528 ◆3dKAx7itpI2011/05/06(金) 20:59:29.027XAVvU+Mo (20/25)



「―――――――ッ」


声を発することも許されなかった。その圧倒的な破壊力は一方通行の『反射』など軽々と突き破り、
垣根帝督の『未元物質』の防御を押しのけ、ミーシャ=クロイツェフの『天使の力』を蹂躙する。
その球状の衝撃波は視認できるほどに色濃く、強力で、周囲にある建造物を粉々に砕き、
数秒も経たない内に半径約一キロメートルもの範囲に拡大した。

さらにその爆発によって生じた暴風が、第一九学区という街を破壊していく。
『第一九学区にはまだ利用できる価値がある』と言っていたアレイスターの言葉とは裏腹に、
彼は何の躊躇いもなく自らが作り上げていった世界を破砕していった。


(・・・・・・それぞれが上手く別の方向へと散ったか。 これでいい、エイワスとの戦闘に備えるためにも、
 私が今ここで無駄に消耗するわけにはいかないしな。 垣根帝督は『ファイブオーバー』と"その中身"に
 相手をさせていればいい。 一方通行は十中八九、ミーシャ=クロイツェフと接触するために
 彼女を捜し求める。 そして今、この第一九学区に潜んでいる"『天使同盟(アライアンス)』以外の鼠"は
 ・・・・・・・・・・・・全てを終えた後に私の方で処理するか)




529 ◆3dKAx7itpI2011/05/06(金) 21:00:21.477XAVvU+Mo (21/25)



一方通行、垣根帝督、ミーシャはアレイスターの前から姿を消していた。
先程のアレイスターの攻撃で跡形も無く消滅したわけではない。アレイスターが故意に
彼らを散り散りにしたのだ。


アレイスターがいる地点の周囲は、もはや地獄絵図と化していた。
ついさっきまで密集していた建造物は森林伐採をしたかのように綺麗に吹き飛んでおり、
その衝撃波は遙か数キロ先に立ち並ぶビルやマンションが確認できるほどの規模だった。


「さて、」


アレイスターはパシン、と杖の先端を掌へ軽く叩きつけながら笑みを浮かべる。


「それで、見苦しくも今の私の魔術に耐え切った君は、どうするかね?
 素直に『アストラル界』にでも還った方が懸命だと私は思うけどな」

「・・・・・・『虚数学区』の事ですか」




530 ◆3dKAx7itpI2011/05/06(金) 21:01:23.187XAVvU+Mo (22/25)



アレイスターがいる周辺には、雪のように淡く輝く綿のようなものが、
あれだけの爆風が起きたにも関わらず、ふよふよと漂っていた。

それは、光る鱗粉。
アレイスターが見据える視線の先にいる、科学の力で構成された人工天使、
ヒューズ=カザキリの翼から生み出されている光の鱗粉だった。


「素晴らしい反応だったな、私が『衝撃の杖』を展開させた時には、
 既に君はその『擬似エーテル』の元素で壁を作っていたわけだ。
 もっとも、一方通行達の壁を作るまでには至らなかったようだが」

「・・・・・・彼らは必ず無事でいます。 あなたのような人間に、彼らを討てるわけがない」

「ほう。 しかし現状はこの通りだが・・・・・・どう出るつもりだ?」

「私が・・・・・・・・・・・・、」




531 ◆3dKAx7itpI2011/05/06(金) 21:02:21.457XAVvU+Mo (23/25)



風斬氷華は行方が分からなくなった一方通行達の事を、今だけは考えないように
一度ゆっくりと目を閉じる。
そして、次に開いた時、彼女の瞳にはこれまで見せたことのないような勇ましい光が宿っていた。




「ここで私が、あなたを止めます。 アレイスター=クロウリー」

「愉快だよ、"人形"」




アレイスターは楽しそうな、とても愉しそうな笑顔を風斬に送り返した。





『人形』が、『人形師』に謀反する。




532 ◆3dKAx7itpI2011/05/06(金) 21:08:09.837XAVvU+Mo (24/25)



Q. あたち幼女だけどあんだけ格好つけといてアレイスターに手も足も出ないトップ2って・・・・・・

A. 天使すら指先ひとつでダウンさせたアレイスターに人間が勝てるわけない


とはいえ、とんでもない事になってきました。
主人公補正とかそんなん一切通用せず、アレイスターにフルボッコにされた第一位と第二位。
終いにゃ蠅を追い払うが如く皆散り散りにされてしまいます。
どうやら風斬がアレイスターにタイマンを挑むようですが誰か助けてあげてください。このままじゃ殺される。

各々が散った先に待っている敵とは?そんな感じで次回もよろしくお願いします。

次回更新は三日以内。

それでは、本日もお付き合いいただきありがとうございました!


・・・・・・次回予告が短すぎて投下するか迷いましたが、一応投下しときます。




533次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI2011/05/06(金) 21:09:01.817XAVvU+Mo (25/25)




                          【次回予告】



『テ、メェ・・・・・・・・・・・・そのふざけた仮面は・・・・・・ッ!!!』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督






534VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/05/06(金) 21:10:13.79CCsT56yAO (1/1)


続き待ってます


535VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/06(金) 21:11:26.76ouXwC2yKo (1/2)


人工天使は"死"ねるのか


536VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/06(金) 21:11:49.43+d9jmuR00 (1/1)


どうやって勝つんだこれ…吉良みたいになってきてんぞ


537VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/06(金) 21:12:27.002itmkyQY0 (1/1)

乙!
"『天使同盟(アライアンス)』以外の鼠"って誰だ?


538VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/05/06(金) 21:13:32.67KdtOllsUo (1/1)

>>537
ほら、なんかウニ頭に付けてる・・・


539VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/06(金) 21:15:40.25LcARHLOzo (1/1)

乙乙

次回は垣根編か
仮面と言うとEqu.Darkmatterかな……

>>537
遊園地でジェットコースターから落ちながら告白したアイツとか


540VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/06(金) 21:16:08.23tpSwidjSO (1/1)

>>538 美堂蛮!?
確かに天使とか関わってくるけど…


541VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)2011/05/06(金) 21:20:07.63O8E6Vint0 (1/1)

>風斬の肩から手を離し、涙を流す彼女の目元をそっと指で拭うと、
>一方通行はアレイスターの方を振り返って言った。

>「覚悟は出来てンだろォなオマエ

一方さんマジイケメン
俺が女なら惚れてるレベル


542VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/06(金) 21:20:18.29WIfeujLh0 (1/1)

ていとくんの相手は、ファイブオーバーと未元仮面か……
学園都市のテクノロジーに、果たして勝てるのか……?

それはそうと、やっぱアレイスター強すぎるな。
消耗していたとはいえ、あのフィアンマをボッコボコにした魔術師だからな……
エイワス、急ぐんだッ!


543VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/05/06(金) 21:24:35.77oupEMGZAO (1/1)

乙です!!
アレイ☆強すぎだろ…。
フリーザの53万発言より絶望的すぎる


544VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県)2011/05/06(金) 21:25:20.59LBXkAmZZ0 (1/1)

ここでKJさんですよ


545VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/05/06(金) 21:32:36.70PsP238z20 (1/1)

アレイスター強い、さすがはラスボス(暫定)
しかしこんなアレイスターをよくまあ昔の魔術師たちは瀕死の重傷まで追い込めたな


546VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/06(金) 21:35:41.63ouXwC2yKo (2/2)

ホームグラウンドだから魔術師としては万全に近いのだろう



547VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/05/06(金) 22:00:47.85dDNOGpAyo (1/1)

無理ゲー臭がしてきたな


548VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/05/06(金) 22:02:06.73ZLaVjGv/0 (1/1)

>>540
ネタでもそいつはやばいwwwwwwwwwwマジで「天使?何それ?おいしいの?」レベルぐらい強いからwwwwwwwwwwwwww
それにしてもアレイスターって冥土帰しに助けてもらっときまでは人間だったの?


549VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/05/06(金) 22:37:43.51yChaWKRm0 (1/1)

時々思うんだ・・鎌池さんも泣く泣くボツにしたネタをssにしてupしてたりするのかな?って・・・・
>>1 鎌池さんですか?


550VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県)2011/05/06(金) 22:49:15.24c8Ih8wyOo (1/1)

テレズマと拡散力場の両方を扱えるんだろ多分
この絶望感は老バーン vs ダイ一行のファーストバトルを思い出すな


551VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/06(金) 23:30:04.13Q8Ym2Vlv0 (1/1)


流石のアレイスターだな
でも魔術攻撃っぽい超現象を防いじゃう風斬も地味に凄いぞおい
よく考えりゃ科学と魔術が存在の根底から絡み合った限りなくホルスの世界の住民に近い子だもんな
で垣根!
Equ.Darkmatterが超能力という火で打った鉄なら、今のお前は魔術という酸素を得たガスバーナーの炎だ!
焼き切っておしまい!


552VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/07(土) 00:13:57.57GQFb9PEIo (1/1)

ちょっとアレイスター消してくる




553VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県)2011/05/07(土) 01:39:37.50n5y0JgNlo (1/1)

Equ.Darkmatterって浜ヅラと麦野相手に全滅した雑魚だろ


554VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/07(土) 03:03:04.18/EYaVvAc0 (1/1)

でも当然のごとく中身が訳ありらしいけどなあ


555VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)2011/05/07(土) 11:41:18.04H532QQMAO (1/1)

てか冥土帰しって何歳なの?



556VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/07(土) 12:25:39.18nBI/QGCSO (1/1)

>>555
スレチ


557VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/08(日) 02:29:50.57FBBCeTJQ0 (1/1)

じゃあ、俺はアレイスターの魔の手から風斬を守るために戦ってくるわ。


558VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/08(日) 02:49:50.30sFod0sJT0 (1/2)

じゃぁ、俺は>>557のsageないという魔の手からみんなを守るため戦うわ。


559VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/08(日) 03:09:20.34rK8+VBvV0 (1/3)

>>553
浜面・麦野戦は相手が手負いの無能力者だと油断しまくって不用意に近づいた上に麦野が来ることは完全に予想外だったから負けた
普通の銃器は効かない(不完全とはいえ原始崩しまで防いでる)し、翼はリーチ長くて硬くて強力
中の人間は能力者じゃないだろうから脳に影響する音も関係ない=キャパシティダウンも効かない
つまり能力者が行動不能のなか発条包帯装着者なみの機動力と窒素装甲以上の防御力とレベル4なみの攻撃翌力を持てることになる
まして普通の軍隊相手なら中隊程度は秒殺できるはず
これから出てくる強敵をナメてたんじゃ楽しめないぞ


560VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/08(日) 04:16:45.27eaVRxPNIo (1/1)

おいおい相手は新・ていとくんだぜ
そんな常識通用しねぇよ

この>>1ならそれすら上回りそうだけど…


561 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:08:35.4923kDzkD5o (1/27)

こんにちわ、夜に投下できそうにないので今から投下します。

いつも沢山のレスをありがとうございます。何だか考察的なレスも多くて恐縮です。
つーか皆さんいいアイデア浮かびまくりですよね・・・・・・パクろっかな普通に・・・・・・


さて、前回の投下でアレイスターにボッコボコにされた第一位と第二位。
しかもミーシャも含めた三人は散り散りにぶっ飛ばされてしまいます。勝負にもなんねえ
その場に何とか残った風斬氷華は一人、アレイスターに戦いを挑みます。

では続きをどうぞ。


562 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:10:16.3823kDzkD5o (2/27)



――――――――――――――――――――――


"目に映る光景が全てゴチャ混ぜになる瞬間"を、垣根帝督は久々に体感した。
今まで彼は能力者同士の戦闘では無類の強さを誇っていた。
こんな風に、景色がぐるぐると回転するほどの衝撃を喰らったのは一〇月九日の対一方通行戦の時以来だったか。


やがてアレイスターによる魔術での攻撃で吹き飛ばされていた自身の肉体が停止する。
全身がズタボロになりながらも、垣根は痛みを堪えて立ち上がった。
荒い呼吸を繰り返しながら、肺から奪われた酸素を急ピッチで取り込んでいく。


「ぜぇ・・・・・・はぁ・・・・・・クッソ・・・・・・!!! ・・・・・・どの辺だここは」


垣根は辺りを見回す。第一九学区外まで吹き飛ばされたという事は無いようだった。
何らかの衝撃でへし折れたのか、信号機の上に付けられていた看板に『第一九学区』と書かれていたので確認が出来た。
周りに"人の気配"は無い。どうやら相当の距離まで吹き飛ばされたようだ。

垣根帝督は拳を強く握り締めながら今自分が立っている三車線の広い道路のど真ん中で
口に溜まっていた血糊を吐き出す。




563 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:11:35.1723kDzkD5o (3/27)



(アレイスターの野郎・・・・・・完全に遊んでやがる・・・・・・!!)


格の違い、というものを見せつけられた気がした。
お前のような人間などいつでも殺せます、というアピールをされた気がした。


魔術師、アレイスター=クロウリーは学園都市第二位の超能力者にそこまで思わせるほどの力を秘めていた。


しかもそれでいて、依然アレイスターは遊んでいる。
一瞬、背中に寒気のようなものを感じたが、垣根はブンブンと頭を振って無理やり払拭させた。


(とにかくアレイスターのクソ野郎を捜さねえと・・・・・・せっかくここまで辿り着いたんだ。
 もうここまで来たら『天使同盟』なんざ必要ねえ。 あとは俺がアレイスターの首を掻っ切るだけだ)


垣根帝督にとって、『天使同盟』はアレイスターと直接接触するための『橋』だと、彼はこの時思った。
そして悲願は達成寸前のところまで来ている。アレイスターに出会えた、あとはそのアレイスターを殺すだけ。




564 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:12:12.6523kDzkD5o (4/27)



だから、風斬氷華がどうなろうが知った事ではない。エイワスなど以ての外。
ミーシャ=クロイツェフが天界へ還ろうがどうなろうが、どうだっていい。

一方通行が殺されようが、垣根にとってはむしろ好都合だ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


本当に?本当にそうだろうか?

垣根は『天使同盟逢引計画』で交わした一方通行との会話を思い出す。


(・・・・・・知るかよ、クソったれ)


ともあれ、まずはさっき居た地点まで戻ってみることにした垣根帝督。




565 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:12:51.1923kDzkD5o (5/27)



しかしその最初の第一歩が踏み出される事は無かった。


「ッ!!?」


突然、垣根の眼前に迫ってきたのは、閃光。


垣根は恐ろしい反射速度で『未元物質(ダークマター)』の翼を前面に展開。
辛うじてその閃光を防ぐことに成功する。

『未元物質』の翼に触れた閃光は、凄まじい衝撃音を放ち消滅した。
垣根帝督はこの感覚に妙な既視感を感じる。


(・・・・・・今の攻撃、どこかで・・・・・・?)




566 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:13:19.9123kDzkD5o (6/27)



実際に見たわけではない、と垣根はこの既視感について分析する。
直に見たわけではない、ただ何かの情報を得たときについでに得た情報のような、
なんとも言えない不思議な違和感だと思った。


そして、垣根が立っている道路の向こう側から何かが近付いてくるのを感じる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、なんだありゃ? 『駆動鎧(パワードスーツ)』・・・・・・か?」


人ではなかった。
垣根帝督に向かって真っ直ぐ近付いてくるそれは、誰が見ても『ロボット』を連想させる物体だった。

そして垣根はそこまで駆動鎧に詳しいわけではなかった。なので近付いてくるそれを完全に目視しても、
どういうタイプの物でどういう機能を備えているのか推測出来なかった。


ただ、垣根はその駆動鎧の外観を見て『カマキリ』を連想した。




567 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:14:06.1123kDzkD5o (7/27)



その駆動鎧の全長は、およそ五メートルといったところか。
学園都市の駆動鎧は多種多様に存在するが、取り立てて巨大というわけではない大きさだ。

しかし異様なのは、その姿。カマキリを連想させるそのボディデザイン。

カマキリと言ってもその駆動鎧は二本の脚に二本の腕、そして二本の鎌を構えているという
妙な体勢をとっていた。
そしてパカッと開かれた装甲からは、それこそ虫のような薄い半透明の羽根が
人間の目では捉えきれないほどの速度で羽ばたいていた。


(・・・・・・あの羽根で空気を叩いて渦みてえな気流を生み出して、揚力を得てやがるんだな)


普通の科学力なら全長五メートル以上の機械の塊をあんな薄い羽根で浮かせる事など出来ないかもしれないが、
ここは学園都市だ。必要ならば本気でアニメに出てくるようなロボットも量産出来るかもしれない。




568 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:14:50.9623kDzkD5o (8/27)



しかし垣根が一番気にかかったのはそんな小さな事ではない。
駆動鎧の背部に取り付けられているタンク、恐らくは銃弾か何かを収めておくような部分、ではない。
前脚の先端にある保護カバーから覗いている、束ねられた三本の銃身、でもない。

その前脚の保護カバーに刻印されている文字。




Gatling_Railgun'。




ガトリングレールガン。『超電磁砲』。


確かそれは、学園都市の超能力者(レベル5)第三位が冠する異名ではなかったか?




569 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:15:31.0523kDzkD5o (9/27)



「ハッ」


垣根が失笑した直後、


――――――ッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!と、もはや銃声というものすら
聞こえないような暴風が第二位を粉々に砕くために襲いかかってきた。
直径一メートル程の弾丸が、一分間に四〇〇〇発を超える速度で、電磁力の原理を利用して撃ち出されていく。


垣根が立っていた地点で、巨大な爆発が発生した。
弾丸を撃っているというのに、爆発が発生した。

その現象が、このガトリングレールガンという駆動鎧の破壊力を如実に表していた。




570 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:16:10.3923kDzkD5o (10/27)



「で? それで終いかクソ雑魚ども」


爆炎と爆煙の中から聞こえたのは、そんな言葉だった。


ボバッッ!!!、という衝撃音と共に"白い繭"が煙の中から飛び出してきた。


「『FIVE_Over. Modelcase_"RAILGUN".』、なぁ。 第三位の『超電磁砲』を
 機械的に再現した駆動鎧か。 学園都市も面白えオモチャを作ってやがるじゃねえか」


繭がゆっくりと解けていく。そこから姿を現したのは、言うまでもなく学園都市第二位の超能力者だった。




571 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:16:54.5623kDzkD5o (11/27)



垣根帝督は威力だけなら本家の『超電磁砲』を超える威力のガトリングレールガンを真正面から喰らっても
全くの無傷を維持していた。
彼は反射速度ではなく『予測』でファイブオーバーのガトリングレールガンを防御するため、
『あらゆる電力と衝撃、砲弾という物理的衝撃を遮断する法則』を組み込んだ『未元物質』を現出させたのだ。

これが、第二位の超能力。

第二位と第三位の間に立ち塞がる壁は、あまりにも巨大で強固だった。
本家『超電磁砲』より応用性が無いファイブオーバーだと尚更だ。


「俺を蜂の巣にしてえなら、そのオモチャをあと一〇〇体は持ってこい。
 それらで一斉に襲い掛かれば俺にカスリ傷くらいは負わせられるかもな」


言うやいなや、垣根帝督は空中に停滞したまま『不可思議のベクトル』を組み込んだ烈風を六枚の翼から
発生させた。ファイブオーバーは完全自立AIではない。乗り込んだパイロットの脳を演算コアに指定し、
それを徹底的に補強する形で駆動用コンピュータが周囲を取り囲む、という方式になっている。

簡単に言えば人間が乗り込んである程度操作しなければならない駆動鎧であり、
人間である以上その反射速度には限界が存在する。


垣根の放った烈風は音速の域を超えていた。その上ノーモーション、更に『不可思議のベクトル』によって
原因不明の破壊現象が発生し、ファイブオーバーはあっという間に高価なガラクタと化してしまった。




572 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:17:54.4023kDzkD5o (12/27)



「悪いな。 俺の『未元物質(ダークマター)』に、常識は通用しねえんだよ」


解体されていくファイブオーバーを空中から見下ろしながら垣根は独り言を呟く。


だが、それは独り言にはならなかった。




「そうか。 だが常識が通用しないのは"我々も同じだ"」




機械音声のような、しかしそれとはまた違う、妙な音質でそんな言葉が聞こえてきた。
破壊される寸前に、機体前面にあるコックピットハッチがグシャァッ!!、という音と共に開かれ、
そこからパイロットであろう男が飛び出してきた。




573 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:18:37.5823kDzkD5o (13/27)



そのパイロットは空中に飛び出したまま、しかし地面に降り立つことはなかった。


「・・・・・・・・・・・・な、に・・・・・・!?」


ファイブオーバーを目の当たりにしても余裕の笑みを見せていた垣根帝督は、今度こそ驚嘆した。
駆動鎧のパイロットは全身を黒のコスチュームに包んでおり、それは暗部などでよく見かける
『警備員(アンチスキル)』の武装によく似た形状の出で立ちだった。

しかし、圧倒的に異なる部分がそのパイロットには見受けられた。


「テ、メェ・・・・・・・・・・・・そのふざけた仮面は・・・・・・ッ!!!」

「見覚えがあるか? 当たり前か」


パイロットは垣根と同じ高度で停滞したまま"翼を羽ばたかせ"、くだらなそうな声色で言った。




574 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:19:17.0823kDzkD5o (14/27)





「貴様が今背負っている翼と"全く同じ素材"だからな、この仮面は」




パイロットの――恐らく男だろうか――装着している仮面は、白と金で装飾されており、
縦の長さが顔の二倍以上もある異様な形相だった。
白くのっぺりとしたその仮面には目や口などの穴が空いておらず、仮面全体がLEDデコレーションのように
発光し、色鮮やかな模様を描いている。

そのLED発光によって、白い仮面にはこんな文字が浮かび上がっていた。




Equ.DarkMatter。




確かそれは、学園都市の超能力者(レベル5)第ニ位が冠する異名ではなかったか?




575 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:20:12.6723kDzkD5o (15/27)



「科学技術の性能と『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』、一体どちらが秀でているのかな?
 貴様がいつまでも学園都市の第二位として君臨し続けていられると思ったら大間違いだ」


垣根帝督はこみ上げてくる怒りでこめかみの血管が破裂するかと思った。
目の前の仮面の男に怒っているのではない。
恐らくは、一〇月九日に『死』に至った垣根帝督の脳を利用してこの仮面を、猿真似の第二位を作り上げた
学園都市に。アレイスター=クロウリーに対して怒っているのだ。


「くふ、は、」


あまりの憤激に垣根は変な笑い声を漏らしてしまった。その怒りは、油断すれば
自身の人格まで歪めて、破壊してしまいそうなほどにまで高まっていた。

垣根は、漠然と思った。




576 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:21:26.8123kDzkD5o (16/27)



この街はもうダメだ。


第四位は既に玩具にされている。ボロボロになった肉体を学園都市の技術の試験として改造し尽くしたことで。


第三位は既に玩具にされている。筋ジストロフィーの治療の為だと言われて提供したDNAサンプルのせいで、
彼女はこの世の『闇』の一部を垣間目撃し、絶望の淵へ追いやられている。


第二位は既に玩具にされている。今もこうして、『自分だけの現実』を利用されてアレイスターのために貢献している。


「第三次世界大戦時、ロシアに投入された『未元物質』の仮面と、"我々"の装着しているこの仮面は
 既に絶対的性能差がある。 我々が装着しているこの『未元物質』は、貴様の『自分だけの現実』を
 "一〇〇パーセント実現させることが出来る"。 貴様のオリジナルとこの仮面の応用性に差は無い」


仮面の男が何かを言っていたが、垣根の耳には右から左だった。




577 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:22:14.2423kDzkD5o (17/27)



第五位はどうなのだろうか?確か『心理掌握(メンタルアウト)』だったか、あれもいずれはこんな風に
玩具として利用されるのだろうか。第六位は?七位は?こんな腐った街に居れば、いずれ彼らも食い物にされる。

そして第一位は?彼はアレイスターにとっての『第一候補(メインプラン)』だが、そう認識されている事こそが
既に彼の玩具として扱われているということではないのか。


今までこんな事を考えたことはなかった、と垣根は自身の思考に驚く。
アレイスターとの交渉権を手に入れ、隙をついてアレイスターの『プラン』を潰す。
その事ばかりを考えて、垣根は暗部として活動してきた。

そしてその野望は一方通行によって頓挫する。
エイワスの手によって『復活』した垣根は、『天使同盟(アライアンス)』と合流した当初は
本気で一方通行を始末しようと考えていた。

でも、今は―――――。


『―――――だったら、オマエもガブリエルを守れよ』




578 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:23:04.5523kDzkD5o (18/27)



黄泉川愛穂という人物が提案したくだらないデート計画の時、一方通行は垣根に言った。
ミーシャ=クロイツェフを一緒に守れ、と。それが『天使同盟』の構成員の義務だと、彼は言っていた。


『オマエにはもォ帰る場所もあるし、帰りを待ってくれるやつもいる。
 俺もオマエも、全く変わらねェってことだ。 わかったかこのメルヘン野郎が』


一方通行は言った。垣根にはもう帰るべき場所があると。帰りを待ってくれる人がいると。

垣根はその時なんと答えた?




『守ってやるよ、ミーシャも、風斬も、「天使同盟」も、何もかも。
 俺の居場所なんだろ? ぶっ壊されちゃたまんねえ』








579 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:23:43.6323kDzkD5o (19/27)



そうだ。


やっぱり、違う。『天使同盟』は垣根をアレイスターの下へ辿り着かせるための『橋』じゃない。


『天使同盟』は、そして学園都市は、垣根帝督の帰るべき場所。
垣根の帰りを待ってくれている人がいる、大切な場所。


『協力してやる。 ――――――』

「―――――・・・・・・今度は嘘じゃねえ」


垣根帝督は怒りで沸騰しそうになっていた頭を冷静にする。
緩やかに息を吐き、全神経を研ぎ澄まして自分の状態をベストコンディションにする。


「守らねえとな」

「?」




580 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:24:37.1223kDzkD5o (20/27)



『未元物質』の仮面を装着した男は、垣根が何を言っているのか分からなかった。
だが伝わらなくていい。それは、垣根が自身に言い聞かせた言葉なのだから。


ようやく追いついた。『天使同盟』の皆の気持ちに、ようやく追いついた。


守らなければ。学園都市を、『天使同盟』を、ミーシャ=クロイツェフを。


そのためには、目の前にいるクソったれの猿真似野郎を叩き潰さなければならない。
そして垣根の帰る場所を腐らせている、アレイスター=クロウリーという魔術師を討たなければ。


垣根は目の前にいる仮面の男を睨んだ。状況は実に把握しやすい。
倒すべき『敵』を倒せば、居場所は守れる。




581 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:25:05.9023kDzkD5o (21/27)



「・・・・・・ふん。 何を決意したのか知らんが、そんな顔をしても無駄だ」


仮面の男は無機質な声でそう言った。
そしておもむろにサッと右腕を天に向かって上げる。


それを合図に、空中から、地上から、わらわらと何かが湧き出してきた。


「リクエストにお応えしようか、垣根帝督。 貴様は先ほど、
 『俺を蜂の巣にしてえならそのオモチャをあと一〇〇体は持ってこい』、と言っていたな?」


湧き出してきたそれは、さっき破壊したタイプと全く同じ駆動鎧、『ファイブオーバー』。
そして目の前にいる白と金の仮面を被った戦闘員だった。




582 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:26:25.3023kDzkD5o (22/27)



しかも『ファイブオーバー』や仮面の兵士は一人や一機ではなかった。
ニ、三、いや一〇、二〇・・・・・・・・・・・・。


「まぁ、今この周囲に配備されている『回収部隊(アンチツヴァイ)』は貴様の要望の一〇〇には満たないが・・・・・・、
 それでも五〇以上は参戦できる。 どうだ? これなら貴様も少しは喜んでくれるんじゃないか?」


気がつけば、垣根帝督の周りには『ファイブオーバー』と仮面の軍隊が彼を取り囲むような配置で
出現していた。目の前の仮面の男の言ったとおり、合わせて五〇以上の数が確認できる。


『回収部隊(アンチツヴァイ)』。


『未元物質』の仮面の兵士と『ファイブオーバー』のみで構成された、"『第二候補(スペアプラン)』回収部隊"。
垣根帝督を"回収"するためだけにアレイスターの直接指揮で組まれた即席の部隊だ。




583 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:27:38.3923kDzkD5o (23/27)



「わざわざ俺のためにこんなキャストを送り込んでくれたのか? 感謝しねえとな」

「必要ない。 貴様の脳さえ回収出来れば、貴様を殺しても構わないのだから。
 そして我々はもちろん、貴様を殺すつもりでいる。 この仮面があればオリジナルはもう必要ない」


そして仮面の男は止めと言わんばかりに、垣根にこう告げた。




「『Equ.DarkMatter』を装着した兵士が一〇〇〇人、そして駆動鎧『FIVE_Over. Modelcase_"RAILGUN".』が五〇〇機。
 ファイブオーバーに乗り込んでいるパイロットはもちろん全てが私と同じ、仮面の兵士だ。
 合計一五〇〇の『回収部隊(アンチツヴァイ)』が、貴様の命に照準を定めている。 
 一〇〇は連れてこいと言っていた貴様のリクエストに応えられて我々も非常に嬉しいよ、垣根帝督」




そう言われても、垣根帝督の表情に変化はなかった。
『超電磁砲』の"応用性"を捨て、"威力"に特化した駆動鎧五〇〇と、垣根の演算パターンを完璧に
再現できる『未元物質』の仮面を装着した兵士が一〇〇〇人。




584 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:28:49.3923kDzkD5o (24/27)



垣根帝督を回収するためだけに構成された即席部隊とはいえ、それはあまりにも豪華すぎる顔ぶれだった。
『回収部隊』だけで一国と戦争が出来るのではないかと思えるレベルの戦力だ。


「第一九学区に一五〇〇の勢力が揃ってやがるのか? どこにコソコソ隠れてやがるんだか」

「地下だよ。 さすがに全勢力を一斉に表へ出すことは出来ん。 学園都市の人間に目撃されても
 困るし、何より我々は暗部だ。 全勢力で一気に攻めるなどという派手な真似はしない」

「ハッ、あんだけ銃声や爆撃音を鳴らしまくっておきながら何を言ってんだ」

「それは我々だけが原因ではない。 何やらこの第一九学区にワケの分からん"ネズミ"が何匹か紛れ込んで
 我々の戦力を削いでいるとの情報が入っている。 ・・・・・・が、それは貴様には関係の無いことだ」


垣根は訝しげに眉をひそめた。
第一九学区に潜むネズミ。一方通行や風斬の事かと思ったが、彼らは『天使同盟』であって
アレイスターも予期せぬ来訪客ということはあるまい。

なら、誰か他に第一九学区に潜んでいる謎の勢力が・・・・・・?




