◆fftSPPkhRw さんの作品一覧
http://s2-d2.com/archives/16593793.html
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1:1 ◆fftSPPkhRw:2011/02/24(木) 01:51:38.03:dn/wG2Ft0 (1/2)
・『とある魔術の禁書目録』、『とある科学の超電磁砲』の二次創作SSです。
・スレタイ通り、主に佐天さんが活躍する予定です。
・オリキャラ(名前なし)が登場します。
・魔術に関する解釈は原作と一部異なります。
前スレ
佐天「きゅ、吸血殺しの紅十字ッ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1286977013/l50
・『とある魔術の禁書目録』、『とある科学の超電磁砲』の二次創作SSです。
・スレタイ通り、主に佐天さんが活躍する予定です。
・オリキャラ(名前なし)が登場します。
・魔術に関する解釈は原作と一部異なります。
前スレ
佐天「きゅ、吸血殺しの紅十字ッ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1286977013/l50
モバP「泰葉からチョコもらった時の話?」
絵里「なんとかストロガノフ!」穂乃果「そう、カレーです」
タマ「ニャー」タラオ「タマ口臭いですぅ!」タマ「!!!!!!!」
玲音「風邪を引いてしまったようだ…」
苗木「霧切さん、この蝶ネクタイつけてみてよ」
2:1 ◆fftSPPkhRw:2011/02/24(木) 01:53:11.15:dn/wG2Ft0 (2/2)
これまでのあらすじ
学園都市で起きた学生の連続失踪事件。魔術結社『科学の子』によって仕組まれた誘拐に巻き込まれた佐天涙子は、
超能力とは異なる力、『魔術』の存在を知る。
『必要悪の教会』の魔術師ステイル=マグヌスとの邂逅、力なき無能力者という己の現実―――
佐天涙子は学園都市を飛び出し、『イギリス清教』の本拠地、ロンドンで魔術師となることを決意するのだった。
これまでのあらすじ
学園都市で起きた学生の連続失踪事件。魔術結社『科学の子』によって仕組まれた誘拐に巻き込まれた佐天涙子は、
超能力とは異なる力、『魔術』の存在を知る。
『必要悪の教会』の魔術師ステイル=マグヌスとの邂逅、力なき無能力者という己の現実―――
佐天涙子は学園都市を飛び出し、『イギリス清教』の本拠地、ロンドンで魔術師となることを決意するのだった。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 02:14:54.01:LS3C5XqFo (1/1)
乙
乙
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 02:48:10.08:EgXQC66SO (1/1)
ついに2スレ目か乙
ついに2スレ目か乙
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 07:01:24.12:xpKOexdDO (1/2)
どうでもいいけど、佐天さんって原作だと英語で
メールのやり取りが出来てて驚いた。
どうでもいいけど、佐天さんって原作だと英語で
メールのやり取りが出来てて驚いた。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 07:45:14.42:4Z4kw9enP (1/1)
新スレ乙
楽しみにしてます
新スレ乙
楽しみにしてます
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 07:45:32.00:QOu3OFxAO (1/2)
ジーンズのために勉強したんだろうな。
ジーンズのために勉強したんだろうな。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 10:02:52.11:5xQKX7EAO (1/1)
新スレ乙
番外編面白かった。三頭身にデフォルメされた二人で脳内再生癒されました
新スレ乙
番外編面白かった。三頭身にデフォルメされた二人で脳内再生癒されました
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 11:12:10.13:oUMA9nQz0 (1/2)
>>7
佐天さんがねーちんスタイルで戦うのか。股間熱
>>7
佐天さんがねーちんスタイルで戦うのか。股間熱
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 11:21:19.41:KfBkXUaAO (1/1)
>>5
結構頭いいじゃねーかww
>>5
結構頭いいじゃねーかww
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 11:29:47.30:7gyrpVcAO (1/1)
そういえば佐天さん今どんな服着てるの?
そういえば佐天さん今どんな服着てるの?
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 11:33:59.48:xpKOexdDO (2/2)
>>11
ピンクのサラシにミニスカートだよ。
>>11
ピンクのサラシにミニスカートだよ。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 11:42:30.73:oUMA9nQz0 (2/2)
>>10
しかし、能力は開花しないと。ぶっちゃけ、ショチトルとかジーンズ店主との絡み
見ると佐天さんは魔術サイドの方が生きるんじゃないかと思ってみたり……
>>10
しかし、能力は開花しないと。ぶっちゃけ、ショチトルとかジーンズ店主との絡み
見ると佐天さんは魔術サイドの方が生きるんじゃないかと思ってみたり……
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 13:12:48.62:QOu3OFxAO (2/2)
>>13 原作佐天さんは基本アホな娘だから誰とでも絡みやすい気がしないでも・・・
>>13 原作佐天さんは基本アホな娘だから誰とでも絡みやすい気がしないでも・・・
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 13:27:55.39:gMH9SiEKo (1/1)
全裸ネクタイで正座しながら待ってます
全裸ネクタイで正座しながら待ってます
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 16:11:38.39:q2yZIzYDO (1/1)
>>15
スマブラに出てらっしゃる方ですか?
>>15
スマブラに出てらっしゃる方ですか?
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 17:45:23.46:IIFEu54AO (1/1)
>>16
全裸ネクタイのC・ファルコンを想像してしまったんだが
>>16
全裸ネクタイのC・ファルコンを想像してしまったんだが
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 20:53:48.05:orJ2gGKT0 (1/1)
>>1乙なのでございます
続きに期待させていただきます
>>1乙なのでございます
続きに期待させていただきます
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 21:03:37.61:TuU1pmBP0 (1/1)
ルーンを作りながら待っています
ルーンを作りながら待っています
20:1 ◆fftSPPkhRw:2011/02/24(木) 21:39:47.32:FLaUeom90 (1/1)
うっかり予告し忘れてましたが、次回投下予定は二月二七日(日)です。
それまで少しお待ちを。
うっかり予告し忘れてましたが、次回投下予定は二月二七日(日)です。
それまで少しお待ちを。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 22:04:45.79:/3ABLird0 (1/1)
マントの下で全裸待機
マントの下で全裸待機
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/24(木) 22:38:55.01:vawMfwvTo (1/1)
これ時系列いつ?
これ時系列いつ?
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/25(金) 13:47:54.61:5sYJwcBAO (1/1)
11 について考えていたら
??「佐天さん今回のバトルコスチュームをもって来ました~」
??「カードバトラー佐天さんの勇姿は一秒たりとも逃しませんわ~」
佐天「ほえ~!」
という妄想をしてしまった
ステイル「君の服に"も"魔術的処置を施した」
佐天「ありがとう」
ステイル「ここで待っていてくれ、こっちの準備を終わらせて来る」
佐天「わかった」
佐天「あれ?上条さん?」
上条「ん?」
ステイル「おーい…!?待てー!!」
パキーン
パサパサパサ
上条「」
佐天「///」
ステイル「」
ステイルJr.「パオーン」ポロン
という電波も拾った
11 について考えていたら
??「佐天さん今回のバトルコスチュームをもって来ました~」
??「カードバトラー佐天さんの勇姿は一秒たりとも逃しませんわ~」
佐天「ほえ~!」
という妄想をしてしまった
ステイル「君の服に"も"魔術的処置を施した」
佐天「ありがとう」
ステイル「ここで待っていてくれ、こっちの準備を終わらせて来る」
佐天「わかった」
佐天「あれ?上条さん?」
上条「ん?」
ステイル「おーい…!?待てー!!」
パキーン
パサパサパサ
上条「」
佐天「///」
ステイル「」
ステイルJr.「パオーン」ポロン
という電波も拾った
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/25(金) 19:46:02.28:08wwQrlS0 (1/1)
>>23
悪いことは言わん
いますぐあった場所に戻してきなさい
>>23
悪いことは言わん
いますぐあった場所に戻してきなさい
25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/28(月) 05:35:08.63:EvfAsdos0 (1/1)
にょ?
にょ?
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/01(火) 18:12:35.19:dfaLnX0v0 (1/1)
にょにゅにゃんにゃにゃににゃー?
ふにゃー
にょにゅにゃんにゃにゃににゃー?
ふにゃー
27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/02(水) 22:26:06.72:bPwi2Kfwo (1/1)
あ
あ
28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/03(木) 14:01:47.51:hGVoLxcAO (1/2)
舞ってます
舞ってます
29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/03(木) 21:25:31.63:r7SsVWPA0 (1/1)
そういえば
投下予定日・・二月二十七日
今・・三月三日
どういうことなの・・・
そういえば
投下予定日・・二月二十七日
今・・三月三日
どういうことなの・・・
30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/03(木) 21:57:43.95:hGVoLxcAO (2/2)
>>29
まぁ来週には~って言って一月放置する書き手も居るからなぁ…
まだまだ我慢我慢
>>29
まぁ来週には~って言って一月放置する書き手も居るからなぁ…
まだまだ我慢我慢
31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/03(木) 22:33:21.33:omjrqG3io (1/1)
>>1だってこのSS書くことが仕事なわけじゃないし、
忙しくて予定通りいかないなんてこともあるだろうよ。
>>1だってこのSS書くことが仕事なわけじゃないし、
忙しくて予定通りいかないなんてこともあるだろうよ。
32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/06(日) 15:48:38.98:/TtqG1Vr0 (1/1)
忙しいのかね
何にしとも早く読みたいな
忙しいのかね
何にしとも早く読みたいな
33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/06(日) 15:56:28.49:ZMFzmdje0 (1/1)
更新来たかと思って期待したじゃないか
せめてsageてくれ…
更新来たかと思って期待したじゃないか
せめてsageてくれ…
34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/06(日) 15:58:18.43:L0SYRIqAO (1/1)
パンツ脱いだオレに謝れ!謝れ!
パンツ脱いだオレに謝れ!謝れ!
35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/06(日) 16:02:51.15:r5xNrJbj0 (1/1)
投下の時のためにマントの下は全裸にしておいたのに…
マント脱いだ俺に謝れ
投下の時のためにマントの下は全裸にしておいたのに…
マント脱いだ俺に謝れ
36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/06(日) 21:17:13.18:8glIb9yho (1/1)
大丈夫だろ、まだ皮は装備してるみたいだし
大丈夫だろ、まだ皮は装備してるみたいだし
37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/07(月) 22:36:36.12:aNFXErga0 (1/1)
テスト
テスト
38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/08(火) 01:40:50.35:WqpuHGbAO (1/1)
葉っぱ一枚で隠してると寒いです
葉っぱ一枚で隠してると寒いです
39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 00:17:00.51:EdQLXmH80 (1/1)
ビニール紐一本で耐えるのつらい
ビニール紐一本で耐えるのつらい
40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 01:39:16.41:/kbT9qvMo (1/1)
思った以上に爪楊枝が頼りない
思った以上に爪楊枝が頼りない
41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/09(水) 01:50:39.32:APdFByFPo (1/1)
>>40
どんだけお前のほせえんだよ
>>40
どんだけお前のほせえんだよ
42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 09:22:44.89:0IkNujmP0 (1/1)
マーダー
マーダー
43:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/10(木) 19:21:23.17:J7TAPGLD0 (1/1)
色々とゴタゴタしとりまして、とてつもなく遅れしまい本当にごめんなさい!
今日の0時くらいに投下しますよ!
新刊も発売しちゃって、皆さんそっちを読むので忙しくてこんなSSなんて読んでる場合じゃねぇ!
って感じだと思いますが、読み終わって一息ついた頃に目を通してもらえると嬉しいです。
それにしてもやはり禁書のネットコミュニティは狭いですね。
以前から巡回してるサイト(のコメント欄)でこのSSの名前が挙がってて、
Σ(゚д゚;) ヌオォ!?ってなりました。
ここで言うのも変な話ですが、名前を出してもらってありがとうございます。
これからも超絶ゆっくりペースですが頑張っていきます。
それではもうしばらくお待ち下さい。
色々とゴタゴタしとりまして、とてつもなく遅れしまい本当にごめんなさい!
今日の0時くらいに投下しますよ!
新刊も発売しちゃって、皆さんそっちを読むので忙しくてこんなSSなんて読んでる場合じゃねぇ!
って感じだと思いますが、読み終わって一息ついた頃に目を通してもらえると嬉しいです。
それにしてもやはり禁書のネットコミュニティは狭いですね。
以前から巡回してるサイト(のコメント欄)でこのSSの名前が挙がってて、
Σ(゚д゚;) ヌオォ!?ってなりました。
ここで言うのも変な話ですが、名前を出してもらってありがとうございます。
これからも超絶ゆっくりペースですが頑張っていきます。
それではもうしばらくお待ち下さい。
44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 19:23:08.87:qxf0pgvwo (1/1)
>>43
禁書に限らずネットコミュニティは狭いと思うよ
とりあえずきたーい
>>43
禁書に限らずネットコミュニティは狭いと思うよ
とりあえずきたーい
45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 19:23:52.40:IkCncCbq0 (1/1)
キター!
