1以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/17(水) 22:45:21.31cDQlZeEo (1/2)
2以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/17(水) 22:49:07.29pLHrGkUo (1/1)

どうして>>1が凝ったスレタイを考えてる可能性を考慮しなかったのか


3以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/17(水) 23:00:49.06cDQlZeEo (2/2)

>>2
ごめん残り少なかったから勢いで立てちゃった



4以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/17(水) 23:14:45.467mHqgQAO (1/1)

まぁ『!』を一個増やすくらいしか考えてなかったし万事オッケーさ
何はともあれ>>1乙


5以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/17(水) 23:17:02.7299uBb32o (1/1)

>>1に>>1乙
>>4に前スレ乙


6以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/18(木) 00:10:14.775P0visAO (1/1)

おっと注意書き忘れてた

KOFと思った人はごめんなさい
天上天下とか一騎当千とかをごちゃ雑ぜにした感じの厨二ssです
もう少年の心は忘れたという人は背中が痒くなると思う


7以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/18(木) 00:13:38.05...2UIAO (1/1)




8以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/18(木) 01:35:30.96HYscQ6AO (1/1)

乙!楽しみだ


9以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/18(木) 01:49:25.24sbCdQ36o (1/1)

>澪「まぁ、やってやれない事は無いだろうな」

>和「どういう事?」

> 和の問いに対し、澪はどこか遠い目をして答えた。

>澪「完全ステルス能力。あの子は誰であろうと絶対に視覚出来ないからだよ」



失禁した過去を思い出してワロタ


10以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/18(木) 05:03:18.13exKef2.o (1/1)

>>4
乙!

南極にステルス潜入とかワクテカ過ぎる


11以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/18(木) 07:46:21.49c.EsqIAO (1/1)

まさかのメタルギアしずか


12以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/18(木) 12:41:52.32u/Y9RADO (1/1)

>>7
なんかIDすげー

>>1乙



13以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 00:33:26.98RKrRBKUo (1/1)

続きをば


14以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 21:34:37.982uVMO.AO (1/8)

姫子「うーん……。やっぱり肉弾戦は不向きみたいだね」

 潰れたボーリング場もとい『星の観測者』の拠点にて、梓とエリが組み手を取っている。
部屋の隅では姫子が座っており、二人の動作に変化があると逐一メモ帳に何かを書き込んでいた。
その様子を三花とアカネが興味深そうに覗き込んでいる。

エリ「ほいっほいっ」

梓「くっ……」

 梓は懸命に突きや蹴りを放つがそれは傍から見ても素人に毛が生えた程度の拙い技である事が分かる。
銃器を取り上げられれば序列四十九位のエリにさえも劣ってしまう。これではこれから先の戦いについてこれないだろう。


15以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 21:35:17.492uVMO.AO (2/8)

姫子「弱ったなぁ……。まるっきりセンスが無いわけじゃないんだけど」

 しかし近接戦闘におけるノウハウを完璧に叩き込むにはあまりにも時間が少な過ぎる。
或いは曽我部 恵ならばこの状況を打破出来るのかもしれないが、姫子が彼女と接点を持っている筈も無く、それは叶わぬ理想となる。

三花「大丈夫? 何だか顔色悪いよ」

 難しい顔をしている姫子を見て心配に思ったのか、三花は姫子の顔を覗き込んだ。

姫子「うん、私は大丈夫だよ」

 気丈に振る舞ってはいるものの、滲み出た疲労の色はそう容易く隠せるものではない。
姫子の強がりはかえって三花とアカネを心配にさせただけだった。


16以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 21:36:07.942uVMO.AO (3/8)

 いちごの掌中で良いように弄ばれていたとはいえ唯を手にかけてしまった事。
その贖罪の為に友を危険に晒す道を選んでしまった事。
それらは確実に姫子の心を蝕み、疲労させていた。
 しずかの単独潜入を可決したのは昨日の事にも関わらず、その苦悩を隠して梓の指導もこなせるのは偏にその強靱な精神の賜だろう。

姫子「止めて良いよ、二人とも」

 姫子の一声で梓とエリはぴたりと動きを止めた。
そして梓は崩れるように床に寝転んだ。

エリ「ふいーちかれたぁ。休憩休憩」

 エリはじんわりと汗はかいているもののまだ余裕はあるようで、跳ねるように部屋の隅に置いてあった鞄を取りに行くとそのまま中身を漁り始めた。


17以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 21:37:17.252uVMO.AO (4/8)

姫子「どうしたもんかなぁ……」

 姫子はぼんやりと溜め息をつき、目の前にいる三花の髪の毛をそっと撫でた。
照れたようにはにかむ三花の表情は果てしなく無垢だった。

姫子「ねぇ、梓ちゃんの闘気の色は分かる?」

三花「んー?」

 三花は首だけ梓の方に向け、目を細めてじっと見据えた。

三花「分かりづらいなぁこれ。青……、いや緑かなぁ」

 瞼を忙しなくぱちぱちと動かしては時折首を傾げる。

三花「うーん、暫定緑だね」

姫子「そっか、ありがとね」

 御安い御用だよ、と三花は得意げに鼻を鳴らした。


18以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 21:38:16.702uVMO.AO (5/8)

 若干気怠そうに姫子は立ち上がった。
そして寝転ぶ梓の元に寄り、身を屈める。

梓「え?」

 喋るよりも速く掌で口を塞がれる。
そしてもう片方の手は胸に添えられた。
姫子の髪の毛は垂れ下がり、梓の額をくすぐる。

姫子「ごめんね、ちょっと苦しいかも」

梓「っ!?」

 言い終えると同時に梓の身体を悍ましい何かが包み込んだ。
一瞬にして呼吸は乱れ、心臓は跳ね上がり、全身の毛穴から汗が吹き出る。

梓「~~っ! ~~っ!?」

 迫り来る恐怖から逃れる為に身体を捩らせるが胸を抑えられているので意味が無い。
叫び声を上げる事も出来やしない。


19以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 21:39:05.492uVMO.AO (6/8)

 梓は姫子の腕を掴み、振りほどこうとする。
細い腕に爪が食い込み血が滲むが、姫子はそれをものともしない。

エリ「あわわ……。何やってんのあの人」

アカネ「やだ……。何か虫が這ってるみたい……」

 露骨に嫌悪感を示す二人。
三花を盾にする形で身を丸めているのだが、当の三花は吹き付ける風を直視してうっとりと溜め息をついていた。

三花「わぁっ、すっごく綺麗だね!」

 三花の目には深緑の花が咲き乱れる光景が映っていた。
大気、風を操る姫子の緑色の闘気。
だがそれは力無き者にとっては毒でしかない。
アカネ、エリ。そして梓とて例外ではないのだ。


20以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 21:40:18.672uVMO.AO (7/8)

 姫子は自分が放出している闘気に反発しているものを感じ取っていた。

姫子「…………」

 それは煮え滾るマグマの中に垂らした一滴の水のように些細なものだが、確かにそこにある。
今までは垂れ流すだけだった梓の闘気が、梓の苦痛に呼応して一瞬だけ意志を持ったのだ。

姫子「……良い風だね」

 渦を巻くように流れていた風が一瞬だけ舞い上がった。
 姫子はそれに負けじと更に闘気を流し込む。

梓「ぁ……っ! んっ!」

 僅かに漏れた声は苦痛を越えてどこか艶めいていた。
 『絶対の彼方』
 固く閉ざされた力の門の鍵には亀裂が走る。


21以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 21:41:56.272uVMO.AO (8/8)

姫子「クルーシオ!」
梓「ぬわーーーーっ!」

そんなノリ


22以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 21:44:04.725sqMxA.o (1/1)

あずにゃん接近戦か…乙


23以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 21:54:41.31eDwmi.Io (1/1)

なるほど絶対の壁を超えるにはオーガズムが必要なんだな!


24以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/19(金) 23:00:58.932saOowQo (1/1)

ハンターハンターの塔で念能力覚える時にやってた念を当てて無理矢理起こすアレだよな


25以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 01:27:49.12vIIQyg2o (1/1)

やっぱり梓は念弾の為に指切断コースか…。

*     +    巛 ヽ
            〒 !   +    。     +    。     *     。
      +    。  |  |    
   *     +   / /   イヤッッホォォォオオォオウ!
       ∧_∧ / /    
      (´∀` / / +    。     +    。   *     。
      ,-     f
      / ュヘ    | *     +    。     +   。 +
     〈_} )   |
        /    ! +    。     +    +     *
       ./  ,ヘ  |
 ガタン ||| j  / |  | |||
――――――――――――



26以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 10:07:54.07LCeMO1go (1/1)

梓「れいがーん!!」
姫子「ただし、1日1発しか撃てない」

そんなノリ


27以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/20(土) 21:51:11.18LtR.OUEo (1/1)

乙です。

右手を切り落としてロックバスターですね。わかります。


28以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/21(日) 18:03:25.58llMizsDO (1/1)

ここは左手にサイコガンだろ


29以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/21(日) 18:26:56.89YYipiIwo (1/1)

ロックバスターって、太陽のエネルギー使ってんじゃなかったっけ?


30以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/21(日) 19:36:22.814/vY3x.o (1/1)

ここはあえて空気砲だろJK


31以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/22(月) 19:43:45.86is4ADxoo (1/1)

誰一人としてあずにゃんが五体満足でいる事を期待していない件…



俺もだけど…。

えっとあずにゃんは本体の触覚で他者に寄生するようになるんだっけ?


32以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/22(月) 22:44:56.92W4JY.ADO (1/1)

あずにゃんにサイコガンとか最高じゃなイカ


33以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 00:02:06.04Hz0qeSoo (1/1)

そこはガン・デル・ソルだろ
もちろんゾクタイ仕様で


34以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 01:12:12.580bwT0lwo (1/1)

あずにゃんはボーグ化でいいよね。
強くなるし、増えるし…。


35以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 01:22:49.03fLRolgoo (1/2)

我々は中野だ。
お前たちを同化する。
抵抗は無意味だ。


36以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 01:28:11.44WDR9BIAO (1/2)

そんなことしなくてもオーラを電気に変換してレールガン(笑)で充分


37以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 03:22:26.05PA1NJd.o (1/1)

で>>26に戻って以下ループwww


俺的には消しゴムの切れ端を指弾で飛ばすスナイパーで是非。


38以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 03:29:18.121YsyE6AO (1/2)

ふと思ったのだが

猛スピードのあずにゃんがカサカサッという音と共に触角を揺らして黒光りする物を構えて身を隠しながら接近してくるわけだ

技がなくてもこれだけで精神的には大ダメージじゃないか


39以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 09:59:34.70fLRolgoo (2/2)

もう闘気でコインを飛ばすレールガンでおk


40以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 13:23:53.94P7B.wyoo (1/1)

至高の魔弾ですねわかりません。


41以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 21:27:18.75wzSWq6oo (1/1)

まだか


42以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:31:48.32b8.nP6AO (1/12)

梓「いやっ……! はなし……」

 梓の中に宿った闘気は反発を続ける。
その度に梓の小さな体躯はびくりと跳ね上がっていた。

エリ「なんか……。見てて恥ずかしくなってきたよ」

アカネ「私もう無理……」

 アカネは口元を抑えてそのまま外へ去ろうとする。
闘気が奔流する過酷な状況で、更に梓の喘ぎ声にも似た苦悶の呻きはアカネの思い出したくない過去を刺激していた。
紬との闘いの爪痕は根深く残っていたのだ。
 アカネが扉に手をかけようとしたその時、ドアノブが捻られて勢い良く扉が開く。

しずか「ちょっ、姫子!?」


43以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:32:26.45b8.nP6AO (2/12)

 しずかの叫びが姫子を我に返らせた。
それに少し遅れて、しずかに着いて来ていたキミ子とよしみが姫子に飛び掛かってゆく。

キミ子「しっかりしてよリーダー」

よしみ「それ以上はダメ、絶対」

 金属同士が触れ合う冷たい音色が聞こえた。
目にも止まらぬ速度で鎖は姫子の身体を拘束しようとする。

姫子「っ!」

 だが姫子は鎖を乱暴に引っ張り、そのまま床に叩き付けた。
鎖の持ち主であるキミ子とよしみの身体が大きくふらつく。

姫子「ふぅ……」

 じんわりと額に滲んだ汗を拭い、姫子は大きく深呼吸をした。


44以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:33:05.70b8.nP6AO (3/12)

姫子「ごめんね。ちょっと意識が飛んでたよ」

しずか「謝るなら梓ちゃんに謝らなきゃ。ほらほら」

 姫子の言葉を聞く前にしずかは仰向けの梓の元へ駆け寄っていた。
ブレザーのポケットからハンカチを取り出して梓の汗を拭う。

梓「うぅ……」

しずか「起きれる? ほら掴まって」

 梓の腕を自分の首の後ろに回し、そのまま身体を引き上げる。
その拍子に噎せた梓は血混じりの唾を吐き出した。

しずか「見てないで手伝って!」

姫子「う、うん……」

 姫子は促されるままに梓の背中を擦る。
しずかは続けて鞄の中からペットボトルの紅茶を取り出し、梓に手渡した。


45以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:33:40.36b8.nP6AO (4/12)

しずか「自分で飲める?」

梓「大丈夫……です。どうも……」

 顔色はあまりよくはないものの、不自由無く意思疎通が出来るところまでには回復していた。
それを確認するとしずかは安堵の息をつく。

姫子「……ごめんね梓ちゃん」

 姫子が頭を撫でようと伸ばした手に反応し、梓の身体がびくりと跳ねる。
姫子はそれ以上何もせず、伸ばした手をしまった。

エリ「うーん、何かレベルが違い過ぎて何がヤバいのかお姉さん分かんなーい、って感じなんだけど……」

 のんびり歩み寄ってきたエリは梓の掌を握り締めた。


46以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:34:26.31b8.nP6AO (5/12)

エリ「ちょっと休んだら? 姫子がしっかりしてくれないと私達は二束三文のガラクタなんだからさ」

姫子「うん……」

 物憂げに目を伏せ、姫子はよろめきながら立ち上がった。
梓はその様子をぼんやりとしたまなざしで追っている。
それに気付くと姫子はもう一度ごめんね、と呟いた。
引き摺るような足跡が、扉が閉まると同時に消え失せる。

エリ「姫子も困ったもんだ。ねぇしずか」

 エリは呆れつつしずかの方へと目を移した。

エリ「あれ?」

 そこに居た筈のしずかは影も残さず消え去っていた。
エリはキミ子とよしみに目配せをしたが、二人も首を傾げるだけだった。


47以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:34:59.96b8.nP6AO (6/12)

 桜高から少し離れたところにある河川敷。
姫子はそこの堤でごろりと横たわっていた。
川の水面は夕日に照らされて星屑をちりばめたように瞬いており、柔らかい風は幻想のような世界を優しく撫でる。

姫子「…………」

 姫子は風が吹く方を遠く見据えた。
川の流れは視界の更に奥の方まで果てしなく続く。
風に乗ってあの流れの向こうへ旅立ってみようか、そこまで思い付いたところで姫子は考えるのを止めた。

姫子「柄にもないよね」

しずか「ほんとにね」

 不意に聞こえたしずかの声に驚き、姫子は尾を踏まれた猫のように飛び起きた。


48以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:35:50.29b8.nP6AO (7/12)

しずか「声に出てたよ。姫子ってもっとリアリストなのかなぁって思ってたのに、なんか意外」

 普段は幼く見えていたしずかが妙に大人びていて、逆に姫子はしどろもどろになる。

姫子「私だってまだ高校生だもん。たまには乙女チックな事考えたりするよ」

しずか「甘えたり、我儘言ったりもする?」

姫子「そりゃするよ」

 しずかはふぅんと溜め息混じりにぼやき、鞄の中からチョコレートを取り出した。

しずか「あーん」

姫子「ん……」

 一口大のチョコレートを噛み締めると中からいちごのシロップが溢れてきた。
甘酸っぱい香りが姫子の鼻腔を突き抜ける。


49以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:36:35.30b8.nP6AO (8/12)

姫子「何か恥ずかしいね、こういうの」

しずか「姫子は自分を取り繕いすぎなんだよ」

 照れたようにはにかんでいた姫子だが、不意に上目遣いで見つめられてぎょっとする。

しずか「そりゃ姫子だって私達と同い年だもん。まだ大人じゃないし、子供なとこだってあるよね」

 そこで言葉を区切ったしずかは表情に憂いを灯した。

しずか「でも私達は姫子のそんな一面なんて全く知らないよ?」

 姫子は何も返す事が出来なかった。
それもその筈だろう。
決して自分を良く見せようとしていたわけではない。
だが自分でも気付かないうちに、姫子は周りを支える為に大人であり続けていたのだ。


50以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:37:23.39b8.nP6AO (9/12)

しずか「もっとよく周りを見てみなよ。私達ってそんなに頼りない?」

姫子「そんなこと……」

 無いとは言えない。
平沢姉妹を取り巻く事件に介入する為の勢力、『星の観測者』は悪く言えば個々の力も強くはない所謂烏合の衆である。
 不安定な勢力を束ねる精神的負担は姫子を着実に蝕んでいた。

姫子「あ……」

 姫子の目に溜まっていたものが表面張力の限界を迎え、零れ落ちた。

しずか「ごめんね、今まで気付いてあげられなくて」

 核心を突くしずかの言葉は姫子の双肩に積み重なった荷を解いてゆく。


51以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:38:02.66b8.nP6AO (10/12)

姫子「私の方こそ、ごめん。しずかが、っそんなに強くなってたなんて……全然知らなかったよ……っ」

 嗚咽混じりに言葉を紡ぐ姫子の姿は、年相応の少女のものだった。

しずか「もう、いつまでも泣き虫じゃないんだからね」

 姫子の頭をそっと撫でるしずか。
少なくとも今の彼女はかつてその存在を否定されていた弱い彼女ではないのだろう。
小さな体躯に宿した強靱な意志は、姫子の胸を強く叩いた。

姫子「そうだよね。しずかならきっと、大丈夫だよね」

 自分の選択は間違ってなどいなかった。
姫子は初めてそう思えた。


52以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:38:53.14b8.nP6AO (11/12)

 今のしずかならばきっと南極の単独調査をこなして、無事に帰って来てくれるだろう。

姫子「木下 しずか一世一代の大仕事だよ。聞いてくれる?」

しずか「もちろん!」
 弾けたようなしずかの笑みは、今の姫子にとって世界で一番愛しいものだった。
 姫子が紬の家に行き、軽音部勢に単独調査を提案した時の事。
 自分の頭の中にある潜入プラン、日程、方針。
 そして結果としてしずかを投げ出す形になってしまった自分の苦悩。
 それらをつらつらと語る姫子の隣で、しずかはその弾けたような笑顔を絶やさずにいた。


53以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 22:42:47.89b8.nP6AO (12/12)

姫子「らふめーいか! じょーだーんじゃない!! こんなーもん呼んだおぼーえはない!」

しずか「あんたの泣き顔笑えるぞ」

そんなノリ、最近自分のノリが分からない。
何で俺はラブコメ書いてんだ……


54以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 23:01:47.48r9T26xQo (1/1)


久しぶりだな


55以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 23:04:33.011YsyE6AO (2/2)


なにこのしずかかっこいい


56以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 23:38:06.14WDR9BIAO (2/2)

>>無事に帰って来てくれるだろう


あれ?死亡フラグじゃね?


57以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/23(火) 23:49:43.56Q.9CnCMo (1/1)

>>56
ちょばかおまえ言うなって


58以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/24(水) 00:07:54.88cQ0bYoAO (1/1)

屍拾いめ・・・・・・アカネに一生モンのトラウマを・・・・・・


59以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/24(水) 11:47:34.80dwhqX7Eo (1/1)

正直







姫子
以外の顔がわからない
誰か参考画像くれ


60以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/24(水) 11:54:11.59i79kEA2o (1/1)
61以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/24(水) 13:41:45.71PgvSDsAO (1/1)

死亡フラグか、言われてみればそうだな
じゃあしずかには死んでもらう方向で考え直してみよう


62以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/24(水) 15:56:35.81uiu6sEDO (1/1)

らめえええぇぇぇ!


63以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/24(水) 16:26:44.30XLGDy.2o (1/1)

>>60

こういう分かりやすいのを待ってた


64以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/25(木) 09:33:18.54KvG.AgAO (1/2)

唯のせいでしずかがバレる
唯の目の前でしずかが殺される
唯発狂して暴走


こんなノリでおねがいします


65以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/25(木) 09:45:33.50G.4mgQSO (1/1)

>>64お前がここに書かなければそんなノリもあったかもな


66以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/25(木) 14:16:57.37KvG.AgAO (2/2)

>>65
なんだ…と…………


67以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/25(木) 15:25:40.62OQGYooAO (1/1)

ということはありとあらゆる死亡フラグを書き込めば
しずかは生きる事ができるんだな



68以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/25(木) 17:21:22.93WGxzyIAO (1/1)

冗談はおよしよ


69以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/25(木) 18:11:16.953ToTc6DO (1/1)

俺もサイコガン何て書かなければ…


70以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/25(木) 22:18:48.66Ogx/ocEo (1/1)

ここでフラグブレイカーのコーラサワーさんが一言↓


71以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 02:01:56.74G2NwJ/Ao (1/1)

あずにゃんは五体満足で新たな能力に目覚めて、潜入工作したしずかは無事帰ってくるよ!!