585 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:29:27.6923kDzkD5o (25/27)



「さて、ではそろそろ回収させてもらうが、構わないな?
 申し訳ないが最期の一言を聞くほどの慈悲は持ち合わせていないのでな」


あちこちから奇妙な音が聞こえてきた。
ファイブオーバーが銃弾を装填する音、『未元物質』の仮面が白い翼を展開する音。

垣根はそれでも臆しない。その表情には、不敵な笑みしか見られなかった。




「来いよ猿真似野郎ども。 テメェらが俺の居場所を荒らすってんなら容赦はしねえ。
 お前らに垣根帝督ってのがどんなヤツかを教えてやるよ!!!」 

「攻撃開始」




第一九学区の一角から、色と音が消える。


垣根帝督が挑むは、五〇〇人の第三位と、一〇〇〇人の第二位。


彼はいつまで、第二位として君臨できるのか。




586 ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:37:59.8923kDzkD5o (26/27)


Q. 第三次世界大戦時に投入された『未元物質』の仮面も第二位の演算パターンを
  完璧に再現できる物なのでは?

A. 覚えてません。ごめんなさい。なのでこのSSの設定では戦時中に浜面仕上を襲った仮面は
  あまり応用性がない未完成の仮面ということになっています。


さて、アレイスターという憎き敵を前に変な方向へ暴走しかけた垣根ですが、何とか留まりました。
そして彼を襲う凶悪な部隊は、第三位と第二位が大勢で襲ってくるようなとんでも部隊。
ただし敵の仮面野郎には、垣根が新たに手に入れたあの力が無いですね。

なのですが・・・・・・、実はこの『回収部隊(笑)』、この最終決戦では"その他大勢の雑魚"扱いです。
よくヒーロー物でボスとやる前に雑魚戦闘員と立ち回りますよね?つまりはそれです。
垣根帝督には申し訳ありませんが、彼にはこの使い捨て集団を相手してもらいます。

それと、ここから垣根帝督は一旦主軸から外れ、彼独自のストーリーが展開されていきます。
今まで散々な目に遭ってきた垣根ですが、独自のストーリーで思わずカッコイイと思えるような垣根帝督を
お送りできたらなと思っています。

次回更新は三日以内。

それでは、長々と失礼しました。




587次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI2011/05/08(日) 16:38:46.7823kDzkD5o (27/27)




                          【次回予告】



『ガブリエル・・・・・・俺の声が聞こえねェのか!! 俺が誰だかわからねェのか!!?』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『うが、が。 う、ggggggggggggggg―――――――』
―――――――――――水を司る『大天使』・ミーシャ=クロイツェフ






588VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/08(日) 16:39:46.78TE2tZ0UL0 (1/1)


こんなに格好いい垣根は見たことない



589VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 16:40:34.66XAEhjl5Do (1/1)

>>1乙!
カッキー格好いいよカッキー


590VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/05/08(日) 16:43:01.78sLaJhrgI0 (1/1)


雑魚のレベル高過ぎだな



591VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 16:44:20.22FsQs9pNko (1/1)

かっきーマジかっけー

まぁ、オリジナルvs超大量コピーはむしろ勝ちフラグ
こちらはあまり心配しなくてよさそうww

次回は一方通行&ガブリエル
悪魔と言うか堕天使と言うか、多分そんな状態なんだろうけど、どうなる事やら……


592VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/08(日) 16:47:00.27sFod0sJT0 (2/2)

乙! 一国と戦争できる勢力を雑魚…… 天使同盟のレベルの高さが改めて分かるな……


593VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/08(日) 16:47:31.854EUud+K0o (1/1)


この垣根ならたかがコピーの量産品に負けるはずないと信じてる


594VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2011/05/08(日) 16:47:52.28/nCXGhEn0 (1/1)

乙乙
…>>579の「今度は嘘じゃねえ」で
スラムダンクの最終巻を思い出したのは俺だけか?


595VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 17:08:14.05//5r+SjDO (1/1)

次回予告のガブリエルのところが「天使同盟の構成員」でなくなっている…だと……!?


596VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/05/08(日) 17:10:27.50QoZ0q9u1o (1/1)

おっつ

むしろちょっとピンチになってから思わぬ応援が!
的な妄想をしてみた


597VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/08(日) 18:03:02.16785U3qGAO (1/1)

だ!れ!か! ワ!ク!テ!カ!
止!め!て! w!k!t!k!


598VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 18:55:23.37uCA8ZEGio (1/1)

おつん
垣根カッコいいよ垣根!!

>>595
うお、マジだ
ガブリエル……


599VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/08(日) 19:04:29.01TXcGtjNfo (1/1)

ARMSの最終決戦を思い出す展開で熱いぜ!


600VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 23:21:50.57kngXkxkSO (1/1)

絶対能力進化計画:第一位が第三位を128人殺せばok
今回:量産系最雑魚キャラが第2位1000体と第3位500体とか

垣根がこれ一人で狩るだけでLevel6余裕だな


601VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/08(日) 23:43:54.81rK8+VBvV0 (2/3)


いやああああ垣根いやあああああかっこいいやああああああ!!
いやあああ・・・ガブリエルいやああああ・・・


602VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/08(日) 23:45:37.61rK8+VBvV0 (3/3)


いやああああ垣根いやあああああかっこいいやああああああ!!
いやあああ・・・ガブリエルいやああああ・・・


603VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/09(月) 00:26:17.02c7pE81md0 (1/2)

>>601-602

落ち着けwwww


604VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/09(月) 00:27:27.65c7pE81md0 (2/2)

>>601-602

落ち着けwwww


605VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 00:31:37.92e8+QvKhuo (1/1)

もうダメだ気持ちはわかるがしばらく全員書き込むな


606TLB2011/05/09(月) 00:45:22.90fMz1nNvf0 (1/1)

なんてカッコイイ垣根くン
相手の仮面なんて割っちまえ


607>>601・6022011/05/09(月) 01:33:22.18+eKuWyOY0 (1/1)

なぜか連投されてた。スマンカッタ


608VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 18:22:25.21CBD+Idv00 (1/1)

>>601-604

ワロタ


609VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)2011/05/09(月) 19:31:08.31lM26VP/20 (1/2)

信じられないだろ……?
こいつ、ほんの少し前では能力全開で女風呂覗こうとしてたんだぜ…………


610 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 21:53:03.50SFTFFmxUo (1/20)

久々の連日投下です。
何だか二重投稿が多発していたようですね。私もそれで困ったことがあるのでわかります。
何なんでしょうかアレは・・・・・・

さて、>>609さんの言うとおり少し前は全身全霊で女湯を覗こうとしてた垣根が
だんだんイケメンに見えてきた前回の投下ですが、
今回は一方通行です。垣根同様彼も第一九学区のどこかにぶっ飛ばされました。

そこで彼は彼女を発見します。

そんな感じの展開で参ります。ではどうぞ




611 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 21:54:51.55SFTFFmxUo (2/20)



――――――――――――――――――――――


無造作に腕を振るうだけで、辺りのビルが吹き飛んでいった。


乱暴に翼を振るうだけで、地殻がめくれ上がり、烈風が巻き起こり、
第一九学区の商店街を瓦礫の山に仕立て上げた。


掌から『天使の力(テレズマ)』を発射するだけで、ズン!!!という爆発音と共に
その地点に大きなクレーターが出来上がった。


それが、大天使の力。ミーシャ=クロイツェフの驚異。


そして彼女は今、天使ですらなくなりかけていた。




612 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 21:56:25.39SFTFFmxUo (3/20)



「nfgheaghbvuう、ううsqfiugうううううぐnhwevb」


ノイズだらけの呻き声を上げながら、ミーシャはひたすら暴れ続けていた。
アレイスターの魔術によって吹き飛ばされて来た場所は、第一九学区と第四学区の
境界線近くの場所だった。

ロシアでの一方通行との接触と、『天使同盟』での生活で手に入れたミーシャの自我は、
もはや風前の灯火と化していた。わずかに残った自我の葛藤と、間もなく訪れる自身の崩壊の恐怖とが
ぐちゃぐちゃに混ざり合い、ミーシャは自分というものを保てなくなっていた。


結局、アレイスター=クロウリーは倒せなかった。結果、一方通行達を巻き込んでしまう事となった。
その自責の念の一押しもあり、彼女の『悪魔化』を促進していく。

身も心もボロボロになってしまったミーシャ=クロイツェフは、




613 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 21:59:37.85SFTFFmxUo (4/20)





「見つけたぞクソ天使。 ・・・・・・ったく、学園都市をこンなに荒しちまいやがって。
 これ誰が復旧費用出すンだァ? また俺に借金背負わせる気かよオマエは」




そんな声を聞いて、ピタリと破壊活動を止めた。


カツッ、カツッ、と突起物が地面を叩く音がする。靴底が地面を叩く音が、ミーシャの下へ近付いてくる。
ぐにゃぐにゃに歪んだ視界で、ミーシャはその音と声の正体を捉えた。

白よりも白い髪、白い肌。その白に浮かんでいる、真っ赤な眼光。
図らずもミーシャに自我というものを植えつけた張本人が、そこにはいた。


学園都市最強の超能力者(レベル5)、第一位の一方通行。


彼はミーシャから五メートル程離れた位置で歩みを止めた。
その体はアレイスターの攻撃によるものか、衣服は擦り切れ、露出している手や顔には
至る所に血が滲んでいた。




614 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:01:54.37SFTFFmxUo (5/20)



「帰るぞ、ガブリエル」


彼女の本来の存在を示す名を呼びながら、一方通行は言う。


「こンなところで暴れてたってしょうがねェだろ。 オマエはただでさえ目立っちゃいけねェってのに、
 これ以上俺達を困らせンじゃねェよ・・・・・・バカが。 おとなしく黄泉川ン家にでも向かってろ。
 アレイスターのクソ野郎は俺達でなンとかしておくからよ」


返事はなかった。ミーシャは両手で頭を抱えて呻くだけだった。
必死に何かに抗うように、背中から生えた水晶の翼を振り回して無差別に攻撃をする。


(ちくしょうが・・・・・・!!)


ミーシャの攻撃をギリギリで回避しながら、一方通行は下唇を噛んだ。
もう目の前の天使は一方通行すら見えていない、下手をすれば覚えてすらいないかもしれない。

ミーシャ=クロイツェフと呼ばれる天使が崩壊していってるのは、人間である一方通行にも一目瞭然だった。
『星の欠片』をどうにかすることで今のミーシャの状態も回復するとは思えなかった。




615 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:03:36.59SFTFFmxUo (6/20)



エイワスから、そしてアレイスターから聞いた話と、目の前の現実は完璧に一致していた。
もう、あの時のような、皆でバカをやって騒いでいたような日々には戻れないのかもしれない。

だとしたら、ミーシャはこのまま止まることはない。放っておけば『星の欠片』が消滅して
自身も消えてなくなるまで、こうして破壊行為を繰り返し続けるだろう。


ならば止めなければならない。それはつまり、本物の大天使と戦わなければならないという事だ。


「ガブリエル・・・・・・俺の声が聞こえねェのか!! 俺が誰だかわからねェのか!!?」

「うが、が。 う、ggggggggggggggg―――――――」


ちょろちょろと飛び回るうるさい蠅を追い払うようにミーシャは一方通行に向かって翼を振るった。
狙いがめちゃくちゃだった。爆発的に伸びた氷の翼は、一方通行には当たらず、明後日の方向へ飛んでいった。




616 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:04:26.68SFTFFmxUo (7/20)



だがその翼は一〇階建てのビルを突き破り、その瓦礫が地上にいる一方通行を押し潰そうと
雨のように降ってくる。

一方通行は首元に装着してある電極チョーカーのスイッチを弾くように切り替え、
背中に四本の竜巻を接続して瓦礫を周囲に吹き飛ばした。


レベル5第一位の超能力、『一方通行(アクセラレータ)』はこの世に存在するあらゆるベクトルを操作する。
そんな反則級の能力を用いても、果たして大天使にたった一人で立ち向かえるのか。


(クソが・・・・・・とりあえず今は錯乱しまくってるこのバカを止めるしかねェ。
 だが出来るか? ロシアじゃ一度こいつに殺されかけてる、この能力だけで
 こいつの暴走を食い止める事なンざ出来るのか?)


一方通行が決断に迷っていると、ふとミーシャの様子が変化した。
頭を俯かせ、猫背になり、だらりと両腕を下げた状態のまま動かない。




617 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:04:58.32SFTFFmxUo (8/20)



そしてゆっくりと一方通行の方を向くと、彼女の背中にある水晶の翼が一瞬で膨張し、展開した。
一〇〇メートル以上はあろうかというその巨大すぎる翼は、この学園都市に存在する全ての『水』に
接続して展開させているらしい。

その影響か、学園都市全域でビリビリと不安を煽るように低く重い震動が響いた。


「cvbtihbx攻撃tohrpf対象apfghb捕捉xaawpdi」


ゴォッッ!!!、という見えない殺意が一方通行とミーシャの周りに広がっていった。
呼吸が出来なくなるなるんじゃないかというほどの圧迫が一方通行の胸を襲う。

ロシア戦でも見せた戦闘モード。ミーシャは完膚なきまでに一方通行を殲滅するつもりのようだ。


「ガブリエル・・・・・・」


迷っている暇など無かった。一方通行はチョーカーのスイッチをオンにしたままミーシャの方へ
体を向けると、右腕に装着している杖を収めて背中の竜巻を更に膨張させた。


こうなったらもうやるしかない。味方の援護が望めない以上、たった一人で天使に立ち向かうしかない。
アレイスターの動向も気になるが、一方通行の、『天使同盟』の目的はあくまでミーシャの救出だ。




618 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:05:31.14SFTFFmxUo (9/20)



「btjoh貴方、dkvqeuda」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・クソッ」


ミーシャは全身をガクガクと震わせながら、一方通行に突撃する前に一言告げた。




「逃、げて」

「クソったれがァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」




それは、第三次世界大戦のリプレイだった。
学園都市の超能力者と大天使ミーシャ=クロイツェフの激突。


しかし、両者が胸に秘める想いは、あの時とはまるで違っている。




619 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:06:56.59SFTFFmxUo (10/20)



――――――――――――――――――――――


「はーまづらぁ!!! テメェもっとスピード出せコラ!! このままじゃ追いつかれちまうだろうが!!」

「アクセル底まで踏んでるっつーの!! ちくしょう・・・・・・人がいい気分で昼寝してたら
 ワケの分かんねえ爆発が起きてテメェらからの呼び出しがかかって、
 今じゃこうして『警備員(アンチスキル)』とカーチェイス!!? どこのアクション映画だっつの!!」

「はまづら、きぬはたから通達。 このまま真っ直ぐ進んで二つ目の角を左に曲がれば振りきれるって。
 私達の乗ってる車の大きさならギリギリ入れる道幅の抜け道がある」

「だークソったれ!!! お前らしっかり掴まってろよ!!!」


同じ頃、学園都市の第六学区では小さな軽自動車一台と『警備員』の武装車両数台が
盛大な鬼ごっこを繰り広げていた。
今現在、第六学区には人や車は全く通っていない。それはこの騒ぎが原因でもあるが、
何より昨日、第一九学区と隣接する学区には全て避難指示が通達されていたからだ。




620 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:08:12.67SFTFFmxUo (11/20)



軽自動車は明らかに第一九学区に向かって走っていた。『警備員』が武装車両を持ち出して
追いかけてくるのも当然である。


「また爆発音! やっぱり第一九学区じゃ今、間違いなく『祭り』が行われてる。
 学園都市の『闇』どころの匂いじゃないでしょこれは!!」

「なんでお前はこの状況でそんなハイテンションを保っていられるんだ!?
 第一九学区がヤバすぎる状況になってんのは分かってんだろうが!!?」

「だからこそこのビッグウェーブに乗らなきゃなんねえっつってんの!
 ちんたらと地下シェルターなんぞに避難してられっか! こんな時の『アイテム』だろうが!!」


軽自動車の中でギャーギャーと喚く男女の声が響く。
運転席には浜面仕上、助手席には滝壺理后。そして後部座席には超能力者(レベル5)第四位、『原子崩し(メルトダウナー)』の
麦野沈利が居座っていた。




621 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:09:07.49SFTFFmxUo (12/20)



彼らは『アイテム』という名の組織。『アイテム』はかつて学園都市の暗部として活動していた組織だが、
第三次世界大戦以降は『闇』から解放され、学園都市で平和な日々を過ごしていた。

過ごしていたはずなのだが。


「麦野ォ!! もしこれで俺達全員ブタ箱行きとかになったらゼッテー許さねえからな!!」

「そうならねえようにテメェがここで踏ん張らなきゃならねえんだろうが!!
 滝壺の前だ、しっかり男を魅せてちょうだいよ」

「大丈夫、私はこの状況で涙目になってるはまづらを応援してる」


ドンッ!ドンッ!、と背後に迫る武装車両から乾いた銃声が何度も鳴り響く。
浜面達の乗る軽自動車のタイヤを撃ち抜いて無理やり停止させようとしているのだ。

後部座席にいた麦野が窓から身を乗り出した。そしてじっくりと武装車両の位置を把握すると、
その掌から不健康そうな青白い閃光が迸る。

『原子崩し』。電子を『粒子』でもない『波形』でもない『曖昧なまま固定された電子』として操る能力。
それによって射出される光線は、いかなる遮断物をも濡れた和紙のように突き破る威力を持つ。




622 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:10:29.77SFTFFmxUo (13/20)



麦野はその光線を道路へ目掛けて発射し、爆破させることで武装車両をその勢いで横転させてしまった。


「これなら人死も出ないでしょ」

「俺達のワガママで『警備員』をぶっ飛ばすなよ!! 顔見られてねえだろうな!?
 そうなったらマジで俺達、学園都市から逃げ出さなきゃならねえハメになるぞ!?」

「その学園都市が今、滅びようとしてるんだけど?」


そうやって口論を交わす二人を無視して、助手席にいる滝壺は携帯電話を耳に当てたままボーッとしていた。
彼らと同行していない『アイテム』の構成員、絹旗最愛の指示を聞いているのだ。


「はまづら、ここでインド人を右に」

「よし・・・・・・!!」


恐らく絹旗はどこかでパソコンでも弄って学園都市の全体図を見て指示を出しているのだろう。
昨今、『天使同盟(アライアンス)』なる謎の組織の手により『警備員』と『風紀委員(ジャッジメント)』の
データベースがハッキングされているわけだが、学園都市のマップくらいならアクセス出来るようだ。

浜面は電話越しの絹旗の指示に従い、素晴らしいハンドルさばきで軽自動車を左折させる。
『警備員』の武装車両も同じように左折するが、その瞬間に麦野の光線攻撃で吹き飛ばされてしまった。
これで残りの武装車両はニ、三台ほど。どうやら無事に第一九学区に到着できそうな流れだった。




623左折じゃない、右折です。 申し訳ない  ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:11:52.50SFTFFmxUo (14/20)



軽自動車は第六学区の遊園地に強引に侵入し、尚も爆走し続ける。
助手席の滝壺が窓ガラスに貼り付きながらこんなことを言い出した。


「この遊園地、この前はまづらとあくせられーたとどらこの皆で一緒に遊んだとこだよね」

「確かにそうですけどね滝壺さん、今それどころじゃないんですよ!!」

「はぁ? 一方通行? 遊園地で遊んできたってのは滝壺から聞いてるけど、
 第一位も一緒だったの? 意味わかんねえ」


言いながら麦野は残りの武装車両を全て片付けてしまった。
連射が聞かないその能力の性質上、だいぶ時間を割いてしまったがどうにか撃退に成功する。




624 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:13:05.46SFTFFmxUo (15/20)



「あくせられーた達は今なにしてるのかな」

「ロシアにいるって昨日電話があったけど・・・・・・さすがにまだ戻ってきてねえだろ。
 あ、じゃあ第一九学区の騒ぎに一方通行達は関わってねえって事か・・・・・・。
 やっぱり俺の考えすぎだったのかな」

「何が?」


浜面は難しい顔をしながら麦野の問いに答える。


「今起きてる第一九学区の騒ぎ。 俺、もしかしたら『天使同盟』ってヤツらの
 仕業じゃねえかって漠然と思ってたんだよな」

「そりゃお前、この学園都市に住むほとんどの人間がそう思ってんでしょ。
 私もそうだし、あのハッキング事件があって次の日にこれだ。 ほぼ間違いないね」

「いやそうなんだけどさ、その『天使同盟』って一方通行達のことじゃねえかって思ってたんだ。
 根拠も何もねえただの勘だけどな。 ほら、滝壺は覚えてねえか? 一方通行が俺に偽装パスポート
 作れって言ってきた時に俺達に見せてきた写真。 あれにロシアで出た天使も写ってたろ」




625 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:14:43.61SFTFFmxUo (16/20)



「あ・・・・・・、うん。 そうだね」

「何の話?」

「いやあ・・・・・・説明すると長くなるんだけどさ、とにかくこの第一九学区の件は一方通行が関わってると思ってた。
 でもあいつ今ロシアにいるんだよな・・・・・・それが嘘ならまだ考えられるけど、本当なら一方通行達はこの件に
 関わってない。 あいつは『天使同盟』じゃないって事になるんだ。 あー・・・・・・でも電話があったのは
 朝だからな。 ロシアから日本って最速でどれくらい掛かるモンなんだろ?」


驚くべきというか当然というべきか、浜面仕上は一方通行が『天使同盟』の一人だという答えに"辿り着きかけていた"。
しかし彼はその推理を自ら否定する。一方通行は未だにロシアにいるのならこの第一九学区の事件は引き起こせない、と。
一方通行達が関わっていたらどうなのかと問われたら浜面も答えようがないだろうが、彼はあと少しで『天使同盟』の
全貌を知りうる存在となるところだった。

普段は頭が悪そうに見えるこのチンピラも、思わぬところで頭が働いているのだ。


「ワケの分からねえ話はいいからさ。 さっさと第一九学区に向かってよ」




626 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:16:04.70SFTFFmxUo (17/20)



「はいはい。 つかこの遊園地抜けて少し走ったらもう到着するぞ。
 "戦闘準備"は出来てんのか?」

「大丈夫」


滝壺の言葉を最後に、車内にしばしの沈黙が訪れた。
戦闘準備。第一九学区内では今、とても穏やかでない事が起きていると三人は理解していた。


「よっしゃ。 じゃあ突入するぞ!!」


浜面は勢い良く軽自動車を真っ直ぐに走らせる。第一九学区まで残り数メートルといった距離。


そして、




ガシャァァンッッ!!!!、という交通事故が起きたような衝撃音と共に、彼らの乗る軽自動車が急停止した。






627 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:17:41.53SFTFFmxUo (18/20)



「が、はぁ・・・・・・!!?」


浜面はハンドルから飛び出てきたエアバッグに顔を埋めながら呻き声を上げた。
突然全身を襲った衝撃に悶えながらも顔を上げ、直ぐ様隣にいる滝壺に視線を向ける。


「大丈夫か!?」

「う・・・・・・、うん。 なん、とか・・・・・・」

「はーまづらぁ・・・・・・私の心配もしろよコラ」


どうやら滝壺も麦野も大怪我は負っていないようだ。浜面は安堵の息を吐く。
しかしなぜ急に車は急停止したのか?衝撃音からして何かに真正面からぶつかってしまったようだが・・・・・・。

三人はぐしゃぐしゃになった軽自動車から何とか抜け出し、外へ出る。
彼らの目に映った光景は、空爆でも受けたかのような惨状の第一九学区と、


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なん、だこれ? ・・・・・・"壁"・・・・・・?」


あらゆる物から第一九学区への侵入を妨げるようにそびえ立つ、オーロラのように輝く半透明の光のカーテンだった。




628 ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:26:31.76SFTFFmxUo (19/20)



今回はここまでです。
一方通行の必死の叫びも虚しく、ミーシャとの戦闘に突入してしまいました。
最終章でミーシャと再び戦うという展開は最初から決めていました。
こうすることでアレイスターと『天使同盟』の戦力差が均一になると思ったので。

・・・・・・実際はアレイスター一人でもべらぼうに強かったですけど。

そして唐突に登場した浜面仕上と愉快な仲間たち。
麦野沈利はこのSS二度目の登場ですが、果たして皆様は最初に登場した時の話を覚えていらっしゃるでしょうか・・・・・・ww

彼らのように、学園都市から地下シェルターに避難していない大馬鹿者はまだ何人かいます。
それら全てが第一九学区に向かっているわけではありませんが、アイテムの連中は門前払いを喰らいましたね。
例のツンツン頭はどうするつもりでしょうか。


次回更新は三日以内。


それでは、ありがとうございました!




629次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI2011/05/09(月) 22:27:12.91SFTFFmxUo (20/20)




                          【次回予告】



『・・・・・・私みたいな化物が、人を好きになっちゃいけないっていうんですか・・・・・・』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・風斬氷華




『幻想は人間とは相容れない。 立場を弁えたまえ、木偶人形』
―――――――――――学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー






630VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県)2011/05/09(月) 22:31:53.63x+Eml8vVo (1/1)

きてる?


631VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/09(月) 22:35:51.17Ed6LPWr90 (1/1)

乙! 門前払いってことはアイテムはもう出ないの?


632VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/09(月) 22:38:17.46TPF3J+Mf0 (1/1)

超乙です!
今日はいろんな良スレの投下があって嬉しいww

それにしても次回予告の風斬のセリフ……まさかフラグか!?
そしてアレイスターこの野郎……
一方さんじゃなくても、神浄さんでも馬面でもいい。早くアイツをぶん殴ってやってくれ!


633VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/05/09(月) 22:46:12.84H3hHyQVoo (1/1)

乙!

避難しない大馬鹿者は厄介ごとに首を突っ込むタイプの人(達)ですね……
むぎのんは偽装パスポートのとき以来の出演だ

次回も期待してる


634VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/05/09(月) 22:46:29.80kipz+/fAO (1/1)

乙です!!
鼠の正体が気になるぜ…。


635VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/05/09(月) 22:48:27.75MWv8O2tU0 (1/1)

とどのつまり、乙です
さあて、ここからどうハッピーエンドに持っていくかが作者の腕の見せ所だ


636VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 23:08:53.15oxDaxWh6o (1/1)

熱い熱い熱いぜ! このビックウェーブに乗り遅れるんじゃねえぞ野郎ども!
続きが楽しみすぎる。乙です!


637VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/09(月) 23:11:14.91KnWwpOAio (1/1)



一方さんは能力全開でもミーシャに全然及ばない感じだったが大丈夫かいな

第二位がぼこぼこにされるような戦場に第三位以下が来てもな……
いくら序列は戦闘能力の高低ではないとはいえ


638VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)2011/05/09(月) 23:46:23.53lM26VP/20 (2/2)

>『・・・・・・私みたいな化物が、人を好きになっちゃいけないっていうんですか・・・・・・』
あかん……あかんでぇ氷華たん…………
それは死亡フラグにいたる第一歩やでぇ……


639VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 23:52:58.76mlwOwwMfo (1/1)

シリアス展開だからこそ、インド人を右に左折がツボに入ってしまった…


640VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 00:14:31.84pujIKm2IO (1/1)

アレイスター側にミーシャを入れて戦力の均衡が取れるということはやっぱエイワスやべぇんだな


641VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/10(火) 00:21:38.96PhIvJifB0 (1/1)

鼠って浜面達みたいなシェルターに逃げない大馬鹿ものたちってて事でOK?


642VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県)2011/05/10(火) 01:40:01.88TygeCBT9o (1/1)

エイワス以外の天使同盟全員<アレイスター
エイワス以外の登場人物全員(アレイスター含む)<エイワス
とかじゃない?


643VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/10(火) 02:06:19.37hBQceW2B0 (1/1)

戦力を削ってるって言ってたからネズミは必ずしも学園都市の人間じゃないかもな
ホラ、あの金髪ロリババァも不穏な動きをしてたし、第一能力を使っての戦闘となるとダークマター仮面にそう勝てないのでは


644VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)2011/05/10(火) 05:07:34.85DuWlaeJBo (1/1)

インド人を右にするのはカウンターだから左折で間違ってないぜ!


645 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:16:40.27C1VtU0hHo (1/26)

>>644
混乱してましたぜ、すまぬです

そんなわけで今回も投下です。
前回は情緒不安定なミーシャを止めるべく立ち向かう一方通行。
そんで門前払いを喰らってもうたアイテムの皆さんをお送りしました。

では、行きます!


>>631
あともう一回くらいは出番あったかな・・・・・・と思います


646 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:17:41.39C1VtU0hHo (2/26)



――――――――――――――――――――――


何かを守るためなら、誰かを守るためなら、人は強くなれると知っていた。


「ん?」


上条当麻という少年は、誰かを守るためにその右手を握り締め、
どう考えても太刀打ち出来そうもない苦難に、何度も立ち向かっていった。

その結果、彼は幾度と無く人を救い続けていた。


「第一九学区全周囲に遮断術式の展開・・・・・・いや、これは『魔術』ではないな。
 エイワスの仕業か。 まったく・・・・・・面倒なことをしてくれる」


一方通行と呼ばれる少年も、一人の少女を守り続けてきた。
その少女のためなら例え自身の命が脅かされる状況でも、彼はがむしゃらに、不器用に走り続けた。

そして一方通行には今、守らなければならない人が大勢いる。




647 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:18:35.34C1VtU0hHo (3/26)



だから彼女、風斬氷華も大切な人を守るために戦う決意をした。
ミーシャ=クロイツェフ。水を司る大天使を守るために、一方通行という、彼女に居場所を提供してくれた
少年を守るために。それだけじゃない、この学園都市にいる人間を、全ての大切な人を守るために、
風斬氷華は苦難に立ち向かった。


そうすることで、人は強くなれる。そんな例を何度も見てきた風斬だからこその決断だった。
何かを守るためなら、人は誰だって主人公になれる。


そのはずなのに、


「これでこの第一九学区に侵入する術は上空から降りてくるという手段しか無くなったわけか。
 エイワスめ、『神浄』の成就を妨害するつもりだな。 ・・・・・・さて、それで。 君はどうするかね?」


そのはずなのに、


「ヒューズ=カザキリ」




648 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:19:13.72C1VtU0hHo (4/26)





なんで、自分は地面に倒れ伏せている?