待ってるぜー
キター!
待ってるぜー
46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 20:02:59.43:KmHzRKWAO (1/1)
このSSのために生きてます
このSSのために生きてます
47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/10(木) 20:18:53.52:vXoa7qs70 (1/1)
>>43
とりあえず復活オメ
このSSできれいな(七巻や十一巻ごろの)建宮さんはでる?
個人的には佐天さんにはきれいな建宮さんを見て見直してほしい
>>43
とりあえず復活オメ
このSSできれいな(七巻や十一巻ごろの)建宮さんはでる?
個人的には佐天さんにはきれいな建宮さんを見て見直してほしい
48:kk:2011/03/11(金) 00:20:35.48:KAch7St30 (1/1)
待機
待機
49:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 00:48:12.44:FRtQ0WDh0 (1/20)
それじゃあ投下します。
>>46
この世には面白い作品一杯あるぜ!
こんな場末のSSで満足せず、色んな作品に触れてみてはどうでしょう。
しかしそう言ってもらえると嬉しさが込み上げてくる>>1であった……。
>>47
きれいな(真面目な)建宮さんか……。
この先少しは活躍する場面はあるんだけど、基本的に佐天さんを叱咤激励する役目はステイルに残してあげたいですね。
建宮さんの良さは佐天さんも理解していると思います。
佐天さんは天草式アパートの面々とはかなり上手くやってるんじゃないでしょうか。牛深以外は……。
それじゃあ投下します。
>>46
この世には面白い作品一杯あるぜ!
こんな場末のSSで満足せず、色んな作品に触れてみてはどうでしょう。
しかしそう言ってもらえると嬉しさが込み上げてくる>>1であった……。
>>47
きれいな(真面目な)建宮さんか……。
この先少しは活躍する場面はあるんだけど、基本的に佐天さんを叱咤激励する役目はステイルに残してあげたいですね。
建宮さんの良さは佐天さんも理解していると思います。
佐天さんは天草式アパートの面々とはかなり上手くやってるんじゃないでしょうか。牛深以外は……。
50:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 00:50:30.92:FRtQ0WDh0 (2/20)
―――聖ジョージ大聖堂
アニェーゼ「一班は術式の準備、二班、三班は各自移動に備えてください!」
聖堂内を何人ものシスターたちが慌ただしく歩き回っていた。
修道服を着込んだシスターが剣や槍など一目見て戦闘用の武器であると分かる物から、
歯車や鉤爪など、何に使うかよく分からない物まで、多種多様な道具を携えている様子は現実感のないものだった。
佐天はその光景をぼんやりと眺めていた。
佐天「…………」
ステイル「何を呆けているんだ?」
佐天「あ……、ステイル君」
ステイル「緊張でもしてるのか?」
佐天「そりゃあ緊張もするよ。だって初めての実戦なわけだし」
佐天はポケットに手を突っ込み、ルーンの書かれたカードの感触を指先で確かめた。
薄く滑らかな感触は、“武器”と呼ぶには頼りないように思える。
佐天「ステイル君……」
ステイル「ん?」
佐天「今日って、人と戦うわけだよね」
ステイル「ほぼ間違いなくね」
佐天「そっか……」
―――聖ジョージ大聖堂
アニェーゼ「一班は術式の準備、二班、三班は各自移動に備えてください!」
聖堂内を何人ものシスターたちが慌ただしく歩き回っていた。
修道服を着込んだシスターが剣や槍など一目見て戦闘用の武器であると分かる物から、
歯車や鉤爪など、何に使うかよく分からない物まで、多種多様な道具を携えている様子は現実感のないものだった。
佐天はその光景をぼんやりと眺めていた。
佐天「…………」
ステイル「何を呆けているんだ?」
佐天「あ……、ステイル君」
ステイル「緊張でもしてるのか?」
佐天「そりゃあ緊張もするよ。だって初めての実戦なわけだし」
佐天はポケットに手を突っ込み、ルーンの書かれたカードの感触を指先で確かめた。
薄く滑らかな感触は、“武器”と呼ぶには頼りないように思える。
佐天「ステイル君……」
ステイル「ん?」
佐天「今日って、人と戦うわけだよね」
ステイル「ほぼ間違いなくね」
佐天「そっか……」
51:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 00:53:58.40:FRtQ0WDh0 (3/20)
ステイル「……怖いのか? 今から戦場に出ることが」
佐天「それは……ね。五和さんと訓練も一杯した。ステイル君とも魔術の練習も沢山やった。
あたし、こんなに何かに一生懸命になったことって初めてかも知れない。
でも……やっぱり怖いよ。うん、怖い」
ステイル「今日の君に多くは望まない。少なからず自分の身を守ることに集中しろ。
それと」
佐天はステイルを見上げた。
いつも通りの愛想の悪い、厳しい顔がそこにはあった。
ステイル「目の前で起こることから絶対に目を背けるな。
自分が選んだ場所がどんなところか、しっかりとその目に焼き付けるんだ」
佐天「うん……分かった」
ステイル「しかし……」
佐天「?」
ステイルは何処か呆れたような表情で佐天を見た。
ステイル「何故今日は格好が派手なんだ?」
佐天「ああこれ? この服は五和さんに貸してもらったんだ。ダメージ緩和の術式が施されるんだって」
七分丈パンツに少し胸元の開いたサマーセーター。
動き易い、ということもあるのだろうが、いつもの佐天の服装より露出度も高く派手なのは確かだった。
ステイル「……もしかしてそれ、術式が発動しすぎると不味いことになるんじゃないか?」
佐天「へ? 確かに攻撃を無効化するわけじゃないから気を付けなくちゃいけないけど」
ステイル「いや、そういうことではなく」
佐天「はぁ?」
はっきりしないステイルの言葉に、佐天が首を傾げる。
ステイル「……怖いのか? 今から戦場に出ることが」
佐天「それは……ね。五和さんと訓練も一杯した。ステイル君とも魔術の練習も沢山やった。
あたし、こんなに何かに一生懸命になったことって初めてかも知れない。
でも……やっぱり怖いよ。うん、怖い」
ステイル「今日の君に多くは望まない。少なからず自分の身を守ることに集中しろ。
それと」
佐天はステイルを見上げた。
いつも通りの愛想の悪い、厳しい顔がそこにはあった。
ステイル「目の前で起こることから絶対に目を背けるな。
自分が選んだ場所がどんなところか、しっかりとその目に焼き付けるんだ」
佐天「うん……分かった」
ステイル「しかし……」
佐天「?」
ステイルは何処か呆れたような表情で佐天を見た。
ステイル「何故今日は格好が派手なんだ?」
佐天「ああこれ? この服は五和さんに貸してもらったんだ。ダメージ緩和の術式が施されるんだって」
七分丈パンツに少し胸元の開いたサマーセーター。
動き易い、ということもあるのだろうが、いつもの佐天の服装より露出度も高く派手なのは確かだった。
ステイル「……もしかしてそれ、術式が発動しすぎると不味いことになるんじゃないか?」
佐天「へ? 確かに攻撃を無効化するわけじゃないから気を付けなくちゃいけないけど」
ステイル「いや、そういうことではなく」
佐天「はぁ?」
はっきりしないステイルの言葉に、佐天が首を傾げる。
52:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:01:30.37:FRtQ0WDh0 (4/20)
ステイル「だから、その……それは着てる服が衝撃を肩代わりしてくれる術式なんだろ?
てことはつまり……下手したらあられもない格好になるんじゃないかという……」
佐天「あられもない格好……ってえええぇぇぇッ!? す、ステイル君何言ってんの!!」
見る見る佐天の顔が真っ赤に染まっていった。
そして気まずそうにしていたステイルをぼかすか叩いた。
ステイル「痛ッ! 僕は事前に危険性を忠告してやっただけだろ!」
佐天「あ、あたしがみんなの前で、下着一枚になるのを想像してたんでしょ!!」
ステイル「していない!!」
移動の準備で周りも騒がしいものの、二人だけ明らかに場違いな喧騒に包まれていた。
近くのシスターも冷めた視線を送っている。
ルチア「何を騒いでいるんですか」
アンジェレネ「えっと、何か問題でもありましたか?」
佐天「ルチアさん、アンジェレネ」
二人の言い争いを聞きつけたのか、ルチアとアンジェレネが佐天の側に来ていた。
ルチアは木製の車輪を、アンジェレネは腰のベルトに袋を吊っている。
よくは分からないが、これが彼女たちの武器であるらしい。
ルチア「佐天さんは初の実戦だそうですね。気でも急いているんですか?」
佐天「いや、そうじゃないですけど……ああッ! 何か色々考えてたら余計に緊張してきた。
アンジェレネ、ちょっとこっちに来てくれない?」
アンジェレネ「私ですか?」
ちょこちょことアンジェレネが佐天のすぐ近くまで来た。
佐天は自分より少し低い位置にあるアンジェレネの頭を、ギュッと腕の中に抱え込んだ。
ステイル「だから、その……それは着てる服が衝撃を肩代わりしてくれる術式なんだろ?
てことはつまり……下手したらあられもない格好になるんじゃないかという……」
佐天「あられもない格好……ってえええぇぇぇッ!? す、ステイル君何言ってんの!!」
見る見る佐天の顔が真っ赤に染まっていった。
そして気まずそうにしていたステイルをぼかすか叩いた。
ステイル「痛ッ! 僕は事前に危険性を忠告してやっただけだろ!」
佐天「あ、あたしがみんなの前で、下着一枚になるのを想像してたんでしょ!!」
ステイル「していない!!」
移動の準備で周りも騒がしいものの、二人だけ明らかに場違いな喧騒に包まれていた。
近くのシスターも冷めた視線を送っている。
ルチア「何を騒いでいるんですか」
アンジェレネ「えっと、何か問題でもありましたか?」
佐天「ルチアさん、アンジェレネ」
二人の言い争いを聞きつけたのか、ルチアとアンジェレネが佐天の側に来ていた。
ルチアは木製の車輪を、アンジェレネは腰のベルトに袋を吊っている。
よくは分からないが、これが彼女たちの武器であるらしい。
ルチア「佐天さんは初の実戦だそうですね。気でも急いているんですか?」
佐天「いや、そうじゃないですけど……ああッ! 何か色々考えてたら余計に緊張してきた。
アンジェレネ、ちょっとこっちに来てくれない?」
アンジェレネ「私ですか?」
ちょこちょことアンジェレネが佐天のすぐ近くまで来た。
佐天は自分より少し低い位置にあるアンジェレネの頭を、ギュッと腕の中に抱え込んだ。
53:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:05:37.64:FRtQ0WDh0 (5/20)
アンジェレネ「ヒャア!? さ、佐天さん!? 一体何を……ッ!」
佐天「落ち着く……。アンジェレネをこうやってると、とっても落ち着くよ」
アンジェレネ「や、止めてください! 恥ずかしいです!」
アンジェレネがジタバタ暴れたが、
佐天はリラックスするために編みだした『柔らかヘッドロック』を外そうとしない。
むしろその頭を猫でも撫でるようにぐりぐりと追撃までする始末だった。
ルチア「はぁ……。佐天さん、何をやっているんですか」
佐天「アンジェレネで少しはこの緊張を和らげようかと思って」
アンジェレネ「シスター・ルチア、助けて下さい!」
ルチア「シスター・アンジェレネも嫌がってますし、離してあげて下さい」
佐天「……ムッ」
佐天の腕から力が抜ける。
やっと開放される……。アンジェレネが安心した瞬間、
佐天は思いっきり両腕に力を込めてアンジェレネを抱き込んだ。
アンジェレネ「イヤアアアァァァ!!」
佐天「よしッ、落ち着いた! ありがとう、アンジェレネ」
佐天がパッとその腕を開くと、アンジェレネはふらつきながらルチアの後ろに隠れた。
アンジェレネ「う、うぅ……。お役に立てたのなら、良かったです……」
ルチア「やはり緊張しているのですね。初めての実戦に」
佐天「はい、情けないことに……」
アンジェレネ「ヒャア!? さ、佐天さん!? 一体何を……ッ!」
佐天「落ち着く……。アンジェレネをこうやってると、とっても落ち着くよ」
アンジェレネ「や、止めてください! 恥ずかしいです!」
アンジェレネがジタバタ暴れたが、
佐天はリラックスするために編みだした『柔らかヘッドロック』を外そうとしない。
むしろその頭を猫でも撫でるようにぐりぐりと追撃までする始末だった。
ルチア「はぁ……。佐天さん、何をやっているんですか」
佐天「アンジェレネで少しはこの緊張を和らげようかと思って」
アンジェレネ「シスター・ルチア、助けて下さい!」
ルチア「シスター・アンジェレネも嫌がってますし、離してあげて下さい」
佐天「……ムッ」
佐天の腕から力が抜ける。
やっと開放される……。アンジェレネが安心した瞬間、
佐天は思いっきり両腕に力を込めてアンジェレネを抱き込んだ。
アンジェレネ「イヤアアアァァァ!!」
佐天「よしッ、落ち着いた! ありがとう、アンジェレネ」
佐天がパッとその腕を開くと、アンジェレネはふらつきながらルチアの後ろに隠れた。
アンジェレネ「う、うぅ……。お役に立てたのなら、良かったです……」
ルチア「やはり緊張しているのですね。初めての実戦に」
佐天「はい、情けないことに……」
54:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:13:49.67:FRtQ0WDh0 (6/20)
ルチア「誰だって初めは緊張するものです。恥じることではありません。
それに……」
佐天「?」
ルチアは、少し言いにくそうに視線を外した。
ルチア「佐天さんはこれまで一生懸命頑張ってきたのでしょう?
