12011/01/21(金) 03:50:07.69NYWq/vuc0 (1/38)

初SSです。
至らぬ点など多々あるかと思われますが、がんばります。


22011/01/21(金) 03:50:57.52NYWq/vuc0 (2/38)

勇者「前略、親父殿にお袋様」

勇者「時の流れは速いもので、私が故郷を旅立ってから一ヶ月が経ちました」

勇者「勇者の使命を全うするため、魔王討伐に向けて頑張っています」

勇者「さしあたって、今私が直面している問題は……」


<イタカー!?

<ヤツハドコニイッター!

<サガセー!


勇者「公僕の皆様に追いかけられていることです」


32011/01/21(金) 03:51:32.56NYWq/vuc0 (3/38)

騎士A「いたぞ!」ザッ

騎士B「この犯罪者め、この場で斬り捨ててくれる!」チャキッ  

勇者「……すまないが、ここで捕まるわけにはいかない。スタコラサッサだ」ダッ

騎士A「待てー!」

勇者「待てないと言っている!」



勇者(何故こんなことになったのか……それは一ヶ月前、勇者として旅立つ直前まで遡る)

勇者(私には別に生まれながらの宿命や因縁があったわけではなく)

勇者(王立魔法研究所の学士として、独自に新たな魔法の研究を行っていた)

勇者(そしてある日、王宮に呼び出された私は、魔王を討つ勇者に任命されたのだ)


42011/01/21(金) 03:52:46.24NYWq/vuc0 (4/38)

――――――――――
一ヶ月前
王宮
所持金:0G


勇者「私が勇者……ですか?」

王様「うむ。聞けばそなたは剣術の心得もあり、魔法研究の分野でも非常に優秀」

王様「現在の我が国にそなた以上の適材はいまい」

勇者「恐れながら陛下、私は一介の研究者にすぎません。そのような大役は……」

王様「そう謙遜するでない。我々も勇者選考に半年もかけておるのだ。のう大臣よ?」

大臣「はっ。最も勇者に相応しい人物を見つけるため、国中から候補者を探しました」

王様「そなたの研究している魔法の資料も見せてもらった」

王様「あの魔法が完成すれば魔王とて討つことができよう」

王様「行け、勇者よ! 魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらすのだ!」



勇者(その後、研究所に戻って資料の整理と書きかけのレポートを仕上げた私は)

勇者(翌日、勇者として旅立つことになった)

勇者(同僚たちへの別れを済ませ、魔王討伐の長い旅へと……)

勇者(しかし、陛下は出立のための資金を120Gしか用意してくれなかった)

勇者(これが全ての始まりだったのだ……)


52011/01/21(金) 03:53:25.55NYWq/vuc0 (5/38)

 
――――――――――
現在
とある街にて
所持金:6731G


騎士A「待てー! 待たんかー!」

騎士B「インチキ商売人め、王宮の権威を貶めた罪は重いぞ!」

勇者「クッ……しつこい」

勇者(出来れば使いたくはないが……是非もない)

ゆうしゃは ふところから きんかを とりだした
ゆうしゃは じゅもんを となえた!

勇者「――燃えろッ!」

ほのおのかべが きしたちの まえに たちふさがった!
あまりのあつさに きしたちは すすめない!

勇者(私の開発した魔法、それは)

ほのおのかべは もえつづけている!
ゆうしゃの きんかは おともなく くずれ はいになった……

勇者(呪文発動のための魔法媒介に貨幣を用いた、『魔貨式魔導法』)

勇者(――所持金=MP上限という画期的超理論に基づく魔法体系だ)

ゆうしゃは にげだした!


62011/01/21(金) 03:55:26.55NYWq/vuc0 (6/38)

 
――――――――――
路地裏
所持金:6264G


勇者「はぁ、はぁ、はぁ……ようやく撒いたか」

勇者「また貴重な金貨を……だが銅貨や銀貨ではあれほどの出力は得られない」

勇者「かといって、普通の魔法を使おうにも私はMPが低いからな……」

??「勇者さん!」

勇者「ッ!? ……ああ、君か。賢者」

賢者「また騎士団に追われてましたね? 今度は何をやったんです」

勇者「資金調達のために手製のマジックアイテムを売っていた」

賢者「マジックアイテムの売買には王宮の認可が必要なんですよ?」

勇者「知っている。認可を取るためにはそれなりの袖の下が必要だということも」

勇者「だが見てくれ。今日は1000Gも稼ぐことができた」

賢者「そりゃ良かったですね……」

賢者「ああ……なんでボク、こんな人のパーティに加わったんだろ……」

勇者「まったくだな。君も物好きな奴だ」

賢者(ブッ殺してぇ……)



72011/01/21(金) 03:58:07.85NYWq/vuc0 (7/38)

賢者「この間は薬草、その前は魔法石、今回はマジックアイテムの密売……」

勇者「占星術に用いる星座盤を作って売ったこともあったな」

賢者「いくらお金がいるからって、こんなんじゃいつか本当に捕まっちゃいますよ」

勇者「勇者の名誉のためにもそれは避けたいものだな」

賢者「……だいたい、なんでそんな燃費の悪すぎる魔法を使ってるんですか」

勇者「私自身に魔法の才能がないからさ」

賢者「王立魔法研究所の所員だったのに?」

勇者「基本的な魔法くらいは使える。だが上級魔法になると扱い切れなかった」

賢者「とんだ頭でっかちだったわけですね」

勇者「そういうことになる。MPの上限が低いせいだというのはわかっていたが……」

賢者(皮肉もきかねぇのかよ)


82011/01/21(金) 04:00:12.48NYWq/vuc0 (8/38)

賢者「で、なんで魔法媒介がお金なんです。他になかったんですか?」

勇者「いい質問だ。説明しよう……当然だが、貨幣の価値は物質としての価値とは異なるものだ」

賢者「まあ、金貨だって純金の塊じゃなく、金の混ざった合金の塊ですからね」

勇者「貨幣が額面通りの価値を持つには、その貨幣に信用があることが必要となる」

勇者「私はそこに目をつけた。国中の人間がその貨幣に価値を認め信用しているということは」

賢者「ということは?」

勇者「つまり、『貨幣そのもの』に強い念が込められているということに他ならない」

賢者「貨幣自体に……ですか?」
 
勇者「金銭はそもそも、人間の、欲望というプリミティブな衝動の象徴だ」

勇者「これは魔法的な意味を見出すには十分すぎるファクターだ」

勇者「だから貨幣に込められた念を利用する術式を開発しようと思い立った」

賢者「で、貨幣そのものをリソースに使う魔法が完成したと」

勇者「通常の魔法は精神力を代償に精霊から力を借りる」

勇者「こちらは金銭に込められた念で精霊や悪魔から力を買う」

勇者「奇跡を金で買う……簡単に言ってしまえばそういうことだ」


92011/01/21(金) 04:02:49.78NYWq/vuc0 (9/38)

賢者「呆れるくらい神秘性のない魔法ですね」

勇者「だが費やす金額に比例して出力は跳ね上がる」

勇者「理論上は、魔法の才能のない者でも戦略級の極大殲滅呪文を扱える」

賢者「でも魔法を使うために怪しい商売に手を染めるなんて……」

勇者「陛下が120Gしか用立ててくれなかったからな」

勇者「実験も兼ねてスライムやら大ガラスやらを狩っていたら一時間で底をついた」

賢者(あたりめーだよバカ)
  「あたりめーだよバカ」

勇者「偽造貨幣の製造も考えたのだが、流石に造幣用の設備を整えるのは不可能だったな」

賢者(勇者さんが捕まったら他人のふりをしよう)
  「勇者さんが捕まったら他人のふりをしよう」

勇者「だが、そのおかげでデータも集まったし目標もできた。10000G集まればしばらくは戦える」

賢者(頭のいいバカってこういう奴のことを言うんですね)
  「頭のいいバカってこういう奴のことを言うんですね」

勇者「……君は正直な奴だな」

賢者「それはどうも。子供の頃から素直な良い子で通ってましたから」

勇者「私は変人偏屈で通っていたよ。何故だろうな」


102011/01/21(金) 04:06:16.22NYWq/vuc0 (10/38)

もう少し書きためるべきだったろ……常識的に考えて……

今日の夕方~夜にまた投下できるよう頑張ります。


11VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 04:18:16.644YCQ9YUqo (1/1)

よし がんばれ


12VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 04:22:55.81/35Csjtv0 (1/1)

いいじゃないか


13VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 07:14:14.053RTqfURDO (1/1)

なんかOOOを連想した
どっちかって言うとバースだろうか


14VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 10:44:41.25NqXW94j4o (1/2)

なんというセルリアクター


152011/01/21(金) 11:26:05.06NYWq/vuc0 (11/38)

――――――――――
一ヶ月前
草原
所持金:61G


ザシュッ!

まもののむれを やっつけた!
ゆうしゃは 20の けいけんちを えた!
17Gを てにいれた!

勇者「……よし、こいつの毛皮は使えそうだ」

ゆうしゃは ナイフを とりだし まものの かわを はぎとっている!

勇者「相場はわからないが、売れば多少の金にはなるだろう」ザクザク

勇者「……しかし、多くの冒険者は魔物を殺しっぱなしだが、勿体ないとは思わないのだろうか」

勇者「魔物の骨と皮、時には爪や牙は貴重な資源になるというのに……」

ザッザッザッ

??「勇者様ーっ!」

勇者「ん? ……君は、王宮の兵士か」

兵士「はい! 勇者様、王様がお呼びです」

勇者「陛下が?」

兵士「なんでも、会わせたい人がいるとか……とにかく、ついてきてください」


162011/01/21(金) 11:26:45.90NYWq/vuc0 (12/38)

 
――――――――――
一ヶ月前
王宮
所持金:78G


兵士「陛下! 勇者様をお連れしました」

勇者「私に会わせたい人物がいると聞き、戻って参りました」

王様「うむ。新たな勇者が旅立ったと聞いて、勇者のお供に是非にと志願した者がおった」

勇者「お供?」

王様「賢者! 賢者はおるか!」

賢者「お呼びでしょうか、陛下」

勇者「君は……確か、王宮お抱えの」

賢者「はい。ボクは賢者と申します。以後お見知りおきを」

大臣「我が軍自慢の、魔導騎士団の次期団長と目されている者です」

勇者「時期団長とは……エリートなんだな、君は」

賢者「光栄です」



172011/01/21(金) 11:27:18.12NYWq/vuc0 (13/38)


賢者「勇者様、どうかボクをお供にしてください。攻撃・補助・回復呪文、なんでもやれます」

勇者「……」


勇者(私の魔法の性質上、仲間を増やすことは必ずしも得策ではない)

勇者(所持金が魔法の威力に直結する以上、装備や宿代、道具代で浪費するのは避けたい)

勇者(しかし彼は賢者だ。既存の魔法との比較実験を行うのが容易になる)

勇者(受けるべきか断るべきか。どちらが私にとってメリットが大きいのか……)


勇者「……賢者。いくつか私の質問に答えてほしい」

賢者「はい?」

勇者「まず第一に、君は呪文はなんでもやれると言ったが、どんな呪文を覚えている?」

賢者「一応、最高位の極大呪文まで一通りは」

勇者「次に……君は手先は器用かな?」

賢者「? はぁ……とりあえず、マジックアイテム製造の実習ではいつも満点でした」

勇者「そうか、わかった。最後に、君はモテるか?」

賢者「??? ……それはわかんないです」


賢者(勇者さん、なんでこんな質問するんだろ……?)


182011/01/21(金) 11:28:38.23NYWq/vuc0 (14/38)

 
――――――――――
現在
とある村
所持金:4109G


賢者「ええ、わかりましたよ。あの時の質問はこういうことだったんですよね」

賢者「手先が器用なボクにマジックアイテムの製造を手伝わせて」

賢者「そ、その上っ……! こんな格好までさせて……!」

賢者「勇者さんっ! アンタって人はどこまでバカ野郎なんですか!」


けんじゃ
E けんじゃのつえ
E メイドふく
E ねこみみバンド
E ねこしっぽ


勇者「私もよくわからないのだが、近頃の流行りらしいと聞いたんだ」

賢者「ボクだってこんな流行まるっきり初耳です!」

勇者「物を売る時や接客をする時、男は執事、女はメイドの格好で『ご奉仕するにゃん♪』」

勇者「これで売り上げ倍増間違いなしと知り合いの商人が言っていた」

賢者「じゃあ勇者さんだってやりゃいいじゃないですか!」

勇者「商人に君の分の装備を用立ててもらったのだが、結構取られてな」

勇者「流石にこれ以上の浪費は避けたいと判断した」

賢者「こんなもん買ってる時点で無駄遣い以外の何物でもないって気付けよぉー!」


192011/01/21(金) 11:29:44.22NYWq/vuc0 (15/38)

勇者「その格好は私達が勇者一行であることを悟られないためでもある」

勇者「王立魔法研究所の元所員と、王立魔法大学を首席で卒業のエリートが」

勇者「まさかそんな恰好でマジックアイテムの密売を行っているとは誰も思わないからな」

賢者「それは犯罪者の思考ですよ、勇者さん」

勇者「とにかく、このアイテムを売らなければ話が進まない」

勇者「こんなところでグズグズしている暇はない。早く始めよう」

賢者「……えぇーい、もうヤケだぁ!」



賢者「ちょっとそこ行くご主人様☆」

賢者「美容と健康にすっごく効く魔法の化粧水が一本500Gだにゃ!」

賢者「それからぁ、今なら怪我がたちまち治るハーブもつけて700G!」

賢者「え、高い? う~ん、それじゃあもっとご奉仕しちゃうにゃん☆」

賢者「……この全自動生爪剥がし機『睦雄くん13号』、今ならもう一つついて1000G!」

賢者「全自動タンスの角に小指ぶつけ機『パメラちゃん』もあるにゃ!」



勇者「……君は逞しいな」

賢者「なに若干引いてるんですかブッころがすぞご主人様☆」


202011/01/21(金) 11:30:41.45NYWq/vuc0 (16/38)

 
――――――――――
数日後
とある村
所持金:10037G


勇者「ようやくこれだけ貯まったか……」

賢者「10000Gかぁ……これだけあったら、少なくとも半年は遊んで暮らせますよ」

賢者「でもなぁ……王宮一の賢者だったボクがあんな破廉恥な……」

勇者「魔法のことを抜きにしても先立つものは必要だ」

勇者「大丈夫、君の行いは世界平和のために有益だ。君の行いは正しかったのだ」

賢者「勇者さんの確信犯的なところがボクは嫌いです」

勇者「とにかく、これだけあればしばらく困ることはない。先を急ごう」

賢者「……思ったんですけど、勇者さんはこれからも二人だけで旅をするつもりですか?」

勇者「何か問題があるのか?」

賢者「ちょうどお金がない時に魔物に襲われたりしたらどうするんですか。魔法使えませんよ」

賢者「戦士か武道家辺りを仲間に加えるのはどうでしょう?」

勇者「ふむ、なるほど。確かにその意見は一理ある」

勇者「しかしギルドに仲間を斡旋してもらうには城下町に戻らなくてはならない」

賢者「散々胡散臭い商売で稼いだから戻りづらいんですね?」


212011/01/21(金) 11:32:31.23NYWq/vuc0 (17/38)

勇者「なに、今ある所持金を節約して使っていけばなんとかなる」

賢者「なんとかなってなかったから、密売人まがいのことをしてるんじゃないですか」

賢者「ボ、ボクにあんな恥ずかしい格好までさせておいて」

勇者「私の目にはノリノリで売り子をする君の姿しか見えなかった」

賢者「シャラップ!だいたい勇者さんは……」クドクド

勇者「そう言ってくれるな。自分の分野に夢中になりすぎるのが研究者の粗忽なところで……」

ドンッ

少女「きゃっ」ドテッ

勇者「おっ……と、すまない」

賢者「大丈夫? 怪我はない?」

少女「は、はい。大丈夫です」

賢者「ったく……勇者さん、ちゃんと前見て歩いてくださいよ」

少女「ゆ、勇者さま!? ごごごごめんなさい! 勇者さまにぶつかるだなんて」

勇者「いや、気にしないでくれ。賢者の言うとおり私の不注意だ」


222011/01/21(金) 11:33:33.55NYWq/vuc0 (18/38)

勇者「それより、君はどうしたんだ? 何やら急いでいるようだが」

少女「は、はい……実は父が病気で、お医者さまを呼びに……」

勇者「重い病気なのか?」

少女「はい……ここ数日、ずっと苦しそうで……」

勇者「……」

勇者「……君のお父さんを私に任せてみないか?」

少女「えっ?」

賢者「勇者さん!?」

勇者「治せるかも知れん。医者に薬を処方してもらうよりは早く済むはずだ」

賢者「勇者さん、何言ってるんですか。ボクは病気を治す魔法なんて」

勇者「君ではない。私の魔法だ」

賢者「勇者さんの、って……」

少女「でも、勇者さまのお手を煩わせるような……」

勇者「人々を救うのが勇者の使命なのだろう? 気にすることはない」

少女「はぁ……では、私の家に……」

賢者「……」


232011/01/21(金) 11:34:15.29NYWq/vuc0 (19/38)


――――――――――
少女の家
所持金:10037G


少女「ここです。父は少し前から寝たきりで……」

勇者「全力を尽くそう。任せてくれ」

賢者「勇者さん、ちょっと」チョイチョイ

勇者「? どうした」

賢者「なんだっていきなりあんなことを言い出したんです」ヒソヒソ

賢者「あなたが単なる正義感であんなことを言うとは思えませんね」

賢者「何企んでるんですか」

勇者「確かに、打算がないとは言わんよ。魔貨式魔導法による回復呪文の効能を試したい」

勇者「どこかに丁度いい病人はいないかと探していたのだが、ここに見つかった」

賢者「それって人体実験じゃないですか!」

勇者「成功なら皆幸せになれる。よしんば失敗しても死にはしないし誤魔化すことはできる」

勇者「私は生まれながらの勇者ではなく一介の研究者にすぎない」

勇者「試せるものは何でも試して、自分の研究を完成させたいのさ」

賢者「……期待通りのクソ野郎ですね」


242011/01/21(金) 11:36:54.98NYWq/vuc0 (20/38)

少女「あの……」

勇者「ああ、待たせてすまない。ではお邪魔させてもらおう」

賢者「ホントにこの人は……」

ザッザッザッ

父親「うぅ……娘よ、どこへ行っていたんだ……?」

少女「お父さん! 勇者さまがお父さんの病気を治してくれるって!」

父親「そ、それは本当か……? ゲホッ、ゲホッ」

父親「おぉ、あなたが勇者様ですか……ど、どうか……」

勇者「わかっている。私に任せておけ」

賢者(不安だなぁ……)

勇者「君達のような者達のためにこそ魔法はあり、勇者はいるのだ」

賢者(うわっ、超しらじらしい)

少女「勇者さま……!」ポロポロ

父親「あぁ……ありがとうございます……」

賢者(こっちは感動しちゃってるし……心が痛むなぁ)

勇者「賢者、財布を」

賢者「はいはい」

ジャラジャラジャラジャラ


252011/01/21(金) 11:38:00.01NYWq/vuc0 (21/38)

賢者「……って全部使うんですか!? あんな苦労して貯めたのに!」

勇者「彼の値段がいくらかわからん。ここは強気に出るしかない」

少女「あ、あの、値段って……うちは貧乏だからお金は……」

勇者「こっちの話だ。気にすることはない」


賢者「……で、回復呪文を使うって言ってましたよね。病気に効くんですか?」ヒソヒソ

勇者「彼の病状次第だな」ヒソヒソ

勇者「回復呪文の原理は知っているな?」

賢者「ええ、もちろん。自然治癒力を高めて再生を促し、傷を癒すんです」

勇者「それに対して魔貨式魔導法における回復呪文は、損傷した部位を新しいものに『取り換える』」

賢者「取り換えるって……」

勇者「骨が折れれば新しい骨に、内臓が悪ければ新しい内臓に買い換えるというわけだ」

賢者「まるごと新品にしてしまうってことですか……悪魔との取引ってやつですね」

勇者「見たところ、彼は胸が悪いらしい。心臓を取りかえることになるだろう」

勇者「そして問題になるのは、人間の身体の値段はいくらなのか、ということだ」


262011/01/21(金) 11:39:17.94NYWq/vuc0 (22/38)

数分後


勇者「……うむ。術式の構築は完了した」

少女「……」ドキドキ

賢者「……」

ゆうしゃは きんかのやまに てを のせた!
やがて きんかは まばゆいひかりを はなちはじめる……

少女「眩しいっ……!」

勇者「――癒えよ」

きんいろの ひかりが ちちおやの からだに すいこまれていく!

賢者「どうなる……!?」

勇者「……!」

ちちおやの かおいろが みるみるうちに よくなっていく
きんかのやまは おともなく くずれ はいになった……

父親「……」スゥ…スゥ…

勇者「……成功だな」


272011/01/21(金) 11:39:57.89NYWq/vuc0 (23/38)

勇者「しばらくは寝かせておくといい。だが、すぐにでも動けるようになるだろう」

少女「よかった……勇者さま、ありがとうございます! なんてお礼を言ったらいいか……」

賢者「失敗してたら、この子になんて言って詫びたらいいかわかんなかったですよ」

勇者「気にすることはない。こちらとしても色々と有用なデータを採取することができた」

勇者「しかし……」

ゆうしゃは はいのやまに てを いれた
ゆうしゃは 218Gを てにいれた!

勇者「やはり人間の値段というのは、そう安いものではないらしい」ジャラ

賢者「そ……それだけ? 残ったお金、たったそれだけですか!?」

勇者「ああ。他の金貨は全て、『意味』を失って灰になった」

勇者「むしろこれだけで済んだことを感謝すべきだろう。しかし、心臓だけでこれか……」

賢者「そんなぁ、あんなに頑張って稼いだのに……」

勇者「実験のついでに人が一人助かったんだ。よしとしよう」

賢者(ホントこの人は……)



282011/01/21(金) 11:40:43.67NYWq/vuc0 (24/38)


――――――――――
翌日
少女の家
所持金:218G


父親「本当にありがとうございました。勇者様が来てくれなんだら、どうなっていたことか」

賢者「いえいえ、内心ヒヤヒヤもんだったのはこっちも同じなんで」

勇者「普通に暮らす分にはもう問題はないはずだ。身体の異常はほぼ治っているはず」

少女「本当に、本当にありがとうございます……」

勇者「顔を上げてくれ。私は医者ではないし、結果としてお父さんの命が助かったというだけだ」

賢者「失敗してたらただの人殺しですよ」

勇者「その通りだ。下手をすれば心臓が治るどころか、内臓を全部持っていかれていたかも」

父親「」

少女「」

勇者「冗談だ。多分な」

賢者「つまり冗談じゃないんですね、わかります」

勇者「君は私の良き理解者だな、賢者」

賢者「反吐が出そうですけどね」


292011/01/21(金) 11:42:21.05NYWq/vuc0 (25/38)

勇者「では行こう、賢者」

父親「すみません、大したおもてなしも出来ませんで……」

賢者「いえ……まあ、勇者さんも見返りが欲しかったわけじゃないみたいですし」

勇者「私は君が助かったという事実だけで十分満足だが、君達がそれでは不満だというなら」

勇者「この一件は他言無用でお願いしたい。それだけ守ってくれればいい」

少女「わかりました、勇者さま。私、誰にも言いません!」

勇者「それでは、失礼する」



賢者「……勇者さん、どうして口止めを?」

勇者「まだデータが不十分なものを、さも奇跡の業のように言い触らされては困る」

勇者「わかっているのは成人男性の心臓ひとつに10000G弱かかるということだけだ」

勇者「手足や指、眼球、その他の臓器……それらの値段を調べておかないことには使えない」

賢者「……じゃあ、それが全部わかったら?」

勇者「新たなアンダーグラウンドビジネスとして確立するかも知れん」

勇者「理論上、身体の部品を全て買い換えることで、若返りや不老不死の実現も出来るからな」

賢者「若返らせ屋、とか? そんな商売、教会が黙っちゃいないでしょうね」

勇者「だからアンダーグラウンドなんだ。表立ってやるには敵が多すぎる」

賢者「……全部でいくらくらいなんでしょうね、人間って」

勇者「……いや。案外、ありふれた寓話的教訓に帰着するかも知れんよ」

勇者「人の命は金では買えない、とね」


302011/01/21(金) 11:43:49.32NYWq/vuc0 (26/38)

勇者は若い男です。でも基本的に研究一筋の学者気分が抜けてません。
賢者はボクっ娘です。でも色気はないのでねこみみメイド装備でもあまりグッときません。

早漏なので昼間に投下。だが私は謝らない。


31VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 12:16:41.71FXY53sNIO (1/1)

期待支援


32VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 14:30:36.20XwxXYUrUo (1/2)

支援


33VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 14:41:36.19JJous6QIO (1/1)

面白い支援


34VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 15:24:38.092qJPXPGIO (1/1)

ふむ、続けたまえ


35VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 17:57:14.44HeIdDExco (1/1)




36VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 18:17:43.36NKUaDreAO (1/1)

ボクッ子は良いものだ


37VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 18:35:27.17h2afmZZJ0 (1/1)

乙です。
楽しみだな


38VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 19:58:41.07gP9gA5YIO (1/1)

数レスでこれだけの支援がつくのだ
貴殿には、是非完結していただきたい


39VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 20:13:43.61o88GRK4Po (1/2)

ボクっ子の賢者かわゆす
鬱展開になりそうで怖いが支援


40VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 20:17:46.27O6dnX5qYo (1/1)

まだ始まったとこだがこれはいいな


41VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 20:55:31.10SJ076AvAO (1/1)

支援するしかないだろう!


422011/01/21(金) 21:32:35.49NYWq/vuc0 (27/38)

支援ありがとうございます

今後は酉つけた方がいいでしょうか?


43VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 21:48:28.28AwI2z+J8o (1/2)

つけたほうがいいとおもう


44 ◆6I9SwHc8xc2011/01/21(金) 22:02:20.37NYWq/vuc0 (28/38)

こうですか? わかりません!


45 ◆6I9SwHc8xc2011/01/21(金) 23:29:00.92NYWq/vuc0 (29/38)

 
――――――――――
現在
とある街
所持金:2460G


勇者「魔王について現在わかっていることは三つ」

勇者「ひとつ。強大な魔翌力を持っており、人間では太刀打ち出来ぬ程の力を持つこと」

勇者「ふたつ。大小合わせて百万の魔物を束ねる魔界の支配者であること」

勇者「みっつ。各地に直属の部下を配置し地上を監視していること」

賢者「これまで何人かの勇者が討伐に乗り出しましたけど、帰ってきた人はいないんですよね」

勇者「魔王の実力は推して知るべし、か」

賢者「勇者さんの魔法も未完成……いや、仮に完成していたとしても」

賢者「魔王と渡り合おうっていうんですから、それこそ国家予算レベルのお金が必要なんじゃ」

勇者「私もそう思う。先日貨幣の偽造を計画したことがあると言ったが、アレもダメだ」

勇者「どういうわけか偽造した貨幣には念が宿らない。魔法媒介として利用することは不可能だ」

賢者「社会の中で流通していくうちに、そういう念が宿るってことでしょうか?」

勇者「かも知れん。多くの人間の手に触れることで魔法的意味が生まれるのかも」


46 ◆6I9SwHc8xc2011/01/21(金) 23:29:45.16NYWq/vuc0 (30/38)

賢者「とにかく、各地で悪さをする魔物を退治するのと、お金を稼ぐのと」

勇者「両方をいっぺんにやらなければならないのが勇者の辛いところだな」

賢者「……やっぱり、仲間が必要ですよ。ボク達だけじゃ限界があります」

勇者「だとすれば商人か、あるいは盗賊か」

賢者「……地味ですね。いえ、別に職業差別をするわけじゃありませんけど」

賢者「王都まで戻ってギルドに紹介してもらいましょうか? 転移呪文なら使えますよ」

勇者「……いや、長い時間を共にする仲間を探すんだ。自分の目で確かめた方がいい」

賢者「スカウトするんですか?」

勇者「私は常に、様々な資料を精査し、実際に確認して判断を下してきた。それと同じだ」

賢者「実際に確認……ねぇ……」


47 ◆6I9SwHc8xc2011/01/21(金) 23:30:33.06NYWq/vuc0 (31/38)

――――――――――
一週間前
岬の塔
所持金:783G


賢者「うえ……ちょっと勇者さん、これグロいですよぉ!」

勇者「もう少しの辛抱だ。我慢してくれ」

賢者「そう言ったって……うわっ、ちょっとビクッてしたぁ」

勇者「コカトリスの生き血を抜くための装置を持ってきておいて正解だった」

賢者「足を縛って、内側に鏡を貼ったドラム缶に吊るして入れるなんて……」

勇者「先人の知恵だ。コカトリスはその目で見た者を石に変える力があるからな」

勇者「東洋ではコカトリスの肉は珍味に、目玉や生き血は妙薬の材料になるという」

勇者「コカトリスの血の薬は、一度実際に作ってみたかった。いい機会が巡ってきたものだ」

賢者「ドラム缶支えてるボクの身にもなってくださいよぉ~……」

勇者「さて、次はハーピィの羽を毟る作業だ。毛髪も刈っておこうか」

賢者「ああッ! 魔物だとはわかっていても上半身が人間っぽいから超グロい! やだぁ!」

勇者「ハーピィの羽根は最高級羽箒の材料らしいが、使い心地はどうなのだろう」

勇者「……賢者! 君はムネとモモ、どちらが好きかな? 塩とタレは?」

賢者「喰う気かアンタ!? 嫌です嫌です嫌です! トラウマもんですよぉ!」



48 ◆6I9SwHc8xc2011/01/21(金) 23:31:44.42NYWq/vuc0 (32/38)

 
――――――――――
四日前
魔法の森
所持金:962G


勇者「この植物は強い可燃性があるのか……おそらく光合成によって二酸化炭素と窒素を……」

勇者「資料の通りだ。だとすればこれは兵器に転用できる可能性がある。調査の必要が……」

賢者「勇者さぁーん! 助けてぇー!」

触手「モジャモジャ」ニュルニュル

勇者「賢者!? ……ああ、その魔物は人畜無害だ。安心していい」

触手「モジャモジャ」ニュルニュル

賢者「こいつの触手、なんかやらしいですよぉ!?」

勇者「大丈夫だ、そいつの触手は相手が男でも女でも等しくやらしい」

賢者「どこが大丈夫なんだこのムッツリ学者バカーッ! あ、ちょ、らめぇ……」

勇者「ある程度やったら勝手に満足してどこかに行く。それまで我慢していればいい」

賢者「乙女のピンチに何キノコ採取してやがんだコラー!」

勇者「む……これはシビレダケに似ているが、傘の形が違うな……ワライダケの変種か?」

触手「ハァハァ……ツルペタボクッコモエー……」ニュルニュル

賢者「むがーっ!」


49 ◆6I9SwHc8xc2011/01/21(金) 23:32:38.45NYWq/vuc0 (33/38)

 
――――――――――
昨日
魔王軍の砦
所持金:1811G


ガキィンッ!

勇者「……終わりだ」チャキッ

賢者「こいつ案外弱かったですね」

魔族「ク、クソッ……! だが俺を倒しても第二第三の刺客が……」

勇者「いや、そういうのはいい。それより、君に家族はいるか?」

魔族「……妻と子がいるが、それがどうかしたか。今更情けをかける気か?」

勇者「君が力尽きた後、私は君の遺体を薄皮の一枚、筋の一本に至るまで解体する」

魔族「は?」

勇者「すまないとは思っているが魔法科学の発展のため必要なんだ。理解して欲しい」

賢者「うわぁ……勇者さんの確信犯っぷりがここでも炸裂してますね」

魔族「き、貴様……この俺がそんなハッタリでビビるとでも」

賢者「いやぁ、この人はやりますよ? きっと全身バラバラでホルマリン漬けですよ」

勇者「もしも君に家族がいるのなら、君の遺体を利用することを話し、許可をもらいたい」

勇者「快く承諾してくれるのならそれでよし、もしそれをよしとしないのであれば遺体は返そう」

賢者「言葉の通じない低級な魔物は問答無用でバラバラだったくせに」

勇者「だが言葉が通じるのならば対話を試みるべきだ。それで、家族への連絡先は……」

魔族「」

賢者「……何かとても恐ろしいものを見たような形相で死んでる……」


50 ◆6I9SwHc8xc2011/01/21(金) 23:33:17.52NYWq/vuc0 (34/38)

 
――――――――――
現在


賢者(……しかもそういうのをいちいち詳細なレポートにまとめるんだもんなぁ……)

賢者(屍食いコンドルの胃袋の中とか出来れば見たくなかった……)

勇者「とにかく、私は候補者のリストアップと身辺調査を始める」

賢者「あ、はい。それじゃあ勇者さん、ボクは何をしていれば?」

勇者「魔王と、この地方にいる魔王の部下について調べてくれ」

賢者「わかりました。いつも通り弱点とか調べてきますね」

勇者「頼む。私は一旦王都に戻ってギルドに資料を貰ってくる」

ゆうしゃは ふところから どうかを とりだした
ゆうしゃは てんいじゅもんを となえた!
ゆうしゃの からだが うきあがり そらのかなたへと とんでいった!

賢者「……あそこから墜落したら、少しはマトモになってくれるのかなぁ」


51 ◆6I9SwHc8xc2011/01/21(金) 23:34:21.34NYWq/vuc0 (35/38)

 
――――――――――
翌日
王都・冒険者ギルドの酒場
所持金:1230G(賢者と半分ずつ分け合った)


店主「とりあえず、アンタのご希望の職業ならこんなもんか」

勇者「ありがとう」

店主「しかし、どうしてこんな大量の資料を欲しがる? レベルとスキルがわかりゃ十分だろ」

勇者「私は曲がりなりにも勇者だからな。仲間選びは慎重に行きたい」

店主「まあ、勇者様だからなぁ。そういうものかね」

勇者「この資料は持ち出し禁止か?」

店主「ギルドの預かってる個人情報だからな。いくら勇者のアンタでも貸せないよ」

勇者「わかった。あっちの卓を使わせてもらう」

勇者(レベル・ステータス・スキル以外にも身長・体重・年齢・職歴・家族構成・交友関係……)

勇者(ギルドもよくぞ調べ上げたものだ。登録者はギルドの監視下にあるのか……)

勇者(資料を閲覧するのが許されたのも、勇者特権で強引にねじ込んだからだが)

勇者(これだけのものなら当然だろう……)

勇者「さて、候補者の絞り込みに入ろう。スカウトするのは……」


52 ◆6I9SwHc8xc2011/01/21(金) 23:35:12.23NYWq/vuc0 (36/38)

安価で3人目の仲間が決まります
>>57

1.戦士

2.商人

3.盗賊


性別? 決まってから考える! そして書く!


53VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 23:36:44.92GGGtharZ0 (1/1)

ksk


54VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 23:38:43.70XwxXYUrUo (2/2)

戦士


55VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 23:41:32.72V4UiFukIO (1/1)

ksksk


56VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 23:43:06.19NqXW94j4o (2/2)

3


57VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 23:45:50.99o88GRK4Po (2/2)

盗賊


58VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 23:49:33.83jUo0RdzIO (1/1)

1


59 ◆6I9SwHc8xc2011/01/21(金) 23:50:41.32NYWq/vuc0 (37/38)

了解しました
3人目の仲間の職業は盗賊で行きます

今回はあまり書き溜めてないので今日はこの辺で


60VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 23:52:48.43AwI2z+J8o (2/2)

あ、メール欄にsaga入れておくといいよ
[ピーーー]とかなっちゃうから


61VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 23:54:26.17EanyrX0po (1/1)

>>59 乙!
ちょうど今読み終わった。今後の展開にwktk
次の投下はいつ頃?


62 ◆6I9SwHc8xc2011/01/21(金) 23:58:03.80NYWq/vuc0 (38/38)

1~2日に1回は投下できるようペースを整えていきたいと思っています
元々筆不精な性分なので間が空いたりするかもですが、その辺はどうかご容赦を


63VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/22(土) 00:18:00.177TLqVbsMo (1/1)

まっつる!土日期待してまっつる!


64VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/22(土) 00:27:54.90Gy7olcEXo (1/1)




65VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/22(土) 07:57:52.30ne+MLnOz0 (1/1)

乙です。
wktk


66 ◆6I9SwHc8xc2011/01/22(土) 12:00:34.55VK0Z+oqN0 (1/8)

 
――――――――――
さらに翌日
王宮・地下牢
所持金:1190G


看守「勇者様、こちらです」

勇者「ありがとう。ここからは二人きりで話をさせてくれ」

看守「そうですか……何かあったら呼んでくださいね」

勇者「わかった」

勇者「……」

勇者「はじめまして、かな。私は勇者だ」

盗賊「……へぇ。アンタが勇者様か。意外と年いってるんだね」

勇者「否定はしない。私自身、勇者はティーンエイジャー限定だと思っていた」

盗賊「それで? オトナの勇者様はこんな辛気臭いところに何をしにきたのさ?」

勇者「君をスカウトしに来た」


67 ◆6I9SwHc8xc2011/01/22(土) 12:02:10.50VK0Z+oqN0 (2/8)

盗賊「スカウトぉ? あははははっ、アンタ何言ってんの。あたしをスカウトだって?」

盗賊「こんなヘマやってブタ箱にぶち込まれた盗賊の、どこが魅力だっての」

勇者「君を選んだ理由は三つ」

勇者「まず第一に、ギルドに登録された盗賊の中では君が最もレベルが高いこと」

勇者「第二に、君は多くの有用なスキルを覚えていること」

勇者「……そして第三に、君はとても優しい人間だということ」

盗賊「……なんだって?」

勇者「ギルドの資料を閲覧した際、君が投獄された経緯も知ることができた」

勇者「君は城下町から特定のアイテムだけを盗み出していた。これだ」サッ

盗賊「……! それは……」

勇者「キラービーの体液を原料にした毒煙玉だ。何故か、芳香剤のラベルが貼られていたがね」

勇者「キラービーの体液は地上の気圧では急激に気化し、毒性のあるガスになる」

勇者「これは風の魔法によって液体の状態を保ち、球状の容器に閉じ込めたものだ」

勇者「王宮直轄の研究機関で試作され、結局お蔵入りになった経緯を持つ」


68 ◆6I9SwHc8xc2011/01/22(土) 12:03:24.43VK0Z+oqN0 (3/8)

勇者「君はこれの危険性に気付き、街中にばら撒かれたこれをひとつ残らず回収した」

勇者「しかし、最後のひとつを盗み出したところで騎士団に拘束され」

勇者「家宅捜索でアジトに残っていた大量のこれを発見されることになる」

勇者「大量の毒ガスを隠し持っているということが凶悪性と解釈され、君は地下牢に幽閉された」

勇者「……と、私が知っているのはここまでだ」

盗賊「……」

盗賊「……そうだよ。あたしはそいつがヤバい代物だって気付いた」

盗賊「調べてみたら一部の兵士が小遣い稼ぎに横流ししたってわかってね」

盗賊「そいつを締め上げてブツを押収して、買った人間からも盗み出した」

盗賊「あたしに弁護人はいなかったから、問答無用でブタ箱入りだがね」

勇者「……だから、私は君をスカウトしようと思ったのだ」

勇者「君のその不器用さと優しさは、時に災難をもたらす」

勇者「だが、それでも私は、それをとても好ましく感じた。だから君が欲しいと思った」

勇者「勇者特権を行使すれば君を釈放させられる。あとは君の意思ひとつだ」


69 ◆6I9SwHc8xc2011/01/22(土) 12:05:01.21VK0Z+oqN0 (4/8)

盗賊「……アンタは、あたしを仲間にして何をするつもりなのさ」

勇者「最終的な目標は、魔王討伐」

盗賊「ホントにできると思ってるのかい?」

勇者「できなければ、次善の策を探す。それでもダメなら、三善の策を」

勇者「だが私一人では四善にさえ辿り着けない。だから君が欲しい」

盗賊「……女の口説き方がなっちゃいないよ、まったく」

勇者「すまない。なにぶん、研究一筋の生き方しかしてこなかった」

勇者「……それで、君はどうする? どうしたい?」

盗賊「……」

盗賊「……あたしは盗みしかできないよ」

勇者「私も大したことはできん」

盗賊「学もないし」

勇者「構わない」

盗賊「……その、アンタの言う優しさがもたらす災難っての。それに遭遇したら?」

勇者「力を合わせよう。私達なら乗り越えられるはずだ」

盗賊「……わかったよ。アンタに協力する。そんな風に言ってもらったの、初めてさ」

勇者「私は自分の感じるままを言葉にしただけだ。とにかく、これからよろしく」

盗賊「ああ、よろしく」



70 ◆6I9SwHc8xc2011/01/22(土) 12:06:12.38VK0Z+oqN0 (5/8)

 
――――――――――
翌日
とある街
所持金:979G


賢者「う~ん……魔王についての情報、集まらないなぁ」

賢者「魔王の配下についての情報は嫌ってほど入ってくるんだけど……」

賢者(……もしかして、魔王の情報は隠されている、ってことなのかな)

賢者(この地方に展開している魔王軍の情報を流し不安を煽ることで魔王への興味をそらす)

賢者(魔王のことを知られると都合がよくないということ……?)

シュン

勇者「賢者!」

賢者「……ってうわっ、勇者さん!? いきなり現れないでくださいよ」

勇者「優れた科学者は神出鬼没だ、という格言がある」

賢者「だからアンタは勇者でしょ……で、そちらのお姉さんは?」

盗賊「……」

勇者「ああ、私がスカウトしてきた新しい仲間だ。紹介しよう。彼女は盗賊だ」

盗賊「……」ゲシッ

勇者「……盗賊、何故私の尻を蹴るんだ」

盗賊「……アンタ、あんな熱烈な口説き文句を並べといて、女がいたのかい?」

勇者「確かに、賢者の性別は女性に間違いないが」

盗賊「なにさ、このちんちくりんは。アンタそういう趣味?」


71 ◆6I9SwHc8xc2011/01/22(土) 12:07:19.41VK0Z+oqN0 (6/8)

賢者「なっ……ち、ちんちくりんとは失礼な!」

盗賊「ちんちくりんにちんちくりんと言って何が悪いのさ。それよりアンタはなんなんだい?」

勇者「彼女は賢者。私の仲間で、良き理解者だ」

賢者「ボクは勇者さんのことを理解できたことなんてありませんっ!」

賢者「それに口説き文句って……勇者さん、どんなやり方でスカウトしたんですか!?」

勇者「盗賊。君をスカウトする際に言った言葉に他意はないと、説明したはずだが」

盗賊「……ったく、ありゃマジだったのかい。額面通り、裏表なしに」

賢者「???」

勇者「言っておくが、私は必要ならば逃げも隠れもするし嘘も吐く。勇者というしがらみもある」

勇者「しかし、君を仲間にしようと思ったのは私の正直な気持ちだ」

勇者「私という、ひとりの個人の気持ちでしかない。だからそれを偽るべきではないと信じた」

盗賊「……アンタも大概不器用な奴だよ。あたしに負けず劣らずさ」

賢者「……あのぉ~……そろそろボクにも説明をしてほしいんですけど」

盗賊「長ったらしい説明はいらないよ。あたしは盗賊。勇者にスカウトされた。以上」

盗賊「これだけわかってりゃ問題ないだろ?」

勇者「……そうだな。賢者もそれでいいか?」

賢者「まあ、とりあえずは」

盗賊「というわけさ。これからヨロシクね、賢者」

賢者「……ちんちくりん呼ばわりは忘れませんからね」



とうぞくが なかまに なった!


72 ◆6I9SwHc8xc2011/01/22(土) 12:08:52.94VK0Z+oqN0 (7/8)

盗賊は姉御肌です。巨乳です。優しいお姉さんです。巨乳です。義賊です。巨乳です。
ラブコメとかこっぱずかしくて苦手なのでそういう感じになるかどうかは知りません。


73VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/22(土) 12:09:14.04BUdN6wz7o (1/2)

なるほど、ボクッ子の男の娘っぽくてショタっぽい賢者か
髪型が気になる


74 ◆6I9SwHc8xc2011/01/22(土) 18:16:47.14VK0Z+oqN0 (8/8)

勇者:長身・鬱陶しい長髪・眼鏡・不必要にイケメン
賢者:低身長・ショートヘア・貧乳・ミニスカート
盗賊:長身・ロングヘア・色黒・巨乳

作者的にはこの程度のイメージで書いてます


75VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/22(土) 18:17:37.642UuwWOTVo (1/1)

乙した。盗賊が女で嬉しい!
ラブコメみたいが>>1に任す!


76VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/22(土) 18:34:13.12BUdN6wz7o (2/2)

>>74
なるほど。一瞬にしてテイルズで脳内再生された

賢者はヒロインにくるかこないか……
何にせよ支援しかないな


77VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/22(土) 20:59:42.786h3KzGUkP (1/1)

>>74 盗賊どこから考えてもリスティだな


78VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/22(土) 21:59:03.45za3gGgmPo (1/1)

リスティは腹筋ガチガチすぎてこわい


79VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/22(土) 23:18:27.05MNwAdQfDO (1/1)

良さそうな勇者SS発見、張り付こう

>>1がラブコメしないっぽいんで嬉しい支援


80 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:35:55.75U4Eevslj0 (1/25)


 
――――――――――
とある街・カフェ
所持金:3061G


賢者「う~ん、ここのケーキはやっぱり絶品です!」モグモグ

盗賊「ホラホラ、口んとこにクリームついてるよ」

賢者「むっ、子供扱いの予感がしますよ。これでもボクは王立魔法大学を飛び級で首席卒業……」

盗賊「はいはい、そりゃもう聞いたよ。良い子だからちょっと動かないでな」フキフキ

賢者「……勇者さんはボクを子供扱いしないのに」

勇者「魔王討伐の旅に同行している以上、子供も大人も関係ないからな」

賢者「そうでしたね、アンタはそういう人でした」

盗賊「で、これからどうするんだい? 何か当面の目標はあるのかい」

勇者「まずは資金調達だな。10000Gを目安にしたい」

盗賊「例の、ナントカ魔法のため?」

勇者「そうだ。所持金は増やしておくに越したことはない」

賢者「……ボク、もうあんな格好しませんからね」

勇者「それから、魔王軍の前線基地になっている西の塔へ行く」



81 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:37:50.44U4Eevslj0 (2/25)

勇者「この地域では獣人や魔獣など、獣系の魔物が多かったが?」

賢者「はい。情報によると、この地方のボスは獣系の魔物の王らしいです」

勇者「とすれば、魔王軍の将は獣王か……」

盗賊「あたしも聞いたことあるよ。魔王軍でも一番の力自慢で、人望も厚い武人だってさ」

勇者「魔王討伐を目指すのであれば、いずれは戦わねばならん相手だが……」

盗賊「なら、やっつけちまうかい?」

賢者「いえ、真正面から乗りこんで行くのは流石にやめといた方がよさそうですね」

勇者「ああ。手下の魔物と戦ったら無傷では済まないだろう」

盗賊「だったらコッソリ忍び込むかい?」

勇者「いや。どちらにせよ、無用な戦闘は避けたい」

賢者「じゃあどうしましょう?」

盗賊「ボスだけやっちまうなら、暗殺って手もあるけどさ」

賢者「流石盗賊さん、サラッとエグイ手を提案しますね」

勇者「ふむ……」

勇者「……二人とも、私に考えがある。協力を頼む」


82 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:38:25.90U4Eevslj0 (3/25)

 
――――――――――

西の塔・指令室


狼男「獣王様ッ! 大変です!」

キメラ「大変です!」

獣王「どうした、騒々しい。それからプロテインを切らしているではないか」

狼男「プロテインは明日仕入れてきます。そんなことより大変なのです!」

キメラ「先程、勇者を名乗る男が門の前に現れまして、獣王様との面会を求めています」

獣王「勇者だと? 勇者というと、あの勇者か!」

狼男「そうです、その勇者です。我ら魔王軍に仇なす存在であることは間違いありません」

キメラ「獣王様、いかがいたしましょう」

獣王「ムゥ……だが、敵陣に単身乗り込んできたその気概、大したものではないか」

獣王「しかも俺に面会したいとは……面白い奴よ! ガハハハハハ!!」

獣王「よい! その勇者とやらを通せ!」

狼男「ははっ」


83 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:38:59.43U4Eevslj0 (4/25)

 
――――――――――
数分後
西の塔・会議室
所持金:8399G


獣王「貴様が勇者か!」

勇者「いかにも。半年ほど前に勇者に任命された者だ」

獣王「……それで? 何故俺との面会を望んだのだ、勇者」

獣王「しかも仲間も連れずたった一人で……何の魂胆があってこのような行動を」

勇者「単刀直入に言おう。この地域における戦闘行為や偵察行動の一切をやめてもらいたい」

獣王「……そんなことをわざわざ言いに来たのか?」

勇者「私の目的は君達を殲滅することではない。こちらは対話による解決を望んでいる」

獣王「……クククッ、ガハハハハハハハハ!!」

獣王「よもやこの獣王にそのようなことを提案する奴がおったとはな!」

勇者「それが最善の道だからだ。武力衝突は双方にとって利がない」

獣王「だが断る! 戦わぬ武人など張り子の虎よ」

獣王「この身、この腕ひとつで魔王様の敵を排除するのが我が役目!」

獣王「貴様は頭でっかちの軟弱者だ。そのような奴に用はない!」

勇者「……どうしてもダメか」

獣王「くどい!」


84 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:40:25.82U4Eevslj0 (5/25)

勇者「……なら、仕方がない。君が望む方法で決着をつけよう」

勇者「一騎打ちを望むなら応じよう。少なくとも不必要な戦闘は避けられる」

獣王「……ガハハ! 少しは話のわかるところもあるようだな!」

獣王「貴様のような軟弱者に後れを取る俺ではないが、魔王様のために後顧の憂いは除かねば」

獣王「俺と勝負だ、勇者! 貴様が勝ったら要求を呑んでやろう」

勇者「であるなら、私の敗北は、即ち……死」

獣王「物分かりが良くて助かるぞ、勇者! ……いざ参る!」グォンッ

勇者「来い!」

じゅうおうは ちからを ためている
ゆうしゃは ふところから きんかを とりだした

獣王「覇ッ!」

じゅうおうの きりょくが とっぷうとなって ふきあれる!

勇者「――護れ」

ゆうしゃの まわりに まりょくの かべが あらわれた!
ゆうしゃの てのなかの きんかは はいになった

勇者(防護障壁で防いでもこの衝撃……大した威力だ)

勇者(守ってもジリ貧か……)


85 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:41:10.32U4Eevslj0 (6/25)

ゆうしゃは きんかを すうまい ばらまいた
きんかは ゆかに ちらばった

獣王「ガハハ! なんだ、おひねりか? 俺の技は曲芸ではないのだがな」

勇者「――閃けッ!」

いなづまが きんかから あふれだし あれくるう!

獣王「!? グゥゥゥ……!」

勇者「電撃攻撃なら、硬い皮膚の上からでも……!」

獣王「おのれェ……ッ! なめるな!」

じゅうおうは みを まもっている!
じゅうおうには あまり きいていないようだ

獣王「……流石は勇者、電撃系の呪文も使えるとはな」ブスブス…

勇者「あれを喰らって無事で済んでいるということは、電撃に耐性があるのか……」

獣王「ガハハハハハハ!! このくらい耐えられんで獣の王は名乗れぬわ」

勇者「ならば――凍れッ!」

ゆうしゃは ふたたび きんかを すうまい ばらまいた
へやのなかに ふぶきが ふきあれる!
えたーなるふぉーすぶりざーど あいてはしぬ
じゅうおうは みを まもっている!

獣王「……プハァッ!」

だが じゅうおうには あまり きいていないようだ


86 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:42:26.80U4Eevslj0 (7/25)

獣王「どうした勇者! その程度の攻撃では俺は倒せんぞ!」

獣王「もっと根性のあるところを見せてみろ!」

勇者「クッ……」

勇者(……やはり“王”と称されるほどの上級魔族……1対1では分が悪いか……)

勇者(そして、残りの所持金も……!)


所持金:1741G


勇者(もとより、戦闘になった場合は短期決戦を狙うしかないと踏んでいたが)

勇者(かなりの額を使ったとっておきの呪文が効かないとはな……)

勇者「どうやら、魔法に頼ってばかりもいられないらしい」

獣王「そうだ、魔法などでは俺は殺せん! 腰に帯びている剣は飾りか?」

勇者「飾りで終わるのなら、それでも構わなかったのだがな」チャキッ

ゆうしゃは けんをぬき かまえをとった
ゆうしゃは いっきに きょりをつめ じゅうおうに きりかかる!

ガキィィィィン!

獣王「……ッ! ひ弱な軟弱者かと思えば、なかなかにいい太刀筋」

勇者(腕で止めた……!? 肉体強化、鋼体か!)

獣王「だが力こそパゥワァァァァ!!」

じゅうおうは ちからのかぎり うでをふるう!
ゆうしゃは 48の ダメージを うけた!
ゆうしゃは ふきとばされ かべに たたきつけられた!


勇者「ガハッ……!」


87 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:43:26.91U4Eevslj0 (8/25)

獣王「どうした勇者? もう終わりか?」

勇者「……君のパワーは想定外だ。正直に言って面食らった。だが、まだ終わっていない」ヨロッ

獣王「足元がふらついているようだが、大丈夫か?」

勇者「……大丈夫だ、問題ない」

獣王「よく言った!」

じゅうおうは もうれつな いきおいで とっしんした!
ゆうしゃは じゅもんを となえた
ゆうしゃの からだが かたく おもくなっていく!

ゆうしゃは じゅうおうの とっしんを うけとめた!

勇者「ぐぅっ……!」

獣王「ぬぅぅぅぅ……!」

勇者(鋼体には鋼体を、と思ったが……パワーが違いすぎる……!)

獣王「どっせぇぇぇぇぇい!!」

じゅうおうは ゆうしゃの からだを つかみ なげとばした!
ゆうしゃは ふたたび かべに たたきつけられた!
ゆうしゃは 25の ダメージを うけた!

勇者「ぐぅッ! ……ハァ……ハァ……」

獣王「フン……勇者といえどこの程度か……」

獣王「……武士の情けだ、最後は苦しまぬよう一撃であの世に送ってやろう」

じゅうおうは ちからを ためている!
ゆうしゃは なんとか たちあがり よろめきながら あとずさる


88 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:43:56.36U4Eevslj0 (9/25)

だが じゅうおうは さきまわりして たいろを ふさいだ!
にげられない!

勇者「……!」

獣王「……魔王様に仇なす者は全て排除する! たとえ貴様のような軟弱者であってもだ」

じゅうおうは ためこんだちからを いっきに かいほうした!
じゅうおうの こうげき!

獣王「勇者よ、塵と砕けい!」



かいしんの いちげき!
 
 
 


89 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:45:02.16U4Eevslj0 (10/25)

勇者「……」

獣王「……」

勇者「……」

獣王「……グゥゥ……ッ!?」ガクッ

じゅうおうは ゆかに ひざをつき たおれふした!

獣王「バ……バカな……」

勇者「……実を言えば、君と真っ向勝負して勝てるとは最初から思っていなかった」

勇者「私は囮だったのだ。君達の意識を私一人に向けさせるための」

じゅうおうの せなかには まほうで うたれた きずがある……
ゆうしゃは まどのむこうを みつめた
とおくの もりのなかには つえを かまえた けんじゃがいた!

獣王「狙撃……だと……」

勇者「私の仲間に賢者がいる。彼女は肩書きに違わぬ魔法の使い手だ」

勇者「そして彼女は見事に私の注文に答えてくれた」

ズゥゥゥゥゥゥン……!


90 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:46:18.84U4Eevslj0 (11/25)

獣王「な、なんだ……? 今の音は……」

勇者「この塔の門を封鎖したんだ……これで誰もこの塔から出られない」

獣王「なに……!?」

そのとき かいぎしつの てんじょうのいたが はずれた
とうぞくが てんじょううらから あらわれた!

盗賊「終わったみたいだね、勇者」

勇者「ああ。君もやり遂げてくれたようだな……」

獣王「どういうことだ……!」

勇者「……たった一人で交渉に乗りこんできた私に、塔の魔物の目を集中させる」

盗賊「その隙に、あたしがあちこちに爆弾を設置して回って、ついでにこいつを頂いたのさ」キラッ

獣王「それは、我が軍の財宝の数々……!」

勇者「君の性格上、私の申し出は却下されるだろうとわかっていた」

勇者「だからこそ罠を仕掛けることは容易だった。賢者は狙撃手を、盗賊は工作と探索を」

勇者「そして私は、最も厄介な敵である君を釘づけにする囮役を務めたというわけだ」

獣王「なんだとォ……!」


91 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:47:15.59U4Eevslj0 (12/25)

勇者「……計算では、盗賊に渡した爆弾の全てを一斉に起爆すれば、この塔は完全に崩壊する」

盗賊「アンタも含めて、みんな瓦礫に潰されてペチャンコってわけさ」

獣王「おのれェ……! 卑怯者め!」

勇者「卑劣漢の誹りは甘んじて受けよう」

盗賊「そうさ。仮にも世界を救おうってんだから、これくらいできなきゃ嘘ってもんだよ」

勇者「間もなく、私の魔翌力を注ぎこんで爆弾の起爆装置を作動させる」

勇者「そして私達は転移呪文で安全な場所まで退避する」

勇者「……さらばだ、獣王。君にとっては無駄死にかもしれないが、君の死は無駄にはならない」

獣王「貴様……よくも……!」

ゆうしゃは ふところから きんかを とりだした!

盗賊「……悪いね」

ゆうしゃは きばくじゅもんを となえた!

勇者「――弾けろ」

ばくだんの きばくそうちが さどうした!
それとどうじに ゆうしゃととうぞくの すがたは じゅうおうのまえから きえさった!

獣王「勇者ァァァァァァァァァァァァァ!!!」

とうの いたるところで ばくはつが まきおこる!


92 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:48:05.45U4Eevslj0 (13/25)

 
――――――――――
数瞬後
西の塔に近い森の中
所持金:1832G


シュン!

賢者「勇者さん! 盗賊さん!」

盗賊「賢者、勇者を診てやりな。結構なダメージを受けてる」

勇者「……頼む。獣王とやり合うのは流石に辛かった」

賢者「はい。それじゃあ回復呪文を……」ポゥ

けんじゃは じゅもんを となえた!
ゆうしゃは くずれゆく にしのとうを みつめている……

賢者「……ホント、勇者さんって卑怯者ですね」

勇者「かもしれん。だが、獣王の軍勢との全面戦争は避けられた」

盗賊「あたしらだけで片がついたからOKってかい? ……ったく、イカレてるね」

勇者「……すまないが、人心地ついたらひどく眠くなってきた」

勇者「私は寝る。起こさないで……くれ……」バタッ

勇者「」

賢者「……寝ちゃった」

盗賊「……こりゃあまた、死んだように眠ってるね」

賢者「勇者さんでもこんな風になるんだなぁ……」



じゅうおうを たおした!
500の けいけんちを えた!
ごうけい 18900G そうとうの ざいほうを てにいれた!


93 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:50:38.74U4Eevslj0 (14/25)

獣王はライオン獣人のイメージ。死んだけど。

もっと日常パートとか番外編とかやってキャラクターを描写していくべきでしょうかね


94VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 02:52:14.51AR7Vd7Bto (1/1)

>>93 乙!
できるならやって欲しい


95 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 02:53:38.18U4Eevslj0 (15/25)

>>92の所持金間違えた。
× 1832G
○ 1532G


96VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 04:53:44.81XvYcVt4DO (1/1)

更新乙

日常なんかも>>1の好きなように

旅路だったり街の依頼を受けたりとか妄想…('A`)


97VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 11:48:06.19oY+mjuiyo (1/1)

うおお乙した。


98VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 15:13:26.11gjjvfBhp0 (1/1)

乙ー
これは中々惹かれる勇者


99VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 15:43:08.50tUAAOnCw0 (1/1)

乙です。
目が離せない展開


100VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 15:58:44.707qTztmXDo (1/2)

sagaだぜお兄さん


101 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 17:14:00.24U4Eevslj0 (16/25)

 
――――――――――
翌日
西の塔・跡地
所持金:20432G


盗賊「兵どもが夢のあと、っていうけどさぁ……こりゃ酷いね。あたしらが言うのもなんだけど」

賢者「みんな瓦礫の下に生き埋めですもんね」

勇者「……あまりスマートな手口とは言えなかったが、データは取れた。よしとしよう」ゴソゴソ

勇者「賢者、盗賊。私は王宮に報告書を提出しに行く」

盗賊「報告書? 昨日のことをかい?」

賢者「勇者さん、ちょくちょく王都に戻って報告書と研究レポートを出してくるんですよ」

盗賊「へー、マメだねぇ。あたしはそういうの苦手だし、めんどくさいから、よくわかんないや」

勇者「王国の支援を受ける代わりに発生する義務だ。ある程度は仕方ない」

勇者「それに今回は事の重要性が違う。魔王軍の幹部である獣王を倒したんだ」

勇者「魔王軍としても、我々を無視できなくなったはずだ。戦いはより一層激しくなる」

賢者「……覚悟はしてます」

盗賊「この旅の間は、あたしの身柄はアンタのもんさ。あたしはアンタについてくよ」

勇者「ありがとう。では私は王宮へ向かう。後ほど街で合流しよう」

ゆうしゃは じゅもんを となえた
ゆうしゃの すがたが ふたりのまえから きえさった!


102 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 17:15:07.68U4Eevslj0 (17/25)

 
――――――――――
同時刻
魔王城


魔王「……へ? ちょ、ちょっと、もっかい言ってよ側近くん」

側近「ですから、西の塔の獣王が倒されたと言っているのです」

魔王「嘘だろ? あの魔界一の根性野郎がやられたって?」

側近「残念ながら事実です。斥候に確認させました」

魔王「……おいおい。勘弁してよ。勇者ってマジで強いじゃんか」

側近「つきましては、獣王の葬儀の際、士気高揚のための演説を魔王様に……」

魔王「……あー、オレの人生どうしてこうなっちまったんだ」

魔王「オレは確かに先代の魔王の息子さ。でも何の取り柄もない三男坊だぜ?」

魔王「親父が死んだ後、立て続けに上の兄貴も下の兄貴も死んじまって……」

側近「それはそれは壮烈な戦死を遂げられたとか」

魔王「知るか! なんでウチの家系は命を粗末にする奴ばっかりなんだよ!」


103 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 17:15:36.23U4Eevslj0 (18/25)

魔王「おかげで継承権が繰り下がってオレにお鉢が回ってきちまったし……」

魔王「強大な力を持つ魔界の支配者、そりゃ確かに魔王ってのはそういうもんだよ」

魔王「だけどそれは親父や兄貴達のことなんだもん。オレは全然大したことないってのに」

魔王「……獣王がやられたって聞いたら、他の王も黙っちゃいないだろうなぁ」

側近「でしょうな」

魔王「こう、勇者をやっつけろー! って感じになるんだろ?」

側近「それが当然の反応かと」

魔王「だよなぁ。それで勇者をやっつけてくれるんならいいんだけど、どうかなぁ」

側近「獣王を退けるほどの者です。一筋縄ではいかないかと」

魔王「……オレ、ちょっと出かけてくる。側近くん、あとヨロシク」

側近「行ってらっしゃいませ」

魔王「……気が重いなぁ」


104 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 17:16:55.98U4Eevslj0 (19/25)

 
――――――――――
数分後
魔王城・獣王の間


コンコン

魔王「あー……獣王子。いる?」

ギィィィィ……

獣王子「……魔王様。何か御用でしょうか」

魔王「堅苦しいからやめてよ、そういうの」

魔王「オレが第三王子だった頃からの友達じゃないか。もっと気楽にしようぜ?」

獣王子「ですが、今は魔王様なので……親父殿も礼儀に厳しい人だったし」

魔王「……あのさ、獣王子。獣王が……死んだってのは」

獣王子「聞いています……親父殿が勇者に討たれたと」ワナワナ

魔王「あ、ああ! そうなんだ……それなら話が早いや。あのさ」

獣王子「わかっています。僕にはこれより次代獣王を名乗り、獣王軍を再建します」

獣王子「必ずや勇者を倒し、親父殿の仇をとります!」

魔王「そうそう、その意気……って違う!」

魔王「オレが言うのもなんだけど、獣王子。お前はまだ半人前だろ?」

魔王「勇者なんかに戦いを挑んだら返り討ちに遭うのがオチだ。だからやめとけって言いに来た」


105 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 17:18:12.18U4Eevslj0 (20/25)

獣王子「そんな……! いくら魔王様の命令でもそれは聞けません!」

魔王「命令じゃない。友達としての忠告だよ」

魔王「だって考えてもみろよ。あの魔界一の力自慢のガチムチ根性親父がやられたんだぞ?」

魔王「親父をやられて悔しい気持ちはわかるよ。オレだって親しかった奴を殺されて悔しい」

魔王「でも後追い自殺みたいなことをするこたぁない。やめといた方が身のためだよ。な?」

獣王子「……ですが魔王様。親父殿の死に様をご存知ですか」

獣王子「勇者どもは卑怯にも、騙し打ちで親父殿に膝を突かせた上に」

獣王子「あろうことか止めを刺さず、塔を破壊して生き埋めにしたのですよ!」

獣王子「親父殿の武人の誇りを汚す蛮行、この獣王子は許しておけません!」

魔王「ま、待ってよ。まずは落ち着いて……」

獣王子「これが落ち着いていられますか! ……僕は命に代えても勇者を討ちます」

魔王「やめろよ。命に代えてもなんて言わないでくれ。命はひとつなんだぜ?」

獣王子「とにかく、もう話すことはありません! ……では魔王様、僕はこれで」ダッ

魔王「あっ……行っちまった」

魔王「……完全に頭に血が上ってたなぁ。あいつ、ああなると頑固だしなぁ」


106 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 17:20:30.02U4Eevslj0 (21/25)

??「……あやつも昔から変わらぬのう」

魔王「……あっ、竜姫ちゃんじゃないか。相変わらずボインボインだね」

竜姫「お前は女子を見るとすぐそれじゃの」

魔王「いつから見てたんだよ。ちょっとは手助けしてくれてもよかったじゃないか」

竜姫「……魔王も大変じゃな。獣王子は父の仇討ちのことしか頭にないぞ」

魔王「竜姫ちゃんからも言ってやってくれよ。そうだ、親父さんに頼んで説得してもらえば」

竜姫「ああ、無理じゃ無理じゃ。父上は獣王のことを獣臭いと毛嫌いしておったからの」

魔王「マジ?」

竜姫「うむ、えらくマジじゃ。わらわはあの鬣がフサフサのモフモフで好きじゃったがのう」

竜姫「力づくで止めることもできようが、そうなるとわだかまりが残ってしまうじゃろうな」

魔王「……ったく、命を大事にしないのはオレの家系だけじゃないみたいだ」

竜姫「そのようじゃの」

魔王「……竜姫ちゃん、頼むよ。協力してくれ。やらなきゃならないことが多すぎる」

竜姫「お前もお人好しよのう。生き急いだ死にたがりは放っておけばよかろうに」

魔王「そういうわけにもいかないよ。なにしろ友達だからさ」


107 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 17:22:46.58U4Eevslj0 (22/25)

竜姫「男は義理人情に生きる、というやつか? わらわにはイマイチよくわからんな」

竜姫「魔族の女は利に聡い。損得勘定が第一じゃからの」

魔王「そうかもね。でも、そういうことを気にするのが男ってもんだし」

竜姫「……まあ、お前といると退屈せん。それくらい付き合うてやってもよいぞ」

魔王「おっ、流石ボインボインは話がわかる! 愛してるぜ竜姫ちゃん」

竜姫「ボキャ貧のお世辞や口説き文句ほど聞き苦しいものはないのう」

魔王「お世辞じゃないよ。オレは本心からボインボインな女の子が好きだからさ」

竜姫「こんな奴が魔王とは、魔界も末じゃな……」



魔王「さて、まずやるべきことは……」


108 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 17:25:40.17U4Eevslj0 (23/25)

1.獣王子の説得

2.人間の街へ出て情報収集

3.勇者一行に接触


>>113で魔王と竜姫の行動を決定します
これからたまに魔王サイドの話をする予定


109VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 17:27:58.38vzT3fTp3o (1/1)

魔王良い人すぎだろ・・・


110VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 17:30:02.31OXN6jsZlo (1/2)

ksk


111VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 17:35:50.93xXQqhzFFo (1/2)

ksk


112VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 17:36:15.407qTztmXDo (2/2)

1


113VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 17:36:54.67OXN6jsZlo (2/2)

3


114 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 17:53:47.05U4Eevslj0 (24/25)

魔王「勇者一行に接触しよう」

竜姫「勇者どもに?」

魔王「取引を持ちかける。お互い、適当なとこで手打ちにできるようにするんだ」

竜姫「相手は魔王討伐を標榜する輩じゃぞ? お前自身が出向くのは危険ではないのか?」

魔王「確かに、こいつは博打さ」

魔王「だけど博打を打たなきゃ事態は動かない」

魔王「それに最悪、こっちが向こうとの戦いを望まないってのを伝えるだけでも意味はあるはずだ」

竜姫(……バカのくせに考えておるのう)

竜姫「ならば、誰ぞ変身魔法を使える者が必要じゃのう」

竜姫「角や尻尾、耳。人間の街ではわらわ達の姿は少々目立ちすぎるぞ」

魔王「わかった。ちょっと幽魔に頼んでくるよ。とびきりのイケメンの姿をオーダーしてくる」

竜姫「ならばわらわは、三国一の美女を所望するぞ」

魔王「安心しなって。竜姫ちゃんは元から美人だからさ!」

竜姫(……)

竜姫(……しかし、獣王子が暴走しなければよいのじゃが……あやつはファザコンじゃからのう)

竜姫(……わらわが事の趨勢を見極めばならぬか)

竜姫(……魔王は色ボケの上に、バカでお人好しじゃからな)


115 ◆6I9SwHc8xc2011/01/23(日) 17:57:32.53U4Eevslj0 (25/25)

生真面目で律儀でムッツリ研究馬鹿の勇者
陽気でお人好しで女の子が大好きな魔王
当初からこの二人のイメージがあって、こいつらを出会わせたいというのがありました

「竜姫」を「りゅうき」で打ってるんだけど高確率で「龍騎」になる俺のPCを褒めてやりたいです


116VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 18:12:07.16xXQqhzFFo (2/2)

りゅうひめで打てばいいんじゃね


117VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 18:22:56.75RCA16eE8o (1/1)

「り」っ竜姫を単語登録すれば一発じゃね?


118VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/23(日) 19:58:56.83q5LaJM10o (1/1)

ダゴンナイッ


119VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 00:45:05.48R1ddtwQ90 (1/1)

乙!頑張ってください!


120VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:34:43.28lH6rS8u/o (1/2)

wktk


121 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 01:59:14.62BP2sTImw0 (1/20)

 
――――――――――
同日・午後
王宮
所持金・10000G
 
 
勇者「報告は以上です。いつも通り、研究レポートにも目を通しておいて頂きたい」

王様「うむ、流石は勇者。わずか半年で、あの獣王を倒すとは」

大臣「魔王軍の報復行動に備え、我が軍も軍備増強を図るべきでしょうな」

王様「うむ。魔貨式魔導法も完成に近づいておるようだし、魔王討伐も近いだろうな」

勇者「いえ、まだ検証すべきことは多く、完成には程遠い状態です」

大臣「しかし、実戦で十分な戦果を挙げているではないか」

勇者「獣王討伐も私一人では成し得ぬことでした。仲間の協力があってこその戦果です」

王様「そなたのそういう謙虚なところ、余は嫌いではないぞ」

勇者「いえ、事実を申し上げているだけです」

王様「……では、行け勇者よ。引き続き、魔王討伐に向けて邁進せよ」

勇者「了解しました。それでは失礼します」

ザッザッザッ……


122 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 02:00:01.47BP2sTImw0 (2/20)

 
 
 
大臣「……陛下。どう思われます」

王様「今のところは大丈夫だろう。そもそも、ああいう人種に手綱をつけることはできん」

王様「あの手の人間は自身の興味関心や、理念への共感を動力にする。善悪や忠誠心は二の次だ」

王様「でなければ、あんな鉄面皮を保ってはいられまい」

王様「奴の提出したレポートは魔族の屍を切り刻んだ血で書かれているからな」

大臣「まったく不敬な……とんでもない勇者もあったものですな」

王様「もし、万が一、奴が魔族へのシンパシーを感じるようなことがあれば……」

大臣「勇者は我々に反旗を翻すかもしれない、と?」

王様「……勇者の監視を強化しろ」

王様「魔族は我ら人類にとって憎むべき敵……あるいはモルモットでいてくれなければ」

大臣「勇者にとっても、その方が良心も痛まぬでしょうな」

王様「……もっとも、あの男に痛むだけの良心があればの話だがな」


123 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 02:00:41.45BP2sTImw0 (3/20)

 
――――――――――
同時刻
城下町・市場
所持金:9759G
 

<マイドアリー!
 