72以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 05:53:44.44ywEtfMAO (1/1)

あずにゃん『私の戦闘力は53万です』


73以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 22:55:25.14dqucisAO (1/16)

エリ「お、起きた?」

 梓が目を覚ますと視界には天井ではなく、エリの顔が映っていた。

梓「私……寝てたんですか?」

 そこで梓は自分の視界の異変に気付く。 
エリの身体を覆うように、黄色の蒸気のようなものが浮かんでいた。

梓「え……?」

エリ「どったのあずにゃん?」

 エリは唯が梓を呼ぶ渾名を使い、軽くおどけてみせた。
だがそれはあっさり無視され、妙な羞恥心を駆り立てられる羽目になる。

梓「…………」

 慌てて辺りを一瞥する。
よしみ、キミ子、三花。そして部屋の隅でうなだれるアカネ。
各々が違った色の何かを纏っているではないか。


74以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 22:56:07.49dqucisAO (2/16)

 意識を手放す前まではあれだけ辛かったのに、何故か今は身体が風のように軽い。
猜疑心が恐れに変わるのには時間はかからなかった。

梓「私、どうなったんですか……?」

三花「闘気の発現、だね」

 梓が振り返ると三花が這うように擦り寄ってきていた。

梓「闘気……」

 闘気を観測し、自在に操れる者を『絶対の彼方』を越えた者とする。
和が語っていた強者の定義、梓はまさか自分がこうもあっさりその枠に当て嵌まってしまうとは思っていなかった。

三花「でもまだ駄目だね。全然綺麗じゃないもん」


75以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 22:56:45.91dqucisAO (3/16)

 三花は眉を八の字にして残念そうに言った。

梓「……あなたにもこれが見えるんですか?」

三花「見えるよー。色は緑、でも黒っぽいのが煤けてるね」

 言われてよく見ると、確かに自分の肌にも闘気が纏わりついているのが見えた。
不純物を混ぜたような澱んだ緑だった。

梓「…………」

 闘気の奔流を目の当たりにした事が無いわけではない。
和や純が何かしらの技を以て攻めに転じる時、確かに似たような何かを感じていた。
だからこそ分かる。
今の自分はあの二人と比べてどれほど未熟なのかを。

三花「でも大丈夫だよ。私がその力、引き上げてあげるから」

梓「っ!?」


76以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 22:57:16.78dqucisAO (4/16)

 その瞬間、梓の身体が宙を舞った。
梓自身それが三花に蹴り上げられたからだと気付いたのは自分の身体が床に転がってからだった。

梓「っ! 何なんですかいきなり!」

 梓は即座にホルスターから銃を抜き取り、銃口を三花に定めた。
だが弾が射出されるよりも速く、三花は銃口に指を突っ込む。

三花「撃ってごらん? 自分の腕を犠牲にする覚悟があるのならね」

梓「…………」

 野獣の如く鍛えられた三花の身体を貫ける自信など梓には無かった。
引き金を引けば行き場を失った銃弾は暴発し、両者ともただでは済まないだろう。


77以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 22:57:48.52dqucisAO (5/16)

三花「なーんてね、嘘だよ。流石にこんな意地悪はしないよ」

 三花は銃口から手を離し、けたけたと笑った。

三花「でも全力で手は抜いてあげるから、全力でかかっておいでよ」

 言葉はそれだけで充分だった。
三花はあくまで闘いではなく指南、梓のポテンシャルの引き上げを望んでいる。
それはつまり、『獣王』が『射手』に狩られる事など断じて無いという驕りの現れ。
ならばと梓が思う事は一つだけだった。

梓「……やってやろうじゃないですか!」

 瞬時にマガジンを入れ替える。
金属同士が噛み合う小気味の良い音と共に、二つの鉛玉が射出された。


78以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 22:58:17.70dqucisAO (6/16)

三花「ふふん」

 三花は鼻歌混じりで片手を薙いだ。
二つの銃弾はまるで刀で切られたかのように真っ二つになる。

梓「これは……」

 反撃の手に備え、大きく後退しながらも梓は観測する。
三花の指の爪が鋭利な刃物のように長く伸びているのを。

三花「ぼーっとしてると串刺しにしちゃうよ!」

 三花は梓が作った隔たりを一瞬で詰めた。
その動きはまるでしなやかなバネの力を開放させたかのように素早い。

梓「っ!」

 梓は爪の槍を咄嗟に身を屈めて避ける。
そしてがら空きになった二の腕に向けて一発。
コンマの差でそれを追うようにもう一つの弾丸を射出した。


79以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 22:58:57.08dqucisAO (7/16)

 左右の腕の伸び具合、角度、弾の速度。
それらを計算し尽くして放たれた弾丸はぶつかり合い、Yの字に軌道を逸す。

三花「うおっとと……」

 三花は二の腕と顔面に向かって飛んでくる銃弾を身を大きく反る事によって回避する。
そして左脚を軸にして回転しながら上体を起こし、回転の力を殺さぬまま蹴りを放った。

梓「はや──っ!?」

 二つの銃のグリップを足に向け、盾代わりにする。
だが蹴りの勢いはそんなチープな壁では殺せない。
梓は襲い来る手の痺れに銃を手放してしまった。

三花「えいっ!!」

 三花は軸にしていた左脚を浮かせ、その足で宙に浮く形で蹴りを放った。


80以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 22:59:48.91dqucisAO (8/16)

梓「きゃっ!?」

 不安定な体勢にも関わらずその蹴りは速く、そして鋭い。
梓は銃を捨てて咄嗟に後退して、鼻先を掠めながらも何とかそれを躱す。

梓「──っ!」

 それ以上の追撃は無かった。
動作のキレ、破壊力共に申し分ないがその動き自体は酷く単調なものだった。
 まるで獣を相手にしているようだ。梓は直感でそう感じた。
 ならばと、梓は策を練る。
獣を相手にするなら自分のような射撃手がやるべき事は一つ。

エリ「やばっ!?」

 梓の目論みに一番最初に気付いたのは遠目に見ていたエリだった。
エリは即座にキミ子とよしみの手を引き、扉を蹴破った。


81以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 23:00:38.93dqucisAO (9/16)

 なだれ込むように部屋の外へ飛び出したエリ達。
丁度それと同時に眩い光と爆音がエリ達の背後を包む。

エリ「やだーっ! まだ死にたくないよー!!」

キミ子「ちょっ、もう離してよ!」

よしみ「……くるしい」

アカネ「何やってんのアンタ達……」

 部屋の外で壁にもたれていたアカネが呆れたような表情でエリ達を見た。
目は垂れ下がっており、顔色はあまり良いとは言えない。

エリ「ありゃ?」

 エリは爆風に身を焼かれてしまうと思い込んでいた。
それもその筈だ。あの闘いの最中でエリは見たのだ。
梓の制服の袖口から金属製の球体、爆弾らしきものが零れるのを。

エリ「じゃああれは……?」


82以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 23:01:36.46dqucisAO (10/16)

梓「スタングレネード」

三花「うっ……うぅ……」

 二丁の銃を構える梓と膝を折って目を塞ぐ三花。
二人の間には狙撃手が絶対的に有利になるだけの隔たりがあった。

梓「流石にこれは視覚と聴覚を鍛えてどうこうなるものじゃないでしょう? まぁ音に関しては近接戦闘を想定して作ったものだから大した威力は無いでしょうけど……」

 スタングレネード。それは強烈な音と光で対象の平衡感覚を狂わせる兵器だ。
それ自体に殺傷能力は殆ど無いものの、並の人間が不意打ちで使われるとその衝撃は計り知れないものとなる。


83以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 23:02:19.85dqucisAO (11/16)

三花「眼がっ! 眼があああっ!!」

 獣に近い身体能力を誇る三花。
視覚と聴覚も同じように発達している三花にはその効果が顕著に現れた。
 網膜を焼き尽くされてゆくような錯覚。三半規管を掻き乱される感覚。
それらは三花の世界を大きく揺らがせる。

梓「チェックメイトです」

 後は念には念を入れ、跳弾を利用した変則射撃で急所以外の箇所に弾丸を浴びせる。
それで勝敗は決する、筈だったのだが。

三花「なーんちゃって」

 梓には両手で表情を隠した三花が舌を出すのが見えた。
だが時既に遅し。三花の肩を狙って放った弾丸は身体を伏せた三花の頭上を通り過ぎ、コンクリートの壁を砕いただけだった。


84以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 23:03:09.49dqucisAO (12/16)

梓「な……。なんで……?」

 背後から首筋に鋭利な何かを突き付けられる。
梓の身体は目に見えこそしないものの、確かに震えていた。

三花「視覚と聴覚は確かにぐちゃぐちゃだよ。ぶっちゃけこうして立ってるのも辛いかな」

 ならどうして、と尋ねる前に三花は言葉を続けた。

三花「でも感覚は視覚と聴覚だけじゃないよね。普通の人間ならそれを潰せば暫くは動けないだろうけど、多分梓ちゃんは私と闘ってる時に思った筈だよ?」

 まるで獣のようだと。

梓「まさか──」

 梓の脳内でほんの数分前に思った言葉が過ぎった。


85以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 23:03:48.37dqucisAO (13/16)

三花「そう、嗅覚だね」

 この狭い空間で目と耳を塞いで梓を認識する事など、三花にとっては児戯に等しかった。

梓「そんな……っ! 火薬の匂い、それにさっきまでいたエリ先輩達の匂いも紛れてる中で私の匂いだけ嗅ぎ分けたっていうんですか!?」

 犬でもそんな芸当真似出来るだろうか。
梓にはその事実が俄かには信じられなかった。

三花「だって私『獣王』だもん」

 梓は首に爪を突き付けられた感覚が消え、身体が引き寄せられるのを感じた。

梓「や……ぁっ……」

 梓の小振りな乳房が制服の上から揉みしだかれる。


86以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 23:04:37.53dqucisAO (14/16)

三花「質量、材質を一瞬で判断出来る触覚」

 首筋を今度は鋭利な爪ではなく、湿った舌がなぞる。
征服感が三花の本能を駆り立て、恐怖感が梓の理性を狂わせてゆく。

三花「脳内分泌物を大量に撒き散らす強欲な味覚」

 舌の動きは上へと向かい、三花は梓の耳朶を甘噛みした。

梓「んっ……。やだよぅ……」

 背筋はこれ以上無いほどに伸び、爪先に力が込められた。
本能的な力の動きすら許さないように、三花は梓の耳元に息を吹き掛ける。

三花「梓ちゃんは、どんな味がするのかなぁ?」

梓「ひっ──!?」

 じわりと下着が濡れるのを感じたが梓に下腹部を確認する余裕など無かった。


87以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 23:05:44.20dqucisAO (15/16)

 染み出す愛液が自分の中に眠る僅かな被虐の性を露にするが、それを情けないと思う事すらままならなかった。

三花「本日三度目のなーんちゃって!」

 弾けたような声と共に三花は梓の背中を押した。
梓はそのまま前のめりに倒れ伏す。

三花「折角闘気に触れたんだからもう少し有効に使ってあげないとね。次からはそこんとこもビシビシいくから!」

梓「…………」

 梓は呆れて物も言えなかった。
ただ力無く振り返った視界に映る三花の得意げな顔がどことなく唯に似ているような気がして、梓は一瞬頬を弛める。

梓「……よろしくお願いします、三花先輩」

三花「うむ、任せられたよあずにゃん」

 あずにゃんは止めて下さい。
梓のそんな呟きの後に、部屋の外からは数人の笑い声が零れた。


88以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 23:06:58.02dqucisAO (16/16)

三花「三分待ってやろう!」
梓「バルスッ!!」
そんなノリ

えっちいのが好きになってきました


89以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 23:11:52.31sesPjqk0 (1/1)


私もえっちいの好きです


90以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/26(金) 23:14:09.708NHURkAO (1/1)

えっちなのはいけないと思います!


だが問題ない
>>1乙


91以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/27(土) 00:25:37.39ekOWa9Eo (1/1)

モブ共がかわいいいいいいいいいいいいいいいい


92以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/27(土) 00:27:26.05lkHRgNEo (1/1)


えっちぃの大好きです


93以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/27(土) 00:27:52.85hBYxLHoo (1/1)

これで五体満足で触覚が生えたり冷蔵庫の下に潜り込んだりしないあずにゃん√か…。


94以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 01:22:31.00oKcah.AO (1/1)

いちいち戦闘シーンだってのに劣情を駆り立ててくれるなあ

一番興奮したのは澪vsしずかだけどね


95以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 01:25:32.094x6OS6AO (1/1)

首と身体が分離して髪の毛を手足のように操るあずにゃんルート


96以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 14:55:25.88zIa.T2DO (1/1)

赤いボディースーツに身を包み
葉巻が似合うハードボイルドなあずにゃんルート


97以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 15:01:44.511IVfOMMo (1/1)

背広に帽子がトレードマーク
ヘビースモーカーの硬派なあずにゃんルート


98以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/29(月) 20:30:15.99kIjdsZco (1/1)

そんな事より担当者は至急>>1のとこへ原稿取りに行ってくるんだ!!

菓子折り持ってくの忘れるな!!


99以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/11/30(火) 09:48:47.24BwXgYQSO (1/1)

あとチョコレートも
もしかしたら原稿先伸ばしにするために買いに走らされるかも


100以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:02:58.96Ecp6hAAO (1/15)

 梓の覚醒の翌日。
 まだ朝日も昇っておらず薄暗い早朝の雑木林を澪は歩いていた。
 抜き身のまま刀を携えており、その刀身にはどす黒い血が付着して輝いている。

澪「出て来い」

 唐突な呟きと共に木々が揺れた。
それに遅れて渇いた銃声が数発。
放たれた鉛玉は澪の元に届く手前で失速する。
空間が水面のような波紋を浮かべて揺らぎ、銃弾がみるみるうちに凍り付いてゆく。

澪「……そこか」

 澪は銃弾が飛んできた方を見て、刀を地面に深々と刺し込んだ。
刀を中心に氷柱が四方に飛び交い、木々の向こうへと収束してゆく。


101以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:03:42.81Ecp6hAAO (2/15)

 数人の男の短い悲鳴が聞こえた。
それでも健在な者は居たようで、黒スーツに身を包んだ三人の男がそれぞれ澪を囲むように直進していく。

「オラァッ!!」

 野太い声を響かせながら刀を持った男が澪に切り掛かる。
技を一切捨てた乱雑な一撃。
澪はそれを技で受け流そうともせず、ただ力任せに刀身を刀で切り付けた。
甲高い金属音が鳴り響き、男の持つ刀は真ん中から真っ二つに折れる。

澪「一人目」

「ぐっ──!?」

 人指し指で軽く男の胸を突く。
その瞬間男の身体を巡る全ての水分が波打った。
男が膝を折る事すら澪は許さない。
男の顔面をサッカーボールと同じ要領で蹴り上げると、男の身体はその後ろで構えていた男とぶつかる。


102以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:04:15.01Ecp6hAAO (3/15)

 後ろで構えていた男はその拍子に持っていた得物を手放してしまった。
澪という絶対的な強者を前にしてそんな隙を見せるという事は死に直結する。

「ひっ──!?」

 短い悲鳴の後に、男の身体が肩口から胸にかけてざっくりと切り付けられる。
運が悪ければショック死を引き起こしてしまいそうな切り傷だが、それは決して深くはない。
致命傷たり得ないその傷が男に甚大なダメージを与えたのは次の瞬間だった。

「ひっ、ひぃやああああっ!?」

 傷口を中心に冷気が拡がり、男の身体を凍らせてゆく。
出血は一瞬で止まり、代わりに重度の凍傷が男を蝕んだ。


103以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:05:10.44Ecp6hAAO (4/15)

澪「いつだってそうだ」

 男の悲鳴にかき消されてしまうほどのか細い声で澪は呟く。
そして振り向きざまに刀を薙いだ。

「え──」

 刃と化した水が刀身から迸り、最後の刺客の右手の甲から先を奪い去った。
舞い散る血飛沫。鉄が地面と触れ合う音。狂乱した叫び。
その全てが澪の神経を逆撫でる。

澪「勝ちの目なんてこれっぽちも無い事を自覚しながら、害虫みたいにわらわら沸いてくる」

 澪が地面を蹴ると、地表から現れた氷柱が男二人を串刺しにした。
急所は外れており、貫かれた箇所は一瞬で止血される。後に残るのは痺れと痛みだけだ。


104以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:05:48.75Ecp6hAAO (5/15)

澪「そして最後には思考停止。自爆を謀って殉職者気取り」

 地面を転がる鉄の塊が小型の爆弾である事を、澪は振り向かずとも察知していた。
それは本来の役割を果たすことなく、ただ虚しく転がっている。

澪「自分から死ぬ勇気があるんなら、その意地でしっかり生きててよ……」

 右手を失いながらもそれ以外は健在な男。
澪はそこで初めてその男の方へと向き直った。

「な……。何で……?」

 男は困惑した。
悪鬼羅刹が如き残虐な戦い振りを見せていた少女が、その冷淡な瞳を滲ませて顔を伏せたからだ。


105以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:06:46.81Ecp6hAAO (6/15)

澪「ばか……」

 震える声で涙目になりながら呟く澪は、どこから見ても年相応の少女だった。
 力を手に入れ、揺るがない意志を持った。
 情を捨て去り、どこまでも非情になれた。
 だが優しさと甘さは違う。
どれだけ強くなったところで澪は自分の優しさだけは捨て去る事が出来なかった。

「…………」

 身も凍る冷気で痛みすら麻痺していた。
だが男は思った。捨て駒としての価値しかない自分だが、ただ一言この少女に謝りたいと。
 口を開きかけたその時、男の側頭部に衝撃が走る。
辛うじて保たれていた男の意識はそこで途切れた。


106以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:07:32.03Ecp6hAAO (7/15)

澪「んっ……」

 目を擦って何度か瞬きをすると、澪は刀を鞘へと収めた。
そして大きく伸びをして、血に染まって黒くなったパーカーを脱ぎ捨てる。
腰の手前まで伸びた艶やかな黒髪を払い、悠然と歩くその様からは先程の少女の一面は見られない。
 一寸の猶予も与えられぬまま叩き潰された三人の男が横たわり、呻き声を漏らしていた。
各々が目も当てられないほどの重傷を負っているが、誰も澪を恨むことは無かった。
 痛い。だがそれ故に生きている。
髪の毛一本も残さずにこの世から抹消する事も出来たのにそれをしなかった澪に、三人は感謝の意すら覚えていた。


107以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:08:24.38Ecp6hAAO (8/15)

 電車の路線をなぞるように移動する事十分。
澪が敵襲を迎撃した地点から三駅分ほど離れたところに琴吹財閥の格納庫があった。

和「遅かったわね」

澪「ごめん、どうも向こうの動きが活発みたいでね」

 澪は身体中に飛び散った血飛沫を和に見せ、大きく溜め息をついた。

澪「で、肝心の木下さんはまだ来てないの?」

和「さっき立花さんと来たけど二人でどっか行っちゃったわよ。私が水を差すのも悪いし、ね?」

 ふぅん、とあまり興味なさげに呟く澪。
彼女の興味はこの格納庫に鎮座している鉄の塊に向いていた。


108以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:09:13.46Ecp6hAAO (9/15)

澪「それにしても凄いな。財閥の長までになると自家用ジェットなんかも買えるのか……」

 流線型のフォルムに白を基調としたボディ。
軍用兵器や機械に疎い澪にはそのジェット機の価値は分からないものの、自分では一生掛かっても買える代物ではないとは直感していた。

紬「あ、おはよう澪ちゃん」

 格納庫の扉が開かれる。 
そこには盆の上にティーカップを乗せて運ぶ紬が居た。

澪「こんな時まで気を使わなくても良いのに……」

紬「こんな時だからこそよ。私にはこれくらいしか出来ないもの」

 琥珀色の液体が注がれたティーカップを澪と和に手渡す。



109以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:09:58.66Ecp6hAAO (10/15)

 澪は紅茶を啜り、ほっと一息ついた。
朝方の冷たい風に晒されて冷えた身体がすっと溶けてゆくのを感じた。

和「それにしても遅いわねあの子達。ムギが見た時はどうだった?」

紬「二人で何か話してたみたいだけど……」

 紬が言いかけたところで格納庫の扉が開いた。
昇り始めた朝日が部屋の中に差し込む。

しずか「ごめん、待たせたね。もう準備は出来たから」

 誇らしげな表情を浮かべるしずか。
そしてその後ろで温かく見守るような笑みを浮かべる姫子が居た。
姫子の頬にはうっすらと涙が伝った後があるが、その笑顔は作り物ではない。
誰もがそれを理解していた。


110以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:10:33.52Ecp6hAAO (11/15)

しずか「出発までどれくらいかかる?」

紬「操縦はオートマティックだから乗り込み次第飛び立てるわ」

 そう、と短く呟いてしずかはジェット機のドアを開いた。

和「随分あっさりね」

しずか「あまり長居してると怖くなっちゃうからね」

 しずかは落ち着いた様子で笑みを浮かべた。
それが作り物か否かは、しずか以外には分からない。

澪「木下さん」

 機内に乗り込もうとしずかが身を屈めたその時、澪が呼び止めた。

しずか「……何?」

 怪訝そうな表情を浮かべて振り返るしずか。
澪は残った紅茶を一気に飲み干すと口を開いた。


111以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:11:20.64Ecp6hAAO (12/15)

澪「危なくなったら逃げて。そして隠れて。例えこの潜入が無駄になったとしても、木下さんが無事帰ってきてくれればそれで良いから……」

 澪は言葉を区切り、一息つくと再び口を開いた。

澪「逃げる事を臆病だなんて思わないで。命さえ残っていれば、後は万事どうとでもなるからね」

 たとえ状況が悪化したとしても、その時の尻拭いは自分がしよう。
それが出来る力を自分は持っている筈だ。
澪はそう心に決めた。

しずか「……ありがとう」

 眉尻を下げてはにかみ、しずかは機内に乗り込んでゆく。

和「何か言わなくて言いの?」

 和が姫子に言葉を促す。
だが姫子はそれに対して首を振るだけだった。


112以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:11:59.42Ecp6hAAO (13/15)

姫子「私は大丈夫だよ。言いたい事はあの子が『帰ってきて』言うから」

 無事帰ってこれる保証などない。
そんな事は嫌というほど理解している。
だがここで別れを惜しんだらしずかは永遠に帰って来ない。
姫子はそんな予感を感じ取ってきた。

姫子「だからしずかは大丈夫だよ」

 誰に言うでもなく姫子は呟いた。
 格納庫の扉が完全に開き、封鎖されて滑走路と化した道路がジェット機の行く末を示している。

和「そうね」

 エンジンに火が点り、機体の駆動音が鳴り響く。
それに遅れて機体はゆっくりと走り始めた。


113以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:12:42.12Ecp6hAAO (14/15)

 機体の動きは徐々に加速していき、道路を走る。
首の部分が上を向き、前輪が収納されるその時、一陣の風が吹き荒れた。

姫子「良い風だね」

 モカブラウンの髪の毛がはためくのを抑え、姫子は空を飛ぶ鉄の鳥を見送った。
 今の姫子が何を考え、何を思っているのか。
それを知る術を持つ者は姫子以外に居なかった。
だが要らぬ詮索はするまいと澪達は思う。
そう思えるほどに姫子の表情は明るかった。

澪「そうだね」

 綺麗な思い出は綺麗なままで。
この二人の語らいに水を差すような真似はせずに、澪は一言呟いたのだった。


114以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:15:06.26Ecp6hAAO (15/15)

澪「危なくなったら逃げろ。そんで隠れろ。運が良ければ隙を突いてぶっ殺せ。それさえ守れば、後は万事どうとでもなる」

姫子「この野郎順調に死亡フラグ立てやがってェェェェエエッ!!」
そんなノリ


115以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/01(水) 23:17:08.67EMilqsAO (1/1)

乙!


116以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/02(木) 01:34:28.189kiF/2AO (1/1)


しずかマジ頑張れ!


117以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/02(木) 03:27:30.69XKwnGp6o (1/1)

澪「危なくなったら逃げろ。そんで隠れろ。あとは私が何とかする」

しずか「うっせー雑魚」
そんなノリ


118以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/02(木) 04:36:50.046rEZT..o (1/1)

澪「今、誰か私を笑ったか?」
紬「我が友シ・ズーカ!!」

そんなノリ


119以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/02(木) 11:12:26.41YHHx6cwo (1/1)

乙!

