521:乗り過ごし 18/18:2011/10/25(火) 00:32:15.20:HJFMC2az0 (19/23)
気付くと、いつの間にか日下部さんと峰岸さんが峰さん達の会話に加わっていた。
こなた「おまたせ、かがみ帰ろうか」
今度はこなちゃんが話題に付いていけなくなったみたい。
かがみ「今更遅いわ、つかさと色々話していたら、もう少し居たくなった」
こなた「えー、つかさはかがみと同居でしるから何時でも話せるでしょ」
かがみ「ここに、こうして居る時間は今しか無いわよ、今は話をしていたいのよ」
こなた「えー、約束の買い物は~」
こなちゃんは口を尖らせて怒った。
かがみ「買い物こそ、何時でもできるじゃない」
こなた「限定品があるんだよ、そこには今しか買えない物もあるんだよ」
かがみ「買い物ってそっちかよ、付き合いきれんわ、どうせ私のポイントが狙いなんで……ん?」
クスクスと笑い声が聞こえた。皆はお姉ちゃんとこなちゃんを見ていた。
みさお「さおり、あれが名物の柊とちびっ子の喧嘩だ」
さおり「ふふ、聞いているのと見るのとでは違うわね……」
二人の言い合いが止まった。二人の顔が真っ赤になった。
さおり「あら、いいのよ、気にしないで続けて」
ふざけ半分でからかう峰さん。
かがみ「う、うるさい、見世物じゃない!!」
お姉ちゃんの怒号が飛び交って暫く沈黙が続いた。そして一斉に皆で爆笑をした。
かがみ「まったく、何が名物よ、日下部、部活はどうしたんだ」
まだちょっと怒り気味のお姉ちゃん。
みさお「もう部活はない、明日から自由登校だろ」
あやの「そうね、もう私達、卒業だから……」
皆の顔が急に沈んでしまった。
さおり「なに皆沈んでいるのよ、私の身にもなってよ……私はね、私はもう一度……」
え、まさか、また病院に戻るの、そんなの嫌だ。せっかく助かった命なのに……
さおり「私はもう一度、三年生をやり直すのよ、昨日先生に言われたわ、流石に日数半分以上欠席じゃしょうがない」
つかさ「よかった!!」
かがみ「バカ、何が良かったのよ、失礼よ」
お姉ちゃんが慌てるように私を叱った。私は峰さんの留年を喜んだわけじゃないのに……
さおり「ふふ、そう言わないで、そうね、そうよ、私は二年も留年するの、でもそれで良かった、だから皆とこうして出会えたのだから……そうでしょ、つかさ」
笑顔で返す峰さんだった。
つかさ「それじゃ、明日、また登校できる?」
さおり「するけど、いろいろ手続きもあるし……なんで?」
つかさ「今度二年生になる、ゆたかちゃん達を紹介しようと思って」
みゆき「そうですね、少しでもお友達は多いほうが良いです、私も明日登校しましょう、私もその中に紹介したい人がいるのです」
さおり「その人達ってどんな人?」
つかさ「みんな良い人だよ」
さおり「そう言うと思った……」
笑いながら峰さんは窓の外を見た。
こなた「さて、これから皆で買い物行こうよ~」
かがみ「だから今日はもう行かないって言ってるだろ、行きたいなら一人でいけ」
みさお「また始まった」
……
……
私達は話し続けた。卒業まで残り少ない日々を惜しむかのように。そこには新しい友達が一人座っている。彼女はもう2年間も病気で留年してしまった。その病気の中で私と
出会った、不思議な出来事。
居眠りで二駅乗り過ごしたのが始まりだった。峰さんの乗り過ごしは二年間。私より失った時間は大きい。でももっと大事な物を手に入れたと私は信じたい。
これからもっと大事な物をこれから手にはいるかもしれない。それは私達次第かな。私達を乗せた列車は発車したばかり、その電車の終着駅はまだ決まってない。でも走り続ける。
生きている限り。これから大きな事故や故障がありませんように……
就業時間を知らせるチャイムが鳴っても私達は帰ろうとはしなかった。窓からに真っ赤な夕日が射して教室が真っ赤に染まる。誰も居ない校舎に私達の笑い声だけが
木霊のように響いていた。
終
気付くと、いつの間にか日下部さんと峰岸さんが峰さん達の会話に加わっていた。
こなた「おまたせ、かがみ帰ろうか」
今度はこなちゃんが話題に付いていけなくなったみたい。
かがみ「今更遅いわ、つかさと色々話していたら、もう少し居たくなった」
こなた「えー、つかさはかがみと同居でしるから何時でも話せるでしょ」
かがみ「ここに、こうして居る時間は今しか無いわよ、今は話をしていたいのよ」
こなた「えー、約束の買い物は~」
こなちゃんは口を尖らせて怒った。
かがみ「買い物こそ、何時でもできるじゃない」
こなた「限定品があるんだよ、そこには今しか買えない物もあるんだよ」
かがみ「買い物ってそっちかよ、付き合いきれんわ、どうせ私のポイントが狙いなんで……ん?」
クスクスと笑い声が聞こえた。皆はお姉ちゃんとこなちゃんを見ていた。
みさお「さおり、あれが名物の柊とちびっ子の喧嘩だ」
さおり「ふふ、聞いているのと見るのとでは違うわね……」
二人の言い合いが止まった。二人の顔が真っ赤になった。
さおり「あら、いいのよ、気にしないで続けて」
ふざけ半分でからかう峰さん。
かがみ「う、うるさい、見世物じゃない!!」
お姉ちゃんの怒号が飛び交って暫く沈黙が続いた。そして一斉に皆で爆笑をした。
かがみ「まったく、何が名物よ、日下部、部活はどうしたんだ」
まだちょっと怒り気味のお姉ちゃん。
みさお「もう部活はない、明日から自由登校だろ」
あやの「そうね、もう私達、卒業だから……」
皆の顔が急に沈んでしまった。
さおり「なに皆沈んでいるのよ、私の身にもなってよ……私はね、私はもう一度……」
え、まさか、また病院に戻るの、そんなの嫌だ。せっかく助かった命なのに……
さおり「私はもう一度、三年生をやり直すのよ、昨日先生に言われたわ、流石に日数半分以上欠席じゃしょうがない」
つかさ「よかった!!」
かがみ「バカ、何が良かったのよ、失礼よ」
お姉ちゃんが慌てるように私を叱った。私は峰さんの留年を喜んだわけじゃないのに……
さおり「ふふ、そう言わないで、そうね、そうよ、私は二年も留年するの、でもそれで良かった、だから皆とこうして出会えたのだから……そうでしょ、つかさ」
笑顔で返す峰さんだった。
つかさ「それじゃ、明日、また登校できる?」
さおり「するけど、いろいろ手続きもあるし……なんで?」
つかさ「今度二年生になる、ゆたかちゃん達を紹介しようと思って」
みゆき「そうですね、少しでもお友達は多いほうが良いです、私も明日登校しましょう、私もその中に紹介したい人がいるのです」
さおり「その人達ってどんな人?」
つかさ「みんな良い人だよ」
さおり「そう言うと思った……」
笑いながら峰さんは窓の外を見た。
こなた「さて、これから皆で買い物行こうよ~」
かがみ「だから今日はもう行かないって言ってるだろ、行きたいなら一人でいけ」
みさお「また始まった」
……
……
私達は話し続けた。卒業まで残り少ない日々を惜しむかのように。そこには新しい友達が一人座っている。彼女はもう2年間も病気で留年してしまった。その病気の中で私と
出会った、不思議な出来事。
居眠りで二駅乗り過ごしたのが始まりだった。峰さんの乗り過ごしは二年間。私より失った時間は大きい。でももっと大事な物を手に入れたと私は信じたい。
これからもっと大事な物をこれから手にはいるかもしれない。それは私達次第かな。私達を乗せた列車は発車したばかり、その電車の終着駅はまだ決まってない。でも走り続ける。
生きている限り。これから大きな事故や故障がありませんように……
就業時間を知らせるチャイムが鳴っても私達は帰ろうとはしなかった。窓からに真っ赤な夕日が射して教室が真っ赤に染まる。誰も居ない校舎に私達の笑い声だけが
木霊のように響いていた。
終
モバP「泰葉からチョコもらった時の話?」
絵里「なんとかストロガノフ!」穂乃果「そう、カレーです」
タマ「ニャー」タラオ「タマ口臭いですぅ!」タマ「!!!!!!!」
玲音「風邪を引いてしまったようだ…」
苗木「霧切さん、この蝶ネクタイつけてみてよ」
522:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/25(火) 00:33:33.17:HJFMC2az0 (20/23)
以上です。
短くするつもりだったけどどんどんイメージが膨らんで長くなってしまった。
以上です。
短くするつもりだったけどどんどんイメージが膨らんで長くなってしまった。
523:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2011/10/25(火) 00:50:15.85:9n4AkYbxo (1/1)
そういや今日みゆきさんの誕生日だっけ?
そういや今日みゆきさんの誕生日だっけ?
524:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/25(火) 00:50:15.96:HJFMC2az0 (21/23)
『乗り過ごし』№3でエントリーしました。
『乗り過ごし』№3でエントリーしました。
525:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/25(火) 00:53:08.96:HJFMC2az0 (22/23)
>>522
そういえばそうだった。コンクール作品で精一杯だった。
何も考えていなかった。
>>522
そういえばそうだった。コンクール作品で精一杯だった。
何も考えていなかった。
526:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/25(火) 00:54:19.18:HJFMC2az0 (23/23)
>>525は>>523の間違えです。失礼しました。
>>525は>>523の間違えです。失礼しました。
527:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空):2011/10/26(水) 04:18:39.07:r1/pCoj90 (1/1)
皆おつ
>>518
>かがみ「あけみの病気は治る、そして病院を退院する。また一緒に語り合う……」
>あけみの病気
あけみって誰だwwww
皆おつ
>>518
>かがみ「あけみの病気は治る、そして病院を退院する。また一緒に語り合う……」
>あけみの病気
あけみって誰だwwww
528:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/10/26(水) 08:23:26.39:TdvJHW/w0 (1/2)
>>518
どうやら誤字があったみたいですね。
見直しでも結構直しがあったから漏れてしまったようです。
コンクール中なので修正できませんが脳内修正お願いします。
この程度のssなのであまり気にしないで下さいww
>>518
どうやら誤字があったみたいですね。
見直しでも結構直しがあったから漏れてしまったようです。
コンクール中なので修正できませんが脳内修正お願いします。
この程度のssなのであまり気にしないで下さいww
529:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/10/26(水) 08:42:01.26:TdvJHW/w0 (2/2)
上に引き続き
>>528
一応 あけみ=さおりでお願いします。
この間違えは致命傷だ。別の事を考えていたようです。
上に引き続き
>>528
一応 あけみ=さおりでお願いします。
この間違えは致命傷だ。別の事を考えていたようです。
530:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/26(水) 19:10:42.43:45qLX8300 (1/1)
☆第二十二回コンクール開催☆
コンクール投稿期限は10/30(日)です。
よろしくお願いします。
☆第二十二回コンクール開催☆
コンクール投稿期限は10/30(日)です。
よろしくお願いします。
531:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/29(土) 17:15:40.12:SrsP4POd0 (1/8)
かがみ「こなた、あんたまだ出来ていないの、もうそろそろ時間ないわよ」」
こなた「ふ、ふ、ふ、かがみ、私も出来たよ」
かがみ「な、なんだって、それは驚いた」
こなた「それじゃ、私の作品と勝負だよ」
かがみ「望むところよ、こなたには負けないわよ」
……っと言うことでコンクール作品2作目を投下します。
5レスくらい使用します。
かがみ「こなた、あんたまだ出来ていないの、もうそろそろ時間ないわよ」」
こなた「ふ、ふ、ふ、かがみ、私も出来たよ」
かがみ「な、なんだって、それは驚いた」
こなた「それじゃ、私の作品と勝負だよ」
かがみ「望むところよ、こなたには負けないわよ」
……っと言うことでコンクール作品2作目を投下します。
5レスくらい使用します。
532:途中下車 1/5:2011/10/29(土) 17:17:26.48:SrsP4POd0 (2/8)
今日もいつもと同じように授業が終わり、いつものようにこなた達と雑談をしてからの下校。普段と何も変わらない。いつもの日常。みゆきは駅のホームで別れた。
いつものように途中の駅でこなたは降りていく。そしてつかさと私が残った。
つかさがこそこそと鞄を持ち上げた。
かがみ「つかさ、降りるのは次の駅じゃない、準備は速過ぎるわよ」
つかさ「私、次の駅で降りるから、お姉ちゃんは先に帰ってていいよ」
次の駅、私の知る限りつかさが次の駅で降りた事はない。何か特別な施設があるわけでもない。知り合いでもいるのか。つかさの交友関係を全て把握している訳ではないが、
少なくともその駅には知り合いは居ないはず。
かがみ「急に降りるって、何か用事でもあるの?」
つかさ「ちょっとね~」
つかさは私から目を外して電車の窓の外を見た。目的を私に知られたくないのか。いつもならどうでもいい事まで私に話してくるのに。いったいどんな用事なのだろう。
『間もなく〇〇駅に到着します、お出口は右側です』
つかさはドアの前に移動した。気なる。なぜ降りるのか興味が湧いてきた。電車が止まりつかさは降りた。そして発車のベルが鳴った。
どうするかがみ、降りるか、このまま帰るか、妹を尾行するなんて趣味が悪いぞ。でも気になるじゃない。もう時間がない。
えーい、ままよ。
ドアが閉まると同時に飛び降りた。
『途中下車』
私は降りる選択をした。つかさの後姿が見える。もう十メートル以上は離れている。私の乗っていた電車は発車した。
もう今更後には引けない。つかさは後ろを振り向いていない。私はあの電車で帰ったと思っている。私は気を落ち着かせてつかさの後を追った。
この駅を降りるのは初めてかもしれない。正直いって利用しない。いつも通り過ぎていた駅。それはつかさだっておなじはず。ますますつかさの目的が分からない。
つかさは迷う様子もなく駅を出ても歩き続けている。前にも降りた事があるのだろうか。付かず離れず見つからないように後を付けた。
『しまった!!』
心の中で叫んだ。
信号に捕まって待った。思いのほか車の通りは激しい。信号無視はできそうにない。つかさの姿がどんどん小さくなっていく。
青になった頃にはつかさの姿は見えなくなっていた。私は走ってつかさの通った道を辿った。
私は歩みを止めた。道は三方向に分かれていた。つかさはどの道を通ったのか。もうつかさの姿は見えない。
一つ目は緩やかな坂道で高台の公園に続く、二つ目は住宅街に続いているようだ。三つ目は商店街に向かっている。友達を訪ねるなら住宅街の道だろう。
しかし住宅街に入ったらつかさを見つけるのは困難だ。つかさの事だから買い物かもしれない。それなら商店街だろう。見つけるのもそんなに苦にはならない。
公園の道は……公園に行く理由が見つからない。公園なら家の近くにもある。私の第六感に懸ける。商店街に向かって歩き出した。
商店街には結構人が歩いている。このような時は注意が必要。ばったり鉢合わせがあるからだ。細心の注意をしつつ、つかさの行きそうなお店を廻った。
洋服店、装飾店、お菓子屋さん……etc、つかさの姿は見えない。私の感が外れたか。何度か廻ってみたがつかさは居ない。分かれ道に戻った。
後は公園と住宅街か。どちらに行ったか。腕を組んで考えた。
今日もいつもと同じように授業が終わり、いつものようにこなた達と雑談をしてからの下校。普段と何も変わらない。いつもの日常。みゆきは駅のホームで別れた。
いつものように途中の駅でこなたは降りていく。そしてつかさと私が残った。
つかさがこそこそと鞄を持ち上げた。
かがみ「つかさ、降りるのは次の駅じゃない、準備は速過ぎるわよ」
つかさ「私、次の駅で降りるから、お姉ちゃんは先に帰ってていいよ」
次の駅、私の知る限りつかさが次の駅で降りた事はない。何か特別な施設があるわけでもない。知り合いでもいるのか。つかさの交友関係を全て把握している訳ではないが、
少なくともその駅には知り合いは居ないはず。
かがみ「急に降りるって、何か用事でもあるの?」
つかさ「ちょっとね~」
つかさは私から目を外して電車の窓の外を見た。目的を私に知られたくないのか。いつもならどうでもいい事まで私に話してくるのに。いったいどんな用事なのだろう。
『間もなく〇〇駅に到着します、お出口は右側です』
つかさはドアの前に移動した。気なる。なぜ降りるのか興味が湧いてきた。電車が止まりつかさは降りた。そして発車のベルが鳴った。
どうするかがみ、降りるか、このまま帰るか、妹を尾行するなんて趣味が悪いぞ。でも気になるじゃない。もう時間がない。
えーい、ままよ。
ドアが閉まると同時に飛び降りた。
『途中下車』
私は降りる選択をした。つかさの後姿が見える。もう十メートル以上は離れている。私の乗っていた電車は発車した。
もう今更後には引けない。つかさは後ろを振り向いていない。私はあの電車で帰ったと思っている。私は気を落ち着かせてつかさの後を追った。
この駅を降りるのは初めてかもしれない。正直いって利用しない。いつも通り過ぎていた駅。それはつかさだっておなじはず。ますますつかさの目的が分からない。
つかさは迷う様子もなく駅を出ても歩き続けている。前にも降りた事があるのだろうか。付かず離れず見つからないように後を付けた。
『しまった!!』
心の中で叫んだ。
信号に捕まって待った。思いのほか車の通りは激しい。信号無視はできそうにない。つかさの姿がどんどん小さくなっていく。
青になった頃にはつかさの姿は見えなくなっていた。私は走ってつかさの通った道を辿った。
私は歩みを止めた。道は三方向に分かれていた。つかさはどの道を通ったのか。もうつかさの姿は見えない。
一つ目は緩やかな坂道で高台の公園に続く、二つ目は住宅街に続いているようだ。三つ目は商店街に向かっている。友達を訪ねるなら住宅街の道だろう。
しかし住宅街に入ったらつかさを見つけるのは困難だ。つかさの事だから買い物かもしれない。それなら商店街だろう。見つけるのもそんなに苦にはならない。
公園の道は……公園に行く理由が見つからない。公園なら家の近くにもある。私の第六感に懸ける。商店街に向かって歩き出した。
商店街には結構人が歩いている。このような時は注意が必要。ばったり鉢合わせがあるからだ。細心の注意をしつつ、つかさの行きそうなお店を廻った。
洋服店、装飾店、お菓子屋さん……etc、つかさの姿は見えない。私の感が外れたか。何度か廻ってみたがつかさは居ない。分かれ道に戻った。
後は公園と住宅街か。どちらに行ったか。腕を組んで考えた。
533:途中下車 2/5:2011/10/29(土) 17:18:45.25:SrsP4POd0 (3/8)
私、何をしているのかな。残りの二つの道を見ながら自分の行動に疑問を感じた。そこまでしてつかさを探して私は何を知りたい。
買い物、友達に会いに行く。それを見て私は何を感じると言うのか。後ろめたさだけが残るだけじゃない。つかさは私と同じ高校生、私が知らない
行動をしたとしても何も不思議じゃない。いや、もう自分の行動に責任を持てる。つかさはもう私の姉としての立場なんてもう要らない。
もしかしたらつかさを見失って正解だったのかもしれない。もうつかさを追うのは止めよう。
さて、もうここには用はない。それこそここでつかさに見つかったら言い訳がつかない。駅に向かおうとした時だった。公園の方から誰かがこっちに向かって来た。
つかさか。思わず私は商店街に向かう道に隠れた。つかさじゃなかった。良く見ると男性だった。なんだ、私は男女の区別も付かなかったのか。ほっと溜め息をついた。
男性は分かれ道を超え、駅の方に向かって……あの男性は私のクラスメイトじゃない。学生服を着ている、彼も帰宅途中だったに違いない。なぜ公園の方から歩いてきた。
まさか、つかさは公園に向かっていたのか。彼と待ち合わせをして……
帰ろうとした気持ちが何処かに消えた。彼が見えなくなるのを確認すると公園に向かった。
隣のクラスなら彼とつかさが会って、話をしたりする機会はいくらでもある。待ち合わせでもしていたのか。いや、それなら何故彼は一人だけで駅に向かう。
もしかしたらつかさとは無関係でたまたま通っただけなのかもしれない。いや、もしかしたら……私の好奇心は勝手に想像を膨らませていく。
坂を上り切ると、視界が開いて広場に出た。芝生が一面に敷き詰められている。高台で街が一望出来る。降りた駅も見えた。周りにブランコやシーソー、砂場はない。
そのせいか子供達が遊んでいる姿はなかった。広場の中央に大きな木があった。その根元に誰か立っている。遠いけど分かる、つかさだ。
周りに身を隠す物はない。これ以上近づくことは出来ない。つかさは町を眺めている。良く見ると駅の方を見ているようだ。まさか、彼を見送っているのか。
なぜ見送る必要がある。一緒に行けば良いじゃない。じれったい、直接つかさに近づいて真相を聞きたい。でも、そんな事をしたら私は軽蔑されるかもしれない。
10分くらい経っただろうか、つかさは木から離れて歩き出した。しかし私の居る方ではない。駅の方向に向かって歩き出した。そしてつかさは止まった。
つかさは駅を見ている。私でも分かる。何故そこまでして駅を見るのか。その答えは今までの状況から察しはつく。
私は異変に気が付いた。つかさが立っている足元は切り立った崖になっている。柵はあるが腰の高さくらいしかない。つかさは身を乗り出している。
まさか。嫌な予感が過ぎった。その瞬間だった。つかさは柵を跨ごうとした。
かがみ「バカー!!!」
走った。全速力で、ばか、何があったか知らないけど自ら死を選ぶなんて許さない。つかさの首根っこ掴んで柵の中に引き戻した。つかさはキョトンとした顔で私を見た。
私はつかさを睨み返した。
かがみ「何やってるのよ、死んだらダメだ!!!」
つかさ「あ、あう、あう」
つかさは目が潤み始めて、何か言おうとしているのだろうか、言葉になっていなかった。首元を掴んでいた手を離し、今度は腕を掴んで中央の木まで引っ張り座らせた。
かがみ「少しここで頭を冷やしなさい、私も居てあげるから」
つかさは暫く動かなかった。
つかさの目が元に戻ってきた。何時また崖から飛び降りるとも限らない、一時もつかさから目を放さなかった。でも、だいぶ落ち着いたと判断した。
かがみ「何故私に相談しなかったの、そんなになるまで思い詰めて」
つかさ「……思い詰めるって、何?」
白を切るつもりか、この期に及んで……私は溜め息を付いた。
かがみ「あんた、さっきその崖から飛び降りようとしたわよね、この目でしっかり見たわよ」
つかさ「……ち、ちがう、よ」
俯き首を振って否定した。
かがみ「柵を跨いでその後どうするつもりだったの?」
つかさ「り、リボンが落ちちゃったから……拾おうと……したの」
かがみ「リボン?」
つかさの頭を見ると確かにリボンが付いていない。
つかさ「リボンを付け直そうとしたら風が吹いて飛ばされちゃって……柵の柱に引っかかったから……跨いで取ろうと……」
つかさは飛び降りようとはしていなかったのか。そんなはずはない。
かがみ「だったら、なんで私を見て目が潤んだのよ」
つかさ「だ、だって、お姉ちゃん……顔が、恐かったから……」
かがみ「ば、ばか、妹が飛び降りようとしているのに普通で居られるか!」
またつかさの目が潤みそうになった。どうやら本当みたいだ。急に力が抜けた。私もその場に座り込んだ。
かがみ「よかった……」
私、何をしているのかな。残りの二つの道を見ながら自分の行動に疑問を感じた。そこまでしてつかさを探して私は何を知りたい。
買い物、友達に会いに行く。それを見て私は何を感じると言うのか。後ろめたさだけが残るだけじゃない。つかさは私と同じ高校生、私が知らない
行動をしたとしても何も不思議じゃない。いや、もう自分の行動に責任を持てる。つかさはもう私の姉としての立場なんてもう要らない。
もしかしたらつかさを見失って正解だったのかもしれない。もうつかさを追うのは止めよう。
さて、もうここには用はない。それこそここでつかさに見つかったら言い訳がつかない。駅に向かおうとした時だった。公園の方から誰かがこっちに向かって来た。
つかさか。思わず私は商店街に向かう道に隠れた。つかさじゃなかった。良く見ると男性だった。なんだ、私は男女の区別も付かなかったのか。ほっと溜め息をついた。
男性は分かれ道を超え、駅の方に向かって……あの男性は私のクラスメイトじゃない。学生服を着ている、彼も帰宅途中だったに違いない。なぜ公園の方から歩いてきた。
まさか、つかさは公園に向かっていたのか。彼と待ち合わせをして……
帰ろうとした気持ちが何処かに消えた。彼が見えなくなるのを確認すると公園に向かった。
隣のクラスなら彼とつかさが会って、話をしたりする機会はいくらでもある。待ち合わせでもしていたのか。いや、それなら何故彼は一人だけで駅に向かう。
もしかしたらつかさとは無関係でたまたま通っただけなのかもしれない。いや、もしかしたら……私の好奇心は勝手に想像を膨らませていく。
坂を上り切ると、視界が開いて広場に出た。芝生が一面に敷き詰められている。高台で街が一望出来る。降りた駅も見えた。周りにブランコやシーソー、砂場はない。
そのせいか子供達が遊んでいる姿はなかった。広場の中央に大きな木があった。その根元に誰か立っている。遠いけど分かる、つかさだ。
周りに身を隠す物はない。これ以上近づくことは出来ない。つかさは町を眺めている。良く見ると駅の方を見ているようだ。まさか、彼を見送っているのか。
なぜ見送る必要がある。一緒に行けば良いじゃない。じれったい、直接つかさに近づいて真相を聞きたい。でも、そんな事をしたら私は軽蔑されるかもしれない。
10分くらい経っただろうか、つかさは木から離れて歩き出した。しかし私の居る方ではない。駅の方向に向かって歩き出した。そしてつかさは止まった。
つかさは駅を見ている。私でも分かる。何故そこまでして駅を見るのか。その答えは今までの状況から察しはつく。
私は異変に気が付いた。つかさが立っている足元は切り立った崖になっている。柵はあるが腰の高さくらいしかない。つかさは身を乗り出している。
まさか。嫌な予感が過ぎった。その瞬間だった。つかさは柵を跨ごうとした。
かがみ「バカー!!!」
走った。全速力で、ばか、何があったか知らないけど自ら死を選ぶなんて許さない。つかさの首根っこ掴んで柵の中に引き戻した。つかさはキョトンとした顔で私を見た。
私はつかさを睨み返した。
かがみ「何やってるのよ、死んだらダメだ!!!」
つかさ「あ、あう、あう」
つかさは目が潤み始めて、何か言おうとしているのだろうか、言葉になっていなかった。首元を掴んでいた手を離し、今度は腕を掴んで中央の木まで引っ張り座らせた。
かがみ「少しここで頭を冷やしなさい、私も居てあげるから」
つかさは暫く動かなかった。
つかさの目が元に戻ってきた。何時また崖から飛び降りるとも限らない、一時もつかさから目を放さなかった。でも、だいぶ落ち着いたと判断した。
かがみ「何故私に相談しなかったの、そんなになるまで思い詰めて」
つかさ「……思い詰めるって、何?」
白を切るつもりか、この期に及んで……私は溜め息を付いた。
かがみ「あんた、さっきその崖から飛び降りようとしたわよね、この目でしっかり見たわよ」
つかさ「……ち、ちがう、よ」
俯き首を振って否定した。
かがみ「柵を跨いでその後どうするつもりだったの?」
つかさ「り、リボンが落ちちゃったから……拾おうと……したの」
かがみ「リボン?」
つかさの頭を見ると確かにリボンが付いていない。
つかさ「リボンを付け直そうとしたら風が吹いて飛ばされちゃって……柵の柱に引っかかったから……跨いで取ろうと……」
つかさは飛び降りようとはしていなかったのか。そんなはずはない。
かがみ「だったら、なんで私を見て目が潤んだのよ」
つかさ「だ、だって、お姉ちゃん……顔が、恐かったから……」
かがみ「ば、ばか、妹が飛び降りようとしているのに普通で居られるか!」
またつかさの目が潤みそうになった。どうやら本当みたいだ。急に力が抜けた。私もその場に座り込んだ。
かがみ「よかった……」
534:途中下車 3/5:2011/10/29(土) 17:20:03.27:SrsP4POd0 (4/8)
私とつかさは町並みを座りながら眺めていた。つかさは飛び降りようとはしていなかった。だけどまだ疑問が解消したわけではない。
かがみ「こんな公園にいったい何をしに来たのよ」
つかさは木にもたれた。
つかさ「も、もしかして見ていたの?」
見ていた。見ていたってどうゆう事だ。私が来た時はただ景色を眺めていただけだった。それは私が此処に来る前の出来事を言っているのか。
かがみ「つかさはただ景色を見ていただけだった、それとは違うわよね」
つかさは口を閉じた。顔を少し赤らめて。つかさはやっぱり嘘は付けない。話したくなさそうに私から目を背けた。
かがみ「私がこの公園に向かうとき、私のクラスメイトとすれ違った」
つかさの瞬きが早くなった。やっぱり。もう答えは確定した。
かがみ「もう隠す必要はない、ここで彼から告白されたんでしょ……」
つかさの呼吸が早くなっていくのが分かる。でも否定も肯定もしない。
かがみ「……凄いじゃない、陰ながら応援するわよ……ははん、こなたにバレるのが嫌なのか、私からは話さないわよ、付き合っていれば何れは分かるけどな」
つかさは大きく深呼吸してゆっくり立ち上がった。
つかさ「私……告白されてない……告白したの」
耳を疑った。いつも受身のつかさが自ら行動したと言うのか。思わず下からつかさを見上げた。
つかさはゆっくりと歩き出した。さっきの崖の所まで行くと柵の内側から手を伸ばしてリボンを取り付け始めた。私も立ち上がりつかさの居る所に歩いた。
つかさと並び崖の上に立つ。
つかさ「いい眺めでしょ、あの駅からこの公園が見える、入学式の時、電車の窓で見つけたんだよ、今までに二、三度来た」
それで方向音痴のつかさが一度も迷わず目指すことが出来たのか。公園へ続く道はこの公園をぐるりと一周するので知らないと少し迷うかもしれない。
つかさは振り返り中央の木を見た。
つかさ「この木、何となく気に入ったの、ここで座ってると心が落ち着みたいで……だから重要な出来事があったらここで決めようと思った」
重要な出来事……好きな人ができて、それを相手に伝える。簡単で難しい……
かがみ「それで、彼をここに呼んだのね、それで、彼は何て言ったのよ……」
その質問は野暮だった。つかさの悲しげな表情を見れば直ぐに分かったはずだった。それでもあえて聞いた。つかさもそれを感じたのか何も言わず木の天辺を見ていた。
かがみ「一言、相談してくれれば良かったのに……」
つかさ「……そうだよね、相談したらよかったかな……でも、恥かしいから、やっぱり言えなかった」
その問いも何も意味が無い、私自身異性に好きだなんて言った事はないし、言えない。助言すらできなかっただろう。
こんな時はどうすればいい……なんてつかさに言ってあげればいい。
かがみ「凄い、凄いわよ、つかさを見直した、想いを伝えるって時には心を傷つける場合だってある、自分も、相手もね、それでも決めた事を実行できるなんて、
結果なんか関係ない、賞賛に値するわよ」
つかさ「そ、そうかな……」
少し嬉しそうに微笑んだ。
かがみ「そうそう、別に落ち込むことなんかないわよ」
もうこの話をするのは止した方がいいかもしれない。
かがみ「さてと、気晴らしに商店街に行ってみる、結構いろいろあったわよ」
つかさ「そうだね、新しいリボンも欲しいし……そうそう、あの商店街にね、とっても美味しいお菓子屋さんがあるよ」
かがみ「わーい、行ってみよう」
つかさに満面の笑みが戻った。こうでないとつかさじゃない。
つかさ「ところで……今更だけど、なんでお姉ちゃんがここに居るの?」
う、確かに今更だ。しかし私はその答えを準備していなかった。
かがみ「え、え~つかさが心配だったから……べ、別に告白を覗こうって思った訳じゃないから……実際、見ていないし……」
つかさ「もういいよ、私を柵から引っ張り上げた時、ちょっと恐かったけど……今、思うとやっぱり危なかったね、ありがとう」
こんな時は言い訳をするべきではない。知ってはいたがやってしまった。私はつかさの性格に救われたようだ。
私達は公園を後にした。商店街で買い物とお菓子屋さんで軽食を食べてから帰った。
何時になくつかさの笑顔が綺麗に見えた。
これはつかさのようにありたい、そう願う自分自身への憧れなのだろうか。もうつかさはただ見守っているだけの妹ではなくなったのかもしれない。
私とつかさは町並みを座りながら眺めていた。つかさは飛び降りようとはしていなかった。だけどまだ疑問が解消したわけではない。
かがみ「こんな公園にいったい何をしに来たのよ」
つかさは木にもたれた。
つかさ「も、もしかして見ていたの?」
見ていた。見ていたってどうゆう事だ。私が来た時はただ景色を眺めていただけだった。それは私が此処に来る前の出来事を言っているのか。
かがみ「つかさはただ景色を見ていただけだった、それとは違うわよね」
つかさは口を閉じた。顔を少し赤らめて。つかさはやっぱり嘘は付けない。話したくなさそうに私から目を背けた。
かがみ「私がこの公園に向かうとき、私のクラスメイトとすれ違った」
つかさの瞬きが早くなった。やっぱり。もう答えは確定した。
かがみ「もう隠す必要はない、ここで彼から告白されたんでしょ……」
つかさの呼吸が早くなっていくのが分かる。でも否定も肯定もしない。
かがみ「……凄いじゃない、陰ながら応援するわよ……ははん、こなたにバレるのが嫌なのか、私からは話さないわよ、付き合っていれば何れは分かるけどな」
つかさは大きく深呼吸してゆっくり立ち上がった。
つかさ「私……告白されてない……告白したの」
耳を疑った。いつも受身のつかさが自ら行動したと言うのか。思わず下からつかさを見上げた。
つかさはゆっくりと歩き出した。さっきの崖の所まで行くと柵の内側から手を伸ばしてリボンを取り付け始めた。私も立ち上がりつかさの居る所に歩いた。
つかさと並び崖の上に立つ。
つかさ「いい眺めでしょ、あの駅からこの公園が見える、入学式の時、電車の窓で見つけたんだよ、今までに二、三度来た」
それで方向音痴のつかさが一度も迷わず目指すことが出来たのか。公園へ続く道はこの公園をぐるりと一周するので知らないと少し迷うかもしれない。
つかさは振り返り中央の木を見た。
つかさ「この木、何となく気に入ったの、ここで座ってると心が落ち着みたいで……だから重要な出来事があったらここで決めようと思った」
重要な出来事……好きな人ができて、それを相手に伝える。簡単で難しい……
かがみ「それで、彼をここに呼んだのね、それで、彼は何て言ったのよ……」
その質問は野暮だった。つかさの悲しげな表情を見れば直ぐに分かったはずだった。それでもあえて聞いた。つかさもそれを感じたのか何も言わず木の天辺を見ていた。
かがみ「一言、相談してくれれば良かったのに……」
つかさ「……そうだよね、相談したらよかったかな……でも、恥かしいから、やっぱり言えなかった」
その問いも何も意味が無い、私自身異性に好きだなんて言った事はないし、言えない。助言すらできなかっただろう。
こんな時はどうすればいい……なんてつかさに言ってあげればいい。
かがみ「凄い、凄いわよ、つかさを見直した、想いを伝えるって時には心を傷つける場合だってある、自分も、相手もね、それでも決めた事を実行できるなんて、
結果なんか関係ない、賞賛に値するわよ」
つかさ「そ、そうかな……」
少し嬉しそうに微笑んだ。
かがみ「そうそう、別に落ち込むことなんかないわよ」
もうこの話をするのは止した方がいいかもしれない。
かがみ「さてと、気晴らしに商店街に行ってみる、結構いろいろあったわよ」
つかさ「そうだね、新しいリボンも欲しいし……そうそう、あの商店街にね、とっても美味しいお菓子屋さんがあるよ」
かがみ「わーい、行ってみよう」
つかさに満面の笑みが戻った。こうでないとつかさじゃない。
つかさ「ところで……今更だけど、なんでお姉ちゃんがここに居るの?」
う、確かに今更だ。しかし私はその答えを準備していなかった。
かがみ「え、え~つかさが心配だったから……べ、別に告白を覗こうって思った訳じゃないから……実際、見ていないし……」
つかさ「もういいよ、私を柵から引っ張り上げた時、ちょっと恐かったけど……今、思うとやっぱり危なかったね、ありがとう」
こんな時は言い訳をするべきではない。知ってはいたがやってしまった。私はつかさの性格に救われたようだ。
私達は公園を後にした。商店街で買い物とお菓子屋さんで軽食を食べてから帰った。
何時になくつかさの笑顔が綺麗に見えた。
これはつかさのようにありたい、そう願う自分自身への憧れなのだろうか。もうつかさはただ見守っているだけの妹ではなくなったのかもしれない。
535:途中下車 4/5:2011/10/29(土) 17:21:15.39:SrsP4POd0 (5/8)
『間もなく〇宮、〇宮駅です……』
すっかり遅くなってしまった。もう日は沈み、真っ暗になっていた。メールでお母さんに連絡はしておいたが、怒られるのは間違いなさそうだ。
かがみ「ちょっと、買い物とお喋りに夢中になりすぎたみたい、怒られるのは覚悟しておきなさい」
気付くと隣につかさが居ない。後ろを振り向くと四、五メートル後にポツンと立ち止まっていた。
かがみ「どうしたのよ、大丈夫、メールで遅くなるって伝えてあるし、そんなには怒られないわよ、行こう」
しかしつかさは歩き出そうとはしなかった。乗客は全て改札口を出ている。私達だけが残ってしまった。
つかさ「さっきまであんなに楽しかったのに、断られても断然平気だったのに、どうしてかな、今頃になって……」
私は戻ってつかさに近づいた。電灯と電灯の間で少し暗くて分からなかった。つかさの目には涙が溜まっていた。
これが……失恋ってものなのか。その時初めてその重大さに気が付いた。
つかさ「これじゃ、家に帰れないよね……どうしよう、止まらないよ……」
そんな悲しい目で訴えかけられても私に何ができる。つかさの目からどんどん涙が溢れてきた。このまま立っていてもしょうがない。つかさを駅のベンチに座らせ
暫く放っておくしかなかった。これほど自分が無力だったのかと思わされた。そして自分にもこんな日がくるのであろうかと……ただ泣きじゃくるつかさを見ていた。
かがみ「もう……帰ろう」
つかさはただ首を横に振るばかりだった。もう一時間も経つがつかさの涙が止まる気配はなかった。何本もの電車が通り過ぎた
確かにこんな姿を家族が見たら、人生の先輩である二人の姉、お父さん、お母さんに、つかさに何があったか分かってしまうだろう。
誰にも見せたくないはず、本当は私にだって見せたくなかった。……だから一人であの公園に行った。遅かった。今頃分かっても。遅すぎた。
つかさはこうなるのをある程度分かっていたのかもしれない。ならなぜ……分からない。そんな質問をするだけの勇気もなかった。
かがみ「私が玄関の扉を開けたら、すぐに自分の部屋に入りなさい、後は私が対応するから、そこでなら幾らでも泣いていられるわよ」
つかさはやっと頷いた。でも立とうとしない。いや、立てないのか。私が肩を貸してあげてやっと立ち上がった。足元に力が入らないのかふらついてしまう。
普段の二倍の時間をかけて家にたどり着いた。
かがみ「開けるわよ、つかさ、準備はいい?」
私は玄関の扉を開けた。
かがみ「ただいま~」
つかさはゆっくりと、しかも音を立てずに自分の部屋に向かった。暫くすると。
みき「何やっていたの、何度も電話したのに出ないで……」
かがみ「ごめんなさい……」
お母さんがキョロキョロと辺りを見回した。
みき「つかさは、どうしたの?」
かがみ「気分が悪いから……部屋に……」
任せろとは言ったが、実際にやってみると誤魔化すのは難しい。お母さんはつかさの部屋に向かおうとしていた。
かがみ「待って、お母さん、今は、今はそっとしておいてあげて、お願い」
神にでも祈るように頼んだ。お母さんは私の顔を見た。そして、暫くつかさの部屋の方を見ると。
みき「そう、たまにはこんな事もあるでしょう」
そのまま居間の方に戻っていった。ほっと胸を撫で下ろした。しかしこの後、お父さんのお説教が待っていた。つかさの分まで叱られてしまった。
その後、つかさが部屋から出てくることは無かった……日が明けるまで。
『間もなく〇宮、〇宮駅です……』
すっかり遅くなってしまった。もう日は沈み、真っ暗になっていた。メールでお母さんに連絡はしておいたが、怒られるのは間違いなさそうだ。
かがみ「ちょっと、買い物とお喋りに夢中になりすぎたみたい、怒られるのは覚悟しておきなさい」
気付くと隣につかさが居ない。後ろを振り向くと四、五メートル後にポツンと立ち止まっていた。
かがみ「どうしたのよ、大丈夫、メールで遅くなるって伝えてあるし、そんなには怒られないわよ、行こう」
しかしつかさは歩き出そうとはしなかった。乗客は全て改札口を出ている。私達だけが残ってしまった。
つかさ「さっきまであんなに楽しかったのに、断られても断然平気だったのに、どうしてかな、今頃になって……」
私は戻ってつかさに近づいた。電灯と電灯の間で少し暗くて分からなかった。つかさの目には涙が溜まっていた。
これが……失恋ってものなのか。その時初めてその重大さに気が付いた。
つかさ「これじゃ、家に帰れないよね……どうしよう、止まらないよ……」
そんな悲しい目で訴えかけられても私に何ができる。つかさの目からどんどん涙が溢れてきた。このまま立っていてもしょうがない。つかさを駅のベンチに座らせ
暫く放っておくしかなかった。これほど自分が無力だったのかと思わされた。そして自分にもこんな日がくるのであろうかと……ただ泣きじゃくるつかさを見ていた。
かがみ「もう……帰ろう」
つかさはただ首を横に振るばかりだった。もう一時間も経つがつかさの涙が止まる気配はなかった。何本もの電車が通り過ぎた
確かにこんな姿を家族が見たら、人生の先輩である二人の姉、お父さん、お母さんに、つかさに何があったか分かってしまうだろう。
誰にも見せたくないはず、本当は私にだって見せたくなかった。……だから一人であの公園に行った。遅かった。今頃分かっても。遅すぎた。
つかさはこうなるのをある程度分かっていたのかもしれない。ならなぜ……分からない。そんな質問をするだけの勇気もなかった。
かがみ「私が玄関の扉を開けたら、すぐに自分の部屋に入りなさい、後は私が対応するから、そこでなら幾らでも泣いていられるわよ」
つかさはやっと頷いた。でも立とうとしない。いや、立てないのか。私が肩を貸してあげてやっと立ち上がった。足元に力が入らないのかふらついてしまう。
普段の二倍の時間をかけて家にたどり着いた。
かがみ「開けるわよ、つかさ、準備はいい?」
私は玄関の扉を開けた。
かがみ「ただいま~」
つかさはゆっくりと、しかも音を立てずに自分の部屋に向かった。暫くすると。
みき「何やっていたの、何度も電話したのに出ないで……」
かがみ「ごめんなさい……」
お母さんがキョロキョロと辺りを見回した。
みき「つかさは、どうしたの?」
かがみ「気分が悪いから……部屋に……」
任せろとは言ったが、実際にやってみると誤魔化すのは難しい。お母さんはつかさの部屋に向かおうとしていた。
かがみ「待って、お母さん、今は、今はそっとしておいてあげて、お願い」
神にでも祈るように頼んだ。お母さんは私の顔を見た。そして、暫くつかさの部屋の方を見ると。
みき「そう、たまにはこんな事もあるでしょう」
そのまま居間の方に戻っていった。ほっと胸を撫で下ろした。しかしこの後、お父さんのお説教が待っていた。つかさの分まで叱られてしまった。
その後、つかさが部屋から出てくることは無かった……日が明けるまで。
536:途中下車 5/5:2011/10/29(土) 17:22:28.87:SrsP4POd0 (6/8)
翌朝、目覚めて顔を洗いに洗面所に向かった。するとつかさが歯を磨いていた。私より先に起きるなんて、珍しいこともあるものだ。
かがみ「おはよう、つかさ」
つかさ「も、もはもー」
歯ブラシを咥えたままの挨拶だ。鏡から見えるつかさの顔は笑顔だった。
かがみ「ばかね、歯を磨きながら話すやつがあるか」
昨日の今日、無理に作った笑顔にも見える。
かがみ「こんな日は休んでもいいのよ、無理をしない方がいい」
つかさはうがいをして口をタオルで拭いた。
つかさ「うんん、もう大丈夫だよ、お姉ちゃんがずっと泣かせてくれたから、もう涙は出なくなったよ、それに、三年連続皆勤賞がかかってるしね」
かがみ「そ、そうなの……それじゃ休めないわね」
つかさ「昨日はありがとう」
私に譲るように洗面所を出て行った。なんだ。何か違う。今までのつかさとは何かが違っていた。そういえば頭に付けていたリボンの色が少し明るい色になっていたか。
朝食を済ませ、私達は学校へと向かった。いつもの駅でこなたと待ち合わせ。待っているとこなたとみゆきが改札口から出てきた。二人が同時くるのは初めてだ。
つかさ「こなちゃん、ゆきちゃん、おはよー」
私が言うより先に挨拶をした。
みゆき「おはようございます」
こなた「おはよー」
かがみ「おっす……こなたとみゆきが一緒とは驚いたわね」
こなた「たまたま偶然の一致だよ」
かがみ「それじゃ、バス停に行こうか」
バス停に向かった。
みゆき「つかささん、リボンを変えたのですね」
みゆきがいち早くつかさのリボンに気付いた。
つかさ「うん、昨日買ったの、どうかな」
みゆき「とってもお似合いですよ」
つかさ「ありがとう、あとね、何本か買ったのだけど、こんど見て欲しいんだ」
……
つかさとみゆきの会話、みゆきが妙に気遣っているのが分かった。もしかしたらみゆきもつかさと同じ経験をしたのかもしれない。同じ経験をした者同士にしか分からないのか。
私の背中をツンツンと突く。こなただ。
かがみ「なによ、言いたいならそんな事なんかしないで直接言いなさいよ」
こなたは私に近づき耳打ちした。
こなた「なんかさ、つかさ変わったと思わない……何だろう、何て言って良いのか表現できないけど、かがみはなんとも思わないの?」
こなたも私も分かるはずもない。
かがみ「そうね、私達がこれから十年くらいの間には分かるかもしれない」
こなた「えー私達ってお子ちゃまなの?」
子供か、その通りかもしれない。
バスに乗るとちょうど彼もバスに乗ってきた。私は内心ハラハラした。またつかさが泣き出すかと思ったからだ。しかしつかさは何事もなかったようにみゆきと話していた。
そう、もうつかさは昨夜の涙で全てを洗い流した。もう昨日までのつかさとは違う。つかさがとっても大きい存在に感じた。
今まではつかさが私を追いかけた。今日からは私がつかさを追いかける。
終
翌朝、目覚めて顔を洗いに洗面所に向かった。するとつかさが歯を磨いていた。私より先に起きるなんて、珍しいこともあるものだ。
かがみ「おはよう、つかさ」
つかさ「も、もはもー」
歯ブラシを咥えたままの挨拶だ。鏡から見えるつかさの顔は笑顔だった。
かがみ「ばかね、歯を磨きながら話すやつがあるか」
昨日の今日、無理に作った笑顔にも見える。
かがみ「こんな日は休んでもいいのよ、無理をしない方がいい」
つかさはうがいをして口をタオルで拭いた。
つかさ「うんん、もう大丈夫だよ、お姉ちゃんがずっと泣かせてくれたから、もう涙は出なくなったよ、それに、三年連続皆勤賞がかかってるしね」
かがみ「そ、そうなの……それじゃ休めないわね」
つかさ「昨日はありがとう」
私に譲るように洗面所を出て行った。なんだ。何か違う。今までのつかさとは何かが違っていた。そういえば頭に付けていたリボンの色が少し明るい色になっていたか。
朝食を済ませ、私達は学校へと向かった。いつもの駅でこなたと待ち合わせ。待っているとこなたとみゆきが改札口から出てきた。二人が同時くるのは初めてだ。
つかさ「こなちゃん、ゆきちゃん、おはよー」
私が言うより先に挨拶をした。
みゆき「おはようございます」
こなた「おはよー」
かがみ「おっす……こなたとみゆきが一緒とは驚いたわね」
こなた「たまたま偶然の一致だよ」
かがみ「それじゃ、バス停に行こうか」
バス停に向かった。
みゆき「つかささん、リボンを変えたのですね」
みゆきがいち早くつかさのリボンに気付いた。
つかさ「うん、昨日買ったの、どうかな」
みゆき「とってもお似合いですよ」
つかさ「ありがとう、あとね、何本か買ったのだけど、こんど見て欲しいんだ」
……
つかさとみゆきの会話、みゆきが妙に気遣っているのが分かった。もしかしたらみゆきもつかさと同じ経験をしたのかもしれない。同じ経験をした者同士にしか分からないのか。
私の背中をツンツンと突く。こなただ。
かがみ「なによ、言いたいならそんな事なんかしないで直接言いなさいよ」
こなたは私に近づき耳打ちした。
こなた「なんかさ、つかさ変わったと思わない……何だろう、何て言って良いのか表現できないけど、かがみはなんとも思わないの?」
こなたも私も分かるはずもない。
かがみ「そうね、私達がこれから十年くらいの間には分かるかもしれない」
こなた「えー私達ってお子ちゃまなの?」
子供か、その通りかもしれない。
バスに乗るとちょうど彼もバスに乗ってきた。私は内心ハラハラした。またつかさが泣き出すかと思ったからだ。しかしつかさは何事もなかったようにみゆきと話していた。
そう、もうつかさは昨夜の涙で全てを洗い流した。もう昨日までのつかさとは違う。つかさがとっても大きい存在に感じた。
今まではつかさが私を追いかけた。今日からは私がつかさを追いかける。
終
537:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/29(土) 17:24:11.67:SrsP4POd0 (7/8)
以上です。
2作、間に合うとは思わなかった。
自分の作品と競合するのはちょっと面白いかもです。
以上です。
2作、間に合うとは思わなかった。
自分の作品と競合するのはちょっと面白いかもです。
538:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/29(土) 17:32:10.47:SrsP4POd0 (8/8)
コンクール作品『
途中下車』№4でエントリーしました。
コンクール作品『
途中下車』№4でエントリーしました。
539:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/30(日) 04:12:57.55:U17+SiQ60 (1/3)
☆第二十二回コンクール開催☆
コンクール投稿期限は10/30(日)24:00です。
もう時間ものこりわずか。
現在4作品がエントリーされています。
まだ間に合いますので諦めずにいきましょう。
☆第二十二回コンクール開催☆
コンクール投稿期限は10/30(日)24:00です。
もう時間ものこりわずか。
現在4作品がエントリーされています。
まだ間に合いますので諦めずにいきましょう。
540:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/10/30(日) 08:31:23.53:ZT5mEr9L0 (1/7)
コンクール作品2作目投下いきます。
コンクール作品2作目投下いきます。
541:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/10/30(日) 08:32:08.65:ZT5mEr9L0 (2/7)
怨霊
「……線は、○○駅において人身事故が発生したため、運転を見合わせております」
駅舎内にアナウンスが繰り返されていた。
こなたは、携帯電話を取り出して、かがみに連絡をとった。
「かがみ。事故で電車止まってるから、自転車で行くよ。ちょっと遅れるから」
『分かったわ。気をつけて来なさいよ』
「ほーい」
事故の原因は、高校生の飛び込み自殺だった。
残された遺書からいじめを苦にした自殺だと判明した。
警察が学校関係者などに事情を聞き取り、捜査を進めてるところで、事態は思わぬ展開を見せた。
飛び込み自殺があったのと同じ駅で、人身事故が連日三度も発生したのだ。
特に、三度目は、死亡者が四人にのぼった。さらに、事故があった電車の運転手は「ブレーキをかけたのに全く効かなかった」と証言し、検証の結果そのとおりであることが判明した。
この事態を重く見た国土交通省は、その路線を運行する鉄道会社に全車両の緊急点検を行なうことと、それが終わるまですべての路線の運行を停止するように命じた。
鉄道会社はそれに従い、バスによる代替運行に切り替えた。
その数日後……。
柊家に来客があった。例の駅の駅長さんだった。
ただおは社務所の奥へと案内した。応対するのは、ただお、みき、そして、いのりだ。
なんとなく話しづらそうにしている駅長さんを見て、ただおはこう切り出した。
「例の連続人身事故の件でしょうか?」
「……はい」
「私のところにも噂は聞こえてきてます」
地域の住民の間では、「あれは自殺した高校生の怨霊が地縛霊になって、駅に来る人を取り殺してるに違いない」という噂がささやかれていた。
そのため、その駅に近づく者もすっかりいなくなっていたのだ。
「警察が当時現場にいた乗客からとった証言を私にも教えてくれたのですが、最初の自殺の件以外は、みんな口をそろえて、犠牲者はまるで何かに引きずり込まれたかのようにホームから転がり落ちていったと……」
いったん沈黙したあと、こう続けた。
怨霊
「……線は、○○駅において人身事故が発生したため、運転を見合わせております」
駅舎内にアナウンスが繰り返されていた。
こなたは、携帯電話を取り出して、かがみに連絡をとった。
「かがみ。事故で電車止まってるから、自転車で行くよ。ちょっと遅れるから」
『分かったわ。気をつけて来なさいよ』
「ほーい」
事故の原因は、高校生の飛び込み自殺だった。
残された遺書からいじめを苦にした自殺だと判明した。
警察が学校関係者などに事情を聞き取り、捜査を進めてるところで、事態は思わぬ展開を見せた。
飛び込み自殺があったのと同じ駅で、人身事故が連日三度も発生したのだ。
特に、三度目は、死亡者が四人にのぼった。さらに、事故があった電車の運転手は「ブレーキをかけたのに全く効かなかった」と証言し、検証の結果そのとおりであることが判明した。
この事態を重く見た国土交通省は、その路線を運行する鉄道会社に全車両の緊急点検を行なうことと、それが終わるまですべての路線の運行を停止するように命じた。
鉄道会社はそれに従い、バスによる代替運行に切り替えた。
その数日後……。
柊家に来客があった。例の駅の駅長さんだった。
ただおは社務所の奥へと案内した。応対するのは、ただお、みき、そして、いのりだ。
なんとなく話しづらそうにしている駅長さんを見て、ただおはこう切り出した。
「例の連続人身事故の件でしょうか?」
「……はい」
「私のところにも噂は聞こえてきてます」
地域の住民の間では、「あれは自殺した高校生の怨霊が地縛霊になって、駅に来る人を取り殺してるに違いない」という噂がささやかれていた。
そのため、その駅に近づく者もすっかりいなくなっていたのだ。
「警察が当時現場にいた乗客からとった証言を私にも教えてくれたのですが、最初の自殺の件以外は、みんな口をそろえて、犠牲者はまるで何かに引きずり込まれたかのようにホームから転がり落ちていったと……」
いったん沈黙したあと、こう続けた。
542:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/10/30(日) 08:33:08.33:ZT5mEr9L0 (3/7)
「あと、車両のブレーキが効かなかった件ですが、徹底的に調査しましたが車両には何の異常もなかったんです。うちの技術者も国土交通省の事故調査委員会の人も、ありえないと首をかしげるばかりで」
確かに、ただ事ではない状況だ。
みきが口を開いた。
「では、お祓いの御依頼ですね?」
「はい。お願いいたします。お祓い料なら、いくらでもお支払いいたしますので」
駅長はそう言って頭を下げた。
みきは、ただおの顔を見た。
個人的な依頼や企業からの普通の依頼なら、容赦なく料金をいただくところだが、今回は地域全体にかかわることだ。
駅はその地域の中心施設の一つであり、鉄道は交通のかなめである。それがこんな状態では、地域から活気が失われ、衰退していくのは確実だ。
それに、こんなお金は会社の経費からは出ないだろう。この駅長さん一人に負担させるのも忍びない。
みきが目で訴えたそのことは、ただおも同意見だった。
だから、ただおは、駅長さんにこう言った。
「お祓い料はよろしいですよ。今回のことは、この地域全体にかかわることです。地域の安寧と繁栄に貢献することがうちの神社の方針ですから」
駅長は驚いて顔をあげた。
「いえ、そんなわけには……」
「今度のお祭の御神輿かつぎを若い駅員さんに手伝っていただければ、それで結構ですよ」
みきがそう言って笑みを向けた。
そう言われては、駅長さんもそれ以上反論はできなかった。
「ありがとうございます。今度のお祭はうちの駅員総出でお手伝いさせていただきます」
「では、さっそく行きましょう」
ただおとみきは神職の装束で、いのりは巫女服で、駅長さんの車に乗り、例の駅へ向かった。
いのりも神職の装束を着る資格はあるのだが、面倒くさがって、あまり着たがらない。どちらも着る手間はそんなに変わらないはずなのだが。
「うわっ、やな感じ」
いのりは、駅前で車を降りるなり、そうつぶやいた。
駅長さんの顔がこわばる。
「やはり、いるんですね?」
「ええ、厄介かもしれません」
みきは、そう答える。
「あと、車両のブレーキが効かなかった件ですが、徹底的に調査しましたが車両には何の異常もなかったんです。うちの技術者も国土交通省の事故調査委員会の人も、ありえないと首をかしげるばかりで」
確かに、ただ事ではない状況だ。
みきが口を開いた。
「では、お祓いの御依頼ですね?」
「はい。お願いいたします。お祓い料なら、いくらでもお支払いいたしますので」
駅長はそう言って頭を下げた。
みきは、ただおの顔を見た。
個人的な依頼や企業からの普通の依頼なら、容赦なく料金をいただくところだが、今回は地域全体にかかわることだ。
駅はその地域の中心施設の一つであり、鉄道は交通のかなめである。それがこんな状態では、地域から活気が失われ、衰退していくのは確実だ。
それに、こんなお金は会社の経費からは出ないだろう。この駅長さん一人に負担させるのも忍びない。
みきが目で訴えたそのことは、ただおも同意見だった。
だから、ただおは、駅長さんにこう言った。
「お祓い料はよろしいですよ。今回のことは、この地域全体にかかわることです。地域の安寧と繁栄に貢献することがうちの神社の方針ですから」
駅長は驚いて顔をあげた。
「いえ、そんなわけには……」
「今度のお祭の御神輿かつぎを若い駅員さんに手伝っていただければ、それで結構ですよ」
みきがそう言って笑みを向けた。
そう言われては、駅長さんもそれ以上反論はできなかった。
「ありがとうございます。今度のお祭はうちの駅員総出でお手伝いさせていただきます」
「では、さっそく行きましょう」
ただおとみきは神職の装束で、いのりは巫女服で、駅長さんの車に乗り、例の駅へ向かった。
いのりも神職の装束を着る資格はあるのだが、面倒くさがって、あまり着たがらない。どちらも着る手間はそんなに変わらないはずなのだが。
「うわっ、やな感じ」
いのりは、駅前で車を降りるなり、そうつぶやいた。
駅長さんの顔がこわばる。
「やはり、いるんですね?」
「ええ、厄介かもしれません」
みきは、そう答える。
543:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/10/30(日) 08:34:09.08:ZT5mEr9L0 (4/7)
駅には最低限の駅員しかいなかった。そして、その駅員たちはみな、神社のお守りを握り締めていた。
ただお、みき、いのりの三人だけで、駅のホームに出た。
人身事故があった現場にゆっくりと近づいていく。
いのりが突然叫んだ。
「お父さん、避けて!」
ただおは、飛び上がるように一歩退いた。
いのりは、呪符の束を取り出すと、『それ』に向けて投げつけた。
呪符は『それ』全体を覆うように貼り付き、その輪郭を浮かび上がらせた。
身長3メールはあろうかという人の形をした何かが、そこにあった。
いのりがつぶやく。
「何これ? こんな大きなの見たことないわ」
「取り殺した人間の魂を取り込んで強大化してるわね。いのり、どのくらいもつかしら?」
「長くて三十分。半端な怨霊じゃないわよ、これ。反動がすごい」
とりあえず呪符で押さえ込んだが、その反動は術者に跳ね返ってくる。
「手早く済ませちゃいましょ」
みきは、そういうと、御幣を手にとり、祝詞を唱え始めた。
ただおは、二人を守るように一歩前に出た。柊家に婿入りしてもう何十年もたつ。妻と娘が何をしてるかは理解している。
いのりはたちまち苦しげな表情になり、滝のように汗を流していた。
怨霊に貼り付いた呪符からいのりが手にしている呪符を伝って、怨霊の怨念が流れ込んでいた。かといって、怨霊を押さえ込むためには、媒介となる呪符を手放すわけにもいかない。
ただおは、いのりがいよいよ耐え切れないとなれば身代わりになる覚悟であった。いのりが手にしている呪符を奪い取れば、怨霊の怨念は自分の方に向かってくるはずだ。
「この世の……すべてを……呪ってやる……」
怨霊からそんな声が聞こえてきた。
遺書に書いてあった言葉そのままだった。
その気持ちは分からなくはない。漏れ伝わるところによれば、自殺した高校生が受けたいじめは壮絶かつ陰湿なものだったようだ。この世のすべてを呪いたいたくなるのも無理はない。
しかし、それを許すわけにはいかない。
この世は生きとし生ける者たちの場所であり、死者の怨念が支配するところとなってはならないのだから。
駅には最低限の駅員しかいなかった。そして、その駅員たちはみな、神社のお守りを握り締めていた。
ただお、みき、いのりの三人だけで、駅のホームに出た。
人身事故があった現場にゆっくりと近づいていく。
いのりが突然叫んだ。
「お父さん、避けて!」
ただおは、飛び上がるように一歩退いた。
いのりは、呪符の束を取り出すと、『それ』に向けて投げつけた。
呪符は『それ』全体を覆うように貼り付き、その輪郭を浮かび上がらせた。
身長3メールはあろうかという人の形をした何かが、そこにあった。
いのりがつぶやく。
「何これ? こんな大きなの見たことないわ」
「取り殺した人間の魂を取り込んで強大化してるわね。いのり、どのくらいもつかしら?」
「長くて三十分。半端な怨霊じゃないわよ、これ。反動がすごい」
とりあえず呪符で押さえ込んだが、その反動は術者に跳ね返ってくる。
「手早く済ませちゃいましょ」
みきは、そういうと、御幣を手にとり、祝詞を唱え始めた。
ただおは、二人を守るように一歩前に出た。柊家に婿入りしてもう何十年もたつ。妻と娘が何をしてるかは理解している。
いのりはたちまち苦しげな表情になり、滝のように汗を流していた。
怨霊に貼り付いた呪符からいのりが手にしている呪符を伝って、怨霊の怨念が流れ込んでいた。かといって、怨霊を押さえ込むためには、媒介となる呪符を手放すわけにもいかない。
ただおは、いのりがいよいよ耐え切れないとなれば身代わりになる覚悟であった。いのりが手にしている呪符を奪い取れば、怨霊の怨念は自分の方に向かってくるはずだ。
「この世の……すべてを……呪ってやる……」
怨霊からそんな声が聞こえてきた。
遺書に書いてあった言葉そのままだった。
その気持ちは分からなくはない。漏れ伝わるところによれば、自殺した高校生が受けたいじめは壮絶かつ陰湿なものだったようだ。この世のすべてを呪いたいたくなるのも無理はない。
しかし、それを許すわけにはいかない。
この世は生きとし生ける者たちの場所であり、死者の怨念が支配するところとなってはならないのだから。
544:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/10/30(日) 08:34:51.14:ZT5mEr9L0 (5/7)
「────!!」
みきが裂ぱくの気合をこめて祝詞の末尾を唱えた。
すると、怨霊に貼り付いていた呪符が青白い炎を上げて燃え上がった。
「ーーーーッ!!」
怨霊が断末魔の叫び声をあげた。
その叫び声が収まったとき、炎は怨霊を燃やし尽くして消えていた。
「ああ、しんどかった」
いのりは、その場にへたり込んだ。
みきが、いのりに近づいて、その肩に右手を乗せて何かを唱えた。
「ちょっと、お母さん!」
みきはその場にふらりと倒れ、いのりは慌てて受け止めた。
「無茶しないでよ。もう若くないんだから」
みきは、いのりから疲労を丸ごと吸い取ったのだ。さっきのお祓いでの消耗も考慮すれば、無茶もいいところだった。
「そうだよ、みき。いのりももう子供じゃないんだから、負担は分担しないと」
ただおは、そう言ってみきを背負った。
みきは、駅舎の仮眠室に運ばれて、しばらく休養した。
みきが回復したあと、駅長さん以下駅員一同に何度もお礼を言われてから、その場をあとにした。
「────!!」
みきが裂ぱくの気合をこめて祝詞の末尾を唱えた。
すると、怨霊に貼り付いていた呪符が青白い炎を上げて燃え上がった。
「ーーーーッ!!」
怨霊が断末魔の叫び声をあげた。
その叫び声が収まったとき、炎は怨霊を燃やし尽くして消えていた。
「ああ、しんどかった」
いのりは、その場にへたり込んだ。
みきが、いのりに近づいて、その肩に右手を乗せて何かを唱えた。
「ちょっと、お母さん!」
みきはその場にふらりと倒れ、いのりは慌てて受け止めた。
「無茶しないでよ。もう若くないんだから」
みきは、いのりから疲労を丸ごと吸い取ったのだ。さっきのお祓いでの消耗も考慮すれば、無茶もいいところだった。
「そうだよ、みき。いのりももう子供じゃないんだから、負担は分担しないと」
ただおは、そう言ってみきを背負った。
みきは、駅舎の仮眠室に運ばれて、しばらく休養した。
みきが回復したあと、駅長さん以下駅員一同に何度もお礼を言われてから、その場をあとにした。
545:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/10/30(日) 08:35:26.28:ZT5mEr9L0 (6/7)
自宅に戻ると、つかさが夕食の準備をして待っていた。
「お母さん、ごはん用意しておいたよぉ」
「ありがとう」
「随分遅かったけど、なんかあった?」
まつりの疑問には、いのりが答えた。
「ちょっと急な仕事があってさ」
詳しいことは何も言わない。父母と姉がそろって取り殺されかけたなんて、妹たちに話すことではないからだ。
まつりもそれ以上は追及しない。
三人がシャワーを浴びてすっきりしたあと、自室で勉強していたかがみを呼び出して、家族そろっての夕食となった。
それは、まったくいつもと変わらない日常だった。
それから二日後。電車の運行が再開された。
再開直後は気味悪がってその駅で乗降する客は少なかったが、事故が起きない状況が数日続くと、それも次第に解消され、駅とその周辺は徐々に活気を取り戻していった。
自宅に戻ると、つかさが夕食の準備をして待っていた。
「お母さん、ごはん用意しておいたよぉ」
「ありがとう」
「随分遅かったけど、なんかあった?」
まつりの疑問には、いのりが答えた。
「ちょっと急な仕事があってさ」
詳しいことは何も言わない。父母と姉がそろって取り殺されかけたなんて、妹たちに話すことではないからだ。
まつりもそれ以上は追及しない。
三人がシャワーを浴びてすっきりしたあと、自室で勉強していたかがみを呼び出して、家族そろっての夕食となった。
それは、まったくいつもと変わらない日常だった。
それから二日後。電車の運行が再開された。
再開直後は気味悪がってその駅で乗降する客は少なかったが、事故が起きない状況が数日続くと、それも次第に解消され、駅とその周辺は徐々に活気を取り戻していった。
546:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/10/30(日) 08:36:13.91:ZT5mEr9L0 (7/7)
以上です。
以上です。
547:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/30(日) 09:10:02.35:U17+SiQ60 (2/3)
コンクール作品『怨霊』
№5でエントリーしました。
コンクール作品『怨霊』
№5でエントリーしました。
548:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/30(日) 17:58:44.18:U17+SiQ60 (3/3)
こなた「いよいよ大詰めだね」
かがみ「そうね」
こなた「現在5作品がエントリー その内2作が2つ目の作品です……ってことは……えっと、えっと」
かがみ「3人の作者さんが居るって事でしょ、しっかりしなさいよ」
こなた「そうでした、どうでしょう、一人2作までってのはそれなりに良かった?」
かがみ「人が少なくたったからしょうがないわね」
こなた「これからの残り時間で新たな作品が出ることを祈っています」
かがみ「よろしくお願いします」
こなた「いよいよ大詰めだね」
かがみ「そうね」
こなた「現在5作品がエントリー その内2作が2つ目の作品です……ってことは……えっと、えっと」
かがみ「3人の作者さんが居るって事でしょ、しっかりしなさいよ」
こなた「そうでした、どうでしょう、一人2作までってのはそれなりに良かった?」
かがみ「人が少なくたったからしょうがないわね」
こなた「これからの残り時間で新たな作品が出ることを祈っています」
かがみ「よろしくお願いします」
549:旅の途中:2011/10/30(日) 23:40:24.54:dGJRxqLSO (1/6)
コンクール作品の投下いきます。
一作目です。
コンクール作品の投下いきます。
一作目です。
550:旅の途中:2011/10/30(日) 23:41:02.35:dGJRxqLSO (2/6)
カタンコトンと、レールを鳴らし列車が走る。
自分以外には誰もいない車内で、泉こなたは目を閉じてその振動を楽しんでいた。
ふと、目を開けて窓の外を見る。
「…おー」
その景色に思わず感嘆の声が出た。
目の前に広がる青い海。なんの変哲もない普通の海だというのに、こなたはなんだか子供の様な高揚感をおぼえていた。
この辺りを歩いてみようか。
こなたはそう思い、自分の小さな身体には少し不釣り合いな、大きめの旅行鞄を肩にかけながら席を立った。
「お嬢ちゃん、ここで降りてもなんもないよ?」
駅から出た直後、こなたは外で植木に水をやっている駅員にそう声をかけられた。
「みたいですね…でも、そういう所を歩いてみたいんですよ」
こなたの返事に駅員は目を丸くした。
「若いのに変わってるねえ…」
「よく、言われます」
こなたは少し笑いながらそう言い、駅員に手を振って歩き出そうとした。
「ああ、ちょっと待って」
そのこなたを、駅員が引き止める。
「なんですか?」
「どっちに向かうんだい?」
こなたは顎に手を当てて少し考え、列車が走り去った方を指さした。
「とりあえず、線路沿いに一駅くらい歩こうかと」
「そうか…あー、まあ見れば分かると思うけど、次の駅は潰れちまってるからねえ、そこで列車待っちゃダメだよ」
「あ、そうなんですか…」
「それと…もうちょっと待っててくれ」
そう言って駅員は駅舎の中に入って行った。
こなたが首を傾げながら待っていると、駅員はアルミホイルの包みを持って戻ってきた。
「これ、持ってけ」
「…なんです、これ?」
差し出された包みを受け取りながら、こなたがそう聞くと、駅員が歯を見せて笑った。
「おにぎりだよ。こっから先は、ほんとなんも無いからな。腹減るぞ」
「はあ、なるほど…わたし、こういうのは遠慮しない主義なんで、ありがたく貰っときますね」
こなたの物言いに、駅員が苦笑する。
「お嬢ちゃん、ほんと変わってるねえ」
「よく、言われます」
そう言ってこなたは駅員に、ニコッと微笑んで見せた。
― 旅の途中 ―
カタンコトンと、レールを鳴らし列車が走る。
自分以外には誰もいない車内で、泉こなたは目を閉じてその振動を楽しんでいた。
ふと、目を開けて窓の外を見る。
「…おー」
その景色に思わず感嘆の声が出た。
目の前に広がる青い海。なんの変哲もない普通の海だというのに、こなたはなんだか子供の様な高揚感をおぼえていた。
この辺りを歩いてみようか。
こなたはそう思い、自分の小さな身体には少し不釣り合いな、大きめの旅行鞄を肩にかけながら席を立った。
「お嬢ちゃん、ここで降りてもなんもないよ?」
駅から出た直後、こなたは外で植木に水をやっている駅員にそう声をかけられた。
「みたいですね…でも、そういう所を歩いてみたいんですよ」
こなたの返事に駅員は目を丸くした。
「若いのに変わってるねえ…」
「よく、言われます」
こなたは少し笑いながらそう言い、駅員に手を振って歩き出そうとした。
「ああ、ちょっと待って」
そのこなたを、駅員が引き止める。
「なんですか?」
「どっちに向かうんだい?」
こなたは顎に手を当てて少し考え、列車が走り去った方を指さした。
「とりあえず、線路沿いに一駅くらい歩こうかと」
「そうか…あー、まあ見れば分かると思うけど、次の駅は潰れちまってるからねえ、そこで列車待っちゃダメだよ」
「あ、そうなんですか…」
「それと…もうちょっと待っててくれ」
そう言って駅員は駅舎の中に入って行った。
こなたが首を傾げながら待っていると、駅員はアルミホイルの包みを持って戻ってきた。
「これ、持ってけ」
「…なんです、これ?」
差し出された包みを受け取りながら、こなたがそう聞くと、駅員が歯を見せて笑った。
「おにぎりだよ。こっから先は、ほんとなんも無いからな。腹減るぞ」
「はあ、なるほど…わたし、こういうのは遠慮しない主義なんで、ありがたく貰っときますね」
こなたの物言いに、駅員が苦笑する。
「お嬢ちゃん、ほんと変わってるねえ」
「よく、言われます」
そう言ってこなたは駅員に、ニコッと微笑んで見せた。
― 旅の途中 ―
551:旅の途中:2011/10/30(日) 23:41:41.89:dGJRxqLSO (3/6)
一人旅をしよう。それも、観光地でもなんでもないような場所を。
なぜそんな事を思いついたのか、こなた自身もよくわからない。
そういった漫画やアニメを見たわけでもなく、はまったゲームにそういう場面が出てきたわけでもない。
ただ唐突に旅がしたいと思い、即座に実行に移したというだけだった。
一人旅には反対するだろうと思っていた父のそうじろうは、意外にもあっさりと了承してくれた。
大学生になったことで、ある程度は自立を認められてるという事だろうか。
そのことをこなたは嬉しく思ったが、同時に少し寂しさらしきものも感じていた。
線路沿いの道をのんびりと歩く。
久しく持って無かった時間、感じて無かった空気に、こなたの顔が綻ぶ。
こういうのも悪くない。そういう事を素直に感じられる自分に、こなたは少し気恥ずかしさを覚え、照れたように頭をかいた。
そうこうしてる内に、こなたは自分の腹の音が鳴るのを聞いた。
腕時計を見てみると正午を少し過ぎた時間。どこか座れそうな場所でもないかと辺りを見回したこなたは、線路の先に何か建物があるのを見つけた。
そういえばと、こなたは先程の駅員が廃駅の事を言っていたのを思い出した。
中には入れないだろうから、外にあるベンチででも昼食を取ろうと、こなたは少し足を早めた
一人旅をしよう。それも、観光地でもなんでもないような場所を。
なぜそんな事を思いついたのか、こなた自身もよくわからない。
そういった漫画やアニメを見たわけでもなく、はまったゲームにそういう場面が出てきたわけでもない。
ただ唐突に旅がしたいと思い、即座に実行に移したというだけだった。
一人旅には反対するだろうと思っていた父のそうじろうは、意外にもあっさりと了承してくれた。
大学生になったことで、ある程度は自立を認められてるという事だろうか。
そのことをこなたは嬉しく思ったが、同時に少し寂しさらしきものも感じていた。
線路沿いの道をのんびりと歩く。
久しく持って無かった時間、感じて無かった空気に、こなたの顔が綻ぶ。
こういうのも悪くない。そういう事を素直に感じられる自分に、こなたは少し気恥ずかしさを覚え、照れたように頭をかいた。
そうこうしてる内に、こなたは自分の腹の音が鳴るのを聞いた。
腕時計を見てみると正午を少し過ぎた時間。どこか座れそうな場所でもないかと辺りを見回したこなたは、線路の先に何か建物があるのを見つけた。
そういえばと、こなたは先程の駅員が廃駅の事を言っていたのを思い出した。
中には入れないだろうから、外にあるベンチででも昼食を取ろうと、こなたは少し足を早めた
552:旅の途中:2011/10/30(日) 23:42:18.99:dGJRxqLSO (4/6)
「…まさか入れるとは」
廃駅の中。こなたはそう呟きながら、ホームにあるベンチに腰掛け、おにぎりの包みを開いた。
一口食べたこなたは、思わず顔をしかめた。味付けは塩のみで、何も入ってないシンプルなおにぎり。その塩が効き過ぎていてかなりしょっぱい。
しかたなく、こなたはペットボトルのお茶で少し味を薄めながら、おにぎりを食べていった。
「…これは珍しい」
おにぎりを食べ終わり、指についた米粒を舐め取っていると、入り口の方から声が聞こえた。
こなたがそちらの方を見ると、一人の老人がゆっくりとした足どりで近づいてきていた。
「隣、よろしいですかな?」
そして、ベンチの近くに立ってそう聞いてきた老人に、こなたはコクコクと頷いた。
「まさか人がいるとは思いませんでした…ご旅行かなにかで?」
「ええ、まあそんな感じで…えーっと、お爺さんはこの辺りにお住まいで?」
こなたがそう聞くと、老人はゆっくりとした動作で頷いた。
「散歩ついでにここで過ごすのが日課でしてな。駅が使われなくなった後も、こうして通り過ぎる列車を眺めているんです」
そう言いながら、老人が目を細める。
「もう通り過ぎるだけの場所になってしまいましたが、私にとってはここは終着駅なんですよ」
「終着駅、ですか…」
「ええ。この土地で生涯を終える…人生の終着駅です」
老人の話に、こなたは何となく居心地の悪さの様なものを感じていた。
「ああ、すいません。つまらない話でしたな…若い人と話すことなど、なかなか無いものですから」
「え、あ、いや…」
自分の考えを見透かしたような老人の言葉に、こなたは慌てて首を横に振った。
「…まさか入れるとは」
廃駅の中。こなたはそう呟きながら、ホームにあるベンチに腰掛け、おにぎりの包みを開いた。
一口食べたこなたは、思わず顔をしかめた。味付けは塩のみで、何も入ってないシンプルなおにぎり。その塩が効き過ぎていてかなりしょっぱい。
しかたなく、こなたはペットボトルのお茶で少し味を薄めながら、おにぎりを食べていった。
「…これは珍しい」
おにぎりを食べ終わり、指についた米粒を舐め取っていると、入り口の方から声が聞こえた。
こなたがそちらの方を見ると、一人の老人がゆっくりとした足どりで近づいてきていた。
「隣、よろしいですかな?」
そして、ベンチの近くに立ってそう聞いてきた老人に、こなたはコクコクと頷いた。
「まさか人がいるとは思いませんでした…ご旅行かなにかで?」
「ええ、まあそんな感じで…えーっと、お爺さんはこの辺りにお住まいで?」
こなたがそう聞くと、老人はゆっくりとした動作で頷いた。
「散歩ついでにここで過ごすのが日課でしてな。駅が使われなくなった後も、こうして通り過ぎる列車を眺めているんです」
そう言いながら、老人が目を細める。
「もう通り過ぎるだけの場所になってしまいましたが、私にとってはここは終着駅なんですよ」
「終着駅、ですか…」
「ええ。この土地で生涯を終える…人生の終着駅です」
老人の話に、こなたは何となく居心地の悪さの様なものを感じていた。
「ああ、すいません。つまらない話でしたな…若い人と話すことなど、なかなか無いものですから」
「え、あ、いや…」
自分の考えを見透かしたような老人の言葉に、こなたは慌てて首を横に振った。
553:旅の途中:2011/10/30(日) 23:43:05.86:dGJRxqLSO (5/6)
「え、えっと…ご家族とかは…」
そして話題を変えようと、そんな事を口走っていた。
「妻と娘がいますよ。もっとも、娘の方はだいぶ前に他界しましたが…」
「そ、そうでしたか…」
選択肢を間違えた。こなたの頭の中をそんな台詞が過ぎった。
「一つ、お聞きしていいですかな?」
こなたがダラダラと脂汗を流して焦っている事に気がついていないのか、老人は変わらないのんびりとした口調でそう言った。
「は、はい、なんなりと…」
「そうじろう君は、元気で過ごしていますかな?」
「…え?」
こなたは、老人が何を言ったのか理解出来なかった。
確かに今、『そうじろう君』と自分の父の名を言ったのだが、なぜこんな旅先でその名が出てくるのか、わからなかった。
「ど、どちらのそうじろうさんで…?」
きっと同名の別人に違いない。こなたはそう思い、老人にそう聞き返した。
「あなたの父親のそうじろう君ですよ…泉こなたさん」
こなたは口をポカンと開けて絶句していた。
今度は自分の名前までピタリといい当てられた。
この人は一体誰なんだろう?自分が忘れているだけで、どこかで会ったことあるのだろうか。
「あ、あの…なんでわたしとお父さんの事を知って…えと、どこかで会いましたっけ…?」
「会ったことはありますが、あなたかはまだが物心もつかない赤ん坊でしたよ…けど、一目でこなたさんだとわかりました。あなたは本当に良く似ている…私の娘に」
その言葉で、こなたはこの老人が何者なのか理解した。
「え…それって…お、おじいちゃんってこと?…わ、わたしの…」
少し混乱したように言うこなたに、老人は目を細めて頷いた。
「そう、なりますな」
偶然にも程がある。
こなたには、何だかこの旅が仕組まれたものなんじゃないかとさえ思えてきた。
「娘が…かなたが死んで以来、そうじろう君はすっかりこちらに来なくなりましたから」
そう言えば、お父さんが里帰りとかしたとこ無いな。
こなたはそんな事を思いながら、老人の話をじっと聞いていた。
「きっとそうじろう君は、かなたの事で責任を感じでいるのでしょう。駆け落ちのように出ていって、そのままこうなってしまって…」
「…お父さん、変なところで真面目だから」
思わず呟いてしまったこなたの言葉に、老人は目を細めた。
「昔から…子供の頃から、あの子は変わらずそうでした。かなたは、そういうところも好いていたようでしたが…」
少し顔を上げ、懐かしそうに語る老人の横顔を、こなたはチラチラと横目で見ていた。
「…そうじろう君に伝えて貰えますかな?」
その老人の顔が急にこちらを向き、こなたは慌てて視線をそらした。
「な、何をでしょう…」
「私たちは、何も恨んでなどいない…むしろ、貴方には感謝している、と」
こなたは再び視線を老人に向けた。
老人は変わらず温和な表情を浮かべている
「娘は最後の最後まで幸せだった…それは確かな事で、そして…それはそうじろう君のおかげだと、私たちは信じていますから」
こなたは老人の…おじいちゃんの変わらぬ優しい表情を、じっと見つめていた。
廃駅を出たこなたは、歩きながら、祖父から託された言葉をどう父に伝えようかと考えていた。
ふと、こなたは立ち止まって、さっきの廃駅の方を振り向いた。
ホームにあるベンチ。人生の終着駅と自ら称したその場所で、おじいちゃんはじっと空を眺めていた。
こなたはその姿を目に焼き付けるようにじっと見つめ、大きく頷いて歩き出した。
旅はまだ途中なんだ。
そう、心で呟いて。
― 終 ―
「え、えっと…ご家族とかは…」
そして話題を変えようと、そんな事を口走っていた。
「妻と娘がいますよ。もっとも、娘の方はだいぶ前に他界しましたが…」
「そ、そうでしたか…」
選択肢を間違えた。こなたの頭の中をそんな台詞が過ぎった。
「一つ、お聞きしていいですかな?」
こなたがダラダラと脂汗を流して焦っている事に気がついていないのか、老人は変わらないのんびりとした口調でそう言った。
「は、はい、なんなりと…」
「そうじろう君は、元気で過ごしていますかな?」
「…え?」
こなたは、老人が何を言ったのか理解出来なかった。
確かに今、『そうじろう君』と自分の父の名を言ったのだが、なぜこんな旅先でその名が出てくるのか、わからなかった。
「ど、どちらのそうじろうさんで…?」
きっと同名の別人に違いない。こなたはそう思い、老人にそう聞き返した。
「あなたの父親のそうじろう君ですよ…泉こなたさん」
こなたは口をポカンと開けて絶句していた。
今度は自分の名前までピタリといい当てられた。
この人は一体誰なんだろう?自分が忘れているだけで、どこかで会ったことあるのだろうか。
「あ、あの…なんでわたしとお父さんの事を知って…えと、どこかで会いましたっけ…?」
「会ったことはありますが、あなたかはまだが物心もつかない赤ん坊でしたよ…けど、一目でこなたさんだとわかりました。あなたは本当に良く似ている…私の娘に」
その言葉で、こなたはこの老人が何者なのか理解した。
「え…それって…お、おじいちゃんってこと?…わ、わたしの…」
少し混乱したように言うこなたに、老人は目を細めて頷いた。
「そう、なりますな」
偶然にも程がある。
こなたには、何だかこの旅が仕組まれたものなんじゃないかとさえ思えてきた。
「娘が…かなたが死んで以来、そうじろう君はすっかりこちらに来なくなりましたから」
そう言えば、お父さんが里帰りとかしたとこ無いな。
こなたはそんな事を思いながら、老人の話をじっと聞いていた。
「きっとそうじろう君は、かなたの事で責任を感じでいるのでしょう。駆け落ちのように出ていって、そのままこうなってしまって…」
「…お父さん、変なところで真面目だから」
思わず呟いてしまったこなたの言葉に、老人は目を細めた。
「昔から…子供の頃から、あの子は変わらずそうでした。かなたは、そういうところも好いていたようでしたが…」
少し顔を上げ、懐かしそうに語る老人の横顔を、こなたはチラチラと横目で見ていた。
「…そうじろう君に伝えて貰えますかな?」
その老人の顔が急にこちらを向き、こなたは慌てて視線をそらした。
「な、何をでしょう…」
「私たちは、何も恨んでなどいない…むしろ、貴方には感謝している、と」
こなたは再び視線を老人に向けた。
老人は変わらず温和な表情を浮かべている
「娘は最後の最後まで幸せだった…それは確かな事で、そして…それはそうじろう君のおかげだと、私たちは信じていますから」
こなたは老人の…おじいちゃんの変わらぬ優しい表情を、じっと見つめていた。
廃駅を出たこなたは、歩きながら、祖父から託された言葉をどう父に伝えようかと考えていた。
ふと、こなたは立ち止まって、さっきの廃駅の方を振り向いた。
ホームにあるベンチ。人生の終着駅と自ら称したその場所で、おじいちゃんはじっと空を眺めていた。
こなたはその姿を目に焼き付けるようにじっと見つめ、大きく頷いて歩き出した。
旅はまだ途中なんだ。
そう、心で呟いて。
― 終 ―
554:旅の途中:2011/10/30(日) 23:45:27.47:dGJRxqLSO (6/6)
以上です。
話は早めに出来てたのに、体調崩したり色々あって、ギリギリになった上に最後の方が練り込めなかったです。
なんて言い訳してみたり。
以上です。
話は早めに出来てたのに、体調崩したり色々あって、ギリギリになった上に最後の方が練り込めなかったです。
なんて言い訳してみたり。
555:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/31(月) 01:49:58.77:mr+UQxop0 (1/5)
☆第二十二回コンクール開催☆
遅れましたが投稿期間を終了します。
作者のみなさまお疲れ様でした。
一日空けて投票となります。
☆第二十二回コンクール開催☆
遅れましたが投稿期間を終了します。
作者のみなさまお疲れ様でした。
一日空けて投票となります。
556:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/31(月) 01:58:32.29:mr+UQxop0 (2/5)
コンクール作品『旅の途中』
№6のエントリーです。
これで全て作品は揃いました。
コンクール作品『旅の途中』
№6のエントリーです。
これで全て作品は揃いました。
557:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/31(月) 02:05:25.30:mr+UQxop0 (3/5)
>>554
体調不良は辛いですね。からだの調子が悪いと頭の回転も鈍りますからね。おだいじに
>>554
体調不良は辛いですね。からだの調子が悪いと頭の回転も鈍りますからね。おだいじに
558:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2011/10/31(月) 02:19:29.69:YxQPaVZXo (1/1)
投下おつー
投下おつー
559:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/31(月) 23:54:52.43:mr+UQxop0 (4/5)
作品はまとめサイトで読んだ方が見やすいと思います。(6作品)→ http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1754.html
携帯はこちらへ → http://mgw.hatena.ne.jp/?url=http%3a%2f%2fwww34%2eatwiki%2ejp%2fluckystar%2dss%2fm%2fpages%2f1754%2ehtml%3fguid%3don&noimage=0&split=1&extract=on
投票所および部門選考基準(参考)
『お題』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/jodai22.html
お題をよく表現していると思われるものに投票して下さい。今回は『駅』です。
『ストーリ』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/story22.html
これは笑った、興奮した、感動した等、物語の内容が良かったものに投票して下さい。
『文章』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/bun22.html
読み易さ、表現力等、文章が良かった物に投票して下さい。
説明はあくまで参考なので投票される方はそれぞれのご判断でよろしくお願いします。
そんなに重く考えず『気楽に』お願いします。ふるってご参加下さい。
作品はまとめサイトで読んだ方が見やすいと思います。(6作品)→ http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1754.html
携帯はこちらへ → http://mgw.hatena.ne.jp/?url=http%3a%2f%2fwww34%2eatwiki%2ejp%2fluckystar%2dss%2fm%2fpages%2f1754%2ehtml%3fguid%3don&noimage=0&split=1&extract=on
投票所および部門選考基準(参考)
『お題』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/jodai22.html
お題をよく表現していると思われるものに投票して下さい。今回は『駅』です。
『ストーリ』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/story22.html
これは笑った、興奮した、感動した等、物語の内容が良かったものに投票して下さい。
『文章』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/bun22.html
読み易さ、表現力等、文章が良かった物に投票して下さい。
説明はあくまで参考なので投票される方はそれぞれのご判断でよろしくお願いします。
そんなに重く考えず『気楽に』お願いします。ふるってご参加下さい。
560:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/10/31(月) 23:57:44.66:mr+UQxop0 (5/5)
☆第二十二回コンクール開催☆
それでは投票を開始します。 投票は三部門に別れます。お一人、それぞれ一票、計三票です。
締め切りは11/7 24:00時です。 11/8に結果発表します。
作品はまとめサイトで読んだ方が見やすいと思います。(6作品)→ http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1754.html
投票所および部門選考基準(参考)
『お題』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/jodai22.html
お題をよく表現していると思われるものに投票して下さい。今回は『駅』です。
『ストーリ』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/story22.html
これは笑った、興奮した、感動した等、物語の内容が良かったものに投票して下さい。
『文章』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/bun22.html
読み易さ、表現力等、文章が良かった物に投票して下さい。
説明はあくまで参考なので投票される方はそれぞれのご判断でよろしくお願いします。
☆第二十二回コンクール開催☆
それでは投票を開始します。 投票は三部門に別れます。お一人、それぞれ一票、計三票です。
締め切りは11/7 24:00時です。 11/8に結果発表します。
作品はまとめサイトで読んだ方が見やすいと思います。(6作品)→ http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1754.html
投票所および部門選考基準(参考)
『お題』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/jodai22.html
お題をよく表現していると思われるものに投票して下さい。今回は『駅』です。
『ストーリ』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/story22.html
これは笑った、興奮した、感動した等、物語の内容が良かったものに投票して下さい。
『文章』 投票所→ http://vote3.ziyu.net/html/bun22.html
読み易さ、表現力等、文章が良かった物に投票して下さい。
説明はあくまで参考なので投票される方はそれぞれのご判断でよろしくお願いします。
561:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2011/11/01(火) 00:06:10.07:o3nJsUje0 (1/2)
投票所に不備がないかご確認お願いします(作品名等)
設定は主催者側で確認するしか方法がありませんが、お願いします。
投票所に不備がないかご確認お願いします(作品名等)
設定は主催者側で確認するしか方法がありませんが、お願いします。
562:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋):2011/11/01(火) 23:56:31.99:o3nJsUje0 (2/2)
563:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋):2011/11/03(木) 07:36:31.02:9uGmJsmD0 (1/2)
サーバー交換して不通になっていたみたい。
サーバー交換して不通になっていたみたい。
564:コンクール途中経過:2011/11/03(木) 18:10:14.66:9uGmJsmD0 (2/2)
☆第二十二回コンクール開催☆
こなた「いよいよ大詰め、投票期間も中盤戦です」
かがみ「投票数としては前回を上回るペースで投票されています」
こなた「すごいね、この調子でいきたいね」
かがみ「そこで一つお願いです、投票後のコメントに是非一言お加え下さい」
こなた「よかった、GJ、等、なんでもいいです、その一言は作者にとって100票くれたのと同じくらいの喜びです」
かがみ「……それはちょっとオーバー……じゃない?」
こなた「良いんだよ、コメントは別枠でまとめサイトに貼り付けるくらいだから……分かるでしょ?」
かがみ「……何となくわかった」
こなた「沢山書きたい人はコンクール終了後、各作品に設けるコメントフォームをご活用下さい」
こなた・かがみ「よろしくお願いしま~す!!」
運営からのお知らせでした。
☆第二十二回コンクール開催☆
こなた「いよいよ大詰め、投票期間も中盤戦です」
かがみ「投票数としては前回を上回るペースで投票されています」
こなた「すごいね、この調子でいきたいね」
かがみ「そこで一つお願いです、投票後のコメントに是非一言お加え下さい」
こなた「よかった、GJ、等、なんでもいいです、その一言は作者にとって100票くれたのと同じくらいの喜びです」
かがみ「……それはちょっとオーバー……じゃない?」
こなた「良いんだよ、コメントは別枠でまとめサイトに貼り付けるくらいだから……分かるでしょ?」
かがみ「……何となくわかった」
こなた「沢山書きたい人はコンクール終了後、各作品に設けるコメントフォームをご活用下さい」
こなた・かがみ「よろしくお願いしま~す!!」
運営からのお知らせでした。
565:コンクール途中経過(:2011/11/07(月) 00:00:37.78:wQSA8afr0 (1/1)
☆第二十二回コンクール開催☆
日が変わると投票終了です。
>>564の案内が裏目に出たのか投票が伸び悩んでしまいました。
コメントは気にしなくていいです。良いと思った作品に投票をして下さい。
投票が未だの方は期限までに間に合うように投票をして下さい。
☆第二十二回コンクール開催☆
日が変わると投票終了です。
>>564の案内が裏目に出たのか投票が伸び悩んでしまいました。
コメントは気にしなくていいです。良いと思った作品に投票をして下さい。
投票が未だの方は期限までに間に合うように投票をして下さい。
566:コンクール結果:2011/11/08(火) 00:23:05.06:n0G2TqBw0 (1/4)
☆第二十二回コンクール開催☆
それでは投票結果を発表します 票は 『お題』『ストーリ』『文章』の順です
エントリーNo.01:ID:SoaXMRNA0氏:駅でのワンシーン×6+1 2+0+2=4
エントリーNo.02:ID:s7F11wdAO氏:駅構内の出会い~WithYou~ 0+0+1=1
エントリーNo.03:ID:HJFMC2az0氏:乗り過ごし 0+2+0=2
エントリーNo.04:ID:SrsP4POd0氏:途中下車 1+2+2=5
エントリーNo.05:ID:ZT5mEr9L0氏:怨霊 0+0+0=0
エントリーNo.06:ID:dGJRxqLSO氏:旅の途中 5+4+3=12
以上になります。
大賞 エントリーNo.06:ID:dGJRxqLSO氏:旅の途中
部門賞
『お題』『ストーリ』『文章』
エントリーNo.06:ID:dGJRxqLSO氏:旅の途中
パーフェクト賞が出ました。『旅の途中』の作者さん、おめでとうございます。
その他の作者さんもお疲れ様でした。投票された方々もおありがとうございます。
これで第二十二回コンクールを終了します。
☆第二十二回コンクール開催☆
それでは投票結果を発表します 票は 『お題』『ストーリ』『文章』の順です
エントリーNo.01:ID:SoaXMRNA0氏:駅でのワンシーン×6+1 2+0+2=4
エントリーNo.02:ID:s7F11wdAO氏:駅構内の出会い~WithYou~ 0+0+1=1
エントリーNo.03:ID:HJFMC2az0氏:乗り過ごし 0+2+0=2
エントリーNo.04:ID:SrsP4POd0氏:途中下車 1+2+2=5
エントリーNo.05:ID:ZT5mEr9L0氏:怨霊 0+0+0=0
エントリーNo.06:ID:dGJRxqLSO氏:旅の途中 5+4+3=12
以上になります。
大賞 エントリーNo.06:ID:dGJRxqLSO氏:旅の途中
部門賞
『お題』『ストーリ』『文章』
エントリーNo.06:ID:dGJRxqLSO氏:旅の途中
パーフェクト賞が出ました。『旅の途中』の作者さん、おめでとうございます。
その他の作者さんもお疲れ様でした。投票された方々もおありがとうございます。
これで第二十二回コンクールを終了します。
567:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋):2011/11/08(火) 00:43:47.33:n0G2TqBw0 (2/4)
コンクール主催者です。
すみません。投票結果のスクリーンショットの貼り付けをどのなたかしていただけませんか。
いつもながらすみませんです。
コンクール主催者です。
すみません。投票結果のスクリーンショットの貼り付けをどのなたかしていただけませんか。
いつもながらすみませんです。
568:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋):2011/11/08(火) 01:16:35.90:n0G2TqBw0 (3/4)
『乗り過ごし』『途中下車』の作者です。
『旅の途中』大賞および部門賞おめでとうございます。
もはや何も言う事はございません。結果が全てを語っているでしょう。
私は主催者でもありますので投票状況を見てきました。投票開始から『旅の途中』の独占状態でした。
今後とも楽しい作品を期待しています。
『乗り過ごし』『途中下車』の作者です。
『旅の途中』大賞および部門賞おめでとうございます。
もはや何も言う事はございません。結果が全てを語っているでしょう。
私は主催者でもありますので投票状況を見てきました。投票開始から『旅の途中』の独占状態でした。
今後とも楽しい作品を期待しています。
569:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方):2011/11/08(火) 03:28:18.30:kb8B0wA7o (1/3)
大賞の人おめでとうございます。主催、参加者みんなお疲れ様でした~
>>567
おつおつ。スクショはやっといた
今回も三つバラバラだが、一つにまとめた方がよかったら言ってくれ
大賞の人おめでとうございます。主催、参加者みんなお疲れ様でした~
>>567
おつおつ。スクショはやっといた
今回も三つバラバラだが、一つにまとめた方がよかったら言ってくれ
570:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方):2011/11/08(火) 03:28:46.30:kb8B0wA7o (2/3)
大賞の人おめでとうございます。主催、参加者みんなお疲れ様でした~
>>567
おつおつ。スクショはやっといた
今回も三つバラバラだが、一つにまとめた方がよかったら言ってくれ
大賞の人おめでとうございます。主催、参加者みんなお疲れ様でした~
>>567
おつおつ。スクショはやっといた
今回も三つバラバラだが、一つにまとめた方がよかったら言ってくれ
571:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(関西地方):2011/11/08(火) 03:30:07.11:kb8B0wA7o (3/3)
多重になっとる('A`)
多重になっとる('A`)
572:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です):2011/11/08(火) 18:49:38.49:shpkL2UI0 (1/1)
コンクール終わったってのにこじんまりしてるなあ
コンクール終わったってのにこじんまりしてるなあ
573:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋):2011/11/08(火) 19:19:32.39:n0G2TqBw0 (4/4)
>>570
このままでいいと思います。お手数かけてしまいました。
>>572
そうですね。終わるといろいろ盛り上がりました。
>>570
このままでいいと思います。お手数かけてしまいました。
>>572
そうですね。終わるといろいろ盛り上がりました。
574:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です):2011/11/08(火) 21:42:16.21:fRyxqKlSO (1/1)
こなた「うわーお」
かがみ「どしたの、急に」
こなた「うわーおとしか言いようがない結果だから、うわーお」
かがみ「…まあね。まさか自信無かった作品で、大賞の上に三冠だなんてね」
こなた「世の中わからないものだねえ」
かがみ「そうね」
こなた「うわーお」
かがみ「…いや、それはもういいから」
コンクールお疲れ様でした
そして投票ありがとうございました
本気で予想外の結果でしたね
こなた「うわーお」
かがみ「どしたの、急に」
こなた「うわーおとしか言いようがない結果だから、うわーお」
かがみ「…まあね。まさか自信無かった作品で、大賞の上に三冠だなんてね」
こなた「世の中わからないものだねえ」
かがみ「そうね」
こなた「うわーお」
かがみ「…いや、それはもういいから」
コンクールお疲れ様でした
そして投票ありがとうございました
本気で予想外の結果でしたね
575:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋):2011/11/11(金) 00:30:25.04:X84YhSEP0 (1/2)
第二十二回コンクールの感想をかいてみました。
参考にもならないと思いますが投下します。
『駅でのワンシーン×6+1』
6人それぞれの近況、そして集まってどこかに旅行、楽しくなるなってワクワクしている間に物語は終わってしまった。
目的地に着く所までの物語があればもっと面白かったかも。
『駅構内の出会い~WithYou~』
やまとが主人公なのは珍しいですね。やまとは本編にも(少し出ているかな)、アニメにも出ていないので自分には未知のキャラクターです。
かなたと出会うのは斬新でした。もう少しやまとを知っていればもっと感想を書けたかもしれません。
『乗り過ごし』
自分の作品なのでどなたか感想をいただけると嬉しいです。
オリキャラを出すのは私の仕様です。
『途中下車』
自分の作品なのでどなたか感想をいただけると嬉しいです。
自分の作品、『乗り過ごし』に対抗して作ったssです。
『怨霊』
お祓いのお話ですね。なんとなく『孔雀王』を連想してしまいました。こうゆうお話は好きです。らき☆すたには全く無いシチュエーションで面白かったです。
『旅の途中』
廃駅に入るこなた、そこに思わぬ人物との出会い、そして、おじいさんの最後の言葉……幻想的で切なく感じました。
以上です。
感想になっていないかも……感想はあまり得意ではないのですみません。
第二十二回コンクールの感想をかいてみました。
参考にもならないと思いますが投下します。
『駅でのワンシーン×6+1』
6人それぞれの近況、そして集まってどこかに旅行、楽しくなるなってワクワクしている間に物語は終わってしまった。
目的地に着く所までの物語があればもっと面白かったかも。
『駅構内の出会い~WithYou~』
やまとが主人公なのは珍しいですね。やまとは本編にも(少し出ているかな)、アニメにも出ていないので自分には未知のキャラクターです。
かなたと出会うのは斬新でした。もう少しやまとを知っていればもっと感想を書けたかもしれません。
『乗り過ごし』
自分の作品なのでどなたか感想をいただけると嬉しいです。
オリキャラを出すのは私の仕様です。
『途中下車』
自分の作品なのでどなたか感想をいただけると嬉しいです。
自分の作品、『乗り過ごし』に対抗して作ったssです。
『怨霊』
お祓いのお話ですね。なんとなく『孔雀王』を連想してしまいました。こうゆうお話は好きです。らき☆すたには全く無いシチュエーションで面白かったです。
『旅の途中』
廃駅に入るこなた、そこに思わぬ人物との出会い、そして、おじいさんの最後の言葉……幻想的で切なく感じました。
以上です。
感想になっていないかも……感想はあまり得意ではないのですみません。
576:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/11/11(金) 19:26:27.57:X84YhSEP0 (2/2)
こなた「今日は何の日かしってる?」
かがみ「……誰かの誕生日でもあったかしら……思い当たらん」
こなた「聞いて驚け、ポッ〇ーの日だよ」
かがみ「……ふ~ん」
こなた「あ、あれ~、思いも寄らない反応、ポッ〇ー好きじゃなかった?」
かがみ「好きだけど、別に特別な日にしなくともいいじゃない、普段から食べてるし」
こなた「そりゃそうだけど……」
つかさ「あれ、昨日ダンボール沢山お姉ちゃんの部屋に持って行ったけど……あれってぽっ……」
かがみ「わー、わー、つかさ、なんでもない、なんでもない、通販で買った美容器具よ、そうそう、うんうん」
こなた「なるほど、かがみにとっては特別な日だったんだね」
終
こなた「今日は何の日かしってる?」
かがみ「……誰かの誕生日でもあったかしら……思い当たらん」
こなた「聞いて驚け、ポッ〇ーの日だよ」
かがみ「……ふ~ん」
こなた「あ、あれ~、思いも寄らない反応、ポッ〇ー好きじゃなかった?」
かがみ「好きだけど、別に特別な日にしなくともいいじゃない、普段から食べてるし」
こなた「そりゃそうだけど……」
つかさ「あれ、昨日ダンボール沢山お姉ちゃんの部屋に持って行ったけど……あれってぽっ……」
かがみ「わー、わー、つかさ、なんでもない、なんでもない、通販で買った美容器具よ、そうそう、うんうん」
こなた「なるほど、かがみにとっては特別な日だったんだね」
終
577:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/11/13(日) 05:51:09.09:aS1Lfarw0 (1/2)
ここまでまとめた
ここまでまとめた
578:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/11/13(日) 23:57:25.46:aS1Lfarw0 (2/2)
次回、第二十三回コンクールは2月下旬にお題募集をする予定です。
纏めサイトには載せましたけどこれでいいかな?
