1>>12011/03/04(金) 22:42:56.26zdjIhP3b0 (1/2)

この物語は「とある魔術の禁書目録」及び「とある科学の超電磁砲」の二次創作SSです。
原作崩壊・時系列無視・厨二等含む駄文でございますが、宜しくお願いします。


以下、大まかな設定。

・メインは天草式十字凄教の……香焼、五和、浦上、そして稀に神裂。

・基本ほのぼの。キャラの性格は本編より丸い。   (例)ステイルが14歳相応。神裂が18歳相応。

・ラブラブ、シリアス、エロエロは未定。

・大きく二分して、「学園都市編」と「英国編」。

・組織設定や社会背景等はやたらリアル思考……だけど駄文。

・アンケートやリクエスト、偶に安価の御協力お願いします。


矛盾点や歪んだ点が多々出てくると思いますが、『魔術師(及び魔女)の仕業かっ!』と流して下さい。
では素人の駄文ですが、何卒、宜しくお願いします。 m(_ _)m


2VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/04(金) 22:46:43.21rdj/OlvAO (1/1)

香焼SSって最近見なかったな


3VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/04(金) 23:42:16.479udFVLZbo (1/1)

よっしゃ来た!
本編の方は休みなの?


4>>12011/03/04(金) 23:50:48.14zdjIhP3b0 (2/2)

今日は主な説明と今後の展開についてのアンケート・リクエストを取ります。

>>3
……本編? 何の事かワカラナイヨッ!
ってのは嘘で、そっちは書き溜め中。因みにこっちは、設定似てるけどアッチと無関係って事で。


5>>12011/03/05(土) 00:23:41.58aCI9TYL10 (1/14)

<勝手な設定>

・天草式の若手数名は偽戸籍(ダミーID)で学園都市の学校・生徒の中へ紛れ込んでいる。所謂、潜入任務である。
 コレは英国清教の命であり、また、アレイスター(あちら)側の意向。
 表向き――無論、一般的には裏である――英国側としては学園都市の動向を探るスパイ。
 しかし裏向きには――若手には悪いが――……アレイスター監視下の人質でもあった。

・神裂は、土御門からの呼び出し、禁書目録の『監視』という名のお世話(加え、上条当麻に会いに)、教徒の活動視察で学園都市に来る。
 ステイルも神裂と類似行動。ただしかなり暇人。何故か香焼と仲良し(本人は否定)。



<主な登場人物>

・香焼……主に狂言回し的存在でメインキャラ。出番が一番多いと思うよ。アニメでは『法の書』編に少し出ただけ……残念。
      中学1年。得物(武器)は短刀や鋼糸(ワイヤー)、稀に都市の武器。ショタキャラ。
      呼称は……香焼、コウちゃん等。

      天草式十字凄教の一教徒で特に役職は無し。潜入任務での所属学校は「とある学園都市理事・役員養成学校中等部」。
      性格は真面目で苦労人。強くはないが、弱くもない見た目は普通の少年。因みに『カミやん病:Lv.1~4』。
      学徒(若衆)の中でも一番難しい学校と一番良いマンションを割り振られた。その為、馬鹿姉共の溜まり場に……
      冷静だけど熱くなる時は『カミやん病発作』の如く説教するかも。(以下追々付け足していきます)


・五和……自称、香焼の姉その一(実は、姉その二)。一番キャラ崩壊が酷い人。ごめんなさい。『上条さんLOVE!』は相変わらず。
      高校2年。得物は海軍用船上槍(フリウリスピア)や鋼糸、稀に都市の武器。おっぱい。
      呼称は……五和、姉ちゃん、お姉、大精霊さん。

      天草式十字凄教の一教徒で若衆筆頭。潜入任務での所属学校は「『学舎の園』内のとある御嬢様高校(常盤台では無い)」。
      性格は二面性で他人には控えめで奥手……だが親しい者にはかなりフランク(ウザい)。教徒の中で最も潜在実力がある。
      何故か浦上と一緒に『姉』と称して香焼のマンションに入り浸る。ブラコンでは無いが余計な御節介やき。
      真面目な時はとっても頼りになる。(以下追々付け足していきます)


・浦上……自称、香焼の姉その三。一番キャラ付け難しい人。原作設定ほぼ皆無。実はアニメ版で香焼より出番多い。やったね!
      中学3年。得物はドレスソード(フェンシングのエペ)や鋼糸、稀に都市の武器。ポニテのサイハイ娘。
      呼称は……浦上、ウラ、お姉ちゃん。

      天草式十字凄教の一教徒で特に役職は無し。潜入任務での所属学校は「『学舎の園』内のとある御嬢様中学(常盤台では無い)」。
      性格は御転婆、しかし偶に黒い。強くはないが弱くもない、実力は香焼とドッコイの姉分。姉弟の中で一番の策士。
      五和と共に『姉』と称して香焼のマンションに入り浸る。周りが熱くなっている時に冷静になれるキレ者。
      意外と一番お姉ちゃんかもしれない。(以下追々付け足していきます)


・神裂火織……自称、香焼の姉その一。4人の中では一番出番が少ない人。ごめんねーちん! 『上条当麻・・・///』は、そのまま。
        18歳。得物は七天七刀や鋼糸。おっぱい聖人。魔法名「救われぬ者に救いの手を(Salvere000)」。
        呼称は……神裂、女教皇(プリエステス)様、姉さま、カオリ姉さん、堕天使さん。

        天草式十字凄教の女教皇。所属学校は無いが、禁書目録の『監視』や上条当麻への『礼』の為、よく学園都市に足を運ぶ。
        性格はかなり義理堅く、生真面目。だけどうっかりさんで何処か抜けている。とても強い。でも姉妹喧嘩はガラスハート。
        学園都市へ来る際、香焼のアパートに顔を出す。年の近い香焼、五和、浦上には『一、姉』として接して貰いたい願望有り。
        年相応が目立つかもしれない。因みに固法美偉、麦野沈利は年が近いので何故か仲良し。(以下追々付け足していきます)



<その他>

・上条さん、一方通行さん、美琴さん、浜面さん、白井さん等(ヒーローズ)……出番少ないです。だけど、リクエストがあれば考えます。

・実は、あわきんがそこまでショタコンじゃない。一通さんがセロリじゃない。
 麦野が原作に比べてかなり優しい。木山テンテーと芳川さんが同じ通信制大学の教育学部所属。
 テレスティーナが那由他と、ぎこちないが和解済み。垣根は……考え中。黒妻さんも……考え中。

・某所で書いたSSを再編したりもします。御了承を。


とりあえず、一旦、此処まで。


6VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/05(土) 00:25:56.66ALaZmWcDO (1/2)

マジで別個にしたのかよww

とりあえず期待!


7>>12011/03/05(土) 00:36:55.57aCI9TYL10 (2/14)

明日からスタート予定です。とりあえず質問アンケ。そしてリクエスト。



①香焼の一人称……『オレ』or『僕』、どっちがいい?

②出して欲しいキャラは?



協力よろしくですっ!


あと簡単に小話だけ投下させてもらって、今日は終わります。


8VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/05(土) 01:22:02.88GT5n5iMAO (1/1)

>>1
乙。こっちには絹旗は出ないんかね。

一人称は使い分けを希望。
ステイルと教会組(ステアン)も頼むぜ。何だかんだで天草の年少イジられ役が香焼なら、教会組はステイルだと思うんだ。


9第1話――香焼「お前ら出てけぇっ!!」2011/03/05(土) 01:35:44.37aCI9TYL10 (3/14)

 ―――とある日、PM06:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・



空が藍色に染まった頃。自分――天草式十字凄教の学生信徒……香焼は、無人バスの中にいた。


バスアナウンス『次は第1学区学生住宅街一丁目、学生住宅街一丁目ー。御降りのお客様は―――』


ボタンを押す。


香焼「はぁ……疲れたー」ハァ・・・


学園都市の未来を担う理事候補生の養成学校で、朝8時から夕方6時まで缶詰状態。
自分が通う学校は、この街で珍しい文系メインの私立学校だ。

無論、理事になりたいが為に通っている訳ではない。『潜入任務』という名目である。
ただし折角、学費を英国清教から負担して貰っているのだからダラダラと過ごすのは勿体無い。
得られる知識は得ておこう。きっと自分の将来に役立つ。

それが自分の決め事だった。


香焼「でも、やっぱ理事校レベル高いっすね。放課後自習強制なんて……デフォで能力開発免除は助かるっすけど……ん?」チラッ


玄関前に都市製のバイク(新型ビッグスクーター)が置いてある事に気付く。
此処の住民であんな単車に乗っている人間はいない筈だ。第一、登録ステッカーを貼って無い。


香焼「……まさかっ!!?」ダッ!


急いでエレベーターに跳び乗り、7階のボタンを押す。そして一番奥の部屋へとダッシュ。


香焼「……やっぱり、鍵開いてる……という事は」ゲッ・・・


嫌な予感全開。静かにドアを開けてみた。靴が二人分ある。
そして中から喧しい声が……


五和「―――……そしたらノモ(野母崎)さんがさぁ! 立場忘れて『建宮。腹を割って話そう!』って!」ニャハハッ!

浦上「あはは! 建宮さん、今度は何しでかしたのさー!」ケラケラ!

香焼「」

五和「マジ爆笑だよねー。って……あ、コウちゃん。おかえりー」

浦上「おかえりー」

香焼「……お前ら」ジトー・・・


テレビを付けたまま談話。人の家の菓子とジュースを勝手に物色。おまけにボロボロ食べカスを落としたまま。

同じ天草式の学生信徒――五和と浦上が、『我物顔』で『堂々』と自分の部屋に居た。
しかも女子とは思えない恰好で寝転んでいる。

男子(香焼)が居るというのに、制服を脱ぎっ放し。Yシャツの第3ボタンまでオープン。
スカートの中など気にせず胡坐掻いて座っている五和。捲れるのを気にせずソファーに寝そべる浦上。


香焼「勝手に来るなって言ってるだろ!」ギロッ!

五和「そんなに怒んないでよ。怖いコウちゃんなんて、姉ちゃん嫌いだぞー」キャー

浦上「まぁまぁ。私達の仲でしょ。ね!」ニコッ


駄目だ。言葉が通じない。


10第1話――香焼「お前ら出てけぇっ!!」2011/03/05(土) 02:06:41.52aCI9TYL10 (4/14)

やっと家に帰ったというのに頭が痛くなる。
溜息をつきながら自分の荷物を自室に片付けに行った後、二人の制服をハンガーに掛けてやった。


五和「コウちゃんやっさしー! 私達の教育の賜物だね!」b"!

香焼「五月蠅い。というかお前らどうやって入ったんだよ」ジトー・・・

浦上「決まってるじゃん。五和のピッキングだよ」サラッ・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?


五和「此処のマンション、電子ロックも付いた二重鍵だったから大変なのよ。香焼、もっと簡素にしなさいって」サラッ・・・

浦上「流石長崎のジ○=バレ●タイ●! お姉、恰好良い!」ヨッ!

五和「あはは。褒めるでない。何も出ないぞー」ワッハッハッ!


人それを、不法侵入という。


五和・浦上「「誰だオマエは!」」ビシッ!

香焼「喧しい。今から警察に電話するから黙ってろ」PiPiPi・・・

浦上「ちょ、身内から恥出ちゃうのよ! いいの?!」アタフタ・・・

香焼「まことに遺憾っす……残念だ」ハァ・・・

五和「……同志を売るつもりなの!! 姉ちゃん、そんな風に育てた覚えないとよ!」メッ!


自分も育てられた覚えは有りません。


香焼「そうだ。警察より上条さんに電話した方がいいかも」ア・・・

五和「すんませんでしたああぁっ!!」ズサァッ!!


見事なまでの土下座。浦上が見惚れて拍手をする程。
ヤレヤレと頭を掻き、とりあえず恰好を正すよう指摘した。それから散らかした部屋を片付けさせる。

数分後・・・・・完璧ではないが、ある程度部屋が元の形に戻った。


五和「んもー……コウちゃん、サディストなんだからー」ハァ

香焼「五月蠅い。対馬さんより優しいだろ」

浦上「あー……まぁね」ハハッ・・・


天草怖い人ランキング第1位……対馬姐さん。この二人も普段から頭が上がらない。
因みに優しい人ランキング第1位は諫早だ。

さておき、時計を見る。


香焼「もう7時なるっすよ。寮に帰らなくて良いんすか?」

浦上「アタシの寮、規則緩いもん。ルームメイトにも『弟の家行ってくる』って連絡したし」ヘーン

五和「私はアパート住みです!」ドヤッ!

香焼「ああ言えば、こう言う……」ハァ・・・


誰か助けて下さい。男の人がいいです。女性じゃ無理だコレ。


11第1話――香焼「お前ら出てけぇっ!!」2011/03/05(土) 02:44:07.57aCI9TYL10 (5/14)

余談だが、この街で天草式の移動手段は大きく分けて二つある。

一つは一般人と同様の移動。至って普通に歩道を歩いたり、公共機関を乗り継ぎする。
もう一つは魔術的移動。魔術的といえば大袈裟かもしれないが、ビルの屋上や地下道等、普通の人間がいない所を駆ける。

今回、二人は前者(バイク)で来たようだ。


香焼「……兎に角、遅くなり過ぎない内に帰れよ」テクテク・・・

五和「まぁまぁ。夕飯作ってあげるからさ。ね!」ニコッ

香焼「む……」ピタッ・・・

浦上「よっし! お姉の飯だ!」ヤッター!


満面の笑みを浮かべる馬鹿1号。腹立たしいが……大目に見てやる。

確かに、五和の料理は上手い。
食べたモノの十中八九がプロ級と言えるだろう。偶に変な創作料理をしなければだが。


浦上「じゃあアタシはお風呂淹れてくるねー」パタパタ

五和「任せたー。コウちゃん、冷蔵庫の中勝手に使うよー」ガチャッ

香焼「うん……ん?」アレ?


ちょっと待った。


香焼「……浦上」マテ・・・

浦上「はいはい」クルッ

香焼「何故、風呂を沸かす?」

浦上「何故って……シャワーでいいの?」ヘ?


そういう問題では無い。


香焼「……泊る気?」タラー・・・

浦上「さっきそう言ったじゃん」サラッ

香焼「言って無いっす」ジトー・・・

浦上「えー? お姉ぇ、言ったよねぇ」チラッ

五和「ルームメイトに『弟の家行ってくる』って伝えたんでしょー」カチカチッ・・・


それは『遊びに行ってくる』という意味じゃなかったのか?


浦上「だって明日土曜だし、問題ナッシングじゃない?」b"!

香焼「自分は土曜も学校だっつの」ハァ・・・

五和「うわぁ……ゆとり無いね……」アハハ・・・


理事校嘗めんな。殆ど自分の時間作れないんだぞ……だから家でくらい、一人で休ませてくれ。


五和「何でそんな学校選んだのよー。コウちゃんお馬鹿だねぇ」ハハハ

浦上「学園都市なのよ? 遊べる所選びなさいって。柵川中とか候補あったじゃない」

香焼「ッ!! テメェら……誰の所為で自分が理事校行くハメになったと思ってんだ道化姉妹がっ!!」ガアアァッ!

五和・浦上「「あるぇー?」」ポカーン・・・(・3・)??(・3・)ゞ


自分が理事校へ行く事になった由縁はコイツらの所為なのだが……それはまた別の機会にお話しよう。


12第1話――香焼「お前ら出てけぇっ!!」2011/03/05(土) 03:15:09.98aCI9TYL10 (6/14)

香焼「兎に角、泊るのは駄目!」

五和「えー……ご飯作っちゃってるよー」ブーブー・・・

浦上「良いじゃん別にー。邪魔する訳でもないし」

香焼「前泊めた時、お前ら朝まで騒いでたろ」ジトー・・・

五和・浦上「「……ヒューヒュー」」3~♪


その時も無理矢理この家に泊った。
居間に布団を敷いて、缶チューハイ山ほど空けて……次の日の夕方まで寝てた。
二日酔いの世話をするのは自分だ、勘弁してくれ。この呑んだ暮れ未成年共。


浦上「ま、まぁ今回お酒無いし……静かに『モンバス(※)』してますヨ」アハハ・・・

五和「そ、そうね」アハハ・・・

香焼「……マジで騒いだら教皇代理と対馬さんに言うからな」ギロッ・・・


苦笑しながら首を縦に振る。

※モンバスとは……『モンスターバスター・ポータブル5G』の略称である。
学園都市の老若男女問わず、大人気のゲームソフト。自分が好きな『能力』を選んで、架空のモンスターを討伐していく狩りゲーだ。
通信で対戦・共同プレイが可能な為、一種のコミュニケーションツールとして活用される事も屡(しばしば)。

因みにこの馬鹿二人、最近では女教皇様まで巻き込んで狩りをしているらしい。阿呆共。
さておき、台所を見遣ると五和が既に献立を決めていた。


五和「えっと……豚の冷しゃぶサラダと、ナメコのお味噌汁でいいかなぁ」

浦上「もう一品!」オネガーイ!


図々しくも風呂場から叫ぶ馬鹿2号。


五和「うーん……コウちゃん、他に何か材料ある?」

香焼「野菜室に色々無い?」

五和「ん……ホウレンソウ……白和えに……ジャガイモは簡単にジャガバタか……」


よくパッと思いつく。料理の才能だけは認めてやってもいいだろう。。


五和「……OK。とりあえず準備するわ。ウラー。お風呂終わったら布団準備しといてー」

浦上「あいよー」


無駄に洗練された無駄なコンビネーション。


五和「コウちゃんも宿題あるんならやっちゃっていいよ。出来たら呼ぶから」

香焼「あ、うん……」


真面目にしてれば清楚な少女なのに……勿体無い奴。
まぁ上条さん(好きな人)の前ではちゃんと猫被ってるし、本人的には問題無いのかな、と苦笑した。


13第1話――香焼「お前ら出てけぇっ!!」2011/03/05(土) 03:45:37.16aCI9TYL10 (7/14)

 ―――とある日、PM07:45、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・



香焼・浦上「「ごちそうさまでした」」ペコッ

五和「はい、お粗末さま」ペコッ


先程とは一転して、黙々と夕食を終える。大体20分くらいで食事を終えただろう。

天草式にとっては食事も鍛錬の一つである為、盛大に騒ぎながら飯を喰らう事など滅多にない。
ただしコレでも簡略化している方である。
この家では成るべく『オフ』の生活を送る。この3人(加え1名)で勝手にそう決めていた。


五和「さ、てと……食器洗っちゃお。ドッチかお風呂先入っちゃって」

香焼「自分は最後で良いっすよ。レポート終えてから入るから」

浦上「……」ジトー・・・


何やら変な目で自分を見てくる浦上。何事だ。


浦上「まさか……アタシ達の残り湯を……」ハッ!?

香焼「殴っていい?」ニコッ

五和「だ、駄目だよコウちゃん……いくら思春期真っ盛りとはいえ、姉ちゃん達をそういう対象に見ちゃ……」ドキッ!

香焼「歯ぁ食い縛れお前ら」ニコッ・・・


いつも順番なんて気にしてないだろうが。
この被害妄想モードに入った馬鹿二人に、どんな攻撃的な言葉を向けても、暴走は収まらない。


浦上「も、もしかして……私達が入っている途中に、侵入してきたりして……」キャー!

五和「た、確かに、昔は一緒にお風呂入って上げてたけど……もう、コウちゃん……良い年だし……」キャー!

香焼「何年前の話だ馬鹿女郎」ハァ・・・

浦上「『五和……ごめん。もう抑えられないっす!』ってな感じでえええぇー! きゃああぁー!」"レ(>∀<)ノシ”ベシベシッ!

五和「だ、駄目っ!! 私には心に決めた人がいるの! それに……間違ってるわ!! 姉と弟なのよ!!」(っ>ω≪)J|”キャー!

香焼「……勝手に言ってろ」テクテク・・・


トランス状態の二人を無視し、自室へ戻ろうと―――


 ピンポーン・・・・・


―――した瞬間、チャイムが鳴った。馬鹿二人が喧し過ぎて苦情が来たか?


香焼「はい、ドチラさまで?」ガチャッ・・・


居間にあるインターフォンモニターは使わない。後ろに失礼な身内が映ってしまう。
直接玄関に向かって、チェーンだけ掛けてあるドアを開いた。そこに居たのは……


神裂「こんばんわ」ニコッ


……一番偉いお姉さんだった。


14第1話――香焼「お前ら出てけぇっ!!」2011/03/05(土) 04:15:42.83aCI9TYL10 (8/14)

香焼「ぷ、女教皇様!?」ドキッ!

神裂「近くまで寄ったものですから、何をしているかと」


長い髪をポニーテールに括り、左右非対称のジーンズとデニムジャケットを着た奇抜な恰好。
更に腰にウエスタンベルト。そこに長刀(七天七刀)を携えて現れたのは、我らが天草式の女教皇様だ。
今日は、まるで似合わないスーパーのエコバックを持ち歩いてらっしゃる。


香焼「えっと……」タラー・・・

神裂「何か都合が悪かったですか?」フム?

香焼「い、いえ……ただ一報頂ければ、もう少し片付けておけたんすけど」アハハ・・・

神裂「ふふっ。そんなに気を使わなくても良いですよ」ニコッ


眩しい笑み。
気を使う使わないの問題じゃ無くて、部屋の中に『爆弾』が居るから入れたくないのだが。

ところがどっこい、まさかの発言をなさった。


神裂「五和から連絡を受けまして、是非遊びに来いと」

香焼「」

神裂「香焼、上がってもいいですか?」

香焼「」コクコク・・・


唖然と頷く。
女教皇様は『お邪魔します』と何処ぞの馬鹿共とは違い、丁寧に挨拶して部屋に上がられた。
荷物を受け取ろうとした際、女教皇様が『そうだ』と口を開いた。


神裂「香焼、夕食は済ませましたか?」キョロッ・・・

香焼「え……あ、はい」テクテク・・・

神裂「そう、丁度良かった……はい、御土産です」ゴソゴソ・・・


エコバックの中からゴトリと……メロンが飛び出してきた。
何故に、バックの中に直メロン?


神裂「貰い物です。土御門から渡されました」

香焼「そ、そうなんすか……」

神裂「3人で分けて下さい……ん? 五和と浦上は居間で何をやっているのですか?」キョトン・・・

香焼「い"っ……」ギクッ・・・


居間で身体をくねらせている阿呆二人(トランス状態)に気付いてしまったらしい……非常に拙い。
女教皇様は何の疑いも無く、二人に近づいて行った。


神裂「二人とも、何を―――」


浦上「『五和……いつも堂々とこんな恰好で……ホントは誘ってたんだろ、この大精霊さんめっ!』ってかぁオイ!」キャー!

五和「ち、違うの! この恰好は魔術的な意味合いで、その……駄目っ! 私達血は繋がって無くても家族なのよ!!」キャー!


神裂「―――」ボトッ・・・


手に持った長刀を落とした。そりゃ落としたくもなる……


15第1話――香焼「お前ら出てけぇっ!!」2011/03/05(土) 04:49:19.40aCI9TYL10 (9/14)

五和「あ、いや! そんな強引に……って、あれれ?」タラー・・・

浦上「『ホントはこうされたかったんだろ……なぁ』……ん?」タラー・・・

神裂「……こんばんわ」ゴゴゴゴ・・・


フリーズ姉妹。


五和「こ、ここ、これは、これは……か、カオリ御姉様……ご機嫌麗しゅう」アハハハ・・・

浦上「お、お早いお着きで……お荷物、御持ち、おいたしましょうか」ハハッ・・・

神裂「……正座」ジロッ・・・

五和・浦上「「ごめんなさいいぃっ!!」」ウギャアアッ!


ざまぁ見ろ。

それから暫く二人は女教皇様にしぼられていた。説教モードの女教皇様はかなり面倒臭い。
誰かが止めないと話をやめないのである。

時計の針が9時に近づいた所で、流石に止めに入る事にした。


神裂「―――……総じて悪乗りが過ぎます。香焼の歳を考えなさい。まだ中学1年なのですよ? 情操的にも――」

五和・浦上「「」」チーン・・・

香焼「あのー……女教皇様」コホンッ

神裂「――……はい。何でしょう?」チラッ

香焼「二人も懲りてますし、もう9時です。そろそろ」ン・・・

神裂「もうそんな時間でしたか……つい長くなってしまいましたね」フム・・・

五和・浦上((香焼ありがとおおぉっ!!))イエッスッ!


半ベソ笑顔の二人。良い薬だ。
最後にと女教皇様が謝罪を促し、お馬鹿騒動は終了。まったく疲れる話だ。


五和「ふぃ……足痺れた……」クラッ・・・

浦上「もう布団敷いて良い?」ハァ・・・

香焼「女教皇様がメロン持ってきてくれたっすよ。食べてから布団敷け」ホラッ

五和「女教皇様のベリーメロン?」ジー・・・


オマエは、何を言っているのだ。


神裂「五和……もう少し、お話が必要ですか?」┣¨┣¨┣¨┣¨・・・

五和「あ、あははは。じょ、ジョークですよ。いっつぁじょーく」タラー・・・

浦上「ほ、ほら。今切ってきますから、皆で食べましょう!」アハハ・・・

五和「か、カオリ姉様も食べますよねー。座って座って」ニコニコ・・・

神裂「むぅ……では、頂きましょう」フム・・・///


何故か軽く頬を染める女教皇様。この人は何故か『姉』扱いされると喜ぶ。存外単純な人だ。
馬鹿二人も調子に乗るから早く何とかしてほしい。


16第1話――香焼「お前ら出てけぇっ!!」2011/03/05(土) 05:15:00.95aCI9TYL10 (10/14)

一寸後、4人でテーブルを囲み談笑しながらメロンを食べていた。
折角女教皇様が居るので、今は噛む回数などは気にしない。

このまま平和な一時が過ぎ去れば良い……しかし、その考えは完熟メロンより甘かった。


浦上「そういえば、カオリ姉さんも泊るの?」

神裂「え?」キョトンッ

香焼「ゲホゲホッ!! おま……何だって?」タラー・・・

五和「そうだね。またモンバス大会しましょうよ」ニコッ


貴様ら、こっちの都合もお構い無しに……


神裂「うーん……明日の予定は……午前中は無いですね。大丈夫ですよ」ニコッ

五和・浦上「「やっほーぅ!!」」ワーイ!

香焼「ちょ、待てぃ……自分、明日学校って言ったろ」アタフタ・・・

五和「だから大人しくモンバス大会って言ったじゃん」ブーブー!


絶対無理だ。
3人一緒に泊る時は必ず宅呑み会場と化す。女教皇様も自制が外れるから厄介。


香焼「ハァ……絶対騒がない事。酒飲まない事」ジトー・・・

神裂「大丈夫、私がさせません!」キリッ!


貴女が毎度毎度、一番言い包められてるんでしょうが。


浦上「心配しなくてもいいよ。それに……ちゃんと朝起こしてあげるから。3人で」ニヤッ・・・

香焼「……勘弁してくれ」ハァ・・・


以前、『コウちゃーん……気持ち悪いよぉ……うっぷ』という具合に起こされた事が有る。最悪の目覚めをありがとう。
さておき、泊ると言い出したら何を言っても無駄なので次の行動に移る事にした。


香焼「じゃあ、女教皇様。先にお風呂どうぞっす」

神裂「え」キョトン・・・

浦上「香焼……アンタ」ジトー・・・

香焼「まだ、言うか?」ギロッ・・・

浦上「……うぃ」サーセン・・・


女教皇を指し置いて、一、教徒が風呂に入ることなどできない。それだけの話だ。
そう。それだけの話なのに……


3姉妹『……』ジトー・・・


何故か座った目で見詰められた。


17第1話――香焼「お前ら出てけぇっ!!」2011/03/05(土) 05:51:12.46aCI9TYL10 (11/14)

神裂「香焼……確かに教徒としては正しい判断です。しかし……」ジトー・・・

五和「あのねぇ、コウちゃん。この家の中では身分無しって約束でしょ!」ジトー・・・


何時、誰が、何処でそんな決まり事を作ったのだ。
お前らが勝手に作ったルールだろう。しかも此処は自分の家だ。そんなもの適用されない。


浦上「加えてカオリ姉さんの事、いつまで経っても『姉さん』って呼ばないしさ」ジトー・・・


自分はお前ら二人も姉と呼んだ覚えは無いぞ。


五和「もしかして……コウちゃん……まさか……」ハッ!

香焼「何すか……」

五和「御姉様の事……嫌いなの?」

香焼「はぁ?!」

神裂「え……そうなの……ですか」シュン・・・

香焼「ちょ、ま、ぷ、女教皇様!!?」ドキッ!


マジで落ち込んでる偉い人。
嫌いな訳無かろう。自分達の教皇を嫌う教徒が何処に居る。


浦上「また教徒とか立場とか……『神裂火織』は如何なのって聞いてんの!」ジロッ

香焼「な……おま……」アタフタ・・・

神裂「……」... (´;ω;`)ショボーン

香焼「ぐぅ……」タラー・・・


どうしてこうなった……


五和「コウちゃん……姉ちゃんは目上に対する偏見を持つよう育てた覚えはありませんよっ!」メッ!

香焼「違ぇよ! じゃなくて、その……女教皇様?」ダラダラ・・・

神裂「私の事……嫌いですか?」・・・ (´っω;`)ショボーン


卑怯です。助けて幻想殺し。


香焼「あの、えっと、だから……嫌いな訳無いですよ。こう、親身になって相談に乗ってくれたり、真剣に説教してくれたり……」アワワ・・・

五和・浦上「「……」」ニヤニヤ・・・

香焼「よく『一、姉として』って仰ってますけど……ホント、最近では身近な感覚が……って、え?」キョトン・・・

五和・浦上「「……」」プッ・・・

神裂「ふふふっ……冗談ですよ。すいません香焼。だけど私の事を『姉』と呼んでくれれば尚嬉しいです」クスッ

香焼「む、無理、です……」カアアァ・・・///


畜生。どうやらまんまと一杯喰わされた。


18VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/05(土) 05:55:26.52OdzEl2fAO (1/1)

>>7
乙乙
①香焼の一人称……『オレ』or『僕』、どっちがいい?

オレ

②出して欲しいキャラは?

天草といったらのよなさん、英国といったらアニェーゼをお願いしちまいますね


19第1話――香焼「お前ら出てけぇっ!!」2011/03/05(土) 05:55:38.82aCI9TYL10 (12/14)

コイツら絶対姉と呼んでやるものか! 心の中でそう誓った!
その直後―――


五和「くっ……私の弟がこんなにツンデレなわけがない」2828・・・

浦上「ぷっ……お姉ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!」2828・・・


―――図に乗る馬鹿共。コイツら……






香焼「お前ら出てけぇっ!!」ガアアァッ///






3姉妹『テレ隠しだ……真っ赤っか』ニヤニヤ・・・


結局、夜遅くまで馬鹿(申し訳無いが女教皇様含む)共にからかわれ、次の日遅刻した。

……建宮さんにお願いして、アイツら入室禁止にしてもらおう。


20>>12011/03/05(土) 06:01:37.44aCI9TYL10 (13/14)

はい、一話終了。引き続きアンケとリクエスト御協力お願いします。


①香焼の一人称……『オレ』or『僕』、どっちがいい?

②削板の年齢って、中学生くらいじゃ変?

③出して欲しいキャラは?

④何かやって欲しい設定・シュチュエーション等々、リクエスト募集します。


それでは感想質問意見罵倒等々もよろしくお願いします。以上! ではまた次回ー! ノシ


21VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/05(土) 08:35:55.40C44/B3MAO (1/1)

先輩の人か


22VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/05(土) 09:39:43.83LY5eoBVDO (1/1)

五和のくだけっぷりにワロタ


23VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/05(土) 14:49:07.03ALaZmWcDO (2/2)

乙!

>>20
①僕っ子
②任せる。高校生にも見えるし、中学生にも見える。
③④好きにやれー。でも絹旗、結標の絡みはみたい!

まぁ似て非なるモノとしてみるが‥‥エロは?(チラッ


24VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/05(土) 15:40:15.80rtC2DWij0 (1/1)

期待過ぎて生きるのがつらいです>>1乙です


>>20
①あえて俺といきたいところだが僕でb
②変に感じるけどそのギャップがいいんじゃないかと!
③アイテムメンバーとの絡みとか新鮮な気がするので期待



25>>12011/03/05(土) 23:31:54.03aCI9TYL10 (14/14)

こんばんわ。今日も小話投下……の前にレス返信。


>>8
一人称の使い分けは恰好良いね! ステイルくんには色々、頑張って貰うよ(ニヤッ・・・

>>21
はて・・・誰かなw?

>>22
キャラ崩壊注意!

>>23
絹旗は今回出しちゃいます。あわきん未定。あと私、エロっちぃのは書いた事無いから……

>>24
みんな僕っ子好きだね。でも香焼を僕っ子にすると……理樹にゃんになっちゃうイメージがw


ついでに、今回の登場キャラ設定!


<主な登場人物②>

・絹旗最愛……準レギュラー的ポジションかも。そのうち『カミやん病』患者の被害者になる……かもしれない。アニメはまだ出てない。
        超学生(中学1年)。能力は「窒素装甲(オフェンスアーマー)」の大能力者(レベル4)。「暗闇の五月計画」の被験者。
        呼称は……絹旗、きぬはた、最愛、もあい。

        学園都市暗部『アイテム』所属。学校は「霧ヶ丘女学院中等部・特別学級」。中学校には名前を置いているだけ。
        「置き去り(チャイルドエラー)」出身。性格は人見知りだが、仲良くなると面倒見が良くなる。
        アイテムの中では比較的常識人だが、B級映画等、人には理解されにくいモノが好きという不思議な感性を持っている。
        仕事中はキャリア顔負けの冷静さ。しかし日常生活では基本アイテム以外の人間には懐かない。
        ただし年下や動物など、純粋で慾の少ないモノに対しては幾らか心を開く。(以下追々付け足していきます)
         

という訳で、今回はモアイちゃんの出番です。よろしくっ!


26第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 00:10:17.74w1T0pmTu0 (1/16)

 ―――とある日、PM07:30、学園都市第7学区、とあるイカレ自動販売機在中の公園・・・・・



雨が降っていた。

秋の小雨は異様に冷たく、体力をガリガリ削って来る。
自分―――香焼は、平日のこんな時間、人気の無いこの公園へと足を運んでいた。
何故こんな馬鹿げた行動をしているかというと、理由は単純。仕事……というより『お使い』である。


香焼「態々雨の中、第7学区まで走らせるとか……何考えてるんすか」ハァ・・・


この日も夕方遅くまで学校に缶詰。グダグダと雨の中、家に帰る。
部屋の鍵を開け早くシャワーを浴びようと荷物をソファに置いた―――刹那、ふとこの置手紙の存在に気付いた。

内容は、タイプ字で……『この袋を第7学区の○○公園まで持って行け。時間は今日の20時だ。確実に持って行け、コウちゃん』と書いてある。
自分は即行で馬鹿1号に電話した。


<回想>


 ――Prrrrr・・・・・


五和『はいはい。どうしたのー?』Pi!

香焼「おい、何だこの袋」

五和『なっ!!? ……何の事カナ?』タラー・・・

香焼「……ざけんな」イラッ・・・


オマエ以外に『コウちゃん』と呼ぶ阿呆はいない。


五和『ミスったあああぁっ!!』ガーン・・・

香焼「喧しい。いいからこの袋、何なのか教えろ」ハァ

五和『くっそぉ……折角態々プリンターまで使ったのに……』グゥ・・・


詰めが甘いぞ、馬鹿女郎。


五和『えっと、それね……建宮さんからの頼まれモノ』

香焼「教皇代理からの?」

五和『うん。ICカードとか雑貨とか、色んなモノ入ってると思うんだけど……それ渡しといて』

香焼「渡す? 誰に?」

五和『……』タラー・・・


口籠る五和。


五和『……ステイルさん』ボソッ

香焼「は? ステイルに?」ヘ?

五和『うん。渡しといて』


何か腑に落ちない……どうして、自分が?


27第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 00:30:55.95w1T0pmTu0 (2/16)

香焼「オマエが頼まれたんじゃないんすか?」ジトー・・・

五和『うっ……だってぇ……』タラー・・・


人に仕事押し付けやがって。


五和『私……あの人、苦手なんだもん』

香焼「……は?」ポカーン・・・

五和『コウちゃん、ステイルさんと仲良いでしょ。お願い!』パンッ!


苦手って……それだけの理由で仕事を放棄したのか?


五和『……お願い』ボソッ・・・

香焼「……ったく」


物は自分の目の前にある。今更取りに来て渡せと言っても、二度手間だ。しょうがない。


香焼「今週の潜入レポートの作成、手伝えよ」ギロッ

五和『えぇ……』ヤダー・・・

香焼「じゃあ無視する。教皇代理に怒られろ」フンッ

五和『わ、分かったよぅ! ……ケチ』ボソッ・・・


何か言ったか?


五和『な、何でも無い! じゃあ宜しく!』Pi!

香焼「おい! ……切りやがった」ハァ・・・


現在の時刻は6時半くらい。確か第7学区方面行きのバスは、今日はもう来ない筈。
仕方ない……散歩がてら走って届けるか。


 <回想終了>


―――……という理由で今に至る。


香焼「しかし……ちょっと早く着き過ぎちゃったっすかね」ハァ・・・


途中から折り畳み傘を開き歩いたのだが、まだ7時半だ。
何処かのコンビニにでも寄って時間を潰せば良かった……そう考え、一度公園を突っ切ろうとした時だった。


香焼「……女の子?」ジー・・・


ポツンと光る自動販売機の下に、人がしゃがんでいる。
傘もささず、何だか不気味だったが……よくよく見る。すると自販機の下を覗き込んでいる事に気付いた。
多分、お金を落としたのだろう。

無視は出来ない。


香焼「救いの手を……ってね」テクテク・・・


どんなに小さくても、人助け。誰に褒められる訳ではないが、己を褒めてやれる。
そういう『教え』だ。


28第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 01:09:49.08w1T0pmTu0 (3/16)

香焼「君」テクテク・・・

??「っ!!」ビクッ!


女の子の方に歩み寄る。自分より少し小さいくらいの少女だ。


香焼「どうしたの?」

??「あ、えっと……その……」アタフタ・・・

香焼「……もしかしてお金落としたとか?」

??「え、あ……はい。財布ごと」コクッ・・・


器用な落とし方をするものだ。
自分はちょっと退いてと少女を促し、傘を畳んで柄の部分を使い、財布を引っ張り出してやった。


香焼「はい、どうぞ」ニコッ

??「あ、ありがと……」コクッ


しかしこんな小さな子が、夜中雨の中一人とは感心できない。


香焼「君、一人? もしかして迷子? だったら風紀委員(ジャッジメント)の詰め所まで案内するけど」

??「……そんなに子供じゃありません」ムッ・・・

香焼「あはは。そっか。そうだね」


小学生高学年くらいであろう少女は、可愛らしく頬を膨らませた。
『そこ退いて下さい』と睨まれ『武蔵野ホットミルク(缶)』と書かれたジュースを購入。それ、美味しいのだろうか。
そして自分を見向きもせず、トコトコと歩き出す。例の一つもなく帰るとは……悲しいモノだ。


香焼「……ん?」チラッ


と、思いきやゴソゴソと茂みの方に入って行った。


香焼「ちょ……何処行くんすか?」アタフタ・・・

??「……」テクテク・・・


無言で突き進む少女。まさかホームレス少女という訳ではあるまい。
どうにか止めなければと後を追うと、一寸先で止まった。丁度大きな木陰となる場所。雨は当たっていない。

そこには……


ぬこ「みー」

香焼「……猫?」キョトン・・・

??「……」スッ・・・


ダンボールに入った泥んこ子猫がいた。ダンボールには、どうも御丁寧に『育てて下さい』と書いてある。
そんな事をするくらいならペットを飼うなと、憤りを感じる典型的な例である。

さておき、少女は先程買ったホットミルクを飲ませようと猫の前にしゃがみ込んだ。
淹れる器など無い。ダンボールの内側、布の無い部分にチロチロとジュースを垂らした。


??「……飲みました」ナデナデ

ぬこ「みゃー」


ペロペロと水溜りになったミルクを舐める子猫。
しかし、実際の猫に牛乳を飲ませたら腹を下す。如何したものか……やはり告げるべきだろう。


29第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 01:28:03.92w1T0pmTu0 (4/16)

香焼「……猫に牛乳飲ませちゃいけないっすよ」

??「え……そうなんですか?」キョトン・・・

香焼「お腹壊しちゃうからね」


『そうなんだ……』と表情を翳らせる少女。困ったもんだ。


??「どうすればいいんですか?」チラッ

香焼「やっぱりちゃんとした餌だろうけど……」


その前に大事な事を聞かねば。


香焼「君、その猫飼うの?」

??「え」ビクッ・・・

香焼「飼うなら色々教えるけど……飼わないなら、申し訳無いけど……」

??「……放っておけと」

香焼「うん……」コクッ・・・


残酷だが、そうするしかあるまい。
運良く生き延びれば、清掃業者が保健所に報告してくれるかもしれないし、誰かが飼うかもしれない。

少女は悲しそうに、無言で猫を撫で続けた。


??「……お前、死んじゃうって」シュン・・・

ぬこ「み?」キョトン・・・

??「ははは……言っても分からないですよね……」ナデナデ・・・

香焼「……」ジー・・・


何だか虚しくなってきた。ふと、少女が呟く。


??「アナタは飼えない?」ジー・・・

香焼「え? うーん……」


ペット禁止のマンションではないが……ペットを飼おうだなんて考えた事無い。
しかし、この少女の悲しげな顔を見ると首を横に振れなかった。


香焼「……飼い主が見つかるまでなら、置いてあげられる」ハァ・・・

??「ほ、本当ですか!?」パアァ!