私は語学しか担当していないので分かりませんが、魔術や、聞くところによると剣術の訓練までしていたとか」
佐天「ルチアさん……」
ルチア「そ、それにッ! 不慣れな私の、厳しい授業にも耐えられたのですから、
その……佐天さんなら臆することはないのでは、ないかと……ッ!」
ルチアは恥ずかしそうに、そう言った。
佐天「ここにもツンデレが……」
ルチア「つ、ツンデレ? 学園都市が作った悍ましい化学兵器か何かですか?」
アンジェレネ「違いますよ、シスター・ルチア。きっと一口でチョコレート、カスタード、
アイスクリーム、フルーツの味が楽しめる魅惑のスイーツに違いありません!」
佐天「どんなスイーツですか、それ?」
ルチア「誰だって初めは緊張するものです。恥じることではありません。
それに……」
佐天「?」
ルチアは、少し言いにくそうに視線を外した。
ルチア「佐天さんはこれまで一生懸命頑張ってきたのでしょう?
私は語学しか担当していないので分かりませんが、魔術や、聞くところによると剣術の訓練までしていたとか」
佐天「ルチアさん……」
ルチア「そ、それにッ! 不慣れな私の、厳しい授業にも耐えられたのですから、
その……佐天さんなら臆することはないのでは、ないかと……ッ!」
ルチアは恥ずかしそうに、そう言った。
佐天「ここにもツンデレが……」
ルチア「つ、ツンデレ? 学園都市が作った悍ましい化学兵器か何かですか?」
アンジェレネ「違いますよ、シスター・ルチア。きっと一口でチョコレート、カスタード、
アイスクリーム、フルーツの味が楽しめる魅惑のスイーツに違いありません!」
佐天「どんなスイーツですか、それ?」
55:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:16:15.06:FRtQ0WDh0 (7/20)
「シスター・アンジェレネ、シスター・ルチア! 移動が始まります。持ち場に戻ってください!」
アンジェレネ「は、はい!」
二人に声を掛けたのは、身長の半分くらいはありそうな巨大な十字架を持ったシスターだった。
彼女は佐天に射るような眼差しを向けた。
佐天「う……ッ!」
ルチアやアンジェレネ、アニェーゼとは頻繁に会うので余り感じないが、
同じ『アニェーゼ部隊』と言えど彼女たちにとって佐天は“異物”でしかないのだ。
その冷たい視線を真正面から受け、佐天は改めてそう感じた。
ルチア「戻りましょう、シスター・アンジェレネ。それでは佐天さん、お互いに気を付けて」
佐天「はい、ありがとうございます」
アニェーゼ「移動術式を発動します。各々気を抜かねぇでくださいよ!」
アニェーゼの号令に、この場にいるすべてのシスターが威勢のよい返事をする。
三〇余名の声とこれから向かう戦場への緊張で、聖堂内はぴりぴりと震えた。
佐天(よしッ! あたしも少しでもみんなの役に立たなくっちゃ!)
「シスター・アンジェレネ、シスター・ルチア! 移動が始まります。持ち場に戻ってください!」
アンジェレネ「は、はい!」
二人に声を掛けたのは、身長の半分くらいはありそうな巨大な十字架を持ったシスターだった。
彼女は佐天に射るような眼差しを向けた。
佐天「う……ッ!」
ルチアやアンジェレネ、アニェーゼとは頻繁に会うので余り感じないが、
同じ『アニェーゼ部隊』と言えど彼女たちにとって佐天は“異物”でしかないのだ。
その冷たい視線を真正面から受け、佐天は改めてそう感じた。
ルチア「戻りましょう、シスター・アンジェレネ。それでは佐天さん、お互いに気を付けて」
佐天「はい、ありがとうございます」
アニェーゼ「移動術式を発動します。各々気を抜かねぇでくださいよ!」
アニェーゼの号令に、この場にいるすべてのシスターが威勢のよい返事をする。
三〇余名の声とこれから向かう戦場への緊張で、聖堂内はぴりぴりと震えた。
佐天(よしッ! あたしも少しでもみんなの役に立たなくっちゃ!)
56:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:22:00.41:FRtQ0WDh0 (8/20)
―――イギリス、とある古びた洋館
―――ヴォン……
移動術式の明かりが消えると、佐天は森の中に立っていた。
鬱蒼とした木々の向こうに、屋根や壁が所々剥げている洋館を見ることができた。
佐天「あれが……」
アニェーゼは手に持った『蓮の杖』を握り直すと、隣のシスターの方に顔を向けた。
アニェーゼ「侵入者探知の術式は?」
「魔術反応ありません。おそらくまだこちらに気付いてはいないでしょう」
アニェーゼ「ありがてぇことですね。それじゃあ予定通りに行きましょう。
三班はこの場で待機。移動術式の警備と不測の事態に備えてください。
一班は正面から、二班は裏手から回り込みます」
小さく返事をすると、シスターたちは各々準備と移動を始めた。
佐天は大きく息を吸い込んで、吐き出した。
少しでも緊張が和らげば、と思ったが吐き出す息が震えるのを感じて増々緊張感が高まった気がした。
ステイル「落ち着け」
そう言ってステイルは、佐天の肩に手を置いた。
佐天「う、うん」
アニェーゼ「一班、行きましょう」
アニェーゼは佐天の方を見て、無言で頷いた。
佐天も頷き返す。
アニェーゼを戦闘とした十数名が、洋館の正面を目指した。
―――イギリス、とある古びた洋館
―――ヴォン……
移動術式の明かりが消えると、佐天は森の中に立っていた。
鬱蒼とした木々の向こうに、屋根や壁が所々剥げている洋館を見ることができた。
佐天「あれが……」
アニェーゼは手に持った『蓮の杖』を握り直すと、隣のシスターの方に顔を向けた。
アニェーゼ「侵入者探知の術式は?」
「魔術反応ありません。おそらくまだこちらに気付いてはいないでしょう」
アニェーゼ「ありがてぇことですね。それじゃあ予定通りに行きましょう。
三班はこの場で待機。移動術式の警備と不測の事態に備えてください。
一班は正面から、二班は裏手から回り込みます」
小さく返事をすると、シスターたちは各々準備と移動を始めた。
佐天は大きく息を吸い込んで、吐き出した。
少しでも緊張が和らげば、と思ったが吐き出す息が震えるのを感じて増々緊張感が高まった気がした。
ステイル「落ち着け」
そう言ってステイルは、佐天の肩に手を置いた。
佐天「う、うん」
アニェーゼ「一班、行きましょう」
アニェーゼは佐天の方を見て、無言で頷いた。
佐天も頷き返す。
アニェーゼを戦闘とした十数名が、洋館の正面を目指した。
57:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:23:47.23:FRtQ0WDh0 (9/20)
遠目から見ても古びているのが分かったこの建物だったが、
近くで見ると人がいるとは思えないほど老朽化していた。
アニェーゼは玄関の扉の前にしゃがむと、通信術式用の符を取り出した。
『二班、裏口に到着しました』
アニェーゼ「了解です。こっちが先に突入しちまいます。遅れねぇでくださいよ」
符を仕舞うと、アニェーゼは後ろに控えるシスターと佐天、ステイルの方を振り返った。
その顔には緊張どころか笑みが浮かんでいる。
アニェーゼ「久しぶりの戦闘です。いっちょ派手に行きましょう」
その場にいる全員が無言で頷いた。
アニェーゼ「佐天さんも目に焼き付けておいてください。これが“戦い”だってものを」
佐天「はい」
アニェーゼは一人のシスターに手で合図した。
そのシスターは肩に担いだ斧を振りかぶると、勢い良くドアに打ち付けた。
―――ドンッ!
轟音と衝撃が起こした土煙。それと共に目の前にあったドアが消し飛んだ。
遠目から見ても古びているのが分かったこの建物だったが、
近くで見ると人がいるとは思えないほど老朽化していた。
アニェーゼは玄関の扉の前にしゃがむと、通信術式用の符を取り出した。
『二班、裏口に到着しました』
アニェーゼ「了解です。こっちが先に突入しちまいます。遅れねぇでくださいよ」
符を仕舞うと、アニェーゼは後ろに控えるシスターと佐天、ステイルの方を振り返った。
その顔には緊張どころか笑みが浮かんでいる。
アニェーゼ「久しぶりの戦闘です。いっちょ派手に行きましょう」
その場にいる全員が無言で頷いた。
アニェーゼ「佐天さんも目に焼き付けておいてください。これが“戦い”だってものを」
佐天「はい」
アニェーゼは一人のシスターに手で合図した。
そのシスターは肩に担いだ斧を振りかぶると、勢い良くドアに打ち付けた。
―――ドンッ!
轟音と衝撃が起こした土煙。それと共に目の前にあったドアが消し飛んだ。
58:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:28:23.84:FRtQ0WDh0 (10/20)
アニェーゼ「突入ッ!」
そう言うとアニェーゼは、先程の斧の一振りが穿った入り口に真っ先に飛び込んでいった。
その前に驚きで硬直して男が呆然と突っ立っていた。
アニェーゼ「万物照応。五大の元素の元の第五。平和と秩序の象徴『司教杖』を展開」
アニェーゼの祈りの言葉に反応して、両手に抱いた蓮の杖の先にあしらわれている天使の羽が開いた。
「うわぁぁぁ!? し、侵入者だぁ!?」
アニェーゼ「偶像の一。神の子と十字架の法則に従い、異なる物と異なる者を接続せよ!」
そう言いながらアニェーゼが杖を振るう。
すると男は見えない力に横殴りにされたように頭から吹っ飛んでいった。
アニェーゼ「さあ! 躾のなってないイギリスのくそ意地汚い盗人共に、
私たち『アニェーゼ部隊』の怖さを思い知らせてやりますよ!」
アニェーゼの勇ましい掛け声に呼応して、シスターたちが破壊された玄関をくぐって洋館に飛び込んだ。
佐天も急いでその後を追う。
ドアが吹き飛んだ音、そして男の絶叫を耳にしたのか、人々の騒がしい物音が洋館全体から響いてきた。
何人もの『聖人の御手』の一員と思われる男たちが目の前に飛び出してきた。
『アニェーゼ部隊』のシスターたちは手に持った武器で彼らに向かっていった。
すでに戦闘は始まっている。しかし佐天はその場を動けずにいた。
佐天「えッ、えっと……ッ!」
「ウオオオォォォ!!」
佐天たちの前に屈強な男が踊り出てきた。
その男は華奢なシスターたちを棍棒でなぎ倒しながら、後方にいる佐天に向かって進撃してくる。
アニェーゼ「突入ッ!」
そう言うとアニェーゼは、先程の斧の一振りが穿った入り口に真っ先に飛び込んでいった。
その前に驚きで硬直して男が呆然と突っ立っていた。
アニェーゼ「万物照応。五大の元素の元の第五。平和と秩序の象徴『司教杖』を展開」
アニェーゼの祈りの言葉に反応して、両手に抱いた蓮の杖の先にあしらわれている天使の羽が開いた。
「うわぁぁぁ!? し、侵入者だぁ!?」
アニェーゼ「偶像の一。神の子と十字架の法則に従い、異なる物と異なる者を接続せよ!」
そう言いながらアニェーゼが杖を振るう。
すると男は見えない力に横殴りにされたように頭から吹っ飛んでいった。
アニェーゼ「さあ! 躾のなってないイギリスのくそ意地汚い盗人共に、
私たち『アニェーゼ部隊』の怖さを思い知らせてやりますよ!」
アニェーゼの勇ましい掛け声に呼応して、シスターたちが破壊された玄関をくぐって洋館に飛び込んだ。
佐天も急いでその後を追う。
ドアが吹き飛んだ音、そして男の絶叫を耳にしたのか、人々の騒がしい物音が洋館全体から響いてきた。
何人もの『聖人の御手』の一員と思われる男たちが目の前に飛び出してきた。
『アニェーゼ部隊』のシスターたちは手に持った武器で彼らに向かっていった。
すでに戦闘は始まっている。しかし佐天はその場を動けずにいた。
佐天「えッ、えっと……ッ!」
「ウオオオォォォ!!」
佐天たちの前に屈強な男が踊り出てきた。
その男は華奢なシスターたちを棍棒でなぎ倒しながら、後方にいる佐天に向かって進撃してくる。
59:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:32:01.41:FRtQ0WDh0 (11/20)
佐天「えッ!? えッ、えっと……ッ!」
佐天(やらなきゃ!! あたしも戦わなきゃ!!)