もっと早くして欲しい人がいるなら変更します。遅くして欲しいは無しでお願いします。
沈黙は承認したとみなします。
次回、第二十三回コンクールは2月下旬にお題募集をする予定です。
纏めサイトには載せましたけどこれでいいかな?
もっと早くして欲しい人がいるなら変更します。遅くして欲しいは無しでお願いします。
沈黙は承認したとみなします。
579:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です):2011/11/14(月) 01:38:16.49:8a3Sg1y80 (1/1)
別に異存はないが。
それまでに人残ってりゃいいがなあww
別に異存はないが。
それまでに人残ってりゃいいがなあww
580:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/11/14(月) 18:48:46.44:lxRYqE6A0 (1/1)
>>579
それを言ったら……
流石に一人になったらコンクールにならないかな。
らきすたはもう誰も読まないのかな。
かと言って人気に流れたくはないし。
らき☆すたの魅力はなんと言っても分り易いキャラクターかな。だからssとしては作りやすい。
他の物では作ったことはないし。作る気もないかな。それなら完全オリジナルにしちゃうかもしれない。
完全オリジナルだと恐らく誰も読んでくれないだろうから、らき☆すたのキャラにお世話になります。
>>579
それを言ったら……
流石に一人になったらコンクールにならないかな。
らきすたはもう誰も読まないのかな。
かと言って人気に流れたくはないし。
らき☆すたの魅力はなんと言っても分り易いキャラクターかな。だからssとしては作りやすい。
他の物では作ったことはないし。作る気もないかな。それなら完全オリジナルにしちゃうかもしれない。
完全オリジナルだと恐らく誰も読んでくれないだろうから、らき☆すたのキャラにお世話になります。
581:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関東・甲信越):2011/11/15(火) 10:49:33.23:jVcuB/RAO (1/1)
読み専だけど過疎るのは やはり寂しいなぁ。
たまにくる作品が私の楽しみです。
読み専だけど過疎るのは やはり寂しいなぁ。
たまにくる作品が私の楽しみです。
582:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です):2011/11/15(火) 18:59:44.88:kG0q3qOa0 (1/1)
ぶっちゃけこのスレの初期からいた人とかいるんだろうか?
俺は3年前ぐらいにこのスレを知って1年くらいいて去ったけど最近また覗きに来た感じ。
ぶっちゃけこのスレの初期からいた人とかいるんだろうか?
俺は3年前ぐらいにこのスレを知って1年くらいいて去ったけど最近また覗きに来た感じ。
583:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/11/15(火) 21:21:39.62:ctyjt42P0 (1/1)
初期の頃の作者さんはもう居ないみたい。このまとめサイトを立ち上げた人も居ないかな。
避難所を立ち上げた人はたまに覗いているそうです。
現在では自分が殆どの作品を纏めています。コンクールの主催もやっていたり、参加したりしている。
もちろん一般作品も書いています。
三年前程からこのサイトを知った。
こなかがとこっちをはしごしてROM専だった。コンクールとかは楽しみだった。よくあんな短時間で作品作れるなって感心するばかり。
読んでいるうちに自分もssを作ってみたいと思って、三ヶ月もかけて作ったのを投下した。
こなかがでも良かったけど、らき☆すたキャラ全体が好きだったからこっちを選んだ。
投下する時、どんな反応をするのかドキドキしたのをはっきり覚えている。
今でも投下する時はドキドキものだけどね。
作品を書いてみたい人がいたら躊躇せずに書いてみるといい。自分の好きなキャラを自由に動かせるから楽しい。
初期の頃の作者さんはもう居ないみたい。このまとめサイトを立ち上げた人も居ないかな。
避難所を立ち上げた人はたまに覗いているそうです。
現在では自分が殆どの作品を纏めています。コンクールの主催もやっていたり、参加したりしている。
もちろん一般作品も書いています。
三年前程からこのサイトを知った。
こなかがとこっちをはしごしてROM専だった。コンクールとかは楽しみだった。よくあんな短時間で作品作れるなって感心するばかり。
読んでいるうちに自分もssを作ってみたいと思って、三ヶ月もかけて作ったのを投下した。
こなかがでも良かったけど、らき☆すたキャラ全体が好きだったからこっちを選んだ。
投下する時、どんな反応をするのかドキドキしたのをはっきり覚えている。
今でも投下する時はドキドキものだけどね。
作品を書いてみたい人がいたら躊躇せずに書いてみるといい。自分の好きなキャラを自由に動かせるから楽しい。
584:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/11/18(金) 00:07:42.79:nHEVJ19n0 (1/1)
>>578
異論はなさそうなので予定通り進めます。
その時、お題募集で大体の参加人数が分るから、あまりに少ないようなら延期、中止も考えます……考えたくない。
>>578
異論はなさそうなので予定通り進めます。
その時、お題募集で大体の参加人数が分るから、あまりに少ないようなら延期、中止も考えます……考えたくない。
585:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(大阪府):2011/11/21(月) 22:03:57.13:qOjBIWhZ0 (1/1)
>>582
俺もそんな感じだわ。四年前に見つけてから何回かss書き込んで一年半くらいで消えたなー
今日久々に見にきたよ
>>582
俺もそんな感じだわ。四年前に見つけてから何回かss書き込んで一年半くらいで消えたなー
今日久々に見にきたよ
586:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/11/22(火) 02:07:25.01:DmSZcYR+0 (1/1)
初めて作品を投下してから二年を過ぎた。
二年も居座っているのは長い方かな。シリーズ物はやっていないけどね。
「かがみ法律事務所」とか「命の輪」の作者さんもかなり長いような気がするが。
初めて作品を投下してから二年を過ぎた。
二年も居座っているのは長い方かな。シリーズ物はやっていないけどね。
「かがみ法律事務所」とか「命の輪」の作者さんもかなり長いような気がするが。
587:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方):2011/11/22(火) 02:30:06.31:Njn52OQJo (1/1)
ここ来て3年半ぐらいだなー。時々投下して、しばらく主催やったりしてたが
ネタはあるのに書く気力が湧かない状態になって今に至る。なんでまだ居るのかは謎
ここ来て3年半ぐらいだなー。時々投下して、しばらく主催やったりしてたが
ネタはあるのに書く気力が湧かない状態になって今に至る。なんでまだ居るのかは謎
588:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/11/23(水) 04:58:57.33:JUFhTxrH0 (1/1)
謎は解けた。らきすたが好きだから。それしかない
謎は解けた。らきすたが好きだから。それしかない
589:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海):2011/11/26(土) 09:03:23.37:4SAyly8AO (1/1)
こう「HappyBirthday!」
やまと「…こう、これは何?」
こう「何って誕生日プレゼントだけど」
やまと「違うわよ。この飲物の方」
こう「あー、わかる人はわかる。IAI製のドリンク。100%果肉入りだよ」
やまと「へー…人の誕生日に罰ゲーム品もってくるんだ」
こう「大丈夫。飲むのはひよりんだか…いなーい!逃げたな!」
やまと「というわけで飲みなさい、この………100%果肉入りの『タン塩』味を」
こう「あ、あはは……川上稔作品の飲食物は地獄だね」
やまと、HappyBirthday!
こう「HappyBirthday!」
やまと「…こう、これは何?」
こう「何って誕生日プレゼントだけど」
やまと「違うわよ。この飲物の方」
こう「あー、わかる人はわかる。IAI製のドリンク。100%果肉入りだよ」
やまと「へー…人の誕生日に罰ゲーム品もってくるんだ」
こう「大丈夫。飲むのはひよりんだか…いなーい!逃げたな!」
やまと「というわけで飲みなさい、この………100%果肉入りの『タン塩』味を」
こう「あ、あはは……川上稔作品の飲食物は地獄だね」
やまと、HappyBirthday!
590:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/11/28(月) 19:33:17.63:hZbcIyQe0 (1/1)
ここまで纏めた。
やまとの誕生日だったとは気が付きませんでした。
ここまで纏めた。
やまとの誕生日だったとは気が付きませんでした。
591:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です):2011/12/05(月) 19:20:29.69:TppEvyvB0 (1/2)
自分が書いたSSをwikiから消して欲しいっていう要望はやっぱ通らないかなあ
自分が書いたSSをwikiから消して欲しいっていう要望はやっぱ通らないかなあ
592:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です):2011/12/05(月) 19:36:10.18:ajx5PgG30 (1/1)
>>591
ここはコテハン使わないから、本人確認ができないという難点があるよね。
>>591
ここはコテハン使わないから、本人確認ができないという難点があるよね。
593:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です):2011/12/05(月) 20:06:40.92:TppEvyvB0 (2/2)
>>592
そうなんだよなあ
>>592
そうなんだよなあ
594:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/12/05(月) 21:07:29.63:sBTmP2Gg0 (1/3)
>>593
コンクールやリレーssの作品でなければなんとかなりそうだが。
本人確認はssを消して欲しい理由を書いてもらってそれが妥当と思えるなら本人とする?。その消したい理由は教えたくないものかな?
成りすましや悪戯もあるからただ消してくれだけだと消せないね。
>>593
コンクールやリレーssの作品でなければなんとかなりそうだが。
本人確認はssを消して欲しい理由を書いてもらってそれが妥当と思えるなら本人とする?。その消したい理由は教えたくないものかな?
成りすましや悪戯もあるからただ消してくれだけだと消せないね。
595:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です):2011/12/05(月) 22:09:26.49:7YbKkggK0 (1/2)
>>594
コンクール作品とかリレーSSではない。
理由は教えたくないようなもんでもない。
消してほしい理由書いて妥当かってのも基準が曖昧な気がするが。
というか編集すれば自分で消せるんで、とりあえず本人だってことを証明したい……が、やっぱ手段ないかね。
作品書いた時のtxtファイルはうちのディスクにあるんだが。
>>594
コンクール作品とかリレーSSではない。
理由は教えたくないようなもんでもない。
消してほしい理由書いて妥当かってのも基準が曖昧な気がするが。
というか編集すれば自分で消せるんで、とりあえず本人だってことを証明したい……が、やっぱ手段ないかね。
作品書いた時のtxtファイルはうちのディスクにあるんだが。
596:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/12/05(月) 22:50:51.02:sBTmP2Gg0 (2/3)
>>595
消すときには修正報告ページに報告をお願いします。
>>595
消すときには修正報告ページに報告をお願いします。
597:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/12/05(月) 22:59:01.46:sBTmP2Gg0 (3/3)
>>596
追記
消すと履歴が更新されてかえってその作品を宣伝してしまうかも?
最後は作者さんのご判断です。
>>596
追記
消すと履歴が更新されてかえってその作品を宣伝してしまうかも?
最後は作者さんのご判断です。
598:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です):2011/12/05(月) 23:30:59.33:7YbKkggK0 (2/2)
>>597
もうちょっと意見を集めたいので待ってみる。
この辺のルールも整備した方がいいかも。
>>597
もうちょっと意見を集めたいので待ってみる。
この辺のルールも整備した方がいいかも。
599:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/12/06(火) 00:00:33.01:tuVjBADC0 (1/2)
実は作品を消すのは個人的にはあまり賛成しない。
発表してしまった作品を消しても読んだ人の記憶は消すことはできないからね。
消すと言うからにはそれなりの理由があるのだろうけど。
過去にも作者の都合で消された作品があったみたいだね。
避難所のどこかに載っていたかな。その作品を読んだわけじゃないから分らないけど、レスの内容からかなり惜しまれたと思う。
作品は発表した時点で作者から離れて一人歩きします。
実は作品を消すのは個人的にはあまり賛成しない。
発表してしまった作品を消しても読んだ人の記憶は消すことはできないからね。
消すと言うからにはそれなりの理由があるのだろうけど。
過去にも作者の都合で消された作品があったみたいだね。
避難所のどこかに載っていたかな。その作品を読んだわけじゃないから分らないけど、レスの内容からかなり惜しまれたと思う。
作品は発表した時点で作者から離れて一人歩きします。
600:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西地方):2011/12/06(火) 12:26:07.99:Cuci07TEo (1/1)
報告さえちゃんとすれば、自分の作品消す分には自由だと思われ
投下したら削除は認めない、なんてルールはないし。まぁあってもおかしいが
報告さえちゃんとすれば、自分の作品消す分には自由だと思われ
投下したら削除は認めない、なんてルールはないし。まぁあってもおかしいが
601:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です):2011/12/06(火) 18:48:07.55:h3VmV3PZ0 (1/1)
削除して修正報告もしといた。
削除して修正報告もしといた。
602:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋):2011/12/06(火) 19:51:01.21:tuVjBADC0 (2/2)
>>601
確認しました。
>>601
確認しました。
603:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/08(木) 10:23:28.02:iKx4n3LNo (1/1)
削除じゃなくても、昔の作品を加筆修正したいときとか
最新履歴で目立ってしまうのが地味に困るね
削除じゃなくても、昔の作品を加筆修正したいときとか
最新履歴で目立ってしまうのが地味に困るね
604:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/08(木) 20:07:57.91:Wu/3SKep0 (1/1)
>>603
履歴に残すかは選べるはず。編集欄の下の更新情報を宣伝(Ping)っていうメニューから
>>603
履歴に残すかは選べるはず。編集欄の下の更新情報を宣伝(Ping)っていうメニューから
605:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/08(木) 23:09:45.91:YsKDD49b0 (1/1)
>>604
纏めている立場からすると履歴がのこるのは便利。
悪戯とかで内容が書き換えられたりしても履歴が更新しなかったら確認できない。
>>604
纏めている立場からすると履歴がのこるのは便利。
悪戯とかで内容が書き換えられたりしても履歴が更新しなかったら確認できない。
606:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/10(土) 13:00:00.29:xVDeTfvSO (1/1)
607:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/11(日) 08:49:19.01:u7ErOJ4G0 (1/1)
こなた「ねぇ、昨日は皆既月食だったみたいだよ」
かがみ「そうだったみたいね、私は見ていないけどこなたは見たの?」
こなた「準備万端、寒さ対策もしたよ」
かがみ「それで、どうだった?」
こなた「時間までゲームで時間を潰そうと思って……夢中になっちゃって……気が付いたら朝になってた」
かがみ「……居るんだよな、準備だけは万全な奴……」
こなた「ねぇ、昨日は皆既月食だったみたいだよ」
かがみ「そうだったみたいね、私は見ていないけどこなたは見たの?」
こなた「準備万端、寒さ対策もしたよ」
かがみ「それで、どうだった?」
こなた「時間までゲームで時間を潰そうと思って……夢中になっちゃって……気が付いたら朝になってた」
かがみ「……居るんだよな、準備だけは万全な奴……」
608:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/12(月) 07:15:29.53:KM7M/XzY0 (1/1)
ところで9巻はいつ出るんだ?
ところで9巻はいつ出るんだ?
609:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/12(月) 18:42:44.56:RmW6I8VAO (1/1)
こなた「そういうことはみゆきさんに訊いてみよ~」
かがみ「また懐かしいノリだなおい」
みゆき「はい、らき☆すた9かn」
大神ちひろ「らき☆すた9巻、12月26日発売です!!
今回の表紙絵は1巻のセルフパロディになってま~す!!
以上、コンプエースから大神ちひろが出張宣伝致しました!
ばいにー!」
かがみ「…」
こなた「…」
みゆき「…本編はおろかあきらの王国にも出れないカスが私の出番を奪いやがって…」
こなた「そういうことはみゆきさんに訊いてみよ~」
かがみ「また懐かしいノリだなおい」
みゆき「はい、らき☆すた9かn」
大神ちひろ「らき☆すた9巻、12月26日発売です!!
今回の表紙絵は1巻のセルフパロディになってま~す!!
以上、コンプエースから大神ちひろが出張宣伝致しました!
ばいにー!」
かがみ「…」
こなた「…」
みゆき「…本編はおろかあきらの王国にも出れないカスが私の出番を奪いやがって…」
610:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/12(月) 21:54:52.57:MrXuCOMz0 (1/1)
やっと出るのか。
また高校と大学が交錯するかな。時系列がこんらんするんだよな~
やっと出るのか。
また高校と大学が交錯するかな。時系列がこんらんするんだよな~
611:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/13(火) 01:39:43.45:S69gd1vSO (1/1)
コンプ分とコンプエース分とをちゃんと区切ってるから、混乱すること無いと思うが
コンプ分とコンプエース分とをちゃんと区切ってるから、混乱すること無いと思うが
612:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/13(火) 18:13:27.31:+Hk6zmdx0 (1/1)
しばらくらき☆すた離れてたから8巻も買ってないけど新キャラ増えたんだなあ
しばらくらき☆すた離れてたから8巻も買ってないけど新キャラ増えたんだなあ
613:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/18(日) 07:31:34.17:R7mFJvKAO (1/1)
~やっべ、どうしよう~
毒さん「…どーすんのさ」
山さん「やばいよね。どうしようか」
毒さん「いや、たまきがやったんじゃないアレ」
ひより「ま、まさか『忍野忍』の声優が坂本真綾さんになるとは…どーしますコンクール作品の『4×2=?』。平野綾のまま偽物語やるのかと思ってたのに」
毒さん「声ネタじゃなくなったね。まぁドラマCDでもしゃべらなかったから怪しかったけど」
山さん「とりあえず、やさこに『ホライゾン』ネタやってもらって誤魔化す?」
毒さん「…確か東だよね?東だと………アレかなやっぱ」
こう「嫌だからね!」
あー…ヤバい本当に
~やっべ、どうしよう~
毒さん「…どーすんのさ」
山さん「やばいよね。どうしようか」
毒さん「いや、たまきがやったんじゃないアレ」
ひより「ま、まさか『忍野忍』の声優が坂本真綾さんになるとは…どーしますコンクール作品の『4×2=?』。平野綾のまま偽物語やるのかと思ってたのに」
毒さん「声ネタじゃなくなったね。まぁドラマCDでもしゃべらなかったから怪しかったけど」
山さん「とりあえず、やさこに『ホライゾン』ネタやってもらって誤魔化す?」
毒さん「…確か東だよね?東だと………アレかなやっぱ」
こう「嫌だからね!」
あー…ヤバい本当に
614:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/18(日) 23:29:08.86:QqkVvJ+v0 (1/1)
声優ネタはいまいち分りません。
解説よろ
声優ネタはいまいち分りません。
解説よろ
615:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/19(月) 05:45:10.00:fRU5GmGAO (1/1)
>>614書いてあるけど
>>614書いてあるけど
616:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/19(月) 06:31:31.45:L4S/k0fx0 (1/1)
久々に来訪
ここはまだまだSSが投下されてるね
久々に来訪
ここはまだまだSSが投下されてるね
617:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/20(火) 21:45:18.79:okP5QSsn0 (1/1)
ゆたかの誕生日だったか……
そういえばゆたかメインのSSはまだ一つも書いていないな
今書いているssが終わったら挑戦してみるかな
ゆたかの誕生日だったか……
そういえばゆたかメインのSSはまだ一つも書いていないな
今書いているssが終わったら挑戦してみるかな
618:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/23(金) 15:11:37.09:HmPtnlFr0 (1/1)
9巻、フラゲした。
これから読む。
9巻、フラゲした。
これから読む。
619:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/24(土) 18:24:12.08:WfC77Z4SO (1/1)
なんか9巻は水曜あたりから一般本屋でも普通に売ってたみたいね
とりあえず若瀬兄はヤバいな
なんか9巻は水曜あたりから一般本屋でも普通に売ってたみたいね
とりあえず若瀬兄はヤバいな
620:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/26(月) 01:26:05.27:9tU4bH1Q0 (1/5)
9巻ネタバレ含むネタ
こなた「カバー表は、二年生組全員集合ー。って、ゆーちゃんとみなみちゃんが折りで隠れちゃってるけど」
ゆたか「若瀬さんがカバー表に初登場だから、私たちは隅の方によけてたんだけど……」
いずみ「そんな気を使ってもらわなくても……」
こなた「カバー下の表では、天原先生がゲーマーであることが判明したね」
ひより「意外っスね。あっ、そういえば、キングダムズでは、大原さんがゲーマーであることが判明しましたね。弟さんといっしょにゲームしてるそうで」
かがみ「カバー裏の4コマは、完全に自虐ネタだな」
こなた「まあ、ここまで来ちゃったら、かがみが50歳超えるまで続けるべきだよ。みきさんの若作り遺伝子がかがみに遺伝してるかどうか是非とも確かめたい」
かがみ「にゃもーさんがそれまで生きてられるかが問題だな」
こなた「カバー下の裏では、ゆい姉さんがなんか無茶してるし」
ゆい「こなたー。私だって、まだまだ若いんだぞ!」
こなた「まあ、P88でゆかりさんまでセーラー服着てたからね。でも、ゆかりさんやほのかさんまで着てるのに、みきさんが着てないのは納得いかない!」
かがみ「いや、さすがに50代でセーラー服はきついだろ」
みき「ただおさんが反対しなければ、着てもよかったんだけど」
かがみ「お母さん!」
ひより「三年生組では、毒さん先輩が最初の方でなかなかいい印象を残してましたね」
みく「そう?」
こなた「柊家ネタも結構あったし、黒井先生の出番も充分にあったし、今回はバランスいい方だよね」
ひより「そうっスね」
ゆい「私にも出番ほしいよぉ~(><)」
こなた「ゆい姉さんは、また、見えないところで、きー兄さんといちゃついてるってことで」
こなた「バカにつける薬が本当にあるかと思っちゃったよ」(P29)
つかさ「ひどいよ、こなちゃーん(><)」
こなた「お父さんの夜食ネタは定番になってきたね」
そうじろう「嫌な定番だな」
9巻ネタバレ含むネタ
こなた「カバー表は、二年生組全員集合ー。って、ゆーちゃんとみなみちゃんが折りで隠れちゃってるけど」
ゆたか「若瀬さんがカバー表に初登場だから、私たちは隅の方によけてたんだけど……」
いずみ「そんな気を使ってもらわなくても……」
こなた「カバー下の表では、天原先生がゲーマーであることが判明したね」
ひより「意外っスね。あっ、そういえば、キングダムズでは、大原さんがゲーマーであることが判明しましたね。弟さんといっしょにゲームしてるそうで」
かがみ「カバー裏の4コマは、完全に自虐ネタだな」
こなた「まあ、ここまで来ちゃったら、かがみが50歳超えるまで続けるべきだよ。みきさんの若作り遺伝子がかがみに遺伝してるかどうか是非とも確かめたい」
かがみ「にゃもーさんがそれまで生きてられるかが問題だな」
こなた「カバー下の裏では、ゆい姉さんがなんか無茶してるし」
ゆい「こなたー。私だって、まだまだ若いんだぞ!」
こなた「まあ、P88でゆかりさんまでセーラー服着てたからね。でも、ゆかりさんやほのかさんまで着てるのに、みきさんが着てないのは納得いかない!」
かがみ「いや、さすがに50代でセーラー服はきついだろ」
みき「ただおさんが反対しなければ、着てもよかったんだけど」
かがみ「お母さん!」
ひより「三年生組では、毒さん先輩が最初の方でなかなかいい印象を残してましたね」
みく「そう?」
こなた「柊家ネタも結構あったし、黒井先生の出番も充分にあったし、今回はバランスいい方だよね」
ひより「そうっスね」
ゆい「私にも出番ほしいよぉ~(><)」
こなた「ゆい姉さんは、また、見えないところで、きー兄さんといちゃついてるってことで」
こなた「バカにつける薬が本当にあるかと思っちゃったよ」(P29)
つかさ「ひどいよ、こなちゃーん(><)」
こなた「お父さんの夜食ネタは定番になってきたね」
そうじろう「嫌な定番だな」
621:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/26(月) 01:27:42.14:9tU4bH1Q0 (2/5)
ひより「若瀬さんのお兄さんが、リアル妹萌えであることが判明したっスよ」
こなた「若瀬さんって、オタクにとってはかなり理想的な妹だからね」
ひより「そうっスね」
こなた「そう考えると、実はひよりんのお兄さんも妹萌えだったりして」
ひより「いやいや、うちではそれはありえないっスよ」
こなた「ひよりん! 山辺さんの素顔を見ただとぉ!」(P44)
ひより「すごい美人だったっス」
こなた「画像、うp、うp!」
ひより「いや、さすがに写真は撮らせてもらえなかったっス」
こなた「若瀬さんって、すごい気にしぃさんだよね?」
ひより「そうっスね。もう少し気持ちを楽にもった方がいいと思うんスけど。隠れオタじゃ、なかなかそういうわけにもいかないっスよね」
こなた「ダイエットに何度も失敗するのと、ダイエットに何度も成功するのは、全く同じことを意味するという新たな真理が判明したよ!」
かがみ「そうだな……」
ひより「いや、ホント、柊家はネタの宝庫っスよね。是非とも泊り込みで取材に行きたいっス」
ひより「声優ネタ込みでまどマギネタを仕込むとは、泉先輩もしぶいっスね」(P55)
こなた「いやぁ、やっぱり、旬なうちにこれは是非ともやらないとね」
ひより「大人の悲哀を感じさせてくれる桜庭先生っス。先生もまだ若いんだから、そんな枯れた大人なのはどうかと思いますけど」
ひかる「田村も大人になれば分かるようになる」
ひより「後ろにロリ、って。ホントにあったら嫌っスね……」
こなた「ホント、新手のロリ発見機かと思ったよ」
こなた「ウソ予告、すごい気合入った出来だよね」(P71)
ひより「桜庭先生も言ってるっスけど、ホントになりそうなのがいくつもあるっス」
いずみ「やめて!!」
ひより「若瀬さんのお兄さんが、リアル妹萌えであることが判明したっスよ」
こなた「若瀬さんって、オタクにとってはかなり理想的な妹だからね」
ひより「そうっスね」
こなた「そう考えると、実はひよりんのお兄さんも妹萌えだったりして」
ひより「いやいや、うちではそれはありえないっスよ」
こなた「ひよりん! 山辺さんの素顔を見ただとぉ!」(P44)
ひより「すごい美人だったっス」
こなた「画像、うp、うp!」
ひより「いや、さすがに写真は撮らせてもらえなかったっス」
こなた「若瀬さんって、すごい気にしぃさんだよね?」
ひより「そうっスね。もう少し気持ちを楽にもった方がいいと思うんスけど。隠れオタじゃ、なかなかそういうわけにもいかないっスよね」
こなた「ダイエットに何度も失敗するのと、ダイエットに何度も成功するのは、全く同じことを意味するという新たな真理が判明したよ!」
かがみ「そうだな……」
ひより「いや、ホント、柊家はネタの宝庫っスよね。是非とも泊り込みで取材に行きたいっス」
ひより「声優ネタ込みでまどマギネタを仕込むとは、泉先輩もしぶいっスね」(P55)
こなた「いやぁ、やっぱり、旬なうちにこれは是非ともやらないとね」
ひより「大人の悲哀を感じさせてくれる桜庭先生っス。先生もまだ若いんだから、そんな枯れた大人なのはどうかと思いますけど」
ひかる「田村も大人になれば分かるようになる」
ひより「後ろにロリ、って。ホントにあったら嫌っスね……」
こなた「ホント、新手のロリ発見機かと思ったよ」
こなた「ウソ予告、すごい気合入った出来だよね」(P71)
ひより「桜庭先生も言ってるっスけど、ホントになりそうなのがいくつもあるっス」
いずみ「やめて!!」
622:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/26(月) 01:28:19.18:9tU4bH1Q0 (3/5)
ひより「若瀬さんのお兄さんが、リアル妹萌えであることが判明したっスよ」
こなた「若瀬さんって、オタクにとってはかなり理想的な妹だからね」
ひより「そうっスね」
こなた「そう考えると、実はひよりんのお兄さんも妹萌えだったりして」
ひより「いやいや、うちではそれはありえないっスよ」
こなた「ひよりん! 山辺さんの素顔を見ただとぉ!」(P44)
ひより「すごい美人だったっス」
こなた「画像、うp、うp!」
ひより「いや、さすがに写真は撮らせてもらえなかったっス」
こなた「若瀬さんって、すごい気にしぃさんだよね?」
ひより「そうっスね。もう少し気持ちを楽にもった方がいいと思うんスけど。隠れオタじゃ、なかなかそういうわけにもいかないっスよね」
こなた「ダイエットに何度も失敗するのと、ダイエットに何度も成功するのは、全く同じことを意味するという新たな真理が判明したよ!」
かがみ「そうだな……」
ひより「いや、ホント、柊家はネタの宝庫っスよね。是非とも泊り込みで取材に行きたいっス」
ひより「声優ネタ込みでまどマギネタを仕込むとは、泉先輩もしぶいっスね」(P55)
こなた「いやぁ、やっぱり、旬なうちにこれは是非ともやらないとね」
ひより「大人の悲哀を感じさせてくれる桜庭先生っス。先生もまだ若いんだから、そんな枯れた大人なのはどうかと思いますけど」
ひかる「田村も大人になれば分かるようになる」
ひより「後ろにロリ、って。ホントにあったら嫌っスね……」
こなた「ホント、新手のロリ発見機かと思ったよ」
こなた「ウソ予告、すごい気合入った出来だよね」(P71)
ひより「桜庭先生も言ってるっスけど、ホントになりそうなのがいくつもあるっス」
いずみ「やめて!!」
ひより「若瀬さんのお兄さんが、リアル妹萌えであることが判明したっスよ」
こなた「若瀬さんって、オタクにとってはかなり理想的な妹だからね」
ひより「そうっスね」
こなた「そう考えると、実はひよりんのお兄さんも妹萌えだったりして」
ひより「いやいや、うちではそれはありえないっスよ」
こなた「ひよりん! 山辺さんの素顔を見ただとぉ!」(P44)
ひより「すごい美人だったっス」
こなた「画像、うp、うp!」
ひより「いや、さすがに写真は撮らせてもらえなかったっス」
こなた「若瀬さんって、すごい気にしぃさんだよね?」
ひより「そうっスね。もう少し気持ちを楽にもった方がいいと思うんスけど。隠れオタじゃ、なかなかそういうわけにもいかないっスよね」
こなた「ダイエットに何度も失敗するのと、ダイエットに何度も成功するのは、全く同じことを意味するという新たな真理が判明したよ!」
かがみ「そうだな……」
ひより「いや、ホント、柊家はネタの宝庫っスよね。是非とも泊り込みで取材に行きたいっス」
ひより「声優ネタ込みでまどマギネタを仕込むとは、泉先輩もしぶいっスね」(P55)
こなた「いやぁ、やっぱり、旬なうちにこれは是非ともやらないとね」
ひより「大人の悲哀を感じさせてくれる桜庭先生っス。先生もまだ若いんだから、そんな枯れた大人なのはどうかと思いますけど」
ひかる「田村も大人になれば分かるようになる」
ひより「後ろにロリ、って。ホントにあったら嫌っスね……」
こなた「ホント、新手のロリ発見機かと思ったよ」
こなた「ウソ予告、すごい気合入った出来だよね」(P71)
ひより「桜庭先生も言ってるっスけど、ホントになりそうなのがいくつもあるっス」
いずみ「やめて!!」
623:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/26(月) 01:29:33.00:9tU4bH1Q0 (4/5)
こなた「物忘れがなくなる本を既に買っていたことを忘れて、何度も買っちゃうみさきちであった」
みさお「物忘れがなくなる本を忘れない本とかねぇかな?」
かがみ「そんな本があっても、おまえの場合は、その本のことも忘れるだろ」
こなた「ラノベはなんとか読めるようになったけど、文学はさすがにきついよ」
かがみ「頑張れ。おまえにはそうじろうさんの血が流れてるんだから、いけるはずだ」
こなた「ホームページの別窓開きって、親切なようでいて不親切だったりするよね」(P88)
みゆき「別窓開きにする場合は、リンクの近くにその旨を付記しておけば親切ですね」
こなた「確かに、エレキバンって、年寄りアイテムなイメージだよね」(P89)
かがみ「そう思うでしょ。やっぱり、お母さんとかには使ってほしくないっていうか……」
こなた「黒井先生は、草食系ならぬ絶食系女子だったわけですが」
ひより「桜庭先生もそんなイメージっス」
こなた「まあ、私もひよりんも、ぶっちゃけそんな感じだよね」
ひより「そうっスね。実のところ、私の知り合いの半分ぐらいはそんな感じかもしれないっスね」
ひより「フィギュアの同音異義語問題は、マジでびっくりしたっス」(P92)
こなた「この手は話は、他にもいろいろありそうだよね」
こなた「元副委員長、同窓会主催頑張ってくれたまえ!」(p105)
ひより「先輩、後で結果を教えてくださいっス。こんなネタはめったにないっスからね」
こなた「凄腕のフラグクラッシャーみゆきさんが相手だからね。見事に空振りの可能性もあるけど」
ひより「それならそれで、いいネタっスから」
こなた「ひよりん、君は結構エグいですな」
ひより「ネタのためなら、鬼にもなるっスよ」
こなた「キングダムズでは、中谷さんのツッコミの切れ味が日本刀なみだね。かがみのお株を奪うほどだよ」(p123左側)
あくる「そうかしら?」
あきら「中谷はホント容赦ないんですよぉ~(><)」
こなた「それに比べて、音無さんは、鈍器で叩きのめすような感じかな」(p125右側)
以上
こなた「物忘れがなくなる本を既に買っていたことを忘れて、何度も買っちゃうみさきちであった」
みさお「物忘れがなくなる本を忘れない本とかねぇかな?」
かがみ「そんな本があっても、おまえの場合は、その本のことも忘れるだろ」
こなた「ラノベはなんとか読めるようになったけど、文学はさすがにきついよ」
かがみ「頑張れ。おまえにはそうじろうさんの血が流れてるんだから、いけるはずだ」
こなた「ホームページの別窓開きって、親切なようでいて不親切だったりするよね」(P88)
みゆき「別窓開きにする場合は、リンクの近くにその旨を付記しておけば親切ですね」
こなた「確かに、エレキバンって、年寄りアイテムなイメージだよね」(P89)
かがみ「そう思うでしょ。やっぱり、お母さんとかには使ってほしくないっていうか……」
こなた「黒井先生は、草食系ならぬ絶食系女子だったわけですが」
ひより「桜庭先生もそんなイメージっス」
こなた「まあ、私もひよりんも、ぶっちゃけそんな感じだよね」
ひより「そうっスね。実のところ、私の知り合いの半分ぐらいはそんな感じかもしれないっスね」
ひより「フィギュアの同音異義語問題は、マジでびっくりしたっス」(P92)
こなた「この手は話は、他にもいろいろありそうだよね」
こなた「元副委員長、同窓会主催頑張ってくれたまえ!」(p105)
ひより「先輩、後で結果を教えてくださいっス。こんなネタはめったにないっスからね」
こなた「凄腕のフラグクラッシャーみゆきさんが相手だからね。見事に空振りの可能性もあるけど」
ひより「それならそれで、いいネタっスから」
こなた「ひよりん、君は結構エグいですな」
ひより「ネタのためなら、鬼にもなるっスよ」
こなた「キングダムズでは、中谷さんのツッコミの切れ味が日本刀なみだね。かがみのお株を奪うほどだよ」(p123左側)
あくる「そうかしら?」
あきら「中谷はホント容赦ないんですよぉ~(><)」
こなた「それに比べて、音無さんは、鈍器で叩きのめすような感じかな」(p125右側)
以上
624:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/26(月) 01:33:56.86:9tU4bH1Q0 (5/5)
622二重投稿になってた。ごめんなさい。
622二重投稿になってた。ごめんなさい。
625:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/29(木) 09:47:48.26:R2IAmY8SO (1/1)
―突っ走る人―
こなた「もしもし、かがみー?トライG買った?」
かがみ『うん。昨日、つかさと買ったわよ』
こなた「じゃ、また今度みんなで集まってやろっか」
かがみ『オッケー…っと、進めないほうがいいかしら?』
こなた「んー…まあ、流石に初期装備とかちょっとアレだし、消耗品も集めときたいし、少しはソロででもやっといていいと思うよ」
かがみ『わかったわ。じゃあ、また今度ね』
こなた「ういー。みゆきさんにも伝えとくよー」
数日後
かがみ「………」
つかさ「………」
こなた「…なぜみゆきさんはG級装備なのか」
みゆき「…すみません…!…ほんのちょっと…ほんのちょっとのつもりだったんです…!」
―突っ走る人―
こなた「もしもし、かがみー?トライG買った?」
かがみ『うん。昨日、つかさと買ったわよ』
こなた「じゃ、また今度みんなで集まってやろっか」
かがみ『オッケー…っと、進めないほうがいいかしら?』
こなた「んー…まあ、流石に初期装備とかちょっとアレだし、消耗品も集めときたいし、少しはソロででもやっといていいと思うよ」
かがみ『わかったわ。じゃあ、また今度ね』
こなた「ういー。みゆきさんにも伝えとくよー」
数日後
かがみ「………」
つかさ「………」
こなた「…なぜみゆきさんはG級装備なのか」
みゆき「…すみません…!…ほんのちょっと…ほんのちょっとのつもりだったんです…!」
626:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b):2011/12/29(木) 23:10:08.68:jMsCDCu60 (1/1)
ここまでまとめた
年内中にできると思ったけど間に合いそうにない。
取りあえず投下お疲れ様です。
ここまでまとめた
年内中にできると思ったけど間に合いそうにない。
取りあえず投下お疲れ様です。
627:SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b):2012/01/01(日) 00:23:33.37:ky3RfmFc0 (1/1)
明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします。
またいろいろssを書いていきたいたいと思います。
相変わらずらき☆すたらしくないかもしれませんが
読んでくれれば幸いです。
明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします。
またいろいろssを書いていきたいたいと思います。
相変わらずらき☆すたらしくないかもしれませんが
読んでくれれば幸いです。
628:SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b):2012/01/01(日) 16:37:36.48:gnMujoa3o (1/1)
あけましておめでとう~
あけましておめでとう~
629:以下、あけまして:2012/01/03(火) 16:08:41.15:o2bv1CyAO (1/1)
パティ「イズミ!HappyBirthday!プレゼントですよ!!フユコミゲンセンドージンシです!!」
いずみ「嫌がらせか!」
パティ「イズミ!HappyBirthday!プレゼントですよ!!フユコミゲンセンドージンシです!!」
いずみ「嫌がらせか!」
630:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/08(日) 23:52:04.04:ilryqbMC0 (1/5)
久しぶりに投下します。
これは「つかさの一人旅」http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1684.html の続編です。
知らない人はこれを読んでからにした方がいいかもしれません。
興味ない方はスルーで。
45レスほど使用させて頂きます。
久しぶりに投下します。
これは「つかさの一人旅」http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1684.html の続編です。
知らない人はこれを読んでからにした方がいいかもしれません。
興味ない方はスルーで。
45レスほど使用させて頂きます。
631:つかさの旅 1/45:2012/01/08(日) 23:54:37.23:ilryqbMC0 (2/5)
これは『ID:8sJ1r760氏:つかさの一人旅(ページ1)、(ページ2)』の続編です。
一部 <再会>
かえでさんと新しい店を切り盛りする毎日。もうどのくらい経ったのかな。忙しい毎日、そこまで考える余裕がなかった。
店は温泉宿の食堂を改造した。温泉の食堂も兼ねている。店の名は『かえで』。最初は温泉の宿泊客だけだったけど最近になってはこの店だけを目的に訪れる客も増えてきた。
店の運営もひと段落ついてこの町、規模からすると村かな、この村の生活もだいぶ慣れてきた。
別に招待したわけじゃなかったけどお父さん、お母さん、いのりお姉ちゃん、まつりお姉ちゃんは直ぐに店に来てくれた。ゆたかちゃん達も来てくれた。
お姉ちゃんはこなちゃん達と一緒に来ると言ってまだ来てくれていない。
でも今は夏休み、お姉ちゃん達も大学最後の夏休み。明日、待望のお姉ちゃん達が泊りがけで遊びに来てくれる。嬉しいな。自然と仕込みに熱が入る。
かえで「いよいよ明日はかがみさん達が来るわね」
つかさ「うん、やっと来てくれる、お姉ちゃんはね……」
かえでさんは手を前に出して私が話そうとするのを止めた。
かえで「その話は何度も聞いたわ、好きなのは分かるけどお腹いっぱいだ、まだ一回も会っていないのに知り合いのように感じるわ」
そうかもしれない。かえでさんと料理の話以外はお姉ちゃん達の話しかしていないかも。でもそれじゃないと真奈美さん、まなちゃんの事を思い出しちゃう。
この村に来て一番悲しい出来事
本当はまなちゃんの話をかえでさんにもしたい。だけど話せばかえでさんはまなちゃんをきっと許さない。辻さんの自殺を止めなかった。
かえで「ご、ごめん、別に悪気はなかった、話したければ話して」
どうやら私は悲しい顔をしてしまったみたい。忘れることはできないけど、今はそれを考えている時じゃないよね。
つかさ「私ってそんなに同じ話してた?」
かえで「それすら気が付かないなんて、もうかがみさん達がどんな人なのかは分かったつもり、それより明日のメニューは決まってるの?」
お姉ちゃん達に出すメニューは私が決めることになっていた。
つかさ「もう決まってる、一応フルコースにしようと思って」
私はかえでさんにメニューを渡した。
かえで「良いわね、問題ないと思う、それで最後のデザートはつかさ、貴女が担当しなさい」
つかさ「えっ、いいの?」
耳を疑って聞き直した。かえでさんは頷いた。かえでさんはいままで私の作ったデザートをお客さんに出していなかった。
かえで「最初からつかさの腕は完成に近い状態だった、お姉さんに腕の上がった所をみせてあげなさい」
デザートでかえでさんに褒められたのは初めてだった。
つかさ「ありがとう、店長」
かえで「この時だけ店長なのね、ふふふ」
私達は笑った。
『つかさの旅』
その日が来た。お姉ちゃん、こなちゃん、ゆきちゃんが私たちの店に来た。早速予約席に案内した。
つかさ「今日は来てくれてありがとう」
みゆき「こんにちは、お久しぶりです……」
こなた「いや~つかさもこんなに早く店を持つなんて凄いね~」
つかさ「私の店じゃないよ、かえでさんのお店だよ……募る話はお店が終わってからゆっくり話そう、今夜は私たちの料理を楽しんでね」
こなた・みゆき「はーい」
あれ、おかしいな。さっきからお姉ちゃんは黙って一言も話していない。私がここに住んでから初めて会うのに何も言わないなんて。私と会うのが嬉しくないのかな。
久しぶりだからしょうがないよね。私は気を取り直してかえでさんに合図をした。かえでさんの料理が始まった。
何品か料理を出した時だった。
かがみ「店長、店長を呼んできて」
店内にお姉ちゃんの声が響いた。私はデザートの準備をしていたのでその場を離れる事ができなかった。かえでさんは料理の手を休めてお姉ちゃん達のテーブルに向かった。
かえで「いかがなされましたか?」
かがみ「この料理は何、よくこんな物を客に出せるわね」
お姉ちゃんはお皿をかえでさんに突き出した。
かえで「……何かお気に召さないものでも……」
かえでさんは困惑している様子だった。今までこのお店に難癖をつけてくるお客さんは何人かいた。だけどかえでさんは毅然とした態度で対応してきた。
いくらお姉ちゃんがあんなに怒っているとは言え今までに無い低姿勢、何故だろう。
かがみ「……まだ分からないの、それでよく料理長が務まるわね……」
こなた「かがみ、いきなりどうしたの?」
さすがのこなちゃんも驚きを隠せなかった。ゆきちゃんはお姉ちゃんを見たきり何も出来ない様子だった。お姉ちゃんは一度溜め息を付いた。
かがみ「つかさを貴女に預けてどれほど腕を上げたか楽しみにしていたけど、貴女がこの程度の腕ならつかさの料理も高が知れたわね」
かえで「私はベストを尽くしました、それでお気に召さないのでしたら、せめて理由をご教授お願いします」
お姉ちゃんは立ち上がった。
かがみ「教える必要はない、つかさは貴女の何処に惹かれたのかしらね、こんな寂れた店よりつかさならもっと洒落た店を任せられるわ、がっかりした、
もうこの店に用はない、先に宿に行っているわ」
お姉ちゃんは店を出てしまった。かえでさんは俯いている。両手を握り締めて震えている。
みゆき「あ、あの、すみません、普段のかがみさんは、この様な事は……私はとても美味しく……」
こなた「わ、私も美味しいよ、次の料理……未だかな…」
必死にその場を取り繕うとするこなちゃんとゆきちゃんだった。だけどそれは空しいだけだった。私はお姉ちゃんにデザートを食べてもらえなくて寂しかった。
これは『ID:8sJ1r760氏:つかさの一人旅(ページ1)、(ページ2)』の続編です。
一部 <再会>
かえでさんと新しい店を切り盛りする毎日。もうどのくらい経ったのかな。忙しい毎日、そこまで考える余裕がなかった。
店は温泉宿の食堂を改造した。温泉の食堂も兼ねている。店の名は『かえで』。最初は温泉の宿泊客だけだったけど最近になってはこの店だけを目的に訪れる客も増えてきた。
店の運営もひと段落ついてこの町、規模からすると村かな、この村の生活もだいぶ慣れてきた。
別に招待したわけじゃなかったけどお父さん、お母さん、いのりお姉ちゃん、まつりお姉ちゃんは直ぐに店に来てくれた。ゆたかちゃん達も来てくれた。
お姉ちゃんはこなちゃん達と一緒に来ると言ってまだ来てくれていない。
でも今は夏休み、お姉ちゃん達も大学最後の夏休み。明日、待望のお姉ちゃん達が泊りがけで遊びに来てくれる。嬉しいな。自然と仕込みに熱が入る。
かえで「いよいよ明日はかがみさん達が来るわね」
つかさ「うん、やっと来てくれる、お姉ちゃんはね……」
かえでさんは手を前に出して私が話そうとするのを止めた。
かえで「その話は何度も聞いたわ、好きなのは分かるけどお腹いっぱいだ、まだ一回も会っていないのに知り合いのように感じるわ」
そうかもしれない。かえでさんと料理の話以外はお姉ちゃん達の話しかしていないかも。でもそれじゃないと真奈美さん、まなちゃんの事を思い出しちゃう。
この村に来て一番悲しい出来事
本当はまなちゃんの話をかえでさんにもしたい。だけど話せばかえでさんはまなちゃんをきっと許さない。辻さんの自殺を止めなかった。
かえで「ご、ごめん、別に悪気はなかった、話したければ話して」
どうやら私は悲しい顔をしてしまったみたい。忘れることはできないけど、今はそれを考えている時じゃないよね。
つかさ「私ってそんなに同じ話してた?」
かえで「それすら気が付かないなんて、もうかがみさん達がどんな人なのかは分かったつもり、それより明日のメニューは決まってるの?」
お姉ちゃん達に出すメニューは私が決めることになっていた。
つかさ「もう決まってる、一応フルコースにしようと思って」
私はかえでさんにメニューを渡した。
かえで「良いわね、問題ないと思う、それで最後のデザートはつかさ、貴女が担当しなさい」
つかさ「えっ、いいの?」
耳を疑って聞き直した。かえでさんは頷いた。かえでさんはいままで私の作ったデザートをお客さんに出していなかった。
かえで「最初からつかさの腕は完成に近い状態だった、お姉さんに腕の上がった所をみせてあげなさい」
デザートでかえでさんに褒められたのは初めてだった。
つかさ「ありがとう、店長」
かえで「この時だけ店長なのね、ふふふ」
私達は笑った。
『つかさの旅』
その日が来た。お姉ちゃん、こなちゃん、ゆきちゃんが私たちの店に来た。早速予約席に案内した。
つかさ「今日は来てくれてありがとう」
みゆき「こんにちは、お久しぶりです……」
こなた「いや~つかさもこんなに早く店を持つなんて凄いね~」
つかさ「私の店じゃないよ、かえでさんのお店だよ……募る話はお店が終わってからゆっくり話そう、今夜は私たちの料理を楽しんでね」
こなた・みゆき「はーい」
あれ、おかしいな。さっきからお姉ちゃんは黙って一言も話していない。私がここに住んでから初めて会うのに何も言わないなんて。私と会うのが嬉しくないのかな。
久しぶりだからしょうがないよね。私は気を取り直してかえでさんに合図をした。かえでさんの料理が始まった。
何品か料理を出した時だった。
かがみ「店長、店長を呼んできて」
店内にお姉ちゃんの声が響いた。私はデザートの準備をしていたのでその場を離れる事ができなかった。かえでさんは料理の手を休めてお姉ちゃん達のテーブルに向かった。
かえで「いかがなされましたか?」
かがみ「この料理は何、よくこんな物を客に出せるわね」
お姉ちゃんはお皿をかえでさんに突き出した。
かえで「……何かお気に召さないものでも……」
かえでさんは困惑している様子だった。今までこのお店に難癖をつけてくるお客さんは何人かいた。だけどかえでさんは毅然とした態度で対応してきた。
いくらお姉ちゃんがあんなに怒っているとは言え今までに無い低姿勢、何故だろう。
かがみ「……まだ分からないの、それでよく料理長が務まるわね……」
こなた「かがみ、いきなりどうしたの?」
さすがのこなちゃんも驚きを隠せなかった。ゆきちゃんはお姉ちゃんを見たきり何も出来ない様子だった。お姉ちゃんは一度溜め息を付いた。
かがみ「つかさを貴女に預けてどれほど腕を上げたか楽しみにしていたけど、貴女がこの程度の腕ならつかさの料理も高が知れたわね」
かえで「私はベストを尽くしました、それでお気に召さないのでしたら、せめて理由をご教授お願いします」
お姉ちゃんは立ち上がった。
かがみ「教える必要はない、つかさは貴女の何処に惹かれたのかしらね、こんな寂れた店よりつかさならもっと洒落た店を任せられるわ、がっかりした、
もうこの店に用はない、先に宿に行っているわ」
お姉ちゃんは店を出てしまった。かえでさんは俯いている。両手を握り締めて震えている。
みゆき「あ、あの、すみません、普段のかがみさんは、この様な事は……私はとても美味しく……」
こなた「わ、私も美味しいよ、次の料理……未だかな…」
必死にその場を取り繕うとするこなちゃんとゆきちゃんだった。だけどそれは空しいだけだった。私はお姉ちゃんにデザートを食べてもらえなくて寂しかった。
632:つかさの旅 2/45:2012/01/08(日) 23:56:00.11:ilryqbMC0 (3/5)
閉店時間。店はすっかり片付いた。でもかえでさんは帰ろうとはしなかった。
つかさ「すみません、お姉ちゃんのあの態度はいくらなんでも酷い、明日会う約束しているからしっかり言っておくね」
普段なら解散の時間。かえでさんはあれから気が抜けたような感じになっていた。私にはこう言うしかなかった。
かえで「……あの方、つかさのお姉さんだったのね……かがみさだったわね、双子にしては似ていなかった、気付かなかったわ」
つかさ「え?」
お姉ちゃんを知っているような言い方だった。
かえで「ここに開店してからすぐに見えたお客様だった、つかさは引越しの準備で居なかったわね」
そういえばお姉ちゃんだけ私の引越しを手伝わないでどこかに出かけていたのを思い出した。お姉ちゃんはこの店に来たのは初めてじゃなかった。
かえで「料理を食べると私を呼び、『美味しかった』……そう一言、初めて私の目の前で褒められた……味付け、盛り付け……いろいろ具体的だった、
あの時の彼女の笑顔が今でもしっかりと思い出せる」
一回だけ来たお姉ちゃんを覚えていたなんて、よっぽど嬉しかったに違いない。
褒めていたのに手のひらを返したようにいきなりのダメ出し。しかも理由を言わないなんて。力が抜けたように椅子に座るかえでさんに私はなんて言って良いか分からなかった。
かえで「……私は開店してから調理法を変えていない、いや、改善はしている、材料も私自身が選んだ、手も抜いていない、今日の料理だって……何がいけなかった」
俯いた顔を私に向けた。
かえで「もう遅いわ、帰りなさい、明日は休みでしょ、戸締りは私がするから」
つかさ「でも……」
かえで「もう少しここに居たいから、一人にして」
つかさ「……お疲れ様」
店の外に出ると月の光が射していた。星も綺麗。ほっとする瞬間だった。今は考えてもしょうがない。明日直接お姉ちゃんに聞く。それでいい。
淳子「あら、つかさちゃん」
宿屋の女将の淳子さん、この時間に会うのは珍しい。
つかさ「こんばんは」
淳子「つかさちゃんのお友達は部屋に居るわよ、会っていくかい?」
つかさ「明日の朝、神社で会う約束をしているから」
淳子「神社……あのお稲荷さん?」
私は頷いた。
淳子「そういえば毎月つかさちゃんはお参り行っているんだってね、あの階段大変でしょ」
つかさ「もう慣れました」
淳子「明日は休みだってね、お友達と楽しんでらっしゃいな」
つかさ「ありがとうございます」
淳子「おやすみ」
つかさ「おやすみなさい」
明日は久しぶりに皆とお喋りができる。
閉店時間。店はすっかり片付いた。でもかえでさんは帰ろうとはしなかった。
つかさ「すみません、お姉ちゃんのあの態度はいくらなんでも酷い、明日会う約束しているからしっかり言っておくね」
普段なら解散の時間。かえでさんはあれから気が抜けたような感じになっていた。私にはこう言うしかなかった。
かえで「……あの方、つかさのお姉さんだったのね……かがみさだったわね、双子にしては似ていなかった、気付かなかったわ」
つかさ「え?」
お姉ちゃんを知っているような言い方だった。
かえで「ここに開店してからすぐに見えたお客様だった、つかさは引越しの準備で居なかったわね」
そういえばお姉ちゃんだけ私の引越しを手伝わないでどこかに出かけていたのを思い出した。お姉ちゃんはこの店に来たのは初めてじゃなかった。
かえで「料理を食べると私を呼び、『美味しかった』……そう一言、初めて私の目の前で褒められた……味付け、盛り付け……いろいろ具体的だった、
あの時の彼女の笑顔が今でもしっかりと思い出せる」
一回だけ来たお姉ちゃんを覚えていたなんて、よっぽど嬉しかったに違いない。
褒めていたのに手のひらを返したようにいきなりのダメ出し。しかも理由を言わないなんて。力が抜けたように椅子に座るかえでさんに私はなんて言って良いか分からなかった。
かえで「……私は開店してから調理法を変えていない、いや、改善はしている、材料も私自身が選んだ、手も抜いていない、今日の料理だって……何がいけなかった」
俯いた顔を私に向けた。
かえで「もう遅いわ、帰りなさい、明日は休みでしょ、戸締りは私がするから」
つかさ「でも……」
かえで「もう少しここに居たいから、一人にして」
つかさ「……お疲れ様」
店の外に出ると月の光が射していた。星も綺麗。ほっとする瞬間だった。今は考えてもしょうがない。明日直接お姉ちゃんに聞く。それでいい。
淳子「あら、つかさちゃん」
宿屋の女将の淳子さん、この時間に会うのは珍しい。
つかさ「こんばんは」
淳子「つかさちゃんのお友達は部屋に居るわよ、会っていくかい?」
つかさ「明日の朝、神社で会う約束をしているから」
淳子「神社……あのお稲荷さん?」
私は頷いた。
淳子「そういえば毎月つかさちゃんはお参り行っているんだってね、あの階段大変でしょ」
つかさ「もう慣れました」
淳子「明日は休みだってね、お友達と楽しんでらっしゃいな」
つかさ「ありがとうございます」
淳子「おやすみ」
つかさ「おやすみなさい」
明日は久しぶりに皆とお喋りができる。
633:つかさの旅 3/45:2012/01/08(日) 23:57:22.17:ilryqbMC0 (4/5)
次の日の早朝。
私は石の上に稲荷寿司とパンケーキを置いた。そして手を合わせた。後ろにこなちゃんとゆきちゃんも同じく手を合わせてくれた。しばらく静寂が続いた。
みゆき「ここが真奈美さんの……不思議な雰囲気ですね」
こなた「そうかな、私には普通の森にしか見えないけど、しかしこの階段はつかれたよ~よく息も切らさないでつかさは登れるね」
ゆきちゃんはこなちゃんにあの出来事を話した。ここでどんな事が起きたのかこなちゃんは知っている。信じているのかいないのかは別にして。
つかさ「毎月数回は登っているからね」
こなた「普通の森だけど、この景色はいいな、町が見渡せるよ」
こなちゃんは階段から町を見下ろしていた。
みゆき「泉さんは一連の話をどう思われますか?」
おもむろに口を開いた。
こなた「俄かに信じろって言われてもね……でもつかさが嘘をつくとも思えない、幻想でも見た、それで片付けるのも納得がいかない、お稲荷様か……」
町並みを見下ろしながらこなちゃんは答えた。
こなた「でも、つかさがここに来て店を出すなんて言ったのだから、よっぽどの事が起きたのは確かだよね、つかさをそこまで決心させた何かがね」
みゆき「そうですね、でも、一番驚いたのはかがみさんではないでしょうか」
つかさ「お姉ちゃん、来てくれなかった……ゆきちゃんはお姉ちゃんにも話したの?」
ゆきちゃんは頷いた。
つかさ「やっぱりお姉ちゃんは信じてくれなかったのかな」
みゆき「かがみさんは生理痛が酷くて宿で休んでいます、無理は禁物です、おそらく元気なら来てくれたと思いますよ」
こなた「チッチ、みゆきさんはかがみを全く分かってないね……かがみはツンデレだから、ツン、が出てるんだよ」
こなちゃんは人差し指を立て、舌打ちをして私たちの方を向いた。
こなた「昨夜のかがみは本心で言ったんじゃないと思うよ」
みゆき「それでは、どうしてあのような言動を?」
こなた「それは、つかさが原因だよ」
つかさ「え、私?」
こなた「可愛い妹が見ず知らずの人に取られた、それも料理の才能を見込んで、これだけでかがみの嫉妬心に火を付けるには充分さ」
お姉ちゃんはかえでさんに焼餅を焼いていた。そうなのかな。
つかさ「でも、私は別にお嫁さんになったわけじゃないし、かえでさんは女性だよ……それだけで焼餅焼くかな?」
こなた「血縁関係、性別、年齢問わずそうゆうのはあるんだよ、高校時代かがみはいってたじゃん、つかさよりも一歩先にいきたかったって、雲泥の差があったらそんなの
言わないよ、つかさはかがみとってライバルでもあり、可愛い妹でもあり、友達でもあったんだ、それをいきなり松本さんって人がつかさを取っちゃった、
これはかがみにとっては言い表せないほどの喪失感があったに違いない……だよね、みゆきさん」
こなちゃんはゆきちゃんの方を向いた。ゆきちゃんは突然振られたのですこし慌てていた。
みゆき「え、ええ、そうですね、なかなか興味深い推理ですね、昨日からかがみさんの様子がおかしかったのですが、生理痛だけはなさそうですね」
こなた「その生理痛も疑わしい、きっと今頃、宿屋であんな事をして後悔しているよ」
つかさ「それなら心配はしないけど……」
そう、後悔しているなら心配はしない、かえでさんとお姉ちゃん、性格がなんとなく似ているからもしかしたらと思った。これ以上の衝突は無く友達になって欲しい。
みゆき「かがみさんが心配です、すみません、私は先に下ります、お昼にまた会いましょう」
ゆきちゃんは階段を下りていった。私達はゆきちゃんが小さくなるまで見送った。
こなた「お稲荷さんの末裔か……つかさは神社の娘……これって偶然じゃないよ、まだ何大変な事が起きるような気がするよ、真奈美って人がつかさを殺さなかったのも、
もっと何か意味があるのかもね、フラグ立ちまくり……そうは思わない?」
つかさ「フラグ云々は別として、まなちゃんにはまた会いたい、助けてもらったお礼も言ってないしね」
ゆきちゃんが見えなくなった頃だった。こなちゃんは目を閉じてから私の方を向いた。
こなた「フラグと言えばね、もう一つ見つけた、つかさは気付いていないだろうね……」
何だろう、勿体ぶった言い方、私はその内容を聞きたくなった。
つかさ「なに、そのフラグって、私に関係するの?」
こなちゃんはニヤリと笑った。
こなた「……昨夜のお店にいた一人の男性客……それがつかさをずっと見つめていた……きっとつかさに気があるよ」
つかさ「男性客、私を見つめていたって、それだけで何故私に気があるって分かるの?」
こなちゃんは得意そうな顔になった。
こなた「バイトをしていて分かるようになった、あの目は普通じゃないよ、もっともストーカーの可能性もあるからその辺り判断できない」
つかさ「ストーカー……なんか怖い」
こなた「まぁ、気を付けることですな……さてと、私もみゆきさんじゃないけどかがみが心配、つかさも心配でしょ」
私は頷いた。
こなた「午後からこの町を探索しに行こうと思ってるんだけど、私はみゆきさんと一緒に行くから、つかさはかがみの相手をして」
つかさ「え、私は皆を町の案内する為に一日休んだし、別行動はあまり良くないよ」
こなちゃんはまた舌打ちをして人差し指を立てた。
こなた「つかさ、まだかがみを分かってないね、きっとかがみは私達と一緒に行くのを断るよ……それに募る話もあるんじゃないの、姉妹だしね」
こなちゃんはウインクをした。
こなた「まぁ、姉妹で何を話しても構わないけど私がツンデレの話をしたって話さないでね……あとで殴られるから」
つかさ「こなちゃんこそまだお姉ちゃんを分かっていないよ、私が何を話してもこなちゃんは殴られるよ」
こなた「え、なんで?」
こなちゃんはキョトンとした顔で私を見つめた。
つかさ「時間は大丈夫なの、遅刻はお姉ちゃん嫌いだから……」
こなちゃんは慌てて腕時計をみた。
こなた「うゎ、もうこんな時間、それじゃ三十分経っても携帯に電話がこなかたらかがみは宿にいるから」
つかさ「それじゃここで待っているね」
こなた「うひゃー、遅刻、遅刻」
こなちゃんは飛び出すように階段を下りていった。そのスピードはゆきちゃんの時の三倍はある感じだった。私はこなちゃんが見えなくなるまで見送った。
次の日の早朝。
私は石の上に稲荷寿司とパンケーキを置いた。そして手を合わせた。後ろにこなちゃんとゆきちゃんも同じく手を合わせてくれた。しばらく静寂が続いた。
みゆき「ここが真奈美さんの……不思議な雰囲気ですね」
こなた「そうかな、私には普通の森にしか見えないけど、しかしこの階段はつかれたよ~よく息も切らさないでつかさは登れるね」
ゆきちゃんはこなちゃんにあの出来事を話した。ここでどんな事が起きたのかこなちゃんは知っている。信じているのかいないのかは別にして。
つかさ「毎月数回は登っているからね」
こなた「普通の森だけど、この景色はいいな、町が見渡せるよ」
こなちゃんは階段から町を見下ろしていた。
みゆき「泉さんは一連の話をどう思われますか?」
おもむろに口を開いた。
こなた「俄かに信じろって言われてもね……でもつかさが嘘をつくとも思えない、幻想でも見た、それで片付けるのも納得がいかない、お稲荷様か……」
町並みを見下ろしながらこなちゃんは答えた。
こなた「でも、つかさがここに来て店を出すなんて言ったのだから、よっぽどの事が起きたのは確かだよね、つかさをそこまで決心させた何かがね」
みゆき「そうですね、でも、一番驚いたのはかがみさんではないでしょうか」
つかさ「お姉ちゃん、来てくれなかった……ゆきちゃんはお姉ちゃんにも話したの?」
ゆきちゃんは頷いた。
つかさ「やっぱりお姉ちゃんは信じてくれなかったのかな」
みゆき「かがみさんは生理痛が酷くて宿で休んでいます、無理は禁物です、おそらく元気なら来てくれたと思いますよ」
こなた「チッチ、みゆきさんはかがみを全く分かってないね……かがみはツンデレだから、ツン、が出てるんだよ」
こなちゃんは人差し指を立て、舌打ちをして私たちの方を向いた。
こなた「昨夜のかがみは本心で言ったんじゃないと思うよ」
みゆき「それでは、どうしてあのような言動を?」
こなた「それは、つかさが原因だよ」
つかさ「え、私?」
こなた「可愛い妹が見ず知らずの人に取られた、それも料理の才能を見込んで、これだけでかがみの嫉妬心に火を付けるには充分さ」
お姉ちゃんはかえでさんに焼餅を焼いていた。そうなのかな。
つかさ「でも、私は別にお嫁さんになったわけじゃないし、かえでさんは女性だよ……それだけで焼餅焼くかな?」
こなた「血縁関係、性別、年齢問わずそうゆうのはあるんだよ、高校時代かがみはいってたじゃん、つかさよりも一歩先にいきたかったって、雲泥の差があったらそんなの
言わないよ、つかさはかがみとってライバルでもあり、可愛い妹でもあり、友達でもあったんだ、それをいきなり松本さんって人がつかさを取っちゃった、
これはかがみにとっては言い表せないほどの喪失感があったに違いない……だよね、みゆきさん」
こなちゃんはゆきちゃんの方を向いた。ゆきちゃんは突然振られたのですこし慌てていた。
みゆき「え、ええ、そうですね、なかなか興味深い推理ですね、昨日からかがみさんの様子がおかしかったのですが、生理痛だけはなさそうですね」
こなた「その生理痛も疑わしい、きっと今頃、宿屋であんな事をして後悔しているよ」
つかさ「それなら心配はしないけど……」
そう、後悔しているなら心配はしない、かえでさんとお姉ちゃん、性格がなんとなく似ているからもしかしたらと思った。これ以上の衝突は無く友達になって欲しい。
みゆき「かがみさんが心配です、すみません、私は先に下ります、お昼にまた会いましょう」
ゆきちゃんは階段を下りていった。私達はゆきちゃんが小さくなるまで見送った。
こなた「お稲荷さんの末裔か……つかさは神社の娘……これって偶然じゃないよ、まだ何大変な事が起きるような気がするよ、真奈美って人がつかさを殺さなかったのも、
もっと何か意味があるのかもね、フラグ立ちまくり……そうは思わない?」
つかさ「フラグ云々は別として、まなちゃんにはまた会いたい、助けてもらったお礼も言ってないしね」
ゆきちゃんが見えなくなった頃だった。こなちゃんは目を閉じてから私の方を向いた。
こなた「フラグと言えばね、もう一つ見つけた、つかさは気付いていないだろうね……」
何だろう、勿体ぶった言い方、私はその内容を聞きたくなった。
つかさ「なに、そのフラグって、私に関係するの?」
こなちゃんはニヤリと笑った。
こなた「……昨夜のお店にいた一人の男性客……それがつかさをずっと見つめていた……きっとつかさに気があるよ」
つかさ「男性客、私を見つめていたって、それだけで何故私に気があるって分かるの?」
こなちゃんは得意そうな顔になった。
こなた「バイトをしていて分かるようになった、あの目は普通じゃないよ、もっともストーカーの可能性もあるからその辺り判断できない」
つかさ「ストーカー……なんか怖い」
こなた「まぁ、気を付けることですな……さてと、私もみゆきさんじゃないけどかがみが心配、つかさも心配でしょ」
私は頷いた。
こなた「午後からこの町を探索しに行こうと思ってるんだけど、私はみゆきさんと一緒に行くから、つかさはかがみの相手をして」
つかさ「え、私は皆を町の案内する為に一日休んだし、別行動はあまり良くないよ」
こなちゃんはまた舌打ちをして人差し指を立てた。
こなた「つかさ、まだかがみを分かってないね、きっとかがみは私達と一緒に行くのを断るよ……それに募る話もあるんじゃないの、姉妹だしね」
こなちゃんはウインクをした。
こなた「まぁ、姉妹で何を話しても構わないけど私がツンデレの話をしたって話さないでね……あとで殴られるから」
つかさ「こなちゃんこそまだお姉ちゃんを分かっていないよ、私が何を話してもこなちゃんは殴られるよ」
こなた「え、なんで?」
こなちゃんはキョトンとした顔で私を見つめた。
つかさ「時間は大丈夫なの、遅刻はお姉ちゃん嫌いだから……」
こなちゃんは慌てて腕時計をみた。
こなた「うゎ、もうこんな時間、それじゃ三十分経っても携帯に電話がこなかたらかがみは宿にいるから」
つかさ「それじゃここで待っているね」
こなた「うひゃー、遅刻、遅刻」
こなちゃんは飛び出すように階段を下りていった。そのスピードはゆきちゃんの時の三倍はある感じだった。私はこなちゃんが見えなくなるまで見送った。
634:つかさの旅 4/45:2012/01/08(日) 23:58:54.09:ilryqbMC0 (5/5)
私はまたお供えた稲荷寿司とパンケーキの所に向かった。こなちゃんの話が気になっていた訳じゃないけど、なんとなく来てしまった。そして両手を合わせた。
まなちゃん、辻さん、皆を守ってあげて下さい。
私は会談を下りるのに時間がかかるので十五分後には下り始めた。神社の入り口を通る頃、こなちゃんの言う三十分が経った。携帯電話のメール着信が来た。
見るとこなちゃんからだった。内容は、お姉ちゃんはやっぱり出かけないと書いてあった。こなちゃんは電話しないって言ったのに。こなちゃん、変わったかな。
宿が見えてきた。その隣にレストラン。素通りしようとしたけど出来なかった。でも休みの時は店には入るなってかえでさんと約束をしったっけ。ちょっと覗くだけなら。
窓越しに店の中を見た。かえでさんが忙しそうに働いていた。昨夜のような脱力した感じは見受けられなかった。なんか安心した。
お姉ちゃん達が泊まっている部屋の前に着いた。私はノックした。返事は無かったけど扉を開けた。
つかさ「お姉ちゃん、入るよ」
お姉ちゃんは椅子に座っていた。何をするわけでもなく。
つかさ「これからでもこなちゃん達と合流する、こんな所でも結構見るところいっぱいあるよ」
お姉ちゃんはムスっとした顔で窓の外を見ていた。私と目を合わせないようにしているみたいだった。
私はテーブルに置いてあったポットと急須でお姉ちゃんにお茶を入れてあげた。
つかさ「久しぶりだね、お茶なんか高校三年の時以来だね、その時はコーヒーの方が多かったかな?」
お姉ちゃんは何も言わず窓の外を見たままだった。どうしよう。こんな時はどんな話がいいのかな。昨夜の話をしたら余計に話してくれそうにない。
かといって昔話をしたって同じだよね。それなら私が知らないと思っている話をしてあげよう。
つかさ「お姉ちゃん、私が引越しの……」
かがみ「そんな事より、いつ頃帰ってくるの?」
私の話しにいきなり割り込んできた。私はお姉ちゃんが前にもレストランに来てくれた話をしようとしていた。
つかさ「今はそんな話していないよ……」
かがみ「それじゃ何の話をしているのよ」
お姉ちゃんは私を睨み付けてきた。いくら生理痛でもこんな訳の分らない事で怒ったりはしなかったのに。こうなったら直接聞くしかない。
つかさ「昨日の……レストランでお姉ちゃんのした態度……」
お姉ちゃんはお茶をすすった。
かがみ「そんな事をいちいち言わないといけないのか」
私はお姉ちゃんと話しているのかな……
つかさ「そんな事、そんな事って、かえでさんは昨夜、お姉ちゃんの言葉にどれほど苦しんだのか分かっているの」
お姉ちゃんの考えている事が分からなくなった。こなちゃんの推理通りだとしてもあまりにも酷すぎる。
お姉ちゃんはまた黙ってしまった。
つかさ「それに、ここに住んでまだ一年も経っていないよ、少なくともお店が自立できるくらいまでは居ないと、それに私はかえでさんの技術を全部学びたい」
かがみ「……さすが先に卒業して社会に出ているだけはあるわね、この町を、松本さんを選んだ理由なのか、技術ね……はっきり言って彼女から学ぶ技術はないわ」
え、なんか違う、お姉ちゃんはこんな事は言わない。お姉ちゃんと話しているのに、お姉ちゃんじゃないような変な感覚を感じた。
つかさ「私は、かえでさんを友達だと思ってるよ、かえでさんは美味しい料理の技術を持っている、この町だって、まなちゃん、真奈美さんが……」
かがみ「やめろ!!」
お姉ちゃんは怒鳴った。思わず話すのを止めた。
かがみ「そんなおとぎ話みたいなのを信じると思っているのか、バカバカしい」
お姉ちゃんらしい、うんん、これが普通の人の反応かもしれない。こなちゃんやゆきちゃんだって無理に私に合わせてくれているのかもしれない。それでも……
つかさ「それでも私は見たよ、感じた、体験した、それは否定できないよ、まなちゃんは実際に私と話して、笑って、泣いて……勇気を与えてくれた」
かがみ「あんた、その松本って人に唆されているのよ、悪い事は言わない、もう関わり合うのはやめなさい」
お姉ちゃんはかえでさんを良く思っていない。私を笑って見送ってくれたのに。真っ先に賛成してくれたのに。今頃になって……
かがみ「松本かえで……性根が腐っているわ、今からでも遅くはない、私と一緒に帰ろう」
つかさ「お姉ちゃんはかえでさんとお客様と店長の関係でしか接していないでしょ、松本かえで……本人と会って欲しいの、私と同じように、きっといい人だって分かるよ」
お姉ちゃんはしばらく考え込んだ。
かがみ「つかさの良い人はあてにならん、こなたの件もあるしね」
つかさ「でも、そのこなちゃんと一番の親友でしょ」
かがみ「……それはこなたがそう思っているだけよ」
お姉ちゃんは立ち上がった。そして身支度をし始めた。
つかさ「一緒に来てくれるの」
かがみ「なに言ってるのよ、つかさが帰らないのならもう用はないわ、帰り支度よ」
つかさ「え、もう帰るの、あと二泊の予定じゃないの?」
お姉ちゃんは支度をしながら答えた。
かがみ「実はね、つかさを連れ戻しにきたのよ」
つかさ「連れ戻すってなに、まるで私が家出でもしたみたい」
お姉ちゃんは支度の手を止めて私を見た。
かがみ「私以外に賛成した人は居たかしら」
つかさ「……こなちゃんとゆきちゃん……」
かがみ「違う、家族での話をしているの」
確かにお姉ちゃん以外賛成はしなった。でも皆店に来て料理を食べた。美味しいって笑って帰った。もう誰も反対なんかしていないよ。
つかさ「だけど、お父さん達だって店に来たし、もう半年以上生活してきたし……私はもう二十歳を過ぎた、もう子供じゃない……帰る理由なんかないよ」
かがみ「意外と強情ね……まぁいいわ、今に彼女の化けの皮が剥がれて酷い目に遭うわよ、その時になって泣いても知らないから」
お姉ちゃんはまた身支度をし始めた。私は携帯電話を取り出した。
かがみ「なによ、その携帯電話をどうするのよ」
つかさ「帰るならこなちゃんとゆきちゃんに連絡をしないと」
お姉ちゃんは帰り支度を止めた。
かがみ「チッ……宿をキャンセルするのもお金もかかるし、予定通り泊まるわよ、つかさ、その間よく考えておきなさい」
さっきの舌打ち、こなちゃんとは違う。あれは何か失敗した時に使う舌打ち。舌打ちなんかお姉ちゃんは滅多に使わない。よっぽど私を帰したいみたい。
帰らないのならこなちゃん達に連絡は要らない。そのまま携帯電話をしまった。これ以上はお店の話はしない方がいいみたい。話題を変えよう。
つかさ「お父さん達はどう、みんな元気?」
かがみ「皆いつも通りよ、とくにまつり姉さんはね……」
急にお姉ちゃんの顔が笑顔に戻った。これからは家族の話や、お姉ちゃんの大学での話しで盛り上がった。確かにこうしてお姉ちゃんと話していると家が恋しくなる。
私はまたお供えた稲荷寿司とパンケーキの所に向かった。こなちゃんの話が気になっていた訳じゃないけど、なんとなく来てしまった。そして両手を合わせた。
