429番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:30:34.09icrLa6RD0 (6/17)

 
――――――――――
数時間後
城下町・王立魔法研究所
所持金:36550G
 
 
僧侶「……と、いうわけで……」

竜姫「こ奴にかかった呪いの正体を知りたいのじゃ」

勇者「呪術の専門家である君の意見を聞きたい。我々だけでは判断ができかねる」

呪術師「う~ん……」

じゅじゅつしは プラチナのよろいを じっとみつめている

呪術師「結論から言っちゃうと……勇者君、これはまたとんでもない呪いにひっかかったね」

勇者「厄介な呪いなのか」

呪術師「うん。まあ、命に関わるってことはないと思うけど、解呪法が解明されていない」

勇者「確かに、それは厄介だな。術式を一から解析しなければならなくなる」

僧侶「違う方法で無理矢理解呪しようとしても……逆に悪化してしまうかも……」

呪術師「そうなんだよね。そこが呪いの面倒なところでもあり、奥深いところでもあるんだけど」

竜姫「能書きはよい。こ奴はどんな呪いを受けておるのか、説明せい」

呪術師「ああ、うん、そうだね。彼が受けた呪いはね……」
 
 
 
呪術師「ロリコンになる呪い、かな」キリッ
 


430番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:31:11.98icrLa6RD0 (7/17)

 
勇者「……」

僧侶「……」

竜姫「……なん、じゃと?」

呪術師「だから、ロリコンになる呪い。勇者君は今猛烈に小児性愛なはずだよ」

僧侶「……」

竜姫「……」

勇者「……君を疑うわけではないが、にわかには信じがたい話だ」

呪術師「じゃあちょっとあれを見てごらん」

じゅじゅつしは まどをあけ そとにあるこうえんを ゆびさした

呪術師「今、ちょうど学校の下校時間みたいだね」

竜姫「子供が遊んでおるのう」

勇者「そのようだ。それにしても、少女の健康的なふくらはぎはいつ見ても素晴らしい」

僧侶「……」

僧侶「……え……?」

竜姫「勇者、お前、今なんと言ったのじゃ?」

勇者「……待ってくれ。今、私は何を言ったんだ?」

呪術師「ほらね」
 


431番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:31:44.45icrLa6RD0 (8/17)

 
僧侶「そ、そんなはずないです……聞き間違いです……!」

竜姫「そうじゃ、わらわ達の空耳じゃ! こ奴があんなことを口走るわけがない」

呪術師「でも今の勇者君はロリコンだし」

竜姫「黙りゃ、このヘボ呪術師が! 大体、勇者のような堅物がロリコンなどこじらせるはずが」

呪術師「勇者君、あの黒髪の女の子可愛いねぇ。ほら見てごらんよ」

勇者「ああ。できれば一生涯あのままでいてくれないものだろうか」

呪術師「それは難しいんじゃないかなぁ」

勇者「しかしスカートの丈はもう少し短くてもいいように思える。君はどう思う?」

呪術師「いやぁ、僕の口からはどうにも。あっ、悪戯な風に吹かれて女の子のスカートが」

勇者「……ッ!」

ゆうしゃは まどから みをのりだした!
りゅうきとそうりょは ゆうしゃのうしろがみを つかんで ひっしにひきとめる!

竜姫「やめぬか、勇者! わらわ達はそんなお前を見とうなかった!」

僧侶「やめて……ください……!」

勇者「私にもおかしいという自覚はある。しかし内から突き上げる衝動に押されてしまうんだ」

呪術師「いやぁ、こりゃ参ったね。ロリコンの呪いに間違いないみたいだよ」
 


432番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:32:30.59icrLa6RD0 (9/17)

 
勇者「竜姫、僧侶、離してくれ。もう大丈夫だ」

僧侶「本当……ですか……?」

勇者「ああ。今しがた『スクール水着』という単語を意識の外へ放逐した」

竜姫「何一つ安心できぬわ、たわけっ!」

僧侶「勇者さんが望むなら……私が……」///

勇者「僧侶。君は今年で何歳になる」

僧侶「えっ……? あ、あの……20歳ですけど……」

勇者「……」

僧侶「そ……そんな……養豚場のブタでも見るかのように冷たい目で……!?」

勇者「いいか、僧侶。世間の大人が本当のことを言わないなら私が言おう」

勇者「女子中学生は老婆だ。女子高生は即身仏だ。そして女子大生は生きる化石に等しい」

勇者「幼女は命より重い……! そこの認識を誤魔化す輩は生涯地を這う……!」

竜姫・僧侶「「アグネェェェェェェェェェェェェェェェェェス!!」」

りゅうきとそうりょの がったいこうげき!
かいしんのいちげき!
ゆうしゃは きぜつした……
 


433番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:33:03.04icrLa6RD0 (10/17)

 
~数分後~

勇者「すまない、ToLOVEった」

竜姫「やっべーの、マジっべーの……特にもう主人公としての威厳がっべーわ」

僧侶「うぅ……」シクシク

竜姫「おー、よしよし……勇者がこんなことになったら百年の恋も冷めようというものじゃな」

僧侶「なんで、私……勇者さん好みの女子小学生じゃ、ないの……?」シクシク

竜姫「その発想はなかったわ」

呪術師「いやぁ、勇者君もそうなっちゃうとただの社会不適合者だねぇ」

勇者「このままではまずい。法を犯すか、自ら死を選ぶか、選択はふたつにひとつだ」

呪術師「おっと、前者はともかく後者は穏やかじゃないね」

勇者「第三者の介入によって私の自由意思が阻害され続けるのなら、それもやむを得ない」

勇者「この呪いを放置し続ければ、私が私でなくなってしまう。恐ろしい呪いだ……」

竜姫「しかし、解呪の方法はわからぬのじゃろう? それでは手の施しようが……」

勇者「……いや、ひとつ試してみたいことがある」

竜姫「何か策があるのかえ?」

勇者「それには竜姫、君の力が必要だ。手伝ってくれ」

僧侶「竜姫さんの……力……?」

竜姫「なんだかわからぬが、これ以上あんなお前は見ておれぬ。手を貸そうではないか」

勇者「ありがとう。では、場所を移そう」
 


434番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:33:51.12icrLa6RD0 (11/17)

 
――――――――――
数分後
王都近郊の草原
 
 
勇者「この辺りでいいだろう」

竜姫「こんなところに連れてきて、一体何を始めるつもりなのじゃ?」

ゆうしゃは じめんに まほうじんをかき そのちゅうしんに たった
そして しょじきんを すべて まほうじんのうえに ばらまいた

勇者「竜姫。君の魔法で私を撃ってくれ」

竜姫「……ッ!?」

僧侶「な……なに、言ってるんですか……!?」

竜姫「ロリコンをこじらせてついにおかしくなりおったか?」

勇者「私は正気だ……君の魔法攻撃でこの鎧を破壊する」

竜姫「鎧を?」

勇者「呪われたアイテムを物理的に破壊することで呪いから逃れる。乱暴な手だが、これしかない」

勇者「この鎧は華美な装飾とは裏腹に物理攻撃に強いが、魔法への耐性はない」

勇者「そして私達の中で最も魔法攻撃力が高いのは君だ。鎧が壊れるまで魔法を撃ってくれ」

竜姫「……よいのか? これは自慢じゃが、わらわの攻撃魔法は生半可な威力ではないぞ」

僧侶「そうです……そんなことしたら死んじゃいます……!」

勇者「心配には及ばない。一定以上のダメージを受けたら自動で回復呪文を発動する術式を組んだ」

勇者「即死してしまわない限り、肉体のダメージは回復することができる」
 


435番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:34:20.40icrLa6RD0 (12/17)

 
僧侶「じ、じゃあ……私も回復役に……」

勇者「ダメだ。私の近くにいたら攻撃に巻き込まれる」

僧侶「そんな……!」

勇者「竜姫、始めてくれ。覚悟はできている」

竜姫「本当によいのじゃな?」

勇者「ああ。もとより、解呪方法の解明を待っている時間は私達にはない」

竜姫「……死んだら、わらわを恨んでも構わぬぞ」

りゅうきは じゅもんを となえた!
あふれだしたまりょくが でんきエネルギーにへんかんされ いかずちのやりとかす!
りゅうきは いかずちのやりを ゆうしゃにむかって とばした!

ゆうしゃに 72のダメージ!
かいふくじゅもんが きどうし ゆうしゃのきずは みるみるうちに なおっていく……

勇者「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ……!」

僧侶「勇者さん……!」

勇者「……鎧はまだ壊れない。続けてくれ」

竜姫「……ッ!」

りゅうきは じゅもんを となえた!
りゅうきのてに ひとかかえもある しゃくねつのひのたまが うまれ
あおくかがやくほのおが ゆうしゃに はなたれた!

ゆうしゃに 96のダメージ!
じどうかいふくにより ゆうしゃのきずが なおっていく……
 


436番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:34:54.19icrLa6RD0 (13/17)

 
りゅうきは じゅもんを となえた!
くうちゅうに きょだいなこおりのかたまりが あらわれ
ゆうしゃにむかって らっかし げきとつした!

ゆうしゃに 88のダメージ!
じどうかいふくにより ゆうしゃのきずが なおっていく……

勇者「ぐっ! ……ハァ……ハァ……」

僧侶「勇者さん……!」

僧侶「竜姫さん、やめて……! 勇者さんも……!」

勇者「いや……続けるんだ。竜姫、君の魔力はまだ余裕があるだろう」

竜姫「……わらわは問題ない。しかし、お前の魔力とて無限ではあるまいよ」

竜姫「所持金が尽き、自動回復できなくなれば本当に死んでしまうぞ? やめるなら今じゃ」

僧侶「そうです……やめましょう……」

僧侶「私、勇者さんがロリコンでも……我慢します……いえ、受け入れますから……」

僧侶「勇者さんのこと理解できるように努力しますから……! だから……!」

勇者「ありがたい申し出だが、ダメだ」

僧侶「どうして……!?」

勇者「私は私という個人の自由意思に従って生きている。自分という存在を規定している」

勇者「それを諦めて妥協したり、他人任せにすることだけはできない」

勇者「変節することも時にはある。しかし堕落はしたくない。ただそれだけだ」

僧侶「……!」
 


437番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:35:54.49icrLa6RD0 (14/17)

 
竜姫「よくぞ言った。であれば、わらわも全力を尽くしてやろうではないか」

勇者「頼む」

僧侶「……っ!」

りゅうきは じゅもんを となえた!
むすうのきらめきが たかくかかげた りゅうきのてに うずまいていく!

竜姫「これがわらわの全力……! 受け止めてみせい、勇者!」

勇者「……!」

竜姫「行っけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

きらめきのほんりゅうが まほうじんのうえに たつ ゆうしゃに すいこまれていく!

かくさんする ひかりのりゅうしの ひとつひとつが いまずまへとかわり
だいばくはつを まきおこした!
 
 
 
ゆうしゃは 214のダメージをうけた!
 


438番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:36:39.01icrLa6RD0 (15/17)

 
――――――――――
三日後
城下町・王立魔法研究所
所持金:1905G
 
 
呪術師「……で、鎧を破壊して呪いから脱出したと」

勇者「ああ。咄嗟に魔法障壁を張って威力を減殺しなければ、木っ端微塵だったかもしれんが」

呪術師「無茶するねぇ。なまじ鎧が頑丈だっただけに、苦痛は大きかったわけだ」

僧侶「鎧は砕けましたけど……勇者さんも心肺停止状態で……」

僧侶「本当に……心配したんですよ……? もう、あんな無茶は……しないで……」

竜姫「そうじゃ。わらわもテンションが上がってつい最強呪文を使ってしもうたではないか」

呪術師「しかし、僕も遠くから見てたけど、あれだけの魔法を耐えきるなんてすごいねぇ」

勇者「魔貨式魔導法も完成に近付いている。今回も有用なデータを採取できた」

呪術師「完成して実用化されたら技術革新が起こるかもね。十字勲章ものだよ」

勇者「データに関しては怪我の功名だが……竜姫」

竜姫「む?」

勇者「重ねて言うが、今後は未鑑定のアイテムには気をつけてくれ」

竜姫「ふん。言われぬでもわかっておるわ」キラッ
 


439番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:38:28.96icrLa6RD0 (16/17)

 
僧侶「……あれ? 竜姫さん……その指輪……」

竜姫「ああ、これか。研究室の前に落ちておったのじゃが……」

呪術師「あーっ!」

勇者「どうした、呪術師」

呪術師「それ、装備しちゃったのかい?」

竜姫「うむ。新しいアイテムを手に入れたらメニュー画面を開く、基本じゃろうて」

呪術師「いや、それ新式呪術の試作品だったんだけどさぁ」

竜姫「……なに?」

呪術師「えっとね、確かそれは髪形がひとりでにアフロになる呪いの……」

竜姫「……ぎゃーっ! わーっ! 静まれわらわの毛髪ーっ!」モジャモジャ

僧侶「懲りない……です……」ハァ

勇者「……呪術師、解呪の方法を教えてくれ」
 
 
 
デンデロデンデロデンデロデンデロ
 
 
 
りゅうきは のろわれてしまった!
 


440 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:40:02.17icrLa6RD0 (17/17)

どの辺のタイミングで差し込んだらいいかわからず、結局没になったネタです。
勇者のキャラをボッコボコに崩そうキャンペーン中の作でした。


441VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/12(土) 23:00:31.67EElS2hglo (1/1)

>>440 乙!



442VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/12(土) 23:14:12.74aOZPQa8ho (1/1)

勇者ェ


443VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/13(日) 00:41:08.48kXV06wqDO (1/1)



別にネタ回いらね…いや、たまになら


444VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/13(日) 01:06:50.44EFk30mQq0 (1/1)

じゅじゅちゅし


445VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/13(日) 03:13:11.05Yqv2YftTo (1/1)

面白かった!やっぱゆうしゃが好き。
またやってほしい!


446VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/14(月) 02:16:55.035TE2e4kAO (1/1)

おつおつ


447VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/15(火) 03:34:31.96PyaD2bcAO (1/2)

賢者の健気さは五臓六腑に染み渡るでぇ


448VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/15(火) 03:47:20.26PyaD2bcAO (2/2)

ごめん、間違った。僧侶だった


449VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/15(火) 18:33:13.40HKrJb+ENo (1/1)

実に面白い
が、このssずっとガリレオ先生のイメージで読んでたから
崩壊具合がやばかったwwwwww


450VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/03/16(水) 04:51:52.28bhqjnrLEo (1/1)

期待


451 ◆6I9SwHc8xc2011/03/17(木) 21:00:54.83Wt3cOnVw0 (1/9)

 
――――――――――
現在
砂漠・地下水路入口
 
 
ガチャガチャ……

賢者「両脚に風の魔法石を嵌め込んで……っと」ガチャッ

賢者「できました! これで飛べるはずです」

機械王「再起動……システムチェック・進捗率31%……」カリカリカリカリ……

魔王「いやぁ、ここまで漕ぎつけるのに随分苦労したよなぁ」

賢者「魔王さんはボクの横で見てただけじゃないですか」

盗賊「難しいことはわかんないやって一番最初に投げ出したろ?」

猫忍者「いくら手持ち無沙汰だからって俺様をフカフカするのはやめてほしいにゃあ」

機械王「魔王様が役に立たなかった確率、89.9%」

魔王「まーまー。何はともあれ、これでこの砂漠ともおさらばだ」

猫忍者「いよいよ魔界へ向かうのですにゃあ?」

盗賊「でも、魔界ってどうやって行くんだい? あたしは知らないよ」

賢者「北の果てに魔界へ続くゲートがあると聞いたことがありますけど……」

魔王「というか、それが魔界へ続く唯一の道さ。魔王軍はそのゲートから地上に来てるんだ」
  


452 ◆6I9SwHc8xc2011/03/17(木) 21:01:57.53Wt3cOnVw0 (2/9)

 
猫忍者「何しろ北の果ての孤島にあるもんだから、どの国も手出ししづらいのにゃあ」

魔王「しかも魔族にとっては交通の要所だから、魔王軍の部隊が駐留してるしね」

盗賊「なら、まずはそのゲートを目指すんだね?」

魔王「そういうことになるね。機械王に乗っていけばすぐに行けると思う」

賢者「ボクと盗賊さんが一緒にいるのはどう説明するんですか?」

魔王「う~ん……やっぱオレのガールフレンドってことで」

賢者「それだけは絶対に嫌です」

盗賊「捕虜とでも言っとけばいいんじゃないかい? あたしらが大人しくしてりゃバレないよ」

猫忍者「それがいいにゃ。魔王様と俺様が勇者の一味を捕まえたことにするにゃあ」

魔王「機械王もいるし、嘘にしたって結構信憑性高いんじゃないの?」

賢者「いえ、信憑性という言葉からは最も遠いところにあると思いますけど」

盗賊「ま、いいさ。捕虜でもガールフレンドでもね。とにかく出発するよ」

猫忍者「にゃ! お前達、これからは捕虜らしく俺様をフカフカするのはやめるにゃあ?」

賢者「それとこれとは話が別ですっ」フカフカ

猫忍者「にゃにゃっ!? し、尻尾を掴むのはやめるにゃあ!」

魔王「……よし。それじゃ機械王、トランスフォームだ」

機械王「了解。トランスフォーム!」

きかいおうは おおきなひこうきかいに へんけいした!
まおうたちは きかいおうのせに のり そらへ とびたった……
  


453 ◆6I9SwHc8xc2011/03/17(木) 21:04:20.37Wt3cOnVw0 (3/9)

 
――――――――――
昨日
城下町・勇者の部屋
所持金:8441G
 
 
竜姫「……これでよし、と」

勇者「竜姫、何をしているんだ」

竜姫「出発の準備に決まっておろうが。今回は父上と直接戦うやもしれぬのじゃろう?」

竜姫「であれば、用心に用心を重ねておかねばならぬ。色々と用意してやったぞ」

勇者「すまないが、今回君には王都に残ってもらいたい」

竜姫「……なに?」

勇者「エルフは魔法の扱いに長けた種族だ。体内の魔力の流れを見ることで種族を判別できる」

勇者「君は今、変身呪文で人間の形態を取っているが、彼らが見ればすぐにわかる」

勇者「エルフが王国と手を結んだのは魔族という共通の敵がいるからこそだ」

勇者「そこに魔族である君を連れていくわけにはいかない。十中八九、話がこじれるだろう」

竜姫「わらわが邪魔だと言うのかえ」

勇者「そうなってしまうだろう。だから、君には留守を頼みたい」

竜姫「断る! こんな安アパートに一人で留守番など冗談ではないわ」

勇者「君が家事全般が不得手だということは知っている。だが、そこを曲げて頼む」

竜姫「嫌じゃ嫌じゃ! そこを何とかするのがお前の役割じゃろうが」
 


454 ◆6I9SwHc8xc2011/03/17(木) 21:04:46.81Wt3cOnVw0 (4/9)

 
勇者「君が魔族であることは陛下にも伏せている。君の正体が露見したらまずい」

勇者「下手を打てば、私はここで勇者の任を解かれることになる」

竜姫「む……」

勇者「更にはスパイの嫌疑をかけられる可能性がある。私だけでなく、僧侶にもそれは及ぶだろう」

竜姫「それは……確かにまずいが」

勇者「そうなれば、庇護する者のいなくなった君の身も危うくなる」

勇者「魔界に帰る目途が立っていない現状、目立つ行動は控えた方がいい」

竜姫「……つくづく正しいことしか言わぬ男よの」

勇者「正しいかどうかはわからない。予測される範囲で最も可能性の高いものを挙げたにすぎない」

竜姫「じゃが、お前の理屈はお前の立場から考えたものでしかない」

勇者「?」

竜姫「この敵国の安アパートに一人で待っておらねばならぬ、このわらわの視座に立っておらん」

勇者「……心細いのか?」

竜姫「……でなければ嘘じゃ。一時的な協力関係にあるとはいえ、お前も僧侶も所詮は人間」

竜姫「ましてここは人間の都じゃ。同族のいない場所で、たった一人で残されるなど……」

竜姫「一時的な協力関係とはいえ、お前達と行動を共にせねば、わらわは……」

勇者「……竜姫」
 


455 ◆6I9SwHc8xc2011/03/17(木) 21:05:31.16Wt3cOnVw0 (5/9)

 
竜姫「わらわを連れていけ、勇者。父上さえ討ち果たすことができたなら後はなんとかなる」

竜姫「大体、父上と戦うのに、仲間が僧侶のような小娘一人では心許なかろう?」

勇者「ダメだ。君はここに残れ」

竜姫「……どうしてもダメかえ」

勇者「ああ」

竜姫「……そう、か」

竜姫「……もうよい。わかった。行ってくるがいい。わらわはここで待っている」

勇者「わかってくれたか」

竜姫「うむ……じゃが、わらわの願いを退けたからには、必ず戻ってくるのじゃぞ?」

勇者「無論だ。私は死ぬつもりはない。必ず帰ってくる。だから、私を信じて待っていてくれ」

竜姫「そういう物言いはよさぬか……お前がそうじゃから、僧侶の奴も勘違いをするのじゃ」

勇者「? 僧侶がどうかしたのか」

竜姫「なんでもない。ほれ、さっさと行かぬか!」

勇者「……ああ。では、行ってこよう」
 
 
 
りゅうきが パーティから はずれます
 


456 ◆6I9SwHc8xc2011/03/17(木) 21:07:18.45Wt3cOnVw0 (6/9)

 
――――――――――
現在
魔法の森
所持金:8309G
 
 
僧侶「そんなことが……あったんですか……?」

勇者「竜姫には悪いが、今回ばかりは彼女を連れていくことはできない。仕方のないことだ」

僧侶「彼女を一人で置いて行くのも……心配ですけど……」

勇者「変身魔法の効果が持続している限り、周囲から見て彼女は人間にしか見えない」

勇者「彼女の正体に気づく者はいない。王都にいる方が安全だ」

勇者「一刻も早く賢者達と合流しなければ、とは思うが……」

僧侶「魔王、っていう人も……ですか……?」

勇者「ああ」

僧侶「……でも……勇者さんは、すごいです……」

勇者「何がだ?」

僧侶「竜姫さん……人間そっくりだけど、魔族なんですよね……?」

勇者「ああ。もちろん、変身魔法を解けば彼女本来の姿があるが」

僧侶「魔族は……敵性種族なのに……」

僧侶「それをなんでもないことみたいに……竜姫さんに接してて……」
 


457 ◆6I9SwHc8xc2011/03/17(木) 21:10:33.15Wt3cOnVw0 (7/9)

 
勇者「君は、竜姫に対して何かわだかまりがあるのか?」

僧侶「いえ……その……」

僧侶「……ごめん……なさい……」

勇者「責めているわけではない。考えてみれば当然のことだ」

僧侶「え……?」

勇者「そもそも、私は魔王討伐を命じられて旅に出た。魔族は私にとっても敵だった」

勇者「今でもそれは変わらない。竜姫と行動を共にしていたのは状況の一部に過ぎないんだ」

僧侶「状況……ですか……?」

勇者「そうだ。私達が獣王軍に捕えられた偶然。竜王が魔王に反旗を翻した偶然」

勇者「魔法の森を脱出する際に竜姫の手を取った偶然がなければ、こうはならなかった」

僧侶「て、手を……?」

勇者「もっとも、それは彼女にとっても同様だろう。奇妙な巡り合わせがあったものだ」

僧侶「そうですね……でも……」

勇者「でも?」

僧侶「子供の頃読んだ……冒険譚みたいで……」

僧侶「それもなんだか……素敵ですよね……?」

勇者「……そうだな」
 


458 ◆6I9SwHc8xc2011/03/17(木) 21:11:59.64Wt3cOnVw0 (8/9)

  
――――――――――
同時刻
城下町・勇者の部屋
 
 
竜姫「まったく、勇者の奴め。信じて待っていろなどとよくも抜け抜けと……」

竜姫「……」

竜姫「……ふん、わらわもよくよく気を許したものじゃ。あんなつまらん男にのう……」

竜姫「……ん?」

竜姫「!」

りゅうきは じぶんのてのひらを みつめた
いっしゅん そのての はだのいろが あおじろくみえた……

竜姫(……いかん。変身呪文の効果が切れやすくなっておる)

竜姫(竜族の肉体はあらゆる呪文に対して耐性を持っておる。まさか変身呪文にも耐性が……?)

竜姫(……)

竜姫(早く帰ってこい、勇者。わらわの正体が露見する前に)

竜姫(ここには、お前と同じ人間しかおらぬのじゃぞ……?)
  


459 ◆6I9SwHc8xc2011/03/17(木) 21:15:13.72Wt3cOnVw0 (9/9)

こっちのキャラにもあっちのキャラにも作者自身が萌えながら書いていけるよう頑張っております

向こうのスレの更新もあるので、こちらの投下ペースが更に遅くなることをお詫びします
今更だけど地の文をつけようと思ったのが間違いだったかもわからんね


460VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/03/17(木) 22:22:31.71H8US25SAO (1/1)




461VIPにかわりましてNIPPERがお送りします()2011/03/17(木) 22:55:50.022e8BQAmGo (1/1)

>>459 乙!


462VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/17(木) 23:28:49.05+WYSOdiIO (1/1)

>>459
あっちについてkwsk!!


463VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/03/17(木) 23:45:44.59VqSb5qcoo (1/1)

乙した。竜姫可愛い


464 ◆6I9SwHc8xc2011/03/18(金) 00:05:50.41BbU/tIbL0 (1/1)

>>462
↓このスレでも書かせて頂いてます
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1299515775/

登場キャラクターに女の子を出したがるのは俺の悪癖のひとつですが
あっちのスレでは最終的に何人女性キャラが出るのか今のところ不明です


465VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/18(金) 00:23:41.57fpkMSKXTo (1/1)

立て逃げ確認してから見てなかったが乗っ取ってたのか


466業務連絡 ◆6I9SwHc8xc2011/03/19(土) 16:05:49.69KcfCqSro0 (1/4)

たった今気づいたのですが、以前の投下の際に抜けがあったことが判明いたしました
しかもそれが勇者サイドの様子をチラッと書きつつ彼らのこれからの行動を決める部分でした

>>403の前に以下の2レスが入るはずだったんです……


467 ◆6I9SwHc8xc2011/03/19(土) 16:06:47.44KcfCqSro0 (2/4)


――――――――――
同時刻
とある街・宿屋
所持金:7664G
 
 
勇者「どうやら、この旅行鞄には転送呪文の術式が施されているらしい」

竜姫「転送呪文……というと、転移呪文の亜種かえ?」

僧侶「はい……軽くて小さなものを……任意の座標に転移させるものです……」

勇者「鞄に貼られているラベルは、その転送呪文の術式を刻み込んだ呪符だ」

勇者「繋がっている先は王宮だな。しかもこちらからだけでなく、向こうからも転送できる」

僧侶「すごい……です……」

竜姫「しかし、そんな便利なものを何故今頃になって?」

勇者「竜王の造反によって魔界の情勢は混迷を極め、王宮も連日に渡って対策会議を行っている」

勇者「報告書や研究レポートの提出と、指令書の受領を旅先で行えるようにすることで」

勇者「我々の状況への対応を迅速化させようという意図があるのだろう」

竜姫「逆に言えば、今まではそこまで差し迫った状況だと認識していなかったというわけじゃな」

勇者「他にも仕掛けはありそうだが……これ以上は私にはわからないな」

竜姫「ほう? なんじゃ、お前にもわからぬことがあるんじゃな。魔法に関することだというのに」

僧侶「魔法工学は……勇者さんの専門外なんです……」

僧侶「魔法学が対象とする領域は広くて……区分も多岐にわたりますから……」

竜姫「ふむ、そういうものか……ん?」
 


468 ◆6I9SwHc8xc2011/03/19(土) 16:07:35.73KcfCqSro0 (3/4)

 
<ガタガタガタガタガータガタキリッバッガタキリバ

僧侶「鞄が……震えてます……」

竜姫「なにやら妙な音声も聞こえるのじゃが」

勇者「呪符が反応している。王宮からなにか転送されてきたようだな」ガチャッ

ペラッ

竜姫「送られてきたのはその紙一枚だけかえ?」

勇者「そうらしい。王宮からの指令書だ」

僧侶「なんて……書いてあるんですか……?」

勇者「――王宮はエルフと手を結び、共に竜王軍の脅威に対抗することを決定した」

勇者「よって、勇者一行に、竜王軍に略取されたエルフの長老の救出を命ずる――」

僧侶「……と、いうことは……」

勇者「竜王軍の拠点である火竜山脈の砦を攻略せよ、ということだ」

僧侶「……っ!」

勇者「しかし、竜王と直接戦うには戦力が不足しているのは明らかだ」

竜姫「その通りじゃ。わらわ達3人では、どうにもな」

僧侶「これから……どうするんですか……?」

勇者「……賢者達の捜索を続けたいが、まず果たすべきは王宮からの指令の方だ」

勇者「エルフの里へ行き、協力を要請しよう。その上で火竜山脈の攻略に臨む」

竜姫「となれば次の目的地は魔法の森か……あまりいい思い出のない場所じゃのう……」

勇者「だが、行かねばなるまい。竜王を倒すためにも」
 


469 ◆6I9SwHc8xc2011/03/19(土) 16:09:27.91KcfCqSro0 (4/4)

自分でも最近の投下の後「アレ? この部分入れたっけ?」と違和感を感じ
確認してみたところ投下漏れがあることにようやく気付いたという体たらくでした
今後こういうことのないよう細心の注意を払っていきたいと思います
お騒がせしました


470VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/19(土) 17:04:10.62fpdkDC0AO (1/1)

ドンマイ


471VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/19(土) 21:13:04.86ticMEVzbo (1/1)

支援


472VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/03/19(土) 23:45:02.31WKeKaJKAO (1/1)

失態を演じたとしても、きちんと最後まで書ききることが名誉挽回になる

頑張れ


473VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/03/20(日) 00:06:22.86NeHwGDDLo (1/1)

しえ


474VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/03/20(日) 08:30:47.41goyb0kFAO (1/1)

支援


475VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2011/03/22(火) 10:52:44.765iQ9zEWN0 (1/1)

大丈夫だ

何があろうと俺はこの>>1の味方


476VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/23(水) 09:39:25.78Vmn388HDO (1/1)

ガタキリバわろたwwwwww


これからの旅行鞄に期待してますね


477VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/23(水) 17:41:11.34R27fnfY60 (1/1)

そんな>>1を応援してる


478 ◆6I9SwHc8xc2011/03/24(木) 09:24:07.78sX9OBNeZ0 (1/2)

登場順適当なキャラクター紹介2

大賢者
彼が参加した30年前の魔王討伐遠征で、魔王の父が討たれたという設定。

大賢者娘
勇者が彼女を保護する展開も考えていたが、あいつならああすると思ったらああなった。

獣人A・B・C
なんの獣人かさえ設定されていないモブキャラである。

竜王
竜族の王。竜姫の父。種族は竜人。魔王に代わって魔界を支配せんと反乱を起こす。
脳内CVは藤原啓治なので作者の中での彼のあだ名はひろし。

機械王
物質系モンスターの王。トランスフォーマーである。
機械王にはまだまだ隠された機能がたくさんあるぞ!

魚人A・B・C
海王に使えるマーマン。弾ける生臭さとは裏腹に、忠義に篤い漢たち。

海王
水棲系モンスターの王。種族はセイレーン。
愛ゆえに、愛する人の死を認知することを拒んだ哀しい女。

店主(砂漠の村)
ギルドの酒場の店主と名前が被っているのは、単に作者の確認漏れだったりする。

メイド
盗賊の実家で働いている。元は奴隷の子だったが、村長に盗まれ盗賊とは姉妹同然に育った。

村長
反面教師という言葉を体現したエキセントリック親父。これでも村長。

同僚
研究員時代の勇者の同僚。絡みづらいことに定評のある勇者をよく飲みに誘っていた。

猫忍者
獣王軍のマスコット的存在だった。
魔王に顎を撫でられたり尻尾を掴まれたりモフモフされたりと愛玩動物扱いを受けている。

呪術師
王立魔法研究所の研究員。呪術を専門に研究している。
強制アフロの呪いの他、タンスの角に小指をぶつけやすくなる呪い等を考案した。


479 ◆6I9SwHc8xc2011/03/24(木) 09:25:40.63sX9OBNeZ0 (2/2)

キャラクター整理のためのキャラクター紹介2回目。
案外キャラが増えてないというか物語が進んでいないというか。


480VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/24(木) 10:32:29.73YaP7RRnAO (1/1)

ひろし把握ww

そして、タンスの角に小指をぶつけやすくなる呪いKOEEEEEEE!


481VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/03/25(金) 15:04:14.81pArpdVxko (1/1)

ガタキリバwwww
機械王とか俺の好みにドンピシャ


482VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:29:09.04ngJbv0sE0 (1/14)

 
――――――――――
数十分後
魔法の森・エルフの里
 
 
エルフA「止まれ! お前達、一体何の用でこの里まで来たのだ」ジャキッ

僧侶「え……えっと……」オドオド

エルフB「今、余所者を里に入れるわけにはいかん。お引き取り願おう」

勇者「私達は王宮から勅命を受けてきた者だ。エルフの長老を救出する任務を帯びている」

エルフA「なに? もしかして、お前が人間の勇者か」

勇者「いかにも。君達の代表の者に会わせてもらいたい」

エルフB「……わかった。長老代理に確認を取ってくる。そこで待っていろ」

ザッザッザッ……

僧侶「……王国とエルフが同盟を結んだっていう話……本当なんですね……」

勇者「ああ。でなければ門前払いされているところだ」

エルフA「……本当なら、お前達人間と手を結ぶなど有り得んことなのだがな」

勇者「敵の敵は味方、ということだな。共通の敵があるならそのような選択肢も生まれる」

エルフA「ふん……ん、戻ってきたか。どうだった?」

エルフB「ああ、確認を取ってきた。お前達、里に入ってもいいぞ」

勇者「感謝する。僧侶、行こう」

僧侶「は、はい……!」
 


483VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/03/26(土) 12:30:36.04px4Fdu9Oo (1/1)

来てる


484VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:32:30.85ngJbv0sE0 (2/14)

 
――――――――――
現在
エルフの里
所持金:8309G
 
 
老賢者「……貴殿が人間の勇者か」

勇者「お初にお目にかかります。以後お見知りおきを。彼女は私のお供です」

僧侶「よ、よろしく……お願いします……」

老賢者「よい。互いに時間がない身だろう。早く用件を言え」

勇者「わかりました。では、ひとまず現状確認をしたく存じます」

老賢者「うむ」

勇者「獣王軍によるエルフの里の無血制圧と、竜王による反乱」

勇者「その混乱に乗じて、拘禁されていた長老の身柄が略取された」

老賢者「そうだ。竜王軍が引き上げてから、なんとか我々は脱出できたが、長老だけは……」

老賢者「おそらく長老から古代魔法の秘儀を聞き出そうとしているのだろう」

老賢者「秘儀は長老にのみ伝えられている。どこでそれを知ったのかはわからんが……」

勇者「そして王宮は竜王の脅威に対抗するため、エルフ側も長老の救出のために」

老賢者「王宮からの申し出に応じて同盟を結び、協力関係となった……というわけだ」
 


485VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:34:22.23ngJbv0sE0 (3/14)

 
勇者「今日私達がここに来たのは、貴方達と協力して長老の救出を行うためです」

老賢者「ほう……何か策があるのか」

勇者「はい。勇者といえど、全くの無策では」

老賢者「言ってみよ」

勇者「今回の救出作戦では、我々が火竜山脈の砦に潜入します」

勇者「それに際して、エルフは王国軍と協同して竜王軍に対し陽動をかけて頂きたい」

老賢者「陽動とな?」

勇者「はい。山脈の東西両面から攻撃を仕掛け、竜王軍の注意を引きつけて欲しいのです」

勇者「その隙に地下水道から砦内部に潜入し、長老を救出します」

老賢者「作戦のためには、何人ほど必要なのだ?」

勇者「腕利きの術者を100名。私のパーティに一人編入し、後は陽動作戦に」

老賢者「ふん、涼しい顔で無理を言いおる。流石は人間の勇者というわけか」

老賢者「しかし、その作戦に成功の保証は……」

コンコン

勇者「?」

老賢者「ん……誰だ? 今大事な話をしているところなのだぞ」
 


486VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:34:51.00ngJbv0sE0 (4/14)

 
ガチャッ

??「老賢者。人間の勇者が来たと聞いたのだが……」

老賢者「戦士か……」

勇者「彼は?」

老賢者「里の自警団の団長だ。まだまだ未熟な若造よ」

戦士「老賢者よ、貴方はいつもそれだな。俺も300年は生きたというのにいつまでも子供扱いだ」

僧侶「300年……? すごく……若く見えますけど……」

勇者「エルフは不老の種族だ。ある程度まで成長してからは見た目も変わらないし、寿命も長い」

戦士「とにかく、お前が人間の勇者だな。一度どんな奴なのか見てみたかっ……」

戦士「……!」

せんしは そうりょのかおを みると ことばをうしなった
せんしは おもわず いきをのんで そうりょを みつめている……

戦士「……」

僧侶「……?」

勇者「? ……どうしたんだ」

僧侶「さあ……?」
 


487VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:36:32.94ngJbv0sE0 (5/14)

  
戦士「お、お前……いや、あ、貴女は?」

僧侶「わ、私……ですか……?」

勇者「私のお供だ。竜王討伐の旅に同行してもらっている」

戦士「そ、そうか。勇者のお供なのか……」

老賢者「どうしたのだ、戦士。何をうろたえている」

戦士「俺は冷静だ! ……それで、勇者がこの里に来たということは」

勇者「エルフの長老の救出作戦を決行する。君達エルフに協力を要請しに来た」

戦士「なに……? 竜王軍に打って出、竜王を斃すのではないのか」

勇者「可能ならばそうしたいが、竜王が手に入れようとしている古代魔法についても情報不足だ」

戦士「……老賢者。この話は本当か?」

老賢者「本当だ。今は攫われた長老と、古代魔法の秘儀を守ることを優先せねばならん」

老賢者「これより里の術者から、勇者に同行する者を選ばねばならぬが……」

戦士「む……」

戦士「……よし。ならば、俺がお前達についていくぞ」

勇者「君が?」
 


488VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:37:05.58ngJbv0sE0 (6/14)

 
勇者「魔法の心得は?」

戦士「多少はある。魔法戦士としての技量は里で一番だ」

僧侶「自警団の団長さん……なんですよね……? そっちの……お仕事は……?」

戦士「ふ、副団長に任せよう。俺ほどではないが、奴もなかなかの剣の使い手だ」

老賢者「戦士。そのような勝手は許さんぞ」

戦士「事は一刻を争うはずだ。人間と手を結び中立を捨てたなら、長老の身も安全では……」

老賢者「長老はそう簡単に口を割るような男ではない。竜王も秘儀を得ぬうちは彼を殺せまい」

勇者「その見通しは楽観的に過ぎます。解読できる範囲だけでも、竜王の魔力なら危険です」

老賢者「しかしだな……」

僧侶「あ……あの……」

老賢者「ん?」

僧侶「さっきから……気になっていたんですけど……」

僧侶「古代魔法の秘儀って……一体何なんですか……?」

僧侶「長老だけが知っているくらいだから……きっと……すごい魔法だと思いますけど……」

戦士「俺も老賢者も詳しいことは知らない。ただ、それは神域の禁呪と伝えられている」

勇者「神域の禁呪?」

老賢者「そうだ。ヒトにも魔族にも過ぎたる力だ」

戦士「……そして、我らエルフにとっても例外ではないと、長老は言っていた」
 


489VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:38:38.13ngJbv0sE0 (7/14)

 
勇者「神域の禁呪……まさか……」

僧侶「勇者さん……?」

勇者(王宮や教会によって禁忌とされた研究はホムンクルスだけではない)

勇者(生命倫理や人道上の観点から、様々な魔法が禁忌の烙印を押され抹殺されてきた)

勇者(使われなくなったテクノロジーはすぐさま衰退し、自然消滅していく)

勇者(しかし古代魔法の秘儀は神々の時代から伝えられ、そして外部に漏らさぬよう秘匿された)

勇者(そうして現代まで受け継がれてきた秘儀、考えられるとすれば……)

戦士「……とにかく、協力者が欲しいのなら俺が同行しよう」

僧侶「いいんですか……本当に……?」

戦士「も、もちろんだ。俺は誇り高きエルフの戦士、二言はない!」

勇者「そうか……なら、よろしく頼む」

戦士「まあ、短い間だけの協力関係だがな……」チラッ

僧侶「……? なんですか……?」

戦士「い、いや……なんでもない。とにかく、これからよろしく頼むぞ」



せんしが なかまになった!
 


490VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:39:12.66ngJbv0sE0 (8/14)

 
――――――――――
同時刻
城下町・勇者の部屋
 
 
竜姫「……」

りゅうきは もうふにくるまって ベッドのうえに ねころんでいる
そのはだは にんげんのものではなく あおじろい まぞくのものだった……

竜姫(日常的に変身魔法を使っていたせいで、耐性ができて効きにくくなってしまった)

竜姫(じゃが、こうして部屋から出ず誰にも会わなければ、正体がバレることもないはずじゃ……)

竜姫(……)

竜姫(……惨めったらしい姿じゃ。こんな安アパートの一室で、薄い毛布を被って蹲って)

竜姫(やはり無理矢理にでも着いて行けばよかったのう。勇者はああ見えて人が好い)

竜姫(僧侶の奴も、押しに弱いし、勇者がいいと言えば逆らわん)

竜姫(わらわとて竜の血筋に連なる者。父上にも負けはせぬ……)

竜姫(……)

竜姫(……父上を倒したら、わらわはどうする?)

竜姫(竜王軍を掌握し、魔界に帰るのが上策か? しかし軍の荒くれどもを抑えきれるか……)

竜姫(かといってこのまま勇者と行動を共にするのは危険すぎる……)

竜姫(もしわらわの正体が露見したら、勇者の言うように……)
 


491VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:40:17.96ngJbv0sE0 (9/14)

 
コンコン

竜姫「ッ!!」ビクッ

竜姫「……」

竜姫「だ、誰じゃ……?」


??「おかしいな。いないのか? 勇者の奴、王都に戻ってきてたんだろ?」

???「そうらしいんだけどねぇ。もう出発しちゃったのかなぁ」


竜姫(この声は、呪術師と……誰じゃ? 勇者の知り合いか……?)


同僚「ったく、久しぶりに飲みに誘おうと思ってたのに……ん?」

呪術師「どうしたんだい?」

同僚「いや、鍵が開いてるんだよ。不用心だなぁ」


竜姫(……! しまった、玄関の鍵を閉め忘れておった!)


呪術師「ひょっとして寝てるんじゃないのかい?」

同僚「だけど、鍵の閉め忘れなんてあいつらしくねぇな」

同僚「よし、ちょっと上がってこうぜ。鍵を閉め忘れてるって教えてやろう」

呪術師「そうだね。彼の寝顔なんて見ても面白くはなさそうだけど……」ガチャッ
 


492VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:41:23.92ngJbv0sE0 (10/14)

 
竜姫(――ッ!)

りゅうきは あわてて じゅもんを となえた!


同僚「おーい、勇者! いるかー?」

呪術師「相変わらずキチンと片付いた部屋だねぇ……あれ? 君は」

竜姫「な、なんじゃ、呪術師か。誰かと思うたわ」ドキドキ

同僚「おい、なんだよこの美人は。勇者のコレか?」

呪術師「彼のお供なんだってさ。この間、勇者と一緒に僕の研究室に来てね」

同僚「おいおい、勇者の奴も隅に置けねぇな。あいつのお供って女ばっかなんだろ?」

同僚「……で、アンタはなんで勇者の部屋に? 勇者は出かけてるのか?」

竜姫「う、うむ。大事な用事があると言って出て行きおった。わらわは留守を頼まれてのう」

呪術師「へぇ……何か事情でもあったのかい?」

竜姫「そ、それは……さ、最近ちょっと風邪気味でのう。その旨を伝えたらここに残れと」

竜姫「わらわは平気だと言ったのじゃが、それでも残れと言って聞かぬのじゃ」

呪術師「勇者君、意外と優しいところあるんだねぇ」

同僚「マジかよ? そりゃあ、あいつも冷血漢ってわけじゃあないけどよ」

竜姫「ほ、本当だとも。わらわに何事かあってはいかんと必死になっておった」

竜姫「あ奴の鉄面皮からはわからぬであろうが、わらわはそれはそれは大事にされておるのじゃぞ」
 


493VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:43:13.90ngJbv0sE0 (11/14)

 
呪術師「それで勇者の部屋で留守番をしてたってわけだね」

同僚「ここにこの子が残ってたから鍵が開いてたのか……」

竜姫「と、とにかくそういうわけじゃ。勇者もおらぬし、お前達はさっさと帰るがいい」

呪術師「でも、風邪だったら同僚君が治せるかもしれないよ? 彼は魔法薬学が専門だから」

同僚「そりゃ確かに俺は魔法薬の研究をしてるが、医者ってわけじゃないぞ」

同僚「素人診察を鵜呑みにするより、病院に行った方が確実だろうよ」

呪術師「……そういえば竜姫さん、病院には行ったのかい?」

竜姫「び、病院か。まだ行っておらぬが」

呪術師「おっと、それはいけないね。たかが風邪と侮ってると痛い目を見るよ?」

同僚「そうだな。風邪は万病の元っていうし……俺達が付き添ってやろうか?」

竜姫「い、いい! わらわに構うな! 病院は嫌いじゃ」

同僚「けどよ、風邪は万病の元って言うし……」

呪術師「一騎当千の英雄が風邪をこじらせて死ぬっていうのもよくある話だからね」

同僚「勇者がそんなにアンタのことを大事にしてるんなら、勇者のためにも診察を受けた方が」

竜姫「よいと言っておるじゃろうが! わらわは大丈夫じゃ、さっさと帰りゃ!」グイグイ

同僚「わ、わかったよ」

呪術師「でも、辛くなったら僕らに連絡するようにね?」
 


494VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:43:47.15ngJbv0sE0 (12/14)

 
バタン

竜姫「……ふぅ……」

りゅうきは ホッと ひといきついた
げんかんのドアノブを にぎるてが ゆがんでみえ あおじろいはだに かわった……

りゅうきは げんかんのかぎを しっかりとしめた……

竜姫「まったく、勇者の知り合いにあんなお節介な奴がおったとは……」

竜姫「いや、問題はこんなわずかな時間で変身呪文の効果が切れてしもうたことじゃ」

竜姫「このままでは食料を買いに行くことさえままならぬではないか……」

竜姫「……ん?」

りゅうきは まどのそとからきこえる くつおとを きいた
そとでは へいしたちが れつをなして こうしんしている……

竜姫「ついに火竜山脈へ出兵するのか……父上と戦おうというのじゃな」

竜姫「……」

竜姫「……いや、後のことは勇者が帰ってきてから考えよう。それがよい……」

りゅうきは かーてんをしめ もうふをかぶって ベッドにねころがった……
  


495VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/03/26(土) 12:46:04.85ngJbv0sE0 (13/14)

油断しているとガンダムウォーとかヴァンガードばかりやって遊んでしまうので
まだまだ頑張らないと
とりあえずエンディングまでは見えてはいるもののまだ先は長いなぁ……


496 ◆6I9SwHc8xc2011/03/26(土) 12:46:43.10ngJbv0sE0 (14/14)

そして酉のつけ忘れに今頃気づく俺である


497VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/26(土) 12:58:21.5285+q6CkDO (1/1)




498VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2011/03/26(土) 13:31:14.83YHz0KalV0 (1/1)

乙です。


499VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽)2011/03/26(土) 17:56:51.77mIBAY3kAO (1/1)

乙。
ガタキリバwww。鞄が増えるのかョwww。


500 ◆6I9SwHc8xc2011/03/27(日) 02:42:25.82/nG1ojN50 (1/1)

>>493

同僚「そうだな。風邪は万病の元っていうし……俺達が付き添ってやろうか?」

竜姫「い、いい! わらわに構うな! 病院は嫌いじゃ」

同僚「けどよ、風邪は万病の元って言うし……」



今気づいたけどチェック漏れで同じこと2回言わせるとかだらしねぇな
1回目の「風邪は万病の元っていうし……」は見なかったことにして頂けるとありがたいです


501VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/03/27(日) 02:43:14.45n/4oLQXKo (1/1)

きてた


502VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/03/27(日) 05:50:53.94liG8ohDqo (1/1)

りょうかい!


503VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/03/28(月) 10:08:43.23nHpUhA6To (1/1)

RPG感が増していいんじゃない?

ゆうしゃ よ! せかい を すくって くれるか!

はい
ニアいいえ

そんなこと いわずに! すくって くれるか?

はい
ニアいいえ

そんなこと(ry みたいなwwww


504VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/28(月) 16:49:12.67z0Rb4gFAO (1/2)

おいおい冗談じゃねえぐらいキモいぞコイツ


505VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2011/03/28(月) 17:32:04.03gAtUZVpH0 (1/1)

下げぬか阿呆めが


506VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/28(月) 17:38:26.64z0Rb4gFAO (2/2)

晒しageだちくしょう


507 ◆6I9SwHc8xc2011/04/01(金) 00:22:46.11jEZb0UaK0 (1/5)

       (⌒)  (¨)
    (´)  iT (`) II r¨ヽ O r‐、       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  O  Vi.-‐.L!´.Vi:.:.:ヽ i.:.:-.、〕i'  O   /  人がSSを書くにあたって… 一番大切なことは何だと思うね?
 、 ,.V''´:.Vi.:.:.:.:.:.:.:.Vi:.:.:l l.:.:.:.:〈ノ:(¨)/ ( )  /    ジョルノ・ジョバァーナ君…
 \、.:.:.:,. -‐- 、..:.:¨.:.:l_l.:.:.:.:.:.:.//.:ヽ///
 ヽ-‐'"ィ''´ ̄`ヽ \.:.:.:.:.:.:.:.:.:.〈/:.:.:.:.:.:ヽ/     それは『意思』だよ ジョルノ・ジョバァーナ君!
  `¨´  /__,,.. -、\.\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_ノ      人がSSを書くにあたって最も大切なのは 完結させようという意思なんだ
      (ヾ-‐,ニヽ\.丶、`ー-- ‐<__
      ゙ミ_、、,,.ニ、\  ` ー─,,..ニ、 `ヽ     でもそろそろ大学も始まる時期なので
        ヽ;;::Oィ゙ヽ.`'  /_''"¨ヽ_,,.ヽ‐-、.._,. 更新頻度が 今以上に落ちるかもしれないというのは
          ̄  .r' i ヽヾr,、‐iニ,.ニ ニヲくヘ 割と死活問題なんだよ… 読者の皆様にはそのことをお詫びしたい…
    ,. -ァ=‐-、_   -‐゙ヽ.,.-‐' r〈li_iノl i,、V、ヽ\ニi \____________
  // '´` -‐' ̄T)エヽ-、`i .゙ーレィi.Y iノ .ト、ヽフ!
 ⌒i、   /  ,.イ´ヽ二ニニヽー ,}ヾ i | ,ゝト、ヘ
 ー-、゙┐   イ `'  ´  __,,.. ノ . ー、_ / /::::::iヽY)
   i  ) ,_,.ノ   、,. '゙´  ヽ    `-'イ:/::::>イハ、
   ハ ¨ワ                ノ/:::::::::ヽニ.ハ
   i \<               /:/::::::::::::::::::::::l:::ヽ,
 入   i.              ,:'´::::`ヽ::::::::::::::::::::::l::::::l
   `了'"               f:::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::l:::::;'
 、.._ノ'´ \             ,i、::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::/
   |\  ヽ          ./ lヽ\:::::::::l:::::::::::::::::::::/i
  /   ヽ、 丶、.._  _,,..ィ''´   iヽ::::::::::::::i:::::::::::::::::/::/


508VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/01(金) 08:17:04.68lFDHwXKHo (1/1)

ktkr


509即興エイプリルフールネタ ◆6I9SwHc8xc2011/04/01(金) 23:07:35.27jEZb0UaK0 (2/5)

 
――――――――――
4月1日
王都・城下町
 
 
勇者「賢者。君に話がある」

賢者「なんですか? また怪しい商売の話じゃないでしょうね」

勇者「資金面は今のところは問題ない」

賢者「じゃあ、どこぞの秘境に珍獣でも探しに行くんですか」

勇者「それも魅力的ではあるが、装備を整えてからでなければ行けないな」

賢者「なら何のお話ですか? 言っておきますけど、ボクだってこう見えて忙しい……」


勇者「結婚しよう」


賢者「……んですから……」

賢者「……」

賢者「……え?」

勇者「結婚しよう……結婚しましょう、結婚して欲しい……」

勇者「……うむ、この言い方が一番しっくりくる。結婚しよう、賢者」

けんじゃは こしのはいった いいローキックを ゆうしゃのむこうずねに たたきこんだ!
ゆうしゃに 16のダメージ!
 


510即興エイプリルフールネタ ◆6I9SwHc8xc2011/04/01(金) 23:08:18.40jEZb0UaK0 (3/5)

 
勇者「……何をするんだ」

賢者「アンタが何言ってるんですかっ! け、け、け、結婚ってなんですかっ!」

勇者「結婚とは、主に男女が夫婦関係になることだ。あるいは夫婦間の関係のことを……」

賢者「そういう意味じゃなくてっ!」

勇者「……ああ。そうか、そういうことか」

賢者「え?」

勇者「安心して欲しい。先程の私の発言は全て嘘だ」

賢者「……はぁ?」

勇者「賢者。今日は何月何日だ?」

賢者「何月何日って、4月1日……」

賢者「……ああ、そういうことですか」

勇者「今日はエイプリルフールだ。皆、悪意のない大小様々な嘘を吐いている」

勇者「お前も嘘を吐いてみろと同僚に勧められて、意外性のある嘘を考えたのだが……」

賢者「二度とやらないでくださいね。勇者さんは嘘禁止です」

勇者「何故だ?」

賢者「いつもと変わらない鉄面皮の仏頂面であんなこと言うから怖かったです」
 


511即興エイプリルフールネタ ◆6I9SwHc8xc2011/04/01(金) 23:09:28.30jEZb0UaK0 (4/5)

 
賢者「ボクはてっきり、勇者さんが発狂したのかと……」

勇者「そこまで言われるのか……やはり、私にエイプリルフールの嘘は向いていないか」

賢者「いえ、勇者さんの場合ホントっぽすぎるのが問題なんです」

賢者「その嘘を言ったのがボクだったから、ローキックで済んだようなものを……」

勇者「君は他人に嘘を吐かれたらローキックをお見舞いするのか?」

賢者「まさか、ボク以外の誰かにその嘘を吐いてないでしょうね?」

勇者「君の他には、研究員時代の元同僚に同様の嘘を吐いた」

賢者「……その人、どんな反応を?」

勇者「その場で卒倒したから、介抱した。目を覚ますや否やすぐどこかへ行ってしまったが……」

賢者「……今すぐ嘘だったって説明してきてください! 一刻も早く!」

勇者「?」
 
 
 
僧侶「ゆ……ゆ……勇者さんが、結婚しようって……!」///

僧侶「こ、婚姻届……? それとも……新居の手配……? ご両親への挨拶……?」///


そのご そうりょに ウソをばらした ゆうしゃは 
そうりょにも こしのはいった いいローキックを もらったという……
 


512VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/01(金) 23:10:20.06qim8FaO2o (1/1)

金的貰えばいいのに…


513 ◆6I9SwHc8xc2011/04/01(金) 23:14:57.19jEZb0UaK0 (5/5)

                     ノ)_
                     ノ)'"ー'7 / ゙̄ス        なあ 勇者
               / /  /  / /ヽ{
             r‐く`ヽ l__/--く___  ヽ i__       いい友情関係ってのには
            r {(::)  jノヽ l {ミ ヽ\   }::Y⌒ヽ    3つの『U』が必要なんだ
          _l ヽ.__,ノ/ \〉 レ |  `ーv'\!___/   なぁ………!
.         r'´: ̄ : : ヽ.一1 /',ィ  i  ー{    ∧::::::::/:::::::  
      ,:": : : : : : : : : :i、 ヒ イリ     ',  ,' lヽ:::i:::::::::    '二) ー―、 r┬‐、 『│ |
.     /: : : : : : \: : : :l ヽ }        〉 i__ノ__|:::|::::::::.    、__)  __,ノ V  ノ   {_} 』
     { : : l\: : : :ヽ :_j ノ L,‐___     /  | }_} i::::l::::::::  
.     V: : :':、i `ー--' 斤ラ l `こ   /:::>|( し |::::i:::::::   ああ…1つ目はな………
.      ヽ: : : :i r' .ィj  ヽ  \ ヽ--'´ / ヽ\リ'⌒マ!   「うそをつかない」だ
.        ト: 〈 二´  ー'_ノ | ヽ   /  ノ:::|   }|    2つ目は
         \ヽゝ ̄  `こ ノ l  |  i   |:::/   /ム   「うらまない」…
        r i´ト、 \____ノ l |  l   |::{   ,イノ i}   そして3つ目は
         │|-|-|. _  \    / i  l   l:::∨/i lo ソ!   相手を「敬う」…
          |‐l‐l‐|/ 〉  |\ ´  |  l   |:://::::辻ソ: 
.        | / / 〈 \ l|  ` i /l  l   l'/::::::::::::i:::::   いいだろ?
         ハ ヽ    ヽl_____ l/::::|  !  ヽ::::::::::::::l::::   友情の3つの『U』だ
.        { ヽ       }ヽ::::ヽ|::::::l      V:::::::::::i:::: 
       \_    /_|:::::::l:::::::|        |::::::::::::i:::   いくらエイプリルフールと言っても
.          l/ ̄ ̄     l:::::::O:::::l        l:::::::::::::i:::   許される嘘と許されない嘘があるから気をつけろよ…
 


514VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/02(土) 00:13:06.25LOgIWf89o (1/1)




515VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/04/02(土) 02:10:56.40pnKyUoVAO (1/1)

勇者&賢者の初期パーティか
この二人はなんか安定感があるな




516VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/04/02(土) 14:12:47.00FI+jFsQyo (1/2)

ああっ、追いついちゃった…

勇者と賢者は正カップルだと思うんだ…



517VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/04/02(土) 14:13:42.26FI+jFsQyo (2/2)

乙つけ忘れてた…orz

乙です…


518VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/02(土) 19:49:33.58XYlVHL+IO (1/1)


_ノツ ヾ ゙i.:.:.:.:.:\   ___  , -/...:.:.:.:.:             \.:.:. 」ヽ
 ̄ 、    ゙i.:.:tー、y'´〃/'7/-一''"´      ☆  、     \.:.`'^ヽ       
  ヾ:.:.: ___゙i.:_ゝ_Y 、(/_,.∠-‐   ☆ =ニ二二ニー- 、_ `ヾ、☆,.>┐ ヽ   
ヾ:  i∠-―、 `ヾミ! 、ゞ、_☆ _==彡'"_ノ´:. `ミー、_\_ , '´rュ_!::.|  }   
ヾ::.  !:.:.   `ハミ、 ヽ ゙゙゙゙゙/彡ィ    ̄フ´.:.:.  = iヽゞ、!Tー-{i[]/ ゞ´!ノ;{  
.:.:〉      / \ヾーゝ/-‐''"´_ノ´/.:.:.:.:.:.:   "''、{;じ)、!ヽ ヾロ{ミ、〈;i;;;!;;;;;} 
:/      /.:.:.:.:/ ̄((彡三-一イ .:.:.:.:.:      `ヾ!!i:._, ヾ[lヽ__`,.久  
' r:     /  / / ̄ _/ ,.://    .:.:.:        ̄ミ ´_ ゝrュュィ、ノ  
  ゙!:.   .:/ / "/ ̄彡| }ハヽ       ゙   , -‐   ,-≦一 }/7    
  ノ:.:...:.:/ / _∠-‐イ  |/  }:.゙i          ゝ- 、  /伀})`ブ /  
 {:.:.:./   リ´ 、ミ`   _,リ  j:.:.l_     ..,>t-:.、:.. ::ゞイ チ'´_ソ´   投げ出すのか?いや君のことだ……
_ノシ´     、ミ`    '´    、:.:.:.:\  ,〃ヾ゙_ \ヾ!_' ̄_∠ィ'´       …………黄金のSSは無敵さ
,/     、ミ`          ヾ.:.:.:.:.:.\'   ヽ__〉ニ/´ ̄         
     ミ`  _______  __,.>ー-:.、_`:.  .:/´           
      ̄ ̄   ...:..:.:.:.:.:シ //r彡=ィ⌒ー一'        
               ..:/ / 川 (          


519 ◆6I9SwHc8xc2011/04/03(日) 01:03:33.87JOVJu7rY0 (1/1)

ニ--、ー==、_ iヘ_  `-´ ノ F、_ノi  ノ i、ヽノノ |
クr>-ミ-、 乙 / `ー..イヽr ´ 二_ノク、_フ_ /
 /|r、  ヽ /七二>、L _: :| く T /∠ノ_T
|/ |' />  '   fK`三'フ < リ ァ伃ア:/´     去ってしまった者たちから
 /ヽヽ     /   i/ : ,-、iヽ: : :V       受け継いだものはさらに『先』に
   |\o ,   | .    レ ´ r ^ Y-、/       進めなくてはならない!!
  ノ ノ `|i .  i      、i  .ノ ./
r´r:´\/ ゝ、 !    _ . -=-'ク/
/T:::ト、::ヽ、 \     ニ二 -ノ/         そして、自分自身の情熱から発した
::::|:::i、ヽ`ー、ヽ .\     - /           「書きたい」という意思も……
::::i::::| ヽ|ヽ、 i::i i   ` ー--イ
::::i::::|/ヾ、 i i::i !    ///フノ、
::::::::::\  iノノ::|:|     |////:::::ヽ_         このSSをエターにはしない!
::::::::::::::::\/::ノノ    レ'ム'::::::::::::::: ̄ヽ_
:::::::::::::::::::::::::::く_   ヽ:::イ二ニニミ>. /iヽ
:::::::::::::::::::::::>-、)  /イ      ヽ/ ∧ヘ   今は、少しずつだけど続きを書いてる途中だから……こらえてくれ
::::::::::::::::::::::イ___ノ-、_ィ'        Y/::::i::i


520VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/03(日) 09:40:28.51MBU67k1IO (1/1)

          ハ、 ∧ ハ           /\   /\   /\
        ,{! ヾ } / !i ヽ    ___/\/   \/   \/   \/ |_
.      |ソハ   !}   jレi   \
        } !/¨  〃  '{   /
       ト{´{ .ハ} r'"´} !{   \  みんなに読んでもらいたから ageようと思うんですが
      FY'弍{ }' 斥ァ`}ハ   /
      ヾ{:i  /ノ〉` !rソ    ̄|/\/\   /\   /\
.        ヽ /'f=ヘ  ハト、         _/\/   \/   \/
       ,ノ´f\='/ノ!ヽ\._      \
    /ノ !|`ヽ三イ  ヽノノ `'ー-、._ /  
  / r'/   | /::|,二ニ‐'´イ -‐''"  /´{ \  かまいませんね!!
  {  V   ヽ.V/,. -‐''"´ i   /  |/
  ヽ {    r‐、___     i  /     ∩  ̄| /\/\   /\ /\
   } .ゝ二=、ヒ_ソ‐-、   i__,. '| r‐、  U          \/
.   |  〉 ,. -',二、ヽ. `ニ二i___ |:| l|   |
    |'}:} ,/|毒|\丶   i ,::'| 'ー'  {
    |ノノ  |,ノ:::::|ト、 \ヽ ! i }`i´  r|
    |_>'ィ毒::::ノ  丶 ハ し-' | !  | |
 ┌≦:::::::::::::/      lハ     | ) U
 /ィf冬::::::イ |::.. j:    }lハ.   |∩  '゙}


521VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県)2011/04/03(日) 10:48:20.120oqVAVRRo (1/1)

投下ですか~


522VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方)2011/04/03(日) 11:56:01.67uV59PdZJ0 (1/1)

      |二_  _―-、_   |、ヽ_,./ r''‐'´ヽ ヽヽ  |  |
      | i二ニ―---、__, | | | ̄―_ヽヽ、:::::ノミ-| l /  |
     く二二ニ-‐''''''~´  \ヽ`'‐=,´  \/ \ノ  人) |
     |  ノ /  /二三´`ヽヽ l /ヽヽ ヽ /r‐´// |┐
     /‐'´,/ /く \-- ̄`''‐\ ヽく ||ノ、lノ,-'´// |
    ヽ/_///く   :ヽ弋;;;;ッ-、 | |:::::-<::::-=ニ二//  /´
     Y´  .\/ ノ      ̄ ̄::::ノ/ ヽ !弋シフ´/ r‐'
     | /`i、  .V/ ヽ      ::::::lノ  __| ヽ::   | /  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     .l l | ヽ |          :::::../::::: ̄ノ   //  |関係ない
     ヽヽヽ! |            \::::::/   |/  <
      | vヽ |          _,. -''''ヽ-‐、   .|、ヽ  |書け
     /.( (>、_|         !-‐''~´ `~´\!  ./'ノ   \_____
     |/ `-i´ |.          '';;,,,,,,,,,,,,,,,;;''  /|/             _,,、
     |   |  |.           """""   / |          r'''ヽ''´ヽ ヽ!-、
_,. --、 ||||   \               | |          '、 `''''''  _ノ,.--`--┬''ヽ,
    ヽ| 川|    \       ___   / |           `''''''''フヽ´   ヽ,,,,ヽ_ノ__,,
   | |||||      ::::::\  /:::::::::::::::\/ |          _,. -''´-、,.-‐‐''''''''´./ ヽ  ヽ  )
   / | | 川|       ::::::`'''‐------‐''´:  |         /r‐'''''''´/ヽヽ_, イ´    ノ _フ


523VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)2011/04/05(火) 06:33:50.67+HpzMnYB0 (1/1)

AA馬鹿には消えて欲しい


524VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/05(火) 20:24:22.47MFBZzYcSO (1/1)

勇者系のSS漁ってたらこのSSにたどり着いて、今やっと追いついた
キャラの濃さと、そのキャラクターたちが自然と動いて展開していくストーリーがすごく好みだ!!
賢者ちゃんか竜姫ちゃんを嫁に下さい
支援支援


525VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/06(水) 08:15:57.86klY8yP6DO (1/1)

最近の後衛には腰の入ったローキックが必要なのか


526 ◆6I9SwHc8xc2011/04/07(木) 12:45:02.89KQcVd8nd0 (1/9)

 
――――――――――
現在
魔界へのゲート前
 
 
番兵A「おい、交代だ」

番兵B「ん……もうそんな時間か」

番兵A「地上の昼も短くなってきたな……もっとも、ここは常時夜のようなものだが」

番兵B「これからの季節は特にな。しかし、魔王様はまだお戻りになられないのか……」

番兵A「竜王の反乱の際に行方がわからなくなったのだろう?」

番兵B「まさかとは思うが、竜王の手にかかり亡くなられたのか……?」

番兵A「そんなはずはない。魔王様は魔界最強の一族の末裔だぞ」

番兵B「だが噂によれば、あの竜王の娘とつるんでいたそうではないか」

番兵A「ああ。獣王の倅とも親交があったとか」

番兵B「俺は竜王の娘を見たことがある。ドレスや宝石で着飾っても、所詮は卑しい叛徒の娘よ」

番兵B「きっと魔王様の寝首を掻くために近づいたに違いない。どこまでも卑劣な……」

番兵A「しかし生き残った獣王軍の兵の話では、竜王は自分の娘までも手にかけようとしていたとか」

番兵B「そんなもの見せかけに決まっている……あるいは用済みになったか」

番兵A「魔王様に加え、機械王も姿を消している。あのお二方がお戻りになれば……ん?」
 
 
 
ばんぺいたちは そらを みあげた
とおくのそらから おおきなひこうきかいが とんでくるのが みえた……
 


527 ◆6I9SwHc8xc2011/04/07(木) 12:46:26.91KQcVd8nd0 (2/9)

 
番兵A「お、おい……あれは!」

番兵B「まさか……!」

ゲートにむけて せっきんする ひこうきかいのうえには 
だてないしょうを きた まぞくのおとこが たっていた……
 
 
 
魔王「ヒャッホー!」

猫忍者「ま、魔王様! スピード出しすぎだにゃあ!」

盗賊「猫の言う通りだよ! もうちょっと安全運転しなって!」

魔王「大丈夫大丈夫、慣れてるから。安心して空のデートを楽しもうぜ?」

猫忍者「にゃにゃにゃあ!? そ、それはちょっとアクロバットすぎるにゃあ!?」

盗賊「……ったく、賢者も何か言ってやりなよ」

賢者「キャッハー! 風です! ボクは風になります!」

魔王「おっ、賢者ちゃんもなかなかノリがいいじゃん。俺達って結構趣味が合うのかもね」

賢者「だとしても魔王さんのことは嫌いです! イヤッホー!」

盗賊「バカ、立ち上がったら危ないよ!」

猫忍者「にゃにゃ……ゲ、ゲートが見えてきたにゃあ!」

機械王「――間もなく着陸態勢に移行。お客様はシートベルトをお締めの上……」

盗賊「……そんな気の利いたもの、どこに付いてるんだい?」
 


528 ◆6I9SwHc8xc2011/04/07(木) 12:47:46.75KQcVd8nd0 (3/9)

 
きかいおうが ゲートまえに ちゃくりくし まおうと ねこにんじゃが おりてきた
ばんぺいたちは まおうのすがたを みると いそいで かけよってきた……

番兵A「あ、あなたは……!」

番兵B「魔王様! 魔王様ではありませんか!?」

魔王「よう、久しぶり。前に地上に出て以来かな?」

番兵A「ご無事でしたか……機械王も健在のようで」

番兵B「魔王様さえお戻りになられれば、もう怖いものはない! 竜王軍など何程のものか!」

魔王「よせよ。オレは弱いんだから、オレ一人いるくらいじゃ竜王には勝てないさ」

番兵B「魔王の血筋に連なるお方が、御謙遜を……」

番兵A「……それで、魔王様。あの人間どもは?」

魔王「え? ああ、オレのガールフレンド」

賢者「」ジトッ

魔王「――と言いたいところだけど、彼女達は地上で捕まえてきた捕虜だよ」

番兵A「捕虜……ですか」

番兵B「何者なのです?」

魔王「勇者の仲間だよ。手配書で見たことはないか?」

番兵A「な……勇者の!?」
 


529 ◆6I9SwHc8xc2011/04/07(木) 12:49:11.48KQcVd8nd0 (4/9)