香焼「あくまで、飼い手が見つかるまでっすけどね」ポリポリ・・・

??「あ、ありがとうございます! 良かったな、オマエ!」ニコッ!

ぬこ「にゃー」グシグシ


まったく、ただでさえ面倒な雌猫がでいりしてるというのに、また増えてしまった……対価(メリット)はこの子の笑顔と、猫の寿命延長。
我ながら馬鹿な御人好しだと思う。


30第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 01:52:26.75w1T0pmTu0 (5/16)

 ―――とある日、PM07:45、学園都市第7学区、とあるイカレ自動販売機在中の公園・・・・・



それから猫をダンボールから取り出し、さっきの自動販売機前まで戻った。
泥だらけのままでは可哀想なので、ステイルに渡す雑貨の中から勝手にタオルを取り出し、身体を拭いてあげた。
ついでにあんパンも取り出し、餡の無い部分だけを子猫に与える。
ポロポロ溢しながらではあるが、一生懸命食べていた。碌に何も口にしていなかったのだろう。

少女は無言で猫を凝視していた。


香焼「とりあえず、座る?」

??「……」コクッ


濡れたベンチを二人分座れるようタオルで拭き、チョコンと腰を下ろす。
そして先程から猫が気になってしょうがない少女に、そっと渡した。


??「……にゃー」

ぬこ「にゃー」

香焼「……ぷっ」クスッ

??「あ……べ、別に良いじゃないですか!」カアアァ・・・///

香焼「駄目とは言ってないっすよ。でも、そんなに好きなら飼えば良いのに」

??「私は……世話になってる立場なので、猫飼いたいだなんて、言ないんです」シュン・・・

香焼「……そっか」


人それぞれ事情はある。深くは聞かない。
とりあえず傘を少女と猫に被せ、簡単な質問をした。


香焼「そういえば、どうしてこんな時間に公園に? 最終下校時間は過ぎてるけど」

??「学校行ってませんから、そんなの関係有りません。映画見に行った帰りに、この公園突っ切ろうとしたらこの子の鳴き声が聞こえました」

香焼「えっと……」


ツッコムべきか、ただ頷くべきか。


香焼「君、家出娘なの?」

??「家出娘って……この学園都市で親と暮らしてる人間こそ、そんなにいないでしょう」

香焼「まぁ、そうだけどさ……何て言うか……」ポリポリ・・・

??「超成績優秀生なんです。私、大能力者(レベル4)ですから学校なんか行く必要ありません」エヘンッ

香焼「へぇ、大能力者かぁ。凄いなぁ」ヘー・・・

??「……信じてないですね」ジトー・・・


小学生の大能力者なんて、そうそういないだろう。しかも学校行ってないのに高位の能力者だなんて、信じられる訳が無い。


31第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 02:19:26.21w1T0pmTu0 (6/16)

自分の棒声に腹立ったのか、語気を上げて少女が喰いついてきた。


??「っていうか、小学生相手にそんな超嘗めた口聞かれたくないんですけど」ジトー・・・

香焼「……」カチンッ・・・


コイツは、言ってはならない事を……
自分の中で『身長』と『信心の自由』を馬鹿にされるのは、最も嫌いな事だった。


香焼「あのね……残念ながら自分は中学生っす」フンッ

??「はいはい。そーですねー」ヘー

香焼「君こそ、小学生なのに夜遅くまで出歩いて身内に迷惑掛けるっすよ」ジトー・・・

??「なっ!! ぐぬぬ……私は超学生です……」ギロッ・・・

香焼「何だよ超学生って」ハイ?

??「間違えました。中学生なんです! 学校には通ってませんけど……でも中学生です!」


意地を張る自称中学生女子。
此処は年上の貫録を見せるしかないなと、財布から生徒手帳を取り出し、少女に見せ付けた。


??「あ、ホントに中学生なんですか。しかも『▲▲▲学院』って……理事養成(エリートキャリア)校」キョトン・・・

香焼「フンだ。自慢したい訳じゃ無かったすけど、そういう事っす」

??「ぐぬぬ……じゃあ私も」ゴソゴソ・・・


先程拾ってやった財布をバリバリ開き、学生証らしきICチップ付きカードを見せてくる少女。


??「ほら!」ドヤッ!

香焼「えっと……」ジー・・・


 ――『霧ヶ丘女学院中等部:一学年特別学級……絹旗最愛』――


香焼「霧ヶ丘……特殊能力(レアスキル)なんだ」

絹旗「えっへん! そうです、超凄いんです!」ニコッ!


霧ヶ丘女学院。名門の御嬢様校だ。
常盤台に並ぶ名門で『奇妙・異常・再現するのが難しい』イレギュラー的な能力者の開発のエキスパート校である。

ただし、潜入任務として都市内に入り込んでいる天草学徒からすればあまり良い評判はない。
後援(バック)にある霧ヶ丘付属研究所は『宜しくない研究』を多々行っているからだ。


香焼「成程、大能力者ってのも嘘じゃ無かったんすね」キョトン・・・

絹旗「そう言ったでしょう。驚いたか、香焼とやら!」フフーン!

香焼「ま、まぁね……」アハハ・・・

ぬこ「なー」スリスリ


ニヤニヤと天狗になって、猫を撫で続けているいる絹旗少女。
……何だか、ローマ正教所属の虐めっ娘シスターに似ているなと考えてしまった。


32第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 03:01:07.27w1T0pmTu0 (7/16)

ふと公園中央の時計を見る。もう少しで8時だ。
この子は何時まで此処に居るのだろうか。


香焼「君、帰りはどうするの?」

絹旗「迎えが来ますよ。もう少しで来ます」

香焼「そっか。良かった」

絹旗「そういえば――は、なんでこの公園に?」


・・・・・


香焼「……え?」キョトン・・・

絹旗「だから――は何故この公園に居るんですかって」


そこで自分が呼ばれている事に気付く。
名前で呼ばれるのは大分久しぶりだ。一瞬マジで分からなかった。


香焼「自分は待ち合わせっすよ。8時くらいに……友人(?)が来るっす」

絹旗「あはは。こんな時間に待ち合わせなんて、大概不良ですね。――は」クスッ

香焼「君も人の事言えないだろう……あと、出来れば苗字で呼んで欲しいっす」


恥ずかしながら、自分が呼ばれている事に気付けない。


絹旗「どうしてです? あ、もしかして『見知らぬ女に名前を名前を呼ばれるにゃ早過ぎるぜ、ベイベ』とか思ってます?」

香焼「何だそれ……いや、名前で呼ばれ慣れてないんすよ。ハッと気付けない」

絹旗「へ? ……超変なの。ねー」

ぬこ「なー」


我ながら変だと思う……が、仕方あるまい。
きっと魔女の仕業だろう。次元が歪んでそうさせているんだ。うん、そうに違いない。


絹旗「分かりました。香焼(こうしょう)ですね。じゃあ私も『君』じゃなくて名前で呼んで下さいよ」

香焼「コウショウじゃなくて『コウヤギ』って読むんすよ。まぁ難しいけどね」


九州出身であれば話は別だが、初見の人間には分からないだろう。


絹旗「九州ですか。えっと……確か日本の下の方ですよね」ウーン・・・

香焼「南って言おうよ」アハハ・・・

絹旗「う、五月蠅いですね……社会弱いんですよ……」グゥ・・・

香焼「あはは。さっき君、成績優秀性って言ってたじゃないか」クスッ

絹旗「別に何かに超特化してれば問題ありませんよ。理数が出来ればこの街で生きていけます。社会なんて将来役に立ちません!」フンッ!


なにその霧ヶ丘的(超偏屈)思考。てか生きて行くだけなら社会『が』必要だろうに。


絹旗「それよりまた『君』呼ばわりですか? 名前覚えてます?」ジトー・・・

香焼「あ、ごめんごめん。えっと……」


確か……絹旗最愛。きぬはた……さいあい?


33第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 03:35:16.19w1T0pmTu0 (8/16)

香焼「絹旗……」ボソッ・・・

絹旗「はい」コクッ・・・


そこで言葉を止めた。

待て待て『さいあい』なんて名前有り得るのか?
いや、無くは無いかもしれないがストレート過ぎる。きっともうちょっと名前っぽい名前だろう。

もあい、もちか、もえ、もなる、もまな、さいえ、さいな……候補はこれくらい。更に絞れば『もえ』か『さいな』だと予想。


香焼「……もえ?」チラッ

絹旗「はい? 萌え?」キョトン・・・


違うらしい。じゃあ……


香焼「さいな」

絹旗「へ? 香焼、さっきから何言ってるんですか?」


悉く外れらしい。ということは……


香焼「じゃあ絹旗……さいえ?」フム・・・

絹旗「……」ポカーン・・・

香焼「もちか、かな?」ウーン・・・

絹旗「……ああ、名前ですか」ポンッ

香焼「もなる、か?」エット・・・

絹旗「サイアイ、です」サラッ


何か言ってるが、正解じゃないらしい……何だろう?


香焼「絹旗……最愛(もあい)?」チラッ・・・

絹旗「サイアイちゃんですっ!!」ガアアァッ!

香焼「え」キョトン・・・

絹旗「キ・ヌ・ハ・タ・サ・イ・ア・イぃっ!! 最も愛するで『サイアイ』ちゃんっ!! モアイとか言うなっ!!」ギロッ!!

ぬこ「なぅ!」シャー!

香焼「ご、ごめんなさい」タラー・・・


耳元で怒鳴られた。どうやらストレートで正解だったらしい。残念。


絹旗「さっきから何言ってるかと思ったら、名前当てしてたんですね」ハァ・・・

香焼「あはは……素直に聞けば良かったね。ごめんごめん」

絹旗「もう……でもモアイ以外で呼ばれたのは初めてですね。よくパッと出てきます」

香焼「まぁ文系人間だから、ね」クスッ

絹旗「成程。私とは逆のタイプって事ですか」クスッ

香焼「そうかもね……でも良い名前だと思うよ。最愛」ニコッ

絹旗「っ!! あ、ありがと……」ポッ・・・///


照れてしまった。存外、この子も名前で呼ばれ慣れてないタイプなのかもしれない。


34第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 04:45:32.42w1T0pmTu0 (9/16)

 ―――とある日、PM08:00、学園都市第7学区、とあるイカレ自動販売機在中の公園・・・・・



それから暫く、二人で話をした。
といっても、彼女が一方的に話をしてきたので自分は聞き役に回るだけ。
それでも楽しそうに話すこの子を見ているだけで、何故か嬉しかった。


絹旗「―――……そしたら皆して私の事『小学生だろ』って。超失礼しちゃいますよ!」プンスカ!

香焼「ははは。それは同意する」クスッ


お互い見た目が幼い故に、同じ苦労をしているらしい。
さておき、話を聞く限りだと、この子にも友人と呼べる人達がいるようだ。


絹旗「ううん。その人達は……仕事仲間、かな」ボソッ

香焼「……仕事仲間?」エ?

絹旗「あ、いや、何でもありません! えっと仲の良い『バイト』仲間って感じなんですよ」アハハ・・・

香焼「自分と同い年なのにバイトしてるんすか。偉いっすね」

絹旗「そうなの、かな……私……」ハハ・・・


何処となく、悲しい笑顔。

余談だが、バイトではないにしろ自分(潜入学徒)にはある程度の給金が入っている。
任務として都市に入っている以上、必要経費と学費、それから余暇を有意義に過ごせる分の額は振り込まれていた。
ただし自分の場合は学校が忙しくて遊ぶ暇が無い為、かなりの貯蓄が溜まっている。

自分で言うのも何だが……灰色の青春とやらかもしれない。畜生め。


香焼「……学校の友達は?」

絹旗「……学校は、一定の研究レポートを提出すれば問題無く卒業できますから……友達なんて、いませんよ」

ぬこ「にゃー」スリスリ・・・

絹旗「ふふっ……オマエは友達かな?」クスッ・・・

香焼「……」


自分は馬鹿だ……何が灰色の青春だ。この子は真っ黒そうじゃないか。


絹旗「……良いんですよ、別に。生きているだけでも幸せなんです」

香焼「そんな事……」

絹旗「あはは……ついでに不幸自慢しちゃうと、私、『置き去り』出身なんです」


置き去り(チャイルドエラー)……学園都市における社会現象の一つだ。所謂、親による子供の『捨子』行為。
原則、入学した生徒が都市内に住居を持つ事となる学園都市の制度を利用し、入学費のみ払って子供を寮に入れ、その後に行方を眩ます行為。
親による養育拒否のケースもあれば、親が死亡・蒸発してしまうケースもある。

ただ学園都市には置き去りにされた子供を保護する制度が存在するが、それを逆手に取り非人道的実験を行う研究チームも存在するという。


絹旗「親の顔なんて知りません。施設も碌なとこじゃなかったから、友達なんて……」フフフ・・・

香焼「……ごめん」シュン・・・

絹旗「どうして謝るんですか? 私の不幸自慢って言ったでしょう」クスッ

ぬこ「なー」

絹旗「……この子と同じなんですよね。貴方がこの子を一時的に助けてくれたように、私も都市に助けられた」


最愛は『そんなもんですよ、世の中は』と猫を撫で続けた。

言葉が……出なかった。


35第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 05:11:40.22w1T0pmTu0 (10/16)

それから暫く無言が続いた。
ふと最愛が自分の携帯を取り出し、画面を見る。どうやらメールが入っていたようだ。


絹旗「あー……そろそろ行きますね。迎え来てたみたいです」スッ

香焼「あ、うん」スッ


笑顔で子猫と傘を自分に渡す。何処か寂しそうだった。


香焼「傘、持ってっていいよ。濡れるっす」

絹旗「濡れませんよ。私の能力です」クルクルッ


そういえば……始め見た時も濡れてなかったかも。
その場で一回転してみせる最愛。確かに衣服の表面上で水が弾いているようだった。
特殊能力者らしいし、きっと大気操作系か水力使いの能力なのだと思う。


絹旗「そんなとこです……ま、今日はありがとうございました。その子の事、超よろしくお願いしますね」スタッ・・・

ぬこ「みー」

香焼「最愛……」

絹旗「……バイバイ」ニコッ・・・


手を振り、公園の出口へ駆けていく『独り』の少女。これで、良いのかな……


香焼「良くない……よね」ハァ・・・


同情では無い。
ただ、己を救われないと勘違いしている子を捨て置く様な『教え』を、自分は受けた覚えはない。


香焼「最愛っ!」オーイ!

絹旗「……え」ピタッ

香焼「……また、会える?」ニコッ

絹旗「へ?」キョトン・・・

香焼「また会ってくれるかなって」

絹旗「な……っ」///


目を丸くし、口をあんぐり開け硬直する最愛。そんなに驚く事だったのだろうか。


36第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 05:28:34.86w1T0pmTu0 (11/16)

自分は立ち止まる最愛の下まで歩み寄り、話を続けた。


香焼「今度会う時まで、子猫(コイツ)預かってて上げるからさ。またお話、してくれるかな」

絹旗「……いいの?」チラッ・・・

香焼「うん、大丈夫っすよ。任せて」ニカッ

絹旗「で、でも……何だか超申し訳無いです……」モジモジ・・・

香焼「……じゃあ、自分が最愛と話をしたいから、そのついでにこの子も連れていく。これでいいでしょ?」ニコッ

絹旗「あ……う、うん……わ、分かりました! そ、そこまで言うなら、仕方ないですね! また会いましょう!」ニコッ・・・///

香焼「うん」クスッ

ぬこ「にゃんっ」パタパタ!


そして自分達は連絡先を交換した。
それから『またね』と再会の約束をし……今度こそホントの笑顔で、お別れをした。


香焼「……良い子、なんだけどね」クスッ・・・

ぬこ「なぁ」スリスリ・・・


彼女が見えなくなって一寸後、自分は子猫を抱えてベンチへ戻った。


香焼「置き去り、か……しかも学校に行ってないなんて。何して過ごしてるんだろう……」ムゥ・・・


これも学園都市の悩みの一つ。理事校の『都市政経』の授業で習った事を思い出す。
深くは追求しなかったが、もしかして過去に非人道的な扱いを受けていたのかもしれない。
世の中には金欲しさで、支援金を横領する為だけに、施設を建てる輩もいるからなぁ……嫌な社会だ。

色々物思いに耽りながらベンチに戻る。
そこで、とても重要な事を気付いた。『気付かされて』しまった。


香焼「あ」ピタッ・・・


ベンチに……大男が座っていた。傘もささず、曇天を仰いで煙草を吹かしている。


ステイル「……」フゥ・・・


完璧、忘れてた。


37第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 05:59:19.67w1T0pmTu0 (12/16)

ステイル「ハァ……びしょ濡れだ」ガサッ・・・

香焼「うっ……」タラー・・・


自分がベンチに置きっ放しにしていた袋を持ち上げてみせる不良神父。


ステイル「君はお使いも碌に出来ないのかな? 香焼くん」ジトー・・・

香焼「ぐぅ……ごめん」ペコッ

ステイル「まったく……ICは無事だったから良かったモノの、差し入れは殆ど死んでる」ガサゴソッ

香焼「……申し訳無いっす」フカブカー・・・

ぬこ「にゃー」


傍から見れば、ガラの悪い兄(あん)ちゃんが小さい子を虐めている様に見えるかもしれないが、これでも一つ違いだ。
英国清教の中で数少ない年の近い同性の人間である。

コーヒー奢れと睨まれたので、素直に応じ、ブラックコーヒーと自分の分のカフェオレを購入した。


香焼「はい、どうぞ」スッ

ステイル「ん……喫うかい?」スッ・・・


煙草を指し出してくる阿呆。


香焼「未成年っす」ジトー・・・

ステイル「知ってる。一本どうだ?」ホレ

香焼「……いらない」ハァ・・・


自分は長い時間を掛けて自殺する気なんかサラサラ無いのだ。


ステイル「肺癌で死ねたら本望だよ……それより……飼うのかい?」チラッ

香焼「え? あ、えっと……預かるだけ」ナデナデ

ぬこ「みゃぅ」

ステイル「……御人好し」フゥ・・・

香焼「お褒めに預かり光栄で」アハハ・・・

ステイル「しかしまぁ……君も隅に置けない奴だね」ニヤッ・・・

香焼「はい?」

ステイル「さっきの娘だよ」ニヤニヤ


見てたのか。意地の悪い奴め……


38VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/06(日) 06:05:03.63jH3Rm9YAO (1/1)

五和がウラーとか言うとジェロニモごっこしてるみたいでちょっと笑える


39第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 06:29:22.17w1T0pmTu0 (13/16)

香焼「この出刃亀野郎……いつから見てたんだよ」ジトー・・・

ステイル「二人で仲良さそうにベンチでお話なさっている所からでございますよ、坊ちゃん」ニヤニヤ・・・

香焼「ぐぬぬ……」

ステイル「まったく、使いも忘れて……ICが壊れてたら如何するんだい?」

香焼「……だから悪かったろって」

ステイル「まぁあと煙草一箱分で許してやるよ」


足元見やがって……


香焼「ハァ……それでそのカード何なんすか?」

ステイル「とある書類データだよ。君が深入りする必要はない」

香焼「はいはい。そうでございますね、主教補佐殿」


片や傘下宗派の一教徒、片や大本の頭補佐……我ながら変な組み合わせだと思う。


ステイル「しかし、香焼。もう少し言葉を選んだ方が良いぞ」クスッ

香焼「え?」キョトン・・・

ステイル「『可愛い』だとか『また会ってくれる?』だとか『またお話したい』とか……君は女衒師(ホスト)かい?」ククク・・・

香焼「う、五月蠅いなぁ」フンッ・・・

ステイル「ははは。まるで『あの男』のようだな」ニヤニヤ


あの男とは、幻想殺し――上条当麻の事だろう。褒めてるんだか、貶してるんだか。


ステイル「まぁ仕事に差し支えない程度で遊べよ。女遊びが理由で任務失敗しましただなんて、知人として恥ずかしいからな」ハハハ!

香焼「女遊びとか言うなっつの……友達だよ。普通のね」

ステイル「友達、ねぇ……」ジジジ・・・フゥ

ぬこ「なー」


お前と同じな、とは言わない。
コイツはどっちかというと『悪友』といった感じだし、『友』と言った瞬間、照れ隠しで煙草を飛ばしてくるやもしれない。


ステイル「勝手にするといい。ま、荷物は受け取ったし今日はもう帰るよ」スタッ

香焼「うん。自分も帰るっす」コクッ


立ち上がって出口に向かう。歩きがてら、ふと、ステイルが呟いた。


40第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 06:41:25.41w1T0pmTu0 (14/16)

ステイル「そういえば、如何して君がお使いだったんだ?」チラッ

香焼「え?」キョトン・・・

ステイル「神裂から誰かが来るとは言われてたけど、態々第1学区の君が来るとは思わなかったよ」


自分は正直に理由を話した。すると……


ステイル「五和が?」

香焼「うん。押し付けられた」ハァ・・・

ステイル「……可笑しな話だ。彼女は第7学区だというに」フゥ・・・

香焼「まぁそうなんだけど……ちょっとね」アハハ・・・


本人を目の前に、苦手だと教える事は出来ない。


ステイル「ふぅん……本人はノウノウと上条当麻の家に居るのにな」

香焼「」ピタッ・・・

ステイル「……ん?」


……ナンダッテ?


ステイル「だから、五和は上条当麻の家に居るぞ。今頃、夕食を終え茶でも啜ってるんじゃないか?」

香焼「」プルプル・・・

ステイル「どうした? 知らなかったのか?」

香焼「あの……馬鹿女郎……」ギギギギ・・・

ステイル「……ま、まぁドンマイだ」タラー・・・


今度顔見せたら色んな意味でボコボコにしてやる……心の中でそう誓う。


ぬこ「ぬぉー」スリスリ・・・

香焼「ぐぬぬ……ちくしょー!」ウワーン!


こうして雨の日の、不思議なお使いは幕を閉じた……―――


41VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/06(日) 06:49:51.20MF1ad+4Wo (1/1)

汚いな流石五和汚いwww


42第2話――香焼「絹旗……最愛(もあい)?」  絹旗「サイアイちゃんですっ!!」2011/03/06(日) 06:53:46.58w1T0pmTu0 (15/16)

 <おまけ>

―――とある日、PM08:15、学園都市第7学区、とある大通り、とある車内・・・・・



絹旗「ふんふふ、ふんふふ、ふんふーふ~♪」ニコニコッ

浜面「どうした? 何だか楽しそうだな」チラッ

絹旗「え? そ、そうですか?」

浜面「まぁな。良い事でもあったのか?」

絹旗「そうですね……そうなのかもしれません」クスッ

浜面「ふーん。面白い映画でも見つけたとか」

絹旗「へへへ。超内緒ですよー」ニコッ

浜面「そう言われると気になるなぁ」ハハハ

絹旗「ふふっ。そうですねぇ……じゃあ少しだけ」

浜面「お!」

絹旗「……『友達』……かな」クスッ

浜面「へ? と、友達?! オマエにか!!?」キョトン・・・

絹旗「超失礼な奴ですね……麦野達に言うんじゃありませんよ」ジロッ・・・

浜面「あいよ、内緒な。しっかし……人見知りのオマエがねぇ」アハハ

絹旗「五月蠅いですね……へへっ」ニコッ

浜面(……ま、いいか)クスッ



……早く、メール来ないかな。


43>>12011/03/06(日) 07:01:21.01w1T0pmTu0 (16/16)

はい。という訳で今日は終わりです。五和ファンの皆さん、ホントごめんなさいね。
書くペース遅くて申し訳無い。あと投稿時間遅いのも問題か……次は色々もうちょっと早くする。

それじゃアンケート!


①次、または今後出して欲しいキャラは?

②同じくシュチュエーションは?

③時系列かなり崩れるけど、レッサー出していい?

⑦削板は中学生にしてもいい?


以上! ご協力お願いします!
それでは感想質問意見罵倒リクエスト等々もよろしくお願いします。ではまた次回ー! ノシ


44VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/06(日) 07:26:46.87vUmWZ6SDO (1/1)

>>1乙! モアイちゃんは相変わらず超可愛いです‥‥おっ持ち帰りぃーっ!


①アニェーゼ、あわきん、また絹旗!
②五和か浦上、ねーちん主体の何か!
③④任せるよーん


ちなみに、五和達が主役回って有るのかな? ともかく次回も楽しみにしてるぜー!


45VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/07(月) 02:03:04.79v+rWM4F9o (1/1)

乙!
絹旗はカミやん病のドツボにハマればイイと思う訳よ。

①アニーとアンは必須だと思うの
②長姉こと女教皇と二人でお出かけ
③カムヒアレッサー
④ソギーはお任せ


46VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/07(月) 03:38:56.47tgLuLZNAO (1/1)

乙でーす
五和はもう少し自重しなさいw

①アニェとアンジェレネをぜひとも
②香焼くん上条さんと出会うの巻
③レッサー来いっ!!
④いいんじゃないかな



47VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/08(火) 00:30:27.84z1nGMO5AO (1/1)

ハァハァ……まさか…ハァハァ…こんな良スレを見落としていたとは…ハァハァ…ハァハァ……とんだ不覚だったわ…


というわけで乙

①②美琴やら妹達やら打ち止めやら番外個体やらと猫を抱えているときに遭遇したりとか、
打ち止めの場合はお互いにお姉さん・お兄さんぶってみたりとか、
お兄さんぶる相手は小萌てんてーもいいよね
ほかにも飼い始めたねことスファンクスがじゃれ始めたとこにインさんが来たりとか、
一方さんや浜面と、身の回りの女性の扱いづらさについて意気投合したりとか、
佐天さんあたりに弟扱いされて、また一人苦手な「姉」が増えたりとか


……すまない、ついつい興奮しすぎて夢が広がりんぐwwwwwwだったわ
まさか学園都市ショタSSにこんな可能性があったなんて……ハァハァ…


③④
>>1のやりやすい形でいいと思う。

べ、別に香焼キュン以外に興味がないわけじゃないんだからねっ


48>>12011/03/08(火) 22:11:34.19M8wvRWn20 (1/10)

こんばんわ! 今日も小話です。先にレス返し。


>>44
五和達がメインってどんなのがいい? ちなみに最愛ちゃんは皆の妹です。

>>45
カミやん病被害者にはあるかもしれないけど、コンセプトは友情です。

>>46
アニーとアンは人気だね。香焼とカミやんの組み合わせって新鮮かも……上条×香焼?

>>47
ミサカーズは絵になるね。佐天さんは近いうち出す予定だよ。ちなみにアナタはアワキン・スカイウォーカーさま?


はい。さておき今日はまた天草4姉弟の話です。


<主な登場人物③>

・上条当麻……おなじみ主人公さん。だけどこのSSでの出番は薄い。カミやん病スプラッシャー。
        とある高校1年。無能力者(レベル0)だが異能の力なら何でも打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」持ち。
        呼称は……上条、とーま、アンタ、幻想殺し、英雄さん、等々。因みに『二度目の死亡』前設定。

        不幸人。一概に如何『不幸』とは言えないが、不幸らしい。詳しくはググれ!
        記憶を無くしているが、上手く誤魔化して生活中。それについては、あまり支障は見られない様子。
        この作品では香焼にフラグを譲っている少女達もチラホラ。例としてアニェーゼ、レッサーなど。
        喧嘩は結構強い。でも人海戦は基本逃げる。(以下追々付け足していきます)


でも上条さん出番無し! ごめんね! では投下!


49第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/08(火) 22:14:03.35M8wvRWn20 (2/10)

 ―――とある休日、AM11:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・



何も無い日。

学校も休みだし、仕事もオフ。
学校からの週末課題と天草本部宛ての週間報告書も昨日の内に書きあげ、丸二日暇を作った。
今日はドブ日――所謂、家に籠ってグダグダする日にしようと決めていたというのに……


五和「……」ズサー・・・


何故か此処に土下座をしている女がいる。


五和「……コウちゃん、ごめんなさい」ズサー・・・

香焼「……」


無視。


五和「コウちゃん……ごめ―――」

香焼「喧しい」ギロッ

五和「―――ん、な……さい……」シュン・・・


断固無視。


浦上「ハァ。香焼ー、もう許してあげなよー」ズズズズ・・・

神裂「そうですね。大分懲りてるようですし」モキュモキュ・・・

ぬこ「なー」ゴロゴロ


そして当たり前の様に居る女達。呑気な子猫。


五和「こーちゃーん……ごべんだざぁい・・・・・」グズッ・・・

浦上「ああ、もうベソかいちゃったぁ」アチャー・・・

神裂「流石にやり過ぎですね」ムゥ


いや、やり過ぎも何も、自分は何もしてないっつーの。


五和「だっで無視ずるんだもん……」ウルル・・・

浦上「だってよ」チラッ

神裂「だそうです」チラッ

ぬこ「なぅ」スリスリ


コイツらウゼぇ……厄介な事に女教皇様まで便乗してるから、尚、面倒臭ぇ。

因みに、今自分が五和に腹を立ててる理由は3日前(第2話)の件についてである。
まったくと毒づき、拾った猫を撫でながら五和の方を向いた。


50第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/08(火) 22:39:50.11M8wvRWn20 (3/10)

香焼「あのなぁ。そりゃ一概に駄目とは言えないっすよ? でももっと早く連絡出来ただろう」ハァ・・・

五和「だって……急だったんだもん」グズッ

香焼「ステイルが苦手なのはしょうがない。だけどそれとは関係無く……」チラッ


女教皇様の方を一視。


香焼「……自分が雨の中お使い行ってる最中、ノウノウと遊んでた五和(オマエ)が気に喰わないんだ」ジトー・・・

五和「それは、その……」モジモジ・・・

神裂「……」ジー・・・

浦上「ありゃりゃ」タラー・・・


浦上の乾いた笑いだけが部屋に響く。
五和はバツが悪そうに、女教皇様を気にし、言い訳がましく呟いた。


五和「この前まで……私の優先権だったんだもん……」ボソッ・・・

香焼「……はぁ!?」ポカーン・・・

神裂「……」ズズズズ・・・


まるで知らんぷりの女教皇様。というか『優先権』って何だ?


浦上「あれ? 香焼知らないっけ?」

香焼「いや、何すかそれ」

五和「……ウラ」ギロッ・・・

浦上「……言っちゃダメ?」

五和「……」ダメダメ・・・


何やら目で訴える五和。
自分に知られたくない事なのか、ただ無言で頭を垂れていた。しかし……


神裂「別に良いのでは?」ズズズ・・・

五和「ぷ、女教……カオリ姉様。それは……」グゥ・・・

神裂「この子は他人にベラベラ言う様な男子ではないでしょう」

五和「……だけど」チラッ


様子がおかしい。


浦上「えっとね、香焼。今から言う事、建宮さん達には内緒だよ」シー

香焼「え、あ、うん」コクッ・・・

浦上「お姉、いいね?」チラッ

五和「……コウちゃん。言ったら絶交だかんね」ジトー・・・


それでオマエと縁を切れるなら言ってやっても良いんだが……まぁ仕方ない。空気を読もう。


51第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/08(火) 22:43:39.15M8wvRWn20 (4/10)

浦上「あのね……五和とカオリ姉様の間で不文律の約束、要は暗黙の了解(ルール)があるんだよ」

香焼「は?」ポカーン・・・

浦上「女性陣は全員詳細知ってるんだけどね。つまり……上条さん」ボソッ

香焼「……ああ、成程」コクコクッ

神裂・五和「「……」」モクモク・・・


確かにというか……この家で、この二人が集まる際に言ってはいけない言葉(タブー)があった。

 ――上条当麻――

誰がどう見ても二人は彼に好意を寄せている訳で、下手に彼の話題を出せば折角仲良くしていたメンツが崩壊しかねない。
勿論、仕事で上条当麻……もとい『幻想殺し』を出さねばならぬ事は有るが、極力控えめにしている。

ぶっちゃけ二人が喧嘩になると、自分と浦上に色々皺寄せが回って来るので勘弁して欲しかった。


香焼「でも、暗黙の了解って?」

浦上「……五分で済ませる」チラッ・・・ボソッ

香焼「へ?」ポカーン・・・


『何が』と言おうとした瞬間――二人が立ち上がった。


五和「……ちょっと教皇代理から電話が入っていたので外に出ます」スタッ・・・

神裂「私も、ステイルから連絡が入っていたのでベランダに……」スタッ・・・


そそくさと消える二人。
不文律とはいえ、誰かの言葉でそれを聞いてしまったら均衡が崩れかねないと判断したのだろう。

……女って怖いな。


浦上「じゃあ……まず優先権についてね。基本、お姉は学徒潜入で都市に居るでしょ」

香焼「うん。何してるのか分かんないっすけどね」

浦上「あはは……いや、ああ見えて忙しいのよ。五和も」

ぬこ「ぬぉ~」ペタン


信じられない。学業どころかキチンと仕事しているのかも怪しいのに。


浦上「続きだけどカオリ姉さんは基本、英国じゃん」

香焼「……つまり、こっちに足運んだ時は優先権が生じると?」

浦上「大まかに言えばそうだね。細かく言えば任務じゃない限り週3以上禁止とか、一日12時間以上禁止とか有るんだけど」

香焼「面倒臭いっすね」ハァ


そういえば女教皇様が都市に来たのは昨日の事だ。五和が言ってた『この前まで』とはその事だったのだろう。

さておき『ここから重要点!』と人差し指を立て、グイッと近づく浦上。
念を入れたいのは分かるが、猫を潰すな。肩に顎乗せてグリグリすんな。


浦上「……してはいけない事があります」ジー・・・


52第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/08(火) 22:48:08.61M8wvRWn20 (5/10)

嫌な予感がした。言わせてはいけない!


香焼「予想付いたから言わなくて良いっす。てか身内のそういう話聞きたくな――」タラー・・・

浦上「その一、一緒にお[にゃーん]」

香焼「――言うな馬鹿女郎っ!!」ガアアァッ!!


『折角教えてあげるっつってんのにー』とグゥたれる浦上。あの二人というより、上条さんが不憫で仕方が無い気がした。
しかし少々気になる点が有る。思い切ってそれを聞いてみた。


香焼「えっとさ。言い辛いんだけど……上条さんが……」ウーン・・・

浦上「うん。何?」フム?

香焼「その……上条さん特有のっていうか……えっと……」モジモジ・・・

浦上「……」ジー・・・

香焼「……アレが、ああいう風に……うん」モジモジ・・・


・・・・・・・・


浦上「ておぉゐぃっ!! 女々しいのよこのショタボーイっ!! はっきり[禁則事項です]とか[らめぇぇっ!]とか[ピーーー]とか言いなさいよっ!!」ガシッ!

香焼「そ、そんな事思ってないっす!! 自分はまだ中1だぞっ!!」ウワアァッ///

浦上「嘘付け、小5ショタっ!! 今度部屋の中の衣類全部女性物に換えといてやるかんなー!!」ウッヒッヒッ!!

香焼「おま、マジでブッ飛ばすぞっ!!」ダラダラ・・・

ぬこ「にゃっ!?」ビクッ!?


ただでさえ低身長と童顔を気にしているのだ。女装なんか強要された日には首を吊るかもしれない。

話を戻すが、要は上条さん特有の『病気』が働いて、不文律の約束以上の事になったら如何するのかという事だ。
うっかり~~~とか、ばったり×××とか。


浦上「ああ、そういう事。それは自己申告。私や他の女性陣を通してね」

香焼「成程。それで『仕方為し』って事にするんすね」

浦上「うん。あの人の『旗立て』は日常だからね……私もされてるし」アハハ・・・


そういえばコイツ、上条さんに押し倒されてるんだっけ。影で五和がグチグチ言ってたのは内緒。


浦上「んでもって、最重要は……Hな事とかじゃないよ」

香焼「だからそういう事言うなよ変態。誰も期待してないっすから」

浦上「そう? 『上琴』と『上条目録』に次いで需要あると思うけど」


オマエは何を言ってるんだ。


浦上「まぁまぁ。当分私が○ッドプール役だから」アハハ

香焼「デップ……何?」ハァ?

浦上「第4の壁をブチ壊せるんですヨ。当分は私の仕事ダネ」ニャハハ!

ぬこ「みー?」キョトン?


ツッコむ事に疲れたのでスルーします。


53VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/08(火) 22:49:26.28lGXybMKDO (1/1)

キテター!

うwwらwwかwwみww


54第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/08(火) 22:56:42.58M8wvRWn20 (6/10)

兎に角、これ以上脱線してはいけない。もう少しで二人が戻って来る。


香焼「それで? 最重要は?」

浦上「……もし、どちらかが告白された場合」

香焼「……・・・・・・・・・・・へぁっ?!」ドキッ!!?

浦上「だから『もし』だってば。上条さん倍率(レート)高いから難しいけど、それでもあの二人のドチラかを選んだ場合」

香焼「……うん」コクッ

浦上「潔く身を引き、祝福する事」


何とも……気まずい約束だ。
祝福するといっても、絶対に遺恨が残ってしまうと思うのだが……それは恋愛経験の少ない自分の想像だけなのだろうか。


浦上「とりあえず以上。これを『上条例』と呼ぶ……どう?」ドヤッ!

香焼「いや『上手い事言ったでしょ!』みたいな顔すんな。ウザい」ハァ・・・

浦上「まぁ因みにだけど、他の上条さんの毒牙に掛った人達ともこの『上条例』の一部は適用されるみたい」

香焼「……へぇ」フーン


他にも細かい点があったが、『上条例』を纏めると……


①女教皇が学園都市に居る際は、優先権を其方に。それ以外は若衆頭・五和に。

②週3日、一日12時間以上の合瀬は無し。ただし仕事で護衛任務等、特殊な場合は除く。

③周囲から『番(つがい)』と認められるまで、貞淑にすべし。(※他の者にも、ほぼ適用)

④他の男に余所見した場合、『上条例』の一切を放棄すると見做す。よって今後、上条当麻には好意を持って近寄らない。(※)

⑤『カミやん病』の『うっかり』にあった場合は、自己申告する。これを受けた者は必ず片一方に報告する事。

⑥仮に上条当麻本人から『番』になって欲しいと告白された場合は、他方もこれを認め、応援する事。(※)

⑦上記を守れぬ者は、厳しい罰則を科す。


……らしい。罰則(ペナルティ)って何さ?


浦上「罰は罰よ。それより何でそんな法律みたいにすんの? 香焼堅物ねぇ……不文律って言ったのに」ハァ・・・

香焼「うっさい。心読むな」ギロッ

ぬこ「みー」ペチペチ!


それから暫くして、何事も無かったかのように、二人が戻ってきた。ジャスト5分。


神裂・五和「「……」」テクテク・・・スッ


気まずいです。助けて教皇代理。


55第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/08(火) 23:00:46.33M8wvRWn20 (7/10)

 ―――とある休日、PM00:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・



さておき……自分が危惧していたような事態にはならなかった。

今日は五和と女教皇様、二人のプロ級料理人が居たので、とても美味しい昼食が取れた。
調理の際は二人は仲良く台所に立っていた……ただ、内心如何いう心境だったのやら。

まぁ部外者である自分が首を突っ込んでも、事をややこしくするだけなので、発言は控える。
とりあえず、今は浦上が食器洗い。二人が茶を啜り、自分が子猫を如何に映り良くムービーに撮らえるか奮闘している。


五和「ねぇ、コウちゃん。何時の間に猫飼ったの?」オイデオイデ♪

香焼「雨の日」ギロッ

五和「うっ……」タラー・・・

神裂「……して、何故飼うに至ったのですか? ただ拾っただけでは無いでしょう」ズズズズ・・・

浦上「そうですよネ。香焼の性格からいって、捨て猫拾う様なタイプじゃない筈だけど」

ぬこ「にゃー」ゴロゴロ・・・ピタッ

香焼「んー……どうでもだろー……ちょ、五和。映るなよ」●REC


絶対に『あの日』の事は教えない。面倒臭い事になるどころか、一波乱起こってしまう様な気がした。

猫がノソノソと女教皇様の方に歩いて行く。長いポニーテールが気になったようだ。ペチペチと猫パンチを繰り返す。
困って苦笑している女教皇様と無邪気な子猫……絵になるが、女教皇様が入ってしまっては『あの子』に送れない。


ぬこ「なー」ペチペチ

神裂「あはは……ちなみに、名前は?」フム?

香焼「最愛っす」●REC

五和「サイアイ?」キョトン?

