521伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/22(火) 13:21:30.65QTgs2cUAO (3/9)

――――追憶。とある少年

さて、今日は特に用事も無いし……帰って積んでるゲームでもやるかなー。

ん、何だあの子?
歩道を歩いてるだけなのに、随分怯えてるなぁ。

それに……何だろう、アレ。サラミ?
ウネウネ動くサラミとか聞いた事も無いんだけど。

はっ、これはもしやチャンスですね!?
あの子に優しく声を掛ける事によってフラグが立つのですね!
だから今日予定が入らなかったのですね、ありがとう神様!

さて、あんまり驚かせないように……肩をトン、っと。

「――――ァ」

え――――?


522伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/22(火) 13:21:58.30QTgs2cUAO (4/9)

――――追憶。とあるジャッジメントの少女。

うん? 何やら向こうの方が騒がしいわね。人だかりに……悲鳴!?
急がなきゃ!

「退いて、退いて下さい。ジャッジメントです!」

……女の子?
いや、あの子は確か……あの時に一緒にパトロールした子じゃない。一体何が……。

男の子が壁に叩きつけられたのね。見れば分かるわ。多分やったのはあの子かしらね……

「あなた!!ジャッジメントが一体何をしてるの――」

「――――『ゥゥ』」

がっ――――


523伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/22(火) 13:23:08.82QTgs2cUAO (5/9)

――――追憶。黄泉川愛穂。

ついてないじゃん。
今日は非番だと言うのに、緊急招集で駆り出されてしまったじゃん。
まぁ、件が件だけに仕方がないとは思うじゃんよ。

『御坂美琴の補導』

マジ難易度最大じゃんよ……

現場ついたじゃん……さて、気張るじゃん!

とりあえず私が行くじゃん。
何も無ければそれが一番良いじゃんよ。

「お前ら、構えるなじゃんよ」

無理です。危険です、か。知ってるじゃんよ。
あの化物は一体何なのか、こっちが知りたいじゃん。

「御坂美琴、お前はアンチスキルに包囲されてるじゃん!大人しく投降すれば、危害は――」

撃って、違う!蹴って来たじゃん!!?

……鉄装!?助かったじゃん!流石じゃんよ!

AIMジャマー……仕方がないじゃん!手早く済ますじゃんよ!

銃を向けるなって言ってるじゃん!
ああなったらもう抵抗は出来ないじゃん!

「――ウォォォォォォォォォ!!!!」

ぐっ……あれ武器だったかじゃん!?
痛……まだ動けるじゃん、背中打っただけじゃん。
腕は……折れてるかもしれないじゃん。

「――撃つなっつってるじゃん!!!バカ野郎!!」


524伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/22(火) 13:23:35.34QTgs2cUAO (6/9)

……銃弾を止めたじゃん!?
何故じゃん、AIMジャマーは起動してるから能力は使えないはずじゃんよ!

なっ、ジャマーがぶっ壊されたじゃん!?マズイじゃんよ!

「――ヒヒヒィ!!」

くっ、砂煙で何も見えないじゃん!

なっ――近い、じゃん。

げほっ……カハッ……胃の中身出そうじゃん……

「っ!!お前!」

止めるじゃん、鉄装!!?



鉄、装?



――はっ、気を失ってたじゃん。
みんなはどうなったじゃん!?

全……滅?

くそっ、御坂美琴……覚えてるじゃんよ……


525伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/22(火) 13:25:05.85QTgs2cUAO (7/9)

――――追憶。白井黒子。

通報を受けて来てみれば……これは一体どういう事ですの!?
死体……いや、まだ息がありますわね。
早く治療しなければ命に係わるやもしれませんですの。

お姉様……いえ、違いますわね。
恐らく妹様、美夏ですわね。
何故お一人で血まみれに……とにかく事情をお聞きしませんと。

け、ほっ?
殴られましたの?
何で、何がどうなって――

危ない所でしたの……あの化物は一体何ですの?

「『――ォォ』」

――上からレールガンですの!!
当たったら致命傷間違い無しですの!
でもまだまだ甘いですのね。
狙いもバラバラで、私のテレポートに追い付けていないですの。

鉄心を靴にテレポートですの!
これで咄嗟に動けませんの!

その化物には当たりませんの!

どうです、の――


526伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/22(火) 13:25:47.35QTgs2cUAO (8/9)

――――追憶。芳川桔梗。

……ん、物音?10666号の部屋からかしら。

……奴らかしら。

ドアを慎重に空けて……10666号!?
良かった、生きて――


527伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/22(火) 13:26:16.70QTgs2cUAO (9/9)

投下終了。


528VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/22(火) 23:10:49.33Kj30058eo (1/1)

おそくなった、おゆ
人いねぇwwww


529VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県)2011/03/23(水) 02:40:00.74rdfEcOGEo (1/1)

乙でした~


530VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/03/27(日) 14:58:25.71TFg9mQwO0 (1/1)

>>528
俺がいる


531VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県)2011/03/28(月) 17:54:39.53BtApXHFD0 (1/1)

乙!
フォース復活にうるっときたよ
後日談とかは、ないのかにゃー?


532伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/28(月) 21:54:17.672hqCW8bAO (1/1)

熟と書き溜めてる。


533VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/29(火) 22:21:08.77d/B4JDCw0 (1/1)

楽しみに待ってるよ~


534伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 08:53:07.80WEpReWvAO (1/17)

投下開始。


535伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 08:57:34.78WEpReWvAO (2/17)

――――御坂美琴。冥土帰しの病院。

御坂「……あの子は大丈夫なんですか、先生?」

上条「どうだったんですか!?」
未だ意識不明の10666号。治療と診察を終え、調整を済ませた今でもそれは続いていた。
上条らとしても、気にならない訳がない。

一方「……アレはァ?」

冥土「切除したよ。大丈夫、きちんと元通りさ」

上条「そういやぁ、な……何でアレはあんな所に有ったんですか?」

上条が少し気まずそうに問い掛ける。
事実、男には言いづらいのだ。

冥土「まぁ、患者の言いにくい事を口に出すのも医者の勤めだね。……女性の身体には、生体的にリンクするのにピッタリな器官があるのは知ってるね?」

一方「……胎盤か」

唯一の女性が小さく悲鳴を上げる。
自らの腹の中に化物を飼っているイメージをして、怯えない中学生がいるだろうか。

冥土「うん。差し詰めあれは臍の緒か……または胎児そのモノかもしれないね」

上条「マジかよ……それ、大丈夫だったんですか?」

冥土「僕を誰だと思っている?きっちり元通りにしたよ」

部屋に充満する、取りあえずの安堵。
冥土帰しは続けた。


536伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 08:58:12.38WEpReWvAO (3/17)

冥土「君たちの話を聞いて、アレを自分でも調べてみた総括なんだけれど、アレはただの化物じゃなさそうだね」

御坂「と言いますと?」

冥土「あの物体から微量のAIM拡散力場が検出されたんだよ。それもまた奇妙なんだけれど、更に驚いた事にね」

上条「……」

冥土「それが10666号のと非常に酷似していたのだよ。そして、それには魔術の干渉の残滓も同時に見受けられた」

一方「……つー事はァ、ありゃあ13510号の増幅した魔力か」

冥土「それが10666号を宿主にしたんだろうね。意思を持っていたのかと考えると興味深いね」

冥土「――思うに、アレは彼女自身だったのかもしれないね」

御坂「…………」

冥土「無力への恐怖。力の具現。目標への盲目。悪く言えば、いくらでも言えてしまうね」

上条「それでも、それでもアイツはっ……」

上条が拳を強く、強く握る。

上条「13510号を求めるアイツは、真っ直ぐなんだ……」

御坂「アンタ……」


537伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:04:38.76WEpReWvAO (4/17)

――――10666号。現実。病院。

10666「……う」

混濁とした世界から現へと目を醒ます10666号。
ゆっくりと目を空けて、彼女はまず深く息を点いた。
身体の中に蔓延る良からぬモノが抜けていくような、癒しの溜め息。

14440「――!起きましたか、とミサカは10666号の目覚めに驚きます」

10666「……14440号か。ここは?」

身体を起こそうとするが、上手く力を入れられずもがくばかりだった。
些かもどかしい。

14440「冥土帰しの病院です。大変だったのですよ、とミサカは苦労を伝えられない事を残念がります」

10666「そうか――」

仕方無く、視線を天井に向ける。
真っ白なそれは、まるで今の自分の空虚な心のようだった。

14440「みんなを呼んできますね、とミサカは立ち上がり――」

10666「14440号」

部屋を出る寸前で声が掛かる。
振り向く14440号。

10666「ありがとな」

14440「その笑顔も久しぶりです、とミサカは柄にも無く貴女に微笑みかけます」


538伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:05:21.36WEpReWvAO (5/17)

――――10666号の病室

一方「起きたかァ?」

ガチャリと音を立て、部屋に入ってくる少年ら。

10666「あぁ……お姉様に上条さんも。……迷惑、かけたね」

上条「別に気にすんなって」

御坂「良かった……ホントに……」

こんなに、私なんかの事を気にしてくれている。
全く有難い事だ。

10666「こんな時に何だけどさ……フォースは何処に?」

14440「ここに、とミサカはチョーカーと機具を手渡します」

10666「お、サンキュ」

相棒を受け取り、チョーカーを付ける少女。

一方「もォ大丈夫なのか?」

10666「分からんね。っと……フォース、起きろ」

フォース「起動中……完了。お帰りなさい、マスター」

チョーカーと手甲を付け、フォースに精神をリンクさせる。
いつもの行動。
しかしそれはフォースの成長した心に『驚き』を与えるに足る行為だった。


539伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:05:49.52WEpReWvAO (6/17)

フォース「ま、マスター……」

10666「? どうした?」

フォース「いや、まさか……演算構成……失敗。演算補助起動……リンクアウト……全代理演算……不可」

サー、とCPUがフル稼働する小さな音が、それでも静かな部屋に響き渡る。

何事かと思う、その場の人間たち。

唯一、命持たざる者が主に訊ねた。

フォース「マスター……貴女今『超電磁砲』を、撃てますか?」

それは、例外無く、無力の証明だった。


540伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:10:53.85WEpReWvAO (7/17)

――13510号、垣根帝督の隠れ家

13510「しかし……私は特に何もしなくて良いのでしょうか?」

垣根「あぁ。まずは術式構成しなきゃいけねぇらしいな。結構時間掛かるみたいだから、暫くは何も出来ないな」

彼女らから聞いた説明に由れば、私は増幅器の役割をするだけなので、正直当日しか出番が無いらしい。

今、こうしている間にも10666号は……

垣根「焦るなよ」

13510「っ」

垣根「探し人に会えない辛さは分かる。が、ありゃ本気でヤバい。ノコノコとお姫様を渡す訳にはいかねぇな」

13510「彼女は――!」

つい、声を荒げてしまう。

垣根「そうじゃねぇんだろ。だけど、お前も見たアレが真実なら、対策を取るのが当然だろ?」

13510「…………」

垣根「怪我してほしくないしな」

私の頭を優しく撫でる彼。
彼の笑顔は、本当に私を見てくれていた。


541伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:11:41.14WEpReWvAO (8/17)

――――冥土帰しの病院、冥土帰しの部屋。御坂美琴。

木山「失礼します――君たち?」

御坂「……木山さん」

一方「よォ」

冥土「是非とも詳細を知りたいとの事でね。うっかり口を滑らしてしまったね」

部屋に入って来た女性は少し驚く。
冥土帰しに検査結果報告に来ただけだったのだが、まさか彼らが同席するとは思いすらしなかったのだから。

木山「学校はどうしたんだい?」

一方「随分行ってねェ」

御坂「公には、能力実験中よ」

木山「……ふふっ。そうか」

女性はカエル顔の老人に向き直る。
手元の書類を机に置き、それを冥土帰しが受け取った。

木山「思った通り、彼女――10666号のAIM拡散力場が希薄になっています。レベルにして、僅か1程度です」

やはり、といった空気が部屋に溢れる。

御坂の脳裏に、虚しくコインを落とした10666号が思い出される。

彼女はただ一言、「そうか」と言ったのだ。

木山「原因として考えられるのは『自分だけの現実』の変異、及び崩壊です。聞き伝の話ですが、彼女の能力の芽生えには13510号が密接に関わっているようですね」

冥土「うん。そうだよね、御坂君?」


542伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:12:17.55WEpReWvAO (9/17)

御坂「えぇ。初めて『超電磁砲』を撃った時も、13510号が不良に殴られた時だったわ」

木山「……検査中に彼女から聞いた話ですが……思い当たる節について訊ねた時に――」

――もう、心配ないんだよ。先生。

木山「――とだけ。もしかしたら、彼女は13510号と接触したのやもしれません」

一方「何だとォ……こっちでもまだ見つかってねェンだぞ?」

そこで気付く、10666号の異変。

御坂「……待って。あの子は、何であの時あんなに暴れていたのかしら」

一方「……10666号をあァしたのが13510号って事かァ……考え難いぜェ?」

木山「……こんな事は言いたくないのだが」

女性は一息置いた。

木山「……これは私の仮定ですが、もしかしたら13510号が10666号に依存していたように、10666号も13510号に依存していたのではないのでしょうか」

冥土「ふむ」

木山「彼女が強く在れたのは、一重に、守る為にそう成る必要があったから……共依存だったのではないのかと」

木山「本当に、相手を必要としていたのは――10666号では?」


543伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:17:08.17WEpReWvAO (10/17)

――――

剣は折れ

身体は朽ち

魂は砕けた。

きっと私はもう要らない。
きっと私はもう居ない。

そうさ。だって私は化物なのだから。

彼女を守れる訳が無かったのだ。

ミコト「元気無いわね」

そりゃ、まぁ。

ミコト「ここも、何だか寂しい感じに模様替えされちゃったわ」

悪いね。

ミコト「もういいの?」

今は、いいや。

ミコト「あれほど求めていたのに?」

……アイツが、無事で、健やかなら、それは即ち私の願いだ。

ミコト「だからどうでもいいの?」

そうじゃねぇ、そうじゃねぇよ……

ミコト「じゃ、アンタの意思って何なのよ」

そんなモノ、何処かに置いてきちまったなぁ。

誰でも良い。
使えるなら、この身体使い潰してくれよ。

価値の無い私を――


544伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:22:46.35WEpReWvAO (11/17)

――――御坂美琴、病院のホール

御坂「…………」

御坂美琴はホールのソファに腰掛け、目を片手で覆ってもたれ掛かっていた。
ここ最近は本当に休む暇が無く、疲労がチクチクと彼女を蝕み始めている。

御坂「……はぁ。あっちが帰ればこっちが居なくなる……いい加減、ケリを付けないとね」

御坂美琴は思考する。
彼女たちは、何を間違ってしまったのだろうか。

13510号がおかしくなったのは?
10666号がアレに呑み込まれたから。

10666号が呑み込まれたのは?
13510号が心を病んだから。

13510号が心を病んだのは?
10666号が嘘をついていたから。
それだけではないが。

10666号が嘘をついていたのは?
8222号に頼まれたからだ。

8222号は何故頼んだ?
殺されるのが分かっていたからだ。

誰に殺された?
一方通行だ。

何故一方通行は殺した?
レベル6になる実験のためだ。

何故実験が出来た?
ミサカシリーズが20000体居たからだ。

何故ミサカシリーズが作れたのか?
――私がDNAマップを提供したからだ。

御坂「ははっ」

誰が間違った?
それは私じゃないの。
本当、馬鹿。


545伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:23:51.80WEpReWvAO (12/17)

乾いた笑いが漏れた。
愉快でも何でもないのに、それは自然に出てきて。

御坂「――ん?」

そこに至って御坂美琴は気付く。
数人の人間に緩く取り囲まれている事に。

御坂「何か用かしら?」

不審に思い、一番手近にいた少年に声を掛ける。

少年はいきなり御坂美琴の髪の毛を掴み、思い切り引き倒した。

突然の事に身体が追い付かず、そのまま床に這いつくばってしまう。

顔を上げた時には、既に人の輪が狭くなっていた後だった。

御坂「な、何?」

「御坂美琴……」

「よくもやってくれたな……」

「……お前にも、身体を裂かれる痛みを教えてやるよ!」

気付く。
この者たちは10666号の被害者たちだと。

だが、言えはしない。
言うつもりも無い。

少年の一人が大きなカッターナイフを取り出し、御坂美琴の目へと突き刺す――

寸前、掌が切っ先に割り込み、その刃を掴み取る。
スゥっと肉の切れる感触。

「なっ、誰――」

10666「よぉ。初めましてじゃねぇな?」

御坂「アンタ……」


546伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:30:58.05WEpReWvAO (13/17)

――――10666号

思わぬ乱入者に騒然とする周囲。
そんな状況下で、彼女は二つ手を鳴らして注目を集めた。
少しばかり血が飛び散る。

10666「はーいはい皆さん、何してたか5秒以内に答えなきゃぶっ殺すよー?」

「誰だよお前」

10666「――質問に答えろ」

読み取る力が足りないようなので、今度は明確に殺気を込めた。

今度は伝わった様で、別の一人が答えてくる。

「俺たちは、そこの御坂美琴に腕やら足やらを――やられたんだよ」

「お前……身内か?なら詫びの一つもあって然るべきだろうが!」
成る程、合点。
なら簡単な話じゃないか。

10666「あ、あー!お前あん時の雑魚じゃん。ごめー、それ私だわー。美琴は関係無いよ?ちょっと能力暴走しちゃってさー、痛かった?ま、雑魚が雑魚なのが悪いんだけどー、私優しいから謝るね」

ペコリと、出来るだけ可愛らしく頭を下げた。

絶句が世界を染め上げる。
それはすぐさま怒りで塗り替えられた。

「テメェぇぇ!!」
「ふざけんな……ふざけんなよ!!」
「殺す、今殺す……」

御坂「な、何バカな事を……!?」

いや、これで良いんだよ、お姉様。


547伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:31:53.28WEpReWvAO (14/17)

10666「あ、そこのカッターの人。私どこ引きちぎったかな?覚えてなくてさ」

怒りが赤熱していくのが分かる。
これはこれで愉快でもあった。

「――左腕だ、クソ野郎」

10666「そ。じゃ、これ」

そう言って、少年に軍用ナイフを投げ渡す10666号。
少年は呆気に取られていた。

少年がナイフをしっかり握ったのを見て、それに左の二の腕辺りを突き刺した。

目を見開く少年。
しかし少女は平然と指示を出した。

10666「くくっ、骨で止まっちゃったね。コツがあってね、こう、グッと力を込めるんだ。出来るかい?」

「な、な……」

10666「仕方無いな、手伝ってあげるよ」

10666号は自らの左腕の肘あたりを右手で掴み、勢いよく身体ごと刃の方に力を加えた。

彼女の左腕は落ちた。

凄まじい勢いで流れ出す血液。
狂乱する周囲の人間たち。
無関係な人々の悲鳴。
その場から動けない御坂美琴。

そんな最中、一人澄んだ思考に溺れている10666号。

10666「何故そんなに驚いているんだ?そのつもりで、覚悟を決めてきているんだろう?」

少年の後ろにいる別の少年を見る。
右足に包帯が巻かれていた。

10666「お、君は右の足か。なら丁度良いや」


548伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:32:40.30WEpReWvAO (15/17)

言って、惜し気もなくスカートを捲り上げる。
左足には後二本、ナイフが仕込んであった。
一本取り、自分の右足――腿の辺りに突き刺す。

10666「くっくっ……痛ぁい。ほら、ゆっくり円を描くように太股を裂いて、骨を削れば千切れるから」

膝をついて崩れ落ちる10666号。
右足はもう動かない。

同じく、固まったように動かない被害者達。
目の前の現実を、まるで映画のような気分で見ていた。

10666「やらないの?」

糸が切れたマリオネットの如く、ぐったりと床に倒れ、上目遣いで被害者らを見上げる10666号。
それは確かに狂っていて、そしてそれをようやく周囲は理解したのだ。

10666「全く臆病なんだね。じゃあ、はい」

物を手渡すような気軽さで、次に右足が落ちた。
自らの右手で右足の骨を削り切る。
壮絶な痛みを伴うはずのそれを、彼女は僅かに笑いながら淡々と行なっていた。


549伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:33:27.26WEpReWvAO (16/17)

ゴロリ、と部品が転がる音がした。
切っ掛けはそれ。

「う、うわぁぁぁぁぁっ!!?」
「や、ま、ヤバいってこれ!!」
「ひっ」
「あ、お、おい逃げんな!!」
「俺は、俺は何もやってないぞ!!」

全く違う意味で騒然とする被害者達。
狂乱、とでも言えば適当だろうか。

そんな騒ぎの中、彼女は言った。

10666「あぁ、ダメだ……眠い。フォース、あと右腕と左足もいどいて」

フォース「…………」

御坂美琴が漸く我に返り、駆け寄る頃には彼女の意識は無かった。


550伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/03/31(木) 09:40:37.12WEpReWvAO (17/17)

投下終了


551VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県)2011/03/31(木) 22:51:54.16sr3RfD2x0 (1/1)

え…
えぐい…
自傷はえぐすぎるよ…



552VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/02(土) 02:59:19.78Lhod5rju0 (1/1)

m


553伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/04(月) 08:24:10.379fzLSYoAO (1/1)

読み返して気付く文章の安定しなさ。
最初と入院直後と最近で凄ぇ違う。


554伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:15:40.68UDuWp+1AO (1/14)

