1VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 18:02:01.23dpawE1.0 (1/1)

ウンコ出してから書くわ


2VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 18:31:37.87FqjRMIAO (1/1)

⊃下剤


3VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 18:56:27.38CMmCygDO (1/2)

ちょっと期待


4VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 19:02:36.425ekpTqI0 (1/1)

けっこう期待


5VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 19:10:22.78rYhTQIQ0 (1/3)

どういう展開にしようか?


6VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 19:16:32.04rYhTQIQ0 (2/3)

ID変わったけど>>1ですよー


7VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 19:16:57.78YC8KcsAO (1/1)

セロリは何に迷ったんだ?


8VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 19:27:06.84rYhTQIQ0 (3/3)

誰か案を頼む


9VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 20:32:00.03GrdCkMAO (1/1)

学園都市にあきあきしたセロリが外に出て会う展開は?


10VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 20:34:27.291xrnvMDO (1/1)

打ち止めのプリンを食べてしまった、一通が家に帰りたくない。とか


11VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 20:35:52.06SWlt6Qoo (1/1)

考えてから立てろカス吹き飛べ


12VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 21:18:10.13CMmCygDO (2/2)

>>11IDがQoo

八九寺は発育がいい方だけどセロリさん的にはどうなんだろう
セクハラするんだろうか


13VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 22:57:36.20o.CjIJso (1/1)

一方さんって家に帰りたくないって思ってんの?
思ってなきゃ見えないし触れないぜ


14VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 23:03:25.42/l0WI6wo (1/1)

思ってんじゃん?
そもそも帰りたいのかどうか怪しいがww


15VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/23(金) 23:30:41.35VmJiiZ60 (1/1)

そこは打ち止めと喧嘩したことにする
化ってその日母の日だっけ?


16VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/24(土) 18:47:04.09j9ZYHwDO (1/1)

母の日であってるんだが……もう無理か?


17管理人、Twitterを始める http://twitter.com/aramaki_vip2ch2010/04/26(月) 01:09:58.95EKwHgcUo (1/1)

やらないならhtml依頼してきて


18VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/27(火) 02:20:29.77dsjgltQo (1/4)

一方通行「おイ」

八九寺「話しかけないでください、あなたのことがきらいです」

一方通行「はァ?」

八九寺「聞こえなかったのですか? ならもう一度言います。あなたのことがきらいです」

一方通行「いや、意味わかンねェし。案内板見てェからそこ退けよ」

八九寺「ああ、そういうことだったのですね。なら早く言ってください紛らわしい
    てっきり私は、あなたがロリータにコンプレックスを抱いてるお人で、私に欲情して声をかけたのかと」

一方通行「『おイ』の一言だけで性犯罪者ですかァ!? いくらなンでも物騒すぎンだろうがァ!」

八九寺「通学中の小学生に声をかけた近所のおじちゃんでさえ立派な犯罪者になる世の中ですよ?
    もやしっ子の癖に異様に目つきの悪い天性のヒキオタニートが、私のような可憐でキューティクルな幼女に声をかける。
    それを世間は極悪犯罪と呼ぶのです。良かったじゃないですか朝刊一面写真付きで載りますよ?」

一方通行「俺は引きこもってもなけりゃ、オタクでもねェ! ましてやニートなンかじゃねェよォ! 体の色素が薄いのは能力の弊害だ!
     それと、キューティクルは髪の表皮の組織の名前だ! テメェは全身キューティクルで覆われてンのかァ!?」

八九寺「あら、それは失礼しました。しかし能力ときましたか、なるほどなるほど……学園都市してますね」

一方通行「あァ? 『学園都市してますね』っておまえ、"外"の人間か?」

八九寺「うーむ……外といえば外ですが、中といえば中のような気がします」



19VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/27(火) 02:23:41.87dsjgltQo (2/4)


一方通行「めンどくせェ喋り方だなァくそ。ハァ、もういいから退けよ。付き合ってらンねェ」

八九寺「な! このタイミングで別れ話ですか!? ひどい! 
    あんなに濃密な言葉を交わしたというのに! こんな簡単に捨てるなんて!」

一方通行「出会って一分で惚れた腫れたの話もねェだろうがよォ!」

八九寺「でも確か、あなたはロリータにコンプr」

一方通行「違ェつってンだろうがァ!! ついさっきそれ否定しましたァ! ダンゴムシ以下の記憶力しかねェのかテメェはよォ!
     つーか、いい加減そこ退きやがれ!」

八九寺「あーはいはい、わっかりましたよ。うるさいウサギさんですねぇ」

一方通行「………………」

八九寺「? ど、どうしました、ウサギさん?」

一方通行「……おまえがどこの誰様なのか知らねェが……よォォおっぽォど、愉快にぶちまけられたいらしいなァ!!」

八九寺「うにゃっ!? お、下ろしてください! バックをつかんで振り回すのはやめて下さぃぃいい!!」

……
…………
………………

一応時系列的には原作前のつもりなんだけど、一方通行ハッチャケすぎだよね。なんかとりあえずゴメン


20VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/27(火) 02:33:11.63CtdbP9Ao (1/1)

「構わん、続けろ」


21VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/27(火) 03:02:00.44dsjgltQo (3/4)

八九寺「……回ってましゅー……雲が、壁が、地面が、ぐーるぐるぐーるぐる回ってましゅー」

一方通行「あァ、そォかよォ。愉快でよかったじゃねェか」

八九寺「そーでしゅねぇー…………って、違います!!

一方通行「なンだァ? えらく早いお目覚めだなァ」

八九寺「ふんっ! この私をそんじょそこらの一般小学生と一緒にしないことですね!
    なにせ、私は100人にひとりの天災なのですから!」

一方通行「天才の字が違ェし割合が思いのほか高ェ! ンな、ひとつの街に数千数万単位で天災が転がっててたまるかァ!」

八九寺「おぉ、さすがのツッコミですね、……えーっと? …………だれさんでしたっけ?」

一方通行「あー……まぁいいか、一方通行《アクセラレータ》ってンだ」

八九寺「ふーむふむなるほど、日本人っぽくはないお名前ですね……
    でもまぁ、そう言われれば異様な色をしたその髪、肌、目もどうにか納得出来そうです。
きっと、ロシアの獄中でドタバタやってたんでしょうね」

一方通行「おまえなに言ってンだよ」

八九寺「ウサビッチですよ。知らないんですか?」

一方通行「そンな、雄ウサギとよろしくやってそうな名前のウサギは知らねェよ」


22VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/27(火) 03:04:20.89dsjgltQo (4/4)

八九寺「はぁ……これだからヒキコモリは。内向的で自分の殻から飛び出そうという意思が見受けられませんね」

一方通行「おまえまだその設定引きずってたのかよ。あいにく職には困ってねェよ」

八九寺「あら? 学生さんではなかったのですか?」

一方通行「ま、そうっちゃそうだが、違うっちゃあ違うなァ」

八九寺「あなたも人の事を言うくせ、なかなか面倒な喋り方をするではないですか」

一方通行「自分で分かってっから良いンだよ。そういやおまえは名前言わねェのな」

八九寺「そうでしたねすっかり忘れてました、人に名前を聞いたくせに自分の名前を言おうしないやつは人じゃない。
    と、昔祖母に言われたので私も名乗りましょう。私は八九寺真宵と申します。以後、あまりお見知りおかないでください」

一方通行「口上から、名乗りまで全部前衛的で攻撃的だなァオイ。
     あとお前バァさン理論なら今のオマエは人じゃねェンじゃないのかよ」

八九寺「……そうとも言います」

一方通行「あァ? どういうこt」

八九寺「それではアセロラさん! 私はコレで失礼しますね」

一方通行「なァ!? 俺はンな健康食品的な名前じゃねェ! ってあら? アイツどこいきやがったンだ?」

……
…………
………………

寝ます。乗っ取りの乗っ取り大歓迎


23VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/27(火) 08:09:46.46VsjtUIDO (1/1)

なんか始まってた
(・∀・)イイヨーイイヨー


24VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 01:16:41.21BwS0yVUo (1/6)

芳川「遅かったじゃない一方通行。なにかあったの?」

一方通行(ちくしょう話し込ンで遅れるなンざがらじゃねェことしちまったなァ)

一方通行「なンもねェよ、起きンのがだるかっただけだ。
     で、今日の実験はどこの部屋でやンだよ」

芳川「今日はここの地下の第二軍事演習室でやるわ。ちょっといつもの場所に比べて耐久性が心もとないけれど、
   あなたが意図的に壊しでもしない限り今回の実験内容なら問題ないでしょう」

一方通行「ふーン。で、今回の『縛り《ハンデ》』はなンなンですかァ?」

芳川「『外部への能力を使った干渉ができない』これだけよ」

一方通行「あーハイハイ。体を中から爆散させたりとか、鉄骨使ってすりこぎとか、そういう愉快なことができなくなるだけだろ?」

芳川「まぁ、実験の意図としては、『能力を使った身体操作法の確立』とかそういうものなのだけれど」

一方通行「知らねェよ。俺は"一方通行"な殺戮ゲームやってるだけだ。内容まで求めてくンじゃねェ」

芳川「はぁ、あなたらしいわね。じゃあ、第6709から第6759次実験まで一気にやるけど大丈夫?」

一方通行「ハッ、何の心配をしてンだよ。こちとらうン千人同じ顔したやつブチ殺してきてンだぜ?」

芳川「……そうだったわね。ではさっそくだけど向かってくれるかしら?」

一方通行「あァ、行ってくらァ」


25VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 01:49:51.39BwS0yVUo (2/6)

一方通行「おォ……よくもまぁ誰も使わねェ空間にビル群なンざ作ったなァ」

6709号「他の研究所で行われる多くの実験と違い、この実験は学園都市の本望である『SYSTEM』へ近づく研究ですので、
    予算が有り余るほどもらえるらしいです。と、ミサカは内部事情を教授します。」

一方通行「数十万で作れるクローン二万体ブチ殺すつってもせいぜい数十億しかかかンねェンだがなァ」

6709号「それでは、『実験』開始まであと二分三〇秒ですが準備はよろしいでしょうか? と、ミサカはこの場にいるミサカ全員を代表して確認をとります」

一方通行「あァ? 一人一人素手でブチ殺すだけだ。準備も糞もねェよ
     しっかし、おンなじ顔したやつがこンだけ集まると壮観だなァ、おい」

6709号「ミサカ達は同じ遺伝子から生み出され、ほぼ全て同じ環境で育ち、同じ人格をインストールされましたので、
    顔立ちに差異がないのは当然と言えます。と、ミサカは詳細を含めて説明します」

一方通行「……ほンとに気味の悪ィ『人形』だよおまえらは、これから殺されるってェのになンの感慨もねェのかよ」

6709号「それがミサカ達の生み出された意味ですから。と、ミサカは淡々と事実を告げます」

一方通行「そォいうのが気味悪ィっつゥンだよ、もうちっと泣くだの喚くだの命乞いだのしねェとこっちも殺しがいがねェだろうが」

6709号「『実験』の内容上、殺されるまでに最大限の戦闘行為は行います。と、ミサカは殺しがいという点に関して提案します。
    しかし、それ以外の行動は必要性がないと判断出来るため、残念ながら行うことはありません。
    と、ミサカはあなたの期待に添えないことを発表します」

一方通行「もう、めンどくせェなぁおい。さっさと始めンぞ」

6709号「分かりました。と、ミサカは首肯し、カウントダウンを始めます。
   『実験』開始まで、残り四〇秒……三〇秒……二〇秒……一〇、九、八、七、六、五----
    これより、第6709次実験から第6759次実験までの短縮実験を始めます。被験者一方通行は所定の位置について下さいと、ミサカは伝令します」



26VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 02:32:10.32BwS0yVUo (3/6)

一方通行(くそ、ノらねェ。もう二〇人は殺ったか? ぜンぜっンテンションあっがンねェな)

一方通行(あと三〇人……ちまちま殺ってくのもめンどくせェし、もう……終わらせちまうか)

一方通行(体表に掛かる『力』を全反射設定。『重力』を操作)

 演算を完了させ、一方通行は"真横"へと"落ちて"いった。
 ビルの壁にぶつかろうが、その体へ加わるハズの反作用は全て反射され、一方通行の速度へは干渉出来ない。
 そうして、加速度的に勢いを増しながら、一方通行の体は渦を描くように"落ちる"。
 厚みを増していく空気の壁にぶち当たろうが、一方通行の体に当たったビルの破片が粉々に砕けようが、
 "轢かれたミサカがミンチになろうが"、それは些細な問題にすらならない。はずだった。

 ベクトルを操作し、一方通行は地に降り立った。

一方通行「はい、オシマイっとォ」

 ところどころが血に濡れた、赤いコンクリートの上を歩きながら出口へ向かった。


一方通行「おい、終わったぜェ」

芳川「モニタで見てたから分かってるわよ。まったくむちゃくちゃにしてくれて、ミサカを回収するのはこっちなのよ」

一方通行「だから、そっちの事情なンて知らねェよ。おまえらは文句言わずにやることやってろ」

芳川「はいはい」

一方通行「じゃあ俺はもう良いよなァ、帰らしてもらうぜ」

芳川「…………ねぇ一方通行」

一方通行「あァ?」

芳川「あなた、なにかあった?」


27VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 02:37:08.70BwS0yVUo (4/6)

寝ます。あいかわらず乗っ取りの乗っ取り大歓迎なんで使いたければどぞ。特に速筆の方どぞ

そういや忍野メメの口調ってどんなでしたっけ? いま化物語~偽物語が別宅お泊り中なのでわからんのです
誰か教えてください


あとこのSSって需要あるの?


28VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 05:21:12.66s1b309Y0 (1/1)

少なくとも俺には


29VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 05:42:00.11DpHLZ2SO (1/1)

俺もいるぜ


30VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 07:02:07.18qrcdSkDO (1/2)

この時期なら一方さん帰りたくねえだろうな。



31VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 10:07:16.14rFHrRvUo (1/1)

>>27
僕は知らないよ。誰かに聞いてみたほうがいいんじゃないかな?
おや、怒ったのかい?元気がいいなぁ、何かいいことでもあったのかい?
需要?あるんじゃないかな、多分だけどね。                     
CV櫻井


32VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 10:19:28.21AHDGCxI0 (1/1)

うまいなぁー。


33VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 19:43:58.96BwS0yVUo (5/6)

>>31忍野さん何やってるんスか。いやまじありがとうございます


一方通行「……さっき、なンもねェつったところだろうが、同じ質問してんじゃねェよボケてンですかァ?」

芳川「いえ、質問の"意味"は同じだけど、"意図"が全く異なるわ」

一方通行「はァ?」

芳川「どうして、今回の実験はあんなに"苦しそう"だったの?」

一方通行「……おまえ、何言ってンだ」

芳川「今回の実験『外部への能力を使用した直接的な干渉が不可能な状態での体多人数戦』
   普通の能力者、それこそ他のレベル5であったとしても苦戦するであろう条件。
   でも、あなたの能力『一方通行』のベクトル操作は体内への衝撃を例外なく『反射』できる。
   そんな、苦戦しようのない実験で、なぜあんな表情を見せたの?」

一方通行「…………」

芳川「『あの子たちを一人づつ、ゆっくりと嬲り殺していく』これは私の勝手な推測だけれど、普段のあなたならそうしたでしょうね。
   いつもの『残任で狂気に染まった』一方通行なら、笑いながら手足の一つや二つもいで見せたはず。でもあなたはそうしなかった。
   いえ、実際は、そう"振舞おうとしていた"ようだけれど、結局駄目だったのね。一〇人を超えたあたりから狙いを心臓に定めたし、
   二〇人を超えればセットを破壊してまとめて叩き潰すなんて力技を使った。
   一見すると、容赦のない攻撃の用に思えるけど、普段の執拗なまでにサディスティックなあなたを見ているから話は別。
   あの子達を、そして手を血で染める自分自身を想いやった、とても優しい攻撃だったわ」

一方通行「……面倒になったから全部まとめてぶっ潰しただけだ」

芳川「ええ、本当はそうなのかもしれない。でも、ただ"気になった"の、あきらかにいつもと違う行動パターンを見せたあなたが。
   ……じゃあ改めて聞くわ、一方通行。"なにかあったの?"」


34VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 20:21:14.68qrcdSkDO (2/2)

いい感じ
一度美琴や上条抜きで妹達の問題解決する奴みたいな。


35VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 21:17:35.03BwS0yVUo (6/6)

ちょっと思わぬハプニングで今日書き進められなさそうです
可能ならチョコチョコ投下していきますが、たぶんムリです
いやもうほんとにすみません


36VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/28(水) 22:04:33.66Dd9/6EDO (1/1)

ちょっとずつでも書いてくれたら嬉しいんだぜ


37VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/29(木) 01:17:10.33jOjNiH6o (1/2)

一方通行「…………うるせェよ、ただの"研究者"のおまえが"教師"の真似事ですかァ? めんどくせェことしてんじゃねェぞおい」

芳川「質問に答えてくれないかしら、一方通行?」

一方通行「だから、"なンもなかった"つってンだろうがよォ! 仮に"なンかあった"としてもおまえにはなンの関係もねェ!」

芳川「いいえ、実験の監督者の一人として私には『被験者一方通行』のことを知る必要があるわ」

一方通行「あァそうかい! だがなァ、おまえらにとっての『被験者一方通行』は『欠陥電気を[ピーーー]存在』だろうがよォ
     つまりは、結果的に殺しゃあおまえらは文句ねェんだろ? おまえらはそのセッティングだけすりゃァ良いンだ。
     さっきも言ったがその過程《プロセス》にまで口出しするんじゃねェ!」

芳川「…………」

一方通行「チッ、胸糞悪ィ。今度こそ俺ァ行くぞ」


38VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/29(木) 01:43:34.43jOjNiH6o (2/2)

sagaり忘れたorz ……まぁいいか


芳川「はぁ、行ってしまった……か……」

芳川「ほんとにダメね私。ただ、"甘い"だけ。人に道を教える"優しい"教師になんてなれやしない」

芳川「あそこで、一歩踏み込む勇気がなかった。ギリギリ"研究者"でいられるラインを超えることが出来なかった」

芳川「『リスク』と『チャンス』を天秤にかけて、リスクが下がったから踏み込むことはしなかった」

芳川「結局は自分に甘いだけなのよね。あそこで境界線を超えていれば、目の前に現れた彼の引き金を引いていれば、何かが変わるのは分かっていたのに」

芳川「その変化が、自分に危害を加える可能性を考えて、手を出せなかった。ホントに甘い、甘い考え」

芳川「……でも、私が境界線を超えなくても、引き金を引かなくても、彼は確実に今までと何処か"違っていた"」

芳川「だから、とても、とても甘い考えで、とても最低な願い事だけど」

芳川「『誰か、もう一度彼を変えて下さい』」

芳川「願わくば、彼にとって、良い方へと……」


39VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/29(木) 09:02:22.15x1od0tw0 (1/1)

ここvipじゃないからゆっくりやってくれていいんだぜ


40VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/30(金) 00:51:37.07BrP.cNAo (1/2)

ハプニングが去りました
結局昨日は書きためを放出しただけなので書けてません
すっからかんのすっぽんぽんでパッパラパーです

>>39
そう言われるとものすごく助かるますます
がんばってGW中には終われる用にしたいけどどうなることやら

……
…………
………………

一方通行「……はァ」

一方通行「ガキとペチャクチャおしゃべりして、お人形遊びもそうそうに切り上げた。しまいにゃ研究者にキレると来たもんだ」

一方通行「なンか違ェよなァ……いや、もうぜンぜン違ェ。確実にいつもの俺じゃねェ……」

一方通行「俺は、どうなってンだ…………」

 一方通行は、その昔『怪獣』になったことがある。
 『イラッ』と思っただけで、数十、数百、果ては数千、数万という単位で人が傷つきかねない。
 自分の感情の起伏が周りの人間の生き死にに直結する『怪獣』。
 彼は決意した。心の動かない『氷』のような人間になろうと。誰も愛さず、誰も憎まず、誰も近づかないような人間になろうと。
 そうして『氷』となった彼の心は、他人を寄せ付けないための、もうひとつの解を導き出した。
 それは、『絶対』となること。誰であっても、相対することが馬鹿らしくような『絶対』の存在になること。
 その二つを彼は、彼自身に誓った。
 『氷』になり、これから『絶対』になると。

 それから彼は、律儀にそれを守り続けた。守り続け、守り続け、それこそが本来の自分であると思い込むほど、深い心の底までその誓いを守らせた。
 そうして他人に関心を持たない『氷』になったし、これから『絶対』になる。
 それこそが一方通行《アクセラレータ》。

 だからこそ、今日の一方通行は『異常』だったのだ


41VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/30(金) 01:26:57.19fkC/OwAO (1/1)

もう何がなんだかパラダイス気分


42VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/30(金) 02:53:53.95BrP.cNAo (2/2)

忍野のキャラが掴めないので諦めて寝ます
あの人原作で純粋な裏のないギャグパート出たことありましたっけ?

たぶん次はちょっと期間あけて溜めてから来ます


43VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/04/30(金) 09:19:20.30cHJTFkDO (1/1)

あの人はつかめないのが本分だからな
真面目なときにふざけてるっていう感じの人だし


44VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/01(土) 00:06:19.48cZwRcgM0 (1/1)

忍野さんは、上条さんみたいなタイプ嫌いそうだな。忍野さんの口癖は「僕が助けるんじゃない。君が勝手に助かるんだよ、一方君。」みたいな感じか?


45VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/01(土) 01:12:55.39f9ei5dc0 (1/1)

忍野ってなんかあれだな
京極堂みたいな話し方するんだな


46VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/01(土) 15:01:02.20qdjrhsso (1/2)

明確に京極堂の……ゲフン……ゲフン。
アニメのチョイ悪系オヤジのデザインは意表をつかれたがアニメにはよく合ってたな。




47VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/01(土) 18:12:43.56xpzYRcDO (1/1)

まさかの金髪だったけど見慣れちまうもんだな


48VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/01(土) 22:30:25.17T/45MSAo (1/1)

忍野が手伝うのって怪異関係だけだしなあ


49VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/01(土) 23:28:26.13kNOJiJgo (1/1)

某微笑動画等で化物語について勉強し直して
「真宵の可愛さは地球を平和にするね」とか考えたりしてたら結局あんまり書けませんでした
やっぱり遅筆でお送りしますので一時間に一回くらいのペースでスレを覗いてくれればなと思います。




 --一方通行は、『答え』にたどり着かない『自問』を繰り返し続けた。

 来た道をなぞるように足を動かす。

 --なぜ、研究員にあんなに感情的になったのか。『絶対』になるための、道具に過ぎないはずなのに。

 行きに案内板で探し、見つけたコンビニでブラックの缶コーヒーを買い漁った。

 --なぜ、欠陥電気達をなぶり殺さなかったのか。自分への、欠陥電気への、『けじめ』のはずなのに。

 その中から一本を取り出し、一気に胃へ流し込んだ。

 --なぜ、『ハチクジマヨイ』に構い続けたのか。だれにも感情を向けない『氷』になったはずなのに。

 近くの清掃ロボットへと、空き缶を投げ、なんとなく横道へ目をやった。

 --なぜ--こんなにも、『マヨイ』続けるのか。

 紙切れを片手に、辺りをキョロキョロ見回す、『八九寺真宵』が視線の先にいた。


50VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/01(土) 23:35:13.13qdjrhsso (2/2)

おお、来た。


51VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/02(日) 00:06:00.208XcYNnwo (1/6)

 『自問』を中断し、進路を変更。
 それこそ『異常』なのだと分からぬまま、一方通行は八九寺真宵のもとへ歩いていった。

一方通行「おイ」

八九寺「話しかけないでください、あなたの--」

一方通行「『ことがきらいです』ってか? 振り向きざまに暴言吐こうとしてんじゃねェぞ」

八九寺「んなっ!? そんなことありません! 最後まで聞かないで勝手に人のセリフを決めつけるのはよして下さい!」

一方通行「最後まで聞かなかったのは、オマエが言葉に詰まってっからだろォがよ。
     じゃあいま、なンて言おうと思ってたんですかァ?」

八九寺「……『あなたのことが大好きです』と言おうと思ってましたよ」

 一拍おいて、言葉を口にした八九寺は、そこそこに膨らんだ胸を張りながら、ニヘラと--心の底から嬉しそうに--笑った。

一方通行「はァ!? 前の文と後の文で相手に向ける感情が真逆じゃねェか!」

八九寺「ちっちっち、これだから乙女心の分からない男性は嫌なのです」

一方通行「オマエに乙女の心なんてあったンかよ

八九寺「すごく失礼な言葉を言われた気がしますが、まぁ良しであげましょう。
    いいですか? 乙女心とはすべからく、段落と段落、文と文、単語と単語の間に挟まってこびりついているものなのです!」

一方通行「なンか歯の間に挟まった残りカス見てェな扱い受けてんなァ乙女心! ならさっきのはどこに乙女心が挟まってンだ」

八九寺「『……ください、あなたの……』のあたり……ってなんか此処だけ引用すると酷く卑猥です!
    いったいなにを言わせるんですかアクセロリータさん!」

一方通行「知らねェよ! てめェが勝手に引用したんだろうか!
     それに、俺は一方通行《アクセラレータ》だ! 名前に性癖引っさげるような変態じゃねェ!」


52VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/02(日) 00:08:03.16vKm5kMMo (1/3)

きたぁ、お約束! wwktk


53VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/02(日) 00:40:43.828XcYNnwo (2/6)

>>51「まぁ良しであげましょう」→「まぁ良しとしてあげましょう」
なんかもう誤字とか一方通行さんの「ァ、ィ、ゥ、ェ、ォ、ン」とかいろいろ酷いけど適当に脳内補完お願いします
「もう意味分かんねぇ」ってなったらなじりつつ指摘して下さい



八九寺「なっ、そんなまどろっこしい手段ではなく、直接襲ってやるぜぐえっへっへということですか!?」

一方通行「ちっげェよォ!! なンでロリコンが大前提で話が進んでンだ! あと、そのわかり易すぎるキャラはどこのどいつだ! オマエのなかで俺はどうなってやがンだよ!」

八九寺「『ロリコン』じゃない……? ということは、まさか! オールラウンダーな変態!?
    直接だけの話ではなくもっとすごいプレイを数多く強要させるつもり!?
    つまり『名前に自分の性癖なんて入れたら呼び終わるのに一生かかっちまうぜ』ということ訳ですね!」

一方通行「今のは別に『俺を見くびンなよ』とかそういう類の言葉じゃねェ!
     っていうか最後なンで『?』付けなかったんだオイ! てめェひとりで、疑問が解消されてホクホク、みてェな顔してンな!」

八九寺「まぁ、セロリさんの歪んだ嗜好は良いとして、話を戻しましょうか、えーっと? 本題は、
    『セロリさんって失恋しても、未練たらたらに彼女つけ回しそうだよね』でしたっけ?」

一方通行「だから! オマエの中の俺はなンでそンなに色恋沙汰の方面で歪ンでンだ!
     つーかその呼び方知らねェやつが聞いたら『変わったあだ名』になンだろうけど、俺ァ成り行き知ってっから『嫌なあだ名の一部分』としか思えねェンだよ!
     それと、さっき話してたンは乙女心の場所だろうが。自分で振った話をなンで忘れンだ、ちっと前にも言った気がすっけどその記憶力どうにかしやがれ」

八九寺「ああ、そうでしたね。私が卑猥な言葉を口にさせられたアレですね」

一方通行「あー。なンかツッコンだらまた堂々巡りになる気がすっから続けろよ」

八九寺「なっ! 今のに一方通行さんがツッコまない!? どうしたんですか!?」

一方通行「ダァああああ!! なンでそこで食いついてくるンだよォ! 俺の話を進めようって配慮を悟りやがれ!」


54VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/02(日) 02:30:26.158XcYNnwo (3/6)

八九寺「『一時間置きくらいに見に来て下さい』とか言っておきながらこの体たらくはなんなんでしょう」

一方通行「なにメタ発言してやがンだよ」

八九寺「いや、ごめんなさい。他スレを眺めてニヤニヤしてるコイツの姿が妙に腹立たしくて。
     そういえば、メタ発言という言葉は『アニメ、マンガ、ライトノベル等の創作キャラクターが、その世界観の外の人物、出来事、もしくはその世界の設定へ言及する』場合によく使われますが、
     とうぜんながら、本来の意味はもう少し広いんですよね」

一方通行「ン? あァ、ンなマンガとかのためだけに作られた言葉じゃねェからな。『ある言語の意味を記述する際に使われる、高次元の言語』とかだったか?
       まァ今の意味は『メタ発言』じゃなく『メタ言語』を示してるンだがな。よく使われるメタ発言ってのはメタ言語の『高次元』って部分だけのイメージで広まってった言葉だろうよ」

八九寺「おォ、学園都市一位。流石ですね。一応、簡単に言いますと、普通の『発言』に対しては、その人の『身振り』や『表情』、言葉の『リズム』や会話事態の『テンポ』、
     もしかするとそのときの、『服装』や『化粧』なんかがメタ言語になるんですよね」

一方通行「ようするに、『言葉』の意味の他に、ソイツの『感情』とか、会話の『流れ』とかを示すもンだな。
       今俺らが『発言』してっけど、SSだとそういう『メタ言語』にあたンのが『口調』とか、『文のリズム』くらいで極端に少ねェから、キャラクターの感情とかを表現するのはなかなか難しいンだよな」

八九寺「そこで、です」

一方通行「あ? なにが『そこで』なんだよ」

八九寺「わかりませんか? 描写出来ないということは--裏で何をやっているのかハッキリと伝わらないということです」

一方通行「ハッ!?」

八九寺「あー。なんだか異様にあつーくなってきましたねー」

一方通行「そ、そんな大胆な姿に!?」

八九寺「うっとうしいですねぇ。これも取っちゃいましょうか」

一方通行「なァ!? そんな大事な部分を」

八九寺「あー床がひんやりしてますねー」

一方通行「オマエ! そんなカッコでそんなカッコしたら、大事なところがァ!?」



ゴメンナサイちょっと書きたかったんです
『メタ発言』についてはうろ覚えの知識なのでほんとにこの通りなのかは知りません


55VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/02(日) 02:38:08.32vKm5kMMo (2/3)

いいんじゃないかな。っぽくて。


56VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/02(日) 03:42:25.568XcYNnwo (4/6)

>>53

八九寺「ほぉ、一方通行さんの口から配慮なんて言葉が聞けるなんて思いませんでしたよ」

一方通行「俺だってそんな言葉言うなんざ思ってもみなかったわ」

八九寺「では、そんな一方通行さんに免じて、乙女心の在処をお教えしましょう!」

一方通行「在処は聞いたっつゥの、その場所に『何』が有るかって話題にはいる所だ」

八九寺「……むぅ、せっかく盛り上がったところでしたのに、話の腰を折ってくれましたね。
    まぁいいでしょう。その乙女心とは!」

一方通行「その乙女心とは?」

八九寺「『ツンデレイズム』です!」

一方通行「ツンデレイズムゥ?」

八九寺「そうです。ツンデレイズム。まぁツンデリズムでも構いませんよ?」

一方通行「いや、呼び方に引っかかってんじゃねェよ。で、その『ツンデレイズム』とやらに則ったら、そこにどんな言葉が入ンだよ」

八九寺「えっとですね、『あ、やっちゃった……私って馬鹿だなぁ。でもここで素直にならなくちゃ、いつまでもツンツンしてたって何も始まr」

一方通行「ダウトォオ!! あの一瞬にンなクソなげェ葛藤入るわきゃねェだろうがァ! っていうか一レスじっくり引っ張といてそんなありふれた答えかよォ!?」

八九寺「本編でメタ発言は謹んで下さい!」

一方通行「まぁそれもメタ発言だがなァ」

八九寺「っていうか私は一方通行さんのツッコミが心地よくてつい、ですね。ネタを振ってしまうわけですよ。つまり一方通行さんが悪いんです」

一方通行「いくらなんでも論理が飛躍しすぎだろうがァ! 風桶論法展開してんじゃねェ!」


57VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/02(日) 04:48:49.138XcYNnwo (5/6)