まなちゃん、辻さん、皆を守ってあげて下さい。
私は会談を下りるのに時間がかかるので十五分後には下り始めた。神社の入り口を通る頃、こなちゃんの言う三十分が経った。携帯電話のメール着信が来た。
見るとこなちゃんからだった。内容は、お姉ちゃんはやっぱり出かけないと書いてあった。こなちゃんは電話しないって言ったのに。こなちゃん、変わったかな。
宿が見えてきた。その隣にレストラン。素通りしようとしたけど出来なかった。でも休みの時は店には入るなってかえでさんと約束をしったっけ。ちょっと覗くだけなら。
窓越しに店の中を見た。かえでさんが忙しそうに働いていた。昨夜のような脱力した感じは見受けられなかった。なんか安心した。
お姉ちゃん達が泊まっている部屋の前に着いた。私はノックした。返事は無かったけど扉を開けた。
つかさ「お姉ちゃん、入るよ」
お姉ちゃんは椅子に座っていた。何をするわけでもなく。
つかさ「これからでもこなちゃん達と合流する、こんな所でも結構見るところいっぱいあるよ」
お姉ちゃんはムスっとした顔で窓の外を見ていた。私と目を合わせないようにしているみたいだった。
私はテーブルに置いてあったポットと急須でお姉ちゃんにお茶を入れてあげた。
つかさ「久しぶりだね、お茶なんか高校三年の時以来だね、その時はコーヒーの方が多かったかな?」
お姉ちゃんは何も言わず窓の外を見たままだった。どうしよう。こんな時はどんな話がいいのかな。昨夜の話をしたら余計に話してくれそうにない。
かといって昔話をしたって同じだよね。それなら私が知らないと思っている話をしてあげよう。
つかさ「お姉ちゃん、私が引越しの……」
かがみ「そんな事より、いつ頃帰ってくるの?」
私の話しにいきなり割り込んできた。私はお姉ちゃんが前にもレストランに来てくれた話をしようとしていた。
つかさ「今はそんな話していないよ……」
かがみ「それじゃ何の話をしているのよ」
お姉ちゃんは私を睨み付けてきた。いくら生理痛でもこんな訳の分らない事で怒ったりはしなかったのに。こうなったら直接聞くしかない。
つかさ「昨日の……レストランでお姉ちゃんのした態度……」
お姉ちゃんはお茶をすすった。
かがみ「そんな事をいちいち言わないといけないのか」
私はお姉ちゃんと話しているのかな……
つかさ「そんな事、そんな事って、かえでさんは昨夜、お姉ちゃんの言葉にどれほど苦しんだのか分かっているの」
お姉ちゃんの考えている事が分からなくなった。こなちゃんの推理通りだとしてもあまりにも酷すぎる。
お姉ちゃんはまた黙ってしまった。
つかさ「それに、ここに住んでまだ一年も経っていないよ、少なくともお店が自立できるくらいまでは居ないと、それに私はかえでさんの技術を全部学びたい」
かがみ「……さすが先に卒業して社会に出ているだけはあるわね、この町を、松本さんを選んだ理由なのか、技術ね……はっきり言って彼女から学ぶ技術はないわ」
え、なんか違う、お姉ちゃんはこんな事は言わない。お姉ちゃんと話しているのに、お姉ちゃんじゃないような変な感覚を感じた。
つかさ「私は、かえでさんを友達だと思ってるよ、かえでさんは美味しい料理の技術を持っている、この町だって、まなちゃん、真奈美さんが……」
かがみ「やめろ!!」
お姉ちゃんは怒鳴った。思わず話すのを止めた。
かがみ「そんなおとぎ話みたいなのを信じると思っているのか、バカバカしい」
お姉ちゃんらしい、うんん、これが普通の人の反応かもしれない。こなちゃんやゆきちゃんだって無理に私に合わせてくれているのかもしれない。それでも……
つかさ「それでも私は見たよ、感じた、体験した、それは否定できないよ、まなちゃんは実際に私と話して、笑って、泣いて……勇気を与えてくれた」
かがみ「あんた、その松本って人に唆されているのよ、悪い事は言わない、もう関わり合うのはやめなさい」
お姉ちゃんはかえでさんを良く思っていない。私を笑って見送ってくれたのに。真っ先に賛成してくれたのに。今頃になって……
かがみ「松本かえで……性根が腐っているわ、今からでも遅くはない、私と一緒に帰ろう」
つかさ「お姉ちゃんはかえでさんとお客様と店長の関係でしか接していないでしょ、松本かえで……本人と会って欲しいの、私と同じように、きっといい人だって分かるよ」
お姉ちゃんはしばらく考え込んだ。
かがみ「つかさの良い人はあてにならん、こなたの件もあるしね」
つかさ「でも、そのこなちゃんと一番の親友でしょ」
かがみ「……それはこなたがそう思っているだけよ」
お姉ちゃんは立ち上がった。そして身支度をし始めた。
つかさ「一緒に来てくれるの」
かがみ「なに言ってるのよ、つかさが帰らないのならもう用はないわ、帰り支度よ」
つかさ「え、もう帰るの、あと二泊の予定じゃないの?」
お姉ちゃんは支度をしながら答えた。
かがみ「実はね、つかさを連れ戻しにきたのよ」
つかさ「連れ戻すってなに、まるで私が家出でもしたみたい」
お姉ちゃんは支度の手を止めて私を見た。
かがみ「私以外に賛成した人は居たかしら」
つかさ「……こなちゃんとゆきちゃん……」
かがみ「違う、家族での話をしているの」
確かにお姉ちゃん以外賛成はしなった。でも皆店に来て料理を食べた。美味しいって笑って帰った。もう誰も反対なんかしていないよ。
つかさ「だけど、お父さん達だって店に来たし、もう半年以上生活してきたし……私はもう二十歳を過ぎた、もう子供じゃない……帰る理由なんかないよ」
かがみ「意外と強情ね……まぁいいわ、今に彼女の化けの皮が剥がれて酷い目に遭うわよ、その時になって泣いても知らないから」
お姉ちゃんはまた身支度をし始めた。私は携帯電話を取り出した。
かがみ「なによ、その携帯電話をどうするのよ」
つかさ「帰るならこなちゃんとゆきちゃんに連絡をしないと」
お姉ちゃんは帰り支度を止めた。
かがみ「チッ……宿をキャンセルするのもお金もかかるし、予定通り泊まるわよ、つかさ、その間よく考えておきなさい」
さっきの舌打ち、こなちゃんとは違う。あれは何か失敗した時に使う舌打ち。舌打ちなんかお姉ちゃんは滅多に使わない。よっぽど私を帰したいみたい。
帰らないのならこなちゃん達に連絡は要らない。そのまま携帯電話をしまった。これ以上はお店の話はしない方がいいみたい。話題を変えよう。
つかさ「お父さん達はどう、みんな元気?」
かがみ「皆いつも通りよ、とくにまつり姉さんはね……」
急にお姉ちゃんの顔が笑顔に戻った。これからは家族の話や、お姉ちゃんの大学での話しで盛り上がった。確かにこうしてお姉ちゃんと話していると家が恋しくなる。
635:つかさの旅 5/45:2012/01/09(月) 00:00:29.90:DlK6yebt0 (1/47)
お姉ちゃんとお話に夢中になっているとこなちゃん達が帰ってきた。時間を見るともう午後三時を超えていた。
こなた・みゆき「ただいま」
こなちゃんは私たちを見るなりまじまじと見つめた。
こなた「やっぱり姉妹だね~そんなかがみの嬉しそうな顔は久しぶりだよ」
冷やかされてしまった。私は何も言わず照れていた。
かがみ「……それはそうと帰りが早いじゃないの、どうしたのよ」
こなた「早く帰ってきて欲しくなったのかな~」
かがみ「違うわよ!!」
こなちゃんは何か言い返そうとしていたけどそれよりも先にゆきちゃんが割って入った。
みゆき「最近流行のパワースポットを目指したのですが……見つかりませんでした」
ゆきちゃんは地図を持っていた。
こなた「携帯の地図でも分からないんだよ」
かがみ「地図を持っていて分からないんじゃ、私も分からないわよ、ここは二回しか来ていないからね」
こなた「え、かがみはこの町、初めてじゃなかったっけ?」
かがみ「あっ、そうそう、初めてだから分からないのよ」
こなちゃんとゆきちゃんは顔を見合わせてお互いに首を傾げた。お姉ちゃんは店に来たのを皆に言っていないみたい。秘密にしたいのかな。
つかさ「そのパワースポットってどこなの?」
ゆきちゃんは地図を広げて私に見せた。
みゆき「この辺りなのですが、よく分からないのです」
地図には印しが付いていたけど道から外れていて場所が確定出来ない。だけどこの場所は私が良く通る場所。何となくイメージが出来た。
こなた「ふふ、みゆきさん、つかさに見せても分かるわけないよ」
笑いながらのこなちゃん。昔の私ならそうかもしれない。
つかさ「この場所はね、地図じゃ分からないよ、段差があるからね、きっと段差の上にあると思うよ」
お姉ちゃん達三人は私をポカンと見ていた。
つかさ「どうしたの?」
かがみ「あんた何時から地図が読めるようになったのよ」
つかさ「お姉ちゃん、私は一人旅でこの町を探索したんだよ、確かに始めは迷ったけど、そのくらいは出来るよ、それにこの印の道は車でよく通るしね」
こなた「え、車も運転するの、事故、事故は……どこかに当ててない?」
身を乗り出して驚いているこなちゃん。引越し前、車の運転には自信なかった。それが心配だった。
つかさ「かえでさんと交代で市場に買出しに行くから使うよ、おかげさまで無事故、無違反だよ、引越しする前にね……成実さんの特訓受けから」
だから成実さんに指導してもらった。
こなた「……ゆい姉さんとはまたとんでもない人に……なぜゆい姉さんに、それでゆい姉さんは何て言ってた?」
つかさ「高校時代の夏休みに引率で連れて行ってもらった時、成実さんの運転……カッコいいなって思って……それでね、最後に成実さんは免許皆伝だって言ってたよ!!」
私は得意げに言った。でも、だれも喜んでくれなかった。何故だろう。
こなた「はは、免許皆伝……ある意味安全で恐ろしい……つかさはハンドル握ると性格変わるタイプなのか……」
つかさ「何ならこれから店の車で案内するけど……」
こなた・かがみ・みゆき「いいえ、遠慮しておきます、また今度お願いします」
思いっきり拒否された。おかしいな、かえでさんも私の運転に同乗は遠慮するし、何か悪いのかな。成実さんはあんなに褒めてくれたのに。
今度成実さんにもっとしっかり教えてもらおう。
つかさ「車がダメなら自転車借りて行こうよ、四人で一緒に、ねぇ、いいでしょ?」
もう私は今日しか皆と一緒に居られない。あとはお店が終わってからしか同行できない。
かがみ「そうね、行ってもいいわよ」
透かさずこなちゃんがニヤニヤする。
かがみ「なによ!!」
こなた「つかさの言う事は聞くんだね、さっきは調子が悪いとか言ってね~」
こなちゃんはゆきちゃんの方を向いて同意を求めた。
みゆき「ふふふ、そうですね」
かがみ「な、何よ、みゆきまで、別につかさだからって事じゃないのよ」
宿で自転車を借りてパワースポットがあると言う所まで案内した。途中寄り道をしたので思ったよりも時間が掛かってしまった。
こなた「ここは……最初に来たところだ……」
みゆき「段差には気が付きませんでした……」
こなた「つかさ、本当に地図が読めたんだね」
二人は感心して段差を眺めていた。
かがみ「それで、パワースポットって何なのよ、それらしい物は見当たらないわよ」
確かにそれらしいものは見当たらなかった。そういえばこの段差は道の裏側で谷になっていたような。私は段差に沿って歩いて行った。
そして丁度道の裏側に私の背と幅もと同じくらいの岩があった。上が尖っていて下にいくほど太くなってく形、自然にできた岩みたいだけど不思議な、神秘的な岩だった。
こなた「あった、あった、この岩だよ、説明文と同じ岩だし」
みゆき「そうですね、この岩に間違えなさそうです……不思議な岩ですね……心が洗われると言いましょうか……」
気が付くと皆は目を閉じ、手を合わせて祈っていた。私だけポツンと立っている感じだった。お姉ちゃんが家の神社以外の場所で手を合わせて祈っている姿をみたのは
これが初めてかもしれない。私も気を落ち着かせて手を合わせて祈った。
お姉ちゃんとお話に夢中になっているとこなちゃん達が帰ってきた。時間を見るともう午後三時を超えていた。
こなた・みゆき「ただいま」
こなちゃんは私たちを見るなりまじまじと見つめた。
こなた「やっぱり姉妹だね~そんなかがみの嬉しそうな顔は久しぶりだよ」
冷やかされてしまった。私は何も言わず照れていた。
かがみ「……それはそうと帰りが早いじゃないの、どうしたのよ」
こなた「早く帰ってきて欲しくなったのかな~」
かがみ「違うわよ!!」
こなちゃんは何か言い返そうとしていたけどそれよりも先にゆきちゃんが割って入った。
みゆき「最近流行のパワースポットを目指したのですが……見つかりませんでした」
ゆきちゃんは地図を持っていた。
こなた「携帯の地図でも分からないんだよ」
かがみ「地図を持っていて分からないんじゃ、私も分からないわよ、ここは二回しか来ていないからね」
こなた「え、かがみはこの町、初めてじゃなかったっけ?」
かがみ「あっ、そうそう、初めてだから分からないのよ」
こなちゃんとゆきちゃんは顔を見合わせてお互いに首を傾げた。お姉ちゃんは店に来たのを皆に言っていないみたい。秘密にしたいのかな。
つかさ「そのパワースポットってどこなの?」
ゆきちゃんは地図を広げて私に見せた。
みゆき「この辺りなのですが、よく分からないのです」
地図には印しが付いていたけど道から外れていて場所が確定出来ない。だけどこの場所は私が良く通る場所。何となくイメージが出来た。
こなた「ふふ、みゆきさん、つかさに見せても分かるわけないよ」
笑いながらのこなちゃん。昔の私ならそうかもしれない。
つかさ「この場所はね、地図じゃ分からないよ、段差があるからね、きっと段差の上にあると思うよ」
お姉ちゃん達三人は私をポカンと見ていた。
つかさ「どうしたの?」
かがみ「あんた何時から地図が読めるようになったのよ」
つかさ「お姉ちゃん、私は一人旅でこの町を探索したんだよ、確かに始めは迷ったけど、そのくらいは出来るよ、それにこの印の道は車でよく通るしね」
こなた「え、車も運転するの、事故、事故は……どこかに当ててない?」
身を乗り出して驚いているこなちゃん。引越し前、車の運転には自信なかった。それが心配だった。
つかさ「かえでさんと交代で市場に買出しに行くから使うよ、おかげさまで無事故、無違反だよ、引越しする前にね……成実さんの特訓受けから」
だから成実さんに指導してもらった。
こなた「……ゆい姉さんとはまたとんでもない人に……なぜゆい姉さんに、それでゆい姉さんは何て言ってた?」
つかさ「高校時代の夏休みに引率で連れて行ってもらった時、成実さんの運転……カッコいいなって思って……それでね、最後に成実さんは免許皆伝だって言ってたよ!!」
私は得意げに言った。でも、だれも喜んでくれなかった。何故だろう。
こなた「はは、免許皆伝……ある意味安全で恐ろしい……つかさはハンドル握ると性格変わるタイプなのか……」
つかさ「何ならこれから店の車で案内するけど……」
こなた・かがみ・みゆき「いいえ、遠慮しておきます、また今度お願いします」
思いっきり拒否された。おかしいな、かえでさんも私の運転に同乗は遠慮するし、何か悪いのかな。成実さんはあんなに褒めてくれたのに。
今度成実さんにもっとしっかり教えてもらおう。
つかさ「車がダメなら自転車借りて行こうよ、四人で一緒に、ねぇ、いいでしょ?」
もう私は今日しか皆と一緒に居られない。あとはお店が終わってからしか同行できない。
かがみ「そうね、行ってもいいわよ」
透かさずこなちゃんがニヤニヤする。
かがみ「なによ!!」
こなた「つかさの言う事は聞くんだね、さっきは調子が悪いとか言ってね~」
こなちゃんはゆきちゃんの方を向いて同意を求めた。
みゆき「ふふふ、そうですね」
かがみ「な、何よ、みゆきまで、別につかさだからって事じゃないのよ」
宿で自転車を借りてパワースポットがあると言う所まで案内した。途中寄り道をしたので思ったよりも時間が掛かってしまった。
こなた「ここは……最初に来たところだ……」
みゆき「段差には気が付きませんでした……」
こなた「つかさ、本当に地図が読めたんだね」
二人は感心して段差を眺めていた。
かがみ「それで、パワースポットって何なのよ、それらしい物は見当たらないわよ」
確かにそれらしいものは見当たらなかった。そういえばこの段差は道の裏側で谷になっていたような。私は段差に沿って歩いて行った。
そして丁度道の裏側に私の背と幅もと同じくらいの岩があった。上が尖っていて下にいくほど太くなってく形、自然にできた岩みたいだけど不思議な、神秘的な岩だった。
こなた「あった、あった、この岩だよ、説明文と同じ岩だし」
みゆき「そうですね、この岩に間違えなさそうです……不思議な岩ですね……心が洗われると言いましょうか……」
気が付くと皆は目を閉じ、手を合わせて祈っていた。私だけポツンと立っている感じだった。お姉ちゃんが家の神社以外の場所で手を合わせて祈っている姿をみたのは
これが初めてかもしれない。私も気を落ち着かせて手を合わせて祈った。
636:つかさの旅 6/45:2012/01/09(月) 00:02:13.44:DlK6yebt0 (2/47)
こなた「かがみは何を祈ったの?」
かがみ「何だって良いでしょ」
こなた「あ~さては男関係でしょ~」
かがみ「だからそんなんじゃないって言ってるでしょ!!」
こなた「そうやって否定する所が余計にあやしい……」
………
こなちゃんとお姉ちゃんが言い合っている。高校時代から見慣れた光景。話は言い合いから雑談に変化してお互いに笑いも混じるようになった。こうやって見ていると
仲のいいお友達。卒業してもこうやっているのだから親友って言ってもいいよね。日下部さんやあやちゃんとはまた違った関係のような気がするけど。
宿屋で言ったお姉ちゃんの言葉がいまだに引っかかる。あれは本心でそう言ったのかな。こなちゃんの前でいくらなんでも聞けるわけもない。
それにかえでさんに対する態度も理由が分からない。焼餅を焼いているにしても、私を帰したいにしてもあんな事までしなくても。
こなた「ところでこのパワースポット、どんなご利益があるの?」
かがみ「あんたは知らないでお祈りをしていたのか?」
こなちゃんは頷いた。こなちゃんは私の方を向いた。
つかさ「私も知らない、だってここにこんな岩が在るなんて初めて知ったから」
みゆき「話では万病に効くと、難病のご老人がこの岩を触ったら改善したと……先ほど携帯で調べた限りですけど、この町が出来た頃には既にあったようですね」
こなた「な~んだ、色恋のパワースポットだと思ったのに、皆健康だからここは関係ないね」
するとお姉ちゃんは腕を伸ばして岩を触り始めた。そしてその手を反対の腕に擦り付けた。
こなた「かがみ、なんか病気持っていたっけ?……」
こなちゃんは心配そうだった。私も、ゆきちゃんもお姉ちゃんを見た。そういえば神社に来なかったのも生理痛とか言っていた。
かがみ「最近調子悪くてね、これで健康になるなら安いものでしょ、ほら、皆もやったらどうなの、健康がもっと健康になるかもよ」
ゆきちゃんも岩に触れてお姉ちゃんと同じ事をした。私とこなちゃんも後に続いた。
旅館に戻った私達は先にこなちゃん達を部屋に案内して私は借りた自転車を返しに行った。部屋に戻るとこなちゃん以外は浴衣姿になっていた。
つかさ「今日の夕食だけど……」
かがみ「悪いけど食欲が無いの、行きたければどうぞ、その間温泉にでも入っているわ」
やっぱり、お姉ちゃんは食べる気はないみたい。そういえば何となく顔色が少し悪いような。部屋が蛍光灯だからそう見えるだけなのかな。
みゆき「大丈夫ですか」
かがみ「平気よ、ささ、行ってきなって」
お姉ちゃんはタオルを持って部屋を出て行った。温泉に向かったようだ。お姉ちゃんの足音が聞こえなくなってから暫くして。
こなた「どうしよう、またレストランでかがみが居ないんじゃ松本さん気を悪くしそうだよ……」
ゆきちゃんは俯いて黙ってしまった。私も客として行きたいところだけど流石に行く気にはなれない。
つかさ「それじゃ部屋に持ってきてもらうように女将さんに言っておくよ、お姉ちゃん、明日は来てくれるといいな……」
こなた「つかさは来ないの、折角だから泊まっていけば良いのに、いろいろ話したい事もあるし」
つかさ「ありがとう、でも明日は早いし、もう帰らないと、明日は仕事が終わって夜からなら会えるし、その時に話そう」
こなた「そうだね、おやすみ」
みゆき「おやすみなさい」
私は帰り掛けに女将さんにこなちゃん達の部屋に料理を持ってきてもらうように言った。お姉ちゃんには消化の良いものを特別に作って欲しいと言った。
かえでさんならきっと分かってくれる。本当は直接会いたかったけど休みの日はなるべく仕事の件で会うのは止めようと約束をしていたから出来なかった。
旅館を出て駐車場に停めてある車に向かった。車のドアを開けたときだった。
こなた「へぇ、それはつかさの車?」
突然後ろからこなちゃんの声が聞こえた。慌てて後ろを向いた。
つかさ「こ、こなちゃん、温泉に入らなくていいの?」
こなた「24時間入れるし別に今じゃなくていいよ……それはそうとこの車、ゆい姉さんと同じだね」
こなちゃんは車を見ながら話した。
つかさ「でも、お姉ちゃんとゆきちゃんは……」
こなた「二人は温泉に入っているよ、みゆきさんが言ったんだよ、つかさと一緒に居てくれってね……ドライブしようよ、もちろん運転はつかさでね」
こなちゃんは車に乗り込んだ。そういえばこなちゃんは浴衣に着替えていなかった。もしからしたら最初からそのつもりだったのかな。
私は車を走らせた。
つかさ「町を一周でいいかな」
町を一周するには30分くらいはかかる。
こなた「いいよ」
暫く車を走らせた。暫くはしらせていると、こなちゃんは「ふぅ」と溜め息をついた。
こなた「……やっぱりつかさはつかさだね、ゆい姉さんの運転とは違うよ」
つかさ「それって、褒めてるの、貶してるの?」
こなた「……つかさは変わったよ、一人旅をしたからかな、私はまだ学生なのにもうつかさは働いて車も手に入れてさ」
つかさ「え、さっき、私は私だって言っていたのに、こなちゃんの言ってる事分からないよ」
こなちゃんは黙ってしまった。
つかさ「あっ、そうだ、料理を遅くしてもらわないと、誰も居ない部屋に料理が来ちゃう」
こなた「それは大丈夫、私が駐車場に来る前、松本さんに直接言ったから、料理は最後に出してくれってね」
私はホッと胸を撫で下ろした。
こなた「……昔のつかさならそんなの気にもしなかったでしょ……松本さんって人の教育のせいかな……かがみが嫉妬するはずだよ」
こなちゃんはお姉ちゃんについて話したかったのかな。わざわざ私と二人きりで。
つかさ「私ってそんなに変わった?」
こなた「……変わったと言うより大人になった、私達はまだまだ子供だよ、みゆきさんも、そしてかがみもね……」
つかさ「社会人と学生の差って言いたいの、それならこなちゃん達だって来年卒業だよ、大学院に進学するなら別だけど、もう大人だよ」
こなちゃんは何も言わずうっすらと笑みを浮かべながら車の窓の外を見ていた。変な事言ったかな?
こなた「かがみは何を祈ったの?」
かがみ「何だって良いでしょ」
こなた「あ~さては男関係でしょ~」
かがみ「だからそんなんじゃないって言ってるでしょ!!」
こなた「そうやって否定する所が余計にあやしい……」
………
こなちゃんとお姉ちゃんが言い合っている。高校時代から見慣れた光景。話は言い合いから雑談に変化してお互いに笑いも混じるようになった。こうやって見ていると
仲のいいお友達。卒業してもこうやっているのだから親友って言ってもいいよね。日下部さんやあやちゃんとはまた違った関係のような気がするけど。
宿屋で言ったお姉ちゃんの言葉がいまだに引っかかる。あれは本心でそう言ったのかな。こなちゃんの前でいくらなんでも聞けるわけもない。
それにかえでさんに対する態度も理由が分からない。焼餅を焼いているにしても、私を帰したいにしてもあんな事までしなくても。
こなた「ところでこのパワースポット、どんなご利益があるの?」
かがみ「あんたは知らないでお祈りをしていたのか?」
こなちゃんは頷いた。こなちゃんは私の方を向いた。
つかさ「私も知らない、だってここにこんな岩が在るなんて初めて知ったから」
みゆき「話では万病に効くと、難病のご老人がこの岩を触ったら改善したと……先ほど携帯で調べた限りですけど、この町が出来た頃には既にあったようですね」
こなた「な~んだ、色恋のパワースポットだと思ったのに、皆健康だからここは関係ないね」
するとお姉ちゃんは腕を伸ばして岩を触り始めた。そしてその手を反対の腕に擦り付けた。
こなた「かがみ、なんか病気持っていたっけ?……」
こなちゃんは心配そうだった。私も、ゆきちゃんもお姉ちゃんを見た。そういえば神社に来なかったのも生理痛とか言っていた。
かがみ「最近調子悪くてね、これで健康になるなら安いものでしょ、ほら、皆もやったらどうなの、健康がもっと健康になるかもよ」
ゆきちゃんも岩に触れてお姉ちゃんと同じ事をした。私とこなちゃんも後に続いた。
旅館に戻った私達は先にこなちゃん達を部屋に案内して私は借りた自転車を返しに行った。部屋に戻るとこなちゃん以外は浴衣姿になっていた。
つかさ「今日の夕食だけど……」
かがみ「悪いけど食欲が無いの、行きたければどうぞ、その間温泉にでも入っているわ」
やっぱり、お姉ちゃんは食べる気はないみたい。そういえば何となく顔色が少し悪いような。部屋が蛍光灯だからそう見えるだけなのかな。
みゆき「大丈夫ですか」
かがみ「平気よ、ささ、行ってきなって」
お姉ちゃんはタオルを持って部屋を出て行った。温泉に向かったようだ。お姉ちゃんの足音が聞こえなくなってから暫くして。
こなた「どうしよう、またレストランでかがみが居ないんじゃ松本さん気を悪くしそうだよ……」
ゆきちゃんは俯いて黙ってしまった。私も客として行きたいところだけど流石に行く気にはなれない。
つかさ「それじゃ部屋に持ってきてもらうように女将さんに言っておくよ、お姉ちゃん、明日は来てくれるといいな……」
こなた「つかさは来ないの、折角だから泊まっていけば良いのに、いろいろ話したい事もあるし」
つかさ「ありがとう、でも明日は早いし、もう帰らないと、明日は仕事が終わって夜からなら会えるし、その時に話そう」
こなた「そうだね、おやすみ」
みゆき「おやすみなさい」
私は帰り掛けに女将さんにこなちゃん達の部屋に料理を持ってきてもらうように言った。お姉ちゃんには消化の良いものを特別に作って欲しいと言った。
かえでさんならきっと分かってくれる。本当は直接会いたかったけど休みの日はなるべく仕事の件で会うのは止めようと約束をしていたから出来なかった。
旅館を出て駐車場に停めてある車に向かった。車のドアを開けたときだった。
こなた「へぇ、それはつかさの車?」
突然後ろからこなちゃんの声が聞こえた。慌てて後ろを向いた。
つかさ「こ、こなちゃん、温泉に入らなくていいの?」
こなた「24時間入れるし別に今じゃなくていいよ……それはそうとこの車、ゆい姉さんと同じだね」
こなちゃんは車を見ながら話した。
つかさ「でも、お姉ちゃんとゆきちゃんは……」
こなた「二人は温泉に入っているよ、みゆきさんが言ったんだよ、つかさと一緒に居てくれってね……ドライブしようよ、もちろん運転はつかさでね」
こなちゃんは車に乗り込んだ。そういえばこなちゃんは浴衣に着替えていなかった。もしからしたら最初からそのつもりだったのかな。
私は車を走らせた。
つかさ「町を一周でいいかな」
町を一周するには30分くらいはかかる。
こなた「いいよ」
暫く車を走らせた。暫くはしらせていると、こなちゃんは「ふぅ」と溜め息をついた。
こなた「……やっぱりつかさはつかさだね、ゆい姉さんの運転とは違うよ」
つかさ「それって、褒めてるの、貶してるの?」
こなた「……つかさは変わったよ、一人旅をしたからかな、私はまだ学生なのにもうつかさは働いて車も手に入れてさ」
つかさ「え、さっき、私は私だって言っていたのに、こなちゃんの言ってる事分からないよ」
こなちゃんは黙ってしまった。
つかさ「あっ、そうだ、料理を遅くしてもらわないと、誰も居ない部屋に料理が来ちゃう」
こなた「それは大丈夫、私が駐車場に来る前、松本さんに直接言ったから、料理は最後に出してくれってね」
私はホッと胸を撫で下ろした。
こなた「……昔のつかさならそんなの気にもしなかったでしょ……松本さんって人の教育のせいかな……かがみが嫉妬するはずだよ」
こなちゃんはお姉ちゃんについて話したかったのかな。わざわざ私と二人きりで。
つかさ「私ってそんなに変わった?」
こなた「……変わったと言うより大人になった、私達はまだまだ子供だよ、みゆきさんも、そしてかがみもね……」
つかさ「社会人と学生の差って言いたいの、それならこなちゃん達だって来年卒業だよ、大学院に進学するなら別だけど、もう大人だよ」
こなちゃんは何も言わずうっすらと笑みを浮かべながら車の窓の外を見ていた。変な事言ったかな?
637:つかさの旅 7/45:2012/01/09(月) 00:03:48.24:DlK6yebt0 (3/47)
10分くらい車を走らせた。こなちゃんはボーっとして外を見ている。もう飽きちゃったかな。そうだよね、こんな田舎の町じゃすぐに飽きちゃうかも。
つかさ「こなちゃん、お姉ちゃんをどう思ってる?」
こなた「どうって……友達だよ……今更そんなの聞いて……」
こなちゃんは私の方を向いた。思った通りの返事が返ってきた。そうだよね。今更だよ……
こなた「もしかして昨夜のかがみを気にしているの……確かに師匠を貶されちゃ、弟子は怒るよね、何となく分かるよ」
お姉ちゃんがかえでさんを貶したとは思えない。何か深い理由があると思う、だからその話は今、しなくない。
つかさ「もし、もしだよ、もし、お姉ちゃんがこなちゃんの事を友達だと思っていなかったら……どうする?」
私の顔をじっと見つめるこなちゃん。
こなた「ふーん、かがみはそんな事言ったんだ?」
私は思わずブレーキを踏んで車を止めた。
つかさ「うんん、だ、だから言ったでしょ、もしもって……」
ま、まずい、一発で見破られてしまった。こんなの聞くんじゃなかった。おろおろしている私を見てこなちゃんは笑った。
こなた「ふふ、相変わらず嘘が下手だな、つかさは~」
つかさ「え、えっと……」
こなた「ほらほら、車を止めたなら早くハザード点けないと」
こなちゃんに言われるままハザードボタンを押した。こなちゃんは少し考えたように腕を組んでから話し出した。
こなた「私はかがみを親友だと思っている、それは今でも変わらないよ、かがみがどう思っていてもね……私達は高校が同じと言うだけでなんの共通項もないし、
趣味や趣向も違う……大学も違うし、これから卒業してからも違った仕事をするようになるだろうね……でもそれが良いんだよ、
利害を共にするとね、友情なんてすぐ壊れちゃうものだよ、かがみがそう思っているなら私にとっては好都合だよ」
つかさ「そ、そうなの?」
意外な答えが返ってきた。ただ聞き返すことしか出来なかった。
こなた「異性同士の関係ならまだしも、同性だったらこんなもんだよ、つかさ……つかさは松本さんをどう思ってるの、私やみゆきさんとは違うでしょ?」
つかさ「……それは」
初めて会った時は旅館の料理人とお客、今はレストランの店長と従業員の関係……会っていて楽しいけどいつも緊張感をもって接している。
こなた「お店がうまくいかなければ松本さんの責任は重大、あっと言う間につかさは松本さんと別れると思うよ、それでも友達で居られるなら……本物だよ」
私とこなちゃん……何の利害関係もない、だからこうやって話したり、笑ったり、遊んだり出来るのかもしれない。こなちゃんの言葉が重く響いた。
それと同時にお姉ちゃんとこなちゃんはこれからも友達でいられるような安心感も湧き上がった。
つかさ「こなちゃん、今日はいろいろとありがとう、なんかもやもやしているのが晴れた感じだよ」
こなた「いろいろって、私は何もしていないよ?」
つかさ「さてと、宿屋に戻ろうね、全開でいくから」
私は車の窓を全開にした。
こなた「え、え、今までの……全開じゃなかったの?」
つかさ「うんん、成実さんが教えてくれた三割程度だよ……加速は最高で、法規は厳守……風を切るように……」
今日の風は気持ち良さそう。ギヤを入れ、アクセルを思いっきり踏んだ。
こなた「ちょ、つかさ、まだ私の心の準備が、ぎ、ギャー」
旅館の前に着いた。私は車を止めた。
こなた「隣の席に、ゆい姉さんの姿を見た……」
つかさ「こなちゃんにそう言ってもらえると嬉しい」
こなた「言っておくけど、褒めているわけじゃ……まぁ、いいや」
私の顔を見るなり言うのを止めた。そして車の外に出た。私も車を降りようとした。
こなた「いいよ、そのままで、明日は早いんでしょ?」
つかさ「うん」
こなちゃんは運転席の方に回って来た。
こなた「いつの間にゆい姉さんと同じ走りに……信じられない、この調子で松本さんの技術も全て覚えちゃいなよ」
つかさ「うん、頑張るよ、また明日ね」
こなちゃんは手を振り宿屋へと入っていった。
私も帰ろう。
10分くらい車を走らせた。こなちゃんはボーっとして外を見ている。もう飽きちゃったかな。そうだよね、こんな田舎の町じゃすぐに飽きちゃうかも。
つかさ「こなちゃん、お姉ちゃんをどう思ってる?」
こなた「どうって……友達だよ……今更そんなの聞いて……」
こなちゃんは私の方を向いた。思った通りの返事が返ってきた。そうだよね。今更だよ……
こなた「もしかして昨夜のかがみを気にしているの……確かに師匠を貶されちゃ、弟子は怒るよね、何となく分かるよ」
お姉ちゃんがかえでさんを貶したとは思えない。何か深い理由があると思う、だからその話は今、しなくない。
つかさ「もし、もしだよ、もし、お姉ちゃんがこなちゃんの事を友達だと思っていなかったら……どうする?」
私の顔をじっと見つめるこなちゃん。
こなた「ふーん、かがみはそんな事言ったんだ?」
私は思わずブレーキを踏んで車を止めた。
つかさ「うんん、だ、だから言ったでしょ、もしもって……」
ま、まずい、一発で見破られてしまった。こんなの聞くんじゃなかった。おろおろしている私を見てこなちゃんは笑った。
こなた「ふふ、相変わらず嘘が下手だな、つかさは~」
つかさ「え、えっと……」
こなた「ほらほら、車を止めたなら早くハザード点けないと」
こなちゃんに言われるままハザードボタンを押した。こなちゃんは少し考えたように腕を組んでから話し出した。
こなた「私はかがみを親友だと思っている、それは今でも変わらないよ、かがみがどう思っていてもね……私達は高校が同じと言うだけでなんの共通項もないし、
趣味や趣向も違う……大学も違うし、これから卒業してからも違った仕事をするようになるだろうね……でもそれが良いんだよ、
利害を共にするとね、友情なんてすぐ壊れちゃうものだよ、かがみがそう思っているなら私にとっては好都合だよ」
つかさ「そ、そうなの?」
意外な答えが返ってきた。ただ聞き返すことしか出来なかった。
こなた「異性同士の関係ならまだしも、同性だったらこんなもんだよ、つかさ……つかさは松本さんをどう思ってるの、私やみゆきさんとは違うでしょ?」
つかさ「……それは」
初めて会った時は旅館の料理人とお客、今はレストランの店長と従業員の関係……会っていて楽しいけどいつも緊張感をもって接している。
こなた「お店がうまくいかなければ松本さんの責任は重大、あっと言う間につかさは松本さんと別れると思うよ、それでも友達で居られるなら……本物だよ」
私とこなちゃん……何の利害関係もない、だからこうやって話したり、笑ったり、遊んだり出来るのかもしれない。こなちゃんの言葉が重く響いた。
それと同時にお姉ちゃんとこなちゃんはこれからも友達でいられるような安心感も湧き上がった。
つかさ「こなちゃん、今日はいろいろとありがとう、なんかもやもやしているのが晴れた感じだよ」
こなた「いろいろって、私は何もしていないよ?」
つかさ「さてと、宿屋に戻ろうね、全開でいくから」
私は車の窓を全開にした。
こなた「え、え、今までの……全開じゃなかったの?」
つかさ「うんん、成実さんが教えてくれた三割程度だよ……加速は最高で、法規は厳守……風を切るように……」
今日の風は気持ち良さそう。ギヤを入れ、アクセルを思いっきり踏んだ。
こなた「ちょ、つかさ、まだ私の心の準備が、ぎ、ギャー」
旅館の前に着いた。私は車を止めた。
こなた「隣の席に、ゆい姉さんの姿を見た……」
つかさ「こなちゃんにそう言ってもらえると嬉しい」
こなた「言っておくけど、褒めているわけじゃ……まぁ、いいや」
私の顔を見るなり言うのを止めた。そして車の外に出た。私も車を降りようとした。
こなた「いいよ、そのままで、明日は早いんでしょ?」
つかさ「うん」
こなちゃんは運転席の方に回って来た。
こなた「いつの間にゆい姉さんと同じ走りに……信じられない、この調子で松本さんの技術も全て覚えちゃいなよ」
つかさ「うん、頑張るよ、また明日ね」
こなちゃんは手を振り宿屋へと入っていった。
私も帰ろう。
638:つかさの旅 8/45:2012/01/09(月) 00:05:22.64:DlK6yebt0 (4/47)
次の日の朝一番、私は市場で食材を買出ししてから店に向かった。店に入ると厨房に明かりが灯っているに気が付いた。かえでさんが居る。
かえでさんは腕を組んでじっと下の方を見ていた。そこには料理が置かれていた。そう、あの時お姉ちゃんがかえでさんに突き出した料理と同じもの。
つかさ「おはようございます!!」
かえでさんは飛び跳ねて驚いた。そして厨房の時計を見た。
かえで「驚いた……もうそんな時間なのね」
つかさ「えっと、食材を買ったので運ぶのを手伝って欲しいのですが」
かえで「OK!!」
一緒に車に向かう。かえでさんあの様子だと徹夜で何故お姉ちゃんが料理を批判したのか考えていたみたい。食材を冷蔵庫に運びながら話をした。
つかさ「もしかして徹夜してた?」
かえで「まあね……貴女のお姉さんの宿題、難しいわね、全く分からないわ、それだけ私が傲慢だった、一つの価値観をお客様に押し付けていたのかもしれない」
つかさ「うんん、あまり気にしないで下さい、お姉ちゃん、きっと私と離れて寂しいからあんな事言ったんです」
かえでさんは笑った。
かえで「ふふ、見た目はそんな感じには見えないわよ、しっかりもののお姉さんってね、つかさの方がよっぽど子供っぽいわ」
そうだよね、見た目も実際もそうかもしれない。
かえで「それよりごめんなさいね、折角お友達とお姉さんが来ているのに休ませられなくて……もう少し軌道に乗れば休んでもらえるのだけど」
つかさ「いいえ、それは覚悟して来ましたから、それより徹夜でこれから開店して大丈夫ですか、私が代わりましょうか?」
かえで「いいえ、それは覚悟しているから……」
言い返された、二人で笑いながら食材を運んだ。この様子ならかえでさん、大丈夫かな。ちょっと安心した。暫くするとスタッフの人達も出勤してきて慌しくなった。
お昼を過ぎて少し時間に余裕が出てきた頃だった。厨房で食器の片付けをしていた。先に食事を終えたかえでさんがやってきた。
かえで「つかさ、前々から気になる事があってね、確認しておきたい」
何だろう改まって。私は作業を止めてかえでさんの方を向いた。
かえで「いや、作業はそのまま続けて、自然にしていて、そのまま私の陰から5番テーブルのお客様を見て」
お皿を片付けながらちらりと5番テーブルを見た。そこには男性が座っていた。中肉中背、年齢は私と同じか少し年上っぽい。じっとこっちを見ているみたいだった。
かえで「半月くらい前からかしら、毎日のように来るようになったお客様よ、しかも店内に居る間はつかさの方ばかり見ているの、知り合い?」
もしかして神社でこなちゃんが言っていた男の人ってこの人なのかな。
つかさ「うんん、初めて見る人です、話もしたことないです」
かえで「毎日来てくれている常連さんだから今まで黙っていたけど、つかさの知らない人であるなら少し心配ね……ストーカーも考えられるわ」
こなちゃんと同じ事言っている。最後の食器を片付けてかえでさんの方を向いて話した。
つかさ「帰りは車だし、後を付いてくるような車とかの気配はなかったです」
かえで「それを聞いて安心したわ、お客様を疑ってはいけないわね、つかさの彼氏とも思ったほどよ、あの目つき、いやらしくはないけどね……つかさに気があるかもよ」
つかさ「え、この町に来てまだ一年経っていないです、そんなに私はもてません」
かえで「ふふ、何赤くなって、別に恋愛禁止って訳じゃないわよ、ちゃんと仕事をしてくれればね……それじゃこの話は頭の片隅にでも置いておいて忘れて……」
ちょうどその時、5番テーブルの男の人が立ち上がった。店を出るみたいだった。かえでさんはそれに反応するかのようにレジに向かった。
今まで気が付かなかった。かえでさんはお客さんもしっかりチェックを入れている。私も見てくれている。やっぱり凄いや。かえでさんは料理だけじゃない。
改めてかえでさんを尊敬してしまった。それにこなちゃんもたった一日だけであのお客さんが私に注目しているのを分かったなんて凄いな。それとも私が鈍感なだけなのか。
こんどはお客さんの様子も見ないとだめ。
それにしてもあの男性のお客さん、どうして私を見ていたのかな。ストーカーだったら怖いし。私に気があるのならどうしていいか分からない。
ラストオーダーが終わり片付けに入った。やっぱりかえでさんを皆に会わせたい。特にお姉ちゃんに本当のかえでさんを知ってもらいたい。
結局今晩もお姉ちゃんは来てくれなかった。
つかさ「かえでさん、この後何か用事はありますか、なければ改めて皆を紹介したい……徹夜で疲れているのは知ってる、だけど明日にはみんな帰っちゃうし……」
かえで「行っても良いけど、私はお邪魔になるだけでは、特にかがみさんにはね」
やっぱりかえでさんは気にしている。
つかさ「普段着のかえでさんを皆に知ってもらいたくて」
かえで「普段着ねぇ、そんなに変わらないわよ、私はいつでも私、場所や立場が変わっても同じよ」
つかさ「それじゃ、決まりだね」
ちょっと強引だったかもしれないけど、かえでさんを連れて宿屋に向かった。
次の日の朝一番、私は市場で食材を買出ししてから店に向かった。店に入ると厨房に明かりが灯っているに気が付いた。かえでさんが居る。
かえでさんは腕を組んでじっと下の方を見ていた。そこには料理が置かれていた。そう、あの時お姉ちゃんがかえでさんに突き出した料理と同じもの。
つかさ「おはようございます!!」
かえでさんは飛び跳ねて驚いた。そして厨房の時計を見た。
かえで「驚いた……もうそんな時間なのね」
つかさ「えっと、食材を買ったので運ぶのを手伝って欲しいのですが」
かえで「OK!!」
一緒に車に向かう。かえでさんあの様子だと徹夜で何故お姉ちゃんが料理を批判したのか考えていたみたい。食材を冷蔵庫に運びながら話をした。
つかさ「もしかして徹夜してた?」
かえで「まあね……貴女のお姉さんの宿題、難しいわね、全く分からないわ、それだけ私が傲慢だった、一つの価値観をお客様に押し付けていたのかもしれない」
つかさ「うんん、あまり気にしないで下さい、お姉ちゃん、きっと私と離れて寂しいからあんな事言ったんです」
かえでさんは笑った。
かえで「ふふ、見た目はそんな感じには見えないわよ、しっかりもののお姉さんってね、つかさの方がよっぽど子供っぽいわ」
そうだよね、見た目も実際もそうかもしれない。
かえで「それよりごめんなさいね、折角お友達とお姉さんが来ているのに休ませられなくて……もう少し軌道に乗れば休んでもらえるのだけど」
つかさ「いいえ、それは覚悟して来ましたから、それより徹夜でこれから開店して大丈夫ですか、私が代わりましょうか?」
かえで「いいえ、それは覚悟しているから……」
言い返された、二人で笑いながら食材を運んだ。この様子ならかえでさん、大丈夫かな。ちょっと安心した。暫くするとスタッフの人達も出勤してきて慌しくなった。
お昼を過ぎて少し時間に余裕が出てきた頃だった。厨房で食器の片付けをしていた。先に食事を終えたかえでさんがやってきた。
かえで「つかさ、前々から気になる事があってね、確認しておきたい」
何だろう改まって。私は作業を止めてかえでさんの方を向いた。
かえで「いや、作業はそのまま続けて、自然にしていて、そのまま私の陰から5番テーブルのお客様を見て」
お皿を片付けながらちらりと5番テーブルを見た。そこには男性が座っていた。中肉中背、年齢は私と同じか少し年上っぽい。じっとこっちを見ているみたいだった。
かえで「半月くらい前からかしら、毎日のように来るようになったお客様よ、しかも店内に居る間はつかさの方ばかり見ているの、知り合い?」
もしかして神社でこなちゃんが言っていた男の人ってこの人なのかな。
つかさ「うんん、初めて見る人です、話もしたことないです」
かえで「毎日来てくれている常連さんだから今まで黙っていたけど、つかさの知らない人であるなら少し心配ね……ストーカーも考えられるわ」
こなちゃんと同じ事言っている。最後の食器を片付けてかえでさんの方を向いて話した。
つかさ「帰りは車だし、後を付いてくるような車とかの気配はなかったです」
かえで「それを聞いて安心したわ、お客様を疑ってはいけないわね、つかさの彼氏とも思ったほどよ、あの目つき、いやらしくはないけどね……つかさに気があるかもよ」
つかさ「え、この町に来てまだ一年経っていないです、そんなに私はもてません」
かえで「ふふ、何赤くなって、別に恋愛禁止って訳じゃないわよ、ちゃんと仕事をしてくれればね……それじゃこの話は頭の片隅にでも置いておいて忘れて……」
ちょうどその時、5番テーブルの男の人が立ち上がった。店を出るみたいだった。かえでさんはそれに反応するかのようにレジに向かった。
今まで気が付かなかった。かえでさんはお客さんもしっかりチェックを入れている。私も見てくれている。やっぱり凄いや。かえでさんは料理だけじゃない。
改めてかえでさんを尊敬してしまった。それにこなちゃんもたった一日だけであのお客さんが私に注目しているのを分かったなんて凄いな。それとも私が鈍感なだけなのか。
こんどはお客さんの様子も見ないとだめ。
それにしてもあの男性のお客さん、どうして私を見ていたのかな。ストーカーだったら怖いし。私に気があるのならどうしていいか分からない。
ラストオーダーが終わり片付けに入った。やっぱりかえでさんを皆に会わせたい。特にお姉ちゃんに本当のかえでさんを知ってもらいたい。
結局今晩もお姉ちゃんは来てくれなかった。
つかさ「かえでさん、この後何か用事はありますか、なければ改めて皆を紹介したい……徹夜で疲れているのは知ってる、だけど明日にはみんな帰っちゃうし……」
かえで「行っても良いけど、私はお邪魔になるだけでは、特にかがみさんにはね」
やっぱりかえでさんは気にしている。
つかさ「普段着のかえでさんを皆に知ってもらいたくて」
かえで「普段着ねぇ、そんなに変わらないわよ、私はいつでも私、場所や立場が変わっても同じよ」
つかさ「それじゃ、決まりだね」
ちょっと強引だったかもしれないけど、かえでさんを連れて宿屋に向かった。
639:つかさの旅 9/45:2012/01/09(月) 00:07:28.31:DlK6yebt0 (5/47)
お姉ちゃん達が泊まっている部屋の前でノックをする。
つかさ「こんばんは、入るよ」
ドアを開けると三人とも浴衣姿で楽しそうにしていた。きっとお話が盛り上がっていたに違いない。
こなた「つかさ~待ってたよ、ここのお湯いいね、だからあと二泊することになったよ」
嬉しい。まるで地元を褒めていられるたような感覚だった。三人は私の後ろにいるかえでさんに気が付いた。
つかさ「あ、改めてご紹介します、こちらは私がお世話になっている松本かえでさんです、この宿屋の食事兼、レストランの店長です」
かえでさんを前に出した。
かえで「先日のご来店はありがとうございました、私が松本かえでです、つかさのお友達、お姉さまと伺っています、今後ともよろしくお願いします」
こなた「よろしくお願いします」
みゆき「こちらこそお願いします」
こなちゃん、ゆきちゃんは丁寧にお辞儀をした。お姉ちゃんは黙ってそっぽを向いていた。何で、いくらなんでもお姉ちゃんらしくない。
つかさ「お姉ちゃん、お世話になっている人だよ……」
かがみ「どうも、つかさがお世話になっています……」
そっぽ向いたまま何の動作もしなかった。言葉も感情がはいっていなくて棒読み。これで雰囲気が悪くなってしまった。
みゆき「ど、どうぞ中へ」
ゆきちゃんは慌てて座布団を用意し、こなちゃんはお茶を用意しだした。私たちは部屋の中に入り座布団に座った。
こなた「しかし、つかさが一人暮らしするなんて聞いてどうなるかと思ったら、ちゃんとやっているみたいだし、松本さんのご指導が良かったのですね」
みゆき「これからのご活躍を期待しております」
かえで「ま、堅苦しい挨拶はこのへんでいいでしょ、とりあえずはつかさを私に預けてくれてありがとう、お友達と離れるのは辛かったでしょ?」
こなた「いえいえ、天然のつかさを鍛えて下さい」
つかさ「こ、こなちゃん!!」
かえでさんはにやりと笑った。
かえで「天然ね~確かにそうゆう所もあるわね、そういえばね貴女達が来る前日にね……」
つかさ「わ、わ、それ言っちゃダメ、だめだから」
かえで「そう言われると話したくなるのが人情ってものでしょ」
かえでさんが私達の会話に溶け込むに時間は掛からなかった。暫くの間、私たちはお喋りをしながら過ごした。友達が一人増えた。そんな感じだった。
かがみ「所でつかさ、この前の答え聞いてないわ」
お喋りをし始めてから出たお姉ちゃんの一言。会話が止まってしまった。答えも何も。もう決めた事だから。
つかさ「お姉ちゃん、私はここに残るよ……だってそう決めたから、目的を果たすまでは帰らないよ」
みゆき「いったい何の話ですか?」
かがみ「こんな所にいつまでもつかさを置いておけないから連れて帰るのよ」
みゆき「……どうしたのですか、かがみさん、あの時一番、賛成していたではないですか」
こなた「そうだよ、つかさだって頑張ってるし、いまさらそんな事言って……」
こなちゃんとゆきちゃんが驚いた顔でお姉ちゃんを問い質した。そんなこなちゃん達を無視するかのように私を見ていた。
かえで「……なるほどね、可愛い妹さんが居ないと何も出来ない事に気が付いた……そんな所かしら」
お姉ちゃんはかえでさんを睨み付けた。
かがみ「なに、もう一度言ってみろ」
お姉ちゃんもかえでさんを睨み返した。
かえで「貴女の心叫びが聞こえる『寂しい、帰ってきて、寂しいよ』そうそう、そう言っているのが聞こえるわ、つかさに聞いたのと全然違うわ、ただのアマちゃんね」
かがみ「わ、私はシスコンか、バカにするな、私はつかさのためを思って……」
かえで「確かに私はつかさを誘った、でも決めたのはつかさ、ここに来たのも本人の意思、そして戻りたくないと言っている、それ以上望郷を煽って惑わすのは、やめなさい」
きつい口調で諭すようにお姉ちゃんを叱りつけた。それは店で見た時と逆の光景だった。お客さんと店長としてではない。人生の先輩として……
お姉ちゃんは半分涙目になっていた。こんなお姉ちゃんを見るのも初めてだった。
かがみ「つかさ、帰ってきて、お願い、つかさ、あんたのためな……」
お姉ちゃんはそのまま黙ってしまった。
かえで「つかさのためと言うなら、そのまま黙って見守ってあげなさい……少し居すぎたわね、帰るわ」
暫くかえでさんは黙って俯いているお姉ちゃんを見下ろしていた。でもそれは軽蔑している感じではなかった。
かえで「少し居すぎたわね、帰るわ」
かえでさんはそのまま部屋を出て行った。
つかさ「お姉ちゃん、あとで話そうね……」
私はかえでさんを追いかけた。
お姉ちゃん達が泊まっている部屋の前でノックをする。
つかさ「こんばんは、入るよ」
ドアを開けると三人とも浴衣姿で楽しそうにしていた。きっとお話が盛り上がっていたに違いない。
こなた「つかさ~待ってたよ、ここのお湯いいね、だからあと二泊することになったよ」
嬉しい。まるで地元を褒めていられるたような感覚だった。三人は私の後ろにいるかえでさんに気が付いた。
つかさ「あ、改めてご紹介します、こちらは私がお世話になっている松本かえでさんです、この宿屋の食事兼、レストランの店長です」
かえでさんを前に出した。
かえで「先日のご来店はありがとうございました、私が松本かえでです、つかさのお友達、お姉さまと伺っています、今後ともよろしくお願いします」
こなた「よろしくお願いします」
みゆき「こちらこそお願いします」
こなちゃん、ゆきちゃんは丁寧にお辞儀をした。お姉ちゃんは黙ってそっぽを向いていた。何で、いくらなんでもお姉ちゃんらしくない。
つかさ「お姉ちゃん、お世話になっている人だよ……」
かがみ「どうも、つかさがお世話になっています……」
そっぽ向いたまま何の動作もしなかった。言葉も感情がはいっていなくて棒読み。これで雰囲気が悪くなってしまった。
みゆき「ど、どうぞ中へ」
ゆきちゃんは慌てて座布団を用意し、こなちゃんはお茶を用意しだした。私たちは部屋の中に入り座布団に座った。
こなた「しかし、つかさが一人暮らしするなんて聞いてどうなるかと思ったら、ちゃんとやっているみたいだし、松本さんのご指導が良かったのですね」
みゆき「これからのご活躍を期待しております」
かえで「ま、堅苦しい挨拶はこのへんでいいでしょ、とりあえずはつかさを私に預けてくれてありがとう、お友達と離れるのは辛かったでしょ?」
こなた「いえいえ、天然のつかさを鍛えて下さい」
つかさ「こ、こなちゃん!!」
かえでさんはにやりと笑った。
かえで「天然ね~確かにそうゆう所もあるわね、そういえばね貴女達が来る前日にね……」
つかさ「わ、わ、それ言っちゃダメ、だめだから」
かえで「そう言われると話したくなるのが人情ってものでしょ」
かえでさんが私達の会話に溶け込むに時間は掛からなかった。暫くの間、私たちはお喋りをしながら過ごした。友達が一人増えた。そんな感じだった。
かがみ「所でつかさ、この前の答え聞いてないわ」
お喋りをし始めてから出たお姉ちゃんの一言。会話が止まってしまった。答えも何も。もう決めた事だから。
つかさ「お姉ちゃん、私はここに残るよ……だってそう決めたから、目的を果たすまでは帰らないよ」
みゆき「いったい何の話ですか?」
かがみ「こんな所にいつまでもつかさを置いておけないから連れて帰るのよ」
みゆき「……どうしたのですか、かがみさん、あの時一番、賛成していたではないですか」
こなた「そうだよ、つかさだって頑張ってるし、いまさらそんな事言って……」
こなちゃんとゆきちゃんが驚いた顔でお姉ちゃんを問い質した。そんなこなちゃん達を無視するかのように私を見ていた。
かえで「……なるほどね、可愛い妹さんが居ないと何も出来ない事に気が付いた……そんな所かしら」
お姉ちゃんはかえでさんを睨み付けた。
かがみ「なに、もう一度言ってみろ」
お姉ちゃんもかえでさんを睨み返した。
かえで「貴女の心叫びが聞こえる『寂しい、帰ってきて、寂しいよ』そうそう、そう言っているのが聞こえるわ、つかさに聞いたのと全然違うわ、ただのアマちゃんね」
かがみ「わ、私はシスコンか、バカにするな、私はつかさのためを思って……」
かえで「確かに私はつかさを誘った、でも決めたのはつかさ、ここに来たのも本人の意思、そして戻りたくないと言っている、それ以上望郷を煽って惑わすのは、やめなさい」
きつい口調で諭すようにお姉ちゃんを叱りつけた。それは店で見た時と逆の光景だった。お客さんと店長としてではない。人生の先輩として……
お姉ちゃんは半分涙目になっていた。こんなお姉ちゃんを見るのも初めてだった。
かがみ「つかさ、帰ってきて、お願い、つかさ、あんたのためな……」
お姉ちゃんはそのまま黙ってしまった。
かえで「つかさのためと言うなら、そのまま黙って見守ってあげなさい……少し居すぎたわね、帰るわ」
暫くかえでさんは黙って俯いているお姉ちゃんを見下ろしていた。でもそれは軽蔑している感じではなかった。
かえで「少し居すぎたわね、帰るわ」
かえでさんはそのまま部屋を出て行った。
つかさ「お姉ちゃん、あとで話そうね……」
私はかえでさんを追いかけた。
640:つかさの旅 10/45:2012/01/09(月) 00:09:05.50:DlK6yebt0 (6/47)
かえでさんは店のの車に乗り込もうとしていた。
つかさ「まって、待ってください」
かえでさんは車に乗るのを止めて私の方を向いた。そして溜め息を一回ついた。
かえで「ごめんなさい、大人気なかったわ、彼女がムキになってくるから思わず怒鳴ってしまった……せっかく会わせてくれたのに」
つかさ「うんん、お姉ちゃんがあんな事言うから……」
かえでさんは苦笑いをした。
かえで「ふふ、彼女と言い合いしていたら……浩子の事を思い出してしまったわ」
つかさ「浩子さんって、辻さんの事?」
かえでさんは頷いた。
かえで「そういえば、浩子とあんな言い合いをしたっけ……容姿も歳も違うのに浩子と彼女が妙に重なった……言い過ぎたかもしれない……謝っておいて」
つかさ「かえでさん……」
かえでさんは車に乗り込みエンジンをかけた。そして私を見ると手を上げてから車を走らせた。私も手を振って見送った。
かえでさんは辻さんとお姉ちゃんの姿が重なったって言っていたけど、言い合いだけでそんな風になるのかな。それよりお姉ちゃんをなんとかしないと。
かえでさんの車が見えなくなると旅館に戻った。
旅館のロビーに着くとこなちゃんとゆきちゃんが居た。私服に着替えている。私の姿を見るなり二人は近づいてきた。
つかさ「どしたの、お姉ちゃんは?」
こなた「暫く誰とも会いたくないって、部屋を追い出されちゃったよ」
みゆき「あんなかがみさん初めて見ました、いったいどうしたのでしょうか、理解できません」
どうしよう、これだと私が部屋に行っても会ってくれないかもしれない。
こなた「実は、宿泊延長はかがみが言い出したんだよ、かがみは是が非でもつかさをつれて帰りたいみたいだね」
つかさ「……何で……」
こなた「訳を聞くと黙り込んじゃってね、かがみらしくないよ、つかさなら心当たりあるんじゃいの?」
つかさ「分からない……」
こなた「あ~あ、つかさが分からないんじゃお手上げだ」
本当に両手を上に上げた。
つかさ「部屋に入れないのなら、私の家で時間を潰すのはどうかな、車で行けば直ぐだし」
みゆき「それはいいで……」
こなた「わー、いいよ、車はもう沢山だよ」
ゆきちゃんに割り込むように身を乗り出してきた。
つかさ「それなら、お店で少し時間を潰すといいよ、お茶くらないなら出せるし」
みゆき「いいのですか、明日の準備は?」
つかさ「もう明日の朝食は仕込んであるから関係ないよ」
私達は店に移動した。消していた電灯をつけて、お茶とお茶菓子を二人に出した。そこでの話はやっぱりお姉ちゃんの話しになった。
一時間くらいは話したけど、結局お姉ちゃんの真意は分からなかった。旅館に戻った二人、何とか部屋には戻れた。だけど私は泊まるのを諦めた。
お姉ちゃんは私が帰ると言うまで泊まり続けるつもりなのかな。一日でいいのなら帰ってもいい。そこまで言うのなら、帰って欲しいと言うのなら……
かえでさんは店のの車に乗り込もうとしていた。
つかさ「まって、待ってください」
かえでさんは車に乗るのを止めて私の方を向いた。そして溜め息を一回ついた。
かえで「ごめんなさい、大人気なかったわ、彼女がムキになってくるから思わず怒鳴ってしまった……せっかく会わせてくれたのに」
つかさ「うんん、お姉ちゃんがあんな事言うから……」
かえでさんは苦笑いをした。
かえで「ふふ、彼女と言い合いしていたら……浩子の事を思い出してしまったわ」
つかさ「浩子さんって、辻さんの事?」
かえでさんは頷いた。
かえで「そういえば、浩子とあんな言い合いをしたっけ……容姿も歳も違うのに浩子と彼女が妙に重なった……言い過ぎたかもしれない……謝っておいて」
つかさ「かえでさん……」
かえでさんは車に乗り込みエンジンをかけた。そして私を見ると手を上げてから車を走らせた。私も手を振って見送った。
かえでさんは辻さんとお姉ちゃんの姿が重なったって言っていたけど、言い合いだけでそんな風になるのかな。それよりお姉ちゃんをなんとかしないと。
かえでさんの車が見えなくなると旅館に戻った。
旅館のロビーに着くとこなちゃんとゆきちゃんが居た。私服に着替えている。私の姿を見るなり二人は近づいてきた。
つかさ「どしたの、お姉ちゃんは?」
こなた「暫く誰とも会いたくないって、部屋を追い出されちゃったよ」
みゆき「あんなかがみさん初めて見ました、いったいどうしたのでしょうか、理解できません」
どうしよう、これだと私が部屋に行っても会ってくれないかもしれない。
こなた「実は、宿泊延長はかがみが言い出したんだよ、かがみは是が非でもつかさをつれて帰りたいみたいだね」
つかさ「……何で……」
こなた「訳を聞くと黙り込んじゃってね、かがみらしくないよ、つかさなら心当たりあるんじゃいの?」
つかさ「分からない……」
こなた「あ~あ、つかさが分からないんじゃお手上げだ」
本当に両手を上に上げた。
つかさ「部屋に入れないのなら、私の家で時間を潰すのはどうかな、車で行けば直ぐだし」
みゆき「それはいいで……」
こなた「わー、いいよ、車はもう沢山だよ」
ゆきちゃんに割り込むように身を乗り出してきた。
つかさ「それなら、お店で少し時間を潰すといいよ、お茶くらないなら出せるし」
みゆき「いいのですか、明日の準備は?」
つかさ「もう明日の朝食は仕込んであるから関係ないよ」
私達は店に移動した。消していた電灯をつけて、お茶とお茶菓子を二人に出した。そこでの話はやっぱりお姉ちゃんの話しになった。
一時間くらいは話したけど、結局お姉ちゃんの真意は分からなかった。旅館に戻った二人、何とか部屋には戻れた。だけど私は泊まるのを諦めた。
お姉ちゃんは私が帰ると言うまで泊まり続けるつもりなのかな。一日でいいのなら帰ってもいい。そこまで言うのなら、帰って欲しいと言うのなら……
641:つかさの旅 11/45:2012/01/09(月) 00:10:53.96:DlK6yebt0 (7/47)
二部 <訪問者>
車を駐車場に止めて降りた。トランクからコンビニで買った荷物を降ろした。駐車場を出ようとした時だった。壁の陰から人影が飛び出した。そして私の行く手を阻むように
立ちはだかった。男性だった。私は立ち止まった。男性は私から二、三メートル離れて私を見ている。この男性は……店に居たお客さん、かえでさんの言ってた常連さんだ。
かえでさんは私をずっと見ていたと言っていた。も、もしかしたらストーカー……
身がすくんでしまった。で、でも、家は男性を追い越さないと帰れない。小走りに男性を追い越した。男性は邪魔するどころか何もしないで私を通した。
男性「待ってお姉ちゃん!!」
思いもしなかった言葉が後ろからした。私は立ち止まった。
男性「やっぱり、お姉ちゃんだね、探したよ」
私はゆっくり振り向いた。男性は親しいそうな笑顔で近づいてきた。
つかさ「お、お姉ちゃん?」
男性「仲間もいないから探したよ、お姉ちゃん、完全に人間になりきっているね、流石だよ、でも、僕には分かるよ、微かにお姉ちゃんの気配がする」
言っている意味が分からない、人違いに違いない。
つかさ「ひ、人違いじゃないの……私は……」
男性「僕が分からない、そうだよね、僕だって腕を上げたからね……ひろしだよ、真奈美お姉ちゃん」
真奈美……まなちゃん。もしかしてこの人はまなちゃんの弟さんなのかな。
つかさ「まなちゃん……真奈美さんは私の友達だった……」
ひろし「もうお芝居はいいよ、早く仲間の所に戻ろう、みんな神社に居ないからその訳も聞きたいしね」
男性はさらに近づいた。
つかさ「私は真奈美さんじゃないよ、柊つかさ……」
男性は私の直ぐ近くまで来るとまた立ち止まった。
ひろし「ん、おかしい、お、お前、姉さんじゃない……何故姉さんを知っている、お前、人間だよな」
男性は数歩後ろに下がった。そして目つきが鋭くなった。
つかさ「うん、真奈美さんは知り合い……友達だったよ」
ひろし「嘘だ、姉さんは人間を嫌っていた……お前、姉さんに何かしたのか」
さらに目つきが鋭くなった。
つかさ「私、真奈美さんに助けてもらったの」
男性は何も言わなくなった。この感じ……そうだ、身動きが取れなくなる術をしようとしている。二回も受けたから何となく分かった。あれは目を合わせると動けなくなる。
私は男性のすぐ横にある電柱を見て男性の目を見ないようにした。
ひろし「……こ、こいつ、何故人間が金縛りの術を知っている、お前、狐狩りか!!」
あぁ、余計に怒らせてしまった。男性は一瞬で私に近づき右手で胸倉を掴まれた。力は強く身動きが取れない。私の身体は宙に浮いた。そして左手の爪が伸び始めた。
ひろし「……弱いな、弱すぎる、これも芝居か、何を企んでいる……」
苦しくて何も出来ない。声も出ない。これじゃ金縛りを受けているのと変わらない。左手の爪が私の頬に接した。このまま切り裂かれてしまのかな。
まなちゃん、助けて……そう心で叫んだ。
男性は急に私を放した。私はその場に落ちるように座りこんでしまった。
つかさ「げほ、げほ……」
ひろし「お姉ちゃん……嘘だろ……う、うゎー」
男性は両手で頭を抱えながら走り去ってしまった。喉を少し絞められたからまだ少し苦しい。喉を押さえながら立ち上がった。買い物袋を拾って家に向かった。
家に入ると水を一杯飲んだ。まだ少し喉が痛い。あの男の人、私をまなちゃんだと思っていた。あの男の人、まなちゃんが辻さんに化けるようになってから
まなちゃんに会っていない。だから間違えたんだ。でも、どうして私とまなちゃんを間違えたのかな。考えても分からないや。でも、また、まなちゃんに助けられちゃった。
二部 <訪問者>
車を駐車場に止めて降りた。トランクからコンビニで買った荷物を降ろした。駐車場を出ようとした時だった。壁の陰から人影が飛び出した。そして私の行く手を阻むように
立ちはだかった。男性だった。私は立ち止まった。男性は私から二、三メートル離れて私を見ている。この男性は……店に居たお客さん、かえでさんの言ってた常連さんだ。
かえでさんは私をずっと見ていたと言っていた。も、もしかしたらストーカー……
身がすくんでしまった。で、でも、家は男性を追い越さないと帰れない。小走りに男性を追い越した。男性は邪魔するどころか何もしないで私を通した。
男性「待ってお姉ちゃん!!」
思いもしなかった言葉が後ろからした。私は立ち止まった。
男性「やっぱり、お姉ちゃんだね、探したよ」
私はゆっくり振り向いた。男性は親しいそうな笑顔で近づいてきた。
つかさ「お、お姉ちゃん?」
男性「仲間もいないから探したよ、お姉ちゃん、完全に人間になりきっているね、流石だよ、でも、僕には分かるよ、微かにお姉ちゃんの気配がする」
言っている意味が分からない、人違いに違いない。
つかさ「ひ、人違いじゃないの……私は……」
男性「僕が分からない、そうだよね、僕だって腕を上げたからね……ひろしだよ、真奈美お姉ちゃん」
真奈美……まなちゃん。もしかしてこの人はまなちゃんの弟さんなのかな。
つかさ「まなちゃん……真奈美さんは私の友達だった……」
ひろし「もうお芝居はいいよ、早く仲間の所に戻ろう、みんな神社に居ないからその訳も聞きたいしね」
男性はさらに近づいた。
つかさ「私は真奈美さんじゃないよ、柊つかさ……」
男性は私の直ぐ近くまで来るとまた立ち止まった。
ひろし「ん、おかしい、お、お前、姉さんじゃない……何故姉さんを知っている、お前、人間だよな」
男性は数歩後ろに下がった。そして目つきが鋭くなった。
つかさ「うん、真奈美さんは知り合い……友達だったよ」
ひろし「嘘だ、姉さんは人間を嫌っていた……お前、姉さんに何かしたのか」
さらに目つきが鋭くなった。
つかさ「私、真奈美さんに助けてもらったの」
男性は何も言わなくなった。この感じ……そうだ、身動きが取れなくなる術をしようとしている。二回も受けたから何となく分かった。あれは目を合わせると動けなくなる。
私は男性のすぐ横にある電柱を見て男性の目を見ないようにした。
ひろし「……こ、こいつ、何故人間が金縛りの術を知っている、お前、狐狩りか!!」
あぁ、余計に怒らせてしまった。男性は一瞬で私に近づき右手で胸倉を掴まれた。力は強く身動きが取れない。私の身体は宙に浮いた。そして左手の爪が伸び始めた。
ひろし「……弱いな、弱すぎる、これも芝居か、何を企んでいる……」
苦しくて何も出来ない。声も出ない。これじゃ金縛りを受けているのと変わらない。左手の爪が私の頬に接した。このまま切り裂かれてしまのかな。
まなちゃん、助けて……そう心で叫んだ。
男性は急に私を放した。私はその場に落ちるように座りこんでしまった。
つかさ「げほ、げほ……」
ひろし「お姉ちゃん……嘘だろ……う、うゎー」
男性は両手で頭を抱えながら走り去ってしまった。喉を少し絞められたからまだ少し苦しい。喉を押さえながら立ち上がった。買い物袋を拾って家に向かった。
家に入ると水を一杯飲んだ。まだ少し喉が痛い。あの男の人、私をまなちゃんだと思っていた。あの男の人、まなちゃんが辻さんに化けるようになってから
まなちゃんに会っていない。だから間違えたんだ。でも、どうして私とまなちゃんを間違えたのかな。考えても分からないや。でも、また、まなちゃんに助けられちゃった。
642:つかさの旅 12/45:2012/01/09(月) 00:12:14.35:DlK6yebt0 (8/47)
喉の痛みは治まったけど、お姉ちゃんの事とさっきの男性のせいで眠れない。眠れないのは、この町に引っ越してから初めてかもしれない。
こんな時は無理に寝ないで温かいココアでも飲むかな。やかんに水を入れて火を点けた。お姉ちゃんとかえでさんの言い合いを思い出す。
やっぱり明日、かえでさんに話して一日だけでも帰ろう。それでお姉ちゃんの気が済むならそれでいいし。それでダメならお姉ちゃんを叱らないといけないのかもしらない。
『ピンポーン』
呼び鈴が鳴った。置時計を見るともう日が変わろうとしている時間。こんな夜遅く誰だろう。やかんのお湯をポットに移して玄関に向かった。
ドアのノブに手をかけた。さっきの男性を思い出した。もしまたあの男性だったら。また私を……そうしたらもう自分の力ではどうすることも出来ない。開けられない。
つかさ「あ、あの、誰ですか」
ドア越しから声をかけた。
ひろし「……さっきは、ごめんなさい……ひろしです、真奈美の弟です……」
やっぱりあの男性だった。とても静かな声だった。恐い、恐いけど話さないと、またさっきみたいに怒り出すかもしれない。
つかさ「な、なんの用ですか……」
ひろし「……貴女に触れた時、見てしまった……姉と仲間の事……あれは、本当なのか……」
そういえば思い出した。まなちゃん達は触れたものの心とかが分かる能力を持っている。だから私に触れた時、あの時の状況が彼の頭の中に映ったのかな。
つかさ「……多分、見た通りだよ、私からは何も言えない、でも、私は真奈美さんに助けられた……」
ひろし「……そう、出来れば少し話したいけど……酷いことしたから……無理だよね」
……それはまなちゃんだって同じだった。最初は私を殺そうとまでしようとしていた。私は彼を信じる。ロックを解除してドアを開けた。彼は驚いた顔をして立っていた。
つかさ「とうぞ」
ひろし「ドアを開けた……なぜ、少なくとも君を傷つけようとした……」
つかさ「まなちゃん、真奈美さんもそうだったから……」
ひろしさんはそのまま家に上がった。居間に案内した。彼は椅子に座った。
つかさ「今、ちょうどココアを淹れようとしていた所だから」
私は台所に向かった。
ひろし「……いいのか、初対面の男性を家に入れて……人間の世界だといろいろ問題になるぞ」
つかさ「こんな深夜だしだれも見ていないよ、それに貴方は人間じゃないでしょ、まなちゃんが言っていた、人間とは種族が違うからそんな気持ちにはならないって」
ひろし「姉さんはそんな事まで話していたのか……」
つかさ「でも、弟さんが居るなんて一言も言ってなかった」
ココアを淹れたカップを居間に持って行った。
つかさ「どうぞ」
ひろしさんはココアを飲もうとはしなかった。私をじっと見ている。
ひろし「おかしい、どうみても普通の人間なのになぜ、姉さんを感じるのか……今も感じる」
私もそれが不思議だった。まなちゃんを感じる物って……もしかしたら。ポケットから財布を取り出し中から葉っぱを取り出した。お金だと言って渡されたものだった。
それをあきらさんに見せた。ひろしさんは笑みを浮かべた。
ひろし「……それだ、それから姉さんを感じる……はは、まだそんな幼稚な術で悪戯していたのか」
つかさ「御礼だって、渡された時は一万円札に見えた」
ひろし「これは人間を騙す初歩の術さ……」
つかさ「も、もしかして、レストランで払っているお金も……」
ひろし「ははは、まさか、この術は直ぐにバレるからな、使わないよ、人間の社会で仕事してちゃんとしたお金で払ってるよ」
笑いながら話した。そして直ぐに真面目な顔になった。
ひろし「さて、話してくれるかな、姉さんと仲間の事……」
つかさ「私も全ては知らないけど……」
私はまなちゃんとの出会いから別れまでの出来事を話した。
喉の痛みは治まったけど、お姉ちゃんの事とさっきの男性のせいで眠れない。眠れないのは、この町に引っ越してから初めてかもしれない。
こんな時は無理に寝ないで温かいココアでも飲むかな。やかんに水を入れて火を点けた。お姉ちゃんとかえでさんの言い合いを思い出す。
やっぱり明日、かえでさんに話して一日だけでも帰ろう。それでお姉ちゃんの気が済むならそれでいいし。それでダメならお姉ちゃんを叱らないといけないのかもしらない。
『ピンポーン』
呼び鈴が鳴った。置時計を見るともう日が変わろうとしている時間。こんな夜遅く誰だろう。やかんのお湯をポットに移して玄関に向かった。
ドアのノブに手をかけた。さっきの男性を思い出した。もしまたあの男性だったら。また私を……そうしたらもう自分の力ではどうすることも出来ない。開けられない。
つかさ「あ、あの、誰ですか」
ドア越しから声をかけた。
ひろし「……さっきは、ごめんなさい……ひろしです、真奈美の弟です……」
やっぱりあの男性だった。とても静かな声だった。恐い、恐いけど話さないと、またさっきみたいに怒り出すかもしれない。
つかさ「な、なんの用ですか……」
ひろし「……貴女に触れた時、見てしまった……姉と仲間の事……あれは、本当なのか……」
そういえば思い出した。まなちゃん達は触れたものの心とかが分かる能力を持っている。だから私に触れた時、あの時の状況が彼の頭の中に映ったのかな。
つかさ「……多分、見た通りだよ、私からは何も言えない、でも、私は真奈美さんに助けられた……」
ひろし「……そう、出来れば少し話したいけど……酷いことしたから……無理だよね」
……それはまなちゃんだって同じだった。最初は私を殺そうとまでしようとしていた。私は彼を信じる。ロックを解除してドアを開けた。彼は驚いた顔をして立っていた。
つかさ「とうぞ」
ひろし「ドアを開けた……なぜ、少なくとも君を傷つけようとした……」
つかさ「まなちゃん、真奈美さんもそうだったから……」
ひろしさんはそのまま家に上がった。居間に案内した。彼は椅子に座った。
つかさ「今、ちょうどココアを淹れようとしていた所だから」
私は台所に向かった。
ひろし「……いいのか、初対面の男性を家に入れて……人間の世界だといろいろ問題になるぞ」
つかさ「こんな深夜だしだれも見ていないよ、それに貴方は人間じゃないでしょ、まなちゃんが言っていた、人間とは種族が違うからそんな気持ちにはならないって」
ひろし「姉さんはそんな事まで話していたのか……」
つかさ「でも、弟さんが居るなんて一言も言ってなかった」
ココアを淹れたカップを居間に持って行った。
つかさ「どうぞ」
ひろしさんはココアを飲もうとはしなかった。私をじっと見ている。
ひろし「おかしい、どうみても普通の人間なのになぜ、姉さんを感じるのか……今も感じる」
私もそれが不思議だった。まなちゃんを感じる物って……もしかしたら。ポケットから財布を取り出し中から葉っぱを取り出した。お金だと言って渡されたものだった。
それをあきらさんに見せた。ひろしさんは笑みを浮かべた。
ひろし「……それだ、それから姉さんを感じる……はは、まだそんな幼稚な術で悪戯していたのか」
つかさ「御礼だって、渡された時は一万円札に見えた」
ひろし「これは人間を騙す初歩の術さ……」
つかさ「も、もしかして、レストランで払っているお金も……」
ひろし「ははは、まさか、この術は直ぐにバレるからな、使わないよ、人間の社会で仕事してちゃんとしたお金で払ってるよ」
笑いながら話した。そして直ぐに真面目な顔になった。
ひろし「さて、話してくれるかな、姉さんと仲間の事……」
つかさ「私も全ては知らないけど……」
私はまなちゃんとの出会いから別れまでの出来事を話した。
643:つかさの旅 13/45:2012/01/09(月) 00:14:40.79:DlK6yebt0 (9/47)
ひろし「……お姉ちゃん……」
つかさ「私の知ってるのはここまで」
ひろしさんはうな垂れていた。やっぱりそうとうショックだったに違いない。
ひろし「お頭と姉とはいつも意見が対立していたけど……まさか」
つかさ「お頭って、もしかして大きな狐さん?」
あきら「大きい……確かに、大きくて偉大、最長老で、最高指導者さ……」
つかさ「何故、あの時、えっと、えっと」
なんて呼ぼうかな。ひろしさんでいいのかな。
ひろし「ひろしでいいよ」
私の心を読んだように答えた。
つかさ「何故、あの時ひろしさんは居なかったの?」
ひろし「僕は人間の世界で修行中だったから、僕達は人間とは付かず離れずの関係できていた、最低限、人間の世界は理解しないと生けていけないから、狐狩りさえなければ……」
つかさ「駐車場で私を狐狩りって言ってたけど……」
ひろし「い、いや、大昔の話だよ、動物の狐ではなく、悪魔として狩られた時もあってね、この時代は僕達の存在すら忘れられているから、関係ない話、思わず言ってしまった、
でも、この時代の人間も動物の狐は狩る……一年中人間の姿で居られる訳じゃないから狙われる場合もある」
つかさ「この町も定期的に狐狩りしているよ……」
ひろしさんは黙ってしまった。
つかさ「まなちゃん、真奈美さんは生きているかな、この葉っぱには真奈美さんの術が残ってるんでしょ、だからまだどこかに生きているような気がする」
ひろし「……分らない、君のイメージから分るのは、かなりの深傷だった、あのまま逃げてもどうなったか……」
つかさ「やっぱり……」
ひろし「君達人間も、僕達も思考や感情はそんなに違いはなかった、恨みや辛みは弱いものに当たる……お頭達は、馬鹿なことをしたものだ」
溜め息をつくひろしさんだった。その表情は怒ると言うより悲しそうだった。ひろしさんは仲間を深くは恨んでいないような気がした。
ひろしさんは置いてあったココアを一口飲んだ。
ひろし「……このココア、美味しく飲んでもらおうとして作ったのが解る……店で出しているのと同じだ、でも、君の作ったのを口にするのは始めだな」
つかさ「私は、デザート担当だから」
ひろし「そうか、だからか……」
ひろしさんはまたココアを一口飲んだ。私は彼をじっと見た。
ひろし「何か?」
つかさ「やっぱり男性は強いですね、まなちゃ……うんん、真奈美さんが亡くなったのに涙一つ見せない」
ひろしさんは一瞬微笑んだ。
ひろし「まだ死体を見たわけじゃないからね、それまでは涙もでないさ、それに、だから君もこの町に来たのでしょ……強いのは君の方だよ、あれだけの恐怖体験をしながら
この町で暮らせるなんて、僕の術を冷静に対処ところなんかは賞賛に値する、名前はなんて言ったっけ?」
これって褒められているのかな。人間じゃないけど男性に褒められたのはお父さん以外では初めてかもしれない。
つかさ「つかさ……柊つかさ」
ひろし「つかさ……覚えておこう」
あきらさんは立ち上がった。
ひろし「お邪魔した、帰ろう……」
ひろしさんは玄関の前で立ち止まった。
つかさ「どうしたの?」
ひろし「……帰る足がなかった」
もう時間が時間だし、交通機関はもう止まっている。
つかさ「車で送るけど……」
ひろし「……いや、車は苦手なんだ……あの音、振動、思い出すだけで身震いがする」
思わず吹き出しそうになった。
ひろし「な、なんだよ、誰にだって苦手なものはあるだろう」
顔が少し赤くなっているのが分った。
つかさ「そ、そうだね、ごめんなさい……自転車もあるけど……」
ひろし「それだと家に着く前に変身が解けそうなんだ、変身の解けたばかりは何も出来ない狐と同じ、野犬にも勝てない」
この状況で答えは一つしかない。
つかさ「それなら家で泊まればいいよ」
ひろし「……今は人間なんだぞ、いいのか、その気がなくともどうなるか分らんぞ……それも分らないような歳じゃないだろう」
ひろしさんの目が真剣になった。でも私は笑った。
つかさ「ふふ、その気になる前に狐になっちゃうでしょ、私はもう寝るけどお風呂が沸いているから入って、居間に布団をひいておくから」
あきらさんは黙ってお風呂場へと向かって行った。あんな事言ったけど、内心はドキドキだった。こんな事を言われるのも初めてだった。男性と一夜を明かす……考えもできない。
でもなんだか心が落ち着いた。まなちゃんは生きている。そうだよ、それもあるからこの町に戻ってきた。また逢えるかも知れない。そんな事を考えていたら眠くなってきた。
もう眠れそう。
ひろし「……お姉ちゃん……」
つかさ「私の知ってるのはここまで」