――――

10666「まだ生きてんのか……」

目覚め、その虚ろな目線を泳がせる。
両手両足は繋がっていた。
ベッドに寝かされた身体が重い。

御坂「死にたい訳でも無いでしょうに」

10666「……お姉様か」

声のした方に頭を向けると、視界に御坂美琴その人を入れる事が出来た。

10666「ふむ……じゃ、お姉様。一つ良いかな?」

御坂「……何よ?」

10666「私は明日、何をすればいい?」

10666号は虚ろな目を向けながら、答えを求めた。

御坂「……好きにすれば良いじゃない」

10666「そうなんだよ。それは分かってる。だけど、何も思いつかないのさ」

死んだ独白。

10666「死にたい訳じゃない。でも、生きる理由も無くしてしまった」

御坂「……そんな」

10666「私は私にとって価値の無いものに成り下がってしまった。だから、別に腕が無かろうが惜しくないし、足が無かろうが気にもしない」

自分の左手をまじまじと見つめる10666号。


555伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:16:12.19UDuWp+1AO (2/14)

10666「まぁ、アイツらはもう手は出してこないんじゃないか?悪いとは思うけれどさ」

御坂「……ごめんね」

10666「構わないさ。礼を言うのはそもそもこちらだろうに」

窓から、遠くの空を見る。
嫌味なのか、とても良く晴れていた。

10666「……ま、先の事は退院してから考えるさね、っと」

寝床の柔らかさに、無性に腹が立った。


556伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:16:44.71UDuWp+1AO (3/14)

――――暫く経ったある日。14440号。

14440「10666号、見舞いにきましたよ。とミサカは静かにドアを開けます」

遠慮がちに病室に入ってくる14440号。
そっと戸を閉め、ベッドへと近付く。

14440「眠っているのですか……」

死んだ様に眠る10666号は、今にも消えてしまいそうな儚さを携えていた。

その少女がゆっくりと目を開ける。

10666「……お、14440号か」

14440「えぇ、花を換えに。とミサカは手に持った花を貴女に見せます」

10666「おぉ、ありがとよ」

ニヤッと笑う彼女は、しかし以前のそれとは気色が違った。


557伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:17:42.16UDuWp+1AO (4/14)

何もかも諦めたような、そもそも諦める物事すら失ったような、腐りきった正義。

14440「……早く良くなって下さいね。とミサカは10666号に激励を送ります」

10666「あぁ、そうだな」

彼女はきっと私を見ないのだろう。
誰も周りに居なくなって一人ぼっちになっても、多分私には頼らない。
一人、孤独に戦い続けて敗れるだろう。

それはミサカと言う存在から、余りに異質。
私たちは、謂わば群体。

しかし彼女はそれを良しとしない。

一人で成し遂げる事は、そんなに美徳なのであろうか。

誰かに頼るとは、それほどまでに悪なのだろうか。

10666「そんな事ないさ」

ハッとする。
ネットワーク越しに思考を読み取ったようで、彼女は諭すような口調で話し掛けてきた。

10666「私ほど、前に進むのに他人の力を借りた奴はいない。だから、いざとなったらお前の手も貸してもらうよ」

きっと、彼女の中でその『いざ』は来ない。

彼女は確かに周りの人間に助けて貰ってきただろう。

だが、そのいずれもが、決して自分から救いを求めてはいない。

なんて、傲慢。

なんて、不遜。

なんて、愚直。

彼女はクックッと含んで笑っていた。
ただ、ただ。


558伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:18:11.52UDuWp+1AO (5/14)

――――

冥土「……もう大丈夫だね。研究所に帰るのかい?」

10666「そりゃ直れば家に帰るでしょうに」

冥土帰しは小さな溜め息を吐く。
その呼気に含まれた憂いは如何程だろうか。

冥土「……無茶をせず、体を大事にしてくれれば医者冥利に尽きるね」

10666「へへっ、肝に刻んでおきます」

彼女はスッと立ち上がる。
あれだけ刻まれた身体は、既に元通りだった。

10666「では」

冥土「願わくは――」

10666「二度と担ぎ込まれないように、でしょう?」

後ろ手で別れを告げる少女は、振り返る事をしなかった。


559伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:20:05.53UDuWp+1AO (6/14)

――――10666号、研究所。

10666「ただいま……なのかねぇ」

研究所の入り口で立ち止まる10666号。
聞いた話だと、あの人形は芳川さんだったらしい。
入り難いが――

10666「まずは謝らないと」

自分の気持ちなんてどうでも良かった。

入口でカードキーを使い、セキュリティを解いて中へと入る。
いつもの廊下を慣れた様子で進んでいった。
やはり、実験室に着くのはあっと言う間で。

10666「失礼――」

『お帰りなさい、10666号!』

10666「――はぁ?」

ドアを開けるなり襲いかかってくるクラッカーの破裂音とその紙テープ。
呆気に取られつつ周りを見渡すと、その部屋には見知った顔が沢山いた。

10666「みんな……」

御坂「やっほー」

上条「よっ」

一方「……」

禁書「おかえりなんだよ!」

10666「お前ら……」

10032「クラッカー上手く鳴らなかったとミサカはしょんぼりします……」

19999「気にするな、とミサカは自分のヒモだけ抜けたクラッカーを見せつけます」

20000「ゴムならエライ事になるよなー、とミサカは他愛ない脳内をさらけ出します」


560伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:21:02.98UDuWp+1AO (7/14)

15555「……良く帰ってきた、と言っていいか?」

17600「身体も無事そうで何より」

14440「お帰りなさい……10666号」

10666「それに……」

芳川「よく帰ってきてくれたわ、10666号」

白井「お帰りなさいですの!」

大勢の中にツインテールの少女を見つける10666号。
とある懸念が頭を過る。

10666「黒子さんはいいのかい?」

御坂「あー……事情は話したわ」

白井「水臭いですの。私だって皆さんのお役にぐらい立てますのに」

頭を掻きながら姉は答えた。
そうか。ならもう一つ。

10666「そうかい……それじゃ、この集まりは何なんだい?」

上条「何って……10666号が無事帰ってきた事に対するお祝い、でいいのか?」

10032「まぁ、概ねそうです。驚きましたか?とミサカは10666号に問います」

そうかそうか。
お祝いときたか。
驚きましたとも。

先に謝っておこう。冷静な内に。

10666「芳川さん、黒子さん……二人には随分酷い事をしてしまったと聞いている。本当に済まなかった」

深く、深く頭を下げる。
申し訳無い気持ちは、確かにあるから。


561伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:21:49.96UDuWp+1AO (8/14)

白井「い、いえいえ。特に大した怪我もありませんでしたし」

芳川「寧ろ暫く入院して体が健康になったわよ。気にしないで」

10666「……ありがとうございます」

うん。まぁ、とりあえずはこれで良い。
じゃあ、次に。

10666「で、この催し物の主催は誰だい?」

努めて楽しそうな声を出す。
嬉々として答えたのは10032号だった。

10032「14440号ですよ。とミサカは元気の無い10666号の為に企画を立てた14440号を指名します」

14440「そんな……とミサカは恥ずかしがります」

指で前髪をクルクルと弄っている14440号を見て、抑えられなくなった。
詰め寄り、胸ぐらを締め上げる。

14440「え――え?」

10666「誰が――」

何が起きているのか理解出来ない様子の14440号。
腹の底から、消え入りそうな声を捻り出した。

10666「――誰がやってくれと頼んだ?祝ってくれと願った?何でこんな、今のこんな状況で――」

御坂「ちょ、ちょっと!?」

上条「お、おい!?」


562伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:22:51.04UDuWp+1AO (9/14)

誰も見ていないのか?
私以外はアイツを見ていないのか?
そうじゃないだろう?
そうじゃないんだろう?

――いや、アイツは、大丈夫なんだろ、私。
何で怒ってんだよ。バカじゃねぇの。

周りがざわめきだした。
さて、自分を殺せよ、私。
もうどうでも良いんだろう?

10666「――なんてな。ビックリしたかー?」

14440「へっ?」

ニヤリ、と。
何時もの様に笑えただろうか。
14440号を抱き締め、グルグルと振り回す。
宛ら大喜びしている様に。

14440「わ、わー!?」

10666「嬉しいに決まってんだろバカヤロー!!みんな心配掛けたね!」

さっきのは何なんだよ……
ドッキリ返しさ!
本気でビックリしたんだよ!

途端に騒がしくなる室内。
だが、しかし――――私は世界の外側にいたのだ。


563伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:24:42.52UDuWp+1AO (10/14)

――――10666号、飲めや歌えやの研究室内。

10666「ふぅ……アイツらテンション高ぇなぁ」

紙コップに入ったドリンクを飲みながら、壁際にもたれ掛かる。
今は上条争奪戦で騒がしいので、輪から外れた次第である。

一方通行も、そこにいた。

10666「やぁ。一方通行にも迷惑掛けたね」

一方「構わねェよ……しかしオマエ」

10666「言うな。それこそどうでも良い。どうでも良いんだよ」

どうやら一方通行は分かっているようで、私は少しばかり安心した。

一方「……13510号は?」

10666「さてね。男と駆け落ちでもしてんじゃねぇの?」

一方「――その男ってのは、コイツじゃねェか?」

一方通行がポケットから一枚の写真を出す。
そこに写っていたのは、成る程確かにあの男だった。

10666「へぇ、有名人かい?」

一方「……第二位、垣根帝督だ」

ほう。そりゃまた凄い御仁を引っ掛けたもんだ。
13510号の手腕に恐れすら抱くね。

10666「……ま、客観的に見りゃ悪人じゃなさそうだったな。なついてたし」

一方「ケッ、ンな訳ねェだろ。何か裏があるに決まってやがる」

10666「根拠は?」

一方「……コイツは俺がぶっ殺した小悪党だからなァ」


564伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:25:30.55UDuWp+1AO (11/14)

ふむ、成る程。

10666「そうかい。改心でもしたのかねぇ」

一方「あり得ねェな」

10666「クックッ。それはギャグのつもりかい?目の前に1万近く人を殺した奴がいるんだが……」

一方通行は口を紡ぐ。
そうさ、何も言えないだろうね。

10666「何かあれば、その時考えるさ。それに、その『何か』が分かっていればもう乗り込んでるだろう?一方通行」

一方「……ハッ、ご名答だ。クソガキ」

10666「お褒めに預かり光栄至極。クソ野郎」

言葉とは裏腹に、私たちは笑いあっていた。
これが、自分を嘲るって事か。



上条争奪戦は、何故か白井黒子が勝利していた。


565伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:26:13.55UDuWp+1AO (12/14)

――――10666号、その夜。

研究所の屋上で一人、星を見ていた。
街の灯りに掻き消され、明るい星しか、見えない空。

まるで、この街そのものだと思った。

麦野「……ここにいたの」

10666「おや、随分遅い時間のお客さんだ」

空から目を離さずに、声に答える。
足音から、近寄ってきている事が分かった。

麦野「呑気ね」

そして私の隣、同じように手すりに体を預けた。

10666「何がだい?」

麦野「奪われたのに、取り返さない」

その声色には、侮蔑が混ざっていた様に感じた。


566伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:26:56.47UDuWp+1AO (13/14)

10666「そもそも私の所有物じゃないと思う訳さ」

麦野「ふーん。そ」

そこで私は彼女の顔を見た。
意地悪く、ニヤけている。

麦野「何だ、まだ腐ってないじゃない。いや、前より鬱屈としてるかも」

彼女は心底嬉しそうな声で言った。

麦野「死んで尚餓えた狼みたいな目をしてるわ」

10666「……何しに来たんだよ」

麦野「別にー?無事を確認しにきただけなのにゃん」

10666「そうかい。ありがとにゃん」

麦野「止めて何か恥ずかしくなってきた」

10666「……ククッ」

諦めきれないのかね。全く。

いや、もう全部が――絡め取られているのかもしれないな。

空を見て。

必死に、必死に見えない星を見ようとした。


567伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/06(水) 02:27:43.31UDuWp+1AO (14/14)

開始書き込み忘れたけど、とりあえず投下終了。


568VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/06(水) 03:31:25.56BKbaSSE00 (1/1)

乙です!
黒子ェ・・・


569VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/04/06(水) 21:39:38.01wDzo2Pue0 (1/1)

おっつー
なぜ黒子が…


570VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/04/06(水) 23:36:25.47/2kcNUMAO (1/1)

>>1はなんか詩人的だよね
良い意味でポエミー


571伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/13(水) 22:44:13.546GR3AStAO (1/1)

今>>261の二番目書いてるからちょいとここ遅くなるかも。


572伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:10:51.56fJKxpiaAO (1/24)

生存報告とかいらねぇよな。
モチベ上がらね。投下開始。


573伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:13:21.85fJKxpiaAO (2/24)

――――翌日、研究所、10666号の部屋。

10666「同期開始」

フォース「……同期完了。ネットワークリンク異常無し。オーケーだ、マスター」

フォースとの接続チェックを済ませた少女は、その場で軽くステップを踏む。

彼女の右腕には今、白いガントレットが付けられている。
ガントレットと言っても西洋風の物々しい感じではなく、柔らかな布――ゆったりとした手袋、または上着の袖の様な物だった。
関節の動きを邪魔するは無いが、簡易装甲としても十分実用に耐えうる素材で出来ている。
軽いゴムのようにも見て取れた。

10666「ふむ、問題無しっと」

そのガントレットの先端にフォースの鉤爪部が可変し装着され、宛ら熊の腕の様になっていた。

鋭いその爪が外側へとめくり上がり、小さな盾のように変形する。

10666「可動部位も問題無し、か」

フォース「行きますか?」

10666「勿論だ。構える事にはそうそうならないだろうが、今の私にはお前しかない。頼んだぞ」

フォース「イエス、マスター」


574伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:13:50.49fJKxpiaAO (3/24)

部屋を出て、芳川の部屋を二度ノックする。

返事は無かった。

10666号はドアに向かって話し掛ける。

10666「ちょっと、出掛けてきますわ」

ただそれだけ。

彼女は当ても何も無い状態で、昼間の、あの星空へと繰り出した。


575伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:14:33.93fJKxpiaAO (4/24)

――――10666号、学園都市、昼。

歩くと言う行動は、頭を活性化させる。
例に漏れず彼女の思考は、椅子に座って悶々としているよりかは僅かに澄んでいた。

――――第二位。

一方通行との戦闘にて死亡。
しかしその身体の破片は隈無く回収され、能力のみを行使する「モノ」へと成り果てたらしい。

10666「ククッ、相変わらずイカれてやがる」

だが、どうあってか今は身体を組成し蘇生した。
これはどういう事だ?

麦野『――――』

10666「かねぇ、やっぱり。短絡的にも思えるが……」

可能性としては、奴ら。
大人しくしているのか、はたまたこの間の戦闘で著しく消耗してしまったのか、動きが見えない。

10666「様は、悪意があるか否かだよな」

少し見ただけだが、13510号は健やかだった様に思えた。それは、喜ばしい事だ。

10666「……会いたい。会って謝りたい」

街は広く、彼女はちっぽけだった。


576伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:15:28.60fJKxpiaAO (5/24)

――――学園都市、三時過ぎ

街を宛もなくさ迷っていた彼女は、昼食を取っていない事に思い至った。
軽く腹に何か入れておこうと、前に行ったパスタバイキングの店に立ち寄る。

期間限定のバイキングはもうやっていなかった。
席につき、仕方無くカルボナーラを注文する。

随分無駄な事をしているという実感は、ある。

目標が見つからないのに、目標に向かって走らなければならないのだ。
歩きたくもなる。

濁った思考が頭を撫ぜていた。
そんな10666号に、声が掛かる。

「お久しぶりです。ボクもご一緒して宜しいでしょうか?」

10666「……また随分懐かしいな。よ、パスタのダチ公」

兵1「アハハ。覚えててくれたみたいで何よりです」

中性的な顔立ちと口調から、10666号からは男と思われている彼女。
その人が、10666号のテーブルの向かいに座った。


577伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:16:00.77fJKxpiaAO (6/24)

お互いに、注文したパスタを食べながらの他愛のない会話。
少なくとも一方は。

兵1「……そういえば、悩みは解決しましたか?」

10666「あぁ……それ聞く?」

フォークを置いて、水を飲んで一息付く。

10666「アイツな、男と一緒にどっか行っちまってな……ま、幸せならそれも良いかもしれないが……」

兵1「えぇ」

10666「ま、気になる訳だよ。私もさ。だからちょっと行方を探ってる所だよ」

兵1「…………」

深刻な顔で黙り込む。
それを見た10666号は手をふって否定した。

10666「ま、そんな重い話でもないさ。気にしないでくれよ」

兵1「……早く会えるといいですね」

10666「そうだなぁ」


578伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:18:01.31fJKxpiaAO (7/24)

――――学園都市、夕方。人気の無い小高い場所。

10666「ふう……」

手すりにもたれ掛かり、赤い空を見つめる10666号。
太陽は、慰める様な優しく、そして厳しい光を湛えていた。

10666「さて、どうするかな?」

大した手掛かりも無し。
第七学区も結構回った。

目を閉じても、世界に助けを求める事すら出来ない。

やりたい事って、何だったかな。

今の私は、ただの惰性だ。
もうとっくに諦めていると言うのに、諦められてもいない。


いや、これは賭けだ。
今日一日の、賭け。


わざわざ人気の無い場所を終着点に選んだ。


来いよ。
来てくれ。


餌は私だ。それだけじゃ不足か?

麦野『アンタを殺して――』

アレがまだ有効だと言うのなら、今は絶好のチャンスだろう――?




やれよ
ヤれよ
殺れよ








579伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:18:34.61fJKxpiaAO (8/24)







「――こんにちは」









580伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:19:12.91fJKxpiaAO (9/24)

彼女は歓喜した。
口角が否応なしに吊り上がってしまう。
餌は功を成し、大きい魚が掛かる。

後は釣り上げるだけ。
深く、深く針を食い込ませろ。

声は、聞き覚えのある、聞き覚えの無い声。

ゆっくりと、10666号は声の主に振り返った。

「そんな所で、何をしてるの?」

高い声色の通り、女。







御坂美琴みたいな、御坂美琴だった。


581伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:19:55.72fJKxpiaAO (10/24)

10666「――夕日を見ていたのさ」

「へぇ、ロマンチック。私もご一緒していい?」

違う所と言えば、可愛らしい私服に身を包んでいる所だろうか。
10666号はフォースに信号を送り、それを受けた彼女の相棒は右腕を爪へと変化させる。

10666「いや、残念だがご遠慮させていただくわ。御託は良いから、かかってこいよ」

「……そうね。それが一番簡単」

10666号は頼りのフォース――爪を形成したそれを真っ直ぐ構える。
今の彼女に出来るのは、爪を打ち込んで電撃を全力で流すのみ。

対して御坂美琴に似た少女は電気を器用に操り、砂鉄の剣を作り出した。

「冥土の土産に何かある?」

一時の間。

10666「そうだな。お前は誰だ?後期生産のミサカなら、色々こっちもやる事があるんでね」

「――ぷっ、アハハッ。違う違う、全く逆よ」



「私を呼ぶとすれば、ミサカ00000号。フルチューニングかな」


582伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:20:23.50fJKxpiaAO (11/24)

10666「なっ――」

00000「行くわよ、量産型」

少女は、始めのミサカ。

左手に砂鉄剣。



右手に銀色のコイン。

00000「『超電磁砲』」

それは10666号に迫り――――


583伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 02:21:12.44fJKxpiaAO (12/24)

あー。もういいや。
投下終了。


584VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/17(日) 09:33:42.54PBtDRFDSo (1/1)

そろそろ登場だと思ってた、00000号。
しかし、これはもしや・・・・


585伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:00:14.28fJKxpiaAO (13/24)

投下開始


586伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:00:52.23fJKxpiaAO (14/24)

――――学園都市、夕方、それぞれの紅焼け。

打ち止め「――っ!!?」

一方「どォした?」

打ち止め「た、大変!?って――」



10032「――っ。お姉様!」

御坂「どうしたの?」

10032「10666号が――」



15555「あのバカ……」



17600「…………くっ」






587伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:01:38.02fJKxpiaAO (15/24)

――――小高い丘、赤く染まる。

10666「ぐぅっ……」

『超電磁砲』の先端に爪を突き出し、フォースの電磁フィールドによって僅かに反らす事が出来た。
しかし、反動によって後ろに吹き飛んでしまう。

00000「ほら、寝ている暇はないわよ?」

10666「っ!?」

慌てて飛び起き、バックステップ。
今しがた倒れていた場所に、砂鉄剣が幾つも突き刺さった。

10666「遠隔操作もお手の物ってか。まるでお姉様だな」

00000「それは当然よ。だって、私は御坂美琴に一番近くなるように調整され続けたから」

爪を解除し、フォースを喰らい付かせんと00000号に飛ばす。
が、それは砂鉄の壁に阻まれた。

10666「――チッ!」

00000「無理よ。貴女じゃ勝てない。私は限りなく御坂美琴と相似しているの」

側にあったベンチが浮き上がる。足の部分は鉄製だった。

投げ飛ばされたそれをフォースが貫き砕く。
その後ろから撃ち抜かれる『超電磁砲』が、彼女の軽い身体を吹き飛ばした。


588伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:02:28.73fJKxpiaAO (16/24)

10666「かは――」

彼女も電撃使いの端くれ、咄嗟に相殺しようと電気を発して軽減した。
しかしそれでも尚、『超電磁砲』は折れず引かず、そして強かった。

ドサリ、と力無く倒れる10666号。
フォースはそれと連動して動かなくなる。

00000「へぇ、供給元は本体なんだ」

10666「く、そ――」

00000「終わりね」

止めを刺そうと00000号は倒れ伏した少女に近寄り――そして背後から来る一撃を砂鉄剣で受け止めた。

00000「危ない危ない……」

15555「くっ、『疾風迅雷』!」


589伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:03:39.95fJKxpiaAO (17/24)