香焼「え!? あ、いや、違う、何でも無い」アハハ・・・

天草姉妹『へ?』ポカーン・・・


危ない危ない……猫の名前を聞いただけだ。


香焼「えっと、コイツに名前は無いっすよ」

五和「どうして? まだ付けてないの? なら私が付ける!!」キラキラ!

香焼「やめろオイ。名前付けない理由あるんだか――」ギロッ

五和「黒い子猫だから『クロ』……じゃつまんないかぁ。『香焼2世』とか!」ヨシヨシッ

香焼「―――……ら……馬鹿じゃないの?」ハァ・・・

神裂「秋口の雨の中拾ってきたので『秋雨』……『秋水』も良さそうですね。黒のイメージを取るなら『鉄(クロガネ)』とか」フム・・・

香焼「女教皇様っ!!?」エ!?


アンタまで乗るんかい……


56第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/08(火) 23:06:57.09M8wvRWn20 (8/10)

浦上「ヒョードル、ゲイツ、アインシュタイン、テヅカ、シューマッハ、ヒトラー、オードリー、ジャッキー、ユウサク、アリストテレス」

香焼「……」... (゚Д゚)ハァ?

浦上「アクタガワ、イルファン、ガッツ、コバーン、ファーブル、ホクサイ、メンデルスゾーン、マイルス、ドルジ、レノン」ビシビシッ!!


たまに浦上が言ってる事、分かんない。


浦上「ちくしょー……コア過ぎたかぁ。このネタ通じないのね……」ハァ・・・

五和「黒いニャース」ニャー

香焼「金出さないし喋らないし形容詞付いてるしオマエ馬鹿だし」

五和「……コウちゃん、ホント私の事嫌いなんだね」ハァ・・・

神裂「闇霞」オイデオイデ

香焼「や……何すかそれ?」ハァ?

神裂「黒い模造刀の名前です。まんま黒刀でも良いですよ!」(`・ω・´)キリッ!

香焼「……」タラー・・・

五和「カオリ姉様、厨二ネームしか付けられないんですか?」

神裂「厨……貴女よりマシだと思いますけど」

ぬこ「みゃー」コクッ


かろうじて、だが。
というか女教皇様……『モンバス』のやり過ぎです。控えて下さい。それ武器の名前でしょ。


浦上「むー……じゃあどうすんのサ?」

香焼「だから付けないって言ってるだろ。今、コイツの飼い主探ししてるんすよ」

五和「飼う気無いのに、拾ってきたの? らしくないね」

神裂「動物の生死に無闇やたらと介入するのでしたら、あまり褒められた事ではありませんね」フム・・・

香焼「……色々あるんすよ」ムスッ・・・

浦上「そこんとこ詳しく!」ニコッ


絶対言わない。


五和「……私達の秘密知ったのに」ボソッ

香焼「……」タラー・・・

神裂「身内で信用できる貴方にだから知られても良いと思ったものの……無碍に辱めを受けた気分ですね」ボソボソッ

香焼「……ぐっ」ダラダラ・・・


こんな時ばかり弱みを糧に団結しやがって。


浦上「まぁまぁ。全部じゃなくてもいいから、掻い摘んでネ」

香焼「……」ハァ・・・


という訳で最愛の名前は出さず、『友達』に頼まれてという経緯で事を話した。


57第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/08(火) 23:17:24.81M8wvRWn20 (9/10)

自称姉達は自分の話を黙って聞き、一寸考えた後、各々口を開いた。


五和「成程ねぇ。その子は自分の家で飼えないから、預かって欲しいと」

香焼「そんな感じっす。でも此処で飼う気は無いっすよ。あくまで飼いたいって人がいたら譲るっす」

浦上「出なかったら?」

香焼「探せば猫飼いたいって人、絶対居るだろ。出来れば探すの協力して欲しいっすね」

五和「まぁ探すけど……最悪、出なかったら飼う?」


それは考えて無かった。

自分は海外にも足を運ぶ人間だし、四六時中ペットの面倒を見る事は出来ない。
故に飼う事は出来ないだろうと踏んでいたが、もし本当に現れなかった場合は……如何しよう。
今更飼い主が出ませんでした。だからもう一回捨てるね、などとは言えないし、最愛に申し訳も立たない。


香焼「……とりあえず、飼い主なってくれる人を探す。それまでは此処で世話するよ」

五和「飼っちゃっても良い気はするけどなぁ……」


悩み所だが……今はその気は無い。
ふと、女教皇様がらしいことを仰った。


神裂「貴方も子供じゃない。好きにするといいでしょう。しかし無責任な対応や筋が通らない真似は許しません」

香焼「はい……分かってます。肝に銘じるっす」ペコッ

ぬこ「みぃ」ポニポニッ


凛々しい顔で告げる女教皇様。ポツリと出る一言は、改めて『教皇』なのだと実感できる点だ。
……猫にポニテを殴られてなきゃ、完璧なのだが。


五和「しっかし、友達ねー。コウちゃん此処に友達連れて来ないからなぁ」

浦上「あはは。私達の所為だよねー」

五和「あはは。ねー」


分かってる辺りが、マジ腹立つ。
マトモなのは女教皇様だけか……と甘い考えを持った自分が愚かだった。



神裂「それで、香焼。その友人というのは先日知り合ったという『女の子』の事ですか?」サラッ・・・



香焼「」



五和・浦上「「ッッ!!?」」‘m( ゚д゚ ))ミ_ シ(( ゚д゚ )m" ...ガタッ!!




もちふけオマエら。諏訪テロ。


58第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/08(火) 23:20:25.91M8wvRWn20 (10/10)

香焼「ぷ、ぷぷ、女教皇様……じ、自分……どっかで……それ、い、言いましたっけ?」ギギギギ・・・

神裂「え? いえ、ステイルから聞かされました」ウンウンッ

香焼「ぁんの不良似非神父外郎おおおおおぉっ!!!」ウワアアアアァッ!!


『クククク・・・』と微笑む悪魔神父が目に浮かんだ。今度英国帰ったら、アイツの部屋にガソリン撒いてやる。
そして、目を輝かせ自分に詰め寄る馬鹿二名。


五和「コウちゃん……ねぇ、コウちゃん?」ニコニコッ!

浦上「何? お姉ちゃん達に隠し事? 良くないなぁ……知りたいなぁ」ニコニコッ!

香焼「……」タラー・・・


近い。色々近い。色々危ない。
責任取って助けて下さい、女教皇様。


神裂「ま、まぁまぁ。踏み入ってはいけない個人の部分もありますから」アハハ・・・

五和「カオリ姉さん! 詳しく知りたくないの!?」ギロッ

神裂「それは―――」

浦上「もしかしたら将来香焼の彼女……つまり若い教徒を産む母になる娘かもしれませぶあ痛ぁっ!!?」ゴチンッ!


割と本気でゲンコツした。


神裂「―――……しかし」ムゥ・・・

五和「……単に、香焼と仲良くしている友達とやらを知りたいと思いませんか?」ニコッ

神裂「……それは、まぁ」コクッ


あっさり騙されるし……駄目だこの教皇。簡単に折れ過ぎ。


五和「って事でさぁ! 教えなさい!」グイッ!

香焼「……教えるも何も、自分も彼女の事そんなに知らないんすよ」

浦上「痛てて……ホントに? 歳とか容姿くらいは説明出来るでしょ」

香焼「同い年だけど自分より幼く見えるっす……先に言っとくけど写真無いぞ」ギロッ

五和「ちぇっ……ツマんないのー」


ようやく飽きてくれた。
悪いがこれ以上、彼女のプライベートをベラベラ話したくない。『置き去り』だの『不登校児』だの、他人が話して良い事ではなかろうて。


59第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/09(水) 00:03:50.76QUx0plQw0 (1/29)

香焼「ていうか……お前らこそ友人関係とか如何なんすか?」

3姉妹『え?』


学園都市内で、という意味だ。
仮にも学生してるんだから、天草以外の友達の一人や二人いてもおかしくないだろう。

……自分は学校が学校なので、少ないけど。


五和「んー、私は少ないかなぁ……割り当てが御嬢様校だったし」

浦上「そうなの?」

五和「プライド高い娘多いじゃん。ウマが合わなくてさぁ……ルチアとかフロリス、ランシスの方が仲良いかも」


そういえば五和って英国じゃ彼女達と仲良くしてるなぁ。


神裂「浦上は?」

浦上「私は結構友人作ってますよ。潜入任務の基本は交友関係だって、教皇代理から教わったんで」

香焼「へぇ。意外だなぁ」

浦上「仕方ないでしょう……私のメインターゲットは第3位と第5位ですヨ?」トホホ・・・


第3位と第5位……超能力者(レベル5)の事だ。
一番歳が近く、同じ学び舎の園の中等部ということで、可能であれば監視・接触出来る様任されている。


浦上「超電磁砲は何とかなるんだけどね……未だに心理掌握の尻尾も掴めないんデス」ハァ・・・

五和「私も見つけられないなぁ、あの人……ホントに常盤台に居るの?」

香焼「資料ではそうなってるっすよ」


何だかんだで苦労してるのか、コイツらも。


五和「カオリ姉様は……いないですよね」アハハ・・・

浦上「普段こっち居ないもんね」

神裂「いますよ」サラッ

3姉弟『……え』ポカーン・・・


意外や意外。


神裂「失礼ですね。私だって友人の一人や二人いますよ」ムゥ・・・

ぬこ「みー」ウンショウンショ!


心外だ、としかめっ面の女教皇様。子猫が肩に攀じ登ってるのもお構い無し。


60第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/09(水) 00:25:04.06QUx0plQw0 (2/29)

浦上「失礼ですが、上条さんと土御門さんは抜きですよ?」

神裂「無論です。他にも居ますよ」


そう言って携帯を弄り出す女教皇様。
そして『ほら』と画面を見せてきた……珍しい。プリクラだ。隣に同い年くらいの女性が二人写ってる。

眼鏡を掛けた清楚そうな女性と、対称的に派手そうでファッションセンス溢れる女性。ドチラも美人さんだ。


五和「……皆20代後半で〔にゃーん〕があ痛あぁっ!!」ゴスッ!

神裂「……二人とも、私と貴女と変わらない年代です」ギロッ

浦上「みんなおっぱいボーンっ!! でも一番はカオリ姉〔にゃーん〕んぎゃあああぁっ!!」ゴトッ!

神裂「貴女達は……」プルプル・・・///

香焼「……」///

ぬこ「にゃぅ!」ガリッ!


自分が居る前でそういう話をしないで欲しい……仮にも男子だ。
しかし女教皇様、器用に五和と浦上の面を猫に引っ掻かせる。えげつない。


神裂「ったく……成り行きではありますが、友人になった方々です」フンッ

浦上「うぐぐぅ……というと?」イテテ・・・

神裂「道に迷ってたら、助けられました」

香焼「へ? それだけで?」

神裂「……2、3回ほど」タラー・・・

五和「痛いなぁ、痕残るよぅ……ホントは何回?」チラッ

神裂「……云十回」ボソッ

香焼・浦上「「……恥ずかしい」」ハァ・・・


この人は意地張って自分一人で何とかしようとするからなぁ……連絡してくれれば良いものの。
さておき、どうやら一人は風紀委員(ジャッジメント)らしい。『迷子』の女教皇様を幾度とガイドしてくれたとか。

多分、その風紀委員さんが『どうせまた迷子なるよね』と気を使って、女教皇様と連絡先を交換するに至ったのだろう。
そして何時の間にか交友関係に……といったところか。


神裂「こ、香焼!? 何時の間に読心魔術をっ!!?」ドキッ!?

五和・浦上「「香焼パネぇ!!」」ワー!


いや容易に予想できますから……あと馬鹿二人ウザい。


香焼「……それで、もう一人は?」

神裂「え、あ、はい。大通りで捕まりました」サラッ

3姉弟『は?』ポカーン・・・

神裂「だから、捕まったんです」


……意味が分からない。


61第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/09(水) 00:56:34.66QUx0plQw0 (3/29)

香焼「えっと……大通りで、何してて捕まったんすか?」タラー・・・

神裂「道に迷……もとい、土御門に頼まれたお使い先で」


また迷子か……教皇代理に、女教皇様へGPS携帯持たせるよう進言しとこう。


五和「それで、お使い先というのは?」

神裂「くっ……あの馬鹿道化師が、また意味の分からない服を注文してたんです。しかも老舗の有名服屋の特注で」グヌヌ・・・

浦上「あー……堕天使さん?」

神裂「そう、堕天使さ……浦上?」ギロッ

浦上「あはは、予想ですヨ。予想……で、自分で取りに行かされたと?」

神裂「……謀られたんです」ウグゥ・・・


土御門も女教皇様にコスプレさせるの好きだなぁ。
そして何故か『私も新しいの準備しなきゃ!』と意気込んでる馬鹿1号。自重しなさい。


香焼「つまり、大通りの老舗ブランド店で捕まったと?」

神裂「そういう事です」

浦上「へぇ……でも何で捕まったの?」

神裂「何でも……私の服装が気に入らなかったそうです。仕方ないでしょう、魔術的な意味合いなのですから」ハァ・・・

3姉弟『……』ジー・・・

神裂「……何ですか」ジトー・・・


別名、ただエロいだけ左右非対称ファッション。


五和「まぁファッション五月蠅い人に捕まった訳だ。『そんなコスプレ着るんじゃなくてマトモな服装しなさい!』って」

神裂「……トゲを感じますが、大体合ってます」ムゥ

浦上「普通の恰好すればモデル顔負けだからねー。カオリ姉さんも、お姉も」ジー・・・

五和「わ、私はちゃんと気にしてるわよ。術式も服買うたびに工夫してるし」


態々面倒臭い事をする。男はそんなに拘らないからなぁ。
これを言うと『駄目男』と馬鹿姉妹に怒られるが、無視無視。


神裂「兎角……その店で無理矢理脱がされて……」ハァ・・・

五和・浦上「「む、剥かれたっ!!?」」‘m( ゚д゚ ))ミ_ シ(( ゚д゚ )m" ...ガタッ!!

香焼「違ぇよ馬鹿女郎!!」カアアァ・・・///

神裂「……着せ替え人形にされました」

五和・浦上「「……なーんだ」」ハァ・・・


何を期待してたんだ阿呆共。女同士だっての……


62VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 01:09:47.70YJJqrnTAO (1/2)

眼鏡の方はわかったが…
もう一人はだれだ?むぎのん?


63第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/09(水) 01:25:33.26QUx0plQw0 (4/29)

五和「何って……コウちゃん。何想像したの?」エ?

香焼「え」

浦上「私、キャバとかガールズバーで働いてみないかってスカウトされたのかと思った」チラッ

五和「私はモデルしてみないかって……違うの?」チラッ

香焼「……」タラー・・・

五和「ねぇねぇコウちゃーん……何考えちゃったのー?」ニヤニヤ・・・

浦上「女同士って、なぁに?」ニヤニヤ・・・

ぬこ「にゃーん」トコトコ


コイツら……助けて女教皇様。


神裂「こ、香焼。その、健全な男子だというのは分かりますが、まだ中学1年なんですし、些か早いかと……」モジモジ・・・

香焼「」

五和・浦上「「むふふふ」」(・∀・)(・∀・)ニヤニヤ・・・

香焼「ぐっ……畜生、自分の負けっす。だから話を戻してくれ! 頼む!」ウウゥ・・・///

五和「うぃのう、うぃのう♪」ウフフ・・・

神裂「こほんっ……と、兎に角! 着替えを強要されただけです!」

浦上「ふむふむ。成程成程。だからカオリ姉さん、最近私服着る機会多いんですネ」ヘェ

五和「その人、ファッション雑誌の関係者とかですか?」

神裂「『新作流行の相談に乗る程度』って言ってました。たまにコラムを任されるらしいですけど」


風紀委員とファッション関係者か……中々凄いお友達がいるらしい。
五和と浦上が『いいなぁ』と目を輝かせていた。


神裂「という感じで、色々ありましたが友達に。歳も近いのでお茶等御一緒したりします」

浦上「へぇ。意外です」

五和「でも……うーん」ポリポリ・・・

神裂「如何しました?」

五和「……こっちの茶髪の人、どっかで見た様な」ウーム・・・


頭を悩ます五和。多分そのファッション誌か何かで見たんだろうて。


64第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」 2011/03/09(水) 01:39:51.80QUx0plQw0 (5/29)

これで女教皇様の話は終わり……そう思った刹那、ふと五和が質問した。


五和「名前聞けば、思い出すかもしれない……その人のお名前は?」

神裂「え? この人は麦野沈利さん。此方は固法美偉さんです」


麦野……沈利……


浦上「……香焼」タラー・・・

香焼「うん……多分……」タラー・・・


第4位――原子崩し、だ。資料で見た気がする。
確か担当は五和。


五和「そうだ! そう、超能力者!!」ピカリンッ!!

麦野「あー……そういえばそんな事言ってましたね」フムフム

香焼「『そんな事』って……」アハハ・・・


確かに『聖人』と『超能力者』どっちが凄いと聞かれたら……何とも言えない。どっちもどっちだろう。


麦野「うん。彼女のレーザーを見せてもらいましたけど天使の小光線くらいはありましたよ」ウンウン

3姉弟『』チーン・・・

ぬこ「なぅ」グシグシ・・・


次元が違い過ぎます。


浦上「……お姉。担当頑張れ」ボソッ

香焼「……骨くらいは拾ってやるっす」ボソッ

五和「や、ちょ……担当カオリ姉様でいいじゃん」ダラダラ・・・

神裂「あはは。大丈夫ですよ。とてもフランクで優しい人ですから」フフッ

五和「そ、そうなんですか?」ホッ

神裂「多少男勝りなとこも有りますが、いつも温厚な人ですよ……まぁ能力使用時はバイオレンスでしたが」

香焼・浦上「「ドンマイ」」ポンッ・・・

五和「……不幸だ」ハァ・・・


普段温厚だが、『キレる』と口悪くなるといったところか。
女教皇様みたいな人かもしれない……と思った所で何故か本人に睨まれた。

貴女こそ読心能力持ってるんじゃないですか……


65VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 01:48:14.83AuCfxniDO (1/2)

神裂が麦野になってる


66>>65・・・トンデモ無いミスをww2011/03/09(水) 02:16:09.37QUx0plQw0 (6/29)

 ―――とある休日、PM02:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・



何やかんやでグダグダ時間が過ぎ、自称姉達は『モンバス』大会を開きだした。
自分は今後、子猫を如何しようか悩んでいる。

誰か猫飼いたいって人いないかな。探せば必ず出ると思うんだけど。


香焼「そういえば……禁書目録、猫飼ってたっすよね」ボソッ


呟いてみる。瞬間、浦上が凄い勢いで睨んできた。拙ったか……


神裂「スフィンクスですか? ……あ、浦上。そこトラップ」カチャカチャ

香焼「え、あ、はい……もう一匹飼ってくれたりしないっすかね」ハァ・・・

五和「うーん。禁書目録っていうか、上条さんに負担掛ける事になるからね……あ、ウラ。今そっちに雑魚集団行った」カチャカチャ


存外、気にしないみたいだ。


香焼「そっか……どうする、オマエ?」グシグシ

ぬこ「みー」ペチペチ

浦上「どうするって、ちゃんと責任取らなきゃ……ってうわああぁっ!! 死ぬ死ぬ!! 助けて!!」カチャカチャ!

神裂「自分で何とかして下さい」タンッ

五和「今、大型種狩ってるから無理」タタタッ


浦上がピンチらしい。まったく女教皇様まで夢中になっちゃって。


五和「ていうかコウちゃん。何でその娘、猫飼えないの? ……あ、ジュース無くなりそう」ヤベェ・・・

香焼「学園都市で猫飼えるアパートの方が稀っすよ。それに居候みたいな感じだから無理だそうっす」

浦上「そうなんだ。でも禁書目録は居候でペット飼ってるよ? ぐぬぬ……何とかなった」ホッ・・・

香焼「……アレは悪い例っす」

神裂「確かにあの学生寮はペット禁止の筈でしたからね……む? もう少しですね」ヨシッ・・・

五和「了解!」ウッシ!

浦上「ちょっとぅ。少しは削らせてよー」ムキー!


話を聞くか、画面に集中するか、どっちかにしなさい。


67第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 02:46:19.81QUx0plQw0 (7/29)

ふと、五和が尋ねてきた。


五和「ねぇ、コウちゃん。一つ聞いていい?」

香焼「何すか?」

五和「その女の子に猫ちゃん、頼まれただけ?」

香焼「それは……」


というか、多分見つけもしなかった。


浦上「って事は、猫見る為に……此処来たりするの!?」ウキウキ!

香焼「いや絶対連れて来ない」キッパリ

五和「えー。つまんなーい……あ! ラスト一撃!」カチャッ!

浦上「あ、こら!」タンッ!

神裂「遅いっ!」タタンッ!

五和・浦上「「あー!!」」ギャー!


女教皇様が討ち取ったようだ。抜け目ないな。悔しがる馬鹿二人。ざまぁ見やがれ。

『もう一狩り!』と喧しい女性陣を捨て置き、猫と共に自室に籠ろう。
……と立ちあがった瞬間、馬鹿一人がトンデモないことを放った。



浦上「で、香焼……二人は何処までイったの?」チラッ


香焼「」


神裂・五和「「っ?!」」ガタッ!!



ちょ、オマ……何言ってやがんだ?


五和「こここ、こ、コウちゃん!?」

神裂「こ、香焼!? そ、そんな……まさか、中学1年で……」


過剰反応するな馬鹿。口に出さないが、女教皇様。貴女も馬鹿3号決定です。


香焼「あのね……この前、会ったばかりっすよ」ハァ・・・

五和「あ、会ったばかりなのに!!?」グイッ!

浦上「最近のガキんちょは増せてるねぇ」フムフム・・・

神裂「だ、駄目ですよ!! 教皇として、一、姉として! そんな不貞を許す訳にはいきません!!」カアアァ・・・///

香焼「対馬さーんっ!! 建宮さーんっ!! 助けてー!!」ウワーン!


残念ながら苦笑する二人の顔が浮かんだ。


68第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 03:09:20.62QUx0plQw0 (8/29)

浦上「あはは。まぁそこまでの甲斐性無いのは分かってるから大丈夫だヨ」ケラケラ

香焼「おま、え……」プルプル・・・

五和「ほ、ホント!? ホントに?! コウちゃん、ちゃんと童t〔にゃーん!〕ったぁああっ!! 噛まれたあああぁっ!!」ギャー!

神裂「こ、こほんっ……そうですね。そのような節操無しに育てた覚えはありませんからね」フム・・・


育てられた覚えも無いですよ。


浦上「ははは。おもろー」ニヤニヤ・・・

香焼「……オマエ、マジ覚えてろよ」ギロッ

神裂「こ、香焼。結婚するまで待て、とは今の御時世言いませんが……キチンとお付き合いしている人がいますくらいの報告は」モジモジ・・・

香焼「女教皇様。戻ってきて下さい」ハァ・・・

浦上「ふむふむ……でも何処で如何なってるか分からないからねぇ。『実はっ!』って事も無くは無いですヨ」ニコッ

香焼「……じゃあオマエは如何なんだよ」ギロッ

浦上「わ、私? えっと……」アハハ・・・


何故か苦笑する浦上。


五和「ああ、ウラは彼氏にいたもんね」ボソッ

神裂・香焼「「……・・・・・・・・・・・・え?!」」ギョッ!?

浦上「い、五和っ……ええっと……あ、あはは……」ポリポリ・・・///

香焼「知らなかった……」

神裂「う、浦上?」キョトン・・・

浦上「で、でも昔の話ですって! 今は学徒潜入で、遠距離続いて別れましたけど」アハハ・・・


地元で、という訳か。
他人事だが……遠距離恋愛なるものは相当覚悟がなければ続かないという。オルソラさんが熱弁してた。昔何かあったのかな?


神裂「ひ、一言教えて貰いたかったですね。少しは任務等考慮したのに……姉として」

浦上「姉(それ)押しますネ……いや、良いんですよ。未練は無いですし、私もアッチも互いに新しい気持ちで生活してますから」ニコッ

香焼「意外と、踏ん切り良いっすね」ヘェ・・・

浦上「恋の一つや二つでクヨクヨするな! 対馬さんと牛深さんが叫んでましたヨ」ハハハ


同期で勝ち組、野母崎(ノモ)さんだけ。説得力が……うん。


69第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 03:21:02.23QUx0plQw0 (9/29)

神裂「因みに……その……浦上は、何処まで?」ポッ・・・///

香焼「女教皇様!!?」エ!?


何聞いてんだ馬鹿3号……いや敬意を表して馬鹿V3さま。
浦上は苦笑して誤魔化すのみ。代わりに五和が口を開いた。


五和「いや、ウラ教えてくれないんですよー。対馬さん達上の女性陣は知ってるみたいなのにー」ジトー・・・

神裂「と、ということは!!?」グイッ!

浦上「い、いや、別にそこまでは……」アハハ・・・


というか馬鹿V3さま。興奮し過ぎです。このムッツリスケベめ。


浦上「じゃあそうですネ……」チラッ

3姉弟『ん?』

浦上「……皆が何処までイったか教えてくれたら、教えますヨ」ニコッ

神裂・五和「「っ?!」」ギョッ・・・


何処までって、自分はお話するまでと言っただろう。


浦上「じゃあ香焼は少し教えてあげる」ニコッ

香焼「え、いいの?」ポカーン・・・

神裂・五和「「えぇっ!!?」」

浦上「うん。ちょっとコッチおいで」スタッ・・・


浦上の後を追ってベランダに。
さてと、と浦上は表情を変え……まったく関係無い事を口走った。


浦上「よしよし……これであの二人から聴きだせる」ニヤッ

香焼「……へ?」ポカーン・・・

浦上「香焼、上手く演技してね。多少オーバーでいいからサ」ポンッ

香焼「え、ちょ……」アゼーン・・・


教えてくれないの?


浦上「え? あの程度で教える訳無いじゃん。嘘よ、うーそー」アハハ


……騙された。


70第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 03:35:31.03QUx0plQw0 (10/29)

浦上「それより……あの二人から何処までイけてるか聞き出すの手伝って」ニコッ

香焼「え、だって……皆知ってるんじゃないんすか?」キョトン・・・

浦上「お馬鹿ねぇ。不文律なんだから黙ってればばれない事もあるでしょう」ニヤッ


この策士め……腹黒い。土御門くらい腹黒いぞ。


浦上「じゃあ大袈裟なリアクションしてね。まずベランダで驚愕の一声。中に入ったら茫然の表情。OK?」

香焼「……何か、ムカつくけど」ハァ・・・


仕方ない。自分もあの二人が実際何処まで上条さんに近づいたかは気になる。
意を決し、一声……『ええぇっ!!』と演技。部屋の中から『ガタッ!!』という音がした。

これはもう釣れるな。


浦上「うふふ。上出来よ」クスッ

香焼「何だかなぁ……」ポリポリ・・・


腑に落ちない。
じゃあ戻ろっかと再び浦上の後を追う。その時だった。


浦上「ああ、そうそう。御褒美がてらに教えてあげる」ニコッ

香焼「え」

浦上「相手は私と同い年(中三)の男の子だよ。『何も無い』訳、無いじゃん。キスくらい迫られるわよねー」ニコッ

香焼「……」ヒュー・・・

浦上「それ以上は……内緒! さ! 行こっか」ニコニコッ!


一瞬だが、浦上が女教皇様以上に大人に見えた。

中に戻ると、馬鹿二人がモジモジしていた。まぁ気になるわな。自分も『内緒』が気になって仕方が無い。


浦上「うふふ」ニコニコッ


ただ微笑み、台所へ向かう浦上。上手いな。自分が不在の場を作る気だ。
予想通り、女教皇様と五和が詰め寄ってきた。


五和「こ、コウちゃん……」グイッ・・・

神裂「ど、如何でした……」グイッ・・・

香焼「え、えっと……」タラー・・・


演技、演技ねぇ……


71第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 03:46:40.41QUx0plQw0 (11/29)

香焼「とりあえず……吃驚っす……」アハハ・・・

神裂・五和「「……」」チラッ


麦茶を飲む浦上の方を見遣る思春期女子高生。
自分はこれ以上聞かれたら拙いなと感じ、猫の方に逃げた。

それを見計らったかの様に戻って来る浦上。


浦上「さってと。狩りの続きでも!」

五和「う……ウラ」ボソッ

浦上「んー? 何ー?」ニコッ

五和「……教えるから、教えて」ボソボソッ

神裂「くっ……い、五和……」タラー・・・


先に喰いついたのは五和。女教皇様が葛藤なさってる。
浦上は笑顔を崩さず……内心してやったりと思ってるに違いないが、大きく頷いた。


浦上「うん、いいよー」ニコッ

五和「じゃあ、ベランダに」コソッ・・・

浦上「……」ジー・・・

五和「……え?」


立たれたら自分が聞けないのだが……と思いきや、何故か動く気配の浦上。


浦上「駄目」ニコッ

五和「え」

浦上「教えるよ。でもさぁ……」


女教皇様を一視、そして……


浦上「バレちゃ拙い事でも……有るのかナ?」ニヤッ・・・

ぬこ「なぁ」コロコロ・・・

神裂・五和「「ぐっ……」」タラー・・・


凄ぇ……コイツ、えげつねぇ。


72第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 04:03:30.94QUx0plQw0 (12/29)

浦上は自分の方を向いて、一瞬口端を釣りあげた。敵に回さなくて良かったと心底思う。
一方、五和と女教皇様は何度か目合わせしていた。

そして……


神裂「い、良いでしょう」コクッ


今度は先に女教皇様が動いた。五和が軽く舌打ちし、後から頷く。


浦上「じゃあ女教皇様、先にどうぞ」ニコッ

神裂「え、えっと……では……」モジモジ・・・


さて、何が飛び出すのか期待。


神裂「か、上条当麻の家に……し、私服で……お邪魔しました」カアアァ・・・///

3姉弟『……』ポカーン・・・

神裂「ど、どうですか?」ポリポリ・・・///


どうって……


浦上「えっと……私服デートくらいって当たり前じゃないですか?」

神裂「なぁっ!!? で、デートなんて……そんな……こ、コンビニまでを散歩した程度で……」カアアァ・・・///


まだ彼の家の外に出た事が無いらしい。まぁ家の中だけってのも逆に凄いけど。
さておき、今度は五和が余裕の笑みを浮かべ浦上に告げた。


五和「私は、その……ジュースをか、間接キ、キス……された!」カアアァ・・・///

神裂「な、にっ!!?」ドキッ!!?


それだけ? ……と言いたかったが、女教皇様的に大分インパクトがあったようだ。
しかし浦上は動じない。


浦上「それって上条さんのうっかりでしょ? 私は普通に回し飲みくらいはしたけど」

神裂・五和「「っ!!?」」ガタッ!!

香焼「浦上……二人の具合に応じて、それに返す訳っすね」ハァ

浦上「うん。そですヨ」ニコニコ


となると、二人は結構踏みこまなきゃいけないと思うのだが……その前に、何処まで近づいてるかも問題だろう。
謂わば二人の出し惜しみ無しのブッチャけトークと化す訳だ。

喧嘩にならなきゃいいが、それなりに期待。


73第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 04:20:33.68QUx0plQw0 (13/29)

浦上「それから? もう終わり?」ニヤッ・・・

神裂・五和「「くっ」」チラッ・・・


さて、どう出るか。


神裂「か、上条当麻の……し、下着を!! あ、洗いました!!」カアアァ・・・///

浦上「へぇ……姉さんにしては大胆ですネ。でも……五和もそのくらいしてるんじゃないの?」ニコッ

五和「そ、そうね。任務で泊った時に……い、一緒に私の衣類も……洗ったかな!」コホンッ///

神裂「に、任務でしょう。仕方無いですね」フンッ・・・


貴様らの衣類を普段洗わされてる自分は如何なんだ?


五和「か、上条さんの目を盗んで……ベットに……」///

浦上「おっ!! 夜這ったか!?」オ!?

神裂「っ!!?」ギロッ!

五和「で、出来ないよ! そんなの! ……べ、ベットに……ゴロンって……しちゃった。シーツをギュって」///

神裂「な、なんて破廉恥な!?」カアアァ・・・///

浦上・香焼「「……」」ポカーン・・・


何、この……乙女回路全開の二人。レベルが小学生だ。


浦上「えっとさぁ……ハグくらいはするよね」アハハ

神裂・五和「「出来る訳無いでしょう!!」」カアアァ・・・///


絶対浦上から聞きたい事聞き出せないなと悟った。


浦上「ほ、他には? うっかりは無しだよ」

神裂「ひ、膝枕を……」///

香焼「気絶したからとか?」

神裂「うっ……」グゥ・・・

五和「と、トイレに……」///

浦上「鍵が壊れてて間違ったとか?」

五和「なっ……」クゥ・・・


何かこう自分からモーション掛けた事は無いのだろうか。


74第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 04:49:02.79QUx0plQw0 (14/29)

浦上「せめて腕組むとか耳掻きとか、肩揉みしたとかは?」

神裂「そ、そういえば……禁書目録の携帯カメラで……ち、近寄って撮影を」///

五和「甘いです。この前……ぷ、プリクラ……と、撮っちゃいました!」///

神裂「な……」ガーン・・・

香焼「へぇ。外に連れ出せたんすね……禁書目録抜きで」

五和「むっ……りでした」ハァ・・・


そりゃそうだ。一応彼女も、どういったレベルかは別として上条当麻に好意を持つ者。
二人の横暴は許さないだろう。


浦上「じゃあさぁ……もう一番凄いって思える事、暴露して下さい。勿論禁書目録抜きで。それに応じて考えますから」ニコッ

神裂・五和「「……」」ピタッ・・・


空気が張り詰める。暫く無言が続いたが、突然……――



神裂「上条当麻の……と、隣に座らせてもらって……か、肩に頭を乗せました!!」カアアァ・・・///

五和「上条さんの……ほ、頬を摘まんで……あ、頭撫でてもらっちゃいました!!」カアアァ・・・///



―――同時に告白した……うん。頑張った。


浦上「うん……まぁ……」アハハ

神裂(頭を……撫でられただと……)チラッ・・・ゴゴゴゴ

五和(密着して……座っただと……)チラッ・・・ドドドド


何やら嫌な予感がする。


浦上「でもさぁ……それじゃあ他の子に取られても文句無いですネ」ボソッ

神裂・五和「「っ!!」」ドキッ!!?

香焼「オマ!!?」ギョッ!

浦上「いや別に選ぶのは上条さんだけどサ……レッサーくらいとは言わないけど、もっと強引でも良いんじゃない?」


アイツは例外だ。誰にでもああしてくるから仕方ない。
自分もよくからかわれる。アニェーゼが止めてくれるので助かるが、ストッパーがいなければ暴走の限りは続くだろう。


75第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 05:11:31.25QUx0plQw0 (15/29)

さておき、上条さん。


浦上「えっとね……私は腕組むくらいの強引はしたよ」

五和「そ、そうなんだ」ヘェ・・・

浦上「まぁライバルいなかったからだけどサ。付き合う前も音楽プレイヤー一つのイヤホンで聞いたりした」

神裂「な、成程」メモメモ・・・


何時の間にか勉強会になってるし。


浦上「あと怒られるかもしれないけど……付き合う前でも、少しくらいエッチな話ならしたよ」

五和・神裂「「は、破廉恥だっ!!」」カアアァ・・・///

浦上「頭ごなしにそう言うのも勝手だけど、相手は思春期の男の子だヨ? こういう話も出来る子なんだなって思われた方がリードするっしょ」

五和・神裂「「……ふむ」」コクッ・・・


確かに、まったくエッチぃ話も出来ない相手は堅苦しいかもしれない。
そういう知識が殆ど無いなら兎も角、多少フランクな方が取っ付きやすい。

ただ、女教皇様の場合は……知ってるのか? 五和は自分の事以外は変態親父だけど。


神裂「わ、私だって……少しは出来ますよ!」フンッ・・・///

香焼「まぁ年相応興味津津ムッツリだってのは分かってま……ぁいや、何でも有りません」

五和「私は、うん……オリアナ姉御から色々聞いてるもん!」フンヌッ!!


あの人は『純粋なお付き合い』をする上で、害となる情報しか齎さないぞ?


神裂「わ、私も先の二人から色々聞かされてます!」ムンッ!

浦上「へぇ……え? 二人?」キョトン・・・

香焼「意外っすね。風紀委員さんも?」ヘェ

神裂「彼女はお付き合いしている殿方がいるそうです。予想以上に……その……大人な話も……はい」コクッ・・・///

浦上「へぇ……第4位さんじゃないんですね」

神裂「彼女は口だk……じゃなくて知識豊富ですから、参考にはなります」ウン・・・


成程。第4位は態度だけで、ウブなんだ。秘密情報ゲット。


76第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 05:45:20.60QUx0plQw0 (16/29)

兎角、これ以上は危ないと判断した自分と浦上は話を切る事にした。


浦上「じゃあ私の秘密を少し。キスはしました」

神裂・五和「「おぉ……」」スゲェ・・・

浦上「後は内緒。二人がそれ相応の情報を持ってきたら教えます。香焼もだよ」ニコッ

香焼「自分は関係無いだろ……」ハァ・・・


まったく……さて、自分はとりあえずそろそろステイルの所にでも足を運びに……―――


浦上「でも、多分香焼の方が先に恋人作るんじゃない?」サラッ

香焼「……はぁ?」ポカーン・・・


―――……意味不明。何を言ってるんだ、オマエは。
ツッコんだら負けなので、無視しようと決めた瞬間……五和も乗ってきやがった。


五和「まずその子でしょ? それから……アニェーゼ。アンジェレネ。レッサー。サーシャ……」

香焼「何言ってんの?」ポカーン・・・

浦上「Dr.ツッチーの『カミやん・シンドローム』テストで、香焼引っ掛ったもんねー」

香焼「それオマエら勝手に騒いでるだけだろ……こっちの立場になってみろ。馬鹿にされてるだけだから」ッタク・・・


アニーもアンも、レッサーも、サーシャも仲は良いけど特別な感情なんか持ち合わせない。同年代なだけだ。


神裂「そういえば……男性陣でアニェーゼとアンジェレネを略称で呼ぶのは貴方くらいですね」フム・・・

香焼「それは、まぁ……歳近いからで」ムゥ

五和「それだけじゃなくて男女問わず横暴なアニェーゼとレッサーに絡むのコウちゃんだけじゃない?」ジー・・・

香焼「いや、皆勝手に苦手意識持ってるだけだからで別に普通の娘っすよ」

浦上「人見知りのアンジェレネと寡黙なサーシャも、仕事以外であそこまで仲良く出来るのも香焼だけじゃん」ニコッ

香焼「いや、だからさぁ……」ハァ・・・


アニーとレッサーは年相応に元気娘。アンとサーシャは此方から話しかけてあげれば普通の女子。
それだけの話だろう。人が誰かと仲良くするだけで、大袈裟なのだ。


五和「いや……マイノリティに挑戦する辺りがフラグ立ってんのよ。まぁこっちとしては楽しいん―――」ニヤニヤ・・・

浦上「まだまだ増えるんだろうねぇ……しかし! 私達は香焼新たな可能性(フラグ)を探るので―――」ニヤニヤ・・・

神裂「あ、天草は一応、一夫一妻です。し、しかし、如何してもというのであれば、特例を考えて―――」コホンッ・・・


まだ言う……馬鹿1号、馬鹿2号、馬鹿V3。いい加減に……


香焼「こ、の……今日は帰らないからなっ!! 勝手にしろ!!」ガシッ!

ぬこ「にゃっ!?」ジタバタッ!

3姉妹『あ』ポカーン・・・


……出てってやる。絶対帰らない。そう決めて子猫を抱えて走り出した―――


77第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 06:04:42.67QUx0plQw0 (17/29)

 <おまけっ!>


ステイル「――……で、此処に来たと?」フゥ・・・

香焼「……」ムスッ・・・

ぬこ「にゃー」トコトコ・・・

ステイル「馬鹿だな……あのアパートは君の家だろう? 普通逆じゃないのか? 追い出すなり、何なり」ハァ

香焼「……泊めて」グズッ・・・

ステイル「構わないが、僕はずっと此処(上条宅の向いのアパート屋上)だぞ? 土御門の家にでも泊めて貰ったらどうだ?」

香焼「……いいから泊めて」グズッ・・・ウルウル・・・

ぬこ「みー」スリスリ・・・

ステイル「……」ウッ・・・

香焼「お願い」クイッ・・・

ステイル「ぐっ……寝袋は一つしか無いんだぞ。考えて物を言え!」ジジジ・・・フゥ

香焼「一緒で良いもん」グズッ・・・

ステイル「な、オマ……た、煙草臭いから嫌だとか言うだろ!」グッ・・・

香焼「言わないから……泊めてよぅ……」ウルウル・・・

ステイル「ば……馬鹿言うな! 男同士で気持ち悪い……誰かの家に泊れ!」フンッ

香焼「……ステイルぅ」ウルウル・・・

ステイル「……だ、駄目だ」コホンッ

香焼「もう……いいっす」スタッ・・・テクテク・・・

ステイル「こ、香焼?」チラッ

香焼「迷惑掛けた。ごめん……行くよ」スッ・・・

ぬこ「……なぅ」トコトコ・・・


 ――ぴゅー・・・・・


ステイル「女々しい奴……」ハァ・・・

ステイル「……行ったか。神裂に説教メールだな。教皇のくせに大人げ無い奴め」チラッ

ステイル「きちんと……寝床確保しろよ」ボソッ


78第3話――浦上「それで……二人は何処までイったの?」  香焼「ちょ、オマっ!!?」2011/03/09(水) 06:22:02.29QUx0plQw0 (18/29)

 <おまけっ!!>


浦上「あーあ。行っちゃった」アチャー・・・

神裂「少し言い過ぎましたね……」ハァ

五和「いや、戻って来るっしょ」ウンウン

神裂「だと、いいのですが……」フム・・・

浦上「いやぁ、今頃新しいフラグでも立ててるんじゃないんですかネ」フヒヒ!