次週号は巻頭カラーですね、わかります。


120以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/02(木) 11:17:41.26xqAzSTYo (1/1)

「モカブラウンの髪の毛」とかオシャレな言い回しだよな。
俺も今度、自分のSSで闇雲に使ってみよう。



121以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 20:57:48.99POl6LwAO (1/11)

 飛び立ってからどれくらいの時が経っただろうか。
そんな事を考えながらしずかは機内に備えられていた耐寒スーツに着替えていた。

しずか「ひゃっ……」

 首元まで覆うタイツのような生地のそれは地肌と擦れ合い、妙な刺激をもたらす。

しずか「このまま外に出ても大丈夫って言うんだから、科学の力って凄いよねぇ……」

 ぼんやりと呟いてはみるものの、それに答えるものは居ない。

しずか「…………」

 着替えが入ったジェラルミンケースの中には弛めのパンツとダウンジャケット、それに白色のマフラーと耳当てが入っていた。


122以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 20:58:21.62POl6LwAO (2/11)

 少し考えるように腕を組み、しずかは脱ぎ散らかした制服を手に取った。

しずか「やっぱりこっちの方が良いや」

 耐寒スーツの上からスカートを履き、ブラウスに袖を通す。
しずかはブラウスのボタンを下から一つずつ止める毎に、気持ちが引き締まってゆく感覚を覚えた。
 着古して少し緩んだカーディガンのボタンを止め終える頃にはしずかの表情は険しくなっていた。

しずか「よっし!」

 軽く頬を叩き、備え付の電子ポットの中のホットチョコレートを紙コップに注ぐ。
嗅ぐだけで心が休まりそうな甘い香りが機内に満ちた。


123以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 20:58:57.18POl6LwAO (3/11)

 だがしずかの表情は決して緩まない。
紙コップに口をつけ、数枚に分けられた今回の計画書に目を通す。

しずか「…………」

 その内容は決して用意なものではない。
そもそも南極への潜入自体が過酷なのだ。
たとえ日本から離れた南極に本部構えていたとしても、用心深いいちごがセキュリティを甘くする道理は無い。
張り巡らされた膨大なセキュリティの網が上空にまで及んでいる事は火を見るより明らかだ。
 つまり潜入のチャンスは一度きり。
ジェットが本部上空を駆け抜けるその一瞬のうちに飛び降りなくてはならないのだ。


124以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 20:59:35.64POl6LwAO (4/11)

しずか「やっぱりきっついなぁ……」

 それが出来なければ進路を予めプログラムされている機体はたちまち日本へと帰還してしまう。
それで済めば御の字だろう。
最悪の場合、セキュリティに引っ掛かった機体は想定し得ない何らかの迎撃システムによってたちまち破壊される。
それはつまり、しずかの死に直結する。

しずか「──っ!」

 突如として機内に警報が鳴り響く。
敵に存在を悟られたわけではない。
この警報音は、機体が若王子機関本部の上空の到達した知らせだった。

しずか「よっし!」

 飲みかけのホットチョコレートを投げ捨て、食料を詰め込んだパラシュート付きのリュックを速やかに背負う。


125以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 21:00:08.04POl6LwAO (5/11)

 警報音が鳴り止んでから三秒。それがしずかに残された時間だ。

しずか「『詐欺師』木下 しずか──」

 ドアをこじあけると常人では耐えられぬほどの風圧がしずかを襲った。
だがしずかはその脅威にすら気圧されない。

しずか「行きます!」

 直後に警報音が鳴り止んだ。
しずかの身体は物理法則に逆らう事なく、急速に落下速度を増してゆく。
目を開けているのも辛い状況の中で、しずかは空を駆る機体を見送った。
ジェットはあくまで機械的にしずかを手放し、突き放すように飛びさってゆく。
 氷雪で覆われた大地がしずかの眼前に迫ってくる。
しずかはそっとパラシュートに手をかけた。


126以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 21:01:17.35POl6LwAO (6/11)

いちご「この警報は……?」

斎藤「侵入許可を出していない機体が上空を過ぎ去ったようです」

 巨大なモニターと何台ものコンピュータが設置された場所にいちごと斎藤、そして片目を覆う長い黒髪を気障な動作で弄る青年が居た。

いちご「直ぐにその様子を再生して」

斎藤「はい」

 斎藤がリモコンのようなものを弄ると、林檎の木を映し出していたモニターが空へと切り替わる。

「ふぅん、見たところほんとに通り過ぎただけみたいですね」

 気障な男がさも興味なさげに呟いた。

いちご「通り過ぎた機体を拡大してもう一度再生して」


127以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 21:02:14.84POl6LwAO (7/11)

 男の言い分に少しも耳を貸さずにいちごが言った。
再び斎藤がリモコンを弄ると、ピント調節された先の映像が流れる。

「あぁ? 何だありゃ故障か? ドアが開いちまってるじゃねーか」

 男が若干声を荒らげるのを聞いて、いちごは眉を顰めた。

斎藤「機体から何かが落ちた形跡はありませんね。しかし用心の為注意を促しておきますか?」

いちご「いや……」

 唇に指を添え、少し考え込むといちごは斎藤らの方へ振り返った。

いちご「従者衆全員に命令を下すわ。各々のスキルを全力で発揮し、施設内の警備に当たる事。一般作業員には悟られないように」


128以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 21:03:21.07POl6LwAO (8/11)

「あぁ!? なんだってそんな──」

斎藤「よせ、後藤」

 斎藤はいちごに食ってかかる後藤を片手で制した。
黒のサングラス越しの表情は誰にも分からない。

斎藤「何で、だって、しかし、でも。我ら従者衆が口にして良い言葉ではないな。主人の命令に対する返事は一つだけの筈だ」

 斎藤はちらりといちごの方を見たが、当のいちごは背を向けてパソコンのキーボードをタイプしている。

後藤「ちっ……。了解です」

 後藤は悪態をつきながらスーツのポケットに手を突っ込み、踵を返して去って行った。


129以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 21:04:12.11POl6LwAO (9/11)

斎藤「見苦しいところをお見せしました」

いちご「気にしてないよ。それよりあなたには私の護衛を任せるから、今から一時間自由時間をあげる」

 いちごはそれだけ言うと、再び振り返る事は無かった。
部屋を出る時斎藤は妙な猜疑心に駆られたが、特に気にせずそのまま部屋を後にした。

いちご「まずいね……」

 いちごは誰も居ない空間の中でぽつりと呟いた。
表情は険しく歪んでおり、うっすらと汗をかいている。
 先の映像を見て、いちごは全てを理解していたのだ。
あの機体は琴吹財閥が仕向けたもの。そしてあれに乗っていた人物が木下 しずかであるという事も。
 全て分かっているからこそ分かる。
事態は深刻な方向に進んでいる事が。


130以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 21:05:15.77POl6LwAO (10/11)

 仮にしずかが『タナトス』の情報。そして『エデンシステム』に触れたとしたらその被害は甚大なものになるだろう。
それを考えるといちごは気が気ではなかった。
 『沼』の策士たるいちごがこの事態を想定し得なかったかと問えば、その答えはノーだ。
だが結束力の強い桜高の面子がステルス能力以外に取り柄が無いしずかをこんな危険に曝すとは思っていなかったのだ。
いや、思っていなかったという表現には語弊がある。
正確には今の状況に陥る可能性を微弱なものと判断し、効率を重視したのだ。

いちご「それでも……」

 いちごは天井を仰ぎ、うわ言のように呟く。
口調は弱々しいものの、その瞳には強靱な意志が宿っていた。

いちご「真っ向から不意打ってあげるわ」

 詐欺師の見えざる手が智略の沼に潜り込まんとしていた。


131以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 21:07:31.72POl6LwAO (11/11)

斎藤「俺たちはSeeDです。命令には従います」

後藤「やってやろうぜサイトー!」

そんなノリ


132以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 21:31:30.97WendPOYo (1/1)

俺「ああ…そんなにがんばらないで…」

てことか。


133以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/03(金) 23:04:32.75zax0EkMo (1/1)

いちごが子荻ちゃんwwwwww


134以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/04(土) 17:23:40.87NuOjW/Io (1/1)

乙です!!

しずかちゃんが雪に埋れてしまわないか心配で心配で・・・・(´・ω・`)


135以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/05(日) 04:48:15.28ah2GssAO (1/1)

しずか「犬神家ッ!」

こうですねわかります


136以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/05(日) 21:54:56.50iwSXPoDO (1/1)

ちょっと手遅れっぽいけど女帝降臨させて見た、

http://imepita.jp/20101205/778960
和「ガァァァベラストレェェェト!!」

そんなノリ、

手持ちの刀が1/144菊一文字しか無いので。


137以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 10:26:43.34wwzvQPo0 (1/1)

>>136
すげえええええかっけえええええええ


138以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 17:59:45.1854W/icgo (1/1)




139以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 23:54:02.83hgoUAG2o (1/1)

>>136

乙!

澪は?澪は居ないの??

アズにゃんが1番難しそう


140以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 00:58:00.80eJqprYDO (1/2)

澪は同じ刀で良いならすぐ出来る、
梓はみくるか屍姫が無いと完全再現は無理、手持ちのマシが100ミリとザクマシと80マシ、ハンドガンは壊滅状態、せめてケルディムかサバーニャが有れば……



141以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 01:04:24.95BoSKSJQo (1/1)

ガーベラだと流石に鞘がゴツすぎてなんか違うなぁって感じがする
Az-nyangはこのサイズのライフルあったっけかなぁ


142以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 01:07:13.18HccVGl6o (1/1)

プロの模型班はスレのためだけにプラモを1つ買ってくる


143以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 03:48:00.61pwbaZZMo (1/1)

>>140
ハルコルネン2で宜しく。


144以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 08:02:27.01eJqprYDO (2/2)

3~4日くれ、田舎に住んでるからAmazon無しでは最近出たガンプラしか調達出来ないんだ。


145以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 20:54:05.37j2W2KYAO (1/13)

 一方桜高の生徒会室には軽音部、『星の観測者』、生徒会の面々が集っていた。
和はデスクトップのパソコンをタイプしており、その様子を他の面子が後ろから眺めている。

律「何やってんのかさっぱり分かんねーや。私にも分かるように説明してよ」

澪「そうやってかれこれ三回は説明したじゃないか。もう黙って見てろよ」

 律が拗ねたように唇を尖らせ、澪は呆れたように溜め息をつく。

和「あんた達いつまでそうしてるつもり? 気が散って集中出来ないんだけど」

 和は片手を振って煩わしさを露にする。
和の言葉を境に純以外の面々は散開していった。


146以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 20:54:39.00j2W2KYAO (2/13)

和「なに?」

純「お気になさらずー」

 純は隣の席に腰掛け、パソコンを立ち上げる。
和が横目でディスプレイを見ると、そこには見覚えがある盤面が映し出されていた。

和「……呆れた」

純「あーあ、いきなり不可予知出ちゃった」

 ぴりぴりとした空気が漂う室内で呑気にマインスイーパーが出来る辺り、純のメンタルは強いというより捻子曲がっているのだろう。

律「で、結局何やってんの?」

澪「だから何回も言ってるだろ。木下さんから送られてくる情報の解析準備をしてるんだよ」

 いまいち理解を得ないような律の反応に澪は再び溜め息をついた。
その後ろで紬がいそいそと茶を淹れている。


147以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 20:55:17.02j2W2KYAO (3/13)

紬「どうぞ」

和「ありがと、悪いわね」

 この時世にしては珍しく古めかしい造りの湯呑みを和に手渡す。だが和は注がれたお茶には手をつけず、脇に置いてそのまま作業に没頭した。

姫子「大変そうだね」

アカネ「どうする? 時間がかかりそうなら戻って梓ちゃんの訓練でも……」

 アカネが言い終える前に姫子は首を振った。

姫子「ごめん、私は止めとくよ」

 理由など詮索するまでもなかった。
むしろアカネは今の姫子にそんな提案してしまった事に後悔した。

エリ「じゃあ私達は行こっかあずにゃん」

梓「あ、はい……」


148以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 20:55:52.12j2W2KYAO (4/13)

 後ろ髪引かれながらも梓は生徒会室を後にした。
部屋を出る手前で一度振り返り何を思ったか、今では梓自身にも思い出せない。

梓「…………」

 校門を通り抜け、前日通った道と同じ道を歩く。

アカネ「…………」

 夕焼けの空では雲が日に溶け込み、滲んでゆく。

エリ「…………」

 面々の足取りは重く、通夜を思わせる清閑さがあった。

梓「あの……」

 無音の世界に終止符を打ったのは梓だった。
梓の呟きを機にアカネとエリは一斉に梓の方を向く。
無言の圧力にたじろいでしまうが、それでも梓は口を閉ざなかった。


149以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 20:56:40.90j2W2KYAO (5/13)

梓「しずか先輩はきっと帰ってきます。だからそんな顔しないでください」

 梓の言葉は清閑なる空気を払拭するものとは成り得なかった。
そうだね、と力無く呟くアカネとエリの背中には悲愴が漂う。

梓「…………」

 澱んだ感情は周囲にも伝染するもので、何とか場を和ませようとしていた梓の頭も自然と下がっていった。

エリ「ほんとにこれで良かったのかな……」

アカネ「今更何言ってんのよ」

 ふと弱音を漏らすエリをアカネが窘める。

エリ「だって……。しずかは確かに私達と比べたら桁違いに強いかもしんないけどさ……」

アカネ「やめてよ……」


150以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 20:57:24.66j2W2KYAO (6/13)

エリ「それがあの子が無事に帰ってこれる理由になるのかな……」

アカネ「やめてったら!」

 アカネの叫びはエリには届かない。
遂にエリの足は止まり、手に持っていたバッグを手放す。

エリ「どうしよう……。私達、しずかを見殺しにしちゃったよ……っ!」

 眼に力が入っているのが傍から見ていても分かる。
だがその力みとは裏腹に、大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちた。

アカネ「だったらどうしろっていうのよ! 何の策も無しに突っ込んで皆で死ねとでも言うの!?」

 アカネは憤りに身を任せ、ガードレールを殴り付けた。
鉄製であるにも関わらずレールは紙のようにひしゃげる。


151以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 20:58:14.56j2W2KYAO (7/13)

エリ「そんなの、分かんないよ……」

 振り絞るように呟き、エリは閉口する。

アカネ「……結局誰かがやらなきゃいけないの。それが出来ない私達には悔やむ権利なんて無いわ」

 エリに背を向けてアカネは再び歩き始めた。

梓「…………」

 もの言わぬアカネの背中から悲痛の叫びが聞こえてくるような気がして、梓は眼を逸した。
視線を逸した先には俯くエリ。
その顔を上げて言葉をかけてやる事すら出来ない自分が、堪らなく嫌になる。
 今になって思うと、姫子が学校に残ったのも気が急いてしまったがゆえなのだろう。
 戦いは始まったばかりなのに、士気は壊滅的に低下してしまっていた。


152以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 20:59:14.98j2W2KYAO (8/13)

 刺すような鋭い風が吹き荒れ、雪を運ぶ。
風が吹いているのか雪が吹いているのか分からなくなる過酷な状況下で、木下 しずかは着実に歩を進めていた。

しずか「ううぅ……」

 身体自体は琴吹財閥製の耐寒スーツのお陰で常温を保ってはいるものの、首から上の外気に触れる部分は悲惨だった。
髪の毛や睫毛は凍り、元の面影は殆ど見られない。

しずか「冷たいよぅ……」

 服が湿る事も厭わずにどっかりと雪の上に座り込む。
だが氷雪は尚も降り注いできて、しずかの英気を殺いでゆく。
 このままではもたないと判断したしずかはそこで小休止を取ることにした。


153以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 21:00:02.40j2W2KYAO (9/13)

しずか「お腹空いたなぁ……」

 肩にかけたリュックの中から真空パックに入った粘土のような携帯食料を取り出し、張り付けられていたシールを剥がす。
すると真空パックはたちまち熱を持ち蒸気を放った。

しずか「あちちっ……」

 雪の中にそれを突っ込み、温度を調節するとしずかはチューブの蓋を開けた。
チューブを吸い上げると味が薄くお世辞にも美味とは言えない流動食が口内に広がる。
味は粗末なものでも、この過酷な環境下で自分はまだ生きているという実感は自然としずかの頬を綻ばせた。


154以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 21:01:00.71j2W2KYAO (10/13)

斎藤「どうしたものか……」

 娯楽など何一つ無い名ばかりの談話室にて、斎藤は煙草を咥えてぼんやりと宙を眺めていた。

「身に余る悪巧みはその身を滅ぼすぜ?」

 背後で聞こえた粘っこい声色に斎藤は眉をしかめた。

斎藤「なんだ、後藤か」

後藤「なんだとは何ですかい。忠実な部下をないがしろにしてる内は三流止まりですよ」

 自分で言っていれば世話は無い、と軽くあしらい、斎藤は煙草を灰皿で揉み消した。

後藤「全くあのお嬢も人使いが荒い。あそこまで用心深いと生きるのも息苦しいだろうに」

斎藤「目的の為ならどこまでも用意周到になれる。それこそが成功者の条件だと思うがな」


155以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 21:02:05.61j2W2KYAO (11/13)

 斎藤の言葉を鼻で笑い、後藤は胸ポケットからシガレットケースを取り出して煙草を咥えた。
煙草の先端に一人手に火が点る。

後藤「はっ、堅苦しい生き方だな。俺には真似出来ねーや」

斎藤「人の生き方に水を差すのは感心しないな」

 後藤が吐き出した紫煙を斎藤は軽く手で扇いだ。
それを一瞥すると後藤はにやりと口角を歪める。

後藤「そいつぁ失敬。俺はある程度の資金を稼がせてもらったらこんなところからはおさらばさせてもらうさ。そんでバイクで世界を旅する。人生を楽しまないのは罪だぜ?」

 その言葉はいちごに向けられているのか、はたまた自分に向けられているのか。
斎藤には分からなかった。


156以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 21:02:58.17j2W2KYAO (12/13)

斎藤「好きにしろ。与えられた仕事をこなしていれば私は何も言わんさ」

後藤「……やっぱつまんねーな、斎藤の旦那は」

 くるりと踵を返して後藤は歩み始めた。

後藤「さてと、俺は夢の為に狐狩りに出掛けますかね」

 人指し指で短くなった煙草を弾く。
炎の赤は放物線を描いて、床に落ちる前に大きく燃え盛った。
それはほんの一瞬の出来事で、煙草の吸い殻は既に灰の一片すら残っていない。

斎藤「……私にも夢はあるさ。年甲斐もなく無様に追い続ける下らない夢がな」

 誰も居ない空間で斎藤は自嘲気味に微笑む。

斎藤「私が仕える主君に、全てを捧げ続ける事……」

 泡沫のように舞った言葉は誰にも聞かれることなく弾けた。


157以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 21:06:18.78j2W2KYAO (13/13)

後藤「我が問いに 空言人は 皆燃える」

しずか「ぐ、グレートハイカー!?」
そんなノリ

フィギュア班はちゃんと所持金と相談しようね!
お兄さんとの約束だゾっ☆


158以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 21:36:22.92Y3uFndgo (1/1)




159以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 21:41:19.29bErN0O.o (1/1)

最近のノリが本編とずれてきててわろち


160以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 23:12:03.81Rjdwjnwo (1/1)

乙乙!


161以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 00:10:16.18pZvCUEAO (1/1)

乙乙乙!!


162以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 16:01:46.47756jcgSO (1/1)


自分用メモ しおり

――――――――――――――――――――――――――
         ここまで読んだ
――――――――――――――――――――――――――

・しずか南極 ・梓緑修行 ・澪氷優 ・斎藤後藤火 ・三花獣

 


163以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 23:17:51.65aFYzNAAO (1/9)

 凍て付く氷雪に覆われ、あらゆる存在を拒む建造物。
しずかは遂にそれを眼前に見据えるところまで来ていた。

しずか「…………」

 腕に巻き付けた時計型のカメラを起動する。
音も無く、光も無く、しずかが撮った光景は自動的に桜高へと送られる。

しずか「よっし!」

 両頬を叩き、気を引き締める。
ここから先は一言も口を開く事すら出来ない。
それを頭の中に刻み込み、高く反り立つ塀をよじ登ってゆく。
常人ならば一通りの道具が無ければ登れないであろう垂直な壁だが、そこはやはり流石桜高の生徒と言ったところか、階段でも登るかのようにスムーズに登ってゆく。


164以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 23:18:31.13aFYzNAAO (2/9)

 猫のようにしなやかな動作で塀から降り立つ。
ふと振り返り、足跡の心配をしたがそれは杞憂だと気付いた。
視覚されない。触る事すら出来ないしずかが唯一残した足跡は降り注ぐ雪に瞬く間に覆われてゆく。
少しだけ頬を緩めて歩きだそうとしたその瞬間、しずかの真横を赤い何かが通り抜ける。

しずか「──っ!?」

 心臓が跳ね上がり、一瞬にして呼吸が乱れる。
通り過ぎたものが炎だと気付いたのはそれが雪を溶かして作り上げた一本道を視覚してからだった。

「かったりぃなぁおい」

 調子はずれで緊張感の無い声が響く。


165以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 23:19:18.00aFYzNAAO (3/9)

 黒いスーツを身に纏った男は咥え煙草のまま降り注ぐ氷雪の中を悠然と歩いている。
三流ホストのような伸ばしっ放しの黒髪は片目を完全に覆っており、隠れていない右目は野獣のように鋭い。

後藤「……うん?」

 雪解けの道を歩いていると後藤はふと眉をしかめた。
確信があるわけではない。だが何かが這っているような、或いは何者かに見られているような不快な感覚を覚える。

しずか「っ! ──っ!」

 意味が無い事を知っていながらしずかは両手で口を覆った。
胸で激しく脈打つ心臓の鼓動でさえ気取られ殺される。
そんな錯覚を感じさせるほどのモノをこの男は持っている。


166以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 23:20:05.55aFYzNAAO (4/9)

後藤「気のせい、だよなぁ?」

 後藤は訝しげな目付きで辺りを見回した。その視線が通り過ぎる度、しずかの心臓は激しく暴れ狂う。
極寒の地のど真ん中にいるのにしずかのスーツの中の肌はぐっしょりと濡れていた。

後藤「まぁいいや」

 後藤は雪が降り注ぐ空を見上げ、不機嫌そうに舌打ちした。
そして片手を眼前に翳し、眼を閉じる。
 その瞬間翳した手の先から血のような赤色をした炎は迸った。
轟音を上げる炎は後藤の行く末に道を作り上げる。

後藤「ったく……。こんだけ雪が積もってると靴が汚れてならねーや」

 しずかに背を向ける形で後藤は呟く。


167以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 23:20:52.17aFYzNAAO (5/9)

 だが後藤の首から上がゆっくりとしずかの方へと向き始めた。
断腸の思いで神に祈るしずかだが、後藤の動きは止まらない。

後藤「お前もそう思うだろ?」

 ここまで下卑た笑みを浮かべられる人間が他に居るだろうか。
しずかは眼を見開き、呆然と立ち尽くしていた。
理性は早急にこの場から離れるよう警告しているが、本能は既に生きる事を諦めて終息へと向かっている。

しずか「────」

 しずかは言葉を紡ぐ事が出来なかった。
叫び声を上げることも、呻き声で訴えることも出来ない。

後藤「…………」

 後藤はにやにやと笑みを浮かべるだけで何もしてこない。


168以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 23:21:51.31aFYzNAAO (6/9)

しずか「──っ!」

 しずかは閉ざした唇を強く噛んだ。
身体を縛り付けていた恐怖が一瞬だけ和らぐ。
だがしずかが後退ろうとしたその時、後藤は思いがけない行動に出た。

後藤「こんだけカマかけて出てこねーってことは……。やっぱ気のせいかぁ?」

 どこか不満げな表情を作り、後藤は視覚していないしずかの顔へと手を伸ばした。

しずか「……っ」

 安堵の溜め息を吐くべきか歓喜の雄叫びを上げるべきか、取り敢えずは一命を取り留めた喜び故にしずかの呼吸は再び乱れた。
 視覚されないとは言えど些か不安に思ったしずかはそろりと身を屈めて後藤の手を躱す。


169以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 23:22:45.26aFYzNAAO (7/9)

 後藤がおかしいなぁ、などと呟いている脇でしずかは手を合わせてひたすら祈った。
 早く行け、足を止めるな、振り返るな。
呪詛の言葉のように心の中で呟き続けるしずかの思いが伝わったのか、後藤は振り向くことなく歩き始めた。

後藤「っかしーなぁ。俺もそろそろ年かぁ?」

 煙草を咥えて指先に火を灯す。
吐き出した紫煙は寒空の元で吐き出る白い息と混ざり合い、残り香を置いて言った。

しずか「良かった……」

 捻った言葉や感想などは要らない。
しずかは生きているという実感を味わう為、小声ながらもそう呟いた。


170以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 23:23:47.91aFYzNAAO (8/9)

 腕時計型のカメラを後藤に向けてピントを調節し、シャッターを切る。
音も光も発することは無い。つまりこの行為がばれる事は無いのだが、しずかの手は小刻みに震えていた。

しずか「ふぅー……」

 これで一つ大きな仕事をこなしたかのような疲労感があるものの、その実やるべき事はまだ何一つとしてこなしていない。
 やれやれだね、としずかは呟き、後藤が作った道を避けて歩き始めた。
 もし後藤が自分の能力を熟知していれば。
邂逅した相手が後藤よりも用心深い者だったら。
無限に存在するIfの中のどれかが成立していれば自分の命は無かった。
この時点ではしずかは神に愛されていたのだろう。
そんな事を考えながらしずかはそっと溜め息を吐いた。


171以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 23:25:13.40aFYzNAAO (9/9)

後藤「まずは挨拶代わりだ!」

しずか「こんなもん初見で勝てるかあああああっ!!」

そんなノリ


172以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 00:07:16.53qn6FNIYo (1/1)

おつー


173以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 00:12:47.54dq9UsUU0 (1/2)

てす


174以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 00:44:40.17gu0xrADO (1/2)

乙、
今日は澪
http://imepita.jp/20101209/003370

http://imepita.jp/20101209/005770

http://imepita.jp/20101209/004440

http://imepita.jp/20101209/004070
オマケ、和のボツ写真
http://imepita.jp/20101209/007000
後ハルコネン無理、
ハルコネンってセラスたんの得物で良いんだよな?でもあれ固定式フィギュアの上に1,5諭吉もしやがる、
よって代わりの対戦車ライフルを2丁ほど発注したんだが土日までかかりそうな感じだ。



175以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 00:48:09.89dq9UsUU0 (2/2)

>>174澪がデビルかっけえ!!



176以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 01:16:13.232JJCp1Ao (1/1)

>>171
乙です!

>この時点ではしずかは神に愛されていたのだろう。

おい!wwwしずかが心配で眠れなくなるだろwwwww

せっかく無事に着地出来たというのに!

>>174

こちらも乙!
やっぱ想像していたのをこの目に出来るのは感慨深いな~


177以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 02:57:56.59HI9vsyYo (1/2)

>>174
ハルコンネンだった… .. .: ∬ ::::: ::: :::::: :::::::::::: : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
        ∧_∧ . |||.: : : ::: : :: ::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
  ストン   /:彡ミ゛ヽ;)ー、 . . .: : : :::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::
    ||| / :::/:: ヽ、ヽ、 ::i . .:: :.: ::: . :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
      / :::/;;:   ヽ ヽ ::l . :. :. .:: : :: :: :::::::: : ::::::::::::::::::
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄
大丈夫、俺たちはおまいさんを信じてるよ!!

