次スレキターーーー

Q.　この二次創作はどんなジャンル？

A.　独自の解釈にお任せします


Q.　このキャラの組み合わせは需要がない！

A.　需要とは求めるものじゃない、育むものだ


Q.　>>1の他の作品も読んでみたい

A.　これが初めての二次創作。　だが実は一方通行×白井黒子のSSを書くだけか書いてお蔵入りにしてる


Q.　>>1にとってこれを読んでくれている人、覗いてきてくれる人とは？

A.　神ならぬ身にて天上の意志に辿り着くもの


Q.　あのキャラ出てこないの？　このキャラ出てこないの？

A.　主要キャラ以外の科学サイドキャラはそこまで出ないかもしれない･･････


Q.　エロシーンは無いの？　もっと濡れ場を！

A.　この文章力で書くエロが見たいのかと


Q.　矛盾多過ぎ、無茶設定多過ぎ

A.　初SSなのでそこは見逃してください･･････

2getォォォォォォォォォ！！！！！！！！！！！

いィィィィィィィィィィち乙ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン！！！！！！

と、いうわけで前スレの垣根帝督サイドのお話はここまでです。

エイワスみたいなチート野郎に『殺す』とか言われたら逆に生存フラグですよね。
これは垣根帝督、今回は死亡フラグを建てずに済んだのではないでしょうか？


さて、次回は一方通行サイドなんですが･･････････････････。


非常に見苦しいキャラ崩壊が盛りだくさんです、ご注意ください！

それでは、早いもので6スレ目ですがよろしくお願いいたします。

ありがとうございました！

この一方通行さンって人はすげェかっこいい人なンだなァ

1000取りにだれもいかねえｗｗｗｗ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【次回予告】



『え、なに。　アンタらキスとかしてんの･･････？』
―――――――――――ローマ正教、禁断の組織『神の右席』の元一員・『前方』のヴェント




『してねェェェェェェェええええええええええええええええ！！！！！
　断じて、神に誓って、ガブリエルに誓って言うがしてねェよ！！！』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『何言ってるんですか♪　プレッシャーキスでもキスはキスですよ』
―――――――――――魔術結社予備軍『新たなる光』の構成員・レッサー




『ぷ、ぷれっしゃ･･････？　何、それ、重圧接吻って何･･････？』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・風斬氷華




『プレッシャーキスの検索結果、約 312,000 件 （0.16 秒）』
―――――――――――元『殲滅白書』の魔術師・サーシャ＝クロイツェフ

次回予告が相変わらずの面白さｗｗｗｗ
そして・・・前スレ>>1000!!　よくやった!!!

前スレ>>1000
ワシリーサの悲願が……ｗｗ

プレッシャーキスの検索結果、約 473,000 件 （0.04 秒）
google調べ

乙

何時何処で検索したんだよサーシャｗｗ

乙
スレタイワロタｗｗｗｗ

プレッシャーキスと聞いて罰ゲームを想像したが、違うのか
衆人環視の無言の圧力の中ムリヤリキスをさせられるような、そんなのかと思ったぜ

風斬「……」
レッサー「……」
サーシャ「……」
オルソラ「……」

一方通行(ﾉ_-;)ﾊｱ…
ヴェント(#ﾟﾛﾟ#)

オルソラさんは初めてだったらしいが一方さんの初めては誰なんだろ？

バキュームキスってキスに含めていいもんなんだろうか…

>>1乙なんだよ

折ってええんか！もやし！

>>1乙

こんばんわ、>>1です。
今日は投下できないと思ってたのですが時間が少し空きましたので投下します。

新スレ最初の投下は一方通行サイド、ショッピングですね。
ていうかあんまりショッピングしませんけどねｗｗ申し訳ないことに･･････


今回は本当にキャラが崩壊しまくりですので苦手な方は注意を！
とはいえこのSS、初っ端でミーシャがキャラ崩壊してますから今更感ありますけど

一方通行とヴェントはジェットコースターを楽しんだ後、三人が待つ飲食店へ戻ってきたのでした。


それでは、いきましょう。よろしくお願いいたします。

――ロシア東部の原野　実験都市　ショッピングセンター　とある飲食店


店員「いらっしゃいませ～。　何名様でしょうか？」

一方通行「何名サマっつーか、連れがここに来てるはずだ。
　　　　　頭悪そォなガキとメガネの女と金髪のチビ」

店員「･･････。　ああ、失礼いたしました。　こちらです、どうぞ」ｽﾀｽﾀ

ヴェント（今ので通じんのかよ･･････）ｽﾀｽﾀ



レッサー「おっそーーーーーい！！！」ﾄﾞｷﾞｬｰ

一方通行「うるせェよマセガキ。　いい子にお留守番してたかァ？」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

レッサー「･･････頭撫でてごまかそうとしないでください」ﾎﾝﾜｰ

サーシャ（と、言ってる割にはご満悦な表情･･････）

風斬「あの･･････荷物、ありがとうございました」ﾍﾟｺ

一方通行「構わねェ。　荷物は全部郵送サービスで独立国同盟に送っといたからな。　明日には届くだろ」

サーシャ「第一の解答ですが、了解しました」

ヴェント「ちょっと寄ってよ」

風斬「あ、ごめんなさい･･････」ｽﾞｲｯ

一方通行「はァ～疲れた･･････」ﾄﾞｶｯ

サーシャ「第一の質問ですが、ずいぶん時間を掛けてますね。
　　　　　何かあったのですか？」

ヴェント「････････････」

一方通行「あァ？　別に何もねェよ。　俺ァ杖ついてるからな、それで時間食っただけだ」

レッサー「杖ついててもこんなに時間掛かるような距離じゃないはずなんですがねえ～･･････。
　　　　　な・ぜ・か、ヴェントさんも同行してるしい･･････」ｼﾞﾄｰ

ヴェント「チッ･･････」

一方通行「何詮索してやがンだボケ。　別にどォだっていいだろォが」

風斬「そういえば何でヴェントさんも着いていったんですか？
　　　急に居なくなっちゃうからびっくりしちゃって･･････」

ヴェント「いや･･････別に、」ｵﾛｵﾛ

一方通行「何言ってやがる、コイツは俺に着いてきてねェぞ？」

ヴェント「！」

レッサー「え？」

一方通行「俺は一人で荷物預けに行ったンだ。　ンでここに戻る時にヴェントと合流したっつー事。
　　　　　そォいやオマエどこ行ってたンだよ？」

ヴェント「え、･･････････････････。　べ、別にどこでもいいでしょ」

レッサー「ホントですかぁ？　なーんか怪しいですねえ」ｼﾞﾛｼﾞﾛ

一方通行「俺を疑ってンのか？」

レッサー「いえいえ！　ただ一方通行さんがヴェントさんに浮気してどっかで遊んできた、
　　　　　なんて可能性も無いわけではないですからね」ﾆﾋﾋﾋ

ヴェント「は、･･････はぁ？　浮気ってどういう意味よ？」ｶﾞﾀｯ

風斬「？」

サーシャ「第一の私見ですが、説明を要求します」

レッサー「そんな畏まって話すようなことでもないですよ？　ね、ダーリン」ﾊｧﾄ

一方通行「」

ヴェント「だ･･････、」

風斬「ダーリン･･････だと･･････？」

サーシャ「･･････？　第二の質問ですが、お二人はそういう関係で？」

レッサー「そうですよ？　あれ、言いませんでしたっけ？　ていうか見てればわかるでしょ？　ほらほら」ｽﾘｽﾘ

一方通行「頬をなすりつけてくンな･･････！！」ｺﾞﾂﾝ

レッサー「ぐへっ」ﾄﾞｻｯ

風斬（こ、これは･･････レッサーからの宣戦布告とみなしていいのかな･･････）ｷｭｲｲｲｲﾝ

サーシャ「風斬氷華、目が虹色に輝いていますが」

一方通行「オイ、こンなアホの戯言を真に受けてンじゃねェぞ」

レッサー「いたたた････････････」

風斬「（やっぱり冗談･･････だよね？）　そ、そうですよね。　もう、驚かさないでくださいよ」ﾎｯ

レッサー「戯言！？　私の唇を、ファーストキスを奪っておいてー！」ﾑｷｰ

一方通行「」

風斬「！？！！？」ｶﾞﾀｯ

ヴェント「き、キス･･････？///」

サーシャ「わーお･･････」

一方通行「ふっざけてンじゃねェぞこのクソガキがァ！！　あれはオマエからしてきた事だろォが！！」

風斬「！！！！！？？？？？？？？！！！！！！！？？？」

一方通行「･･････あ、いや違う、そォじゃなかった。　よつばまちがえた」

サーシャ「あなたはよつばではなく、一方通行では？」

一方通行「あァ、そォ･･････いや、そォいうンじゃなくて」

ヴェント「え、なに。　アンタらキスとかしてんの･･････？」

一方通行「してねェェェェェェェええええええええええええええええ！！！！！
　　　　　断じて、神に誓って、ガブリエルに誓って言うがしてねェよ！！！」

レッサー「何言ってるんですか♪　プレッシャーキスでもキスはキスですよ」

風斬「ぷ、ぷれっしゃ･･････？　何、それ、重圧接吻って何･･････？」

一方通行「オマエマジでふざけンな本気でブチ殺されてェかァ！！！？」ｶﾞﾀｰﾝ

ヴェント「････････････あ、アンタ。　さっき彼女とかはいないって私に言ったわよね？」

一方通行「あァいねェよキスもしてねェよ俺の言ってる事に嘘偽りは一切ねェと断言出来る！！！」

サーシャ「プレッシャーキスの検索結果、約 312,000 件 （0.16 秒）」ﾋﾟﾋﾟｯ　ﾋﾟｯ

一方通行「オマエ何半公開型ARでググってンだよ！？」

風斬「ど、どういう事なんですか･･････？　どっちが本当の事を言ってるの･･････？」ﾜﾅﾜﾅ

一方通行「！！（クソ、この手の話題になると風斬は『なぜか』激しく動揺しちまう！！
　　　　　このままじゃ昨晩の二の舞だぞ一方通行ァァァァァァ！！！！！！！！）」

一方通行「バカ野郎、風斬！！」ﾄﾞﾝ

風斬「ひっ」ﾋﾞｸｯ

一方通行「この腐れメスガキの性格考えろ！！　コイツはいっつもこンな風に冗談言って
　　　　　俺たちをからかうよォな女だろォが！！　考えろ！！！」

サーシャ（何でこんなに必死になって否定するのだろう･･････）

ヴェント「キス･･････、キス･･････///」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

風斬「え、えと･･････でも････････････」ｵﾛｵﾛ

一方通行「このバカは俺をどォにかして陥れてからかってやろォって算段なンだよ！！
　　　　　だから真に受けるンじゃねェ！！（泣くなよ、泣くなよ頼むからァァァ）」

風斬「そうなんですかレッサー･･････？」

レッサー「ち、違いますよ。　私は本当に――――」

一方通行「オマエもう喋ンな頼むから！！！　ていうかいい加減に白状しろォ！！
　　　　　俺とオマエにそンな接点ねェだろォが！！」ｾﾞｰﾊｰ


店員「あ、あのお客様･･････、他のお客様のご迷惑になりますので･･････」

一方通行「黙ってろ！！　オマエも愉快なオブジェに変えてやろォか！！？」

店員「すんませんっした」ﾋﾟｭｰﾝ

サーシャ「第三の質問ですが、どうかしましたかヴェント？　顔が真っ赤ですよ？」

ヴェント「う、うるさい。　今ちょっと話しかけないで･･････///」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

一方通行「つかそンなに言うなら証拠見せろ証拠！！　物的証拠をよォ！！
　　　　　それが無い＝俺とオマエにそンな関係は無い、ほらこれで『Q.E.D.』だァ！！」ﾄﾞﾄﾞｰﾝ

風斬「あ、一方通行さん、ちょっと落ち着いて･･････」

一方通行「ぜェ･･････ぜェ･･････、はァ･･････（よ、よし･･････とりあえず泣き出す気配はねェな）」

サーシャ「第二の私見ですが、とりあえず冷たいドリンクでも飲んで落ち着いてはどうでしょう」

一方通行「あ、あァ･･････そォだな。　すまねェ･･････つい取り乱しちまった･･････」ｾﾞｪｾﾞｪ

風斬「････････････。　･･････、？　レッサー･･････？」

一方通行「あァ？　マセガキ、まだ何か言いてェ事が――――」

レッサー「････････････ひっく。　ぐすっ、うううう････････････」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ




一方通行「」

サーシャ「れ、レッサー？」

風斬「レッサー、どうしたんですか･･････！？」

一方通行（おいいいいいいいいいいィィィィィィィ！！！？　今度はこっちかよォォォォォ！！！？）

ヴェント「････････････」ﾎﾞｰｾﾞﾝ

レッサー「うぅ、うううう･･････。　そんなに･･････ひっく、否定しなくてもいいじゃないですかぁ･･････」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

一方通行「ひ･･････、ひ、･･････」←『泣く女』がすっかりトラウマになった男

サーシャ「一方通行･･････？（なぜ怯えてる？）」

風斬「レッサー、大丈夫ですよ。　ほら、これで涙を･･････」ｽｯ

レッサー「･･････うっく、ぐす。　ずびばぜん･･････うゆ、うぅぅぅ･･････」ﾌﾞﾋﾞｰ

一方通行「お、オイ･･････大丈夫か･･････？」ｵﾄﾞｵﾄﾞ

レッサー「私は･･････、っく。　真剣に･･････あなたが好きで･･････ひっく、うう･･････」ｸﾞｽｯ

一方通行「い、いやでもあれはよォ･･････（か、垣根。　エイワス、三下、浜面、だ、誰でもいい、
　　　　　誰か俺を導いてくれ･･････ララァ･･････！！）」

レッサー「そんなに･･････私のこと、嫌いですか･･････？」ﾁﾗｯ

サーシャ（見事な上目遣い･･････、涙目効果も重なり効果は抜群といったところ･･････）

一方通行「う、ぐ･･････！！　そ、そォは言ってねェだろ･･････」

レッサー「じゃあ好きなんですか？」ｹﾛｯ

一方通行「いやそォでもないっつーか･･････」

レッサー「･･････ぐすっ、うああああああああん････････････」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

一方通行「うゥ･･････！！（まずい･･････周囲の視線もかなり痛くなってきやがった･･････！！
　　　　　風斬も『どうなんだよ？　あ？』みてェな顔してやがるし･･････なンでだよ･･････）」

風斬「あ、一方通行さん･･････」ｵﾛｵﾛ

ヴェント「･･････････････････（こういう時、どういう顔をすればいいか分からない･･････）」

一方通行（落ち着け･･････『KOOL』になれ、前ば･･････じゃねェ、一方通行･･････！！
　　　　　多分、恐らくだが今回もこの件は俺に非があるンだ･･････。
　　　　　風斬の時はどォした？　確か『オマエの側から離れねェ』的な事を言ったはずだ。
　　　　　ンで頭撫でてやって･･････。　･･････しかし今回もそれで乗りきれるとは思えねェ･･････！！
　　　　　クッソ、どォしてこォなった！！？　俺はどォしたらいいンだ打ち止め･･････！！！？）



？？？『大丈夫だよ、あなた。　ってミサカはミサカは励ましてみる』



一方通行「！！？　（頭に声が･･････！？　いや、心に･･････！？　こ、これは･･････）」

？？？『あなたが思ったとおりにすれば、きっと終わりが見えてくるよってミサカはミサカは応援してみたり！』

一方通行（ら･･････、打ち止め(ラストオーダー)･･････か･･････！！？）

？？？『ううん、違うよ。　ミサカは打ち止めじゃないよってミサカはミサカは否定してみる』

一方通行（なンだと！？　しかしその口調、その声は間違いなく･･････！！）

打ち切り『ミサカは「打ち切り(ジ・エンド)」っていうの、ってミサカはミサカは自己紹介してみる！
　　　　　もうこんなめんどくさい修羅場なんか放っておいて、どこか遠いお国に高飛びしちゃえ
　　　　　ってミサカはミサカはあなたにアドバイスを送ってみたり！』



一方通行「それ一番やっちゃダメだろこの偽物がァァァァァァァァァァァァァ！！！！！！！！！！！！」ｶﾞｼｬｰﾝ

風斬「！？」ﾋﾞｸｯ

レッサー「！？」

サーシャ「！？」

ヴェント「な、何よ急に！？」

一方通行「･･････ハッ！！？　はァ･･････はァ、･･････げ、幻聴･･････いや幻想か･･････」ｾﾞｪｾﾞｪ

風斬「び、びっくりした･･････」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

一方通行（やべェ、本格的に頭おかしくなってきた俺）

レッサー「･･････････････････」

サーシャ「第三の私見ですが、とりあえず座ってください」

一方通行「･･････････････････」ﾍﾟﾀﾝ

ヴェント「････････････で、どうなのよ？」

一方通行「･･････あ？」

ヴェント「き、き･･････キス、したの？　してないの？///」

一方通行「･･････････････････････････････」


　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　ﾌﾟﾂﾝ




一方通行「今夜のご注文はドッチ？　ってかァ？　ひひ、ひゃはははははははははははは！！！！！！！」

風斬「あ、一方通行さん･･････？」

一方通行「く、ひひ、ぎゃは、ひゃはは、カカ、コカキ、コココココ････････････」ｶﾞｸﾝｶﾞｸﾝ

サーシャ「第四の私見ですが、どう見ても壊れていますね」

ヴェント「壊れる前にさっさとゲロしろテメェ！　どっちなのよ！？」

一方通行「したよ」

風斬「」

レッサー「！」

ヴェント「･･････ほ、ホントに･･････」

一方通行（もうどォにでもなァーれ）ｼｬﾗﾝﾗｰ

レッサー「ふっふっふ！　やっと認めてくれましたね！　それでこそ第一位です！」ｹﾛｰﾝ

風斬「え、本当にしたんですか･･････？」

レッサー「まぁ、このままではさすがに一方通行さんが可哀想ですのでネタばらしをしますが、
　　　　　彼の言う通り私が一方的にチューしただけですよ♪」

風斬「それ結局同じことじゃないですかー！！！」ｶﾞﾀｰﾝ

レッサー「だから風斬さんには先に忠告したじゃないです･･････、ふにゅ！？」

風斬「うー･･････！　うー！　うーうー！！」ｳﾙｳﾙ

一方通行「風斬ィ、そのうーうー言うのをやめなさいっていつも言ってるでしょ、ってかァ？
　　　　　ひ、ひひひひひひひひひひ････････････！！！」ﾌﾗﾌﾗ

レッサー「ほ、ほっぺたひっふぁらないで･･････」ｸﾞｲｸﾞｲ

風斬「レッサーのバカ･･････！！　バカバカバカバカ！！！！」ｸﾞﾆｭｸﾞﾆｭ

一方通行「バカバカ言わないでください！　なンつって･･････くっくく･･････」ｶﾞｸｶﾞｸ

レッサー「だ、大丈夫れふよ･･････！！　まだ付き合ってるわけじゃないでふかりゃ･･････いひゃいいひゃい！！！」

ヴェント「････････････した、のかよ･･････」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

