450 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/08(火) 20:49:49.08s4+v7UlLo (2/6)

「……そう」

ふう、と息を吐いて天井を見上げる。照明が目に入り、思わずきゅっと目を閉じた。
モデルやっているだけあってかわいい顔しているのは認めざるをえないし、足だって長い。丸顔ではあるがそれが好きだって人もいるだろう。
それに下賤なことを言うようだけれど胸も私より大きいし……。
あの人も愚かな雄の例に漏れず大きい方が好みなのかしら。中には小さい方が好きという人もいるらしいけれど。
もしそうなら私にも勝ち目が出て来るのだろうか。
……なんてついつい莫迦な想像をしてしまう。それくらいにあの人のことが気になってしまっていた。
いつからかはわからない。特にきっかけがあったわけでもない。
でも、いつの間にかあの人は私の心に入り込んできた。そして今もその場に居座り続けている。

「いつから?」
「はあ? 何であんたにそこまで言わなくちゃならないわけ? あんたには関係なくない?」
「ふふ、いいじゃない。ここまで言ってしまったら後は一緒よ。それに関係なくはないもの」
「えっ?」

驚き、目を丸くする親友。

「ま、まさか……あんたも?」
「ええ、そのまさかよ」
「…………」

親友は言葉を失い、何も話せないでいる。
しばらくお互いに無言のままの時間が続く。そして、ようやく親友が口を開いた。

「そっか、あんたもか」
「……ええ」

私は力なく返事をすることしかできない。



451 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/08(火) 20:50:25.64s4+v7UlLo (3/6)

「だからあれ以降も兄さんって呼び続けてたんだ」

ん?

「でも、ま、あんたも物好きだよね。あんなののどこがよかったの? 人のこと言えないけどさ」
「どこって……そうね…………優しい……ところ?」

一瞬感じた違和感はとりあえず脇に置いて、質問に答える。
自分でもわからない。あんなののどこがよかったのか。顔は地味だし、重度のシスコンだし。
でもこうなってしまったものは仕方がない。もうどうにもできない。
私は自分の気持ちに嘘をつけるほど器用ではないのだから。

「だよね。…………沙織が本当に羨ましい」

んん?
口をとがらせ、しょぼんとうなだれる親友。
しかし、今、私の思考は別のことに囚われていた。
口に出すのも恐ろしい。これを口に出してしまうとこいつに弱みを握られることになってしまう。
だけど、それでも確認せずにはいられない。

「あ、あなた…………ひょっとして……男性としてではなく、兄として好きだと言いだすんじゃないでしょうね?」
「は? そうだけど? ……あんた何だと思ってたの?」

ふ、不覚。まさかこの私がこんな凡ミスを犯してしまうなんて。
しばらくきょとんとした顔を私を見ていた親友だったが、私が犯してしまったミスに気付いてしまったようで、ぐにゃあとその口を歪める。
にやにやと下卑た笑みを浮かべている。「さて、今からどう料理してやろうか」というような顔に見えた。
……こんなことなら、普段この子をからかう回数を減らしておけばよかったわ。

「なに? あんた、あいつのことが好きなの? ……男として」

ぷくく、声が漏れた。申し訳程度に口を抑えてはいるようだが、それでも笑いをこらえきれないようだ。

「くっ……」

今の私はもはやまな板の上の鯉。あとは捌かれるのを待つことしかできない。

「ふ~ん、そっかそっか。なるほどね」

腕を組み、顔を上下させてなにやら一人で納得している。
さて、ここからどんな風にいじられるのか……。あまり意味はないが気持ちの上だけでも身構えておく。
しかし、聞こえてきたのは意外な言葉だった。



452 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/08(火) 20:51:39.70s4+v7UlLo (4/6)

「ま、いいんじゃない?」
「え?」
「だって、あいつ顔は地味だけど優しいのは間違いないし? 多分今まで彼女なんてできたことないだろうし、いざ彼女できたら大切にしてくれそうじゃん。地味子という対抗馬が気になるけど」

この子のことを少し誤解していたのかもしれない。この子は本気の相手を小馬鹿にするような人間ではなかった。
この子という人間をまた少し理解できた気がする。

「いや……一番の対抗馬は沙織? あれ? でも沙織が対抗馬になるなら私だってなっちゃうのかな? 同じ妹属性だし。…………ん? あんた、何笑ってんの?」

言われて初めて自分が笑顔になっていたことを自覚する。

「なんでもないわ」
「ま、いいけど。でも……ぷぷっ。まさかあんたがね~。ちょー似合わないんですけどwww」

こ、このアマ……。どうやら前言撤回しなければいけないようね。
思わず頬が引きつってしまう。褒めた矢先にこれだもの。
でも本気で馬鹿にしているわけがない。だって、この子は私の親友だから。

「……あなたに言われたくはないわ」

だから私は、ふんと鼻をならし、ありふれた捨て台詞を吐くだけにとどめておいた。



第十三話(黒猫√)おわり



453 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/08(火) 20:53:39.66s4+v7UlLo (5/6)

今日はここまで。ネタに困ったので今回は黒猫視点にしてみました

黒猫マジ難産。誰かネタを下さい


454VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/08(火) 23:26:41.64cljwYQM4o (1/1)

乙!


455VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/08(火) 23:50:19.57L07/07vg0 (1/1)

乙!

黒猫ルートはまだ続くんだよね?


456 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/08(火) 23:57:04.68s4+v7UlLo (6/6)

>>455
まだ続くよ。頑張ってネタをひり出してるからしばらくお待ちください。


457VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 03:25:45.87eavO7cge0 (1/1)

受験生な黒猫と図書館で勉強会ってのはどうだろうか

そして偶然遭遇した地味子に黒猫が宣戦布告するってのも面白そうだ


458VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 07:00:47.15SwuzvebDO (1/1)

桐乃は身を引いたのか本当に兄として好きなだけなのか…
どっちだろうか…
前者なら諦め切れず爆発して黒猫と対峙とか面白いかな


459VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 20:11:34.21iIcSAdyZo (1/1)

黒猫を思って身を引いたはいいが、やっぱり我慢が出来なくなってくんかくんかし始める桐乃か


460VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/10(木) 18:51:51.51nCW5n+hA0 (1/1)

しえん


461 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/11(金) 01:04:55.17TnzDLdHjo (1/6)

第十四話(黒猫√)

「で、どうだったんだ沙織?」
『…………』

待てども待てども電話の向こうの沙織から返事はない。
ま、まさか……そんな、嘘だろ?

「さ、沙織! 気をしっかりもて! い、今からそっちに――」
『てへっ。当然、受かっていましたわ』
「……おい、こんな時にふざけないでくれよ」

既に靴はいちゃっただろうが!
だが、なにはともあれこれで俺の一つ目の心配事は無事解決だ。
今の会話の概要を説明すると、受験の合格発表を見に行った沙織が合否を知らせる連絡を入れてきたって場面だ。
最初家の電話にかけたら誰もでなかったらしい。親父は仕事。お袋は家にいたはずだが……便所でも行ってたのかな。
そんな俺は気を紛らわせるため自室でヘッドフォンで音楽聞いてたもんだから電話に全く気がつかなかった。
その後、沙織が俺の携帯に電話してきたところでようやく気付いてやれたんだ。
ちなみに俺の方はもう春休みに突入していて暇だったんだ。決して妹の受験結果が心配で学校休んだわけじゃないからな。

「よかったな。おめでとう」
『ありがとうございます。でも――』

でも? なんか不満でもあるのか?

『お兄様は心配しすぎです。ほぼエスカレーター式だから心配ないって何度も言ったではありませんか』
「ぐっ……そうは言うがな」

兄貴が妹の心配して何が悪い。いいや、悪くないね! そうさ、なんせ俺はシスコンなんだからな!

「おまえだって、俺の受験の時朝からおろおろしてたじゃねえか」
『うっ……そ、それは今関係ありません!』
「懐かしいなあ。お茶ぶちまけたり、目玉焼きにいきなりふりかけをかけはじめたり――」
『ひっ、人の話を聞いて下さい!』

そう。だから俺が朝から目玉焼きに七味ふりかけちまったのも仕方ないことなんだよ。
ちくしょう、なんであんなところに七味がおいてあるんだ。お袋もちゃんと整理しといてくれよ。

「今から帰ってくるのか?」
『いえ、少し友人たちと談笑してから帰りますわ』
「そっか、わかった。お袋にも電話しといてやれよな」

こういうのは沙織から直接報告したほうがいいだろうからな。

『ええ、わかりました』

俺の意図を理解したのか、沙織は素直な返事を返してくれた。
電話を切ってから椅子を回転させ再び机に向き直る。



462 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/11(金) 01:08:02.45TnzDLdHjo (2/6)

「やれやれだ」

さて、これで心配事が一つ片付いたわけだが、片付いたら片付いたで今度はもう一方の心配事の首尾が気にかかる。
あいつはあいつで結果がわかったら連絡くれるって言ってたんだけどな。



数日前。
俺たち4人が集まって遊んでいた時のことだ。

「そういえば、おまえも合格発表の日沙織と同じなんだよな」
「そういえば――ね。私はあくまで沙織のおまけというわけかしら」
「いやいや、そういうわけじゃねえよ。結果、わかったら教えてくれよな」

なんで会って早々いきなり不機嫌なんだろ? 俺なんかしたっけ?