五和「案外ステイルさんとかー」アハハ!

神裂「あはは。まぁステイルとも仲が良いですからね」ハハハ

浦上「もしかしてぇ……一緒の布団に二人で……とか!?」ニヤッ!

神裂・五和「「きゃー!!」」///




 <おまけっ!!?>


初春「編集長っ!! 新作は『不良イケメン神父×迷える男の娘』にしましょう!!」ガタッ!!

冷蔵庫『ふむ……よっしゃー!! 運営様からOKが出た! 明日までにシナリオ上げろ! 受け攻め交換パターンもだ!』ウウィイイイン・・・

初春「了解です! あと今週までに15pまで、ベタ・トーン作業やっちゃうんで出来ればアシ回して下さい!」グッ!

冷蔵庫『あいよ! 探してみるぜ!』ブオオオォン・・・


白井「うい……は……る?」エ・・・

佐天「何か、お花が蠢いてるよ……」ゲ・・・

固法「いい加減冷蔵庫交換しようかしら」ハァ・・・

御坂「……意外と冷静ですね」アハハ・・・


79>>12011/03/09(水) 06:30:00.27QUx0plQw0 (19/29)

はい、終了。また朝方まで掛った……次回こそ普通の時間に投稿する!

さておき、次回はアンケートの結果で決まります。


①小萌・あわきんペアに拾われる。

②黄泉川・打ち止めペアに拾われる。

③その他。


どうかご協力お願いします。


それでは感想質問意見罵倒提案リクエスト等々、コメントお願いします。それじゃあ、また次回! ノシ



80VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 06:47:12.87MVkU/sZFo (1/1)

乙!
ふぅ、長かったぜ。これでようやく寝られるw

アンケートは
③むぎのん&りこりんペアに拾われる
で。


81VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 07:07:33.51qEb+wLwDO (1/2)

乙! 初春通常運行だなww


①あわきんがアップを始めた様です!


ところで‥‥ステイル×香焼を書いても良いのよ?


82VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 07:21:08.087OmVGZxAO (1/1)

乙!今回も面白い。
アンケートは2がいいです。


83VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 07:29:56.53wwtuLPiDO (1/1)

乙!続き楽しみです!!
アンケートは2で


84VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 08:17:42.75lcmVSTdao (1/1)

③アイテムの5人組に拾われる(フレンダ・絹旗・麦野・滝壺・浜面)

絹旗とコンタクトとれるしむぎのんともコンタクトとれるので


85VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 08:42:24.88AKbQTmlDO (1/1)

乙~
リトバスネタに笑った。
アンケートは①で


86VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 08:48:21.22AuCfxniDO (2/2)

①でお願いします


87VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 09:02:46.44OaMOZO+AO (1/1)



そろそろある意味本格的にピンチな場面を見てみたいwwwwww


88VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 09:18:32.59e0ovt1WIO (1/2)

①で!

寧ろ通行止めに拾われろ


89882011/03/09(水) 09:19:34.68e0ovt1WIO (2/2)

①じゃ無くて②だぁあ!
間違えた上に連レスすまん
半年ROMってくる


90VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 10:08:11.89uFueiV9AO (1/1)

乙です
初春も帝凍庫くんも通常運営で何よりwww

アンケは①で
あと地味に>>1の書いたステイルと小萌先生の絡みとか見てみたいかも


91VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 10:42:05.06YJJqrnTAO (2/2)

①か②…だと…!?
両方で


92VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 12:04:07.894MTuu1SAO (1/1)

ねーちんはナルにゃん好き、まで読んだ


93VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 13:47:02.90O3gQb5NAO (1/1)

アイテムに拾われるのもいいけど、小萌先生とステイルの話をしてほしいから①で!


94>>12011/03/09(水) 21:15:04.87QUx0plQw0 (20/29)

こんばんわ! 今日は昨日の続きです……アンケの結果は①となりました。アイテム、打ち止め期待してた人はごめんね!

まずレス返信!

>>80
滝壺にゃんと香焼くんの絡みってほのぼのしそうだね。むぎのんは……魔女の所為で悪いイメージしか……

>>81
BLなんて書いた事ないんだもの……

>>84
絹旗はまた出すからちょっと待っててね!

>>85
香焼理樹にゃん、ステイルが謙吾役って超ピッタリ来るんだよね。

>>87
今日はピンチ来ますよー! 色んな意味で(笑)

>>88
一通さんと如何からませよう……別世界では兄貴が中間入ったからいいけど。

>>90
初春ファンの方々ごめんなさい! 小萌先生とステイルは、いいよね。ステイルはチビっ娘と上手く混ざる。

>>92
というか、ねーちんのイメージがナルガクルガだww

>>93
今回ステイルはちょこっとしか出ないかも。ごめんね。


んでもって<主な登場人物④>

・結標淡希……多分、一番香焼との絡みを期待されてる人。だけど此処では『ショタコン』とはちょっと違う路線。カミやん病抗体無し。
        霧ヶ丘女学院高等部2年特別学級。能力は「座標移動(ムーブポイント)」の大能力者。ただし「単体ジャンプ」は危険。
        呼称は……結標、結標ちゃん、淡希、あわきん、あわき。

        学園都市暗部『グループ』所属。変態集団のショタコン枠。高校には絹旗と同様、名前を置いているだけ。月詠家居候。
        元学生運動(テロリスト)のリーダーで、それなりにカリスマはある。ただしガラスのメンタルハート。アドリブ利かない。
        窓のないビルの内部に運ぶ『案内人』を務めている。アレイスター的に便利屋その5くらいのポジション。
        性格は姉御肌。年下の面倒は上が見るべきだと謳い、グループでもリーダーを主張する。でも実は海原(エツァリ)の方が上。
        守銭奴。ひっきー。友達少ない。運動しない……無意識で一方通行とイチャイチャしてる等、あまり健康的では無い様子。
        香焼くんは如何なる事やら……(以下追々付け足していきます)


・月詠小萌……学園都市の七不思議である「完全幼女宣言」その人。その見た目とは対に、教師の鑑。とある高校1年7組(上条クラス)担任。
        専攻は発火能力。他にも社会心理学・環境心理学・行動心理学・交通心理学・等の心理学の専門家でもある。
        呼称は……小萌先生、小萌、月詠先生、月詠さん、合法ロリ、山盛り灰皿(ホワイトスモーカー)など。

        色者ぞろいの上条に近い人物の中で比較的一般人な人。だが「大人の目」で上条を一番気に掛けてくれてる人でもある。
        幼女(似非)のくせに大酒豪で愛煙者。住んでる家はオンボロだが特注車を持ち、頻繁に焼肉パーティーを開き、
        煙草の高い学園都市でヘビースモーカーで有る点貧乏では無い模様。結標が払ってる手間賃を足せば、かなりのお金持ちかも。
        性格は総合して大人。時間に精確。真剣に不良少年少女に向き合い、自分の家を借宿として提供する。だけど結構お茶目。
        実は……神道月詠神社の「ツクヨミノミコト」の陰(女性)の部、巫女役としてその身に神を―――嘘です。
        香焼よりステイルとの関わりの方が気になる……(以下追々付け足していきます)


という訳で、同日の物語! 投下します!


95第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/09(水) 21:18:13.97QUx0plQw0 (21/29)

 ―――とある休日、PM05:45、学園都市第7学区、とある商店街・・・・・



さっき(第3話)のあらすじ。自分こと、香焼は意地悪な自称姉達に虐められ家出しました。


ぬこ「にゃー」ペチペチ・・・

香焼「……オマエまで連れ出しちゃってごめんな」ナデナデ・・・


冷え込んできた秋の夕暮れ。自分と子猫は商店街付近をウロウロしていた。
突発的に飛び出してきた為、携帯も財布も家に忘れてしまった。こんな事ならステイルに少々借りれば良かったかもしれない。

だが……今更ステイルの所へも、自分の家にも戻る事は出来ない。
今日は帰らない、と叫んだ以上此処で折れたらきっと笑われてしまうだろう。


香焼「アイツら……自分ん家帰ってないかなぁ。そしたら戻れるのに」ハァ・・・

ぬこ「みー」スリスリ・・・

香焼「せめてオマエのご飯くらいは用意しないとな」ニコッ・・・


自分の我が儘で連れてきてしまった。申し訳無い限りだ。

しかし……これから如何しよう。
他の潜入学徒の家には五和達が根回ししてるだろうし、土御門や上条さんにもあまり迷惑掛けたくない。
だがこのままウロウロしていては風紀委員か警備員に補導されかねないし……仕方ない。


香焼「公園の林か路地裏で一晩過ごそ」ハァ・・・


そこならばれない。治安も危険だが、自分は並の不良に負ける程軟弱ではない。
そう考え、トボトボ足を進めた……―――


96第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/09(水) 21:20:19.57QUx0plQw0 (22/29)

 ―――とある休日、PM05:55、学園都市第7学区、とある商店街、スーパーとたけけ・・・・・


 ウィーン・・・アリガトッザイヤシター・・・・・


月詠「ふんふふ、ふんふふ、ふんふーふ~ん♪」ニコニコ!

結標「小萌……特売だからって買い過ぎじゃないの? 流石に特級焼き肉セットは多いわよ……」ハァ・・・

月詠「余ったら冷凍しておけば良いんですよ。多分、賞味期限が危なくなったらシスターちゃんが処理しに来てくれるのです」ビシッ

結標「インデックスに任せたら冷蔵庫空になるわ。まったく……秋沙も秋沙よ。こんな時に来ないなんて……」ムゥ・・・

月詠「仕方ないですよー。姫神ちゃんはクラスメイトのお誕生日会ですからね」ニコッ

結標「小学生かっての……ハァ」テクテク・・・

月詠「あらあら。数少ないお友達が来てくれなくて残念ですか?」ニヤッ

結標「べ、別にそんな事思ってないもん」ムッ!

月詠「だったらちゃんと学校に行ってお友達を作る事です。友人関係は利害関係では無い立派な――」

結標「あーはいはい。お説教はまた今度受けるから」テクテク・・・

月詠「―――……んもー」プンスカッ!

結標「ごめんごめん。わたしー、こもえがー、だいすきー」ボウヨミー

月詠「心が全く籠って無い……今までで一番難しい娘なのですよ、結標ちゃんは……」ハァ・・・

結標「ゆるしてー」ニコニコ

月詠「ハァ……ん!」ピキリーンッ!!

結標「しっかし、お酒も沢山ね。冷蔵庫にまだ有ったでしょう。私呑めないのに……って、如何したの?」ヘ?

月詠「……家出気質(プレッシャー)を感じました」キョロキョロ・・・

結標「ぷ、ぷれっしゃー?」ポカーン・・・

月詠「……こっちですね!」スタスタスタ!

結標「ちょ、ちょっと! ……もう!!」ハァ・・・


97第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/09(水) 21:24:15.69QUx0plQw0 (23/29)

 ―――とある休日、PM06:00、学園都市第7学区、とある通り・・・・・




香焼「此処の路地でいいっか」

ぬこ「みー」


適当な路地を見つけた。スキルアウトが居なそうなビル裏。


香焼「……お腹空いた」クゥー

ぬこ「……なぅ」

香焼「任務だと思えば一食くらいは大丈夫だけど……携帯食とタオルケットくらい欲しいな」

ぬこ「にゃん」

香焼「オマエは僕の服の中でダイジョブだね」ハハハ・・・


久しぶりに『僕』という一人称を使った。更に幼く見えるから普段は使わない様にしている。

さておき、子猫の寝床だが自分の服の中で大丈夫だろう。パーカー裏に隠してる暗器(ナイフ)を外せば問題無い。
兎角、業務用の大きなダストボックスの横に座り込み、猫を抱えて……目を瞑った。

……虚しい。


香焼「……馬鹿姉」グズッ・・・

ぬこ「にゃー」


純粋に仲良くしている友人達を変な目で見やがって……許さないからな。
ペロペロと舐めてくる猫の温もりだけが、唯一の救いだった。


香焼「……ごめんな」ナデナデ

ぬこ「みぅ」ペロペロ


お腹が鳴る。猫も物欲しそうな目で自分を見上げてくる。
いっそ隣のダストボックスでも漁ってみようか……そう考えた時だった。


??「もしもし」

香焼「……え」キョトン

??「そこで何をしてるのですか?」


小学校低学年くらいの子供が声を掛けてきた。


香焼「何って……」タラー・・・

??「まだ小さいのに……家出ですか?」ジー・・・

香焼「ち、小さいって……人の事言えないだろ」ジトー・・・

??「失礼ですね。私はこう見えても学校の先生ですよ!」プンスカ!


嘘付け。どう見ても自分より年下だろう。最愛より幼いぞ。


98第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/09(水) 21:26:33.77QUx0plQw0 (24/29)

??「兎に角、小学生が居て良い場所じゃありません。如何してこんな場所に居るかお話聞かせて下さい」ニコッ

香焼「しょ……中学生っすよ!」ギロッ

ぬこ「なぅ」トコトコ

??「それは失礼しました。あ、猫ちゃんです」ペコッ


一転、飛び出した猫の方に近づきニッコリと撫で始める自称教師な少女。
ヤレヤレと溜息を吐きながら無言でそのやりとりを見詰めていた刹那……少女の背後からまた人が現れた。


??「小萌。勝手にノコノコ行かないでよ。袋持ってんの私なのよ?」

??「あ、ごめんなさい」

??「ったく……何? また家出少年見つけたの? それともその猫に釣られた?」ジー・・・

ぬこ「みー」キョロッ


女教皇様に負けないくらい露出が多い、大人びた感じの女性。歳は五和と同じくらいだろうか。


??「……ペット感覚じゃないんだからヒョイヒョイ拾わないでよね」ジトー・・・

??「むぅ。そんな事思ってませんよ」ムッ

??「アンタも……」ジー・・・


自分の方を睨んでくる年上の女性。


??「……こんなとこいないで、大人しく家に帰りなさい。スキルアウトが少ない所とはいえ、ガキが居て良い場所じゃないわ」フンッ

香焼「……やだ」ボソッ

??「生意気ね。折角の忠告を……痛い目見なきゃ分かんない?」スッ・・・

香焼「っ」ギョッ・・・


腰の辺りに手を伸ばす女性。何やら拙い予感。


??「結標ちゃん!」ギロッ!

??「……」ピタッ・・・

??「……任せて下さい」ジー・・・

??「……ふんっ」


どうぞご勝手に、と後ろに下がる。
何故か猫もその後を付けて行った。ビニール袋の中身に釣られたのだろうか。


??「とりあえずこんな場所じゃなんです。私の家に来ませんか?」ニコッ

香焼「え」キョトン・・・

??「生憎、特売でお肉を買い過ぎちゃって困ってるのですよー。減らすのを手伝って欲しいのです」

香焼「お、お肉?」クゥー・・・「……あ」///

??「ふふふ。さ、行きましょう。帰りがてらお話聞かせて下さい」ニコニコ


無邪気な笑み。多分、害は無い人だ。
という訳で……空腹の誘惑に負けた。猫もさっきの女性に付いていってしまったし、止むを得なくお邪魔する事にした。


99第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/09(水) 21:42:17.97QUx0plQw0 (25/29)

 ―――とある休日、PM06:10、学園都市第7学区、とある通り・・・・・



家に着くまでの間、小さな少女……もとい先生から自己紹介を受けた。

名前は月詠小萌さん。本当に高校教師をやってるらしい。
それからもう一人は結標淡希さん。月詠さん家の居候さんだとか。

自分も簡単に自己紹介し、歩を進めた。


月詠「―――……成程。お姉さん達と喧嘩をしちゃったんですか」

香焼「喧嘩っていうか……アッチが一方的に悪いんすよ。人の友達変な目で見て」ムゥ・・・

月詠「あはは……先生の教え子にも、本人の意志とは別によくフラグが立っちゃう子がいますけどねー」ハハハ


フラグとか如何とか、皆して良く分からない事を言う。


結標「ま、要は身内の痴話から逃げ出してきたんでしょ? 貴方の家なのに」チラッ

香焼「……はい」シュン・・・

月詠「結標ちゃん。言い方ってものがあるのです」メッ!

結標「はいはい。悪ぅござんした」テクテク・・・

ぬこ「みー」スリスリ


物事をはっきり言う人。だけど猫を肩に乗せてるので、今一貫禄が出てない。


月詠「ごめんなさい。結標ちゃん、ホントは良い子なんですよ」ハァ

香焼「い、いえ。別に気にしてませんから」アハハ・・・

月詠「それより、財布も携帯も忘れて出てくるなんて困りましたね……お家に連絡を――」

香焼「嫌です」キッパリ!

月詠「―――……」ムゥ・・・


アッチから謝って来ない限り、連絡なんてするものか。


結標「でも今のままじゃ如何やっても連絡取れないんじゃないの? それじゃ謝罪も聞けないじゃない」

香焼「……でも、今日は絶対許さないって決めたっす」グッ・・・

月詠「香焼ちゃん……」ジー・・・

ぬこ「なー」ペチペチ・・・

結標「……ふふっ。そういう意固地な男の子は嫌いじゃないわ」ニコッ

香焼「え」キョトン・・・


そう言って、結標さんは立ち止まり……告げた。


100第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/09(水) 21:59:32.04QUx0plQw0 (26/29)

結標「泊めてあげてもいいよ?」ニコッ

香焼・月詠「「……」」ポカーン・・・


いや、アンタの家じゃないでしょ……


月詠「ごめんなさい。結標ちゃん、謙虚って言葉を知らないんです」ハァ

香焼「え、あ、その……」アハハ・・・

結標「失礼ね。で? 如何するの? 飯食ったら出てく?」ジー・・・

香焼「……えっと」チラッ


家主さんが良しと言ってないし、それに赤の他人の女性の家に泊るなんて気が引ける。


月詠「私は構いませんよ。教師としてまだ小学7年生の子を外に放っぽり出す方がいけない事ですからね」ニコッ

香焼「小学7……でも」チラッ

結標「私が『良い』って言ってるの。子供はお言葉に甘えなさい」フンッ

ぬこ「にゃん」ペロッ

結標「子猫(この子)も外で寝かせる? まぁ畜生だから平気っちゃ平気でしょうけど」

香焼「……」ウーン・・・


些か急過ぎる。
自分が頭を悩ませている最中、月詠さんが微笑み告げた。


月詠「香焼ちゃん。では一晩私の家で考えましょう。泊るとかじゃなくて、そのお姉さん達の愚痴を聞かせてくれるだけでも良いんです」ニコッ

香焼「……むぅ」ポリポリ・・・

月詠「怒らないで下さいね? 貴方も……頭を冷やす時間が必要です。自分が一番分かっているのでは?」チラッ

香焼「……」ハァ


確かに、自分も……多少大人げ無かったかもしれない。一番年下だが。
しかし女性二人の部屋にお邪魔するのは……                   ※五和・浦上は女性としてカウントしてません。


結標「今時珍しい堅気な少年だって事は分かった。それとも……実は襲っちゃおーなんて考えてる悪い子?」ニヤッ

香焼「ま、まさか!!」カアアァ・・・///

結標「ふふっ。じゃあ決定ね」ニコッ

ぬこ「みゃー」コロコロ


悩んだ末、結局丸め込まれてしまった。


101第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/09(水) 22:23:42.14QUx0plQw0 (27/29)

《その頃……一方、香焼宅》


五和「こ、コウちゃんが何処にも居ないよーぅ!!」アワワワ・・・

浦上「五和落ち着いて。こういう時は素数を数えるの」ポンッ

五和「わ、分かった……1、2、4、8、16、32、64……」フゥ・・・

神裂「それは二の乗数です……浦上、他の潜入学徒から連絡は?」タラー・・・

浦上「ありません。土御門さんも、上条さんも見てないそうですヨ」ハァ・・・

五和「ステイルさんが見かけたのが最後です! ど、如何しよう……誰かに捕まってたら……」ギャー!

神裂「それは無いでしょう。あの子も魔術師の一人です……もしかしたら警備員に保護されてる可能性も」フム・・・

浦上「……もしかして今頃、グレてスキルアウトの仲間入りとかしてたら」アハハ・・・

神裂・五和「「っ!!?」」ドキッ・・・

浦上「(んな事する訳無いでしょww)……もしくは思い詰めて……ビルの屋上から身を……」ワー!

神裂「し、至急捜索班を準備しなさい!!」アワワワ・・・

五和「土御門さんに街の監視モニタージャック許可を取ります!」ドタバタ!

浦上「あはは……(……いやぁ。大袈裟ですネ)」アハハ・・・




《その頃……もう一方、香焼達付近のビル屋上》


ステイル「まったく世話の焼ける奴だ……ん?」ジー・・・

ステイル「いた……誰かと一緒だな……アレは『案内人』と……『あの人』か!?」エ?!

ステイル「何故、香焼が一緒に……ふむ」ポリポリ・・・

ステイル「これは神裂達よりも、土御門に連絡した方が無難だな」カチッ・・・フゥ

ステイル「……派手な行動は慎めよ、香焼」ジジジジ・・・




《その頃……まったく関係無いバイキング店》


 ガヤガヤガヤ・・・・


デルタフォース『喰い放題だー!!』ワーイ!

吹寄「黙れ!! 貴様らが主役じゃないぞ!!」コラー!

誕生日の子「あはは。まぁまぁ」ポリポリ・・・

姫神「おめでとう……小萌先生も来れば良かったのに」ムゥ

禁書「代わりに私が来たんだよ!!」バクバク!

姫神「がめついわね。まぁ淡希を放っておけないのも分かるけど……ん? 土御門くん。携帯鳴ってるわ」チラッ

土御門「とりあえず乾杯してから見るから大丈夫だぜぃ!! ほれ! 吹寄!! 音頭取るにゃー!」ワー!

姫神「……もぅ」ハァ・・・


102VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 22:29:35.21qEb+wLwDO (2/2)

やったー! 二日連続だー!


サブタイトルって、褒めてあげてm‥‥おや? 誰か来たようだ。


103第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/09(水) 23:18:03.38QUx0plQw0 (28/29)

 ―――とある休日、PM06:30、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



それから歩いて数分後……


月詠「此処です」テクテク・・・

香焼「……」タラー・・・

ぬこ「なぅ」ジー・・・


大分年季の入ったオンボロ荘だ。
固まっていた自分の背中を、結標さんに押され歩を進めた。

通路に洗濯機と物干し竿。トイレは……良かった。共同じゃないみたいだ。


結標「金有るくせにこんな家住んでんのよ」ハァ

月詠「結標ちゃん。贅沢は敵ですよ! それに守銭奴具合なら結標ちゃんの方が上なのです!」ムゥ

結標「あー、そーですねー」ボーヨミー


ムキーと唸る月詠さん。よくこの二人が共同生活出来てるなと内心苦笑した。
兎角、月詠さんの後を追い部屋に入―――


香焼「……」ウワッ・・・

ぬこ「……にゃ」ピタッ・・・


煙草臭い。


結標「すぐ慣れるわよ。ほら上がった上がった」ウイッ

香焼「は、はい……お邪魔します」テクテク・・・

月詠「はい。いらっしゃいです」ニコッ


何とも、男っぽい部屋だった。山盛り灰皿、ゴミ袋いっぱいの酒缶。


香焼「結標さん……煙草喫うんすね」チラッ

結標「私は酒も煙草も嫌いよ。全部小萌」テクテク・・・

香焼「」


何たるギャップ……改めてあの合法ロリ教師は大人なのだと認識した。


104第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/09(水) 23:47:12.15QUx0plQw0 (29/29)

一寸後……円卓にホットプレートとお肉、野菜、それから月詠さんのビールを準備し焼き肉が始まった。
因みに、子猫にはツナ缶と麦飯を混ぜた猫まんまを食べさせた。


月詠「さて、では……」パンッ

香焼・結標「「いただきます」」ペコッ


瞬間、月詠さんが肉の塊をブチ込んだ。


結標「小萌! ばらけさせろっていつも言ってるでしょ!」アーア・・・

月詠「お腹に入れば皆同じですよ」ゴクゴク・・・プハー!

結標「それじゃ火が通らないのよ。まったく……ほら、香焼くんも手伝って」イソイソ

香焼「え、あ、はい」イソイソ・・・


ドチラが保護者か分からない。
それから結標さんの手伝いを続けながら夕飯を続けた。結標さんは意外に几帳面で面倒見が良いらしい。
口調などはガサツかもしれないが、所々細かい所にも目が行く人だ。


月詠「もぐもぐ……時に香焼ちゃん」ビシッ

結標「箸で人指さない。行儀悪い……はい。コレ焼けた」ヒョイッ

香焼「(今、箸使ってないのに……皿の上にある?!) え、あ、ど、どうも……何すか?」キョトン・・・

月詠「学生証が無いので確認できなかったんですけど、学校はドチラに?」モグモグ

結標「小萌、食べるか話すかどっちかにする。あと野菜食べなさい」ヒョイッ

月詠「どうも♪」ニコッ


結標さん、母親みたいだな。


香焼「自分は、えっと……『▲▲▲学院中等部』っす」ボソッ

月詠・結標「「……」」ピタッ・・・

ぬこ「まぅ」クチャクチャ・・・


まぁ最初は皆驚く。


月詠「ほ、本当ですか!? 理事校!!?」ジー・・・

香焼「ええ、一応」アハハ・・・

結標「やだ、小萌。今までで一番トンデモ無い子拾ってきたわよ!?」ヘェ・・・

香焼「い、いや、別に普通の学生っすよ。学園都市内なのに能力開発無い点、他の学校より劣ってるっていう人もいますし」タラー・・・

結標「言い方悪いけど、頭の中弄られる側じゃ無くて……弄る方針決める側の勉強してんだから、十分エリートよ」モグモグ


毒のある言い方だが、それも一理ある。
今の発言に月詠さんは苦い顔をしていたが、それでも理事校という点は驚くに値した様だ。


105第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 00:12:16.09aUjZRigj0 (1/27)

香焼「……エリートとかそういう風に言われるのは好きじゃないっす」ムゥ

結標「そう? 変わった子ね。まぁその環境で家出しちゃうんだからかなり変わってるんでしょうけど」ヒョイッ

月詠「結標ちゃんだって御嬢様校なのに家出してるでしょう」ハァ・・・

香焼「御嬢様校?」

結標「……そうでもないわよ」フンッ

月詠「霧ヶ丘ですよ。しかも大能力者さんなのです!」エヘン!

結標「ちょ、小萌!」ンモー・・・


自分の事の様に自慢する月詠さん。
霧ヶ丘で大能力者って……何だか最愛に似てるな。きっと珍しい能力なんだろう。


結標「ふんっ……別に学校で教わる事なんか無いわよ。霧ヶ丘(あの学校)は仲良しこよしなんてのは一切無いんだから」ッタク・・・

月詠「もう……まだ意地張るんですか」ハァ・・・


何やら険悪な雰囲気。


香焼「え、えっと、月詠さんはドチラの学校に御勤めなんすか?」アハハ・・・

月詠「私ですか? ○○高校ですよー」ニコッ

香焼「え……○○って」

月詠「知っていますか? そんなに有名な高校じゃない筈ですけど」

香焼「一応……」アハハ・・・


上条さん達の学校か。


結標「ん? ……知り合い居るとか?」ジー・・・

香焼「少々、はい」コクッ

月詠「おお! 誰誰! 誰ですか!? 先生は生徒の顔名前、全員記憶してますよー!」ニコニコ!


言っていいものか……まぁ無害そうだから大丈夫か。


香焼「えっと、上条当麻さんと土御門元春さんっす」ポリポリ・・・

結標「っ……」ピタッ・・・

月詠「あらあら! 上条ちゃん達とお知り合いでしたかー! 二人とも先生の担任クラスの子ですよー!」パアァッ!!

香焼「え、あ、そうなんだ」アハハ・・・


存外、世界は狭いモノなのだと考えさせられた。


106第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 00:34:22.95aUjZRigj0 (2/27)

結標「……しかし、何処にでも出てくるわね。幻想殺し(イマジンブレイカー)は」ハァ

月詠「結標ちゃん。ちゃんと名前で呼んで上げなきゃ駄目ですよ」ンモー

香焼「っ」ピタッ・・・


何故、その呼称を……


結標「え? 駄目なの? (やっぱり……この反応……)」キョトン・・・

香焼「いや……駄目というか……」ジー・・・

結標「アイツ、自分でベラベラ言ってるけど。ね?」チラッ

月詠「そうですねー。無能力者なのに……『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)殺し』みたいな厨二ネーム自分に付けちゃって」ハァ・・・

結標「『俺の右手は異能の力なら何でも打ち消せるんだよ』だっけ? 絶対アレ希少能力よね。羨ましい」ウンウン

香焼「」

月詠「でも、少しは先生の能力開発の成果も実って……あれ? 香焼ちゃん?」


あの人は……少し自分の重要性を危惧した方が良い。


月詠「それにシスターちゃんも此処によく遊びに来ますよ」ニコニコ

香焼「い、禁書目録が?」ポカーン・・・

結標「知ってるのね。ホント、食い散らかすだけ喰い散らかして……秋沙と揃った時なんて大変よ」ハァ・・・

香焼「吸血ごr(ディープブr)……姫神、秋沙さんも?!」キョトン・・・


確か、今や吸血殺し(ディープブラッド)の異名は完璧タブーだ。危ない危ない。


月詠「姫神ちゃんも知ってるのですか! 理事校の学生さんに知ってもらえてるなんて……先生、有名人の恩師みたいですー!」キラキラ・・・

香焼「お、大袈裟っすよ。あははは……」タラー・・・

結標「……」ジー・・・

ぬこ「……にゃう」ペロペロ・・・


……この人は意外と、大物なのかもしれない。

それから暫時、楽しく食事が出来た。
月詠さんはビールを軽く5本空けてもデキ上がらないトンデモ少女。結標さんは始めの頃にくらべ、大分優しく対応してくれるようになった。
何とも……居心地が良い。新鮮である。あの馬鹿姉妹にも見習って欲しい程だ。


107第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 00:48:24.53aUjZRigj0 (3/27)

それから一寸後、食事終了。


香焼・結標「「ごちそうさまでした」」ペコッ

ぬこ「ぬぉー」ペコッ

月詠「はい。お粗末さまでした♪」ニコッ


お世話になっている手前、せめて食器洗いくらいはさせて貰わねばなるまい。
そう思って、プレートを持とうとした瞬間……


香焼「……あれ?」ポカーン・・・


プレートが消えていた。
それどころか次々とテーブルの上のモノが消えていく。何が起きてるのだ……


結標「……私の能力よ」ボソッ

香焼「え、あ……凄いっす……瞬間移動ってヤツっすか?」ポカーン・・・

結標「まぁそんなとこね。でも詳細は……な・い・しょ♪」ニコッ


狐に頬を抓まれた様だ。テーブルの上のモノが全て台所にある。
兎角、食器洗いくらいはしないと……


月詠「いいですよ。香焼ちゃん、お客様なのですから」ニコッ

香焼「いえ。世話になりっ放しで申し訳が立たないっす。せめてお手伝いくらいは」コクッ

月詠「そうですか。じゃあ水に浸けとくだけでいいです。そろそろ急がないといけないので」ウンウン


急ぐって何を? というかこの部屋時計無いし。


結標「何って、この家お風呂無いでしょ。銭湯行くのよ。銭湯」ヨイショ

香焼「あ……成程」コクッ

月詠「香焼ちゃんのお風呂セットは……既存のモノで大丈夫ですか? 必要でしたらお金貸すのですよ」

香焼「置いてある石鹸とかで大丈夫っす」コクッ

結標「パンツは?」サラッ

香焼「ぱん……え、えっと……」アハハ・・・///

月詠「結標ちゃん……デリカシー無いですね」ハァ

結標「だって私達の貸す訳にいかないでしょ? まぁそのままでも良いってんなら勝手だけど」

ぬこ「みー……」グシグシ・・・


……お言葉に甘えて、お金を借りよう。


108第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 01:13:16.00aUjZRigj0 (4/27)

 ―――とある休日、PM06:45、学園都市第7学区、とある銭湯・・・・・



ずっと一緒に居た子猫と暫しの別れを告げ、銭湯に出発した。
途中コンビニに寄り、結標さんから借りたお金で下着を購入。
月詠さんが『む、結標ちゃんがお金を貸した……だと……』と何故か驚いていた。そんなに珍しい事なのだろうか。


結標「お釣りは取っておきなさい」サラッ

香焼「え、でも、万札っすよ」ポリポリ・・・

月詠「む、結標ちゃん……明日病院に行きましょう。先生の知り合いに名医がいるのです!」アワワワ・・・

結標「失礼ね。バラで受け取るの面倒だから、後で諭吉ごと返せば良いって言ってるのよ。やるなんて言って無いわ」マッタク・・・

月詠「よ、良かった……いつもの結標ちゃんです」ホッ・・・


次の瞬間、脳天直下でチョップを喰らう月詠さん。まぁ自業自得だろう。
というか結標さんの『諭吉』って表現、生々しいな。


月詠「痛た……とりあえず、私達が最後くらいの筈なのでゆっくりどうぞです」ニコッ

結標「多分40分後くらいに玄関居るわ。合わせる気が有るならそのくらいに出てきなさい」テクテク・・・

香焼「了解っす」コクッ


そう言って、二人は先に女湯へ入って行った。
自分も男湯の方へ歩を進み、番頭さんに『大人料金』で支払った後、更衣室へ向かった。

しかし……都会の銭湯は結構高いようだ。
地元に居た頃は保護者が五十円(子供料金だからか)くらい払って入れてたような気がしたが、此処は三百円した。
後で聞いたがこれでも良心価格らしい。地方との差を感じられる瞬間だ。

さておき、自分は銭湯や温泉といった所で碌な思い出が無い。
理由は簡単。あの馬鹿姉達と悪乗りした大人(主に建宮さん)の所為である。
無理矢理、女湯入れさせられたり、覗きに行かされたりと……振り返るだけで涙が出る。

最近では、アンの裸を見てしまった時が大変だった。
悲鳴を聞いて駆け付けたアニーが圧底ブーツで股間蹴るし、サーシャがノコギリ股間に当ててきたし、レッサーが襲ってきたり……


香焼「ハァ……不幸だ」タラー・・・


誰かさんの口癖が伝染ってしまった。
まぁ今日はそんな事無いだろう。そう思って更衣室で着替え始めた。


香焼「ん?」チラッ


一人だけ、風呂に誰か居る様だ。特に気にする事でもないか。今身体流してるし、もう上がるのだろう。


109第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 01:28:38.91aUjZRigj0 (5/27)

ガララと戸を開け、中に入る。
入っていた人が上がるようで、丁度入れ違いに―――


香焼「っ」ビクッ・・・


―――建宮さん並の身体つき……


??「ん? 最後じゃなかったか」テクテク・・・


―――傷だらけ。大きな刺青……


香焼「……」トコトコ・・・

??「……」チラッ

香焼「っ」ペコッ・・・


この学園都市にも本格ヤクザ商売の人間は居るんだと、チラ見してしまった。
そそくさと逃げる様に湯の方へ向かった。


??「……おい、坊主」ボソッ

香焼「っ!!? は、はい!! (こ、声掛けられたぁっ!!?)」ビクッ!?


今の自分はまるで術式が練れない。何かされたら、あの体躯相手に太刀打ちできる訳無い。


??「……タオル、浴槽ん中入れんなよ」ニコッ

香焼「え……あ、はい。すいません……」ペコッ・・・


注意だけだった。かなりホッとする。
それからその人はさっさと着替えを終え、瓶牛乳二本片手に出て行った。
ヤクザ商売の人かと思ったが、服装がライダースだったので、喧嘩屋タイプか暴走族タイプのスキルアウトの方なのだと思う。


香焼「……怖かった」ハァ・・・


銭湯なんだから入れ墨厳禁にして欲しいものだ。心臓に悪過ぎる。
兎に角一安心し、ドップリ湯に浸かった。

たまに入る大浴場、しかも独り占めは気もち良いものだった。


110第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 01:47:53.07aUjZRigj0 (6/27)

 ―――とある休日、PM07:25、学園都市第7学区、とある銭湯・・・・・



きっかり40分後、自分は玄関口にいた。
湯冷めしない内に帰りたいものだ、と考える前に二人が出てきた。

結標さん髪下してる。さっきより大人びた感じだ。


結標「お待たせ。行きましょ」ニコッ

香焼「はい」コクッ


帰り際に瓶牛乳を渡される。
『奢りよ』と微笑まれたが『身長伸ばせよ』の暗喩にしか思えず、複雑な心境だった。


月詠「ところで香焼ちゃん」テクテク・・・

香焼「何すか?」ゴクゴクッ

月詠「お風呂の中で吃驚したでしょう」ニヤッ

香焼「ごほっげほっ!! ……え」タラー・・・

結標「あはは! まぁアレ見たら吃驚するわよねー」ケラケラ!


……知ってるの?


月詠「はい。女湯(此方)に知り合いの風紀委員さんがいたので、もしかしてー……と思ったら案の定でしたね」クスクス・・・

香焼「……まぁ、ええ。ヤクザ屋さんかと」ハァ・・・

結標「ふひひっ! ヤクザだってー! 強ち間違ってないわねぇ」アハハ!


風紀委員に、ヤクザ? 如何いう組み合わせだ……


結標「まぁあの夫婦は偶に閉館ギリギリで来るからね。旦那の身体の所為だけど」

月詠「夫婦って……大体合ってますけど」ハハハ・・・

結標「香焼くん。あの男の人には極力関わらない方がいいわ……危ない人だから」ニヤッ・・・


やっぱり、スキルアウトか何かなのだろうか。


月詠「結標ちゃん。嘘教えちゃいけませんよ。彼、今はカタギなんですからね」ムゥ

香焼「え……し、シノギの方だったんすか?」タラー・・・

結標「まぁそんじょそこらの生半可な能力者よりは強いわよ。風紀委員のエースとどっこいくらいじゃない?」

月詠「黄泉川先生に勝てる人が居たら、警備員の殆どが制圧されちゃった様なものですよ?」

結標「そうじゃない? 加え第7学区(此処ら)一帯を仕切ってるスキルアウトチームのリーダーの兄貴分って噂。おっかないわー」キャー


そういえば、そのスキルアウトチームのリーダーとは伊賀統領の御子息だろう。五和が調べ上げていたっけ。


111第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 02:05:20.75aUjZRigj0 (7/27)

結標「ま、今やあの女の私兵みたいなものだけどね」アハハ

月詠「あの女って彼女、結標ちゃんと同い年くらいですよ。あと私兵って……普通に就職活動頑張ってる男性ですよ」

結標「中卒で雇ってくれる場所、学園都市に有るのかしらね? しかも無能力者ときてる」アハハ!