勇者「……とりあえず、アイテムの補充は完了だな」

勇者(すぐに出発して、賢者達と合流するか。王都に留まる理由もない)

勇者(私は研究所を辞職した身だ。今更戻っても迷惑だろう)

??「……」ツンツン

勇者「?」

??「……勇者?」クイックイッ

勇者「……君は、僧侶か?」

僧侶「はい……お久しぶりです……」

勇者「ああ」

勇者(懐かしいな。彼女は研究員時代の同僚で、魔法薬学の分野で色々と世話になった)

僧侶「半年……ぶり……」ギュゥゥゥ

勇者「すまない。外套の裾を掴むのはやめてくれないか」

僧侶「あ……ごめんなさい……」ウルウル

勇者「責めているわけではない」



124 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 02:02:05.12BP2sTImw0 (4/20)

僧侶「……急に……いなくなったから……」

勇者「すまない。研究所の皆には迷惑をかけてしまった」

僧侶「……迷惑じゃ……ないですけど……」

僧侶「今は……何をしてるんですか……?」

勇者「君こそ。研究所の皆はどうしている?」

僧侶「変わり……ありません……勇者さんは……?」

勇者「見ての通り、勇者としての任務に従事している。今日は報告書の提出に来た」

僧侶「……髪……」

勇者「?」

僧侶「髪……伸びましたね……」

勇者「ああ、言われてみればそうだな。気にしていなかった」

僧侶「……触って……いいですか……?」

勇者「触っても面白いものではないが」

僧侶「……♪」サッサッ

勇者「?」

僧侶「三つ編み……かわいいです……」

勇者「……君は器用だな。そんなすぐにできるものなのか?」

僧侶「……♪」キリッ

勇者(これが『どや顔』というものか)


125 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 02:02:44.46BP2sTImw0 (5/20)

僧侶「それで……あの……」

勇者「?」

僧侶「あの……勇者さんさえ……よければ……私も」ドキドキ

勇者「……」

僧侶「勇者さんの旅に……お供として……」

勇者「静かに」グイッ

僧侶「……!?」カァァァァ

僧侶(ゆ、勇者さん……大胆です……)ドキドキ

勇者「……」

勇者(誰かに見られている。監視されているのか……?)

僧侶(あ、あ、あ、あうぅ……)グルグル

勇者「……」

勇者「僧侶、場所を移そう」

僧侶「は、は、は、はいぃ……」

僧侶(ゆ、勇者さん……積極的ですぅ……)ドキドキ

ダッ


126 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 02:03:31.98BP2sTImw0 (6/20)

 
――――――――――
数分後
城下町・住宅街
所持金:9759G
 
 
僧侶「……はぁ……はぁ……」

勇者「急に走らせてすまなかった」

僧侶「だ……だい……だいじょうぶ……れすぅ……」ゼーハー

僧侶「あ……あの……勇者さんはどうして……」ゼーハー

勇者「私達を監視している者がいた」

僧侶「え……?」

勇者「いや、監視というより警告と取るべきか。向こうはわざと気配を悟らせていた」

勇者「獣王軍の残党か、それとも他の軍勢からの斥候か……」

勇者「どちらにせよ、君を巻きこむわけにはいかなかった。こちらの都合で申し訳ないことをした」

僧侶「い……いえ……」

僧侶「……」

僧侶「そういうの……勇者さんらしいです……」

勇者「監視者はまいたようだ。部屋まで送ろう」

僧侶「あ……ありがとうございます……」


127 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 02:04:33.09BP2sTImw0 (7/20)

 
――――――――――
20分後
城下町・僧侶の下宿先
所持金:9759G
 
 
勇者「ここでよかったのか?」

僧侶「はい……送っていただいて……ありがとうございます……」

僧侶「その……」チラッ

勇者「どうした?」

僧侶「……引き止めたりして……ごめんなさい……」

勇者「いや、久しぶりに君と会えて嬉しかった」

僧侶「! ……はい……私も……」モジモジ

勇者「また会おう。それまで元気で」

僧侶「はい……また……」

ギィィィ……バタン

タッタッタッ……
 
 
 
僧侶「……勇者さん……」
 


128 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 02:05:26.06BP2sTImw0 (8/20)

 
――――――――――
一時間後
とある街・教会前広場
所持金:9487G
 
 
シュン!

勇者「遅くなってすまない」

賢者「あっ、勇者さんが来ました!」

盗賊「どこで油売ってたん……っておい、なんだいそりゃ。新手の冗談?」

勇者「?」

賢者「プッ……勇者さん、なんで三つ編みなんですか?」クスクス

盗賊「くっ……くくっ。アンタ、三つ編み似合わないねぇ。誰にやってもらったのさ?」ニヤニヤ

勇者「ああ、これか……城下町で友人に会って、それで……」

盗賊「なに、女? あたしらだけじゃなく他にもいるのかい?」

賢者「おっと、それは無視できませんね。どういう関係なんですかー?」
 
 
 
ひさしぶりに ゆうじんと さいかいした ゆうしゃは
そのひ みつあみを とかなかった
 
ゆうしゃとしての しごとに むかんけいの ひとを まきこまない
きびしい たいどを とるべきだと ゆうしゃは けっしんした……


129 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 02:07:20.45BP2sTImw0 (9/20)

なんか番外編っぽいの。僧侶の再登場予定は今のところありません。
やはりというかなんというか、こういうキャラとかエピソードはなんだかこっぱずかしい。


130VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 02:30:24.51BTEOjDzHo (1/1)

乙した。僧侶カワイイのに再登場なしか…



131VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 03:02:51.85HWVoY33io (1/1)

>>129 乙!
恥ずかしいか?別に変ではないから気にしなくて良いと思うが
僧侶の再登場予定なしは残念


132 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 08:51:57.43BP2sTImw0 (10/20)

 
――――――――――
現在
城下町・門前町


魔王「……ここが王都の城下町かぁ。いいね、賑やかでさ」

竜姫「ほほほ。ほれ、周りを見てみぃ。道行く人間どもがわらわ達を振り返って見ておるぞ」

魔王「変身魔法ってすごいよな。鏡で見てみたけど、オレってば超イケメンなんだもん」

竜姫「……ところで魔王よ。天下の往来で魔王とか竜姫とか呼び合うては不審に思われる」

竜姫「呼び名を変えぬか? わらわは令嬢、お前は……楽師とでも名乗るがよい」

魔王「あ、そっか。魔王って言えば人間の敵だもんな。じゃあヨロシク、令嬢ちゃん」

竜姫「ふむ。苦しゅうないぞ、楽師」

魔王「……にしても、楽師かぁ。モテモテくんのオレにピッタリだな」

竜姫「ほう、お前が女にモテておったとは初耳じゃな」

魔王「知ってる? 音楽やってる男ってモテるんだぜ?」

竜姫「わらわの家にはお抱えの楽団がおるのでのう。別に何とも思わぬわ」

竜姫「それより楽師、本来の目的を忘れるでない。勇者に会いに来たのじゃろう」

魔王「そうそう。斥候に聞いたら、勇者が転移呪文で王都に戻ったっていう話なんだよね」

竜姫「勇者の人相風体はわかるのかえ?」

魔王「うん。なんでも、背が高くて、男のくせに鬱陶しい長髪で、眼鏡かけてんだってさ」

竜姫「……大雑把な情報じゃのう。で、所在はわかるのか」


133 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 08:52:42.77BP2sTImw0 (11/20)

魔王「さあ?」

竜姫「……は?」

魔王「二人であちこち探してればそのうち会えるんじゃない?」

魔王「あ、二人っきりで街を回るって、これってデートみたいだよね。やりぃ♪」

竜姫「……そうじゃった。こやつはバカなのじゃった」

魔王「へ? なんで?」

竜姫「……常識的に考えてみぃ。こんな広い都で、たった一人を捜し出すのがどれほど難しいか」

魔王「でも、長身で長髪で眼鏡の男なんてそうはいないよ?」

竜姫「それ以前に、この都にいる人間の数が多すぎると言っておるんじゃ」

魔王「またまたぁ。RPGじゃ、王都って言っても結構狭いもんじゃんか」

竜姫「お前が何を言ってるのかわからん」

魔王「……」

竜姫「……」

魔王「……と、とにかく捜そう! 急いで勇者を捜し出すぞー!」

竜姫「……この、うつけ!」


134 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 08:53:31.16BP2sTImw0 (12/20)

 
――――――――――
一時間後
城下町・市場


魔王「……アレかな」コソコソ

竜姫「うむ……長身、鬱陶しい長髪、メタルフレームの眼鏡……あ奴っぽいのう」コソコソ

魔王「とりあえず勇者に接触できればいいんだけど」

竜姫「その上で取引に持ち込めればわらわ達の思惑通りじゃな」

魔王「……隣のあの子、可愛いなぁ。ちょっと引っ込み思案っぽいけど」

竜姫「うつけ。ああいうのは根暗というのじゃ」

魔王「いやいや、ああいう子は実は情熱的で、ついでに着やせするタイプでボインボインなのさ」

魔王「見た感じ、あの勇者にお熱みたいなのが残念だけど、オレは人妻もイケるから大丈夫」

竜姫「こ奴、いつか去勢してくれようか……」

<ソレデ……アノ……

<ユウシャサンサエ……ヨケレバ……

魔王「おっ、告るのかな? 告るのかな?」

竜姫「お前という奴は……これではただの出歯亀じゃぞ」

魔王「でもさ、今はちょっと出ていきづらいだろ。あの子が告るまで待ってあげようぜ」

竜姫「あ奴らの都合など構ってはいられぬのではないのか?」

魔王「そりゃそうだけど、オレは女の子の都合を優先してあげる主義なんだ」


135 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 08:54:18.68BP2sTImw0 (13/20)

<シズカニ

<……!?

魔王「あっ、勇者が大胆な行動に」

竜姫「天下の往来で女子を抱き寄せるとはやるのう」

魔王「う~ん……やっぱ男はクールな感じの方がいいのかな。オレもそんな路線で行こうか?」

竜姫「お前には落ち着きと知性がないから無理じゃな」

<……バショヲウツソウ

<ハイィ……///

ダッ

竜姫「む、二人で走りだしたぞ。どこへ行くのじゃ?」

魔王「……気付かれてるのか? まずい、見失っちまう!」

竜姫「追うぞ、楽師」

魔王「当然! ……おい令嬢ちゃん、何やってんだよ」

竜姫「わらわのスカートは走るのには向いてない。ほれ、早うわらわをおんぶせぬか」

魔王「OK。オレ、女の子の頼みならどんな状況でも聞いちゃうよ」

ヒョイッ
タッタッタッ……

魔王「……令嬢ちゃん、オレ達って周りからはどんな風に見えてるかな? 恋人?」

竜姫「貴族令嬢とその家来が精々じゃな。ほれ、無駄口を叩いてないで走らぬか」ペシペシ


136 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 08:54:54.23BP2sTImw0 (14/20)

 
――――――――――
30分後
城下町・住宅街


魔王「ハァ、ハァ、ハァ……」

竜姫「完全に見失ったようじゃな」

魔王「勇者ってなんであんなに足速いんだよ……」ゼーハーゼーハー

竜姫「お前が遅いのじゃ、軟弱者」

魔王「まあ、オレとしては令嬢ちゃんのボインボインが背中に押し付けられてて役得だったけど」

竜姫「……やむを得ぬな。今日のところは諦めて帰るしかなさそうじゃ」

魔王「だね。せっかく勇者を見つけたのになぁ。残念」

魔王「引き続き手下に勇者一行の監視を続けさせて、また適当なところで接触を試みよう」

竜姫「うむ。ほれ、早う帰るぞ。街の外に待機させておる飛竜で魔王城までひとっ飛びじゃ」

魔王「なーんかドッと疲れちまった。早く帰って……ん?」

魔王「……ちょい待ち。帰る前にもうひと仕事やらないといけないみたいだ」

竜姫「……さっさと済ますのじゃぞ。わらわは先に行って待っておるからな」

魔王「大丈夫。デートの待ち合わせ時間は厳守しろってのが家訓でね」



137 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 08:55:51.93BP2sTImw0 (15/20)

 
――――――――――
住宅街・僧侶の下宿付近
 
 
???「……」

魔王「……ヘイ! 何やってんだよ。のぞきか?」

???「……なんだ、お前は」シュタッ

魔王「お前こそなんなんだよ、逆さま野郎。女の子の部屋を覗き見とは、趣味が良くないぜ」

蝙蝠男「……俺を獣王子殿下直属の忍と知っての振る舞いか」

魔王「……獣王子の差し金かよ」

魔王「言っとくけど、あの子は勇者の仲間じゃないぜ。ただの恋する乙女だ」

蝙蝠男「……勇者に繋がる者を捨て置くわけにはいかぬ」

魔王「そう野暮を言わずに、さっさと巣に帰りな。今なら見逃してやるからさ」

蝙蝠男「……何故お前が俺を見つけることができたのか……」

蝙蝠男「とにかく……俺の姿を見た者は生かして帰すわけにはいかん……」

魔王「あ……やっぱりそうくる」

蝙蝠男「……シャアッ!」

こうもりおとこは おともなく とびかかった!
まおうは じゅもんを となえた
こうもりおとこの かぎづめが まおうの のどを ねらう!

まおうは すれちがいざまに しゅうそくした まりょくを かいほうした!


138 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 08:57:18.31BP2sTImw0 (16/20)

蝙蝠男「……!」

こうもりおとこの からだから ほのおが ふきだした!
こうもりおとこは いっしゅんで もえつき ひとにぎりのはいと かした……

魔王「……」

魔王「今のはメラゾーマではない。メラだ……ってね」

魔王「まあ、そんなことはなくて普通にメラゾーマなんだけどさ」

魔王「……」

まおうは はいのやまを けとばした
はいは かぜに ふかれて ひさんしていった……

魔王「獣王子の性格からして、暗殺は好まないはずだ。だからこいつらは監視が目的のはず」

魔王「だけど、こいつらを動かしてるってことは、あいつが本気ってことだ」

魔王「勇者とやり合うのも時間の問題……」

魔王「……急がないとダメかなぁ、やっぱり」

魔王「でもオレも竜姫ちゃんもそう自由に動けるわけでもない。それなりの立場だしね」

魔王「果たして獣王子が行動を起こす前に勇者に接触できるのか……?」

魔王「……ま、今は竜姫ちゃんと空のデートを楽しみますか」



まおうは かるくちを たたきながらも ふあんを かくせなかった
 
そのすうふんご、 おうとの ちかくのもりから いっとうの りゅうが とびたった……


139 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 08:59:49.95BP2sTImw0 (17/20)

番外編の番外編。魔王は大体この程度のバカ野郎です。

竜姫はボインボインです。僧侶は隠れボインボインです。あれ、賢者だけ貧乳……?


140VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 09:17:47.23DrDOWVtgo (1/1)




141VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 09:44:10.83oS6HmQ7s0 (1/1)




142VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 09:50:15.04lH6rS8u/o (2/2)

おつ!


143VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 12:59:06.92Y2b6XCrL0 (1/1)

オツー
そういや魔王は外見どんなんなの?


144VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 13:56:27.20KPutIL5Qo (1/1)

乙おつ
魔王がうる星やつらの諸星で再生される


145 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 15:33:05.62BP2sTImw0 (18/20)

【登場順テキトーなキャラクター紹介】

勇者
男。25歳。身長187㎝。鬱陶しい長髪にインテリメガネを標準装備。
生真面目かつ律義な性格で、常にベストを尽くそうと努力しているが
最近は結構危険なレベルで金銭感覚が麻痺してきた。

騎士A・B
多分出番はあれっきり。勇者に逃げられはしたものの実力は未知数。

王様
勇者を勇者に任命した人。相手が無修正でなければ決して抜かない男の中の男。

大臣
勇者を大勢の候補者の中から選び出した人。特筆すべき点のない王様の腰巾着。

賢者
女。17歳。身長147㎝。ショートヘアが可愛らしいボクっ娘。貧乳。
魔法全般が得意。王立魔法大学を飛び級で首席卒業と何気に高学歴だが、
低身長と貧乳が災いし大学では常にマスコット扱いだった。

兵士
勇者を呼ぶためだけにパシらされた不遇の兵士。基本的にいい人。

少女
病気の父のために奔走していたら勇者一行とエンカウントした。
治療後、部屋に残された大量の灰を掃除したのも彼女である。

父親
勇者の実験台にされ奇跡の生還を果たす。
後に「勇者様がいなかったらどうなっていたか」と世界まる見え風に語ったという。

触手
勇者曰く、相手が男でも女でも等しくやらしい。しかし適度にニュルニュルしたら満足する紳士である。

魔族
勇者のあまりの恐ろしさにショック死した人。休日は家族サービスに余念がない。

店主
冒険者ギルドの酒場の雇われ店主。「何故店主が女じゃないんだ」と謂れなき迫害を受けている。

看守
王宮の地下牢にブチ込まれるのは怖い人ばかりなので、盗賊が投獄されてきた時は内心喜んだ。


146 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 15:33:56.83BP2sTImw0 (19/20)

盗賊
女。22歳。身長171㎝。褐色の肌に銀髪のセミロング。巨乳。
得意技は罠設置とアイテム鑑定。勇者のスカウトに応じて仲間になったが
不覚にも勇者の言葉にグッときてしまったのは彼女の新たな黒歴史である。

狼男
狼男。満月の夜は血が騒ぐため、仲間とバトルドームに興じて超エキサイティンしている。

キメラ
合成獣。ただし合成に用いられた素材の内訳は未だ不明のままである。

獣王
魔王軍幹部の一人。種族はライオン獣人で、獣系魔族の王。
趣味は筋トレで、最近はトレーニング後の効きプロテインにハマっていた。

魔王
男。??歳。身長180㎝。プラチナブロンドのくせっ毛がチャームポイント。
陽気でお人好しで友達思い。可愛くてボインボインの女の子に目がないが
別に貧乳でも構わないので結局可愛ければ誰でもいい。

側近
魔王の側近。
達成不可能なようで達成可能な少し達成不可能なノルマを部下に課す。被害届は出ていない。

獣王子
獣王の息子。種族はライオン獣人。獣王の死後、その後を継ぐ。
父と二人で「ライオンキング」を観に行ったあの日のことを今でも思い出す。

竜姫
女。??歳。身長169㎝。金髪ツインテールだが特にツンデレというわけではない。巨乳。
ワガママで高飛車な性格だが魔界を代表するバカである魔王とつるんでいるせいで
ツッコミ役に回ることが多い。当初の予定では勇者に惚れる予定だった。

僧侶
女。20歳。身長160㎝。目を前髪で隠している。着やせするタイプの隠れ巨乳。
当初の構想では勇者一行に参入する予定だったがどうしてこうなった。
再登場させたくはあるけど再登場予定は今のところなし。

蝙蝠男
獣王子が放った密偵。結局あれはメラだったのかメラゾーマだったのか。


147 ◆6I9SwHc8xc2011/01/24(月) 15:36:41.48BP2sTImw0 (20/20)

とりあえず自分の中でキャラクターを整理するためザッと書き出してみました。
作者が新たな厨二マインドの境地に達したりすることで前触れなく変わることもあるのでご了承ください。


148VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 17:04:27.75GZBI47ceo (1/1)

かまわん続けたまえ


149VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 18:07:53.99B567cMeI0 (1/1)

乙です。
ばっちこい


150VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 20:53:45.25Y/fnZqaDO (1/1)

ファザコンの獣王子可愛いなwwwwww


151VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 21:01:52.11S9Si9UxAO (1/1)

バトルドームって懐かしすぎるww


152VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/25(火) 00:29:13.51va3EJlfDO (1/1)

更新乙ー

ラブコメしないと言ってた>>1はどこへ…しかし胸やら容姿やら出てくるのはSSだし仕方ないのか…

黒歴史作るならいっそ硬派なファンタジー書いてクレヨン


153VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/25(火) 02:49:29.18gdaOMGo6o (1/1)

ラブコメが苦手とは言ってたけど、しないとは言ってないでしょ。
もしかしたら竜姫勇者に惚れるとかあんのかなぁ…と思ってたけど、早々に無くなったぜw
>>1の好きな様に書いてほしいです。


154VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/25(火) 11:37:21.21M8OYB8yw0 (1/1)


ファザコン獣王子は死ぬのか生存するのか……


155VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/25(火) 14:46:14.04X/ry5cfDO (1/1)

乙!
メラってことはドラクエ的な世界なんだろうけど、
どうもドラクエのイメージで思い浮かんでこないぜ


156VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/25(火) 17:53:04.31JD3KiHWmo (1/1)

わかりやすく伝えるために引用したんでね?


157VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/25(火) 18:30:15.95JuBwdpMIO (1/1)

世界観どうこうじゃなくダイ大のネタを引用しただけじゃね


158 ◆6I9SwHc8xc2011/01/25(火) 20:16:54.21y+6FDswf0 (1/1)

続き製作中なう。

今更ですが勇者みたいな裏表のないキャラは扱いづらいですね。
最終的に勇者や魔王が誰とくっつくとか、そういうのはあまり考えてません。
誰とくっつけてもいいけど、今の時点では特に必然性を感じませんし。
というか、勇者は生真面目すぎて会話の駆け引きも楽しめない奴なので
恋人ができたところですぐ破局するかも知れません。

きっとバーン様の名台詞は魔界に故事として伝わっていることでしょう。大魔王からは逃げられません。


159VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/25(火) 20:47:07.625l4mowrCo (1/1)

大魔王様が見てる


160VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 00:07:12.14mLutBysAO (1/1)

>>158

賓乳ボクっ娘が幸せになることに、黒木メイサがダイワウーマンになる以上の必然性を感じます。


161VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 07:44:01.18OP1I7UPDO (1/1)

>>160 なら勇者とくっつかないのは確定だな


162VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 20:38:27.14m34eY+AUo (1/1)

あら、ラブラブコメコメはしないのか
まぁ好きに書いてくれればそれでいいが


163VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/27(木) 07:33:02.37WQO1i7xDO (1/1)

ラブコメ無しなんてかっこいいじゃん
期待


164VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/27(木) 18:29:28.85NZldc3NIO (1/2)

面白いのでお気に入りに挿入
継続的に支援させていただく


165 ◆6I9SwHc8xc2011/01/27(木) 20:30:16.96KbiGDNjY0 (1/8)

 
――――――――――
現在
魔王城・獣王の間
 
 
竜姫「……暇じゃのう」

竜姫「わらわもゆくゆくは父上の後を継ぎ、竜女王とでも名乗るのじゃろうが」

竜姫「父上もまだまだ現役、あと500年はこのままじゃろうなぁ」ゴロゴロ

獣王子「……竜姫。どうして僕のところで暇そうにするんですか」

獣王子「そんなに暇なら、自分の部屋でゴロゴロしていればいいでしょうに」

竜姫「たわけ。なんで暇な時に一人きりにならんといかんのじゃ」

竜姫「魔王の奴も側近に捕まっておってのう。ほれ、近う寄れ。鬣をモフモフさせるのじゃ」

獣王子「僕は忙しいんです。貴女に構っている暇はありません」

竜姫「つれないのう」

獣王子「帰ってください。僕はもう、貴女や魔王様と遊んでいられる立場ではないんです」

竜姫「おやおや、今度は立場を盾に取るのかや。魔王があんなに心配しておったのにな」

獣王子「魔王様のお心遣いには感謝しますが……」

獣王子「……いえ、それでも僕は新たな獣王としての責務を果たさねば」

竜姫「頑なじゃのう……」


166 ◆6I9SwHc8xc2011/01/27(木) 20:32:27.57KbiGDNjY0 (2/8)

竜姫「……よいか、魔王はバカじゃ。それくらいお前も知っておろう」

獣王子「仮にも魔王様に向かってバカだなんて、無礼です」

竜姫「事実じゃろ? あ奴は魔界を代表する大うつけ、しかも魔力も大したことはない」

竜姫「じゃが、他人のために真剣になれる、まっすぐなバカじゃ」

獣王子「……」

竜姫「まこと、魔王らしからぬ大うつけよのう。いずれ痛い目を見るじゃろうな」

獣王子「……何が言いたいんですか。魔王様のために仇討ちをやめろとでも?」

竜姫「さあ? どうであろうな。わらわは、魔王の奴がバカだという話をしておるだけじゃ」

獣王子「……たとえ、魔王様が僕のことを思って忠告して下さっているのだとしても」

獣王子「父を殺した勇者を許すことはできません。一族の誇りのためにも」

竜姫「そうじゃろうな。それが魔族の男として正しい反応じゃ」

獣王子「とにかく、帰ってください。貴女に構っている暇はないんです」

竜姫「……そうじゃな。今日のところはこれで帰るとしようかや。ではのう」

バタン

竜姫(……こりゃあダメじゃな。完全に勇者を倒すことに固執しておる)

竜姫(魔王は停戦……あるいは裏取引による解決を望んでおる)

竜姫(友である獣王子のためでもあるが、自分が死にたくないというのもあるのじゃろうな)

竜姫(しかしそれには、魔王軍の幹部があと一人か二人……それくらいの生贄が必要となるか……)

竜姫「あるいは……」


167 ◆6I9SwHc8xc2011/01/27(木) 20:33:41.30KbiGDNjY0 (3/8)

 
――――――――――
一年前
王立魔法大学
 
 
賢者「……お世話になりました、教授」

賢者「お陰様で正式に賢者の称号を賜り、春から王宮で働くことになりました」

大賢者「うむ、おめでとう。我が王立魔法大学始まって以来の秀才を手放すのは惜しいが……」

大賢者「君の魔法体系論は多くの教育機関で取り入れられ、多大な成果を挙げている」

大賢者「今度は王宮で、この国のために働きなさい」

賢者「はい! ……それで、教授は」

大賢者「うむ。私はやはり、これを機に引退することにするよ」

大賢者「私の教育者人生の最後に、君を一人前の賢者に育て上げることが目標だった」

賢者「残念です。研究室の皆も、とても寂しがって……」

賢者「ボクだって、教授から教わりたいことはまだまだ沢山ありました」

大賢者「なに、大学を辞職することになるが、今生の別れでもあるまい」

大賢者「また何かあったら、いつでも私を訪ねるといい。それまで息災でな」

賢者「はい。教授、今までありがとうございました」
 
 
 
賢者(……それから半年、王宮の賢者として魔法指南役の職に就いていたボクは)

賢者(魔王討伐のため派遣された勇者さんのお供に志願し、パーティの一員に加わることになった)

賢者(……そして、あっという間に半年が経った)


168 ◆6I9SwHc8xc2011/01/27(木) 20:34:43.91KbiGDNjY0 (4/8)

 
――――――――――
現在
とある村・宿屋
所持金:23724G
 
 
チュンチュン……

賢者「ん……」

賢者「ふあぁぁ……」

賢者「……なんだか、懐かしい夢だったなぁ……教授、今どうしてるんだろう」

賢者「盗賊さん、起きてください。もう朝ですよ」

盗賊「う~ん……あたしのポン菓子ぃ……」ムニャムニャ

賢者「寝ぼけてないで起きてくださいよぉ」ユッサユッサ

賢者(勇者さんはもう起きてるんだろうな……あの人、えらく早起きだし)

盗賊「んっ……うぅ~……もう朝……?」

賢者「はい、もう朝です。一緒に顔洗ってきましょう?」

盗賊「そうだね……」

賢者(勇者さんとは逆に、盗賊さんは朝弱いんだよなぁ)


169 ◆6I9SwHc8xc2011/01/27(木) 20:37:16.11KbiGDNjY0 (5/8)

賢者「おはようございます、勇者さん」

盗賊「おはよぉ~……」

勇者「おはよう」ペラッ

賢者「……? 勇者さん、それなんですか? すごく上等な羊皮紙ですけど」

勇者「今朝早く、王宮から届けられた指令書だ。君も目を通してくれ」

盗賊「王宮から直接指令が届けられるなんて珍しいね」

賢者「それだけ重要な案件ってことでしょうか……どれどれ」

盗賊「王宮の書庫から無断帯出された禁書の回収……? なんだい、これ」

勇者「今回の案件は王宮というより、教会の要請によるものだ。禁書目録は知っているな?」

賢者「それは勿論。教会が作成する、所持・売買が禁止された書物のリストですよね?」

勇者「そうだ。教会とその信徒に対して有害であると見なされた書物が掲載されるのだが……」

勇者「王宮の書庫の禁書棚から数冊が無断帯出されている。いずれも同一人物によるものだ」

賢者「それって、危険な魔術書とか……?」

勇者「近いな。これは教会の教義に反する以上に、兵器にも転用できる技術だ」

勇者「持ち出されたのは、錬金術によって生まれる人造人間――ホムンクルスに関する資料だ」


170 ◆6I9SwHc8xc2011/01/27(木) 20:38:09.66KbiGDNjY0 (6/8)

盗賊「人造人間……ってことはなにかい? 人間をそっくり造っちまうってのかい?」

賢者「はい。過去に偉大な錬金術師が製法を発見したという、人口生命体です」

賢者「でも錬金術は現在ではロストテクノロジーですよ。再現できるとは思えません」

勇者「いや。現在の魔法科学でも、完全とまではいかないが、かなり近いところまで再現できる」

盗賊「……ゾッとしないね。なんだか気味が悪いよ」

勇者「……人間が人間を造るという行為は、神への挑戦であり冒涜であるとして」

勇者「教会の異端審問機関はそれを異端であると断じている」

勇者「主にそうした圧力によって、現在人工生命に関する研究は禁忌とされている」

賢者「教会を敵に回したらとてもやっていけませんからね」

盗賊「で、兵器に転用できるってのはなんでだい?」

勇者「……伝承では、ホムンクルスは生まれながらにして様々な知識を持っているという」

勇者「普通、一人前の兵士を育成するには多くの時間と金が必要だ。人員を割く必要もある」

勇者「だが、ホムンクルス製造の過程でそうした分野の知識を学習させることができれば」

賢者「生まれながらの兵士が誕生する……と?」

盗賊「さしずめ人造兵士、ってとこかい」

勇者「兵士の教育の手間を省いてしまえる上に、それを量産化できる。これは危険だ」


171 ◆6I9SwHc8xc2011/01/27(木) 20:38:40.69KbiGDNjY0 (7/8)

盗賊「……それにしても、禁書を持ち出した奴がわかってるんなら、教会の連中がやりゃいいのに」

賢者「でもそれをしないってことは、手出ししづらい理由があるんですね?」

盗賊「よっぽど強い奴が持って行ったとか……」

勇者「とにかく、可及的速やかに資料を回収する必要がある。この技術が流出したらまずい」

勇者「情報によればこの村の近くに住んでいるらしいのだが……」

賢者「どんな人なんですか? 資料を持ちだした人って」

勇者「ああ。それについては同封されてきた資料に書かれている。目を通してくれ」ペラッ

盗賊「どんな奴なんだかねぇ。やっぱ、ヤバい奴なのかな」

勇者「……正直、意外な人物だった。まさか彼が禁忌とされる研究に触れようとは……」

ペラッ

賢者「……!」

盗賊「? 賢者、どうしたんだい?」

賢者「……勇者さん、嘘ですよね? この人が禁書の持ち出しなんて……」

勇者「残念ながら事実だ。鑑識班の識別魔法によって彼のいた痕跡が見つかっている」

盗賊「賢者……まさか、アンタの知り合いかい?」

賢者「……はい……」

賢者「この人は、ボクが大学在学中に所属していた研究室の……教授で……」

賢者「……ボクの恩師の、大賢者です」
 
 
 
おうきゅうからの しれい

【ホムンクルスにかんする しりょうを かいしゅうせよ!】


172 ◆6I9SwHc8xc2011/01/27(木) 20:41:09.77KbiGDNjY0 (8/8)

一度くらいは賢者回を書いておこうと思った。後悔はしていない。

正直勇者が相手では誰をくっつけてもラブコメにはならないと思う。
始めて一週間近く経ちましたがこの認識だけは変わってません。


173VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/27(木) 20:42:28.65Hgs84wJDO (1/1)

乙乙


174VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/27(木) 20:44:31.87LQ2FfDfeo (1/1)

乙ー
良い展開ダナー


175VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/27(木) 20:46:27.27NZldc3NIO (2/2)

乙乙なんだな
おもろー


176VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/27(木) 21:33:48.78KxGDTLi3o (1/1)

そうか僕っ娘と盗賊ちゃんの
百合物語になるのか


177VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/27(木) 22:30:44.00ZqJpZLYFo (1/1)




178VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/27(木) 23:08:04.66GTVt8p6/o (1/1)

>>172 乙!


179VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/27(木) 23:34:40.741cgQcA+Ho (1/1)

>>176



180 ◆6I9SwHc8xc2011/01/28(金) 08:51:50.11Sfgt0JuG0 (1/1)

何故……俺が百合も好きだということがバレたのだ……!?

盗賊×賢者もいいですが盗賊×僧侶もよさげですね。
特に僧侶はきっと耳年増で色々エロい。多分。


181 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 14:58:37.85yywrOjTl0 (1/17)

 
――――――――――
同日・昼
森の奥の館・玄関前
所持金:23724G
 
 
盗賊「……あの館だね」

勇者「そのようだ。情報によれば、大賢者はこの館に住んでいるらしい」

賢者「……」

賢者「本当に、教授がホムンクルスの研究を……?」

勇者「私も半信半疑だ。大賢者といえば、王立魔法研究所でも有名な、魔法学の第一人者だった」

盗賊「そんな有名人が、なんだってこんなことしようと思ったんだかねぇ」

勇者「先程も言った通り、ホムンクルスは危険な技術だ。だがそれだけに金になる技術でもある」

盗賊「金のなる木ってやつだね。それとも金の卵を産む鶏かな」

勇者「私個人としても、研究者としてまったく興味がないと言えば嘘になる」

盗賊「人間、金と権力が絡むとどうなるか知れたもんじゃないからね。その大賢者ってのも……」

賢者「……教授はそんな人じゃありません!!」

盗賊「……っ」

勇者「……」

盗賊「……悪いね。ちょっと、無神経だったよ」

賢者「いえ……ボクも、大声を出してしまって……」


182 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 14:59:08.16yywrOjTl0 (2/17)

勇者「とにかく、任務を遂行する。盗賊、この周辺に罠や仕掛けはないんだな?」

盗賊「ああ、それらしいもんはなかったよ。玄関の鍵も開けておいた」

勇者「よし。では行こう」

盗賊「賢者……大丈夫かい?」

賢者「……はい。行きましょう。ボクも教授に会って、直接話がしたいです」

勇者「では、行こう」

ギィィィィィ……

ザッザッザッ……

盗賊「中は結構綺麗だね。掃除も行き届いてるし……」

賢者「教授はまめな人でしたから。自分で掃除したんだと思います」

盗賊「そうなのかい? 学者先生の家ってのは、もっと散らかってるもんだと思ってたよ」

盗賊「……いや、ここにもいたね、学者先生が。勇者の部屋はキチッと整理整頓されてそうだ」

勇者「油断するな。相手は仮にも大賢者の称号を持つ男だ」

勇者「盗賊。大賢者がどの部屋にいるか、わかるか?」

盗賊「いいや。外から見てわかるように、全部の窓が塞がれてるかカーテンが閉じてたよ」

勇者「一部屋ずつ回って探すしかないようだな」

賢者「じゃあ、分かれて探しましょう。その方が効率的です」

盗賊「一人になったら危険じゃないかい? アンタ、子供だし」

賢者「子供じゃありません!」


183 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:00:11.37yywrOjTl0 (3/17)

勇者「賢者と盗賊は二人で1階を探索してくれ。私は2階を探索しよう」

盗賊「了解、賢者はあたしに任せときな。何かあったら呼びに行くよ」

賢者「むぅ……仕方ないですね」

盗賊「じゃ、行くよ。勇者も気をつけて」

勇者「わかった。君達も注意して探索してくれ」
 
ゆうしゃは かいだんをのぼって にかいへ むかった
 
盗賊「さて、あたしらも行きますか……」

盗賊「……ところでさ、賢者」

賢者「なんですか?」

盗賊「大賢者――アンタの言うところの教授だけど、どんな人だったんだい?」

盗賊「アンタがそこまで尊敬してるんだ、よっぽど凄い人だったんだろうけど」

賢者「……」

賢者「……教授は元は王宮に仕えていた賢者で、30年前の魔王討伐遠征にも参加したらしいです」

賢者「終戦後に王立魔法研究所に入って、近代魔法研究の第一人者として名を挙げて」

賢者「その後、王立魔法大学の客員教授として迎えられ、多くの賢者を育てました」

盗賊「アンタもその一人、ってわけだね」


184 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:01:42.44yywrOjTl0 (4/17)

賢者「魔法学だけじゃなく、畑違いの占星術や死霊魔術などにも造詣が深い人でした」

賢者「何度かその筋の研究者が会いに来ていたのをよく覚えています」

賢者「ボクは在学中、新しい魔法体系論の論文を発表しましたが、教授の助けなしにはとても……」

盗賊「……感謝してるんだね、大賢者に」

賢者「はい……教授は、よくボクにこう言いました。自分のためだけの人生は虚しいものだって」

賢者「そのような人間は、いつか必ず、その孤独な生き方を悔やむ日が来る」

賢者「誰にも影響を与えることなく、一人ぼっちで終末を迎えることになる……って」

賢者「ボクは秀才だなんだってちやほやされたけど、それは自分のためでしかなかった」

賢者「でも教授は、ボクや他の学生のために色々なことを教えてくれて、手伝ってくれて……」

賢者「ボクはそこに真実があると感じました。確かに信じられるものがあると」

賢者「だから、王宮に仕えてこの国のために働こうと思ったんです」

賢者「それから、勇者さんのお供になって、魔王討伐。国中の人々の平和のために、って」

賢者「いつか、教授みたいな立派な賢者になりたくて……」

盗賊「……そっか。アンタ、いい先生に恵まれてるよ」

賢者「……ありがとうございます」


185 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:02:36.72yywrOjTl0 (5/17)

 
――――――――――
同時刻
森の奥の館・2階
所持金:23724G
 
 
勇者(2階は暗いな。全ての窓に板が打ちつけられて塞がれているからか……)

勇者「――灯せ」

ゆうしゃの てのひらに ちいさな ひが ともった
しゅういが ほのおの あかりで てらされた

ゆうしゃは にかいの かくへやを たんさくしていった……
しかし なにも みつからなかった
ゆうしゃは いちばんおくの とびらを あけた

勇者「ここは書斎か。資料はどこにあるんだ……?」

ゆうしゃの てのひらから ともしびが うきあがり へやぜんたいを てらした
ゆうしゃは ほんだなを さがしはじめた

勇者(この文献は魔法工学、これは錬金術について……)

勇者(これは……『人間の記憶の保存と出入力』……?)