「・・・・・・・・・・・・あ、・・・・・・ぅぐ・・・・・・」


圧倒的だった。あまりにも、理不尽なまでに、アレイスター=クロウリーという人間は強大無比だった。
魔術なのか能力なのかも分からない。仕組みも原理も法則も分からない。意味不明、理科不能の攻撃によって
風斬は為す術も無く沈められてしまった。

AIM拡散力場によって構成されている風斬氷華の体は、至る所に亀裂が入り、穴があき、陶器のように割れていた。
風斬は目の前に落ちているひび割れたメガネを緩慢な動きで手に取ると、手を震わせながらそれをかける。




649 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:20:06.66C1VtU0hHo (5/26)



「ふむ、まだ動けるのか。 まさか虚数学区が学園都市全体に展開しているのか?
 虚数学区を動かした覚えはないのだが・・・・・・ふふ、これもエイワスの仕業かな?
 それとも、君の『心』とやらが抱く『想い』から力が湧いているのか」


アレイスター=クロウリーが立っている場所には、綺麗な半球状のクレーターが出来ていた。
以前に彼の行使した魔術で一方通行、垣根帝督、そしてミーシャ=クロイツェフを散り散りに吹き飛ばした時に
発生したクレーターだ。


つまりそれから、風斬氷華との戦闘が始まって以来、"アレイスターは一歩もその位置から動いていないのだ"。


「見たまえ、ヒューズ=カザキリ」


周囲一帯を撫でるように、アレイスターは片腕をゆっくりと動かす。




650 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:20:48.78C1VtU0hHo (6/26)



「小癪だとは思わんか? エイワスの仕業だよ。 第一九学区周域の『境界線』を操作しているんだ。
 これでこの第一九学区と外界は完全に遮断された。 見た目はただ輝く黄金のカーテンが
 敷かれているだけのように見えるが、これで外部から第一九学区への干渉は出来なくなってしまった。
 『回収部隊(アンチツヴァイ)』を予めここに配備しておいて良かったよ」


風斬はアレイスターの言葉など聞いていなかった。荒い呼吸を繰り返しながら、
ボロボロになった手で地面を押さえつけ、よろよろと立ち上がる。


「ただ不思議なことに、エイワスはこのカーテンをドーム状に展開していないんだ。
 私はそこがどうも引っかかる。 エイワスならこの第一九学区という空間そのものを
 異世界に仕立て上げ、この世から隔離してしまうくらいの芸当は出来るはずなのに。
 この私の制御や、ホール=パール=クラアトの召使としての立場から一時的に離れたことで
 エイワスは自由の身であるはずだ。 それくらいの事が出来なくてはおかしい。
 なのになぜ境界を不完全なまま切り離し、放置する・・・・・・?」


風斬に尋ねているとは思えなかった。実際、そんな事を聞いても風斬は一割も内容が理解出来ていない。
そしてアレイスターも、風斬の方を向いていなかった。興味も無いものには目を向ける価値もないとでも言いたげに。




651 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:22:30.08C1VtU0hHo (7/26)



風斬は乱れた呼吸を強引に整え、そして右手を何かを握るような形に作る。
彼女の右手の内部から強烈な光が発せられると共に、そこに彼女の背中から生えている紫電の翼と
同じ材質で構成された雷光の剣が出現した。

ヒューズ=カザキリ。風斬氷華に追加モジュールを上書きする事で出現する人工天使。
だが以前から彼女の意志だけでヒューズ化する事が可能な状態にある。

その瞳と頭上に浮かぶ天使の輪は虹色に輝き、その長い髪は現在、美しい金色に染め上げられている。
人工天使とはいってもその姿だけを見れば、誰もが天使であると頷くであろう彼女も、
今はアレイスターの手によって目を覆いたくなるようなボロボロの姿に成り果ててしまっていた。


それでも剣を握り立ち上がる風斬に対し、アレイスターは呆れ果てたように深い溜息をついた。


「・・・・・・・・・・・・まだ私に立ち向かうか、"人形"」

「・・・・・・わ、私・・・・・・は・・・・・・、・・・・・・人形じゃない・・・・・・」




652 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:23:24.74C1VtU0hHo (8/26)



声を出すのも辛そうで、しかし風斬は続ける。


「私は・・・・・・化物かも知れない。 人間じゃない事は・・・・・・とっくに理解しています。
 でも・・・・・・それでも・・・・・・そんな私を受け入れてくれる人達がいるんです」

「ふふ。 上条当麻と禁書目録、そして一方通行か?」

「その三人だけじゃありません・・・・・・、他にも沢山、私の事を人間のように扱ってくれる
 人達に出会えました。 世界はこんなにも広いんだって・・・・・・知ったんです」

「人間のような口を聞く。 愉快だな」


アレイスターはようやく風斬のいる方へ振り返り、そして嘲笑う。


「それで、その人間たちの"虚言"に励まされ、それを糧にして私に立ち向かうと
 言うのか。 人形」




653 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:24:16.24C1VtU0hHo (9/26)



「私は人形じゃない・・・・・・!!! それに、皆がかけてくれた私への言葉は嘘なんかじゃない!!
 今の発言、取り消してください・・・・・・!!」


虹色の瞳に涙を浮かべながら風斬は叫んだ。化物であっても人形じゃない、
そしてこれまでの旅で出会ってきた"友達"全てを侮蔑するようなアレイスターの言葉に激怒する。

しかしアレイスターの表情から挑発するよな薄い笑みが消えることはなかった。


「取り消す? 事実を言ったまでなのにか? おかしな事を言う」

「あなたが皆の・・・・・・私の友達の何を知ってるって言うんですか!!」

「ヒューズ=カザキリ。 君は人形だ」




654 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:24:52.78C1VtU0hHo (10/26)



あくまで風斬氷華は人形だと言い張るアレイスターに、風斬は歯噛みする。


「確かに君はこれまでの、『星の欠片』を巡る旅で数々の人間と出会い、
 触れ合い、そして親睦を深めていったのだろう。 そこは否定しない」


アレイスターはその手に持つ銀色の杖、『衝撃の杖(ブラスティングロッド)』を
指でツツー・・・・・・と撫でながら続ける。


「だが考えてもみたまえ。 果たしてその旅で出会った"友達"の言葉に
 嘘偽りは一切無いと断言できるのか? それこそ、君はその人間たちの事を
 全て理解しているわけではないだろう? 気遣い、同情、もしくは拒否感から
 生まれた、ただの虚言である可能性を否定することなど出来はしないんだ」


風斬は下唇を噛みながらアレイスターの顔を睨みつける。




655 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:25:37.29C1VtU0hHo (11/26)



「・・・・・・そんなこと・・・・・・!!」

「化物とは所詮、そういう物なのだよ。 この世界の常識と異常は決して相容れない。
 表層では仲睦まじく交流しているように見えても、深層ではそうではない。
 そうでなくとも君はこの学園都市で私が作った人形だ。 人形は人間から一方的に
 愛される事はあっても、人形の方から人間を愛するという事は決してあり得ない」

「な、何が言いたいんですか・・・・・・・・・・・・!!」

「君が人間に送る笑顔など、相手には決して届きはしない。
 それが嫌悪であっても"好意"であっても、な。 君の好意は主に一方通行に
 注がれているようだが・・・・・・・・・・・・、」


アレイスターは嘲笑しながら言った。




「君の想いが実ることは無いよ。 ヒューズ=カザキリ」




風斬氷華は何も言い返す事が出来なかった。




656 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:26:52.83C1VtU0hHo (12/26)




化物だからいくら愛想を振りまいても、それが相手の心に響くことはない。
例えそうではなくても、人形だから自分の気持ちが相手に届くことはない。
人形は人形らしく、ただ一方的に相手に愛され、飽きたら捨てられる。


「それが君という存在だ」


悔しかった。

これまで過ごして自分の思い出を、あたかも知ったように否定してくるアレイスターの言葉が悔しかった。

そして何より、何も言い返せないでいる自分が一番悔しくて、惨めだった。


「まぁ・・・・・・これはさっさと君に目を覚まして欲しいという私の願いでもあるのだがね。
 君はこの学園都市に、そして私の『プラン』にとっても重要な存在だ。
 いつまでも"夢"を見続けて幻想に浸かったままでいられては私としても困る」




657 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:27:30.16C1VtU0hHo (13/26)



自覚はあった。もしかしたらいくら自分が一生懸命に愛想良くしていても、
相手は何にも感じてくれはしないのではないかと。

例え一人の人間を愛したとして、その人間に一生懸命気持ちを送っても、
振り向いてはもらえないんじゃないかと。

自分が化物である事はとうの昔に理解している。そしてその現実もとっくに受け止めて、背負っている。

けれど、それでもわずかに、風斬の心にはその決心が揺らいでしまう『隙間』があった。
アレイスター=クロウリーはそこを突いたのだ。


いつまでも純情な少女が見るような夢から覚めて、この学園都市に"人形"として留まってもらうために。


あまりの悔しさに、風斬の瞳からはいつの間にか涙が流れていた。
あれだけ散々化物である自分を受け入れてくれた人達の支えがありながら、
こうしてアレイスターに言い包められてしまっている自分の現状が情けなさ過ぎて。




658 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:28:25.43C1VtU0hHo (14/26)



「・・・・・・私みたいな化物が、人を好きになっちゃいけないっていうんですか・・・・・・」

「『胡蝶の夢』に例えようか。 果たして人間と交流し人間に恋をする君が現実なのか、
 それともこの学園都市に人形として、化物として縫い付けられている君が現実なのか。
 どちらが夢で、どちらが現実なのか。 私は人間と交流し、人間に恋をする君が
 夢で、人形としての君が現実なのだと言っている。 そしてそれは真実だ」

「ど、どっちも現実です・・・・・・!! 私自身じゃないあなたに、私の何が分かると言うんですか!?」

「分かるさ」


出来の悪い機械人形にいちいち説明をしなければならないのか、とでも言いたげな
仕草を見せながらアレイスターは告げた。




「君は私が作った人形なのだから。 "この時代"では君はただの幻想でしかない。
 幻想は、人間とは相容れない。 立場を弁えたまえ、霞んだ木偶よ」






659 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:29:25.32C1VtU0hHo (15/26)



風斬氷華は膝から崩れ落ちた。虹色に輝いていた瞳からも光が消え、天使の輪も消失し、
背中から生える大小様々な雷光の翼も、学園都市の空に吸い込まれるように霧散していった。

結局、人形は持ち主には歯向かえないのか。いくら人形がああだこうだと喚いたところで、
その主が人形を縛り付けてしまえば全く動けなくなる。

それと同じことを、風斬はたった今アレイスターにしてやられた。
死刑宣告を喰らったも同然だった。今はただこうして存在出来てはいるものの、
アレイスターを討たない限り風斬はこの戦いが終わったら元の持ち主の下へ帰ることになるだろう。

そうなればもう、皆には会えない。旅で出会った数多くの友達とも、上条当麻ともインデックスとも、
エイワスとも垣根帝督とも、ミーシャ=クロイツェフとも。

一方通行とも、二度と会えない場所に帰されることになる。


「悲しむな、ヒューズ=カザキリ。 その悲しみすら、人形である君には必要のない物だったんだ。
 これは私の落ち度だな。 申し訳ないと思っている」


言いながら、アレイスターは『衝撃の杖』を風斬の方へ突きつける。
それを受けても風斬はひび割れた地面にしゃがみ込んだまま、ピクリとも動くことはなかった。

ただその瞳から宝石のように流れる涙と、小さく鳴り続ける嗚咽だけが、壊れた機械のように繰り返されるだけだった。




660 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:31:11.61C1VtU0hHo (16/26)



『衝撃の杖』の中心部が激しく発光する。そこに込められた魔力は、
魔術師が見たら誰もが絶句するような凄まじく洗練された大量の魔力だった。


「今しばらく、虚数学区に帰っていたまえ。 そしてそこで自分自身という存在が
 どういうものなのか、永い時間を掛けて見つめ直すといい」

「あ、・・・・・・イヤ・・・・・・。 イヤだ・・・・・・・・・・・・」


ふるふると首を振るも、風斬はもはや抵抗を見せなかった。
星のように輝く『衝撃の杖』の先端を、ただただ見つめることしか出来なかった。


「せめてもの慈悲だ、」


口ではそう言うが、アレイスターの表情に慈悲など欠片も見受けられなかった。
彼の顔にはフラットながらも、その中に愚かで惨めで、出来の悪いガラクタ人形を見下すような表情しか張り付いていなかった。




661 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:32:00.74C1VtU0hHo (17/26)



そして、




「せめてこの一撃で、今までの想い出が全て消え去るよう祈っている」

「"テメェが消えろ"」




ゴシャァァァァァァッッ!!!!!!!!!、という耳を劈くような炸裂音と共に、
風斬の視界は真っ白に染め上げられた。


「え・・・・・・・・・・・・?」




662 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:32:54.78C1VtU0hHo (18/26)



彼女の視界を覆っていた白はすぐに風と共に消え去っていった。
次に風斬の目に映った光景は、ヒュンヒュンと風を切りながら飛んでいく『衝撃の杖』と、
何らかの防御術式でも発動したのか、全身を金色のバリアのようなものに包んでいるアレイスター。


そして風斬が背後を振り向くと、そこには以前どこかで見たことのある『水晶のような氷で出来た帆船』と、




「ハッアァーイ、アレイスター。 こうして直に会うのは初めてよねえ?
 あーいやいや、自己紹介は必要ないわよ。 そのクソみてえなツラ見たら
 一発でアンタだってわかっちゃったから♪」




"少し前にロシアで別れた時と同じ"、ブラウンのロングスカートに細身の白いダウンジャケット。
綺麗な亜麻色のショートヘアが風に靡き、その舌の先に付けられている鎖の先には帆船と同じ
水晶の十字架がぶら下がっている。




663 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:33:50.72C1VtU0hHo (19/26)



「賊が。 今更私に何の用だ?」

「そのスッカラカンの頭で考えてみろクソ魔術師。 私がここに来る理由なんて
 たかが知れてるでしょうが」

「ふ。 私の首でも取りに来たか」

「"友達"ってのを助けに来たんだよクソボケ」


『前方』のヴェント。ロシアで別れたはずの"友達"が、アレイスター=クロウリーに
『女王艦隊』による攻撃を仕掛けたのだ。


「ヴェント・・・・・・さん・・・・・?」

「よう"風斬"、三〇分ぶりくらい? 相変わらずメソメソしてやがんなぁアンタは」


ヴェントは第一九学区の道路に氷の帆船を現出させたまま、ツカツカと風斬の方へ歩み寄ってきた。
風斬は一瞬、幻ではないかと疑ったが、この威風堂々たる態度、化粧が無くなりより少女らしくなった顔立ち、
そして相変わらずの乱暴な言葉づかい。


間違いなく、ヴェントは学園都市に現れていた。




664 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:35:32.92C1VtU0hHo (20/26)



ヴェントは舌先からぶら下がっている鎖をジャラリと鳴らしながら苦笑する。


「ハッ、独立国同盟に居たヤツらには何も言わずにここまで来ちゃったわ。
 これ終わったら電話貸してくんない? あんなヤツらでも、一応世話にはなったしね」

「え、あ、はい。 ・・・・・・って、そんな事言ってる場合じゃないです!」


風斬はゴシゴシと涙を拭って慌てながら立ち上がった。
なぜ学園都市にヴェントが来ているのか。間違いなくロシアで別れたというのに。
風斬は未だに自分の目を疑いながらヴェントに問う。


「ど、どうしてヴェントさんがここにいるんですか・・・・・・?」

「あん? 魔術師が学園都市に来ちゃいけねえ決まりでもあんの?」

「そうじゃなくて・・・・・・ヴェントさんはロシアにいたはずじゃ・・・・・・!?
 どうやって学園都市に来たんですか?」

「アンタらのとこにいる金色の音速直行便に学園都市行きのチケットを発行してもらっただけ」




665 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:36:25.17C1VtU0hHo (21/26)



ヴェントの言葉の意味が分からなかったが、やがてそれはエイワスにここまで連れてきてもらったと
いう意味だと風斬は理解した。


「でもどうしてわざわざこんな危険な場所に・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・・・別に。 暇だったからね。 それにこんな状況だ、どうせアンタはまた
 びーびー泣いてるんだろうなと思ってからかいに来たのもあるかしら。 案の定だったわね。
 ・・・・・・それと、そこにいる世界最高のクズ野郎の顔を拝めるチャンスでもあるし」

「ふふ、ひどい言われようだな」


肩をすくめて大袈裟なリアクションをとるアレイスターの余裕綽々ぶりに舌打ちしながら、
ヴェントは周囲の様子を軽く見回す。


「・・・・・・白いのは?」

「あ、一方通行さんも垣根さんも天使さんも・・・・・・アレイスターの攻撃でどこかへ飛ばされてしまいました。
 恐らくみんなまだ第一九学区にいると思いますけど・・・・・・」




666 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:38:03.14C1VtU0hHo (22/26)



「ふうん。 ああ、そうだ。 エイワスからここに降ろしてもらってしばらく歩いてたら変な機械に
 襲撃されたんだけど、あれ何? なんか白い仮面着けた気持ち悪い人間もいたし。
 ま、適当にあしらいながら二〇匹くらいぶち殺してやったけどさあ」

「?」


キョトンとしてるところから見ると、風斬はヴェントを襲撃してきた謎の機械と仮面の兵士については
心当たりがないらしい。
そしてよく見ると、ヴェントの着ている服は既に所々が痛んでおり、手や脇腹にはじわりと血が滲んでいる。
その謎の勢力に襲撃された際に負った傷なのだろうか。


「だ、大丈夫ですか・・・・・・?」

「問題無いわよ。 ・・・・・・ていうかね」


ヴェントは厳しい目付きを風斬に送りながら言う。


「アンタが胸に抱いてる気持ちは、アレイスターなんかに
 簡単に論破されるほど安いモンだったの?」




667 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:38:49.54C1VtU0hHo (23/26)



「そ、それは・・・・・・」

「アンタが私に話した事全部、あんなヤツに否定されて終わるような事じゃないでしょ。
 白いのの事も、『天使同盟』も、アンタ自身も、何もかも」


ヴェントは風斬とアレイスターの会話を一部始終聞いていた。
まず風斬氷華を発見し、彼女が対峙している人間が何者なのかを判断するために
少しの間身を潜めていたのだ。


「こんな所で言い包められてヘコンでんじゃないわよ、風斬」

「・・・・・・・・・・・・。 ありがとう、ございます」


ついさっきも含め、ヴェントが初めて自分の名前を呼んでくれた。
そして彼女なりに身も心も崩れかけていた風斬を励ましてくれようとしている事が伝わり、
風斬の心に、瞳に、再び光が宿っていく。


「やれやれ・・・・・・ここまで大勢の『客』を招くつもりはなかったのだがな・・・・・・。
 エイワスは少し欲が過ぎるよ。 これでは会場が保たん」




668 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:39:49.31C1VtU0hHo (24/26)



そう言いながらアレイスターは手で虚空を掴むような動作を行った。
それだけで彼の手には、さっきヴェントの攻撃で吹き飛ばされたはずの『衝撃の杖』が握られていた。
同時に、アレイスターの周囲に粘つくような何かが渦のように蠢いているのを風斬は感じ取った。


「・・・・・・・・・・・・この私にあれだけの事を言いやがったんだ、アンタは。
 言うだけ言って、アンタがこの世からいなくなるなんて間抜けな結果になるだなんて
 私はごめんだからね」

「え、それじゃあ・・・・・・」

「『天使同盟』には入んないっつーの。 けど、」


ベキベキベキベキッッ!!!と、アスファルトの地面に次々と亀裂が走ったかと思った瞬間には、
既に風斬とヴェントの周りには五隻もの『女王艦隊』の一部が出現していた。
地面から飛び出した船体の衝撃と、その船体のあまりの大きさに、その辺のビルが何棟か崩落する。

ぎちぎち・・・・・・と複数の帆船の側面に取り付けられた氷の砲身全てが、アレイスターへと照準を定める。
だがやはり、アレイスターの不敵な笑みが変化する事は無かった。


「とりあえずコイツをぶっ殺す手伝いは、してあげてもいいかな」

「・・・・・・・・・・・・お願いします」


風斬は再びヒューズ化し、その全身を輝かせた。
自分はまだ、戦える。こんなところで挫折している暇など無い。
こうしている間にも、ミーシャ=クロイツェフ消失の時が刻一刻と迫っているのだから。


かつて、九月三〇日に対立した科学を憎む魔術師と科学の人工天使が、
互いに手を取り合い、最強の魔術師に挑む。




669 ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:44:04.52C1VtU0hHo (25/26)


Q. 今更ヴェントが参戦したところでアレイスターには・・・・・・

A. 彼女はアレイスターを倒しに来たのではなく、友人を助けに来ただけなので結果オーライです


というわけで、第一九学区をうろちょろしていたネズミその1、ヴェントが参戦しました。
アレイスター相手ではヴェントですら心許ないですが、私個人としては
ヴェントを学園都市に送っておきたかっただけなのでまぁいいかな・・・・・・と。

だからってヴェントを蔑ろに扱ったりはしませんよ。


次回更新は三日以内。


それでは、ありがとうございました!


学園都市をうろつくネズミは、ヴェントだけではないです


670次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI2011/05/11(水) 22:44:53.20C1VtU0hHo (26/26)




                          【次回予告】



『見せてやるよ。 テメェらが知らねえ、俺が得た新たな『法則』をなぁ』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・垣根帝督






671VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/11(水) 22:54:15.13i8vaNF8ro (1/1)

>>1乙!
熾天使ていとくんキター!


672VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/11(水) 22:58:23.91Ea4HxPiB0 (1/1)

ヤダ…ていとくん最近かっこいい。


673VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/11(水) 23:05:44.14B/TIV+N60 (1/1)

>>1乙
ていとくん本当にかっこいいけど大丈夫?期待しちゃうよ?



674VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/11(水) 23:06:43.961xQCdiHOP (1/1)


ヴェントの株が急上昇した


675VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)2011/05/11(水) 23:07:28.512bHpRkcAO (1/1)


ヴェント登場に心震えた


676VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/05/11(水) 23:14:15.18t0CZLVqm0 (1/1)

>>1乙!

ていとくんマジイケメン。マジメルヘン。
そして上条さんはいつ参戦するのか気になるぜ!


677VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/11(水) 23:21:04.99P9QyyT/W0 (1/1)


ていとくん……これは期待しちゃっていいんだよな?


678VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/11(水) 23:21:17.00j7lkSs+Bo (1/1)

幻想を守るためにどんな現実にだって立ち向かう人がリーダーだから大丈夫っすよ風斬さん!

帝督さん予告だけでも格好いい…次回も楽しみにしてます
乙!


679VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/11(水) 23:26:10.62lnFNrx/h0 (1/1)


ヴェントにグッチャグチャの塊にされたい


680VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/11(水) 23:33:03.78ulr01fga0 (1/1)

ていとくんが気になってしょうがない


681VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/11(水) 23:43:22.65Bjoqwq+I0 (1/1)


風斬の再起とか、ガブリエルVS一方通行とか、ヴェント参戦とか色々震えたがとりあえず

ていとくんマジ帝督!予告一行だけなのに全部持ってかれた!


682VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/12(木) 00:33:28.57ZiNERR9Co (1/1)

乙!


683VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)2011/05/12(木) 01:12:31.04JhtRMuSD0 (1/1)

これで上条さんが最後に全部おいしいとこ持ってく展開だったらやだなww


684VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/12(木) 03:39:14.33ik8BLDHLo (1/1)

上条さんはうっかりガブリエルに攻撃しちゃって
天使同盟からフルボッコだろw


685VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/12(木) 05:03:32.63YVSNBSRY0 (1/1)


風斬はともかく、正体不明の高位能力者と学園都市製のトンデモ兵器が交戦してたら上条さんはどっちに付くんだろうね
ロシアやアビニョンの件もあったし警備員は全員いい奴だと思い込んでるなんてことは無いだろうど、どう見てもていとくんってば暗部の子なんだもん


686VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 10:40:01.62REAAW2+T0 (1/1)

先が気になりすぎて体が持たない・・・
仕方ないな明日の4時限目は睡眠学習にするか


687VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/13(金) 08:16:33.44P0943Nnq0 (1/2)

>>685
あの上条さんがリンチに加わる姿を想像できん
というか、どう見ても向こうも一般人には見えんだろ


688VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/13(金) 11:28:56.77/qghPU2Z0 (1/1)

なーんかアレイスター、ヴェントちゃんちゅっちゅが横槍入れてくるタイミングを計ってたようにも見えるが…
考え過ぎだろうな、風斬を[ピーーー]んじゃなくて再インストールする為の一撃なんだろうし


689 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:32:07.96rjpFEEXxo (1/22)

ここでの垣根帝督の人気は異常。
彼もいいけど他のキャラもよろしくね!

と、いうわけで今回の投下は垣根帝督サイド。
『回収部隊』というファイブオーバーと『未元物質』の仮面兵士で構成された
総勢1500の勢力を相手に垣根は立ち向かえているのでしょうか?

それでは、御覧ください


690 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:32:56.85rjpFEEXxo (2/22)



――――――――――――――――――――――


対戦型格闘ゲームという娯楽をご存知だろうか?
現在、この世界にはありとあらゆる格闘ゲームが嗜まれているが、その中に『サバイバルモード』という
生き残り形式で対戦相手を倒して進んでいくというモードがある。

自身のキャラクターの体力は対戦相手を倒しても微量しか回復せず、それでいて終わりがない。
ゲームの種類によっては終わりがあるパターンもあるが、大抵は無数の対戦相手と戦闘を行わなければならない。
最初の方は順調に勝ち進んでいくも、対戦回数が二〇、三〇、六〇、果ては一〇〇以上にまで登り詰めると、
操作キャラクターでなくプレイヤーの精神が疲弊してくる。

体力も残り少ないまま、万全のコンディションである対戦相手を倒していかなければならない状況になっていき、
僅かなミスが命取りとなると、プレイヤーの精神も徐々に、そして確実に脆くなっていくものだ。

そして、最終的には対戦相手に敗北し、リザルトとなる。
プレイヤーにもよるが大体がそういうパターンで終わるのが格闘ゲームのサバイバルモードなのだ。


学園都市第二位の超能力者、垣根帝督はそのサバイバルモードを現実で体感していた。




691 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:33:49.42rjpFEEXxo (3/22)



「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・ぜぇっ・・・・・・、ちくしょうが・・・・・・!!!」


倒しても倒しても、殺しても殺しても、壊しても壊しても、巣から無尽蔵に沸き出る蟻のように、
垣根帝督の対戦相手は出現してくる。
相手は、第三位『超電磁砲(レールガン)』の威力を特化させた高性能駆動鎧ファイブオーバー。
そしてそれを操縦するは第二位『未元物質(ダークマター)』の仮面を装着した兵士。

ファイブオーバー五〇〇機。『未元物質』部隊一〇〇〇人。

『回収部隊(アンチツヴァイ)』と呼称される、垣根帝督専用の特殊部隊だった。


垣根は現在、半ば廃ビルと化した建物の中で息を潜めていた。
既に数十機、そして数十人もの『回収部隊』を殲滅している彼なのだが、さすがに体力が保たなくなってきていた。
そのためこうしてビルの中に隠れて体力を回復させるという安直ながらも効果的な行動をとっているのだが。


『回収部隊』相手にそんな行動は無意味だった。




692 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:35:07.34rjpFEEXxo (4/22)



鼓膜が爆発してしまいそうな爆撃音と共に、七階建てはあろうかという垣根帝督が潜んでいたビルが
一瞬にして粉塵と化してしまった。
垣根は『未元物質』を展開し、速やかに外へ飛翔する。
ビルを"霧散"させてしまった攻撃を放ったのは、ファイブオーバーのガトリングレールガンだった。

上空へと飛び出した垣根はすかさず空中にピタリと停滞していたファイブオーバーに向けて
背から生える六枚の翼から激しい烈風を巻き起こす。
その烈風がファイブオーバーに直撃した時は、既にファイブオーバーは粉々になって地面へ瓦礫の雨を降らせていた。

しかし『回収部隊』の恐ろしいところは、その破壊されたファイブオーバーの中から今度は『未元物質』の兵士が
飛び出して戦闘を続行させる部分にあった。
垣根帝督と"まったく同じ応用性"を秘める、最悪の白金の仮面。

ファイブオーバーの中から『未元物質』が飛び出る。タチの悪いマトリョーシカだ、垣根は忌々しげに呟く。


視線を下界へ向ける。第一九学区の一角は既に凄惨たる状況になっていた。
どこを見ても目に映るのは、空爆でも受けたような街並み、至る所から立ち込める黒煙、炎。
そして垣根帝督が殲滅したファイブオーバーの残骸、無残な姿で転がる『未元物質』部隊の死体。

戦争の縮図だった。垣根帝督の『未元物質』は、街を一瞬で地獄絵図に変えてしまう力が備わっている。
だがそんな能力を秘めている垣根帝督は今、精神的に追い詰められつつあった。




693 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:36:02.87rjpFEEXxo (5/22)



(今何匹ほど殺ったんだ俺は・・・・・・。 殺っても殺ってもゴキブリみてえに沸いてきやがって・・・・・・。
 一五〇〇だと・・・・・・ふざけてんじゃねえぞクソったれが・・・・・・!!!)


息つく間などありはしない。気がつけば空中にいる垣根帝督の三六〇度の周囲に、
ファイブオーバーと『未元物質』部隊が大勢で彼を取り囲んでいた。


「ちくしょ、―――――――」


毒づく暇もなかった。即座に全方位からガトリングレールガンと未知なる法則を含んだ烈風が
垣根帝督をバラバラにするために襲いかかってくる。
彼は背中の翼で自身の身を包みながら包囲網を突破していく。『未元物質』の翼は敵のあらゆる攻撃を
防いでくれる鉄壁の盾だ。

しかし、


「ご、が・・・・・・ッ!!!」


無数の攻撃の内の何発かが、垣根帝督の肉体に確かなダメージを与えていた。
口から鮮血を零しながら地面すれすれを滑空して後退していく垣根。




694 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:37:05.11rjpFEEXxo (6/22)



(ファイブオーバーはそれ単体相手なら問題にならねえ・・・・・・。 だがあのクソ仮面野郎の
 攻撃はまずい。 俺の『未元物質』の応用性を駆使して"相殺"してきやがる・・・・・・!!)


『未元物質』との戦闘経験が無い垣根には『未元物質』と『未元物質』がぶつかり合った時、
どのような現象が起こるか予想がつかなかった。

結果は、相殺。烈風と烈風なら霧散し、翼と翼が接触すれば双方の翼がもぎ取られる。
『「未元物質」を破壊する法則』を組み込んでも結果は同じ、相手も同じ法則を
組み込んで攻撃してくるのだから意味が無い。

相殺したらその隙を突いて『未元物質』の兵士に追撃出来そうなものだが、
それをさせないのが複数のファイブオーバーだった。

ガトリングレールガンは絶対に阻止しなければならない。そのため垣根帝督は
全身を常に不可視の『対「超電磁砲」用遮断演算パターン』の『未元物質』を展開していた。
これは翼によるものではない。『未元物質』は何もその翼からしか効果を引き出せないわけではない。




695 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:38:23.96rjpFEEXxo (7/22)



ならば垣根はファイブオーバーに対しては完全無敵である、というわけではなかった。
ガトリングレールガンの威力はデタラメだ、わずかでも集中力を緩ませ、演算が狂おうものなら
全身に展開させている対『超電磁砲』の防御が崩れ、垣根は肉片と化してしまう。


ならばしっかりとガトリングレールガンを警戒していれば問題ない、ともいかない。
『未元物質』部隊は垣根の『未元物質』を打ち消してしまう仮面を装備している。
そちらの方にも気を配らなければ今度は『未元物質』による攻撃で垣根は死に至る事になる。

では仮面の攻撃に備えようと思うと、四方八方からガトリングレールガン。
それを防ごうとすると『未元物質』の攻撃。

それなら『未元物質』とガトリングレールガンの両者の攻撃を防ぐ『未元物質』を展開すればいい
と思うだろうが、その内の『「未元物質」の攻撃を防ぐ法則』がどうやっても演算できないのだ。

相手も垣根と同じ『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を持ち合わせた仮面を装着している。
その演算パターンを駆使して、仮面の兵士達は垣根の『未元物質』を容易く破壊してしまう。
ガトリングレールガンはともかく、『未元物質』部隊だけがどうしても隘路になる状況だった。




696 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:39:40.15rjpFEEXxo (8/22)



それでも垣根帝督は第二位を誇る超能力者だ。そんな状況に追い込まれても
対処できる戦略はいくらでも考え出す事は出来る。

ただし、それは相手の数が少数の場合だ。上記で挙げた『回収部隊』の攻撃パターンは、
それを圧倒的な数で実行してくるから驚異なのだ。


と、そんな事を考えている間にも滑空する垣根の眼前にある地面から
ドドドドドドッッ!!!、と海中から飛び出す魚のようにファイブオーバーが複数出現してきた。
そしてそのままファイブオーバーは銃口を垣根に向けて、ガトリングレールガンを一斉に発射する。

当然その攻撃は垣根の『未元物質』の前では無意味なのだが、今度は上から
複数の『未元物質』部隊が怪しく輝く殺人光線を射出してきた。
上下からの攻撃なら前方へ回避すればいいと前に視線を向けると、そこには既にファイブオーバーと『未元物質』部隊が
地獄へ誘うように立ちはだかっている。後方も、左右も全く同じだ。完全に包囲されてしまっている。


(コイ、ツらぁ・・・・・・!! 本当に俺を『回収』する気あんのか・・・・・・!?
 インターバルの一つもとらねえで全力で俺を粉々にしようとしてやがる・・・・・・!!)