ひろしさんはうな垂れていた。やっぱりそうとうショックだったに違いない。
ひろし「お頭と姉とはいつも意見が対立していたけど……まさか」
つかさ「お頭って、もしかして大きな狐さん?」
あきら「大きい……確かに、大きくて偉大、最長老で、最高指導者さ……」
つかさ「何故、あの時、えっと、えっと」
なんて呼ぼうかな。ひろしさんでいいのかな。
ひろし「ひろしでいいよ」
私の心を読んだように答えた。
つかさ「何故、あの時ひろしさんは居なかったの?」
ひろし「僕は人間の世界で修行中だったから、僕達は人間とは付かず離れずの関係できていた、最低限、人間の世界は理解しないと生けていけないから、狐狩りさえなければ……」
つかさ「駐車場で私を狐狩りって言ってたけど……」
ひろし「い、いや、大昔の話だよ、動物の狐ではなく、悪魔として狩られた時もあってね、この時代は僕達の存在すら忘れられているから、関係ない話、思わず言ってしまった、
でも、この時代の人間も動物の狐は狩る……一年中人間の姿で居られる訳じゃないから狙われる場合もある」
つかさ「この町も定期的に狐狩りしているよ……」
ひろしさんは黙ってしまった。
つかさ「まなちゃん、真奈美さんは生きているかな、この葉っぱには真奈美さんの術が残ってるんでしょ、だからまだどこかに生きているような気がする」
ひろし「……分らない、君のイメージから分るのは、かなりの深傷だった、あのまま逃げてもどうなったか……」
つかさ「やっぱり……」
ひろし「君達人間も、僕達も思考や感情はそんなに違いはなかった、恨みや辛みは弱いものに当たる……お頭達は、馬鹿なことをしたものだ」
溜め息をつくひろしさんだった。その表情は怒ると言うより悲しそうだった。ひろしさんは仲間を深くは恨んでいないような気がした。
ひろしさんは置いてあったココアを一口飲んだ。
ひろし「……このココア、美味しく飲んでもらおうとして作ったのが解る……店で出しているのと同じだ、でも、君の作ったのを口にするのは始めだな」
つかさ「私は、デザート担当だから」
ひろし「そうか、だからか……」
ひろしさんはまたココアを一口飲んだ。私は彼をじっと見た。
ひろし「何か?」
つかさ「やっぱり男性は強いですね、まなちゃ……うんん、真奈美さんが亡くなったのに涙一つ見せない」
ひろしさんは一瞬微笑んだ。
ひろし「まだ死体を見たわけじゃないからね、それまでは涙もでないさ、それに、だから君もこの町に来たのでしょ……強いのは君の方だよ、あれだけの恐怖体験をしながら
この町で暮らせるなんて、僕の術を冷静に対処ところなんかは賞賛に値する、名前はなんて言ったっけ?」
これって褒められているのかな。人間じゃないけど男性に褒められたのはお父さん以外では初めてかもしれない。
つかさ「つかさ……柊つかさ」
ひろし「つかさ……覚えておこう」
あきらさんは立ち上がった。
ひろし「お邪魔した、帰ろう……」
ひろしさんは玄関の前で立ち止まった。
つかさ「どうしたの?」
ひろし「……帰る足がなかった」
もう時間が時間だし、交通機関はもう止まっている。
つかさ「車で送るけど……」
ひろし「……いや、車は苦手なんだ……あの音、振動、思い出すだけで身震いがする」
思わず吹き出しそうになった。
ひろし「な、なんだよ、誰にだって苦手なものはあるだろう」
顔が少し赤くなっているのが分った。
つかさ「そ、そうだね、ごめんなさい……自転車もあるけど……」
ひろし「それだと家に着く前に変身が解けそうなんだ、変身の解けたばかりは何も出来ない狐と同じ、野犬にも勝てない」
この状況で答えは一つしかない。
つかさ「それなら家で泊まればいいよ」
ひろし「……今は人間なんだぞ、いいのか、その気がなくともどうなるか分らんぞ……それも分らないような歳じゃないだろう」
ひろしさんの目が真剣になった。でも私は笑った。
つかさ「ふふ、その気になる前に狐になっちゃうでしょ、私はもう寝るけどお風呂が沸いているから入って、居間に布団をひいておくから」
あきらさんは黙ってお風呂場へと向かって行った。あんな事言ったけど、内心はドキドキだった。こんな事を言われるのも初めてだった。男性と一夜を明かす……考えもできない。
でもなんだか心が落ち着いた。まなちゃんは生きている。そうだよ、それもあるからこの町に戻ってきた。また逢えるかも知れない。そんな事を考えていたら眠くなってきた。
もう眠れそう。
644:つかさの旅 14/45:2012/01/09(月) 00:20:49.49:DlK6yebt0 (10/47)
何だろう。ほっぺたがくすぐったい。ゆっくりと目を開けた。起き上がり背伸びをした。久々に良く眠れたみたい。気分が爽快だった。
つかさ「う~ん」
目覚まし時計を見るとまだセットした時間より10分早かった。
「クゥ~ン」
はっとして声のする方を見るとベッドのすぐ下に狐がお座りをしていた。私は頬を触った。少し濡れている。そうか変身の解けたひろしさんだったのか。私の頬を舐めて
起こしたみたいだった。
つかさ「おはよう」
ひろしさんは私と目が合うとクルリと一回りをして寝室を出て行った。そうか、もう帰りたいに違いない。私も寝室を出ると、あきらさんは玄関の前でお座りをしていた。
つかさ「帰りたいの?」
ひろしさんは頷く仕草をした。この狐……良く見るとまなちゃんが狐になった時と良く似ている。やっぱり姉弟。納得してしまった。玄関を開けようとしたけど開けるのを止めた。
この時間だと近所の人が犬の散歩で出ている。狐が家から飛び出して見つかったら言い訳ができない。
つかさ「他の人に見つかっちゃうかもしれないから、台所の裏窓から出てくれないかな?」
私が台所に向かうと私の後からひろしさんが付いてきた。裏窓を開けると、軽やかに飛び上がり窓から出て行った。やっぱり狐の姿だとドアも開けられないのか……
あれ、それじゃ何で寝室に入ってこられたのかな。もしかして私が眠っている時、人間のあきらさんが入ってきた……
それから……わ、私何かされたのかな。それより寝姿見られた……あまりにも自分が大胆な事をしていたのに気付いてしまった。こんなのまだ早過ぎだった。
今頃になって恥かしくなってしまった。
『お姉ちゃん』、駐車場で彼は私にそう言った。とっても親しみが籠もっていた。私も同じように言っているから直ぐに判った。急いで家に帰ろうとしていた私の足を止めた言葉。
最初は恐かったけど……話してみると優しい人だった。でも、私をまなちゃんに間違えたのならもう私と会うこともない。ちょっと残念。
問題は私のお姉ちゃん。このままにしておくのはやっぱりダメだよ。かえでさんに会ったら話してみよう。私の気持ち……
何だろう。ほっぺたがくすぐったい。ゆっくりと目を開けた。起き上がり背伸びをした。久々に良く眠れたみたい。気分が爽快だった。
つかさ「う~ん」
目覚まし時計を見るとまだセットした時間より10分早かった。
「クゥ~ン」
はっとして声のする方を見るとベッドのすぐ下に狐がお座りをしていた。私は頬を触った。少し濡れている。そうか変身の解けたひろしさんだったのか。私の頬を舐めて
起こしたみたいだった。
つかさ「おはよう」
ひろしさんは私と目が合うとクルリと一回りをして寝室を出て行った。そうか、もう帰りたいに違いない。私も寝室を出ると、あきらさんは玄関の前でお座りをしていた。
つかさ「帰りたいの?」
ひろしさんは頷く仕草をした。この狐……良く見るとまなちゃんが狐になった時と良く似ている。やっぱり姉弟。納得してしまった。玄関を開けようとしたけど開けるのを止めた。
この時間だと近所の人が犬の散歩で出ている。狐が家から飛び出して見つかったら言い訳ができない。
つかさ「他の人に見つかっちゃうかもしれないから、台所の裏窓から出てくれないかな?」
私が台所に向かうと私の後からひろしさんが付いてきた。裏窓を開けると、軽やかに飛び上がり窓から出て行った。やっぱり狐の姿だとドアも開けられないのか……
あれ、それじゃ何で寝室に入ってこられたのかな。もしかして私が眠っている時、人間のあきらさんが入ってきた……
それから……わ、私何かされたのかな。それより寝姿見られた……あまりにも自分が大胆な事をしていたのに気付いてしまった。こんなのまだ早過ぎだった。
今頃になって恥かしくなってしまった。
『お姉ちゃん』、駐車場で彼は私にそう言った。とっても親しみが籠もっていた。私も同じように言っているから直ぐに判った。急いで家に帰ろうとしていた私の足を止めた言葉。
最初は恐かったけど……話してみると優しい人だった。でも、私をまなちゃんに間違えたのならもう私と会うこともない。ちょっと残念。
問題は私のお姉ちゃん。このままにしておくのはやっぱりダメだよ。かえでさんに会ったら話してみよう。私の気持ち……
645:つかさの旅 15/45:2012/01/09(月) 00:21:54.93:DlK6yebt0 (11/47)
かえで「実家に帰ると言うのか……」
私は頷いた。ひろしさんに会ったからではない。まなちゃんの影響でもない。わたしの率直な気持ちだった。朝一番、かえでさんが出勤した時に話した。
つかさ「お姉ちゃん、普段はあんなんじゃないよ、いつもかえでさんに話していたよね、あんなに言うのには絶対に何か深い事情があると思うの……」
かえでさんは暫く考えていた。黙って私を見ていた。
かえで「私情を仕事に持ち込むなと言ったわよね……それを承知で言っているのか……」
私はまた頷いた。かえでさんは少し驚いた顔をした。
かえで「……成るほどね、そこまでしてお姉さんを……そんなのは私にわざわざ許可を取るまでも無いでしょ」
厳しい目つきで私を見た。やっぱりダメかな……
かえで「貴女のお姉さん……最初に会った彼女と違うのは確かに認める、何があったのかしらね……このまま中途半端な気持ちでいられても困るわ、いってらっしゃい」
つかさ「本当ですか!!」
思わず聞き返した。
かえで「ご家族とそこでしっかり話しなさい、その結果が例えこのままここに戻らなくても私は何も言わない……もともと誘ったのは私、その責任は私があるのだから」
かえでさんはにっこり微笑んだ。
つかさ「あ、ありがとうございます」
かえで「ばか、なに涙なんか流して、まだ何も解決していないわよ」
何故か涙が出ていたのに気が付いた。確かにそうだった。涙を拭った。
かえで「さて、開店準備するわよ」
つかさ「はい!!」
それからお昼近くになった頃だった。かえでさんが厨房に入ってきた。
かえで「つかさ、デザートの注文よ」
何だろう、かえでさん自ら私に注文を言ってくるなんて。かえでさんは客席の方を向いているから私も客席を見た。
つかさ「あ、ひろしさん……」
来るはずもないと思っていた。もう私に用は無いはず。どうして店に来たのだろう。
気付くとかえでさんは細目でにやけた顔で私を見ていた。
かえで「ほ~、会った事もないってね~、そう言っていたわよね……それに名前まで知ってるじゃない、苗字じゃなく名前で呼ぶなんて……いつからそんな仲になったのよ」
はっとした。彼には名前しかないからそう呼ぶしかない。でもかえでさんにはそうは思ってくれない。昨夜や今朝の出来事が頭に浮かぶ。
つかさ「そ、そんなんじゃないよ、知り合ったのは最近で……お友達みたいなものだよ……」
かえで「みたい……ね……ささ、赤い顔をしないでさっさとデザートを持っていきなさい」
勘違いだよ。と言いたかったけど、否定すれば余計に突っ込まれる。私は急いでデザートを準備して客席に持っていった。
つかさ「おまたせしました」
ひろしさんの前にデザートを置いた。そして伝票を置いたついでにあきらさんの耳元に小声で話した。
つかさ「どうして来たの、もう私には用はないでしょ」
ひろし「この店の味が気に入っているから、それに君の料理はまだ食べていないからね……それは用にはならないのか?」
私は何も言えなかった。彼はちゃんとしたお客さんの一人だった。
つかさ「そ、そうだけど……」
ひろし「それより、昨夜は……」
突然背中をツンツン突かれた。振り向くとこなちゃんとゆきちゃんが立っていた。こなちゃんもかえでさんと同じように細目でにやけた顔をしていた。
こなた「お昼を食べにきたけど……お邪魔だったかな」
頭が真っ白になった。こなちゃんまで誤解している。耳元で話していたからからかな。
つかさ「あ、え、全然邪魔じゃないよ、い、いらっしゃいませ……こちらは友達のひろしさん……」
こなちゃんはひろしさんに会釈した。
みゆき「いつもつかささんがお世話になっています」
ゆきちゃんも会釈した。ひろしさんもそれに釣られるように会釈をした。私は二人を席に案内した。ひろしさんは私に何を言いたかったのか少し気になった。でも聞ける状況
ではない。二人が席に着くとメニューを渡した。二人はメニューを開いた。
こなた「なんか普通じゃないと思っていたけど、やっぱり彼氏だったんだ……すみにおけないね~」
つかさ「そんなんじゃないから……昨夜ちょっと会っただけだから……」
こなた「え~、一夜を共に過ごしたの……あちゃ~、のろけられちゃったよ」
まずい、これはまずいよ、話せば話すほど誤解が深まっていく。隣でゆきちゃんもクスクスと笑っていた。
つかさ「ご、ご注文はお決まりですか?」
こなた「えっと、おすすめランチで」
みゆき「私も同じで……」
つかさ「少々お待ち下さい……」
注文を受けて厨房に戻った。
つかさ「おすすめ二つ追加……」
かえでさんはフライパンを取り出し料理に取り掛かった。手を動かしながら話す。
かえで「……今日はつかさのお友達が多いわね……それにしてもかがみさんは見えないわね……」
そういえば気が付かなかった。いつもこなちゃんと一緒にいるからと思ったけど……今日も別行動なのだろうか。
かえで「実家に帰ると言うのか……」
私は頷いた。ひろしさんに会ったからではない。まなちゃんの影響でもない。わたしの率直な気持ちだった。朝一番、かえでさんが出勤した時に話した。
つかさ「お姉ちゃん、普段はあんなんじゃないよ、いつもかえでさんに話していたよね、あんなに言うのには絶対に何か深い事情があると思うの……」
かえでさんは暫く考えていた。黙って私を見ていた。
かえで「私情を仕事に持ち込むなと言ったわよね……それを承知で言っているのか……」
私はまた頷いた。かえでさんは少し驚いた顔をした。
かえで「……成るほどね、そこまでしてお姉さんを……そんなのは私にわざわざ許可を取るまでも無いでしょ」
厳しい目つきで私を見た。やっぱりダメかな……
かえで「貴女のお姉さん……最初に会った彼女と違うのは確かに認める、何があったのかしらね……このまま中途半端な気持ちでいられても困るわ、いってらっしゃい」
つかさ「本当ですか!!」
思わず聞き返した。
かえで「ご家族とそこでしっかり話しなさい、その結果が例えこのままここに戻らなくても私は何も言わない……もともと誘ったのは私、その責任は私があるのだから」
かえでさんはにっこり微笑んだ。
つかさ「あ、ありがとうございます」
かえで「ばか、なに涙なんか流して、まだ何も解決していないわよ」
何故か涙が出ていたのに気が付いた。確かにそうだった。涙を拭った。
かえで「さて、開店準備するわよ」
つかさ「はい!!」
それからお昼近くになった頃だった。かえでさんが厨房に入ってきた。
かえで「つかさ、デザートの注文よ」
何だろう、かえでさん自ら私に注文を言ってくるなんて。かえでさんは客席の方を向いているから私も客席を見た。
つかさ「あ、ひろしさん……」
来るはずもないと思っていた。もう私に用は無いはず。どうして店に来たのだろう。
気付くとかえでさんは細目でにやけた顔で私を見ていた。
かえで「ほ~、会った事もないってね~、そう言っていたわよね……それに名前まで知ってるじゃない、苗字じゃなく名前で呼ぶなんて……いつからそんな仲になったのよ」
はっとした。彼には名前しかないからそう呼ぶしかない。でもかえでさんにはそうは思ってくれない。昨夜や今朝の出来事が頭に浮かぶ。
つかさ「そ、そんなんじゃないよ、知り合ったのは最近で……お友達みたいなものだよ……」
かえで「みたい……ね……ささ、赤い顔をしないでさっさとデザートを持っていきなさい」
勘違いだよ。と言いたかったけど、否定すれば余計に突っ込まれる。私は急いでデザートを準備して客席に持っていった。
つかさ「おまたせしました」
ひろしさんの前にデザートを置いた。そして伝票を置いたついでにあきらさんの耳元に小声で話した。
つかさ「どうして来たの、もう私には用はないでしょ」
ひろし「この店の味が気に入っているから、それに君の料理はまだ食べていないからね……それは用にはならないのか?」
私は何も言えなかった。彼はちゃんとしたお客さんの一人だった。
つかさ「そ、そうだけど……」
ひろし「それより、昨夜は……」
突然背中をツンツン突かれた。振り向くとこなちゃんとゆきちゃんが立っていた。こなちゃんもかえでさんと同じように細目でにやけた顔をしていた。
こなた「お昼を食べにきたけど……お邪魔だったかな」
頭が真っ白になった。こなちゃんまで誤解している。耳元で話していたからからかな。
つかさ「あ、え、全然邪魔じゃないよ、い、いらっしゃいませ……こちらは友達のひろしさん……」
こなちゃんはひろしさんに会釈した。
みゆき「いつもつかささんがお世話になっています」
ゆきちゃんも会釈した。ひろしさんもそれに釣られるように会釈をした。私は二人を席に案内した。ひろしさんは私に何を言いたかったのか少し気になった。でも聞ける状況
ではない。二人が席に着くとメニューを渡した。二人はメニューを開いた。
こなた「なんか普通じゃないと思っていたけど、やっぱり彼氏だったんだ……すみにおけないね~」
つかさ「そんなんじゃないから……昨夜ちょっと会っただけだから……」
こなた「え~、一夜を共に過ごしたの……あちゃ~、のろけられちゃったよ」
まずい、これはまずいよ、話せば話すほど誤解が深まっていく。隣でゆきちゃんもクスクスと笑っていた。
つかさ「ご、ご注文はお決まりですか?」
こなた「えっと、おすすめランチで」
みゆき「私も同じで……」
つかさ「少々お待ち下さい……」
注文を受けて厨房に戻った。
つかさ「おすすめ二つ追加……」
かえでさんはフライパンを取り出し料理に取り掛かった。手を動かしながら話す。
かえで「……今日はつかさのお友達が多いわね……それにしてもかがみさんは見えないわね……」
そういえば気が付かなかった。いつもこなちゃんと一緒にいるからと思ったけど……今日も別行動なのだろうか。
646:つかさの旅 16/45:2012/01/09(月) 00:23:35.37:DlK6yebt0 (12/47)
かえでさんの作った料理を私が運んだ。
つかさ「おまたせしました、おすすめランチです」
二人の目の前に料理を置いた。
こなた「わぉ、美味しそうだね……いただきます」
みゆき「いただきます」
ふたりは料理を食べだした。
つかさ「お姉ちゃんは?」
二人の動作が止まった。
みゆき「体の調子が優れないようです……それしか言いませんでした」
こなた「私はかがみを見損なったね、まさかあんなに気が弱いなんて……もういい加減にしてほしいよ」
こなちゃんの食べ方が早い。少しやけ食いに見えた。
つかさ「私、一度帰ろうと思うの……今夜お姉ちゃんに直接話すからそれまで内緒にして……」
また二人の動作が止まった。でももうこれ以上同じお客さんに対応出来ない。他のお客さんも見たりしないといけない。
みゆき「分りました……旅館でお待ちしています」
厨房に戻るとかえでさんが心配そうに私を見ていた。もう新たなオーダーは無かったから余裕があったかもしれない。
かえで「かがみさんが来ないのは私のせいかもしれないわね、すまなかった」
つかさ「うんん、昨日、かえでさんと別れてからお姉ちゃんには会っていない、だから……お姉ちゃんの気持ちも分らない」
かえで「そうだったの……つかさ、ひろしさんがお帰りみたい、レジお願いね」
名前まで知られてしまった。こなちゃん達にも紹介してしまったし、変な誤解まで……どうしよう……ここで考え込んでも仕方が無い、レジに向かった。
ひろしさんは伝票を私に渡した。
つかさ「1500円になります……」
ポケットからピッタリ1500円を私に渡した。
ひろし「美味しかった……料理は良かったがデザートは何だ、やっつけ仕事みたいだ、迷いも感じられる……昨日のココアとは別物だな……」
私の今の心を完全に読まれている。それはまなちゃんも同じ、彼等の得意技、ごまかしは通用しない。
つかさ「すみません、デザートの御代は結構ですから……」
御代を返そうとすると……
ひろし「いや、それには及ばない、忙しそうだからな……それより店が終わったら少し話がしたい、いいかな」
話って何だろう……でも私も大事な用事があるし。
つかさ「私は用事が……」
ひろし「時間は取らせない、直ぐに終わるよ……」
つかさ「それなら……」
ひろしさんはそのまま店を出て行った。妙にこなちゃんとかえでさんの視線が気になって仕方がなかった。
夕方になり、旅館の食事の準備もほぼ終わりかけた頃だった。
かえで「つかさ、今日はもういいわ、上がっても良いわよ、いろいろ準備があるでしょ、あとは私とあけみでやっておくわ」
あけみさんは最近になってスタッフになってくれた人。あけみさんが店に入ってからはだいぶ仕事の負担が軽減した。
つかさ「帰るって言ってもそんなにながく滞在するつもりは……」
かえで「成るほどね~彼氏が恋しいか~」
からかう様な口調だった。私もこれ以上どんな反応していいか戸惑ってしまう。否定すれば余計にからかわれるのは分った。でも肯定もできない。
つかさ「折角ですので甘えさせて……お先に失礼します……」
更衣室に向かおうとした時だった。
かえで「つかさ……私はかがみさんにもう一度この店に来てもらいたい……そしてもう一度私の作った料理を食べて欲しい……あの時の笑顔をもう一度見てみたい、美味しいと
もう一度言ってもらいたい」
私は立ち止まってかえでさんを見た。さっきまでの元気が消えていた。
つかさ「私が帰ってお姉ちゃんがどうなるか、私も分らない……でもこのままで終わるのは私も嫌、やれるだけの事はするつもり……です」
かえで「ありがとう……お疲れ様……」
お姉ちゃんはかえでさんが店を出して初めて料理を褒めてくれた人。そんな人がいきなり手のひらを返したように貶したりしたらそのショックは何倍にもなる。
さっきのかえでさんの言葉を聞いて改めてそう感じた。私が居ない間に家で何があったのかな。それならいのりお姉ちゃんやまつりお姉ちゃんから何か連絡があってもいい。
そうなるとお姉ちゃん自身の何かが変わってしまったとしか考えられない。その原因は私が家を出たから……でもそれなら……何でお姉ちゃんは大賛成したのかな。
かえでさんの作った料理を私が運んだ。
つかさ「おまたせしました、おすすめランチです」
二人の目の前に料理を置いた。
こなた「わぉ、美味しそうだね……いただきます」
みゆき「いただきます」
ふたりは料理を食べだした。
つかさ「お姉ちゃんは?」
二人の動作が止まった。
みゆき「体の調子が優れないようです……それしか言いませんでした」
こなた「私はかがみを見損なったね、まさかあんなに気が弱いなんて……もういい加減にしてほしいよ」
こなちゃんの食べ方が早い。少しやけ食いに見えた。
つかさ「私、一度帰ろうと思うの……今夜お姉ちゃんに直接話すからそれまで内緒にして……」
また二人の動作が止まった。でももうこれ以上同じお客さんに対応出来ない。他のお客さんも見たりしないといけない。
みゆき「分りました……旅館でお待ちしています」
厨房に戻るとかえでさんが心配そうに私を見ていた。もう新たなオーダーは無かったから余裕があったかもしれない。
かえで「かがみさんが来ないのは私のせいかもしれないわね、すまなかった」
つかさ「うんん、昨日、かえでさんと別れてからお姉ちゃんには会っていない、だから……お姉ちゃんの気持ちも分らない」
かえで「そうだったの……つかさ、ひろしさんがお帰りみたい、レジお願いね」
名前まで知られてしまった。こなちゃん達にも紹介してしまったし、変な誤解まで……どうしよう……ここで考え込んでも仕方が無い、レジに向かった。
ひろしさんは伝票を私に渡した。
つかさ「1500円になります……」
ポケットからピッタリ1500円を私に渡した。
ひろし「美味しかった……料理は良かったがデザートは何だ、やっつけ仕事みたいだ、迷いも感じられる……昨日のココアとは別物だな……」
私の今の心を完全に読まれている。それはまなちゃんも同じ、彼等の得意技、ごまかしは通用しない。
つかさ「すみません、デザートの御代は結構ですから……」
御代を返そうとすると……
ひろし「いや、それには及ばない、忙しそうだからな……それより店が終わったら少し話がしたい、いいかな」
話って何だろう……でも私も大事な用事があるし。
つかさ「私は用事が……」
ひろし「時間は取らせない、直ぐに終わるよ……」
つかさ「それなら……」
ひろしさんはそのまま店を出て行った。妙にこなちゃんとかえでさんの視線が気になって仕方がなかった。
夕方になり、旅館の食事の準備もほぼ終わりかけた頃だった。
かえで「つかさ、今日はもういいわ、上がっても良いわよ、いろいろ準備があるでしょ、あとは私とあけみでやっておくわ」
あけみさんは最近になってスタッフになってくれた人。あけみさんが店に入ってからはだいぶ仕事の負担が軽減した。
つかさ「帰るって言ってもそんなにながく滞在するつもりは……」
かえで「成るほどね~彼氏が恋しいか~」
からかう様な口調だった。私もこれ以上どんな反応していいか戸惑ってしまう。否定すれば余計にからかわれるのは分った。でも肯定もできない。
つかさ「折角ですので甘えさせて……お先に失礼します……」
更衣室に向かおうとした時だった。
かえで「つかさ……私はかがみさんにもう一度この店に来てもらいたい……そしてもう一度私の作った料理を食べて欲しい……あの時の笑顔をもう一度見てみたい、美味しいと
もう一度言ってもらいたい」
私は立ち止まってかえでさんを見た。さっきまでの元気が消えていた。
つかさ「私が帰ってお姉ちゃんがどうなるか、私も分らない……でもこのままで終わるのは私も嫌、やれるだけの事はするつもり……です」
かえで「ありがとう……お疲れ様……」
お姉ちゃんはかえでさんが店を出して初めて料理を褒めてくれた人。そんな人がいきなり手のひらを返したように貶したりしたらそのショックは何倍にもなる。
さっきのかえでさんの言葉を聞いて改めてそう感じた。私が居ない間に家で何があったのかな。それならいのりお姉ちゃんやまつりお姉ちゃんから何か連絡があってもいい。
そうなるとお姉ちゃん自身の何かが変わってしまったとしか考えられない。その原因は私が家を出たから……でもそれなら……何でお姉ちゃんは大賛成したのかな。
647:つかさの旅 17/45:2012/01/09(月) 00:24:54.65:DlK6yebt0 (13/47)
駐車場の前に着いた。旅館に寄ってお姉ちゃん達に会っても良かった。だけど会うのは夜だって言ったから一度家に帰ってから出直す事にした。
車に乗りエンジンをかけようとした。そうだ。そういえばひろしさんが何か用があるって言っていた。店が終わってからって言ったけど、詳しい時間とかは言っていない。
といっても連絡なんて取れないし……すると目の前にあきらさんが立っているのに気が付いた。私は一度車を降りた。
ひろし「早いお帰りだね、気が付くのが遅れたら会えなかった」
どうしよう、ここだと店から見えちゃう。あまりひろしさんと会っている所をかえでさんに見られたくない。
つかさ「え、えっと、用事は……車の中で話しませんか、家に帰る道でよければ……」
車が苦手だった。乗ってくれるか不安だった。あきらさんは一歩後ろに下がってしまった。そして車をじっと見つめた。
ひろし「……いいよ」
ひろしさんはゆっくり車に近づき車に乗り込んだ。続いて私も乗り込みゆっくり車を走らせた。緊張しているのか、恐いのか少し足が震えているように見えた。あきらさんから
話す気配は全く見受けられない。こっちから話さないとだめかな。何を話そうかな。そういえばお昼言いかけた続きが聞きたかった。
つかさ「話って何ですか、昨夜の事ですか?」
ひろし「昨夜か……さっきの店の人間の反応を見て分っただろう、こんな噂はすぐに立ってしまう、僕が人間ならどうなっていたか、もう少し考えたほうが良いぞ」
つかさ「でも、車も自転車もダメで放っておけないよ……狐に戻ったら危ないでしょ」
ひろし「……その優しさに姉さんは惹かれたのかもしれないな」
何か違う。率直に聞いたほうが良さそう。
つかさ「お昼、お店で言いかけたお話を聞きたかった」
少し間を空けてから話した。いい辛いのだろうか。
ひろし「あ、あれか……昨夜、つかさの部屋に勝手に入ってすまなかった……トイレが何処か聞きたかった……扉を開けたが既に寝ていて聞けなかった、
探したら直ぐに見つかったから問題はない」
なんだそんな理由だったのか……あれ、私……なんでガッカリしているの。何を期待していたの。彼はお稲荷さんでしょ。だめだめ、考えちゃだめ……
体が熱くなってきた。窓を開けて風をいれた。この後の話ができなくなってしまった。
家に近づいた。ひろしさんは徐に話し始めた。
ひろし「本題に入らせてもらう……お昼の二人組み、親しそうだったが友達なのか」
つかさ「うん、友達だよ」
ひろし「この前、もう人居たな、店長に言いがかりをつけていた、今でも印象に残っている、その人も二人組みの仲間か?」
お姉ちゃんの事を言っているみたい。
つかさ「そうだけど……」
ひろし「僕にはその人に何の義理もない、でもつかさにはある、いろいろ教えてくれた、だから教える、そいつは重い呪術にかかっている、このままだとそう長くはないだろう」
私はブレーキを踏んで車を止めた。そしてひろしさんの方を向いた。
つかさ「長くないって……呪術ってどうゆう事なの?」
ひろしさんは驚いたのか少し身を引いた。
ひろし「『服従』……って言ってね、呪術者の命令を聞かないと命を落とす術だ、僕達仲間でも禁じている呪いなんだ……」
つかさ「……そ、そんな、何とかならないの?」
ひろし「呪術者が呪いを解くか、命令を成し遂げないと消えない……」
私はすがりついた。
つかさ「ねえ、お願い、術を解いてよ……」
ひろし「僕には……無理だ、術が高度すぎる、お頭か、姉さんじゃないと解けそうにない……つかさにとってよほど親しい人みたいだな……教えるべきではなかったか」
つかさ「その人、店長に言いがかりをつけた人は私のお姉ちゃんだよ」
ひろし「な、似ていないぞ……姉妹だったのか……そういえば髪質が似ているか……」
今までお姉ちゃんの様子が変だったのはこの呪いのせいだった……どうすれば……
ひろし「……その姉さんから最近頼まれた事とか無いのか、理由もなく頼むはずだ……命令を無視、理由を話す、呪術者の話をしようとすると死ぬほどの苦痛が襲うからな」
思い当たる事が一つあった。
つかさ「私を頻りに実家に帰そうとしていた……理由なんて言わなかった」
ひろし「何だって……恐らくそれが命令だ……もし帰る意志があるなら早く伝えた方がいい……」
私が帰ると言えば呪いが解ける。一度帰ってなんて悠長な事はやっていられない。
つかさ「ひろしさん、このまま旅館に戻るよ……つかまっていて、全力でいくよ」
アクセル全開、ドリフトUターン。
ひろし「え、え、わ、わー」
ひろしさんの悲鳴のような声が聞こえたけど、それからはよく覚えていない。ただ旅館に戻るのに夢中だった。
お姉ちゃんは誰かに呪いをかけられた。その人は私をこの町から追い出そうとしている。こんな呪いをかけられるのはまなちゃんの仲間しか考えられない。
やっぱり私はこの町に来てはいけなかったのかな。本当だったらもうこの世にはいなかったかもしれない私……来るべきじゃなかったんだ。
でも、こんな回りくどい事しないで直接言ってくれれば良いのに。お姉ちゃんを利用するなんて。呪いまでかけるなんて……
駐車場の前に着いた。旅館に寄ってお姉ちゃん達に会っても良かった。だけど会うのは夜だって言ったから一度家に帰ってから出直す事にした。
車に乗りエンジンをかけようとした。そうだ。そういえばひろしさんが何か用があるって言っていた。店が終わってからって言ったけど、詳しい時間とかは言っていない。
といっても連絡なんて取れないし……すると目の前にあきらさんが立っているのに気が付いた。私は一度車を降りた。
ひろし「早いお帰りだね、気が付くのが遅れたら会えなかった」
どうしよう、ここだと店から見えちゃう。あまりひろしさんと会っている所をかえでさんに見られたくない。
つかさ「え、えっと、用事は……車の中で話しませんか、家に帰る道でよければ……」
車が苦手だった。乗ってくれるか不安だった。あきらさんは一歩後ろに下がってしまった。そして車をじっと見つめた。
ひろし「……いいよ」
ひろしさんはゆっくり車に近づき車に乗り込んだ。続いて私も乗り込みゆっくり車を走らせた。緊張しているのか、恐いのか少し足が震えているように見えた。あきらさんから
話す気配は全く見受けられない。こっちから話さないとだめかな。何を話そうかな。そういえばお昼言いかけた続きが聞きたかった。
つかさ「話って何ですか、昨夜の事ですか?」
ひろし「昨夜か……さっきの店の人間の反応を見て分っただろう、こんな噂はすぐに立ってしまう、僕が人間ならどうなっていたか、もう少し考えたほうが良いぞ」
つかさ「でも、車も自転車もダメで放っておけないよ……狐に戻ったら危ないでしょ」
ひろし「……その優しさに姉さんは惹かれたのかもしれないな」
何か違う。率直に聞いたほうが良さそう。
つかさ「お昼、お店で言いかけたお話を聞きたかった」
少し間を空けてから話した。いい辛いのだろうか。
ひろし「あ、あれか……昨夜、つかさの部屋に勝手に入ってすまなかった……トイレが何処か聞きたかった……扉を開けたが既に寝ていて聞けなかった、
探したら直ぐに見つかったから問題はない」
なんだそんな理由だったのか……あれ、私……なんでガッカリしているの。何を期待していたの。彼はお稲荷さんでしょ。だめだめ、考えちゃだめ……
体が熱くなってきた。窓を開けて風をいれた。この後の話ができなくなってしまった。
家に近づいた。ひろしさんは徐に話し始めた。
ひろし「本題に入らせてもらう……お昼の二人組み、親しそうだったが友達なのか」
つかさ「うん、友達だよ」
ひろし「この前、もう人居たな、店長に言いがかりをつけていた、今でも印象に残っている、その人も二人組みの仲間か?」
お姉ちゃんの事を言っているみたい。
つかさ「そうだけど……」
ひろし「僕にはその人に何の義理もない、でもつかさにはある、いろいろ教えてくれた、だから教える、そいつは重い呪術にかかっている、このままだとそう長くはないだろう」
私はブレーキを踏んで車を止めた。そしてひろしさんの方を向いた。
つかさ「長くないって……呪術ってどうゆう事なの?」
ひろしさんは驚いたのか少し身を引いた。
ひろし「『服従』……って言ってね、呪術者の命令を聞かないと命を落とす術だ、僕達仲間でも禁じている呪いなんだ……」
つかさ「……そ、そんな、何とかならないの?」
ひろし「呪術者が呪いを解くか、命令を成し遂げないと消えない……」
私はすがりついた。
つかさ「ねえ、お願い、術を解いてよ……」
ひろし「僕には……無理だ、術が高度すぎる、お頭か、姉さんじゃないと解けそうにない……つかさにとってよほど親しい人みたいだな……教えるべきではなかったか」
つかさ「その人、店長に言いがかりをつけた人は私のお姉ちゃんだよ」
ひろし「な、似ていないぞ……姉妹だったのか……そういえば髪質が似ているか……」
今までお姉ちゃんの様子が変だったのはこの呪いのせいだった……どうすれば……
ひろし「……その姉さんから最近頼まれた事とか無いのか、理由もなく頼むはずだ……命令を無視、理由を話す、呪術者の話をしようとすると死ぬほどの苦痛が襲うからな」
思い当たる事が一つあった。
つかさ「私を頻りに実家に帰そうとしていた……理由なんて言わなかった」
ひろし「何だって……恐らくそれが命令だ……もし帰る意志があるなら早く伝えた方がいい……」
私が帰ると言えば呪いが解ける。一度帰ってなんて悠長な事はやっていられない。
つかさ「ひろしさん、このまま旅館に戻るよ……つかまっていて、全力でいくよ」
アクセル全開、ドリフトUターン。
ひろし「え、え、わ、わー」
ひろしさんの悲鳴のような声が聞こえたけど、それからはよく覚えていない。ただ旅館に戻るのに夢中だった。
お姉ちゃんは誰かに呪いをかけられた。その人は私をこの町から追い出そうとしている。こんな呪いをかけられるのはまなちゃんの仲間しか考えられない。
やっぱり私はこの町に来てはいけなかったのかな。本当だったらもうこの世にはいなかったかもしれない私……来るべきじゃなかったんだ。
でも、こんな回りくどい事しないで直接言ってくれれば良いのに。お姉ちゃんを利用するなんて。呪いまでかけるなんて……
648:つかさの旅 18/45:2012/01/09(月) 00:26:38.32:DlK6yebt0 (14/47)
つかさ「ひろしさんは車で待っていて……」
お店の駐車場に車を止めると旅館に向かって飛び出した。そしてお姉ちゃん達が泊まっている部屋に直行する。部屋のドアをノックする。こなちゃんが出てきた。
こなた「……つかさ……」
私の顔を見て驚いた様子だった。きっと私の切羽詰った顔を見たからかもしれない。
つかさ「お姉ちゃん……お姉ちゃんはいる?」
こなた「……うん、さっきみゆきさんと温泉から戻ってきたところだよ」
部屋の中に入った。テーブルにゆきちゃんとお姉ちゃんが座っていた。お姉ちゃんは私を見るとにっこり微笑んだ。
かがみ「なに慌ててるのよ……それより仕事はもういいのか、やけに早いわね」
私はお姉ちゃんの目の前で座った。
つかさ「私……決めたよ、一度帰るよ、だから……」
私の視界からお姉ちゃんの姿が消えた。
『ドサ』
畳に何かが当たる鈍い音がした。お姉ちゃんが倒れた。苦しそうにもがいている。
つかさ「お、お姉ちゃん、どうしたの……お姉ちゃん」
何がなんだか分らない。私は……帰るって言ったのに。
側に居たゆきちゃんが慌ててお姉ちゃんに近づいた。
みゆき「かがみさん、しっかり……つかささん、何があったのですか」
こなちゃんも異変に気が付いた。すぐにお姉ちゃんに近づいた。ゆきちゃんはお姉ちゃんの浴衣を緩めて楽な姿勢に寝かせようとしていた。
お姉ちゃんの口から泡が吹き出してきた。全身が痙攣しはじめてしまった。
みゆき「私では手に負えません、救急車を……泉さん……」
こなた「わ、分った……」
こなちゃんは部屋を出ようとした。
ひろし「救急車を呼んでも無駄だよ……これは人間には治せない」
部屋の入り口にひろしさんが立っていた。こなちゃんは立ち止まった。ひろしさんはそのまま部屋に入ってきて倒れているお姉ちゃんの目の前に近づいた。
そして座るとなになら呪文のようなのを唱え始めた。ひろしさんの手が伸びてお姉ちゃんの額に触れた。
ひろし「つかさ、さっき言ったのを否定して」
なんだか頭が真っ白でひろしさんの言っている意味が分らない。
ひろし「否定するんだ、早く!!!……さっき言ってやつだ、しっかりしろ!!!」
怒鳴り声、私ははっとした。
つかさ「やっぱり私は、帰らないよ……」
お姉ちゃんの痙攣がみるみる引いていく……静かに、眠るように落ち着いていった。ゆきちゃんはタオルでおねえちゃんの口の周りを拭いた。ひろしさんは深呼吸を一回した。
ひろし「……少し休ませた方がいい……」
こなちゃんは布団を敷いた。ひろしさんは軽々とお姉ちゃんを抱きかかえるとそのまま布団に寝かせた。
ひろし「話がある、ここだと少しまずい、この人に聞かれるとね……」
つかさ「でも……お姉ちゃんが……」
ひろし「今の所は大丈夫だ……そのまま寝かせておけばいい」
話を聞く必要がありそう。
つかさ「ロビーでいいかな」
ひろし「お二人も一緒に……聞いておいた方がいい」
こなた「貴方は……誰?」
ひろしさんは何も言わない。
つかさ「まなちゃんの弟さんだよ……」
こなた「え……狐……この人が……?」
みゆき「私は残ります、かがみさんを一人にしておくのは……」
ひろしさんはお姉ちゃんを見た。
ひろし「それならここで話す……彼女の意識はないようだからな……」
私はひろしさんとの出会いを皆に話した。こなちゃんもゆきちゃんもただ黙って聞いていた。
お姉ちゃんは静かに眠っていた。何かから開放されたように。静かに眠っている。
つかさ「もしかして呪いは解けたの?」
ひろし「さっき試みたがやっぱりだめだった、強力な呪いだよ」
つかさ「でも、こんなに安らかに眠っているから……」
ひろし「……それは、つかさがさっき帰るのを否定したからさ」
言っている意味が分らなかった。
ひろし「彼女は最初から呪術者の命令に従うつもりはなかったようだな、つかさを帰すのは命令違反だった……つまり呪術者はこの町の何処かにつかさを連れていくのを
命令した、しかし彼女はそれに従わずつかさを逃がすようにした訳だ、恐らく彼女はつかさに帰れと言う度にさっきの様な苦痛が襲っていたはずだ……
今は、つかさが帰るのを止めたと言ったから一時的に呪いが収まった、それだけだ」
つかさ「そんな……お姉ちゃんは何度も言ったよ……帰って来てって……でも苦しい表情なんて見せなかった……」
ひろし「……凄い精神力だな、そこまでしてつかさを、妹を助けたいのか……」
ひろしさんは立ち上がった。
ひろし「気休めにしかならんが、魔除けの石をもってきてやろう……少し待ってくれ」
ひろしさんは部屋を出て行った。
つかさ「ひろしさんは車で待っていて……」
お店の駐車場に車を止めると旅館に向かって飛び出した。そしてお姉ちゃん達が泊まっている部屋に直行する。部屋のドアをノックする。こなちゃんが出てきた。
こなた「……つかさ……」
私の顔を見て驚いた様子だった。きっと私の切羽詰った顔を見たからかもしれない。
つかさ「お姉ちゃん……お姉ちゃんはいる?」
こなた「……うん、さっきみゆきさんと温泉から戻ってきたところだよ」
部屋の中に入った。テーブルにゆきちゃんとお姉ちゃんが座っていた。お姉ちゃんは私を見るとにっこり微笑んだ。
かがみ「なに慌ててるのよ……それより仕事はもういいのか、やけに早いわね」
私はお姉ちゃんの目の前で座った。
つかさ「私……決めたよ、一度帰るよ、だから……」
私の視界からお姉ちゃんの姿が消えた。
『ドサ』
畳に何かが当たる鈍い音がした。お姉ちゃんが倒れた。苦しそうにもがいている。
つかさ「お、お姉ちゃん、どうしたの……お姉ちゃん」
何がなんだか分らない。私は……帰るって言ったのに。
側に居たゆきちゃんが慌ててお姉ちゃんに近づいた。
みゆき「かがみさん、しっかり……つかささん、何があったのですか」
こなちゃんも異変に気が付いた。すぐにお姉ちゃんに近づいた。ゆきちゃんはお姉ちゃんの浴衣を緩めて楽な姿勢に寝かせようとしていた。
お姉ちゃんの口から泡が吹き出してきた。全身が痙攣しはじめてしまった。
みゆき「私では手に負えません、救急車を……泉さん……」
こなた「わ、分った……」
こなちゃんは部屋を出ようとした。
ひろし「救急車を呼んでも無駄だよ……これは人間には治せない」
部屋の入り口にひろしさんが立っていた。こなちゃんは立ち止まった。ひろしさんはそのまま部屋に入ってきて倒れているお姉ちゃんの目の前に近づいた。
そして座るとなになら呪文のようなのを唱え始めた。ひろしさんの手が伸びてお姉ちゃんの額に触れた。
ひろし「つかさ、さっき言ったのを否定して」
なんだか頭が真っ白でひろしさんの言っている意味が分らない。
ひろし「否定するんだ、早く!!!……さっき言ってやつだ、しっかりしろ!!!」
怒鳴り声、私ははっとした。
つかさ「やっぱり私は、帰らないよ……」
お姉ちゃんの痙攣がみるみる引いていく……静かに、眠るように落ち着いていった。ゆきちゃんはタオルでおねえちゃんの口の周りを拭いた。ひろしさんは深呼吸を一回した。
ひろし「……少し休ませた方がいい……」
こなちゃんは布団を敷いた。ひろしさんは軽々とお姉ちゃんを抱きかかえるとそのまま布団に寝かせた。
ひろし「話がある、ここだと少しまずい、この人に聞かれるとね……」
つかさ「でも……お姉ちゃんが……」
ひろし「今の所は大丈夫だ……そのまま寝かせておけばいい」
話を聞く必要がありそう。
つかさ「ロビーでいいかな」
ひろし「お二人も一緒に……聞いておいた方がいい」
こなた「貴方は……誰?」
ひろしさんは何も言わない。
つかさ「まなちゃんの弟さんだよ……」
こなた「え……狐……この人が……?」
みゆき「私は残ります、かがみさんを一人にしておくのは……」
ひろしさんはお姉ちゃんを見た。
ひろし「それならここで話す……彼女の意識はないようだからな……」
私はひろしさんとの出会いを皆に話した。こなちゃんもゆきちゃんもただ黙って聞いていた。
お姉ちゃんは静かに眠っていた。何かから開放されたように。静かに眠っている。
つかさ「もしかして呪いは解けたの?」
ひろし「さっき試みたがやっぱりだめだった、強力な呪いだよ」
つかさ「でも、こんなに安らかに眠っているから……」
ひろし「……それは、つかさがさっき帰るのを否定したからさ」
言っている意味が分らなかった。
ひろし「彼女は最初から呪術者の命令に従うつもりはなかったようだな、つかさを帰すのは命令違反だった……つまり呪術者はこの町の何処かにつかさを連れていくのを
命令した、しかし彼女はそれに従わずつかさを逃がすようにした訳だ、恐らく彼女はつかさに帰れと言う度にさっきの様な苦痛が襲っていたはずだ……
今は、つかさが帰るのを止めたと言ったから一時的に呪いが収まった、それだけだ」
つかさ「そんな……お姉ちゃんは何度も言ったよ……帰って来てって……でも苦しい表情なんて見せなかった……」
ひろし「……凄い精神力だな、そこまでしてつかさを、妹を助けたいのか……」
ひろしさんは立ち上がった。
ひろし「気休めにしかならんが、魔除けの石をもってきてやろう……少し待ってくれ」
ひろしさんは部屋を出て行った。
649:つかさの旅 19/45:2012/01/09(月) 00:29:05.94:DlK6yebt0 (15/47)
ゆきちゃんは心配そうにお姉ちゃんを見ていた。こなちゃんは腕を組んで考え込んでいる様子だった。
こなた「……どうも引っかかる、あのひろしって人、真奈美さんの弟って言ってたよね」
つかさ「うん、そうだよ」
こなた「それだ、それが引っかかる、本来つかさは生贄となっていなきゃならない、生贄になっていれば真奈美さんは死なずに済んだ、普通考えればつかさを憎むはずだよ」
つかさ「な、何が言いたいの?」
こなちゃんは溜め息をついた。
こなた「つまりかがみに呪いをかけたのはあの人じゃないかなって、そうすると辻褄が合うんだよ、姉の真奈美さんの命を奪ったつかさに復讐するために、同じ目に遭うようにね」
つかさ「もしかして、ひろしさんを疑ってるの?」
こなた「真奈美さんの仲間は姿を現していないじゃないか、それにつかさを殺すならとっくに神社で殺しているでしょ、つかさの稲荷寿司で心が変わったならつかさに
何かをするとも思えない……」
つかさ「わ、私は……まなちゃんと友達になった、それをまなちゃんの仲間は許さなかった……それでひろしさんは私を恨むの?」
こなた「逆恨みってやつだね、私が彼ならやり場のない怒りをつかさにぶつける……私達人間と彼が同じ思考ならだけど……さっきから黙っているけどみゆきさんも
同感なんじゃないの、さすがの聖人君子も今回ばかりは疑うでしょ?」
いきなり振られてゆきちゃんはオドオドした。
みゆき「……お店であんな振る舞いをしたのも、店長、松本さんと言い合いをしたのも、駄々っ子みたいな言動も……全てつかささんを逃がすためだった……
その度に襲い掛かる激痛に耐えながら……私だったら……いくら親友であるつかささんの為とは言え……出来ません……そのかがみさんを死の寸前で
助けたのがひろしさんだと思います……それに、もしつかささんが憎いのであれば、昨夜、つかささんが熟睡している所を狙えば確実です」
淡々と話すゆきちゃんだった。
つかさ「私もそう思うよ、少なくとも呪いは別の人だと思う……」
こなた「ふぅ~私はゲームのやりすぎかな、捻くれた考えばかりみたいだね、さっき言ったのは忘れて、ここで疑ったら何も進まない、確かに」
こなちゃんは俯いてしまった。
つかさ「私、女将さんの所にいって今晩泊めてもらうように頼んでくるよ……少しお姉ちゃんと一緒に居たいから……」
みゆき「それがいいかも知れません……いいですか皆さん、かがみさんの意識が戻っても呪いのお話は決してしないように、何が切欠で呪いが出てくるか分りませんので」
つかさ・こなた「うん」
ゆきちゃんは心配そうにお姉ちゃんを見ていた。こなちゃんは腕を組んで考え込んでいる様子だった。
こなた「……どうも引っかかる、あのひろしって人、真奈美さんの弟って言ってたよね」
つかさ「うん、そうだよ」
こなた「それだ、それが引っかかる、本来つかさは生贄となっていなきゃならない、生贄になっていれば真奈美さんは死なずに済んだ、普通考えればつかさを憎むはずだよ」
つかさ「な、何が言いたいの?」
こなちゃんは溜め息をついた。
こなた「つまりかがみに呪いをかけたのはあの人じゃないかなって、そうすると辻褄が合うんだよ、姉の真奈美さんの命を奪ったつかさに復讐するために、同じ目に遭うようにね」
つかさ「もしかして、ひろしさんを疑ってるの?」
こなた「真奈美さんの仲間は姿を現していないじゃないか、それにつかさを殺すならとっくに神社で殺しているでしょ、つかさの稲荷寿司で心が変わったならつかさに
何かをするとも思えない……」
つかさ「わ、私は……まなちゃんと友達になった、それをまなちゃんの仲間は許さなかった……それでひろしさんは私を恨むの?」
こなた「逆恨みってやつだね、私が彼ならやり場のない怒りをつかさにぶつける……私達人間と彼が同じ思考ならだけど……さっきから黙っているけどみゆきさんも
同感なんじゃないの、さすがの聖人君子も今回ばかりは疑うでしょ?」
いきなり振られてゆきちゃんはオドオドした。
みゆき「……お店であんな振る舞いをしたのも、店長、松本さんと言い合いをしたのも、駄々っ子みたいな言動も……全てつかささんを逃がすためだった……
その度に襲い掛かる激痛に耐えながら……私だったら……いくら親友であるつかささんの為とは言え……出来ません……そのかがみさんを死の寸前で
助けたのがひろしさんだと思います……それに、もしつかささんが憎いのであれば、昨夜、つかささんが熟睡している所を狙えば確実です」
淡々と話すゆきちゃんだった。
つかさ「私もそう思うよ、少なくとも呪いは別の人だと思う……」
こなた「ふぅ~私はゲームのやりすぎかな、捻くれた考えばかりみたいだね、さっき言ったのは忘れて、ここで疑ったら何も進まない、確かに」
こなちゃんは俯いてしまった。
つかさ「私、女将さんの所にいって今晩泊めてもらうように頼んでくるよ……少しお姉ちゃんと一緒に居たいから……」
みゆき「それがいいかも知れません……いいですか皆さん、かがみさんの意識が戻っても呪いのお話は決してしないように、何が切欠で呪いが出てくるか分りませんので」
つかさ・こなた「うん」
650:つかさの旅 20/45:2012/01/09(月) 00:30:26.70:DlK6yebt0 (16/47)
私はロビーで宿泊の手続きをした。と言っても旅館もお店も共同経営みたいなものなので無料で泊めてくれた。
つかさ「済みません、お手数をおかけします」
淳子「いいのよ……それより、さっきの男性は誰……つかさちゃんの彼氏かな、旅館でもこの話になってね」
うわ、ここでもこんな話になっている。皆、どうかしているよ……でもなんだか悪い感じはしなくなった。
つかさ「そこまででは……友達です」
女将さんは笑った。
淳子「ふふ……照れちゃって……まぁ、ゆっくりしていきなさい…」
女将さんはロビーの奥に戻っていった。
つかさ「ふぅ~」
溜め息を一回。ひろしさんが人間ならこんなに悩まなくてもよかったのに……バカ、私ったら何考えているのだろう、好きになってもどうしようもないよ。人間とお稲荷さんの恋
なんて……人間の男性もまだ好きになった事ないのに、ばか、考えちゃだめ、そんなのは考えちゃいけない。
ひろし「またせたな……」
つかさ「え?」
気付くとロビー入り口にひろしさんが立っていた。
ひろし「本当に気休めにしかならないが受け取ってくれ、弱った身体には良いだろう」
ひろしさんは片手で掴めるほどの小石を私に渡した。この石の色どこかで見たことある……
つかさ「この石……パワースポットの岩の色に似ているね」
ひろし「そうさ、あの岩は僕達も調子が悪いときはよく行く、普通の病気なら治る筈だ……でも、あの呪いは別物だ……」
ひろしさんはロビーを出ようとした。
つかさ「えっ、帰っちゃうの、お茶でも飲んで帰って……」
ひろしさんは立ち止まった。
ひろし「……君の仲間、背の低い子が居たけど、あまり僕を良く思っていないみたい、行かない方がいいだろう」
つかさ「す、凄い……触れても居ないのに、分るの?」
ひろし「な、なんだ、図星か……経験でそう思っただけだ、心理学少しかじったからな……腕組みをしているのは警戒している場合が多い」
ひろしさんはまたロビーを出ようとしている。このまま帰していいのかな。もっと聞きたい事があったんじゃないの。自問自答した。
つかさ「待ってください」
ひろし「ん?」
また止まってくれた。聞いて答えてくれるかどうか分らない。だけどお姉ちゃんの命が懸かっているから……
つかさ「お姉ちゃんの呪いをかけた人……知っているの?」
ひろし「あれだけ強力な呪術……僕の知っている仲間で数人……それを聞いてどうするつもりだ」
つかさ「もし、知っているなら、その人に会って呪いを解いてもらおうと思って……」
あきらさんは呆れた顔をした。
ひろし「何処にいるのか分らない、知っているとしてつかさに説得できるのか、姉さんのように好意的じゃない、禁呪まで使ってくる奴だ……」
そうだよね。私なんかじゃ何も出来ない。
つかさ「……でも、あきらさんは何故私の味方を……」
ひろし「……味方……味方だと思っているのか、僕が君に何をした……」
つかさ「お姉ちゃんを助けてくれたから……」
ひろし「助けた……あれで助けたと言えるのか、呪いは解いていない、いや、解けない……あとはつかさの家に一晩泊めてもらっただけだ、他に何をした」
つかさ「……助けられなくても、助けようとしたから、私にはそう見えたよ、それだけで充分味方だと思う、石も貰ったし」
ひろし「僕は一度、つかさを殺そうとまでした、駐車場の出来事を忘れたわけじゃあるまい」
つかさ「その台詞……まなちゃんも同じように言っていたよ……やっぱり姉弟だね……そのまなちゃんは私を助けてくれた」
私は微笑みかけた。ひろしさんは言い返してこなかった。
ひろし「僕は昔人間に育てられた、だから人間の心は理解できる……そして僕は狐一族、彼らが人間を憎むのも理解できる……一族で唯一信頼できる姉さんは傷ついた
……姉さんは仲間に……味方も敵も分りはしない」
重い何かを感じた。
つかさ「両方の気持ちが分るなら、両方仲良くなれる方法が見つかるかも」
ひろしさんは笑った。
ひろし「僕にコウモリになれと言うのか……」
つかさ「こうもり?」
ひろし「……何でもない、ところで、君の友達と姉さんの名前をまだ聞いていない」
つかさ「えっと、お姉ちゃんは柊かがみ、背の低い子は泉こなた、眼鏡をかけた子は高良みゆき……」
ひろし「……また明日来る、かがみとは呪いの話はしないように、今言えるのはそれだけだ」
ひろしさんはロビーを出て行った。
私はロビーで宿泊の手続きをした。と言っても旅館もお店も共同経営みたいなものなので無料で泊めてくれた。
つかさ「済みません、お手数をおかけします」
淳子「いいのよ……それより、さっきの男性は誰……つかさちゃんの彼氏かな、旅館でもこの話になってね」
うわ、ここでもこんな話になっている。皆、どうかしているよ……でもなんだか悪い感じはしなくなった。
つかさ「そこまででは……友達です」
女将さんは笑った。
淳子「ふふ……照れちゃって……まぁ、ゆっくりしていきなさい…」
女将さんはロビーの奥に戻っていった。
つかさ「ふぅ~」
溜め息を一回。ひろしさんが人間ならこんなに悩まなくてもよかったのに……バカ、私ったら何考えているのだろう、好きになってもどうしようもないよ。人間とお稲荷さんの恋
なんて……人間の男性もまだ好きになった事ないのに、ばか、考えちゃだめ、そんなのは考えちゃいけない。
ひろし「またせたな……」
つかさ「え?」
気付くとロビー入り口にひろしさんが立っていた。
ひろし「本当に気休めにしかならないが受け取ってくれ、弱った身体には良いだろう」
ひろしさんは片手で掴めるほどの小石を私に渡した。この石の色どこかで見たことある……
つかさ「この石……パワースポットの岩の色に似ているね」
ひろし「そうさ、あの岩は僕達も調子が悪いときはよく行く、普通の病気なら治る筈だ……でも、あの呪いは別物だ……」
ひろしさんはロビーを出ようとした。
つかさ「えっ、帰っちゃうの、お茶でも飲んで帰って……」
ひろしさんは立ち止まった。
ひろし「……君の仲間、背の低い子が居たけど、あまり僕を良く思っていないみたい、行かない方がいいだろう」
つかさ「す、凄い……触れても居ないのに、分るの?」
ひろし「な、なんだ、図星か……経験でそう思っただけだ、心理学少しかじったからな……腕組みをしているのは警戒している場合が多い」
ひろしさんはまたロビーを出ようとしている。このまま帰していいのかな。もっと聞きたい事があったんじゃないの。自問自答した。
つかさ「待ってください」
ひろし「ん?」
また止まってくれた。聞いて答えてくれるかどうか分らない。だけどお姉ちゃんの命が懸かっているから……
つかさ「お姉ちゃんの呪いをかけた人……知っているの?」
ひろし「あれだけ強力な呪術……僕の知っている仲間で数人……それを聞いてどうするつもりだ」
つかさ「もし、知っているなら、その人に会って呪いを解いてもらおうと思って……」
あきらさんは呆れた顔をした。
ひろし「何処にいるのか分らない、知っているとしてつかさに説得できるのか、姉さんのように好意的じゃない、禁呪まで使ってくる奴だ……」
そうだよね。私なんかじゃ何も出来ない。
つかさ「……でも、あきらさんは何故私の味方を……」
ひろし「……味方……味方だと思っているのか、僕が君に何をした……」
つかさ「お姉ちゃんを助けてくれたから……」
ひろし「助けた……あれで助けたと言えるのか、呪いは解いていない、いや、解けない……あとはつかさの家に一晩泊めてもらっただけだ、他に何をした」
つかさ「……助けられなくても、助けようとしたから、私にはそう見えたよ、それだけで充分味方だと思う、石も貰ったし」
ひろし「僕は一度、つかさを殺そうとまでした、駐車場の出来事を忘れたわけじゃあるまい」
つかさ「その台詞……まなちゃんも同じように言っていたよ……やっぱり姉弟だね……そのまなちゃんは私を助けてくれた」
私は微笑みかけた。ひろしさんは言い返してこなかった。
ひろし「僕は昔人間に育てられた、だから人間の心は理解できる……そして僕は狐一族、彼らが人間を憎むのも理解できる……一族で唯一信頼できる姉さんは傷ついた
……姉さんは仲間に……味方も敵も分りはしない」
重い何かを感じた。
つかさ「両方の気持ちが分るなら、両方仲良くなれる方法が見つかるかも」
ひろしさんは笑った。
ひろし「僕にコウモリになれと言うのか……」
つかさ「こうもり?」
ひろし「……何でもない、ところで、君の友達と姉さんの名前をまだ聞いていない」
つかさ「えっと、お姉ちゃんは柊かがみ、背の低い子は泉こなた、眼鏡をかけた子は高良みゆき……」
ひろし「……また明日来る、かがみとは呪いの話はしないように、今言えるのはそれだけだ」
ひろしさんはロビーを出て行った。
651:つかさの旅 21/45:2012/01/09(月) 00:33:09.71:DlK6yebt0 (17/47)
彼が居なくなったロビーに私一人が残った。そうだ、お姉ちゃんが心配だ。早く部屋に戻ろう。戻ろうとした方角から人影が見えた。ゆきちゃんだった。
つかさ「ゆきちゃん、どうしたの?」
みゆき「白湯をもらいにきたのですが……」
つかさ「お姉ちゃんの具合が悪いの?」
みゆき「いいえ、落ち着いています……どうしたのですが、つかささん、何かあったのですか?」
私の顔を見ると心配そうに聞いてきた。
つかさ「コウモリ……って何だろう」
みゆき「コウモリ?」
つかさ「うん、さっきひろしさんが来て、コウモリみたになるのかって言っていたから……」
みゆき「……もう少し詳しく話して頂けませんか?」
私はひろしさんとロビーで会話した内容を説明した。
みゆき「それはコウモリの昔話の事を言っているのではないでしょうか……」
つかさ「なにそれ……」
みゆき「昔、森で獣と鳥がとても仲が悪かった、そこに獣の姿でありながら翼を持っているコウモリが仲介するお話です……ひろしさんは狐の種族でありながら人間に
近い思考をお持ちなので……その昔話と比喩しているのでしょう」
つかさ「……そうなんだ、コウモリの様に……」
みゆき「その話なのですが、獣と鳥は仲良くなれた……しかしコウモリはどちらからも憎まれる存在になった……それで闇夜にひっそり飛ぶようになったと聞いています」
別れ際のひろしさんの表情が悲しげだったけど……
つかさ「私は、そんな意味で言ったわけじゃないよ……憎むなんて……」
みゆき「この昔話はいろいろなバリエーションがありますので……所詮昔話です」
私は……本当にこの町に戻ってきて良かったのだろうか。
つかさ「……ごめんね、私のために、巻き込んじゃって……私はやっぱりこの町に来ちゃいけなかった……私がこの町に戻ってこなければ……」
みゆき「戻って来なければ、このような事にならなかったと言いたいのですか?」
ゆきちゃんに先回りされてしまった。私は頷いた。
みゆき「つかささんを憎み、かがみさんに禁じられた呪いをかけたと、それが本当なら、その人物……いえ、狐は例えつかささんがこの町に戻らなくとも同じ事をしたでしょう、
つかささんが一人旅をしようと思ったその時からこうなるのは決まっていたのかもしれません、それでもその旅で得たものは大きいはずです、
悔やむよりもこれからの事を考えませんか?」
つかさ「……でも、お姉ちゃんが呪われて……呪いが解けなくて……どうして良いか分らないよ」
目頭が熱くなった、自分でも涙が出ているのが分った。
みゆき「……かがみさんはつかささんを何処に連れて行くように命令されていたのでしょうか……呪いの苦痛に耐え、さらに店長である松本さんとわざと言い合いをして
つかささんを帰る気持ちにさせようとした……私達に気が付かないように……そこまでつかささん……妹の為に……死ぬ覚悟だったはずです……」
つかさ「……お姉ちゃん……」
ゆきちゃんは微笑んだ。そして私の目の前に手を差し出して招いた。
みゆき「行きましょう、つかささん、かがみさんの側に居てあげて下さい……私も微力ながらお手伝いさせて頂きます……」
つかさ「う、うん」
お湯を貰ってから私達は部屋に戻った。
彼が居なくなったロビーに私一人が残った。そうだ、お姉ちゃんが心配だ。早く部屋に戻ろう。戻ろうとした方角から人影が見えた。ゆきちゃんだった。
つかさ「ゆきちゃん、どうしたの?」
みゆき「白湯をもらいにきたのですが……」
つかさ「お姉ちゃんの具合が悪いの?」
みゆき「いいえ、落ち着いています……どうしたのですが、つかささん、何かあったのですか?」
私の顔を見ると心配そうに聞いてきた。
つかさ「コウモリ……って何だろう」
みゆき「コウモリ?」
つかさ「うん、さっきひろしさんが来て、コウモリみたになるのかって言っていたから……」
みゆき「……もう少し詳しく話して頂けませんか?」
私はひろしさんとロビーで会話した内容を説明した。
みゆき「それはコウモリの昔話の事を言っているのではないでしょうか……」
つかさ「なにそれ……」
みゆき「昔、森で獣と鳥がとても仲が悪かった、そこに獣の姿でありながら翼を持っているコウモリが仲介するお話です……ひろしさんは狐の種族でありながら人間に
近い思考をお持ちなので……その昔話と比喩しているのでしょう」
つかさ「……そうなんだ、コウモリの様に……」
みゆき「その話なのですが、獣と鳥は仲良くなれた……しかしコウモリはどちらからも憎まれる存在になった……それで闇夜にひっそり飛ぶようになったと聞いています」
別れ際のひろしさんの表情が悲しげだったけど……
つかさ「私は、そんな意味で言ったわけじゃないよ……憎むなんて……」
みゆき「この昔話はいろいろなバリエーションがありますので……所詮昔話です」
私は……本当にこの町に戻ってきて良かったのだろうか。
つかさ「……ごめんね、私のために、巻き込んじゃって……私はやっぱりこの町に来ちゃいけなかった……私がこの町に戻ってこなければ……」
みゆき「戻って来なければ、このような事にならなかったと言いたいのですか?」
ゆきちゃんに先回りされてしまった。私は頷いた。
みゆき「つかささんを憎み、かがみさんに禁じられた呪いをかけたと、それが本当なら、その人物……いえ、狐は例えつかささんがこの町に戻らなくとも同じ事をしたでしょう、
つかささんが一人旅をしようと思ったその時からこうなるのは決まっていたのかもしれません、それでもその旅で得たものは大きいはずです、
悔やむよりもこれからの事を考えませんか?」
つかさ「……でも、お姉ちゃんが呪われて……呪いが解けなくて……どうして良いか分らないよ」
目頭が熱くなった、自分でも涙が出ているのが分った。
みゆき「……かがみさんはつかささんを何処に連れて行くように命令されていたのでしょうか……呪いの苦痛に耐え、さらに店長である松本さんとわざと言い合いをして
つかささんを帰る気持ちにさせようとした……私達に気が付かないように……そこまでつかささん……妹の為に……死ぬ覚悟だったはずです……」
つかさ「……お姉ちゃん……」
ゆきちゃんは微笑んだ。そして私の目の前に手を差し出して招いた。
みゆき「行きましょう、つかささん、かがみさんの側に居てあげて下さい……私も微力ながらお手伝いさせて頂きます……」
つかさ「う、うん」
お湯を貰ってから私達は部屋に戻った。
652:つかさの旅 22/45:2012/01/09(月) 00:34:24.53:DlK6yebt0 (18/47)
部屋に戻るとこなちゃんが首を長くして待っていた。お姉ちゃんの寝ている直ぐ近くで座っていた。お姉ちゃんを看病していたみたいだった。
こなた「つかさ~みゆきさん~遅い、遅いよ、いったい今までなにしていたの、泊まるって言うのにそんなに時間かからないよね」
つかさ「ごめんなさい、ひろしさんが来てこれをお姉ちゃんに渡してって」
私は石をこなちゃんに見せた。ゆきちゃんもその石を見た。
こなた「その石……どっかで見たことある……どこだっけ……」
みゆき「その石の色、艶……それはパワースポットの岩と同じものですね、削ったのでしょうか?」
つかさ「削ったかどうかは分らないけど、同じ物だって、気休めって言っていたけど……」
お姉ちゃんを見るとぐっすりと眠っていた。
こなた「つかさ達が離れている間、見ておいたよ……つかさって何度か言っていた……私はかがみに呪いをかけた人を許さない…」
こなちゃんが怒っている、あんな怒った顔を見たのは、はじめてかもしれない。
私はお姉ちゃんの鞄に付いていたお守りを外してその中に石を入れた。そのお守りを胸元にそっと置いた。
こなた「そういえば、かがみはあのパワースポットの岩で体に擦り付けていたね……気休めじゃないかも、あれでかがみはだいぶ楽になったんだよ」
みゆき「落ち着きましょう……お湯を貰ってきましたのでお茶でも入れますね……」
ゆきちゃんはお茶の準備をしだした。私が手伝おうとすると。
みゆき「私がしますので、つかささんはかがみさんの傍に居てあげてください」
言われるまま私はお姉ちゃんの傍に移動した。そしてこなちゃんと入れ替わった。こなちゃんはゆきちゃんの手伝いをした。
お姉ちゃんは静かに眠っている。お姉ちゃんはいつ呪われちゃったのだろう……移動中はこなちゃんやゆきちゃんが居るから無理だし……。
そんなのどうでもいい。お姉ちゃんは私を守ってくれた。あんなに、倒れるまで苦しんで……昔から、幼い頃からそうだった。きっとそうだったに違いない。
私の気が付かない所で私を守ってくれていた。そして今も……やっぱりお姉ちゃんには敵わない。
でも……今度は私がお姉ちゃんを助ける番かもしれない……でも、どうやって……呪いをかけたのはお稲荷さんとまで言われた人……人じゃない。
人間に恨み、憎み、嫌っている。今まで私達人間が彼等にどんな仕打ちをしてきたのかは知らない。まなちゃんの時だって……
私があの神社に行かなければこんな事には……あっ、ゆきちゃんに言われたばかりなのに……
こなた「つかさ」
こなちゃんが私を呼んだ。一人で考えたっていい考えは浮かばない。こなちゃんの方を向いた。
つかさ「何?」
こなちゃんは申し訳ないような顔をしていた。
こなた「さっきは、ごめん……ひろしさんを疑っちゃって……かがみに呪いをかけたならわざわざパワースポットの石なんかもって来るわけない……」
つかさ「こなちゃんの仕草でひろしさんは分っちゃったみたいだよ、疑っているの」
こなた「やば……どうしよう」
つかさ「あまり気にしていないみたい、明日も来てくれるって言ってた……それに今、頼れるのはひろしさんだけ、疑ったら協力してくれないかも」
こなた「……それにしても彼はなんでこんなに協力的なのだろう……つかさが真奈美さんと友達という理由だけじゃないような……」
こなちゃんはマジマジと私を見た。
こなた「う~ん」
何か納得したように頷いた。
つかさ「何?何なの?」
こなちゃんは不敵な笑みを浮かべた
こなた「惚れたな……」
つかさ「え?」
こなた「つかさに惚れたんだよ、それしかない……いいね~禁じられた恋……よくあるシチュだけど」
つかさ「ちょ、からかわないで……」
こなた「いやいや、そう言うつかさはどうなの、彼を好きじゃないの?」
つかさ「それは……」
その続きは言えなかった。恥かしい……みんなから言われたから本当に好きになってしまったのかもしらない。
こなた「……まぁ、私が彼を批判した時のつかさの表情を見たらすぐに分るよ……『彼はそんな事絶対にしない』って顔してたからね……うんうん」
こなちゃんはまた何回も頷いた。
みゆき「そうですね、少なくともつかささんに特別な好意を持っているのは確か様です」
こなた「おお、今回はみゆきさんと意見が一致した」
つかさ「ゆきちゃんまで……」
私と目が合うとにっこりと微笑んだ。そしてこなちゃんとゆきちゃんは私とひろしさんの話で盛り上がっていった。
こなた「そういえば私、もうこれ以上滞在する宿代が底をついちゃってね、かがみもこんなんだし、どうしていいか迷っていたんだ……夏休みで時間はいっぱいあるけどね」
みゆき「それならばお金……お貸ししましょうか?」
つかさ「うんん、学生なんだしお金は大事にしないとね、私の家に泊まればいいよ、居間と寝室で二人ずつ寝られると思うよ、温泉はないけど……」
こなた「つかさの提案に賛成!!!」
みゆき「済みません、ありがとうございます」
こなた「ところでみゆきさん、さっきの話にもどるけどね……」
こなちゃんはまたさっきの話をし始めた。
最初は好きでも嫌いでもない。だけど周りの人たちが勝手にこの人とこの人は好き合っているなんて言い出す。そんな雰囲気に飲み込まれて何時の日か
お互いに本当に好きになってしまう。そんな話をどこかで聞いた事がある。今回は私だけの話だけど。これだけいろいろな人から言われると本当に好きになってしまうかも。
でも、彼は人間じゃないし……それじゃ人間だったら……優しそうだよね、それに料理も美味しそうに食べてくれる。恋人にするには……あ、また変な事考えている。
もうこんな事考えるのは止めよう。
お姉ちゃんもぐっすり眠っているし。安心したのかな、少し眠くなってきた。こなちゃんとゆきちゃんの会話が子守唄に聞こえる……。
部屋に戻るとこなちゃんが首を長くして待っていた。お姉ちゃんの寝ている直ぐ近くで座っていた。お姉ちゃんを看病していたみたいだった。
こなた「つかさ~みゆきさん~遅い、遅いよ、いったい今までなにしていたの、泊まるって言うのにそんなに時間かからないよね」
つかさ「ごめんなさい、ひろしさんが来てこれをお姉ちゃんに渡してって」
私は石をこなちゃんに見せた。ゆきちゃんもその石を見た。
こなた「その石……どっかで見たことある……どこだっけ……」
みゆき「その石の色、艶……それはパワースポットの岩と同じものですね、削ったのでしょうか?」
つかさ「削ったかどうかは分らないけど、同じ物だって、気休めって言っていたけど……」
お姉ちゃんを見るとぐっすりと眠っていた。
こなた「つかさ達が離れている間、見ておいたよ……つかさって何度か言っていた……私はかがみに呪いをかけた人を許さない…」
こなちゃんが怒っている、あんな怒った顔を見たのは、はじめてかもしれない。
私はお姉ちゃんの鞄に付いていたお守りを外してその中に石を入れた。そのお守りを胸元にそっと置いた。
こなた「そういえば、かがみはあのパワースポットの岩で体に擦り付けていたね……気休めじゃないかも、あれでかがみはだいぶ楽になったんだよ」
みゆき「落ち着きましょう……お湯を貰ってきましたのでお茶でも入れますね……」
ゆきちゃんはお茶の準備をしだした。私が手伝おうとすると。
みゆき「私がしますので、つかささんはかがみさんの傍に居てあげてください」
言われるまま私はお姉ちゃんの傍に移動した。そしてこなちゃんと入れ替わった。こなちゃんはゆきちゃんの手伝いをした。
お姉ちゃんは静かに眠っている。お姉ちゃんはいつ呪われちゃったのだろう……移動中はこなちゃんやゆきちゃんが居るから無理だし……。
そんなのどうでもいい。お姉ちゃんは私を守ってくれた。あんなに、倒れるまで苦しんで……昔から、幼い頃からそうだった。きっとそうだったに違いない。
私の気が付かない所で私を守ってくれていた。そして今も……やっぱりお姉ちゃんには敵わない。
でも……今度は私がお姉ちゃんを助ける番かもしれない……でも、どうやって……呪いをかけたのはお稲荷さんとまで言われた人……人じゃない。
人間に恨み、憎み、嫌っている。今まで私達人間が彼等にどんな仕打ちをしてきたのかは知らない。まなちゃんの時だって……
私があの神社に行かなければこんな事には……あっ、ゆきちゃんに言われたばかりなのに……
こなた「つかさ」
こなちゃんが私を呼んだ。一人で考えたっていい考えは浮かばない。こなちゃんの方を向いた。
つかさ「何?」
こなちゃんは申し訳ないような顔をしていた。
こなた「さっきは、ごめん……ひろしさんを疑っちゃって……かがみに呪いをかけたならわざわざパワースポットの石なんかもって来るわけない……」
つかさ「こなちゃんの仕草でひろしさんは分っちゃったみたいだよ、疑っているの」
こなた「やば……どうしよう」
つかさ「あまり気にしていないみたい、明日も来てくれるって言ってた……それに今、頼れるのはひろしさんだけ、疑ったら協力してくれないかも」
こなた「……それにしても彼はなんでこんなに協力的なのだろう……つかさが真奈美さんと友達という理由だけじゃないような……」
こなちゃんはマジマジと私を見た。
こなた「う~ん」
何か納得したように頷いた。
つかさ「何?何なの?」
こなちゃんは不敵な笑みを浮かべた
こなた「惚れたな……」
つかさ「え?」
こなた「つかさに惚れたんだよ、それしかない……いいね~禁じられた恋……よくあるシチュだけど」
つかさ「ちょ、からかわないで……」
こなた「いやいや、そう言うつかさはどうなの、彼を好きじゃないの?」
つかさ「それは……」
その続きは言えなかった。恥かしい……みんなから言われたから本当に好きになってしまったのかもしらない。
こなた「……まぁ、私が彼を批判した時のつかさの表情を見たらすぐに分るよ……『彼はそんな事絶対にしない』って顔してたからね……うんうん」
こなちゃんはまた何回も頷いた。
みゆき「そうですね、少なくともつかささんに特別な好意を持っているのは確か様です」
こなた「おお、今回はみゆきさんと意見が一致した」
つかさ「ゆきちゃんまで……」
私と目が合うとにっこりと微笑んだ。そしてこなちゃんとゆきちゃんは私とひろしさんの話で盛り上がっていった。
こなた「そういえば私、もうこれ以上滞在する宿代が底をついちゃってね、かがみもこんなんだし、どうしていいか迷っていたんだ……夏休みで時間はいっぱいあるけどね」
みゆき「それならばお金……お貸ししましょうか?」
つかさ「うんん、学生なんだしお金は大事にしないとね、私の家に泊まればいいよ、居間と寝室で二人ずつ寝られると思うよ、温泉はないけど……」
こなた「つかさの提案に賛成!!!」
みゆき「済みません、ありがとうございます」
こなた「ところでみゆきさん、さっきの話にもどるけどね……」
こなちゃんはまたさっきの話をし始めた。
最初は好きでも嫌いでもない。だけど周りの人たちが勝手にこの人とこの人は好き合っているなんて言い出す。そんな雰囲気に飲み込まれて何時の日か
お互いに本当に好きになってしまう。そんな話をどこかで聞いた事がある。今回は私だけの話だけど。これだけいろいろな人から言われると本当に好きになってしまうかも。
でも、彼は人間じゃないし……それじゃ人間だったら……優しそうだよね、それに料理も美味しそうに食べてくれる。恋人にするには……あ、また変な事考えている。
もうこんな事考えるのは止めよう。
お姉ちゃんもぐっすり眠っているし。安心したのかな、少し眠くなってきた。こなちゃんとゆきちゃんの会話が子守唄に聞こえる……。
653:つかさの旅 23/45:2012/01/09(月) 00:35:59.43:DlK6yebt0 (19/47)
三部 <疑惑、怨み……そして>
つかさ「う~ん」
……私ったらいつの間に寝ちゃったのだろう。気付くと私に毛布がかけられていた。辺りを見回すとこなちゃんもゆきちゃんもテーブルにもたれて眠っていた。
二人にも毛布がかけられている。二人もそのまま眠ってしまったみたい。
あ、あれ。直ぐ隣で眠っていたはずのお姉ちゃんが居ない。布団が畳まれていた。着ていた浴衣も畳んである。
つかさ「こなちゃん、ゆきちゃん、起きて……お姉ちゃんが……」
私は二人を揺すって起こした。
こなた「むにゃ、むにゃ……あ、つかさ、おはよ~」
眠気眼のこなちゃんだった。
つかさ「お姉ちゃんが居ないの……」
こなた「え、居ないって、温泉かトイレでも行ったんじゃないの……」
目を擦りながら話すこなちゃん。
つかさ「だって布団を畳んで、着替えているみたいだし……」
私が慌てているにようやくこなちゃんは気付いた。
こなた「着替えてるだって……本当だ……何で、何処にいったのかな……」
ゆきちゃんもゆっくりと起きだした。
みゆき「この毛布は……かがみさんがかけたのかもしれません」
ゆきちゃんはお姉ちゃんの畳んだ布団に近づき浴衣を手に取った。
みゆき「冷たいですね、かなり時間が経っているようです」
こなた「かがみめ、あんな身体で何処に行くって言うんだよ……まったく、もう」
こなちゃんはバックから携帯電話を取り出した。
みゆき「携帯電話をかけても意味はありません、かがみさんの携帯はここに置いてあります」
こなちゃんは携帯電話をかけるのを止めた。
こなた「これじゃ何処にいったか分らない……私達に来るな、って言いたいのか……」
みゆき「そのようですね、恐らくかがみさんは、呪いをかけた本人に会いに行ったのでしょう……」
つかさ「ごめんなさい、私、寝ちゃったから……」
みゆき「それは私も同じです、三人とも寝てしまったのも不思議ですが……そんな詮索よりもかがみさんを探さなければなりません」
探すと言っても何処に行ったのか見当も付かない。
こなた「つかさ、何処か心当りないかな、私達より土地勘あるから想像できない?」
つかさ「わからないよ、私だってこの町に来て一年経っていないから……稲荷さんの秘密の住処とか……そんなのだったら……」
みゆき「……秘密の住処……」
ゆきちゃんはブツブツと小声で言い始めた。
みゆき「かがみさんもこの土地に関しての知識は私や泉さんとさほど変わらないでしょう、私の考えが正しければかがみさんの行こうとしている場所は一つしかありません」
つかさ・こなた「それって、何処なの?」
二人同時詰め寄った。
みゆき「……神社、山の上の神社以外に考えられません」
こなた「神社か……最初に案内された所……」
みゆき「そうです、かがみさんは来ていない……もしかしたらと考えていました、呪術者の目的はつかささんをあの神社に連れて行くことなのでは」
つかさ「あの神社、私は頻繁に行っているよ、それににゆきちゃん達も案内したから……わざわざお姉ちゃんが連れてこなくても……」
みゆき「かがみさんとつかささん、二人が揃って初めて呪術者の目的が達成されるとすれば、つかささんだけがあの神社に行っても意味がありませんから……」
こなた「……他に候補がなければ行こう、ここで話していても何も進まないよ……」
つかさ「うん、車を出すから」
結局あの神社……そういえばこの前も安否を心配してあの神社に登ったのかな。もうこんな事は無いと思っていたのに。今度はお姉ちゃんを心配して登らないといけない。