勇者(やはり、大賢者がこの館でホムンクルスの製造を行っているのは間違いない)

勇者(指令内容は資料の回収だったが、場合によっては……ん?)

勇者「これは……」


186 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:03:30.26yywrOjTl0 (6/17)

 
――――――――――
同時刻
森の奥の館・1階
 
 
賢者「……! 盗賊さん」

盗賊「……ああ、この先に何かあるね。嫌な感じがするよ」

賢者「この先の部屋に不自然に魔力が滞留しています。これは明らかに人為的なものです」

賢者「……多分、教授はこの先にいます」

ギィィィィ……

とびらを あけると かなりのめんせきの おおべやだった
だいしょうさまざまな そうちに かこまれて ひとりのおとこが たたずんでいる

盗賊「……あいつかい?」

賢者「はい。間違いありません……」

大賢者「――誰だ? 先程から、何者かがコソコソと嗅ぎ回っているのは知っていたが」

盗賊「あら、バレてた」

大賢者「もう少しで私の目的は達成されるのだ。私をそっとしておいてくれ……」

賢者「教授!」

大賢者「……!? 君は……」

賢者「ボクです、教授。大学で、教授の研究室にいた……」

大賢者「……久しぶりだ。勇者のお供として魔王討伐の旅に同行したと聞いていたが……」


187 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:04:06.89yywrOjTl0 (7/17)

賢者「ボク達は、無断帯出された禁書の回収に来たんです……ホムンクルスに関する資料を」

盗賊「アンタが持ち出したってんで、何故かあたしらにお鉢が回ってきたのさ」

賢者「教授。どうしてこんなことをしたんですか。それにこの部屋にある装置は……」

大賢者「……」

大賢者「……いいだろう。君には話しておこう、私のやろうとしていることを」

大賢者「あれを見たまえ」

だいけんじゃの ゆびさしたさきには ばいようえきで みたされた すいそうが ある
その すいそうのなかで おんなのこが ねむっている……

盗賊「これがホムンクルス……? ホントに人間そっくり、そのものじゃないか」

賢者「……これが、教授の造ったホムンクルス」

大賢者「いや……ホムンクルスなどと呼んで欲しくはないな。彼女は私の娘だよ」

盗賊「はぁ?」

大賢者「伝承に語られ、資料に書かれていた製法では完全な生命体を造るのは不可能だった」

大賢者「だから私は独自の解釈と改良を加え、それを完成させたのだ」

賢者「……でも教授の娘さんって、確か」

大賢者「……」


188 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:04:40.61yywrOjTl0 (8/17)

大賢者「私は当時の勇者パーティの一員として魔王討伐遠征に参加し、魔王を討った」

大賢者「その後、後世に何かを残せるかと研究一筋の生活を送ってきたが……」

大賢者「……研究者にはよくある話だ。家庭を顧みず、その結果、家族はバラバラになり……」

大賢者「妻は男を作って出て行った。娘は魔物に襲われて命を落とした」

大賢者「私はやり直したいのだ。また家族と一緒に……三人で……」

盗賊「だから、ホムンクルスの家族を造ってやり直すのかい」

賢者「そんなの馬鹿げてます! 禁忌の研究に手を染めるなんて、教授は……!」

大賢者「これを禁忌と規定したのは教会だ。所詮、つまらんモラルの反論でしかない」

大賢者「見たまえ、私の造った人工子宮と培養槽、それに睡眠学習装置だ」

大賢者「これで完全な肉体を、そして完全な記憶を備えたホムンクルスが生まれる」

賢者「おかしいですよ……こんなのおかしいですよ! 教授!」

大賢者「……賢者。私は以前、君に言ったな。自分のためだけの人生は虚しいと」

大賢者「私の人生はまさしくそうだった。気づけば取り返しのつかないところまで来ていたんだ」

大賢者「だから私は取り戻すのだよ。自分の手で、自分の家族を。幸福を」

ザッ……

勇者「話は聞かせてもらった」

賢者「勇者さん!」



189 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:05:19.73yywrOjTl0 (9/17)


盗賊「勇者、2階には何かあったかい?」

勇者「資料は見つからなかった。おそらく、彼が持っているのだろう」

大賢者「……君が今の勇者か」

勇者「そうだ。大賢者、あなたのご高名はかねがね」

大賢者「せっかく来てもらって悪いが、今日は娘の誕生日なのだよ。お引取り願えないか」

勇者「……錬金術と死霊魔術の応用によるクローン・ホムンクルス。そしてブレインコピー」

勇者「人工生命というより、一人の人間を複製しようという試み。一研究者として興味は尽きない」

勇者「よければ、後学のために誕生の瞬間を見学させて頂きたい」

賢者「な……」

盗賊「勇者、何言ってんだい! こいつを止めるんじゃないのか!?」

大賢者「ふふ……なんだ? 勇者よ、何を企んでいる。私を罠にはめようとでも?」

勇者「いや、私はその必要を感じていない。単純に、個人的な知的好奇心の問題だ」

盗賊「アンタ、ホムンクルスは危険だって言ってたろう! いきなり何を言い出すんだい!」

賢者「勇者さん……」

勇者「さあ、大賢者。やってみせてくれ。私は一切手出しをしない」

大賢者「勇者……君は私と同じ、一介の研究者だったそうだな。君なら理解を示すと思っていたよ」


190VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/29(土) 15:05:44.92RFsAH5EVo (1/1)

アグネスAAが・・・


191 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:05:50.49yywrOjTl0 (10/17)

ガチャン!
ゴボゴボ……

だいけんじゃは そうちの レバーを おしこんだ
ばいそうようの えきたいが はいすいされていく……

やがて ばいようそうのふたが あき ねむっていた ホムンクルスが めをさました!

大賢者「お……おお……!」

大賢者「成功だ! 外気に触れても何の影響もなく、肉体的には異常は見られない……」

大賢者「我が娘は……再び完全な肉体を得て、蘇ったのだ!」

大賢者「娘よ……私だ、わかるか?」

大賢者娘「……パパ?」

大賢者「そうだ、パパだ。体の具合はどうだ? 気分は悪くないか?」

大賢者娘「ううん……なんだか調子がいいみたい」

勇者「記憶のコピーも万全のようだな」

盗賊「おいおい、生まれてほんの数秒だろ……? なんで普通に歩いて、口を聞いてるのさ……」

賢者「……これが、教授の完成させたホムンクルス……」

大賢者「娘よ、今まで放っておいてすまなかった」

大賢者娘「……ママは?」

大賢者「ああ、ママももうすぐ戻ってくるとも」

大賢者娘「パパとママと、私で、一緒に暮らすの……?」

大賢者「そうだとも。何も心配することはない。全て取り戻せるんだ……」

大賢者娘「そうなんだ……」

大賢者娘「……」

大賢者「なんだ、娘よ。どうかしたのか? ああ、そうだ。今、着替えを……」


192 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:06:27.49yywrOjTl0 (11/17)

  
むすめは じゅもんを となえた!

だいけんじゃにむかって ほのおのうずが あれくるう!

だいけんじゃは 194の ダメージを うけた!
 


193 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:06:56.26yywrOjTl0 (12/17)

賢者「教授!?」

盗賊「な……!?」

勇者「……」

だいけんじゃは たおれた!
じぶんの みに なにがおこったのか わからないようだ……

大賢者「む……娘よ……何故……!?」

大賢者娘「……」

大賢者娘「……ママも『造る』のね? 私みたいに」

大賢者「……!」

大賢者娘「なんだかね、だんだん頭がハッキリしてきたのよ」

大賢者娘「私は模造された人間だって、わかるの。記憶だけが不自然に鮮明だからかしら」

大賢者娘「ママが出て行った時のことも、私が魔物に殺された時のことも、よく覚えてるわ」

大賢者娘「それにね、この体、すごく違和感を感じるの。自分の体じゃないみたいで」

大賢者「あ……ああ……」

大賢者娘「目が覚める前に、聞こえてたのよ。ホムンクルスがどうたら、って」

大賢者娘「……私は、パパに造られたんでしょう?」


194 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:07:55.53yywrOjTl0 (13/17)

勇者「……やはり、か」

賢者「やはり、って、どういうことですか?」

勇者「大賢者の書斎に、研究内容に関するメモ書きが残されていた」

勇者「ホムンクルスが様々な知識を持って生まれてくるのは、自分で見聞きするからだと」

勇者「彼らは深い眠りの中にありながら、周囲の環境を学習しているという内容だった」

賢者「つまり、あの子はボク達の会話を聞いていたってことですか?」

勇者「そうだ。更に、大賢者の記憶の保存とホムンクルスへのインプットは完璧だった」

勇者「しかし生前の記憶をそのまま移植したために、記憶の矛盾点を残してしまった」

勇者「……そして、悪意という記憶さえも継承していたはず」

盗賊「それじゃあ、あの子は大賢者を……憎んでたってこと?」

賢者「そんな……」

大賢者娘「だいたい、自分勝手にも程があるわよ」

大賢者娘「自分が家庭を顧みなかったくせに、代わりの家族を造ってやり直そうだなんて」

大賢者娘「私は何なの? パパのお人形さん?」

大賢者「違……う……」


195 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:08:27.16yywrOjTl0 (14/17)

大賢者娘「何が違うってのよ……そうやって、自分が救われた気分になりたいだけじゃないのよ!」

大賢者「……」

大賢者娘「パパ、そっちの子に言ってたわね。自分のためだけの人生は虚しいって」

大賢者娘「ホントその通りよね。パパは最後まで一人ぼっち、家族の気持ちは揃わないまま」

むすめは じゅもんを となえた!
むすめの てのなかに ほのおが もえあがる!

大賢者娘「じゃあ……死んで」

むすめは だいけんじゃに ほのおを たたきつけた!
だいけんじゃは 101の ダメージを うけた!

大賢者「あ……あ……!」

だいけんじゃは こえにならない さけびをあげ やがて ちからつきた……

賢者「あ……き……教授……?」

賢者「死……んだ……?」

大賢者娘「ふふ……あはは、あははははははははははははははははははは」

むすめは くるったように わらっている

賢者「そんな……そんなのってないですよ……」

けんじゃは そのばに へたりこんだ……



196 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:09:13.63yywrOjTl0 (15/17)

賢者「……勇者さん! 勇者さんはこうなるってわかってたんですか!?」

勇者「おそらく拒絶されるであろうと思っていた。殺すことまでは予想外だったが……」

勇者「だが、彼女を始末し、資料を抹消する口実ができた。よしとしよう」

ゆうしゃの てには いつのまにか ひとふりの ナイフが にぎられていた
ゆうしゃは ゆっくりと むすめのほうに むかって あるきはじめた

盗賊「……あの子、殺すのかい?」

勇者「そうだと言ったら、君は私を止めるのか?」

盗賊「そりゃあ……相手は生まれたばかりの赤ん坊みたいなものじゃないか」

勇者「その生まれたばかりの赤子に大賢者は殺された。彼女の存在は危険極まりない」

勇者「やはり後の世に残すべき技術ではない。指令に反するが、資料も併せて処分する」

賢者「……」

勇者「賢者。結果論ではあるが、大賢者はホムンクルス技術の危険性を身をもって証明した」

勇者「ショックは大きいと思うが、堪えてくれ」

賢者「やめてください……勇者さんのくせに、そんな慰めるみたいな……」

勇者「……すまない」

賢者「やめてください……やめて……!」

むすめは いぜんとして わらいつづけている
ゆうしゃは いっきに きょりをつめ むすめの のどを きりさいた
むすめは きもちのわるい こえを だしながら たおれた

むすめが ちからつきる そのまぎわ、 むすめの めから なみだが こぼれおちた……


197 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:10:41.19yywrOjTl0 (16/17)

 
――――――――――
数分後
森の奥の館
所持金:21690G
 
 
やかたは あかいほのおに つつまれている……

盗賊「……後味が悪いね、どうも」

盗賊「ホントに、館ごと燃やす必要があったのかい?」

勇者「研究資料や製造装置は残してはおけない。これは必要な措置だ」

賢者「……」

盗賊「……賢者。元気出しなよ」

賢者「いえ……ありがとうございます。ボクは大丈夫ですから」

勇者「辛い思いをさせてしまった。すまない」

賢者「なんですか、さっきから。勇者さんらしくないですよ?」

賢者「さあ、王都に戻って報告しましょう! 資料を処分したこと、どう説明しましょうか?」

勇者「賢者」

賢者「じゃあ、ボクは先に行きますからね! ちゃんと着いてきてくださいね、二人とも」

盗賊「賢者……」
 
けんじゃは じゅもんを となえた
けんじゃのすがたが ゆうしゃと とうぞくのまえから きえさった!

ゆうしゃと とうぞくは なにもいわず もえさかるやかたの まえから たちさった……
 
 
 
おうきゅうからの しれい:しっぱい

ゆうしゃは ホムンクルスに かんする すべてのしりょうを しょぶんした


198 ◆6I9SwHc8xc2011/01/29(土) 15:12:49.81yywrOjTl0 (17/17)

このスレは全何話なのか自分でもよくわかってません。
当初は一話完結的に色々やろう、と漠然と考えていただけだし……
現在の目標は、とりあえず失踪しないことだけです。


199VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/29(土) 15:47:28.66AF4EY/y6o (1/1)

支援


200VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/29(土) 16:25:06.742N2fROiIO (1/1)

がんばれ、応援してるぜ


201VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/29(土) 18:08:23.20c10twlTDO (1/1)

シリアスで良いな賢者娘が仲間になってたりなんかしたらスレ閉じてた支援


202VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/29(土) 21:21:04.14k4za+N2mo (1/1)

支援


203VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/29(土) 22:34:17.28ZJOkcIvV0 (1/1)

乙です。


204VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/29(土) 22:58:32.69+hFXByBVo (1/1)




205VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/29(土) 23:47:30.18WAf/qXWIO (1/1)

完結まで着いて行きます先生
こんな素敵な話を書けるんだから
失踪する理由なんてないはず


206 ◆6I9SwHc8xc2011/01/30(日) 22:52:03.70bp+aOAyn0 (1/1)

業務連絡
 
 
               ____
             /      \
           / ─    ─ \
          /   (●)  (●)  \   やべえ明日からテストだよ
            |      (__人__)     |
          \     `⌒´    ,/   こんなことやってる場合じゃなかった
          /     ー‐    \
 
 
今週は忙しくなるので続きを書くのが滞ると思われます


207VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/30(日) 23:41:33.01fcpn2FkOo (1/1)

舞ってる


208VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/31(月) 05:23:54.08VkSa4COUo (1/1)

>>207
舞ってどうするんだよwwwwwwww

>>206
期待してる
ゆっくりでもいいけど失踪はするなよ
絶対だからな


209VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/31(月) 08:12:51.15UW3/NODIO (1/1)

俟ってる


210VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/31(月) 20:57:13.245o3hU1KTo (1/1)

───舞え、蝶の様に(訳:全裸でフォークダンス踊って待ってます)


211VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/01(火) 23:55:33.87yOtGR7ubo (1/1)

ならば私も纏う
このネクタイを!


212VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/02(水) 00:57:37.50cm0kIEY9o (1/1)

靴下でもよければご一緒しよう


213VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/02(水) 01:07:57.81btsWiWhVo (1/1)


    ∧_∧ ♪
. ((o(・ω・` )(o))
   /    /
   し―-J

   ∧_∧
 ((o(´・ω・)o))
    ヽ   ヽ ♪
    し―-J


214VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/02(水) 20:11:59.10GouTdtZAO (1/1)

追いついたー
支援


215 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 07:52:09.59XvQPYi0h0 (1/1)

にわかにタモリ倶楽部の様相を呈し始めたスレに俺参上!
 
 
今日の夜あたりに投下できたらな~と考えてます


216VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/03(木) 14:16:48.14cFPZydTco (1/1)

待ってる!


217 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:08:17.54OWrRsxTS0 (1/15)

出先からテスト


218 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:09:01.67OWrRsxTS0 (2/15)

 
――――――――――
現在
エルフの里付近の森
所持金:30566G
 
 
勇者「貨幣が人間の欲望の象徴であるのは、欲望というものが目に見える卑しいものだからだ」

盗賊「卑しい、って決めつけていいのかねぇ。欲望ってのはもっと複雑だと思うけど」

勇者「もちろん、人間の欲とは金銭欲だけではない。生理的・本能的なものも多い」

勇者「しかし今日の社会においては、多くの欲望は金銭と結びつけることができる」

勇者「所持金の多寡は人間社会の中で、最もわかりやすく、数値化しやすいステータスのひとつだ」

盗賊「ま、普通に考えるなら、貧乏人より金持ちの方が魅力的だろうね」

賢者「だから勇者さんの魔法で扱っているように、魔法的な意味や強い念が宿るんですね」

勇者「私はその仮説のもとに研究を重ね、魔法媒介としての利用を可能にした」

勇者「しかし、貨幣を重要視しない、あるいは必要としない社会の中ではこの魔法は成立しない」

賢者「……そんな世の中が来るってことは、今ある秩序や社会体制が崩壊するってことですよね」

盗賊「Welcome to this crazy time.このイカレた時代へようこそ……ってね」

賢者「世界が核の炎に包まれたら、勇者さんは魔法を使えなくなるんですね」

盗賊「そうなったら、そもそもあたしら生きてるかどうかわかんないけどね」

盗賊「……で、バカ話もいいけどさ。いい加減、こんな森の奥まで来た理由を教えておくれよ」


219 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:09:49.15OWrRsxTS0 (3/15)

勇者「この先にエルフの隠れ里がある。今回の目的地はそこだ」

賢者「エルフの里……ですか」

賢者「確か、人間とも魔族とも関わりを絶って、森の奥に住んでいるんですよね」

盗賊「そんな連中に何の用があるんだい? どっちにも関わらないなら中立なんだろう?」

勇者「そうだ。エルフは100年以上前から両種族に対し中立を宣言している」

勇者「だが……先日、再編された獣王軍がエルフの住む地域に向けて進軍したと情報が入った」

盗賊「獣王軍が?」

賢者「獣王を倒して総崩れかと思ってましたけど、ずいぶん再建されるのが早いですね」

勇者「獣王の実子である獣王子が後を継いだそうだが……」

勇者「現在軍を指揮している獣王子の目的が何なのか、見極める必要がある」

勇者「中立地域への軍事的示威行動……そしてその後どうするつもりなのか」

賢者「エルフを味方につけようとしているかもしれない、ってことですね?」

盗賊「あるいは、エルフが持ってるとんでもないお宝か何かを奪おうとしているか」

勇者「とにかく、エルフの里が今どうなっているか知りたい。獣王軍に遭遇しないよう進もう」

盗賊「はいよ。賢者、アンタも気を付けなよ?」

賢者「子供扱いはやめてください。いつも言ってるでしょう!」

盗賊「はいはい。大声出さないでよ、見つかっちまうかもしれないから」

賢者「ぐぬぬ」


220 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:10:39.95OWrRsxTS0 (4/15)

 
――――――――――
2時間後
エルフの里
所持金:30566G
 

エルフのさとは きみょうな しずけさに つつまれている……
 
盗賊「着いてはみたけど……おかしいね。人の気配がない」

賢者「静かっていうか、静かすぎますね……まだ日も高いのに」

勇者「やはり何かあったようだな。二人とも、周囲に注意してくれ」

ザッザッザッ……

賢者「……変ですね。エルフがいないのはともかく、獣王軍も見当たらないですよ」

盗賊「盗るもん盗って、さっさと帰っちまったってことかね?」

賢者「じゃあ、エルフはどうなったんですか? まさか皆殺しに……?」

勇者「エルフは強靭な肉体と不滅の魂を持つと言われる種族だ。その可能性は低いだろう」

勇者「……しかし、里全体がもぬけの殻とは……ん?」

<……!

<……! ……

盗賊「……声が聞こえる。遠くに誰かいるみたいだね」

勇者「里のエルフか……?」

賢者「行ってみましょう。何か話が聞けるかもですよ」


221 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:11:09.16OWrRsxTS0 (5/15)

 
――――――――――
同時刻
 
 
魔王「獣王軍がエルフの里に向けて進軍したって聞いて飛んできたけど、もぬけの殻じゃないか」

魔王「ボインボインの女の子はどこ行っちまったんだよ? 寂しいにもほどがあるぜ」

竜姫「うつけ。こんな時くらい女子のことから離れたらどうじゃ」

魔王「いやいや、重要なことだよ。今のあいつが女子供に手を出すのかどうか、ってこと」

竜姫「嘘くさいのう……」

魔王「今回のことは獣王子の独断だ。オレだって、あいつの目的が何なのか把握してないんだぜ」

竜姫「とにかく……これからどうするか、じゃな。周りに誰もおらなんでは情報も得られぬ」

魔王「オレみたいなイケメンが来るもんだから、ビックリしちゃって隠れてんのかもね」

竜姫「ほう? ならば、この森ごと里を焼き尽くせば、炙り出されてくるかも知れんのう」

魔王「えっ」

竜姫「冗談じゃ。わらわの力では、魔力の充溢した森の木々を焼き払うことは難しいじゃろうな」

魔王「……よかった。まだ見ぬボインボインを失うのは惜しいよ。安心した」

魔王「オレも竜姫ちゃんも、実は魔力は大したことないしね」

竜姫「わらわはともかく、お前はそれでよいのか?」

魔王「ま、オレもそう思うけどさ。できもしないことをやろうとするほど熱血くんじゃなくてね」

魔王「とりあえず今できそうなことから手をつけていくさ。勇者との交渉とかね」


222 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:11:56.01OWrRsxTS0 (6/15)

竜姫「その交渉のことなんじゃが、勇者に会ってどうする? 私が魔王です、とでも言うのかえ?」

魔王「そのつもりだけど」

竜姫「向こうは魔王討伐を掲げて旅をしておる連中じゃ。そんなことをして無事に済むとも思えん」

魔王「……あ、考えてみたらそうなるよな。何しろ敵のボスが目の前に出てくるわけだし……」

魔王「こう、いきなりバトルに入っちゃったりするかな? 参ったな、オレ弱いんだぜ?」

竜姫「……バカじゃバカじゃと思っておったが、ここまでだったとは……」

竜姫「お前がどれだけ直観と脊髄反射で行動しておるのかよくわかるのう」

魔王「いやあ、まあ……そんなに褒めても何も出ないよ」

竜姫「照れるな。決して褒めてはおらんから安心せい」

魔王「そりゃどうも。竜姫ちゃんがついにオレのカッコよさに気付いたのかと」

竜姫「それだけは天地魔界がひっくり返っても有り得んな」

魔王「……となると、勇者を交渉のテーブルに着かせる方法を考えないとなぁ」

魔王「穏便に済ませるにはどういう条件を出すべきか……可愛い女の子の接待とか……」

竜姫「……しっ。魔王、ちょいと黙りゃ」

魔王「え?」

竜姫「……向こうに誰かおるのう。獣王軍かや?」


223 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:12:38.28OWrRsxTS0 (7/15)

 
――――――――――
数分後
 

魔王(……どうしてこうなった)

竜姫(……どうしてこうなった)
 
勇者「……君達は? この里の者ではなさそうだが」

盗賊「エルフでもないよねぇ。エルフって、耳が尖ってるんだろ?」

賢者「見たところ、ただの人間っぽいですけど……」

勇者「だが一般人がこんなところにいるはずがない。何者だ?」

魔王「い、いやぁ……なんていうか、旅人っていうか冒険者っていうか」

竜姫「うむ。わらわは令嬢、こっちの頭の軽そうな男は付き人の楽師じゃ」

盗賊「令嬢に楽師ねぇ……何しにエルフの里くんだりまで来たんだい?」

魔王「ま、まあ、目的なんてないんだけどね。足の向くまま、風の向くままさ」

賢者「目的もなしにうろつけるような場所じゃないですよ、ここ」

盗賊「どうも怪しいねぇ」

勇者「場合によっては重要参考人として王都に連行する必要があるな」

魔王「え、えぇ~……それは……」チラッ

竜姫(……まったく、咄嗟の嘘のひとつも吐けぬのか)

竜姫「……ここに来たのは、わらわの意思じゃ。一度エルフというものを見てみたくてのう」


224 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:13:17.71OWrRsxTS0 (8/15)

勇者「君が?」

竜姫「いかにも。森の奥に住まう神秘の種族と本で読んで、どのようなものか気になってのう」

竜姫「わらわは何事も、自分の目で確かめてみんと気が済まぬ性分じゃからな」

魔王「そ、そうそう! いやぁ、令嬢ちゃんのワガママには困っちゃうよ」

魔王「それで、ここまで着いたのはいいけど、見ての通り誰もいなくてさ」

竜姫「どうしたものかと話しておったら、お前達に出会ったというわけじゃ」

盗賊「はぁー……こんな森の奥まで来るなんて、大したお嬢さんだねぇ」

賢者「お嬢様のワガママも、ここまでくるといっそ立派なものですね」

魔王「あはは、だよねぇ」

竜姫「……」ゲシッ

魔王「あいたっ!? なんで蹴るんだよ」

竜姫「付き人の分際で生意気じゃぞ」

勇者「……事情は分かった。だが今この里は危険だ」

賢者「獣王軍がこの近くにいるかもしれないし……」

盗賊「かといって、このまま帰すのも危ないね。どうしたもんか」


225VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/03(木) 16:13:26.96Ea1bLqQqo (1/1)

どうしてこうなったワロタ


226 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:13:57.23OWrRsxTS0 (9/15)

賢者「仕方ないですね。安全が確認されるまで、ボク達と行動を共にしてもらいましょう」

勇者「……やむを得ない。今のところはそうするしかないか」

盗賊「アンタ達はそれでいいかい?」

魔王「もちろん! 令嬢ちゃんに加えてボインボインの美女がもう一人なんて最高だよ」

盗賊「嬉しいこと言ってくれるねぇ。美人って言われちゃ悪い気はしないよ」

魔王「オレ、女の子を褒める時には嘘をつかない主義でね」

竜姫「……まったく、この大うつけが。調子に乗るでない」

賢者「……胸かぁ……」

魔王「あっ、ごめんごめん。女の子はボインボインだけが価値じゃないから、大丈夫だって」

賢者「……勇者さん、この人超馴れ馴れしいです」

竜姫「すまんのう。こういう奴じゃ」

盗賊「いいじゃないか、なかなか楽しい奴だよ。ウチの勇者はこの通り絶望的に無愛想でね」

勇者「とにかく、今日は休んで体力を温存する。あの宿を拠点にしよう」

竜姫「うむ。わらわは疲れた。ふかふかのベッドを所望するぞえ」

竜姫「ほれ、そこの馬鹿オブ馬鹿。わらわをおんぶせぬか」

魔王「りょうか~い」


227 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:15:36.78OWrRsxTS0 (10/15)

 
――――――――――
数分後
エルフの里・宿屋
所持金:30566G
 
 
賢者「はぁ、なんだかドッと疲れました……」

魔王「大丈夫、賢者ちゃん? オレがおんぶしてあげた方がよかったかな」

賢者「主にあなたのせいですよ」

勇者「私が見張りに立つから、君達は休んでいてくれ。代わってもらいたくなったら戻ってくる」

盗賊「頼むよ、勇者」

竜姫「ほれ、楽師。お前も見張り番をしてくるのじゃ」

魔王「えぇ? なんでオレが」

竜姫(……勇者と二人きりになれる今がチャンスじゃろうが。女子どもはわらわが留めておける)

魔王(あっ……そっか、じゃあオレもついていくよ。サンキュー竜姫ちゃん)

竜姫(まったく……)

勇者「見張りは私一人で十分だ。一般人を危険に晒すことはできない」

賢者「そうですよ。大体、魔物が襲ってきたら楽師さんは戦えるんですか?」

竜姫「こいつもそこいらの魔物には負けぬ。案山子の真似事程度の役には立つぞ?」

魔王「そうそう! 大丈夫だって、オレに任せといてよ」

勇者「……わかった。好きにするといい」
 
ゆうしゃと まおうは やどやの そとに でた……


228 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:16:24.00OWrRsxTS0 (11/15)

 
――――――――――
 
 
勇者「……」

魔王「……勇者って言ったっけ? 羨ましいよな、あんな可愛い子がお供でさ」

勇者「……」

魔王「両手に花って奴でしょ? いや、オレだってモテモテくんだからわかるよ」

勇者「……」

魔王「やっぱり一緒に旅するなら可愛い女の子だよ。それもボインボインで、目がパッチリしてて」

勇者「悪いが少し黙っていてくれないか」

魔王「あー……ごめんごめん」

勇者「……」

魔王「……えっと、勇者はアレだろ? その、魔王をやっつけるために旅してるんだろ?」

勇者「最終的な目標はそういうことになる。何故そんなことを?」

魔王「もし、もしもなんだけどさ。魔王が結構いい奴で、戦う意思はないって言ってきたら?」

魔王「ほら、魔王なんて悪の親玉みたいに言われてるけど、案外そういう奴かも知れないじゃん」

勇者「対話による解決を望めるなら、私個人としては、それに越したことはない」

勇者「しかし、王や将軍は魔王の首級を挙げることを望んでいるだろう」

勇者「魔王を倒し、平和をもたらした勇者を擁するという事実は、外交的イニシアティブとなる」

勇者「それに悪の枢軸である魔王を討つという目標は自らの正当性をも保障するものだ」


229 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:17:05.72OWrRsxTS0 (12/15)

魔王「……戦争なんて、偉い奴がやめるって言えばいいもんじゃないの?」

勇者「戦争を終えたとしても、戦没者は帰ってこない。戦争の傷跡も残る」

勇者「結局、国民を納得させるお題目が要るんだ。自分達の行いは正義だったのだと」

魔王「じゃあ……もしもオレがその悪者の親玉の、魔王だったらどうする?」

勇者「魔王の意思を聞いた上で、交渉のテーブルに着く余地があるならば、そうしたい」

勇者「しかし、王か魔王のどちらかが戦いを望むのであれば、私はそれに従うしかない」

勇者「そして今は後者の道を行かざるを得ない。だから、もし君が魔王なら、この場で斬る」

魔王「……そっか。貴重なご意見どうもありがと」

勇者「いや、他の者ならもっと建設的な意見を出せたかもしれない。私に言えるのはこの程度だ」

魔王「……」

魔王(……交渉の余地はありそうだけど、やっぱしがらみとか色々あるんだよな……)

魔王「なぁ、勇者……」
 
 
バタッ
 
 


230 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:17:59.41OWrRsxTS0 (13/15)

勇者「くっ……」

魔王「ゆ、勇者? どうしたんだよ、いきなり倒れて」

勇者「突然、強烈な眠気が……まさか……」

勇者「……」zzz

ゆうしゃは ねむってしまった!

魔王「お、おい! どうしちまったんだよ! おいってば!」ユッサユッサ

勇者「……」

魔王「クソッ、なんだってんだよ。竜姫ちゃん達は……!?」ダッ
 
 
 
魔王「竜姫ちゃん! 賢者ちゃん! 盗賊ちゃん!」

けんじゃと とうぞくは しんだように ねむっている……

竜姫「……その様子じゃと、勇者もやられたか」

魔王「ああ、いきなり倒れて眠り始めて……」

竜姫「催眠呪文じゃな。効果範囲を特定の種族のみに限定した強力なやつじゃ」

魔王「……ってことは、オレと竜姫ちゃんは魔族だから無事だったってわけか」

竜姫「この里のエルフもこれにやられたのじゃろう。これをやったのは、おそらく」

魔王「獣王子……」


231 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:18:44.31OWrRsxTS0 (14/15)

ギィィィィ……

???「……その通りです」ザッ

魔王「っ!」

獣王子「こうも容易く勇者一行を捕らえることができるとは……正直、拍子抜けですよ」

獣王子「ですが、何故魔王様と竜姫がここに?」

魔王「それは」

竜姫「獣王軍がエルフの里へ進軍したと聞いてのう。お前の仕事ぶりを見に来たのじゃ」

魔王「竜姫ちゃん!」

竜姫(……勇者と接触して戦いを回避するという、当初の目論見は失敗したのじゃ)

竜姫(ここはわらわに任せておくのじゃ。悪いようにはせぬ)

竜姫「何しろ獣王子、お前の初陣じゃろ? 友人として気にかかってしまってのう」

獣王子「そうでしたか。ですが、この通り勇者一行の身柄は我が獣王軍が確保しました」

獣王子「この近くに本陣を構えています。お二人も、勇者の最後を見物なさってはどうでしょう」

竜姫「うむ。では邪魔させてもらうぞえ。ほれ魔王、お前も来るのじゃ」

魔王「あ、ああ……」

魔王(……クソッ……!)
 
 
 
ゆうしゃいっこうは じゅうおうぐんに とらえられてしまった!


232 ◆6I9SwHc8xc2011/02/03(木) 16:20:33.20OWrRsxTS0 (15/15)

魔王はこういう性格なので台詞がスラスラ出てきて扱いやすいです。
でも相応のバカさ加減を保とうとすると扱いづらいです。
総合するとまあ普通ってことで。


233VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/03(木) 16:30:13.69w6rdjLbAO (1/2)

なかなかピンチだな
>>1はお約束が嫌いみたいだから先が読めない


234VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/03(木) 16:36:59.87HelD5C5DO (1/2)

エルフをどうしたファザコン野郎(#^ω^)


235VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/03(木) 16:37:47.09HelD5C5DO (2/2)

忘れてた更新乙

連続でスマン


236VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/03(木) 17:06:16.14w6rdjLbAO (2/2)




237VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/03(木) 21:48:00.49dJ7f87gho (1/1)




238VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/03(木) 21:52:42.608KYi/3wDO (1/1)




239VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/04(金) 00:50:21.86cUXAltnQ0 (1/1)

乙です。


240VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/04(金) 18:05:55.68UpffWfA6o (1/1)

見つけたから待つぞ。


241VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/05(土) 03:08:41.945EhK+nXDO (1/1)

乙カレーライス


242 ◆6I9SwHc8xc2011/02/07(月) 17:28:12.17c7XWbM2/0 (1/1)

はっきり言うと、この作品のテーマはありふれたテーマ――「生きること」です。

     *      *
  *     +  うそです
     n ∧_∧ n
 + (ヨ(* ´∀`)E)
      Y     Y    *



早ければ今日の夜か、明日には投下したい
こっちは嘘にならないよう頑張ります


243VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/07(月) 17:29:42.44dPP+FXkko (1/1)

たのしみじゃ


244VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/07(月) 21:37:59.76RfwCuU9AO (1/1)

待つぜ


245VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/07(月) 22:38:12.00X26uSf/No (1/1)

舞ってる


246VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/08(火) 00:43:03.20kayarKNno (1/1)

なんだ嘘か


247VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/08(火) 07:52:11.797y9NVVdDO (1/1)

今日の夜だろ?
逸る気持ちは分かるが、焦ることはない


レベルと言うか、強さ的には皆どんなもんなんだろうか


248 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:20:03.28DQG4XW2s0 (1/14)

 
――――――――――
現在
魔法の森・獣王軍本陣
所持金・0G
 
 
勇者「……ん……」

ゆうしゃは めを さました!