 
猫忍者「そうだにゃ。俺様と魔王様で捕まえたんだにゃあ」

番兵B「……お前は獣王軍の者か?」

猫忍者「にゃ」

番兵A「見たことのない奴だな……見るからに下っ端のようだが」

猫忍者「にゃ!? し、失礼な奴だにゃ! 俺様を誰だと思ってるのにゃあ!」

魔王「やめとけ、猫……地上で獣王子の遺体を回収したんだ。そのついでに勇者の仲間も捕まえてね」

魔王「機械王が竜王軍との戦闘で傷ついて、修理に手間取っちゃってさ。時間がかかっちまった」

番兵A「そうでしたか……では、これから本国へ?」

魔王「ああ。魔界が今どうなってるのかも知りたいしね」

番兵B「わかりました。今ゲートを開きますので、少々お待ち下さい」

魔王「OK、じゃあ頼むよ。オレは機械王に乗って待ってるから」

ザッザッザッ……

魔王「……ふう。結構何とかなるもんだね」

猫忍者「にゃ。それもこれも魔王様の人徳のなせる業だにゃあ」

魔王「流石はオレだよ。部下にも慕われてる理想の上司ってことだな!」

賢者「こんなチャランポランでも尊敬されるんだから、世の中って理不尽ですよね」

魔王「またまたぁ。そんなこと言って、カッコいいオレの姿を見て照れちゃってるんだろ?」

賢者「それだけは絶対ないです」
 


530 ◆6I9SwHc8xc2011/04/07(木) 12:50:30.38KQcVd8nd0 (5/9)

 
魔王「まあ、オレも魔王一族の末裔だしね。スター性とかカリスマとか受け継いじゃってるのかな?」

盗賊「……それはどうかねぇ」

猫忍者「にゃ?」

盗賊「ところで魔王。魔界に行ってからは、あたし達のことはどうするんだい?」

賢者「そうですね……一応捕虜扱いですけど、勇者の仲間ですよ? 何をされるかわかりません」

魔王「あ、そっか。何しろ勇者の仲間だもんな……じゃあ本当にオレのガールフレンドってことに」

賢者「ふざけてないで真面目に考えてください」

魔王「割と本気なんだけどなぁ……」

盗賊「そういう場合じゃないってわかるだろ? 今はアンタだけが頼りなんだからね」

魔王「ま、下っ端連中には手荒な真似をするなって言っておくよ。安心しなって」

タッタッタッ……

番兵A「魔王様! ゲート開放の準備が整いました」

魔王「おっ、流石に仕事が早いね。じゃあ行きますか!」

猫忍者「にゃ。お前ら、本国に着くまで大人しくしてるにゃあ?」

盗賊「はいはい。わかってるよ」

猫忍者「いい心がけだにゃ。ほら、お前も返事をするにゃあ」

賢者「……後でたっぷりフカフカさせてもらいますからね」ボソッ

猫忍者「にゃにゃ!? お、俺様はそんな脅しには屈しないのにゃあ!」アセアセ

機械王「――発進シフト、オン。離陸態勢に移行」
 


531 ◆6I9SwHc8xc2011/04/07(木) 12:52:24.96KQcVd8nd0 (6/9)

 
――――――――――
数分後
魔界・ゲート付近空域
 
 
猫忍者「にゃにゃ……懐かしいにゃ、この空気。ついに魔界に帰ってきたのにゃあ」

賢者「噂には聞いてましたけど、本当に地下深くにこんな広大な空間が……」

盗賊「こいつは驚いたよ。下に広がってるのは湖……いや、海かい?」

魔王「そう。太陽の明るさが違う以外は地上と大差はないさ」

猫忍者「だから魔族は地上でも生きていけるのにゃ」

盗賊「太陽って……あの天井近くにある火の玉のこと?」

賢者「熱と光を放射するアーティファクトですね。あれだけの規模のものは見たことないですけど」

魔王「あの人工太陽は初代魔王が設計・開発して、それ以来ずっと魔界を照らしてるんだってさ」

賢者「ずっと、ということは、ある種の永久機関なんでしょうか?」

盗賊「アンタのご先祖様も大したもんだね。頭脳派の魔王だったのかい?」

魔王「さあ? オレには難しいことはわかんないし、ぶっちゃけ興味ないから」

猫忍者「流石は魔王様、偉大なご先祖様であっても全く敬う気がないにゃあ」

機械王「――現在位置座標から、魔王城への到着予定時刻を計算中……」

盗賊「そういえば機械王も初代魔王の作だって言ってたけど……案外、インテリ魔王で正解かねぇ」

賢者「その末裔がこんなのってことは、世襲される文化や制度が質を落とすのは真理なんですね」

盗賊「賢者。そいつはあたしらの世界にも跳ね返ってくる言葉だよ。わかってるかい?」
 


532 ◆6I9SwHc8xc2011/04/07(木) 12:53:25.90KQcVd8nd0 (7/9)

 
――――――――――
数時間後
魔界・魔王城
 
 
キィィィィン……

きかいおうは まおうじょうのまえの ひろばに おりたった!
へいしたちが ぞくぞくと あつまってくるなか まおうは かろやかに ちじょうにおりた……

側近「魔王様!」

魔王「側近くん、久しぶり! オレの留守の間、こっちは大丈夫だった?」

側近「はい。竜王軍と幾度か武力衝突を……ですが、我ら親衛隊は叛徒などに後れは取りません」

魔王「そいつは結構。魔王城も無事みたいだしね。他の地域は?」

側近「魔法石の鉱脈と加工工場を抑えられました。後は旧海王領の海域を……」

魔王「地底海の半分を抑えられたってこと? 結構ヤバくない?」

側近「後手に回ってしまったのは事実です。現在、奪還作戦の準備を整えているところです」

側近「魔王様がお戻りになられたとなれば、全軍の士気も上がりましょう」

魔王「……ま、こんな時だしね。それも仕方ないか」

側近「ゲートの番兵から連絡を受けています。捕虜は地下の牢獄に収監しておきましょう」

魔王「ああ、頼むよ。二人ともか弱い女の子だから、くれぐれも手荒な真似はするなよ?」

側近「承知しました。では、魔王様はこちらへ……」

魔王「あ、ちょっと待ってくれ。その前にやることがあるんだ」

側近「やること……ですか」

魔王「すごく大事な用事が残ってる。すぐ戻るから、ちょっとだけ待っててくれない?」
 


533 ◆6I9SwHc8xc2011/04/07(木) 12:53:59.07KQcVd8nd0 (8/9)

 
けんじゃととうぞくは きかいおうから おろされた
ふたりと いれちがいに まおうは きかいおうに のりこんだ!

すれちがいざまに とうぞくは まおうに こごえではなしかけた……

盗賊「……行くんだね?」

魔王「ああ。他の奴らには任せられないことだし、盗賊ちゃん達を連れてはいけないよ」

盗賊「獣王を殺したのはあたし達だし、みんな快くは思わないだろうね」

盗賊「ひょっとしたら、その場で殺されちまうかもしれない。それなら牢獄の方が安全だよ」

魔王「……ごめん。オレ、盗賊ちゃんがああ言ってくれたから甘えちまったけど……」

魔王「オレの都合で、女の子をとんでもない場所に連れてきちまった」

盗賊「王都付近を飛んだら撃ち落とされるのが関の山だよ。かといって竜王軍にも追われる身だし」

盗賊「いっそゲートまで最短距離を飛んで魔界へ行った方がいいって、みんなで話し合ったろ?」

魔王「そりゃそうだけど……」

盗賊「アンタが心配すべき事柄はもっと他にあるはずだよ。それを忘れないように」

魔王「え?」

親衛隊A「おい、貴様! さっさとこっちへ来い!」

盗賊「はいはい……じゃ、魔王。うまくやりなよ」

魔王「……ああ。ありがとう、盗賊ちゃん」

まおうとねこにんじゃ そして じゅうおうじのいたいをのせた きかいおうは
じんこうたいようが てらす まかいのそらへ とびたった……
 


534 ◆6I9SwHc8xc2011/04/07(木) 12:56:35.35KQcVd8nd0 (9/9)

ブツ切り投下で申し訳ありません。下手したら週一ペースです。どうしてこうなった……

しばらく魔王パーティの魔界編。
そろそろ賢者の腰の入ったいいローキックが唸る展開になるかは微妙。


535VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/07(木) 14:44:01.24HdwnhuESO (1/1)

乙!


536VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/07(木) 14:53:18.29Vj6ekBWDO (1/1)




537VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/04/08(金) 08:33:32.36cmiVuiEuo (1/1)




538VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/04/08(金) 12:32:13.05BSmxoI7AO (1/1)



賢者の魔王嫌いは筋金入りだが果たしてツンデレなのかどうか
それが問題だ


539VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/04/08(金) 15:52:31.271Kq61djVo (1/1)

魔王×賢者とかマジでやめてえええ


540VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/10(日) 17:06:31.04tbTmE5vAO (1/1)

期待支援


541VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/11(月) 23:53:51.133zaBYLUgo (1/1)

面白いです、応援してます


542VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/12(火) 11:29:54.86Zb6doimJ0 (1/1)

おつ~ん


543VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2011/04/14(木) 02:16:01.372DJWbl4wo (1/1)

追い着いた。これは面白い…!


544VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/04/29(金) 02:14:05.59KVrhnatJo (1/1)

かむばっく


545VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/04/30(土) 08:49:03.08f8g15WlPo (1/1)

ぷりぃぃいいいいず!


546VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/04(水) 18:26:20.709tth+Ed30 (1/1)

いいや限界だッ!ageるねッ!


547VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/05(木) 17:37:47.71o0QIuN5DO (1/1)

さみしいのぉ~・・・


548VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/06(金) 01:51:29.19Q8Ym2Vlv0 (1/1)

そろそろこっちにも更新が来るらしいぞ。大人しく待つんだ!


549VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2011/05/06(金) 08:18:21.38QTOHUu5z0 (1/1)

オチ無いからダイジだよ。
二兎…


550VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/06(金) 08:46:09.951OJCrRXm0 (1/1)

期待age


551VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/05/08(日) 00:58:15.61a2EOD1Cro (1/1)

こいよ…


552 ◆6I9SwHc8xc2011/05/11(水) 23:09:34.68kB63MfyQ0 (1/1)

続き執筆難航中\(^o^)/

気分転換と言ってはなんですがお題募集して短いの書きます
>>555


553VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/11(水) 23:20:02.18fzj07lwy0 (1/1)

来てた!kskksk!


554VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県)2011/05/11(水) 23:20:04.69Xbgq5fOMo (1/1)

グラップラー「うおのめ」


555VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/11(水) 23:21:28.73QLlXCA8go (1/1)

宝くじ


556VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/05/11(水) 23:26:55.26con5X+Pro (1/1)

生存と執筆中の報告だけでまだまだ待てる!
という訳で踏み台


557VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 16:28:23.60K6D7pFFS0 (1/1)

まだかな?


558VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/16(月) 00:02:06.543VLtGeNAO (1/2)

生きてるならそれでいい
待ってる


559お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc2011/05/16(月) 22:05:39.88s0t3mLyK0 (1/8)

 
――――――――――
とある日曜日
王宮・会議室
 
 
勇者「宝くじ……?」

財務大臣「そう、宝くじだ。知っているか?」

勇者「聞いたことがあります。東方の寺院などで、普請の資金収集のために主催されていたとか」

財務大臣「うむ。流石は王立魔法研究所の元研究員だ。博識だな」

勇者「ですが、何故この情勢下に宝くじを? しかも王宮の公認とは」

財務大臣「この情勢下だからこそだ。相次ぐ戦火で、各地の自然や文化財への被害も夥しい」

財務大臣「それらの修復費用を調達すると共に、民衆にも適度な娯楽を提供してやらねばならん」

財務大臣「言うまでもなく、我々のやろうとしている宝くじは賭博だ。だがそれがいいのだよ」

勇者「なるほど……それで、私を呼んだ理由は?」

財務大臣「ああ。そのことだが……君のお供にいるだろう? あの背の低い……」

勇者「賢者ですか」

財務大臣「そう、彼女だ。君から賢者にちょっとした頼みごとをして欲しいのだ」

勇者「頼みごと?」

財務大臣「なぁに、簡単なことだよ。宝くじの売り上げを上げるために、彼女の協力をね……」
 


560お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc2011/05/16(月) 22:06:09.62s0t3mLyK0 (2/8)

 
――――――――――
午後
城下町・勇者の部屋
 
 
ガチャッ

賢者「こんにちは、勇者さん」

勇者「来てくれたか……歓迎する。楽にしてくれ」

盗賊「いいですよ、そんな。勇者さんらしくないです」

勇者「そうなのか?」

賢者「わざわざボクを呼びつけるなんて、火急の用事なんですか?」

勇者「ああ。しかも、イエスと言ってくれなければ困る案件だ」

賢者「……なんか嫌な予感がしますけど、とりあえず話を聞かせてください」

勇者「来週末から王宮の公認の下、宝くじが発売される。この話は知っているか?」

賢者「はい。戦火で疲弊した地方財政を立て直すとか、文化財の修復費用の調達とか……」

勇者「この戦時下で庶民に宝くじを買うような浮動購買力があるかどうか疑問ではあるが……」

勇者「宝くじは、その売上額から当選金と興業入費を差し引いた差額が興行主の利益になる」

勇者「つまり、できるだけ多くの人間に買ってもらわなければならないわけだ」
 


561お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc2011/05/16(月) 22:07:13.93s0t3mLyK0 (3/8)

 
賢者「それはわかりますけど……宝くじについての講義をするために呼んだわけじゃないでしょう?」

勇者「当然だ。それで、君に頼みたいことがあるのだが……」ゴソゴソ

賢者「?」

勇者「宝くじの企画担当が言うには、君にイメージキャラクターを務めて欲しいらしい」

賢者「イメージキャラクター?」

勇者「企画書によれば、この衣装を着て各地の売り場を巡業するらしいのだが……」

ゆうしゃは うさみみバンドとバニースーツを とりだした!

勇者「さらに『一等当選者にはいいことあるかも♪』と思わせぶりなフレーズを多用することで」

勇者「男性層の購買意欲を煽って売り上げアップを狙う、と書いてあるのだが……」

スパーン!

けんじゃは ゆうしゃのひざのうらに こしのはいった いいローキックを たたきこんだ!
ゆうしゃに 14のダメージ!
  


562お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc2011/05/16(月) 22:08:44.79s0t3mLyK0 (4/8)

 
勇者「……何をするんだ、賢者」

賢者「アンタこそ何を言い出すんですかっ! い、いきなり、そんな……破廉恥な……」

勇者「これは財務大臣からの正式な要請だ。事実上拒否権はないと言っていい」

賢者「だとしても絶対に嫌ですっ! ボ、ボクがそんなこと……」

勇者「衣装が不満なのか? この国の古い言い伝えでは、ウサギは幸運を運ぶ動物とされていて」

賢者「そういうことじゃなくてっ!」

勇者「要するにくじの売り子をすればいいんだ。以前、似たようなことはしただろう」

勇者「あの時の君はずいぶんノリノリで……」

賢者「わーっ! わーっ! 思い出させないでくださいーっ!」バタバタ

賢者「……と、とにかくですね、ボクはそんな仕事やる気はありませんから」

勇者「……君がそこまで言うなら仕方がない。財務大臣には私から断っておこう」

賢者「そうしてください……」
 


563VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/16(月) 22:09:26.87jF+dtqoCo (1/1)

おお


564お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc2011/05/16(月) 22:10:09.01s0t3mLyK0 (5/8)

 
勇者「……しかし、そうなると代案を考えねばならないか」

賢者「……」

勇者「イメージキャラクターやイベントコンパニオンのプロデュースは専門外だが、どうしたものか」

賢者「……あ、あの……勇者さん」

勇者「どうした、賢者?」

賢者「い、一応、念のためですけど? あくまでも、もしもの、仮定の話なんですけど」

賢者「ゆ、勇者さんは……ボクがそういう格好をしてるの、見てみたいって思いますか……?」

勇者「? どういうことだ」

賢者「べ、別に深い意味はありませんけど、ちょっと聞いてみたくなったっていうか?」

賢者「勇者さんは一番身近にいる異性ですし、参考になるかなーって……」

賢者「もしも、仮に、万が一、ボクがバニーさんの格好をしてたらどう思うかなって」

勇者「……私は別になんとも思わないが?」
  
ドゴォッ!

けんじゃは ゆうしゃのわきばらに とびうしろまわしげりを たたきこんだ!
ゆうしゃに 25のダメージ!
 


565お題「宝くじ」 ◆6I9SwHc8xc2011/05/16(月) 22:10:49.34s0t3mLyK0 (6/8)

 
――――――――――
数日後
城下町・宝くじ売り場
 
 
たからくじうりばでは ドラゴンのあたま ウサギのみみ カメのこうら 
ネコのて ツルのはねをそなえた きみょうなデザインのきぐるみが
こどもたちにかこまれていた

賢者「……これ、勇者さんのデザインですか?」

勇者「ああ。古今東西の縁起のいい動物を集めてみたのだが……」

賢者「売り上げはどうなんです? こんな奇怪なマスコットで大丈夫なんですか?」

勇者「予想よりも売れている。財務大臣も上機嫌だったよ」

勇者「……それより賢者。どうしてもわからないことがひとつだけある」

賢者「なんですか?」

勇者「君が帰ってしまった後、考えてみたのだが……君が怒る理由がわからない」

賢者「はぁ?」

勇者「私の返答が気に入らなかったのだとすれば、君は私にバニー姿を披露したいということになる」

勇者「しかし君はああも拒否反応を示していたのだから、私に見せてもいいという理屈は……」

賢者「わーっ! わーっ! そ、そんなのもうどうでもいいですから!」

勇者「だがどうしても解せないんだ。君の口から説明してもらいたい」

賢者「それより、折角だからボク達も宝くじ買いましょうっ! ほら、最後尾に並んで!」

勇者「……?」
 
 
 
そのご ざいむしょうは ことあるごとに けんじゃにイメージキャラクターのオファーをだすが
けんじゃが それにおうじることは なかったという……
 


566VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/16(月) 22:12:29.32HAfbPFMHo (1/1)


一箇所盗賊になっとるぞ


567 ◆6I9SwHc8xc2011/05/16(月) 22:12:52.74s0t3mLyK0 (7/8)

お題ひとつにここまで時間がかかってしまうとはだらしねぇ……
どうでもいいですが最近勇者の脳内CVが石川英郎で固まってきました


568 ◆6I9SwHc8xc2011/05/16(月) 22:14:06.46s0t3mLyK0 (8/8)

>>566
アッー!

× 盗賊「いいですよ、そんな。勇者さんらしくないです」

○ 賢者「いいですよ、そんな。勇者さんらしくないです」


569VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/05/16(月) 22:15:04.2003OG+M7mo (1/1)

うむ、実にこの勇者ありだ。ありがとう


570VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/16(月) 22:16:14.33A/3izGj/o (1/1)

乙です
いいわーやっぱり賢者いいわー


571VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/16(月) 22:52:22.7428dRBmk3o (1/1)

ふむ、私の目から見ると賢者はかわいいと思うのだが

だれか勇者のデザインを書いてみてくれ、見たい!


572VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/05/16(月) 23:57:46.413VLtGeNAO (2/2)

>>145には身長187cm、鬱陶しい長髪にインテリ眼鏡とあるな
個人的には元研究者という経歴のせいか白衣が似合いそうなイメージ


573VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 00:00:41.112g2jrtCIO (1/2)

絵師様()~ってか?


574VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/05/17(火) 00:01:22.04s3dBmGV3o (1/1)

まんま戦国無双の毛利元就でいけそうだな


575VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 01:12:24.54Ppw/mo4ro (1/1)




576VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/17(火) 02:34:21.25WwQt4yZv0 (1/1)

乙バニー!
>>573
おまえSS見なくてもいいよ


577VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 14:50:49.01bxV8POdAO (1/1)

勇者と賢者は40cmも身長差があるのか……胸熱


578VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 16:08:30.44DJvokguZo (1/1)

>>572
そっちじゃねえ
勇者がデザインした宝クジマスコットの方だよ


579VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 17:30:31.08TSI2Sq9DO (1/1)

壊死様(笑)

ぴくしぶでやってろwwww


580VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2011/05/17(火) 17:55:38.49cb3dHmcB0 (1/1)

乙です。


581VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 20:03:21.812g2jrtCIO (2/2)

絵師様降臨キボンヌwwwwwwww(笑)

まーた変なのがわく季節か?


582VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 20:06:11.3577nEiAMwo (1/1)


やっぱりこの初期コンビは安定感あるな


583VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/18(水) 07:36:23.987gmGDoBDO (1/1)

賢者の跳び後ろ回し蹴りかぁ…


小さい割りによう動くな


584VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/18(水) 12:27:01.79iYVTx1aAO (1/2)

賢者どころかパラディンになれるんじゃないのか


585VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/18(水) 13:19:07.78SmeLiTlLo (1/1)

毒の治療にきゅうしょ突き使うシスター思い出した


586 ◆6I9SwHc8xc2011/05/18(水) 20:12:01.65I00C/Cke0 (1/1)

懲りることなく再びお題募集
よろしければ使ってほしいキャラも添えてお願いします
>>590


587VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/18(水) 20:15:42.96Wo5LDHRZo (1/1)

賢者の足が骨折とか期待


588VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2011/05/18(水) 21:05:30.76rVsaq02oo (1/1)

本編は?


589VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/18(水) 21:23:22.49iYVTx1aAO (2/2)

ksk


590VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/18(水) 21:25:18.15fxfjXXaIO (1/1)

勇者の活躍


591VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/19(木) 17:49:16.01vK8dtcxS0 (1/1)

GJだ


592VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/24(火) 04:47:42.75qpUoIRKSO (1/1)

これは期待が高まる


593VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 20:39:02.56ZTuXTJoIO (1/2)




594 ◆9BJ4hJYdoU2011/05/28(土) 20:39:56.72ZTuXTJoIO (2/2)




595VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 21:02:03.63WHyhEoq10 (1/1)

何こいつ?


596VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/28(土) 21:41:08.690JbA7KPB0 (1/1)

>>594って>>1だよね?
酉変えたの?


597VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 21:44:30.56msvN9qhRo (1/1)

>>596 >>1は携帯じゃないぞそれに携帯にするなら何か一言あるだろうよ


598VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)2011/05/28(土) 22:22:27.28JGZZ6+Wx0 (1/1)

単なる馬鹿だろ
触るだけ無駄


599VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/29(日) 17:22:51.19tm/l32Tb0 (1/1)

あ、携帯か
そこまで見てなかったわ


600VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/30(月) 12:39:12.80sGheKCCIO (1/1)

追いついてしまったorz

楽しいから見ているぞ


601VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/31(火) 11:35:34.01qD05aEqt0 (1/1)

で?まだ?待つけど


602VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/02(木) 21:46:34.71OWEbDw2IO (1/1)


    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
 / ̄ ̄ ̄        /|
 |\_______/ |
  |          __ ヽ_
  |   |     /     / |`'''ー------‐'''''フ
   |   |    /    /: :ノ        /
__|ヽ \  |   ,.-'´: :/     _,.-''´
    | :`'ー----‐''´: : ,.-'´  _,.-Tミ ̄     つまりこういうことか?
'‐-、_ \____,. -二-‐<ミ( ) |ミ、
   `''‐-、__,._- ,=tラフ  ミkノ /ミミ、    「奴は今、迷っている!!」
   /,.ヽくゞク!T ヽ ̄´ )  ミr'くヽヽミ、i    こう言いたいということか?
 / / >、-‐|ヘ ノ`''''''´l  ミミ|  ヽヽ/ |ヽ、
_/ / /  ヽ ゞブ 、、、  、ミミノ    /  ヽl
  / く、   ヽ〃‐‐--ヽ川/   /   !
    ||ヽ   ! ''''''ミ、ヽ/   /    /
    | | |   ヾ川川/   i´     /
    `' ヽ   !ヽ ̄: : /   |ヽ    /




603VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/03(金) 12:55:05.90VSaGE0LIO (1/1)

大学落ち着いたら書いてくれよ!


604 ◆6I9SwHc8xc2011/06/10(金) 02:26:47.07LVvwCULp0 (1/11)

 
――――――――――
現在
魔王城・地下牢
 
 
 
看守「さあ、さっさと入れ!」

盗賊「わかってるよ。そう急かさなくたっていいじゃないか」

看守「お前もだ。グズグズするな!」

賢者「うぅ……なんだかジメジメしてて気持ち悪いです」

看守「ふん、人間風情が……」

看守「魔王様がお前達を殺すなと言ったのがどうにも解せないが、まあいい。大人しくしていろよ」

ガシャン!

ツカツカ……

賢者「……はぁ」

盗賊「どうしたんだい? 溜め息なんか吐いて」

賢者「溜め息のひとつも出ますよ。計画通りとはいえ、実際にこうしてみると……」

盗賊「そうかい? ……ま、そのうち慣れるよ」

賢者「……そういえば、盗賊さんはスカウトされる前は投獄されてたんでしたっけ」

盗賊「まあね。まさか、勇者のお供になるなんて思ってもみなかったけど」
 


605 ◆6I9SwHc8xc2011/06/10(金) 02:27:19.23LVvwCULp0 (2/11)

 
盗賊「食事は出るし、雨風に晒されることもない。不便なのは外に出られないくらいだよ」

盗賊「とどのつまり、人間ってのは、生きていく上でそう多くのものはいらないってことさ」

賢者「そんな人生訓欲しくなかったです……でも、魔王さんは大丈夫でしょうか」

盗賊「なにが?」

賢者「こんな情勢下に外をうろついて大丈夫か、ってことです。竜王軍に襲われたりとか……」

盗賊「なんだい、アンタ魔王のことが心配なのかい?」

賢者「別に心配ってわけじゃないですけど、あの人になにかあったらボク達も危ないですし……」

盗賊「……でもね、賢者。あいつは自分のやらなきゃならないことをやりに行ったんだよ」

盗賊「その結果がどうあれ、今のあたしらにできるのは待つことだけさ」

盗賊「信じてやりなよ。魔王とはまだまだ付き合いは短いけど、悪い奴じゃあない。だろ?」

賢者「……ええ。魔王にしておくには勿体ないくらいのお人好しです」

賢者「……」

賢者「……ボク達の勇者さんがあんな人で、魔族の王があんなので。考えてみれば不思議ですよね」

盗賊「……そうだねぇ。あたしゃ、魔王が勇者でも問題ないような気がするよ」

賢者「そうですよ。あの人は、誰にも何も感じないような人なのに……」
 


606 ◆6I9SwHc8xc2011/06/10(金) 02:27:53.90LVvwCULp0 (3/11)

  
――――――――――
一時間後
魔界・獣王領

  
  
魔王「機械王、ここらでいい。後は歩いていくよ」

機械王「――了解。着陸態勢へ移行」

猫忍者「獣王子様の棺は俺様に任せるにゃ、魔王様」

魔王「ああ、頼む。やっぱりオレ一人じゃどうにもさ……」

魔王「……」

魔王(獣王領……久しぶりに来たけど、できればこんな形で訪れたくなかったぜ)

魔王(この土地には獣王の屋敷があって、ガキの頃にはよく遊びに来たっけ……)

魔王(……それがよりにもよって、ダチの亡骸を運んで戻ってくるなんて)

魔王「……ん?」

きかいおうが はやしのなかにちゃくりくしようとしたとき
まおうは ふと なにかのけはいをかんじた

猫忍者「魔王様……」

ねこにんじゃは しっぽをたてて しゅういをみまわしている

魔王「……猫、お前も気づいたか?」
 


607 ◆6I9SwHc8xc2011/06/10(金) 02:28:53.04LVvwCULp0 (4/11)

 
猫忍者「囲まれてるにゃあ。まさか竜王軍……?」

魔王「マジかよ、こんなところにまで?」

猫忍者「どうするにゃあ? 獣王様の屋敷までは結構距離があるにゃ」

魔王「そうは言っても、俺達3人だけじゃな……機械王、周りに何人いるかわかるか?」

機械王「――サーチモードへ移行。半径200m圏内の魔力反応をサーチ」

ヴゥン……

きかいおうのめに ひかりがともり ひくいおとが なりひびいた……

機械王「――魔力パターンB。魔族・獣人タイプを3体確認」

魔王「獣人……? 竜人じゃなくてか?」

猫忍者「ということは、獣王軍の生き残りかにゃあ!」

魔王「なぁんだ、心配して損しちまったぜ。獣王軍ってことはオレ達の味方だな」

猫忍者「きっと魔王様を迎えに来たに違いないにゃあ」

魔王「機械王、どうやら大丈夫みたいだ。下に降りたら連中に道案内してもらって……」
 
 
ドォンッ!
 


608 ◆6I9SwHc8xc2011/06/10(金) 02:29:46.47LVvwCULp0 (5/11)

 
きかいおうのボディに ちゃくだんのひばながちり 
ひこうけいたいのきかいおうは くうちゅうで おおきくゆらいだ!

魔王「ッ!?」

猫忍者「にゃにゃにゃにゃあ!?」

魔王「なんだ、一体何が……」

機械王「――胴体に被弾。地上の獣人より攻撃を受けた模様」

猫忍者「ど、どういうことだにゃあ! 下にいるのは獣王軍じゃないのにゃあ!?」

機械王「――魔法石エンジンに異常。長距離航行に支障が出る確率、22.6%」

魔王「……機械王、トランスフォームして急降下だ! このままじゃ狙い撃ちにされる!」

機械王「――了解。トランスフォーム」

きかいおうのからだが へんけいし ひとがたをなす!

まおうとねこにんじゃは ゴーレムけいたいにトランスフォームした 
きかいおうのかたに しがみついている……

魔王「とにかく走れ! 獣王の屋敷まで突っ切るんだ!」

機械王「――了解。オートコンパス・OK。ナビゲーション・オールクリアー……」

きかいおうは じひびきをたてながら じゅうおうのやしきにむけて はしりだした!


しかし つぎのしゅんかん きかいおうのあしもとのじめんが ばくはつをおこした!



609 ◆6I9SwHc8xc2011/06/10(金) 02:30:49.43LVvwCULp0 (6/11)

 
ばくはつにあしをとられたきかいおうは てんとうし まおうたちはじめんになげだされる! 
   
猫忍者「にゃにゃあっ!?」ドサッ

魔王「いってぇ……地雷まで仕掛けてあったのかよ……」

機械王「――左脚部に損傷。装甲の一部が脱落。歩行及び走行に支障が出る確率……」

魔王「いいよ、機械王。言われなくたってすげぇヤバい状況だってわかるからさ」

ザッ……

たちつくすまおうたちのまわりに 3にんのじゅうじんがあらわれた!

猫忍者「にゃあっ!? お、お前達は……」

魔王「知り合いか?」

猫忍者「獣王親衛隊の中でも有名な三人組だにゃ。なんでこいつらが……!?」

犀銃士「……魔王様ですね?」

たいほうをかついだ サイのじゅうじんが いっぽまえにすすみでた……

魔王「そうだけど、何の用? オレのサインでも貰いに来た?」

犀銃士「……我らが主の命により、お命頂戴つかまつる」
 


610 ◆6I9SwHc8xc2011/06/10(金) 02:32:44.90LVvwCULp0 (7/11)

 
犀銃士「あくまでも抵抗なさると?」

魔王「いきなり死んでくれって言われて、ハイそうですかと言うとでも思うのかよ」

猿闘士「ならば致し方ない……」

象剣士「実力行使に移るより他にないようですな」

犀銃士「……御覚悟を」

さんにんのじゅうじんが まおうに おそいかかってきた!

まおうは きかいおうにむけて こえをはりあげる!

魔王「機械王!」

機械王「――ラジャー!」

そのしゅんかん きかいおうのてあしのそうこうが はがれ
ないぶにかくのうされていた ひとくいサーベルのむれが かおをだした!

魔王「サーベルミサイル、オープンファイア!」

さんじゅうしのこうげきを かわしながら まおうが めいれいをくだす!
きかいおうのぜんしんから ひとくいサーベルのむれが いっせいにしゃしゅつされた!

犀銃士「体内にモンスターを格納していたとは……」

猿闘士「ええい、子供騙しを!」

サルとうしは おそいかかるひとくいサーベルを たたきおとした!
 


611 ◆6I9SwHc8xc2011/06/10(金) 02:34:13.68LVvwCULp0 (8/11)

 
はじかれ じめんにつきささった ひとくいサーベルから まりょくがもれだし 
まほうばくはつをおこす!

はやしのいたるところにせっちされたじらいが まりょくをうけて ゆうばくする!

犀銃士「物質系モンスターが自爆魔法をその身に宿すとは……」

魔王「余所見は禁物だぜ!」

まおうは とびかうサーベルのうちのいっぽんを キャッチし そうびした!
まおうのてからながれこむまりょくが ひとくいサーベルにこめられたまほうを おさえこむ!

まおうは サイじゅうしにむけて はげしくきりかかった!

ガキィンッ!

犀銃士「ぬ……!」

ゾウけんしのつるぎが まおうのサーベルをうけとめた!

魔王「チィッ……!」

象剣士「犀銃士、お前は後方へ」

犀銃士「うむ。前衛は頼むぞ」

サイじゅうしは うしろへさがり たいほうをかまえなおす!
 


612 ◆6I9SwHc8xc2011/06/10(金) 02:35:23.50LVvwCULp0 (9/11)

 
魔王「それなら!」

まおうは サーベルからてをはなし バックステップできょりをとった!
ひとくいサーベルのとうしんが くちのようにわれ ゾウけんしのつるぎにかみついている!

象剣士「これは……!」

魔王「BANG!」

まおうが ゆびをならすと ひとくいサーベルは まりょくをかいほうし ばくはつをおこした!
ゾウけんしに 41のダメージ!

犀銃士「象剣士!」

象剣士「ぐぬぅぅぅ……!」

猿闘士「流石は魔王様と言ったところか……侮れぬ」

魔王「機械王、次の武器だ! 今度は……」



ザシュッ!
 


613 ◆6I9SwHc8xc2011/06/10(金) 02:37:18.76LVvwCULp0 (10/11)

 
そのとき まおうとすれちがったかげが まおうのせなかをきりさいた!
まおうに 48のダメージ!
 
魔王「――ッ!?」
 
猫忍者「魔王様!」
 
まおうは じめんにたおれふした!
 
猫忍者「だ、誰だにゃあ! 俺様に気配を悟らせにゃいにゃんて……」
 
魔王「ぐぅっ……」
 
まおうのせなかからは とめどなく ちがながれている!
それは するどいつめできりさかれたような きずあとだった……
 
魔王「この攻撃……まさか、だろ……」
 
??「そのまさかよ」
 
猫忍者「にゃっ?」
 
いつのまにか まおうのそばには ひとりのじゅうじんのしょうじょが たっていた!
 
??「お久しぶりね、魔王様。こっちに来るの、何ヶ月ぶりかしら?」

ライオンじゅうじんの しょうじょのかおをみあげて まおうはつぶやいた……
 
 
 
それは じゅうおうじのいもうとの なまえだった……
 


614 ◆6I9SwHc8xc2011/06/10(金) 02:38:30.96LVvwCULp0 (11/11)

どうしてこんなに間が開いてしまったのか……慢心、環境の違い

土日辺りにはお題「勇者の活躍」を投下したいと思ってます


615VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/10(金) 03:54:32.395IH0uz6DO (1/1)


まさか続きが投下されてるとはwww



616VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/10(金) 08:27:10.13HblJ1voIO (1/1)

おまいを待ってるんだぜ>>1よ


617VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/10(金) 14:27:41.63HLhcReCSO (1/1)

乙 今回も楽しかったです


618VIPにかわりましてNIPPERがお送りします()2011/06/11(土) 00:07:49.95I7OmYB+io (1/1)

>>614 乙!


619VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/17(金) 02:15:20.54CgvAGX+D0 (1/1)

明日明後日かな?


620VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/06/17(金) 12:20:40.16fYjRWfVbo (1/2)

続き書く気がないならやめちまえぼけなす


621VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)2011/06/17(金) 16:33:17.93aKaHNF4Io (1/1)

待つこともできねえなら見るのやめろボケナス


622VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/06/17(金) 16:38:50.19fYjRWfVbo (2/2)

がきで低脳とか終わってんなお前いますぐ首つってきたほうがいいぞ


623VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/17(金) 17:43:51.01dgP3c5PIO (1/1)

とりあえず落ち着いてほしい


624VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/17(金) 19:51:49.00UndLc6qDO (1/2)

4円


625VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/17(金) 19:53:07.47UndLc6qDO (2/2)

さげ忘れたスマソ


626VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/17(金) 21:01:48.74Fa08R2dIO (1/1)

ちんちん


627お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:41:18.11yAbJkxyo0 (1/21)

 
――――――――――
とある日曜日
城下町・勇者の部屋
 
 
 
ドゴォッ!