「ああ、そういえばあんたも中三だっけ。あんたってちっこいからついつい年上だってこと忘れちゃうんだよね」
「……」

黒猫が何も言わないみたいなので、俺がかわりに突っ込んでやろう。おまえらがでかすぎるんだ。
黒猫だって160cmくらいあるんだぜ? 中三女子の平均身長がどのくらいかは知らないが、どう考えても小さいってことはありえない。
それに、学年が一年違うとはいえおまえも黒猫と大差ないじゃねえか。
しかし、黒猫は桐乃の言葉が相当ショックだったらしく、がっくりと下を向いてしまっている。
仕方ねえな。

「ちょっと言いすぎだ。黒猫、落ち込んじゃってるじゃねえか。そもそも黒猫って別に小さく――」
「誰も落ち込んでなどいないわ。勝手に話を進めないでちょうだい」
「ほらね。大丈夫なんだって……あっ、そうだ! 兄貴は小さい方が好きなの?」
「はあ? いきなりどうした?」
「いいから答えて」

どうしていきなりそんな話になる? ……関係ないけど、未だに兄貴って呼ばれるの慣れねえなあ。
桐乃に言われ、沙織、黒猫、桐乃を順に見回す。
でかい。小さい。中くらい。いや、黒猫が特別小さいってわけでなくて、あくまでこの中でってことね。

「そうだな……俺は特に気にしないけどなあ」
「はあ? 何その腑抜けた回答。そんなんで許すと思ってんの?」
「……そうね。ここまできたからにははっきりさせておくのもいいかも知れないわね」

じりじりと、にじりよってくる桐乃と黒猫。

「な、なんだおまえら。お、落ち着け! 俺をどうする気だ!?」

なんとかしてくれ沙織ぃ! という意味を込めて沙織に視線をやる。
が、先ほどまでいた場所に沙織の姿はなく――

「はっはー、捕まえましたぞお兄様!」

後ろからいきなりがっしと羽交い絞めにされた。



463 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/11(金) 01:10:41.66TnzDLdHjo (3/6)

「沙織! てめえ裏切ったな!」
「すみませんお兄様。でも拙者も気になりますので、お兄様のこ・の・み」

その手を今すぐ離すんだ沙織! さもないと大変なことに――
くっそおおおお! やわらけえなあ、ちくしょう!! 妹なのに妹なのに!!

「さあ、兄さん」
「さっさと白状しなって」
「お兄様、心を解き放って?」

あーあー、何も考えられない。おっぱいおっぱい。

「お、俺はっ!」

こうなりゃもうやけくそだ。もうどうにでもなーれー。

「大きい方が好みだああああああ!!」

ぴたり。
はかったように同時に動きを止める桐乃と黒猫。
た、助かったのか?
そう思ったのもつかの間、黒猫は2,3歩よろけるようにして後ずさる。

「そうね。わかってはいたわ。でも夢は見ていたかった。ただあなたも所詮、数多いる雄の一人だったというだけ」
「く、黒猫?」

黒猫は両手をだらんとたれ下げて腰からがっくりと項垂れ、なにやら言葉を紡ぎ始めた。

「この半年いろいろと頑張ってみたけれどまるで駄目。いくら食べても大きくならないんですもの。しょうがないじゃない」
「な、なにを……言っているんだ?」

黒猫の雰囲気に飲まれ、沙織も桐乃も言葉を発せないでいる。
自分の、ごくりと唾を飲む音が聞こえるほど辺りは静まりかえっていた。
こ、こいつそんなに身長のこと気にしてたのか?

「そりゃあ、あなたたちはいいわ。でかいんですもの。でも、大きくなりたくても大きくなれないものはどうしたらいいの? あはははは! いっそ哀れだと笑うがいい!」
「お、落ち着いてくだされ黒猫氏!」
「ちょ、ちょっとなにとち狂っちゃってんの!? あんたのせいだかんね! なんとかしなさいって!」
「俺のせいなの!?」

話がさっぱり見えねえ! けど、黒猫が異常事態ってことは言われなくてもわかる。
こりゃあ、友達としてなんとかしないとな。そして、この状況が俺のせいだと言うならば、原因はあれで間違いないだろう。

「お、落ち着け黒猫! でかい方が好みと言ったが小さい方も嫌いじゃないぞ?」

ぴたり。
黒猫は高笑をやめ、こちらへゆっくりと視線を向ける。

「……ほんとうに?」
「ああ、本当だ」



464 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/11(金) 01:12:18.52TnzDLdHjo (4/6)

そこには、いつもの大人びた黒猫ではなく、年相応のあどけない少女の顔があった。

「小さいには小さいなりのかわいさがあるって。思わずなでなでしたくなっちゃうくらいだぞ?」

その瞬間、右サイドから耳を引っ張られ、左サイドからは脇腹に拳がめりこんだ。

「お、おまえら……なにしやがる……」
「うっさい、変態! なでなでとか頭おかしいんじゃないの!? セクハラじゃん!!」
「お兄様がそんなセクハラ発言をするなんて……信じていましたのに」

セクハラ!? 俺がいつセクハラしたって言うんだ!?
ぎゃあぎゃあとまくしたてる二人をよそに、(こいつらに言わせると)セクハラをされたはずの黒猫はひとりまんざらでもないように笑っていた。
……苦笑いかもしれないけど。



「じゃあ、またね」
「また来るわ」

いつかと同じ台詞を残し、二人は帰って行った。
今は沙織と二人きりだ。

「それにしてもお兄様につるぺた属性があったとは驚きでござる」
「沙織さん? いったい誰がそんなことを言ってたのかな?」

ぐるぐる眼鏡をかけたままなので、ござる口調が抜けない沙織。
いや、ぐるぐる眼鏡をかけたままでもお嬢様口調になるときもあるから一概に眼鏡がスイッチとは言えないけどさ。

「はて? お兄様自身が仰ったのではありませんか。『小さいには小さいなりのかわいさがあるって。思わずなでなでしたくなっちゃうくらいだぞ?』と」
「はあ? どういうことだ? あれって身長の話だろ?」
「…………お兄様の鈍さを考慮し忘れた我々も悪いのかもしれません。そして運よく、いやこの場合運悪くですか――身長的に大中小が揃ってしまったのも悪かった」

なにがいいたいんだ? 他に大小の好みを比べるものなんてあるか?
と、考えている最中に沙織の“大きい”胸に目が行った。別に普段から常習的に見る癖がついてたわけじゃないからな。たまたまだぞ。
あれ? まさか……大きい小さいってそういう意味だったの?

「小さいなりのかわいさがあるはいいにしても、なでなではちょっと……我が兄ながら――ドン引きです」

なんてこった……これじゃあ俺、完全に変態じゃねえか。
なんだよ、なでなでしたいって。
うおあああああああ! 今すぐあの発言を取り消したい!



465 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/11(金) 01:14:09.52TnzDLdHjo (5/6)

「まあ、黒猫氏も今度きちんと謝れば許してくださると思います。ところでお兄様、正座は30分ほどでよろしいですかな?」
「……はい」



こんなことがあったせいで、ここ最近黒猫に連絡しづらくなっていたのだ。
もちろん、すぐさま謝罪はした。したのだが、「はいはい、わかったわ」とあっさり流されてしまったのだ。
怒ってるはずの相手に謝罪をして、あっさり流されるってのはなかなかにおっかないぜ?
いっそ、怒ってくれた方がすっきりする。

「あいつ、連絡くれっかな?」

そんなことを考えながら、椅子に座ったまま床を蹴り、子供みたいに椅子と自身を一緒にくるくると回転させる。
ひとしきり回転した後、千鳥足になりながらも自分のベッドへとダイブする。

「好みねえ……」

考えたこともなかったな。大きい小さいの話じゃないぞ。女性像の話だ。
今までは、沙織がいて、麻奈実がいて、桐乃や黒猫と馬鹿やって、あやせとも知り合って――そんな中でも特別誰かを好きになるとかってのはついぞなかったしなあ。
そりゃあ、まわりは美少女ばっかりで、確かにかわいいとは思うんだけども、好きとは違う気がする。
ほら、よくあるだろ? 好きとまではいかないまでも、ちょっといいなと思うあの感じ。俺の気持ちはあれに近い。
俺の好みってどんなだっけ?
むくりと起き上がり、ごそごそとベッドの下の段ボールを漁る。
そして、そこに収められている我がお宝を見つめ、

「これは好みじゃなくてフェチだからなあ……あてにならん」

再び封をして奥へと押しやった。
自らの好みを聞かれてはっきりと答えられないことが、今までいかに流されて生きてきたかを物語っているかのようで、少し悲しく思えた。

「こればっかりは相談もできないしな」

ちょっぴりブルーな気分にひたっていると、机上の携帯が鳴った。
携帯のフリップを開く。その画面には“黒猫”と表示されていたのだった。



第十四話(黒猫√)おわり



466VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 01:16:55.84KTZeZNnVo (1/1)




467 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/11(金) 01:17:05.15TnzDLdHjo (6/6)

今日はここまで。ちょっと駆け足進行っぽいのは許してくれ

>>458-459
そのネタもらった!改変して使わせてもらうかも


468VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 02:30:49.64gqgzr36M0 (1/1)

京介が身長と勘違いしたことがわかって「大きいほうが好き=自分が好き?」とか考えて悶々してる沙織まで創造した


469VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 02:52:36.277WSkUHnwo (1/1)

おつおつ

黒猫って160もあんの!?
俺よりでかいんだけど…orz


470VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 07:55:01.89oJiqA30DO (1/1)

黒にゃん可愛いにゃん


471VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 10:48:25.57ZnEt9B0DO (1/2)

<<469
黒猫「小さいには小さいなりの可愛さがあるわ(笑)」


472VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 10:51:52.48ZnEt9B0DO (2/2)

orz

×<<469

○>>469


473VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 12:53:40.689yXO3l1IO (1/1)

大きい子ってかわいいよな


474VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 14:02:38.12CK11WNYIO (1/1)

みんなかわいい


475VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/11(金) 18:35:10.777qHIdeNDO (1/1)

俺妹のキャラの中では背が低めなせいか黒猫はちびに見られがちなのかなぁ。160といえば麻奈実と同じなのに
沙織の隣に並ぶから低く見えるのか地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/


476VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/12(土) 01:45:41.503gyub3SHo (1/2)

作者が地震でどうこうなってなきゃいいが…地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/


477 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/12(土) 10:18:01.87ebqtahCto (1/1)