勇者「ここは……?」

盗賊「目ェ覚めたかい?」

勇者「盗賊……賢者も」

賢者「勇者さん、大丈夫ですか? ボク達、催眠呪文で眠らされてたんですよ」

勇者「そうか……やはり、あれは呪文による攻撃だったか」

盗賊「で、周りを見てみなよ」

勇者「これは……周囲をバリアで囲まれているのか」

勇者「バリア発生器をここまで小型化したのか……これならいつでも捕虜を閉じ込めておけるな」

盗賊「感心してる場合かい? つまりあたしら、ここから出られないってことじゃないか」

賢者「装備品もお金も取り上げられちゃったみたいですし……」

盗賊「令嬢と楽師も、あの後どうなっちまったのかわかんないしね……心配だよ」

勇者「なるほど……確かに、状況は芳しくないな」

賢者「ボク達……どうなっちゃうんでしょうか」

勇者「相手は獣王軍だ。私達を生かしておく理由などないはずだ」


249 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:20:48.87DQG4XW2s0 (2/14)

賢者「……終わりなんでしょうか、これで」

賢者「ボク達、魔王を倒すこともできないで、殺されちゃうんでしょうか……」

盗賊「諦めちゃいけないよ。チャンスはあるはずさ。なあ勇者」

盗賊「……勇者?」

ゴソゴソ

勇者「このタイプのバリアなら、属性的には……いや、しかし魔力源の問題がクリアできない」

勇者「考えられるとすれば、生体金属を触媒にしているのか……あれなら寿命はかなり長い」

勇者「あるいは放電花の果実かもしれないが、あれは熟すまでの時間が……」ブツブツ

盗賊「……聞いちゃいないか。ま、勇者らしいけどさ」

賢者「マイペースっていうか、どんだけKYなんだって感じですよ」

賢者「……あーあ、なんだか暗い気分になったのがアホらしくなりますよね」

賢者「どう見ても絶望なのに、一番危ない立場の勇者さんはああだし」

賢者「いっつもそうですよ。勇者さんは自分のことしか考えてないんだから」

盗賊「勇者なりにあたしらを元気づけようとしてる、ってのは考えすぎかねぇ」

賢者「そんな気の効いたこと、勇者さんにできるわけないじゃないですか。バカバカしい」

賢者「勇者さんは間違っても善意の人間なんかじゃないんですから。有り得ないですよ」

盗賊「……やれやれ」

盗賊(そんなこと言って、しっかり元気づけられちまってるじゃないか)


250 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:21:43.47DQG4XW2s0 (3/14)

 
――――――――――
同時刻
魔法の森・獣王軍本陣
 
 
獣王子「魔王様、竜姫。こちらへどうぞ。お食事を用意しました」

魔王「……ああ、サンキュー。実は昼から何も食べてなくて、腹ペコでさ」

獣王子「お二人の口に合うかどうかわかりませんが……」

竜姫「構わぬ。どうせ招かれざる客人なのじゃろう?」

獣王子「……いえ、そのようなことは……」

魔王「よせよ、竜姫ちゃん。とりあえず腹ごしらえしようぜ。せっかく用意してくれたんだしさ」

竜姫「まあ、今のところはそうするかの」

魔王「おっ、超美味そうじゃん! 魔法の森ってキノコとか山菜とか色々採れるもんな」

獣王子「はい。これはエルフの里の郷土料理だそうです。部下に作らせました」

竜姫「……ところで獣王子。何故、エルフの里に進軍したのじゃ?」

魔王「あ、そうだ。オレもそれを聞きたかったんだ。どうしてオレに何も言わなかったんだよ」

獣王子「申し訳ありません、魔王様。秘密の作戦だったので、勝手ながら独自行動を」

獣王子「この作戦の目的は、第一に、エルフの里の異変を餌に勇者をおびき出し、これを討つこと」

獣王子「そして第二に、エルフの持つ古代魔法を手に入れることです」

魔王「古代魔法……っていうと、神話の時代にあったっていう原初の魔法のこと?」


251 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:22:26.63DQG4XW2s0 (4/14)

獣王子「はい。伝承によれば天界の神々がエルフに伝えたとされています」

竜姫「カビの生えた言い伝えじゃ。お伽噺のようなものじゃろうに」

獣王子「ですが、エルフの里には古代魔法にまつわる書物が残されていたんです」

獣王子「伝承の通りならば、これを極めた者は天地魔界を支配する力を得られるといいます」

獣王子「それを手に入れ、魔王様に献上しようと思い、里のエルフを無力化し捕えました」

獣王子「後ほど、長老以下数名を尋問する予定です」

魔王「……過激だなぁ、獣王子。初陣でこんな派手なことをやらかすなんて」

竜姫「獣王の名を継いだのじゃ。これくらいせねば格好もつかんじゃろ」

獣王子「……恥ずかしながら、そのような見栄や功名心があったことも確かです」

魔王「あ、いや、別に悪いってこっちゃないさ。ただ、思ったより落ち着いてるから」

魔王「オレだって女の子の前じゃカッコよくありたいしね。いや、オレはいつでもカッコいいけど」

竜姫「格好をつけるだけなら得意なのじゃがな。頭が空っぽなせいで後が続かぬからの」

魔王「竜姫ちゃん、オレ今のでちょっと傷ついたぜ。チューしてくれたら心の傷も癒えるかも!」

竜姫「じゃから脊髄反射でそういう妄言を垂れ流す癖を矯正しろと小一時間」

獣王子「はは……」

魔王「おっ、やっと笑ったな」

獣王子「は?」


252 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:23:26.16DQG4XW2s0 (5/14)

魔王「さっきからしかめっ面で、堅苦しいことばっか喋ってたからさ。いつ笑うのかって思ってた」

獣王子「あ、いえ……すみません」

魔王「だからそういうのいいんだって。オレ達、友達だろ?」

竜姫「そのようなことを考えておったのか? 魔王のくせに生意気じゃぞ」

魔王「へへへ……それほどでも」テレッ

竜姫「褒めてはおらんからな?」

獣王子「……ありがとうございます、魔王様」

魔王「様はつけなくていいって。それより、せっかく三人揃ってるんだ。獣王子も飯、食ってけよ」

獣王子「いえ。これから竜王殿のところに挨拶に行きますので」

魔王「竜王……?」

竜姫「父上が来ておるのか!?」

魔王「なんであのオッサンがここにいるんだよ。火竜山脈の砦にいるんじゃなかったっけ」

獣王子「今回の作戦への協力を申し出てくれたんです」

獣王子「獣王軍も再編されて日も浅く、人手不足ですから、ありがたい申し出でした」

竜姫「……そうか。父上がのう」

獣王子「寝室も用意していますから、お休みになる時は部下にお申し付けください。それでは」

バタン

魔王「……竜王が、ねぇ」

竜姫「……」


253 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:24:47.25DQG4XW2s0 (6/14)

 
――――――――――
2時間後
魔法の森・獣王軍本陣
所持金:0G
 

ゴソゴソ
 
盗賊「……う~ん。やっぱり地面に穴掘って脱出ってのは無理っぽいよねぇ」

賢者「スコップの一本もないんだから当たり前ですよ……で、勇者さん」

勇者「どうした?」

賢者「さっきからバリア発生器の前でブツブツと独り言を言ってましたけど、何してたんです?」

勇者「ああ。このバリアを解除する方法が見つかった」

盗賊「えっ!? それ、マジかい!?」

勇者「マジだ」

賢者「……この、地面に書いてある魔法式はそのためのものなんですね?」

勇者「あくまでも大雑把に解析しただけだから、うまくいくかは保証しかねるが……」

勇者「脱出のためには君達の協力が必要不可欠だ。どのみち、ここから脱出できなければ命はない」

盗賊「……勇者さ、アンタってホント何でもできるんだね」

勇者「そう買い被られても困る。私には、私にできることしかできない」

賢者「全然そんな風に見えないんですけど」

勇者「……研究員時代からなんだが、他人から見るとそう見えてしまうらしい。何故だろうか」


254 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:26:03.81DQG4XW2s0 (7/14)

盗賊「それで、あたしらは何をすればいいんだい?」

勇者「まず、賢者は私と一緒にこの魔法式に沿って術式を構築してくれ」

勇者「この魔法式は、バリア発生器に内蔵された魔力変換装置の反応に干渉、阻害するものだ」

賢者「つまり、バリアを一時的に無力化する?」

勇者「あくまでも一時的であり、しかもほんのわずかの時間だけだ。そこで盗賊。君の出番だ」

盗賊「あたし?」

勇者「この魔法式に従って術式を展開すれば、数秒間だけバリアに穴が開く」

勇者「私達二人は術式の維持で動くことができない。君がバリアの外に出て発生器を破壊してくれ」

盗賊「なるほどね。あたしは魔法とかよくわかんないから、適任じゃないか」

勇者「十分に注意してくれ。バリアに触れたら大ダメージを受ける」

盗賊「でも、あたしにしかやれないんだろ? だったらやるしかない。早速始めるかい?」

賢者「待ってください。まだ外に見張りがいます」

勇者「そろそろ交代の時間のはずだ。彼らの注意が逸れたのを見計らって始めよう」
 
………………… 
  
<オイ、コウタイダ

<フウ、ヤットヒトヤスミデキルゼ

<アイツラ、ミョウナウゴキハシテナイカ?

<オトナシイモンダゼ。アキラメタカナ?

…………………

勇者「……よし、今だ」


255 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:27:05.89DQG4XW2s0 (8/14)

ゆうしゃと けんじゃは じゅつしきを てんかいしはじめた!
バリアはっせいきの くどうおんが すこしずつ ちいさくなっていく……

なんと バリアに あなが あいた!

賢者「ぐっ……こ、これ、結構キツいです」

勇者「外部から装置に無理矢理干渉するからか……だが道は開いた。行くんだ、盗賊」

盗賊「……了解!」

とうぞくは バリアに あいた あなに とびこんだ!
とうぞくは ろうごくの そとに でた!
バリアのあなは すぐに ふさがった……

獣人A「な!?」

獣人B「き、貴様! どうやってバリアを……!」

盗賊「言ってもわかんないよ!」

とうぞくは じめんをけり じゅうじんA・Bの ふところに とびこんだ!
とうぞくは きゅうしょを ねらって こうげきした!

盗賊「……あたしにだってチンプンカンプンなんだからさ」

じゅうじんA・Bは たおれた!

賢者「やった! やりましたよ、勇者さん!」

勇者「ああ……盗賊、バリア発生器の電源を落としてくれ。そこのレバーだ」

盗賊「はいよ。よっ……と」

ガコン

とうぞくは バリアはっせいきの でんげんを おとした!
ゆうしゃと けんじゃの まわりのバリアは きえさった!


256 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:27:38.68DQG4XW2s0 (9/14)

賢者「ふぅ、これで一安心……あ、あれっ」フラッ

勇者「大丈夫か? ……いや、正直に言うと、私も相当消耗させられた」

盗賊「おいおい、どうしちまったんだい。いつもなら魔法のひとつやふたつ、平気で……」

賢者「杖がないからです……」

賢者「杖には、術者の魔力を増幅させ、安定させる効果もありますから……」

勇者「私の場合は、単純に魔力容量の上限が低いからだな。すぐに魔力が尽きてしまう」

勇者「……とにかく、ここから離れよう。体勢を立て直す必要がある」

盗賊「じゃあ装備はあたしが探してくるから、アンタ達は早く逃げな」

盗賊「脱走したのを感づかれる前に安全なところまで逃げないといけないし、戦えないだろ?」

賢者「そうですね……じゃあ、エルフの里の近くで落ち合いましょう」

勇者「気をつけろ、盗賊。バリアの内側から外の様子を観察していたが、不可解な点が多い」

盗賊「不可解な点?」

賢者「やっぱり勇者さんも気づいてました?」

勇者「我々を捕えたのは獣王軍のはずだが、獣系の魔物の中に混じって竜人がいた」

盗賊「竜人だって?」

勇者「彼らは本来、竜王軍の兵士だが、どういうわけか獣王軍と行動を共にしている」

盗賊「獣王軍と竜王軍が一緒になって行動してる、って……」

賢者「でも竜王軍の拠点は火竜山脈の砦で、ここからかなり遠いはずですよ」

勇者「どういう事情なのか……とにかく、注意してくれ。危なくなったら装備は諦めて構わない」

盗賊「ありがたいお言葉だね。じゃあ、アンタ達も気をつけて」


257 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:29:13.11DQG4XW2s0 (10/14)

 
――――――――――
数分後
獣王軍本陣・司令部
 
 
獣人C「獣王子様! 大変です!」

獣王子「落ち着いてください。何事ですか」

獣人C「は、はい……バリア牢から勇者一行が脱走しました!」

獣王子「何……!? すぐに周辺の警戒を強化、アリ一匹通すな!」

獣人C「ハッ!」

タッタッタッ……

??「……なかなか面白いことになってきたじゃねぇか」

獣王子「笑いごとではありませんよ、竜王殿」

竜王「物事には予期せぬトラブルってのがつきもんだからな。そいつも楽しんでこそよ」

竜王「こんなことなら、勇者を捕まえた時点で殺しておくべきだったなぁ」

獣王子「本国に移送して公開処刑すれば、魔王軍全体の士気高揚と戦死者への慰霊になると……」

竜王「お坊ちゃんの考えそうなこったな」

獣王子「くっ……!」

竜王「まあいい、今日の主役はお前さんだ。俺んとこの部隊をいくつか貸してやるから使いな」

獣王子「……感謝します。それでは、僕も勇者捜索に参加しますので、これで」

ザッザッザッ……


258 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:30:09.66DQG4XW2s0 (11/14)

竜王「……ヘッ、お坊ちゃんがよ。詰めが甘いぜ……お前もそう思うだろ、なあ」

ガチャ

竜姫「……気づいておったか。流石は父上じゃな」

竜王「よう竜姫。相変わらず魔王とつるんでるらしいじゃねぇか」

竜王「ていうか、なんだよその格好は。まるで人間じゃねぇか」

竜姫「うむ。変身呪文でチョチョイとな。どうじゃ? 悪くないじゃろう?」

竜姫「……それよりも父上。一体、何の魂胆があって獣王子に肩入れするのじゃ?」

竜王「魂胆ってほどのもんはねぇな。強いて言うなら親切心じゃねぇか?」

竜姫「嘘じゃな。父上の行動原理が善意とは最も遠いところにあることを、わらわは知っておる」

竜姫「まあ、獣王子がどうなろうと、わらわにはどうでもよいことじゃ」

竜姫
「しかし、友達を危険に晒すまいと奔走しておった魔王に悪いからのう」

竜姫「……何を企んでおるのじゃ、父上」

竜王「……」

竜王「……ああ、もういいわな。らしくねぇ。本当にらしくねぇわ」

竜姫「?」

竜王「どうせ今夜中には行動を起こすつもりだったからな……」

ドォン!

りゅうおうは はげしいいなづまを よびよせた!
りゅうきは 87の ダメージを うけた!


259 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:31:18.12DQG4XW2s0 (12/14)

竜姫「がっ……!?」ドサッ

竜王「お前はそこで寝てろ。朝日が昇る頃には終わってるからよ」

竜姫「ち、父上……! 待つのじゃ、一体何をしようと……!」

竜王「お前が知る必要はねぇな」

竜王「ま、ガキが首突っ込むこっちゃねぇんだよ。じゃあな」

ザッザッザッ……

竜姫「くっ……うぅ……!」

りゅうきは からだがしびれて うごけない!

竜姫(身体が動かぬ……このままでは、魔王と獣王子が……!)

竜姫(ダメじゃ……意識、が……)ガクッ

竜姫「……」
 
りゅうきは きを うしなった!


260 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 12:32:13.97DQG4XW2s0 (13/14)

 _________|\
|To Be Continued...    >
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/

Aパート終了
Bパートはまた後で投下する予定


261VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/08(火) 12:38:58.89nqP2wpJmo (1/1)

乙乙
wwktkしてきた


262VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/08(火) 12:51:01.82bzRyU0bfo (1/1)

>>260 乙!


263VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/08(火) 12:52:05.450evuhxgDO (1/1)




264VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/08(火) 15:58:39.87eK8inAvAO (1/2)




265 ◆6I9SwHc8xc2011/02/08(火) 22:21:56.16DQG4XW2s0 (14/14)

Bパートの仕上げが実はあまり捗ってないでござる

明日明後日と出かける用事があるので金曜日までもつれ込むかもわからんね


266VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/08(火) 23:24:16.15eK8inAvAO (2/2)

待つぜ
ただハイクオリティ期待しちゃうぜ


267VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/10(木) 07:06:07.794dVuJPSO0 (1/1)

乙です。


268VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 08:38:22.22t4w52Q4M0 (1/23)

 
――――――――――
数分後
魔法の森
所持金:0G
 
 
賢者「なんだか騒がしくなってきましたけど……もう脱走がバレたみたいですね」

賢者「盗賊さん、大丈夫かなぁ。それに楽師さんや令嬢さんはどうなったんでしょうか」

勇者「ああ……盗賊はともかく、彼らは……」

ギィンッ!

ゆうしゃの めのまえに いっぽんのけんが つきたった!

勇者「!」

賢者「勇者さん!」

勇者「……これは、魔王軍で制式採用されているサーベルか」

???「そのサーベルを取れ、勇者!」

賢者「あれは……!?」

勇者「……君が、獣王子か?」

ザッ

獣王子「そうだ……僕が獣王子」

獣王子「お前が卑劣な手段で殺した、獣王の息子だ!」


269VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 08:38:57.12t4w52Q4M0 (2/23)

獣王子「本来なら魔界へ移送して公開処刑を行うつもりだったが、やはりこの手で……!」

獣王子「ここなら横槍が入ることもない。一対一の決闘で勝負をつける!」

ゆうしゃたちの まわりを じゅうおうぐんの へいしたちが とりかこむ!

賢者「か、囲まれちゃってますよ!」

獣王子「安心しろ。部下に手出しはさせない。僕とお前の一騎打ちだ」

勇者「……いずれ戦わなければならないとは思っていた」

勇者「武器がなくて困っていたところだ。君の正々堂々とした精神に感謝する」

獣王子「減らず口を……」

勇者「賢者、君は下がっていろ。今戦うべきは私のようだ」

賢者「は、はい。気をつけて!」

じゅうおうじは マントをぬぎすて おのを かまえた!
ゆうしゃは じめんから サーベルをぬき かまえた!

獣王子「……勇者を倒すことが死者への最大の慰めであり、我が一族の雪辱を果たすことにもなる」

獣王子「いざ、尋常に勝負!」

勇者「来い!」

ゆうしゃは じゅもんを となえた
サーベルのとうしんが せきねつし ほのおをまとう!
じゅうおうじは おおきく いきをすいこんだ
じゅうおうじの からだに きりょくが みちる!

ゆうしゃは あかくもえさかるサーベルを てに はげしくきりかかった!


270VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 08:39:46.10t4w52Q4M0 (3/23)

ギィンッ!

じゅうおうじは おので サーベルを ふせいだ!

獣王子「魔法剣……このような技まで身につけているとは……!」ギリギリ

勇者「クッ……」ググッ

勇者(やはり金貨なしでは消耗が激しい……!)

獣王子「しかしッ!」

じゅうおうじは ゆうしゃの サーベルを はねのけた!
ゆうしゃは バックステップして きょりをとる!

獣王子「それでもッ!」

じゅうおうじのおのを ちゅうしんに かぜが あつまっていく!
じゅうおうじは おのを ふりかざした!
しんくうのやいばが ゆうしゃに おそいかかる!

勇者「……ッ!」

ゆうしゃは じゅもんを となえ サーベルを じめんに つきたてた
あしもとの じめんが はぜ どしゃのかべが しんくうはを ふせぐ!

獣王子「だとしてもッ!」

じゅうおうじは いっきにきょりをつめ ゆうしゃに きりかかる!
つちけむりを きりさいて おのが ふりおろされた!

勇者(……間に合わない!)

ゆうしゃは じゅもんを となえた!
ゆうしゃは おのを ひだりうでで うけとめた!


271VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 08:40:13.26t4w52Q4M0 (4/23)

勇者「ぐぅ……ッ!」

ゆうしゃに 41の ダメージ!
ゆうしゃの ひだりうでに おのが くいこんでいる!
ゆうしゃは すかさず じめんにささった サーベルを ひきぬき きりつけた!
じゅうおうじに 36の ダメージ!

獣王子「左腕に鋼体呪文を集中させて防いだのか……!」

勇者「肉を切らせて骨を絶つ……とまではいかなかったか……」ガクッ

ゆうしゃは ぜんしんのちからが ぬけていくのを かんじた
ゆうしゃは じめんに ひざを ついたが
サーベルを つえのかわりにして なんとか たちあがる!

獣王子「どうした、勇者……もう疲れたのか?」

勇者「……ハァ……ハァ……」

賢者「勇者さん!」

勇者(まずい……こんなにも魔力の消耗が激しいとは……)

ゆうしゃの ひだりうでから とめどなく ちがながれている
ゆうしゃは かいふくじゅもんを となえ きずを ふさいだ!
ゆうしゃは いしきが もうろうと してきた……

勇者(魔力とは精神の力……そして精神は肉体に強い影響を及ぼす)

勇者(このまま魔力が尽きてしまえば、間違いなく戦闘不能……)

勇者(だが魔法を出し惜しみして勝てる相手とも思えない。どうすれば……)


272VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 08:40:51.75t4w52Q4M0 (5/23)

 
――――――――――
同時刻
獣王軍本陣・物資保管所
 
 
ゴソゴソ……

とうぞくは たからばこを あけた!
なかには とうぞくたちのそうびひんと さいふが はいっていた!
とうぞくは そうびひんと 30566Gを てにいれた!

盗賊「……やっと見つけたよ。物置に放り込まれてるなんて、えらく雑な扱いじゃないか」

盗賊「装備の管理もいい加減なもんだし、獣王軍も人手不足なのかねぇ」

盗賊「とにかく、勇者達と合流しないとね。さっきからなんだか騒がしいし……」

盗賊「……っと、この傷薬は貰っておこうか。あとは解毒薬も」ヒョイ ヒョイ

タッタッタッ……

盗賊「! 足音……やばい、誰か来ちまう」

とうぞくは いそいで たからばこのかげに みを かくした!

バタァン!

つぎのしゅんかん ほかんじょのとびらが いきおいよく ひらかれた!

??「ハァ、ハァ……ここか、物資保管所は……」

??「クソッ、なんでこんな散らかってんだよ。早く薬を探さないとヤバいってのに……」

??「ええっと、これは……包帯か。これも必要だな。あとは薬草と傷薬……」


273VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 08:41:27.90t4w52Q4M0 (6/23)

盗賊「その声……楽師かい?」

魔王「!? ……盗賊ちゃん?」

とうぞくは たちあがり たからばこのかげから でた
まおうは そこらじゅうのはこを あけて なかみを ちらかしている

盗賊「くたばっちまったかと思ってたよ。アンタ達も獣王軍に連れてこられたのかい?」

魔王「それは……いや、今はそんなことどうでもいいんだ。竜……令嬢ちゃんが大変なんだよ!」

盗賊「大変って……怪我をしたのかい?」

魔王「ああ。多分、電撃呪文か何かにやられたみたいで、ひどい火傷なんだ」

魔王「獣王軍には火傷によく効く薬があったはずだから、急いでここに来たんだ」

盗賊「そうだったのかい……薬ならあたしが持ってるよ」

魔王「マジ!? ……頼む、盗賊ちゃん! それ使わせてくれ!」

盗賊「ああ、そりゃ構わないよ。でも……」チャキッ

とうぞくは まおうにむけて ナイフを つきつけた!

魔王「と、盗賊ちゃん? 何してんの……」

盗賊「答えておくれよ。なんでアンタが、獣王軍が使う薬のことを知ってるんだい?」

盗賊「ただのお嬢ちゃんに付き従っているだけの楽師が知っているはずのない情報を、ね」

魔王「……」


274VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 08:42:07.48t4w52Q4M0 (7/23)

盗賊「思い返してみれば、あたしらが催眠呪文で眠らされた時」

盗賊「あたしと賢者が眠気に襲われて眠っちまう時、あのお嬢ちゃんは平気そうだった」

盗賊「気になって勇者にも聞いてみたら、アンタもどうってことなさそうだったと言ってた」

盗賊「賢者の話だと、あれは人間だけに効く強力な催眠呪文らしいじゃないか」

盗賊「つまり、アンタもお嬢ちゃんも、人間じゃない。魔族か何かだってことになるんだよ」

魔王「……催眠呪文への耐性をつけるマジックアイテムを持ってた、って可能性だってある」

盗賊「じゃあそれを見せてごらんよ。見たところ、アンタは身なりがちゃんとしてる」

盗賊「つまり、装備品を獣王軍に没収されていないってことさ。あたしらみたいにね」

盗賊「そういうアイテムだってんなら、見ればわかる。アイテム鑑定は得意だからさ」

魔王「う……そ、それは」

盗賊「……アンタ、何者なんだい?」

魔王「……」

魔王「……じゃあ、盗賊ちゃんは、オレが魔族だったとしてどうするつもりかな」

盗賊「質問に質問で返したらテストは0点だよ」

魔王「いいからいいから。オレにだってそれを聞く権利はあるはずだぜ」

盗賊「……ま、どうしようってわけじゃないよ。でもあたしがアンタを信用するために必要だろ?」

魔王「信用?」

盗賊「そう。ルールみたいなもんだと言い換えてもいいね」


275VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 08:42:45.84t4w52Q4M0 (8/23)

盗賊「本当のことを言うと、あのお嬢ちゃんが大変だってんなら、薬は届けてやりたいさ」

盗賊「けれどアンタ達には不審な点が多すぎる。頭の中の冷静な部分が、疑えと言ってくる」

盗賊「一文無しに大金を貸す金貸しはいない。担保ってもんがいるんだよ。今はこんな状況だしね」

魔王「……オレなら、女の子の言うことを疑ったりなんてしないのになぁ」

盗賊「あたしもそうありたいよ。でも、仲間の命がかかってるんだ」

魔王「……」

魔王(オレ自身、命は惜しい。正体を明かすのも気が引ける。でも女の子の命がかかってる)

魔王(そうなったら、どう考えても、優先順位ってやつは決まってるよな)

魔王「……わかった。話すよ、オレが何者か」

魔王「それでどうにかなるんなら、オレはそうするさ」

まおうは じぶんにかかった へんしんじゅもんを かいじょした!
にんげんのすがたから ほんらいの まぞくのすがたに へんかしていく……
まおうは しょうたいを あらわした!

盗賊「……!」

魔王「この通り、オレは魔族だよ。それもそんじょそこいらの田舎者とは訳が違う」

盗賊「まさか」

魔王「そう……オレは魔王。君らの言うところの悪者の親玉さ」


276VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 08:43:25.54t4w52Q4M0 (9/23)

盗賊「……続けな」

魔王「オレの目的は勇者に接触して戦いを回避することだったんだ。取引でも持ちかけてね」

魔王「自慢じゃないけど、オレは力は大したことないから。それに獣王子のこともあった」

魔王「獣王子はオレの昔からの友達なんだ。親父の仇討ちにこだわってたし、危ないと思ってた」

魔王「あ、そうそう。令嬢ちゃんもオレの友達でさ。竜王の娘の竜姫ってんだ」

魔王「……でも結局、戦いは回避できなかった。それに、オレが恐れていた以上のことが起きた」

盗賊「恐れていた以上のこと?」

魔王「竜姫ちゃんがやられたのはさっき話しただろ?」

魔王「……竜姫ちゃんをやったのは、彼女の親父の竜王だ」

盗賊「竜王が……ってことは、そいつもここにいるのかい?」

魔王「いや、今はどこかへ行っちまってる。でも……」

魔王「……?」

盗賊「?」

まおうは なにかに きづいたように ほかんじょのまどを みあげた


277 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:44:04.34t4w52Q4M0 (10/23)

酉つけ忘れてたwww
 
 
 
 
 
盗賊「どうしたんだい?」

魔王「……盗賊ちゃん。話の続きは後でいいかな」

盗賊「まだ話は終わってないよ」

魔王「今は竜姫ちゃんが心配だし、やらなきゃいけないことがある。竜王軍の連中、始めやがった」

盗賊「何を?」

魔王「……盗賊ちゃんはこの先の司令室に行ってくれ。そこに竜姫ちゃんがいる」

盗賊「アンタはどうするんだい?」

魔王「逃げる……と言いたいところだけど、オレも友達を放ってはおけない」

魔王「強い味方を呼んでくるよ。すぐ戻るから、竜姫ちゃんのこと、よろしく頼む」

盗賊「あたしが令嬢……いや、竜姫を治療するとは限らないよ」

魔王「いや、盗賊ちゃんはキチンとやってくれるさ。なにしろ、君は優しい人だと思うし」

盗賊「……二人目だよ。アンタ、勇者と同じこと言うんだね」

魔王「マジ? だとしたら、オレ達って案外感性が似てるのかも……」

盗賊「わかったよ。あたしはこの薬を使って竜姫の治療をする。アンタはアンタの仕事をしな」

魔王「サンキュー。じゃ、行ってくるよ」


278 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:44:42.35t4w52Q4M0 (11/23)

 
――――――――――
同時刻
魔法の森
所持金:0G
 
 
ギィィィン!

獣王子「どうした勇者……! 魔法が使えなければそんなものか!」

勇者「……!」

獣王子「親父殿の仇……今こそ、この手で!」

じゅうおうじは おのを はねあげ ゆうしゃのサーベルを はじきとばした!

勇者(しまった……!)

獣王子「もらった!」

じゅうおうじは かぜのやいばを おのに まとわせ はげしく きりかかった!

賢者「勇者さん!」

じゅうおうじのおのが ゆうしゃに ふりおろされる!

勇者「……ッ!」
 
 
  
ザシュッ!


279 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:46:23.66t4w52Q4M0 (12/23)

ボトッ……

ゆうしゃの ひだりうでが せつだんされ じめんに おちた!

賢者「――――ッ!」

ゆうしゃは げきつうに かおを ゆがめ ひざをついた!

勇者「ぐあぁぁぁぁぁ……ッ!」

賢者「勇者さん!!」

のたうちまわる ゆうしゃに けんじゃが かけよった
じゅうおうじは そのこうけいを みながら つぶやいた……

獣王子「……勝った」

獣王子「……フ、ハハハ……やった……僕の勝ちだ」

獣王子「今とどめを刺してやるぞ、勇者。父の仇を……!」

勇者「……」

ピシッ

勇者「……いや、私の勝ちだよ。獣王子」


280 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:47:12.72t4w52Q4M0 (13/23)

ブシュゥゥゥゥ!

じゅうおうじのよろいに きれつが はしり せんけつが ふきだした!

獣王子「ガハッ……!?」

獣王子「バ、バカな……いつの間に……」

獣王子「い、いや、勇者には魔力さえ残っていなかったはず……何故……」

勇者「あのままだったなら、な……」ヨロッ

賢者「勇者さん、動かないでください! 回復呪文を……」

勇者「杖がないのでは君が消耗するだけだ……大丈夫、止血さえできればいい……」

勇者「……知っての通り、私の魔貨式魔導法は貨幣を魔法媒介に用いる」

勇者「だが、媒介に貨幣を使うのは、それが最も我々の身近にあり、かつ強い念を宿すからだ」

勇者「理論上では、魔法的価値のある物質ならば、何でも魔法媒介に利用することはできる」

勇者「勝負が長引けば私の不利だった……だから私はカウンター攻撃に賭けた」

勇者「一瞬だけ魔法が使えればよかったから、代償は比較的少なく済んだ方だったろう……」

賢者「……!」

けんじゃは ゆうしゃのかおを のぞきこみ ことばを うしなった
ゆうしゃの がんかから ちが あふれ ながれている
かれの がんかからは がんきゅうが なくなっていたのだ……!

獣王子「バカな……! 視力を代償に強化呪文を使っただと……」

勇者「もはや何も見えないが……君を戦闘不能にする程度のダメージは与えたはずだ」

賢者「でもこんな状態じゃ、周りの兵士にかかってこられたらひとたまりも……」

獣王子「……そうだ。僕はまだ死んではいないし、周りには我が獣王軍の精鋭達が……!」


281 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:48:08.91t4w52Q4M0 (14/23)

 
パチパチパチパチ……
 
そのとき どこからともなく はくしゅの おとが ひびいてきた……

獣王子「? なんだ、誰が拍手など……」

??「……大したもんだなぁ、オイ。流石は勇者ってところだな」

賢者「……上です!」

けんじゃと じゅうおうじは そらを みあげた!
りゅうおうが つばさをひろげ ちゅうにうかんでいた!

りゅうおうは ゆっくりと じめんに おりたった……

竜王「獣王子にブッ殺されてるかと思ったが……いや、マジに予想外だぜ」

竜王「今の勇者ってのはなかなか骨のある奴じゃねぇか。お前もそう思うだろ?」

獣王子「竜王殿、一体何の……」

竜王「おっと、ストップ。別にお前さんの獲物を横取りしようなんて思っちゃいねぇよ」

竜王「ただな、ちょいとやることがあって来たのよ。なに、すぐ終わる用事だ」

獣王子「そうですか……しかし、何もこんな時に……」

竜王「そう言わずに聞いてくれや。とりあえずはな……」

バヂィィィィッ!

獣王子「――――ッ」

竜王「死ねよ」


282 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:49:03.19t4w52Q4M0 (15/23)

 
ドサッ
 
じゅうおうじは ぜんしんから けむりを あげながら たおれた!

勇者「……! 賢者、今何が起こったんだ」

賢者「あ……り、竜王が、獣王子を……獣王子に……」

勇者「攻撃をしたのか?」

賢者「は……はい……」

獣王子「……」

竜王「ご臨終だ」

じゅうおうじは なにも はんのうしない
ただの しかばねの ようだ……
りゅうおうは ゆうしゃたちに むきなおった

竜王「よう、手負いの勇者にちんちくりんの賢者」

勇者「……竜王と言ったか。何故、仲間を殺した?」

竜王「仲間ァ? ハハッ、こりゃあ傑作だな」

竜王「お前らもそう思うだろ、なぁ?」

りゅうおうが きょうぼうな えみを うかべた
それを あいずに しゅういを とりかこむ りゅうおうぐんのへいしは
じゅうおうじの しに ぼうぜんとしている じゅうおうぐんのへいしに おそいかかった!


283 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:49:38.17t4w52Q4M0 (16/23)

賢者「! 仲間割れ……!?」

竜王「だからよ、仲間なんかじゃねぇんだよ。あんな獣臭ェ連中とは」

竜王「俺達竜族と、あのくっせぇ野獣どもじゃ、生命体としてのレベルがダンチなんだからな」

勇者「……獣王軍を叩くことで、魔王軍内の地位を確固たるものにするということか」

竜王「その通り。あのガキの上前を撥ねてやるついでに、邪魔な連中も漏れなく始末できる」

竜王「そして古代魔法についての情報も得る……一石三鳥ってやつだ」

勇者(古代魔法……?)

竜王「さて、そろそろお前らをブッ殺してフィナーレだ」

賢者「勇者さんはやらせません!」ザッ

勇者「賢者……!」

竜王「おーおー、元気なこって。てめーの目を抉り出したアホのために、泣かせるねぇ」

賢者「確かに、勇者さんは研究のためなら自分のことさえ顧みないムッツリ研究バカですけど……」

賢者「ボクだって王宮の賢者で、勇者さんのお供です。ボクが守ってみせます!」

賢者「勇者さんがいれば、魔王だって……!」

竜王「……目の見えない勇者に、杖も持たない賢者……ナメられたもんだぜ、なぁ」

りゅうおうは いまづまを よびよせ みぎてに いかづちの エネルギーを あつめた!

竜王「……消し炭になりな」

??「待ちやがれ!」


284 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:50:32.73t4w52Q4M0 (17/23)

そのとき けんじゃとりゅうおうの あいだに きょだいなゴーレムが おりたった!
つづいて ゴーレムのかたから とうぞくとまおうとりゅうきが とびおりた!

スタッ

魔王「大丈夫? 賢者ちゃんに勇者」

竜姫「ずいぶん酷い格好じゃのう。まあ、わらわも似たようなものじゃが」

賢者「え? え? な、なんなんですか!? なんでボク達の名前を」

魔王「……あ、そっか。この姿は見せたことなかったっけ」

勇者「その声……楽師と令嬢か?」

賢者「で、でもどう見ても魔族ですよ! 盗賊さん、どうして魔族と一緒にいるんですか!?」

盗賊「詳しいことは後でゆっくり話すよ。それより勇者、これを」

とうぞくは ゆうしゃに さいふを てわたした
ゆうしゃは 30566Gを てにいれた!

盗賊「早く回復しな。出血も酷いし、顔色も悪い」

勇者「すまない。礼を言う」

ゆうしゃは さいふを ひっくりかえして ひとつかみのきんかを かおに おしあてた
ゆうしゃは かいふくじゅもんを となえた!
みるみるうちに がんきゅうが さいせいされていく!

勇者「ぐっ……ハァ、ハァ……」

賢者「大丈夫ですか……?」

勇者「問題ない。じきに視力も回復する……次は左腕の再生を行う。手伝ってくれ」


285 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:51:02.65t4w52Q4M0 (18/23)

竜王「チッ……まさかこのガラクタを連れてくるとはな」

竜姫「強がるのはよすんじゃな、父上」

竜姫「機械王は物質系モンスターの王……父上の得意とする電撃にも耐性を持っておる」

機械王「――竜王が魔王様に対し謀反を企てている確率、91.4%」

魔王「ああ。多分勇者達を殺った後、オレ達を相手取るつもりだったんだろうな」

魔王「オレって弱いからさ、頼りにしてるぜ機械王」

機械王「――ラジャー」

魔王「さーて……」

まおうは じゅうおうじのしかばねを みやった
まおうは つよく こぶしを にぎりしめ りゅうおうを にらみつけた

魔王「……落とし前をつけさせてもらうぜ、オッサン」

竜王「やれんのかよ? 落ちこぼれのガキが!」

竜王「お前もだ、竜姫。まさか俺に歯向かって勝てるとなんざ思っちゃいねぇだろう」

竜姫「確かに、100%の勝算など持ち合わせておらぬ」

機械王「――彼我の戦力差とレベルから計算して、我々が竜王に勝つ確率、66.1%」

竜姫「じゃが、友を殺されて黙っていられるほど大人にはなりきれぬでのう」

竜王「……大人しく寝てりゃあ、全て終わった後で相応の地位をくれてやったのによ」

竜王「てめえらの横槍で、こっちの段取りはグチャグチャだぜ、まったく」


286 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:51:33.98t4w52Q4M0 (19/23)

勇者「魔王軍の内部抗争というわけか……大体の事情は把握した」

魔王「……勇者」

勇者「身体の傷は治した。問題ない」

勇者「君が何者かはこの際どうでもいい。目下の脅威は竜王だ」

勇者「協力して竜王を倒す。君はそれで構わないか?」

魔王「上等……実はちょっと複雑だけどな」

竜王「……ちょうどいい機会だ。俺はこいつをてめえらの身体で試させてもらうぜ」

りゅうおうは いっさつの ふるびたしょもつを とりだした!