月詠「……無能力者は、落ちこぼれじゃ無いんです。偏見は怒りますよ」ギロッ

結標「あは、は……わ、悪かったわよ。そんなんで怒らないでって」ハハハ・・・


この街は学歴社会ではない。能力主義だ。それは一種の選民思考。
子供達は入学当初から、そう教育されている。

それを悪と呼べるかどうかは一概に言いきれないが……しかし、自分は月詠さんの意見に賛成だ。
きっと能力とか、魔術とか、そういったものではない大事なモノが有ると思う。そう信じたい。


結標「……甘ちゃんね」フフッ

香焼「……悪かったっすね」ムッ

結標「ううん。別に悪くないわよ。貴方みたいな考えの人間が居なきゃ、世界は回らないもの」ニコッ

月詠「バランス、ですか?」フム

結標「そうね。どちらか一方よりの世界なんておかしいし、何よりつまらないわ」テクテク・・・


では、貴女はドチラなのだ……とは聞けなかった。


月詠「あの子も……良い方ですよ」ボソッ

香焼「え」キョトン・・・

月詠「良い方に、変わって来てます……今は間違えない様、見守るだけです」ニコッ・・・

香焼「……」チラッ・・・


この人は、本当に教師なのだ。こんな担任が欲しかったかも、本気でそう思えた。


結標「何してんのー。早く行くわよー」クルッ

月詠「はいはい。あ、帰りにお酒買わなきゃいけませんねー」ニコッ

結標「まだ呑むんかい……私も何か買ってこー。香焼くんも買う?」ニコッ

香焼「……ちゃんとした猫の餌、買って帰ります」クスッ


面白い人達(コンビ)だ。


112第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 02:53:11.92aUjZRigj0 (8/27)

 ―――とある休日、PM09:30、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



それから家に戻ってグダグダと、時には真面目に話をした。
可笑しく、切なく、優しく、丁寧に返してくれる二人。

あの姉達も少しは見習ってくれたら良いのに……


結標「……それは香焼くんが邪険にしてるだけよ。だからそう見えちゃうんじゃない?」

香焼「……」

結標「人間、嫌って思っちゃうと全部悪く見えるものよ。感情ってそう出来てるモノよ」

香焼「……そう、なんすかね」

結標「ええ。意外と単純に」ニコッ


ハーフパンツにタンクトップ姿の結標さんは、悟ったような話口調で自分に告げた。


結標「……小萌、寝ちゃった」フフッ

香焼「え、あ……」チラッ

月詠「すぅ……くぅ……」zzz・・・

ぬこ「みゅぅ……」zzz・・・


熟睡、横たわる一人と一匹。因みに、月詠さんは可愛らしいパジャマにお着替え済みだ。
結標さんは静かに布団を敷き、月詠さんをそっと寝かせた。ついでに猫も隣に寝かせる。


結標「私は別として、小萌は根っからの善人よ。色々言われたと思うけど、真面目に受け止めなさい」フフッ

香焼「はい……結標さんも、良い人っすよ」コクッ

結標「ふふふ、ありがと。香焼くんは……良い人『過ぎる』わね」クスッ

香焼「……そんな事、無いっす」

結標「損する程に、良い人よ。甘いったるい程にね」


違う。買い被り過ぎだ。自分はそんな善人じゃ無い。


結標「……ま、いいわ。私達も寝ましょ」


自分は玄関に近い所、結標さんは月詠さんの隣に布団を敷く。
電気を消して『おやすみなさい』と一言、そしてパーカーを脱いで床に付いた。


香焼「……」ボー・・・


居心地が良い場所。でも……


香焼「多分……此処に居ちゃいけないんだと思う」


此処は『居るべき人』の場所。自分の場所じゃ無い。

……明日帰ってからキチンと話をしよう。誰が悪いとかじゃなく、腹を割って、言いたい事をぶつける。それだけだ。


113第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 03:35:38.02aUjZRigj0 (9/27)

疲れた。目を瞑って……ゆっくりと……―――


香焼「っ!?」ビクッ・・・


―――そう考えた刹那だった。身体に掛る重み。目線を胴体に向ける。そこには……


結標「……しー」スッ・・・

香焼「む、結標、さん……っ!?」ドキッ・・・


ゆっくりと、自分の身体を這うように、顔を近づけてくる。


結標「小萌が起きちゃう……」スッ・・・ピタッ

香焼「な、何を……」ドキッ・・・

結標「……何だと思う?」ニコッ・・・


面妖な笑み。


結標「驚かないで……私、貴方の事……気になるの」ペタッ・・・

香焼「結……標……さん……」ドキドキ・・・

結標「軽い女だと思わないで……誰でもって訳じゃないから……」ニコッ・・・

香焼「いや、ちょ……何で……」ゴクッ・・・

結標「香焼くん……貴方は優し過ぎる……そう言ったでしょう」ペタッ・・・


只管身体に触れてくる結標さん。


結標「甘い男に……甘えたくなる女だっているわ。その甘さ……優しさに酔い痴れたくなる」クスッ

香焼「だ、だからって……貴女も、自分も……全然互いの事知らないのに……」グッ・・・

結標「だから今から……『知り合い』ましょう……そういう事よ」ニコッ

香焼「そ、んな……自分は、まだ、そういうの……っ!!」ビクッ!?

結標「ふふふ。『そういうの』って、なぁに? おマセさん」グィッ・・・


徐ろに服の中に手を入れてきた。これは……拙い。こんな事されたら、思考が……


結標「緊張してるの? こんなに勃(な)ってるのに? 変態さんね」スッ・・・

香焼「おかしいっすよ、結標さん……好き合ってる訳じゃ……無いのに……っ」スッ・・・

結標「淡希って、呼んで……好きじゃ無くても人は抱けるのよ……こう見えても私初めてなの……お相子よ」ニコッ・・・

香焼「なら、尚更……」ギロッ

結標「もう、黙って……ん……」グッ・・・


ズボンの中を弄(まさぐ)る結標さん。声を出すか、突き飛ばすしかないのか……そう考えた瞬間―――


114VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/10(木) 03:39:55.785Nr6Z+zDO (1/2)

!!? パンツ下ろしたぞっ!


115第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 04:09:55.87aUjZRigj0 (10/27)

香焼「っ?!」ギョッ!?


―――握られた。


結標「ふふっ……立派なモノね」クスッ・・・

香焼「結標……さん……」ビクッ・・・


―――ナイフを。


香焼(抜かった!!)シュッ!

結標「動くなッ」シャキッ!!

香焼「ぐっ……」ピタッ・・・


ズボンの中のガーターベルトから主戦用のナイフを奪われた。
そして自分の喉首にそれを押し付ける結標さん。


香焼「どう、して……」グッ・・・

結標「上着にダガーナイフ22本、煙玉3個、コンバットサバイバル1本。ズボン内にダガー16本、レイピアナイフ2本……他諸々」ギロッ

香焼「くっ……」

結標「幻想殺し、土御門、姫神に過剰反応……『こっち』側にいて、疑わない訳ないじゃない」ニヤッ・・・


という事は……


結標「そうね。同業者か如何かは知らないけど……『似た人間(裏っ側)』よ。甘ちゃん坊や」グッ・・・

香焼「な……ま、待って下さい。自分はそんな――」

結標「小萌に聞かせられない。外出るわよ」クイッ・・・

香焼「―――事、を……―――」


瞬間、天井が……―――……月夜の空に変わった。


香焼「―――っ……瞬間、移動(テレポート)か!!?」ドンッ!!


背中から地面に落ちる。肺から嫌な息が漏れた。
落とされたのは玄関側の庭の様で、月詠さんの部屋からゆっくり、結標さんが出てくる姿が見えた。

自分を見下しながら歩み寄って来る彼女。手には消音器(サイレンサー)付きの拳銃に……懐中電灯の様なモノ。


香焼「……拙い、な」ゴクッ・・・


逃げる気は無い……というか、今出来得る術式で逃げ切れない。
説得するしかないと腹を決め、服装を正し、結標さんが近づくのを待った。


116第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 04:42:51.82aUjZRigj0 (11/27)

結標「……逃げないのね」カツカツ・・・

香焼「結標さん、話を聞いて下さい!」

結標「動かないで。穏便に済ませたいのはお互い様でしょ?」カチャッ・・・


相当頭に来てるらしい。此方からの主張は全部切られるだろう。質問等、順を追って説明しながら説得せねば納得しまい。
ゆっくりと近づいてきた結標さんは自分に膝立ち、両手を頭の後ろに置くよう指示。そして……『尋問』を開始した。


結標「所属、目的、仲間の数を言いなさい」グイッ

香焼「……」グッ・・・

結標「……此処で死ぬ?」スチャッ・・・

香焼「その前に、教えて下さい……」

結標「私の質問が先よ……答えろ!」ドンッ!

香焼「ぐっ!!」ドサッ!


押し倒され、馬乗りされた。銃口は突き付けられたままである。
質問に答えてしまってはいけない。何とか自分のペースに持って来ないと……

学園都市の『暗部』に触れてしまった場合、まずは土御門に指示を仰ぐ。鉄則だ。


香焼「つ、土御門を、知ってるんすね?」ゲホッ・・・

結標「あの道化師が如何かした? 関係無いでしょ?」ギロッ・・・

香焼「か、彼は……貴女の味方っすか? それとも……」


賭けだった。此処で『ノー』と言われれば……鋼糸(ワイヤー)で自分の首を掻っ切る。


結標「……どっちでもないわ。利害が一致したら仲間かもしれないし、逸ぐそうなら敵よ」

香焼「な、なら……彼に連絡を取って欲し―――ッッ!!」ビクッ!!


手の甲に鋭い痛み。


結標「自分のダガーで切られるのは痛い?」ニコッ・・・

香焼「む、結標さん……お願いっす……話を聞い―――ぁッ!!」グッ・・・

結標「ふふっ……利口なのね。大声上げたら鉛玉が飛んでくるって分かってるんだ」スチャッ・・・


完全優位の笑み。もはや嗜虐心と言っても過言ではない表情を浮かべ、自分を足蹴にする。


結標「あのね……貴方みたいな人が好きなのは嘘じゃ無いわ。でもね……運が悪かったの」グッ・・・

香焼「ッ……ゲホッゴホッ……やめ、て」グゥ・・・

結標「家出、というのは嘘じゃないわね? でも『仲間割れ』って言い方が正しいかしら? どっちにしろ……」スッ・・・


月と結標さんの頭が被さる。そして――


結標「香焼くん……貴方は私の数少ない『日常』に踏み込んだ『異形(イレギュラー)』……普通の子なら歓迎したけど……残念だわ」ギロッ


――歪んだ心を暴露した。


117第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 05:03:33.02aUjZRigj0 (12/27)

結標「小萌はね……小萌だけが、今の私の『日常』なの」フッ・・・

香焼「そ、んな……」

結標「そこに『異形』は要らない……例え一時の同僚(土御門)であっても、必要無い」ギロッ

香焼「か、彼は月詠さんの生徒で! ――ッッ!!」ザッ・・・

結標「『裏』のアイツは必要無いって事よっ……幻想殺しも『上条当麻』であるなら構わない」


この人の中心は自分では無く……月詠さん(あの人)なのか。


結標「いいえ。私が中心よ……ただ中心は二つ有る。『私(裏)』と『小萌(表)』……分かる?」

香焼「……っ」

結標「小萌が浮浪児拾ってくるのは構わない……でも貴方みたいな『危険な子』は駄目なの!」ギロッ・・・

香焼「違う……自分は、本当に……ただ普通に家出を」グッ・・・

結標「例えそうでも……もう遅いわ。知ってしまったもの」カチャッ・・・


顔を近づかせてくる結標さん。


結標「貴方に残された術は二つ。一つは全てを吐き、二度と此処に現れない事。もう一つは……」スッ・・・


態々ご丁寧に、自分の短刀を首筋に当てる。


結標「死、よ」グイッ・・・

香焼「っ」ゴクッ・・・


軽く血が流れた。この人は本当に『人を殺せる』人だ。
天草にはいない……本気のステイルやアニェーゼと同じ眼をしている。


結標「さぁ……答えなさい!」ググッ・・・

香焼「っ」ハァ・・・ハァ・・・

結標「第一、仲間の下から逃げてきたんでしょ? だったら簡単じゃない……それで生き残る。ね?」ニコッ・・・

香焼「そ……」ハァ・・・ハァ・・・

結標「好きなのは嘘じゃ無いって言ったでしょ。出来れば殺したくないわ……答えなさい。具合によっては専属の間諜にしてあげてもいい」ニコッ


甘言。短刀を持つ手とは別に、他方で頬を撫でる。一瞬だが先の『情事紛い』が思い出された……


結標「そうね……もしかしたら、『良い事』の続き、有るかもよ? ……答えなさい」グイッ・・・ニコッ


ナイフと情事。自分は……―――


118第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 05:33:23.73aUjZRigj0 (13/27)

香焼「ははは……素敵なお誘いっすね……本当っすか?」フゥ・・・

結標「……ええ。まぁ処女を上げるに値するかは別だけど二、三番目のペットとしてなら――」



―――お断りだ。糞売女(No,Bitch!!!)―――



結標「――ッ!!?」クッ!!


コイツは近づき過ぎた。この(0)距離なら能力云々関係無い。咄嗟に手首を掴み、ナイフを叩き落とす。
慌てた結標は急いで拳銃を掴み、もう躊躇わず引鉄を握ろうとする。


香焼「やらせるものかよっ」シュッ!

結標「っ……ワイヤー!?」グイッ・・・


手首に鋼糸を巻き付け、目標を逸らす。
放たれた火花(マズルフラッシュ)で一瞬自分の動きが止まったが、銃弾は顔面を逸れ地面に突き刺さった様だ。
そこで勢いを止めず、鋼糸を引っ張り結標の身体を地面へ薙ぐ。
結標も拙いと察し、銃を滑らせワイヤーが掛って無い逆の手に持ち替えた。そして……


香焼「っ!!」グイッ!!

結標「っ!!」カチャッ!!


状況は……逆転。自分が馬乗りに。
しかし相手は銃を腹部に立て、自分は短刀を胸部に突き立てる形で止まった。これでは、均衡。


香焼「仲間は、売れない……お願いします。大人しく帰りますから……此処は引いて下さい」ハァ・・・ハァ・・・

結標「……引鉄を、引くわ」ギロッ・・・

香焼「自分は刺しません。でも自分が死んだら……自分の意志とは関係無しに、体重で貴女の心臓にナイフが刺さります」グッ・・・

結標「……自分の意志では殺しはしないつもり? ホント……トんだ、甘ちゃんね」フゥ・・・ニコッ


自分も、この人は嫌いじゃ無い。傷つけたくない。


香焼「自分達が、死んだら……一番悲しむの……誰っすか?」ギュッ・・・

結標「……」ジー・・・

香焼「月詠さん、でしょ? 結標さん……やめようよ……」ポロポロ・・・

結標「……香焼くん」グッ・・・


武器を、捨てる。無抵抗。


結標「っ……甘過ぎるわ。何で武器捨てるのよ……何で泣くのよ……」カチャッ・・・

香焼「死にたくないし……殺したく、ないっす……お願い……」ポロポロ・・・

結標「……貴方は……裏(こっち)に居るべき人間じゃ無いっ!! 優し過ぎるわっ!!」ガチャッ!!


多分、平常心を失った自棄のベクトル違い。自分は無気力に、結標さんは……武器を振うしかなくなった。

銃声。

銃弾が自分の腹へと―――


119第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 05:53:47.21aUjZRigj0 (14/27)

―――……突き刺さ、らない。何時までも、痛みが走らない。

ふと下を見ると、驚愕した表情の結標さん。手には……銃が無い?


香焼「……え」キョトン・・・


刹那―――身体が浮き……地面に叩き付けられた。今日二度目の衝撃。折角食べた焼き肉が飛び出そうになる。
やったのは、結標さんじゃない模様。となると、第三者。


??「いやぁ……ホント、困ったもんですね」ハァ・・・


誰かに組伏せられている状態で、顔を上げる。
玄関の方から自分より二、三程年上そうな男性が歩み寄ってきた。


??「結標淡希……大人げ無さ過ぎです。冷静さを欠いては事は上手く運べませんよ」ニコッ・・・

結標「海原……ぐっ!?」ドサッ!

香焼「結標さん!!」ギロッ!


彼女も何者かに抑えられた様だ。事態が見えない。如何なってる……
『海原』と呼ばれた男性は此方に歩み寄り、屈託の無い笑顔を崩さず話し始めた。


海原「君も……裏の人間に有るまじき行為ですね。香焼――。まぁ結果的に貴方の冷静さで一大事は避けられましたが」ニコニコ・・・

香焼「っ……何故、自分の名前を……」ギロッ・・・


暫時無言。その後『離せ』と一言。自分から重みが消えた。
武器一切を没収され、その場に立たされる。結標さんも同じ状況の様だ。


結標「海原……アンタっ!!」ギロッ!!

海原「おっと、怒られるのは筋違いです。罰せられるべきは貴女であって、僕ではありません」フゥ

香焼「え、と……」チラッ・・・

海原「香焼さん。キチンと順を追って説明するのでご安心を……まぁ先に纏めを言ってしまえば、土御門の指示です」ニコッ


それを聞いて安堵する。良かった……何とかなったようだ。
ただ、結標さんはまだ不服なご様子。仕方あるまい……私怨とはいえ、殺し合いを止められてしまったのだから。


120第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 06:08:58.07aUjZRigj0 (15/27)

海原という男は、ボソボソ無線越しに命令を出し、その後また自分達の方へ向き直った。
自分達の背後に居た人物……女性二人も少し離れた所に移動する。


結標「……何時から妹達(シスターズ)はアンタの私兵になったのよ」ギロッ

海原「なぁに。暇だと言うので雇ったまでです。費用は土御門経由……香焼さんの『お姉さん達』払いですから」ニコッ

香焼「え……」ポカーン・・・

海原「順を追って話すと言ったでしょう。まずは……―――」


つまり、こうだ……

①自分が出てった後、馬鹿姉共が大捜索。

②ステイルが自分発見。しかし月詠さんと結標さんが一緒なのを見て、土御門に指示を仰ぐ。

③土御門、私用により動けず。海原にお願いする。

④海原及びサポーター、自分達を監視。

⑤問題勃発。

⑥結標さんの自棄が度を越したので、介入。

……という事らしい。


海原「―――……以上です。香焼さん。お姉さんやマグヌスさん、土御門に感謝して下さいね」ニコッ

香焼「……はい。態々お手数お掛けしたっす。申し訳ありません」ペコッ・・・


さて、と結標さんの方へ向き直る海原さん。
面倒臭そうに携帯を取り出し、結標さんに渡した。


結標「……何よ」ジトー・・・

海原「出て下さい。これは『強制』です」ジー・・・

結標「……」スッ・・・


息を飲み、携帯を耳に当てる。


結標「……誰?」ボソッ・・・


『誰……じゃねぇよ、大馬鹿女郎っ!!! 何仕出かしてんだこのタコっ!!』ガアアァッ!!


結標「ッッ!!?」キーン・・・


声で分かった……土御門だ。


121第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 06:33:49.62aUjZRigj0 (16/27)

結標「ちょ、ちょっと待ってよ……何でアンタに怒られなきゃいけない訳?」タラー・・・

土御門『黙れ阿呆!! 香焼を殺しかけた? 素性も知らないくせに? バッカじゃねぇのか!!』ガミガミ!!

結標「うっ……」ダラダラ・・・

土御門『別にソイツの貞操を喰らうくらいなら大目に見れたが、殺生沙汰は「戦争問題」になんだよ! 駄阿呆!!』ガーガー!!

結標「こ、戦争問題ぃっ!!?」ドキッ!!?


口を丸くし、無言になる結標さん。


土御門『テメェが詳しく知る必要は無ぇがなぁ……ソイツはテメェが良く案内するスカシノッポの不良神父のダチで……』イライラ・・・

結標「……」ゴクッ・・・

土御門『更に超能力者級のバケモノ(聖人)がトップを務める組織の一組員だっ!! しかもそこの大本は「国」だぞボケナスッ!!』ダァッ!!

結標「げっ……」チーン・・・

土御門『加えて、そのバケモンの弟分だ!! 聞いてんだろ本人から糞っタレがっ!!』シッツ!!

結標「」


完全に固まった。


土御門『ったく……人が楽しく宴会やってる最中に騒がせやがって……』ギリリ・・・

結標「……ごめんなさい」シュン・・・

土御門『カミやんと姫神にばれた時は「俺(私)が探しに行く!」とか言って大変だったんだぞ? マジ勘弁してくれよ……』ハァ・・

結標「……すいませんでした」シュン・・・

土御門『兎に角、テメェの処遇は後だ……先に香焼に変われ』ピリピリ・・・

結標「……はい」トボトボ・・・


打って変わって泣きだしそうな顔で携帯を渡してくる結標さん。こってり絞られた様だ。
多分、自分も怒られるだろう……


香焼「……変わりました。香焼っす」スッ・・・

土御門『三つ……激怒と謝罪と忠告だ』ボソッ

香焼「はい……」

土御門『まず一つ目だが……一介の教徒が出しゃばった真似すんなボケカス。俺(都市内最終指揮系統)まで迷惑掛けんじゃねぇダアホ』ギリッ

香焼「っ……すいません」シュン・・・

土御門『しかも神裂達との痴話喧嘩たぁフザケやがって……当事者全員減法じゃボケ。覚悟しとけ』ハァ


此処まで柄の悪い口調の土御門は初めてだ。相当怒らせてしまった。


122第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 06:50:44.30aUjZRigj0 (17/27)

土御門『まぁ後は神裂達とキチンと話付けろ。ステイルには感謝しとけよ? 見つけて無かったら大変な事だったからな』ッタク・・・

香焼「はい。分かってます……」

土御門『じゃあ二つ目だが――』


コホンっと咳払い。そして……


土御門『――本っっっ当にっ! 申し訳無いっ!! そこの変態痴女が迷惑を働いたっ!!』ニャー!!

香焼「え、ええぇっ!!?」キョトンッ!?


一転、口調がいつもの通りになる土御門。


土御門『いや、マジですまないですたい。ただのショタコンだと甘く見てたら、狂ったショタコンだったみたいだぜぃ』ハァ・・・

香焼「しょ、しょたこ……な、何すか?!」ヘァ?

土御門『ふむふむ……そうだなぁ。じゃあ詫びとして、都市に居る間はソイツの事好きにして良いにゃー』フヒヒ!

香焼「な、何言ってんすか!?」ポカーン・・・

土御門『だーかーらー! 不貞と無礼の御詫びに香焼ちゃんの従者にでもしちゃって良いぜよ? 何なら堕天使セット着せてもOK!』ククッ・・・

香焼「」


駄目だ。『いつもの土御門』だ。話にならない。


土御門『ま、お好みのプレイ云々はさておき……自分のケツは自分で拭かせる。勝手にするといいにゃ』ハハハ

香焼「……分かりました」コクッ

土御門『うしっ……じゃあ三つ目だがな、最重要』


息を飲む。


土御門『……天草抜けるか?』ボソッ

香焼「っ」ドキッ・・・

土御門『いや別に潜入学徒程度なら如何でも良いと放っておいたがよぉ……オマエ、いつか死ぬぞ?』

香焼「……」ゴクッ・・・

土御門『ステイルやソイツらにも言われてると思うんだが、甘い。弱いくせに甘い』


淡々とした声……自分が一番分かってる。


土御門『これもオマエの勝手だがな……何言っても聞かねぇんだろうから最後に……割り切れ。じゃないと、死ぬ』

香焼「……忠言、どうも」ギリッ・・・

土御門『ん……じゃあ結標に戻せ』


言われなくても……分かってるっての……遣る瀬無い気持ちのまま、携帯を結標さんに渡した。


123第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 07:05:50.82aUjZRigj0 (18/27)

 ―――とある休日、PM10:00、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



結標さんは土御門との電話を、まだ続けていた。
土御門の一言一句に顔色をコロコロ変え、結果的にグロッキーになっている。


海原「しかし……面白い人ですね、貴方も」ニコッ

香焼「え、あ……何とも」アハハ・・・

海原「あの状況下、ワイヤーだけで乗り切るとは中々」クスッ

香焼「言っちゃ悪いっすけど……結標さん、驕ってましたから」ポリポリ・・・


負けたり、逆転される者の大半は優位から来る『驕り』だ。


香焼「でも……貴方は、一体?」

海原「んー……そうですね。今は彼女達の同僚ですが」チラッ・・・

香焼「結標さん『達』?」ジー・・・

海原「此方も事情があるので詳しくは教えられません。ですが……昔の所属なら教えましょう」ニコッ

香焼「昔?」エ?


意外な言葉を耳にした。


海原「……翼ある者の帰還」ニヤッ

香焼「っ!!? じゃ、じゃあ……」ギョッ・・・

海原「ええ……『貴方達寄り(魔術師)』です」ニヤッ・・・


この街に、そんな人間が居たとは……


海原「土御門には内緒ですよ。ばらした事ばれたら、怒られちゃいますから」フフッ

香焼「え、あ、はい……」コクッ

海原「ははは。僕も貴方みたいな人間は嫌いじゃ無い……『彼』に似てるからかな?」クスッ


誰の事か分からないが、気に入られてしまった。ちょっと不気味。


香焼「えっと……二、三疑問を聞いて良いっすか?」

海原「ええ。僕の事以外と、答えられる範囲であれば」ニコッ


結標さんの電話がまだ終わりそうに無いので、質問を開始した。


124第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 07:45:37.58aUjZRigj0 (19/27)

香焼「まず……この人達はお仲間っすか? その、どう見ても……」チラッ・・・

海原「……超電磁砲。御坂美琴さんだと?」クスッ

香焼「はい」コクッ・・・


先程から気になっていた女性達。その容姿は超能力者第3位、御坂美琴その人だった。


海原「……量産型能力者計画(レディオノイズけいかく)、妹達(シスターズ)という単語に聞き覚えは?」

香焼「え、えっと……少々。確か絶対能力進化計画(レベル6シフト)の……」チラッ


報告書で読んだ覚えがある。
簡単に言えば絶対能力進化計画とは、その名の通り絶対能力者を作る為の非人道的計画。対象は第1位、一方通行(アクセラレータ)。
その実験動物として宛がわれたのが第3位、超電磁砲(レールガン)のクローン……欠陥電気(レディオノイズ)。

ただしこの計画は『とある人物』によって阻止された。


海原「ええ、大体合ってます。流石隠密性に長けた天草式十字凄教ですね。情報収集力も素晴らしい」ニコッ

香焼「……それで、何故海原さんと共に?」

海原「暇だったのですよ。まぁ後は……貴方達を止める為に、中途半端な人間では無理ですからね。彼女達くらい強くないと」フフッ・・・


妹達の欠陥電気は、確か異~強能力者(レベル2~3)程度だった筈だが。


海原「能力強度(レベル)は、でしょう? 現に貴方を抑えた彼女は体術のスペシャリストだ」スッ・・・


ドライバーグローブを付けた少女。


海原「珍しく都市に来ていたので協力を仰ぎました……5's(ファイズ)!」

御坂5's「先程は御無礼を、とミサカは謝罪します。検体番号(シリアルナンバー)は15555号です、とミサカは簡単に自己紹介します」ペコッ

香焼「ど、どうも……」コクッ

御坂5's「貴方は筋が良いのに勿体無い……兎に角今は身体を作る事でしょう、とミサカは冷静に貴方の武道プランを述べてみます」

海原「彼女は妹達の中では珍しく肉体派専門なんです」


珍しくって……クローンなのに一人ひとり違うのか?


御坂5's「クローン故(ゆえ)ですよ――」

香焼「え」

御坂5's「――僅かな誤差であっても自己唯一(アイデンティティ)を探そうと努力するのですと……ミサカはしみじみ説明します」フフッ


アイデンティティか……何やら難しい話だな。


125第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 08:17:22.03aUjZRigj0 (20/27)

海原「それから結標(彼女)を抑えてたのは……そこの御坂丸」スッ


都市製のライフルを肩に掛け、頭を下げてくるミサカ……丸さん?


御坂丸「ど、どうも。検体番号10039号です、とミサカはたどたどしくに自己紹介します」ペコッ

香焼「ど、ども」ペコッ

御坂丸「え、えっと、その……ええぃ! ショタレンジャー共、黙れ!! とミサカはMNW内と現実がゴッチャで……あわわ!」フギュゥ・・・

香焼「……」タラー・・・

海原「あはは。彼女達は個体間独自のネットワーク持っているんです。多分、貴方の事が話題になってるんですよ」フフッ

御坂5's「はははは……そうですね、とミサカは身内(ミサカ)の恥を嘆きます」ハァ・・・


不思議な人達だ。こうして見てみると同じ顔でも違く思えてきた。


香焼「え、えっとじゃあもう一つ、質問なんですが……」

海原「はい」コクッ・・・

香焼「……自分が撃たれそうになった時、何が起こったんすか?」

海原「ああ……それですか」クスッ


結標さんも唖然していた。確かに銃声はしたのだが……撃たれてない。何故だ?


海原「えっとですね。あの時は僕と、もう一人が射撃の準備をしていました」

香焼「しゃ、射撃!?」ドキッ・・・

海原「はい……最悪、銃を狙えない角度なら僕が彼女を撃ってたんですがね……『アッチ』が丁度良いポジションに居て良かった」フフッ

香焼「アッチって……」エ?

海原「……スネーク、戻ってきて良いですよ」Pi!


二件ぐらい先のアパートの屋上に向き、無線越しに呟く海原さん。
一寸後……ライフルを持って、他の二人とは違いバンダナを巻いたミサカさんが歩いてきた。


海原「今日5'sと御坂丸を呼んで貰えたのは彼女の御蔭です……スネーク」ニコッ

御坂蛇「検体番号17600号……とミサカは簡潔に自己紹介を終えます」ペコッ

香焼「ど、うも……」タラー・・・

御坂丸「プ、17600号(プロスネーク)……もう少し愛想良く出来ないのですか? とミサカはぶっきら棒な貴女(ミサカ)に呆れてみます」ハァ

御坂蛇「……」ギロッ・・・

御坂丸「ご、ごめんなさい……とミサカは謝罪します……い、10032(妹)! ヘタレとか言うな!」ムキー!


成程十人十色といった訳か。


126第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 08:36:45.51aUjZRigj0 (21/27)

兎角、感謝せねば。


香焼「えっと、17……」ウーン・・・

御坂5's「17600。長かったら『スネーク』でも可です、とミサカは寡黙な彼女の代わりに説明します」

香焼「す、スネークさん。ありがとうございました」

御坂蛇「師匠(その人)に頼まれたのでこなしたまでです。報酬もキチンと頂くので悪しからず、とミサカは要点だけを告げます」サラッ

香焼「あ、あはは……」タラー・・・

海原「まったく……スネーク。お金はいつも通り口座に振り込んでおきますから安心を」

御坂蛇「トンだ……茶番でしたねとミサカは最後にそこのガキに呆れながら、去ります」テクテク・・・

香焼「なっ!?」ギリッ

海原「ま、待って! ……すいません。あの子はいつもああなんです。許してやってください」ハァ・・・


茶番と言われて、良い気はしない。


御坂5's「17600号の師匠(スネーク・マスター)……ミサカ達もそろそろ、とミサカは事の終わりを判断したので」ペコッ

御坂丸「か、勝手に安価すんなし。アドレスなんて聞けるか馬鹿共!! え、えっと……ミサカも、とミサカは走って帰りまーす!!」ウワー!

海原「ええ。御苦労さま」ニコッ


こうして三人の妹達は消えて行った。さて……こっちはっと。


結標「」


蒼い顔の結標さんがいた。


海原「ククク……これはまぁ」フフッ

結標「」スッ・・・

海原「電話ですね。はいはい――ええ、それは――ふふふ! 貴方も意地が悪い――はい。分かりました――では後日」Pi!

香焼「あの……土御門は何て?」チラッ

結標「」フルフル・・・

海原「先程、香焼さんが聞いた通りですよ」ニヤニヤ・・・


と、いうと……


結標「ご……ご、ご……ごしゅ……ご……」プルプル・・・

海原「ほらほら。ちゃんと言わなきゃ大変な『問題』になりますよ?」クスクス・・・


嫌な予感が……


127第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 09:12:15.66aUjZRigj0 (22/27)

結標「ご……ごしゅじ、ん……さま」ウルウル・・・

香焼「……・・・・・・・・・・・・はぁ?!」ポカーン・・・


意味不明。海原さんだけがニヤニヤしてる。


結標「ご、ごご……ごめんなさい。香焼く……ご主人、さま……不躾な、わ、わたくしめに……お、お、お仕置きを……くだ、下さい」グズッ・・・

香焼「」

海原「ぷっ……妹達も残すべきでしたね。こりゃ傑作だ」ククク・・・

結標「海原、さん……今日は、迷惑を掛けて悪かったですねぇ……マジ、帰りやがって下さい。この……出刃亀野郎、様……」グヌヌ・・・

海原「ふふふ。ええ、二人っきりのお仕置き現場に他者は不要ですからね」ププッ・・・


つまり……え?


海原「ショタコン、ショタに喰われるとはこの事……良かったですね。結標さん」プフー!

結標「ショタコンじゃないって、言ってるで、ございましょ……この、ストーカー様……マジ……覚えてなさい……でございますよ」ギロロ・・・

海原「はいはい。と、いう事で……香焼さん。その貴方専属従者『あわきん』を宜しくお願いしますね。では!」シュンッ・・・

香焼「はい? ちょ、ちょっと!!?」キョトン・・・


土御門の戯言……マジだったんだ。というか、今二人きりにされると……


結標「……」ウルウル・・・


今にも泣きだしそうな結標さん。如何しよう。


香焼「え、えっと……その……」タラー・・・

結標「……うぇ」グズッ・・・

香焼「な、泣かないで! 結標さん、悪くないっすから!! 自分も、この通り元気だし!」アハハ・・・

結標「……」ウルウル・・・

香焼「も、勿論従者とか何とか意味分かんない事もしなくて良いっすからね。そう! 事故っすよ! 事故!」アタフタ・・・


何とか収ま―――


結標「うわあああぁんっ!! こんな年下に同情されるなんてぇっ!! 私の馬鹿ああぁっ!!」ビエエエエェンッ!!


―――らないっ!!


128第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」 2011/03/10(木) 09:27:56.20aUjZRigj0 (23/27)

何とかしないと。


香焼「む、結標さん!! 落ち着いてよ……大声上げたら近所迷惑だよ」シー!

結標「ウワアアァンッ!! またドジったよーぅっ!! 完璧ぶってやった結果がコレよっ!! 普通にアホじゃないっ!!」ウガアアァッ!!

香焼「こ、今度はキレた……じゃなくて、静かにっ」アタフタ・・・

結標「何よ……笑えば良いでしょ!! 惨めでしょ! 憐れでしょ! 無様でしょ!」ウワーン!


面倒臭ぇ……先の冷静な結標さんは何処に行ったのだ。これじゃ五和の暴走した時レベルだぞ。


香焼「わ、笑わないから。結標さんは月詠さん為に動いたんだよね。だったら笑えないし、怒れないよ」ニコッ

結標「うぅ……ホント?」グズッ・・・

香焼「ホント、ホント」アハハ・・・

結標「でも……私、香焼くんにいっぱい酷い事しちゃったわ……」ウルウル・・・

香焼「だ、大丈夫。慣れてるっすから……ただ命懸けたり、貞操懸けたりするような真似はしちゃダメっすよ」ジー・・・

結標「ごめん……なさい」シュン・・・


調子狂うなぁ。


香焼「と、とりあえず、部屋に戻るっす。寒いでしょ。自分靴履いて無いし……結標さんも……その……」フイッ・・・///

結標「え……あ」カアアァ・・・///


服が破れたりと、さっき以上に際どい恰好になっている。


香焼「兎に角、落ち着きましょう……それから話、ね」ニコッ

結標「うん……」シュン・・・

香焼「えっと……さっきの口調に戻れないっすか? 落ち込んでる結標さん、苦手っす」タラー・・・

結標「そ……そう。わ、分かったわ……」アハハ・・・


無理矢理カリスマを繕おうとするヘタレ結標さん。
それから二人で部屋に戻り月詠さんを起こさない様(あの騒ぎで起きないのは凄い)、着替え、再び外に出た……―――《後半に続く》――


129VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/10(木) 09:31:00.94+rvNPetDO (1/1)

深夜から書き続けてるのか!?


130>>12011/03/10(木) 09:31:09.82aUjZRigj0 (24/27)

すんません……もう無理。一旦寝る。続き夜。

感想質問意見罵倒提案リクエスト等々、コメントお願いします。それじゃあ、また夜。お休み……ノシ"


131VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/10(木) 09:48:53.275Nr6Z+zDO (2/2)

起きたらまだ書いてたww 乙!

アンジェレネの裸目撃も気になるが、まさかの‥‥あわきんニャンニャンルートなのかっ!?
夜に期待!


132VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/10(木) 10:05:06.79UHqfQU6DO (1/1)

あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!
あわきんかと思ったらS音さm……いや、なんでもない



133VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/10(木) 14:29:09.99+nZ+yM8v0 (1/1)

やっと追いついた
とりあえず>>1乙


リクエストだけどルチアかフロリス出してくれたらそれだけで十分です
いやホント



134VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/10(木) 16:24:15.55CxUpPY9AO (1/1)

>>1乙
とりあえず何をどうしたらアンジェレネの裸なんか見れるのかな香焼ェ……

リクは普通に学生生活を送っている香焼くんを見てみたい


135VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/10(木) 17:19:50.728FocE1QDO (1/1)



こう×あわふたー(食べられたルート)がいつか書かれると信じて……



136>>12011/03/10(木) 22:15:29.25aUjZRigj0 (25/27)

こんばんわ! 第4話続きです。


>>131
それが理由が無くてもフラグが立つ。それがカミやん病の恐ろしい所。

>>132
あわきんははるるんです。妹さんじゃありませんよ。ちゃんと謝ったら、褒めてあげてもいいよ?

>>133
次回の英国編で出すよー。ベイロープ、フロリス、レッサーのポジションは決まってるんだけど……ランシスって何歳くらい?

>>134
香焼の学校生活って理事校設定の? 多分地味ぃだから……どっかで柵川中に組み込もうかと思ってます。

>>135
え、エロいのなんて書いた事無いんだからねっ!! 恥ずかしいっ!!


……はい。続き投下。


137第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/10(木) 23:13:52.29aUjZRigj0 (26/27)

 ――《前半の続き》――とある休日、PM10:30、学園都市第7学区、とある公園(月詠家付近)・・・・・



空気が澄んだ夜だった。
極端な都市開発が進んでいる街で、この学園都市だけが唯一綺麗な空気を保てている。

今、自分――香焼は諸事情により、一晩宿を借りる事になった月詠さん家の居候さん――結標さんと二人きりで公園に居た。
戦闘、というか『事故』が有ったので一旦着替えた為、自分はいつもの私服を、結標さんは小さめのYシャツを無理矢理来て外に出ている。

……正直、結標さんの恰好は際どい。

だが、口には出さないでおく。一人ベンチに座って翳りを付けている彼女に、下手な事は言えないだろう。
とりあえず近くの自販機で買ったカフェオレを渡し、隣にお邪魔した。


結標「……ありがとう」ズーン・・・

香焼「うん……」ポリポリ・・・


気まずい。


香焼「えっと……」ウーン・・・

結標「……」シュン・・・

香焼「つ、土御門はああ言ってたけど、事故っすから……気にしないで、ってのは無理だと思うけど……」タラー・・・

結標「……いいのよ。私が馬鹿だったの」ハァ・・・


超ネガティブ思考モード。


香焼「しょ、職業病っすよね。まずは疑ってかかる。間違っては無いっすよ」アハハ・・・

結標「でも……早とちりで暴走しちゃった」グズッ・・・

香焼「うっ……」マズイ・・・

結標「しかも、土御門と海原にばれて……香焼くんに酷い事して……皆に迷惑掛けて」ウルウル・・・


また泣きそうだ。もうこっちが泣きたいよ。


香焼「じ……自分が、悪いんすよ。元々家出なんかしなきゃこうならなかった」ハハッ・・・

結標「それは……」チラッ

香焼「全部自分の所為っす……結標さんは悪くない」ニコッ・・・


そうだ。この人は悪くない。
ただ己の日常(月詠小萌)を守ろうとしただけだ。歪んだ形かもしれないが、それも愛故。


結標「……」グシグシ・・・


目尻を拭い、やっと凛々しい顔に戻る結標さん……良かった。崩れたこの人は苦手だ。


138第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/10(木) 23:34:03.22aUjZRigj0 (27/27)

温かいカフェオレを見詰めながら結標さんは呟いた。


結標「……ホント、優しいのね」フフッ・・・


キャップを開け、二三啜る。


結標「信じられないわ……こんな人が『同業者』に居るなんて」

香焼「同業かどうかは分かんないっすけどね……」ハハハ・・・

結標「でも『表』じゃないんでしょ」チラッ

香焼「まぁ……そうかもしれないっす」


互いに詳細は聞けない。知ってしまえば『制裁』が待っている。


結標「あのさ……本当に、私と小萌の事知らなかった?」

香焼「はい……もしかしたら資料にあったかもしれませんが、失礼っすけど、パッとは出てきませんでした」

結標「じゃあ……『案内人』って言葉に聞き覚えは?」


案内人。窓のないビルへの唯一の通行手段。


結標「……知ってんじゃん」ハハハ・・・

香焼「それが結標さん?」

結標「さぁ……私の口から『Yes』とは言えない。でも、お友達の愛煙家神父さんに聞いたら分かるんじゃないかな」フフッ

香焼「……自分が勝手に調べて、知ってしまった」チラッ

結標「ええ。利口な子は好きよ」ニコッ


ペースが戻ってきたようだ。


結標「ただ……お友達を穢す訳じゃないんだけどね。土御門とかあの神父と香焼くんが友達ってのは、意外かな」

香焼「土御門は友達っていうより完璧、上司っすよ。ステイルも上司っちゃ上司なんすけど……自分と一番歳近いから」アハハ・・・

結標「そうなんだー……って、ええええぇっ!!?」ハァ!?