不意打ちが失敗してしまう。
素早く大きく15555号は距離を取った。
取った先に、追い付かれる。

00000「遅いのね」

15555「――『雷華崩拳』!」

近寄ってきた者を迎撃しようと、拳に稲妻を乗せて突く。
だがそれも紙一重で空を切った。

その隙を埋めるように、何処からともなく銃弾が00000号の腕を掠める。

00000「へぇ、良い腕。だけど、丸分かり」

電撃を徐に物陰に打ち込み、聞こえる悲鳴。
17600号は身体の自由を奪われた。

17600「ぐぅっ……」

15555「『雷天大壮』、『断罪の剣・二刀』!!」

走って十歩程度の距離を一息の間に詰める15555号。
両手には砂鉄剣、その刃を振るった。

00000「おっ、これは速いわね……」

鋭く素早く、そしてそうであるが故に重く必殺の一撃を、敢えてギリギリで避けていく00000号。


590伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:04:17.15fJKxpiaAO (18/24)

15555「ラァァッ!!」

突き、切り、払い、落とし、叩き、薙ぐ。
その何れも敵の身体を捉える事は出来ず、15555号は最後の渾身の一振りを躱された所で、その勢いを保ったまま盛大に地面に倒れ伏した。
『雷天大壮』の反動で、全身の筋肉が例外無くズタズタになってしまったのだろう。



彼女は、正に圧倒的だった。



00000「あら、終わり?」

10666「くっそ……」

痛む身体を起こそうとするが、足が言うことを聞いてくれない。

00000「なら、これで――」

「そこまでよ」「そこまでだ」

00000号が振り上げた腕を下ろし、無防備な自分を晒した。
チラリ、と侮蔑と嘲りの目線を向ける。

00000「あら、いらっしゃい。『御坂美琴』に『一方通行』」


591伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:06:37.33fJKxpiaAO (19/24)

一方「お前……」

00000「最初に自己紹介よ」

彼女はスカートの裾を少しだけつまみ上げて、軽く一礼した。

00000「ミサカシリーズ初期型、00000号(フルチューニング)よ。出来れば、二度は会いたくないけれど」

御坂「まだ、こんな妹達が……でも、もう大丈夫よ。目的が何か知らないけど、私たち――」

00000「待て」

超電磁砲の甘い言葉を、手で遮る少女。
顔は呆れで歪んでいた。

00000「そうね、確かに魅力的だわ。仲良しこよし。でもね、私はそんなつもり無いの」

御坂「――どういう、事?」


592伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:07:22.64fJKxpiaAO (20/24)

ニヤアァァ、と気味悪く笑うミサカ00000号。
それは、単純に御坂美琴を嘲笑っていて。

00000「アハ。アハハッ。分かんないの?分かんないよね? じゃあ聞くよ。『何で私は救われなかったの?』 じゃあ聞くよ。『何で妹達だけで満足したの?』 じゃあ聞くよ。『何で番外個体みたいなミサカの可能性を考えなかったの?』」

一方「オマエ……」

00000「私たちは生まれ、使われ、捨てられる! それはDNAマップが有る限り永遠! だと言うのに、何故そんなのうのうと生きていられるの!?」

御坂「――――っ」

00000「そうさ、隠匿されていれば気付く事さえ儘ならない!ねぇ、御坂美琴――」





「――アンタを抱いた男は何人いるんだろうね?」








593伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:08:18.45fJKxpiaAO (21/24)

御坂「――――ひっ」

レベル5の、しかしか弱き少女が震えに耐えながら、膝を折る。
考えてしまった。
僅かながらの、しかしあり得なくは無い可能性。

一方「その減らず口を閉じねェと、痛い目見てもらう事になンぜ」

一方通行がチョーカーのスイッチを入れる。
どんな能力者であろうと、こうなった一方通行を打ち負かすのは容易ではない。
だと言うのに、彼女の余裕は揺るがない。

00000「あーあ。私もここで死んじゃうのか」

一方「ケッ、そォ簡単に死なせる訳ねェだろォが」

00000「違う違う。番外個体の件で学ばなかったの?」

そう言って、彼女は自身の心臓の辺りを指差した。

00000「『シート』と『セレクター』は知ってるでしょ? 私も条件付けされててね……『妹達以外との戦闘』を行うと、能力が暴走して――」



「――真っ黒焦げになるの♪」



一方「……クソッタレ」


594伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:09:16.29fJKxpiaAO (22/24)

「――って事は、妹達ならオッケーなんでしょ?ってミサカはムカつくオマエの背中を蹴り飛ばす☆」

00000「え――」

00000号の身体が、吹き飛ぶ。
今度の不意打ちは成功のようだ。

番外個体。
一方通行と戦う為に造られた彼女が、そこにいた。

00000「アンタ……っ」

受け身を取り、素早く起き上がる00000号。
憎々しげに、番外個体を睨み付ける。

番外「キャハッ☆腰に来ちゃったかな、プロトタイプのおばあちゃん?」

00000「じょーだん。この位でぶっ壊れる程柔な調整受けてないわよ、消耗品」

一方「……何しに来やがった」

問いに答えるは、番外個体。

番外「アイツをヤっちゃえるのはミサカシリーズだけなんでしょ?なのにアイツはお姉様クラス……なら、一番何とかなりそうなのミサカじゃーん?」

一方通行は、番外個体の背中に強さを見る。
それは意思、そして力。

番外「たまには護らせてよ、ミサカにもさ」

一方「……ケッ、ヤバくなったら容赦しねェぞ」

番外「りょーかい☆」

アハハ――

甲高い笑い声が響く。
00000号の、嘲笑。


595伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:10:05.98fJKxpiaAO (23/24)

00000「良いね良いよ番外個体! 全くアンタらミンナイカれてる!」

それを無視し、番外個体は10666号に声を掛けた。

番外「動けそうだね☆」

10666「あいよぉぉ……」

番外「17600号と15555号を退けといて。流れ弾に当たっても知らないよ☆」

10666「オーケー、だ。っと!」

10666号はよろけながらも、ゆっくりと立ち上がる。
17600号は気を失っていたが、15555号は意識があった。

10666「お?」

15555「体が動かないだけだ。ダメージも無い」

10666「分かった。後は任せろ」

一方通行の元へと二人を運んだ。
一方通行は一方通行で、震える少女の側についていた。

10666「お姉様……」

御坂「…………」

ここ数日で、彼女の心に架かった負担は如何程なのだろうか。
私たち以上に、魂はひび割れているはずだろうに。

さて、幸い15555号の乱入のお陰で身体はまだ動く。

10666「お前と共闘って初めてだな。宜しく頼むぜ、妹」

番外「こちらこそ、お姉ちゃん☆」

番外個体が言葉を返したタイミングで、二人は仕掛けた。


596伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/17(日) 23:12:04.07fJKxpiaAO (24/24)

投下終了


597VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/04/18(月) 02:21:26.02Q3I9J90AO (1/1)

おつーん


598VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/04/18(月) 13:49:34.76qaNeJSoq0 (1/1)

なすーん


599VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/21(木) 19:53:03.20WHmtlZcL0 (1/1)

ワークテイカー


600伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:08:13.48q7pFmDbAO (1/13)

待たせた……か?

投下開始。


601伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:10:52.75q7pFmDbAO (2/13)

10666「いけっ!」

番外「シッ……!!」

10666号がフォースを飛ばし、番外個体がそれに追従するように鉄釘を幾つか突き抜く。

00000「――ちっ」

だが00000号は鉄釘の進路を反らしつつ、噛みつかんと襲い掛かってくる機械を躱していった。

10666「凄ぇな、それ」

番外「『堕天超電磁砲(レールガン・ワースト)』ってトコかな☆」

10666「ハハッ、上等ぉ!」

二人は猛攻を掛けていく。じわり、じわりと。


602伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:12:51.04q7pFmDbAO (3/13)

00000「(うーん、厄介)」

攻撃を捌きながらも、その少女は焦りを覚えていた。

向こうの息が合いすぎているのだ。
番外個体が強烈な電撃で鉄釘を飛ばし、その隙を10666号のフォースが埋める。

――ならば、まずは弓兵を止めるに限る。

フォースが突っ込んできたタイミングで、00000号は脚に電気信号を直接送る。

走れ、と。

00000「ふっ!」

番外「な――」

番外個体の懐に潜り込み、拳を一撃打つ。
僅かに身体を傾け、それを凌ぐ番外個体。

付かず離れず。これで、

10666「くそっ!?」

フォースを飛ばすのは簡単に出来ない。
下手をすれば、番外個体ごと薙ぎ払ってしまうのだから。

番外「――ナメるな、プロトタイプ!」

00000「局地戦型が、汎用型に敵うのかしらね?」

空かさず番外個体は戦闘スタイルを近接に移行し、鋭い蹴りを放つ。
鞭の様に00000号を襲うそれは、しかし腕を盾に防がれる。

そして、番外個体はその足を下ろす勢いのまま。
00000号は逆の手を構えて。

前者は鉄釘を、後者はコインを。
電撃に乗せて加速させ、打ち出した。

お互いの頬を、チリ、と掠める。

二人は、苦しく楽しそうに笑っていた。


603伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:13:49.43q7pFmDbAO (4/13)

無粋にもそこに斬り込む爪。

再び右腕にフォースを纏った10666号が背後を取るが、対象は半身になってそれを容易く避け、クルリと一回転。
回し蹴りが腹部に埋まり、吹き飛んだ。

再び距離を取る00000号。

00000「あー、良いわね。アンタ、なかなかじゃない」

番外「そりゃどうも☆」

00000「悪くない目をしてる。同業、相憐れむわ」

番外「バッカ。ミサカはとっくに割り切ったんだけど☆」

00000「そ。それにしても……アンタ、弱いのね」

10666号は、また立ち上がる。
足はガクガクと震え、暫くは立っているのもやっとだろう。


604伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:14:56.16q7pFmDbAO (5/13)

10666「へっ……ぬかせ」

番外「……下がっててよ。10666号じゃ厳しいとミサカは思う――?」

番外個体の両足が、ガクリと力を失う。
結果生まれる、隙。

00000「余所見するって、バカなの?」

番外「(やら、れた――)」

00000号が行なったのは、筋肉への電気信号の撹乱。
番外個体に『超電磁砲』が直撃する。
噴煙が舞い上がった。

10666「番外――!」

一方「番外個体!!」

煙が晴れ、番外個体の姿が見える。
多少の相殺があったのか、一応体の原型は留めていた。

意識は、亡い。

番外個体に駆け寄る一方通行。
クス、と笑ってミサカはそれを一瞥した。

00000「もう何も考えず、私を殺せば話は早いのに。貴方も大概面倒くさいのね」

一方「……クソが」

御坂「……」

不気味にユラリ、と御坂美琴は立ち上がった。
手には、コインを。
00000号に向けていた。


605伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:16:46.78q7pFmDbAO (6/13)

御坂「もう……いなくなっちゃえ……」

一方「バッ――」

一方通行の制止が、甲高い、本当に甲高い叫びで遮られる。

00000「キヒヒィィィ――!! やっと割り切ったの!?やっと覚悟出来たの!?それとも――」

「――ただパンクして、イカれただけなの?」

そんな声も、聴こえていないようで――

御坂「もう――いなくなってよ――妹達なんか、いなくなってよ――」

――虚ろな瞳で、ただ、繰り返した。

00000「イイ、イイ――たまんないわ!そうよ、本音はそう!!私たちを疎んで――」

10666「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

咆哮。空に向けて。

誰がこんな、何でこんな事になるんだ、と。

フラつく足を必死に動かして、10666号は御坂美琴の側に行った。


606伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:19:34.08q7pFmDbAO (7/13)

頭を引き寄せ、撫でる。

御坂「――もう、いや」

10666「だーいじょーぶだ、お姉様。大丈夫。だからそんな寂しい事言わんでくれ」

そして、彼女は意識を手放した。
……眠っている。

00000「気持ち悪い」

あぁ。そうか。

それは、侮蔑を孕んだ悲鳴。

一方通行も、お姉様も、目の前のミサカも。

みんな、みんな。

みんな救いを求めている。

でも私には何も出来ない。
私の器は13510号でいっぱいで、もう誰も入れないのに。

でも、今、可能性があるのは、私だけ。

10666「――なら、ここで私がお前に大逆転すりゃ解決か」


607伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:20:21.11q7pFmDbAO (8/13)

00000「出来るの?その身体でさ!」

バチン、と電撃が10666号を襲い、呆気なく膝を付く。
もう疾うに限界なのだ。

一方「クッ――」

10666「まだだ……せめて私が倒れるまでは、手を出さないでいてくれ。一方通行……」

渾身の力を奮って、しかし立ち上がるだけ。

00000「無様ね」

10666「ヘへッ……違いねぇ」

こんな状況だからこそ、彼女は笑う。

10666「――なぁ、何でこんな事するんだよ」

もう持たないのは自分が一番良く知っていた。
せめて、少しだけでも真実を。

00000「貴方をぶっ殺さないと私が捨てられちゃう。私だって死にたくないわ」

10666「奴らか……」

00000「貴方も大概よね――」

クスクスと笑いながら。



「――愛しの可愛い可愛い、あの子を奪われるんだから」



ドクン、と。

魂が鼓動した。


608伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:23:05.71q7pFmDbAO (9/13)

唇が震えながら、声と言う名の音を紡ぐ。

10666「それは――垣根――」

00000「確かそんな名前ね。寝取られる気分はどう?」



そうか――

10666「よかった――」

00000「はぁ?」



私はまだ――

私はまだ。

私はまだ!!



力を奮っていい!!!






609伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:23:55.42q7pFmDbAO (10/13)

00000「え――」

確かに自分から10m、少なく見積もってもそれ以上は離れていたはずの10666号を、00000号は見失った。

そして、自らの足元に見るのだ。

両の手を固く握り――指の間に三枚ずつコインが挟まっている――弓の様に身体を引き絞る彼女を。

10666「『爪牙(レールガン)』……」

00000「この――」

10666「『超電磁砲(クロウ)』!!」

弓弦は放った。
片腕につき三本の爪痕が、稲妻を傍らに空を傷つける。

それは、咄嗟に後ろに跳んだ00000号の肩を切り裂いた。
狼狽。


610伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:25:03.36q7pFmDbAO (11/13)

10666「15555号!!フォース!」

15555「了解だ!」

00000「なっ!?」

ノーマークだったのだろう。
15555号が砂鉄に語りかけ、それは剣と為りて空に浮かぶ。

フォース「固定完了」

10666「オーケー、最初からフルスロットルだ……行くぞフルチューニング。捌ききれるか――」

「『電撃姫の財宝』!!」

彼女と、15555号と、フォースの力がそれぞれ絡まり合い、砂鉄剣のダンスパーティーが開かれる。

手を抜けはしない。
全力で、ありったけ。

連続した着弾の轟音が鳴り響く。
だが、演算を止めはしない。

剣が無くなるまで。
この身が焼け付くまで。

13510号を迎えに行くまで、止まりはしない。

10666「おおぉぉっ!!」

噴煙が辺りを覆い、視界を塞ぐ。


611伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:26:20.18q7pFmDbAO (12/13)

10666「……どうだ?」

砂鉄剣も全て使い切り、不測の事態に備えてコインを握り込んだ。

そこで、ズブリ、と。

嫌な音を聞く。

肉を裂くような汚いそれと、追随して神経を昇ってくる焼け付く様な痛覚。

腹部に、砂鉄の剣が深々と刺さっていた。

00000「……やるわね。正直危なかったわ」

一方通行「10666号!」

砂煙が晴れる。
00000号の前に、土塊が盾の様に立ちはだかっていた。

10666「――チクショ」

遠隔操作された砂鉄剣が、勢い良く引き抜かれ、傷口から血が迸る。

意識が遠くなっていって。

ダメだ、負けるな――負けたくない。

前へ――前へ――

彼女は地に伏した。
驚く程静かに。


612伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/22(金) 11:26:58.66q7pFmDbAO (13/13)

投下終了。


613VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/22(金) 19:39:55.47S6BSbhV+o (1/1)

財宝キターーーー(゚∀゚)ーーーー!!
乙です


614伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/23(土) 23:28:06.696nYq6wTAO (1/8)

投下開始


615伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/23(土) 23:28:45.946nYq6wTAO (2/8)

――――

ミコト「あら、お久しぶりね」

あぁ、全くだな。

ミコト「やりたい事、見つかった?」

あぁ。

ミコト「それは上々」

でもダメだった。

ミコト「確かに強いけど、一方通行なら余裕なんじゃないかしら」

まぁ、そうだな。でも――

ミコト「どうしたいの?」

出来れば私がやるべきだった。

ミコト「何故?」

前に、進みたい。

ミコト「そう」

でも、悔しいけど動けないや。

ミコト「ボロボロだもの。仕方無いわ」

アハハ――

ミコト「……眠ってて。アンタの道、作ってあげる」


616伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/23(土) 23:30:02.906nYq6wTAO (3/8)

――――紅く輝く丘。

00000「ふふっ、お仕事完了っと」

愉快そうに笑っている00000号の前に、一方通行が立ち塞がる。

00000「先に治療しなくていいの?死ぬよ?」

一方「オマエを始末してからでも余裕だ」

00000「始末!始末!何て素敵な響きなのかしら!」

ジリ、と空気が凍る。
互いが互い以外の情報をシャットアウトし、世界を限定する。

故に、不意に掛けられた声に反応出来なかった。



「誰が死ぬのかしら」



00000「え――」

『雷撃の槍』が00000号の体を突き抜ける。咄嗟に体に流れる電気を逃がすが、ダメージは確実に入っていた。


617伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/23(土) 23:31:26.126nYq6wTAO (4/8)

一方「!?――オマエ?」

00000「貴女、しぶといのね……っ!?」

両者一様に驚きを見せる。

少女の腹部の傷は塞がっていた。

10666「さて、やりましょうか」

00000「この死に損ない!」

コインを弾き、次いで10666号に迫る『超電磁砲』。

それは、微動だにしない彼女の前で制止し、空へと逸れて――消えた。

00000「なに……っ!?」

10666「ダメねダメ、全くダメよ。アンタに足りないのは威力経験精度努力電気量演算速度――」

10666「――そして何よりも、誇りが足りない」

余裕の表情で、00000号を一瞥する。
それは、今までの彼女から、余りにかけ離れていた。

00000「ど、どういう――」

10666「自己紹介してくれたのに、こっちはしてなかったわね」



「常盤台中学二年、レベル5の第三位――」



10666「『超電磁砲』の御坂美琴よ。以後宜しく」


618伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/23(土) 23:33:35.206nYq6wTAO (5/8)

それは、宣言。

妹達の身体を我が身とし、世界に顕現する事への、言霊。

10666号の身体は、確かに御坂美琴と同一になったのだ。

00000「な……バカな事を言うな!頭でもおかしくなったの!?」

10666「バカかどうか、試してみればいいじゃない」

10666号は首のチョーカーと右腕の装甲を外し、そこらに投げた。

いや、そもそも彼女は――

00000「くそっ、失せろぉぉぉっ!!」

『超電磁砲』が10666号へと放たれる。
それに返す様に、『超電磁砲』を重ねた。

10666「ヌルいのね……どぉりゃあぁっ!!」

掛け声と共に、力を放出する。
ぶつかり押し合っていた超電磁砲が、一瞬で00000号側に押し込まれて炸裂する。

00000「きゃあぁっ!?」

10666「寝てんじゃないわよ」

怯んだ00000号に、回りに散らばっていた砂鉄を集めて組み上げた剣を振りかざした。
00000号も負けじと砂鉄剣で鍔競り合う。

が、その抵抗も虚しく00000号の砂鉄剣はあっさり砕かれてしまう。

00000「くそぉっ……!!」

10666「アンタが、オリジナルの私に勝てる訳ないじゃないの」

00000号は混乱していた。全く訳が分からない。
10666号の様子は、まるで――


619伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/23(土) 23:34:20.376nYq6wTAO (6/8)

天空に黒き雲が集う。10666号は未だかつてない電流を身体に纏っていた。


悟る。
オリジナルは、私には越えられない、と。

10666「もう勝つとか考えてる段階じゃないわよ?……耐えれるかしら?」

空から、雷が落ちてきた。


620伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/23(土) 23:35:47.686nYq6wTAO (7/8)

――――

轟雷が大地を貫いた後に、少女が倒れている。
00000号の意識は、余す所無く刈り取られていた。

10666「こんなとこかしら……」

一方「……オマエ、どォした――いや、誰だ?」

振り返る彼女の少し得意気な顔が、出会った当初の御坂美琴を思い起こさせる。

10666「私は、ミサカミコト。でも、今はそれより――」

ミコト「この子の身体はもうとっくに限界よ。後は頼んだわよ、一方通行――」

一方「な――」

言い残して、彼女もまた地に伏した。

その場には、同じ顔ばかり。
皆、傷ついている。

一方「……クソッ」

一言そう漏らした少年は、どのような気分だったのだろうか。


621伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/04/23(土) 23:36:52.666nYq6wTAO (8/8)

投下終了。

ツイッター誘われて始めてみたけど面白いね。


622VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県)2011/04/24(日) 00:09:06.77IFXOAnmG0 (1/1)

クーガーわろたwww乙


623伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:05:32.50n7l0NxAAO (1/22)

二週間も開いちまったね。全く情けない。

投下開始。


624伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:06:17.16n7l0NxAAO (2/22)

――――

ん――

ミコト「あら、お目覚め?」

ここで起きた事を、目覚めると言うならな。

ミコト「そう」

私は……どうなった?
アイツはどうなった?