とりあえず生存報告。地震の被害が大変なことになってる……
ちなみに自分が住んでいるところはまったく揺れなかったので大丈夫でした
引き続きちまちまと書き溜めていきます。みなさん余震には気を付けて


478VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/12(土) 13:37:29.58Z1k2t/oDO (1/1)

黒猫かわいい

盛岡の妹生きてた


479VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/12(土) 21:15:27.983gyub3SHo (2/2)

生存報告乙、これで俺の知り合いの範囲では全員無事が確認された


>>478
お前の妹のほうが可愛い…かもしれない


480VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/15(火) 02:16:55.115TBXlVIbo (1/1)

続きwwktk


481 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/15(火) 17:16:22.81Lj3urlD7o (1/7)

第十五話(黒猫√)

「皆の物、グラスは持ちましたかな? それでは――かんぱーい!」
「「かんぱーい」」

各々がそれぞれの飲み物を口に運ぶ。使うのはグラスではなくて紙コップだけどな。
ここは秋葉原のレンタルルーム。無事受験を終え、高校に合格した沙織と黒猫のために簡単なお祝いパーティーを開いたというわけだ。
会の進行を務め、乾杯の音頭をとるのは案の定沙織。この4人で集まる時は、もはやそれが習慣となってしまっていた。
こんなときくらい俺が音頭とるべきだったかな。机を挟んで向かい側で黒猫と受験の苦労話を交わす沙織を見つめ、今さらではあるがそんなことを思う。

「ま、ここから頑張ればいいか」

頑張る、といっても何か考えがあるわけじゃない。俺が考えついたのは、このパーティーを開くことと、お祝いの品を渡すというごくありふれたものものだけだったからな。
更に言うなら、プレゼントに関しては俺だけの発案ではない。
実は、今日このパーティーを開くにあたって事前に桐乃と相談したところ、お互いに何かプレゼントをもちよって祝ってやろうということになったんだ。

「ねえねえ」

声をかけられると同時に服の裾をひっぱられ、そちらに向き直る。
声の主は桐乃だった。

「プレゼントいつ渡すの?」

沙織たちに聞こえないようにするためか、小さな声で耳打ちをしてくる。

「そうだな……べたに最後でいいだろ。別に急ぐ必要もないし」
「そっか、そうだよね」
「おふたりとも、いかがなされました?」

ひそひそ話をする俺たちを訝しんだのか、沙織が声をかけてきた。

「な、なんでもないぞ!」
「そ、そうだって! なんも企んでないってば!」

大慌てで返事する俺と桐乃。桐乃なんかは両手をぶんぶん振って否定しているくせに、その口はもはや半分げろってしまっている。
……サプライズがこんなにも難しいものとは思わなかったぜ。俺と桐乃に詐欺師の才能はねえな。

「ふふっ、左様でござるか」

沙織は口をωこんなふうにしてにやにやとこちらを見つめている。その目は例のぐるぐる眼鏡で見えないが、沙織が何を考えているかはわかる。
そう、あいつは全てわかった上で俺たちを泳がせているんだ。
ともあれ、今の所沙織と黒猫の反応は悪くない。素直にこのパーティーを楽しんでくれているようだ。



482 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/15(火) 17:20:40.08Lj3urlD7o (2/7)

それから、俺たちはシスカリで対戦をしてみたり、黒猫が「コスプレの心得」と称して即席コスプレ講座を開いてみたり、みんなして沙織のガンプラ講座に聞き入ってみたり――要はいつも通りにすごした。
うーん、我ながらあんまりお祝いって感じじゃねーな。
もうちょっと真面目に企画立案すべきだったか? 真面目に考えたからと言って名案が出るとは限らないけどさ。

「このように、プラ板工作において重要なのは切り出したパーツの精度を確保することです。特に同じパーツを複数製作する場合においては、少しのずれが命取りになる場合が少なくないでござる。もっとも、切り出した直後ならやすりで簡単に調整可能ですからそこまで神経質になる必要はござらん。続いて、筋彫りについて説明させて頂きます。筋彫りとは、デザインナイフ、Pカッター、目立てヤスリ、ガイドテープ等の道具を用いて、プラモにモールドを彫る作業のことでござる。これもデカール同様、情報量を増すことでプラモをよりリアルに見せる手法となります。ちなみに、ディテールダウンしたい、情報量を少なくしたい、なんていう時には逆にパテ等でモールドを埋めてしまったりもします。モールドを彫る場所や形と筋彫りには意外とセンスが要求されるので注意されたい。ネットで同じキットを製作した人の筋彫りを参考にするのもいいでしょう。さて、筋彫りにを行うにあたって是非知っておいてもらいたい注意事項ですが、筋彫りはなにも無暗やたらと彫ればいいわけではありません。適当に彫っても確かに情報量は増えますが、それだけではいけません。何より愛がない。もし、この機体が実在したならば、ここの装甲の分割はこうなってるんじゃないか。逆にこの部分の装甲は一枚で生成されているべきではないかなど想像力を働かせることが重要となります。まあ、これは何も筋彫りに限ったことではありませんが――」

……な、長い。今日はいつにも増して長い。もはや通訳を用意したとしてもその全容を把握することは難しいだろう。
いつもの口頭での説明と違って今日はホワイトボードを使えるもんだから、沙織の方も熱が入ってやがる。
俺は普段から沙織のガンプラ講座を聞いているから、おぼろげながらではあるが沙織の言いたいことはわかる。
だが、桐乃や黒猫は完全に置いてきぼりだ。そろって目をしぱたかせ、口をこんなふう◇にして、頭の上に?マークを浮かべている。
プラモ初心者にいきなりそんな内容の話をするやつがあるか。まずは基本的な作り方から説明しようぜ。

「さ、沙織? もうちょっとわかりやすい話題の方がいいんじゃないか? 桐乃と黒猫が完全に置いてきぼりくらってるぞ?」

沙織の会話が途切れた瞬間を狙い、なんとか言葉を挟む。
はっと何かに気付いたようなリアクションをとる沙織。

「あ……も、申し訳ありませぬ。拙者、少しばかり浮かれすぎていたみたいでござる」

片手で頭を掻き、申し訳なさそうな表情を浮かべる。

「いいっていいって、なんか楽しそうなのは伝わってきたし。それに今日はお祝いなんだし? 好きなだけ喋ってよね」
「そうね。新たなコスプレグッズ製作のヒントになるかもしれないし、私は構わないわ」

よくできた友達である。沙織の兄としてこいつらには頭が上がらねえよ。

「ありがとうございます。でも、きりもいいですし拙者の話はこれまでといたしましょう」

長かった沙織のガンプラ講座が終わり、沙織は文字がびっしり書き込まれたホワイトボードを綺麗にしていく。
壁に掛けられた時計を見て現在の時刻を確認すると、時計の針は15時30分を示していた。
この部屋のレンタル終了時刻が16時なので、プレゼントを渡すならちょうどいいタイミングだろう。

「沙織、黒猫。実は――いや、ばれてるかもしれねえけどおまえらにプレゼントがあるんだ」
「な、なんですと~」

俺の言葉に、沙織はわざとらしく驚いて見せる。口が依然としてこんなωだったから、わざとなのは間違いないだろう。
目は口ほどに物を言うと言うが、コイツの場合文字通り口が全てを語ってくれる。
特に、バジーナ状態の時はそれが顕著だ。
一方、黒猫はというと無言でこちらを見つめていた。
そして、

「……あなたにプレゼントを貰ういわれが見当たらないのだけれど」
「いわれなんて『俺がそうしたかったから』で十分だ。それに、今日はおまえらの高校合格を祝うためのパーティーなんだぜ?」

プレゼントの一つや二つあったっておかしくないだろ?
そして、おまえらをお祝いしたいと思っているのは俺だけじゃない。さっきからエロティックにけつを突き出し、なにやらごそごそと自分の鞄を漁っている桐乃もその一人だった。



483 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/15(火) 17:21:46.53Lj3urlD7o (3/7)

「ふぃ~、よかった。入ってた」

どうやらプレゼントを探していたらしい。
俺も桐乃に習い、自分の鞄からプレゼントを取り出す。沙織へのプレゼントは少々かさばるので取り出すのも一苦労だ。そのため、今日俺はやたらでかい鞄を用意する羽目になってしまった。
これじゃあ、何か企んでますよ、と自白しているようなものだ。
自宅ならどこかに隠しておいて――ってのもできたんだろうが、今日はこの後に秋葉めぐりも一緒に行う予定だからな。自宅で集まるのは少々都合が悪い。
沙織のプレゼントに関しては、あげたあとも家に帰るまでは俺が持つつもりでいたし、多少かさばっても許してくれるだろう。

「はいこれ。受験合格おめでとう!」

桐乃が一足先に沙織にプレゼントを渡す。
「ここで開けても?」と沙織が一言断りを入れる。そして、桐乃が頷くと嬉しそうに開封し始めた。

「ほう! HG1/144デスティニーガンダムに……これはクレオスのメッキシルバーではないですか!」

沙織が驚くのも無理はない。このクレオスという会社のメッキシルバーというマーカーペン。
優れた発色と定着性を有しながら原材料の関係ですでに生産中止されており入手が困難となっているのだ。
ただ、これは後で知った話なのだが、近々同じクレオスという会社からメッキシルバーⅡなるものが発売される予定らしい。ただ、その性能がこのメッキシルバーと同等のものかどうかはわからないとのことなので、このプレゼントは無駄にはならないだろう。
桐乃がどうやってこのレアもののプレゼントを手に入れたかは後々説明しよう。