ここで停まったらお終いだ。停まる事は死を意味する。
垣根は驚愕すべき判断速度で全方位の状況を把握した後、右のファイブオーバーばかりがいる方に向かって
突貫した。ファイブオーバーは破壊され、その中から『未元物質』の兵士が飛び出てくるが、
そこから攻撃に転じる際に若干のタイムラグがあることを垣根は理解していた。




697 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:40:47.80rjpFEEXxo (9/22)



垣根はファイブオーバーを破壊した突進の勢いを緩める事なく、ビルというビルを
積み木のように崩しながら突き進んで包囲網を突破する。


そのまま進んでいくと彼の視界に小さな建物が見えてきた。
教員用の事務所かなんかだろうか、二階建ての建物の窓ガラスを突き破って
垣根は滑りこむようにその事務所内へと突入した。


(・・・・・・・・・・・・ッく。 最初のうちは仮面野郎の四肢に攻撃することで
 始末出来てはいたが・・・・・・あいつらすぐに対応しやがった。 さっきから
 全然数減らせてねえぞ・・・・・・・・・・・・)


もはや自身の『未元物質』だけでは手詰まりであるという現実を受け入れざるを得なかった。
その事が非常に腹ただしく、悔しく、そして情けないと思った。

垣根は上着として羽織っているジャケットの内ポケットに手を入れながら呟いた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう、出し惜しみは出来ねえな」


ズギャァァッ!!!!!、という轟音と共に垣根のいた事務所は手品のように消失してしまった。
もちろん、『回収部隊』の仕業である。

しかしこれも当然だが、既に垣根は事務所から脱出していた。




698 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:42:28.13rjpFEEXxo (10/22)



『未元物質』部隊は姿を隠した垣根を捜索するため、白と金の仮面に『反響定位の法則』を組み込む。
垣根帝督がロシアでワシリーサと訓練をした際に行った演算だ。

そしてファイブオーバーのコックピット内にいる仮面の兵士も同じようにエコーロケーションで
垣根の位置を捜索していた。ファイブオーバーに備わっている機能で捜すことも不可能ではないが、
『未元物質』で捜し出した方が遙かに手早く、的確だからだ。


だが、捜索するまでもなく、その対象の声が『回収部隊』の面々に届いた。





「見せてやるよ。 テメェらが知らねえ、俺が得た新たな『法則』をなぁ」







699 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:43:24.30rjpFEEXxo (11/22)



『回収部隊』は聞こえてきた言葉の意味が理解できなかった。
そして理解する必要もない、彼らの目的は『垣根帝督の抹殺、及び回収』、ただそれだけなのだから。

だがそれでも、"警戒くらいはしておくべきだった"。


「ぐ、ぎゃああああああああああああああああああ!!!?」

「!?」


垣根ではない、誰か男の悲鳴が上がってきた。
そちらへ視線を向けると、『未元物質』の仮面を装備した兵士の一人が地面をゴロゴロと転がっている光景が映った。


その仮面の兵士の全身は激しく燃え上がっており、それは顔の部分にある『未元物質』の仮面も例外ではなかった。


『な、馬鹿な・・・・・・!! なぜ「未元物質」に燃焼現象が起きる!!?
 あの物質に既存の法則など通じないはずだ!!』




700 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:45:09.79rjpFEEXxo (12/22)



複数のファイブオーバーの内の一機から、そんな言葉が聞こえてきた。
他の『回収部隊』も何が起きたのか全く分からず、ただ呆然と燃えていく自軍の兵士を見つめるしかなかった。


「既存の法則じゃなきゃいいんだよ。 お勉強が足りてねえなテメェら。
 ったく、・・・・・・ロシアじゃ散々な目に遭ったが、その甲斐があったってもんだ」


崩れた廃ビルの角から聞こえた声の方に目を向けると、そこには垣根帝督がいた。
既に全身あらゆる所に痛々しい傷が窺え、あと数分攻め続ければ討てるくらいには衰弱しているようにも見える。

だが、この垣根帝督は何かが違っていた。


「さて・・・・・・、準備は整ったか」


垣根は懐から何かを取り出した。それは奇妙な文字が連々と書かれた薄い札。
『回収部隊』はその札を見ても尚、それが何なのかが分からなかった。
当たり前だろう、『回収部隊』の構成員は全員が学園都市に住む暗部の人間だ。
科学による能力の知識はあっても、垣根が手に持つ謎の札の知識はない。




701 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:46:42.83rjpFEEXxo (13/22)





だから、その『ルーン』と呼ばれる札から瞬時に『炎剣』が現出し、
広範囲に渡って大爆発が引き起こされても、『回収部隊』はその正体を掴むことができなかった。




周囲にいたファイブオーバーや『未元物質』部隊が無様に吹き飛び、転がり、炎上していく。
悲痛な叫びを上げながら燃え続ける炎を消そうと、地面をバタバタと転がる何人もの兵士の姿が
垣根帝督の視界に映っていた。


そして彼の頭からドロリと、血糊が零れていく。




702 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:47:12.78rjpFEEXxo (14/22)



魔術。

垣根帝督が『天使同盟(アライアンス)』として旅をし、得た力は、炎の魔術だった。


(本来、設置型のルーンは入念な準備が必要だとエイワスから貰った本に書いてあったが・・・・・・。
 実際使ってみるとその通りだな。 逃げ回りながらの設置だったせいか、炎剣の威力も大きさも
 とても褒められたもんじゃねえ)


垣根帝督はただ闇雲に『回収部隊』から逃げ回っていたわけではなかった。

ビルとビルの隙間を縫って飛行しているときも、さり気無くビルの壁にルーンをばら撒き設置したり、
わずかでも相手の攻撃が止んでいたら地面やゴミ箱の蓋の裏、被害の少ない建物の天上など、
様々な場所にルーンを設置していたのだ。




703 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:48:59.56rjpFEEXxo (15/22)



事態の重大さを理解した『回収部隊』は即座に陣形を立て直し、
再びを垣根を中心に取り囲むような配置につく。
あの燃焼現象や広範囲に及ぶ大爆発、そして第二位が手に持つ不可思議な炎剣。

どれもこれも法則の掴めないものばかりだったが、要はそんなものに付き合わなければいい。
『未元物質』すら燃やしてしまうような炎なら、それを回避すればいい。

冷静になってみれば、実に簡単な攻略法だった。
『回収部隊』は魔術という、学園都市には存在しない法則を目の当たりにしても平静を取り戻していた。
既に彼らは合図一つで垣根を抹殺出来る体勢を整えていた。


そんな『回収部隊』の考えを一蹴するように、垣根は口を開く。




704 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:50:06.07rjpFEEXxo (16/22)





「灰は灰に―――――」
(Ash To Ash)




目標が何かをブツブツと呟き始めたのを確認すると、
『回収部隊』の一人は訝し気に思いながらもそれを無視し、攻撃再開の合図を送る。




「――――塵は塵に――――」
    (Dust To Dust)




ガトリングレールガンと『未元物質』の烈風、怪光線が垣根の生命活動を停止させるために
容赦なく牙を剥く。




705 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:50:48.06rjpFEEXxo (17/22)



その時、ファイブオーバーに乗っていた『未元物質』の兵士の一人は漠然とこんな感想を抱いた。
頭や口、腕や腹から出血を起こしながら呟いている垣根の言葉はまるで、




「――――吸血殺しの紅十字!!」
   (SqueamishBloody Rood)




"呪文"、のようだと。


そんな感想を抱いたまま、その仮面の兵士はファイブオーバーと共に塵と化し、この世から消滅した。
垣根帝督が"もう片方の手で振るった"、青白い炎剣によって。


「さて・・・・・・散々攻められまくった鬱憤、晴らさせてもらうぞ。
 こっからは俺のターンだ」




706 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:51:55.99rjpFEEXxo (18/22)



『吸血殺しの紅十字』。
垣根帝督の両手には今、二本の炎剣が握られている。
右手には赤き業炎の剣、左手には青き聖火の剣。

垣根帝督が『天使同盟』と合流して得た知識、魔術に興味を持ったところから始まり、
そして"とある魔術師"との出会いが、図らずも彼を魔術サイドの更に奥深くへと導くことになった。

その結果が、この炎の術式。


全身に巡る神経がビキビキと悲鳴を上げ、その痛みで体が震え上がるが垣根は気にも留めない。
背中から『未元物質』の翼を現出させるとそのまま『回収部隊』の群れに突っ込んでいく。

ファイブオーバーや『未元物質』の兵士達は、突如として垣根が行使した謎の『法則』にどう対応すべきか
思考する。構う必要はないと言っても、こうして実際に未知の法則を振るわれるとやはり無視などという
選択肢は取れない、否、垣根帝督が取らせてくれない。

だから対応策を瞬時に練る。だがその"瞬時"という刹那の瞬間が、今この場においては命取りとなるのだった。




707 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:53:34.52rjpFEEXxo (19/22)



垣根が右手の赤い炎剣を横一線に薙ぐ。その行為だけで扇状の爆熱と熱風が発生し、
ファイブオーバーのコックピット内に、『未元物質』の仮面越しに、確かなダメージを与えていく。
第二位の"魔術師"はそこで動きを止めることなく、更に一歩踏み込み、射程範囲内にいた
ファイブオーバーと仮面の兵士に容赦なく青の炎剣で"焼き裂いて"いく。

この時点で既に一〇〇以上の『回収部隊』が未知の法則の前にその命を散らせていった。

『回収部隊』は即座に垣根帝督から距離を取る。あの炎剣が一体どういう原理で出現しているのかは分からないが、
所詮は『剣』。遠距離を保っていればとりあえず触れる事はない。そしてその距離からガトリングレールガンや
『未元物質』による不可思議のベクトルを組み込んだ攻撃でなぶり殺しにすればいい。今までと何ら変わりはない。

『回収部隊』の皆が皆、セオリー通りに事を運ぼうと考えていた時だった。


「おい、ボケッとしてんじゃねえぞ」


ドバァッ!!!!!、という爆発音が鳴ったかと思ったら、ファイブオーバーの一機が激しく煙を立ち上げながら
スクラップになっていた。その中にいたパイロットの仮面の兵士の体も燃え上がっており、
『未元物質』で炎を消そうと試みるが、どう演算しても体を焦がしていく炎に干渉出来なかった。




708 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 22:54:55.95rjpFEEXxo (20/22)



「なるほど、コックピット内までは貫通出来る事は分かった。 遠距離から攻撃すればいいってのは
 当たり前の考えだが、詰めが甘かったなクソども」


炎剣を握る垣根の手の指の隙間には炎剣を生み出すときにも使用していた妙な札が数枚挟んであった。
恐らくあの札には炎剣を生み出す以外にも何かが効果があるのだと『回収部隊』は理解する。


つまり今の攻撃は遠距離からの狙撃。垣根が操る炎は、あの炎剣だけではない。
『回収部隊』は息を呑んだ。学園都市統括理事長から受理した情報に、垣根がこんな力を使うことは
一切記載されていない。


そして垣根が持つ手札も、遠距離攻撃用の火炎弾や炎剣だけではない。
彼にはまだ、いわゆる『切り札』と呼べる力を秘めていた。


現在時刻は午後二時四〇分過ぎ。『ゲーム』開始から約四〇分が経過していた。




709 ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 23:01:46.37rjpFEEXxo (21/22)



以上です。というわけで垣根が行使する魔術とは『炎』でした。
え、分かりきってたって?ですよねー・・・・・・。

ワシリーサとの訓練のときも垣根は炎剣やらなんやらを使っていましたが、
あえて描写はしませんでした。まあ最後はワシリーサを焼いていたのであまり意味は無かったですが・・・・・・

ここからは垣根無双、と一概には言えません。能力者が使う魔術は身を滅ぼします。
どうなっちゃうのでしょうか、次回をお楽しみに!次回は一方通行ですけど


次回更新は三日以内。


それでは、ありがとうございました!




710次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI2011/05/13(金) 23:02:20.33rjpFEEXxo (22/22)




                          【次回予告】



『(「雰囲気が俺にまとわりついてやがる」・・・・・・。
 いや、と言うよりは"誰かが俺を監視してる"雰囲気に近い。 ・・・・・・なンなンだこりゃ)』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『「貴方に話したい事がいっぱいある。 聞いて・・・・・・くれる?」』
―――――――――――水を司る大天使・ミーシャ=クロイツェフ






711VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/13(金) 23:02:50.95P0943Nnq0 (2/2)

>>1超乙!
やばい、帝督がかっこよすぎて身震いした



712VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/05/13(金) 23:03:09.190zcOLfFn0 (1/1)

ステイルェ・・・


713VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/13(金) 23:04:55.71DhOnGXWa0 (1/1)

乙!!

これはイノケンさんが見られるのか!!


714VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/13(金) 23:08:25.83PqeeDyGU0 (1/1)

ステイルの使ってた魔術ってこんなにつよかったんだな


715VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方)2011/05/13(金) 23:13:25.98fawwICjAO (1/1)

垣根マジかっこいい。しかしやっぱりステイルの魔術って強いよな、ただ原作では敵が強すぎたり特殊すぎたりするだけで。



716VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)2011/05/13(金) 23:58:26.52L0RgFaBR0 (1/1)

決して弱くないのに何故か相性が悪かったり相手が規格外の強さだったりで負けてるところしか印象に残らない。
人それをウオーズマンポジションという。


717VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/14(土) 00:21:19.60JzI70rgu0 (1/1)

作者! きさま! スパロボを知っているな!
乙でした!


718VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/14(土) 01:55:55.76d0qCPo/Y0 (1/1)


っていうか血反吐吐く思いして若干14歳でルーンと炎の術式を極め
新たなルーンを開発して法王級の魔術を超短時間で使えるようになった
ネセサリウスきっての天才としてのステイルの立場ェ・・・
たしかにていとくんも天才だし血反吐も吐いてるけど、身体能力と費やした時間と超能力で完全に負けてるじゃねえか・・・
それだけ第2位の演算能力がべらぼうだったのか、エイワスの入門魔道書がデタラメなシロモノだったのか
多分両方だよな・・・
ステイル・・・


719VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 02:02:12.47nzF5TR2bo (1/1)

ステイルにはトリプルイノケンさんが居る・・・
いくらていとくんでもイノケン三体召還したら体持たないだろう・・・


720VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 02:25:55.66FFv7AJpIO (1/2)

毎度毎度熱い本編の後に気になりすぎる予告……
とりあえずは>>1に何事もなく無事完走してくれることは切に願っておこう


721VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県)2011/05/14(土) 03:12:02.25oxyxSit0o (1/1)

トリプルイノケンさんは三位一体で体の負担を軽くする術式だからていとくんにはうってつけだと思う


722VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 05:01:06.15g8jdoApRo (1/1)

一番ステイル好きの俺としては悲しいww
あ、別に文句を言いたいわけじゃないんだけどね?
このSS内でもそうなんだけど、目に見えて不遇なキャラを応援したくなる。


723VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)2011/05/14(土) 09:23:17.29F1PTgHfAO (1/2)




724VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/14(土) 10:42:16.569niKXxas0 (1/1)

>>721
そして反面、一体でもやられれば残り二体分の負荷が一気に来ることを忘れるな


725TLB2011/05/14(土) 13:46:09.70sePHWr+Q0 (1/1)

垣根マジかっこいい・・・


726糞音痴2011/05/14(土) 13:49:48.69FXCc2n8i0 (1/1)

ていとくんにマジ惚れしそうなんすけどwwwwwww



727VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 14:05:13.28ZCMEKPLQ0 (1/1)

なんか完結したらすごい勢いで感想が出てきそうだから先に言っておこう
大爆笑から入ったのにまさかこんなかっこいい戦闘系SSになるとは思ってなかった。もちろんいい意味で
このスレに出会わなければガブリエルとていとくんここまで好きにはならなかったと思う
毎度毎度楽しみに見てるよ。是非完結まで突っ走ってくれ乙乙


728VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2011/05/14(土) 16:47:29.29H4n5sUmSo (1/1)

ていとくんマジでかっこいいな


729VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 17:03:15.30FFv7AJpIO (2/2)

最初はほんと「この発想はねーよwww」から始まったんだよな
ただのギャグで終わるかと思いきやガブリエルはすごいメインヒロインになったもんだ


730VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/14(土) 17:17:25.969eSsApvd0 (1/1)

ガブリエルが出てくるなんて予想してなかったなー初代スレのころ


731VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/14(土) 21:26:16.99XDrqXVUF0 (1/1)

てかていとくんはイノケンさん使ってないし、何より自力開発じゃないだろ?
イノケンさんを「ただばらまくだけ」のルーン制御で使える方法を確立したのがステイルの天才たる所以なんじゃないの?


732 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 22:58:31.99Sam7OFnqo (1/20)

こんばんわ~、投下しにきました。
連日投下・・・・・・になるんですかね?

さて、前回はついに垣根帝督が魔術を使い始めました。
ステイル=マグヌスが用いる炎の魔術ですね。
当然ながら物申したい方々もいるようですが、それは後ほど。

今回は一方通行。暴走寸前のミーシャを相手に大苦戦。
はてさてどうなることやら。


それでは、よろしくお願いします。




733 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 22:59:21.89Sam7OFnqo (2/20)



最初にその異変に気がついたのは、エイワスを除けば一方通行が初めてだった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」


彼はひとまずミーシャ=クロイツェフから離れ、電気が通っている場所を捜し回っていた。
天使との戦闘で能力使用のための電極チョーカーのバッテリーを大幅に消費したためだ。

ミーシャとの戦闘では『反射』もあまり意味を成さないため、彼の体は既にボロボロだった。
これ以上戦えない、という程の重傷でもないが、ここから先、天使との戦闘が長引けば
待っているのは死。

一方通行も人間だ、人間がたった一人で、いや、例え何億何百億という人数で戦ったとしても
天使には絶対に敵わない。
だからこそ、大した意味がない能力でも使わざるを得ない。能力さえあれば、彼は辛うじて
天使相手に立ち回れるのだ。




734 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:00:10.64Sam7OFnqo (3/20)



だから消費したバッテリーを充電するために第一九学区を歩いていたのだが、


(・・・・・・な、ンだ? 空気がおかしい・・・・・・具体的に説明できねェが、『雰囲気が俺にまとわりついてやがる』・・・・・・。
 いや、と言うよりは"誰かが俺を監視してる"雰囲気に近い。 ・・・・・・なンなンだこりゃ)


一方通行は周囲を注意深く見渡す。だが自分を監視している者の正体を見つけ出すことは出来なかった。
そもそもさっきから感じる視線のようなもの自体が気のせいだというならそれまでだが、
一方通行は暗部での活動でその辺りの『勘』が非常に鋭くなっている。

だから分かる。明らかに今、誰かが一方通行を"凝視"していると。


(・・・・・・アレイスター、じゃねェな。 あのクソ野郎というよりはこの視線はエイワスのものに近い。
 だが、エイワスでもねェはずだ。 "エイワスに限りなく近い領域に立ってやがる誰か"・・・・・・。
 ・・・・・・ガブリエルか? でもあいつは・・・・・・)




735 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:01:23.49Sam7OFnqo (4/20)



自分を監視する者の正体を推理していると、遠くから建造物を破壊するような音が聞こえた。
その音は徐々にこちらに近付いている。

ミーシャ=クロイツェフだ。


(・・・・・・とりあえず、さっさと充電しとかねェと)


一方通行は適当に視線を巡らせ、視界に入った建造物の中に入っていった。
今は自分を見つめる視線の正体きついて考察している場合ではないと、彼は思考を放棄した。


だが、それでよかったのかもしれない。


一方通行も、アレイスターも、ミーシャも、この世の誰もが気付けぬ事だったが。


一方通行をさっきから見つめている者は、彼がこの学園都市に到着した時から今までずっと"居たのだから"。




736 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:02:05.34Sam7OFnqo (5/20)



――――――――――――――――――――――


第一九学区に立ち並ぶ廃ビルの一棟の中から、ピピッという小さな電子音が鳴った。
その音を確認した学園都市最強の超能力者は即席で組み立てた充電器のコードを
首元にある黒のチョーカーから取り外す。


(・・・・・・これでまた三〇分フルで能力を使用できる。 望み薄で適当に
 配線弄ってみたのが正解だったな。 この学区にまだ電気が通ってやがるとは)


一方通行は電極チョーカーに問題が無い事を確認すると、壁に手を当てながら
ゆっくりと腰をあげた。右腕に装着している自作の杖をつこうと思ったが、その杖は
"数分前の戦闘"で粉々に砕かれてしまった事を思い出し、舌打ちする。

彼が今いるビルは元々デパートだったようだ。このフロアは洋服店売り場のようで、
あちこちにこの時間帯で見ると不気味に見えるマネキンがポツンと淋しげに設置されている。

フロアにあるロッカーの中には物々しい銃火器等が収納されていたり、さっきのように
ちょっと配線を弄っただけで電気が通るようになっているところから推測するに、
どうやらこのデパートを隠れ家として誰かが使用しているようだ。




737 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:03:12.34Sam7OFnqo (6/20)



一方通行は商品棚などに手をつきながら歩いて行き、壁一面がガラスで出来た窓から下の様子を俯瞰する。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あそこか。 クソったれ・・・・・・」


一方通行の視線の先には、彼がいるフロアに置いてある埃まみれのマネキンに
似ていると言えば似ている、そんな怪物がフラフラと当てもなく道を歩いていた。


大天使、ミーシャ=クロイツェフ。つい先程まで一方通行と死闘を繰り広げていた天使だ。


結果としては、一方通行は命からがらこのデパートまで避難できた、といったところか。
天使の力はやはり暴走寸前であっても健在だった。暴走寸前だからこそ、『天使の力(テレズマ)』を
奪われる前の、万全のコンディションに戻りつつあるのかもしれない。

そう思わせるほど、ミーシャ=クロイツェフは圧倒的な力で最強の超能力者に牙を剥いた。
今こうして一方通行は窓の景色を眺めるという、端から見れば呑気な事をしているが、
許されるなら今すぐにでも意識を断絶して眠りにつきたいくらい、その肉体と精神は疲労していた。
身に纏う白のダウンのあちこちが破れて綿が飛び出しており、口の周りは拭った血の跡がべっとりとこびりついている。




738 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:04:33.74Sam7OFnqo (7/20)



だが対する一方通行もただ天使の前に屈するだけではなかった。というより、一方的に攻撃されていたら
彼はもうこの世にはいないだろう。一方通行は学園都市最高の頭脳を活かし、能力を全力で駆使し、
見事にたった一人で大天使を相手に立ち回っていた。

ミーシャには付け入る隙があった。アレイスターも掻い摘んで説明していたが、
彼女は『天使同盟』として過ごしてきた事によって得た自我と、『星の欠片』にある『門』の柱が
太陽に近付くにつれその力が弱まり存在の維持が困難になってきている現実とがごちゃまぜになり、
暴走寸前、『悪魔』と化す一歩手前まで来ていた。

天使が本来決して手に入れる事の出来ない自我、感情が原因でミーシャにはもう
何も見えていなかった。一番大切な存在である一方通行にも牙を剥くほどに。

だから彼女の攻撃も強烈ながら安定していなかった。見当違いの方向に飛んでいく『天使の力』の塊。
どこに狙いをつけて振るっているのか分からない氷の翼。


一方通行はその隙をついてなんとか天使の攻撃をやり過ごしながら、ひたすらミーシャに声をかけていた。
『俺が分からねェのか』、『自分をしっかり保て』、『これ以上暴れるンじゃねェ』。
そんな言葉を、喉が掠れるまでずっと叫び続けた。




739 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:06:03.67Sam7OFnqo (8/20)



だが彼の言葉が届く前に、無情にもバッテリーの電源が切れる寸前まで消費されてしまった。
一方通行はやむなく充電を行うためにこのデパート内に身を潜めているというわけだ。


ミーシャは現在、一方通行がいるデパートの周辺をゾンビのようにおぼつかない足取りで
うろうろと彷徨っていた。無意識に彼の居場所を掴んでいるのだろうか。

一方通行は意を決したように短く息を吐き、チョーカーの電源をオンにする。
コツン、と指で目の前のガラスを突付くと、それだけで放射状にひび割れが生じ、派手な音と共に割れた。


一方通行は躊躇なく割れたガラスから足を踏み出し外へ飛び出す。
ガラスの割れた音に反応したのか、見下ろした先にいたミーシャの水晶の翼が左右から
薙ぐように現れ、一瞬で一方通行のいた廃ビルを真っ二つにしてしまった。
地響きを鳴らしながらデパートが崩落していく。


そして一方通行は背中に接続した四本の竜巻を一斉にミーシャへ向ける。
避けられるか吹き消されるかと考えていたが、意外にも竜巻は直撃しミーシャは派手に地面を転がっていった。




740 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:07:33.63Sam7OFnqo (9/20)



とにかくミーシャに暴れられてはこの街が持たない。
一方通行はさらに追撃を加えるためにうつ伏せで倒れているミーシャの下へ駆け寄るが、


「bnthi攻撃nvrgio開始vyjmk」

「ッ!?」


天使はうつ伏せのまま背中にある水晶の翼を一方通行目掛けて縦に振った。
脚力のベクトルを操作し、ロケットのように突っ込んでいた一方通行は急停止が間に合わず、
翼の斬撃をもろに受ける形になってしまった。


鮮血が吹き出る。一発で意識が刈り取られそうになる重い一撃。
『反射』を適応させていたにも関わらず、天使の翼は容赦なく彼の体を引き裂いた。
一方通行の体から吹き出た出血が、ミーシャの翼を不気味に染め上げる。


「ご、ご・・・・・・が・・・・・・ッ!?」




741 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:08:21.81Sam7OFnqo (10/20)



一方通行は大量の出血をベクトル操作によって抑えるが、
それでも視界がぼやけて焦点が定まらなかった。わずかでも気を緩めたら
間違いなくそこで昏倒してしまう確信があった。

フラフラと揺れて次のアクションを起こせない一方通行に天使は翼を展開させ、
数百数千の氷の刃を躊躇なく少年に向けて振るう。
斬撃と衝撃波がメチャクチャに混ざり合う。一方通行の華奢な体は一瞬で膾切りになってしまった。
彼女の振るった翼は、この学園都市全体を大きく振動させるほどの威力があった。

そのまま輪切りにされてバラバラにならないのが逆に不思議だった。
彼の能力である『反射』が既の所で働いているのだろうか。


だが、ここまでされても。全身をズタズタに切り裂かれても、一方通行は倒れなかった。
本来なら致死量に達していたであろう出血をベクトル操作で抑えているのもあるが、それ以上に、


「vgkhj貴方kougう、ううううううggggggggggggg」

「バ、カ野郎・・・・・・が・・・・・・!!」




742 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:09:29.89Sam7OFnqo (11/20)



ミーシャ=クロイツェフの顔にある、目を型どる凹みから、雫が零れていたからだ。


涙。一方通行はロシアでサーシャ=クロイツェフから聞いた『天使の涙』の話を思い出した。
だがミーシャが流しているこの涙は、そんな紛い物ではない。

自身の理不尽とまで言える強大な力で大切な人を傷つけてしまっている事実に、彼女は苦痛の涙を流していた。

そんな光景を目にしては、一方通行もこのままミーシャに攻撃する事をどうしても躊躇ってしまう。
今まで彼女と過ごしてきた思い出が映画のフィルムのように断続的に脳裏を過ぎり、
自身の行いに苦悩している隙だらけの天使に攻撃する事が出来ない。

手を伸ばせば届く範囲にいるというのに、一方通行とミーシャはお互い向き合ったまま
立ち尽くしているという奇妙な状況になっていた。


ミーシャは緩慢な動きで、それでも一歩一歩踏み出し、一方通行に近づいていた。
一方通行は後退することもなく、かと言って攻撃することもなく、黙ってミーシャを見つめていた。
やがて天使は至近距離まで彼に近付くと、


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」




743 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:10:26.64Sam7OFnqo (12/20)



ゆっくりと彼の華奢な体に腕を回し、抱擁した。


「・・・・・・抱き、」


『抱きつくな』、と言いかけて一方通行は口を噤んだ。
思わず一方通行とミーシャの間で日常的に行われているやり取りが、こんな状況で出る所だった。

ミシ・・・・・・と骨が軋む音が聞こえる。一方通行は一瞬、このまま背骨を折られて絞め殺されるのではないかと
危惧したが、精神不安定なミーシャのこの抱擁にはどこか暖かさが感じられた。
そしてミーシャは彼を抱きしめたまま動かなくなってしまった。さっきまでの暴れっぷりは、今や見る影もない。


(終わったのか・・・・・・? こいつは自我を取り戻したのか・・・・・・、)


一方通行はどう対応していいのか分からず困惑する。油断をすればまたさっきのように
翼の斬撃が飛んでくるかもしれない。
もしそうなれば、一方通行はそれをやり過ごす事が出来ないと確信していた。ここまでの時点で彼は
肉体に深刻なダメージを負っている。正直、こうしてミーシャに抱き寄せられていなかったら倒れていたかもしれない。




744 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:11:46.39Sam7OFnqo (13/20)



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「―――――――――――――――」


やがて、どのぐらいそうしていたか分からなくなるほどの時間が経った頃、






『・・・・・・・・・・・・、貴方』

「!!!」






一方通行の脳に直接語りかけているような、優しい、それこそ天使のような声が響いてきた。




745 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:12:55.22Sam7OFnqo (14/20)



「ガブリ、エル・・・・・・か・・・・・・?」

『やっと・・・・・・話せる。 ね』


風斬氷華に起きたような現象が、一方通行にも起きた。
ミーシャ=クロイツェフは彼の頭を優しく撫でながら、諭すような声色で言った。


『貴方に話したい事がいっぱいある。 聞いて・・・・・・くれる?』


そして一方通行は知る。ミーシャ=クロイツェフという存在がずっと胸に抱いていた真の想いを。
そして一方通行は知る。自分という存在が、どれほど愚かで小さな存在だったのかを。


『星の欠片』の予想消滅時間まで、残り一時間を切ったところだった。




746 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:16:36.80Sam7OFnqo (15/20)



――――――――――――――――――――――


九月三〇日にこの学園都市にやってきた魔術師。ヴェントは、本気でアレイスター=クロウリーという
魔術師の首を取ろうと躍起になっていた。
だがその野望はアレイスターが虚数学区を学園都市に展開した事によって魔術師としての力を
著しく削がれ、本来のターゲットでもあった上条当麻という少年に敗れることで一度打ち砕かれる。


しかし、そんな彼女に願ってもいないチャンスが訪れた。
『天使同盟』。天使を引き連れているこの連中が、アレイスター=クロウリーと直接対峙するのだという。

一方通行という少年と出会い己の心境に大きな変化が生じたヴェントだったが、
それでもやはり魔術から科学に走り他の魔術師を見下すアレイスターには憤りを抱いていた。
そんな彼女に、再びアレイスターと接触できるチャンスを、『天使同盟』は与えてくれた。
もちろん本命は風斬氷華の救出と・・・・・・・・・・・・。・・・・・・。

だがその目でアレイスターを確認すると、胸の中にある憎悪の炎が激しく燃え上がってしまう。

『天使同盟』の構成員、風斬氷華という、本物の大天使に勝るとも劣らない力を秘めた人工天使を
味方につけたヴェントは、今度こそアレイスターを討ち取れると思った。




747 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:17:38.80Sam7OFnqo (16/20)



だが、ここまでアレイスターという存在に近付いても、人工天使を味方につけても、
学園都市に君臨する魔術師には指一本触れることは叶わなかった。


「『女王艦隊』の船体そのものを私にぶつけ、物理的ダメージを与える・・・・・・。
 ヒューズ=カザキリの攻撃で私の防御術式を破らせ、そこに魔力を凝縮させたハンマーで
 私に追撃を仕掛ける。 ・・・・・・対魔術では敵わぬと判断し、物理的攻撃によって
 優位に立とうと考えた君の考えも評するに値するが・・・・・・、ふふ。 愚行でしかなかったな」


ゴトン、という重厚な物が地面に落ちる音がした。それはヴェントが手に握っていた
有刺鉄線付きの鉄製ハンマーだった。
そしてそのハンマーの跡を追うように、ヴェントも力無く膝を折る。
血糊が伝う鎖が伸びるその口からは浅い呼吸が繰り返すその彼女の様子は、絶命寸前の虫を思わせた。


「クソ・・・・・・野郎が・・・・・・」

「おや、これは驚いた。 まだ口が聞けるのか」


ヴェントは不敵に笑うアレイスターの顔を睨みながら、ガクガクと震える膝に鞭を入れて立ち上がろうとする。
だがどう見ても立ち上がるだけで精一杯といった様子の彼女は、もうこれ以上戦えるようには見えなかった。




748 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:18:33.89Sam7OFnqo (17/20)



バランスを崩して倒れそうになったヴェントを、ヴェント以上に深刻なダメージを負っている人工天使が
手を添えて支える。


「ヴェントさん・・・・・・、大丈夫ですか・・・・・・?」

「ハッ、・・・・・・アンタ。 これが大丈夫なように見えるの?」


ヴェントは両腕を横に広げ、血塗れになった体躯を見せつけるような仕草を行いながら言った。


「平気よ。 こんなの・・・・・・屁でもないわ」


強がりとしか思えなかった。事実、それは強がりだった。


ヴェントは静かに悟る。目の前にいる魔術師、アレイスター=クロウリーには逆立ちしたって敵わない、と。
圧倒的だった。見せつけられて、魅せつけられた。これが、次の時代に生きる魔術師の実力。
結局、風斬氷華と合流したときにアレイスターが立っていた地点から、二人がかりでも彼を動かすことは出来なかった。




749 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:19:20.10Sam7OFnqo (18/20)



アレイスターは依然として、自身で作ったクレーターの中心に佇んでいる。


ズズゥゥゥゥン・・・・・・、と学園都市が不気味に震動する。この第一九学区では今でも
あらゆる場所で激しい戦闘が行われている。今の震動はその一環だった。


「・・・・・・か、ざきり」


声を出すのも辛そうな様子で、ヴェントは側で自分を支えてくれている風斬に向かって言った。


「アンタは・・・・・・白いのの所に・・・・・・行ってあげて」

「え・・・・・・? で、でもヴェントさんは・・・・・・?」


ヴェントは返事をせず、アレイスターの方に憎悪を込めた視線を向ける事で暗に返答を示す。
それを受けたアレイスターは、ただ微笑を返すだけだった。




750 ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:25:42.96Sam7OFnqo (19/20)


ちょいと短いですが今回はここまでとなります。

まず垣根帝督の魔術についてですが、確かにあれではステイルの立場が無いようにも思えます。
垣根には魔術師としての才能なんてほとんどありません。が、それでもステイルの魔術を使いこなす
彼がいてはさすがのステイルも苦笑いするしかありません。これではあまりにも不遇なのではないか。
そう思われても仕方がないですね。

しかしこれだけは言わせてください。私はステイル=マグヌスが大好きです。
お楽しみに・・・・・・という事で!