八九寺「まぁまぁ、終わった話はどうでもいいじゃないですか。
    そんなことより、さっきから一方通行さんが動くたびガランガラン音をたてるビニール袋が気になるんですが」

一方通行「ンあ? こりゃ、コーヒーだ」

八九寺「いやまぁ、それはなんとなくわかるんですけど……そのビニール袋の耐久性を無視してるとしか思えない量を買ったんですか?」

一方通行「あァ、重さは能力でどうとでもなるしなァ」

八九寺「な!? よくみると全部同じ銘柄じゃないですか! 棚にあるものを全て買い占めたというのですか!?」

一方通行「いや、足りなかったンで、奥からいくつか持ってこさせた」

八九寺「くっ、想像以上です……ブラック、無糖のコーヒーをこれだけ買うなんて、大人度が段違いです」

一方通行「ハッ! ガキはガキらしく甘甘のMAXコーヒーでも飲むんだなァ!」

八九寺「ぬぅう……っ! ココで引き下がるわけには……しかし、あれは子供の味覚に対応しつつ大人の世界の片鱗を味わわせる逸品……っ! 魅力に抗えない!」

一方通行「クハハハハ!!」

 手に持った缶コーヒーをガラガラいわせながら高笑いをする一方通行に、片膝をつきながら苦々しい表情をする八九寺。
 どう贔屓目に見ても、『誰も』が『異常』に思う光景がそこにはあった。


58VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/02(日) 05:03:22.378XcYNnwo (6/6)

うぅ眠い……また今日の夜やってきてノロノロやります
ではでは


59VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/02(日) 08:48:42.09vKm5kMMo (3/3)

乙! 待ってるよ。


60VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/02(日) 20:23:09.17y/2FILgo (1/1)

期待


61VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 00:04:58.74QX1YU6oo (1/7)

 そんな――『異常』な光景に近づくものが、一人。

??「あー、気分良さげに笑ってるとこ申し訳ないんだけど、ちょっと聞きたいことがあるんだ――いいかな?」

一方通行「あァ? ……だれだオマエ」

 一方通行が振り返ると、サイケデリックなアロハシャツにぼさぼさの髪という、とても見られた格好でない、軽薄そうな男が立っていた。

忍野「姓は忍野で名前はメメ。仕事の依頼でちょっと学園都市までやってきたんだけどさ、困ったことに道に迷っちゃってね」

 両手を軽く上げ、肩をすくめて見せた忍野。その左手には学園都市製のGPS付き携帯用地図が握られていた。

一方通行「迷っただァ? ンなもん持っててどうやったら迷うんだよ」

忍野「うーん、どうやってと言われてもね。現に僕は迷ってしまっているんだ。
   迷ってる人に『なんで迷ったんだい』と聞いて答えられる人は少数派なんじゃないかなぁ」

一方通行「あァもうめんどくせェなァ……ちっとそれよこしやがれ」

一方通行「…………オマエ、ほンとになンで迷ったンだよ。しっかりきっかりナビゲートしてンじゃねェか」

忍野「いやぁ、携帯とかそういう機械の類には弱くてイマイチわかんないんだよね」

一方通行「……ハァ、この学園都市でアナログ人間に出会うことになるたァよォ……」

忍野「良かったじゃないか。希少であるとソレだけで価値が発生するのが世の常なんだから、
   希少なものに出会えたキミはなんかいいことあるよ。きっと」

一方通行「ハイハイ、そうですねェ」

忍野「と、いうワケで、道案内をお願いしたいのだけど。いいよね?」



メメさんこんなんかなぁ……


62VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 00:32:42.81yjxFwQk0 (1/1)

いい感じだが、もうちょい意味ありげな感じとチャラさが欲しいな


63VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 02:36:23.49QX1YU6oo (2/7)

一方通行「はァ? なンで俺がンなことしなきゃいけねェんですかァ?」

 不敵に笑みを浮かべながら口を動かす一方通行に、忍野は少し言葉を溜めた。

忍野「――『人助け』って素晴らしいと思わないかい?」

一方通行「ハッ! 人助けて自己満足しまショってかァ? ンなもんクソ食らえだ」

忍野「はっはー。奇遇だねぇ、僕もおんなじさ。人を『助ける』なんざクソ喰らえだよ」

 自分の発言を否定する忍野に、一方通行は眉をひそめた。

一方通行「言ってることが矛盾してンじゃねェか、どォいう事だ」

忍野「いやぁなに、簡単なことさ。キミにとっても――『その子』にとっても、きっと益のあるお誘いだよってこと」

 いつの間にか忍野から隠れるようにして、一方通行の右足にしがみついていた八九寺の体から、ビクッという振動が一方通行へ伝わった。

一方通行「あァ? ……何企んでやがる……オマエは『偶然』ここに来たんじゃねェのか」

 右手で八九寺を自身の後ろへ追いやる。
 自分の周りでこの少女が傷つくことを、なぜか一方通行は許容することが出来なかった。

忍野「ああ、『偶然』さ。『たまたま』とか『まぐれ』なんて言い換えることもできるけどね。
   僕がここに来たのも、キミと僕が出会ったのも、全部まとめて純然たる『偶然』だよ」


64VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 13:10:06.78ReQ7A9ko (1/1)

いいよいいよー


65VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 17:11:18.95QX1YU6oo (3/7)

一方通行「…………」

 一方通行は目の前の胡散臭い男を睨みつける。

忍野「まぁまぁ、そんなことはどうでもいいじゃないか。キミは僕を案内する。僕はキミらの『益』となる情報を提供する。
   ほら、利害関係が一致しただろう? これ以上なにか必要かい?」

一方通行「……はン、オマエは馬鹿ですかァ? 俺ァオマエになンかされるつもりはねェし、コイツだって今しがた出会った怪しすぎるオマエを信用出来るかよォ。
     まァ、なンか道に『迷ってる』みてェだが、ンなもん最悪俺かオマエじゃねェ誰かが連れてきゃいい話じゃねェか。
     オマエに貸しを作らなきゃいけねェ理屈なんざどこにもねェンだよ」

忍野「んー……そっかそっか。なるほどね」

一方通行「はァ?」

忍野「学園都市って、超能力とか、もはやオカルトって研究とかしてるって聞くし、正直外れてたらどうしようかと思ってたんだ。
   でも、まぁ、今ので『きっと』から『ほぼ絶対』に変わった。これは『ほぼ絶対』キミに――『益』のあるお誘いだよ」

一方通行「……どォいうこった」

忍野「いやぁ、いくつか候補はあったんだ。別にほっといてもどうとでもなるだろうなぁ、っていうのもあったんだけど、
   キミの場合は、僕みたいなのが口出しないと、ちょっと困ったことになるだろうから」

一方通行「わっけわかんねェこと言って煙にまいてんじゃねェぞアロハ野郎が、なンのつもりだァ!」

 右腕を大きく振りながら一方通行が叫んだ。
 それに驚いた八九寺は、右足を手放し、今度は左足へとしがみついた。

忍野「まったく、随分と元気がいいなあ。何かいいことでもあったのかい? まぁそんなせっかち君に免じて『困ったこと』を教えてあげるよ。

 そう言うと、忍野は自分の左手で、一方通行の『左側』を指さした。

忍野「その子は決して『目的地にたどり着くことはない』。あと、キミもそのままじゃ、絶対に『目的地にはたどり着けない』。
   ようするに、ずっとずっと迷子ちゃんってことさ」


66VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 17:13:36.24QX1YU6oo (4/7)

>>65

まァ、なンか道に『迷ってる』みてェだが
→まァ、コイツはなンか道に『迷ってる』みてェだが


67VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 17:29:37.78optkCwDO (1/1)

wwktk


68VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 17:48:50.00U.TK87g0 (1/1)

それがゴールドエクスペリエンスレクイエム。
wktk


69VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 17:59:39.47QX1YU6oo (5/7)

一方通行「……オイ、ちょっとまちやがれ」

忍野「ん、なんだい?」

一方通行「オマエは――『どこ』見て話してやがるンだ」

 一方通行の『左足』にしがみつく八九寺。
 一方通行の――忍野から見て――『左側』を指さす忍野。
 忍野は、虚空を指さしながら『その子』と言った。

忍野「あれ? 外れちゃったのかい? うーん、さっき右手で後ろに押すような仕草が見えたからそっちだと思ったんだけど。
   うーん、いざ決め台詞。ってところだったのにかっこつかないよねぇ、まったく」

 なんとなくバツが悪そうに、どうということもなさそうに、片手で頭を掻きながらぼやく忍野。
 そんな、忍野とは対照的に、一方通行はその表情に怒りやら、戸惑いをまぜこぜにしていた。

一方通行「オマエ……見えてねェってのか? コイツが」

 一歩通行は左足にしがみつく八九寺の肩に手を置くと、確かめるように、力を込めた。


忍野「うん? ああ、全然見えないよ。ついでに声も聞こえない。
   まぁ、キミの振る舞いを見てたら、たぶん子供なんだろうなっていうのと、おおよその背丈くらいは想像がついたけどね。
   僕にはその子の髪の色も髪型も、服装も、性別すらわからない。
   あ、性別は別に見えても分からないかもしれないなぁ。確認までに聞くけどキミは男の子でいいんだよね?」

 忍野の軽口が一方通行の左手に一層の力を込めさせた。

八九寺「……あの、痛いです、一方通行さん」


70VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 18:05:06.77GnwVpsMo (1/1)

化物語よんでなくてちんぷんかんぷんな俺に産業でたのむ


71VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 18:18:08.23lpU0DfAP (1/1)

>>70
化物語は怪異が実在するオカルトの世界で忍野はそれ専門のプロ
真宵の詳細は読んでれば分かる
絹旗は俺の嫁


72VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 18:28:55.08QX1YU6oo (6/7)

うーん、いざ決め台詞。ってところだったのにかっこつかないよねぇ、まったく
→いやぁ、いざ決め台詞。ってところだったのにかっこつかないよねぇ、まったく

ごめんなんか気持ち悪かったから訂正。


73VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/03(月) 18:54:26.81QX1YU6oo (7/7)

 八九寺の声が響き、一方通行は八九寺から手を離した。

一方通行「ンあァ、悪ィ八九寺」

忍野「ふぅん、その子は『ハチクジ』っていうのかい? そうだな、ちょうど良い。話を本題に戻そうか、その子の下の名前はなんていうんだい?」

 さっきの質問などどうでもいいというように質問を重ねる忍野に、一方通行は一瞬の逡巡のあと、答えた。

一方通行「……『真宵』だよ」

忍野「『ハチクジマヨイ』、か。字は? どう書くんだい? たぶん苗字は八、九、寺で『八九寺』。まぁこれで間違いないと思うんだけど、名前は?」

 忍野の問いに、決して届くことの無い、すこし震えた声で八九寺が答えた。

八九寺「……真実の『真』に、宵の刻の『宵』で真宵です。お父さんとお母さんがくれた、大切なお名前です」

 少しだけ強く足をつかんだ八九寺に一方通行は、力肩から離れて所在を求めていた左手を頭に置いてやった。

一方通行「……あァ、そうか」

 八九寺の体が強張ったが、気にせずガシガシと乱暴に撫でてやる。
 一方通行自身、なぜ自分がこのようなことをしているのか分からなかったが、少しの間撫で続けた。

 撫でるのを止めても、手は置いたままにして、一方通行は忍野に八九寺の説明をそのまま伝えた。


74VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/04(火) 13:27:33.62D1exVFw0 (1/1)

支援


75VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/04(火) 16:44:49.349da8XIwP (1/1)

そして支援


76VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/04(火) 17:09:39.588Fsnlc.o (1/4)

支援されると興奮します。遅筆でごめんなさい。



忍野「『八九寺』に『真宵』で、『八九寺真宵』か……出来すぎだね、仕組んで名付けたんだろうってくらい出来すぎだ」

一方通行「あァ? 何がだよォ」

忍野「んー、説明してもいいんだけど……その前に、そろそろ返事が聞きたいんだけど? 結局、キミは僕の案内人になってくれるのかい?
   今、僕が話を続けてる目的はそこだし、何もしてくれないのに便利な話だけしてあげるお優しい人になるつもりもないんだよ」

一方通行「ちっ……今の話のどこに確証らしい確証があったンだよ。一から十まで、ぜーンぶまるっとオマエの妄想でしたァってオチの方がよっぽど信じられらァ」

忍野「たかだか道案内だっていうのに渋るねぇ、キミは。ただちょっとそこまで連れていってもらえれば良いだけなんだけど。
   うん、まぁでも、ずっとキミに馴染みのない話してたしね。無理もない反応だと思うよ。
   で、信用してもらうには実際にそっちのお嬢さん連れて、どこらか目指して練り歩いてもらうのもいいんだけど――ここはやっぱり直接聞くのが早いんじゃないかなぁ」

一方通行「直接だァ?」

忍野「うん。まさかその子だって自分のことを全く知らないって訳でないでしょうよ。
   その子が、自分について知ってることをキミに洗いざらい吐いてくれりゃあ、キミも僕の話を少しは聞く気になるんじゃないかい?
   ま、その子が全然なーんにも知りませんっていうなら、ニ、三〇分程学園都市観光に時間が潰れることになるんだろうけどね」

 そう言いながら、忍野は一方通行の左手の下――八九寺の頭――あたりに手のひらで促すような仕草をした。

忍野「さあ、お嬢ちゃん。そっちの怖ぁいお兄ちゃんと、ちょっとばかしディープなお話をしてくれるかな?」


77VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/04(火) 18:33:35.858Fsnlc.o (2/4)

 そう言うと、忍野はポケットからタバコを取り出し、口に加えて、火を着けることもせず、近くの壁に寄りかかった。
 興味はないからさっさと終わらしてくれ。そう告げているようだった。

一方通行「八九寺……」

 一方通行は視線を落として、相変わらず手の下に居る八九寺を見る。
 表情は、見えなかった。

八九寺「ええ、きっと、そちらのお兄さんのおっしゃってることは間違っていません。
    なんど、なんど行っても、たどりつけないんですから。
    私は、決して、いつまでも、たどりつけないんです」

一方通行「……」

八九寺「だって、私は……蝸牛《かたつむり》の迷子ですから」

一方通行「どォいうことなんだよ」

八九寺「そうですよね、分かりませんよね。……じゃあ少しだけ昔話をしましょうか、ほんの、十年ほど前の話です――」



78VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/04(火) 20:19:13.43s1tDgYDO (1/1)

ひたすらに支援


79VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/04(火) 21:56:50.578Fsnlc.o (3/4)

 この学園都市で、一組の研究者の夫婦がその関係に終焉を迎えました。
 きっかけは些細なことかもしれませんし、そうでなかったのかもしれません。
 その夫婦には娘が一人いました。
 夫婦の一人娘は父親が引き取ることになりました。
 幾許かの時を一人娘は父親と過ごしました。
 どんな思いも風化していきます。どんな思いも劣化していきます。
 一人娘は驚きました。自分の母親の顔がおもいだせなくなっていたのです。
 母親の写真を見ても、それが本当に自分の母親なのかどうか、わからなくなっていました。
 だから一人娘は母親に会いに行くことにしました。
 父親の机を、棚を漁って、見つけた住所を紙に書き。
 母親との思い出の品を、大きなリュックにいっぱいいっぱい詰め込んで。
 母親に会いに行きました。
 その年の母の日に。
 けれど、一人娘はたどり着けませんでした。
 母親に会うことは出来ませんでした。
 母親の住むところへは、たどり着けませんでした。
 どうしてでしょう、どうしてでしょう。
 本当に、どうしてなんでしょう。
 信号は、確かに青だったのに――



書き溜まらない


80VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/04(火) 23:33:27.42bJYSowAO (1/1)

八九寺の話はいつ見ても悲しくなる


81VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/04(火) 23:57:53.068Fsnlc.o (4/4)

八九寺「――その一人娘というのが私です」

 学園都市は、科学の発展した街である。
 しかし、その発展は『効率』を引き上げる方向へ特化している。
 『大きな実験場』という、学園都市の一側面も手伝い、『安全』の発展は、『効率』の二の次となっていた。
 『車』もそのご多分に漏れず、運転性能や、燃費効率といった部分は『外』と比べ物にならない程発展しているが、
 人が運転するという点に、変化はないため、やはり偶発的な事故は起こってしまう。

一方通行「……てェことはよォ……オマエは十年近い間、ずゥっとここらをさまよってたってことなのか?」

八九寺「……はい。なんど、なんど目指しても、お母さんのところには……たどり着けませんでしたから」

一方通行「……蝸牛……クソがァ……」

 最期の最期に優しい幻想を抱くことすら出来ずに死んだこの悲しい少女を、死んだ後も苦しめ続けている何かが許せなくて。
 それに怒りを抱くことが、不自然だと知りつつも、怒りを隠すことなく、一方通行は忍野に怒鳴った。


82VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 00:06:52.73KgZZUQMo (1/8)

一方通行「アロハ野郎ォォォおおおおおおおおお!!」

 予期せぬ大声に、加えたタバコが宙を舞い、慌ててそれをキャッチしながら忍野は振り向いた。

忍野「おわっ!? ……っと、まったく。元気がいいなぁ、何かいいことでもあったのかい?
   それといきなり安易なあだ名を叫ぶのはやめて欲しいのだけど」

一方通行「道案内でも、仕事の手伝いでも、何でもやってやらァ! だから、オマエが持ってる、コイツにとって『益』になる情報とやらをさっさとよこしやがれェ!!」

忍野「うーん、せっかくだし……一応その子に関するバックボーンとかを説明しようかなぁ。とか思ってたんだけど、
   そういうのは必要ない感じなのかい?」

一方通行「まどろっこしい説明なんていらねェよ。さっさとコイツがこの地獄から抜け出す術を教えろっつってんだ」

忍野「あれ? なんか認識がずれてるけど。そこまで言うなら、まどろっこしいのは一切なしで、キミがどうすれば、現状の最善を得られるのか、教えてあげるよ」

一方通行「あァ。さっさと言いやがれ」

忍野「やれやれ、ここまで強引なのは今まででもそうはいなかったぁ。まぁいいか、じゃあ、言うよ?
   とりあえず、キミがすべき、最善の行動は――その子に関わらないこと。だよ。わかったかい?」


83VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 00:08:07.91vUDf/g.o (1/2)

さすがセロリさん、スタンスぶれませんねww


84VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 00:08:09.68KgZZUQMo (2/8)

>>82
忍野「やれやれ、ここまで強引なのは今まででもそうはいなかったぁ。まぁいいか、じゃあ、言うよ?
→忍野「やれやれ、ここまで強引なのは今まででもそうはいなかったなぁ。まぁいいか、じゃあ、言うよ?


85VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 00:30:53.67KgZZUQMo (3/8)

一方通行「……は、はは、いったいなんの冗談だ、笑えねェ、笑えねェぞおい。オマエ自分で言いやがっただろうが、
     コイツが一人でどんなに頑張っても『目的地にたどり着くことはない』ってよォ!!
     なのにほっとけってか!? なにをどう考えたらそれが最善になンだよォ!?」

 激昂し、詰め寄る一方通行に、忍野は肩をすくめた。

忍野「だから言ったじゃないか。認識がずれてる、って。僕はそのセリフのあとにこうも言ったろう?
   『キミもそのままじゃ、絶対に「目的地にはたどり着けない」』ってさ?
   『目的地にたどり着くことはない』のが確定事項なら、その被害者は少ない方が良いに決まってる。
   たぶん、まぁコレは、キミの振る舞いを見てて考えた、僕の勝手な憶測だけど。
   その子も、キミを巻き込むことをよしとしないんじゃないかい?」

 忍野の言葉に一方通行が振り返ると、そこには、笑みを浮かべる八九寺真宵がいた。

八九寺「……えへ、ありがとうございました。優しい優しい一方通行さん。
    あんまり優しいんで、ちょっと甘えすぎちゃいましたけどね」

一方通行「八九寺……」

 出会った時、八九寺が言った言葉を思い出す。
 ――『話しかけないでください、あなたのことがきらいです』
 最初は、凶悪な目つきをする自分に怯えて出てしまった言葉がと思った。
 だが、八九寺は、二度目にあった時、相手を確認する前に、同じ言葉を言おうとしていた。
 それは、あきらかな拒絶。
 自分に関われば、自分と一緒に居れば、その人が道を見失ってしまうから。
 そうならないよう。八九寺は自分が見えてしまう人全員にそう言うのだろう。



書いてると、メメさんとリアルゲコ太がダブって困る


86VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 00:41:40.25KgZZUQMo (4/8)

>>85
最初は、凶悪な目つきをする自分に怯えて出てしまった言葉がと思った。
→ 最初は、凶悪な目つきをする自分に怯えて出てしまった言葉かと思った。

さすがの誤字率


87VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 00:59:42.56c90i7F2o (1/1)

頑張れ


88VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 01:04:21.43vUDf/g.o (2/2)

がんばれ、あと気になっているんだろうが、そのレベルなら誤字報告しないでもよいと思う。文意が変わってしまう場合のみ報告してくれると助かる。


89VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 01:32:20.11BeAzwds0 (1/1)

あぁ泣けてくる


90VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 01:44:29.60KgZZUQMo (5/8)

>>88
なるほど。一方通行の口調とかも直したくてうずうずしてましたが、これからはそんな感じで行きます。
実はこの作品でバージンブレイクなので、イマイチそこら辺が分からないので助かります。




八九寺「その人の言うとおりです。私は、一方通行さんにまで迷って欲しくありません。
    だから……どうぞ行って下さい。その人を、『目的地まで辿り着かせてあげて下さい』。
    そして、何処かで私を見つけても『話しかけないで下さい』。
    優しい一方通行さん、どうかお願いします」

 精一杯の笑顔を浮かべながら八九寺は一方通行に頭を下げた。

 きっと辛いはずだ。ずっとずっと一人ぼっちだったのだから。
 十四、五の少女が、その精神のまま、何十年も、死ぬことも出来ずに、誰と触れることもできずに、一人ぼっちだったのだから。
 決して、本望ではないだろう。
 人恋しい年頃の、一方通行とあんなに楽しそうに話していた女の子が、
 もう一度、終りの無い一人ぼっちの『迷い』になんて戻りたくないはずだ。

 それでも。
 少女はそれを願っているのだから、願いを受け入れるのが『正しい』のだろう。
 論理的にも、この少女の願いを受け入れ、二人が『迷わなくなる』方が『正しい』に決まってる。
 ましてや、この少女はすでに『人でない』のだから。

 『一方通行』なら、願いを受け入れて、見放すハズだ。
 一を見捨てて十を助ける選択を取るはずだ。
 道に迷うことなど嫌い、自分を突き進む、『氷』の『一方通行』なら。

 だが――


91VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 02:57:00.55KgZZUQMo (6/8)

一方通行「……断る」

 一方通行はこの少女と関わりすぎてしまった。
 物理的な意味ではなく、精神的な、彼の生きざまでもあったはずの『氷』の『反射』を、なぜか抜けてきた、この少女と、近くで触れ合い過ぎてしまった。
 『迷わせる』少女に、触れ過ぎて、『迷い』過ぎて、『目的地』を見失って――
 ――今、新しい『目的地』を見つけた。

 もう、『氷』は溶けていた。
 もう、一を見捨てることは出来ない。
 もう、八九寺を見捨ててやることは出来ない。

 一方通行は見つけたのだ。
 だれも近寄らない『無敵』じゃなく、『誰か』を守る『最強』になる道を。
 『誰か』の意志に反してでも、『誰か』を守り通す。そういう『最強』になる道を。

 六〇〇〇人を殺した癖にと。自分の中の自分が言う。
 偽善だ、贖罪のつもりか、と。
 なにも罪の意識が消えたわけではない。
 むしろ、誰かを助けること意識し、罪の意識は感じる。
 でも、だからこそ、一方通行は決めた。
 欠陥電気、妹達……これ以上は、殺さない、殺させない。『それ』も全部、守ってやる。
 いままではひとり残らず、平等に、[ピーーー]ことが『けじめ』になると思っていた、その少女も守りぬいてやる。
 それが、それこそが、彼が小さな頃求めていた、『誰も傷つけない』結末に繋がると、今なら信じられた。
 
 もう、一方通行は『迷わない』。新しい『目的地』へとただひたすら、『一方通行』に突き進む。


92VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 03:03:09.0372dMlUwo (1/1)

どうでもいいけど
> 十四、五の少女
小5じゃなかったっけ


93VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 03:07:05.34KgZZUQMo (7/8)

あ、ァァああああ……
小五の『五』のイメージだけが妙に強くて変な方向に引っ張られました……

>>90
十四、五の少女が、~~
→小四、五の少女が、~~

でお願いします。>>92さんありがとう


94VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 16:46:41.84KgZZUQMo (8/8)

>>93
小四、五っておかしさ満点だよね。小学生四、五年と解釈してくだしあ



八九寺「え?」

 顔を上げた八九寺が、素っ頓狂な声をあげた。

一方通行「オイオイ、聞こえてなかったのかァ? ならもういっぺン言ってやるよ、あァついでに後ろのアロハ野郎もよく聞きやがれ
     八九寺を置いてくなンざ――お断りだ。
     そもそもオマエらは俺を誰だと思ってンだ、学園都市に七人しかいねェ超能力者《レベル5》。その頂点に君臨する一方通行《アクセラレータ》様だぞ?
     『絶対たどり着かない』だの『蝸牛』だの意味のわかんねェこと言ったって所詮、迷子の道案内でしかねェンだ。俺に出来ねェ訳がねェ」

忍野「……一応言っておくと、キミが超能力者っていうのも、一方通行だっていうのもは、僕は初耳だよ?
   まぁ、なんていうかさ、今の一瞬でなにかあったのかい?
   なんか妙に吹っ切れちゃってるけどさぁ、まさか『人助け』、なんかしちゃうつもりなのかな?」

一方通行「あァ?」

 首をひねって一方通行は忍野の方へ視線を向けた。

一方通行「別に何があったわけじゃねェよ、それこそオマエが言った通り、ただ単に、吹っ切れたンだ。
     やっぱ、『悩む』とか『迷う』なンざ柄じゃねェンだよなァ。ぜンぜン違ェンだ、ンなもん『一方通行』じゃねェ。
     俺は、俺がやりてェ事をする。俺が進む『方向《ベクトル》』は絶対に他人に『操作』させねェ。
     ま、その結果で、どこぞの『誰か』が勝手に『助かってる』かもしンねェけどよォ」

 体も振り返らせて、両手を広げ、もう決して『迷う』ことのない少年はニヤリと『不敵』に笑う。

忍野「ふ、はは、いいねぇ。僕はそういうの嫌いじゃないよ。好きでもないけどね。
   でも、どうするつもりなんだい? 『絶対に目的地にたどり着けない迷子』を『目的地にたどり着かせる』。
   まるで、禅問答じゃないか」

一方通行「言ってンだろうがよォ。『俺に出来ない訳がねェ』って。
     まァ、今すぐ送り届けンには、ちィっとばかし情報が少なすぎだよなァ。
     つゥ訳で、オマエはとっととコイツについて知ってること全部、今すぐ吐きやがれ」

忍野「はぁ、キミは全く強引だなぁ。でもまぁ、いいよ。教えてあげよう、この子がどういう状況なのかを。
   あ、途中棄権は別に歓迎するからいつでも言ってくれて構わないよ?」


95VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/05(水) 21:59:55.59Vledp6DO (1/1)

クライマックスだね
wwktk


96VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/06(木) 03:39:09.00ECgwmcoo (1/1)

>>1ではないけど書いてる奴です
土日までに、頑張って書き溜めようかなと思います
GW中は無理でしたが、今週、来週中には終わらしたいです


97VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/07(金) 16:54:01.02M1Y403k0 (1/1)

イイよーイイよー


98VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 01:16:49.70tEiftzIo (1/12)

一方通行「はン。オマエはちゃンと今の話聞いてたンですかァ?」

 そこで、一方通行は後ろに手を伸ばし片手で八九寺を引き寄せた。

八九寺「はわっ!?」

 自身の前に引っ張ってきた八九寺の頭の上に、ぽんっと手を乗せ、一方通行は忍野に言ってのけた。

一方通行「俺は絶対にコイツを送り届ける。さっきからそう言ってンだろォがよ」

 頭に手を乗せられたまま八九寺が振り返る。

八九寺「え、い、いや、一方通行さん?」

一方通行「あン? なンだよ」

八九寺「さっきから超弩級の急展開で、私、八九寺真宵は着いていけないのですが……」

一方通行「ン、なら簡単に言ってやるよ。オマエの母ちゃンとこまでお邪魔すンだよ」

八九寺「いや、だから、話はちゃんと聞いていましたか?」

一方通行「あァ? さっき言ったろォが、こちとら学園都市一の頭脳だ。ンな数分前のことくらい覚えてるに決まってンだろ」

八九寺「私と居ると、どこにも行けないんですよ? どこにもたどり着けないんですよ? あの、だから、その……」


99VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 02:07:17.50tEiftzIo (2/12)

八九寺「にゅわぁっ!? な、何をするんですか!」

一方通行「なァにウジウジやってンだよ、オマエの担当はギャグパートだっつゥの。
     これ以上シリアスパートにしゃしゃり出てくンじゃねェ」

八九寺「い、いや。で、でもですね、でもですよ?」

 まだ言葉を探し、続けようとする八九寺の頭を、一方通行はもう一度叩いた。

八九寺「うやあっ!?」

一方通行「だァかァらァ! 迷子のガキはちィっと黙ってろ。こっからはまたシリアスパートだ。
     まだ喋りたンねェってンなら、ハッピーエンドのエピローグでワーギャーワーギャーやりゃァいいだろうがよォ」

 八九寺の頭に乗せた手をガシガシ動かす一方通行。
 先程の同情や、慈愛に満ちたそれではなく、心配なんていらないという自負に満ちた動作。

八九寺「……」

 そんな、決して『迷う』ことのない一方通行に、八九寺の心の『迷い』がちょっと取れて。

一方通行「あン? 黙って睨みやがって。なンなンですかァ?」

八九寺「……そのときは」

 この人ならなんとかなるのかもしれないと思うことができた。

八九寺「あなたにも付き合ってもらいますからね?」

一方通行「ハッ、わァったよ。じゃ、手始めにエンディングまで済ましちまいますかァ」


100VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 02:51:54.40tEiftzIo (3/12)

忍野「んーと、話はもう終わったのかい?」

一方通行「あァ、またせたなァ」

忍野「ほーんとだよ。いきなり二人の世界にトリップしないでもらえるかなぁ。
   片方の声が聞こえない会話ってさ、聞いてると案外不快なんだよ? ほら電車で大声で電話しちゃうおっさんいるじゃない?
   あれといっしょだよ。人って、『わからない』のを続けられるといい気分しないんだよ?」