ところでフィギュアが1.5諭吉?元ネタが1.5諭吉?


178以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 06:24:17.51gu0xrADO (2/2)

フィギュアの方だぜ。


179以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 12:57:38.95HI9vsyYo (2/2)

>>178
 . .... ..: : :: :: ::: :::::: ::::::::::: * 。+ ゚ + ・
        ∧ ∧.  _::::。・._、_ ゚ ・    
       /:彡ミ゛ヽ;)(m,_)‐-(<_,` )-、 *
      / :::/:: ヽ、ヽ、 ::iー-、     .i ゚ +
      / :::/;;:   ヽ ヽ ::l  ゝ ,n _i  l
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄ ̄E_ )__ノ ̄
よし、なら元ネタの方のデン○ロビウムを買うんだ!!縮尺合う気しないけど…。


180以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 16:50:17.78YW8nVIAO (1/1)

>>174
紫のパーカーが必要だな


181以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 01:17:23.02e714xwAO (1/1)

乙!!

キャラの戦闘力が知りたいな。


182以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 08:17:44.10j/uE9QDO (1/2)

今日はりっちゃん、
律「おぉっと、おいおい、いきなりかよ」

http://imepita.jp/20101210/028460
律「バーン!、はい死んだー」

http://imepita.jp/20101210/028870
律「迅さを一点に集中させればどんな分厚い塊でも砕け散る!!」

http://imepita.jp/20101210/029640
http://imepita.jp/20101210/030030
みたいなノリ、
>>179>>180
すまん、勘弁してくれ、流石にそんなスキルは無いぞ。


183以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:13:03.92ehA7zoAO (1/18)

和「あら?」

 パソコンのディスプレイが点滅し、受信音を鳴らす。
本日二度目のしずかからの受信に一同は和の元へ駆け寄る。
純はマインスイーパーに飽きたのか、既にソリティアに移行していた。

律「さっき入口の写真が届いたばかりだろ? 幸先良いなぁ」

和「人、かしら? 見づらいわね……」

 送られてきた映像に映る人影にカーソルを合わせ、マウスを二回クリックする。

紬「後藤……」

 紬は片手で口を覆い、悲しそうに眼を伏せた。

律「後藤って、あのなんとか衆ってのの……」

澪「従者衆だろ」

 そうそれ! と律は指を弾きながら紬の方へと振り返った。


184以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:13:42.71ehA7zoAO (2/18)

 だが振り返った先にあった紬の辛そうな表情を見て、律は自分の軽率さを改めた。

律「……ごめんな。やっぱムギにとっちゃキツいよね」

紬「いいのよりっちゃん。覚悟は出来てるから」

 強がって笑っているのは誰の目から見ても明らかだった。
だが律は紬のそんないたいけな努力を汲んで、それ以上は言及しようとしなかった。

紬「唯ちゃんの方が大切だもんね」

 心の平静を求めるように自分に言い聞かせる。
だがそれは欺瞞だと紬は心の何処かで理解していた。
たとえ裏切り者だとしても、ディスプレイに映る後藤、そして従者衆と唯を天秤にかけて選ぶ事など出来やしないのだ。
 遠い目で紬は天井を仰ぎ、幼い日の事を思い返す。


185以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:14:23.17ehA7zoAO (3/18)

後藤「今日から貴女の身の回りの世話をさせていただく後藤です。至らない点もあるでしょうが、その際は何卒ご教示下さい」

 たどたどしくはあるものの、丁寧な言葉遣いだった。

紬「こちらこそよろしくおねがいします」

 幼い紬は少し弾んだ声で礼を返した。
その声とは裏腹に紬は思っていた。
また要らない置物が増える。自分が一人になれる時間が減ってしまうと。
 この頃の紬は小学校三年生だった。
その年の子供は往々にして人との繋がりを求めるものなのだが、幼い頃より置かれた環境が紬の繋がる心を荒ませていたのだ。


186以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:15:14.48ehA7zoAO (4/18)

斎藤「家庭教師の方が体調不良でお見えにならないので今日は今から二時間は自習です。何かあれば後藤に言いつけて下さい」

紬「分かりました」

 紬の二つ返事を聞くと斎藤は音も無く去ってしまう。
残された二人が口を開く事はなく、静寂が部屋を包み込んだ。

紬「…………」

 鉛筆が紙の上を滑る音が断続的に聞こえる。
後藤はその音を聞きながら、年のわりにはやけに大人びた紬の後ろ姿を眺めていた。

後藤「すげーなぁ。この年から机に向かってお勉強なんて俺だったら五分も持たねーや」

 静寂が一時間ほど続いたあたりだろうか、後藤は従者とは思えない軽率な言葉遣いで呟いた。


187以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:15:50.69ehA7zoAO (5/18)

 鉛筆を握る紬の手に力が込められる。
お前に何が分かる? 出来るのではなくやらなければならない環境に置かれた自分の心中を、少しでも想像した事があるのか。
沸き上がる苛立ちをそのままこの軽率な男にぶつけたい衝動に駆られたが、父の期待を考えるとそれは出来なかった。

紬「……お茶を貰えますか?」

後藤「はあ? んなもん給仕係にでもやらせろよ。何で俺が小学生に茶なんざ汲まなきゃなんねーんだよ」

紬「え?」

 沸き上がった怒りが急速に冷めてゆくのを感じる。
はたして今まで生きてきた中で自分にこんな汚い口を利く者がいただろうか。
未知なる人種との邂逅に紬は恐怖すら感じつつあった。


188以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:16:39.94ehA7zoAO (6/18)

後藤「ったく、斎藤の旦那も人がわりーよな。初日から令嬢の目付け役なんて荷が重過ぎるっつーの」

 がしがしと頭を掻きながら後藤はシガレットケースを取り出す。

後藤「っと、流石に煙草はマズいよな。失敬失敬」

 苦笑いしながら後藤は胸ポケットにそれをしまう。
この時点で普通は解雇に値している。
それを知ってか知らずか後藤は我が物顔でずかずかと紬に歩み寄ってきた。

紬「な、なんですか……?」

後藤「ははっ、そうびくびくしなさんなって。ちょっくら俺の退屈凌ぎに協力してもらうだけさ」

 後藤は机の上に広がったノートを取り上げ、ぐしゃぐしゃに引き千切った。


189以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:17:27.98ehA7zoAO (7/18)

紬「っ!?」

 散らばる紙屑を見て、紬は呆然とするしかなかった。

後藤「この年から机にかじりついてっとろくな大人になんねーぞ。折角誰も見てねーんだからガキらしく遊ぼうぜ」

 後藤は人の悪そうな卑しい笑みを浮かべた。
だが紬は不思議とそれを不快には思わなかった。
突拍子も無い新人従者の提案にただただ驚くだけだったのだ。

紬「…………」

 思えば物心がついた時からまともに笑った記憶が無い。
しかしどうしてだろうか。
この男となら今まで笑えなかった分まで笑えるような気がする。
紬はそんな淡い期待を抱きつつあった。


190以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:18:18.93ehA7zoAO (8/18)

後藤「さて、と……。意気込んだは良いものの最近の子供の遊びはよく分かんねーんだよな。何かやりたい事無いのか?」

 普通の子供ならばここであれをやりたい、これをやりたい、と騒ぎ立てるものなのだが、この時の紬は違った。
胸の前で両手を組んでしゅんとうなだれたのだ。

紬「私、今まで遊び道具なんて貰ったことないです……」

 口ごもりながら紬は言った。
後藤はばつが悪そうな顔をして頭を掻いたが、それはほんの一瞬で、再び下卑た笑みを浮かべてずいっと紬に詰め寄った。

後藤「最近の子供は道具がなきゃ遊べないのか? こんな時に頭使う為にお勉強してんじゃねーのかよ、んん?」


191以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:18:50.00ehA7zoAO (9/18)

 乱暴な物言いに紬は思わずたじろいだ。
そして後藤は紬の反論を待たずに閃いたぜ! と叫びながら部屋を飛び出してゆく。

紬「…………」

 一から十まで何一つとして理解出来ない人間だ。
紬は幼いながらも後藤の人格の突拍子の無さを悟った。
まるで条件反射で喋り、動いている。
それは自分では真似出来ない。いや、真似しようとも思わない。
けれどもどこか羨ましさすら感じてしまう気持ちの良い生き方だった。

後藤「おっまたせーい!!」

 かちゃかちゃと音を響かせながら、後藤が再び戻ってきた、
右手には盆に乗せられた十数個程のグラス。
そして左手には水が入ったピッチャーがあった。


192以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:19:24.75ehA7zoAO (10/18)

後藤「日曜に早起きした甲斐があったぜ。まさかこんなところで役に立つとはな」

 紬には何の事を言っているのかさっぱり分からなかった。
困惑する紬を余所に後藤はてきぱきと机を片付けてグラスを置いてゆく。

紬「…………」

 作業が進むにつれて紬は後藤がやらんとしている事を理解した。
机の上には異なる量の水を注がれた八つのグラス。
後藤は鉛筆を手に取り、横一列に並んだグラスを順に叩いた。

紬「わあっ!」

 グラスは澄んだ音で音階を奏でる。
紬の表情は年相応の少女のそれと同じように綻んだ。
 後藤は器用に音を刻み、ばらばらの音を繋いで歌を作る。


193以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:20:16.21ehA7zoAO (11/18)

後藤「と、こんなもんか」

 後藤は満足げな笑みを浮かべて鉛筆を紬に手渡した。
やってみろと手で合図をするが、紬はもじもじして顔を伏せている。

紬「でも私、こんなのやった事無いから……」

後藤「はっ、よっぽどの暇人じゃなきゃこんな事やんねーよ。こんなもんピアノと一緒だって」

 強引に鉛筆を握らせると後藤は更に強く促す。

紬「…………」

 そろりとグラスを叩いてみる。
澄んだ音が鳴り響くと紬の顔は更に綻んだ。
今度は後藤の手ではなく自分の手で音を紡ぐ事が出来た。
他の子供にとっては何でもない事が、紬の心に温かい何かを染み渡らせる。


194以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:20:49.51ehA7zoAO (12/18)

 紬は顔を両手で覆い、肩を震わせた。
小さな指の間から一粒の涙が零れ落ちる。

後藤「なぁにめそめそしてんだよ」

 後藤は肩を竦め、紬の頭を乱暴に、優しく撫でた。
それを口火に塞き止められた水が決壊したかのように紬の中から何かが溢れ出た。

紬「こういう事するのが……。ずっとずっと夢だったんです。私……私……っ!」

 後藤は困ったように頭を掻く。
だが人の悪そうな表情の中には、確かな優しさがあった。

後藤「……社長令嬢だからって無理に気負うこたねーよ。寂しくなったら俺や斎藤の旦那が一緒に遊んでやるからさ」


195以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:21:34.70ehA7zoAO (13/18)

 まぁ斎藤の旦那は年食い過ぎってから厳しいかもな、と喉を鳴らして笑うと、後藤は紬の両手を取った。
涙でくしゃくしゃになった紬の顔が露になる。

後藤「そうだ。俺の夢はバイクで世界中旅する事なんだけどよ、お前がこれくらい大きくなったら後ろに乗っけてやんよ」

 紬の頭上で手をひらひらと振り、後藤は笑った。
その笑顔は今日一番、そして紬が今まで見た笑顔の中で最も人間らしい笑顔だった。

紬「うん!」

 紬はくしゃくしゃになった顔に年相応の無邪気な笑顔を浮かべた。


196以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:22:27.42ehA7zoAO (14/18)

 それから後藤と紬は紬の父や厳しい従者達の目を盗んで色んな事をした。
温室育ちの紬にとってそれらは新鮮で、人格に大きな影響を与える。
 多くの習い事の中で特にピアノに熱心に打ち込んだのもその日の出来事がきっかけだ。
今でも時に見せる向こう見ずな好奇心も、かつて紬が後藤のそんな人格に憧れた事が影響なのだろう。
 彼女が何か楽しい事を経験した時に常套句のように口走る「するのが夢だったの」という決まり文句はその日から始まった事は、今となっては彼女自身も覚えていない。

紬「…………」

 きっと語られる事は無い。
紬はそんな泡沫のような思い出を愛でるように思い返す。


197以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:23:14.48ehA7zoAO (15/18)

 あの時後藤が示した身長に到達する事は出来ただろうか。
そんな自問自答を最後に紬は考えるのを止めた。

紬「その写真に写ってるのは従者衆の一人、後藤よ」

律「…………」

 鬼気迫る紬の物言いに律は思わず押し黙った。

紬「昔手品と称して火を操るのを見た事があるわ。闘気の事なんて知らなかった私にもはっきり見えたから──」

和「少なくとも私や立花さんと同等、或いはそれ以上の使い手ってわけね」

 紬の言葉を和が代弁する。
紬は肯定の意を込めて強く頷いた。

紬「私の事は気にしなくていいの。私も全力でやるから皆も──」

 紬の口から紡がれた言葉は冷たく、それでいた燃え盛る火のような思いが込められていた。

紬「従者衆を、皆殺しにするつもりでいて」


198以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:25:03.73ehA7zoAO (16/18)

ロリムギ「口笛は何故遠くまで聞こえるの?」

後藤「それはねツムギ、アルプスは空気がとても綺麗だからだよ」

そんなノリ


199以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:26:30.13tk4q0MAO (1/1)

後藤△


200以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:38:50.48j/uE9QDO (2/2)

残りの3人もきっと強烈なキャラに違い無い。


201以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 22:48:21.14ehA7zoAO (17/18)

多分>>181みたいな人が他にも居そうだからお粗末ながらも強さ順に並べてみた

ウイさん>>>何かよく分からんが凄い壁>>>澪>姦通式の壁>>>斎藤≧後藤>和≧恵>純≧姫子≧対姫子戦唯(?)>>>絶対の彼方>>>三花>>通常唯>律>しずか>信代>文恵>紬>風子>>>トップランカーの壁>>>梓(銃器持ち)>>>上位ランカーの壁>>>キミ子≧よしみ>>エリ>アカネ>>純にボコられた不良>>>中堅の壁>>>吹奏楽部部長>>梓(銃器無し)>>いちご>>>>>>>>物語に参加出来るか否かの壁>>>>>>>>>>>>>>冒頭の不良、憂の闘気に当てられて自殺した不良、聡etc.

ぶっちゃけ即興だからあてにならない(つーかあてになったら興が殺がれる、よな?)けど大まかに言うとこんな感じ。
取り敢えずクソねもいのでフィギュア班に感謝しつつ僕は寝ます。


202以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 23:14:49.04KaFEyjgo (1/1)

憂がスゴイのはわかったが
澪もそこまで強いんだな


203以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 23:27:30.10YEKnOcAO (1/1)

>>201
元序列1位のさわこはどの辺なんだ?


204以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 23:30:01.18ehA7zoAO (18/18)

>>203
忘れてた、後藤とほぼ同列かちょい下。
まぁその辺をさ迷ってる感じで


205以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/11(土) 00:38:56.05STgC50so (1/1)

つーか紬と律は修行せんでいいのか


206以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/11(土) 01:01:34.18Tj5HvcDO (1/1)

今日はムギちゃん、

紬「よいしょ」グワッ

http://imepita.jp/20101211/021500

紬「えい!」ブン

ビターン!!

http://imepita.jp/20101211/022000

紬「レコアさんとサラちゃんは私が頂いて行きますね」

http://imepita.jp/20101211/022360
そんなノリ、
律紬はスレチ気味な画ばっかでスマン、でも劇中の速さとパワフルさをなんとかして表現したかったんだ、明日はムギの究極真拳を繰り出す予定、
最後に明日の夜には射手梓を御披露目出来ると思う、
>>205俺もそう思ってた所だ、勿論>>1は何かしらの手は用意してるんだよな?


207以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/11(土) 03:12:33.05FgRKw32o (1/1)

>>1
乙!回想パートって素敵やん

>>206
その写真だと修行必要無いぐらいパワフルwwwwwww


ちょっと待て、その強さ序列に姦通式の壁ってあるがまさかそれってこの先りっちゃ・・・・・ゴクリ


208以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/11(土) 06:55:09.76/Ln566DO (1/1)

>>206
フィギュア組おつかれ
律の突きに関して細かいこと言うと右手で殴るときは右足は後ろだぞ
サウスポーでジャブ打ったってなら分かるが


209以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 01:43:05.16Kw/cWYDO (1/1)

くそっ、仕事が遅れて不在通知の洗礼を受けてしまったぜ、
というわけで射手は明日だ、
今夜は宣言通りムギの究極神拳を魅せてやるぜ!

http://imepita.jp/20101212/025960
http://imepita.jp/20101212/030030
http://imepita.jp/20101212/030540
チキンをな俺は究極神拳とか言っときながらこの程度です、
百合以上は恐くて揚げれん、
>>208
アドバイスサンクス、次以降参考にさせて貰うぜ。



210以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 03:34:12.93J7Df6AAO (1/1)

これはひどいwwww


211以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 01:09:04.27GutVnoDO (1/1)

ふう、やっと射手にゃん出来たぜ、
まずはガンにゃん

http://imepita.jp/20101213/035340

次は砂にゃん

http://imepita.jp/20101213/036140

最後にマシにゃん

http://imepita.jp/20101213/034090

各武装でのアクションは次回、
次からは話が進む毎に少しずつ貼るようにするよ、
後ハルコルネンの代わりはちゃんと用意したから安心してくれ。



212以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 02:48:14.13Z39gDjso (1/2)

>>211
おぉ!今までで一番完成度高いな!!
乙です。

しかし背景を何とかしないともったいない!!

ヒーターの前で戦ったらアズにゃん干からびちゃうwwww


213以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 08:28:11.76oKlAs1Io (1/2)

>>211
あずにゃんを這い蹲らせるんじゃねぇ!!
黒い髪が触角にみえてまるでgkb…。
カサカサカサ


…おっと誰か来たみたいだ。


214以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 16:53:17.38FqWnLgAO (1/2)

>>211
はやく憂のフィグマを入手しなければな


215以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:36:18.831Qi/e2AO (1/18)

 後藤との不吉な邂逅の後、しずかは順調に敵陣の奥深くまで潜り込んでいた。
先程の緊張などまるで無かったかのように、しずかの表情からはうっすらと笑みが漏れている。

しずか(いける……っ!)

 声には出さないものの徹底的に自身を鼓舞した。
そのお陰かどうかは定かではないが、しずかの動作は時間が経つ毎に機敏になってゆく。

しずか「っとと……」

 一瞬だけ声を漏らしてしまい、思わず身を震わせる。
だがしずかの目に止まったものはしずかを動揺させるには充分過ぎるものだった。

しずか「…………」

 他の扉とは明らかに室が違う鋼鉄製の扉。
そこには『披験体収容室』と刻まれていた。


216以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:37:18.941Qi/e2AO (2/18)

 心臓が脈打つ音が一際大きくしずかの頭に響く。
確証があるわけではないが確信はあった。
自分達が助けるべきクラスメイト、平沢 唯はこの扉の向こうにいる。
 しずかは恐る恐る扉に手を伸ばしてみた。
自分の完全ステルス能力は生半可なセキュリティには認識すらされない。
その自信すら揺らがされる何かがこの扉にはあったのだ。

しずか「……っ」

 やはりというべきか、扉にはロックがかけられており、ぴくりとも動かなかった。
だがしずかの本能が鳴らした警鐘は杞憂に終わり、何事も無かったかのように空気が流れてゆく。


217以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:38:06.001Qi/e2AO (3/18)

 しずかは腕時計型のカメラを起動する。
これで丁度三十枚目か、などと考えてそっと一息ついていたその時、それは起きた。

しずか「うぐ……っ!?」

 肩口に指すような激痛。
たまらず痛みの発信部を抑えると、何か固く鋭いものが手に当たった。
それが何か確認する為に振り返ったしずかは自分の選択を悔いる。

「駄目じゃない狐さん。狼から逃げようと思うんなら、その卑しい匂いをどうにかしなきゃね」

 針金が組み込まれた強化ガラスの窓の縁に、妖艶な雰囲気を漂わせる女が腰掛けていた。

「従者衆が一人、江藤よ。よろしくね」


218以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:38:45.631Qi/e2AO (4/18)

 毒々しいまでに艶めいた黒髪はアップで纏められており、黒縁眼鏡の向こうの瞳はしずかを咀嚼するように見つめている。
黒のジャケットと丈の短いキュロットスカートに包まれた肢体はそれらの衣服をはちきらせんばかりに起伏の存在を主張していた。

しずか「くっ……」

 身体が思うように動かない。
まるで全身の血の巡りを止められたかのように身体が痺れている。

江藤「後藤くんと加藤さんは何してるのかしら? こんな女狐一匹見つけられないようじゃ従者衆失格ね」

 女狐と称された事に怒りを覚え、しずかは江藤をきつく睨み付けた。


219以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:39:23.191Qi/e2AO (5/18)

江藤「うふふっ、怖い顔しちゃって。でも駄目よ、全身が痺れて動かないでしょう?」

 にやにやとせせら笑いながら、江藤はしずかに歩み寄る。

しずか「はな……れてっ!」

 拒絶の言葉とは裏腹に、しずかはがくりと膝を折ってしまう。

江藤「ふふっ、興奮しちゃうわ。即効性の毒を盛られてもまだそんなに元気に喋れるの?」

 江藤はしずかの顎を持ち上げ、長い舌をちろちろと動かした。
頬はうっすらと高揚しており、西洋人形のように整った顔は妖艶に歪む。そして……。

しずか「~~っ!?」

 江藤の長い舌がしずかの口内に捩じ込まれた。


220以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:40:01.131Qi/e2AO (6/18)

 口内を侵す舌を噛み千切ってやる事も出来ない。

しずか「んっ……んー……っ!」

 ぴちゃぴちゃと卑しい音が鳴り、しずかの背徳感を煽る。
江藤の細い指がしずかの唇を撫で、舌と舌が絡まり合ってねっとりとした唾液が二人の口内を行き来した。

しずか「──ぷはっ!」

江藤「うふふっ、ご馳走さま」

 不意に唇が離されて、しずかは大きく肩で息をする。
だがそんなものではしずかの身体を蝕むものは払拭されない。
唇を犯された背徳感。そして全身を縛り付ける悪寒。
何故痛みを感じた時点で逃げなかったのかとしずかはひたすらに悔いる。


221以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:40:43.041Qi/e2AO (7/18)

江藤「さぁて狐ちゃん、次はどんな遊びが良いかしら? あっ、安心してね。私が満足するまでは殺さないであげるから」

 冗談じゃない。しずかは思った。
この女は自分の身体を骨の髄まで貪り尽くした挙げ句、残飯のように捨て去るつもりだ。
その末路を想像すると自然としずかの目から涙が零れ落ちた。

しずか「やめて……よぉっ……。こんなの……」

江藤「敵陣の真ん中でそんなお願いが通じると思ってるの? 本気で言ってるなら抱き締めたくなるような可愛い子ね」

 趣味、嗜好の歪みがそのまま具現化したような残虐な笑みを浮かべたまま、江藤はしずかの細い首に手をかけた。


222以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:41:08.651Qi/e2AO (8/18)

江藤「こういうのも最高じゃない?」

 じわじわと首を掴む手に力が入ってゆく。
いたいけな少女を手中に収めた征服感に、江藤は恍惚の表情を浮かべた。

しずか「あがっ……!」

 押し倒された拍子に肩口に刺さった刃物が更に肉を貫き、めり込んでゆく。
だがその痛みにしずかは一縷の希望を見出した。
全身を襲う悪寒が、痛みのお陰で一瞬だけ緩和されたのだ。

しずか「くっ……」

 即効性の毒がどんなものなのかはしずかには分からない。
だがその効力が痛みによって誤魔化せる程度のものならば、そんなものは知る必要すら無い。


223以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:41:37.761Qi/e2AO (9/18)

 しずかは震える手で肩口に刺さった刃物を掴み、そして。

しずか「──っ!」

 渾身の力を込めて引き抜いた。
その痛みは刃が刺さった時のそれとは比べ物にならない痛みで、それはしずかの身体を覚醒させる。

江藤「きゃっ!?」

 意表を突いたしずかの一撃は江藤の元に届く事は無かった。
だがしずかが引き抜いたナイフに塗られた毒を恐れてか、江藤は大きく身体を逸す。
その隙に身体を捻って拘束から逃れたしずかはそのまま脱兎の如く駆け出した。