りゅうきの とびひざげりが ゆうしゃのあごをうちすえた!
ゆうしゃに 18のダメージ!

僧侶「ゆ……勇者さん……!?」

勇者「……いい飛び膝蹴りだ、竜姫。だが何故突然こんなことを」

竜姫「黙らぬか! さっさと観念してお前の罪を数えろ! そして死ね!」

僧侶「ま、待って……ください……一体なんの話……」

竜姫「やかましい! 今すぐ死なないと殺す! 殺されたくなければ死ぬがいいわ!」

勇者「冷静になれ。先程から発言内容が支離滅裂だ」

僧侶「そうです……落ち着いて話してください……」

竜姫「まだしらを切るつもりか? ……まあよい」

勇者「一体何があったんだ? 私に飛び膝蹴りをするほどのことなのか」

竜姫「……わらわの下着がなくなっておったのじゃ。しかも気に入っていたものばかり!」

竜姫「ズバリ盗んだのは勇者、お前じゃろう!」ビシッ

勇者「……私は君の下着を盗んでなどいない。それは濡れ衣だと言わせてもらおう」
 


628お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:42:16.55yAbJkxyo0 (2/21)

 
僧侶「そうです……! 勇者さんがそんなことするはずありません……!」

竜姫「では何故、洗濯物を取り込んだ時に下着が少なくなっておるのじゃ?」

竜姫「大方、洗濯の最中にちょろまかしたのじゃろう! わらわの目は誤魔化せぬぞ!」

勇者「確かに私は君の衣類も併せて洗濯しているが、そんなことをして何の……」グイッ

僧侶「……」グイグイ

勇者「……」グイグイ

勇者「……すまない。シャツの裾を引っ張るのをやめてくれないか」グイグイ

僧侶「やめません……」グイグイ

僧侶「どういうことですか……竜姫さんの、し……下着を……洗濯してるって……」

勇者「竜姫を私の部屋に泊まらせることになった時、彼女は家事を手伝うことを承服しなかった」

勇者「かといって自分で洗濯する気もないようだったから、私がまとめて洗濯しているのだが……」

竜姫「ええい、話の腰を折るでない! とにかく勇者、下手人はお前でファイナルアンサーじゃ!」

勇者「君は少し落ち着いた方がいい。こんな時こそ冷静に対処すべきだ」

僧侶「そ、そうです……ま、まずは、落ち着いて平等に私の下着も洗濯してください……!」

勇者「僧侶、君もだ」
 


629お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:45:11.56yAbJkxyo0 (3/21)

 
勇者「まず、状況を整理しよう」

勇者「早朝、私は井戸に行って水を汲み、服を洗濯して、バルコニーにそれを干す」

竜姫「うむ。実際に干しているところはあまり見ぬがのう」

勇者「それは君がその時間帯にはまだ眠っているからだ」

竜姫「わらわは低血圧なのじゃ。それに何故わらわが朝早く起きねばならぬ?」

僧侶「これはひどい……です……」ボソッ

竜姫「で、日中は勇者が部屋におらぬし、夜になってからわらわが自分の洗濯物を取り込む」

勇者「そして君は、今朝方に下着がなくなっていることに気付いた……というわけか」

竜姫「わかったか勇者? お前には証人もおらねばアリバイもないのじゃ」

竜姫「わらわの寝ている隙に、あるいは外出を装った上で犯行に及ぶことは容易なのじゃ!」

竜姫「……なに、わらわは寛容じゃ。今なら土下座して謝れば許してやる」

僧侶「寛容な人は……出会い頭に飛び膝蹴りをしたりしないと……思います……」

竜姫「やかましい! ……で、まだ何か申し開きがあるというなら……」

勇者「竜姫。この一件は私に任せてもらいたい」

竜姫「ん?」
 


630お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:45:46.45yAbJkxyo0 (4/21)

 
勇者「君の追及に対する私の答えはひとつ。『私はやっていない』だ」

勇者「しかし、それでは君は納得しないだろう。だから私が真犯人を探す」

僧侶「勇者さん……何もそこまで……」

勇者「私は必ず君の下着を盗んだ真犯人を突き止め、己の名誉を回復する」

勇者「だからこの件を私に委ねて欲しい。悪いようにはしないと約束しよう」

竜姫「……」

竜姫「……まあよい。なら、しばし時間をやろうではないか」

勇者「そうしてくれると助かる」

竜姫「じゃが、その真犯人とやらを見つけられぬ時はわかっておるじゃろうな?」

勇者「ああ。その時は、君の好きなようにすればいい」

僧侶「……勇者さん……」
 


631お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:46:36.66yAbJkxyo0 (5/21)

 
――――――――――
三日後
城下町・住宅街
 
 
 
そのひ りゅうきとそうりょは ゆうしゃに よびだされ
じゅうたくがいのいっかくにある アパートのまえにきていた……

竜姫「……勇者の奴め。三日も姿を見せぬかと思えば、急にわらわを呼び出しおって」

僧侶「なに……してたんでしょうか……?」

竜姫「真犯人を探すなど口からでまかせ、どこぞへ逃げたのではないかと思っておったがな」

僧侶「勇者さんは……そんな人じゃありません……」

竜姫「ふん……それで、このアパートじゃな?」

僧侶「……はい。勇者さんが指定した場所……ここで間違いないです……」

竜姫「勇者のところに似ておるのう。向こうに負けず劣らずの安アパートじゃな」

僧侶「この辺りは……私や勇者さんみたいな……魔法研究所の職員もたくさん住んでるんです……」

僧侶「あとは学生とか……だから、一人暮らし向けのアパートが多いんです……」

竜姫「独り者の寄り合い所帯ということじゃな……まあよい。行くぞ」
 
コンコン

ガチャッ
 


632お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:47:21.94yAbJkxyo0 (6/21)

 
呪術師「はい、どちら様……って僧侶さんに竜姫さんじゃないか」

僧侶「呪術師……さん……?」

竜姫「なんでお前がここにおるのじゃ」

呪術師「なんでって、そりゃあここが僕の部屋だからさ」

呪術師「それはそうと、君達とはロリコンの呪いの一件以来だね。今日はどうしたんだい?」

竜姫「勇者に呼ばれたのじゃ。あ奴め、準備ができたから来いとわらわ達を呼びつけおった」

呪術師「へぇ、勇者君が呼んだのか……うん、そういうことなら仕方ないね。彼なら奥にいるよ」

竜姫「うむ、入らせてもらうぞ」ズカズカ

僧侶「あ……ま、待って……」

バァン!

竜姫「勇者! このわらわを呼びつけたからには、真犯人の手がかりのひとつも……」

竜姫「……!?」

僧侶「ど……どうしたん……ですか……?」

りゅうきのしせんのさきには まどぎわにたつ ながいくろかみのじょせいがいた

ごごのひざしが かのじょの ととのったおもざしを うきたたせていた……
 


633お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:48:02.26yAbJkxyo0 (7/21)

 
僧侶「えっと……あの……どちら様ですか……?」

竜姫「なんじゃ、呪術師の女か? お前なぞに用はない。勇者はどこにおるのじゃ?」

??「……呼びつけてしまってすまない。だが、ここを離れるわけにはいかなかった」

竜姫「なに?」

ふりむいたじょせいのかおに りゅうきは ふと きしかんをおぼえた……

竜姫「……まさかとは思うが、お前は」

呪術師「あ、勇者君。その後どうだい? 何か進展はあったかい?」

勇者♀「ああ。君の協力のおかげだ。ありがとう」

僧侶「え……? ゆ、勇者さん……!?」

勇者♀「立ち話もなんだ。適当な椅子にかけてくれ」

僧侶「な、なんで……? どう見ても……女の人……です……?」

竜姫「……まるで意味がわからぬぞ。キチンと説明せぬか」

勇者♀「そのために君達を呼んだんだ。これから順を追って説明する」

ゆうしゃは まどをとじて カーテンをしめた……
 


634お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:49:05.07yAbJkxyo0 (8/21)

 
竜姫「……で? わらわに真犯人を突き止めると大見得を切っておいて、お前は何をしておる」

勇者♀「いい質問だ。私は犯人を捜索するにあたって、最初にこのような疑問を感じた」

勇者♀「それはつまり、『何故私の部屋から下着が盗まれたのか』だ」

僧侶「あの……それとその姿と、何の関係が……」

勇者♀「私は数年前からあの部屋で暮らしており、隣近所にも私が一人暮らしであることは周知」

勇者♀「にも関わらず、私の部屋に居候している竜姫の下着が、誰にもわからぬうちに盗まれた」

勇者♀「つまり、犯人は我々の普段の生活をよく観察し、その上で犯行に及んだということだ」

呪術師「君に同居人ができたって噂が立って、それでターゲットになったのかもね」

勇者♀「竜姫は、隣人達の評価では美人と評されていた。無理からぬことではある」

竜姫「……それで?」

勇者♀「私はあの後、独自のルートでここ最近の城下町の盗難事件について調査を行った」

勇者♀「その結果、この半月の間に、下着や衣類を盗まれる被害が急増していることがわかった」

勇者♀「そして捜査線上に浮かび上がってきたのがこの男だ」

ゆうしゃは すうまいのしりょうと いちまいのにがおえを とりだした
 


635お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:50:05.42yAbJkxyo0 (9/21)

 
勇者♀「この男は、半年前に城下町を騒がせた下着泥棒だ」

僧侶「……聞いたこと……あります……」

僧侶「でも……犯人は騎士団に捕まって……投獄されたって……」

勇者♀「だが調査を進めるうち、彼がつい最近になって脱獄したという事実が判明した」

呪術師「僕もその調査に付き合ったんだけど、騎士団が情報を隠蔽してたんだよね」

呪術師「事もあろうに下着泥棒風情に脱獄を許したなんて、恥ずかしくて公表できないからねぇ」

勇者♀「今が戦時下であるということも手伝ったのだろう。騎士団も慢性的な人手不足だ」

呪術師「たかだか下着泥棒程度、黙殺しても仕方ないっていう判断なのかな」

勇者♀「とにかく、彼が脱獄した時期と、下着泥棒の被害件数が増加した時期は一致する」

勇者♀「即ち、真犯人の疑いが濃厚なのはこの男であるということだ」

呪術師「下着泥棒には常習性があるらしいからね。まあ妥当な線でしょ」

竜姫「……ふむ。それはわかった。よくぞ調査したものじゃな」

僧侶「さすが……勇者さんです……」

竜姫「それで? 何故お前は女の姿をしておるのじゃ?」

竜姫「身長はあまり変わっておらぬが、体つきが完全に女のそれじゃ。変身呪文かえ?」
 


636お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:51:03.60yAbJkxyo0 (10/21)

 
勇者♀「その通り、これは変身呪文による擬態だ。呪術師に協力を頼んだのはこのためでもあった」

勇者♀「一人暮らしの男性に女性の同居人ができるという、私達と同じ状況を再現することにより」

勇者♀「下着泥棒の注意を引き、犯行に及んだところを検挙する。言うなれば囮捜査だ」

僧侶「そのために……女の人に、変身して……?」

勇者♀「私に女性の知り合いはそう多くないし、君に囮を頼むわけにもいかなかったからな」

僧侶「……勇者さん……紳士……です……」///

竜姫「何を顔を赤くしておる。この手の男は誰にでもそう言うものじゃぞ」

僧侶「そ……そんなこと……」

勇者♀「とにかく、下着泥棒が脱獄した時期と竜姫の下着が盗まれた日から逆算し」

勇者♀「調査の結果得られた諸々の要素を加味して真犯人の行動予測を行った結果……」

勇者♀「真犯人が私の観察を終えて行動に移るとすれば今日か明日の夜だろうという予測が立った」

呪術師「関係各所に彼女ができたって言い触らしておいたから、情報の拡散もバッチリさ」

呪術師「加えて、その下着泥棒は一度盗んだ女性からは繰り返し盗まないらしいからね」

僧侶「ということは……勇者さんがターゲットになる可能性が……高いんですね……?」

勇者♀「この一両日がヤマだ。必ず下着を盗んだ真犯人を捕え、私の身の潔白を証明しよう」

竜姫「……その姿でなければ、もう少し格好がついたろうにのう」
 


637お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:51:48.52yAbJkxyo0 (11/21)

 
――――――――――
その夜
城下町・住宅街
 
 
 
よるのとばりがおり まちがしずまりかえったとき
やねからやねを かろやかにとびうつる ひとつのかげがあった……

そのかげは おともなく じゅじゅつしのへやのベランダにおりたち 
ほしてあるしたぎに てをのばした……

しかし そのとき ベランダはまばゆいひかりにつつまれた!

??「ッ!?」

勇者♀「そこまでだ」

ベランダのしゅういを まばゆいひかりをはなつ アーティファクトがとりかこんでいる!

はんにんがみあげると アパートのやねのうえに ゆうしゃたちが ならびたっていた!

勇者♀「連続女性用下着盗難事件の犯人だな」

犯人「なっ……バカな、何故俺の行動が……」

勇者♀「確認した」

ゆうしゃは ゆびでコインをはじき じゅもんをとなえた!

勇者♀「――捕えよ」
 


638お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:52:26.88yAbJkxyo0 (12/21)

 
しゅういをとびかうアーティファクトが ねつとひかりをほうしゃしながら
はんにんにむかって とっしんしていく!

犯人「チィッ……!」

はんにんは ベランダからむかいのアパートへととびうつった!

ベランダにアーティファクトがげきとつし ふんさいされる!

呪術師「あ、ちょっと困るよ勇者君。僕が大家さんに怒られちゃうじゃないか」

勇者♀「すまない。修繕費は私が負担しよう」

僧侶「それよりも……犯人を……」

竜姫「そうじゃ! あ奴め、わらわ達を前にしてちゃっかりと下着を盗って行きおった」

勇者♀「流石だな。かつて城下町を騒がせ、騎士団を翻弄しただけのことはある」

竜姫「追うぞ。僧侶に呪術師、お前達は下から追ってくるがよい」

呪術師「了解。僕達は飛翔呪文を使えないしね」

僧侶「……気をつけて……ください……」

勇者♀「問題ない。行こう、竜姫」

ゆうしゃとりゅうきは じゅもんをとなえた!

ふたりのからだがはねのようにかるくなり はんにんをおって やねからやねへとびうつっていく!
 


639お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:53:18.77yAbJkxyo0 (13/21)

 
シュタッ

タッタッタッ……

勇者♀「……やはりスカートは走りづらい。ズボンを履いてくるべきだったか」

竜姫「なにをゴチャゴチャ言うておる。今は犯人を捕らえるのが先決じゃ!」

勇者♀「その点は大丈夫だ。しっかり捕捉している」

竜姫「ならばよし……さて、少し可愛がってやるとするかの」

りゅうきは じゅもんをとなえた!
まりょくが でんきエネルギーにへんかんされ かみなりのやりとなってはっしゃされる!

かみなりのやりが やどやのやねのうえにさくれつし ばくはつをおこした!

勇者♀「竜姫、やりすぎだ。犯人を殺してしまったら君の方が罪に問われる」

竜姫「案ずるな。加減はしてある……」

竜姫「……ん?」

もうもうとたちのぼるけむりがはれると そこには
まったくのむきずのまま そのばにたっている はんにんのすがたがあった……

はんにんは りゅうきのブラジャーを そうびしていた!

犯人「ふぅ……このブラがなければ即死だった」

竜姫「今すぐ死ねェ――ッ!!」

りゅうきは ふたたび かみなりのやりをとうじた!
 


640お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:53:52.60yAbJkxyo0 (14/21)

 
犯人「だが甘いッ!」

はんにんは じゅもんをとなえた!
まりょくのかべが はんにんのまえにそびえたち かみなりのやりをふせぐ!

勇者♀「魔力障壁……竜姫の攻撃魔法を防ぐのか」

竜姫「こ、この変態めが……どこまでもわらわを愚弄するかっ」

犯人「フハハハ! 馴染むッ! 実によく馴染むぞッ!」

犯人「金髪ツインテで巨乳ッ! そしてお嬢様ッ! そんな女子の下着は特になッ!」

竜姫「」プチッ

りゅうきは じゅもんをとなえた

りゅうきのりょううでに きらめくまりょくのうずが しゅうそくしていく!

勇者♀「待つんだ。その出力の殲滅魔法を放てばこの区画は一握りの灰と化す」

竜姫「構わぬ」

勇者♀「私達もただでは済まない。それに犯人ごと君の下着も消滅するが」

竜姫「変態の装着した下着などもういらぬわ! あ奴ごと全てを焼き尽くすまで!」

犯人「おっと、それは我々の業界でも死の宣告だ。やめておいた方がいい」

竜姫「……く……ふふ……初めてじゃ、このわらわをここまでコケにした大うつけは……」

竜姫「絶対に許さぬぞ、虫ケラが! 二度と生き返れぬよう塵も残さず消し去ってくれる!」
  


641お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:55:02.28yAbJkxyo0 (15/21)

 
まりょくがかいほうされるすんぜんに 
ゆうしゃは コインをゆびではじき じゅもんをとなえた!

勇者♀「――眠れ」

竜姫「――っ」

りゅうきは とつぜん きょうれつなねむけにおそわれた!
こうちくしたじゅつしきが むさんし じゅもんがむりょくかされる!

ゆうしゃは たおれそうになったりゅうきをだきとめ そのばにねかせた……

犯人「催眠呪文とカウンタースペルを同時に行うとは、只者ではないな」

勇者♀「君こそ、竜姫の攻撃魔法を防ぎきるとは、下着泥棒にしておくには惜しい」

犯人「昔、魔法をかじったことがあってな。役に立っているよ」

勇者♀「……とはいえ、野放しにするわけにいかなくなったのも事実だ」

犯人「俺をどうしようというんだ、お嬢さん?」

勇者♀「大人しく投降するならばよし、もし抵抗するというなら力ずくで拘束する」

犯人「美女に拘束されるのも悪い話ではないが、生憎、俺は縛る方が好みでね……」ゴソゴソ

はんにんは ふところから りゅうきのパンツをとりだした!
 


642お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:55:43.63yAbJkxyo0 (16/21)

 
犯人「セタップ!」ガバッ

はんにんは まよいなく それをあたまにかぶると
またたくまに ぜんしんに まりょくをみなぎらせる!

勇者♀「……竜姫に意識があったなら、彼女は怒りのあまり憤死していたかもしれないな」

勇者♀「しかし、この異様な魔力……彼の内包する欲望とエゴの強さゆえか……?」

犯人「気が高まる……溢れる……!」

犯人「さあお嬢さん、俺が逃げるのを止められるかな……?」

勇者♀「是非もない」

ゆうしゃは コインをすうまいとりだし ばらまいた!
ちらばったコインから ほのおがあふれだし じょうかまちのよぞらをあかくそめる!

はんにんは まりょくのかべをつくり おそいかかるほのおを はじきとばした!

犯人「無駄無駄ッ! 俺の魔法は内から溢れ出るリビドーを魔力に変換している」

犯人「自らの内から発する無尽蔵の力だ……なまじの魔法では俺は倒せん!」

勇者♀「ならば……ッ」

ゆうしゃは ナイフをぬき いっきにきょりをつめ きりかかった!
 


643お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:56:22.34yAbJkxyo0 (17/21)

 
勇者♀(私の仮説が正しければ……!)

ザシュッ!

ゆうしゃのナイフが はんにんがそうびしている りゅうきのブラジャーを きりさいた!

犯人「クッ……せっかくの美少女のブラジャーをッ!」

はんにんは ゆうしゃからきょりをとり そうびしていたブラジャーをはずした!
そして ふところから あらたなブラジャーを とりだした!

犯人「しかし俺にはまだこれがある! ゲットしたばかりのブラが……即ちあんたのブラがな!」

犯人「あんたの魔法は俺には通用しない……つまり離れた距離からならあんたは俺に勝てない」

犯人「あとはもう逃げ切るだけだ。あんたから逃走するだけで……勝った……この俺の……」

はんにんは ゆうしゃ♀のブラジャーを そうびした!

ゆうしゃは くちもとをゆがめ しのびわらいをもらした……

勇者♀「……いいや。私の勝ちだ」

ゆうしゃは じゅもんをとなえた!
ゆうしゃにかかっている へんしんじゅもんがかいじょされ ゆうしゃのすがたがかわっていく!

ゆうしゃは ほんらいのすがたにもどった!

勇者「そう。君ではなく……」
  


644お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:57:00.36yAbJkxyo0 (18/21)

 
犯人「な……そ、その姿は! まさかッ!」

勇者「その通り。君は気づかなかったようだが、あの姿は仮初めのものでしかない」

勇者「そしてこの決定的な一言が、勝負を決する。君にとっての致命の言葉が」

犯人「や……やめろッ!」

ゆうしゃは しずかに はんにんにつげた……

勇者「――『私は男だ』」

ゆうしゃのことばに はんにんは どうようをかくしきれない!
はんにんのまりょくが みるみるうちにゆらぎ ちいさくなっていく!

犯人「そんなバカなッ! こ、この俺が……男の着けていたブラを……」

犯人「……グハァッ!?」

ドサッ

はんにんは くちからちをはき たおれてうごかなくなった!

ゆうしゃは はんにんをみおろしながら しずかにつぶやいた……

勇者「君の敗因はたったひとつだ、犯人。たったひとつのシンプルな答え」

勇者「……『君は私を怒らせた』」
 
 
 
犯人――再起不能(リタイヤ)
 


645お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:57:46.89yAbJkxyo0 (19/21)

 
――――――――――
翌日
城下町・勇者の部屋
 
 
 
勇者「というわけで、犯人は騎士団に引き渡した。これで事件は解決だ」

竜姫「……うむ。わらわの手で引導を渡せなかったのが心残りではあるがの」

呪術師「今朝からそればっかりだね、竜姫さん」

竜姫「当たり前じゃ! 勇者が止めねば、あそこで奴を仕留めておったものを」

勇者「あそこで街を焼いていたら、君にも大きな不利益が生じたと思うのだが」

僧侶「でも……これで、勇者さんの身の潔白は……証明されましたね……」

勇者「ああ。下着泥棒疑惑がかかったままでは、勇者としての行動に支障が出るからな」

呪術師「まあ、僕は信じていたよ? 君は真面目でいい奴だからね」

勇者「ありがとう」

呪術師「だからアパートのベランダの修繕費、早めに払ってね?」

勇者「わかっている。今回は色々と世話になってしまったな」

呪術師「ま、いいさ。なんだかんだで結構面白かったからね……じゃあ、僕はこれで」

じゅじゅつしは ゆうしゃのへやから でていった……
 


646VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/06/19(日) 15:58:05.17wVX+BX1AO (1/1)

あれ?俺がいる


647お題「勇者の活躍」 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 15:58:54.70yAbJkxyo0 (20/21)

 
竜姫「……」

竜姫「……おい、勇者」

勇者「? なんだ、竜姫」

竜姫「……まあ、その……アレじゃ。お前のことを疑って悪かった」

竜姫「なんというか……すまなかった。謝る」

勇者「……」

僧侶「……竜姫さん……」

竜姫「な……なんじゃその顔は! せっかくわらわが非を認め謝っておるというのに!」

竜姫「お、お前もじゃ勇者! 聞いておるなら何か言わぬか!」

勇者「いや……君の口から謝罪の言葉が出てきたので、正直面食らった」

僧侶「絶対……うやむやにして終わるって……思ってました……」

勇者「しかし、竜姫も私が思っているよりも大人だったということか」

僧侶「正直……すっごく意外でした……」

勇者「君を見くびっていたようだ。どうやら謝るのは私の方……」

竜姫「~~っ!」
 
 
 
ドゴォッ!

りゅうきの とびひざげりが ゆうしゃのあごをうちすえた!
ゆうしゃに 23のダメージ!
 


648 ◆6I9SwHc8xc2011/06/19(日) 16:00:31.64yAbJkxyo0 (21/21)

賢者のパンツをセタップしたいです。すいません、冗談です。でも嘘ではないです。

あと身長187センチの美女とか逆にビビってしまうレベルだと思います。


649VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/06/19(日) 16:03:19.61lbx0KRB4o (1/1)



何気に犯人が強すぎる


650VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/06/19(日) 16:05:59.54D/3XmenAO (1/1)

>>648

乙です。

セタップで吹いたw



651VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/06/19(日) 19:32:21.393RytFH2AO (1/2)

なんじゃこりゃwwwwww


652VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/06/19(日) 19:34:09.903RytFH2AO (2/2)

さげ忘れスマン

そして乙


653VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/19(日) 19:37:15.28iAldKE4co (1/1)

いつも乙


654VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/19(日) 19:55:36.13alhic9EDO (1/1)




655VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/06/19(日) 21:57:36.63ovbBcdplo (1/1)

僧侶の下着はいただいておきますね。とりあえず乙!面白かった


656VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/06/19(日) 22:56:42.892/hFf7hAO (1/3)

犯人……お前もまた強敵(とも)だった

それはそうと俺は盗賊のパンツをセタップしたいぜ


657VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/06/19(日) 22:57:36.472/hFf7hAO (2/3)

犯人……お前もまた強敵(とも)だった

それはそうと俺は盗賊のパンツをセタップしたいぜ


658VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/06/19(日) 23:02:01.162/hFf7hAO (3/3)

連投してしまったスマン


659VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県)2011/06/19(日) 23:31:23.729c2Jx+8Ro (1/1)

ゴールデンティスティクルだと?


660VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/06/20(月) 11:34:41.97/Rhzs3ZAO (1/1)

確かに身長187センチの女性を前にしたらビビってしまうかもしれないな
それが美人なら尚更


661VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/06/20(月) 15:23:07.92Nmqd+EqSo (1/1)

乙した
竜姫と僧侶がすごくかわいかった

犯人まじで許せねぇ竜姫のパンツでくそー


662VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/20(月) 20:30:29.328SHskilDO (1/1)


きっと犯人は勇者と同じベクトルの魔法使いだなw媒体が女性の下着か通貨ね差だけっぽいしwww

あと勇者!竜姫の下着洗う役目交代してくれ!!


663VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/06/20(月) 21:22:55.54tMJxB7Nl0 (1/1)

竜姫の下着をクンカクンカしたりセタップしたりしたのがバレたら命はないな

あの勇者だからこそ、竜姫も無遠慮かつ無警戒に洗濯を任せてるんだろうなぁ


664VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/20(月) 22:34:17.4626qoWXgIO (1/1)

セタップ!キリッ




665VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/06/20(月) 23:02:08.88MTkDwfKpo (1/1)

セッタープッ!!!\(^o^)/


666VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/29(水) 13:16:08.00rT/wfdaIO (1/2)


セタップ\(^o^)/


667VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/29(水) 13:16:08.18rT/wfdaIO (2/2)


セタップ\(^o^)/


668VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/06/29(水) 13:34:33.23ivierC/AO (1/1)

セタップ/^o^\


669VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/06/29(水) 18:29:06.49Bn0mbXQxo (1/1)

横島を思い出した


670VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2011/07/04(月) 11:34:32.19o6G9FF7S0 (1/1)

乙です。


671VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/07/09(土) 14:51:08.97tYYLkZmAO (1/1)

追い付いた


672VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/15(金) 16:43:36.86+NwG1qsDO (1/1)

お題も楽しいが本編進めてください
待ち遠しすぎる


673VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県)2011/07/28(木) 18:28:19.71zR6MbPRao (1/1)

はよ


674 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:14:47.71nuQeG0MM0 (1/12)

 
――――――――――
同日
火竜山脈・竜王軍拠点 
 
 
りゅうおうは こだいまほうにかんするしょもつを よみあさっている……

竜王「……なるほどな。古代魔法なんて言っても、現代の魔法と根本的な部分は変わらねぇ」

竜王「要するに魔法を行使するには代償が要る。攻撃、回復、補助、召喚、それら全てにだ」

竜王「多くの場合、術者の精神エネルギーだが……こいつはちっとばかり事情が違う」

竜王「最ッ高だぜ……イカレてやがる。一部のエルフにのみ口伝で伝わってるのも納得だ」

竜王「……ん?」

ザッザッザッ……

竜人A「竜王様、ちょいとお話が」

竜王「……なんだ、テメェか。どうした」

竜人A「ええ、あのエルフの長老なんですがね。てんでダメですよ」

竜王「まだ口を割りやがらねぇのか」

竜人A「それどころか、飯も食わなきゃ水も飲もうとしません。頑固な野郎ですよ」

竜王「敵から施しを受けたくねぇんだろうよ。これだからエルフってのは頭が固くていけねぇな」

竜人A「見上げた根性ですよ。だいぶ痛めつけてやったってのにピンピンしてます」
 


675 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:15:57.15nuQeG0MM0 (2/12)

  
竜人A「古代魔法の秘儀……天地魔界を統べる力の秘密ってのは、野郎しか知らねぇんでしょう?」

竜王「そうらしいな。だからあの混乱に乗じて長老を掻っ攫ってきたんだろうが」

竜人A「しかし、そんなとんでもねぇ魔法ってのはどんなモンなんでしょうね?」

竜人A「俺達にゃ想像もつかねぇ話ですが、その辺り竜王様はどうお考えで?」

竜王「お前が気にすることじゃあねぇ。それより、周辺地域の警戒を怠るんじゃねぇぞ」

竜人A「エルフ達が長老を助けに来るってことですか?」

竜王「それだけじゃねぇ。人間どもがエルフと結託したという情報も入ってんだ」

竜王「魔王の動きも掴めてねぇ。あのガキはどう動くか……」

竜人A「……お嬢も、ですか?」

竜王「それこそお前が気にすることじゃねぇな」

竜人A「失礼しやした」

竜王「わかってんならいい。とっとと仕事に戻れ」

竜人A「へい」

ザッザッザッ……

竜王「……」

竜王(クソ人間どもに田舎者のエルフ、出来損ないのガキが率いる魔王軍……)

竜王(いいねぇ、いいじゃねぇか。面白くなってきやがった)

竜王(さぁて、これからどうなっていくのか見物だぜ……)
 


676 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:16:54.24nuQeG0MM0 (3/12)

 
――――――――――
同時刻
獣王領
 
 
魔王「なんだよ……久々の再会にしちゃあ、刺激的すぎるぜ……」

魔王「だろ……? 獣姫ちゃん……」

まおうをみおろす じゅうじんのしょうじょは くちもとにきょうぼうなえみをうかべ
まおうのせなかを ブーツのかかとでふみにじる!

魔王「~~ッ!!」

獣姫「ごめんなさいね。でも、あたしはこういうのが好みなの」グリグリ

魔王「エ……SMプレイの趣味は……ないんだけどなぁ……」

獣姫「あなたの意見は聞いてない」

ガッ!

じゅうきは まおうをけりとばした!

魔王「ぐぅっ……!」

猫忍者「ま、魔王様! 大丈夫かにゃあ!?」

獣姫「あら、猫じゃない。今日は懐かしい顔によく会うわね」

獣姫「よく魔王様と一緒になってフカフカしてあげたっけ。あなた、柔らかくて気持ちいいのよね」

猫忍者「ほ、本当に……本当に獣姫様なのにゃあ!? 魔王様にこんな……」
 


677 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:17:29.11nuQeG0MM0 (4/12)

 
犀銃士「そうだ。獣王様の長女にして、獣王子様の妹君」

猿闘士「獣の王たる一族の正統なる血統に連なるお方だ」

象剣士「しかし、獣姫様がお出でにならずとも……」

獣姫「うるさいわよ、三獣士。アンタ達がスットロいのが悪いんだからね」

犀銃士「……申し訳ありません」

獣姫「ま、結果オーライよ。本来なら魔王城に刺客を送り込むつもりだったけど」

獣姫「結果的に魔王様はここに転がってるんだし……よしとしましょうか」クイッ

まおうは またたくまに さんじゅうしにとりおさえられた!

獣姫「犀と猿はそのまま魔王様を押さえといて。象は……」

猫忍者「ち、ちょっと待って欲しいのにゃあ! 魔王様をどうする気なのにゃあ!?」

獣姫「殺すけど?」

猫忍者「にゃ……!?」

獣姫「三獣士だって、御命頂戴って言ってたじゃない。聞いてなかった?」

猫忍者「それは……獣姫様の御意志だとは思わにゃくて……」

獣姫「ならこれでスッキリしたでしょ? これはあたしの意思、ひいては獣王軍の総意よ」

猫忍者「そんにゃ……」
 


678 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:19:44.79nuQeG0MM0 (5/12)

 
猫忍者「だ、だとしても、魔王様をやらせはしないにゃあ! いくら獣姫様とはいえ……」

獣姫「象。うるさいから押さえといて」

象剣士「了解しました」ガシッ

猫忍者「にゃにゃっ!? は、離すにゃあ!」

獣姫「それから魔王様? 機械王を使って逃げようなんて考えない方がいいと思うわ」

獣姫「機械王があたし達を蹴散らすのと象が猫の首をへし折るの、どっちが速いかしらね」

魔王「……!」

獣姫「あんまり手間かけさせないでくれる? そうそう、大人しくしていてくれればそれでいいの」

猫忍者「ま、魔王様……俺様には構わにゃいで逃げるにゃあ!」

魔王「ダメだ、猫。お前を見捨てられるかって」

猫忍者「魔王様……!」

魔王「……獣姫ちゃん。何でこんなことをするんだ」

獣姫「当ててみる? 魔王様に当てられるかしら」

魔王「オレが憎いから?」

獣姫「はずれ」

魔王「オレを人質にして身代金を要求とか」

獣姫「それも考えてはいたけど、でもそれが全てじゃないわね」
 


679 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:21:04.75nuQeG0MM0 (6/12)

 
魔王「金じゃないならモノかい? 魔王城に何かすごいものが眠ってて、それを奪おうとしてる」

獣姫「半分当たり。でも、魔王城にはあたしが求めるものはない」

魔王「……竜王にオレを殺すようそそのかされた」

獣姫「……」

魔王「当たりなのか?」

獣姫「そそのかされたっていうのは違うけどね。まあ概ね当たり」

獣姫「なんてことはないわ。向こうがいい話を持ち込んで、あたしが竜王側につこうって決めただけ」

魔王「どうして? 獣王子を殺したのはあのオッサンなんだぞ!?」

獣姫「竜王が古代魔法を持ってるからよ」

魔王「え……!?」

まおうののうりに りゅうおうのはなった すさまじいいりょくのまほうが よみがえった……

獣姫「生き残りから報告を受けて、あたしも独自に調べたのよ。古代魔法に関してね」

獣姫「現存する資料も殆んどない。伝説や言い伝えが残っているばかりだったけど」

獣姫「神話の時代の原初の魔法。伝え聞くところによると、それには黄泉帰りの呪文があるの」

魔王「黄泉帰り……?」

獣姫「今ある蘇生呪文は、死後一定以上の時間が経ってしまうと肉体に魂を呼び戻せない」

獣姫「肉体の損傷が激しくても成功率は大きく落ちるし、未完成の部分も多いけど」

獣姫「古代魔法にある黄泉帰りの呪文はそうじゃない。死者を完全に蘇らせることができるの」
 


680 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:22:34.42nuQeG0MM0 (7/12)

 
魔王「金じゃないならモノかい? 魔王城に何かすごいものが眠ってて、それを奪おうとしてる」

獣姫「半分当たり。でも、魔王城にはあたしが求めるものはない」

魔王「……竜王にオレを殺すようそそのかされた」

獣姫「……」

魔王「当たりなのか?」

獣姫「そそのかされたっていうのは違うけどね。まあ概ね当たり」

獣姫「なんてことはないわ。向こうがいい話を持ち込んで、あたしが竜王側につこうって決めただけ」

魔王「どうして? 獣王子を殺したのはあのオッサンなんだぞ!?」

獣姫「竜王が古代魔法を持ってるからよ」

魔王「え……!?」

まおうののうりに りゅうおうのはなった すさまじいいりょくのまほうが よみがえった……

獣姫「生き残りから報告を受けて、あたしも独自に調べたのよ。古代魔法に関してね」

獣姫「現存する資料も殆んどない。伝説や言い伝えが残っているばかりだったけど」

獣姫「神話の時代の原初の魔法。伝え聞くところによると、それには黄泉帰りの呪文があるの」

魔王「黄泉帰り……?」

獣姫「今ある蘇生呪文は、死後一定以上の時間が経ってしまうと肉体に魂を呼び戻せない」

獣姫「肉体の損傷が激しくても成功率は大きく落ちるし、未完成の部分も多いけど」

獣姫「古代魔法にある黄泉帰りの呪文はそうじゃない。死者を完全に蘇らせることができるの」
 


681 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:23:38.14nuQeG0MM0 (8/12)

 
魔王「……そいつぁすごいや。竜王も欲しがるわけだ」

獣姫「あたしもそれが欲しい。だから竜王からそれを奪おうってことよ」

魔王「表面上だけあのオッサンに尻尾を振って、チャンスを待つってのか」

獣姫「報告によれば、竜王はエルフの里に伝わる古代魔法の書物を奪っていった」

獣姫「何しろ数万年前のモノよ。100%解読できたとも思えない」

獣姫「チャンスは必ず巡ってくる。古代魔法さえ手に入れば……」

魔王「オレの命は竜王へ近づくための手土産ってわけ?」

獣姫「そうよ。魔王様の命で竜王の信用を買って、奴に近づく。そして古代魔法を奪う」

獣姫「どの勢力の側についたところで勝算は五分五分。なら、あたしは自分の目的のために動くわ」

魔王「……やめようぜ。やめてくれよ、こういうの」

魔王「相手がオレだからよかったものの、もし親父や兄貴達だったら笑って済ましちゃくれないぜ?」

魔王「だからやめよう。今すぐ、こんなこと……」

バシィッ!