香焼「む、結標さん。声、声大きい」アワワ・・・


まぁ驚くのも無理無いが。


結標「こ、香焼くん……実は年上なの!? 中1って嘘!?」ポカーン・・・


そっちじゃない。あっちが見た目より下なのだ。


結標「え、あ、成程……それも吃驚ね」ヘェ・・・


自分と一つしか変わらない2mオーバーの愛煙者不良神父。どっちが年相応と言われれば……間違いなく自分だろう。


139第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 00:15:22.12HwyG+qya0 (1/30)

それから暫く、適当な話を続けた。
普段の結標さん……月詠先生、禁書目録、姫神さんの事。土御門、海原さん、何故か第1位の事。

仕事の話は聞いていないが、この人は何処かで踏み外さなければ、存外普通の女子高生だったと思う。


結標「普通かぁ。私が女子高生やってるのなんて考えられないわ」ハハハ

香焼「霧ヶ丘には?」

結標「さっき言ったでしょ。あそこは生徒を観察対象にしか思って無い。生徒同士も慣れ合う気は無いの」

香焼「そんなのって……学校じゃない気がするっす」

結標「ええ。誰も学校だなんて思ってないわよ。でも学園都市にはそんな『学校もどき』山ほど在るわ」


研究者(大人)のエゴと片付けてしまえばそれまでだが、認めたくない。


結標「……」ジー・・・

香焼「……どうしたんすか?」エ?


複雑そうな目で自分を見詰めてくる結標さん。


結標「……やっぱり、学園都市の人間じゃないのね。香焼くんは」クスッ・・・

香焼「え」

結標「この街で理由を求めちゃいけないのよ。子供達(モルモット)は……如何に大人(研究者)を満足させるか。それだけよ」

香焼「そんなの……」

結標「ええ……嫌よね。だから私は動いたの」グッ・・・


ペットボトルを握りしめる。


結標「学生運動(テロ)なんて馬鹿な真似して……」

香焼「結標、さん……」


望むままに人を傷付けることすらできる強大な能力。その力に怯えていた。
それでも自分が力を得る必要性が何かあったのだろうと我慢していた。
しかし……量産能力者(クローン)である妹達たちの結果を知って、人以外にも能力が宿る可能性がありうることを知る。


結標「何で、能力なんて有るのか……何で、自分じゃなきゃいけなかったのか……考えたって無駄なのにね」


足掻いた。足掻きたかった。足掻くという行為で、正当化するしかなかった。


結標「あげく、昔以上に人を傷つけ……自虐して……今のザマよ」フフッ・・・


都市を裏切り、『制裁』の末……暗部に堕ちた。


140第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 00:40:49.39HwyG+qya0 (2/30)

香焼「……」ジー・・・

結標「……ははは、理事校出身とはいえ、中1には難しかったかな」ポリポリ・・・

香焼「いえ……」


この人は凄い。

『従順で在れ』と教育される学園都市で、自我を持った。剰(あまつさえ)、先頭に立ち戦った。
ただ手段が悪かっただけだ。テロリズムでは跳ね返されるだけ。


結標「先導……まぁ別に私がリーダーじゃなくても良かったのよ。ただ周りに器がいなかったからやっただけ」アハハ・・・

香焼「そうかな。今の話だと結標さん、カリスマ溢れてたっすよ」ニコッ

結標「あ、ありがと……でも他の所、運動組織からも誘いは受けてたのよ」

香焼「へぇ……運動組織って色々有るんすね」

結標「ただ、スポンサーってかパトロンが付くかどうかも難しいからね。私はケネディの科学結社とコンタクト取れたけど」

香焼「……アメリカが?」


学園都市を目のカタキにしている大国の一つ。合衆国(アンクル・サム)。


結標「違う違う。合衆国がバックだったら、今でもテロ続けてるわよ……金だけあるチンケな組織よ」

香焼(その組織の後ろに、合衆国が居ても変じゃないけど……)

結標「互いに『残骸(レムナント)』が欲しかった……残骸って知ってる?」


『0728事件』で粉砕された『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』の残骸の中にあった中枢部品。
『0728事件』の詳細は特秘事項で下っ端の自分には知らされてないが、『魔術』による攻撃で衛星が破壊されたと記憶している。


香焼「樹形図の設計者の残骸は誰もが欲したっすからね」

結標「そ。私が掴んだ。組織が金を出すと言った。協力関係……簡単でしょ」ニコッ

香焼「……」コクッ


ただし、それこそ組織に踊らされている様に思えた。


結標「分かってるわよ。アッチも私達(能力者)を知識を持った『道具』にしか思ってない連中だもの」

香焼「じゃあ、何で……」

結標「学園都市(今まで)を取るか。見知らぬ輩(別の可能性)を取るか……可能性に縋っただけよ」


まるで弱い心に浸け居る宗教理論だ。この人は手を出してしまった。


結標「……そうね。弱いもん、私」フフフ・・・

香焼「結標さん……」


隣に座るのは、か細い一人の少女だった。


141第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 01:04:09.19HwyG+qya0 (3/30)

結標「ハァ……あー! やめたやめた!」グググ!!


背伸びする少女。


結標「あー……駄目ね。ネガティブ症治らないわ……」ハァ・・・

香焼「ははは……」

結標「こんなんだからガラスメンタルとか馬鹿にされるんだけどね……ま、『不幸』の考え方次第よ」ニコッ・・・

香焼「そうっすね。知り合いに『不幸』のスペシャリストがいるっす」クスッ

結標「私もソイツ知ってるわ」フフッ


不幸を『誇り』に変える人……それを『英雄』と呼ぶ人もいる。


結標「考え方一つで見方は変わる。さっき言ったでしょ? 嫌だと思えば邪険にしか見えないって」チラッ

香焼「……はい」コクッ

結標「香焼くんは……どうしたい?」ニコッ


自分は……


香焼「前向きで、生(行)きたいっす」

結標「うん。よろしい。お姉さんみたいになっちゃダメだぞ」クスッ

香焼「そんな事、ないっすよ」ポリポリ・・・

結標「ふふふ。お世辞がお上手ね」ニコッ・・・


ただ、敢えて言うならば。


香焼「誰かの所為じゃなく……何かの所為じゃなく……それらの『為』に。救われない者に、救いの手を」ボソッ・・・


姉の……女教皇様の教え。


結標「良いお姉さんじゃない。でも宗教みたいね」クスッ

香焼「あはは……何とも」タラー・・・

結標「何だかんだ言って仲良いみたいね。従順、とまではいかないけど慕ってるのは分かるわ」

香焼「慕ってるのは認めるっすけど……」ポリポリ・・・


それじゃ無理矢理みたいだ。


香焼「自分の意志っすよ。それこそ誰に言われるでもない、何かに縋るでもない」

結標「ふーん」ジー・・・


流されてじゃない。自分の決定。


142第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 01:18:36.78HwyG+qya0 (4/30)

科学とか、魔術とか、能力とか、術式とか……関係無い。


香焼「丸裸の自分に嘘をついてないか。それだけっすよ」ニコッ・・・

結標「……」

香焼「今自分が問題を起こしたのは組織にいるからだけど、それを嘆いてないっす」

結標「大人ね……子供のくせに割り切り過ぎよ」クスッ

香焼「ガキだから単純なんすよ。さっきの問題も不幸で終わらせたくない」


それじゃ魔術や能力の所為にして逃げてるだけになる。


香焼「だから……全部、自分の所為なんす。でもそれは未練じゃない」

結標「……」

香焼「組織の年長者が言ってたんすけどね……未練と後悔の違い知ってますか?」

結標「……先と後?」


諫早さんが言っていた。
未練はやらずに人(モノ)の所為にする事。後悔はやって自分の糧にする事だって。


香焼「やらずに人(何か)の所為にするのは、卑怯っす。やって、失敗して……成長する」

結標「……失敗して、成長か」

香焼「さっき言ってた結標さんの能力云々話も同じっすよ」


簡単な事だ。


香焼「能力の所為じゃない。自分の所為で失敗した。それを認めれば……伸びるんじゃないっすか?」ニコッ

結標「っ」グッ・・・


俯かれた……生意気過ぎたか。


結標「……ええ。生意気よ」ボソッ・・・

香焼「あはは……すいません」タラー・・・


結標さんは暫く無言だった。が、ふいに顔を上げ……微笑んだ。


143第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 01:37:45.00HwyG+qya0 (5/30)

結標「同じ事を……香焼くんと同い年の娘に言われたわ」ハハハ・・・

香焼「え」

結標「同じ移動能力者なんだけどさ……『不幸を能力の所為にして逃げてますの!』とか一丁前に、ね」フフッ

香焼「そう、なんだ」

結標「更に言うに事欠いて『その腐った根性叩き直して差し上げますの!』って……最近の中学生は凄いわ」クスクス・・・


凄ぇ女子だな。きっとゴッツい娘に違いない。


結標「……この街には貴方達みたいな子が必要なのよ、きっと」

香焼「大袈裟な」

結標「香焼くん……さっき言ったわね。『裏』の人間に思えないって」

香焼「……」ピタッ・・・

結標「『表』で活躍すべきよ。それこそ理事になるとか、この街の方針を決めるとか」


考えた事、無い。


結標「正直ね……香焼くんの『裏』としての顔は誰も連いてこない。残酷だけどね」


それは分かってる。自分は上に立とうだなんて思ってない。


結標「でも……『表』なら連いていこうと思うわ。貴方みたいな人に、この街を変えて欲しいって」

香焼「そ、そんな! 自分は部外者っすよ!!」アタフタ・・・

結標「勿論、もしよ。でも惹かれる力……香焼くんがさっき言ってくれた『カリスマ』ってのは人それぞれよ。貴方は『表』気質」

香焼「買い被り過ぎっすよ……自分は器じゃないっす」

結標「それは今から育てていくものよ。まぁ『道』を決めるのは香焼くんだけどね」


そういって微笑む結標さん。そんなに期待されてもなぁ……


結標「私も大概ネガティブだけど貴方もね……いや違うなぁ。香焼くんは謙虚過ぎるのね」フム・・・

香焼「まぁ横暴よりはマシっすよ」アハハ・・・

結標「もうちょっと強引っていうか強気だったら完璧なのになぁ……でもその甘さが美徳なんでしょ」フフッ

香焼「また甘いって……別に自分は甘くないし、優しくもないっすよ」ムスー・・・

結標「はいはい。しょげないしょげない。褒めてるのよ」ナデナデ

香焼「っ……も、もぅ」///


やっぱり年上なんだな、この人は。こういう時に余裕が持てる人には憧れる。


144第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 01:52:02.67HwyG+qya0 (6/30)

 ――とある休日、PM11:00、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



それから暫くしてから部屋に戻った。
月詠さんも子猫もぐっすり寝ている。結標さんが月詠さんの布団を直し、静かに告げた。


結標「じゃあ、今度こそ」チラッ

香焼「はい……お休みなさい」ニコッ


布団に潜る。


香焼「……」スッ・・・


今日は色々あった。


香焼「……」フゥ・・・


馬鹿姉達に猫がばれて……最愛の事がばれて……友達馬鹿にされて……


香焼「……」ムゥ・・・


家出して……結標さん達にあって……『事故』があって……


香焼「……」ハァ・・・


やっと、床に着いた。疲れたよ……


香焼「……」ピクッ・・・


疲れて、疲れ過ぎて……寝れない?


香焼(どうしよう……)タラー・・・


このままじゃ夜ふかしコースだ。他人の家で明日お寝坊なんて恥ずかしいぞ。


香焼(そうだ、猫!)チラッ


最近は子猫と一緒に寝ていた。近くに居れば寝れるかも……


ぬこ「にゅぅ……みゅぅ……」zzz・・・

月詠「くぅ……きゅぅ……」zzz・・・


駄目だ。ピッタリくっ付いて寝てる……困ったぞ。


145第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 02:17:09.29HwyG+qya0 (7/30)

こうなったら朝まで起きてようか……そう考えた刹那―――


結標「……香焼くん」ボソッ


―――小さな声。結標さんもまだ起きてるみたいだ。


結標「起きてる?」ボソッ

香焼「……はい」ボソッ

結標「そっか……もしかして、寝れない?」ボソッ

香焼「……はい」ボソッ


結標さんも同じか。ちょっと前までアレだけハイになって動いていたのだ。
そう簡単には落ち着く訳が無い。


香焼「このままじゃ朝寝坊しそうっす」アハハ・・・

結標「私はいつも寝坊だけどね」フフッ・・・

香焼「あはは……職業病っすね」クスッ・・・


『裏』の仕事は夜中が基本だ。身体が夜は起きてるようにセットされてしまう。
天草に入りたての頃は、自分もペースを直すのに苦労した。


結標「ねぇ……香焼くん」ボソッ・・・

香焼「何すか?」ボソッ・・・


成程。人と会話をしてると眠たくなったりもする。その方法か。


結標「……そっち行って良い?」ボソッ


……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?


結標「だから……その、そっちの布団行って良い?」ボソボソッ・・・

香焼「え、は……え?」タラー・・・


貴女は何を言ってるんですか?


結標「……駄目?」ボソッ

香焼「いや、その……」タラー・・・


だって……




冷蔵庫『①「いいよ」 ②「僕が行くよ」 ③「来るだけでいいの?」 ④「ご主人様に提案とは生意気な従者め。お仕置きだ」かな?』フム・・・




勝手に決めんな馬鹿家電。⑤の『駄目』に決まってんだろ。


146VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 02:19:02.471r72YxhDO (1/2)

②だろjk!


147VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 02:20:29.94rCRRnzSAO (1/4)

②!


148第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 03:25:24.14HwyG+qya0 (8/30)

香焼「おま、何勝手なこ『僕が行くよ……淡希さん』ちょ、ざけんなっ!!」ギロッ!!

結標「え、あ……そんな……」ポッ・・・///


結標さん、すぐにそこの冷蔵庫交換した方がいいです。


冷蔵庫『ひゅ~ひゅ~』ブウォオオオォン・・・・・


てか月詠さん起きちゃうっつの!


結標「……来て、くれるの?」モジモジ・・・///

香焼「ちょ、その……」ダラダラ・・・


何だこれ……さっきとはまた違う感じのピンチ。


月詠「んん……」モゾッ・・・

香焼「っ!! ほ、ほら。音立てちゃうと月詠さん起きちゃうからね……無理っすよ」ボソッ

結標「……音立てなきゃいいの?」ジー・・・///

香焼「え、いや、そういう問題でもな―――」


瞬間、自分の身体は元居た布団には無く……


香焼「―――いっす……よ。って……・・・・・・・・・・・あれ?」ギョッ!?

結標「……いらっしゃい」ニコッ・・・///

香焼「」


……結標さんの布団の上に移動(テレポート)されていた。


香焼「む、結標、さん?」ギギギ・・・

結標「てへっ☆」ペロッ♪


勘弁して下さい。


結標「安心して……別にさっきみたいな事する気はないもの」ニコッ・・・///

香焼「い、いや、これでも十分拙いっすよ……」ダラダラ・・・

結標「分かってる……」スッ・・・///


ゆっくりと、布団を掛けられた。現在向かい合わせ……大変だ! 心臓が足りない!


149第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 03:54:42.16HwyG+qya0 (9/30)

結標「……寒く、ない?」ジー・・・///

香焼「だ、大丈夫っすけど……やっぱ大丈夫じゃないっすっ」ドキドキ・・・

結標「ふふっ。可愛い」クスッ・・・///


寧ろ暑いです。クラクラします。


結標「なら脱いじゃえばいいじゃない。ナイフまみれの服のままじゃキツいでしょ?」ニヤッ・・・///

香焼「な、なな、な、何を!? そ、そういう問題じゃないっすよっ」カアアァ・・・///

結標「ふふふ。冗談よ……でもお姉さん達と寝るって考えれば大丈夫じゃない?」クスッ・・・///


死んでもアイツらとは同衾しません。


結標「一番上のお姉さんでも?」


女教皇様と寝たら死にます。各方面から叩かれた後、審問で処刑されます。


結標「もう……意地っ張りね」フフッ・・・///

香焼「意地っ張りとかじゃなくて……」アワワ・・・///


そうだ!


香焼「め、命令っす! ご主人命令!」ギロッ!

結標「え?」ポカーン・・・

香焼「も、元の場所に戻しなさい。そして大人しく寝る事!」ムゥ!

結標「……」ジー・・・


土御門からの馬鹿提案が役に立つ時が来た。
さぁ大人しく言う事を……



 ――ぎゅっ・・・・・



……・・・・・・・・・・・え。


結標「私の……我儘よ」ギュッ・・・///

香焼「ッッッ!!?」ドキッ!!


これは、ヤバぁい。


150第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 04:12:11.26HwyG+qya0 (10/30)

目の前に、胸。


香焼「む、むむ、む、結標さんっ」カアアァ・・・///

結標「……変な事しないから」グッ・・・///


十分変な事です!


結標「……香焼くんが硬派な人だって、分かってる」ニコッ・・・///

香焼「そ、そ、それなら」アタフタ・・・///

結標「私だって……淫売じゃないわよ。さっき言ったのは本当。誰でもって訳じゃない」ギュッ・・・///

香焼「む、結標……さん……」ダラダラ・・・

結標「それとも……H、したい?」クスッ・・・///

香焼「っ!?」ドッキンッ!!


拙い!! 後ろ向かなきゃ!!


香焼「し、したくないっ」グルッ!

結標「あらら……そっぽ向かれちゃった。残念」フフッ・・・


お察し下さい。


結標「我慢強い男の子は好きよ……ふふっ、私も簡単に貞操上げようだなんて考えてないわよ。心配しないで」ニコッ・・・///

香焼「……」ゴクッ・・・///

結標「自分の誇りと、私を傷つけまいって考えてるんでしょ?」ギュッ・・・///

香焼「……それは」

結標「優しいわよ、貴方は……残念過ぎる程に」ナデナデ・・・///

香焼「っ……違うっす」シュン・・・

結標「香焼くんが甘くなかったら、香焼くんじゃないか……そしたら多分、こうしてあげないわね」フフッ・・・///

香焼「結標さん……」

結標「名前で呼んでいいわ……さっきも呼んでくれたでしょ?」ニコッ・・・///


あれはあの馬鹿家電の声です。


結標「じゃあお姉ちゃんでもいいわよ?」クスッ・・・///

香焼「それは……っ」グッ・・・


何故か……あの三人の顔が浮かんでしまった。


151VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 04:12:42.59rCRRnzSAO (2/4)

盛り上がってまいりましたww
(いろんな意味で)


152第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 04:37:43.73HwyG+qya0 (11/30)

結標「……嘘よ。それは貴方のお姉さん達のものだもんね」クスッ・・・///

香焼「……」ムゥ・・・

結標「仲良くなさい。折角家族がいるんだもの……羨ましいわ。私も香焼くんみたいな弟が欲しかった」ニコッ・・・///

香焼「……生意気な弟っすよ」クスッ・・・///

結標「どんとこい」ギュッ・・・///


それでも、貴方の弟にはなれない。だけど……


香焼「……淡希、さん」ボソッ・・・///

結標「っ……何?」ニコッ・・・

香焼「また……遊びに来ていいっすか?」

結標「ええ。いつでもいらっしゃい」ナデナデ・・・///


この人には惹かれるものがある。女教皇様とは違うカリスマ。年上の包容力とでもいうのだろう。


結標「土御門に言われてって訳じゃなく……何かあったら助けてあげる。多少の我が儘も聞いてあげるわ」フフッ・・・///

香焼「ははっ。迷惑掛けるつもりはないっすよ」クスッ・・・///

結標「ホント、出来た子ね。遠慮しなくていいのに……あ、でもエッチぃのは駄目よ?」ニヤッ・・・///

香焼「し、しないっすよ!」カアアァ・・・///

結標「ふふふ。かわいいかわいい。もしかして彼女いるの?」ナデナデ・・・

香焼「い、いません! まだ中1っすっ」モゥ・・・///

結標「そう? 付き合う子は付き合ってるけど……じゃあ好きな子は?」クスッ・・・

香焼「い、いないよっ」ウワーン!

結標「あらあら……どうかしら? 淡希お姉さんに教えてみなさいな」ニヤニヤ・・・

香焼「ほ、ホントっすよーっ」カアアァ・・・///


それから暫くからかわれ……何時の間にか、淡希さんは自分を抱いたまま寝入ってしまった。
時計が無いので時間が分からないが、一時間したかしないかくらいだと思う。


香焼「やっと……寝たんだ」ハァ・・・

結標「くぅ……すぅ……」ギュッ・・・


背中に胸が当たる。吐息が頬に掛る。衣擦れ音が生々しく響く……余計眠れない。
信じてくれたのに、こんな感情を持つなんて……自分は最低だ。


結標「むぅ……こ、もえ……」スヤスヤ・・・

香焼「……小萌、か」フフッ・・・


淡希さんの中の平和の象徴。いつの日か、この人の全てが、平和になって欲しい。
そう願って、自分も……目を瞑り……―――


153第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 04:54:22.94HwyG+qya0 (12/30)

 ――とある休日(翌日)、AM08:00、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



トントントンという包丁刻みの一定音。

カーテンからの木漏れ日。

子猫が畳の上を闊歩する爪音。


香焼「……ん」グッ・・・


朝だ。時間が分からないが、意外な爽快感。思いの外グッスリ寝れたのだろう。


月詠「ん? おはようございます。香焼ちゃん」ニコッ

ぬこ「にゃー」トコトコ

香焼「あ、はい。おはようございます」ペコッ


アレだけ呑んで寝たのに、カラッと元気な月詠さん。あの人の身体は一体どうなってるのだろう。


月詠「ふふふ。酒は飲めども呑まれるな、ですよ」クスッ

香焼「ははは……」ポリポリ・・・

月詠「それで……お姉さん達と向き合う決心は付きましたか?」

香焼「……はい。ご迷惑をおかけしました」ペコッ

ぬこ「なぅ」ゴロゴロ


思えば下らない理由。互いに大人げ無かっただけ。


月詠「そう。なら大丈夫ですね。後で電話を貸します。帰る前に連絡するんですよ?」

香焼「はい。何から何まで……」

月詠「いえいえ。問題児の『問題』解決は私の自己満足でもありますから」ニコッ

香焼「そんなそんな……月詠さんくらい子供の事考えている大人もいませんよ」

月詠「ふふっ。お上手ですね……さてと」パンパンッ


台所(ガスコンロ)の火を止め、満面の笑みで……宣告した。


月詠「さくやは おたのし みでした か?」ニッコリ・・・

ぬこ「なー」ジー・・・


……・・・・・・・・・・・あ。


154第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 05:11:20.36HwyG+qya0 (13/30)

月詠「……追求しませんが、そろそろお隣の『半裸』のお姉さんを起こしてあげて下さい」ニコニコ・・・


忘れてた……って、半裸?



 ―――むにゅっ・・・・・



むにゅって……え?


結標「ぁ……んっ……」キュッ・・・

香焼「」

月詠「……柔らかいですよね。結標ちゃんの胸って」ジトー・・・


事故です!! てか、何でYシャツの前ボタン全開なの?! しかも自分の胴体に抱き着いてるし!?


結標「ん……すぅ……むにゃ……」ポリポリ・・・

香焼「……」タラー・・・


生温かい様な、怒っている様な、冷めている様な、複雑な視線を向ける月詠さん。


香焼「こ、こここ、こ、こ、コレは!! その、違くて!! え、えっと!!」アタフタ・・・

月詠「……とりあえず、起こしてあげて下さいね」ニコッ

香焼「え、あ、は、はい! あ、淡希さん! 起きて下さい! 朝です!!」トントン

結標「むぅ……んぁ……」クゥ・・・

香焼「淡希さーんっ!!」ユサユサ!


中々起きてくれない。


月詠「人が酔って寝てるからって……やって良い事と悪い事が有りますよね? 彼氏いない歴[禁則事項です]年の私に対する嫌味でしょうか」ブツブツ・・・

ぬこ「みぃ」グシグシ

香焼「あ、淡希さんっ!! 早く起きて説明を!!」アワワワ・・・

月詠「お目覚めのチューでもすれば起きるんじゃないでしょうか? ねー」ブツブツ・・・

ぬこ「なー」スリスリ

香焼「馬鹿な事言わないで下さい! てかマジ起きてー!」ギャー!


それから月詠さんのパーティー用クラッカー目覚ましが炸裂されるまで結標さんは眠りっ放しだった。


155第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 05:30:31.61HwyG+qya0 (14/30)

結標「んが……何時?」ボー・・・

香焼「な、何時じゃないっすよ! とりあえず朝っす! 起きて淡希さん!」カアアァ・・・///

月詠「『淡希さん』ですってー。昨日までは苗字までだったのに……ねー」グチグチ・・・

ぬこ「なー」コロコロ・・・


早く弁解手伝って下さい。居心地最悪です。


結標「……」キョロ・・・キョロ・・・

月詠「……結標ちゃん。おはようございます」ニコッ!

結標「……」キョロッ・・・タラー・・・

香焼「あ、淡希さん……おはよう」アハハ・・・


当たりを数度見回した後……自分の顔に視点が止まった。


結標「……」ジー・・・

香焼「淡希、さん?」タラー・・・

結標「っ……お、おはよぅ……」カアアァ・・・///


一瞬にして真っ赤になり、布団で顔を隠す淡希さん。何その反応!?


月詠「結標ちゃん? ……さくやは おたのし みでした か?」ニコッ!!

結標「っ!! う、うん……」コクッ・・・///

香焼「淡希さあああぁんっ!!」ウワアアアァッ!!

月詠「……決定ですね」ジトー・・・

ぬこ「なぅ」ジトー・・・


何か物凄い勘違いなさってる人がいる! 違うから! この人寝ぼけてるだけだから!


月詠「香焼ちゃん。男の子は責任を持たなければいけないのですよ? それが例えワンナイトラブであっても!」ビシッ!

香焼「違うっすよ!! 過ち冒してないよ!! ちゃんと理由あって!」アタフタ!

月詠「じゃあ……そのシーツの『血』は何ですか?」ジトー・・・

香焼「え……」ダラダラ・・・


血……ホントだ……って! これ昨日自分が斬られた時に出た血固まっただけじゃん!!


結標「あ、え……もしかして……やっちゃった系?」テヘッ♪

香焼「」

結標「ふ、不束者ですが! 宜しくお願いします!!」カアアァ・・・///


後でステイルから煙草を貰おう。きっと美味しいんだろうな……現実逃避の煙の味って。


156第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 05:50:23.22HwyG+qya0 (15/30)

数分後……ちゃんと説明をし、月詠さんを納得させた。
血の説明は外に出た際に切ってしまった部位を放置したままだったという事で誤魔化せた。


月詠「まったく……夜中コンビニ行く程度は構いませんが、はしゃいで怪我するなんてやっぱり小学7年生さんですよ。香焼ちゃん」プンスカ!

香焼「あはは……すいません」ペコッ

月詠「そして結標ちゃん! 小さいとはいえ香焼ちゃんも男の子なんです! 能力使ってまで抱き枕にしちゃ駄目なのですよ!」ンモー!

結標「ごめんごめん」アハハ

ぬこ「にゃん」スリスリ


さておき、現在朝御飯の最中。わかめの味噌汁、納豆、玉子焼き、グリーンサラダ、ご飯のメニューである。
子猫には昨夜買った猫缶を与えていた。


香焼「そういえば……淡希さん」モグモグ・・・

結標「んー?」ズズズズ・・・

香焼「いつもは月詠さん抱いて寝てるの?」ゴクン

結標「ぶっ!! ごほっごほっ!!」ドキッ!


昨日の寝言が気になった。


結標「そ、そんな訳無――」

月詠「ふふふ。そうですねー。偶にギュって抱き着いて来るのですよー。結標ちゃんは寂しがり屋の兎さんなんです」ニコッ

結標「――いで……小萌ぇっ!!」カアアァ・・・///

香焼「あははは」ニコッ

ぬこ「んなー」ペロペロ


淡希さんは何かに抱き着いてないと寝れないタイプらしい。


結標「ち、違うのよ。独り身の小萌が寂しそうだなぁって私が同情してあげてるだけなんだから!」ムキー!

月詠「はいはい。結標ちゃんは優しい子ですねー」クスッ

結標「ぐぬぬぬっ……小萌ぇ、覚えてなさい……」ギロリ・・・


やはり何だかんだで大人(月詠さん)の方が上手の様だ。それにしても仲が良い。


ぬこ「みー」トコトコ・・・スリスリ

香焼「……ふふふ」ナデナデ


二人は素敵な家族だ。


157第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 06:04:30.84HwyG+qya0 (16/30)

 ――とある休日(翌日)、AM10:00、学園都市第7学区、とあるアパート(月詠家)・・・・・



食事が終わり、今度こそ片付けを手伝った。
それから掃除を手伝い、出来得る限りの洗濯も手伝い、一晩の礼には足りないだろうが月詠さんへの感謝を自分なりの行動で表した。


月詠「態々良いんですよ。私の自己満足って言ったでしょうに」

香焼「あはは……すいません」

月詠「香焼ちゃんが良い子だって事は嫌という程分かりました。後は……自分の問題を解決するだけですよ?」ニコッ

香焼「……はい」コクッ


一通り終わったので、一息つこうとお茶を入れた時……



 ――ピンポーン・・・・・



……インターホンが鳴った。


結標「こんな早くに誰かしら?」

月詠「回覧板だと思いますよ。はーい。今開けますよー」トコトコ


玄関に小走りする月詠さん。


月詠「はいはい。ドチラ様でしょ……」ガチャッ


ドアを少し開いた所で、止まった。そして……


月詠「あ……ぅ……」ペタンッ・・・


その場に尻もちを付いた。その表情は……恐怖。


結標「っ!! 小萌っ!!」タッ!!

香焼「月詠さんっ!!」スタッ!


自分と淡希さんが玄関に跳ぶ。そこに居た人物は……


158第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 06:20:42.87HwyG+qya0 (17/30)

結標「朝っぱらからカチコミとは良い度胸ね!!」スチャッ!!

香焼「っ!! ま、待って! 淡希さん!!」グイッ!

結標「香焼くん!?」ピタッ・・・


……その人は、敵じゃない。


神裂「……そう。貴女の家でしたか」スッ・・・

月詠「あ……な、にが……」オドオド・・・

香焼「女教(プリエ)……カオリ姉さん」ペコッ・・・

月詠「姉さ……香焼ちゃんの、お姉さんって……」キョトン・・・

結標「……」ギロッ・・・

神裂「……名を告げるのは初めてでしたね。神裂火織と申します」ペコッ・・・


深々とお辞儀をする女教皇様。


神裂「愚弟が、御迷惑をお掛けしました」

月詠「え、あ……いえ……」ポカーン・・・


女教皇様の事を知っているのか、月詠さんは複雑な表情のままだった。


結標「……アンタ」ギロッ

神裂「……何か」チラッ

結標「とりあえず上がりなさい。茶でも出すわ……いいわね、小萌」チラッ

月詠「あ、え、はい……どうぞ」スッ・・・


淡希さんの手を借り、立ちあがり居間へ戻る月詠さん。
女教皇様は軽く頭を下げ、その後を追った。


神裂「……香焼」チラッ

香焼「はい」

神裂「とりあえず、話は後で……五和と浦上も共に」コクッ


それだけ告げ表情を崩さぬまま、月詠さんが座る円卓の向かいへ正座。
自分と淡希さんも、遅れて少し離れた所に座った。


159第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 06:39:47.30HwyG+qya0 (18/30)

切り出したのは女教皇様。


神裂「貴女には迷惑を掛けてばかりで……なんと謝罪すればよいものか」

月詠「い、いえ。何というか……吃驚で」

神裂「聞けば禁書目録も未だにお世話になっている様で、それも含めて改めてお礼させてもらいます」

月詠「そんなそんな!」


確かに今回の件で女教皇様にも汚点はあったが、頭を下げさせるなんて……教徒失格だ。


神裂「前回(0728事件)の件は私の口からは何とも言えませんが……今回の件は全て私の責任です」

香焼「っ! それは――」

結標「香焼くん。黙ってなさい」スッ・・・

香焼「――っ……」グッ・・・

神裂「その子を追い詰め家出させたのは、我々姉三名が莫迦だった故。その子に責はありません」

香焼「カオリ姉さん……」

月詠「……神裂さん」

神裂「はい」

月詠「言いたい事は分かりました。ただ一言言わせてもらえれば……」


近くに居た猫を撫でながら……


月詠「何処にでもある……普通の姉弟喧嘩なのでしょう?」ニコッ

ぬこ「にゃー」スリスリ


……聖人に向かって、聖母の様な笑みで告げた。


神裂「……それは」

月詠「見た所、貴女もお若い様です。多分、歳の近い結標ちゃん以上に苦労している人なのでしょう」

結標「……歳の、近い?」エ?

月詠「結標ちゃん。香焼ちゃんが『一番上の姉は結標さんと一つ違いっす』って言ってたじゃないですか」

結標「そういえば……そんな気も」ジー・・・


比べれば確かに淡希さんが大分幼く見えるだろう。五和と比べても淡希さんは若く見える。


160第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 07:01:55.58HwyG+qya0 (19/30)

月詠さんは更に続けた。


月詠「『家族』という概念が希薄であるこの学園都市で、どんな形であっても『家族』であれる貴女達は恵まれているのですよ」

神裂「……ええ」

月詠「折角の姉弟です。仲良くするのは勿論、多いに喧嘩しても良いと思います」

香焼「月詠さん……」

月詠「その際、人に迷惑を掛てはいけないとは言いません。家出しちゃえば必ず誰かに迷惑は掛りますから。家出捜索の警備員とかね」

香焼「……すいません」

月詠「今回は私でしたが……良いんです。大人にいっぱい迷惑掛けて下さい」


それを寛容するのが大人の役目ですから、と自分ら『三人』に向けた。


月詠「香焼ちゃん」

香焼「はい」

月詠「神裂さん……いえ、神裂ちゃんをキチンと『弟』として、支えてあげてくださいね」

香焼「お、弟としてっすか?」ポリポリ・・・

神裂「神裂、ちゃん……ですか」ポリポリ・・・

月詠「働いてるのか如何か分かりませんが……若いのに苦労してる相が出ちゃってます。神裂ちゃんに一番必要なのは『日常』ですよ」


それは……納得できる。


月詠「先生の話は此処までですよ……さて、後は当人達の問題ですから」

ぬこ「なー」


笑顔でお茶を一啜り。

それから暫くして、女教皇様と月詠さんは雑談を始めた。自分と淡希さんは庭先で待っている事にした。


結標「綺麗な人ね。女性から見ても恰好良いし」

香焼「……はい」

結標「仲直り、できそう?」

香焼「……どうかな」


4人揃ってから、如何なるか。正直、他二人と顔を合わせるのが心配だった。


161第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 07:26:52.23HwyG+qya0 (20/30)

数分後……女教皇様と月詠さんが玄関から出てきた。


結標「……終わったの?」

月詠「はい。見た目以上にユニークなお姉さんですよ。神裂ちゃんは」

神裂「だからその神裂『ちゃん』というのを止めて頂きたいのですが……」

結標「言っても無駄よ。小萌は未成年誰でもちゃん付けだから」


苦笑。


神裂「それでは失礼します。香焼、忘れ物は無いですか?」チラッ

香焼「え、あ……はい」コクッ

神裂「ではお礼を……近くの公園に二人がいます。そこに向かいましょう」


些か急だが、ダラダラ残るより良いだろう。


香焼「月詠さん。淡希さん。昨日今日とご迷惑をおかけしました」ペコッ

月詠「いえいえ。楽しかったですよ。また来てくださいね」

香焼「是非。お土産持ってくるっす」

月詠「ふふっ。期待しちゃいましょう」クスッ


淡希さんは……何も言わない。


結標「……私も少し、貴方のお姉さんと話が有るわ」

神裂「……」

月詠「……では、私はこれで。香焼ちゃん、他の二人ともちゃんとお話するんですよ。いいですね」ニコッ

香焼「はい。ありがとうございました」


そう言い残して、月詠さんは部屋に戻って行った。此方は……


神裂・結標「「……」」

香焼「……えっと」タラー・・・

神裂「……歩きがてら、話しましょう」チラッ

結標「……そうね」チラッ


何やら険悪な雰囲気。間違いが起こらない事を祈る。


162第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 07:44:46.53HwyG+qya0 (21/30)

 ――とある休日(翌日)、AM10:40、学園都市第7学区、とある道路・・・・・



歩きだしてすぐ、女教皇様が口を開いた。


神裂「どうやら一番貴女に迷惑を掛けたようですね。申し訳ございません」カツカツ・・・

結標「謝罪される謂われはないわ……終始土御門から聞いてるんでしょ?」カツカツ・・・

神裂「……」

結標「その子を殺しかけたわ」チラッ

香焼「っ!! 淡希さん!!」ギョッ!


態々言わなくても良い事を。


結標「私の早とちり。しかも私怨……姉として、『上司』として私を如何する?」

香焼「ぷ、女教皇様! 違います! それは事故で!」

神裂「……この子がこう言っています」サラッ

結標「部下任せ?」フンッ

神裂「いえ……『本人』任せ、そして『弟』任せです。月詠さんが言っていたでしょう。『喧嘩は当人同士』と」

結標「……アンタ、苦手だわ」ハァ・・・


鉾は降ろされたようだ。


神裂「それに元を辿れば私達の所為。我々が莫迦をしなければ、その事態にはならなかった」

結標「……」

神裂「貴女は被害者であって加害者では無い。土御門からの罰則も全て私が責を負います」

結標「や、やめてよそういうのは! ……調子狂うわねぇ」ッタク・・・

ぬこ「なー」


その人は達観してるから、何を言っても無駄だと思う。


結標「まったく……姉弟して同じような事言うのね。貴方達」

神裂「ふむ。そうなのですか?」チラッ

香焼「あはは……まぁ」ポリポリ・・・


そういう教えだ。仕方あるまい。


163VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 08:00:41.63rCRRnzSAO (3/4)

よかったよかった


164第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 08:07:08.53HwyG+qya0 (22/30)

結標「じゃあ失礼ついでに言わせてもらうけど……私は昨日の『私怨』については謝らないわ」

神裂「……」

結標「香焼くんには言ったけど、私の『日常』を守る為に動いただけ。勿論、早とちりは私の所為だけど……貴女には謝らない」

神裂「香焼本人に謝罪をしたのでしょう? だったら私に謝られても仕方ありません」

結標「そう。ならいいわ」

神裂「……香焼」チラッ

香焼「え、あ、はい」

神裂「貴方はその件を如何考えているのですか?」

香焼「え……如何って」


事故だが……そういう応えは望んでいないだろう。
それならば、今の自分の、純粋な気持ち。


香焼「最初は、怒りました……命も貞操も軽く見過ぎな行いだと」

神裂「……」

結標「そう……よね」


でも……


香焼「例え、あそこで死んでいても……未練は無いっす。やるだけの事はやった」

結標「そんな……っ」

香焼「あはは。でも結果、何だかんだでこうして生きてる。それで良いじゃないすか」ニコッ

結標「香焼くん……」

神裂「……ふふっ」


ポジティブに、自分の行いを恥じず。


香焼「それに……月詠さんに……淡希さんに会えた。それが一番っすね」ニコッ

ぬこ「にゃー」スリスリ


一期一会に感謝を、だ。


香焼「感謝はしても、謝罪はしない。そうあれかし(AMEN)……そんな考えっすよ」ハハッ

神裂「……だそうです」ニコッ

結標「……うん。ありがとう」ニコッ・・・///


淡希さんは笑顔をくれた。
それから少し先で踵を翻し、自分に連絡先のメモを渡して去って行った。きっとまた会うだろう。


165VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 08:13:22.56rCRRnzSAO (4/4)

何故か HELLSINGを思い出したしまった俺は 重度のヒラコー好き


166第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 08:25:57.78HwyG+qya0 (23/30)

 ――とある休日(翌日)、AM10:55、学園都市第7学区、とある公園・・・・・



神裂「……素敵な人でしたね」ニコッ

香焼「はい。二人とも」ニコッ


未だ昨日の話はしない。4人集まってからと決めている。


神裂「二つ……いいですか」

香焼「はい」コクッ

神裂「叱咤と、疑問ドチラから?」

香焼「……叱咤で」


子猫が自分の肩の上から女教皇様のポニーテールをパンチする。


神裂「先程、貴方は彼女に自分の命を軽く見過ぎと叱りましたね」

香焼「……はい」

神裂「分かっているようですので……後は言いません」


身の程を知れ、という意味だろう。当然だ。人の事を言える立場では無い。


神裂「次に疑問ですが……彼女は、貴方から見て『救いの手』が必要な者でしたか?」

香焼「……はい」


淡希さんも……最愛と同じ。
『裏』に染まり切ってる分、彼女の方が深い。          ※(この時点で香焼は絹旗が『アイテム』だと知らない)


神裂「そうですか……では須らく」

香焼「分かってるっす。途中で投げ出したりはしません」


自分に何が出来るか分からないが……手を伸ばしたかった。


神裂「では強くなりなさい。最低土御門より強くなければ、この街の『暗部(闇)』に太刀打ちできませんよ」

香焼「頑張るっす」


自分が弱いのは十に承知だ。今の自分の総合的な力は、多分アンとどっこい。まだまだだ。


167第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 08:45:23.12HwyG+qya0 (24/30)

一寸後、公園に着いた。自分が最愛と出会ったイカレ自販機が置いてある公園。
人気は無い。態々人払いの結界を敷いたようだ。


神裂「……此方に」テクテク・・・


歩を進める。その先に……二つの影。


五和「……」

浦上「……おはよ」


二人の前に歩み寄る。


香焼「……こんにちは、だろ。もう昼だ」

浦上「あはは。そですネ」

五和「……」

ぬこ「みー」スタッ・・・トコトコ


無言の五和。


神裂「……五和」

五和「……さい」

香焼「え」

五和「ごめんなさい……」グズッ・・・


コイツ最近いつも涙ぐんでるな。


五和「ごめ、う……うわあああああぁんっ!! ゴウぢゃあああああぁんっ!! ごめんだざああああぁいっ!!」ガシッ!