江藤「あらあら狐さん。そっちに行くなら狼に噛まれた方がマシだと思うんだけどな……」

 取り残された江藤は尻餅をつく形でしずかの背中を眺め、それを追う事は無かった。


224以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:42:09.341Qi/e2AO (10/18)

しずか「はぁ……はぁっ……」

 息遣いは荒く、ステルスなどとうに解除されていた。
 闘気を探られれば一瞬で居場所を突き止められるとはいえ、それ以外に欠点は無いステルス能力の解除方法は声を出す事だ。
その事さえ忘れて、しずかは呻き声を混じらせながら息を荒らげる。

しずか「ひゃ──っ!?」

 足をもつらせて盛大に転ぶ。
何でも無い痛みが今では全身打撲の重傷を負ったような錯覚に陥らせる。
 痛みを堪えて背後を振り返ると、自分をこの状況に叩き込んだ張本人は既に追って来ていない事に気付いた。


225以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:42:47.551Qi/e2AO (11/18)

しずか「…………」

 安堵感から意識が遠のいてゆく。
だがここで寝てしまえば命は無いだろう。
諦めと執着、二極化した感情が責めぎ合う。
 寝そべって葛藤していると、冷たい床を伝って一人分の足音が聞こえてきた。
 しずかは痛みに耐え、よろよろと身体を起こそうとした。
だが、その生への執着は突如として発せられた禍々しい闘気の奔流によって叩き折られる。

「──人間道」

 しずかの視線の向こうから厳かな声が響いた。
その瞬間しずかの身体は冷たい床に叩き付けられた。

しずか「かっ……はっ……!?」


226以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:43:25.911Qi/e2AO (12/18)

 まるでこの空間だけ重力が何倍にも増幅しているような圧力がしずかを襲う。
空気に身体を穿たれ、骨が軋み、臓物が圧縮される。

「侵入者よ、貴様の退路はここで絶たれた」

 霞みゆくしずかの視界に男が現れる。
黒のスーツを身に纏い、表情は黒のサングラスで隠されている。

斎藤「私は従者衆が一人、斎藤だ。来い、貴様の意志を以て活路を見出してみろ」

 厳かな声はそう言った。
体勢は丸腰で棒立ち。傍から見ればある程度武の心がある者ならば一瞬で首を刈り取る事が出来そうにも見える。
だが視覚がそう認識していても本能、第六感は真逆に働く。


227以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:43:57.831Qi/e2AO (13/18)

 どれだけ修練を積んだところで埋めようが無い力量の差。
自分の無力にしずかは再び涙を流した。
歯は震え、耐寒スーツは最早意味を成さず、悪寒がひたすらしずかを襲う。
その様子を暫く無言で眺めていた斎藤だが、痺れを切らしたのか遂にしずかを一喝する。

斎藤「立て! 単身でここに乗り込んで来た覚悟はそんなものだったのか!?」

 怒号の後に斎藤は床をだんっ、と鳴らした。
更に強い重圧がしずかを襲う。

しずか「────っ!」

 最早口を開く事すら出来なかった。
しずかは確信し、諦めた。
ここで自分が命を落とす事は自明の理であると。


228以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:44:31.561Qi/e2AO (14/18)

 この諦めが必然だとすれば、それは偶然だったのだろうか。
どちらにせよ、人はそれを奇跡と呼ぶのだろう。
ぶちりと、しずかの頭の中で何かが切れた音がした。

しずか「────」

 声にならない声を上げながら、しずかは見えざる圧力を突破して立ち上がる。
それを見て斎藤は満足げに口角を弛めた。

斎藤「……それで良い」

 責めぎ合ってくるのは自分のそれとは相反する闘気。
その色はどんな深い森よりも深く緑に染まっていた。
室内であるにも関わらず一陣の風が廊下を突き抜ける。
斎藤はその時一瞬だけ瞬きをしていた。
その刹那の間に、しずかは斎藤の懐に潜り込んでいたのだ。


229以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:45:10.051Qi/e2AO (15/18)

斎藤「っ!?」

 認識出来たのは鋭く輝く銀色のナイフだった。
斎藤は咄嗟に手を翳し、刃を素手で受け止める。

しずか「くっ……」

 空いた片手でがっちりと身体を掴まれ、身動きが取れない。
逃れようと身体を捩らせるが、それも無意味に終わる。

斎藤「もういい」

 不意に斎藤が呟いた。

斎藤「貴様の戦士としての誇り、存分に見せてもらった」

 斎藤は刃が突き刺さった手に力を込め、乱暴に引き抜く。
一瞬だけ鮮血が舞い、直ぐに治まった。

斎藤「その決意に敬意を払おう。一瞬でケリをつけてやる」

 刹那、空間そのものが歪んでゆくような膨大な闘気が溢れ出す。


230以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:45:42.541Qi/e2AO (16/18)

 土壇場で手にした『絶対の彼方』を越える力。
それを以てしても埋まらない力の差に、しずかの心は燃え尽きた。
だが不思議と絶望は無い。
たとえ自分がここで死んだとしても、それは仲間達にここに巣くう脅威を知らせる警告となるのだ。
何一つとして無駄な事などない。

しずか「姫子……」

 最期にしずかは思う。
しずかの死を知ってあの風の申し子はどんな顔をするだろうか。
眉を顰め、身を震わせて涙を流す姫子の姿が頭を過ぎった。

しずか「ごめん──」

 地獄のような孤独の檻の中から救ってくれた貴女に、私は少しでも恩返しが出来たでしょうか。


231以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:46:29.781Qi/e2AO (17/18)

 心の中で自分に問うて、しずかは笑みを零した。
世界が終わりを迎える。
だが姫子と姫子を取り巻く全てのものの世界はまだ終わらない。
きっと穏やかな道を切り開いてくれる。
そう思うとしずかの心はこれまでに無いほどに晴れ渡ってゆく。

しずか「大好きだよ……。姫子!」

 フェードアウトなどでは無い。
しずかの意識は走馬灯を映すこともなく、一瞬で途切れた。

斎藤「……私よりも強いのだな、貴様は」

 斎藤はしずかを掴んでいた手を離した。
何の抵抗も無くしずかの身体は床に転がり、ぴくりとも動かなかった。


232以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:47:55.901Qi/e2AO (18/18)

しずか「木の葉の意志は途絶えんさ……」

姫子「火影のじいちゃん……!」

そんなノリ


233以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 20:50:47.875tPvicko (1/1)

人 合掌


234以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 21:31:51.23qDVGX2AO (1/1)

……


235以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 21:42:47.87FqWnLgAO (2/2)

…………


236以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 21:43:20.78Z7pNl/wo (1/1)

この世界の女は皆レズなんか


237以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 21:47:58.58oKlAs1Io (2/2)

>>683
レズじゃない女の子っているのか?


238以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 22:19:46.66BPO8IfsP (1/1)

未来に生きてやがる


239以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 22:53:05.34Z39gDjso (2/2)

     / ̄⌒⌒ヽ
      | / ̄ ̄ ̄ヽ
      | |   /  \|
    .| |    ´ ` |
     (6    つ /   ちくしょう・・・
    .|   / /⌒⌒ヽ
      |    \  ̄ ノ
     |     / ̄

  __,冖__ ,、  __冖__   / //      ,. - ―- 、
 `,-. -、'ヽ' └ァ --'、 〔/ /   _/        ヽ
 ヽ_'_ノ)_ノ    `r=_ノ    / /      ,.フ^''''ー- j
  __,冖__ ,、   ,へ    /  ,ィ     /      \
 `,-. -、'ヽ'   く <´   7_//     /     _/^  、`、
 ヽ_'_ノ)_ノ    \>     /       /   /  _ 、,.;j ヽ|
   n     「 |      /.      |     -'''" =-{_ヽ{
   ll     || .,ヘ   /   ,-、  |   ,r' / ̄''''‐-..,フ!
   ll     ヽ二ノ__  {  / ハ `l/   i' i    _   `ヽ
   l|         _| ゙っ  ̄フ.rソ     i' l  r' ,..二''ァ ,ノ
   |l        (,・_,゙>  / { ' ノ     l  /''"´ 〈/ /
   ll     __,冖__ ,、  >  >-'     ;: |  !    i {
   l|     `,-. -、'ヽ'  \ l   l     ;. l |     | !
   |l     ヽ_'_ノ)_ノ   トー-.   !.    ; |. | ,. -、,...、| :l
   ll     __,冖__ ,、 |\/    l    ; l i   i  | l
   ll     `,-. -、'ヽ' iヾ  l     l   ;: l |  { j {
   |l     ヽ_'_ノ)_ノ  {   |.      ゝ  ;:i' `''''ー‐-' }
. n. n. n        l  |   ::.   \ ヽ、__     ノ
  |!  |!  |!         l  |    ::.     `ー-`ニ''ブ
  o  o  o      ,へ l      :.         |
           /   ヽ      :



240以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 00:40:20.70ZQ2zfIUo (1/1)

↑今の俺


241以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 00:44:19.78GRpuTcAO (1/1)

いくら死亡フラグがビンビンだったとはいえ……。
この子には幸せになって欲しかったぜちくしょう。

最後に七つの球的なものを集めて、
龍的なものを召喚して生き返るんだよな?

な?


242以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 02:02:16.38I6vvt2Mo (1/1)

>>241
憂さんの近くに置けば生命力に当てられてなんとかなるんじゃない?


243以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 02:26:43.76rYMieADO (1/1)

>>212
OK、もう少しこだわって見る、
今日の分は撮り貯めだから無理だけど、
というわけで今日は
マシにゃん(アクション編)をお送りします、
>>211梓初登場時のマガジン盗られて負けたシーン

地上で連射

http://imepita.jp/20101214/074290
後ろに飛び退きながら弾幕

http://imepita.jp/20101214/083990
http://imepita.jp/20101214/074030
>>214
甘いわ!!

http://imepita.jp/20101214/072820
というわけで純早く出して下さいお願いします。


244以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 14:42:07.98xZ8dm6Uo (1/1)

しずかあああああああああああああああああああああああああああああああああ


245以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 18:44:04.42sagDDgAO (1/1)

>>243
和も憂も限定発売のはずなのに持ってるとは流石だな…


246以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:14:28.53oJ2QukAO (1/16)

 目が痛くなるような真っ白な部屋で、唯は苦痛に耐えていた。

唯「うっ……。ぐぅ……」

 その痛みは何の前触れも無く突然訪れた。
脳の奥を刺す鋭い痛み。そして全身の血が沸騰してきそうな妙な高揚感。
苦痛の中で見え隠れしているのは、貪欲に戦いだけを求める『龍』の本能だった。
 唯の中に巣くう彼女はひたすら呼び掛ける。
『こっちに来い』と。

唯「やだ……っ。やだよ……っ!」

 半ば狂乱気味になりながら唯は頭を抑えた。
だがその苦行は意味を成さず、頭に響いた硝子が割れるような音と共に唯の意識は砕けていった。


247以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:15:05.95oJ2QukAO (2/16)

 先程までいた真っ白な部屋とは対照的に、その部屋は仄暗かった。
部屋と呼ぶには語弊があるかもしれない。
その場所にはあらゆる境界を取り払う純然たる闇と、仰々しく悪趣味な模様が刻まれた門だけがあった。

唯「…………」

 唯は目の前の光景を目の当たりにして唇を噛み締めた。
自分と同じ顔、背丈の少女がその目に虚構を映して立ち尽くしていたのだ。

『我が主がお待ちです。どうぞ中へ』

 その少女は唯を確認すると門の蝶番に手を触れた。
次の瞬間その少女の身体が燃え盛り、一瞬で血のような赤色に包まれる。


248以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:15:36.12oJ2QukAO (3/16)

 肉を焼き、骨を焦がし、魂を蹂躙する。
地獄の業火に焼かれて灰と化した少女は更に細かな粉となって門に付着した。

唯「──っ!?」

 恐らくそれが鍵だったのだろう。
常人では動かす事も出来なさそうな巨大な門が音を立てて開いた。
 その先には更に濃い闇が口を開けて佇んでいた。
黒に黒を重ねて黒で固めたような黒。
唯は少しだけ身震いしたが、勢いよく闇の中へと飛び込んでいった。
 仮にこの世界が自分の内面を映したものだとして、こんな禍々しいものを飼っている自分は果たして人間を名乗っても良いのだろうか。
そんな自虐に満ちた自分への問いに対して答えが返ってきたような気がした。
たった一言、『笑わせるな』と。


249以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:16:07.92oJ2QukAO (4/16)

 一分。或いは一時間、はたまた永遠か。
刹那とも永劫ともとれる時を落下し続けた後に、唯の足はようやく地に着いた。

唯「…………」

 舞い降りた視線の先へと無言でにじり寄る。
だが視界の先の少女は唯に背を向けたまま揚々と挨拶した。

『よう、宿主』

 その少女は唯に背を向けて胡座を掻いていた。
両手には何かを抱えていて、顔をその何かに埋めている。

唯「そんなの……」

 少女が抱えているものが何なのか、唯は直ぐに理解した。
その瞬間強烈な吐き気と目眩に襲われる。


250以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:16:51.10oJ2QukAO (5/16)

『どうしたぁ? 化物でも見たみたいな顔しやがって』

 彼女は振り返った。
 本来は白かったであろう歯はてらてらと赤く光り、血が滴り落ちている。
歯だけではない。
口元、両手、髪の毛。制服から露出している部分の大半は赤黒い血がこびりついていた。

唯「そんなの……。見せないで!」

 唯の悲痛の叫びに呼応して彼女はけらけらと笑った。
そして両手に抱えていたものを乱暴に投げ捨てる。

唯「ひっ!?」

 転がったのは一糸纏わぬ少女だった。
華奢な身体付きで発展途上の凹凸、本来は茶色がかった癖毛だったであろう毛髪は黒く染まり、固まっている。


251以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:17:30.77oJ2QukAO (6/16)

 そしてその少女の眼や鼻がついている位置、つまり顔面は見るも無残な状況になっていた。
まるで西瓜の皮だけを綺麗に剥き取り、現れた赤い表面を乱雑に掻き毟ったかのような肉のクレーターが出来ている。
こぽこぽと間抜けな音を立てて滲み出す血は少女の無念を晴らすことなく、無残に零れるだけだった。

『要らなくなったものを美味しく頂いてるだけじゃねーか。そんな怖い顔するなよ』

唯「悪趣味過ぎるよ!」

 だんっ、と闇を踏み締めて威嚇する。
だが彼女はそんな唯の憤りさえも楽しんでいた。

『要らなくなった思い出。捨てたのはお前自身なんだぜ?』


252以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:18:24.06oJ2QukAO (7/16)

 そしてその少女の眼や鼻がついている位置、つまり顔面は見るも無残な状況になっていた。
まるで西瓜の皮だけを綺麗に剥き取り、現れた赤い表面を乱雑に掻き毟ったかのような肉のクレーターが出来ている。
こぽこぽと間抜けな音を立てて滲み出す血は少女の無念を晴らすことなく、無残に零れるだけだった。

『要らなくなったものを美味しく頂いてるだけじゃねーか。そんな怖い顔するなよ』

唯「悪趣味過ぎるよ!」

 だんっ、と闇を踏み締めて威嚇する。
だが彼女はそんな唯の憤りさえも楽しんでいた。

『要らなくなった思い出。捨てたのはお前自身なんだぜ?』


253以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:20:16.99oJ2QukAO (8/16)

唯「え?」

『日常の中で忘れられてゆくお前はこうして私の餌になる。まさか被害者面する気じゃねーだろうな』

 目を細めてせせら笑いながら、彼女は唯の元へと歩み寄ってゆく。

『今のお前もいつかこうなるだろうさ。その時のお前はどんな顔して私に食われるんだろうな? ひゃっははははっ』

 彼女は唯の首筋に舌を這わせ、無垢な柔肌に唯の血を擦り込む。
嫌悪感だけが先走るばかりで、唯は身体を震わせる事すら出来なかった。

『それもこれも全てお前が選択した結果だ。他の全てを忘れてもこれだけは忘れるんじゃねーぞ?』


254以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:20:16.30oJ2QukAO (9/16)

唯「え?」

『日常の中で忘れられてゆくお前はこうして私の餌になる。まさか被害者面する気じゃねーだろうな』

 目を細めてせせら笑いながら、彼女は唯の元へと歩み寄ってゆく。

『今のお前もいつかこうなるだろうさ。その時のお前はどんな顔して私に食われるんだろうな? ひゃっははははっ』

 彼女は唯の首筋に舌を這わせ、無垢な柔肌に唯の血を擦り込む。
嫌悪感だけが先走るばかりで、唯は身体を震わせる事すら出来なかった。

『それもこれも全てお前が選択した結果だ。他の全てを忘れてもこれだけは忘れるんじゃねーぞ?』


255以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:21:40.39oJ2QukAO (10/16)

 一呼吸置くように唯の耳を甘噛みして息を吹き掛けると、彼女は言った。

『私はいつだってお前の事を一番に考え、お前の味方であり続ける。たとえお前が私を拒んだとしてもなぁ!』

唯「うぐっ──!?」

 刹那、雷光が轟く。
何よりも強く鋭い雷が唯の身体に纏わりついた。

『アッハハはははハハッ!!』

 唯の視界にノイズが走り、五感全てが揺さぶられる。
それでも彼女の壊れたような笑い声は悲しい程に唯の身体に染み渡った。


256以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:22:22.22oJ2QukAO (11/16)

『まぁさかもうお手上げなんて言わないよなぁ? まだ言いたい事も言ってねーのによぉ』

 ポイズン、と呟いて一人笑い転げる彼女の様子など、唯の目には殆ど映っていなかった。

唯「言いたいこと……?」

 漆黒の闇に身を任せて倒れ伏した体勢のまま、唯は呟いた。

『おおっ、笑い過ぎて忘れるところだったよ。今日はお前に説教しに来たんだ、いや呼んだんだっけ? まぁどっちでも良いや』

 彼女は唯の首を片手で掴み上げ、空いた手の指を鳴らした。
世界が渦巻き、捩じれ、崩壊してゆく。
 不意に手を離されて身体がすとんと落ちる。


257以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:23:01.69oJ2QukAO (12/16)

『終点、桜高軽音部部室でーす。ぎゃっはははっ』

 唯はいつも自分が座っていた椅子に腰掛けていた。
机の上で胡座を掻いている彼女はおどけながら指を鳴らす。
紬が持ってきたティーカップが二つ、宙を舞って机に落ちた。

唯「言いたいことって……。何なの?」

『まぁ大した事じゃないんだけどな。お前があの巻き毛女といちゃいちゃしてる間にお前の友達が傷付いてんぞってこった』

 大した前置きもなく彼女が言い放った。
その言葉に唯は眉を顰め、露骨に嫌悪感を示す。

唯「いちごちゃんを悪く言わないで!」

 机を叩き、身を乗り出す。
彼女はそれをとても冷めた目で見ていた。


258以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:23:41.44oJ2QukAO (13/16)

『大事なお友達を悪く言われて大層ご立腹ってかぁ? お前は零から唯まで全部ずれてやがんな』

 まぁ何も持たない私よりかはましかな、と呟き、彼女は冷めて目付きのまま唯に顔を近付ける。

『ずれっぱなしのド天然のお前にも分かるように簡単に道を示してやんよ』

唯「……っ」

『今お前の為に血反吐吐きながら戦ってる奴等は、お前の友達じゃないんかよ?』

 それはシンプル過ぎる教示だった。
手に届く位置に居たいちごだけを盲信し、友の想いに盲目になっていた自分を戒める言葉。

唯「きみは……一体……?」

『今はまだ知らなくても良いよ。お前と私の間にある因果はこんなちっぽけな諍いじゃあ片付けきれねーからな』


259以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:24:16.30oJ2QukAO (14/16)

 唯の問いに答えないまま、彼女はそっと唯の額に触れた。

唯「まっ、待って……!」

 手を伸ばせば届く距離の筈なのにその距離は彼女にとっては数寸で、唯にとっては無限となっていた。
 身体が徐々に闇に溶け、落ちてゆく感覚に陥る。
滲む視界の先に居る彼女の表情は、今までの残虐なものとはどこか違っていた。

『近いうちにまた会おう。もしかしたらそれは明日かもしんねーな』

 下卑た笑い声が空間に鳴り響き、その声は遠のく唯の意識を包む子守歌となっていた。
遥かな深み、或いは高みへと落ちてゆく。
ずっと────。
ずっと──。
ずっと。


260以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:24:54.00oJ2QukAO (15/16)

唯「くぅっ……」

 白い部屋に戻ってきた唯は考える前に身体を動かしていた。
あの黒い場所に居た時とは異なり、胸の痛みはまだ完全には癒えていない。
精神面が穏やかである時は幾分かましにはなっているが、今は痛みのあまり全身から冷や汗が吹き出ている。

唯「うぅ……開かないよぉ……っ」

 閉ざされた扉を押し引きするがびくともしない。
身体の痛みに耐えて力任せに扉を殴るが、それさえも無意に終わる。

唯「いちごちゃん……どうして?」

 押し付けた拳からは血が流れる。
唯はそのまま力無く膝を折り、啜り泣いた。


261以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:27:18.44oJ2QukAO (16/16)

『人肉迅速サイコホラー』

唯「最期の晩餐なんて楽しめないよぅ……」

そんなノリ


262以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/14(火) 23:32:18.78YSUpFoAO (1/1)

おつ


263以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/15(水) 00:55:32.82oOi7ibAo (1/1)

おつおつ


264以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/15(水) 06:56:57.30aF5EpADO (1/1)

>>1乙、
砂にゃんとアズコンネンに夢中で龍神 平沢 唯まで撮影出来なかった、
というわけで今日は
ガンにゃん(アクション偏)

http://imepita.jp/20101215/244930
http://imepita.jp/20101215/245250

梓「唯先輩、いえ、唯、あなたをもう一度、私の女にします!!」

梓「トランザム!!」
そんなノリ、
スレチ全開でスマソ
龍唯と魔王憂選手は
可能な限り狂暴な画を目指す積もりだ。


265以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 00:39:09.01l4oi156o (1/1)

1もおっつー


266以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:11:19.64wc/RJAAO (1/12)

 桜高生徒会室では室内であるにも関わらず爆風が吹き荒れていた。
その風は主の悲痛の想いを具現化したように悲しく哭く。

澪「そんなんじゃあの子が報われないよ」

姫子「ごほっ……」

 姫子は腹部を抑えて嗚咽を漏らしている。
そんな彼女を取り押さえるように澪は長い茶髪を乱暴に引き上げていた。

律「…………」

 報われないのはどちらの方だろう。
律は完全なる力を行使する澪を見て、そんな事を考えていた。
 死と同義である一夜を乗り越えて手にしたその力。
何故そんなものの代償に、こんな冷めた目しか出来なくなってしまったのか。


267以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:12:00.12wc/RJAAO (2/12)

 時は十数分前に遡る。
それはしずかの死がほぼ断定された時だった。

和「……良くて捕虜、けどほぼ確実に殺されてるでしょうね」

 淡々とした口調ではあるが、机の下で握られた拳からは血が滴り落ちていた。

姫子「…………」

 俯いた姫子の表情を伺う事は出来ない。
 脇では紬が目頭を押さえて啜り泣き、律は肩を震わせながらも平静を保つように大きく息を吐く。
 順調に送り込まれていた情報が急に途絶えた時点で全員はある程度予感していた。
和の言葉によってたちまち現実味を帯びてゆく絶望。
それは姫子の身体をつき動かす。


268以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:13:01.53wc/RJAAO (3/12)

姫子「…………」

 姫子は俯いたまま歩き出した。

和「どこに行くの?」

姫子「決まってる、しずかの仇討ちに行かなきゃ。今から一台出せるかな?」

 姫子は和を通り越して紬に問う。
平静を装ってはいるものの、今直ぐに泣き、震え、叫び、暴れ出してしまいそうな危うい雰囲気を醸し出していた。

純「待ってください」

 存在そのものが地雷と化した今の姫子に何の躊躇もなく警告するのは純だった。

姫子「……大丈夫だよ。しずかを送り出したのは私なんだから、その尻拭いもちゃんと私がするからさ」

 姫子は笑えない瞳のまま無理に笑ってみせた。
そして純の肩を軽く叩き、過ぎ去ろうとする。


269以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:13:55.34wc/RJAAO (4/12)