何か嫌な予感がしてどうしようもない。でも、行かないとお姉ちゃんは助けられない。
皆が車乗り込んだ。私はエンジンをかける前に話しておこうと思った。
つかさ「もし、神社で呪術者と会って、何かあったらなんだけど……」
こなた「何かって何?」
あって欲しくない、襲ってくるなんて……
つかさ「何があっても相手の目を見たらダメだから、お稲荷さんには人を金縛りしてしまう術があるから、身動きがとれなくなるよ」
こなた「相手の目を見ると心が相手に奪われる……」
つかさ「……こなちゃん知ってるの?」
意外な返答に驚いてしまった。
こなた「いやね、武道では相手の目を見て戦うのはタブーなんだ……昔、聞いたことがあるよ……」
みゆき「そういえば泉さんは武術の心得がありましたね」
こなた「……心得といってもお遊び程度だよ……実践ではやったことないし……」
私は車のエンジンをかけた。こなちゃんが頼もしくみえた。
つかさ「私はお姉ちゃんが無事ならそれで良いから……できれば争いたくない」
こなた「それは私も同じ」
みゆき「私も……」
ライトを付けて車を走らせた。
三部 <疑惑、怨み……そして>
つかさ「う~ん」
……私ったらいつの間に寝ちゃったのだろう。気付くと私に毛布がかけられていた。辺りを見回すとこなちゃんもゆきちゃんもテーブルにもたれて眠っていた。
二人にも毛布がかけられている。二人もそのまま眠ってしまったみたい。
あ、あれ。直ぐ隣で眠っていたはずのお姉ちゃんが居ない。布団が畳まれていた。着ていた浴衣も畳んである。
つかさ「こなちゃん、ゆきちゃん、起きて……お姉ちゃんが……」
私は二人を揺すって起こした。
こなた「むにゃ、むにゃ……あ、つかさ、おはよ~」
眠気眼のこなちゃんだった。
つかさ「お姉ちゃんが居ないの……」
こなた「え、居ないって、温泉かトイレでも行ったんじゃないの……」
目を擦りながら話すこなちゃん。
つかさ「だって布団を畳んで、着替えているみたいだし……」
私が慌てているにようやくこなちゃんは気付いた。
こなた「着替えてるだって……本当だ……何で、何処にいったのかな……」
ゆきちゃんもゆっくりと起きだした。
みゆき「この毛布は……かがみさんがかけたのかもしれません」
ゆきちゃんはお姉ちゃんの畳んだ布団に近づき浴衣を手に取った。
みゆき「冷たいですね、かなり時間が経っているようです」
こなた「かがみめ、あんな身体で何処に行くって言うんだよ……まったく、もう」
こなちゃんはバックから携帯電話を取り出した。
みゆき「携帯電話をかけても意味はありません、かがみさんの携帯はここに置いてあります」
こなちゃんは携帯電話をかけるのを止めた。
こなた「これじゃ何処にいったか分らない……私達に来るな、って言いたいのか……」
みゆき「そのようですね、恐らくかがみさんは、呪いをかけた本人に会いに行ったのでしょう……」
つかさ「ごめんなさい、私、寝ちゃったから……」
みゆき「それは私も同じです、三人とも寝てしまったのも不思議ですが……そんな詮索よりもかがみさんを探さなければなりません」
探すと言っても何処に行ったのか見当も付かない。
こなた「つかさ、何処か心当りないかな、私達より土地勘あるから想像できない?」
つかさ「わからないよ、私だってこの町に来て一年経っていないから……稲荷さんの秘密の住処とか……そんなのだったら……」
みゆき「……秘密の住処……」
ゆきちゃんはブツブツと小声で言い始めた。
みゆき「かがみさんもこの土地に関しての知識は私や泉さんとさほど変わらないでしょう、私の考えが正しければかがみさんの行こうとしている場所は一つしかありません」
つかさ・こなた「それって、何処なの?」
二人同時詰め寄った。
みゆき「……神社、山の上の神社以外に考えられません」
こなた「神社か……最初に案内された所……」
みゆき「そうです、かがみさんは来ていない……もしかしたらと考えていました、呪術者の目的はつかささんをあの神社に連れて行くことなのでは」
つかさ「あの神社、私は頻繁に行っているよ、それににゆきちゃん達も案内したから……わざわざお姉ちゃんが連れてこなくても……」
みゆき「かがみさんとつかささん、二人が揃って初めて呪術者の目的が達成されるとすれば、つかささんだけがあの神社に行っても意味がありませんから……」
こなた「……他に候補がなければ行こう、ここで話していても何も進まないよ……」
つかさ「うん、車を出すから」
結局あの神社……そういえばこの前も安否を心配してあの神社に登ったのかな。もうこんな事は無いと思っていたのに。今度はお姉ちゃんを心配して登らないといけない。
何か嫌な予感がしてどうしようもない。でも、行かないとお姉ちゃんは助けられない。
皆が車乗り込んだ。私はエンジンをかける前に話しておこうと思った。
つかさ「もし、神社で呪術者と会って、何かあったらなんだけど……」
こなた「何かって何?」
あって欲しくない、襲ってくるなんて……
つかさ「何があっても相手の目を見たらダメだから、お稲荷さんには人を金縛りしてしまう術があるから、身動きがとれなくなるよ」
こなた「相手の目を見ると心が相手に奪われる……」
つかさ「……こなちゃん知ってるの?」
意外な返答に驚いてしまった。
こなた「いやね、武道では相手の目を見て戦うのはタブーなんだ……昔、聞いたことがあるよ……」
みゆき「そういえば泉さんは武術の心得がありましたね」
こなた「……心得といってもお遊び程度だよ……実践ではやったことないし……」
私は車のエンジンをかけた。こなちゃんが頼もしくみえた。
つかさ「私はお姉ちゃんが無事ならそれで良いから……できれば争いたくない」
こなた「それは私も同じ」
みゆき「私も……」
ライトを付けて車を走らせた。
654:つかさの旅 24/45:2012/01/09(月) 00:37:49.42:DlK6yebt0 (20/47)
外はまだ薄暗い早朝。神社の入り口近くに車を停めた。私達は車を降りた。
そして私達三人は階段を登った。私はもう慣れているので最初に登った時よりは速く登ることができる。こなちゃんがやや遅れて付いてくるけどゆきちゃんは
どんどん私達と距離が離れていった。私が立ち止まって待っていると、息を切らせながらゆきちゃんは話した。
みゆき「私に構わず先に言ってください……」
つかさ「ゆきちゃん、ごめん……こなちゃん、スピードを上げるよ」
私が速度を上げるとこなちゃんは黙って後を付いてきた。いくら慣れているとはいってもこれだけ速度上げると息が切れてきた。こなちゃんも必死に付いてきている。
頂上にお姉ちゃんはいるのかな。ただそれだけを祈って登った。
頂上に着くと私は辺りを見回した。森の中は暗くて何も見えない。少し遅れてこなちゃんが着いた。
こなた「ふぅ、疲れた、流石何度も登ってるだけはあるね……つかさ」
つかさ「シー!!」
森の奥で何か気配がする。私はゆっくりと気配のする方に近づいた。こなちゃんも私の後についてくる。森の入り口で私は止まった。こなちゃんは私の耳元で囁いた。
こなた「誰か居る……」
私が稲荷ずしを置いていた辺りかな、暗くてよく見えない。話し声が聞こえる。
「何故つかさをつれてこなかった、お前、死にたいのか」
男の声だ、私の名前を言っている、声はしっかりと聞こえるけど誰だか分らない。
かがみ「つかさが此処に来たら……そんなの……出来ない」
お姉ちゃんの声だ、やっぱりこの神社に来ていた。それにしても誰と話しているのだろう、きっとお姉ちゃんに呪いをかけた本人に違いない。
「携帯で今すぐ呼べ……」
私をここに連れてくるように言っている。どうしよう。今、出て行ったらどうなるか分らない。
かがみ「そんなものは無い」
こなた「あいつが……あいつがかがみに………許せない……」
こなちゃんが私よりも一歩前に出た。これ以上近づくと気付かれちゃう。私はこなちゃんの腕を掴んだ。でもこなちゃんはまた一歩近づこうとする。
つかさ「だ、ダメだよ……」
小さい声でこなちゃんを止めた。だけど引っ張る力はどんどん強くなるばかり。
「お前には呪いがかかっているのを忘れるな」
こなた「うわー!!!」
男の声が引き金になったみたいにこなちゃんは大声を上げて私の手を振り払った。そして真っ直ぐ男の声のする方に全速力で突進していった。
こなちゃんが森の闇に消えた。それと同時に物が当たった音がした。鈍く低い音だった。こなちゃんと男の唸った声が聞こえた。
地平線から朝日の光が森の奥に射し込んだ。こなちゃんと男が倒れている姿が照らし出された。その少し奥にお姉ちゃんが呆然と立ち尽くしていた。
こなちゃんは直ぐに起き上がりお姉ちゃんの前に立った。少し遅れて男が立ち上がった。私からは後姿で誰だか分らない。
男はこなちゃんを見た。
「お、お前は……確か……泉こなた」
こなちゃんも男を見た。こなちゃんは驚いた顔をした。
こなた「……つかさ、私の勘は正しかった……こいつ……とんだ詐欺師だよ……」
「つ、つかさだと」
男は振り向いた……朝日に照らされてはっきり顔が見えた……その人はひろしさん……
こなた「かがみの呪いを解け!!」
こなちゃんはひろしさんに向かって怒鳴った。ひろしさんはこなちゃんの方を向いた。こなちゃんは素早くお姉ちゃんを庇うように構えた。
ひろし「……ほう、武術をするのか……面白い」
こなちゃんはひろしさんを見ず私の方を見ていた。
ひろし「こいつ、つかさから入れ知恵うけたか」
ひろしさんは金縛りの術をするつもりだったみたい。こなちゃんとひろしさんは睨みあいを続けた。
こなた「つかさを呼んでどうするつもりだった!!」
ひろし「姉が死んだ苦しみを味あわせる為に、俺と同じ苦しみを味わってもらう、かがみを殺せば俺の気持ちが分るだろう……つかさ……本来はお前が死ぬべきだった筈だ」
ひろしさんがお姉ちゃんに呪いをかけた。それじゃ今までひろしさんは私を騙していた……嘘、嘘だよ、
私をまなちゃんと間違えたのも、お店に何度も来てくれたのも、一晩家に泊まったのも、お姉ちゃんを助けたのも……車に乗ってくれたのも……みんなお芝居だった。
信じていたのに……お姉ちゃんに呪いをかけた……
ひろし「そこを退け、お前には用はない」
あきらさんは両手の爪を伸ばして臨戦態勢になった。こなちゃんは退かずにお姉ちゃんを庇っている。
違う、こんなんじゃダメだよ、お姉ちゃんを殺したって何も解決しない。
つかさ「止めて!!」
私は叫んだ。あきらさんはピクリと反応して振り返った。そして私を見た。
つかさ「まなちゃんは、私の為に死んだんじゃない、そんなのも分らないの……弟さんでしょ」
ひろし「なに……」
私はあきらさんの目を見て話した。あきらさんは少し驚いた顔で私を見ている。
つかさ「まなちゃんは仲間の為に死んだ、死なせたのは皆の怨みのせい……それをまなちゃんは教えてくれた……もう止めようよ、あきらさん……」
私はあきらさんに向かって歩き出した。あきらさんは一歩退いた。
こなた「つかさ、それ以上近づいちゃだめだ」
こなちゃんの忠告……それでも私はあきらさんに近づいていった。
みゆき「こっちです、こっちで暴行している人がいます、来てください」
ゆきちゃんの声が突然した。
あきら「ちっ、人を呼んだか……」
あきらさんは森の茂みの奥に駆け込んで消えた。
外はまだ薄暗い早朝。神社の入り口近くに車を停めた。私達は車を降りた。
そして私達三人は階段を登った。私はもう慣れているので最初に登った時よりは速く登ることができる。こなちゃんがやや遅れて付いてくるけどゆきちゃんは
どんどん私達と距離が離れていった。私が立ち止まって待っていると、息を切らせながらゆきちゃんは話した。
みゆき「私に構わず先に言ってください……」
つかさ「ゆきちゃん、ごめん……こなちゃん、スピードを上げるよ」
私が速度を上げるとこなちゃんは黙って後を付いてきた。いくら慣れているとはいってもこれだけ速度上げると息が切れてきた。こなちゃんも必死に付いてきている。
頂上にお姉ちゃんはいるのかな。ただそれだけを祈って登った。
頂上に着くと私は辺りを見回した。森の中は暗くて何も見えない。少し遅れてこなちゃんが着いた。
こなた「ふぅ、疲れた、流石何度も登ってるだけはあるね……つかさ」
つかさ「シー!!」
森の奥で何か気配がする。私はゆっくりと気配のする方に近づいた。こなちゃんも私の後についてくる。森の入り口で私は止まった。こなちゃんは私の耳元で囁いた。
こなた「誰か居る……」
私が稲荷ずしを置いていた辺りかな、暗くてよく見えない。話し声が聞こえる。
「何故つかさをつれてこなかった、お前、死にたいのか」
男の声だ、私の名前を言っている、声はしっかりと聞こえるけど誰だか分らない。
かがみ「つかさが此処に来たら……そんなの……出来ない」
お姉ちゃんの声だ、やっぱりこの神社に来ていた。それにしても誰と話しているのだろう、きっとお姉ちゃんに呪いをかけた本人に違いない。
「携帯で今すぐ呼べ……」
私をここに連れてくるように言っている。どうしよう。今、出て行ったらどうなるか分らない。
かがみ「そんなものは無い」
こなた「あいつが……あいつがかがみに………許せない……」
こなちゃんが私よりも一歩前に出た。これ以上近づくと気付かれちゃう。私はこなちゃんの腕を掴んだ。でもこなちゃんはまた一歩近づこうとする。
つかさ「だ、ダメだよ……」
小さい声でこなちゃんを止めた。だけど引っ張る力はどんどん強くなるばかり。
「お前には呪いがかかっているのを忘れるな」
こなた「うわー!!!」
男の声が引き金になったみたいにこなちゃんは大声を上げて私の手を振り払った。そして真っ直ぐ男の声のする方に全速力で突進していった。
こなちゃんが森の闇に消えた。それと同時に物が当たった音がした。鈍く低い音だった。こなちゃんと男の唸った声が聞こえた。
地平線から朝日の光が森の奥に射し込んだ。こなちゃんと男が倒れている姿が照らし出された。その少し奥にお姉ちゃんが呆然と立ち尽くしていた。
こなちゃんは直ぐに起き上がりお姉ちゃんの前に立った。少し遅れて男が立ち上がった。私からは後姿で誰だか分らない。
男はこなちゃんを見た。
「お、お前は……確か……泉こなた」
こなちゃんも男を見た。こなちゃんは驚いた顔をした。
こなた「……つかさ、私の勘は正しかった……こいつ……とんだ詐欺師だよ……」
「つ、つかさだと」
男は振り向いた……朝日に照らされてはっきり顔が見えた……その人はひろしさん……
こなた「かがみの呪いを解け!!」
こなちゃんはひろしさんに向かって怒鳴った。ひろしさんはこなちゃんの方を向いた。こなちゃんは素早くお姉ちゃんを庇うように構えた。
ひろし「……ほう、武術をするのか……面白い」
こなちゃんはひろしさんを見ず私の方を見ていた。
ひろし「こいつ、つかさから入れ知恵うけたか」
ひろしさんは金縛りの術をするつもりだったみたい。こなちゃんとひろしさんは睨みあいを続けた。
こなた「つかさを呼んでどうするつもりだった!!」
ひろし「姉が死んだ苦しみを味あわせる為に、俺と同じ苦しみを味わってもらう、かがみを殺せば俺の気持ちが分るだろう……つかさ……本来はお前が死ぬべきだった筈だ」
ひろしさんがお姉ちゃんに呪いをかけた。それじゃ今までひろしさんは私を騙していた……嘘、嘘だよ、
私をまなちゃんと間違えたのも、お店に何度も来てくれたのも、一晩家に泊まったのも、お姉ちゃんを助けたのも……車に乗ってくれたのも……みんなお芝居だった。
信じていたのに……お姉ちゃんに呪いをかけた……
ひろし「そこを退け、お前には用はない」
あきらさんは両手の爪を伸ばして臨戦態勢になった。こなちゃんは退かずにお姉ちゃんを庇っている。
違う、こんなんじゃダメだよ、お姉ちゃんを殺したって何も解決しない。
つかさ「止めて!!」
私は叫んだ。あきらさんはピクリと反応して振り返った。そして私を見た。
つかさ「まなちゃんは、私の為に死んだんじゃない、そんなのも分らないの……弟さんでしょ」
ひろし「なに……」
私はあきらさんの目を見て話した。あきらさんは少し驚いた顔で私を見ている。
つかさ「まなちゃんは仲間の為に死んだ、死なせたのは皆の怨みのせい……それをまなちゃんは教えてくれた……もう止めようよ、あきらさん……」
私はあきらさんに向かって歩き出した。あきらさんは一歩退いた。
こなた「つかさ、それ以上近づいちゃだめだ」
こなちゃんの忠告……それでも私はあきらさんに近づいていった。
みゆき「こっちです、こっちで暴行している人がいます、来てください」
ゆきちゃんの声が突然した。
あきら「ちっ、人を呼んだか……」
あきらさんは森の茂みの奥に駆け込んで消えた。
655:つかさの旅 25/45:2012/01/09(月) 00:39:27.36:DlK6yebt0 (21/47)
ゆきちゃんが階段を登って来た。
みゆき「物々しかったので人を呼んだふりをしました……余計な事をしてしまったのでしょうか……」
こなた「……うんん、た、助かったよ……」
こなちゃんはその場にへたり込んだ。私はこなちゃんに駆け寄って手を引いて立たせた。
つかさ「こなちゃん、凄いね、かっこよかったよ」
こなた「……あれはハッタリの構えだよ……正直あのまま襲われたらどうなってたか分らない、みゆきさんの機転の方が凄いよ……それより、つかさ、
無防備であいつに近づくなんて……しかも目を見るなんて……殺されるところだったよ」
つかさ「あまりよく覚えていない……夢中だったから……」
こなた「あいつが好きなのは分るけど、無茶すぎだ」
私はあきらさんが好き……もう否定はしない。好きになってしまったのはどうしようもない。でもあれが全部策略だったなんて、今でも信じられない。信じたくない。
かがみ「……何も言っていないのに……よく此処がわかったわね」
お姉ちゃんはうな垂れていた。
こなた「土地勘の無いかがみが行く所なんて限られているよ……と言ってもみゆきさんの推理だったけどね……呪いか……これでかがみの不可解な行動の謎が解けた、
つかさを守るために呪いと戦っていた」
かがみ「そんなんじゃない、あんな強制的な命令なんて誰が聞くものか……」
みゆき「ちょっと待ってください、もうこれ以上呪いの話は止めたほうが……いつ呪いがかがみさんに襲ってくるか分りません」
こなた「おっと……」
こなちゃんは両手で口を塞いだ。
かがみ「……何故かしら、身体が軽い……」
お姉ちゃんは右腕を持ち上げて見た。
かがみ「……二の腕にあった呪いの印が消えている……」
こなた「呪いが解けたって事?」
かがみ「分らない、分らないけど……解けたみたい」
つかさ「ひろしさんが解いてくれたんだ」
私は喜んだ。
みゆき「……それはどうかな、あいつ自ら呪いを解くなんて考えられない、それは単に呪いの命令が実行されたから消えただけだよ、結果的にかがみがつかさをここに
連れてきたようなものだから」
みゆき「つかささんには悪いですけど、今回だけは泉さんの考と同じです」
ゆきちゃんまでひろしさんを……でもこの状況から考えられる結果はそうなのかもしれない。
こなた「さて、これからどうするかだ……またあいつ襲ってくるよ」
どうすると言われてもどうする事も出来ない。沈黙が続いた。
かがみ「考えたって答えは出ないわ、私が帰れば少なくとも彼の目的は達成出来ない……それでいいじゃない」
こなた「それだと今度はつかさを襲うに違いない」
かがみ「それは無い」
こなた「何で言い切れるんだよ、つかさ一人にして心配じゃないの」
かがみ「こなたなら守れると言うのか、言っておくけど私やみゆきは戦力にならないわよ、警察に話したって信じてもらえない」
こなちゃんは黙ってしまった。ゆきちゃんも成す術なしって感じだった。
かがみ「何、みんな辛気臭い顔をしてさ……まだお礼を言ってなかった、つかさ、こなた、みゆき……ありがとう、呪いが解けたのは皆のおかげね」
お姉ちゃんは背伸びをして森を出た。
かがみ「うわー、綺麗な眺めね、朝日がキラキラ反射しているわよ、皆も来てみなよ」
嬉しそうに私達を誘った。
こなた「なんだい、あの変わりよう……呪いが解けた途端に……」
みゆき「ふふ、元のかがみさんに戻った……それだけです」
ゆきちゃんはお姉ちゃんの方に向かって行った。ゆきちゃんとお姉ちゃんは楽しそうに景色を眺めていた。
こなた「元のかがみね……元には戻っていない、良い意味でね……つかさの家に泊めてもらわなくて済みそう……」
つかさ「でも……ひろしさんが……」
こなた「かがみの言うように私達じゃどうしようもないよ、また襲ってくるかもしれないし、二度と来ないかもしれない、でも、例え襲ってきたとしても
つかさならなんとかなりそう、何とかしそう、そんな気がしたよ」
こなちゃんもお姉ちゃんの方に向かって行った。
私に何が出来る。何もできないよ。まなちゃんと全然状況が違うし。ひろしさんは明らかに私を恨んでいる。今までのひろしさんの行動が全部嘘だとしたら……
私の気持ちはどうすればいいの。お姉ちゃんに呪いをかけたはずなのに彼を嫌いになれない。また会って真意を聞きたい。
聞いてどうするの、もし本当に私を恨んでいるって言ったらどうするの……何も答えは出てこない。
まなちゃんならどうするの……
いつまでもまなちゃんと座って語った石を見つめていた。
ゆきちゃんが階段を登って来た。
みゆき「物々しかったので人を呼んだふりをしました……余計な事をしてしまったのでしょうか……」
こなた「……うんん、た、助かったよ……」
こなちゃんはその場にへたり込んだ。私はこなちゃんに駆け寄って手を引いて立たせた。
つかさ「こなちゃん、凄いね、かっこよかったよ」
こなた「……あれはハッタリの構えだよ……正直あのまま襲われたらどうなってたか分らない、みゆきさんの機転の方が凄いよ……それより、つかさ、
無防備であいつに近づくなんて……しかも目を見るなんて……殺されるところだったよ」
つかさ「あまりよく覚えていない……夢中だったから……」
こなた「あいつが好きなのは分るけど、無茶すぎだ」
私はあきらさんが好き……もう否定はしない。好きになってしまったのはどうしようもない。でもあれが全部策略だったなんて、今でも信じられない。信じたくない。
かがみ「……何も言っていないのに……よく此処がわかったわね」
お姉ちゃんはうな垂れていた。
こなた「土地勘の無いかがみが行く所なんて限られているよ……と言ってもみゆきさんの推理だったけどね……呪いか……これでかがみの不可解な行動の謎が解けた、
つかさを守るために呪いと戦っていた」
かがみ「そんなんじゃない、あんな強制的な命令なんて誰が聞くものか……」
みゆき「ちょっと待ってください、もうこれ以上呪いの話は止めたほうが……いつ呪いがかがみさんに襲ってくるか分りません」
こなた「おっと……」
こなちゃんは両手で口を塞いだ。
かがみ「……何故かしら、身体が軽い……」
お姉ちゃんは右腕を持ち上げて見た。
かがみ「……二の腕にあった呪いの印が消えている……」
こなた「呪いが解けたって事?」
かがみ「分らない、分らないけど……解けたみたい」
つかさ「ひろしさんが解いてくれたんだ」
私は喜んだ。
みゆき「……それはどうかな、あいつ自ら呪いを解くなんて考えられない、それは単に呪いの命令が実行されたから消えただけだよ、結果的にかがみがつかさをここに
連れてきたようなものだから」
みゆき「つかささんには悪いですけど、今回だけは泉さんの考と同じです」
ゆきちゃんまでひろしさんを……でもこの状況から考えられる結果はそうなのかもしれない。
こなた「さて、これからどうするかだ……またあいつ襲ってくるよ」
どうすると言われてもどうする事も出来ない。沈黙が続いた。
かがみ「考えたって答えは出ないわ、私が帰れば少なくとも彼の目的は達成出来ない……それでいいじゃない」
こなた「それだと今度はつかさを襲うに違いない」
かがみ「それは無い」
こなた「何で言い切れるんだよ、つかさ一人にして心配じゃないの」
かがみ「こなたなら守れると言うのか、言っておくけど私やみゆきは戦力にならないわよ、警察に話したって信じてもらえない」
こなちゃんは黙ってしまった。ゆきちゃんも成す術なしって感じだった。
かがみ「何、みんな辛気臭い顔をしてさ……まだお礼を言ってなかった、つかさ、こなた、みゆき……ありがとう、呪いが解けたのは皆のおかげね」
お姉ちゃんは背伸びをして森を出た。
かがみ「うわー、綺麗な眺めね、朝日がキラキラ反射しているわよ、皆も来てみなよ」
嬉しそうに私達を誘った。
こなた「なんだい、あの変わりよう……呪いが解けた途端に……」
みゆき「ふふ、元のかがみさんに戻った……それだけです」
ゆきちゃんはお姉ちゃんの方に向かって行った。ゆきちゃんとお姉ちゃんは楽しそうに景色を眺めていた。
こなた「元のかがみね……元には戻っていない、良い意味でね……つかさの家に泊めてもらわなくて済みそう……」
つかさ「でも……ひろしさんが……」
こなた「かがみの言うように私達じゃどうしようもないよ、また襲ってくるかもしれないし、二度と来ないかもしれない、でも、例え襲ってきたとしても
つかさならなんとかなりそう、何とかしそう、そんな気がしたよ」
こなちゃんもお姉ちゃんの方に向かって行った。
私に何が出来る。何もできないよ。まなちゃんと全然状況が違うし。ひろしさんは明らかに私を恨んでいる。今までのひろしさんの行動が全部嘘だとしたら……
私の気持ちはどうすればいいの。お姉ちゃんに呪いをかけたはずなのに彼を嫌いになれない。また会って真意を聞きたい。
聞いてどうするの、もし本当に私を恨んでいるって言ったらどうするの……何も答えは出てこない。
まなちゃんならどうするの……
いつまでもまなちゃんと座って語った石を見つめていた。
656:つかさの旅 26/45:2012/01/09(月) 00:41:45.97:DlK6yebt0 (22/47)
神社の森を出るとお姉ちゃんはまだ外の景色を見ていた。
つかさ「こなちゃんとゆきちゃんは?」
かがみ「先に下りたわよ」
景色を見ながら答えた。
つかさ「すっかり日が昇ったね、今日も暑くなりそう……」
お姉ちゃんは私を見た。さっきまで元気だったのに少し顔が曇って見えた。
かがみ「つかさを助けたかった、その為の演技だった、皆はそう思っている、」
つかさ「私もそう思ってる、お姉ちゃんはあんな事はしない」
かがみ「呪いに反抗した、確かに反抗した、だけどね、30……うんん、80%以上は本当につかさに帰ってもらいたかった、これが私の本音よ、
可笑しいわね、自分で真っ先に賛成したのに、心の中では離れて欲しくなかった……松本さんの言うのにシスコン丸出しだったわね」
つかさ「お姉ちゃん……」
かがみ「つかさは私の言うことに全く動じなかった……今思えば恥かしい……もっと他に方法は無かったのかしらね」
つかさ「でも、呪いを隠し続けながら今まで私を帰そうとした、どれだけ苦しかったか想像もできないよ」
お姉ちゃんはまた景色を見た。
つかさ「……ひろしって人を恨んでるの?」
聞くまでも無い事を聞いてしまった。
かがみ「こなたから聞いた、あの人ひろしって名前らしいわね……」
それ以上何も言わなかった。もしかしてこなちゃんは私がひろしさんを好きって言っちゃったのかな。私もそれ以上聞かなかった。
お姉ちゃんは私景色を見るのを止めて私を見た。
かがみ「松本さんを巻き込んだのはまずかったわ、あの時、形振りは構っていられなかった……今更許してなんて……虫がよすぎるわよね」
お姉ちゃんは呪われていたなんてかえでさんに言えない。それならば。
つかさ「かえでさん、お姉ちゃんが料理を褒めてくれたの、お店を出して初めてだったって、とっても嬉しかったって言っていたよ」
かがみ「え、まさか、以前に店に行ったのを覚えていてくれた?」
つかさ「うん、もう一度美味しいって言ってもらいたいって、もう一回笑顔が見たいって……」
かがみ「バカよ、あれは嘘だったのに……真に受けてどうするのよ……」
お姉ちゃんの目が潤み始めた。
つかさ「呪いが解けたなら……本当の事が言えるよね、私、これから出勤する、お店で待ってるから帰る前にお昼食べに来て、かえでさんには黙っているから」
かがみ「そうね、私自身で解決しないといけないわね……お腹が空いてきた、ここに来てまともに食べていないから……」
つかさ「行こう!」
私達は階段を下りた。神社の入り口の鳥居を潜り、神社を出ると私の車の横にこなちゃんとゆきちゃんが待っていた。
こなた「お二人とも、もう話は決まった?」
つかさ「私は店に行く」
かがみ「旅館に戻って帰る支度よ、お昼にお店で食べてから帰るわ」
こなちゃんとゆきちゃんな頷いた。これで良い、もう一度最初からやり直し。
つかさ「皆車に乗って、目的地は同じだよ!!」
お店の駐車場に車を停めた。皆は車を出た。直ぐにこなちゃんが何かに気付いた。
つかさ「どうしたの?」
こなた「いや、普段よりも車の数が多いなって」
辺りを見回すと駐車場に停めてある車の数が確かに多い。まだお昼前で開店していないのに。
つかさ「なんだろう、旅館と共同駐車場だからもしかしたら宿泊客かも……でもこんなに宿泊客が来るなんて聞いてない、朝晩の料理の仕込みがあるから宿泊している人数は
事前に教えてもらっているはずだけど……」
かがみ「つかさ、私達は旅館に戻るわ」
つかさ「それじゃお昼に……」
とりあえずお店に行こう。
私は店の中に入った。厨房は仕込みが一段落しているみたいでみんな一休みをしていた。
つかさ「おはようございます」
皆は私を見た。特にかえでさんはかなり驚いた様子だった。私はタイムカードを押すとそのまま更衣室に入った。すぐにかえでさんも更衣室に入ってきた。
かえで「どうしたの、帰ったんじゃなかったの、お姉さんと、かがみさんと何かあったの?」
心配そうに私をみている。私は着替えながら話した。
つかさ「私は帰らなくてもよくなったから……心配かけてすみませんでした」
わたしの表情を見てすぐに笑顔に戻った。
かえで「……何があったのかは分らないけど、解決したみたいね……良かったわ……」
つかさ「ありがとう……それより駐車場の車は……」
これ以上お姉ちゃんの話をするとお昼に来るのを言ってしまいそうなので話題を変えた。
かえで「ああ、あれね……急に団体さんが泊まる事になって、地元の猟友会のメンバーね、いつもこの旅館を使用していただいているわ」
つかさ「猟友会……それって狐狩りの、で、でも狐狩りって冬にするって……」
かえで「そういえばつかさはここの狐狩りは初めてよね、いつもはそうだけど、今年は特に増えちゃったみたいで臨時に間引くようね」
この狐狩りで狐と間違えられて何人もお稲荷さんが……
つかさ「間引くって……野菜や果物じゃないよ……」
かえで「……そうね、可愛そうだけど、でも、狐狩りはこの町の伝統なの、それに増え過ぎると農作物に悪影響を与える……この店で使う野菜や果物にも影響がでるわ」
つかさ「そ、それはそうだけど……」
かえで「私も子供の頃はいろいろ疑問に思っていた、天敵の狼が居なくなったから誰かが代わりをしないとならない……悲しいけどこれが現実よ」
この町の人達はお稲荷さんを知らない、どうしよう。
かえで「つかさは優しいわね……」
かえでさんは更衣室を出て行った。
神社の森を出るとお姉ちゃんはまだ外の景色を見ていた。
つかさ「こなちゃんとゆきちゃんは?」
かがみ「先に下りたわよ」
景色を見ながら答えた。
つかさ「すっかり日が昇ったね、今日も暑くなりそう……」
お姉ちゃんは私を見た。さっきまで元気だったのに少し顔が曇って見えた。
かがみ「つかさを助けたかった、その為の演技だった、皆はそう思っている、」
つかさ「私もそう思ってる、お姉ちゃんはあんな事はしない」
かがみ「呪いに反抗した、確かに反抗した、だけどね、30……うんん、80%以上は本当につかさに帰ってもらいたかった、これが私の本音よ、
可笑しいわね、自分で真っ先に賛成したのに、心の中では離れて欲しくなかった……松本さんの言うのにシスコン丸出しだったわね」
つかさ「お姉ちゃん……」
かがみ「つかさは私の言うことに全く動じなかった……今思えば恥かしい……もっと他に方法は無かったのかしらね」
つかさ「でも、呪いを隠し続けながら今まで私を帰そうとした、どれだけ苦しかったか想像もできないよ」
お姉ちゃんはまた景色を見た。
つかさ「……ひろしって人を恨んでるの?」
聞くまでも無い事を聞いてしまった。
かがみ「こなたから聞いた、あの人ひろしって名前らしいわね……」
それ以上何も言わなかった。もしかしてこなちゃんは私がひろしさんを好きって言っちゃったのかな。私もそれ以上聞かなかった。
お姉ちゃんは私景色を見るのを止めて私を見た。
かがみ「松本さんを巻き込んだのはまずかったわ、あの時、形振りは構っていられなかった……今更許してなんて……虫がよすぎるわよね」
お姉ちゃんは呪われていたなんてかえでさんに言えない。それならば。
つかさ「かえでさん、お姉ちゃんが料理を褒めてくれたの、お店を出して初めてだったって、とっても嬉しかったって言っていたよ」
かがみ「え、まさか、以前に店に行ったのを覚えていてくれた?」
つかさ「うん、もう一度美味しいって言ってもらいたいって、もう一回笑顔が見たいって……」
かがみ「バカよ、あれは嘘だったのに……真に受けてどうするのよ……」
お姉ちゃんの目が潤み始めた。
つかさ「呪いが解けたなら……本当の事が言えるよね、私、これから出勤する、お店で待ってるから帰る前にお昼食べに来て、かえでさんには黙っているから」
かがみ「そうね、私自身で解決しないといけないわね……お腹が空いてきた、ここに来てまともに食べていないから……」
つかさ「行こう!」
私達は階段を下りた。神社の入り口の鳥居を潜り、神社を出ると私の車の横にこなちゃんとゆきちゃんが待っていた。
こなた「お二人とも、もう話は決まった?」
つかさ「私は店に行く」
かがみ「旅館に戻って帰る支度よ、お昼にお店で食べてから帰るわ」
こなちゃんとゆきちゃんな頷いた。これで良い、もう一度最初からやり直し。
つかさ「皆車に乗って、目的地は同じだよ!!」
お店の駐車場に車を停めた。皆は車を出た。直ぐにこなちゃんが何かに気付いた。
つかさ「どうしたの?」
こなた「いや、普段よりも車の数が多いなって」
辺りを見回すと駐車場に停めてある車の数が確かに多い。まだお昼前で開店していないのに。
つかさ「なんだろう、旅館と共同駐車場だからもしかしたら宿泊客かも……でもこんなに宿泊客が来るなんて聞いてない、朝晩の料理の仕込みがあるから宿泊している人数は
事前に教えてもらっているはずだけど……」
かがみ「つかさ、私達は旅館に戻るわ」
つかさ「それじゃお昼に……」
とりあえずお店に行こう。
私は店の中に入った。厨房は仕込みが一段落しているみたいでみんな一休みをしていた。
つかさ「おはようございます」
皆は私を見た。特にかえでさんはかなり驚いた様子だった。私はタイムカードを押すとそのまま更衣室に入った。すぐにかえでさんも更衣室に入ってきた。
かえで「どうしたの、帰ったんじゃなかったの、お姉さんと、かがみさんと何かあったの?」
心配そうに私をみている。私は着替えながら話した。
つかさ「私は帰らなくてもよくなったから……心配かけてすみませんでした」
わたしの表情を見てすぐに笑顔に戻った。
かえで「……何があったのかは分らないけど、解決したみたいね……良かったわ……」
つかさ「ありがとう……それより駐車場の車は……」
これ以上お姉ちゃんの話をするとお昼に来るのを言ってしまいそうなので話題を変えた。
かえで「ああ、あれね……急に団体さんが泊まる事になって、地元の猟友会のメンバーね、いつもこの旅館を使用していただいているわ」
つかさ「猟友会……それって狐狩りの、で、でも狐狩りって冬にするって……」
かえで「そういえばつかさはここの狐狩りは初めてよね、いつもはそうだけど、今年は特に増えちゃったみたいで臨時に間引くようね」
この狐狩りで狐と間違えられて何人もお稲荷さんが……
つかさ「間引くって……野菜や果物じゃないよ……」
かえで「……そうね、可愛そうだけど、でも、狐狩りはこの町の伝統なの、それに増え過ぎると農作物に悪影響を与える……この店で使う野菜や果物にも影響がでるわ」
つかさ「そ、それはそうだけど……」
かえで「私も子供の頃はいろいろ疑問に思っていた、天敵の狼が居なくなったから誰かが代わりをしないとならない……悲しいけどこれが現実よ」
この町の人達はお稲荷さんを知らない、どうしよう。
かえで「つかさは優しいわね……」
かえでさんは更衣室を出て行った。
657:つかさの旅 27/45:2012/01/09(月) 00:43:32.42:DlK6yebt0 (23/47)
開店してどのくらい経ったか、狐狩りの事で頭がいっぱいで作業が思うようにいかない。今までは仕事中は集中できたのに。チラっと客席を見る。
やっぱりひろしさんは来ていない。来て欲しかった。あれは何かの間違えって言って欲しかった。狐狩りも教えたかった。
でも、来ないって言うことは……やだ、もう考えたくない。
かえで「いらっしゃ……」
かえでさんの声が上擦った。私はかえでさんを見た。そして、かえでさんの目線の先に立っていたのはお姉ちゃんだった。お姉ちゃんはかえでさんに深々と頭を下げた。
かがみ「先日は大変失礼しました……あの時はどうかしていました、もし、許されるならば……入ってもいいでしょうか……」
かえでさんは暫く固まっていた。
つかさ「店長……」
私はそっとかえでさんを呼んだ。かえでさんははっとして我に返った。
かえで「どうぞ……」
かがみ「ありがとう……」
かえでさんは席に案内した。お姉ちゃんの後からこなちゃんとゆきちゃんも入ってきた。お姉ちゃん達はかえでさんの案内した席に座った。かえでさんがメニューを
渡そうとすると。
かがみ「この前のメニューと同じものでいいわ」
こなちゃんとゆきちゃんも頷いた。
かえで「かしこまりました」
かえでさんは厨房に来た。そして私を睨んだ。
かえで「つかさ~、来るなら来るって言いなさい……なぜ出勤してきたのか今分ったわよ……私を驚かすつもりだったのね」
私は頷いた。かえでさんは帽子を被った。
かえで「もう不味いとは言わせない、私が鍋をふるわ……デザートはつかさ、頼むわよ」
つかさ「はい!」
いろいろ心配事はある。だけど今はデザートを作る事だけに集中しよう。
料理が次々とお姉ちゃん達の席に運ばれる。お姉ちゃん達は楽しそうにお喋りをしながら料理を食べていた。私もお姉ちゃん達の会話にまじりたいほど楽しそう。
この前と全然雰囲気が違う。もう感想なんて聞かなくても分る。美味しければ自然に会話は弾むもの。私も自然と作業のペースが上がっていく。
そしていよいよ私のデザートを出す番が来た。
つかさ「もういいかな」
かえで「いいわ、行きなさい」
自ら作ったデザートをお姉ちゃん達の席に持っていった。後からかえでさんが付いてくる。
つかさ「どうぞ、デザートです」
それぞれの席にデザートを置いた。皆は静かにスプーンを下ろして掬って食べた。
こなた「美味しい、学生の時に作ってくれたのとは別物だよ……つかさ」
みゆき「素晴らしいです、他にはない工夫がされていますね」
お姉ちゃんはただ黙って食べていた。かえでさんは帽子を取り私の前に出た。
かえで「いかがでしたか?」
この問いはお姉ちゃんに向けて言っている。そう思った。お姉ちゃんはゆっくりスプーンを置いてかえでさんの方を向いた。
かがみ「美味しかった……前よりもね、つかさもただ甘いだけのデザートじゃない、きっと松本さんに鍛えられたのね」
お姉ちゃんはにっこりと微笑んだ。
かえで「ありがとうございます……」
一礼をするとかえでさんは更衣室の方に行ってしまった。
こなた「あらら、店長さんどうしたのかな」
みゆき「急にどうしたのでしょうか」
つかさ「きっと嬉しすぎて涙がでちゃったと思うよ」
かがみ「大袈裟ね、私は有名な批評家でもなんでもないのよ、私が美味しいって言ったって繁盛するわけじゃないし……」
こなた「そんな事言っているわりには照れているね」
かがみ「そんな事ないわよ……」
つかさ「私も褒めてくれありがとう……実は私も褒められたのは初めてで……ちょっと……私も……」
みゆき「あらあら……」
ゆきちゃんは慌ててハンカチを私に渡した。そしてそっと肩を貸してくれた。
私は分る。褒められて泣いたんじゃなくてお姉ちゃんの笑顔が嬉しかった。そうだよね。私は暫く仕事を忘れて泣いていた。周りのお客さんが不思議そうに
私を見ているけど。構わずその場で涙をながした。
お姉ちゃん達が会計を終えて店を出て直ぐだった。
かえで「さて、つかさ、これから駅まで見送りしにいきなさい」
つかさ「でもまだ私は仕事が……」
かえで「何言っているの、今日は休みのはずだったでしょう、お姉さんと友達を送ってあげなさい、電車が出るのは当分先のはずよ……私だったらそのまま飛び出して行くわよ」
つかさ「あ、ありがとうございます」
私は更衣室に向かった。
開店してどのくらい経ったか、狐狩りの事で頭がいっぱいで作業が思うようにいかない。今までは仕事中は集中できたのに。チラっと客席を見る。
やっぱりひろしさんは来ていない。来て欲しかった。あれは何かの間違えって言って欲しかった。狐狩りも教えたかった。
でも、来ないって言うことは……やだ、もう考えたくない。
かえで「いらっしゃ……」
かえでさんの声が上擦った。私はかえでさんを見た。そして、かえでさんの目線の先に立っていたのはお姉ちゃんだった。お姉ちゃんはかえでさんに深々と頭を下げた。
かがみ「先日は大変失礼しました……あの時はどうかしていました、もし、許されるならば……入ってもいいでしょうか……」
かえでさんは暫く固まっていた。
つかさ「店長……」
私はそっとかえでさんを呼んだ。かえでさんははっとして我に返った。
かえで「どうぞ……」
かがみ「ありがとう……」
かえでさんは席に案内した。お姉ちゃんの後からこなちゃんとゆきちゃんも入ってきた。お姉ちゃん達はかえでさんの案内した席に座った。かえでさんがメニューを
渡そうとすると。
かがみ「この前のメニューと同じものでいいわ」
こなちゃんとゆきちゃんも頷いた。
かえで「かしこまりました」
かえでさんは厨房に来た。そして私を睨んだ。
かえで「つかさ~、来るなら来るって言いなさい……なぜ出勤してきたのか今分ったわよ……私を驚かすつもりだったのね」
私は頷いた。かえでさんは帽子を被った。
かえで「もう不味いとは言わせない、私が鍋をふるわ……デザートはつかさ、頼むわよ」
つかさ「はい!」
いろいろ心配事はある。だけど今はデザートを作る事だけに集中しよう。
料理が次々とお姉ちゃん達の席に運ばれる。お姉ちゃん達は楽しそうにお喋りをしながら料理を食べていた。私もお姉ちゃん達の会話にまじりたいほど楽しそう。
この前と全然雰囲気が違う。もう感想なんて聞かなくても分る。美味しければ自然に会話は弾むもの。私も自然と作業のペースが上がっていく。
そしていよいよ私のデザートを出す番が来た。
つかさ「もういいかな」
かえで「いいわ、行きなさい」
自ら作ったデザートをお姉ちゃん達の席に持っていった。後からかえでさんが付いてくる。
つかさ「どうぞ、デザートです」
それぞれの席にデザートを置いた。皆は静かにスプーンを下ろして掬って食べた。
こなた「美味しい、学生の時に作ってくれたのとは別物だよ……つかさ」
みゆき「素晴らしいです、他にはない工夫がされていますね」
お姉ちゃんはただ黙って食べていた。かえでさんは帽子を取り私の前に出た。
かえで「いかがでしたか?」
この問いはお姉ちゃんに向けて言っている。そう思った。お姉ちゃんはゆっくりスプーンを置いてかえでさんの方を向いた。
かがみ「美味しかった……前よりもね、つかさもただ甘いだけのデザートじゃない、きっと松本さんに鍛えられたのね」
お姉ちゃんはにっこりと微笑んだ。
かえで「ありがとうございます……」
一礼をするとかえでさんは更衣室の方に行ってしまった。
こなた「あらら、店長さんどうしたのかな」
みゆき「急にどうしたのでしょうか」
つかさ「きっと嬉しすぎて涙がでちゃったと思うよ」
かがみ「大袈裟ね、私は有名な批評家でもなんでもないのよ、私が美味しいって言ったって繁盛するわけじゃないし……」
こなた「そんな事言っているわりには照れているね」
かがみ「そんな事ないわよ……」
つかさ「私も褒めてくれありがとう……実は私も褒められたのは初めてで……ちょっと……私も……」
みゆき「あらあら……」
ゆきちゃんは慌ててハンカチを私に渡した。そしてそっと肩を貸してくれた。
私は分る。褒められて泣いたんじゃなくてお姉ちゃんの笑顔が嬉しかった。そうだよね。私は暫く仕事を忘れて泣いていた。周りのお客さんが不思議そうに
私を見ているけど。構わずその場で涙をながした。
お姉ちゃん達が会計を終えて店を出て直ぐだった。
かえで「さて、つかさ、これから駅まで見送りしにいきなさい」
つかさ「でもまだ私は仕事が……」
かえで「何言っているの、今日は休みのはずだったでしょう、お姉さんと友達を送ってあげなさい、電車が出るのは当分先のはずよ……私だったらそのまま飛び出して行くわよ」
つかさ「あ、ありがとうございます」
私は更衣室に向かった。
658:つかさの旅 28/45:2012/01/09(月) 00:45:13.77:DlK6yebt0 (24/47)
駅に着き入場券を買って駅の構内に入った。お姉ちゃん達は電車を来るのを待っていた。私は手を振った。
つかさ「おーい」
お姉ちゃん達も手を振って答えた。私は駆け寄った。
こなた「見送りなんていいのに……」
つかさ「でも……次に会えるの、いつになるか分らないし……」
かがみ「年末年始は帰ってくるでしょうね……」
つかさ「もちろんそのつもりだけど」
みゆき「長い時間ですね、名残惜しいです……」
こなた「まぁ、その前に就活があるけね~」
かがみ「こなたかからそんな言葉が聞けるとは思わなかった」
私達は笑った。
良かった……元に戻った……私達はこうでないとね。
こなた「……それより、つかさが帰りたいって言わないのが不思議でしょうがないよ、ホームシックにはならかったの?」
つかさ「毎日が夢中でそんなの考えていられなかった……だけどお姉ちゃんが帰るように言ってから……」
こなた「あらら、かがみが望郷心煽っちゃった……」
かがみ「そうね、それは認める……でもね、呪われて居なくとも何らかのアプローチはしていたかも……私もまだまだ子供だったってことよ」
つかさ「お姉ちゃん……」
お姉ちゃんが皆の前でこんな事を話すなんて。
かがみ「つかさが居なくなって家も少し変わったわ……何かが足りないってね、帰って欲しいのは私だけじゃないわよ」
みゆき「かがみさん……もうそのくらいにしませんと、つかささんが辛くなってしまいます……いいえ、私も辛くなってしまいます」
普段ならこんな時はこなちゃんの冗談が飛び出すはずだけど、こなちゃんも俯いてしまって何も言ってこない。
かがみ「はい」
お姉ちゃんはポケットからお守りを取り出し私に差し出した。私はそれを受け取った。これはパワースポットの石が入ったお守りだった。
かがみ「もう私には必要ないもの、返しておくわ」
つかさ「返すって、この石は私が持ってきたものじゃないよ」
みゆき「それはひろしさんが持ってきた物……」
こなた「さん付けしなくていいよ、あんな奴……思い出したくもない」
急にこなちゃんが怒り出した。そういえばこなちゃんは最初からひろしさんを疑っていた。
つかさ「私達とお稲荷さん……仲良くなれないのかな」
こなた「まだそんな事いっている、かがみを呪って殺そうとまでしたんだ、つかさだっていい様に使われて下手したら殺されていた……許せないよ」
かがみ「これが一般的な反応だ、つかさ、あんたはそれでもひろしが好きなのか……」
つかさ「う、うん」
かがみ「辛いわよ……」
お姉ちゃんは鞄を取ってホームに並んだ。
つかさ「辛い……」
みゆき「人と人でも分り合うのは難しい、ましては人ではない者と……そう言いたいのではないでしょうか」
ゆきちゃんも荷物を持ってホームに並んだ。
こなた「家はここより人口が多いからあいつはそう簡単にかがみに手をだせないと思うけど、私はつかさが心配だよ、ずっと一緒には居られないし」
つかさ「私、もうとっくに死んでいたかもしれなかった、だけど生きている」
こなた「真奈美さんが居たからね、今度はつかさ一人だけだよ……いっその事一緒に帰ったら?」
つかさ「お稲荷さんは人に化けられるよ、人が多い町の方が危ないかもしれない」
こなちゃんは驚いた顔をした。
こなた「つかさらしからぬ鋭い考えだ、ごもっとも……」
こなちゃんも荷物を持ってホームに並んだ。アナウンスと共に電車がホームに入ってきた。電車は止まるとドアが開いた。発車までにはまだ少し時間がある。
お姉ちゃん達は電車に乗り込んだ。荷物を椅子の下に置くとこなちゃんがドアまで出てきた。
こなた「かがみは……柊家は私が守るから安心して」
お姉ちゃんもやってきた。
かがみ「こなた、その言い方はやめろ」
こなた「なんで、現に守れるのは私しかいないじゃん」
かがみ「それは男性が女性に言う言葉だ、それに……ひろしが去ってすぐにへたり込んだくせに」
こなた「あれは敵を油断させて……」
かがみ「敵が逃げているのに油断も隙もないだろう」
こなた「つかさ~かがみを何とかして~」
つかさ「ふふふ」
久しぶりに聞いた。お姉ちゃんとこなちゃんの言い合い……
こなた「それそれ、その笑顔……ここに来て一番良い笑顔だよ」
みゆき「笑顔でお別れ……また再会へのいいお土産になります……」
かがみ「そうね……」
発車のベルが鳴った。お姉ちゃんは私の手を握った。
かがみ「つかさが決めたのなら貫きなさい、これからどんな辛くて苦しい事があっても、それが正しいと信じるなら……」
つかさ「え……それって、どうゆうこと?」
ドアが閉まった。握っていた手が自然に離れた。ドア越しにお姉ちゃん達が手を振っている。私も手を振って答えた。電車はゆっくりと動き出した。
もうお姉ちゃん達の姿は見えない。だけど私は手を振った。そして電車が見えなくなっても手を振って見送った。
お姉ちゃんの最後の言葉が心に残った。
駅に着き入場券を買って駅の構内に入った。お姉ちゃん達は電車を来るのを待っていた。私は手を振った。
つかさ「おーい」
お姉ちゃん達も手を振って答えた。私は駆け寄った。
こなた「見送りなんていいのに……」
つかさ「でも……次に会えるの、いつになるか分らないし……」
かがみ「年末年始は帰ってくるでしょうね……」
つかさ「もちろんそのつもりだけど」
みゆき「長い時間ですね、名残惜しいです……」
こなた「まぁ、その前に就活があるけね~」
かがみ「こなたかからそんな言葉が聞けるとは思わなかった」
私達は笑った。
良かった……元に戻った……私達はこうでないとね。
こなた「……それより、つかさが帰りたいって言わないのが不思議でしょうがないよ、ホームシックにはならかったの?」
つかさ「毎日が夢中でそんなの考えていられなかった……だけどお姉ちゃんが帰るように言ってから……」
こなた「あらら、かがみが望郷心煽っちゃった……」
かがみ「そうね、それは認める……でもね、呪われて居なくとも何らかのアプローチはしていたかも……私もまだまだ子供だったってことよ」
つかさ「お姉ちゃん……」
お姉ちゃんが皆の前でこんな事を話すなんて。
かがみ「つかさが居なくなって家も少し変わったわ……何かが足りないってね、帰って欲しいのは私だけじゃないわよ」
みゆき「かがみさん……もうそのくらいにしませんと、つかささんが辛くなってしまいます……いいえ、私も辛くなってしまいます」
普段ならこんな時はこなちゃんの冗談が飛び出すはずだけど、こなちゃんも俯いてしまって何も言ってこない。
かがみ「はい」
お姉ちゃんはポケットからお守りを取り出し私に差し出した。私はそれを受け取った。これはパワースポットの石が入ったお守りだった。
かがみ「もう私には必要ないもの、返しておくわ」
つかさ「返すって、この石は私が持ってきたものじゃないよ」
みゆき「それはひろしさんが持ってきた物……」
こなた「さん付けしなくていいよ、あんな奴……思い出したくもない」
急にこなちゃんが怒り出した。そういえばこなちゃんは最初からひろしさんを疑っていた。
つかさ「私達とお稲荷さん……仲良くなれないのかな」
こなた「まだそんな事いっている、かがみを呪って殺そうとまでしたんだ、つかさだっていい様に使われて下手したら殺されていた……許せないよ」
かがみ「これが一般的な反応だ、つかさ、あんたはそれでもひろしが好きなのか……」
つかさ「う、うん」
かがみ「辛いわよ……」
お姉ちゃんは鞄を取ってホームに並んだ。
つかさ「辛い……」
みゆき「人と人でも分り合うのは難しい、ましては人ではない者と……そう言いたいのではないでしょうか」
ゆきちゃんも荷物を持ってホームに並んだ。
こなた「家はここより人口が多いからあいつはそう簡単にかがみに手をだせないと思うけど、私はつかさが心配だよ、ずっと一緒には居られないし」
つかさ「私、もうとっくに死んでいたかもしれなかった、だけど生きている」
こなた「真奈美さんが居たからね、今度はつかさ一人だけだよ……いっその事一緒に帰ったら?」
つかさ「お稲荷さんは人に化けられるよ、人が多い町の方が危ないかもしれない」
こなちゃんは驚いた顔をした。
こなた「つかさらしからぬ鋭い考えだ、ごもっとも……」
こなちゃんも荷物を持ってホームに並んだ。アナウンスと共に電車がホームに入ってきた。電車は止まるとドアが開いた。発車までにはまだ少し時間がある。
お姉ちゃん達は電車に乗り込んだ。荷物を椅子の下に置くとこなちゃんがドアまで出てきた。
こなた「かがみは……柊家は私が守るから安心して」
お姉ちゃんもやってきた。
かがみ「こなた、その言い方はやめろ」
こなた「なんで、現に守れるのは私しかいないじゃん」
かがみ「それは男性が女性に言う言葉だ、それに……ひろしが去ってすぐにへたり込んだくせに」
こなた「あれは敵を油断させて……」
かがみ「敵が逃げているのに油断も隙もないだろう」
こなた「つかさ~かがみを何とかして~」
つかさ「ふふふ」
久しぶりに聞いた。お姉ちゃんとこなちゃんの言い合い……
こなた「それそれ、その笑顔……ここに来て一番良い笑顔だよ」
みゆき「笑顔でお別れ……また再会へのいいお土産になります……」
かがみ「そうね……」
発車のベルが鳴った。お姉ちゃんは私の手を握った。
かがみ「つかさが決めたのなら貫きなさい、これからどんな辛くて苦しい事があっても、それが正しいと信じるなら……」
つかさ「え……それって、どうゆうこと?」
ドアが閉まった。握っていた手が自然に離れた。ドア越しにお姉ちゃん達が手を振っている。私も手を振って答えた。電車はゆっくりと動き出した。
もうお姉ちゃん達の姿は見えない。だけど私は手を振った。そして電車が見えなくなっても手を振って見送った。
お姉ちゃんの最後の言葉が心に残った。
659:つかさの旅 29/45:2012/01/09(月) 00:46:53.85:DlK6yebt0 (25/47)
三部 <告白>
三日後、旅館に宿泊している猟友会の人達の狐狩りの準備を終え、明日から狩が始まると聞いた。狩を止めさせたい。本当の事を言っても多分信じてもらえない。
どうすればいいのか全く分らない。
かえで「今日も来ないわね……つかさ、喧嘩でもしたの?」
あれからひろしさんは店に来ていない。喧嘩……喧嘩なら仲直りもできる。
来ない。何故……彼は、ひろしさんはお姉ちゃんに呪いをかけて私を神社に連れて来させて……
私の目の前でお姉ちゃんを……その後は私も殺すつもりだった。こなちゃんはそう言っていた。でも、お姉ちゃんは否定も肯定もしていない。ゆきちゃんはこなちゃんと同意見。
直接聞きたい。なぜ来てくれないの……狐狩りがあるからと信じたい。
かえで「……ごめん、二人の事は二人でないと分らないわね、差し出がましかった……」
はっと我に返った。
つかさ「あ、す、すみません、ぼーっとしちゃって、仕込みはもう終わりましたから……」
かえで「……私はそんな事聞いていないわ……ちょっと、大丈夫……」
つかさ「は、はい……大丈夫です」
かえで「煮え切らない返事ね……公私混同は……と言いたいが、恋愛問題ともなると、そう言ってもいられないわね……時には一生を左右する決断をしなければならい事もある」
つかさ「かえでさんはそんな決断をした事あるのですか……」
透かさず聞いたせいなのか、かえでさんは言葉に詰まってしまったよう。暫く黙っていた。
かえで「私はそこまで恋愛を真剣にしていない、例え真剣だったとしてもつかさの助言にはならいと思うわ、それぞれの立場があるしね、
それに絶対にこうしないといけないと言うセオリーも無い、正しかったのか、間違っていたのか、それすらも分らない、それ故に悩み苦しむ……そんなところかしら……
ごめんなさい、そんなのはつかさだって分かっているわね……情けない、私って料理以外は全くダメね……恋愛すら語れないなんて」
かえでさんは苦笑いをした。
つかさ「いいえ、そんな事はないです……ありがとうございます……」
私自身で解決方法見つけないといけないって事なのかな……
夕方の仕込みが終わり、夜の開店準備をしていた。かえでさんが旅館の方から店に入ってきた。そして私達スタッフを招集した。
かえで「集まってもらったのは明日から二日間、このレストランと旅館は臨時休業にする事をきめた……理由は旅館の温泉を汲んでいるポンプが故障したから、
知っての通り、この旅館は温泉が目玉、その温泉が出ないのであれば、冬に備えて思い切って休む事になった、このレストランも温泉を利用している以上
同調することになった……このレストランが開店して以来、大きな休暇は与えていなかった、たった二日とは言え、有意義な休日を過ごしてもらいたい」
降って湧いたような臨時休暇……二日間か、長いような短いような……実家に帰ってもいいかな……
かえで「何か質問は
私達を見回すかえでさん。そうだ、思い出した。旅館に泊まっている団体が居た。
つかさ「旅館に泊まっていた猟友会の人達はどうなるの?」
かえで「猟友会は明日から現地でキャンプをして狩をするそうよ、もうチェックアウトした、たまたまこの二日間の予約が少ないのも休館にした理由の一つ……他に質問は?」
皆は黙っている。心なしか皆の顔が嬉しそうに見えた。このレストラン、旅館も二日も休むのはそうは無い。
かえで「それでは開店準備……続けるわよ」
私達はそれぞれの持ち場に戻った。
次の日……私は実家に帰るのを止めた。お姉ちゃん達とは会ったばかり、確かにお父さん達にも会いたかった。だけどなにより狐狩りが気になって仕方が無かった。
かえでさんの話では狐狩りといっても狩の対象は狐だけじゃない、猪とか鹿、熊も狩るとは言っていた。
今まで狐に間違えられて何人のお稲荷さんが死んだのかな。そう思うとこの町を出る気にはなれなかった。
ニホンオオカミ、日本の九州、四国、本州に生息していたオオカミの一種、西暦1905年、明治38年に絶滅した……
オオカミが居なくなってしまって生態系が大きく崩れて鹿などが大繁殖、農作物を荒らして大被害を与えた。そして絶滅したオオカミに代わって人間が
定期的に狩って数を調整する必要が出た。
ニホンオオカミの絶滅の原因……狂犬病等の家畜伝染病、人的な駆除、開発による餌の減少……
百年以上前に絶滅したオオカミ……これって私達人間が原因じゃない、お稲荷さんが私達を恨むのはこれが根底にあるのかもしれない。
本を捲ると絶滅してしまった動植物の名前が次々と出てきた。その殆どは人間が原因だった。そしてその数に驚いた。
三部 <告白>
三日後、旅館に宿泊している猟友会の人達の狐狩りの準備を終え、明日から狩が始まると聞いた。狩を止めさせたい。本当の事を言っても多分信じてもらえない。
どうすればいいのか全く分らない。
かえで「今日も来ないわね……つかさ、喧嘩でもしたの?」
あれからひろしさんは店に来ていない。喧嘩……喧嘩なら仲直りもできる。
来ない。何故……彼は、ひろしさんはお姉ちゃんに呪いをかけて私を神社に連れて来させて……
私の目の前でお姉ちゃんを……その後は私も殺すつもりだった。こなちゃんはそう言っていた。でも、お姉ちゃんは否定も肯定もしていない。ゆきちゃんはこなちゃんと同意見。
直接聞きたい。なぜ来てくれないの……狐狩りがあるからと信じたい。
かえで「……ごめん、二人の事は二人でないと分らないわね、差し出がましかった……」
はっと我に返った。
つかさ「あ、す、すみません、ぼーっとしちゃって、仕込みはもう終わりましたから……」
かえで「……私はそんな事聞いていないわ……ちょっと、大丈夫……」
つかさ「は、はい……大丈夫です」
かえで「煮え切らない返事ね……公私混同は……と言いたいが、恋愛問題ともなると、そう言ってもいられないわね……時には一生を左右する決断をしなければならい事もある」
つかさ「かえでさんはそんな決断をした事あるのですか……」
透かさず聞いたせいなのか、かえでさんは言葉に詰まってしまったよう。暫く黙っていた。
かえで「私はそこまで恋愛を真剣にしていない、例え真剣だったとしてもつかさの助言にはならいと思うわ、それぞれの立場があるしね、
それに絶対にこうしないといけないと言うセオリーも無い、正しかったのか、間違っていたのか、それすらも分らない、それ故に悩み苦しむ……そんなところかしら……
ごめんなさい、そんなのはつかさだって分かっているわね……情けない、私って料理以外は全くダメね……恋愛すら語れないなんて」
かえでさんは苦笑いをした。
つかさ「いいえ、そんな事はないです……ありがとうございます……」
私自身で解決方法見つけないといけないって事なのかな……
夕方の仕込みが終わり、夜の開店準備をしていた。かえでさんが旅館の方から店に入ってきた。そして私達スタッフを招集した。
かえで「集まってもらったのは明日から二日間、このレストランと旅館は臨時休業にする事をきめた……理由は旅館の温泉を汲んでいるポンプが故障したから、
知っての通り、この旅館は温泉が目玉、その温泉が出ないのであれば、冬に備えて思い切って休む事になった、このレストランも温泉を利用している以上
同調することになった……このレストランが開店して以来、大きな休暇は与えていなかった、たった二日とは言え、有意義な休日を過ごしてもらいたい」
降って湧いたような臨時休暇……二日間か、長いような短いような……実家に帰ってもいいかな……
かえで「何か質問は
私達を見回すかえでさん。そうだ、思い出した。旅館に泊まっている団体が居た。
つかさ「旅館に泊まっていた猟友会の人達はどうなるの?」
かえで「猟友会は明日から現地でキャンプをして狩をするそうよ、もうチェックアウトした、たまたまこの二日間の予約が少ないのも休館にした理由の一つ……他に質問は?」
皆は黙っている。心なしか皆の顔が嬉しそうに見えた。このレストラン、旅館も二日も休むのはそうは無い。
かえで「それでは開店準備……続けるわよ」
私達はそれぞれの持ち場に戻った。
次の日……私は実家に帰るのを止めた。お姉ちゃん達とは会ったばかり、確かにお父さん達にも会いたかった。だけどなにより狐狩りが気になって仕方が無かった。
かえでさんの話では狐狩りといっても狩の対象は狐だけじゃない、猪とか鹿、熊も狩るとは言っていた。
今まで狐に間違えられて何人のお稲荷さんが死んだのかな。そう思うとこの町を出る気にはなれなかった。
ニホンオオカミ、日本の九州、四国、本州に生息していたオオカミの一種、西暦1905年、明治38年に絶滅した……
オオカミが居なくなってしまって生態系が大きく崩れて鹿などが大繁殖、農作物を荒らして大被害を与えた。そして絶滅したオオカミに代わって人間が
定期的に狩って数を調整する必要が出た。
ニホンオオカミの絶滅の原因……狂犬病等の家畜伝染病、人的な駆除、開発による餌の減少……
百年以上前に絶滅したオオカミ……これって私達人間が原因じゃない、お稲荷さんが私達を恨むのはこれが根底にあるのかもしれない。
本を捲ると絶滅してしまった動植物の名前が次々と出てきた。その殆どは人間が原因だった。そしてその数に驚いた。
660:つかさの旅 30/45:2012/01/09(月) 00:48:45.17:DlK6yebt0 (26/47)
私は町の図書館に居た。図書館……調理師の勉強をする時に利用してから全く行っていない。もちろんこの町の図書館も始めて。普段からそんなに本なんか読まない。
高校時代なんて図書室はもっぱらお喋りの場だった。高校時代か、卒業して三年も経っているなんて……ゆたかちゃん達も卒業してしまった……
もうあの学校……校舎、校庭、教室、懐かしいな……
「つかさ、つかさじゃない」
突然だった。聞き覚えのある声、その声の方を向くとかえでさんが立っていた。
つかさ「か、かえでさん、おはようございます」
かえで「おはよう、こんな所で会うなんて奇遇ね」
かえでさんは早速私の読んでいる本を覗き込んだ。
かえで「へぇ~つかさ、自然科学に興味があるの、人の趣味って分らないものね」
つかさ「いえ、別に趣味って訳じゃ……狐狩りの事を調べていたらこれに当たっただけです……」
かえで「そういえば聞いていたわね、狐狩りか……仕事以外の事に興味を持つのは良いわよ、自然科学にしたって全く無縁じゃないわ、料理につかう食材は自然の産物よね」
つかさ「そんな大袈裟では……ただ何となく……」
私はかえでさんが大事そうに両手で抱えている本を覗き込んだ。さっきのお返し。それは料理の専門書だった。
かえで「ああ、これね、コース料理に関しての著書よ、料理の組み合わせって結構難しいの」
かえでさんは私の正面の席に腰を下ろした。そして本を読み始めた。その顔は料理を作っている時のように真剣だった。
休日の図書館でかえでさんと会う確率ってどのくらいだろう。例え私と彼女が図書館に行ったとしても時間帯が違えば出会えないし、時間が同じでも同じ席に
行かないと会えない。そんなのは当たり前だけど……もしかしたら奇跡的な状況なのかもしれない。休日に二人で会うなんて、どちらかは必ず店に出勤しないといけなかった。
でも今はどちらもお休み。こうして二人で図書館に余暇を過ごしている、それも偶然に……今なら話せるかもしれない。お稲荷さんの事。
偶然の神様がそうしろと言っているみたい。
お稲荷さん、特にまなちゃんの話をすればかえでさんは辻さんの自殺を止めなかったまなちゃんを怒ると思っていた。今でもそう思う。
だけどそれは真実。やっぱり話さないといけない。これからの自分の為にも。
つかさ「かえでさん、これから大事なお話をしたいのですが……時間はいいですか」
かえでさんは本を閉じた。
かえで「何、急に改まって、大事な話って何よ?」
つかさ「ちょっと長くなる話なので……」
かえでさんは立ち上がった。
かえで「本を借りる手続きしてくるわ、ここで長話をしたら他人に迷惑よ……エントランスに行きましょう」
かえでさんは受付に向かった。私も受付に向かった。この本を全部読みたくなったから。
エントランスにある休憩用のベンチ、そこに私達は座った。そして私は話した。一人旅で出会った真奈美さんの話、その弟のひろしさんの話を。
私は町の図書館に居た。図書館……調理師の勉強をする時に利用してから全く行っていない。もちろんこの町の図書館も始めて。普段からそんなに本なんか読まない。
高校時代なんて図書室はもっぱらお喋りの場だった。高校時代か、卒業して三年も経っているなんて……ゆたかちゃん達も卒業してしまった……
もうあの学校……校舎、校庭、教室、懐かしいな……
「つかさ、つかさじゃない」
突然だった。聞き覚えのある声、その声の方を向くとかえでさんが立っていた。
つかさ「か、かえでさん、おはようございます」
かえで「おはよう、こんな所で会うなんて奇遇ね」
かえでさんは早速私の読んでいる本を覗き込んだ。
かえで「へぇ~つかさ、自然科学に興味があるの、人の趣味って分らないものね」
つかさ「いえ、別に趣味って訳じゃ……狐狩りの事を調べていたらこれに当たっただけです……」
かえで「そういえば聞いていたわね、狐狩りか……仕事以外の事に興味を持つのは良いわよ、自然科学にしたって全く無縁じゃないわ、料理につかう食材は自然の産物よね」
つかさ「そんな大袈裟では……ただ何となく……」
私はかえでさんが大事そうに両手で抱えている本を覗き込んだ。さっきのお返し。それは料理の専門書だった。
かえで「ああ、これね、コース料理に関しての著書よ、料理の組み合わせって結構難しいの」
かえでさんは私の正面の席に腰を下ろした。そして本を読み始めた。その顔は料理を作っている時のように真剣だった。
休日の図書館でかえでさんと会う確率ってどのくらいだろう。例え私と彼女が図書館に行ったとしても時間帯が違えば出会えないし、時間が同じでも同じ席に
行かないと会えない。そんなのは当たり前だけど……もしかしたら奇跡的な状況なのかもしれない。休日に二人で会うなんて、どちらかは必ず店に出勤しないといけなかった。
でも今はどちらもお休み。こうして二人で図書館に余暇を過ごしている、それも偶然に……今なら話せるかもしれない。お稲荷さんの事。
偶然の神様がそうしろと言っているみたい。
お稲荷さん、特にまなちゃんの話をすればかえでさんは辻さんの自殺を止めなかったまなちゃんを怒ると思っていた。今でもそう思う。
だけどそれは真実。やっぱり話さないといけない。これからの自分の為にも。
つかさ「かえでさん、これから大事なお話をしたいのですが……時間はいいですか」
かえでさんは本を閉じた。
かえで「何、急に改まって、大事な話って何よ?」
つかさ「ちょっと長くなる話なので……」
かえでさんは立ち上がった。
かえで「本を借りる手続きしてくるわ、ここで長話をしたら他人に迷惑よ……エントランスに行きましょう」
かえでさんは受付に向かった。私も受付に向かった。この本を全部読みたくなったから。
エントランスにある休憩用のベンチ、そこに私達は座った。そして私は話した。一人旅で出会った真奈美さんの話、その弟のひろしさんの話を。
661:つかさの旅 31/45:2012/01/09(月) 00:50:08.36:DlK6yebt0 (27/47)
始めはただ聞いていただけだった。だけど途中から目を閉じて私の話を聞いた。全て話し終わると涙を流していたような気がした。
かえで「何故もっと早く話してくれなかった……でもそれは今だから言えるのかもしれない……私が神社につかさを追った時の貴女の変わり様、
一回り大きくなって見えた……そんな出来事があったのね……かがみさんの変わり様もつかさの話なら納得できる……」
意外だった。こんなにすんなり私の話を受け入れるなんて……
つかさ「私の話を信じてくれるの……」
かえで「この町には狐の昔話が沢山言い伝えられていてね、私も子供の頃はよくおばあちゃんから聞いたものだわ……」
一番信じてもらえないと思っていた人だったのに……嬉しい誤算だった。
かえで「それでもつかさはひろしを愛しているの?」
つかさ「あ、愛してって……それは大袈裟かな……好きかもしれないけど……」
かえで「そうでなきゃ図書館でその本を読まないでしょう、あんな目に遭っても懲りない、恋は盲目とは良く言ったものね」
かえでさんは呆れるように溜め息をついた。
つかさ「やっぱりかえでさんもこなちゃんと同じなの?」
かえで「……普通に考えればそうなるわね……でも、つかさの気持ちも分からないわけではない、なにせかがみさんは何も言っていないのか、ひろしに口止めされたか、
真の呪術者に口止めされたか……呪いが解けても言えない何かがあるのかもね」
それが一番気になっていた。お姉ちゃんは呪いの事をほとんど話していない。
かえで「彼はつかさを殺せる機会を何度も逃している、最初につかさに声をかけた時、つかさの家に泊まった時、つかさの車に乗った時、神社で会った時……
つかさの話を聞いただけで四回もあるわ……本当に彼がつかさを憎むならとっくにつかさはこの世に居ない」
泊まった時私は無防備だった、それはゆきちゃんが言っていた。でもそれ以外は気付かなかった。そう言われるとそうかもしれない。
かえで「彼等の思考は私達人間と違うのかもしれない……つかさにかがみさんの死を見せるのが目的だったのかしら、違う何か深い理由がありそうね……あっ、ベラベラ勝手に
話してしまって……私の勝手な想像だから参考にしないで」
かえでさんの言う深い理由が知りたい。もしそれがあるなら。
かえで「いいえ、別にいいです……それより真奈美さんの事ですけど……」
かえで「真奈美さん……彼女が浩子の自殺を止めなかったから怒らないのかって?」
つかさ「え、あ、うん……」
私の思っているのを言い当てられてしまった。やっぱりそうだよね……普通はそうなるよね。
かえで「今更怒っても浩子は生き返らない、亡くなっている者に怒ったって空しいだけ、それに彼女はそれを後悔したのでしょ……そう思ってくれたのなら許すわよ……
彼女は仲間の怒りを鎮める為に自ら犠牲になった……これは真似できないわね、彼女には生きていて欲しかった……」
そう言ってくれると自分の事のように嬉しかった。
つかさ「ありがとう」
かえで「つかさがお礼を言ってどうするのよ」
つかさ「まなちゃんの代わりにお礼を……」
かえで「ふふ、本当に真奈美さんを慕っているわね、ほんの数日の出会いなのに……」
つかさ「かえでさんはまなちゃんより後に出会った、まなちゃんより短い出会いだった、だけどこうして私はこの町に住んでいる」
かえで「私もつかさがこの町に来てくれるとは思わなかった……不思議ね、」
何が切欠で親しくなるのかな、親子や兄弟でも仲が悪い場合だってあるよね。少なくとも会った回数や時間では決まらない。本当に不思議。
かえで「問題は今後よね……こうやって人中に居る限りは安全だけど……」
つかさ「大丈夫です……私、ひろしさんを信じていますから」
かえで「信じる……それを愛って言うのよ」
つかさ「え……」
かえでさんは溜め息をついた。
かえで「まったく……最後に惚気られたわ……その愛が彼に届くと良いわね……」
つかさ「うん」
愛なんて大袈裟だよ……
つかさ「それより狐狩りを止めさせたいけど……どうすれば良いのか分らなくて」
かえでさんは私の持っている本を見た。
かえで「それでその本を読んでいたのか……」
かえでさんは暫く考え込んだ。
かえで「狐狩りは止められないわ、彼らは遊びやレジャーでしている訳じゃない、中には生活がかかっている人もいる、『お稲荷さん』の存在を証明して理解させることは
事は皆無に等しい……つかさの話を聞いた私だって……ひろしと言う男性は何処から見ても人間だった」
つかさ「狼がいないから狐狩りをするようになったって、でも、その狼を滅ぼしたのは人間だよ」
かえで「そうね、それはどうしようもない現実、でもそれを全てつかさに押し付ける彼らのやり方も似たり寄ったりだわ、つかさは人間70億人の中の一人に過ぎない」
話のスケールが大きくなってしまって私は何をしていいのか分らなくなってしまった。
かえで「さてと、まるっきり役に立たない私が出来ることはお昼を奢るくらいかしら、この近くに美味しいパスタ屋さんがあるけど、どう?」
つかさ「え、お昼を……」
かえでさんは立ち上がった。
かえで「他店の味を見るのも勉強よ……なんて言わない、美味しい料理で楽しい会話でもしましょう」
かえでさんはにっこり微笑んだ。
つかさ「はい」
それからのかえでさんは帰るまでお稲荷さんの話をしなかった。良い解決策が無かった。それだけではない。せめて自分と一緒にいる時くらいは人間とお稲荷さんの呪われた
関係なんか忘れていなさい。かえでさんの笑顔と楽しい会話がそう言っているような気がした。
始めはただ聞いていただけだった。だけど途中から目を閉じて私の話を聞いた。全て話し終わると涙を流していたような気がした。
かえで「何故もっと早く話してくれなかった……でもそれは今だから言えるのかもしれない……私が神社につかさを追った時の貴女の変わり様、
一回り大きくなって見えた……そんな出来事があったのね……かがみさんの変わり様もつかさの話なら納得できる……」
意外だった。こんなにすんなり私の話を受け入れるなんて……
つかさ「私の話を信じてくれるの……」
かえで「この町には狐の昔話が沢山言い伝えられていてね、私も子供の頃はよくおばあちゃんから聞いたものだわ……」
一番信じてもらえないと思っていた人だったのに……嬉しい誤算だった。
かえで「それでもつかさはひろしを愛しているの?」
つかさ「あ、愛してって……それは大袈裟かな……好きかもしれないけど……」
かえで「そうでなきゃ図書館でその本を読まないでしょう、あんな目に遭っても懲りない、恋は盲目とは良く言ったものね」
かえでさんは呆れるように溜め息をついた。
つかさ「やっぱりかえでさんもこなちゃんと同じなの?」
かえで「……普通に考えればそうなるわね……でも、つかさの気持ちも分からないわけではない、なにせかがみさんは何も言っていないのか、ひろしに口止めされたか、
真の呪術者に口止めされたか……呪いが解けても言えない何かがあるのかもね」
それが一番気になっていた。お姉ちゃんは呪いの事をほとんど話していない。
かえで「彼はつかさを殺せる機会を何度も逃している、最初につかさに声をかけた時、つかさの家に泊まった時、つかさの車に乗った時、神社で会った時……
つかさの話を聞いただけで四回もあるわ……本当に彼がつかさを憎むならとっくにつかさはこの世に居ない」
泊まった時私は無防備だった、それはゆきちゃんが言っていた。でもそれ以外は気付かなかった。そう言われるとそうかもしれない。
かえで「彼等の思考は私達人間と違うのかもしれない……つかさにかがみさんの死を見せるのが目的だったのかしら、違う何か深い理由がありそうね……あっ、ベラベラ勝手に
話してしまって……私の勝手な想像だから参考にしないで」
かえでさんの言う深い理由が知りたい。もしそれがあるなら。
かえで「いいえ、別にいいです……それより真奈美さんの事ですけど……」
かえで「真奈美さん……彼女が浩子の自殺を止めなかったから怒らないのかって?」
つかさ「え、あ、うん……」
私の思っているのを言い当てられてしまった。やっぱりそうだよね……普通はそうなるよね。
かえで「今更怒っても浩子は生き返らない、亡くなっている者に怒ったって空しいだけ、それに彼女はそれを後悔したのでしょ……そう思ってくれたのなら許すわよ……
彼女は仲間の怒りを鎮める為に自ら犠牲になった……これは真似できないわね、彼女には生きていて欲しかった……」
そう言ってくれると自分の事のように嬉しかった。
つかさ「ありがとう」
かえで「つかさがお礼を言ってどうするのよ」
つかさ「まなちゃんの代わりにお礼を……」
かえで「ふふ、本当に真奈美さんを慕っているわね、ほんの数日の出会いなのに……」
つかさ「かえでさんはまなちゃんより後に出会った、まなちゃんより短い出会いだった、だけどこうして私はこの町に住んでいる」
かえで「私もつかさがこの町に来てくれるとは思わなかった……不思議ね、」
何が切欠で親しくなるのかな、親子や兄弟でも仲が悪い場合だってあるよね。少なくとも会った回数や時間では決まらない。本当に不思議。
かえで「問題は今後よね……こうやって人中に居る限りは安全だけど……」
つかさ「大丈夫です……私、ひろしさんを信じていますから」
かえで「信じる……それを愛って言うのよ」
つかさ「え……」
かえでさんは溜め息をついた。
かえで「まったく……最後に惚気られたわ……その愛が彼に届くと良いわね……」
つかさ「うん」
愛なんて大袈裟だよ……
つかさ「それより狐狩りを止めさせたいけど……どうすれば良いのか分らなくて」
かえでさんは私の持っている本を見た。
かえで「それでその本を読んでいたのか……」
かえでさんは暫く考え込んだ。
かえで「狐狩りは止められないわ、彼らは遊びやレジャーでしている訳じゃない、中には生活がかかっている人もいる、『お稲荷さん』の存在を証明して理解させることは
事は皆無に等しい……つかさの話を聞いた私だって……ひろしと言う男性は何処から見ても人間だった」
つかさ「狼がいないから狐狩りをするようになったって、でも、その狼を滅ぼしたのは人間だよ」
かえで「そうね、それはどうしようもない現実、でもそれを全てつかさに押し付ける彼らのやり方も似たり寄ったりだわ、つかさは人間70億人の中の一人に過ぎない」
話のスケールが大きくなってしまって私は何をしていいのか分らなくなってしまった。
かえで「さてと、まるっきり役に立たない私が出来ることはお昼を奢るくらいかしら、この近くに美味しいパスタ屋さんがあるけど、どう?」
つかさ「え、お昼を……」
かえでさんは立ち上がった。
かえで「他店の味を見るのも勉強よ……なんて言わない、美味しい料理で楽しい会話でもしましょう」
かえでさんはにっこり微笑んだ。
つかさ「はい」
それからのかえでさんは帰るまでお稲荷さんの話をしなかった。良い解決策が無かった。それだけではない。せめて自分と一緒にいる時くらいは人間とお稲荷さんの呪われた
関係なんか忘れていなさい。かえでさんの笑顔と楽しい会話がそう言っているような気がした。
662:つかさの旅 32/45:2012/01/09(月) 00:52:04.90:DlK6yebt0 (28/47)
そんな楽しい時間は直ぐに過ぎていった。かえでさんと別れて私は一人車を運転して家に向かっていた。一人で居るとやっぱりひろしさんやお稲荷さんの事で頭が
いっぱいになってしまう。今頃山奥では狐狩りが始まっているに違いない。私じゃ何も出来ない。そんなのは分っている。分っているけど……
あっ!!