一方通行「そら、こっちのセリフだ。秘密主義な癖に、思わせぶりな結果だけ押し付けやがってよォ」

忍野「そうだっけ? まぁいいや、じゃあ……そうだな、どこから話せばいいんだろう?
   ……うん、キミは『怪異』って言葉を知ってるかい?」

一方通行「『怪異』つゥと、バケモンとか摩訶不思議なそォいうンだろ?」

忍野「そう、実際すっごく意味の広い言葉でね。お化けも『怪異』、妖怪も『怪異』。
   真面目な信者の方々に聞かれると嫌なんだけど、言ってしまえば天使や、神様だって『怪異』さ。
   つまり、『怪異』ってのは『存在しないのに存在するもの』、『人がいるから存在できる』、
   いわゆる超常現象的なものをなんでもかんでもひっくるめたものなんだよ」

一方通行「で、それがどうしたっていうンだよ? 『存在しないのに存在するもの』つゥのは
     『ありもしねェ話が出来上がっちまってる』ってことじゃねェのか?
     所詮怪異なンざ、民間伝承だとか都市伝説にしか出てこねェ嘘っぱちの存在じゃねェのかよ」

忍野「んー、半分ハズレだね。確かに最初はそうだったよ? ありもしない幻想だった。
   だけどさ、人の間で伝えられていくうちに、生まれちゃうことがあるんだよ。ほんとの意味で
   ――『存在しないのに存在するもの』が」


101VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 03:14:36.69sjO7nDgo (1/1)

盛り上がって参りました。
こりゃ、一方さんのかこいい決めゼリフが聞けそうだ。


102VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 03:19:26.55tEiftzIo (4/12)

今日はまだまだいけます



一方通行「……オカルトもオカルトだな。正直この場面じゃなけりゃ信じてねェぞ」

忍野「うん。とりあえず、今は僕の話を信じてもらえると話が早く進んで助かるよ。
   で、そう、オカルトさ。そんでもって、僕はその『オカルト』の専門家なんだよ」

一方通行「専門家ァ?」

忍野「そ、オーソリティで、ついでに言うとプロフェッショナル。『怪異』のアレコレを解決して、いろんなところを回ってるんだよ。
   学園都市に来たのもその仕事の一つでね」

一方通行「ほォ……学園都市がこンなの入れるってこたァ、そのオカルトも眉唾もンじゃねェってことか……
     で、専門家っつゥと、アレか? 『怪異退治』みたいな事やってンのかよ」

忍野「退治だなんて、まったく考え方が乱暴だなぁキミは。何かいいことでもあったのかい?
   さっきも言ったけど『神様』だって怪異なんだし、こっちに何かあったからって、一概にこっちが悪いなんて云いきれないことがあるんだよ。
   いや、むしろ、怪異に人間になにかするときは、さきに人間が『何かしてる』ことの方が多いからね。
   だから僕はあくまでも『専門家』なんだ。基本的には人間と怪異の間を取り持つだけ、場合によれば荒っぽいこともするけどさ」

一方通行「ン、なら怪異ってのは大概話し合いでなンとかなるもンなのか」

忍野「んー。その楽観的な考え方はどうかと思うけど、ま、そうだねその認識は決して間違いじゃないよ」

一方通行「なら今回は八九寺になンかしやがった怪異を頼むか殴るかでどォにかしたら、八九寺は開放されるって話じゃねェのか?」

忍野「はぁ、ほんとに……キミは人の話を聞かないんだね」

一方通行「あァ?」

忍野「話し合いの余地があるって言うなら、僕がもうやってるよ。なんで僕が『その子に関わるな』なんて言ったと思ってるのさ」


103VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 03:42:28.01tEiftzIo (5/12)

一方通行「なンだ? 手に負えねェほどムチャクチャやるやつなンかよ」

忍野「そういうのなら、話し合いの余地はなくとも殴り合いの余地があるさ。僕だってだてに専門家を名乗ってはいないし、それで全部丸く収まるならそうするさ。
   というわけで、コレはそういう問題じゃないんだよ。追い出すとか、消すとか、そういう問題じゃない」

一方通行「……あァくそ! オマエはまどろっこしィンだよォ! ずばっと言えってンだ!」

忍野「あー、だからさ、この話はそもそも『怪異に行き逢っちゃったかわいそうな八九寺ちゃん』の話じゃないんだよね。
   どっちかって言うと『怪異に行き逢っちゃったかわいそうな一方通行』、キミの話さ」

一方通行「――ってことは」

忍野「んー? なにをびっくりしたような顔してるのかな? キミが『怪異』と聞いてどんなのを思い浮かべたのかはしらないけど、
   はじめに言ったじゃない。『お化け』、つまり『幽霊』だって『怪異』なんだよ?
   その子は『怪異』に行き逢ったわけじゃない。その子自身が『怪異』なんだ」

一方通行「……は、はは、なるほどなァそォいうことかよ」

忍野「うん、理解が早くて助かるよ。
   その子を『迷わせる』なにかに対してなにかするんじゃない。
   だれかを『迷わせる』その子に対してなにかしなきゃいけないんだ」


104VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 03:58:39.67tEiftzIo (6/12)

一方通行「で、その対策の最善策ってェのが、『関わるな』か」

忍野「ま、そういうことだね。関わった相手ならどこに居ようと迷わせる。みたいな強力な怪異ではないし、
   関わりさえしなければ特に害はないってこと」

一方通行「オーケェ、わかった」

忍野「そ、現状じゃそれが最善策だと思うんだけどね。で、途中棄権はどうするのかな?」

一方通行「ハッ、いちいちくどいンだよオマエは。途中棄権なンざありえねェ」

忍野「はぁ……言うと思ったけどさ。あんまり強がるのはよしてくれよ? 僕だってめずらしく暇じゃないんだから」

一方通行「ならとっとと全部吐けよ。まだ『途中』棄権なンだろォが」

忍野「あー、わかったわかった。もう聞かないよ。ったく、ほんとに面倒だねキミは」


105VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 04:16:27.46tEiftzIo (7/12)

忍野「いいかい? そのお嬢ちゃん、八九寺真宵は『迷い牛』っていう怪異なんだ」

一方通行「はァ? 『迷い牛』ィ? なんだよオイオイ、蝸牛ってェのはカンケェねェのか?」

 忍野は頭を振った。

忍野「『怪異』は『人』の文化が発展したから生まれた存在なんだ。だから文化を伝えるもの、つまり『字』が重要なんだよ。
   ほら、『蝸牛』って牛って字が入ってるじゃないか」

一方通行「いやいや、なら他にもあンだろ、天牛(カミキリムシ)なンかもそォだろうが」

忍野「えぇとね、蝸牛の前の字にも意味があるんだ。『蝸』ってあるだろう? コレの『咼』って部分、『渦』の右側だね。
   今回はそいつがけっこう大事になるわけだ」

一方通行「あァ?」

忍野「もともとはこの字、人の間接を模した字でね、窪みに骨がはまってる様子から、『穴』っていう意味を持って他の字に使われるようになったんだ。
   例えば、『禍』。『神』のたたりを受けて、思いがけない『穴』にはまっちゃうってことから、わざわいって意味がついた。
   例えば、『渦』。穴のような水のうずまきって意味だ。ま、これは分かりやすいね」

一方通行「で、それがどォ八九寺に繋がンだよ」

忍野「じゃ、『蝸』をそれを踏まえて見てみると、あんまりいい意味の漢字には見えないよね? そもそも『渦を巻いたまるい穴のような虫』って不吉な意味だし、
   『禍』と『渦』、その二つと接点を持っちゃってる。『渦』のように人を『禍』に巻き込む虫……そんな字に見えないかい?」

一方通行「ンだそりゃあ? こじつけじゃねェか」

忍野「あぁ、こじつけさ。でもね? 誰かがそう『伝えちゃった』から仕方がない。
   晴れて迷い牛、『蝸牛』は『自身も迷子として人を巻き込む、自分の不幸へ人を巻き込み落とし込む』そんな怪異になっちゃった。って訳だよ」


106VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 05:02:14.08umKKQDUo (1/1)

しえん


107VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 05:24:30.59tEiftzIo (8/12)

一方通行「……その『迷い牛』ってのがどォいうのかってのは大体わかったけどよォ、それと八九寺、どこに接点があるってンだ」

忍野「なら、一つ確認するよ? さっきキミはその子の昔話を聞いたみたいけど、たぶん『どこかに行こうとしたとき』に亡くなってないかい?」

 一方通行は、八九寺の話を思い出した。母親の所へ向かっている途中に跳ねられ死んだ、少女の話。
 思わず、歯をギリリと鳴らした。

一方通行「あァ……」

忍野「そっか、ならそれで、『自身も迷子』って条件は満たしたね。
   まぁそもそも路上で亡くなる人ってそういう人ばかりだろうから、これだけで『迷い牛』になるってわけじゃないけどさ。
   うん、そこで、その子の名前だよ」

一方通行「『マヨイ』だから『マヨイ牛』です。ってかァ? いくらなんでも安直過ぎだろうがよ」

忍野「それもあるんだけど、もーっといっぱいあるんだよね。
   例えば、八九寺の『八九』は『厄』、すなわち『八九寺真宵』は『迷いの厄』がある名前なんだ」

一方通行「……」

忍野「あと、『八九寺』って苗字は四国八十八箇所に通じるところがあって。『八十九箇所目の寺』ってことになるんだけど、当然ながら、そんな寺は無いよね?
   そこで、『八十九箇所目=〇箇所目』って意味が出てくる。時計でいうところの『一二時=〇時』って解釈だ。
   で、それはつまり『四国八十八箇所巡りの行き帰り』を意味する言葉になる。
   『八九寺真宵』って名前を、今度はそういう視点で見ると『行き帰りで迷う』って漢字の意味になるよね。いやいやおもしろい名前だよほんとに」

一方通行「まったく強引だなァオイ」

忍野「言葉や、漢字の成り立ちなんてだいたいこういうモノだよ。万人が納得できる成り立ちっていうと数えられるくらいしかないんじゃないかな?」

 人を馬鹿にした笑みを浮かべながら忍野は続ける。


108VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 05:42:41.77tEiftzIo (9/12)

忍野「で、名前の『マヨイ』なんだけど、これは元来織り糸が乱れることを言うんだ、だから糸偏で『紕う』なんて書くんだけどさ。
   これって死者の成仏の妨げになるんだよね。
   あと、ついでに『真宵』って漢字。『宵』には、夜になりかけの時刻っていう意味と、夜そのものって二つの意味があるんだけど、
   ここで万葉集第一五巻三六三九句目よろしく、後者の意味で考えると、『真宵』が指すのは『夜の真ん中』、ちょうど二時頃。
   これってさ――丑三つ時なんだよね」

一方通行「丑三つ時……」

忍野「で、これら全てを統括して『八九寺真宵』って名前を見直すと、さぁどうだろう?」

一方通行「こりゃあ確かに……『出来すぎ』だわなァ」

忍野「そーいうことさ。どう? 『迷い牛』と『八九寺真宵』。これら二つを『オカルト』的に考えて、
   これはもう『迷わない方がおかしい』と言っても良いレベルじゃないかな」

 『八九寺』も『真宵』も、『八九寺真宵』も、全てが『迷い牛』に通ずる名前。
 忍野、怪異のオーソリティをして、『出来すぎ』と言わせる名前。
 迷わない方がおかしい。
 迷うのは、仕方ない。

一方通行「確かに、絶対に迷っちまうなよァこれじゃ」

 そう、迷う『のは』、仕方ない。


109VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 05:45:12.09tEiftzIo (10/12)

※一応注意※
ここらのまよいちゃんに関する考察は基本的に原作準拠のつもりですが、
原作が手元にないのでちょっとズレてると思いますので、ご容赦のほどをお願いしまくります


110VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 07:21:25.09tEiftzIo (11/12)

眠い……明日。もしくは今日来れたらまた来ます。
そういや火曜に落ちるんでしたっけ? それまでに終われるかなぁ


111VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 08:44:10.53w15CyADO (1/1)

一週間ルールはvipだけじゃなかったっけ?
何はともあれ乙!


112VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 10:29:21.849RkGWycP (1/1)

乙ー


113VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 10:36:25.22LYgbQ.Eo (1/1)

GJ


114以下、VIPにかわりまして…ミs(ry2010/05/09(日) 18:24:36.90eRKizwQ0 (1/1)




115VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 21:06:20.65E7LLM4wo (1/1)

::| ∨ /// ,,,ィ=ニミゞx/`乂∧::::/    -|::|-V:::::::|  | ヾ:::::::|:::::::::::::::::::::
    _∥ル"    ノ/)   ハ r‐:/≡==ォzミゝ、 ∨:::|  `ヘ,|:::::::i:::::::::::ソ::::::
==l   ((    ,ィメ/ノ   |::|{        ゙`  \|    |::::::|::::::::イ:::::::::
"`゙ァ)   `゙゙"´ー __|  .  V | / / /          ミ:|::::/|:::/. |::::::::::
  ノノ     /ヘ∧     .|         ° 。    `レ'ミレ'、 |:::::::::::
彡"/   /: : : : : 丶     |               /  ヾタ |::::::::::
/    /: : : : : : : : : :\        /´: `:> ,      /    レ'|::/
 ) /: : : : : : : : : : : : : :/ゝ  ヘ   /: : : : : : : : : `ォ     /    レ〉
   |┘: : : : : : : : : : : /  ∠,_ゝ  {: : : : : : : : : : :|         _´ノ
   \: : : : : : : : ,/  /\__\. ` ,`: : : : : : : : /       ヌ_ _,ノ
ヽ    ` ̄ ̄ ̄´  ィ´    | 冫  > ` ー--'   /⌒/´:::::::::::::::


116VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 23:15:03.71eiJY9wAo (1/1)

>>111
VIPサービス恒例月イチの「あの日」のことだと思うんだ
ともかく乙!続きも期待してるぜ!


117VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/09(日) 23:37:13.41tEiftzIo (12/12)

なんとなく見直してたらちょっと抜けてましたね

>>98

一方通行「……あァもォうっぜェなこのクソガキ!!」

 八九寺の頭に乗っかっていた手を浮かせ、勢いよく振り下ろした。

>>99

ってな感じでお願いします


118VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/10(月) 21:47:01.81t/YfNC.0 (1/1)




119VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/12(水) 00:47:49.10ZkGz2cwo (1/2)

書いてる人です。
ちょっといろいろ忙しくなってまいりましたな感じですので、ちょっと期間開きます。
いや、ほんとに申し訳ないです。


120VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/12(水) 01:43:12.07dNboR.DO (1/1)

期待してるがゆっくり書いてくれ
逃亡とかは勘弁なww


121VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/12(水) 10:22:12.02l1JlswAO (1/1)

次いつ投下できるとか大体の日程を書いてもらえると嬉しい


122VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/12(水) 23:44:12.76ZkGz2cwo (2/2)

ん……3つほど面倒なの抱え込んでまして
18日にはその二つが解消される予定になってるので、19もしくは20日に投下します


123VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/13(木) 00:13:57.89JMW.vkoo (1/1)

待ってる


124VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/13(木) 23:14:33.92xAL0V6AO (1/1)

身体壊すんじゃねェぞ三下ァ!!


125VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/21(金) 14:44:56.20Dws/wago (1/1)

生存報告的なものを
無事に18日のイベントを乗り切りましたが、ちょっと後処理的なアレと充電期間的なソレで書きためれてません
もう落ち着いているので、書き次第投下していきたいと思います
待ってくださったり、体を気遣ってくれた方には申し訳ないです


126VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/21(金) 15:09:16.706YADgIDO (1/1)

待ってるよー(`・ω・′)シ


127VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/21(金) 19:59:38.399mTLKwAo (1/1)

待ってるぜ


128VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/21(金) 23:41:14.17wlMXGnQ0 (1/1)

こういう風にきちんきちんど報告してくれるのはこっちとしては本当に有難い話だよね


129VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/22(土) 00:01:57.77UClcJMAO (1/1)

報告ないとどんどんスレ過疎化するもんな


130VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/23(日) 00:15:18.54DNFvE.AO (1/1)

書き込まないだけで、チェック入れてる人は結構いるからね


131VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/24(月) 16:33:42.82FJ39TgAO (1/1)

パー速のロム率は異常


132VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/26(水) 08:50:11.4705hZ2Ac0 (1/1)

続くまだかよ


133VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/27(木) 01:58:52.08lObMJF2o (1/1)

マダー?


134VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/27(木) 21:08:44.510p2BqzEo (1/3)

ちょっと忙しくて学校と住居を往復する生活が続いてました。
こりゃいかんと思い以前から買おうか悩んでいたpomera DM20を決心し買いました。
結論から言うと、買ってよかったpomeraって感じです。
最近は講義中シコシコ書いてて、ちょっと書き溜まったので今日の11時頃には投下します。

ついでに、pomeraで指鳴らししてる時に書いた文章投下していきます。



一方通行「で、だ」

八九寺「どうしました?」

一方通行「pomeraは期待しすぎだったみてェだな」

八九寺「……一方通行さん、ほんとにそう――思いますか?」

一方通行「あン?」

八九寺「あなただって、気づいてるはずです。
    キーボードが、手になじんできていることを」

一方通行「――ッ!?」

八九寺「いや、いいんです。ずっとpomeraを否定し続けることも、選択の一つですから」

一方通行「・・・・・・」

八九寺「ですが、そういう、些細なことくらい、揺らいでもいいんじゃないでしょうか?」

一方通行「・・・・・・あァ、そうかも知れねェなァ」

八九寺「はい、変わることは悪いとは限りません。改善というのも変化の形の一つです」

一方通行「ま、確かに、もうブラインドタッチも楽にできるくれェ手に馴染んだコイツを馬鹿にはできねェわ」

八九寺「ただ、やっぱり不満点がなきにしもあらずなのですよね」

一方通行「あン? どこだよ」

八九寺「それはですね……ATOKです!」

一方通行「てめェ……天下のATOKさンにケンカ売ってんのかよ」



135VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/27(木) 21:09:55.500p2BqzEo (2/3)


八九寺「いやいや違います! そうではなくてですね生粋のGoogle信者的にはTabキーでの予測変換機能は欲しかったりするのです」

一方通行「あァー、なるほどなァ、Google日本語入力か」

八九寺「はい、そうです。もう『い』とか『は』とか『お』とか入力するだけで
    『一方通行』『八九寺』『忍野』と出てきますからね、SS書きにとってはかなり重宝する機能です」

一方通行「そンくらいなら辞書登録とかすりゃいいンじゃねェのかよ。
     辞書登録数がそこそこ多いDM20なンだし、別に構いやしねェだろォが」

八九寺「いやいや、あれですよ、なんか『読み:い 語句:一方通行』ってかっこわるくないですか?」

一方通行「……わからなくもねェけどよ」

八九寺「あーそれにしてもアレですね。そろそろGoogle日本語入力さんも再変換機能を実装していい頃合いだと思いません?」

一方通行「まァうン。それは思う」

八九寺「わりと役に立つんですよねあれ、たとえば某2chの某VIPで『○ ←これ読めたら~~』みたいなスレで博識ぶったり」

一方通行「某が意味をなしてねェ! あと、かるーく2chとかVIPとか言うな!
     オマエは小学生設定なンだしもうちょっと考えて発言しやがれ!」

八九寺「やれやれ、今時の女子小学生が純真無垢だと思ったら大間違いですよ?
    『わたし昨日○○しちゃったー』とか『わたしなんて××に生の△△を☆☆』なんて十年前でもふつうでしたからね」

一方通行「だァああああ!! 男子が絶対に知りたくなかった早熟女子の実体ィいいいい!!」



〇〇とかは適当に入れてくだしぃ


136VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/27(木) 21:43:47.59i3h5Cfso (1/1)

キてただと?!


137VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/27(木) 23:23:42.11e6ROykDO (1/1)

いいぞもっとやれww


138VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/27(木) 23:27:59.600p2BqzEo (3/3)

では、だらだら投下していきます。


>>108

一方通行「でもよ」

 それは、八九寺真宵という少女が、迷い『続ける』理由にはならない。

一方通行「迷ったンなら導きゃイイ。間違えたんなら正しゃイイ。そンだけの――簡単な話じゃねェか。
     『迷わない方がおかしい』ンだとしても、だ。迷った事実に変わりはねェ」

 少女と自分を重ねながら、一方通行は言った。
 迷い、間違いは、正すのが、正解なのだ。
 間違った理由はあれど、間違い続ける理由なんてそうは存在しない。

一方通行「オマエがどンだけ八九寺が迷ったワケをグダグダ言おうが、俺が結局やることはなァンにも変わンねェンだよ」

 迷い子を、導いてやるだけ。
 ただひたすらに、一方通行に道を突き進むハズだった自分を、強引に、脇道へと引き込み迷わせた迷い子を。
 先に『道へと帰った』自分が、手を引いてやるだけ。


139VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/28(金) 00:00:30.00kRsrc5Uo (1/2)

忍野「うーんなるほど、もう僕が何を言おうが、キミの耳には念仏なんだよね」

一方通行「ハッ、学園都市最高の頭脳を捕まえて何言ってやがる」

忍野「いやいや、結局話をしてもキミはなんにも変わって無いようだし、人を変えない、動かさない言葉なんて意味のない念仏だよ」

 あまり困った風もなく忍野が肩をすくめると、「違いねェ」と一方通行は一笑した。

 乾いた笑い声が路地のビル壁に薄く反射して、消える。
 夕日も落ちかけ、薄暗くなった路地に、二人と一人だけが残った。
 二人の内の一人、忍野はその顔をニヤつかせたまま言った。

忍野「じゃあ……そろそろこの話も終りにしようか」

 先ほどと、なにも変わらず同じ口調で言う忍野に、一方通行も変わらぬ調子で答えた。

一方通行「あァ、俺もさっさと終わらしてェンだ」

 この言葉は人を変えない。この言葉、この確認に意味など無い。
 結末はすでに決まっているのだ。

一方通行「『誰もが笑って帰れる』そォいうご都合主義全開のハッピーエンドでよ」

 それこそが、一方通行の結末。


140VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/28(金) 00:06:16.521PCYcCs0 (1/1)

支援超支援です


141VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/28(金) 00:11:15.11nYaxveIo (1/2)

~ラノベっぽく書いてみよう!~
   / ̄\  例文.
  | ^o^ |  「私はお腹がすいています。」
   \_/
   _| |_
  |     |
  ( 二⊃.| |
1、まずはそのふざけた例文をぶち壊します
   / ̄\  完成例.
  | ^o^ |  「手前らずっと待ってたんだろ!?朝食べたカツサンドはとっくの昔にオサラバしちまって!
   \_/   空腹を満たすことができる、栄養を取ることが出来る…そんな誰もが望む、最高のランチタイムってヤツを!
   _| |_   ちょっとぐらい長い四限目で絶望してんじゃねーよ!手を伸ばせば届くんだ!いい加減に始めようぜ、昼休みを!」
  |     |
  ( 二⊃.| |
             / ̄\
            |     | < まだ 授業中 です
             \_/
             _| |_
            |     |


142VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/28(金) 00:43:16.44kRsrc5Uo (2/2)

一方通行「ンじゃ、オマエの根拠を聞かせてもらおうじゃねェか。
     コイツが一生以上のクソ長ェ間迷い続けなきゃなンねェっていうことの根拠をよ」

忍野「ん? あー、やっぱりキミとは話がかみ合わないなぁ。
   僕としてはさっきからのアレが根拠のつもりだったんだけど。根拠ってなんの根拠だい?」

 迷う理由、迷う根拠。迷うのだから迷い続ける。
 原因が事象であり、事象が原因となる迷いの螺旋。
 忍野はそれを説いた。

一方通行「とぼけてんじゃねェクソアロハ、オマエは『八九寺から離れる』ことを『現状の最善』っつっただろォが」

 対して一方通行が聞くのは、螺旋から逃れられぬその『訳』。

忍野「たしかにそう言ったねぇ。そこの迷子ちゃんから僕らが離れる、二度と関わらないようにする。
   それが『現状の最善』だよ。うん間違いない」

一方通行「だから、その根拠を聞かせろってンだ。なンで現状じゃそれが最善なのか、だよ」

 『現状』でなければどうなるのか、『現状』でなければこの螺旋から八九寺真宵を導き出すことができるのか。
 それを考えるためには、まず何が現状をだめにしているのかを知る必要がある。

忍野「なぜ、か。じゃあ例えばの話。迷子ちゃんすら救われるIFの世界のお話をしようか。
   迷子ちゃんが救われる――まぁ最初っから『八九寺真宵』じゃなけりゃよかったとか、
   そもそも、亡くならなけりゃ良かったとか、ありえないのはほっといて――
   その、現状じゃ全く揃ってない条件はいくつかあるよ」

一方通行「条件……なンか儀式でもやンのかよ」

忍野「んー、そういうんじゃないんだよ。儀式なんてやる必要はない。
   結局迷子ちゃんは突き詰めたとしても迷子ちゃんでしか無いんだから、家に帰すのが一番の対策だよ」

 忍野の言葉に一方通行は顔をしかめた。

一方通行「あ? そりゃ無理なんだって今自分で長々喋ったところだろうがよ」

忍野「あー、別に絶対出来ないわけじゃないよ? ただ、『ここ』学園都市じゃ無理だって話さ」




書き足しながらやってたら投下すること忘れちゃう


143VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/28(金) 00:53:28.28nYaxveIo (2/2)

     /            l ヽ | ヽ   ィ´/
      |           |   \ Y´   /
    /     , --、   ,'     \ ̄`ミト
.   |       /    }  /        ::::::::::::::::::ミト.、
    \     |     / /> ミ_      \\ミ:::::::::::::::ヽ  _
     \ __!  彡'/::::::___ヽ/` <    ヽj_` <::::::\|
     -- 、  7:/ /::::::::::::>//⌒ θ、   丶   `Y丶:::::\_
     \  \l:,' /::::ト、ゝ´ ´  r...、   ト、  ∨  :j|__ \::∨
      `  _! i:::::!ヽ /!   丿:::::\ \ ー─ 彡 ト、 `Y \',、
.        /  l!l:::: |// l|  /::::::::::::::::::ヽ. \    |: : _ {\/-<
        /   ,'Vト、:| ` l:|  ヽ :::::::::::::::::::::::)/ l ト、   : : ヽゝ ⌒Lヽ
.       / .::/!:::ゝ「>ヽ `    ` ー─/  | ┌ヽ-<.、: :八_ ノ「ヽ|
      ─ ´  |:::::::ト ヘ:',θ        /. ̄ ス>二二ト、 ̄\トゝ┘:__\
         |:::::::', `ー:ゝ     , _<乍L__/::::!ヽ\::ヽ. ヽ ̄\ミー─‐ ヘ
.          ',:::::::', ⊂ニヽ=、7' -‐‐`ヽ ト !!:::', ヽr'ヽ \ Y.:.:.:.:.:.:.:.:.:',
          :::::::::::⊂ニ´  /      Y´ゝ |::::l       \ `ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ
             ',:::::::::', 八__/',      l7┘  ̄       ヽ !.:.:.:.:.:/
          ∨::::∧   ヽ 人     ハ          , < l.:.:./
.            ∨::::∧   ∨ヾト- 爪 ヽ     / _ イ ○   「
            \::::::',   {   ̄ i.:.:\ \/ ̄     < \


144VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/29(土) 01:11:00.20xa5Y5DAo (1/1)

良い


145VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/31(月) 00:24:35.34IiC.zW2o (1/7)

一方通行「なンだそりゃあ。まさか、科学の街じゃオカルトの対策はできませン。なンてことじゃねェよな」

忍野「いやいや、僕はもともとオカルトの専門家としてきてるんだから。
   一応プロ名乗ってるんだし、働けない場所でお金は貰わないさ。
   そうじゃなくって、ここの地理的状況がまずいのさ」

一方通行「……風水でも関係すンのかよ」

忍野「違う違う、だからそういうのじゃなくてだね。
   ……あー、うん。ざっと説明するよ」


146VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/31(月) 00:31:27.13IiC.zW2o (2/7)

忍野「まず、迷い牛といっても、無条件に人を迷わせるわけじゃない。
   そもそも『帰りたくない』と思ってないと行き逢うことがないしね」

 一方通行は忍野の言葉に首を傾げた。

一方通行「はァ? 『帰りたくない』だ? 俺ァはそもそも帰るとこだったンだぞ?」

忍野「ああ、帰るっていうのは『住居』じゃない。『家庭』なんだ。
   英語でいうと『house』じゃなく『home』って感じかな」

一方通行「家庭……ねェ」

 久しく聞いたことの無かった言葉を頭の中で反芻する。

忍野「まあ、僕はキミのことを知らないけど、迷い牛に行き逢ったってことは、家庭に対して後ろ暗い気持ちがあるか、
   その家庭自体に問題があるはずだよ。別にそのことを詮索するつもりはないけどね」

 後ろ暗い、問題、一方通行が抱える家庭の不和はそういうものではなかった。
 なぜなら、一方通行の中に、「家庭」から浮かび上がる情景は、何一つなかったのだから。

 だが、忍野の言葉は間違いでない。
 記憶も曖昧なほどの昔に、学園都市へと預けられた一方通行。
 学園都市から外の親からの連絡がなく、もしかすると『置き去り』なのかもしれないが、
 幼いころから研究所をたらい回しにされていた一方通行には判断のしようがなかった。
 もしかすると研究所が次々変わるせいで連絡が付きにくかったのかもしれない、
 そうじゃなく「一方通行」を学園都市が独占したかったのかもしれない。
 小さいうちは家庭に対するというものが一方通行の中に存在していたが、
 あのとき、自分の力が全てを傷つけると知ったとき、そういうものもまとめて全部、氷の中に閉じこめてしまっていた。

 そうして、今も。氷、心の中の間違いが解けた今でも、一方通行は家庭に帰りたい、という気持ちは沸いてこなかった。
 妹達を大量に殺した自分に、そういう形での救いがあるとは思えなかったからだ。
 誰かを救う救世主《ヒーロー》にはなれても、みんなに慕われる主人公《ヒーロー》にはなれない、なってはいけない。
 誰かを「救う」ことに資格なんていらないが、「救われる」ことはそうじゃない。
 その資格を得るのに、明確な境界線なんてものはないが、少なくとも、どんな理由があろうとも、
 云千人を殺した、云千の可能性をつぶした自分が得られるものではない。
 だからこそ、一方通行は頭の中にすらない「家庭」を求めることをしなかった。


147VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/31(月) 00:37:06.23IiC.zW2o (3/7)

一方通行「……具体的になにをどォすンだ」

 一方通行はつぶやくように言った。
 忍野は拾った小石を左手で弄びながら答える。

忍野「うーん、ほんとにいろいろやるんだけど……一番分かりやすいのは、人の方向感覚を狂わせること。だろうね。
   気がついたら目的地を通り過ぎていたり、目的地とまったく逆へ行ってたり、ひたすらに狂っちゃうんだよ」

 人の感覚、認識を狂わし、意識を遮る。
 そこで、一方通行は「善意」の違和感に一つの仮定を導き出すことができた。

一方通行「……脳への干渉……か」

 人の思考の母体。迷い牛はその脳に干渉しているのだろう。

 「善意」という言葉に対する一方通行の違和感もそのせいだ。
 一方通行は元来、「善意」で動かない。完全に「利」のみで動き、それ以外は知ったことではない。そういう生き方だった。
 だが、今の一方通行は、贖罪の気持ちはあれど、完全に「善意」で動いている。
 自分が変わったことも感じているし、理解もしている。
 ただ、それを改めて他人の口で言葉にされると、自分のあまりに急激な変化にやはり違和感を覚えた。

 しかし、精神感応の「能力」は、一方通行に通じないはずだ。
 学園都市には、レベル5の心理掌握《メンタルアウト》を筆頭に、精神感応系の能力者はあまたといるが、
 それら全ての能力は一方通行に干渉することができない。
 なぜなら、一方通行はその干渉の向きを反転させることができる。
 さらに、万一脳の操作までこぎ着けたとして、それは科学の領分あり、科学的に説明できる、
 「脳のなにかの流れの操作」でしかないのだから、そこでの優先権は一方通行にある。
 