しかし佐天の気持ちは頭の中を上滑りするだけで、今何をすればいいのか一向に分からない。
ステイルに教えてもらった魔術のことも、五和と一緒に練習した剣術も、
今は記憶を真っ白に塗りつぶされてしまったように思い出すことができない。
男が佐天のすぐ近くまで迫ってくる。
咄嗟に佐天は目を瞑った。
佐天「ッ!?」
―――ガンッ!
鈍い音がして佐天が目を開けると、聖堂で佐天を睨みつけていたシスターが、
巨大な十字架で男の振り下ろした棍棒を受け止めていた。
佐天「あ、あ、あ……ッ!」
「ぼーとしないでッ!」
その声に突き動かされたように、佐天は急いでルーンの書かれてカードを取り出した。
佐天「原初の炎、その意味は光、優しき温もりを守り厳しき裁きを与える剣をッ!!」
佐天の持つカードが紅い炎に包まれる。
魔術の炎は水飴で出来ているようにウネウネと蠢き、瞬く間に剣へと姿を変えた。
佐天「えッ!? えッ、えっと……ッ!」
佐天(やらなきゃ!! あたしも戦わなきゃ!!)
しかし佐天の気持ちは頭の中を上滑りするだけで、今何をすればいいのか一向に分からない。
ステイルに教えてもらった魔術のことも、五和と一緒に練習した剣術も、
今は記憶を真っ白に塗りつぶされてしまったように思い出すことができない。
男が佐天のすぐ近くまで迫ってくる。
咄嗟に佐天は目を瞑った。
佐天「ッ!?」
―――ガンッ!
鈍い音がして佐天が目を開けると、聖堂で佐天を睨みつけていたシスターが、
巨大な十字架で男の振り下ろした棍棒を受け止めていた。
佐天「あ、あ、あ……ッ!」
「ぼーとしないでッ!」
その声に突き動かされたように、佐天は急いでルーンの書かれてカードを取り出した。
佐天「原初の炎、その意味は光、優しき温もりを守り厳しき裁きを与える剣をッ!!」
佐天の持つカードが紅い炎に包まれる。
魔術の炎は水飴で出来ているようにウネウネと蠢き、瞬く間に剣へと姿を変えた。
60:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:34:54.95:FRtQ0WDh0 (12/20)
「ああッ!?」
男が棍棒でシスターを跳ね除ける。そしてもう一度棍棒を振りかぶった。
シスターの脳天を目掛けて。
佐天「やあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
佐天は男の懐に入ると、その巨体に炎剣で一閃を放った。
「ぐおおおおぉぉぉぉ!!」
剣の軌道をなぞって、男の身体に炎の筋が描かれた。
男は棍棒を投げ捨てて、慌ててその炎を消そうとする。
―――ヒュッ ドンッ!
シスターの十字架が男の側頭部を強かに打った。
ズドン! と派手な音を立てて、男は地面に倒れた。
佐天「はぁ、はぁ、はぁ……」
佐天は額を流れ落ちる汗を拭った。
男を切ったと同時に、炎剣は消えてしまった。
その剣を先程まで持っていた手は、ぶるぶると震えている。
佐天は周りに目を遣った。
佐天を助けてくれた十字架を持ったシスターは佐天を一瞥して、戦っている他のシスターの応援に向かった。
それ以外にもあちこちで『聖人の御手』と『アニェーゼ部隊』の戦闘が起こっている。
ステイル「ぼさっとするな。僕たちはこのままニ階を制圧するぞ」
そう言いながらステイルは咥えた煙草を前方に放った。
シスター二人掛かりで押さえつけていた男が、瞬時に炎に包まれた。
佐天「は、はいッ!」
「ああッ!?」
男が棍棒でシスターを跳ね除ける。そしてもう一度棍棒を振りかぶった。
シスターの脳天を目掛けて。
佐天「やあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
佐天は男の懐に入ると、その巨体に炎剣で一閃を放った。
「ぐおおおおぉぉぉぉ!!」
剣の軌道をなぞって、男の身体に炎の筋が描かれた。
男は棍棒を投げ捨てて、慌ててその炎を消そうとする。
―――ヒュッ ドンッ!
シスターの十字架が男の側頭部を強かに打った。
ズドン! と派手な音を立てて、男は地面に倒れた。
佐天「はぁ、はぁ、はぁ……」
佐天は額を流れ落ちる汗を拭った。
男を切ったと同時に、炎剣は消えてしまった。
その剣を先程まで持っていた手は、ぶるぶると震えている。
佐天は周りに目を遣った。
佐天を助けてくれた十字架を持ったシスターは佐天を一瞥して、戦っている他のシスターの応援に向かった。
それ以外にもあちこちで『聖人の御手』と『アニェーゼ部隊』の戦闘が起こっている。
ステイル「ぼさっとするな。僕たちはこのままニ階を制圧するぞ」
そう言いながらステイルは咥えた煙草を前方に放った。
シスター二人掛かりで押さえつけていた男が、瞬時に炎に包まれた。
佐天「は、はいッ!」
61:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:38:55.72:FRtQ0WDh0 (13/20)
駆け出すステイルの後を追う。
不意打ちを受けた『聖人の御手』たちは、数でも勝る『アニェーゼ部隊』の猛攻に劣勢を強いられていた。
このまま行けば、戦闘は早期に決着が付きそうだった。
廊下の突き当たりまで来ると、ステイルは階段を昇った。
階段を上った先は、がらんとした広い部屋だった。
階段を上りきった佐天の目の前には五人の男たちがいた。
各々鞄に荷物をつめ、逃げようとしているようだった。
ステイル「巨人に苦痛の贈り物をッ!」
躊躇なくステイルは男たちに向かって魔術を放った。
その言葉と共に現れた炎剣は、手前にいた男が身体にぶつかり、その体を部屋の壁までふっ飛ばした。
その衝撃で壁がぼろぼろと崩れる。
男「で、でやぁぁぁぁ!!」
魔術を放った一瞬の隙をついて、別の男がステイルに攻撃を仕掛ける。
佐天は急いでルーンのカードを取り出した。
佐天「剣をッ!!」
佐天が炎剣で男を斬りつける。叫び声を上げながら、男は床を転がり回った。
佐天「や、やった……ッ!」
ステイル「油断するな!」
佐天は床に倒れた男から顔を上げる。
二人の男が佐天に向かって剣を振り下ろそうとしていた。
駆け出すステイルの後を追う。
不意打ちを受けた『聖人の御手』たちは、数でも勝る『アニェーゼ部隊』の猛攻に劣勢を強いられていた。
このまま行けば、戦闘は早期に決着が付きそうだった。
廊下の突き当たりまで来ると、ステイルは階段を昇った。
階段を上った先は、がらんとした広い部屋だった。
階段を上りきった佐天の目の前には五人の男たちがいた。
各々鞄に荷物をつめ、逃げようとしているようだった。
ステイル「巨人に苦痛の贈り物をッ!」
躊躇なくステイルは男たちに向かって魔術を放った。
その言葉と共に現れた炎剣は、手前にいた男が身体にぶつかり、その体を部屋の壁までふっ飛ばした。
その衝撃で壁がぼろぼろと崩れる。
男「で、でやぁぁぁぁ!!」
魔術を放った一瞬の隙をついて、別の男がステイルに攻撃を仕掛ける。
佐天は急いでルーンのカードを取り出した。
佐天「剣をッ!!」
佐天が炎剣で男を斬りつける。叫び声を上げながら、男は床を転がり回った。
佐天「や、やった……ッ!」
ステイル「油断するな!」
佐天は床に倒れた男から顔を上げる。
二人の男が佐天に向かって剣を振り下ろそうとしていた。
62:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:41:54.32:FRtQ0WDh0 (14/20)
佐天「盾をッ!!」
佐天は左手でカードを取り出り出した。
男たちの目の前に、猛った炎が出現する。
そしてその炎は盾となって、二人の攻撃を防いだ。
佐天「う、うぐぅ……ッ!」
ステイル「しゃがめ!」
佐天はステイルの声に反応し、咄嗟に床に伏せた。
男たちがステイルの方に顔を向ける。
―――ドンッ!
佐天の使うものより遥かに巨大な炎剣が二人に直撃した。
二人の男は最初の男のように壁まで吹き飛ばされた。
「くそッ!!」
最後に一人残った男はナイフを持ち、二人を睨みつける。
そして二人に向かっていこうとした時、
男「ゴフッ!?」
男は正面から顔を殴られたように、地面に倒れた。
アニェーゼ「やれやれ。これで全員ですか?」
いつの間にか二人の後ろにアニェーゼが立っていた。
アニェーゼは蓮の杖はくるりと回して肩で担いた。
ステイル「ああ、そのようだな」
アニェーゼ「それじゃあこいつらを連れてさっさと戻りましょう」
佐天「盾をッ!!」
佐天は左手でカードを取り出り出した。
男たちの目の前に、猛った炎が出現する。
そしてその炎は盾となって、二人の攻撃を防いだ。
佐天「う、うぐぅ……ッ!」
ステイル「しゃがめ!」
佐天はステイルの声に反応し、咄嗟に床に伏せた。
男たちがステイルの方に顔を向ける。
―――ドンッ!
佐天の使うものより遥かに巨大な炎剣が二人に直撃した。
二人の男は最初の男のように壁まで吹き飛ばされた。
「くそッ!!」
最後に一人残った男はナイフを持ち、二人を睨みつける。
そして二人に向かっていこうとした時、
男「ゴフッ!?」
男は正面から顔を殴られたように、地面に倒れた。
アニェーゼ「やれやれ。これで全員ですか?」
いつの間にか二人の後ろにアニェーゼが立っていた。
アニェーゼは蓮の杖はくるりと回して肩で担いた。
ステイル「ああ、そのようだな」
アニェーゼ「それじゃあこいつらを連れてさっさと戻りましょう」
63:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:47:58.05:FRtQ0WDh0 (15/20)
佐天は手に持った炎剣と炎盾を消した。
そして床に倒れている男たちを見た。
佐天(この人たちをあたしが倒したの?
ステイル君と一緒って言っても、本当にこんなことが出来るなんて……)
ステイル「しかし、妙だな」
佐天「えッ? 何が?」
ステイルは先程男たちが準備していた鞄を拾い上げた。
ステイル「これを見てみろ」
ステイルは鞄を開けた。中には幾つもの束になった紙幣が詰まっていた。
佐天「これって、お金? それも、こんなに沢山」
アニェーゼ「さっさと逃げりゃあいいものを。命より金が大事なんて、さすが泥棒ってとこですかね」
佐天「でもこれのどこが変なの?」
ステイル「確かにこいつらは泥棒には違いないが、それでも『聖人の御手』の一員だ。
持ち出すならまず結社に関わる物を持って行きそうなものだが」
アニェーゼ「こいつらは『聖人の御手』の下っ端なんですよね。
なら結社のために必要なものなんて知ったこっちゃねぇって感じなんじゃないですか?」
ステイル「おかしいところはもう一つある。ここは『聖人の御手』が所有する物資の一時的な保管場所のはずだ。
しかしその割には物が明らかに少ない」
佐天「そう言わると、確かに」
佐天は周りを見回した。
ニ階は佐天たちがいるこの一室だけだが、事前に片付けられたようにこの部屋には物がなかった。
佐天は手に持った炎剣と炎盾を消した。
そして床に倒れている男たちを見た。
佐天(この人たちをあたしが倒したの?
ステイル君と一緒って言っても、本当にこんなことが出来るなんて……)
ステイル「しかし、妙だな」
佐天「えッ? 何が?」
ステイルは先程男たちが準備していた鞄を拾い上げた。
ステイル「これを見てみろ」
ステイルは鞄を開けた。中には幾つもの束になった紙幣が詰まっていた。
佐天「これって、お金? それも、こんなに沢山」
アニェーゼ「さっさと逃げりゃあいいものを。命より金が大事なんて、さすが泥棒ってとこですかね」
佐天「でもこれのどこが変なの?」
ステイル「確かにこいつらは泥棒には違いないが、それでも『聖人の御手』の一員だ。
持ち出すならまず結社に関わる物を持って行きそうなものだが」
アニェーゼ「こいつらは『聖人の御手』の下っ端なんですよね。
なら結社のために必要なものなんて知ったこっちゃねぇって感じなんじゃないですか?」
ステイル「おかしいところはもう一つある。ここは『聖人の御手』が所有する物資の一時的な保管場所のはずだ。
しかしその割には物が明らかに少ない」
佐天「そう言わると、確かに」
佐天は周りを見回した。
ニ階は佐天たちがいるこの一室だけだが、事前に片付けられたようにこの部屋には物がなかった。
64:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:52:50.30:FRtQ0WDh0 (16/20)
アニェーゼ「でも何でそんなこと―――」
―――ドオオオオオォォォォォンンン!!