「じゃあ、次は俺な。合格おめでとう。それから、いつもありがとな」

そう言って、沙織にプレゼントを渡してやる。
子供みたいか顔をしてそれを受け取り、開封していく。

「こっ、これは!」

その先は言葉がでないようだった。
俺が選んだプレゼントは、SDガンダム0074黄金神スペリオルカイザー。
こちらも再生産がおこなわれていない所謂レアものだ。ガンプラファンにはたまらないものらしい。
ちなみに、桐乃とプレゼントの方向性が被ってしまったのは偶然ではない。実は、先日桐乃と一緒にプラモ屋巡りをしていたのだ。
こういう珍しいプラモやアイテムを手に入れる手段は、おおまかにわけて三つある。ネットオークションで落とすか、古い模型屋に残っていることを祈ってプラモ屋巡りをするか、またはそういう珍しい玩具を専門に扱う店を訪ねるかだ。
一つ目と三つ目に方法に関してはとにかく金がかかる。特に、俺が選んだ方のプレゼントは、組み立てた後のものですら定価の倍はくだらないという超レアものだ。
読モやってる桐乃はまだしも、一介の高校生である俺には二つ目の選択肢しかなかった。
今にも潰れてしまいそうな模型屋の奥にひっそりと(しかも定価で)置かれているのを見つけたときは、俺ですら小躍りしちまったくらいだ。
事前にレアプラモの知識を詰め込んでいかなかったら、俺も気づかなかっただろう。

「こ、これが夢にまで見た……ごくり」

プレゼントを受け取った沙織はハアハアと息を荒げ、まじまじと箱を見つめている。珍しいな、沙織がこんな状態になるなんて。
そこまで喜んでくれると俺も苦労した甲斐があったというものだ。あの日は、桐乃ともども足が棒のようだったからな。



484 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/15(火) 17:25:24.97Lj3urlD7o (4/7)

「次はあんたね。はいこれ」

一人完全に自分の世界に入ってしまっている沙織を尻目にプレゼントの贈呈は進む。

「……開けてもいいのかしら?」
「当然でしょ。ふふーん、実はこのプレゼント、ちょー自信あるんだよね」

言葉の通り、いかにも自信あり気に胸を張る桐乃。
黒猫はがさがさと袋を開け、中身を取り出す。そこから現れたのは真っ白のワンピースだった。

「…………」
「どうどう? ちょーかわいくない? これ、絶対あんたに似合うと思ったんだよね」

普段の黒猫のイメージとは対極にあるような真っ白のワンピース。
それを着ている黒猫を脳内でイメージする。

「ほう……これは…………なかなかに」

悪くない気がする。いや、悪くない所かかなりかわいんじゃないだろうか。
これに麦わら帽子でもあれば完璧だ。……今度、こっそりプレゼントしようかな。

「さ、次は俺だな」

妄想もそこそこに、用意した黒猫へのプレゼントを手に取る。
沙織に関しては渡して喜んでくれそうなものが簡単に想像できたんだが、正直黒猫に関しては何をあげたらいいのかさっぱりだった。
初めは桐乃と相談しようと思ったんだが、「あんたが自分で考えろ。じゃないと意味ないから」と言われ突っぱねられてしまった。
それから昨日までの三日三晩うんうんと悩み続け、ようやく出た結論がこれだ。

「これは……」

俺が黒猫に渡したプレゼント。
それは、

「ネックレス……?」
「それを見た瞬間ビビッと来たんだよ」

このデザイン、黒猫が好きそうだな。これなら喜んでくれそうだって。
黒猫が金属アレルギーでないことは事前に桐乃を通して調べておいてもらったからその点に関しては問題ないはずだ。
ま、プレゼントとしては月並みだけどな。

「……ありがとう」
「おう」

黒猫はネックレスをまじまじと見つめ、掌の上で転がしている。
特別口には出さないが、喜んでくれているのはどうやら間違いないようだ。
口元が今にも緩みそうになっていてプルプルしている。こいつのことだから素直に喜ぶのが悔しいんだろうな。



485 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/15(火) 17:28:55.15Lj3urlD7o (5/7)

「む? いつのまにやらプレゼント贈呈が終わっている様子」

先ほどまで夢中で箱の横にある商品写真を眺めたり、説明書を読みふけっていた沙織がようやく現実世界に戻ってきた。

「それでは今度はこちらのターンでござるな」
「は?」

なにそれ? 俺、何も聞いてないよ?
戸惑う俺をよそに、沙織と黒猫そしてなんと桐乃までもが俺と向かい合うようにして集合する。
そして、黒猫が一歩前へと踏み出した。

「……」
「ほら、さっさと言っちゃいなってば」
「拙者は――拙者はお兄様が幸せならそれで構わんでござる。ずばっとやってくだされ!」

黒猫に何かを促す二人。
どうやらこの二人はこれから起こることを知っているようだ。

「……私はこの春から高校生になるわ」
「あ、ああ。そうだな」

絞り出すようにして話し始める黒猫。

「あなたと同じ高校に進学するの」
「えっ? そうなの? なんだよ、それならそうともっと早くいってくれればよかったのに」
「なんでわざわざあなたに知らせなければならないのよ」
「なんでって……そりゃあ、やっぱり嬉しいじゃんか。そもそも、今自分から知らせたばかりのくせに何言ってんだ」

むぐ、と口をつむぐ黒猫。そして、眉間に皺を寄せ再度言葉を紡ぐ。

「だから、その…………」

言いにくそうに視線を彷徨わせてから、

「よろしくね、先輩」

黒猫はそう言った。

「おう!」
「私の話は以上よ」

一時は何事かと思ったが――いや、十分驚くことだったのは間違いないけどさ、沙織が「こちらのターン」とか言うからてっきりもっと大事かと思ったぜ。
だが、これで納得がいかない奴らがいた。

「ちょ、ちょっと! それで終わりって、なにへたれてんの!?」
「そうでござるぞ黒猫氏! 拙者だって断腸の思いで今日を迎えたというのに!」

いきなり黒猫に対して猛抗議を始める沙織と桐乃。

「お、おいおまえら落ち着け。なにキレてんだよ」
「お兄様は静かにしていてください!」

ひい! 沙織がおっかない! なんで俺が怒られてるの!?
しかし、当の黒猫は落ち着きはらった様子でこう答えた。



486 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/15(火) 17:33:34.41Lj3urlD7o (6/7)

「今は――これでいいのよ。この鈍感は今言ったところでろくに返事もできそうにないから。……もっと時間をかけることにしたの」

なんだろう。黒猫の言っていることの意味はよくわからないが、なんとなく小馬鹿にされてる気がするぞ?

「ちっ。…………でも、それも一理あるかも。仕方ないか。あ、言い忘れてたけど、もしあんたらがうまくいっても兄貴のシャツくんかくんかくらいは許しなさいよね」
「…………あなた、自分が何を言っているかわかっているの?」
「はあ? あんたこそ何言ってんの? これくらい兄妹の間では常識じゃん」
「それはエロゲの世界での常識でしょう!」
「そんなことないって、ねえ沙織」
「そうですぞ黒猫氏。現に拙者だってたまにしておりますし」
「なん……ですって……」

俺を無視して会話を進める女性陣。
くんかくんかって何ですか? それを沙織もしているってどういうことかな?
どうやら、この記憶は抹消したほうがいいみたいだ。
目を閉じ、鼻頭を揉み今聞いた言葉が夢幻であることを願う。
すると、直後に「きゃっ」という悲鳴が聞こえ、一体何事かと、すぐさま目を見開く。
開かれた視界には黒猫の姿が映っていた。

「黒猫!」

前につんのめるようにして、俺の方によろけてくる黒猫をしっかりと抱きとめる。

「大丈夫か?」
「え、ええ」

沙織と桐乃が向こうでにやにやしているのが見える。
さてはおまえらの仕業か。ちょっと一言言ってやらなきゃ駄目だな。友達に何するんだ、とな。
そう思って、口を開こうとした瞬間。
俺の腕の中の黒猫がぴくりと反応した。そして、なんと俺の胸元に顔を近づけすんすんと匂いをかぎ始めた。

「……いい匂い。あなたの匂いがする。……私、あなたの匂い好きよ。落ち着くもの」

そう言って黒猫は妖艶な笑みを浮かべる。
直後、自分が何を口にしてしまったのかを自覚したのか途端に顔が真っ赤になった。
それにつられて俺も一緒に顔を赤くする。

「い、いつまでそうしているの、この変態!」

慌てて俺から離れると同時に罵倒を始める黒猫。
俺は何もしてないはずなのに、何で罵倒されなきゃならんのだ。
やれやれ、こいつの相手も楽じゃないな。
春からはこいつが俺の後輩になるわけか。こりゃあ、俺の高校生活も一層楽しくなりそうだ。



こいつが俺と同じ高校に入学してから少し経ったころ。
俺と黒猫に腐女子の友達ができたり、俺が厨二病を患った女の子に告白されたりするわけだがそれはまた別のお話。



俺の妹が身長180cmなわけがない黒猫√
おわり



487 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/15(火) 17:34:51.29Lj3urlD7o (7/7)

黒猫編おわた。なんか当初の予定以上に駆け足だった
黒猫高校生編は原作とほぼ変わらない気がして断念
桐乃編に比べて踏み込んだ終わり方じゃないけど許して。そもそも原作が今現在黒猫√だもんで……

さて、次はみなさんお待ちかねの沙織√です
沙織√は近親√に持って行っていくかどうかが最大の焦点になるのかな
ネタに困ったら助けを求めるので、その際はどうかよろしくお願いします



488VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/15(火) 20:36:02.58tnTkPfBCo (1/1)

乙!
桐乃は実の兄妹でなくなった分、ブラコンの進行具合がヤバイなwwwwww
黒猫EDだと基本は原作通りに続いていくのかね?