 つまり、なにをどうしようが、彼の脳を操作することはできない。



148VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/31(月) 01:00:48.74IiC.zW2o (4/7)

 そう、できないはずなのだ。

 一方通行は自身の能力、一方通行《アクセラレータ》に意識を移した。
 全ての「ベクトル」を感知し、操作、反射を可能にするその能力。
 その能力は確かに「何か」による脳への干渉を捉えていた。
 非常に微弱ではあったが、その「何か」は、一方通行の能力による対抗の影響を受けながらも、
 反射のフィルターを通過し脳の操作までこぎ着けていた。

 それは、その干渉が一方通行にとって、果ては科学において、まったくの未知であることの証明であり、
 微弱とはいえ、そのような干渉を受ける一方通行が、未だ無敵に至っていないということの証明でもある。

 しかし、今の一方通行に取って問題はそこではない。
 問題なのは、

 「今の」一方通行が干渉を受けていること。

 そして、その干渉の根源が――八九寺真宵、すなわち「迷い牛」であるということ。


149VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/31(月) 01:02:12.35IiC.zW2o (5/7)

 一方通行は唇を噛みしめた。

 干渉されていることが問題なのであれば、それを打ち消す方法はいくらでもある。
 いくら不可思議なものといえども、ここまで持続的に干渉するのであれば、
 パターンを解析し、反射設定に組み込むことくらい一方通行の演算力を持ってすれば造作もない。
 仮に反射設定ができなくとも、脳の流れを制御し、普段の状態に保つことだってできる。

 けれど、そうじゃない。
 一方通行は干渉され続けなくてはならない。
 八九寺真宵――「迷い牛」からの、迷いの干渉を受け続けなくてはならないのだ。

 事実を頭の中で反芻し、何度も確認した。
 そのたび、一方通行の望まない未来が覗き見えた。

忍野「さっきから、苦虫を数百噛み潰したみたいな顔してるけどいったいどうしたんだい? 僕の話は聞く気がないのかな」

 一方通行の様子に今まで口を閉ざしていた忍野が声をかけた。

一方通行「……なンでもねェ。なンでもねェからオマエは喋ってろ」

 おそらく、たぶん、いやきっと――八九寺を救えば、自分は妹達を救えない。


150VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/31(月) 01:13:58.61IiC.zW2o (6/7)

今回はここまで

ホントは「一方通行がぱぱっとまいまいを助けてはい終り」
のはずだったのにどうしてこうなった。
物語が自動運転状態です。


ある程度書き溜まったら、また投下しにきます。

あと、金曜日は完全に寝落ちです。気分転換とか思って布団で書いてたら朝だった。
ほんとにアイムソーリー。ベリーごめんなさい。


151VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/31(月) 01:39:15.33/Y3.8gMo (1/1)

otu


152VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/31(月) 02:17:45.51oNbV91Eo (1/1)

良い


153VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/31(月) 02:21:53.51IiC.zW2o (7/7)

すみません

>>146 と >>147のあいだにこれ挟んで下さい

一方通行「あァ……そういやそうなンかもしンねェな」

 確かに、一方通行は帰ることを拒んでいた。
 意識すらしない、無意識の中で。

 だがそれがどうした。帰るべき、家庭がなかったからこそ八九寺真宵に出会えたのだから。

一方通行(ガラにもねェ、バカなこと考えてやがンなァ)

 自嘲の笑みを浮かべる一方通行に忍野は話し続けた。

忍野「ま、帰りたくないってのは、見えるか見えないかの選択が行われるだけだから、
   たとえ行き逢ってしまっても、なかなかなお人好しでなければ迷惑を被ったりはしないんだけどね」

一方通行「はァ? お人好しィ?」

忍野「そう、キミみたいな、拒まれても――『善意』を押しつける人種のことだよ」

 皮肉をたっぷり塗りつけた忍野が発した言葉、「善意」。

 だが、一方通行はそれに噛み付くことをしなかった。
 ただ、その言葉に違和感を覚え、押し黙った。

 一方通行のリアクションに疑問を抱きつつも、忍野は続ける。

忍野「あと、迷わせるにも課程ってものがある。迷い牛は、何度も言うけどそこまで強力な怪異じゃないからさ、
   段階も踏まずに迷いの結果だけ残す。なんていうどこぞのマンガみたいなことはできない――」

 そこで忍野は言葉を切って、足下に転がっていた小石を一つ、左手で拾い上げた。

忍野「つまり、目的地が近づくと、いろんな角度から干渉しまくって、『迷い牛』が人を迷わせるわけだ」


154VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/05/31(月) 07:33:46.11wkOcG.2o (1/1)




155VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/06/01(火) 21:36:20.35uqJPw.U0 (1/1)

乙 なんだかきっちりと落ちそうだ



156VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/06/06(日) 02:03:56.873qjCX/E0 (1/1)




157VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/06/08(火) 14:57:42.132KfpViYo (1/1)

生きてますよ報告

なかなかネタがひり出せなくて、手慰みに妄想120%のSS書いてたりしてると全然書きたまりません。
頑張って書きますが、なにせ私は学生で、今テストまっさかりなので気長に待ってくれると嬉しいです。


158VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/06/08(火) 17:42:37.23dNYatTY0 (1/1)

大江戸えゔぁんげりをん


159VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/06/08(火) 20:01:33.134p84XkDO (1/1)

気長に待ってるよ

さすがに一月過ぎると不味いけれど


160VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/06/09(水) 11:15:18.67.qj0kiko (1/1)

待ってる


161VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/06/17(木) 22:34:22.33a/UZlgDO (1/1)

まよいキョンシー楽しみだねまよいちゃん!


162VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/06/23(水) 21:03:58.66E5OY3uYo (1/1)

テストも終わり、なんとか暴走SSの着陸点が見つかりましたので現在徐々に書きためてます。
ある程度の量がたまり次第投下します。ほんとに間が開きまして申し訳ないです。


163VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/06/23(水) 21:32:47.737ruNT.DO (1/1)

無理ない範囲でがんばれー


164VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/06/23(水) 21:42:39.19LHvhZ5.0 (1/1)

把握したぜい


165VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/06/24(木) 22:34:40.26I3iyGpg0 (1/1)

待ったよ


166VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/03(土) 01:01:13.30jnI0jwoo (1/1)

まだかよ


167VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/10(土) 15:31:05.565NAqZEDO (1/1)

なまむぎ


168VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/11(日) 02:54:27.33eMYb5vAo (1/1)

なまごめ


169VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/11(日) 03:23:50.65duO4pRco (1/1)

なまままご


170VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/11(日) 04:06:40.78d9KApfEo (1/1)

かみまみた


171VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/11(日) 17:09:21.973dM8ADQ0 (1/1)

わざとだ


172VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/11(日) 21:43:31.63IJ5jiKo0 (1/1)

わざとじゃないっ!


順番違ったな•••


173VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/13(火) 04:28:42.87zuENCwDO (1/1)

傾が先に出ると思ってたら猫が先なのね
おいちゃんびっくりだよ


174VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/20(火) 17:40:11.56RSRi1Tg0 (1/1)

>>1です
長い間、スレを放置してしまい申し訳ありませんでした。
諸事情で時間に余裕がなくなってしまったため、続ける事が困難になってしまいました。
大変残念ですが、ここで打ち切りという形にさせて頂きます。
スレ見ていただいた方どうもありがとうございました。


175VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/20(火) 19:51:06.04ZkIPEIDO (1/2)


しかし残念だ


176VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/20(火) 19:53:14.35ZkIPEIDO (2/2)

って偽物か
早く>>1来ないかなー


177VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/28(水) 01:07:25.398ksX1cDO (1/1)

早くこいよちくしょうage


178VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/28(水) 18:50:42.443K0zE3Uo (1/1)

>>1じゃないって言ってたもんな。
でももう一ヶ月か……


179VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/07/29(木) 12:57:55.01fmb0OUDO (1/1)

つばさキャットの下も出ちゃったよー
でも帰ってこないー

まだ待ってるよー


180VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/08/14(土) 08:38:33.561AusS1k0 (1/1)

あげ


181VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/08/22(日) 17:11:21.66vSHU/ADO (1/1)

俺たちの夏はまだまだ終わらない


182VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/08/23(月) 02:52:08.88DrNTvI2o (1/1)

2ヶ月か…
この文章と言葉の使い方はほんとうに尊敬できる


183VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/08/31(火) 00:43:44.77LOSmFQs0 (1/1)

ゴールは目前なのになぁ
作者も迷い牛に引っ掛かってるんだろーか(キリッ


184VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:02:33.49G6DJanQo (1/28)

大変、大変長らくお待たせしました。
あれからいろいろあったりしまして、しばらくネットに繋がらない状態が続いておりました。

書き溜めはありますので、推敲のあと二十分頃から投下したいと思います。


185VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:06:33.59hk4p4YUo (1/1)

八九寺に遭遇した阿良々木さんばりにテンションあがったわ


186VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:21:05.91G6DJanQo (2/28)

>>149



 もし、八九寺からの干渉がなくなれば。

 一方通行は「元」に戻るだろう。最強で、無敵を目指した一方通行に。

 それはダメだ。一万三千の少女を殺してしまう。
 なにをやっても、相手がそれを望まなくとも守ってやると、ついど誓った少女が死んでしまう。

 それに、今干渉を切ったとすれば、そもそも八九寺すらも助けられないだろう。
 向かってくる者は反射、向かってこない者には見向きもしない。それが一方通行だった。
 助けても得することのない八九寺を、一方通行が能動的に助けることはありえない。

 どうすれば、妹達を助けられるか。どうすれば、八九寺を助けられるか。

 考えて、考えて、考えた。破壊の能力しか生み出さなかったその学園都市第一位の脳で、人を、誰かを救うことだけを、ひたすらに考え続けた。


187VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:22:00.5096WOF9Uo (1/2)

再開きたああああ
最高にうれしいです 支援


188VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:23:03.68G6DJanQo (3/28)

 一方通行に続きを促された忍野は、苦悶の表情を浮かべ、眉間に深いしわを作るその様子をいぶかしみながらも、話を続けた。

忍野「……はあ、そういうなら聞いてるものとして話を続けるけどさ」

 そう言って手に持っていた小石を自身の後ろの壁に突き立てて、傷を付け始めた。
 ガリガリという耳障りな音が路地に響く。

 音が鳴り終わると、ちょうど「井」のそれそれの線が波打っているような、歪んだ図が壁にできあがった。

忍野「んじゃ、これからするのは『もしこうだったら』。つまりifの話だから、それほど期待せず、ぼちぼち聞いてくれればいいよ」

 そう、嫌味ったらしく前置きして、忍野は八九寺を助ける一つのすべを語った。


189VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:25:33.66G6DJanQo (4/28)

忍野「まず、迷い牛ってのは、そんなに高尚な、頭の良い怪異じゃない。っていうのは何度か言ったよね?」

 だから、と続けて忍野は先ほど書いた図形の上に、今度こそきれいな「井」の字を書き加えた。

忍野「線が一つの道だとして、こういう具合に道を書き換えてしまう。現実的に言えば区画整理かな?
   ともかくそういうことが起これば、頭の悪い迷い牛は、そこの道を通る人が、どうすれば迷うのか判断できなくなるんだ」

 忍野は、用済みとなった石を足下へと投げ捨てた。

忍野「ついでに、記憶力も皆無だから、『書き換えられた道を覚える』なんてことはできない。
   ってなわけで、迷い牛のマイナーな解決法は『迷い牛の知らない道のみを通っていく』ということだね」

忍野「まあもっとも、この方法がどうして無理なのかとかいう理由は僕よりキミの方が分かってるんじゃないかな?
   学園都市はそもそも歴史の浅い街。設計段階から完成形を目指してその通りになってるんだから、区画整理なんて必要ないんだよね」


190VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:27:41.38G6DJanQo (5/28)

 言うべきことは言ったとばかりに、忍野は口を閉ざした。


 ――八九寺は助かる。

 忍野の話を聞いて、一方通行はまずそう考えた。
 正しくは、一方通行なら、自分なら八九寺真宵を助けられる。

 ようするに、忍野が助けることを不可能だと断定したのは、学園都市の「超能力」を知らなさすぎた。それだけの理由によることだったのだ。
 知っていたとしても、せいぜい巷にあふれている念話能力、念動力などだけで、
 一方通行の能力もせいぜい、その程度のものとしか捉えられなかったのだろう。

 忍野は言った。迷い牛に「記憶」という概念はない。

 迷い牛が発生した。つまり八九寺が死んだそのときに、迷い牛という存在は完結した。
 つまり、迷い牛は、そのとき八九寺に備わっていた地形への記憶のみを頼りに人を迷わせるのだ。
 だから、大災害で大きく地形が変わったり、区画整理が行われて、そのあたりの道がまるっきり変わった場合。
 晴れて迷い牛は迷い牛としての機能を果たさなくなる。

 ならば、そんな"些細"なことならば、一方通行にとって障害でもなんでもない。

 一方通行がその気になれば、大災害級の地形の変化だって起こせるだろうし、
 そんなことをしなくとも、迷い牛が「知らない」道。空とか、なんなら建物でもを突き破りながら進んでやればいい。

 そう、障害はないはずだった。



191VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:29:33.36G6DJanQo (6/28)

 一方通行がそれを実践すれば、今すぐにでも「八九寺真宵」は助けられる。

 だが。

 ――「妹達」は、どうなるのだろうか。

 ここで一方通行が八九寺を助けるのは、それこそ朝飯前だ。

 だが、その後は?

 「八九寺真宵」という"今の"一方通行を形成する一つのピースが抜け去った後は?
 
 きっと――誰も助からないだろう。一方通行は一人残さず、殺しきってしまうだろう。

 "今の"自分は決めたのだ。誰も、一人も死なさないと。

 歪んだ「井」に正確な「井」が重なった妙な図形の横に立つ忍野を置き去りに、
 一方通行は「誰もが助かる」ハッピーエンドを求め、思考の底へと沈んでいった。


192VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:32:05.84G6DJanQo (7/28)

 まず、現状の整理。
 八九寺は「助けられる」。迷い牛の干渉を受けた一方通行は八九寺を「助ける」。
 つまり、八九寺真宵と一方通行が同時にいるかぎり、八九寺真宵は「助かる」。

 次に、妹達。こちらは八九寺ほどシンプルではない。八九寺がいなくなれば干渉が途絶えて、一方通行が持つ「守りたい」という気持ちすら消えてしまうだろう。
 そうなっては元も子もない。どうにかして、八九寺が居る間に、妹達が「死ぬことのない環境」を作り上げなければならない。

 一方通行に「殺されない環境」ではなく、「死ぬことのない環境」。

 そもそも、妹達は捨てられた技術のはずだ、今の一方通行が研究員に、もう絶対に実験はしない。などと言ってしまえば、
 妹達に一方通行がレベル6に至るまでの材料以上の価値はないのだから、さっさと処分されてしまうのがオチだろう。

 それではダメだ、「とりあえず生かしておくか」というところまで持っていかなければならない。
 そうすれば、延命のための調整を受け、ひとまずは生き延びるはずだ。

 ひとまず生きてさえくれれば良い。なにも、永遠を生かそうと思ってなどいない。
 自身の生死を、自分で選んでくれるようになればそれで良い。
 まあ、彼女たちが自分で生きたいと思ってくれれば、それが最良だ。


193VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:34:57.66G6DJanQo (8/28)

 その環境を作るために。
 妹達を殺さないために。
 「とりあえず」妹達に生きてもらうために。
 まずしなければならないことはなんなのか。

 たとえば、どんなに実験続行の判断が難しい状況になろうとも、樹刑図の設計者にデータを入力してしまえば、
 結果は必ずYES or NO。「中止」or「続行」なのだ。

 実験の終了、もしくは何らかの形での再開。前者なら妹達は用済みだろうし、後者であれば一方通行自身が妹達を殺し尽くすだろう。
 学園都市で、絶対的な判断基準である樹刑図の設計者が居る限り、「とりあえず」のような曖昧な答えは出てこないのだ。

 仮に、樹刑図の設計者がなければ、まだ停止した実験に、レベル6への可能性が残されている「かもしれない」と、研究者が判断すれば、
 その生産に二十数億かかった妹達の全廃棄、もしくは転用には踏み切ることなどできないはずだ。


 だから、「しなくてはならないこと」。それは学園都市の頭脳とも言える、最高の量子コンピュータを破壊することだろう。


194VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:37:44.77G6DJanQo (9/28)

 高すぎるスペックを持ち、様々な組織からねらわれる樹刑図の設計者は、安全のためおりひめI号に格納されている。
 だが、学園都市外でも宇宙開発が活発化している中、学園都市の技術を狙う組織の「上空」に樹刑図の設計者を置きはしないだろう。

 つまり、樹刑図の設計者は十中八九、学園都市上空にあるはずなのだ。

 都合良く、今日は快晴。雲などの障害物さえなければ、大気によって拡散された光を選択除去することで、直接宇宙空間を見ることができる。

 見ることができるなら、見つけることもできる。見つけることができたなら――壊せる。

 自らに触れる、ありとあらゆる力を一点に集中させれば、宇宙空間をたゆたう人工衛星を打ち壊すことなど、一方通行にとって造作もないことだ。


 ともあれ樹刑図の設計者を壊す算段はついた。

 妹達と八九寺真宵が助かって、あとに憂いの残らない。そんな最高の未来へ手が掛かった。

 最高の未来を手に入れるためには、あと「一手」――。


195VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:41:40.71G6DJanQo (10/28)

 ――――――
 ――――
 ――

一方通行「クッ、ハ、ハハ! クハハハハ!!」

 大声で、喜色に色づく顔を隠すことなく、感情を思い切り笑いにして吐き出した。

一方通行「最ッ高じゃねェか!! これ以上を望む必要もないくらいに最高のハッピーエンドだ!!」

忍野「急に大きな声を上げたと思えば……もう結論は出たのかい?」

一方通行「あァ! 誰もが望ンだご都合主義のハッピーエンドへの道ってのが今見つかったんだよォ!」

 自分が間違っているとは欠片も考えていないその自信たっぷりな口調に、忍野は驚いた。

忍野「……夢を追いすぎて幻覚を見ちゃいけないよ? ほんとにそれは『最高』への道なのかな?」

 短いやりとりの中で、一方通行が頭のいい少年であることは分かっている。
 それだけに、おそらく無理だと思っていた「八九寺真宵」が救われる結末を一方通行が見つけだしたということに、驚いた。

一方通行「ハッ! 俺が『最高』っつゥンだからそれは『最高』なンだよ! オマエのものさしで俺を測ってンじゃねェ」

 一方通行が発するのは、ただ自信のみ。

 方法もなにも教えられていないのに、それだけで忍野は一方通行を信じれるような気になった。


196VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:43:28.98G6DJanQo (11/28)

一方通行「さァて……オイ八九寺!」

八九寺「え? あ、はい!」

一方通行「ぼけっとしてンじゃねェぞ? もうエンディングの時間だ。物語のヒロインが上の空じゃ締まらねェよなァ」

八九寺「…………ほんとに、私は、お母さんのところへ……帰れるんですか?」

一方通行「当たり前だ、この俺が最初からそう言ってンだろ。いい加減そのネガティブ思考改めろってンだ」

 緩く拳を握って、それを八九寺の頭の上に落とした。

八九寺「あいたっ!」

 こづかれた頭を両手で擦る八九寺。なんとなく動きがコミカルでおもしろく思えて、一方通行は笑った。

一方通行「そォだよ、それでいいンだ。こちとら、オマエの母親の住所聞いたらすぐ行ける状態なンだよ。
     ……つってもその前にちょっとやることがあるンだな。まァ何分か待ってろ。すぐ終わる」

八九寺「やること?」

 ちょっと涙目になりながら八九寺が聞き返した。

一方通行「あァ。世界で一番頭良いとか抜かしてやがる天気屋をちょっとぶち壊すだけだ」



197VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:45:49.58G6DJanQo (12/28)

 それだけ言って、一方通行は八九寺に背を向けた。

 頭を後ろに倒し、空を見上げ、目に飛び込んでくる光を操作する。
 光源から直接地球に届き、大気で回折したのみの光線を拒絶。周りの物々から反射し飛び込んでくる光も、選択し拒絶していく。
 念入りに、他の星々から届く光も拒絶した。そうすると目に飛び込むのは、月といくつかの惑星、そしてたゆたう人工衛星だった。
 屈折率を調整し、拡大縮小を繰り返して――。

一方通行「……見ィつけたァ」

 ニヤリと笑みを浮かべる。
 樹刑図の設計者を捜し当てた。

 拒絶していた光を徐々に受け入れ、光に慣れたところで地面を軽く足で叩く。
 操作されたベクトルが、地面をちょうど一辺3mの立方体に切り離し、浮き上げた。

 それを後ろで見ていた忍野は驚き、一方通行の力の大きさというものを理解した。
 そして、完全に、一点の曇りなく確信した――これなら助けられる、と。


198VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:49:03.52G6DJanQo (13/28)

 浮き上がった石の固まりに手を当て、再びベクトルを操作する。
 石にかかるすべての力を内側に変換、加える力に対する抗力も内側に変換し、圧縮し続ける。
 すると、十数秒後には、一方通行の手に、切り出したときの半分以下の大きさになった球体が出来上がっていた。

 そこから続けて何かしようとする一方通行に忍野が後ろから声をかける。

忍野「まさか……そこまでけた外れな能力だとは思わなかったよ」

 出来上がった高密度の球体の形を、再びベクトル操作で調整しながら、振り向くことなく一方通行は答えた。

一方通行「初めから言ってただろォが。俺は学園都市第一位、最強の能力者なンだよ。こンなもン朝飯前だ」

忍野「なるほど。たしかに僕の認識不足だったよ…………で、その危なーい武器でなにをするつもりかな」

 忍野の視線の先、一方通行の手の中にはすでに球体の石はなく。流線型の先端を備えた、さながらライフルの弾丸のような物体があった。

一方通行「あァ、うン、そォだな。よし、八九寺ちょっと来い」


199VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:52:01.66G6DJanQo (14/28)

 一方通行が巨大な弾に手を当ててる方とは逆の手で、袋いっぱいのコーヒーをガラガラ鳴らしながらそう手招きすると、八九寺がその背中にテクテクと歩いてきた。

八九寺「? なんでしょうか一方通行さん」

一方通行「今からちょォっと危ねェことやるからよ、俺の背中ンとこひっついとけ」

 自分の背中を指さしながら一方通行は言った。
 その言葉に、八九寺はちょっとだけ考える。

 先ほどの、ある部分で自分より常識はずれな一方通行の能力を見るに、
 一方通行の言う「危ないこと」というのは「そうとう危ないこと」なんだろうと思う。

 だから、ちょっとだけ考えた結果、一方通行の背中からお腹へと、腕を回してしっかり抱きつくことにした。

八九寺「こ、これでいいでしょうか?」

 ビクつきながら、背中にしがみつく八九寺はなんとなく滑稽であった。

一方通行「クハッ、おォそれで大丈夫だ。忍野、オマエも吹き飛ばされたくなけりゃ俺の背中に隠れてろよ」


200VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 01:54:35.58G6DJanQo (15/28)

 そそくさと、自分の背中の影へ移動する忍野を見て、一方通行はポキッと気合を入れるように首の骨を鳴らした。


一方通行「さァて、これはどォ使うか、つってたよなァ」


 もう一度、光を取捨選択し、樹刑図の設計者の位置を確認する。
 そして、手作りの大質量ライフル弾を構えた。


一方通行「教えてやるよ」


 あたりに存在するベクトルを感知、数値化、自分だけの現実へ入力する。


一方通行「これはなァ――」


 その情報を元に、頭の中で膨大な演算式を組み立ていく。


一方通行「こォ――」


 そうして、肌に触れる流れすべて、弾自身に掛かる力すべてを一方向に束ね、


一方通行「やって――」


 演算が――終了した。


一方通行「――使うんだよォォオオ!!」


201VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:01:48.80G6DJanQo (16/28)

 瞬間。弾丸は消え、風景はブレた。

 重力、自転、風、ありとあらゆるベクトルが、ただ力のみへと変換され注ぎ込まれた。

 自転を数秒遅らせ、重力を無視し、天へと突き進む。

 カテゴリー5の最大瞬間風速を遙かに凌駕する、超音速の風を纏いながら、大気圏を越え――。

 ――弾丸は、樹刑図の設計者を打ち抜いた。


202VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:03:54.29G6DJanQo (17/28)

 一方通行は、探索時と同じように光を操作しつつ肉眼でそれが壊れるのを確認した後、再び光を取り込んだ。
 成功したことで気分が高翌揚していたのか、勢いよく光が目に入り、少しばかりの痛みを覚えた。

 ベクトル操作で目の痛みをどうにかしようとしていると、声がかけられた。

八九寺「もう……大丈夫なんですか?」

 未だに八九寺は、一方通行の腰にがっちりしがみついてる。

 風のベクトルを操作し打ち出したとき、できるだけ進行方向以外に拡散させないよう、
 特に自分の背中より後ろは風が吹かないようにしたが、それでも訪れた若干の余波が怖かったのだろう。

一方通行「あァ、もう離れても平気だ」

 そう言ったはずなのに。八九寺は離れなかった。

一方通行「ン?」

 痛みの収まった目で、八九寺を見るとよほど怖かったのか腰が抜けてしまっている。
 辺りを見回すと、風を吹かせないようにした一方通行の後ろ以外の場所は、
 ものが吹き飛び、ビルはきしみ、すごいことになっていた。
 台風一過。それに勝るとも劣らぬ被害を一瞬で出してしまっていたようだ。


203VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:05:02.64G6DJanQo (18/28)

一方通行「……そォか」

 いくら長い間迷い続けたといっても八九寺は小学生だ。こんな怪獣スペクタクルなものを間近で見せつけられたら怖いに決まっている。
 別にしばらくしがみつかれて困ることもないか、と思ったが、八九寺を帰らさなくてはいけない。
 どうしようかと考えて、

一方通行「オラ」

八九寺「うひゃうっ!」

 抱っこすることにした。
 ベクトル変換で重力を相殺し、片方の腕の上に八九寺を乗せる。

八九寺「ア、一方通行さん? コレは、な、なんなんでしょうか?」

一方通行「腰抜けてンだろォが、おとなしくしとけ」

八九寺「あ、いや、そうなのですか、なんていうか、恥ずかしいというか」

一方通行「どォせほとんど誰にも見えねェンだから恥ずかしがる必要なんかねェだろ。
     ンなことよりとっとと場所言え。行き先わかんなきゃ流石にどォしようもねェぞ」

 乙女心を「そンなこと」で済まされた八九寺は、しばらく納得がいかなそうにうーっと唸るが、
 一向に表情を変えない一方通行に観念すると、母親の家の場所をつぶやいた。


204VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:05:44.47G6DJanQo (19/28)

 一方通行は、八九寺の言葉をそのまま記憶の中の地図に照らしあわせる。

一方通行(そンな遠くはねェな。道なりに行って1km、直線距離で700mってとこか)

 場所の地理条件などを加味して、いくつか考えていた「既存の道を使用しない」行き方をそれに照らしあわせる。

一方通行「まァ、問題はねェか」

忍野「……後ろには問題しかないんだけどね」

 一方通行が起こした「若干の余波」で埃まみれとなった忍野が後ろから恨めしそうに言う。

一方通行「お? あァ忍野か、そろそろ移動するぞ」

 悪びれる様子がいっさいない一方通行に、忍野は浅いため息を吐いた。

忍野「相変わらず僕の扱いがひどいなあ。まあ構わないけど。で、どうやって移動するのかな?」

 一方通行は目の前の地面を指差す。

一方通行「こっからまっすぐ行くンだよ」

 迷うことなく言った一方通行が指さした先は、先ほど石を切り取ったときにできた大きな大きな――穴だった。



205VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:08:06.80G6DJanQo (20/28)

 カツンカツン。音を響かせ、道を"作り"ながら進んでいく。

忍野「……そりゃあ、地下に道を作れば、その道は誰にとっても未知のものになるけどさぁ。
   まったく無茶するよね、迷子ちゃんを届けた後、ここはどうするつもりなんだい?」

一方通行「あ? ンなもん知らねェよ。配電線やら何やら避けた上で崩れねェように道作ってンやってンだ。誰も困りゃしねェ」

忍野「はあ、そんなものなのかな?」

一方通行「そンなもンなンだよ」

 片方の手に大量のコーヒー缶。もう片方には八九寺真宵を乗せて、カラカラ笑いながら一方通行はそう言った。

 光の届かない真っ暗闇のなか、ベクトルを感知することができる一方通行は何の問題もなく進むことができるが、忍野はそういうわけにいかない。
 怪異のエキスパートというだけで、あくまでも普通の、能力を持たない人間なのだ。
 しかしながら、仲良く手をつないで行くというのは、一方通行にとって受け入れがたかったため、
 さきほどライフル弾を作った要領で棒を作り、忍野にはそれを握らせている。


206VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:10:19.86G6DJanQo (21/28)

一方通行「……っと、ここだな」

忍野「着いたのかい?」

一方通行「あァ、間違いねェ」

 一方通行は立ち止まり、タンッとつま先で地面を叩いた。
 すると、ガバァッ! と低い、唸り声のような音と共にアスファルトの天井が開いた。

 飛び込んでくる光に、一方通行の腕の中にいる八九寺と、使い道がなくなった棒を手放した忍野がほとんど同時に眩しそうな顔をするが、
 一方通行は、ついぞそれを経験しているので光量をあらかじめ押さえておいたため二人のようになることはなかった。

一方通行「オラ忍野、手ェだせ」

忍野「……あ、えっ?」

 出せと言いながら、強引に手首のあたりをひっつかむ。

忍野「っ! うわッ!!」

 そのまま、一方通行は二本の腕に二人を繋いで大きく跳躍し、外に躍り出た。


207VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:12:18.47G6DJanQo (22/28)

 怪我をしない程度には配慮しつつ忍野を投げ捨てて、一方通行は目の前の"光景"を見つめる。

 頭の中の住所と改めて比較しても、住所に間違いはなかった。

 なかった、のだが。

八九寺「……」

 一方通行は、呆然としながら、同じくなにも喋れない八九寺をゆっくりと、丁寧に下ろしていく。

 ――住所を聞いたときに、一方通行はたぶん分かっていた。
 それでも、なにがどうなろうとココへ八九寺を連れてくるとこが、八九寺にとってのマイナスになるとは思わなかった。
 いや、今もそんなことは思っていない。それでも、想像していた中での"最悪"だった。

一方通行「……忍野、この場合はどォなンだ」

 一方通行等が今いるのは第19学区。学園都市で、もっとも"廃れた"場所。
 用済みとなった前時代の研究施設、宿舎などのが多くが順に、更地へと戻る場所。
 ここも、その多分に漏れることなく、目の前の土地には「なにもない」があった。


208VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:14:00.13G6DJanQo (23/28)

忍野「イタタ……ん? あぁなるほど。こういうこともあるよね」

 目の前のことよりも、むしろ自分の体を気にしながら忍野は立ち上がる。

忍野「でも――問題はないよ。迷い牛は"頭の悪い"怪異なんだ。目的地に何があろうと"なかろう"と、その場所に着きさえすれば問題ない」

 忍野の言葉を聞いて、一方通行は自分の腕に乗る八九寺に視線を向けた。

八九寺「…………う、ぅぇえ……」

 小さな体が小さく震え、目に溜まった涙が更に八九寺を小さく見せた。

一方通行「……」

 嗚咽を漏らす八九寺を、一方通行は、そっと、少しの振動も与えぬよう細心の注意を払って、地面へと下ろす。
 それが、自分が"唯一"救える者に、できる"最後"のことだったから。


209VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:15:03.34G6DJanQo (24/28)

 八九寺は、一歩、二歩と、よろけるようにして前に出て、一つ鼻をすすった。
 すでに瞼から涙は溢れてしまっており、顎を伝って地面に落ちていく。
 ポタポタと、八九寺と一方通行にしか聞こえない音が響く。
 八九寺の頬に軌跡を残して落ちる滴は、地面にその跡を残さない。
 けれど、その涙は、――一方通行の目に焼き付いた。

 たしかに"生きていない"少女は、それでも、たしかに此処に"居た"のだ。

 一方通行の、自分だけの現実の中へ、その存在を刻み込んだ八九寺は、涙で塗れた顔を両手のひらでぐしぐしと拭いて、振り返ることすらせずに――走り出す。




八九寺「――ただいまっ、帰りましたっ」


210VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:16:53.98G6DJanQo (25/28)

 音も、光も何も残さず"迷い牛の少女"はこの世から居なくなった。

忍野「……終わったのかい?」

一方通行「……あァ、間違いねェよ」

 目の前で消えた。それだけで十分だったが、加えて一方通行は感じていた。
 自分の中から――「八九寺真宵」が無くなっていくのを。

 だから、一方通行は忍野の方へと向き直って、

一方通行「……忍野」

忍野「うん? なんだい?」


一方通行「――ありがとうよ」


 "柄にもない"ことを、今の内に言っておこうと思った。

 一方通行のその言葉と、共に差し出された手に、忍野はめずらしく、驚いた表情を見せた。


211VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:17:38.74G6DJanQo (26/28)

忍野「……似合わないことをするんだね」

一方通行「うるせェよ馬鹿。期間限定特別サービスだ、ごちゃごちゃ言ってねェでさっさとしろ」

 はいはいと、軽い相づちを打ちつつも、なんだか懐きにくい猫を懐かせたような、そんな妙な気持ちになって、忍野は手を取った。

 ぎゅっと、お互いが、お互いを認めるようにして、強く握り合った。

一方通行「もう一回言ってやる。ありがとう、たぶん俺一人じゃどうしようもなかった」

忍野「んー、流石にこの距離で何回も言われると恥ずかしいというか、なんというか」


212VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:19:01.73G6DJanQo (27/28)

 忍野をじっと見つめ続ける一方通行の視線に、やっぱり慣れなくて忍野は視線を逸らした。
 だから、その視線にどんな想いが込められていたのかを、忍野は知ることができなかった。

 急速に薄れゆく自分の中の「八九寺真宵」に、一方通行はもの悲しさを覚えつつ。

一方通行「あと、ワリィ」

忍野「ん?」

一方通行「――『サヨナラ』だ」

 直後、バチンッ! と、電力ヒューズが飛ぶような音が鳴り響き、一人が、ちょうど糸が切れた操り人形のごとく、崩れ落ちた。


213VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:20:41.54G6DJanQo (28/28)



もうちょっとだけ続くんじゃってやつです。

改めて、おまたせして申しわけありませんでした。
それと、待ってくれてた人。ありがとうございます。
あと少しだけ、お付き合い下さい。


214VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:22:35.0796WOF9Uo (2/2)

今日はもう終わりな感じですか?
取り敢えず乙!
再開がなによりうれしいです


215VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 02:32:47.78z2qQ5Wso (1/1)

3ヶ月は長かった


216VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 03:55:05.46XEW6/Jwo (1/1)

よくhtml化もされずスクリプトからも生き延びたな


217VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 06:10:56.33n5VCV6.0 (1/1)

やべえちょううれしい
面白かったよ!乙


218VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 06:53:30.29kSWz1u.o (1/1)

マジで待っててよかったぜ・・・乙。。一方さんはやっぱかっこいいや

しかし樹形図の設計者を打ち落とすとは・・・無茶苦茶やるなぁwwww


219VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 07:12:22.59esGeG.DO (1/1)

待っててよかった
乙だぜ


220VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/03(金) 17:32:46.86ZRynlADO (1/1)

>>213
亀仙人的なアレなのか。ここからZが始まるのか。そうなのか


221VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/07(火) 18:39:12.72LDnUbLM0 (1/1)

>>218
真宵の影響下での事だから、本当はどうなんだろう

あと、忍野はきっと☆に呼ばれたんだろうけど、会えるのかな。何を話すんだろう
☆に羽川のきめ台詞を言ってほしい。




222VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/08(水) 00:07:47.34Bfltitso (1/1)

化も禁書も好きな俺には最ッ高のスレじゃねェか!


223VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 04:26:53.461LYrfBMo (1/7)

|ω・`) 深夜にこっそりと

投下します


224VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 04:27:59.381LYrfBMo (2/7)

 ――するっ、手の中から何かがこぼれていく感触。

忍野「…………はぁ?」

 ぱたり、というよりも、がらがらがらと、盛大に缶コーヒーをならしながら、白髪白肌でとってもとっても白い少年が倒れた。

 なにがどーしてこうなった。忍野には皆目見当が付かなかった。

忍野「……はぁあ?」

 もいちど、気の抜けた声を出したら、ころころすこーん。転がっていった無糖コーヒーの一つが例の大穴に落下。
 ホーン効果で大きくなった音が耳に届いて、ようやく頭が回転し始める。

忍野(道を造って迷子ちゃんを送り届けて……超能力には反作用でもあるのか? いや、つらそうなそぶりは見せなかったし、なにより倒れ方が唐突すぎる)

 ぐるぐると、頭の中を情報が巡っていくが、その情報はどう考えても不足している。
 とりあえず不足分の補填するため、一方通行のそばに屈んで、手首と胸に手を当て脈と呼吸を確かめた。

忍野(……死んでは……ないか)

 脈はきっと正常で、胸もゆっくりと上下している。
 確かな生きてる証。心の臓が、その鼓動を止めない限り、命の終わりはないのだから。

 でも、忍野には、そのうっすらと笑みを浮かべた真っ白な顔が、まるで――"死人"のそれに見えてしまった。

忍野「……おいっ」

 なんだか、妙な胸騒ぎを覚えてゆさゆさと、胸に当てた手で一方通行の身体を揺らす。
 徐々に大きく、擬音で表すのなら、ゆっさゆっさぐわんぐわんごろごろごろごろ。

 揺らすたびに早くなっていく自分の鼓動に急かされて、力を入れすぎ転がってしまった一方通行

 それでも、反応は、なかった。



225VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 04:29:49.761LYrfBMo (3/7)

 ――――――
 ――――
 ――

一方通行(……ンあ?)

 暗闇の中で一方通行は目を覚ました。いや、正しくは、進化とかれう゛ぉりゅーしょんとかそういうのじゃない意味で覚醒した。

一方通行(……成功……なのか?)

 動かない体に、なにも伝えてこない感覚神経達。外界から隔絶された、まさに「自分だけの現実」。
 知覚できないことを知覚してから、今の自分の「意志」を確認する。

一方通行(いや……この『八九寺に影響されたまま』の意志でものを考えられてンなら、大成功か)

 確かに隔絶された此処で、消えてしまった八九寺からの影響が残っているようには感じられないが、結果としてこの心が残っている。
 それで良いのかもしれない。
 いや、良いんだろう。少なくとも今の一方通行は、八九寺に影響された今の自分が好きなのだから。


226VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 04:31:32.861LYrfBMo (4/7)

 ――「八九寺真宵」と「妹達」。二つを救うための「あと一歩」。
 それは、「一方通行」を、正しく"永遠の眠り"へ就かせることだった。

 そのために一方通行が行ったことは簡単で、一方通行が何の変哲のない日常でよく行っていたこと。

 「脳内電流」の逆流。

 妹達の死亡原因でランキングを作るのなら、トップ争い必死の、ありふれた殺害方法。
 不規則に規則正しく流れる電流をビリッと乱して、脳の活動をストップ。脳が止まれば、人の鼓動は消えてなくなるのだ。

 もちろんその死の法則は一方通行にも当てはまる。
 脳のすべての電流が逆流し、細胞を焼いてしまえばさしもの第一位でも為すすべはないだろう。
 一方通行を一方通行たらしめる「一方通行」を生み出す脳が止まってしまうのだ。
 結果として残るのはただの「死」だが、失うものはふつうの人間よりも大きいのかもしれない。


227VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 04:33:24.701LYrfBMo (5/7)

 ただ、それは脳の"すべて"だった場合だ。

 一方通行を一方通行たらしめる「一方通行」を生み出す脳の「演算部分」。
 理論上、不可能なことはないとすら言われる一方通行のベクトル操作という能力。
 一方通行は、ちょうどそこだけを避けるように能力を行使した。

 それさえ残っていれば、一方通行は、自他ともに「一方通行」という化物でいられるから。

 能力をフルに使って脳内電流を制御し、生命活動と思考能力を維持させる。
 そうすることで、自分はあくまで「学園都市第一位の能力を使役する一方通行」でいられる。

 しかし、脳の中で渦巻くすべての電流を解析し、それを完全に再現させる。
 それを行う為に必要な処理量は、普段使う「反射」や「操作」などとはまるで比較にならない膨大な量だ。
 だから、一方通行の能力のすべては「生命活動の維持」という一点に当てられる。
 だから、他の、身体操作や情報の拾得等と言った部分はまったく使えない。

 ようするに、自己の能力で生命を維持する植物人間。
 それは、間違いなく前例のなく、治しようのない、また、実験の中止を人間では判断しようのない、まさしく「中途半端」な状態なのだ。


228VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 04:41:52.371LYrfBMo (6/7)

一方通行(馬鹿みてェな金を使ってたっつう事実以上に、研究者どものくっだらねェプライドが研究の中止を認めねェだろォな。
     嬉しそうに妹達を殺せ殺せとのたまってた奴らが、生き続けろっつゥンだからなんつーか皮肉なもンだ)

「中途半端」に死んだ一方通行はそこまで考えて、

一方通行(……あァ、なンだ。俺も同類かよ)

 毛嫌いする人間達に共通項を見いだして、心の底からあきれかえった。

 いや、むしろ、根底にある感情ががらりと変わってしまった自分のほうが質は悪いのかもしれない。

 1000人をぐっちゃぐっちゃとじっくり殺して、1000人をビリビリと一瞬で殺して、1000人をズガンと反射して殺して、
 1000人をびちゃっとまきちらして殺して、1000人をベリベリと剥いで殺して、1000人をぐしゃっと叩き潰して、あとは覚えてない。

 そこまでしておきながら、自らのエゴで悪人を止めようという自分こそが、誰よりも最悪の人間なのかもしれない。

一方通行(でもまァ、生かさず殺されずってのは、7000人を殺した殺人鬼にはお似合いの末路かもしンねェな)

 だから、一方通行は死なない。

 一方通行はいつでも、演算を止めれば苦しみを味わうことなく死ぬことができる。
 それをするのは今ではない。

一方通行(7000人×80年=56万年。アイツらの分だけ生きて業を償うってのは……さすがに不可能か。
     だが、『死』は悪人にとっちゃ救い。なら、生きれるとこまで生きてやろォじゃねェか)

 自分に生きるための栄養が供給されなくなるのはいつだろうか。
 それとも、もはや「反射」すらもなくなったこの身体に誰かが刃を突き立てるのか。

 死ぬのはいつかわからないが、絶対に自分から死んでなるものか。

 そんな、後ろ向きに前向きな。それでも確固たる想いを、一方通行は動かない体でただただ脈打つ心臓に誓った。


229VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 04:49:57.221LYrfBMo (7/7)

fin.







こんな前向きなBADENDでもいいかもしれないなと、思ってしまいましたがやっぱりもうちょっと続きます。

ただ、以前書きましたが私学生でして、今テスト期間でして、今ほとんで書けませんでして。次の投稿は最速でも10月になると思いますでして。

なので、これでお腹いっぱいになれた方はタブを閉じても良いと思います。この後はHAPPYなアレしかありませんですので。


230VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 04:51:03.14UZoVvtco (1/1)

乙!
まさかこんな時間に来るとは思わなかったww


231VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 04:52:06.708P7nkgAO (1/1)

読めて良かった。良くできた結末だ


232VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 04:58:25.43gaTCzbko (1/1)




233VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 05:49:14.9356VyXBI0 (1/1)


この後の展開が凄く気になるな

HAPPYENDになるなら待ってるぜ


234VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/13(月) 12:09:41.34SamXOsAO (1/1)

一気に読んだ



235VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/14(火) 02:47:46.54MrPf.MAO (1/1)

教えろスレから

おんもすれぇぇぇ!!!
化物語は曲しか知らない自分も楽しめたわ
一方さん…アンタって人はぁっ!


236VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/14(火) 04:04:12.19ZSF.6gAo (1/1)

作者です。

たくさんの感想が大変嬉しく。はっぴーなえんどを望む方のためにも頑張らねばと意気込んでテストがどうにかなりそうです。

本題。
今更過ぎますが>>207の
>一方通行は、呆然としながら、同じくなにも喋れない八九寺をゆっくりと、丁寧に下ろしていく。
は脳内削除しておいてください。次の>>208でもいっかい降ろしてますね。アホかと


237VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/14(火) 18:15:25.40PtLT4F6o (1/1)

お前が遅筆なのには慣れてるからテストをしっかりしてくれww



238VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/14(火) 18:35:47.79iH9js.DO (1/1)

八九寺と一方通行好きな自分にはごちそうでしたよ
乙です

続きも期待


239VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/09/18(土) 03:02:23.07Bh/SqMDO (1/1)

保守だァ


240VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/10/01(金) 14:51:05.84NDHDHEDO (1/1)

10月ほ


241VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/10/05(火) 08:50:55.45y0EUxhI0 (1/1)

八九寺と一方通行いいなあこれ、これ読んでて久々にワクワクする。


242VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/10/09(土) 18:51:44.257CGV/WM0 (1/1)

保守。って、必要なのかな?このまま放って置いても死なないの?



243VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/10/09(土) 20:58:58.82J3OwiU.o (1/1)

GEPとかパー速とかは保守しなくても死なないよ


244VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/10/25(月) 13:51:33.352iqhIQDO (1/1)

もしもしだけどHTML化されたスレ開こうとすると

このスレッドはレスが1000を超えたか長い間書き込みがなかったためHTML化されています。

って表示されるからいつかは落ちるんでないの?期間は解らんけど


245VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/10/25(月) 15:27:47.821dATcSco (1/1)

1ヶ月放置可能
それ以上は保証しない


246VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/10/29(金) 01:35:49.12wEF8aEko (1/1)

10月が終わりそうなので生存報告です。

10月17日に試験自体は終了し、それからシコシコ書こうと試みているのですが、
なかなかどうして筆が進まず、普段の遅筆に輪をかけて驚異の最遅状態になっております。

待ってくれる方には申し訳なく、お前はどれだけ待たせるんだ。といった具合ですが
間近に見えるのは八九寺と一方通行のゴールなはずなので、例え歩くような速さでも、完走はします、ええ、しましょうとも。

なので、もう少し、もう少しだけ。


247VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/10/29(金) 11:34:10.72RANj3k6o (1/1)

待ってるんだぜ


248VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/10/30(土) 01:52:00.388wCJTRI0 (1/1)

報告ありがたい
この面白いssの完結が読めるのを楽しみにお待ちしております


249VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/11/07(日) 15:34:06.47GUJO9YA0 (1/1)

待ってるんだぜ


250VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/11/07(日) 23:45:45.17M75UsYAO (1/1)

待ち遠しいね


251VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/11/12(金) 19:10:21.96JQsxYwQo (1/1)

おもろい


252以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/16(火) 04:58:40.51gLqJug2o (1/1)

一気にENDまで行こうと思ってましたが、遅筆過ぎていい加減私のしびれが切れたので、
今週中に書きあがったところまで、投下しようと思います。
キリの良いところまで書ければその書いた日に投下しますが、書けないようなら週末、金、土曜のどちらかに投下します。


253以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/16(火) 05:02:40.992bjgl4Uo (1/1)

待ってます!


254以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/16(火) 06:14:23.09khU35EAO (1/1)

期待


255以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/16(火) 09:34:48.62Zo3CO26o (1/2)

そう言い残して半年が経過したのである


256以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/16(火) 09:37:45.60Zo3CO26o (2/2)

>>255
すまん、誤爆した


257以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/16(火) 22:22:43.34a.bknsso (1/1)

妙に納得してしまうのは何故か


258以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/17(水) 01:35:34.99t6mEMo2o (1/1)

半年と比較してまだ2ヶ月と思ってしまった俺はなんなんだろうね


259以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 06:00:16.86JSoh/Mg0 (1/3)

今日か…


260以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 09:51:23.30LU94if6o (1/16)

今日だなぁ…


261以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 22:48:59.62LU94if6o (2/16)

約束の日付が終わろうとしていますので、そろそろいきましょう。
推敲の後に、11時より投下開始します。


262以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 22:57:08.51JSoh/Mg0 (2/3)

フェァオイァアアア…
来たぜ来たぜ来たぜ
俺のテンションと眠気がMAX


263回線の接続状況が非常に悪いため、間隔が開くことがあります。ご了承を2010/11/20(土) 23:01:19.96LU94if6o (3/16)




 ――「ア、一方通行が倒れただと!?」


「実験はどうなる!? 樹刑図の設計者はなんと!?」

 「場所は!? いったいなにがあったというのだ!?」

「わかりません!! 原因は不明ですが、樹刑図の設計者への申請が却下されています!!」

 「知らん!! なにがあったとしてもあの『化物』が倒れるものか!!」

「がぁああああああ!! この緊急事態に!!」

 「実際に倒れているではないか!!」

「実験は……どうなるのでしょうか」

 「私に言うな!! もう事が起きた後だ、こうなったら『冥土帰し』に祈るしかないだろう……」

「くそっ!! ――ここまでやったんだ、なんとしても成功させる!!」



264以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:02:36.72LU94if6o (4/16)


 想定外に想定外が重なって、あっという間の大喧噪。

 一方通行は、彼ら研究者にとって、畏怖される存在であったが、それと同時に命綱でもあったのだ。
 一見太く、切れることなどあり得ないほど強靱に見えた綱だからこそ、繋がれたものは多い。
 繋がれていた者たちは、切れそうになったその綱を、どうにか補強し、直そうと血眼になっていた。

芳川「……」

 そんな中、一方通行を畏怖し、その綱に繋がれながらも、どこか『同情』していた芳川。

 思い浮かべるのはつい先ほどの実験。
 いつもと『違った』一方通行。

芳川(やはり、一方通行には『なにか』があったの?)

 妹達を、一方通行に殺されるしかない妹達を『優しく』殺して見せた一方通行。

芳川(だとするならば……これも妹達を思ってのこと?)

 考えを巡らせる芳川の頭に、飛び交う怒号の一部が飛び込んでくる。


265以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:04:12.29LU94if6o (5/16)




「実験に投入されていない妹達はどうすれば!?」

「ああ、くそっ!! そっちもあったか……とりあえずは待機させておけ」

「待機といっても、一方通行がいつ目覚めるか分からなくては妹達の寿命が……」

「寿命…………っ、そういえば、20001番の作成はまだだったな」

「え、あ、はい」

「なら、ラインは今まで通り稼働させ続けろ。最後まで造りきってしまえば上とて実験を止めろとは言うまい」

「、では」

「これから造る物は勿論、すでに造られていた妹達の寿命もすべて調整しろ。最悪一方通行が死亡したとしても、人間関係にいっさいの面倒がない人間型モルモットだ。いくらでも流用できる」



266以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:05:12.37LU94if6o (6/16)

 飛び交う会話の一つ。それだけが、ただ引っかかった。
 なんの変哲もない。というには少々物騒すぎるが、少なくともこの混沌とした場所ではおかしくない、ただの会話。

芳川(妹達の……調整)

 そう。それは至極当然のことだったから。

 例えば――今回起こった『何か』で一方通行が『死んだ』なら。
 使われる必要の無くなった妹達は『処分』されていただろう。

 例えば――今まで通り一方通行が『生きて』実験が続けられるなら。
 調整を受けて長生きする必要もない妹達は、当然一方通行の糧となり死んでしまっていただろう。

 だから――一方通行がいわば『半死半生』の状態にある今、妹達の寿命が『調整』されるのは当然のこと。

 でも、

芳川(『どうして』一方通行は倒れたの?)

 それは、全然まったく、当然ではない。

 だって、一方通行は『最強』なのだ。

 銃、剣、拳骨――明らかすぎるほどに物質的なものは言うまでもなく。
 電撃、光線、ウィルス――観測の難しい粒子の移動も。
 重力、電磁力、抗力――そもそも『物』として観測できないものも。
 そこに『向き』と『大きさ』があるのなら、一切の例外なく、全ては一方通行の支配下なのだ。
『操作』――『反射』。一方通行に、全ては届かず、全ての干渉は無視され、それはいうなれば、隔絶された一つの『世界』。
『一方通行』と『その他』。
 それがこの世の真理の一つで、だから、

 ――『その他』の誰かが『一方通行』を倒すのは考えられない。


267以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:05:50.76LU94if6o (7/16)

芳川(だと、するならば――)

 消去法で、信じられなくとも、ありえなくとも、そうとしか、考えられない。

芳川「っ!」

 踊る会議のまとまらない机の上に散乱した書類の一つ。
 一方通行について記されたものを引っつかんで、芳川は部屋を飛び出した。

 バタンと乱暴に開いた扉を閉めることもせず、そんな些細なことは気にもせず。

芳川(甘い、甘い甘い)

 運動に慣れない体は、よろけながらも、一歩ずつ、しっかと踏みだし、前へ進む。

芳川(どれほど、どれほど甘ければっ)

 下唇を、ぎゅっと噛み締めた。

芳川(『甘い』という言葉で自分に言い訳して、背負うべき重荷を放り出して)

 握りしめた書類はぐしゃりと音を立てた。

芳川(――その重荷が『何処』へ向かうのか考えもせずに)


268以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:06:59.39LU94if6o (8/16)

 かつて、教師になりたかった一人の研究者。
 優しい、生徒に親身に話しかけるような、そんな先生に、なりたかった。
 そのために勉強して、そのために調べて、そうやって教師になるために努力して、やっと、わかった。

 ――『優しさ』と『甘さ』は、違うのだ。

『甘い』自分では、『優しい』教師には、なれない。

 自分を省みることを決して止めず、自分と他を天秤に掛けて、いざというときでも決して踏み込まず、一線は越えない。

 人として、たしかに賢く思えるその生き方は、『優しさ』を備えてはいなかった。

 だからこそ、研究者になった。『優しく』ありたい心をごまかし、『甘い』自分を慰めるために。


269以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:08:19.21LU94if6o (9/16)

 研究者としての生活は順風満帆だった、はず。
 幸いというか、皮肉にも、なりたくなかった研究者に必要な才のほとんどには恵まれており、世渡りも下手ではなかった。
 おかげでこの年の独身女性としては十分すぎるほどの給金をもらえているし、なにより、何かを『探求』することで、自分が本当に『求めていた』ものを忘れることができた。

 ――そう、徐々に、忘れていたはずだった。

 なのに、どうして。


 『彼ら』と、出会ってしまったのだろう。


 男日照りならぬ、子供日照りな研究所で、長い月日を過ごし、忘れかけてた想いは、自分でも驚くほど、簡単に蘇った。

 女性である自分が羨ましくならないほど白く、目つきの悪いのどこまでも不健康そうな少年。
 文字通り細胞レベルで同一で、事務的な口調のモルモット代わりの少女達。

 一介の研究者が推し量ることができないほど、暗い闇に覆われた彼らを、どうにか、その手段は思いつかなくとも、どうにか助けたくなった。

『優しい』人に、なりたくなって、しまった。


270以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:09:12.63LU94if6o (10/16)

 ――――――
 ――――
 ――

 防犯目的なのか、だらだらと開く自動ドアすらももどかしく感じ、駆けないぎりぎりの速さで歩く。

芳川(あの子のっ、部屋はっ……)

 資料に書かれた病室番号を頭の中で読み返し、エレベータの呼び出しボタンを押した。

 一秒、二秒。

芳川(遅いっ!)

 過ぎる時間に耐えきれず、すぐ横の階段を、今度こそ駆けあがった。

 どこにも向けることのできない激情が、自分を突いて、急かす。

 一方通行の所へ行ったとして、何が出来るわけでもない。
 芳川はただの研究者。今も寝てるであろう一方通行を起こすことも出来ないし、身元を引き取ることもできない。
 あくまで一方通行とは研究者と被研者の関係で、端的にいうなら、ただの他人。

 ――だけど、たとえ『最強』であっても、彼は、『子供』なのだ。

『子供』は守られるべきで、『大人』は守るべき。

 今まで心の奥に隠していた、そんな絶対の不文律を思い出したから――。


 芳川は、『一方通行』の前で足を止める。


芳川(っここが……)

 荒れる息を整えながら、ドアの横の『一方通行』のタグを確認した。

 非常時にも、本名が記されることのない彼の境遇をもう一度想いつつ、大きく息を吸い込んで、まとめて吐き出した。

芳川「……よし」

 揺れそうになる『甘い』気持ちをどうにか押さえつけ、扉に手をかけて、ゆっくりと横滑りさせた。


271以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:09:42.93LU94if6o (11/16)

 開け放たれた窓とカーテン。
 その隙間から飛び込んできた、短長様々な波長を含んだ多量の電磁波は、速度を緩めることなく病室の様々なものへと衝突し、そのほとんど全てが乱雑に反射される。

 病室は、白かった。

 ただ、その様はまるで一方通行で、それは此処に一方通行が居ることを芳川に一層強く意識させた。

芳川「……あそこに」

 今度こそ、本当の一方通行へ意識を向けて、芳川はベッドへと足を運ぶ。

 辺りを確認して、一方通行の周りに重々しい医療器具はないように見えた。
 あるのはせいぜい栄養を与えるための点滴のみ。この分なら、たぶん大丈夫なのだろう。
 機械で無理やり生命維持させられているようにも見えないし、一方通行自身の力で生きている。
 だから、大丈夫。

 ポタポタと栄養を落とす点滴器具の横に立ち、もう一度小さく息を吸って、ベッドの上を見下げた。

 白いシーツに包まれた、白い少年が、瞼を閉じて、横たわっている。
 それは見慣れた姿で、なんどもなんども見たはずなのに、


芳川「一方……通行?」



272以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:10:30.19LU94if6o (12/16)

 感じたのは、疑問だった。

 一方通行に会って、どうしよう。そんなことは考えていなかった。とにかく会って、謝りたかった。

 ただ、それだけだったのに――。

 ああ、どうしよう、目の前の彼は、本当に、一方通行なのだろうか。

芳川「……一方通行」

 白い、白い頬に、自分の手のひらを重ねて、じっと見比べる。

 確かに、白いのだ。
 女性の自分でさえも羨ましくならないほどの、たぶん人間としては極限の『白』。
 いつもの一方通行も白かったし、今の、一方通行であろうこの彼も白い。

 その白さに違いはないはずなのに、

 ――なんでこんなにも、儚いのだろう。

 全てを跳ね返した強烈な『白』ではなく、透明に近い『白』。

 以前は触れることの叶わなかった、その肌をさすっていると、閉じられた瞳が二度と開くことがないような気がして、

芳川「……一方通行。……ごめんなさい」

 届くはずのない謝罪が、それでも口を突いて出てきた。



273以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:12:29.25LU94if6o (13/16)

 小さく、薄い、この体に、いったいどれだけの『重荷』を背負わされたのだろう。
 誰にも支えられることなく、全ての支えを振り払って、一人でどこまで歩き続けたのだろう。
 これが、その終着点なら、そんなのって、ああ、あんまりじゃないか。

 変わることのない表情に、一粒の雫が落ちたとき、ガチャリと、ドアの開く音がした。

芳川「……誰?」

 溢れ出たそれを隠すこともせず、芳川は振り返る。

冥土返し「うん? 誰、か。ただの医者だよ? その子を診させてもらってる。ただの医者さ」

 立っていたのは、芳川のそれとは一線を画す、清潔さをそなえた白衣に身を包む、カエル顔の医者だった。

冥土帰し「一方通行の、保護者……ではなさそうだね? 管理者ないし関係者ってところかな?」

 コクリ。首肯して、ようやく頭が回り始めた。

 第七学区に、カエル顔の医者。それだけで、十分だった。
 幸いお世話になるようなことになってはいないが、顔ぐらいは覚えている。
 その手にかかった患者はすべて、『冥土』から『帰される』。だから『冥土帰し』。
 そんな彼が、一方通行を診てくれているのだ。
 だから、大丈夫。素人たる自分の、『元の一方通行には会えない』などという予感はきっと、杞憂。

 そんなかすかな希望で大きな不安をどうにか薄め、小さな勇気を口にした。

芳川「一方通行は、どう、なのですか?」

冥土帰し「……どう、か。うん?」

 そう言って、冥土帰しはツカツカと芳川の横へ並んだ。
 冥土帰しが一方通行の頭に手をやるのをみて、頬に添えていた手を、慌てて引っ込める。

冥土帰し「ひどい状態だね? そこいらの医者よりは、多くの患者を診てきた自負はあるけれど、こんな患者は見たことがないよ」

 ズキリと感じたショックは殺して、芳川は別の問いを投げかける。

芳川「彼に、なにがあったのでしょう」

 カエル顔の医者は、少しの間、うーんと唸った。

冥土帰し「いったい彼に『なにが』あってこうなったか、それは僕にも分からないよ?」

 でも、と続けて、

冥土帰し「彼の『身』に何が起こったか、なら、そうだね? 前例のない症状を、あえてそれっぽい単語にするなら、『神経細胞分離』ってところかな?」


274以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:13:45.06LU94if6o (14/16)

 ――『神経細胞分離』。

芳川「……っそれは、どういうものなのでしょうか」

 冥土帰しは一方通行の頭にやっていた手の形を、頭を指すように変え、指先で何度かつつきながら。

冥土帰し「何も難しいことはないよ? 言葉のままさ。シナプスが何らかの原因で破壊され、個々のニューロン、つまり『神経細胞』のつながりがなくなり『分離』した。それだけだね?」

 ニューロン、シナプス。神経細胞、その繋がり。
 芳川は研究者で、その専門分野は能力開発。脳をいじくり、『ありえない』を作る身には、あまりに聞き慣れた単語。

 もちろん、その構造、特性も頭に入っている。

 学園都市で行われる『脳開発』。
 クスリを投与し、脳に電極を挿し込んで、脳の閉ざされた回路を『開く』。
 その回路というのは、ニューロンとシナプスで構成されるもので、一生を通して数が一定。
 だからこそ、使われていないものを刺激し、開いてやる。
 そうすることで『自分だけの現実』を確かなものにし、能力を発露させる。

 そんな経験が、芳川の理解を早めた。
 ようするに、一方通行は、『増えない』ものが『なくなった』のだ。
 つまり、

芳川「一方通行は……」

 ――治らない。


275以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:17:20.76LU94if6o (15/16)

 最後の言葉は、喉を震わすことなく外へ出て、ほとんど息に、かき消えた。

 その微かな声ならぬ声を、拾ったカエル顔の医者は、

冥土帰し「うん? そう。――『普通』は、そうだね?」

芳川「普……通?」

冥土帰し「そうだね? 普通。普通なら、こんな症状、助かりっこない。絶対に死んでるよ?」

 よく考えれば、当たり前のことだ。
 手足も、肺も、心臓さえも、全ては脳の管理の元で動いている。
 その脳が停止するなら、先にあるのは『死』しかない。

 そんな『死』を目の前にしても、冥土帰しと呼ばれた男は、まったく声色を変えることなく、

冥土帰し「死んでる人を生き返らせることはできないね? 『死んでいる』なら、それは僕の管轄外だよ? わざわざ診たりはしないさ」

 その言葉に、ハッとして、芳川は一方通行の顔を見た。
 いつの間に退けたのか、そこに冥土帰しの手はなく、だから、一方通行の顔の、全てが見えた。

『生きている』。確かに、そう、生きている。
 耳を澄ませば点滴の、彼に送られる、生きるための栄養の水音も、生きるために必要な空気を吸う音も。
 ああ、ありありと聞こえる。

 死んでいるとは、思ってなかった。
 けれど、『生きている』とも、思ってなかった。

冥土帰し「脳の神経細胞のほとんどが分離している。こんな、常人ならまず死ぬしかない状態でも、彼は、能力を振り絞って、『生きている』」

芳川「ではっ!」

 カエル顔の医者は、なれない笑顔を形作って、その二つ名の意味を言う。

冥土帰し「うん? 絶対に、起こしてみせるよ? 生きている限りは、生きなきゃ嘘だ。『冥土』に行くことに抗う魂は、僕が今に『帰し』てやるさ」


276以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:19:43.53LU94if6o (16/16)



今回はここまで、ですの。

次こそ物語の幕を下ろせたらなぁ。と、つねづね思っていますがなかなか筆は思うように進んでくれません。
原因としては、まず脳の構造とかに中途半端に突っ込んじゃったことと、Twitterはまっちゃったことと、
異常にリアルが忙しかったのがありますが、まぁそれはそれで、どうにかします。

あ、感想コメとか、全部見てますのよ? 嬉しくてニヤニヤしちゃいます。
こんな乗っ取りスレを見てくれて本当にありがとう。本当に、あとすこしだけ付き合ってください。


277以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:25:28.25JSoh/Mg0 (3/3)


くそっ生殺しか 

くそう…待ってるからなくそぅ


278以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:29:27.750pjB.AQo (1/1)




279以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:32:45.76JkUFWoAO (1/1)

ひとまず乙!