突然、地震のような揺れが建物全体を襲った。
佐天は倒れそうになりながら、近くの壁で身体を支えた。
佐天「な、何ッ!?」
次の瞬間、耳障りな音が響かせて部屋の窓ガラスが砕け散った。
ステイル「伏せろッ!」
急いで三人は床に伏せた。
短い風切音と共に何かが飛び込んでくる。しかも数えきれないほどに。
アニェーゼ「これは……ッ!」
飛んできたのは全て弓矢だった。
魔術が施されているらしく、鈍く光るその弓矢は部屋の壁をパイ生地でも崩すように軽々と貫通している。
床に伏せているものの、いつ自分たちに当たるか分からない。
ステイル「どうやら、僕たちは嵌められたようだね」
佐天「嵌められた?」
現代兵器で繰り広げられる銃撃戦に放りこまれたような錯覚を覚えながら、佐天は聞き返した。
ステイル「罠だよ。僕たちは誘い込まれたんだ」
アニェーゼ「でも何でそんなこと―――」
―――ドオオオオオォォォォォンンン!!
突然、地震のような揺れが建物全体を襲った。
佐天は倒れそうになりながら、近くの壁で身体を支えた。
佐天「な、何ッ!?」
次の瞬間、耳障りな音が響かせて部屋の窓ガラスが砕け散った。
ステイル「伏せろッ!」
急いで三人は床に伏せた。
短い風切音と共に何かが飛び込んでくる。しかも数えきれないほどに。
アニェーゼ「これは……ッ!」
飛んできたのは全て弓矢だった。
魔術が施されているらしく、鈍く光るその弓矢は部屋の壁をパイ生地でも崩すように軽々と貫通している。
床に伏せているものの、いつ自分たちに当たるか分からない。
ステイル「どうやら、僕たちは嵌められたようだね」
佐天「嵌められた?」
現代兵器で繰り広げられる銃撃戦に放りこまれたような錯覚を覚えながら、佐天は聞き返した。
ステイル「罠だよ。僕たちは誘い込まれたんだ」
65:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:57:09.42:FRtQ0WDh0 (17/20)
「シスター・アニェーゼ! 建物に火が!」
階下から首を覗かせたシスターが、絶叫するようにそう告げた。
アニェーゼ「まんまとしてやられましたね……ッ!
こんなボロい屋敷に火を放ってその上攻撃されたんじゃ、すぐに倒壊しちまいますよ」
アニェーゼは中腰で立ち上がった。
アニェーゼ「退却です! 早くこの建物の外に出ます!」
佐天「で、でもこの人たちは!」
先程佐天たちが倒した『聖人の御手』の男たちは、今も床の上に横たわっている。
魔術の弓矢の攻撃を受けてはいないが、この洋館が倒壊すれば一溜まりもない。
アニェーゼ「分かんねぇんですか! あいつらはここにいる自分たちの仲間を囮にして
私たちを殺そうとしてるんですよ!」
佐天「で、でもッ!」
なおも食い下がろうとする佐天の腕を、ステイルが掴んだ。
そしてぐっと佐天の上体を引き上げる。
ステイル「逃げるぞ」
佐天「そんな……ッ!」
ステイル「走れッ!」
佐天はステイルに引きづられるように階段を降りた。
一階ではすでにあちこちで火の手が上がっている。
佐天の顔を焦がすような熱波がなぶった。
「シスター・アニェーゼ! 建物に火が!」
階下から首を覗かせたシスターが、絶叫するようにそう告げた。
アニェーゼ「まんまとしてやられましたね……ッ!
こんなボロい屋敷に火を放ってその上攻撃されたんじゃ、すぐに倒壊しちまいますよ」
アニェーゼは中腰で立ち上がった。
アニェーゼ「退却です! 早くこの建物の外に出ます!」
佐天「で、でもこの人たちは!」
先程佐天たちが倒した『聖人の御手』の男たちは、今も床の上に横たわっている。
魔術の弓矢の攻撃を受けてはいないが、この洋館が倒壊すれば一溜まりもない。
アニェーゼ「分かんねぇんですか! あいつらはここにいる自分たちの仲間を囮にして
私たちを殺そうとしてるんですよ!」
佐天「で、でもッ!」
なおも食い下がろうとする佐天の腕を、ステイルが掴んだ。
そしてぐっと佐天の上体を引き上げる。
ステイル「逃げるぞ」
佐天「そんな……ッ!」
ステイル「走れッ!」
佐天はステイルに引きづられるように階段を降りた。
一階ではすでにあちこちで火の手が上がっている。
佐天の顔を焦がすような熱波がなぶった。
66:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:58:50.23:FRtQ0WDh0 (18/20)
アニェーゼ「退却、退却です! さっさと逃げますよ!」
アニェーゼの号令に従い、全員が裏口に向かった。
弓矢による攻撃は未だ止まない。
窓のみならず、崩れかけた壁をあっさり弓矢は貫通して佐天たちの頭上を通過した。
佐天(これが、戦い……。こんな、酷いのが……ッ!)
佐天の葛藤をよそに、『アニェーゼ部隊』は裏口から洋館を脱出した。
アニェーゼが安堵の溜息を吐くと、一人のシスターがアニェーゼに尋ねた。
「どうしますか? 『聖人の御手』の援軍と交戦しますか?」
アニェーゼ「いや、私たちを確実に殺しに来ているなら、この人数で戦うのは分が悪いです。
情けねぇですが、移動術式まで戻りましょう」
佐天「あれ?」
佐天は周りを見回した。
辺りにいる二〇名ほどシスターの中に、あの十字架を持ったシスターがいない。
佐天「アニェーゼさん! あ、あの、おっきな十字架を持ったシスターさんは!?」
アニェーゼ「退却、退却です! さっさと逃げますよ!」
アニェーゼの号令に従い、全員が裏口に向かった。
弓矢による攻撃は未だ止まない。
窓のみならず、崩れかけた壁をあっさり弓矢は貫通して佐天たちの頭上を通過した。
佐天(これが、戦い……。こんな、酷いのが……ッ!)
佐天の葛藤をよそに、『アニェーゼ部隊』は裏口から洋館を脱出した。
アニェーゼが安堵の溜息を吐くと、一人のシスターがアニェーゼに尋ねた。
「どうしますか? 『聖人の御手』の援軍と交戦しますか?」
アニェーゼ「いや、私たちを確実に殺しに来ているなら、この人数で戦うのは分が悪いです。
情けねぇですが、移動術式まで戻りましょう」
佐天「あれ?」
佐天は周りを見回した。
辺りにいる二〇名ほどシスターの中に、あの十字架を持ったシスターがいない。
佐天「アニェーゼさん! あ、あの、おっきな十字架を持ったシスターさんは!?」
67:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 01:59:53.90:FRtQ0WDh0 (19/20)
アニェーゼ「彼女ですか? そう言えば」
アニェーゼもその場にいるシスターたちの顔を順番に見回した。
アニェーゼの顔がさっと青ざめる。
アニェーゼ「いない!? もしかしてまだあの中に……ッ!」
―――ガタンッ!
屋根の一部が落ち、地面にぶつかって粉々に砕ける。
すでにこの洋館の倒壊が始まっているのだ。
中にいる人間は程無く陥落した洋館に押しつぶされてしまう。
佐天「ッ!?」
佐天は裏口に向かって走り出した。
一刻も早く、あのシスターを助けださなくてはならない。
アニェーゼ「ちょっと!? 佐天さん!?」
佐天が裏口を潜ると、燃えて脆くなった壁が音を立てて崩れた。
崩れた壁は裏口を塞ぐように落ちた。
ステイル「あの馬鹿ッ!!」
吐き捨てるようにそう言うと、ステイルは駈け出した。
アニェーゼ「彼女ですか? そう言えば」
アニェーゼもその場にいるシスターたちの顔を順番に見回した。
アニェーゼの顔がさっと青ざめる。
アニェーゼ「いない!? もしかしてまだあの中に……ッ!」
―――ガタンッ!
屋根の一部が落ち、地面にぶつかって粉々に砕ける。
すでにこの洋館の倒壊が始まっているのだ。
中にいる人間は程無く陥落した洋館に押しつぶされてしまう。
佐天「ッ!?」
佐天は裏口に向かって走り出した。
一刻も早く、あのシスターを助けださなくてはならない。
アニェーゼ「ちょっと!? 佐天さん!?」
佐天が裏口を潜ると、燃えて脆くなった壁が音を立てて崩れた。
崩れた壁は裏口を塞ぐように落ちた。
ステイル「あの馬鹿ッ!!」
吐き捨てるようにそう言うと、ステイルは駈け出した。
68:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/11(金) 02:09:15.17:FRtQ0WDh0 (20/20)
というわけで今回は以上!
今回から1レスでの行数を増やしてみました。
閲覧環境によって違うとは思いますが、見づらかったりしたら教えてください。
これまで次回の投下予定日を言ってきましたが、ここまで実行できないと信用もへったくれもないと思うので、
投下予定日の宣言は基本的になしにします。
4日に1回くらいのペースで投下する、程度に思っておいてください。
それでは次回の投下までしばしお待ちを……。
というわけで今回は以上!
今回から1レスでの行数を増やしてみました。
閲覧環境によって違うとは思いますが、見づらかったりしたら教えてください。
これまで次回の投下予定日を言ってきましたが、ここまで実行できないと信用もへったくれもないと思うので、
投下予定日の宣言は基本的になしにします。
4日に1回くらいのペースで投下する、程度に思っておいてください。
それでは次回の投下までしばしお待ちを……。
69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/11(金) 02:58:00.83:Hw/xqLTAO (1/1)
乙
楽しみに舞ってる
乙
楽しみに舞ってる
70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/11(金) 04:36:22.47:RboZA9JFo (1/1)
じゃあ俺は楽しげに舞ってる
じゃあ俺は楽しげに舞ってる
71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/11(金) 06:12:43.65:joGn+b9AO (1/1)
乙!!
じゃあ俺も奇態して舞ってるわ
乙!!
じゃあ俺も奇態して舞ってるわ
72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/11(金) 07:29:38.08:v3Jd7Vnz0 (1/1)
じゃあ俺奇譚捜して待ってる
じゃあ俺奇譚捜して待ってる
73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/11(金) 08:49:30.49:lIx5YbBAO (1/1)
♪ ∧,_∧
(´・ω・`) ))
(( ( つ ヽ、 ♪
〉 とノ )))
(__ノ^(_)
♪ ∧,_∧
(´・ω・`) ))
(( ( つ ヽ、 ♪
〉 とノ )))
(__ノ^(_)
74:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/11(金) 15:52:24.81:gem9zk79o (1/1)
地震来たwwwwwwww
地震来たwwwwwwww
75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/12(土) 00:44:36.59:h4IEvFrAO (1/2)
76:1 ◆fftSPPkhRw:2011/03/12(土) 17:59:59.64:oM+BewAx0 (1/1)
皆さんご無事でしょうか。>>1はとりあえず元気です。
>>1は関東の内陸部住みなので地震の被害はそれほどでもなかったのですが、
今日のお昼頃まで停電していました。こういう状況で長時間PCを付けているのも憚られる気がするので、
ノートにでも書いて書きためを進めていこうかと思います。
>>1は「佐天さんとスーパーに行く妄想」で4時間ほど時間を潰していましたが、
二次創作好きの力の源「妄想力」で皆さんもこの難局を乗り切ってください!
SSとは関係ないレス失礼しましたm(_ _)m
皆さんご無事でしょうか。>>1はとりあえず元気です。
>>1は関東の内陸部住みなので地震の被害はそれほどでもなかったのですが、
今日のお昼頃まで停電していました。こういう状況で長時間PCを付けているのも憚られる気がするので、
ノートにでも書いて書きためを進めていこうかと思います。
>>1は「佐天さんとスーパーに行く妄想」で4時間ほど時間を潰していましたが、
二次創作好きの力の源「妄想力」で皆さんもこの難局を乗り切ってください!
SSとは関係ないレス失礼しましたm(_ _)m
77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/12(土) 18:07:04.02:h4IEvFrAO (2/2)
無事で良かったぁぁぁ!
