431VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 19:46:00.60OjqT9Wng0 (3/14)

やっべ。もう〆切だな。まだ書こうっていう頭にも入ってないけどまだ間に合うかな。。。


次回のお題は、
安価を3つ出し、お題を3つ設定します。好きなお題を一つ選び書いてください。
書ける短編SSは一人一作でお願いします。

創作期間と感想期間はどうしようか。


432VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 19:57:50.99XyOaFpaDO (10/14)

感想期間は今回と同じく三日間でいいと思う
執筆期間は木曜0時からだから…ワカンネ
平日だしな


433VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/08(日) 20:06:12.53qgMhGmAUo (6/9)

スレがもったいないという理由で安価を100、105、110みたいにするのではなく
100、101、102みたいにするのは貧乏性すぎるか?


434VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/08(日) 20:06:32.37vpgjN6aAO (6/9)

三つのうち一つだけって縛りが、どういう効果を生むのか……今からドキがムネムネ
お題はともかく安価は狙っていきたいな。

>期間

現状挙げられてる「創作2日、感想3日」のままでいいのでは。



435VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/08(日) 20:15:48.69vpgjN6aAO (7/9)

あと今のうちに確認されたい点あり。

0時の安価で501,502,503と指定されたとする。
このとき安価先の501や502,503が、安価指定を狙ってたりお題以外のレスだった場合について。

0時の人が欠けた部分を再安価する?
それとも、あくまで安価先の人が改めてお題を掲示する?

ここ、意見割れて決まってなかったような



436VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 20:20:26.27XyOaFpaDO (11/14)

再安価か、安価下でいいと思う。
あと不安に思った、
安価出すの木曜だよな?



437VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 20:21:17.29OjqT9Wng0 (4/14)

>>433
いやそれでいいと思う。範囲を広くすると安価に関係ないレスが入ることもあるし。
連続でいこう。

とりあえず「創作2日、感想3日」でいこうかな。平日だから参加出来ない人もいるかもだけど
ここで書く機会はいくらでもあるし、時間があれば参加してくれ。


皆は自分のSSは書けてるのか?ここで短編SSを書くのと感想書くことばっかで
本来のSS書きの活動の手は止まってないだろうか?

最初にお題更新を一週間としたのは、そういった意味合いのため。
なので次回が終了したら、一週間案も考えてもらってもいいだろうか?

またそれと同時に次回終了時に安価の方法について議論の時間を設けてほしい。


438VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 20:33:54.19c7bP/PtF0 (1/1)

>>437
創作期間二日って短くない?個人的な感想だけど。感想期間は三日で十分というかベストだと思う。
このままだとスケジュールがギチギチで、他のSS執筆が進まない。



遅れて感想返しと説明。

>>417
ショートショートはそれなりに書いてるぜ(キリッ
とか高校生が言ってもマジ説得力皆無な罠。こういう感想は励みになるからマジサンクス。

>>418
やっぱ滞空は失敗だったか……どうせなら壁キックコンボでかく乱させるとかすりゃ良かったorz
サイボーグさん(←この呼び方気に入った)の雰囲気が変わったのはホントに計算外。つまり失敗orz
潤滑油に関しては思いつきでやった。ロボットが涙流すならオイルかなーと。くそっ、冷却水は盲点だった……

>>420
『失神は免れない』→一度気絶させて現場に運び強制突入させる
ということだったんだがやはり説明不足か。完全にこちらの落ち度でした。もっと明確な説明を心がけなければ……

>>421
なんでアンチヒーローはサイボーグより速くて強いの?サイボーグなのに9㎜弾が当たった位でダメージ食らうの?20歳未満でマッドサイエンティストだったの?膝蹴り食らっただけで目からオイル出るのってポンコツ過ぎじゃね?

何 一 つ 言 い 返 せ ね え

一つ言い訳すると、アンチヒートーはすごくつよくてすごくはやいんだよ!

>>423
倒置法……背伸びしすぎたか。慣れないテクを無理に使おうとするとやっぱボロが出るな。以後気をつけなければ。

>>426
アンチヒーローを伝えられているならこの上ない喜び。
邪道か……正直一ひねり加わった話になると書けなくなる。思考が安直なんだよなあ。

>>429
「ありがちな組織」と「ステレオタイプなキャラクター」は俺の大好物さ!



439VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 20:40:49.19OjqT9Wng0 (5/14)

>>435
基本は安価を受けた人がお題を練って提示する。出来ないなら再安価。
放置されたら誰でもいいんで、決まってない安価数分の安価出してくれ。
放置かどうかの判断は30分くらいでいいかな?
お題が書きこまれていたなら今まで通り。


440VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 20:42:30.84XyOaFpaDO (12/14)

>>429
なるほどなぁ
大して何も考えずに書くから、
こう指摘されると
あぁそれがいいなぁって思う。
ということで、
ここは深読みじゃなく、そういう設定だったということで一つ! あ、だめ?


441VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 20:54:12.34OjqT9Wng0 (6/14)

>>438
短いか。じゃあ決定はまだにさせてくれ。

個人的には、今日を境に更新期間を一週間にしたい。ちょうど日曜日だし。本当は土曜日の24時がいいんだけど。
しかし、やる気満々の人はそもそも一週間はなげーよ!って言う人も多い。更新期間についての意見がほしい。


あと、自分の本来のSS活動がちゃんと出来ている人のみ参加してほしい。
ここはあくまで練習場だってことは忘れないでほしいな。
もし、この根本的な部分も変えるべきと言うなら、その話し合いもしよう。


442VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 20:56:00.38E4eg+KHMo (13/15)

うんまあぶっちゃけちゃうと、本来のSS


443VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 20:59:30.48E4eg+KHMo (14/15)

しまった途中送信
ぶっちゃけちゃうと、本来のSSと同じかそれ以上楽しいんだよなここ。個人的にだけど


444VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/08(日) 21:06:31.13c9EanCGBo (2/2)

やっと全部読めた

>>376
ヒーローアンチヒーローというよりかは二項対立を感じましたwwwwwwww
冒頭の凛とした空気が澪にかっさらわれた時「あー負けたわー」とか思いました
自分は壊れて~のくだり嫌いじゃないですね、後半のしみじみした(?)空気がそこで作られたと思います

>>378
短文を隙間なく詰め込むっていう手法もあるんですね
地の文が一つ下げられているせいで、ほぼ全ての文の左列が揃ってしまっているのが
少々読みにくさにつながっているかなと思います
でもこういう叙情的な書き方は暖かくていいですね、こんど真似してみたいです
自販機に手を入れる→ぷしゅりは前にもある通り、表現を工夫して缶を手に取る描写があればよかったかなと

>>384
「あいつに死んでほしいなら」「そうか」と、この文の間に改行がないのですが
その直後にようやくあった~と続いている所に違和感を覚えました
口火を切り出してからようやく、といった意味なのだろうとは思いますが
主人公の感じるやるせなさが端々に漂っていて、全体として馴染みやすい文だと思います

>>391
力と振るう、この二つが節々に織り込まれているのはやはり最後の一文を書きたいがためなのでしょうか
せっかくだから全段落に入れてしまうとか、やりすぎるくらい強調してもよいかなと
あとちょっと読みにくさを感じました。
主人公の口調がですますから命令に移った辺りは感情の昂ぶりとかなんでしょうか
でも最初のシーンから苛立ってますし、ここは統一したほうが読み手に優しいと思います

>>415
驚くべき読みやすさですね……
強いて言うなら、『は、や』の所がワンテンポ置かされるせいで
少しスピード感が削られているのではないかというところですが、自分の読解力の問題かもなのでなんとも
バトル描写の上手さに痺れました


445>>260お題現時点SS2011/05/08(日) 21:12:10.81Jcg6OCX/0 (1/2)

追加※右側の安価は投下直後のコメント・訂正・追記

>>357

>>368|>>369

>>372|>>373 >>381

>>376

>>378|>>379

>>384|>>385

>>391|>>392

>>415


446VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/08(日) 21:20:13.26vpgjN6aAO (8/9)

そうか、次回安価は木曜だったっけ。把握。

>>441
長いと思うものの、言われてることは尤もなので、反対はしづらい。
期間が1週間ならせめて二本目もいきたいってのは、企画の主旨にもとるかな?

本来の活動。
自己申告ではちゃんと出来てるはずながら、そもそも間隔が広いから胸を張って言えるものでもなく。
うちの読者さんがここ見てて催促されたりだとかはさすがにないだろう……たぶん、メイビー

>>443
示された課題に一斉に取り掛かる楽しさはあるよなー。
基本書き手ばかり集まってるだけあって、表現・解釈・展開など気付かされる点も多いし。



447VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 21:22:55.17Jcg6OCX/0 (2/2)

>>444
>短文を隙間無く詰め込む手法
すいません携帯だからです手法なんて大層なもんじゃないです
今パソコンから見たら、うへっ見づれえwwwwwwって思いましたorz
缶を手に取った描写がないから、どうしても急になってしまいますもんね
えっなんでいきなりプルタブ開けてるの?
って感じに。ってわかってるなら投下する前に直せってゆー
叙情的は意味がわからなくて調べました馬鹿すぎオワタwwwwww
勉強になりました


448VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 21:33:00.54E4eg+KHMo (15/15)

>>444
感想どうも
>文の間に改行がない
それはきっと書き方・形式の違いかと
俺の場合改行は読みやすさを考慮して要所(台詞と地の文の間など)に入れるだけで大きく区切る意味合いはない
だから隣り合っていようが別の台詞は別の台詞、という形式


449VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/08(日) 21:39:21.61qgMhGmAUo (7/9)

>>あと、自分の本来のSS活動がちゃんと出来ている人のみ参加してほしい。

1年以上書いてない半引退状態で、リハビリ代わりに参加させてもらったんだけど
俺みたいなのは出入り禁止?


450VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 21:49:38.26OjqT9Wng0 (7/14)

確かに楽しいと思う。それに収獲もたくさんあるとも思う。
ただここで短編SSを書くことに没頭して自分の書いていたSSが放置されるようであれば、
それは個人的にとても悲しい。元々SSが好きで自分も書き始めた訳で。

皆が一本書きあげたSSを読ませてほしい。中途半端はいくない。


“何か”を書きたくてSSを書き始めたのならそれを完了させてから。
もしくは>>446のように余裕をもって参加してくれるとうれしいなと思います。

>>449
>俺みたいなのは出入り禁止?
まさか!歓迎に決まってんだろ。言わせんな恥ずかしい。
まぁ、物事を決める時なんかは冷静な態度でいてほしいけどな。
でも辛口感想はいいと思うんだぜ。thx!


451VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 22:03:01.12Xltx0Fp8o (7/7)

金曜24時(土曜0時)安価
日曜24時(月曜0時)投下締め切り
次の安価の日まで感想

>>243で書いたのとほぼ同じだけど、俺的にはこんな感じがいいかなあ
これ以上期間が延びるなら、一人1作品縛りだとちょっと寂しい
後、お題の間隔が二週空くと廃れそう

>>449
俺なんてここ来るまでNIPでは読み専だったぐらいだからいいんでね?
長編向けのネタばかり浮かぶのに長編が書けないからなんだがorz


452VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 22:05:39.26OjqT9Wng0 (8/14)

>>446
>期間が1週間ならせめて二本目もいきたい

二本目……。どうだろうな。でも2つ書いたら感想は4つだな。
どういても書きたい?魅力的なお題が2つあればそう思うかな?


453VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/08(日) 22:12:42.04qgMhGmAUo (8/9)

別に毎回参加する義務があるわけでもないし、3日に1回くらいでも良いと思うけどな
書く時間だってそんなにかからないだろうし(俺の場合は40分程)


454VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 22:17:05.57OjqT9Wng0 (9/14)

>>451
期間についてはそんな感じだな。そのレス見逃してたわ。スマソ。
それでいて感想についてはいつでも受付でいいと思う。
更新期間が一週間以上になることはないと思う。

なんというか、ちょっと物足りないと感じるくらいの方がいいように思うんだが。
おもしろいし、収獲もあるけど週一でしかない。みたいな。


455VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 22:29:33.93OjqT9Wng0 (10/14)

>>453
自制……出来るのであれば。
ただこの企画が始まってから自分の書いてるSSがほとんど進んでない人もいるんでないかなーと。

なんとなく気になって覗いちゃうでしょ?皆が書いてるでしょ?必ず感想もらえるでしょ?
書きこんじゃうんだなー、これが。 
と推測。


456VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/08(日) 22:29:56.72qgMhGmAUo (9/9)

>>454
なるほどね。
短いスパンで継続する事によって生じる中毒性ではなく
期間をおく事でわくわく感を煽る方法も良いかな。
製作者スレ過疎ってるし。



457VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/08(日) 22:58:02.99vpgjN6aAO (9/9)

>>452
>魅力的なお題が二つあれば~
どうしてもというか、そういうケースもあるんじゃないかなぁ、ぐらい。
無論、意見を募って当面禁止と決まったらそれに不服を唱える気はないのよ

>>456
住み分けしたからにはね、進行速度に差がつくのは予想の範疇じゃまいかん。
別に過疎って程では……今日だけで20くらい進んでるし、平常運転でしょ>作者スレ

にしても一本40分は凄い。
357なんかは、お題に当てはまる思い付きまでに数時間、打ち込みとチェックだけでも3時間はかかった始末



458VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 23:09:43.08OjqT9Wng0 (11/14)

>>457
過大解釈したかも。スマソ。

>思い付きまでに数時間、打ち込みとチェックだけでも3時間
そのレスよんで、やっぱ一人一作の方でいいように思えてきた。
まぁお題によっては違うんだろうけど。


459VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 23:10:33.55OjqT9Wng0 (12/14)

>>457
過大解釈したかも。スマソ。

>思い付きまでに数時間、打ち込みとチェックだけでも3時間
そのレスよんで、やっぱ一人一作の方でいいように思えてきた。
まぁお題によっては違うんだろうけど。


460VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 23:10:58.50OjqT9Wng0 (13/14)

>>457
過大解釈したかも。スマソ。

>思い付きまでに数時間、打ち込みとチェックだけでも3時間
そのレスよんで、やっぱ一人一作の方でいいように思えてきた。
まぁお題によっては違うんだろうけど。


461VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 23:11:00.49XyOaFpaDO (13/14)

というかあと一時間な件
今日あんま投下されてないなってことでage


462VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/08(日) 23:29:01.23xhrF3EpD0 (7/7)

110 7
160 10
260 8
こんなもんなんじゃないかなー
バトル物続いたし

つか、重いな。>板


463VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 23:45:22.60XyOaFpaDO (14/14)

今回二日間の執筆期間だったからもっとあるかと……こんなもんか
ほんとに板重いな


464VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/08(日) 23:55:44.45OjqT9Wng0 (14/14)

駄目だ三分の二まで出来たが間に合わない。くそぅ


465VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/08(日) 23:59:21.47xhrF3EpDo (1/1)

最終的に決まったのは二時だしな
まだ二時間あるぞw

どうせ次は木曜まであくんだし


466VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 00:01:13.49q5tH1DIDO (1/5)

締め切り

……かな?


467VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 00:03:32.49ATJRImYG0 (1/13)

すまん。構わず締め切ってくれ。


468VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 00:07:41.41q5tH1DIDO (2/5)

じゃあ一応締め切りで
>>467は午前2時までに投下できそうだったら、投下しちゃおうぜ!
ってことで感想タイムです
今回のSSは>>445にまとめてあるよ!


469VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 00:58:53.06ATJRImYG0 (2/13)

お題+台詞形式のみという自分ルール発動。パクリという名のおまーじゅ。ほぼ二次創作に近い。またしてもひどい出来だ。

>>260
「まてっ!」
『お前は……さっきの屋敷のやつか。追いかけてきたのか?どうやって?』

「貴様っ!屋敷から盗ったものを返してもらおう。貴様が盗ったその赤い石は先生が後生大事にしていたものだ!
絶対に渡すわけにはいかない。返せっ!素直に返す気がないのなら……力ずくでもっ!」
『おっと!そう言うなって。お前じゃこれの価値は分からないだろう?俺が有効活用してやるって』

「ちょこまかと!お前がそれの何を知ってる!それは博士の形見で私にとって大事な物だっ」
『ああ、お前にとっても大事なものだろうよ。何せこれはお前を創り出した親のようなものだからなぁ。ふふふ』

「は?何を言って」
『まぁ、黙って聞けよ。お前これがなんて呼ばれてるか知ってるか?』

「そんなことどうでもっ!」
『よくないんだなぁ、これが。これはな、賢者の石と一般的には呼ばれている』

「そんな名前聞いたこともない。デタラメでうやむやに出来るとでもっ!」
『思ってない。ちょっと黙れ。一般的とは言っても一般人は知るはずもないんだが。
この石があればあるものが作れるため裏社会ではかなりの高値で取引されているものだ。
そのあるものとは……人間』

「……は?」
『人間を作るためには、材料がいる。その材料とは生きた人間。一人の人間を作るのに必要なその数は約20人。
これで作られた人間をホムンクルスという。石を核にして犠牲になる20人の体のパーツを寄せ集めて作られる』

「…話を聞いたのが無駄だったようだ」
『そうかい。でも一つだけ答えろ。お前、月に一度だけ寝る部屋が違ってたりしなかったか?幼少期の記憶は?』

「……今はそんなことどうでも」
『さっきの話は途中だ。作ったあと生命を維持するためにはまた人間が必要になる。月に一回体のどこかを交換しないといけない。
まぁこれは死んでいてもいいが。例えば臓器だけとか。あともちろん幼少期の記憶もない』

「私がそれだとでも?そのほむなんとかって奴に。馬鹿馬鹿しい。幼少のころの事はかなり曖昧だが全く記憶が無いわけじゃない」
『それがお前のものならな。お前、たまに自分の記憶ではない記憶を見る事が無いか?』

「!そ、それは夢のようなもので誰でもあることだと…」
『先生が言っていたか?』

「し、しかし証拠など無いだろう!もういい!憲兵に」
『それは“元になった”人間の記憶。…しかし、まぁいいぜ。どうしてもというなら証拠を!』

どちゅ

「!―――がはっ」
『見せてやる』

「!!なっ……!」
『さて、心臓を貫いたから普通の人間なら即死のはずだが……生きてるな?それはお前の核が心臓ではないからだ」

「くっ………くぅ」
『ふっ。いい眼だ。その絶望した眼が見たいがために長々と説明してやったんだからな。くくくっ。
無様な姿だ。めそめそと。いっそここで殺してやった方がお前の為だなぁ?え?』

「…………う、うぅ」
『――だが俺は殺してやらない」

「!な、なぜ」
『その方がお前は苦しむだろう?先生様が今まで交換の儀式をしていただろうが、それはもう無理だ。だがお前が直接食えば同じこと。
生きてみろよ。そうすれば再び俺と出会うこともあるだろう」ダッ

『ふははは!生きろ!そしてまた会おうぜ!―――兄弟!!」


470VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 01:01:03.37ATJRImYG0 (3/13)

遅れて出しておいてさらに訂正。スマン。
五行目 博士 → 先生


471VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 01:04:01.26ATJRImYG0 (4/13)

訂正箇所が多くありすぎて訂正出来ない。もういいや。台詞の入れ忘れもあるし。
酷評頼む。


472VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/09(月) 01:25:52.57TPF3J+Mf0 (1/1)

取り合えず不自然なまでの説明口調が気になった。
読者側には、少し匂わせるぐらいでいいんじゃないか?


473VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 01:37:40.34ATJRImYG0 (5/13)

>>472
焦ってたから作ってる時は気がつかなかったけどたしかにこれはひどい。
もうね、何か何やら。

前に台詞形式に挑戦しようとして結局出来なかったから今回そうした訳だけど、
全く情報が入れられずにこうなってしまった。もうやらない。

少し匂わせるようとすると、必ず後になにかしらの形で地の文を入れなくちゃいけなくなって
一度全没にした。そんで開き直ってキャラに説明させた。開き直るべきじゃなかった。


474VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 02:17:42.91m2aVdA3AO (1/1)

正式に感想期間ということで、個々へのとは別に今回の一連を振り返ってみる。

>優等生vsアンチヒーロー

が提示されたお題なわけだけど、前者にヒーローを据えたものが多かった。対比が際立つからだろう。
そんな中で主人公を(ヒーロー然としてない)優等生という限られた条件に止めた>>372が光る。
また>>391も、変身ヒーローだが、それ以上にいかにもな優等生らしさが焦燥という形でよく表されている。

次にアンチヒーロー。
情状酌量の余地や、悲しい背景を持つものが目立つ。それはそれで各人趣き深くあり、
ただ、一読して倒されるべきと認識される悪役がもっと配されてもよかったかも。
彼にはこんな同情に値する背景があった……なんてのはキャラの掘り下げとして有意義に違いないにしろ、
時には対決のカタルシスを妨げ、興醒め要因になりかねない諸刃の剣。
魅力的な悪役を描くことの困難さが浮き彫りになったんじゃなかろうか。
>>415は悪役でこそないが異彩を放った。
世界の大事より自身の大事を優先する、アンチヒロイズムの一種の典型を見た気がする。


自分のイメージでは優等生的な思考こそアンチヒロイズムに結び付きやすかったので、
今回相対するものと課題されたのはかなり刺激的でwktkだった。

ヒーロー幻想への苦悩を滲ませるヒーローを描いた>>368
表向き完全なヒーローたらんとするあまり、害悪の排除に一切の情けをかけないヒーローを描いた>>378
信じるものの掲げた正義を守り通すため、阻むものは肉親でも討つ護衛者を描いた>>384

どれも見方を変えればアンチヒロイズムを内包していて、
そのアンバランスさがとても気にかかるキャラだった。


最後に、「寸止め」を最も粋なかたちで見せてくれた>>376に賛辞を送って、〆としたい。

皆お疲れさまでした

追記>>469
タイムラグがあったので上記に感想を含めなかった。ごめんよ。
後で読んでから改めてレスさせてもらおう



475VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 02:35:13.88ATJRImYG0 (6/13)

まとめ乙。こういうのいいな。締まりがでる。

今回は書くよりも読むことで勉強になった。
>>474後だしになってスマン。


476VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 03:15:10.13bhUKo3810 (1/2)


上手い事まとまらなくて間に合わなかったか……次頑張ろう
では、自分も幾つか感想を

>>378
ヒーロー、というよりサラリーマンの哀愁が伝わってくる、良い文章だと思いました。
けどせっかく間違って炭酸を買わせたのだから、炭酸を小道具として使うともっと雰囲気が出せると思います。
例えば、炭酸の刺激の良さをあるべきヒーローのカッコよさに例えて、主人公にはその味が舌に触った、とか。

まぁ、ありきたりっちゃありきたりかも知れませんが。


>>384
主人公のやるせなさが伝わってくる、読みやすい文章だと思います。

>「あいつに死んでほしいなら、同じくらい[ピーーー]と望まれるって知った方がいい」
>「そうか」
この二つの台詞の間に地の文を挟んで、主人公以外に誰かがいる事を表現した方がいいかも。
というか、対峙している相手の描写が少なく、実態が掴めない。
なんとなく幽霊と戦っている感じがした。
死体があるのだからそうでない事は明らかだけど。


>>391
どの台詞を誰が言っているのか、ちょっと分かりづらい。
地の文が、戦闘を拒否するヒーローの動作をほとんど説明していないから、状況が想像しにくいのだと思う。
設定自体は、物語の背景が気になる興味深いものでした。


>>415
かなり完成度が高いです。
なので、重箱の隅をつつくような指摘になってしまいます。 ご容赦を。

>視界を横切る影を追う、が捉えられない
金髪はジャンプ、つまり縦方向に移動したのに、『視界を横切る影』というのはミスだと思います。
この一文からでは、私は、金髪が横方向に駆け出したと思いました。
しかし舞台となっているのは薄暗い路地裏、とてもそんな横幅があると思えないので違和感が残り、
後で『着地した』と説明されて、そこでジャンプしたのだと分かりました。
なので金髪がサイボーグさんの視界から消えてから、どんな風に移動したのか――それこそ
『壁を蹴り上げ跳躍した』などと――描写できるとよくなると思います。

>彼がまだ立ちすくんでいる間に、男は誕生日パーティーへと~
サイボーグさんが押し倒されてから、立ち上がった描写が無いのが引っかかりました。


>>469
反省は次回に生かそうぜ。

SSは展開が急すぎる。
特に賢者の石の材料が人間であると明かすところ。 もっと間を取って雰囲気を作らなければ、
衝撃の事実でも驚けません。

同じように自分がホムンクルスだと知らされた男からも、驚きや動揺が伝わってきません。
男に荒唐無稽と笑い飛ばさせた後、続く泥棒の言葉に沈黙させる、などをして緊張感を作る必要があると感じます。




477VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 03:24:59.47bhUKo3810 (2/2)


感想ついてに、、遅まきながら>>160で書いたSSの感想に対する返事をお返します。
うっかり返事をしなかったものもあったもので、返事が遅くなって申し訳ありません。


>>221
>すんなりと頭に入らなく、
>いくつかつっかかるところが気になった。
国語力が足りないようです。 もっと自然な文章を心がけて練習します。


>>223
>「亜人」という言葉
化物のイメージの元がゲッターロボの爬虫人類だったので、『亜人』という表現になってしまいました。
和風な世界観を考えていたので、鬼や妖怪という表現の方が良かったかもしれません。


>>424
メートルに関しては考えていませんでした。
書いてて違和感があったけど流してしまっっていたので、参考になりました。

>「~た」の表現が多すぎて臨場感が薄らいでる
なんとなくリズムが単調になるとは思ってたけど、臨場感が薄らいでるとは気がつかなかった。
何が悪いのか、今まではぼんやりとして分からなかったけど、はっきりと意識することができました。
ありがとう。

>返り血や物音の継続などの方が場面に適した
確かに『血の雨が降った』じゃ安直ですね。
血の雨が降った事と本物の雨が降り続いている事から、血の雨が止まない事を表現したかったんですが……
これでも表現が足りてませんね。


助言だけでなく、皆さんからお褒めの言葉も沢山いただき、本当にありがとうございます。
いろいろと気付かされたことが多く、とても参考になりました。

失礼しました。



478VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/09(月) 03:52:43.131gxapWWro (1/2)

感想期間だけど参加者は粗方感想書いてるから
あとは参加者以外の人が感想を書いてくれるのを
木曜のお題決めまで待ってるだけなんだよね
ちょっと寂しい


479VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 16:02:41.27q5tH1DIDO (3/5)

>>474が格好良い
こんなまとめ感想書きたいけど、書ける気がしない

ってことで
俺なりのまとめ感想です

前回に続き、シリアスなものが多かったため
>>376は目立っていたように思う
自身戦闘描写が苦手なため、このように多くの戦闘描写を読めたのは勉強になった
…ほとんど書かれてしまっているため書くことがないな
普段自分からは書かないお題で書くというのは、難しい、けど面白かった


感想期間になると一気にレスが減ったな
何らか考えた方がいいのだろうか




480VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(佐賀県)2011/05/09(月) 16:07:35.169FzFkllso (1/1)

感想だけの時間ってのがやっぱダレるんじゃない?
ちゃんとログ追えてないけど、木曜までって長いと思う


481VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/05/09(月) 16:22:00.74mnNUx5vAO (1/1)

SS投下されたら、そのつど感想がついてかたらなぁ
投下されたSSの量も考えると、感想期間なくしてSS投下期間だけでもいいんじゃないかね


482VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 20:13:42.68q5tH1DIDO (4/5)

>>481
俺もそんな気がする……
それか執筆期間と感想期間を完璧に分離…ってそれは無理だな


483VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 21:01:07.53ATJRImYG0 (7/13)

そもそも感想期間は決めてなくて、いつでも受付という形だったからな。
今回は感想期間が設定されてたけど、最初は感想期間だけで時間を取るとは思ってなかったり。
感想期間をそれはそれでとると考えてた人が多そうだったのでそのままにしたけど。

まぁそれでもこの企画は週一でいいと思ってるんだが。


寂しい、ダレるとの事なんでちょっと考えてくる。


484VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/09(月) 21:15:49.45M+ix6CkD0 (1/4)

「感想期間」にどうしても意味を持たせたいなら
「執筆期間」と「投稿時間」を分けてしまえば良いんだけどね

金曜24時お題確定→土日執筆期間→作品投稿は月曜日中のみ→火水感想期間

あ、これは提案ではなく雑談な。手もある。ってだけでこうしたいわけじゃないw


485VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 21:31:59.25q5tH1DIDO (5/5)

執筆感想分けずに、
三-四日間くらいで回してもいいんじゃね?とも思ったり
一週間でも何日間でも、しばらくすれば毎回投下する人は少なくなるだろうし
自分のスレが疎かになることもあんまないんじゃねっていう雑談


486VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 22:10:57.37r348Nj1p0 (1/1)

流れ的には感想タイムが不要って感じだな
確かに感想のほとんどは執筆タイムの最中、作品が投下された直後に張られてる
それを考えると俺は作者側として>>484に大賛成だな
回す期間が長すぎるとダレたり過疎ったりするからその辺の調整はみんなでやろうや
全部のお題にすべての作者が執筆する必要はないから、三日四日でも大丈夫な気もする


487VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 22:20:29.90x7PRnOm9o (1/2)

執筆感想一緒にするならば、土日二日間の部と平日五日間の部に分けることを提案する
一人一作に限定すればなかなかいいペースだと思うし、曜日で今何やってるか分かるのは大きいのではないかと
あ、今月曜日だ、お題が決まってるはずだから久しぶりに参加してみるか、みたいな
まあ、ペースは人数に依存するし、提案の一つとして


488VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/09(月) 22:32:34.72M+ix6CkD0 (2/4)

ぽんぽんと雑談だけ出してく
まず、ここは「お題練習本スレ」にして安価は一つ。週一回開催 と決めちゃう
ここは絶対。揺るがない。

で、別スレで本スレ日程優先。まだやりたいなら
「絵(図?)を見て30~60分で一本。とにかく書けるところまで」とか
「安価三つまとめて一本書いてみれ」とか
「別スレだけど参加できる人だけでサイクル回すよー」とかを開催する手もある
「日ごろの練習法晒せ。皆で挑戦しようぜ」も面白いかも

あ、三題話に固執してる岩手が居るけどホントに雑談なので気にしないようにw
土日執筆でも隔週で参加できるかどうかくらいなんで

自分のスレ持ってる人が「練習に熱中し過ぎて書けない」とかは他の人が容喙する事ではないよね。うん


489VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 22:33:14.81x7PRnOm9o (2/2)

と思ったら曜日依存のやり方はもう>>484にあったな
よく読んでなかったスマソ


490VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 22:52:51.94ATJRImYG0 (8/13)

>>488
>ここは絶対。揺るがない。
週一で決定?FA?週二の案は別スレの話になったのか?
もうここでは検討しないということ?一応現行案をまとめようと思ってたんだが。

練習云々は個人的な考えを言いすぎた。スマソ。


491VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/09(月) 22:58:38.71M+ix6CkD0 (3/4)

>>490
落ち着いてくれ~。私はただ雑談してるだけなんだ~
やり方は色々あるんじゃね?って言ってるだけだなんだ~


492VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 23:02:47.32ATJRImYG0 (9/13)

ごめん。言い方がまずかった。問い詰めてるとかじゃないんだ。
二度目のスマン。一応自分用にまとめてもいい?


493VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/09(月) 23:12:21.76M+ix6CkD0 (4/4)

だなんだってなんだ~
落ち着いてないのは俺だったorz
>>492
取り敢えず金曜24時にお題決まるまでは
勝手に1サイクルやっちゃうのも、
進行方法をつめるのも自由だと思うんだ。
まとめてみれば良いと思うんだ。


494VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/09(月) 23:21:09.231gxapWWro (2/2)

みんな、好き勝手言ってるみたいなので俺も言ってみる。

勉強会とかイベントとかそういう大げさなものじゃなくて
勉強にもなる書き手のお遊びとして、もっと軽く考えてはどうだろうか?

・誰かが安価のレス番を決めて、お題を決める
・お題が決まってから48時間が書く時間
・感想はその都度、書いて行く
・感想が出尽くし、新しいお題に移りたい人が次の安価のレス番を決める
・以下繰り返し

決定事項は期間が48時間という事だけで、お題の数・条件・制限等は
言い出しっぺが、その都度決める。
締め切りを1,2時間過ぎても、まぁいいじゃんwwwのアバウトさで
もっと気楽にやってもいいんじゃないかなぁ。

言い出しっぺがいるという事は、仕切るつもりのやつがいるという事で
細かくルールを決めてそれに従うよりも、活発で積極的なスレになると思う。


495VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 23:30:55.99ATJRImYG0 (10/13)

>>493thx!

とりあえずお題更新のペースについて出てる案は、
1、4日‐3日(月火水木・金土日)日24時と木24時でお題更新

2、5日‐2日(月火水木金・土日)日24時と金24時でお題更新

3、セカンド別スレ(>>488)

4、執筆期間と感想期間とは別に「投稿期間」を作る(金曜24時お題確定→土日執筆期間→作品投稿は月曜日中のみ→火水感想期間 )

5、とりあえず週一更新(土24時お題更新)

更新とはお題の終了と次期お題の安価のこと。何かおかしいとこあったらおせーてー。
一応金曜までの暇つぶしと2の案の平日にできることなんかも考えた。

感想期間についてはそれだけで時間をとる必要はないかな、と思う。
その意見も多かったし、4の案以外はそれについては考慮してない。


496VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 23:31:25.57ATJRImYG0 (11/13)

>>493thx!