じゅうきは まおうのほおに ひらてをくらわせた!

獣姫「今更やめると思う?」

魔王「……オレは獣王子を連れてきたんだ。あいつ、家に帰りたがってるに違いないから」

獣姫「黙りなさい」

バシィッ!

じゅうきは ふたたび まおうを ひらてうちした!
 


682 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:25:22.63nuQeG0MM0 (9/12)

 
魔王「久しぶりに獣姫ちゃんにも会えて嬉しかったぜ。ちょっと手荒な歓迎だけど」

獣姫「命乞いのつもり?」

じゅうきは まおうのかおをつかんで めとめをあわせた

まおうは くちびるのはしから ちをながしながら つづけた……

魔王「地上で素敵なガールフレンドも見つけた。獣姫ちゃんもきっと仲良くなれる」

獣姫「だから?」

魔王「今ならまだ間に合うんだよ。オレは君を許したい。これ以上友達をなくしたくない」

獣姫「……」

魔王「……頼む。オレ、魔王だから……獣王軍が表立って反抗するなら潰すしかなくなる」

獣姫「ご忠告痛み入るわ。まさか魔王様がそんなこと言うなんて」

魔王「立場ってやつだよ。わかるだろ? 仮にも獣王や獣王子の後を継いだのなら」

獣姫「まだ状況がわかってないみたいね。それがあたしの『立場』なの」

魔王「……君の口からそんな言葉は聞きたくなかった」

獣姫「残念がるならご勝手に。あたしを哀れむならどうぞご自由に。パパと兄さんによろしくね」

じゅうきは するどいつめをきらめかせ みぎてをふりあげた! 

魔王「……ッ!」
 


683 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:26:41.36nuQeG0MM0 (10/12)

 
そのとき だいちがゆれ じめんをくだきながら なにかがとびだした!

じめんのなかから ドリルモグラA・Bが あらわれた!

獣姫「なっ!? ……まさか!」

犀銃士「こいつら……!」

猿闘士「機械王の手の者か!」

ドリルモグラは サイじゅうしとサルとうしに たいあたりした!
じゅうきは すかさずそのばからとびのき まおうは こうそくからかいほうされた! 

魔王「機械王が体内に手下を飼ってるのは知っての通りだけど、こういう奴らもいたのさ」

獣姫「チィッ……象!」

魔王「遅いぜ、獣姫ちゃん」

まおうは じゅもんをとなえた!

ゾウけんしが ねこにんじゃのくびをへしおろうと うでにちからをこめたが
ねこにんじゃのからだは こうてつとかし あらゆるこうげきをうけつけない!

象剣士「鋼鉄変化……! 魔王様がこんな呪文を使えようとは」

魔王「その通り。これで猫にはお前らの攻撃は効かない」

魔王「呪文が効いてるうちは指一本動かせないし口も聞けないけど、命と引き換えにはできないしね」

ドリルモグラA・Bは まおうのさゆうにじんどっている
ドリルモグラAは まおうに こうてつのスコップをてわたした!

魔王「……あんまりカッコよくないなぁ。ま、贅沢は言ってられないか」

まおうは こうてつのスコップを そうびした!
 


684 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:27:32.02nuQeG0MM0 (11/12)

 
獣姫「……流石ね。昼行燈を装ってても、やっぱり魔王の血筋ってこと」

魔王「驚いてくれるのは嬉しいけど買い被りすぎさ。オレは見たまんまのチャランポランだよ」

魔王「友達一人助けることもできない、つまんない男さ」

獣姫「……三獣士。ここはアンタ達に任せるわ。魔王様を始末しなさい」

犀銃士「御意」

魔王「おっと、どこ行くんだよ獣姫ちゃん。野暮な奴らはうっちゃって、二人でデートしようぜ」

獣姫「そう? じゃあ尚更帰らなきゃ。魔王様とのデートにピッタリの服を選ばなきゃね」

じゅうきが ゆびをならすと そらからガルーダがおりたった!
ガルーダのあしが じゅうきのかたをつかみ ガルーダはおおきくはばたいた!

魔王「……そりゃ楽しみだな。オレ、オシャレした獣姫ちゃんはすごく可愛いと思うぜ」

獣姫「誰にでもそう言うくせに」

魔王「オレはデートコースを考えとくよ。決まったら迎えに行くから、待ってて欲しいな」

獣姫「遅刻はNGよ? くれぐれもあたしの気が変わらないうちにね」

ガルーダはじゅうきとともに そらたかくまいあがり すぐにみえなくなった……

魔王「……さて」

魔王「悪いけど、デートの待ち合わせ時間は厳守しろってのがウチの家訓なんだ」

まおうは こうてつのスコップをかまえ じゅもんをとなえた!
まおうのこうげきりょくが 2ばいになった!

魔王「オレの代からね」
 


685 ◆6I9SwHc8xc2011/07/29(金) 20:29:04.74nuQeG0MM0 (12/12)

男所帯のサークルで「彼女募集中」と言うのも寒いので、
「彼氏も併せて募集中」と言ったらノンケはお断りと解釈されました。
違うよ俺はゲイじゃないよ! 女も好きだよ!


686VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/07/29(金) 20:37:48.43ftxbUIl7o (1/1)

ちょっとこっち来ないでください


687VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県)2011/07/29(金) 20:41:49.45VLfPoFOxo (1/2)

俺の穴貸すよ


688VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県)2011/07/29(金) 20:42:18.31VLfPoFOxo (2/2)

俺の穴貸すよ


689VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/29(金) 20:43:06.06cYxpN/Edo (1/1)

なんと奇遇な!


690VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/07/29(金) 20:45:36.35r9sGQMfPo (1/1)

くす。魔王が勇者を狙うのも時間の問題?
それはともかく乙!魔王もやっぱり魔王を名乗るだけあって決めるときは決めるね!


691VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県)2011/07/29(金) 22:22:22.35zst/DKZRo (1/1)

ホモ以外は(ry


692VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/29(金) 23:54:08.73e5CI75/SO (1/1)

追い付いた乙!
学者な勇者って面白いなあ!
なんだかんだいってキメる魔王もなかなか


693VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/30(土) 01:52:17.955W407Bi9o (1/1)

乙っす。

(´・ω・`)つ□⇦人肌な温かさのこんにゃく


694VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/07/30(土) 13:42:49.52N5epV34AO (1/1)

女「も」……?

それはともかく乙
猫忍者と獣姫でケモナー需要もバッチリですね


695VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/31(日) 01:23:38.27LL+4qJuIO (1/1)

勇者の出番はまだか!


696VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/31(日) 03:27:27.04LHfdQ+hAO (1/2)

今魔王が絶賛イケメン化中だから
勇者や僧侶や竜姫の出番がないのも仕方ない


697久々の初期パーティ3人 ◆6I9SwHc8xc2011/07/31(日) 20:09:47.58dkk2zqFW0 (1/4)

 
――――――――――
とある昼下がり
 
 
盗賊「そういえば、前から聞こうと思ってたんだけどさ」

勇者「?」

盗賊「アンタ達、あたしが仲間になる前は怪しい商売で稼いでたんだって?」

賢者「……あんまりあの時のことは思い出したくないです」

盗賊「前に聞いた限りじゃ、薬草に魔法石にマジックアイテム、占いの道具とか」

盗賊「全部王宮の認可が必要な品だよ。専門業者との利権とか、癒着もある」

勇者「武器・防具関連の業者と王国軍、それに各種研究機関の関係も取り沙汰されているな」

賢者「勇者さんは王立魔法研究所にいたんでしょう? その辺は知らないんですか」

勇者「私も所詮、一介の研究員にすぎない。そこで得られる情報などごく限られている」

盗賊「……しかし、アンタも大した悪党だよ。思いついても実行するかね普通」

勇者「騎士団の手入れをかわすのには苦労させられたよ。流石は王国が誇るエリート達だ」

賢者「そりゃあそうですよ。将来のボクの就職先ですから」

盗賊「あたしが捕まった時も大した手際だったよ。まさかアジトを突き止められちまうなんてね」

勇者「賄賂を受け取らない役人は優秀だ。それは歴史が証明している」

賢者「ということは、賄賂を贈ろうとしたんですね……」
 


698久々の初期パーティ3人 ◆6I9SwHc8xc2011/07/31(日) 20:11:29.08dkk2zqFW0 (2/4)

 
盗賊「まあそれはいいさ。今はアンタのおかげで自由の身だしね」

賢者「……一応聞いておきたいんですけど、勇者さんのところから逃げ出そうと思ったことは?」

盗賊「今のところはないよ。勇者がいなきゃ、少なくとも向こう3年は檻の中だったし」

勇者「恩に着る必要はない。私には君が必要だった。だからスカウトした。それだけのことだ」

盗賊「アンタにとってはそうでも、あたしにとっては違うのさ」

勇者「確かにそうだが、私は、君の自由意思を必要以上に束縛するつもりはない」

盗賊「やめたくなったらいつでもやめろって? そういうアンタだからついていく気になったんだよ」

盗賊「なんなら一生ついてってあげるよ。あたしら、いいパートナーになれそうじゃないか」

賢者「と、盗賊さん!? な、な、な、何を血迷ったことを……」

勇者「そうだ、盗賊。魔王討伐を成したら私についてくる必要もなくなる」

盗賊「あはは、冗談だよ。そんなに焦らなくても大丈夫さ」

賢者「別に焦ってません! ボ、ボクだってこんな人格破綻者と一生なんてお断りの願い下げです!」

勇者「先程から君は何を言っているんだ」

賢者「勇者さんはわからなくて結構です!」

勇者「そうなのか……」
 


699久々の初期パーティ3人 ◆6I9SwHc8xc2011/07/31(日) 20:12:13.20dkk2zqFW0 (3/4)

 
盗賊「そういう賢者はどうなんだい? アンタは勇者のお供をやめようって思わないのかい?」

賢者「そんなのしょっちゅうですよ。だって勇者さんですよ?」

賢者「ボクに恥ずかしい格好はさせるし、変な実験に付き合わせるし、最悪です」

勇者「君は意外と根に持つタイプだな」

賢者「忘れるわけないじゃないですか。ボクにあんな辱めをしておいて……」

盗賊「じゃあアンタは勇者のこと嫌いなのかい?」

賢者「そ、それは……確かに、矯正してほしい人格的欠陥はままあるとしても?」

勇者「君は私をそんな風に思っていたんだな」

賢者「シャラップ! まあ、その……ボクもいい加減、勇者さんとは付き合い長いですから」

賢者「……勇者さんのことは、嫌いじゃないです」

盗賊「ふ~ん?」ニヤニヤ

賢者「べ、別にそういうアレじゃないですからね。ただ一研究者として尊敬に値すると」

勇者「私も君に敬意を表するよ。君が在学中に発表した魔法体系論はとても参考になったからな」

賢者「え、あ、ありがとうございます……」

勇者「私は君達をお供にしてよかったと思っている。感謝しているよ」

盗賊「……参っちまうね、まったく。こういう奴なんだから」
 


700 ◆6I9SwHc8xc2011/07/31(日) 20:13:28.87dkk2zqFW0 (4/4)

勇者・賢者・盗賊の初期メンバー3人が再会するのはいつなのか……
まあしばらくの間は魔王の活躍にご期待ください


701VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県)2011/07/31(日) 20:15:43.63cQrc8C3go (1/1)

激烈乙


702VIPにかわりましてNIPPERがお送りします()2011/07/31(日) 22:16:36.84XDvChrpbo (1/1)

>>700 乙!


703VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/31(日) 22:33:38.86LHfdQ+hAO (2/2)

やはり賢者はツンデレだったのか……乙


704VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/01(月) 07:42:00.80n+t4ylXIO (1/1)

更新が待ち遠しい④


705VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/01(月) 10:54:14.86n9tkQG7AO (1/1)

魔王がこのままイケメン化したら加速度的にモテそうだけど
そんなの魔王じゃない的な寂しさも感じるだろうな


706 ◆6I9SwHc8xc2011/08/03(水) 23:36:49.008GxLdnyu0 (1/10)

 
――――――――――
数分後 
獣王城
 
 
バサッ……バサッ……

じゅうおうじょうのテラスに ガルーダにつかまったじゅうきが おりたった! 
 
獣姫「ご苦労様。アンタはバードマン偵察隊に合流して、引き続き魔王様の動向を見張って頂戴」

ガルーダ「クワーッ」バサッ

獣姫「さてと……魔王様が三獣士相手にどこまでやるかしら」

獣姫「元々分の悪い勝負だったけど、あたしって奴はつくづく土壇場のツキがないのよね」

獣姫「……実際のところ、それはウチの一族全部に言えるのかもしれないけど」

獣姫「……誰か! 誰かいるかしら?」

シュバッ

鎌鼬「ここに」

一角兎「獣姫様、どうされました」

獣姫「魔王様が来るかもしれないの。歓迎の準備をしておいて」

鎌鼬「魔王様が……?」

一角兎「しかし三獣士が動いているのでは」

獣姫「油断大敵ってやつよ。それに、用心はしすぎて困るってことはないわ」

獣姫「……特に、あの人は魔王なんだからね」
 


707 ◆6I9SwHc8xc2011/08/03(水) 23:38:13.898GxLdnyu0 (2/10)

 
――――――――――
同時刻
獣王領内の林
 
 
ギィンッ!

象剣士「……流石は魔王様。侮れませんな」

魔王「だったら黙って帰りな。デートの時間に遅れちまうよ」

ゾウけんしは まおうのスコップを はねのけた!
まおうは すかさずたいせいをととのえ じゅもんをとなえた
まおうのすばやさが 61あがった!

まおうは じめんをけり はげしくきりかかった!

猿闘士「……させんッ!」

サルとうしが まおうとゾウけんしのまえに たちはだかった!
サルとうしに 54のダメージ!

魔王「邪魔だ!」

まおうは じゅもんをとなえた!
かぜのやいばが サルとうしをきりさく!
サルとうしに 29のダメージ!

猿闘士「ぐ……だが!」

サルとうしは そのばからとびのいた!

サルとうしとゾウけんしのうしろでは サイじゅうしが たいほうをかまえていた!
 


708 ◆6I9SwHc8xc2011/08/03(水) 23:39:54.388GxLdnyu0 (3/10)

 
犀銃士「お覚悟を」

ドォンッ!

サイじゅうしのたいほうが ひをふいた!
しかしそのとき ドリルモグラAが まおうのまえにとびだし まおうをかばった!

ドリルモグラAは こなごなにくだけちった!

魔王「……ッ!」

まおうは じゅもんをとなえた!
たちのぼるけむりをきりさき むすうのこおりのやいばが サイじゅうしにさっとうした!

ふたたびサルとうしが サイじゅうしをかばった!
サルとうしに 61のダメージ!

そしてゾウけんしが とびだし はげしくきりかかってきた!
まおうは スコップのえで こうげきをうけとめる!

魔王「畜生、いいチームワークだな」

象剣士「お褒めに与り恐悦至極」

魔王「そのチームワークを活かしてスポーツでもやってろよ。精一杯応援してやるからさ」

ドウッ!

ゾウけんしのけんを はらいのけると あしもとのじめんがはぜた!
サイじゅうしのたいほうは いまだ まおうをねらっている……
 


709 ◆6I9SwHc8xc2011/08/03(水) 23:41:21.618GxLdnyu0 (4/10)

 
――――――――――
 
 
 
獣姫「ママは? 今どうしてるの」

鎌鼬「奥方様は……お変わりありません」

一角兎「この時間なら、食堂の方にいらっしゃるかと」

獣姫「そう。ありがと」

一角兎「ですが獣姫様。奥方様は……」

獣姫「……なに? 何か言うことでもあるの?」

鎌鼬「いえ……恐れながら申し上げますが、奥方様はもう」

獣姫「言っておくけど、あたしはパパや兄さんみたいに寛大じゃないわよ。それでもいいの?」

鎌鼬「……ッ」

獣姫「アンタ達は引き続き城の警備。何かあったらすぐに報告して。いいわね」

一角兎「……御意」

ザッザッザッ……

じゅうきは しろのしょくどうまで あるいていった
しょくどうにある おおきなテーブルには 4にんぶんのしょくじがよういされ
ひとりのじょせいが せきについていた……

???「あら……帰ってきてたの、獣姫?」

獣姫「……うん、ママ」
 


710 ◆6I9SwHc8xc2011/08/03(水) 23:42:35.688GxLdnyu0 (5/10)

 
獣王妃「あなたのことを待ってたのよ。お父さんも獣王子もお腹を空かせてるわ」

獣姫「ごめんごめん、ちょっと急な用事ができちゃって」

じゅうきは いつもすわるせきについた
じゅうおうひは だれもいないせきにむかって したしげによびかけていた……

獣王妃「別に不思議じゃないわ、あなた。獣姫だってもう大人なのよ。こういうことだってあるの」

獣王妃「獣王子も心配性ねぇ。大丈夫、あなたの妹じゃないの」

獣王妃「この子もお父さんの若い頃にそっくりだけれど、子煩悩なところも似るのかしら?」

獣王妃「あらあら……いよいよ獣王子も反抗期かしら。うふふ……」

獣姫「……」

じゅうきは テーブルのしたで りょうてをつよくにぎっていた
じゅうきのてのひらに つめがくいこんで ちがにじんでいる……

獣姫(パパと兄さんが死んで、ママは壊れちゃった)

獣姫(今だって、いもしないパパや兄さんと一緒に楽しく食事してる)

獣姫(いっそ、パパと兄さんは死んだんだって現実を突き付けて、ママも完全に壊しちゃおうか?)

獣姫(……ううん。ママがおかしくなってるのは今だけ)

獣姫(古代魔法さえ手に入れば、パパと兄さんが生き返ればきっと……)

獣王妃「……どうしたの、獣姫? 元気ないわねぇ」

獣姫「……ごめん、ママ。あたしちょっと食欲ないの」

獣王妃「あら……きっと疲れてるのね。休んでらっしゃい? ねぇ、お父さんもそれがいいって」

獣姫「うん……ごめんね」

じゅうきは しずかにせきをたって しょくどうをでていった……
 


711 ◆6I9SwHc8xc2011/08/03(水) 23:44:41.198GxLdnyu0 (6/10)

 
――――――――――
 
 
 
魔王「機械王!」

機械王「――ラジャー」

きかいおうのからだから いきおいよくじょうきがふきだした!
しゅういはまたたくまに ふかいきりに つつまれていく……

犀銃士「噴霧装置だと……!?」

まおうのすがたが きりにかくれて みえなくなった!

猿闘士「機械王にそんな機能があったとは……」

象剣士「ええい、魔王様はどこにいるのだ」

バッ!

きりのなかから まおうがとつぜんあらわれ サルとうしにおそいかかる!
サルとうしに 12のダメージ!

サルとうしが はんげきをこころみるまえに まおうのすがたは きりのなかにきえていく……

猿闘士「小細工を……!」

犀銃士「猿! ここは一箇所に固まって守りを固めろ!」

猿闘士「言われるまでもない!」

ふたたび きりのなかから まおうがとびだした!

象剣士「我らの盾となる猿を先に倒すつもりか……そうはさせん!」

ゾウけんしは とびかかってきたまおうを げいげきした!
 


712 ◆6I9SwHc8xc2011/08/03(水) 23:46:28.758GxLdnyu0 (7/10)

 
ゾウけんしのけんが まおうをきりさいた!

しかし まおうのすがたが ゆがんだかとおもうと まおうはきえてしまった!

象剣士「な!?」

ガランガラン……

あとには はかいされたよろいが ころがっている……

象剣士「これは……!?」

ゾウけんしが ふしんにおもうまもなく なおもきりのなかから まおうがおそいかかる!

猿闘士「小癪な!」

ガキィッ!

まおうのすがたがゆがみ くだけちったゴーレムがあらわれた!
さんじゅうしをこうげきしたまおうは すべて モンスターのぎたいだった!

犀銃士「なるほど……この霧に虚像を映し、我らを欺くつもりか」

猿闘士「ならば……この霧を全て吹き飛ばせばいいことだ!」

サルとうしは おおきくいきをすいこんだ!
サルとうしは もうれつないきおいで やけつくいきをふきだした!

しゅういにたちこめるきりが いっきにふきはらわれた!

きりがはれると しゅういには たすうのぶっしつけいモンスターが ひしめいていた!
しかし そこにまおうのすがたは なかった……

象剣士「逃げられたか……!」
 


713 ◆6I9SwHc8xc2011/08/03(水) 23:49:02.908GxLdnyu0 (8/10)

 
――――――――――
三十分後
獣王城・城門前
 
 
魔王「ハァ……ハァ……なんとか撒いたか?」

魔王「こんなにドキドキするデートは久しぶりだぜ。よりにもよって親友の妹だしさ」

魔王「……大丈夫か、機械王?」

まおうがよびかけると きかいおうのどうたいだけが そのばにうかんでいた
きかいおうのたいないには じゅうおうじのいたいをおさめた かんおけがはいっている……

機械王「――システムチェック・異常なし。死体保存装置・正常に作動中」

魔王「ならよかった。それにしても、お前って胴体ブロックだけで動けたのかよ。初めて知った」

機械王「――動体センサーに反応。警告」

ギィィィ……

じゅうおうじょうのもんが ゆっくりとひらかれていく!

もんのさきには じゅうきがまちかまえていた……

獣姫「ハロー、魔王様。結構早かったのね」

魔王「ああ、急いできたんだ。乗り物がエンストしたせいで徒歩だったけどね」

獣姫「そうなの。でも、魔王様のことだから、きっと素敵なプレゼントを持参してるんでしょう?」

魔王「勿論さ。今、君が一番待ち望んでいたものだって確信してるよ」

きかいおうのからだのハッチがひらき かんおけがおろされた
まおうは かんおけをひきずりながら いっぽずつ じゅうきのもとへあるいていった……
 


714 ◆6I9SwHc8xc2011/08/03(水) 23:49:48.158GxLdnyu0 (9/10)

 
――――――――――
 
 
 
ガキィンッ!

さまようよろいに 80のダメージ!
さまようよろいは バラバラにくだけちった!

犀銃士「これで最後か」

猿闘士「機械王の手下どもめ……思ったより手こずったな」

象剣士「急ぐぞ。獣姫様に何事かあっては……」

そのとき ゾウけんしは はいごにしのびよるけはいにきづいた!

ザシュッ!

象剣士「――ッ!?」

きゅうしょにあたった!
ゾウけんしは たおれた……

犀銃士「ぞ、象!?」

猿闘士「なんだ、何が……!?」

ザシュッ!

サルとうしのくびすじに どくばりがつきたてられた!
サルとうしは そくしした!

犀銃士「な……き、貴様!」

??「……」

サイじゅうしのまえには こくいをまとったおとこが たっていた……
 


715 ◆6I9SwHc8xc2011/08/03(水) 23:50:50.048GxLdnyu0 (10/10)

獣姫の脳内CVは田村ゆかりでした。一体何の作品の影響やら。
でも竜姫の脳内CVはまだ定まってなかったりします。


716VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/08/03(水) 23:57:59.43p1umvvDVo (1/1)




717VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/08/04(木) 00:04:30.20WDFkvdxFo (1/1)

乙乙
っ沢城みゆき


718VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/04(木) 01:58:33.73uYhnQhiAO (1/1)



竜姫なら小林ゆうとか斎藤千和とかどうよ


719VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/04(木) 07:24:16.86VkXNJiyIO (1/1)

おつん


720 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 10:24:19.32V3JG271v0 (1/15)

 
――――――――――
同時刻
獣王城・城門前
 
 
じゅうきは まおうがひきずってきたかんおけのまどから じゅうおうじのかおを みた……

獣姫「……兄さん、なのね?」

魔王「ああ。こいつを連れて帰れたのも猫のおかげだよ」

獣姫「……」

魔王「獣王子も、獣姫ちゃんが戦うことなんか望んでないと思う」

獣姫「……そう、かもね」

魔王「……」

魔王「……なあ、獣姫ちゃん。もういいだろ」

魔王「俺が今回のことを知らんぷりすればそれでおしまいなんだ。だから……」

獣姫「だから……何?」

魔王「何って……やめようって言ってるんだよ。さっきも言っただろ?」

魔王「竜王をぶちのめして古代魔法を奪うんなら、別にあいつらの側につかなくたって」

獣姫「ダメよ」

魔王「どうして!」

獣姫「魔王様の側についたとして、確実に竜王に勝てる保証はないわ」

獣姫「それならより竜王に近づける方が都合がいい。あたしの目的はあくまで古代魔法よ」
 


721 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 10:25:21.42V3JG271v0 (2/15)

 
魔王「大丈夫さ、オレには強い味方がたくさんいるんだ。獣姫ちゃんが不安に思うことなんかないよ」

魔王「あんなオッサン、オレがやっつけてやるさ。約束するよ」

魔王「古代魔法だって獣姫ちゃんにプレゼントする。天地魔界を支配するとかオレは興味ないしさ」

獣姫「……変わらないのね、魔王様は」

魔王「え?」

獣姫「今からもっと昔、魔王様が第三王子だった頃から、あなたは何も変わってない」

魔王「そうかな?」

獣姫「そうよ。今みたいに他人を安心させようとする時とか、特に」

魔王「変わらない良さってやつかな? オレってば昔っからイケメンのモテモテくんだしさ」

獣姫「ほら、また。そうやって照れ隠しでおどけてみせるのも、昔から変わってない」

魔王「へへ……まあね」

獣姫「でもどうしようもないことはある。魔王様だってわかってるでしょ?」

獣姫「いくら魔王様でも……魔王の地位と力があるとしても、取り返しのつかないものがあるの」

魔王「それは……」



魔王「……それは……」
 


722 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 10:26:03.39V3JG271v0 (3/15)

 
――――――――――
同時刻
獣王領
 
 
シュゥゥゥゥ……

てつのかたまりとかしていた ねこにんじゃのからだが じょじょにもとにもどっていく……

猫忍者「うにゃ……にゃにゃあ!?」

ねこにんじゃに かけられていたまほうが とけた!

猫忍者「い、一体何がどうなったのにゃあ……急に体が重くにゃったかと思ったら意識が……」

猫忍者「そ、そうにゃ! それよりも魔王様は!?」

猫忍者「……にゃあっ!?」

ねこにんじゃが しゅういをみまわすと そこにはバラバラになったぶっしつけいモンスターと
さんじゅうしのしたいが つみあげられていた……!

猫忍者「さ、三獣士が……魔王様がやったのかにゃあ?」

猫忍者「でも魔王様も獣姫様もいにゃい……どこへ行ったのにゃあ」

猫忍者「機械王の手足が転がっているのも気ににゃるけど、今はとにかく魔王様だにゃあ!」

猫忍者「どこかへ行くとすれば、この先にある獣王城……」

猫忍者「きっと魔王様はそこに向かっているはずだにゃあ!」

ねこにんじゃは じゅうおうじょうのほうへ かけだした!
 


723 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 10:26:50.05V3JG271v0 (4/15)

 
――――――――――
 
 
 
魔王「……違う。そんなんじゃない。オレ達がもっと言葉を費やすべきことは他にあるはずだ」

魔王「オレは君の本心が聞きたいんだ。どうしてオレの手を取ってくれないんだ?」

魔王「……どうして、オレと一緒に来てくれないんだ」

獣姫「……」

じゅうきは するどいつめをのばし かまえをとった!

魔王「獣姫ちゃん!」

獣姫「そんなの簡単……許せないからよ。あたしが魔王様を許すことができないから」

魔王「……」

獣姫「パパが死んだのは勇者のせい。兄さんが死んだのは竜王のせい」

獣姫「むしろ魔王様は兄さんを止めようと頑張ってた。そんなことわかってる」

獣姫「でも……それでもあたし、魔王様と昔のままでいられる自信がないの」

獣姫「パパと兄さんを助けてくれなかった魔王様が許せない。何もできなかった自分が許せない」

獣姫「逆恨みでも何でも、誰かのせいにして、誰かを憎まずにいられない」

獣姫「ママみたいに壊れてしまえれば、何も感じずに済んだのに……!」

魔王「……そんな……」
 


724 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 10:27:50.44V3JG271v0 (5/15)

 
獣姫「……ごめんなさい、魔王様。でも、あたしはあなたと一緒には行けない」

魔王「……」

魔王(……そうだ。オレがもっとうまくやれてりゃ、きっと今頃は)

魔王(勇者を早く叩いておけば、竜王の動向に気を配っていれば、オレが魔界を留守にしなければ)

魔王(全部たらればの話だけど、全部オレの責任でもあるんだ……)

魔王「……でも、オレはやっぱり獣姫ちゃんと戦いたくなんてない」

魔王「獣姫ちゃんがオレを許せない気持ちはわかるし、償いたいよ。少しでも君に報いたい」

獣姫「その方法はひとつしかないわ。少なくとも、あたしにはそれしか思いつかない」

魔王「オレの命が欲しいって言うならあげるよ。でも今はダメなんだ」

獣姫「どうして?」

魔王「竜王をぶちのめすのもそうだけど、竜姫ちゃんだっていなくなっちまった。探さなきゃ」

魔王「賢者ちゃんに盗賊ちゃんだって、いつまでもこんな辛気臭いところに居させられない」

魔王「それに竜王を倒しても、勇者は引き続き魔王討伐を再開する。それも片付けなくちゃだ」

魔王「今のオレには、やらなきゃいけないことがたくさんあるんだ。だから」

獣姫「……」

魔王「だから……少しだけ待ってて欲しいんだ。全部終わったら、オレの命でも何でもあげるから」

魔王「一生許さなくたっていい。それで獣姫ちゃんが生きていけるなら、それで構わない」

魔王「だから……頼むよ」
 


725 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 10:29:01.45V3JG271v0 (6/15)

 
獣姫「……ホント、魔王様って昔とちっとも変わってない」

獣姫「そうやって自分のことを簡単に投げ出してしまえるところとか、特に……」

魔王「オレが君に差し出せるものはそれだけだよ。それしか持ってないんだ」

獣姫「そんな約束して、ホントに……」

じゅうきが つめをひっこめて まおうにちかづいたそのときだった……

ジャキンッ!

機械王「――ラジャー」

ガシィッ!

まおうのはいごにいたきかいおうが きゅうにうごきだし
どうたいから かくしうでをのばして じゅうきのくびをつかんだ!

魔王「な……機械王!?」

獣姫「グ……あぁ……ッ」ギリギリ

きかいおうのうでが じゅうきのくびを つよくしめあげている……

魔王「何やってんだ、やめろ! その手を離せ!」

機械王「――管理者用上位パスからの指令を優先。状況を続行」

魔王「機械王! オレの言うことが聞けないのか!?」



??「無駄です、魔王様」
 


726 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 10:29:58.75V3JG271v0 (7/15)

 
まおうがふりむくと そこには こくいをまとったおとこがたっていた!
おとこが こくいのフードをぬぐと まおうは めをみひらいた……

魔王「側近くん……?」

側近「私は、機械王に最優先指令を出せる管理者用上位パスを所持しています」

側近「機械王は今、私の命令で動いています。魔王様の命令は受け付けません」

魔王「おい……どういうことだよ。なんで側近くんがここにいるんだ!」

魔王「いや、そんなことどうでもいい。側近くんがやらせてるんなら今すぐやめさせろ!」

側近「それはできかねます」

魔王「どうして!?」

側近「この者は魔王様に弓引く反逆者。罰するには十分すぎる理由かと」

魔王「違う! 獣姫ちゃんはオレの……」

側近「ご友人であったのかもしれませんが、今は違います」

魔王「……!」

側近「機械王。折れ」

機械王「――ラジャー」

魔王「やめろぉ!!」

獣姫「ま……おう……さま……」

魔王「獣姫ちゃ……!」
 


727 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 10:30:45.21V3JG271v0 (8/15)

 
 
 
 
  
ゴキッ
 
 
 
 
 


728 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 10:31:42.61V3JG271v0 (9/15)

 
魔王「……ッ!」

じゅうきのからだから ちからがぬけ いとのきれたにんぎょうのように
てあしがだらんとなげだされた……

きかいおうが じゅうきのくびからてをはなし じゅうきはじめんにおとされた

ドサッ

魔王「あ……あぁ……!?」

側近「直に親衛隊がここに来ます。後の始末は任せましょう」

魔王「……」

側近「何しろ獣王軍は魔王様を殺そうとした反逆者。一族郎党全員を厳しく処罰せねばなりません」

側近「では魔王様、我々は魔王城に戻りましょう。傷の手当てを」

魔王「……!」

バキィッ!

まおうはふりむいて そっきんをなぐりたおした!