純「何の対策も練らずに行くつもりですか? それじゃああの人、まるで犬死にじゃないですか」

 純はあくまで冷静に、姫子を諭すつもりだった。
だがしずかの死という単語が姫子の逆鱗に触れる。
次の瞬間、純の身体は壁に叩き付けられていた。

純「──っ!?」

 前に闘った時とは段違いに闘気が膨れ上がっている。
そんな驚愕を抱いている間に追撃が迫ってきた。
視覚可能なまでに凝縮された風の刃が現れる。

純「うわっとと……」

 流石と言うべきか、刹那の間に駆け抜ける風の刃を純は紙一重で躱した。


270以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:15:10.36wc/RJAAO (5/12)

 だが姫子の目的は純を屈伏させることではない。
まるで何事も無かったかのように死地へと赴こうとする彼女の背には、自暴自棄でネガティブな感情が渦巻いていた。

澪「待って」

 そんな姫子を澪は黙って見てはいなかった。
敵さえも生かす彼女が仲間が無意の死を遂げる事など許す筈もない。
 待てというたった一言の警告を姫子は無視した。
それがいけなかった。次の瞬間姫子が手にかけた扉は凍り付いた。

姫子「──」

 何か言おうとした姫子はそれさえもかなわずに床に吸い寄せられた。
痛みも無ければ苦しみも無い。
それが澪に足を引っ掛けられたと気付いたのは、仰向けになって天井を見据えてから数秒後だった。


271以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:16:36.70wc/RJAAO (6/12)

 澪は感慨もなく姫子の腹部に片足を捩じ込む。
反作用の力さえも押さえ込み、踏みつぶすその圧力に姫子は声にならない声を上げた。

澪「私が言いたい事は分かるよね。分からないならもう一発いっとくけど」

 姫子の反骨心はまだ絶えない。
噎せ返りながらも瞳には憎悪を宿しており、身体には風を纏っている。

姫子「……退いてよ。私は行かなきゃいけないんだか──」

澪「うるさい」

 澪は姫子の言葉を待たずに刀を鞘に収めたまま振り下ろした。
姫子の側頭部から潰れたトマトのような鮮血が噴き出る。

澪「無意味に死ぬ事に価値なんてあるの?」


272以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:18:31.87wc/RJAAO (7/12)

 その答えは分かりきっている。
それでも姫子は、友を危険の渦中に送り出した自責の念を払拭する償いが欲しかったのだ。

澪「あるわけないよね。無意味なんだから」

 甘えるなとでも言いたげな絶氷の仮面を顔に張り付けたまま、澪は淡々と言い放つ。

姫子「分かんないよ……。じゃあ私は……」

 世迷い言のようにぶつぶつと辛みを吐き出す姫子を見兼ねたのか、澪は乱暴に茶髪を引っ張り上げた。

澪「死にたい人間を引き止めるつもりは無いけどさ、そうやって自分を美化してあの子を侮辱するのは止めてよ」

 駄目押しに、澪は姫子の頬を思い切りひっぱたいた。


273以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:19:25.07wc/RJAAO (8/12)

 こうして時系列は元に戻る。
殺意無き悲しい風は主を置き去りにしていた。
 律には風が示す悲しみが姫子ではなく澪の内面を映しているような気がしてならなかった。

律「澪……」

 律は縋るように澪の名を呼ぶが、当の澪はどこか遠い目をしている。
 律は悟った。
 今の澪を止められるのは自分しかいないという事を。
 たとえどこまで高みに登り詰めたとしても、気難しくて臆病な澪はそこに居る。
その澪は既に死んでしまったというなら叩き起こせば良い。
 儚さすら醸し出す青の少女を見据えながら、律は思った。


274以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:20:30.14wc/RJAAO (9/12)

憂「あなたは一体何なんですか?」

 荒んだ空気に満ちた個室で一人、憂は空虚に話し掛けていた。

『私は貴女ですよ。それ以上でも以下でもありません』

 どこからともなく、憂と同じ声が響いた。

『敢えて私を記号化するならば龍、でしょうね。そういう風に創られたのだから』

憂「創られた……?」

 一体誰に創られたのか。そんな憂の思考を先読みしていたかのように声の主は即答する。

『神様にですよ。もっとも、強くなり過ぎたが故に今はこんな有様ですが……』

 言葉を濁して咳払いすると、彼女は数秒の間押し黙った。


275以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:21:24.29wc/RJAAO (10/12)

『お姉ちゃん』

 沈黙の後に紡がれたその単語は憂の身体を跳ね上がらせた。

憂「……お姉ちゃんが何処に居るか分かるんですか?」

 自分と名乗る空虚にすら縋りつく自分を、情けないと思う余裕は憂には無かった。

『それを伝える為に私は貴女に話し掛けたのですよ』

 次の瞬間宙に光の粒が舞った。
一つ一つは小さく儚いそれは、数万数億と折り重なって形を成してゆく。

『貴女の気持ちはよく分かります。私にも大好きなお姉ちゃんがいましたから』

憂「…………」

 光を映さない憂の両目に映ったのは自分自身だった。


276以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:22:46.07wc/RJAAO (11/12)

『いつだって自信満々で、自由奔放で、たまに手がつけられなくなったりしてたけど……。それでも大好きなお姉ちゃんでした』

 まるで自分の事のように誇らしげに語る彼女の表情は限り無く健やかだ。

『でも神様はお姉ちゃんは何も与えてくれませんでした。どれだけお姉ちゃんが頑張っても、何をしても報われなくて……』

 この少女は一体何を抱えて今まで在り続けたのだろうか。
思案するにつれて深みにはまってゆく自分の意識を憂はすんでのところで引き上げた。

『だから貴女のお姉ちゃんにはそうなって欲しくないんです。だから一緒に行きましょう?』

 差し出された優しい光に対して、憂はただ一言『はい』と呟いた。


277以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 02:24:40.06wc/RJAAO (12/12)

憂「私はここに居ても良いんだ!」

『おめでとう』

そんなノリ


278以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 04:47:34.47WoleI.Qo (1/1)

唯と憂が出会ったらロンギヌスの槍でも防げないセカンドインパクト起きそう。



279以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/16(木) 07:00:59.35UXxW2gDO (1/1)

ああ間違いなく起きるな。


280以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:31:07.43aVo07sAO (1/22)

 やたらと鼻につく甘ったるいルームスプレーの香りが充満した個室に彼女は居た。
アンティーク調の腰掛けに身を委ね、上品に紅茶を啜る姿は中世の貴婦人を思わせる。
 そんな高貴なる彼女のティータイムはノックの音によって中断させられた。

江藤「どうぞ」

 江藤の応対の後に扉は開かれる。
扉の先にいたのは斎藤だった。

斎藤「休憩中のところ悪いな」

 言葉とは裏腹に大して悪びれもせず、斎藤はずかずかと部屋の中に入ってゆく。

江藤「どうしたんですか? 私用ってわけでも無さそうだけれど……」


281以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:31:54.94aVo07sAO (2/22)

 ちらりと斎藤の方を見て江藤は大体の事を把握した。
斎藤は平静を装ってはいるものの、よく見れば肩で息をしており、額にはうっすらと汗が滲んでいる。

江藤「うふふっ、油断しちゃ駄目じゃないですか斎藤さん。狐にも牙はあるんですよ」

斎藤「牙はあっても毒は無い筈なのだがな」

 悪態をつきながら斎藤は空いた腰掛けに座り込んだ。

江藤「それは災難でしたね。でもまだこうして立っているという事は、もしかして斎藤さんって悪運は強い方だったりします?」

斎藤「御託は良い。解毒薬はあるんだろうな」

 有無を言わせぬ斎藤の圧力に江藤は肩を竦めた。


282以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:32:34.33aVo07sAO (3/22)

江藤「ご心配なく。その毒は神経系を狂わせる強力な毒だけど、それで死ぬ事はありませんから」

 脇に置いてあった小瓶と注射器を取り、斎藤に投げ渡す。

江藤「それできっちり一人分。それを打って安静にしていれば今日中には良くなる筈ですよ」

 江藤の説明を受けると斎藤は直ぐに立ち上がり、部屋を後にしようとする。

江藤「あ、そうそう」

 急な呼び止めを煩わしく思いながらも斎藤は振り返った。
江藤はそんな斎藤の心情を察しながらも不敵に笑う。

江藤「毒の効力自体に殺傷能力は無いけど、そんなに血を流してたら早くしないと合併症状で衰弱死しちゃうかも」


283以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:33:16.46aVo07sAO (4/22)

斎藤「……それを先に言え」

 斎藤はぎりぎりと歯を食いしばりながら江藤を睨み付けた。
数秒の沈黙の後に、やや取り乱した動作で斎藤は部屋を後にする。

江藤「斎藤さんに傷を負わせるなんて……。私も少し遊んどけば良かったなぁ」

 ぐっと伸びをして江藤は立ち上がった。
そして個室に備わったシャワールームへと歩を進める。
 上着を脱ぎ捨てスカートのファスナーをそっと引き下ろすと、瞬く間に彼女の姿は扇情的なものとなった。
鼻歌混じりに纏った下着を脱いでゆく彼女の顔には意味深な笑みが張り付けられていたが、それが何を意味するのかは彼女にしか分からない。


284以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:33:52.61aVo07sAO (5/22)

 姫子と澪の諍いの次の日。
完全下校を知らせるチャイムが鳴り響くグラウンドの中央に和達は集っていた。

和「送られた情報の解析が終わったわ。今配った紙を見てくれる?」

 和の一声の後に紙が擦れ合う音が重なった。

澪「凄いな……。三十枚の写真からあの建物の構造の殆どが割り出せてる」

和「あくまで推測よ。実物との差異にはその都度臨機応変に対応してもらうわ」

 事務的に物を言う和には厳格な雰囲気が漂っていた。
彼女が桜高を束ねる事に誰も異論を唱えないのも頷けるだろう。


285以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:34:23.48aVo07sAO (6/22)

梓「臨機応変、ですか……。便利な言葉ですね」

 梓は苦笑いを浮かべておどけて見せるも、動揺は隠し切れていなかった。
もしかしたらこの中で一番足を引っ張るのは自分かもしれない。
そう考えると梓は気が気ではなかった。

純「あれぇ? 梓ってばもしかしてビビってるぅ?」

 梓は横でけらけらと笑う純の肩を軽く小突いた。
だが煩わしくは感じない。むしろ日常を思わせるその軽いやり取りは梓の心の波を静めてゆく。

和「黙って聞きなさい!」

 和の一喝と共に残撃によって生み出された不可視の刃が駆け抜ける。
純はそれを咄嗟に屈んで躱し、事なきを得た。


286以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:35:00.46aVo07sAO (7/22)

純「だぁから! そろそろ私も本気で怒りますよ!? 何ですかそれ! せめて真っ当な人間扱いして下さいよ!!」

 ぎゃあぎゃあと喚く純を完全にスルーしつつ、和は説明を続ける。

和「出来る事なら全員連れて行きたいんだけど不透明な点が多過ぎるのよね。取り敢えず勝手に突入の面子を組ませてもらったわ。異論も受け付けます」

律「あるわけねーだろ。なんたって和の判断なんだからな!」

 両の拳をぶつけながら律は意気揚々と答えた。
彼女も彼女で思うところはあるのだろうがその影を落とす事は一切無い。
 軽音部の部長としての器量には申し分なかった。


287以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:35:47.71aVo07sAO (8/22)

 和は他の面子にも目配せした。
全員が申し合わせたかのように首を縦に振るのを見て、和は少しむず痒くなる。

和「プレッシャーかかるわね……。それじゃ言うわよ」

 少し間を空けて和は一人目を呼んだ。

和「ムギ」

紬「どんと来いです!」

 一人目に彼女が選ばれたのは必然だ。
この作戦は紬無しでは機能し得ない。
そして従者衆にも精通しているという点ではデメリットも多少あるが、それ以上のメリットもあるだろう。

和「澪」

澪「うん」

 澪は地図から目を切らずにそっけなく答えた。
この二人だけで作戦は成功してしまうかもしれない。
そう思わせるだけの力を手にした彼女は、言わば桜高の最終兵器と言ったところか。


288以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:36:25.67aVo07sAO (9/22)

和「次に私ね」

 憶する事もなく自分を推すその自信は流石は『女帝』と言うべきだろう。
今の澪には大きく劣るものの、彼女の強さも常識で計り得るものではない。

和「立花さん」

姫子「……」

 無言で頷くだけだった。
だがその瞳には捨身の覚悟が宿っていた。
或いはその覚悟こそが、最大の武器になるのかもしれない。

和「佐伯さん」

三花「うなー」

 自分で選んだもののこの子はどう動くだろうか。
一抹の不安を抱える和とは裏腹に当の本人はゆらゆらと頭を振るばかりだった。


289以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:37:14.46aVo07sAO (10/22)

和「律」

律「うっし!」

 律は拳と平手を作って打ち鳴らす。
 仮に全体の統率が取れなくなった場合、自分以上に場を纏めるスキルを持っているのは律だ。
力よりも大切な強さ。
そんな期待を抱きながら和は律を選んだのだ。

和「中野さん」

梓「は、はい!」

 裏返った声から緊張している事は直ぐに分かった。
だが軽音部の覚醒していない三人の中で一番初めに力を手にするのは彼女だろう。
少し前とは違う梓の闘気を感じ取った和はそんな予感を抱いていた。


290以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:38:04.80aVo07sAO (11/22)

和「作戦決行は明日。以上の八人を潜入メンバーとするわ。一応聞いておくけど何か異論のある人は?」

 聞くまでもないだろうと言わん許りに一人を除いて皆沈黙を返した。
 選ばれなかったエリ、アカネ、そしてキミ子とよしみもそれは同じだった。

純「いやいや……」

 そんな中純はぼそりと呟く。

純「いやいやいやいやいやいや! これって突っ込むところですよね!? 一応聞いときますけど私は入ってないんですか!?」

 喚き散らす純から鬱陶しそうに逸しつつ、和は手に持った書類を再確認した。

和「ああ忘れてたわ。あんたも入ってるわよ」

 桜高のグラウンドにぶちん、と何かが切れる音が響いた。


291以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 00:42:05.65aVo07sAO (12/22)

純「和和和忘れ物~♪」

和「話し掛けるな。アホの鈴木がうつる」

そんなノリ
年の瀬なのに存外仕事が少ないというジレンマ


292以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 01:15:26.03VLCwSwAO (1/1)

乙~!
ちなみに物語はどのくらいまで進んでる感じ?

まだ3分の2とか?


293以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 01:19:06.291wFhakDO (1/1)

>>1乙

すまん憂のキャラ思いっ切り見誤ってた、
選手じゃ無いんだね……
という訳でこうなりました

憂「今日の所はお引き取り願えませんか?」

http://imepita.jp/20101217/026270
http://imepita.jp/20101217/026630
http://imepita.jp/20101217/026850
http://imepita.jp/20101217/027160
昨日の分も含めてもう一つ、
純の代理で律が飛燕連脚を繰り出した様です
http://imepita.jp/20101217/029470 http://imepita.jp/20101217/029790
確かこんなだったよね?
>>292
俺はまだ半分も行って無いと思う。


294以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 01:30:45.26aVo07sAO (13/22)

ジャスト半分ってとこかなぁ
まぁ次の章をどれだけ濃厚に書くかによって大部変わるんだけど
多分そこが一番の盛り場だから熱が入り過ぎて間延びする可能性大


295以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 03:19:19.814NahUIAO (1/1)

まっ、好きなようにやってくれたらいいんですけどねっ!


296以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 06:56:05.90og.TlkYo (1/1)

>>294
乙です!
濃厚でもドンと来いです!!
でも何より気兼ねせず頑張って下さい!!!

>>293
も乙です!
背景のお陰で見やすくなったよ~ありがとう!!
フィギュア持ってない人には嬉しいね、参考になります


297以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 22:27:06.30aVo07sAO (14/22)

唯「出して! 出してよぉっ!!」

 発狂気味に叫びながら彼女は叫び続ける。
殴打し続けた扉は大きく陥没してはいるものの開く気配は無い。
赤子のように泣き喚いても差し伸ばされる手は無い。
 やがて泣き疲れたのか、唯はベッドに顔を埋めて押し黙った。
時折聞こえる嗚咽を漏らす音は虚しく響く。

唯「うぅ……。ギー太ぁ……」

 シーツに埋めた顔を起こすとスタンドに立て掛けられたギターが目に入った。
 買った当初より少しネックが反ってしまっただろうか、適切なメンテナンスは殆ど施されてないので若干古ぼけてしまっている。


298以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 22:27:42.93aVo07sAO (15/22)

 唯は何かに取り憑かれたようにふらふらとギターに手を伸ばし、それを弾くわけでもなくただそっと抱き締めた。

唯「誰か、誰か助けてよ……」

 ぼそりと呟いたその時、それは起きた。

唯「ひっ──!?」

 床、天井、壁。あらゆる場所から白い蒸気のようなものが噴出される。
たちまち煙に覆われてゆく部屋の外から放送の音が聞こえてきた。

「披験体をエデンシステム内に搬送します。関係しているクルーは速やかに持ち場に待機、該当しないクルーは収容区域から速やかに退出してください」

 放送の直後に外が急に慌ただしくなった。


299以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 22:28:16.15aVo07sAO (16/22)

唯「うっ……ごほっ、ごほっ」

 催眠ガスの類のものなのだろう。
ぼんやりと滲んでゆく意識の中で唯は思考する。
 披験体。
 エデンシステム。
 搬送。
 収容区域。
 それらの単語から辿り着く答えは……。

唯「私……。死んじゃうのかな……?」

 これからどれ程の苦汁を飲まされるのだろうか。
もしかしたら全身を捌かれて中を掻き乱されるのかもしれない。
或いは全身の血を一滴残らず搾り取られるのかもしれない。
 絶望のヴィジョンだけが頭を過ぎる。

唯「いやだ、よ……。死にたくないよ……」

 唯の意識はフェードアウトしていった。


300以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 22:28:47.65aVo07sAO (17/22)

斎藤「……催眠効果が作用したようですね」

いちご「まだ安心は出来ないわ。後三十分放出を続けて」

 慌ただしく駆け回るクルー達がいちごの一声で更に動きを早める。

斎藤「しかしよろしいのでしょうか。プランを早めるとエデンシステムは正確に起動しない恐れが……」

いちご「背に腹は代えられないの。今は時間が無いからね」

 事態がますます深刻化してゆく事にいちごはひたすら憤っていた。
しずかの潜入はそれほどの被害を及ぼしていたのだ。

いちご「こっちにはタナトスもあるし、最悪あちら側に対抗出来る力さえ出来ればそれで良いわ」


301以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 22:29:18.36aVo07sAO (18/22)

 ひたすら後手に回り続ける。
それはいちごが今まで経験した事の無い状況だ。
桜高でトップランカーに登り詰めるまでに彼女は一度も敵に傷を負わされたことはない。 それは彼女の闘いが相手の千手先を読んで事前に策を仕掛ける計算ずくの詰め将棋だったからだ。

いちご「大丈夫……。大丈夫だから」

 うわ言のように呟く彼女の額にはうっすらと汗が滲んでいた。
 何から何までイレギュラーばかりだ。
自分の居場所がこれほど早く特定されるとは思わなかった。
しずかが単身でここへ乗り込んでくるとは思わなかった。


302以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 22:29:54.15aVo07sAO (19/22)

 だがそれも仕方ないと言ってしまえばそれまでだ。
彼女は澪がかつての憂と同等のレベルまで昇華している事も知らなかった。
それでは主君に絶対的な忠誠を誓う従者衆が一人、伊藤が恐怖のあまり自白してしまう事も予測出来ない。
そこまで観察する為の労力は全て憂に牽制をかける事によって使い果たしていたのだから。

いちご「…………」

 唾を飲み込んでいちごは立ち上がった。
先程まで狼狽していた頼りない表情は影を潜めている。

いちご「あの子から抽出するエネルギーの内の五パーセントをタナトスに回して」

斎藤「……はい」


303以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 22:30:29.34aVo07sAO (20/22)

いちご「そして四十五パーセントをエデンシステムに投入」

斎藤「…………」

 斎藤は顔にこそ出さなかったものの、その数字に疑問を覚えた。
残りの半分を温存する意味は何なのだろうか。
その考えは直後に放たれたいちごの言葉によって払拭された。

いちご「残りの半分はエデンシステムを介して私が貰うから」

 その言葉の意味を斎藤は直ぐに理解した。
そして同時にいちごの強靱なる精神を触れる。
 唯から抽出する『龍』の闘気の内の半分を身体に宿すという事は人外の者へと堕落してしまうという事だ。


304以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 22:31:12.24aVo07sAO (21/22)

 その決断をこうも容易く下してしまうという事は自分の命を軽く見ている事と同義。
普通ならば褒められたものではないが斎藤は違った。
 むしろあらゆる犠牲を払ってでも目的を成さんとするいちごに畏敬の念すら覚える。

いちご「何してるの? 早くして」

斎藤「は、はい……」

 この少女ならば或いは……。
制御すら困難な『龍』の力すら涼しい顔で手駒としてしまうかもしれない。
斎藤は少し遅れて、堂々と歩むいちごの背後を恐縮するようにおずおずと着いて行った。


305以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 22:32:44.43aVo07sAO (22/22)

やっとだ!!! やっとちゃんとした闘いが書ける!!!!!
今日はこれでおしまい


306以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/17(金) 23:35:43.90dc2IaUYo (1/1)


戦いwwktk


307以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 00:39:16.75cHHRlkAO (1/1)

唯「いやっ!外に出して!外に出してよぉっ!!」

唯「外で出してって言ったのに…」グスッ

そんなノリ


308以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 01:13:21.01E8GuTgDO (1/1)

>>296
サンクス、凄く助かる、梓の撮り貯めでまだ前の背景が混じってるやつがあるけど許して、今日は遊び無しで再現度を高めてみた

http://imepita.jp/20101218/027410
http://imepita.jp/20101218/027780
憂と和に付いてた表情が猛威を振るうぜ!

http://imepita.jp/20101218/028030
http://imepita.jp/20101218/028320
http://imepita.jp/20101218/028610
http://imepita.jp/20101218/028840
>>1
俺の理性を破壊する気か(笑)
ガチのエロシーンは同人誌で補完という事でヨロシク、
さて、いよいよ戦争の始まりだなぁ……
期待してるぜ。


309以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 01:19:50.71cY3ZyQAo (1/1)

唯「いやっ!外に出して!外に出してよぉっ!!」
唯龍「落ち着けハマーD」


そんなノリ


310以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 01:40:17.78qkyq0Foo (1/1)

>>305
ぶっちゃけ過ぎワロタwwww
乙です!

目一杯暴れちゃって下せぇ!!