ミコト「大丈夫よ。アンタは前へと歩いていけるわ」

――まさかアンタ。

ミコト「身体、勝手で悪いけど……借りたわ」

……そうかい。ありがとうな。

ミコト「アンタの望みを、叶えただけよ」

それでも……いや、だからこそさ。

ミコト「ふふっ……じゃあ、どういたしまして、かしらね。ほら。早く起きないと、みんな待ってるわよ?」

うん。そうだな――


625伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:06:45.80n7l0NxAAO (3/22)

――――病院、見知った天井。

10666「くくっ、いよいよもって常連だな……上条さんの事を笑えないねぇ」

ベッドから上体だけを起こし、周りを見る。
腕を枕にして、机に突っ伏して寝ているミサカがいた。

10666「……お前も物好きだよな」

14440号が、彼女の側にいる。

特に意味は無く、10666号は頭を撫でた。


626伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:07:25.88n7l0NxAAO (4/22)

――――冥土帰しの病院、冥土帰しの研究室。

木山「は、ははっ……はははっ……」

気の抜けた様な笑いを溢しながら、女性は乱雑に椅子に腰かけた。
背もたれが悲鳴をあげるが、気にする様子は無い。

冥土「どうしたのかい?」

木山「ふぅ……これをどうぞお読みになられて下さい」

冥土「……ふむふむ――ふむ」

手渡された書類に目を通していく冥土帰し。
真剣な目付きが、その文章や図、表の一つ一つを射抜いている。

木山「驚きでしょう?私も非常に驚愕しています」

女性は満足そうな、不満足を吐き出していた。

木山「10666号のAIM拡散力場の二重展開。両力場の相互干渉による打消の確認無し。力場の展開は正常。彼女の精神状態は至って健康。比較的類似した能力であると推測されはしますが――」

彼女は目を片手で覆って天井を仰いだ。
表情はうまく見えない。

木山「――彼女は間違い無く『多重能力者(デュアルスキル)』です。それもとびっきり、純粋な」


627伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:08:21.29n7l0NxAAO (5/22)

――――10666号の病室

14440号は慌ただしく部屋を出ていった。
粗方私が目覚めた事の報告だろう。

身体は……動く。
冥土帰しは神様かもしれないな。

くつくつと、腹の奥から笑いが這い上がってきた。

手近にあった据え付けの洋服タンスを開ける。
中には自分の常盤台の制服、そしてチョーカーとフォース、次いでそのガントレット。

下着も確認出来た。
手早く病院の寝間着を脱ぎ、ショーツを下ろした。

彼女は今、布一枚も纏ってはいない。
身体を軽く洗浄用のボディータオルで吹き、汚れを落とした。

10666「姉さん」

ミコト『何かしら?』

薄い水色のショーツに足を通した。
スポーツブラを付けて、カッターシャツを羽織る。

10666「良かった、わりかし姉さんも浅くなったみたいで。手伝える?」

ミコト『えぇ。構わないわよ』

ボタンを上二つだけ除いて止めていく。
スカートを身に付け、ホックを止める。
シャツはスカートの中に、その上から常盤台のデニムを着込んだ。

10666「そうか……サンキュ。ごめん」

ミコト『良いわよ別に。他ならぬ妹の頼みを聞かずして何が姉か!ってね』


628伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:13:19.34n7l0NxAAO (6/22)

髪を手で軽く整え、左耳の回りの遊んでいる髪を髪飾りで纏める。
チャリ、と静かな部屋に音が響いた。

ガントレットに腕を通し、チョーカーを首に巻く。
体内の電流をチョーカーへと集め、自動的に電源が入る。
フォースが独りでに動き出した。

フォース「お目覚めですか、マスター」

10666「あぁ。インスタントリンク、頼む」

フォース「了解。……同期完了、ネットワークリンク以上無し。オーケーだ、マスター」

10666「ご苦労さん」

フォース「それと、ミコトさん」

ミコト『うん、お疲れさま』

手を思いきり下に伸ばす。
パンッ、と軽い音がして身体に芯が生まれた。

靴をいつもの物へと履き替え、彼女は病室を出る。

休んでいる暇は無い。
一方通行を捕まえて、00000号の行方を聞かねば。
どうせ何かしら拘留はされているだろうし、情報は喉から手が出る程欲しい。

遥か背後で14440号の声が聞こえた。

全く、無事なのは見て分からんかねぇ。


629伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:15:39.75n7l0NxAAO (7/22)

――――冥土帰しの研究室へ向かう廊下

14440「貴女はまだ安静が必要なんですよ!?とミサカは10666号を引き止めます」

10666「動けるんだから問題無いだろう」

14440「そういう事では……いつか死にますよ!!とミサカは10666号の無茶を指摘します」

その言葉に、早足で歩いていた10666号は歩みを止めた。
振り返る彼女の目には不思議な自信が満ちていた。

10666「死にはしないさ」

14440「根拠がありません!」

10666「私を殺せるのは――」

彼女は再び歩き出した。
それは冥土帰しの部屋へと向かっていて、また新たな目標へとも向かっていたのだ。

10666「――きっと13510号だけさ」


630伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:16:16.59n7l0NxAAO (8/22)

――――13510号、何処か。

垣根「調子はどうだ?」

13510「特に問題はありません」

垣根「そりゃあ上々だ。この部屋に居れば、お前は触媒として魔術の一部となれる。なに、好きに寛いでて構わない。俺も一緒にいられないのが残念だぜ」

13510「貴方は……」

垣根「俺がこの部屋に居ると魔術が……あぁ、良くは分からねぇが悪影響らしい。済まねぇな」

13510「いえ……大丈夫です」

垣根「そうか。なら、もう行くぜ」

クシャリ、と頭を撫でられた。
暖かい。

彼は部屋から出て、そして私は不思議な力が自分の中を通り抜ける気分を今一度理解するのだった。


631伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:17:03.68n7l0NxAAO (9/22)

――――

定規「あの子は?」

垣根「もう指定位置だ。後は儀式だがなんだかが終わるまで待機するだけだ」

定規「簡単な仕事……ふふっ。そう思わない?帝督」

垣根「あぁ……いや、違ぇな。『仕事』じゃねぇ、俺の『目的』はまた別だ」

定規「そうだったわね」

少女は少年の腰に腕を回し、その意外に鍛えられた身体に撓垂れ掛かる。
自嘲気味に笑って、少年は少女の華奢な身体を軽く抱き返した。

定規「……どうなるのかしらね」

垣根「さぁな。天下の第一位様なら何とかするんじゃねぇか」

少年は天を仰ぐ。くすんだ天井があっただけだった。

垣根「……心理定規、俺はな」

定規「うん、聞いてる」

垣根「俺はな、自分が世界で一番だと思ってた。こんな凄ぇ能力が使えるんだし、まぁ見て呉れも悪くはねぇ」

定規「あら、自分で言うの?」

小さい苦笑。

垣根「茶化すなよ……ま、そう思ってた。一方通行が第一位なのも、上の見る目が無いと考えてた。こう見えても俺は努力家でな……自分で言うのもなんだけど」

定規「……そうね」

垣根「だがどうだ。いざ殺り合ってみれば、俺は負けちまった。死んじまった」

定規「……うん」


632伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:17:54.90n7l0NxAAO (10/22)

垣根「聞けば世にはあの一方通行ですら手こずる奴らがごまんといるらしいじゃねぇか。そこで漸く気づいたんだ」

定規「……」

垣根「『俺はなんてちっぽけなんだ』ってな。こんな事に気付くのに随分時間を掛けた辺り、間違いねぇ」

定規「……そんな事ないわ」

垣根「ははっ、そうかもな……だけど、少なくとも一番ではないだろ?」

定規「……そう、ね」

垣根「あの爺さんも、根っこは俺と同じなんだろうな。違いと言えば、あの爺さんはこのプランの『結果』を、俺は『過程』を求めてるって事だな」

定規「……いいのね?」

垣根「……あぁ。俺も未練がましいが、見てみたいのさ……世界の『一番』って奴をさ」

垣根「もし、それを止められるようなら……それはそれで、いい」

定規「そう……なら、私は――」

定規「その時が来れば、私は――貴方と死んであげるわ」

垣根「どうせ皆死ぬぜ?」

定規「貴方と、死にたいの。分かるでしょ?」

声。笑い声にも聞こえ、泣き声にも聞こえた。

垣根「……そっか」

定規「そうよ」











少年は携帯電話を取った。

垣根「完了だ、爺さん」


633伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:18:54.47n7l0NxAAO (11/22)

――――冥土帰しの病院、冥土帰しの部屋

10666「失礼、先生……っと、揃ってるのかい?」

部屋に入った少女は、そこに何人かの者を見る。
第一位に第三位、そして医者に研究者。

奥に、ミサカ。

一方「起きたか」

御坂「……もう動けるの?」

10666「あぁ、問題無いよ。00000号も居るとは好都合だ。随分大人しいんだな?」

00000「勝算も無い状態で逃げやしないわよ」

冥土「彼女も一応治療させてもらったよ。酷い怪我だったからね」

木山「彼女のAIM力場は、そこの彼の呼び出しで来た女の子が覚えていったよ」

10666「アイテム……滝壺さんが来てたのか?」

一方「一応なァ。万が一ってのもあるしな」

10666号は、00000号の目をじっと見つめた。
嘘も虚言も許さないと、目が口を切る。

10666「13510号は何処だ?」

00000「さぁね。知らないわ」

フォースが鋭く00000号の首に食らい付き、壁にめり込む。宛ら首輪の様に縫い付けられてしまった。

10666「もう一度聞くぞ。お前を『拘束して』『恐喝して』『拷問して』やる」

10666「13510号は何処だ?」

00000号がハッとした顔つきになり、そしてニヤリと――心底可笑しそうに笑った。


634伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:21:31.89n7l0NxAAO (12/22)

00000「……最初は垣根帝督のアジトに居たわ。でも今は多分、違う場所に居ると思うわ」

10666「それは何処だ?」

00000「残念だけど、本当に分からないわ。だけど、やろうとしてる事は知ってるわよ」

シン――と無音が響く。

10666「……話せ」

00000「……アイツらはね、10666号を触媒にして、凄まじい兵器を創るつもりらしいわ」

00000「そうね。適当な表現をするなら『神』とでも言うのかしらね」

10666「神、だと?」

00000「そう。最高の器に最高の魂を無理矢理入れるの――神様を、堕ろすのよ」

御坂「……それ、似たような話をアイツから聞いた事があるわ。確か『御使堕し』だったかしら」

00000「多分合ってるわ。それを故意に起こす事、それが奴らの目的」

一方「……差し詰め魔術側をぶっ潰すつもりなンだろうな」

00000「多分ね。私も自分で調べただけだからそこまで詳しくは知らないわよ」

10666「調べた?」

00000「自分の仕事を、詳細も知らずにやれはしないわよ」

10666「……そういえば、何故私を?」

00000「アンタは向こうからすれば、状況を打破為兼ねないファクターなのよ」


635伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:22:01.07n7l0NxAAO (13/22)

10666「……一方通行でも上条さんでも無く、私が?」

00000「……13510号が今向こうにいるのは――」







「――化け物になったアンタを救う為よ」









636伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:22:36.02n7l0NxAAO (14/22)

10666「――な、ん、だと?」

00000「アンタを助ける為の魔術を使うって騙されて、触媒になろうとしてるのよ」

10666「――だとしても!私は……いや、成る程な」

00000「理解した様ね。アンタが無事ならあの子は魔術を使わなくても良い。向こうが欲しいのは大人しいあの子、って訳」

10666「ちくしょう……っ」

御坂「……あのさ」

00000「ん、何かしら?オリジナル」

御坂「アンタそんな秘密ポロポロ喋って大丈夫なの?だって、フレンダさんにもストッパーが着いてたじゃない……その『セレクター』だかは、機能しないの?」

10666「あ、それは――」

10666号が目を閉じて、開く。
黒く澄んだ瞳が、仄かな橙色を宿した物へと変わった。

「多分大丈夫だと思うわ」

一方「――ン?」

御坂「え?」

木山「……ふむ」

冥土「ほう」


637伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:23:19.01n7l0NxAAO (15/22)

00000「この感覚……やっぱりアンタ」

10666「はぁい。暫く振りね、00000号」

木山「やはり……君は、御坂美琴か」

御坂「え、はい……」

研究者の女性は首を横に振ってそうではない、という意を示す。

木山「君じゃあない。10666号の事だよ。正確に言うなら、10666号の中の人格とでも言うべきか」

10666「それも不適当ですよ、木山先生。私は彼女の中に居て、彼女に非ず。とても不安定で、しかし確実に御坂美琴であるだけです」

御坂「……意味が分からないわよ」

木山「簡単に言えば彼女は……彼女は、『多重能力者』だ。10666号と、御坂美琴との、ね」

一方「ほォ……でも、理論的には不可能ォだったよなァ?」

木山「机上のそれは所詮空論だったということさ。正直私も驚いている」

10666「へぇ、この状態が――はいはい分かったわよ」

目を閉じて、開く。
瞳は夜のように暗かった。


638伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:25:52.08n7l0NxAAO (16/22)

10666「この状態が多重能力者って訳なのか……」

冥土「ふむ、今は10666号だね?自由に入れ替われるようだね」

10666「まぁ。手伝ってくれる、らしいですし。しかし面倒だな……フォース、姉さんの意識データ変換して外部音声に出力出来るか?」

フォース「イエスだ、マスター」

フォース『ヘローヘロー、聞こえるわね?』

00000「わお」

木山「しかし本当に凄いな……出来れば今すぐにでも詳しく調査したいが……」

10666「それはまた今度で頼むよ、先生」

ニカッ、と彼女の懐かしい笑顔。
釣られて木山もクスリと笑ってしまった。

フォース『ま、最初の話に戻るんだけど……その子、多分条件規制掛かってないわよ?』

00000「ぎくり」

御坂「……なんですって?」

フォース『だって私は御坂美琴だもの。条件範囲内よ?』

御坂「……御坂美琴は私よ」

フォース『でも私も、一つも違わず御坂美琴よ』

御坂「――違うっ」

00000「ふふふっ、面白っ」

御坂「何が可笑しいのよ!?」

00000「だって、見なさいよ」

そう言って彼女は、順番に二人を指し、最後に自分を指した。


639伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:26:30.09n7l0NxAAO (17/22)

00000「御坂美琴が一人、御坂美琴が二人、御坂美琴が三人」

00000「元々こういう目的だったんだから、当然じゃない。ま、そっちの量産型は魔術が絡んでそうだけどさ?」

10666「さてね。かもしれんな」

御坂「……私っ、私が本物の御坂美琴なのよ……っ」

一方「あァ、そォだ。そしてアイツは10666号で、ソイツは00000号だ」

御坂「……」

一方「それに間違いは無ェだろ」

御坂「……ふん。で、何でそんな嘘を?」

00000「だって素直にやったら勝てないじゃないの。それくらい分かるわよ」

10666「……そもそも、何でお前は?お前は何故『居る』?」

00000「……私は天井亜雄製の妹達。コスト度外視で、限り無く手加減無く御坂美琴に近寄ろうとした個体よ」

一方「……ケッ、天井か」

00000「で、主が死んだ私は宙ぶらりんになったの。そこを回収されて今に至るって訳よ。妹達の中ではトップクラスの自信はあるし、事実トップよ。量産型や後期決戦型なんかじゃ私は止められない」

「私を捻り潰せるのは……オリジナルだけよ」

御坂「…………」


640伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:27:24.87n7l0NxAAO (18/22)

00000「悔しい、死ぬほど悔しいわ。そして今も憎い。なんでアンタがその席に座ってんのよ。なんで私じゃいけなかったの?」

フォース『アンタが私じゃないから。それ以上でもそれ以下でもないわ』

00000「……そう、分かってるわよ。そのくらい、ね」

御坂「……」

フォース『そして私もまたそこの御坂美琴足り得ない。私はこの子の中にいる御坂美琴。だから、そんなに気に病まないで……私』

御坂「……アンタ、強いのね」

フォース『この子の中に居れば……こうもなるわ、きっとアンタも』

フォース『本当に綺麗な……何も無い場所だもの』


641伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:28:01.58n7l0NxAAO (19/22)

――――

10666「そうか……13510号は、私を……まだ、『居る』と思っていたんだな」

御坂「うん……言わない方が良いと思ったけど、こうなっちゃね」

10666「ハハハ……全部私のせいか」

一方「……」

10666「なんて顔しやがる。これから失敗を取り返しに行くんだ。これほど愉快な事は無いよ」

00000「ありがと。『拘束して』『恐喝して』『拷問して』くれて」

10666「おぅ。まぁ、『仕方無い』よな、喋っちまってもなぁ」

一方「……クカカッ」

10666「……クックッ」

冥土「はぁ……壁を直す身にもなってくれないか?」


10666「いや申し訳ないです、先生」

彼女はフォースを腕に戻した。壁には案の定大きな穴が空いている。


642伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:28:31.00n7l0NxAAO (20/22)

10666「なぁ、00000号」

00000「何よ?」

彼女は、手を差し出した。

10666「助かりたきゃ、掴め。手を出さない奴は……なかなか救ってもらえないぞ?13510号みたく、私がいるなら別だけどな」

00000「私、は……」

少女は戸惑い、手を泳がせ――そして掴んだ。

00000「もう……嫌」

10666「そうだな。全くその通りだ」

00000「うっ……ううぅ……」

室内に、雨が降っている。

10666「……全くもって、その通りだよ」


643伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:29:21.60n7l0NxAAO (21/22)

――――

フォース『……ん。何か始まったようね』

10666「分かるのか、姉さん?」

御坂「姉さん……」

フォース『場所も大まかにはね。アンタの道を作るって約束したでしょ?』

10666「頭が上がらないぜ、ったく」

10666「さて、迎えに行くとしますかね、お姫さんよ!」


644伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/08(日) 02:30:11.50n7l0NxAAO (22/22)

投下終了。もうすぐ終われると思う。思うだけ。


645VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/05/08(日) 22:52:24.81y9nn+MdJ0 (1/1)

凄い楽しみ。 1からぶっ通しで読んだ。
もう出来るならこのまま何時間でも1秒も間をおかずに
どんどん書いてあと数スレは続けて欲しい程に。

続き、楽しみに待っています。


646伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/12(木) 23:46:59.71upg1tTmAO (1/1)

待ってる人がいるのに書けんのは辛いね。ごめんねもうちょっと掛かるよ。


647伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 00:56:07.39b6JfPl4AO (1/13)

壁]・ω・)
誰か居たら投下する、誰もいなかったら溜める、そんな量しか書けてないけど……投下しようか?


648VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)2011/05/14(土) 01:07:01.86ZhY6DTfYo (1/2)

戻ったか


649伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:11:03.96b6JfPl4AO (2/13)

よっしゃ投下するね。


650伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:13:59.43b6JfPl4AO (3/13)

――――第23学区、とある建物内。終わりへ向かう各々の物語。

老人「……気取られたようだね」

スーツ「えぇ。しかし、計画通りです。いえ、邪魔は無いに越した事はありませんが……」

老人「もう間に合わんよ。後は奴らがいくら好き勝手に動こうとも結果は変わらぬ」

老人「だが……一つ後悔が有るとするなら」

スーツ「……何か?」

老人「彼女と……10666号とは一度直接話をしてみたかったね」

老人「君は……知っているはずだろう?なぁ、10666号。あの世界は、とても寂しいと思うだろう?」

スーツ「先生……」


651伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:15:04.21b6JfPl4AO (4/13)

――――第23学区、駐屯所。

兵1「さて……所謂『上条勢力』が動き出したようだね」

兵2「はい。どうやら触媒の少女の在処は割れているようですね。23学区への最短ルートを行軍しています」

兵1「オーケィ……ボクらの役目は『その他』の足止めだ」

兵2「我々の最優先事項はコードネーム『双頭の化物(オルトロス)』、10666号の防衛ライン突破阻止、でしたな」

兵1「ハハッ、全く物々しい渾名だと思うよ。まぁ、その犬っころさえ通さなければ最悪大丈夫だ」

兵1「それに、後ろには『心理掌握』に『未元物質』が構えている。万に一つも単騎突破は不可能さ」

兵1「故に、ボクらはひたすらノコノコ現れた上条当麻を虐め抜くのさ。現代兵器の前には、あんな奴は足手まといにしか為らないよ。彼は戦術単位の戦闘に慣れていない。対集団では無力なんだ」

兵1「しかし向こうにとっては切札だ。上条当麻を失う事は戦意的な意味でも敗北に等しい。何が遭っても守られるだろうね。故に向こうの戦力はいくつか削がれてしまう」


652伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:16:57.54b6JfPl4AO (5/13)

兵1「だと言うのに、彼はきっと先陣を切ってくるよ。賭けても良いね。幾多の強敵を打ち負かしてきた自信と、そして内に秘める確固たると思い込んでいる正義感がそうさせるさ」

兵1「それでボクらが落ちるって言うならやるが良いさ。そんな幻想は、ぶっ殺してやるよ」

兵2「良い気合いですね。いよいよとあって、奮い立っているのですかな?」

兵1「あぁ……この作戦が成功すれば、世界の悪は根絶やされ、そして誰も泣かなくていい世の中になるんだ……最初に聞いた時は半信半疑だったが、実際に『神様』は降りようとしている」

兵1「『助けて、神様』と何度願ったろうか」

兵2「…………」

兵1「だけれど、何も起こらなかった。ボクを助けたのは、銃と……この発育の悪い身体だけだったな。おかげで男に見られて楽だった」

兵2「男に見られて楽でした、と?」

少し、表情が翳った。

兵1「ゲイに連れていかれた事はあるね……ふふっ、だけどボクが女だと分かると諦めるのさ。あれは未だに訳が分からないね」

兵2「……もう、そんな事はないでしょう……何処にも」

兵1「そうさ。だからボク達も……あと少し戦おう」


653伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:17:53.14b6JfPl4AO (6/13)

――――駐屯所より多少中央に近い場所、垣根帝督。

垣根「さて、術式発動まで後少し……か」

定規「あの子達も動き出したらしいわね」

掌握「ふふっ……無駄な事を」

垣根「そうだな……ハハハッ!」

少年は心底愉快そうに笑い出した。
不思議と、心理掌握はその笑いに苛立ちを覚える。

掌握「急に何よ?」

垣根「いやいや、済まねぇ……こっちの話さ。楽しみがもう一つあるのを思い出してね」

掌握「……貴方、何を――『何を考えているの?』」

垣根「さてな」

掌握「……まぁ良いわ。これが終われば私は抜けさせてもらうし、それは約束でしょ?」

垣根「あぁ、間違いねぇ」

掌握「しかし魔術兵器開発なんて……関わるとは思ってなかったわ」

垣根「そりゃそうだろうな」

――んなもん作ってねぇんだからよ。


654伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:18:48.30b6JfPl4AO (7/13)

――――23学区、ターミナル前、10666号。

10666「さて、お姫様はこの広い学区の何処かって訳だが……」

10666号は僅かに後ろを振り返った。
そして不敵に笑う。

――お人好しの多さに。

上条「この学区もよくよく悪用される場所だなぁ……」

御坂「これで終わり……よね」

一方「さァて、ショータイムといくかァ」

15555「よし……問題無い」

番外「出遅れないでね、プロトタイプ☆」

00000「嘗めないで、後期型」

そして。

神裂「随分広域に渡って魔力を感じますね」

ステイル「あぁ。大層な大魔術だよ」

インデックス「凄く、嫌な感じがするんだよ……」

魔術サイドの三人も、共にいた。

と言う事は――

10666「しっかし神裂さんとステイルさんが手を貸してくれるなんてね……しかし、『早かった』ね?」

神裂「……これは仕置きです。我らから、ここへの」

10666「漸くお達しが出たようだね。好き放題暴れられて、さぞかし良い気分じゃあないのかい?」

神裂は首を横に振って否定する。

神裂「そんな……無駄な争いはなるべくは避けたいものです」

10666「くっく、全くだ」


655伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:20:48.04b6JfPl4AO (8/13)

「すまん、手間取ったにゃー」

不意に背後から掛けられた声に全員が振り返る。
そこには三人、『グループ』のメンバーが揃っていた。

土御門「サポートはこっちが受け持たさせて頂く」

海原「後衛は任せて下さい、御坂さん達」

結標「さて、とりあえず作戦を実行したいのだけど……聞いてるかしら?」

10666「あぁ、聞いてる。だがまぁ……再確認も兼ねて頼むよ」


656伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:22:07.98b6JfPl4AO (9/13)

作戦の内容はこうだ。

23学区は入口が一ヶ所、ターミナルからしか侵入する事が出来ない。

ミサカミコトの話ではもう少し奥に反応を感じる、というらしい。
彼らの目的は23学区の探索である。

だが、確実に仕掛けられているだろう伏兵を捌きながらの作業になる。
命の危険が傍らにある行為だ。

そこで結標の能力を使い、まず結標が単騎である程度奥地まで自身の転移を行う。
安全確認、後に一方通行グループ(一方通行、ミサカ10666号、ミサカ15555号、番外個体、ミサカ00000号)が同地点に潜入。
一方通行と番外個体、そしてその他のミサカの二手に別れての探索。

残った上条当麻グループ(上条当麻、ステイル・マグヌス、神裂火織、インデックス、御坂美琴、海原光貴、土御門元春、結標淡希)がそのまま正面から探索を開始する手筈だ。

だが、上条グループは正面から突破する事になるだろうから、戦力を多く取っておかないといざと言うときに敗走してしまう可能性がある。

また、突入グループが少人数なのも出来るだけ気取られないようにするためであり、また上条グループには万能に戦えない者(上条当麻、インデックス)もいるのでこの組み合わせは間違ってはいない。


657伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:23:03.46b6JfPl4AO (10/13)

各連絡方法はミサカネットワークや携帯、結標などの複数を使用出来るので、最悪分断の可能性も無い。

第一目的は13510号の探索だ。

しかし第二目的がある。
故に上条当麻が必要なのだ。

既に魔術が手のつけられない様な状況になってしまっていては、最早上条以外に解決出来る手段は少ないだろう。
よって上条は正面から突入グループが探し当てた場所まで行軍しなければならない。

上条当麻を転移出来れば話は早いのだが、上条当麻は自身に掛けられる異能を悪意の有無に関わらず打ち消してしまう。
よってやはり中央突破が必須となる。

ここで突入グループが光ってくる。

任務を終えた一方通行らが後ろから攻め立て、上条グループと共に敵を挟撃、殲滅後合流出来るのが理想の流れだ。

つまり突入グループには早さが求められる。

上条グループは囮も兼ねてじっくりと進み、一方通行グループはその騒動の中素早く目標を見つけ出さなければならない。

不安要素は、敵の戦力が不明な事だろう。


658伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:23:45.49b6JfPl4AO (11/13)

10666「オッケー、確認完了だ。質問は無いかな?」

禁書「……私は待っていた方がいいのかも?」

10666「いや、魔術の知識に関してシスターの右に出る奴はいないよ。現場での策を私たちに授けてくれ……謂わば軍師さ」

番外個体「上条当麻グループにミサカ達は要らないの?ネットワークでの通信出来ないよ?」

10666「それも考えてたが、ネットワーク持ちは極力探索に使いたい。何らかのジャミングでずっと繋がらなかった13510号に繋がるかもしれないし……まぁ賭けみたいな物もある」

上条「俺たちは固まって行くのか?」

10666「そっちも二つに別れると良いと私は思う。上条さんとシスターは別れた方が良い。いざというときに守られる対象が二人いるグループはまずい」

上条「……じゃあ」

上条、御坂、海原、土御門、結標

インデックス、神裂、ステイル

上条「って所か、戦力的に考えて」


659伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:25:03.66b6JfPl4AO (12/13)

10666「あぁ。そっちは結標さんのお陰で合流も楽だろう」

結標「私がやられたら?」

10666「一番マズい。上条さんやシスター、一方通行は確かにいざ最終的に活躍するかもしれないが、結標さんが落ちたらそこまで辿り着く事すら危うくなる。AIMジャマーやキャパシティダウンは私たちも見つけ次第壊しながら進むよ」

結標「責任重大ね……」

土御門「まぁそれもあってこっちが多いんだがな」

ステイル「もし片方が落ちたら?」

10666「そんときゃもう片方で何とかするしかねぇな」

海原「何とかなるのですか?」

10666「絶対無理だな」

御坂「そんな――」

10666「私らに求められる事は、迅速さ、正確さ、素早い連携、そして不敗さ」

そこまで言って、彼女は顔を伏せて呟いた。

10666「……あと。まぁ、不殺なら最高だよな」

彼女は顔を上げた。
瞳には強さが浮かんでいる。

10666「質問は以上だね?……じゃ、行こう」

23学区が、禍々しい気配を放つ異界と化している。




まるで、世界の終わりが凝縮されているような――そんな気が、した。


660伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/14(土) 01:26:13.33b6JfPl4AO (13/13)

投下終了。
ようやくラストステージ手前だよ。


661VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県)2011/05/14(土) 02:33:20.29ZhY6DTfYo (2/2)


さぁどうなるか


662伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:15:20.69Prbp5pOAO (1/19)

やっべ終わらね。長くなるしちまちま吐いてく。


663伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:17:47.38Prbp5pOAO (2/19)

――――23学区、ターミナル前

結標「じゃ、行ってくるわね」

一方「一人で大丈夫かァ?」

結標「えぇ。貴方が着いてきてくれれば安心だけど、二人運ぶ手間もあるしね」

一方「そォか、気ィつけろ」

10666「頼んだよ」

結標は力強く頷いた。
精神を移動先へと向け、そのまま身体を持っていく。
彼女は敵陣の奥深くへと単身乗り込んだのだ。


664伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:18:21.30Prbp5pOAO (3/19)

――――23学区、中部。

結標「――よっ、と。特にジャマーなんかは無いみたいね……ま、隠密向けの能力だし――」

彼女が広めの空き部屋にテレポートして、安堵出来たのは僅か二秒だった。

けたたましく鳴り響く警報、それが侵入者の発見を顕していた。

結標「(―――っ!!?ヤバい!?)」

結標は乱れる演算を、足を踏ん張る事で持ち直そうと試みる。
深く息を吸い、長く呼気を吐く。
喧騒は、暫し外へ。

結標「――よし」

一言、音だけを残して彼女は居なくなった。


665伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:18:48.03Prbp5pOAO (4/19)

――――

スーツ「確かに警報を鳴らしはしましたが……テレポーターはどこにいるのですか?」

老人「知らんよ」

スーツ「……それは、如何様な?」

老人「私が見ていたのは今はターミナルだけだよ。彼女が居なくなったから警報を鳴らしただけさ、全域にね」

スーツ「成る程……」

老人「ふふ……」

スーツ「……お、入り込みましたな……何が可笑しいので?」

老人「いや、彼らはこちらの戦力を把握しているのだろうかね?」

スーツ「いえ。恐らくその線は薄いでしょう」

老人「ならいい」

老人は嫌らしい笑みを浮かべて、空気を食んでいる。

老人「さぁ、幻影と踊るがいい。存在しない大軍とね……」


666伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:19:16.07Prbp5pOAO (5/19)

――――23学区、ターミナル前。

少女が再びテレポートを行い帰ってくる。
額には冷や汗が見て取れた。

10666「どうだった!?」

結標「……すぐ気付かれたわ。奴らはこの学区内を良く把握しているようね」

10666「くっ――!」

ギリ、と拳が軋む。
さて、どうするか――

考える暇は、無いようだ。


667伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:19:43.00Prbp5pOAO (6/19)

――――23学区、ターミナル前。とある部隊の女隊長。

兵1「狙撃班、スタンバイ」

『オーケー』

兵1「気取られるなよ……一方通行は狙うな、跳弾で死ぬぞ。上条当麻、コードネーム『禁書目録』を狙え。あそこは脆い」

『イエス、マム』

兵1「武運を祈る。能力者部隊、部隊長。そちらはどうだ?」

『頗る結構であります。脳波に異常を来す者もおりませぬ』

兵1「……すまないな、お前たちを物みたいに扱ってしまって」

『隊長が気に病む必要はないのであります!我々一同端から隊長に命を預けている所存でございます!』

兵1「……そう言ってくれると、ボクも気が楽だ。これが終わったら、皆に飯でも奢ろう」

『サー、楽しみにしています。ご武運を!』

兵1「あぁ、グッドラック」


668伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:21:49.84Prbp5pOAO (7/19)

兵2「隊長、そろそろです」

利発な女性は、端整な男に笑いかけた。
それは逸る気持ちの現れでもあり、また、自嘲でもあった。

兵1「さて、諸君。いよいよこの時だ。この場に至って多くは語らん。勝て、そして死ぬな!」

『イエス、マム!』

兵1「狙撃班の攻勢と奴らの動きを見て、我々白兵部隊が奇襲を掛ける。準備をしておけ!」

『イエス、マム!』

兵1「上等だ。……狙撃班、頼んだよ」

『合点承知ぃ!』

少年少女らの、遥か彼方から銃弾の雨が降り注いだ。


669伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:22:56.58Prbp5pOAO (8/19)

――――

一方15555神裂00000御坂10666番外海原「「「「――――っっ!!?」」」」

飛来した銃弾が着弾する前に反応出来たのは凡そ半分。

一方15555神裂10666「「「下がれ!!」」」」

それに対処出来たのは更に半分。

一方「くそがァっ!!」

白き少年は銃弾のベクトルを操作して射線を逸らし、

神裂「――『七閃』!」

神の一部は、人を超えた反射神経で銃弾にワイヤーを這わせ、

15555「『断罪の大剣』!!」

妹達は砂鉄袋をぶち撒け、巨大な剣を10666号と自分の前に突き刺し、

10666「『乱舞超電磁砲』!!!」

そして彼女はそれを盾にしてコインケースを一つ分――凡そ50枚掃射した。

ステイル「ちっ……」

海原「マズいですね」

御坂「何処から!?」

僅かに遅れて反応が間に合う、咄嗟の後衛。

一方「角度的にどっか高ェ所だが……ざっと目視は出来ねェな」

飛来する銃弾全てを演算しきっている一方通行が、目を細めて答えた。

上条「どうする!?」

10666「……迷ってる暇はねぇ。今は一方通行が守ってくれてるが、このままじゃジリ品になるのは間違い無い」


670伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:23:59.93Prbp5pOAO (9/19)

10666号が、僅かな時間深く考え込む。

――行きましょう。

10666「――だな。プラン通り、私たちは突っ込む。神裂さん」

神裂「分かっています」

10666「お姉様、海原さん」

御坂「だ……大丈夫よ。任せてちょうだい」

海原「責任を持って、彼らを護衛致しましょう」

10666「よし、別れるぞ!攻勢が止むまで防衛しながら移動。私らは狙撃部隊を叩いてから、後に作戦を開始する!」

一方「――速攻だァ、結標ェ!」

結標「やるわよ!」

一方通行らの座標が移動する。
向こうでは激戦は必死だろう。

神裂「インデックス、下がって下さい!」

ステイル「僕の後ろから離れるんじゃないよ」

インデックス「う、うんっ」

御坂「アンタ、流れ弾に当たるんじゃないわよ!!」

上条「分かってる!」

土御門「頼むぞ、槍」

海原「はぁ……出来れば女性をエスコートしたいものです」

結標「あら失礼ね、私は数に入らないのかしら?」

海原「失礼、訂正が。御坂さんをエスコート、でお願いします」

一方通行の抜けた穴をすかさず埋める異能達。

彼らは素早く逆方向へと駆け出した。
勝利する為に、勝利すべき為に。


671伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:24:41.41Prbp5pOAO (10/19)

――――23学区、中部。

一方「……ン?」

10666「どうした?」

一方通行グループらが転移してきた場所は割りと開けていたが、その妙な雰囲気を一方通行は感じ取った。

一方「妙だな……」

番外「……そうだね☆」

00000「人の気配が無い?テレポーターの話は嘘って訳?」

いくら回りを見渡しても、確かに人一人を見つける事すら出来なかった。

15555「……デコイか?」

10666「かもしれないな……狙撃を潰すまでは固まって行こう。番外個体」

番外「ん?」

10666「電池役頼んだよ」

番外「りょーかいっ、ひひっ☆」
一方通行の首の辺りを見ながら、番外個体は意地悪く笑った。

一方「……銃声が近ェ。ついてるぞ」

10666「よし、行こう!」


672伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:25:14.14Prbp5pOAO (11/19)

――――23学区、ターミナル周辺

『隊長、気取られたみたいだ。奴らが――いや、来やがった!』

兵1「よし、現時点で現場を放棄。被害を最小限に押さえて撤退しろ。一方通行の相手はするな、やるだけ無駄だ」

『イエス、マム!』

兵1「よし、奴らの動きを見て攻め立てる。油断するなよ!」


673伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:28:39.93Prbp5pOAO (12/19)

――――23学区中部、何処かの屋上、10666号

10666「『二連超電磁砲』!!『三連超電磁砲』!!」

一方通行グループは見敵から素早く奇襲を掛けた。
にも関わらず敵の連携は見事な物である。
良く鍛錬された兵である、と僅かに関心を覚えた。

相手に能力者が居ないと見られるので、攻め手はミサカらで十分事足りる。
一方通行は銃弾から盾となって妹達を守っていた。

その後ろから、尽きない弾薬を打ち続ける鉄砲隊。

00000「ほらっ、『超電磁砲』!」

番外「次にミサカに痺れちゃうのはどいつー?」

15555「『雷の暴風』!」

雨霰と襲いかかる電撃が、次々と敵兵を昏倒させていく。
狙撃部隊だからだろうか、中距離での攻撃が拳銃程度しか見えなかった。

部隊長「ちっくしょう!下がれ、下がれ!!」

非常階段へと雪崩る狙撃兵達。
しかしそれを逃がす訳にはいかない。
せめて再起不能にしなければ意味が無いのだから。

15555「――前へ出る。援護頼んだ、『疾風迅雷』!」


674伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:29:58.49Prbp5pOAO (13/19)

15555号が駆け出すと同時に、その背後から3種類の『超電磁砲』が道を作るように前方を貫いた。

標的は先頭の隊長格。

右手に力を込めて、腹部を狙って振り抜いた。

15555「『雷華崩拳』!」

しかしそれは勢い良く空を切った。
ギリギリ、半身になった隊長格は重く速いそれを躱せた。

いや、躱したのだ。

15555「っ!?」

部隊長「ところが、どっこい!」

――コンバットナイフ!

銀色を視界に捉えた段階で、素早く後ろへ飛び退く。
判断が数瞬遅れていたら、確実に首を刈られていたであろう軌跡を描いていた。

追撃とばかりにもう一方の手に握られたベレッタから銃弾が打ち出される。

だが、銃弾と15555号との直線上に砂鉄剣が空から突き刺さった。
それは細く剛健な壁となってその一撃を耐えて、絶えた。

しかし、手練――

と、思考する間もなくその男は体当たりしてきた。
余りに稚拙な行為に面食らい、吹っ飛ばされてしまう。
だが、ダメージはごく僅かな物である。

しかし、位地は先ほどより味方よりになってしまった。

部隊長「残留部隊!コードB!」

叫んで、一人で突貫してくる男。


675伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:31:44.21Prbp5pOAO (14/19)

00000「ふん」

余りに愚策なそれを鼻で笑い、雷撃の槍を飛ばす00000号。
だが、それが間違っていた。

撃つのなら必殺であるべきだった。

まだ撤退しきれていない狙撃部隊が一斉に物陰から突貫してきたのだ。
先程まではその臆病な盾から弾丸を発するだけだった奴らが、だ。

よろけながら、槍を受けた男は笑った。

部隊長「――喰らいやがれ」

男は手に握っていた何かを地面に叩きつけた。

それは激しい光を放って、一方通行らの視界を阻んだ。
スタングレネードである。



一方通行は、光を反射していない。

一方「ぐっ……」

目を眩まされる一方通行達。
不意の攻勢にも対応出来るように一同身構えるが、不思議と何も起こらない。

目が見える様になるまで数秒間、そして見えたのは濃い煙幕。

15555「――やられたっ!?逃げられるぞ!」

一方「……ふン」

一方通行が風を操って煙を吹き飛ばした。

奴らは影も形も無くなっていた。
屋上から地上を覗くと、蜘蛛の子を散らす様に逃げている狙撃兵らが見て取れた。


676伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:32:12.60Prbp5pOAO (15/19)

10666「……ま、いいか。これで暫くは弾の雨も止むだろうし、再起不能クラスにゃ痛めつけた」

こちらの損害は皆無。
作戦を続行するのには何の問題も無かった。

一方「じゃ、行くぞ。時間が惜しい」

10666「あぁ。じゃ、また後で落ち合おう」

彼女らも二手に別れ、探索に入った。

街の深く深くへと、沈んで。


677伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:33:11.95Prbp5pOAO (16/19)

――――23学区、上条

上条「……止んだ、か?」

土御門「どうやら一方通行たちがやってくれたようだな。これで暫くは持つだろう」

御坂「ちょ、ちょっと休憩……」

海原「大丈夫ですか、御坂さん」

電撃使いの少女は、能力の使いすぎで息を切らしていた。
銃撃の殆どを一人で捌いていたのだから当然と言えば当然ではあるのだが。

御坂「心配するならもう少し手伝ってくれないかしら……」

海原「申し訳ありません。僕の槍は対多人数に適していませんので……出来る限りは対処しましたが」

御坂「何だっけ、トラウィスカリュパン――」

海原「…………」

御坂「…………」

海原「…………」

御坂「……噛みましたよーだ」

海原「(やはり御坂さんは可愛い)」

上条「ほら、行くぞー?」

土御門「魔力が強くなってる感じがするな。行くぞ」

一同、目的地を奥地へと定める。

結標「私もなかなか足手まといよね……」

その場に残ったのは、結標のアンニュイな独り言だけだった。


678伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:34:44.75Prbp5pOAO (17/19)

――――23学区、インデックス

神裂「……ふむ、攻撃が止みましたね」

ステイル「彼女らが仕留めてくれたのだろう」

神裂が愛刀を鞘へと仕舞う。
彼女らが弾丸を切り裂いていたのは五分程度だろうか。
人知ならぬ業をやって退けたにも関わらず彼女は汗一つかいていなかった。
これが聖人たる所以である。

禁書「しかし、妙なんだよ」

神裂「えぇ、静か過ぎます」

ステイル「それならそれで動き易いさ。行こう」

魔術師三人も奥へと向かって歩みを進める。

禁書「(……何だかこの魔力、気持ち悪いかも)」

こちらに残ったのは、シスターの疑念だった。


679伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:35:19.89Prbp5pOAO (18/19)

――――23学区、一方通行

一方「……意外と手薄だな」

番外「やっぱハッタリだったんじゃない?」

00000「そんなに大勢兵隊が居る、って話も聞いた事は無いし……案外間違いないかもしれないわね」

一方「向こォは?」

番外「問題ナッシングみたいだよー☆こっちと違って足が速いから何かあっても大丈夫そう☆」

一方「なら良いンだがな……」


680伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/26(木) 01:36:53.32Prbp5pOAO (19/19)

中途半端だがここで一旦切る。


681VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/26(木) 21:09:43.08RiaOSd99o (1/1)

キテタ‐-------(゜∀゜)--------!!


682伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/27(金) 22:24:33.08wMKGffCAO (1/11)

俺にしてはハイペース。投下開始


683伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/27(金) 22:28:00.06wMKGffCAO (2/11)

――――上条

上条「くそっ、囲まれたのかっ!?」

上条グループらに休む暇を与えず、兵隊達は襲いかかる。
指揮を取るのは端整な顔立ちの女性ではなく、その隣で彼女をサポートし続けた屈強な男であった。

兵2「突っ込め!一班は幻想殺し、二班はその護衛を狙え!」

海原「なっ……」

海原の撃ち出す光線は、出力を抑えていると言ってもかなりの破壊力を持っていて、かつ激痛を伴う。
にも関わらず、敵から恐れが感じられないのだ。
通常、一人でもいい。
誰かが痛みを感じて呻いたなら、それは周囲に伝染し僅かなりにでも士気は下がる。

だと言うのに、下がるどころか激昂し更に攻め手が激しくなるばかり。
今や雨霰と横殴りに襲ってくる弾丸を捌いているのは御坂美琴だけであった。

御坂「このぉっ!」

防戦一方になり、既に電磁盾としての役割しか果たせない少女が吼える。
空中で磁界に囚われた弾丸は、そのまま次に来る弾丸とキスをした。
潰れて爆ぜる。

結標「(急所を外すって難しいのね……っ!)」

拳銃とテレポートを駆使して一人一人確実に仕留めていく結標。
だが、その一撃一撃は『仕留める』と言うには些か死からかけ離れ過ぎていた。


684伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/27(金) 22:29:12.88wMKGffCAO (3/11)

土御門「御坂美琴、壁を頼むぞ」

土御門――風水師は折り鶴を持って、唄う。

土御門「黒キ色ハ水ノ象徴。(さぁおきろクソッタレども)其ノ暴力ヲ以テ道ヲ開ケ!(ぜんぶこわしてゲラゲラわらうぞ!)」

世界に響くは型式張った宣誓。
この世に轟くは粗暴な雑言。

それは空中に水を生み出し、兵隊を薙ぎ払った。
ミシリ、と身体が悲鳴をあげる。

上条「土御門!」

土御門「大丈夫だ!行け、カミやん!奴さんよっぽどカミやんを仕留めたいらしい……ここは任せるんだにゃー」

上条「だけど……」

上条当麻の友人はニヒルに笑ってガッツポーズを見せる。

土御門「舐めるんじゃないぜよ。こちとらこれでも天才で通ってるんだにゃー」

上条当麻は僅かな迷いの後、手薄な方向へと走りだした。
それを追おうと兵隊達が動く。
戦意は全く萎えていない。

が、進む先に光の槍が突き刺さる。

海原「まぁそう焦らず」

結標「ゆっくりしてきなさいよ」

土御門「そうだぜい。さ、美琴ちゃんはもう暫く盾になってくれにゃー」

御坂「えっ……」

土御門「大丈夫、すぐ終わるにゃー」


685伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/27(金) 22:30:16.81wMKGffCAO (4/11)

もう一羽、折り鶴を翳す。

――場ヲ区切ル事。紙ノ吹雪ヲ用イ現世ノ穢レヲ祓エ清メ禊ヲ通シ場ヲ制定。
(それではみなさん。タネもシカケもあるマジックをごたんのうあれ)

御坂「な、何を?」

少女が困惑しながらも風水師に向かう、傷つける意思を叩き落としていく。

――界ヲ結ブ事。四方ヲ固メ四封ヲ配シ至宝ヲ得ン。
(ほんじつのステージはこちら。まずはメンドクセエしたごしらえから)

結標「早くしなさいよ?」

――折紙ヲ重ネ降リ神トシ式ノ寄ル辺ト為ス。
(それではわがマジックいちざのナカマをごしょうかい)

――四獣ニ命ヲ。北ノ黒式、西ノ白式、南ノ赤式、東ノ青式。
(はたらけバカども。げんぶ、びゃっこ、すざく、せいりゅう)

海原「いやはや、お見事ですねぇ」

――式打ツ場ヲ進呈。凶ツ式ヲ招キ喚ビ場ヲ安置。
(ピストルはかんせいした。つづいてダンガンをそうてんする)

――丑ノ刻ニテ釘打ツ凶巫女、其ニ使役スル類ノ式ヲ。
(ダンガンにはとびっきりきょうぼうな、ふざけたぐらいのものを)

――人形ニ代ワリテ此ノ界ヲ。
(ピストルにはけっかいを)

――釘ニ代ワリテ式神ヲ打チ。
(ダンガンにはシキガミを)

――鎚ニ代ワリテ我ノ拳ヲ打タン!
(トリガーにはテメエのてを!)

土御門「――ほら、ぶっこわせ」


686伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/27(金) 22:31:40.64wMKGffCAO (5/11)

業火。

そう形容するにふさわしい、荒々しい破壊の炎がそこに現れた。
それは意思を持っているかの如く、兵隊達を呑み込んでいく。

兵2「くっ……不味いな。下がるぞ!」

幾ばくかの手負いを引き連れて下がる。
ジリジリと前線を押し返していく、世界の化身。

御坂「すっご……」

土御門「さ、美琴ちゃんはカミやんを頼んだぜよ」

御坂「あ、うんっ。任せて」

少女も少年の後を追うため、同じ方向へと走っていった。
後に残されたのは『グループ』のメンバーのみ。

土御門「げふぅ」

血を吐いた。割りと間抜けに。

海原「貴方もそれが無ければ中々お強いんでしょうけどね」

土御門「ヒーローには弱点が付き物なんだにゃー」

結標「はいはい、無駄口叩かない。今度はこっちが――」


土御門「足止めしないとな!」
海原「足止めしなきゃですねぇ」
結標「足止めしないとね」


687伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/27(金) 22:34:03.68wMKGffCAO (6/11)

――――とある兵隊

兵2「…………」

兵1『良いか。奴らは決して我々の命を取らない』

兵1『トップがバカだからね。愚君を持った国の末路は諸君も知っているだろ?』

兵1『とにかく臆するな、死にはしない。打ち所が悪くなければね』

兵1『ボクは一部隊連れて下がる。後から合流したいものだね』

兵1『……奴ら人を割って来やがったのさ。10666号は既に中さ』

兵1『ボクはそっちに向かうよ。じゃ――』

兵1『グッドラック』

兵2「全く……仰る通りでございます」

迎撃する部下。
負傷した部下。
それを救助する部下。

しかし死者は出ていない。

良く良く気高い考えで――反吐が出る。

兵2「全隊、撤退。30秒後に、背を向けて走り出せ」

「な、何を仰るのですか!」

兵2「命令だ。我らの役割はこの戦闘ではない」

「っ――了解!」

兵2「……それと、二人程。私の無茶に付き合え。アレを強行突破して幻想殺しに奇襲を掛ける」

「イエス、サー!」

兵2「残りは隊長に合流だ、急げ」

「イエス、サー!」

射撃が止むまで30秒。
男らは突貫を掛けて、駆けた。


688伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/27(金) 22:34:41.17wMKGffCAO (7/11)

「副長殿をやらせるな!」

「援護を絶やすなよっ!」

サブマシンガンを掃射しながら三人の子供らに接敵する。
我ながらなんて無様だと思うが、やはり死なない。

甘いのだ。子供の理想と言うのは。

土御門「くっ」

着いてきた二人は倒れてしまったようだが、男はまだ動ける状態を保って向こうの防衛線を突破した。

結標「まちなさ――」

海原「よそ見をするんじゃありませんっ!流れ弾に当たりますよ!」

土御門「……カミやん、無事でいろよ」

男は一人、愛する人の為に少年を殺しに向かった。


その先に、正しい世界はあるのだろうか。


689伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/27(金) 22:35:44.84wMKGffCAO (8/11)

――――10666号

10666「――んっ?」

ピクリ、と何かの気配を感じて10666号は足を止める。
未だ13510号の手掛かりは見つかっていなかった。

15555「おい」

10666「あぁ……結構距離はあるが、囲まれてるな」

ジリ、と地を擦る音。

音の先に、中性的な顔つきの男がいた。

10666「お前――ダチ公?何故こんなところに――」

言葉は最後まで出せなかった。
彼はこちらに銃を向けていたからだ。

10666「……へぇ、そうかい」

兵1「えぇ、そうです」

簡素な受け答え。
ただそれだけでお互いを把握し合った。

10666「他に隠し事はあるかい?」

兵1「そうですね……実は私、女なんですよ」

10666「くっくっ、そうかい。そりゃあ済まなかったね」

銃口は余所を向いたりしない。
ずっと彼女の命を握り続けた。

動けば撃たれる。きっと兵も伏せられてる。

15555『どうする?』

10666『割りと詰みだ。一方通行も間に合わないしな』

15555『銃弾なら止めれるだろう』

10666『何処からかの不意打ちが当たらんとも限らない……やってみる価値はあるけどな。ま、ダメになったらそれだ。今はギリギリまで様子を見る』


690伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/27(金) 22:37:13.77wMKGffCAO (9/11)

ネットワークでの会話は一瞬。
気取られる事は無い。

10666「お前、知ってたんだよな。私がずっとアイツを探してた事」

兵1「……えぇ」

質問には首肯が返ってきた。

10666「随分と酷いな。どうかな、ちゃんと愉快なピエロを演じてれたかい?」

兵1「…………」

10666「黙りは肯定と見なすぜ……しかし、何でこんな外道な事を?」

兵1「――そんなんじゃないっ!!」

道を外す、その言葉が気に食わなかったのか、女は激しい言葉を放った。

兵1「私は、より良い世界の為になる事を……してるんだ……」

10666「それが誘拐かい?そりゃ素晴らしい世界だな。驚きすぎて呆れすら覚えるね」

兵1「うるさいっ、お前に何が分かる!?」

銃が音を鳴らす。強く握り直したのだろう。


691伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/27(金) 22:38:30.19wMKGffCAO (10/11)

10666「分からんね。特に分かろうとも思わない」

兵1「ボクは――」

10666「あぁ待て」

少女は手を振って会話を遮った。
表情は心底面倒くさそうで。

10666「そういうの要らないから。不幸自慢?自己弁護?んなの聞きたくねぇよ。どうせ私とお前の正義は相容れないし、それに私は許容も出来ねぇ」

兵1「――黙れっ!」

15555『おい、挑発してどうする!?』

10666号は更に語気を荒げて話す。
より良い世界が、兵器によって成り立つのか?

成り立つものか。

10666「それでもってんなら、一つ教えてやるよ。私は今からコインを取り出して、弾いて、『超電磁砲』を撃つ」

兵1「……なら、ボクは引金を引くだけだよ」

10666号はクスリと笑った。
当然、とでも言わんばかりに。

10666「そうだな。お前の正義が正しけりゃ、私は死ぬだろう」

10666「――やってみろよ。私は死にはしない、こんな場所ではな」

彼女はポケットからコインを取り出し、指で弾いた。


目を閉じて、開く。
琥珀のような色。


驚くほどゆっくりと落ちてくる、と女は思った。
あれが少女の指に触れたら、終わり。


全て、終わり。









彼女は引金を引き、それは少女の額を貫いた。


692伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/05/27(金) 22:39:08.50wMKGffCAO (11/11)

投下終了


693VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/05/28(土) 10:56:26.41GeyjNr6DO (1/1)

乙!
土御門△


694VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/06(月) 17:36:18.88l2whwgvDO (1/1)

待ってる


695伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/06/07(火) 01:27:09.47tMwUTE6AO (1/9)

ちょいとだけだが行くぜ!


696伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/06/07(火) 01:27:51.95tMwUTE6AO (2/9)




15555「10666号っ!!?」

反動で10666号の身体が後ろへ吹き飛ぶ。



目が閉じて、開く。
黒い、誇りの色。

足を踏ん張る。

兵1「――え」

落ちてきたコインに、右手を合わせる。

15555「な――」

ただ、それだけ。

10666「『超電磁砲』!」

彼女の右手から放たれた正義は、女の頬を霞めて、後ろの壁を突き崩した。

暫しの呆然の後に、周囲から聞こえる機械音。
ライフルでも構え直したのだろう。

兵1「あ……あ……?」

10666「――お前の正義ってその程度さ。ヒト一人殺せやしない」

確実に弾丸が貫通した10666号の額は、しかしどうともなっていなかった。
いや、概念的に再生したとでも言うべきなのだろうか。

10666号は踵を返す。

10666「私はこんな所で止まれない。先に行かせてもらう……撃ちたきゃ、後ろからどうぞ」

女は全身から力が抜けて、とても立っていられなかった。

ただ一言、部下に言った。

兵1「……撃たなくて……いい」


697伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/06/07(火) 01:28:53.69tMwUTE6AO (3/9)

――――水面と空と姉。

ミコト「いったぁぁぁぁぁ超痛い!!?」

10666「サンキュー、姉さん」

ミコト「いや軽すぎくない!?凄く痛いんだけど!」

10666「痛いで済んでるなら良いよ。ぶっちゃけ死ぬかと思った、私」

ミコト「アイタタ……しかし、大概不思議な身体よね。私たち」

10666「あぁ、あの時銃弾を受けたのは姉さん。超電磁砲を撃ったのは私」

10666「私が受けた訳じゃないから、損傷は修復されたのか?でも何によって?」

ミコト「……さぁね。私にも分からないわ。でも多用は出来ないだろうし、危険よ」

10666「あぁ。しかし姉さんなら何とかしてくれると思ったら……」

ミコト「変わるタイミング悪すぎでしょ……」


698伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/06/07(火) 01:29:29.62tMwUTE6AO (4/9)

――――上条当麻

上条「くっ……とりあえず人の気配の無い方へと走ってきたが……」

ふと嫌な予感がして、足を止めない。
その場から飛び退く。

殺意が、鉄のそれが地面を傷付けた。

上条「(銃かよ!?)」

兵2「君を通す訳にはいかないのでね、ここで倒れてくれると有難いのだが」

屈強な男が、真っ直ぐ上条当麻と対峙していた。
一筋縄ではいかない様な、しかし一対一。

時間を稼げ。

上条「……そうまでして、お前らは何をしようってんだよ! 作ってんのは厄介な兵器だろうが!!」

兵2「兵器が生み出す平和もある」

上条「その平和の為に、女の子を泣かせるってのが気に食わねぇ!! 犠牲の上に成り立つ平和なんてもんが正しい訳ねぇだろうが!!」

一言。

兵2「誰がそう決めた?」


699伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/06/07(火) 01:30:23.03tMwUTE6AO (5/9)

上条「――何だと?」

兵2「例えば如何なる犠牲かは解らんが、その上での平和な世界があったとしよう」

上条「それがどうしたってんだ! それは平和なんかじゃねぇ!!」

兵2「君が生きている世界の話なのだがね」

上条「――――っ」

兵2「犠牲無しに何かを得ようと言うのは、子供の甘えだ。何かを欲するなら対価を払わねばならん」

上条「――それを、アイツらに払わせといて、良く言うぜバカ野郎が!!」

兵2「我々は対価を払っている」

上条「ふざけんじゃねぇ!!」

兵2「巫山戯てなどいない。現に我々は、命を張っている……それでは足りんのか?」

上条当麻の拳に力が籠る。

上条「あぁ……足りねぇな。アイツらを返しやがれ」

兵2「……若いな。私も君ぐらいの頃があった。自分が間違いだと思った事を認めたがらない、我が侭極まり無い頃がね」

上条「……下らねぇ言い訳は聞き飽きた」

兵2「そのままそっくりその言葉を返そう。とどのつまり、君は――」

「自分の勘に触る者を殴る理由を求めているだけなのだ」

上条当麻が、叫んだ。

上条「御坂ぁぁぁぁぁぁっ!!!」


700伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/06/07(火) 01:31:10.71tMwUTE6AO (6/9)

御坂「りょーかいっ!」

男の頭上から飛び込んできた少女が、電撃を命中させる。

手に当たったそれによって、男は拳銃を取り落とした。

兵2「くっ――」

上条当麻は走る。
拳に一撃の魂を込めて。

上条「いいぜ、お前が正義とやらに囚われて――妹達を傷つけるってんなら!!」

「まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す!!」

上条当麻の右腕が男の眼前へと迫り――――僅かに、躱される。

上条「なっ」

兵2「大振り、過ぎるな」

当然、上条当麻は隙だらけだった。
腹部など、特に。

兵2「お前が甘えにすがると言うなら、まずは――」

「――その現実を見せてやる」

上条「がっ、は……」

深々と、抉る男の右腕。
上条当麻は崩れ落ちた。
文字通りに、意味通りに。

御坂「あ、アンタぁぁぁぁっ!!」

一瞬の事、余りにあり得ない事を見た御坂美琴は、故に激昂し電流を遠慮なく叩き込んだ。

当然、男は気を失ってしまう。
倒れる直前、彼は苦く笑っていた。

情けない、と言いたそうに。


701伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/06/07(火) 01:33:13.34tMwUTE6AO (7/9)

――――土御門

土御門「オロロロロ」

海原「血を嘔吐しないで下さいよ。ほら、簡単にですが治癒しますから……」

風水師は満身創痍だった。
敵の攻撃ではなく自分の魔術によってではあるが。

海原の手が光り、土御門の傷を癒していく。

結標「大分時間を食ってしまったわ。早く行きましょ」

土御門「ちと待ってくれにゃ――」

「あら、お祭りはもっと先かにゃーん?」

土御門の声を遮る様に、女性の透き通った声が前を通った。

土御門「お前らか……」

「お前呼ばわりとは超失礼です!」

「水臭いよ、みんな。私たちだって手伝えるよ」

「結局、私らがいないと攻撃力半減って訳よ」

「ま、知らない奴らじゃねぇしな。借りもある」

その後ろから現れる、四人。一人は男だった。


702伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/06/07(火) 01:33:43.13tMwUTE6AO (8/9)

土御門「……助かる。先行して一方通行と妹達が、俺らの少し先に上条当麻と超電磁砲が、それからステイルと神裂、インデックスがいる。援護してやってくれ」

「援護、ねぇ……ね、頼むわよ」

長身の女性はジャージの少女に呼びかける。

「うん。体晶を少しだけ……ん、10666号のAIM拡散力場がコロコロ変わってる……」

「それって超戦闘中って事じゃないですか!」

「結局、ヤバいのはあの子って訳よ!」

「……って訳だ。先に行くぞ?」

土御門「あぁ、頼む。俺たちも体制を整え次第、後を追う」

「じゃ……行くか、にゃー!」

先頭を切って、健脚を披露する女性。それを追って二人の少女、ジャージの子は片方に担がれていた。
最後尾に、金髪の男。

遊撃が、23学区を走っていった。


703伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/06/07(火) 01:34:37.56tMwUTE6AO (9/9)

うああ少ねぇ終了


704VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/06/07(火) 01:48:03.04UNgayGT8o (1/1)

乙乙

他スレも見てるし頑張ってくれ!!
応援してるぜ!


705VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/06/07(火) 05:38:48.61t734QhGDO (1/1)

乙!
上条さんなにやってんすか…


706VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県)2011/06/07(火) 20:44:06.46cHE8TtWro (1/1)

でも実際ある程度心得がある奴と戦えばこうなるよな


707VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国)2011/07/11(月) 11:52:59.60R6KsD69AO (1/1)




708VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)2011/07/26(火) 23:37:17.85yhMKwEan0 (1/1)

1ヶ月2ヶ月放置するスレ増えたよね


709伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/07/27(水) 00:14:58.837kaxO9uAO (1/1)

すんまっせん!今手掛けてるやつ終わらせたらターボ駆けますんでどうか一つ!


710VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/07/27(水) 11:50:36.50Rj6cXd7wo (1/1)

アスカ派?


711伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:28:48.12zRvmGtlAO (1/12)

アスカどうしよっか……

お待たせ致した。投下開始。


712伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:29:57.12zRvmGtlAO (2/12)

――――10666号、23学区の奥深く

10666「……随分静かだな。さっきの奴らで護衛は全員か?」

10666号が辺りを警戒しながら歩を進める。
15555号と合わせて索敵範囲は360度をカバーしていた。

15555「分からない……が、まだ単騎での護衛がいないとも限らないな。気を付けるに越した事はない」

一方通行のグループも大した発見は無いようだ。
ネットワークも酷く静かで、ノイズも聞こえない。
妹達の総意が、ネットワークの様子に現れていた。

ミコト『……近いわ。きっと13510号までもう僅かよ』

10666「そりゃいい。当たりを引けるなんてのは、選ばれた人間だけだからねぇ」

堅い空気に、あえて笑みを落とす10666号。
彼女にも分かっているのだ。
この場の空気が、徐々に雰囲気を変えていっているのに。

10666「魔力……なのかねぇ?」

フォース「正確ナ情報トハ言エマセンガ、AIM力場ノ類イデハナイヨウデス」

右腕の機械がその奇妙な雰囲気を分析しようと試みたようだが、結果は芳しくないようだ。

10666「……ん?通信……って事は、後衛からか?」

不意に震え出した端末を耳に当て、通話ボタンを押す。
端末から聞こえた声は、土御門のものだった。


713伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:31:02.14zRvmGtlAO (3/12)

土御門『こちら土御門……10666号だにゃー?』

10666「あぁ。そちらは無事かい?」

土御門『伏兵があったけど、返り討ちにしてやったぜい』

10666「流石土御門さんだ。って事は……合流出来そうかい?」

電話の向こうの声が、申し訳なさそうな色を見せる。

土御門『いや、悪いけど敵さんのおかげでボロボロだにゃー……行けてもかなり遅くなるぜよ』

10666「そうか……」

土御門『悲観する事はないぜよ。カミやんと美琴ちゃん、魔術組はそっちにほぼ無傷で向かってるにゃー』

10666「――そりゃ心強い!こっちの護衛も何とか捌けたから、後は奪還するだけさ。じゃ――」

その時、彼女の背筋をゾクリと悪寒がかけ上がる。

無視してしまえば――死ぬ悪寒だった。

15555「――――っ!?」

10666「――そこぉっ!」

ほぼノーモーションからの『超電磁砲』が虚空を貫く。
威力は通常の物より遥かに劣るが、それでも牽制としては十分だった。

「おぉ、怖い怖い。犬に例えられるだけあるもんだな」

10666「……最悪だな。当たりは当たりでも、くじは貧乏くじってか?」

その『超電磁砲』を容易く止めてしまったのは、学園都市のレベル5――第二位。

垣根「引けるだけ恵まれてると思うぜ?」

垣根帝督が、そこに立っていた。


714伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:31:57.72zRvmGtlAO (4/12)

――――臨戦

15555『どうする、一筋縄ではいかないぞ!?』

10666『――策はある。データ確認を頼むぜ』

15555『……分が悪いが』

10666『出会った時点で確定事項だ。仕方ねぇさ』

15555『――番外個体に連絡はした。一方通行が来るまで粘れるか……』

10666『バッカ、倒すんだよ。私の中にはな――』

10666『第三位が居るんだぜ?』

ネットワークでの意思伝達を一瞬で済ませる。

15555号は『雷天大壮』によって限界まで反応速度を上げた肉体を駆使し、少年の立つ場まで一瞬で距離を詰めた。

15555「『雷華――』!」

垣根「お、速いな。ま、だけど――」

いつの間にか生えていた少年の白い翼が、力を発する。

15555「『――崩拳』!」

雷を纏った拳が、他ならぬ『空気』に止められた。
15555号は僅かに、しかし驚きを隠せない。

垣根「俺に、『スピード』なんてちゃちな常識は通用しねぇ。記憶しろよ?」

15555「――がっ」

圧縮された空気の壁が叩きつけられた。
15555号の身体を流れる電気が霧散して弾け、15555号は吹っ飛んで壁に打ち付けられる。

10666号が垣根帝督の懐に飛び込むには、十分過ぎる時間だった。


715伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:33:16.10zRvmGtlAO (5/12)

少女の瞳は、深い橙色。

第三位を体内に宿したその身体が、無謀とも呼べる突貫を行なっていた。

例え近接での勝率が薄かろうと行かなければならない。
距離を離せばなぶり殺されてしまうのだから。

10666「なめんじゃないわよ!」

『雷撃の槍』を振りかぶり、投げつける前に――胸を何かが貫く。
それは確実に、致命的なモノ。

10666「あ――かはっ」

垣根「甘いって。分かんねぇかなぁ」

グラリ、と足が身体が世界が揺れる。

10666「――分かってるさ!」

10666号は強く敵を睨み付けた。目に輝くのは、猛る黒。

一度死んで、尚突き進む――それは誇り。

拳が少年の腹にめり込んだ。
手には、コインを握り込んで。

10666「『爪牙超電磁砲』!!」

稲妻の爪が少年の身体を空に浮かせる。
切り裂く筈のそれが、しかし為せていない。

――そんなのは予測の範疇内だった。

フォースの牙が少年に喰らい付く。

10666「もう一発――『炸裂超電磁砲』!!」

フォースから凄まじい電撃が放たれる。
ゼロ距離でそれを受けたなら、例え『未元物質』と言えどただでは済まないだろう。

済まないはずなのだ。


716伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:36:04.29zRvmGtlAO (6/12)

垣根「で、次は?」

10666「なに――?」

垣根「無いなら……砕けな」

フォース『――――』

従者の牙がへし折れる。
次いで連鎖した爆発がワイヤーを伝い、ガントレットの肩が弾け飛んだ。

10666「ぐっ――フォース!?」

牙を抜かれた獣は立ち上がれない。
彼はそれを良く知っていた。

垣根「あー、弱い弱い。全くダメだ。そんなんじゃあ、13510号は渡せないぜ」

10666「なん、だと……」

歯ぎしりの音が酷く煩い。

少年は踵を返して言った。

垣根「会いたけりゃ着いてこいよ。そのザマで戦える――生き残るつもりならな」

高笑いと共に、本当に愉快そうに去っていく少年。

15555号が地に伏せながらも声をかけた。

15555「行くなよ……どう、考えても罠だ……」

10666「……一方通行は来てるんだな?」

15555「あぁ。全開でな」

10666「……怪我をまず処置してもらえ。私は――」

10666「――バカだから。これは、譲れないんだ」

10666号は少年を追った。



心内の姉は倒れ、頼もしき相棒は機能停止。

無力な彼女だけの、精一杯の闘いだった。


717伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:36:44.97zRvmGtlAO (7/12)

――――垣根帝督

少年は端末を片手に持って、彼の親玉と連絡を取っていた。
表情は芳しくない。

垣根「あぁ?まだ早いって言うのか……分かった、こっちで何とかするさ」

手短に連絡を終える。
一つ、思案した。

垣根「……こういう時の『心理掌握』、かねぇ」

――――兵士

兵2「う……むぅ」

男は自分が気絶していた事に気付く。
周囲の計器を確認し、さほど時間が経っていないのを確かめた。

兵2「まだ動けるな……ふんっ!」

勢いを付けて立ち上がる。
少しばかりフラついてしまったが、彼にとっては許容範囲だった。

兵2「隊長と合流せねば……」

敵も味方も、戦場を駆けている事には変わりが無いのだ。


718伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:37:21.23zRvmGtlAO (8/12)

――――10666号

10666「見失った……か?一体何処へ……」

辺りを見回しても足取りは掴めない。
いよいよしまった、と思考した直後に声をかけられた。

「あら、貴女は……10666号、かしら?」

10666「……アンタは?見たところ、私と同じくらいの年頃だが……」

その少女は小さくクスクスと笑うばかりで、少し不気味だった。

10666「……アイツらの仲間だな?」

「自己紹介、ね」

掌握「私はレベル5の第五位――『心理掌握』よ」


719伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:38:17.82zRvmGtlAO (9/12)

――――







――――

10666「何だと!?」

掌握「私はAIM力場を通じて心の理を掌で握る事が出来る……貴女を生かすも殺すも私次第……」

女は気味悪く笑った。

私はコインを構えて、射った。

掌握「ぎゃ」

女に『超電磁砲』が直撃して倒れた。

10666「なんだ、打たれ弱いな」

私はソイツを放っておいて走った。

程無くして少年に追い付いた。

垣根「お、来たか」

振り向く前にコインを射った。

垣根「ぎゃ」

不意打ちには弱かったようだ。

10666「よし、これで13510号を助けられる」

少し走ると怪しげな部屋に着いた。

ドアを開けた。

13510ごうがいた。

10666「ここにいたのか。助けに来たぜ」

13510ごうがふりむいた。

なみだをながしてよろこんでいた。

やった!ついにだいじなひとをたすけることができた!

10666「さぁはやくかえろう」

13510「ありがとうございます10666ごう、とミサカはよろこびます」



手を、握ると――視界が暗転し――反転した。


720伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:38:52.12zRvmGtlAO (10/12)

?「どうした?せっかく迎えに来たってのに、そんな顔をされては困ってしまうよ」



そう言ったのは、10666号だった。確かにそうなのだ。



でも、変だ。だって、なら、私は――自分を見ている私は誰だ!?

10666「ほら、行こう――」



――13510号。



13510「あ――」

そこでようやく異変に気付く。

自分は、10666号だと思っていた自分は――13510号だったのだと。



目が、覚めた。


721伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:40:17.05zRvmGtlAO (11/12)

――――真っ暗な空間。

「ここ、は――」

彼女は光の差さない暗闇の空間に一人だった。

身体は何か柱の様なモノに縛り付けられていて、不自由が与えられている。



そうだった。私は、触媒だ。

魔術増幅回路の一部として、ミサカシリーズから切り離された個体。

彼女らはそれを知らず、私のダミーデータとネットワークで繋がっている。



故に私に自由は無く。

故に私は救われない。



それでも心が壊れてしまわないように。

私は幸せな夢を見ていたんだ。

そうだ。この夢は二回目。
最初の時も、垣根帝督に勝てなくって、あやふやになりながら話を進めたんだった。

「ふふっ」

私は笑った。
声が遠くまで響く。

今度は誰が私を助けに来るんだろう。
誰にしようか?

10666号は、ホントにいるけど、ホントはどんなミサカなのかな?



暗闇が、怖い。

また眠ろう。
今度も、私が助かる幸せな夢を願って――――


722伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/21(日) 00:41:28.00zRvmGtlAO (12/12)

今日の投下終わり。プロットは組んでたから書きやすいね。


723伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 00:49:57.65CdHhhqcAO (1/12)

初心に帰れるスレは素晴らしいと思った。

投下開始


724伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 00:51:37.57CdHhhqcAO (2/12)

――――一人、夢の中

10666「――なんつー夢だ畜生、とミサカは一人呟きます。痛ぇ肩打った……」

穏和な夢を見て、


13510「おはよう、とミサカは朝の挨拶を欠かさないレディーである事をアピールします」

家族が居て、


10666「じゃあ放課後。コンビニでも行きませんか?」

連れ合える仲で、


10666「……『自分だけの現実』、か」

悩んで、


10666「あぁ……お早う、姫さん。気持ち良さそうに寝てたから、ね」

いとおしくて、


10666「離れろ」

10666「離れろっつってんだろうが耳着いてねぇのかコラァァァァァァァァ!!!」

無力で、


10032「そこまでです、とミサカは颯爽と登場します」

15555「なんだ、肉体強化って聞いてたんだけど、案外トロいんだな」

20000「ネットワークでセロリたんのあられもない画像探してたら『誰か助けて』ってスレがあってさー、仕方ねーから来てやったんだよセロリたんまじセロリ」

仲間が居て、


13510「…………」

10666「……悪ぃ」

後悔して、


10666「……今日は、悪かったな」

13510「いえ、助けに来てくれて嬉しかったです。とミサカは素直な気持ちを伝えます」

10666「結果が全てさ。私だけじゃ危なかった」

13510「…


725伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 00:53:17.20CdHhhqcAO (3/12)

>>724 規制。修正

――――一人、夢の中

10666「――なんつー夢だ畜生、とミサカは一人呟きます。痛ぇ肩打った……」

穏和な夢を見て、

13510「おはよう、とミサカは朝の挨拶を欠かさないレディーである事をアピールします」

家族が居て、

10666「じゃあ放課後。コンビニでも行きませんか?」

連れ合える仲で、

10666「……『自分だけの現実』、か」

悩んで、

10666「あぁ……お早う、姫さん。気持ち良さそうに寝てたから、ね」

いとおしくて、

10666「離れろ」

10666「離れろっつってんだろうが耳着いてねぇのかコラァァァァァァァァ!!!」

無力で、

10032「そこまでです、とミサカは颯爽と登場します」

15555「なんだ、肉体強化って聞いてたんだけど、案外トロいんだな」

20000「ネットワークでセロリたんのあられもない画像探してたら『誰か助けて』ってスレがあってさー、仕方ねーから来てやったんだよセロリたんまじセロリ」

仲間が居て、

13510「…………」

10666「……悪ぃ」

後悔して、

10666「……今日は、悪かったな」

13510「いえ、助けに来てくれて嬉しかったです。とミサカは素直な気持ちを伝えます」

10666「結果が全てさ。私だけじゃ危なかった」

13510「……強いて言えば」

10666「……うん」

13510「少し……いえ、たくさん心配しました」

気を使わせてしまって、


726伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 00:54:14.28CdHhhqcAO (4/12)

10666「なぁ」

13510「何ですか?」

10666「これって変かな?」

13510「……私は特には」

10666「ん、じゃ、帰るか」

13510「?」

10666「手。ちょっと寒い」

13510「――はい」

暖かくて。


727伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 00:54:55.74CdHhhqcAO (5/12)

10666「下がってろ!!」

10666「初春さん! 佐天さん連れて逃げろ!! お姉様に伝えて……」

10666「――ッ、手ぇ出してんじゃねぇ三下ぁ!!感電死させるぞゴラァァァァァッ!!」

勝てなくて、





そしたら、空からコインが振ってきて




私の世界に、一つ




大きな波紋が、大きい大きい、世界を包むような大きな波紋が




生まれたんだ。



10666「これが超電磁砲……」

見つけて、



13510「やった……10666号、大丈夫ですか?」

10666「ぐっ……おいバカ逃げろ!?」

13510「え?」

傷つけられて、



10666「てめえぇェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!」

無意識にポケットに手を突っ込む。


さっきの釣り銭が手に当たった。


そのまま手を相手に向けて――



「しっかり前を見て撃つのよ」


728伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 00:55:28.64CdHhhqcAO (6/12)

手が誰かに握られる。
急に思考が冷えて、異常に冷静になった。

10666「――なるほど、こりゃ酷いや。見たくないもんだよ、過去ってモノは、さ?」

間違える訳がない。
彼女は背後の気配を正確に感じ取っていた。

ミコト「ほら、もうとっくに出来るでしょ?」

10666「あぁ……じゃ、悪いが――」

10666「消えろ、幻想」



――そして、前へと進んだ。


729伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 00:56:21.78CdHhhqcAO (7/12)

――――薄暗い部屋、10666号

10666「ぐぅ――」

10666が目覚める。
まるで悪い白昼夢でも見たような心地で身体はふらつき、事実それは間違いでは無かった。

掌握「――解けた?まさか……眠りなさい」

10666「う、あ……」

視界が融けていくような錯覚に襲われる。
暗転していく視界を――しかしはっきりと確認した。

ミコト『ほら気張って!』

10666「――了解だ!」

足を一歩前に出す。
ただそれだけだと言うのに、女はたじろいだ。

掌握「なに……なんなのよ!止まれ、止まりなさい!言う事を聞いて!」

女の声は脳味噌の至る所に染み渡って響く。
だがそれ以上に、姉の声は大きく頼もしかった。

――そうだ。
私の心は、とっくに折れる訳にはいかない所まで歩いてきているのだから。

10666「――おい」

逃げる女の襟首を引き寄せ、顔を近付けた。
静かな怒りを孕んだ10666号の表情に、女は小さく絶句する。

10666「まずは能力を解け。効かないんだからな」

掌握「な、何であなたの言う事なんか――」

10666「……立場が分かってないようだけどさ、今電撃を流せば――どうなるかな」

掌握「ひっ」


730伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 00:58:28.74CdHhhqcAO (8/12)

女は想像から恐怖を受け取る。
震えが止まらなくなって、地面に座り込んでしまった。

超能力者の彼女、ましてや精神操作系の能力者なのだ。
敵を近付けるどころか、敵を作った事さえないだろう。

故に、能力の効かない者に対して恐怖や混乱を覚える。
事実、あの第一位ですらそうなのだから。

掌握「やめ……やめて、ごめんなさい……」

怯える姿は、うって変わって年相応に見えた。
僅かな戸惑いの後、10666号は僅かな溜め息を吐いた。
襟からはとうに手を離している。

10666「(しかし、これはチャンスかもしれないな。無力化できる相手がいた事に感謝して、有り難く情報を頂戴しよう)」


731伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 00:59:01.89CdHhhqcAO (9/12)

10666「……垣根帝督はいねぇな。何処に行った?」

掌握「む……向こう。奥に、触媒があるって。垣根は、先に向かうから、って」

10666「ビビり過ぎだろ……何も出来ない奴にゃ何もしないって」

女――いや、少女は肩をビクリと震わせた。
何かの琴線に触れたのか、と察した10666号は自分の発言に色を添える。

10666「まぁアンタがついてなかっただけさね。垣根の他に、超能力者は居るのか?」

掌握「…………」

10666「……ハァ」

10666号が軽く静電気を起こすと、少女の身体が小さく跳ねた。

掌握「は、話す、から――」

10666「それでいい。こちとら悪い夢を見せられて、イライラしてるのもあるんだからな……で?」

掌握「超能力者は知らない……けど大能力者は、一人……」

10666「それは誰だ?」

掌握「め、『心理定規』……他人との心の距離を、変えられる能力者で……」

10666「まだ精神系が居るのか……ったく、厄介だな」

軽く頭を掻いた。
が、それでも知らないよりかは遥かに良い。

10666「他には?」

掌握「あ、後は知らない――本当よ」


732伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 00:59:33.90CdHhhqcAO (10/12)

10666「(能力者がそんなに大勢居る訳ではない……のか?いや、もしかしたら)」

10666号がある事に思い当たる。

10666「――なぁ。アンタは奴らの目的を知っているのか?」

掌握「兵器――そう、兵器を作るって……」

10666「なんでアンタは奴らに協力を?アンタにとっては、兵器なんて必要無いだろ?」

少女は目を伏せた。

掌握「……第二位が直々に来て、その第二位には私の能力が効かない」

掌握「……協力するか、死ぬか。その二択だったの」

掌握「……協力すれば、普段の研究費用より二つ程桁が違う奨学金も用意するって。実際あっさり用意してきた」

掌握「……別に私は兵器が作られようがどうしようが関係無いし……なら死なないついでに報酬もらうに決まってるじゃないの――ごめんなさい殺さないで!?」

10666号は極端に怯える少女の様子で、自分が険しい顔をしているのに気付く。
慌てて手を振って否定した。

10666「あぁ、いや、アンタは関係無い。気にするな」

暫し思考する。


733伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 01:00:55.12CdHhhqcAO (11/12)

10666「(やっぱり……この人、末端だ。って事は、真実を全部知っている訳でも無い……)」

10666「(この人の能力ではあり得ないようにも思えるが……垣根帝督が手を回していたのか?)」

10666「……いや待て。末端って事は目的は――」



その時、10666号は確かに聞いた。
訳も無く、背筋に悪寒が走る。



世界の悲鳴が、冷たく響き渡った。


734伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/25(木) 01:01:22.20CdHhhqcAO (12/12)

投下終了。


735VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/08/25(木) 17:14:12.32H7HAvPaPo (1/1)


アスカはー?


736伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/08/26(金) 23:25:48.61q8LVaTyAO (1/1)

今三スレ書いてるから、どれか一つが完結したら立て直す。


737伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/09/25(日) 15:11:11.76YZZqAYFAO (1/1)

ぐわぁぁ書けねぇ生存報告


738VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/09/25(日) 18:15:12.34oUlFKtaOo (1/1)

ずっと待ってるよー


739VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/09/25(日) 22:32:29.276nXjqpKPo (1/1)

舞ってる


740VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/09/25(日) 22:51:09.61UXMB2Ol1o (1/1)


生存戦略


741VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/10/23(日) 13:33:40.93TZWSrnKIO (1/1)

そろそろやばいかなー


742伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/10/28(金) 12:18:10.11lg6M80cAO (1/1)

向こう終わらんぞおい……


743伊吹 ◆LPFQRD/rxw2011/11/16(水) 00:11:33.60rMfQ8UaAO (1/1)

生きてる


744VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(神奈川県)2011/11/23(水) 01:35:46.32ON0Vca5a0 (1/1)

生存広告乙
まどか以外に何かあったっけ?