サーシャ「？」

ヴェント「･･････したのかよ･･････き、キス･･････」

サーシャ「ヴェント？」

風斬「ううううう･･････どれだけ後手に回ればいいんですか私は･･････！！」ｶﾞｸｯ

レッサー「ぷはっ！　いててて･･････。　これで私が一歩リードですね」ｳｹｹｹｹ

風斬「むぅー･･････！」

レッサー「ふふっ」ﾆｺｯ

ヴェント「････････････どうすりゃいいのよこれ･･････」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

一方通行「あァ･･････最後にもう一度、打ち止めの顔が見たかったなァ･･････」ｷﾗｷﾗ

サーシャ（･･････私の空気化が著しくないだろうか。　ここは誰か一人でも正気に戻さないと･･････）

サーシャ「･･････････････････」ｳｰﾝ

一方通行「垣根ェ･･････、『天使同盟(アライアンス)』はオマエに託した･･････。
　　　　　俺ァ先に地獄で木原クンと再会の喜びを分かち合ってくるぜェ･･････」ﾌﾗﾌﾗ

サーシャ「うーん･･････。　･･････あ、そういえば･･････一方通行」

一方通行「はァーい･･････一方通行さンですよォ･･････」ﾌﾗﾘ

サーシャ「第四の質問ですが、先ほどのヴェントのセリフを復唱させていただいてもよろしいですか？」

一方通行「はァー･･････？」

ヴェント「は？　何？」

風斬「？」

レッサー「？」

サーシャ「先ほどヴェントは『あ、アンタ。　さっき彼女とかはいないって私に言ったわよね？』と、
　　　　　このように話していたはずです。　この『さっき』とは一方通行の話から考えると
　　　　　荷物を預けてこの店に戻ってくる時にヴェントと合流した時の事を言っているのだと思いますが、
　　　　　そのわずかな時間に一方通行は彼氏だの彼女だのというお話をされていたのでしょうか？」


一方通行「」

ヴェント「」

風斬「え？　え？」

レッサー「････････････！！」

サーシャ「補足説明させていただきますと、失礼ながらお二人の場合、その短時間でそんな濃い話題で語り合える
　　　　　ような性格はしてないかと思われます。　もちろん、長時間会話をすれば、もしくは、
　　　　　『二人の間の距離がある程度親密になるような出来事』が起きているのでしたら話は別ですが」

一方通行「エイワスゥゥゥゥゥゥ！！！！！　出てこいコラァ！！　オマエサーシャを操ってンだろ！？
　　　　　なンかコイツ急に探偵みてェなキャラになってンぞォォォ！！！？」ｷｮﾛｷｮﾛ

風斬「あ･･････元に戻った」

サーシャ「第二の解答ですが、エイワスは今この場にいませんし、私は操作などされていません。
　　　　　それとも何か、よくない話題を振ってしまったのでしょうか･･････？」

ヴェント「サーシャ･･････て、テメェ･･････！！！///」

サーシャ「さ、さらに補足説明しますと、なぜかヴェントは一方通行の話題になると
　　　　　顔を紅潮させてますよね･･････。　昨日までそんなことはなかったはずなのに。
　　　　　ただ疑問がここに存在するだけで。　サーシャ＝クロイツェフはこの程度の推理が可能です。
　　　　　･･････如何でしょうか、皆様方？」

風斬「！？」ｶﾞﾀｯ

レッサー「！？」ｶﾞﾀｯ

一方通行（サーシャの野郎･･････完全にキャラが崩壊してやがる･･････！！）

ヴェント「な･･････な･･････！！？///」

一方通行（チィ･･････！！　このままだとヴェントのヤツの過去までゲロしちまうハメに･･････！！
　　　　　いくらこンな雰囲気でもそれだけはやっちゃダメだ、愚鈍の俺でもそれは分かる！！）

一方通行「（落ち着け･･････俺･･････）オイ、違うぞサーシャ、それはだなァ―――」

レッサー「ヴェントさん！　今度はあなたが白状する番ですよ！！」ｽﾞｲｯ

ヴェント「な、何がよ･･････！？　私は何もしてないっ！！」

風斬「うう･･････頭痛くなってきた･･････」ﾌﾗ

サーシャ（･･････私は取り返しのつかない話題を出してしまったのかもしれない）

レッサー「サーシャさんの言う通りですよ！　いくらなんでも店に戻るまでのわずかな間に
　　　　　そんな彼女がいるとかいないとかいう会話しますかねぇ！？」

ヴェント「あ、あれよ･･････！！　ARの掲示板にそんな事が表示されてたから･･････！！
　　　　　そ、そう！　最近、トップアイドルの『一一一（ひとついはじめ）』に
　　　　　彼女が出来たって噂が出てるってニュースがやってたのよ！！
　　　　　その流れでコイツにも彼女とかいるのか聞いてみただけで･･････！！」

一方通行（コイツ･･････言い訳上手すぎンだろ･････）

いえ、サーシャちゃんは最初から冷静かつ冷徹に分析してましたｗｗｗｗｗｗ

風斬「一一一は知ってますけど･･････あの人、そういう浮ついた噂なんてありましたっけ･･････？」

レッサー「サーシャさん！！」

サーシャ「らじゃ」ﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ

一方通行「もォ誰なンだよオマエは。　俺の知ってるサーシャはどこ行ったンだよ」

サーシャ「･･････第三の解答ですが、数年前に某人気女優に手を出し、そこを週刊誌にすっぱ抜かれた経歴があります。
　　　　　補足説明しますと、その事実を深く反省した彼は『これからはファン一筋で活動していく』とインタビューで
　　　　　発言しており、そこから現在まで女性に関する妙な噂は一切報道されていません」

ヴェント（んだそりゃああああああああ！！？　アイドルならそんな噂くらい山ほどあんだろうがあああ！！！）

レッサー「ふふ･･････、残念でしたねヴェントさん。　一一一は実直にアイドルしてるそうですよ･･････？」

ヴェント「ぐ、く･･････！！！」ｷﾞﾘﾘ

風斬「べ、ヴェントさん････････････」ﾌﾗﾌﾗ

一方通行（なンで風斬のヤツ、具合悪そォなンだ？）

レッサー「別に責めてるわけじゃないんです。　ただ一方通行さんとの間に起きた事を、
　　　　　ありのままに話していただければそれで結構なんですよ」

一方通行（クソ･･････レッサーの野郎、調子に乗りすぎじゃねェのか！？）

ヴェント（こ、このヴェントがこんなガキに･･････！！）

レッサー「さあ･･････！」ｽﾞｽﾞｲｯ

風斬「･･････････････････」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

サーシャ「････････････（あとでちゃんと謝ろう）」

一方通行（限界だ･･････！　俺がフォローしねェと！！）

一方通行「オイ待てマセガキ、これはなァ―――」

ヴェント「･･････いいわよ」

レッサー「！」

風斬（もう嫌な予感しかしない･･････。　あんなノート、見るんじゃなかった･･････）

ヴェント「話せばいいんでしょ･･････、話せば満足するんだろうがこのクソメスが･･････！！」

レッサー「･･････お願いします」ｺﾞｸﾘ

一方通行「待て！！　こればっかりはその場のノリで話していい事じゃねェ！！」

ヴェント「私、白いのと一緒に荷物を預けにいったわ」

レッサー（やはり･･････）

サーシャ（本当だったんだ･･････）

一方通行「ヴェント･･････！！（こ、コイツ･･････自分の過去と向きあって･･････？）」

レッサー「そ、それで･･････？」

ヴェント「それで、その･･････。　･･････て、手･･････///」ｶｧｧ

サーシャ「手？」

一方通行「？」

風斬「？」

ヴェント「手、繋いで･･････、その。　あの託児所あるでしょ･･････、
　　　　　そこのジェットコースターに一緒に乗ってきた」

風斬「はは」

一方通行（そこ！？　ピックアップするとこ、そこなのかよ！！？
　　　　　つか『手ェ繋いで』のくだりいらねェだろォが！！）

レッサー「や、やはり店に戻ってくるのが遅かったのはデートをしていたからなんですか･･････！！」ﾌﾙﾌﾙ

サーシャ（一方通行はやたら女性に好かれてますね。　ミーシャもそうでしたし）

ヴェント「で、デートじゃねぇだろ！！　あんなガキ向けのアトラクション乗ったくらいで
　　　　　デートになるわけねぇだろうが！！！」

一方通行（もォワケわかンねェ･･････、一体全体何がどォなってやがンだ）

レッサー「いやいや！　十分すぎるほどですよ！　男女二人で仲良くジェットコースターなんて
　　　　　ばりばりテンプレの典型的デートパターンじゃないですか！！」

ヴェント「テメェの主観を押し付けてんじゃねぇよ！！（そ、そうなのか･･････？　デートだったのかあれは･･････？）」

風斬「もうダメです･･････もう終わった･･････」ｼｭﾝ

一方通行「なンでしおれてンだオマエ･･････しおれてェのは俺の方だ」

サーシャ「あの、一方通行」ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ

一方通行「ンだよ･･････」

サーシャ「第五の私見ですが、こういう雰囲気の事を『修羅場』というそうですよ。
　　　　　ほら、このARの画面にそう―――――」

一方通行「ガキは大人しくメシでも食ってろォ！！！」ﾄﾞｷﾞｬｰﾝ

サーシャ「第六の私見ですが、それもそうですね。
　　　　　みなさんも、そろそろ食事を摂りましょう。　一旦落ち着いて」

風斬「･･････････････････」

レッサー「･･････････････････」

ヴェント「･･････････････････」

一方通行「･･････････････････」

サーシャ（何だか通夜のような空気になっている･･････）


ﾃｨﾛﾘﾛﾘﾝ♪　ﾃｨﾛﾘﾛﾘﾝ♪


サーシャ「････････････ん？」

一方通行「どォした？」

サーシャ「･･････ARにニュース速報が流れて来ていますね。
　　　　　どうやら･･････、他のARにも全て」ﾋﾟﾋﾟｯ

風斬「？」ﾋﾟｯ

レッサー「何かあったんですかね？」ﾋﾟﾋﾟﾋﾟ

ヴェント「････････････」




一方通行「････････････各国諜報機関のデータベースに、大規模な『ハッキング』が起きただァ？」

･･････はい、今回はここまでです。
おふざけが過ぎましたか。しかしたまにはこんなノリでもいいかなと思って書いてみました。

しかし最後の最後で、何やら嫌な予感溢れる速報が流れましたね。
はてさてどうなることやら


次回は『行間』？というか、一方通行サイドとか垣根帝督サイドとかそういうのは終わって、
エリザリーナが主役で立ちまわるお話です。需要？あるだろ

では、今回もここまで読んでくださった方に感謝の気持ちを込めて祈りを。

次回更新は三日以内という決め台詞を吐きながらお別れです。

ありがとうございました！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【次回予告】



『gphkvfmfegfj難儀lnpdocfdnifafgnlgnosk』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・ミーシャ＝クロイツェフ




『（天使が人間に気を遣う･･････。　人間が天使を心配する･･････。
　普通に考えたら、いえ、普通には考えられない事だけど･･････）』
―――――――――――エリザリーナ独立国同盟の中心的人物・エリザリーナ

ミーシャ久しぶりだなミーシャ！！
乙です

サーシャちゃんマジ天使

乙
全員混乱しすぎだろｗｗｗｗｗｗｗｗ

>>1乙です
久しぶりのリアルタイムでした

前スレ1000のサーシャの生着替え期待してます！

これが最終決戦……ッ!!
ここにオルソラがいないのが悔やまれるな！

俺はまだ風斬がメインヒロインだと信じている
乙

ヒーローは遅れてやってくる
つまり

>>57　つまり、どういうことだってばよ？

下げ忘れた､スマン

乙です！声出して笑ったｗｗサーシャその猫箱は開けたらだめだｗｗｗｗ
みんな可愛いなもう……とりあえずヴェント株は買い占めておきますね

支援絵投下します！前スレ687のダイナミック浣腸の場面です。
ていとくんが第二の主人公してて胸熱
ttp://convini.ddo.jp/imguploader/src/up8031.jpg

>>60
このエイワス殴りてぇｗｗ

>>1フラグ乙
打ち切り(ジ・エンド)、第三次製造計画で原作にも出てきたりして

>>58
今は高みの見物

やばい、元ネタは分からんがサーシャが可愛すぎるｗｗｗｗｗｗ

堪えようとしたけどアクセラローザで腹筋やられたｗｗｗｗｗｗ

>>60乙

打ち切り(ｼﾞ･ｴﾝﾄﾞ)で腹筋崩壊したw

一方さんはそろそろ天に召されといた方が色々楽だと思うの
どォせホルスがどうのこうので天使化しても今とそう変わらないさ

もうキャラ崩壊とかそういうレベルじゃねぇｗｗｗｗ

>>60
そういえばていとくんワシリーサに三連敗中じゃないか！

ジ・エンドとか、なんか全滅した部隊にいそうな名前だなぁオイ

狙撃の名手で光合成できんのか

厄介事フラグが立てばとりあえずエイワスの仕業と思ってしまうな

垣根「これも全部エイワスって奴の仕業なんだ」

打ち切りｗｗｗｗワロタｗｗｗｗｗｗｗｗ

なんだコレw
何だこれwww

一方通行、やましいことなら最初からやらなきゃいいんだよ
清く正しく生きていこうぜ！

>>62
案外打ち止めの代わりとして製…生み出されてたかもしれないよな
原作でミサワが「旧シリーズは消す」見たいな事言ってたし

>>60
すげえｗｗｗｗｗｗ
ワシリーサかわいいよオオオォォォォ

ひぐらしうみねこブレイブルーか。ネタが豊富だなw

サーシャがぼくのヱリカちゃんになってるうううううううううう

新スレ初投下なのにカオスすぎるｗｗｗｗ
サーシャも正気じゃねぇｗｗ

>>60
いつもの挿絵の人かな？うめぇｗｗおつ！！

このレッサーにはキツいお仕置が必要だと思う

レッサーも>>60みたいなことになるべきだな
ベクトルカンチョーで

仕方ないから俺がやってくる

おらよ

>>83

自転カンチョー

>>80
イギリスに帰ればベイロープがやってくれるさ

よつばとだと？
ネタが豊富すぎだろww

なんで>>1来てないのにこんなに伸びてんだよ…
お前らちょっと落ち着け

逆に考えるんだ
こんな楽しい修羅場にエイワスが居ないとなると
よっぽど垣根の魔術免許皆伝は重要案件なんだと考えるんだ

……未元物質だけで大抵なんでもありだと思うんだけどなあ

やつは……どこにもいないし、どこにでもいるのさ

もしもし

わたしエイワス

今あなたの後ろにいるの

>>89
それなんてシュレディンガー

>>90
ドラコなら歓迎する

>>60
相変わらず高クオリティな挿絵をありがとうございます！
エイワスの嫌な奴っぷりが如実に表現されてていい感じですね、素晴らしいです！

某イラストサイトにも嬉しいことに絵を書いてくれてる方がいらっしゃるのですが、
その方の絵ももっと見てみたいな･･････エイワス通行とかすごい綺麗でした


そして沢山の支援レスをありがとうございます！
今回のお話は前みたいに楽しい話ではないのですが、それでも見ていただけたら嬉しいです。


それでは投下します。

――――――――――――――――――――――


エリザリーナは独立国同盟の市街地に鎮座する巨大クルーザー『アライアンス』号で
民間人達と今後の船の取り扱いについて話し合った後、軍事施設のオフィスルームへと戻っていた。


（とりあえず、船にある食料の運び出しは彼らに任せるとして･･････、
　残りはどうしようかしら。　船に備え付けてある客室を、住居を失った民間人達に
　貸し与えるとしても･･････、部屋の数から考えて何人かは共同で入居してもらう必要があるわね）


エリザリーナはオフィスに到着すると、パソコンの電源を立ち上げて
『天使同盟(アライアンス)』が船で突っ込んできた際の被害の詳細をデータにまとめる作業を始めた。

何もそうして『天使同盟』の面々を責め立てようというわけではない。
エリザリーナにそんな気はないし、仮にそんなことをしても『天使同盟』には厄介な構成員が存在する。
というか、厄介な構成員しか存在しない。

だがそうではなく、単に船の衝突によって住居を失った民間人たちの総人数と、
一方通行から――正確にはエイワスから――贈呈されたクルーザーにある客室の数を照らし合わせ、
被害者全員を収容出来るかどうかを計算しているだけだ。

（それにしても･･････冷静に考えると無茶苦茶してくれたわね･･････彼ら。
　もし船で入国してきたときに民間人の中から死者でも出ていたらどうするつもりだったのかしら）


それについては、彼女は知る由もないが心配は無い。
民間人に被害が降りかからないようエイワスが入国の際に説明不可能な計算をしている。
そのおかげで民間人の中から死者が出る事はなかったのだ。


エリザリーナはカタカタとキーボードを打ち込みながら、チラリと側のソファに目をやる。


「gphkvfmfegfj難儀lnpdocfdnifafgnlgnosk」


そこには、水の属性を司る本物の大天使。『神の力(ガブリエル)』、ミーシャ＝クロイツェフが
ロシアの子供向け番組を見ながら妙な動きをしていた。
どうやらその子供向け番組でやっているコーナーの、体操を見て真似ているようだ。全く真似出来ていないが。

とても天使のやることとは思えないその無邪気な行為を見て、エリザリーナはクスっと笑う。

ミーシャは今朝、原因不明の体調不良でひどく衰弱しており、ついさっきまで
体を休めるためにソファで横になっていた。

エリザリーナがオフィスに戻るとミーシャは起床していて、自身が所持しているノートに
何かを書いていたのだが、エリザリーナが帰ってきた途端素早くそれを隠してしまった。


（今は何ともないようだけど･･････、どうなのかしら。
　またさっきみたいに倒れたりしたらどう対処すればいいのか･･････）


今朝は倒れているミーシャを見て、とりあえず天使に詳しそうなエイワスを呼ぼうとしたのだが
ミーシャにそれを制止された。彼女は自分が衰弱している事を誰にも知られたくないらしい。