無理はしないでくれよー
1が無事で書いていられてるなら投下もいつまでも待てる!
無事で良かったぁぁぁ!
無理はしないでくれよー
1が無事で書いていられてるなら投下もいつまでも待てる!
78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/12(土) 22:15:19.87:37B/wr6j0 (1/1)
俺もアニェーゼのおでこをペロペロしてキレられる妄想してたぜ
アニメのオルソラ蹴ってる時のドヤ顔が可愛すぎる
俺もアニェーゼのおでこをペロペロしてキレられる妄想してたぜ
アニメのオルソラ蹴ってる時のドヤ顔が可愛すぎる
79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道):2011/03/18(金) 03:07:42.54:/q8OLEVAO (1/1)
皆頑張れ
皆頑張れ
80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/24(木) 17:09:40.10:R1wgBwJ+0 (1/1)
hey
hey
81:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2011/03/28(月) 16:43:40.34:3+2W4J7d0 (1/1)
yo!
yo!
82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/28(月) 18:14:11.61:/vkg54hso (1/1)
わwwwwwwざwwwwwwwwわwwwwwwざwwwwwwww何wwwwwwでwwwwwwwwなwwwwwwwwまwwwwwwwwえwwwwwwwwらwwwwwwwwんwwwwwwww
わwwwwwwざwwwwwwwwわwwwwwwざwwwwwwww何wwwwwwでwwwwwwwwなwwwwwwwwまwwwwwwwwえwwwwwwwwらwwwwwwwwんwwwwwwww
83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県):2011/03/31(木) 10:05:46.23:MWaTo4w50 (1/1)
生存なされているのだろうか…とりあえず待ってますぜー
生存なされているのだろうか…とりあえず待ってますぜー
84:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東):2011/03/31(木) 21:06:18.22:UYOuhV8AO (1/1)
待ってるよ
待ってるよ
85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/03/31(木) 23:20:07.27:l1W8rF7to (1/1)
俺も待ってる
俺も待ってる
86:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/01(金) 20:09:11.72:yiX8k3NL0 (1/4)
またかなり時間が空いてすいませんでした。
今日の23時頃に投下します!
前回の現状報告の時は水道がまだ止まってて川に水を汲みに行くなど、
ぷちサバイバルな日々を過ごしていましたが、今は何の問題もないっす。
かわにおちたりもしたけど、わたしはげんきです。
それでは少しお待ちを。
またかなり時間が空いてすいませんでした。
今日の23時頃に投下します!
前回の現状報告の時は水道がまだ止まってて川に水を汲みに行くなど、
ぷちサバイバルな日々を過ごしていましたが、今は何の問題もないっす。
かわにおちたりもしたけど、わたしはげんきです。
それでは少しお待ちを。
87:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/01(金) 21:45:28.87:IXxeoY1Qo (1/1)
おk
おk
88:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県):2011/04/01(金) 23:26:41.43:bwNok7Nx0 (1/2)
了解っ!
ってそれはそれでやばい状況なんですね…応援してますぞ…
了解っ!
ってそれはそれでやばい状況なんですね…応援してますぞ…
89:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/01(金) 23:51:00.59:yiX8k3NL0 (2/4)
置いてない、おとめ妖怪ざくろのコミックス1巻が何処にも……。
投下開始します。
置いてない、おとめ妖怪ざくろのコミックス1巻が何処にも……。
投下開始します。
90:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州・沖縄):2011/04/01(金) 23:52:14.02:hzwrv/8AO (1/1)
キター!
キター!
91:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/01(金) 23:53:55.45:yiX8k3NL0 (3/4)
―――メリメリ……ッ ガコンッ!
魔術の矢による損傷、そしてあちこちで吹き上がる火の手によって、洋館は今にも崩れ落ちようとしていた。
「あ……ッ! くぅ、あ゛ぐ……ッ」
黒煙が立ち込める廊下で、一人のシスターが必死に脱出を試みていた。
しかし彼女の太腿には深々と矢が突き刺さっており、腕で這うしか術はなかった。
シスター「はぁ、はぁ……、は、早く、ここから逃げなく、ては……」
シスターは動かない脚を引きずりながら出口を目指した。
しかし肺が焼け付くような熱気を吸い込むばかりで、彼女の身体は中々前に進まない。
シスター「ゴホッゴホッ! 早く、早く……ッ!」
―――ガシャン!!
そうしている間にも、火の手が彼女に迫り、洋館の崩壊は近付いていた。
「何と一人か。これほどまでの人員を投入したにも関わらず、この様とは。
『必要悪の教会』は中々優秀な犬を飼っておるようだ」
「ッ!?」
シスターは後ろを振り返った。
―――メリメリ……ッ ガコンッ!
魔術の矢による損傷、そしてあちこちで吹き上がる火の手によって、洋館は今にも崩れ落ちようとしていた。
「あ……ッ! くぅ、あ゛ぐ……ッ」
黒煙が立ち込める廊下で、一人のシスターが必死に脱出を試みていた。
しかし彼女の太腿には深々と矢が突き刺さっており、腕で這うしか術はなかった。
シスター「はぁ、はぁ……、は、早く、ここから逃げなく、ては……」
シスターは動かない脚を引きずりながら出口を目指した。
しかし肺が焼け付くような熱気を吸い込むばかりで、彼女の身体は中々前に進まない。
シスター「ゴホッゴホッ! 早く、早く……ッ!」
―――ガシャン!!
そうしている間にも、火の手が彼女に迫り、洋館の崩壊は近付いていた。
「何と一人か。これほどまでの人員を投入したにも関わらず、この様とは。
『必要悪の教会』は中々優秀な犬を飼っておるようだ」
「ッ!?」
シスターは後ろを振り返った。
92:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県):2011/04/01(金) 23:54:06.96:bwNok7Nx0 (2/2)
キタ――(゚∀゚)――!!
キタ――(゚∀゚)――!!
93:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/01(金) 23:56:28.08:yiX8k3NL0 (4/4)
燃え盛る業火を背景に、背の低い老人と、フードで顔を隠した二人の男が廊下に立っていた。
老人は先端に装飾がなされた杖を、フードを被った男たちは弓矢を携えていた。
老人「その修道服を見るに、お前は例の『ローマ正教』からの亡命者か。
ふむ、とすればこれが罠だと分かっていた上で、捨て駒を当てたか……」
シスター「何を、言っている……ッ!」
老人「まあ良い。今回の戦などほんの小手調べ。端から大した成果が上がるとは期待しておらん」
老人は右手を上げた。側に控える二人が僅かに頷く。
老人「撃て」
―――ヒュッ グサッ!!
「あ゛あ゛ああああああぁぁぁぁぁ!!!」
シスターの絶叫が崩れかけた洋館に木霊する。
シスターの腕に、フードの男が射った矢が突き刺さっていた。
老人「ほっほっほ。良い声で鳴く。どれ、もう一本」
―――グサッ!!
再びシスターに向かって矢が射られる。
肩に刺さった矢は深く肉を抉り、鮮血が溢れ出た。
シスター「ぐあ゛あ゛ああああああぁぁぁぁぁ!!!」
燃え盛る業火を背景に、背の低い老人と、フードで顔を隠した二人の男が廊下に立っていた。
老人は先端に装飾がなされた杖を、フードを被った男たちは弓矢を携えていた。
老人「その修道服を見るに、お前は例の『ローマ正教』からの亡命者か。
ふむ、とすればこれが罠だと分かっていた上で、捨て駒を当てたか……」
シスター「何を、言っている……ッ!」
老人「まあ良い。今回の戦などほんの小手調べ。端から大した成果が上がるとは期待しておらん」
老人は右手を上げた。側に控える二人が僅かに頷く。
老人「撃て」
―――ヒュッ グサッ!!
「あ゛あ゛ああああああぁぁぁぁぁ!!!」
シスターの絶叫が崩れかけた洋館に木霊する。
シスターの腕に、フードの男が射った矢が突き刺さっていた。
老人「ほっほっほ。良い声で鳴く。どれ、もう一本」
―――グサッ!!
再びシスターに向かって矢が射られる。
肩に刺さった矢は深く肉を抉り、鮮血が溢れ出た。
シスター「ぐあ゛あ゛ああああああぁぁぁぁぁ!!!」
94:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/02(土) 00:07:52.58:fFxONrhn0 (1/11)
老人「ん? 芋虫のように這っとると思えば、脚をすでにやられているのか。
おい、弓を貸せ」
老人はフードの男の一人から弓を受け取ると、矢を番え、鏃をシスターに向けた。
そして口の中で、短く言葉を呟いた。
―――ボォ……
矢が、老人の言葉に反応して鈍く光る。
老人が弦から手を離すと、一本だったはずの矢は、三本の矢となってシスターに殺到した。
そして、すでに怪我を負っているシスターの右足に突き刺さった。
再び、シスターの悲痛な叫びが上がる。
老人「この矢に掛けた魔術は『聖セバスティアヌス』を死の間際に追いやった弓矢の処刑を元にしている。
聖人の身体を突き破るほどの貫通力を持ち、術を追加すればこのように一本の矢を増やすこともできるというわけだ」
シスターの身体に突き刺さった矢は計六本。
しかもその矢は魔術によって威力を高められており、その証拠にシスターから流れ出た夥しい血が廊下を濡らしている。
老人「そろそろか。では楽にしてやろう。かの聖人と同じ方法で殺されること、誇るが良い」
老人は弓に新たな矢を番えた。
弱々しい息を吐き出しながら、シスターは鈍く光る鏃を凝視した。
老人の節くれ立った指先が、何の躊躇いもなく矢を解き放つ―――
―――ドオオオォォォンン!!
突如、シスターの側面の壁が崩れ、彼女の前に火柱が噴き上がった。
老人「ん? 芋虫のように這っとると思えば、脚をすでにやられているのか。
おい、弓を貸せ」
老人はフードの男の一人から弓を受け取ると、矢を番え、鏃をシスターに向けた。
そして口の中で、短く言葉を呟いた。
―――ボォ……
矢が、老人の言葉に反応して鈍く光る。
老人が弦から手を離すと、一本だったはずの矢は、三本の矢となってシスターに殺到した。
そして、すでに怪我を負っているシスターの右足に突き刺さった。
再び、シスターの悲痛な叫びが上がる。
老人「この矢に掛けた魔術は『聖セバスティアヌス』を死の間際に追いやった弓矢の処刑を元にしている。
聖人の身体を突き破るほどの貫通力を持ち、術を追加すればこのように一本の矢を増やすこともできるというわけだ」
シスターの身体に突き刺さった矢は計六本。
しかもその矢は魔術によって威力を高められており、その証拠にシスターから流れ出た夥しい血が廊下を濡らしている。
老人「そろそろか。では楽にしてやろう。かの聖人と同じ方法で殺されること、誇るが良い」
老人は弓に新たな矢を番えた。
弱々しい息を吐き出しながら、シスターは鈍く光る鏃を凝視した。
老人の節くれ立った指先が、何の躊躇いもなく矢を解き放つ―――
―――ドオオオォォォンン!!
突如、シスターの側面の壁が崩れ、彼女の前に火柱が噴き上がった。
95:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/02(土) 00:12:41.73:fFxONrhn0 (2/11)
老人「むッ!?」
老人とフードの男たちが僅かにたじろぐ中、炎は次第にその勢いを弱めていった。
いや、弱まったというより、むしろその炎は何らかの意志を以て形を変えているようだった。
「大丈夫ですか!!」
シスター「あ、貴女は……ッ!」
炎の盾を掲げてシスターを守るように、佐天は立っていた。
充満する熱気とシスターを探して洋館を駆け回っていたことで、佐天の息は乱れ切っていた。
老人「ほう。わざわざ自分から死地に飛び込んでくるとは。愚かな者もいるものだな」
佐天「あんたたちが『聖人の御手』……ッ!」
佐天は一歩進み出て、老人たちを睨んだ。
老人「如何にも。私の部下が随分お前たちの世話になったようだな。
故に『聖人の御手』を代表するものとして、直々に馳せ参じた次第だ」
佐天「じゃあ、あんたが『聖人の御手』の―――」
佐天の言葉を遮るように、老人は隣に立つフードの男たちに目配せした。
二対の矢が、佐天に狙いを定める。
老人「撃て」
老人の言葉と当時に、魔術によって威力を増幅した二本の矢が放たれた。
佐天「ッ!?」
佐天は再び炎の盾を目の前に掲げた。
佐天「炎よッ!!」
老人「むッ!?」
老人とフードの男たちが僅かにたじろぐ中、炎は次第にその勢いを弱めていった。
いや、弱まったというより、むしろその炎は何らかの意志を以て形を変えているようだった。
「大丈夫ですか!!」
シスター「あ、貴女は……ッ!」
炎の盾を掲げてシスターを守るように、佐天は立っていた。
充満する熱気とシスターを探して洋館を駆け回っていたことで、佐天の息は乱れ切っていた。
老人「ほう。わざわざ自分から死地に飛び込んでくるとは。愚かな者もいるものだな」
佐天「あんたたちが『聖人の御手』……ッ!」
佐天は一歩進み出て、老人たちを睨んだ。
老人「如何にも。私の部下が随分お前たちの世話になったようだな。
故に『聖人の御手』を代表するものとして、直々に馳せ参じた次第だ」
佐天「じゃあ、あんたが『聖人の御手』の―――」
佐天の言葉を遮るように、老人は隣に立つフードの男たちに目配せした。
二対の矢が、佐天に狙いを定める。
老人「撃て」
老人の言葉と当時に、魔術によって威力を増幅した二本の矢が放たれた。
佐天「ッ!?」
佐天は再び炎の盾を目の前に掲げた。
佐天「炎よッ!!」
96:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/02(土) 00:19:16.32:fFxONrhn0 (3/11)
佐天の炎盾が、ボオォッ! と勢いを増す。
―――ドスドスッ!