マジでこのSSの続きが楽しみだったので、
更新してくれるだけでもありがたいです


280以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 23:54:25.62TDH3KIY0 (1/1)

おつおつ

化物語のキャラは出ないの?
忍野はどうしたのかな


281以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/21(日) 03:09:20.74fXHmnGYo (1/1)

>>280
当初スレタイ見たときいろいろ妄想しましたが、一方通行を外にだすのはちょっと無理があるだろうと思ったので、
化物語の方からは忍野とまいまいちゃんの二人のみですね。

また、忍野ですが、この後も少し出る予定です。
……関係ありませんが、予定は未定とも言いますね。


282以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/22(月) 01:38:33.03T0fzRr.0 (1/1)

なんか芳川通行に見えてしまう俺は末期かな


283以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:51:51.44zecKOGo0 (1/1)

>>282
まだまだ初期だよ。これから始まるのさ。



にしてもここの作者にはいやに好感がもてる。


284以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 23:31:06.06B.eWzQ60 (1/1)

>>282
よう同志
芳川通行好きな俺には>>263-275が最高すぎるぜ


285以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 14:03:50.55eWh1gVko (1/1)

作者でございまーす(休みの終わりを感じさせる某国民的アニメ風に)。
よくよく考えると、芳川は冥土帰しのこと知っとりましたね。
まぁ、知ってても大筋に変化はないので、口調とか、モノローグとか、適当に脳内補完お願いします。

次投下するときは終わるときだと意気込んでいましたが、どうもお勉強しなきゃヤバイのがあるので、
まあ、週明けくらいに投下しようと思います。


……改めて芳川通行とか言われると、芳川さんかわいく見えてきた。結婚したい。


286以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/28(日) 09:59:05.07fXs/zmM0 (1/1)

待ってるからねー
頑張って!


287以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 21:37:19.75tVf412Mo (1/13)

23時に投下開始します。と、作者は宣言するとともに、自分の首を締めます。


288以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 21:39:43.30TcKpe.AO (1/1)

投下宣言ktkr!


289以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 22:12:34.28ckobsjk0 (1/2)

全裸で待機だ!!!


290以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:01:11.14tVf412Mo (2/13)

そろそろ、始めます。
いつも通り(?)回線の不安定さが有頂天なので、間が開くことがあるかもしれませんが、ご了承お願いします。


291以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:01:59.37tVf412Mo (3/13)

 ――――――
 ――――
 ――

 ゴポゴポと不思議な浮翌遊感。なんだか、そう。頭から水に突っ込んだような。

一方通行(あァ?)

 あれから、ほとんど何も変わらない時間を、独り自分だけの世界で過ごしていた一方通行。
 一日を判断する材料が一切ないため、何日経過したかはまったく不明だが、たぶん、それ相応には長い時間を過ごしたように思う。
 外で『生きていた』時分も、物理的に、立場的に、外界から隔離された変化のない生活を送っていたように思うが、今はそれをはるかに凌ぐくらい変化がない。
 変化がない空間。真っ暗で、何も無い空間。やることといえば、思考で、外からの刺激がないのだから、その思考は回想か、妄想。

 今だって、『もし、自分が女だったら』なんて、不毛すぎることを思考、もとい妄想して、
 ……うん、少しばかり、いや、かなり気持ち悪くなったところであった。

 ゴポゴポ。

 連続して響く、音ならぬ音。どちらかというと、振動そのものだろうか。

一方通行(脳が細かく揺れて、電気信号の波に若干ノイズが入ってやがるな。浮翌遊感は、ノイズで思考に遅延がでたせいか、とりたてて問題はねェ、が……うぜェ)

 うっとうしいと感じても、今の一方通行に、それをどうにかするだけの余力はない。
 その超能力を全開で、自分を保っているのだから。

 しばらくして、その音は、鳴りやんだ。

一方通行(今のは……なンだ?)


292以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:02:59.17tVf412Mo (4/13)

 あまり、人に好かれるような人生は送っていない一方通行。
 普通に考えて、この体にちょっかいを出してくるということは、たぶん殺しにきてるのかも?
 しかしながら、一方通行は死んでない。だって、考えられているから。
 生きてるのかと問われれば、クエスチョンなマークが浮かぶけれど、少なくとも死んじゃいないであろう。
 では、[ピーーー]つもりでないのなら、なにか?
 次点で考えるのなら……治療。

 いよいよもってめンどくさいことになりやがった。一方通行は思う。

 一方通行は、八九寺を届けたあと自分がどうなったかなんてまったく知らないが、えらくお節介な男のそばで倒れたのだ。まさかそのまま放置してなどいないはず。
 だから、今自分がいるのは病院の可能性が高い。というか、ほとんど100%。
 そうすると、まぁ、医者がいて、普通は検査する。
 検査して、異常が見つかって、普通の医者ならサジを窓から全力投球ではなかろうか。
 だって、脳の細胞がブチブチになって、取り返しの付くはずもない。
 優秀な医者であっても唸って悩んで、悩み尽くして机の上へ静かに置くだろう。
 だから、治療にとりかかるのは、そりゃあ、頭のつくりが本格的に『おかしい』奴だけ。

一方通行(忍野の野郎……『ハズレ』を引きやがったな)

 忍野が(たぶん)病院まで運んだことには感謝もしよう。だが、一方通行は死にたくも、生きたくもないのだ。
 今のような、そう、『中途半端』を維持してくれるのが一番都合がいい。
 だから、無駄に熱血な普通の医者に架かって「手の施しようないでーす。ドラマばりの奇跡期待しまショー」で点滴だけされるのが理想。
 でも、まあ、パチンと能力を使った瞬間から自分の体はすでに自分の管轄を離れてしまっているわけで。

一方通行(……あァ、出来ることなら……、まだ殺してくれるなよクソッタレ)

 今は、そうやって妹達を想いやるしかなかった。

 ――
 ――――
 ――――――


293以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:04:27.84tVf412Mo (5/13)




 目の前の光景を見ながら、芳川は思った。
 ――どうやら、『冥土帰し』の異名は伊達ではなかったらしい。


 あの後、カエル顔の名医はすぐに術式の準備にかかった。
 シナプスという決して『増えない』ものがなくなった一方通行を、果たしてどうするつもりなのか?
 そう芳川がそう問うと、

冥土帰し「ああ、そんなにそれは難しいことじゃないね? 彼は能力で脳内電流を再現してるようだから、それを利用してニューロンの枝同士をくっつけてやれば、それでおわりだよ?」

 なんだか、自分の心配が全く無駄だと言わんばかりの軽い言葉に拍子抜けして、へ? と、間抜けな声が口から漏れた。

冥土帰し「電流に反応する接着細胞のような物質を脳の隙間に注入し、それでもってシナプスを作る。ただそれだけだね? 幸い再現された脳内電流は安定していて乱れがないし、時間さえかければ、十分に回復するよ?」

 それで説明は終わり、冥土帰しは一方通行を載せたストレッチャーを看護婦らしき人に押させて、部屋を後にしようとした。
 そこで、あっ、と何かを忘れたように振り返り、

冥土帰し「僕は割と忙しい身で、手術が終わった彼にずぅっと付くわけにはいかないんだよね? だからさ、また来て、彼を看てあげてくれるかな?」

 また、予想していなかったものだから、少しの間ポカーンとしてしまい、

芳川「わかりましたっ」

 ちょっとだけ、声が弾んだ。


294以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:05:34.67tVf412Mo (6/13)




 それから何日かの間、芳川は時間の許す限り一方通行の病室に通いつめた。
 妙に実験に執着していた天井を始めた研究員たちから『なにをしているんだ』というような連絡が多々あったが、
 そんなむさくるしい、というより薬臭い男どもといるよりも、一方通行の寝顔を眺めている方がよっぽど良いので、
『妹達の調整に関して冥土帰しと話し合ってる』
 とだけ答えて後は無視した。

 事実、彼の病院でも調整は引き受けてもらう予定になっているようだし、少しだけ話はしたので全くの嘘ではない。
 そうして作った時間を使って芳川は一方通行に寄り添い付き添い、非常に献身的に世話をした。
 それは、贖罪でもあったが、芳川を動かす気持ちの最たるものは、一方通行を想う気持ち。

 そして――今。

 モゾっと、布団がかすかに動いた。

芳川「っ!」

 少し遠目に椅子を置き、ずっと一方通行を見ていた芳川は立ってベッドに駆け寄った。
 体を揺らすことはせず、一方通行に呼びかける。

芳川「一方通行! 気がついたの!?」

一方通行「……ンン、」

 一方通行は、目を開けようとして、白い光が眩しかったのか、眉間にシワを寄せながら目をシパシパ。
 なんだこいつかわいいぞと、ついぞ芽生えた芳川の庇護欲につよおい刺激。

芳川「一方通行、私、芳川よ? わかるかしら?」

 ぼんやりと目を開けた一方通行に、自分を指さして意識確認。
 ムニャムニャと、どこか夢心地な一方通行はやっぱりとってもまぁ可愛かったが、意識がないのでは困る。

一方通行「……ン」

 短い一言を、肯定と判断。一気に安堵が吹き出して、芳川はぶはぁとため息を吐いた。

 ばたん。気の抜けた体は一方通行の方へ倒れ、行き場を求めた両腕は、ぎゅぅっ。その体を抱きしめた。

芳川「ほんとに、あ、はは、……良かったぁ」

 思わず漏れた一言と、ぎゅっと抱きしめる両手の力。
 それは一方通行を想う、芳川の優しさが溢れ出たもののように思えた。


295以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:06:08.28tVf412Mo (7/13)


 ――――いったいなにがどうなっているのだろう。
 起きて。状況を見て。そこそこ長考して。やっとたどり着いたのがそこまで。

 芳川が、まさにそう、天使でも見たかのような顔を見せるその下で、一方通行の弱った頭は、怒濤の急展開を処理しきれずにいた。

 だって、今し方まで、
『自分が死んだら妹達はどうなるのだろうか』とか。
『そもそも妹達はちゃんと延命の調整を受けているのだろうか』とか。
『果たして自分は何日ほど「死なずに」いられたのか』とか。
 自分が『死ぬ』ことを前提にものを考えていたのだ。

 それが、なぜだか分からないが、目覚めてしまって、
 たぶんそんなに深い仲でもなかった研究員が自分に抱きついている。

 なんというか、ダンゴムシの交尾を見たかのような、いや本当に見たことはないけれど見たらコレくらいビックリするんじゃないかというか、まぁ、とりあえずひたすらに一方通行は混乱していた。

一方通行(…………治療が……成功したのか?)

 数十秒かけて、やっと落ち着いてきた頭でようやくまともな思考。
 どうも状況を考えるに、そうであるらしい。
 真っ白で清潔な部屋は、たぶん病室で、自分の腕に繋がる管は点滴に繋がっている。
 いったいなにがどうなって、自分が助かったのかは謎だが、どうやら助かってしまったらしい。

 そう、助かって――。


296以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:11:17.74tVf412Mo (8/13)


一方通行「ン?」

 疑問が、声になった。

芳川「どうしたの?」

 いつのまにやら、下半身までベッドの上な芳川の声が耳を通過する。

 助かって、しまった? いったいどうして『助かってしまった』?
 そう、そもそも『一方通行が助かる=妹達が死ぬ』という等式を何故考えた?
『助かる→実験が再開→八九寺からの影響下でない→妹達を一方通行が[ピーーー]』
 こうではなかっただろうか? こういう考えで、作り上げたのではなかっただろうか?
 八九寺と離れて生きる限り、自分の中に八九寺はいない。
 そう仮定して、そのもとで行動してたはずなのに、

 妹達を想って思考する一方通行の頭は、あきらかに――八九寺に影響されたそれだった。

一方通行「……くはッ」

芳川「一方通行?」

 思わぬ、嬉しいようで、そうでないような、そんな誤算だった。
 なにせ、自分は生きてるだけで災厄を振りまいてしまうようだから、生き残ることがうれしい誤算とは、ちょっと言えないかも。
 だから、小首を傾げる芳川に、状況を確認する。

一方通行「オイ、妹達はどうなってンだ」

 その質問に、なぜかいっそう柔らかい顔になった芳川は、

芳川「あぁ、あの子たちね? うん、大丈夫よ。きちんとみんな、延命の調整を受けているところ」

一方通行「……そォか」

 一つ安心して、なら次は、そう続けようとしたところで、

芳川「うん、そうよ。そう。もう大丈夫。『実験』も凍結されたし、あなたが抱え込む必要はないの」

 聞こうと思ってたもうひとつのことを先に言われてしまった。
 これで、うん? 妹達は大丈夫らしい。ああ、そうか。
 どうにも、懸念事項はもうないようで、こうなるともう一方通行はすべて安心してしまうしか、ないのだ。


297以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:13:59.05tVf412Mo (9/13)

 さて、どうしようか。
 安心してしまったら、目的も無くなって。やることも無くなった
 とりあえず、と考えて、

一方通行「芳川」

芳川「なに?」

 名前で呼ばれたのがうれしいのか、先ほどよりもちょっとだけ、芳川の声は明るい。
 一方通行は抱きしめられて両手が使えないので、顎をしゃくって言った。

一方通行「とりあえず、重てェから退け」

 芳川は、少し考えて、一方通行の胸にのっかってる顔をグリグリして、それから顔をぐぐっとその薄い胸に思い切りうずめてから、

芳川「んー……やあよ」

一方通行「あァ?」

芳川「だって、あなたが眠っている間、動かないあなたの体の世話をしたのはほとんど私よ? 今更恥ずかしがることもないし、これくらい許して頂戴」

 んんっ、と体を動かして、芳川は顔を上げた。心なしかその顔はニヤニヤしていて、やはり嬉しそうだった。
 一方通行は、ひとつため息を吐いて、気持ちの上だけ諸手を上げて、バンザイまいった。

一方通行「……たまンねェ」


298以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:17:03.61tVf412Mo (10/13)

芳川「あら、興奮させちゃった?」

 ニヤニヤ20%増しである。

一方通行「ンなわけねェだろ」

芳川「そーう? これでも一応『ある』方だと思っているのだけど」

一方通行「あァ?」

 何が? 一方通行はまあるく口を開けた。

芳川「おっぱいよ、おっぱい。当たってるでしょ?」

 そんな一方通行に、芳川はぐいぐいと、上半身をあからさまに動かせて見せた。
 その動きは一方通行の目から見ると、たぶんきっと、すごくえっちなのだろう。けれど、

一方通行「……オマエは俺がンなことで欲情するような人間に見えンのか?」

 呆れたような一方通行の問いに、芳川は動きを止め、んーっと考える。

芳川「そりゃあまあ、そうは見えないけれど、あなただって健全……? な思春期の男の子だもの。ちょっとくらいこういうことに興味があっても不思議じゃないわ」

 あくまで嬉しそうで、妙にアクティブな芳川をどうこうすることを諦めて、一方通行は一言つぶやいた。

一方通行「……ばァか」

芳川「あら? おっぱいのあるお姉さんは嫌いなのかしら? もしかしておっぱいのない小さな女の子の方が好」

 芳川の言葉はそこで遮られて、声を荒らげた一方通行。

一方通行「違ェっつゥの!! なァンでオマエらはそろいもそろって俺をロリコン野郎にしたがるのかなァ? 分っかんねェよ」

 ふんす、と、一方通行は少し不機嫌に鼻息一つ。

 ――ロリコン。

 芳川としては冗談のつもりだったのだけれど。
 もしかしたら、一方通行が『変わった』訳が分かるかも。

 巻き付いていた手を離してベッドに突き、芳川はぐっと、顔を顔に近づけて、

芳川「ロリコンって――、他の誰かに言われたことがあるの?」


299以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:17:51.83cWXAVPM0 (1/2)

今まで芳川が一通の身体を拭いたりしてたのかと思うと俺もたまンねェ。


300以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:18:40.26tVf412Mo (11/13)

 芳川の知る限り、一方通行は孤高の存在だ。
 超能力が学生の評価基準のほとんどであるこの都市で、レベル5の第1位。
 その能力値の高さと、まぁ本人の性格もあいまって、一方通行のまわりに、純粋な意味で人が集まることはない、はず。

 だから、そんな一方通行がそういうことを言われるのは、すごーく、ありあえないこと。

 ぐっと、ぐぐっと迫ってくる芳川の圧力に、一方通行は何故か気圧されて、

一方通行「な、あ?」

芳川「どこの、誰に? 誰があなたにそんなことを言えたの?」

 一方通行とて、今の自分の発言にツッコミどころがあったのは理解できる。
 できる。が、なにゆえここまで食いつく?
 一方通行をロリコンと呼んでいいのは自分だけ! そんな思考? ワケわかんねェ。

一方通行「べ、別に、そンな奴がいたっつゥそンだけの話だ。オマエにはなンの関係もねェだろ」

 戸惑いながらの言葉に刺はなく、ことを確認するような、興奮する子供をなだめるような、そんな口調。
 そんな一方通行の喋り方は激レア。というか本邦初公開で、誰も見たことはないはずなのだけど、なぜか感じたデジャヴ。
 確かに感じた、そのデジャヴ。

 けれど。
 芳川は、既視感を追わない。

 ただ、『今』の本心のみを。

芳川「関係ないわ。うん、関係ない」

 まっすぐ、目を見て、逸らすことなく

芳川「でも、私はあなたのことが、知りたいの。ただの大人、『芳川桔梗』は、『一方通行』のことを知りたいの」

 だめかしら? と、締めた芳川の言葉は、語調こそ柔らかかったが、それには芯があった。
 聞くからには、全てを背負ってみせる。その覚悟は、出来てる。そういう意味の、芯。
 そんな、どうも『違う』らしい芳川に、一方通行はなんだか呆然としてしまった。


301以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:20:05.29tVf412Mo (12/13)


一方通行「……オマエ、変わったなァ」

 なんとなく、芳川の言葉の真意が飲み込めてきた。
 だからこそ、しみじみと、溜め込んだ息を吐き出すように、胸の奥から出た言葉。

芳川「変わった……そうね。変わったわ。変えられた、というべきのが適切かもしれないけれど」

『優しい』表情で、芳川。
 清々しくて、刺も、裏もなく、包みこんで、癒してくれるような、そんな『優しい』表情。

一方通行「……く、はァ」

 今度こそ、参った。本当に、降参だった。
 高圧的な態度ならその態度ごと反射して見せよう。
 ただ甘い言葉をぶつけてくるのなら、そんなの、自分のエリアには入れさせまい。

 でも芳川は、『ともすれば』。諸諸の最悪すらも考えて、それでも確固とした覚悟を持って、一方通行だけの現実に足を踏み入れようというのだ。
 これはちょっと、反射してはダメなのではなかろうか。
『全部』を投げ出してきた相手は、やっぱり『全部』で受け止めるべきなのだ。

一方通行「言ったところで、信じれるとも思えねェぞ」

芳川「あら、信じるわよ? あなたの口から出た言葉だったら、なんでも信じちゃう」

一方通行「クハッ、つくづく損しそォな考え方だ」

芳川「ええ、これからよく言われる予定よ」

 また一笑。衝撃的に思えるほど変わってしまった芳川の凄さを確認して、

一方通行「おーけィ。たぶんオマエが疑問に思ってること全部に答えてやるよ」


302以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:26:54.06tVf412Mo (13/13)

それでは、今回もここまで。
文字規制引っかかる前にsagaれよ! と、ごもっともですスミマセン気をつけます。

芳川さんを、もうちょっとえっちぃ感じにしようかと思いましたがさすがに収集つかなくなりそうなので自重しました。
本格的な芳川通行はまた別の機会に書けたらいいなと思います。

あと、この作品は 禁書×化物 ではなく 禁書←化物くらいで捉えていただけるといいなと思います。
あくまで、とある魔術の禁書目録の世界に、いくつか化物語の要素が入り込んだ物語です。
もっと化物語を! という方にはけっこう遅くなりましたが、ごめんなさいを捧げます。


303以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:29:25.47Kf86Ce2o (1/1)

乙でした!


304以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:30:17.43cWXAVPM0 (2/2)



芳川さん可愛すぎ。よって俺の嫁。


305以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:43:55.57bCy4jAM0 (1/1)

乙ー
流石は芳川さんは甘い女だ…甘くてにやにやする
しかし冥土帰しは本当につくづく凄いなぁ


306以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:46:16.81oQrduZ60 (1/1)

嫁入り宣言しちゃってるよこの人……


307以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 23:51:29.26ckobsjk0 (2/2)


なんだこれ、ただ一方さんと芳川がいちゃこらしてるだけじゃないか







俺得ですありがとう
あと芳川、結婚してくれ


308以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/30(火) 00:00:18.74uXgqJ.Eo (1/1)

初夜は何時ですか?


309以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/30(火) 00:51:58.15ypEEgEIo (1/1)

違うっ・・・・このスレの芳川っ・・・・・!!
二ートでダラダラな他のスレの芳川とはっ・・・・


なにこれ大人エロ可愛い


310以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/30(火) 01:21:48.35w7zcw9ko (1/1)

この芳川は良い芳川


311以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/30(火) 02:07:08.45Zlr7v1go (1/1)

ストーリもさることながら文章が単純に面白いと思った乙


312以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/30(火) 02:12:08.87sFrXgME0 (1/1)

乙でした
二人のやり取りが微笑ましいぞー



313以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/30(火) 07:27:09.10UjjmP1Q0 (1/1)

なんだかく、はァってエロイね


314以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/30(火) 17:33:15.37K6ATdyQo (1/1)

やべぇよ芳川やべぇよ大人の魅力だよ乙


315以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/30(火) 17:58:38.55nT5El2AO (1/1)

>>299
溜まった芳川がちょいっとだけ自分に都合の良いように一方さんを使った事が有るかも知ンねェと思うと、
俺もたまンねェ


316以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 16:17:25.502DrbtEAO (1/1)

溜まってんのか溜まんねえのかどっちだい


317以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 08:15:12.59dmwauUwo (1/3)

>>299
>>315


 ――――――
 ――――
 ――

看護婦「すみませんね。では、おまかせします」

芳川「はい、こちらこそワガママを言ってしまって。それでは」

 ガラガラ、ピシャリ。扉が閉まってふたりきり。

 一方通行が倒れて、病院に運ばれたその日、芳川は一方通行が倒れている間の身の回りの世話を申し出たのだった。
 もちろんそれは、ふつう看護師の仕事。
 それでも、やろうと言ったのは、贖罪の気持ちからのこと。

 今まで私は彼になにかしてやれただろうか。
 いや、もちろん、何もしてやれていない。子供である。守るべき彼に私は何もしてやれていない。

 それは、今の芳川にとって、とても許されざることだから。
 だから、そんな芳川が、『今から一方通行に何かしてあげよう』そういう気持ちになるのは極々自然なことだった。

 会釈程度の、少しばかり失礼な礼から顔を挙げて、芳川は一方通行の方を振り返る。

 髪も肌も、ついでに与えられた病院の服も、なにもかも白いその少年は、唯一の色であった真紅の瞳が閉じられて、いよいよもって純白に。
 そんな彼がまたも純白のベッドに横たわるのは、なんだかもう、一枚の絵画のようではないだろうか?



318以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 08:15:42.79dmwauUwo (2/3)

 ――ゴクリ。

 え? と疑問に思って、その音の発生源が自分の喉だということに気づくまで少々の時間を要した。

 なんで、ゴクリ?

 看護婦に手渡されたのは、大きめのタオルふたつとひとつの尿瓶。
 彼の体を拭くものと、彼の尿を採取するもの。

芳川「……って違う、違うわ!」

 まったくの無意識で、『採取』という単語が頭に浮かんでしまった。
 尿瓶は自分で用をたすことができない彼の代わりに、自分が彼の代わりにモノを使って、って、使うじゃない。使うはなんか響きがエロい。え、っと、じゃあなんだっけ。

芳川「うぅ……」

 一度、何かのスイッチが入ってしまって、思考がぐちゃぐちゃに。
 もしかしたら溜まっているのか?

 ……そうかもしれない。
 教師を諦めてからというもの、『子供』への想いを断ち切るため、ただひたすら勉強し続けた。
 もちろん、美人に部類される芳川。研究者やそうでない男性からの誘いがあることも少なからずあったが、全てやんわりと断って今に至る。

 そうして、自分の中に溜め込んでしまった子供への想いと情欲。
 そのふたつは図らずも、いや、図ることなど出来やしないのだろうけど、リンクされ、同一のものと見なされて、
 今回、一方通行が倒れたことで爆発した。

 自分を分析し、どうにか平静を取り戻そうと努力。

 しかし、いくら事を難しく考えようと、今はただ、
 一人のショタコンが発情しているだけなのだ。


319以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 08:16:39.29dmwauUwo (3/3)

 そんなことが頭のなかで巡って、一度思ってしまうと、もうダメ。

芳川「……あは」

 芳川は、半分無意識、そして半分意識的に、看護婦から貰った『道具』へ手を伸ばす。

芳川「そう、これは看護。動けない彼の代わりに、私が代わってやってるだけ……」

 タオルと、尿瓶。
 小さめの箱にまとめられたそれらふたつとひとつから、
 芳川は『尿瓶』を手に取った。

芳川「うん、もしかしたら催してるかもしれないわよね。っていうかきっと催してるし、催してなくても、催してるにちがいないわ(?)」

 フラフラと、どこか夢のような手足取り。
 しかし、その瞳からは、酷く強い『決意』のようなものが見て取れた。

 布団を剥いで、彼の全身を眺めた。

芳川「うん、うん? うん」

 なんだかよく分からないことを呟きながら、ガウン状の病院服の紐をつまんで――






朝っぱらから何書いてるんだろう。溜まってンのかな。


320以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 10:11:06.45zax0EkMo (1/1)

頼むから○せて下さい


321以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 11:49:24.137d3hCYAO (1/1)

ふ、ふぉっ、ホォォー――――――――ゥゥゥゥゥゥウウウ!!!(言葉にならない歓喜)

純粋な読者の方、ここは妄想ですので読み飛ばしましょう、作者様に代わってお伝えします

ふぉホーゥウ!!!!


322以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/05(日) 18:37:25.71mmfL8rY0 (1/1)

続きは?


323以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 12:42:42.858x6EsyIo (1/1)

続きは、来週中に投下出来れば理想だなぁとなんて、思っとります。

ついでに、昨日までこのスレの分や、他スレに投下したものなど、遅筆をどうにか走らせて何気にシコシコ書いておりましたが
明日から金曜日まで学生にありがちな定期試験本番なので流石に書けませんの。
ですので、その後、ということになりますね。それは間違いないです。

そういえばスレ見直したら「GW中には終われる用にしたい(笑)」とか言ってましたね。
馬鹿みたい。もう12月ですよ。今年終わりますよ。(笑)ですよ。


324以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 14:40:26.09WVxx4K60 (1/1)

良いじゃないですか
一方さんとて一流の悪党(笑)とかやっちゃってますし、最後まで投げ出さなかったらマジ天使ですよ
続き楽しみにしてます


325以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 12:46:20.53YMZo3UDO (1/1)

たまンねェ


326以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 08:33:54.80QasCjfo0 (1/1)

芳川一方とか誰得


327以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 10:32:12.96JOZZe6s0 (1/1)

>>326
どうみても俺得です、本当に(ry
このスレは期待できる・・・ッ


328以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 17:15:36.59JcUjBr60 (1/1)

>>326
オマエ後で屋上な?


329以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 19:20:12.79/4Ff9g60 (1/1)

さて本日が期日締切日なワケだが


330以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/22(水) 05:41:53.0572ZNZik0 (1/1)

まってるんですよー


331MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!)2010/12/25(クリスマス) 06:54:03.23A7oWHq2o (1/1)

メリクリ


332以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/25(クリスマス) 21:26:35.21T50QjvI0 (1/1)

メリー


333以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/25(クリスマス) 21:58:04.69txghjsIo (1/1)

クリスマス


334以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/25(クリスマス) 22:24:19.10fvZ70NUo (1/1)

クリトリス。

……さて、いい加減遅すぎるなぁと思ったので現状を報告。
正直に、全然進んどりません。頭で話が凝り固まって、むむむと。むむむと。
できるだけ早いうちに終われるよう、頑張りますので、皆様良いお年を。


335以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/25(クリスマス) 22:49:52.94ls/8T0c0 (1/1)

頑張ってね。

待ってます。


336以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/27(月) 17:56:05.27M1TOw.AO (1/1)

この番組は
目覚めた一方さん
献身的な芳川さん
助っ人忍野さん
GO!GO!HEAVEN!!八九寺さん
つい下ネタに寄り道しちゃう作者さん
の提供でお送りしております


337以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/28(火) 16:19:27.76zrRfMsDO (1/1)

傾物語読みながら待つよ!


338以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/30(木) 18:28:03.60fhqU5Pgo (1/1)

だが最高は恋愛サーキュレーション


339あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 23:36:58.463EHcQ3Yo (1/1)

そして至高は帰り道。


340真・スレッドムーバー移転 ()

この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)


341VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 03:50:43.1065N/9EEfo (1/11)

 新年結構前に明けてましておめでとうございました。
 どうも、自分で自分が嫌いになるくらい遅筆なことで無名な作者です。
 板移転しました。私自身はたらい回しにされた経験なんてないのですけど、やっとSSも安住の地を見つけたような感じですね。
 ではでは、例のごとく詰まって待たせた期間の割に量が全然ですが、自分のおしりを目一杯殴打する意味も込めて、4時頃より投下開始したいと思います。


342VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 03:59:03.37iUW4I38Ho (1/2)

ktkr!!!


343VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 03:59:25.4865N/9EEfo (2/11)

 ――――――
 ――――
 ――
 八九寺真宵という少女。現れた心境の変化。忍野の登場。
 それら全て、0から10まで語りつくして、一方通行は一息つく。
 上半身だけ起こし、壁にもたれる一方通行の視線の先には、ベッドにちょこんと腰掛ける芳川。

芳川「うぅん……」

 小さく唸って、さながら考える人のポーズ。
 だって、意味のわからないことばかり、怪異? 迷い牛? なんだそれは知らんぞ、と。
 今まで培った常識の外から襲来する情報は、学園都市最高の頭脳である一方通行ですらそうであったように、簡単に処理できるわけでない。
 芳川はぷはぁと息を吐き出して、両手で参ったのポーズをとりながら一方通行に、

芳川「まったく、ワケがわからないわね」

一方通行「まァ、信じられねェだろうな」

 一方通行の言葉に芳川はうなづいた。

芳川「聞きたいことは聞けたけれど……めちゃくちゃに疑問が増えたわ」

一方通行「そりゃそォだろォよ」

 無理もない。一方通行はそう思う。
 この話を一つ聞いて、よし! 怪異って居たのねふっしぎぃ! なんてなるのはちょっと頭が本物な奴だけだ。
 しかし、

芳川「でもね? 信じるわ。信じる。だってあなたが話してくれたことだもの。どんなに不思議でも、それはきっと事実だから」

『迷う』ことなく言ってのけた芳川は、どうやら『本物』だったらしい。

一方通行「…………アホか」


344VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 04:00:51.0565N/9EEfo (3/11)

 一方通行の呆れた声に、芳川はハリのある自慢の胸をピンと張って、

芳川「アホで結構。今の私は貴方をとことんまで盲信してるわ」

一方通行「ハッ、科学者なら事を疑えっつゥの」

芳川「んー? ……たしかにそうよね、なら宗教家にでもなろうかしら?」

一方通行「……何教だよ」

芳川「新興宗教アクセラ教?」

一方通行「アホか」

芳川「ふふっ……アホで結構よ。今の私は貴方をとことんまで盲信してるわ」

一方通行「……ループはしねェぞ?」

芳川「あらそう? 残念」

 まったく残念そうでない声色で言って、トンと芳川はベッドから降りる。
 ひらひらと、手を振りながらドアに向かって歩く。

芳川「それじゃ、私はそろそろ研究所へ戻って一応報告してくるわね」

 そんな態度が、一方通行のどこかに引っかかって、

一方通行「ン、ン?」

芳川「あら、どうかした?」

 一方通行の不思議な声に、ドアに手をかけ振り返る。

一方通行「いや……オマエ疑問が増えたとか言ってただろォが、それはもォいいのかよ」

芳川「?」


345VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 04:02:56.1365N/9EEfo (4/11)

 芳川は、考え込む様子を見せず、むしろ不思議そうな顔になって、

芳川「だって、考えたって仕方ないじゃない」

 さらり、そんな擬音が相応しいくらいには簡単に言ってのけた。

一方通行「……まァ、うン」

芳川「あなたの言っていた、八九寺ちゃんの影響もそうだし、忍野さんというオカルトのオーソリティが何故学園都市にやってきていたのかも疑問。
   でも、今あーだこーだ言っても本当のことは何も分からないでしょ。私とあなたはオカルトについて無知だし、忍野さんについては無知とかそういう話ではないのだから」

 つらつらと、当然のことを語った芳川に、一方通行は怪訝そうな顔つき。
 聞きたい答えは、そういう理屈の部分ではないのだ。

一方通行「そりゃァそォだろォが、あの俺について知りたいとか言ってたのはなんだったんだよ。俺が言う事だけじゃ俺に起こったことは分からねェぞ」

 一方通行が引っかかったのは、そういう感情論。
 知らなくても良いことが、どうしても気になったのだ。

芳川「んー、そうね、うん。正直いうとどーでも良かったの」


346VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 04:03:34.6465N/9EEfo (5/11)

一方通行「……………………」

 じっくりたっぷりの間が開いて、ようやくもっての再起動。

一方通行「はァ?」

 一方通行が目覚めて最初に見た相手である芳川。
 人が変わったかのようにねちゃねちゃ絡んできて、今になってどーでもいい。
 寂しいとか、そういうのではないが、もう唖然としてしまって言葉はそれしか出なかった。

 そんな一方通行の様子から何かを察したのか慌てて付け加えるように、

芳川「えーとね、あなたのことを知りたいのはホントよ? ついでに八九寺ちゃんがあなたに与えた影響っていうのもちょっとは気になるわ」

 でもね、と続けて、

芳川「私は、今のあなたが幸せそうならそれでいいの。あなたに起こったことを聞いたのだって、あなたが穏やかな原因に不幸な事が無ければいいなって思っただけよ」

一方通行「……はァ」

 まさしく、新興宗教アクセラ教。たぶん教祖。
 アイツの世界は自分が中心に回ってンのか。そんなことを、本気で思えるくらい、想われている。
 芳川が教師志望だったことも、それを挫折したことも一方通行は知らない。
 それでも何かを感じたのか、角の立たないまぁるい声で、

一方通行「バァカ」

 呆れたようなその声に、芳川は微笑。

芳川「なにそれひどいわね」

 しばし停止していた手をひねって、やっぱりひらひらと、手を振りながら芳川は部屋を出て行き、

一方通行「……ありがとよ」

 パタン。


347VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 04:04:23.8865N/9EEfo (6/11)

 視線の先、小さな音を鳴らした閉まったその扉。気恥ずかしさを隠すよう、小さく頭をかいた。

一方通行「ホント、わけわかンねェ女だ」

 芳川は、たぶん、あんな女じゃなかったはず。
 研究員の中では、どちらかというとまだ『人間的』な人だったように、一方通行は記憶する。
 しかし所詮深く関わっていない研究員ABCDの一人。一方通行はその人となりを詳しく知らないのだ。
 だが、あんなイカレタ実験に参加していたのだ。少なくともあの時点で良心的と呼ばれるような人間であったはずはないだろう。

 ――でも、それは『あの時点』の話。
 今は違う、と、一方通行は確信を持って言い切ることが出来た。

一方通行「人の心ン中ずかずか入り込ンできやがって」

 芳川は、『反射』を恐れず、まるで考えることを放棄したかのように思い切り抱きついていた。
 その強い原動力の正体は、優しさと思いやり。一方通行が久しく向けられていない、人間らしい清い感情。
 一方通行の何かが芽生えさせた芳川の美しいそれは、一方通行の心に存在していた『反射』の膜すら突破してしまったのだ。

 芳川の顔のぬくもり残る、白くて華奢なその胸に、何かを感じて手をやった。

 一方通行の生きざまは、幼いころ起きてしまったあの『事件』から、なにもかも『反射』することに決まった。
 それは物理的な、『一方通行』という能力が生み出すベクトル変換を用いたものだけではない。
 精神的な、個々人のパーソナルスペースをとことんまで守る。侵入者は漏れ無く『反射』する。
 そんな誓いでもあったのだ。
 もちろん決めるときに迷いはした。
 でも、それが最良の道だと思ったから。

 『最悪の災悪』である一方通行は、人々の『和』に入るべきではない。

 そう考えたから。
 だから、出会う人をすべて拒絶し、反射し、自分から離そうと――。

一方通行「ン?」


348VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 04:05:58.8265N/9EEfo (7/11)

 なにか、なにか引っかかった。
 思わず胸の上で手をぎゅっと握り締める。
 なんだろうか、この胸の奥、手の先にある感覚は。
 自分が何に何を感じているのか、思い出そうと思ったことを振り返る。
『芳川』……、『優しさ』……、『反射』……、『拒絶』……、『拒絶』?
 ハッとして、握られた手から力が抜ける。

一方通行「八九寺……」

 キーワードから思い至ったのは、小さな少女。
 大きな大きなリュックサックを背中に背負い、女の子らしい長い髪は両サイドで結んでツインテールに。
 まるで蝸牛のような風体の少女は、その実『迷い牛』という蝸牛の地縛霊、世界の物理に縛られない怪異なのだという。

一方通行「……」

 初めて出会ったあの時、まだ自分が八九寺に『侵されて』いないとき。
 自分はなんであんなに自然に、八九寺と接せられたのだろう。
 答えは、単純。


 ―― 一方通行は、八九寺の中に『一方通行』を見たのだ。


 思い出すのは、初めに出会ったとき、八九寺が一方通行に放ったあのセリフ。

八九寺『あなたのことがきらいです』

 出会った瞬間の存在全否定。
 あまりに『反射』的な姿勢。
 その『拒絶』は唐突で、ぎこちなく。
 無差別に、『優しさ』を放っていた。
 そんな姿に『かつての』自分が重なって、一方通行は昔を思い出したのかも知れない。
 だから、まだ心のなかに『八九寺』がいないにも関わらず、八九寺を無碍に扱うこともなかった――。


349VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 04:06:57.4865N/9EEfo (8/11)

 ――でも、それがどうしたというのだ。
 八九寺はすでにこの世に居ない。
 地縛霊としてあやふやには居たが、そのの心残りも自分が消してしまったではないか。
 今八九寺を考えるのは、それこそサハラの大砂漠程度には不毛。
 だから、さぁ、ほら、八九寺を考えるのはもう終わり。

 胸に引っかかったものの正体も分かった。
 今はゆっくり休めば良い。
 妹達のことだって、全て研究所任せというわけには行くまい。
 乗りかかった船どころの話ではないのだから、事の最後を見届ける責任くらい一方通行にはあるはずだ。
 それに、芳川だって、多少の借りが出来てしまっている。
 もしかすると、このことが原因で路頭に迷うかも知れない。
 まぁ、そのときは、家と金くらい提供してやろうではないか。
 ほらほら、やることが多くて、とても過去を邂逅するなど、すくなくとも今は許されそうにない。

 ――そう、思うのに。

 気づくと自分の中で、八九寺は大きくなるばかりだった。
 いくら漫然とした事実っぽいもので覆い隠しても、自分の本心は偽れない。

一方通行「八九寺……っ」

 一方通行は八九寺にまだ「ありがとう」を言ってない。
 忍野には言った。握手までして、まぁ、その後の自分の行動は難だらけだったが、言うもんは言った。
 芳川にも、言った。届いてるか分からないが、誰が何と言おうと言ったのだ。2回目は言えない。

 そうだ、ほんとに自分を変えてくれたのは八九寺なのに、ありったけの思いを込めて、「ありがとう」告げるべきなのに。
 一方通行はまだ言ってない。少女に想いを伝えていない。

一方通行「八九寺っ!」

 気づけば行動は速かった。
 未だ重たく感じる体を動かし、かけられた布団を剥ぎ、ベッドを飛び降り、


350VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 04:10:48.2365N/9EEfo (9/11)

一方通行「うァ?」

 ガンッ! と、硬質な衝突音をたて、ものの見事に顔面着地した。

一方通行「……っ!?」

 声は声にならず、息となって外へと排出。
 なんか頭の中の考えやら想いやら全部吹き飛びそうな大衝撃。
 痛い痛いと、痛いが頭を巡って痛い、痛い。

 ――思えば、生まれてこのかた、一方通行は『痛い』を経験したことがなかった。
 そんな、ある意味赤ちゃん並に痛さへの耐性がない一方通行へ、最初に襲いかかった痛み。
 当然、鼻を押さえ悶絶。痛いという新情報がなだれ込んで混乱する頭。
 大変痛い。
 鼻が気持ち悪い。コレが鼻血か?
 上半身が落ちて、下半身がベッドの上、シャチホコかよ。
 体がうまく動かない。病み上がりだから仕方ない?

 ――いや、違う。

 一方通行は、頭をぐるぐる回る情報から、なんとか重要なことに気づく。

一方通行「ほうりょふがひほうひへあいはお」

 痛みを堪え、鼻を押さえて呟いた言葉はまともな言葉にならない。
 ただ、『能力が機能していない』呟いた言葉はそれだけだったのに。
 自分の考えは文字に起こすと短くあっさりしている。一方通行はなぜかそんなことを思った。
 ただ、そんな悠長なことを考えられるほど、余裕のある状況ではない。

 一方通行にとっても、『一方通行』という能力は太い太い命綱。
 実験内外で命を狙われる彼が今ここまで、ただひとつの痛みすら知らずに生きてきたのは『一方通行』あればこそ。
『一方通行』のない一方通行なんて、ただの不健康なもやしっ子に過ぎないだろう。豚肉と一緒に塩コショウを味付けに炒められるべきだ。

 痛みで頭が混乱してることはわかっているのに、混乱した頭はこれからなにをどうすべきか指針をたてられない。
 もごもごと、芋虫かなにかの如く床でもがいていると、ガチャッと、メカニックで金属質な軽い音が一方通行の耳に届いた。
 パタパタと、響いた足音はすぐに止まる。

冥土帰し「…………えーっと……」

 カエル顔の名医は、おおよそ理解の及ばない光景に、めずらしく困った顔をした。


351VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 04:14:53.7865N/9EEfo (10/11)

ってことで以上。
あんまりな筆の遅さに、この寒さに筆も凍ってるのかなぁ? と思ったりしたけれど、夏も遅かったなと思い直して、そんなことはないなと気づく。
あぁ、そろそろマイマイといい勝負できる遅さじゃないかなとか考えると、マヨイちゃんと一緒に居られるじゃんやったぁ!


どうも私はバカです。


352VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 04:21:27.93iUW4I38Ho (2/2)

やっぱりおもしれえな


353VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 04:33:38.55Nh3pDkcqo (1/1)

ひゃっほう久しぶり乙


354VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 04:38:40.14uQglz3/AO (1/1)

キテタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!
移転早々縁起が良いな!!
この板も変わらず栄えていくに違いない

俺はゴロゴロしてるさといもだから、椎茸や蒟蒻と一緒に甘辛く煮っ転がされるべき


355VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 10:46:12.71NXmKg//3o (1/1)

芳川と一方通行のやりとりにニマニマしたりほっこりしたりしてたのに
あとがきで爆笑しちまって全部吹っ飛ばされたwwwwww


356VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 16:03:39.358NVmQtd+o (1/1)

素敵過ぎる…
 乙でした、移転もお疲れ様です


357VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/14(金) 19:14:03.44uQbG5ej30 (1/1)

ふぅ、やっと追いついた


358路傍の石 ◆pVT9AM1tJNOL2011/01/14(金) 21:21:09.4065N/9EEfo (11/11)

なんか自治スレの方でトリについての話題が盛り上がってますの。
放置スレを作者の書き込みがあるかどうかで判断し、作者かどうかの判断をトリで行おうという話。

今までは「所詮立て逃げの再利用だしなぁ」と思ってトリ付けてなかったけれど、なんかほっといたら放置スレ認定される自信があるので今のうちに付けておきます。
ついでに作品への責任という意味も込めて、名前を名乗ってみたりとか。なんにせよもう完結まで逃げられませんので、がんばります。


359VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/19(水) 23:16:45.57rsg+OrNZo (1/1)




360VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/30(日) 18:06:32.35Vg0YJY/AO (1/1)

全然余裕な間隔だが支援だぜ。思い立ったら一方通行(即レス)ってなァ!


361VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/31(月) 13:29:17.163Xh/8qmt0 (1/1)

期待してるぜェ


362VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/03(木) 09:27:11.58cY+BFyZAO (1/1)

なにしゃしゃりでてきてるんですか?アクセロリータさん


363VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/04(金) 03:11:21.75CzswL60Bo (1/1)




364VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/04(金) 16:09:39.07ytkPg5oPo (1/1)

マダー?


365VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/13(日) 21:22:36.82qnbXVlS80 (1/1)

続きマダー


366VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/13(日) 22:43:58.362D0euOLk0 (1/1)

あら、てっきり完結したものかと・・
続きがんばー


367VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/14(月) 01:10:42.02gR2yYGxeo (1/1)

待つわ


368バレンタインデーSS ◆pVT9AM1tJNOL2011/02/17(木) 08:05:49.62CWbrftHQo (1/3)

八九寺「おぉーい!! 一方通行さーん!!」

一方通行「ンァ? おォ、八九寺じゃねェか。ンなに走ってどォしたよ」

八九寺「はぁ……はぁ……、いや、ちょっと、はぁ」

一方通行「……水飲むか?」

八九寺「このタイミングでミネラルウォーター差し出す一方通行さんに惚れちゃいそうです。お言葉に甘えていただきまふ」

一方通行「……あンま急いで飲むとよ」

八九寺「んぐっんぐっんっ、ゴハッ!! かはっ!!」

一方通行「、言わんこっちゃねェな……」

八九寺「うぇー……忠告は飲む前にしていただくとありがたかったです……。でも、ありがとうございました。生き返った気分です。幽霊だけに」

一方通行「くだらねェギャグ……で、何を急いでやがったンだ?」

八九寺「あ、えっとですね一方通行さん。……2月といえば、なんでしょう?」

一方通行「…………はァ?」

八九寺「はぁ、聞き逃したんですか? まったく仕方ないですね。もう一度言いますからしっかり聞いててくださいよ? にーがーつーとーいーえーばー、なーんーでーしょーお?」

一方通行「聞こえてらァ、ったく、ンだよソレ」

八九寺「いやいや、あの、ほらっ! 日本人にとっては欠かせないイベントがあるじゃないですか! アレですよアレ! 記念日的な!」

一方通行「ン? ……あァそォいや11日は建国記念の日だったな」

八九寺「…………へ? そうなんですか?」

一方通行「あァ。実際そォなのかははっきりしてねェが、日本が正当な歴史書と認めた歴史書に、2月11日は初代天皇が天皇に即位した日、って記述されてるらしいな」

八九寺「へぇー」

一方通行「ま、制定しました廃止しましたやっぱ制定しましたとか、『建国記念日』じゃ駄目だ『建国記念の日』にしろとか、いろいろせわしなかった記念日だが、実際これと言った行事やるわけでもねェし忘れるのも無理ねェな」

八九寺「ふむふむ……勉強になります」


369バレンタインデーSS ◆pVT9AM1tJNOL2011/02/17(木) 08:07:16.35CWbrftHQo (2/3)

一方通行「ま、常識とは言わねェし、今年はもォ過ぎちまったけどよ、自分の国のことだ。建国記念の日くらい覚えててもいいンじゃねェか?」

八九寺「なるほど、ありがとうございましたっ!」

一方通行「ン、じゃァな」

八九寺「はい、それでは!」


























八九寺「って違うでしょダァァァァアアアアイブ!!!!」

一方通行「あ、バカ」

八九寺「反射っ!!??」

~おわり~


370路傍の石 ◆pVT9AM1tJNOL2011/02/17(木) 08:08:12.26CWbrftHQo (3/3)

いい女房は夫の3歩あとを歩くというように、いいSS書きはイベントの3日後にSSを投下するものです嘘です。
バレンタインに義理チョコのひとつでも貰えれば、うっひゃーと自慢代わりにいちゃいちゃSSでも書けたんですが、まぁ、その、察して。

と、いうわけで生存報告。毎度のごとく、SS自体ちょっと詰まってるのと、ほんと最近自分でも引くくらい忙しかったので書く時間が取れませんでしたのよと。
しかしまぁ、先を見ても、まだまだ忙しさがハッスルしてるようなので、合間を見つけてちょくちょく書いていきますので、忘れた頃に来ていただければ丁度いいかも。
まぁ、そんな忙しいぜ自慢でした。いやーマジ忙しいわー。マジでー。働き蟻の忙しさと張るわー。接戦して負けるわー。でも接戦だぜ接戦。いやーマジいs(ry


371VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/17(木) 10:04:41.33+xUhTx50o (1/1)

待ってる


372VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/19(土) 15:43:21.56QMwRkvCV0 (1/1)

一方通行さん、マジ一方通行
期待して待ってる


373VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/20(日) 02:19:34.06zrSedt2AO (1/1)

安心しました&頑張って!!


374VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/02/24(木) 22:57:48.86j8MGEKEV0 (1/1)

いつの間に来てたーーーーーー

頑張って!!!


375VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/03(木) 18:06:09.64tTRn4zoz0 (1/1)

幽霊も反射できるのか


376VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/09(水) 23:14:49.1873Swfox+0 (1/1)

芳川通行なんて俺得すぎ
つうか芳川通行少なすぎだろ

芳川通行って組み合わせメジャーだと思ってたけど
違うみたいだね


377VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/12(土) 05:44:42.72pBRgPR1AO (1/2)

作者さん無事か!?


378 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/12(土) 06:47:15.453aqUoWe2o (1/1)

ご心配ありがとうございます。
現住所は関西の中でもかなり揺れが少ない地域らしく、誰もが体感できる大きさの揺れはなく、また被害もありません。
和歌山の南西部に、もし連絡の取れないお知り合いが住まわれてる方おられたら、和歌山は大きな被害にあっていないので、沿岸部でなければひとまずは安心を。
沿岸部であれば念のため直接連絡を取ってください。

私は元気です。東北や関東、九州の被災地の方々が一人でも多く生き、そして一刻も早く日常を取り戻せることを心からお祈りしております。

(和歌山の被害情報を書いたため、一応ageました。)




379VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/12(土) 13:41:51.08pBRgPR1AO (2/2)

>>378
良かった!!
やはりあなたは素晴らしい人だ


380 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:03:42.262m+OQhQ50 (1/15)

どうも、書いてる人です。投下します。

でも、その前に。
>>378 の「九州」というのは、申し訳ありません。完全に誤りです。
今回の震災の被害を受けた、茨城県鹿島市の「鹿島」を「鹿児島」と見間違えてしまいました。
情報を確認しなかったことが原因です。もし混乱した方居られましたら、お詫び申し上げます。


では、ではでは、お待っておいたお方お待たせおいたしました!
少し見直した後、投下開始します。


381 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:06:10.862m+OQhQ50 (2/15)

 ちくちくはずぶずぶ。ぺたぺたはぬちゃぬちゃ。
 音のない擬音語を発するそれらは至近距離で観測するとたぶんそう変わるんじゃないか。
 なんて、

一方通行「……あァ、ちくしょう」

冥土帰し「どうしたんだい?」

 点滴を付け直されるのをぼーっと眺めながら、一方通行はぼーっと考える。

一方通行「……、締まンねェ」

 本当に、大事な気持ちに気づいた矢先、駆けるまでもなくズダンと転んで元戻り。

 いや、アホかと。

 思わず、自分で自分が嫌いになりそうだった。

 え、ん? ということは、一方通行は一方通行を元々好きだった?
 …………どォでもいィか。

 くだらない思考は頭を振って、どこかへ追いやることにした。

冥土帰し「……まあ、シャチホコだったしね?」

一方通行「だまれ」

 ……この、ふざけた事をふざけた調子で、ふざけた顔から言うカエル。
 驚くことに、一方通行を治してみせた変態的に天才的で名医なのだという。


382 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:07:24.072m+OQhQ50 (3/15)

一方通行「まったく、」

 はァ。ひとつ幸せにさようなら。

冥土帰し「どうしたのかな?」

 一方通行は針の刺さってない方の手をひらひらさせて、答える。

一方通行「いや、締まンねェなァ、ってよ」

 今まで、こーんな難病(?)を、たやすく治して見せる名医なんていうのは、空想の世界にしか居なかった。
 しかも、その誰もがおもたーい過去を背負っていて、なんかこう、『名医』というか、ヴェルタースオリジナルもとい『特別な存在』オーラを発しまくっていた。
 だから、一方通行の中で名医は妙に神格化フィルターがかかっていて、

一方通行「奇跡を起こす医者なンてェのはもっと仰々しい風貌してねェと『らしく』ねェだろ?」

 そう、一方通行の中にある『らしさ』を語ると、

冥土帰し「――まあ、僕は別にいいと思うんだけどね?」

 点滴の針を付け変え終わり、絶賛名医中の彼は、やんわりとそれを否定した。

一方通行「ン?」

冥土帰し「奇跡なんて出し惜しむもんじゃないさ。少しでも望む人がいるなら、二束三文でたたき売ってばらまいちゃえば、皆が皆、幸せになれるよね?」

一方通行「……ほォ」

冥土帰し「『らしく』して、出し惜しんで敬遠されて。それで誰かが死んだりしたらやりきれないからね? だから、うちで出せる奇跡は全部出すさ。それが患者――キミに必要なものなら全部、ね?」

 安っぽい、おもちゃ屋の前のガチャガチャに入ってるカエルのキャラクターのような顔の、奇跡の名医はそう言った。

一方通行「はっ……、なるほどなァ。殊勝なこって」


383 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:08:43.432m+OQhQ50 (4/15)

 ごもっとも。
 言いたい気持ちを口にはできず、一方通行が悪態をついてごまかしたとき、その視線の先でドアが開いた。

冥土帰し「お、もう来たのかな?」

 冥土帰しはくるっときびすを返して半回転。
 一方通行に背を向けて、冥土帰しは何か大きなものを持ってきた看護婦に応対する。
 上等なイスに車輪を添えたような形で、がらがらと小さな音を立てながら押されるように移動してきたそれは、もう、まさに、

一方通行「…………車椅子ゥ?」

 なんで、今そんなものを? ここに?
 ポカンとする一方通行。冥土帰しは看護婦に礼を言って、向き直る。

冥土帰し「ああ、車椅子だよ? ほら、必要なんじゃないかなと思ってね?」

 確かに、車椅子は必要、かもしれない。
 先ほどベッドから地面にダイナミックキスをかましたのは。なぜだかわからないが、能力の停止と同時に運動能力がよっぽど低下しているからだろう。



384 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:12:55.452m+OQhQ50 (5/15)

冥土帰し「……んー、あれ? 必要じゃなかったかい?」

 どうにもリアクションのない一方通行に、冥土帰しは珍しく正しい疑問系。

一方通行「……いや、まァ、助かるには助かるが……」

 ……でも、どうして『あると助かる』ということを知っているのか。
 面倒なことを考え始めて、一方通行はまたまた一時停止。
 冥土帰しはそんな一方通行を眺めて、

冥土帰し「――あぁ、なるほど、僕がきみにこれを渡す『理由』みたいなのが欲しいのかな? そんなの僕が医者だから。の一言で足りるんだけど……まあ時間が押してるわけでもないし、ちょっと説明してあげるね?」

一方通行「え、あ、あァ」

 条件反射的な声を肯定と解釈して、一方通行の疑問に答えるべく、冥土帰しはごほん。咳払いひとつ。

冥土帰し「ん、えっと、まずきみは脳細胞が、文字通り細胞レベルで切り離された状態で運ばれてきた。それを単純な外科的な手作業で繋ぐのは、当たり前だけど不可能だね?」

 外科技術。針と糸、そしてメス。そこまで単純で分かりやすいなもの以外も含む、そういうもの。
 冥土帰しは名医で、百数カ所の神経束の縫合を経験したことだってある。
 もちろん縫合の多さ=手術の難しさとはなり得ないが、それくらい難しい、そして繊細で集中力を要す作業に耐えることもできる。

 それでも、脳、とりわけ細胞レベルになると手をつけられない。

 集中力が持つとか持たないとか、手先が狂うとか、そんな話ではない。
 必要な結合箇所数はその桁を二、三増やすし、大きさだって、ひとつかふたつ下の接頭辞を使わなけりゃダメになる。
 物理的に、不可能なのだ。

冥土帰し「だから、君の細胞から作った、ちょっと特殊な液体で頭蓋を満たした。簡単にいうと、電気信号に反応して信号の伝送路を形成するようなものかな?」

 細胞から作った液体。
 クローン技術の応用だろうか、一方通行は考えた。

一方通行(つーか芳川のヤツ、そういうことはなンも話さねェのな)

冥土帰し「まあ、死んでる回路に電流が流れるなんて、まずあり得ない現象だけど、幸いと言うべきか、患者はきみだったからね? きみが意図していたのかしていなかったのかはわからないけど、さ?」

 そう言って、冥土帰しは意味ありげに、一方通行を見た。


385 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:13:53.892m+OQhQ50 (6/15)

一方通行「……ンだよ」

冥土帰し「ああ、いや、なんでもないよ? 自分の脳を細胞単位で分裂させたところに自動制御を設定して脳の働きの大半を維持させることができるほどの演算力を使ったただの『自殺もどき』が結局その能力に助けられる形で失敗なんて、いやもうほんとアレだよなぁなんて、ほんとに思ってないよ?」

一方通行「……………………ンだよ」

冥土帰し「いやいや、ほんと、ほんとなんでもないんだよ? 今のはひとつの予測でしかなくてさ、僕はきみがなんであんなことになったのかなんて、ほんとは皆目見当も付かないし、あんなことになったきみが何を望んでいたかなんて、それこそ知る由もないしね? ほんとだよ?」

 うっとうしいくらいの疑問符付きで、一方通行を見ながらん? ん?
 そんなカエルに、一方通行は、


 ……ずーん、と。


 それくらいは分かりやすく、とにかく盛大に、凹んだ。

一方通行(……たしかに、結果論にすぎねェが、八九寺の影響は残ったまま……これなら別にこンな大がかりなことしねェで直談判でもやりゃ、実験終わらすも妹達の安全保障するもできた……よなァ……)

 凹んで垂れた頭はだんだんと、鬱々した思考に入って……あれ?
 もしかして、もしかすると?


386 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:15:02.202m+OQhQ50 (7/15)

 ――俺がやってきたことって無駄なことだらけじゃねェか?


 例えば、樹刑図の設計者を壊したこと。
 もしも生きて直談判していたなら、こっちには『一方通行』という、研究価値と武力の両方で、めちゃくちゃに強い交渉カードがあるのだ。
 応じないということは考えにくいし、応じないのならそれこそ武力で応じさせることもできる。
 ようするに、アレを壊す必要なんて、なかったのだ。

 仮に、金という物差しで無駄を測るのなら、

『樹刑図の設計者+それによって生まれる研究のの価値+医療関係費』

 何億、いや、兆、もしかするとそれ以上、か。
 少なくともそれなりの国の国家予算に匹敵する損害。

 くはは、我ながらむちゃくちゃやったものだ。

 なんて、一方通行の思考が逃げ始めたところで、冥土帰しが話しかけた。



387 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:16:06.572m+OQhQ50 (8/15)

冥土帰し「……まぁ、何があったのか、それはほんとに知らないよ? その上で言うけどね? 自分を犠牲にしてまで成し遂げたいほどの大志だっていうなら、僕はそれこそ、生きるべきだと思うけどね?」

 僕の個人的な感想のようなものだから、気にしなくて良いけどさ。
 そう締めくくって、冥土帰しは、すぐに話を切り替えた。

冥土帰し「で、なんだったっけ? あぁ、まだ説明の途中だったね?」

 そんな、なんだか名医らしい冥土帰しを見た一方通行は、ぼそりと、


一方通行「……お節介野郎」


冥土帰し「ん? なんだい?」

一方通行「なンでもねェっつゥの。続けろ」

冥土帰し「……そう? じゃあ続けるよ?」



388 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:17:20.552m+OQhQ50 (9/15)

冥土帰し「うん……っと? 確かきみの頭にいろいろそそぎ込んだってところまで言ったかな?」

一方通行「その言い方はなンか気に食わねェが、まァそォだよ」

冥土帰し「ん、まあ、そこまで話しちゃったら後説明する事なんてないんだけどね? 今、たぶんきみはまだ治りきってはず。その自覚はあるかな?」

 自覚症状、能力が使えないことと、もう一つ。
 一方通行は少し黙ってから、

一方通行「…………能力が使えねェ。あと………………コケた」

 簡潔に、要点だけに絞った。
 理由は単純に、『恥ずかしい』から。

 だから、言い終わって、一方通行は目を反らす。

冥土帰し「なるほどなるほど……」

 そんな一方通行の返答に、顎に手を当て少し考える冥土帰し。
 数秒考えを巡らせてから顔を上げ、

冥土帰し「ただの能力使えないモヤシになってシャチホコした。ってことでいいね?」

一方通行「っ、オマ、このッ!!」

 白い肌に朱がかかる一方通行、それを無視して冥土帰しは続ける。

冥土帰し「あ、シャチホコのモヤシあんかけっておいしそうじゃないかな?」

一方通行「知らねェよ!! オマエ説明する気あンのか!!」

冥土帰し「いや、目の前に穴があって、手元には棒があるとするとさ? ほら、突っ込まずにはいられない男心ってものがあるじゃない?」

一方通行「わっかりにくい下ネタで返してくるンじゃねェっつゥの!! 一瞬上がったオマエの株が5分もしねェうちにだだ下がりだ!!」

冥土帰し「ん? わかりにくかったかなぁ? じゃァ試しに突っ込」

一方通行「っ!?」

 身の、とくに、骨盤周辺に危険を感じ、ずざざと後退。
 点滴の針が引っ張られる痛みなんて、気にしなかった。

冥土帰し「…………冗談だよ? そこまで露骨に避けられると流石に傷つくんだけどね?」



389 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:18:01.282m+OQhQ50 (10/15)

一方通行「……続けろ」

冥土帰し「そんなシーツひっつかんで、襲われる直前の婦女子みたいな格好しなくても、別に僕にその気はないよ?」

一方通行「…………」

冥土帰し「……あぁ、はぁ、うん。じゃあこれで良いかな?」

 冥土帰しはため息を吐きながら車椅子をベッドに横付けし、自分は病室のドア付近まで離れる。

一方通行「…………」

 一方通行はそれを見て、おずおずと車椅子に近寄る。
 そこで、また冥土帰しの方を見て、車椅子を見て、冥土帰しの方を見て、車椅子の方を見て。

 チラ、チラ、チラチラ、チラチラチラチラ。

冥土帰し(……なんというか、親元離れた子猫みたいだね?)