（天使が人間に気を遣う･･････。　人間が天使を心配する･･････。
　普通に考えたら、いえ、普通には考えられない事だけど･･････）

それが彼ら、『天使同盟(アライアンス)』なのだ。
一方通行や風斬氷華、垣根帝督はミーシャのために国から国へ渡り歩いている。
エイワスの心中はわからないが･･････、それでも彼らは天使のために行動をしている。


確か活動理由は、『なぜミーシャがこの世界に顕現し続けているのか』、『ミーシャがこの世界でしたい事とは何なのか』。
主にこの二つだっただろうか。『天使同盟』のリーダーはあまり意欲的ではない様子だったが。


それと、もう一つ。


（･･････････････････星の欠片）


エリザリーナはもう一度、ミーシャの方に目を向ける。
彼女は依然、子供向け番組を夢中で見ており、エリザリーナの存在など気にも留めてないといったご様子だ。

今やっているのはどうやら東洋の島国ではポピュラーらしい、『オリガミ』の紹介だ。
ミーシャはその辺に落ちていたエリザリーナが整理した書類を手に取り、グシャグシャに折りまくっている。
あの書類は後でロシア政府に提出しなければならない物なのだが･･････。

（････････････････････････アメリカ国家偵察局）


エリザリーナは無邪気な子供のようにキャッキャと遊ぶミーシャから視線を逸らし、
マウスとキーボードを慣れた手捌きで操作する。


彼女はまず、ロシア政府の諜報機関『GRU』の極秘サイトにアクセスし、
そこから情報総局長が個人で運営しているページへ飛んだ。

そのページから情報総局長にダイレクトメールを送る。


ちなみに、この情報総局長は前代のプライベーティアを極秘裏に動かしていた
情報総局長ではなく、新たに就任した情報総局長だ。

前情報総局長はエイワスにより完全に精神崩壊を起こしてしまい、
現在は精神病院で廃人同然のままベッドで横たわるだけの生活を送っているらしい。

（情報総局長へ送るメールの内容は･･････、回りくどい内容ではダメね。
　単刀直入にこちらの要望を伝えればあるいは･･････）


エリザリーナはキーボードを打ち込み、メールの文章を作っていった。


『アメリカ国家偵察局から打ち上げられた偵察衛星の現在の状況が知りたい。
　NROが所有する偵察衛星のリアルタイムの映像の閲覧許可が欲しい』


アメリカ国家偵察局『NRO』は、現在までに多種多様の偵察衛星を宇宙空間へ打ち上げている。
エリザリーナはその中の『早期警戒衛星』が観測する映像をリアルタイムで送って欲しいとロシアの情報総局長に要求した。

偵察衛星を打ち上げているのはアメリカだけでなく、例えば日本も宇宙で偵察衛星を作動させている。
代表的な衛星は情報収集衛星『IGS』と呼ばれる衛星だ。

実は学園都市からも『ひこぼしⅡ号』と呼ばれる"スパイ衛星"が打ち上げられているのだが、
『ひこぼしⅡ号』がスパイ衛星だと知る者は学園都市の中のほんの一握りだけであり、
エリザリーナ他、各国は単なる気象衛星としか捉えていない。

エリザリーナはこの独立国同盟の長であり、政府にも顔がきくそれなりの権限を持ちあわせているが
さすがに各国の偵察衛星の映像を直接要求出来るほどの力は持っていない。

そこで彼女はロシアの『GRU』の情報総局長を通してアメリカの偵察衛星の映像を送るよう要求したのだ。
『GRU』はエリザリーナ独立国同盟に大きな『借り』がある。
先日に発生したロシアの非公式軍『プライベーティア』による抗争。それを解決し、
結果的にロシア政府の汚職を世間に公表することに成功しているのだ。


正確にはプライベーティア崩壊を成し遂げたのは『天使同盟(アライアンス)』という
国家も政府も法律も通用しない超非常識組織なのだが、その構成員の一人、エイワスは
その手柄を全てエリザリーナに譲渡している。


彼女はその『借り』は使いはしないと決めていたが、ここへ来てその切り札を切った。
『借り』を利用すればアメリカ国家偵察局の情報を得られるかも知れない。

利用、などという手段を取りたくはなかったが、そうまでしてでもエリザリーナには
確かめたい事があた。


（来た。　さすがに早いわね）

数分も経たず、ロシアの情報総局長から返信メールが届いた。
無論、彼女と情報総局長の間でやり取りされているメールは完全プライベート体制、
相応の権限を持ちあわせていなければ覗き見たりすることは出来ないようになっている。


（このメールを開ければ、答えが････････････）


しかしなぜ、エリザリーナはそんな大掛かりな手順を踏んでまで偵察衛星の映像を欲しがるのか？


もちろん、その映像からあらゆる情報を盗み見て独立国同盟を国家間で優位な立場にしようとか、
そういうスパイまがいな事をするためにしているのではない。


それは、今もすぐ側にいる大天使、ミーシャ＝クロイツェフの奇妙な行動を見たからだった。


（彼女が空を見上げているのでは無いとしたら）


ミーシャは今朝、倒れているところをエリザリーナに介抱されてこのオフィスに連れられて来ている。
しかしその時、オフィスに向かう際にミーシャは妙な行動をとった。


彼女は天井を、いや、空をジーッと見つめて動かなくなったのだ。


最初はただ単に天井にぶら下がっている質素な電球に興味を持ったのかと、大して考えなかった。
しかしエリザリーナは聡明な女性である。ミーシャが天井を見上げているのではないと気付いたのはその後すぐだった。

エリザリーナは『ミーシャが見上げているのは天井ではなく、"空"なのだ』と考えた。
そしてその推測は見事に的中している。

『天使同盟』の構成員、一方通行や風斬氷華らもミーシャが『上』をジッと見つめる行為を
度々目撃している。そこから推察するとエリザリーナの考えも間違ってはいない。

そう、的中しているのだが、あと『もう一歩』、答えに及んでいないのだ。
一方通行達も『空を見上げている』という考えまでには至ったが、そこから先は無理だった。


しかし、エリザリーナはさらにその頭脳明晰さを発揮し、考察する。


（彼女が見上げているものが、空ですらないとしたら･･････？）


昨晩、夕食の時間に『天使同盟』も招き、そこで彼らのこれまでの経緯を彼女は聞いている。
彼らは『星の欠片』という、ベツレヘムの星の欠片を探し求めているらしい。


星の欠片にはミーシャ＝クロイツェフの召喚に利用された儀式場があるのでは、と彼らは考えていた。
食事の席に同席していた元『殲滅白書』のシスター、ワシリーサもその意見に同意していた。

エリザリーナ自身も、そうだと思った。でなければミーシャが未だにこの世に存在出来る理由が無い。


が、『天使同盟』は未だに星の欠片にはたどり着いていなかった。
星の欠片の情報を得るために彼らはロシアの地へ趣き、かつてその身に天使を宿していた魔術師の少女、
サーシャ＝クロイツェフとの接触を図っていたらしく、ロシア訪問はそのためだったのだと言う。


結局、その時は誰も星の欠片の在り処についての答えを出すことが出来なかったが、
現在、エリザリーナは新たな可能性を見つけている。

そのために、わざわざロシアの情報総局長とのコネクションを利用して
世界最大国家のアメリカの偵察衛星の情報を得ようとしているのだ。


（私の予想は当たっているのか、外れているのか･･････）


エリザリーナはふぅ、っと息を短く吐いてメールを開封するためにマウスを一度クリックした。


メールの内容を見て、エリザリーナは呼吸が止まった。

『NROに問い合せてみたが、信じられん答えが返ってきた。
　現在、各国が打ち上げている全ての人工衛星に原因不明の不具合が発生しているらしい。
　各国諜報機関全て、衛星の映像取得が不可能な状況になっている』




「･･････なんですって」


思わず声が出た。
どっと全身から嫌な汗が吹き出て、開いた口も塞がらなかった。


エリザリーナの要求は叶わなかった。
それ以前に、応じることすら出来なかった。各国の衛星が『全て』原因不明の故障を起こしているという。
それは仕方がないどころか、どうしようもない事だ。

しかしこれはどういう事なのか？


（･･････このアドレスは）


情報総局長からの返信メールの本文画面を下にスクロールすると、
そこには数種類のアドレスが貼りつけられてあった。


（これは･･････！）


アドレスを見ただけでエリザリーナはそのリンク先がどこなのかを理解する。
そのアドレスのリンク先は、全て各国が打ち上げている偵察衛星の映像へのアドレスだった。

しかも直リンク、そのアドレスをクリックするだけで映像が見放題ということだ。

（･･････よくこんな物が･･････、感謝するわ）


これは完全に越権行為だ。
恐らく情報総局長は各国諜報機関にハッキングを仕掛け、偵察衛星のアドレスを抽出してきたのだろう。
新たに就任した情報総局長はかなりのヤリ手のようだ。

エリザリーナはプライベーティア一斉摘発の事後処理のために何度かロシアの情報総局に
足を運んでおり、そこで現情報総局長と何度か顔を合わせただけだった。

そのためまずメール返事自体返ってくる保証が無かったのだが、情報総局長は予想と反してあっさりと
メールを返してくれた。だがその理由もこれでハッキリ分かった、まさかこのような状況に陥っているとは。


（諜報機関へのハッキングなんてそう簡単に出来るものではない。
　恐らく、現在各国全ての諜報機関のセキュリティがガタガタになっているんだわ･･････）


と、言うことは各国諜報機関は何者かの手によってハッキングされたという事だ。
いや、これはもうクラッキングと言っても過言ではないかもしれない。

諜報機関のデータベースに不正な理由で侵入したのかどうかは定かではないが、
十中八九、その何者かは諜報機関へ侵入するとともに各国偵察衛星にもハッキングしている。
情報総局長が容易に偵察衛星の映像のリンクを入手出来た事が確たる証拠だ。


（とりあえずは、アメリカの『ラクロス』へアクセスを･･････）


メールによれば現在、偵察衛星の映像の取得、閲覧は不可能となっているようだが、
それならばわざわざ映像のリンクを危険を冒してまで入手したりはしないだろう。

しかもそのリンクを情報総局長はエリザリーナに提供している。
『とりあえずアクセスしてみろ』、と暗に示しているのだ。


エリザリーナは震える手で画面のカーソルをリンク先のアドレスへと動かしていく。
カーソルはアメリカが所有する合成開口レーダー(SAR)の『ラクロス』の映像リンクアドレスで動きを止めた。


（････････････、！）

エリザリーナはゴクリと生唾を飲み込み、意を決してマウスをクリックした。

その瞬間、








ビーッ！！！　ビーッ！！！　ビーッ！！！と、
けたたましいエラー音がオフィスの室内を駆け巡った。

「な！！？」


エリザリーナは心臓が止まるかと思った。思わず間抜けな声が出てしまう。


騒音レベルで鳴り響くエラー音は、エリザリーナのパソコンには入っていない音声データだった。
聞いたこともない警告音を至近距離で受けた彼女はパニックに陥りかける。
だがそこで彼女は冷静になるよう自分に言い聞かせ、そのエラーメッセージが表示されたウィンドウを閉じた。

するとそれに呼応するように、エラー音もピタリと止んだ。

ハァ･･････、と安堵の息を吐くエリザリーナ。あの状況でもパニックにならなかった
彼女の強い精神は賞賛ものだ。さすがに一国を率いる『聖女』だけのことはある。

しかし、それでもやはり動揺はしたのだろう。彼女は気付いていなかった。




さっきまで子供向け番組を見てはしゃいでいたミーシャが、まるで固まった石のように動かなくなっている事に。
そして、ジッと･･････エリザリーナの方を無言で見ている事に。

その後、エリザリーナは情報総局長から送られた各リンク先にアクセスしてみたが
結果はどれも同じだった。

耳を塞ぎたくなるほどの警告音と、他のリンク先と全く同じエラー画面とメッセージ。
これらがアクセスを容赦なく拒否し、映像の閲覧は不可能となっていた。


（全世界でこんな事になっているなんて･･････、ニュースは！？）


エリザリーナはパソコンを操作し、ディスプレイでテレビ番組が見られるようにする。
そしてニュース番組を見ると、案の定どこの局でも各国諜報機関がハックされたという内容のニュースで持ちきりになっていた。


（公になるまでの時間が遅すぎる･･････！！　一体どんな方法でハッキングを･･････！？）


しばらく呆然とエラー画面を見つめていると、エリザリーナの目に何かが映った。
それはいわゆる『エラーメッセージ』のようなものなのだが、そのメッセージはとても無視できるような物ではなかった。

『"天使同盟(アライアンス)をよろしく！"』




どう考えても、どう楽観的に推察しても、エリザリーナは"とある組織"の事しか考えられなかった。


『天使同盟(アライアンス)』。


（まさか･･････彼らの仕業？）


しかしエリザリーナは一方通行達がこんな大規模のハッキングを行うとは思えなかった。

彼女は詳しく知らないが、例えば『天使同盟』のリーダーである一方通行は学園都市最高の頭脳の持ち主だ。
仮に一方通行が本気で各国の諜報機関のデータベースに不正侵入しようと思えば、それは容易に実行出来るだろう。

ま　た　お　ま　え　か　

しかし今回の件は、少なくとも一方通行の仕業ではない。無論、風斬氷華でも、垣根帝督でもなければ、
ミーシャ＝クロイツェフでもない。


（･･････と、なると）


エリザリーナの脳裏にはあの金髪の怪物が浮かんでいた。
あの怪物なら根拠はないがこんな事くらい平気で出来そうな気がなぜかするのだ。


と、ロシアの情報総局長から新たに一通のメールが届いた。
彼女は迷いなくそのメールを開封する。


『各国が混乱状態に陥りつつある状況だ。　皆が皆、互いに協力し合い解決策を練っている。
　君も是非協力して欲しい。　････････････正直既に絶望的な状況ではあるが。
　あの学園都市からも協力要請が入ってきている。　「守護神(ゴールキーパー)」と呼ばれる
　ハッカーを知っているか？　彼、ないしは彼女へ君のアドレスを提示しても構わないだろうか。
　少しでも助力が欲しいとの事だ』


しばし逡巡した後、エリザリーナは返信メールに一言、『よろしく』と打ち込んで素早くメールを送る。

『守護神(ゴールキーパー)』。


学園都市には、学園都市の治安を守るために超一流の天才ハッカーが存在すると言われている。
男か女かも分からないその人物の実力は本物よりも本物で、『守護神』が築き上げたセキュリティは
学園都市でも十指に入るほどだと言われている。


･･････と、言う噂だけはエリザリーナも立場上、少しだけ耳にしたことがあるのだが、
まさか本当に存在していたとは思わず、さらに『GRU』の現情報総局長とのコネクションを持っており、
その上、その『守護神』が協力して欲しいと言ってきているらしい。

一度も会ったことがないため信用しにくいし、信用されても困ると思ったエリザリーナだったが、
今はとにかく情報が必要だ。彼女はただただ、『宇宙』の様子が知りたいだけだ。


エリザリーナ自身はハッキングに関する知識は乏しいが、それでも全く出来ないことはない。
しかもこうしてアクセス拒否などをされてしまうと余計に情報が欲しくなるというのが人間の性というものだ。

そして今、エリザリーナには『GRU』という強力な後ろ盾と、学園都市の『守護神』が味方についている。
エリザリーナは間もなく送られてくるであろう『守護神』からのメールを待った。

エイワスをひっ捕らえろｗｗｗｗ

すみません、ちょっと不具合でキーボードで文字が打ち込めなくなってましたｗｗ
私のパソコンも何かされたのかと少し心配になりました、今回の話が話だけに･･････焦った


さて、今回はここまでです。
なんか色々おかしいところがあるかもしれませんが、どうか寛大な精神でスルーしてあげてください。
それと『ゴールキーパー』なのか『ゲートキーパー』なのか、よく思い出せなかったのですが
ゴールキーパーで合ってますよね･･････？


次回は一方通行にカメラが向かいます。
どうやら今回の事件について情報を得るためにある人物と連絡をとるそうですが･･････はてさて

次回更新は三日以内。

今日もここまで読んでくださった方々に感謝します。

では、失礼します。ありがとうございました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【次回予告】



『オマエは今どこにいる？』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)




『あー･･････、今は第七学区のカフェにいるぞ。　つかお前今何時だと思ってんだ。
　こんな朝っぱらから電話してくんなよ･･････そんな時間にカフェに『無理やり連れてかれてる』俺も俺だけど』
―――――――――――新生『アイテム』構成員・無能力者(レベル0)・浜面仕上

乙ー

初めてリアルタイム遭遇できたー

乙
はーまずらぁ大変だな……ｗｗ

乙
守護神何やってんだよｗｗｗｗ

乙
ゴールキーパーであってるはず
そしてはまづらと一通さんのハーレム同士の会話か･･･胸熱

乙!
これは……超電磁組の再登場フラグか……?