魔王「それは……!」

機械王「――エルフの里に保管されていた古代魔法に関する書物である確率、95.9%」

竜姫「……皆の者、一ヶ所に固まるでない! 散れ!」

竜王「遅ぇんだよ!」

りゅうおうは しょもつを ひらき じゅもんを となえた
かぜがふるえ だいちがゆらぎ てんくうから ひとすじのひかりが おりてきた!
それは あれくるうほのおとなり やがて だいばくはつを まきおこした!

ゴォォォォォォォォ!!

ゆうしゃたちは このはのように ふきとばされた!


287 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:52:41.05t4w52Q4M0 (20/23)

魔王「……ッ! なんて威力だよ!」

勇者「これが古代魔法……これほどとは……!」

竜王「まだまだこんなもんじゃねぇぞ!」

りゅうおうは じゅもんを となえた
だいちが さけ こおりのはしらが いたるところから のび ゆうしゃたちを おそう!

賢者「きゃあああああああっ!」

盗賊「賢者! 竜姫! 大丈夫かい!?」

竜姫「予想を遥かに上回る力じゃ……侮っておったか……!?」

機械王「――新たなファクターを加えて再計算。我々が竜王に勝つ確率……」

りゅうおうは じゅもんを となえた
きょだいなたつまきが まきおこり ゆうしゃたちを うちあげる!
ゆうしゃたちは じめんに たたきつけられた!

勇者「くっ……」

魔王「ぐあぁぁぁ……っ!」

竜王「ハハハハハ! 最高だな、古代魔法ってやつは! とんでもねーパワーじゃねぇか!」

竜王「確かに、ちと扱いづれぇし疲れるが……てめぇらをブッ殺すには十分すぎる力だ」

竜王「さあ……こいつで終わりだ」

りゅうおうは じゅもんを となえた!


288 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:55:02.31t4w52Q4M0 (21/23)

そのとき ゆうしゃとまおうは たがいに アイコンタクトを かわした
いっしゅんで たがいのいとを さっした ふたりは はじかれたように こうどうを かいしした

ゆうしゃは のこりのしょじきんを いっせいに ばらまき じゅもんを となえた!

まおうは ちかくにたおれていた けんじゃととうぞくを かかえあげた!

きんかに こめられた まりょくが かいほうされ まばゆいひかりを はなった!
りゅうおうは めがくらんで となえていたじゅもんは むさんした!
ゆうしゃは ちかくにいた りゅうきのてくびを つかんだ!

魔王「機械王!」

機械王「――了解。トランスフォーム!」

きかいおうのすがたが いっしゅんで へんかし きょだいな ひこうきかいに かわった!
まおうは けんじゃととうぞくを つれて きかいおうの せに とびのった!

ゆうしゃは てんいじゅもんを となえ りゅうきと ともに とびたった!
ひこうけいたいの きかいおうが そらのかなたへと とんだ!

あとには りゅうおうと じゅうおうじのしかばね
そして たたかいを つづける へいしたちがのこされた……

しばし あっけにとられていた りゅうおうだったが やがて くちから わらいが こぼれた

竜王「ク……ククク……」

竜王「いいねぇ、最高だぜあいつら。楽しくなってきやがった」

竜王「たまらねぇ、たまらねぇな。思ったより戦い甲斐のありそうな奴らで安心したぜ」

竜王「だがあまり俺を待たすんじゃねぇぞ、小僧ども。魔界はすぐに俺のものになるんだからよ!」
 
りゅうおうは つばさをひろげ よぞらに とびたった!
 
 
 
ゆうしゃたちは にげだした!


289おまけ ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:56:50.86t4w52Q4M0 (22/23)

勇者
破壊力:C(A) スピード:C    射程距離:B
持続力:D    精密動作性:A   成長性:E(A)
ユーモアセンス:E
 
賢者
破壊力:E(A) スピード:E    射程距離:A
持続力:B    精密動作性:B   成長性:B
学歴:A
 
盗賊
破壊力:C    スピード:A    射程距離:C
持続力:C    精密動作性:A   成長性:D
優しさ:A
 
魔王
破壊力:C(A) スピード:B    射程距離:D(A)
持続力:A    精密動作性:D   成長性:A
モテ度:A(自己申告)
 
竜姫
破壊力:E(A) スピード:E    射程距離:A
持続力:A    精密動作性:E   成長性:A
ワガママ:A
 
 
破壊力:攻撃力・破壊力を示す。デビルキックの威力に反映される。()内は魔法込み。
スピード:どの程度機敏に動けるかを示す。逃げ足の速さも含む。
射程距離:攻撃範囲を示す。魔王は女の子限定で世界中どこでも射程距離となる。
持続力:スタミナや魔力の量を示す。正直厳密には区分していない。
精密動作性:どの程度精密な動きができるかを示す。竜姫ちゃんは料理もお裁縫もダメダメ。
成長性:後々どの程度成長する可能性が残されているか。勇者は本体はEだが魔法込みでA評価。
 
A:超スゴイ B:スゴイ C:人並み D:ニガテ E:超ニガテ


290 ◆6I9SwHc8xc2011/02/12(土) 08:58:58.20t4w52Q4M0 (23/23)

なんかこう自分の中では第一部完的なアレ。いや打ち切りじゃないよ。
折り返し地点はすぎたので風呂敷を畳んでいく作業に戻ります。


291VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 09:42:41.636p2pZWIOo (1/1)

デビルキックワロチwwww


292VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 09:50:03.76XK4uR9OAO (1/1)

乙です


293VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 10:24:08.74AlGVyjmDO (1/1)

なぜジョジョのスタンドっぽいランク分けを…乙です


294VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 11:49:52.14Z+cGV/dAO (1/1)


やっぱり盗賊いいな
巨乳だし


295VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 17:27:20.92ompZHuwco (1/1)

おつです
竜姫さまに仕えたいのですが


296VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/12(土) 23:05:07.61Sk59o1FAO (1/1)


一瞬、獣王子がティエリアしてたのは気のせいだろうか?


297 ◆6I9SwHc8xc2011/02/14(月) 00:31:22.02ANIC+SD00 (1/10)

 
――――――――――
現在
王宮・謁見の間
所持金:480G
 
 
王様「……では、獣王軍の壊滅は確認したが、依然として竜王軍の脅威は残っていると」
 
勇者「はい。仲間ともはぐれてしまい、目下捜索中です」

大臣「なんと……いつ竜王軍が行動を起こすか、わかったものではないではないか」

勇者「ですが、今すぐということはないと思われます。竜王はまず魔界を掌握しようとするはず」

勇者「魔界にも現魔王のシンパや、反竜王の抵抗勢力は存在するでしょう。時間は稼いでくれます」

王様「だが、決して楽観できぬのもまた事実であろう」

勇者「その通りです」

王様「……一刻も早く竜王を倒すのだ。手段は問わん」

大臣「新たにお供を募っても構わぬぞ。仲間が生きているかどうかもわからんからな」

勇者「いえ、それには及びません。私は、彼女達が必ず生きていると確信しています」

王様「……ならば行け、勇者よ。祖国を脅かす敵を悉く排し、勇者の使命に殉ぜよ」

勇者「御意」


298 ◆6I9SwHc8xc2011/02/14(月) 00:32:42.40ANIC+SD00 (2/10)

 
――――――――――
数分後
城下町・カフェ
所持金:480G
 
  
勇者「すまない、待たせてしまった」

竜姫「構わぬ。多少時間のかかるであろうことは、予想しておったからの」

竜姫「……ところで、このコーヒーとやら。こんな泥水みたいなものを人間は飲んでおるのか?」

勇者「世界中で愛飲されている嗜好飲料だ。魔界にはないのか?」

竜姫「魔界で飲まれておるのは紅茶かワインじゃな。コーヒーはないのう」

勇者「なるほど」

竜姫「……して、これからどうするのじゃ?」

竜姫「父上から逃れたはいいが、魔王達とはぐれ、連絡も取れぬ」

竜姫「死んではおらぬと思うが、早急に捜し出して合流する必要があろう」

勇者「……」

勇者(……竜王が獣王子を陥れ、魔王への翻意を露わにしたあの日から、既に10日余りが過ぎた)

勇者(私は竜姫と共に、転移呪文で王都近郊まで逃れていた)

勇者(賢者、盗賊、そして魔王は機械王の背に乗り別方向に逃れたようだが、その行方は知れない)

勇者(仲間達との合流、そして竜王討伐……)

勇者(討つべき敵は魔王から竜王へ変わった。敵の敵は味方、ということか……)

勇者(……魔王軍四大幹部――獣王、海王、機械王、竜王のうち、獣王は斃れ竜王は反旗を翻した)

勇者(機械王はどうやら魔王の味方らしいが、問題は……)


299 ◆6I9SwHc8xc2011/02/14(月) 00:33:38.40ANIC+SD00 (3/10)

竜姫「……おい。聞いておるのか、勇者」

勇者「ん……ああ、すまない。考え事をしていた」

竜姫「お前の考えそうなことはわかる。海王はここ100年の間は表舞台に出ておらぬぞ」

勇者「……君には人の心を読む能力があるのか?」

竜姫「そんなもの持ち合わせた覚えはないわ……獣王子は死に、父上は魔界征服に乗り出した」

竜姫「機械王は初代魔王の時代から魔王一族に仕えておるし、裏切ることはないじゃろう」

竜姫「となれば、残るは水棲系モンスターの王である海王のことになる。当然の帰結じゃ」

勇者「察しが良くて助かる。仲間と離れ離れになってしまったが、君と一緒でよかった」

竜姫「うむ、苦しゅうない。もっとわらわを褒めちぎれ」

勇者「……海王が表舞台に出ていないと言ったが、その理由はわかるか?」

竜姫「いや、それはわからん。それにわらわも海王に会うたことはないのじゃ」

竜姫「じゃが海の魔物どもの統率のとれた動きを見ると、死んだようにも思えぬ」

勇者「30年前の魔王討伐遠征の際にも海王は現れなかったというが、一体何故……?」

竜姫「王たる地位にある魔族で、名誉欲や支配欲が全くないというのも考えにくい話じゃ」

竜姫「戦が起こったなら喜び勇んで戦いに行き、手柄を立てる。それが魔族の在り方じゃからな」

勇者「……まずは、図書館に行って当時の資料を確認しよう。君はどうする?」

竜姫「わらわも行くぞ。古代魔法に関する文献を探したい……正直期待はしておらぬが」

勇者「わかった。では、行こう」


300 ◆6I9SwHc8xc2011/02/14(月) 00:34:31.45ANIC+SD00 (4/10)

 
――――――――――
一時間後
王都・王立図書館
所持金:480G
 
 
勇者(……水棲系モンスターの王、海王。種族は魔の海の歌姫セイレーン)

勇者(海という最も広大な地域を支配する王で、美しい女性であったと言われているが……)

勇者(調査の結果、30年前の魔王討伐遠征の際も当時の勇者一行が海王と戦ったという記録はなく)

勇者(それどころか、少なくともこの50年の間、目撃証言のひとつさえ残されていない)

勇者(故に、海王の意図を推察するための材料は殆んどない……か)

勇者(次はもう少し昔の資料を調べるしかないか。古い文献を収めた書架は……)

ドンッ

勇者「……っ、すまない。不注意を……」

??「ご、ごめんなさい……余所見を……」

勇者「……」

??「……」

勇者「……君は、僧侶?」

僧侶「……勇者さん……?」


301 ◆6I9SwHc8xc2011/02/14(月) 00:35:29.54ANIC+SD00 (5/10)

僧侶「戻ってきてたんですね……あの……」

僧侶「会いたかった……です……」///

僧侶「勇者さんの活躍……聞いてます……」

僧侶「なんだか、すごく……自分のことみたいに……嬉しくて……」///

勇者「いや、今回はあまりいい状況ではない」

僧侶「え……?」

勇者「私の預かり知らぬところで、事態は大きく推移していたらしい」

勇者「今、重大な問題が進行している。それを解決するために資料を集めに来た」

僧侶「そうだったんですか……」

勇者「君はどうしてここへ? 魔法薬学の研究資料か?」

僧侶「はい……マンドレイクの栽培方法に関する文献を……」

勇者「ああ。それなら、向こうの書架の左端にあったはずだ」

僧侶「あ……ありがとう……ございます……」ペコッ

勇者「では、私はこれで失礼する」

僧侶「あ……ま、待って……」

勇者「?」

僧侶「あの……その……」

勇者「まだ何かあるのか?」

僧侶「ゆ、勇者さんが……迷惑じゃなければ……」

僧侶「わ……私を……勇者さんの……」モジモジ


302 ◆6I9SwHc8xc2011/02/14(月) 00:36:36.60ANIC+SD00 (6/10)

竜姫「……何をやっておるんじゃ、お前達は」

僧侶「っ!!?」

勇者「竜姫か。その様子では、君の求める文献はなかったようだが」

竜姫「うむ。何しろエルフの里に秘匿されていたような情報じゃからのう……それで」

竜姫「この娘は何じゃ?」ジロリ

僧侶「……っ」ビクッ

勇者「研究所時代の私の同僚だ。魔法薬学を研究している」

竜姫「ほう……? ん、思い出したぞ。確か市場で勇者と抱き合うておったの」

僧侶「そ……そんな……」///

勇者「竜姫。誤解を生まぬよう言っておくが、あれは追跡者を欺くための演技だ」キッパリ

僧侶「……は……はい……そうですよね……」ズーン…

勇者「しかし、良き友人であると私は思っている。彼女には色々助けられた」

僧侶「そ、そんなことないです……私だって……」モジモジ

竜姫(わかりやすいのう)

竜姫「ところで勇者、お前の方はどうなのじゃ? 海王に関しての情報は得られたかえ?」

勇者「いや。50年前まで遡っても、海王に関する有用な情報は得られなかった」


303 ◆6I9SwHc8xc2011/02/14(月) 00:37:48.91ANIC+SD00 (7/10)

竜姫「ふむ……ならば、これ以上調べても無駄かもしれんの」

竜姫「いっそのこと、海底神殿まで出向くのはどうじゃ?」

勇者「海底神殿……海王の本拠地か」

竜姫「何故100年近くに渡って海王が姿を見せぬのか、実際にこの目で確かめればよかろう」

勇者「それは私も考えていたが、もう少し資料を精査してからでも遅くはない」

勇者「最悪の場合、海王軍と戦うことになる。せめて弱点でもわかればアドバンテージになる」

竜姫「ほう……ま、その辺りは任そうかの」

勇者「君はどこへ行くつもりだ?」

竜姫「部屋に帰って寝るのじゃ。ほれ、さっさと鍵を渡さぬか」

勇者「わかった。今、鍵を……」グイッ

勇者「……」グイ グイ

僧侶「……」ギュゥゥゥ

勇者「すまない。外套の裾を掴むのはやめてくれないか」

僧侶「やめません……」

勇者「何故」

僧侶「その鍵……勇者さんのお部屋の……?」

勇者「そうだが」

僧侶「~~っ!」プルプル


304 ◆6I9SwHc8xc2011/02/14(月) 00:38:15.83ANIC+SD00 (8/10)

勇者「今、竜姫を私の部屋に泊めているんだ。だから鍵をやり取りしている」

僧侶「どうして……ですか……?」

竜姫「わらわは生憎と無一文でのう。路銀は勇者が管理しておるし、宿に泊まる金がないのじゃ」

勇者「そこで、部屋を引き払っていなかったのが幸いしたというわけだ」

勇者「再び王都を発つまで、彼女には私の部屋で寝泊まりしてもらっている」

竜姫「まったく、昔のわらわからは考えられぬ暮らしぶりじゃ。まさかあんな安アパートに……」

勇者「とにかく、私は調査を続行する。竜姫、君は部屋で休んでいてくれ」

僧侶「あ……あの……っ!」

勇者「僧侶?」

僧侶「わ……私も、手伝います……っ!」

勇者「しかし、君には君の研究があるのでは」

僧侶「大丈夫です……いえ、大丈夫になりましたから……っ!」

竜姫「……協力させてやったらどうじゃ? よほど手伝いたいようじゃぞ」

勇者「……そうか。なら、協力を頼みたい」

僧侶「は……はい……っ!」

僧侶「勇者さんと……その人だけじゃ、心配ですから……」

僧侶「わ、私……あの……その」モジモジ

勇者「よし。まずは60年前の大洪水の資料を探そう。確か16番書架の……」スタスタ

僧侶「あ……ま、待ってください……」

竜姫「……やれやれじゃの」
 
 
 
そうりょが なかまに なった!


305VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/14(月) 00:41:16.96gTpiiuIWo (1/2)

ktkr


306VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/14(月) 00:48:22.73UGdxEDaoo (1/1)

ちょうど今読み返してた!
支援


307 ◆6I9SwHc8xc2011/02/14(月) 00:48:31.95ANIC+SD00 (9/10)

自分の創作したキャラクターの担当声優を妄想したりしてニヤニヤした経験は誰にでもあると思います
そして俺は現在進行形でそれです

黒歴史は今もなお拡大を続けていると言うのか……!


308VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/14(月) 02:38:48.29GVJZKPhAO (1/2)

誰でもやるってwwww
しかし竜姫さんはなかなか大人だな
ワガママAのくせにー


309VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/14(月) 04:34:23.00ajYw61TDO (1/1)

やっぱ勇者のキャラがいいな

ずっとドライな性格のままでいて欲しいわ


310VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/14(月) 10:10:35.02gTpiiuIWo (2/2)

黒歴史を代償に黒魔法が使えるようになる日は近いな


311VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/14(月) 20:53:27.76vT4aEW9yo (1/1)

第二部(?)キター!待ってました1
ここまで立派な形になったものは既に黒歴史ではなく輝きを放っております!
今後もものすごい勢いで期待


312没ネタ ◆6I9SwHc8xc2011/02/14(月) 21:18:24.02ANIC+SD00 (10/10)

 
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z____________________
 
 
問題
以下の意味を持つ諺を答えなさい。
『ある事象の発生により、一見するとまったく関係のないような第三者が得をする』

賢者の答え
「風が吹けば桶屋が儲かる」
勇者のコメント
「正解だ。現在では、その論証に用いられる例の突飛さから、
 こじつけの理論や物言いを指して言う場合もある」

盗賊の答え
「風が吹けばあたしが儲かる」
勇者のコメント
「君は桶屋ではなく盗賊のはずだが」

魔王の答え
「風が吹けば女の子のスカートがめくれてすごく嬉しい」
勇者のコメント
「気持ちはわかるが後で職員室に来るように」
 
 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z____________________
 
シリーズ化できる気がしなかった。今は反省している。
バカテスでは工藤愛子が好きです。


313VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/14(月) 22:07:51.87OvkAH0plo (1/1)

>>312
ムッツリーニのライバルの女の子がどストライク


314VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/14(月) 22:08:59.29GVJZKPhAO (2/2)

くすり


315VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/15(火) 02:05:09.31KHLCwLlAO (1/1)

>>312

問題は公募でいいと思うんだ。


316没ネタ ◆6I9SwHc8xc2011/02/16(水) 12:37:08.15q294+nBT0 (1/9)

 
――――――――――
数日後
とある港街
所持金:379G
 
 
勇者「古い資料や文献を読んで、わかったことは以下の2点」

勇者「まず、海底神殿の所在。南海到達不能極にほど近い絶海の領域に位置すると伝えられている」

勇者「一ヶ月に一度、満月の夜に海底から浮上し、月の魔力を充填するというが……」

勇者「乗りこむとすればその時だな。幸い一週間後は満月だ。船を調達し、洋上で時を待つ」

勇者「次に、海王が歴史の表舞台から姿を消すのに前後して、一人の賞金首が消息を絶っている」

勇者「その生涯において500隻の船を襲い、1億Gにも及ぶ財宝を略奪したとされる伝説の海賊」

勇者「王国の犯罪史の中でも五指に入るほどの男だが……何か関係があるかもしれない」

勇者「竜姫、僧侶。私はこれから港で船を調達してくる。君達は宿屋で待っていてくれ」

勇者「……竜姫? 僧侶? どこだ?」

僧侶「ま……待ってくださいぃ……」ヨロヨロ

竜姫「ほれ、遅れておるぞ! もっとシャキッとせぬか」

僧侶「で……でも……重い……です……」

竜姫「重い? 小娘、言うに事欠いてわらわを重いと言いおったか? このっ、このっ」ムニムニ

僧侶「や、やめて……ください……」

勇者「竜姫。あまり僧侶をいじめてやるな」

竜姫「ふん、お前がわらわをおんぶせぬから悪いのじゃ。こ奴が馬になるのも致し方なかろうて」


3171 ◆6I9SwHc8xc2011/02/16(水) 12:37:56.20q294+nBT0 (2/9)

没じゃねぇよwww
 
 
 
 
 
竜姫「魔王ならば、文句を言わずにすぐおんぶしたぞ。まったく、淑女への気遣いがなっておらぬ」

勇者「そうなのか……とにかく、私は船の調達に向かう」

僧侶「あの……そんなにすぐに、船が手に入るんですか……?」

勇者「勇者特権を行使する。書類上は、王宮が民間の船を接収したという形になるだろう」

竜姫「便利なものじゃのう、勇者特権とやらは」

勇者「とはいえ、特権の濫用は民の反発を招く。みだりに使うことはできない」

竜姫「では、わらわ達は宿屋で待っておるからの。さっさと戻ってくるのじゃぞ」

僧侶「気をつけて……」

勇者「ああ、ありがとう。では、また後で」

竜姫「うむ。では行くぞ、僧侶」

ザッザッザッ…

僧侶「……勇者さん……」

竜姫「これ、僧侶」

僧侶「は、はひっ!」

竜姫「前から気になっておったのじゃが、お前は勇者のどこを好きになったのじゃ? 顔か?」

僧侶「え……そ、それは……」///

竜姫「わらわのような高貴な生まれの者には、勇者程度の男など路傍の石に等しくての」

竜姫「真面目なだけで面白くもなんともない、あんな男のどこがいいのか理解しかねておる」


3181 ◆6I9SwHc8xc2011/02/16(水) 12:38:40.12q294+nBT0 (3/9)

僧侶「ゆ……勇者さんは……面白いとか、そういうのじゃなくて……」

僧侶「私は……その……」

僧侶「勇者さんの……優しくて……」

僧侶「責任感が強くて、誠実なところが……」

竜姫「……ふむ。そんなものか」

竜姫「なんじゃ、お前も案外普通の恋をしておるのじゃな。相手が相手じゃから期待してしもうた」

僧侶「別に……そんな面白いことなんか……ないです……」

竜姫「あの勇者に惚れるという時点で相当面白いと思うがの」

僧侶「それに、多分……さっきのじゃ……全然足りない……」

僧侶「ひとつのセンテンスじゃ……とても言いきれないくらい……」

僧侶「……ううん……違う……」

僧侶「人を好きになる理由は……ロジックやメソッドじゃないから……」

僧侶「きっと……どれだけ言葉を並べても……伝わらない……です……」

竜姫「……なかなか言いよるわ」

竜姫「ロジックとメソッドだけで生きておるような男を好いておるくせにのう」

僧侶「誰かを好きになれば……竜姫さんにも……わかります……」

竜姫「そのようなことは有り得ぬよ。わらわが、利に聡く欲深い魔族の女である限り」

竜姫「損得勘定なしに他人を信じたり、好きになったりはせぬ。それが魔族の女の在り様じゃ」


3191 ◆6I9SwHc8xc2011/02/16(水) 12:39:27.45q294+nBT0 (4/9)

僧侶「そう……なんですか……?」

竜姫「そうじゃ。少なくともわらわの知る女達は皆、そうじゃった」

竜姫「わらわの母上でさえその例に漏れぬ。恋が終われば、ただ打算だけの関係じゃったそうな」

竜姫「ま、最後は父上に捨てられたがの。どこで野垂れ死んだのやら……」

僧侶「それって……お互いに愛がなかったって……ことですよね……?」

竜姫「結果的にはそうじゃろうな。わらわが生まれた時にはあったやも知れぬが」

僧侶「なんだか……可哀想です……」

竜姫「人間のつまらぬ倫理観で、わらわを哀れむようなことはするでないぞ。同情など要らぬ」

竜姫「所詮、魔族も人間も、一皮剥けばオスとメスが存在するだけじゃ」

竜姫「世のメスが優秀なオスと結ばれるための戦略を立てていくのは当たり前のことじゃろう?」

竜姫「逆もまた然り……弱肉強食、優勝劣敗、適者生存。それが魔界の普遍的な摂理じゃ」

僧侶「じゃあ、竜姫さんは……お母さんが弱かっただけだって……言うんですか……?」

竜姫「魔界では強くなければ生きていけぬ。ただそれだけのことじゃ」

僧侶「……でも……」

僧侶「でも……それは哀しいことです……」

僧侶「魔族には……愛はないんですか……? 誰かを慈しむ……優しい心は……」

竜姫「さあ、それはわからぬ……しかし、ただひとつ言えるのは」

竜姫「それを見出そうとするような純粋な奴は、必ず絶望することになる」

竜姫「誰もが見ようとしないものを見て、その純粋さゆえに絶望するのじゃ」

竜姫「……そう。たとえば、あのバカのような奴は、特に」


3201 ◆6I9SwHc8xc2011/02/16(水) 12:42:05.72q294+nBT0 (5/9)

 
――――――――――
一週間後
南海・洋上
所持金:511G
 
 
サァァァァ……

ゆうしゃたちは ふねのうえで そのときを まっていた
いまはまだ うみは しずけさを たもっている……

勇者「……」

竜姫「……今宵は満月じゃな。辺りに月の魔力が降り注いでおる」

僧侶「今夜……海底神殿が浮上するんですよね……?」

勇者「そのはずだ。だが、神殿が浮上してからは周辺の魔物の動きが活発になる」

勇者「準備は整えてきたが、油断するな。君達は戦い慣れてはいない」

僧侶「は、はい……」

竜姫「まあ、そのためにお前がおるのじゃ。ちゃんとわらわを守るのじゃぞ?」

勇者「善処しよう」

勇者「……ん。そろそろ時間だな」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

うみのそこから きょだいな けんぞうぶつが ふじょうしてきた!
かいていしんでんが げっこうのもとに そのすがたを あらわした!

僧侶「あれが……海底神殿……?」

竜姫「ほう、なかなかのものじゃな。少々古臭い建築様式じゃが」

勇者「建造されたのは少なくとも1000年前とされている。古くて当然だ」


3211 ◆6I9SwHc8xc2011/02/16(水) 12:43:00.82q294+nBT0 (6/9)

勇者「よし。この期に海底神殿へ接近する」

勇者「僧侶、聖水の散布急げ。竜姫は空中からの攻撃を警戒」

僧侶「は、はい……!」

竜姫「ん、任せておけ」

勇者「船尾の風の魔法石を活性化。機関最大、最大船速だ」

かいていしんでんの ふじょうに ともなって まもののけはいが つよくなってきた……
そうりょは しゅういに せいすいを ふりまいた!
よわいまものは ふねに ちかづけない!

ゆうしゃたちのふねは さいだいせんそくで かいていしんでんへ むけて つきすすむ!

竜姫「空からの攻撃はなさそうじゃぞ!」

僧侶「このまま……行けそうです……」

勇者「ある程度近づいたら、飛翔呪文で神殿側に飛び移る。武器を忘れるな」

僧侶「わかり……ました……」

そうりょは おおきなトランクを かかえた!
トランクには さまざまなおふだが はられている

勇者「……? 賢者、その旅行鞄は君の武器なのか?」

僧侶「これは……お供に志願した時……大臣に持たせられて……」

僧侶「肌身離さず持っているように……って……」

勇者「そうなのか……これは何かのマジックアイテムなのか?」

僧侶「そうみたいです……でも、どんな術式なのかまでは……」
 

  
ズゥゥゥゥゥゥン……!


3221 ◆6I9SwHc8xc2011/02/16(水) 12:43:27.97q294+nBT0 (7/9)

そのとき ふねが おおきくゆさぶられ うごきをとめた!

竜姫「! 何じゃ、何が起きた!?」

せんたいに タコのようなしょくしゅが からみつき しめあげる!
ミシミシと せんたいが きしむおとが ひびきわたる……

勇者「これはクラーケンの触手か……いかん、捕まってしまった」

僧侶「クラーケンって……あの、巨大イカのことですよね……?」

竜姫「魔物除けの聖水をものともせぬとは……どうする、この船はもうダメそうじゃぞ」

勇者「……止むを得ない、ここから神殿へ飛び移ろう」

竜姫「行けるのか?」

勇者「問題ない。代金は少々高くつくがな」

ゆうしゃは じゅもんを となえた!
さんにんのからだが うきあがり くうちゅうへ とびあがった!

僧侶「わ、わ、わ……!」

勇者「しっかり掴まっていてくれ。落ちても拾ってはやれない」

僧侶「だ、大丈夫……です……!」ギュッ

竜姫「む。奴め、わらわ達が脱出したのに気付いたぞ」

勇者「よし……今だ」

ゆうしゃは きんかを いちまい ゆびではじいて かんぱんに なげいれた!
きんかが かんぱんに おちた しゅんかん まばゆいひかりが はなたれ
クラーケンのからみついたふねは だいばくはつを おこした!


3231 ◆6I9SwHc8xc2011/02/16(水) 12:44:04.52q294+nBT0 (8/9)

ドォォォォォォォォン……!

クラーケンは ばくはつに まきこまれ ふねのざんがいと ともに
かいちゅうへ しずんでいった……

竜姫「……出発前に船倉に何か運び込んでおったと思ったら、こういうことかえ」

僧侶「ふ、船を壊しちゃって……大丈夫……なんですか……!?」

勇者「転移呪文があるから王都には戻れる。それに船の持ち主に対しては王国が補償するはずだ」

僧侶「勇者さん……過激です……」

僧侶「でも……かっこいいです……」///

竜姫「……痘痕も靨とはよく言ったもんじゃのう」

勇者「海中からでは、空中にいる我々を追い切れないはずだ。このまま海底神殿へ突入する」

竜姫「うむ……では、仕上げと行こうかの」

りゅうきは じゅもんを となえた
こくうから むすうの ひのたまが あらわれ うみのまものへと さっとうし
だいしょうさまざまな ばくはつが かいめんを ゆらした!

竜姫「時間稼ぎ程度じゃが、これで十分じゃろう」

僧侶「すごい……です……」

竜姫「そうじゃろうそうじゃろう。もっとわらわを褒めるがよい」

勇者「よくやってくれた。行こう」

ゆうしゃたちは スピードをあげ かいていしんでんへと とんでいった!


3241 ◆6I9SwHc8xc2011/02/16(水) 12:48:02.32q294+nBT0 (9/9)

勇者・竜姫・僧侶のパーティは誰が料理とかやってるんだろうと考え、
多分絵的に僧侶なんだろうなと思いつつ、
竜姫ちゃんはどれくらい料理が下手なのかと想像しながら書いてました

魔界的には自分で料理作るより店を襲って料理人を攫ってきた方が手っ取り早いって感じなんだろうな


325VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/16(水) 13:02:05.23JfJu0ylAO (1/1)

一旦終わりなのかな…?



326VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/16(水) 13:14:20.63Ry2mCJqEo (1/1)

賢者、盗賊もよかったけど、僧侶、竜姫もいいっすな


327VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/17(木) 02:29:05.19PU4fqDIf0 (1/1)

乙です。


328VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/17(木) 14:20:06.45iJahJcLLo (1/1)

おつ!


329VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/17(木) 15:14:06.21rjdDUWCAO (1/1)

>>326
欲張りさんめ


3301 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 06:51:50.32oD6pttKL0 (1/14)

 
――――――――――
数十秒後
海底神殿
所持金:483G
 
 

竜姫「なんとか辿り着いたのう……うぅ、ジメジメしてて磯臭いわ」

僧侶「それに……寒い……です……」

勇者「海底神殿が浮上しているのは夜の間だけだ。夜明けと共に再び海中に沈む」

勇者「その前に海王を見つけ出し、場合によっては戦って倒す」

竜姫「そうじゃな。わらわもこんなところに長居はしとうない」

竜姫「……そも、魚というのは、調理されてわらわの前に運ばれてくるものであって」

竜姫「間違ってもわらわに歯向かってよいものではない。そうは思わぬか?」

ザッザッザッザッ

しんでんのおくから ぶそうした ぎょじんが たいきょして おしよせてきた!
マーマンのむれが あらわれた!

僧侶「……! 囲まれ……ました……!」

勇者「海王の部下か」チャキッ

魚人A「噂には聞いている。お前らが勇者一味か……」

魚人B「海王様の居城たるこの海底神殿に乗りこんでくるとは、なんと不敵な」

魚人C「だが海王様には近づけさせんぞ!」

竜姫「ふん。父上ではないが、お前達とわらわでは生命体としての格というものが……」


3311 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 06:52:54.42oD6pttKL0 (2/14)

……♪ ……♪


竜姫「……? なんじゃ……?」

勇者「どうした?」

僧侶「何か……聞こえます……これは、歌……?」

あたりに うつくしいうたごえが ひびいてきた……

ゆうしゃのうでから ちからがぬけ ゆうしゃは かまえたけんを おろしてしまった
けんさきが ゆかにつき かわいたおとを ひびかせた……

勇者(これは……歌、いや、魔力か……?)

勇者(全身の力が萎えていく……立っていることができない……)

僧侶「ゆ……勇者……さん……?」

勇者「?」

僧侶「どうして……泣いてるんですか……?」

勇者「泣いて……?」

ゆうしゃは じぶんのかおを さわってみて はじめて 
じぶんが なみだを ながしているのに きがついた……

勇者「……君達こそ、どうして泣いているんだ」

りゅうきとそうりょも どうように なみだを ながしている
りゆうは わからないが ただただ なみだがあふれてくる……

竜姫「わからぬ……この歌が、わらわ達に何か影響しておるのか……?」グスッ

僧侶「止まらないんです……涙が、勝手に……」ポロポロ


3321 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 06:56:09.08oD6pttKL0 (3/14)

マーマンのむれも みな そのばにひざまずき いのるように なみだを ながしている……
もはや そのばにいる ぜんいんが こうどうふのうに おちいっていた!

魚人A「お、おお……!」

魚人B「海王様……海王様……!」

勇者(精神干渉……! 他者の感情をコントロールする術……!? まさか、これは海王の……)

勇者(しかし、これは……心の奥から湧きあがってくる、理解不能な感覚……)

勇者(そう、敢えて言葉にするなら、この感情は……)

勇者(……今は先に進むことを考えろ。惑わされるな……!)

勇者「竜姫、僧侶……マーマン達が行動不能に陥っている今が好機だ。今のうちに先に進もう」

竜姫「じ、じゃが……身体が言うことを聞かんのじゃ。立って歩くことさえ……」

僧侶「すごく強力な……精神干渉です……耳をふさいでも、直接心に流れ込んできます……」

勇者「なら……」

ゆうしゃは じゅもんを となえた!
まほうのスパークが ゆうしゃのからだに すいこまれていく!

勇者「ぐっ……あぁぁぁぁ!」

僧侶「ゆ……勇者さん……!」

ゆうしゃは めをみひらき くるしげに あえいだ
ゆうしゃに かけられていた せいしんかんしょうが いちじてきに よわまった!