魔王「お前ッ……なんで殺した、なんで獣姫ちゃんを……!」

側近「……私は、魔王様をお守りするようあなたのお父上から申しつけられておりますので」

魔王「親父はもう死んだんだぞ! そんな命令にいつまで従ってんだよ!」

側近「恐れながら申し上げますが……魔王様こそご自分のお立場を理解されていない」

側近「あなたは魔界の支配者、魔王なのです。あなたの命はあなた一人のものではあり得ません」

側近「それに今は戦時下。あなたにもしものことがあれば全軍の士気にも関わりますので」
 


729 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 10:32:55.04V3JG271v0 (10/15)

魔王「何だよそれ……オレが一番偉いんなら、オレの命令が優先だろ!」

側近「あなたの身に何事かあれば、魔王の一族の血筋は絶え、絶対的支配者を失ってしまいます」

側近「そうなれば再び魔界は混沌の時代へ逆戻り。魔界の秩序を保つためにも魔王様は必要なのです」

側近「ですから、今後は軽々しくご自分の命を賭けることなどないようにお願いいたします」

側近「……では魔王様。魔王城へ戻りましょう」

きびすをかえしてあるきさる そっきんのせなかをみながら まおうはきつくくちびるをかんだ

魔王「畜生……!」

そっきんといれかわるようにして ねこにんじゃがあらわれたが しばらくのあいだ 
まおうは そのばにたちつくしていた……
 
 
 

 _________|\   
|To Be Continued...   >
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/




730 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 10:34:20.10V3JG271v0 (11/15)

 _________|\   
|To Be Continued...    >
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/


矢印ェ……
「魔王が痛い目にあうようです」編が思ったより長くなったので自分でもビックリしました。
そろそろ勇者パーティの出番かもしれません。


731VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/05(金) 11:02:54.69ySHFUFnSO (1/1)

乙です
獣姫ちゃんうわあああ


732VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/05(金) 11:19:09.10A1AxkbmIO (1/2)

いつも楽しい乙
今後、機械王が忠実なる機械であることが、魔王には苦しいかもな


733VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/05(金) 13:50:44.68302Nj9BAO (1/2)



相変わらずゲストキャラに容赦ない作者やでぇ


734VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/05(金) 14:32:25.03kf5Keu8w0 (1/1)


魔王痛い目にあうってレベルじゃねぇ……


735時系列順にまとめてみた ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 18:31:21.80V3JG271v0 (12/15)

番外編「勇者、冗談を言う」
>>392-397

「勇者&賢者の旅立ち」
>>2-9
>>15-29

「勇者、盗賊をスカウトする」
>>45-51
>>66-71

番外編「初期パーティ3人の雑談」
>>697-699

即興ネタ「勇者、嘘をつく」
>>509-511

お題「宝くじ」
>>559-565

「勇者、獣王と戦う」
>>80-92

「魔王、決意する」
>>101-107
>>114

「勇者&僧侶と魔王&竜姫」
>>121-128
>>132-138

「大賢者とホムンクルス」
>>165-171
>>181-197

「竜王造反と獣王子の死」
>>218-231
>>248-259
>>268-288


736時系列順にまとめてみた ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 18:32:53.94V3JG271v0 (13/15)

「勇者&竜姫&僧侶、海に行く」
>>297-304
>>316-324
>>330-342

番外編「勇者、呪われる」
>>425-439

「魔王&賢者&盗賊、砂漠に行く」
>>355-364
>>370-378
>>467-468
>>403-414

お題「勇者の活躍」
>>627-647

「竜姫、王都に残る」
>>451-458
>>482-494

「魔王、魔界に戻る」
>>526-533
>>604-613
>>674-684
>>706-714
>>720-729


737 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 18:34:14.78V3JG271v0 (14/15)

いったん整理してみるために順番に並べ直してみた。
多分これで合ってると思います。


738VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/05(金) 19:13:07.62A1AxkbmIO (2/2)

整理乙
続きをいつも心待ちにしてっぜ


739 ◆6I9SwHc8xc2011/08/05(金) 21:30:49.34V3JG271v0 (15/15)

せっかくなので性懲りもなくお題募集

>>742


740VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/08/05(金) 21:34:40.20RrRaps400 (1/1)

賢者のデレ期到来


741VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/05(金) 21:45:45.51302Nj9BAO (2/2)

バレンタインデー


742VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/08/05(金) 21:59:31.423Oliz3Bso (1/2)

うっかり着替えを覗いちゃう


743VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/08/05(金) 22:00:40.453Oliz3Bso (2/2)

うっかり着替えを覗いちゃう


744VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/08/06(土) 17:49:09.55uI6+efgW0 (1/1)

勇者結婚しろよ


745VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/08/06(土) 18:15:23.33SNCaLsjuo (1/1)

勇者の恥ずかしい場面を賢者が目撃


746お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc2011/08/07(日) 02:16:05.87sYkCjTXv0 (1/8)

 
――――――――――

砂漠の村・村長の屋敷
 
 
ねこにんじゃとごうりゅうした そのよる
まおうたちは そんちょうのやしきに いっぱくすることになった

ゆうしょくのせきで とうぞくとメイドは おもいでばなしにはなをさかせていた……

盗賊「……で、結局あたしが、村のいじめっ子どもをとっちめに行ったってわけさ」

メイド「うんうん、あの時の盗賊はカッコよかったわぁ」

魔王「へぇ……盗賊ちゃんらしいなぁ」

賢者「盗賊さん、面倒見いいですもんね」

メイド「そうよ。盗まれてきた奴隷の私達に、まるで家族みたいに接してくれたんだもの」

メイド「覚えてる? 私がここに来たばかりの頃に暑さで倒れちゃった時、寝ずに看病してくれたの」

盗賊「そんなこともあったねぇ……そういう時に限って親父がいなくて困っちまってさ」

メイド「働けなくなった奴隷なんて捨てられて当たり前。ここで死んじゃうんだって思ったのに」

メイド「盗賊は何度も何度も励ましてくれたの。頑張れ、負けるなって」

メイド「アンタはここにいていい、あたしの家族だからって……」

盗賊「……よしておくれよ、恥ずかしい。それ何回もした話じゃないか」

賢者「あっ。盗賊さん、ひょっとして照れてますか?」ニヤニヤ

盗賊「バカ言うんじゃないよ。妹分の心配するのに何の不思議があるんだい?」
  


747お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc2011/08/07(日) 02:16:55.25sYkCjTXv0 (2/8)

 
メイド「……盗賊が王都に行くって言って出て行った時は、すごく心配だったけど」

メイド「無事に戻って来てくれてよかった。しかも勇者様のお供だなんて!」

盗賊「自慢になるようなもんじゃないよ。今は勇者と別行動だしさ」

メイド「そんなことないって。魔王をやっつけて世界を平和にするんでしょ?」

盗賊「……あー、えっと、最終的にはそうなるのかねぇ」チラッ

賢者「……多分、というか十中八九、そうなるんじゃないかと」チラッ

魔王「……ま、まあ? 意外と魔王っていい奴かもしれないし、わかんないけどさ?」キョロキョロ

メイド「世界を救う旅の仲間なんてこんな名誉なことはないじゃない。とっても素敵よ、盗賊」

盗賊「名誉ねぇ。あたしにゃピンと来ないけど」

メイド「盗賊は私達の誇りよ。私、この家に盗まれてきて本当によかった」

賢者「愛されてますね、盗賊さん」

盗賊「バカ。姉離れできてないだけだよ」

魔王「そりゃ無理もないよ。盗賊ちゃんのお姉さんっぷりが板に付きすぎてるからね」

盗賊「……まあ、悪い気はしないけどさ。それにしたってお互いいい年なんだから」

メイド「そんなの関係ないわよ。私、ずっとこのお屋敷で働くんだもの。他に行くところもないし」

賢者「そうなんですか? お給金で自由を買い戻そうと思ったことは?」

メイド「ううん。私は、盗賊のそばにいるのが何より幸せだって気付いたから……」

メイド「だから盗賊、早く帰ってきてね。私達みんな待ってるから」

盗賊「ああ、そのうちね」
 


748お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc2011/08/07(日) 02:18:10.37sYkCjTXv0 (3/8)

 
――――――――――
夕食後
村長の屋敷・談話室
 
 
魔王「あれ、賢者ちゃんは?」

盗賊「寝たよ。今日は色々あったからね。ま、お子様だから仕方ないさ」

盗賊「……それにしても、メイドの奴にも困ったもんだよ。全然進歩しちゃいない」

魔王「なんで? 可愛いじゃん、あの子」

盗賊「まあ、それはそうだけどね。あいつはあたしの可愛い妹分だけど」

盗賊「……あたしは、あの子にとても酷い仕打ちをしたんじゃないかって、不安になる時があるんだ」

魔王「何が?」

盗賊「メイドの話、聞いたろ? あの子が小さい時の」

魔王「ああ、盗賊ちゃんが寝ずの看病をしたって話?」

盗賊「……あの頃のあたしはね、何かにつけて卑屈なあの子の態度が気に食わなかった」

魔王「卑屈?」

盗賊「親父は、あたしが寂しくないように、友達にするようにってメイドを盗んできた」

盗賊「内心呆れたけど、あたしも友達が欲しかったから、メイドにもそういう風に接してたさ」

盗賊「でもあの子は、自分は奴隷だからって進んで働こうとする。あたしにもなかなか懐かなくて」
 


749お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc2011/08/07(日) 02:19:38.55sYkCjTXv0 (4/8)

 
盗賊「たまにメイドの手を引いて、外に遊びに行ったりした時もそうさ」

盗賊「あの子はよその親子や兄弟、家族なんかを羨ましそうに見つめてた。何も言わないで」

魔王「手の届かない、叶わない夢を見るみたいに?」

盗賊「そう。ガキの頃のあたしには、その目がたまらなく嫌だったんだよ」

盗賊「すぐ近くにあたしがいるのに、隣の芝生を羨んでばっかりなのがね」

盗賊「極めつけはメイドが倒れた時さ。あの子、熱で衰弱しながらどんな顔をしていたと思う?」

魔王「どんな顔さ?」

盗賊「『もうゴールしてもいいよね』って感じの、いかにも自分は不幸でございっていう顔」

盗賊「その時、あたしはそのひがんだ根性がもう我慢ならなかったけど、同時に理解もできたのさ」

盗賊「この子は誰かに愛されるのを待ってる。誰かに肯定されたくてたまらないんだって」

魔王「……仕方ないよ。だって奴隷の子供だったんだろ?」

盗賊「だね。牛や馬よりマシな程度の扱われ方しかされてこなかったなら、そう考えもするよ」

魔王「正直、オレにはわからない話だけど……」

盗賊「……だからあたしは、メイドと友達じゃなく家族になろうって思ったんだ」

盗賊「幸せな家族を羨むだけじゃなくて、自分も幸せな家族になれるんだって教えてやりたかった」

盗賊「あの時は、そのためにも絶対助けてみせる、って思いながら看病してたもんさ」

魔王「いい話だなぁ……やっぱり盗賊ちゃんは優しい子だよ、うん」
 


750お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc2011/08/07(日) 02:21:53.48sYkCjTXv0 (5/8)

 
盗賊「……でも、なんかねぇ」

魔王「?」

盗賊「あれ以来、妙にあたしにベッタリというか……もっと言うと依存しちゃってるみたいでね」

盗賊「あの子は親父に盗まれてきた子供ってこともあって、いじめられたりもしたから」

盗賊「何かとあたしが助けてやったんだけど……それがいけなかったのかねぇ」

魔王「それは難しい問題だなぁ……そういう時は助けてあげるべきだと思うし」

盗賊「人にも魔族にも寿命はある。生き物はいつか死ぬもの、そうだろ?」

魔王「そりゃそうさ。天寿を全うできる魔族なんて稀だけど」

盗賊「加えてあたしは勇者のお供、しかもこれから敵の本国に行こうってんだから……」

魔王「あ……ごめん。魔界に行くなんて言ってさ」

盗賊「いいよ、気にしなくて。アンタのしたいようにさせるって決めたんだから」

盗賊「……あたしが不安なのは、あたしがいなくなっちまったらメイドはどうするのかってこと」

盗賊「誰かに寄りかかってないと生きていけないんなら、あの子はどうなっちまうのかって」

盗賊「メイドは奴隷だったから他の暮らしを知らないし、この家に縛り付けただけじゃないかってさ」

魔王「……どうだろう。オレにはわかんないかな」

盗賊「あたしはね。メイドと家族になるっていう『今』と引き替えにして」

盗賊「あの子から『未来』を奪ったんじゃないかって、そう思えてならないんだよ」

盗賊「結局、全てはあたしのちっぽけな良心を満足させるためだったんじゃないかってさ」
 


751お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc2011/08/07(日) 02:22:50.49sYkCjTXv0 (6/8)

 
盗賊「そう思うとひどく後ろめたくてね。家に居づらかったっていうのも、都会暮らしの理由かな」

魔王「そうだったんだ……でも盗賊ちゃん、そのことをメイドちゃんには?」

盗賊「いや、話してないよ。いつかはちゃんと話しておかないとって思うけど」

魔王「……やっぱりさ、盗賊ちゃんって優しいよ。そうやって振り返れるんだし」

盗賊「どうかねぇ。少なくとも善意の人間ではないよ」

魔王「見返りを全く求めないとか、100%の善意とか、そっちの方が不自然だよ」

魔王「盗賊ちゃんはそうやって、メイドちゃんの将来まで考えて悩んでる。なかなかできないよ」

盗賊「罪悪感かもしれないね。あるいは、責任の取り方がわからなくて困ってるか」

魔王「……オレもさ、宿題を後回しにして後で焦るタイプだからよくわかるけど」

魔王「できるだけ早いうちにメイドちゃんに話して、姉離れできるようにしてあげなって」

魔王「ここで働く以外にも生き方があるし、メイドちゃんにはそれができるって教えてあげればいい」

盗賊「他の生き方……ねぇ」

魔王「例えば、オレみたいなモテモテくんと恋に生きるとかさ?」

盗賊「それはあの子を口説けてからにしな?」

魔王「難しいことじゃないよ。メイドちゃんが本当に望む生き方を見つけてあげるんだ」

魔王「それが、盗賊ちゃんにできる責任の取り方だと思うぜ」

盗賊「……そうかもね。アンタ、たまにはいいこと言うじゃないか」

魔王「へへ、だろ? オレってばシリアスな場面も似合っちゃうんだぜ」
 


752お題消化中に何故かこんな番外編ができた件 ◆6I9SwHc8xc2011/08/07(日) 02:24:42.43sYkCjTXv0 (7/8)

 
盗賊「……あの子への責任を取るためには、生きて帰らなくちゃね」

魔王「魔界はオレのホームだ。賢者ちゃんも盗賊ちゃんもオレが守ってみせるさ」

盗賊「頼りにしてるよ、魔王様?」

魔王「……あっ、今の結構グッと来た。盗賊ちゃん、もっかい言って! ね?」

盗賊「バーカ。これっきりだよ」

魔王「ちぇっ、残念……じゃあ、オレはもう寝るよ。おやすみ」

盗賊「ああ、おやすみ」

ザッザッザッ……

盗賊「……」

盗賊「……勇者の言ってたことを思い出しちまったよ」

盗賊「あたしの不器用さと優しさは時として災難をもたらす、ってね」

盗賊「どうしてあいつの言うことはいつもいつも正しいんだか。やってることは無茶苦茶なくせに」

盗賊「……勇者も魔王も、あたしが優しい人間だって言った」

盗賊「でも、こうして他人の人生狂わす程度には、無責任な優しさなんだよ」

盗賊「アンタは……それでも、あたしが欲しいって思ったのかい……?」
 
 
 
とうぞくのつぶやきが さびしげにながれて きえた
そして よが ふけていった……
 


753 ◆6I9SwHc8xc2011/08/07(日) 02:26:25.95sYkCjTXv0 (8/8)

当初の予定では魔王が賢者の着替えを覗いちゃってキャーみたいな話だったのが
あっちこっちに逸れた挙句何故だかこうなりました。

キャラの組み合わせを変えてみたりしつつお題消化作業に戻ります。


754VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/08/07(日) 03:46:56.29sXPnexCOo (1/1)

乙。 魔王のイケメン、ってかいい男っぷりがとどまるところを知らないな。
照れ隠しのためにおどけるだけで優しいいい男だなぁ、魔王は…


755VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/07(日) 10:14:11.83liPdTcaAO (1/1)



盗賊の場合は優しさというか慈愛や母性に近かったのかな


756VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/08/07(日) 12:10:04.67/5ammy8+o (1/1)

伊達に魔族を束ねる立場に立ってないな。カリスマ的な優しさとかっこよさだ


757嘘製品情報 ◆6I9SwHc8xc2011/08/11(木) 13:42:04.846AG3QGSo0 (1/1)

勇者「地獄の沙汰も金次第」 ~お金じゃ買えない恋もあるっ!~

ジャンル:リア充爆死ADV
発売日:20XX年13月45日
価格:通常版5800G
    初回限定版8800G
CERO:B


ストーリー:

『勇者「地獄の沙汰も金次第」』がドタバタ恋愛コメディになって登場!?

勇者は王立魔法研究所の研究員。
たった一人の研究室で、自らが考案した新たな魔法体系「魔貨式魔導法」を研究する日々を送っていた。

そんな彼がある日、王宮から勇者として任命され、魔王討伐の使命を果たすべく旅に出ることに。
旅のお供に賢者と盗賊を迎え、成り行きから竜姫や僧侶と行動を共にし、やがて
倒すべき敵であるはずの魔王と意気投合していくうちに、平和な世界を取り戻したのだった。

しかし戦火の爪痕は深く、食料やエネルギーに関する問題は依然として残っていた。
そんな折、王立魔法研究所に戻った勇者が魔族の研究チームと共同で研究を行っていると、
ある一定の手順に従って人間や魔族の感情エネルギーを抽出した場合、途方もなく大きな
魔力を生み出すことができるという実験結果を得た。
それは、相思相愛の男女が生み出す恋のエネルギーだった!?

感情のロジック、恋のメソッド、愛のプロトコル。

人が人を愛するために必要なこととは何なのか?
果たして勇者は、有史以前からの難題を解決できるのか?

勇者の史上最大の挑戦が、今始まる――!
 
 
 
 
「比翼恋理のだーりん」やってたらなんかこんなの思いついた。
今は反省している。


758VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/08/11(木) 16:06:03.62snYPESeAO (1/1)

オイ、ふざけんな
是非とも続編でやってください


759VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/08/11(木) 16:12:05.48SXsCJs3zo (1/1)

ジャンルに吹いたwwwwww


760VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/11(木) 18:36:56.85B60e5CzIO (1/1)

CREOは、「Z」な気がするんだ、うん


761VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/08/13(土) 14:46:21.943uXj679xo (1/1)

>>757
はやく書くのだ


762VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/19(金) 08:35:02.00fppp3b7so (1/1)

早く続き読みたい


763 ◆6I9SwHc8xc2011/08/19(金) 23:11:02.87y8B0yGqj0 (1/11)

 
じゅうおういちぞくは まおうにゆみひく はんぎゃくしゃとして 
しゅくせいされた……

じゅうおうのちょうじょである じゅうきが ころされ
じゅうおうのつまの じゅうおうひも ちかろうにゆうへいされることとなった……
 
 
 
そしてよがあけた!
 


764 ◆6I9SwHc8xc2011/08/19(金) 23:12:00.13y8B0yGqj0 (2/11)

 
――――――――――
翌日
魔王城・謁見の間
 
 
まおうは ぎょくざにすわって うつろなしせんをさまよわせている……

魔王「……」

魔王(昨日は……あれからどうやって帰ってきたんだっけ……)

魔王(覚えてないな……ああ、でも、魔王城に戻ってきてすぐ休んだから……)

魔王(……賢者ちゃんと盗賊ちゃんに会わないと……二人に会って……)

魔王(……二人に……)

魔王(……ッ!)

ダンッ!

まおうは ぎょくざのひじかけに こぶしを たたきつけた!

魔王(……会って、どうする? 友達の家族を……一族郎党粛清した話を披露しろって?)

魔王(冗談じゃない。二人を不安がらせるだけだし、オレだってそんな……)

魔王(でもこれからのことも話し合っておかないと……いつまでも捕虜ってわけには……)

魔王(……彼女達だけでも、地上に帰してあげないと……)

まおうは ふかくためいきをついて しせんをおとした
そのとき えっけんのまに だれかがはいってきた……
 


765 ◆6I9SwHc8xc2011/08/19(金) 23:14:53.77y8B0yGqj0 (3/11)

 
魔王「……側近くん」

そっきんは ふかくれいをして ぎょくざのまえにひざまずいた……

側近「魔王様。お疲れのところ、失礼致します」

魔王「……ホントだよ。何か用かい?」

側近「お話ししたいことがあります。よろしいでしょうか?」

魔王「手短に頼むよ。オレ、疲れてるから」

側近「昨晩の会議での決定をお伝えします」

魔王「オレ抜きで会議なんかしたんだ。さぞスムーズに進んだろうな」

側近「魔王様がお疲れのようでしたので」

魔王「……で? 何が決まったんだよ」

側近「人間とエルフの連合軍に新たな動きが。近く火竜山脈へ攻撃を仕掛けるようです」

魔王「連中、ついに竜王とやり合うのか……で、オレ達はどう出るつもり?」

側近「かなり大規模な作戦のようで、我々はひとまず静観を、との方針が固まりました」

側近「地上・魔界の各地に部隊を配置し直し、各部隊の連携を密にせよとの通達を行いました」

魔王「なるほどな……それだけ?」

側近「会議で決定したのはこれだけです。ですがもうひとつ、魔王様に大事なお話が」

魔王「聞きたくないって言ったら?」

側近「あなたのお父上の意思でもあります。魔王様が果たされるべき義務と言ってもいいでしょう」
 



766 ◆6I9SwHc8xc2011/08/19(金) 23:15:50.95y8B0yGqj0 (4/11)

 
魔王「親父は30年前に死んだんだぞ。今更何を……」

側近「魔王城最深部に、儀礼用の祭壇があります。詳しくはそちらで」

魔王「おい! オレはそんな話聞くつもりは」

側近「入口は玉座の後ろです。この鍵を使えば隠し扉が開く仕掛けになっています」

魔王「だから……!」

側近「これはあなたが、魔王として真に正しき資質を持つかどうかを試すものでもあるのです」

側近「今、多くの魔族が、魔界の支配者としてのあなたを必要としています」

魔王「知るかよ、そんなの! なりたくてなったわけじゃない!」

側近「今は子供の言い訳が通用する状況ではありません。魔王様もおわかりでしょう?」

魔王「……ッ!」

側近「では魔王様、地下の祭壇へ参りましょう。急を要する案件ですので」

そっきんは ぎょくざのうしろのゆかに かぎをさしこんだ!
なんと ぎょくざのうしろに かくしかいだんがみつかった!

魔王「……オレに何をやらせようってんだ」

側近「すぐにわかることです」

まおうとそっきんは かいだんをおりていった……
 


767 ◆6I9SwHc8xc2011/08/19(金) 23:16:27.14y8B0yGqj0 (5/11)

 
――――――――――
同日
エルフの里付近の湖
所持金:8309G
 
 
エルフのさとのちかくのみずうみで ゆうしゃとせんしが はなしあっていた
みずうみには くびのながいこがたのドラゴンが およいでいる……

水竜「キュー……」

戦士「……地下水道まで移動する際、こいつらに乗ればいいのか」

勇者「ああ。地下水道の入り口に到着後、水竜から降りて砦に潜入することになる」

戦士「確かにここいらの水竜は里の調教師が躾けているが……竜王軍の水竜に偽装するとはな」

勇者「輸送部隊が乗るような地竜を用意する手もあったが、この付近には生息していない」

勇者「作戦決行は三日後。あまり準備に時間を取られるわけにもいかない」

勇者「今回の作戦はあくまで潜入と人質の救出だ。無用な戦闘は極力避けたい」

戦士「なるほどな。その意見には同意だ」

勇者「……君が私のパーティに加わってくれてありがたい。選考の手間が省けた」

戦士「我々エルフとしても長老の救出は急務だ。協力しない手はない」

勇者「そうか。協力を感謝する」

戦士「礼は成功してから言え。長老が無事かどうかさえ不明なんだ」

勇者「それでもだ」

戦士「……ふん。聞いた通りの男だな、お前は」

勇者「私のことを誰かに聞いていたのか?」

戦士「いや……その、僧侶殿に聞いたのだ」
 


768 ◆6I9SwHc8xc2011/08/19(金) 23:17:47.91y8B0yGqj0 (6/11)

 
勇者「僧侶が、か」

戦士「ま、まあな。彼女はお前のことを詳しく教えてくれた」

戦士「それでだな、お前にも聞きたいことがあるのだが……」

勇者「なんだ?」

戦士「……そ、僧侶殿について、教えてほしいのだ」

勇者「僧侶について……?」

戦士「そうだ。趣味であるとか、好みであるとか……そういうことを……」

勇者「何故だ?」

戦士「と、特に深い理由はないぞ? だが短い間とはいえ、パーティとして行動を共にするのだから」

勇者「確かに、お互いのことを知っておくことは大事だ。パーティの連携は作戦の成否にも関わる」

戦士「そうだろう? だからだな、その……彼女について、教えてほしいと」

勇者「本人から直接聞けばいいのではないか? その方が相互の親睦を図る意味でも……」

戦士「む……それはそうだが……いいや、そう、俺は慎重に段階を踏んでいてだな」

勇者「段階?」

戦士「そうだ。将を射んと欲すればまず馬を射よ、と言うではないか」

勇者「少々違う気もするが」

戦士「それに、知り合って間もないのにあれこれ詮索したら、彼女も訝しく思うだろう」

勇者「ふむ……まあ、別に私も、僧侶について話すことは吝かではないが」
 


769 ◆6I9SwHc8xc2011/08/19(金) 23:18:36.92y8B0yGqj0 (7/11)

 
勇者「彼女は私の元同僚で、王立魔法研究所にいた時に色々世話になった」

戦士「ほ、ほう。なかなかインテリなのだな、彼女は」

勇者「彼女は別の研究室だったが、魔法薬の資料を探しに図書館に行った時に知り合った」

勇者「当初はあまり会話もなかったし、ただの顔見知りという程度だったが……」

勇者「ある時期を境に、よく私に話しかけてくるようになった」

戦士「なにっ!? そうなのか!?」

勇者「理由はよくわからなかったが……今では良き友人関係を結べたと思っている」

戦士「む、むぅ……」

勇者「私が勇者に任命されて旅に出てからは疎遠になっていたが、竜王の反乱によって情勢が急変」

勇者「王都に戻っていた時に再開し、彼女が私のお供に志願したことで現在に至る」

戦士「そうか……彼女がお前のお供になった経緯はわかった」

勇者「……本当なら、私は僧侶をお供にするつもりはなかったのだが」

戦士「どういうことだ?」

勇者「確かに彼女は、僧侶の職を修めたことで多くの回復・補助系呪文を覚えている」

勇者「魔法薬学を専攻していたこともあり、薬草などに関する知識も豊富だ」

勇者「しかし彼女は戦闘員としての訓練を積んだわけではない。あくまでもただの研究員だ」

戦士「まあ、確かに彼女は可憐で……いや、戦いができるようには見えんが……」

勇者「結局は彼女の熱意に押し切られる形となったが、この判断が正しかったか確信が持てていない」
 



770 ◆6I9SwHc8xc2011/08/19(金) 23:19:53.93y8B0yGqj0 (8/11)

 
戦士「何を迷うことがある? お前も一人の戦士ならば、女子供を護ってやらねば」

勇者「私は勇者だが」

戦士「そんなことは関係ない。俺ならば……その、彼女一人護るくらいはわけもない」

勇者「私には、私個人にできうる範囲のことしかできない。誰かを守りながら戦えるものだろうか」

戦士「何を弱気なことを……人間の勇者といっても、案外情けない奴なのだな」

勇者「情けない、か。そうかもしれないな」

戦士「……これはまた、あっさりと認められるものだな?」

勇者「どんなに言葉を費やして言い繕ったところで、事実は覆らないからな」

戦士「事実だと?」

勇者「勇者は王宮の勅命を受けて活動するエージェントだ。国王に逆らえるほどの権限などない」

勇者「活動上、必要ならば勇者特権を行使することもできるが……」

勇者「それも王宮の権威を笠に着ているにすぎず、決して私の力というわけではない」

勇者「結局のところ、勇者といえども様々なしがらみがあり、それを越えることもできない」

勇者「私にできることは王宮が許可した範囲内のことであり、私個人の力の範囲内でしかないんだ」

戦士「……勇者というのは、もっと自由な存在かと思っていたが」

勇者「残念だが、勇者も王国を運営する大きな枠組みの中の一部でしかない。そして僧侶も」

勇者「私のお供に志願するということは、自らその枠組みの中に収まるということに他ならない」
 


771 ◆6I9SwHc8xc2011/08/19(金) 23:20:58.91y8B0yGqj0 (9/11)

 
戦士「……魔王討伐の大義の下で、僧侶殿も王宮に操られる駒になるというのか」

勇者「そうだ」

戦士「……それが人間の社会というものか……」

勇者「……僧侶も私のかけがえのない友人だ」

勇者「彼女が勇者のお供としてどのような役割を与えられるのかわからないが……」

勇者「彼女はあくまでも、ただの一般人だ。少なくとも数週間前まではそうだった」

戦士「そうだろうな。戦場の似合う女性ではないことは確かだ」

勇者「僧侶のような無関係の人間を巻き込まないよう、厳しい態度を取るべきと思っていたのだが」

勇者「彼女をお供にすることを認めてしまったのは、私のミスだったかもしれない」

戦士「……だが、そうなってしまったからには、命を賭けて僧侶殿を護るべきだ」

戦士「少なくとも俺ならばそうする。お前のように責任逃れの詭弁を弄したりはしない」

勇者「……君は強いな。そのように結論できるとは」

戦士「ふん! お前のような奴におだてられたところで、嬉しくもなんともない」

勇者「……今回の作戦は潜入作戦だが、最悪の場合、竜王と戦うことになるかもしれない」

戦士「……?」

勇者「私は勇者として任務遂行を優先せざるを得ないが、もし私にもしものことがあったら」

勇者「その時は僧侶のことを頼みたい。君になら任せられそうだ」

戦士「い、言われるまでもない! 俺を誰だと思っているのだ」
 


772 ◆6I9SwHc8xc2011/08/19(金) 23:22:19.21y8B0yGqj0 (10/11)

 
そのとき みずうみちかくのもりから そうりょがあるいてきた……

僧侶「あの……勇者さん……」

戦士「そ、僧侶殿!」

勇者「どうしたんだ? 里で休んでいるように言ったのだが」

僧侶「いえ……なんだか……一人だと落ち着かなくて……」

勇者「そうか。今しがた、戦士と作戦のことを話していたところだ」

僧侶「そう……だったんですか……?」

戦士「あ、ああ……大丈夫だ。僧侶殿は、気高きエルフの戦士であるこの俺が護ってみせるぞ!」

僧侶「え……? あ、ありがとう……ございます……」

戦士「だ、だからだな、僧侶殿は安心して」

勇者「僧侶。潜入時にはあの水竜に乗って地下水道まで移動するから、今のうちに慣れておいてくれ」

僧侶「え……!? あ、あれに……乗るんですか……?」

勇者「よく躾けられているから噛みつかれたりはしない。乗り方に少々コツはいるが……」

僧侶「む……無理です……! 怖い……です……」

戦士「恐れることはないぞ、僧侶殿。な、なんなら、俺が乗り方を教えよう」

僧侶「で、でも……その……」

水竜「キュー?」

僧侶「ひっ……!」

水竜「キュキュキュキュ……キョエー!」

僧侶「いやぁぁぁぁぁ……」

水竜「キュー」
 


773 ◆6I9SwHc8xc2011/08/19(金) 23:23:48.99y8B0yGqj0 (11/11)

しばらくは嫌なフラグを立てまくる作業に終始しそうな、そうでもなさそうな。
魔王はもう一発くらい痛い目に遭う予定ですが作者のテンションによります。


774VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/08/19(金) 23:25:34.36NUex3YuAO (1/1)

乙です。
ハラハラしますな……


775お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc2011/08/20(土) 00:36:46.27jGwE55a+0 (1/10)

 
――――――――――
20年前
魔界・獣王領
 
 
ザァァァァ……

そのひ じゅうおうりょうのもりに どしゃぶりのあめが ふりそそいでいた
おおきなきのみきのなかで だいさんおうじとじゅうきが あまやどりをしていた……

第三王子「……」

獣姫「……」

第三王子「……やまないなぁ、雨」

獣姫「そうね」

第三王子「獣姫ちゃん、悪いね。オレがこんな奥まで行かなけりゃもう少し早く帰れたのに」

獣姫「ホントよ。ま、目当てのモノは手に入ったから許してあげる」

第三王子「そりゃ重畳。獣姫ちゃんに嫌われたら、オレどうしたらいいか」

獣姫「女の子なら誰でもいいくせに」

第三王子「まあまあ。オレは確かに女の子が好きだけど、節操なしってわけじゃないぜ?」

獣姫「はいはい」

第三王子「獣姫ちゃんは特にチャーミングだし、声だって可愛い」

獣姫「この前、似たようなことを竜姫さんに言ってなかった?」

第三王子「え? そうだっけ」

獣姫「ホラ、これなんだから」
 


776お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc2011/08/20(土) 00:38:51.02jGwE55a+0 (2/10)

 
ザァァァァ……

第三王子「……」

獣姫「……」

第三王子「……今頃、獣王子とかどうしてるかなぁ」

獣姫「心配……してると思う。パパって結構親バカだし、兄さんも私のこと大事にしてるから」

第三王子「気が重いなぁ。獣王にどやされちまうぜ」

獣姫「魔王の一族の人にハッキリ物が言えるなんて、今はパパや竜王くらいかもね」

第三王子「まあね。海王は海底神殿から出てこないらしいし、機械王はああだし」

獣姫「第三王子様は兄さんと仲がいいし、パパ的には息子がもう一人増えたみたいなんじゃない?」

第三王子「息子ぉ? オレが?」

獣姫「うん。兄さんはあの通り真面目で努力家でファザコンだから、手がかからないし」

獣姫「パパ、実は第三王子様みたいな出来の悪い息子っていうのに憧れてたとか」

第三王子「おいおい……オレ、仮にも魔王の倅だぜ? モテる以外に取り柄のない三男坊だけど」

獣姫「そのモテる以外に取り柄のない三男坊だから、毎日遊び暮らしていられるんでしょ?」

第三王子「それはまあ……そうなんだけどさ」

獣姫「……でも、ありがと。今日はあたしのワガママに付き合ってもらっちゃって」

第三王子「お安いご用さ。でも目当てのモノは手に入ったって言ってたけど、何を探してたんだ?」

獣姫「これよ」サッ
 


777お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc2011/08/20(土) 00:40:01.49jGwE55a+0 (3/10)

 
じゅうきは ふところから ちいさなたねをとりだした!

第三王子「これって?」

獣姫「この辺りに生える樹の種よ。ちょっと見つけるのに苦労したけど」

第三王子「どういう樹なんだよ? ていうか、市場で苗木とか買えばいいのに」

獣姫「これはね、酒のなる樹なの」

第三王子「酒のなる樹?」

獣姫「木の実から果汁を絞ってそれを濾過すると、ほのかに果実の香りがする蒸留酒みたいになるの」

獣姫「育てる土地の土壌とかによって味や香りが変わるし、種から育てると美味しくなるらしいのよ」

第三王子「へぇ、そんなのがあるんだ……獣姫ちゃんってそんなに酒好きだったっけ」

獣姫「違うわよ。これは、パパへのプレゼント」

第三王子「獣王への?」

獣姫「うん。パパはお酒好きだし、地上に出てて魔界にいないことも多いから」

第三王子「獣王が魔界に帰った時の楽しみを用意してやるわけだ」

獣姫「そういうこと……くしゅんっ」

じゅうきは ちいさく くしゃみをした

第三王子「大丈夫? 雨に濡れたし、身体冷えちゃったかな?」

獣姫「そうかも……」

第三王子「とりあえず火を起こして暖を取ろう。君に風邪なんか引かせたら獣王に殺されちまうよ」
 


778お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc2011/08/20(土) 00:40:46.03jGwE55a+0 (4/10)

 
獣姫「でも、このまま濡れた服を着てても……」

第三王子「あ、そうか。う~ん……じゃあ服を乾かそう。脱いでくれる?」

獣姫「脱いで、って……ムードもへったくれもないわね。もう少し気の利いた言い方できない?」

第三王子「べ、別に変な意味じゃないって! ただ乾かすだけだし」

獣姫「わかってる。あたしを襲おうなんて甲斐性が第三王子様にあるわけないし」

第三王子「そこまで言われるとちょっと釈然としないなぁ……男は狼なんだぜ?」

獣姫「あたしの知る限り、そんな目をした狼はいないと思うけど?」

第三王子「どんな目だって?」

獣姫「構ってもらいたがりの子犬みたいな目」

第三王子「バカ言っちゃいけないよ。オレみたいなモテモテくんの優しくも荒々しい……」

獣姫「はいはいワロスワロス」

じゅうきは ぬれたふくを ぬいだ
だいさんおうじは じゅもんをとなえ ちいさなひをおこした!