>>308
表情を使い回すとはやるね!乙です!
この際だし、ジオラマ建てちゃえよ!wwwww



311以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 05:08:10.98Sl2YicAO (1/1)

憂は強いんだろうけど危うい強さだな
鑢七実みたいな


312以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 22:03:45.433bRG/kAO (1/1)

>>311 憂だけに危“うい”ってか


313以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/19(日) 03:14:56.58Tm3.R3Yo (1/1)

>>312
【審議中】
    |∧∧|       (( ) )   (( ) )  ((⌒ )
 __(;゚Д゚)___   (( ) )   (( ⌒ )  (( ) )
 | ⊂l     l⊃|    ノ火.,、   ノ人., 、  ノ人.,、
  ̄ ̄|.|.  .|| ̄ ̄   γノ)::)  γノ)::)   γノ)::) 
    |.|=.=.||       ゝ人ノ  ゝ火ノ   ゝ人ノ
    |∪∪|        ||∧,,∧ ||∧,,∧  ||  ボォオ
    |    |      ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
    |    |      ( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
   ~~~~~~~~     | U (  ´・) (・`  ). .と ノ
              u-u (    ) (   ノ u-u
                  `u-u'. `u-u'


314以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 22:53:37.27PtZOfMAO (1/14)

 一昨日しずかが通った軌道と同じ空を一台のジェットが走る。
機内に不快な揺れは無く、各々が迫る戦いの時に備えて集中力を高めていた。

律「なぁ澪」

澪「うん?」

 不意な呼び掛けに澪は刀を手入れする手を止めた。

律「仮にさ、あちらさんの中に『絶対の彼方』を越えた人間が百人居たとする。お前ならその内何人倒せる自信がある?」

 澪は口を噤んで質問の意図を探ってみたが、今まで律が深い考えを以て何かを言った事があっただろうかと考えると馬鹿らしくなり、率直に答える。

澪「百人居るなら百人倒せるだろうな。多分五百人でも千人でもそれは変わらないよ」


315以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 22:54:09.49PtZOfMAO (2/14)

律「そっか……。そりゃ頼もしいな」

 律の曖昧な返事に澪は違和感を覚えた。
だがそれはそこまでの話で、澪はその違和感を胸にしまったまま再び刀の手入れへと戻る。
 再び静寂が機内に満ちた。
中にはタオルケットを被って眠りについている者もいるのでそれは当然なのだろう。
 離陸してからどれくらい時間が経っただろうか。
かつてしずかがこの機内でそう感じたように、律と澪もそんな事をぼんやりと考えていた。
 その時──

澪「っ!」

 けたたましい警報音が機内に鳴り響いた。
その音に遅れて仮眠を取っていた者も次々に飛び起きる。


316以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 22:54:42.77PtZOfMAO (3/14)

和「皆落ち着いて。飛び降りるのは警報が鳴り止んでからだか──」

 和はそう言いかけて言葉を止めた。
ぞわりと首筋を這う感覚が和の思考を一瞬だけ掻き乱す。

澪「飛べ!」

 喉が張り裂けんばかりに叫び、澪は鞘で機内の壁を突いて。
動作の見た目とは裏腹に、機体に大きな風穴が空く。

紬「えっ!? なんなの──」

 律と紬だけが事態を把握していなかった。
痺れを切らした純が二人の首を掴み、躊躇いなく外へ飛ぶ。

律「のおおおおおおおっ!?」

 律の叫び声が空に響いた。


317以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 22:55:22.40PtZOfMAO (4/14)

 続けて三花、梓、姫子、、和の順に飛び降りる。
最後に澪が飛び降りようとしたその時、それは起きた。

澪「くっ……!」

 機体が外からひしゃげてゆき、黒い何かが突き出て来る。
機体の外に出る事を諦めた澪は咄嗟に身を屈めて刀を床に突き立てた。
機体はみるみるうちに崩壊し、飛散してただの鉄屑となり、今の状況が露になる。
 澪を囲むように突き出した何かは黒い牙で、鉄屑が流れ込む先には深い闇が広がっていた。

澪「食べられる一歩手前ってとこか……」

 このまま停滞を続けていればいつか牙にその身を砕かれる。
だがこの闇の中に身を投じても無事で済まないのは同じ事だろう。


318以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 22:55:56.76PtZOfMAO (5/14)

律「な……」

 律は目の前の光景に息を飲む。
今までの自分の人生も普通とは言い難かったが、これはあまりにも現実離れし過ぎだ。

律「なんじゃこりゃああああああああっ!?」

 律の眼前には鉄の竜がジェット機を食い荒らす光景が広がっていた。
 全長一キロはあろうか、最早その漆黒の身体の全貌を視界に収める事など出来はしない。
瞳を象った水晶体は赤くてらてらと輝いている。

純「ちょっと大人しくして下さいって!」

 この巨竜を相手にする前に乗り越えるべき壁がある。
遥か上空から飛び降りた純達は必然、このままだと地上に叩き付けられてしまうのだ。


319以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 22:56:33.24PtZOfMAO (6/14)

 どうしたものかと純はちらりと姫子の方を見た。

姫子「しっかり掴まっててね」

三花「はーい」

 姫子は三花を腰から抱き抱え、螺旋を描くように落下している。
吹き荒れる風を上手く制御して滑空しているのだろう。
表情に焦りの色は一切無い。

純「なるほど……」

 純もそれに倣って闘気を緑に切り替え、二人を抱えたまま滑空する。
始めは不安定だったものの、風の制御を繰り返しているうちにその軌道は安定してきた。

梓「どうするんですか!? このままだと私達死んじゃいますよ!!」

和「うろたえないの。これくらい今の澪と比べれば大した問題じゃないわ」


320以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 22:57:12.35PtZOfMAO (7/14)

 和は涼しい顔で刀を鞘から抜き、地上に向けた。
凍土から吸い寄せられるように光が集ってゆき、巨大な剣を形成する。

和「しっかり掴まってなさい。まぁ肩の脱臼は避けられないだろうけど、それくらいなら我慢出来るわよね?」

 和の言葉で梓はこれから彼女が何をしようとしているかを悟った。
無謀過ぎるとは思ったものの他にこの状況を打破出来る策は無い。

梓「…………」

 無言で頷き、差し出された和の手を取ると、温もりが梓の手を覆った。
 刃が風を裂き、雪を切り、落下の速度が段違いに上がる。
地表に激突する直前でも、梓は目を逸らさなかった。


321以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 22:57:57.39PtZOfMAO (8/14)

和「うぐっ───」

 光の刃が雪に突き刺さり、とてつもない衝撃が走る。
鈍く嫌な音が二人の肩から聞こえた。
高度五十メートル、およそ学校の校舎ほどの高さだろうか。
一度だらりと刀の柄にぶらさがると二人はそこから飛び降りた。

梓「大丈夫ですか……?」

和「わりと平気ね。ちょっと待ってて、直ぐに肩入れてあげるから」

 むくりと立ち上がり、和はだらしなく垂れた右腕を無理矢理矯正する。
その様子をひとしきり眺めると、梓は空を覆う黒い影に視線を移した。

梓「澪先輩……」

 澪を助けたい想いと自分ではどうにもならないと思う理性が梓の中で葛藤していた。


322以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 22:58:39.31PtZOfMAO (9/14)

 不気味な呻き声を上げて空を泳ぐ巨影の名はタナトス。
 ただそこに在る命を情緒も無く、配慮も無く、躊躇も無く刈り取る。ただそれだけの為に造られた兵器だ。
長い胴とは裏腹に歪に膨れ上がった腹部は鯨のようにも見える。

和「大丈夫よ」

 いつの間にか肩の矯正を終えた和が梓に呼び掛けた。

和「あれがどういったものなのかは分からない。けど澪の方が怖いもの」

梓「怖い……?」

 顔に疑問の色を張り付けて梓は復唱した。
和はふっ、と微笑むと梓の首元に手をかける。

和「怖い、という表現がそれであってるのかも分からないわ。そうね……あなたは憂を一言で表現する時、どんな言葉を使う?」


323以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 22:59:32.83PtZOfMAO (10/14)

 投げ掛けられた質問に対する明確な答えを、梓は持ち合わせていなかった。

梓「……それは」

和「怖い、黒い、歪、醜い。私ですらそう揶揄される事があったわ。けど今の澪はそんな私さえも遥かに凌駕してるの」

 究極の更に奥。
人知を越えた力を人が目の当たりにした時、その口から紡がれる言葉は讃辞や尊敬の言葉ではない。
酷いほどに冷たく、悲しいほどに黒い言葉だ。

梓「つっ……」

 肩に鈍い音が走り、思案に更けていた梓の意識は引き戻される。

和「あの黒いのには私から一言、怖いという言葉を送れるわ。でも澪は……」


324以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 23:00:17.45PtZOfMAO (11/14)

 和はそこで言葉を区切り、歩き始めた。

和「行くわよ。他の皆とも合流しなきゃ」

 指を弾くと雪原に突き刺さっていた光の刃が散り、刀だけが吸い寄せられるように和の手元に舞い込んだ。

梓「…………」

 また一瞬だけ空を見上げ、梓は和がつけた足跡を辿ってゆく。
その途中で一際大きな爆発音が鳴り響いたが、それでも梓は振り返らない。
 今はただ自分に出来る、やるべき事を成し遂げよう。
せめて今自分の側にいてくれる和の足を引っ張らないように。
 梓はそんな想いを抱き、歩き続ける。


325以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 23:01:01.13PtZOfMAO (12/14)

澪「なんて力だ……!」

 澪はタナトスの口内で必死に耐えていた。
上顎と下顎の圧力は鋼鉄さえも一瞬で砕く威力を持っている。
そんな過酷な状況下を刀のつっかえ棒のみで耐えている澪の力もまた言うまでもないだろう。

澪「……っ!」

 喉の奥から不気味な呻き声が鳴り響き、何かがせり上がってくる。
それが砲台だと気付いた澪は瞬時の判断で刀を引き、視覚不可能の速度で後退した。

澪「うわっ──!?」

 空へと身を投げ出される直前で下顎の装甲の節目に指を引っ掛けると、手元に強烈な熱が伝わってきた。


326以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 23:01:40.97PtZOfMAO (13/14)

 爆発音を轟かせながら射出されたそれは極太のレーザーだ。
雲を、雪を焼き払い、地平線の彼方まで突き進むとそれは消えた。

澪「レーザー……なんてちゃちなものじゃなさそうだな。となると……」

 自分の目でさえ射出の瞬間を見切れなかった。
となるとこの光線は限り無く光速に近い速度で放たれている。

澪「荷電粒子砲か……。まさか実物を生きてるうちに見られるなんてね」

 それは再現可能な理論はあってもそれを起動する為の電力が膨大である為、実用化されなかった架空兵器だ。
 タナトスは澪を嘲笑うように不気味な呻き声を漏らしている。
策士の知略、財閥の科学力を総結集して造られた究極の兵器が澪に牙を剥いた。


327以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 23:04:18.32PtZOfMAO (14/14)

律「誰の仕業だ!?」

澪「決まってる。勘で荷電粒子砲ぶっ放してくる奴なんざ一人しかいねぇだろ……!」

律「レイヴン……!」

そんなノリ


328以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/20(月) 23:45:44.17qLitfcAO (1/1)

乙!
また盛り上がっきたな


329以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 03:20:53.41Dn78jIEo (1/2)

乙!


330以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 08:04:31.1616o4d2DO (1/1)

乙、

今日は着地後の和と梓

http://imepita.jp/20101221/044440 http://imepita.jp/20101221/044790 http://imepita.jp/20101221/045100 http://imepita.jp/20101221/045370 http://imepita.jp/20101221/045580 http://imepita.jp/20101221/055780

梓の鞄とギターケースには武装が満載されてるってことにしといて。


331以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:32:42.23x6DF/wAO (1/13)

澪「この……! 暴れるなったら!」

 澪はタナトスの腹の部分にしがみつき、振り落とされないよう必死に耐えていた。
 タナトスは耳を劈く咆哮を発しながら空中を縦横無尽に旋回している。

澪「まずいな……」

 先程から掌を介して冷気を送り続けているのだが一切手応えが無かった。
この過酷な状況下で自由に飛行しているのだ。過度の冷気に対する何らかの防御法は持ち合わせているのだろう。
 それだけならまだ良かった。
水氷、冷気を操る力だけが澪の強さではない。
 圧倒的な身体能力から放たれる鉄を穿ち、大地を裂く斬撃。
その他にも勝負出来るカードは幾らでもあった。


332以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:33:14.74x6DF/wAO (2/13)

 澪は刀を握る左手に力を込め、装甲の節目の部分を突いた。

澪「やっぱり駄目か……」

 まるで暖簾を突いたような不快な手応えが腕に伝わる。
試しに刀をしまい、素手で殴り付けてもそれは同じだった。

澪「うわっ──!?」

 タナトスの巨体が急激に揺れ始める。
ドリルのような激しい回転で澪を弾き飛ばそうとしているようだ。
 最初の数回転は何とか耐えていた澪だが、片手の、しかも人指し指と中指だけでしがみついていた身体は呆気なく空に投げ出された。

澪「…………」

 狼狽することなく意識を研ぎ澄まし、両腕を横に広げる。
すると澪の身体を受け止めるように地上からわき出た水の柱が澪を守った。


333以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:33:50.12x6DF/wAO (3/13)

 水の柱は緩やかに噴出を抑え、澪を地上へと送り届ける。
タナトスは残虐な意志が込められた赤い瞳でその様子を見つめていた。

澪「…………」

 向こうに追撃の意志が無いことを悟ると澪は即座にその思考をフルスロットルで回転させる。
 敵の全長は一キロメートル強。
 その装甲には何らかの防御システム、所謂不可視のバリアのようなものが張られており、こちらの攻撃は完全に防がれる。
 攻撃用兵器には荷電粒子砲。或いはそれ以上の兵器が搭載されているかもしれない。

澪「……不透明な点が多過ぎるな」

 勝負出来るカードは今のところ一枚も無い。
決着を急ぐのはまだ早計だと判断した澪は暫く見の姿勢を取ることにした。


334以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:34:33.07x6DF/wAO (4/13)

斎藤「完全自律型駆動兵器タナトス。想像以上の猛威を振るっていますね」

いちご「秋山 澪があそこまでの力を手にしているのも想定外だけどね。まぁそれを踏まえても中々の出来でしょ」

 若王子機関本部の中枢。生命の実がなる禁断の樹の元。
そこに斎藤といちごが居た。
十メートル足らずほどの高さの樹の上部には鉄の杭で胸を穿たれた唯がはりつけられている。
 その根元で蔦に絡まっているいちごは外の様子を映像化しているモニターを見てくすりと笑った。

いちご「まぁ三十分持てば良い方かな」

斎藤「では標的を殲滅し次第タナトスをこちらに戻しますか?」


335以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:35:08.74x6DF/wAO (5/13)

いちご「いや……」

 いちごは言葉を区切り、身体を捩らせた。
頬をうっすらと赤く色付いており、はだけた衣服の間から見える柔肌には汗が伝っている。

いちご「タナトスじゃああの子は食い止められないよ。多分あのアンチエネルギーフィールドの穴も見破られるだろうし」

斎藤「し、しかし……。あれの穴を看破したところで破る手段など……」

いちご「成るように成るんじゃない? どの道あれは試作品だし、大した愛着も無いよ」

 狼狽する斎藤に対していちごはぴしゃりと言い放った。
肩を震わせながら甘い吐息を漏らし、糸が切れた人形のように頭を下げた。


336以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:35:42.36x6DF/wAO (6/13)

いちご「分かったら……席を外して貰える? 持ち場は、んっ……第五研究室で良いから」

 いちごは苦しそうではあるもののどこか恍惚とした表情を浮かべている。

斎藤「しかしエネルギーの抽出が終わるまでは此所ががら空きに……」

いちご「良いから」

 有無を言わせぬきつい目付きに斎藤は思わずたじろいだ。

斎藤「…………」

いちご「早く行って。恥ずかしいよ……」

 絡まる蔦が身体を這い、その度に甘い声を漏らすその姿は、いたいけな少女が凌辱されているようにも見える。
 後藤がこの場に居ればきっと目を細めて下卑た笑みを浮かべるだろう。
そんな事を考えながら斎藤は部屋を後にした。


337以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:36:20.45x6DF/wAO (7/13)

いちご「んっ……」

 眉を顰め、襲い来る快楽の並に耐えていたいちごだが斎藤が去った事によってその理性は崩壊した。
全身から汗がどっと吹き出て、漏れる嬌声の音も大きくなる。

いちご「やっ……あんっ……そこは……っ」

 身体を締め付ける蔦の力が強くなり、一層激しく動く蔦は遂にはいちごの秘部に潜り込もうとしていた。
 膝ががくがく震え、下腹部がじんわり熱くなる。

いちご「駄目……だよ……おかしくなっちゃう……っ!」

 歪に歪んでゆくいちごの頭上で唯は安らかに眠っていた。
いちごの太股を伝って零れた愛液に、穿たれた唯の胸から滴り落ちた血が交ざり合う。


338以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:36:59.63x6DF/wAO (8/13)

 和と梓はひたすら駆けていた。
後ろを振り返ることなく、ただ眼前に迫る敵の本拠地に向かって。

和「多分皆もあそこに向かってる筈よ。先に入口を突破して中を掻き乱すわよ」

梓「はい!」

 走りながら制服の袖口、首から下を覆う耐寒スーツの下から銃器の部品を取り出し、即座に組み立ててゆく。
その一連の動作に一切の無駄は無い。
その道を知る者ならばそれを見てただ溜め息をつくだろう。
 和はそれを横目で捉えて薄く微笑むと、桜花を勢い良く鞘から抜いた。


339以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:37:35.43x6DF/wAO (9/13)

 桜花に光が収束し、巨大な剣を形成する。
目標は数十歩先の反り立つ塀。
和は渾身の力を込めて光の刃を塀に叩き付けた。

梓「凄い……!」

 梓は感嘆し、頬を弛める。
ほんの一瞬だけ気を緩めた梓の首を和が掴みあげた。

和「油断しないの!」

 そのまま大きく跳躍し、瓦礫と化した塀を飛び越える。
目まぐるしく動く視界の中で梓が見たのは、つい先程まで自分達が居た場所に放たれた一筋の炎だった。
 炎は一瞬で雪を溶かし、熱風を撒き散らして辺りの風を食い荒らす。


340以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:38:34.38x6DF/wAO (10/13)

「つーかよぉ……」

 やけに間延びした声が和達の前方から聞こえた。
粉塵と雪が入り交じって視界が混濁しているが、何かが来ている事は分かる。

「もうすぐ一生働かずに旅する資金が貯まるってのに、どうしてこうも面倒事が多いかね?」

 粉塵の先の男が腕を振るうと、熱風が粉塵を吹き飛ばした。

和「後藤……?」

 和は今対峙している男が先日画像で見た男とその容姿が一致している事に気付く。

後藤「気安く呼び捨てにしてんじゃねーぞ。後藤『様』だ、豚が」

 後藤が翳した掌に赤い光が収束してゆく。


341以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:39:23.91x6DF/wAO (11/13)

 何か来る。
それを肌で感じた和は梓を突き飛ばして自分も大きく転がった。
そのすぐ隣を真紅の炎が駆け抜けてゆく。

後藤「へぇ。そっちのロリな嬢ちゃんはぼんくらだが、お前は中々楽しめそうじゃん?」

 後藤は無言の怒りを込めて放たれた梓の弾丸をまるでピーナッツでもキャッチするかのように掴み取る。

和「……女帝の前で道化となって媚びるのは誰なのかしらね」

後藤「おー怖いねぇ……。媚びたところで一切容赦しねーのが女王様なんだろ?」

 目を細め、下卑た笑みを浮かべる後藤。
 対峙する敵をゴミ屑のように見下す和。
 そしてその和に寄り添い、明確な意志を胸に抱いた梓。
 たった今、一つの戦いの火蓋は切られた。


342以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:40:50.29x6DF/wAO (12/13)

後藤「馬鹿な女だ。シズカって奴もよぉ」

和「死者を愚弄するのはやめろ、マグニス……!」

そんなノリ


343以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:45:06.88D/87zYAO (1/1)

乙!
今のところ 澪VSタナトス
和・梓VS後藤って感じか。




344以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 20:47:38.45Dn78jIEo (2/2)

乙!
2日続けて読めるとかラッキーだわ、ありがとう!!


345以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 21:00:54.80Is.TYcAO (1/1)

従者衆ってのはけいおんに実際に出てくるの?


346以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 21:05:35.19x6DF/wAO (13/13)

>>345
出ないよ、斎藤さんは名前だけ出るけど
敵の名前が執事Aとかだったら締まりが無いから斎藤さんから妄想膨らませて勝手に作った


347以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 22:38:21.46aGV3JJ2o (1/1)

あずにゃーん(⌒▽⌒)


348以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 23:37:53.81PlNn/wAO (1/1)

>>346 オリキャラなのに、一人ひとりのキャラがよく作り込まれてるのはさすがです。


349以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/22(水) 01:11:20.72QT5RFwAO (1/1)

後藤ってスターオーシャン2のミカエルみたいだな




350以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/22(水) 01:42:12.69d1gBVcAO (1/1)

>>330
ギターケースに武器を入れてると某映画が浮かぶな


351以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/22(水) 02:49:12.16kYwH.gDO (1/1)

>>1は相変わらず良い意味で予想を上回って来るな、
今のところ誰もツッコんで無いから一応言っておくぞ、

折角治したのにまた串刺しかい!!

という訳で俺が予め用意した動力として組み込まれた唯には杭は刺さって無い、
よって刺してみた、

http://imepita.jp/20101222/088950
前から見たらこんな感じ

http://imepita.jp/20101222/089270
四角い木しか無かった……Orz
許して、
勿体無いから捕縛唯カプセルバージョンも貼る
http://imepita.jp/20101222/089720 http://imepita.jp/20101222/090310 http://imepita.jp/20101222/090000
実際こんな感じ
http://imepita.jp/20101222/096530 半透明のケースに入れて撮影するだけの簡単調理(笑)
>>350
自分のイメージではガンスリンガーあずにゃんって感じ、
アズニャエッタが活躍したらケースの中から銃が出て来るよ。



352以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/22(水) 03:04:17.93bFDf0Cwo (1/1)

>>351
二枚目と最後でシュール過ぎて吹いたwwwww

せっかくそれっぽく撮れてるのに、何で自分でネタバラしてんだwwwwww

乙!


353以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/22(水) 03:11:30.69VFT1wQAO (1/1)

いちごちゃんマジ禁断の果実


354以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:38:02.190mUThYAO (1/12)

 例えば同じ力同士がぶつかりあったとする。
責めぎ合う二つの力の優劣を決めるのは、均衡を崩すのは一体何だろうか。
相殺することもなく責めぎ合う二つの力が完全に同じものだとしても、その均衡は永遠に続く筈も無い。

澪「はぁ……はぁっ……」

 雪原で暴れ回るタナトスの体躯を擦り抜けるように、澪はひたすら駆け回っていた。
どんな技や力を以てしても傷一つつけられないタナトスの防御力に、澪は成す術がなかった。

澪「きゃっ──」

 雪に足を取られて盛大に転ぶ。
幸いタナトスがその隙を突くことは無かったが、自分の体力が確実に削られてきていることが澪を焦燥感に駆らせた。


355以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:38:40.380mUThYAO (2/12)

 澪の攻撃がタナトスに通用しないのと同じように、タナトスの攻撃も澪には通用しない。
 大き過ぎる身体から繰り出される攻撃は範囲こそ広いが動作が緩慢だ。
最悪被弾したところで闘気を纏っておけば死にはしない。
唯一殺傷能力があるのは荷電粒子砲だが、それもエネルギーの収束を察知すれば容易く躱せる。

澪「…………」

 しかしそれはあくまで澪が健全な状態を保つ事が出来ればの話だ。
どれだけ鍛えたところで人間の身体は永劫機関ではない。
ましてや足に纏わりつく雪、視界を遮る吹雪。
この場は体力の減少を促す条件に満ち溢れた環境なのだ。


356以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:39:18.110mUThYAO (3/12)

 再びタナトスの口内から砲台がせり上がり、光が集束してゆく。
澪は咄嗟にタナトスの顎の下へと潜り込み、荷電粒子砲の攻撃範囲外へ身を潜めた。

澪「う……ぐぅ……!」

 大気中を流れる水分を一点に集めて瞬時に凝固させるが、砲台のほぼ真下という位置に襲い来る余波は尋常なものではない。
氷の壁が音を立てて崩れると同時に、澪は衝撃を殺す意味も兼ねて大仰に飛び退いた。

澪「……?」

 何かがおかしい。
地球の磁場の影響を受けて軌道を曲げてゆく粒子砲を眺めながら、澪は思った。
 何もおかしくなどない筈なのに、そもそも自分が今こうして苦戦している事すら何かおかしく思える。


357以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:39:53.950mUThYAO (4/12)

澪「はっ!」

 下半身に力を込め、身体全体を上手く利用した一閃を宙に放つ。
するとその直後、その剣撃に呼応したかのように降り積もった大量の雪が舞い上がり、雪崩と化してタナトスを飲み込んでゆく。
全長一キロメートル強、その気になれば空母ですら易々と食い尽くしてしまうであろう巨体が自然の猛威に飲み込まれていった。

澪「一点集中型の荷電粒子砲……。全身を覆う不可視のバリア……」

 雪崩がタナトスを覆い、雪山を作り上げた。
山の内部に閉じ込められたタナトスはぴくりとも動かない。
 吹き荒れる吹雪の音だけが響く清閑としたその場所の中央で、澪はうわ言のように何かを呟いていた。



358以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:40:28.670mUThYAO (5/12)

澪「……こいつ。私を殺す気が無いのか?」

 得体も知れない猜疑心は澪の思考を本来ならば辿り着かないような答へと導いた。
 殺す気が無い、という表現には語弊がある。
 ただ荷電粒子砲という空想科学兵器を現実のものとしたその攻撃力を持ちながら、何故この竜には他にもっと手っ取り早い、例えば広範囲を巻き込む爆弾の類のものを搭載していないのか。
そんな疑問が殺す気が無いという判断を暫定的に下させたのだ。

澪「……っ!」

 澪が思案に更けている間に雪原が大きく揺れ始めた。
まだ終わりではない。
黒い夢、タナトスは標的を殲滅するまではその純然たる殺意を絶やしたりはしないのだ。


359以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:41:03.710mUThYAO (6/12)

 耳を劈く咆哮と共に大気が震える。
殺戮の権化は大量の雪と純然たる殺意を撒き散らした。

澪「……確率は五分五分。もう一つくらい確証が欲しいところだな」

 その殺意に物怖じすることなく悠然と立ち向かうのは水氷の女王。
 澪は見の姿勢を取り続けて洞察したタナトスの動向から、その鉄壁の致命的な穴を見出したのだ。

澪「他にそれらしいところ……。尚且つ私が斬ってないところは……」

 大きく後ろに跳躍し、タナトスの全体を見渡す。
そして該当する箇所を瞬時に把握した澪は、刀の柄を握る力を強めた。
 読みが外れていれば十中八九即死だろう。
それでも澪は、見出した一縷の活路を強く見据えた。


360以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:41:39.200mUThYAO (7/12)

後藤「はっはーっ! 甘い甘いぜぇっ!!」

 繰り出される後藤の裏拳を和はすんでのところで受け止めた。
闘気を纏っているにも関わらずその威力を完全に殺す事は出来ない。

後藤「だから甘ぇっつってんだろーが!!」

 ぎりぎりと押しつけられる右手の指がぱちりと鳴った。
その瞬間紅蓮の炎が和の髪の毛先を僅かに焼き、その背後を駆け抜けてゆく。

和「しまっ──!?」

 振り返ったその先には反応すら出来ずに棒立ちでいる梓。
和は咄嗟に桜花を積もった雪に突き刺し、闘気を操る。

梓「きゃっ!?」

 梓の足元から筒状の岩がせり上がり、その小さな体躯を空中へと投げ出す。


361以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:42:17.500mUThYAO (8/12)

 梓はそのお陰で何とか事なきを得たが、無防備となった和は鳩尾を思い切り殴りつけられる。

後藤「ボディがお留守だぜっ……と!」

 更に追撃の蹴り上げが同じ箇所を捉えた。
僅かに吐血しながらも和は耐える。
宙に浮いた不安定な体勢で後藤の首筋目掛けて一閃を放った。
 その一閃すらも見切って和の懐に潜り込もうとしていた後藤だが、頭上から降り注ぐ弾丸の気配を察して大きく後退する。

後藤「ちっ……。ちょこまかうざってぇ鼠だなぁおい!」

 後藤は更に後転して和から距離を取るが、絶好のチャンスを格下に潰された事に苛立ちを隠せていなかった。


362以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:44:33.540mUThYAO (9/12)

和「助かったわ……。ありがと」

梓「いえ……。元々私のせいですから」

 互いにフォローし合い、二人が格上の後藤相手に大した負傷も無く渡り合っているのは奇跡と言えるだろう。
 高度な連携だけでは説明出来ない、俗に言う運さえも二人の味方をしていた。

後藤「ちっくしょお……苛々すんぜ。この俺を差し置いて仲良く女子高生やってんじゃねーぞ三下ぁ!」

 長い黒髪、スーツに纏わりついた雪を払うと後藤は地団駄を踏んだ。
 和と梓は更なる後藤の猛攻に備え、腰を低く落として身構える。
だが後藤の口から紡がれた言葉は二人の闘志を著しく殺ぐものだった。


363以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:45:08.480mUThYAO (10/12)

後藤「てめぇこのスーツ上下合わせて八十万すんだぞ!? 八十万だ! お前ら女子高生を何回抱ける値段だよ!? ちゃんとそこんとこ分かってんのかこら!!」

 憤る後藤とは対照的に二人の目は明らかに冷めていた。

梓「馬鹿ですね……」

和「ええ、馬鹿ね」

 後藤と対峙してから今に至るまで、二人はこれと全く同じ掛け合いを四回繰り返していた。
後藤の方もそれでやる気が殺がれた隙を狙うなどという阿漕な真似はしないので、それが余計に対処に困っている。


364以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:45:48.460mUThYAO (11/12)

和「ねぇ……。これから私がする事を何も言わないで見ててくれる?」

梓「え? あ、はい……」

 ありがとう、と呟くと和は後藤の方へ数歩前に寄った。

後藤「なぁにコソコソやってんだよ?」

 露骨に不機嫌な顔をしながらもいきなり攻撃してくることは無い。
この人はどこまで律義なんだろうか、梓は呆れつつそう思っていた。

和「後藤『さん』」

 しゃりしゃりと雪を踏み鳴らして歩きながら、和は桜花を鞘に収めた。

梓「──っ!?」

 無謀過ぎる。
 空いた口が塞がらない梓は口を金魚のようにぱくぱくさせていた。
 だが和が次に紡いだ言葉は、そんな行動よりも更に梓を驚愕させた。

和「私達、降伏します」


365以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:46:36.380mUThYAO (12/12)

後藤「燃えたろ?」

和「そして死ねぇ!」

そんなノリ


366以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 00:54:34.24GVNRkf.o (1/1)

スレタイktkrと思ったら後藤だった


367以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 02:07:07.86OWTVDzo0 (1/1)

5103愉快な人だなww


368以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/24(金) 03:56:49.240RDjZX.o (1/1)

乙です!
タナトスの討伐依頼を受注したい!!


369Are you enjoying the time of eve?2010/12/24(クリスマスイブ) 13:24:47.30WInOGMMo (1/1)

タナトス「背中かゆい…」


370Are you enjoying the time of eve?2010/12/24(クリスマスイブ) 23:30:48.66AjfV3ADO (1/1)

荷電粒子砲か、ならばコイツの出番だな

http://imepita.jp/20101224/828890

という訳で彼がタナトスの代理です、

http://imepita.jp/20101224/829250

取り敢えず登らせてみた

http://imepita.jp/20101224/829940 http://imepita.jp/20101224/830180 http://imepita.jp/20101224/830800

今梓頑張ってるからアズコンネンも貼っちまうぜ!

http://imepita.jp/20101224/831600
対艦ライフルで許して、サイズ的にはいい線行ってる筈、


オマケ、憂「この辺ですか?」ボリボリ

死竜「うん、そこそこ、そこが痒くて死にそうだったんだ」

http://imepita.jp/20101224/831930
>>369
こんな感じでどうだろうか?

>>352
こういうのは早めにバラしておいた方が良いと思ったんだ。


371Are you enjoying the time of eve?2010/12/25(土) 00:03:53.45opVrRxQo (1/1)

一気に澪が勝てる姿を想像出来なくなったでござる


372Are you enjoying the time of eve?2010/12/25(土) 00:49:12.87c4ecEAIo (1/1)

どう考えても澪が消し炭にしかならない…。


373MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!)2010/12/25(クリスマス) 20:35:02.67U/o8jkDO (1/1)

失禁して動けn(ry


374クリスマス終了のお知らせ2010/12/26(日) 00:34:35.64JO72E2DO (1/2)

皆落ち着くんだ!
よく見ろ、コイツはバトスト版の死竜だ、
今の澪なら充分、いや余裕で勝てる相手だ。


375クリスマス終了のお知らせ2010/12/26(日) 01:19:04.94r0ksUdwo (1/3)

【>>370を許すかどうか審議中】
    |∧∧|       (( ) )   (( ) )  ((⌒ )
 __(;゚Д゚)___   (( ) )   (( ⌒ )  (( ) )
 | ⊂l     l⊃|    ノ火.,、   ノ人., 、  ノ人.,、
  ̄ ̄|.|.  .|| ̄ ̄   γノ)::)  γノ)::)   γノ)::) 
    |.|=.=.||       ゝ人ノ  ゝ火ノ   ゝ人ノ
    |∪∪|        ||∧,,∧ ||∧,,∧  ||  ボォオ
    |    |      ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
    |    |      ( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
   ~~~~~~~~     | U (  ´・) (・`  ). .と ノ
              u-u (    ) (   ノ u-u
                  `u-u'. `u-u'