一方・浜面コンビはいいよな
原作だとお互い「携帯の番号を交換する仲に見えるか？」とか言ってたけど
ここではしっかり繋がってるようで

守護神が出てくるだけで胸熱だな！！

そうだよな……あの街の中でも有数のハッカーってもう普通にワールドクラスだよな……

科学の最先端の最高峰なんだからワールドクラスでもトップ余裕だろ

>>123
イギリス行くときに交換したんだよな
あと、滝壺とも・・・

意外と皆さん『守護神』に食いつきますね･･････何だか申し訳ない事をしてしまったような気がする

というわけでこんばんわ。今日はゴールデンタイムの投下となります。

まず最初にエリザリーナvs謎のハッキングの続きをちょこっとやって、
そこから一方通行へとカメラが切り替わる、といった感じになります。


それでは参りましょう。世界規模のハッキングが発生し、人々はどのような反応を見せるのか。
大して描写もないですけど･･････

数分後、エリザリーナのパソコンから新着メールの通知音が申し訳程度に鳴った。
彼女はすかさずメールボックスを開き、新着メールを確認する。

そのメールのアドレスはやはり、見たこともない英数字で作られていた。
恐らく使い捨て、あるいは本メールアドレスを隠蔽するための擬似アドレスなのだろう。


内容は以下の通りだ。


『初めまして、「定温保存(Thermal hand)」です。
　あなたの個人情報は私には一切伝わっていませんのでご安心ください。
　それと、非常に申し訳ないことに既にこちらのデータベースも乗っ取られつつあります。
　メールのやり取りもあと数回も出来ないでしょう。　ですので今のうちに得ることが出来た情報を
　まとめてあなたに送ります』


（さーまる･･････はんど？）

この人物の異名か何かだろうか？しかし異名と言うなら『守護神』こそ異名なのではないか。


しかしそんな瑣末事は今はどうでもいい。『守護神』こと『定温保存』から送られる情報を元に
エリザリーナもこの謎のセキュリティロックを解除するために奮闘しなければならない。
彼女は早速、エラー音対策のため音量設定を最小にして偵察衛星の映像のリンク先へアクセスする。

すると相変わらず、例のエラーメッセージが表示された画面が映し出された。
まずはここをどうにかしなければ話は始まらない。

それにしてもメールの文面を見る限りでは、既に『定温保存』側、つまり学園都市の
セキュリティでも乗っ取られてしまっているという。一体ハッキングを仕掛けた者はどんな技術を使っているのか。


『定温保存』からメールが届く。


『大音量の警告音はハッタリですね。　大きな音を発することでアクセスした人間の集中力を削ごうと考えているのだと思います。
　音量設定を最小にすれば解決する陳腐なトラップでした。　多分あなたも既に実行していることかと思います。
　次にこのエラーメッセージですが、私には何の事だか理解できません。　『同盟』という言葉について
　あなたは何か心当たりがありませんか？　あるのでしたら是非情報の提供をお願いします。　私からの情報提供は
　このエラーメッセージ画面から抜け出し、とりあえずですが諜報機関のデータベースへアクセスする方法です。
　まず･･････････････････』

エリザリーナは文面を全て目に通し、頭に叩き込み、『定温保存』の指示通りにパソコンを操作する。


すると、見事にエラーメッセージから抜け出すことが出来、偵察衛星の映像リンクへたどり着くことが出来た。
しかしその画面には、テレビの『砂嵐』のような映像が延々と流れるだけで、エリザリーナの求める映像ではなかった。

『定温保存』は『同盟』については何も知らないらしい。
『同盟』とはほぼ間違いなく、『天使同盟(アライアンス)』の事だろう。なぜ彼らの組織名がここで出てくるかは分からない。
関連があるとすればやはり、星の欠片についてなのだろうが･･････、『定温保存』にそんな事を説明しても無意味だろう。


エリザリーナは『天使同盟』の情報は『定温保存』に伝えない事を決め、自分にも心当たりはない旨の内容を打ち込み、
『定温保存』に送信した。


次にこの『砂嵐』だが、恐らく諜報機関のデータベースをハッキングした者の仕業だろう。
ここを修復すれば一応は解決の目処が立つのだが、ここからが厄介だった。

『定温保存』からのメールによると、他の一流ハッカーも『砂嵐』の復旧作業で心を折られるらしい。
ハッカー特有の専門用語がふんだんに使用された文面であったためあまり理解出来なかったが、
どうやら学園都市の知識と技術、そして『定温保存』の頭脳をフルに活かしても『核』に至れないのだという。

情報を提供すると言っておきながらこの有り様で申し訳ない、という意味の文が最後にあった。
どうやら『守護神』と呼ばれる『定温保存』でもお手上げ寸前の様子だ。


（『守護神』でも･･････、学園都市全ての技術をフル活動させても全くダメとは･･････）


ますますあの金髪の怪物がきな臭くなる。
今回のこのハッキング、ハッカーの目的は恐らく『宇宙空間の映像を他者に見られないようにする』事だ。

そこまで分かるのはエリザリーナが『天使同盟』についての知識が一通りあるからだ。
しかしなぜそんな事をするのかは分からない。


気がつくと、定期的に送られていた『定温保存』からのメールがピタリと止まっていた。
どうしたのだろうと思っていると、新着メールを伝える通知音が鳴った。ロシアの情報総局長からだ。


『今すぐパソコンの電源を切り、ケーブルを全て抜けとの指示が「守護神」から送られた。
　この「Alliance」に深入りすると逆ハックをかけられてしまうらしい。
　君も今すぐ実行してくれ。　報告は後日、メールで伝える』

エリザリーナの背筋が凍った。
この文面から察するに、『守護神』こと『定温保存』は逆ハックを仕掛けられ、
『定温保存』程の腕を持つハッカーでも対処出来なくなり、恐らくはパソコンを乗っ取られたのだろう。
メールの返事が来ない理由もそれで説明がつく。


このわずかな時間で、学園都市の最強ハッカーは撃破されてしまった。


（ここまできたのに･･････！！）


しかしこちらも逆ハックをされてはたまらない。
エリザリーナは直ぐ様パソコンの電源を落とそうとしたところで、

ブツッ、とスクリーンがブラックアウトした。


「？」


エリザリーナは何度かマウスをクリックし、電源ボタンを押してみるが何の反応も無い。
自分の足元を見てみると電源ケーブルが全て引っこ抜かれていた。


そして、


「･･････み、ミーシャ･･････？」


エリザリーナの視界には、ケーブルを握ってこちらを無言で見つめてくる大天使の姿があった。

――――――――――――――――――――――


一方通行、風斬氷華、レッサー、サーシャ＝クロイツェフ、『前方』のヴェントの五人は
黙々と食事を摂った後、各自自由行動となった。


自分たちは少し頭を冷やしたほうがいい、というサーシャの意見に全員が同意し、
飲食店から出てそれぞれ別の方向に散っていった。


（さて･･････、どォすっかな）


一通り必要な買い物を済ませた一方通行は――ミーシャやエリザリーナへの土産、垣根に頼まれた漫画や服、打ち止め達への土産等――、
ショッピングセンターの入り口近くにある休憩所を兼ねた広場に移動し、そこにあるベンチに座ってARを適当に操作していた。

片手でキーボードを操作し、もう片方の手に持っている缶コーヒーをグイッと一口飲む。
さっきまで女性陣の買い物袋を大量に背負い込んでいたため、コーヒーすら飲めなかったのだ。

食後の一服を堪能し、一方通行はARのウィンドウを切り替えてテレビ番組が見れるARを表示させた。
適当にチャンネルを変え、一通りのニュース番組に目を通す。


（･･････諜報機関のデータベースへのハッキング自体は二、三日前には既に実行されており、
　ハッカーがそれを悟られぬよう巧妙に隠蔽していた可能性が考えられる。　･･････ハッ）


喉を鳴らしてコーヒーを一飲みした彼はニュースを見て鼻で笑った。
セキュリティが杜撰だからこンな事になったンだろ、と適当に感想を漏らす。
顔を上げて周りを見渡してみるが、どいつもこいつもハッキング事件のニュースに釘付けになっていた。


無論、各国に存在する諜報機関のセキュリティは並ではない。
あらゆる技術が惜しみなく導入されており、ハッカーでも容易に侵入できないようなシステムは当然組まれている。

だが一方通行は長く学園都市に住んでいるせいか、学園都市より技術が数十年遅れている『外』のセキュリティなど
全くアテになりゃしないと考えているようだ。

（こンなモン、学園都市に協力を要請すりゃあっさりと解決出来るモンじゃねェのか）


一方通行は新しいタブを開き、学園都市のデータベースへの侵入を試みようとした。
各国の諜報機関がハッキングされているという話だが、まさか学園都市まで乗っ取られているという事はあるまい。

学園都市が組んでいる各機関のデータベースのセキュリティは『外』の比ではないほど強力に構成されているが、
この一方通行という少年は学園都市最高の頭脳を誇る超能力者だ。
彼がその気になれば、学園都市の機関へ侵入することなど朝飯前である。


（とりあえず･･････『風紀委員(ジャッジメント)』か？）


別に本気で学園都市のデータベースにハッキングをするわけではないのでどの機関でもいいのだが、
一方通行はとある『噂』をチラリと思い出していた。


『守護神(ゴールキーパー)』と呼ばれる、学園都市に存在する天才ハッカーだ。


本当に噂程度でしか聞いたことがないが、あのおかしな街ならそんな漫画じみた存在がいても不思議ではない。
学園都市のデータベースへハッキングを実行するという事は、『守護神』と真っ向からぶつかりあうという事にもなる。

（覗き見るくらいなら『守護神』とやらにも接触する事ァねェだろ）


とりあえず、と一方通行は風紀委員のデータベースへ無断でアクセスしてみた。


が、


「･･････あァ！？」


突然、ARが謎のエラー画面を表示し、サイレンのような警告音を発し始めた。
周りにいる買い物客の視線が一斉に白髪の少年へと向けられる。


（クッソ、くだらねェ小細工かましやがって！！）


一方通行はARの音量設定を弄り、ひとまずその警告音を抑える。そしてエラー画面を確認もせずにウィンドウを閉じた。
その後、カタカタとキーボードを素早く操作して侵入を試みてみるが、学園都市最高の頭脳を以てしてでも
ハッカーの仕掛けた強力な防壁を崩すことは出来なかった。

（野郎･･････、コイツは『守護神』ってヤツの仕業か？　それとも例のハッカーか？）


自分の頭脳をフル回転させてもこの状況を打破できず、イライラしながらエラー画面を睨みつける。
彼が見ているエラー画面は、ただ赤と黒のストライプ模様が延々と表示されるだけの、『何も無い画面』だ。


（少なくともコイツはコンピュータの技術だけで実行出来るよォなハッキングじゃねェな･･････。
　でなきゃとっくに俺が、もしくはアレイスターのクソ野郎が解決してる）


もしくは一方通行の携帯電話に『暗部』からの仕事の連絡が入っているだろう。
そんな電話に出るつもりは彼にはさらさら無いが。


（それか、その『守護神』とかいう野郎が解決の糸口を見つけてるンだろォが･･････、
　この様子じゃ恐らく学園都市もやられてやがるな）


ついさっきまで全く関心が無かった今回のこの事件。
しかし一方通行は妙な胸騒ぎを感じていた。どう考えても自分はこのハッキング事件とは関係ないのだが、
それでもなぜか、ほんの少し『関連性』を感じ始めている。

（情報を手に入れねェと、････････････。　誰か適当に電話してみるか）


一方通行は忌々しいエラー画面が表示されているARを乱暴に叩きつけて閉じ、
携帯電話を取り出して学園都市にいる――数少ない――知り合いに連絡をとる事にした。


（黄泉川と芳川･･････は駄目だな、芳川は役に立ちゃしねェし、黄泉川はどォせ今回の事で
　『警備員(アンチスキル)』に呼ばれてるだろ。　クソガキや番外個体(ミサカワースト)が妥当か？）


まさかとは思うが、ミサカネットワークすら乗っ取られているという事はあるまい。
もうそこまでいくとさすがに事が大きすぎる。エイワスや風斬氷華がミサカネットワークの異変に気付き、
自分に連絡を入れているはずだ。


（･･････コイツでいいや。　今の学園都市の状況くらいならこの『バカ』でも把握してンだろ。
　暗部の仕事で呼ばれてる可能性もあるが･･････）

一方通行は電話帳からその人物の番号に電話をかけた。
プルルルルルル･･････、と無機質な呼び出し音が一方通行の耳に入ってくる。

ここはロシアで、学園都市は日本にあるため何かの原因で電話が繋がらない可能性も考慮したが、
そんな考えは無駄に終わり、数秒で相手は電話に出てきた。


『くあぁ･･････眠。　･･････もしもし？』

「はーまづらァ」

『うおっ、一方通行か？　不気味な声出してんじゃねぇよ･･････』


電話先の相手は、浜面仕上だった。


彼は第三次世界大戦後、ロシアで入手した『素養格付(パラメータリスト)』という公になれば学園都市を根本から揺るがしかねない
情報を交渉材料にし、新生『アイテム』として学園都市で活動を再開している。

今回のハッキング事件で暗部として仕事をしているため電話には出ないと一方通行は踏んでいたが、
意外にもあちらは呑気な声で返事をしてきた。


「オマエは今どこにいる？」

『あー･･････、今は第七学区のカフェにいるぞ。　つかお前今何時だと思ってんだ。
　こんな朝っぱらから電話してくんなよ･･････そんな時間にカフェに『無理やり連れてかれてる』俺も俺だけど』


ロシアは現在正午を回った頃だ。時差の影響で日本は今、早朝といったところだろう。
電話先から聞こえる浜面の声はとても眠たそうだった。


「オマエと世間話をするほど俺も暇じゃねェンだ。　こっちの質問に素直に答えろ。
　まず、『アイテム』他、暗部に何らかの仕事の連絡が来てる話とか聞いてねェか？」

『暗部の仕事？　お前には言ってなかったか？　「アイテム」はもう学園都市の暗部から「卒業」しちまってんだよ。
　んでまあそれとは関係ないけど、何か今、学園都市が騒がしくてな。
　俺もそろそろ仕事来るかなーってひやひやしてたんだけどさ』

「何･･････？」


学園都市が騒がしい、と浜面は言う。やはり何か事件が起こっているのか。
そして『アイテム』が学園都市の暗部との関連性を絶ったというのも初耳だ。
どこかで聞いたかもしれないが、今の一方通行にはとりあえず関係はない。

「詳細を話せ、何が起きてンだ？」

『お前ニュース見た？　ハッキングがどうこうってヤツ』

「見ねェよォにする事が難しい状況だろォが。　どこもかしこもハッキングの話題で持ちきりだ」

『だよな。　学園都市もそんな感じなんだけどよ･･････、っていうかお前こそ今どこにいんの？』

「ロシア」

『ああ、ロシア･･････ロシア！！？　何だってまたそんなとこ行ってんだよ！？』


浜面は大袈裟にリアクションをしてみせた。一方通行は会話が逸れそうな事にイライラしながら
本題の続きを促した。


「俺の事なンざどォだっていい。　学園都市の状況を教えろクズ」

『クズとか言うなー！！　･･････ったく。　で、なんかそのハッキングがさ、
　風紀委員や警備員のデータベースにも及んでるらしくて、あちこちで機関の人員が対応に追われてるんだと。
　もちろんこれは極秘情報だぞ？　この事実が学園都市に広まったらスキルアウトのバカ共が
　チャンスとばかりに犯罪起こしまくりかねねぇからな』

「････････････」

風紀委員と警備員がやられた。


一方通行はそれを聞いても冷静だったが、これは学園都市にとってはとんでもない大損害だろう。
恐らく警備用ロボットや人工衛星やらのデータベースも全てハッキングされているに違いない。
風紀委員や警備員を潰せるほどの規模だ、そうでなければ不自然である。


「暗部に動きは？」

『サクっと調べたところだと、ちらほらと暗部の組織も動いてるみたいだぞ。　俺たちにゃ関係ないけどな。
　･･････お前ってまだ暗部だよな？　もしかして仕事の連絡が入ってんのか？』

「入ってねェし、来ても動きよォがねェよ。　･･････それで、活動してる暗部の情報とか
　風紀委員や警備員の対応の詳細とか、なんか情報を得てねェのかオマエは」

『無茶言うなよ、『闇』から足洗ったっつってんだろ。　そんな簡単に情報は手に入らねえよ。
　･･････あー、ただな。　風紀委員と警備員に関しては大したダメージは負ってねえらしい。
　復旧は今んとこ不可能だけど、あそこらは動かせる人員が多いからな。
　人海戦術で何とか街の治安は維持出来てるらしいぜ』


さすがにハッキング程度で折れるよォな組織じゃなかったか、と一方通行は興味無さげに感想を抱く。

「以上か？」

『いや、まだある。　これはまぁ･･････お前に言ってもしょうがねえかもしんねえけどさ』

「いいから話せ」




『第二三学区ってあるだろ？　一般学生は立ち入り禁止の区域。　あそこの通信施設とか
　実験空港、学園都市の宇宙開発研究所関連の施設は軒並みやられてるんだとよ。
　他の学区は被害が少ねえんだけど、二三学区、なぜか宇宙関連のデータベースは
　研究者が首を括りかねないほど壊滅的な状況になってるみたいだぞ』




第二三学区。
ここは一学区丸ごと航空・宇宙開発分野の施設などが占領している特殊な学区だ。
樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)情報送受信センターといった、学園都市にとって極めて重要な
施設なども存在している。

その第二三学区の、特に宇宙開発関連施設が壊滅的なダメージを受けているらしい、と浜面は言う。


（どォいうこった･･････？　狙うなら普通、学園都市の監視システムとかそォいうベタな所じゃねェのか？
　いや、このハッキング野郎は学園都市も『ついで』で考えてやがる。　じゃねェと全世界の諜報機関の
　ハッキングなンて祭りみてェな事はしねェはずだ････････････）


『なんか、まず最初にハッキングされたのが世界各国で打ち上げた偵察衛星関連のデータベースみたいなんだけど、』

「偵察衛星だと？　･･････ひこぼしⅡ号もやられてンのか？」

『は？　ひこぼし？　あれってただの気象衛星じゃなかったっけ？』


どうやら当時下っ端構成員だった浜面には、ひこぼしⅡ号がスパイ衛星であるという情報は
入ってこなかったようだ。

とにかく、そんな元下っ端構成員の情報によればまずハッカーが最優先でハッキングを仕掛けたのが
各国が打ち上げている偵察衛星のデータベースだという事。


（･･････意味がわからねェ。　なンのためにそンな事をしてやがるンだ？）


一方通行には全く関係の無いこの事件、本来の彼ならここらで情報収集を打ち切りにしているだろう。
しかし、なぜか胸のもやもやが拭えない。関係ないのに、関係ないとは思えない妙な違和感を感じる。


「オマエのその情報、間違いはねェンだな？」

『自信は無いけど、絹旗にも確認してもらったから大丈夫だと思う』


絹旗、と言われても一方通行には誰の事だか分からないが、恐らく『アイテム』の一員なのだろう。
ならばこれは学園都市暗部からの確たる情報という事になる。一方通行の収穫は小さい物ではなかった。

『小耳に挟んだだけだから真偽はわからないけど、学園都市が
　放っている気象衛星が結構前から何らかの不具合を起こしているらしいわよ』




昨晩の食事の時、エリザリーナがチラリと漏らしていた言葉を思い出す。
彼女がプライベーティアとのいざこざでロシア政府に足を運んだ時に耳にしたと言っていたはずだ。


（クソッ･･････こンな事になるンならエリザリーナからもっと話を聞いときゃよかったな。
　こォなるとあの女が言っていた『結構前』ってのが具体的には何日前なのか気になる）


「下っ端、聞いてるか？」

『下っ端言うな、聞いてるよ。　なんだ？』

「学園都市のひこぼしⅡ号が前から不具合を起こしてるらしいンだが、
　オマエそれについて何か知ってる事はねェのか」

『ひこぼしⅡ号って、だからあれってただの気象衛星だから―――』

「いいからオマエは雑魚らしくせっせと情報集めりゃいいンだよクソボケ」

『それが人に物を頼む態度かよ！？』

だー、ちょっと待ってろ！！と、憤慨しながら浜面は会話口から離れた。
どうやら彼が今いるカフェにはパソコン利用サービスがあるらしい。

小さな声でよく聞こえないが、近くにいる誰かと話をしているようだ。さっき言っていた絹旗とかいう人物だろうか？
一方通行は会話を聞き取ろうと聴覚を集中させると、あっちから例の大音量警告音が鳴り響いた。どうやら浜面達もアレに引っかかったらしい。