香焼「うわっ!! ちょ、い、五和!?」ワトト・・・

浦上「あーあ……お姉、先に謝っちゃった」ハァ

神裂「三人でと言ったでしょうに……仕方ありませんね」フフッ


抱き着いて泣き叫ぶ五和の後ろから、二人が頭を下げた。


神裂「教皇という立場、そして一姉として、礼節に事欠ける振る舞いをしてしまいました。申し訳ございません」フカブカー

浦上「ああ、えっと……悪ふざけが過ぎました。ごめんネ、香焼……ほら、お姉も!」ペコッ

五和「ううううぅ。ごめ、んなさい……許して、コウちゃん……嫌わないで……」ウルウル・・・


まったく……馬鹿みたいだ。


香焼「……自分こそ、心配掛けてごめんなさい」ペコッ


お相子さ。


168第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 09:12:53.86HwyG+qya0 (25/30)

五和を落ち着かせるのに時間が掛り、まともな話が出来たのは十数分後だった。


浦上「……それで、香焼。お泊まり楽しかった?」ニヤッ

神裂「浦上! 貴女はまだ!」ギロッ

香焼「良いっすよ、女教皇様」ニコッ・・・

神裂「む……しかし」ムゥ・・・

香焼「楽しかったよ。色々勉強できた」コクッ


そう。色々知れた。


香焼「この街は、自分達が思っている以上に……複雑みたいっすね」

浦上「あらら。何だか大人になっちゃったみたいで。てか、お姉。鼻、鼻」ハーイ・・・

五和「ぐすっ……危険な目にあったんでしょ? 怪我してない?」チーン!

香焼「大丈夫っすよ。一応勝負には勝ったっすから」ポリポリ・・・

神裂「勝ったって……殺されかけたのでしょう?」エ・・・


嘘はついてない。形勢逆転した(馬乗りになった)時点で、自分の中の戦いには勝っていた。


香焼「死合は、自分が勝手に武器を捨てて放棄したっすけど……あの時、戦いの意味は無かったっすから」アハハ・・・

神裂「……武器を、捨てた?」ハァ?!

浦上「香焼……自殺願望?」キョトン・・・

五和「やっぱりピンチだったんだ……私の所為で……」シュン・・・

香焼「だから誰の所為でも無いって言ったろ……意味の無い戦いだったから、放棄した。それだけっすよ」


そこにあったのは、自分と彼女の『命』を剥き出しにした戦いだけ。それをただ天瓶に掛けただけだ。


香焼「武器を離さなければ……如何あっても淡希さんを殺してしまってた」

浦上「馬鹿ね……優し過ぎるわよ、香焼」

香焼「五月蠅いなぁ。兎に角、結果的に淡希さんと仲良くなれた。それでいいじゃないっすか」ニコッ

神裂「楽観的な……そう理由が理由だと、怒るに怒れませんよ」ハァ・・・


誰も悪くない。為る様になっただけだ。


169第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 09:34:50.69HwyG+qya0 (26/30)

浦上「ま、大能力者の空間移動能力者……だっけ? その人追い詰めた点は、自慢できるカナ」クスッ

香焼「いや、淡希さんも本気じゃなかったし。本気出されてたら多分……」


……淡希さんのペットコースだった。


神裂「は? ペット、ですか?」ポカーン・・・

五和「殺されてたんじゃなくて?」キョトン・・・

香焼「い、いや、何でも無いっす!」アハハ・・・

浦上「香焼……またフラグ立ててきやがったわね」ボソッ

ぬこ「にゃーん」フシフシ


また馬鹿にされたんじゃ堪ったもんじゃない。


神裂「……まぁ深くは追求しません。貴女達も駄目ですよ」チラッ

五和「分かってます」コクッ

浦上「……」コクッ


学習したようだ。喧嘩の火種は作らない。


浦上「うんしょ! それじゃあ皆さん、結界解いていいですか?」チラッ

神裂「いいでしょう。長時間結界を張るとアレイスターにグチグチ言われますからね」

五和「それじゃあこの後4人でお昼でも行きますか」

浦上「そだね……カオリ姉さん、その恰好で?」

神裂「いつもの事でしょう」


もう周りの目線も慣れたものらしい。流石、聖人だ。レベルが違う。


五和「何処行きたい? コウちゃんの好きなとこで良いよ」ニコッ

香焼「五和が優し過ぎて怖い……」

五和「私はいつも優しいよ」ニコニコッ

浦上「馴れ馴れしいのもいつも通りだよネ……って、アレま?」ドキッ!?

神裂「どうしました?」

浦上「……結界が勝手に壊れちゃった」アララ・・・

香焼「術式ミスっただけじゃないんすか?」

浦上「うーん……五和と張ったから問題無いと思うんだけど……」ポリポリ・・・


となると、考えられるは二つ。一つは魔術師によるハッキング。もう一つは……


170第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 09:54:44.06HwyG+qya0 (27/30)

上条「あれ? 何か変だと思ったら……神裂達だったのか」テクテク

神裂・五和「「か、上条当麻(さん)!!?」」ドキンッ!!


誰かさんが結界に触れたか、だ。


上条「公園に違和感あるなーって触っちゃったんだけど……拙かったか?」

神裂「い、いえ。今出る所だったので」アハハ・・・

五和「か、上条さんは何故此処に?」ドキドキ・・・

上条「ああ。午後から補講でさぁ。休みなのに補講って……不幸だよなぁ」トホホ・・・


どんだけ成績悪いんだ、この人。


上条「ん? ……香焼」チラッ

香焼「え、あ、はい」

上条「何だか大変だったみたいだな。大丈夫だったか?」

香焼「あはは。御心配お掛けしたようで」ポリポリ・・・


そういえば、この人と姫神さんにばれたんだっけ。


上条「まったく、仲良くしろよ。喧嘩程度なら仲裁頼まれてやっても良いからな」ニコッ

浦上「そですネ。上条さんが仲裁なら一発で収まりますヨ」チラッ

神裂・五和「「……あはは」」タラー・・・

ぬこ「なぅ」コロコロ


今度から絶対頼もう。我が家の平和の使者、上条当麻。


上条「あはは。平和の使者か。面白いな、それ……おっと、そろそろ急ぐわ」

香焼「はい。土御門と姫神さんにもよろしくお伝えください」ペコッ

上条「おう。あと……別に俺(男)んとこ頼ってくれても良いんだからな。インデックス居るけど、アイツは気にしないからさ」ボソッ

香焼「え、あ、あはは……そうっすね。今度はお邪魔するっす」クスッ・・・


こっそり耳打ちしてくれる上条さん。同じ苦労を知ってる人だ。


上条「それじゃ、またな!」バイバイ!

神裂・五和「「ま、また近い内に!」」ウンウン!

上条「おう。いつもインデックスが楽しみにしてるよ。んじゃ!」タッタッタッ・・・


颯爽と駆けて行く普通の高校生。あの人こそ、本当に優しい人だろう。


171第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 10:12:12.56HwyG+qya0 (28/30)

浦上「香焼のカミやんレベルが上昇しました」コソッ

ぬこ「みー」フリフリ


そして相変わらず意味不明な浦上。


香焼「じゃあ行こう。近場のファミレスで良いっすよ」

浦上「お! いいね! 先導して頂戴な。文(もん)無しさん」ニヤッ

香焼「うっ……」

五和「ははは。いいよいいよ。今日ぐらい奢るから」ニコッ


申し訳無い。


浦上「じゃあ最近ドリンクバーの使い方覚えたらしいカオリ姉さんと一緒にファミレス行ってみよー」ニヤニヤ

神裂「ちょ、何でそれを!」ドキッ!

五和「姉さん、この前酔った時自分で言ってましたよ」クスッ

神裂「ぬ、抜かった……」カアアァ・・・///

ぬこ「にゃん!」


そういえば、子猫(コイツ)がいた。どうしよう。


浦上「あー、ダイジョブダイジョブ」ニコッ

香焼「え?」

浦上「おいでおいでー」チチチ・・・

ぬこ「んなー」トコトコ


浦上は猫を掴むと……少し大きめな自分のバックの中に入れた。


香焼「ちょ!?」ドキッ!

浦上「よしよし。顔出して良いよー」チョンチョン

ぬこ「にゃぅ」ヒョコッ


……オマエは蛇使いか?


五和「ウラの変な特技だよね。猫とか犬とか扱い上手いの」

浦上「あはは。教会の裏が野良畜生の溜まり場だったからネ。まぁこれで大人しくさせてれば、ばれないヨ」ニコッ

神裂「浦上の旧教会ですか。懐かしいですね」フフッ・・・


身体はでかくなっても心は子供のままか。そうありたいけど、そうも言ってられないからなぁ。
なんて、昔話に華を咲かせつつ、自分達は公園から一番近いファミレスにのんびりと向かった……―――


172第4話――結標「泊めてあげてもいいよ?」  香焼・月詠「「……」」2011/03/11(金) 10:23:02.18HwyG+qya0 (29/30)

 <おまけっ!>


 ガチャッ・・・・・


月詠「おかえりなさい」ニコッ

結標「うん、ただいま」

月詠「お姉さん達と仲直り出来そうでしたか?」

結標「大丈夫よ。似た姉弟だもの。すぐ仲直りするわ」

月詠「そうですか。それは良かったです」ニコッ

結標「……」

月詠「……寂しいんですか?」

結標「べ、別に……いや、そうね。台風一過ってヤツかも」フンッ

月詠「あらら。珍しく素直です」クスッ

結標「……何だか調子狂いっ放しだわ」ハァ・・・

月詠「ふふふ。楽しそうですけどね」

結標「……小萌」ボソッ

月詠「はい」

結標「……いつも、ありがと」ボソッ・・・///

月詠「え」

結標「……何でも無い! 昼寝する!」ゴロンッ!

月詠「……ふふふ。じゃあ先生も一緒しちゃいまーす!」コロンッ!

結標「ちょ、く、くっ付かないでよ!」///

月詠「えへへ。良い子良い子」ギュッ

結標「も、もぅ……仕方ないんだから」///

月詠「そうですよー。仕方無いんですよー」ニコニコ・・・











冷蔵庫『おーわーりーじょーうっ!』ビシッ!



173>>12011/03/11(金) 10:29:13.80HwyG+qya0 (30/30)

はい終了。またオールしちゃったぜぃ。休みだからって調子乗った……死ぬる。
てかPC重くて一々固まる。投稿遅くなるのよな。すんません。


次回は英国編ですが、一つ質問。
新たなる光のランシスって何歳くらいかな。フロリスくらい? レッサーくらい?


それでは感想質問意見罵倒提案、特に『リクエスト』、等コメントお願いします。
それじゃあ、また。お休み……ノシ"


174VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 10:46:09.951r72YxhDO (2/2)

乙‥‥いや、お疲れ様。そしてお休み!

色々感想あるが、ショタコンとはまた別ベクトルのあわきんが見れて良かった。甘ちゃん香焼も良いね。

ランシスって、いつもくすぐったくて笑ってる娘だよね? 二人の間くらいだと思うけど。
リクエストは‥‥いっぱいありすぎるので、他の人に任せるにゃー。


175VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 12:15:04.17qyshcpqDO (1/1)

>>1もあわきんとお昼寝か

上条宅行くようになったら、かみやん病悪化する気が……
しかし、某所のアフターでヒロイン候補は同年代と思い込んでたが、年上もありか……



176VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 14:54:57.63mZDVhbiAO (1/1)

ファミレスに拠るみたいだけど猫の連れ込みは出来る



177VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 15:03:22.89gem9zk79o (1/1)

ちょっ地震来たwwwwwwwwww


178VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/12(土) 00:52:49.50QeyF0V7DO (1/1)

落ち着いたから

>>1やおまいら無事か?地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/


179VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/12(土) 23:46:04.07Ch34AqKAO (1/1)

>>1の安否が気になる


180>>12011/03/14(月) 02:43:37.74LUxjde8DO (1/1)

こんばんは。携帯からすいません。
SSスレで報告するのも何すが、生きてます。水電気ガスも徐々に復活してるっすよ。


ただ近場の原発が暴走むぎのん状態なので、書く書かない言ってられる場合じゃないっす!

雨・雪降り出したら絶対に身体に当てないこと。
政府は中途半端な発表してるけど、こっちの専門家達は十分危険と警告してる。


当分投稿は無理かと思うけど‥‥いつかまた近い内に続きが書ける様、生き残るっす。




お前らも死ぬな。
あと、最後まで倫理的に行動してくれ。




以上、宮城仙台。


181VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/14(月) 04:52:18.89yNn/4A5DO (1/1)

>>1!!よく生きてた!

無事再開される事を祈ってる!



182VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/14(月) 05:41:12.76XW36I9LB0 (1/1)

そういえば、ランシスが魔翌力使うたびくすぐったい理由→エンゼルフォールの際『ガブリエルの中に入っていたから』という考察があったな・・・・・・


183VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/14(月) 12:56:43.28jxwoPgiO0 (1/1)

生きてたか
とにかく良かった

まだ油断できないから十分気をつけてくれ


184VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/14(月) 16:18:11.59WzP2ntfpo (1/1)

生きてて良かった
報告ありがとう

早く再開できるようになることを祈ります


185>>12011/03/28(月) 19:46:15.76w4Xj2QWF0 (1/48)

こんばんは! やっと落ち着いた……だけど、まだ新約買えてないのょ(´;ω;`)

レス返信!
>>174
あわきんは坊やに好かれるお姉さんなのよ。カリスマってヤツでっさぁ!

>>175
カミやん病の相乗効果……むふふ! ところで某所ってナンノコトデスカァ?

>>176
にゃんこファミレスなんてあるのか!? 気になるぜー!

>>182
そんな考察があったのか……でも何でくすぐったいのん? まぁどちらにしろ主キャラで出せないかも。さーせん!

>>177-184
まさか寝て直後に襲われるとは。しかも住処ってばらしたオレって……wwww
でもお前らのレス嬉しかったよ! これからも頑張るぜ!



<主な登場人物⑤>

・ステイル=マグヌス……香焼と一番歳の近い必要悪の教会(ネセサリウス)男メンバー。準レギュラー。カミやん病はLv.3くらい。
      14歳、年齢でいえば中学2年くらい。しかし所謂天才故、学校になど通ってる訳が無い。身長2m超えのヘビースモーカー。
      呼称は……ステイル、不良神父、マグヌス神父、等々。

      必要悪の教会所属の魔術師。役職的には主教補佐。魔法名は『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』。
      合理・禁書目録主義、ツンデレ。必要悪の教会では立場実力ともにトップクラスなのだが……誰かさんの所為で性格は丸くなった。
      英国と都市を行き来している為、香焼とは頻繁に顔を合わせる。彼を煙草仲間にしようと試みる一面も。傍から見ればラブラブ?
      香焼曰く『友達』だが、本人は『仕事仲間』と中々のツンデレっぷりを発揮してる。(以下追々付け足していきます)


・アニェーゼ=サンクティス……同じく準レギュラー的ポジション。そのうち『カミやん病』患者の被害者になる……誰かと似てるね!
      年齢は12歳で香焼と同学年程度。彼女も天才故、学校に通う必要無し。間違った敬語少女。普段Sだが、だからこそ打たれ弱い。
      呼称は……アニェーゼ、アニー、シスター・アニェーゼ、アニェーゼちゃん、アグネス、見栄っ張りチビ、等々。

      ローマ正教のシスターだが必要悪の教会預かりの身。リーダーを務めるアニェーゼ部隊は一応健在。『蓮の杖』を武器とする。
      性格は御転婆で我儘横暴、微エロ。必要悪の教会内での実力はそれなりに位置するが、立場は外様という事で下っ端。
      英国に来てからは前ほど『汚れ仕事』を押し付けられはしないが、英国人が手を付けたくない仕事を回されている様である。
      このSSではアンジェレネ、サーシャ、レッサーと組んで馬鹿騒ぎする事が多い。

      余談だが『どっかの世界』で香焼と[らめぇぇっ!]ってうわなにをするやめ[禁則事項です]……(以下追々付け足)


・アンジェレネ……準レギュラーかも。ポジション的には香焼と同じくツッコミ系。男性免疫が少ないが、香焼は別。男の娘と思ってる?
      年齢はアニェーゼの1つ下。アニェーゼと同様、ローマで義務教育程度は難なく叩き込まれてきた。立場は元々下っ端。
      呼称は……アンジェレネ、シスター・アンジェレネ、アン、わんジェレネ、等々。

      経緯の殆どはアニェーゼと同じ。『十二使徒マタイの伝承』を基にした硬貨袋を触媒とする魔術を使用。ファンネ○ミサイ○!
      性格は柔和だが人見知り、以外と俗っぽく偶に黒い。強くはないが弱くもない、実力は香焼くらい? 度胸はあるようだ。 
      数少ない常識人だが場に流される事も多々。アニェーゼにべったりだが彼女が本当に拙い事を仕出かそうとするとストッパーに。
      他人の気持ちに敏感故、空気を読める良い娘。なので朴念仁の香焼にイラッとする時もある。(以下追々付け足)


・サーシャ=クロイツェフ……準レギュラー? 4人娘の中で一番キャラ付けが難しい。さーせん。この子もカミやん病患者の被害者かも。
      13歳。ステイルらと同じで義務教育はすっ飛ばしている。立ち位置が繊細過ぎて本人も身の振り方に困っている。
      呼称は……サーシャ、シスター・サーシャ、クロイツェフ、真・堕天使エロシスター、等々。

      ロシア成教『殲滅白書(Annihilatus)』所属メンバーの戦闘修道女。必要悪の教会には上司(変態)の命令で足を運ぶ。
      性格は生真面目で寡黙、意外とお茶目。秘めたる力と立場が尤も釣り合わないが、香焼の『友人論』からすれば関係無ぇ状態。
      数多の拷問具を携帯していて、最近のお気に入りは香焼に買って貰った都市製のプラズマカッター。 ( 韭)ノ====))
      アニェーゼやレッサーとつるんで以降、大分朗らかになってきた。だけど上司が相変わらずで……(以下追々付け足)



・レッサー……準レギュラーっぽい。時系列的に出てくるとややこしくなるがネセサリウス・チビッ娘同盟には必要! 御了承下さい。
      年齢は13歳。義務教育は多分放棄したタイプ。立場は嘱託魔術師という感じ。だがステイル並にイギリス愛国者。
      呼称は……レッサー、レッサーちゃん、小悪魔系痴少女、変態、等々。

      魔術結社予備軍『新たなる光』所属メンバー。『鋼の手袋』を武器とし、特殊な霊装を常備している。尻尾は飾りじゃないよ。
      性格は横暴で大雑把、エロい。同年代ではアニェーゼと同程度の強さ。立ち位置はあくまで嘱託。他の嘱託はオリアナ等。 
      リーダーであるベイロープの目を盗んではアニェーゼ達と屯してる。御蔭でルチアとベイロープは胃薬常備らしい。
      香焼に対して上条当麻と「同じ匂い」がすると言って勝手にターゲットとしている。彼を脱がせたり着せたり、色々……フヒヒ!
      しかし、香焼に色目を使う度『何故か』他三人がキレる……何でだろうね!(以下追々付け足していきます)


それじゃあ久しぶりに投下! どーん!っ


186第5話――アニェーゼ・アンジェレネ・サーシャ・レッサー『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 19:53:17.04w4Xj2QWF0 (2/48)

 ―――とある日、AM11:00、英国、ランベス宮、女子寮・・・・・



午前の職務を粗方片付けた主教補佐次席……神裂火織は昼食までの間、寮の方へ戻る事にした。

基本的には都市ではなく英国、必要悪の教会内に居る事の多い彼女。
天草内では『女教皇』、必要悪の教会内では『主教補佐次席』と割と忙しい身。
時には仕事(主に主教の我が儘を聞く係)で英国に。本職(天草の『老人』共を黙らせる)故九州某所に。そして『様々な理由』で学園都市に。


神裂「せめて身体がもう一つ欲しい……」ハァ・・・


聖人とはいえ、歳にして18。厳しい生活だった。

さておき、今回英国に戻ってきた理由は二つ。
一つは主教様への定期報告。もう一つは例の馬鹿上司の『我儘病』が発動した為、戻らされた。

『数日英国より離れる故に、留守番を頼み設けるかしら?』って……せめて何処行くか告げてから消えろあのBBA。定期報告も出来ないわ。

ちなみに勿論『主教補佐(ステイル)』も一緒に英国に。それから五和達天草学徒も連れ帰っている。建宮が用有りとか何とか。


オルソラ「あらあら。St(サンタ).神裂、溜息でございますか? お疲れでしたらハーブティーでも如何でございましょう?」ニコッ

神裂「オルソラ……ええ。頂きます」コクッ


もはや寮長的存在のオルソラ=アクィナス。朗らかな彼女はマイペースな所を抜けば、纏め役としてピッタリだろう。
ローマの御方だが到仕方ない。他の輩は問題児過ぎる。
まぁ年齢不詳の彼女は実質、シェリー=クロムウェルと同い年くらいと噂があるので寮長には妥当かと――


オルソラ「……お待たせ、いたしました」ニコニコニコニコニコニコ・・・


――笑顔が、怖い……ごめんなさい。二度とそんな事考えません。


オルソラ「しかし最大主教はドチラへ向かわれたのでございましょう。何か重要且つ特秘な会議にでも……」ウーン・・・

シェリー「存外、アメリカ西海岸で日光浴とかだったりしてな」ハハハ

ルチア「仮にも巨大宗派の一、主教ですよ? そんな訳……無いとは言えませんね」ハァ・・・


確かに……もしバッキンガム宮で騎士団長殿が騒いでいたら、女王陛下と共に消えてそうな可能性は否めない。
ロシア成教の某機関トップも一緒だったら、完璧バカンスだ。


オリアナ「良いわねぇ。お姉さんもカリフォルニア辺りで焼いて来ようかしら」ウフフ

オルソラ「まぁまぁ! それはそれは素敵な提案でございますね。皆さんで慰安旅行と洒落込みましょう」ニコッ

神裂「そんな余裕有る訳無いでしょう……」ハァ・・・


金も、時間も無い。いや金は一同使ってないから溜まっているか。


ベイロープ「行くならオーストラリアの方が良いわ。アメリカ汚いもの」フフッ

ルチア「そういう問題じゃない。というか嘱託組、今日は呼ばれて無いでしょう? 何故居るのですか?」ジトー・・・

ランシス「何故って……何でかな?」ポカーン

フロリス「ルチアっちぃ。用が無くちゃ来ちゃダメなの?」ツンツン

ルチア「用が無ければ来れる場所じゃないでしょう、ランベス宮内部は。あと太腿突くなアバズ女郎。貴様もだ、浦上!」ギロッ!

浦上・フロリス「「きゃー(棒読み)」」ナデナデ

五和「し、シスター・ルチア。落ち着いて」ドゥドゥ・・・


まったく相変わらず姦しい所だ。女子寮だから当然っちゃ当然だが。


187第5話――アニェーゼ・アンジェレネ・サーシャ・レッサー『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 19:55:14.87w4Xj2QWF0 (3/48)

兎角、昼食まで小腹を詰めながら雑談等をして時間を潰した。浦上は相変わらずだが、五和の猫被りがいつも以上に冴えてる。
こんな時間が貴重だと感じられるようになったのも『彼』の御蔭だろう……感謝してもしきれない。

いつまでも平穏が続けば良い。人間とはそう願ってしまう―――



 ドッゴオオォーンッ!!



―――が、大抵そんな事を考えるタイプには平穏が訪れてくれないものだ。


神裂「何事ですか!?」バッ!

シェリー「隣の聖堂からだな……必要悪の教会メンバーのみ入れる礼拝堂だぞ?」ジー・・・

オリアナ「音だけで特に被害は見えないけど……襲撃?」フム

ルチア「何を呑気な! 誰か調査に向かっているのですか?!」キッ!


私が――と七天七刀に手を掛けた瞬間……固定電話が鳴った。ランプが光っているのを見るに、ホットライン。
オルソラが能天気に対応を始めた。


オルソラ「はいはい。此方女子寮でございますよ。ドチラ様で――」

シルビア『シルビアよ! まったくあの馬鹿ガキ共が!!』ギャーギャー!

オルソラ「あらまぁ、St.シルビア。ごきげんよう。今日は洗濯物が良く乾きそうでございま――」

シルビア『誰かオルソラと代われー!! 話通じないっ!!』ギャー!


怒声が漏れてくる。やれやれとシェリーが重たい腰を上げた。


シェリー「あいよ。如何した? カチコミか?」

シルビア『違う! ガキんちょ共よ!』ハァハァ・・・

シェリー「……ガキ?」ハ?


ガキというと……


シルビア『チビ共! カルテッ娘! それから天草のコォヤギ坊やとステイル……あ! 見つけた悪ガキ共! 切るわよ!』プツン・・・

シェリー「……だそうだ」チラッ


数名は苦笑。そして三名程……


五和・ルチア・ベイロープ「「「……」」」スタッ・・・


ゆっくり立ち上がり、武器を手にした。


188第5話――アニェーゼ・アンジェレネ・サーシャ・レッサー『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 19:58:29.92w4Xj2QWF0 (4/48)

オルソラ「皆さま、加減を忘れずに」ニコッ・・・

フロリス「リーダー。『角』必要?」ハァ・・・

浦上「……お姉、程々にね。どうせ香焼が原因だけど『元凶』じゃない筈だから」ハァ・・・

ランシス「うん。多分香焼くんとステイルさん、アンジェは暴れてないよ。サーシャは微妙だけど」アハハ・・・

オリアナ「まぁ主にいつもの『御転婆娘コンビ』でしょうね」クスッ


周りの言葉を聞いているのか流しているのか……三人は無言で扉に向かう。そして……


ルチア「あんの糞ガキいいいぃっ!! また隊長とアンジェレネ誑かしやがってぇ!!」ダッ!!

五和「コウちゃーん! 今助けるわッ!! あの虐めっ娘共おおおぉっ!!」ダッ!!

ベイロープ「レッサー……一掃すれば問題無しね。まとめてお仕置き」シャキンッ!!


二名程シスコン、ブラコン。一人は危険思考。最大限の高速術式を行使して、駆けて行った。


神裂「……私も行きますか」ハァ・・・


彼女達だけでは余計大変な事態になりかねない。というか聖堂が壊れる。
それにステイルとサーシャが一緒というのも拙い。二人がキレたら私以外止めれないだろう。


オルソラ「では私も御一緒いたしましょう。なるべく穏便に……でございましょう」ニコッ・・・


笑顔が怖い人が一緒に来てくれるらしい。こんな時は助かる。


シェリー「とりあえず早めに終わらせろよー。昼飯前だ」ヨイショッ

オリアナ「そうね。さっさと済ませて頂戴な」スッ・・・


一部の者からすれば、もう慣れた風。残った者にこの場と昼食の確保を頼み、我々も聖堂に向かった。




 ―――とある日、PM00:00、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、とある聖堂・大廊下・・・・・




走る、隠れる、止まれない。

本来食堂に集合し、食前の祈を囁いていなければいけないこの時間に如何して自分は逃げなければいけない?
簡単な話だ……捕まったら何をされるか分かったもんじゃない。


アニェーゼ「こらああぁっ!! 待ちやがれってんですっ!! わんこーやぎ! そいつ寄越せー!」ズゴゴゴ!

香焼「嫌だあああぁっ!!」タッタッタッタッ!!

サーシャ「第三の警告です……さっさとブツを渡したら如何です? 無論、私にですが」ジトー・・・

レッサー「自分から追い詰められる選択をするなんて相当なMですねっ!! 良いでしょう、お望みとあらば調教ですっ!!」ニヤリ!


魔術やら打撃やらで自分を追撃してくるアニェーゼ、アンジェレネ、サーシャ、レッサー。別名、必要悪の教会カルテッ娘(カルテッコ)達。
誰一人として本属の必要悪の教会メンバー(英国清教徒)ではないが、教会内で仲の良い4人故に誰かがそう呼びだした。

さておき彼女達は現在、自分とステイルが持っている『あるモノ』を奪い取ろうとしている。
シルビアさんがこの騒動の原因を自分の所為だと騒いでるが……ふざけるな。元はと言えば彼女達の所為だ。


189第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 20:10:10.28w4Xj2QWF0 (5/48)

香焼「渡したら渡したで喧嘩するだろお前ら! うわっ! 危なっ!!」ウワーン!

アンジェレネ「コォヤギくーん……たいちょー……もう走るの疲れましたぁ」タタタタタ・・・

ステイル「ハァハァ……僕も、疲れた……というか……ゼェゼェ……何故、僕まで巻き込まれなきゃならんのだ」ハァ・・・ハァ・・・

香焼「おま、友達見捨てるのか!?」フコウダー!!


そう言いながら一緒に追ってくるアンジェレネさん。しかも疲れたとは口だけ、ステイルとは違い余裕の表情。
そして6人の中で一番死にそうな表情をしている体躯の少年、ステイルさん14歳。煙草止めろっつぅの。


ステイル「ゼェ……もう、いい……コイツを、渡す……」グダグダ・・・

香焼「渡したら禁書目録に煙草の本数増やした上、もっと危ない煙草に変えたって告げ口してやる」ギロッ!

ステイル「そんな事、してみろ……ハァハァ……消し炭すら、残さず……ゼェゼェ……」ヘトヘト・・・

香焼「月詠さんにも同じ事言ってやる!」ギロッ!

ステイル「マジで……ひぃ……ふぅ……止め……ハァ……」ワトト・・・

アンジェレネ「マグヌスさーん。これ以上喋ったら死んじゃいますよー。走るの集中して下さーい」タタタタ・・・


これだからヘビースモカーは……


アニェーゼ「良しっ! 似非神父から狙いましょう!! 既にダウン寸前です!」スチャッ!

サーシャ・レッサー「「了解っ!」」スチャッ!

アンジェレネ「三人ともエグいねー」ニコニコ!


各々武器(蓮の杖、硬貨袋、バールの様なモノ、鋼の手袋カスタム)を構える。
拙い。ステイルは死に体だ。


香焼「っ! ステイル! 火ぃ貸して!」スッ・・・

ステイル「何、を……」ハァハァ・・・

香焼「いいからっ! あと耳塞げ!」チラッ!


億劫そうに革カバーの高級そうなライターを放って来るステイル。
自分はそれを受け取り……『あるモノ』に着火。そして―――



 カァッ!! キイイイイィーン・・・・・



カルテッ娘『うわぁっ!』ビクッ!!


―――後ろに放り、4人の動きを止めた。


香焼「ステイルこっち!」グイッ!

ステイル「うぐっ……オマ、さっき……何投げた……」ジトー・・・

香焼「都市製の乱聴弾と閃光弾を混ぜた特注弾。いいから隠れるぞ!」ダッ!

ステイル「……ったく」フコウダ・・・


最愛から貰った悪戯ボールが役立った。一応失聴や失明はしないとの事。
その場で悶えている4人を後目に近くの男子トイレへ逃げ込んだ。後で謝るから、今は隠れよう。

しかし、如何してこんな事態になったかと言うと……―――


190第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 20:13:23.41w4Xj2QWF0 (6/48)

                     <回想>


 ―――とある日、AM10:50、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、食堂・・・・・



天草学徒にとって英国の居る時間と都市に居る時間は、年間にして丁度半々くらいと調整されていた。
そんな訳で、此方に居る連中とも仲が良かったりする。友達の数でいえば英国の方が多いだろう。


ステイル「ん? 香焼か……早いな。昼食までまだ一時間はあるだろう」テクテク・・・


そんな交友関係の中、コイツとだけはアッチもコッチも一緒になる機会が多い。


香焼「頼まれモノっすよ。お使いの品寄越せってね」ハァ

ステイル「まったく、態々あの喧しいチビ共のパシリなどしてやる義理もなかろうに。アッチでもコッチでも使いっ端とは」フンッ

香焼「お使いと言え、お使いと。てかステイルも早いっすね」

ステイル「ああ。ローラが紙切れ一枚で消えただけだからな。今に始まった事では無い」

香焼「あはは……大変だね」

ステイル「神裂には言ってないが、女王陛下も消えてる。しかも余計な事に全権を『あの方』に任せるとは……何考えてんだあのババア」ハァ・・・

香焼「女王陛下をババア呼ばわりって……」タラー・・・

ステイル「皆言ってる事だろう。気にするな」


最大主教も最大主教(問題人)だが、主教補佐も主教補佐(冷酷)だ。苦労するのは女教皇様だけだろう。


ステイル「それよりコーヒーが欲しい。香焼」スッ・・・チラッ

香焼「はいはい、補佐殿……って、此処禁煙だぞ」ジトー・・・

ステイル「ローラがいないから僕が法(ルール)さ」ニヤッ


悪い笑み。絶対碌な死に方しないぞ。


香焼「やれやれ……あ、じゃあコイツ見てて」スッ

ステイル「ん? コイツは……」ジー・・・

ぬこ「みー」ニュッ

ステイル「……都市から連れてきたのか?」ムゥ・・・


仕方なかろう。誰も預けられる都合がつかなかったのだ。
最愛は元々無理だし、月詠さん家は二人ともお出かけ中。他の学徒は一緒に帰ってきてるし、上条さん土御門に頼むのは忍びない。

という訳で、女教皇様のプライベート機にコイツの同乗をお願いしたのだ。


ステイル「飼ってもいないくせに、よくもまぁ……色々面倒だろう」フム・・・

ぬこ「にゃー」ヨジヨジ・・・

香焼「飼い主が見つかるまでっすよ。てかステイル懐かれてるね」クスッ

ステイル「……よせ。柄じゃない」ハァ


肩に登ろうとする子猫を持ち上げ、テーブルに降ろす2m超。
自分は二人分のコーヒーを入れた後、どっかり座るステイルの下へ戻った。


191第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 20:19:42.12w4Xj2QWF0 (7/48)

それから暫く、子猫とステイルのほのぼのやりとりにニヤニヤしながら、人を待った。


ステイル「ふぅ……お? コイツ、煙草を嫌わないのか」モクモク・・・

ぬこ「なー」ペチペチ

香焼「猫パンチしてるって。多分、嫌がってんすよ」ハハハ

ステイル「いや、これはコイツなりの好意表現だな。現に煙を掻き集める様に、こう」クイクイッ

香焼「煙を掃ってるんだろ」クスッ

ステイル「なら普段一緒に居るオマエが煙草を喫えば事の真意が分かるぞ。ほら」スッ・・・


また愛煙布教活動が始まった。勘弁してくれ。


ステイル「モノは試しだ。一本だけ、火を付けて咥えるだけで良い。吸わなくて良いから、な」ニヤッ・・・

香焼「やだ」ウヘェ・・・

ステイル「じゃあ命令。僕が法だぞ? 喫え」ニヤニヤ・・・

ぬこ「みー」ジー・・・

ステイル「ほら、コイツも喫ってみろって言ってるぞ?」


絶対言ってない。何というパワハラ。


香焼「人事部にパワハラ被害提出してやるぞ」ジトー・・・

ステイル「アイツらはガキの遊び程度にしか捉えないよ。ほら早く咥え―――



               ゴチンッ!!



        ―――ろっぐ、つぅッッッッ~~~~ッ!!?」ガンッ!!

ぬこ「にゃんっ!!?」ビクッ!! スタタタタ・・・


突如、頭蓋を踵落としされるパワハラ上司。ざまぁ見ろ。
だがついでに、子猫が驚いて逃げてしまった。


ステイル「……誰だ、オイ」ギロッ・・・

アニェーゼ「誰だ、じゃねぇです。人の使い魔もといペットを悪道に引き摺りこむな、この不良神父」ジトー・・・


待ち人が来た。
助かったが……誰が使い魔だ。色々危ないからそういう事言わないの。


192VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/28(月) 20:22:58.22+fONqZQDO (1/1)

おおぉ‥‥>>1、復活ッッ!!
>>1、復活ッッ!!
>>1、復活ッッ!!


193第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 20:31:08.69w4Xj2QWF0 (8/48)

先頭に立つアニェーゼの後ろから3名、同じくらいの身長の少女達が連いてくる。


アンジェレネ「ま、マグヌス神父。此処は禁煙ですよ? コォヤギくんも止めなきゃ駄目です」メッ!

ステイル「……あ?」チラッ

アンジェレネ「はぅ……」スッ・・・


アンジェレネ、怯え過ぎ。ステイルは睨んだ訳じゃない。振り向いただけだ……人相が悪いのは仕方ない。

因みにこのメンツで集まる時は皆フランクに呼びあっている。
アンが自分をくん付けで読んだり、アニーやレッサー、サーシャをちゃん付けで読んだりするのがその例だ。


アニェーゼ「アンを虐めんな、この[ピーーー]野郎! 金○、ブっ潰しますよ!?」アアァン!?

ステイル「ハァ? ……上等だ。格の違いを教えてやろう、この[ピーーー]チビ……灰すら残さず消してやる」ギロッ・・・

香焼「ふ、二人とも。落ち着いて……アンも大丈夫でしょ?」

アンジェレネ「う、うん。アニェーゼちゃん、私は大丈夫ですから」

ステイル・アニェーゼ「「……ふんっ」」チッ・・・


犬猿の仲。どうして仲良くできないかなぁ。


サーシャ「第一の考察ですが、同族嫌悪というヤツでしょう。確かワシリーサが言っていた『ツンドラ』ですね」フムフム


ツンデレね。君の祖国の北側じゃないよ。


アニェーゼ「サーシャ……コイツと一緒にしないで下さい。もっと愉快な痴女衣装に改造してやりますよ」ジトー・・・

ステイル「おい、赤色(ロシア人)。いくら客人とはいえ言葉を選べ。死体になって永久凍土に帰りたくは無いだろう?」ジトー・・・

サーシャ「第一の訂正ですが……罵倒使い(スラング)も一級品(同レベル)です」ハァ・・・

ステイル・アニェーゼ「「一緒にすんな!!」」ガアアァッ!!


どっちもどっちだ。サーシャが正しい。


レッサー「にしし! こういうのって日本語で何て言うんでしたっけ? えっと……う●こち●カス?」クスクス・・・

香焼「目糞鼻糞。レッサー、ワザと間違えたろ?」ジトー・・・

レッサー「失敬失敬。しかーし……男同士で『吸え』だの『咥えろ』だの『先っぽだけ』だの、何おっ始めるつもりだったんですか?」kwsk!


頭が緩い奴も一緒の様だ。誰も『先っぽ』だなんて一言も言ってない。
それからアンとサーシャ。無言で赤面しないの。


アニェーゼ「まったく、相変わらず不貞の極みですね。レッサー」ハァ・・・

レッサー「そう? じゃあ不貞ついでに……」ゴソゴソ・・・ガシッ!

一同『っ!!?』ビクッ!?

香焼「ちょ、レッサー! レッサーさん!? 何してんの!? 何で自分のベルト掴むの!?」ジタバタ!

レッサー「コウヤギにゃんの[ピーーー]を私が[らめぇぇっ!]してあげようかなぁとかぁ痛あああぁっ!!」ゴギンッ!!


流石のアニェーゼも直接的な表現はアウトらしい。赤面しながら綺麗なローキックを叩き込んだ。


194第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 20:39:15.81w4Xj2QWF0 (9/48)

床で悶えるレッサーを捨て置き、一同、席に着く。


アニェーゼ「ああ、もぅ……コーヤギ。私もコーヒー! 砂糖ミルクいっぱいの!」ドカッ!

ステイル「図々しい奴。自分でやれ」フンッ!

アニェーゼ「アンタに言ってねぇです。コーヤギ、早く」チラッ

香焼「はいはい……アンとサーシャは?」

アンジェレネ「私は手伝います。サーシャちゃん、ココアで良い?」

サーシャ「第一の回答ですが、肯定です。お願いします」ペコッ

ステイル「まったく女の尻に敷かれる奴だ……香焼、僕もおかわり。チビガキと違ってブラック濃いめで」フンッ

アニェーゼ「チッ……調子乗んなっつってんです、枯渇不能野郎」ガタッ・・・

ステイル「あ? 僕の聞き間違いかな……コーヒーと厚底ブーツで見栄張る幼女(ロリータ)さん」スゥ・・・


いい加減にしろ……『怖い大人』呼ぶぞ?