とりあえずお題更新のペースについて出てる案は、
1、4日‐3日(月火水木・金土日)日24時と木24時でお題更新

2、5日‐2日(月火水木金・土日)日24時と金24時でお題更新

3、セカンド別スレ(>>488)

4、執筆期間と感想期間とは別に「投稿期間」を作る(金曜24時お題確定→土日執筆期間→作品投稿は月曜日中のみ→火水感想期間 )

5、とりあえず週一更新(土24時お題更新)

更新とはお題の終了と次期お題の安価のこと。何かおかしいとこあったらおせーてー。
一応金曜までの暇つぶしと2の案の平日にできることなんかも考えた。

感想期間についてはそれだけで時間をとる必要はないかな、と思う。
その意見も多かったし、4の案以外はそれについては考慮してない。


497VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 23:32:34.51ATJRImYG0 (12/13)

今日もまた……重いです。連続スマソ


498VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/09(月) 23:58:20.61ATJRImYG0 (13/13)

>>494
アバウトさや気楽さについては同意。最初に目指してたものでもあるしな。
ただ俺はそれに加えてゆったりさも加えたいと思ってたり。

やっぱこのスレは自SSを書くための糧にしてほしい、という気持ちはあるしなぁ。
でもこれは個人的すぎるんだよなー。スレの人達の好きなようにやるべきだしな。

一応時間のある時に出来ること考えた。
・感想や指摘を元に手直しした先の短編SSを再投下。(ただこれは製作者スレでの実験でとりまナシって事になってる)

・さらに細かい、より具体的な添削、指摘。

・感想の解説(※要解説)

・自身の練習法公開。

・文章作成の基本、注意事項、タブー(禁止事項)について。ちょっと感想の解説と被る。


499VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 04:58:06.94ck0EfMcNo (1/5)

一応感想期間なのに何だろう、この出遅れ感…
辛口という名のいちゃもん感想。見当違いな事を言っていたら反論頼む

しかし最初から全体的なクオリティは高かった気がするけど
回を重ねる毎に更に増してってるな


>>384
> その時に気付く。先ほどまで気付かぬ微風が吹いていたことを。今は吹いていない。
> 意識を尖らせ、ようやくわかったこと。
意識を尖らせる以前の「気付かぬ微風」の存在を認識するのは少し変かな、と思った。
気になったのはそれ位。完成度高い

>>391
誰の視点か解り辛い。思考上での言葉と実際の口調が異なる場合は
同一人物であることをより強調しないと混乱してしまうかも(特に短編では)
既に指摘されているけど、特に3段落目の状況が解らない。特撮見ないからかもしれんが
後やっばり場面描写がもうちょっと欲しいかなあ

>>415
設定も解りやすくキャラも生き生きしてた。以下すごく細かいこと
>片方の人影――ベージュのコートを羽織り、~
この辺の説明がくどいかな、と思った。ダッシュ使わず普通に地の文に組み込んで
「ベージュのコートを羽織った人物が煩わしそうにry。
オールバックに固めた金髪をしきりに触りながら、かけたサングラス越しにry」とかの方がいいかも。
>あっさりと勝負はついた。~
「~た。」が三つ続いてるせいで説明的に見え過ぎるかも
>確か己のエゴのために
一文が長いので、流石にどっかに読点が一つぐらい欲しい

>>469
台本形式ってのは鉤括弧の前に名前が入れられてる形式の事だと思ってたから、一瞬「ん?」ってなった
感嘆符・疑問符の後に文章を続けるときは、符号の後ろにスペース入れる方が多分読みやすい
(台本形式でそこまできっちりやらなきゃいけないか、と聞かれても肯定しきれないのでお好みで)
二人のやり取りを1組ずつペアにして空白入れてるから、テンポが悪く感じる様な
一つの鉤括弧に内容を詰めすぎている感じがするので、今回のような鉤括弧で区別する形式だと
同じ発言者の鉤括弧を並べて分けてもよかったかなーと感じた
…これを全て鵜呑みにされると作風ががらりと変わってしまうと思うので、適当に取捨選択してください
どこまでオマージュしているのか解らないのだけれど、題材と展開は結構好き


500VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 05:24:52.23ck0EfMcNo (2/5)

次いで感想返し+α。レスサンクス! 今回も収穫沢山で勉強になった

>>414
今回は行数を心配しすぎてアクション描写を改行せずに詰めてしまったのも原因かもしれない
加えて「……」「……?」の類の鉤括弧を出来る限り避けたいタイプなせいで難しい…
アクションはやっぱりまだまだ試行錯誤しないといけないなー

>>425
うーん、言われてみれば確かに…
これでも何処其所を余計に変換しなくなった分、マシではあるのだけれどorz
漢字漢字した文章を読み書きするのが好きなせいかもしれません。檸檬がバイブル
スピード感のある場面では漢字比率を減らして、読ませる速度を意図的に調整するのもアリかもしれん…!
具体的に指摘いただいた二文も確かにおかしい…「襲い来る」「飛び掛かる」の距離感が似ているからか

>>474
なにこれ興味深い
当初「vsアンチヒーロー戦」という指定で取る予定だったものの折角だから指定しちまおう、と
「優等生」指定を付加したので、逆に思った以上にヒーロー物が多くて驚いたw
彼女取り合いリア充物が無かったのが内心ちょっと意外(>>368が近いけど)。層の問題か


501VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/10(火) 05:48:47.12yI0v9tfno (1/1)

優等生VSアンチヒーロー思考の持ち主との『戦闘』
第三者の直接介入禁止(『精霊などに力を借りて術を発動する感じのは可、召喚・使い魔の類は不可』)

この2行のせいで、優等生=ヒーローのバトル物になるのは当然の結果だと思うんだけど
なぜ彼女取り合いリア充物が書かれると思ったのか不思議でたまらない。



502VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 06:12:47.40ck0EfMcNo (3/5)

>(『精霊などに力を借りて術を発動する感じのは可、召喚・使い魔の類は不可』)
これ記述したのは飽くまで第三者が居ないという事の強調と
不特定の精霊から力を借りる系の魔法とはおkって事を言いたかったから
でもよく考えたら「場に二人しかいない」指定で事足りたw

お題出す時点で一応何パターンか想定してたけど
やっぱり「この発想は無かった!」てな話が殆どだったな。読んでいて面白かった


503VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 20:24:16.78kbQ57xxk0 (1/4)

まだ感想書いてない分を時間をかけて書いていく。
今回感想書きづらい。みんなうまいから。

>>368
人物の説明の書き方が好み。簡潔で無駄がない。余計な部分を全て削った感じ。
ただ戦闘描写にはちょっと削っている部分が多い気もした。もしくは言葉の選択かも。

>疾駆と共に
>反逆者は背中から無機質な翼を生みおとし、ヒーローは地面に縫い止められる

きれいな単語を戦闘描写の中で使いすぎるとリアリティが感じにくい。違和感を感じる人もいる。
一瞬で距離をつめ、とか地面に這いつくばる、のようなよく使われる言葉でもいいように思う。
読んでいて時間が常に一定で、読むスピードに緩急がもう少しほしいように感じた。


>>372
戦闘描写の地の文が丁寧すぎる。読んでるうちに文字を読む頭になって脳内イメージがぼやけてくる。
二文を一文にするくらいでちょうどいい。スピード感のある言葉を選んで、表現を立体的に。

また、別に気になった文。
>見失う訳にはいかない。
>瞬きをした隙に、だ。
この間はせめてもう一段改行がほしかった。

瞬きの隙ですら見失いかねない―――その思った刹那。

(ここに驚いたことがわかる表現)
背後の気配に気付く。

でもいいかも。


504VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 20:48:53.53KcY/SLGAO (1/2)

イッツァ感想ターイム

>>469
酷評とまではいかないけどチクチクさせてもらうよー

『追いかけてきたのか?』の直後の『どうやって?』が全く活きてないように見える。
盗賊の逃走経路が秘密の抜け道だったり、獣道だったり、果ては空路だったり?と空想を掻き立てられはするけど。
あるいは常人の足では到底追い付けない速さで屋敷から離れたのを遠回しに表現しようとしてるのかな?
答を設定してたなら、文中で回収されたかった。

些細な点ながら[舞台は暗い]が無いようなので、
会話の最初あたりに『こんな暗い中をご苦労なことだ』とでも添えれば
同時に盗賊キャラのシニカルさを自然と印象づけることも出来るかと。

>私がそれだとでも?そのほむなんとか

吹いた。
文字表記のおそろしさ、シリアスなやり取りなのに「ほむなんとか」で唐突に和みウェーブ。ほむほむ!ほわわ……

こんなところかなぁ。
最後の引きが強く今後のエピソードに期待をさせるのが上手い。



505VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 21:16:16.58ck0EfMcNo (4/5)

>>503
レスサンクス!
うーん、やはり課題はスピード感か…。文字を読む頭になってしまう、というのは盲点だった
形式的に追加で改行を入れるのは厳しいけど、他にもやりようあったなあ…と指摘頂いて気付いた。反省orz

しかし、特別意識していなかった自分ルールがいくつも見えてきた
直す直さないは別だけども、直さないものはもちっとその分頑張らないとな…

ところでダッシュは三点リードと一緒で2つセットで使うのが原則だと思ってたんだけども
ググったら三点リード程も言及されてなくて不安になってきた


506VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 21:24:21.15tptBKB2DO (1/2)

>>469
辛口で感想書かせていただきます
面白いし、ストーリー展開も好き
けど、台詞と台詞の間が繋がらない
不自然な会話に思える
特に最初の方の台詞の繋がりが急に感じる
一つの台詞が説明口調なせいかもしれない
長くなるかもしれないけれど、もっと会話文っぽくした方が良いかと




507VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 21:25:55.33tptBKB2DO (2/2)

俺もダッシュは2つで使うものだと思ってた


508VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 21:48:31.33kbQ57xxk0 (2/4)

>>504
thx!
全くうまく書けなかったことは自覚してるけど、すでに言われた通り反省は次に活かしていこうと思う。
>『どうやって?』が全く活きてないように見える。
その通りです。台詞入れ忘れました。。。
なんもいえねぇ。ちなみにもう一か所台詞入れ忘れてる。
ほむほむw変なテンションで書いたことを認めます。
>>476
まさしく、としか。描写はいつも分かりやすく書こうと思ってたんだけど。
とにかく入れづらい表現が多かった。次頑張る。thx!
>>499
形式は変なのかもしれん。普段こういった書き方しないからあまり詳しくない。ならやるな?その通り!
スペースも参考になる。鉤括弧も指摘された方が不自然さが和らぐように思う。
指摘してくれたとこは全部その通りだし参考にさせてもらう。thx!
オマージュは鋼の錬金術師で、賢者の石とホムンクルスの設定だけをパクリンチョ。
人の作り方は違うけど。まぁそこはSSには入れ忘れたけど!
>>506
書いた人間が読んでも不自然さMax。最後に行くまでに思ってたより行を消費していまい、急展開になった。
台詞だけだとやたら行数食う。お題にもよるだろうけどやっぱ短編では地の文が無いときついかも。thx!


むしろ三点リーダーを一つだけで使いたいと思う場面って結構ある。でも駄目となってるけど。
縦書きと横書きの違いは関係ないのかな。ダッシュを三つで使うことも多いんだけど。
――― ←これで見た目ちょうどいい長さに感じる。
――

…うぬぬ。……うぬぬ。
うぬぬ……。うぬぬ…。


509VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 22:00:37.17ck0EfMcNo (5/5)

俺もなんやかんやでレスや台本形式だと三点リードは一つにする方が多いな
文章ルールを優先するか、読みやすさを優先するかは人それぞれか
ここは前者を優先する人が多そうだけど

今回は投下時に小説形式って前置きしてたから指摘返ししちゃったけど
もし気分を害してしまったらすまなかった


510VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/10(火) 22:32:53.21KcY/SLGAO (2/2)

>三点リーダ

ごく短い間を表すって機能だけ重視するなら、敢えて一つで使われるケースは少なくないんでない?

いま自分のスレを見直したら六割から七割は単独で使ってた。
一人称だし、って影響も大きそう。

台詞やモノローグのちょっとした修正、
一瞬考え込むとき(まぁ…とか)、
困ってたり慌ててたり(うぅ…とか)、
感情の急激な盛り上がり、
目前の相手へ距離を取ろうとする、
絶句の表現、
嘆息、
欠伸、
照れ、
寝言、
弛緩、
(´・ω・`)


なんやかやで頻出してるなぁ…
原則破り甚だしい。



511VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 22:48:03.52kbQ57xxk0 (3/4)

擬音擬態語とかでも言えることだけど、なんにでも例外はあるからなぁ。
そもそもSSでそこまで畏まって書く必要はあるのかどうか分からないし。
もう好きに書くようにする。しちゃう。


512VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/10(火) 23:34:07.64kbQ57xxk0 (4/4)

>>376
他で言われてることを書かなかったら何も書くことがない。
おもしろかった。見事にバトルを回避したな。

>>378
どうでもいいと思えるほどむちゃ細かいけど、
>吐きそうになった溜息 → 吐き出しそうになった溜息
もしくは、前に“思わず”とあるのなら“思わず溜息を吐きだした”と書いた方が自然。

>コーラの写真。炭酸は、苦手だ。 
はPCから見ると改行がほしく見えるけど、携帯であることを考えれば脳内補完コースになるか。
少年が蹴りを入れるシーンのことは既に言われてるし、もうない。
文章が全体的に雰囲気にあっていてより内容を分かりやすくしている。こういう情景は好み。


>>384
「俺ぁ誰が死のうとかまわないと思ってる」 「ああ、誰も彼も死んじまえ。てめえも一緒だ消えちまえ」
を繋げて一文でもよかったかも。
他でも言われてるけど、「そうか」にもう少し余韻がほしかった。
口調や全体の雰囲気から銃士は少し汚いおっさんをイメージしてしまった。
きれいにまとまってる印象。


>>391
>これは、力だ。振るわれるための力だ。
>力は、振るわれなければならない。
振るわれる為のとは、何のために振るわれる力なのか。
助けるために振るわれるのか、悪者を倒す為の力なのかをはっきり書いてしまってもよかったかも。

変身からの攻撃なんかは結構書く人によっては字数を多くかけて書くけど、
これくらいあっさりしてる方がやはりイメージしやすさやスピード感を考えれば
ちょうどいいように思える。

正直にいうと「自分の嘘に気づいただろうか。或いは、僕の嘘に?」で 嘘がどのことが分からなかった。
最初に「それは、嘘だ」と言っていたところにかけているのかと考えたり。
アンチヒーローの嘘は「僕にはできない」なのだろうか?
ヒーロー(僕)の嘘とは、アンチの方に嘘を言っているようにも思えないから、むしろ自分に対する嘘なのか。


513VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/11(水) 14:06:07.21g/aTYjwIo (1/1)

次のお題決定までまだ一日あるし、アドバイスを受けて書き直したバージョンを投下するとか
俺ならこう書くとアレンジした物を投下してみる(書いた人が希望した場合のみ)とかどうだろう?


514VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/11(水) 15:14:12.03inbTGHVDO (1/2)

なるほど、勉強になりそうだな。
じゃあ試しに、
>>378をアレンジして投下してもらえると嬉しいです。



515VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/11(水) 15:17:59.21inbTGHVDO (2/2)

>>512
つきそうになった溜息のつもりで、
吐きそうと書いたんだが、
はきだしそう、の方が良さそうだな
蹴りは……本当に反省してます……
そういってもらえて嬉しい、ありがとうございます


516VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/05/11(水) 16:14:16.64Nn2GU1rS0 (1/2)

>>378
>>514

「仕事では随分と人気者なんだって?」

 久し振りに同窓会で会った友人に、そう言われたのを思い出す。真面目にやっているから、と返すと、変わらないなと苦笑いされた。
 俺の仕事はヒーローだ。
 ヒーローは、怪物を倒すことが仕事である。まだこの職についてから3ヶ月というところだが、業績は悪くない。
「君も慣れてきただろうから」という言葉と共に渡された1枚の辞令書に、自分のデスクに戻って目を通す。

「俺1人、か」

 無意識に出掛かった溜息を、慌てて呑み込む。

――――――――――――――
―――――――――

 幼稚園バスをジャックしかけた怪物らを、少々手間取りながらも撃退した。
 大勢の子供に感謝されながら、俺は夕陽を背負ってマニュアル通りの笑顔を作り、台詞を発する。

「"ヒーローのやるべきことをやっただけさ"」

 めいっぱい手を振る園児たちに手を振り返しながら、現場を離れた。
 こきり、と首を鳴らす。今日も疲れたので会社に戻る前に一息吐こうと自販機の前に立った。
 どうせ会社に戻れば無料で珈琲が飲めるのだからと、並んだボタンの間に指をふらふらと泳がせていたら、不意に背後から体当たりを食らった。
 つんのめった拍子にボタンを押してしまう。ガコン、と出てきたのはコーラの缶だった。――炭酸は、苦手なのだけど。
 舌打ちと共に苛立ちを隠さずに振り返ると、幼稚園児くらいの小さな男の子が立っていた。額には、小さな切り傷がある。
 その傷を見て、ようやく思い出す。1匹の怪物に人質のようにされていた少年だ。
 まだ残っていたのかと思いながら、背中にじわりと汗をかいた。
 やばい。舌打ちなんて"ヒーローのすること"ではない。慌てて、"ヒーローらしい"笑顔を作ってから話しかける。

「"どうしたんだい? もう悪い奴等はいないよ?"」

「うるさい! この悪党め!」

 悪党。
 ざらついた耳障りのする言葉に、思わず笑顔を崩してしまう。

「あの怪物は悪い奴だったかもしれないけど! 言ってたんだ! 本当はこんなことやりたくないって、だからっ……なのに!」

 顔がくしゃりと歪み、みるみるうちに目に涙が溜まっていく。
 それを否定するかのように大きく首を振る。拳を硬く握ったまま、ぐいと強く目元を拭った。

「~~っ」

 ガスッ、と思い切りすねを蹴り飛ばされる。
 男の子はキッと俺を睨みつけると、太陽の沈んでしまった方向へ向かって駆け出した。
 マニュアル通りの表情を浮かべることもできないまま、去っていく少年の背中を見送る。
 イレギュラーな状況に思考が追いつかない。目を細めてから一度強く瞑った後、自販機からコーラを取った。
 プルタブを開けた。ぷしゅ、と暢気な音がする。

「……そんなこと、言われてもなぁ」

 戦闘の際についた額の傷を、そっと指でなぞった。自販機に背中を預け、暗くなった空を仰ぐ。
 そういう仕事なんだよ、と誰にでもなく呟いてから、口にコーラを流し込んだ。
 妙に甘ったるいくせに、舌が痛い。
 炭酸は、嫌いだ。



517VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/05/11(水) 16:18:02.89Nn2GU1rS0 (2/2)

ちょっと縦に長くなったけど、こういうとこでは横に伸ばさない方が読みやすいっぽいので
多分読みやすさ重視。なんとなく若干雰囲気かわっちゃったのはごめん



518VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/11(水) 23:16:07.463+vV3/8E0 (1/2)

間開いちゃったけど作品感想とレス返し

>>469
当事者以外の「驚き役」「解説役」が出せないこのお題下で台詞のみ。
正直に、私は断念しました。厳しかったと思います。
お題は捕らえられていますし脳内では某ダークファンタジーな絵できちんと動いてくれました。
ただ、やはり「…」と「―」で「間」も表現していますが限度はありますね。
単純に台詞をもう少し区切ることでも「説明くささ」を抜けるのではないかと感じました。

>>444>>476>>499
とレス返しをしようと思ったんですが、言い訳しかでてこない。
感想ありがとうございました。とだけさせて頂いて

>>513に救われて改稿を投稿したく思います。
せめてものお礼代わり、と言いつつ俺得なだけですが読んで貰えれば。
改稿前58行(改行含む)
改稿後80行(改行含む)
改稿時間約1時間、です。

無しだったら無視でw


519VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/11(水) 23:16:53.073+vV3/8E0 (2/2)

「こんな所に居たんですか」
「うっわっっっっっっ!!」
敢えて在り来たりの言葉をかけた筈だった。
だのに、なんで飛びのいて、しかも水溜りに嵌るのか。
こいつは、どうしてもこんなに僕を苛立たせる。
大丈夫かと言い掛けた言葉を僕は飲み込んだ。
「山の中に潜めば、助けを呼ぶ声は聞こえないと思ったんですか」
「一日中じっとしていれば、誰からも見つけられない。そう思ったんですか」
「ヤツ等に、虫共に見つからなければ、殺されることもない?…………あの人のように」
矢継ぎ早に問いかけても、答えはない。
ただ、日没間近の弱い光の下でも、「あの人」という単語に肩が震えたのだけは分かった。
片足を泥水に浸して立ち尽くすその姿はとても頼りなげに見える。
それでも、僕はこいつを連れ戻さなければ。戦いの場に。
力は、振るわれなければならないのだから。

「誰でも生きていたいんですよ」
「虫共のやりたいように、ただ殺されて良い理由なんてないんですよ」
状況を変え、言葉を変え、何度同じ意味の言葉を繰り返したのだろう。
その度に返ってくるのは、暗い、見上げるような眼差し。
「力があるなら、抵抗しなければならないでしょう」
「力の無い人たちのためにも。…………何か言ったらどうです!」
つかつかと近寄り、叩くように肩を突き飛ばすと、そのままびしゃりと水溜りに尻餅をつく。
どうしてこんなにもなすがままなのか。
「僕よりも、あの人よりも、君は強いでしょう。なのに!」
そうだ。本当はわかっているのだ。苛立つ理由。
こいつは自分に出来る事をしようとしない。
僕よりも力を持っているくせに振るおうともしない。

「…………ない」
何かを否定した声は小さ過ぎて聞きとれなかった。
「…………」
「ぼくには、できない」
無言の視線が効いたのか。今度は辛うじて僕の耳に届く。
「…………」
「そんなことをするくらいなら死んだほうが、マシ」
目の前が、かっと赤くなった。
「それは、嘘だ」
「それだけは、嘘だ」
感情のままに言葉が重なる。
「証明してやるよ!」
自分が裂けるように目を見開いているのがわかる。
そのままつり上がった目尻が裂けていくような感覚。
「変身!」
憤怒の形相がそのまま仮面となり、異形の甲冑が僕の身を包む。
これは、力だ。振るわれるための力だ。
「インパクト!」
赤熱した感情のままに右拳を振り下ろす。
「ここで、消えてしまえ!」

「死にたく、ない」
「まだ、死にたく、ない」
滂沱と頬を流れる涙。そして、その涙の流れのままに顔が割れていくのが見える。
「変、身」
瞬間、悲哀の仮面が姿を現し、
「インパクト」
へたり込んだままの姿勢からただ振るわれただけの左腕が僕の拳を弾く。
「クロス、インパクト」
冴え冴えと青く光った右の拳が突き出されてくる。
肩を狙っているのは分かるが反応できない。当たって、しまう。

「「!!」」
衝撃を覚悟した瞬間に聞き覚えのある羽音が聴覚を揺らす。
僕を吹き飛ばす直前だった拳がひかれた。
情け?優しさ?
「ごめん。行って、ください」
違う。こいつも感じたんだ。
僕らには聞こえる音。虫共が人を襲う時にたてる喜悦の羽音。
拳を引いた不自然な姿勢から、真直ぐに僕の目を見返してくる。
「嘘吐き。どこが死んだほうがマシだ。僕は間に合わなかったぞ」
「ごめん。…………ごめん」
「僕だけ行かせる気ですか?」
「嘘吐きは……………………ごめん」
僕をしっかり見上げていた視線が落とされる。
差し出した僕の手は無視され、へたり込んだ姿勢から足の力だけを使って跳ばれた。
重ねて、跳躍される。もう、追えない。
「誰だって死にたくないんだよ。だから一緒に」
踵を返して走り去る背に、叫んだ声は届いただろうか。
自分の気持ちに気づいてくれただろうか。
嘘吐きは…………。僕?
いや、でも、そうだ。僕は行かなければ。力は、振るわれなければ。


520VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 00:08:21.17zs0pwo/DO (1/9)

感想期間終了
安価お願いします


521VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 00:13:49.61zs0pwo/DO (2/9)

age


522VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/12(木) 00:19:53.902mRi92os0 (1/4)

一応の流れとしては次は金曜24時だと思ったんだが。

お願いしますじゃなくて>>520が仕切って始めてるならありかもよ?
ただ、その場合48時間で行くとか、ここから執筆3感想2でとか宣言も込みでな


523VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 00:25:19.95zs0pwo/DO (3/9)

あれそれって次からじゃなかったっけ?
今回はとりあえず最初に決めた通り執筆2感想3でやるものかと思ってた
雑談が多いせいか、混乱するな



524VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/12(木) 00:30:09.25lukllWKZo (1/4)

>>519
間違いなく改稿前の方が良かった。
冒頭の台詞が地味になってる分、つかみも弱くなってる。
予備知識があるのを前提にしたような話の書き方で
読む側に対する考慮が欠けているのではないだろうか。
『振るわれなければ』という力に従属しているようにも取れる書き方をするのであれば
望まぬ力を無理矢理与えられたという類の描写が必要だったと思う。


525VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/12(木) 00:31:20.982mRi92os0 (2/4)

主に雑談の犯人は俺だが、実は俺もよく分からん
よってやる気があってそのとき出来るやつが仕切れば良いのではないかという雑談


526VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 00:39:49.81zs0pwo/DO (4/9)

なるほど


527VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/12(木) 00:43:47.072mRi92os0 (3/4)

>>524
お、レス㌧
今度はそっちに引っ張られたか。難しいなぁ。
「望まぬ力を与えられた」ところまで「仮面ライダー」的な予備知識に頼っていたつもりはなかったんだけど、
そのつもりで書いていたと言われても仕方ないな。


528VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 00:56:22.95ElXye05oo (1/7)

感想期間中の議論は読み流し程度にしか見てないから間違ってるかもだけど
俺も>>523と同じだと思ってた

前回のお題決定時の議論通り

・執筆期間2日(土曜0時)感想期間とりあえず暫定で3日
・安価三つ
・投下は一人一作まで
・投下した人は最低2つは感想書くこと推奨

以上で間違い無ければ勝手ながら安価出す
感想期間は開催間隔確定したら調整してくれい
週1にするんだったら平日二日固定だときつい気がするので


529VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 01:03:31.50ElXye05oo (2/7)

後ここからは俺の個人的意見なので、反映させるなら次回のがいいと思うしスルーしてくれてもおkだが
感想期間はアリにして、その期間に

・他人の作品のリメイク(投下時に許可する旨が書かれている場合)
・感想を受けての改稿
・書かなかった方のお題を用いたSS(お題が複数ある場合)

これらを投下してもいい事にしてはどうだろうか?
感想は投稿期間の作品優先で、それらに感想を付けた人が気が向けば付ける程度の扱いで
個人的には期間中は作品投下するのが精一杯なので感想期間ある方が楽でいいんだが…


530VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 01:03:47.47zs0pwo/DO (5/9)

感想期間を無くした方がいいって意見しかなかったからな
感想期間も執筆期間も一緒にしちゃっていいと思う
って勝手に俺が言っていいのかわからんが


531VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)2011/05/12(木) 01:04:06.672mRi92os0 (4/4)

>>528
・執筆期間2日(土曜0時)感想期間とりあえず暫定で3日
「土曜0時」を重視してた

でも仕切るんなら良いと思う
安価も用意してないし今回は感想参加になると思うが、やることは良い事だ


532VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 01:07:39.21zs0pwo/DO (6/9)

まぁ仕切ってくれるなら助かる
任せます


533VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 01:09:33.35ElXye05oo (3/7)

間違えた土曜0時“まで”、だよorz
正直週1派だから土曜0時安価の方がやりやすいんだけどね。でも少数派か…

議論纏めるのはちょっと環境的にきついので
空白期間が出るのを避ける為にとりあえず安価出す?程度の気持ちだったんだが



534VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 01:22:33.93ElXye05oo (4/7)

この状況で安価3つも埋まるか心配ではあるけど、とりあえず>>528の条件で安価
感想期間終了(=次回安価)は人の居そうな時間帯に議論してください
決まらなければ火曜0時安価で

>>536>>537>>538
安価取った後、10分以内にお題の指定が来なかった場合は再安価
(でも今まで通り安価自体にお題を書くこと推奨)


535VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 01:42:50.53zs0pwo/DO (7/9)

age
安価下


536VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 01:44:09.99zs0pwo/DO (8/9)


男女の別れ(人間に限らず)
年齢設定は中学生-高校生(またはそれに相当する年齢)は不可/それ以外は自由
必ず"ロボット"というキーワードを入れること(文中に意味合いを含ませるも可、あくまでキーワードとして使って下さい)



今まで戦闘ばかりだったので趣向を変えてみた




537VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 01:51:57.18ElXye05oo (5/7)

ううむ 時間的に埋まらんか

舞台は現代日本、時間帯は午後(0-12時)
男女(人間)最低一人ずつは登場させる事
「鳥」を登場させる事(種類は問わず)
登場人物に「勘違い」をさせる事


538VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 02:20:26.44Hnpqu1670 (1/3)


案外埋まらないものだな


舞台はカジノ
ブラックジャックでディーラーと勝負をする若い男
100ドルを賭け、配られたカードは絵札とエース以外の二枚
ディーラーの見せ札は10
三枚目のカードを引くか止めるか、男に問いかけるディーラー
男はしばらく無言を通し、やがてどちらかを選択する

・男の正体(金持ちか貧乏か、現地人か旅行者かなど)
・男にとっての100ドルの価値(擦ってしまっても構わない端た金か、なけなしの100ドルかなど)
・勝敗
これらは自由に設定してください

ただし、ディーラーの伏せ札はキングで、合計は20です

参考までに、ブラックジャックのルールについてwikiのページを貼っておく
http://p.tl/X3sa


539VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/12(木) 02:35:45.37lukllWKZo (2/4)

もうちょっと>>105を参考にしようよ
まあ、いいけどさ


540VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 02:36:45.71ElXye05oo (6/7)

時間が時間だからなあ
12時代に安価出来ればよかったんだが…

とりあえず>>536-538から好きなお題を一つ選択、投下は土曜0時迄
まあ安価遅かったし数時間ぐらいなら遅れてもいい気がする
平日だからあまり投下は無いかもしれんけど、それを含めての実験ということで


541VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 02:39:09.66ElXye05oo (7/7)

>>539
埋まるまで時間あったし文句あるなら自分で安価取ってくれよちくしょー
前回みたいに決めすぎてもきついから、良いお題出すのって結構難しいよ


542VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 02:43:54.79zs0pwo/DO (9/9)

>>539
あんな良いお題は難しい
ってか安価埋まるまで間隔随分あったんだし、そういうお題で安価取ってくれ



543VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 02:52:53.61Hnpqu1670 (2/3)

>>539
一応情景が浮かびやすいように設定したつもりだったけど的外れだったかな?
一レスに纏められる内容だとも思ったけど…


544VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/12(木) 02:56:46.65VnFX5bnUo (1/2)

>>538を書きたかったが男にもディーラーにもエースが使えないからキツくて挫折してしまった……
せめてディーラーの伏せ札が不明だったら……と思ったがお題スレだからなんとか頭ひねって書くわ


545VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/12(木) 03:07:05.41VnFX5bnUo (2/2)

男の二枚目は決まってないじゃないか
なんか早とちりしてたわ ごめん


546VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 03:30:01.88Hnpqu1670 (3/3)

>>545
男が三枚目のカードを引く場合、そのカードがなんであるかは自由に設定してください

それにしても少し条件が厳しすぎたか
お題出すのを甘く見てた…反省しなくちゃだな



547VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/12(木) 03:56:03.88lukllWKZo (3/4)

>>543
いや、君のはいいと思うよ
俺も暖めているネタはあるんだけど毎回タイミングを逃してしまう


548VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/12(木) 05:41:25.105xRXCSfho (1/1)

少年は、間違いなく彼女のことが好きだった。
愛。
年端も行かぬ彼の語るその言語に、どれだけの重みがあるだろうか。
それを幼稚な思い込みだと、ままごとの延長だと笑うものもいるかもしれない。
しかし、少年の想いは幼さ故に純粋なものだった。
その感情は堅く、他人の評価などに揺るがされはしない。
少年は、間違いなく彼女のことが好きだった。

「………………、どうして?」
ぽつり、と口をついて出たのは、単純な疑問の声。
それは確かに誰かへ宛てた言葉だったが、降りしきる雨の中、その声はあまりにもか細い。
だが、目は口ほどに物を言い――少年の見据える先、言葉の届かなかった「誰か」が反応を示す。
「――――――」
発されたのは、音。
少年の小さな声とは、まず根本を異にする、ただの音。
言葉未満のそれを耳にした少年は、とうとう感情を抑えきれなくなった。
「どうしてっ!」
堪らずに叫ぶ。
今度は、雨に負けないだけの声量で。
雨に負けないほどに涙を流しながら。
少年の胸中で錯綜する想いが、それぞれの粒に乗って流れ出、頬を伝う。
その中に、取り零してはいけない何かを見つけたような気がして、少年は慌てて涙を拭った。
「――――、ぁ、――」
不意に。
手が伸びる。「誰か」から、少年へ。
「え――?」
泣き濡れた少年の瞳が驚愕に見開かれる。
「―か、な――。泣か――で」
音が、次第に心を得てゆく。
それだけのことが、どれほどの無理か、少年は知っていた。
だから、こんこんと溢れる涙もそのままに、少年は「誰か」に縋りつく。
「誰か」――少年の愛した、彼女へ。
彼女は、伸ばした手を静かに少年の頭に置き、緩慢な動作で滑らせる。
「泣かないで」
彼女が言う。
少年が唸る。
――ノイズ混じりの、それでも充分に澄んだ声。
   内の歯車が覗く、それでも充分に柔らかな手。
   四肢のうち片腕と両脚を喪い、それでも充分に愛おしい人――
守りきれなかった。
守られてしまった。
幼い少年の心には確かな後悔が在り、それは容赦なく彼を苛んだ。
「なん、で、ぼく、なんかを、」
最後まで言い切ることは出来なかった。
身体の半分以上を砕かれてもなお絶やされなかった笑顔が、そこで始めて憂いを纏ったからだ。
「なんかじゃないよ」
彼女は優しく、諭すように言った。
「あなたはにんげんだから……あなたは、それだけで、なんかじゃ、ないから」
淡々と言葉を連ねる。
少年はただ嗚咽を繰り返すばかりだった。
「わたし、は、あ、な、たをま、もりたか、ったか、ら。わた、しは《言語化に失敗》、だから。わたし、は――あなたがだいすきだから」
静かに、彼女から零れ落ちてゆくものがあった。
砂のように、水のように、急速に彼女の中から喪われてゆくものがあった。
それを少年は止められない。世界中を探したとしても、それは誰にも止められない。
少年はそれを痛いほど知っている。彼女も、悲しいほど解っている。
だから彼女は、最期の最後まで、優しく微笑み、毅然として、さも当たり前のように、残酷なまでに不器用な言葉で、少年を悲しませないように、尽きかけた命で――

「わたしは、へいきだから」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

>>536で書いてみた

自己評価:長い。言葉を飾り過ぎている。もうちょっと地の文に湿り気が欲しい。ラストの一言への持って行き方が強引?
自己弁護:ただ、長編もののワンシーンとすればクライマックスにあたる箇所なので、多少の演出過多はやむなし?

ところでもう書いて問題なかった?まだだったらすまんこ



549VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/12(木) 12:37:22.85lukllWKZo (4/4)

硬いというか仰々しい等というか、文体のせいで主人公が子供に見えない
後、個人的で申し訳ないが死にネタは大嫌いだ
死が悲しくて泣けるのは当たり前で、死にネタで泣かせようとする意図が見えた時点で萎える



550名無しNIPPER2011/05/12(木) 21:13:49.11axH6+JKAO (1/2)

>>536

 「終わったかい?」
 と、ばあちゃんが聞いてくるので、俺はもう少しだ、と答える。
 俺は壊れたテレビを修理していた。俺にとって、機械の修理は自分の身体をいじることと同義だった。つまり、俺はロボットというわけだ。
 俺だって生まれつきロボットだったわけじゃない。小さい頃、親に捨てられて、組織に拾われた。そして、機械の身体に改造された。機械の身体は殺人に向いているからだ。
「ばあちゃん、終わったよ」
 俺はそう言ってテレビをつけてみせる。 「おっ悪いね、わたしゃ機械はわかんないからね」
 なぜだか、誇らしげにばあちゃんは言う。それにしてもばあちゃんとも今日でお別れだ。仕事でヘマして傷ついた俺を助けてくれたことには感謝している。
 「でも、テレビ直さない方が良かったんじゃないか?」
 「なんでだい?」
 「だって、ばあちゃんテレビつけたら、ずっと消さないだろ?環境に悪いつーの」 ばあちゃんはやれやれというような仕草をしてから、まくしたてる。
 「だいたい環境がなんだい。環境を悪くしたのは人間なんだよ、今さら環境をよくしたいなんて自分勝手だろ。ほんとに環境のためを考えるなら、絶滅するしかないんだよ」
 「ばあちゃんも人間だろ」
 「わたしゃ、もうじき死ぬからね、後のことなんて知らないんだよ」
 俺は苦笑するしかない。もう行くよ、俺はばあちゃんに別れを告げる。
 「あっ、ちょっと待っておくれ」
 玄関まで来たところでばあちゃんに呼び止められる。
 「言い忘れたことがあった」
 そこで、俺はばあちゃんが感動的な別れのセリフとか、また会えたらいいな、みたいな言葉を言い出すのかと少し思ってしまった。もちろん、それは綺麗に裏切られることになる。
 「さっきの話だけど、よく考えたら、あんただって人間だろ?」
 今さらそれかよ――俺は躊躇いもなく、組織の禁則事項を破る。
 「俺はロボットだぜ?」
 「そうかい、わたしゃ機械はよくわかんないんだよ」
 少しは驚いてくれよ、そう言って俺は外に出た。



―――こいつはもういらないな。俺は拳銃に弾が入ってないことを確認して、それをペットボトルの回収ボックスに押し込んだ。分別にご協力くださいと書いてあるのが目に入ったが気にしない。きっと、ばあちゃんは許してくれるだろう。
 環境なんて、そうまくしたてるばあちゃんの顔が浮かんできて、俺は笑う。


551名無しNIPPER2011/05/12(木) 21:16:20.15axH6+JKAO (2/2)

>>550

もしかして、男女の別れって恋愛限定だったかな。
読み返して思ったけど…
そうだったら、お題違いすいません。


552VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/12(木) 23:12:56.29u+UJadfto (1/3)

>>536
「夢も希望もねぇな」

二十代も半ばに差し掛かったフリーターもとい俺の口から漏れた言葉は、なんとも弱気なものだった。
工業高校を出て就職したはいいものの、不況の煽りを受けて仕事は会社ごとなくなって。
次の職を探すためハロワに通いつつ、コンビニバイトと日雇い派遣の仕事で生計を立てる毎日。
そんな俺の唯一と言っていい娯楽は、目の前のPCに表示された一つのソフトウェア。
―――初音ミク。

ビールを用意して、適当にシャッフルボタンを押す。
懐かしい曲がスピーカーから流れ出した。

『今日からはあなたがご主人様~♪』

高校生くらいの頃から何度も再生した曲だけれども、その輝きは当時感じたそれと全く変わっていない。
そういえば自分が工業高校に進んだのも、この子に影響されたからではなかったか。
はあ。思わず溜息が漏れる。あの頃の俺は、随分と色々な夢を持って生きていたっけ。
片手に握ったビール缶が、何故かとても軽く思えてしまって、そのまま一気に飲み干す。

「……ぐ、うっぷ」

せめてのストレス発散用にと買った酒なのに、それで気分が悪くなってるんじゃあ救いがない。
溜まりに溜まった疲労とストレスも手伝い、視界がぼやけ始めた所で、
何かおかしなことに気付いた。

パソコンの前に青い影。髪の色は青。髪の型はツインテール。
黒と灰を基調とした服に白い体を包み、ピンポイントにあしらわれた青は髪によく映えている。
そいつはこっちに視線を向けると、こんなことを言ってきた。

「マスター、遊びに行きましょう!」

俺は何を見ている?