歩道を歩いている四足動物の陰、犬、猫……違う、あれは狐だ。狐はすぐに歩道から草むらの中に入っていった。隠れた場所から少し離れて私は車を止めた。
私は辺りを見回した。ここはあのパワースポットの直ぐ近く。もしかしたら……
私はパワースポットに向かった。ゆっくりと岩に近づいた。岩の直ぐ傍に狐が座っている。気が付かないようにもっと近づいた。あの狐は……
まなちゃんとそっくりのあの姿、間違いないひろしさんだ。でもどうして狐の姿で居るのだろう。彼は岩に擦り寄っていた。もっと近づこうとしたら小枝を踏んだみたいだった。
『バキ!!』
折れる音が響いた。彼は音のする私の方を振り向いた。気付かれてしまった。隠れていても意味はない。私は彼の目の前に姿を見せた。すると彼は私に後ろを向けて
立ち去ろうとした。
つかさ「待って、ひろしさん、ひろしさんでしょ?」
彼はピタリと立ち止まり私を見た。間違いない。野生の狐がこんな行動をするはずは無い。間違いなくひろしさんだ。
つかさ「どうしてあんな事を……」
何もせず私を見ているだけだった。もしかしたら彼はまだ狐狩りの事を知らないのかも。
つかさ「それより、その姿でこの町をうろつくのは止めた方がいいよ、狐狩りをやっているから」
『ウー』
彼は牙を見せて唸りだした。眉間にしわをよせて私を睨んでいる。この姿は神社で見た大狐、お頭さんと同じ表情だった。私を襲わんとばかりだった。人間に対する憎しみなのか、
私に対する憎しみなのか。
つかさ「そうだよね、怒るよね、私もどうしていいか分らないよ……でも今までお店に来てくれたよね……また来て欲しかった」
私が一歩近づくと彼は一歩後退した。
つかさ「危ないから森の近くまで送ってあげる」
あれ、彼の身体が小刻みに震えだした。そしてその場に倒れてしまった。
つかさ「ひろしさん!」
私が近づいても彼は倒れたままだった。よく見てみると右の後ろ足から血が出ていた。慌ててハンカチを出して血を拭った。傷が丸くなっていて足を貫通しているみたいだった。
これってもしかして銃で……まさか狐狩りに遭ってしまった。まだ傷口から血が出てくる。私はハンカチを破って傷口を押さえて足を縛った。彼を抱きかかえて車に戻った。
彼を隣の席に乗せると車を走らせた。ハンカチから少しずつ血がにじみ出ている。帰ったらちゃんと手当てしないと。そういえば家に救急セットがあった。
駐車場に車を止めると私は荷物と彼を抱えて家に入った。
彼を居間のソファーにそっと寝かすと棚から救急セットを持ってきた。成実さんに教えてもらった応急処置……まだ誰にもしたことはない。しかも相手は狐……
でも躊躇している時間はない。私は教えてもらった通り応急処置を彼に施した。
包帯を巻く数が多すぎたかな。少し足が太くなって見える。巻き方も雑だったかもしれない。でもやれるだけの事はやった。彼はまだ意識が戻らないみたい。
そういえば何でパワースポットに来たのだろう。こんな大怪我でも癒す力があるのかな。お姉ちゃんから石の欠片の入ったお守りを貰ったのを思い出した。
どこにしまったかな……部屋を探した。
あった。お守りを包帯の上に置いてテープで固定した。これだと歩き難いかもしれない。でも血が止まるまでの包帯だから我慢してもらう。
彼の意識が戻ったのは私が夕ご飯の準備をしている時だった。彼はうつ伏せたまま頭を持ち上げてきょろきょろと周りを見ていた。ご飯の準備を止めて居間に移動した。
つかさ「気付いたみたいだね、この前来たから分るでしょ、私の家だよ……」
『ウー!!』
私を見るとまた唸りだした。
つかさ「そんなに力むと傷に障るよ」
彼は唸りを止めて自分の右足を見た。包帯でグルグル巻きになっていて重たそうだった。足を持ち上げてじっと見ていた。
つかさ「初めてだったからゴメンね、血が止まればもっと軽くできると思うよ」
私の言う事を無視するように彼は猫みたいに丸まって寝てしまった。
つかさ「今、ご飯作っているから……大好きないなり寿司だよ」
彼は全く無反応、丸まったままだった。だけど耳は私の方に向いているのが分った。私はそのまま台所に戻ってご飯の支度の続きをした。
つかさ「はい、ご飯が出来たよ」
お皿に数個のいなり寿司を彼の目の前に置いた。彼はチラっとお皿を見るとまた丸まってしまった。
つかさ「お腹が空いているでしょ……毒なんか入っていないよ」
全く食べようとしない。それならば、寿司を一個手にとって食べて見せた。
つかさ「わぁ~美味しい~自分でつくったのもなんだけど、今までの中で一番の出来だよ……」
『ゴク』
彼の喉から生唾を飲み込む音がした。食欲はあるみたい、ちょっと安心した。私はそのままそっと居間を出て自分の部屋に戻った。
大怪我すると人間に化けられない。まなちゃんがそうだった。あんな怪我で人間に化けていたから弱ってしまった。彼も足に大怪我しているから人間に化けられない。
あのまま放っておいたらいくらパワースポットのあの岩でも癒しきれないよ。野犬とかに襲われたらきっと死んでしまう。やっぱり連れてきて良かった。
明日も休みだから看病できるけど、明後日からどうしようかな。彼一人でお留守番になるけど、食事とおトイレだけ出来るようにすれば何とかなるかな。
今の彼は話すことは出来ないけど私の話は理解出来るみたいだから話してみよう。
30分位して居間に行ってみた。
彼はソファーに丸まって眠っていた。呼吸も落ち着いている。これは起こさない方がいいね。薄い毛布を彼にかけてあげた。気付くとお皿のいなり寿司が綺麗に無くなっていた。
お皿を手に取った。よっぽどお腹が空いていたみたい。私が見ていると食べないのかな。こなちゃんだったら「ツンデレ」って言うに違いない。
男性でもそう言うのかな……
音を立てないようにお皿を片付けた。そして台所から自分の夕食を持って部屋に戻った。
そんな楽しい時間は直ぐに過ぎていった。かえでさんと別れて私は一人車を運転して家に向かっていた。一人で居るとやっぱりひろしさんやお稲荷さんの事で頭が
いっぱいになってしまう。今頃山奥では狐狩りが始まっているに違いない。私じゃ何も出来ない。そんなのは分っている。分っているけど……
あっ!!
歩道を歩いている四足動物の陰、犬、猫……違う、あれは狐だ。狐はすぐに歩道から草むらの中に入っていった。隠れた場所から少し離れて私は車を止めた。
私は辺りを見回した。ここはあのパワースポットの直ぐ近く。もしかしたら……
私はパワースポットに向かった。ゆっくりと岩に近づいた。岩の直ぐ傍に狐が座っている。気が付かないようにもっと近づいた。あの狐は……
まなちゃんとそっくりのあの姿、間違いないひろしさんだ。でもどうして狐の姿で居るのだろう。彼は岩に擦り寄っていた。もっと近づこうとしたら小枝を踏んだみたいだった。
『バキ!!』
折れる音が響いた。彼は音のする私の方を振り向いた。気付かれてしまった。隠れていても意味はない。私は彼の目の前に姿を見せた。すると彼は私に後ろを向けて
立ち去ろうとした。
つかさ「待って、ひろしさん、ひろしさんでしょ?」
彼はピタリと立ち止まり私を見た。間違いない。野生の狐がこんな行動をするはずは無い。間違いなくひろしさんだ。
つかさ「どうしてあんな事を……」
何もせず私を見ているだけだった。もしかしたら彼はまだ狐狩りの事を知らないのかも。
つかさ「それより、その姿でこの町をうろつくのは止めた方がいいよ、狐狩りをやっているから」
『ウー』
彼は牙を見せて唸りだした。眉間にしわをよせて私を睨んでいる。この姿は神社で見た大狐、お頭さんと同じ表情だった。私を襲わんとばかりだった。人間に対する憎しみなのか、
私に対する憎しみなのか。
つかさ「そうだよね、怒るよね、私もどうしていいか分らないよ……でも今までお店に来てくれたよね……また来て欲しかった」
私が一歩近づくと彼は一歩後退した。
つかさ「危ないから森の近くまで送ってあげる」
あれ、彼の身体が小刻みに震えだした。そしてその場に倒れてしまった。
つかさ「ひろしさん!」
私が近づいても彼は倒れたままだった。よく見てみると右の後ろ足から血が出ていた。慌ててハンカチを出して血を拭った。傷が丸くなっていて足を貫通しているみたいだった。
これってもしかして銃で……まさか狐狩りに遭ってしまった。まだ傷口から血が出てくる。私はハンカチを破って傷口を押さえて足を縛った。彼を抱きかかえて車に戻った。
彼を隣の席に乗せると車を走らせた。ハンカチから少しずつ血がにじみ出ている。帰ったらちゃんと手当てしないと。そういえば家に救急セットがあった。
駐車場に車を止めると私は荷物と彼を抱えて家に入った。
彼を居間のソファーにそっと寝かすと棚から救急セットを持ってきた。成実さんに教えてもらった応急処置……まだ誰にもしたことはない。しかも相手は狐……
でも躊躇している時間はない。私は教えてもらった通り応急処置を彼に施した。
包帯を巻く数が多すぎたかな。少し足が太くなって見える。巻き方も雑だったかもしれない。でもやれるだけの事はやった。彼はまだ意識が戻らないみたい。
そういえば何でパワースポットに来たのだろう。こんな大怪我でも癒す力があるのかな。お姉ちゃんから石の欠片の入ったお守りを貰ったのを思い出した。
どこにしまったかな……部屋を探した。
あった。お守りを包帯の上に置いてテープで固定した。これだと歩き難いかもしれない。でも血が止まるまでの包帯だから我慢してもらう。
彼の意識が戻ったのは私が夕ご飯の準備をしている時だった。彼はうつ伏せたまま頭を持ち上げてきょろきょろと周りを見ていた。ご飯の準備を止めて居間に移動した。
つかさ「気付いたみたいだね、この前来たから分るでしょ、私の家だよ……」
『ウー!!』
私を見るとまた唸りだした。
つかさ「そんなに力むと傷に障るよ」
彼は唸りを止めて自分の右足を見た。包帯でグルグル巻きになっていて重たそうだった。足を持ち上げてじっと見ていた。
つかさ「初めてだったからゴメンね、血が止まればもっと軽くできると思うよ」
私の言う事を無視するように彼は猫みたいに丸まって寝てしまった。
つかさ「今、ご飯作っているから……大好きないなり寿司だよ」
彼は全く無反応、丸まったままだった。だけど耳は私の方に向いているのが分った。私はそのまま台所に戻ってご飯の支度の続きをした。
つかさ「はい、ご飯が出来たよ」
お皿に数個のいなり寿司を彼の目の前に置いた。彼はチラっとお皿を見るとまた丸まってしまった。
つかさ「お腹が空いているでしょ……毒なんか入っていないよ」
全く食べようとしない。それならば、寿司を一個手にとって食べて見せた。
つかさ「わぁ~美味しい~自分でつくったのもなんだけど、今までの中で一番の出来だよ……」
『ゴク』
彼の喉から生唾を飲み込む音がした。食欲はあるみたい、ちょっと安心した。私はそのままそっと居間を出て自分の部屋に戻った。
大怪我すると人間に化けられない。まなちゃんがそうだった。あんな怪我で人間に化けていたから弱ってしまった。彼も足に大怪我しているから人間に化けられない。
あのまま放っておいたらいくらパワースポットのあの岩でも癒しきれないよ。野犬とかに襲われたらきっと死んでしまう。やっぱり連れてきて良かった。
明日も休みだから看病できるけど、明後日からどうしようかな。彼一人でお留守番になるけど、食事とおトイレだけ出来るようにすれば何とかなるかな。
今の彼は話すことは出来ないけど私の話は理解出来るみたいだから話してみよう。
30分位して居間に行ってみた。
彼はソファーに丸まって眠っていた。呼吸も落ち着いている。これは起こさない方がいいね。薄い毛布を彼にかけてあげた。気付くとお皿のいなり寿司が綺麗に無くなっていた。
お皿を手に取った。よっぽどお腹が空いていたみたい。私が見ていると食べないのかな。こなちゃんだったら「ツンデレ」って言うに違いない。
男性でもそう言うのかな……
音を立てないようにお皿を片付けた。そして台所から自分の夕食を持って部屋に戻った。
663:つかさの旅 33/45:2012/01/09(月) 00:53:22.37:DlK6yebt0 (29/47)
次の日の朝、小鳥のさえずりで目覚めた。大きく背伸びをして起きた。今日はなんか清々しい。着替えて彼の様子を見に行くかな。居間の扉を開けた。
つかさ「おはよう、ひろしさん……」
彼はソファーを下りていた。下を向いている。何をしているのだろう。私は彼に近づいた。
つかさ「傷は痛まないの、まだ安静にしていないと……」
彼は床に本を広げていた。まさか読んでいたのだろうか。よく見ると昨日図書館で借りていた本だった。
つかさ「本を広げて、文字読めるの?」
『フン!!』
馬鹿にするなと言いたげな息遣いで返された。彼は前足で猫みたいに引っ掻いて頁を捲ろうとしているけどなかなかうまく捲れないみたいだった。その仕草が可愛く見えた。
私は彼のすぐ後ろに近づき本を一枚捲ってあげた。彼は食い入るように本を見ている。彼の目は文字を追っている。読んでいるみたいだった。
私も内容を読んでいると……丁度読み終えた所、オオカミが絶滅した頁だった。
つかさ「私も一緒に読んでいいかな……」
彼は少し移動してスペースを空けてくれた。私は彼の隣に座り本を読んだ。
本の内容は数々の種を絶滅に追いやった人類がいずれ同じ道をたどるだろうと警告をして終わっていた。
特に印象にのこったのは、昔、北アメリカに生息していたリョコウバト、彼らは当時数十億羽居たとされていたけど百年も経たないうちに乱獲によって絶滅してしまった。
あまりに呆気なく、弱い……生命ってこんなに脆いのかと思うほどだった。
滅ぼす者と滅ぼされる者、一緒に同じ本を読んでお互いに何を感じているのだろう。私は少なくとも彼等、お稲荷さんを滅ぼそうなんて思っていない。猟友会の人達だって
そうだよ。でも、リョウコウバトを狩っていた人達も同じように絶滅するなんて思っていなかった。でも気付いた時にはもう遅い……
私が本と閉じると彼は床に丸まって寝てしまった。
つかさ「ひろしさん……私達はどうすればいいのかな……」
彼は耳だけ動かしていただけだった。
気付くともうお昼近くになっていた。
つかさ「本に夢中になり過ぎた、お昼作るから待ってね」
私は台所に向かった。
つかさ「今日はパスタにしてみたよ……食べられるかな……」
トマトソースのスパゲッティ、彼が狐だったのをすっかり忘れていた。麺類は食べてくれるかな……彼の目の前に料理を置いた。彼はゆっくりと起き上がると匂いを嗅いだ。
そして器用に数本咥えるとスルスルと吸い込んだ。
つかさ「ふふ、今度は直ぐに食べてくれた」
私の問い掛けに反応せず黙々と食べていた。
つかさ「昨日、かえでさんと行ったパスタ屋さんで食べた物を真似たの、味はどう……私の店のメニューに加えてもいいかな、かえでさんと比べてどう?」
彼の食べる速度はどんどん上がっている。感想は聞けないけど彼の食べている姿を見ていると不味くはないみたいだった。私も彼の隣で同じパスタを食べた。
食べ終わるとまた同じように丸くなって寝てしまった。なんか同じ反応でちょっとイライラしてきた。
つかさ「唸らなくなったけど、まだ、私が憎い?」
彼は私を睨みつけた。眉間にしわを寄せて今にも唸りそうだった。
つかさ「私が人間だから、それとも、まなちゃんが私の代わりに亡くなったから……どっちなの?」
眉間のしわがとれて睨むだけになった。
つかさ「私が人間なのはどうすることも出来ない、だけどまなちゃんが亡くなったのは私のせいじゃないよ……まなちゃんが亡くなって悲しいのは私も同じだよ、
今だって思い出すと涙が……それだけは言いたかったから……」
私はパスタのお皿を台所に持って行った。そしてそのまま片付け始めた。あんな事いうつもりはなかった。あれじゃ余計に怒ってしまうかもしれない。
なんであんな事言っちゃったのかな。ああ、もうダメかもしれない。やっぱりお稲荷さんと理解し合うなんてできないよ。お姉ちゃんが言った辛いだけってこの事なのかも。
『ガタ!!』
何かが落ちる音がした。居間の方からだった。あきらさんがソファーから落ちたのかもしれない。台所から居間を覗いた。彼は床に伏せていた。身体全体が震えている。
傷口が開いてしまったのかな……違う、足は伸ばしたままで痛そうに見えない。顔を床に押し付けて顔を隠しているみたい……まさか、泣いているのかな。
人が泣いている姿に似ている。
まなちゃんを思い出しているのかもしれない。私がまなちゃんの事言ったから、思い出しちゃったかな。
ひろしさんはやっぱりまなちゃんを慕ってる。弟さんだから……
お姉ちゃんが亡くなったら私もあんな風になるかもしれない。私の場合三人もいるけど……何だろう……まだ皆生きているのに涙が出てきた。また会いたくなってしまった。
私も身体を震わせて泣いてしまった。
次の日の朝、小鳥のさえずりで目覚めた。大きく背伸びをして起きた。今日はなんか清々しい。着替えて彼の様子を見に行くかな。居間の扉を開けた。
つかさ「おはよう、ひろしさん……」
彼はソファーを下りていた。下を向いている。何をしているのだろう。私は彼に近づいた。
つかさ「傷は痛まないの、まだ安静にしていないと……」
彼は床に本を広げていた。まさか読んでいたのだろうか。よく見ると昨日図書館で借りていた本だった。
つかさ「本を広げて、文字読めるの?」
『フン!!』
馬鹿にするなと言いたげな息遣いで返された。彼は前足で猫みたいに引っ掻いて頁を捲ろうとしているけどなかなかうまく捲れないみたいだった。その仕草が可愛く見えた。
私は彼のすぐ後ろに近づき本を一枚捲ってあげた。彼は食い入るように本を見ている。彼の目は文字を追っている。読んでいるみたいだった。
私も内容を読んでいると……丁度読み終えた所、オオカミが絶滅した頁だった。
つかさ「私も一緒に読んでいいかな……」
彼は少し移動してスペースを空けてくれた。私は彼の隣に座り本を読んだ。
本の内容は数々の種を絶滅に追いやった人類がいずれ同じ道をたどるだろうと警告をして終わっていた。
特に印象にのこったのは、昔、北アメリカに生息していたリョコウバト、彼らは当時数十億羽居たとされていたけど百年も経たないうちに乱獲によって絶滅してしまった。
あまりに呆気なく、弱い……生命ってこんなに脆いのかと思うほどだった。
滅ぼす者と滅ぼされる者、一緒に同じ本を読んでお互いに何を感じているのだろう。私は少なくとも彼等、お稲荷さんを滅ぼそうなんて思っていない。猟友会の人達だって
そうだよ。でも、リョウコウバトを狩っていた人達も同じように絶滅するなんて思っていなかった。でも気付いた時にはもう遅い……
私が本と閉じると彼は床に丸まって寝てしまった。
つかさ「ひろしさん……私達はどうすればいいのかな……」
彼は耳だけ動かしていただけだった。
気付くともうお昼近くになっていた。
つかさ「本に夢中になり過ぎた、お昼作るから待ってね」
私は台所に向かった。
つかさ「今日はパスタにしてみたよ……食べられるかな……」
トマトソースのスパゲッティ、彼が狐だったのをすっかり忘れていた。麺類は食べてくれるかな……彼の目の前に料理を置いた。彼はゆっくりと起き上がると匂いを嗅いだ。
そして器用に数本咥えるとスルスルと吸い込んだ。
つかさ「ふふ、今度は直ぐに食べてくれた」
私の問い掛けに反応せず黙々と食べていた。
つかさ「昨日、かえでさんと行ったパスタ屋さんで食べた物を真似たの、味はどう……私の店のメニューに加えてもいいかな、かえでさんと比べてどう?」
彼の食べる速度はどんどん上がっている。感想は聞けないけど彼の食べている姿を見ていると不味くはないみたいだった。私も彼の隣で同じパスタを食べた。
食べ終わるとまた同じように丸くなって寝てしまった。なんか同じ反応でちょっとイライラしてきた。
つかさ「唸らなくなったけど、まだ、私が憎い?」
彼は私を睨みつけた。眉間にしわを寄せて今にも唸りそうだった。
つかさ「私が人間だから、それとも、まなちゃんが私の代わりに亡くなったから……どっちなの?」
眉間のしわがとれて睨むだけになった。
つかさ「私が人間なのはどうすることも出来ない、だけどまなちゃんが亡くなったのは私のせいじゃないよ……まなちゃんが亡くなって悲しいのは私も同じだよ、
今だって思い出すと涙が……それだけは言いたかったから……」
私はパスタのお皿を台所に持って行った。そしてそのまま片付け始めた。あんな事いうつもりはなかった。あれじゃ余計に怒ってしまうかもしれない。
なんであんな事言っちゃったのかな。ああ、もうダメかもしれない。やっぱりお稲荷さんと理解し合うなんてできないよ。お姉ちゃんが言った辛いだけってこの事なのかも。
『ガタ!!』
何かが落ちる音がした。居間の方からだった。あきらさんがソファーから落ちたのかもしれない。台所から居間を覗いた。彼は床に伏せていた。身体全体が震えている。
傷口が開いてしまったのかな……違う、足は伸ばしたままで痛そうに見えない。顔を床に押し付けて顔を隠しているみたい……まさか、泣いているのかな。
人が泣いている姿に似ている。
まなちゃんを思い出しているのかもしれない。私がまなちゃんの事言ったから、思い出しちゃったかな。
ひろしさんはやっぱりまなちゃんを慕ってる。弟さんだから……
お姉ちゃんが亡くなったら私もあんな風になるかもしれない。私の場合三人もいるけど……何だろう……まだ皆生きているのに涙が出てきた。また会いたくなってしまった。
私も身体を震わせて泣いてしまった。
664:つかさの旅 34/45:2012/01/09(月) 00:55:01.09:DlK6yebt0 (30/47)
かえで「……これはこの前のパスタ屋さんの……」
つかさ「そうだよ、ちょっとアレンジしてみたけど……うちの店ってまだパスタが無かったから、新メニューにと思って……」
お昼を少し過ぎた頃、賄いで作ったスパゲッティ、もちろんかえでさんには初めて食べてもらった。彼女の反応を待った。
かえで「……美味しい、確かに美味しいけど、うちの店では出せないわ」
つかさ「え、どうして、美味しいって言ったのに……」
かえで「これじゃあの店の味だって分ってしまう、はっきり言えば向こうの店の方が味は上よ」
自信はあった。だけどアレンジしたとは言っても所詮真似をしたのは変わらない。難しいな……
かえで「たった一回行っただけであの味を理解する所は流石だわ、もう少し研究が必要ね」
かえでさんは綺麗にパスタを食べた。私はその皿を持って厨房に戻った。そして、しばらくするとかえでさんが来た。
かえで「つかさ、最近積極的ね……何かいい事でもあったの?」
つかさ「べ、別にいい事なんか……」
かえで「相変わらず彼氏は来ていないみたいだけど……それとは関係なさそうね」
ひろしさんが家にいる事はかえでさんにはまだ話していない。話せば多分反対するような気がしたから。
もう怪我の彼を家に連れてきてから一週間が経った。最近になって彼はもう唸ったりはしなくなった。
包帯も素直に取り替えさせてくれるし、ご飯も美味しそうに食べるようになった。でも、相変わらずすぐ丸まって寝てしまう。
足を怪我しているのを考えればそれしかする事ないので仕方がない。足の怪我はだいぶ良くなった。でも何かおかしい、血は止まったけど傷口が全然小さくならない。
銃弾の傷だから治りが遅いのかな。人間とお稲荷さんとでは治る早さが違うのか。少し心配だな。
かえで「もう少しで狩りの期間は終わるわね、その後は注意しなさい、何なら私が家まで送っても良いわよ」
つかさ「あ、大丈夫ですよ、もう家に、あぇ、あ……なんでもないです」
かえで「なに、噛んでるのよ」
危ない、危ない、もう少しで言ってしまう所だった。
つかさ「心配しなくても大丈夫です」
かえで「……つかさが大丈夫でもね、私は家族から大事な娘、妹、を預かっている責任があるのよ」
つかさ「本当に大丈夫ですから」
かえで「どこからそんな自信がでてくるのか……意外と強情な所があるわね、かがみさんの妹ってことか……」
呆れるかえでさんだった。こうしてあっと言う間の一日が過ぎていった。
つかさ「お先に失礼します……」
スタッフ「お疲れ様」
一日の仕事を終え、更衣室で着替えている時だった。かえでさんが部屋に入ってきた。
かえで「つかさ、お昼の賄い料理……あれは他人に出すのは私達が初めてではないでしょ?」
つかさ「え、初めてじゃないって……」
かえで「料理は他人に食べてもらって味が変わっていくものよ、あのパスタの味はつかさの味付けとは違っていた」
つかさ「い、いろいろアレンジしたから……」
かえで「誰かに食べさせているでしょ……つかさは一人暮らしのはずだったわね、誰かと同居でもしているの?」
かえでさんはじっと私を見ていた。
つかさ「えっと、だ、誰も居ないよ……」
かえで「つかさ、私の目を見て答えなさい」
まさか、ひろしさんと一緒に居るのがバレてしまった。そんな筈はない。誰にも話していないし、見られてもいないのに。
何故かかえでさんの目を見て答えられなかった。
かえで「まさかとは思ったけど、同棲していたなんて」
私はかえでさんの目を見て話した。
つかさ「ど、同棲なんて、怪我をしていたから、歩けそうになかったし、彼は人間には化けられないから同棲じゃない……」
かえでさんは溜め息をついた。
かえで「ふぅ、やっぱり」
つかさ「え?」
しまった。と思った時には遅かった。いつの間にか本当の事を話してしまった。
かえで「つかさ、彼のした事を忘れた訳じゃないでしょ」
何も言えない。そんな私を諭すように話し始めた。
かえで「彼らと理解し合うなんて妄想はもう捨てなさい、コソコソ隠れて住んでいる必要があるのよ、分ってもらいたいのなら堂々と表に出て主張すればいい、
彼等の境遇は自業自得よ、彼にいたってはかがみさんを苦しめて、つかさを殺そうとしたのよ、逆恨だわ」
つかさ「彼が狐の姿になっているなら私を殺すなんてできよ、私の方が大きいし力だって……」
かえで「もし、彼が狐と同じ力だったら、首元を牙で噛み付けばすればあっと言う間にあの世行きよ、怪我の完治をまっているだけ」
つかさ「私、信じているだけだから、かえでさんの話が本当でも私の気持ちは変わらないよ、今更彼を追い出すなんてできないよ、そんな事より傷が全然良くならない、
追い出したらきっと直ぐに死んじゃう……野犬に襲われるかも、狐狩りにまた遭うかもしれない、そんなの……できないよ……」
自然と涙が出ていた。私の目をかえでさんはじっと見ていた。
かえで「……どうやらつかさの気持ちは本物のようね……それが知りたかっただけ、ごめんなさい、もう私は何も言わない……傷、早く治ると良いわね……お疲れ様」
かえでさんは部屋を出た。
かえで「……これはこの前のパスタ屋さんの……」
つかさ「そうだよ、ちょっとアレンジしてみたけど……うちの店ってまだパスタが無かったから、新メニューにと思って……」
お昼を少し過ぎた頃、賄いで作ったスパゲッティ、もちろんかえでさんには初めて食べてもらった。彼女の反応を待った。
かえで「……美味しい、確かに美味しいけど、うちの店では出せないわ」
つかさ「え、どうして、美味しいって言ったのに……」
かえで「これじゃあの店の味だって分ってしまう、はっきり言えば向こうの店の方が味は上よ」
自信はあった。だけどアレンジしたとは言っても所詮真似をしたのは変わらない。難しいな……
かえで「たった一回行っただけであの味を理解する所は流石だわ、もう少し研究が必要ね」
かえでさんは綺麗にパスタを食べた。私はその皿を持って厨房に戻った。そして、しばらくするとかえでさんが来た。
かえで「つかさ、最近積極的ね……何かいい事でもあったの?」
つかさ「べ、別にいい事なんか……」
かえで「相変わらず彼氏は来ていないみたいだけど……それとは関係なさそうね」
ひろしさんが家にいる事はかえでさんにはまだ話していない。話せば多分反対するような気がしたから。
もう怪我の彼を家に連れてきてから一週間が経った。最近になって彼はもう唸ったりはしなくなった。
包帯も素直に取り替えさせてくれるし、ご飯も美味しそうに食べるようになった。でも、相変わらずすぐ丸まって寝てしまう。
足を怪我しているのを考えればそれしかする事ないので仕方がない。足の怪我はだいぶ良くなった。でも何かおかしい、血は止まったけど傷口が全然小さくならない。
銃弾の傷だから治りが遅いのかな。人間とお稲荷さんとでは治る早さが違うのか。少し心配だな。
かえで「もう少しで狩りの期間は終わるわね、その後は注意しなさい、何なら私が家まで送っても良いわよ」
つかさ「あ、大丈夫ですよ、もう家に、あぇ、あ……なんでもないです」
かえで「なに、噛んでるのよ」
危ない、危ない、もう少しで言ってしまう所だった。
つかさ「心配しなくても大丈夫です」
かえで「……つかさが大丈夫でもね、私は家族から大事な娘、妹、を預かっている責任があるのよ」
つかさ「本当に大丈夫ですから」
かえで「どこからそんな自信がでてくるのか……意外と強情な所があるわね、かがみさんの妹ってことか……」
呆れるかえでさんだった。こうしてあっと言う間の一日が過ぎていった。
つかさ「お先に失礼します……」
スタッフ「お疲れ様」
一日の仕事を終え、更衣室で着替えている時だった。かえでさんが部屋に入ってきた。
かえで「つかさ、お昼の賄い料理……あれは他人に出すのは私達が初めてではないでしょ?」
つかさ「え、初めてじゃないって……」
かえで「料理は他人に食べてもらって味が変わっていくものよ、あのパスタの味はつかさの味付けとは違っていた」
つかさ「い、いろいろアレンジしたから……」
かえで「誰かに食べさせているでしょ……つかさは一人暮らしのはずだったわね、誰かと同居でもしているの?」
かえでさんはじっと私を見ていた。
つかさ「えっと、だ、誰も居ないよ……」
かえで「つかさ、私の目を見て答えなさい」
まさか、ひろしさんと一緒に居るのがバレてしまった。そんな筈はない。誰にも話していないし、見られてもいないのに。
何故かかえでさんの目を見て答えられなかった。
かえで「まさかとは思ったけど、同棲していたなんて」
私はかえでさんの目を見て話した。
つかさ「ど、同棲なんて、怪我をしていたから、歩けそうになかったし、彼は人間には化けられないから同棲じゃない……」
かえでさんは溜め息をついた。
かえで「ふぅ、やっぱり」
つかさ「え?」
しまった。と思った時には遅かった。いつの間にか本当の事を話してしまった。
かえで「つかさ、彼のした事を忘れた訳じゃないでしょ」
何も言えない。そんな私を諭すように話し始めた。
かえで「彼らと理解し合うなんて妄想はもう捨てなさい、コソコソ隠れて住んでいる必要があるのよ、分ってもらいたいのなら堂々と表に出て主張すればいい、
彼等の境遇は自業自得よ、彼にいたってはかがみさんを苦しめて、つかさを殺そうとしたのよ、逆恨だわ」
つかさ「彼が狐の姿になっているなら私を殺すなんてできよ、私の方が大きいし力だって……」
かえで「もし、彼が狐と同じ力だったら、首元を牙で噛み付けばすればあっと言う間にあの世行きよ、怪我の完治をまっているだけ」
つかさ「私、信じているだけだから、かえでさんの話が本当でも私の気持ちは変わらないよ、今更彼を追い出すなんてできないよ、そんな事より傷が全然良くならない、
追い出したらきっと直ぐに死んじゃう……野犬に襲われるかも、狐狩りにまた遭うかもしれない、そんなの……できないよ……」
自然と涙が出ていた。私の目をかえでさんはじっと見ていた。
かえで「……どうやらつかさの気持ちは本物のようね……それが知りたかっただけ、ごめんなさい、もう私は何も言わない……傷、早く治ると良いわね……お疲れ様」
かえでさんは部屋を出た。
665:つかさの旅 35/45:2012/01/09(月) 00:56:37.37:DlK6yebt0 (31/47)
家に戻った私は晩御飯の支度をした。相変わらず彼は居間で丸まって寝ていた。食事の支度をほぼ終わるといつもの包帯の交換の時間。
つかさ「食事の前に包帯交換しよう」
彼は包帯の付いた足を私の前に出した。私は包帯を取る。
つかさ「ひろしさん達は何故人間と一緒に住もうとは思わないの、お稲荷様と言われた時代もあったってまなちゃんは言っていたよ、現代でもお稲荷さんの術は役に立つと
思うけど……それに狐狩りで撃たれる事もなくなるし……良いと思わない?」
彼は寝たまま何も反応しない。だけど耳は私の方を向いている。聞いているのは分った。私はそのまま話し続けた。
つかさ「私ね、オオカミに化けてね、鹿とか、猪を狩ってみたらどうかなって思ってる、滅びたオオカミが復活すれば人間だって大事にするし、狐狩りだってわざわざしないで
済むよね……ねぇ、聞いているんでしょ、どうかな?」
『フッフッフッ!!』
荒い息づかいと共に彼の身体が小刻みに揺れている。前足をバンバン床に何度も叩きつけていた。すぐに分った。彼は笑っている。
つかさ「あー、笑ってる……私これでも一週間ずっと考えていた事なのに……」
付け焼刃の考えじゃ笑われてもしょうがないか。ゆきちゃんならどんな考えをするかな……
『バリバリ』
包帯が傷口から剥がれる音がした。
『キャン!!』
彼が痛そうに足を引っ込めた。
つかさ「ご、ごめん、ごめん、もう痛くしないから」
足を見ると傷口から膿が出ていた。今まで膿なんか出ていなかった。包帯が傷にへばり付いていたのは膿のせいだ。脱脂綿で膿を綺麗にふき取って包帯を巻き直した。
つかさ「傷口が悪化しているよ……私は素人だからこんな事しか出来ない、獣医さんに見てもらうのはダメかな?」
彼は首を横に振った。
つかさ「それじゃ、化膿止めのお薬買ってくる」
私が立ち上がると彼は靴下を噛んで止めた。
つかさ「何で、このままだとバイ菌が入って病気になっちゃうよ」
彼は靴下を咥えたまま何度も首を横に振って断った。
つかさ「どうして、せっかく治療してもこのままだと意味がないよ、もうまなちゃんみたいに見ているだけなんて、やだ」
彼は口を放してくれた。
つかさ「ご飯は薬を買ってきてからね」
薬も飲んだ。パワーストーンの力もある。だけど傷は膿み、腫れていく。食事はしているけどどんどん体が細くなっていった。このままだとひろしさんは死んでしまう。
きっとお稲荷さん本人なら治療法は知っている。そう思った私は彼との会話方法を考えた。
つかさ「ひろしさん、これを見てくれる?」
一枚の紙を彼の目の前に出した。そこには平仮名五十音が書いてある。真ん中には、はいといいえ、端には数字……こっくりさんをイメージして書いた。
つかさ「この紙で私の質問に答えて」
彼は暫く紙を見ると前足をゆっくりだして『はい』と書いてある文字の上に置いた。よかった、意味を理解してくれた。
つかさ「傷を治したいの、ひろしさんなら知っているよね、治療方法」
彼の前足はゆっくり『いいえ』の上に動いた。知らない……どうすればいいのか分らない。するとひろしさんは勝手に前足を動かし始めた。私は彼の足を目で追った。
『つ・か・さ・が・に・く・い・こ・ろ・し・て・や・る』
動かし終わると前足を引いてしまった。
つかさ「そんなのはもうとっくに知っているよ、それだったら何でもっと元気なときにしなかったの、いくらでもチャンスはあってでしょ、かえでさんが言っていたよ、
その牙があれば私を噛み殺せるって、私を殺したいのならまず元気になってよ」
彼は私の顔をしばらく見てからゆっくりと前足を紙の上に動かした。
「よもぎ」「おおば」「どくだみ」「とかげのしっぽ」と動かした。
つかさ「これだけ用意すればいいの?」
彼の前足は「はい」の上だった。
つかさ「最初の三つは野草だよね……四つ目の「とかげのしっぽ」って何、トカゲならなんでもいいの?」
彼の前足は「はい」のまま動かない。
つかさ「トカゲなんて何処に居るの……気持ち悪いし……噛むでしょ……」
彼はまたうつ伏せになってしまった。自分で何とかしろと言っているみたいだった。
家に戻った私は晩御飯の支度をした。相変わらず彼は居間で丸まって寝ていた。食事の支度をほぼ終わるといつもの包帯の交換の時間。
つかさ「食事の前に包帯交換しよう」
彼は包帯の付いた足を私の前に出した。私は包帯を取る。
つかさ「ひろしさん達は何故人間と一緒に住もうとは思わないの、お稲荷様と言われた時代もあったってまなちゃんは言っていたよ、現代でもお稲荷さんの術は役に立つと
思うけど……それに狐狩りで撃たれる事もなくなるし……良いと思わない?」
彼は寝たまま何も反応しない。だけど耳は私の方を向いている。聞いているのは分った。私はそのまま話し続けた。
つかさ「私ね、オオカミに化けてね、鹿とか、猪を狩ってみたらどうかなって思ってる、滅びたオオカミが復活すれば人間だって大事にするし、狐狩りだってわざわざしないで
済むよね……ねぇ、聞いているんでしょ、どうかな?」
『フッフッフッ!!』
荒い息づかいと共に彼の身体が小刻みに揺れている。前足をバンバン床に何度も叩きつけていた。すぐに分った。彼は笑っている。
つかさ「あー、笑ってる……私これでも一週間ずっと考えていた事なのに……」
付け焼刃の考えじゃ笑われてもしょうがないか。ゆきちゃんならどんな考えをするかな……
『バリバリ』
包帯が傷口から剥がれる音がした。
『キャン!!』
彼が痛そうに足を引っ込めた。
つかさ「ご、ごめん、ごめん、もう痛くしないから」
足を見ると傷口から膿が出ていた。今まで膿なんか出ていなかった。包帯が傷にへばり付いていたのは膿のせいだ。脱脂綿で膿を綺麗にふき取って包帯を巻き直した。
つかさ「傷口が悪化しているよ……私は素人だからこんな事しか出来ない、獣医さんに見てもらうのはダメかな?」
彼は首を横に振った。
つかさ「それじゃ、化膿止めのお薬買ってくる」
私が立ち上がると彼は靴下を噛んで止めた。
つかさ「何で、このままだとバイ菌が入って病気になっちゃうよ」
彼は靴下を咥えたまま何度も首を横に振って断った。
つかさ「どうして、せっかく治療してもこのままだと意味がないよ、もうまなちゃんみたいに見ているだけなんて、やだ」
彼は口を放してくれた。
つかさ「ご飯は薬を買ってきてからね」
薬も飲んだ。パワーストーンの力もある。だけど傷は膿み、腫れていく。食事はしているけどどんどん体が細くなっていった。このままだとひろしさんは死んでしまう。
きっとお稲荷さん本人なら治療法は知っている。そう思った私は彼との会話方法を考えた。
つかさ「ひろしさん、これを見てくれる?」
一枚の紙を彼の目の前に出した。そこには平仮名五十音が書いてある。真ん中には、はいといいえ、端には数字……こっくりさんをイメージして書いた。
つかさ「この紙で私の質問に答えて」
彼は暫く紙を見ると前足をゆっくりだして『はい』と書いてある文字の上に置いた。よかった、意味を理解してくれた。
つかさ「傷を治したいの、ひろしさんなら知っているよね、治療方法」
彼の前足はゆっくり『いいえ』の上に動いた。知らない……どうすればいいのか分らない。するとひろしさんは勝手に前足を動かし始めた。私は彼の足を目で追った。
『つ・か・さ・が・に・く・い・こ・ろ・し・て・や・る』
動かし終わると前足を引いてしまった。
つかさ「そんなのはもうとっくに知っているよ、それだったら何でもっと元気なときにしなかったの、いくらでもチャンスはあってでしょ、かえでさんが言っていたよ、
その牙があれば私を噛み殺せるって、私を殺したいのならまず元気になってよ」
彼は私の顔をしばらく見てからゆっくりと前足を紙の上に動かした。
「よもぎ」「おおば」「どくだみ」「とかげのしっぽ」と動かした。
つかさ「これだけ用意すればいいの?」
彼の前足は「はい」の上だった。
つかさ「最初の三つは野草だよね……四つ目の「とかげのしっぽ」って何、トカゲならなんでもいいの?」
彼の前足は「はい」のまま動かない。
つかさ「トカゲなんて何処に居るの……気持ち悪いし……噛むでしょ……」
彼はまたうつ伏せになってしまった。自分で何とかしろと言っているみたいだった。
666:つかさの旅 35/45:2012/01/09(月) 00:58:06.57:DlK6yebt0 (32/47)
かえで「トカゲが何処に居るかって……なんでトカゲなんか……」
つかさ「トカゲの尻尾が欲しくて……」
目を大きくして驚くかえでさん。次の日、私は店に出勤するなり一番にかえでさんに聞いた。
かえで「トカゲの尻尾なんて何に使うのよ……」
つかさ「え、漢方で使う……」
かえでさんは察したのか尻尾の質問はしなくなった。
かえで「この店と旅館の間にある石の隙間に居たかな……掃除すると必ず数匹は出てくるわよ、すばしっこいから捕まえるのは大変よ、もっとも尻尾だけが欲しいのなら
尻尾を掴めばしっぽが取れるから……」
つかさ「え、と、取れちゃうの」
かえで「そうよ、取れるとウネウネ動いて尻尾に気を取られた隙に本体が逃げるって訳」
つかさ「ウネウネ……」
かえで「あらあら、まだ見ても居ないのに尻込みしちゃって……」
笑いながらかえでさんは話している。
かえで「生魚やイカ、蛸だと思っていれば掴めるわよ、トカゲは歯が無いから噛まれても痛くないわ……頑張って!!」
つかさ「うん、頑張る……」
かえでさん笑っていたけど、トカゲを掴んだ事あるのかな……イカやタコが生きているものをさばいた事なんてない。
かえでさんの言われた店と旅館の間にある石……小石、大きな石がゴロゴロと沢山あった。一体どれがトカゲの出る石なのだろう。とりあえず掃除をしよう。
ほうきで地面を掃きだした。10分くらい経っただろうか。石の陰からカサカサと何かが出てきた。四本足で身体がキラキラと光っているトカゲだ。
私と目が合うと一目散に逃げ出した。ほうきで叩けば捕まえられそうだけどトカゲが死んでしまう。やっぱり手で捕まえるしかない。私も小走りでトカゲを追いかけた。
射程距離に入った。このまま屈んで捕まえよう
つかさ「えい!!」
目を閉じ、全体重をかけてトカゲ目掛けて両手を出した。
『バン』
地面と手が当たる音がした。恐る恐る目を開けた。右手の人差し指にトカゲの尻尾が挟まっていた。トカゲは逃げようと必死に足をバタバタさせている。
トカゲが引っ張るので尻尾がピーンと張っている。そのうちポロリと音も無く尻尾が取れた。その時、尻尾が突然暴れだした。私は思わず手を引いた。
尻尾がクネクネと動いている……気持ち悪くて取る事が出来なかった。気付くとトカゲは何処かに逃げてしまった。
暫くすると尻尾は動かなくなった。ゆっくりと指でツンツンしてみた。またウネウネと動き出す……そんな事を数回繰り返した。
動かなくなった尻尾を袋に入れて店に戻った。
ヨモギ、オオバ、ドクダミは店の空き地に生えているので直ぐに手に入った。
本当にこんな物で彼は元気になるのだろうか。でも元気になったら私は……
彼は本気で私を殺すのかな。だったら何で今まで何もしなかったのだろうか。怪我の治療をしているから。それしか考えられない。私が死んだら怪我の治療は誰も出来ないから。
私のやっている事って自殺行為なのかもしれない。はっきりと私が憎いって言われちゃったし……
今なら彼は弱っている。そのまま外に放り出してしまっても彼は抵抗できない……そうすれば私は殺されずにすむよね……
バカバカ何を考えているの。そんな事をしたら私が彼を殺してしまうようなもの。私は彼を憎んでいない。
旅館でお姉ちゃんを助けてくれた。あれは嘘や演技じゃ出来ない。そうだよ、私はそう感じた。誰がなんて言われようとそう思った。正しいと思ったから……
かえで「つかさ、もう時間よ……」
ハッと気が付き時計を見ると私の勤務時間は過ぎていた。
つかさ「あ、もうこんな時間……」
かえで「早く帰って漢方を処方するのでしょ」
つかさ「薬の作り方は全く分らない、彼が教えてくれると思う」
かえで「どうやって話すのよ、狐の姿だと喋られないって……」
つかさ「紙に文字を書いて彼が前足で指すの……こっくりさんって知ってる?」
かえで「こっくり……ああ、あれね、中学の頃やったわ……」
つかさ「それじゃお先に失礼します」
かえで「お疲れ様」
私は急いで更衣室に向かった。
かえで「トカゲが何処に居るかって……なんでトカゲなんか……」
つかさ「トカゲの尻尾が欲しくて……」
目を大きくして驚くかえでさん。次の日、私は店に出勤するなり一番にかえでさんに聞いた。
かえで「トカゲの尻尾なんて何に使うのよ……」
つかさ「え、漢方で使う……」
かえでさんは察したのか尻尾の質問はしなくなった。
かえで「この店と旅館の間にある石の隙間に居たかな……掃除すると必ず数匹は出てくるわよ、すばしっこいから捕まえるのは大変よ、もっとも尻尾だけが欲しいのなら
尻尾を掴めばしっぽが取れるから……」
つかさ「え、と、取れちゃうの」
かえで「そうよ、取れるとウネウネ動いて尻尾に気を取られた隙に本体が逃げるって訳」
つかさ「ウネウネ……」
かえで「あらあら、まだ見ても居ないのに尻込みしちゃって……」
笑いながらかえでさんは話している。
かえで「生魚やイカ、蛸だと思っていれば掴めるわよ、トカゲは歯が無いから噛まれても痛くないわ……頑張って!!」
つかさ「うん、頑張る……」
かえでさん笑っていたけど、トカゲを掴んだ事あるのかな……イカやタコが生きているものをさばいた事なんてない。
かえでさんの言われた店と旅館の間にある石……小石、大きな石がゴロゴロと沢山あった。一体どれがトカゲの出る石なのだろう。とりあえず掃除をしよう。
ほうきで地面を掃きだした。10分くらい経っただろうか。石の陰からカサカサと何かが出てきた。四本足で身体がキラキラと光っているトカゲだ。
私と目が合うと一目散に逃げ出した。ほうきで叩けば捕まえられそうだけどトカゲが死んでしまう。やっぱり手で捕まえるしかない。私も小走りでトカゲを追いかけた。
射程距離に入った。このまま屈んで捕まえよう
つかさ「えい!!」
目を閉じ、全体重をかけてトカゲ目掛けて両手を出した。
『バン』
地面と手が当たる音がした。恐る恐る目を開けた。右手の人差し指にトカゲの尻尾が挟まっていた。トカゲは逃げようと必死に足をバタバタさせている。
トカゲが引っ張るので尻尾がピーンと張っている。そのうちポロリと音も無く尻尾が取れた。その時、尻尾が突然暴れだした。私は思わず手を引いた。
尻尾がクネクネと動いている……気持ち悪くて取る事が出来なかった。気付くとトカゲは何処かに逃げてしまった。
暫くすると尻尾は動かなくなった。ゆっくりと指でツンツンしてみた。またウネウネと動き出す……そんな事を数回繰り返した。
動かなくなった尻尾を袋に入れて店に戻った。
ヨモギ、オオバ、ドクダミは店の空き地に生えているので直ぐに手に入った。
本当にこんな物で彼は元気になるのだろうか。でも元気になったら私は……
彼は本気で私を殺すのかな。だったら何で今まで何もしなかったのだろうか。怪我の治療をしているから。それしか考えられない。私が死んだら怪我の治療は誰も出来ないから。
私のやっている事って自殺行為なのかもしれない。はっきりと私が憎いって言われちゃったし……
今なら彼は弱っている。そのまま外に放り出してしまっても彼は抵抗できない……そうすれば私は殺されずにすむよね……
バカバカ何を考えているの。そんな事をしたら私が彼を殺してしまうようなもの。私は彼を憎んでいない。
旅館でお姉ちゃんを助けてくれた。あれは嘘や演技じゃ出来ない。そうだよ、私はそう感じた。誰がなんて言われようとそう思った。正しいと思ったから……
かえで「つかさ、もう時間よ……」
ハッと気が付き時計を見ると私の勤務時間は過ぎていた。
つかさ「あ、もうこんな時間……」
かえで「早く帰って漢方を処方するのでしょ」
つかさ「薬の作り方は全く分らない、彼が教えてくれると思う」
かえで「どうやって話すのよ、狐の姿だと喋られないって……」
つかさ「紙に文字を書いて彼が前足で指すの……こっくりさんって知ってる?」
かえで「こっくり……ああ、あれね、中学の頃やったわ……」
つかさ「それじゃお先に失礼します」
かえで「お疲れ様」
私は急いで更衣室に向かった。
667:つかさの旅 36/45:2012/01/09(月) 00:59:40.42:DlK6yebt0 (33/47)
つかさ「ただいま!!」
家に帰ると早速彼に集めた材料を見せた。彼は重たそうに身体を持ち上げると私の持ってきた材料を嗅ぎ始めた。昨日よりも辛そうだった。
確実に弱ってきている。早くこの薬を完成させないと。私はまだ嗅いでいる彼の前に紙を置いて準備をした。
つかさ「言われた物を集めたよ、次はどうするの?」
嗅ぐのを止めると彼は紙の文字を前足で指し示した。
『お・ゆ・を・わ・か・す』
つかさ「お湯を沸かす……でいいよね」
彼の前足は『はい』を指した。
薬の処方……お湯を沸かしたり、材料を刻んだり、煮たり、炒めたり……普段からしている料理とあまり変わりはなかった。私は慣れた作業を彼の紙の指示通りこなした。
一時間も掛からないうちに鍋にドロドロとした液体が完成した。湿布薬なのかな。
つかさ「出来たよ、これを布につけて患部に貼るの?」
彼は紙に前足を出した。
『つ・ち・の・な・か・に・う・め・て・ひ・や・く・ね・ん・お・く』
つかさ「……つちのなかに……ひやくねん……土の中に埋めて百年置く……」
彼の前足は『はい』を指した。
つかさ「百年……ちょっと百年って、ひろしさんの傷はそんな軽いものじゃないよ、もう今にでもちゃんとした治療しないといけないの……分っているの」
彼の前足は『はい』を指した。
つかさ「もしかして、最初から私を騙してこんな時間の掛かる薬を作らせたの……」
彼の前足は『はい』を指した。
つかさ「このままじゃひろしさん死んじゃうよ……そんなのダメだよ、どうして、どうして素直にならないの」
『お・れ・に・か・ま・う・な』
つかさ「……そんな、助かりたくないの、私、ひろしさんが元気になったら話したい事があるの、だからもっと違う方法教えて」
彼の前足が『いいえ』を指そうとした時だった。そのまま倒れこんでしまった。
つかさ「ひろしさん!!」
彼の身体を触った。
つかさ「熱い……」
燃えるような熱さだった。彼は高熱になっていた。私は冷蔵庫から氷枕を取り出して彼の頭の下に置いた。
つかさ「これじゃ……まなちゃんと同じだよ……」
彼の前足が紙の方に伸びたけど届きそうになかった。私は紙を彼の前足の届く所まで持ち上げた。
『か・え・り・た・い』
帰りたい……彼はもう死を覚悟したのかもしれない。帰る所、私には一箇所しか思い当たらなかった。
つかさ「帰りたい場所って、神社の事を言っているの」
『フゥ~』
彼の前足は『はい』を指す元気もなく床に落ちた。私に出来る事は彼を神社に送り届ける……それしか出来ないなんて。
私は車を運転している。目的地は、神社。家で彼の治療を続けたい。普段の私ならきっと続けている。でも私は彼を車に乗せて神社に向かっていた。
何故って……彼がそれを望んだから。それもあるけど、もしかしたら、仲間のお稲荷さんがあの神社に戻って来てくれているかもしれない。もしからしたら
助けてくれるかもしれない。それが私の最後の希望だった。
神社の入り口近くに車を止めると彼を抱きかかえて降りた。彼は毛布に包めて頭には氷袋を付けた。まだ暑いというのに彼はブルブルと震えている。
きっと高熱のせいだ。懐中電灯を照らしながら神社の階段を登った。本当なら稲荷すしを持っていく筈だった。だけど寿司を作る時間がない。
もう何回この階段を登ったかな。殆ど一人で登った。この前のこなちゃん達と登ったのが遠い過去のように感じる。
こなちゃんやゆきちゃんは最後に彼を嫌っていたけど、お姉ちゃんは違っていたような気がする。呪われた本人なのに。理由を聞けなかった。
今、こうして彼と神社に向かっていると何となくお姉ちゃんの気持ちが分る。お姉ちゃんが彼を許した理由が。だから私は最後まで彼を信じられた。
うんん、まだ最後だって決まったわけじゃない。まだ彼は生きている。生きている限り治ると信じる。
つかさ「ただいま!!」
家に帰ると早速彼に集めた材料を見せた。彼は重たそうに身体を持ち上げると私の持ってきた材料を嗅ぎ始めた。昨日よりも辛そうだった。
確実に弱ってきている。早くこの薬を完成させないと。私はまだ嗅いでいる彼の前に紙を置いて準備をした。
つかさ「言われた物を集めたよ、次はどうするの?」
嗅ぐのを止めると彼は紙の文字を前足で指し示した。
『お・ゆ・を・わ・か・す』
つかさ「お湯を沸かす……でいいよね」
彼の前足は『はい』を指した。
薬の処方……お湯を沸かしたり、材料を刻んだり、煮たり、炒めたり……普段からしている料理とあまり変わりはなかった。私は慣れた作業を彼の紙の指示通りこなした。
一時間も掛からないうちに鍋にドロドロとした液体が完成した。湿布薬なのかな。
つかさ「出来たよ、これを布につけて患部に貼るの?」
彼は紙に前足を出した。
『つ・ち・の・な・か・に・う・め・て・ひ・や・く・ね・ん・お・く』
つかさ「……つちのなかに……ひやくねん……土の中に埋めて百年置く……」
彼の前足は『はい』を指した。
つかさ「百年……ちょっと百年って、ひろしさんの傷はそんな軽いものじゃないよ、もう今にでもちゃんとした治療しないといけないの……分っているの」
彼の前足は『はい』を指した。
つかさ「もしかして、最初から私を騙してこんな時間の掛かる薬を作らせたの……」
彼の前足は『はい』を指した。
つかさ「このままじゃひろしさん死んじゃうよ……そんなのダメだよ、どうして、どうして素直にならないの」
『お・れ・に・か・ま・う・な』
つかさ「……そんな、助かりたくないの、私、ひろしさんが元気になったら話したい事があるの、だからもっと違う方法教えて」
彼の前足が『いいえ』を指そうとした時だった。そのまま倒れこんでしまった。
つかさ「ひろしさん!!」
彼の身体を触った。
つかさ「熱い……」
燃えるような熱さだった。彼は高熱になっていた。私は冷蔵庫から氷枕を取り出して彼の頭の下に置いた。
つかさ「これじゃ……まなちゃんと同じだよ……」
彼の前足が紙の方に伸びたけど届きそうになかった。私は紙を彼の前足の届く所まで持ち上げた。
『か・え・り・た・い』
帰りたい……彼はもう死を覚悟したのかもしれない。帰る所、私には一箇所しか思い当たらなかった。
つかさ「帰りたい場所って、神社の事を言っているの」
『フゥ~』
彼の前足は『はい』を指す元気もなく床に落ちた。私に出来る事は彼を神社に送り届ける……それしか出来ないなんて。
私は車を運転している。目的地は、神社。家で彼の治療を続けたい。普段の私ならきっと続けている。でも私は彼を車に乗せて神社に向かっていた。
何故って……彼がそれを望んだから。それもあるけど、もしかしたら、仲間のお稲荷さんがあの神社に戻って来てくれているかもしれない。もしからしたら
助けてくれるかもしれない。それが私の最後の希望だった。
神社の入り口近くに車を止めると彼を抱きかかえて降りた。彼は毛布に包めて頭には氷袋を付けた。まだ暑いというのに彼はブルブルと震えている。
きっと高熱のせいだ。懐中電灯を照らしながら神社の階段を登った。本当なら稲荷すしを持っていく筈だった。だけど寿司を作る時間がない。
もう何回この階段を登ったかな。殆ど一人で登った。この前のこなちゃん達と登ったのが遠い過去のように感じる。
こなちゃんやゆきちゃんは最後に彼を嫌っていたけど、お姉ちゃんは違っていたような気がする。呪われた本人なのに。理由を聞けなかった。
今、こうして彼と神社に向かっていると何となくお姉ちゃんの気持ちが分る。お姉ちゃんが彼を許した理由が。だから私は最後まで彼を信じられた。
うんん、まだ最後だって決まったわけじゃない。まだ彼は生きている。生きている限り治ると信じる。
668:つかさの旅 37/45:2012/01/09(月) 01:01:04.45:DlK6yebt0 (34/47)
神社に着くと、いつものお供えの稲荷すしを置く石の上に彼をそっと置いた。そう、まなちゃんと一緒に座ってお話したのもこの石の上だった。そして、辻さんが
自殺したのもこの石の上……何か運命的な何かを感じる。それともただの偶然かな。
つかさ「ひろしさんの言うように神社に来たよ……」
彼の呼吸が荒くなっている。でも意識はあるみたい。耳を私の方に向けている。懐中電灯で辺りを照らした。静かだった。草も止まって見えるくらいに。
私はありったけの大声で叫んだ。
つかさ「今、ひろしさんが怪我で苦しんでいます、お稲荷さん、助けて!!」
声は闇夜に吸い込まれていく。もう一度。
つかさ「今、ひろしさんが怪我で苦しんでいます、お稲荷さん、助けて!!」
私は何度も叫んだ。お願い。声を届けて。届いて……お願い。ガサガサと木が揺れた。音のする方向に懐中電灯を向けた。バサバサと鳥が飛び出した。
私の声に鳥が目覚めてしまったのかな。お稲荷さんじゃなかった。もう声が枯れそうだ。
『ウー』
彼が短く唸った。私を呼んでいるみたいに聞こえた。叫ぶのを止めて彼の居る石に戻った。
つかさ「どうしたの、私の怒鳴り声で気分が悪くなった?」
何かを言いたそうな顔で私を見ている。紙をもってきて良かった。私は彼の目の前に紙を見せた。懐中電灯で紙を照らす。
『か・え・れ』
私は溜め息を付いた。
つかさ「憎いって言ったり、殺したいって言ったり……今度は帰れ……どうせ動けないから私の好きなようにさせて、このまま仲間のお稲荷さんが来なかったから
朝一番で獣医さんの所に連れていくから」
私は紙をポケットにしまった。
『ウーウー』
何か言いたいみたいだったけど今紙は出さない。少なくともちゃんと回復するまでは。
あれから何度か叫んでみたけど、全くお稲荷さん達が来る気配は無かった。狐狩りのせいでみんな何処かに逃げてしまった。それしか考えられない。
夜明けも近い、森の入り口が少し明るくなっている。
つかさ「ひろしさん、もう諦めよう、一度家に帰ろう……」
返事がない。
つかさ「ひろしさん?……」
懐中電灯をひろしさんに照らした。ぐったりしていた。
つかさ「ちょっと、冗談はやめて……」
私は彼の体を揺すった。耳がピクリと動いた。でも安心できる状態でないのは直ぐに分った。全身の力が抜け切っている。
彼はゆっくり目を開けると私を見た。もう、何をしても無駄だと言っているように感じた。私もそんな気がしてきた。まなちゃんが亡くなる直前に感じが似ていたから。
元気になったら言おうとしたけど。言うなら今しかないのかもしれない。
つかさ「ひろしさん、私は……」
「何故ここに居る、わざわざ死ぬために戻ってきたのか」
突然、後ろから聞き覚えのある声がした。振り向いて懐中電灯を向けた。そこには人の姿をしたひろしさんが立っていた。
つかさ「ひ、ひろしさん……」
なんでひろしさんがそこに立っているのか理解できない。ここに倒れているのは誰……
人の姿をしたひろしさんは狐の姿のひろしさんに気付いた。
ひろし「た、たかし……」
そう呼ぶと走って近づいた。人の姿のひろしさんは目を閉じて狐の姿のひろしさんの方を向いている。数分位その状態が続いた。
ひろし「そうか……」
『パチン』
人の姿のひろしさんが指を鳴らした。茂みの中から四匹の狐が出てきた。狐の姿だった。そして狐の姿のひろしさんを優しく咥えると、
持ち上げて茂みの中に運んで行ってしまった。
つかさ「な、何なの……」
私は呆然と立ち尽くしていた。
ひろし「もうこの神社には来るな」
つかさ「……意味が分らないよ、あのお稲荷さんは誰だったの、ひろしさんなの、それじゃ貴方は誰なの」
ひろし「知る必要はない……見逃してやると言っている、気が変わらないうちにさっさと立ち去れ」
今までひろしさんだと思っていたけど、あのお稲荷さんはひろしさんじゃなかった……私はなんとなく分ってしまった。
つかさ「たかし……あのお稲荷さんをそう呼んでいたね、私はてっきりひろしさんだと思ってた……彼も否定しなかったし、凄く私を憎んでいたら」
ひろしさんは黙ってしまった。それなら今思っている事を言ってやる。
つかさ「お姉ちゃんに呪いをかけたのは、あのお稲荷さんだったんだね」
ひろし「違う……僕だ」
つかさ「別に私は誰が呪いをかけたなんて気にしていないよ、何でひろしさんが罪をかぶる必要があるの?」
ひろし「うるさい、だったら今殺してやってもいい、僕はお前を憎んでいる」
つかさ「嘘……その言葉、もう一度私の目を見て言ってみて」
私は彼の目を見た。しかし彼は目を合わそうとはしなかった。
つかさ「どうしたの、私は金縛りの術なんて出来ないよ、目を合わせるだけだよ」
私の挑発にも乗らず彼の目は泳いだままだった。
神社に着くと、いつものお供えの稲荷すしを置く石の上に彼をそっと置いた。そう、まなちゃんと一緒に座ってお話したのもこの石の上だった。そして、辻さんが
自殺したのもこの石の上……何か運命的な何かを感じる。それともただの偶然かな。
つかさ「ひろしさんの言うように神社に来たよ……」
彼の呼吸が荒くなっている。でも意識はあるみたい。耳を私の方に向けている。懐中電灯で辺りを照らした。静かだった。草も止まって見えるくらいに。
私はありったけの大声で叫んだ。
つかさ「今、ひろしさんが怪我で苦しんでいます、お稲荷さん、助けて!!」
声は闇夜に吸い込まれていく。もう一度。
つかさ「今、ひろしさんが怪我で苦しんでいます、お稲荷さん、助けて!!」
私は何度も叫んだ。お願い。声を届けて。届いて……お願い。ガサガサと木が揺れた。音のする方向に懐中電灯を向けた。バサバサと鳥が飛び出した。
私の声に鳥が目覚めてしまったのかな。お稲荷さんじゃなかった。もう声が枯れそうだ。
『ウー』
彼が短く唸った。私を呼んでいるみたいに聞こえた。叫ぶのを止めて彼の居る石に戻った。
つかさ「どうしたの、私の怒鳴り声で気分が悪くなった?」
何かを言いたそうな顔で私を見ている。紙をもってきて良かった。私は彼の目の前に紙を見せた。懐中電灯で紙を照らす。
『か・え・れ』
私は溜め息を付いた。
つかさ「憎いって言ったり、殺したいって言ったり……今度は帰れ……どうせ動けないから私の好きなようにさせて、このまま仲間のお稲荷さんが来なかったから
朝一番で獣医さんの所に連れていくから」
私は紙をポケットにしまった。
『ウーウー』
何か言いたいみたいだったけど今紙は出さない。少なくともちゃんと回復するまでは。
あれから何度か叫んでみたけど、全くお稲荷さん達が来る気配は無かった。狐狩りのせいでみんな何処かに逃げてしまった。それしか考えられない。
夜明けも近い、森の入り口が少し明るくなっている。
つかさ「ひろしさん、もう諦めよう、一度家に帰ろう……」
返事がない。
つかさ「ひろしさん?……」
懐中電灯をひろしさんに照らした。ぐったりしていた。
つかさ「ちょっと、冗談はやめて……」
私は彼の体を揺すった。耳がピクリと動いた。でも安心できる状態でないのは直ぐに分った。全身の力が抜け切っている。
彼はゆっくり目を開けると私を見た。もう、何をしても無駄だと言っているように感じた。私もそんな気がしてきた。まなちゃんが亡くなる直前に感じが似ていたから。
元気になったら言おうとしたけど。言うなら今しかないのかもしれない。
つかさ「ひろしさん、私は……」
「何故ここに居る、わざわざ死ぬために戻ってきたのか」
突然、後ろから聞き覚えのある声がした。振り向いて懐中電灯を向けた。そこには人の姿をしたひろしさんが立っていた。
つかさ「ひ、ひろしさん……」
なんでひろしさんがそこに立っているのか理解できない。ここに倒れているのは誰……
人の姿をしたひろしさんは狐の姿のひろしさんに気付いた。
ひろし「た、たかし……」
そう呼ぶと走って近づいた。人の姿のひろしさんは目を閉じて狐の姿のひろしさんの方を向いている。数分位その状態が続いた。
ひろし「そうか……」
『パチン』
人の姿のひろしさんが指を鳴らした。茂みの中から四匹の狐が出てきた。狐の姿だった。そして狐の姿のひろしさんを優しく咥えると、
持ち上げて茂みの中に運んで行ってしまった。
つかさ「な、何なの……」
私は呆然と立ち尽くしていた。
ひろし「もうこの神社には来るな」
つかさ「……意味が分らないよ、あのお稲荷さんは誰だったの、ひろしさんなの、それじゃ貴方は誰なの」
ひろし「知る必要はない……見逃してやると言っている、気が変わらないうちにさっさと立ち去れ」
今までひろしさんだと思っていたけど、あのお稲荷さんはひろしさんじゃなかった……私はなんとなく分ってしまった。
つかさ「たかし……あのお稲荷さんをそう呼んでいたね、私はてっきりひろしさんだと思ってた……彼も否定しなかったし、凄く私を憎んでいたら」
ひろしさんは黙ってしまった。それなら今思っている事を言ってやる。
つかさ「お姉ちゃんに呪いをかけたのは、あのお稲荷さんだったんだね」
ひろし「違う……僕だ」
つかさ「別に私は誰が呪いをかけたなんて気にしていないよ、何でひろしさんが罪をかぶる必要があるの?」
ひろし「うるさい、だったら今殺してやってもいい、僕はお前を憎んでいる」
つかさ「嘘……その言葉、もう一度私の目を見て言ってみて」
私は彼の目を見た。しかし彼は目を合わそうとはしなかった。
つかさ「どうしたの、私は金縛りの術なんて出来ないよ、目を合わせるだけだよ」
私の挑発にも乗らず彼の目は泳いだままだった。
669:つかさの旅 38/45:2012/01/09(月) 01:02:10.03:DlK6yebt0 (35/47)
つかさ「嘘や演技はもう沢山、本当の事が聞きたい……ここから追い出すのはそれからでもいいでしょ……」
彼はうな垂れてしまった。このままじゃ話してくれそうにない。
つかさ「さっき、お稲荷さんが4人も来たけど……仲間に会えてよかったね……大きい狐さんは元気なの?」
俯きながら話し始めた。
ひろし「四人……か、僕達を人と数えているのか……そんなのは僕を育ててくれた人間しか知らなかった」
つかさ「うんん、頭の中では匹だったかも……」
頭を持ち上げて私の目を見た。
ひろし「つかさ、人間の世界でよく今まで生きていけたな……そこまで正直に言うなよ……」
彼の顔が緩んだ。私も微笑み返した。
ひろし「何も知らないのか……かがみさんは話さなかったのか……」
つかさ「お姉ちゃん……」
お姉ちゃんは知っていた。何を……
彼は覚悟を決めたように一回大きく深呼吸してから話し出した。
ひろし「つかさが僕と勘違いしていた狐はかがみさんに呪いをかけ、殺そうとした張本人だよ」
つかさ「それより……そのお稲荷さんは助かるの?」
ひろし「呪いをした代償だよ、あの呪いをすると新陳代謝が著しく低下してね……ちょっとした怪我でも命取りになる……それゆえ禁呪となった……
彼はかなり危険な状態だよ……五分五分って所だ」
つかさ「お願い、助けてあげて……」
ひろし「全力は尽くす……つかさは彼が憎くないのか、姉をあれだけ苦しめて、つかさだって殺そうとした、それは看病していても分っていた筈」
皆同じ事を言う。彼がひろしさんじゃなくても何故か憎めない。
つかさ「彼の名前、たかしさんって言ってたね……でも彼は私を殺さなかった……結局私はこうして生きているよね……
パワースポットで初めて会った時の彼と、ここに連れてきた彼は違っているような気がする……それが何かは分らない」
ひろし「彼は七十年前の狐狩りで家族を殺されて以来、人間に化けるのをやめた、今やっている狐狩りの期間でも人間に化けようとはしなかった、猟師の的になるのを
分っていてもね、それほど人間を憎んでいた……彼が暫くこの町を留守にしている間につかさがこの町に来てあの事件が起きた……
彼は帰ってきて怒り狂った、僕の姉が死んだから……お頭は何度も彼に説得したけど彼の怒りは治まらなかった、彼は皆の反対を押し切って単独で復讐をした、
つかさに三人の姉が居るのを調べ上げ、その中の双子の姉、かがみさんがこの町に一人で来た事を知った、彼女は帰りにこの神社に寄った、その時に
彼はかがみさんに呪いをかけた……」
お姉ちゃんが一人でこの町に来たって、私が引っ越す前にかえでさんの店に行った時だ。帰りに神社に寄ってくれた……私の話なんて全く信じなかったのに……
それが裏目にでちゃった。あの時、全てのお稲荷さんが私を許したわけじゃなかった……
つかさ「それでお姉ちゃんはこなちゃんとゆきちゃんを連れてもう一回この町に来た……」
ひろしさんは頷いた。
ひろし「友人を連れて来たのは恐らく怪しまれないようにだと思う、呪われた彼女の立場はとても弱いからな、心の支えも欲しかったに違いない、僕はかがみさんに触れた時、
呪いの内容を全て知った、つかさとかがみさんがあの神社に行けば呪いは解ける、だけど彼女はそれを拒んでいた、彼女なりにつかさを守りたかったのだろう、
僕は彼が居ないのを見計らってつかさ達に催眠術を施した、そこでかがみの夢に語りかけて全てを話した、僕が助けるからつかさを神社に連れて来てくれてってね」
つかさ「でも、何で皆に催眠術を?」
ひろし「高良みゆきと泉こなたは呪いに関係ない、危険に曝したくなかった、だからつかさには弱めに催眠術をかけた、起こし易いように……でも彼女は単独で神社に来た、
思えば夢で話しても信じてもらえる訳はないよな……僕の計画が甘かった……狐狩りが始まるから、またかがみさんに呪いをかけると思って柊家を張っていたが