一方通行の方も進展があったかと思います。
なぜミーシャ=クロイツェフが一方通行に好意を寄せてきたのか。次の一方通行場面で全てが明らかになります。

そんで風斬とヴェント。アレイスターが強すぎます。もうどうしようもありません。
このまま黙って嬲り殺しにされるしかないんでしょうか。次回も風斬サイドからお送りします。


次回更新は三日以内。


それでは、長々と失礼しました。ありがとうございました。


アレイスターと相対出来るのは、やはりあいつしかいません。


751次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI2011/05/14(土) 23:26:54.68Sam7OFnqo (20/20)




                          【次回予告】



『遅い・・・・・・んですよ。 もう少しで・・・・・・何も守れなくなるところだったじゃないですか・・・・・・』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・風斬氷華






752VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/05/14(土) 23:44:28.79VRy0vcKEo (1/1)

いちおつ

展開が全く見えてこない
次が待ち遠しいな


753VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)2011/05/14(土) 23:46:44.17F1PTgHfAO (2/2)




754VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/14(土) 23:53:12.60XYQJmSX+0 (1/1)

乙です!!


755VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 00:04:02.21Sdjej2po0 (1/2)


それにしても垣根は↓の>>13の展開をしそうで怖い。一方みたいに天使の翼を手に入れるほうがまだしも・・・・
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1160397759/


756VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2011/05/15(日) 00:07:31.5385NusHaso (1/1)

乙。
いつも思うんだが、ここの>>1の執筆速度はすごいな。
ネタ探しながら、資料調べながら、話を考えながら
書いてるんだよね。

学生ならともかく仕事しながらとかマジですごいよ。


757VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)2011/05/15(日) 00:08:38.35hkMIX6vb0 (1/1)

エエエェェイワアアアアアァァァスくウゥゥン!!


758VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 01:36:39.68ge8r7KWbo (1/1)

ステイルは魔術の開発をした
垣根はそれを利用したってことじゃないの?
開発するのと使うだけなのは難易度の差が半端ない


759VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/05/15(日) 10:39:32.629D6Ql8Ue0 (1/1)

>>756
むしろ今は遅いほうだろ


760VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 11:51:49.91NslZQ2BIO (1/1)

エイワス来るぅぅぅぅ!?


761VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/15(日) 13:00:01.45aNfv0LlY0 (1/2)

ステイルクルー!?
エイワスも来そうだしイン条ペアも来そうだし・・・
っていうかエイワスに限りなく近い領域にってやっぱり神浄?
やばい今夜は眠れない


762糞音痴2011/05/15(日) 14:33:57.79IaO1dSF70 (1/1)

俺もwww


763VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/15(日) 14:59:30.03h1Yzhyxqo (1/1)

フィアンマとか来ちゃうのかな
取り敢えずガブリエルが素敵


764VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/15(日) 15:24:57.37dQ0GzvlV0 (1/1)

いや、ここは復活して更に光の処刑を完成させたエリマキトカゲさんがだな……


765VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/15(日) 15:37:31.43JavJiI4r0 (1/1)

エイワスキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!


766VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 17:12:04.53NhRnFB8to (1/1)

火野神作、推参!!


767 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 17:51:23.702T1rKI5Go (1/13)

>>759
すみません、なるべく早く投下出来るよう頑張ります


ちょっと私事で申し訳ないですが、微調整のために投下します。
本当にちょっとしか投下しませんがよろしければどうぞ。

ではいきます。




768 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 17:52:10.202T1rKI5Go (2/13)



「何を・・・・・・言ってるんですか・・・・・・!? たった一人でアレイスターに立ち向かうなんて、
 無謀です・・・・・・!! 私も最後までヴェントさんと――――」

「アンタ・・・・・・自分の目的を忘れてるんじゃないわよ・・・・・・」


ヴェントは自分の体を支えている風斬の手を強く握り締め、
この場から出て行けというようにその手を払う。
アレイスターの攻撃で満身創痍になっている風斬はその行為だけでふらりと倒れそうになる。


「アンタは・・・・・・あいつの、白いのにとって必要な存在でありたいって・・・・・・言ってただろうが。
 今の白いのには、・・・・・・アンタが必要だ。白いのは恐らく、ミーシャ=クロイツェフと一緒にいる。
 戦ってる。 ・・・・・・人間が、たった一人で天使に勝てるわけ・・・・・・いや、例え何万何億の人間が
 束になったって、本物の大天使には敵わない。 ・・・・・・アンタも分かってるんでしょ?」


言いながら、ヴェントは激しく咳き込む。その口から夥しい量の鮮血が飛び散った。
風斬が慌てて彼女に駆け寄ろうとするが、ヴェントはそれを片手で制した。




769 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 17:52:52.762T1rKI5Go (3/13)



ひゅるり、と。そよ風が吹いた気がした。
いつの間にかヴェントの手には例のハンマーが握られていた。


「ヴェントさん、・・・・・・でも、・・・・・・でも私・・・・・・」

「デモもストライキもねえんだよクソボケ。 ・・・・・・アンタがここで白いのを支えてやんなきゃ、
 あいつは折れる。 あいつは・・・・・・ここで死んだらダメなのよ。 アンタも困るし、私も困る。
 アレイスターは私が・・・・・・このヴェントが引き止めるから。 だから・・・・・・アンタは早く行け」

「・・・・・・ここであなたを見捨てて、一方通行さんの所へは向かえません」

「・・・・・・この私に・・・・・・否定形はない・・・・・・。 例え人工天使だろうが、否定だけは認めねえ・・・・・・。
 私がやれっつったことは・・・・・・やれよ泣き虫」


それでも、と風斬が言いかけた時。


ザンッ!!、と木材に刃物をめり込ませるような音がした。
風斬の顔とメガネに真っ赤な血が飛び散り、彼女の視界は赤一色に染まる。




770 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 17:53:57.022T1rKI5Go (4/13)



「が、ァァァあああああああああああああああああ!!?」

「余興が過ぎるぞ。 何時まで私の前でお涙頂戴の茶番劇を見せつける気だ」


いつの間に、どうやって攻撃されたのかも分からなかった。
気がつけばヴェントの肩口から横腹にかけて、一直線に大きな裂傷が出来上がっていた。
そこから大量に溢れ出す血飛沫のシャワーが、彼女の側にいた風斬の全身を洗い流していく。

ヴェントが着ている白のジャケットが深紅色に染まっていくのを見て憤慨した風斬が
アレイスターに突貫しようとするが、突如として風斬の足元から黒より暗い闇が噴出する。


「!?」


直後、ズグンッ!!!と風斬の全身に驚異的な『負荷』がかかった。
抗う間もなく、平伏せるように風斬の体が地面に強く叩きつけられてしまう。
恐らくは局地的に重力を変化させるような魔術を行使したのだろうが、AIM拡散力場の集合体である
風斬に重力変化の攻撃など大した意味はないはず。

やはり、アレイスターが操る魔術は、"魔術という物差しでは計りきれない法則が含まれていた"。




771 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 17:54:53.112T1rKI5Go (5/13)



「が、・・・・・・ぐっ・・・・・・!!?」


理解不能の魔術攻撃によって全く身動きが取れなくなった風斬と、
目を覆いたくなるような出血をしながら膝をついているヴェントに向かって、
魔術師は言葉を送る。


「魔術師と人工天使の、概念を超越した友情か。 くく、実に感動的だな。
 私にそういう感情が残っていれば、涙を流してしまったかもしれない」

「流させてやろう・・・・・・か? 今ならオプションで脳漿がはじけ飛ぶサービスが
 付いてくるけどな・・・・・・・・・・・・」


ごぽ・・・・・・と口から血を流しながらヴェントが挑発するが、もはやアレイスターの耳には届いていない。


「だがそういった余興は、ほんの一瞬楽しむだけに留める事でその甘美さを満喫できるというのに、
 君たちはその辺りをまだ理解していない。 舞台に上がる覚悟があるなら客を最高に楽しませる
 作法を完璧に熟知してから上がるのが役者というものだろう?」


どこかで聞いたことのある物言いだ、と風斬は不可視の魔術攻撃に体を押し潰されながらそう思った。
全身の至る所からガラスがひび割れていくような音がする。自身の身体が悲鳴を上げている音だった。


もう、終わりだ。自分はここで消える。
そう悟った風斬の目から悔しさによる涙が流れていた。




772 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 17:55:56.402T1rKI5Go (6/13)



アレイスターはクレーターの中心点から一歩も動くことなく、
手に持っている『衝撃の杖(ブラスティングロッド)』を弄びながら続けた。


「よって、君たちはこの舞台には相応しくない役者だ。 お役御免とさせてもらおうか」


スッ、と『衝撃の杖』の先端を風斬とヴェントに向ける。
咲きかけの花のように螺旋状に重なった金属状の板がゆっくりと花開いていく。
その中央部、つぼみのような部分が発光し始めた。


「殺してやる・・・・・・」

「次の時代でまた君たちと出会える事があれば、そのような罵詈雑言も聞いてやる」


ヴェントはただただ、発光する『衝撃の杖』の先端部を見つめることしか出来なかった。
地面に伏している風斬に至っては、そんな光景すら目にする事が出来ない。




773 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 17:56:53.782T1rKI5Go (7/13)



せっかく、ここまで来たというのに。結局はこんなつまらない結末で幕を閉じてしまうのか。
風斬とヴェントの心には、『もう会いたい人と会えない』という不安と絶望と悲観がぐるぐると回っていた。


そして、カッッ!!!、と『衝撃の杖』の発光が一層激しくなり、炸裂する。
三人がいた場所は局所的な大爆発に見舞われ、わずかにビルとしての形を残していた建造物も
今度こそただの瓦礫と化して粉々に破砕されていった。

空気がビリビリと震え、地面はめくれ上がり、あまつさえ天空すら割れんばかりの衝撃が走る。
もはや更地となったと言って遜色ないほどの被害を受けていく第一九学区の一角を、





"全くその被害を受けていない風斬とヴェントはキョトンとした表情で見つめていた"。







774 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 17:57:53.512T1rKI5Go (8/13)



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」


あまりの衝撃で粉塵すら舞い上がっていなかったため、はっきりと見て取れた。
風斬氷華の猛攻を受けても、ヴェントの加勢で二対一の状況になっても、
その場から全く動かなかったアレイスター=クロウリーの肢体が、派手に吹き飛んでいく光景を。


そして二人の目の前には今、一つの『光』が佇んでいた。
比喩ではない、本当に『光』が、先程までアレイスターが居た場所に"空から墜落してきたのだ"。
その光は、黄金色に輝いており、そして不健康そうな青ざめた輝きを放っている。


風斬氷華は知っている。そしてヴェントも、ロシアで初めてその『光』に遭遇した。




775 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 17:58:33.942T1rKI5Go (9/13)











              ついに、あいつがやって来た。


















776 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 17:59:12.782T1rKI5Go (10/13)



「相変わらず君はせっかちだな、アレイスター。 先程の判断も実に早計だよ」


頭部から宇宙にある星のように流れる美しい金髪。
その体は、ゆったりとした白の装束に包まれている。


「この舞台にはまだ役者が全員揃っていないじゃないか。 幕を閉じるどころか
 まだ開いてすらいないというのに」


その極めてフラットな表情からは、なぜか微笑みが浮かんでいる印象を与えてくる。


「役者が全員揃い、観客が揃って、初めて舞台は成立する。
 そこから観賞する価値が生まれるのだよ・・・・・・まったく」


金色に輝く長い頭髪をかき分けるように背中から生えているのは、輝きすぎるほど輝く翼。
日本刀よりも精巧で、西洋剣よりも勇ましく、しかしどこか怪奇さを漂わせる美しい翼。




777 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 18:00:23.342T1rKI5Go (11/13)



「まぁ、遅刻してしまった私がこんな事を言える立場ではないのかも知れないがね。
 待たせたな風斬氷華、ヴェント。 傷の方は平気かね?」


その頭上にプラチナのような輝きを放っている天使の輪を浮かべながら、"それ"は尋ねてきた。

風斬氷華は"それ"に対して、最初はあまり良い印象を抱いていなかった。
いつも人間という存在を下に見るような発言をし、全ての現象を価値と興味で判断する"それ"に、
わずかだが嫌悪感すら抱いていた。


しかし、この時ばかりは、もうそんな気持ちは霧散していた。
単純に、純粋に、助けてもらったことへの感謝の気持ちで一杯だった。


「遅い・・・・・・んですよ。 もう少しで・・・・・・何も守れなくなるところだったじゃないですか・・・・・・」

「そうか。 では今から、そしてこれから先も守っていけばいいだろう。 君の大切な友人を」


日本時間の午後三時過ぎ。


聖守護天使エイワスが、ついに舞台へと降臨した。




778 ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 18:07:25.212T1rKI5Go (12/13)

ここまでです。全然物足りないと思った方には申し訳が立ちません。
ちょっと前回の終わり方がいつも以上に中途半端過ぎたのと、書きためと現行の差を調節しておきたかったので
投下させていただきました。


さて、ついに『天使同盟』最強の存在であるエイワスが降臨しました。
エイワスが今までどこで何をやっていたのかはかなり後のほうで判明します。
今回、エイワスの登場をかっこ良く演出しようと頑張ってみたのですが、いかがでしたでしょうか?
全然駄目だと言われればもっと頑張ります、はい。


次回更新は三日以内。


それでは、ありがとうございました!




779次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI2011/05/15(日) 18:07:56.482T1rKI5Go (13/13)




                          【次回予告】



『「神浄」と「ホルスの永劫」はともかく、「星幽界」の成立はあなたがいなければ達成出来ない「プラン」の最終目標だ。
 だから「天使同盟」に頭を抱えているのだと私は言ったはずだが、伝わらなかったか?』
―――――――――――学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー




『そうだな、ただその前にこれだけは言わせてくれ。 ――――「セト」は絶対に、君に振り向く事はない』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス






780VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/05/15(日) 18:12:28.93k6E09/1Jo (1/1)

エイワスかっけーwwww


781VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/15(日) 18:16:43.02z4iTsPb9o (1/1)

エイワスたんかわゆすと言って時代が懐かしい…



782VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/15(日) 18:18:47.54aNfv0LlY0 (2/2)

なンだよ格好イイじゃねェかエイワスのクソ野郎!
愉快に陽気に決まってンなァオイ!


783VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 18:35:24.91dOMRkKE90 (1/1)

乙乙。
惚れちゃいそうだぜエイワスぅーwww

セトってアレか、エジプト神話の悪神だか破壊神だか。オシリス殺しでホルスと敵対し…て、んん?
…一方さんを視てたのはもしや…いやいやいや。


784VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/15(日) 18:35:45.94naQE/5T0o (1/2)

アレイスターに攻撃が刺さるのは流石だな


785VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)2011/05/15(日) 18:36:31.002a7LyGLAO (1/1)


「セト」と聞くとどうしても某コーポレーションの社長が頭をよぎってしまうぜワハハハハ


786VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/05/15(日) 18:36:36.52YYH26/UXo (1/1)

>>1は一体どれだけ書き溜めをしていたのか
こんだけの長編でこのペースだったら普通に尽きるだろうと思うのだが
ううむ、ホルスを感じる

そしてエイワスに心を許しそうになる
だがあんな胡散臭いヤツに心を許すわkエイワスかっけえ!


787VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/15(日) 18:37:39.463bOisAE2o (1/1)


エイワスキタ!
こういうときは頼りになるなってか、いよいよ戦うのか?
え、マジで?


788VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 18:56:04.1491bC8a5SO (1/1)

流石俺のドラちゃん


789VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 18:57:42.89Sdjej2po0 (2/2)

>>785
俺はどっちでもいいけど。



790VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 19:33:07.84hdypHmoDO (1/1)

某社長の前世がセトじゃなかったっけ?


791VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/15(日) 20:11:59.69naQE/5T0o (2/2)

神と神官じゃ大分違うだろ


792VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/15(日) 21:17:44.0085z+YKmF0 (1/1)

とりあえず、ここは最強の援軍を素直に喜ぼうぜ
そういや、今のエイワスはどういった姿なんだ


793VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 22:06:16.26HKMXtxtDO (1/1)

遊戯王のセトは名前借りただけだから!
砂漠の神で、暴風の神で、オシリスを殺してホルスと敵対したから悪魔の代表って辞書にあった


794VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 23:43:20.84JBLdim4IO (1/1)

>>786
きっとこの>>1はクライマックス時、相当な量の投下で一気に終わらせそうな気がする。


795VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)2011/05/15(日) 23:56:50.97/d8G30GAO (1/1)

このスレもう半年以上やってんだよな


796VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/16(月) 00:00:23.159azBn7sVo (1/1)

題名で避けててやたら続いてるから読み始めたのが最近だが、追いつくまで何時間かかったことやらww


797VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/16(月) 00:07:23.63kAnm9zbDO (1/1)

>>796
俺達の半年が、お前の数時間か


798VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/16(月) 00:32:36.827Xicc2yq0 (1/2)

これまで一方通行・風斬・垣根・ヴェントがまともに戦うことも許されず
その場から一歩も動かず完全に圧倒していた(ミーシャは動かすくらいは出来たかもしれないが)アレイスターが
エイワスがただ空から衝突してきただけで粉微塵にされてしまう
しかも、当然それは倒したのではなくほとんどあいさつ代わりにすぎないだろう

この二個の化け物は次元が違いすぎる
そして主の演出が素晴らしい


799VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/16(月) 00:34:06.23TEzHWidpP (1/1)

>>798



800VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/16(月) 03:11:35.99BcdI9bO/0 (1/1)

おいおいこれからどーなんだよ
気になりすぎて隈できちゃったじゃねーか!


801VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/16(月) 06:19:36.30INK79jAAO (1/1)

>>800
このネットワークから、続きが気になるもやもや感だけを抽出する特性を持ったナナシワーストさんですか


802VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/05/16(月) 18:57:02.06Yy2FsWze0 (1/1)

か、勘違いしないでよね、続きが気になるのはわたしじゃなくて妹たちなんだから!





~昨日の夜~

「エイワスかっけぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇええええええええええええ!!!」


803糞音痴2011/05/16(月) 20:13:42.70k9w8pIyl0 (1/1)

ハッ、何だこのエイワスの登場の仕方。1点だな(0.000001点満点中)


804VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)2011/05/16(月) 20:15:17.48APD0/crAO (1/1)

………。


805VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2011/05/16(月) 20:15:43.24xlR5Qixi0 (1/1)

>>803 おまえ色々なスレにいるけど なんでageるの?
[ピーーー]よ



806VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/16(月) 22:35:38.707Xicc2yq0 (2/2)

しかし、当然のように次スレ確定状態だなあ


807VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/16(月) 23:04:50.48IdZvxwfSO (1/1)

>>803
コテハンは自己顕示欲が強いから


808VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/16(月) 23:46:49.57TQjBoT4io (1/1)

>>805
いちいちそんなことで目くじら立てんなよ


809糞音痴2011/05/17(火) 02:53:14.22np0W9DJy0 (1/13)

ageたっていいじゃないか


810VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 07:36:59.22a3c++g9SO (1/1)

言い訳ねーだろ迷惑なんだよ


811VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/17(火) 07:59:48.34WwQt4yZv0 (1/1)

いままでは黙ってたけど流石にいい加減にしろよてめえ
ほんとのクソコテだな


812VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 08:13:02.72YzWqNoCIO (1/1)

スレが上がっている事を>>1の来た合図だと思ってる俺らからすると無駄なageは死活問題


813VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 09:02:07.49V01g42KDO (1/1)

じゃあage


814VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 12:41:16.93i76eaK0DO (1/1)

悪禁ってどうすれば出来るんだ?


815VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 13:24:42.39ygynZOizo (1/1)

瀬戸さん……


816VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 17:04:37.56XzvMgQbN0 (1/2)

>>809
メール欄に「sage」と、ただ四文字打ち込めばいいだけのこと。
それだけで済む話なわけなんだけど糞君はどうしてもageたいようだね。


817糞音痴2011/05/17(火) 17:15:10.70np0W9DJy0 (2/13)

え?ちょ、俺アクキンされるようなことした?


818糞音痴2011/05/17(火) 17:17:27.51np0W9DJy0 (3/13)

したなら謝る。ゴメン


819糞音痴2011/05/17(火) 17:20:17.44np0W9DJy0 (4/13)

・・・あっ、それと一つにまとめられなくてゴメン。努力する。



820VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県)2011/05/17(火) 17:20:33.86YyA0ctyDo (1/3)

もういい
sageろ
もしくはレスすんな


821糞音痴2011/05/17(火) 17:22:50.99np0W9DJy0 (5/13)

・・・ねぇsageの意味教えて?どうすればいいのか分らない


822糞音痴2011/05/17(火) 17:24:16.88np0W9DJy0 (6/13)

・・・ねぇsageの意味教えて?どうすればいいのか分らない


823糞音痴2011/05/17(火) 17:24:59.27np0W9DJy0 (7/13)

・・・ねぇsageの意味教えて?どうすればいいのか分らない


824糞音痴2011/05/17(火) 17:33:33.25np0W9DJy0 (8/13)

こゆこと?


825VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/17(火) 17:33:51.78VmV3gkmX0 (1/1)

こええ


826VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県)2011/05/17(火) 17:35:16.00YyA0ctyDo (2/3)

>>824
うん
二度と外すな


827VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 17:42:54.12XzvMgQbN0 (2/2)

>>824
なんだよ、やり方わからないのにageたっていいじゃないかなんていってたのかww
やり方わかったならもう一生はずすなよ。


828糞音痴2011/05/17(火) 18:07:26.36np0W9DJy0 (9/13)

OK。了解した。


829VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 18:10:20.45rch8wmLIO (1/1)

お前ら一体誰と戦ってんだ……あ、アレイスターか


830VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 18:19:44.11yhV7Jy2LP (1/1)

ついでに言わせてもらうとそのコテ(名前)も外してほしい
名前欄は何も入力しなくてもVIPにかわりましてNIPPERがお送りしますになるから
クソコテって言われて嫌われるよ


831VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 18:22:44.90hStMysCHo (1/2)

上がってるから見てみたらこれかよ
小学生はレスしないでくれ


832糞音痴2011/05/17(火) 18:41:30.34np0W9DJy0 (10/13)

ごめん俺小じゃない


833VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 18:41:51.05TgTQ5nNU0 (1/1)

そろそろこの話題は終了しようぜ


834VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県)2011/05/17(火) 18:44:33.15np0W9DJy0 (11/13)

ゴメン直す。おれは高3


835VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2011/05/17(火) 18:46:17.77H3EAmbFyo (1/1)

更新来たかと思ったら検索して調べられない奴が来てただけかよ。。


836VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 19:02:41.54pklz3xCIO (1/1)

頭悪い高3だな


837VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県)2011/05/17(火) 19:06:31.62YyA0ctyDo (3/3)

過ぎたことをネチネチと


838VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 19:06:49.44uQHi8o0z0 (1/1)

テッラ「優先する。スレを上位に、クソコテを下位に」


839VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県)2011/05/17(火) 19:19:42.39np0W9DJy0 (12/13)

クソコテ卒業したぜ。


840VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県)2011/05/17(火) 19:21:31.34np0W9DJy0 (13/13)

なっ・・・光の処刑・・だと!?


841VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 19:22:15.95hStMysCHo (2/2)

それ以上どうでもいいことをレスするな
これに対するレスも要らん
お願いだから黙ってくれ


842VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)2011/05/17(火) 20:23:47.79/bE+8A22o (1/1)

黙ってNGしろよ
クソガキ1匹の為に無駄にスレ消費しないでくれるかな


843VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 20:24:26.02qFgXQ0HSO (1/1)

>>832
ROMってろ生ゴミ


844VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 20:58:02.34Z9CRRIdIO (1/1)

このスレに漂う殺伐とした空気。アレイスターも本気だということか……


845 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:32:40.169q3HpP9po (1/32)

こんばんわ、お待たせしました。

前回、ついに学園都市に現れたエイワス。
唯一アレイスターに対抗出来るこの存在はどう出るのか・・・・・・、って
いかにもな前振りと共に投下を開始します・・・・・・ww


それではよろしくお願いします。


846 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:33:25.719q3HpP9po (2/32)



――――――――――――――――――――――


エイワス。
学園都市の暗部の、最奥部に位置する最重要機密コード『ドラゴン』を冠する存在。
ホルスの時代に生きる先住民であり、アレイスター=クロウリーに『法の書』を書かせた霊的存在。

そして、今はホール=パール=クラアトという神の手を離れた『天使同盟(アライアンス)』の構成員。


エイワスは数十メートル先まで吹き飛ばしたアレイスターの姿を確認すると
背後にいる風斬とヴェントの方に身を翻し、うっすらと笑う。


「パーティは愉しんでもらえているようだな。 主催者としても嬉しい・・・・・・、
 いや、主催者は私ではなくミーシャ=クロイツェフだったか」

「エイワスさん・・・・・・」

「ヴェントを連れてここから離脱したまえ。私は久しぶりに直に出会えた旧友と
 談笑を愉しみたい。 ふふ、"ここは少し荒れるぞ?"」




847 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:34:28.029q3HpP9po (3/32)



ぞくっ、と。風斬の背筋が凍った。
"あのエイワスの口から"『この場は荒れる』という言葉が出た意味を、
彼女は本能的に察知し、身震いしたのだ。

風斬はヴェントに肩を貸し、背中に生えている雷光の翼を広げる。


「ヴェントさん、大丈夫ですか・・・・・・?」

「・・・・・・、く・・・・・・エイワス。 アレイスターは・・・・・・」


全身を血で染めているヴェントは微かに呼吸をしながらエイワスに声をかける。


「いつまでもアレイスターの影に囚われていては前に進めないぞ、『前方』のヴェント。
 アレイスターは私が"処理"する。 君はもう、科学にそんな目を向けられるような
 立場ではあるまい? 一方通行の件もあるしな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




848 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:35:54.559q3HpP9po (4/32)



ヴェントの表情が沈む。エイワスの言葉に反論できなかった事で沈んだのか。
それとも、


「風斬氷華は一方通行とミーシャ=クロイツェフの下へ向かえ。 状況が切迫している、
 ミーシャはまもなく『悪魔』に変貌し、自我の崩壊という道を辿るだろう。
 "今の"一方通行ではミーシャ=クロイツェフには敵わない。 助力してあげたまえ」


"今の"、という含みのある言い方に首を傾げたが、深くは追求しなかった。
風斬氷華は頷くだけで返事をしない。言われるまでもないという意思表示だろう。


「ヴェント、君はもう動けないようなら安全な場所へ避難したまえ。
 分かっているとは思うが、今はまだ第一九学区からは出られない」

「・・・・・・動けない? 冗談でしょ」




849 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:36:55.709q3HpP9po (5/32)



ヴェントの言葉にエイワスはクスっと笑って、


「ならば君には掃除当番を任せようか。 既に『回収部隊(アンチツヴァイ)』と接触しているようだから
 敵の情報は分かっているな? 現在、垣根帝督と"魔術師二人"が『回収部隊』と交戦している。
 君もそこに加わり、『回収部隊』の殲滅に当たってくれたまえ」

「わ、私以外にも学園都市に潜入している魔術師がいるのか・・・・・・!?」

「私が招待した。 まだ舞台に上がっていない者もいるがな」

「・・・・・・・・・・・・所詮、私は脇役って訳か」

「それを言うならこの私も脇役だぞ? 脇は脇らしく、慎みやかに事を運ぼうじゃないか」


チッ、と舌打ちをするヴェントだったが、エイワスに対して文句は一切言わなかった。
今の自分ではアレイスターには届かない。だがそんな自分にもやれる事はある。
それをエイワスに指摘されたのが、少し腹ただしかった。

風斬はヴェントを抱えたまま、ふわりと地から足を離す。




850 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:37:49.759q3HpP9po (6/32)



「おい・・・・・・天使のアンタが私をお姫様抱っこして宙に浮いたりなんかしたら、
 そのまま天国に連れていかれそうなんだけど?」

「あ・・・・・・すみません。 でも今だけは我慢してくださいね」


ボロボロで虫の息になっていたヴェントもそんな軽口が聞ける程度には
無事であると知った風斬は安堵の息を吐く。
そしてそんな二人を見上げているエイワスに向かって風斬は言った。


「・・・・・・エイワスさん」

「?」

「私達・・・・・・ちゃんと元に戻れますよね?」


エイワスは答えず、ただ微笑を浮かべるだけだった。
風斬はヴェントと共に荒野と化した第一九学区の一角から飛翔していった。




851 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:38:56.069q3HpP9po (7/32)



「ふ」


呆れが含まれたような失笑が聞こえた。


「『「天使同盟」が元に戻れる』、か」


緑色の手術衣に付いた砂埃を適当に手で払いながら
魔術師はエイワスの方へ歩いて来る。


「なぜ答えてあげなかった? 『天使同盟』という集団の結末が、あなたには見えているからか」


風斬氷華とヴェントが居なくなり、ビルも商店街も吹き飛んだ第一九学区という名の荒野には
エイワスとアレイスターだけが存在している。
空爆を被った跡地のようなこの場所でも、この二人がいるだけで神聖なる地に変貌しているかのような雰囲気が生まれる。




852 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:40:02.409q3HpP9po (8/32)



「久しぶりだな、アレイスター。 ・・・・・・ふふ、面白い。
 君はあの時と全く変わっていないな」

「人間を外見だけで判断しないでほしいものだが」

「人間という生き物に、私が中身まで熟知して印象を決めるほどの価値があるとでも?」


エイワスとの距離が残り一〇メートル辺りになったところでアレイスターは足を止める。


エイワス。
アレイスター=クロウリー。


この二人の容姿は非常によく似ていた。
頭部から流れる美しい頭髪、フラットながらも時折微妙に変化するその表情。簡素な出で立ち。

だが対照的に、エイワスの長髪は金色だがアレイスターは銀、いや灰色に近いだろうか。
そして微妙に変化する表情にも、エイワスには『怪』、アレイスターには『邪』の雰囲気が含まれている印象を受ける。

アレイスターが『人外の領域ギリギリの所に位置する人間』なら、今のエイワスは『人間の領域ギリギリの所にいる人外』。




853VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 22:40:04.17Y67edFS90 (1/1)

生キターーーー
がんばれ。俺は>>1を応援している。


854 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:41:04.469q3HpP9po (9/32)



容姿こそ似ているものの、アレイスターの言うとおり人間は見た目では判断出来ないものだ。
もっとも、エイワスは人間ではないのだが。

そんな人外が口を開く。


「"愉しそう"だな、アレイスター」

「"楽しい"よ、エイワス。 あなたたちのせいで私の『プラン』に甚大な乱れが生じてしまったが、
 今はあなたたちのおかげでその『プラン』の過程を大幅にカット出来る状況にある」

「ほう、『プラン』の修正ルートを新たに構築したのか。 それはそれは・・・・・・。
 で、その修正ルートが現状だと」

「察しのとおりだ」


パシッ、という軽い音がした。アレイスターが再び虚空から取り出した『衝撃の杖』を掴んだ音だ。




855VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/17(火) 22:42:12.47XvIMfj5x0 (1/2)

今の……一通さン凶化フラグが立ちました


856 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:42:23.239q3HpP9po (10/32)



与えられた台本を忠実に読み上げるかのように、アレイスターは尋ねる。


「ここに来るまでの間、色々と動き回っていたようだが・・・・・・。 何をしていた?」

「返答を得られると思って問うているとは思えん質問内容だな。
 だが・・・・・・いずれその答えは私が口にするまでもなく、君自身が思い知ることになるさ」


ちりちり・・・・・・と二人を包む空気が鋭くなっていく。
仮に人間がこの場に居たら一秒も経たないうちにその重厚に押し潰されて発狂しているかもしれない。
それ程までに、この二人が生み出す雰囲気は常軌を逸していた。


「さて、今度はこちらから質問しよう。 先ほど君は『プラン』の過程を大幅に省くことが出来ると
 言っていたが・・・・・・。 具体的にはどこまで進められる状況にある?」




857 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:45:12.699q3HpP9po (11/32)



「珍しいこともあるのだな、まさかあなたから『プラン』に関する質問をされるような
 日がやってくるとは。 『プラン』の中心核に位置するあなたなら答えるまでもないのでは?」

「『神浄』への到達段階まで来ている、と?」

「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』なくして『神浄』への到達は不可能だと思っていたが、
 あなたたち『天使同盟』の"おかげ"で『幻想殺し』を利用することなく達成できるかもしれない」

「くく。 それを成せば『最古の神』が君を認め、君は私と同じ位置に立つ事が出来る、か。
 ずいぶんと焦ってるじゃないか。 そんなに『天使同盟』が怖いのか?
 まあ今回ばかりは、君の焦りも良い傾向にあると思うけどな」

「何?」


それは、この二人にしか理解出来ない会話だった。
アレイスター=クロウリーとエイワス。両者が存在している領域は、もはや現代の人間では
到底理解が追いつかない所にある。




858 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:48:28.589q3HpP9po (12/32)



第一九学区のあちこちで戦闘が勃発しているためか、打ち上げ花火が至近距離で大量に炸裂したように学園都市全体の空気がビリビリと
震えているがエイワスは相変わらず気にも留めず会話を続行する。


「いつもいつも焦りすぎで早計気味だった君だが、今回ばかりはそれが正しいと言っているのだよ。
 こんなところで私と会話などしてないで、『回収部隊』などという瑣末な戦力を作っていないで、
 さっさと『星幽界』を展開させるなり『ホルス』を迎えるなりしていればよかったものを」


その言葉を聞いて、アレイスターの表情が初めて険しいものとなった。
と言っても、それは彼の表情を一切見逃さず延々と観察することでようやく分かる程度の変化だったが。


「星幽界とホルスは連動しているわけだが。 知っているくせに知らないフリをするなよエイワス。
『神浄』と『ホルスの永劫』はともかく、『星幽界』の成立はあなたがいなければ達成出来ない『プラン』の最終目標だ。
 だから『天使同盟』に頭を抱えているのだと私は言ったはずだが、伝わらなかったか?」

「私程度の存在に『楔』さえ打てないような君が、新たなる『界』と時代を開拓出来るわけがない。
 私が君の束縛から解き放たれた時点で、『プラン』の崩壊は約束されたも同然だ」

「・・・・・・・・・・・・、」




859 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:51:28.819q3HpP9po (13/32)



今ここにいるエイワスは、アレイスターがヒューズ=カザキリを製造ラインにしてこの世に現出させた、
いわゆる『レプリカ』のようなものである。
つまりは人形。本来ならエイワスはアレイスターの手中に今も収められていなければならない存在なのだが、
エイワスが『天使同盟』の存在に興味を持った瞬間、アレイスターの『プラン』は致命的な損傷を負うことになった。

エイワスは学園都市に重なる蜃気楼のように存在する虚数学区をアレイスターの手中から奪い、
逆に掌握してしまっている。これでアレイスターは強制的に排除する以外の方法でエイワスと風斬氷華を
どうにかすることが出来ない状態にあった。

だがアレイスターはため息をつくだけで、エイワスの言葉に動じたりすることはなかった。


「分かっているつもりだ。 だから、」


アレイスターは『衝撃の杖』をエイワスの方に向け、


「だからここで今日。 あなたを取り戻す」




860 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:52:43.549q3HpP9po (14/32)



「ふふ、照れるじゃないか。 ここまで私に熱烈なアプローチをしてくる人間は、
 今まで君だけだったな」

「今は他にもいると?」

「さあ・・・・・・、どうかな」

「妬けるじゃないか」

「くく」


二人の談笑はここまでだった。
会話が途切れた途端、二人がいる場所を中心に、もう何度起きたか数えるのも面倒なほどの震動が
学園都市を襲う。
比喩ではない。実際に揺れている。この二人の『殺気』に地球という惑星が恐怖しているかのように、
地面が、空が、空間が、確かに震動している。

エイワスは微笑を貼りつけたまま言う。




861 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:53:22.929q3HpP9po (15/32)



「ならば、私も私自身の身を守るために、君と戦わざるを得ないな。
 もっとも、ここで私が君を止めなければ君はミーシャ=クロイツェフの下へ向かい、
 『星の欠片』の消滅を待たず彼女を消し去ってしまうだろうがな」

「まさかあなたと刃を交える日を迎えようとは・・・・・・私は何を呪えばいいのかな?
 私に必要な知識を全て授けてくださったあなたに牙を剥かなければならない運命にか?
 それとも『天使同盟』か。 いずれにせよ、あなたたちはここで終わりだ」

「そうだな、ただその前にこれだけは言わせてくれ」

「?」


星のように輝く翼を大きく広げ、完全な戦闘態勢に入ったエイワスは
嘲笑を前置きにして言った。




862 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:54:10.399q3HpP9po (16/32)





「――――『セト』は絶対に、君に振り向く事はない」




それはアレイスターにしか理解出来ない、エイワスから送られた侮辱だった。
アレイスターの表情は誰が見ても分かるほどに『憤怒』一色に染まる。
『衝撃の杖』から一切容赦のない攻撃が放たれる。


世界ではこれまで、様々な戦争が起きた。
トロイア戦争。ローマ内戦。ダキア戦争。スコットランド独立戦争。フランス革命。
日露戦争。第一次世界大戦。第二次世界大戦。太平洋戦争。イラク戦争。第三次世界大戦。
上記以外にも数々の戦争が勃発してきた。挙げていけばキリがない程に。

だがこれから起こるこの両者の戦いは、それら全ての戦争が『茶番』とでも言うような、
人間が引き起こしてきた戦争とは世界が違う、それこそ神の領域の戦い。


アレイスター=クロウリーとエイワスのたった二名による、地球誕生以来最大規模の戦争が幕を開けた。




863 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:55:17.339q3HpP9po (17/32)



――――――――――――――――――――――


風斬氷華はヴェントを抱きかかえたまま第一九学区の上空を飛行していた。
ヴェントはアレイスターとの戦闘で重傷を負っている。今は風斬と共に
どこか体を休める事が出来る安全な場所を探しまわっていたのだが、


「な、何なんですかこの人達は・・・・・・!?」

「・・・・・・『回収部隊(アンチツヴァイ)』とかいう、ワケのわかんない連中だったか」


風斬とヴェントは突如として現れた謎の兵器と仮面の軍隊たちから奇襲を受けていた。
何とか逃げ回りながら雷光の翼やAIMの剣を駆使して風斬はそれらをやり過ごしている。

『回収部隊』。垣根帝督のために結成されたファイブオーバーと『未元物質』の仮面の兵士で即席の軍隊。
恐らくは風斬達を垣根の仲間と判断して攻撃を仕掛けてきているのだろう。

風斬は頭上に浮かんでいる虹の輪を拡大させ、それを盾にして素早く自身の周囲へ
移動させていく事で『回収部隊』の攻撃を防いでいる。




864 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:56:33.439q3HpP9po (18/32)



「も、もしかしてこの人達、第一九学区全域に配備されているんでしょうか・・・・・・?
 だとしたらもうこの学区に安全な場所なんて・・・・・・」


ならば第一九学区から他の学区に移動すればいいのだが、それも出来ない。
現在この第一九学区外周にはエイワスが施した、高さ一〇〇〇メートル以上の強固な魔術防壁が出現している。
筒状に展開されているため、風斬なら上空から外へ出ることも可能だが、それは『回収部隊』も同じことだ。
必ず風斬を追ってくる、そうなると他学区にいる関係の無い一般人まで巻き込まれる事になってしまう。

だが自分たちが第一九学区にいる限りだと『回収部隊』も外へは移動したりしないようだ。
あくまで彼らの目的は垣根帝督。彼が第一九学区にいれば『回収部隊』もそこから出ることはない。

ヴェントは消え入りそうな呼吸を繰り返しながら風斬に言った。


「エイワスの話じゃ・・・・・・この場所には私以外の魔術師がいるらしい・・・・・・。
 仮面の連中と戦闘を行ってるなら、上空に行けばすぐに魔術師がいる場所が分かるはず。
 ・・・・・・その周辺で私を降ろしてくれればそれでいいから」




865 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:57:40.579q3HpP9po (19/32)



それを聞いた風斬は背中の翼で周囲の『回収部隊』を辛くも撃退し、
一瞬で高度一〇〇〇メートル付近まで飛翔した。

俯瞰風景をじっと観察していく。上空から見渡す学園都市には、学生たちの姿は確認できなかった。
そして、


「あ、あそこ。 ビルとか沢山崩れてる・・・・・・」

「・・・・・・あそこでいい、私を降ろしてアンタはさっさと白いのの所に・・・・・・」


立ち並んでいる建造物のエリアに、そこだけポッカリと穴が開いたような場所があった。
恐らく『回収部隊』と戦闘をしていた垣根帝督か魔術師の仕業だろう。
一方通行とミーシャ=クロイツェフである可能性も考慮したが、天使が暴れているとなると
被害はあんなものじゃないと風斬は判断する。

そのまま上空で一方通行達の居場所を捜すことも出来たが、まずはヴェントの安全確保が最優先だ。
風斬は目処を付けたそのエリアへ向かうために一気に下降したが、




866 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 22:58:46.719q3HpP9po (20/32)





直後、風斬とヴェントの視界と聴覚が。否、少なくともこの学園都市から
景色と音という概念が一瞬だけ消えてなくなった。




宇宙からでも余裕で観測できそうな激しい閃光と爆発。
そして遅れてやってきた恐るべき爆風に煽られ、あらぬ方向に吹き飛ばされてしまう。

核爆発の数千倍はあるのではと疑う程の爆破が起きた場所は、エイワスとアレイスターがいたエリアだった。


(・・・・・・空中でのバランス制御が・・・・・・出来、な・・・・・・!!!)


エンジンの故障で地面へ墜落していく飛行機のように、風斬は螺旋状に回転しながら
落下していく。上空に飛んだ風斬達を追うために飛翔していた『回収部隊』も爆風に飲み込まれ
一瞬で吹き飛ばされていた。
こんな状況下でも風斬はヴェントを絶対離さないよう強く強く抱きしめていた。

尚も続く爆風に乗って、二人は本来向かうべきエリアから少し離れた地点へ勢い良く墜落していった。




867 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:00:33.779q3HpP9po (21/32)



――――――――――――――――――――――


エイワスとアレイスターの衝突によって起きた規格外の大爆発によって、
第一九学区以外の地域も巻き起こる暴風に晒されていた。

しかし『警備員(アンチスキル)』と『風紀委員(ジャッジメント)』による適格で迅速な対応の甲斐あって、
学園都市に住む全ての住人達は地下にあるシェルターに避難していた。
人外の化物二人が起こした爆発は当然地下にも響いているが、学園都市に作られているシェルターは
地上からの衝撃を極限まで拡散させる構造になっている。地下での被害者は出ていないだろう。

だが、中には例外もいる。本当に例外中の例外だが、例えば第一九学区で起きている出来事を
確認したいと、わざわざ危険を承知で第一九学区に近付いている人間がいたとしたらどうだろうか?


例えば『アイテム』。浜面仕上と滝壺理后、麦野沈利の三人は
エイワスが施した光のオーロラ状の壁付近から一気に一〇〇メートル近い距離まで吹き飛んでしまっていた。


「・・・・・・・・・・・・た、きつぼ。 ・・・・・・むぎの・・・・・・」




868 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:01:38.099q3HpP9po (22/32)



どれくらい気を失っていたのかも分からない。浜面はゆっくりと目を開けて呟いた。

生きている事が奇跡だった。奇跡というよりはもはや不自然といってもいい。
浜面が盗んだ軽自動車の中にいたことが生命線をギリギリのところで繋ぐ原因になったのだろうか。

その軽自動車はひどい有様になっていた。ガラスというガラスは全て粉々に割れており、
車体はグシャグシャに歪み、どういう交通事故を起こせばこんなことになるのかと言いたくなるような状態だった。

浜面は未だに聴覚が戻って来ない耳を気にしながら車内をもぞもぞと這う。
車体はタイヤが仰向けになる形で、綺麗にひっくり返っていた。
浜面は隣の助手席に目をやる。呼吸が止まるかと思った。助手席に座っていたはずの滝壺の姿がなかったからだ。

後部座席"だった"場所にも視線を向ける。しかし予想通り、そこに麦野沈利の姿は無かった。


(ち、きしょ・・・・・・。 一体全体何がどうなってやがんだ・・・・・・!!?
 また戦争でもおっ始めてるってのかよ・・・・・・!!!)




869 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:02:38.309q3HpP9po (23/32)



浜面仕上は諸事情により、第三次世界大戦に巻き込まれている。
あれはまさに地獄を再現したような戦争だった。二度と関わりたくないと素直に思った。

頭から生温い液体が頬を伝ってくる。頭部からの出血だった。
軽傷ではない、このまま目を閉じたら死ねる自身があるくらい浜面はダメージを受けていた。

と、そんな馬鹿な事を考えていると、


「はまづら・・・・・・はまづら・・・・・・!! 大丈夫・・・・・・!?」


その第三次世界大戦で必死になって守り続けてきた浜面の一番大事な人間の声が車外から聞こえてきた。
どうやら滝壺理后は生きているようだ。彼女の声を聞いた浜面の表情が綻ぶ。

ベキベキベキッ!!!、という鉄板をへし折るような音がした。
浜面の目の前にある、助手席側の扉がめくれ上がって外の景色が飛び込んできた。


「浜面、そこから這って外に出れる?」

「麦野か? 良かった・・・・・・お前も無事だったんだな。 ・・・・・・ちょっと待っててくれ。
 シートが邪魔だけど何とか出られると思う」




870 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:03:26.039q3HpP9po (24/32)



浜面はズリズリと芋虫のように体を這わせ、やっとの思いで外に出る。
腕にガラス片がいくつか突き刺さっていたが生きていただけ御の字だ。

外にいた滝壺と麦野も無傷ではなかった。滝壺は着ているジャージが所々破れているし、
麦野も頭から軽く出血しており、左腕の義腕が不自然な方向に折れている。


「何があったんだ・・・・・・?」

「わかんない。 けど学園都市全域に及ぶ爆破があった事だけは確か。
 携帯がぶっ壊れたから絹旗とは連絡つかないけど、あいつは第七学区にいたから
 多分無事でしょ。 ただ第一九学区周辺の学区はダメだね。 ほら、」


麦野が顎を少しだけ動かして示す。
彼らがいる第六学区は荒れていた。まるでそこだけ集中的にハリケーンでも起きたかのように
建物のガラスは吹き飛び、遊園地から飛んできたのか、メリーゴーランドの白馬の乗り物が
無造作に転がっている。


「・・・・・・・・・・・・ふざけやがって」




871 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:04:18.219q3HpP9po (25/32)



毒づく浜面に歩み寄った滝壺が持っていたハンカチで彼の頭の血を拭う。
浜面は彼女に感謝しながら考えた。この学園都市で今何が起こっているのか。

だが、浜面程度の頭ではいくら思考を巡らせてもそれらしい答えには辿りつけない。
それは滝壺や麦野も同じだった。もう彼らに出来る事はただ一つ、これ以上この騒ぎに首を突っ込まないようにすることだけだった。

とにかく第一九学区から遠く離れて避難したほうが良いと、浜面は二人に声をかけようとしたところに、


「ん?」


遠くの方から足音が聞こえてきた。誰かが走っている。
三人がその方向へ目を向けると、第六学区にある遊園地へ続く道を二人の人影が走っていくのが一瞬だけ見えた。
一人は異国のシスターのようなコスプレをした女の子だった。そしてもう一人は、


「・・・・・・あいつ、確か断崖大学の時の・・・・・・?」


二人はその人影を無視したが、浜面仕上は見覚えがあった。
確かあれは十月初旬、御坂美鈴襲撃のために断崖大学にいた浜面の前に立ち塞がった、無能力者ではなかったか?




872 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:05:32.709q3HpP9po (26/32)



――――――――――――――――――――――


「・・・・・・なんだ? あの壁・・・・・・」

「とうま、怪我は大丈夫?」

「ああ、問題ない。 インデックスこそ平気かよ?
 さっきは思いっきり吹っ飛ばされたけど・・・・・・」

「大丈夫なんだよ。 とうまが守ってくれたから」


学園都市の無能力者(レベル0)、上条当麻とイギリス清教のシスター、インデックスもまた、
第六学区と第一九学区の境界線付近まで足を運んでいた。

彼らは青髪ピアスと吹寄制理の制止を振り切り、『警備員』の目を盗んで
第七学区から三時間以上もかけて全力疾走でこの場所に向かっていた。

途中、この世のものとは思えないほどの大爆発が発生し、二人は爆風に飲み込まれた。
上条は咄嗟にインデックスを懐に抱え右手を突き出したが無意味だった。
あっさり吹き飛ばされて地面を何度も転がるハメになってしまう。




873 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:06:52.189q3HpP9po (27/32)



だが幸い、上条はともかくインデックスは軽い擦り傷で済んだ。
上条も全身傷だらけになってしまったが、命に関わるような怪我は負っていない。


そして現在、二人は第一九学区周囲に展開されている光のカーテンの前までたどり着いていた。


「インデックス、この壁って魔術で出来た物なのか?」

「・・・・・・ごめん、分からないんだよ。 私の中の魔道書にもこんな魔術は記載されていないし、
 私自身もこんな物は見たことがないかも」


インデックスの脳に収められている一〇万三〇〇〇冊の原典にも、『完全記憶能力』という
特異体質を秘めるインデックス自身も、この壁については全く知らないという。
だが上条から見てもこれが魔術以外の技術、例えば科学的な人工物だとは思えなかった。
要するに、この壁は『異能の力』で構成されているということだ。

ならば上条当麻がその右手に宿す、全ての異能の力を打ち消す『幻想殺し』なら壁を壊せるはず。
だが上条は自分の右手を見つめながら迷っていた。本当にこの壁を壊してしまってもいいのかと。

もしかしたらさっきの爆風もこの壁があったから威力が弱まって自分たちは助かったのではないか。
もしこの壁を破壊した結果、さっきのような爆発が発生したら学園都市そのものが吹き飛んでしまう程の
被害を被ってしまうのではないか。




874 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:08:36.629q3HpP9po (28/32)



(・・・・・・どうする? どうすればいい、この壁を破壊しちまってもいいのか・・・・・・!?
 第一九学区で起こってる事はやっぱり只事じゃない。 第三次世界大戦がおままごと
 に思えるくらいの事が起きてんじゃないか・・・・・・。 ・・・・・・でももしこの壁を壊して、
 そのせいで誰かが傷つくような事があったら・・・・・・・・・・・・)


じわり、ときつく握り締めている右手が汗ばむ。自分としては、今すぐにでも
第一九学区に入ってこの騒ぎを食い止めたい。しかしこの壁を破壊してしまってもいいものなのか、
上条当麻は最後の決断を下せずにいた。

と、壁の前で立ち往生している彼に、すぐ後ろからインデックスが声をかける。


「行ってみよう、とうま」

「インデックス・・・・・・。 で、でも、これって第一九学区にいる魔術師か誰かが
 他学区にまで被害が及ばないように設けた壁じゃないのか・・・・・・?
 それを壊しちまったら俺・・・・・・」

「多分だけど、壁が破壊されてもその魔術師はまたすぐに壁を出現させられるはず。
 目測でしかないけど、その魔術師はこれだけ巨大で強固な壁を一瞬で作り出せるような魔力を秘めていたんだよ。
 そんな魔術師、聞いたことないかも。 だからとうまが右手でこれを壊したら、魔術師は必ずそれを察知して
 再び一瞬でこの壁を出現させると思う。 ・・・・・・自分勝手な意見だけど、私達が中に入るにはそれしかないかも」




875 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:12:12.479q3HpP9po (29/32)



二人はこの光のオーロラが出現する瞬間を目撃している。なにせ高度一〇〇〇メートル以上の巨大な壁だ、
遠く離れた位置からでもそれは確認できる。そしてその壁は、まるで最初からそこにあったかのように
一瞬で出現していた。並の魔術師では、いや、例え世界に名を馳せるような大魔術師でも果たしてそんな事が出来るのか。

上条は目を閉じ、しばし沈黙する。
これは賭けだ。インデックスの言ったとおり、自分勝手な理由でこの壁を破壊して、もしそれで
誰かが酷い目に遭うような事があったら・・・・・・。しかし、自分たちが一旦第一九学区に入れば
必ずこの騒ぎを止められるという自身があった。これまで様々な事件に関わってきた経験もあっての自身だった。

上条はバシッ!と自分の両頬を強く叩いて喝を入れる。これから自分たちが首を突っ込む場所は、
地獄すら生温いと思える戦場だと強く心に念じる。そして必ず、学園都市のために、学園都市に住む人間のために
この騒ぎを終わらせてみせると強く誓った。

『幻想殺し』が宿る右手を握り、インデックスの方を見て上条は言った。


「・・・・・・それじゃあ、行くぞ」

「うん」


上条は右腕を思い切り振りかぶり、叩き割る勢いで右手を壁にぶつける。
パキイィィィィン!!!!!!、という甲高い音が鳴り響いた。




876 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:15:18.169q3HpP9po (30/32)



そして上条は絶句する。


「・・・・・・・・・・・・え?」


『幻想殺し』で異能の力を打ち消す時の独特の手応えは確かに感じた。
だが依然として、光の壁は第一九学区への侵入を防ぐように、上条達の目の前に君臨していた。


「な、何で消えねえんだ・・・・・・? これも魔術の一環のはずだろ・・・・・・」


上条はもう一度右手を壁に押し付ける。だが今度はもう、異能の力を打ち消す感触すらしなくなった。
普通の右手で、普通の壁を触っているような感触しか伝わってこなかった。間違いなくこの壁は『異能』で
あるにも関わらず、まるで"『幻想殺し』が破壊する必要がないと判断しているかのような錯覚さえ覚える"。


「と、とうま・・・・・・」

「・・・・・・意味が分かんねえ。 何だよ、どうなってんだちくしょう・・・・・・!!!」


第一九学区から絶えず聞こえてくる銃声や爆撃音を聞きながら、二人は呆然と立ち尽くすしかなかった。


もうここは、"招かれざる客"は絶対に入れない不可侵領域だと認めざるを得なかった。




877 ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:23:04.739q3HpP9po (31/32)

ここまでです。前回の投下が少なめだったんで今日はちょいと多めに。

地球誕生以来最大規模の戦いっつってもそれが第一九学区だけで起きてるってんじゃ
スケール小さい感が否めませんよね・・・・・・。地球を巻き込んでしまうのはもう少しあとになります。
頑張れ地球、>>1は限界だー

そして上条当麻と浜面仕上。上条当麻は特に動向が注目されていましたが、
なんと舞台にすら上がれないという事態に。
このまま上条の出番は終わってしまうのでしょうか。


次回は第一九学区に『天使同盟』より早く侵入していたネズミが出てきます。
どうかお楽しみに・・・・・・。

次回更新は三日以内。

それでは、今日もありがとうございました!




878次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI2011/05/17(火) 23:24:57.299q3HpP9po (32/32)




                          【次回予告】



『まさかアンタみたいな大物まであいつらと関わってたなんて。
 助けてもらったお礼と自己紹介は今しておいた方がいいかしら?』
―――――――――――ローマ正教の暗部『神の右席』の元一員・前方のヴェント




『どちらも後にしましょう。 まだ援軍がこちらに向かってきています』
―――――――――――イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師・神裂火織




『・・・・・・あー・・・・・・、お前・・・・・・ステイル、だっけ』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・垣根帝督




『覚えててくれたのか。 まあ、君みたいな無茶をする馬鹿に覚えられても
 ちっとも嬉しくないんだけどね。 ・・・・・・久しぶりだな、垣根帝督』
―――――――――――イギリス清教『必要悪の教会』所属の魔術師・ステイル=マグヌス






879VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 23:27:34.35IVroh8ic0 (1/1)


上条さんキt……あれー……
一方さんとガブリエルのターンが待ち遠しい


880VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/05/17(火) 23:31:36.85JiSDFZW9o (1/1)


ネセサリウスの二人組登場か
この二人ってコンビ組んでたの最初だけなのに妙な安定感あるよね


881VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/17(火) 23:32:11.08NWHR0sAuo (1/1)



流石の上条さんも主人公ではないこの物語には介入できないか
てか、介入しても回収部隊に襲われたら右手だけではどうにもならん気がするしな……


882VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/17(火) 23:33:04.052l0kLO8E0 (1/1)

ステイルキターーーーーー!!!!!!!!!!!!!


883VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/17(火) 23:37:14.23XuovpZ0Lo (1/1)

ステイルさんがここにきたってことは何か新しい魔術的なものが完成したのでは・・・!!


884VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方)2011/05/17(火) 23:38:03.39vzCqgJ+AO (1/1)


ステイルとねーちんキターーーー!
ステイル&ていとくんでダブルイノケンティウス、いやクワドループルトイノケンティウスが見れるかもしれんとは胸が熱くなるな
しかし上条さんは介入不可か


885VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/05/17(火) 23:39:01.88DR6T6MDko (1/1)

うん。上条は今回お呼びではないからな
主役のはずだろ、、頑張れ、一方通行


886VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 23:40:23.74tayZLbbco (1/1)


オーバーレベル5の大群とか上条さんには鬼門だし介入しない方が吉か
次回は新旧イノケンコンビが見れたりするのかね

それにしても>>877の
>頑張れ地球、>>1は限界だー
が某エキセントリックな少年ボーイを思い出さずにはいられない


887VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)2011/05/17(火) 23:44:06.13pJtVZOv10 (1/1)

よし、初遭遇
上条さんがどうなるか気になってたがまさか門前払いとはwwwwww


888VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 23:44:24.61L55r3SPr0 (1/1)



インデックスがエイワスに頭の中を整理されたみたいな感じだったから、
てっきりインデックスと上条さんは物語にだいぶかかわってくると思ってた


889VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/17(火) 23:45:10.24JadGHKqd0 (1/1)

乙なんだよ!
まさか戦場に残るネズミ…いや、舞台に上がる役者がこんなラインナップだとは!
そしてエキセントリック少年ボウイやめろww


890VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 23:56:03.90u2xEDiVS0 (1/1)

乙乙!
ステイルと垣根の炎の魔術師遭遇ktkr!

それに引き換え上条さんェ…
…いや、まだ門前払いと決まった訳じゃない
のーみそこねこねされちゃったインデックスの見せ場がきっとあるんだよ!


891VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/17(火) 23:59:13.37XvIMfj5x0 (2/2)


中条さんの判断により、上条さんはシャットアウトされました
でも浜面たちと遭遇フラグは立ったし、このまま出番終了するとも……


892VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)2011/05/18(水) 00:15:54.105IF4yvOAO (1/1)

二人(?)のおかげで地球がヤバい
というか、エイワスが負ける場面が想像出来ないんだが


893VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/18(水) 00:33:50.00MU1vAvrbo (1/1)

アレイスターがそこまで強いとは思えないけどね


894VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/05/18(水) 00:36:29.35EnrsY1XAO (1/1)

前スレ>793の
明日。
垣根帝督がとった行動で、とある銀髪のシスターが悲痛の涙を流してしまうとも知らずに。

って、もしかして…。


895VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)2011/05/18(水) 00:42:01.01vWLhg8mp0 (1/1)

わざとやってんじゃねぇかって思うくらい気持ちよく間違ってるけど自身→自信な。
こういう間違いは読んでて萎えるから気をつけてくれ。
話は最高に面白いのに。


896VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/05/18(水) 01:08:26.81/mR3LkGoo (1/1)

まぁそういうのは取りあえず置いておいて1乙しようぜ!

次回の更新も待ち遠しいぜ


897VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県)2011/05/18(水) 06:59:30.65iAhd9vD/0 (1/1)

乙でっす!!
エイワスさすが!


898VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/18(水) 07:24:02.41tgyhjMvIO (1/1)

>>895


899VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2011/05/18(水) 12:17:40.00OHxt9NXE0 (1/1)

乙でーす



900VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/18(水) 15:12:20.26JzxftZCAO (1/1)

エイワスはあれだな、良い油を使った[たぬき]なんだな。


901VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/18(水) 17:00:27.39ySeJNFBJ0 (1/1)

乙!
エイワスと☆の対決……胸熱やで!


902VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/18(水) 17:42:47.91TejLR3a80 (1/1)

エイワス☆マジックという名のどこでもドアで
☆を太陽の中に飛ばすことはできないものか


903VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/18(水) 20:51:57.27MvB5N/fAO (1/1)

         ↑太陽

       ☆
       /
      /
      //
     //
     ///
    ///
エイワス マジック!

こうですかわかりません


904VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/18(水) 21:14:58.32X5FCqiGd0 (1/1)

おつおつ
上条さんに主人公補正がかからなくなってしまった…


905VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/05/18(水) 22:09:28.0058nEat4Q0 (1/1)


ステイルとていとくんのコンビネーションに期待


906VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/05/18(水) 23:26:47.48KsY8/jjg0 (1/1)

>>1乙!!
よっしゃあああああああステイル来たああああああああああああ



907 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:36:00.71nS2L2I+Yo (1/19)

>>895
大変申し訳ない・・・・・・深く反省します。
未だに誤字脱字が直らないのはいただけませんね・・・・・・長期間やってるのに

>>902
大気圏外への干渉はちょっと・・・・・・ww 今のエイワスは所詮AIMの結晶なので


こんばんわ、投下しに来ました。
つか何か次スレの匂いが漂ってきましたね。次で終わるかなぁ

前回はエイワスvsアレイスターの開幕。上条当麻と浜面仕上の門前払いという展開でした。

今回はついに、学園都市に侵入したネズミが登場します。
思いっきり次回予告でバラしてますけど気にしない。

では、いきます!


908 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:36:38.42nS2L2I+Yo (2/19)



――――――――――――――――――――――


瓦礫の山の中で目を覚ました風斬氷華とヴェントは周囲を警戒しながら歩き、
第一九学区の廃ビルの中に入っていった。


「ここでいい、アンタはもう行け」

「・・・・・・ここなら『回収部隊』も追ってきませんかね?」

「どこだろうがあいつらはやってくる。 でも私は傷の回復時間さえ稼げればそれでいい。
 ここで傷を癒せばまた戦える」


風斬は抱きかかえているヴェントをそっと降ろす。
ここは恐らくマンションだったビルなのだろう、ほぼ全壊している部屋の一室に、
わずかだが人が生活していたような痕跡が見られる。

屋根や天井はない。『回収部隊』辺りの攻撃が流れてきて破壊されてしまったのだろう。
壁も頼りない程度にしか残っておらず、こんなところにヴェントを置いていくのは躊躇われたが、
さすがにこれ以上うろちょろしてると『回収部隊』に見つかってしまう恐れがあるため
苦渋の決断でヴェントをここに降ろすことにした。




909 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:37:45.42nS2L2I+Yo (3/19)



「・・・・・・・・・・・・ヴェントさん」

「いいから行けっつってんだろ。 万が一仮面の野郎共が来たところで、
 この私があんな奴らにやられると思ってんの?」


アレイスターと対峙していた頃よりは幾許か傷は回復しているようだが、
それでも風斬から見るヴェントは満身創痍の状態にしか見えなかった。

しかし実を言うと、そんなヴェントよりも風斬のほうがより消耗が激しかった。
出血や傷はAIM拡散力場の集合体である彼女からは見受けられないが、
アレイスターと二連戦するという熾烈な状況に置かれていた彼女も、もはや戦闘不能寸前と言える状態だった。

ここで時間を食って『回収部隊』に攻められでもしたら、一方通行達と合流出来る可能性が無くなってしまう。
風斬は最後まで心配そうな表情でヴェントを見つめ、背中の翼を羽ばたかせて足を地から離す。


「・・・・・・・・・・・・風斬」

「?」

「また機会があったら・・・・・・ご飯食べに行こう」

「・・・・・・そんな不吉なこと言わないでください! 必ず、また一緒に」

「・・・・・・ふん」




910 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:38:26.53nS2L2I+Yo (4/19)



そう言って、風斬は静かに飛翔していった。
戦闘の騒音が鳴り響く学園都市で、ヴェントは一人残される。


風斬が飛び立って数分が経過した頃だろうか。
動ける程度まで回復したヴェントが壁に手をつきながらよろよろと立ち上がると、


「・・・・・・もうおでましか。 もう少しくらいゆっくり休ませろよ」


いつの間にか、『回収部隊』の連中がヴェントが身を潜める廃ビルの周囲を取り囲んでいた。


動けるとは言うが、それでもまだ満足に戦闘を行えるような状態ではない。
それでもヴェントは最後まで諦めなかった。風を呼び、その手に有刺鉄線付きのハンマーを携える。
兵士達が身につける『未元物質(ダークマター)』の仮面が怪しく発光する。ファイブオーバーがガトリングレールガンの
銃口をヴェントに向けて正確に構える。


(・・・・・・『また一緒に』、か。 どうせ死ぬなら、あいつに殺してほしかったかな)




911 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:39:41.81nS2L2I+Yo (5/19)



仮面の兵士の一人が『未元物質』の翼を斬撃用に変化させ、容赦なくヴェントの首を切断せんと振るってきた。
その瞬間まで、ヴェントは幸せそうな笑顔を浮かべていた。
そして、


ザンッ!!!、と人間の肉を斬ったにしては、あまりに呆気無い音だった。
ヴェントがいた廃ビルの壁に大量の血糊が飛び散る。
ドシャ・・・・・・と、人間の体が倒れる音がした。


ただし、それはヴェントではない。
倒れた人間の顔には、のっぺりとした白と金の仮面が装着されていた。


『!?』


ファイブオーバーと仮面の兵士が一斉に視線を同じ方向へと向ける。
だがその瞬間、複数のファイブオーバーはコックピットにいた仮面の兵士ごと斬り裂かれ、
仮面の軍隊たちも全身を一瞬で斬られて地面へ落下していく。




912 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:40:31.66nS2L2I+Yo (6/19)



ヴェントは『回収部隊』を切り捨てた者の正体を視界に収めた。
その人物が口を開く。


「あなたも『天使同盟』との関わりで学園都市に?」

「・・・・・・まあね。 でも驚いたわ、まさかアンタみたいな大物まであいつらと関わってたなんて。
 助けてもらったお礼と自己紹介は今しておいた方がいいかしら?」

「どちらも後にしましょう。 まだ援軍がこちらに向かってきています」


その人物は二メートル以上はあろうかという巨大な日本刀を構えて背後を睨む。
ヴェントがその人物と会うのはこれが初めてだったが、話だけは聞いたことがあった。


確かこの女は、イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』に所属している、"聖人"だったはずだ。




913 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:42:35.34nS2L2I+Yo (7/19)



――――――――――――――――――――――


『数』という名の暴力の恐ろしさを、学園都市の第二位は心身で感じることになった。


垣根帝督はエイワスとアレイスターによって引き起こされた極めて強烈な爆風を
『未元物質』で防いだ後も、一心不乱に『回収部隊』と交戦していた。

魔術。垣根帝督という『超能力者』が手に入れた、科学の視点から見れば未知の法則。
彼はルーンという道具をフル活用し、両手に赤と青の炎剣を携えて『回収部隊』を蹴散らしていく。
ファイブオーバーも『未元物質』の仮面部隊も、やはり魔術の法則までは対応出来ないでいた。
そのため垣根が魔術を発動してからしばらくは彼一人による無双状態が展開されていたのだが、


「・・・・・・・・・・・・ったく、何、匹、殺れば、終わるん・・・・・・だっつの・・・・・・」


ボタボタと血が地面に落ちていく。それは垣根帝督の口から、頭から、全身から。
能力者が魔術を行使する際に起こる副作用。拒絶反応とでも言うべきか。
それは彼の体を容赦なく食い散らかしていき、徐々に『死』へと追い込んでいく。


そしてここで、ついに垣根の魔術による猛攻が止んでしまう。




914 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:43:47.75nS2L2I+Yo (8/19)



(一〇〇〇は殺ったはずだ・・・・・・。 確か総人数は一五〇〇だったか。
 ・・・・・・あと三分の一、か・・・・・・)


構えていた両手をだらりと下げる。その隙を突いて周囲に潜む『回収部隊』が一斉に攻撃し始めた。
垣根は再び炎剣を構え、その攻撃を薙ぎ払っていく。

第一九学区は現在、死屍累々の地獄絵図と化していた。どこを見ても必ず黒のコスチュームに身を包んだ
死体がゴロゴロと転がり、中にはファイブオーバーの破片と一緒に溶けて固まっているような死体まである。

それらは全て、垣根が仕留めた『回収部隊』の人間達だった。
多数を相手取って長時間戦い未だ生存している垣根帝督も見事なものだが、
そんな彼もこの死体の山の一部に加わってしまうのは時間の問題だった。

垣根はただひたすら炎剣を振るい続け、時には背中の『未元物質』を使い、
死に物狂いで敵を殲滅していく。
他の『天使同盟』の戦況も気になるところだったが、今それを調べるような余裕は残っていない。


と、魔術の使用による拒絶反応で垣根の目に血が入り込み、一時的に視界を奪われてしまう。




915 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:44:44.46nS2L2I+Yo (9/19)



(しまっ・・・・・・)


拭っている暇はない。こうしている間にも『回収部隊』は垣根に向かって攻撃を仕掛けてきている。
垣根は血を拭うことを諦めて応戦しようとするが、視界を気にした一瞬の隙が原因だったのか、
相手の攻撃の方がわずかに早く届く事を垣根は本能で理解した。

死。

思わず垣根の脳裏にそんな言葉が浮かんだ。しかし、


ゴォォォッ!!!!、という轟音が鳴った次の瞬間には、垣根の目の前に炎の海が出現していた。
垣根に向かって飛翔していた大量の『未元物質』部隊が炭になり、そして灰となって散っていった。


「・・・・・・なん、だ?」


垣根が使用している魔術は炎の魔術だ。『回収部隊』は今の炎の海は垣根の攻撃だと
思っているようだが、それは違っていた。
なにせ垣根自身も、その炎の海を見て目を点にしていたのだから。




916 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:46:47.10nS2L2I+Yo (10/19)





「炎剣の使い方が雑すぎる。 他の魔術に比べれば劣るが、炎剣の応用性は実は割と高い。
 炎剣の刀身を団扇のような形にして叩きつけたり、今のように刀身を伸ばして
 一線に薙ぎ払う事だって可能なんだ。 もっと頭を柔らかくしてはどうかな」




声が聞こえた。その声を垣根帝督は聞いたことがあった。
横に視線を送る。揺らめく炎の海の中から、誰かが悠然と歩いてきていた。
人影を見る限りでは、その人物はかなりの長身。そして衣服を何枚も着重ねているような厚着。


「けど・・・・・・実際、敬意にすら値するよ。 僕が炎の術式の開発と応用に
 一体どれほどの年月をかけて、どれほどの犠牲を払ってきたと思っているんだ。 
 ・・・・・・まったく、どこの誰から教わったのか知らないが、君達と別れてからこの短期間でどんな訓練をしてきたんだか」




917 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:47:19.96nS2L2I+Yo (11/19)



「・・・・・・あー・・・・・・、お前」


その魔術師は長く炎のように赤い長髪を靡かせていた。
あちこちに派手なアクセサリーを身につけ、神父らしからぬきつい香水の匂いを漂わせている。
右目の下にはバーコードの刺青、その口には煙草が咥えられていた。


「・・・・・・ステイル、だっけ」

「覚えててくれたのか。 まあ、君みたいな無茶をする馬鹿に覚えられても
 ちっとも嬉しくないんだけどね。 ・・・・・・久しぶりだな、垣根帝督」


ステイル=マグヌス。イギリス清教『必要悪の教会』に所属する、天才魔術師。
彼もまた、この『茶会』の舞台に半ば強引に招かれた役者だった。




918 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:48:33.35nS2L2I+Yo (12/19)



――――――――――――――――――――――


どうにかその場にいた『回収部隊』を殲滅した垣根とステイルは
辛うじて形を残していた商店街に並ぶコンビニの中に身を潜めていた。
店内は当然ながら、営業が再開できるような状態ではなかった。
商品という商品がまるで店内限定で発生した竜巻に見舞われたかのようにあちこちに散乱しており、
キャッシュレジスターはコードが千切れた状態でひっくり返って中の小銭や紙幣が飛び散っている。

垣根は壁に背を預けて座り込み、手に持っているルーンをしげしげと眺めていた。
右手には自分で作ったルーン、左手にはステイルが自作したルーンがある。
難しい顔をしながら垣根はそれらを見比べる。


「・・・・・・・・・・・・なんだこれ? ラミネート加工?」

「学園都市で販売されていた高性能・・・・・・カラープリンタ?
 それを使ってルーンの表現力を高めているんだ。 自作では手間がかかるが
 カラープリンタなら一発で大量に生産出来るからね」

「ちょっと待てや。 カラープリンタでルーンって強化出来るのかよ!?
 科学が混じってどうする! そんなんでいいなら俺が一手間一手間かけて
 作り出した俺の苦労は一体どうなる?」

「魔術だけに囚われていては未来は見えてこないということだ。
 ・・・・・・まぁ正直、僕も機械に頼ってルーン魔術の強化を施すことには
 抵抗があったんだけどね。 大切な者を守るためだ、選り好みなどしていられないさ」




919 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:50:07.04nS2L2I+Yo (13/19)



がっくりと項垂れる垣根を見て肩をすくめて大袈裟なリアクションをとるステイル。
科学の力で魔術を強化。こうして考えると、科学と魔術は案外背中合わせのように近しい概念なのかもしれない。


「この街の至る所にルーンの札が貼りつけてあったけど・・・・・・あれも君の仕業なんだろう?」


ステイルは吸い終えた煙草を一瞬で灰に還すと、改めて懐から煙草を取り出し口に咥え、
ライターも使わずに火を付けた。


「まあな。 火の玉や炎剣だけじゃねえぞ、俺が会得した魔術は。
 ・・・・・・もっとも、ワシリーサとの訓練で使ってねえ魔術がまだ一つある。
 そればっかりはぶっつけ本番って事になっちまうけどよ」

「応用は? 炎で攻撃するだけがこの魔術の能じゃない。
 温度変化を利用した蜃気楼の現出、人払いのルーン、『神隠し』・・・・・・etc。
 ルーンを極めたというならその辺の応用にも長けていないとね」

「極めたなんて一言も言ってねえよ。 テメェに言わせりゃ俺なんて
 まだまだひよっ子なんだろうが・・・・・・別に俺は本物の大魔術師になろうだなんて
 考えちゃいねえ。 ちょっとかじる程度に使えりゃそれでよかったんだ」

「・・・・・・、」




920 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:52:33.87nS2L2I+Yo (14/19)



隣で座り込んでいる垣根をジッと見つめるステイル。
その表情は一見無表情ながら、どこか驚愕の色も含まれていた。


(・・・・・・"ちょっとかじる程度"であれだけルーンを使いこなせるわけがない。
 特にこの男が使用していた『吸血殺しの紅十字』。 あれは一朝一夕で
 習得できるような魔術じゃないぞ・・・・・・? 垣根帝督、一体どんな無茶をすれば
 この短期間でこれほどまでに・・・・・・・・・・・・)


ふぅー・・・・・・と口から煙を吐き出し、ステイルは話題を変える。


「・・・・・・敵の数は?」

「奴さん、全部で一五〇〇とかほざいてやがったが実際はどうなのか分からねえ。
 少なくとも一〇〇〇は固いが・・・・・・つかお前、何でここにいんの?」

「僕だって来たくて来たわけじゃないさ。 ある意味君たち『天使同盟』のせいとも言える。
 君たちが秘密裏にイギリス清教と協定を結んだことによって、イギリス清教は『天使同盟』に
 干渉出来る立場になってしまった。 それで『最大主教』が僕に命令を送ったのさ。
 『天使の存在が危ぶまれている、学園都市に向かい天使存続のために貢献してこい』・・・・・・ってね。
 まったく・・・・・・学園都市に"あの子"がいるから今回は僕の利害とも一致しているとはいえ、
 それが無ければこんな時代の命運を懸けたような戦争に誰が好き好んで首を突っ込むものか」




921 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:54:12.72nS2L2I+Yo (15/19)



垣根には詳しい事情は分からなかったが、ステイルはイギリスでローラ=スチュアートと共に
エイワスから手紙を受け取っていた。

その手紙の内容は今現在学園都市で起こっているこの戦いの詳細が書かれていた。
アレイスター=クロウリーの出撃、ミーシャ=クロイツェフ消滅の危機、十字教存続の危機・・・・・・。
手紙に書かれていた事はまるで今回のこの戦争が起こると予め分かっていたとしか思えないような物だった。

ランベスにある『必要悪の教会』の女子寮やバッキンガム宮殿に送られた手紙も
ステイルが受け取った物とほぼ同じ内容だ。


「テメェ以外にも魔術師が来てんのかよ?」

「神裂火織。 君たちも彼女に接触しているだろう? 天草式十字凄教の女教皇だよ。
 僕は彼女と一緒に手紙を貰ってすぐに学園都市に侵入したのさ」

「げ・・・・・・あの露出狂、ここに来てんのかよ・・・・・・」

「僕と神裂であのワケの分からない仮面と機械の塊はかなりの数を減らせたはずだが・・・・・・
 君の方でも何体か討っているんだろう?」

「一〇〇〇強。 詳しくは数えてねえ」

「なら、あと少しで全滅だな」


周囲はさっきまでとは一転、不気味なまでに静まり返っていた。
時折地面が揺れたり爆発音が遠くから聞こえたりはするが、『回収部隊』が攻めてくる様子はない。




922 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:55:39.05nS2L2I+Yo (16/19)



ステイルは口の煙草を指で挟んで話しながら現在の戦況を質問していく。


「ミーシャ=クロイツェフとアレイスター=クロウリーの状況は?」

「どっちも知らねえよ。 ただ、アレイスターは恐らくエイワスのクソ野郎と殺りあってる。
 さっきのアホみてえな爆発も多分あいつらの仕業だろ」

「・・・・・・僕達はミーシャの下に向かった方がいいのかな?」

「『回収部隊』のゴミ共がそれをさせてくれねえんだけどな。 あいつら、
 俺のためだけに編成された特殊部隊なんだとよ。 笑えるだろ?」

「何? どういう意味だ?」


垣根は呆れたように笑いながら指でこめかみをトントンと叩き、


「あいつらの狙いは俺の頭ん中にある脳みそだ。 アレイスターの命令だろうな。
 俺をまた学園都市の実験の玩具にしようって企みだろうよ」


ステイルは眉をひそめながら冷や汗を流す。垣根の言っていることの大半は理解できなかったが、
それでもなぜか、学園都市に利用される危機を迎えているという点が、かつての『あの子』と重なった。




923VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/18(水) 23:56:00.35cYgotFKt0 (1/1)

タブルイノケンティウスクルーーー?
きっとていとくんはイノケンティウスと合体するはず・・・・


924 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:56:36.82nS2L2I+Yo (17/19)



「・・・・・・とりあえず、僕らはその『回収部隊』とやらを追い払いながら
 ミーシャ=クロイツェフの下へ向かうとしようか」

「・・・・・・」


垣根は賛成も反対もせず、黙って立ち上がる。
彼としてはミーシャよりも先にアレイスターの方をどうにかしたかったのだが、
先の戦闘で垣根はアレイスターに指一本触れることなく敗北している。

つまり今ここでアレイスターの下へ向かっても垣根は何も出来ない。
その事実を受け止めざるを得ない事に彼は歯噛みするのだった。

と、ここで垣根はステイルを見て言った。


「おい、お前」

「なに、大した怪我じゃない。 ・・・・・・ただ、あの機械はともかく
 仮面の兵隊。 あの白い仮面は何かおかしい、どう考えてもこの世に既存する
 法則で働いているとは思えない力を現出させている」




925 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:57:29.13nS2L2I+Yo (18/19)



よく見ればステイルの体は所々が傷ついていた。黒のローブは出血で更に黒ずんでおり、
彼の顔にもじっとりと脂汗が出ているのが窺える。

ステイルは確かに魔術サイドでも一線を張れる天才魔術師だ。
だがそんな彼にとって今回の敵はあまりにも『未知』が過ぎた。『未元物質』、
防護術式で体を固めているステイルの体に傷をつけたのは、その未知なる力と圧倒的な数の暴力だった。


「行こう」


垣根とステイルはコンビニから外へ出る。最大限の警戒を行いながら
周囲の様子を確認するが、やはりまだ『回収部隊』が攻めてくる気配はない。
そのまま警戒の糸を切らさず商店街を歩いていると、


「ステイル!」

「!」




926 ◆3dKAx7itpI2011/05/18(水) 23:58:29.85nS2L2I+Yo (19/19)



廃ビルの一棟の中から声がした。
声の主はステイル達の姿を窓から確認するとビルの中から出てきた。


「神裂、無事だったか」

「無傷とはいきませんでしたけどね。 ・・・・・・お久しぶりです、垣根帝督」


黒の長髪をポニーテールに括り、無地の白いTシャツに根元までバッサリ切り落としたジーンズ。
腰に巻いたウエスタンベルトには七天七刀を携えている。

神裂火織。イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔術師にして
天草式十字凄教の女教皇。そして世界に二〇人といない『聖人』の一人だ。

だが垣根帝督が目を見開いたのは神裂火織の登場のせいではない。
その隣、肩口から斜め一直線に切り裂かれ血に染まったジャケットを着ている、
舌先に鎖をぶら下げたショートカットの女の子。




927 ◆3dKAx7itpI2011/05/19(木) 00:00:48.41yTCD0ejoo (1/3)



「・・・・・・・・・・・・ヴェント、だっけ。 え? お前何でここにいんだよ?」

「説明するのが面倒くさい。 ・・・・・・そっちの赤い髪は大体の話は聞いてるの?」

「ヴェント・・・・・・? 『神の右席』まで参加しているのか。 ・・・・・・ああ、
 状況は把握した。 ひとまず『回収部隊』と片付けながらミーシャに接触する」

「つか聞けお前ら。 あの白い仮面のクソ野郎との立ち回り方を教えてやる。
 魔術に関しちゃテメェらの方がお得意だろうが、『未元物質』のスペシャリストは俺しかいねえ」


神裂は無言で頷く。無傷とはいかなかったと言う彼女の体にも
腹に青アザが出来ていたり口元には血を拭ったような跡があった。

こうして、現在この第一九学区にいる魔術師がアレイスターを除いて全員集結した。
彼らの当面の目標は『回収部隊』の殲滅とミーシャ=クロイツェフとの接触。


『ゲーム』開始から一時間一五分が経過。『星の欠片』消滅予測時間まで残り四五分を切った。
しかしこの舞台に招待された役者は、これでもまだ全員揃っていない。




928 ◆3dKAx7itpI2011/05/19(木) 00:06:19.82yTCD0ejoo (2/3)

ここまでです。戦闘もなく比較的おとなしいお話でした。
垣根帝督とステイルのコンビネーションが期待されているようで、私としても冷や汗を流すしか無いというかその・・・・・・まあいいか


次回は一方通行とミーシャのターン。
このSSが始まった原因といってもいい、ミーシャがこの世界でやり残したことを成すために
無理を押して現世に留まった理由とか、そういうのが全部明らかになります。

ただ、期待しないでください。そんな大したことじゃないので・・・・・・


次回更新は三日以内。


それでは、今日もお付き合いいただきありがとうございました!


はよ役者全員揃えたいです


929次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI2011/05/19(木) 00:06:52.86yTCD0ejoo (3/3)




                          【次回予告】



『ハッ、鈍感どころか・・・・・・クソったれのクズ以下じゃねェか俺は!!!』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『だから、言うね。 私がこんなになってまで、「星の欠片」の事も無視してまで
 ktob私がこの世に居続けた理由。 私cmsがこの世界でやり残している事』
―――――――――――水を司る大天使・ミーシャ=クロイツェフ






930VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/19(木) 00:07:29.13b6aeJ1OEo (1/1)

乙だァ、そんなこと言われると期待しちまうよなァ


931VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/19(木) 00:13:59.08owmFvhF70 (1/1)

乙ッス
とうとう最終回か。さみしくなるな・・・・・



932VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/19(木) 00:58:44.17MQ4dAwRmo (1/1)

ステイルさん何だこの渋み…ベテランの風格じゃないっすか
頼もしい援軍も続々と集まって、物語が加速する。次回も楽しみにしてます
おつ!


933VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方)2011/05/19(木) 01:17:06.607l8GQ7IQ0 (1/1)


ワシリーサはカラープリンタの事を知らなかったのか、それとも知ってて黙ってたのか
……エイワスは間違いなく後者だな


934VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方)2011/05/19(木) 01:50:17.25rjE9p8X3o (1/1)

ルーンにカラープリンタとラミネート加工って結構ギリギリのラインだよなぁ
破滅の枝のリチャード的に考えて


935VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/19(木) 01:53:23.47zsv0cJPjo (1/1)



1時間15分で回収部隊1000人も殺ったのか
垣根くン、すげェな
ステイル+神裂も来たなら回収部隊は全滅だろうが、他にアレイスターに手ゴマはあるのかな?
まあ、本人と暴走してるガブリエルだけで全滅に追い込めそうな気もするけど


936VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/19(木) 02:27:38.65XCh0dPBDO (1/1)

1000人強とか三国無双かっての


937VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/19(木) 04:18:42.43xsaDiyxto (1/1)

おつおつ
クライマックスに向けて読み返してきたが
当初のギャグっぷりから今の展開なんて誰も想像出来ないな


938VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/19(木) 06:15:29.61VQ0vVht50 (1/1)

おぉ・・・いつも扱い雑なステイルがかっこいい
>>1クオリティ乙!


939VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)2011/05/19(木) 06:15:58.12Aci+MzP6o (1/1)

佳境だねえ。正しく言葉を使えるミーシャがかわいい。

前に100度のジェットコースターて、つうツッコミをしたんだけど、121度のが出来るみたいね。日本に。
逆反りって本当にあったんだなあ……


940VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/19(木) 09:19:01.92RfwVekODO (1/1)




垣根レイターに期待


941VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)2011/05/19(木) 13:53:58.926IImpfFG0 (1/1)

ステイル強いもんなぁ、ただいつも相手が悪すぎる
まともなのオリアナ位じゃなかろうか・・・


942VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県)2011/05/19(木) 20:18:26.75AY//Y8Gx0 (1/1)

やべ、ていとくんに惚れちまった


943VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/20(金) 02:22:15.90q/hfaRJ90 (1/1)

>>941 建宮も結構まともなほうだろ。

そんなことより1乙!


944VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/20(金) 05:45:48.277HHPxSfAO (1/1)

>>939
ヴェントが泣いて土下座するレベル


945VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/20(金) 09:51:53.07lxMX5J2vo (1/1)

>>939>>944
早くヴェントをつれてかなきゃ!


946VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県)2011/05/20(金) 16:23:52.66+lZWq/Qw0 (1/1)

俺が連れて行こう
誰か共に行く者があるか!


947 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:37:18.09KlepS9wCo (1/21)

では私が同行しましょう!

こんにちわ、ちょっと夜は都合が悪くなってしまったのでこんな時間帯ですが投下します。

今回、少し投下量が多いかも知れませんが、お付き合いいただけたらなと思っております。

一方通行とミーシャの場面から始まりです。それでは行きます


948 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:38:04.37KlepS9wCo (2/21)



――――――――――――――――――――――


二人がいるこの空間だけ、時間の流れという概念が無くなっているように思えた。
実際には今も周囲から戦闘による騒音が響いているのだが、一方通行にはもうそんな音すら
耳に入ってこなかった。

聴覚神経を全て"そちら"に集中させていたから。

声。

一方通行の頭に直接響いてくるように、ミーシャ=クロイツェフの声は彼に語りかける。


『・・・・・・ごめんなさい。 怪我は大丈夫?』

「・・・・・・・・掠り傷だ、こンなモン」


優しい、優しい声色だった。
一方通行は今まで何度かミーシャのノイズ無しの純粋な声を聞いたことがあるが、
いずれもここまで透き通った愛に溢れる声ではなかったように思う。




949 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:39:32.33KlepS9wCo (3/21)



『ずっと・・・・・・今までずっと、こうしたかった。 あなたに寄り添って、
 あなたとちゃんとお話がしたかった。 ・・・・・・こんな事になる前に、
 この世界から消える前に、話したかった』


ミーシャは自我を失った自分の攻撃でボロボロになった一方通行を
全身で抱きしめていた。長い間自分の子と離れ離れになり、数十年後の再会を喜び
自分の子を抱きしめる母親のような、慈愛に満ちた抱擁だった。


『突然こんな事をしてごめんね。 でも、こうしないと私の精神体と
 対象の精神体が接続出来ないから・・・・・・』

「?」

『こうして相手にちゃんとした声を伝えるjosnklときは、長時間相手に直接接触していないと駄目。 
 だから今まで、私はあなたとお話ochsをすることが出来なかった』

「なンだと・・・・・・? ・・・・・・だったら、なぜ最初からこォしなかった?
 抱きつくのもいいが、例えば手を握ってもこンな風に会話が――――」


と、不意に一方通行の言葉が途切れた。




950 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:40:35.26KlepS9wCo (4/21)



『うん・・・・・・』


待て、と一方通行は思う。
"相手に直接触れなければ言葉を伝達することが出来ない?"。
そしてミーシャはどうしても一方通行に伝えたい事があったという。

ならばなぜ最初からそうしなかったのか?それは今、一方通行が尋ねた事だ。

目の前が真っ白になっていく。自分の鼓動が徐々に早まっていくのを感じる。
違う。そうではない。なぜ最初からそうしなかったのか、ではない。


例えば、そんなことも出来なかったのだとしたら?