そして一分も経たない内に、浜面は声をかけてきた。


『ひこぼしⅡ号が不具合起こしてたって噂は少しだけあったみたいだけど、
　詳しくは調べられなかった。　なんかそういう衛星とか「宇宙関連」の情報を調べようとすると
　変なエラー画面が出るんだよ。　お前知らないのか？　バカみてえにデカいエラー音が鳴るヤツ。
　学園都市でもあっちこっちで鳴ってたんだぞさっきまで。　ていうか今のも聞こえたろ？』

「俺もそれは見たし聞いてる。　音は設定弄りゃどォにでもなるチンケなトラップだ。
　････････････なら、ひこぼしⅡ号が具体的に何日前から不具合起こしてたかはわからねェンだな？」

『ああ、皆目見当もつかねえよ。　「衛星」はもう絶望的だ、復旧の目処も全く無い。
　どんな方法で調べようとも必ずあの「変なメッセージ」が出て先に進めねえんだとよ。
　小耳に挟んだだけだけど、あの「守護神」もノックアウトされたらしいぞ』

「････････････『変なメッセージ』？」

浜面が放った妙なワードに、一方通行は眉をひそめた。
確かに自分も例の大音量トラップを喰らいはしたが、エラーメッセージは見ていない。
なぜならエラー画面など見向きもせずにウィンドウを閉じていたからだ。


「････････････オイ、オマエが見てるエラー画面にゃ何かメッセージがあンのか？」

『はぁ？　そりゃお前、こんだけ堂々と表示されりゃ見ざるを得ねえだろうよ。
　本当にニュース見たのか？　"コイツら"が何者なのか、今のニュースはその話題でも盛り上がってんぞ？
　ネットの巨大掲示板とかも"コイツら"の話題で持ちきりだ』

「･･････････････････････････････」


『コイツら』、と浜面は言う。
複数形という事は、そのメッセージには何人かの言葉でも表示されているのだろうか。
一方通行はさっきチラッとニュースを見ただけだ、そんなエラー画面のメッセージの事など知らない。

「･･････俺が見てるエラー画面は、ただ赤と黒の縞模様が表示されてるだけだぞ」


言いながら、試しにARで適当に『衛星』について情報を検索するが、
もはや『衛星の関連情報』ですらハッキングされ、乗っ取られてしまっている。

そして、一方通行の目の前に表示されるのは赤黒のストライプ模様だけだった。


『そうそう、その赤と黒のシマシマ画面の中央に、ドーンと挑発するようなメッセージがあんだろ。
　なんか数分くらい待ってたら表示されるヤツ』

「･･････数分待てば、だと？」

『ああ。　学園都市でも既に多数目撃証言が出てるんだけど』


聞いちゃいけない気がする。
絶対に聞いたら後悔する気がする。いや、気がするではなく、これは確信だ。

しかし、ここまで深く関わってしまった以上、一方通行も後には退けなかった。
絶対に後悔するとしても、"自分は聞かなければいけない気がしたのだ"。

「･･････教えろ。　エラー画面には、何が書いてある？」


胸の鼓動がだんだん早くなっていくのが分かる。
心なしか、呼吸も荒くなっているような気がする。
嫌な予感しかしない。嫌な悪寒が全身を駆け巡る。

それでも一方通行は浜面に質問した。エラーメッセージの正体を。

でも、なぜ。どうして、


どうしてこんな時ですら、あの水の大天使の顔が思い浮かぶ？


『えっと、････････････』


浜面は少しだけ閉口した後、恐らく画面を確認しながらこう言った。

『「"天使同盟をよろしく！"」、だってよ。　Allianceだから･･････「アライアンス」、か？
　天使同盟なんて聞いた事もない名前だけど、お前知ってるか？
　ネットとかで色々憶測が飛び交ってるけど、何か"どこかの組織の名前"じゃないかって
　仮説が一番濃厚なんだとさ。　お前心当たりとかないの？　ていうか天使って言えばお前確かロシアの天使と―――』





もはや浜面の言葉など耳に入って来なかった。


一方通行はこの時、間違いなく呼吸が止まっていた。

知っているどころの話ではない。
心当たりがある、どころの騒ぎではない。
『組織の名前』説が濃厚になっているらしいが、濃厚どころではない。


ドンピシャリ。正確。的確。言い得て妙。的を射ている。


『天使同盟(アライアンス)』の名は、全世界のネットワークを介して大勢の人間に知れ渡っていた。

（･･････････････････････････････、夢かなンかだろ、これ）


現実を素直に受け止める事が出来ない。
一体全体、何がどうしてこうなった？


『おい、一方通行。　聞いてるのか？　ああ、ちなみに「天使同盟」については
　今のところ全く情報無し。　調べてもエラーどころか、何一つヒットしないんだと。
　でもよ、天使って言葉･･････何か嫌な感じだよな』


その"嫌な感じ"を今、自分は必死で守ろうとしていると知ったら、浜面仕上はどう反応するだろうか。
浜面は以前、一方通行に偽造パスポートの作成依頼を受けた時に『天使』の顔を写真で見ているし、
その天使と自分が一緒に行動していることもしっている。

浜面が一方通行と『天使同盟』の関係に辿り着くのは時間の問題かもしれない。


（何が起こるってンだ･･････。　クソったれ、こォいう嫌な予感だけは的中しやがる･･････！！）

何かが起ころうとしている。具体的に何が起ころうとしているのかは分からないが、
漠然と、これから先に自分たちに何かとてつもない事態が発生しようとしている事だけは分かる。


『おい、一方通行？』

「･･････なンでもねェよ。　とにかく分かった、オマエはもォこれ以上この件に関わンな」

『は？　何言ってんだ？　お前やっぱり今回の事件について何か知って――――』


浜面が何か言っていたが、それを無視して一方通行は電話を切った。


（･･････とにかく、もォ帰った方がいいな。　風斬はこの状況を全て把握してンのか？
　垣根は？　他の連中はどォだ？　魔術サイドにゃもォ『天使同盟』として
　かなりの人間と関わっちまったぞ･･････。　････････････それと、）


一方通行はARのウィンドウを全て閉じ、空になった缶コーヒーをゴミ箱に投げ捨てた。
そして周囲の人間たちの様子を確認し、ゆっくりと、自然にベンチから立ち上がる。

（こォいう時、やっぱ一番怪しいのはあの"クソ野郎"なンだ。　アイツから話を聞いてみねェ事には
　何も進展しねェ。　･･････買い物なンかしてる場合じゃなかったか）


現在、時刻は正午を少し過ぎた辺りだった。
今帰れば、夕方前にはエリザリーナ独立国同盟に到着出来るだろう。


（慌てる事ァねェ。　世界が『俺達』に気付く事はあり得ねェンだ。
　とにかく帰って、冷静に状況を把握していけばいい）


一方通行は踵を返して四人の女性陣と合流しに向かう。
とりあえず独立国同盟に帰って、あの金髪の天使を問い詰めなければならない。


だが、彼はまだ気付いていなかった。


今この瞬間も、刻一刻と『茶会へのタイムリミット』が近付いている事に。

Q.第三次世界大戦終結後、一方通行との取引で暗部は全て解体されたはずでは？

A.このSSでは未だ健在です。『グループ』も活動しています。
　『アイテム』は暗部とは関係なく動いているのですが、どうしてもクセで暗部扱いしてしまう･･････


そんなわけで、本日の投下は終了します。
一方通行はどうやらこの事件の犯人に心当たりがあるようですね、誰なんでしょうか。

次回は再びエリザリーナにカメラが切り替わります。
エリザリーナの行動を阻害するミーシャの真意とは･･････。

なんて書くと壮大なストーリーっぽくなりますが、実際大したことありませんねｗｗ

次回更新は三日以内。

それでは今日もお付き合いいただきありがとうございました！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【次回予告】



『もう。　遅い。　消失。　許容。　魔術師。　敵。　彼。　皆。　守る。
　準備。　完了。　待機。　待機。　待機。　････････････』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』の構成員・ミーシャ＝クロイツェフ




『何が遅いの、まだ何も起きていないわ！！　彼らは諦めずにあなたと共に行動しているというのに、
　あなた自身が諦めてどうするのよッ！？』
―――――――――――エリザリーナ独立国同盟の中心的人物・エリザリーナ




『ハッキング？　首謀者？　何の事です？』
―――――――――――『天使同盟』の構成員・エイワス

最速の一乙ッ!!

>>1乙ー

エイワス絶対棒読みだろｗｗ

エイワスｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ

乙
エイワスじゃないなら誰なんだろーなー

>>1乙

次回も楽しみで仕方がない

これは犯人が予想できないぞー

エイワスこの野郎？ｗｗ

あれれー？

しゅごしんのうえのひとがあやしいんじゃないかなー

まああんぶにしれいがとばないということはかんでるよねー

予告に重大なヒントが隠されている気がしてならないな。

このスレの読者のノリの良さは異常

それより絹旗ちゃんが名前だけ出てるんだけど、出番期待していいんですかね！？

これだけの大規模ハッキングをやらかすとは……一体犯人は誰なんだ

>>170
なんだと？！　犯人が気になって重要なことを見過ごしていた
絹旗もしくは、守護神とのフラグなフラグってことか！！

このエイワスからはアステカのにおいがする

ガブリエルが日記書いてるってことはガブリエル消失フラグだよな…
想像するだけで胸が痛い

そして乙！

>>172
電子戦で窒素を操る能力がどう役に立つと

最近、一方通行から木原くンの話題が出てるからまさかの復活のフラグは………無いか(-o-;)

禁書に守護神より凄いハッカーとかいたっけなー？
だれなんだろうなー？

禁書に守護神より凄いハッカーとかいたっけなー？
だれなんだろうなー？

わたしだ

おまえだったのか

暇を持て余した天使同盟の遊び

遊びそうなのが一人しかいない件について

ミーシャの事ですね

ワシリーサと毎日ｷｬｯｷｬｳﾌﾌしてる垣根じゃね

命懸けのｷｬｯｷｬｳﾌﾌ

>>184
×　ワシリーサ
○　バーバ・ヤーガ

どっちにしろ死亡フラグ…

俺の未元物質にフラグは通用しねえ

あんた一度死んでるじゃないか

お、おかしいですねえ･･････皆さんのその口ぶりからして
これはもしかしたら犯人が誰だかバレているのでは･･････どういう事なんだ


てなわけでこんばんわ。今日も投下していきたいと思います。


今回はエリザリーナとエイワスのシャベリ場をお送りします。
さりげなくですがこのお話の重要なポイント、『星の欠片』についての話です。
もう読者の皆様には大体予想がついているでしょうが･･････


それでは参りましょう

――――――――――――――――――――――


エリザリーナは、パソコンのケーブルを握ってただこちらを無言で見つめてくるミーシャに対して、
どうアクションを起こせばいいのか分からなかった。


「ミーシャ････････････」

「――――――――――」


水を司る大天使、ミーシャは手に持っていたケーブルを床に放り投げ、
そしてまたエリザリーナの顔を、瞳を黙って見つめてくる。

こうしていても何も事態は進展しないと判断したエリザリーナは、とりあえず話しかけてみることにした。


「ミーシャ、どうしてこんな事を･･････？　私はまだ仕事をしなければならないの。
　だからパソコンが使えなくなると困るのだけれど･･････」

「pefjng無駄vngrg」

ノイズの混じった声で短く何かを言うミーシャだが、エリザリーナにはその言葉が理解出来ない。


「まったく･･････意外とおてんばなのね、あなた。　もうお昼を回っているし、
　そろそろ昼食なのだけれど･･････どうかしら？　あなたも食べるでしょう？」


そう言いながらエリザリーナは椅子から腰を上げ、ミーシャが放ったケーブルを拾い上げる。
そして再びパソコンに繋げようとするのだが、


パシッと、ミーシャは軽くエリザリーナの手を叩いて阻害してきた。
エリザリーナの頬にツツー･･････と、冷や汗が流れる。


「････････････ミーシャ･･････」

「駄目」


次の言葉は理解できた。ノイズが混じっていなかったのだ。
ノイズがあったり無かったりと、やはりミーシャはどこか不安定な状態にあるようだ。

「だ、駄目って･･････何が？　私はただ―――――」

「――――――――、」

「？」


ミーシャはゆっくりと首を横に振り、『上』に指を立てる。
エリザリーナは釣られて上を見るが、そこには石で出来た無機質な天井しか広がっていない。

ただ、エリザリーナにはミーシャの仕草が何を意味しているのかが分かった。


「････････････空？　いえ、あなたは･･････」

「調査。　無駄。　lsaw駄目jfer。　無意味。　遅い」

「･･････ではやはり、ベツレヘムの星の欠片は････････････」


出来れば当たってほしくない推理だったが、どうやら見事に的中してしまったようだ。

エリザリーナは『天使同盟』よりも早く、『星の欠片』の居場所を突き止めることが出来た。
しかしそれで素直に喜べるような状況ではない事を、エリザリーナも、そして誰よりもミーシャは分かっていた。


「でも、だったらどうして･･････なぜ邪魔をするの？　詳しい原因は分からないけど、
　多分『星の欠片』は間もなく消滅してしまうわ。　あなたの儀式場もろとも！！
　それなら今のうちに対策を整えて実行しなければ、あなたはこの世界から消えてしまうのよ！？」


口調が徐々に荒々しくなってきた彼女の言葉に、ミーシャは黙って頷いた。


「分かっているのなら邪魔しないで！！　あなたはこの世から消えたくはないのでしょう！！？
　自分で言っていたじゃない！！　　ここから消えるのは嫌だって、彼らと、『天使同盟』の
　皆と別れるのは嫌だって、そう言ったのはあなたでしょ！？　今からでも行動すれば間に合うはずだわ！
　一方通行達だって、あなたのために今まで行動してきたのよ！？　それを―――――――」

「もう。　遅い。　消失。　許容。　魔術師。　敵。　彼。　皆。　守る。
　準備。　完了。　待機。　待機。　待機。　････････････」

「何が遅いの、まだ何も起きていないわ！！　彼らは諦めずにあなたと共に行動しているというのに、
　あなた自身が諦めてどうするのよ！？　･･････、準備って････････････！！」

気付けばエリザリーナは肩で息をしながら激昂していた。それはミーシャの諦めに対する怒りでもあれば、
呆れるほどの無力な自分に対する怒りでもあった。


「準備って･･････何の準備よ。　あなたは一体何を考えているの････････････？
　『神の力(ガブリエル)』は伝達の御使いでしょう･･････？　だったら、私に何を考えているのか教えて･･････」




『教えるも何も、ミーシャ＝クロイツェフはこれ以上事を歪ませるなと言っているだけだよ、エリザリーナ』




突然の虚空からの声に、エリザリーナはビクン！！、と体を強ばらせた。
ドッと吹き出る汗が頬から顎へと渡り、床にぽたりと落ちる。

その真実も嘘も考慮させない、美しすぎるほど美しい声は、聞き間違えようがない。

「エイワス･･････！！」

「そう、みんなのエイワスだよ」


まるっきりふざけた口調で虚空より顕現せしは、クロウリーにあらゆる知識を授けた聖守護天使エイワスだった。
エイワスはエリザリーナの真後ろに、まるで最初からそこにいたかのように佇んでいた。

エリザリーナは後ろを振り向くこともせず、エイワスに問いかける。


「今回のハッキング事件、首謀者はあなたね？　エイワス･･････」

「ハッキング？　首謀者？　何の事です？」

「とぼけないでッ！！！」


エリザリーナの喝に、エイワスはただ微笑するだけだった。

「証拠も何も無いというのに、いきなり私を疑うとはひどいじゃないか、エリザリーナ」

「どの口がそんな事を言うのかしら･･････、こんな事が出来るのは現時点であなたしかいないでしょう。
　あのわざとらしいエラーメッセージが動かぬ証拠よ」

「ふはははは、バレちゃあしょうがねえぜ、白状しちまいますよ名探偵さん♪」


こんな雰囲気の中でもふざけた口調で喋るエイワスに、エリザリーナの苛立ちは募るばかりだ。
この時点でエリザリーナは完全にエイワスの術中にハマっていた。


コホン、とエイワスは咳をして言う。


「その通り、今回のハッキング事件は私が起こした。　ただ一つ訂正するならば･･････、
　私は首謀者ではないよ。　これは私一人による単独犯だからね」

「あなた一人で･･････？　呆れるわね、信じられないわ」

だが本当にたった一人でそんな事をやってのけてしまうのがエイワスという存在だ。
エイワスはロシア到着からちょくちょく姿を消していたが、この事件を引き起こすための
下準備でもしていたのだろうか。


「そんな大した事をしているつもりはないのだがね。　もちろん、事が済めば私が掌握した
　データベース等は全て元通りにするつもりだし、何もこのまま世界を混乱の渦に巻き込もうと
　しているわけではない。　そんな事をしてもつまらない世界はつまらないままだからな」

「この事態が大した事じゃないですって･･････？　あなた一体何をしようとしているの？」

「ミーシャ＝クロイツェフ、君は私の部屋で休んでいたまえ。　私は少し彼女と話がある」


言われて、ミーシャは黙ってエイワスの言葉に従いエリザリーナのオフィスから出て行く。


「あ、待ってミーシャ！！　あなたは、」

「pvhyg謝々krpogj」

のっぺりとした顔にある、口に当たる凹凸をもごもごと動かして何かを言ってきたミーシャは、
エリザリーナの制止を無視してオフィスを後にした。


そしてオフィスに残っているのは、エリザリーナとエイワスのみ。


エイワスという未知なる存在と二人きりで対峙するという事が、こんなにも恐ろしいとは思わなかった。
傍にいるだけでこんな得体の知れない重圧がのしかかってくるこの怪物と、今までずっと行動を共にしてきた
一方通行達もやはり只者ではないのだなと痛感した。


「楽にしたまえエリザリーナ、私は君に何かをしようと企んでいるわけではないのだから。
　そうだな、まずは君に称賛の言葉を送りたい。　おめでとう、エリザリーナ。
　君は見事、『星の欠片』に辿り着く事ができたようだな」


パチパチパチ、と全く心が込められていない拍手をエリザリーナに送る。
しかしそんな事よりも、エリザリーナはエイワスの言葉に驚愕していた。

「『星の欠片』･･････、じゃあやはり『星の欠片』は」

「うむ、君の推理通りだ」


エイワスは大袈裟に両腕を広げ、まるで空をその身で受け止めるようなポーズをとって言った。






「『天使同盟(アライアンス)』が探し求めていた『ベツレヘムの星の欠片』は、宇宙空間を漂っている」

分かっていても、予想は出来ていても、やはりこうしてハッキリと答えを提示されると
驚嘆してしまうものだ。
実際、エリザリーナは目を皿のように広げてその場に固まってしまった。