そしてスペリオルカイザー懐かしいwwwwww
当時はあのデザインは衝撃だったわ
SDなのにリアル頭身だし、なのに頭だけSD仕様でバランスがちょっとおかしかったんだよな
大鋼とか超起動大将軍みたいに頭もリアルよりのデザインにすればよかったのに
そもそも黄金神話はスペリオルドラゴンが死ぬのがまずショックだった
しかも化身が暴竜として敵で出てきくるし、スペリオルドラゴンはもういないんだと落ち込んだもんだ
逆に歴代の主人公達が守護者として再登場したのは燃えたね
キングⅡ世まで機兵に乗って出てきたのは驚いたけど、1人だけ乗ってないのもおかしいもんな
カードダスに妖精ジムスナイパーカスタムのカードもあるうんだけど、その文に懐かしい気配を感じるって見た時はグッと来たね
力がはじけた時、何十年経っていても騎士ガンダムのことを感じてくれたんだと
そういえばスペリオルカイザーのカードは後ろを剥がすとFinって書いてある最後のカードが出てくるんだよね

そんなことは置いといて
メインに行く前に>>412の麻奈実√も読みたいです


489VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/15(火) 20:36:31.69voWsihRo0 (1/1)

乙っした!
凄く後味の良い終わり方だった


沙織ルートは思うまま好きにやってくれ
期待してるゞ


490VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/03/16(水) 00:30:58.54uHnWk/lho (1/1)

輝羅鋼シリーズほとんど持ってたけど数年前に全部捨てちゃった…
まさかロストテクノロジーになっていたとは
何事も生産中止になると途端に価値が上がるよな


491VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/16(水) 08:29:41.02ejZR4ZHDO (1/1)

かわいい乙


492VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/03/17(木) 00:28:41.16LRAV7I2Po (1/1)

これプラモネタ分かる人は俺より数段楽しんでるんだろうな~

乙乙


493 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/17(木) 13:53:11.851PHjPp0ko (1/2)

>>353からの分岐になります
第十二話(麻奈実√)

2月が過ぎようとしていて、日ごとに暖かくなっていくのを実感する。
来年の今頃は俺も受験で忙しくなっていることだろう。俺としても、残り少ない高校生活ってやつをを有意義に過ごしたい。
沙織たちと一緒にわいわい騒ぐのも決して嫌いじゃないし、むしろ楽しいのだが、やっぱりたまにはのんびり過ごす時間が欲しい。
そんなわけで、俺は休日の朝から幼馴染の家で日向ぼっこと洒落込んでした。
空には雲ひとつなく、気温はほんの少し肌寒いくらい。日向ぼっこには最適だ。
暖かい春の日差しの中の日向ぼっこも悪くないが、こんな季節の日向ぼっこの方が太陽の暖かさを感じることができて俺は好きだ。

「きょうちゃん」

縁側に座り、足を投げ出すような恰好で仰向けに寝転んでいた俺に、幼馴染が声をかけてきた。
ゆるい喋り方が特徴のこいつは田村麻奈実。俺の幼馴染にして、和菓子屋・田村屋の娘である。

「お茶入ったよ」
「さんきゅー。ちょうど喉が渇いてたんだよ」

急須と二つの湯呑が乗ったお盆を持ってきた麻奈実が俺の隣に腰を下ろす。そして、こぽこぽと湯呑にお茶を注いでくれた。
こいつが淹れてくれるお茶って妙に美味いんだよなあ。こいつの腕がいいのか、田村家のお茶葉が良質なのかは知らないけどさ。
身体を起こし、麻奈実から湯呑を受け取り、ずず……と音を立てて茶を飲む。

「……ふう」

本当に落ち着く。こんな時間がいつまでも続けばいいのにと思ってしまう。
と、俺はにこにこと笑う麻奈実に気が付いた。いや、こいつがにこにこしているのはいつものことなんだけど、ただのにやけ面とは違ったんだ。
多分、この違いがわかるのは世界で俺一人だろう。

「どうした?」
「んふふ~。きょうちゃん、おじいちゃんみたいだなあって」
「……悪かったな、爺臭くて」

そういうお前は婆さんみたいなくせに。俺もおまえにだけは言われたくないよ。
今まで何度繰り返したかもわからないやりとり。だけど、だからこそ俺の最も落ち着く場所はここだと断言できる。
湯呑を一旦お盆に戻し、再び仰向けに寝転がる。
今日は昼まで日向ぼっこして、昼からは気温も上がるだろうし公園にでも散歩に出掛けて……
脳内で今日一日のんびり過ごすための予定を立てる。こんな平穏な休日は久しぶりだ。

『SECRET×2 OF MY HEART I SHOW YOU IT なう。 だ・か・ら 人生相談っ!ちゃんと 責任持って聞いてよね~♪』

唐突に俺の携帯の着信メロディが流れる。
黒猫風に言うならばそれは、俺を平穏な休日から引きはがす悪魔の呼び声だった。



が、俺はそれを無視。そして、慌てず、静かに携帯の電源を切る。

「よかったの、きょうちゃん?」
「いいんだ。今日はゆっくりしたい気分だったからな」

あいつらとわいわい騒ぐのは嫌いじゃないが、俺にはやはりこんな風にほのぼの過ごすのが性に合っている。
ビバ凡庸、ビバ平穏な日常だ。
そして、隣にこいつがいてくれればもう何も言うことはない。

「?」

幼馴染は、俺の視線の意味を理解できず頭上に?マークを浮かべている。

「ふあぁ……ねみい」
「じゃあ、お昼寝しよっか」

そう言うと麻奈実はてきぱきとお茶を片付け、座敷から座布団を取り出し即席の枕を作る。
そのまま二人して横になり、会話もせず、ただひたすらにぼーっとする。
こいつといる限りずっとこんな日々が続くのだろう。それこそ一生な。

「それも、悪くないな」

暖かな日差しの下、俺はそんなことを考えながらそのまま眠りに落ちて行った。


俺の妹が身長180cmなわけがない麻奈実√
おわり



494 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/17(木) 14:00:46.931PHjPp0ko (2/2)

今日はここまで
麻奈実√はあくまでおまけなのですごい短いけど許してね

>>488
まさか語れる人がいるとは
先日、某スレのコンペ用に押し入れ漁ってたらスペリオルカイザー出てきてわろた

>>489,491
ありがとう。沙織√は構成0からだから少し時間かかるかも知れないけど気長に待っててくれると嬉しい

>>490
俺も大半もってたはずなのに今は一つしか残ってないよ。後悔先に立たず

>>492
プラモネタわからない人から見て今の頻度ってどうなんだろ?くどくないだろうか?
もう少し減らして別の話題で盛り上げた方がいいのかな?


495VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/17(木) 18:35:09.92YJL/u6sa0 (1/1)

おつ
ってことはおまけのあやせ√も……?


496VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県)2011/03/18(金) 13:13:45.99pGUM9Rpt0 (1/1)


麻奈実ルートが予想以上に短かったけど、何もないからこそだからな
よかったわ

プラモの部分はあくまでネタだし、このくらいでいいと思うよ


497 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/18(金) 23:57:18.85SuOMxSvNo (1/1)

沙織回のネタが思いつかない。誰か助けて
あやせ√は申し訳ないけど無理っぽいなあ……そのうち総合スレにあやせ√投下するからそれで許してくれ

関係ないけど、明日は大学の卒業式。ぼっちの俺は胃が痛いです


498VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/19(土) 02:10:11.98DlZas/gU0 (1/1)

沙織ルートに関しては思うまま好きにやってほしいな
個人的にはハッピーエンドにさえなってくれれば何でもイケるb


ぼっちを卒業するんだと割りきれっwwwwwwwwwwwwwwww


499VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/19(土) 11:09:57.87OKTbsi3Lo (1/1)

誕生日にゴニョゴニョ…とか?


500VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/19(土) 14:55:14.39IS4FDEuDO (1/1)

あやせSSあるのか
超期待
沙織は正直思い付かんww


501VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/03/19(土) 17:47:52.00ruIbPRG2o (1/2)

あやせ√ならネタは思いつくのだけど、沙織√はさっぱりだ


502 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/19(土) 17:57:47.62BTEDHaXWo (1/8)

>>356から
第十二話分岐

「じゃあ、沙織と組むわ」


見方を変えれば、これはある種のチャンスと言えるのではないだろうか。
これを機に、桐乃と黒猫がもっと仲良く――いや、既に仲良しなのはわかっちゃいるが、更に仲を深めるチャンスだ。
もしかすると、ゲームでも奇跡的な相性の良さを見せるかもしれないしな。
幸い大会までは後一週間ある。こいつらだってその間にみっちり練習するだろうし、そうそう不甲斐ない結果にはならないはずだ。
ぶっちゃけると、こいつらと組むと俺の精神が持つ気がしないってのもあったけどな。

「……拙者で……よいのですか?」

俺が言ったことが信じられない、というように改めて俺の意思を確認する沙織。
どうでもいいけど、そのござる口調なんとかならないの? 普段の沙織を知っている人間からすると違和感が半端じゃない。
……まあ、今さら何言ってんだって感じではあるが。

「いいんだよ、俺がそう決めたんだ。確か決定後はお互いに文句は言わない約束なんだよな?」
「た、確かにそうでござるが……」

沙織は未だ納得がいかない様子。どうしてすんなり受け入れないんだろ。
そんなに桐乃と黒猫を組ませることが心配なのだろうか? ま、その気持ちはわからんでもないけどな。

「大丈夫だって。こいつらだって喧嘩するために参加するわけじゃないんだからさ」
「……うう、わかりました」

渋々ではあるが、ようやく折れてくれた。
ふう、ようやく納得してくれたか。それにしても心配しすぎだろ。
桐乃と黒猫の相性の良さを早々に見抜いたのは他ならぬ沙織、おまえなんだからもっと安心していいと思うんだけどな。
……ひょっとして俺と組むのが嫌だったってことはないよな? 
いや、ないな。あの沙織に限ってそれはないよな。…………多分。



503 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/19(土) 17:58:14.30BTEDHaXWo (2/8)

大会当日。俺たちはシスカリ大会に参加するため、秋葉原に集まっていた。
この一週間、沙織はつきっきりで俺の特訓に付き合ってくれた。桐乃と黒猫も秘密特訓をしていたらしいが、果たしてその成果やいかに。