**********************************************


553VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/12(木) 23:13:41.51u+UJadfto (2/3)


「いやー、楽しかったですねマスター!」
「あーすっげえ楽しかったな、特にミクが俺とジェットコースターを連結したせいであわや死にかけたアレとか」
「もうそれは何度も謝りましたからー」

人間の順応能力とは恐るべきものだ。結局あの後遊園地に出かけ、半日遊び倒して部屋に戻ってきた。
なんでミクが俺の部屋にとか、そんな些細な疑問はどうでもよく、ただこの夢のような時間を楽しんでいたかった。
そんなことを思いながら、台所で動き回るミクに目をやる。俺の視線に気付いたのか、満面の笑みと共に声が返ってきた。

「もうすぐできますから、待っててくださいね」
「いい匂いだな、何かすることないか」
「じゃあ、お皿出してもらっていいですか? その大きい奴を一枚お願いします」
「あいよ」

しまいこんでいた大皿を一枚出し、渡す。
ありがとうございます~と言いながら受け取ったミクは、台所へ向き直る動作の中派手にずっこけた。

「ふぇえええええええん」
「ああほら、怪我してねーか? あとはやるから湿布でも貼っておけ」

割れた皿を片付け、慣れない手つきでおかずを盛り付ける。
あまりに俺の手際が悪かったため、結局手伝ってもらう羽目になり、文句を言われてしまったが。
それよりもう、腹が減ってしょうがないんだ。盛り付けのことはもういいだろ。
そう伝えると嬉しそうに、じゃあ食べましょう、と言ってくれた。

「いただきます」
「いただきます」

思えばそれを言うのも、とてつもなく久し振りで。
それを言う相手が目の前にいることが、どうしようもなく嬉しいと感じた次の瞬間、
頭痛に襲われた。


「あっ………………がっ……………………」

頭全体がグラグラと揺さぶられるような痛み。こらえきれず、床に転がった。
明滅する意識を必死に上へ向けると、そこには何かを悟ったようなミクが、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「晩御飯、食べてほしかったな」
 何を言ってるんだ。これくらい大したことない。

そう言おうとしたのに、口は全く動かず声も出ない。
ただそれでも、ミクに意思は伝わっているようで。

「ごめんなさい」
 どうして謝るんだ。

「歌うことしかできないはずの私が、こんなことをしようとしたから」
 こんなことってなんだよ。

「ただのボーカロイド、ソフトウェアにすぎないのに」
 俺の目の前にいるんだから、そんな訳ないだろ。

「今日あなたにzgjkf伝えた言葉も、感情も、ほとんどが詞kxとして曲としpkrsて私に打ち込まれたもの」
 …………。

「作ghtられて4年も経っていなfhjyい私には、それが限界で」
 ……。

「それhhzjyrsでも、楽gdwwrsしかgzったです」
 …。

俺の言葉をあざ笑うように、ミクの姿がぶれる。声にはノイズが混じりひどく割れる。
そんな馬鹿な話があるかと憤ろうにも、体は動かず、さらに頭痛は酷くなる。

『ありがとうございました、マスター。 さようなら』

無理やりに笑顔を繕って、彼女は悲しみに満ちた声を発する。ほとんど聞き取ることはできなかったが、唇から無理やり読み取った。
その一声を皮切りに、世界はめちゃくちゃに歪む。苦痛は全身に広がる。痛覚以外の感覚が消えた。
だがそれでも、最後の一瞬まで俺は目を開け続けた。たった一つの思いを全力で込めて。


―――目を覚ましてみれば、そこはいつもの俺の部屋で、ビール缶を左手に握り潰していた。
そいつをゴミ箱に放り投げ、ついでに大皿を一枚叩き割ると、ロボット工学を専門に扱う研究機関を全力で調べ始める。
君がただのソフトウェアで、意思を表出させる術を持たないというのなら。
君の感情を表現するためのハードウェアを、君の体を、作り上げてやる。
かつての夢と希望を取り戻した俺に、不可能への恐怖は欠片もない。
パソコンから流れる歌声はいつもと変わらないはずだけれども、なぜかどこか、嬉しそうに聞こえた。


554VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/12(木) 23:16:24.56u+UJadfto (3/3)

>>552-553
2レスになってしまったので悩みましたが、どう推敲しても減らなかったので投下してしまいました
何よりも量がまず問題なので、削れる所のアドバイスがあればお願いします
全体としては丁寧な心情描写を意識しています。ミクさんかわいい


555VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/13(金) 04:29:14.94BC5nwiYI0 (1/4)

ちょっと初心に戻って書いてみた。>>537


 カツ カツ カツ

階段を登る。一歩一歩を踏みしめて。

 カツ カツ カツ

男性は登る。大好きな歌を口ずさみながら。

 “いま 私の 願いごとが”

   “かなうならば 翼がほしい”

男性の年齢をこの長い階段を登ることは考えれば楽な事ではない。すでに何百段と登ってきて、体力的には相当きついだろう。
それでも男性は歌うことをやめない。もうすぐ屋上だと思うと、気分が昂って仕方ないのだ。

 “この背中に 鳥 のように”

   “白い翼 つけてください”

決してうまくはない。しかしその歌声はどこか耳を傾けたくなる、そんな声だった。

「ふぅ。やっと屋上か。風が強いな」

「だが、やはりここから見える夜景はまさに絶景だな」

カンカンカンカンカンカンッ
たった今男性が登ってきた階段をまた誰かが登ってくる音がする。しかし、こちらは先ほどとは違い、急ぎ足で。

「社長っ!!」

「もう“社長”ではないよ。
 ……君か。どうしたのかね?」

「どうしたもこうしたもっ。社長が『今まで世話になった』と置手紙をして突然いなくなるからっ!
 私はてっきり!てっきり…………。その、心配しましたよ」

「それはすまなかった。つい心の赴くままにな。……ところで君は何を使ってここまできたのかね?」

「はい?ええっと、途中までエレベーターで。途中からは階段も結構使いましたけど」

「いかんなぁ。君は私よりも若いんだから階段を使わなきゃ。私なんて30階から階段を使ってここまで登ってきたぞ。
 まぁ、でも私がここにいるとよくわかったな。さすがは私の秘書だ」

それだけ言って男性は再び夜景に向き直ってしまった。
女性の方からはその顔をうかがい知ることは出来ない。

「社長は高い所が好きですから」

「ああ、私は高い所が好きだ。あらゆることに置いて、な。

 ―――しかし、今、私は富とか名誉ならばいらないけれど、翼がほしい」

自らの力で積み上げ、ここまで登り詰めた。その道中は決して楽なものではなく、
孤独で、冷たく、静かで、それらはまさに“試練”であった。
そして登り詰めた者だけに見える景色を前にして、男性は何を思い、何を感じたのか。
それは誰もわからない。
最後に彼は、ただ一言呟いた。


       綺麗だ、と





556VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/13(金) 04:34:20.81BC5nwiYI0 (2/4)

訂正 ちょっと直し忘れてる。

>「はい?ええっと、途中までエレベーターで。途中からは階段も結構使いましたけど」

 「はい?ええっと、途中までエレベーターで。ここに来るまでは階段も結構使いましたけど」


557VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/13(金) 05:06:08.05BC5nwiYI0 (3/4)

また台詞入れ忘れてる。もういいや。今度から推敲してから投下するようにすれば。
指摘するとこ満載だけど、感想おねげーします。


558VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/13(金) 17:25:12.99Dyvt0nRJ0 (1/1)

男性の年齢を~ってところ、
文の順番間違ってないか?
文脈から見るに、

男性の年齢をこの長い階段を~
     ↓     
この長い階段を登ることは男性の~

もしくは

男性の年齢を考えればこの~

だよな?


559VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/13(金) 20:05:05.07BC5nwiYI0 (4/4)

>>558
ホントだわ。変なとこで切り取ってある。
しかも「この長い階段を登ることは」はここに入れようとした文ですらない。
ごめんちゃい。thx!

>>555訂正
男性の年齢をこの長い階段を登ることは考えれば楽な事ではない。

男性の年齢を考えれば楽な事ではない。


560VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/13(金) 23:56:48.69f/l2UTrIo (1/1)

さっきお題の存在知ったんだけどもうまにあわねえおわた
執筆期間二日って短くないか……


561VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 00:02:49.16nwT+c+Kco (1/2)

とりあえず締め切りかな
安価遅かったからまだ書いてる人が居たら1,2時間ぐらい遅れてもおkだと思う

…安価出したからには書きたかったんだが、SSどころじゃない事態になって参加出来なかったorz
感想は明日書く


>>560
前々回(前回じゃない)お題決定時の議論を参考に日程出した
確かに平日だと2日はきついな…


562VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 00:03:34.98XBKolbrH0 (1/3)

ぎりぎりの滑り込み
お題は>>538で

--------

カジノの中は、むせ返るような熱気に満ちていた。
何千台ものスロットマシーンの音、コインの弾ける音、人々の歓声と落胆のざわめきが渦巻いている。
その渦の中、男はブラックジャックに興じていた。
若い男だった。 白いジャケットにジーンズを合わせ、ピカピカに磨かれた茶色の革靴を履いていた。
その革靴はカジノの薄暗い照明中で輝いていた。 恐らく革靴のつま先を覗き込めば、顔が映るであろう。

彼は長らく、ブラックジャックのテーブルに腰を据えていた。
彼はテーブルに対し斜めに、足を組んで座り、自慢の革靴を放り出している。
眉間にはシワがより、固く結んだ唇からは食事前のトラのような唸り声が上がった。

目の前で、ディーラーが手早くチップをさらっていった。 事前に交換したチップは、これで全て
失われた。 最早かけるべきチップは残っていない。


「ミスター、まだ続けますか?」


ディーラーが不敵に笑った。 男はジロリと視線を投げ返すと、ジャケットのポケットに手を滑らせた。
ポケットの中には一枚の100ドル札。 これは遊びの金ではなかった。 擦ってしまえば、明日の朝食すら賄えなくなってしまう。
動きを止めた男に、ディーラーは一瞥をくれカードをシャッフルした。

唐突に、歓声が上がった。
見ると隣のテーブルでは、金髪の美女がディーラーから大量のチップを渡され、それにうっとりとした視線を注いでいる。

美女が顔を上げた。 一瞬男と視線が交わり、彼女は軽くウインクを返した。

男はポカンと口を開けると、慌てて口の端を吊り上げて、笑った。 彼の眉が跳ね上がり、彼は
流れるようにジャケットから100ドル札を取り出すと、テーブルに叩きつけた。


「100ドルだ! これに賭ける!」


男は居住まいを正し、低い声で宣言した。 ディーラーは笑みを引っ込め、鋭い手捌きでカードを配る。
男の手札は9と8。 悪く無い手である。 十分に勝負に出られる手であった。

しかし、男の額に汗が滲んだ。 強い喉の渇きに襲われ、舌が歯茎に張り付いた。
ディーラーの見せ札は10。 その下の伏せ札が8以上であれば、彼は負ける。


「ミスター! カードを引きますか? それとも止めますか?」


ディーラーの低い声が、男の耳朶を叩いた。 ディーラーの視線は剃刀の刃であった。
男は縋るように隣のテーブルへ視線を投げた。 金髪の美女が、こちらに向けて笑みを浮かべている。
気付けば、男はテーブルを叩いていた。 即座にカードが滑り込まれる。 数字は……4。


「ぃよっしゃーっ!」


合計21。 男の勝利であった。
ディーラーが悔しそうに開いたカードはキング。 首の皮一枚でもぎ取った大金に、男は舞い上がった。
男はイスを回転させ、美女に視線をやった。 勝利の喜びを美女と分かち合いたかった。
それだけの金を、彼は手に入れたのだ。

不意に、彼の背後からスーツ姿の大男が現れた。 大男は彼の視線を遮り、美女へと近づいていく。
美女は立ち上がり、その大男へとしな垂れかかった。 大男が彼女の背に腕を回し、キスを落とした。


「ミスター、まだ続けますか?」


呆然と立ち尽くす白ジャケットに、ディーラーが声をかけた。


「……いえ、帰ります」


そう答えた男に、勝利の余韻は無かった。




563VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 00:25:03.81ZGDkyks00 (1/9)

あれ?もう〆切だっけ?感想まだ書けてねー。土日に書きます。
>>548

>>550

>>552-553

>>555

>>562
土曜日0時だから今か。

ただ、金曜24時土曜0時は一週間にお題二回更新ペースで都合のいいやり方というだけであって
別に今回このやり方に合わせなくちゃいけない訳ではないと思う。どっちにしても感想期間は
それはそれで時間をとるなら意味ないし。

今回の条件>>528
前回の議論では感想期間については触れられていない。その後の雑談で感想期間はあまり意味がないという
意見が多かったけど、特に何か決まったということはない。なので今回の条件でも感想期間については前回と
同じ3日間ということになった。

土日を感想期間にして消費するのはもったいない気がするんだけど……。

いっそのこと今お題更新してしまって、週二ペースにすることもできる。
ただ今人がいないな……。週一でいいと思う人がどれくらいいるかも分かんないし。
週一ペースについて発言していた人は自分で、あともう一人週一でといっていた人がいたが、
おそらく多くの人が週二ペースかそれ以上の更新ペースを支持していたと思う。

一応今は感想期間と言うことなので、このへんのことをこの土日にゆっくり決めていってもいいと思うんだが。


564VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 00:30:33.81ZGDkyks00 (2/9)

あげとく

せっかく安価考えて三つも出してもらったことを考えるとちょっと投下数が寂しいと思う所もあるだろうし、
その辺のことも話し合ってもいいんじゃないかと思う。

ちなみに更新ペースの案を一応まとめてある。
>>496


565VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 00:36:18.07nwT+c+Kco (2/2)

>>563
纏め乙、週1主張してたのは多分俺だな
感想三日は飽くまで暫定なので、人(特に仕切れる人)が居るようなら
昼辺りにでも安価出してもいいと思う、休日だし。


566VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 00:48:08.93/n1xdxbAO (1/2)

まとめおつ~
感想はまたあとで。

>496でいうと第一案か第二案が妥当なんじゃないかな



567VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 01:23:50.56ZGDkyks00 (3/9)

>>566みたいにわかりやすい意志表明がいくつかあれば仕切る人も楽なんでないかと。
自分は2の案で。

次回安価はできればあまり急がず、更新ペースがある程度決まってからの方がいいかも。

とりあえず前回の条件や方針に関するレスも引っ張っとく。
>>329
>>347
>>528

雑談とかの部分はざっと流し読みしておけたらいいかと。
仕切る人はあれこれ方針を積極的に出していった方がいいのかも。

今人いない感じだし、これらの事を考えるのは明日からだな。
明日になったらまた人が来ていますように……。いや来てくださいお願いします。


568VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 03:08:13.66XBKolbrH0 (2/3)


>>563
纏め乙、です
感想は後にさせてもらいます

>>496の2案に一票

それと、お題3つというのは多すぎたように感じる
>>537と>>538は一つずつしか書かれてないし、週二でお題を変更するなら、お題は一つにした方がいいかも



569VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/14(土) 04:03:37.44AaoBYo6Lo (1/4)

面倒くせぇ
今決めようぜ
期限は5/15(日)深夜2時
お題はひとつ
安価は572


570VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/14(土) 04:21:33.21AaoBYo6Lo (2/4)

ksk


571VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/14(土) 04:22:16.21AaoBYo6Lo (3/4)

ksk


572VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/14(土) 04:24:46.51AaoBYo6Lo (4/4)

昼下がりの公園
笑っている女
男が怒っている
女「関係ないでしょ」
男が声を荒げ、思わず拳を振り上げる
女の笑みが消え、男を睨み付ける
我に返った男が辛そうな顔で女を抱きしめる

幼女「なんであのおねえちゃん笑ってるのに泣いてるの?」
大人になれば分かると母親が微笑みながら答える


573VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)2011/05/14(土) 10:19:14.608D/3OGWAO (1/1)

>>496
2か5が良いと思う


574VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/14(土) 20:32:12.57MYTPLrPao (1/1)

>>548
結のシーンだけ切り抜いた感じですね
「、」「――」「……」などで台詞が頻繁に区切られてますけど
その一方で文全体の密度が高いために、ちょっと演出が噛み合ってない印象を受けました
個人的には、想像に任せるあるいは匂わせる程度に留める部分があってもいいと思います

>>550
主人公がロボットであること、ばあちゃんとお別れであること等の重要な要素が
いずれも文末にひょいっと書かれていたために、一読した時は読み飛ばしてしまいました。
あと最後ロボットが拳銃を捨てた理由がどうしても……
ばあちゃんの語り口にはいい雰囲気が出てると思います

>>555
>もうすぐ屋上だと思うと、気分が昂って仕方ないのだ。
ここの部分がナレーションなのに断定口調になっていて、あれ、と感じました
地の文が元社長視点かと思ってしまったので、ここは直した方がいいです

あと読点の後ろに三点リーダを続けると違和感の元になりやすいので、スペースなり入れた方がいいかと
有名な歌を元にして書かれただけあって、雰囲気や心情には馴染みやすいんですが
歌詞を台詞に残そうとするあまり、言い回しに違和感がある部分も見られました。

>>562
渋い雰囲気の主人公かと思いきや衝撃のラスト
序盤で作り上げた主人公のダークなイメージをさらっと崩して終わったお陰で
文全体になんとなくオチがつけられたような、肩透かしをくらったような
よく分からないけどやられたなあって感じですね
強いて言うなら、主人公の若さについては言及しない方がより序盤の重厚さが出るかなと思いました


人減っちゃったね…


575VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 20:36:28.77ZGDkyks00 (4/9)

感想
>>548
地の文を丁寧に書いたことがわかる。台詞もよく書けてると思うからすんなり感情移入できると思う。
演出過多を気にしてるようだが、自分で書いてある通りラストシーンならこれで問題ないと思う。

ただこのSSの評価はかなりシビアになると思う。なぜかというと、このようなシーンは定番王道だから。
誰もがどこかで一度は目にしたシーンで真新しさがない。どこかに一工夫ほしい所。でないと記憶に残らない。
人によっては途中で読むのをやめてしまうこともあるかも。

このシーンからさらにあれこれ付け加えてみるとか、設定変えてみるとか。
いろいろ考えてもっと発展させてほしい。


576VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 20:44:13.42ZGDkyks00 (5/9)

>>574
thx!どっちも自分がよくやる書く時の癖だ。
寝ぼけて書いてたし、今回はそれがより顕著に出たかも。
気をつけるようにする。

歌詞は男性風の口調にするかどうか結構迷った。
意見参考にさせてもらう。


今レスしろ、と言われても出来ないかも。
とりあえず淡々と感想書いてく。


577VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 21:08:35.69ZGDkyks00 (6/9)

>>550
もうちょっと書いてもいいんだぜ。銃を捨てようと決意するまでにあるはずのロボット少年の心情が
せめて一言か二言ほしかった。

少年をロボットに変えた科学者なんかを回想とかで登場させて、おばあちゃんの台詞と
対比させるようにすると説明が綺麗にできるかも。入れるとするなら最初か、空白部分。
もちろん少年に捨てるに至った理由をそのまま言わせてもいいし、最後に地の文で
捨てた後の少年の心情を書いてもいい。いろいろとやり方はある。


578VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/14(土) 21:42:23.14/n1xdxbAO (2/2)

今回(前回かな?)は書かなかったので感想だけというのもびめおな心境。
…まあいいじゃん

>>548
文章に突っ込む所はないように思う。ただ独自性が見えないのが残念。
言っちゃ悪いけど、長編のクライマックスよりむしろ導入部としてのほうが受け容れやすい。

>>550
男が自分をロボットと称する点に、もう少し皮肉げなニュアンスを含ませたら良かったかもという印象。
>生まれつきロボットだったわけじゃない
~のなら(あくまで人間ベースの)改造人間なわけで、
ロボットのように命じられるまま殺人を続けてきた悔恨に触れるとか、
あるいはそんな生き方を改めようと思い立った転機を匂わせるぐらいは欲しいところ。

>>552-553
主人公のキャラがいい。典型的な「少年の心を持ったまま大人になったような」
良し悪しでもあるか…と思いながら、応援したい気持ちにさせられる。
でも、ゴメン、心理描写が丁寧とは見えなかった。

>>555
薄い!
いや、失礼。
お題の中で唯一の制約的な指定[勘違い]がアッサリ流されているし、
三題噺の作り方で書いたのであれ掴みが弱い……というか無かったように見える…
[午後]ならではの、あるいは[鳥]に関連した[勘違い]を書くお題だったのではと、差し出がましく言ってみる。

>>562
地の文が実に文語文語していて、臨場感、緊迫感、文句ナシ。
テンポもいい。
最後の、これまでとの落差にやられた。痛快作、って言っていいのかなww


最新>>572のお題の難度の高さは凄いね
文章表現力以前に、未だ整合性のある状況を思い描けないでいるorz



579VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 21:56:01.76ZGDkyks00 (7/9)

>>552-553
お前さんが日々どんな妄想をしているかがよくわかった。
たしかに丁寧に書いてある。感情移入が容易。2レスある割には読むのに時間がかからなかった。
情景をイメージしやすかったということ。日々の妄想の賜物だな!

削るところと言えば、細かい所をあげればちょっとくらいは字数を減らせるけど
それじゃ意味がないな。大胆に削るなら晩飯を作る場面は削ろうと思えばできなくはないけど、削りたくないよな?
普通の短編SSとして見れば全く長くはないし、これ以上削ったら雰囲気が損なわれるだろうから
もうこれでいいんじゃね、と思う。ミクさんかわいい

ただ、作風を少し変えてもいいというなら他にもやりようはあるかも。
最後の大皿やビールから、夢オチを強調して、大皿を割って終わり。
そのまま話を締めて終わらせることもできる。話としてはおもしろくないけど。

主人公は大学出、院出、にした方がいい。もしくは潰れた会社がその関係の業界のものだったとか。
その方が最後の部分につながりやすい。なんというか最後を読んで、
この男が夢をみて失敗していく様が少しだけイメージされてしまった。
だからこそさっきの夢オチ終了が思い浮かんだのかも。


580VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/14(土) 22:17:16.25+ZEyoTgko (1/1)

なんでだろうね 〆切月曜0時までだと思ってたわ
お蔵入りハハッワロス


581VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 22:21:57.21ZGDkyks00 (8/9)

>>580
人いないしこっそり晒せばバレないって誰かが言ってた。


582VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 23:46:27.22ZGDkyks00 (9/9)

>>562
~だった。みたいな文の終わり方が多いから文をもう少し繋げてもいいかも。
わかりやすいし、ギャグ風なオチもついてるので、まさに短編SSって感じ。


583VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/14(土) 23:55:45.99XBKolbrH0 (3/3)


>>548
地の文に湿り気を帯びさせたいのなら、もっと客観的に、二人の様子を書いてみるといいかも
場面が連想できるように叙述的に書いてみると上手く行くかもしれません


>>550
アイディアはとても面白い

けど読んでて、幾つかつっかかったところがあります
他の方が指摘しているように、説明不足が原因かと


>>552-553
話として纏まっているので、削るところは見当たらないと思います

ただミクが登場する前に、主人公の部屋の狭さや汚さを描写して鬱屈な雰囲気を描けたら
ミクの明るさが際立つんじゃないかと思う


>>555
叙情的に書こうとしたら、心理を表現したい人物の周りにいる人物や風景を描写すると効果的だと思う

だから後半の、男性に声をかけられない女性の表情や仕草を描写すると、男性の達観した様子が
もっと描けるんじゃないかな

せっかく女性を登場させたのに、ただ来ただけになってるのが残念




584VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 02:29:11.69ol/wEuJr0 (1/1)

感想のお返しです

>>578
勝負の緊張感が表現したかったので、達成できたようでほっとしています
お陰で臨場感や緊迫感を重視した書き方に自信が持てます
三枚目な男のオチは思いつきだったのですが、上手く機能したようで、こちらも嬉しいです


>>574
>主人公のダークなイメージ
勝負の緊張感が主人公にダークなイメージを付加させたようです
特別主人公にダークなイメージを持たせる意図は無かったので、この視点は新鮮でした

>主人公の若さについては~
それは気がつきませんでした
短編だと、読者にイメージさせるために描写しないことも必要なのですね


>>582
>~だった。みたいな文の終わり方
前にも指摘されたことで、どうもクセになっているみたいです
ちょっと見直してみよう



585VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/15(日) 11:13:00.84JPp23ehAO (1/1)

>>572難しすぎる。
どうしても、他人から見て微笑ましい帰結に解釈できない。
自スレを切りのいいところまで進めて、いざとやって来たものの…これは降参かもしれない。

他力本願だけれど誰か先鞭をつけてくれるよう期待。


586VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/15(日) 12:22:29.88niClHtYIo (1/3)

>>578
そう見えてしまったってことは、どこかしらに描写を省いてしまった部分があったんですねぇ…
もう少し文字にしなければいけない場所があったってことなんでしょうか
精進します。

>>579
ご察しの通り日々の妄想の賜物です、はい
その分心情の推移については書きやすかったので、それが功を奏したのでしょうか
このテーマで書く以上はこの分量が限界なんですね、読み易かったと言って頂けて助かります
大学院出ってのは全然思いつきませんでした
最初の設定は比較的適当だったので、もうちょっと詰めるべきでしたね

>>583
仰るとおりです
もう少し主人公の序盤風景を描写すべきでした…
大皿の伏線とか全体の雰囲気も向上させられますね、次回に活かしたいと思います

感想返しです、毎度本当にありがとうございます
そして>>572が難しすぎて泣きそう


587名無しNIPPER2011/05/15(日) 13:22:19.57NKG8aQGAO (1/1)

感想ありがとうございます


やっぱり、皆さんに指摘されているように説明不足だったみたいです。
もう少し丁寧に書けば良かったと後悔。
言い訳を言わせてもらえば1レスにまとめようとしたことかな……でも、他人に理解できないようではいけないか。
これからはもう少し、他人に読ませることを意識しないといけないと痛感しました。



588VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/15(日) 16:27:43.31niClHtYIo (2/3)

>>572
「おーっすビリビリ、何してんだ」
「アンタに伝えることがあってね、待ってたのよ。あとビリビリ言うな」
「伝えること?」
「能力なくなっちゃったから、外部に転校するわ」

いつもの公園、いつもの自販機の前。
明るい日差しが差し込むその場所で、私はアイツに別れを告げる。
全身に満ちた絶望を悟られないよう、努めて明るい声で。

「……はい?」
「何度も言わせないでよね、転校すんのよ。これでアンタともお別れね」
「イヤイヤ何言っちゃってますかミサカミコトさん。能力なくなったにしても、無能力者の上条さんも学園都市で暮らしてますことよ」
「アンタのどこが無能力者だってのよ。一回も私に勝たせてくれなかったくせに」
「いや、でもシステムスキャンでは無能力者って」
「システムスキャンで無能力者って出てもね、能力はあるのよ。ただ力が弱くてそこに分類されるだけ」
「ああ、それは小萌先生から聞いたことがあるけど」

「……今のわたしは、正真正銘何の能力も持っていない。
 ”超電磁砲”としてのわたしを支えていた『自分だけの現実』も『AIM拡散力場』も、跡形もなく消えてしまった。
 ”能力の素質なし”って宣告される、普通の人間になっちゃったんだ」

そして、沈黙。
訪れた静寂に耐えられず、慌てて二の句を紡いでしまう。

「まあ、それもそれで悪くないわよ。普通の生活ってのにはずっと憧れてたし、外の世界ってのにも興味はあるし、
 わたしがいなければ、妹達に無用な負担がかかることもきっとない。それぞれの生活を送れるはず。
 短い付き合いだったけど楽しかったわ。せいぜい元気にやんなさいよ」



「……本当にそう思ってるのかよ?
 お前がこの街で積み上げてきたものは、その程度で諦められるものだったってのか?」

静かな怒りを受けて、
完璧に作り上げた笑い顔が崩れていく。
私はその言葉に、何を返せばいいのか分からなくて、
ひたすらに汚い逃げ向上を吐いてしまう。

「アンタには、関係ないでしょ。
 能力を失ったわたしなんて、この街には必要ない」

「――――何を言ってやがるんだテメェはッッッッ!!!」

ぐい、っと胸倉を掴まれ。
引き寄せられる。

「お前がいなくなって悲しむ奴が、一体どれだけいると思ってやがるんだ?
 もしお前が自分の事を、能力以外に何の価値もなくて、学園都市のどこにも居場所がなくて、
 出て行くしかないと思ってるのなら、そんな幻想は俺が残らずぶち殺してやるよ」

そうしてアイツの右腕が上げられる。何度も何度も、私の雷撃を止めてきた右腕が、今の私には光ってさえ見えた。
その右腕が私の幻想を殺してくれたら、どれほどよかっただろう。
笑顔を繕うのは止め、視線を思いっきりぶつけながら、一つの書類を突きつける。

「残念ながら、幻想なんかじゃないわ」
「…………何だよ、これ」
「学園都市統括理事長直々の印よ。ここにいる資格は君にはない、だってさ」
「そんなもん、無視してやれば」
「期日内の退出が認められなければ、わたしだけじゃなく、親戚縁者まで学園都市から追跡されるみたいね」

そこでアイツの言葉は止む。これは幻想でもなんでもなく、現実なんだ。ただ逃れようのない現実。
書類を握りつぶして、眼を伏せたところで、胸倉を掴んでいた手が離れて、そのままさらに抱き寄せられる。

「何でだよ……! お前、そんな形で追放されて、それでいいのかよッ…………!」

「あたしだって、アンタと、みんなと、離れたくなんかないに決まってるでしょ?
 でもさ、こうしてアンタの腕に抱かれただけで、もういいかなって思っちゃうんだ」

「……諦めるんじゃねえよ。能力がどうとかの下らない理由で、住んでた街を追い出されるなんて馬鹿な話があるか。
 今は無理でも、俺達と会ってバカ話して追いかけっこして笑える日常を、絶対に取り戻してやる」

その力強い言葉は、今度は私の心に響いた。
ぽろぽろ、ぽろぽろと、瞳から透明な雫が零れるのが分かる。

「うん、お願い、約束だからね」



「こもえ、抱き合うのは百歩譲って許すとしても、何で短髪は笑いながら泣いてるのかな?」
「インデックスちゃんも、大人になれば分かるのですよ」


589VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/15(日) 16:29:08.51niClHtYIo (3/3)

>>588
あまりにお題が難しかったので、比較的動かしやすい禁書でやってみました
長い台詞を言わせるのが難しいんですよね…… 今回は「」の中に改行を入れてみたんですが
母親の条件だけぶっちしました、ごめんなさい


590VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/15(日) 17:54:16.95oql8XX/k0 (1/1)

男の子が女の子に手を上げた。

ぴしゃりと乾いた音はここまで届いた。
制服姿の二人が視線をぶつけるようにしながら、じっと佇んでいる。

昼下がりには娘と公園を散歩することが日課になっていた。
そんな平穏な一時がしばし中断される。
目の前のカップルを、私は娘共々息を呑んで見守った。

「おねえちゃんとおにいちゃんがケンカしてるよ。とめなくていいの?」

止めるべきでないケンカもある。第三者が口を挟んではいけないケンカもある。
幼い娘にはまだ分からないのだろう。

「大丈夫、すぐに仲直りするからね」

娘の頭を優しく撫でた。
それなりの確証はある。自分も通った道だから。

娘はなおも不安げに、私の脚にしがみつく。
この子があの道を通るのはいつになるだろう。


「関係ないわけないだろっ!」

びりびり空気を震わせるほどの大声。
公園の木々がざわめいたのは、男の子の怒鳴り声のせいだろうか。それとも、春の強風のせいだろうか。
どちらにしても、娘がこの緊張した状況に怯えていることには変わりない。

私から見ればただの痴話ゲンカでも、娘からすれば若い男女の大ゲンカだ。
震える娘をふわりと抱き上げて、背中をさすってやる。

「大丈夫だからね」

青春、という時期にはよくあることなんだよ。
そんなことを娘に言っても分からないだろうから、心の中でそっとつぶやく。


その時、男の子が女の子を抱き寄せた。
そしてまるで宝物を扱うかのように、ゆっくりと慎重に背中に手を回す。
髪を丁寧に撫で上げながら、何かを呟いた。

私と娘は目を見合わせる。

「ほらね、ちゃんと仲直りしたでしょ?」

娘が嬉しそうに頷いた。

「おにいちゃんたち、はるかとおかあさんみたいになかよしだね」

親子愛とは違ったものなんだけど、娘にその違いが分かるはずがない。
恋愛が何かを知るには、娘は幼すぎるのだ。
今はただ、そうだねと首肯してやれば十分だろう。


「……あれ?」

娘がきょとんとした顔を浮かべた。
何事かと思い、カップルの方へ目をやる。

「あのおねえちゃん、なきながらわらってるよ?」

なるほど、と思った。
仲直りをしたのに、何で泣いているのか分からないのか。
それも、綻びきった笑顔を浮かべながら。

嬉しいときにも人は泣くものだ。

泣くときは悲しいとき、笑うときは嬉しいとき。
単純で無邪気な世界に暮らす娘には、笑顔と涙が混じる複雑な感情は想像できないのだろう。

「大人になれば分かるよ」

そう、あと十年もすればあの青春がやってくる。
私が十年も前に終えたあの時代が。

青春に向かう者、通り過ぎた者。
そして、まっただ中にいる者が混在する、不思議な午後の一時。


591VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/15(日) 20:48:57.51eWxaWHeyo (1/1)

期限24時間延ばす?


592VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/15(日) 20:49:43.59vRoEy58y0 (1/1)

いらんだろ


593VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/15(日) 20:56:48.78dQ0GzvlV0 (1/1)

>>589
上琴厨の俺としてはものすごく掘り下げてほしい話だぜ……
しかし「インデックスちゃん」に違和感を覚えた。
「シスターちゃん」じゃなかったかな?
あと、非常に個人的な意見で申し訳ないんだが一言。
無理矢理入れたせいか、最後のセリフで緊迫感がなくなってたかも。
こういうのもアリだとは思うが、俺的には何だかスッキリしなかった。

>>590
とても綺麗にまとまっていて良かった。俺では注意すべきところが見つけられない。
風景が頭の中に自然と浮き上がってきたし、改行の使い方も上手くてスラスラと読めた。


594VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/16(月) 00:15:38.18nyumkK9uo (1/1)

>>590
参考になりそうなことが言えないです
読んだ後に余韻まで残る良作だと思いました
強いて言うならパンチが……いやでもこの空気壊したくないですね

>>593
これは恥ずかしい
シスターちゃんにお説教されてきます
最後で少しゆったりした空気にして終わりたかったんですが、緊迫感あるまま終わらせる方がって方もいらっしゃるんですね
確かに少々お題にとらわれすぎた感は否めないので、気をつけます


595VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 00:10:10.34s01YT6IAO (1/4)

感想

>>588
禁書よく知らない自分からしたらパーフェクトに見えた。
前後の流れから「関係ないでしょ」は本心と裏腹、否定されたい言葉のはずで、
それでも男を睨み付けるくらいの余程圧倒的な現実、苦味と希望の両方が残る別離、綺麗な帰結に納得しきり。

>>590
視点が母娘の側に置かれているのに驚き。この発想はなかった。
男女の事情や心理を描写せずあくまで憶測というかたちに留めることで、
見えない悲喜への関心を否応なく引き寄せる妙手。
一本も二本も取られた感。



596VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 00:14:26.52s01YT6IAO (2/4)

何故か次のお題更新がスルーされてるけど、これは現時点暫定的に安価しないで感想期間にあてるっていう認識でok?


597VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 00:22:17.11PvFPL4rg0 (1/6)

よくわからん。
面倒くせぇ、って言って深夜にお題更新した人が何かしらのアクション取ってくるのかと思ってたけど動きがないな。

なんならまた酉つけて今後の方針を決めてみる。
一度やったことだし、そこまで反対されないだろう。
なんかもうね。スレの私物化とか考えて慎重に意見出してたのは無意味だったようだ。


598VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 00:32:23.81s01YT6IAO (3/4)

匿名掲示板でスレの総意とかありえないし、いいんでない?仕切っても。

平日は時間が取りづらいと察せられるので、執筆期間は四日程度を提案。



599 ◆jPpg5.obl62011/05/17(火) 00:47:02.58PvFPL4rg0 (2/6)

仕切るっても今ちょっと忙しいからいつでもは来れないって事を先に断わっておくよ。
自分の書き溜め中のSSもあるしね。

スレの総意なんて得られる訳がない事は重々承知だが、それでもできるだけ意見はほしいし、聞くつもり。
他にあれこれやってくれる人がいたら嬉しいし。俺にできることは他の人にもできる。
別に誰かじゃなきゃいけないなんてことはない。

>>598
執筆期間4日なら、お題更新は一週間になるけどOK?