『ベツレヘムの星の欠片』は現在、宇宙空間にある。


一方通行と出会ってから、ミーシャは度々空を見上げていた。
そんな天使の様子を見て一方通行達は『星の欠片は上空を漂っている』、というところまでは推理出来ていた。

しかしさすがに、まさか宇宙空間にまで飛び出しているとは予想出来なかったのだろう。
実際に答えに辿り着いたエリザリーナですら、自分の推論に半信半疑だったのだから。


「それにしても、本当に驚いたよ。　イレギュラーとはこういう事を言うのではないかね？
　まさか一方通行よりも、風斬氷華よりも、垣根帝督よりも、他の人間よりも。
　先にエリザリーナ、君が『星の欠片』を発見してしまうとはね」


エイワスはスッと腕を降ろし、エリザリーナに向かって微笑みながら続けた。

「これは私でも予想出来なかった事態だ。　これこそ『大事』ではないかな？
　君にとってはそうでなくとも、私にとってこの事態は大きなサプライズだ。
　『事』の大小と価値観は、個によって多種多様だからね」


エリザリーナが『星の欠片』に辿り着く事を、果たして本当に予想出来なかったのかどうか怪しいところだが、
エイワスはさも本当に驚いているかのような仕草をとってみせた。


「やはりさすがに科学サイドの人間には予想し難い事だったかな、これは。
　たかが空中要塞が、宇宙にまで飛んでいくとは思えなかったのだろうね。
　かくいう私も、アレイスターに遅れをとってしまったのだが･･････、ふむ。
　やはり君は聡明な人間だよエリザリーナ、褒美でもとらせようか？」

「･･････そうね、なら甘んじて授かろうかしら、その褒美を。
　けど、何を貰うかは私に決めさせてちょうだい」

「何なりと。　何が欲しいのかな？　金？　地位？　名誉？　ふふ、ありきたり過ぎるか」

エイワスの言葉など無視して、エリザリーナは褒美の内容を注文した。


「･･････私の質問に『正直』に答えてちょうだい」

「そんなものでいいのかね？　欲が無いのだな」

「あなたから貰える真実ほど価値がある物なんてないかも知れないわよ。
　だからお願い、正直に答えて。　私の質問と、あなたの考えている事と、ミーシャの考えていること」

「さりげなく注文が増えているが･･････、まぁいいだろう。　拝聴しようか」


エリザリーナは質問の内容を頭にまとめていき、しばらくの間無言で佇んでいた。
そんな彼女の様子を冷笑を浮かべながら見つめるエイワスの、なんと余裕綽々な事か。
どんな事を聞かれても、全て正直に答えようとも、全く問題ないと言いたげな佇まいだ。


一分が経った頃だろうか、エリザリーナが口を開いて最初の質問を投げかけた。


「･･････まず一つ。　なぜ各国諜報機関の、いえ、『衛星』のコントロールを掌握するなんていう
　大それた事をしたの？」

「当然の疑問、といったところだな」


どう答えたものか･･････、とエイワスは演技臭く指を顎に当て、解答内容を考える。
もっとも、こうやってわざと焦らしてイライラするエリザリーナの姿を見て愉しもうとしているだけかもしれないが。

やがて、エイワスはエリザリーナに答えた。


「宇宙にあんな物がふわふわと漂っていたら、誰だって驚くだろう？　ベツレヘムの星を知らない者が見ても、
　知っている者が見ても、必ず驚く。　そして各国は持ちうる技術を使って『星の欠片』の争奪戦だ。
　宇宙に浮かぶモノリスだのUFOだの未知の惑星の一部分だのとのたまってな。
　そうなってしまっては困る。　あれを乱暴に扱われでもしたら、ミーシャの存在維持に関わってしまうからね。
　我々『天使同盟』の目的は『天使の保護』だ。　その邪魔立てはさせるわけにはいかないのだよ」

「････････････本当に、それだけなのかしら？」

「疑うかね？　疑ったところで、ならば君は真実を提示することが出来るのか？
　提示した上で、そが真実だと立証させ、私を論破する事が出来るのか？
　私は正直に答えろと言われたから答えているまでだが」

「･･････････････････」

「無知なら与えられた知識を受け入れろ。　それこそ、甘んじてな。　ふふ･･････」


馬鹿にするように笑うエイワスだが、しかしその通りだ。
今のエイワスの解答が虚偽だとしてもそれを確証付ける物は何も無いし、言葉だけで論破出来るほど材料も無い。

何より今、エイワスが言った事は真実味がある。確かに未だ世界は宇宙についての情報が不足している。
そんな時に宇宙空間を漂う『星の欠片』を発見すれば、あっという間に各国での争奪戦が始まってしまうだろう。

それに一つの国だけが秘密裏に『星の欠片』を発見したとしても、それを回収出来なければどうしようもない。
恐らくだが、『星の欠片』は欠片とはいえ元は空中要塞。その大きさは繊細な宇宙空間専用回収マシン等では
とても回収出来ないものだろう。


「･･････ただ、」

「？」


と、ここでエイワスがまたしてもエリザリーナを困惑させるような発言をする。


「『衛星』のコントロール掌握に関しては、世界の目から『星の欠片』を隠すためだけに
　行った事ではない。　いわば、これは『カモフラージュ』だ」

「カモフラージュ･･････？」

「詳細は時が来たら話す。　そうだな･･････、明日にでも、全員を招集して話すことになるだろう。
　そうせざるを得ない事態が発生するはずだ、私の予想だとね」


相変わらずこの金髪の怪物は言っている事がよくわからない。
明日になれば全てを話すことになるとはどういうことなのか。しかもそうせざるを得ない事態が発生するとは、
これ以上何が起こるというのか。エリザリーナは頭に鈍痛のようなものを感じた。

「･･････今、ここで私に全てを説明する気はないの？」

「君という人間個人にそんな価値は無い。　同じ説明を何度もするのは苦手でね。
　それなら皆を集めて一回で説明した方が楽だろう？」


ならば今ここでエリザリーナがエイワスに質問をぶつけても、結局全ての答えは提示されないのではないだろうか。
なんだか狐につままれたような錯覚を覚えつつも、エリザリーナは質問を続けた。


「･･････あのエラーメッセージは何？　『天使同盟をよろしく』とかいう、あのメッセージは」

「遊び心だよ。　それにほら、ハッキングによって生じたエラー画面にあんな意味深なメッセージが表示されたら、
　何だかワクワクしてこないかね？　謎の組織が世界を混沌で満たそうとしているんだ、とかな。
　ちょっと地球を混乱させてみようかなと、ほんの悪戯心で行ったことだ」


結局、エイワスにとって世界とは。この惑星とは。そんなものでしかないらしい。

いわばこの地球という惑星は、エイワスにとっては大きなおもちゃ箱なのだ。
いや、ゲーム盤と言った方が正しいだろうか？人間という駒を好きなときに好きなだけ動かすことが出来、
飽きたら『ひっくり返して』またやり直し。それはまさに神の所業だ。


「今頃、大慌てで一方通行達がこちらへ向かっているところだろうね。
　やれやれ、また怒られるのかな私は････････････」

当たり前だろう。エイワスに好き放題振り回されて黙っている第一位ではない。


「いつまで『衛星』のコントロールを手中に収め続けるの？」

「事が済めば、と言ったはずだが」

「その『事』とは何？　それはいつ終わるの？」

「『事』の詳細は君には関係無いことだ。　終焉は･･････明日だろうがな」


明日。


今までのエイワスの言葉から考察すると、明日に何かが起きて、それは同日に終焉を迎えるという。
その『事』の為に『衛星』のコントロールを掌握するという大規模な『下準備』を行い、
それがミーシャ＝クロイツェフを守る事に繋がるのだという事だろう。


「その『事』は、あくまであなた達の中にしか及ばない事態なのかしら？
　それともまさか、世界全体に関わる事？」

「難しい質問だな。　答えによっては君が余計な行動を起こしかねない」


その言葉だけで既に行動を起こしかねないのだが、エリザリーナはジッと堪えて答えを待った。

「全世界に影響を及ぼさないように尽力するつもりではあるが･･････、
　そこまで心配しなくてもいいのではないかな。　私もついているし、
　一方通行達も全力で取り組んでくれるだろう。　事は天使に関わるからな」


ただ、とエイワスは意味深な笑みを浮かべて続ける。


「この物語にはいくつか分岐ルートがあるが･･････、もし私が予想しうる『最悪のバッドエンド』に
　辿り着いてしまった場合は、"少なくとも十字教は崩壊する"。　これはバッドエンド時の確定事項だな」


もうエリザリーナは声も出せなかった。
十字教が終わるということは、魔術サイドがこれまで築きあげてきた輝かしい歴史も、汚らわしい過去も、
全てが綺麗サッパリ無くなるという事だ。


第三次世界大戦が終結し、魔術結社は復旧・改善が進み、各宗教の信徒に
ようやく平和な日々がやって来つつあるというのに。


「それはあなたのデタラメな発言であって欲しいのだけれど･･････」

「言っただろう、『最悪のバッドエンド』を迎えた場合のみに起こる確定事項だ。
　そんな事は"させない"から、これからも君たち人間は安心して安息の日々を謳歌したまえ」

「させない･･････？　十字教の崩壊は自然現象ではなく、誰かが起こすものなの？」

「時代が変われば、自ずと前時代に蔓延んでいた文化や宗教は消えてなくなるだろう。
　それは自然に起こる場合もあれば、人の手によって起こる場合もある。
　明日が時代の変わる日だというなら、それは十中八九人間の手で起きるものだ」

「･･････誰がそんな事を？」

「さあ？　それも明日になってみなければ分からない。　私はオシリスも嫌いではないから
　そこまでの事は起こさないが、それでも二人ほど候補はいるぞ？　くく･･････」

「････････････････････････」


自身が知らない間に、世界はいつの間にか危機的な状況に陥っていたという事か。
第三次世界大戦が終結し、それぞれの人間の気が緩んでいるところにこれだ。

エリザリーナからすれば、『ごめんけど明日、十字教が終わっちゃうかもしれないのでよろしく』、
と唐突に言われたようなものだ。


そう簡単に、この現実を受け入れられるわけがなかった。

「･･････あなたの言っている事が本当なら、今からでも何か対策を講じたほうが･･････！！」

「エリザリーナ」


さっきまでとは少し違う、気持ち強い口調でエイワスに名を呼ばれ、
エリザリーナは言葉を紡げなくなってしまう。


「これ以上、邪魔をしないでほしい」

「邪魔･･････！？　わ、私はただあなた達とミーシャの事を想って･･････！！」

「想うだけなら結構。　しかしそれを行動に移されると我々にとって君はただの障害でしかなくなるのだよ。
　もはやレールは敷かれている。　あとは我々がそのレールを辿って進むだけという段階まで来ているのだ。
　君がそのレールを歪ませるような事をすれば、我々は『脱線』してしまい大変な『事故』を起こしてしまう可能性がある。
　あまり不安要素を残したくはないのでね。　君に出来ることなど、もう何も無いよ」


それは、あまりに冷たく、あまりに的確な指摘だった。


自分に出来ることなど、もう何も無い。

その通りだった。エイワスがそう言うのだから間違いないとか、そういう事ではなく、
エリザリーナも心の奥底では理解していた。
これ以上自分が何かをしたところで、この状況を打破する解決策など出てこない、と。


「･･････自身の無力さを自覚しろ、と言いたいのね？」

「そこまで言うつもりはないが、とにかくもう君の出番は無いと言いたいだけだ。
　我々の事を本気で想ってくれている事が本当なのは分かっている。
　だが、それなら尚の事、君には何もしないでほしいのだ」

「ここまで来て･･････、ここまであなた達の事が理解出来てきたというのに･･････。
　あとは黙って傍観しているだなんて･･････」

「そこまで卑下に考えなくてもいい。　逆に問うが、なぜそこまで我々に肩入れをする？」


それはエイワスにも分からない事だった。

確かに『天使同盟』はエリザリーナ独立国同盟に多大な迷惑をかけ、その上でその迷惑を
完全に帳消しに出来るほどの詫びを送ったのだが、しかしそんな事だけでここまで動こうとしてくれる
エリザリーナの心中が、エイワスには分からなかった。

エリザリーナは自嘲気味な笑みを見せ、パソコンデスクの椅子に腰をかけて言った。


「分からないわ･･････、私自身のことなのに、私にも分からない。
　なぜここまであなた達に助力しようとするのか･･････いえ、助力にもならないのだったわね」

「････････････」

「あなた達の近況を聞いて、目的を聞いて、それで･･････『天使同盟』を立ち上げた
　一方通行と話をして･･････彼の一面を知って･･････。
　･･････気がついたら私もあなた達の力になりたいと。　そう思ってたのよ」


それを聞いてエイワスはニヤリと意地の悪そうな笑顔を作った。
やはり、彼女をここまで掻き立てたのはあの白髪の少年だったのだ。


（私の目に狂いは無いようだ、アレイスター。　やはり一方通行は
　上条当麻とはまた『質』が違う価値を秘めている）


『天使同盟(アライアンス)』とは、つまりそういう事なのだ。

ミーシャ＝クロイツェフが基となり、一方通行が行動し、周りを惹きつけ、
そこに風斬氷華や垣根帝督、その他多くの人間たちがいつの間にか着いて回る。


そしてエイワスはそれを観客席から観賞し、時に観客席から舞台へ移るという掟破りを実行する者。


そんなサイクルで物語を展開していくのが、一方通行率いる『天使同盟』だ。


「君も、彼に惹かれたか」

「え？　･･････あ、いや、わ、私は別にそういうわけじゃ」


言葉では否定しても、その挙動で真偽は見破れる。
エイワスに嘘偽り、ごまかしなど通用しない。エリザリーナもサイクルに巻き込まれている。

上条当麻とまた違う物語の展開方法。上条当麻も魅力的だが、今回は一方通行が主演の舞台だ。
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は今は拱手傍観。中心は『一方通行(アクセラレータ)』。


エイワスは『自身が描くシナリオ』に狂いが無いことを再確認すると、くつくつと笑ってみせた。
一方通行が主演なら、エイワスは総指揮・総監督だ。ただし気まぐれで仕事を放棄する悪い癖のある監督だが。

「･･････ミーシャもそれが分かってて、私を止めたのかしら」

「だろうな。　彼女は侮れないぞ？　あれでも天界が誇る大天使様だ。
　人間などという劣等種が好き勝手に振り回していい存在ではない」

「私に、私たち人間に出来る事は、ただ明日を待つことだけ･･････」

「分かってもらえて助かるよ。　まぁ、『茶会』の特別に招待した人間が何人かいてね。
　その人間たちにはしっかりと踊り狂ってもらおうと考えている」

「？」

「ふふ、明日が待ち遠しいよ、本当に。　君は遠足前日の夜に眠れなくなるタイプかな？
　私はそうではないと自覚していたのだが、どうやら違うらしい」


ふふふ、と笑うエイワスの姿は、本当に楽しい遠足当日を待ちわびる無垢な子供のようだった。

おい、いつのまにかエリザリーナにまでフラグ建ててたぞ通行さン

下準備は整った。
自分が動かす『駒』も全て掌の中にある。
ゲーム盤も『対戦相手』が用意してくれているだろう。


それを自分はゆったりと眺める。最高級の紅茶を手に、ゲーム盤の上で踊り狂う愚かな駒たちを。


おやおや、これでは『茶会』ではなくなってしまう。
ただ自分だけが茶を楽しみ、自動進行で進んでいくだけのゲームを眺めているだけだ。


それではいけない、それでは興が冷めるというもの。


だったら、『新たな客』を招き入れよう。


それは人間ごときでは務まらない。人間は全て駒なのだから。


（ならば）


"ならば人間よりも高尚な、しかし時に人間より下賤な存在を招く他あるまい"。
もしそれが実現出来たなら、明日の『茶会』はさぞ愉快な催し物になるだろう。

誰を…まさか他の大天使か?