745以下、あけまして2012/01/05(木) 01:41:45.87fKJ/MRO/o (1/1)

やばいくらい下に下がってるぞ


746伊吹 ◆LPFQRD/rxw2012/01/08(日) 01:31:42.50k99QWoGAO (1/1)

一番下になってしまう……やべぇ。


747伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/13(月) 23:27:42.355Kj/pCpAO (1/5)

酉変わったけど俺。

リハビリかねて再開。


748伊吹 ◆LPFQRD/rxw2012/02/13(月) 23:28:58.875Kj/pCpAO (2/5)

――――大魔術、発動開始。

土御門「――奴さん、おっ始めたか」

海原に肩を借りて歩いていた土御門が、膨大な魔力の波に反応した。

海原「急ぎますか?」

結標「大分回復したし、それなりの距離なら転移出来るわよ」

土御門「……いや、正直今の俺が行った所で役には立たない。置いて、お前らだけで行ってくれ」

海原「ふむ、一理ありますが……なら僕も残りましょう。貴方を一人にして、うっかり始末されてしまっては困りますからね」

結標「なら私が残った方が……」

海原「……自分の技術は基本的には殺傷に使う物です」

海原「向こうのメンバーは既に十分過ぎる程の火力を持っていますから、僕より能力の応用が効く結標さんが行くべきです」

土御門「……確かに、転移があれば最悪逃げおおせる事は出来るぜよ。頼めるかにゃー?」

結標「……分かったわ。全く、しんどい役回りね」

結標は言って消えた。
残された男二人が壁に背を預けて座り込む。

海原「失敗したらどうなるんでしょうね」

土御門「アイツらの成功を信じて待つのも、また一興だろう?」

海原「ふふ、全くです……イタタ」

土御門「お前も十分ボロボロだにゃー」

海原「貴方には負けますよ」

天を見上げた。
夕方でもないと言うのに、空が橙色に光っている。

土御門「くくっ」

海原「ははっ」

期待を込めて、二人は笑った。


749伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/13(月) 23:29:46.935Kj/pCpAO (3/5)

――――中心部、13510号

13510「これは……」

少女は自分の回りを見回して驚いた。
いつか見た、何もない水面の世界が、確かに目の前に広がっていたのだから。

垣根「魔術が発動し始めたみたいだぜ」

13510「――垣根さん?」

少女が声のした方に振り返ると、そこには良く見知った少年と、その連れ合いがいた。

定規「沈まないのね……不思議」

垣根「水の上に立つのは始めてか?」

定規「普通始めてに決まってるでしょ」

垣根「そんな常識に囚われてちゃあダメだぜ?」

二人とも呑気に話しているのを見るに、この現象は予測済みだったのだろう。

きっとまた魔術の幻に違いない。
彼女はそう思った。

水面の世界が徐々に広がっていく。




それは緩やかに世界を侵食していった。


750伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/13(月) 23:30:38.645Kj/pCpAO (4/5)

――――10666号

10666「な――これは……」

10666号の足元が、無機質な床から静かな水面へと移り変わっていく。
10666号の後ろで、悲鳴が上がった。

掌握「ひっ、何これ、溺れ――」

10666「えっ――おい掴まれ!」

沈みそうになった心理掌握の手を掴む。
彼女は沈みそうになっているというのに、10666号はしっかりと水面に立つ事が出来ていた。

10666「どうなってんだ、一体……」

酷い荒野だった。
いや、荒野と言うには些か潤い過ぎている。
浅い海が、遠く永く続く夕焼けの荒野だった。

――そして、それはいつも酷く身近に感じていた場所。

10666「13510号……? お前なのか?」

掌握「な、何で貴女立てるのよ……」

掴む手が震えていた。
超能力者といっても、年相応の精神のようだ。

10666「気をしっかり持てよ。さっきまで部屋にいたんだから、立てるに決まってる」

そう言って10666号は彼女を引き上げる。
すると不思議だが、心理掌握は水面に立てたのだ。

掌握「あ――本当」

10666「もう良いよな。私は先に行くから――」

歩きだそうとして、しかしそれは出来ない。
裾を掴まれてしまったのだ。

掌握「…………」


10666「……はぁ」

10666号は深い溜め息を一つ吐き、

10666「……着いてくるか?」

とだけ言った。


751伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/13(月) 23:31:17.355Kj/pCpAO (5/5)

投下終了。
短ぇぇぇ。溜めるわ。


752VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2012/02/14(火) 00:44:34.81HQKwteMk0 (1/1)




753伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/15(水) 17:55:16.50jgXV2o3AO (1/3)

前スレPCで見れなくなってるな……
やっぱ最初からリペアした方がいいのかもしれんね。


754VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2012/02/15(水) 18:21:49.319lb0rthso (1/2)

前スレってこちらでよろしい?

10666「これが超電磁砲……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294926773/


755伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/15(水) 18:27:09.41jgXV2o3AO (2/3)

>>754
うんそれ。今携帯からなんで確認は出来ないけどPCから見れる?


756VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2012/02/15(水) 19:20:37.879lb0rthso (2/2)

PCは>>754で大丈夫だと思うけど、もしかして大丈夫じゃない人向けにhtml直リン

http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1294/12949/1294926773.html

携帯用も念のため
http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/kako/1294926773/


757伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/15(水) 23:10:28.74jgXV2o3AO (3/3)

ありがとう。手を煩わせてゴメン。


758VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2012/02/16(木) 05:04:04.64HsP9sNRv0 (1/1)

>>757
>>755の奴俺は見れたよ~

楽しみに続き待ってるけど、無理のない程度に頑張ってくれ


759伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/20(月) 23:23:28.29STdUbT5AO (1/10)

投下開始


760伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/20(月) 23:23:55.92STdUbT5AO (2/10)

――――魔術サイド

神裂「――これは」

ステイル「巨人でも召喚するつもりだろうかね。随分と手が込んでいる」

禁書「急ぐんだよ! 私たちにも出来る事はあるはずなんだよ!」

ステイル「もちろんだ」

――――遊撃

「水……?」

「なんですかコレ。超幻想的ですね」

「……結局、なんだか寂しい場所って訳よ」

「反応はまだ奥だよ」

「っしゃ、行くか」


761伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/20(月) 23:24:30.45STdUbT5AO (3/10)

――――怨嗟。

兵1「…………私には止められないのか」

「隊長……追わなくていいんですか?」

空が夕焼けに染まっていく。
触媒は確かに役目を果たしたらしい。

兵1「もう僕たちのやることは無いさ。後は待つばかりだけど――」

「――副長殿!」

兵1「っ!」

彼女が声に振り返ると、自身の右腕たる人物が――負傷しながらも歩いてきていた。
駆け寄り、肩を抱く。

兵1「無事だったか!」

兵2「はい。心配をお掛けしました」

これでいい。
後はゆっくり――

『隊長ォォォォォォッッッ!!!??』

兵1「――!?」

無線から聞こえてきたのは、外部で待機している筈の能力者部隊達の声。

彼らはAIM力場生成の為に等間隔に配備されていた。
触媒が魔術を使い終わったのなら、彼らの負担も無くなる筈だ。

しかし、悲鳴は――生々しい、死を表現していた。

兵1「どうした!? 敵襲か!?」

無線からの音が、彼ら部隊を包んだ。


762伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/20(月) 23:25:01.75STdUbT5AO (4/10)






タスケテタスケテイタイカアサンイヤダシヌタス
イタイタスケテイタイカアサンイヤダシヌタスケ
カアサンタスケテイタイカアサンイヤダシヌタス
イヤダタスケテイタイカアサンイヤダシヌタスケ
シヌタスケテイタイカアサンイヤダシヌタスケテ









763伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/20(月) 23:26:28.52STdUbT5AO (5/10)

「――っ!?」

全員が、例外無く戦慄する。

一体何が起こっている――?

スーツ「やれやれ。君たち、仕事はサボりかね?」

唐突に声を掛けたのは上司だった。

彼らが振り返ると、そこには満足気に微笑するスーツ姿の男がいる。

彼らの足元にも、水面が現れた。
一般兵らは狼狽えるが、その男は動揺しない。

兵1「こ、これはどういう事かご存知ですか?」

スーツ「あぁ、知っているよ」

知っている、と答えた。
――ならこれは、想定内だったというのか。

兵1「能力者部隊は一体――」

スーツ「あぁ、彼らかね。いや、なかなかに良い人柱になってくれた」

ひとばしら?

スーツ「これだけの大魔術だ。犠牲も必要に決まっているだろう」

スーツ「そうだな。彼らは偉業の礎になったのだよ」



スーツ「文字通り、柱となってね」



何を言っているのか分からないが、悪意だけは感じた。

スーツ「魔術をよりスムーズに執り行う為に変貌するのは計算済みだった」

スーツ「アレの本質は醜い肉塊も表現する」




スーツ「彼らはぐちゃぐちゃに混ぜ合わされ、一本の肉の柱になったのだよ」


764伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/20(月) 23:26:54.65STdUbT5AO (6/10)

無線から悲鳴が消えた。
部下が死に絶えたのだろう。

吐き気がした。
何故、そんな事を平然とした顔で宣う?

兵1「――どうして」

スーツ「ぬ?」

兵1「どうしてこんな仕打ちを!? 我々は新たな世界を作る同胞では無かったのですか!?」

拳銃を構えて、彼女は涙した。
部下の無念を思うと、やりきれなくなるのだ。

男は深く溜め息を吐く。


765伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/20(月) 23:28:56.23STdUbT5AO (7/10)

スーツ「これだから女はいかんね。頭がスポンジででも出来ているのか?」

スーツ「私は君に言ったろう。君は甘いと」

スーツ「そもそも君と私たちの目指す道は違うのだよ」

スーツ「どうせ皆、死ぬのだからな」

兵1「――それは、どういう。答えて下さい、答えろ!」

銃のトリガーに力が籠る。
この男はつまり、自分達を騙して――

スーツ「我々の目的は世界全ての浄化」

スーツ「それは全人類の死によって為されるのだよ」

スーツ「この空間を見たまえ」

スーツ「どこまでも続く海。陸地の無い世界。紅い空」

スーツ「まさしく人の黎明、新しい世界だとは思わんかね?」

スーツ「こんな下らない世界は一度消してしまわねばならんのだよ」

スーツ「君だってそうだろう? 生きるのに苦労し、絶望し、今ここにいる」

兵1「っ」

後ずさる彼女を、支えたのは右腕だった。

兵2「……しかし納得がいきません。貴方はそれで死んでも良いと?」

スーツ「あぁ。構わんよ」

兵2「……私は、構います」

スーツ「ほう。何故?」

女性の小さな肩を、強く支える。

兵2「共に歩んで行きたい人がいます。明るい未来へと、支え合って辿り着きたい人が」


766伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/20(月) 23:29:29.24STdUbT5AO (8/10)

兵2「その人が命を落とすのなら、それはあってはならないのですよ」

兵1「おまえ……」

スーツ「は、はははっ!」

真剣な目付きの男性兵士とは裏腹に、スーツ姿の男は嘲笑した。

スーツ「ははは……いや、済まない。余りに可笑しくてね」

スーツ「それは即ち、愛、かね?」

スーツ「――だとしたら下らない。そんな不確かなモノを、自らの根幹として胸を張っているのか?」

スーツ「なんと蒙昧なことか」

兵2「下らないと決めるのは、貴方では無い」

スーツ「――下らないとも! 女なぞ自らの幸福を貪欲に貪る事しか知らぬのだからな!」

声を荒く、彼は言う。
下らないと決め付けたくて仕方の無いように。



スーツ「……確かに、私にも経験がある。一生を捧げても良いと思った女性がいる」

スーツ「私は働いた。彼女の為にと日々を犠牲にして働いたのだ」

スーツ「地位を獲り、名誉を得て、権力に手を伸ばした――全ては愛する者の為に」

スーツ「――だが彼女は裏切ったのだよ。この献身的な私を!」

スーツ「愛し合った日々に唾を吐き、小物の男の上で淫らに跳ねていたのだ……我ながら情けない」


767伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/20(月) 23:30:10.08STdUbT5AO (9/10)

キヒヒ、と彼は狂気を孕んで笑っていた――狂ってる。

スーツ「情けないというのはね、私が女を見抜けなかった事なのだよ」

スーツ「恋は盲目と言うがね、それはつまり――そうでなければ恋など出来んのだよ」

スーツ「あぁ、クズだクズだクズクズクズ! 私としたことが、人生最大の汚点だよ!」

兵1「……だから死にたいって言うのか?」

スーツ「そうさ。私はこんな完全でない私を見ていられないのだよ」

スーツ「私の人生は一人の女に奪われてしまったのだよ」

スーツ「私は、とうに死んでいる」



兵1「――――わかってるなら!!」



銃の引金が役目を果たし、男性の左腿を銃弾が貫いた。

スーツ「――ははは」

兵1「死ぬなら一人で死ね!! だがな、私の仲間を巻き込んで――楽に死ねると思うなよ!」

スーツ「――君は何も分かっていない」

男は水面に沈んでいく。

スーツ「私たちは、いつか来る滅びを早めたに過ぎないのだよ」

知識を抱えたまま、溺死する。

スーツ「――あぁ、言い得て妙だ。これは――壮大な自殺だったのですね、先生――」

トプン、と。
水に飲み込まれ、男は沈んでいった。
もう、生きてはいない。




兵1「こんな――こんな事の為に私は――っ」

部隊は家族で――彼女は、それを失ってしまった。

幸せを追い求め、彼女は何を手に入れたのだろうか――?


768伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/20(月) 23:30:38.08STdUbT5AO (10/10)

投下終了


769VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/02/20(月) 23:32:45.30e17Ibcnoo (1/1)

>>1乙



770伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/26(日) 00:27:08.62OPnXd5xAO (1/7)

投下開始


771伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/26(日) 00:27:56.29OPnXd5xAO (2/7)

――――遅れてくる主人公。

上条「――なんだよ、これは」

上条当麻の足元を水面が通りすぎていく。
空は夕焼け、滅びの紅。

御坂「これ――何?」

上条当麻が、ふと、何かを感じ取った。

右手が、空間を削り取っているような感覚と――そう、違和感。

これは、いけない。

ここは、在ってはならない――

上条「急ごう、御坂」

御坂「えぇ、勿論よ」


772伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/26(日) 00:28:23.68OPnXd5xAO (3/7)

――――人の身を超えた行いと、ただの人。

歩く足が重い。
粘りついた泥沼の中をあるいているような、纏わりつく空気。

胃袋の中で溶かされていく、そんな気分を――10666号は抱えていた。

掌握「紅い……」

10666「私もそう思うよ――ん」

ふと、目の前に不思議な老人を見つける。
水面の上で、安楽椅子に座っていた。

誰だ――?

老人「……やぁ、『可能性』。随分と遅かったようだが……なに、君は二番さ」

そのしゃがれた声には聞き覚えがある。
電話で聞いた、あの忌々しいソレだ。

10666「……てめぇ」

老人「どうした? 行きたまえよ。彼女はこの先さ」

10666号は一歩前に出る。それは意思だった。

10666「……聞かせろ。何で13510号を拐った……兵器が欲しければ、他にやりようもあったろう」

老人「……君も勘づいていると思うのだがね」

痛い所を突く。
これだから老人は困るのだ。
口をつぐむ。

老人「私たちの目的は『コレ』だ。この状況全てが、私の望みだよ」

老人「この『滅び』の具現こそが、ね」

――滅び。

この男、言うに事欠いて私たちの心を――そんなモノに例えるというのか。


773伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/26(日) 00:28:52.75OPnXd5xAO (4/7)

10666「違う」

老人「……君も見たのではないのかね? ……いや、『よく見ていた』のかな?」

10666「っ」

確かに、そうだが。

老人「コレは、君たちの心象風景などではない」



老人「――いずれ来るべき、未来の姿だ」

老人「ソレを擬似的に再現しているだけなのだよ」






774伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/26(日) 00:29:24.44OPnXd5xAO (5/7)

10666「……どういう事だ」

老人「我々は魔術を研究していた。科学的な観点から、だがね」

老人「そして研究を進める上で、ある疑問に行き詰まったのだよ」

老人「『何故御坂美琴は第三位なのか』とね」

10666「はぁ?……そりゃ当然だろう。アレだけの電気使い、そうはいないさ」

老人は小さく笑った。
そう自分も思っていたとばかりに。

老人「そう思うだろう。だが、ならばそこの……『心理掌握』が五位なのはどう説明するのかね?」

老人「彼女の能力は人の根幹を揺るがすものだ。今もやろうと思えば私を操れるだろう――対策は取らせてもらっているがね」

掌握「…………」

老人「御坂美琴はね、第三位になるには――余りに、普遍過ぎるのだよ」

老人「唯一の能力でも無く、また下位を引き離すような強度でもない。事実、破壊力は第四位の方が上だ」

10666「――何が言いたいんだ、お前は!」

老人「まだ分からんかね。何故君たちが量産されたかすら、気づかんかね? この景色を見てもまだ――自分達が、魔法的な存在だと」

10666「――っ!?」


775伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/26(日) 00:30:27.87OPnXd5xAO (6/7)

老人「御坂美琴は、超能力者では無い――だからこそ、君たちは生まれ――そして滅びる」

老人の椅子が徐々に水に沈んでいく。
待て。まだ何も分かっていないんだぞ。

老人「――誰も信じない。誰も私を認めない――ならいっそ、この手で幕を引こう」

10666「わ、訳分かんねぇ事を言ってんじゃねぇ、待てよ――!」



老人「御坂美夏君」



10666「っ」

老人は、彼女の目を真っ直ぐ見た。

老人「これから起きるのは、世界の最後の、ほんの一部だ」

老人「もし、もしだ」

老人「君がこの苦難を乗り越えたならば、君は世界を背負わなければならない」

老人「今から滅ぶ世界に対して責任を取らなければならない」

老人「いつか来るその日を、乗り越えなければならない」

老人「君にその――覚悟は――」

老人はそれだけ言って、沈んだ。




10666「――何だよそれ、どういう事だよ……っ」

疑念を置いていきながら、紅い世界は今も広がり続ける。


776伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/02/26(日) 00:31:07.10OPnXd5xAO (7/7)

投下終了


777伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/03/07(水) 01:04:34.93m6tDnTnAO (1/6)

投下開始


778伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/03/07(水) 01:05:09.23m6tDnTnAO (2/6)

――――

しばらく歩くと、空気が変わった事に気付く。

――ここが、最後で、一番奥か。

10666「……おい、『心理掌握』。一人で立てるか?」

掌握「え、えぇ……」

手を離し、前を向く。
夕焼けの眩しさの先に、求めた人がいた。

10666「――13510号」

13510「――10666号?」

あぁ、何て懐かしい――響きだ。
たまらない。自然と口角が上がってしまう。

彼女に手を伸ばして――

垣根「よう、遅かったな」

――癪に触る声で制止させられた。

10666「なるほど」

溜め息。

10666「一番ってのはアンタだったか」

垣根「こんな事で一番になってもねぇ」

第二位の後ろにいた女が垣根に絡み付く。
愛おしそうに腕を回して、言った。

定規「貴方は私の中で一番よ、帝督」

それに笑いかける少年と――突然大声を上げる、10666号の後ろにいる少女。

掌握「――垣根、連れてきたわよ!」


779伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/03/07(水) 01:05:58.85m6tDnTnAO (3/6)

少しの驚きと、追って納得。
彼女は味方ではない。当然の行動だろう。

だが。

垣根「ご苦労、と言ってほしいのか?」

辛辣な言葉に、心理掌握は動揺する。
追い打ちをかけるように、垣根は言葉を続けた。

垣根「足止めも出来ないなら、お前に用事なんてねぇよ。失せな」

掌握「――垣根!」

心理掌握が強く彼を睨み付ける――能力の行使だ――が、それは効果を為さない。

掌握「――何故」

愕然とする少女とは対象に、少年は面白そうに笑っていた。

垣根「怖いなぁ、13510号。この女、俺を殺そうとしたぜ」

13510「――嫌いです。いなくなって下さい、とミサカは願います」

冷たい言葉が、世界に具現して影響する。
心理掌握は水に沈み始めた。

掌握「――いやぁっ!?」

10666「お、おいおいっ!?」

咄嗟にその右手を掴み、ギリギリの所で心理掌握を繋ぎ留める。

彼女と目があった。

掌握「――どうして」

10666「くっ……死にたいのか?」

手が軋む。
『沈んで』いるのではなく、『沈まされて』いるのだろう。

掌握「――死にたく、ない」

10666「なら、しっかり掴まれ――!」


780伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/03/07(水) 01:06:45.48m6tDnTnAO (4/6)

強く引き上げると、彼女は再び水の上に立てるようになる。
肩で息をして、顔は少しばかり青ざめていた。

10666「……足が地に着かない、ってのは正にこのことだな」

垣根「あぁ、言い得て妙だな」

声の掛け合いが、空気を振動させる。
一言一言、臨戦体制に入っていく。

13510「10666号、今助けてあげますから……垣根さんに全て任せて下さい、とミサカは祈ります」

目を閉じ、手を組む彼女は――例外無く、おかしかった。

心底愉快そうに笑う『心理定規』とやらが、とても憎たらしい。

空っぽのアイツを、滅茶苦茶にしやがって――

10666「――フォース」

フォース「了解だ、マスター。共にあのいけすかないクソッタレに、思い切り喰らいついてやろうじゃないか」

爪が、力が答える。
電撃を行使するラインが形成され、演算がスムーズに行われた。



――行ける。


781伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/03/07(水) 01:08:05.66m6tDnTnAO (5/6)

垣根「下がってな、心理定規――ようやくだ」

少年は深く息を吐き出して、微笑した。
待ちかねていた、何かを手に入れたような――子供のみたいな顔。

垣根「10666号、お前は本当にやりやすいな。思った通りに動いてくれる」

垣根「まぁ、最後を迎える為に死んでくれ――」

10666「――『超電磁砲』!!」

垣根帝督が力を発現する前に、コインは電撃を纏って少年までの空間を走り抜けた。
ソレは見えない壁に遮られて落ちる。

垣根「ソレの得体の知れなさは分かっている……じっくりやらせてもらうぜ」

10666「あぁ。そりゃ出来ない相談だ」

垣根帝督の横腹を、熱が掠める。
追って、小型爆弾が連鎖的に破裂した。

垣根「なっ――」

10666「何故ならな――」

飛び込んできたのは、遊撃の――アイテムのメンバー。

麦野「――よぉ、垣根ぇぇぇぇぇぇっ!!」

10666「――私は一人じゃないからな」

第四位を含めた、精鋭たちだった。


782伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/03/07(水) 01:09:44.14m6tDnTnAO (6/6)

投下終了
sage進行にした方がいいかも。


783VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/03/07(水) 10:31:19.27zSiBcDWDO (1/1)

前スレがどこにも見つからないんですが…
リンクも繋がりませんし…


784VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)2012/03/07(水) 12:05:26.565cRuUuFho (1/1)

こっちの投下タイミングがつかめませんが、とにかく乙です


>>783 前スレは>>754 >>756をどうぞ


785伊吹 ◆fJ3KTPFnIUC/2012/05/07(月) 01:18:19.66G816yugAO (1/1)

うぐぐ


786VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2012/06/30(土) 10:17:19.82B+PZ4Vppo (1/1)

えーと
あと1ヶ月ちょっとか
1-2ヶ月書き込みなし落ち防ぐために一応レスしとく


787VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)2012/08/05(日) 18:55:31.25frBj/ZyQ0 (1/1)

そんな>>1を応援してる