アニェーゼ「それは……」ウッ・・・

ステイル「勘弁してくれ……」タラー・・・


分かれば宜しい。


香焼「レッサーは、サイダーだっけ?」チラッ

レッサー「痛たぁ……酒あれば酒。厨房の奥に料理長が隠してるラム酒がある筈です」ポリポリ・・・

アンジェレネ「うん、駄目です。お水持ってくるね」ニコッ

レッサー「……サイダーお願いします」ハァ・・・


やれやれ、やっと落ち着いた。とりあえず飲み物を持ってきてから渡す物を渡そう。



 ―――とある日、AM11:10、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、食堂・・・・・



自分とアンが飲み物を持ってテーブルに戻ると、アニーとステイルはまだ睨み合っていた。
最早いつもの風とサーシャ、レッサーは苦笑。とりあえず全員に飲み物が行き渡り一息ついた所で、都市から買ってきた土産を取り出した。


アニェーゼ「おお! そうでした! ちゃんと買ってきましたか?」ジー・・・

レッサー「忘れてたらオシオキですからねぇ……個人的にはそっちもアリですよ?」ニシシ!

香焼「忘れてないよ……えっと、まず全員分の……」ゴソゴソ・・・


ダンボールいっぱいの菓子類。都市、というより日本でしか手に入らない菓子・ジュースだ。
英国の菓子等はハッキリ言って……雑。味の濃さだけで誤魔化している節が否めない。


ステイル「……日本の駄菓子? あと都市製の飲料か」ジー・・・


故に、コッチの人間からしてみれば日本の菓子類はかなりの嗜好品となる。4人は挙(こぞ)ってダンボールの中身に目を輝かせた。


サーシャ「……チューイングガム。風船ガム。チューブガム」パアァ!

レッサー「いやぁ、これだけあれば二週間は腹持ちしますねぇ……ご褒美は何が良いですか? [らめぇぇっ!]? [禁則事項です]?」ニコッ

香焼「い、いらないよ……」アハハ・・・


アニーがまた睨んでるぞ。


195第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 20:45:49.05w4Xj2QWF0 (10/48)

香焼「次は……アニーとアンの分だね」スッ・・・


リュックから数冊の本を取り出す。


アニェーゼ「待ってました! 新作4つですね!」ワクワク!

アンジェレネ「カナミンの新刊も溜まってたもんね!」ワクワク!

香焼「スピンオフ版も買ってきたっすよ」

アニー・アン「「わぁい!」」キャッホー!


二人が手にしたのは『超機動少女カナミン』という学園都市発の人気漫画だ。世界中で愛読者がいるベストセラー本。
今は第三期に突入し『カナミン:ディファレンシャル』という名前だ。

もともと浦上が買っていたモノを教会内の数名に読ませたら、瞬く間に人気になったのである。


レッサー「二人読み終わったら、次貸して下さいねー」ヨヤクー!

ステイル「君達は子供か……」ハァ

アニェーゼ「ふんっ。大人ぶってコレの良さが分からない枯れた14歳になるくらいなら、子供で結構ですよ」ケッ

アンジェレネ「読んでみれば面白さが分かりますよ。今度貸してあげましょうか?」ニコッ

香焼「……本気で言ってるの?」タラー・・・

アンジェレネ「ええ」ニコニコ!

ステイル「……遠慮しとくよ」タラー・・・


アンはたまに恐いもの知らずのトンデモ発言をする。てかステイルがカナミン読んでる姿を想像したら……


レッサー「きゃははは! す、ステイルがか、カナミンだって!! イヒヒヒっ!」ケラケラ!

サーシャ「カナミン……衣装……やめろワシリーサ……」ガタガタ・・・


こうなる。そして何故か怯えるサーシャ。


香焼「ま、まぁステイルは都市行くし読もうと思えば何時でも読めるしね」アハハ・・・

ステイル「読まん」フンッ

アンジェレネ「あらら、残念」フフッ

アニェーゼ「後になって読みたいっつっても絶対ぇ貸さねぇですよ」フーン!

ステイル「読まないって言ってんだろタコ頭」カチッ・・・フゥ

香焼「まぁまぁ……あとステイル」ジトー・・・

ステイル「……ん」チラッ


女の子の前でも平然と煙草に火を付けるのは如何かと。


レッサー「ま、放っておきましょう。肺癌で死ぬのが関の山です」ベー!

ステイル「神がニコチンとタールの世界に召してくれると仰るなら本望だよ」ワッカッカ・・・


そんな神様、封神されてしまえ。


196第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 20:52:21.90w4Xj2QWF0 (11/48)

香焼「まったく……それじゃあレッサーの分」スッ・・・

レッサー「はいはい!」グイッ!


都市製のリップに香水、ネイルカラー。女子中高生に人気の品だ。


アニェーゼ「レッサー……化粧なんて見栄張って如何すんですか?」ハァ

レッサー「化粧じゃありませんー。リップですー。まったく、少しは御洒落を気にしないと女捨ててるって思われますよ?」

アンジェレネ「でも、私達くらいだと香水とかまだ早いんじゃないかな?」

レッサー「甘い甘い。そういう考えでいると、将来ルチアとか神裂みたいに枯れるんです」

サーシャ「第一の質問ですが、修道女なら別にそれでも――」

レッサー「私シスターじゃないですよーん。それに……ホントに良いんですか? 20前に女して捨てて……ねぇ、サーシャにゃん」ジー・・・

サーシャ「――……むぅ」ウーン・・・


随分失礼な事を言うが多分、オリアナさんの入れ知恵だろう。一部の人間からしてみれば美のカリスマ的存在。
ふと、アンが自分とステイルに尋ねてきた。


アンジェレネ「うーん。男の子ってやっぱり身嗜み気にする?」チラッ

香焼「えっと、人それぞれじゃない? リップくらいなら年相応だけど、若いのに化粧までしてるとね……」アハハ・・・

ステイル「確かに……都市の女学生は正直、匂いキツいよ。アレじゃ御洒落になってないだろうに」

アニェーゼ「んなモンで男釣れると思ってる阿呆は将来売女(ビッチ)確定ですね」ハハッ

香焼「そういう訳じゃないっすけど……ステイルだって香水掛けたり髪染めたり、入れ墨(タトゥ)してるくらいだしさ」ハハハ


瞬時、4人が固まった。自分はしまったと思い、ステイルをチラ見する……


ステイル「……ボケナス」ハァ・・・


……天を仰いでらっしゃった。


サーシャ「第二の質問です。マグヌス……それは地毛では無かったのですか?」ジー・・・

ステイル「答える義務は無い」フンッ

アンジェレネ「え、えっと、魔術的な意味合いなんですよ。きっと」アハハ・・・

アニェーゼ「いやいや、違いますね。きっとイメチェンしたんですよ。地味ぃな黒髪眼鏡だったのがある事をきっかけにデビューとか」ウヘェ

ステイル「勝手な想像をするな!」チッ・・・

レッサー「香水は煙草の臭い消しかと思ってましたが……御洒落とは。もしかしてバーコードとかピアスも御洒落? センス無ぁ!」キャハハ!

ステイル「……燃やすぞ小悪魔」ギロッ・・・

香焼「す、ステイル落ち着いて! 皆もからかわないっす」アワワ・・・


自分が蒔いた種だ。フォローせねばなるまい。


香焼「つ、次。サーシャの!」アタフタ!

アニェーゼ「無理矢理切り替えやがりましたね」ジー・・・

香焼「うっさい! ほら、コレ!」ドンッ!

サーシャ「確認します……1,2,3……丁度7ケースですね。ありがとう」コクッ

アンジェレネ「ええっと……サーシャちゃん。コレ、何?」ポカーン・・・


何やら重々しいケース。自分とサーシャ以外の面々は目を丸くして、それを見詰めた。


197第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:04:20.14w4Xj2QWF0 (12/48)

サーシャは『第一の説明を……』と外套の裏から『何か』を取り出し、銃を構える様な仕草を見せた。
手に持つ『何か』の形状は、マジックハンドの様な取っ手に二枚の平たい電子器具が重なり付いたモノ。


レッサー「うーんと……はい?」タラー・・・

サーシャ「武器(工具)です」キリッ!

ステイル「随分とデカいな……何の工具だ、それは?」ジー・・・

香焼「都市製の資材切断器だよ。業務用のホームセンターに売ってるっす」


つい先日、自分が買って来てやったモノだ。
都市のカタログだか雑誌を見てコレの存在を知ったらしく、見つけるや否や、普段隠れている目を輝かせて喰い付いてきた。
彼女がこんなに興奮する姿を見たのは初めてだったので、相当興味があるのだと思い、買ってきてあげた所存でございます。


アニェーゼ「資材切断? 何か恰好良いですね! 如何やって使うんですか?」キラキラ・・・

香焼「此処で使ったら危な――」



     ザシュンッ!!



香焼「――いぃいいぃっ!!?」ギョッ!!

ステイル「……な」スパッ!

アニー・アン・レッサー『え』ビクッ!!



     ズガンッ!!



香焼「」タラー・・・・

サーシャ「第二の回答ですが……今の通りです」フフッ・・・キリッ!

香焼「……さ、サーシャ、さん?」ダラダラダラ・・・


注意を促す前に、即行実行しやがった拘束着修道女さん。
二枚の器具の間からプラズマの刃が飛び出す。ステイルの咥えていた煙草がスッパリ切れ、その先にあったテーブルが真っ二つになった。


アニェーゼ・レッサー「「す……凄ぇっ!!」」キラキラ!

サーシャ「第一の解説ですが、オリジナルに術式を組み込んでいるので威力は倍増。科学と魔術のハイブリッド工具(武器)です」ニヤッ・・・

ステイル「こ、の……キチガイ女っ!! 鼻が?(も)げる所だったぞ!!」ウガアアァッ!!

サーシャ「大丈夫です。今や数メートル単位なら外しません」キリッ!

アンジェレネ「あはは……そういう問題じゃないかな」タラー・・・


人に向けて撃ってはいけません。危険です。良い子は絶対に真似しない事。


サーシャ「第二の解説ですが、コーヤギーの買ってきた『コレ』はカッターの刃です」ガチャンッ!


ライフルの弾層を交換する様に、カッターのマガジンを入れ替える拷問具の専門家。あと人の名前をロシアンっぽく呼ばないでくれ。
カッターの『刃』と言うが理論が『科学』故、彼女達に説明しても分からないと思う。正直自分もプラズマという事以外、よく分かってない。

何にしろ恍惚状態のサーシャと、触らせろ撃たせろと騒ぐ御転婆コンビには受けが良かったようだ。
ただしかし……注意せねばなるまい。


香焼「サーシャ……次、危ない真似したら没収だからね」ジトー・・・

サーシャ「あ……すいません。コーヤギー」コクッ


自分の否を素直に認めるサーシャ。悪いと思ったらハッキリと謝る。この子の美徳だろう。


198第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:11:37.35w4Xj2QWF0 (13/48)

ステイル「今すぐ取り上げろ。十分危険だろ。しかも科学の工具を使うなんて、ロシアの人間は如何してこう……」ッタク・・・

サーシャ「……マグヌス。第一の意見ですが、祖国は関係ありません」ジトー・・・


ステイルも大概、選民思想が強いタイプだ。自分も彼のそういう所は苦手である。


ステイル「兎に角、君の魔術というか戦闘というか……スマートじゃないよ。もっと分別ある……」グチグチ・・・

アニェーゼ「五月蠅ぇ野郎です。火炎馬鹿一筋に言われたくねぇですよね」ケッ

ステイル「……何だと?」ギロッ・・・


またこの二人は……


香焼「ステイル。アニー」ジトー・・・

ステイル・アニー「「……チッ」」フンッ

香焼「まったく……これやるから機嫌直せ」スッ


こっそり、ステイルに某所で購入した禁制煙草をくれてやる。


ステイル「お。これは……まぁ、許してやろう」フフフ・・・


コイツの扱い方も慣れてきた。
4人に冷ややかな目をされたが、仕方あるまい。ステイルを黙らせる最も効果的な手段なのだ。

それから各々、手にした品を読んだり開いたり嗅いだりしていた。
一寸後……ふとレッサーが、サーシャの工具をマジマジ見詰めだし、グチグチ言いだした。


レッサー「サーシャのそれ、高いでしょう? 良いなぁ……ハッ! まさか差別ですか!?」ブーブー!

サーシャ「第三の回答ですが、私は彼に対しそれ相応の費用は出しています。文句をつけられる謂れは有りませんよ」キッパリ!


別に良いと言うのに、大分上乗せしてお使い費用を振り込んでくるサーシャ。
自分に物騒な物を買わせているという自覚は有るのだろう。義理堅いやら何なんやら。


香焼「レッサーだって偶に高い動物マフラー頼むだろ? それに比べたらマガジンは安いもんっすよ」ハハハ

レッサー「ぐぅ……」タラー・・・

アニェーゼ「でもなぁ……分かってたら私だってもっと高級な物を」ムッ

香焼「アニェーゼだって男の自分が買い辛い厚底サンダル頼むし。店員に『え? 何この子?』みたいな目されるんすよね」ハァ・・・

アニェーゼ「……悪ぅござんした」ポリポリ・・・


でも馬鹿二人(五和・浦上)のお使いと比べたら、彼女達はまだ可愛いモノだ。
アイツらは値段もそうだが量も大量、男が買い辛い物を平気で頼んでくる。しかも代金未払い。


香焼「まぁ自分が日本から運んでくれる程度のモノなら買ってくるっすよ」ニコッ


その程度しか出来ないからね。


199第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:14:07.93w4Xj2QWF0 (14/48)

サーシャ「いえいえ、感謝します」ペコッ

アニェーゼ「流石忠犬わんこーやぎですね」フム!

アンジェレネ「アニェーゼちゃん、それ感謝じゃないですよ」アハハ

レッサー「評価鰻登りですよん。誰かさんと違ってねー」チラッ

ステイル「……僕は主教補佐だ。お使い何て柄じゃないだろう」フンッ

アニェーゼ「うわぁ。立場を主張する男って最っ低ですよねぇ」ジトー・・・

ステイル「何とでも言え。亡命人」ケッ

アニェーゼ「むきーっ!! 何だとぅ!!」キーッ!!

アンジェレネ「あ、アニェーゼちゃん……」アワワ・・・


暫くこんな感じで、最近よく有る光景が続いた。



 ―――とある日、AM11:30、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、食堂・・・・・



今日の昼食係の関係者が厨房で忙しなく動き出した頃、自分達は各々好き勝手やっていた。

アニーとアンは仲良く漫画を読み、サーシャは工具でカッターを調律。
レッサーはネイルアートを試み始め、ステイルは相変わらず煙草に耽っている。
自分は戻ってきた猫を抱えながら、携帯を弄っていた。

一寸後、アニーが漫画を放棄し自分の下へ寄って来る。


アニェーゼ「……何してるんですか?」ジー・・・

香焼「んー……携帯で漫画見てた」カチカチ

アニェーゼ「携帯で?」ホエ?


画面を見せてやる。更にボタンを押してコマ送り。


アニェーゼ「おお! 凄ぇですねぇ。都市製のセルフォンは何でも出来るんですか!」キラキラ!

香焼「いやいや、今の携帯の機能なら大抵付いてるよ」アハハ

アニェーゼ「むぅ……誰でも新しいヤツ持ってる訳じゃねぇんですって」ブーブー


そういえばアニェーゼとアンジェレネは古いタイプしか持っていなかった。
多分、ルチアさんが御堅い所為だろう。電話とメール以外の機能は付いていない奴だった気がする。しかも仕事以外持ち歩いていない。


アニェーゼ「良いですねぇ……これさえあれば漫画買う必要無ぇんですよねぇ」ジー・・・

香焼「いやいや、一応買うんすよ。それに普通の紙媒体の方が読みやすいしね」

アニェーゼ「ふーん……ねぇ。携帯貸して下さい」

香焼「え……無理」エー・・・

アニェーゼ「ちょっとで良いですから」ネ!


オマエは無い物強請りする小学生か。というか、同時並行でメールもしていたから本当に貸せないぞ。


200第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:19:25.16w4Xj2QWF0 (15/48)

アニェーゼ「……何か疚(やま)しいモンでも有んですか?」ジトー・・・

香焼「いや、そういう訳じゃないっすけど……」ウーン・・・

レッサー「如何したんですかー? イチャイチャ騒いじゃってぇあ痛っ!」ポカッ!


喧しいのが突っ込んできた。しかも開口一発アニェーゼに蹴られてるし。


アニェーゼ「コーヤギが疾しいモンあるからってつって、携帯貸してくれねぇんですよ」ムゥ

レッサー「え!? エロムービー?! ハメどぃ痛いって!! アグヌス、叩き過ぎ!!」イタタ・・・

アニェーゼ「アンタは言葉選べ色ボケ!! あとイタリア語発音すんなっ!」ギロッ///

レッサー「んもぅ……アニェーゼは言葉粗暴な割に初心(アンヨ)ですからねぇ」フフフ・・・

アニェーゼ「う、五月蠅いウルサイうるさーい!」ムキーッ///

ぬこ「にゃっ!?」ビクッ! バッ!


何気に危ない叫びを上げる茹でダコさん。
御蔭でまた子猫が逃げた。ただ今度は見える範囲、ステイルの目の前にだ。
因みにアニーの言葉の悪さは育ちの所為だと聞く。罵倒の中に淫語を使うが、実の所、本人はエッチぃ本の表紙を見るだけで真っ赤っかだ。


レッサー「さておき、コウヤギ。フォルダの中がマジでエロエロいっぱいだったらドン引きなんですけど……大丈夫?」ジトー・・・

アニェーゼ「んなもん有ったらリアルにブっ殺しますからね」ギロッ・・・

香焼「無いから……」ハァ・・・


最愛の同僚さんじゃあるまいに、そんな馬鹿な事は無い。


アニェーゼ「じゃあ貸して下さい」ン!

香焼「もぅ……少しだ――」



 Prr・・・Prr・・・



アニー・レッサー「「……」」ピクッ・・・

香焼「――け、だ……やっぱ駄目」ピタッ


メールが来た。


アニェーゼ「……おい」ジー・・・

レッサー「怪しい……」ジー・・・

香焼「仕方ないだろ。携帯ってメインは連絡手段なんだし」タラー・・・

レッサー「誰からですか?」ジー・・・


宛先は……淡希さん。


香焼「……都市の任務関係者」サラッ・・・

アニェーゼ「……ホントに?」ジー・・・

香焼「ほ、本当っすよ。何で疑うのさ」ウッ・・・

レッサー「別にぃ……でも関係者なら見せても大丈夫ですよねぇ」ニヤッ・・・

香焼「いやいや、外部漏洩とか怒られるから」ポリポリ・・・


そう言っとけば黙ざるを得まい。


201第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:22:04.95w4Xj2QWF0 (16/48)

因みに本文は……



【DATE】XX/XX 20:32 
【FROM】淡希さん
【sub】RE4:
------------------------
英国居るんだ!
良いなぁ……私も海外行っ
てみたい♪

香焼くん、連れてって!
なんちゃって(ハート)×3 ← 絵文字



絶対見せらんねぇ……女の子って如何してハート多用したがるんすか?


アニェーゼ「つぅか……そんなに大事な任務をコーヤギみたいな下っ端が受け持ってる訳無ぇです」ジー・・・

レッサー「確かに……」チラッ・・・

香焼「し、失礼な。自分だって都市内では色んな活動を任さ――」



 Prr・・・Prr・・・



香焼「――れ、て……」ピタッ・・・

アニー・レッサー「「……じー」」グイッ・・・


今度は……最愛だ。


香焼「と……特秘事項かぁ……ヤバいっすねぇ……」ダラダラ・・・

アニェーゼ「……やっぱり」ジー・・・

レッサー「怪しい……」ジー・・・

香焼「特秘だって! ホント!」ダラダラ・・・


嘘ではない。
『携帯は他人に見せるもんじゃないぞ……人間関係が……』って野母崎さんがシミジミ言ってた。
多分奥さんに見られた経験だろう……じゃなくて、本当に他人に見せて良いモノではない。

因みに最愛のメールは……



【DATE】XX/XX 20:34 
【FROM】最愛
【sub】RE4:
------------------------
そうなんだ(キャー)!
(ネコ)も海外旅行なんて(超)
羨ましいです♪


御土産(超)期待しちゃって
いいんですよね(キラキラ)×2

あ、でも英国土産って何で
しょう? 紅茶とか(カップ)?

紅茶の味とか(超)分かんな
いですってー(笑)



絵文字多っ……コレはコレで拙い。てか最愛(超)のデコ文字使い過ぎ。


202第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:30:00.52w4Xj2QWF0 (17/48)

アニェーゼ「ねぇ……どんな特秘ですか? 触りだけで良いです。教えて下さい」ジー・・・

香焼「都市内で……これ以上は[禁則事項です]っす。マジで」ウンウン・・・

レッサー「まさかショタキャラを使った痴女を誘う美人局的な任務じゃ……アニェーゼ、冗談ですって。怖いから蹴る準備しないで」アハハ・・・

香焼「そんな任務有って堪るか……兎に角、駄目。ほら、もうすぐ昼飯だから荷物片付けとくっす。ルチアさん達に見つかったら大変だろ?」

アニー・レッサー「「……」」ジトー・・・


個人の自由とはいえ、規律正しいルチアさんや真面目なベイロープさんに見つかると色々厄介だ。
だが、この二人は引かない。そして……


アニェーゼ「……ステイル!」チラッ


頭に乗せた猫をアンとサーシャに取られそうになっているステイルの方を向いた。てか器用だな。でも何故子猫を渡さないんだ?


ステイル「なん、だっ!? くっ!!」クイッ!

アンジェレネ「ねこさーん! おいでー!」エイッ!

サーシャ「第一の要望です。その猫を貸して下さい」エイッ

ステイル「ぐぬっ!! ひっつくな貴様ら!!」ワトト!

ぬこ「なー」グシグシ


椅子に座った状態のステイルの頭上の猫に、手を伸ばしても届かないアンとサーシャ。子猫も器用に曲芸乗りしている。


アニェーゼ「コーヤギが今、何か特秘任務受け持ってやがりますか?」

ステイル「はぁ? そんなもの……聞いた覚えが、無いね……どわぁっ!!」ガタッ!

アン・サーシャ「「にゃー!」」ワシワシ!

香焼「」チーン・・・

レッサー「……と、主教補佐殿が申しているのですがー」ジトー・・・


あの不良神父め……


香焼「す、ステイルにも教えられない内密な」アタフタ・・・

アニェーゼ「じゃあ審問が必要ですねぇ……もしかしたら離反行為かもしれません……」フフフ・・・

レッサー「ありゃりゃ。それは拙い……さぁ、身の潔白を証明する為にも……ハリー! ハリー! ハリー!」ニシシシ・・・


詰め寄る二人。これはピンチだ。この御転婆コンビに『力(魔術)』で捩じ押されたら、堪ったものではない。
こうなったら……


香焼「……あー!! ルチアさんが男の人と仲睦まじく腕を組んで歩いてるー!」ビシッ!!

カルテッ娘『何ぃ!!?』クルッ!!


同時に自分が指差した扉の方を向く4人。そこには……


建宮「いや、だから……オマエは阿呆か? 何度言ったら分かるのよな。一回女教皇様含め、ガキ共にガツンと言わないと」テクテク・・・

牛深「何でそう意固地になんの、斎字。オマエは昔から変な所で融通利かねぇな……女教皇様怒られてる姿をガキ共が見たら拙いべ?」テクテク・・・

野母崎「まぁまぁ。そう言わずにもうちょっと穏便に話そう、二人とも。やっぱ諫早にも相談すべきだって」テクテク・・・


……おなじみ、天草青年(オヤジ)トリオ。


203第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:34:15.16w4Xj2QWF0 (18/48)

アンジェレネ「……シスター……ルチア?」ポカーン・・・

アニェーゼ「いや……違ぇし!! 天草のムサい野郎共だし!!」ガアアァッ!!

レッサー「まぁあのルチアが今から皆が集まる食堂で男と同伴してる訳無いですよね……」アハハ・・・

サーシャ「第二の感想ですが……少しでも期待した自分が馬鹿でした」ハァ・・・

ぬこ「……なぅ」ペロペロ


当たり前だ。彼女が男と二人きりで居たら教会内全ての人間がフリーズする。

てな事はさておき……逃げるが勝ちっ!!


レッサー「……あぁっ!!?」ギロッ!!

アニェーゼ「逃げやがりましたねっ!!」ギロッ!!

香焼「きゅ、急用を思い出しただけだから!! 気にしないで!!」タッタッタッタッ!!

アニー・レッサー「「待てやぁゴルァアーッ!!」」ドドドド!!


扉の方へダッシュ!!


ステイル「お、おい香焼っ!! 一人で逃げる気かっ!!」テメェッ!!?

香焼「自分で如何にかしろっ!!」ワルイッ!!


猫争奪戦に巻き込まれるステイルを横目に走り抜ける自分。
アンとサーシャに顔を掴まれ危うく子猫を奪われそうになる赤毛ノッポは『糞(ダム)ッ!』と悪態をつき……


ステイル「く、の……ふんっ!!」ブンッ!!

アン・サーシャ「「うわっ!!?」」ドンッ

ぬこ「んにゃっ」ガシッ!!


外套を勢い良く脱ぎ捨て、自分の後を追ってきた。勿論、頭に猫を乗せたまま。


アニー・レッサー「「携帯寄越せー!!」」ドドドド!

アン・サーシャ「「ねこー!!」」ババババ!


無論、彼女らも追って来る。


香焼「やばっ!!」ゲッ!!

ステイル「クッソ(ジーザス)!! どうしろってんだ!!」チッ!!

香焼「オマエは子猫渡せば済む話っすよ!!」タタタタタ!

ステイル「コイツがっ!! しがみ付いてっ!! 離れないんだっ!!」タッタッタッタッ!!

ぬこ「みー」ブンブン


どうやらこの猫は長い髪の人間に懐きやすいらしい。
都市でも五和より女教皇様や浦上に懐いてたからなぁ……って、そんな事考えてる場合じゃない!


204第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:39:35.24w4Xj2QWF0 (19/48)

兎に角、食堂をメチャクチャにしない為にも外に逃げねば!


建宮「―――って、ノモ。アンタねぇ……ん? 香焼?」ポカーン・・・

牛深「ステイルも一緒か? 仲良いなぁお前ら」ハハハ

野母崎「何だ何だ、女の子に追っ掛けられてるなんて羨ましいシュチュだこと」ケケケ


扉の前の上司三人。しかし今は構ってられない。


香焼「すいません!! 退いてー!!」タタタタタ!

建宮「ぬをっ!!?」クイッ

野母崎「ったく……危ねぇなぁ」ムゥ・・・

ステイル「……貴様ら。そこ危険だぞ」ボソッ・・・

牛深「はぁ? 何故にさ?」キョトン・・・


自分が小走り、ステイルは大股で駆け抜けた後……―――



    『んぎゃああぁっ!!』ドゴーンッ!!



―――……扉の方から悲鳴が聞こえた。あーめん。


カルテッ娘『待てえぇっ!!』ドドドドド!


4人とも、手に物騒なモノを持っていらっしゃるよ。


香焼・ステイル「「待てるかあああぁっ!!」」ギャアアァッ!!

ぬこ「にゃーん」ニコニコ


捕まったら色んな意味で大変な事になる『大惨事聖堂内鬼ごっこ』が幕を開けた……―――



       <回想終了>



 ―――とある日、PM00:10、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、とある聖堂・何処かの男子トイレ・・・・・



香焼・ステイル「「ハァハァ……ふぅ」」グデェ・・・

ぬこ「なー」ペチペチ


何処ら辺かは分からないが、とりあえず男子トイレに入り込めた。
此処なら居場所がばれたとしても、アニーとアンは恥ずかしがって入ってこれまい。


ステイル「アイツら……ゼェ……[ピーーー]気で、来てたぞ……ゼェゼェ」グダッ・・・

香焼「いや、多分もう……ヒィ……本来の目的、忘れてるよ……4人とも……」フゥ・・・


謂わば狩り。携帯とか子猫はもう如何でも良い。
自分ら二人を取っちめれば、彼女達の気は済むといった所だろう。


205第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:43:22.75w4Xj2QWF0 (20/48)

香焼「ふー……女教皇様か対馬さん辺りが気付いてくれれば……きっと助けに」

ステイル「無駄だな……多分」カチッ・・・フゥ

香焼「え?」チラッ

ステイル「神裂、対馬が出てきた所でカオスが増すだけだ……ゲホゲホッ! オルソラか……もしくは『あのお方』が出てくるしか」ジジジ・・・


こんな時でも煙草を止めない14歳は、冷静にこの場を分析した。
確かにあの二人が、カルテっ娘に[禁則事項です]とか言われたら……間違いなくブチ切れる。


ステイル「畜生(ファッキン)! 頼りにならない大人ばかりだよ、オイ!」ゲホゲホッ!

香焼「違うっす……子供が賢過ぎるだけなんすよ……」フゥ・・・


学園都市もそうだが、必要悪の教会も主要なメンバーの年齢層が低い。成人は数えるほどしかいないと思う。


ステイル「それに……あの4人に加え、シルビア侍女長まで『狩り』側に回るとは……」クッ・・・

香焼「もしかしたらルチアさんとベイロープさん、フロリスさん……馬鹿一号二号(五和・浦上)も『狩り』に出てるかも」ハァ・・・

ステイル「まったく……これだから女共は……」ジジジ・・・


頼りになりそうな男性陣(天草青年トリオ)は、さっき初見殺しで墜とされてた。
もう頼れそうな大人……そして男性は、もう……



 ―――頼れる大人が、男がいないのかい?



香焼・ステイル「「っ!!?」」ビクッ!!


大の個室が一つ……ゆっくり開き……



 ―――それは違うな……君達自身も男だろう? そして何れ大人になる……諦めるな!



水が流れる音をバックに、爽やかな笑顔で……ベルトを締めながら……


香焼・ステイル「「な……騎士団長(ナイトリーダー)!!」」パアアァッ!!

騎士団長「Yes,I’m!」ビシッ!!

ぬこ「にゃー」ジー


頼れそうなオーラを醸し出した男性が歩み寄って来た。


騎士団長「やれやれ。何やら騒がしいかと思えば……君達が中心か」フゥ

香焼「な、騎士団長さん。如何して聖堂内に!?」

騎士団長「君は……天草の香焼少年だったな。St.神裂にバb……女王陛下の安否確認を頼まれてね。案の定、何時の間にか消えていたよ」

ステイル「やはりローラと何処かに遊びに行ったな……」ハァ・・・

騎士団長「多分そうだろう。故に今後の方針を相談しに、侍女長と此処へ来た訳だが……何ともな」ムゥ


手を洗いながら顔を顰める団長殿。ダッサい筈なのだが、窮地に現れたというだけで一挙一動が恰好良く見える。


206第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:47:32.01w4Xj2QWF0 (21/48)

騎士団長「姫様方を連れて来なくて正解だったよ。もっとも、私の眼に入る範囲に居るのは第二第三王女様だけだけどね」Ahaha!

香焼「え……(第二第三だけって……嫌な予感)」タラー・・・

騎士団長「とりあえず主教補佐。煙草を消したまえ。それから話を聞こう。聖堂内は禁煙だ」チラッ

ステイル「チッ……香焼、説明しろ」ジュッ・・・

香焼「え、あ、はい……えっと……―――」カクカクシカジカ・・・


少年説明中……


騎士団長「―――……成程」フムフム・・・

香焼「すいません……自分達がだらしないばかりに……」シュン・・・

騎士団長「いや、人のプライバシーにズカズカ踏み込むのは褒められない事。結果的に被害が広まったが、その場の判断としては仕方あるまい」

香焼「り、団長さん……」キラキラ・・・

ステイル「……それで、如何するんだ」ジー・・・


ダンディに顎を撫で、一寸考える騎士団長さん。


騎士団長「ふむ……簡単な話だ。私が彼女達に説得……いや、説教すればいい」コクッ

香焼・ステイル「「せ、説教?!」」ハァ!?

騎士団長「先にも言ったが人には『領域(プライバシー)』というものがある。それは許可が出ない限り相互不干渉であるべきだ」

香焼「ほ、え?」ポカーン・・・

騎士団長「小娘達はそれが分かってないと見える……安心しろ、仕置き程度だ。傷などは付けん」ニコッ

香焼「お、おぉ……」カッケェ・・・

ステイル「……それが通じる相手だとでも?」ハァ・・・


確かに……彼女達は基本、人の話を聞かない。


騎士団長「なぁに、誠意を持ってすれば熱意で返してくれるさ……私に任せなさい」キリッ!

香焼「は、はい! す、ステイル、助かりそうっすよ!」ヤッター!

ステイル「……僕には嫌な予感しかしないよ」ハァ・・・


いやいや、彼は頼れる大人の筈だ。オーラが出てる。


ステイル「オーラだけじゃないければ良いがな」タラー・・・

騎士団長「主教補佐……いや、ステイル少年。少しは大人を頼ってみるんだ!」

香焼「そうっすよ! 団長さんなら言い聞かせてくれるっす!」ワクワク!

ステイル「楽観視し過ぎだと……ん?」チラッ


ステイルが風気口の方を見遣った。そこには……硬貨袋?


騎士団長「……アレは?」ジー・・・

香焼「……アンの硬貨袋(使徒)! ヤバい!」ドキッ!

ステイル「多分、索敵術式に組み替えてあるな……時期此処へ来るだろう」チッ


刹那、騎士団長が帯刀していたレイピアで袋を切り裂いた。硬貨が十数枚チリンチリンと床に落ちる。


207第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:54:42.00w4Xj2QWF0 (22/48)

騎士団長「成程な。頭がキレる子供達の様だ……説教のし甲斐がある」コクッ

ステイル「……そのレイピアだけで行けるのか?」ジー・・・

騎士団長「無論。私を誰だと思っている?」ニヤッ・・・


威風堂々。宣言した。


騎士団長「騎士団の長だぞ? 嘗めて貰っては困るな」キリッ!

香焼「か、恰好良い……」キラキラ・・・

ステイル「……あっそ」ポリポリ・・・


そして騎士団長は自分に視線を移し、ニコリと告げた。


騎士団長「香焼少年」ニコッ

香焼「え、あ、はい!」ドキッ!

騎士団長「君の話はMs.神裂から聴いているよ」ニコッ

香焼「え、そ、そうなんすか。光栄っす。(ん? さっき『St』って言ってたっすよね?)」ン?


公私の切り替えか。『女教皇様』は聖人や主教補佐次席、女教皇として呼ばれる際は『St(セント)』を冠せられる。
それは聖人、現人神、教皇として崇められたり敬われたりする時だ。
逆に『神裂火織』として扱われる際は『Ms(ミス)』を頭に付けられる。もしくは『さん』や呼び捨てだ。
騎士団長殿は公私共に女教皇様と仲が良いと聞く。多分、普段から使い分けているのだろう。

でも、何故今切り替えたんだ?


騎士団長「彼女は君やMs.五和、Ms.浦上の事を話す時……いつも楽しそうだよ」フフッ

香焼「も、勿体無い限りで……」アハハ・・・

騎士団長「謙遜する事は無い。謂わば弟分の様なモノなのだろう? 彼女のリフレッシュになっているという意味でも素晴らしい事だ」ニコッ


嬉しい事だが……何か話がおかしい。


騎士団長「大丈夫。任せておきなさい。君を無事、Ms.神裂の下へ帰してみせるよ」キリッ

香焼「……へ?」ポカーン・・・

ステイル「僕は最初から彼の意図を分かってたけどね」ハァ・・・

ぬこ「なー」ペタン・・・


つまり……はい?


騎士団長「今度! 私と、お姉さんと一緒にお茶でも如何かな! 君がいてくれれば場の雰囲気が凝り固まらずに済む!」ニコッ!

香焼「」チーン・・・

ステイル「多分、裏や下心は無いよ。彼、純粋にそういう事、悪気無く考えるから」フゥ・・・


少しの間、恰好良いと考えた自分が愚かだった。


208第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 21:58:56.02w4Xj2QWF0 (23/48)

騎士団長は満面の笑みでドアノブに手を掛け、最後にこう告げる。


騎士団長「それでは約束だ! 香焼少年! いや、兄弟(ブラザー)香―――



              ちゅどーんっ!!



        ―――やぎぃやゃああああああああああぁっ!!」ボーンッ!!

香焼・ステイル「「……」」タラー・・・



扉を開けようとした瞬間、爆風と共に壁に打ち付けられる騎士団長。せめて最後まで言わせてあげて下さい。
さておき、アニー達が来てしまったのかと思いきや……



五和「誰がブラザーだ、この両刀野郎っ!! カオリ姉様もコウちゃんもくれてやらんばいっ!! アホンダラぁっ!!」ドーン・・・



馬鹿一号だった。



香焼「な……何してんだよ馬鹿女郎おおおぉっ!!」ギャー!!

五和「あ、コウちゃん見っけ」ニコッ!

香焼「『ニコッ!』じゃねぇよ! おま、誰フッ飛ばしたか分かってんのか?!」アワワ・・・

五和「誰って……あらら。騎士団長殿でしたかー……スイマセンデシタ」ウフフ・・・


今更申し訳なさそうに手に口を当て、御淑やかに謝罪を入れる馬鹿一号。此処男子トイレだぞ? 普通に入ってくんな。


騎士団長「ま、まさか……Ms.五和に……吹き飛ばされるとは……」グヌヌ・・・

五和「『私の弟』を守ってくれようとしてらっしゃったのですね? まぁ何て勇敢な! でもごめんなさい。私の手違いで……(猫被り)」アアァ

騎士団長「き、気にするな……この程度……」ムムム・・・

五和「おっと、槍が滑ったぁ★」エイッ♪

騎士団長「おうぶっ!!」ゴンッ!!


如何にも態と臭く、されど猫を被りながら槍の柄で騎士団長の腹部を突く五和さん。


五和「きゃああ! 騎士団長殿ー! 『私の御姉様』と『私の弟』に、よくも近づいてくれた騎士団長殿ー! (猫被り)」ワーワー

騎士団長「さ、流石Ms.神裂の妹分だけあって……良い腕だ……将来が待ち遠しい……」グッハァッ!

香焼「騎士団長ああぁ!! ちょっと! 五和!! 何でまだ槍に体重乗せてんの?! 手ぇ離せボケ!!」アタフタ・・・

五和「わぁ! いけない! 騎士団長殿ー! 死なないでー! (猫被り)」ウワーン

騎士団長「ふふふ……Ms.神裂の妹弟達に見守られて逝く、か……ウィリアム……悪くない人生だったよ……」ガクッ・・・

香焼「騎士団長ああああぁっ!!」ギャアアアァッ!!

ぬこ「にゃーん……」ペシペシッ!


一人の漢が……子猫に叩かれながら、便所で散った……


209第5話――カルテッ娘『待てーっ!!』  香焼・ステイル「「ふっざけんなぁっ!!」」2011/03/28(月) 22:01:43.72w4Xj2QWF0 (24/48)

ステイル「いや、そう簡単にくたばる奴じゃないからね」ハァ・・・

五和「ふぅ。討伐完了っと♪ まったく……誰が人の姉弟くれてやるかバーカっ!!」ベー!

香焼「おま……もしコレがばれたら……」アワワワワ・・・

五和「大丈夫! 誰も見てないよ! ……ね。二人とも」ニコッ・・・

香焼・ステイル「「……」」ダラダラ・・・


逆らったら、狩られる。


五和「さぁてと……とりあえず一番乗りで良かったわ。コウちゃん、助けに来たわよ!」ニコッ!

香焼「助けにって……他の連中撒いてきたんすか?」ヘ・・・

五和「アニェーゼとシルビアさん。レッサーとベイロープ。ルチアとサーシャが各々戦(バト)ってるよ」グッ!

香焼「……こそこそ一人逃げてきたんすね」ハァ・・・

五和「ふふふ。乱戦での隠密行動は天草の十八番よ! まぁルチア辺りに見つかったらコウちゃん去勢されそうな感じだったからね」

香焼「」

五和「一先ず安全な所へ避難を」

ステイル「おい」ボソッ

五和「……何です?」ポカーン・・・


ステイルは律義に騎士団長の身体を壁に腰掛けさせ、煙草を加えながら告げた。


ステイル「一人……足りないぞ?」カチッ・・・フゥ

香焼・五和「「……あ」」ピタッ


自分らを発見した筈のアンがまだ姿を現さない。一体何処に……



『―――東D3-左奥の男子トイレですっ!!』ピーガー!



ステイル「アンジェレネの声!? 館内スピーカーだとっ!!?」ゲェッ!!?

五和「ヤバッ! やられた!!」タラー・・・

香焼「此処は袋小路っす!! 兎に角、逃げないと!!」スタッ!!

ぬこ「みゃーんっ!!」スタタ!


先に跳び出した子猫に続き、男子トイレから飛び出す自分達。そこへ……


アニェーゼ「見つけたああぁっ!! この馬鹿犬うぅっ!! ご主人様に逆らうなんて如何いうつもりでいやがりますかあぁっ!!」ガアアァッ!!

サーシャ「目標補足……斬れ味最少、打撃Lv.4に……後頭部を目処に動きを止めます。あとアニェーゼ。色々アウトですよ」ガチャンッ・・・

レッサー「あはははは! もう何でも良いです! 如何にでもなれー!」ピョンピョンピョンッ!


カルテっ娘が来た。武器の準備を見るに……間に合わない。こうなったら子猫だけでも逃がす覚悟で―――