今回はここまでです。


そして今回で、最終章への下準備が全て整いました。
あとはただ明日、ロシア編の三日目を待つのみとなります。


宇宙にある『星の欠片』を『天体制御(アストロインハンド)』でどうにか出来るのではと思われるかもしれませんが、
もう今のミーシャではそれも無理です。理由はいずれ明かされると思います。


次回は一方通行が女性陣の回収へと向かいます。
ここでようやく、一方通行とサーシャの会話パートが繰り広げられますので、どうかお楽しみに。


次回更新は三日以内。

それでは、今回もありがとうございました！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【次回予告】



『木原･･････？　･･････、もしかしてですが、木原とは顔にタトゥーを刻んだ学園都市の研究員では？』
―――――――――――元『殲滅白書』の魔術師・サーシャ＝クロイツェフ




『あァ！！？　なンでオマエが木原を知ってンだァ！？』
―――――――――――『天使同盟(アライアンス)』のリーダー・一方通行(アクセラレータ)

乙
なんか「うみねこ」に出てても違和感ねえなエイワス

乙
木原くンは逆はやぶさしたからねぇ……

次回予告読んでなかった





オイ木原、お前サーシャに何しやがった
内容次第じゃ………………………………

おつおつ

ロシア編てまだ2日しかたってないのか…

おいおい。
2日間で色々起こりすぎだろ。
そして一方さんは2日間でフラグ立てすぎだろ。

最終章か…　寂しくなるなぁ　
ガブリエルの幸せを祈るばかりです
乙！

乙

まさかの木ィィィィィィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥゥン・・・だと・・・

ベツレヘムは宇宙空間にまで到達する機能がなかった
ただそれだけの事が、この世のあらゆる叡智の間隙に陥ったのか…

気象衛星の不具合とか言ってた時点で、ベツレヘムの星が気象衛星にめり込んでるんじゃないかと思ってたが、そこまで安直じゃなかったか

代わりに木原君がめり込んでます

月にめり込んだかとｵﾓﾀ

木原くンの出番だぁー！！！！

ちょいさー！！

木原クン、セクハラするならサーシャじゃなくアニェーゼにしなさい
OO的な意味で

そういやゲームでサーシャは木原に会ってたな

乙

>>232と>>233が分からん
誰か教えてくれ

>>235
>>232は中の人ネタ。藤原さん（木原）とくぎゅ（アニェーゼ）が同陣営だったり少し因縁があったり
>>233はそのままの意味じゃね？PSP禁書やってないからわからんけど

OOだと木原くン（サーシェスCV藤原啓治）が兄弟殺しちゃたし

OO小説だとアニェーゼ（ネーナCV釘宮理恵）をレイプ的な事をしたって書いてあった気がする……

>>236
感謝する、ありがとう

>>237
感謝…………





木原くんがアニェーゼをレイプ…だと……！？

あ、ＩＤ違うけど>>238は>>235です
答えてくれた2人には改めてありがとうと言いたい

>>224
ま、まあでも原作でも一日の間に色んなことが起きてますし、これもそんな感じで見ていただければ･･････
いや、言い訳に過ぎませんけどね。申し訳ないです。


そんなこんなでこんばんわ。もうだいぶ夜遅い時間になりましたけど投下します。
時間が時間なので、起床したら暇潰しにでも見ていただけたらと思います。

今回は一方通行とサーシャのターン。
またしても一方通行はフラグを立ててしまうのか、それとも。


それではいきまーす

――――――――――――――――――――――


一方通行はロシア東部の原野にあるショッピングセンターを歩き回っていた。
風斬氷華、レッサー、サーシャ＝クロイツェフ、ヴェントを呼び戻して帰路に着くためだ。


依然として周囲の様子は変わらなかった。例のハッキング事件で買い物客は盛り上がっている。
どの客を見ても半公開型ARを操作してニュース番組をチェックしていたり、面白半分で『衛星』関連のサイトにアクセスして、
あのエラー画面を表示させてみたりとやりたい放題だ。


（クソったれが･･････。　だが『天使同盟』の名が認知されただけでまだ俺達に影響はねェ。
　世間の目に晒されたのが『キーワード』だけならまだ余裕で俺達は行動できる。
　･･････それにしてもあのクソ金髪野郎、一体何が目的でこンな事しやがった？）


一方通行の表情はハッキリと『怒』の色が反映されていた。
杖をつくその動作も乱暴になり、ガツガツと床にあるARを叩きつけるかのようだ。

とにかく、女性陣を回収してさっさと独立国同盟に帰らなければならない。
その後はロシアを発ってもいいのだが、そこから先の予定はまだぼんやりとしか決まっていないため
とりあえずエイワスにこの騒ぎについて言及するしかない。


と、そこで彼の視界に昔懐かしい所謂『駄菓子屋』を彷彿とさせる店で
商品を物色している見慣れた拘束具と赤い外套を着込んだ魔術師が入ってきた。


「サーシャ！」

「むぐむぐ。　おや、一方通行じゃないですか」


元『殲滅白書』の魔術師、サーシャ＝クロイツェフは一方通行から事前に渡されていたお小遣い――二〇万くらい――で
購入したのだろう『きなこ棒』をもむもむと口の中で堪能していた。


「第一の私見ですが、日本にはこのような風情のある店が存在するのですね。
　ダガシヤ･･････と呼ばれているそうで、もうあまり営業されていない古めかしい店なのだとか」

「ンな事ァどォでもいい、もォ十分買い物は楽しンだだろ？」

「第一の解答ですが、まだこれから立ち寄ろうと考えている店があります。
　補足説明しますと飲食店が立ち並ぶエリアに『立ち食いそば』なる店がありまして、
　少し興味が湧いたので今から寄ってみようかと――――、」

「また今度連れてってやるから、行くぞ」

「え、あ。　ちょっと･･････」


まだまだ回ってみたい店が沢山あるサーシャの意志などガン無視で、一方通行は彼女の手を強引に引っ張り
駄菓子屋から遠ざかっていった。


「第一の質問ですが、どうしたというのですか？」

「オマエ、周囲の様子がおかしくなってる事に気がついてねェのか」

「？　･･････第二の私見ですが、確かに買い物客がどこかざわめいていますね。
　皆が皆、ARを操作して何かを閲覧しているようですが、これは一体？」

「さっきメシ食ってる時に流れたニュース速報があっただろ」

「第二の解答ですが、各国の諜報機関が大規模なハッキングを喰らったというアレですよね。
　補足説明しますと、さっきの駄菓子屋でも店主がそのニュースを見ていたような気がします」

「エイワスの仕業だ」

「･･････････････････え？」


一方通行はようやくサーシャの手を放し、それに釣られてサーシャは転びそうになってしまう。
前屈みの体勢になったサーシャの目の前にあるARには、変わらずハッキング事件の続報が流れていた。


「今から他のヤツらも全員集めて帰るぞ。　エイワスのクソ野郎を問い詰める」

「だ、第三の質問ですがそれなら別に帰らなくても電話一本で済むのでは･･････？」

「出るわけねェだろォがこンな状況で。　かといってアイツも逃げたりはしねェだろォから、
　独立国同盟に戻ってるエイワスに話を聞くンだよ」

「第四の質問ですが、なぜこのハッキングがエイワスの手によるものだと･･････？」

「･･････････････････いいから行くぞ」


なぜエイワスの仕業だと決めつけているのか、と言われたら答えようがないが、
エラーメッセージの『天使同盟』という名を知っている存在などたかが知れているし、
その中でもこんな馬鹿な事をしでかすヤツと言えば十中八九、疑いようもなくあの金髪の霊的存在しかあり得ないのだ。

一方通行がチラリとサーシャの様子を見ると、彼女はどこかションボリとしていた。
前髪で目元が隠れているため断言は出来ないが、さっきより少し元気がないことは分かる。


「･･････なンだよ」

「あ、いえ････････････」


何か言いたそうにしながら、しかし何も言わないサーシャの様子に舌打ちをして、
一方通行は再度尋ねた。


「言いたい事があンなら言えよ」

「･･････、第三の私見ですが、その･･････もう少しだけ買い物したかったな、と」


サーシャは俯きながら両手の人差し指をこねこねと動かし、小さな声で本音を吐いた。

「オマエ･･････、出発前は嫌々だったじゃねェか」

「第三の解答ですが、こうしてショッピングというものを楽しむのは初めてでして･･････。
　いざ来てみたら意外と楽しくて、その･･････」

「･･････」

「さっきの飲食店でも、あんなに仲睦まじく皆さんとお喋り出来て･･････すごく、楽しかったですし。
　あなたもあなたで私に衣服を買い与えてくれたりして･･････嬉しかったですし」


決して一方通行の目を見て言ったりはしないが、それでもサーシャは頑張って言葉を紡いだ。


「私としては、もう少しショッピングを楽しみたいなという･･････ワガママな気持ちがあります」

「････････････そォかよ」


サーシャはコクン、と小さく頷いた。


それは一方通行でも予想がつく事だった。

サーシャ＝クロイツェフは今までの人生でこんなに平和でのんびりと買い物を楽しんだ事など無いのだろう。
そんな事例も、それが初めてなら多少の抵抗や遠慮が出てしまうのが人間という生き物だ。
だから最初にレッサーが買い物へ誘った時も、頑なに拒否したのだろう。

今のサーシャはまるでデパートのおもちゃ売り場から離れたくないと駄々をこねる子供のようだった。
一方通行はそんなサーシャの姿にあのクソガキの影が重なって――――。


「････････････オマエの気持ちは分かったが、･･････すまねェ。
　コイツはあのアホ天使にも関わってる事かもしれねェンだ」

「はい･･････」

「だから今回はここで打ち切りだ。　やっぱり今は独立国同盟へ帰る事が
　正しい選択肢なンだと俺は考える」

「はい、･･････」


ますますサーシャの表情から元気が無くなっていく。
さすがにミーシャの事となれば、自分のワガママでそれを放っておくわけにはいかないが、

それでも彼女は皆と楽しく買い物がしたいのだろう。


だから、


「だから、また今度買い物するぞ」

「え･･････？」

「今回の買い物はここまでだが、何もこれでこの先の買い物も出来なくなるってワケじゃねェだろ。
　別に俺達はいつだって買い物出来るンだ。　誰だっていい、誰を連れてっても出来るンだよ。
　その辺のコンビニでも、セレブですら近寄らねェよォな高級ブランド街でも、どこだっていい。
　俺ならどこにでも連れていける。　ていうか無理でも連れてってやろォか」

「一方通行･･････」

「･･････、約束だ」


どこか照れくさそうに、一方通行は膝をついてサーシャに自分の小指を向けた。
サーシャは困惑しながらも、その動作の意味が分かっているようだ。


「なンか無理やり言いくるめてるみてェで悪いがな。　また今度、必ず買い物に連れて行ってやる。
　なンなら学園都市に来てもいいンだぞ。　あそこにゃこことはまた違ったモンが売ってあったりするからなァ。
　次こそはオマエを満足させてやるよ。　だから、約束だ」

「･･････････････････」


サーシャは耳まで真っ赤になって、うぅ･･････と小さく呻く。
こういう時、一方通行は急に男前な事を言い出すからタチが悪いのだ。

「だ、第四の私見ですが･･････了解しました」


しばし逡巡していたサーシャだったが、やがて一方通行の真剣な気持ちを受け取ると
その小さな手をキュッと握り、小指をちょんと出して一方通行の小指に絡ませた。


「すみませんでした、私のワガママでこんな事までさせてしまって･･････」

「俺が好きでやってンだ。　気にすンじゃねェよ」


二人はゆっくりと互いの小指を解き、改めて残りの三人を捜すことにした。


一方通行は立ち上がり、ARを操作して三人の行方を捜す。
半公開型ARを使用する際にはアカウントが必要となる。三人がアカウントを使用して
ARを使用した痕跡を辿れば、居場所を掴む事は容易い。


「風斬は生活必需品エリアの薬局か･･････、アイツそンな所で何やってンだ？
　マセガキは･･････ゲーセンかこりゃ？　ショッピングセンターにありがちなショボいゲーセンだな。
　あとはヴェントだが、･･････チッ。　コイツまたあの『託児所』にいやがる」

オイ、ワシリーサ





サーシャちゃんが今まさに口説かれている件について

三人はそれぞれ全く別の方向にいた。一人一人当たって回収していくしかない。
一方通行とサーシャは並んで歩き始めた。


「･･････ところで一方通行。　天使の事に関する話なんですが」

「あ？　ンだよ薮から棒に。　ガブリエルの事か？」


ハッキング云々の話題を一八〇度変え、サーシャは天使についての話を切り出してきた。




「第五の質問ですが、一方通行は『天使の涙』をご存知ですか？」

天使の涙。
そのワードだけ聞くと非常に神々しい響きだが、一方通行はしかめっ面になって唸った。
どこかで聞いたことがあるが、ハッキリとは思い出せないといった様子だ。


「･･････学園都市が保有してたっつゥ石･･････宝石？　結晶とかだったかァ？」

「やはり、聞いた事くらいはありましたか。　さすがに学園都市に関わっている事は
　『天使の涙』などという秘匿情報扱いの代物でもあなたならご存知なのですね」

「俺がまだ木原のクソ野郎ンとこの研究所にいた時に、木原がなンかそンな石を使って実験しよォと
　してるとかなンとか言ってた覚えがあるが･･････。　もォ詳細は覚えてねェな。
　つかよく考えりゃあンな昔っから学園都市は天使に着手してやがったのか･･････胸糞悪ィ」



「木原･･････？　･･････、もしかしてですが、木原とは顔にタトゥーを刻んだ学園都市の研究員では？」



「あァ･･････、あァ！！？　なンでオマエが木原を知ってンだァ！？」


一方通行は驚愕を隠す事も忘れて間抜けな声をあげてしまった。

木原数多。


学園都市の一部で有名な『木原一族』の研究員の一人であり、『一方通行(アクセラレータ)』の能力発現に
最も大きく貢献した天才学者だ。


かの『0930』事件時、木原数多は一方通行の前に立ち塞がり、アレイスターの命によって
『猟犬部隊(ハウンドドッグ)』のリーダーとして打ち止め(ラストオーダー)の捕獲作戦を実行。
当然、一方通行はそれを食い止めようとするのだが、木原は『一方通行の「反射」が適応される前に拳を引き戻し、
戻るベクトルを反射させ、一方通行に打撃攻撃を与える』というぶっ飛び理論で一方通行を終始圧倒した。


「やはりそうでしたか。　いえ、私はその木原という研究員については全く詳しくは無いのですが、
　顔のタトゥーと、彼が抱える大規模な野望がやたら印象的だったので、もしかしたらと思って」

「オマエ･･････木原の野郎に会った事があンのか･･････！？」


一方通行とサーシャは歩く速度を緩め、かつて一方通行を極限にまで追い詰めた研究員の話題で盛り上がった。


打ち止めを取り戻すために木原との決着をつけようと彼のアジトに乗り込んだ一方通行は、
それでも『対一方通行のスペシャリスト』である木原に一方的に攻め続けられ、
最後には能力使用のための電極チョーカーのバッテリーが切れてしまう。


しかし、それによってレベル0になった一方通行は逆に木原数多を圧倒。
思考能力と超能力を失い、予測不可能な行動に出る一方通行に必勝法が適用できなくなったためだ。

最後は突如として発現した一方通行の黒翼の力によって、木原数多は夜空を流れる星となった。

そんな、二度と思い出したくないようなクソったれの野郎と、サーシャは接触したことがあるという。
『天使の涙』とサーシャ、そして木原数多の関係とは。


「一体どォいう経緯がありゃオマエみてェな魔術師と木原に接点が生まれるってンだ？」

「第四の解答ですが、私は自身の肉体に宿った原因不明の『天使の力(テレズマ)』を解消するため、
　学園都市で保有されているという『天使の涙』を入手しに学園都市へ潜入した過去があります」


一方通行はハッとした。
確かに昔、学園都市に謎の侵入者が現れたという情報を耳にしたことがある。
その情報を聞いたときはまだ木原数多は健在だったため、恐らくそれがサーシャなのだろうと一方通行は簡単に推測してみる。


「･･････夏休みが終わる頃、だったか？　いやそれよりちょっと前か･･････。
　夏休み最後の日は俺ァ頭に銃弾ぶち込まれてぶっ倒れてたからなァ」


さりげなくとんでもない発言をする一方通行にギョッとしたが、サーシャは話を進めた。

「日付はよく覚えていませんが、『御使堕し(エンゼルフォール)』後の事です。
　その日、私はロシア成教によって派遣されたオリアナ＝トムソンという魔術師と共に
　『天使の涙』が保管されているという学園都市の研究所へと向かいました」


オリアナ＝トムソン。

一方通行もこれまで色んな魔術師に出会ってきたが、そのオリアナという魔術師には
まだ出会ってないな、と軽く思い返しながら考えた。


「そこで木原と接触したのか？」

「第五の解答ですが、その通りです。　彼は私の知りえない『誰か』を器にし、
　人工的に私と同じような『天使の力』を内に秘めた体質の人間を作り出そうとしましたが、
　私とオリアナ＝トムソンでそれを阻止しました。　結局、木原という研究員を捕える事は叶わなかったのですが」

「待て、その『天使の涙』とかいう代物は人間の身体に『天使の力』をぶち込むために
　作られたモンなのか？　『天使の涙』って名前にしちゃァ思いっきり人工物じゃねェか」

「第六の解答ですが、学園都市の研究ではそのように扱われていたようです。　さすがに『天使の力』という
　認識までは持っていなかったようですが、学園都市は『天使の涙』を人工的に量産していました」

「なら本来、『天使の涙』ってのはどォいうモンなンだよ」

「第七の解答ですが、『正しく利用すれば天使との対話が可能になる』宝石です。
　失敗したら使用者は死に至るようなのですが、詳しい事は結局分かっていません」

「･･････天使と対話が出来るだァ？」


『天使の涙』。それは正しい使用方法で使用すれば天使との会話が出来るという曰くつきの石。

その組成はサファイアやルビーに似通っており、結晶構造にサファイアやルビーとは異なる何らかの組織が
織り込まれているため、全体的に透明なのだが、その中心部は黄金に輝いているという宝石だ。


そんな宝石が本当に今も存在しているのなら、『天使同盟』としては喉から手が出るほど欲しい一品なのだが･･････。


「胡散臭ェことこの上ねェな。　実際、今もその石は学園都市にあンのかよ？」

「第八の解答ですが、『天使の涙』の回収任務は打ち切りとなってしまったため、
　ロシア成教は『天使の涙』の行方については把握していません。
　私もその時は木原の計画を食い止めただけで、大した成果は残せませんでした」

「ふン･･････」

さっきサーシャは、学園都市は既に『天使の涙』を量産していたと言っていたが、
今日まで一方通行はその量産された『天使の涙』に関する情報は聞いていない。

暗部として活動していた時、もしそんな石が現在も学園都市にあるというのなら
それに関する情報や仕事が一方通行の元に転がり込んできてもおかしくはないはずだ。


「･･････第五の私見ですが、あの木原という研究員は、どこか空恐ろしい男でした･･････。
　補足説明しますと、心の奥底にどうしようもないほどの『闇』を秘めているというか･･････、
　あんな男がまだ学園都市にいるとなると、さっき約束した学園都市へのお買い物も
　少し抵抗感が生まれてしまいかねませんね･･････」

「心配すンな。　木原はもォこの世にはいねェよ」

「え？」

「俺が満点の星空の一部にしてやったからなァ」

「･･････････････････」


ポカン、とサーシャは横に並んで歩く一方通行の横顔を見つめた。
さっき一緒にまた買い物へ行くと約束してくれたこの白髪の少年が、木原という男を
星にしてしまったのだという。

あんな男を殺してしまうだなんて、あんな男に関わらなければならない事情が過去にあったなんて。
一方通行という少年は、一体学園都市ではどのような人生を送ってきたのだろうか。

サーシャはそんな一方通行に、畏怖よりまずこの少年に対する興味がさらに湧き上がるのを感じた。


「･･････第六の私見ですが、やはりあなたはまだ、私程度の器では計り知れない存在ですね」

「あァ？」

「いえ、何でもないです。　･･････あ、ここが風斬氷華のいる薬局じゃないですか？」


ARの追跡によって風斬氷華がいる薬局へと辿り着いた二人は、そのまま店内へと入っていった。


様々な人間に好かれ、それを鬱陶しそうにあしらい、しかし自分とまたいつか買い物へ連れて行ってやると
律儀な約束をしてくれ、果ては天使であるミーシャと共に過ごし、しかし木原数多という学園都市に潜んでいた
『闇』と関わらなければならない事情があった、学園都市最強の超能力者。


一方通行とは実に不思議で、近寄り難い部分もあり、それでいてどこか魅力的な一面もある男なんだな、とサーシャは漠然と思った。

Q.『天使の涙』事件が起きてたなら、サーシャは一方通行やヒューズ＝カザキリと接触してなきゃおかしくね？
　　ロシアで初対面じゃなくね？

A.このSSでの『天使の涙』事件は、サーシャとオリアナが学園都市へ潜入→一方通行や土御門、神裂やステイルと接触すること無く
　研究所に潜入する→木原数多と接触、戦闘→打ち止めを器にしようとしていた木原の実験を阻止、木原逃亡→
　結局『天使の涙』は入手できず、ワシリーサから帰還命令。

こんな感じになってます。都合良すぎですけど目をつぶっていただけたらな･･････と思ってます。


というわけで今回はここまでです。

次回は原作でいう行間？でしょうか。その頃学園都市ではみたいなのをちょこっとだけやります。

次回更新は三日以内。

では今回もお付き合いいただきありがとうございました！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【次回予告】



『だーっ。　やっぱ全ッッ然わからん。　俺にはこれは無理だわ。
　こんなん滝壺とか麦野とかにやらせりゃいいじゃねえか。　なんで俺なわけ？』
―――――――――――新生『アイテム』構成員・無能力者(レベル0)・浜面仕上




『私だって超役にも立たない浜面より滝壺さんや麦野を呼びたかったですけど、
　あの二人は連絡しても電話に出なかったんで超仕方なく浜面を
　呼んだだけです。　もしかしてデートのお誘いかもって超期待しました？』
―――――――――――新生『アイテム』構成員・大能力者(レベル4)『窒素装甲(オフェンスアーマー)』・絹旗最愛




『･･････とにかく、ミサカ達に出来る事は何もないかもってミサカはミサカは少しションボリしてみる』
―――――――――――『妹達(シスターズ)』の司令塔、検体番号二〇〇〇一号・打ち止め(ラストオーダー)




『わかりやすくアホ毛まで萎れさせちゃって。　でもミサカ達の出る幕なんか無いってのには同意かな。
　大体状況が把握出来ないし、問題の『天使同盟(アライアンス)』は･･････今どこにいるんだっけ』
―――――――――――『妹達』第三次製造計画(サードシーズン)で作られた御坂美琴のクローン・番外個体(ミサカワースト)

乙

ワシリーサの居ぬ間にサーシャにまでフラグを立てるなんて・・・恐ろしい子！
にしても風斬は薬局でナニを(ry

乙

≫261時間すげぇ

あいうえおつ

サーシャは恋愛感情ではなく純粋な興味本位で接していると思う
それと、>>259に気になる記述が
　・・・・
＞打ち止めを器にしようとしていた木原の実験を阻止


！？





長くなりましたが、>>1乙!!
　