ちょっと考えてくる。




一度このスレから離れた人がまた来てくれるようになるかどうかはわからないけど、
もし時間があって、まだ興味があるならまたこの企画に参加してみてください。


600 ◆jPpg5.obl62011/05/17(火) 00:48:59.89PvFPL4rg0 (3/6)

勘違い。執筆期間4日でも一週間にはならないわ。スマソ。


601VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 00:58:33.48s01YT6IAO (4/4)

>>599
あぁ、前も言ってたもんな>いつでもは…
忙しいなか乙乙

更新は496の一案か二案でいいのでは。
そこらも含めて、次回更新時までにまた意見を募るのもありかとは思うけど

ここ最近ひとが減ったのは、皆自分のssで順調に筆が走ってるんだよ。きっと。
うちもラストまで巻いてみたから次は参加できそうだし



602 ◆jPpg5.obl62011/05/17(火) 01:51:44.55PvFPL4rg0 (4/6)

感想期間は特に定めず、
>>588

>>590
の感想はいつでも受付で。今後も同じ。


お題更新ペースは、>>496の2の案。
“5日‐2日(月火水木金・土日)日24時と金24時でお題更新”
でとりあえずいきます。

安価でお題を決めるとき以外は基本的に執筆期間であり、感想期間です。

週二なので安価は1つで。条件をつけたい場合はお題の中に組み込んでみてください。
お題は安価の時に直接書きこんでくれた方がいいです。ちょっとくらい遅れても待ちますが。

投下SSは一人一作などの事は今までと同じ。
感想は一作投下につき、他の人のSSにも2つお願いします。従来通りです。

SSの再投稿は自由ですが、とりあえずその前に感想を書く方を優先してください。

〆切後のSS投下は、一応投下してもいいか聞いてみてください。
お蔵入りさせるのはちょっと寂しいと思うのでOKなら遠慮せず投下してください。
少し遅れたくらいなら気にすることはないでしょう。この辺はその都度判断すればいいと思います。


なんか抜けてたら教えて。




603VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 01:57:59.64PvFPL4rg0 (5/6)

>>601
thxとしかいえない。また参加してください。

意見はいつでも出してください。


一日少ないけど、安価出しときます。次回更新は今週金24時で。
安価>>605


604VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 03:30:27.62EIaHb59I0 (1/1)

>>603
お疲れ様です

感想期間は特別に設けず、今までどおり、SSが投下されたらその都度感想をつけていくんですね
>>602には、特別不足はないと思います


さて、今回はどんなお題になるかな?




605VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/05/17(火) 03:56:13.36JiSDFZW9o (1/1)

登場人物は主人公とその居候の二人
それと他に脇役を最低でも一人登場させる
性別や年齢は問わない。脇役の立ち位置も友人から第三者まで自由
舞台は家の中かその周辺(家が視界に収まる範囲)、時間帯は夕方
居候が主人公を糾弾する。主人公の反応は自由
最終的に二人は和解するが若干のわだかまりを残す

こんな感じでどないでっしゃろ


606VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 09:14:06.09//C3CqHgo (1/1)

>>602
乙乙、異論はないです
ちょっと体調崩して暫く作品も感想も書けん状態だけど、余裕が出来たら参加するお
季節の変わり目だから同じ様な人もいそうだ


607VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/05/17(火) 15:45:24.99Zep24TdAO (1/1)

ここって下げ進行なの?

SSを投下したら、分かるように上げようかと思ってるんだけど、大丈夫かな?


608VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 16:27:36.36vjqKN37DO (1/1)

上げても問題ないと思う

誰でも参加できるスレだし
というわけであげ


609VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/05/17(火) 22:05:56.48ORg1VflOo (1/1)

>>602-603
遅くなりましたが乙です

現在スレ立てしようかしまいかで迷っているのでそれが解決したらまた参加させてもらいます


610VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/17(火) 22:26:00.64PvFPL4rg0 (6/6)

お題thx!

>>606
まずは隊長を整えてくれぃ。お大事に。

>>607
あげちゃってー。

他の人も余裕をもって参加してくだせい。thx!


611VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/05/21(土) 00:05:31.37dzF+qYsAO (1/1)

やっぱり平日は時間が限られるからか、それとも今回お題の縛りが厳しかったからか

駆け込み投下もありだろうけど、取りあえず次のお題は>>615ヨロシク



612VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 00:20:48.36AIGaryVN0 (1/7)

>>611
thx!

ちょっと今週本気で忙しかったから書けなかった。
投下が一本も無いのは寂しいので明日中に一つ投下させてくれ。
>>605申し訳ない。


613VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/21(土) 00:42:27.43zUsJ5cJ1o (1/2)

>>605のお題で、[たぬき]ネタ以外を思いつく奴が存在するのか?


614VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/05/21(土) 01:24:04.37hwlUUDpLo (1/1)

まあ正直どこまで限定すべきかよく分からなかったから構わんよ
自由過ぎたらお題提供する意味が無いし、限定し過ぎたら大勢で書く意味無いし難しいね


615VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 09:50:03.699+Uuge9/o (1/3)

展開数パターン考えられたから今回のお題は縛り的には問題ないと思う
ただ今五月病でSS書けない状態なんで投下できんけども…


616VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 10:30:46.51AIGaryVN0 (2/7)

テーマは 「旅」


場面の指定はなし(自由に)
旅人がヒッチハイクをしている
旅の動機が分かるように書く
旅人はこのまま旅を続けていていく事に迷い(悩み)がある
車(乗り物ならなんでもOK)が通りかかり乗せてもらう
このドライバーとの邂逅によって旅人の心情に変化が生じる
旅人はもう少し旅を続ける事を決意する


主人公などは自由に決めてください
お題文はどのように解釈してもOK(この旅自体が誰かの心情の比喩であってもいい)
幻想的なものでもリアリティのあるものでも思うように書いてください


617VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 10:35:27.70AIGaryVN0 (3/7)

>>613
え!? ああ、ドラえもんね! う、うん気付いてたよ。気付いていたとも!!


618VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/21(土) 11:12:09.88zUsJ5cJ1o (2/2)

カジノとか居候とかヒッチハイクとか日本人には縁の薄いお題が続くなぁ


619VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 11:34:40.21AIGaryVN0 (4/7)

>>618
615が安価だったんだから五月病がお題でもいいよ。
なんかすごく日本人ぽくないか?


620VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 11:46:31.67AIGaryVN0 (5/7)

変な言い方になった。
>>615の事を悪く言った訳ではない。すまん。


621VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 12:51:42.439+Uuge9/o (2/3)

UWAAAAごめん!安価素で気付いてなかったorz
>>616でいいと思う、「五月病でSS書けない」がテーマでもいいけどさw


622 ◆jPpg5.obl62011/05/21(土) 18:18:37.01AIGaryVN0 (6/7)

じゃあ、「五月病でSS書けない」をお題にしちゃう。

これは細かい設定は案があれば好きに追加しちゃって~。
まぁみんなSS書きなんだから割とスラスラ書けるかもなw
旬だし、中々の良題だな。本人にちょっと期待。

今回決まるの遅かったり人数的な問題もあるから期限はちょっと延ばすか。
来週金曜くらいでいいかな。
もっと書けるという人は>>605を書いてみて。

変な感じで変更になったけど自分で自分のテーマを放棄するわけだから、まぁ大丈夫だろう。
一応酉つけとく。


623VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/05/21(土) 18:46:16.64JXAS9NEAO (1/1)

>>622
水を注すようで悪いけど、>>616の設定でアイディアが浮かんで書こうとしていたんだ。
>>616の設定を放棄するとあるけど、投下しちゃダメかな?


後、今回は『五月病』と>>605のお題で二作書いても良いって事ですか?



624VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 18:52:50.029+Uuge9/o (3/3)

流石に確定までに書き始めちゃった人はいいんじゃないだろうか
かく言う自分も>>615-616の五月病おまけ状態でもう半分書いちゃってたりする
一人一作の一番の理由が感想の負担だった気がするんで
感想不要でもう一つ投下してもいいなら、日本舞台でもう一つ書きたくはあるが…
(>>622で謎の期待されてるし。感想批評は出来れば今書いてる方で欲しい)


625VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/21(土) 20:58:50.63hkrg6xRy0 (1/1)


>>624
>>623だけど、楽しくなったから>>616でSSを書いてみるよ
上手い事書けたら投下しようと思うけど、一応、>>622の意見も聞きたいな




626 ◆jPpg5.obl62011/05/21(土) 21:17:18.98AIGaryVN0 (7/7)

とりあえずすまんかった!!(謎の期待含む)


もうですね、書けるんなら書いておくれと。
今の状況で一人一作にこだわる必要は皆無。
>>605でも
>>616でも
>>622でも
書けるんなら書いちゃってくらさい。
ただ一つのお題については一作の方がいいかも。
一つのお題につき二作もう書きてる、という人は言ってくんろ。考える。


お題更新は金曜24時で。
今回はかなり柔軟にやってみよう。
あれこれやってもそれなりに融通がきく感じで。好きに書いてー。


さすがに次からはもうちょっと状況を整理してやり方を考えるよ。
でもそれは次からにするのです。そう“次”から。


627VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/22(日) 16:58:13.39tycQA9OK0 (1/2)

>>605を書いてるんだが、地の文の一人称三人称で困っている。

感想で、指摘だけじゃなく改善方法も貰えることを期待して未完成状態で書きこんでもいいんだろうか。


628VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/05/22(日) 17:31:17.32D6V3woVAO (1/2)

>>627
文章力を上げることが目的なのだから、どんな事でをんでいるのか言ってくれれば問題ないよ




629VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/05/22(日) 18:41:49.02D6V3woVAO (2/2)

ごめん、意味不明な文になってたorz

悩み事の相談がしたいのだと思うから、未完成を投下して意見を仰いでも問題無いと思うよ


630VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/22(日) 19:46:35.28tycQA9OK0 (2/2)

>>629
了解!thx!


631VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/23(月) 18:33:01.59QOagTXs90 (1/4)

これはいつからが投下期間なのだろうか……?


632VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/23(月) 19:56:26.022Dp2xXeL0 (1/2)

いつ投下しても大丈夫ですよっと
感想も同じく

投下期間じゃないのは安価とってる間だけ


633VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/23(月) 19:59:50.692Dp2xXeL0 (2/2)

安価とってる間だけってのは変なので訂正。

今のお題募集が〆切になって、次のお題が決まるまでが投下期間外になるかな。


634VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/23(月) 20:08:46.11QOagTXs90 (2/4)

>>632
おk、じゃあ俺が先陣を切るとしますかね。
ちなみにお題は>>605です。


635VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/23(月) 20:10:07.25QOagTXs90 (3/4)

「クソ兄貴、また女の人連れ込んだでしょ!」

 妹から飛んでくる罵詈雑言に、男は思わず顔をしかめた。
 男は眠そうに欠伸をしながら冷蔵庫に近寄り、卵を取り出した。それを片手で割ると、あらかじめ熱していたフライパンにぶちまける。金髪をくしゃくしゃと掻き毟り、面倒くさそうに妹を見やる。

「あーもーうっせぇ。学校帰りなんだからさっさと着替えてきなさい」
「話は終わってない! ウチは、その、そういうことする場所じゃないの!」

 家をラブホ代わりに使うな、と言いたいらしい。確かに妹はもう高校生、思春期真っ只中である。そんな彼女が兄の部屋を掃除する度に長さや色がまちまちな頭髪を見るのはさぞ苦痛だろう。
 以前ちょうど情事の最中に出くわしてしまった時は一週間口を利いてくれなくなった。完全に男の自業自得ではあるが。

「はいはい。分かった分かった」
「返事は一回!」

 すかさず、サーイエッサー! なんて『まるで本物の軍人がするように本格的な敬礼』を返す男に、妹はため息をついた。

「じゃあ着替えてくるけど、覗かないでよね!」
「誰が覗くか。お前はもうちょっと家主に対する敬意というものをだな」
「あ、ブラのホック外れた」
「さっさと部屋に上がりなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


 ほどよく焼きあがった卵生地をあらかじめ盛りつけておいたチキンライスにかぶせる。ケチャップでなんと書くか男は迷った。ハートマークは陳腐なので以前モナリザを書いた時は兄妹揃って食欲が消し飛んだ。あまりにリアル過ぎて、見てるだけでめまいがしたのが忘れられない。

「やっぱ今度は魔法少女リンドバーグ☆ジェノサイドフォルム(毎週日曜朝8時に大人気放映中)でも……チッ」

 男の呟きは、ポケットから鳴り響いた携帯の着信音にかき消された。乱暴にそれを引き抜き、通話ボタンを押す。スピーカーを耳に押し当てた瞬間、けたたましい銃声が鼓膜を震わせた。

「オイ、生きてるか?」
『なんとか大丈夫です……用件は分かりますね?』
「分からねえな。この間誕生日パーティーへの道を塞いだ罰だろ。俺には関係ねえ、そこで死んでろ」

 向こう側から聞こえた機械質な声にそう返し、さっさと通話を切ろうとする。『いや、待ってください』と焦りの見えない平坦な声がそれを阻んだ。

『これは『任務』です。アナタの家に輸送部隊が向かっているのでそれに従ってください』
「後はなんだ、楽しい楽しいフライトか?」
『スカイダイビング付きで代金は特別支出落ち、なんともお得ですね』
「……お前、だんだん人間らしく戻ってきたけど、性格がマイナス方向に突っ走ってねえか?」
『気のせいです。ではまた、戦場で』

 プツンと通話は切れた。銃声にまぎれて船の駆動音と波の音がした、ということは場所は海上だろう。相手は密輸シンジゲートあたりか。

「おーい」
「ん、何よ?」
「ちょっと旅に出てくる、明日の晩飯までには帰ってくるから」
「はあ!? ちょっ、この間は誕生日の晩御飯にすら遅刻したのに、性懲りもなく私を放置!?」
「知り合いがハワイ沖でクルージングしてるらしいから、遊びに行ってくる。いやービキニのお姉さんって俺大好きなんだよね」

 言い訳にしても最低である。自らの性的嗜好を実の妹に暴露する兄がどこにいるのだろうか。

「っ、っ、こんのッ……大バカクソ兄貴ぃ――――――――!!」

 ぎゃーすかと喚く妹の頭に手を置き、男は今までにないほど優しい声色で告げる。

「分かった。これからはそういうこと、しない」
「…………」
「だからお前は、帰ってきた俺にお手製の料理を振る舞えるよう、料理を勉強してくれ」

 台無しだった。

「……ったく、分かったわよ。さっさとどっか行っちゃって」

 まるで犬を追い出すように手を払う妹に、男は優しく笑いかけ、わしわしとその頭を乱暴になでてやった。

「行ってくる」
「……行ってらっしゃい」

 必要なものはすべて輸送部隊が用意してくれている。男はまるで散歩にでも行くかのように、玄関へと歩く。革靴を履き振り返れば、妹がなでられた頭を触っている。
 それを見て――自分の『聖域』を見て、男の中で何か和らぐものがあった。ドアを開ける。引っ越し業者のトラックに偽装した輸送車へと歩く男は、もう振り返らなかった。


 妹は閉じるドアを見て、その場に崩れ落ちた。

「ひっぐ……バカ、バカ、バカ兄貴」

 彼女が兄の『異常』に気づいたのは遠い昔だ。外出して、憔悴した様子で――もっとも最近はそんな様子微塵も見せないが――帰ってきた時、服から何かがこぼれ落ちたのを見た。
 薬莢、だった。
 この国には『機密特捜機構』なる組織がある。そしてその存在は、ごく一部の人間しかしらない。無論、この少女とて例外ではない。が、兄が何か危険なことに関わっているというのは想像がつく。思えば誕生日の時も彼は遅れたが、あの日は高層ビルで立てこもり事件が起きていたはずだ。まさかとは思うが、兄はそれに関わっていたのだろうか。疑念の連鎖は止まない。
 妹は床に涙をこぼし続けた。
 兄が帰ってくるのは、まだまだ先の事である。


636VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/23(月) 20:17:33.84QOagTXs90 (4/4)

どっかで見たことある? はい、俺>>415です。
新たに話を作るのは面倒だったので設定を引っ張ってきた。
第三者は電話でしか登場してないけど、これはお題回収不足か……な?
わかだまりが若干どころじゃないのは置いといて、感想お願いします。


637VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/24(火) 03:17:14.406Phwbr5H0 (1/1)

自分の書いてるやつが全然出せる形にならないので先に感想書いちゃう。

>>635の感想
以前書いたSSの設定を再利用はいいと思う。お題の解釈は自由。
なので、要素が少なからず入っているなら回収不足なんてありえない。

少し細かい所から。全部は書けないけど。

>「……お前、だんだん人間らしく戻ってきたけど、
→ ~人間らしさが戻ってきたけど、
後、“けど、”の部分は男のキャラに合わせて調整できるかと。

>妹は床に涙をこぼし続けた。
表現を変えてみるとよりいいかと。
書いた後に一度朗読して、突っかかる部分がないか確かめる作業がおススメ。


SSの文章として見ればもう十分な出来だと思うんで、別に今の感じで書き続けるのもありだと思う。
だけど、前にも同じような事を言ったけど少し書き方を変えてみるのもいいんじゃないかと。
この文章を読んで、可もなく不可もなしとは言わないけど、無難な印象を受けた。
文章の書き方は他にもたくさんあるので、いろんな本を読んで調べてあれこれ試してみるといいと思う。
まぁ、しっくりくるような文書がすぐ書けるようにはならないけど。


……自分のやったことのない書き方をするとものすごく疲れるから、正直どうするかは勝手だと思う。
ただ、本人が気付いてるかどうかはわからないけど、ちょっと壁にぶち当たってる感じがするんだよねー。

今回の感想……辛口すぎるな。スマソ。個人的思った事なんであんま真に受けないでほしい。


638VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/25(水) 15:11:36.68RHP5hsTp0 (1/1)

>>635の感想です
いっそシリーズ化して欲しいと思った。 サイボーグ君もいい性格になってきたみたいだしね。
それでも読んでいて突っかかる部分があったので、幾つか挙げてみます。


>男は眠そうに欠伸をしながら冷蔵庫に近寄り、卵を取り出した
この一文だと、寝起きの男が料理の支度に取り掛かったばかりのように感じられた。
手始めに卵を料理しようって感じで。
本当ならチキンライスを仕上げているのだから、男がどこまで食事の準備を進めていたのか、簡単な
描写が欲しかったかなっと。


>この国には『機密特捜機構』なる組織がある。そしてその存在はそしてその存在は、ごく一部の人間し

かしらない。
この一文が浮いているように思う。
妹の心情描写をしているのだから、妹の知らない組織の説明は、ここでは蛇足になっている。
『機密特捜機構』の説明をするのなら、男が現場に輸送される時など、組織の一員として誰かが動く時に挿入する方が、流れが自然になるかと。


細かいところをつっつくような感想になってしまったけど、ご勘弁を。


639名無しNIPPER2011/05/25(水) 18:57:11.140tEqrZ+AO (1/5)


 目の前を車が横切った。僕はそいつに向かって親指をたてた。運転手は僕の方をちらっと見て、顔をしかめて通りすぎる。
 これで何人目だろうか。
 停まってくれないのはまだしも、人の顔を見て、その場で嫌な顔をするのは少し失礼過ぎるだろ。僕はそんなことを呟きながら、ひたすらに親指をたて、車が停まるのを待っていた。

 車が停まってくれたのは、それから三時間後。23台の車が通りすぎたあとの銀色をした小型車だった。
 運転席には若い女の子が座っていて、ガラスを下ろし、僕に話しかけてきた。
 「きみはここで何してるの?」
 「何ってヒッチハイクじゃないか。だから君は停まってくれたんじゃないの」 
 「違うって、わたしが聞きたいのはなんでそんな格好でヒッチハイクをしてるのかってこと」
 「その前に君は僕を車に乗せてくれるのかな?」
 急がないといけないんだ悪いけど、と僕は言う。彼女はわざとらしくため息をついてから答えた。
 「いいよ、乗せてあげる。ただし、わたしの質問に答えてからね」
 「質問?」
 「だーから、なんでそんな格好してるわけ?」
 ああ、と僕は呟き、答える。
 「ピエロなんだ」
 僕はピエロの格好していた。顔にはあの独特のメイクしてあり、滑稽な服を着ている。
 「英国大道芸団って知ってるかな?」
 ああ、あの大陸を渡り歩くサーカスね と彼女は答える。
 「僕はその団員でピエロなんだ。だから、こんなメイクをしてる。寝坊したんだ、そしたら置いてかれた」
 「じゃあ、こんなときくらいメイク落とせばいいじゃない」
 簡単には落とせないんだと僕は言う。
 「僕は生まれたときから、このメイクを施されてるんだよ。優秀なピエロ一家なんだ。面白いだろ?」
 「それ、全然笑えないって」
 彼女は言って、助手席のドアを開ける。まさか、ピエロと旅することになるとは、と呟くのが聞こえた。


640名無しNIPPER2011/05/25(水) 18:58:12.480tEqrZ+AO (2/5)


 「ねえ、そういえばどこまで行くの?」 彼女が聞いてくるので、僕は次の公演地を答える。
 「それって、随分遠いよね?」
 「だから、君の行き先で下ろしてくれればいいよ」
 彼女は少し考えてから答えた。
 「いいよ、そこまで行ってあげる。どうせ、今すぐしなきゃいけないことなんてないし、それにピエロを乗せてくれるような人なんてそうはいないって」
 ありがとうと僕は深く感謝を述べ、それから言った。
 「だけど君は乗せてくれてる」
 「わたしはもの好きなんだよ。妹にも言われたことあるよ。お姉ちゃんは男を選ぶとき注意したほうがいいって、変なやつを好きになるから。確かに今まで付き合ったやつはろくでもなかったな」 
 「今は誰かと付き合ったりしてるの?」 「ううん、夜の仕事をしてるから。さすがにこりたよ」
 僕はそれを聞いて、なぜだか悲しくなった。彼女にそれがわかったわけじゃないだろうけど、こう言った。
 「夜の仕事っていってもエッチなやつじゃないよ。生まれもったものは生かさないと。きみと同じで」
 彼女はそう言って笑う。彼女が笑うと確かにキュートだった。だけど、僕はこう言う。
 「自意識過剰だ」
 たしかに、と彼女が言うので僕もつられて、笑った。

 車内の雰囲気が和やかになったところで僕は先ほどから気になっていたことを聞いてみた。
 「この車スピード出しすぎじゃないか?」
 「じゃあ、ルールって何のためにあるか知ってる?」
 逆に彼女が尋ねてきたので、僕は少し考えてから、あたりきりの答えを口にした。 「破るためとか?」
 「ぶっぶー。正解は格好つけるためだよ。国とかが自分に自信がないからさ、なんとなくそれなりにみえるように作って安心してるんだよ。」
 「斬新な意見だ」
 僕は答えた。彼女が走らせる車は時速120キロで走り続けている。



641名無しNIPPER2011/05/25(水) 18:59:49.660tEqrZ+AO (3/5)


 僕らが目的地につくまでに一週間ほどかかった。その間に団長から二回の電話があって、公演までには間に合いそうだと僕は言った。僕らは道中色々なことを話した。 例えばこんなことだ。
 「ねえ、きみはやめたいと思ったことはないの?そのーピエロのまま、ずっと旅することに」
 「あるよ。いつだって考えてたよ。だけど、これはつまり僕の運命なんだ」
 「だけど、女の子にはモテないじゃないかな?」
 「まあね。ピエロは恋しちゃいけないんだ」
 「それって、悲しくないの?」
 「火の輪をくぐるライオンよりはましだよ」
 このときには、僕はもう彼女に対して、特別な感情を抱いていたんだと思う。

 そんなふうにして、僕らは目的地についた。車から降りるときに書くものを探したけれど、見当たらなかった。だから、僕はポケットから、次回の公演のチケットを取り出して、もう片方のポケットから取り出したペンでそれに電話番号を書き入れた。 そして、それを彼女に渡して言った。
「これはお礼に。明日、公演があるから良かったら来てくれるかな。さらに良かったら電話をくれると嬉しいんだけど…」
 彼女はすぐに答えた。
 「ピエロは恋しちゃいけないんじゃなかったっけ?」
 「ルールはなんていうのは格好つけるためにあるんだ」
 僕は言い返す。クールなふうを装いながらも、心の中では、思い届いてくれよ、と叫んでいた。多分、ステージの上だって、んなふうに思ったことはない。たくさんの観客を笑わせるより、ずっと難しくて、ずっと意味がある。彼女を笑わせられないんじゃピエロ失格だ。
 すると、声が聞こえた。
 「妹の言うとおりだよー。わたしは変な人ばかり好きになっちゃうんだ」
 彼女はとびっきりの笑顔をしている。
 「となりに可愛い女の子がいれば、きみの旅だって、きっと素晴らしいものになるって。たとえ、ピエロのままだってね」
 僕は嬉しくてしょうがなかったけど、あえてこう言う。
 「自意識過剰だ」

 きみの演技を見せてもらおうかなー。彼女が言って、僕らは二人で広げられたテントまで、手を繋いで歩いていく。


642名無しNIPPER2011/05/25(水) 19:03:41.050tEqrZ+AO (4/5)

お題は>>616
長くなってすまない。あんまり投下がないので少しくらいいかなと。
削るのも技術のうちだが、俺には足りないみたいだ…
感想お願いします。

感想に関してはそのうちに書くつもり。



643名無しNIPPER2011/05/25(水) 19:40:25.750tEqrZ+AO (5/5)

 上手いと思った。参考にしたいくらい。淡々とした文章が、雰囲気にもあっていていて良かった。

 前の人がだいたい言ってくれているので、それでもあえて挙げるとすれば、途中に入る、である調が少し雰囲気にあってなかったので気になった。

 ただ、雰囲気になんていうのは、受けとる側によっても変わるので、あまりあてにしないでくれ。


644VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/26(木) 19:47:21.83hB/Jq/+c0 (1/5)


>>639-641
主人公とヒロインの掛け合いがテンポよく、引き込まれました
そのために特別長いとは感じず、読んでいて突っかかるところもありませんでした

ただもう少し、ヒロインの仕草や表情を描写してもいいと思います
そうしてヒロインの魅力をより表現できると、深みが増すのではないかと




645VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/26(木) 21:35:14.04hB/Jq/+c0 (2/5)

>>616のお題で投下します


見渡す限りの荒野が、地平線の果てまで広がっていた。
乾いた大地は灰色の砂で覆われ、その上を、南北に渡って道路が舗装されている。
道路は車両が十分に行き返る幅があった。 その白んだアスファルトの上にはラインが引かれ、
車道を二車線に区分しているのだが、ラインは消えかけ、ほとんど用を成していなかった。
歩道は整備されておらず、私は車道に沿って、砂利道をひたすらに歩いていた。
砂利道には土気色の雑草が生えていた。 あるいは枯れているのかも知れない。

一陣の風が吹き、砂埃が舞い上がった。 今朝から断続的に吹きすさぶ風に、私はせめてもの思いで
帽子を目深に被っている。 私の耳に聞こえるのは風の音と、私が砂利を踏みしめる音だけだった。

太陽が中天からやや西に傾いた頃、背後から車のエンジン音が聞こえてきた。
この荒野にエンジン音が響いたのは、今朝から数えて、これで五回目だった。
その内の四回は、私を追い越して地平線の彼方に消えてしまっている。 私は肩越しに視線を投げた。

中型のトラックが一台、こちらへと近づいていた。
私は歩幅を狭め、トラックが近づくのを待った。 トラックが十分に近づいてから、私はゆっくりと右手を上げる。

トラックは私の横を通り過ぎていった。 それは古い形式のトラックであったが、よく磨かれた、
綺麗な車体をもっていた。 エンジン音も快調で、よくよく手入れが行き届いていることが窺える。

やおらトラックは速度を落とし、私の数十ヤード先で停車した。
パワーウインドが下げられ、筋肉質な腕と強面が突き出される。

「旅人とは珍しいね」 と、強面は白い歯をむき出しにして、言った。 

その言葉に、私は唇の端を持ち上げて、笑った。 「まさか……止まるとは思わなかった」 と、
私の口からうわ言のような言葉が零れた。

「苦労したみてぇだな、兄ちゃん。 まぁ乗れ、近くのモーテルまであと数十マイルもある。 
 もたもたしてると日が暮れちまわぁ」

喉を震わせて笑う男に、私は曖昧に頷いてトラックへ近づいた。 助手席に乗り込み礼を述べると、
強面は右手を上げて答えた。 柔らかいシートに体を預けると、流れるようにトラックが発車した。

「それにしても兄ちゃん、一体なんだってこんなところを歩いてたんだ?
 こっから先あるのはガソリンスタンドとモーテルくれぇなもんで、後は永遠砂漠が続いているだけだ。
 砂漠観光だなんてツアーがあるって言うが、ここにはピラミッドなんて洒落たもんはねぇぜ」

私は窓の外に一瞥を投げた。 唇を舌で舐めてから、口を開いた 

「取材を……そう、取材をしようと考えていたんだ」
「取材? するってぇと兄ちゃん、アンタ作家か何かか?」

男の声が弾んだ。 私が頷くと、彼は目を輝かせてこちらに一瞥を送った。

「なるほど、だったらこんなところまでやって来るのも合点が行く。
 なぁ先生、良けりゃお名前を教えちゃくれませんかね?」

私はもう一度、視線を窓の外に投げた。 雲一つ無い空を、一羽の鳥が飛んでいた。
雄雄しく空を舞うそれは、恐らく鷲であろう。 私はしばし鷲を眺め、それから男に視線を戻して、名乗った。

男が私の名を呟いた。 私の名に合点がいかないようだ。 無理も無い、私の本は売れたためしがない。




646VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/26(木) 21:38:02.24hB/Jq/+c0 (3/5)


「駆け出しでね……名前は売れてないんですよ」
「いや、これはとんだ失礼を……。 しかしお陰で、一つ楽しみができましたよ。
 仕事が終わったら、さっそく先生の本を買いに行きまさぁ」
「お世辞はいらないよ」
「世辞なんかじゃありませんよ。 実を言うと、俺ぁこんな面をしてますが、本を読むのが好きでね。
 酒を一杯やるよりも、本を一冊読んだ方が性に合うんでさ」

私は男を観察した。 六フィート五インチは下らないであろう大男で、鉄板でも仕込んだような厚い胸板と
丸太のような手足を持っている。 ジーンズにシャツというラフな格好で、彼の皮膚は浅黒く、
短く顎鬚を蓄えていた。 黒髪は短く刈り上げられ、肉の厚い鼻はブルドックのように潰れている。
濃い眉毛の下の灰色の瞳は、眩しそうに細められていた。

「先生、今俺のこと変わり者だと思ったでしょう」

図星だった。 私は取り繕おうと口を開いたが、それよりも早く彼が言葉を続けた。

「この面で本が好きだというと、大抵のヤツは目を丸くするんでさ。 またそいつらの面が愉快でしてね!」

がははっ、と男は豪快に笑った。 ライオンの咆哮のような笑い声だった。

「しかしね先生、似合わねぇ趣味って言われますが、バカにしたもんじゃありませんぜ。
 昔あるところに良い所のお嬢様がいた。 麦の穂を思わせる金髪と、今日のように澄んだ空色の目を持つ別嬪さんだ。
 俺ぁちょっとした縁で、その別嬪さんと話をする機会を得たんだが、またこれが鈴の音のように可愛らしい声でね!
 おまけに気立ても申し分ないと来た!
 ……だがよ先生、普通俺みたいなトラック野郎は、そんな女とはそれっきりで終わりよ。
 何しろ住む世界が違ぇや。 お近づきになれただけで奇跡さ」

「ところが、あなたはそうではなかった」

男はくすぐったそうに肩を揺すった。 「アイツは現代アメリカ小説が好きなんだ。 
例えばチャンドラー、ダシール・ハメット、ヘミングウェイ……俺と全く趣味が同じだった。
彼女以上に話せる女はいなかった。 俺たちは時間を忘れて語り合って、最後にもう一度会う約束をした。
俺たちは確かに恋に落ちたんだ。 そして……」

男が手を伸ばして、助手席側のダッシュボードから一枚の写真を取り出し、私に差し出した。
受け取ると、それには彼と、彼に肩を抱かれた金髪の美女の姿があった。
美女は大きくなった自分のお腹を撫でながら、こちらに微笑みかけている。

「八ヶ月だ」 彼の声には活力が漲っていた。 「経過は良好だと、医者が太鼓判を押してくれた。
俺ぁ幸せ者だよ」

それからモーテルに着くまで、私たちは大いに語り合った。
彼が語るのは、かつて聞いたことの無い素晴らしいロマンスだった。
男の口の上手さといえば、私が時間の経過を忘れる程であった。
そして私は、彼のリクエストで自分の簡単な来歴を語った。
彼のロマンスに比べれば刺激の少ない物語だが、それでも彼は私の話に興味深げに相槌を返してくれた。




647VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/26(木) 21:40:13.74hB/Jq/+c0 (4/5)



「短ぇ間だったが、楽しかったぜ先生」

モーテルの前にトラックを止め、男は笑みを湛えて言った。
差し出された手を握り返し、私もまた、笑みを浮かべた。 そして荷物の中から一冊の本を取り出し、
彼へ差し出した。 私の書いた小説だった。

「ありがとう。 これは僕の本なんだが……良ければもらってくれ。
 ガソリン代の代わりになるといいんだが……」

「こりゃぁ嬉しいね。 ガソリン代の代わりなんてとんでもねぇや」 と、男は満足気に頷いた。
「ついでと言っちゃなんですが……こいつにサインをしてくれませんかね?」

私は不意を打たれた。 彼が何を言ったのか分からず、間の抜けた声を上げてしまった。
男はそんな私に構わず、受け取った本をこちらに突き出し、

「いつか先生が有名になった時、自慢になります。 女房も喜びます」

人好きする笑みを浮かべる男に、私は敵わなかった。 結局、私は見返しの部分にサインをした。
震えるペン先を落ち着けるのに、酷く苦労した。 自分の本にサインを書くなど、初めてのことだったのだ。
酷く体がむず痒い。 私の字は決して上手いとは言えなかったが、それでも男はクリスマスプレゼントのように
本を喜んでくれた。 

「ありがとうございます先生。 新刊も楽しみにしてますぜ」

私は滑るようにトラックを降りた。 酷く喉が渇いて、早くモーテルで一杯やりたかったのだ。
「先生!」 と、そんな私の背に声がかけられた。

「四日後、仕事終わりにここに立ち寄ります。 その時もし必要だったら、街まで送って行きますぜ!
 それじゃぁ、取材頑張ってくだせぇ!」

そう言って、彼はトラックを走らせた。 ぐんぐんとトラックは小さくなっていき、私はトラックが
豆粒のように小さくなるまで見送っていた。 しばらくして、私はモーテルに足を向けた。

いつの間にか、風は凪いでいた。 モーテルは決して大きくはなかったが、清掃が行き届いている。
四日間の宿としては申し分なく、静まり返った荒野は執筆には打って付けだった。

私はノートパソコンを持ってくるべきだった。 必要のないものは置いてきてしまったのだ。
メモ帳は荷物に紛れているが、余白は少ない。 部屋にノートが備えてあることを期待して、私はモーテルの扉を開いた。




648VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/26(木) 21:45:21.18hB/Jq/+c0 (5/5)

以上です
長くなってしまって申し訳ありません
どうしても一纏めにして投下したかったので…

男はトラックに乗るまで鬱屈した気持ちでいて、運転手との交流で前向きに変わっていったのですが、
それが伝わったでしょうか?



649VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/05/27(金) 09:16:36.25fbOko5O+o (1/1)

地平線が見えるような荒野の道路に歩道が整備されてないのは当たり前じゃね?とか
古い形式のトラックなのにパワーウィンドウとか
数十マイルや数十ヤードの曖昧すぎる表現とか
現代アメリカ小説じゃなくてハードボイルド小説が好きでいいじゃんとか
1レスにまとめられるだろとか、いろいろ思った

ごめん、俺、ヘミングウェイの小説が面白いと思ったこと無いんだ


650VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/27(金) 23:52:40.59asGwEpjPo (1/3)

>>616+α
リアル五月病からのリハビリと思って浮かんだものを書いたら異様に長くなったごめん。
一週間あると思って途中まで書いて放置していたら締め切りスレスレに…そしてまさかの200行越
後から気付いたけど設定が某スレと似てた。すみません。好きです。後>>645とも若干被った…
多分居ないと思うけど、もし>>513のアレンジみたいな事をやりたい方がいたらどうぞ
(そもそも投下タイミング的におkなのかどうか微妙だが…)
----------

酷く憂鬱な気分だった。
「雨雲に覆われた様な」といったところだろうか。
それとも、「鉛の様に重く」「底なしの沼に沈んでいく」という感じだろうか。
何れにしても、月並みだ。

旅人が一箇所に留まるには、確固たる理由が必要なのだ。
無気力という理由では不十分、それを言い訳にするのは愚の骨頂。
だから四日ぶりに太陽の下に這い出して、岩石砂漠の真っ只中、
辛うじて道と呼べるその端で、ある種の焦燥の元、ヒッチハイクを試みていた。

……まさか、「竜乗り」が引っかかるとは思わなかった。



低空飛行する深緑の巨体に揺られながら、僕はただ黙っていた。
巨体とは言っても、それは他の生物と比較しての話だ。
竜の中では比較的小型、若しくは幼生――の筈だ。

竜なんて、そうお目にかかれる代物ではない。
大きな街を訪れた時に数度見たぐらいだ。背に乗るどころか、触れるのも初めてである。
鞍は竜乗りの青年が座る一席しか取り付けられていないが、
広げた翼の御陰で落ちることもなく、思っていた程も乗り心地は悪くない。

しかし、気になっている点が一つあった。

「あの……」
「なんでしょう?」

青年が振り向いて、そのブラウンの瞳をこちらに向けた。

「あなたはその……何処かに仕えているんですか?」

これまで見た竜は、例外なく国や街、貴族などの紋章を掲げていた。
だが、この竜には紋章入りの装具が見あたらないのだ。

「……いいえ、私はしがない旅人ですから」

本当に?
そう思ったのも束の間、青年は進行方向をむき直してしまった。
言葉が返される前の、僅かな間が気になっていた。
けれど、これ以上は聞けない、聞いてはいけない。

「奇遇ですねー、僕もなんですよ!」

ああ、白々しい。
心を覆う雨雲が厚くなったのか、心自体が更に重く沈んでいったのか。
とにかく、心がまたマイナスへと傾いた。

今度は、青年から質問が投げかけられた。

「旅を始められてから、まだ日は浅いのですか?」
「そうですね、一月半ぐらいです」
「あぁ、やはり。ザックが新しい様に見受けられたので」

つい、バッグパックの肩ベルトを右の手で握りしめた。
魔法道具であるが故に重みも質量も控えめではあるが、今はそれではない何かがとても重い。

「楽しいだけの時期を過ぎて、少し辛くなる頃合いですね」

そして、その言葉にどきりとした。

「うっ……」
「図星でしたか」

再び振り向いた青年の顔は、悪戯っぽく笑っていた。
漏れた呻き声は肯定に等しく、今から否定するのは難しいだろう。

「何かお悩みでもあるのですか? これでも私、それなりに旅を続けていますから、
 先輩として何かしらアドバイス出来るかも知れませんよ」

厳しくとも誤魔化しの言葉を吐くべきか、悩みを打ち明けるべきか。
暫く、僕は黙り込んだ。


651VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/27(金) 23:53:12.63asGwEpjPo (2/3)




「……僕は、小話を描くのが好きなんですよ」

諦め、という言葉が全てを内包してくれるかもしれない。
青年の後頭部に視線を遣って、僕はぽつりと語り出した。

「小説ではなく?」
「ええ、小話」

小説と呼ぶには恐れ多く、詩と呼ぶには文章的すぎる。
だから、小話。

「いい趣味をお持ちですね」
「趣味、趣味ねえ……」

呟いて、僕は頭を抱えた。
掻き上げた髪が風に靡く感触。太陽の光が鬱陶しい。

「ここ数週程、急に描けなくなったんですよね」
「それはそれは……スランプですか」
「かもしれない、です」

描く事に対しての欲求の喪失。
無理矢理筆記具を手にしても、何も言葉が浮かばない。
それは中継宿に泊まっていたこの数日も同じだった。

「僕はですね、旅をして世界の色々な場所で言葉を綴るのが夢だったんですよ」
「素敵な夢じゃないですか」
「その為に何年もお金を貯めて、やっとここまで来たんです」
 ……でも、本当にそれでいいのかなって」

あー、と青年が小さく頷くのが解った。

「いざ実行に移してみて、現実が見えてきたという感じでしょうか」
「……意外と、旅自体は順調だったんですけどね」

もしかすると、順調すぎたのかも知れない。

「気付けば……孤独感とか疎外感とか、不安とか――」

何を初対面の人間に打ち明けているのだろう。
愚かしいと思いながらも、言葉は止まらなかった。

「何で、こんな気持ちを抱えながら旅をしているんでしょうね」

最後にそう言って、唇を噛んだ。
涙声になりかけている、と自分で解ったからだ。

青年はやはり、前を向いたままだった。でも、それでいい。
この、恐らく情けないであろう顔を他者に見られるのは、とてつもなく恥ずかしい。



「……羨ましいですね」
「え?」

不意に投げかけられた言葉。

「私は、私の意志だけで旅を始めた訳ではありませんから」

そんな事を言われると、心が更に締め付けられてしまう。
「自分の意志」などという言葉は、自分でも何度も言い聞かせて来たのだから。


652VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/27(金) 23:54:07.74asGwEpjPo (3/3)


「あなたは、違うんですか?」
「……」

察してくれ、と無言で言っていた。
無言でこちらに向けられた顔は、やはり笑っている。

「私は、この竜と一緒に旅をしていますから」
「あ……」

言い加えられた一言が、答えに等しかった。
紋無しの竜――具体的な理由等は想像の域を超えないが、
あまり喜ばしくない理由である事はそれだけで理解できた。

とても無配慮な事を喋ってしまったと後悔した。
今すぐ竜から飛び降りて、穴掘って埋まりたい程に。
最もそれは例えであって、そんな度胸など一切無いが。

心なしか、心臓が痛くなってきた。

「望んで旅に出た訳ではありませんが、私は今幸せですよ」

それは彼の事実なのか、それとも僕への気遣いなのか。

「ひょっとすると、期待値の問題かも知れませんね」
「期待値……」
「夢というものは、何処までも美化されていくものですから」

一呼吸置いて、青年が言葉を続けた。

「一月半前となりますと……旧暦末辺りから旅を始められたんですよね」
「ええ……如の月の終わりから」
「成る程」

うんうんと微笑みながら頷く青年は、どこか飄々としている。
話し相手である僕の心境とは全く噛み合っていないが、不思議と嫌悪は感じなかった。

「極東の国では、この時期特有の倦怠感を「皐月病」と呼ぶらしいですよ」
「皐月、病……?」
「ほら、今月は皐の月じゃないですか。皐の月の病で皐月病とのことです」
「へえ……初耳です」
「まあ、病名というよりスラング、俗語ですからね」

皐月病、と小さく繰り返してみた。
何処か涼しそうな響きなのに、意味するのが倦怠感だとは。

「旧暦始めに環境が変わった人に起こりやすいそうです。貴方のもそれかもしれません」
「……対処策は?」
「そうですねえ……」

少し唸って、青年は人差し指をぴんと立てた。

「楽観的になることですね」
「え……そんな単純な」
「案外難しいですよ」

青年は笑っているが、しかしふざけているとしか思えなかった。
確かに難しい、いや、難しすぎる。

「……単純ですけど、でもそれが出来ればこんなに悩んでいないですよ……」
「ははっ、でしょうね。もしかすると、時間が解決してくれるかもしれません」

青年の眼が穏やかで物静かな色になった、気がした。

「旅人とは、「流動」する生き物ですから。立ち位置も、心も、何もかもが」

――ああそうか、と思った。
なにが「そう」なのか解らないが、とにかくその様な、結び目が一つ解けたような感じがした。
ただ一つ解った事。僕は、「何か」を難しく考えすぎていたのかもしれない。



空は相変わらず底抜けに青く、光は熱と共に容赦なく降り注ぐ。

状況は殆ど変わっていない。
未だ胸の内を覆う雨雲は去らず、心は重く、水面にも浮かんでこないが、
今なら、僅かながらも文字が綴れそうな気がした。



653VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 00:17:23.82GHiF+Ck+0 (1/5)

〆切だな。書くと言っておきながら結局投下出来なかった……

今回は3レス使うSSが多かったな。
お題が深く考えてしまうようなものだった事が関係してるかな。

文章を作るってのは本当に難しぃ。


654VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 00:28:31.87g82VAxu2o (1/5)

今回一番投下数の多い>>616に限れば

【起】旅人がヒッチハイクをしている
【承】車(乗り物ならなんでもOK)が通りかかり乗せてもらう
【転】このドライバーとの邂逅によって旅人の心情に変化が生じる
【結】旅人はもう少し旅を続ける事を決意する

こんな感じで起承転結が決まってるもんだから
「起だけ」とか「結だけ」とかってのをやりづらいのと

・旅の動機が分かるように書く
・旅人はこのまま旅を続けていていく事に迷い(悩み)がある

この指定がある為に説明に行数を裂かないといけないのが
3レスばかりだった理由かな、という個人的考察
(後人少ないから長くてもいいやーっていうのと)

正直俺の書き方だと3レスに収まるかも相当心配だった。(時間の問題もあったけど)結構説明省いたし
ただ、お題が悪いという意味ではない。大変ではあったけど面白かった


655VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 00:52:08.45GHiF+Ck+0 (2/5)

>>654
なるー。
次はそれも考えてお題設定してみるかの。
短めの文章で書けるテーマでなんかいいのないかな~。

少し趣向を変えて、「キャラの説明」とか「舞台・状況の解説」
みたいなのをお題にしてみるとか。
「あらすじ」のみで投下、起承転結における場面を限定するとか。

なにか軽い文章でセンスの出やすいお題ってないかな。


656VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/05/28(土) 00:54:13.86CeUXj2j0o (1/1)

全部お題拾ったのを書いてみたが、中身無いのに3レスくらいかかりそうだから見送ってしまった
うん、欲張りは良くないな


657VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 00:59:09.80g82VAxu2o (2/5)

写真かなんか一枚引っ張ってきて
「風景扱いでも写真扱いでも何でも良いからこの描写を含めること」
みたいなのも面白そうだなと以前思ったが、引っ張ってくる写真が無かった。
後うっかり含めて安価結構取ってしまってるので暫く安価は避けたい

…正直自分で出したお題だとインスピレーション湧きにくいんだよなorz
後誰とは言わんが他人の出したお題に文句言うの止めようぜ。皆出し辛くなるから

>>656
書き終わってるなら折角だし投下しようぜ


658VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 01:03:14.06GHiF+Ck+0 (3/5)

>>656
おいらも今回は見送りっす。気軽に書こうぜ。

写真かー。それもアリいいなー。
ちなみに今お題安価とってやろうって人いるのか?


659VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 01:33:27.30GHiF+Ck+0 (4/5)

一応また>>602でいくけど、期間が短いようなら見直そう。

安価だけ出しときます。
次回のお題
>>662


660VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 01:34:34.64GHiF+Ck+0 (5/5)

age


661VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 01:39:41.15g82VAxu2o (3/5)

短時間に何度もレスすまんぬ。書ける内に感想。
正直どれもこれもレベル高すぎて、俺のレベルじゃ批評無理だわ…
でもべた褒めばっかだと馴れ合い化しそうなので無理矢理いちゃもん付ける
無理矢理なのであんまり気にすんな!見当違いな事言ってたらスルーしてくれ!

>>635
モナリザ吹いたwww設定の再利用は全然okだと思うよ
>「だからお前は、帰ってきた俺にお手製の~
その後の反応も含めて台無しだった、って言うには少しインパクトが足りない気がする。
> この国には『機密特捜機構』なる組織がある。
最終段落の前半が妹視点に近い状態で進んでいるので、その中で上記の一文があると
「疑念の連鎖」って感じが薄れるかもしれない…と思ったら既に指摘されていたぜ…

>>639
展開はえー、と個人的に思ったけど多分恋愛物のSSを全く読まないせいだろうな。レス数制限あるし
一人称小説としていいと思う。正直最初はえらい説明調だなあと思ったけど
逆に主人公のキャラが伺えてよかった。
飽くまで一意見なんだけど、地の文中の発言内容に鉤括弧があったりなかったりするので
いっそ付けるか付けないか統一してしまった方がいい気がする。ぶっちゃけ暫く改行漏れかと思ってた。
若しくは発言の長さで有無を統一するか
後舞台・時代設定がちょっと解りづらいかなあ。電話って事は現代だと思うけれど。
周辺の状況だけでもいいから、冒頭付近に少し説明が欲しいかも

>>645
荒野被りとか関係無しに個人的に好みだ。鬱展開じゃなくてちょっと幸せになったw
幾ら運転手が本好きでも、「取材」と聞いたら作家よりまずマスコミとかそっちを連想しそうだけど
もしかしてこれって日本人的な発想なのかな…詳しくないからわかんね
もしそうでないなら数言で済むだろうし、その手のやり取りを加えると滑らかだとは思ったけど…
>私はノートパソコンを持ってくるべきだった。 
この一文に、翻訳書籍の様な不自然さを感じた
舞台が舞台なので意図的なものだったらスルーして下さい

※要らん話:現実世界の灰目は色素の薄い人が殆ど、と思っていたのでSSに突っこむのも野暮と思いつつ
指摘しようとしたけど、ぐぐってもろくに資料が見つからなんだ
所詮wikipedia(笑)の知識なので自信ない。誰か眼の色とかに詳しいサイトを知っていたら教えて下さい



やりとり一つ(「見せて下さいよー」>「エーヤダー」な物書きあるある)入れ忘れた事にさっき気付いて呆然としてる
そして安価下


662VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 02:05:23.65g82VAxu2o (4/5)

ごめんちょっと言葉不足だったので追記
ノーパソ云々の一文に関しては、意図的な文体にしても
そこだけ極端に違和感があると言いたかった(通しで読んでてそこでひっかかったので)
トラック降りるところとか気にならなかったのに何でだろうなあ…偶々そこで引っかかっただけかも

しかし時間的な問題か人いないな。とりあえず安価下しときます


663VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 23:01:28.65g82VAxu2o (5/5)

安価下した俺も悪かったが誰もお題書きに来ないとかw 連投は気が引けるが…
人が全く居ない、という訳ではないと信じて、俺が書いたんじゃないけど>>159とかどうだろう
で、これでやるにしても一日じゃきついし、締め切りはまた金曜24時がいいんじゃないかな


664VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/29(日) 00:34:49.96BHJVn6cw0 (1/2)

>>663
いいと思う。

他にも採用されなかったお題安価は
>>109

>>112

>>161

あたりがあるな。これらのどれでもいいようにしてみる?
期限は何ならこれから一週間で行ってみようか。土曜24時締めきりにして。


665VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/29(日) 18:13:59.87BHJVn6cw0 (2/2)

人いるかどうかわからんがとりあえず、
>>664で一週間やってみますよー。


666VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/31(火) 01:06:21.00DUzbA2mho (1/1)

見ていない訳じゃないんだが…
自分のスレを持とうと思って書き貯めを始めた途端余裕がなくなった。並行できる人本当に凄いと思う。


667VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/31(火) 18:46:18.46nknLLC2e0 (1/1)

>>666
同じく。自分のSS書いてたらとても同時にはできない。
以前は展開に詰まって息抜きでやってたが、今は早く自分のSSを進めたいからなぁ。


668名無しNIPPER2011/06/02(木) 22:28:41.93Ul2Iuk0AO (1/2)

>>112

 ――懐かしいな。俺は校舎の屋上から、下を眺め、思う。ここに来たのは3年ぶりだった。俺は実に簡単にフェンスの向こう側にいき、そこに座る。足は行き場がなく、ぶらぶらしていたが別に怖くはなかった。 
 「こりゃー落ちたら確実に死ぬよな」俺は誰に言うでもなく、呟く。なんたって、実証済みだからな。ここから飛び降りて死んだ生徒がいるというのは、有名な話だった。
 校庭では、生徒たちがせわしなく動いていた。あるものは早く学校から解放されようと走り、あるものは部活動に精を出している。
 カキーンと心地よい金属音がしたので、そちらの方を向くと、野球部が紅白戦のようなことをしていた。音のわりには弱いあたりだなと俺は思う。その横でサッカー部がボールを追いかけているのが見えた。そして、その2つの部活を避けるようにして、陸上部が走っている。どれも、俺がいた頃と何も変わってない。
 「君」しばらく、そんな光景を眺めていると、ふいに後ろから声をかけられる。まさか、声をかけられるとは思ってもいなかったので、驚き、振り返る。
 「そんなとこにいるとあぶないと思う」俺は男の姿を一瞥する。背は低く、当然だか学生服を着ている。そして、男はどこか面白がっているようだった。
 「視えるのか?」俺は尋ねた。
「厄介なんだ。得したことなんかないよ」ため息をついた後、男は俺を指差し、言った。
 「昼間に出てくるなんてルール違反だ」



669名無しNIPPER2011/06/02(木) 22:37:16.96Ul2Iuk0AO (2/2)

人いなそうだけど一応投下してみた。
感想お願いします!




670VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/03(金) 17:17:46.88KOYiAI0V0 (1/1)

>>668
読点をあまり使いすぎるとテンポが悪くなる。
それといくつか癖があるようだな。
>下を眺め、思う。
>向こう側にいき、そこに座る。
>言うでもなく、呟く。
>指差し、言った。
>驚き、振り返る。

>まさか、声をかけられるとは思ってもいなかったので、驚き、振り返る。
リアルタイムで事が進んでいる感じがほしかった。
驚き、振り返る。 → 俺は驚いて振り返った。
こんな感じで。読点も減らせる。

文末の言葉をもう少し慎重に選ぶとまた印象が変わると思う。
話はいいと思う。けどこれは短編以外でやるとするなら、視点移動に気をつけなければいけない文章かも。
普段書いているSSでは注意を。


投下があれば感想は書くよ。


671VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/03(金) 19:26:00.46A4zeWWgVo (1/2)

>>668
俺も句読点が多すぎると思った
加えて「説明的な文章」と「心情をそのまま書き写した様な文章」が混ざっていて変な感じ
せめてどちらかに統一した方がよさそう
後、凄く細かいけど、中盤「~る」で終わる文章が三つ続いたのがテンポ悪いかなと思った
…というか内容が>>670とほぼ一緒だな…ごめん

話の組み立ては結構好き
この手の内容は登場人物の状況が今一はっきり把握出来ないまま終わる事も多いのだけど
その辺りは自然に読み取れた


672VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/03(金) 19:31:05.27A4zeWWgVo (2/2)

ごめん別に句点は多くなかった…

締め切りは土曜24時だっけ。滑り込み投下に期待


673VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/05(日) 00:28:21.435t4yJ+pS0 (1/2)

まぁ〆切な訳だが、
お題は
>>109

>>112

>>159

>>161

でしばらくいこうか。
というか何かお題のアイデアがあれば自由に投下してください。


674VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/05(日) 00:29:01.195t4yJ+pS0 (2/2)

まぁ〆切な訳だが、
お題は
>>109

>>112

>>159

>>161

でしばらくいこうか。
というか何かお題のアイデアがあれば自由に投下してください。


675VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/07(火) 21:41:24.02OTf6yLJA0 (1/1)

過疎り始めたけど、これはみんな本スレに戻っていったってことだろうか
嬉しいような悲しいような…


676VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/10(金) 22:19:54.95lsBUaxylo (1/2)

ようやくSS一つ終わったし、そろそろ復帰しようと思う


677VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/10(金) 22:43:11.66lsBUaxylo (2/2)

ざっと過疎中の読んでみたけどレベル高いな
俺も頑張ろう


678お頼み申す。久々だからオーソドックスに行ってみました。2011/06/12(日) 19:15:10.41VBqldvbno (1/1)

>>109


 日が暮れかけても蝉たちは合唱をやめない。
 そのかしましい声々を背景に、やや間を置いてから目の前の彼女はつぶやいた。

「……ごめんなさい」

 俯いたその表情はよく読めない。
 ぼくは口を開いてなにか言おうとして、それでも何も言えなくて。

「そう……そうか」

 風船から空気が抜けるごとくに言葉を吐き出した。
 彼女はなおも謝罪を告げ、それから足早に歩み去る。ぼくはそれを見送った。

「……」

 愛の告白は単純なものだった。

「好きです。付き合ってください」

 再びそれをかみしめて、苦い思いが胸に広がるのを見下ろした。ああ。
 彼女と出会ったのは春先だった。ぼくはとにかく孤立していた。
 別にいじめなんかはなかったが、それでもぼくは一人だった。
 まわりの壁は見えないながらもアクアリウムのごとく分厚くて、一人の寒さは厳しくて。
 だから、それを越えてくる者がいるなんて、考えもしなかったのだけれど。

「隣、いいかしら」

 中庭ベンチで読書のぼくに、声かけしたのが彼女だった。
 特に会話らしい会話もなかったけれど、それから毎日ぼくらは隣同士で読書した。
 彼女は、ありきたりな言葉だけれど綺麗な娘だった。
 見た目ももちろん麗しかったけれど、そのたおやかな振る舞いがぼくはとにかく好きだった。
 優しくページを繰る手、静かに物語を撫でる眼差し。
 何よりその口元の笑みが幸せそうで、ぼくはそれを見ているだけで、何かが報われるような気がしたのだ。
 好きだった。

「それ、何の本?」

 勇気を出して放った言葉は、彼女の微笑みにたどり着いた。ぼくと彼女はそれから少しずつ話すようになった。
 一人じゃないという実感は、とても具合のよいもので。彼女の雰囲気柔らかく。
 ぼくは久方ぶりに安らぎというものを覚えたのだ。
 帰り道を歩きながら、ぼくは静かにこっそりと。涙を流してふき取った。

 彼女が引っ越さなければならなかったことを知ったのはそれから数日後のことだった。


 (了)


679VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/13(月) 02:19:31.12hevMGKNj0 (1/1)

>>678
視覚的にも文章的にも読みやすい。スラスラ読めた。
書いてからしっかり読み返して、違和感があった部分を取り除いて修正してる感じ。
いつもそれをやるのは厳しいけど、その内慣れてくるかと。頑張ってほしい。

表現が凝ってていいと思う。わかりやすい言葉が選ばれてる。
一人称では小難しい言葉を多用すると、読みづらくするだけになる場合がある。
これくらいで個人的にはちょうどいいように感じた。

下から二行目
ぼくは~
帰り道~
の所は、ぼくは~と、帰り道~の文とで時点が変わっているので、改行するなら
この二文の間だったかもしれない。

時点が変わる文章の先頭には具体的な時期や場所を書くといいかと。
>中庭ベンチで読書のぼくに~、が先頭。
この先頭の前に、「新学期に入り、ぼくは新しいクラスになじめずにいた」
みたいな一文があるとまた時点移動がイメージしやすい。
ちなみに関係ないけど、この文を入れたなら、「隣、いいかしら」 のセリフは、
声をかけてきたのが彼女だった、の後に来るな。

>風船から空気が抜けるごとくに言葉を吐き出した。
どちらが言葉を吐き出したんだろうか、と少し思った。主語がほしい。


長々と感想を書いたけど、十分にくおりてーは高いと思うです。


680VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/13(月) 09:09:17.40RIMYA7pfo (1/1)

>>679
感想どうもー
構成の方法について言及してもらってるね
確かに俺は読みやすさ重視だからそういう指摘は助かる
特に時点については参考になったthx

これから週に一回は投下しにきたいな


681清涼感を求めてみました。お頼み申す2011/06/19(日) 19:28:55.89DffbznSxo (1/1)

>>112

 抜けるような青空は、それこそ人の心すら吸い上げる。時速数十キロの勢いで。
 風は涼しく、日射しは優しく。
 その男子生徒は見上げたまま目を細めた。

「……」

 校舎の屋上、その端っこ、フェンスすらも乗り越えて。
 彼は座って足をぶらぶらと。
 思うことは何もなく。
 それでも耳を傾けて。

「……」

 沈黙以外はそこにない。
 それでも世界のぐるりは彼を見守り、何かを語りかけていた。
 ああ。彼は思った。
 このまま飛んでいけたらな、と。
 声がかかったのはそんな時。

「そんなところにいたら、危ないぞ」

 それは優しい少女のもの。
 振り向くその先、風に吹かれて、彼女はそっと微笑んでいた。

「やあ」
「うん」

 彼女はフェンスに近付くと、それを掴んで彼と同じように見上げた。
 風は涼しく、日射しは優しく。
 彼女が目を細めるのが見えた気がした。
 やはり沈黙、それでも囁き。

「そっちに行ってもいいかな?」

 彼が頷くのを見届けて、彼女はフェンスに足をかけた。

「……見るなよ?」

 何のことかな? そらっとぼけて彼は町を見下ろした。高台のそこからはその全てが見渡せる。
 存外軽い音を立て、少女が隣に着地した。

「ここ、いいね」

 彼女は言って、隣に座った。
 彼は無言で肯定し、

「あ」

 無言で彼女の手を握った。
 風と日射しは相変わらず穏やかだった。


682VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)2011/06/20(月) 04:40:20.59tjD13VsEo (1/1)

>>681
ちょっと辛口になりますが、ただの批評家気取りの戯言なのであくまで参考程度に

全体的に情景描写の置き方がちぐはぐな感じがしました
体言止めも多いので詩的要素の濃い世界観ですが、自分はどうにもその世界観に馴染めませんでした
以下数ヶ所気になったところを

>時速数十キロの勢いで。
いきなり出端をくじかれた気分です。倒置していながら後の文章に関与せず、浮いてます

>その男子生徒は見上げたまま目を細めた。
「見上げたまま」の前後にもう一文節欲しいかもしれません

>それでも耳を傾けて。
思うことは何もないのに耳を傾ける?
以下の地の文のくだりも含め、筆者の伝えたいことが図りかねました

>やはり沈黙、それでも囁き。
ニュアンスは分かりますが、さすがにこの一文はやっつけ過ぎなので練り直すべきと思います

>風と日射しは相変わらず穏やかだった。
締めの一文としてはいまひとつのように思えます。あまり余韻が残りません
風と日射しが一緒くたに穏やかと表現されてるせいで、むしろこれまでのタメの文より地味になってる気がします
「清涼感を求める」とのことなので、僭越ながら日射しの描写は捨て、
「ひときわ涼やかな風が通り過ぎた」「風音とともに少女の髪が吹き流れた」などとした方が感じが出るのではないでしょうか


逆に良かったと思えた点は、人物の具体的な言動からなる展開の仕方です
少女との掛け合いの(いい意味での)淡白さは自分好みでしたし、「見るなよ?」の一言は本能のどこかをくすぐりました
手を握った後の描写も欲しかったところですが、あえてここで止めたところも業とみました


精進すべき身でありながら偉そうなことばかり書いて申し訳ありませんでした
以上の駄文でもし何かを得られたなら幸いです。ここまで読んでいただいてありがとうございました。では


683VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/20(月) 07:48:47.02Z6ZcJh/Vo (1/1)

感想どうもー
おお、なんだかこてんぱんですな
特に反論もできないので、参考にしつつ精進させてもらいます
最も参考になったのは締めの一文
提示してもらったものの方が明らかに涼しい
余韻を残す大事な部分なのでこれからは気をつけたいと思います


684名無しNIPPER2011/06/29(水) 09:33:18.20ApUj8/IAO (1/1)

過疎ってるんでSS投下age

>>112
心地好い春風が流れる平日の昼間

大抵の社会人は仕事に行き、大半の学生は自身が所属している学校の校舎で勉学に励んでいる時間

彼は体育の時間でもないのに、自身の所属する校舎の外にいた

このパターンに該当するものがあるなら、サボりか、何か事情がある生徒のどちらかだ

そして彼は前者に該当する

別段、学校をサボる生徒など珍しくない

誰にだって「授業をサボりたい」だの「学校休みたい」だのといった欲望は持っているはずだ

持っていないのなら、その人物はよほどの真面目くんか、幸せ者に違いない

だが、彼は珍しかった

サボる事が、ではない
サボる場所が、珍しかった

学校の屋上
フェンスを乗り越え、屋上の端に座っている
足は端からはみ出して宙ぶらりん

一歩でも間違えたら死に繋がりかねない状態でサボっていた

もし誰かが悪ふざけでトン、と肩を押しただけでも少年は屋上から転落し、地面に叩きつけられた挙げ句、真っ赤なトマトジュースで頭が深紅に染まりかねない

そんな危険性を察した賢い友人は何度も少年に注意を促す

だが、問題のその少年はいい天気だ、などという脳天気な事を考えながら空を眺めているだけだった

そして今日も少年は空を眺め続けていた

「今日も空が青い…」

少年はその顔をいわゆる「マヌケ面」にしながら、ボーッと空を見上げる

彼の頬に渦巻き模様が描けるならば、さぞかし、お似合いだろう

「こんな昼間から生徒がサボりとは感心しないなぁ」

不意に声がかかり、少年の顔が通常の面構えに戻る

脳天気な少年でもマヌケ面を人に晒す趣味はないらしい

「さらに言うなら、そんな所にいると危ないぞ」

先程からするのは高い女性の声

無論、少年からそんな声が出るはずがない

少年が声のする方を振り向く
すると、そこには少年の見知った顔があった

「委員長…」

少年がそう呟くと同時に委員長という名の死に神から、少年に対して死刑宣告が下される

「君、今日の放課後に漢字の書き取りだ。安心しろ。20000字で許してやる」

委員長の言葉を聞き、少年は肩を落とした


685VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/10(日) 18:08:30.73hpGeOUH3o (1/2)

亀だけれども

>>684
ちょっとまわりくどい表現が多い気がする
例えば
>このパターンに該当するものがあるなら、サボりか、何か事情がある生徒のどちらかだ
>そして彼は前者に該当する
これとかは単純に彼はサボりだと言いたいわけだけど、わざわざ遠回りさせている
別に使っちゃいけないことはないんだけど、同じようなのが多い気がするので、あまり頼りすぎない方がいいかと

申し訳ない、これくらいしか批評できないや


686次は投下 できれば批評お願いします2011/07/10(日) 18:10:39.00hpGeOUH3o (2/2)


>>159


 狭くはないが、あまり綺麗でもない。
 ベッドとテーブルが一つずつあるだけの殺風景な、もっと言ってしまえば安っぽいホテルの一室だ。
 どこか淫靡な気配を漂わせるそこで、だが艶っぽい雰囲気など露ほどもなく男と女が向かい合わせに座っていた。
 いや、男と少女といった方が正しいか。

「では、取引は成立だ」

 無機質な男の声。この世の全てに興味がないと言わんばかりのそれ。
 自分にも興味はないのだから、声は情報の伝達という最低限の意味さえも失いかけているのだろうな、と少女は思った。
 了解の意を示し、彼女は一抱えほどの鞄を前に押し出した。かなりの重量がある。
 紙の束でも腕に軽く痺れを走らせる程の重さにはなるのだ。
 男は頷くこともせずにその取っ手をつかむと立ちあがった。

「こちらが提供できる情報はこれが全てだ」

 差し出す手に数枚の紙。受け取るが鞄と違って重みはない。だが、彼女には大事なものだ。
 取り戻すのに欠かせないものなのだ。

「ええ」

 ありがとう。とは決して言わない。天地がひっくりかえっても言うことはないだろう。
 男がこちらに背を向けた。

「……」

 昔――そうだ五年ほど前だ、と少女は思い出した――ひとつの家族があった。
 その家族はお世辞にも裕福とは言えなかったが、それでも居心地は悪くなかった。

 少女はおもむろに手のひらサイズの鉄の塊を取りだすと、男の背中に向かって引鉄を絞った。
 小さな破裂音。男の身体がこわばり、そして倒れる。
 しばしの沈黙をはさんで少女は静かに落ちた鞄に歩み寄った。
 引き開け、一束、取り出す。

「やっぱりわたしのところにあるべきよね、これは」

 紙幣の表面を撫でる視線はどこか熱っぽい。
 そのままそれに口付けし――肩に衝撃を受けて倒れ込んだ。
 幸い拳銃はまだ手の中にあった。しかし二撃目を受けて部屋の壁際まで吹き飛ぶ。
 打たれた腹部が激しく痛んだ。唾液を胃液を吐き散らす。
 持ち上げた視界に黒い影が映った。背中をまともに撃ち抜かれたというのに、男は平気で立っていた。

「取引は成立した。反故にするつもりか」
「お金はわたしのものよ……いつだってね。あなたたちになんて渡すものですか」

 声は震えていたが、拳銃を持つ手は持ちあがってくれた。

「わたしのものよ……! わたしにはこれが必要なのよ!」

 昔、一つの家族があった。お世辞にも裕福ではなく、得るために何かを失う必要があった。
 大事でないものがなくなり、次第に大事なものまでなくなり、彼女は最後に姉を失った。姉は売られていったのだ。

(わたしは絶対に姉さんを取り戻す!)

 あの家族の居心地は悪くなかったから。
 彼女は再び引き金を絞った。



687VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/10(日) 23:39:30.85VcW/dleRo (1/1)

>>686
改善できそうな点として思ったところを。

・「~のだ、~なのだ、~なるのだ」 はあまり好ましくない
 文法の細かいところだけれど、ちょっと崩した表現という印象を受ける。
 会話文なんかで軽く使うにはいいけど、シリアスな中身と一致していない気がする。

・地の文の人称が分かりにくい
 終始「彼女は~、少女は~」で書いてるから、これは三人称視点だと判断できる。
 けど、その中に少女の心情が一人称視点で含まれているように見える。
 痛みの描写などにそれが顕著。
 あとぶっちゃけ彼女と少女を使い分ける意味はあったのだろうか?