「そういえば、大会ってどこでやんの?」
「会場はso○map内のイベントフロアとなります。すぐそこですな」

沙織たちの後に続き、会場へと移動する。
会場は既にオタクたちで埋め尽くされており、イベントが始まるのを今か今かと待ち構えていた。

「……結構な人数来てんな」

まさか全員が参加者ってわけじゃないだろうが、それでもざっと見回して100人以上はいるように見える。
こいつらとやりあって勝てるんだろうか、黒猫たちはともかくとして。なにせ相手は沙織や桐乃、そして黒猫よろしく本気でこのゲームを愛しているような奴らなのだ。
俺、すっかり自信なくなってきたぜ。

「大丈夫です、お兄様。あれだけ特訓したのですから。それに、何事も参加することに意義があると申しますし」

自信喪失気味なのを見かねてか、沙織は快活な笑みを浮かべ俺を励ましてくれた。
ほんと、こいつには俺の考えることが筒抜けだな。

「ありがとな」

すると沙織は、いつも通りに口をこんなふうωにしてにま~と笑ったのだった。

結果から言うと、俺と沙織は3回戦負けだった。
特訓の成果や組み合わせの運も重なり、1,2回戦を突破することに成功したのだが――
所詮は付け焼刃。自力の差が露呈し、敗北と相成った。
ちなみに、桐乃と黒猫は1回戦負けだった。
なんというか……案の定足の引っ張り合いを展開してしまった結果がこれである。
それでも試合終了後には

「あんたのせいだかんね!」
「ふん、あなたがのろまなのが悪いのよ」

と、いつもの二人の様子を見せてくれたので心配はいらないだろう。

「賞品、残念だったな」

あと2勝していればお目当ての賞品が手に入ったんだけどな。残念ながら手元にあるのは1回戦を突破したチームに与えられたストラップだけだ。
そして、まことに残念なことにこのストラップ。なんというかエロい。
描かれているキャラクターは半裸であり、しかもロリ属性ときたもんだ。
いや、エロゲが元なんだから当然なんだけどさ。これじゃあ携帯につけるわけにゃあいかないな。
普段使えないものを貰ってもなあ……。

「……きもっ。なにマジマジと見つめちゃってんの? この変態」
「ちっ、ちげーよ! そういう意味で見てたんじゃねえ!」
「あら、ならばどういう意味で見ていたのかしら? ロリコンでシスコンの兄さん?」
「黒猫、おまえまで!?」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ俺たちをよそに、沙織は手に入れたストラップをにこにこと見つめていた。



第十二話(沙織√)おわり



504 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/19(土) 18:02:53.43BTEDHaXWo (3/8)

とりあえず分岐部分をば。また今日の夜に13話投下しに来ます

>>499
沙織って誕生日決まってたっけ?

>>501
ぜひ聞きたい。総合スレ投下用にあやせネタが欲しかったんだ


505VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/03/19(土) 18:14:20.12ruIbPRG2o (2/2)

いや、桐乃√の派生で、
きりりん告白→きりりん玉砕→きりりん病む→きりりん何度もやってくる
→これは参った→よし偽恋人作って対処だ→助けてあやえもん!

ってのが閃いただけなんだがww


506VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/19(土) 18:21:29.26RZFloZHpo (1/1)

それは・・・悪くない


507 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/19(土) 21:20:32.73BTEDHaXWo (4/8)

第十三話(沙織√)

季節が巡るのは早いもので、外に出てみれば今はもう桜が舞っている。
それなりにのほほんできた春休みも明け、今日は始業式。今まで幾度も迎えた新学期の朝である。
めんどくせえなあという憂鬱な気分と、何かが起こるんじゃないかというわくわくを胸に階段を下りる。
そのままリビングへと続く扉を開き――そして、俺は言葉を失った。

「お兄様?」
「はっ!?」

沙織に呼び掛けられ、ようやく我に返る。

「大丈夫ですか?」
「あんた……始業式の朝から寝ぼけてる場合じゃないでしょ」
「たるんどるんじゃないのか?」

素直に心配してくれる沙織とは違い、辛辣――ってほどでもないが、厳しい言葉をくださる両親。
いやいや、親父にお袋もなんでそんなに落ち着いてられるんだ。
これはもしかして一大事なんじゃないのか? いったい何がどうしてこうなった?

「なんで……」
「?」

ようやく絞り出した声はかすれ、うまく言葉にならない。聞き取れなかった沙織が疑問の表情でこちらを見ている。
俺は、一呼吸おいて、すうと大きく息を吸い込んでからこう叫んだ。

「なんでおまえがその制服を着ているんだああああああああああ!」

沙織が着ているのは、我が高校の制服そのものであった。
どういうこと!? 沙織はお嬢様学校の高校へエスカレーター式に進学するんじゃなかったの!?
まさか、問題起こして放り出されたの!? いやいや、沙織に限ってそんなことあるわけないだろ! 
じゃあ、これはどういうことだ!? 何がどうしてこうなった!?
もはや俺の思考は滅茶苦茶だ。まとまる気配すらない。

「落ち着いて下さいお兄様」

沙織はまるで子供をあやすように優しい口調で語りかる。

「私がお父様とお母様に頼んだんです」
「……はい?」

どういうこと? まさか、沙織が自分から俺のいる高校へ行きたいと言い出したってこと?

「その通りですわ」
「いやいや、何でわざわざそんなことを」

沙織がブラコンなのは知ってたが、それで自分の進路を決めちまうほど愚かではないと思っている。
だから、何かやむにやまれぬ、特別な事情があったんだと思う。ではその事情っていったいなんだ?

「……何があったんだ?」
「それは登校の途中でお話します。今は朝ごはんを食べましょう? このままでは遅刻してしまいますから」



508 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/19(土) 21:22:54.09BTEDHaXWo (5/8)

「で? 俺の高校に来た理由ってなんだ?」

いつもの登校路を沙織と連れだって歩く。見慣れた風景のはずなのに今日はえらく新鮮な気がするぜ。
単純に春休み明けってものあるんだろうけどさ。

「実はそんなに大したことではないんですけど……単純に遠かったからです」
「えっ? それだけ?」
「はい。今まで通っていた中学校とは少し違う場所に校舎があるものですから」
「ふーん」

はっきり言って拍子抜けだった。まさかそんな単純な理由だったなんて。
でも、本当にそれだけか? ……はっ!? まさかいじめにあっていたとかじゃないだろうな!?
進路を変えるという人生に大きな影響を与える事柄であるから、最低でも両親には話さざるを得ないが――
こいつのことだ、俺には無用の心配をかけまいと黙っているはず。
だとしたら俺はそんな沙織に今まで気づいてやれず――

「ふふっ、そんな顔しなくても大丈夫です。いじめが原因ではありませんよ?」
「ぐっ……」

どうやら、本当に俺の心は筒抜けらしい。それとも顔に出過ぎるのがいけないのか。

「で、でも、大学進学のことも考えたらあっちの方がよかったんじゃないのか?」

実際、うちの高校は平凡そのものの進学率だぞ? あるのは普通科だけで、理数科だったりの特別進学コースがあるわけでもないし。

「それはあちらでも同じですから。一貫の大学には行きたい学科はありませんし。ですから、大学受験を考えるならどちらでも一緒なんです。経済的にはこちらの方が圧倒的に安上がりですし」
「そうは言ってもな」

沙織の言うことはもっともだ。付属の大学に行きたい学科がないのなら、普通に考えてうちの高校に来るのが妥当だと言える。
だけど、なぜだろう。このもやもや。腑に落ちないというか、なんとも言えないこの感じ。

「それとも、私が一緒では迷惑でしたでしょうか?」

うるうると目をうるませ、しょんぼりと項垂れる沙織。

「そ、そんなことないぞ! 俺だって一緒の高校に行けて嬉しいって!」

まるで恋人同士の会話だな。俺はいつからこんなシスコンになってしまったのか。
自分が言った内容に呆れ、自嘲気味に笑う。
すると、どこからともなくこんな声が聞こえてきた。

「あの子、超かわいくね? でかいけど」
「どの子? うお、まじだ。超かわいい。 でかいけど」



509 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/19(土) 21:26:02.53BTEDHaXWo (6/8)

途端に、さっきまで感じていたもやもやが急速に膨らんでいく。
この瞬間、はっきりと理解した。今までは沙織が通っているのが女子校だったもんだから、こんな気持ちを感じることはなかったんだな。
そう、これはいわゆる親心というやつだ。……おまえは兄貴だろという突っ込みはなしだぞ。
そこら辺の男が沙織に言い寄ってくるかもしれない。どこぞの馬の骨ともわからんやつが沙織をかっさらっていってしまう可能性がある。
そんなことを考えただけで、俺の心はかき乱され一向に落ち着かない。
沙織が彼氏なんて連れてきた日にゃ、俺はまだ見ぬそいつをきっとぶっ飛ばすだろう。
別にそいつが憎いわけじゃない。ただ、それぐらいやらんと気が済まないのだ。

先ほどの声のを発した男たちをじろりと睨み付け「手を出したらぶっ殺す」と、視線で威嚇。これは最上級生だからできる芸当だ。
……これから毎日こんな思いをして過ごさねばならないのか。とてもじゃないが身が持たねえ。
世間のシスコン様はこういうとき一体どうするんだ? いったいどうやって心を落ち着けるのだろうか。
あーあ、誰か近場にシスコンの兄貴がいねえもんかな。そうそういるもんじゃないってのはわかってるけどさ。