佐天「ぐぅ……ッ!」
佐天の腕に激痛が走った。
矢は盾を貫通し、僅かではあるが佐天の腕に突き刺さった。
老人「ほう……。身体を貫通すると思ったが、『聖セバスティアヌスの矢』を受け止めるとは。
しかしお前は何本の矢まで耐えることができるかな」
佐天(不味い、このままじゃ防戦一方だ。何とかして攻撃しないと)
老人「あの小娘が倒れるまで矢を放ち続けろ」
フードの男たちは次の矢を番えようとしている。
佐天はさっと右手でルーンのカードを取り出した。
佐天「炎よ、巨人に苦痛の贈り物をッ!!」
佐天の言葉に呼応して、その手の中から炎が生まれる。
そして瞬く間に剣の形を成した炎を、佐天は老人たちに向かって投げつけた。
老人「ふんッ!」
老人は手に持った杖を振り、佐天の投げつけた炎剣をたたき落とした。
落ちた炎剣は、すぐに回りの炎と同化し、その姿を消した。
佐天の炎盾が、ボオォッ! と勢いを増す。
―――ドスドスッ!
佐天「ぐぅ……ッ!」
佐天の腕に激痛が走った。
矢は盾を貫通し、僅かではあるが佐天の腕に突き刺さった。
老人「ほう……。身体を貫通すると思ったが、『聖セバスティアヌスの矢』を受け止めるとは。
しかしお前は何本の矢まで耐えることができるかな」
佐天(不味い、このままじゃ防戦一方だ。何とかして攻撃しないと)
老人「あの小娘が倒れるまで矢を放ち続けろ」
フードの男たちは次の矢を番えようとしている。
佐天はさっと右手でルーンのカードを取り出した。
佐天「炎よ、巨人に苦痛の贈り物をッ!!」
佐天の言葉に呼応して、その手の中から炎が生まれる。
そして瞬く間に剣の形を成した炎を、佐天は老人たちに向かって投げつけた。
老人「ふんッ!」
老人は手に持った杖を振り、佐天の投げつけた炎剣をたたき落とした。
落ちた炎剣は、すぐに回りの炎と同化し、その姿を消した。
97:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/02(土) 00:23:31.04:fFxONrhn0 (4/11)
佐天「そんな……ッ!」
老人「『聖セバスティアヌスの矢』を止めたから大した魔術師かと思えば。
何とくだらん術だ、これは」
佐天「なッ!?」
老人「ルーン文字で十字教の教義を再構成したもののようだが、
実際は単に『炎』で『剣』と作り出しているに過ぎない。
故に剣の特性の範疇を出ることもなく、大した攻撃力もない」
老人「まだ見習いの魔術師か。そんな低級な術が利くと思っておるのだから、哀れなものだな」
佐天「ま、まだ魔術覚えて一ヶ月ちょっとしか経ってないんだからしょうがないでしょ!!」
老人「それならむしろ見習い以前と言ったところだな。しかし素人を戦地に追いやるとは。
『必要悪の教会』と言えど、所詮只の寄せ集めか」
佐天「~~~~ッ!!!」
「なら、これならどうだ」
―――ヒュッ ドゴオオオオオォォォォォンンン!!
佐天の後方から飛んできた炎の塊が、老人に直撃した。
先程のように杖で振り払う余裕もなく、老人の右手は紅蓮の炎に包まれた。
老人「ぐがああああぁぁぁぁぁ!!!」
ステイル「国家機関である『必要悪の教会』は原則的に国民の声を広く聞くことにしているが、
敵を嵌めるために自分の部下を犠牲にするような輩には聞く耳持たないね」
佐天「そんな……ッ!」
老人「『聖セバスティアヌスの矢』を止めたから大した魔術師かと思えば。
何とくだらん術だ、これは」
佐天「なッ!?」
老人「ルーン文字で十字教の教義を再構成したもののようだが、
実際は単に『炎』で『剣』と作り出しているに過ぎない。
故に剣の特性の範疇を出ることもなく、大した攻撃力もない」
老人「まだ見習いの魔術師か。そんな低級な術が利くと思っておるのだから、哀れなものだな」
佐天「ま、まだ魔術覚えて一ヶ月ちょっとしか経ってないんだからしょうがないでしょ!!」
老人「それならむしろ見習い以前と言ったところだな。しかし素人を戦地に追いやるとは。
『必要悪の教会』と言えど、所詮只の寄せ集めか」
佐天「~~~~ッ!!!」
「なら、これならどうだ」
―――ヒュッ ドゴオオオオオォォォォォンンン!!
佐天の後方から飛んできた炎の塊が、老人に直撃した。
先程のように杖で振り払う余裕もなく、老人の右手は紅蓮の炎に包まれた。
老人「ぐがああああぁぁぁぁぁ!!!」
ステイル「国家機関である『必要悪の教会』は原則的に国民の声を広く聞くことにしているが、
敵を嵌めるために自分の部下を犠牲にするような輩には聞く耳持たないね」
98:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/02(土) 00:27:55.07:fFxONrhn0 (5/11)
燃え盛る炎をかき分けるようにして、黒衣を纏ったステイルが現れた。
佐天は泣き出しそうな自分の感情を押しとどめて、倒れたまま動かないシスターをステイルに指し示した。
佐天「ステイル君!? こ、この人が……ッ!?」
ステイル「分かっている。さっさとここを出るぞ。もうじき崩れる」
ステイルはそう言うとシスターに肩を貸して立ち上がらせた。
老人「ぐっ……があぁ……ッ! そ、その男を逃がすな!!」
フードの男たちが、再び矢を放とうと矢に手を掛ける。
ステイルはそれを目の端で捉え、ルーンのカードを素早く取り出した。
ステイル「ちッ!」
ステイルの放った炎が天井を崩し、落下した瓦礫が佐天たちと老人たちとの間に壁を作る。
ステイルはそれを確認する間もなく、
ステイル「行くぞ!」
佐天「う、うん!」
佐天は一瞬後ろを振り返った。
ステイルによって作られた壁の隙間から、血走った老人の目が覗いていた。
老人「忘れんぞ!! この屈辱、決して忘れんぞおおおおぉぉぉ!!!」
老人の怒声を背後に聞きながら、佐天は走った。
舞い散る灰煙と火の粉が視界は悪く、ステイルの大きな背中が僅かに見えるだけだった。
燃え盛る炎をかき分けるようにして、黒衣を纏ったステイルが現れた。
佐天は泣き出しそうな自分の感情を押しとどめて、倒れたまま動かないシスターをステイルに指し示した。
佐天「ステイル君!? こ、この人が……ッ!?」
ステイル「分かっている。さっさとここを出るぞ。もうじき崩れる」
ステイルはそう言うとシスターに肩を貸して立ち上がらせた。
老人「ぐっ……があぁ……ッ! そ、その男を逃がすな!!」
フードの男たちが、再び矢を放とうと矢に手を掛ける。
ステイルはそれを目の端で捉え、ルーンのカードを素早く取り出した。
ステイル「ちッ!」
ステイルの放った炎が天井を崩し、落下した瓦礫が佐天たちと老人たちとの間に壁を作る。
ステイルはそれを確認する間もなく、
ステイル「行くぞ!」
佐天「う、うん!」
佐天は一瞬後ろを振り返った。
ステイルによって作られた壁の隙間から、血走った老人の目が覗いていた。
老人「忘れんぞ!! この屈辱、決して忘れんぞおおおおぉぉぉ!!!」
老人の怒声を背後に聞きながら、佐天は走った。
舞い散る灰煙と火の粉が視界は悪く、ステイルの大きな背中が僅かに見えるだけだった。
99:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/02(土) 00:31:03.06:fFxONrhn0 (6/11)
―――『イギリス清教』女子寮
―――バタン
部屋からアニェーゼが出てくると、、ドアの前に立っていた佐天はビクッと身体を震わせた。
佐天「アニェーゼさん……」
アニェーゼ「佐天さん、来てたんですか。腕の方はどうです?」
佐天は腕に巻かれた包帯を軽くさすった。
佐天「いえ、あたしのはほんの掠り傷みたいなものですから。それで……」
アニェーゼは今さっき自分が出てきたドアの方を見た。
アニェーゼ「酷い怪我でした。特に右足の損傷が激しくて」
佐天「で、でも、回復魔術で治療したじゃないですか!」
アニェーゼ「勿論やりましたよ。でも佐天さん、魔術だって万能ってわけじゃねぇんですよ。
何でもかんでもできるような、便利な代物じゃねぇんです」
アニェーゼ「あの足は、もう元には戻らねぇでしょうね。日常生活にはそれほど支障はないかも知れませんが……」
アニェーゼは苦いものを吐き出すように言った。
アニェーゼ「彼女は、もう戦線には復帰できません」
佐天「そんな……」
佐天は息を飲み、アニェーゼを押しのけるようにしてドアノブに手を掛けた。
―――『イギリス清教』女子寮
―――バタン
部屋からアニェーゼが出てくると、、ドアの前に立っていた佐天はビクッと身体を震わせた。
佐天「アニェーゼさん……」
アニェーゼ「佐天さん、来てたんですか。腕の方はどうです?」
佐天は腕に巻かれた包帯を軽くさすった。
佐天「いえ、あたしのはほんの掠り傷みたいなものですから。それで……」
アニェーゼは今さっき自分が出てきたドアの方を見た。
アニェーゼ「酷い怪我でした。特に右足の損傷が激しくて」
佐天「で、でも、回復魔術で治療したじゃないですか!」
アニェーゼ「勿論やりましたよ。でも佐天さん、魔術だって万能ってわけじゃねぇんですよ。
何でもかんでもできるような、便利な代物じゃねぇんです」
アニェーゼ「あの足は、もう元には戻らねぇでしょうね。日常生活にはそれほど支障はないかも知れませんが……」
アニェーゼは苦いものを吐き出すように言った。
アニェーゼ「彼女は、もう戦線には復帰できません」
佐天「そんな……」
佐天は息を飲み、アニェーゼを押しのけるようにしてドアノブに手を掛けた。
100:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/02(土) 00:36:09.19:fFxONrhn0 (7/11)
アニェーゼ「彼女に会って何を言うつもりですか?」
佐天「そ、それは……」
アニェーゼ「『今回のことは残念でしたね』とでも言うつもりですか?
それとも『助けてあげられなくてごめんなさい』とでも言いやがるつもりですか?」
アニェーゼ「佐天さん、こいつが戦場の現実ってやつなんです。むしろ死者が出なかっただけましな方です。
貴女がこれから先、戦場に立ち続けるつもりなら、この現実に耐えていかなきゃならないんです」
アニェーゼの言葉が重たくのしかかり、暫くドアノブを掴んだ手を動かすことができなかった。
しかし意を決してドアを開け、部屋の中に足を踏み入れた。
アニェーゼ「…………」
部屋の奥、窓際のベッドにシスターは横たわっていた。
シスターはドアを開けた佐天の方を見た。
肩が、小さく震える。
佐天「あ、あの……」
シスター「閉めてくれませんか」
シスターは、落ち着いた声でそう言った。
シスター「ドア。寒いですから」
佐天「は、はい」
―――バタン
アニェーゼ「彼女に会って何を言うつもりですか?」
佐天「そ、それは……」
アニェーゼ「『今回のことは残念でしたね』とでも言うつもりですか?