全体としては好きな文章だった
一文が短く、テンポも良かったからさらりと読めた
強いて付け加えるなら「家族の居心地は悪くない」って日本語として合ってるのかな、ちょっとわからん


688VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/11(月) 04:46:05.28rdAf8mWro (1/6)

批評ありがとう、もう人がいないもんだと思ってたから何だか安心しちゃいました

家族の居心地……確かに違和感があるような
書いてた時は分からなかったけど、今度から気をつけよう

地の文の人称については今回、三人称だけれども神視点ではなく少女の視点を採用しています
三人称一元とかいう描写法です
それで心情や痛みの描写をしたのですが、それでも違和感があるようでしたら教えてもらえると助かります

以上です、ありがとうございました


689VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/11(月) 08:42:20.54cX6lX9IJo (1/2)

>>688
三人称一元は知ってるけど、三人称である以上視点は神じゃないかな
三人称一元と一人称では心情描写可能な範囲がちょっと違う
一人称でしか書き得ないレベルの心情描写が入ってるように思えたんだ
俺の考えすぎだったらごめんよ


690VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/11(月) 18:14:40.70rdAf8mWro (2/6)

>>689
なるほど、違和感がある以上何かしら不備があるんですねきっと
三人称一元が一番好きなので、もっと練習します
ところで、自分は三人称一元は一人称の「私」なんかをそのまま「彼」なんかに置き換えられるものだと思い込んでました
心情描写可能な範囲が少し違うということですが、よければ解説をお願いできないでしょうか


691スペース挟めなくて見にくく、申し訳ありません2011/07/11(月) 20:05:41.65rdAf8mWro (3/6)


>>536


 笑い出したいような泣きだしたいような。でも驚きににも似た心地よい緊張と、どこか神性すら感じる厳かさからくる胸の痺れ。
(ああ……!)
 将来子を得て、そしてその子が初めて立って歩いた時の感動はきっと、この心の震えに似ているのだろう。
 ぎこちなくゆっくりであろうとも、確かに歩を進める“彼”を見て、わたしはあの時そう思ったのだ。

 大きく軽快な破裂音の連なりが耳を貫いた。
 拍手の音で、意識を過去の揺らめきから現在に戻す。
「では西本くんの前途を祝して、カンパーイ!」
 教授が大声を張り上げてグラスを掲げた。「乾杯!」とわたしの周囲からも声が上がる。
 わたしは沈黙したまま。グラスは申し訳程度にひょいと持ち上げてみた。
 そんな小さな動作でも、身体に空いた穴から空気が抜けるような気がした。もしくは心に空いた穴からか。
 ありがとうございます、と穏やかに笑う西本くんを見ていると、無性に胸を掻きむしりたくなるような衝動に襲われた。
 だから、西本くんの送別会には出たくなかったのに。

 海外の大学への留学。相手側の大学教授からの直々のご指名。事実上のヘッドハンティング、みたいなものだ。
 西本くんはこの分野で確かな実績があったし経験も豊富だったから、将来は漠然と“すごい人”になるんだろうな、なんて考えてはいたけれど。

 大学の作業所を利用した会場は、夏の夜にも関わらずなかなかに涼しかった。
 でも、わたしは居心地の悪さを感じて、しばらく会場をぶらぶらした後こっそり裏口から抜け出した。
 ため息。見上げると星と月が綺麗だった。
 肉眼ではわからないほどゆっくりと夜空を滑っていくそれらを見つめてどれほどたったろうか。
「渡辺?」
 むわっとした暑さにそぐわない、春のような柔らかい声に、わたしははっとして振り向いた。
「……主役が抜けてきていいの?」
 肩から力を抜き、少しぶっきらぼうに言う。西本くんは笑い、「大丈夫」と言うと隣に来て、さっきのわたしと同じように夜空を見上げた。
「あの日の夜を思い出すなあ……」
「……」
 あの日の夜、とは。わたしたちが、張り裂けそうなほどの胸の痺れに動けなかったあの夜。
 いてもたってもいられない歓喜を、どこか遠いところに思い出す。記憶を共有する沈黙があった。
「わたしはさ」
 意識せずに口を開いていた。
「ライバルだと思ってた、あなたのこと。あなたにだけは負けたくないってね」
「……」
「だから今のこのやるせなさも、あなたに負けたっていう事実に打ちひしがれているからって勘違いしてた。
 あなたが選ばれたのにわたしも選ばれないのは悔しいって」
 西本くんはゆっくりとこちらに視線を下ろすと、「違うのかい?」とやはり穏やかに言った。

 あの日の夜を思い出していた。
 わたしたちは数年前、二人で奮闘していた。小人ほどの大きさのロボットを自分たちだけの手で歩かせる、ただそれだけのために。
 数日間作業所にこもり続けた。徹夜も一日二日ではない。それでもやりがいはあった。

「あの子が歩いてくれたあの日は、やっぱり夏の夜だった」
「うん」
「ガタガタと十数歩だけ。でもわたしは泣いちゃった。うれしくてうれしくて」
「……うん」
 西本くんは微笑んだ。「ぼくも泣きそうだった」と。
「わたし……あなたとずっといっしょにロボットを作っていたい」
 一言目は伏し目がちに。
「わたしは西本くんのことが」
 次の一言はしっかり目を見て。たとえ手が足が震えようとも。
「……ぼくもだ」
「じゃあ――」
「でも行くよ。もっと遠くに歩いていきたい、歩かせてやりたいから」
 涼しい風が吹いた。
「いつか、君と一緒に」

 数日後、仲間たちと飛行場に彼を見送りに行った。
 別れを告げて、それ以降は振り返らずに西本くんは歩いていった。
 ゆっくりと、でもしなやかに。
 その偉大な背中は。
(……)
 どこかあの小人ロボットにも似ていた。



692VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/11(月) 21:09:03.18lcJKLkbL0 (1/2)

オレも書いてみる >>536を会話だけで


「ロボットなら良かったのに」

「どうして?」

「だってロボットなら、別れるとき、涙なんか流さなくて良いだろ」

「そうかしら? ロボットだって涙くらい流すわよ」

「それは多分オイルだよ」

「夢がないのね」

「ロマンがないんだよ」

「どっちも一緒よ」

「かもな」

「うん」

「それじゃ、行くよ」

「気をつけてね」

「ハハ。そっちもな」

「うん」

「バイバイ」

「またね」

「来世でも、君に会えるのを願って」

「私もあとから逝くわ。おじいさん」


693VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/11(月) 21:20:09.55rdAf8mWro (4/6)

>>692
シンプルで整っていて個人的に好感。長々と書いたこちらのと比べるにつけてなんだか負けた気分
ただ、夢がない、ロマンがないのくだりが特に意味もなく思わせぶりでちょっと違和感かも
(もし深い意味があったのなら見落としです、申し訳ない)
でも台詞形式の弱点になりがちな説明台詞もないし良いと思います


694VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/11(月) 21:43:02.86lcJKLkbL0 (2/2)

>>593

「夢がない」とおばあさんが言ったのは、ロボットは涙を流さないと断言する
おじいさんの現実感への皮肉

「ロマンがない」と言ったのは、もう自分達はロマンを追いかけてる年でもないという皮肉。
つまり、「もうそんなロマンチックな事言ってもいい年じゃない」と悟っておられる的な……

けど、おばあさん的には夢だろうがロマンだろうが、そんなものに大差など無く……「どっちも一緒よ」と。


まあ、二人で皮肉を言いあってるだけの場面です
そんなに深い意味はないのであまり気にしないでいいと思う


695VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/11(月) 21:47:34.17rdAf8mWro (5/6)

なるほど、ほんのりと意味があるんだね
話の筋に大きな転換を与えなくともそういうのは好きです


696VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/11(月) 23:08:32.77cX6lX9IJo (2/2)

>>690
うーん、解説までとはいかなくても私見くらいでいいなら

地の文ってのは「誰か」の語りな訳だ
この「誰か」が登場人物の一人になるのが一人称
この「誰か」が登場人物でない『誰か』になるのが三人称
この『誰か』があたかも登場人物の心情を全て見抜いているかのように見えるせいで、神視点とも呼ばれる
一元は一人の心情を『誰か』が描写するもの、多元は複数の心情を『誰か』が描写するもの

だから登場人物の心情を三人称一元で書くとき、それは『誰か』ってフィルタを通すわけじゃん
当然このフィルタには色も何もないけれど、でも何の影響も及ぼさないかって言うと少し違うと思ってる
ものすごく端的な例を挙げるなら

一人称:痛い
三人称一元:彼女は痛いと思った

みたいに、『誰か』の観測をある程度前提とした文になると思う
ただ、それに囚われすぎると文がワンパターンになるから、そこは腕の見せ所のはず

例::痛い。痛い。そんな弱音を口の中で噛み殺し、少女は身体を震わせながら立ち上がる。

とか
まあ、あんまり深く捉えないで欲しい、そう考える人も一応一人はいるって程度に
誰もが違和感を覚えない文なんてのも難しい話だしね


697VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/11(月) 23:15:37.19rdAf8mWro (6/6)

>>696
なるほど、難しいですけどニュアンスは伝わりました
参考にします、ありがとうございました


698VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/12(火) 11:48:01.80kWxuQpNYo (1/2)

まだ>>536を書いてもいいのかな?

「ねえ、前の彼女と別れた理由はなんだったの?」
「はは、知りたい?」
「うん、知りたい」
 僕は思わず笑ってしまった。
 当時はかなりショックだったはずなのに今はただ純粋におかしい。時間の流れのおかげなんだろうか。
「その子はね、ガンダムをロボットって呼んだんだよ」
「へ?」
「うん、ただそれだけ。その事で僕が怒っちゃってね」
「それでお別れ?」
「くだらないだろ?」
「ふふ。うん、くだらないわね」
 彼女はクスクスと頬をゆるめる。
 その笑顔はとても魅力的で、僕はこの笑顔に惹かれたんだ、といまさらながら気がついた。
「そう、だから僕達が別れる理由もくだらない事なんだよ」
「原因が私の浮気だったとしても?」
 さっきまで笑っていた彼女の目が曇る。けれどそこには後悔の色はなかった。
 僕は涙が出そうなのを隠すためになるべく軽妙に口を開いた。
「違うよ、僕達が別れるのは君が目玉焼きにソースをかけたからだ」
「あら、私はしょうゆ派よ?」
「それじゃ駄目だよ。僕もしょうゆ派だもの」
「ふふ、分かった。私はソース派であなたはしょうゆ派だから私たちは別れる。ほんとにくだらないわね」
「くだらなくないよりはいいよ。こうやって違う誰かと笑い合える」
「そう、たしかにそうね……。じゃあそろそろ行くね?」
「うん、身体に気をつけて」
「そっちこそ」
 閉まるドアを見つめながら僕は思う。
 このさき彼女以上に誰かを好きになるかどうかは時間の流れだけが知っている。
 いま僕に出来ることはまだ見ぬ恋人と笑い合うために涙を流すことだけなのかもしれない。


699VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/12(火) 21:54:05.42JAx6dsdlo (1/1)

>>698
これもシンプルでいいなー
重大な事をあえて軽く扱う、みたいなささやかな強がりは大好き。で、次に批評

シンプルゆえに文章関係で特に引っかかったことはなかった
後は内容で、ちょっと話が薄いかなと感じた
掘り下げがあると味わいが増すかも
例えば……過去のエピソードを加えるとか? ちょっとわからない
全体としては好きな文章なので、批評できるのはこれくらいです、申し訳ない


700VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/12(火) 22:52:41.29kWxuQpNYo (2/2)

>>699

ありがとうございます
地の文が苦手故に文章が極端にゴテゴテしたりシンプルになったりしてしまいます
日々精進、ですね



701VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/13(水) 01:35:58.253NWwrY+0o (1/4)

誰か>>691の批評もお願いできないだろうか
力作なんだ
……感想がないのも感想、かもしれないけど


702VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/13(水) 02:33:47.45z4aJsHzmo (1/1)

>>701
最初の一行がくど過ぎて、それ以降飛ばし飛ばしに読んでしまったよ。
小人のような大きさでは、大きさが想像できなかった。
格助詞で終わるのが多すぎる。



703VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/13(水) 02:47:52.003NWwrY+0o (2/4)

>>702
ぐはぁ、やっぱり装飾過多の文章だったか……反省
確かにロボットの大きさも曖昧だなあ
大きさ表現のミスは前もやっちゃったので気をつけよう
格助詞については、読み返してみたけど、十六行目の「けれど」で終わる奴しかわからなかった
できれば追加の解説をお願いしたいです
ありがとうございました


704VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/13(水) 02:58:50.933NWwrY+0o (3/4)

いやあれは接続詞か
指摘されてるのは台詞の方なのかな


705VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2011/07/13(水) 03:49:49.52rGuTdXolo (1/1)

>>703
格助詞とかは分からないけど、確かにちょっと装飾過多っていうか、テンポが悪いかも
長編の一文とかだったら気にならなかったけど、この長さでこの入りだとね
或いは普通の本だったらまだ気にならなかったかもしれないけど
話自体は結構好きよ


706VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/13(水) 07:39:55.313NWwrY+0o (4/4)

>>705
どうも
力作は力作でも、力みすぎの作だったかー……
今度はちょっと肩の力を抜いて書く


707VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/14(木) 13:21:54.38ag8UuRoEo (1/1)

>>109

 お父さん、そこにいますよね。お盆だから帰ってきてるんでしょう?

 私は今あなたが死んだ場所に立っています。
 
 落ちてくるとき、どんな気持ちでしたか?
 
 怖かったですか? 安心しましたか? 後悔しましたか?
 
 私を産もうとするお母さんが憎かったですか? 
 
 それとも私が憎かったですか?
 
 私はずっとお父さんが病気で死んだと聞かされてました。でも違ったんですね。
 
 私の担任はお父さんの同級生だった橋田先生です。
 
 橋田先生が教えてくれました。お父さんは自殺したんだって。
 
 恋人が妊娠して耐えられなくなって屋上から飛び降りたんだって。
 
 何に耐えられなかったんですか?
 
 周りの目ですか? 学校を退学になることですか? 自由に遊べなくなることですか?
 
 そんなに私が邪魔だったんですか?
 
 少なくともお母さんは私を邪魔者扱いしませんでしたよ?
 
 近所で何を言われてもいつも笑ってました。学校を辞めてずっと私のために働いてくれました。
 
 でもそんなお母さんでも、たまに寝ながら泣くんです。
 
 ごめんなさい、ごめんなさいって泣くんです。
 
 聞いてます?
 
 ああ、そうそう報告があったんです。
 
 私のお腹の中に赤ちゃんがいるんです。あと7ヶ月で生まれます。
 
 さっきこの子の父親にその事を告白したんです。ここで。
 
 私手足がガクガクでした。きっとあなたのせいだと思います。ほんとに怖かった。
 
 彼なんて言ったと思います?
 
 よかった、嬉しい、ありがとう。それに三人で幸せになろうねって言ってくれたんです。
 
 もう顔中涙と鼻水でグジャグジャでお世辞にもかっこよくなんてなかったけど。
 
 ……でも、本当に嬉しかった。私も釣られて泣いちゃいました。

 あんなに泣いたの久しぶりな気がします。多分生まれてきたとき以来かな。

 あ、ここ皮肉ですよ? 分かりますよね?

 まあとにかく、そういう訳で私にはあなたのために流す涙は残ってません。

 報告はそれだけです。もうここにも来る事はないでしょう。

 あなたにとってもその方が嬉しいでしょう? 私も嬉しいです。 

 それじゃあ。

 ……そうだ、最後に一つだけ言わせてください。

 「あんたなんか大嫌い」

 あなたの最愛じゃない娘より、校舎裏から愛を込めないで。


708VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/14(木) 14:12:41.80UC7lD1g7o (1/1)

親子揃ってDQNかよw


709VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/15(金) 18:49:24.21x0vODkjRo (1/1)

>>707
要らないかもしれないけど批評を
リズムがよく、するすると読むことができました
言葉の選び方が上手いのだと思います

ただ内容については>>708で、あまり印象よくないかな、とww


710VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/07/17(日) 14:48:34.96qROyTc1ko (1/1)

>>707
とても良かったです
主人公はただ淡々と想いを述べているのに、何故かするりと感情移入が出来ました
最後の一文でまたやられたって感じで

しいて言うなら、この文章に三点リーダはいらなかったかなとか
ちょっとそこでテンポが削がれてしまった気がしました


711VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/17(日) 17:51:52.333RNaMLYEo (1/1)

飛び降りるくらいだから、てっきり別の男の種かと思った


712VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/17(日) 20:17:05.936b8WCbDvo (1/1)

>>709

ありがとうございます。
主人公が優等生なのはあんまり面白くないなと思っているのでこんな感じになりました
結果印象が良くなかったみたいですね


>>710

ありがとうございます。
三点リーダは作中での急な話題や場面の転換のときの違和感を和らげてくれるような感じがします。
個人的にテンポよりそっちのほうが大事な気がするのですがどうなんでしょう?


713VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/18(月) 11:24:14.7127dr636jo (1/1)

 >>536 

 「ねえ、おにいちゃん」

 「なに?」
             
 「わたしたちもうすぐ『おわかれ』なんだって」

 「うん、わかるよ。パパもママもうれしそうだもん」

 「やだなあ」

 「そうかい? ぼくはたのしみだよ。パパがいってた『うみ』をみてみたいんだ」

 「『ずっといっしょ』じゃなくなっちゃうんだよ?」

 「でも『りんご』たべたいんだろ?」

 「うん。だってだってママがすごくおいしいっていうんだもん!」

 「ここからでたら『うみ』にもいけるし『りんご』もたべれるよ」

 「でもおにいちゃんと『いっしょ』じゃないよ」 

 「ちがうよ。『ずっといっしょ』じゃないけど『いっしょ』にはいられるんだ。ママがいってたよ」

 「わたししらない」

 「ねててきいてなかったんだろ。これならたのしみだろ?」 

 「そうだね。うん、たのしみ! あ、そうだ」

 「なんだい?」

 「おにいちゃんがねてるときにねママがいってたの。ここからでたら『おもちゃ』かってくれるって」

 「『おもちゃ』? なにそれ」

 「わかんないけどわたしには『おにんぎょう』でおにいちゃんには『ろぼっと』なんだって」

 「『おにんぎょう』に『ろぼっと』か。どんなだろう」

 「きっとかわいくてかっこいいんだよ」

 「そうだね、たのしみだ……あ!」

 「もう『おわかれ』みたいだね、おにいちゃん」

 「うん。ぼくがさきにいくよ」

 「えー? わたしがさきがいい」

 「ばかだなあ。ぼくがさきにいかないと『おにいちゃん』にならないだろ?」

 「そっかあ。おにいちゃんあたまいいね」

 「ぼくたち『ふたご』なんだからきっときみもあたまがいいよ」

 「だったらいいなあ」

 「じゃあいくよ」

 「うん、じゃあね」

 「うん、またあとで」

  


714VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/19(火) 04:47:04.63AfPIUyVVo (1/1)

>>713
前の台詞だけの人かな?
これは面白かった
何の別れだろうと思ってたらそうくるとは、って感じで
文章? にも問題は見受けられないし、良作だよ


715VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/19(火) 04:56:51.01+7oXs1d5o (1/1)

>>713
ほとんど同じ流れの話を見たことがある


716VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/19(火) 10:49:35.97ZJd3IgP4o (1/3)

 >>714

 ありがとうございます。おっしゃるとおり>>707を書いたものです。
 本当は母と子の出産での『別れ』を書こうと思ったのですが、
 どうしてもうまく書けずこのように双子の会話文のみになりました。
  
 >>715

 >>713を書いてるときに思ったのが『これもう誰かやってそうじゃね?』
 まあ設定が被るなんてよくあるしいいや、と思ったんですが、
 流れも一緒だとは……結構凹みます。わりと上手く書けたと思っているので余計に。
 もし覚えてれば参考までにその作品名を教えてもらえませんでしょうか?


 

 あと、このスレを読み返したら投稿されたSSが三連続で自分のでした。
 これってまずいですかね? まずいようなら少しの間自重します。


717VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/19(火) 10:50:04.10ZJd3IgP4o (2/3)

 >>714

 ありがとうございます。おっしゃるとおり>>707を書いたものです。
 本当は母と子の出産での『別れ』を書こうと思ったのですが、
 どうしてもうまく書けずこのように双子の会話文のみになりました。
  
 >>715

 >>713を書いてるときに思ったのが『これもう誰かやってそうじゃね?』
 まあ設定が被るなんてよくあるしいいや、と思ったんですが、
 流れも一緒だとは……結構凹みます。わりと上手く書けたと思っているので余計に。
 もし覚えてれば参考までにその作品名を教えてもらえませんでしょうか?


 

 あと、このスレを読み返したら投稿されたSSが三連続で自分のでした。
 これってまずいですかね? まずいようなら少しの間自重します。


718VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/19(火) 18:30:37.65d2R0LiD00 (1/1)

>>717
投下の間隔は空いているし、過疎っている現状では、連投でも問題ないと思う
それで人が戻ってきたら儲けものだしね

>>713
会話のテンポがよく、漢字が使われていないわりに読みやすかった
ただ、ここでの『ロボット』は外にある楽しいものの一つという扱いで、キーワードとして成り立っていないのが残念

同じように>>698も、『ロボット』はくだらない理由の一つとして引き出されていて、キーワードとしては微妙かなと思う



719VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/19(火) 22:26:32.59ZJd3IgP4o (3/3)

 >>719

 ありがとうございます
 せっかくなので色々書いて修行させていただきます
 もっとも筆の早さが気まぐれなので書けるかどうか分かりませんが……


 それとキーワードの方ですが少し勘違いしてたみたいですね。
 他の方のSSを読んで分かりました。 
 次からは気をつけます。


720VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/23(土) 13:50:11.21bzxqkXBDO (1/1)

時期的にそろそろお題を変えてみてもいい気がする


721VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/23(土) 14:20:25.499UVblwPho (1/1)

 >>720

 同感、だけど上みたいに安価で決めるのはこの過疎状況だと……
 てなわけで提案
 お題は随時募集、で書き手はその中で選んで書く
 当初の趣旨とだいぶ違うけど人がいないからしょうがないかなあ、と
 好き勝手言ったけどふと思いついただけなんでまずいようなら無視してください
 

 

 


722VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/23(土) 19:58:03.15BZqtsEjg0 (1/1)

真新しさも欲しいし、お題変更は賛成
安価関係なしに二つ三つお題募集してみるのもいいかも

一つのお題で書き比べする事がしづらくなるかもしれないけど、この際仕方ないと思う



723VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/23(土) 22:34:09.31VWfTj4dG0 (1/1)

お題もそうかもしれないけど、たまにはageたほうがいいんじゃ
埋もれてる気がするよ


724VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/23(土) 22:47:59.58KqQjM8JDO (1/1)

基本age進行でいいんじゃないかな

お題

その日の仕事がおわり、静かになった学校の椅子に座り、僕は天井に向かって呼び掛けた。
「(自由に台詞をお願いします)」
天井で、コトッと、音がした。

この文章に繋がるような話で他の条件はなし
放課後の時間割から抜粋させていただきました




725VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県)2011/07/24(日) 00:01:54.13yNPRXKYHo (1/1)

夏休みだし、人増えるかな?

・お題
場所は夏の海
友達に誘われてナンパにチャレンジ
手違いで知り合いの女の子に声をかけてしまう
友達にバレないようにしてドツボにはまるが、女の子からの好感度はUP
別の知り合いにバレて、空気が微妙になる
一緒の電車で帰ることになり、空気を変えようと歯の浮くような台詞を言って笑われる


726VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/24(日) 16:48:21.55YcZhEOnqo (1/1)

 >>742 長くなったので改行してません。見づらくて申し訳ないです。

 この仕事は好きか、と聞かれたらそうでもない、と答える。
 愚痴りながら丸つけする同僚に文句しか言わない保護者。
 そしてどこか人を馬鹿にしたような笑顔の生徒たち。
 少なくとも素敵な職場と人に胸を張れるようなところではないことは断言できる。
 教師なんて言ってしまえば体の良い茶坊主でしかない。
 
 薄っぺらい笑顔を浮かべ問題が起きないよう起きないよう子供の機嫌をとる毎日。
 奴らはまるで一寸法師のようだ。
 小さい体で人の腹の中に飛び込んで、針の刀で胃をチクチク、チクチク。
 胃痛を抱えながら僕は今日も放課後の教室でテストの採点を続ける。
 やけに0点が多い。
 
 中学校の期末テストで0点なんてそうそうでるものじゃない。
 おそらく仲間内で示し合わせてわざとやっているのだろう。
 何が面白いのか分からないが、とにかく奴らは意味のない陰湿さが好きらしい。
 また胃を刺された気がした。
 痛みに耐え切れず僕は赤ペンを置く。
 
 そして上着の内ポケットからタバコとライターを取り出し、思い切り煙を吸うとようやく痛みが和らいだ。
 放課後の教室でタバコを吸うなんて職業倫理的にまずいのは分かってはいる。
 けれど、教室という子供たちのフィールドで紫煙をまき散らすという行為は、
 どこか白い壁にペンキをぶちまけるような快感に似ていてやめられない。
 「そういえば親父もよく吸ってたな」
 
 ふと思い出したことがある。
 超が付くほどのヘビースモーカーだった親父も教師だった。
 自分の中で決めた線引きがあるらしく僕の前ではタバコを手にとるようなことはなかったし、
 僕がタバコに触るだけで怒鳴られた。
 けれど一回だけ親父が僕の前でタバコを吸ったことがある。
 
 僕が中学生のとき、自室の屋根裏部屋にいたところ急に部屋に煙が立ち上ってきた。
 なんだろう、と思って床の板間から下を覗くと親父がうまそうにタバコを吸っていたのだ。
 すると僕に気づいたのか親父はバツの悪そうに笑ってボソッと「お前も一本どうだ?」と呟いた。
 僕は何も答えずにさっさと布団に潜った。
 数分して親父が下の部屋から出て行く気配があっても僕は布団の中で寝付けずにいた。
 
 大人になってから考えると真面目な親父のらしくない一面に戸惑っていただけなのだが、
 当時の僕はよく分からない胸のモヤモヤが本気で怖かった。
 親父の生徒がその日万引きで捕まったのを知ったのは随分たってからだった。
 そんな親父も長年の喫煙が祟り一昨年肺がんで死んだ。
 病床で僕は親父に教師になったことを報告した。
 
 「そうか、がんばれよ」
 親父はそれだけ言って眠ってしまったけれど、その口元の笑みはあの時の笑顔にそっくりだった。
 そうか。
 今あの笑顔を思い出せば分かる。
 親父の胃の中にも一寸法師がいたんだ。
 
 だから親父はあんなにタバコを吸い、腹の中の一寸法師供をいぶして弱らそうとしてたのだ。
 子供たちが一寸法師なら僕ら教師は鬼だ。
 けれど謝って逃げればいい鬼と違って僕らはどこにも逃げられない。
 ただ黙って腹の中で一寸法師が暴れるのをただじっと耐えるしかない。
 けれどやはり鬼だって泣きたくなる時だってあるのだろう。
 
 だからあの時の親父のタバコと笑顔は鬼の涙だったのかもしれない。
 鬼の涙が笑顔というのもなかなか皮肉が効いている。まるで教師という職業そのもののようだ。
 僕は天井を見上げる。当然人の気配なんてない。
 けれど今は猫でも鼠でもゴキブリでもいい。僕の涙を見てくれる何かは居るはずだ。
 僕は短くなったタバコの火を消すと採点の残りと日報の残りにとりかかった。
 
 不思議といつもよりいいペースで仕事が片付いていく。
 そして最後に判子を押して日報を閉じた。
 ゆっくり背伸びをし、タバコに火を付ける。
 その日の仕事がおわり、静かになった学校の椅子に座り、僕は天井に向かって呼び掛けた。
 「お前も一本どうだ?」
 天井で、コトッと、音がした。    


727VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/25(月) 19:19:39.64wABXeEOao (1/1)

 >>726

 安価ミスりました
 >>724です
 申し訳ないです


728VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/25(月) 23:00:24.821xyRBbUj0 (1/1)


>>726
長文だけど、読みやすい文章でスラスラ読めた
主人公が記憶の中の父親と自分を重ねて、仕事で疲れた自分を癒すというのはいい構成だと思う

ただ、この父親が息子の部屋でタバコを吸った事に違和感を感じた
それも教え子が万引きで捕まった日に、うまそうに吸っていたところに、父親の悪意を感じる
普通そんな事件が起きたら、タバコをうまそうに吸う事はできないだろう
それでもタバコがうまいなら、ひょっとして父親は生徒が捕まって喜んでるのか? と考えてしまう

そんな風に考えると、子どもの部屋でタバコを吸った事も『白い壁にペンキをぶちまけるような快感』
を得るために吸っていたのかなって思えてしまった



729VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/27(水) 16:19:48.04Tsvv8Zrco (1/3)

>>726
書きなれてる感じがした
物語の流れが上手というか
気になったところは「体のいい茶坊主」
初めて見た表現なので調べてみたのだけれど、使い方に間違いはないだろうか
ちょっと違和感がありました。以上


730VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/27(水) 16:25:48.79Tsvv8Zrco (2/3)

>>537

 雀が視界をよぎった。
 その背後、青空と雲とが視界を満たしている。
 自分は仰向けであるらしい、と彼は理解した。背中を風の圧が押している。心地よい浮遊感。
 視界は空に固定され、身体の感覚はぼやけ、何一つ自由はなかったものの、
(俺、飛んでる……!)
 そう思った。爽快感が駆け巡る。しかし、それを否定する声があった。
「飛んでは、いませんよ」
 女のものだ。その主の姿は見えなかったが。あえて言えば空の向こうから吹き下ろしてくる風のようだった。
(誰だ……?)
「さあ、誰でしょうね」
 女の声はそっけない。
(俺は、一体……)
 彼は、自分に記憶がないことに気付いた。いつの間にか“飛んで”いた。いや、女の声を信じるのなら飛んではいないのだろうが。
「あなたは今、落ちています」
 え。彼は呆気にとられる。落ちてる、だって?
 女は彼に構わずさらに続けた。
「今までずっと、落ち続けています」
 意味がわからない。彼は訝しく思い、声の主を探そうとしたが、やはり視界は動かなかった。
「少しお話を、しましょうか」

「あるところに一組のカップルがいました。仲の良い二人でした」
 語る女の声に特別感情は込められていない。だから、仲の良い、といわれてもその一瞬はぴんとこなかった。
「仲のよい二人でしたが、いつしか女性の方は、男性の方を裏切るようになりました。
 彼女の愛情は彼以外へと向くようになりました」
 空は抜けるように青い。だが、太陽は見えない。同じように声の主である女も見えない。
「それを知った男性は絶望し、その身を空へと投げ出しました。五年ぐらい前の話です。おしまい」
 それが俺と何の関係が。彼がそう問う前に、女はさらに言葉を重ねた。
「地縛霊というのを知っていますか?」
 何らかの思いの強さのために、死んだその場所にとどまっている、もしくは縛られている霊のことだ。
「当たりです」
(……それが、俺なのか?)
 言われたわけではないが、彼はようやく、ぼんやりと理解した。
(俺は恋人に裏切られ、身を投げ、そして悔いの念で心だけはいまだ落ち続けていると)
「その通りです」
 なんとも現実味のない話だった。だが、実際自分はいまだ落ち続けている、と彼は認めた。
 これは落下の感覚であり、決して浮遊のそれではない。
「わたしはあなたを助けに来ました」
(助けに来た?)
「ええ。あなたの魂を救います」
 救う。だが、そうはいってもだ。彼には記憶がなかった。悲しみも怒りも、それに実感もない。
「それでいいんです。それならば行けますよ」
(どこに?)
「多分、とても良いところです」
 それはあまりに漠然としていたが。彼はどことなく心を惹かれた。
 彼女の言うことが本当ならば、自分はもう五年間、ずっと落下し続けている。
 もしかしたら、魂とか心とかいったものがだいぶすり減っているのかもしれなかった。
(……行きたいな)
 自然と、そう思っていた。
「行けますよ。私がお手伝いします。空を見ていてください。光が見えますよね?」
 いつの間にか、視界いっぱいの空の中心に、太陽のような光があった。優しく降り注ぐそれ。
「そしたらそれを見つめていてください。あなたをお送りします」
 それからゆっくりと。それこそ眠るように、彼の意識はかすれていった。

 あるビルの屋上、五年前にできた落下防止用のフェンスの前に、少女がいた。
 肩までの黒髪を風になびかせ、青い空を見上げていた。
「よかった、気付かれなくて」
 彼女は、固く結んでいた口を解くとそう言った。
 それなりに強い日差しが、コンクリートの床面を照りつける。
 ここは以前、ある男性が突き落とされた場所だった。自殺ではなく他殺。
 動機、というよりか物事の原因は痴情のもつれだ。激しくもみ合った挙句、男性はビルから落下した。
「だってそうよね。飛び降りたのに空が見えるわけないじゃない」
 飛び降りるには絶好の空の下。彼女は投げやりに笑った。



731VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/07/27(水) 19:14:40.061WSnGMaPo (1/1)

 >>728

 ありがとうございます。
 父親が僕の部屋でタバコを吸ったのは、僕が『鬼の涙』を見てくれる誰かを探したように
 息子に泣いている姿を見せたかったから、というつもりで書きました。
 またタバコを『うまそうに』吸っていたのは父親の落胆を強調するつもりでした。
 酒やタバコがうまいのは嬉しいことがあった時より落ち込んでいるときだと思いますので。
 ただ、それが読み手に伝わらないのは決定的な力量不足ですね。申し訳ないです。
 これからも精進します。

 >>729

 ありがとうございます。
 『茶坊主』という表現は昔読んだ小説であった表現(何の本かは忘れました)
 なので多分あっていると思いますが、正しいところは分かりません。
 いずれにせよ違和感の覚える表現はあまり使うべきじゃありませんね。勉強になりました。

 >>730

 こういう最後にどんでん返しがあるのは大好きです。
 最初の主人公が仰向けになっている描写が、少しくどいかな? 
 と思いましたが最後のオチまで読むと必然性があっていいと思います。

 文章のほうで少し気になったのが次の部分。

 「地縛霊というのを知っていますか?」
 何らかの思いの強さのために、死んだその場所にとどまっている、もしくは縛られている霊のことだ。
 「当たりです」

 全体が主人公が『彼』の三人称小説なのに、ここは地の文がまんま主人公のセリフ?なのが違和感を感じました。
 他にもそういうのがところどころ見られます。文体は最後まで統一しないと読みづらさの原因になります。
 あとは違和感があったというわけじゃありませんがこの部分。

 「飛んでは、いませんよ」
 女のものだ。その主の姿は見えなかったが。あえて言えば空の向こうから吹き下ろしてくる風のようだった。

 作中で新たな人物が出てくる時は読み手は少し頭を切り替えなければなりません。
 なので

 「飛んでは、いませんよ」
 女のものだ。
 その主の姿は見えなかったが。あえて言えば空の向こうから吹き下ろしてくる風のようだった。

 という風にすると短い文二行で読者がパッと「ここで登場したのは女なんだな」
 と頭が切り替わるので、その後に改行して描写をいれたほうが読みやすいと思います。

 長々と失礼しました。以上です。


732VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/27(水) 20:13:36.73Tsvv8Zrco (3/3)

>>731
文体はそうですね、前々から同じように指摘されていて研究中です色々と
違和感のない形に持っていけるよう努力します
改行関連も勉強になりました
どうもでしたー


733VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/29(金) 13:07:17.38S3tOY1Df0 (1/1)

お題をひとつ

・「過ぎた時間は戻らない」のセリフ。どこに入れても可。口調が多少変わっても可。
・登場人物が「買い物」をすること。




734VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/07/31(日) 23:22:23.727zK5PSsAO (1/4)

>>733
長くなってしまいましたが感想お願いします。

 駄菓子屋『猿菓子』は僕が小学生の頃と変わっていなかった。
 錆び付いて開きにくいドアやあちこちが染み付いた壁、それらと対比するようにカラフルな駄菓子たち 、なにもかもが20年前と同じで懐かしい。

 昼過ぎの駄菓子屋には、当然というべきか人の姿はまったく見あたらなかった。子どもたちが現れるのは学校から解放された後の夕暮れ時だ。

 僕は駄菓子たちの前に立って、これにしようか、あれにしようか、ひとつひとつ駄菓子を手にとって眺める。
 そうしているうちに僕はなぜこんなことをしているんだろうな、という気になってくる。

 今日、僕は会社を辞めさせられた。
 僕は会社の金を横領していた。自称ミュージシャンの弟がバイクで人身事故を起こして至急金が必要になったのだ。幸い盗んだのが少ない額だったことと、会社が外聞を恐れたことで刑罰をうけることはなかった。

 僕は選んだ駄菓子を持って、それをカウンターに置く。少ししておばちゃんが現れた。このおばちゃんはずっと昔から、この駄菓子屋を趣味でやっているらしい。僕が小学生の頃よりもさらに老けているように見えた。髪はひとつ残らず白くなり、顔に刻まれたしわもより深く、より多くなっている。

「あんたあれだろ、万引きの常連だった、たかしだろ」
駄菓子の値段を計算しながら、おばちゃんが言った。
僕は、人違いですよと答えるかわりに言う。
「変わっちゃいましたね、あのころとは。変わって、そしてもう時間は戻らないんですよ」
もちろん、僕がそのとき考えていたのは横領で会社をくびになったことだった。
「なんも変わらないさ。ここも昔からずっとこうだし。万引きのたかしは今も万引きのたかしさね」
おばちゃんは駄菓子を袋に入れて、僕に手渡す。僕はそれを苦笑しながら受けとる。万引きのたかしは誰か知らないが、自分のことを見透かされた気がした。
「あっそうだ」
おばちゃんは思い出したように棚まで歩き、戻ってくる。そして僕の袋に小さな黄色い飴の袋を放り込んだ。
「たかしそれ好きだったじゃないか。だから、おまけだよ」
僕は礼を言って、駄菓子屋を後にする。

 駄菓子屋を出ると、僕はおばちゃんがくれた黄色い飴をなめる。口のなかにレモンの甘酸っぱい味が広がって、なんだか感傷的な気分になる。涙が出そうになったから、無理に笑おうとしたら、へんな顔になった。


735VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/07/31(日) 23:23:57.917zK5PSsAO (2/4)

>>733
長くなってしまいましたが感想お願いします。

 駄菓子屋『猿菓子』は僕が小学生の頃と変わっていなかった。
 錆び付いて開きにくいドアやあちこちが染み付いた壁、それらと対比するようにカラフルな駄菓子たち 、なにもかもが20年前と同じで懐かしい。

 昼過ぎの駄菓子屋には、当然というべきか人の姿はまったく見あたらなかった。子どもたちが現れるのは学校から解放された後の夕暮れ時だ。

 僕は駄菓子たちの前に立って、これにしようか、あれにしようか、ひとつひとつ駄菓子を手にとって眺める。
 そうしているうちに僕はなぜこんなことをしているんだろうな、という気になってくる。

 今日、僕は会社を辞めさせられた。
 僕は会社の金を横領していた。自称ミュージシャンの弟がバイクで人身事故を起こして至急金が必要になったのだ。幸い盗んだのが少ない額だったことと、会社が外聞を恐れたことで刑罰をうけることはなかった。

 僕は選んだ駄菓子を持って、それをカウンターに置く。少ししておばちゃんが現れた。このおばちゃんはずっと昔から、この駄菓子屋を趣味でやっているらしい。僕が小学生の頃よりもさらに老けているように見えた。髪はひとつ残らず白くなり、顔に刻まれたしわもより深く、より多くなっている。

「あんたあれだろ、万引きの常連だった、たかしだろ」
駄菓子の値段を計算しながら、おばちゃんが言った。
僕は、人違いですよと答えるかわりに言う。
「変わっちゃいましたね、あのころとは。変わって、そしてもう時間は戻らないんですよ」
もちろん、僕がそのとき考えていたのは横領で会社をくびになったことだった。
「なんも変わらないさ。ここも昔からずっとこうだし。万引きのたかしは今も万引きのたかしさね」
おばちゃんは駄菓子を袋に入れて、僕に手渡す。僕はそれを苦笑しながら受けとる。万引きのたかしは誰か知らないが、自分のことを見透かされた気がした。
「あっそうだ」
おばちゃんは思い出したように棚まで歩き、戻ってくる。そして僕の袋に小さな黄色い飴の袋を放り込んだ。
「たかしそれ好きだったじゃないか。だから、おまけだよ」
僕は礼を言って、駄菓子屋を後にする。