しばらく歩くと、いつもの場所で俺を待っている麻奈実が視界に入った。
ぱたぱたと鞄をせわしなく動かしている。

「あ、きょうちゃん、おは――」

いつもの間延びした挨拶をしようとしたところで、そのまま固まる麻奈実。
その目ははっきりと見開かれ俺の隣に立つ美少女を見据えている。

「よう、おはよう」
「おはようございます、麻奈実さん」
「えっ? あ、おお、おはようございます」

慌てて挨拶し返す麻奈実。なに慌ててんだ? おまえら初対面じゃねえだろ。
しかし、慌てていても麻奈実の綺麗なお辞儀の形は崩れない。

「きょうちゃん。え、え~と、どちら様?」
「何言ってんだ、沙織だよ。妹の沙織」
「よろしくお願いいたします」
「ほ、ほんとに沙織ちゃん? あ、あれ~、この前はこんな風じゃなかったよね?」

……忘れていた。前に会った時はたしかバジーナ状態の沙織だったな。
その前に会った時はまだ小さかったし、まさか沙織がこんな美少女に成長するとは思ってもいなかっただろう。

「あ~なんだ。深くは詮索しないでやってくれ」
「う、うん。わかった。じゃあ、改めてよろしくね沙織ちゃん」
「はい。麻奈実さん」

そこからは3人で、他愛ない会話を交えながら、のんびりといつもの登校路を歩いていく。
某アニメには登校路がきつい坂道なのを愚痴っている高校生が登場するが、その点俺たちの学校は平地にあるからな。
そこに関しては千葉県gjと言わざるを得ない。
夏場とか大変だろ、あれ。しかも兵庫県下、特に北摂地域の高校は、そのほぼ全てが山の上に作られているらしい。
どうして兵庫県はあんなところに学校作っちゃうんだろうな。やめてやれよ。
と、実にどうでもいいことに考えを巡らせていると、少し先の道路を黒猫が横切った。
朝からなんて不吉な――という方の黒猫ではない。ましてや宅急便でもない。



510 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/19(土) 21:27:25.02BTEDHaXWo (7/8)

「あ、あれ? 今のって……」
「黒猫さん――みたいですね」
「どうしたの? きょうちゃん、沙織ちゃん」

急いで黒猫らしき黒髪の少女を追いかける。どうやら向こうは俺たちに気付いていないようだ。

「く、黒猫?」

手が届くまであと少しの位置まで迫ったところで、その黒髪の少女に声をかけた。
その少女は上半身だけでこちらを振り返り、得意げにこう言った。

「おはようございます、先輩」
「く、黒猫……まさか、おまえも同じ高校だったのか」

黒猫が着ている制服は、見慣れた、俺の高校の制服だった。

「ええ、本当はもう少し黙っていようと思っていたのだけれどね。……あれ? おまえも?」

それまでにんまりとしていた黒猫が俺の言葉に違和感を感じとった時、後方から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

「お兄様、お待ちになって下さい」
「きょうちゃん待って~」

はあはあ、と仲良く息をきらして沙織と麻奈実が追いついてくる。

「ひどいです、お兄様。私たちをほったらかして行ってしまうなんて」

沙織が俺を責め立て、その隣では麻奈実がうんうんとしきりに頷いている。

「すまんすまん。でもおかげで黒猫に追いつけたんだし、許してくれよ。なっ、黒猫」

同意を求めるべく黒猫の方に向き直ると、当の黒猫は目を丸くして棒立ちになっていた。

「な、なぜあなたが……こ、ここに、その暗黒聖闘士を纏って立っているの?」

いつから俺の高校の制服は暗黒聖闘士に衣替えしたんだ。
震える指で沙織を指さし、質問する黒猫。その表情には驚きの他に恐怖すら垣間見える。
まあ、こいつとしても沙織がここにいるのが不思議でしょうがないんだろう。俺だっててっきりエスカレーター式に進学すると思ってたからな。
とはいえ、俺が言えた義理ではないが、いくらなんでも驚きすぎだろ。なんでそんな何かにびびってるみたいなリアクションなんだよ。

「実は少し事情がありまして。詳しいことは後程」
「くっ……まあ、いいわ」

びびっていると思ったのもつかの間、あっというまにいつもの黒猫に戻ってしまった。

「黒猫さん――だっけ? おはよう~」
「…………おはようございます」

麻奈実の挨拶に、一応返事を返す黒猫。……すっげー渋々だったけどな。
おまえはいつまで麻奈実を目の敵にしてるんだ。
ともあれ、今はそんなことを追求している場合ではない。

「やべ、ちょっとのんびりしすぎた。初日から遅刻しちゃまずいし、急ごうぜ」

そんな俺の言葉に対して三人は三者三様に頷いたのだった。



第十三話(沙織√)おわり



511 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/19(土) 21:31:30.45BTEDHaXWo (8/8)

今日はここまで。さて、これからどうしてやろうか

>>505
おお、以前提案してもらったやつだね
実はそのネタ上手くオチを付けられる自信がなくて諦めたんだよね。力不足で申し訳ない
今日はこの後総合スレにあやせ√も投下してくからそっちもよろしく


512VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/19(土) 23:24:39.50pWbvGFtP0 (1/1)

乙っ

今から総合に張り付きます


513VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/20(日) 02:21:47.78fO+eKznV0 (1/1)

総合のあやせ√乙!

続けてくれ


514VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/21(月) 01:00:21.96LvDjby6AO (1/2)

闘衣ではなく闘士を纏っているだと…


515VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県)2011/03/21(月) 02:42:34.45+01gReEco (1/1)

つまり二人羽織


516VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/21(月) 10:03:56.33LvDjby6AO (2/2)

二人沙織に見えた


517 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/21(月) 10:08:39.11wKKzmEQYo (1/1)

俺もそう見えてわろた


盛大に失敗<×聖闘士○闘衣
やっぱり聞きかじりの知識で書くもんじゃないな。反省
実はロボット物しか詳しくないからなあ


518VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/21(月) 10:52:40.95LnlVdFrGo (1/1)

早見沙織ちゃんが2人とかどこのパライソ


519 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/22(火) 18:01:04.56/jaFti/Vo (1/5)

第十四話(沙織√)

始業式終了後、俺と沙織と黒猫の三人で改めて俺の家に集まることになった。
桐乃も誘ったのだが、部活があるとのことで残念ながらいつもの面子が勢ぞろいとはいかなかった。

「いやあ、黒猫氏の制服姿は新鮮でいいですなあ!」
「そういうあなたはなんでいつものござる口調なのよ」

いつものオタクファッションならいざ知らず、制服着た女子高生がぐるぐる眼鏡を装備してござる口調で喋るというのは……見るに堪えない。
なんというか、心のどこかが痛い。お願い沙織。せめてどちらかに統一して。

「う~む、どうも不評なご様子。しからば着替えますゆえ、しばらく外でお待ちいただいても?」
「あいよ」

結局、いつものオタクファッションに落ち着くわけね。
すっくと立ち上がり、ドアを開けてそのまま沙織の部屋を出る。すると、なぜか黒猫も俺に続き部屋を出る。

「あれ? おまえも出るの?」
「私にのぞきの趣味はないのよ」

のぞきって……女の子同士で何言ってんだ? まさか、そっちの趣味があるんじゃないだろうな?
藪蛇になっても困るから深くは追及しないけどさ。

「沙織も言ってたけど、制服姿も新鮮でいいな」
「…………莫迦じゃないの?」

途端に、むすっと不機嫌になる黒猫。
あ、あれ? 沙織が言った時は何もなかったのに、何で俺が言うと不機嫌になっちゃうの?
女の子の、とくに黒猫の考えることはさっぱりわからん。

「お待たせいたしました!」

沙織の大きな声とともに勢いよく扉が開き、その勢いのまま扉が俺に打ち付けられる。

「っぐぐ……」

顔面を抑えうずくまる俺。ふっ、と鼻で嗤う黒猫。慌てて俺に駆け寄る沙織。
ここに桐乃がいれば、ぷっと吹きだしていたことだろう。



「そういえばさ」
「どうされました?」
「入学式の日、おまえその制服着てたっけ?」

ゲームやアニメの話題で盛り上がっていた最中の、唐突な話題の転換に沙織と黒猫は少し驚いたような顔をした。
別に今聞かなければならないようなことではないのだが、思わず口をついて出てしまったのだ。
俺の記憶によると、うちの学校で入学式が行われたはずの日、沙織は普段着だったと思うんだが。
出掛ける瞬間と帰ってきた瞬間を目撃したわけじゃないから、出掛ける寸前と帰ってきてすぐに着替えたってんならそれまでなんだけどさ。



520 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/22(火) 18:02:41.36/jaFti/Vo (2/5)

「その通りです。ぎりぎりまで引っ張ってお兄様に盛大に驚いて頂こうと思いまして」
「……そうかい」

俺を驚かせるのがそんなに楽しいんだろうか?
そんな沙織の策略に見事にはまり、大声をあげて驚いてしまったことはまだ記憶に新しい。

「『なんでおまえがその制服を着ているんだあああああああ』ってな具合に、盛大に驚いておいででしたな」
「ぐっ……」

俺の恥ずかしい記憶を思い出させるんじゃない! しかも黒猫の前で!