第三王子「とりあえずオレの上着でも羽織ってて。すぐ乾かしちゃうからさ」ファサッ

獣姫「ありがと、第三王子様。でもそんなすぐに乾かせるの?」

第三王子「火と風の魔法で熱風を当てればすぐさ。うまくできるかはわからないけど」

獣姫「服を焼いたら弁償してもらうわよ。それお気に入りなんだから」

だいさんおうじは じゅうきのふくをひろげ じゅもんをとなえた!
ねっぷうが じゅうきのふくに ふきつけられる!
 


779お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc2011/08/20(土) 00:41:36.30jGwE55a+0 (5/10)

 
ザァァァァ……

それからしばらくのあいだ だいさんおうじとじゅうきは 
せなかあわせになって ふくがかわくのをまっていた……

獣姫「……ねぇ。あたし今、下着だけなんだけど」

第三王子「えっ? ああ、うん。大丈夫、もうすぐ乾くから」

獣姫「その上から第三王子様の上着だけ羽織ってさ。ちょっとエロくない?」

第三王子「なっ、じ、冗談やめなよ。オレだからいいようなものの」

獣姫「あら? 男は狼なんじゃなかったっけ。とんだヘタレだわ」

第三王子「オレみたいなイケメンは紳士でもあるから、女の子のことは大事に扱うんだよ」

獣姫「ヘタレ」

第三王子「紳士」

獣姫「紳士という名のヘタレね」

第三王子「ヘタレという名の紳士だよ」

獣姫「……第三王子様はあたしに手を出そうと思わないんだ?」

第三王子「いい加減付き合いも長いからさ。獣姫ちゃんはオレにとっても妹みたいなもんだよ」

第三王子「いや、別に獣姫ちゃんに魅力がないわけじゃなくて? こう、なんて言うんだろ……」

獣姫「……もういいわよ。で、どう?」

第三王子「へ?」

獣姫「服。乾いた?」

第三王子「あ、ああ。そろそろ大丈夫かな」
 


780お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc2011/08/20(土) 00:42:11.39jGwE55a+0 (6/10)

 
じゅうきは だいさんおうじからふくをうけとると そのばできがえはじめた……

獣姫「……」

第三王子「……」

獣姫「……ねぇ。そっちはどうなの? 最近」

第三王子「どうって、何が?」

獣姫「あなたのお兄さんが新しい魔王になってしばらく経つけど、どうだって聞いてるの」

第三王子「ああ……上の兄貴はとんだバトルマニアだからさ。今すぐにでも地上に侵攻しそうな勢い」

第三王子「下の兄貴がなんとか押し留めてるけど、こっちも根っこじゃ戦いが好きだから」

獣姫「……あたしもね。戦いに出ようかって考えてるの」

第三王子「獣姫ちゃんが?」

獣姫「前の魔王様が倒されてからこっち、色々情勢も不安定でしょ」

獣姫「パパだってあちこち飛び回って忙しそうだし、兄さんだって獣王軍に入って戦うって」

獣姫「あたしだけ何もしないっていうのも、なんかね。こう見えてもそこそこ鍛えてるし……」

第三王子「……ダメだ」

だいさんおうじは ふりむいて じゅうきにむきなおった
じゅうきのほそいかたをつかみ じっと めをみつめた……

獣姫「だ、第三王子様?」

第三王子「君が戦いに出ることなんかないよ。おばさんだって心配するだろ?」

獣姫「そ、それはそうだけど、でも……」

第三王子「……オレ、獣姫ちゃんが怪我したり、ましてや死んだりするなんて……そんなの嫌だよ」
 


781お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc2011/08/20(土) 00:42:50.25jGwE55a+0 (7/10)

 
獣姫「……」

第三王子「大体……オレに言わせりゃ、兄貴達は異常だよ。戦うことが好きだなんてさ」

獣姫「異常だなんて……そんな言い方」

第三王子「他人を傷つけたり殺したりしてショックを受けないのは異常者だけだよ」

獣姫「第三王子様はそういう家系の生まれじゃない」

第三王子「だからってその通りになる必要なんかないだろ。オレも、君も」

獣姫「……あたしはパパや兄さんの役に立ちたいの」

第三王子「だったら怪我とか病気とかせずに元気にいればいい。その方が喜ぶよ」

獣姫「……第三王子様は今、魔族の、しかも魔王の一族の者として相当に変なこと言ってるわよ」

第三王子「オレだけがまともで、兄貴達がおかしいのかもよ」

獣姫「それは詭弁よ。第三王子様が戦いたくないから言ってる言い訳」

第三王子「それでもいいよ。獣姫ちゃんを説得するために言ってるんだから」

獣姫「……」

第三王子「……」

獣姫「……まったく、第三王子様ってば。たまに真剣になったかと思えばこうなんだから」

第三王子「オレはいつでも真面目さ。女の子のことを考えてる時なんか特にね」

獣姫「バッカみたい」

第三王子「よく言われるかな。主に竜姫ちゃんに」
 


782お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc2011/08/20(土) 00:43:53.43jGwE55a+0 (8/10)

 
獣姫「で、いつまで見てるわけ?」

第三王子「へ?」

獣姫「あたし、着替えの途中だったんだけど」

第三王子「あ……ご、ごめん!」

獣姫「許さない、絶対にだ」

第三王子「えぇ!? ちょ、ホントごめん! この通り!」

獣姫「……でもまあ、その熱意に免じてヘタレっていうのは撤回してあげようかな」

第三王子「え……?」

獣姫「あ。見て、第三王子様。もうすぐ晴れそうよ」

そとをみると あめあしもよわまり とおくのそらに はれまがのぞいていた……

第三王子「おっ。やっと帰れるっぽいなぁ」

獣姫「パパに着替えを覗かれたってチクられたくなければ、何か御馳走して。お腹減っちゃった」

第三王子「そ、そんな密告されたらマジで殺されちゃうよ……わかった。今度奢るよ」

獣姫「今度じゃダメ。今日、帰ったらすぐね?」

第三王子「……うん。わかった。獣姫ちゃんには負けるなぁ」

それまでのどしゃぶりが うそのようにはれわたり 
まかいのそらに にじがかかったのは それからまもなくのことだった……
 


783お題「うっかり着替えを覗いちゃう」 ◆6I9SwHc8xc2011/08/20(土) 00:45:23.58jGwE55a+0 (9/10)

 
――――――――――
 
 
まおうは ゆっくりと めをあけた……

猫忍者「にゃっ? 魔王様、起きたのかにゃあ?」

魔王「え? ……ああ……」

まおうは じしつのベットで よこになっていたが 
じぶんのめに なみだがにじんでいたのに きづいた……

魔王「さっきの……夢……?」

猫忍者「どうしたんだにゃあ? 寝ている最中に泣くなんて、どんな夢を見たのにゃ」

魔王「……ッ!」

まおうが さっきまでのこうけいが なつかしいゆめだったと じかくすると
とめどなく なみだがあふれてきた……

ねこにんじゃが そばであわてふためくのもかまわず まおうは ただ なきじゃくっていた……
 


784 ◆6I9SwHc8xc2011/08/20(土) 00:46:29.43jGwE55a+0 (10/10)

並行してお題を消化しようとすると続き投下が遅くなることはわかっているのにお題を募集しようとする。
これが人のサガか……


785VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/08/20(土) 02:18:53.45XZCKOu/xo (1/1)

乙。 今となっては遠い日々、か… かなしぃのぉ。



786VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/08/20(土) 03:30:38.458QdqmVOAO (1/1)



勇者にも魔王にも嫌なフラグがビンビンだが大丈夫か?


787VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/08/20(土) 05:02:13.218AL2olMio (1/1)

>>786
お前のおかげで良いSSを見つけたよ


788VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2011/08/21(日) 03:21:04.93lrvMNQF80 (1/1)

だがsageろバカ


789VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)2011/08/21(日) 12:16:18.860f+lRqQSo (1/1)

はよ


790VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/21(日) 15:52:53.28Md1Z7sqAO (1/1)

勇者:死亡フラグ
魔王:闇落ちフラグ
ですね、わかります


791VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県)2011/08/21(日) 18:01:38.11P7i4bf+Oo (1/1)

(´・ω・`)はよおおおおあ


792VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/08/21(日) 18:07:02.29bnz3Whrio (1/1)

顔文字付けて可愛くしても、催促は遠慮したほうがいいんじゃないかな? 

作者さんのペースで投下するのが一番だろうし…


793VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/08/21(日) 22:14:29.40v8zSu74do (1/1)

>>792
同意


794VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/08/22(月) 21:48:30.94r6v/WZHS0 (1/1)

やっと追いついた、続き楽しみ。


795VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/22(月) 22:51:17.57vFczrN0AO (1/1)

獣姫ちゃんも満更でもなさそうだった辺りが辛いな
第三王子時代に手をつけておけばよかったものを……


796VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/08/23(火) 07:00:31.51bbpD9/ALo (1/1)

魔王にはあと一回痛い目にあってもらうってのが怖すぎる
確実に魔王として覚醒するじゃないですか


797 ◆6I9SwHc8xc2011/08/25(木) 20:59:49.36R7IVg25h0 (1/9)

 
――――――――――
同日
魔王城・地下
 
 
まおうは そっきんにつれられて まおうじょうのちかふかくにある
ぎしきのさいだんへと あるいていた……

カツン……カツン……

魔王「……結構歩くんだなぁ」

側近「ええ。最深部は地下8階ですから」

魔王「へぇ……じゃあ、昔は魔王の部屋なんてのはそこにあったんじゃないか?」

側近「何故そう思われるのです?」

魔王「なんとなくさ。ボスってのは一番奥でどっしり構えてるもんだろ」

側近「残念ながら、私の在任中にそのようなことはありませんでしたが」

魔王「あ、そ……」

側近「ですが、魔王という存在はある種、この魔界に語り継がれてきたものです」

魔王「語り継がれてきたもの?」

側近「魔王は単なる制度や体制としてではなく、支配者としての在り方をも受け継がれてきました」

側近「世代を重ねるうちに、選択され、淘汰されてきた情報もあるのでしょう」

側近「もしかすると、古い時代の魔王は、この地下深くに部屋を持っていたのかもしれません」

魔王「それが後になって、やっぱりやめにしようってことになったって?」

側近「ええ。それはその時代の者にしかわからないことではありますが」

ギィィィ……ガシャン
 


798 ◆6I9SwHc8xc2011/08/25(木) 21:00:45.85R7IVg25h0 (2/9)

  
魔王「……やっと着いた。しかし、なんだってこんなところに祭壇なんか作るんだろうな」

側近「ここが魔王城の中で最も魔力が集まりやすい場所だからでしょう」

側近「本来であれば地脈を通って地中を循環するエネルギーがここに滞留し、魔力溜まりとなります」

側近「そうした場所には強い魔術的意味が生じます。儀式などの場には……」

魔王「そういう講釈はやめてくれ。オレに何かさせるつもりでここまで案内したんだろ」

側近「ええ、そうでした。魔王様をここに案内したのは他でもありません」

そっきんは さいだんのしょくだいにひをともし はこから ひとふりのつるぎをとりだした

そのつるぎは さやにおさまっていてなお まがまがしいまりょくを ふりまいている……

側近「これから、魔王継承の儀を執り行います」

魔王「はぁ?」

側近「あなたが魔王の座を継いだ際には、略式の戴冠の儀しか行いませんでしたから」

魔王「ちょっと待ってよ、なんでそんなことを今更……」

側近「必要なことですので」

魔王「……おい。ふざけてるんならオレは戻るぜ」

側近「いいえ、ふざけてなどいません。これこそ先々代の御遺志です」

魔王「親父は別にマナーとか形式にこだわる奴じゃなかったぞ」

側近「とにかく、これを」

そっきんは まおうに つるぎをてわたした!
 


799 ◆6I9SwHc8xc2011/08/25(木) 21:01:36.05R7IVg25h0 (3/9)

 
魔王「こいつは、親父や兄貴が使ってた……」

側近「ええ。初代魔王の時代より受け継がれてきた魔剣です」

魔王「デザインが古臭くてダサいと思ってたけど、まさかオレの手に渡るなんてね……」

側近「これからここで、あなたはある方とお会いになります」

側近「その方との対話によって、あなたは自分が魔王として何を目指すべきかを知るでしょう」

魔王「……いや、さっきから側近くんが何を言ってんのかわけわかんないんだけどさ」

魔王「今頃になって継承の儀なんかやろうって言うのもそうだし、それが親父の遺志とかなんとか」

側近「では、私はこれで」

魔王「おい!」

側近「私はしばらくしたら戻って参りますので、ごゆるりと」

魔王「だから待てって! 説明を……」

ギィィィ……バタン

とびらは かたくとざされ そとからカギがかけられた!

魔王「~~ッ!」

ガァン!

まおうは いかりにまかせて とびらをけりつけた!

魔王「……クソッ、なんなんだよ。ろくな説明もしないで、側近くんのくせに生意気だ」

魔王「大体、これから誰かと会うって言ったって、こんな地下深くに誰が来るってんだよ」

魔王「……継承の儀ってことは上の兄貴もこれをやったのか? 短気な兄貴がよく我慢……」
 


800 ◆6I9SwHc8xc2011/08/25(木) 21:02:39.53R7IVg25h0 (4/9)

 
そのとき まおうは はいごからきょうれつなまりょくをかんじた!

魔王「……ッ!?」

さいだんのひつぎのふたが カタカタとふるえ なかから こえがひびいてきた……

????「来たか……」

魔王「なっ……だ、誰だ!?」

ゆっくりと ひつぎのふたがずらされ なかかられいきがもれだしてくる……!

????「待っていたぞ……第三王子……」

魔王「待てよ。オレが第三王子だったのは兄貴が死ぬまでだぜ」

????「そうか……そうだったな。俺としたことが……」

ひつぎのふたが ゆかにおち にぶいおとをひびかせた!

ひつぎのなかによこたわっていたなにものかが ゆっくりとおきあがり
さいだんのうえに たちあがった……!

????「外に出るのもずいぶんと久しぶりだ……」

????「お前は変わらないなぁ、第三王子。もっとも、俺達魔族は数年くらいじゃ姿は変わらんが」

魔王「……おいおい、なんだよ。オレを揺さぶるにしたって、もう少しマシな人選があるだろうに」

魔王「なんでよりにもよってアンタなんだよ……誰が得するんだかわかんないや」

先代魔王「さあな。だがこれは、親父の仕組んだことだ……兄弟」

魔王「勘弁して欲しいぜ、まったく……なぁ、兄貴」

まおうは さやからつるぎをひきぬき かまえをとった!
 


801 ◆6I9SwHc8xc2011/08/25(木) 21:03:55.03R7IVg25h0 (5/9)

 
先代魔王「兄弟に剣を向けるのか? お互い積もる話もあるだろう」

魔王「ゾンビか幽霊か知らないけど、こんなところで兄貴に会うはずがないからね」

先代魔王「似たようなものだがな。まあ、この通り足はある」

魔王「……兄貴は死んだ。だから俺が魔王になんてなったんだ……どうして生きてるんだよ」

先代魔王「俺は死なん……と言いたいがな。生かされていたんだよ、俺は」

せんだいまおうは ゆっくりと さいだんからおりていく……

魔王「生かされていた?」

先代魔王「数年前の話だ。俺は反抗勢力の鎮圧に向かった時、奇襲に遭い瀕死の重症を負った」

魔王「……ああ。その時、俺は本国にいた。戦いに行くのなんてごめんだったし」

魔王「そこで上の兄貴も下の兄貴も死んだって聞かされた。すぐに葬儀が行われて……」

先代魔王「だが、俺は一命を取り留めていた。気がついた時には処置を施されここに運ばれていた」

先代魔王「第二王子はどうなったか知らんが、あいつも強かな男だ、生き延びているかも知れん」

先代魔王「因みに俺の治療をしたのは側近だ。治療というよりはネクロマンシーに近かったな」

魔王「……何故だ? どうしてそうまでして兄貴の死を偽装する必要があったんだ」

先代魔王「側近の話を信じるなら、親父の遺志ということになるがな」

先代魔王「親父は俺をいつまでも表舞台に立たせておくことをよしとしなかったのさ」

魔王「……また親父か。親父は何がしたいんだ、一体」

先代魔王「まだわからないか? 初めからお前が魔王の座に立つよう仕組まれていたんだよ」

先代魔王「親父はお前を後継者にするつもりだったのさ。俺ではなく、な」

先代魔王「俺は今日この時のために生かされた。親父の遺志を語るメッセンジャーとして」
 


802 ◆6I9SwHc8xc2011/08/25(木) 21:05:06.59R7IVg25h0 (6/9)

 
先代魔王「……魔王というのはな。勝手に死ぬことさえ許されない存在なんだよ」

先代魔王「そもそも継承の儀とは、先代の魔王が後任に自らの志を受け継がせることだった」

先代魔王「もっとも、魔族ってのは好戦的な種族だからな……安楽に魔王の任を終えることは稀だ」

先代魔王「だから時代を経るごとに、次第に継承の儀の形は変化していった」

先代魔王「魂だけ……あるいは肉体ごと強制的に生き永らえさせて、後任に自分の遺志を伝える」

先代魔王「そうまでしても、魔王ってものには語り伝えるべきことがあったんだよ」

魔王「それが、継承の儀ってものなのか? ……親父も?」

先代魔王「親父もそうするつもりだったようだが、そうはならなかった。何故だかわかるか?」

魔王「……親父が死んだのは、30年前の王国軍の魔王討伐遠征」

先代魔王「そうだ。親父が死んだ直後の混乱の中、親父の遺体の捜索も困難を極めた」

先代魔王「結果、遺体は発見できず蘇生もできずじまい。親父の墓には何も埋まっていない」

先代魔王「そして俺は親父の意図を知ることもなく、そのまま魔王の座を継いだというわけだ」

魔王「親父は初めからオレに魔王の座を譲る気だったってのか? ……どうして?」

魔王「自慢じゃないけどオレは弱いぜ? 兄貴達にはどうしたって敵わなかったし……」

先代魔王「……それだ、第三王子。お前が選ばれたのはな、お前が弱いからだよ」

魔王「どういうことだよ? 魔王ってのは強い方がいいんじゃないのか?」

先代魔王「ああ。その点、お前は最低最悪だ。人間みたいな価値観を持ち、女に現を抜かしてばかり」

先代魔王「この魔界の絶対的支配者として、魔王として求められる資質ではない」

先代魔王「……親父達の世代だったらな」

魔王「?」
 


803 ◆6I9SwHc8xc2011/08/25(木) 21:07:00.43R7IVg25h0 (7/9)

 
先代魔王「だが魔王として求められる資質、それを求める価値観なんてものは時代によって変わる」

先代魔王「親父はお前に魔王の座を渡すことで、時代を変えようとしたんだ」

魔王「時代を……変える……?」

先代魔王「お前の考え方は魔族としては独特だが、言ってしまえばある種人間に近い」

先代魔王「まったく、争うより愛し合おうだとか、実に下らん。陳腐なものだ」

魔王「そうかい? オレからすれば、喜んで戦いに行く兄貴こそバカみたいだったぜ」

先代魔王「だが、だからこそ、お前の治世で魔族と人間の関係に変化が訪れるかもしれないと」

先代魔王「親父はそう考えていた。少なくとも側近にはそんな風に説明されたな」

先代魔王「歴史の流れを変え、時代に変化を促す。お前はそのために後継者に選ばれたんだよ」

魔王「……親父の誇大妄想にしか聞こえないな。オレが時代を変えるなんてさ」

先代魔王「違う。親父の遺志だ。少なくとも、死んだ奴の考えであり、遺したことだからな」

魔王「……」

先代魔王「……さて。親父のメッセンジャーとしての役目はここまでにしておこう」

せんだいまおうは じゅもんをとなえた!
てのひらからあふれだすひかりが しゅうそくして ひかりかがやくつるぎとなった!

せんだいまおうは ひかりのつるぎを まおうにつきつけた!

魔王「……!」

先代魔王「ここからは私怨を晴らさせろ」

先代魔王「落ちこぼれの三男坊のために、三文芝居の端役をやらされた恨みをな」

魔王「……やっぱり? 兄貴ならそう来るだろうなって思ってたけどさ」
 


804 ◆6I9SwHc8xc2011/08/25(木) 21:08:09.63R7IVg25h0 (8/9)

 
先代魔王「他にもお前を殺さなけりゃならん理由はある」

魔王「はぁ? オレ、兄貴とそこまで関係は悪くなかったと思うけど」

先代魔王「側近の話じゃ、お前の心臓を抉り出して魔法的な方法で移植すれば俺は蘇れるらしい」

魔王「マジかよ……? 側近くんがそんなことを?」

先代魔王「ああ。俺はこの数年の間、ゾンビみたいな状態で死んだまま生き続けた」

先代魔王「自分の身体じゃないような、まるで覚めない夢を見ているような感覚だった……」

先代魔王「だがそれも今日まで。肉体の欠損を補うには、肉親であるお前の身体はうってつけだ」

先代魔王「……だから死ね。俺にお前の命をくれ。腑抜けたお前の代わりに魔王をやってやる」

魔王「……悪いけどお断りだね。オレにだって、まだやらなくちゃいけないことが山ほどあるんだ」

先代魔王「そうかい」

せんだいまおうは ゆかをけって はげしくきりかかってきた!

まおうは つるぎをもちあげ ひかりのつるぎのいちげきをうけとめた!

先代魔王「だったら力ずくだ。最初からそのつもりだったがな」

魔王「相変わらず……だなッ!」

ガキィンッ!

ひかりのつるぎをおしのけ まおうは バックステップできょりをとった!

せんだいまおうは ひさしぶりにみるおとうとのすがたに ニヤリと えみをうかべた……



せんだいまおうが おそいかかってきた!
 


805 ◆6I9SwHc8xc2011/08/25(木) 21:09:27.00R7IVg25h0 (9/9)

上の兄貴こと先代魔王の長話フェイズでした。
割と真面目に>>757のシナリオを考えていたりしますがとりあえずは本編完結に向かいます。


806VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/08/25(木) 21:48:23.19iSxFMEx5o (1/1)

おつおつ

やー、賢者ちゃんと盗賊ちゃんが生贄に捧げられてたらどうしようかと思ってた
なにはともあれ魔王くん頑張れ、超頑張れ


807VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/08/25(木) 21:50:26.94NfL7TEhe0 (1/1)

>>805



808VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/08/26(金) 02:06:58.60K/cIHRLJo (1/1)

>>805
乙ー 物語が終盤に差し掛かってきたねー 応援してます


809VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/26(金) 16:32:16.80XJ308s9to (1/1)

>>805 乙>>757に期待してるww


810VIPにかわりましてNIPPEがお送りします2011/08/26(金) 18:59:57.44Hv1b9MLAO (1/1)

>>757を書くとしたら攻略対象キャラは何人くらいになりますか
賢者・盗賊・竜姫・僧侶は確定だとしてもワンチャン海王とか獣姫も入りますか


811VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/28(日) 22:28:21.55h2PpldqDO (1/1)

勇者パートは面白いが、魔王パートは読む気がしない


812!ninja2011/08/29(月) 07:33:59.22SfynPKeko (1/1)

>>811
禿同


813VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/29(月) 10:09:09.52BRJVJX9wo (1/2)

魔王パート楽しんでるけどね


814 ◆6I9SwHc8xc2011/08/29(月) 10:21:29.42gXQ3m2zw0 (1/11)

  
せんだいまおうは じゅもんをとなえた!
ひかりのつるぎのぞくせいがへんかし ほのおのつるぎへとかわった!

はげしくもえるほのおのやいばが まおうに おそいかかる!

魔王「くっ……!」

まおうは じゅもんをとなえた!
まりょくのかべが まおうのまえにそびえたち ほのおのつるぎをふせいだ!

先代魔王「小細工だな」

しかしせんだいまおうは ちからまかせに つるぎをふりぬいた!
まりょくのかべは おともなく くだけちった……

魔王「そういう兄貴は相変わらず――」

せんだいまおうは はげしくきりかかってきた!
そのとき まおうは ゆっくりとひだりてをもちあげた……

魔王「力押ししか能がないな!」

ひだりのてのひらに かくしてあったじゅもんが かいほうされる!

しきんきょりで ばくはつがまきおこる!
せんだいまおうに 57のダメージ!
まおうに 33のダメージ!

おたがい ばくふうにまきこまれ ふきとばされる!

先代魔王「チィッ……!」

魔王「ぐぅっ!」

まおうは すぐさま たいせいをたてなおした!
まおうは せんだいまおうにむけてはしりだし ふたたび じゅもんをとなえた!
 


815 ◆6I9SwHc8xc2011/08/29(月) 10:22:54.16gXQ3m2zw0 (2/11)

 
せんだいまおうのまわりに ひばしらがあがり はげしくもえあがる!
まおうは そのすきにちかづき こうげきをしかけた!
もえさかるほのおが ふたりのからだをこがしていく!

せんだいまおうに 41のダメージ!
まおうに 44のダメージ!

先代魔王「しゃらくさいッ!」

せんだいまおうは じゅもんをとなえた!
ほのおのつるぎのぞくせいがへんかし しんくうのやいばへとかわった!

ぼうふうがふきあれ ほのおのかべをふきとばす!

魔王「……やっぱり一筋縄じゃいかないか」

先代魔王「久しぶりだ、この感覚。こんな穴倉じゃ身体が鈍って仕方ない」

先代魔王「……しかし、何だ今のは? お前も攻撃の余波に巻き込まれているじゃないか?」

魔王「元々、無傷で何とかなるとは思っちゃいないからね」

先代魔王「ダメージを覚悟で全力の攻撃をぶち込み、短期決戦を狙うってところか……」

先代魔王「お前らしい浅知恵だが、まあ悪い手じゃない」

先代魔王「だが逆に言えば、そんな戦法に頼らざるを得ないほどに力量差があるということだ」

魔王「長期戦になればそりゃキツいけど、これなら……ッ!?」

たちあがりかけたまおうは とつぜんめまいをかんじ そのばにひざをついた!

魔王「お、思ったより……ダメージが、あったのかな……?」

先代魔王「いいや、違うな。お前の剣をよく見ろ」

魔王「……?」
 


816 ◆6I9SwHc8xc2011/08/29(月) 10:24:00.69gXQ3m2zw0 (3/11)

 
まおうのつるぎは とうしんにまがまがしいまりょくをみなぎらせ 
ときどき うめきごえのような おとをひびかせている……

先代魔王「そいつは一族に代々伝わる魔剣だ。側近から聞いているだろう?」

魔王「ああ……こんなダサい剣押し付けられていい迷惑だぜ……」

先代魔王「その剣は数多の戦士の屍で作られている。この魔界で散華していった奴らのな」

先代魔王「刀身に込められた魔力は、数え切れないほどの怨念の結晶でもある」

先代魔王「闘争と征服に明け暮れた、魔王一族の血塗られた歴史を象徴する逸品だよ」

魔王「吸い取られてるってのかよ……この剣に、俺の魔力が」

先代魔王「並みの奴なら、持つだけで魂を持っていかれる」

先代魔王「魔力の消費は倍以上だ。その分攻撃力は折り紙つきだが、いつまで持つかな?」

魔王「……なんでこんなとんでもないものを、後生大事に持ち続けてたんだか」

先代魔王「俺がお前を殺すのが先か、干からびて死ぬのが先か……」

先代魔王「ここはひとつ賭けでもするか? チップはお互いの命だがな」

魔王「なら……オレはオレに賭けるぜ!」

まおうは じゅもんをとなえた!

むすうのこおりのやいばが せんだいまおうに おそいかかる!

先代魔王「通用するかよ!」

せんだいまおうは じゅもんをとなえた!
しんくうのやいばのぞくせいをへんかさせ ふたたび ほのおのつるぎをふるった!

しゃくねつのほのおのかべが こおりのやいばを とかしきる!
 


817 ◆6I9SwHc8xc2011/08/29(月) 10:25:15.39gXQ3m2zw0 (4/11)

 
魔王「なら……!」

まおうは じゅもんをとなえた!
まおうのこうげきりょくが 2ばいになった!
まおうのすばやさが あがった!

魔王「これならどうだ!」

まおうは ひくいしせいでつるぎをかまえ とびだした!

先代魔王「甘いんだよ」

ガキィンッ!

まおうが するどくふりおろしたつるぎを せんだいまおうは やすやすとうけとめた!

魔王「なに……!」

先代魔王「急所狙いが見え見えだ、馬鹿が。ついでにこういうのはどうだ?」

せんだいまおうのてのひらから いてつくはどうが はなたれた!
まおうにかかっていた すべてのまほうのこうかが むこうかされた!

魔王「マジかよ!?」

先代魔王「そりゃあ……俺も魔王だからなッ!」

せんだいまおうは まおうのつるぎを はじきとばした!

魔王「ッ!?」

先代魔王「終わりだ」



せんだいまおうの こうげき!
つうこんのいちげき!

まおうに 151のダメージ!
 


818 ◆6I9SwHc8xc2011/08/29(月) 10:27:43.55gXQ3m2zw0 (5/11)

  
魔王「が……あぁ……っ!?」

ドサッ

まおうは あおむけにたおれこんだ!
そして はじきとばされたつるぎが ゆかにおちて かわいたおとをひびかせた……

先代魔王「おっと、やりすぎたか? ……まあ殺すのが目的なんだがな」

せんだいまおうは じゅもんをとなえた!
ほのおのつるぎのぞくせいがへんかし こおりのつるぎへとかわった!

先代魔王「さて、とどめを刺すか。そしてお前の心臓を抉り出し、俺は完全復活する」

魔王「ち……くしょう……」

先代魔王「いい表情だ。早く回復しないと死ぬぞ? させるつもりもないが」

魔王「この……ドSめ……」

先代魔王「……そうだ。冥土の土産にひとつ言っておいてやるとするか」

魔王「……?」

先代魔王「お前が連れてきた捕虜。勇者のお供だと言ったか?」

魔王「! ……何故、知って……」

先代魔王「側近から逐一報告は受けてるんだよ……そうだな。俺が完全復活した暁には」

先代魔王「あの女どもを可能な限り惨たらしく殺すとしよう。見せしめとしてな?」

魔王「!! てめぇ……! 兄貴!」
 


819 ◆6I9SwHc8xc2011/08/29(月) 10:30:06.38gXQ3m2zw0 (6/11)

 
先代魔王「考えつく限りの拷問を加えてやろう。早く殺してくれと懇願するまで……」

先代魔王「いや、それとも先に心を壊してやろうか? どちらにせよ容易いことだ」

魔王「や……めろ……!」

先代魔王「やめさせたかったら立て。俺を殺してみろ。さあ、どうした?」

魔王「クソッ……!」

先代魔王「あの女どもが死ぬとすればそれはお前が弱いからだ。お前の弱さのせいだ」

先代魔王「優勝劣敗、適者生存、弱肉強食……強い者が生き残る。それが魔界の摂理だ」

魔王「そんなもん……クソ食らえだ」

先代魔王「シンプルでいいだろう? 弱いということは、それ自体が許されがたい罪だ」

先代魔王「お前はそこから目を背けていたんだよ、第三王子」

先代魔王「お前はいつも自分の見たいものだけを見て、自分のしたいことだけをしていた」

先代魔王「魔王の座についてからもそれは変わらなかったようだがな……まったくお笑いだ」

魔王「オレは……兄貴みたいになりたくないだけだ……!」

魔王「自分の生き方は、自分で選んで……」

先代魔王「お前に自分なんてものがあるのか? そんなものは身を守るための言い訳だろう」

魔王「くっ……」

先代魔王「だが親父は、弱さが罪ではない時代が来ることを望んだ」

先代魔王「そしてそんな時代をお前が作ると思っていたようだが……とんだ見込み違いだな」
 


820 ◆6I9SwHc8xc2011/08/29(月) 10:30:38.05gXQ3m2zw0 (7/11)

 
魔王「じゃあ……」

先代魔王「ん?」

魔王「親父も、弱かったのか……? オレと同じで……」

先代魔王「さあな。晩年の親父は戦場で負傷し、既に不能者だった」

先代魔王「それでも人間ごときに遅れを取るはずはなかったが……まあ、それはいい」

先代魔王「何故なら、ここで全てが終わるからな。親父の遺志も、お前の命もだ」

せんだいまおうは こおりのつるぎを ふりかざした!

先代魔王「死ね」

こおりのつるぎが ふりおろされた!

魔王「――っ」



ザシュッ!
 


821 ◆6I9SwHc8xc2011/08/29(月) 10:33:06.09gXQ3m2zw0 (8/11)

 
先代魔王「……!」

魔王「……」

ふりおろされたこおりのつるぎは まおうのはなさきで せいしし
せんだいまおうのひだりむねに まおうのつるぎが つきささっている……

先代魔王「グッ……ガハッ……!」

よろよろとあとずさった せんだいまおうのてから こおりのつるぎがすべりおちた
こおりのつるぎはゆかにおちると おともなく しょうめつした……

先代魔王「何故……弾き飛ばしたはずの剣が……!?」

魔王「……遠隔操作で引き戻したんだ……オレの手元に」

先代魔王「なんだと……!?」

魔王「あれだけの怨念が込められた剣なら、呼べば応えるんじゃないかってね」

魔王「できるかどうかわからなかったけど、やらなきゃ死ぬからな……こっちも必死さ……」

先代魔王「く……ふふ……この土壇場でこれとは……見直したぞ、第三王子」

せんだいまおうは さいだんのきざはしにたおれこみ ちをはいた!
ふるえるてが こくうへとのばされ なにかをつかもうとしている……

先代魔王「二度目の死か……なかなかできる経験では……ないな……クク」

魔王「……」

先代魔王「ハハ……なんだ、第三王子? その顔は……」

魔王「え?」

先代魔王「いい表情だぞ? 心底ホッとしている……笑ってるんだよ、お前……」

魔王「な……!」

先代魔王「お前は……やはり魔王の血筋に連なる……男、だよ……」
 


822 ◆6I9SwHc8xc2011/08/29(月) 10:34:27.58gXQ3m2zw0 (9/11)

 
魔王「違う……! オレは、兄貴みたいにはならない!」

先代魔王「この俺に……勝ったと思うなよ、第三王子……」

先代魔王「お前は、この俺を……この兄を抹殺したんだ……」

魔王「……黙れ」

先代魔王「自分のために……身内を殺したんだ……そのことを忘れるなよ……?」

魔王「黙れ……!」

先代魔王「先に地獄で待っている……せいぜい長生きして……」

先代魔王「苦しみ……続けるんだな……」

せんだいまおうのてから ちからがぬけ しずかにおろされた……

魔王「……」

まおうは せんだいまおうのしを しずかにみとどけた……

そのとき かたくとざされていたとびらが おとをたてて ひらかれた!
まおうがふりかえると そこには そっきんのすがたがあった……

側近「終わりましたか、魔王様」

魔王「……側近くん」

側近「まずは傷の手当てを。大人しくしていてください」

そっきんは じゅもんをとなえた!
まおうのからだのきずが みるみるうちに いえていく……
 


823 ◆6I9SwHc8xc2011/08/29(月) 10:38:28.07gXQ3m2zw0 (10/11)

 
魔王「……っ」

まおうはしずかにたちあがると おぼつかないあしどりで でぐちへあるいていく……

側近「どちらへ?」

魔王「どこだっていいだろ……ついてくるなよ」

側近「剣は回収しておきます。後ほど届けさせますので」

魔王「いいよ。あれは兄貴にくれてやる。見知った奴と一緒なら、安心して地獄に逝けるだろ」

側近「わかりました」

魔王「……そうだ、側近くん」

側近「なんでしょう?」

魔王「オレの心臓を抉り出して移植すれば、兄貴が蘇るって話……」

側近「ああ、あれですか。あれは先代様を動かすための作り話ですが?」

魔王「作り話……?」

側近「心臓を移植することによる復活など有り得ません。そのような術は存在しませんから」

魔王「だったら、兄貴がオレを殺ったら、どうしてた?」

側近「先代様を操るためのマニュアルも用意しておりました。お聞きになりますか?」

魔王「……結構だ。くそったれ」

まおうはうつむいたまま ながいかいだんを ゆっくりとのぼりはじめた……
 
 
 
せんだいまおうを たおした!
 