まさか、つかさを狙っていたとは思わなかった……銃に撃たれてまで……」
つかさ「家族を失った怒り……」
ひろし「いや、姉さんを失った怒りだよ、彼は姉と婚約をしていた……」
つかさ「え……」
ひろし「つかさに看病されて、一緒に暮らして気付いた、憎むのはつかさでもかがみさんでもなかった、でも怒りだけは消えず苦しんだ……彼がさっきそう言っていた」
まなちゃんは婚約していた。弟さんが居たのもそうだったけど。私は彼女とそこまで深く話した事なかった。お姉ちゃんにも合わせたかった。でも、そんな時間もなかった。
もっといろいろお話をしたかった。そうだったら、ひろしさんや婚約者のたかしさんの話もきっと聞けた。
ひろし「……全て話した、約束通り去ってもらおう」
私に考える余裕も与えずに冷たい一言。
つかさ「この神社はかえでさんのお友達、辻さんの眠る場所……それでも私は来ちゃいけないの、きっとこれからもこの神社に来るよ」
ひろし「……来るのは勝手だが、来ても僕達は居ない、この神社を、町を……去るのだからな」
つかさ「嘘や演技はもう沢山、本当の事が聞きたい……ここから追い出すのはそれからでもいいでしょ……」
彼はうな垂れてしまった。このままじゃ話してくれそうにない。
つかさ「さっき、お稲荷さんが4人も来たけど……仲間に会えてよかったね……大きい狐さんは元気なの?」
俯きながら話し始めた。
ひろし「四人……か、僕達を人と数えているのか……そんなのは僕を育ててくれた人間しか知らなかった」
つかさ「うんん、頭の中では匹だったかも……」
頭を持ち上げて私の目を見た。
ひろし「つかさ、人間の世界でよく今まで生きていけたな……そこまで正直に言うなよ……」
彼の顔が緩んだ。私も微笑み返した。
ひろし「何も知らないのか……かがみさんは話さなかったのか……」
つかさ「お姉ちゃん……」
お姉ちゃんは知っていた。何を……
彼は覚悟を決めたように一回大きく深呼吸してから話し出した。
ひろし「つかさが僕と勘違いしていた狐はかがみさんに呪いをかけ、殺そうとした張本人だよ」
つかさ「それより……そのお稲荷さんは助かるの?」
ひろし「呪いをした代償だよ、あの呪いをすると新陳代謝が著しく低下してね……ちょっとした怪我でも命取りになる……それゆえ禁呪となった……
彼はかなり危険な状態だよ……五分五分って所だ」
つかさ「お願い、助けてあげて……」
ひろし「全力は尽くす……つかさは彼が憎くないのか、姉をあれだけ苦しめて、つかさだって殺そうとした、それは看病していても分っていた筈」
皆同じ事を言う。彼がひろしさんじゃなくても何故か憎めない。
つかさ「彼の名前、たかしさんって言ってたね……でも彼は私を殺さなかった……結局私はこうして生きているよね……
パワースポットで初めて会った時の彼と、ここに連れてきた彼は違っているような気がする……それが何かは分らない」
ひろし「彼は七十年前の狐狩りで家族を殺されて以来、人間に化けるのをやめた、今やっている狐狩りの期間でも人間に化けようとはしなかった、猟師の的になるのを
分っていてもね、それほど人間を憎んでいた……彼が暫くこの町を留守にしている間につかさがこの町に来てあの事件が起きた……
彼は帰ってきて怒り狂った、僕の姉が死んだから……お頭は何度も彼に説得したけど彼の怒りは治まらなかった、彼は皆の反対を押し切って単独で復讐をした、
つかさに三人の姉が居るのを調べ上げ、その中の双子の姉、かがみさんがこの町に一人で来た事を知った、彼女は帰りにこの神社に寄った、その時に
彼はかがみさんに呪いをかけた……」
お姉ちゃんが一人でこの町に来たって、私が引っ越す前にかえでさんの店に行った時だ。帰りに神社に寄ってくれた……私の話なんて全く信じなかったのに……
それが裏目にでちゃった。あの時、全てのお稲荷さんが私を許したわけじゃなかった……
つかさ「それでお姉ちゃんはこなちゃんとゆきちゃんを連れてもう一回この町に来た……」
ひろしさんは頷いた。
ひろし「友人を連れて来たのは恐らく怪しまれないようにだと思う、呪われた彼女の立場はとても弱いからな、心の支えも欲しかったに違いない、僕はかがみさんに触れた時、
呪いの内容を全て知った、つかさとかがみさんがあの神社に行けば呪いは解ける、だけど彼女はそれを拒んでいた、彼女なりにつかさを守りたかったのだろう、
僕は彼が居ないのを見計らってつかさ達に催眠術を施した、そこでかがみの夢に語りかけて全てを話した、僕が助けるからつかさを神社に連れて来てくれてってね」
つかさ「でも、何で皆に催眠術を?」
ひろし「高良みゆきと泉こなたは呪いに関係ない、危険に曝したくなかった、だからつかさには弱めに催眠術をかけた、起こし易いように……でも彼女は単独で神社に来た、
思えば夢で話しても信じてもらえる訳はないよな……僕の計画が甘かった……狐狩りが始まるから、またかがみさんに呪いをかけると思って柊家を張っていたが
まさか、つかさを狙っていたとは思わなかった……銃に撃たれてまで……」
つかさ「家族を失った怒り……」
ひろし「いや、姉さんを失った怒りだよ、彼は姉と婚約をしていた……」
つかさ「え……」
ひろし「つかさに看病されて、一緒に暮らして気付いた、憎むのはつかさでもかがみさんでもなかった、でも怒りだけは消えず苦しんだ……彼がさっきそう言っていた」
まなちゃんは婚約していた。弟さんが居たのもそうだったけど。私は彼女とそこまで深く話した事なかった。お姉ちゃんにも合わせたかった。でも、そんな時間もなかった。
もっといろいろお話をしたかった。そうだったら、ひろしさんや婚約者のたかしさんの話もきっと聞けた。
ひろし「……全て話した、約束通り去ってもらおう」
私に考える余裕も与えずに冷たい一言。
つかさ「この神社はかえでさんのお友達、辻さんの眠る場所……それでも私は来ちゃいけないの、きっとこれからもこの神社に来るよ」
ひろし「……来るのは勝手だが、来ても僕達は居ない、この神社を、町を……去るのだからな」
670:つかさの旅 39/45:2012/01/09(月) 01:03:56.71:DlK6yebt0 (36/47)
朝日が森に射してきた。もう懐中電灯の明かりは周囲の明かりに負けていると言うのに点けて彼を照らしていた。彼は私に背を向けて去ろうとした。
つかさ「待って!!」
彼の足が止まった。
つかさ「何で去る必要があるの、」
彼は止まったまま何もしなかった。
つかさ「狐狩りはずっと昔からしていたよ、何で今頃になって去るの……私達、人と仲良く暮らせないの、隠れていないで表に出て来られないの」
彼はゆっくり振り向いて私を見た。
ひろし「僕達はお稲荷さんだよって、人間達に言うのか……」
つかさ「そ、そうだよ、狐になっている間は私たちが守ってあげる、人になっている間は私たちと少しも変わらない、うんん、色々な魔法だって使えるからきっと活躍できるよ」
ひろし「……つかさはおめでたい奴だな」
懐かしい響き、前にも同じような事を言われた……まなちゃん、やっぱり彼は姉弟だった……。
ひろし「僕達の使っている術を魔法と言うのかい、つかさ達だって色々魔法じみた道具を駆使して繁栄しているじゃないか……でもね、そんなのは僕達から見れば子供だまし、
僕達の知識の一割も使わないで人間と同じ事が出来る……表に出れば、人間達はその知識を手に入れたがる、やがて争い、滅ぶのさ、僕らの先祖、違う……
お頭は何度もそれを見てきた、人間だけで争うのは勝手だけど、必ず僕達も巻き込まれるから……一緒には住めない」
つかさ「そ、そんな大袈裟な話じゃなくて……ひろしさんを育ててくれた人はどうするの、きっと悲しむよ……」
彼は上を向いて目を閉じた。
ひろし「……その人はもう……二百年前に亡くなったよ……」
つかさ「……二百……」
ひろし「さて、時間かな、もう会うこともないだろう……」
え、お別れ……いやだ、別れたくない。別れたくない。
つかさ「お頭さんに会えるかな、狐狩りを禁止にするから……」
ひろしさんは笑った。
ひろし「はははは、つかさにそんなのが出来るのかい、大風呂敷を広げたな……それにお頭はこの前の事件の責任を取って引退した……この事件に全く関係のない僕が
新たなお頭になった……町を去るのは僕の決断だ」
そんな…どうしよう、どうすれば良いの、考えて……つかさ……
つかさ「私……お喋りだからお稲荷さんの話……全部喋っちゃうよ……てか、もう喋ってるし……」
彼の目つきが豹変した。鋭く睨む。
ひろし「何が言いたい……僕の言った程度なら話しても誰も信じまい」
一生に一度の勝負、私は今まで何も出来なかった。だけどどうしてもひろしさんとは別れたくない。
つかさ「うんん、少なくとも私の話した人は皆信じている、いいの、このまま私を帰して……」
ひろし「だから、何が言いたい」
お姉ちゃん、私、決めたよ……やるだけやってみる。
つかさ「真奈美さは自分が旅館に泊まった記憶を女将さんから消した……記憶を消す術ってあるんでしょ……」
ひろし「……それを聞いてどうする……」
つかさ「お稲荷さんの記憶を私から消して……」
ひろし「姉との記憶も含めてか……」
私は頷いた。彼と別れるなら辛いだけ、そんな記憶は悲しいだけ、消せるものなら消したい。もし彼が躊躇ってくれれば……
そのまま記憶を消されても私は彼を忘れられる。
ひろし「……良いだろう、後悔はしないな……する訳もなか、忘れれば全ては無に返る、後からつかさの話した友達や家族の記憶も消さないと辻褄が合わないだろう」
どうしてそんなに簡単に……でもここまでは私だって予想していた。勝負はここからだよ。
つかさ「記憶を消す前に言いたい事があるの、記憶が無くなると言えないでしょ……」
彼は何もしないで立っていた。それを待っている。誰にも言った事のない言葉……私は一回大きく深呼吸をした。
つかさ「私はひろしさんの事が好きです……愛しています……」
言ってしまった。短い言葉だった。でも今の私にはそれが全て。私は石の上に腰を下ろした。
つかさ「……もう、思い残す事はないよ……」
私は目を閉じた。
……
……
朝日が森に射してきた。もう懐中電灯の明かりは周囲の明かりに負けていると言うのに点けて彼を照らしていた。彼は私に背を向けて去ろうとした。
つかさ「待って!!」
彼の足が止まった。
つかさ「何で去る必要があるの、」
彼は止まったまま何もしなかった。
つかさ「狐狩りはずっと昔からしていたよ、何で今頃になって去るの……私達、人と仲良く暮らせないの、隠れていないで表に出て来られないの」
彼はゆっくり振り向いて私を見た。
ひろし「僕達はお稲荷さんだよって、人間達に言うのか……」
つかさ「そ、そうだよ、狐になっている間は私たちが守ってあげる、人になっている間は私たちと少しも変わらない、うんん、色々な魔法だって使えるからきっと活躍できるよ」
ひろし「……つかさはおめでたい奴だな」
懐かしい響き、前にも同じような事を言われた……まなちゃん、やっぱり彼は姉弟だった……。
ひろし「僕達の使っている術を魔法と言うのかい、つかさ達だって色々魔法じみた道具を駆使して繁栄しているじゃないか……でもね、そんなのは僕達から見れば子供だまし、
僕達の知識の一割も使わないで人間と同じ事が出来る……表に出れば、人間達はその知識を手に入れたがる、やがて争い、滅ぶのさ、僕らの先祖、違う……
お頭は何度もそれを見てきた、人間だけで争うのは勝手だけど、必ず僕達も巻き込まれるから……一緒には住めない」
つかさ「そ、そんな大袈裟な話じゃなくて……ひろしさんを育ててくれた人はどうするの、きっと悲しむよ……」
彼は上を向いて目を閉じた。
ひろし「……その人はもう……二百年前に亡くなったよ……」
つかさ「……二百……」
ひろし「さて、時間かな、もう会うこともないだろう……」
え、お別れ……いやだ、別れたくない。別れたくない。
つかさ「お頭さんに会えるかな、狐狩りを禁止にするから……」
ひろしさんは笑った。
ひろし「はははは、つかさにそんなのが出来るのかい、大風呂敷を広げたな……それにお頭はこの前の事件の責任を取って引退した……この事件に全く関係のない僕が
新たなお頭になった……町を去るのは僕の決断だ」
そんな…どうしよう、どうすれば良いの、考えて……つかさ……
つかさ「私……お喋りだからお稲荷さんの話……全部喋っちゃうよ……てか、もう喋ってるし……」
彼の目つきが豹変した。鋭く睨む。
ひろし「何が言いたい……僕の言った程度なら話しても誰も信じまい」
一生に一度の勝負、私は今まで何も出来なかった。だけどどうしてもひろしさんとは別れたくない。
つかさ「うんん、少なくとも私の話した人は皆信じている、いいの、このまま私を帰して……」
ひろし「だから、何が言いたい」
お姉ちゃん、私、決めたよ……やるだけやってみる。
つかさ「真奈美さは自分が旅館に泊まった記憶を女将さんから消した……記憶を消す術ってあるんでしょ……」
ひろし「……それを聞いてどうする……」
つかさ「お稲荷さんの記憶を私から消して……」
ひろし「姉との記憶も含めてか……」
私は頷いた。彼と別れるなら辛いだけ、そんな記憶は悲しいだけ、消せるものなら消したい。もし彼が躊躇ってくれれば……
そのまま記憶を消されても私は彼を忘れられる。
ひろし「……良いだろう、後悔はしないな……する訳もなか、忘れれば全ては無に返る、後からつかさの話した友達や家族の記憶も消さないと辻褄が合わないだろう」
どうしてそんなに簡単に……でもここまでは私だって予想していた。勝負はここからだよ。
つかさ「記憶を消す前に言いたい事があるの、記憶が無くなると言えないでしょ……」
彼は何もしないで立っていた。それを待っている。誰にも言った事のない言葉……私は一回大きく深呼吸をした。
つかさ「私はひろしさんの事が好きです……愛しています……」
言ってしまった。短い言葉だった。でも今の私にはそれが全て。私は石の上に腰を下ろした。
つかさ「……もう、思い残す事はないよ……」
私は目を閉じた。
……
……
671:つかさの旅 40/45:2012/01/09(月) 01:05:15.03:DlK6yebt0 (37/47)
ひろし「……なぜそんな事を言う……僕は人じゃない、好きも嫌いもないだろう……記憶が消えればそんな感情も無くなる……バカじゃないのか」
声から動揺しちるのが分った。私は目を閉じたまま待った。
ひろし「……同じだな、以前に出会った人間の女性と……」
女性と出会った。もしかして、もう既に好きは人が居るってこと。私は目を開けた。
つかさ「好きな人が居たの?」
彼は頷いた……この勝負完全に完敗。早い決着だった。
つかさ「……告白したらこの町に留まってくれると思ったけど……好きな人が既に居るなんて……私は……」
俯く私を見て彼は笑った。
ひろし「……その大きな瞳、背の高さ……そうやって早とちりする所なんか全く同じだよ……双子と勘違いするくらいだ……その人は百五十年前に亡くなったよ……」
つかさ「百……え?」
ひろし「僕達の寿命は千年を軽く超える……前のお頭に至っては三千年も生きている……つかさ達は長生きできて百年くらいだ……短い、短すぎる……
僕達の寿命に比べたらつかさ達はカゲロウだよ」
つかさ「カゲロウ……」
ひろし「僕達は歳を取るにつれて人と関わらなくなる……どんなに友情が芽生えても、好きになっても、あっと言う間に亡くなってしまうからだよ……
つかさには分るまい、この気持ち……」
もしかして、彼が私を避けようとしているのはそのせい……たけしさんの呪いも彼がした事にすれば私は彼を嫌うと思ったからあんな演技して……
つかさ「ひろしさんはまなちゃんと何年一緒に居たの、百年、二百年……私は彼女と出会って何日一緒に居たか知ってるの……」
ひろし「なに……」
つかさ「彼女と一緒に居られた時間なんて……二日……たった二日だよ……寿命なんて関係ないよ……分るもん……そんなのとっくに知ってる、悲しいのは私だって同じだよ
なんでそれで好きになっちゃいけないの……」
彼は何も言わずただ私の話を聞いていた。
『ウォー』
茂みから狐が出てきてひろしさんに向かって吠えた。
ひろし「もう時間か……つかさは僕達の事を知りすぎた……それが今後どんな災いを招くか計り知れない、つかさの言うように記憶を消す……それが一番だよ」
つかさ「去っちゃうの?」
ひろし「僕が決めたが、一人で決めた訳じゃない、もう変更は出来ない……お別れだ……目を閉じて」
私の想いは通じなかった……私は目を閉じた。
……
……
……
そういえばまだ彼から返事を聞いていなかった。私は目を開けた。
つかさ「ひろし……さん?」
彼の姿は無かった。私は石の上に座っている……記憶……まなちゃん、ひろしさん、たけしさん……みんな覚えている……記憶……覚えている
記憶は消えていない。何で……消さなかったの……どうして。涙が出てきた……そして泣いた……泣きじゃくった。
日は昇り、森からは蝉時雨が始まった。私と一緒に泣いてくれているような気がした。
私は神社を出ると携帯電話をかえでさんにかけた。そして一日休みたいと連絡した。
ひろし「……なぜそんな事を言う……僕は人じゃない、好きも嫌いもないだろう……記憶が消えればそんな感情も無くなる……バカじゃないのか」
声から動揺しちるのが分った。私は目を閉じたまま待った。
ひろし「……同じだな、以前に出会った人間の女性と……」
女性と出会った。もしかして、もう既に好きは人が居るってこと。私は目を開けた。
つかさ「好きな人が居たの?」
彼は頷いた……この勝負完全に完敗。早い決着だった。
つかさ「……告白したらこの町に留まってくれると思ったけど……好きな人が既に居るなんて……私は……」
俯く私を見て彼は笑った。
ひろし「……その大きな瞳、背の高さ……そうやって早とちりする所なんか全く同じだよ……双子と勘違いするくらいだ……その人は百五十年前に亡くなったよ……」
つかさ「百……え?」
ひろし「僕達の寿命は千年を軽く超える……前のお頭に至っては三千年も生きている……つかさ達は長生きできて百年くらいだ……短い、短すぎる……
僕達の寿命に比べたらつかさ達はカゲロウだよ」
つかさ「カゲロウ……」
ひろし「僕達は歳を取るにつれて人と関わらなくなる……どんなに友情が芽生えても、好きになっても、あっと言う間に亡くなってしまうからだよ……
つかさには分るまい、この気持ち……」
もしかして、彼が私を避けようとしているのはそのせい……たけしさんの呪いも彼がした事にすれば私は彼を嫌うと思ったからあんな演技して……
つかさ「ひろしさんはまなちゃんと何年一緒に居たの、百年、二百年……私は彼女と出会って何日一緒に居たか知ってるの……」
ひろし「なに……」
つかさ「彼女と一緒に居られた時間なんて……二日……たった二日だよ……寿命なんて関係ないよ……分るもん……そんなのとっくに知ってる、悲しいのは私だって同じだよ
なんでそれで好きになっちゃいけないの……」
彼は何も言わずただ私の話を聞いていた。
『ウォー』
茂みから狐が出てきてひろしさんに向かって吠えた。
ひろし「もう時間か……つかさは僕達の事を知りすぎた……それが今後どんな災いを招くか計り知れない、つかさの言うように記憶を消す……それが一番だよ」
つかさ「去っちゃうの?」
ひろし「僕が決めたが、一人で決めた訳じゃない、もう変更は出来ない……お別れだ……目を閉じて」
私の想いは通じなかった……私は目を閉じた。
……
……
……
そういえばまだ彼から返事を聞いていなかった。私は目を開けた。
つかさ「ひろし……さん?」
彼の姿は無かった。私は石の上に座っている……記憶……まなちゃん、ひろしさん、たけしさん……みんな覚えている……記憶……覚えている
記憶は消えていない。何で……消さなかったの……どうして。涙が出てきた……そして泣いた……泣きじゃくった。
日は昇り、森からは蝉時雨が始まった。私と一緒に泣いてくれているような気がした。
私は神社を出ると携帯電話をかえでさんにかけた。そして一日休みたいと連絡した。
672:つかさの旅 41/45:2012/01/09(月) 01:06:37.77:DlK6yebt0 (38/47)
終章 <愛>
次の日、朝一番で店に出勤した。昨日は休んだけど結局彼の事が頭から離れられなかった。体を動かせば少しは楽になるかもしれない。
かえで「おはよう」
つかさ「お、おはようございます」
私よりも先にかえでさんは出勤していた。
つかさ「昨日は突然休んじゃってすみません……」
かえで「失恋でもしたかな……浮かない顔しちゃって」
つかさ「え……」
ドキっとした。
かえで「……どうやら図星みたいね、でも、そんな顔はつかさらしくないぞ」
つかさ「でも……」
かえで「昨日のお昼……久々に彼が見えたわよ、つかさは居ないのかってね……彼の怪我は良くなったみたいね、良かったじゃない」
つかさ「昨日、来たのですか」
かえで「お、いい顔になったじゃない、今日、一日その顔でね」
何で来たのだろう、この町を去るって言っていたのに。
かえで「つかさは休みだって言ったら、今日来るって言って帰ったわよ、つかさのデザートが食べたいって」
そういえば私のデザートを食べた彼は不満足だった。
つかさ「この前来た時、彼にダメ出しされちゃったから……」
かえで「そんな報告は受けてなかったわよ、つかさ」
声は怒っていたけど、顔は微笑んでいた。
つかさ「だって……」
かえで「そうね、これはつかさ達の問題ね……何があったか知らないけど、あまり見せ付けないように、他のお客様に不快感を与えます、私にもね」
私の肩をポンと軽く叩くとかえでさんは厨房の方に行ってしまった。
見せ付けるって、イチャイチャなんかしていないし……
彼はお昼丁度に店に来た。彼は席に座るとデザートだけを注文した。この前のような失敗はしない。落ち着いて、慎重に、気持ちを込めて……
これが最後の来店だと思って作った。出来上がったデザートをかえでさんに渡した。
かえで「つかさが持って行きなさいよ、彼もそれを望んでいるでしょ」
彼とあまり会う気がしなかった。
つかさ「いいです」
かえでさんは私の顔を見て首を傾げた。持って行く素振りをみせなかったのでかえでさんは痺れを切らせてデザートを持っていった。
暫くするとまたかえでさんが厨房に入ってきた。
かえで「お客様がお呼びよ……」
呼ばれてしまった。またダメ出しか。体が動かない。行きたくない。
かえで「なに意地張っているのよ、早く行きなさい……」
つかさ「意地なんか……張っていません」
かえで「作っている所を見ていたわ、完璧じゃない、これで何か文句を言うようなら私が承知しないわよ……さあ」
かえでさんは両手で厨房の出口を指した。私は渋々彼の席に向かった。
つかさ「お呼びですか……」
何故か彼の顔を直視できなかった。
ひろし「……美味しかった、別れのデザート……そんな感じだった、これでこの町を去れる……」
つかさ「ありがとうございます」
私はそのまま厨房に戻ろうとした。
ひろし「まだ渡していない物があった、いつもの場所で待っているから……」
私はお礼をして戻った。
かえでさんは少し怒っていた。
かえで「つかさ、そっけない態度だったねお客様に失礼じゃない……それで、彼は何て言ったの」
つかさ「美味しかったって……」
かえで「良かったじゃない……嬉しくないの」
私の顔を見てまた首を傾げた。多分嬉しい。嬉しいけど表情に出ない。
かえで「昨日休んだのと関係ありそうね……詳細は仕事が終わってから聞くわ、とりあえずお疲れ様」
かえでさんは持ち場に戻っていった。
彼はデザートを全部食べ終えると直ぐに会計をして出て行った。
終章 <愛>
次の日、朝一番で店に出勤した。昨日は休んだけど結局彼の事が頭から離れられなかった。体を動かせば少しは楽になるかもしれない。
かえで「おはよう」
つかさ「お、おはようございます」
私よりも先にかえでさんは出勤していた。
つかさ「昨日は突然休んじゃってすみません……」
かえで「失恋でもしたかな……浮かない顔しちゃって」
つかさ「え……」
ドキっとした。
かえで「……どうやら図星みたいね、でも、そんな顔はつかさらしくないぞ」
つかさ「でも……」
かえで「昨日のお昼……久々に彼が見えたわよ、つかさは居ないのかってね……彼の怪我は良くなったみたいね、良かったじゃない」
つかさ「昨日、来たのですか」
かえで「お、いい顔になったじゃない、今日、一日その顔でね」
何で来たのだろう、この町を去るって言っていたのに。
かえで「つかさは休みだって言ったら、今日来るって言って帰ったわよ、つかさのデザートが食べたいって」
そういえば私のデザートを食べた彼は不満足だった。
つかさ「この前来た時、彼にダメ出しされちゃったから……」
かえで「そんな報告は受けてなかったわよ、つかさ」
声は怒っていたけど、顔は微笑んでいた。
つかさ「だって……」
かえで「そうね、これはつかさ達の問題ね……何があったか知らないけど、あまり見せ付けないように、他のお客様に不快感を与えます、私にもね」
私の肩をポンと軽く叩くとかえでさんは厨房の方に行ってしまった。
見せ付けるって、イチャイチャなんかしていないし……
彼はお昼丁度に店に来た。彼は席に座るとデザートだけを注文した。この前のような失敗はしない。落ち着いて、慎重に、気持ちを込めて……
これが最後の来店だと思って作った。出来上がったデザートをかえでさんに渡した。
かえで「つかさが持って行きなさいよ、彼もそれを望んでいるでしょ」
彼とあまり会う気がしなかった。
つかさ「いいです」
かえでさんは私の顔を見て首を傾げた。持って行く素振りをみせなかったのでかえでさんは痺れを切らせてデザートを持っていった。
暫くするとまたかえでさんが厨房に入ってきた。
かえで「お客様がお呼びよ……」
呼ばれてしまった。またダメ出しか。体が動かない。行きたくない。
かえで「なに意地張っているのよ、早く行きなさい……」
つかさ「意地なんか……張っていません」
かえで「作っている所を見ていたわ、完璧じゃない、これで何か文句を言うようなら私が承知しないわよ……さあ」
かえでさんは両手で厨房の出口を指した。私は渋々彼の席に向かった。
つかさ「お呼びですか……」
何故か彼の顔を直視できなかった。
ひろし「……美味しかった、別れのデザート……そんな感じだった、これでこの町を去れる……」
つかさ「ありがとうございます」
私はそのまま厨房に戻ろうとした。
ひろし「まだ渡していない物があった、いつもの場所で待っているから……」
私はお礼をして戻った。
かえでさんは少し怒っていた。
かえで「つかさ、そっけない態度だったねお客様に失礼じゃない……それで、彼は何て言ったの」
つかさ「美味しかったって……」
かえで「良かったじゃない……嬉しくないの」
私の顔を見てまた首を傾げた。多分嬉しい。嬉しいけど表情に出ない。
かえで「昨日休んだのと関係ありそうね……詳細は仕事が終わってから聞くわ、とりあえずお疲れ様」
かえでさんは持ち場に戻っていった。
彼はデザートを全部食べ終えると直ぐに会計をして出て行った。
673:つかさの旅 42/45:2012/01/09(月) 01:08:02.86:DlK6yebt0 (39/47)
夜の開店の前、更衣室に呼ばれた。更衣室にはかえでさんと私の二人だけ。用件はだいたい予想がついた。神社の出来事を知りたいに違いない。
かえでさんは思った通り私の休んだ理由を聞いてきた。私は彼女に話した。
話し終わると彼女は怒り出した。
かえで「最低ね……記憶を消して……彼を試すような事なんかして、それで彼がちゃんとした返事が出来ると思っているの……告白なんてのはね『好きです』だけでいいのよ」
そういえば彼は私に対して好きも嫌いも言っていなかった……更に彼女の話は続く。
かえで「それに、つかさは亡くなった前の恋人に焼餅を焼いている、だからお昼のような態度になるの」
つかさ「焼餅なんか焼いていません……」
かえで「そうかしら……私にはそうは見えないわよ……負け犬みたいになっちゃって……もう過ぎた事を言ってもしょうがないわね、彼等、お稲荷さんはこの町を去る
もうどうしようもないわね」
かえでさんは呆れ顔で私を見ていた。
つかさ「彼はいつもの場所……多分神社で待ってる、そう言ってた」
かえで「ばか、なにのんきにこんな所に居るの、さっさと行ってきなさい、まだ外は明るいわよ」
つかさ「で、でもまだ仕事終わっていないし……」
かえで「昨日休んでそんな心配するな、決着をつけてらっしゃい」
つかさ「決着……?」
かえで「そうよ、一番後悔するのは告白して返事がもらえない事……ほらほら、なにいじけてるのよ、時間は待ってくれないわよ、寿命の短い人間なんでしょ」
つかさ「でも……どうして良いか分らい」
かえで「……余計な事は考えないで、つかさはつかさじゃない、そのままで充分よ」
つかさ「嫌われたら……どうしよう」
かえで「それが分ったなら、告白した甲斐があるじゃない……別れは辛いけど……このまま中途半端によりはすっきりするわよ」
中途半端は嫌だ、ちゃんと彼の気持ちを聞きたい。
つかさ「私……行ってくる、この後の仕事は……」
かえで「いいから行きなさい」
私はその場で私服に着替えた。
つかさ「行って来ます」
かえで「いってらっしゃい」
そうだよ、私どうかしていた。あんな事しなくても良かった。どうしてもっと素直になれなかったのかな。彼の返事が恐かったから……
昨日のは告白じゃない。振られたら記憶を消してリセットしようとしていただけ。だから彼は何も言ってくれなかった。記憶は消しちゃだめ。
まなちゃんの記憶が消えたらこの町に居る意味の半分が無くなってしまう。神社に着いたら彼は私の記憶を消してしまうのかな。
謝って取り消してもらおう……許してくれるかどうかは分らない。だけど……許して欲しい。
夜の開店の前、更衣室に呼ばれた。更衣室にはかえでさんと私の二人だけ。用件はだいたい予想がついた。神社の出来事を知りたいに違いない。
かえでさんは思った通り私の休んだ理由を聞いてきた。私は彼女に話した。
話し終わると彼女は怒り出した。
かえで「最低ね……記憶を消して……彼を試すような事なんかして、それで彼がちゃんとした返事が出来ると思っているの……告白なんてのはね『好きです』だけでいいのよ」
そういえば彼は私に対して好きも嫌いも言っていなかった……更に彼女の話は続く。
かえで「それに、つかさは亡くなった前の恋人に焼餅を焼いている、だからお昼のような態度になるの」
つかさ「焼餅なんか焼いていません……」
かえで「そうかしら……私にはそうは見えないわよ……負け犬みたいになっちゃって……もう過ぎた事を言ってもしょうがないわね、彼等、お稲荷さんはこの町を去る
もうどうしようもないわね」
かえでさんは呆れ顔で私を見ていた。
つかさ「彼はいつもの場所……多分神社で待ってる、そう言ってた」
かえで「ばか、なにのんきにこんな所に居るの、さっさと行ってきなさい、まだ外は明るいわよ」
つかさ「で、でもまだ仕事終わっていないし……」
かえで「昨日休んでそんな心配するな、決着をつけてらっしゃい」
つかさ「決着……?」
かえで「そうよ、一番後悔するのは告白して返事がもらえない事……ほらほら、なにいじけてるのよ、時間は待ってくれないわよ、寿命の短い人間なんでしょ」
つかさ「でも……どうして良いか分らい」
かえで「……余計な事は考えないで、つかさはつかさじゃない、そのままで充分よ」
つかさ「嫌われたら……どうしよう」
かえで「それが分ったなら、告白した甲斐があるじゃない……別れは辛いけど……このまま中途半端によりはすっきりするわよ」
中途半端は嫌だ、ちゃんと彼の気持ちを聞きたい。
つかさ「私……行ってくる、この後の仕事は……」
かえで「いいから行きなさい」
私はその場で私服に着替えた。
つかさ「行って来ます」
かえで「いってらっしゃい」
そうだよ、私どうかしていた。あんな事しなくても良かった。どうしてもっと素直になれなかったのかな。彼の返事が恐かったから……
昨日のは告白じゃない。振られたら記憶を消してリセットしようとしていただけ。だから彼は何も言ってくれなかった。記憶は消しちゃだめ。
まなちゃんの記憶が消えたらこの町に居る意味の半分が無くなってしまう。神社に着いたら彼は私の記憶を消してしまうのかな。
謝って取り消してもらおう……許してくれるかどうかは分らない。だけど……許して欲しい。
674:つかさの旅 43/45:2012/01/09(月) 01:09:18.64:DlK6yebt0 (40/47)
階段を登り神社に着いた。日はまだ落ちていない。夕日がまだ見えていた。彼は森の入り口で待っていた。
ひろし「昨日は休みだったね……家に行こうかと思ったが、そんな状況じゃないと思って行かなかった」
つかさ「……あの、お昼は、失礼してすみません……」
ひろし「ん、何が失礼だった……あの店長さんに怒られたのか、まぁ、厳しそうな気はする、あの人の料理に妥協は感じられなかった、それが良いのだけどな」
彼はポケットから何かを出して私に差し出した。私はそれを受け取った。
つかさ「……これは、お守り……」
ひろし「たかしの包帯に付いていたものだよ、もう必要ないから返すよ」
つかさ「助かるの……」
ひろし「……まだ何とも言えない、つかさに安否を伝えられないのが残念だよ」
安否を伝えられない……私の記憶を消すつもりなのかな。
つかさ「渡したい物って、これなの?」
ひろし「そうだ」
つかさ「この中にパワーストーンが入っているけど……」
ひろし「もともとつかさにあげた物だ、それに、このお守りからかがみさんを感じる、返した方が良いと思って」
私は胸のポケットにお守りをしまった。彼の用事は済んだ。今度は私の番……あの時、告白した時よりも緊張してしまう。
ひろし「……さて、まる一日空いたけど、記憶を消していいか……あの時は時間がなくて術をかけられなかった」
先に聞かれてしまった。時間がなかったのを感謝したい。取り返しのつかない事をするところだった。
彼は片腕を上げて私に向けた。きっと術の準備をしているに違いない。
つかさ「……まなちゃんの記憶、とても悲しかったけど、今、ここに居るのもまなちゃんと出会えたから、お稲荷さんの記憶も同じだよ……
それにひろしさんとの記憶は……忘れたくない、いろいろ話してくれた、助けてくれた、別れたって忘れたくない……」
彼はその答えを待っていたかの様に話し出した。
ひろし「それは記憶ではない、思い出だ……思い出……一つ一つの記憶が鎖のように硬く繋がり、網のように複雑に絡み合う、その中から一つの記憶を取り出して
消す術はない……無理にすれば思いでは崩壊し、全ての記憶が消える」
つかさ「全てが消える……どうなっちゃうの」
ひろし「思い出を消した仲間は居ない、どうなるかは分らない、赤ん坊のようになるか、死んでしまうか……最初から消すつもりなんかなかった」
つかさ「私、かえでさんに怒られた……試すような事なんかするなって」
ひろし「まてまて、あの店長にそんな事を話したのか……やめてくれ、そんなの普通他人に話すのか、恥かしくないのか……本当にお喋りだな」
彼の顔が赤くなった。そして彼は階段を下りようとした。
つかさ「どこに行くの」
ひろし「店長の記憶を消しに行く……今ならまだ記憶の状態だ……」
私は慌てて彼の腕を掴んだ。
つかさ「止めて、そんな事しても意味ないよ、かえでさんはもうひろしさんが店に来た頃から気付いているから」
ひろし「だったら尚更だ、放せ……」
力がどんどん強くなる。私も負けじと引っ張った。だけど力の差は歴然、引きずられて行く。もう限界……私は力を一気に抜いた。バランスを崩して私は彼に当たってしまった。
そしてそのまま私たちは倒れてしまった。私は直ぐに体を起こして座った姿勢になった。彼を見てみると倒れたままだった。
つかさ「だ、大丈夫?……あんなに引っ張るからだよ……」
ひろし「ふふふ……ははは」
彼は倒れたまま笑い出した。
つかさ「ふふ……」
私も釣られて笑ってしまった。私が笑っているとそれに連れて彼の笑い声は更に大きくなった。私達二人は心置きなく笑った。
階段を登り神社に着いた。日はまだ落ちていない。夕日がまだ見えていた。彼は森の入り口で待っていた。
ひろし「昨日は休みだったね……家に行こうかと思ったが、そんな状況じゃないと思って行かなかった」
つかさ「……あの、お昼は、失礼してすみません……」
ひろし「ん、何が失礼だった……あの店長さんに怒られたのか、まぁ、厳しそうな気はする、あの人の料理に妥協は感じられなかった、それが良いのだけどな」
彼はポケットから何かを出して私に差し出した。私はそれを受け取った。
つかさ「……これは、お守り……」
ひろし「たかしの包帯に付いていたものだよ、もう必要ないから返すよ」
つかさ「助かるの……」
ひろし「……まだ何とも言えない、つかさに安否を伝えられないのが残念だよ」
安否を伝えられない……私の記憶を消すつもりなのかな。
つかさ「渡したい物って、これなの?」
ひろし「そうだ」
つかさ「この中にパワーストーンが入っているけど……」
ひろし「もともとつかさにあげた物だ、それに、このお守りからかがみさんを感じる、返した方が良いと思って」
私は胸のポケットにお守りをしまった。彼の用事は済んだ。今度は私の番……あの時、告白した時よりも緊張してしまう。
ひろし「……さて、まる一日空いたけど、記憶を消していいか……あの時は時間がなくて術をかけられなかった」
先に聞かれてしまった。時間がなかったのを感謝したい。取り返しのつかない事をするところだった。
彼は片腕を上げて私に向けた。きっと術の準備をしているに違いない。
つかさ「……まなちゃんの記憶、とても悲しかったけど、今、ここに居るのもまなちゃんと出会えたから、お稲荷さんの記憶も同じだよ……
それにひろしさんとの記憶は……忘れたくない、いろいろ話してくれた、助けてくれた、別れたって忘れたくない……」
彼はその答えを待っていたかの様に話し出した。
ひろし「それは記憶ではない、思い出だ……思い出……一つ一つの記憶が鎖のように硬く繋がり、網のように複雑に絡み合う、その中から一つの記憶を取り出して
消す術はない……無理にすれば思いでは崩壊し、全ての記憶が消える」
つかさ「全てが消える……どうなっちゃうの」
ひろし「思い出を消した仲間は居ない、どうなるかは分らない、赤ん坊のようになるか、死んでしまうか……最初から消すつもりなんかなかった」
つかさ「私、かえでさんに怒られた……試すような事なんかするなって」
ひろし「まてまて、あの店長にそんな事を話したのか……やめてくれ、そんなの普通他人に話すのか、恥かしくないのか……本当にお喋りだな」
彼の顔が赤くなった。そして彼は階段を下りようとした。
つかさ「どこに行くの」
ひろし「店長の記憶を消しに行く……今ならまだ記憶の状態だ……」
私は慌てて彼の腕を掴んだ。
つかさ「止めて、そんな事しても意味ないよ、かえでさんはもうひろしさんが店に来た頃から気付いているから」
ひろし「だったら尚更だ、放せ……」
力がどんどん強くなる。私も負けじと引っ張った。だけど力の差は歴然、引きずられて行く。もう限界……私は力を一気に抜いた。バランスを崩して私は彼に当たってしまった。
そしてそのまま私たちは倒れてしまった。私は直ぐに体を起こして座った姿勢になった。彼を見てみると倒れたままだった。
つかさ「だ、大丈夫?……あんなに引っ張るからだよ……」
ひろし「ふふふ……ははは」
彼は倒れたまま笑い出した。
つかさ「ふふ……」
私も釣られて笑ってしまった。私が笑っているとそれに連れて彼の笑い声は更に大きくなった。私達二人は心置きなく笑った。
675:つかさの旅 44/45:2012/01/09(月) 01:10:47.16:DlK6yebt0 (41/47)
つかさ「言っておくけど、私がひろしさんを好きなのは皆知っているからね」
ひろし「……好きな人は誰にも知られたくない……そんなものじゃないか……」
つかさ「私だって……成り行きでそうなっちゃっただけだよ……」
ひろし「成り行きか……」
笑い終わった私達はその場に座りながらお話をした。
ひろし「実は仲間には内緒で戻ってきてしまった……これがバレたら僕はお頭を降ろされてしまう」
つかさ「お守りを渡すにしては大きな代償だね」
ひろし「代償……もともとお頭なんてなりたくもなかった、このままバレてもかまわない」
つかさ「それならいっその事、ひろしさんだけでもこの町に……なんて出来ないの」
ひろし「……それは出来ない……」
つかさ「厳しいね……」
私は家を出てかえでさんの所に行った。私なら何処にでも自由に行ける。
ひろし「さてと」
ひろしさんは立ち上がった。もうお別れの時間。外は日が沈んでいる。彼は私に近づくと片手を差し伸べてきた。
つかさ「もう時間なの」
ひろし「来てくれてありがとう」
私も手を伸ばして彼の手を掴んだ。彼は私を引っ張って立ち上がらせた。力が余って私の体は彼に当たってしまった。
つかさ「ごめん……え……なに?」
急に彼は私を抱きしめてしまった。身動きが取れなかった。見上げると直ぐ近くに彼の顔があった。彼の顔が近づいてきた。
つかさ「ん~ん~」
気付くと彼の唇が私の唇と重なっていた。力を抜いて、目を閉じてそのまま受け入れた。
重なる唇から彼の体温を感じた。ゆっくりと彼の舌が……体が燃えるように熱くなった。何も考えられなくなる。頭の中が真っ白……身体に力が入らない、
そのまま全体重を彼に預けた。このまま時間が止まって欲しい……
……
……
……どのくらい時間が経ったのか……
彼は力を抜き私から離れた。私はゆっくりと目を開けた。彼は赤い顔をして少し離れた場所に立っていた。思わず自分の唇に手を添えてしまった。これはキス……
心の準備なんかしていなかった。どうなったか良く覚えていなかった。私は彼の目を見つめるだけだった。
ひろし「ごめん……順序が逆だった……僕はつかさ……柊つかさが好きです……」
突然の彼の告白。どうして良いか分らない。
ひろし「これが返事だよ」
彼の声にはっと我に返った。簡単だった。これだけで充分彼の気持ちは私に伝わっている。これで……
つかさ「うん、あ、ありがとう」
返事をすると涙がポロポロと出てきた。でも一昨日の涙とは違う。何かつっかえ棒が取れたようなすっきりした涙だった。
彼は私に近づき胸を貸してくれた。そこで私は思いっきり泣いた。
ひろし「一昨日のつかさの言葉に衝撃を受けた何人かの仲間が、それぞれの人間の友人に最後のお別れをしに行ったよ……お礼を言うのは僕達の方かもしれない」
泣いているせいで声が出ない。彼の胸の中でただ泣いているだけだった。
辺りはすっかり暗くなった。蝉の鳴き声は止んだ、そして遠くから秋の虫の音が微かに聞こえてきた。
彼は私の両肩を優しく掴むとそっと離した。
ひろし「もういいかな?」
涙はもう止まった。だけど声が出し難かった。
つかさ「も、もう行っちゃうの?」
ひろし「まだつかさと一緒に居たいけどね、何かあるのか?」
まだ聞きたい事が二つあった。
つかさ「なんで……記憶を消せないのに嘘をついていたの?」
彼の顔がまた赤くなった。
ひろし「仲間の居る前で告白なんかできない……だから……」
つかさ「でも私は先にしちゃったよ……その時も仲間も聞いていたのでしょ、私から見たら狐さんだから気にしないよ……ふふ、恥かしがりやさんだ」
ひろし「笑った……やっぱり笑っているときのつかさが一番だ」
そう言われると照れてしまう……さて、これはもっと早く聞きたかった。
もう一つは聞きたい事……
つかさ「まなちゃんは、真奈美さんはどうなの、まだ生きているの?」
ひろし「たかしのあの執拗までの呪い……憎しみと怒りを見れば分ると思う……お姉ちゃんは……もう」
それは何となく分っていた。淡い希望だった……
つかさ「やっぱりこの神社はひろしさん達が居なくなっても来ないとね、辻さんと一緒に……」
ひろし「この神社はもう人間に忘れられた廃墟、僕達も、もう居ない、ここに縛られる必要はない、姉さんならつかさの財布の中にいるじゃないか」
つかさ「え?」
私は財布の入っているポケットを押さえた。
ひろしさんは階段まで移動して町を見下ろした。
ひろし「この夜景もこれで見納めかな……」
私も彼の隣に並んで夜景を見た。この町は都会と違って灯は疎ら、でも、その分星は綺麗に見える。駅は……あ、列になった灯が移動している。電車だ、その先を目で追った。
あそこにきっと駅があるに違いない。
つかさ「ねぇ、ひろしさん、ひろしさんは電車に乗った事って……」
あれ、首を彼の方にむけると、ひろしさんが居ない……そんな……
なになら足元に何かを感じた。下を向いた。いつの間にか彼は狐に戻っていた。彼は夜景を見たままだった。彼の姿……どことなく凛々しく見える。
前のお頭さんと似ていて堂々とした感じだった。
『ウォーーー』
遠吠え……犬の遠吠えとは違う。彼の遠吠えは何度も繰り返された。
……鋭く通る声、町全体に響いているみたい。堂々として誇らしげ、それでいて悲しく聞こえた。彼はこの町にお別れを言っている……別れの詩を聞いているようだった。
つかさ「言っておくけど、私がひろしさんを好きなのは皆知っているからね」
ひろし「……好きな人は誰にも知られたくない……そんなものじゃないか……」
つかさ「私だって……成り行きでそうなっちゃっただけだよ……」
ひろし「成り行きか……」
笑い終わった私達はその場に座りながらお話をした。
ひろし「実は仲間には内緒で戻ってきてしまった……これがバレたら僕はお頭を降ろされてしまう」
つかさ「お守りを渡すにしては大きな代償だね」
ひろし「代償……もともとお頭なんてなりたくもなかった、このままバレてもかまわない」
つかさ「それならいっその事、ひろしさんだけでもこの町に……なんて出来ないの」
ひろし「……それは出来ない……」
つかさ「厳しいね……」
私は家を出てかえでさんの所に行った。私なら何処にでも自由に行ける。
ひろし「さてと」
ひろしさんは立ち上がった。もうお別れの時間。外は日が沈んでいる。彼は私に近づくと片手を差し伸べてきた。
つかさ「もう時間なの」
ひろし「来てくれてありがとう」
私も手を伸ばして彼の手を掴んだ。彼は私を引っ張って立ち上がらせた。力が余って私の体は彼に当たってしまった。
つかさ「ごめん……え……なに?」
急に彼は私を抱きしめてしまった。身動きが取れなかった。見上げると直ぐ近くに彼の顔があった。彼の顔が近づいてきた。
つかさ「ん~ん~」
気付くと彼の唇が私の唇と重なっていた。力を抜いて、目を閉じてそのまま受け入れた。
重なる唇から彼の体温を感じた。ゆっくりと彼の舌が……体が燃えるように熱くなった。何も考えられなくなる。頭の中が真っ白……身体に力が入らない、
そのまま全体重を彼に預けた。このまま時間が止まって欲しい……
……
……
……どのくらい時間が経ったのか……
彼は力を抜き私から離れた。私はゆっくりと目を開けた。彼は赤い顔をして少し離れた場所に立っていた。思わず自分の唇に手を添えてしまった。これはキス……
心の準備なんかしていなかった。どうなったか良く覚えていなかった。私は彼の目を見つめるだけだった。
ひろし「ごめん……順序が逆だった……僕はつかさ……柊つかさが好きです……」
突然の彼の告白。どうして良いか分らない。
ひろし「これが返事だよ」
彼の声にはっと我に返った。簡単だった。これだけで充分彼の気持ちは私に伝わっている。これで……
つかさ「うん、あ、ありがとう」
返事をすると涙がポロポロと出てきた。でも一昨日の涙とは違う。何かつっかえ棒が取れたようなすっきりした涙だった。
彼は私に近づき胸を貸してくれた。そこで私は思いっきり泣いた。
ひろし「一昨日のつかさの言葉に衝撃を受けた何人かの仲間が、それぞれの人間の友人に最後のお別れをしに行ったよ……お礼を言うのは僕達の方かもしれない」
泣いているせいで声が出ない。彼の胸の中でただ泣いているだけだった。
辺りはすっかり暗くなった。蝉の鳴き声は止んだ、そして遠くから秋の虫の音が微かに聞こえてきた。
彼は私の両肩を優しく掴むとそっと離した。
ひろし「もういいかな?」
涙はもう止まった。だけど声が出し難かった。
つかさ「も、もう行っちゃうの?」
ひろし「まだつかさと一緒に居たいけどね、何かあるのか?」
まだ聞きたい事が二つあった。
つかさ「なんで……記憶を消せないのに嘘をついていたの?」
彼の顔がまた赤くなった。
ひろし「仲間の居る前で告白なんかできない……だから……」
つかさ「でも私は先にしちゃったよ……その時も仲間も聞いていたのでしょ、私から見たら狐さんだから気にしないよ……ふふ、恥かしがりやさんだ」
ひろし「笑った……やっぱり笑っているときのつかさが一番だ」
そう言われると照れてしまう……さて、これはもっと早く聞きたかった。
もう一つは聞きたい事……
つかさ「まなちゃんは、真奈美さんはどうなの、まだ生きているの?」
ひろし「たかしのあの執拗までの呪い……憎しみと怒りを見れば分ると思う……お姉ちゃんは……もう」
それは何となく分っていた。淡い希望だった……
つかさ「やっぱりこの神社はひろしさん達が居なくなっても来ないとね、辻さんと一緒に……」
ひろし「この神社はもう人間に忘れられた廃墟、僕達も、もう居ない、ここに縛られる必要はない、姉さんならつかさの財布の中にいるじゃないか」
つかさ「え?」
私は財布の入っているポケットを押さえた。
ひろしさんは階段まで移動して町を見下ろした。
ひろし「この夜景もこれで見納めかな……」
私も彼の隣に並んで夜景を見た。この町は都会と違って灯は疎ら、でも、その分星は綺麗に見える。駅は……あ、列になった灯が移動している。電車だ、その先を目で追った。
あそこにきっと駅があるに違いない。
つかさ「ねぇ、ひろしさん、ひろしさんは電車に乗った事って……」
あれ、首を彼の方にむけると、ひろしさんが居ない……そんな……
なになら足元に何かを感じた。下を向いた。いつの間にか彼は狐に戻っていた。彼は夜景を見たままだった。彼の姿……どことなく凛々しく見える。
前のお頭さんと似ていて堂々とした感じだった。
『ウォーーー』
遠吠え……犬の遠吠えとは違う。彼の遠吠えは何度も繰り返された。
……鋭く通る声、町全体に響いているみたい。堂々として誇らしげ、それでいて悲しく聞こえた。彼はこの町にお別れを言っている……別れの詩を聞いているようだった。
676:つかさの旅 45/45:2012/01/09(月) 01:12:24.09:DlK6yebt0 (42/47)
遠吠えが終わると彼は私の正面に移動してお座りをした。いよいよ本当のお別れ……彼は本当の姿、お稲荷さんの姿でお別れをしようとしている。
私はしゃがんで彼と同じ目線になった。
つかさ「お別れだね……たかしさん、元気になったらよろしくって伝えて」
私は握手のつもりで手を前に出した。彼も前足を前に出す、これじゃ「お手」と同じ光景、思わず吹き出してしまった。
つかさ「プッ……あはは……」
しまった。直ぐに笑うのを止めた。不謹慎なことをしてしまった。いままでの雰囲気が台無しなってしまった。彼を見ると怒っている気配はなかった。私を見ている。
彼は立ち上がると私の周りをグルグルと駆け足で回り始めた。
つかさ「え、なになに、何なの?」
私は立ち上がった。すると彼の回る速度はどんどん速くなってきた。
つかさ「フフフ、まるでワンちゃんみたいだよ……」
すると彼は回るのを止めて私の正面でお座りをした。そして私の顔を見た。
つかさ「どうしたの、笑ったら止めちゃって……」
笑ったら止まった……もしかして。
つかさ「笑って見送れって言いたいの?」
彼はそれを待っていたかのように立ち上がった。
つかさ「そうだよね、分った……さようなら……ひろしさん」
私はにっこり微笑んだ。彼は私のかを目に焼き付けるように見ていた。そして私にさようならと言っているような気がした。
彼は頭を森の方角に向けた。私は手を振った
『ウォーーー』
森に向かって大きく遠吠えを一回した。そして歩き出した。私から遠ざかっていく。
つかさ「さうなら……」
彼は振り向かない。少しずつ歩きが速くなって来た。私は少し声を大きくした。
つかさ「さようなら」
彼は振り向かない。走り出した、そして風のように森の奥に消えていった。私はありったけの大声で叫んだ。
つかさ「さようならー!!」
彼はもう行ってしまった。そして二度と私に逢う事はない……だけど私は最後にこう声にした。
つかさ「さようなら、また会う日まで……」
空はすっかり暗くなってしまった。月も出ていない。誰もこない神社に街灯はない。階段は真っ暗……そうだ、携帯電話の明りを使って下りよう。
携帯電話が入っているポケットに手を触れた時だった。私の周りが急に明るくなった。周りを見ると。蛍のような小さい無数の光が周りを照らしていた。
私の足元が光りだした。そして私の一番近い階段から順番に次々と階段が光りだした。私を出口まで案内するみたいだった。
こんな事ができるのはひろしさんくらいしか考えられない。私は携帯電話を出すのを止めて彼の用意した明りを頼りに階段を下りた。階段を一段下がると
一つ明りが消える。廻りが暗くて階段が宙を浮いているみたいに感じた。幻想的だった。お稲荷さんはこんな術だけだったら隠れていなくても済んだのかもね。
階段を踏むごとに明りは消えていく。もっとこの時を味わいたい、ゆっくりと時間を掛けて下りた。そして最後の階段を踏むと全ての明りが消えた。
悲しい別れのはずなのに涙が出なかった。
つかさ「ありがとう」
次の日、一番に出勤……の筈だったけど既に店の扉の鍵は開けられていた。中に入ると客席に座っているかえでさんが居た。
つかさ「おはようございます!」
かえで「おはよう」
かえでさんは私の顔をじっと見た。
かえで「昨日までのいじけた顔はどこかに飛んだわね」
つかさ「ありがとうございます」
私は深々とお辞儀をした。
かえで「私は何もしていないわよ……彼を送ってあげられたみたいね」
つかさ「はい!!」
かえで「何があったのよ、話が聞きたいわ」
つかさ「うん、えっとね……」
はっとした。キスした時の状況が脳裏に浮かんだ。あの時の感触が……私は思わず手を唇に触れた。
かえで「どうしたのよ」
つかさ「え、あ……うん……」
恥かしくて話せない……
かえで「どうしたのよ、この期に及んで隠すの?」
つかさ「そうゆう事じゃななくて……」
かえでさんは私をニヤニヤしながら見ている。
かえで「分った、話せないような事をしたんでしょ……どこまでしたのよ」
かえでさんは立ち上がって身を乗り出した。
かえで「当然キスくらいはしたよね……彼は舌を入れてきた?」
頭に血が上ってくる。体が炎のように熱くなった。
つかさ「わー、そ、そんな話……朝からしないで下さい」
かえで「ふふふ、はいはい、それじゃ夜なら良いわよね、楽しみにしてるわよ」
かえでさんは笑いながら厨房に入っていった。今になってひろしさんの言う恥かしい意味が分った。当分かえでさんにいじられそう……
昨夜の出来事……さすがにお姉ちゃん達にも話すことは……
私は溜め息を付いた……でも、秘密があるのもの悪くないかも……
私も着替えないと。
さて、今日も頑張るぞ……
……まなちゃん……真奈美さんの出会いから始まった私の旅……いろいろな事があった……もう私はあの神社には行かない。彼の言うようにあそこにはもう何もない。
だけど忘れないよ、秘術を使っても消せない思い出として、お稲荷さん達の事、まなちゃん、たかしさん……辻さん……そして、ひろしさん……
遠吠えが終わると彼は私の正面に移動してお座りをした。いよいよ本当のお別れ……彼は本当の姿、お稲荷さんの姿でお別れをしようとしている。
私はしゃがんで彼と同じ目線になった。
つかさ「お別れだね……たかしさん、元気になったらよろしくって伝えて」
私は握手のつもりで手を前に出した。彼も前足を前に出す、これじゃ「お手」と同じ光景、思わず吹き出してしまった。
つかさ「プッ……あはは……」
しまった。直ぐに笑うのを止めた。不謹慎なことをしてしまった。いままでの雰囲気が台無しなってしまった。彼を見ると怒っている気配はなかった。私を見ている。
彼は立ち上がると私の周りをグルグルと駆け足で回り始めた。
つかさ「え、なになに、何なの?」
私は立ち上がった。すると彼の回る速度はどんどん速くなってきた。
つかさ「フフフ、まるでワンちゃんみたいだよ……」
すると彼は回るのを止めて私の正面でお座りをした。そして私の顔を見た。
つかさ「どうしたの、笑ったら止めちゃって……」
笑ったら止まった……もしかして。
つかさ「笑って見送れって言いたいの?」
彼はそれを待っていたかのように立ち上がった。
つかさ「そうだよね、分った……さようなら……ひろしさん」
私はにっこり微笑んだ。彼は私のかを目に焼き付けるように見ていた。そして私にさようならと言っているような気がした。
彼は頭を森の方角に向けた。私は手を振った
『ウォーーー』
森に向かって大きく遠吠えを一回した。そして歩き出した。私から遠ざかっていく。
つかさ「さうなら……」
彼は振り向かない。少しずつ歩きが速くなって来た。私は少し声を大きくした。
つかさ「さようなら」
彼は振り向かない。走り出した、そして風のように森の奥に消えていった。私はありったけの大声で叫んだ。
つかさ「さようならー!!」
彼はもう行ってしまった。そして二度と私に逢う事はない……だけど私は最後にこう声にした。
つかさ「さようなら、また会う日まで……」
空はすっかり暗くなってしまった。月も出ていない。誰もこない神社に街灯はない。階段は真っ暗……そうだ、携帯電話の明りを使って下りよう。
携帯電話が入っているポケットに手を触れた時だった。私の周りが急に明るくなった。周りを見ると。蛍のような小さい無数の光が周りを照らしていた。
私の足元が光りだした。そして私の一番近い階段から順番に次々と階段が光りだした。私を出口まで案内するみたいだった。
こんな事ができるのはひろしさんくらいしか考えられない。私は携帯電話を出すのを止めて彼の用意した明りを頼りに階段を下りた。階段を一段下がると
一つ明りが消える。廻りが暗くて階段が宙を浮いているみたいに感じた。幻想的だった。お稲荷さんはこんな術だけだったら隠れていなくても済んだのかもね。
階段を踏むごとに明りは消えていく。もっとこの時を味わいたい、ゆっくりと時間を掛けて下りた。そして最後の階段を踏むと全ての明りが消えた。
悲しい別れのはずなのに涙が出なかった。
つかさ「ありがとう」
次の日、一番に出勤……の筈だったけど既に店の扉の鍵は開けられていた。中に入ると客席に座っているかえでさんが居た。
つかさ「おはようございます!」
かえで「おはよう」
かえでさんは私の顔をじっと見た。
かえで「昨日までのいじけた顔はどこかに飛んだわね」
つかさ「ありがとうございます」
私は深々とお辞儀をした。
かえで「私は何もしていないわよ……彼を送ってあげられたみたいね」
つかさ「はい!!」
かえで「何があったのよ、話が聞きたいわ」
つかさ「うん、えっとね……」
はっとした。キスした時の状況が脳裏に浮かんだ。あの時の感触が……私は思わず手を唇に触れた。
かえで「どうしたのよ」
つかさ「え、あ……うん……」
恥かしくて話せない……
かえで「どうしたのよ、この期に及んで隠すの?」
つかさ「そうゆう事じゃななくて……」
かえでさんは私をニヤニヤしながら見ている。
かえで「分った、話せないような事をしたんでしょ……どこまでしたのよ」
かえでさんは立ち上がって身を乗り出した。
かえで「当然キスくらいはしたよね……彼は舌を入れてきた?」
頭に血が上ってくる。体が炎のように熱くなった。
つかさ「わー、そ、そんな話……朝からしないで下さい」
かえで「ふふふ、はいはい、それじゃ夜なら良いわよね、楽しみにしてるわよ」
かえでさんは笑いながら厨房に入っていった。今になってひろしさんの言う恥かしい意味が分った。当分かえでさんにいじられそう……
昨夜の出来事……さすがにお姉ちゃん達にも話すことは……
私は溜め息を付いた……でも、秘密があるのもの悪くないかも……
私も着替えないと。
さて、今日も頑張るぞ……
……まなちゃん……真奈美さんの出会いから始まった私の旅……いろいろな事があった……もう私はあの神社には行かない。彼の言うようにあそこにはもう何もない。
だけど忘れないよ、秘術を使っても消せない思い出として、お稲荷さん達の事、まなちゃん、たかしさん……辻さん……そして、ひろしさん……
677:つかさの旅 46/45:2012/01/09(月) 01:13:48.81:DlK6yebt0 (43/47)
エピローグ
年末年始は実家に帰る予定だった。だけど温泉旅館は休みを利用してお客さんが普段より沢山くる。私達のレストランの評判も相まってとても休める状況ではなかった。
もっとも実家に帰っても神社の仕事で同じくらい忙しくなるから帰る時期をずらすして良かったのかもしれない。
もうお正月気分が抜け切った一月下旬、一週間の休みをもらって帰宅した。家に帰ると今までの疲れがどっと出てしまったのか、家でゴロゴロする日々が続いた。
かがみ「つかさ、お茶が入ったから居間に下りてきな」
一階からお姉ちゃんの声がした。
つかさ「はーい」
背伸びをして部屋から出た。居間に入るとお姉ちゃんはテレビを見ながらお茶菓子をつまんでいた。私は辺りを見回した。
つかさ「あれ、お母さん達は?」
かがみ「買い物よ、今日はつかさにご馳走するって、姉さん達も連れて行ったわよ」
つかさ「そうなんだ……」
私はお姉ちゃんの隣に座り、用意されていたお茶をすすった。
かがみ「ふふふ」
お姉ちゃんはテレビを見て笑っていた。せっかく一階まで下りたのだからお話したいな。
つかさ「大学院……合格したって聞いたけど……おめでとう」
かがみ「ありがとう……」
あれ……話が続かない……どうしてだろう。今までは意識なんかしなくても話ができたのに……
つかさ「そ、そういえばゆきちゃんも大学院に行くって言っていたね……もう決まったのかな?」
お姉ちゃんはテレビを見ながら答えた
かがみ「決まったみたいよ……そういやまだ何も決まっていない奴がいたな」
つかさ「……こなちゃん?」
お姉ちゃんは私を見た
かがみ「全く……つかさからも何とかいってやりなさいよ」
つかさ「そんなに急がなくても……こなちゃんにはこなちゃんの考えがあるよ」
かがみ「どうだか、あいつがそんな事考えている姿が想像できん」
腕を組み、頷きながら確信的に言うお姉ちゃん。
……お姉ちゃんに聞きたい事があった。この休みに聞きたいと思っていた。今なら聞けるかもしれない。私はお守りをお姉ちゃんに渡した。
かがみ「これは……」
つかさ「帰りの駅でお姉ちゃんから渡されたお守り」
かがみ「……これはつかさにあげたもの、もう私は要らないわよ」
つかさ「たかしさんって言って分る?お姉ちゃんは夢でひろしさんと話したから分るよね」
かがみ「……私に呪いをかけた人……それがどうかしたの」
つかさ「お姉ちゃんは呪いが解けたからひろしさんの話を信じたのでしょ、だから直ぐに帰るって言った」
かがみ「……また私に呪いをかけると思っただけよ、だから早く帰った方がいいと思っただけ、……それに、もう呪った本人にも恨みはないわ……
もう終わった話よ……それよりひろしはあれからどうなったのよ」
つかさ「みんなあの神社……町を去ったよ……」
かがみ「な、何故よ、彼はつかさを好きって言ったのよ……はっ!!」
お姉ちゃんは慌てて口を押さえたけどもう遅い。
つかさ「だから辛いだけ……なんて言ったんだ、お姉ちゃん」
お姉ちゃんは私が驚かないせいなのか、私を見て不思議そうな顔をした。
かがみ「……お互いに好きならそれは素晴らしいわよ、でも、お稲荷さんと人間の恋なんて……実るはずもない……それを言いたかっただけ、やっぱり思った通りになったわ」
でも電車の発車寸前で言ったお姉ちゃんの言葉が励みになったよ。だから彼に告白できた。
つかさ「そうでもないかも……」
私は小声で言った。お姉ちゃんは私の言った声に気付いていない。
かがみ「なんでまた、全員で去ったのよ、狐狩りだって今回が初めてじゃないでしょうに……去る前に人間の前に堂々と出てきたらどうなの」
お姉ちゃんもかえでさんと同じ事を言う。
つかさ「お稲荷さんの知識が知られると人間同士が争うから出来ないって言っていたよ……今私たちがやっている事なんか簡単に出来るって言ってた」
かがみ「どんな知識か知らないけど……今だって充分人間は争っているわ……逆に争いを止めるために使えばいいじゃない……不器用ね」
なんかお姉ちゃんは怒っているような気がする。何でだろう?
つかさ「不器用かもしれないけど、お稲荷さんが本気を出したら遠くの星まで行く事が出来るかもしれないね」
ふと神社の階段を下りる時に見た光の術を思い出した。
かがみ「つかさは夢を見るわね……それが本当ならお稲荷さんは地球の生物じゃないかもしれないわね……人に化けたり、呪ったり…」
お姉ちゃんはテレビのチャンネルを変えようとした。あれ……
つかさ「お姉ちゃんちょっと待って!!」
かがみ「なによ?」
私達はテレビを見た。
エピローグ
年末年始は実家に帰る予定だった。だけど温泉旅館は休みを利用してお客さんが普段より沢山くる。私達のレストランの評判も相まってとても休める状況ではなかった。
もっとも実家に帰っても神社の仕事で同じくらい忙しくなるから帰る時期をずらすして良かったのかもしれない。
もうお正月気分が抜け切った一月下旬、一週間の休みをもらって帰宅した。家に帰ると今までの疲れがどっと出てしまったのか、家でゴロゴロする日々が続いた。
かがみ「つかさ、お茶が入ったから居間に下りてきな」
一階からお姉ちゃんの声がした。
つかさ「はーい」
背伸びをして部屋から出た。居間に入るとお姉ちゃんはテレビを見ながらお茶菓子をつまんでいた。私は辺りを見回した。
つかさ「あれ、お母さん達は?」
かがみ「買い物よ、今日はつかさにご馳走するって、姉さん達も連れて行ったわよ」
つかさ「そうなんだ……」
私はお姉ちゃんの隣に座り、用意されていたお茶をすすった。
かがみ「ふふふ」
お姉ちゃんはテレビを見て笑っていた。せっかく一階まで下りたのだからお話したいな。
つかさ「大学院……合格したって聞いたけど……おめでとう」
かがみ「ありがとう……」
あれ……話が続かない……どうしてだろう。今までは意識なんかしなくても話ができたのに……
つかさ「そ、そういえばゆきちゃんも大学院に行くって言っていたね……もう決まったのかな?」
お姉ちゃんはテレビを見ながら答えた
かがみ「決まったみたいよ……そういやまだ何も決まっていない奴がいたな」
つかさ「……こなちゃん?」
お姉ちゃんは私を見た
かがみ「全く……つかさからも何とかいってやりなさいよ」
つかさ「そんなに急がなくても……こなちゃんにはこなちゃんの考えがあるよ」
かがみ「どうだか、あいつがそんな事考えている姿が想像できん」
腕を組み、頷きながら確信的に言うお姉ちゃん。
……お姉ちゃんに聞きたい事があった。この休みに聞きたいと思っていた。今なら聞けるかもしれない。私はお守りをお姉ちゃんに渡した。
かがみ「これは……」
つかさ「帰りの駅でお姉ちゃんから渡されたお守り」
かがみ「……これはつかさにあげたもの、もう私は要らないわよ」
つかさ「たかしさんって言って分る?お姉ちゃんは夢でひろしさんと話したから分るよね」
かがみ「……私に呪いをかけた人……それがどうかしたの」
つかさ「お姉ちゃんは呪いが解けたからひろしさんの話を信じたのでしょ、だから直ぐに帰るって言った」
かがみ「……また私に呪いをかけると思っただけよ、だから早く帰った方がいいと思っただけ、……それに、もう呪った本人にも恨みはないわ……
もう終わった話よ……それよりひろしはあれからどうなったのよ」
つかさ「みんなあの神社……町を去ったよ……」
かがみ「な、何故よ、彼はつかさを好きって言ったのよ……はっ!!」
お姉ちゃんは慌てて口を押さえたけどもう遅い。
つかさ「だから辛いだけ……なんて言ったんだ、お姉ちゃん」
お姉ちゃんは私が驚かないせいなのか、私を見て不思議そうな顔をした。
かがみ「……お互いに好きならそれは素晴らしいわよ、でも、お稲荷さんと人間の恋なんて……実るはずもない……それを言いたかっただけ、やっぱり思った通りになったわ」
でも電車の発車寸前で言ったお姉ちゃんの言葉が励みになったよ。だから彼に告白できた。
つかさ「そうでもないかも……」
私は小声で言った。お姉ちゃんは私の言った声に気付いていない。
かがみ「なんでまた、全員で去ったのよ、狐狩りだって今回が初めてじゃないでしょうに……去る前に人間の前に堂々と出てきたらどうなの」
お姉ちゃんもかえでさんと同じ事を言う。
つかさ「お稲荷さんの知識が知られると人間同士が争うから出来ないって言っていたよ……今私たちがやっている事なんか簡単に出来るって言ってた」
かがみ「どんな知識か知らないけど……今だって充分人間は争っているわ……逆に争いを止めるために使えばいいじゃない……不器用ね」
なんかお姉ちゃんは怒っているような気がする。何でだろう?
