を思う存分発揮してくれぇええええ!!


707VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2011/08/10(水) 21:13:18.63+1zuT7zUo (1/1)

タイトル不吉すぎワロタwwwwww
ワロタ・・・


708nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/18(木) 18:15:26.00v8ol2l+uo (1/20)

帰省から戻ってきました。書き溜めた分をどかっと投下しますー。
長めのエピソード丸ごと一つだから結構な量だな。


709nubewo ◆sQkYhVdKvM2011/08/18(木) 18:17:58.70v8ol2l+uo (2/20)


ありふれた夕方の雑踏の中を、インデックスは早足で歩く。
記憶を振り返れば、それは慣れ親しんだペースだった。
長身のステイルと神裂にとっては遅めで、インデックスには早め。
仲良くみんなの中間を取った早さを、インデックスの体は覚えていた。
そしてもちろん、隣を歩くステイルがそれを忘れるわけもない……はずなのだが。
どうも、一挙手一投足に流麗さがないというか、ありていに言って緊張していた。

「ようやく、落ち着いたね」
「うん」

体の動きは言葉と裏腹なのだが、ステイルはそうインデックスに切り出した。
二度と、ないだろうと諦めていた。こんな風にインデックスと一緒に歩くことなんて。
だからこそ、ぎくしゃくするものがあるのだ。
例えば全てを忘れてしまう直前に、自分はこの子になんと約束したんだったかとか、
そういうことを考えるとステイルは歳相応の緊張を強いられてしまうのだった。
こんな醜態、インデックスと二人きりでもない限り絶対にさらすことのないものだ。

「で、昼からまるで無関係な仕事をこなしたあの一件については、結局、円満に解決したってことで、いいのかな?」
「うん。みんな、最悪の事態は避けられたみたいだから」
「そうかい」

無難な質問を、ステイルはこなしていく。
婚后光子に高速道路のど真ん中に放り出され共闘させられたせいで、事の顛末はあまり知らされていないのだ。
とりあえずステイルが打倒した側がわかりやすい非道であったのが有難かった。
どちらが正義かわからないような、そういう判断の難しい案件だったら手を出すのは余計に躊躇われただろう。
そういう意味で、一般人に危害を加える結社の類を妥当するのが生業のステイルにとってはいつもの仕事に近いといえた。
だが同時に、学園都市という名のこの町に、改めてステイルは空恐ろしいものを感じてもいた。
この事件を打開した立役者だとか言われていた、長髪の黒髪の女の子と、
トラックに同乗したあの御坂とかいう女の子を思い出す。
どちらも、ただの素人にだった。心構えという一面で見ればステイルからすれば甘いにもほどがある。
聞けば普段は女子中学生だとかいう。
少なくとも『必要悪の教会<ネセサリウス>』という団体に所属するステイルとはまるで立ち居地が違う。
だというのに、そんな女の子ですら、ステイルが危機と感じるような敵を相手に大立ち回りを演じ、
そして自分たちの望む未来を手繰り寄せられる。
この町の子供たちが何気なく手にし、日々開発している能力。
それがいかに強大で危険か、外部の人間だからこそステイルは思い知らされていた。
この町では、何気なくすれ違う学生の中に、ステイルが脅威と感じるような人間がいくらでも存在している。
そんな日が来ないことを祈るばかりだが、この町が中心となってまとまった科学サイドと魔術サイドがぶつかることがあるなら、
この町は確実に脅威となる。
ステイルは沈み込みかけた意識を引き上げ、インデックスに再び問いかける。

「彼女は……エリスって言ったっけ、あの後、どうしたんだい?」

それも気になることだった。こちらは困ったことに学園都市で知り合った同業者だからだ。
土御門には連絡を済ませ、問題があれば対処が行われるだろうが、少なくとも今日は、
ステイルがあの少女に関わっている暇はない。
すぐにでも片づけるべき別の案件を抱えているからだ。

「……ごめんね。ちゃんと聞いてなかったから、私もよく知らない」
「そうかい」