 冥土帰しは、困ったような顔をして、

冥土帰し「あー、別にさ、何か仕込んでたりはしないよ? なんなら一回僕が座って見せた方がいいかな?」

 対して、突然話しかけられた一方通行は、ビクッと、それこそ子猫のように肩で驚き、しばらく冥土帰しの方を見た。

一方通行「…………いや、かまわねェ」

 そう言って、ずるずるとベッドの上を移動した一方通行は、半ば這うように車椅子に座った。



390 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:18:48.912m+OQhQ50 (11/15)

一方通行「っ、ふゥ……」

冥土帰し「うん、どうだい? 座り心地は?」

一方通行「ン、あァ、悪かねェ」

冥土帰し「それは、よかったね? じゃあ、もうさっさと話の続きしちゃっていいかな? さっきから話の腰がボキボキなんだけどね?」

一方通行「そりゃァ、オマエが発端じゃねェかよ」

冥土帰し「いやいや、悪事の発端だけを攻めるのはお門違いだよ? あれはきみの過剰反応だって原因の一つだよね?」

一方通行「…………、あァあァはいはいそォですよォ! もォいいから話してくれってのメンドクセェ!!」

 半ば、というか八分切れ気味で言った一方通行。
 向きの関係で、冥土帰しからは後頭部しか見えないが、まぁ、うん、家に居座りかけのノラ猫くらいには成長しただろうか。

冥土帰し「んー、じゃあ、ま、ささっと説明終わらそうか。いい加減、説明パート長いしね?」

一方通行「あ? 説明パート?」

冥土帰し「ん? いや、なんでもないよ?」



391 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:19:47.202m+OQhQ50 (12/15)

 冥土帰しは一方通行の乗った車椅子反転させ、その正面の、手近ないすに座った。

冥土帰し「よいしょっ、と」

一方通行「おやじくせェなァ」

冥土帰し「オヤジなんて年齢じゃないんだし仕方ないだろう? まあ、それじゃここまでのことをふまえて説明していこうかな?」

 そう言って、冥土帰しは、少しだけまじめな顔に。

冥土帰し「まず、きみの状況を一言で表すと、『治りかけ』ってことになるね?」

一方通行「……くっつきかけ、ってことか?」

 一方通行の頭に浮かんだのは、ほつれたたこ糸。
 ほつれてちぎれかけて、どうにか1本だけ繋がったたこ糸が、一方通行の、今の神経、なのかもしれない。
 情報、すなわち電子を受け渡しするには、確かに効率が悪そうだ。
 まあ、冥土帰しの話通りならばここからビデオを逆再生するごとく、治っていくのだろう。

冥土帰し「大きい目線で見ると間違いでは、ないかな? 手術後いくつか検査を行ったけれどまだ本調子ではないはずだからね? 完全に元の調子に戻るには……そうだね、2、3週間は見てもらいたいかな? まあ、無段階的に治っていくからその間ずっと車椅子ってことはないだろうけどね?」

一方通行「……ン、なるほどな」

 ベクトル操作を使えないのは、現状すでに能力の限界まで使ってるから。
『無段階的に回復する』
 これからそうであるように、きっとこれまでもそうだったのだろう。
 その結果、『能力での補助を含めれば脳すべての機能がほぼ成り立つ』ところまで回復したから、起きた。目覚めた。
 なんとも、せわしのない脳だ。
 もうちょっと休ませてくれればよかったのではないか。



392 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:21:23.202m+OQhQ50 (13/15)

 でも、そんな状況だからこそ、冥土帰しの気遣いが、一方通行は素直に、うれしかった。

一方通行「運動能力すら本調子じゃねェの考慮して、車椅子、か。……なンつゥか、大騒ぎすぎな気がしないでもねェし、杖くらいありゃ移動できるレベルだと思うけどよ、まァ……、ったく、バカだなァ」

 素直な気持ちは、素直に表へ出てくれない。
 どうしてもちょっとひねくれてしまう感謝の言葉は、伝わったか、心配。
 少しだけ緊張を覚えながら待った、冥土帰しの返答は、










冥土帰し「…………え?」

 感謝以前に何も伝わっていなかった。


393 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:24:51.332m+OQhQ50 (14/15)

一方通行「な、なにが『え?』だよ」

 ちょっと詰まった。

冥土帰し「え? いや、だって、ぜんぜん違うよ?」

一方通行「違うゥ?」

 どうも、なにか食い違ってるらしい。

冥土帰し「僕がきみにコレを用意したのは、『運動神経が不十分だから』とか、そういう理由なんかじゃないよ? きみが起きる前に行った検査結果を見る限り、一般の人間が通常行う脳の機能はすべて復活してたはずだしね?」

 間違っていたのは、一方通行の推理であった。
 いや、でも。一方通行にだって推理に足る理由はある。

一方通行「……じゃァよ、俺がすっころンだのはどういうことだよ」

冥土帰し「それは、単にバランスを崩しただけじゃないのかな? きみはそれほど長くなかったけど、意識を失っている期間が長いとそういうこともあるよ?」

一方通行「いや、『慣れ』の問題じゃない、はずだ。感覚も変わってるって言われりゃ確かにそォかもしンねェが、こりゃどォ考えたって違ェンだよ」

冥土帰し「違う?」

一方通行「あァ、今こォして腕を上げるのだって、前と比較して感覚が違いすぎる。もちろン、意識がなかった期間の筋力低下は考慮してる。それでも、ずれが大きすぎる。重りでも付けてるみてェだ」

 腕を一度あげて、ぱたりと落とす。
 重々しそうに動く細腕を見て、冥土帰しは、考えた。

冥土帰し「ん、ん……。おかしいね? 流れる脳内電流の値は、通常流れるべき値とほぼ一致したはずだよ? それでも、重り、か……、重り……?」

 神妙な顔で首をひねっていた名医は、急に破顔し、手を打った。

冥土帰し「――ああ、なるほどね?」


394 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/17(木) 14:25:55.242m+OQhQ50 (15/15)

と、今回はここまで。
こちらも毎度のごとく、少なくてね、ほんと申し訳ないです。いや、ほんとほんと。
本家本元、禁書目録の方は新約が始まって、また新たなキャラクタが追加されたりで、盛り上がりはなかなか衰えそうにないですね。
というか筆速すぎ。

他のSSを読んだりすると、ここだけなんだか『よそはよそうちはうち』みたいなペースでアレですな。
まぁ、というわけで投下作業中に大好きなSSに更新来てるの見つけちゃったりしたので読んじゃいたいと思います!
ではまた、近いうちにお会いできたらいいな! なんて。



しかし、能力の使えない一方さんは……おいしいなぁ。突っ込みt


395VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/17(木) 14:27:12.74B33iFFzIo (1/1)

なんというか……色々とヘンタイだ……
しかし、このまったりした感じもこのSSに合ってると思っていたり。
乙です


396VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/03/17(木) 14:34:07.70qpoUHbmu0 (1/1)

oh……来てたんだぜ
しかし一方カエルか……悪くない?←どっちだ


397VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)2011/03/17(木) 15:27:00.58P0MJB8ZAO (1/1)

まさか……蟹か……?

とにかく乙
一方通行カワユス


398VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/03/17(木) 16:37:35.91SwJEt/Yyo (1/1)

おお おかえり。相変わらず独特の雰囲気がいいね。
次回投下を待ってるよ


399VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)2011/03/17(木) 16:50:34.07h82lJHXAO (1/1)

蟹さん来ちゃったーー!?
って事は一通さんがツンドラ化してカエルが助けてラブラブニャンニャンしてるうちにツンドロに進化してバカップル万歳になったりするのか!!


400VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/03/17(木) 19:32:38.12sYbNBD3R0 (1/1)

いままでずっと待ってました!!!

これからも応援していきますよーーー。


401VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/17(木) 23:04:04.92P+1MOiJAO (1/2)

乙!
なんかこの冥土帰しちょっと忍野っぽいな


402VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/17(木) 23:05:07.08P+1MOiJAO (2/2)

乙!
なんかこの冥土帰しちょっと忍野っぽいな


403VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)2011/03/24(木) 23:52:00.19e1hqFT8AO (1/1)

冥土帰し「そういうわけで公園のトイレにやってきたんだけどね?」


404VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/25(金) 19:20:18.38fSU3hARFo (1/1)

一方通行「や ら な い か」


405VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/25(金) 22:13:48.76t/3F2leDO (1/1)

一方通行「こっから先は一方通行だァ…ノンケだって構わず喰っちまうぜェ?」


406VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(和歌山県)2011/03/30(水) 04:17:40.77hKg/HA4so (1/16)

冥土帰し「よっと」ポロン

一方通行「ンな!? オ、オマエ!! なンてもン出しやがンだ!!」

冥土帰し「んー? 『僕の冥土帰しで天国に連れていってあげるよ?』ってところかな?」

一方通行「その名前、そォいう意味じゃねェって!?」ガシッ

冥土帰し「いいからいいから、さあ力を抜いてね?」

一方通行「なっ、やっ」

冥土帰し「……んっ」ズブッ

一方通行「っ……ぐゥあっ」

冥土帰し「んん、さすがに、キツいね? まぁいいかな? 動くよ?」ズズッ

一方通行「な、や、止めっ、うァっ!!」

冥土帰し「ふっ、は、まるで、食いちぎりそうな、締め付けだね? 恨みでも、あるのかな?」パンパン

一方通行「オ、マァっ! 覚えっ、て、ンァっ!」パンパン

冥土帰し「喋れる、状態じゃ、ないようだね? 」パンパン

一方通行「くゥっ、ン、あっ、うゥっ、あァっ!」パンパン

冥土帰し「おや、ここが、いいのかな?」パンパン

一方通行「ち、ちが、ァっ!」パンパン

冥土帰し「じゃあ、僕も、長くもちそうに、ないからね? おもいっきり、突くよ?」パン

一方通行「な!?」ピタッ

冥土帰し「行くよ? ……、それっ」

一方通行「っひぎィっ!」ズンッ!

冥土帰し「はは、良い反応だよ?」ズンッズンッ

一方通行「あっ、ンっ、うァ、あァっ!」ズンッズンッ

冥土帰し「いい声で、鳴いてくれるおかげで、僕も、気持ちよく、なれそうだよ?」ズンッズンッ

一方通行「あっ、ま、まさか!? ァン!」ズンッズンッ

冥土帰し「ああ、その、『まさか』、だよ?」ズンッズンッ

一方通行「ンっ! あっ! あァ! だ、ダメっ!」ズンッズンッ

冥土帰し「かわいいこと、言うじゃないか? おかげで、もう、出るよっ!?」ズンッズッ

一方通行「ン、ァァァァああああ!!」ドピュッ!! ドピュッ!!


407 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:18:32.61hKg/HA4so (2/16)

            ∩_ 
           〈〈〈 ヽ
          〈⊃  }
   ∩___∩  |   |
   | ノ      ヽ !   !
  /  ●   ● |  /
  |    ( _●_)  ミ/ こいつ最高にアホ
 彡、   |∪|  /
/ __  ヽノ /
(___)   /





どうも、まいど、書いてる人です。
例のごとく不定期でゲリラ的深夜投下ですが、参りたいと思います。
では、すこし見直したら、投下します。


408 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:22:39.20hKg/HA4so (3/16)

>>393

一方通行「なるほど? どォいうことだ」

冥土帰し「いや、まあ確証――つまり、詳細な検査による数字がないからね? 『絶対』とは言えないはずなんだけど、僕としては、まあ、『絶対』を使ってもいいかな? って思える程度には、当たりじゃないかな? って思えるんだね?」

 変な笑顔で、回りくどい言い草をする冥土帰し。
 一方通行は少し、イラ。

一方通行「そォかいそォかい。で、結局なンなンだよ『それ』は」

冥土帰し「ああ、うん、えっとさ」

 言いながら、冥土帰しは立ち上がった。

一方通行「?」

 そのまま、疑問符を浮かべる一方通行に、ずんずん近づいて、

 ――がしっ。

 音はしないが、そういう感触が、一方通行の手首から脳へ。

一方通行「ンなッ!?」

冥土帰し「んー……やっぱり、細いね? うん、『細すぎる』。そこらへんの婦女子にも、腕相撲で負けるんじゃないかな?」

 そう言って、冥土帰しは掴んだ手首を離した。


409 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:23:30.11hKg/HA4so (4/16)

一方通行「何するかと思えば……ンだよ、悪ィか」

 若干ふてくされたように言う一方通行に、

冥土帰し「悪い? んー、そうだね? 健康を重んじる医者の身としては、そりゃあ、悪いと言わざるを得ないかな?」

一方通行「あァ?」

冥土帰し「だってさ、それがきみの違和感の元凶だからね?」

 一方通行は眉間に皺を寄せた。

一方通行「……ンだよそりゃ。オマエ、俺の話聞いてたか? 俺は筋力の低下、感覚の違和感は考慮した上で言ってンだぞ?」

冥土帰し「ああ、『そんなこと』僕だって考慮の上だね?」

 冥土帰しの物言いが、なんとなく癇に障って、一方通行は語気を荒げた。

一方通行「ンじゃァなンだって――」

 だが、冥土帰しはそんな一方通行の言葉に被せて、

冥土帰し「――きみの言う『考慮』ってのは、重要な要素を欠いてるんだよね? それこそ、『一方通行』を語るのなら絶対に欠かせない、最重要部分を」


410 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:24:29.19hKg/HA4so (5/16)

一方通行「最重要部分……だと?」

 眉間の皺が、深くなる。

冥土帰し「そう。きみのアイデンティティとか、そういう感じに言い換えても、問題ないかもね?」

 ひょうひょうと、軽い調子で冥土帰しは言葉を紡ぐ。
 いい加減、イライラ、イライラ。

一方通行「……まどろっこしィンだよさっさと言え」

 睨むようで脅すような一方通行の視線と声に、冥土帰しは涼しい顔を返して見せて、

冥土帰し「最重要部分っていうのは、『超能力』だね?」

 涼しいまま、そう言ってのけた。


411 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:26:08.03hKg/HA4so (6/16)

一方通行「超能力って……ンなもン今使えねェンだから考慮もクソもねェだろが」

 不思議そうに、一方通行がそう言うと、冥土帰しは頭を振った。

冥土帰し「いや、いやいや? キミの場合、そもそもがオカシイんだよ?」

一方通行「あ? なにが、オカシインだよ」

 冥土帰しは、指を立て、一方通行をビシッ。

冥土帰し「その体は、思春期の体じゃありえないね?」

 言われて、一方通行は手のひらを太陽に。
 透かしてみたら、真っ赤に流れる血潮が見えた。

 ――絶対色素足りてない。

 まぁ、たしかに不健康極まりないナリかもしれないが。

一方通行「ちっ、これは……アレだ。物心付く前から能力で有害光線の類反射してっから、アルビノじゃねェけど後天性の色素欠乏症……って、ンなこと分かンだろ?」

 そう答えると、冥土帰しは首を横にふるふる。

冥土帰し「いやいや、そういうのじゃないんだよ?」

一方通行「あン?」


412 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:27:40.51hKg/HA4so (7/16)

冥土帰し「きみの体は、さっきも言ったけど『細すぎる』んだね?」

一方通行「……それこそ今関係ねェだろォが」

 コイツは、何を言い出すのだろう?

一方通行「たしかに俺は細ェ。だがよ、別に俺は能力乱用して無重力で動いてたわけじゃねェぞ? 普通……とは言えねェが、生活はできてたンだ」

 当たり前の事を説いて、要約すると、『オマエアホ?』。

 そんな言葉を耳にしても、いや、耳にしたからこそ冥土帰しの表情は得意げに。

冥土帰し「ははは、ああ、それが、きみの信じるその『一方通行』が、『そうじゃない』としたら、どうかな?」

 それ、つまり一方通行の今までの営み。
 そして、『それ』が『そうじゃない』?

一方通行「オマエ、何が言いてェ」



冥土帰し「言葉の通りだよ? 『一方通行』は『能力なし』では『動けない』ってことだね?」



413 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:29:37.24hKg/HA4so (8/16)

一方通行「…………はァ?」

 一方通行は思う。というか強制的に思わされた。思わざるを得なかった。

 ――話聞いてた?

一方通行「オマエ、今の聞いてたろ? 俺は有害物・光線の反射以外オートで能力使っちゃいねェンだよ。ちょっと動くのにいちいち能力使うわけがねェ」

 それでも、冥土帰しには届かない。


冥土帰し「うん? だからさ? それはきみがそう『思い込んでる』だけだね?」


 おー、ごーまいうぇい。横槍食らえど我が道をズレず。
 この医者勝手に人を妄想患者にしたてやがった。

一方通行「……ンじゃあオマエは、俺が自分の体を操ってた、とでも言いてェのか?」

 自分で言って、あれ、笑いそう。

 はたして、それは、どれだけ滑稽な姿だろう?
 一方通行の脳裏に描かれた姿は、『あやつり人形』。
 自分で自分を操って、最後にすっ転んだ、起き上がれない、マリオネット。
 ようやくピクリ、動いて、また転んで、生まれたての子鹿。

 くはは、と、一方通行は自嘲。
 そんなのは、馬鹿だ。

冥土帰し「そうだねぇ? 半分、肯定しておこうかな?」

 ……半馬鹿だったらしい。


414 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:30:53.31hKg/HA4so (9/16)

一方通行「半分って……、俺が半分自分を操ってる。そォ言いてェのか?」

冥土帰し「ん、正確にはわからないけど、まあ半分よりは少ない割合だとは思うよ? 運動の補助のような形で使ってたんじゃないかな?」

 正直、呆れた。

一方通行「だァかァらァ! 俺は自分の体を操るような能力の使い方なンざ設定してねェし、そもそも使ったこともねェよ!!」

 軽く、声が荒げる。

 いい加減、鬱陶しくなってきたこのカエル。
 もうそろそろ忘れそうになってきたが、一方通行は八九寺を探さねばならないのだ。
 そのために、ベッドを飛び出して、ダイブして、今車椅子に座っている。

 この足、もとい車輪で外へ出て、八九寺を探す。
 見つけられれば忍野にももう一度礼くらい言おう。
 研究所の方も、気になるし、見るべき?
 ともかく、一方通行はやることがたくさんなのだ。
 なのに、

冥土帰し「だからさ、それは『そうじゃない』んだって、さっき言ったよね?」

 ――このカエルは、曲がらない。


415 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:32:09.11hKg/HA4so (10/16)

一方通行「……っ」

冥土帰し「納得行かない、って顔だね?」

 そりゃそうだ。
 一方通行ほど『一方通行』に多く触れ、多く知ったものは居まい。
 でも、

一方通行「理由は、なンだ?」

 相手は、その『一方通行』が作った障害を突破した者だ。
 だから、こうして聞くのは一応の敬意。

冥土帰し「ん、まあ精密に検査してみれば分かるんだろうけど」

 そんな敬意に答えるよう、第一位の片鱗を超えた名医は、例のごとく唐突に、


冥土帰し「きみ、今目はちゃんと見えてるかな?」


一方通行「……目ェ?」


416 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:34:50.10hKg/HA4so (11/16)

冥土帰し「そう、目だね? いつもより眩しい、とか、視界が霞む、とか」

 言ってる意味、というより意図は掴めないが、患者で有る身は答えるしかない。

一方通行「なンだかよくわかんねェが……ン、ンなことはねェな。視界良好だ」

 半信半疑、というか、信じるか否かの情報すら与えられず疑問符を頭に浮かべたまま、一方通行は答えた。

冥土帰し「なるほどね?」

 聞いて、そしてうなづいた冥土帰し。
 表情はかけらも変わらない。

 神妙な表情のまま、1、2……

冥土帰し「……あ、答えはなんでも良かったんだけどね?」


一方通行「は?」


冥土帰し「まあ見えてるなら、うん、それはいいことだね? きみの脳、そして能力は優秀だよ?」

 表情崩してなにを言い出す?

一方通行「……いや、いやいや、視力が良いのはそりゃいいことだがよ、オマエは何がやりたかったんだよ」


417 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:35:23.62hKg/HA4so (12/16)

 つくづく、人を馬鹿にし続ける冥土帰し。
 すでに一方通行の中に怒りはなく、ほとほと呆れたという様子。

冥土帰し「ああ、今のはね? きみの意識を『目』にやってもらうための、暗示みたいなものかな?」

一方通行「暗示?」

 暗示を明示したらそれは暗示なのだろうか?
 小さな疑問は生まれたものの、一方通行は口をはさむことをしなかった。

冥土帰し「そう、きみが身体能力を補助するように能力を使っていた、というのを納得させるには? そりゃ、否が応でも認めざるを得ない『証拠』をつきつけるのが手っ取り早いね? で、その確固たる『証拠』っていうのが、都合よく、きみの『目』にあるんだよ?」

一方通行「……冗談、じゃねェよな」

 一方通行は目に意識を再集中。
 …………オーケェ、違和感なし、まるでわからねェ。

冥土帰し「うん? もちろん冗談なんかじゃないよ?」

 冥土帰しは、自分の目の下を指でトントン。

冥土帰し「ほら、僕ら日本人だと、普通目は黒いよね? 外国の方だと、青とか、緑とか、宝石みたいな色もあるけどね?」

一方通行「ンなの、当たり前だろ」

冥土帰し「そう、当たり前だね? じゃあ、どうして、きみの目は『赤い』のかな?」


418 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:37:50.03hKg/HA4so (13/16)

一方通行「どォしてって、ンなの色素がねェからに決まってンだろ? 眼球に流れてる血液の色がまンま透過すンだよ」

 色素がないから、色白で、血管が透ける。
 それは手のひらに限った話でなく、むしろ、目のほうが顕著なのであった。

冥土帰し「その通りだね? 特にきみの場合、能力が色素の働きを完全に奪っちゃってるから、普通の、というのもオカシイけど、アルビノ患者よりもよっぽど綺麗に色が抜けちゃってるね?」

 もう、色素『欠乏』症というより色素『喪失』症だと、付け加えて、

冥土帰し「で、きみは、きみに備わっていない、きみの能力がその代わりを務める『色素』ってやつの役割を知ってるかな?」

 一方通行が一瞬考えて、浮かんだのは紫外線から体を守る『はず』のアレ。

一方通行「色素、メラニンのことか?」

 でも、冥土帰しは首を振る。

冥土帰し「いやいや、目にある色素のことだよ? 虹彩、網膜色素上皮とか、脈網膜なんかにある色素」

 網膜色素上皮、脈網膜、虹彩。

 頭の中で再探索、開始。
 色素、色素色素…………。
 …………。
 ない。

一方通行「…………」


冥土帰し「どうも、はは、その様子だと……知らないようだね?」


419 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:38:25.12hKg/HA4so (14/16)

一方通行「……悪かったな」

冥土帰し「いやいや、悪くは――いや、悪いかな? うん、無知は罪というものだしね?」

一方通行「…………」

冥土帰し「まぁいいね? 今知ることが、きみの『贖罪』だ」

 たぶん、なんでもない『贖罪』の言葉に、一方通行の心はズキリ。
 ズキリと痛んだそのことが、すでに『贖罪』を始めている証拠であるとは気づかずに、冥土帰しの言葉に耳を傾ける。

冥土帰し「さて、細かく説明はしないけどね? 目の色素は、当然のことだけど視力に大きく関係するんだね? 色素がないから、光の量が調整できない、となると、受光部分も正常な成長ができない、そういうことだね?」

 ――初耳。
 一方通行は、頭がいい。ただしそれは、演算力や記憶力が非常に高いという『だけ』だ。
 北欧神話のオーディン、ギリシア神話のゼウスのように『全知』、つまり世界のすべてを『知っている』わけじゃない。
 だから、一方通行は自分の、アルビノに対して、世間一般に毛が生えた程度の知識しか、持っていない。
 なぜなら、知る『必要がなかった』から。
 ――どうやら、オートの反射が色素の代わりを果たしているようだ。
 これだけ分かれば十分だった。



420 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:39:20.99hKg/HA4so (15/16)

 でも、ほんとは知るべきだったのだ。その先を。

一方通行「……ンじゃァ、俺が『正常に』見えてるってのは」

冥土帰し「物分りがいいね? そう、おかしいことなんだよ『光』を操作でもしない限りは、ね?」

 どうやら、一方通行の『能力』は、ずいぶんと早いうちに、自立してたようだ。
 なくなる色素に合わせて、光を操作し今でも一方通行は両眼2.0。
 ちくしょう能力バンザイ。

一方通行「能力の補助受けて、生活してた証明ってのはそォいうことかよ」

冥土帰し「そうだよ? ま、体が細いって時点で能力にある程度頼った生活してることは分かったけどね? 視力の件は確証ってところかな?」

 なるほど理解。でも、

一方通行「今、俺は能力は使えねェはずだろ? 視力の矯正は能力じゃねェのか?」

冥土帰し「ああ、そうだね? だけど、能力が使えないのは、あくまで『活動するのに必須』な部分へ能力を割り振っているからだよね?」

 先の説明の通り。能力は脳の機能維持に大きくそのリソースを割いている。

冥土帰し「そこで、まあコレも憶測だけど、視力の矯正も含めた『電磁波の操作』っていうのはアルビノのきみにとって必須なことだと、脳が判断したんだと思うよ?」


421 ◆pVT9AM1tJNOL2011/03/30(水) 04:46:45.20hKg/HA4so (16/16)

あまりキリはよくないですが、今回はここまで。
一応、ながーい説明パート(by 冥土帰し)も一段落です。

『電磁波の操作』は、アルビノである一方さんは、原作で言うところのスイッチOFFの状態でも、おそらく電磁波の操作は可能なんだろう、と、このSSでは考えてます。

あと、投下した後気づいたミス。
虹彩とかに含まれる色素ですが、メラニンです。
なので、

>冥土帰し「いやいや、目にある色素のことだよ? 虹彩、網膜色素上皮とか、脈網膜なんかにある色素」

>冥土帰し「いやそうだけど、メラニンが『目』、つまり虹彩、網膜色素上皮とか、脈網膜なんかでする仕事は知ってる?」
とか、そんな感じで脳内変換お願いします。

まあ、私の冥土帰しさんが語ることは、あやふやな知識が元になっていることが多いので、あまり信じないであげてください。


422VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/30(水) 05:50:18.83efI6YR7AO (1/4)




423VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/30(水) 05:51:14.57efI6YR7AO (2/4)

タコ


424VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/30(水) 05:54:52.86efI6YR7AO (3/4)




425VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)2011/03/30(水) 06:00:37.72efI6YR7AO (4/4)




426VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/03/30(水) 06:23:04.88lJXX0W21o (1/1)




427VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/30(水) 08:11:30.79a7/BwuPDO (1/1)




428VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)2011/03/30(水) 09:06:30.40jhl7H6lAO (1/1)




429VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/30(水) 10:06:03.30UTv/3SvIo (1/2)



話が難し過ぎてアレだったから次回の初めあたりに産業でまとめて欲しい


430VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/30(水) 11:01:01.666Vz0oZpIO (1/1)

つーかくどい


431VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)2011/03/30(水) 11:42:56.14e0LDqb8g0 (1/1)

くどいような書き方はいつも通りだろ
それが好きなんだけどな


432VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/30(水) 12:23:13.92WGUnHJK6o (1/1)

とりあえず一レスめで何が起きたのかが理解出来ない



433VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/30(水) 12:30:08.511QaztlYyo (1/1)


フーディンのポケモン図鑑思い出したわ

ポケットモンスタールビー
のうが どんどん おおきくなったので くびでは ささえきれないほど あたまが おもくなった。ちょうのうりょくで あたまを ささえているのだ。

ポケットモンスターエメラルド
つよい ちょうのうりょくと たかい ちのうを もっているが きんりょくは とても よわい。ちょうのうりょくで からだを うごかしている。



434VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/30(水) 13:51:50.254KXFu+yi0 (1/1)

>>433
一方通行が自分をフーディンだと言ってたSSがあるな


435VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/30(水) 14:13:51.01E5ACXAvto (1/1)

麦のんラブな一方通行のSSだな


436VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/30(水) 20:38:45.86UTv/3SvIo (2/2)

>>434-435
今すぐ教えろ下さい


437VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/03/30(水) 21:58:35.36zx3sfc5fo (1/1)

…どうなるんだろこれ。続き楽しみにしてます
乙!


438VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/30(水) 22:10:26.33f3pB1i4Ho (1/1)

流石和歌山最高にアホ乙


439VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/03/31(木) 11:10:27.24MTej7Fcf0 (1/1)

>>436
一方通行(今更年上好きなンて言えねェよなァ・・・・)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1278241381/


440VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/04/30(土) 19:09:59.90UzIOggeGo (1/1)

一ヶ月経ってしまったか・・・


441VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/05/02(月) 21:37:44.467t4EQqrb0 (1/1)

このスレ立ったのって一年ぐらい前なんだな。


442VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)2011/05/03(火) 23:43:10.115uTb5XnAO (1/1)

何気にこのスレが今追ってるなかで一番のお気に入り

作者にはゆっくりでもいいから上手く完結まで持っていってほしい


443VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)2011/05/31(火) 00:41:47.00fqe1cx4t0 (1/1)

待ってます


444VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)2011/06/08(水) 20:14:54.67D53cyAMx0 (1/1)

待ってるぜー


445VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州)2011/06/13(月) 23:51:17.84i2+J5kBAO (1/1)

保守&MISAKA
いーまかーらイチっいーをっ
これかーらイチっいーをっ
なっぐりっにっ行こうかぁ~~~♪


446VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)2011/07/02(土) 05:33:39.68irR2edin0 (1/1)

>>1 支援
生きてるか?