つかさ「不器用かもしれないけど、お稲荷さんが本気を出したら遠くの星まで行く事が出来るかもしれないね」
ふと神社の階段を下りる時に見た光の術を思い出した。
かがみ「つかさは夢を見るわね……それが本当ならお稲荷さんは地球の生物じゃないかもしれないわね……人に化けたり、呪ったり…」
お姉ちゃんはテレビのチャンネルを変えようとした。あれ……
つかさ「お姉ちゃんちょっと待って!!」
かがみ「なによ?」
私達はテレビを見た。
678:つかさの旅 47/45:2012/01/09(月) 01:15:14.75:DlK6yebt0 (44/47)
『次のニュースです、〇〇県の〇〇郡の山林でニホンオオカミに似ている群れの目撃が相次ぎ話題になっています、
ニホンオオカミは既に絶滅されているとされ、もしこれが本当なら歴史的にも、科学的にも大発見になり、各界で注目しています……
そもそもニホンオオカミは明治38年に最後の一匹が死んでから……』
これって、私がたかしさんに言った事……そうか、そうなんだね……あんなに笑ってバカにした私の案を……笑っちゃうよ……
かがみ「つかさ、そんなに面白いニュースか、なに笑っているのよ……」
つかさ「元気になったんだね……そうだよね、これしか私が知る手段ないよね……ありがとう」
今度は涙が出てきた。
かがみ「ちょっと、つかさ……笑ったり、泣いたり……どうしたのよ」
つかさ「お稲荷さんの事をちょっと思い出しただけ……」
かがみ「このニュースと何の関係があるのよ……つかさにが好きなのに何もしないで去っていった奴らの話なんかもう聞きたくないわ…つかさは悔しくないのか」
本当に怒り出したお姉ちゃん。怒っていた訳が分った……
つかさ「……そうでもないよ……」
今度はちょっと声を大きくした。お姉ちゃんは気が付いた。
かがみ「そうでもない……どうゆう事よ?」
つかさ「ひ・み・つ」
かがみ「つかさに秘密だって……何よ、興味あるじゃない教えなさいよ」
つかさ「え、お姉ちゃん、さっきお稲荷さんの話聞きたくないって言ったよね?」
かがみ「むぅ……」
珍しくお姉ちゃんはそれ以上聞いてこなかった。こんな場合、こなちゃんの時はすぐに反撃するのに。
こなちゃんやゆきちゃんの誤解を解くまではまだ話せない。うんん、恥かしくてずっと話せない……
さてと、お稲荷さんのお話はこのくらいにしよう……
つかさ「それより、明日皆で集まって映画を観に行こうよ、お姉ちゃん明日は空いている?」
かがみ「……空いているけど……」
つかさ「それじゃ決まり、明日は早いよ」
かがみ「ちょっと待て、こなたとみゆきはどうするのよ」
つかさ「大丈夫、もう連絡してあるよ」
かがみ「いつの間に……」
こんな話していたら急にお母さん達に逢いたくなった。
つかさ「ねぇ、お母さん達を迎えに行こうよ、荷物いっぱいありそうだし」
お姉ちゃんは私をじっと見ていた。
つかさ「どうしたの?」
かがみ「……あんた、変わったわね」
つかさ「変わった、どうゆうふうに?」
かがみ「何ていうのか……積極的なったと言うのか……さっきの突っ込みもありえない、それに比べたら……私なんか……何も……」
つかさ「私は少しも変わっていないよ、それにお姉ちゃんはお姉ちゃんだから」
お姉ちゃんは照れくさそうに頭を描いた。
かがみ「つかさ、それは褒めていないぞ……それじゃ行こうか」
お姉ちゃんは携帯電話を取り出した。
つかさ「どうするの?」
かがみ「姉さんに連絡するのよ、これから行くってね」
つかさ「連絡はしないで行こうよ、皆を驚かそうよ」
お姉ちゃんの手が止まった。そのまま携帯電話をポケットにしまった。
かがみ「面白そうね……驚かそうか」
つかさ「うん」
私達は玄関を出た。寒い。吐く息が白くなるほどだった。空も曇っていて雪でも降りそうだった。
つかさ「お姉ちゃん急ごうよ」
かがみ「はいはい……」
それから数週間経つとオオカミ騒動は野犬の群れの誤認とされて収束した。それからお稲荷さんの消息は一切分らない。でも人から付かず離れずの生活をしている
彼等の事、きっとどこかの町にいるに違いない。それは遠く離れた町、私の知らない所。
私は思った。彼等の知識を人が手にするにはまだ速過ぎるかもしれない。その一割もない知識ですら手に余している。
いつの日か人間とお稲荷さんが仲良く暮らす日がくると私は信じる。十年、百年、千年、たとえどんなに時間がかかっても……
だって、私とひろしさんは愛し合うことができたのだから。
終
『次のニュースです、〇〇県の〇〇郡の山林でニホンオオカミに似ている群れの目撃が相次ぎ話題になっています、
ニホンオオカミは既に絶滅されているとされ、もしこれが本当なら歴史的にも、科学的にも大発見になり、各界で注目しています……
そもそもニホンオオカミは明治38年に最後の一匹が死んでから……』
これって、私がたかしさんに言った事……そうか、そうなんだね……あんなに笑ってバカにした私の案を……笑っちゃうよ……
かがみ「つかさ、そんなに面白いニュースか、なに笑っているのよ……」
つかさ「元気になったんだね……そうだよね、これしか私が知る手段ないよね……ありがとう」
今度は涙が出てきた。
かがみ「ちょっと、つかさ……笑ったり、泣いたり……どうしたのよ」
つかさ「お稲荷さんの事をちょっと思い出しただけ……」
かがみ「このニュースと何の関係があるのよ……つかさにが好きなのに何もしないで去っていった奴らの話なんかもう聞きたくないわ…つかさは悔しくないのか」
本当に怒り出したお姉ちゃん。怒っていた訳が分った……
つかさ「……そうでもないよ……」
今度はちょっと声を大きくした。お姉ちゃんは気が付いた。
かがみ「そうでもない……どうゆう事よ?」
つかさ「ひ・み・つ」
かがみ「つかさに秘密だって……何よ、興味あるじゃない教えなさいよ」
つかさ「え、お姉ちゃん、さっきお稲荷さんの話聞きたくないって言ったよね?」
かがみ「むぅ……」
珍しくお姉ちゃんはそれ以上聞いてこなかった。こんな場合、こなちゃんの時はすぐに反撃するのに。
こなちゃんやゆきちゃんの誤解を解くまではまだ話せない。うんん、恥かしくてずっと話せない……
さてと、お稲荷さんのお話はこのくらいにしよう……
つかさ「それより、明日皆で集まって映画を観に行こうよ、お姉ちゃん明日は空いている?」
かがみ「……空いているけど……」
つかさ「それじゃ決まり、明日は早いよ」
かがみ「ちょっと待て、こなたとみゆきはどうするのよ」
つかさ「大丈夫、もう連絡してあるよ」
かがみ「いつの間に……」
こんな話していたら急にお母さん達に逢いたくなった。
つかさ「ねぇ、お母さん達を迎えに行こうよ、荷物いっぱいありそうだし」
お姉ちゃんは私をじっと見ていた。
つかさ「どうしたの?」
かがみ「……あんた、変わったわね」
つかさ「変わった、どうゆうふうに?」
かがみ「何ていうのか……積極的なったと言うのか……さっきの突っ込みもありえない、それに比べたら……私なんか……何も……」
つかさ「私は少しも変わっていないよ、それにお姉ちゃんはお姉ちゃんだから」
お姉ちゃんは照れくさそうに頭を描いた。
かがみ「つかさ、それは褒めていないぞ……それじゃ行こうか」
お姉ちゃんは携帯電話を取り出した。
つかさ「どうするの?」
かがみ「姉さんに連絡するのよ、これから行くってね」
つかさ「連絡はしないで行こうよ、皆を驚かそうよ」
お姉ちゃんの手が止まった。そのまま携帯電話をポケットにしまった。
かがみ「面白そうね……驚かそうか」
つかさ「うん」
私達は玄関を出た。寒い。吐く息が白くなるほどだった。空も曇っていて雪でも降りそうだった。
つかさ「お姉ちゃん急ごうよ」
かがみ「はいはい……」
それから数週間経つとオオカミ騒動は野犬の群れの誤認とされて収束した。それからお稲荷さんの消息は一切分らない。でも人から付かず離れずの生活をしている
彼等の事、きっとどこかの町にいるに違いない。それは遠く離れた町、私の知らない所。
私は思った。彼等の知識を人が手にするにはまだ速過ぎるかもしれない。その一割もない知識ですら手に余している。
いつの日か人間とお稲荷さんが仲良く暮らす日がくると私は信じる。十年、百年、千年、たとえどんなに時間がかかっても……
だって、私とひろしさんは愛し合うことができたのだから。
終
679:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/09(月) 01:16:51.22:DlK6yebt0 (45/47)
以上です。
「つかさの一人旅」を書いている時、既にこの物語のイメージはあったけどなかなか書く気にはなれなかった。
あまり反応がなかったし、面白くないと書かれてしまったのがショックだった。
それでも読んでくれている人はいるみたいだし、気に入ってくれている人もいるので続編を書きました。
まあ、そんなのも関係なく書きたいものを書いただけかもしれない。
読んでくれれば幸いです。
分割がうまくいかなくて予定よりレス数増えました。すみませんです。
以上です。
「つかさの一人旅」を書いている時、既にこの物語のイメージはあったけどなかなか書く気にはなれなかった。
あまり反応がなかったし、面白くないと書かれてしまったのがショックだった。
それでも読んでくれている人はいるみたいだし、気に入ってくれている人もいるので続編を書きました。
まあ、そんなのも関係なく書きたいものを書いただけかもしれない。
読んでくれれば幸いです。
分割がうまくいかなくて予定よりレス数増えました。すみませんです。
680:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/09(月) 02:08:57.58:DlK6yebt0 (46/47)
ここまで纏めた
------------------------
ここまで纏めた
------------------------
681:初詣:2012/01/09(月) 20:47:39.68:tr/BKQpAO (1/9)
>>680まとめ乙です。
もう3ヶ日も正月も過ぎたけど初詣ネタで投下いきます。
>>680まとめ乙です。
もう3ヶ日も正月も過ぎたけど初詣ネタで投下いきます。
682:初詣:2012/01/09(月) 20:48:18.23:tr/BKQpAO (2/9)
初詣の日。
私、宮河ひかげは姉や友達と神社に来た…までは良かったのだけれど。あろうことか、というかベタと言うべきか。
「皆してはぐれるなんて…全部アンタのせいだかんね!泉こなた!!」
「ひどいなぁひかげちゃん。私は悪くないよ」
「いや、アンタが悪い。こなたがトイレ割り込まなきゃ良かったんだし」
柊かがみさんが共感してくれる。まったく、こいつさえ割り込んで来なきゃ、みんなははぐれなかったのに。
「ま、まぁ…済んだ事は仕方ないとして」
『反省しろ!』
こいつの辞書に反省と節制の文字はない。冬コミだって…お姉ちゃんを刺激しまくって。
「またしばらく塩かゆ生活だってのに…水島のやつ…神にお金あげる余裕ないってのに…」
なんでゆきなはあんなのと幼なじみなんだろ。
まぁ私も人の事は言えないか。「なんで私、アンタと知り合いになっちゃったんだろ」
「…あきらめなよひかげちゃん。ひなたさんの妹なんだから」
「お姉ちゃんが悪いみたいに言わないでよ…金銭以外で」
「あれれ、ひなたさんひどい言われよう?というかかがみ、まるで私が迷惑しかかけてないみたいじゃんか」
「大学のレポートまで助けてと言い出してた奴に言われたくない。単位落としたらアンタのせいだかんな」
よくわからないが、人は簡単にはかわれないって事なのかな。
「とにかくさ、私と会ったのが不幸ってのは撤回してほしいかな。今頼んでたんだから」
頼む?そういえば、ゆきな達の特徴訊いて、さっきまで携帯いじってたみたいだったけど。
「誰かにメール?あけおめメールでも出してたの?」
「いや、こなたは基本パソコンだから。それにアタシ達には手紙で来てるし」
「んー、どうやらみんなこっちに来てたりいたりするからね。だから頼んだんだ。『助けて』って」
………こいつ馬鹿だ。
「助けてほしいのは私なんだけど」
「うん。だから『ひかげちゃんを助けて』ってみんなに言った」
初詣の日。
私、宮河ひかげは姉や友達と神社に来た…までは良かったのだけれど。あろうことか、というかベタと言うべきか。
「皆してはぐれるなんて…全部アンタのせいだかんね!泉こなた!!」
「ひどいなぁひかげちゃん。私は悪くないよ」
「いや、アンタが悪い。こなたがトイレ割り込まなきゃ良かったんだし」
柊かがみさんが共感してくれる。まったく、こいつさえ割り込んで来なきゃ、みんなははぐれなかったのに。
「ま、まぁ…済んだ事は仕方ないとして」
『反省しろ!』
こいつの辞書に反省と節制の文字はない。冬コミだって…お姉ちゃんを刺激しまくって。
「またしばらく塩かゆ生活だってのに…水島のやつ…神にお金あげる余裕ないってのに…」
なんでゆきなはあんなのと幼なじみなんだろ。
まぁ私も人の事は言えないか。「なんで私、アンタと知り合いになっちゃったんだろ」
「…あきらめなよひかげちゃん。ひなたさんの妹なんだから」
「お姉ちゃんが悪いみたいに言わないでよ…金銭以外で」
「あれれ、ひなたさんひどい言われよう?というかかがみ、まるで私が迷惑しかかけてないみたいじゃんか」
「大学のレポートまで助けてと言い出してた奴に言われたくない。単位落としたらアンタのせいだかんな」
よくわからないが、人は簡単にはかわれないって事なのかな。
「とにかくさ、私と会ったのが不幸ってのは撤回してほしいかな。今頼んでたんだから」
頼む?そういえば、ゆきな達の特徴訊いて、さっきまで携帯いじってたみたいだったけど。
「誰かにメール?あけおめメールでも出してたの?」
「いや、こなたは基本パソコンだから。それにアタシ達には手紙で来てるし」
「んー、どうやらみんなこっちに来てたりいたりするからね。だから頼んだんだ。『助けて』って」
………こいつ馬鹿だ。
「助けてほしいのは私なんだけど」
「うん。だから『ひかげちゃんを助けて』ってみんなに言った」
683:初詣:2012/01/09(月) 20:49:04.79:tr/BKQpAO (3/9)
「…他人が泣いてるの助けてくれるわけないじゃんか」
「小学生なのに厨二入っちゃった?冬コミで色々助けてもらってたのに」
「アレは私が小学生だからじゃない。‘紳士’な人達だし」
「……間違ってないだけに否定できないな」
「かがみ、今のがわかるのの意味わかってる?まぁ、奢るからさ」
そういって泉こなたは財布を取りだし
「ジュースを飲んで、待ってなよ。おねえさん達が皆を集めてくれるから」
「いやー、どうしようかね水島」
「どうすっかな、小池」
水島と小池えりかは途方にくれていた。
内海ゆきながトイレに行こうとしたさい、くせ毛がピンと立った髪の長い上級生くらいの人物に割り込まれ、人波に流されてしまったからだ。
更にゆきなを探して宮河ひなたが人波に呑まれ、ひかげは上級生らしき人物を追って居なくなってしまった。
「宮河も宮河のお姉さんも戻ってきそうにないな。ゆきなはどこまでいったんだ?」
「わっぴーは大丈夫でしょ。何かあの上級生知り合いみたいだし」
「にしても、あんな長い髪の上級生うちの学校にいたっけ」
「さぁ…わっぴーの交友関係ってタマにわかんないからね」
当然ながら二人にはそのくせ毛の上級生らしき人物こと、泉こなたとは面識がない。
そのため、こなたとひなたが友人である事も、こなたが大学生である事も知らない。
「んじゃゆきなが心配だな。場所分かればいいんだけど…あいつ、泣いてないかな」
「うーにゃは泣かないと思うけどね。でも戻ろうとして更に道間違えるかも」
「そうなったらあいつは人に聞くだろ。今は泣き虫じゃねぇし。むしろそれ、宮河がするんじゃねぇか?」
「ひっど……ん?」
「見つかったか?」
「うんにゃ。そじゃなくて、さっきの『泣いてないか』って誰の事?うーにゃじゃなかったの」
「はぁ?!今気にすることかよ」
「いやだって『今は泣き虫じゃない』とか言っときながら『泣いてないか』とか変じゃんか。…もしかしてわっぴー?」
「ちげーよ!なんで宮河の心配なんざ」
「んじゃ誰?妹は連れてないし私はここだし」
「お前の心配は絶対しない。えーとだな………宮河の姉ちゃんだよ。ほら、今日だって泣いてたし」
本人が聞いたら「ぷんすか」という擬音とともに怒りそうな話である。最も、ひかげから姉の所業を聞いている二人にとっては怒りに納得しないだろうが。
「…他人が泣いてるの助けてくれるわけないじゃんか」
「小学生なのに厨二入っちゃった?冬コミで色々助けてもらってたのに」
「アレは私が小学生だからじゃない。‘紳士’な人達だし」
「……間違ってないだけに否定できないな」
「かがみ、今のがわかるのの意味わかってる?まぁ、奢るからさ」
そういって泉こなたは財布を取りだし
「ジュースを飲んで、待ってなよ。おねえさん達が皆を集めてくれるから」
「いやー、どうしようかね水島」
「どうすっかな、小池」
水島と小池えりかは途方にくれていた。
内海ゆきながトイレに行こうとしたさい、くせ毛がピンと立った髪の長い上級生くらいの人物に割り込まれ、人波に流されてしまったからだ。
更にゆきなを探して宮河ひなたが人波に呑まれ、ひかげは上級生らしき人物を追って居なくなってしまった。
「宮河も宮河のお姉さんも戻ってきそうにないな。ゆきなはどこまでいったんだ?」
「わっぴーは大丈夫でしょ。何かあの上級生知り合いみたいだし」
「にしても、あんな長い髪の上級生うちの学校にいたっけ」
「さぁ…わっぴーの交友関係ってタマにわかんないからね」
当然ながら二人にはそのくせ毛の上級生らしき人物こと、泉こなたとは面識がない。
そのため、こなたとひなたが友人である事も、こなたが大学生である事も知らない。
「んじゃゆきなが心配だな。場所分かればいいんだけど…あいつ、泣いてないかな」
「うーにゃは泣かないと思うけどね。でも戻ろうとして更に道間違えるかも」
「そうなったらあいつは人に聞くだろ。今は泣き虫じゃねぇし。むしろそれ、宮河がするんじゃねぇか?」
「ひっど……ん?」
「見つかったか?」
「うんにゃ。そじゃなくて、さっきの『泣いてないか』って誰の事?うーにゃじゃなかったの」
「はぁ?!今気にすることかよ」
「いやだって『今は泣き虫じゃない』とか言っときながら『泣いてないか』とか変じゃんか。…もしかしてわっぴー?」
「ちげーよ!なんで宮河の心配なんざ」
「んじゃ誰?妹は連れてないし私はここだし」
「お前の心配は絶対しない。えーとだな………宮河の姉ちゃんだよ。ほら、今日だって泣いてたし」
本人が聞いたら「ぷんすか」という擬音とともに怒りそうな話である。最も、ひかげから姉の所業を聞いている二人にとっては怒りに納得しないだろうが。
684:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海):2012/01/09(月) 20:50:30.18:tr/BKQpAO (4/9)
「…あー、寝坊したとか言ってたし、それでわっぴーに叱られて泣いてたね」
「だろ!」
「いや、いくらひなたさんでもそこまではないかと」
『…え?お姉さん達誰?』
不意の声に、二人がそちらを見る。そこには高校生とおぼしき女性が五人いた。
「ポニーテールって事は、貴女が小池えりかちゃん?」
目を髪で覆い隠している女性ー山辺たまきが確認するように尋ねる。
「は、はい」
「んじゃ、こっちの男の子が水島くんだね。ひかげちゃんの言ってた通りっス」
髪の長い眼鏡をかけた女性ー田村ひよりが水島を見て頷く。
「宮河の、知り合いですか」
「まぁね。でも君…『絆創膏鼻につけたバカ面男子』って説明だったんだけど、仲悪いの」
「ア、アイツ…!」
くせっ毛の女性ー毒島みくの言葉に水島は唸る。それをまぁまぁと言いながら色黒の女性―八坂こうが口を開いた。
「ひかげちゃん自身がツンデレなんだから、君が素直に告白しないと伝わらないんだよ」
「ぶっ!!」
「え?アンタそうなの?!」
「チゲエョ。ソレヨリオネエサンタチダレデスカ」
「んー、ひかげちゃんの友達の後輩」
「同じく。あと姉のひなたさんがサークルの常連客」
「その友人兼先輩が私達二人」
「あ、こっちの長い髪の子が後輩ね」
「…ただの巻き込まれた人」
こう、ひより、たまき、みく、永森やまとの順に答えていく。
「やまと、巻き込まれた人って…私の親友じゃん」
「事実だもの。ひかげちゃんって子は知らないし、泉って先輩も会った事ないから」
「えっと…じゃあお姉さん達、わっぴーがどこにいるのか知ってるの?」
親友は否定しないんだなぁ、と思いつつえりかが聞く。
「うん。今から案内するよ。…ゆきなって子もひなたさんも、たぶんそこにいるから」
「…あー、寝坊したとか言ってたし、それでわっぴーに叱られて泣いてたね」
「だろ!」
「いや、いくらひなたさんでもそこまではないかと」
『…え?お姉さん達誰?』
不意の声に、二人がそちらを見る。そこには高校生とおぼしき女性が五人いた。
「ポニーテールって事は、貴女が小池えりかちゃん?」
目を髪で覆い隠している女性ー山辺たまきが確認するように尋ねる。
「は、はい」
「んじゃ、こっちの男の子が水島くんだね。ひかげちゃんの言ってた通りっス」
髪の長い眼鏡をかけた女性ー田村ひよりが水島を見て頷く。
「宮河の、知り合いですか」
「まぁね。でも君…『絆創膏鼻につけたバカ面男子』って説明だったんだけど、仲悪いの」
「ア、アイツ…!」
くせっ毛の女性ー毒島みくの言葉に水島は唸る。それをまぁまぁと言いながら色黒の女性―八坂こうが口を開いた。
「ひかげちゃん自身がツンデレなんだから、君が素直に告白しないと伝わらないんだよ」
「ぶっ!!」
「え?アンタそうなの?!」
「チゲエョ。ソレヨリオネエサンタチダレデスカ」
「んー、ひかげちゃんの友達の後輩」
「同じく。あと姉のひなたさんがサークルの常連客」
「その友人兼先輩が私達二人」
「あ、こっちの長い髪の子が後輩ね」
「…ただの巻き込まれた人」
こう、ひより、たまき、みく、永森やまとの順に答えていく。
「やまと、巻き込まれた人って…私の親友じゃん」
「事実だもの。ひかげちゃんって子は知らないし、泉って先輩も会った事ないから」
「えっと…じゃあお姉さん達、わっぴーがどこにいるのか知ってるの?」
親友は否定しないんだなぁ、と思いつつえりかが聞く。
「うん。今から案内するよ。…ゆきなって子もひなたさんも、たぶんそこにいるから」
685:初詣:2012/01/09(月) 20:51:43.03:tr/BKQpAO (5/9)
「どこに行っちゃったのかしらゆきなちゃん」
宮河ひなたは周りを見ながら呟いた。
朝から寝坊してひかげに怒られ、情けない姿を見せてしまった事の名誉挽回に探しにきたものの、あまりの人の多さに完全に見失っていた。
「困ったわね…ひかげちゃんもこなたちゃん追いかけちゃったし」
どうしてあの子はこなたを敵視したがるのだろうと考える。ひかげの心配はしない。こなたを追ったのなら、こなたに聞けばわかるはずだし、こなたがひかげを撒いたりはしないと確信しているからだ。
「あら、パティちゃんじゃない。明けましておめでとう」
「…?Oh!ユタカ、ミナミ、イズミ!イましたよ!」
「え?」
知り合いのパトリシアに会ったので挨拶をしたら何故か人を呼ばれ、混乱するひなた。
「ひなたさん、明けましておめでとうございます。こなたお姉ちゃんが探してましたよ」
「明けましておめでとう、ゆたかちゃん。こなたちゃんが?あぁ、ひかげちゃんと一緒なのね」
どうやらひかげと合流して欲しくてこなたが探してるのだろう、とひなたは察した。
「あら、貴女は」
「初めまして。若瀬いずみと」
「コミケやお店でよく会うわよね。確かアニメイ」
「うわぁぁぁぁ!」
いずみは慌ててひなたの口を塞いだ。隠れオタクである彼女にとって、そう言った事実はあまり口に出して欲しくない。
「…委員長、宮河さんが窒息しちゃう」
「え?あ、そうね岩崎さん。…勘弁してくださいよ、どこで誰が聞いてるかわからないんですよ。『壁に耳あり障子にあの野郎許さねえ』って言うじゃないですか」
「それって『障子に目あり』なんじゃ…あの野郎許さねえって何?」
「槍を揉んだらって意味よ。それで、ひかげちゃんは?」
「今案内します」
「どこに行っちゃったのかしらゆきなちゃん」
宮河ひなたは周りを見ながら呟いた。
朝から寝坊してひかげに怒られ、情けない姿を見せてしまった事の名誉挽回に探しにきたものの、あまりの人の多さに完全に見失っていた。
「困ったわね…ひかげちゃんもこなたちゃん追いかけちゃったし」
どうしてあの子はこなたを敵視したがるのだろうと考える。ひかげの心配はしない。こなたを追ったのなら、こなたに聞けばわかるはずだし、こなたがひかげを撒いたりはしないと確信しているからだ。
「あら、パティちゃんじゃない。明けましておめでとう」
「…?Oh!ユタカ、ミナミ、イズミ!イましたよ!」
「え?」
知り合いのパトリシアに会ったので挨拶をしたら何故か人を呼ばれ、混乱するひなた。
「ひなたさん、明けましておめでとうございます。こなたお姉ちゃんが探してましたよ」
「明けましておめでとう、ゆたかちゃん。こなたちゃんが?あぁ、ひかげちゃんと一緒なのね」
どうやらひかげと合流して欲しくてこなたが探してるのだろう、とひなたは察した。
「あら、貴女は」
「初めまして。若瀬いずみと」
「コミケやお店でよく会うわよね。確かアニメイ」
「うわぁぁぁぁ!」
いずみは慌ててひなたの口を塞いだ。隠れオタクである彼女にとって、そう言った事実はあまり口に出して欲しくない。
「…委員長、宮河さんが窒息しちゃう」
「え?あ、そうね岩崎さん。…勘弁してくださいよ、どこで誰が聞いてるかわからないんですよ。『壁に耳あり障子にあの野郎許さねえ』って言うじゃないですか」
「それって『障子に目あり』なんじゃ…あの野郎許さねえって何?」
「槍を揉んだらって意味よ。それで、ひかげちゃんは?」
「今案内します」
686:初詣:2012/01/09(月) 20:52:51.13:tr/BKQpAO (6/9)
>>684にタイトルつけ忘れてました
内海ゆきなは途方にくれていた。トイレに行こうとしただけなのに、どういう訳かはぐれてしまった。
「ここ…どのあたりなんだろ。だいちゃん達どこかなぁ」
誰かに場所を聞こうか、とも考えた。
しかし、水島達がどこにいるのかもわからないから訊きようがない。それにひかげが
「気をつけた方がいい。下手な‘紳士’だったら危険なんだから」
と言っていた。…正直、意味がわからなかったが、ひかげの本気は伝わったので用心する。
実際、和服のようなものを着てカメラを持った無精髭の怪しげなおじさんがいたのが更にその言葉を信用させた。
と、視界に巫女さんが入った。神社の人、それに女性なら‘紳士’ではないだろうと声をかける。
「あ、あの」
「ん?なに、貴女迷子?」
「いえ、そうじゃなくてその」
「参ったな~せっかく姉さんに隠れてサボってるのに…とりあえず社務所かな。うん、じゃお姉さんに」
「まつり!忙しいんだからサボってんじゃない!」
「ゲッ姉さんにつかさ…。違うわよ、迷子よ迷子」
「迷子?もしかして…内海ゆきなちゃん?」
「えっ…」
突然名前を呼ばれ、ゆきなは混乱した。この人が‘紳士’という種類の人なのだろうか。
(男だけじゃないならそう言ってよひかげちゃん!)
触られたり誘拐されたりするのか、と身構える。そんなゆきなに
「あの、大丈夫ですよ?私達は宮河ひかげさんのお姉さんのお友達ですから」
お母さんのような雰囲気を持った人が、優しく微笑んだ。
>>684にタイトルつけ忘れてました
内海ゆきなは途方にくれていた。トイレに行こうとしただけなのに、どういう訳かはぐれてしまった。
「ここ…どのあたりなんだろ。だいちゃん達どこかなぁ」
誰かに場所を聞こうか、とも考えた。
しかし、水島達がどこにいるのかもわからないから訊きようがない。それにひかげが
「気をつけた方がいい。下手な‘紳士’だったら危険なんだから」
と言っていた。…正直、意味がわからなかったが、ひかげの本気は伝わったので用心する。
実際、和服のようなものを着てカメラを持った無精髭の怪しげなおじさんがいたのが更にその言葉を信用させた。
と、視界に巫女さんが入った。神社の人、それに女性なら‘紳士’ではないだろうと声をかける。
「あ、あの」
「ん?なに、貴女迷子?」
「いえ、そうじゃなくてその」
「参ったな~せっかく姉さんに隠れてサボってるのに…とりあえず社務所かな。うん、じゃお姉さんに」
「まつり!忙しいんだからサボってんじゃない!」
「ゲッ姉さんにつかさ…。違うわよ、迷子よ迷子」
「迷子?もしかして…内海ゆきなちゃん?」
「えっ…」
突然名前を呼ばれ、ゆきなは混乱した。この人が‘紳士’という種類の人なのだろうか。
(男だけじゃないならそう言ってよひかげちゃん!)
触られたり誘拐されたりするのか、と身構える。そんなゆきなに
「あの、大丈夫ですよ?私達は宮河ひかげさんのお姉さんのお友達ですから」
お母さんのような雰囲気を持った人が、優しく微笑んだ。
687:初詣:2012/01/09(月) 20:53:51.06:tr/BKQpAO (7/9)
「あ、だいちゃん!ひかげちゃんにえりちゃんも」
「ゆきな!ってまた増えた!」
一体これで何人になったの?
私にゆきなに水島にえりりん、お姉ちゃん。泉こなたにかがみさん、みゆきさんにつかささん。同人サークルで会った田村さんに八坂さんに永森さん、毒島さんに山辺さん。それにコミケで会ったパトリシアさんに若瀬さん。あと泉こなたの親戚の小早川さんに……誰?それに巫女さんが二人…は含めなくていいか。どっか行ったし。
「…あれ、峰岸と日部は?」
「あーやはデート中らしいからね。みさきちは…」
「さっきからずっといるぞ~」
あ、知り合いなんだこの人も。
「あの、ひかげさん?」
「何、みゆきさん」
「私、そんなに年上に見えますか?」
「小学生から見れば立派に年上だけど…ああ。ゆきな、この人まだ大学生だからね。ママとか呼ぶと傷つくから」
はぁ…こっちは早く働きたいって言うのに。
ん?誰よつついてくるの?水島?
「わっぴーわっぴー、結局、この人達って何なの」
えりりんだった。何って…サークルの客と売り手の関係だったりライバルだったりその仲間だったり今初対面の人とかだったり…簡単に言うと
「友達…かな。こなた除いて」
「だからなんで私を除くのかな」
「小四相手に大人げない大学生は除いていいじゃん!」
「手加減すると怒るくせに」
『え゛っ、大学生?!』
あれ、言ってなかったっけ?
「とにかくさ、初詣済ませない?向こうにお好み焼きの屋台あったから寄りたいんだけど」
「山さん、空気読んで」
「けど実際、この大人数が一ヶ所に溜まってるのは迷惑なのよね。さっさと御詣りしてきなさい」
「確かに。急ぎましょうか。…はい」
「何?やまと。手なんか出して」
「またはぐれたらやっかいだからね。やさこもひよりんも、手繋いだ繋いだ。先輩方も」
「そうだね~はい、ゆきなちゃんも水島くんも」
「あら水島くんはひかげちゃんとよね」
「…小学生に出会いで負けるとは…」
「何言ってるんだ柊?」
ホントに何の話?
「あ、だいちゃん!ひかげちゃんにえりちゃんも」
「ゆきな!ってまた増えた!」
一体これで何人になったの?
私にゆきなに水島にえりりん、お姉ちゃん。泉こなたにかがみさん、みゆきさんにつかささん。同人サークルで会った田村さんに八坂さんに永森さん、毒島さんに山辺さん。それにコミケで会ったパトリシアさんに若瀬さん。あと泉こなたの親戚の小早川さんに……誰?それに巫女さんが二人…は含めなくていいか。どっか行ったし。
「…あれ、峰岸と日部は?」
「あーやはデート中らしいからね。みさきちは…」
「さっきからずっといるぞ~」
あ、知り合いなんだこの人も。
「あの、ひかげさん?」
「何、みゆきさん」
「私、そんなに年上に見えますか?」
「小学生から見れば立派に年上だけど…ああ。ゆきな、この人まだ大学生だからね。ママとか呼ぶと傷つくから」
はぁ…こっちは早く働きたいって言うのに。
ん?誰よつついてくるの?水島?
「わっぴーわっぴー、結局、この人達って何なの」
えりりんだった。何って…サークルの客と売り手の関係だったりライバルだったりその仲間だったり今初対面の人とかだったり…簡単に言うと
「友達…かな。こなた除いて」
「だからなんで私を除くのかな」
「小四相手に大人げない大学生は除いていいじゃん!」
「手加減すると怒るくせに」
『え゛っ、大学生?!』
あれ、言ってなかったっけ?
「とにかくさ、初詣済ませない?向こうにお好み焼きの屋台あったから寄りたいんだけど」
「山さん、空気読んで」
「けど実際、この大人数が一ヶ所に溜まってるのは迷惑なのよね。さっさと御詣りしてきなさい」
「確かに。急ぎましょうか。…はい」
「何?やまと。手なんか出して」
「またはぐれたらやっかいだからね。やさこもひよりんも、手繋いだ繋いだ。先輩方も」
「そうだね~はい、ゆきなちゃんも水島くんも」
「あら水島くんはひかげちゃんとよね」
「…小学生に出会いで負けるとは…」
「何言ってるんだ柊?」
ホントに何の話?
688:初詣:2012/01/09(月) 20:55:21.27:tr/BKQpAO (8/9)
けど19人が手を繋ぐのっていうのも迷惑なんじゃないのかな。
「ひかげちゃん、はい。お姉ちゃんと手を繋ぎましょ」
「あのねお姉ちゃん…」
「?なに?」
大人数の手繋ぎって…ま、いいか。
「わかった」
「♪」
新年だしね。…うん。
甘えたって、いいよね。
お賽銭でいくら出すのかで揉めたのは、また別の話。
終わり
けど19人が手を繋ぐのっていうのも迷惑なんじゃないのかな。
「ひかげちゃん、はい。お姉ちゃんと手を繋ぎましょ」
「あのねお姉ちゃん…」
「?なに?」
大人数の手繋ぎって…ま、いいか。
「わかった」
「♪」
新年だしね。…うん。
甘えたって、いいよね。
お賽銭でいくら出すのかで揉めたのは、また別の話。
終わり
689:初詣:2012/01/09(月) 21:00:01.89:tr/BKQpAO (9/9)
投下終了です。
ぶっちゃけオールスターもどき目指してたらこんな中身に…あ、ちなみにひかげの同級生ズは「宮河家の空腹」のキャラです。
というかそれとゲーム版での設定やらオリ設定やらごちゃ混ぜ状態で書いたので…なんかカオスに。
投下終了です。
ぶっちゃけオールスターもどき目指してたらこんな中身に…あ、ちなみにひかげの同級生ズは「宮河家の空腹」のキャラです。
というかそれとゲーム版での設定やらオリ設定やらごちゃ混ぜ状態で書いたので…なんかカオスに。
690:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/09(月) 23:11:02.72:DlK6yebt0 (47/47)
ここまで纏めた
-----------------------------------
>>689
欲張りすぎた感じはあるけど面白かったです。
アゲときます。
ここまで纏めた
-----------------------------------
>>689
欲張りすぎた感じはあるけど面白かったです。
アゲときます。
691:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/01/12(木) 02:19:08.48:aoRkR66SO (1/1)
新学年が始まった春。
稜桜学園二年B組にやってきた一人の転校生。
それと同じくして広まり始めた一つの噂。
ゆたか「こなたお姉ちゃんが言ってたんだけどね…マヨナカテレビって知ってる?」
― Persona in the Lucky Star ―
雨の日の0時、一人で消えたテレビを見ていると、不思議な映像が映し出されるという。
こなた「…ねえ、昨日のあれって」
かがみ「間違いないわ…つかさよ」
次々に起こる失踪事件。
ゆたか「今度は高良先輩が…たぶんわたしの時とかと同じじゃないかって…」
奇縁な出会い。
かなた「…なんでまたこっちに来ちゃったのよ…」
繋がる絆<コミュニティー>
パティ「ハイ!これでワタシタチはフレンドでありマス!」
そして、目覚める力<ペルソナ>
こなた「やるよ!ジライヤ!」
かがみ「来なさい!トモエ!」
つかさ「え、えっと…コ、コノハナサクヤ!」
ゆたか「お、お願い!タケミカヅチ!」
みゆき「力を貸して下さい…ヒミコ!」
かなた「任せて!キントキドウジ!」
みなみ「これで…スクナヒコナ!」
仲間と共に霧をはらし、君の手で真実を掴め!
???「いけっ!イザナギ!」
こう「…なにこれ?」
ひより「いや、なんかP4のアニメ見てたらこうムラムラっと…」
こう「『???』って誰?」
ひより「そこはまあ、主人公っていうかプレイヤーなんで、好きな名前を入れて下さいって事で」
こう「ふーん…いやまあ、普通にボツだけどね」
ひより「…ですよねー…」
新学年が始まった春。
稜桜学園二年B組にやってきた一人の転校生。
それと同じくして広まり始めた一つの噂。
ゆたか「こなたお姉ちゃんが言ってたんだけどね…マヨナカテレビって知ってる?」
― Persona in the Lucky Star ―
雨の日の0時、一人で消えたテレビを見ていると、不思議な映像が映し出されるという。
こなた「…ねえ、昨日のあれって」
かがみ「間違いないわ…つかさよ」
次々に起こる失踪事件。
ゆたか「今度は高良先輩が…たぶんわたしの時とかと同じじゃないかって…」
奇縁な出会い。
かなた「…なんでまたこっちに来ちゃったのよ…」
繋がる絆<コミュニティー>
パティ「ハイ!これでワタシタチはフレンドでありマス!」
そして、目覚める力<ペルソナ>
こなた「やるよ!ジライヤ!」
かがみ「来なさい!トモエ!」
つかさ「え、えっと…コ、コノハナサクヤ!」
ゆたか「お、お願い!タケミカヅチ!」
みゆき「力を貸して下さい…ヒミコ!」
かなた「任せて!キントキドウジ!」
みなみ「これで…スクナヒコナ!」
仲間と共に霧をはらし、君の手で真実を掴め!
???「いけっ!イザナギ!」
こう「…なにこれ?」
ひより「いや、なんかP4のアニメ見てたらこうムラムラっと…」
こう「『???』って誰?」
ひより「そこはまあ、主人公っていうかプレイヤーなんで、好きな名前を入れて下さいって事で」
こう「ふーん…いやまあ、普通にボツだけどね」
ひより「…ですよねー…」
692:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/12(木) 20:39:04.46:GFCdjWoA0 (1/1)
ここまで纏めた
>>691
最初何か長編の予告か何かだと思ったw
ここまで纏めた
>>691
最初何か長編の予告か何かだと思ったw
693:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/14(土) 02:20:57.42:rDbbNtMx0 (1/1)
ネタが尽きたのか何も思い浮かばない。
何かお題を下さい。
ネタが尽きたのか何も思い浮かばない。
何かお題を下さい。
694:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/17(火) 23:06:26.84:TVKLltS50 (1/1)
>>693
お題は自分で考えます。
投下したい人が居たら無視してどんどん投下して下さい。
>>693
お題は自分で考えます。
投下したい人が居たら無視してどんどん投下して下さい。
695:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/01/18(水) 09:06:55.00:tAFIxdOSO (1/1)
お題は9巻から引っ張ってきたらどーだい?
お題は9巻から引っ張ってきたらどーだい?
696:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/21(土) 17:38:30.73:C80LhZqz0 (1/2)
やっと9巻を買った。
別に売れ切れていたわけではないが遅くなってしまった。
そのタイトルの中から『視線』(P30を参照)をお題にしたいと思います。
特に期限は設けませんので気が向いたら考えて下さい。自分もまだ何もストーリは浮かんでいなかったりします。
それではスタート。
やっと9巻を買った。
別に売れ切れていたわけではないが遅くなってしまった。
そのタイトルの中から『視線』(P30を参照)をお題にしたいと思います。
特に期限は設けませんので気が向いたら考えて下さい。自分もまだ何もストーリは浮かんでいなかったりします。
それではスタート。
697:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海):2012/01/21(土) 17:59:53.35:666TKwiAO (1/1)
………え、何がスタートしたの?
………え、何がスタートしたの?
698:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/21(土) 18:22:18.07:C80LhZqz0 (2/2)
活気付けで
「視線」をお題にssを投下してもらいたい。
それだけです。
活気付けで
「視線」をお題にssを投下してもらいたい。
それだけです。
699:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/25(水) 21:24:58.93:jgI+DUir0 (1/1)
最近纏めサイトで纏めている人です。
今日1/25にいくつかの作品を編集した人が居ます。
編集内容から作者本人と思われます。
従って前の状態には戻しませんが、今度から修正報告ページに報告お願いします。(悪戯と区別するため)
ついでに提案です。
作者別の作品リストをまとめサイトに作るのはいかがですか?
作者は今居る人しかできませんが……
自分はコンクールを含めると約20作品位。自分の作品でリストを作ってみたいと思います。(古い順で)
他に参加されたい方は居ますか?
まとめサイトの編集が苦手であればリストをこのスレに書いてくれれば代わりに作成します。
自分一人だと恥かしいので、他に参加者が居なければこの提案は破棄とします。
よろしくお願いします。
最近纏めサイトで纏めている人です。
今日1/25にいくつかの作品を編集した人が居ます。
編集内容から作者本人と思われます。
従って前の状態には戻しませんが、今度から修正報告ページに報告お願いします。(悪戯と区別するため)
ついでに提案です。
作者別の作品リストをまとめサイトに作るのはいかがですか?
作者は今居る人しかできませんが……
自分はコンクールを含めると約20作品位。自分の作品でリストを作ってみたいと思います。(古い順で)
他に参加されたい方は居ますか?
まとめサイトの編集が苦手であればリストをこのスレに書いてくれれば代わりに作成します。
自分一人だと恥かしいので、他に参加者が居なければこの提案は破棄とします。
よろしくお願いします。
700:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/27(金) 23:10:08.07:T3dvDnN10 (1/1)
>>699
誰かを待っているようでは先に進みませんね。
私の作品一覧を作ってます。
基本的に短編以上の作品を載せます。1レス物はキリがないので割愛します。
もし、いいなと思ったら後に続いてください。
>>699
誰かを待っているようでは先に進みませんね。
私の作品一覧を作ってます。
基本的に短編以上の作品を載せます。1レス物はキリがないので割愛します。
もし、いいなと思ったら後に続いてください。
701:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/01/28(土) 12:15:20.43:vxzwv4wSO (1/1)
リストは自分で作れませんが、作品数がシリーズものを一つにしても70を超えるので人に頼むのもちょっと…
っつーかシリーズばらしたら100超えるっぽいけど、よく書いたなあ
リストは自分で作れませんが、作品数がシリーズものを一つにしても70を超えるので人に頼むのもちょっと…
っつーかシリーズばらしたら100超えるっぽいけど、よく書いたなあ
702:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/29(日) 13:44:09.00:TEzxGI9s0 (1/2)
>>701
一度に処理しようとすれば確かに大変だけどね
少しずつ。例えば10作品ずつでも纏めていけばさほど負担にはなりません。
良かったら纏めますよ。
>>701
一度に処理しようとすれば確かに大変だけどね
少しずつ。例えば10作品ずつでも纏めていけばさほど負担にはなりません。
良かったら纏めますよ。
703:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/01/29(日) 20:04:14.13:22E8piMso (1/1)
元々VIPスレだし、そういうコテハン的なのは嫌われる傾向にあるからどうだろうな
まぁこの期に及んでって話だし、やりたい人がやる分には好きにしていいんじゃないか
元々VIPスレだし、そういうコテハン的なのは嫌われる傾向にあるからどうだろうな
まぁこの期に及んでって話だし、やりたい人がやる分には好きにしていいんじゃないか
704:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/29(日) 23:20:54.22:TEzxGI9s0 (2/2)
そうゆう趣向があったのか。
自分はまとめサイトから入った人だからスレの趣向とかあまり知らなかった。
参考にします。
そうゆう趣向があったのか。
自分はまとめサイトから入った人だからスレの趣向とかあまり知らなかった。
参考にします。
705:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/31(火) 23:13:42.45:/n2d23ov0 (1/6)
作者リストは避難所で参加者が増えなければ消すと書きましたがとりあえずこのまま運用します。
話は変わって、作品を投下します。
ID:bz0WGlY0の作者です
3~4レスくらいかな?
作者リストは避難所で参加者が増えなければ消すと書きましたがとりあえずこのまま運用します。
話は変わって、作品を投下します。
ID:bz0WGlY0の作者です
3~4レスくらいかな?
706:初恋 1:2012/01/31(火) 23:15:37.85:/n2d23ov0 (2/6)
はぁ、疲れた。でも今日は大掃除しないとだめだ。そう自分に言いきかせた。
今年最後の仕事を終え、自分の部屋の大掃除を始めた。普段は使わない所を重点的に掃除しないと……
掃除をして数分だった。埃を被ったアルバムが出てきた……
これは、卒業アルバムだ。何十年ぶりだろう。そういえばあの友人はどうしているかな……彼は三年になって直ぐに意気投合した親友、
でも卒業してから彼には一度も会っていない。いや、あの時から会わなくなった。
アルバムの表紙を見ていると、あの時の出来事が思い浮かんできた……
「おまえ、好きな人はいるのか」
三年生になって暫くした頃だった。お昼休み、ベランダで数人の友人と話していた時、ふと友人の口から出た質問。無視をしても良かった。話題を変えてもよかった。
「……柊さん」
何故か答えてしまった。
「…柊って、学年トップの……無理だな、相手にもされないぞ」
自分の成績は下から数えたほうが早いかもしれない。運動も下手、彼女は恐らく彼の言う通り相手にもされないだろう、でも彼の言っている柊さんは僕の言っている人とは違う。
「いや、柊つかささんの方だよ」
友人は暫く考え込んだ。
「柊つかさ……ああ、柊の妹か……話した事ないな、どんな子だかあまり印象にない、全然目立たないし……なんで好きになったんだよ」
興味津々に聞いてきた。
どうして……
『初恋』
はぁ、疲れた。でも今日は大掃除しないとだめだ。そう自分に言いきかせた。
今年最後の仕事を終え、自分の部屋の大掃除を始めた。普段は使わない所を重点的に掃除しないと……
掃除をして数分だった。埃を被ったアルバムが出てきた……
これは、卒業アルバムだ。何十年ぶりだろう。そういえばあの友人はどうしているかな……彼は三年になって直ぐに意気投合した親友、
でも卒業してから彼には一度も会っていない。いや、あの時から会わなくなった。
アルバムの表紙を見ていると、あの時の出来事が思い浮かんできた……
「おまえ、好きな人はいるのか」
三年生になって暫くした頃だった。お昼休み、ベランダで数人の友人と話していた時、ふと友人の口から出た質問。無視をしても良かった。話題を変えてもよかった。
「……柊さん」
何故か答えてしまった。
「…柊って、学年トップの……無理だな、相手にもされないぞ」
自分の成績は下から数えたほうが早いかもしれない。運動も下手、彼女は恐らく彼の言う通り相手にもされないだろう、でも彼の言っている柊さんは僕の言っている人とは違う。
「いや、柊つかささんの方だよ」
友人は暫く考え込んだ。
「柊つかさ……ああ、柊の妹か……話した事ないな、どんな子だかあまり印象にない、全然目立たないし……なんで好きになったんだよ」
興味津々に聞いてきた。
どうして……
『初恋』
707:初恋 2:2012/01/31(火) 23:17:31.46:/n2d23ov0 (3/6)
更に一年前、二年生の時、彼女は僕と同じクラスになった。友人の言うようにあまり目立たない子だった。僕も最初は彼女を意識しなかった。
二年生最初の席替えの時、彼女は僕の隣の席になった。隣の席になっただけだった。これだけなら彼女を好きになったりはしない。
何週間か経った頃。
「しまった!!」
二時限目の教科書を忘れていたのに気が付いた。一年の時の友人、部活の友人など別のクラスの人に借りに行ったが、その日は同じ学科の授業が無く借りられなかった。
このままだと先生に怒られてしまう。
「どうしたの?」
隣の席から声がした。僕は声のする方を向いた。柊さんだった。彼女は心配そうな顔で僕を見ていた。
「次の授業の教科書わすれてしまって……」
すると彼女は鞄から教科書を取り出し僕に差し出した。
「え、でも、柊さんの教科書はどうするの?」
「……確かお姉ちゃんも同じ授業があったから……」
彼女は僕に教科書を渡すと教室を出て行った。これが彼女との最初の会話だった。
優しい人だな……。そんな第一印象。それ以来お互いに教科書の貸し借りが続いた。二人とも忘れん棒だった。
夏休みが終わり、二回目の席替えが行われた。前回と同じくじ引きで席が決められた。その時隣の席になったのが彼女だった。
「また隣の席になったね」
「よろしく……」
全くの偶然だった。少しだけど運命的な何かを感じた。多分これは僕だけの感情だったのかもしれない。
それでも夏休み前より彼女と話す機会は格段に増えた。その中で僕は彼女を好きになった。そして気持ちを伝えたいと思った。
でもそれは思っただけだった。とても恥かしくてそんな事が出来るわけがない。ただ時間だけが過ぎていった。
三年生になった。自分の中では彼女と一緒のクラスになる自信があった。二度も隣の席になったのだから。でもそれは何の根拠もない自信だった。
偶然は二度起きない。彼女とは別々のクラスになった。
別のクラスになると彼女と話すことも会うこともすっかり無くなってしまった。所詮その程度の関係だった。
しかし不思議なものだ、会わなくなった今の方が二年の頃より彼女に対する気持ちは強くなっていた。
「席が隣になったからか……そんなもんだよな、切欠なんて……」
友人はさも自分がそうだったかような口調で話していた。もうこんな話は止めようと言おうとした時だった。
「それなら、告白しなよ」
友人は僕の顔を見ながらそういった。
「告白?」
僕は言い返した。
「そうだよ、彼女の気持ち聞きたいとは思わない?」
それが出来るなら二年の時にしていた。僕は首を横に振った。
「そんな中途半端な方が俺は嫌だな……」
まったくお節介な奴だな……
『キンコーン』
「あ、次は体育だったよな、やば、早く着替えようぜ……」
友人は慌てて教室に戻った。お昼休みは終わった。そしてこの話もこれで終わり。ほっと一息ついた。
話は終わらなかった。友人は暇を見つけると柊さんの話を持ちかけてきて告白しろと僕を説得した。その度に僕は首を横に振った。友人はある意味面白半分だった
のかもしれない。告白させてその後の成り行きを見たいのだろう。
友人もそれなりの恋愛論があったらしく告白の重要性を熱く語る場面もしばしばあった。
卒業も近づいた。この頃になると部活動も自由参加になり放課後はそのまま帰る日が多くなった。彼が面白半分でなかったに気が付いたのはその頃だった。
友人は人気の居ない所に僕を呼び出した。
「柊は友達と長話をしてから帰る、その友達と別れた時がチャンスだよ、人気の居ない道を通るから」
「チャンスってなんだよ?」
「告白だよ、もう時間がないぞ、するなら今しかないだろ」
いつの間にそんな事まで調べていたなんて。僕はとっくに諦めていた。三年になって彼女と話した事なんて一回もないのに。今更……
「それじゃ明日決行だ、逃げるなよ」
有無を言わさず友人は教室に戻って行った。友人は本気らしい。でも告白なんて……。
次の日の放課後、帰ろうとすると友人は教室の出口で僕を待っていた。どうやら逃げられそうにない。友人は僕を柊さんのクラスに連れて行った。
教室の中で柊さんは背の小さい子とお喋りをしていた。泉さんだったかな……確か二年の時同じクラスだった子だ、そういえば二年の時も同じようによくお喋りをしていた。
時より見せる笑顔がなんとも言えない気持ちにさせた。やっぱり僕は柊さんが好きだった。
もう少し見て居たかったけど友人は僕を連れて教室を後にした。どうやら柊さんが居るのかどうかの確認だったようだ。
更に一年前、二年生の時、彼女は僕と同じクラスになった。友人の言うようにあまり目立たない子だった。僕も最初は彼女を意識しなかった。
二年生最初の席替えの時、彼女は僕の隣の席になった。隣の席になっただけだった。これだけなら彼女を好きになったりはしない。
何週間か経った頃。
「しまった!!」
二時限目の教科書を忘れていたのに気が付いた。一年の時の友人、部活の友人など別のクラスの人に借りに行ったが、その日は同じ学科の授業が無く借りられなかった。
このままだと先生に怒られてしまう。
「どうしたの?」
隣の席から声がした。僕は声のする方を向いた。柊さんだった。彼女は心配そうな顔で僕を見ていた。
「次の授業の教科書わすれてしまって……」
すると彼女は鞄から教科書を取り出し僕に差し出した。
「え、でも、柊さんの教科書はどうするの?」
「……確かお姉ちゃんも同じ授業があったから……」
彼女は僕に教科書を渡すと教室を出て行った。これが彼女との最初の会話だった。
優しい人だな……。そんな第一印象。それ以来お互いに教科書の貸し借りが続いた。二人とも忘れん棒だった。
夏休みが終わり、二回目の席替えが行われた。前回と同じくじ引きで席が決められた。その時隣の席になったのが彼女だった。
「また隣の席になったね」
「よろしく……」
全くの偶然だった。少しだけど運命的な何かを感じた。多分これは僕だけの感情だったのかもしれない。
それでも夏休み前より彼女と話す機会は格段に増えた。その中で僕は彼女を好きになった。そして気持ちを伝えたいと思った。
でもそれは思っただけだった。とても恥かしくてそんな事が出来るわけがない。ただ時間だけが過ぎていった。
三年生になった。自分の中では彼女と一緒のクラスになる自信があった。二度も隣の席になったのだから。でもそれは何の根拠もない自信だった。
偶然は二度起きない。彼女とは別々のクラスになった。
別のクラスになると彼女と話すことも会うこともすっかり無くなってしまった。所詮その程度の関係だった。
しかし不思議なものだ、会わなくなった今の方が二年の頃より彼女に対する気持ちは強くなっていた。
「席が隣になったからか……そんなもんだよな、切欠なんて……」
友人はさも自分がそうだったかような口調で話していた。もうこんな話は止めようと言おうとした時だった。
「それなら、告白しなよ」
友人は僕の顔を見ながらそういった。
「告白?」
僕は言い返した。
「そうだよ、彼女の気持ち聞きたいとは思わない?」
それが出来るなら二年の時にしていた。僕は首を横に振った。
「そんな中途半端な方が俺は嫌だな……」
まったくお節介な奴だな……
『キンコーン』
「あ、次は体育だったよな、やば、早く着替えようぜ……」
友人は慌てて教室に戻った。お昼休みは終わった。そしてこの話もこれで終わり。ほっと一息ついた。
話は終わらなかった。友人は暇を見つけると柊さんの話を持ちかけてきて告白しろと僕を説得した。その度に僕は首を横に振った。友人はある意味面白半分だった
のかもしれない。告白させてその後の成り行きを見たいのだろう。
友人もそれなりの恋愛論があったらしく告白の重要性を熱く語る場面もしばしばあった。
卒業も近づいた。この頃になると部活動も自由参加になり放課後はそのまま帰る日が多くなった。彼が面白半分でなかったに気が付いたのはその頃だった。
友人は人気の居ない所に僕を呼び出した。
「柊は友達と長話をしてから帰る、その友達と別れた時がチャンスだよ、人気の居ない道を通るから」
「チャンスってなんだよ?」
「告白だよ、もう時間がないぞ、するなら今しかないだろ」
いつの間にそんな事まで調べていたなんて。僕はとっくに諦めていた。三年になって彼女と話した事なんて一回もないのに。今更……
「それじゃ明日決行だ、逃げるなよ」
有無を言わさず友人は教室に戻って行った。友人は本気らしい。でも告白なんて……。
次の日の放課後、帰ろうとすると友人は教室の出口で僕を待っていた。どうやら逃げられそうにない。友人は僕を柊さんのクラスに連れて行った。
教室の中で柊さんは背の小さい子とお喋りをしていた。泉さんだったかな……確か二年の時同じクラスだった子だ、そういえば二年の時も同じようによくお喋りをしていた。
時より見せる笑顔がなんとも言えない気持ちにさせた。やっぱり僕は柊さんが好きだった。
もう少し見て居たかったけど友人は僕を連れて教室を後にした。どうやら柊さんが居るのかどうかの確認だったようだ。
708:初恋 3:2012/01/31(火) 23:18:57.61:/n2d23ov0 (4/6)
学校裏の人気の居ない通りに友人は僕を連れてきた。
「柊は友達と別れるとこの道を通るから待っていればいいよ、俺は校舎側にいて柊来たら合図するから準備しれおけよな」
準備って何をすればいい。告白するってどうやって柊さんに話せばいい。何も分らない。聞く間もなく友人は校舎の方に走って行った。
一人残されて誰も居ない通りに居る。緊張してきたのか心臓がドキドキしてきた。冷や汗も出てきてきた。とりあえず壁の陰に隠れた。まさか本当に僕は
告白をするのだろうか。他人事みたいだけど、そんな気分だった。柊さんになんて言うのか全く考えていなかった。このまま帰ってしまおうか。
そんな考えも過ぎった。
暫くすると校舎側から友人が出てきて僕の居る方を向いた。そしてまた校舎の方に戻って行った。これが合図なのか……それとも柊さんは別の道を通ったのか。
そんな事を考えていると校舎側から人影が現れた。
柊さんだ……僕は唾を飲んだ。彼女はどんどん僕の方に近づいてくる。僕は隠れているので彼女から僕は見えていない。
このままやり過ごせば彼女はそのまま僕を通り過ぎて帰る……やっぱり告白なんて出来ない。
柊さんが僕の目の前を通過した。さっき教室で友達と笑顔で話している柊さんを思い出した。
「柊さん」
僕は壁の影から出て彼女を呼び止めた。彼女は立ち止まり振り返った。少し驚いた表情をしていた。それもそうだ、三年になって始めて彼女を呼んだのだから。
呼び止めたはいいが何て言えばいい。彼女は何で自分を呼び止めたのか不思議に思っているに違いない。もうここまで来て後に引けない。
「柊さんが好きです……」
頭が真っ白になった。彼女は慌てて辺りをきょろきょろと見ている。他に誰か居ないか見ているのだろうか……
「で、電話して……」
彼女はそう言ったまま立っていた。僕は恥かしくなって走って校舎の方に向かった。
校舎に着くと友人が待っていた。走ったせいで息が荒くなっていた。
「どうだった……」
「分らない……」
友人は僕の顔をみるとそれ以上聞かずに置いてあった鞄を持つと帰った。
僕は息を落ち着かせてから帰宅した。
家に帰ると自分の部屋に直行して着替えずにヘッドホンを付けて音楽を聴いた。少し頭を冷やし買った。だけど告白した時の彼女の驚いた顔が頭から離れない。
彼女は電話してと言っていたが告白するだけで精一杯だった。これ以上なにかをする気にはなれなかった。
『コンコン』
ドアをノックする音がした。ヘッドホンを外してドアを開けた。
「柊さんって人から電話よ」
お母さんだった。音楽で電話のベルに気付かなかった。柊さんの方から電話をしてくるなんて……どうしてだろう。もしかしたら……期待が膨らんだ。
ゆっくり受話器をとった。
「もしもし……」
『ごめんなさい、こっちから電話しちゃって……で、でもこうゆうのは早い方がいいと思って……』
1分だったか、5分だったか、どのくらい話だろうか。これから先の会話はよく覚えていない。でも断りの返事だったのは分った。話が終わるとゆっくりと受話器を置いた。
「どんな電話だったの」
お母さんが聞いてきた。それもそうだ。女性から電話なんてはじめてだったから。
「え、あ、クラス会の準備の話だよ」
それに納得したのかそれ以上お母さんは聞いてこなかった。
これが彼女との会話の最後となった。でも何かすっきりした感じだった。これで良かったのかもしれない……彼女の気持ちが分ったのだから。
進学、就職、そして仕事……目まぐるしく時は進む……それから何十年か経った。
僕は埃を掃ってアルバムを開いた。
修学旅行、体育祭、文化祭……いろいろあったな。自分のクラスの写真があった。そこにはクラスメンバー全員が写っていた。何か足りないような気がした。
何だろう……そうだった。このアルバムに一緒に写りたかった人が居た。僕はアルバムを捲り別のクラスの写真を探した。
今頃どうしているのか、きっと結婚して家庭をもっているに違いない。子供も随分大きくなっているかもしれない……
写っていた……柊つかさ……にっこりと満面の笑顔で写っていた。僕の記憶とまったく同じ姿がそこにあった。
目頭が熱くなった。手を目に当てると涙が出ていた。
電話を置いた時、すっきりした感じ……あれは嘘だった。僕はまだ彼女が好きだった。そして今も……それは今の彼女ではなくアルバムの写真に写っていた彼女……
柊つかさが好きだった。未練たっぷりだ。初恋が叶うのは希なのは知っているのに……友人と会わなくなったのも彼女を思い出したくないから。
僕は自分の中の時計を止めてしまっていた。あの時の彼女の姿のまま時間を止めていた。やっとそれに気が付いた。
アルバムを閉じて押入れの一番奥にしまった。もうアルバムは見ない。
もう一度恋がしたい。そう思った時、涙が止まった。
そして自分の中の止まっていた時計が動いたような気がした。
さてと、掃除を終わらせるか。
終
学校裏の人気の居ない通りに友人は僕を連れてきた。
「柊は友達と別れるとこの道を通るから待っていればいいよ、俺は校舎側にいて柊来たら合図するから準備しれおけよな」
準備って何をすればいい。告白するってどうやって柊さんに話せばいい。何も分らない。聞く間もなく友人は校舎の方に走って行った。
一人残されて誰も居ない通りに居る。緊張してきたのか心臓がドキドキしてきた。冷や汗も出てきてきた。とりあえず壁の陰に隠れた。まさか本当に僕は
告白をするのだろうか。他人事みたいだけど、そんな気分だった。柊さんになんて言うのか全く考えていなかった。このまま帰ってしまおうか。
そんな考えも過ぎった。
暫くすると校舎側から友人が出てきて僕の居る方を向いた。そしてまた校舎の方に戻って行った。これが合図なのか……それとも柊さんは別の道を通ったのか。
そんな事を考えていると校舎側から人影が現れた。
柊さんだ……僕は唾を飲んだ。彼女はどんどん僕の方に近づいてくる。僕は隠れているので彼女から僕は見えていない。
このままやり過ごせば彼女はそのまま僕を通り過ぎて帰る……やっぱり告白なんて出来ない。
柊さんが僕の目の前を通過した。さっき教室で友達と笑顔で話している柊さんを思い出した。
「柊さん」
僕は壁の影から出て彼女を呼び止めた。彼女は立ち止まり振り返った。少し驚いた表情をしていた。それもそうだ、三年になって始めて彼女を呼んだのだから。
呼び止めたはいいが何て言えばいい。彼女は何で自分を呼び止めたのか不思議に思っているに違いない。もうここまで来て後に引けない。
「柊さんが好きです……」
頭が真っ白になった。彼女は慌てて辺りをきょろきょろと見ている。他に誰か居ないか見ているのだろうか……
「で、電話して……」
彼女はそう言ったまま立っていた。僕は恥かしくなって走って校舎の方に向かった。
校舎に着くと友人が待っていた。走ったせいで息が荒くなっていた。
「どうだった……」
「分らない……」
友人は僕の顔をみるとそれ以上聞かずに置いてあった鞄を持つと帰った。
僕は息を落ち着かせてから帰宅した。
家に帰ると自分の部屋に直行して着替えずにヘッドホンを付けて音楽を聴いた。少し頭を冷やし買った。だけど告白した時の彼女の驚いた顔が頭から離れない。
彼女は電話してと言っていたが告白するだけで精一杯だった。これ以上なにかをする気にはなれなかった。
『コンコン』
ドアをノックする音がした。ヘッドホンを外してドアを開けた。
「柊さんって人から電話よ」
お母さんだった。音楽で電話のベルに気付かなかった。柊さんの方から電話をしてくるなんて……どうしてだろう。もしかしたら……期待が膨らんだ。
ゆっくり受話器をとった。
「もしもし……」
『ごめんなさい、こっちから電話しちゃって……で、でもこうゆうのは早い方がいいと思って……』
1分だったか、5分だったか、どのくらい話だろうか。これから先の会話はよく覚えていない。でも断りの返事だったのは分った。話が終わるとゆっくりと受話器を置いた。
「どんな電話だったの」
お母さんが聞いてきた。それもそうだ。女性から電話なんてはじめてだったから。
「え、あ、クラス会の準備の話だよ」
それに納得したのかそれ以上お母さんは聞いてこなかった。
これが彼女との会話の最後となった。でも何かすっきりした感じだった。これで良かったのかもしれない……彼女の気持ちが分ったのだから。
進学、就職、そして仕事……目まぐるしく時は進む……それから何十年か経った。
僕は埃を掃ってアルバムを開いた。
修学旅行、体育祭、文化祭……いろいろあったな。自分のクラスの写真があった。そこにはクラスメンバー全員が写っていた。何か足りないような気がした。
何だろう……そうだった。このアルバムに一緒に写りたかった人が居た。僕はアルバムを捲り別のクラスの写真を探した。
今頃どうしているのか、きっと結婚して家庭をもっているに違いない。子供も随分大きくなっているかもしれない……
写っていた……柊つかさ……にっこりと満面の笑顔で写っていた。僕の記憶とまったく同じ姿がそこにあった。
目頭が熱くなった。手を目に当てると涙が出ていた。
電話を置いた時、すっきりした感じ……あれは嘘だった。僕はまだ彼女が好きだった。そして今も……それは今の彼女ではなくアルバムの写真に写っていた彼女……
柊つかさが好きだった。未練たっぷりだ。初恋が叶うのは希なのは知っているのに……友人と会わなくなったのも彼女を思い出したくないから。
僕は自分の中の時計を止めてしまっていた。あの時の彼女の姿のまま時間を止めていた。やっとそれに気が付いた。
アルバムを閉じて押入れの一番奥にしまった。もうアルバムは見ない。
もう一度恋がしたい。そう思った時、涙が止まった。
そして自分の中の止まっていた時計が動いたような気がした。
さてと、掃除を終わらせるか。
終
709:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/31(火) 23:19:49.41:/n2d23ov0 (5/6)
以上です。
以上です。
710:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/01/31(火) 23:42:49.21:/n2d23ov0 (6/6)
ここまでまとめた。
---------------------------------
ここまでまとめた。
---------------------------------
711:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/02/02(木) 00:10:36.51:KqzgxToe0 (1/1)
失敗作だったかな……
ちょっとアンケート
「つかさの旅」の続きがあるのだけど読みたい人はいるかな?
反応があるのとないとではモチベーションが違うので聞いてみる。
失敗作だったかな……
ちょっとアンケート
「つかさの旅」の続きがあるのだけど読みたい人はいるかな?
反応があるのとないとではモチベーションが違うので聞いてみる。
712:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海):2012/02/03(金) 17:29:28.04:dzC2fWtAO (1/1)
こう「…これってやっぱり恵方を向いて食べるの?」
毒さん「違って欲しいけど、つか山さんこれどこで売ってたの」
山さん「近所のケーキ屋。バースデーケーキ代わりに買ってきたんだから食べなよやさこ」
こう「恵方巻ケーキって…」
八坂こう、HappyBirthday!
こう「…これってやっぱり恵方を向いて食べるの?」
毒さん「違って欲しいけど、つか山さんこれどこで売ってたの」
山さん「近所のケーキ屋。バースデーケーキ代わりに買ってきたんだから食べなよやさこ」
こう「恵方巻ケーキって…」
八坂こう、HappyBirthday!
713:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(西日本):2012/02/04(土) 01:47:38.94:RbIlZvZp0 (1/1)
書き込み初です。
実は半年くらい前からSS見させていただいてます。
このスレのSSはどの作品も感慨深く何度見ても飽きが来ないので、
新たな作品が投下されるのをいつも楽しみに待ってます。
今後ともよろしくお願いします。
「つかさの旅」ですが、このスレでも特に感慨深い作品と感じます。
是非、続きを見てみたいです。
書き込み初です。
実は半年くらい前からSS見させていただいてます。
このスレのSSはどの作品も感慨深く何度見ても飽きが来ないので、
新たな作品が投下されるのをいつも楽しみに待ってます。
今後ともよろしくお願いします。
「つかさの旅」ですが、このスレでも特に感慨深い作品と感じます。
是非、続きを見てみたいです。
714:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/02/04(土) 07:26:45.54:c8fi3sXw0 (1/1)
-------------
ここまでまとめた
--------------
>>712
こうの誕生日だったか……誕生日はメイン4人くらいしかチェックしていないw
恵方巻コンビニの宣伝で全国に広まったみたいだけど、
個人的にはあまり好きじゃない。かぶりつく姿が卑猥に見える(そう思っているのが卑猥なのか)。
>>713
読んでくれている人がいるのは嬉しいです。
もう出だしだけ書いています。
物語全体はまだイメージの段階……
コンクールもあるし、仕事もあるし、春を過ぎてしまうかもしれない。
気長に待っていてください。
-------------
ここまでまとめた
--------------
>>712
こうの誕生日だったか……誕生日はメイン4人くらいしかチェックしていないw
恵方巻コンビニの宣伝で全国に広まったみたいだけど、
個人的にはあまり好きじゃない。かぶりつく姿が卑猥に見える(そう思っているのが卑猥なのか)。
>>713
読んでくれている人がいるのは嬉しいです。
もう出だしだけ書いています。
物語全体はまだイメージの段階……
コンクールもあるし、仕事もあるし、春を過ぎてしまうかもしれない。
気長に待っていてください。
715:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/02/16(木) 02:41:46.46:JZXMCkyY0 (1/1)
コンクールを2月の下旬から始めたいと言ったが、
私事で申し訳ない。3月下旬に延期してもいいでしょうか?
主催者を誰かが代わってくれればそのままでもいいのだが……
コンクールを2月の下旬から始めたいと言ったが、
私事で申し訳ない。3月下旬に延期してもいいでしょうか?
主催者を誰かが代わってくれればそのままでもいいのだが……
716:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/02/19(日) 18:09:49.54:xu4E1kMQ0 (1/1)
>>715です。
主催者を代わってくれそうもないので……
3月は約半月くらいネットに入れないので、まとめとかができなくなってしまう。
従って、主催の仕事ができなくなる。
これが延長の理由です。
予定通りしたい人が居ましたら2/26(日)にお題募集をして下さい。
この日を過ぎた時点でお題募集がなければ正式に延長とします。
>>715です。
主催者を代わってくれそうもないので……
3月は約半月くらいネットに入れないので、まとめとかができなくなってしまう。
従って、主催の仕事ができなくなる。
これが延長の理由です。
予定通りしたい人が居ましたら2/26(日)にお題募集をして下さい。
この日を過ぎた時点でお題募集がなければ正式に延長とします。
717:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/02/24(金) 21:01:56.98:Zip6qZui0 (1/1)
これからコンクールお題を募集します。
ふるってご参加ください。
お題は過去に出たお題、キャラクターは避けて下さい。
参考、過去のコンクール作品↓
http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/84.html
コンクールスケジュール
お題募集 ~2/28(火)
お題投票 2/29(水)~3/4(日)
作品投下期間 3/12(月)~3/25(日)
作品投票 3/27(火)~4/4(月)
結果発表 4/5(火)
これで進めたいと思います。
それではどしどしお願いします。
これからコンクールお題を募集します。
ふるってご参加ください。
お題は過去に出たお題、キャラクターは避けて下さい。
参考、過去のコンクール作品↓
http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/84.html
コンクールスケジュール
お題募集 ~2/28(火)
お題投票 2/29(水)~3/4(日)
作品投下期間 3/12(月)~3/25(日)
作品投票 3/27(火)~4/4(月)
結果発表 4/5(火)
これで進めたいと思います。
それではどしどしお願いします。
718:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/02/25(土) 22:29:39.87:haBTQKqc0 (1/1)
なんだろう、いつもなら宣言すると一日で結構
お題案が出るのだが……
『視線』
はどうでしょうか?
なんだろう、いつもなら宣言すると一日で結構
お題案が出るのだが……
『視線』
はどうでしょうか?
719:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県):2012/02/25(土) 22:34:05.02:sFU+kR7po (1/1)
零
零
720:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海):2012/02/26(日) 13:27:12.60:2k98JdOAO (1/1)
『蕎麦』
『蕎麦』
721:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/28(火) 09:02:57.86:IzcQmUASO (1/2)
ひな祭り!
ひな祭り!
722:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/02/28(火) 09:08:06.86:IzcQmUASO (2/2)
つかさの旅、長くて[ピーーー]るww
あとで読むます
つかさの旅、長くて[ピーーー]るww
あとで読むます
723:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/02/28(火) 23:02:00.20:kMuR6nue0 (1/1)
コンクールお題、いろいろきていますが 募集をもう一日延ばします。
これによるその後の予定は変更しません。
コンクールお題、いろいろきていますが 募集をもう一日延ばします。
これによるその後の予定は変更しません。
724:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/02/29(水) 21:02:22.89:/n0JI4oc0 (1/1)
>>722
[ピーーー]が気になる
>>722
[ピーーー]が気になる
725:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/03/01(木) 00:13:42.08:Rnsxic1R0 (1/3)
726:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/03/01(木) 00:49:15.78:Rnsxic1R0 (2/3)
お題候補
『視線』
9巻のエピソードの題になったと思います。ジャンルを問わずいろいろ書けるかな。
『零』
数字としてのゼロ、0、の意味がありますね。零す(あやす)といって汗や血を流す意味もあるそうです。
『蕎麦』
そばですね。これに決まれば食べ物がお題になるのは初めてになります。
『ひな祭り』
女の子のすこやかな成長を祈るお祭りですね。女性キャラが豊富ならき☆すたにはうってつけでしょう。
別名、桃の節句、桃の花もイメージできそう?
お題候補
『視線』
9巻のエピソードの題になったと思います。ジャンルを問わずいろいろ書けるかな。
『零』
数字としてのゼロ、0、の意味がありますね。零す(あやす)といって汗や血を流す意味もあるそうです。
『蕎麦』
そばですね。これに決まれば食べ物がお題になるのは初めてになります。
『ひな祭り』
女の子のすこやかな成長を祈るお祭りですね。女性キャラが豊富ならき☆すたにはうってつけでしょう。
別名、桃の節句、桃の花もイメージできそう?
727:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/03/01(木) 08:22:52.93:KW/L9B7SO (1/1)
>>724
ごめんなさい、長くて死ねる(長くて読むの大変そうだ)ってかきますた
もちろん読みごたえありそうで楽しみだなって意味で
最近このスレに来てなかったので、未読がたまっちゃってる感が…
>>724
ごめんなさい、長くて死ねる(長くて読むの大変そうだ)ってかきますた
もちろん読みごたえありそうで楽しみだなって意味で
最近このスレに来てなかったので、未読がたまっちゃってる感が…
728:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/03/01(木) 23:31:11.38:Rnsxic1R0 (3/3)
>>724
気になっただけなので謝ることはないです。
>>724
気になっただけなので謝ることはないです。
729:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/03/03(土) 23:16:10.45:PZNlwKJC0 (1/3)
コンクール規約は前回(二十二回)と同じで行きたいと思います。
反対がなければそのまま採用といたします。
コンクール規約はこちらを参照↓
http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/72.html
コンクール開催中ですが一般作品も随時受け付けています。
どしどし投下して下さい。
コンクール規約は前回(二十二回)と同じで行きたいと思います。
反対がなければそのまま採用といたします。
コンクール規約はこちらを参照↓
http://www34.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/72.html
コンクール開催中ですが一般作品も随時受け付けています。
どしどし投下して下さい。
730:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/03/03(土) 23:18:10.06:PZNlwKJC0 (2/3)
731:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/03/03(土) 23:19:16.99:PZNlwKJC0 (3/3)
安価間違っていた。
>>729ですね
安価間違っていた。
>>729ですね
732:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/03/05(月) 00:08:31.20:k34F5FEx0 (1/2)
☆☆☆☆☆ 第二十三回コンクール開催 ☆☆☆☆☆
コンクールのお題は『蕎麦』に決定しました。
作品投下期間 3/12(月)~3/25(日)となります。
それでは皆さんの参加をお待ちしています。
投票結果↓
http://vote3.ziyu.net/html/odai3.html
☆☆☆☆☆ 第二十三回コンクール開催 ☆☆☆☆☆
コンクールのお題は『蕎麦』に決定しました。
作品投下期間 3/12(月)~3/25(日)となります。
それでは皆さんの参加をお待ちしています。
投票結果↓
http://vote3.ziyu.net/html/odai3.html
733:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/03/05(月) 00:18:13.32:k34F5FEx0 (2/2)
お題は「蕎麦」か
自分的には視線だと思ったが一票差でした。
作りかけのssをお休みしてコンクールモードに入ります。
っと言っても……蕎麦かよw
全くの白紙からスタートです。かなり私にとって難題かもしれない。
とりあえずやれるだけはやるつもりです。
このスレを見て参加してみようと思われる方も気軽に参加して下さい。
このスレのお祭りみたいなものですから。盛り上げましょう
お題は「蕎麦」か
自分的には視線だと思ったが一票差でした。
作りかけのssをお休みしてコンクールモードに入ります。
っと言っても……蕎麦かよw
全くの白紙からスタートです。かなり私にとって難題かもしれない。
とりあえずやれるだけはやるつもりです。
このスレを見て参加してみようと思われる方も気軽に参加して下さい。
このスレのお祭りみたいなものですから。盛り上げましょう
734:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/03/11(日) 22:21:56.72:+RhE5SlT0 (1/1)
☆☆☆☆☆ 第二十三回コンクール開催 ☆☆☆☆☆
少し速いですけど日付が変わりましたら 3/12(月)
作品投下解禁します。
期限は3/25(日)までです。
まだ二週間ありますので今から気が付いた人でも充分時間はあります。
慌てず急いで書きましょう。
今回のお題は『蕎麦』です。
☆☆☆☆☆ 第二十三回コンクール開催 ☆☆☆☆☆
少し速いですけど日付が変わりましたら 3/12(月)
作品投下解禁します。
期限は3/25(日)までです。
まだ二週間ありますので今から気が付いた人でも充分時間はあります。
慌てず急いで書きましょう。
今回のお題は『蕎麦』です。
735:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/03/17(土) 22:36:33.90:ZU/2iOt70 (1/1)
☆☆☆☆☆ 第二十三回コンクール開催 ☆☆☆☆☆
〆切まで一週間余り、まだ1作品もありません。
蕎麦と言うお題が思ったより難しいと思われます。
自分も作っているけど半分くらいかな。ぎりぎり間に合うかどうか。休日を利用してなんとか完成させる予定です。
2作品も投下できそうもない。
作っている人、頑張りましょう!
☆☆☆☆☆ 第二十三回コンクール開催 ☆☆☆☆☆
〆切まで一週間余り、まだ1作品もありません。
蕎麦と言うお題が思ったより難しいと思われます。
自分も作っているけど半分くらいかな。ぎりぎり間に合うかどうか。休日を利用してなんとか完成させる予定です。
2作品も投下できそうもない。
作っている人、頑張りましょう!
736:思い出の蕎麦がき:2012/03/23(金) 21:31:38.16:kKCvadsAO (1/6)
コンクール作品投下いきます。
タイトルは「思い出の蕎麦がき」
「おじさん、何してるんですか?」
「ん、あぁゆーちゃんか。いやね、晩酌のつまみ作ってたんだよ」
台所に行くと、おじさんが何か作っていたので聞いたら、そう返事が返ってきた。
でもこの匂いは…お蕎麦だよね?
「お蕎麦でお酒呑むんですか?」
「いや、これは蕎麦じゃないよ。蕎麦がきって言うんだ。蕎麦粉にお湯を混ぜて練って作る料理でね、醤油とかそばつゆをつけて食べるんだ」
そういっておじさんが見せてくれたお椀には、お蕎麦の匂いがする灰色の塊が入っている。
「へぇ~、初めて見ました」
「蕎麦屋だと、たまにメニューにあるんだが…あまり知られてないか。かくゆう俺も、かなたに教えてもらったんだが」
「かなたさんが…」
じゃあこれって、思い出の料理とかだったりするのかな。でもかなたさん、どうしてこんな料理をおじさんに教えたんだろ…。
「まぁ、かなたに教わったきっかけってのが、ゆきの奴にあるだけど」
「お母さんに?」
どういうことなのかな。
それを聞くと、おじさんは苦笑しながら話してくれた。
コンクール作品投下いきます。
タイトルは「思い出の蕎麦がき」
「おじさん、何してるんですか?」
「ん、あぁゆーちゃんか。いやね、晩酌のつまみ作ってたんだよ」
台所に行くと、おじさんが何か作っていたので聞いたら、そう返事が返ってきた。
でもこの匂いは…お蕎麦だよね?
「お蕎麦でお酒呑むんですか?」
「いや、これは蕎麦じゃないよ。蕎麦がきって言うんだ。蕎麦粉にお湯を混ぜて練って作る料理でね、醤油とかそばつゆをつけて食べるんだ」
そういっておじさんが見せてくれたお椀には、お蕎麦の匂いがする灰色の塊が入っている。
「へぇ~、初めて見ました」
「蕎麦屋だと、たまにメニューにあるんだが…あまり知られてないか。かくゆう俺も、かなたに教えてもらったんだが」
「かなたさんが…」
じゃあこれって、思い出の料理とかだったりするのかな。でもかなたさん、どうしてこんな料理をおじさんに教えたんだろ…。
「まぁ、かなたに教わったきっかけってのが、ゆきの奴にあるだけど」
「お母さんに?」
どういうことなのかな。
それを聞くと、おじさんは苦笑しながら話してくれた。
737:思い出の蕎麦がき:2012/03/23(金) 21:33:09.22:kKCvadsAO (2/6)
あれは、かなたとこの家に引っ越して本当に間もない頃だったかな。
いきなりゆきから蕎麦粉が届いたんだ。
「…なんだこりゃ?」
「蕎麦粉…ね」
「…何考えてるんだゆきは」
付いてた手紙を読んだら、新居引っ越し祝いの蕎麦だって書いてあったんだ。
うん、普通はそれで蕎麦粉を送ったりしないよ。
追伸として
「兄さん、ゆいに『頭文字D』っていう漫画勧めたの、兄さんらしいわね」
ってのがあったんだが……そうだね、ゆきがそれで怒って蕎麦粉にしたんだって、かなたにも言われたよ。
でもまぁ、せっかく貰ったんだ。一応、蕎麦を作って食べようって話にはなったんだが…
「…美味しくないわね」
「…やっぱ、素人の手打ちじゃなぁ」
予想通りにまずかった。麺は太いしつなぎなんて使わなかったからボロボロ千切れるし…。
「どうする?まだ蕎麦粉残ってるけど…パスタマシン使ってみるか?」
「あれはパスタ以外には無理だと思うわ。…そうだ。蕎麦がきにしましょう」
「蕎麦がき?」
「お椀に蕎麦粉とお湯を入れて…こう…混ぜて…」
そう言いながら、かなたがお椀の中身を箸で混ぜ始めたんだ。
その姿が愛らしかったらつい写真を撮ったんだ。これがその写真。
…うん、かなたもそんな感じの顔してたな。
「まったくそう君たら…出来たわよ。さっきのそばつゆにつけて食べてみて」
「…ん!旨い!」
あれは、かなたとこの家に引っ越して本当に間もない頃だったかな。
いきなりゆきから蕎麦粉が届いたんだ。
「…なんだこりゃ?」
「蕎麦粉…ね」
「…何考えてるんだゆきは」
付いてた手紙を読んだら、新居引っ越し祝いの蕎麦だって書いてあったんだ。
うん、普通はそれで蕎麦粉を送ったりしないよ。
追伸として
「兄さん、ゆいに『頭文字D』っていう漫画勧めたの、兄さんらしいわね」
ってのがあったんだが……そうだね、ゆきがそれで怒って蕎麦粉にしたんだって、かなたにも言われたよ。
でもまぁ、せっかく貰ったんだ。一応、蕎麦を作って食べようって話にはなったんだが…
「…美味しくないわね」
「…やっぱ、素人の手打ちじゃなぁ」
予想通りにまずかった。麺は太いしつなぎなんて使わなかったからボロボロ千切れるし…。
「どうする?まだ蕎麦粉残ってるけど…パスタマシン使ってみるか?」
「あれはパスタ以外には無理だと思うわ。…そうだ。蕎麦がきにしましょう」
「蕎麦がき?」
「お椀に蕎麦粉とお湯を入れて…こう…混ぜて…」
そう言いながら、かなたがお椀の中身を箸で混ぜ始めたんだ。
その姿が愛らしかったらつい写真を撮ったんだ。これがその写真。
…うん、かなたもそんな感じの顔してたな。
「まったくそう君たら…出来たわよ。さっきのそばつゆにつけて食べてみて」
「…ん!旨い!」
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