ごめんなさい、ちょっと補足を。


Q.そもそも『天使の涙』事件って何よ？

A.PSP版『とある魔術の禁書目録』のストーリーモード、サーシャ＝クロイツェフ編のお話です。


Q.結局、一方通行はサーシャとフラグ立っちゃったの？

A.厳密には立ってません。サーシャにとって一方通行とは『何だか不思議な人』レベルです。
　あともう少し買い物してれば立ってたかもしれませんが、どっかの誰かがハッキングなんて事を
　起こしたためそれどころではなくなってしまいました。


では、失礼しました。

>>1乙～
補足なかったら天使の涙はポカーンだわｗｗｗｗｗｗ

>>264
ああ～ごめんなさい！！これじゃ木原数多が何だか変態みたいになっちゃいますね。
正しくは"打ち止めを(天使の涙の効力をぶち込む)器にしようとしていた木原の実験を阻止"、です。
木原くン、すまない

>>1乙。
なるほどゲームか。補足さんくす

木原くンの出番だぁー………と思ったら、出番終了なのか出番のフラグなのか分からないが……

木原くン貴方の事は一生忘れないよ

>>261
明るい家族計画に決まってンだろォ

なに･･･！？　　人工天使も妊娠するだと･･･

>>271
ボテ腹風斬か…股間が熱くなるな

そしてあのアへ顔である

繋がったな

何を繋げてんだよｗｗｗｗｗｗｗｗ

そして生まれたのが……あのいたずら坊やか

やっと追いついた!>>１乙!
第一位の建築力マジパネェｗｗｗｗ

1スレ目から読んできたのか？ご苦労様だったな

皆さんこんばんわ、いつも沢山の支援レスをありがとうございます。
投下しにきました。

･･････薬局は色々まずかったかｗｗそこまで深く考えてなかったからなぁ･･････

>>278
ありがとうございます、お疲れ様です！
長ったらしくてうんざりしたでしょうが、まだもうしばらくこの物語は続きます。
それでもよければどうかお付き合いください。


さて、今日は行間･･････というかオマケというか。
あんまりやんなくてもいいようなお話です。『プチあの人は今』といったところでしょうか。


それでは、いきましょう

――――――――――――――――――――――


日本時間の早朝六時頃。
学園都市の第七学区。そこのとあるカフェに浜面仕上はいた。


「なんだったんだ･･････？　一方通行のヤツ･･････」


彼がいるカフェにはパソコンが常備されており、利用客はいつでもインターネットを使用できるようになっている。
いわゆるネットカフェに似ているが、ここはネットカフェのように個室やシャワールーム、漫画雑誌などは無く、
本当にのんびりと一杯のコーヒーとネットを楽しむ客が利用するようなカフェだ。

ちなみにこのカフェは二四時間営業で、完全下校時刻後も教員などが利用出来るようになっている。


その一席で、浜面仕上は自分の持つ携帯電話のディスプレイを眉をひそめながら見つめていた。
彼の出で立ちはいかにもその辺で屯している不良Aですと言わんばかりの服装で、
パーカーの裾からはだらしなくインナーがはみ出て、チャラいズボンにはチェーンがじゃらりと付けられている。

このオシャレなカフェでは浜面の服装はひどく浮いていたが本人もそれは自覚しているようで、
携帯を閉じた後も彼は周りを見ながら居づらそうな様子を見せていた。

だが実際、浜面以外の利用客の中でそんな浮きまくった彼を異端視するような人は一人も存在しなかった。
皆、例のハッキング事件のに注目しており、パソコンの操作に夢中になっている。


浜面は本来このような店にはまず赴くことがない。そして今回も浜面は自分の意志で
ここに来たわけではないのだ。ではなぜ彼がこのカフェにいるのかというと、


「さっきから超落ち着きがないですね。　別に誰も超キモい浜面の事なんか見てませんから、
　あなたも超少しは情報収集に励んでくださいよ」

「超少しってどっちだよ･･････、つかキモい言うな。　なあ、もういい加減切り上げねえ？
　これ以上探り入れたって無駄だとおもうんだけどなぁ俺。　それに眠いし･･････」

「これだから超浜面はいつまで経っても村人Aなんですよ。　今回のこのハッキング事件、
　どう考えたって学園都市が絡んでるに超決まってます」


と、浜面の隣の席で超難しい顔をしながら手元のキーボードを超忙しなく操作しているこの超茶髪の少女は
絹旗最愛という、浜面と同じ『アイテム』の構成員だ。


『アイテム』の中で唯一の中学生――自己申告――にして最年少の構成員。
彼女は浜面とは違い能力者で、レベル4の『窒素装甲(オフェンスアーマー)』という能力を持っている。
窒素を自在に操り、それを用いて強力な攻撃力や鉄壁の防御力を生み出せるのだが面倒なので詳細は超割愛。

「超端折らないでください」

「は？」

「超独り言です。　とにかく浜面ももっと超意欲的に情報収集に取り組んでください」


浜面は早朝、ちょうど『衛星』のデータベースが何者かに掌握された事が公になった頃にに絹旗から連絡を受け、
嫌々ながらもこのカフェに足を運んだのだ。

理由は勿論、このハッキング事件の詳細を追うためなのだが、浜面はそういうハッキングとか
パソコンがどうとかは得意な分野ではなく、適当に情報収集をするふりをしてエロサイト巡りなどを
していた。　が、それを絹旗に見つかり超粛清された後は渋々ハッキングの情報収集を行っている。


しかし、


「だーっ。　やっぱ全ッッ然わからん。　俺にはこれは無理だわ。
　こんなん滝壺とか麦野とかにやらせりゃいいじゃねえか。　なんで俺なわけ？」

「私だって超役にも立たない浜面より滝壺さんや麦野を呼びたかったですけど、
　あの二人は連絡しても電話に出なかったんで超仕方なく浜面を
　呼んだだけです。　もしかしてデートのお誘いかもって超期待しました？」

「してねーよ！！　つか俺にゃ滝壺がいることくらい知ってんだろうがお前･･････」

「滝壺さんも、どうしてこんなのを超選んだのだか。　弱みでも超浜面に握られましたか」

「無理やり人をここまで引きずっといてその言い草はねえだろコラ･･････」


こめかみに青筋をビキビキと浮かべる浜面を無視して、絹旗は尚もハッキング事件の詳細を追う。


「しっかし、この『天使同盟(アライアンス)』というのは何なんでしょうか。
　やはりネットでも噂されているとおり、どっかの超組織団体とか･･････？」

「んなマフィア映画とかじゃあるまいし･･････秘密結社とか？　そんなのあるわけねえだろ」

「学園都市の超暗部に所属してた浜面が言えるセリフじゃないですよねそれ」


それもそうだなぁ･･････、と浜面は相変わらず眠たそうに目を擦り、
そのまま机の上に突っ伏してしまう。


「天使･･････ねえ」


浜面仕上は知っている。
一方通行たちが、かの第三次世界大戦時に出現した大天使、ミーシャ＝クロイツェフと共に行動していると。

浜面仕上は知っている。
一方通行がミーシャだけでなくホログラム映像のような少女、風斬氷華と、レベル5第二位の垣根帝督。
そしてあの得体の知れない『ドラコ』と名乗る『少女』と共に過ごしている事を。


（････････････『天使同盟』）


そのキーワードと一方通行達を繋げてもいいのだろうか。
浜面は熟考するも、答えに辿り着くことは出来なかった。

そんな浜面をギロッと睨み、絹旗は気になっていることを尋ねた。


「ところで浜面、さっきの超電話は誰からですか？」

「んー･･････？　ああ、何か一方通行からだった」

「･･････一方通行？」

「第一位だよ。　確か『グループ』の。　あ、今はもう違うんだっけ？
　よく覚えてねえな･･････。　･･････、どうした？」


視線だけ動かして隣の絹旗を見てみると、彼女はどこか複雑そうな表情を浮かべていた。
さっきまで情報収集に躍起になっていたのだが、心なしか雰囲気が暗くなっている。


「･･････第一位、ですか」

「何でだよ？　一方通行のヤツがどうかしたのか？」

「･･････、･･････"なンで浜面がそンなヤツと超関わってンですか"？」

「･･････？　なんでって･･････別に、なんか成り行きで」

「そォですか」

「？」

素っ気なく返事をした絹旗は再びキーボードを叩き情報収集を再開した。
浜面は頭に『？』を何個か浮かばせる。彼女と一方通行の間に何かあったのだろうか？
一瞬、絹旗の口調がおかしくなった気がするが･･････。

だが浜面はそれ以上詮索する事はしなかった。


ガラス張りの壁から外を眺めると、既に学校へ登校する学生たちの姿がちらほらと見え始めていた。
女子学生が何やら談笑している、恐らく件のハッキング事件についての話をしているのだろう。
もうすぐ『一端覧祭』が開催されるというのに、今の学生達の間で流行りの話題はなんとも暗い話題だった。


「････････････････････････」


何なんだ、と浜面は漠然と思う。
確かに今回のハッキング事件は非常に大きな事件だ。全世界の諜報機関、そして宇宙空間に浮かぶ
全ての『衛星』が何者かの手によって掌握されてしまったのだ、浜面でも事の重大さは理解できる。

しかしその他にも大きな事件が起きていないわけではない。
先の第三次世界大戦だって、終結からまだ一ヶ月も経っていないというのに、もうあまり世間の話題には
なっていなかった。

今は皆、ハッキング事件の話題で持ちきりだ。浜面も最初に知ったときは多少驚いたが、
しかしここまで大勢の人間を虜にしてしまうような事件だろうか？

（･･････一方通行のあの反応。　やっぱ『天使同盟』について何か知ってんのか･･････？）


否、恐らく皆の興味はハッキング事件そのものよりも、あのエラーメッセージに表示される
『天使同盟』に向いているのだろう。
さっき一方通行にも『天使同盟』の事を伝えたら急に黙りこんでしまっていたような気がする。
あの第一位ですらも興味を持つような存在なのだろうか。それとも『天使同盟』とは、彼に深く関わるキーワードなのか。


何かおかしい。何がおかしいのか分からないが、それでもどこか霧がかった違和感が浜面の頭をぐるぐると回る。
隣にいる絹旗もそうなのだろうか。
この違和感は所謂、嵐の前の静けさに似ているなと思った。


そんな事をボーッと考えていると、突然店内の天井にぶら下がっているマイクから放送の報せを伝える音が流れた。


「ん？」

「？」

二人は同時に声を上げ、それぞれ別の方向へ視線を向けた。
絹旗はガラス張りの窓から空を見上げ、浜面はカフェの天井にある店内放送用のマイクを見上げる。

絹旗が見上げている空には、学園都市に浮かぶ『飛行船』があった。
その腹には大型のテレビ画面が搭載されており、天気予報などを街中に報せるための太陽光発電で駆動している飛行船。
つまりは空飛ぶ街頭テレビである。


しかしその飛行船が流しているのは天気予報ではなく、学園都市の『緊急伝達事項』だった。
店内にも飛行船と全く同じ放送が流れている。


緊急伝達事項の放送はこんな内容だった。

『学園都市の全学区の生徒、及び職員にお知らせします。　只今より、学園都市第一九学区への立ち入りを
　禁止すると共に、第一九学区に全面的な封鎖工事を行います。
　第四、第六、第一四、第一九学区にいる生徒、教員、研究員等の方々は直ちに他の学区へ移動するようお願い申し上げます。
　繰り返し、お伝え申し上げます。　只今より、学園都市第一九学区への立ち入りを････････････』

飛行船の大画面に学園都市のマップが表示される。その第一九学区に当たるエリアが赤く点滅していた。
隣接する学区の境界線に×マークがどんどん現れる。既に封鎖工事が始まっているのだろうか。


「･･････な、なんだよ急に。　第一九学区の立ち入りが禁止？
　あそこって取り立てて目立ったもんは無かったよな？」

「第一九学区は学園都市で最も寂れた学区ですね。　街並みも他と比べて超前時代的ですし、
　蒸気機関や真空管とかを調べる超研究機関がちょこっとだけあったような気がします。
　それと、･･････八月の超上旬頃に起きた『乱雑開放(ポルターガイスト)』事件とか？」

「じゃあまたその『乱雑開放』事件が起きたとか？」

「『乱雑開放』事件で第一九学区の封鎖は超行われてませんよ。
　大体、学区の封鎖なんて超よほどの事が起きない限りあり得ないと思いますが」

「じゃ、じゃあよほどの事が起きたって事かよ･･････？」

「今のところはそんな様子は超ありませんし、･･････"これから起こる"んじゃないんですか？
　私には全く超予想もつきませんけど」


嫌な予感がする。

胸騒ぎがする。


浜面仕上はなぜか、この嫌な予感と『天使同盟』という謎のキーワードが繋がっている気がした。

――――――――――――――――――――――


同時刻。
第七学区のファミリーサイドのマンションの一室。


『妹達(シスターズ)』の司令塔、製造番号二〇〇〇一号『打ち止め(ラストオーダー)』と
その第三次製造計画(サードシーズン)によって生まれた『番外個体(ミサカワースト)』は、
学園都市に浮かぶ飛行船から第一九学区の封鎖を報せる放送を聞いていた。


「･･････学区の封鎖って、何があったのかなってミサカはミサカは首を傾げてみる」


現在、この部屋には打ち止めと番外個体しか居ない。
部屋の主である黄泉川愛穂は昨日から例のハッキング事件の調査で警備員(アンチスキル)として呼ばれており、
芳川桔梗は珍しく朝の散歩のために外出していた。黄泉川に『たまには外で運動でもしろ』と叱咤されたためだ。


飛行船の放送を聞いてうーむ？と唸る打ち止めに番外個体は尋ねた。

「なんか派手な祭事でもやるんじゃないかな？　ひひっ、血生臭い事ならミサカも参加したいとこだったけど、
　どうやら一歩出遅れちゃたみたいだね。　ミサカネットワークで何が起きてるのか調べたらどう？」

「さっきから通信してるんだけど、原因不明の電波障害で連絡がとれないの、ってミサカはミサカは困り顔を浮かべてみたり。
　･･････でもなんとなく、予想がつくかなーってミサカはミサカは『あの人』の顔を思い浮かべてみる」

「第一位が第一九学区の封鎖に関わってるってこと？」

「それもあるし、今話題に取り上げられてるハッキング事件。　あれのエラーメッセージは
　とても無視できるものじゃないかもってミサカはミサカは胸騒ぎを感じてみる」

「･･････まあ、『天使同盟』だしねえ」


打ち止めと番外個体は『天使同盟』の存在を知っている。
彼らが最初のイギリス訪問から帰国してきたときに全員でここを訪れており、一緒に食卓を囲んだのだ。
その時に『天使同盟』という組織を一方通行が結成したという話を聞いた。無論、黄泉川も芳川も同じだ。


「朝っぱらから騒がしいと思ったら、今度はこれだもん。
　ハッキング事件の騒ぎといい、少しはミサカにも安息の時間ってのが欲しいね」

「番外個体は安息とかそういうのあまり好まないと思ってたけどってミサカはミサカは疑問に思ってみたり」

「あひゃひゃ、まあね」

そして打ち止めは一方通行からのイギリス土産で貰ったウサ耳バンドを頭に乗せ、ぴょこぴょこと耳を揺らしながら
再びうんうんと唸り始めた。再度ミサカネットワークとの通信を試みているようだ。


「第一位に電話して状況とか聞いたりしないの？」

「うーん･･････。　多分、ミサカがあの人に電話して聞いても、何も教えてくれないと思うの
　ってミサカはミサカは予想してみる。　あの人、こういう事はすぐ隠そうとするから」

「まあ、あんなのでもお人好しだしねえ。　なんたってミサカみたいなクローンでも
　その身を挺して守ってくれるような馬鹿なんだから」


番外個体は表情をグシャっと悪意一色に染めて一方通行を嘲笑う。
そんな彼女を見て打ち止めはムスーっと頬を膨らませながらも、番外個体に言った。


「･･････とにかく、ミサカ達に出来る事は何もないかもってミサカはミサカは少しションボリしてみる」

「わかりやすくアホ毛まで萎れさせちゃって。　でもミサカ達の出る幕なんか無いってのには同意かな。
　大体状況が把握出来ないし、問題の『天使同盟』は･･････今どこにいるんだっけ」