それとも『助けてあげられなくてごめんなさい』とでも言いやがるつもりですか?」
アニェーゼ「佐天さん、こいつが戦場の現実ってやつなんです。むしろ死者が出なかっただけましな方です。
貴女がこれから先、戦場に立ち続けるつもりなら、この現実に耐えていかなきゃならないんです」
アニェーゼの言葉が重たくのしかかり、暫くドアノブを掴んだ手を動かすことができなかった。
しかし意を決してドアを開け、部屋の中に足を踏み入れた。
アニェーゼ「…………」
部屋の奥、窓際のベッドにシスターは横たわっていた。
シスターはドアを開けた佐天の方を見た。
肩が、小さく震える。
佐天「あ、あの……」
シスター「閉めてくれませんか」
シスターは、落ち着いた声でそう言った。
シスター「ドア。寒いですから」
佐天「は、はい」
―――バタン
101:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/02(土) 00:44:51.06:fFxONrhn0 (8/11)
佐天「あ、えっと……」
忙しく指先を擦り合わせながら、必死に言うべき言葉を探した。
佐天(何か言わなくなくちゃ、何か……)
シスターは暫く佐天の様子を眺めてから、
佐天「えッ?」
佐天に向かって深々と頭を下げた。
シスター「ありがとうございました。助けて頂いて。
貴女が来てくださらなければ、きっと私の命はありませんでした」
佐天「そんな……あたしは、何も。それに、その……」
佐天の言葉を先回りして、シスターは続けた。
シスター「私の負った怪我は私の落ち度です」
佐天「でも……」
シスター「だから貴女が気に病むことではありません」
佐天「でも!! もっとあたしが早く来てたら、そんな怪我しなくて良かったかも知れないのに……ッ!」
シスターは溜息を吐いた。
質問に上手く答えることのできない出来の悪い生徒を見るように、呆れて。
シスター「……命の恩人にこんなことを言うのは失礼かも知れませんが」
シスターは今まで変わらぬ調子で言った。
シスター「それは思い上がりというものです」
佐天「ッ!?」
佐天「あ、えっと……」
忙しく指先を擦り合わせながら、必死に言うべき言葉を探した。
佐天(何か言わなくなくちゃ、何か……)
シスターは暫く佐天の様子を眺めてから、
佐天「えッ?」
佐天に向かって深々と頭を下げた。
シスター「ありがとうございました。助けて頂いて。
貴女が来てくださらなければ、きっと私の命はありませんでした」
佐天「そんな……あたしは、何も。それに、その……」
佐天の言葉を先回りして、シスターは続けた。
シスター「私の負った怪我は私の落ち度です」
佐天「でも……」
シスター「だから貴女が気に病むことではありません」
佐天「でも!! もっとあたしが早く来てたら、そんな怪我しなくて良かったかも知れないのに……ッ!」
シスターは溜息を吐いた。
質問に上手く答えることのできない出来の悪い生徒を見るように、呆れて。
シスター「……命の恩人にこんなことを言うのは失礼かも知れませんが」
シスターは今まで変わらぬ調子で言った。
シスター「それは思い上がりというものです」
佐天「ッ!?」
102:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/02(土) 00:48:20.92:fFxONrhn0 (9/11)
シスター「先程も言ったようにこれは私の落ち度にほかなりません。
戦場で己の身を守るのは当たり前のこと。
『自分なら誰かの身を守れる』と盲信するのは、愚かでしかありません」
佐天「それでもッ!!」
佐天「あたしは悔しかったんです! 戦う力を持てば、きっと誰を助けることができるって思ってたのに!
それなのに結局何もできなかった自分に腹が立つんです!!」
自分がどれだけ愚かなことを言っているか、佐天自身少なからず分かっていた。
そしてシスターの言葉がどれだけ真実であるかも。
しかしそう言わなければ、今まで積み上げてきたものが崩れてしまうのではないかという恐怖の方がずっと強かったのだ。
佐天の言葉を、シスターは黙って聞いていた。
佐天が荒い息をすべて吐き出すのを待って、シスターは口を開いた。
シスター「それでも、貴女が私の命を救ってくれたという事実には違いはありません。
しかし貴女がそれでもなお、自分の無力を嘆くというなら、もっと強くなることです」
佐天「強く……」
シスター「理不尽な暴力を跳ね除けることができるほどの力を。己の正しさを貫けられる強さを。
最早戦うことの叶わない私の代わりに、貴女は強くなってください」
強く―――
佐天はその言葉を反芻する。
自分が魔術を志した理由であり、今も尚、自らの肩に重くのしかかるその言葉を。
佐天は大きくゆっくりと、出来る限り力強く見えるように頷いた。
佐天「……分かりました。もう、誰も傷付けさせないくらい、あたしは強くなってみせます」
シスター「先程も言ったようにこれは私の落ち度にほかなりません。
戦場で己の身を守るのは当たり前のこと。
『自分なら誰かの身を守れる』と盲信するのは、愚かでしかありません」
佐天「それでもッ!!」
佐天「あたしは悔しかったんです! 戦う力を持てば、きっと誰を助けることができるって思ってたのに!
それなのに結局何もできなかった自分に腹が立つんです!!」
自分がどれだけ愚かなことを言っているか、佐天自身少なからず分かっていた。
そしてシスターの言葉がどれだけ真実であるかも。
しかしそう言わなければ、今まで積み上げてきたものが崩れてしまうのではないかという恐怖の方がずっと強かったのだ。
佐天の言葉を、シスターは黙って聞いていた。
佐天が荒い息をすべて吐き出すのを待って、シスターは口を開いた。
シスター「それでも、貴女が私の命を救ってくれたという事実には違いはありません。
しかし貴女がそれでもなお、自分の無力を嘆くというなら、もっと強くなることです」
佐天「強く……」
シスター「理不尽な暴力を跳ね除けることができるほどの力を。己の正しさを貫けられる強さを。
最早戦うことの叶わない私の代わりに、貴女は強くなってください」
強く―――
佐天はその言葉を反芻する。
自分が魔術を志した理由であり、今も尚、自らの肩に重くのしかかるその言葉を。
佐天は大きくゆっくりと、出来る限り力強く見えるように頷いた。
佐天「……分かりました。もう、誰も傷付けさせないくらい、あたしは強くなってみせます」
103:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/02(土) 00:49:40.68:fFxONrhn0 (10/11)
ステイル「…………」
シスターの部屋から少し離れたところで、ステイルは壁に背中を預けて佇んでいた
神裂「いいのですか。彼女に何か、言葉を掛けなくて」
ステイル「言える言葉なんてないさ」
神裂「確かに、そうかも知れませんね」
ステイル「これが僕たちのいる世界の現実だ。受け入れるしかないんだ。でも……」
神裂「…………」
ステイル「彼女の身だけは守ってみせる。それが僕に出来る唯一のことだ」
神裂「ステイル、あまり思い詰めてはいけませんよ。彼女の味方は、貴方一人ではないのですから」
ステイル「分かっている。分かっているさ」
ステイル「…………」
シスターの部屋から少し離れたところで、ステイルは壁に背中を預けて佇んでいた
神裂「いいのですか。彼女に何か、言葉を掛けなくて」
ステイル「言える言葉なんてないさ」
神裂「確かに、そうかも知れませんね」
ステイル「これが僕たちのいる世界の現実だ。受け入れるしかないんだ。でも……」
神裂「…………」
ステイル「彼女の身だけは守ってみせる。それが僕に出来る唯一のことだ」
神裂「ステイル、あまり思い詰めてはいけませんよ。彼女の味方は、貴方一人ではないのですから」
ステイル「分かっている。分かっているさ」
104:1 ◆fftSPPkhRw:2011/04/02(土) 00:56:22.14:fFxONrhn0 (11/11)
ちょいと短いですが、今回は以上!
ちょうどよく切れるところが中々見つからないなぁ。
書きためはもう少しだけあるので、次回は多少早く(?)投下できるかも知れません。
当初の予定では長くとも2期が終わるまでには完結してるはずだったのに……。
しかし大丈夫、3期が始まるまでには絶対に終わるから!
というわけで次回まで暫くお待ちください……
ちょいと短いですが、今回は以上!
ちょうどよく切れるところが中々見つからないなぁ。
書きためはもう少しだけあるので、次回は多少早く(?)投下できるかも知れません。
当初の予定では長くとも2期が終わるまでには完結してるはずだったのに……。
しかし大丈夫、3期が始まるまでには絶対に終わるから!
というわけで次回まで暫くお待ちください……
105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/02(土) 03:21:52.37:I441Tj3SO (1/1)
おつ
おつ
106:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/02(土) 10:44:36.51:Aygjgt94o (1/1)
おつ
おつ
107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県):2011/04/02(土) 12:16:51.86:WZuYqetb0 (1/1)
乙!
乙!
108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2011/04/02(土) 17:09:53.41:OcKlHgNAO (1/1)
乙!
乙!
109:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/02(土) 18:26:55.20:WvgVc9nOo (1/1)
乙です!
乙です!
110:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県):2011/04/02(土) 22:25:21.61:q9KlJEuWo (1/1)
ステイルはイノケンティウスといいインデックスへの想いといい、守る姿がよく似合う
ステイルはイノケンティウスといいインデックスへの想いといい、守る姿がよく似合う
111:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/04/06(水) 19:33:54.87:XJeRsuPno (1/1)
3期が始まるまでっていつだよww
3期が始まるまでっていつだよww
112:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/07(木) 20:33:42.64:FJGo2Wu6P (1/1)
来年の春くらい?
来年の春くらい?
113:931:2011/04/12(火) 19:10:18.95:vQOWp7fw0 (1/1)
続けろよぉぉぉぉっぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
続けろよぉぉぉぉっぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
114:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県):2011/04/12(火) 19:51:21.84:mzwcO1cS0 (1/1)
戻ったか
戻ったか
115:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/18(月) 09:24:21.15:Y4MxxFKi0 (1/1)
まだけ?
まだけ?
116:上条:2011/04/18(月) 13:57:26.82:WKj09vDq0 (1/1)
いいぜ・・・てめぇらが続けねえってんならまずはそのふざけた幻想をぶち[ピーーー]
いいぜ・・・てめぇらが続けねえってんならまずはそのふざけた幻想をぶち[ピーーー]
117:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/18(月) 15:32:15.71:ocmVqLT10 (1/1)
>>116せめてsageてくれ……。
>>116せめてsageてくれ……。
118:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2011/04/19(火) 06:10:14.03:wka4lfPho (1/1)
Androidあ
Androidあ
119:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/04/22(金) 17:39:27.51:w5esCyF+0 (1/1)
乙
乙
120:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2011/04/25(月) 10:56:12.50:NdZdmwju0 (1/1)
jddjhgsjfncbdfghdjrnfcgdjfbchgdjcnd
jddjhgsjfncbdfghdjrnfcgdjfbchgdjcnd
121:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/25(月) 16:15:05.85:W6xm5dqC0 (1/1)
変なのが沸き始めてるから早く帰ってきておくれよー
変なのが沸き始めてるから早く帰ってきておくれよー
122:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/26(火) 11:00:14.39:RSc6HEPSO (1/1)
強制詠唱か!
強制詠唱か!
123:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/04(水) 01:37:55.25:XgqhXAwj0 (1/1)
マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
124:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(滋賀県):2011/05/05(木) 07:48:24.56:2yOrQJm+0 (1/1)
舞ってるぞー
舞ってるぞー
125:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2011/05/07(土) 07:48:36.27:jQG5JDfAO (1/1)
そろそろ来ないと初春の花を薔薇に変えるぞ
そろそろ来ないと初春の花を薔薇に変えるぞ
126:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県):2011/05/07(土) 13:48:38.54:phOSMDx8o (1/1)
初春「ロイヤルデモンローズ!」
初春「ロイヤルデモンローズ!」
127:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県):2011/05/09(月) 00:41:46.63:26ov/H7Eo (1/1)
ダー ク マダ ー
全 裸 待 機
ダー ク マダ ー
全 裸 待 機
128:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸):2011/05/19(木) 21:14:24.74:g1jejUCAO (1/1)
やっぱ紳士スタイルにネクタイと靴下で庭先でコーヒー飲みながら待機だな
やっぱ紳士スタイルにネクタイと靴下で庭先でコーヒー飲みながら待機だな
129:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州):2011/05/29(日) 11:36:26.49:53cIVVTAO (1/1)
もうちょっとで二か月か
もうちょっとで二か月か
130:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県):2011/06/07(火) 21:28:51.52:QdZ+azAMo (1/1)
>>128
紅茶だろにわかめ
>>128
紅茶だろにわかめ
131:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/11(土) 16:53:10.05:cpf0+FCJ0 (1/1)
魔ってるよー
魔ってるよー
132:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/06/25(土) 17:17:09.04:fOiemJh20 (1/1)
待ってるよ
待ってるよ
133:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2011/06/25(土) 17:21:29.09:StNCb+//o (1/1)
もうそろそろ三ヶ月来ちゃうのか…
もうそろそろ三ヶ月来ちゃうのか…
134:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 21:08:57.01:7Qs2NuQb0 (1/1)
三期が始まるのがいつだろうな。
三期が始まるのがいつだろうな。
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