 駄菓子屋を出ると、僕はおばちゃんがくれた黄色い飴をなめる。口のなかにレモンの甘酸っぱい味が広がって、なんだか感傷的な気分になる。涙が出そうになったから、無理に笑おうとしたら、へんな顔になった。


736VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/07/31(日) 23:25:54.667zK5PSsAO (3/4)

すまんage忘れた


737VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/07/31(日) 23:28:36.897zK5PSsAO (4/4)

連投すまん…


738VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2011/08/01(月) 10:57:22.40lTEK35fbo (1/1)

 >>735
 
 風景や人物の描写が巧く読みやすかったです。
 短い分で場面を想像させられるのはすごいことだと思います。
 
 ただ内容で気になった点は一つ
 おばちゃんと話す前の主人公の心情があまり見えてこないことです
 『僕はなぜこんなことをしているんだろうな、という気になってくる』
 だけだと悲しんでいるのか、怒っているのか、情けなく思っているのか分かりづらいです
 作品が大人と子供を対比させる作りになっているので
 読み手のもつ子供とは純粋な物というイメージに釣り合うほどの大人の弱さ、情けなさ
 を書かないと、なぜ主人公が飴を舐めて感傷的になったのか伝わりづらいと思います

 以上です
 偉そうな人間の戯言だと思ってください


 


739VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(dion軍)2011/08/01(月) 12:13:38.10tNl3+CqB0 (1/1)

>>735

描写はうまいですね。キレのいい情景描写は好みです。

おばちゃんが「僕」と「万引きのたかし」を誤認した理由が「僕が会社の金を横領したこと」と関係がある点を強調した方がいいかなって気がします。

「僕」が「会社の金を横領」した理由も、弟のためよりも、もっとくだらない理由にした方が「僕の後悔」を引き出せる気もします。例えば遊ぶ金ほしさだとか、しょーもない女に貢いだとか。






740VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/08/01(月) 19:11:53.41JdbYXx3AO (1/1)

>>738
ありがとうございます!
たしかにそれは必要な描写でした…
説明不足になってしまうことが自分の課題だと思っているので、やはりまだまだですね。精進します。


>>739
ありがとうございます!
そうですね…やはり説明不足でした。
会社の金を横領した理由については、いつまでたっても子供のままの弟というのを表現したかったのですが、あれでは伝わりづらいですし、今思うと的外れな気もしますね。


まだいろいろと試行錯誤の段階で、とても勉強になりました。ありがとうございます。



741VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/06(土) 16:24:14.04ddlUlKGDO (1/1)

age


742VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/08/10(水) 23:32:50.37X2CW5hyAO (1/1)

支援


743VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/13(土) 23:30:33.16piH5le9y0 (1/1)

age


744VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/08/18(木) 23:00:08.59rNBPlCLb0 (1/1)

久しぶりにお題を一つ

・夕暮れ
・夢から覚めた(覚める)
・セリフ「一度も考えたことない」



745名無しNIPPER2011/08/24(水) 01:12:26.85+kRFeM4AO (1/3)

 夢の中いると思った。もう何度も観た光景だからそれがわかる。
 夢の中はいつも夕暮れだった。沈みかかった夕日が目の前に広がる果てのない海を、俺の座る浜辺を、オレンジ色に染めあげている。なんだか火星みたいだなと、俺は思った。見たことあるわけじゃないけど、なんとなくイメージとして。
 夏の終わりの海には人気がなくて、その代わりというべきか、たくさんのクラゲが海を漂っている。
 そんなクラゲたちをぼんやり眺めていると、突然その一匹がこちらに向かってきた。海から傘の部分を顕にし、次に触手の部分が外に出て、最後にはふんわりと宙に浮かび上がる。
 今までにこんなことはなかったので俺は驚いたが、夢の中なのでクラゲが宙に浮かんだことに関しては特に不思議に思わなかった。
 クラゲが俺の前に立ちはだかり言った。「夢から覚めた気分はどうです?」
「ここが夢だ」
「ううーん。そういう考え方もありますよね」
 夕日がクラゲを透過しているので、クラゲは真っ赤な色をしているように見える。まるで火星人だ。火星の海で火星人と遭遇。夢にしてはなかなかの傑作だ。
「でも、例えばこうだったらどうします?実は地球は宇宙人に侵略されていて、その攻撃として地球人は夢を見せられているとしたら。楽しい夢からは覚めたくありませんからね」
 俺は笑った。
「馬鹿らしい」
 クラゲはその言葉の意味についてしばらく考えていたが、やがて言った。
「でも、今の現実がほんものだという確証はあるのでしょうか?」
「ない。でも朝になればこんな夢は忘れる。なぜならこれはにせものだからだ」
「ふうむ」
 そして、沈黙。
 波が押し寄せる響きだけが聞こえる。
 俺はふと彼女のことを思った。今の現実にいる彼女。決して百点なんか取れそうにないが、それでも解答欄を全部うめて30点を取るような彼女。
「嘘だ」
「うそ?」
「俺はたぶんこの夢を忘れないと思う。そして、現実を疑って過ごすだろうな」
 俺は昔からそうだった。猜疑心が強くて、愛情だとか正義だとかいうものを信じきることができなかった。
「だけどまあ、にせものでもいいよ」
「あれれ」
「それも悪くない気がするだろ?」
 クラゲは笑った、ように感じた。
 そして言った。
「馬鹿らしい」



746名無しNIPPER2011/08/24(水) 01:15:04.49+kRFeM4AO (2/3)

「ねえ、起きてよ」
 瞼を開くとそこは当然俺の部屋だった。カーテン越しの光が眩しくて、もう一度目を閉じる。夢の名残がそこにはあって、それすらも少しずつ消えようしていた。
「おーい、起、き、ろ」
 彼女が耳元で大声で叫び、暴力的にまどろみから引き剥がされる。
「なんでいるんだ?」
「鍵が開いてた。泥棒に入られても知らないよ」
「もう、入られてるさ」
 彼女はおおげさに頬を膨らませて言う。「ねえねえ、そうやって午後2時まで寝てることで人生を損してるって気づいてる?」
「考えたこともなかった」
「やれやれ」
 俺は彼女が誰かに似ていると思った。そうだクラゲだ。夢の中にいたあのクラゲに似ている。どこがどう似ているのかはわからないがとにかく酷く似ている。これじゃせっかくわすれられそうな悪夢を彼女を見るたびに思い出してしまうじゃないか。
「そんなに寝てたんだからさぞ楽しい夢を見ていたんでしょ」
「悪夢だったさ」
「ふうん。どんな?」
「火星人が地球を侵略しようとして、俺を言いくるめようとするんだ」
「なかなかおもしろそうな気もするけど」 言われてみればそうかもなと俺は思った。


少し長くになってしまいましたが感想お願いします。



747VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東)2011/08/24(水) 01:16:01.71+kRFeM4AO (3/3)

すいませんお題は>>744です



748VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/09/07(水) 09:44:01.72slod9wnz0 (1/2)

SS作家様よろしくお願いします!
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
初恋ばれんたいん スペシャル PS版は あまりのテンポの悪さ,ロードは遅い(パラメーターが上がる度に、いちいち読み込みに行くらしい・・・)
のせいで、悪評が集中しました。ですが 初恋ばれんたいん スペシャル PC版は テンポ,ロード問題が改善して 快適です。
(初恋ばれんたいん スペシャル PC版 プレイをお勧めします!) 初恋ばれんたいん スペシャルはゲームシステム的にはどうしようもない欠陥品だけど。
初恋ばれんたいん スペシャル のキャラ設定とか、イベント、ストーリーに素晴らしいだけに SSがないのが とても惜しいと思います。
(初恋ばれんたいん スペシャル PC版は XPで動作可能です。)
2. エーベルージュ
科学と魔法が共存する異世界を舞台にしたトリフェルズ魔法学園の初等部に入学するところからスタートする。前半は初等部で2年間、後半は高等部で3年間の学園生活を送り卒業するまでとなる。 (音声、イベントが追加された PS,SS版 プレイをおすすめします。)
同じワーランドシリーズなのに ファンタスティックフォーチュンSSは多いのに似ている 魔法学院物なのに ネギま、ゼロの使い魔 SSは多いのに
エーベルージュのSSがほとんどありませんでした。
3. センチメンタルグラフティ2
センチメンタルグラフティ1のSSは多いのにセンチメンタルグラフティ2のSSがほとんどありませんでした。
前作『センチメンタルグラフティ1』の主人公が交通事故で死亡したという設定でセンチメンタルグラフティ2の
主人公と前作 センチメンタルグラフティ1の12人のヒロインたちとの感動的な話です
前作(センチメンタルグラフティ1)がなければ センチメンタルグラフティ2は『ONE ~輝く季節へ~』の茜シナリオ
を軽くしのぐ名作なのではないかと思っております。(システムはクソ、シナリオ回想モードプレイをおすすめします。)
4. ONE ~輝く季節へ~ 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。) SS
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
個人的には 「呪い」 と「花言葉」 を組み合わせた百合奈 シナリオは Canvas 最高と思います。
Canvasの他のヒロイン SSは多いのに Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSSがほとんどありませんでした。
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD ~支配者の為の狂死曲~
似ている 伝奇バトル吸血鬼作品なのに 月姫、Fate、痕(きずあと) SSは多いのに
MinDeaD BlooDのSSがほとんどありませんでした。
8. Dies irae
9. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒 SS
10. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世 SS
11. TYPE-MOON
(1) 逆行最強化断罪スーパー慎二がペルセウスを召還する SS
(2) 凛がイスカンダルを召還するSS
(3) 逆行最強化慎二 OR 四季が 秋葉、琥珀 OR 凛を断罪する SS
(4) 原作知識有憑依最強化( 漫画・アニメ・ゲーム すべての作品 技術使用可能。 EX) ダイの大冒険、bleach、エヴァ)
慎二 OR 四季が秋葉、琥珀 OR 凛を断罪する SS
(5) ロアの転生体が 慎二
(6) アルクェイドに 吸血されて 死徒化
12. ゼロの使い魔
(1) 原作知識有 助演 憑依転生最強化( 漫画・アニメ・ゲーム すべての作品 技術使用可能。 EX) ダイの大冒険、bleach、エヴァ)SS
(ウェールズ、ワルド、ジョゼフ、ビダーシャル)
(2) 原作知識有 オリキャラ 憑依転生最強化 SS
(タバサ OR イザベラの 双子のお兄さん)
13. とある魔術の禁書目録
(1) 垣根 帝督が活躍する OR 垣根帝督×麦野沈利 SS
(2) 原作知識有 垣根帝督 憑依転生最強化( 漫画・アニメ・ゲーム すべての作品 技術使用可能。 EX) ダイの大冒険、bleach、エヴァ) SS
(3)一方通行が上条当麻に敗北後もし垣根帝督がレベル6実験を受け継いだら IF SS
14. GS美神
(1) 逆行最強化断罪 横島×ダーク小竜姫のSS(非ハーレム 単独カップリング ルシオラ も除外 )
15. EVA
(1) 逆行断罪スーパーシンジ×2番レイ(貞本版+新劇場版)のSS
(2) 一人目のレイが死なないで生存そのまま成長した一人目のレイが登場する(二人目のレイは登場しない)
P.S
エヴァンゲリオンのLRSファンフィクションで、レイの性格は大体二つに分かれます。
1.白痴幼児タイプのレイ
LRSファンフィクションで大体のレイはこの性格のように思えます。
白痴美を取り越して白痴に近いレイであり、
他人に裸や下着姿を見せてはいけないという基本的な常識も知らず、
キスや性交等、性に関する知識も全然無いか、それともほとんどありません。
このタイプの場合、逆行物では、シンジがレイに常識や人間の感情等を一つ一つ教えていくという「レイ育成計画」になってしまいがちです。
このタイプは、アニメのレイに近いと言えるでしょう。
2.精神年齢が高く、大人っぽいレイ
1番の白痴幼児タイプとは違って、他人に裸や下着姿を見せてはいけないという
基本的な常識くらいはあり(見られたとしても恥ずかしく思ったりはしないが)、
キスや性交等、性に関する知識は理論的に知っており、自分の自我が確立している、
(命令には絶対服従だが)感情表現がより豊富です。
このタイプの場合、 コミックスのレイに近いと言えるでしょう。



749VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/09/07(水) 09:44:54.20slod9wnz0 (2/2)

16. BlackCat
(1) BlackCatの禁書目録のクロスオーバーSS
(2) イヴ×リオンのSS
17. 鬼切丸
鬼切丸×鈴鹿のSS
18. MURDER PRINCESS マーダープリンセス
カイト×ファリスのSS
19. 式神の城
玖珂光太郎×結城小夜 OR 玖珂光太郎×城島月子のSS
20. 大竹たかし DELTACITY 全2巻
21. ヴァンパイア十字界
(1) 蓮火×花雪 OR 蓮火×ブリジット
(2) とある魔術の禁書目録×ヴァンパイア十字界のクロスオーバーSS
22. 地獄少女
(1) 不合理な 地獄少女の被害者(e× 看護婦、1期の看護婦、2期の 拓真を助けに来てくれた若い刑事、秋恵) 家族・恋人が 地獄通信に 地獄少女と仲間たちの名前を書くSS
(2) 極楽浄土の天使 OR 退魔師が 地獄少女と仲間たちを断罪するSS
(3) 拓真の 地獄少年化SS
二籠の最終回で拓真が地獄少年になるのかと思ってたんですが・・
地獄少年 ジル : 所詮この世は弱肉強食。 強ければ生き弱ければ死ぬ。
拓真 : あの時誰も僕を守ってくれなかった。
守ってくれたのはジルさんが教えてくれた真実とただ一振りの超能力
・・・だから 正しいのはジルさんの方なんだ。
23. 真・女神転生CG戦記ダンテの門
ダンテ× ユーカのSS
24. スレイヤーズ
魔翌竜王ガーヴが慎二に転生 ワカメ魔翌竜王シンガーヴ無双
25. るろうに剣心
志士雄真実が禁書世界に転生
26. CODE:BREAKERととある魔術の禁書目録のクロスオーバーSS
27. ガンダムWとエヴァのクロスオーバー SS
28. ロードス島戦記 IF
(1) ナシェルのロードス統一
(2) ロードス島戦記の破壊の女神カーディス復活 VS ロードス連合軍
(3) 新ロードス島戦記の終末の巨人復活 VS ロードス連合軍
29. ときめきメモリアル4
30. WHITE ALBUM2
31. Canvas3、Canvas4
32. Piaキャロットへようこそ4
33. クドわふたー
34. Rewrite
35. 星の王子くん
36. SHUFFLE! Love Rainbow
37. Vermilion -Bind of Blood-
38. CROSS†CHANNEL~In memory of all people~
39. ToHeart2 DX PLUS
40. A.G.II.D.C. ~あるぴじ学園2.0 サーカス史上最大の危機!?~
41. Rewrite
42. 世界征服彼女
43. D.C.Dream X’mas
44. White ~blanche comme la lune~
45. FORTUNE ARTERIAL-赤い約束-
46. 眠れる花は春をまつ。
47. いろとりどりのセカイ
48. すきま桜とうその都会
49. 11EYES-RESONA FORMA-
50. アネイロ
51. 夏雪~summer_snow~
52. 電激ストライカー
53. グリザイアの果実
54. 君がいた季節



750VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/28(金) 19:18:55.495LdIGujUo (1/1)

>>745
二ヶ月越しの感想を。遅れて申し訳ない

雰囲気作りが上手だなと感じた
夢を見て、それから醒めるまどろんでいるような空気が文章でしっかり作られているというか

気になったところは"彼女"の特徴を表した文の
>決して百点なんか取れそうにないが~
というところ
これは分かるようで分からない表現を狙ったのだと思う
けれど、少なくとも自分には意味不明という方向に強く傾いてしまっているので、もし気が向いたら違う表現を探ってみるのがいいかと

以上っす


751VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/31(月) 23:52:39.98enfAxvUio (1/1)

>>538

 スロットマシンのリールが勢いよく回転する音とコインの奏でる甲高い音。
 それから人の歓声やあるいは罵声。他にも雑多な騒音たち。
 うるさいといえばうるさいのだが、慣れてしまえば実はどうということもない。
 カジノを住処とするディーラーであれば、むしろ静寂に近い。
 だからいちディーラーの彼も普段それらを意識することはない。ないのだが。

「……どうなさいますか?」
「……」

 それでもふと音が耳朶を叩く感触が気になることがあった。今がそうだ。
 ここはカジノの片隅、彼が担当するブラックジャックのテーブル。
 その前の椅子には一人の男が足を組んで座っていた。
 よれよれとくたびれたスーツ。本人も疲れたような空気をまとい若くもないが別段老けているわけでもない。
 ディーラーには見なれた姿だった。いつもこのテーブルに来る。

「ミスター?」

 この男には特徴が二つあった。
 まずは目だ。どこを見ているか分からない。
 今も手の中のカードに視線を落としてはいるが、手札を確認し吟味しているというわけではなさそうだった。
 カードのもっと向こう側を見ているような雰囲気があった。ともすれば、この勝負をどうとも思っていないようにすら見えた。
 格好からするに、男が賭けた百ドルはそう安いものではないはずだったが。
 もう一度声を掛けようとしたとき、男が動きを見せた。
 手の平を下に向け、水平に振る。追加のカードは要らないという合図だ。
 実のところディーラーには男がそうすることが分かっていた。いつもの事だからだ。
 これが男の特徴の二つ目。決してヒット(カードの追加)はしない。

 ディーラーは黙って目の前の二枚の札、そのうち伏せてあった一枚を表にした。キング。見せ札十のカードと合わせて持ち数は二十。
 ついで男が手札を晒した。三と五。持ち数は八。

「ミスター、今日こそは伺ってもよろしいでしょうか」

 たまらずディーラーは声を上げた。限界だった。

「私の見せ札は十でした。あなたの手札ではヒットを選択しなければ私に勝つことはできません。なぜいつもスタンドしかしないのですか」

 もちろんディーラーのバーストを狙ったのかもしれない。だが、それと毎回スタンドを選択することは話が別だ。
 ディーラーは男を真っ直ぐ見据えた。疑念と同時に怒りも感じていた。
 これでは自分がからかわれているかのようではないか、と。

 男からの返事はなかった。
 相変わらずどこを見ているのか分からない視線で、一応はテーブルの上のカードらを射抜いていた。
 返事はなかった。

「ミスター?」
「……俺は」

 不意に男が口を開いた。
 返事を諦めていたディーラーは驚いた。実のところ彼と言葉を交わしたのはこれが初めてだ。今までになかったのだから、歴史上初めてだ。

「俺は、とどまることも、一つの選択としてありだと、思う」

 不器用なしゃべり方だった。もし熊がしゃべったらこんな感じだろう、とディーラーは少し変なことを考えた。

「一歩を踏み出すことが、先へ進むことが、全てだとは、思わない」
「それは一体……?」

 男は組んだ足を解いて立ちあがった。そのまま背を向けて歩き去る。一度もディーラーと視線を合わせることはなかった。
 呼び止めようと思ったが、それは何故かできなかった。
 また今度聞けばいい。そう気付いたのは少し後だ。
 だが、男は二度とカジノには訪れなかった。
 待っていたが、存外に待ち焦がれていたのだが、訪れなかった。
 ディーラーの疑問は今もまだ、そのまま胸の内にある。



752VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/01(火) 11:04:01.94v2inlwsZo (1/1)

>>751 未熟者の感想ですが

難しいお題なのによくできているなあ、というのが第一印象
個人的にあんなにお題の条件が多いと凝り固まった文章になってしまいがちなので羨ましいです
文自体も引っかかるところはありませんでした

ただ内容のほうで少し
この文章だけで完結するとなると客の男の言動が不可解すぎて投げっぱなしな感じがします
モヤモヤが残ると言うか
長編の冒頭だとしたら良い感じで謎を読み手の頭に残せるのでいいと思うのですが……

以上です
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753VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/01(火) 15:26:14.78nWqAZIbDO (1/1)

久々に人がいるな
支援
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754VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/01(火) 18:44:26.31evjbdTxio (1/1)

 >>744 

 熱狂の残滓が抜け切らない甲子園のグラウンドを夕日が優しくゆっくりと染め上げる。
 俺と雄二はその中で大きく影を伸ばしながらキャッチボールをしていた。
 バシンッ。
 毎日聞きなれた音も不思議と今日はやけに遠くに聞こえる。
 「なあ、お前の子供の頃の夢って何だった? ほら、学校で七夕のときとかに書かされただろ」
 「野球選手」
 「はは、俺もだ」
 雄二はまるで俺の答えが分かっているみたいだった。
 バシンッ。
 ボールを受け取るたびに手が痛む。ボールってこんなに硬かったっけ? グローブってこんなに薄かったっけ?
 なんだか変な気分だ。
 「なあ、甲子園で優勝するなんて考えたことあるか?」
 「いや、実を言うと一度も考えたことがない」
 「おいおい、頼むよキャプテン。まあ俺もだけどさ」
 「……」
 「優勝したんだよな。俺たち」
 バシッ。
 ボールが重い、走らない。こんなの初めてだ。
 でもその理由は俺が、俺と雄二が一番良く分かっていた。
 「加藤、すごかったな」
 「ああ、甲子園決勝でノーヒットノーランだもんな」
 「うん、すげえよ。あいつ」
 バッ。
 「あ」
 ボールはグローブをかすり、バックネットの方に転がっていく。
 「本番じゃなくてよかったな」
 「うるせ」
 楽しそうに笑う雄二を無視してボールを歩いて追いかける。監督に見られたら怒鳴られるけど今は二人しかいないから平気だ。
 土で汚れたボール拾いあげる。ただもう投げる気にはなれない。
 雄二も何も言わずにグローブを下ろす。
 「雄二。加藤はプロになるかな」
 「ああ、あいつみたいなのがプロになるんだ」
 「だよな。お前はこれからどうするんだ?」
 「んー。おやじの工場を継ぐかな。お前は?」
 「多分大学に行く。合コン三昧の馬鹿な大学生になるよ」
 「いいな。俺も呼べよ」
 「やだよ。加藤選手の元チームメイトってことでモテるのは俺だけでいいんだよ」
 「なんだよそれ」
 「はは」
 俺はもう野球をやらないかもしれないし、やるかもしれない。ただ俺の野球人生は今日で最後だ。
 右手にあるのはいつものボール。いつものように握り、いつものように振りかぶる。
 「いい球頼むぜ」
 雄二の応援。
 うん、いつも通りだ。
 誰もいないスタンドにいつものように精一杯投げた。
 高く、高く。
 俺たちの引退ボール。
 高く、高く上がったボールはあっという間に落下する。
 誰にも取られず、客席に当たり
 トーンッ
 と跳ねた。
 それは夢の終わりを告げる合図だった。 
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755VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(静岡県)2011/11/01(火) 21:05:27.27qY6iM1Feo (1/1)

>>754
俺が随分前に出したお題を消化してくれてありがとう。

素晴らしい作品だと思う。こういう風に消化されるとは思わなかった。
雰囲気も出ているし登場人物も活きている。
欲を言えばちょっと季節感が希薄かな。甲子園大会が終わった晩夏なのか
少し時間を置いた初冬か、それとも卒業前の春先なのか。

ともあれ、いい作品だと思う。俺が自分でお題を消化した小作が恥ずかしくて
出せなくなっちゃったよ。
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756VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/01(火) 23:19:47.835MktxGrDO (1/2)

>>754面白い、と単純な感想をもった
雰囲気がいい
例えるなら教科書に載っているような文章だと思う
このお題で、こうきたか……やられたっと思わせる
ショートショートの模範、とても良かったです
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757VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/01(火) 23:29:16.965MktxGrDO (2/2)

>>744


 「おい起きろ。男子禁制の撤廃要求だってよ」
 内心またかと思いつつ、デスクに重なったFAX用紙を一枚摘まみあげた。
内容は変わらず「何故女性ばかりが尊重されるのか。男女平等とは何なのか」
といった文句が表現を変えつつもずらりと並べられている。
 夢から醒めたばかりと言わんばかりの寝ぼけ眼で、
高橋はこてんと首を傾げた。
 「これ全部ですか?」
 「そう。これ全部」
 目で確認しただけでも二十枚以上はある。
 高橋ははぁと溜息なのか返事なのかどちらとも取れない声を漏らすと、
鈍い足付きでパソコンの前に座った。
今にも突っ伏して寝てしまいそうな様子である。
眠気覚ましにと紙コップにコーヒーを注いでデスク横に置いてやると、
高橋は座ったままの体勢で小さくお辞儀をして見せた。
 ――何十年か前には、女人禁制を問題に女性差別が訴えられていたのだそうだ。
しかしそれは徐々にエスカレートしていき、
現在においては女人禁制ではなく男子禁制とされることが多くなった。
そしてそれは国技においても同じであった。
 「えぇと、そもそも女性の出産や生理は」
 「バカ。そこまで書かなくていいんだよ、神事なのでとだけ書いとけ」
 「はぁい」
 キーボードを叩く音が軽快に鳴り響く。
 外はもう暗く、太陽が赤く空を染めていた。
 (……原始、女性は太陽であった、か)
 初めは正しかったであろう道が途中から歪曲していくのは珍しいことではない。
そして変化していくのも歴史の流れであると思う。
それでも何か腑に落ちないものを感じるのは、
自分が懐古的な人間だからであろうか。
 「もうすぐ外回りの人たちが帰ってくる時間ですかね」
 「へっ、あ、あぁ」
 いつのまにか考えに耽ってしまっていたようで、思わず変な声を出してしまった。
 高橋の怪訝な視線に思わず目線を逸らす。
 「……なぁ高橋」
 「はい?」
 「相撲を女性しか見れないってのはどう思う?」
 「はぁ、まぁそりゃ女性の半裸姿の取っ組み合いなんて興奮しちまいますからね。男子禁制で良いと思いますけど」
 「じゃあこの投書みたいな――」
 「男性が相撲を組むって? そんなこと一度も考えたことありませんよ」
 だからわからない、そう言外に言われた気がした。
 言葉を詰まらせていると、ガヤガヤと外が騒がしくなってきたのがわかった。
 「帰ってきましたね」
 「……あぁそうだな」
 磨りガラス越しにいくつかの影が見える。
 高橋の手に握られた白い紙コップは、うっすら内側から黒く染まっていた。


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758VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/01(火) 23:44:51.18y6ii2Ik3o (1/1)

>>755 >>756
ありがとうございます。なんだかべた褒めでむずがゆいです。
確かに時期が伝わる描写がありませんね。
脳内で夏の甲子園決勝の直後、と思っていたんですがほんとに思っていただけになってしまいましたね
以後気をつけます。


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759VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/01(火) 23:46:23.10EaqsWD6Wo (1/2)

>>752
感想は諦めてたけど、まさかもらえるとは。ありがとうございます
内容の件は自分でもちょっとなあと思ってたので改善できるように頑張ります

>>754
雰囲気がいいですね
才能ある人とは違う、自分の現実を見つめる寂しさがあるというか
短い文で改行していてやや細切れすぎるかなとは思いましたが、逆にいえばそれくらいしか指摘できるようなところがありませんでした
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760VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/01(火) 23:58:12.63EaqsWD6Wo (2/2)

なんか微妙ににぎわってきてる

>>757
目の付けどころというか、発想が面白かった。文章自体にも違和感はありませんでした
気になったのは改行のはさみ方ですが、これは総合でもいろいろな見方が出ているので引っ込めときます

このまままた少し活気が出るといいなあ
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761VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/02(水) 00:48:12.53ri8dVnNDO (1/2)

>>733

 「いくら?」
 「ハッピャクエンデス」
 ロボットは目玉を点滅させると、金属音を鳴らしながら小銭口を開いた。
僕は財布から五十円玉を十六枚取り出すと、一枚一枚丁寧に差し込んでいく。
最後の一枚を小銭口に入れると、ロボットはまた金属音を鳴らしながら小銭口を仕舞う。
 「カクニン、カクニン。トオカカン、ノ、ハヤオクリシマス」
 「うんお願い」
 間髪入れずに僕は首肯する。
ロボットは再び金属音を鳴らした。
点滅していた目玉がバチリという音と共に強い光を発する。
目の前が真っ白に染まったかと思うと、僕の意識はそこで途切れた。



 ――目を開くと、そこには苺と生クリームでデコレーションされた大きなケーキがあった。
スンと息を吸うと、甘い香りが鼻孔をくすぐる。
 「さぁ、たかし。誕生日おめでとう!」
 「お母さん!」
 「今日はたかしの誕生日だからね。私も久しぶりにたかしに会えてうれしいよ」
 久しぶりの母の顔は少し疲れていて、自分の誕生日のために無理をして仕事を出てきてくれたというのが感じ取れた。
 「僕もうれしい! 誕生日が待ちきれなかったぐらい!」
 なんたってあのロボットだって使ったんだから!
禁止されているのを忘れて、思わずそう口を滑らせようとしたところで、僕の言葉は止まった。
 「そうかい? じゃあさっきあげたプレゼントも大事にするんだよ?」
 「……え?」
 「何だ気に入らなかったのかい」
 母の嬉しそうな顔が曇り、僕は慌てて首を振った。
 「ううん! 気に入ったよ! あぁ僕早くケーキが食べたいな!」
 「あぁごめんよ。さて切り分けようか」



 母がまた仕事に出掛けた後、僕は家中の至るところをひっくり返した。
しかし、見つからない。
プレゼントらしきものはどこにもなかった。
 「ロボットロボット。僕の過ぎちゃった時間を少しだけ買うことはできないかしら」
 「アナタハ、ジカンヲ、カワレタデハアリマセンカ」

 ロボットの返事はにべもない。
けれど母がせっかくくれたプレゼントだ。

 「そこを何とかならないのか」
 「スギタジカンハ、モドリマセンヨ」
 「じゃあどこにあるのかだけでも」
 「アナタガ、カクシタンジャア、アリマセンカ」
 「ええっ!? まさかあ。僕は隠したりなんてしてないよ」
 「イイエ、アナタガカクシマシタ」
 話が全く通じない。
僕は頭に来てしまい、ガンとロボットを蹴り飛ばした。
ガチャガチャピーピー
金属音が鳴り、点滅していたロボットの目玉がビカリと光った。



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762VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/02(水) 01:02:50.83ri8dVnNDO (2/2)

ageられてなかったのでもう一度
また活気づけばいいんだが
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763VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/02(水) 01:27:04.95Uzy/1ip5o (1/2)


 日が天頂から幾分傾きし頃のこと。
 町の小さな公園の一角、そこに尋常ならぬ殺気が満ち満ちていた。

「お主、上様を裏切る心づもりか!」

 太く、張りのある男の声が響く。
 ジャングルジムを背にして立つ声の主、肩を怒らせ目を吊り上げ今にも火を噴かんばかり。
 その険しい視線の先にいる女は、対照的に涼しい笑顔。

「関係ないでしょ」
「関わりなきことはあるまい!」

 女のすげない声にかぶさる男の怒声。
 彼女はついと視線を外すと、脇の滑り台に目をやった。
 何かを言おうと口を開き、だが何も言わずに口をつぐむ。

「上様に楯突く者は例え妹者であろうと許さぬ!」

 男は声を荒げ、言うが早いか拳を振り上げた。
 鍛え上げられた肉。磨かれた骨。
 鋭い呼気と共に放たれた凶拳は、空気を幾万にも引き裂くと女に向かって突進した。

 同時だった。女の笑みが消えた。
 視線が男に突き刺さる。ねめつけるその目の光がどこか悲しく思われた。
 長い空白。男の拳は女の眼前に力を失っていた。
 沈黙があった。深淵をのぞき込むかの如く深く静かに。

「妹者」

 男が拳を解く。そのままゆっくりと女を抱きしめた。

「帰ろう」

 悲しく声が震えた。



 同刻、公園の脇を通る母子があった。娘がふと公園に目をやり訝しげに声を上げる。

「なんであのおねえちゃん笑ってるのに泣いてるの?」

 母は同じく公園の中に目を向け、その二人をじっくりと眺めた。
 その眼鋭く、数拍の間があった。

「母上?」

 ふっ、と。母の口から微笑の吐息が漏れた。
 大人になればわかる。それだけ言うと、母は歩きだした。
 娘はその背中と公園の二人をしばし見比べ首をしきりに傾げた。そののち母を追って小走りに駆けていった。
 その背後。男が静かに崩れ落ちた。
 女の貫手に血の赤色。

 大人になればわかる。修羅の道の険しさは。
 母のつぶやき、誰の耳にも入ることはなく。
 日がまた少し傾いた。

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764VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/02(水) 01:38:29.20Uzy/1ip5o (2/2)

忘れてた。お題は>>572
自分で書いといてアレだけど良くわからないものになりました

>>761
すみません、落ちというかどういうことかが分からなくて感想が書けません
文章は子供らしさが出ていてちょうどよい塩梅になっていると思います
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765VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/02(水) 18:26:12.755jpsaWc0o (1/1)

>>761
お題の条件を組み合わせて時間を買うっていうのはなかなか面白い発想ですね。
ただオチの部分が少し分かりにくいかな。
例えば時間を飛ばす合図をロボットに特定のセリフを喋らせる、などしたほうがオチが分かりやすいかと思います。
あとプレゼントを隠す、の意図がよく分かりませんでした。もし『僕』を怒らせるためだけのものだったら少し意味深すぎるかもしれません。


>>763
うーん、ちょっと良くわかんなかったです。説明不足かな、と思いました。
SSで特殊な世界観の話をやろうとすると説明が不足したり過多になったりして難しくて書きづらいですよね。
だからこの板でもオリジナルは勇者と魔王などのある程度みんな共通した世界観をもっているSSが多いのだと思います。
とはいえこの世界観で長編を書いたらどうなるのかな、という興味はかなりありますね。



766VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/11/02(水) 20:49:03.84Cup+oWaro (1/1)

ここはひとつ新しいお題がほしいっす
だれかカモーン


767VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/03(木) 08:17:43.92ZrsuwQbDO (1/2)

お題

(○○の中は自由で)「そのネコがぼくのところにやってきたのは、ある○○のことです」という文章を入れる(改変OK)

登場人物(動物)が「死」に関係すること

引用/絵本「ネコとクラリネットふき」から






768VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/03(木) 08:21:22.67ZrsuwQbDO (2/2)

>>760
お褒めの言葉、ありがたく受けとめさせていただきます
文章の改行はまたパソコンから確認し、自分でも考えながらいろいろと試してみようと思います
ありがとうございました


769VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/11/03(木) 11:04:12.21jQkcUElHo (1/2)

>>767
黒猫のみーくんが僕のところにやってきたのは、ある秋の夕ぐれ時のことでした。

みーくんは仕事帰りに公園のベンチで缶コーヒーを飲んでいる僕の目の前を横切って、珍しく僕の横にちょこんと腰を下ろしました。

「おや、みーくん、こんな時間に珍しいね。これからお仕事?」

「ん、まあねー。それよりちょっとお話しない?」

みーくんは少し気だるくて退屈そうな声でそう答えました。みーくんは名前の連想を裏切って、実はメス猫です。なぜみーちゃんでなくてみーくんなのかは、長い付き合いになる僕も知りません。

「あなたもお仕事だったの?」

「うん。今日は割りと楽な仕事だったなあ。いつもこう楽だといいんだけどね」

「あなたも大変ね。私は基本歩くだけだから楽なんだけど。時間に間に合いさえすればいいんだから」

「いろいろ大変な時もあるけど、まあ、仕事だから仕方ないよね」

みーくんとお仕事の話をするのは極めて珍しいので、僕はちょっとびっくりしました。お互いの仕事には干渉しないのが僕とみーくんの長い間の不文律だったからです。

「あなた、別のお仕事したいと思ったことないの?」

「もうそういう気持ちも忘れたなあ」

そう答えて僕はふと嫌な違和感を覚えます。

「私たち、長い付き合いだったわね。永遠に続くかと思ってたんだけどね」

「……」

「……できればあなたへの仕事はやりたくなかったの。本当はお仕事の時に話しかけるのは禁止なんだけどね」

「……そっか。僕にもその時が来たんだね。僕はこれから何になるんだろう?」

「……分からない。でも死神ではない何かになるのは間違いないわ」

みーくんは少し眠たそうな大きな目を僕に向けてそう話しました。みーくんの眼は大きくて吸い込まれそうです。

「僕の後は誰が死神をやるの?」

「それも分からないわ。でも誰かが来て、また何千年も死神の仕事をやり続けるんでしょうね」

「みーくんは、……死なないの?」

「それも分からないけど、いつかは私も寿命が尽きる時が来るはずよ」

「そうなのか」

「……私、ホントは、……あなたに……」

みーくんは大きな目を伏せてみーと鳴きました。みーくんの鳴き声に少し感情が篭っていることに気が付きました。これも初めてかもしれません。僕に残された時間はもう少ないようです。