竜姫「微弱な雷の魔法で痛覚神経を直接刺激したのか……無茶をしよるわ」

勇者「だが……これで私だけでも動けるようになった……君達を連れていける」

僧侶「勇者さん……治療を……!」

勇者「いや、必要ない。この痛みがなければ、また精神干渉を受けてしまう」

勇者「……先へ進もう」


3331 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 06:57:11.91oD6pttKL0 (4/14)

ゆうしゃは りゅうきとそうりょに かたをかしてやり
うたごえの ひびいてくる ほうこうを めざし ゆっくりと すすんでいった……

竜姫「……歌声に近づけば近づくほど、身体が重くなってきよるわ」

僧侶「あんな……広範囲の……精神干渉なんて……」

勇者「魔王軍四大幹部の名は伊達ではないということだ。私も先程の余韻で、今なお目頭が熱い」

勇者「痛みでなんとか誤魔化しているが……とてもではないが戦える状態ではない」

竜姫「それは向こうも同じじゃろうが……しかし、正直面食らったわ。敵も味方もお構いなしとは」

僧侶「でも……なんだか、おかしいです……」

僧侶「海王は……セイレーン……歌声で人を惑わす魔物なんですよね……」

僧侶「そういう魔物の伝承は……各地にありますけど……この歌は……」

竜姫「……お前もか、僧侶。わらわもおかしいと感じておったのじゃが」

僧侶「……この歌を聞いて……湧きあがってくる気持ちは……」

??「……そこまでだッ!」

勇者「!」

ゆうしゃたちの まえに ひとりのマーマンが たちふさがった!
マーマンの あしからは ちが ながれている……
ゆうしゃどうよう きずのいたみで しょうきを たもっているようだ……

魚人A「ここから先は通さん……! 海王様には、指一本触れさせんぞ……!」


3341 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 06:58:25.63oD6pttKL0 (5/14)

勇者「よせ。お互い、戦える状態ではないことはわかるはずだ」

魚人A「黙れッ! さっさとこの神殿から去れ……!」

勇者「何故そうまでして、私達を海王から遠ざけようとする。何か理由があるのか?」

魚人A「敵と話す舌など持たぬ! ここから先へは絶対に行かせんぞ!」

勇者「……!」

僧侶「待って……ください……!」

そうりょは なみだをとめるすべも ないまま ふるえるあしで いっぽまえへ すすみでた……

魚人A「なんだ、小娘。貴様の出る幕では……」

僧侶「……涙が、出るほど……」

僧侶「涙が出るほど……優しい気持ちになったんです……」

魚人A「!」

僧侶「この歌を聴いていると……誰かを想う気持ちが……切ないくらいに伝わってくるんです……」

僧侶「それは……海王の気持ちが、歌声に乗って……」

僧侶「私達の心に……響いているから……?」

魚人「だ、黙らんかッ!」


3351 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 06:58:54.75oD6pttKL0 (6/14)

勇者「……信用できないかもしれないが、私達は必ずしも戦いを望むわけではない」

魚人A「なんだと?」

勇者「獣王は斃れ、竜王は魔王に対し反旗を翻し、魔界の情勢は混迷を極めている」

勇者「機械王は魔王サイドについているが、残る海王がどう動くか見極めたかった」

勇者「海王に会わせてもらいたい。その上で、私達は判断を下さなければならない」

魚人A「……海王様が竜王の側につくと言ったら?」

勇者「それも含めて、現状では判断材料が足りない」

魚人A「……」

マーマンは しばらく まよっていたが ぶきをおろし ゆうしゃたちに せをむけた……

魚人A「来い。海王様のお部屋は向こうだ」

竜姫「ほう、案内してくれるのかえ? 感心な心がけじゃな」

魚人A「……さっさと来い。海王様のお姿を見れば、お前達も……」

僧侶「……?」


3361 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 06:59:50.23oD6pttKL0 (7/14)

 
――――――――――
数分後
海底神殿・海王の間
所持金:461G

 
魚人A「……海王様はこの部屋にいらっしゃる」

勇者「何故君達が、私達を海王に会わせたくなかったのか、説明を願いたいが」

魚人A「見ればわかる。海王様の歌声を聴いたのなら、嫌でもな……」

僧侶「それって……どういうこと……?」

マーマンは とびらに てをかけ ゆっくりと あけはなった
とびらの すきまから れいきが もれだしてくる……

僧侶「……!」

勇者「これは……」

竜姫「……なるほど。こういうことかえ」



とびらが あけはなたれ みえたものは
れいきを ふりまきながら へやをうめつくす きょだいな こおりのはしら だった……

こおりのなかでは うつくしい まぞくのじょせいと やせほそった しょろうのおとこが
よりそいあいながら ねむっている……

かいおうのまりょくで つくられたらしい こおりから うたごえが にじみでていた……


3371 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 07:00:44.89oD6pttKL0 (8/14)

魚人A「……数十年前、一人の海賊がこの海底神殿に乗り込んできた」

魚人A「人間の世ではなかなか有名人だったらしいな。お前達も知っているだろう」

勇者「彼が、あの伝説の海賊だというのか?」

僧侶「でも……服装や、身体的特徴は……伝えられている情報と一致します……」

魚人A「欲の権化のような男だ。この世の全てを欲しがっていたよ。それこそ、際限なく」

竜姫「人間の船を襲うだけに飽き足らず、魔王軍の拠点からまでも略奪を行おうとしたのじゃな」

勇者「聞きしに勝る強欲さだな」

竜姫「呆れた話じゃ。海王と言えば水棲生物の王じゃぞ? それを相手取るとは……」

魚人A「子供がそのまま大きくなったような男だった。欲深く、狡猾で、とても愚かな男だ」

魚人A「この神殿の財宝を求めて乗り込んできた海賊を、海王様はいとも容易く追い払われた」

魚人A「しかし、それが奴の欲望に火をつけたのか……奴は幾度となく挑んできた」

魚人A「何度撃退されても、懲りることなく、手を変え品を変え……」

魚人A「そして奴が来るたび、海王様は戦った」

魚人A「我々も不思議だった。何故、海王様はこの無礼千万な男を殺してしまわないのかと」

魚人A「それを聞いたら、海王様はどのように答えられたと思う?」

魚人A「殺すことはいつでもできた。今までも、幾度もその機会はあった」

魚人A「……だが、海賊が来るのが、いつの間にか楽しみになっていたのだと……」

魚人A「お前の全てを奪ってやると言われて、何故だか胸が高鳴るのを感じたと、仰ったのだ」


3381 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 07:01:12.69oD6pttKL0 (9/14)

僧侶「海王が……海賊に、恋を……?」

魚人A「第三者が見れば、とても愚かなことだ。あのような不逞の輩に心奪われてしまうなど」

魚人A「……そして、いくらかの年月が過ぎ、海賊が若さを失いつつあった時」

魚人A「二人の戦いについに決着がついたのだ……海王様の敗北という形で」

僧侶「それじゃあ……海王は……」

竜姫「海賊のものになったと?」

魚人A「ああ。だが、もう二人の間では、そんな約束はどうでもよかったのだろう」

魚人A「むしろ海王様は海賊のものになったという事実を求めてさえいた」

魚人A「次の日から海賊が海底神殿を我が物顔で闊歩するようになったが……」

魚人A「奴の横柄な態度など、海王様の心底から満ち足りたお顔に比べれば、些細なことだったよ」

竜姫「……理解できぬな。自分を跪かせるのにそれほどの時間を要する男など、どこが良いのやら」

僧侶「それでいいと……思います……」

竜姫「む?」

僧侶「……人を好きになるのは……ロジックやメソッドじゃないから……」

僧侶「きっと……彼女には彼女なりの理由が……あったから……」

僧侶「それを理解できなくても……ううん、理解する必要さえないのかも……」


3391 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 07:02:35.80oD6pttKL0 (10/14)

魚人A「その後も、海賊は相変わらず強欲であったし、海王様はそんな海賊を深く愛した」

魚人A「しかし、魔族と人間の生命の尺度はあまりにも違いすぎた」

魚人A「瞬く間に海賊は老いさらばえ、病を患い、死す時が来てしまった」

勇者「……」

魚人A「愛する者が先に死に逝く時……その時どうするかという問いの答えを我々は持たなかった」

魚人A「孤独と喪失に耐えかねた海王様の選んだ道は……共に眠ることだった」

魚人A「自身の魔力で作り上げた永久に溶けない氷の中で、二人で眠り続けることだった」

魚人A「そして時折、先程のように氷の中から歌声が染み出してくる。まるで夢を見ているように」

勇者「……では、少なくとも30年間、海王はこの氷の中にいるというのか」

魚人A「そうだ。正確な年数など誰も数えてはいないが」

竜姫「誰も、海王にとどめを刺して海王軍を乗っ取ろうとせぬのも頷ける」

竜姫「皆、あの歌声に絆されたのじゃな」

僧侶「……胸に湧きあがってくる……涙が出るほどの優しい気持ちに……」

ギュッ

勇者「……僧侶。何故、私の外套の裾を掴むんだ」


3401 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 07:03:07.68oD6pttKL0 (11/14)

僧侶「……勇者さん……」

僧侶「帰りましょう……? 海王に……危険は……ないです……」

僧侶「そっとしておいて……あげましょう……?」

竜姫「……どうするんじゃ、勇者?」

勇者「……」

勇者「実を言うと、私はこの場で海王にとどめを刺すつもりでいた」

魚人A「!」

勇者「理由はふたつある。第一に、海賊にかけられた賞金がまだ有効であるということ」

勇者「海賊は死亡が確認されておらず行方不明扱いであるため、王宮は賞金を取り下げていない」

勇者「この氷塊を破壊し、海賊の遺体を王都に移送すれば、1億Gの賞金を受け取ることができる」

勇者「竜王の力は未知数だ。彼に対抗するためには潤沢な資金が必要になってくるだろう」

勇者「そして第二に、海王自身はまだ生命活動を停止していないということ」

勇者「海王が死んでいるなら、彼女の魔力で作られた氷は溶けるし、歌声も滲んでこないはず」

勇者「つまり、依然として海王は健在であり、その脅威は去ってはいないということになる」

勇者「以上の点から、私は海王にとどめを刺すべきだと考えた」

魚人A「貴様……!」


3411 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 07:04:17.33oD6pttKL0 (12/14)

勇者「……しかし、君の話を聞いて、考えが変わった。海王を倒す必要はない」

勇者「私達は海底神殿を去る。そして、おそらくは二度とここを訪れることもない」

僧侶「勇者さん……!」

竜姫「……何故じゃ? まさか、お前まで情に絆されたわけではあるまい」

勇者「かもしれない。だが」

竜姫「だが?」

ゆうしゃは マーマンのほうに むきなおった!

勇者「……君は言ったな。海王の歌声を聴いたなら、嫌でも理解すると」

魚人A「……ああ」

勇者「この歌声と、君達の忠誠心が、私の変節の理由になった。ただそれだけのことだ」

勇者「確かに、第三者が見ればとても愚かなことだ。だが君達はそれを認め、守り続けた」

勇者「この数十年、海王軍が表舞台に立つこともなく、ただ在り続けたことが何よりの証明だ」

勇者「だから、私もロジックではなく、自分の素直な感情に従うことにする」

魚人A「そうか……」

魚人A「……礼を言うぞ」

マーマンは そっと みずかきのついた てを さしだした
ゆうしゃは そのてを にぎりかえし ふたりは あくしゅをかわした……


3421 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 07:05:22.87oD6pttKL0 (13/14)

 
――――――――――
翌朝
とある港街・食堂
所持金:357G
 
 
竜姫「……結局、南海くんだりまで行ったのに、大した収穫もなかったのう」

勇者「いや。当面の間、海王軍の存在は無視していいとわかった。十分すぎる成果だ」

僧侶「でも……可哀想でした……」

竜姫「海王のことかえ?」

僧侶「はい……」

僧侶「きっと……大好きな人に先立たれて……」

僧侶「心が……壊れてしまったんです……それが、たったひとつのものだから……」

僧侶「もし、同じようになったら……私も、きっと……」

竜姫「……やはり、わらわには理解できぬのう。打算でも自己愛でもない恋というのは」

勇者「あるいは慈しむ母性、慈愛だったのかもしれない。どちらにせよ、私には専門外の分野だが」

勇者(……賢者や盗賊なら、どのように評しただろうか)

勇者(……彼女達は、今どこにいるのか……)
 
 
 
  /└────────┬┐
 <     To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘




3431 ◆6I9SwHc8xc2011/02/19(土) 07:07:28.90oD6pttKL0 (14/14)

次回は魔王サイドのお話になります。
勇者サイドのパーティはメンバーの都合上あまり明るい感じではないので、
そのぶん魔王・賢者・盗賊には頑張ってもらいましょう。


344VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/19(土) 07:12:00.25z/mqUKxJo (1/1)

>>343 乙!


345VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/19(土) 07:52:04.19Z2k0eHF6o (1/1)

乙です


346VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/19(土) 08:53:25.91Yl5GdYbBo (1/1)




347VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/19(土) 12:41:14.38DZOyjPOT0 (1/1)

乙です。


348VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/19(土) 13:40:31.57put5D5tro (1/1)

おつ!


349VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/19(土) 15:08:31.837iNqedQIo (1/1)

乙!この勇者にもこんな感情はあったんだなぁ…


3501 ◆6I9SwHc8xc2011/02/21(月) 18:30:48.75ff8CaeLE0 (1/1)

何をしているセイバー! アックス! ボルテッカだ!
バカ! わからんのか!? こいつはただの休みじゃない! 春休みだ!
ボルテッカ以外で倒せるものか!

実家へ帰省するので続き投下が少々遅れそうです。
正直申し訳ない。


351VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/21(月) 19:14:39.01LqN1EiFKo (1/1)

続きを書く意志があり、かつこうしてこまめに連絡をしてくれるから正直問題ない。むしろそれだけでありがたい


352VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/21(月) 22:26:25.97SwQBlHLY0 (1/1)

ピカチュウ「ボルテッカァァァーッ!!」


353VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/21(月) 22:39:14.50JY1dt+apo (1/1)

>>350 近況報告乙
春休み……。そんな時期なんだな……
逃亡じゃなければ問題ない


354VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/22(火) 00:09:05.61lV9yxmAIO (1/1)

(´・ω・`) テッカマンブレードか

かまわんよ


3551 ◆6I9SwHc8xc2011/02/25(金) 23:20:02.77T5897/Iy0 (1/11)

 
――――――――――
現在
とある村・酒場
 
 
魔王「最近さ。よく、自分の人生について考えるんだよ」

盗賊「人生……? またアンタらしくない話題だね」

魔王「……もし、兄貴達がくたばってなかったら、オレはただの第三王子のままだったはずなんだ」

魔王「継承権の順番は長男からだろ? だから、三男坊のオレは魔王の座を継ぐこともなかった」

魔王「ガキの頃から気楽だったよ。特に誰からも大きな期待をされてないのはわかってたし」

盗賊「そうだねぇ。アンタ、弱いし」

魔王「そうそう。兄貴達になんて勝てるわけなかったし、獣王子だってオレより強かったよ」

魔王「でも家柄だけは最高級。衣食住に不自由はしないし、女の子にもモテモテ」

魔王「いやぁ、オレのモテモテくんっぷりを賢者ちゃんにも見せてやりたいよ」

盗賊「賢者はアンタの話を信じてないからね。モテるっていうのも含めて」

魔王「嫌われてんのかなぁ、やっぱり」

盗賊「かもね」

魔王「こなんだなんか、あんなヒョロくて短い脚から腰の入ったいいローをもらったんだよな」

盗賊「それはアンタが『胸は揉めば大きくなるって聞いたぜ!』とか口走ったからだよ」

魔王「カッとなってやった。今は反省している」


3561 ◆6I9SwHc8xc2011/02/25(金) 23:21:33.77T5897/Iy0 (2/11)

魔王「……本当なら今頃、どこか田舎の領地でも任されて、悠々自適の生活だったはずなんだ」

魔王「それで、地元の名家のお嬢様と結婚したりしてさ……すごい美人で、優しい子だよ」

魔王「ひょっとしたらハーレムを作ったかも……いや、ひょっとしたらそっちの方が魅力的……?」

盗賊「胸の大きな女ばかりで?」

魔王「そうそう。目がパッチリしてて、ボインボインの、セクシーな女の子ばっかりのハーレム」

盗賊「そんなの、魔王でも田舎の領主でも、どっちでだって作れるんじゃないのかい?」

魔王「あ、そうか……オレとしたことが、なんで魔王城にいる時に作っておかなかったんだろ?」

魔王「いや、待てよ。ハーレムは今からでも遅くないはずだ。とりあえず盗賊ちゃんがいるし!」

盗賊「とりあえず呼ばわりは正直いい気分じゃないね」

魔王「オレの愛人第一号は盗賊ちゃん! 決定! 手始めにそのボインボインを揉みしだいて」

ゴンッ

盗賊「……頭冷やしなよ。アンタ、相当酔ってるみたいだし」

魔王「」


3571 ◆6I9SwHc8xc2011/02/25(金) 23:22:26.19T5897/Iy0 (3/11)

盗賊「ったく。アンタから飲みに誘っといてそれかい? しょうがない奴だね」

魔王「……まあ、ちょっとそういう気分だったってだけでさ。悪いね」

盗賊「そういえば、機械王はどうなんだい? また動けるようになるのかい?」

魔王「あー……賢者ちゃんが頑張ってくれてるけど、まだダメみたいなんだよなぁ」

魔王「賢者ちゃんは今どうしてる? まだ修理してるのかな」

盗賊「いや、宿で休んでるよ。子供はもう寝る時間だからね」

魔王「賢者ちゃん、子供扱いしたら怒るぜ?」

盗賊「いいんだよ。あいつは子供で、あたしらは大人なんだからさ」

魔王「……ところで、これからどうしようかなぁ」

盗賊「そうだね。勇者達と別方向に逃げて、竜王軍の追手も撒いたのはいいけど」

魔王「追手との戦闘で損傷して、機械王が飛べなくなったのは痛いよなぁ」

魔王「かなり遠くまで逃げてきちゃったから、賢者ちゃんの転移呪文も範囲外なんだろ?」

盗賊「なんとか王都に戻れればいいんだけどねぇ……そしたら、勇者とも合流できるだろうし」

魔王「そうそう。オレも竜姫ちゃんのボインボインが懐かしいよ」

魔王「まあ、異国の地で行きずりの恋ってのも悪かないけどさ……」


3581 ◆6I9SwHc8xc2011/02/25(金) 23:23:34.21T5897/Iy0 (4/11)

盗賊「この半月あちこちでナンパして回って、一度だって成功したかい?」

魔王「そりゃあアレだよ、スランプってやつ?」

盗賊「あたしはもう引退を考えてもいいレベルだと思うよ」

魔王「いいや、引退なんてしないよ。魔王は永久に破滅です!」

盗賊「そんなメイクミラクル誰も望んでないけどね」

魔王「……それはともかく、修理に使う魔法石が足りないんだよな? どこかで調達しないと」

盗賊「火と地の魔法石が必要らしいんだけど……この辺りには魔法石の鉱脈がないんだ」

魔王「採掘が行われてないなら店にも出回らないし、それこそ王都にでも行かないとないよなぁ」

魔王「う~ん……」

盗賊「……いや。たったひとつだけ心当たりがあったよ。あそこならあるかも」

魔王「え、マジ!? こんな辺境で魔法石を手に入れる当てなんてあるの?」

盗賊「正直言うと、あんまり当てにしたくはなかったけどね」

魔王「で、その心当たりってのはどこなのさ?」

盗賊「……あたしの故郷だよ」


3591 ◆6I9SwHc8xc2011/02/25(金) 23:24:48.59T5897/Iy0 (5/11)

 
――――――――――
翌朝
村はずれの森
 
 
魔王「おはよう、賢者ちゃん! 今日も朝早くから精が出るね」

賢者「おはようございます。ていうか誰のせいだと思ってんですか」

盗賊「ていうかアンタは普通に寝坊だよ。今何時だと思ってんだい?」

機械王「現在の時刻が10:41である確率、99.87%」

魔王「マジで? 昨日呑みすぎちゃったかな」

盗賊「ったく……で、賢者。機械王の修理に魔法石をが必要なんだろ? 今から探しに行くよ」

賢者「当てがあるんですか?」

盗賊「ああ。南東に砂漠があるのは知ってるだろ? そこにあたしの故郷の村がある」

盗賊「もしかしたら、そこにあるかも知れないってね」

賢者「砂漠……盗賊さんの故郷ですか」

賢者(……そういえば盗賊さんも、自分の故郷のこととか話したことないなぁ)

魔王「実は盗賊ちゃんってば、ご両親にオレを紹介したいなんて言い出し……痛ッ」ゴンッ

盗賊「バーカ……昨日の晩に魔王と相談して決めたのさ。この辺だとそこしか心当たりがなくてね」


3601 ◆6I9SwHc8xc2011/02/25(金) 23:26:34.27T5897/Iy0 (6/11)

賢者「……なんでこのチャランポランに相談してボクに相談しないんですか」

魔王「賢者ちゃんが宿屋で寝てたからじゃん」

賢者「つまりボクが寝てる間に二人でこっそり相談したってことじゃないですか」

魔王「あれ、もしかしてオレと盗賊ちゃんが仲良くなっちゃうのが悔しかったり?」

賢者「断固としてNOです!」

盗賊「そういうのでもないんだけどね。ま、成り行きってやつだよ」

魔王「ごめんごめん。今度から酒場で飲む時は賢者ちゃんも誘うから。オトナの仲間入りだね」

賢者「そういうのはお断りします! ……それにしても」

魔王「?」

賢者「この機械王ってなんなんですか? 物質系モンスターの王って聞いてましたけど」

賢者「構造に不可解な点が多いし、ブラックボックスだらけだし、ハッキリ言ってオーパーツです」

賢者「表面の経年劣化から見ても相当古いものですけど、いつ頃建造されたんですか?」

魔王「う~ん……確か、そいつが造られたのは初代魔王の時代だから、ざっと5000年は前だよな」

盗賊「マジかい? そんな昔のものが今も動いてるなんて、すごいじゃないか」


3611 ◆6I9SwHc8xc2011/02/25(金) 23:27:52.24T5897/Iy0 (7/11)

魔王「親父や兄貴達は、特にメンテナンスとかしてなかったけど……オレも知らないし」

賢者「魔界の技術は想像以上です……直せるとわかっただけラッキーですよ?」

魔王「ふ~ん……ま、直るんならそれでいいよ。今大事なのはそれだしね」

盗賊「そうだね。どうせあたしらには小難しいことはわかんないんだし」

賢者「ボク、なんで勇者さんと離れ離れになっちゃったんだろ……」

魔王「それより、砂漠に行くなら色々用意しなくちゃいけないんだろ? 道具屋に行こうぜ」

盗賊「お生憎様。アンタが寝てる間にもう揃えておいたよ」

魔王「えっ、マジ? なんだよ、デートできるチャンスだと思ったのになぁ」

賢者「せっかくなので、そんなこと言ってるから起こしてもらえないんだって理解してくださいね」

魔王「またまたぁ。オレはいつでも誰でもウェルカムなんだから、遠慮するこたぁないって」

賢者「遠慮じゃなくて、本心から嫌なんです!」

魔王「じゃあ、そのうち振り向かせてみせるよ。時間はたっぷりあるからさ」キラッ☆

賢者「うわっ、超ウザいです……勇者さんにしろ魔王さんにしろ、どうしてこうなんでしょう」

盗賊「ま、いいじゃないか。勇者にしろ魔王にしろ、楽しい奴には違いないんだからさ」


3621 ◆6I9SwHc8xc2011/02/25(金) 23:28:53.17T5897/Iy0 (8/11)

 
――――――――――
翌日
砂漠・地下水路
 
 
魔王「ヒューッ! 涼しいなぁ。砂漠の地下にこんなとこがあったなんて知らなかったよ」

盗賊「この辺りの街や村は、この地下水路で水源を共有してるのさ。安全な通り道にもなるしね」

賢者「地下に水路を通せば、蒸発も防げますしね。なかなか理に適ってます」

盗賊「しばらく行けば、あたしの故郷の村の井戸に着く。そこから出られるよ」

賢者「でも、機械王を水路の入り口近くに置いてきちゃいましたけど……大丈夫なんですか?」

魔王「大丈夫大丈夫。あいつはオレが呼んだらすぐ飛んでくるから」

盗賊「どっちみち水路の中じゃ呼べないけどね。この水路が崩れちまったらこの一帯は全滅だよ」

魔王「でも、こんなところで敵に出くわすことなんかないんじゃないの?」

魔王「魔王軍にしろ竜王軍にしろ、こんな砂漠で何かやることがあるとは思えないしね」

賢者「水路の中を棲み処にしてるモンスターくらいはいるでしょうけど……」

魔王「大丈夫だって。そんなのオレがカッコよくやっつけて……」

盗賊「……静かに」

魔王「えっ?」

パシャッ……

パシャッ……

盗賊「……何かいるよ」


3631 ◆6I9SwHc8xc2011/02/25(金) 23:30:16.75T5897/Iy0 (9/11)

賢者「モンスターでしょうか?」

盗賊「暗くてよくわからないけど……何かいるのは間違いない。注意しな」

魔王「マジで? 軽々しくフラグを立てるもんじゃないね、こりゃ」

盗賊「バカ言ってないで、いつでも戦えるように準備を……」

盗賊「……ッ!?」

とうぞくは はいごに なにものかのけはいを かんじた!
とうぞくは ふりむきざまに ナイフを とうてきした!

ギィンッ!

なげつけたナイフは 弾かれ すいろのかべに あたって すいちゅうにぼっした……

盗賊「弾かれた!?」

魔王「な、なに? 何かいるの?」

賢者「敵……!?」

???「……」

くらやみのなかに なにかが ひそんでいる!


3641 ◆6I9SwHc8xc2011/02/25(金) 23:31:03.12T5897/Iy0 (10/11)

盗賊「賢者、明りを! こう暗くちゃ何も見えない!」

賢者「は、はい!」

けんじゃは じゅもんを となえた
こぶしだいの ひのたまが ちゅうにうかびあがった!
まほうのかがりびが あたりを てらしだす!

???「……ッ!?」

くらやみにひそむものは あかりに おどろいて にげだした!

魔王「……逃げた?」

賢者「みたいですね。ボク達を狙ってきたんでしょうか……?」

魔王「クソッ。あんな不意打ちみたいな感じじゃなけりゃ、オレの必殺技を喰らわしてやったのに」

賢者「ボクとしては、魔王さんが戦いの役に立ったか甚だ疑問です」

盗賊「魔王軍の刺客……いや、そういう感じでもなかったね」

魔王「どっちにしろ、ここに得体の知れない妙な奴がいるってのには違いないよな」

盗賊「……つくづく、厄介事の種ってのは尽きないねぇ」

ちかすいろは ふたたび せいじゃくにつつまれ みずのおとだけが ひびいていた……


3651 ◆6I9SwHc8xc2011/02/25(金) 23:33:44.54T5897/Iy0 (11/11)

賢者は魔王をウザがり、盗賊は面白い奴だと一歩引いた感じで接しています。
魔王は割とお構いなしに馴れ馴れしく節操無く接しています。

若干スランプ気味だけど相変わらず台詞がスラスラ出てくるのは魔王の人徳かも。


366VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/25(金) 23:54:25.98Qt0p5luDo (1/1)

>>365 乙!



367VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/26(土) 05:14:59.115wJ5Yx3IO (1/1)

なんだか魔王がインポッシブルのトーリに見えて来たぜ……!


368VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/26(土) 23:58:44.391HgNJd6xo (1/1)

おつ!


369VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/28(月) 06:08:22.10dvlZyLiq0 (1/1)

がんばって書いてくれ


3701 ◆6I9SwHc8xc2011/03/01(火) 23:18:30.586eBqO0mz0 (1/10)

 
――――――――――
数十分後
砂漠の村・井戸
 
 
魔王「ん~! 太陽が眩しいぜ」

盗賊「久しぶりだよ、この砂漠の暑さ。しばらく帰ってなかったからねぇ」

賢者「ていうかこれ、暑いってレベルじゃないですよ……」

盗賊「暑いっていうから余計に暑くなるのさ。さ、早いとこ用事を済ませちまうよ」

魔王「……でもさ、こんな田舎の村に魔法石なんてあるの?」

盗賊「あるかどうかは五分五分。ま、確認してみないことにはわかんないさ」

賢者「あっ、待ってくださいよぉ。どこ行くんですか?」

盗賊「バザーだよ」

賢者「バザー?」

盗賊「そ。この村では、年中バザーが開かれててね」

盗賊「そこでは、大陸のあちこちから集められた品物が売られてるのさ」

魔王「つまり、そのバザーでオレ達の探してる魔法石もあるかもしれない?」

盗賊「そういうこと。じゃ、さっさと行くよ。先に買われちまうのも癪だからね」


3711 ◆6I9SwHc8xc2011/03/01(火) 23:19:11.256eBqO0mz0 (2/10)

 
――――――――――
数分後
砂漠の村・バザー
 
 
ざわ・・・ざわ・・・

<ヤスイヨーホリダシモノダヨー

<オニイサンチョットミテッテヨー

賢者「わぁ……すごい! すごいですよ! すごい品揃えです!」

魔王「確かに……っておい親父、これって永久銀のアクセサリーか?」

賢者「永久銀!? そんな希少な金属、王都でもなかなかお目にかかれないのに」

店主「おうよ! 他にもほれ、決して錆びつかない魔法合金のノコギリとか」

店主「そうそう、これなんてどうだい? 相手の戦闘力を測れる魔法の眼鏡」

賢者「いや、それはいらないです」

魔王「すげぇな……マジで大陸中のありとあらゆるものが集まってるよ」

賢者「どんなルートで集めたらここまで……よほどの豪商がいるんでしょうか」

盗賊「そんな奴いないよ。なんたって、ここで売られてるのは全部盗品だからね」

賢者「と……盗品? 盗んできたものなんですか!?」

盗賊「そ。ここで物売ってる連中は、みんな商人であり盗賊でもあるのさ」


3721 ◆6I9SwHc8xc2011/03/01(火) 23:20:26.706eBqO0mz0 (3/10)

盗賊「価値のある物には、自然と相応の値段がつく。犯した危険の分だけ金になる」

盗賊「だから皆、騎士団に捕まるリスクを負ってでも珍しい品物を仕入れてくるのさ」

魔王「正規のルートじゃ到底手に入らないようなものも?」

盗賊「当然。その証拠に、永久銀の装飾品なんかこんな辺鄙なところに出回るわけないだろ?」

賢者「でもそんなの、王宮や騎士団が黙ってません。いずれ摘発されますよ」

盗賊「そうなったら、尻尾巻いて逃げ出して、またどこか別の場所で始めるだけさ」

盗賊「あたしが知ってるだけでもこの村は5回は移動してるよ。砂漠の隅から隅、端から端をね」

盗賊「砂漠の地下には地下水路が張り巡らされてるし、隠れる場所にも困らないからね」

魔王「逞しいなぁ……で、盗賊ちゃんも盗品商売で一山当てるつもりだったの?」

盗賊「いや、あたしは都会暮らしに憧れただけ。王都の住み心地はなかなかだったよ」

盗賊「ヘマやってパクられちまったけど、それで勇者にスカウトされるんだから人生わかんないね」

賢者「……なんだかカルチャーショックです……」

魔王「まぁまぁ、賢者ちゃん。とりあえずは目当てのものを買っちまおうぜ」

賢者「そうですね……魔法石の相場っていくらくらいでしたっけ」ゴソゴソ

賢者「……ん? あ、あれっ?」ゴソゴソ


3731 ◆6I9SwHc8xc2011/03/01(火) 23:21:17.646eBqO0mz0 (4/10)

魔王「どしたの、賢者ちゃん」

賢者「さ……財布がないです!」

魔王「えっ!? マ、マジ!?」

盗賊「……あー。スられちまったね、そりゃ」

賢者「い、いつの間に!? ちゃんと外套の内ポケットに入れておいたのに」

盗賊「言ったろ? ここにいる連中は商人であり盗賊でもある。周りは全員スリ師と思っていいよ」

賢者「そういうことは最初に言っておいてください!」

盗賊「ごめんよ、事前に教えとくべきだった……ていうか財布はあたしが持つべきだったね」

賢者「……いえ、ボクの不注意です。ごめんなさい……」ショボーン……

魔王「大丈夫だって、賢者ちゃん。オレは気にしないよ。金はまた稼げばいいんだ」

賢者「でも……」

盗賊「魔王の言う通りだよ。そう落ち込むこたぁないさ。稼ぐ当てはあるからね」

魔王「おっ、流石は盗賊ちゃん。どこか雇ってくれるとこでもあんの?」

盗賊「……ま、着いて来なよ」


3741 ◆6I9SwHc8xc2011/03/01(火) 23:23:16.046eBqO0mz0 (5/10)

 
――――――――――
数分後
砂漠の村・村長の屋敷
 
 
盗賊「着いたよ。ここがこの村の村長の家さ」

賢者「結構立派なお屋敷ですけど、ここが稼ぐ当てなんですか……?」

魔王「なに、執事かメイドでもやれっての? オレは仕えるより仕えられる方がいいのになぁ」

盗賊「バーカ、そういうのじゃないよ。第一ここ、あたしんちだよ?」

賢者「へぇ、盗賊さんの……」

賢者「……へ?」

盗賊「ほら、入った入った……おーい、誰かいるかい?」

トタトタトタトタ……

メイド「盗賊! 帰ってたのね?」

盗賊「ああ、今しがたね」

メイド「もう、突然王都に行くって言ってから連絡も寄越さないで……」

盗賊「ごめんごめん、悪かったよ。ちょっと色々忙しくてね」

メイド「執事もコックも心配してたのよ? そちらの方は……盗賊の子分?」

盗賊「旅の道連れだよ。それで、親父は?」

メイド「旦那さんは書斎にいるわ。呼ぶ?」

盗賊「頼むよ。ちょいと親父に頼んなきゃならなくなってさ」

メイド「じゃあそこの応接間で待ってて頂戴。すぐ呼んでくるからね」

タッタッタッタッ……


3751 ◆6I9SwHc8xc2011/03/01(火) 23:24:19.316eBqO0mz0 (6/10)

魔王「さっきの子、可愛いじゃんか。盗賊ちゃんと同い年くらい?」

盗賊「あたしのひとつ下。妹みたいなもんだよ」

賢者「妹みたいってことは、小さな頃から奉公していたんですか?」

盗賊「そうだよ。ウチで働いてる人間は、みんなあたしの親父が盗んできた人間だからね」

賢者「盗んで?」

盗賊「どっか余所の街の金持ちの家から、剣奴や農奴の子供を盗んできて自分の家で働かせるのさ」

魔王「……そりゃあまた、とんでもないなぁ。奴隷を盗むって」

盗賊「奴隷がくたばることなんかよくあるし、一人二人いなくなっても誰も気にしないからね」

盗賊「安全に移送する手筈さえ整えれば楽な仕事だって親父は言ってたよ」

賢者「でも、それなら普通に奴隷市場で買えばいいのに……」

盗賊「あたしもそれが気になってさ、親父に聞いてみたことがあるんだ」

盗賊「そしたらなんて答えたと思う? 『俺は盗みのスリルを楽しんでるんだ』だってさ」

賢者「うわぁ、予想以上にダメな人の答えです」

盗賊「それから『こいつはスリリングだよ! 女には教えたくない快感だ』とか」

魔王「親父さん、そのうち車輪のついた戦艦に特攻するんじゃないか?」



3761 ◆6I9SwHc8xc2011/03/01(火) 23:24:58.566eBqO0mz0 (7/10)

盗賊「極めつけに『お前が寂しくないようにガキの奴隷を盗んできたんだ。友達にしろ』だって」

盗賊「余計な御世話だってんだよ。どこの世界に友達を余所から盗んでくる親がいるんだか……」

魔王「えらいエキセントリックな親父さんだなぁ」

賢者「盗賊の鑑みたいな人ですね……」

ガチャッ

盗賊「!」

メイド「旦那さん、こちらです」

村長「おお……よう、バカ娘。帰ってきてたのか」

盗賊「久しぶりだね、クソ親父」

村長「……おい、なんだ? 開口一番親に向かってその口の聞き方」

盗賊「悪いね。バカな親の悪い影響だよ」

村長「まったく躾がなってねぇ。親の顔が見てみたいもんだ」

盗賊「おい、メイド? 鏡持ってきて差し上げなよ。一番上等なやつをね」

村長「こっちのちんちくりんなガキとバカそうな男はなんだ? お前の子分か」

盗賊「メイドから聞いてないのかい? あたしの旅の仲間だよ」

魔王「……なんでオレ達、第一印象が盗賊ちゃんの子分なんだろうな」

賢者「さぁ……?」


3771 ◆6I9SwHc8xc2011/03/01(火) 23:25:36.456eBqO0mz0 (8/10)

村長「で、何の用だ? 親子の団欒をしに来たようには思えねぇな」

盗賊「金の無心だよ。ちょっとした額が入り用でね」

村長「あぁ? そんなもん、適当に金持ちっぽい家に押し入って盗んでくりゃいいだろうが」

盗賊「この村の人間が黙って盗ませてくれるとは思えないよ。アンタもそうだろ?」

村長「まあな。だがそれを何とかさせるためにお前に色々仕込んでやったんだろうが」

盗賊「今あたしの身柄は勇者のものだからね。そのせいか、どうも気が進まなくてさ」

村長「勇者? ……そいつか?」

魔王「あ、オレはただの楽師さ。真実の愛を歌う詩人ってやつ?」

村長「じゃあそっちのガキか」

賢者「ボクは王宮の賢者です! ……親子揃ってボクを子供扱いするんだから……」

盗賊「勇者とは今別行動をしてるんだよ。で、魔法石を仕入れるよう頼まれたんだけど……」

村長「金が足りねぇから俺にねだりに来たってわけか」

盗賊「そういうことになるね」

村長「つくづく親不孝な娘だぜ。俺をナメてんのか? 家に帰ってくるのは金が欲しい時だけか」

盗賊「あたしもアンタに頼りたくはなかったんだけど、急ぐ用事なんだ。頼むよ」


3781 ◆6I9SwHc8xc2011/03/01(火) 23:26:56.156eBqO0mz0 (9/10)

村長「……ったく、このバカ娘が」

村長「……いいぜ、多少なら都合してやるよ」

賢者「本当ですか!?」

魔王「やった! 頼んでみるもんだな、盗賊ちゃん!」

村長「だが、タダじゃねぇ。条件がある」

盗賊「条件?」

村長「俺だって村長として結構忙しい身でな。解決しないといけねぇ案件を幾つか抱えてる」

村長「そこで、ちょいとひと仕事頼まれてもらいたい」

盗賊「仕事ねぇ……何をすればいいんだい?」

村長「最近、地下水路に妙な奴が住み着いちまってよ。暗がりの中で人を驚かせやがるんだ」

賢者「それって、ボク達が遭遇した……?」

村長「知ってるなら話は早い。そいつを水路から追い出すか、駆除してくれ。それが条件だ」

盗賊「なるほど……わかった。それでいいんだね?」

村長「ああ。お前なら楽勝だろ? なんたって勇者の仲間なんだからな」

盗賊「……言ってくれるね」

魔王「大丈夫大丈夫。魔物か何かわからないけど、そんなのオレがやっつけてやるよ」

賢者「魔お……楽師さんはいちいち言動が無責任です」

盗賊「ま……とにかく承ったよ。親父は財布の紐を緩めて待ってるんだね」

村長「おうよ。吉報を待ってるぜ」


3791 ◆6I9SwHc8xc2011/03/01(火) 23:29:25.376eBqO0mz0 (10/10)

お気づきの方もいらっしゃるかもわかりませんが、
そういえば盗賊回やってねぇなぁと思ったので今回は盗賊回です。

魔王もちゃんとバトルシーンとかで活躍させたいけどそれは少し遠くなるかもしれません。


380VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/01(火) 23:34:53.627BNfCKpxo (1/1)

>>379 乙!
魔王の活躍早く見たい!


381VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/03(木) 05:06:02.19cLlfEHOh0 (1/1)




382VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/03(木) 08:23:02.06TeB7bpHi0 (1/1)

オツゥ!
そういや竜姫もあんまり魔翌力ないって言ってたけど、親とか強い魔族と比べてってこと?
できれば竜王とか獣王みたいな幹部とか、平均的な魔族の性能も知りたいです


383VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/03(木) 09:08:24.91mDsvvKUwo (1/1)

パーティ内では>>289にパラ出てるけど
これで弱いのなら幹部クラスはA+++位いってんのかな


3841 ◆6I9SwHc8xc2011/03/04(金) 01:29:03.253RIcwNno0 (1/2)

僧侶
破壊力:D(C) スピード:D    射程距離:B
持続力:C    精密動作性:A   成長性:C
社交性:E

獣王
破壊力:A    スピード:B    射程距離:C
持続力:B    精密動作性:E   成長性:E
暑苦しさ:A

獣王子
破壊力:A    スピード:B    射程距離:D
持続力:C    精密動作性:C   成長性:B
ファザコン:A

竜王
破壊力:A(A) スピード:C    射程距離:D(A)
持続力:A    精密動作性:C   成長性:A
我慢強さ:E

海王
破壊力:E(B) スピード:D    射程距離:C(A)
持続力:A    精密動作性:A   成長性:E
愛情:A

機械王
破壊力:A    スピード:D    射程距離:B
持続力:A    精密動作性:A   成長性:E
柔軟性:E
 
僧侶と幹部クラスのパラメータはこのくらい。平均的な魔族はまあオールC評価でBがチラホラ程度。
正直パラメータは全くのフィーリングでつけてるので演出の都合により劇中での描写はその都度変わっていきます。


385思いついたから書いてみただけ ◆6I9SwHc8xc2011/03/04(金) 01:31:18.453RIcwNno0 (2/2)

キャラクター別嘘攻略

勇者
 多彩で高性能な魔法を持ち、ステータス面でも穴がない万能型。
 強力な魔法や特技が揃うが、魔法を使うたびに所持金がガンガン減っていくため
 序盤は金欠に陥りやすくゲームバランスが悪いと叩かれる。

賢者
 魔法攻撃力の面では竜姫が一歩上だが、習得している呪文の数は最多。
 ステータスは総じて平均以上に育つが、物理攻撃力が低くスピードも遅い。
 育ち方としては中盤~終盤にかけてのステータスの伸びがいい晩成型。

盗賊
 HPと攻撃力が低いが、手数と機動力に優れるスピードタイプ。
 魔法は使えず、物理技はリーチと攻撃範囲が狭いが隙がない。
 打たれ弱く癖の強いキャラだが使いこなせば強い。しかし多対一の状況には弱いので注意。

魔王
 魔法・特技・ステータス全てにおいて中途半端な器用貧乏キャラ。
 スピードもMPもそれなり以上のものを持つので、育て方によって前衛にも後衛にもなれる。
 他キャラとの連携攻撃で真価を発揮する。

竜姫
 HP・物理攻撃力・防御力・スピードはぶっちぎりの最下位。魔法攻撃に特化したキャラ。
 単発の火力は全キャラ最高なので、後衛として適当に魔法をぶっぱさせておくのが安定。
 たまにプレイヤーの指示を無視することがあり油断できない。

僧侶
 支援・回復型の後衛キャラ。呪文の詠唱速度が最速で状況に対応しやすい。
 防御力は低いが物理攻撃力はそこそこで、実は前衛でも使っていける。
 通常攻撃は旅行鞄で敵を叩きのめすという豪快なもの。レベルを上げて物理で殴ろう。


386VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/04(金) 03:41:29.09RS0fHVoVo (1/1)

そうりょちゃんちゅっちゅ


387VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/04(金) 08:18:31.31kRSMg+kDO (1/1)

僧侶、鞄で殴打かwwwwww



中には何が詰まってるんだろうな ゴクリ


388VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/04(金) 10:53:10.647VmZPkbDO (1/1)

Q.竜王が倒せません、攻略法を教えてください!
A.レベルを上げて物理で殴れ


389VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/04(金) 17:44:33.16gYY57yHyo (1/1)

ラwスwトwリwベwリwオwンwwwww


390VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/06(日) 06:02:17.48w328hArb0 (1/1)

僧侶を前衛で使うのには結構やりこまないとできないな


391VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/06(日) 09:26:06.20Zp7hlVgAO (1/1)

ヘヴィストライク特化か


392番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/06(日) 21:45:16.55BAE+pkF40 (1/7)

 
――――――――――
勇者が旅立つ数ヶ月前
 
 
勇者「……よし。あとは参考資料を添付すれば完成だ」

同僚「おい、勇者! これから飲みに行くんだけど、お前もどうだ?」

勇者「ああ、ちょうど今レポートを仕上げたところだ。御相伴に与るとしよう」

同僚「よし! 今日は門前町の酒場だ。いいな?」

勇者「問題ない」

同僚「へへ……一度でいいからお前が酔い潰れるところを見たいと思ってたんだよ」

勇者「残念だが、その期待には沿えない。私は酒に強いからな」

同僚「こいつ……いや、確かに、お前はどんな強い酒でも顔色ひとつ変えずに飲み干すからなぁ」

勇者「私のペースに付き合うのは君の健康に悪い。君は君のペースで飲むといい」

同僚「わかったよ。じゃあ行こうぜ」

勇者「ああ」
 


393番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/06(日) 21:45:44.70BAE+pkF40 (2/7)

 
酒場 
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z__________ 

  
同僚「乾杯!」グイッ

勇者「乾杯」グイッ

同僚「ふぅ……いやぁ、それにしても今日は人が少なくて助かったな。いい席が空いてたぜ」

勇者「今日は平日だし、そこまで遅い時間ではない。これから混み始めるだろう」

同僚「そうだなぁ……とりあえず何かツマミでも頼むか」

勇者「ああ」

同僚「そういや、知ってるか? 王宮が勇者候補を探してるんだってよ」グビッ

勇者「勇者……王宮直轄の特務武官の俗称だな」ゴクゴク

同僚「魔族との戦争が近いんだろうさ。やだやだ、戦時下じゃ好きな研究ができないぞ」チビチビ

勇者「王立魔法研究所も王宮直轄の機関だからな。魔法兵器の開発を命じられるかもしれない」グイッ

同僚「お前が研究してる新しい魔法、アレになら予算が下りるかもな」

勇者「だが、まだまだ解決すべき課題は多い。到底実用レベルには達していない」

同僚「それにしても勇者候補ねぇ……どんな奴が勇者に任命されるんだろうな」

勇者「候補者として選抜されるとすれば貴族の子女だろう。その方が広告塔として利用しやすい」

同僚「俺もお前も平民の出だし、どっちみち関係ない話かねぇ?」
 


394番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/06(日) 21:46:27.61BAE+pkF40 (3/7)

 
<ヘイオマチー

同僚「……しかしなぁ」

勇者「なんだ?」

同僚「いや、お前ってさ。研究とかの真面目くさった話の時はいいんだが、どうにもな」

勇者「どうにも、なんなんだ」

同僚「ジョークとかユーモアのセンスがないってんのさ。お前、冗談のひとつも言わねぇだろ?」

勇者「ジョーク、か」

同僚「そうさ。その仏頂面と四角四面な性格を矯正すりゃ女にもモテるだろうにな」

勇者「生活の上で、異性との交際が必要だと思ったことはないが」

同僚「違う違う。そういうのは必要に迫られてするもんじゃないだろうが」

同僚「いや、悔しいけどお前は顔がいいからな! あとはユーモアセンスだよ」

勇者「ユーモア……ふむ」

同僚「面白いジョークのひとつやふたつ覚えてみれば、人生がより楽しくなるぞ」

勇者「同僚。君は酔っているな?」

同僚「バカ野郎、まだまだ酔ってなんかいねぇよ。お前ほどじゃないが俺も強いんだ」

勇者「そうか……」

同僚「おう、そうだとも。とにかくお前に必要なのはだなぁ……」
 


395番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/06(日) 21:47:08.55BAE+pkF40 (4/7)

 
翌日・王立魔法研究所
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z__________ 
 
 
勇者「……」ペラッ

勇者「……ジョークか」ペラッ

勇者「しかし、いざジョークをと思っても、なかなか思いつかないものだ」

勇者「書店で買った指南書には、普段は言わないようなことを言って意外性で笑わせろとあるが」

勇者「……私が普段は言わないようなこと、か」パタン
 
勇者「あとで思い浮かぶものをいくつか書き留めておこう。その上で問題点を列挙して……」

ドンッ
バサァッ……

勇者「……っ、すまない。不注意を……」

僧侶「ご、ごめんなさい……余所見を……」

僧侶「……って……勇者さん……?」

勇者「僧侶か。すまない、資料が床に……」

僧侶「い、いえ……大丈夫です……」

勇者「……」サッサッ

僧侶「……」サッサッ
 


396番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/06(日) 21:47:57.84BAE+pkF40 (5/7)

 
僧侶(勇者さんって……なんだかいつも不機嫌そうで、怖いです……)

勇者「……」

僧侶(か、格好いい人だと思うけど……でもやっぱり……)

勇者「僧侶」

僧侶「は、はいぃ!」

勇者「確認してくれ。資料はこれで全部か?」

僧侶「あ、は、はい……だ、大丈夫……です……」

勇者「そうか」

僧侶「はい……」

勇者「……」

僧侶「……」

僧侶「あ……あの……私、これで……」

勇者「ああ、すまなかった。今後は気をつけよう」

僧侶「いえ……わ、私も不注意でしたから……お互い様ってことで……」

勇者「それならよかった。君に嫌われてしまったら、生きていけないからな」

僧侶「え……?」

勇者「では、失礼する」

スタスタスタ……
 


397番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/06(日) 21:49:18.71BAE+pkF40 (6/7)

 
僧侶「……」

僧侶「い、今のって……? え……?」

勇者(君に嫌われてしまったら、生きていけないからな)

僧侶「……~~~っ!?」///

僧侶「ま、まさか……そんな……で、でも、心の準備が」アタフタ

僧侶「ゆ……勇者さんって……」

僧侶「大胆……です……」///
 
 
 
勇者「……」

勇者「先程の冗談には反応がなかったが、やはり面白くなかったのだろうか……」

勇者「以前観た歌劇の台詞をそのまま流用したのがいけなかったのか……?」

勇者「……×、と。他にも候補はいくつかあるが、要検証か」メモメモ

勇者「『空に輝く星よりも君の方が美しい』……いや、これも小説の台詞か……」
 


3981 ◆6I9SwHc8xc2011/03/06(日) 21:50:30.95BAE+pkF40 (7/7)

なんか間が持たないので急遽番外編投下。
ユーモアセンスがなくてもイケメンは爆発しろというお話。


399VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/06(日) 22:10:05.60U+2kul410 (1/1)

乙です。


400VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/06(日) 22:40:44.314IQZhvmBo (1/1)

>>398 乙!
僧侶かわいいな~


401VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/07(月) 02:56:29.7852dOpQuDO (1/1)

僧侶はその内卑猥なコスチュームの武道家に転職して
マホイミとか言いながら殴りかかるのだろうか


402VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/07(月) 08:20:26.88zwVEkfCDO (1/1)

最終的にアムド!とか叫ぶのか


天然たらし始まったギギギ


4031 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:16:14.66NdJB+Wyt0 (1/13)

 
――――――――――
翌朝
砂漠・地下水路
 
 
けんじゃは じゅもんを となえた
まほうのかがりびが あたりを てらしだした!
 
賢者「視界は確保できました。あとは探査呪文で生命エネルギーの動きをサーチします」

魔王「へぇ、そんな呪文もあるんだ……有効範囲は?」

賢者「あまり広くはありませんよ。あと、アンデッドや物質系モンスターには反応しません」

けんじゃは じゅもんを となえた
けんじゃのてのうえに まほうじんが うかびあがった!

盗賊「……じゃあ逆に言えば、水路の中にいるのはそういう類の魔物じゃないんだね?」

賢者「はい。ボクはそう思います」

魔王「根拠は?」

賢者「あの時、敵は炎に驚いて逃げて行きましたよね?」

盗賊「ああ。賢者が明りを出した途端にね」

賢者「アンデッドも物質系も基本的に五感に頼らないので、外部からの刺激には強いんです」

賢者「急激な温度変化や強い光に弱いとすれば、むしろ獣系や爬虫類系じゃないかと……」
 


4041 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:16:54.04NdJB+Wyt0 (2/13)

 
盗賊「なるほどねぇ……じゃあ賢者はそっちに集中しな。戦闘はあたしと魔王がやる」

魔王「おっと、いよいよオレの活躍を見せてあげられるってわけだ。腕が鳴るぜ」

盗賊「アンタ、自分のこと弱いって言ってなかったっけ」

魔王「そりゃあアレだよ、オレは女の子がピンチの時は隠されたパワー的なサムシングが」

盗賊「はいはい、精々カッコいいトコ見せておくれよ。期待しないでおくからさ」

魔王「OK、任せとけって。で、賢者ちゃん、今どんな感じ?」

賢者「今のところは反応はありませんけど……もう少し奥へ進んでみましょう」

盗賊「ま、すぐ見つかるようなところにいるわけがないしね」

魔王「よ~し! どんな奴が隠れてるのか知らないけど、オレがすぐに……」
  
カチッ

魔王「……ん?」
 


4051 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:17:24.67NdJB+Wyt0 (3/13)

 
賢者「どうしたんですか? 急に立ち止まって」

魔王「いや、今なんか変な音が……」

盗賊「変な音って……まさか」

ピシッ……

盗賊「! 賢者!」

賢者「えっ?」

そのとき けんじゃの まうえにあるてんじょうに きれつがはしり くずれだした!
じゅもんに いしきをしゅうちゅうしていた けんじゃは はんのうがおくれている!
たいりょうのすなが けんじゃにむかって おちてきた!

魔王「……ッ!」

まおうは きびすをかえし けんじゃのもとへ かけだした!

ドザァァァァァァァ……!

もうもうとたちのぼる すなぼこりで とうぞくは しかいをうばわれている!

盗賊「ゲホッ、ゲホッ……賢者! 魔王!」

しばらくすると すなぼこりが おさまり しかいがひらけてきた……
すいろは たいりょうの がれきとすなで ふさがれていた!

とうぞくが よびつづけていると がれきのむこうがわから くぐもったこえが きこえてきた……

魔王『……盗賊ちゃん! 盗賊ちゃん、大丈夫かー!?』

盗賊「魔王、無事かい!? 賢者は!?」
 


4061 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:18:22.60NdJB+Wyt0 (4/13)

 
賢者『ボクは大丈夫です。瓦礫が落ちてくる寸前で魔王さんが助けてくれて……』

魔王『へへっ、どう? オレってばカッコよかったでしょ』

賢者『助けて早々そんなことを口走るからカッコよく思えないんです』

盗賊「二人とも無事みたいだね。よかった……」

賢者『でも、どうするんですか? 道が完全にふさがっちゃいましたよ』

魔王『確かに、このままじゃ盗賊ちゃんが村に戻れないぜ』

盗賊「いや、大丈夫だよ。別のルートで遠回りすれば村の井戸まで戻れるからね」

賢者『仕方ありませんね……じゃあ、篝火だけそっちに預けますから、使ってください』

がれきのすきまから けんじゃの まほうのかがりびが とおりぬけてきた
かがりびは とうぞくのずじょうに かかげられ あたりを あかるく てらした!

賢者『プライオリティをそちらに移譲します。少し念じれば、自由に動かせるはずです』

盗賊「あたしは魔法が使えないし、魔力だってない。いつまで持つんだい?」

賢者『大丈夫です。遠隔制御でコントロールしますから、ボクの魔力が続く限り燃え続けます』

魔王『賢者ちゃんって器用だなぁ』

賢者『このくらい、大学で魔法学を修めていれば誰にだってできますよ』

盗賊「まあ、とにかくアンタ達は先に帰ってな。あたしもすぐに戻るから」

魔王『OK、盗賊ちゃんも気をつけて』
 


4071 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:19:32.79NdJB+Wyt0 (5/13)

 
バシャ……バシャ……

盗賊「……しかし、罠が仕掛けられているとはね。あたしとしたことが油断しちまったよ」

盗賊「明りがあるおかげで罠の解除もやりやすいけど……っと」ガチャンッ

とうぞくは あしもとを しらべた
じぶんのしゅういに しかけられていた わなを かいじょした!

盗賊(……罠の間隔が狭くなってる)

盗賊(ということは、この先に潜んでいるってことだね)

盗賊(……だけど、妙だ)

盗賊(こんなあからさまなことをしたら、敵に自分の居場所を教えることになるってのに)

盗賊(まるで素人の仕事じゃないか……一体どういうこと?)

盗賊「……ッ!」

キィン!

とうぞくは しょうめんからとんできたナイフを はじきおとした!

盗賊「……罠を外して一安心なところを狙った、ってところかい? もう一工夫必要だね」

??「チッ……」

盗賊「姿を現しな。なに、悪いようにはしないよ。アンタ次第さ」

??「……」

ザッ!

盗賊「OK、いい子だ。素直な奴は好きだよ」
 


4081 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:20:20.23NdJB+Wyt0 (6/13)

 
猫忍者「人間のくせになかなかやるにゃ……」

盗賊「おっと……ドンピシャだよ、賢者。予想してたのより随分と可愛いね」

猫忍者「にゃはは、戦場ではそういう奴から死んでいくにゃあ。俺様の可愛さに騙されてにゃ」

盗賊「……それを言ったら、あたしは騙されてやれないよ?」

猫忍者「にゃ? ……にゃにゃ!? ひ、卑怯だぞ人間! 俺様を騙したにゃあ!?」

盗賊「……まあ待ちなって。アンタ、あたしの顔に見覚えはないかい?」

猫忍者「……そういえば、見たことのある顔だにゃあ」

盗賊「昨日、あたし達がこの地下水路を通った時に脅かしてくれたろ?」

猫忍者「あの時の人間かにゃ。俺様の気配を感じ取るとは見所のある奴だにゃあ」

盗賊「アンタもなかなかやるじゃないか。当てるつもりで投げたナイフを弾かれるなんてね」

猫忍者「それはお互い様だにゃ。まったく油断のならないメスだにゃあ」

盗賊「……単刀直入に言っちまうけど、あたしはアンタを追い出しに来たのさ」

猫忍者「にゃに?」

盗賊「アンタ、この水路を通る奴は誰彼構わないで脅かしてるだろ?」

盗賊「上に住んでる連中が迷惑しててね。あんな罠まで仕掛けて、一体どういうつもりだい?」

猫忍者「にゃ……そ、それは言えないにゃあ」
 


4091 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:21:34.02NdJB+Wyt0 (7/13)

 
盗賊「どうして言えないんだい? 悪いけど、プライバシーがどうとかって言い訳は聞けないね」

猫忍者「う……出ていけと言われて縄張りを譲る魔族などいないのにゃ!」

盗賊「やり合えばただでは済まないと思うよ。お互いにね」

猫忍者「けっ、人間風情の力などたかが知れてるにゃあ」

盗賊「本当にそう思うかい?」

猫忍者「にゃ……!」

盗賊「……!」

盗賊(……間違いない。こいつは何かを隠してる)

盗賊(それは嘘や隠し事であり、物質的な何かでもある。つまり、何かを守っているんだ)

盗賊(じゃあ、それは何だ? わざわざ罠まで仕掛けて人を遠ざける理由ってのは……)

盗賊(……もう一枚カードを切ってみないと、わからないね)

盗賊「……アンタ、猫獣人ってことは獣王軍だね?」

猫忍者「にゃっ、よくわかったにゃあ? その通り、俺様は獣王軍の忍だにゃあ」

盗賊(忍ってのを胸張って言うのもどうなのかねぇ……)

盗賊「……あたしの仲間に魔王がいるって言ったら、どうする?」
 


4101 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:22:09.78NdJB+Wyt0 (8/13)

 
猫忍者「……そんな戯言を俺が信じると思っているのにゃあ?」

盗賊「嘘じゃないよ。アンタも見てるだろ、あの頭の足りなさそうな男だよ」

猫忍者「にゃ……確かに妙な魔力を感じる奴だと思ったけどにゃあ」

盗賊「竜王が獣王子を殺し、魔王に反旗を翻したあの夜から、魔王の行方はわかっていないはず」

猫忍者「……」

盗賊「ついでに言うと機械王もさ。こっちは水路の入り口に偽装して隠してあるよ。見に行くかい」

猫忍者「……」

盗賊「魔王とは、ちょいと込み入った事情があって行動を共にしてる」

盗賊「あたしが信用ならないなら、同じ魔族ならどうだい? 話をするくらいは構わないだろ」

猫忍者「本物の魔王様だという保証は?」

盗賊「そんなもん持ち合わせてると思うかい? そっちの方が逆に疑わしいじゃないか」

猫忍者「……」

猫忍者「なら、連れてこいにゃ。そしたら信用してやるにゃあ」

盗賊「わかった。ちょっと待ってておくれよ? すぐに連れてくるから」

猫忍者「嘘だった時はわかってるにゃあ?」

盗賊「肝に銘じとくよ。ま、あいつのことだからすぐわかると思うけどね」
 


4111 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:22:45.80NdJB+Wyt0 (9/13)

 
――――――――――
一時間後
砂漠・地下水路
 
 
魔王「久しぶりだな、猫! こいつぅ~!」ナデナデ

猫忍者「ややや、やめるにゃ魔王様! 俺様をナデナデするのはやめるにゃあ!」

盗賊「……」

賢者「……えっと、知り合いなんですね?」

魔王「ああ。獣王子の部下で一番フカフカしてる奴だよ。それにバカで可愛い」

猫忍者「魔王様! 確かに俺様は頭は良くにゃいが、その言い方はあんまりだにゃあ!」

賢者「そうですよ、魔王さん。言って良いことと悪いことの区別くらいつけてください」

盗賊「賢者? アンタも最近ちょっと口悪いよ」

魔王「それにしてもお前、こんなところに隠れてたのか。毛並みもボロボロじゃんか」

猫忍者「う……確かに今の俺様はただの落ち武者だにゃ。しかしボロは着てても心は錦だにゃあ」

魔王「何それ? ……そういや、盗賊ちゃんの話だとお前、何か隠してるんだって?」

猫忍者「にゃあ」コクッ

魔王「あの夜、お前も魔法の森にいたよな。何を持ち出したんだ?」

猫忍者「にゃ……」

盗賊「あたし達にも見せてもらいたいね。いいかい?」

猫忍者「……いいにゃ。魔王様の件は本当だったし、特別に許可してやるにゃあ」
 


4121 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:25:02.13NdJB+Wyt0 (10/13)

 
ねこにんじゃは すいろのよこみちに とうぞくたちを ゆうどうした
そのさきには ひらけたくうかんがあり へやのまんなかに かんおけが おかれていた

ねこにんじゃは ゆっくりと かんおけのふたを あけた!

魔王「……!」

かんおけのなかには じゅうおうじのいたいが よこたわっていた……

盗賊「獣王子の死体……あの後、アンタが回収してたんだね」

賢者「……棺桶から魔力を感じます。多分、魔法で死体の鮮度を保っているんです」

魔王「獣王子……」

猫忍者「殿下は獣王軍の未来を背負って立つべきお人だったにゃあ。それを竜王の奴が……!」

猫忍者「あのまま遺体を野晒しになんてできなかったから、棺桶に入れて運び出したのにゃあ」

猫忍者「せめて、遺体は魔界に帰して差し上げようと……思っていたのにゃあ……」

猫忍者「それで、竜王軍から逃げ延びた先がここだったのにゃあ」

魔王「……」

まおうは じゅうおうじのしたいを じっとみつめている……
けんじゃは まおうの いつになく しんけんなまなざしに なにも いえずにいる
とうぞくは すこしまよったあと まおうに はなしかけた

盗賊「魔王」

魔王「……なに? 盗賊ちゃん」

盗賊「……あー、なんだい。魔法石を手に入れて、機械王の修理を終えてからのことなんだけどさ」
 


4131 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:25:58.11NdJB+Wyt0 (11/13)


盗賊「最初の行き先、アンタの行きたいトコに行っていいよ。誰を連れて行っても構いやしない」

賢者「盗賊さん……」

魔王「いいの? オレに任せたら、王都じゃなくて魔界に行くことになるぜ」

盗賊「やっぱり、魔界に行きたいんだね?」

魔王「……そりゃあ、さ」

盗賊「どうもあたしゃ、こういう話に弱くてね。泣かせるじゃないか」

盗賊「それに、普段チャランポランなアンタのそんな顔見ちゃ、ね」

盗賊「はは……あたし、やっぱり甘いかな? まあ、これは生まれついての性分で」

魔王「盗賊ちゃん」

盗賊「?」

魔王「盗賊ちゃんの優しい気持ちって、魔族の価値観からすればバカみたいに映るかもしれない」

魔王「何しろ欲しいものは奪え、気に食わない奴は殺せっていう、くっだらない世界だし」

盗賊「……」

魔王「でもオレは好きだよ、そういうの。盗賊ちゃんのこと、もっと好きになった」

魔王「サンキュー、盗賊ちゃん」ニカッ

盗賊「……ど、どういたしまして」

魔王「あっ、大丈夫だよ? オレは賢者ちゃんのことも好きだから。ジェラシー感じちゃった?」

賢者「御心配には及びません。ボクは魔王さんのこと、これっぽっちも好きじゃありませんから」

魔王「ははぁん、ツンデレ?」
 


4141 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:27:12.38NdJB+Wyt0 (12/13)


賢者「……それで、これからどうしますか? まずは村長さんへの報告ですよね」

盗賊「そうだね、それはあたしがやっておくよ。魔法石の調達も」

賢者「じゃあ、ボク達は機械王のところまで戻って、修理の準備をしておきます」

魔王「この棺桶に入ってる限り、獣王子の死体が腐ったりはしなさそうだしね」コチョコチョ

猫忍者「にゃにゃっ!? 魔王様、顎を撫でないで欲しいのにゃあ!」

賢者「あ、それボクにもやらせてください!」

猫忍者「ふにゃーっ!?」

盗賊「……じゃあ、そっちは任せる。あたしは村に行くよ」

猫忍者「それなら、俺様は魔王様と一緒に」

盗賊「おっと。アンタは居残り」ガシッ

猫忍者「にゃっ? なんでだにゃ?」

盗賊「水路の中に仕掛けた罠、全部外してきな。危ないからね」ヒョイッ

猫忍者「ぎにゃーっ!? く、首筋を掴まないで欲しいのにゃ、苦しいにゃあ」

盗賊「お、意外と軽いじゃないか。昔家で飼ってた猫を思い出すよ」

猫忍者「お、俺様を家猫と一緒にするんじゃにゃい! コラー! 離すにゃー!」



村長からの依頼:達成 魔法石調達完了!

次の目的地:魔界
 
 
 
  /└────────┬┐
 <     To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘
 


4151 ◆6I9SwHc8xc2011/03/08(火) 23:28:57.70NdJB+Wyt0 (13/13)

二つのパーティはまだしばらく合流出来ないんじゃ

複線とか設定とかいくつ回収できるのか不安になってきたけど
この際細かいことは気にしないことにしました


416VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/08(火) 23:30:30.41UsD1RaiSo (1/1)




417VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/08(火) 23:43:19.08VNOVzKODO (1/1)

乙 ブラック羽川思い出したわ


418VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 00:13:01.68f7nwUp0So (1/1)

>>415 乙!


419VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 00:15:10.44dXzTuRhRo (1/1)

>>417
俺も俺も


420VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 09:14:02.35YqXbGI01o (1/1)

               /.゛\
           /,':: ヽ\    _____             )/:|   __,,
           |i:::   :;;ゝY" ̄     ̄ ̄ `ー--、_   //:/ /'´ /´
              ,||:::. ,. '´ ,.-‐'"´  ̄ `´ ̄ ̄ `ー-.、`>'´':;/   ,'/
          /,jレ'´  /  ,.'  ,i: ::.  ヽ:.     `:<::;ゝ、  ,'/
            / :'"  /    /  /|: |:::... ハ::. 、::.. . . .  \::::;/`ヽ
        /   / ,:   .;':: / |: |∨::::..:|i:: |V::: : : :.   |:∧`ヽ、    こんなゃとこにオレ様がいる
         /   / :,'  :/:.: :/   |: | ∨::: |l:: | ∨:i::: : :  |:: :ハ   \     わけにゃいだろ人間
.       /   /.:/:  ;':: : / 、  |: | ∨: ||:: | | :ト、::: : : : |: : :|     \
.        /    | :i: :  ::: : : |  \ヽ|  |::: ||:: l ,| :| |::: : : :人:: :|       \
      /     | ;|: :  i:: : . |、_‐-.、ヽ  |: /l //|/ |:::: : : : ∧人   __
    ,ノ      |/|: : : :|:: : : |マ弐≧、 |/ |/´ ,.-‐__,|::: : : :|::::ハ:. :\/´\`Yヽ-‐、
   /       ..::|:: : ::|: : : :|弋:;リ  ,`     ,ィチマア'∧::: : :|\:|::、::/ ヘ:. |: |:: |ヘ:: |
 /        ..::::∨:.::|l: : :、ゝ` ̄       ,' ヒリ ,'' ハ:::|:: : :|:::::::::::/ ,/´〉:|,/:;/ レ'
'"        ..::::::::::\:||:; : :∧         ヽ.  ,ハ::::::l:: :;/:::::::::::l ´ ,ノ|,ノ ̄:}
        ..:::::::::::::::::::::∨: :i::∧       ´  ,.:'::::::::/;/:::::|\::|  '"    ,ノ:|
          .::::::::::::::::::::::::ノ`ヽ|ヽ::|    ー-   /:::::::::::'":::::::::/  `|    r‐r'::::|
       .:::::/´ ̄ `ヽ、ヽ  ::::`ヽ、 __ .,..::'´::::::::::::::::::::::::::/    |    | |::::リ
      .::::::/       \\  ::`‐-.、:::::::::::::::::::::::::::::::/    |    | |:::/
     .:::::/         | ハ、     `ヽ、::::::::::::::/     |:     | |/


421VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 20:33:20.72a/7lcnpIO (1/1)

>>420
ペロペロ^^


422VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 20:56:12.40JTjsQN1M0 (1/1)

乙です。
甘くないのがイイ!


423 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 03:14:14.51icrLa6RD0 (1/17)

作者のいる地域は震度6弱で、流石にこの規模の地震は生まれて初めてでした。
ド内陸の山に囲まれた地域に住んでるので津波などの被害はなかったのですが
本棚やら食器棚やらが悲惨なことになったのが地味に効きます。

まだ断続的に余震が続いているので、皆さん気を付けてくださいね。地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/


424VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/12(土) 07:47:23.26XTS49Tkyo (1/1)

>>423
生存確認!

ひとまず安心だが6弱か…
気をつけてくれよぉ


425番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:28:20.75icrLa6RD0 (2/17)

 
――――――――――
現在
とある洞窟
所持金:36937G 
 
 
ガチャッ

ゆうしゃは たからばこを あけた!
なんと なかには プラチナのよろいが はいっていた!
 
竜姫「ほほう、これはなかなかの逸品じゃのう」

僧侶「綺麗……です……」

勇者「美麗な装飾が施されているが、ただの式典用ではなく、防具としての性能も高いようだ」

僧侶「でも……私は装備できません……」

竜姫「残念ながらわらわもじゃ。この中ではお前しか装備できないようじゃな」

竜姫「せっかくじゃから、装備してみればどうじゃ? お前は面がよいからの、様になる」

勇者「しかし、これは戦闘用としては目立ちすぎるのでは?」

竜姫「細かいことは気にするでない。手に入れたらまずメニュー画面を開く、基本じゃろうて」

僧侶「でも……未鑑定のアイテムは、呪われている可能性が……」

勇者「僧侶の言う通りだ。最寄りの街まで持ち帰り、防具屋に鑑定を依頼して……」

竜姫「わらわは今装備せよと言っておるのじゃ! わかったらさっさと装備せんか」

僧侶「ワガママ……」ボソッ

勇者「……わかった。それで君の気が済むならそうしよう」

ゆうしゃは プラチナのよろいを そうびした!
 


426番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:28:56.03icrLa6RD0 (3/17)

 
デンデロデンデロデンデロデンデロ
 
 
 
ゆうしゃは のろわれてしまった!
 


427番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:29:33.73icrLa6RD0 (4/17)

 
――――――――――
数時間後
とある街・宿屋のロビー
所持金:36942G
 
 
僧侶「……」ジトッ

竜姫「……なんじゃ。言いたいことがあるならハッキリ言わぬか」

僧侶「竜姫さんのワガママで……勇者さんが危険に晒されているんですよ……?」

竜姫「ふ、ふん! その鎧が呪われておるなどと、わらわには知る由もなかったことじゃ」プイッ

僧侶「もしも……命に関わるような呪いだったら……どうするんですか……?」

竜姫「お前がなんとかしてやればよかろう。僧侶の修行をしたのなら解呪くらいできようて」

僧侶「そういう問題じゃ……ありません……!」ガタッ

勇者「よせ、僧侶」

僧侶「でも……!」

勇者「問題ない。今のところはまだ、この鎧を外せない以外に実害はない」

竜姫「ほ、ほれ。結果オーライじゃ。さすが勇者はわかっておるのう」

勇者「だが竜姫。今回の君の行いは、軽率なものだったと言わざるを得ない」

竜姫「む……」

勇者「しかし、今回の反省を次回以降に活かしてくれれば、私からは何も言うことはない」

勇者「私にとって幸運だったのは、次回があることだ。それは君にとっても同様のはずだ」

竜姫「……わかった。次から気をつける」

勇者「そうしてくれ。私も未鑑定のアイテムには細心の注意を払う」
 


428番外編 ◆6I9SwHc8xc2011/03/12(土) 22:30:17.16icrLa6RD0 (5/17)

 
竜姫「……しかし、どういう呪いがかけられておるのじゃ。勇者、わかるか?」

勇者「いや、わからない。特に自覚症状もなく装備を外せないだけとあっては……」

僧侶「ひょっとしたら……精神系の呪いかも……」

竜姫「精神系?」

勇者「肉体への直接的干渉ではなく、対象の精神を汚染するタイプの呪術か」

僧侶「確か、研究所に……呪術を専門に研究してる人が……いたはずです……」

僧侶「呪術は……私も勇者さんも専門外ですから……あの人に診てもらいませんか……?」

勇者「呪術師か。確かに彼なら何かわかるかもしれない。研究所に行ってみよう」

竜姫「そうじゃな。わらわ達では結論は出せぬし、そうするより他にあるまい」

竜姫「……あー、勇者? 辛くなったら遠慮せずわらわに言うのじゃぞ。よいな」

勇者「ありがとう。だが大丈夫だ。私に気を遣う必要はない」

竜姫「勘違いをするでない。失地を回復せぬままでは気分がよくないのでな」

勇者「そうか」

僧侶「……私……まだ許してませんからね……?」

竜姫「ふ、ふん。お前に許してもらう謂れなどないわ。ほれ、さっさと王都へ行くぞ!」

りゅうきは じゅもんを となえた
ゆうしゃたちは おうとへ むけて とびたった!