一方通行は『ある事』に気づき、ひどく呼吸が乱れていた。


「・・・・・・・・・・・・は、・・・・・・ァ・・・・・・。 ・・・・・・オ、マエ・・・・・・・・・・・・」




951 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:41:14.24KlepS9wCo (5/21)



『大丈夫だよ。 貴方のせいじゃない。 私。 私に非がある。
 だから貴方が気に病む事じゃない。 大丈夫』

「は・・・・・・・・・・・・ッ・・・・・・!! オマエ・・・・・・まさか、・・・・・・俺・・・・・・!!」


ようやく再開した呼吸はひどく乱れていた。どうすればいつものように酸素を取り込めるのかも
分からなくなるほど、一方通行は混乱、動揺していた。
彼の全身の震えを止めるように、ミーシャは取り乱す一方通行を更に強く抱きしめる。

相手と直接触れる機会が無かったんじゃない。機会ならいくらでもあったのだ。
ならば機会があったにも関わらずミーシャは何の行動も起こさなかったのか。
違う、それも違う。ミーシャは相手と、一方通行とコミュニケーションをとるために
ちゃんと行動を起こしていた。長時間一方通行に触れられるような行動を起こしていた。


だが、その行動を拒否されてしまったらどうだろうか?
そうなってしまったらミーシャも相手とコミュニケーションをとれないのではないか。


「・・・・・・う、・・・・・・うゥ・・・・・・オマエ・・・・・・まさか・・・・・・今までの・・・・・・
 今までのは全部・・・・・・そォいう意味で・・・・・・」

『自分を責めないで。 私のやり方が間違っていただけ』




952う、ぐ・・・・・・・・・・・・。 脳内変換お願いします・・・・・・ごめんなさい ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:42:05.05KlepS9wCo (6/21)



ミーシャ=クロイツェフはロシアの航空機で一方通行と再会し、学園都市へ帰ってからというもの、
事あるごとに一方通行に"抱きつこうとしていた"。彼に隙があればすかさず抱擁を試みていた。
そうすることで、長時間彼に接触することで、会話が出来るのだから。




そんなミーシャを、これまで自分はどう対処していた?




「う、うゥ、ううううううううううううううううううううう・・・・・・!!!!!!!」


ギキキキッッ・・・・・・と血が出るほど唇を噛み締めながら一方通行は獣のように唸った。
ミーシャの肩に手を添え、止まらない震えを止めようとしたが無意味だった。
柔らかな動作で頭を撫でてくるミーシャの行為がより一層自分の惨めさを際立たせた。


つまりは、そういう事だった。
ミーシャは一方通行と会話をするために触れ合おうとした。
一方通行はそんな彼女の行為の意味をよく考えもしないで、適当にあしらっていただけだった。




953 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:43:34.79KlepS9wCo (7/21)



一方通行はミーシャにすがるようにずるずるとへたれ込み、膝を地につける。
ミーシャは身を低くして再び一方通行を抱きしめた。


「・・・・・・・・・・・・俺が、寝てる時とかじゃダメだったのかよ」

『悪いと思ったけど、試したことはある。 貴方に寄り添って
 抱きしめながら寝た日があった。 でも駄dmjvi目だった、私の意志は貴方の中で
 「夢」に変換されて、私のcslvk意志が伝わらなかった』


言い訳などいくらでも出来たはずだった。
そんな事に気付けるわけがない。紙にでも書いてそれを見せてくれれば
いくらでもミーシャに触れてあげてたかもしれない。
もしくはエイワス越しの通訳でその事実を伝えてくれれば一方通行も理解していたかもしれない。

だから結局は、


『単なる私の我儘。 どうしても、自分だけの力で貴方vnbに想いを伝えたかった。
 だからこんなにxcvm時間xvjissewがかかっちゃった・・・・・・。 全部、私が悪い』

「違うだろ・・・・・・そォじゃねェだろ・・・・・・なンでオマエが悪いンだ・・・・・・。
 そォだよ、あンだけくっついてくるンだ・・・・・・何かあるンだと気付かねェ俺がおかしいンだ。
 『鈍感通行』・・・・・・。 ハッ、鈍感どころか・・・・・・クソったれのクズ以下じゃねェか俺は!!!」




954 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:45:34.84KlepS9wCo (8/21)



反論の余地を全て放棄した一方通行は声を上げて涙を流した。
人生で二度目の涙かもしれなかった。最初に流した涙は恐らく自分というクソ野郎が
この世に誕生した瞬間なのだろうが、それ以来涙を流した記憶は一方通行には無かった。


何が『天使同盟』。ミーシャ=クロイツェフの事を全て分かっていたつもりの愚かなリーダーは、
実際は何一つ、天使の気持ちに気付いてあげられていなかった。


そして気づいた時にはこの状況。学園都市は戦場と化し、ミーシャ=クロイツェフは消滅まで
残り一時間も無いという、あまりにも絶望的な状況。
出来るものなら、一方通行は自分で自分を呪い殺したかった。


『mboi泣かないで。 全部私の我儘dkvのせいでこxnhiんな事に
 なってるんだから。 貴方は何もvmgk悪くない、dhq貴方は私にこれだけ尽くlfstuしてくれた』


何もしてやれてねェよ!!!、と一方通行は爆発するように叫んだ。
よく聞けばさっきから頭の中に響くミーシャの純粋な言葉にさえ、ノイズが混じり始めている。
本当に一方通行が本気になって尽くしてやれていたならこんな事態も避けられたかもしれないと、
彼はひたすら自分を責め続けた。

ミーシャは青白く長い指でそっと一方通行の目元を拭いながら言う。




955 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:46:36.35KlepS9wCo (9/21)



『も・・・・・・もうこれ以上・・・・・・wiuy自我cvnを、保っていられない。
 だから、伝える。 私がこんなになってまで、「門」の事も無視してまで
 ktob私がこの世に居続けた理由。 私cmsがこの世界でやり残している事』

「・・・・・・!」


それは『天使同盟』が追う最大の謎と言っても過言ではなかった。
ミーシャ=クロイツェフがこの世界やり残している事。
一方通行達は『星の欠片』の行方と同時に、その謎についても散々調べ尽くしていたのだ。


『一言。 私の口から、貴方に直接言いたかった事がある。
 ・・・・・・それだけ、だよ』


ミーシャは凹凸で表現されている口の部分をモゾモゾと動かして、
自分の口で、自分の言葉で、自分の声で、一方通行にずっと伝えたかった言葉を送った。




956 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:47:21.32KlepS9wCo (10/21)








「ありがとう」









957 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:47:59.74KlepS9wCo (11/21)



たった、これだけ。
自分の身が元の『位階』へ還るという運命に無理やり抗ってまでやりたかった事は、
たった一言。一方通行に礼を言うだけという、あっさりとしたものだった。


けれど、彼女にとってはそれが一番大切なこと。それだけが全てだった。


『ロシアpqf,sの戦争で貴方とojvavq対峙したとき、貴方は私を恐れないと言ってくれた。
 理由はどうあれ、貴方はこの世界では異形lwpfkのaydrxm化物である私と対話をしてくれると
 言ってapveiくれた』


ミーシャは一方通行の体を自分の胸に寄せたまま、空を仰ぎながら言った。


『――――――嬉しかった』


あの時の一方通行はとにかく打ち止めという少女を救うことで頭がいっぱいだったため、
そこまで深い意味を込めてミーシャに語りかけたわけではなかった。
しかし、その事実があったからこそ、ミーシャは元の座に戻ることなく、一方通行と共に過ごす事を決意したのだ。


「・・・・・・・・・・・・そォかよ。 ったく、オマエはとンでもねェ勘違い野郎だな・・・・・・」


洟を啜りながら一方通行は失笑する。
そんな些細なきっかけで、『天使同盟』なんて大仰な集まりが生まれたのかと思うと
笑いを漏らさずにはいられなかった。




958 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:49:20.32KlepS9wCo (12/21)



そんな一方通行とミーシャ=クロイツェフの様子を、風斬氷華は上空から見下ろしていた。
慌てて彼らの下に降りるというような行動は取らなかった。
ただ、二人の間に割って入ろうとする愚者が出てきた場合、それらを撃破することが
自分が今出来る事だと風斬は自覚していた。

そして、


「―――――・・・・・・・・・・・・、jcbpfoghivm jisv pqam fhjgke」

「―――――――、」


トンッ、という人が物を軽く押すような、そんな音が響いた。
その音が鳴った時、既に一方通行は風に舞うビニール袋のように地面を転がっていた。

風斬は急降下して彼の華奢な体を受け止める。


「・・・・・・・・・・・・大丈夫、"ですよね"?」

「・・・・・・当たり前だろクソボケ。 誰に向かって言ってンだよオマエは」




959 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:50:12.23KlepS9wCo (13/21)



全身がボロ衣のようになっている一方通行の減らず口を聞いて、風斬は柔和な笑みを浮かべる。
一方通行は風斬の肩を借りながら立ち上がると、数メートル先にいる『天使』でもない『悪魔』でもない
曖昧な塊をジッと見据えた。


ミーシャ=クロイツェフ。彼女は体を小刻みに震わせ、フラフラと不気味に揺れている。
自我が残っている間に一方通行に伝えたい事を全て伝えた安心感から来た緩みで、
彼女の中に残っている僅かな『天使』が溶けてなくなっていく。

一方通行は風斬の方を見ずに言った。


「・・・・・・状況は」


状況の説明を求められた風斬はどこから説明しようか悩み、
視線の先にいるミーシャを見て悩んでいる暇すらない事を悟り、彼に短く告げた。


「みんなが、私達を支えてくれてます」

「そォかよ」


その一言で充分だった。




960 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:51:10.41KlepS9wCo (14/21)



「aelbjo貴、方tyuytbbnz」

「オマエの言いてェ事は伝わった。 ちゃンと聞いて、理解した。
 俺や、俺たちからもオマエに言いてェ事が山ほどあるンだが・・・・・・
 どォやらそンな時間は残されてねェらしい。 だからひとまず、
 俺達は今からオマエを救う。 だがな、・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


気怠げに全身の力を抜いたまま動かなくなったミーシャに構わず、一方通行は続ける。


「『ありがとう』、の続きを俺はまだ聞いてねェ。
 ありがとう、と言われて俺達はどォ答えりゃいい? どォいたしましてってか?
 そォじゃねェだろ。 "そしてオマエはこれからどォしてェンだ"。 それをまだ
 俺達は聞いてねェ。 あいにく、今ここにゃ俺と風斬しかいねェが、垣根と
 エイワスの馬鹿共には後で俺からちゃンと伝えておいてやるからよ。
 オマエはここからどォしてェのか、今ここで言ってみろ」

「――――・・・・・・、逃げ、―――・・・・・・逃、逃げ、て」




961 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:52:33.04KlepS9wCo (15/21)



もうお互いは触れ合っていないにも関わらず、ミーシャは渾身の力を振り絞って
彼らに言いたい事を伝えた。だが風斬は答えない。そして一方通行も首をゆっくりと
横に振るだけだった。


「もォ一度しか聞かねェぞ。 オマエの気持ちは分かった。
 俺達はこれからオマエを救う。 そンで、その後オマエはどォしてェンだ?」


一方通行が再び問い掛ける。しばしの沈黙が場を包んだ後、石のように固まっていた
ミーシャは顔をゆっくりと上げた。その凹凸で表現された目からは、確かに涙が流れていた。
そして、






「ずっと・・・・・・みんなと一緒に・・・・・・・・・・・・居たい、よ・・・・・・」








962 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:54:10.38KlepS9wCo (16/21)



その言葉を最後に、ミーシャ=クロイツェフは『天使』ではなくなった。
殺気と狂気がゴチャ混ぜになったような得体のしれない何かが第一九学区を、学園都市を、世界を覆っていく。
地球という惑星が狂気に満ちていくような錯覚さえ覚えた。異常事態、怪奇現象、
どれにも当てはまらない、表現しようのない、どうしようもない現象。


悪魔。その悪魔の名は、ミーシャ=クロイツェフといった。


完全に自我を失ってしまったミーシャは、もう目の前にいる二つの人影が
『障害』にしか見えない。背中から生える大小様々な水晶の翼は、
天使だった頃の美しい透明色ではなく、毒々しい黒紫に染まっていた。

白、というよりは灰色に近かった、体表を覆う布の色も背中の一〇〇メートル近い翼に同調するように
紫に染まり、身体中に巡る金色の葉脈のようなものの色が血のように紅く発光している。

天使という存在と長期間過ごしてきた一方通行達でさえ、この悪魔の姿は異形に見えた。
今後、『地獄という風景とそこに住む悪魔の姿を描け』と言われたら、彼らはまず、この前にいる
怪物の姿を思い浮かべながら筆を振るうだろう。




963 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:56:26.29KlepS9wCo (17/21)



ミーシャを中心に空気が膨張していくのが分かる。まだ何も起きていないというのに、
大地には深い地割れが発生し、地鳴りの音が耳を劈く。
辛うじて形を残していた建造物のガラスがひとりでにはじけ飛び、立ち並ぶビル群は小さな崩壊音をたてながら"死んでいく"。


ここまでの状況に陥り、しかしそれでも一方通行と風斬は真っ直ぐミーシャを視界に収めていた。


「ずっと一緒に居たい、だとよ。 どォやらこの大天使様は人間界居残りコースを
 希望してるみてェだな。 どォする?」

「・・・・・・大歓迎です!」


ゴォッッ、ドバァッッッ!!!!!!!!、と炸裂音が立て続けに発生した。
風斬の背中から生えていた紫電を撒き散らす光の翼が、ミーシャの翼と同じくらいに肥大する。

一方通行の頭上に天使の輪が出現した。そして彼も同様に、背中から噴射するように翼を現出させる。


その翼の色は、白。対象をひたすら殲滅する時に出現する黒ではなく、
否が応でも大切な存在を守る、救うという気持ちで彼の心が満たされた時に発生する聖なる翼。
だが、そんな守護全開の翼を生やしながらも、彼の意向は少し異なった。




964 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:57:29.09KlepS9wCo (18/21)



「救うったって、相手は本物の"悪魔"だ。 何とかダメージを与えずにとか、そンな生温い
 考えだと瞬殺されるぞ。 "殺すつもりで救う"。 そンぐらいの矛盾をこなさねェと、
 ガブリエルを救う事なンざ何年経っても出来やしねェ。 いいか?」

「理解してます。 大丈夫です・・・・・・全力でいきます」

「・・・・・・・・・・・・もしこれでガブリエルが悪魔から元に戻らなかったら、
 『天使同盟(アライアンス)』改め『悪魔連合(ディ・ユニオン)』に改名するか?」

「・・・・・・あなたがそれで良いなら私も良いですけど。 でもやっぱり天使がいいなぁ」


この状況下で笑いながらそんな他愛も無い話が出来るのも、二人が自分自身を信じているからだった。
ミーシャ=クロイツェフは必ず救える。ミーシャ=クロイツェフはまた天使として君臨してくれる。


悪魔は口を蠢かし、この世のものとは異なる声を出した。




965 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 16:58:59.37KlepS9wCo (19/21)



「trhbjs対象dhgaq確認axnveorg排除ihj開始orvn」

「いくぞ!!」

「はい!」


三者が同時に地を蹴り、突撃した。
その衝撃だけで地面が深く陥没し、『渦』が発生する。
渦に巻き込まれた周囲のビルが、まるで蟻地獄の巣に引っかかった蟻のように渦の中心に引きずり込まれていく。

だが、建造物は渦の中心で飲み込まれる前に三者の激突で発生した衝撃波で粉々に吹き飛んでしまった。
一方通行の白い翼がちぎられ、風斬の雷光の翼が霧散し、悪魔の禍々しい黒紫の翼が粉塵と化す。

いよいよ本日のメインイベント、神話に新たな一ページを追加出来そうなほどの『救済』が始まった。


『ゲーム』開始から一時間三〇分が経過。『星の欠片』消滅まで、残り三〇分。


皮肉にもこの熾烈な戦闘は、『天使同盟』結成当初のメンバー三人で行われているものだった。




966 ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 17:06:18.49KlepS9wCo (20/21)

どこが多めの投下だよ、むしろ少ねえよ。

申し訳ないですが、今回はここまでで・・・・・・。もう少し多くなる予定だったんですけどねえ・・・・・・

そんなわけで、ミーシャは一方通行に同伴してきたのでした・・・・・・というお話だったのですが
少し強引すぎたでしょうか。まぁ私程度の技量ではこんなお話くらいしか思いつかないわけで・・・・・・ごめんなさい。

風斬通行vs悪魔も始まり、役者のバトルシーンもまとまってきました。
次はエイワスvsアレイスターから始まります。どうか読んでいただけたらと思います。


次回更新は三日以内。


それでは、ありがとうございました!




967次回予告はここまでです。  ◆3dKAx7itpI2011/05/20(金) 17:06:52.47KlepS9wCo (21/21)




                          【次回予告】



『幼稚、は余計だったかもしれないな。 まぁ聞けよ"エドワード"。
 そして考え方が変わっていった人間は、当然心境も変わっていく。
 微妙に、少しずつ変化していく人間もいれば劇的に変わる人間もいる』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・エイワス




『それは自分の「芯」を貫けない愚かな人間に起こる変化だ。 私は違う。
 私以外の人間を見下すつもりなど毛頭ないが、私は「ホルスの永劫」を迎えるために
 これまで一切寄り道をすることなく「プラン」を進行させていったつもりだ』
―――――――――――学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー






968VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/20(金) 17:14:39.16mPlees/P0 (1/1)

神速の乙
そろそろ次スレか


969VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/20(金) 17:18:04.02QVQQKejq0 (1/1)

鈍感通行・・・これを機に敏感通行と生まれ変わってほしいものだ
そして>>1には最大級の乙を


970VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/05/20(金) 17:18:29.28O0NWk5eao (1/1)

くっ……熱いなチクショウ!
乙!


971VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方)2011/05/20(金) 17:28:42.16jzrzkaMAO (1/1)


いいねェ、いいねェ、最っ高だねェ!
しかし今回のを踏まえて、今までのを読み返すと切なくなりそうだ…


972VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/20(金) 17:34:23.56QY4v102IO (1/1)

ロシアの大天使戦と同じメンツて戦うにも関わらず、目的が違うところが感慨深いぜぃ


973VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/20(金) 18:30:57.21b++pT6ZIO (1/1)

かっこよすぎるだろ

乙!


974VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県)2011/05/20(金) 19:03:52.47+UlO1yJw0 (1/1)


次スレのスレタイが気になりすぎて困る。


975VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/20(金) 20:07:22.11dUndI9J+0 (1/1)


もうすぐ次スレの季節か
それにしてもかっこいいなあ


976VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/20(金) 20:14:21.68ZDL+PJin0 (1/1)



一方さん、一刻も早くガブリエルを救ってやってくれ……!



977VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/20(金) 21:07:43.71MFbnQ65d0 (1/1)

やっと追いついた……乙でした!

…ガブリエル……何でこんなに可愛いんだよ
…一方さんがマジイケメン
かっこいいな~


978VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/20(金) 23:00:08.0723q9x6Ww0 (1/1)


もうすぐ次スレか…速いな

ガブリエルが切なすぎて泣きそう
そして一方さんがかっこよすぎる


979VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/05/20(金) 23:22:06.334nvVIrsG0 (1/1)

>>1 乙! そうか・・・・もう次スレか・・・・・次のタイトルが楽しみすぎるww


980VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)2011/05/21(土) 01:46:14.54+o+gymmX0 (1/1)

もう風斬さん完全に一方さんの嫁だよねこれ。


981VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/21(土) 03:14:40.74/4Y+VLZ3o (1/1)

次は☆とエイワスか…
もうシャランラーでいんじゃね?


982VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 08:02:01.00DOaGmMFEo (1/1)

>>1乙
もう次スレ突入かww早いもんだなwwww


983VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 14:32:20.05gnwx0bnf0 (1/1)

>>981
テクマクあわきん☆テクマクあわきん☆
☆がかわいいショタっ子にな~れ☆


984 ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:35:31.42F25Xy5fYo (1/12)

こんにちわ、今日もこんな時間帯ですが投下します。

それと次スレ立てました。↓からどうぞ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305963129/


このスレでもたくさんの支援をありがとうございました。
次スレも是非、よろしくお願いいたします。

それでは行きます。


985 ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:36:09.63F25Xy5fYo (2/12)



――――――――――――――――――――――


現在、戦場という名の舞台になっているこの第一九学区は周囲一帯が
エイワスが施したオーロラ状の光のカーテンによって"世界"から隔離されている状態になっていた。

よって、第一九学区は外部からの干渉を一切遮断する。
核ミサイルをぶち込もうが戦闘機で突っ込もうが地球そのものを破壊しようが
この第一九学区という別世界だけは何があっても揺らぐことはない。


だが、その一角は隔離されているはずの第一九学区全体から"更に別世界へと化していた"。


緑色の手術衣を身に纏う魔術師が口を動かして何かを呟く。


「地に平和を。 安らぎを。 楽園を創りたまえ。 カルマの束縛を解き放ち、
 サンガに至るべき境地を与えん。 ―――――『Nirv??a(ニルヴァーナ)』」




986一発目の投下から文字化けとはやりおる  ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:37:01.41F25Xy5fYo (3/12)



手術衣の魔術師、アレイスター=クロウリーは目前に佇む『敵』に向かって
フッと、軽く息を吹いた。


それだけの行為でアレイスターの前方にある景色が見えない津波に飲み込まれていくように
『消失』していった。地面も、もはやひび割れることすらなく巨大な研磨に磨かれるように
粒子と化し、原子と化し、一瞬で『無』に帰す。
その一帯にあった空気ですら消え去り、急に引き起こされた不可思議な現象に『自然』がついていけず、
空間が"無くなる"という表現しようのない状態が出来上がっていく。


迫り来るニルヴァーナをアレイスターの『敵』、エイワスは薄い笑みを浮かべたまま
全く動じることなく応戦する。


「『ヴェーダ』より抜粋。 生贄は『AIM拡散力場(擬似エーテル)』。 歌うは『反転』。
 我が歌声に呼応し、迫る驚異を払いのける力を貸し与えん」




987 ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:37:34.14F25Xy5fYo (4/12)



一瞬、エイワスの体がテレビの砂嵐のようにブレ、光の粒が天に昇っていく。
するとエイワスの喉から信じ難いほどに美しい歌声が世界に響き渡った。
エイワスの眼前まで迫っていたニルヴァーナの波は何が起きたのか、さっきまでの進行方向とは
真逆、つまりアレイスターに向かって反射された。

アレイスターのニルヴァーナで消失した景色がビデオの巻き戻しのように修復されていき、
今度は逆にアレイスターのいた場所が最初からそこに無かったかのように消失していく。


こんなものに巻き込まれればアレイスターはこの世から削除されてしまうだろうが、
跳ね返ってきたニルヴァーナの波に彼が巻き込まれることはなかった。
既にアレイスターは音も立てず、既にエイワスの真後ろに回り込んでいた。

エイワスは振り向かず、表情も崩さぬまま言う。


「『レイライン』を参照にして私の後ろに回りこんだか、ニルヴァーナの反転も読んでいたわけだ」


アレイスターが手に持つ『衝撃の杖(ブラスティングロッド)』が怪しく輝く。
その先端部をエイワスの後頭部に突き出し、躊躇うことなく魔力を放出させる。
だが、


「私の目にも常に『レイライン』が見えていることくらい、君も知っているだろう?」




988 ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:38:22.94F25Xy5fYo (5/12)



アレイスターの放出攻撃が虚空を貫き飛んでいく。
辺りを見回すと、エイワスは既にあらぬ場所へと体を移動させていた。

そしてその場からエイワスは背中から生える太陽のように輝く翼を展開し、
光速と同程度の速度でアレイスターに叩きつける。
質量のある翼を光速で振るうと当然その周囲にも尋常ではない影響が及ぶはずなのだが、
どのようにエネルギーをコントロールしているのか、エイワスの攻撃で学園都市が吹き飛ぶという事はなかった。

吹き飛んだのは、攻撃を食らったアレイスター本人だけだ。


「ちっ」


惑星一つを真っ二つに出来るほどの攻撃を食らったにも関わらず、アレイスターの体は
傷一つ負っていなかった。彼は空中で上手くバランスをとり、そのまま宙に留まる。


「『ショート・リチュアル』を使って一時的に『ラプラス』を身に降ろしていただろう?
 だから人間である君にさえも『レイライン』が見えていたわけだ。
 いけないな、人間程度の肉の器で悪魔を身に降ろすのは。 君はそうやって昔から
 無茶ばかりしてきたね。 自分の伴侶だけでなく、ついには自分自身もただの器と定め始めたか」

「だがそのおかげで、かつて私はローズにあなたを降ろす事が出来たのだよ」


言いながら、アレイスターが杖を振ると虚空から蛇のような光が数十本に渡って出現した。
エイワスはそれらを自身の翼で蠅を落とすように撃破していく。




989 ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:40:05.61F25Xy5fYo (6/12)



現世という領域から大きく逸脱した二人の戦いに巻き込まれた第一九学区の一角は、
もはや元通りに修復することなど不可能ではないかと思わせるほどに凄惨たる状況になっていた。
二人の周囲にある空間は未だに謎のねじれ現象が多数発生したままになっており、
地面というものは無くなっている。幸い、第一九学区の真下にある地下シェルターには避難民はいないため
不幸な被害者が出てしまうという事はなかった。

火山の噴火口のようにぽっかりと空いた穴からは二人のうちどちらかが何らかの方法で現出させたのか、
豪華な装飾が施された高さ数百メートル以上の巨大な『塔』がいくつも飛び出していた。

その塔の一つを挟んだ位置で、二人は互いの方を向き対峙する。


「ところで、エイワス。 少し前の発言について尋ねたい」

「?」


塔に設置されている窓ガラスの向こうに見えるエイワスを見据えながら
アレイスターはわずかに顔を歪ませて続けた。


「・・・・・・『セト』がこの私に振り向くことはないと、あなたは言ったな。
 あれはどういう意味だ? 私では『オシリス』を殺せないとでも?」

「くく、やはり気にしているのか? 可愛いな」




990 ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:41:33.16F25Xy5fYo (7/12)



エイワスは小馬鹿にするように笑って、


「少し違うな。 確かに人はいずれ『セト』に接触し『神浄』へと至って『オシリス』を殺すことになるだろう。
 『オシリス』の死によって時代は『ホルス』に引き継がれ、これまで人類が築いてきた価値観は崩壊する。
 洪水伝説とはまた違うが・・・・・・人類が新たな時代へ向かうための『方舟』も自ずと姿を現すだろうな」


エイワスの言う事が本当なら、例えアレイスター=クロウリーではなくとも
人類はいつか必ず『神浄』に到達し、時代は変わっていくという。
それはつまり、これまでの歴史も全てリセットされるということ。魔術サイドの十字教は崩壊し、
科学サイドは下手をすれば一部を除いて全て無くなってしまうかもしれない。

だが、とエイワスは前置きをして、


「君は彼と学園都市を創設し、進める必要のない時計の針を大きく進めてしまった。
 時が速く進めばこの時代に生きている人間たちもそれに比例してどんどん成長していく。
 肉体も、心もな。 すると、成長するにつれ人間は考え方が変わっていく。
 子供の頃の幼稚な思考をいつまでも引き摺る大人などいないだろう?」

「・・・・・・幼稚な思考? それは私が『アレイスター=クロウリー』を名乗った時の事を言っているのか」




991 ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:42:21.76F25Xy5fYo (8/12)



チリッ、と空気が一瞬刺々しくなる。どうもアレイスターはエイワスと会話をしている時と
『セト』、『神浄』に関する話題になると奥に秘める感情というものを表に出してしまう傾向にあるようだ。


「幼稚、は余計だったかもしれないな。 まぁ聞けよ"エドワード"。
 そして考え方が変わっていった人間は、当然心境も変わっていく。
 微妙に、少しずつ変化していく人間もいれば劇的に変わる人間もいる」

「それは自分の『芯』を貫けない愚かな人間に起こる変化だ。 私は違う。
 私以外の人間を見下すつもりなど毛頭ないが、私は『ホルスの永劫』を迎えるために
 これまで一切寄り道をすることなく『プラン』を進行させていったつもりだ」

「私はそんな人間ごときの心境の変化にいちいち興味を抱くことはないが・・・・・・、
 例外もあるぞ? 例えば私は十月一九日に"とある人間"の心境変化と行動に興味を持ち、
 珍しくこの世界にorevm・・・・・・失礼、現出した」


"とある人間"、とは言わずもがな白髪の彼のことだ。
彼の前に姿を現した事が、後々このような事態になっているわけだが。




992 ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:43:24.99F25Xy5fYo (9/12)



アレイスターはなかなか本題に入らないエイワスの演説に若干の苛立ちを見せながら続きを促す。


「それで、何が言いたい」

「そういう事だ。 神という存在は基本、ただ人間の想像上で君臨するものだが、
 時には人間を観察し、見極めるという愚行を働くことだってあるのだぞ?」

「・・・・・・? ・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・理解している。 だからこそ私は『セト』を崇拝し、
 貢献し、尽くしてきた。 『セト』に受け入れられれば、私は『神浄』に至ることが出来る。
 『幻想殺し』があれば成るのだ。 『幻想殺し』の真の意味は、全てそこに集約されている」

「それだよ、アレイスター」

「?」


エイワスの言葉に惑わされることなく、アレイスターは己を貫いてみせた。
『プラン』の完遂。それこそが、アレイスターが寿命を無理やり伸ばしてまで生きてきた理由。

しかしエイワスから返ってきた言葉に、アレイスターは意味を見出せなかった。




993 ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:44:17.13F25Xy5fYo (10/12)



「君は自分で作った『プラン』に頼り切って・・・・・・いや、心酔し過ぎている。
 視野が狭すぎるのだと言っているんだ。 視野を狭める上に君の早計さが重なれば、
 なるほど、"何時まで経っても気がつかないのも頷ける"」

「・・・・・・それは挑発のつもりか? エイワス」

「挑発ではない、"親友"へ送る私のささやかな『忠告』だ。 ・・・・・・仕方がない、
 君に最大のヒントをプレゼントしてやろう」


馬鹿にするような発言にアレイスターの苛立ちは積もる一方だった。
だがそれは、無意識にエイワスの言葉の意味を理解しているからこそなのだが、
アレイスターはまだ気がついていない。

そしてエイワスから提示されたヒントを聞き入れたアレイスターは呼吸が止まる。




994 ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:45:24.65F25Xy5fYo (11/12)



「一方通行は九月三〇日に君の意向によって半ば無理やりにAIM拡散力場の数値設定を入力された。
 その時に発現した彼の『黒翼』と、『セト』の言葉の意味。 そして『セト』が支配する世界。
 『黒翼』を構成している物質。 ・・・・・・さて、ここまで言えば幼子でも分かるはずだが」

「・・・・・・・・・・・・あり得ん・・・・・・」

「神は気紛れなのさ。 一方通行も恐らく、"自分を見つめ続ける視線"を感じているはずだ」

「・・・・・・あり得ん・・・・・・ッ!!」

「何を嘆く、これは君にとってのチャンスでもあるんだぞ?」


ビキッ、という音がした。
気がつけばアレイスターは拳をわなわなと震わせながら、握っていた『衝撃の杖』をへし折っていた。




995 ◆3dKAx7itpI2011/05/21(土) 16:46:40.07F25Xy5fYo (12/12)

このスレではここまでにしときます。
一応もう一度、次スレURLを。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1305963129/

それでは続きはあちらで。ありがとうございました!




996VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/21(土) 16:47:27.50D2/dg6xeo (1/1)

乙!!!!!うめにはいるぜ


997VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2011/05/21(土) 16:48:07.40Iach0c7a0 (1/1)

初埋め


998VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/05/21(土) 16:51:30.97izgQm0m+0 (1/1)


埋めとく


999VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)2011/05/21(土) 16:52:50.712CQ4xmxAO (1/1)

1000なら誰もが納得するハッピーエンド(番外編つき)


1000VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 16:55:07.68mkp74rzXo (1/1)

1000なら一方さんのデレ投入