824 ◆6I9SwHc8xc2011/08/29(月) 10:39:49.81gXQ3m2zw0 (11/11)

次回からいよいよ竜王の砦にスネークする予定
しかし「魔王に痛い目に遭ってもらおうキャンペーン」は長かった……


825VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/29(月) 16:23:43.92BRJVJX9wo (2/2)




826VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)2011/08/29(月) 18:08:29.15Y6khEdpdo (1/1)

乙。俺は魔王パートも好きだぜ!

だが一番好きなのは僧侶パート


827VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/29(月) 19:25:40.347Wc32roAO (1/1)


俺は竜姫パートを楽しみにしてるぜ


828VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/30(火) 07:39:20.20aQtVJ4iIO (1/1)

勇者の話が見たい、それだけだ自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/


829VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/30(火) 11:44:30.41R52tCk0AO (1/1)

勇者は目標を決めたらそこに向かって一直線で、その能力もあるけど
良心の呵責とかそういうのが欠けていて非情にも外道にもなれてしまう
魔王は優しくてお人好しの好人物だけど、それは支配者の素質とは言えない
言い換えれば誰かや何かを捨てる覚悟が出来ていないということ

比較してみると好対照な二人だなぁ自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/


830VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/09/07(水) 07:52:25.64Etg7K4ZIO (1/1)

勇者まだかな④


831VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/09/12(月) 17:41:34.59quTZy3jIO (1/1)

そっちもよろしく④


832VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/09/25(日) 12:42:48.70BqXSfWiv0 (1/1)

支援age


833VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)2011/09/25(日) 16:59:35.18WtVTcLEL0 (1/1)

>>832
ここの仕様も理解出来ないまま、自分の知る事だけが
「常識」だとしか認識出来ないお前は取り敢えず死ね

それが嫌なら最低でも5年はROMってろボケ!!


834VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/09/25(日) 19:35:52.23WP3VavRIO (1/1)

まあもちつけ。

たゆまぬ支援④


835VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/09/26(月) 14:13:09.849+3XBTtGo (1/1)

東京は市ね


836VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/09/26(月) 19:53:59.463SW74iYIO (1/1)

東京の人気に嫉妬///


837VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)2011/10/03(月) 16:12:32.46IvEtSWpAO (1/1)

マダー


838VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/04(火) 01:25:41.75y/MFN4C7o (1/1)

なんか魔王が好きになれない…


839VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/04(火) 07:31:15.048apd1nVIO (1/1)


勇者の活躍はまだかー?


840VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/14(金) 23:43:48.89JuOQ3VxZo (1/1)

盗賊さんに会いたい……


841 ◆6I9SwHc8xc2011/10/19(水) 00:25:59.76U3rp6yeh0 (1/10)

 
――――――――――
二日後
竜王軍拠点・竜王の間
 
 
タッタッタッ……バタァン!

竜人A「り、竜王様!」

竜王「あん? どうした、血相を変えて」

竜人B「人間とエルフがついに動き出したんでさぁ!」

竜人A「奴ら、東側の平地と西側の川の両面に軍を展開していやす」

竜人B「既に小規模な遭遇戦が頻発していて、戦線は混乱してますぜ」

竜王「……なるほどな。そうか……思ったよりは早かったな」

竜王「で、向こうの数はどのくらいだ?」

竜人B「併せて10000ってとこです。特に魔法を使うエルフが厄介で……」

竜人A「今のところは竜騎兵の連中に抑えさせてますが、どうしやすか?」

竜王「まだ大した被害は出ていねぇんだろう。なら、まずは砦の守りを固めろ」

竜王「それから竜騎兵を呼び戻して、全員を飛竜に乗せて再出撃させろ」

竜人B「全員をですかい? しかし、騎兵隊だけじゃ数が足りねぇんじゃあ……」

竜王「敵に空の戦力はねぇ。少ない数で十分撹乱できるはずだ」

竜王「こっちにも段取りってもんがある。とりあえずは時間を稼げ。いいな」

竜人A「わかりやした!」
 


842 ◆6I9SwHc8xc2011/10/19(水) 00:27:01.18U3rp6yeh0 (2/10)

 
竜人B「竜王様はこれからどうなさるおつもりで?」

竜王「俺はこれからジジイの尋問の続きだ」

竜人A「しかし、野郎はどれだけ痛めつけてやっても口を割らなかったじゃねぇですか」

竜王「だから奴を呼びつけたんだろうが。奴は到着したか?」

竜人B「へい。はるばる本国から、つい数時間前に……」

竜王「ならいい。さっさと持ち場につけ」

竜人B「わかりやした」

ザッザッザッ……

ピタッ

竜王「……いや。お前ら、ちょっと待て」

竜人A「へい? なんでしょう、竜王様」

竜王「砦の中の見張りを増員しろ。地下にも何人か向かわせるんだよ」

竜人B「そりゃあ構いませんが……何かあるんですか?」

竜王「なに、少しな……用心に越したことはねぇってことさ」

竜王「じゃあ、俺はあのジジイを可愛がってやるとする。お前らもうまくやれよ」
 


843 ◆6I9SwHc8xc2011/10/19(水) 00:27:38.09U3rp6yeh0 (3/10)

 
――――――――――
一時間後
竜王軍拠点・地下水道
 
 
ゴォォォォォォ……

ゴボゴボ……ザパァァァン
 
勇者「……潜入成功だな。見張りはいない」

勇者「陽動作戦はうまく機能しているようだ。竜王軍の目は外に向いている」

戦士「よし、砦の内部に入るぞ。一刻も早く長老を救わねば」

勇者「この作戦に失敗は許されない。時間の余裕がないのは確かだが、慎重を期するべきだ」

戦士「兵は神速を尊ぶ、だ。敵地にいるならばこそ、迅速に事を運ぶべきではないか」

勇者「とにかく、一旦砦の見取り図を確認して……ん?」

僧侶「ま……待って……ください……」バシャバシャ

水竜「キュー?」ペロペロ

僧侶「ひぅっ……あうぅ……」ジタバタ

勇者「大丈夫か、僧侶」

僧侶「は、はい……なんとか……」ザパァ

勇者「ずいぶんと水竜に懐かれたものだな。君には才能があるらしい」

戦士「だ、だが僧侶殿の顔を舐め回すとは、破廉恥な水竜め……」

水竜「キュー」ドヤァ……

戦士「……帰ったらきつく躾けておくよう、里の調教師に言っておくか」
 


844 ◆6I9SwHc8xc2011/10/19(水) 00:28:36.84U3rp6yeh0 (4/10)

 
勇者「だが、こんなところにまでその鞄を持ってこなくてもよかったんだぞ」

僧侶「い、いえ……大臣に、いつも持っているようにって……言われましたから……」

戦士「僧侶殿は真面目だな……まあ、心配することはない。この俺に任せておけ」

戦士「竜王軍など物の数ではない。僧侶殿の薄皮一枚とて傷つけさせぬことを約束しよう」

僧侶「あ……ありがとう……ございます……」

戦士「とにかくここから出るぞ。敵が陽動に気を取られている今が好機だ」

僧侶「砦の構造は……わかってるんですよね……?」

勇者「ああ。事前に情報は得ている」

ゆうしゃは とりでのみとりずを ひろげた!

勇者「見取り図によれば、長老が捕らえられている独房はここからかなり離れているようだ」

勇者「最短ルートはこの道だが、独房の前には見張りがいる。回り道をする必要があるな」

僧侶「でも……どこから行くんですか……?」

勇者「独房の上を通る通風孔がある。そこから侵入して長老を救出しよう」

戦士「だがそうなると、旅行鞄を持っている僧侶殿や、鎧を身に纏っている俺は難しいな」

勇者「独房への侵入は一番身軽な私が行う。君達には脱出ルートの確保を頼みたい」

戦士「わかった。長老の救出は任せたぞ」

僧侶「が……頑張ります……!」

勇者「よし。では、作戦開始だ」
 


845 ◆6I9SwHc8xc2011/10/19(水) 00:29:38.32U3rp6yeh0 (5/10)

 
――――――――――
竜王軍拠点・地下水道出口
 
 
ザッザッザッ……

サッ

僧侶「前の廊下に……見張りが二人……います……」

勇者「こんなところに見張りが? ……見たところ、今さっきここへやってきたようだが」

戦士「奴らを片付けるのは容易いが、どうする?」

勇者「無論、戦わずして無力化できればそれに越したことはない」

僧侶「なら……催眠呪文で……眠らせたり……?」

戦士「そんなもの、仲間を呼ばれる前に奴らを始末すればいいだけの話ではないか」

勇者「……少し待ってくれ。その前に情報収集だ」

ゆうしゃは コインをゆびではじき じゅもんをとなえた!
ゆうしゃのかんかくが とぎすまされ みはりのかいわがきこえてくる……
 
 
 
竜人α「……しかし、竜王様の命令とはいえ、なにもこんなところまで見張りをつけなくとも」

竜人β「竜王様の勘は当たる。だから俺達はあの方についているんだろうが」

竜人α「それはそうだが……」

竜人β「何もなかったらそれでよし。何事かあるならそれを未然に防げる。悪いことはないさ」
 


846 ◆6I9SwHc8xc2011/10/19(水) 00:31:17.54U3rp6yeh0 (6/10)

 
竜人β「まあ、そろそろ交代の時間だ。あともう少しの辛抱さ」

竜人β「ところで通風孔の蓋は開けておいたか? 掃除をするという話だったが」

竜人α「大丈夫だ、問題ない。ついでにネズミの駆除もやるらしいな」

竜人α「独房の天井の蓋も開けておいたが、まさか脱走を企てないかと心配だな」

竜人β「いや、あのエルフの長老も竜王様に相当可愛がられたからな。脱走など考えないだろう」

竜人α「何日も飲まず食わずでいられるのは流石と言うべきだな」

竜人β「いつまで持つか見物だな。口を割るのが先か、力尽きるのが先か……」
 
 
 
勇者「……」

僧侶「どう……でしたか……?」

戦士「奴らは何を話していたのだ、勇者」

勇者「……竜王は我々の陽動作戦に気づいている」

戦士「なに?」

勇者「砦内部の見張りを増員しているらしい。やはり竜族の王、侮れない男だ」

僧侶「これから……どう……するんですか……?」

勇者「とにかく、見つからないよう慎重に進むしかない。この砦の全戦力を相手にするのは不可能だ」

戦士「くっ……長老の救出が目的でなければ、今すぐにでも竜王に天誅を下してやるものを……」

勇者「彼らの話ではそろそろ交代の時間らしい。ここに身を隠して時機を待とう」

戦士「止むを得んな……今しばらくのうちは待つことにするか」
 


847 ◆6I9SwHc8xc2011/10/19(水) 00:31:59.48U3rp6yeh0 (7/10)

 
――数分後
 
 
カツーン……カツーン……

勇者「……動いたな。交代の者がやってきたようだ」

僧侶「また……二人です……」

戦士「ようやく来たか……よし、俺に任せろ。前の奴らが出ていった隙に片付けてやる」

勇者「待つんだ、焦りは禁物……」

戦士「お前のやり方は消極的に過ぎる。慎重も度を越せばただの臆病というのだ!」

バッ!

せんしは ものかげからとびだした!
みはりのりゅうじんたちは おどろきとまどっている!

竜人γ「な、何だ貴様!」

竜人δ「し、侵入者が……」

戦士「遅い!」

せんしは こしのさやからけんをぬき はやてのようにかけぬけた!

竜人γ「グッ……!?」

竜人δ「ガァァァ……!」

ちしぶきがとびちり りゅうじんたちは いとのきれたにんぎょうのようにくずれおちた!

りゅうじんγ・δをたおした!
 


848 ◆6I9SwHc8xc2011/10/19(水) 00:32:31.66U3rp6yeh0 (8/10)

 
戦士「どうだ、見張りは排除したぞ。これで上の階へ行ける」

勇者「……戦士。何故私の言うことを無視した」

戦士「俺達の目的は長老の救出し古代魔法の秘儀を守ること。事は一刻を争うのだ」

勇者「だが君の軽率な行動がパーティ全員を危険に晒すかもしれなかった。ここは敵地なんだぞ」

戦士「確かに俺は一時的にせよお前の味方になったが、お前の命令に従うなどと言った覚えはない」

戦士「俺はお前のお供でもなければ部下でもない! そこを勘違いしないことだな」

戦士「第一、俺がついてきたのは……僧侶殿が……」

僧侶「……?」

戦士「い、いやっ! なんでもない。とにかく先を急ぐぞ」

タッタッタッ……

僧侶「……戦士さん……大丈夫なんでしょうか……?」

勇者「……」

勇者(確かに私のやり方は慎重すぎるかもしれないが、彼のやり方もまた性急すぎる)

勇者(戦士の独断専行を掣肘できるとすれば僧侶だが……いや、よそう)

勇者(急ぎすぎさえしなければ戦士の力は頼りにできる。上手く操縦できるだろうか……?)

僧侶「あの……勇者さん……? どうか……しましたか……?」

勇者「……いや、大丈夫だ。問題ない」

勇者「それよりも先を急ごう。私達も戦士に追いつかなくてはいけない」

僧侶「はい……」

タッタッタッ……
 


849 ◆6I9SwHc8xc2011/10/19(水) 00:34:02.80U3rp6yeh0 (9/10)

 
――――――――――
同時刻
城下町・公園
 
 
ガヤガヤ……

竜姫「……はぁ。まったく、太陽が眩しくて憎たらしいわ」

竜姫「肌を隠すために黒衣を纏ってみたが、暑くてかなわぬ。この季節では目立つし……」

竜姫「とは言っても、生活必需品くらい買うておかねば困るしのう。どうしても外に出ねばならぬ」

竜姫「黒衣を纏うのを宗教上の理由ということにしても、いつまで誤魔化せるやら……」

竜姫「……勇者め、何をやっておる。わらわをずっと一人にしておくなど許されがたいことじゃぞ」

竜姫「父上などさっさと倒して戻ってこぬか。まったく……」

竜姫「……ん?」

りゅうきは ふと しゅういをみまわした
ひろばをふきぬけたかぜが かのじょのしっている においをはこんできた……

竜姫「この匂い……いや、まさかな」

竜姫「わらわも疲れておるようじゃ。よもやこのような場所で……」

竜姫「さ、早く買い物を終わらせて帰るとしようかの」

ザッザッザッ……
  
 
  
りゅうきが そのばをたちさったあと ひろばのかたすみにふたりのおとこがたっていた

くろずくめのかっこうをしたおとこたちの くちもとには
あおじろいはだと するどいキバがのぞいていた……
 


850 ◆6I9SwHc8xc2011/10/19(水) 00:37:27.49U3rp6yeh0 (10/10)

なかなか進まなくて申し訳ありません
実を言うとそろそろ勇者も酷い目に遭う予定です


851VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/19(水) 00:39:48.01AWhD4VqDO (1/1)

みんな酷いめに合うね!


852VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/19(水) 01:07:56.27WAGQnhR7o (1/1)

乙ッス!


853VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)2011/10/19(水) 11:18:58.79CKNiuHm2o (1/1)

メタルギアソリッドか


854VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/10/19(水) 12:50:55.74Sc+2KXb/o (1/1)

乙。 勇者も酷い目か… 仲間脂肪とかかな。


855VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/20(木) 07:22:19.10meS/83bIO (1/1)

読者も酷く待たされているが、こうやって投下の救いがある。問題ない。


856VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/10/20(木) 23:34:09.052O/zymKno (1/1)

この焦らしに快感を覚える様になってこそ真のなんちゃら~

放置プレイとは絶対的な相手への信頼あってこそぜよ


857VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/21(金) 03:04:59.66lLA4HJMDO (1/1)


酷い目か…賢者や僧侶の腰の入ったローキックや竜姫の下着洗濯しゃないのだけは確かだな
アレは御褒美だ



858VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/21(金) 14:04:59.925vC+v/vIO (1/1)

>>856
おまえ凄いな
SMの達人クラスみたいだwwww


859VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/21(金) 23:11:09.15cwzFPDJAO (1/1)

賢者の腰の入ったいいローキックが懐かしい


860 ◆6I9SwHc8xc2011/11/16(水) 23:14:50.12VlE6wYrw0 (1/10)

 
――――――――――
竜王軍拠点・地下3階
 
 
ザッザッザッ……

戦士「……この階に長老が囚われているのか」

勇者「そうだ。情報が正しければ、長老はこの奥の独房に監禁されているはずだ」

勇者「先程の見張りの会話から、通風孔の蓋が開けられていることはわかっている」

勇者「メンテナンス用の出入り口から長老の独房へ侵入し、彼を脱出させるんだ」

僧侶「私達は……敵が来ないかどうか……見張っていれば、いいんですね……?」

戦士「急げよ。竜王軍の雑兵どもなど蹴散らすことは容易いが、一刻も早く長老を救わねばならん」

勇者「わかっている。私がいない間、僧侶を頼む」

僧侶「だ……大丈夫……です……! 足手まといには……なりません……から……」

戦士「い、いいや。そのようなことを僧侶殿が気にする必要はない。俺に全て任せておけ」

僧侶「でも……私は……」

戦士「勇者よ。お前もさっさと長老を助け出して来い」

勇者「ああ、可及的速やかに事を運ぼう。では、ここで待っていてくれ」

ザッザッザッ……
 


861 ◆6I9SwHc8xc2011/11/16(水) 23:15:43.74VlE6wYrw0 (2/10)

 
――――――――――
数分後
長老の独房
 
 
ゆうしゃは つうふうこうのなかを はってすすんでいった
そして しばらくすすんでいると ぜんぽうにひかりがさしこんでいるのがみえた……

………………

…………

……
 
 
 
ガタッ

長老「ッ! な、なんだ……?」

ガシャンッ

ゆうしゃは てんじょうのつうふうこうから どくぼうのなかへ おりたった!

勇者「……ふぅ。やはり、狭い通風孔の中を通るのは一苦労だな」

長老「だ、誰だ!」

勇者「エルフの里の長老だな」

長老「……いかにも、わしが長老だが」

勇者「私は勇者だ。あなたを助けに来た」

長老「……確かに、竜王の一味ではないようだな。噂に聞く人間の勇者とはお前のことか」

勇者「私のことをご存じとは光栄だ。しかし、今はここから脱出を」
 


862 ◆6I9SwHc8xc2011/11/16(水) 23:16:42.79VlE6wYrw0 (3/10)

 
長老「……ふん。わしを救い出しに来た、か……だがもう遅い」

勇者「遅い? どういうことです」

長老「わしを救う目的は、つまるところ古代魔法の秘儀を守るためだろうが……」

長老「……秘密は既に知られてしまった。竜王は古代魔法の秘儀を知ってしまったのだ」

勇者「……喋ったのですか?」

長老「奴らの拷問には耐えた。だが、よもやあのような……心を読む力があるなどと」

勇者「竜王軍に読心能力がある者がいると? 情報にはなかったが……」

長老「わしの頭の中から秘儀を読み取るため、本国から召喚したらしい」

長老「まんまと秘儀に関する情報を読み取られてしまった。こうなればわしはもはや用済み……」

長老「こんな、いつ始末されるかわからぬ老いぼれを救いに来たとて益はないぞ、小僧」

勇者「……長老。古代魔法の秘儀とは一体なんなのです?」

勇者「伝承によれば、古代魔法を極めし者は天地魔界を統べる力を得るといいますが……」

勇者「本当に、そのような力が得られるのですか? 私にはいまだに信じがたい」

長老「……言えぬ。竜王には知られてしまったが、お前達人間にまで秘密を漏らすわけには」

勇者「一介の学士としての興味がまったくないと言えば嘘になります。しかし」

勇者「秘儀を得た竜王を倒すためには、我々もその秘儀を知らなければならない」

勇者「敵がどれほど強大であれ、情報がなければ対策の立てようもない。違いますか、長老」
 


863 ◆6I9SwHc8xc2011/11/16(水) 23:19:14.96VlE6wYrw0 (4/10)

 
長老「……ここで聞いたことを決して口外せぬと誓えるか?」

勇者「保証はしかねます。勇者とはいえ、王宮の命令には逆らえません」

長老「ふん、正直な奴だ……まあいい。どのみち、一刻も早く竜王を討たねばならぬ」

長老「わしがお前に秘儀のことを話すのは、あくまでそのためだ。よいな」

勇者「承知しています」

長老「うむ……神話の時代に神々より伝えられた原初の魔法、それが古代魔法だ」

長老「だが実のところ、その多くは大なり小なり形を変えて、現代に受け継がれている」

長老「とどのつまり、古代魔法とは、今日の魔法のルーツであるというだけのもの」

勇者「確かに……以前、竜王が古代魔法を使ったのを見たことがありますが」

勇者「出力や制御系統に多少の違いはあるようですが、どれも再現可能なものばかりでした」

長老「……だが、我らエルフにのみ伝えられた禁断の術式も存在する。それが」

勇者「神域の禁呪とも呼ばれた、古代魔法の秘儀……というわけですね」

長老「そうだ。秘儀が門外不出のものとされたのは、他種族による悪用を防ぐため」

長老「覇権への欲に駆られた者達が秘儀をもって世界の理を捻じ曲げ、やがては破滅への道を辿る」

長老「それを防ぐために、長老をはじめ一部の者だけに伝えられてきたのだ」

勇者「……それで、その術式とは? 一体どんな魔法なのですか」
 


864 ◆6I9SwHc8xc2011/11/16(水) 23:22:09.45VlE6wYrw0 (5/10)

  
長老「古代魔法の秘儀……それは“時空渡り”の法だ」

勇者「時空渡り……?」

長老「そうだ。現在・過去・未来という、時間と空間そのものに干渉し、それを操ることができる」

勇者「……時間を操る魔法など、現代魔法学ではまだその糸口さえ見えないというのに」

長老「我々がそれを秘匿してきたからだ。欲望の力が世界の理を壊すと知っているからな」

長老「それを使えば、自分の肉体の時間を巻き戻すことで若返ることもできる。不老不死の実現だ」

長老「更に、自らを違う時空へ転移させることで、過去や未来の世界へ行くことができる」

勇者「……まさか?」

長老「そのまさかだ。竜王はおそらく、過去の世界を征服し歴史を変えるだろう」

長老「過去のどの時点で歴史を変えれば奴の望む世界になるかは誰にもわからんが……」

長老「とにかく、これは天地の法則に逆らった行い。どんな影響を及ぼすか想像もつかん」

勇者「……」

長老「このことは、あの呪文書に暗号化されて記されているが……」

長老「わしの頭の中から直接情報を引き出されたのなら、解読完了は時間の問題だろう」

勇者「……待ってください。それほどの魔法なら、扱うのに膨大な魔力が必要になるはず」

勇者「竜王がいかに強大な魔力を持っているとしても、到底賄えるとは思えません」

長老「いや。古代魔法の魔力源を考えれば、片道だけならなんとかなるはずだ」

勇者「魔力源……? 魔力は術者の精神エネルギーを変換するのではないのですか?」

長老「ああ。古代魔法における魔力とは、即ち……」
 


865 ◆6I9SwHc8xc2011/11/16(水) 23:23:11.45VlE6wYrw0 (6/10)

 
……! ……!

勇者「……!」

長老「なんだ、どうしたのだ」

勇者「外が騒がしい……まさか、戦士達が見つかったのか」

長老「なに? 戦士が来ているのか?」

勇者「はい。私のパーティの一員としてこの作戦に参加しています」

長老「里の守りを放り出して何をやっているのだ、まったく……」

勇者「見張りの敵兵も持ち場を離れている……やはり彼らが戦っているらしい」

勇者「……急ぎましょう。戦士達と合流してこの砦を脱出します」

長老「……うむ。だが、せめて呪文書だけでも取り返さねば」

勇者「我々にとっては古代魔法の秘儀の正体がわかっただけでも大きな前進です」

勇者「それに今の戦力はわずか3人。竜王を相手取るには不安が残ります」

勇者「情報は得た。後手に回ってしまうとはいえ、対策を立てることはできるはず」

長老「だが……」

勇者「今は一刻を争う時です。さあ、お早く」

長老「……致し方ない。では行こうか」
 


866 ◆6I9SwHc8xc2011/11/16(水) 23:24:07.75VlE6wYrw0 (7/10)

 
――――――――――
同時刻
竜王軍拠点・地下3階
 
 
キィン!

ザシュッ!

竜人ε「こ……こいつ、強いぞ!」

竜人ζ「軟弱なエルフに人間の小娘、ちょろいものだと思ったが……」

戦士「フッ……貴様ら雑兵では相手にならんな。竜王軍も大したことはない」

竜人η「おのれ、大口を叩きおって!」

僧侶「せ、戦士さん……! 私も……援護します……!」

戦士「無用だ。僧侶殿は俺が守る……何も心配しなくていい」

僧侶「で……でも……」

戦士「さあ、死にたい者から前に出ろ。まとめて片づけてやる」

竜人θ「何を寝ぼけたことを……たった一人でどれほどのことができる!」

竜人ι「ええい、構わん! 八つ裂きにしてやれ!」

戦士「僧侶殿には指一本触れさせぬ。勇者が戻ってくるのを待たず、貴様らは全滅だ!」

せんしは じゅもんをとなえ けんをゆかにつきたてた!
ちていからマグマがふきだし りゅうじんたちにおそいかかる!
 


867 ◆6I9SwHc8xc2011/11/16(水) 23:25:33.28VlE6wYrw0 (8/10)

 
しかし マグマのこうねつにさらされながら りゅうじんたちはへいきなかおをしている!

竜人ε「バカが! 俺達竜族にとっては、この程度のマグマはぬるま湯みてぇなものよ!」

戦士「知っているとも。だがこれならどうだ?」

せんしは けんからてをはなし よろいのせなかからおりたたまれたロッドをぬいた!

竜人θ「背中から新たな武器を……奴の鎧は全身武器の塊か?」

竜人ι「だがそんな棒切れが何になる!」

戦士「冥土の土産に教えてやろう。この鎧に隠された武器はすべて、杖と同じ魔力増幅効果がある」

せんしは ロッドにてをかざしてじゅもんをとなえた
こごえるかぜがふきあれ ゆかからふきだすマグマをみるみるうちにひやしていく!

戦士「最上級呪文でさえも最小限の魔力消費で放つことができる。このようにな」

なんと マグマがひえてかたまり りゅうじんたちのあしがうごかなくなった!

竜人ζ「な!?」

竜人η「う、動けん……!」

戦士「さらに、武器そのものに魔力を込めることで……!」

せんしのよろいのみぎうでのそうこうがはずれ なかからボウガンがあらわれた!
せんしは じゅもんをとなえ ぎんのやにまりょくをこめた!

戦士「貴様ら全員を消滅させるに足る破壊力を得るのだ!」

せんしは ぎんのやをはなった!
やははなたれたしゅんかん まばゆいひかりとなって りゅうじんたちをのみこんだ!
 


868 ◆6I9SwHc8xc2011/11/16(水) 23:26:33.47VlE6wYrw0 (9/10)

 
僧侶「きゃっ……!?」

ひかりがおさまったとき りゅうじんたちはきえうせていた……

僧侶「す……すごい……です……」

戦士「他愛もない……僧侶殿」

僧侶「は、はい……?」

せんしは そうりょにロッドをてわたした!

戦士「その鞄ひとつでは心許ないだろう。そのロッドを持っていろ」

戦士「先程見たように、術者の魔力を増幅し強化する効果がある。武器としても一級品だ」

僧侶「え……でも……戦士さんは……?」

戦士「この鎧は全身に武器が仕込まれている。ロッドのひとつやふたつ、どうということはない」

僧侶「そうなんですか……でも……あまり無理はしないで……ください……」

戦士「俺の心配は無用だと言ったはずだ。ま、まあ、悪い気はせんが……」

僧侶「……そういえば、勇者さんは……まだでしょうか……?」

僧侶「長老さんを助けに……行って……しばらく経ちますけど……」

戦士「ああ……それにしても、何故俺達の居場所がバレたのだ?」

戦士「ここは見張りの巡回コースからも外れていた。俺達の潜入も発覚していなかったはず……」

僧侶「……なにか……嫌な、予感が……します……」
 


869 ◆6I9SwHc8xc2011/11/16(水) 23:30:17.36VlE6wYrw0 (10/10)

最近はこのスレ→兵士スレ→文芸部の原稿という具合にローテーションしながら書いてます。
合間合間に遊戯王とかバトスピとかヴァンガードを挟むせいで遅くなってるのは確定的に明らか。


870VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/16(水) 23:34:14.29IUHhB1LXo (1/2)

文芸部が分からん
なんてスレ?


871VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/16(水) 23:50:00.97b6w+DmRyo (1/1)

乙乙!
たぶん部活の話じゃないか


872VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/16(水) 23:52:48.12IUHhB1LXo (2/2)

見当たらない酉でググってもこのスレと兵士スレ
後謎の安価スレぐらいしか出てこなかった


873VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/17(木) 00:42:58.97n/mzVLWmo (1/1)

乙。 あれか、戦士の鎧はダイ大の鎧の魔槍パワーアップ版みたいなもんか。


874VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/17(木) 06:14:15.84Z5Nwg0n/o (1/1)

いやぁぁぁぁあああっふぅぅぁぅぅ!
待ちわびたぜ文芸部!!

>>872
そりゃそうだ
このスレの>>1参照
>初SSです。
と作者さんが書いとる


875VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/17(木) 18:44:37.39jFGwahBoo (1/3)

>>874 文芸部スレはなんてスレタイなのかと聞いてるのにそんなこといわれても…
誰かスレタイを教えてくださいな


876VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福岡県)2011/11/17(木) 18:53:17.61whGEFBZOo (1/2)

>>875
>>871


877VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/17(木) 20:31:47.53jFGwahBoo (2/3)

>>876 文芸で調べても部活で調べてもヒットするスレ無いんだが・・・


878VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福岡県)2011/11/17(木) 20:43:29.30whGEFBZOo (2/2)

いや、だから現実の部活の原稿の事だろって


879VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/17(木) 20:58:02.31jFGwahBoo (3/3)

自分の読解力の無さに絶望したorz
すまんありがとう


880VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/17(木) 22:41:15.77CoG3/LkHo (1/1)

ちょっとワロタ


881VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/18(金) 11:33:16.69z21t62QIO (1/1)

同意、ワロタ

で、>>1様よ~
文芸部の作品を発表後でいいからスレ作って同じ酉で投下しておくんなまし


882VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/18(金) 19:50:13.77vUBm2pdM0 (1/1)

それ特定されかねないよね
少なくとも身内には


883VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/20(日) 14:10:12.50BYfsmDYDO (1/1)



きてたきてたww


884 ◆6I9SwHc8xc2011/11/21(月) 09:52:00.16slppLYuE0 (1/6)

 
――――――――――
同時刻
王都・城下町
 

竜姫「……」

コツ……コツ……
 
くらいろじうらを りゅうきはひとりであるいている
じぶんをついせきするもののそんざいに かのじょはきづいていた……

やがて りゅうきはたちどまり ゆっくりとふりむいた!

そこにいたのは こうえんのかたすみにいたふたりぐみだった……

竜姫「……何奴じゃ。何故、わらわをつけ回す」

???「……」

竜姫「お前達からはわらわと同じ匂いを感じる。竜の血の匂いがのう」

竜姫「よもや父上の手の者か? わらわを始末しに来たというわけか」

???「いいえ……とんでもねぇ。むしろ逆でさぁ」

???「……あなたをお迎えに上がりやした。お嬢」

竜姫「迎え……?」

???「ええ。あの夜からずっと探し続けておりやした」

バサッ

ふたりぐみは まぶかにかぶったぼうしをとり すがおをさらした!
 


885 ◆6I9SwHc8xc2011/11/21(月) 09:53:02.11slppLYuE0 (2/6)

 
竜人ψ「お嬢。俺達と一緒に来てくだせぇ。本国へ戻りやしょう」

竜人ω「お嬢の帰りを待っている奴は大勢いやす。さあ」

竜姫「……思い出してきたわ。お前達はわらわの手下連中じゃな」

竜姫「こんなところまでわらわを探しに来るとは、見上げた忠誠心じゃ。褒めてつかわすぞ」

竜人ψ「へへぇ……ありがてぇこってす。お嬢にお褒めの言葉を頂けるたぁ……」

竜人ω「勇者の野郎と行動を共にしてると聞いた時は心配で心配で……」

竜姫「案ずるな。勇者はわらわの小間使いのようなものじゃからな」

竜人ω「流石はお嬢! 勇者まで手下にしちまうたぁ、器が違うってもんでさぁ」

竜人ψ「やはりお嬢はこれからの竜族を背負って立つお方。俺達の頭に最も相応しい」

竜姫「……じゃが、今更戻れるわけがなかろう。わらわは父上に歯向かった反逆者ではないか」

竜人ω「確かにそうかもしれやせんが、方法はありやす」

竜人ψ「竜王様は手柄を立てた者には寛容です。何か手土産がありゃあ……」

竜姫「王国の要人の首でも持ち帰れと? 出来もせぬことを……」

竜人ψ「確かに難しいでしょう。ですが、今はチャンスなんです」

竜姫「チャンス?」

竜人ω「実は、これから宮殿前の広場で式典が行われる予定だそうで」

竜人ψ「なんでも今回の遠征の戦勝を祈念するってんで、国王や王妃、王子なんかもいるとか」
 


886 ◆6I9SwHc8xc2011/11/21(月) 09:53:54.50slppLYuE0 (3/6)

 
竜人ψ「その式典に潜入して、誰でもいいですが、王族の首を獲れば……」

竜人ω「それに今王都にいるのは俺らだけじゃありやせん。他にも仲間は何人もいやす」

竜姫「具体的に言わぬか。何人いるのじゃ?」

竜人ψ「俺らを含めて、生え抜きの戦士が10人ほど」

竜姫「竜族の戦士が10人……なるほど、大した戦力じゃな」

竜人ω「手柄さえ立てりゃ、竜王様もお嬢を無碍にはできないはず。やってみる価値はありやすぜ」

竜人ψ「お嬢、お願いでさぁ。俺らに任せてくだせぇ」

竜姫「……確かに、このまま魔界へ帰るよりかはいくらかマシな選択肢じゃな」

竜人ω「それじゃあ……!」

竜姫(勇者の帰りをただ待っているよりも、父上を出し抜ける可能性に賭けた方がよいのではないか)

竜姫(どちらにせよ勝算はない。あったとしても紙のように薄い確率……じゃが……)

竜姫(このまま王都に留まり、正体が露見する危険を冒し続けるのも上策ではない)

竜姫(それに魔界に戻れさえすれば、魔王と合流できるやもしれん。願ってもないことじゃ)

竜姫(やはり、わらわの選ぶべき道は……)
 


887 ◆6I9SwHc8xc2011/11/21(月) 09:54:38.50slppLYuE0 (4/6)

 
 
 
 
 
勇者『私は死ぬつもりはない。必ず帰ってくる』
 
 
 
 
 
勇者『だから、私を信じて待っていてくれ』