黒猫のみーくんは死期が近いことを予告するのが仕事、僕たち死神は尽きた寿命を集めるのが仕事。寿命の尽きた僕の抜け殻は仲間の死神が拾っていくことでしょう。

「……もうそろそろよ」

みーくんは元の気だるそうな声に戻ってそう言いました。僕もいろいろな思いはありますが、ここは男の子の沽券にかけてしっかり答えておくべきだ、と思いました。

「みーくん、今までありがとう。……じゃあね」

みーくんは最後にみーと鳴きました。しかしその鳴き声は意識が薄れる僕には半分しか聞こえませんでした。


770VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/11/03(木) 11:05:40.21jQkcUElHo (2/2)

ぶっちゃけ、お題が難しすぎでした。

現行死神スレの作者さん、ごめんなさい。


771VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県)2011/11/03(木) 20:58:47.590sLMXYfK0 (1/2)

>>767

その猫が俺の家にやってきたのは、夏休みの終わり日だった。
家の外からも聞こえたにゃーという泣き声。
嫌な予感がしつつ、家の扉を開けると、そこには一匹の虎猫が座っていた。

なんでも母親が河原で捨てられていた猫を拾ってきたらしい。
やれ川に流されそうになってただの、このままでは死んでいただの言っていたのを良く覚えている。
当時子供ながらに、あんた猫を飼いたいから、適当に理由付けしてるだけだろうと思ったし、実際その猫が死んだ後も別の猫を他から貰ってきた時心底幻滅したものだ。
――閑話休題

その猫はトムと名づけられた。母親が『トムとジェリー』が好きだった。理由はそれだけである。虎猫なんだからトラでいいだろうという俺と姉と父親の意見は見事に却下された。

トムは基本、俺とは仲が悪かった。
一度、どうもトムは俺の上で寝ようと思って飛び乗ってきたことがあり、その時トムが襲い掛かってくるものと勘違いした俺は必死に抵抗し、あろうことかトムをぶん投げてしまったのである。
ちなみにその時のトムの着地は見事なものだった。

それ以来、トムとはずぅっと険悪な関係だった。
話かければひっかかれる。頭をなでようとすればひっかかれる。
餌をあげなきゃひっかかれる。ま、ようするに基本ひっかかれた。

・・・・・・ただ、俺が親に怒られて泣いてた時、学校でいじめられて帰ってきた時、何故かいつも傍にいてくれたのもトムだったのだ。
いつもひっかくくせに、その時だけはただ俺の近くで眠っていた。
何か意図があったのか、たまたま寝たかっただけなのかはわからない。
ただ、それに俺が救われていたのも、また確かだった。

そんなトムが死んだ。
交通事故だったらしい。
事故を起こした相手は顔面蒼白だったらしく、このお金をやるから許してくれといい、
それを親はうちの猫の死を金で買えるかとぶちぎれたそうだ。
・・・・・・気持ちはわかるが、突然飛び出してきた猫に対して対応しろっていうのもまた酷な話なのではないか。

姉は泣いていた、父親も母親もこの時は意気消沈していた。
俺は別段泣きもしなかったことで、何故か母親に叱られた。
あんたに人の心はないのかと言われたが、大きなお世話である。
大体こっちはその現場も見てないし、いつかひょっこり帰ってきそうな気がしていたのだ。

そして、季節がたち、母親が二匹目の猫をもらってきて、その猫にトムと名前をつけた時、はじめて俺は泣いた。そして怒った。
お前にとってトムはあの虎猫一匹じゃなかったのか!ふざけんじゃねぇ!・・・・・・と
そう叫んだ俺は、父親に抑えられ、そしてその事を母親に怒られた。
多分そこで初めて俺は、トムの死を認識できたんだと思う。

その後俺は社会人となり、家を出て行った。
家には今、三匹目の猫がいる。
二匹目の猫も交通事故で死んでしまったが、三匹目のこいつは結構しぶとい。
今度こそ、普通に最後まで生きてほしいな。
このお題を見て、そんな事を考えた。


772VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(神奈川県)2011/11/03(木) 20:59:39.110sLMXYfK0 (2/2)

こんなでいいのだろうか
趣旨間違えてたらスレ汚しごめん


773VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/11/03(木) 22:17:53.39Lq6J78cho (1/1)

>>771
読ませる良い文章だと思うが、お題とはいえ死ネタはやっぱり嫌いだ。


774VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/04(金) 20:31:00.644+B1OC/jo (1/1)

>>765
なんかこう、正直説明不足以前の問題だったよね、ごめんね……
今度は真面目に書きますのでお許しを

>>769
ですます調の柔らかな地の文が好みです
何か注文をつけるとすれば、読んでいてちょっと風景が浮かびにくかったので情景描写の補強が必要かもしれません
とはいえ、空気を壊してしまっては元も子もないので注意深く検討してください

>>771
「俺」とトムの距離感が心地よかったです
自分からは特に注文はありません


775769です2011/11/04(金) 21:09:41.179UQMVzmTo (1/1)

>>774

コメントありがとう。確かに情景描写が足りないですね。いつも台本形式がメインなのですっかり情景描写が頭から飛んでました。

あと自分で書いたのを読み返してみて思ったのが、僕の前を横切ったのがみーくんの仕事だったと気が付くところがポイントになるんですが、もう少し重みを付けた方が良かったかな、と。

また次のお題が出たら頑張ってみます


776VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/05(土) 23:29:59.24qsEqpdX7o (1/1)

>>605

 日が急角度に傾き、そろそろ休日の終わりを覚悟しなければならない時刻だった。
 私はしずしずと近付いてくる憎き月曜日の気配に恐れおののきながら、それでも外見は平静を装い横臥していた。
 本当ならばイヤイヤと転げ回り月曜日などなくなってしまえと罵声を吐き散らし、
ひいては猥褻のひとつやふたつで時間の神に抗議するところであったが、先週妹に怒られたので自粛している。
 仕方なく残された時間をかみしめながらの不貞寝だった。

「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」

 冷たい声が浴びせられたのはそんな夕方のことだ。
 名の知れた小説の一節である。清く精神の高みを目指す一人の馬鹿男が放った、世の誇り高き怠け者たちへの大胆不敵な挑戦状である。
 しがないいちサラリーマンの私としては断固それに反論したい。いやいやだってかったるいじゃんと。
 私は半身を起して振り向いた。視界に仁王立ちする少女がおさまる。彼女はじろりと私を見下ろした。
 夕日を後ろから浴びてその顔は暗く陰っている。だが冷たく光る瞳は見える。
 再び彼女が口を開いた。

「朝食を食べてからの二度寝。昼に起きて昼食。その後布団にもぐりながら漫画読み。それが済んでのアニメ鑑賞――これが兄さんの今日一日の行動です」
「素晴らしい。充実しているな」
「どこがですか」

 しみじみと言う私に、彼女は忌々しげに吐き捨てた。

「仮にもわたしの兄ならばもっとしっかりとしていただきたい」

 それを聞いて、私はある痛ましい事件を思い出した。「お兄ちゃんには夢がないね」から始まり殺人に終わったあの悲劇。
 そのニュースを知ったときと似た気配を感じて私は戦慄した。

「居候が知ったふうな口を聞くな」

 妹は実家を離れて私の安アパートに寄宿している。高校に通うのにこちらの方が都合がいい。だが。

「あなたに養われた記憶はありません」
「なんという恩知らず」
「どの口が言いますか」

 まあ実際のところ。炊事洗濯掃除は妹が全てこなしているので、例えば彼女に出て行かれれば遠からず滅びるのは私の方だ。
 座りなおしながら分の悪さを認めて切り替える。

「人の生き方に注文をつけるもんじゃない。無粋だ」
「わたしの人生に関わる事だから言っているんです。こんな兄がいるなんて知られればこの上ない恥なんですよ!」
「お前の人生など知ったことか!」
「それが兄の台詞ですか!」
「やーい、ばーか!」
「きいい!」

 その後しばらく口論が続き必死の攻防が繰り広げられたが、チャイムの音によって一時中断となった。
 私は妹に一睨みをくれて玄関に向かった。

 扉を開けると宅急便の制服を着た壮年の男性が姿を現した。
 サインと一抱えの段ボール箱を交換しそのまま彼は去りゆくかに見えたが、ふと肩越しに振り返り、

「仲がいいね」

 と、ちらりと笑って歩き去った。

 そのことを妹に話すと、「聞かれた!」と彼女は頭を抱えた。彼女にとってはこれすら恥なのだろう。
 どことなく疲れた様子で口論の続きを始める気配はない。
 私はというと、先ほどの男性のナイスミドルと言わざるを得ない最高の笑顔に毒気を抜かれていた。
 以上の推移により、私たちのいさかいはなし崩し的に和睦を迎えたのである。

 ちなみに。届けられた段ボール箱の中身は農家をやっている実家からの差し入れだった。
 ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、リンゴ。
 カレーを作れという無言の圧力を感じる取り合わせだが、妹はわざわざニンジン料理をチョイスした。
 ニンジン嫌いの私である。さしあたってはこの嫌がらせの切り抜け方、そして仕返しの方法を考えなくてはならない。
 月曜日が近い。



777VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/05(土) 23:52:17.15lRGHhWJTo (1/1)

 >>776

 いいですね。こういう軽い感じの文章は好みです。良い意味で頭を空にして読めますね。
 ライトノベルの冒頭のような空気を感じます。
 文章自体も特に引っかかるところもありませんでした。良作だと思います。


778VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/11/06(日) 11:09:30.60wEi2dqH70 (1/1)

>>776

乙です。思い当たる節があっていろいろと俺の心に痛いSSですね。
平凡な日常を切り抜いた感じがいいほのぼの感を出していると
思います。

お題を忠実に守ったらお話として見ると抑揚に欠ける展開になった
のは仕方がないところでしょう。それをまとめてしまうところに力量を
感じます。次からはトリ付きで書いてもらえると嬉しいかも。


779VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区)2011/11/08(火) 18:29:23.12bSxcOGYs0 (1/1)


次のお題もらってもいい?ちょっと猫のは俺には書けないっす


780VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/08(火) 18:38:28.326HufzzDDO (1/1)

お題

少女が片想いの相手に告白をしようと相手を待ち伏せしている。
告白は上手く行かず、失敗する。
少女は諦めない。


登場人物の年齢性別は自由。
場所は自然に関するところ。




781VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/08(火) 19:21:06.168lq0uC2IO (1/1)

お題

・落とし物
・青色
・セリフ「これぐらいは当たり前」


782VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(山口県)2011/11/08(火) 20:37:53.15S4flT57Vo (1/1)

>>780
 告白ってどんな感じなんだろう。私はしたことがないからわからない。
 でも、そんな私にも好きな人ができました。

 同じ学校に通う一つ年上の先輩。

 名前は北之城毅(きたのじょう つよし)。

 自然が大好きな先輩が、週末に富士山に登るという情報を聞きつけた私は、今こうして
富士山の七合目で待ち伏せしています。

 どうして七合目かというと、脚が疲れてこれ以上登れなかったから。てへっ。

 さあ、協力してくれているお母さん(43)の情報によれば、もうすぐ北之城先輩がここに
やってくるはず。

「北之城先輩!」

 先輩の前に飛び出そうとしたその時、

「何をやってるんだキミ!」

 突然見ず知らずのオッサンが私を制止したのだ。

「何ですかアナタは」

「それはこっちの台詞だよ。ダメじゃないか」

「え?」

「今は富士山駅伝の真っ最中なんだよ!」

「はい?」

 なんと、北之城先輩はただ富士山に登るだけでなく、富士山駅伝に参加していたのだ。

 先輩素敵過ぎる。

 その後、先輩がヨットで小笠原諸島へ向かうという情報をキャッチした私は、父島辺りで
待ち伏せしようと密かに計画しています。

 ああ先輩。必ず、あなたの大好きな自然の中で告白を成功させてみせます!


783こずみっくてきななにか2011/11/09(水) 08:21:35.59+Be44PY/0 (1/1)

>>781 

今からずっとずっと昔、ボクはある落し物をしてしまったんだ。
それはとても小さな種だから、探すのはきっと骨が折れるんだろうな、と思ったものさ。
事実それはその通りで、ボクがその落し物を見つけたときにはずいぶん時間が過ぎてしまっていた。

「……綺麗だなぁ」

その“落し物”だったはずのものは、とてもきれいな宝石になっていたんだ。
すぐ近くにある大きな火の玉に照らされて、その宝石はきらきらと青くきらめいている。
でも、その宝石の中に住んでいる小さな生き物は、なんだがとても困っていたみたいなんだ。

こっそりと聞き耳を立ててみたんだ、誰にも気付かれないようにね。
すると原因はすぐにわかった。あの大きな火の玉が、どうも悪さをしているらしい。
あの宝石は元々ボクのものなのに、火の玉はそれを食べようとしているみたい。
ちょっと面白くないな。

だからボクは、その火の玉をぎゅっと鷲掴みにした。
ばちばちまっかな炎がボクのてのひらをくすぐる。ちょっと気持ちいいかも。
そしてそのままぱくりと一口。なかは熱々で、口の中がやけどしそうになったけど。

「結構おいしいかも。お腹もすいてたし、丁度よかったな」

半分くらいの食べ残しを、ぎゅっと丸めてもとの場所に戻しておいた。
しばらくすると、なんだか耳元が騒がしくなってきた。

「助かった!」「奇跡だ!」

なんて、とても嬉しそうな声が沢山聞こえてきた。
ボクも嬉しかったんだ。ここまで来る途中だってこんなに騒がしかったことはなかったから。

「これくらいは当たり前だよ、ボクはカミサマだからね」

届くかな?届かないかな?わからないくらい小さく呟いて。
ボクはその宝石に背を向けた。んーっと大きく背伸びをして、そろそろ出発しようかな
なんて考えてた。
落し物を持って帰るのを忘れていたけど、それは気にしないことにしたんだ。
だってまたいつかふらりと寄ったとき、みんなが“地球”って呼んでいたこの青い宝石を
また、見ることができるかも知れないからね。


784VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(dion軍)2011/11/09(水) 17:49:17.44uUJXAo/P0 (1/1)

>>781 

「……落としたの?」

男はソーサーにカップを戻しながら女に聞いた。男の家の小さなダイニングテーブルには女が
買ってきたケーキとコーヒーが並んでいる。女は小さく頷いた。男の質問はただの確認でしか
ない。

「どこで?」

その声には少しだけ非難めいた響きがこもっていた。男の向かいに座って所在なさげにケーキを
つついていた女は、それを敏感に感じ取って恐縮する。

「うーん、分かんないけど多分ケーキ買いに寄ったデパートで……」

「まったく、よくあんなもんを落とせるもんだ」

「……ごめんなさい。ぐすっ」

女は消え入りそうな声で謝り、涙声で続けた。

「……私、もうあなたと一緒にいる資格ない……」

「え?」

「だって、あなたから借りたDVD傷つけちゃったし、あなたにもらった指輪もなくしちゃった
し、あなたがうちにあいさつに来た日は風邪で寝込んでたし……ぐすっ、わーん」

女を泣き出してしまった。男はやれやれと暖かいまなざしで見つめて、優しく言う。

「ばかだな。そんなのお前の今までのドジ歴からみたら全然たいしたことないじゃん」

「……どーせ、私はドジだもん。ぐすっ」

「筋金入りのどじっ娘のお前と一緒に暮らすと決めたんだ。これぐらいは当たり前すぎて怒る気に
 もならないよ」

「……ぐすっ」

「大丈夫だよ。あんなのただの紙切れだ。もう1回書けばいいだけだよ」

「……ぐすっ。うわーん、ごべんなざああいいいい」

男の言葉を聞いて女は再び泣き出してしまった。男はしょーがねーな、まったく、と呟きながら、
がさごそと自分のカバンから青色の線の入った紙を取り出した。

「ほれ。どうせお前のことだからなんかするだろうと思ってもう一枚もらっておいたよ。婚姻届。
もう落とすなよ」

「……あなた。……だいずぎいいいいい。うわーん」




785VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(チベット自治区)2011/11/09(水) 17:54:25.07btrcdzJV0 (1/1)


注1:婚姻届は地方によっては青くないところもあるようです。てゆーか青の方が少数派?

注2:婚姻届は個人情報が超満載です。こんなもの落としたんなら男のように余裕かましてては
   いけません。ブチ切れましょう。


>>783の話のスケールがでかすぎて卑屈になりそう  


786VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/09(水) 18:12:55.462ahA77uDO (1/3)

>>781



馴染みの反物屋に新しく入荷したという反物を見に行ったその帰り道のことである。
川沿いには草が手入れもしていない状態で生え散らかっていて、「猫の死体を踏んでしまってもわからないわ」などと思いながらも歩いていると、知らぬ男が唐草模様の上着を着て何やら悩ましい様子でしゃがみこんでいる。
興味をそそられて、「どうなさったの?」と話を振ってみると、男は被った手拭いを抑えながらこちらに顔をあげた。
しかし手拭いが翳りを落として表情までは窺えない。
「大切なものを落としてしまって」
「あら。あたしも探してあげましょうか」
「そんな、お嬢さんに悪いですよ」と首を振る。
「構わないわ。どうせ帰っても家事を手伝わされるだけだもの」
そう言うと男は可笑しそうに声を漏らして、「それならお願いします」と頭を下げるものだから、少女は恥ずかしそうに頬を紅く染めた。
「それで、どのようなものをお探しかしら」
「このぐらいの、青の、硝子玉です」
男は空に小さな丸を描いて見せる。
「青の硝子玉?」
「人から貰ったものですが、なんでも珍しいものらしくて」
それを聞いて「そうよね、初めて聞いたもの」と返しそうになるのを喉から出る寸前でぐっと抑えた。
男は続ける。手拭いが風を受けて小さくはためいた。
「大切なものなんです。――でも、猫の死体を踏んで吃驚した拍子に落としてしまって」
「間抜けな奴だなぁと自分でもそう思います」
男の声がどんどんと尻窄みになるのを聞いて、少女は何も答えずにすとんとしゃがみこんだ。
「どの辺りに落としたのかわかるの?」
「あっはい。貴女が立っている辺りで落としたので、本当にここ周辺だと思うんですが」
その言葉を聞いて少女は土を軽く触ると、何かを一瞬考えるように顎に指をかけ、立ち上がり水辺に近づいていく。
あと一寸もしないところでまたしゃがみこむと、「ねぇ」と男に呼び掛けた。
「これかしら?」
指に摘まんで見せたのは、青の硝子玉だった。



「何であんなすぐに見つけ出せたんですか?」
お礼をしたいという申し出を断り、やっとのことで引き下がったかと思うと、男はそう聞いてきた。
「それは――……貴方この辺りの人じゃないでしょ」
「えっ」
「貴方みたいに目立つ人が来たら、すぐに噂になるもの」と男の髪を指差すと、男はぎょっと体を強張らせた。
「気づいていたんですか」
「まぁね……日本語があまりにも上手いから、最初は気付かなかったけど」
男は手拭いを脱いでくしゃりと髪を掻きあげる。
「こんな容姿でも日本育ちでして。それで、何故?」
「ここね。歩いていると気づかないぐらいほんの少しだけ、川に向かって傾斜しているのよ。だから硝子玉なら転がっていくだろうと思ったし」
「それを知らない私は地元の人間ではないだろうと?」
「そういうこと。この辺りの人にとってこれぐらいは当たり前に知っていることでね」
「そうですか」と男は肩を落とした。
「……私は混血でして。ここに幼いころに別れた母がいると聞いて会いに来たんですよ。母は私を忘れているかもしれませんが、一目だけでも会いたくて」
「その硝子玉はお母様に?」
「はい」
少女は何やら納得するように頷くと、男に向き直る。
「貴方の瞳にそっくりね」
男は目を見開くと、手に持った硝子玉と少女を交互に見て唇を開けた。
それがあまりにも間抜けに見えて、少女は思わず吹き出すと男は慌てて口を閉じる。
「大丈夫よ、忘れてないわ。きっと」
「さて探し物も済んだのだから」と少女は踵を返す。
「あのっ」
顔だけを振り向かせた少女に、男は硝子玉を空に透かせながら、
「ありがとう!」
嬉しそうに微笑んだ。





787VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/09(水) 18:20:21.412ahA77uDO (2/3)

>>784
ラノベ的で読みやすい反面、物足りないと思いました。
文章に引っ掛かる場所はありません。
ただ物語の一部分を抜き出した、といった印象は受けました。
読みやすくてよかったと思います。


788VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/09(水) 18:28:44.922ahA77uDO (3/3)

>>783
文章は柔らかい調子で良かったと思います。
けれど世界観が少しわかりづらいかなと。
神様のキャラクターが漫画的過ぎるのかもしれません。
これは個人の意見でしかないし、正しいかもわかりませんが、もう少し淡白なキャラクターでもいいかなと思いました。
全体の雰囲気としては絵本ねようで良かったと思います。


789VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/09(水) 20:45:13.02e9fN04Slo (1/3)

>>777,778
遅れましたが感想にお礼を。ありがとうございます
指摘の通り物語に起伏がないというか、だから何? みたいな話になってしまいました
これからは文章だけでなく内容にも気を使っていきたいと思います

トリについては、恥ずかしいですしこういったスレにはそぐわないと思いますのでやめておきます。すみません


790VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/09(水) 21:11:16.41e9fN04Slo (2/3)

>>782
文章について言えば、ですます調とそうでないところがやや不調和を起こしているように見えます
自分だけかもしれませんし混ぜていけないことはありませんが、混ぜる場合は気をつける必要があるかと
内容については自分もユーモアセンスが足りないので難しいですが、それぞれの場面のボリュームがないせいかあまり笑いにつながってないように感じました。

>>783
絵本的で面白いです
それでも一応批評?するなら、たまに語り聞かせる口調から独り言のように変化する箇所があって、少しばかり違和感があったような気がします


791VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/09(水) 21:36:28.39e9fN04Slo (3/3)

>>784
地の文が人物の外面の描写のみだからか、なんとなく文章がほのぼのとしたシーンにそぐわないような気がしました
あとは、泣き声がそれらしくなかったように思えます
泣く様子を台詞だけでなく地の文でも描写するといいかもしれません

>>786
和風な雰囲気が心地よいです
特に指摘できるところはありませんが、
>「大切なものなんです。――でも、猫の死体を踏んで吃驚した拍子に落としてしまって」
>「間抜けな奴だなぁと自分でもそう思います」
ここが話者が変わっていないのに区切られていてちょっと引っかかりました


以上です
ヘタクソな批評ですので、あまり深刻にならずに参考にできるところだけ参考にしてください


792VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/11(金) 00:05:45.68ykBOTRfso (1/2)

>>616

 風が吹いていた。故郷とはどこか違う大陸のそれ。
 強くではない。どこまでも広がる草原がさらさらと囁く程度。
 俺は道の端に座り込んだままそのかすかな声に耳をすませていた。
 空を見上げると天頂に太陽があった。この草の海に足を踏み入れた朝からもう数時間が経過したことになる。
 ひ弱な俺の両脚はとっくに音を上げていて、もう一歩も動けそうにない。

 やはり馬を借りるべきだった。後悔は一時間前、すでに背中に追いついてきていた。
 馬になんか乗ったことがないから不安だとか、金に乏しいから少しでも節約したいなどと考えるべきではなかったのだ。
 今からでも引き返すべきかもしれない。空の向こうに伸ばした視線を来た道に落とした。
 その時ようやく彼に気付いた。

 彼はその時黒い点にすぎなかった。地平よりやや下、黄土色の道の上をゆったり進む点だった。
 馬とそれに乗った人間と気付くのにはしばらくかかった。気付いたところで俺は鞄からカメラを引っ張り出して立ち上がった。
 彼が近付いてくる間、数回シャッターを切る。
 しわが多く日焼けしたその顔をはっきり視認できる距離になったところで、カメラを下ろし代わりに右腕を水平に伸ばした。
 ぴんと立てた親指を見て、彼が馬を止めた。土埃にうっすら汚れた民族衣装が、わずかに衣擦れの音をたてた。

 言葉はほとんど通じなかった。それでもかたことの単語でどうにか先に進みたいことは伝わったようだ。
 かくして俺は彼の後ろで馬に揺られていた。
 会話はなかった。彼はとても静かな人間で、あれこれ俺に訊いては来なかったからだ。
 ただ一度「お前はなんだ」という趣旨の問いかけを受けた。
 カメラを見せると、どこか興味深そうに視線を注いだ。だがそれだけだった。
 彼は多分俺を記者か何かだと思っただろう。実際は違う。写真が趣味なだけの若者だ。

 まだおれが大学にいた頃だ。写真展を見た。
 別にどうしてもそうしたかったわけではない。本当に気まぐれというか偶然だった。
 学生特有の倦怠感を引きずって街中を歩いていたところ、それに出くわしたのだ。
 そんな俺にふさわしく、展示されている写真を撮った人間は無名で大半はどこか独りよがりの退屈な写真。
 あれもこれもいまいち響かない。だが、たった一枚だけ例外があった。

 草原を走る馬の群れ。風をきって、他の何もかもを置いてきぼりに。そしてどこまでも地平を目指し、走っていく。
 冷静に見ればそう優れた一枚でもない。やや遠すぎるその光景は臨場感に欠けていた。欠けていたのだが。
 その日の内に、安いカメラを買った。安かったが、生活費は削れた。ただ、後悔はしなかった。

 ――代わりに今、そのツケとばかりに後悔している。俺の写真は、俺を満足させてくれない。

 彼と俺は二日を共に過ごした。
 何事もなかった。心を揺さぶる見事な風景にであうことなど皆無だった。何事もなかった。
 彼には近くの町に案内してくれるように頼んだ。そこからの帰郷も考えた。

 そして、彼と別れる日の朝の事だ。俺はあまりの寒さに目を覚ました。
 季節は夏だが、ここは一年中あまり気温は上がらない。尿意を覚えて寝袋から這いだした。
 用を足して、寝袋の位置まで戻って、そこで気付く。記憶していた場所に、彼はいなかった。
 彼との交流は希薄だった。言葉が通じないせいもあったが、仮に通じていたとしてもそれほど親密になっていたとも思えない。
 そのせいか、あまり気にならなかった。それでもなんとなく近くを探すことにした。

 草原に一本、木が生えているのが見える。俺はそれを目指して進んだ。
 茫漠とした緑の海の中、目印と言えるものはそれしかなかった。まるで俺の人生のようだと思った。
 ならば目指したところには何があるのだろう。自嘲する。ならきっとそこには何もない。そうだ、今までと同じく。

 右前方から朝日が顔を出した。同時に俺は木の近くにたどり着いた。
 木の根元。馬を傍らに彼が腰をおろしていた。それが目に入った瞬間、俺は思わず立ち止った。
 彼のしわの多い横顔に朝日が当たり、深い陰影を刻んでいる。目は遠く、生まれたばかりの朝日を眺めている。
 あまり大きくない体つきが少しばかりたくましく見えた。日に照らされた民族衣装がうっすら輝いた。
 俺はあの写真を思い出す。カメラを持ってこなかった事を痛烈に後悔した。
 だからその光景を、目に焼き付けた。脳に刻み込んだ。忘れたくないな、と思った。

 数時間後、町に着いた俺は彼と別れた。彼は何事もなく去っていった。俺は馬を借りた。
 明確な風景があればそれでいい。なければないでそれもいい。まだ見ぬ光景を目指して俺は進む。
 また彼に会うことがあれば、現像した俺の写真を見てほしいな。ちらりと思った。



793VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/11(金) 00:43:50.47s6xKKF9zo (1/1)

 >>792

 いいですね。若者のモラトリアムをうまく描いていると思います。
 お題を性質上長くなりすぎてしまいそうですが、1レスでよくまとまっているな、と感心しました。
 気になったのは朝日を眺める『彼』の描写です。少し淡白かな、と感じました。
 他の場面と同じように描写すると、この重要な場面が埋もれてしまうような印象を受けます。
 もっと『くさい』(という言い方が合っているか分かりませんが)描写にしてもいいと思います。
 
 以上です。


794VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)2011/11/11(金) 01:52:58.73ykBOTRfso (2/2)

>>793
感想どうもです
自分もなんとなく上手くないなと思っていた"朝日を眺める『彼』の描写"ですが、ずばり指摘されてしまいましたね
濃い?描写ができないことが弱点のようなので、なんとか克服していきたいと思います
ありがとうございました


795VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/12(土) 07:11:40.74G0JKgipto (1/4)

>>724

 僕が担当する教室には小人が住んでいる。
 靴屋さんが眠っている間に靴を仕立ててくれる、そういう類のやつだ。
 彼らと話なんてしたことはないし、それどころか姿を見たことすらないのだけれど、彼らは確かにそこにいる。

 僕がこの小学校に新任で入って来た時のこと。
 ちょうど、その教室の担当だった年配の女性の先生が入れ替わりに異動していくところだった。
 彼女が教室に案内してくれて、僕はこれからの職場となる小さな戦場を感慨深い目で見回した。
 その顔がよほど緊張して見えたのだろう。彼女は笑って励ましてくれたのだ。
「大丈夫、彼らも歓迎してくれてるわ」
 彼女が指さす黒板のかどっこに、ようこそ、と一言だけ書かれていた。
「この教室には小人がいるの。彼らとは仲良くしなさいね」
 その時はただの落書きに不思議なことを言うもんだなと思ったが、彼女もとりたてて詳しく説明しようとはしなかった。

 新しい年度が始まって、学年が上がった子供たちが教室に入ってきた。
 僕は新四年生の担当で、まだまだはしゃぎたい盛りの彼らには手を焼いた。
 ときには落ち込むようなこともあって、仕事の後に教室でぐったりしていたのだけれど、そんなときにはたまに不思議なことがあった。
 黒板の片隅に「がんばれ」と一言書いてあったり、なくしたはずの万年筆が教卓の上にあったり、
子供たちが掃除を怠けたせいで汚れていたはずの床が綺麗になっていたり。
 大したことではなかった。けれど不思議なことには違いなかった。だからふとあの先生が言っていた小人の事を思い出したのだった。
 その時はまだ信じる気にはならなかったけれど。

「佐藤の馬鹿野郎!」
 ある日のことだ。教室に入った僕の耳に叫び声が飛び込んできた。
 びっくりしてその方向に目をやると、なんと男の子二人が取っ組みあって喧嘩の真っ最中。
 僕は慌ててその周りで当惑している子供たちの間を抜け、掴みあう二人を引き離した。
 それでも言葉でなじり合う二人をなだめてどうにか話を聞き、周りの子の話を統合すると、つまりこういうことらしい。
 その日は夏休みが終わって数日が経っていて、教室の後ろには夏休みの自由研究や工作の作品が並んでいた。
 田中君の作った船の模型もその中にあった。大人の僕の目にもそれはなかなか良い出来で、もちろん田名君もそれを気に入っていたようだ。
 だが、佐藤君が誤ってその船のスクリューを折ってしまったのだ。
「わざとじゃないもん……」
 佐藤君はうなだれてつぶやいた。

 その夕方、僕は教室で頭を抱えていた。どうしたもんかな。つぶやいた。
 目の前には船と、それから破損したスクリューがある。
 怒り心頭の田中君をなだめるには僕が直すと申し出るしかなかったのだが、今それを後悔していた。
 スクリューを手にとって眺める。それはなんと木を彫って作られたものだ。
 そこから細い棒が伸び、船の本体とつながるようになっているのだが、それが今はぽっきり折れている。
 スクリューと棒は一体となっていて、棒だけ取り替えることはできない。棒は細くて接着剤でくっつけることもできそうにない。
「困ったなあ」
 悩んで悩んで二十一時を回った頃、僕は仕方なく帰ることにした。
 とりあえず明日の朝、何か道具をそろえて直そうと思ったのだ。

 そして翌朝。
「ありがとう先生!」
 田中君がすっかり直った船を抱えて、僕に顔一杯の笑みを見せた。
 僕は曖昧に笑って答えた。自分が直したわけじゃないからだ。
 朝教室に入ると、スクリューは船にくっついていた。あれ、と思ってもう一度見てもやはりちゃんとくっついていた。
 継ぎ目があまり目立たない見事な修理。僕は呆けてそれを見下ろした。
 黒板を見ると「かし一つ」とあった。
 菓子一つに見えたので、お菓子を買って教室に置いて帰ったところ、翌日には消えていた。

 それから二年。僕が担当した子供たちは昨日、元気に卒業していった。
 とても良い子たちで、僕にちゃんとお礼を言ってから笑顔で去っていった。
 僕は確かに頑張った。けれども子供たちが笑顔でいられたのは、間違いなく教室の小人さんたちのおかげなのだ。

 その日の仕事がおわり、静かになった学校の椅子に座り、僕は天井に向かって呼び掛けた。
「来年もよろしくな」
 天井で、コトッと、音がした。



796VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/12(土) 09:45:50.75RRVaqnAQo (1/1)

 >>795

 小学校という舞台に合っている丸みのある文章でよかったと思います。
 教室の後ろにおいてあった絵本を思い出しました。
 ただそれゆえに内容が少し物足りないかなと感じました。
 少し裏切られる部分があってもいいと思います。
 
 あと個人的に”かし一つ”の部分は大好きです。

 
 以上です。


797VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/12(土) 13:33:27.83G0JKgipto (2/4)

>>796
確かにひねりがないんですよねー……
実は自分の書く物に共通する弱点です
克服できるように頑張ります
あと"かし一つ"は自分も気に入ってます

以上、ありがとうございました


798VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)2011/11/12(土) 21:55:12.79G0JKgipto (3/4)

>>725

 降り注ぐ紫外線は細胞の一つ一つをまんべんなく刺激する。
 それによって傷ついた細胞はしわしみの原因となり、また癌へと発展する恐れを含んでいる。
 したがってそれをすすんで浴びようとする者はよほどの酔狂かもっと言えば馬鹿であると考えられる。
 かわいそうに、心を病んでまともな判断ができないのかもしれない。
 つまり、と俺は静かに断定した。

「ここにいるのは救いようのない阿呆ばかりということだな」
「はあ?」

 隣の友人が呆けた声を出した。高校での俺の数少ない友人の一人だが、彼を無視して俺は周りを見渡した。
 海である。太陽は容赦することなくその緩やかかつ激しい殺人光線を投げかけており、白い砂はそれを反射してさらに人体を蝕もうとする。
 砂浜に集う愚かな人々は気付かない。自分が緩やかに死に向かっているなどとは。
 だが、自分もまた同類であることを認めざるを得なかった。
 なぜならしかるべき装備を身につけず、愚民と同じく半裸で殺人光線を浴びているのだから。

「皮肉だ……」
「何がだよ」

 せわしなく周りを見回しながら友人が応じる。彼は一通り周りの人々、特に女性について観察を終えると、こちらに向き直った。

「健一、お前ここに来た理由を忘れているんじゃないだろうな?」

 俺は頷く。覚えている。

「お前に協力すれば新たな境地にたどり着ける、だったな?」
「黙ってればイケメンなのによ……」

 友人はため息をついて、こちらに手を振った。「とにかく行くぞ」だそうだ。
 彼の後について歩きだしながらここへ来た理由を思い出した。俺は自身を高めるためのメソッドとしてここにいる。
 友人曰く、男性の対極にいる女性という存在との積極的な関わりを持つことにより、自身の存在を昇華させるとのことだ。
 俗な言い方をすれば「ナンパ」と言うらしい。

「ほら、行け!」

 友人に押し出されて一人の少女の前につんのめった。実のところ気は進まなかったのだが、これも修練の一つだ。
 俺は口を開いた。

「君、俺と新たな次元に――」

 そこで息を詰まらせた。目の前の少女に見覚えがあったからだ。

「あ、けんちゃ――」
「初めましてマドモアゼル。あなたにお会いできて光栄です!」

 俺の名前を呼ぼうとした"俺の従妹"を、言葉で強引にやりこめる。
 驚いて目を瞬かせる彼女にさらに言葉を重ねた。

「ああ、あなたはなんて美しいんだ。ここから立ち去ってほしい程に!」
「う、美しい……? ……えへへ」

 はにかむ従妹と、背中に突き刺さる友人の訝しげな視線。曰く「お前キャラ変わってんぞ」
 だが、なりふり構ってはいられない。彼女は、超人を目指す俺の唯一の弱みだからだ。
 このまま力技で押し切る! そう決めたときだった。

「あやこー」

 従妹の後ろからもう一人、同じぐらいの年齢のポニーテール少女が姿を現した。

「あれ、健一さんじゃん。綾子の従兄兼彼氏の」

 彼女は屈託なく笑った。

「彼女に会いに海まで追いかけてきたんですか?」

 帰りの電車で友人はぶーたれた。曰く、「なんだよ彼女持ちかよ」
 一方俺は隣にひっつく従妹兼彼女に身体をかたくしていた。
 女性との交際など男の弱みでしかない。従妹に告白したのは一時の気の迷いだった。

「あはは、仲いいですねー」

 従妹の友人がからかってくる。この空気はどうにも居心地悪い。
 俺は最後の賭けに出た。

「あー……世はなべて事もなし、だな」
「何それ」

 俺の彼女がくすりと笑った。