「いや~、お兄様のあのときの顔といったら。是非瑠璃ちゃんにも見せてあげたかったでござる」

何か言い返してやりたいのは山々だが、驚いてしまったのは事実なのでどうしようもない。
ちくしょう。何かしら反論の余地は――

「ん? 瑠璃ちゃん?」

誰それ。初めて聞く名前だけど。
沙織が黒猫とアイコンタクトを交わす。黒猫が頷くと、沙織は“瑠璃ちゃん”の正体について語ってくれた。

「五更瑠璃。黒猫氏のほんみょ――いや、人間界での仮の名前です。数字の五に夜が更けるの更、瑠璃色の瑠璃と書きます。ねっ、瑠璃ちゃん」
「……その名前で呼ぶのはやめてちょうだい」

五更瑠璃。それが黒猫の名前らしかった。
ふーん。なんというか……当たり前のことなんだけど、黒猫にも本名があったんだな。なんだか妙に感慨深い気分だ。

「これからも黒猫――でいいんだよな?」

呼び方について黒猫に確認をとる。
今さら呼び方を変えようとは思わないし、今となっては普通の名字よりも黒猫というHNで呼ぶ方がしっくりくる。
それに先ほど、その名前で呼ぶなと黒猫本人が言ったばかりだからな。

「…………ええ。そうしてちょうだい」

黒猫は端的にそう答えた。ちょっと間があったのが気になるけど、まあ本人がそうしてくれと言うんだから問題ないだろう。

「さてと、お茶とお菓子でも取ってくるわ」
「あっ、そういうことでしたら拙者が――」
「いいって。気にすんな」

一つの話題が終わったところで、せっかく我が家を訪ねてくれた友人にお茶を出し忘れているのに気付いた俺は、自分が行こうとする沙織を制してリビングへと向かった。





「京介、おまえに話がある。食事が終わったらわしの部屋まで来い」

始業式の日つまり黒猫の本名が判明したその日の夜。
夕食時、親父にいきなりこう切り出された。

「あ、ああ。わかった」

おふくろや沙織は何事かと目を丸くしている。
そして、親父が先に食事を終え自室に引っ込むとこぞって「何かあったのか」だの、「何かやらかしたのか」だのと聞いてきた。
何があったのかは俺が聞きてえくらいだよ。
沙織は単純に心配してくれてるだけだと思うが、おふくろは面白がってやがるな。さっきから顔が半笑いになってるぜ。



521 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/22(火) 18:03:37.70/jaFti/Vo (3/5)

「ごちそうさま」

親父に続き俺も夕食を終え、親父の部屋へと向かう。
今にも胃に穴が開きそうだ。俺、なんかしたかな……。

「……失礼します」

意を決して、鬼の住まう場所に通じる扉を開く。
その瞬間、ツンと酒の匂いが鼻をついた。どうやら食後だというのにまだ飲んでいるようだ。

「まずはそこに座れ」

親父に促されるまま、ガラステーブルを挟んで親父の向かい側の椅子に腰を下ろす。
張り詰める緊張の中、かちかちと時計の針の音だけが響く。
なんだ……親父は俺に何の用事があるんだ。説教ならいっそ早くしてくれ。
まだ俺が部屋に入って1分も経っていないが、あんまり長引くと俺の胃がもたないぞ。
俺が部屋に入って5分ほど経ったころだろうか。ようやく、親父が口を開いた。

「京介、実はおまえに相談があるんだが」
「…………はい?」

それから約十分後。
親父の部屋を出ると、沙織が心配そうな顔をして俺を待っていた。

「あ、あの。いったい何があったのですか?」
「気にすんな。大したことじゃなかったよ」
「で、でもお兄様の怒鳴り声も聞こえましたし……」
「大丈夫だ。別に喧嘩してたわけじゃないからさ」

あまりにも馬鹿馬鹿しくて笑い話にもなりゃしねえ。

「大したことないのなら何があったか教えてください」
「それは駄目だ」

ぴしゃりとはねつけ、渋る沙織を強引に諦めさせる。
こればかりは沙織が泣いて頼んでも口を割るわけにはいかない。
なんせ、親父の沽券と威厳にかかわる話だからな。





「そういえば、おまえは部活とか入らねえの?」
「部活――ですか?」

沙織たちが俺の高校に入学してきてから一週間が経った頃。
夕食後に沙織の部屋で、かねてから気になっていた疑問を尋ねてみた。

「気になる部活もありませんし、今のところその予定はありませんが……なぜいきなり?」
「い、いや、別に他意はないんだ。ちょっと気になっただけでさ」
「そうですか」



522 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/22(火) 18:04:58.50/jaFti/Vo (4/5)

そう、他意はないんだ。あくまでもちょっと気になっただけで。
別に親父から“沙織の学生生活に探りをいれ、野郎がいる部活に入ろうとしているならそれとなく別の部活に誘導するように頼まれた”わけじゃないぞ。
親父に頼まれたのは“近づくやつがいるなら容赦なくぶん殴れ”だ。
さすがにそれは駄目だろ! と、思わず突っ込んだのだが親父は至って真面目な顔で「傷害程度なら俺がもみ消してやる」とのたまった。
もはや犯罪じゃねえか! 職権乱用もいいとこだよ! 
親父のやつ、どんだけ娘を溺愛してるんだ……。
ともあれ、今の所沙織はなにかしらの部活に所属する気はないようだ。それですべてが安心ってわけじゃあないけどさ。

近づくやつがいるなら容赦なくぶん殴れ。
実に馬鹿馬鹿しい話ではあるが……俺としても親父の気持ちはわかる。俺だって、先日その気持ちを味わったところだからな。
どこぞの馬の骨ともわからん男に沙織はやれん。
この一点において、俺と親父の気持ちは完全に一致していた。
俺が卒業するまでの間、全力で沙織につく虫を排除する。俺はそう決めたんだ。

「黒猫はどこか入るって言ってたか? たしか同じクラスなんだろ?」
「黒猫さんも部活に入るつもりはないようですわ」
「そっか」

黒猫の方は、正直そうじゃないかと思ってはいた。
あいつのことだからクラスに馴染むのにも時間がかかると思う。あいつの性格はややこしいからなあ。
その点、沙織と同じクラスで本当によかったと思う。沙織ならばうまいことクラスの人間との橋渡し役になってくれることだろう。

「それに、部活に入ったらきりりんさんや黒猫さんと遊ぶために割ける時間が制限されてしまいますから」

なるほど。沙織らしい答えだ。
気になる部活がない。というのも確かに部活に入らないことの一因ではあるのだろうが、恐らく、こちらの方が主な原因であるはずだ。
まあ、部活に入ったからといって遊ぶ機会が劇的に減るなんてことにはならないとは思うけどな。
なんだかんだで寂しがりなんだなあ、こいつ。

「あと――」
「うん?」
「もちろんお兄様と私の時間も」

そう言って微笑みながら顔を寄せてくるもんだから不覚にもどきりとしてしまった。
……くそっ、その台詞と行動はちょっとずるい。そんなことはありえないと頭ではわかっていても、沙織の言葉はどうしてもあらぬ妄想を抱かせる。
多分沙織もそれをわかってやっているはずだ。
妹相手にこんな気持ちになってしまうとは……俺はシスコンを通り越して変態鬼畜兄貴になってしまったのだろうか。
……それもこれも全て桐乃が寄越したエロゲのせいに違いない。

「そういえば、今作ってるプラモのことで聞きたいことがあるんだが――」

逃げるように露骨に話題を変える。ここまでわかりやすい敗北宣言もなかなかないだろう。
ちくしょう。なぜ俺が実の妹に対して照れなくてはならんのだ。
依然として沙織はにやにやと、こんな口ωをしてこちらを見つめている。
……なんかこいつ性格悪くなってねえか? いや、人間として駄目な方向に向かっているって意味じゃないから別にいいんだけどさ。
これも桐乃や黒猫の影響だろうか。だとしたら恨み言の一つでも言ってやりたい気分だ。おまえらの影響で沙織が変わっちまったんだがどうしてくれるんだ、とな。

顔を赤くし、ともすれば今にも妹の冗談を真に受けてしまいそうな兄を、いかにも「満足しました」と言わんばかりの満面の笑みを浮かべながら見つめる沙織。
そんな妹様を見て俺はこう思ったのさ。
俺の妹が、こんなに意地悪なわけがない――ってな。



俺の妹が身長180cmなわけがない
おわり



523 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/22(火) 18:07:08.44/jaFti/Vo (5/5)

終わった!

当初近親√も試みたが俺には無理だったんだ。どうしても三次妹の顔がちらついて……
そして急遽路線変更したために、オチに関してはこれが限界だった
そっち期待しては人には申し訳ない

貴重な意見やアドバイス、更には話のネタまでいただいたりと、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
気が向いたらまた総合スレの方に投下しに行くかもしれませんが、その時はよろしくお願いしますね。



524VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/22(火) 18:21:57.59mfxWBXeLo (1/1)

とりあえず誤字があったので

俺の妹が身長180cmなわけがない
おわり ×
→ つづく ○


ひとまずお疲れ様です
沙織なら近親でもありかなと思っていましたが、
このままでもすっとした感じでしたね
別にこのまま瀬菜ちゃんとの絡みもあってもいいんだよ?


525VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)2011/03/22(火) 18:23:45.83xM08QQ1Uo (1/1)



メルルイベントの代わりにガンダムコスプレコンテストでもやるのかと思ったが、そんなことはなかったぜ


526VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/22(火) 23:31:31.77MGPBSxH40 (1/1)



沙織がいるなら黒猫の学園生活も超イージーモードでコンティニューだなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


527VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/23(水) 00:14:35.179D+iNbSq0 (1/1)



あやせの人生相談を受けるあやせ√もあるんですよね!?


528VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/03/23(水) 01:50:38.77TvS24s0io (1/1)

あれ、父親ルートがまだなんだけど?


529VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/23(水) 02:46:59.90X2QEaqw/o (1/1)

加奈子√とブリジット√と赤城√も


530VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/23(水) 16:29:18.15NJ6il+9f0 (1/1)

>>529
お兄ちゃんルートは重要ですよね!
フヒヒwwww


531 ◆5yGS6snSLSFg2011/03/23(水) 16:48:47.859Opt5nWko (1/1)

申し訳ないとは思いますが、続かんのです
余力があればあやせ√は書いてみたかったんだけども


長々と2か月近くもお付き合い頂きまして本当にありがとうございました
ちょっと休んだらまた総合スレに投下しに行くからよろしくね
あっちでもネタ援助して頂けると喜びます



532VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)2011/03/23(水) 18:02:03.77AWwbwojAO (1/1)

まだ地味子のおじいちゃんルートが…

しゃあないな、乙!


533VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/03/24(木) 14:31:35.98ChC7UAyIo (1/1)

おつかれした!
面白かったよ!
また書いてね!