376クリスマス終了のお知らせ2010/12/26(日) 01:23:09.26r0ksUdwo (2/3)

>>374
折衷案を取って、澪は勝つ事を想像してたけど余裕で消し炭になって死竜が勝ったでどうだろうか?


377クリスマス終了のお知らせ2010/12/26(日) 02:15:00.38PclQvEAO (1/1)

仕事が忙しくなってきたので年明けの三が日が過ぎるまでは投下は厳しいかも、という報告


378クリスマス終了のお知らせ2010/12/26(日) 03:14:10.46JO72E2DO (2/2)

>>1
了解、俺はその間に武装を提供してもらったケルとヅダを完成させるか、

正直、死竜の攻撃がここの澪に当たるシーンが想像出来ないんだが、
更に死竜の脳天はガラス張り、そしてそこにコックピットがある、
更にバトスト版死竜の身長はゴジュラスとほぼ同じ、今の澪なら一瞬で登れるだろう、

最後に和の膝の上でヨダレを垂らして爆睡中の唯
http://imepita.jp/20101226/097190 http://imepita.jp/20101226/114430


379以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 15:59:28.170G4UPUDO (1/1)

死龍に排熱用のファンがあれば勝てる


380以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 22:05:28.23r0ksUdwo (3/3)

>>379
ファンは荷電粒子コンバーターに変更済みじゃない?きっと


381以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/27(月) 14:30:11.19kMRtTwAO (1/1)

ずいぶん長い間更新が無いと感じていたけど、
まだ前回から3日しか経っていないのか。

それだけこの作品が面白い、って事かな。


382以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/29(水) 12:10:15.2997UEZa60 (1/1)

年末だし忙しいのかねえ


383以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/29(水) 22:44:47.20yPA163Ao (1/1)

しえんだ


384以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/30(木) 12:24:16.55gNXv9Dk0 (1/1)

製作は保守いらねえよ


385あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/01(正月) 02:16:57.73bldWPO.0 (1/1)

あけおめええええええ!!!


386あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 15:28:49.59NjbMHcAO (1/1)

今年も>>1さんお願いしやす


387VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/05(水) 14:11:36.93PRAKtcSO (1/1)

自分用メモ しおり

――――――――――――――――――――――――――
         ここまで読んだ
――――――――――――――――――――――――――

・澪vsタナ ・梓&和vs後藤 ・江藤レズ毒 ・唯憂龍 ・いちごエロ ・強さ>>201 後藤≧さわ子


388VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/05(水) 15:47:18.749n9gXwAO (1/1)

やっと仕事に区切りがついたから明日投下出来ると思う


389VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/05(水) 15:51:26.25Hq7/VHQo (1/1)

wktk


390VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/05(水) 18:26:41.186uhDiEDO (1/1)

>>1
期待してるぜ、
こっちも何枚か撮り貯めたし、ケルディムとヅダも作ったから準備万端だ。



391VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:50:15.60JtPSIUAO (1/21)

後藤「降伏、だぁ……?」 

和「ええ、まぁ正確には取引といったところかしら」

 普段の和とは違い、のんびりとした話口調だった。

後藤「……聞くだけなら聞いてやんよ」

 後藤は(本人曰く)八十万のスーツが濡れることも厭わずにどっかりと雪の上に座り込み、シガレットケースを取り出した。

和「…………」

後藤「どうした、取引するんじゃねーのかよ?」

 後藤は訝しげな表情を浮かべて和の顔を見上げた。
和はその視線に気付いて我に返ったかのように肩を震わせる。

梓「……?」

 梓には何が何だか全く理解出来なかった。
というより、理解する気にもなれなかった。


392VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:50:52.20JtPSIUAO (2/21)

 闘いの場であるにも関わらず和は得物を鞘に収め、後藤は丸腰で座り込んでいる。
互いにその状態から臨戦態勢に移るのには一秒と掛からないだろう。だがそれは守りにおいても同じ事だ。

梓「意味分かんないよ……」

 仏頂面で銃を構えてその銃口を後藤に向けてみたが、後藤はそれをちらと見るだけで何事も無かったかのように煙草に火を点けた。

和「単刀直入に言います。私達に協力してくれませんか?」

 梓は今度は腰を抜かしそうになった。

後藤「は、ははっ……」

 後藤も後藤でその提案は予想していなかったのだろう。
頬をひくつかせながら苦笑いを浮かべている。


393VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:51:26.51JtPSIUAO (3/21)

後藤「……聞いといてやるが、お前らに協力して俺に何かメリットでもあんのか?」

和「あるわ」 

 和は即答する。
彼女が何を以てこうも自信満々に取引をしているのか、後ろで見ていた梓にはさっぱり分からなかった。

和「私達に協力してくれるなら、貴方が望む願いを一つだけ叶えてあげます」

 和の提案は後藤を揺らがせるには充分過ぎるものだった。
しかしそこは流石プロと言うべきか、暴れ狂う心臓の鼓動を潜めて後藤は静かにほくそ笑んだ。

後藤「……へぇ、まさかこんなとこにシェンロンが居たとはなぁ」

 蛇のような視線が和に突き刺さる。


394VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:52:07.86JtPSIUAO (4/21)

 後藤の願い、夢は一流のバイクで一流の自分が一流の世界を見て、学び、旅する事だ。
言うまでもなくそれには莫大な資金が掛かる。

後藤「…………」

 和の目を舐めるように見つめる後藤は思考をひたすら働かせた。
 目の前で不敵に立ち尽くすこの女のパトロンは琴吹財閥だ。
確かにこの女の言う通り、自分の願いを叶える事などほんの些事でしかないのかもしれない。
 だが少し待て、と後藤はそんな自分の解釈を改めた。
 こうもあからさまに敵意が無い事を示されると逆に勘ぐりたくもなる。
 取引の隙を突いての攻撃、或いは抱えた策の為の時間稼ぎ。
疑い始めればその意図は枚挙に暇が無い。


395VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:52:44.09JtPSIUAO (5/21)

 和の意図を読み取る上で何か確証めいたものが欲しい。
そう思っていた矢先だった。

和「そうね……。五分、五分だけ考える時間をあげます。それまで私達は貴方の視界ぎりぎりのところに居ますから」

後藤「──っ!」

 今の後藤にとっては千載一偶と称しても足りないような発言だった。
思わずポーカーフェイスを装っていた表情が緩む。

和「……? 別に逃げたりするつもりはないから。どの道逃げたところで無駄でしょうしね」

後藤「くくっ、ちげーねぇや」

 渾身の皮肉を込めて後藤はそう返した。
そして警戒しながらもゆっくりと遠ざかってゆく和をにやにやと見つめる。


396VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:53:18.89JtPSIUAO (6/21)

 語りかけるには遠過ぎるがその気になれば一瞬で詰め寄ることが出来る。
和と後藤の間にある隔たりはそんなものだった。

後藤「さて、と……」

 シガレットケースから再び煙草を取り出し、火を点ける。
吐き出した紫煙が後藤の笑みを覆った。

後藤「ガキにしちゃあ賢い、というか賢しい策だがな……」

 子供の幻想を打ち崩すかのように鼻で笑う。
 こうも嗜虐に駆られたのは幼い紬にサンタクロースは居ないと断言した時以来だろうか。
そんな下らない事を考える余裕が、今の後藤にはあった。
 それもその筈だ。
 和が提案した取引は蓋を開ければ刃が飛び出すチープトリック。自分はその事に気付いたというアドバンテージを有しているのだから。


397VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:53:55.78JtPSIUAO (7/21)

 恐らく時間さえ稼げばどうにかなるあてがあるのだろう。
だからこそ一刻を争うこの状況下でも、五分という明確な区切りをつけてきたのだ。
つまりその五分を後藤が反故にしてしまえば……。

後藤「やっぱ詰めが甘いな。五分ってのは禁句なんだよ……」

 それならば、と後藤は考える。
今から五分の間の何時に奇襲を仕掛ければ確実に二人を潰せるか。

後藤「一、二……。三……」

 残り三十秒となればあちらの気も引き締まってしまうだろう。
ならば最後の一分に入る直前。

後藤「残り三分と三秒か……」

 三分五十九秒。
 それが後藤が決めた殺戮の時間だった。


398VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:54:37.01JtPSIUAO (8/21)

和「やれるわね?」

梓「……はい」

 無謀過ぎる。
 和が梓に打ち明けた策はそう評しても足りないくらいに無謀な策だった。
 十全に事が上手く運ぶ可能性など皆無に等しい。
たとえ相手が和の意図の通りに動いたとしても、はたして自分の力量がその無理を通すまでに至っているかは疑わしいものだ。
 だが梓が心中で渦巻くそんな疑念を吐露することは無かった。

梓「私がやらなきゃ、ですよね」

和「よく分かってるじゃない。その通りよ」

 そう言って固く結んだ口、険しく吊り上がった両目。
普通ならば物怖じしてしまう気迫を前にして、梓は何故か安心すら出来ていた。


399VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:55:11.35JtPSIUAO (9/21)

 あんなに遠くにあった筈の絶対を越えた力。
それが何故か今は朧気ながらも感じ取れて、手を伸ばせば届いてしまいそうな距離にある気がした。

和「大丈夫。きっと上手くいくから」

 和は左手をそっと梓の方へと差し出した。
何の確証も無い気休めのようなその言葉はこれ以上にない程梓の心を鼓舞する。

梓「…………」

 梓は差し出された手を握り返し、視界の奥で佇む後藤をきつく睨んだ。
 立ち憚るは紅蓮の徒。
 全てを焦土と化す炎の意志が立ち込めるこの空間に、吹雪と共に一際強い一陣の風が駆け抜けた。


400VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:55:52.33JtPSIUAO (10/21)

後藤「ひゃは──」

 短く嬌声を発すると、後藤は指の骨をばきばきと鳴らす。
距離を置いてから後数秒で四分になる。その瞬間だった。

後藤「──」

 一瞬の煌めきと共に後藤の右腕が発光、発火する。
 そしてその腕をそのまま地面へと叩き付け、凍土を焼き払いながら和達の元へと加速した。

後藤「甘ぇ甘ぇ甘ェ!! 何から何まで甘ぇつってんだよおおおおおっ!!」

 後藤と和達の間にあった距離はみるみるうちに縮められてゆく。
後藤の右腕に纏わりついた炎は膨れ上がり、一つの形を成していた。


401VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:56:30.99JtPSIUAO (11/21)

梓「鳥……?」

 空すらも覆い尽くさんとする紅蓮の鳳凰がそこにいた。
 熱風が吹き荒れ、極光が迸り、爆炎が飛来する。
 始めから和が持ち掛けた交渉など意味を成していなかったのだ。
そしてそれは、和自身が一番分かっていた。

和「これが私のありったけよ」

 梓の手を握る左手に力を込め、右手で素早く抜刀した桜花を雪の中に突き刺す。

後藤「なっ──!?」

 その瞬間、凍土が跳ね上がった。
 まるで地面そのものを強大な何かが下から持ち上げたかのように。
和の爪先からほんの数寸先が山と化したのだ。


402VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:57:09.12JtPSIUAO (12/21)

和「さしずめ山崩し、いや……」

 天を衝かんとする氷山を見てほくそ笑み、和は訂正する。

和「『天崩し』ってとこかしら」

 四分、実際には三分弱という短い時間の中で和は自身が持ち得る闘気のその殆どを練り上げ、奥義へと昇華させた。
 大地そのものが呻き声を上げて鳳凰を掬い上げ、搦めとる。

梓「これが……」

 大地を流れるエネルギーと術者の闘気を呼応させ、意のままに操る黄色の闘気使いの究極の技、世界が軋み、崩れてゆく。
 だがそれでも、舞い上がる炎が絶えることは無かった。

後藤「だぁらあああああああああっ!!」


403VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:57:50.30JtPSIUAO (13/21)

 起伏した凍土がみるみるうちに溶けてゆく。
後藤がその右腕に宿した鳳凰は絶えずその命を燃やし、肥大した。

後藤「それがてめーの奥の手かぁ!? ちゃんちゃらおかしいったらないぜ!!」

 天を衝く山々が崩れ落ち、鳳凰が再び翼をはためかせる。

後藤「知ってっかぁ!? 鳳凰ってのは何度でも蘇るんだよ! ゾンビみてぇになぁっ!!」

 夢の為に、そしてそれの為に捨て去ったモノの為に、後藤は何度打たれようと立ち上がる。

後藤「俺は鳳凰だ! 刮目しろっ! そして死ね! その名が最強である事を此所に証明してやらぁっ!!」


404VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:58:28.96JtPSIUAO (14/21)

 天崩しが破られたというのに、何故か和の表情は何かを成し遂げたかのような安堵感を滲み出していた。
突き立てた刃から手を離し、未だ握ったままの梓の手を更に強く握り締めた。

和「強がったところで結果は決まってるのよ。不滅なんて存在しない、そんな幻想は私達が殺してあげる」

 全力をぶつけた。
それで駄目ならば後は託せば良い、自分と肩を並べる仲間に。

和「後は任せたわよ?」

梓「はいっ!」

 力強く答える梓の右手に握られているのは殺戮、力の象徴。
込められた弾丸の数は零だ。
空の銃口から打ち出されるのは一つの弾丸が織り成す物語。


405VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:59:07.41JtPSIUAO (15/21)

 静粛に、厳粛に、けれども力強く、梓はその鍵語を呟いた。

梓「エピソード」

 刹那、撃ち出されたのは風の咆哮だった。
不可視の銃弾が不可視の速度で駆け抜け、それが後藤の胸を貫くのにはコンマ一秒も掛からなかった。

後藤「あ──?」

 相手の持ち得る究極の力を打ち破った筈なのに、自分が持ち得る究極の力を発現させた筈なのに。

後藤「な──。何が──」

 胸に残る異物感と共に崩れてゆく自分の身体。
それでも後藤は自分の身に何が起きているのか分からなかった。


406VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 21:59:50.49JtPSIUAO (16/21)

 否、分かりたくなかっただけなのかもしれない。
ぼんくらだと評した無力な少女の手によって、自分が地に膝をつけられているという事を。
 大きな咳が漏れる。
精神力だけで溜め込んでいた血液がそれと同時に噴き出した。

和「撃ち出される軌跡の物語、エピソード……か」

 後藤は朦朧とした意識の中で、和がそう呟くのを聞いた。

和「この胸糞悪い話を終わらせる鍵となれば良いのだけどね」

 ざまぁねぇな、と後藤は心中で呟いた。
 和が身も蓋も無い案を持ち掛けてから天崩しを発動するまでの一連の流れ。それは後藤を欺く為のフェイクでしかなかった。


407VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 22:00:28.97JtPSIUAO (17/21)

 勝って兜の緒を締めろ。古い人間はよく言ったものだ。
 どれだけ鍛練を積んでも自分の勝利を確信した瞬間の気の緩みを払拭することは難しい。
その一瞬の隙を、和は欲していたのだ。

後藤「くくっ……。くははははっ……!」

 エピソード。何と皮肉な命名だろうか。
 有って無いような一瞬の隙が命取りとなって、自分の理想は遥か遠くの夢物語になってしまった。

後藤「……お前の勝ちだよ、ロリな嬢ちゃん。俺を負かしたからには、俺みたいな屑な大人になんじゃねーぞ?」

 胸に残る強烈な痛みに耐えながら、後藤はしたり顔でそう言ってみせた。


408VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 22:01:11.71JtPSIUAO (18/21)

梓「屑な大人……。はたしてそうでしょうか?」

 主君を裏切り自分の利益を優先した後藤を、何故か梓は罵倒する事が出来なかった。

梓「ムギ先輩が貴方達従者衆の名前を呼ぶ時、とても悲しそうな顔してました」

 自分の想いを押し殺してかつての従者の殲滅を決意した彼女の表情が梓の頭を過ぎる。

後藤「…………」

梓「せめて最期だけは、道を見誤らないでください」

 そうだ。俺の夢はバイクで世界を旅する事なんだけどよ、お前がこのくらい大きくなったら後ろに乗っけてやんよ。
 かつての言葉が後藤の頭に響いた。
込み上げる何かを抑え切れなくなって、後藤は寝転んで顔を手で覆う。


409VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 22:01:51.43JtPSIUAO (19/21)

後藤「なんてザマだよ……。なぁ俺……ふざけてんじゃねぇよ……!」

 求めていたものは近くにあった筈だった。
壮大な夢を語る後藤の真の望みは、籠の中の鳥に世界を見せてあげたかっただけなのだ。
 側にある朧気な理想を見限ったのは、他でもない自分自身だった。

後藤「……俺はどうすりゃいい? どうすりゃ許されるんだ?」

梓「そんなの……」

 神に懺悔するかのように狼狽する後藤に梓が下した言葉は、何よりも厳しく、しかし真理である言葉だった。

梓「自分で考えてください」

 後藤の物語の意味は後藤にしか分からない。
消えゆく意識の中で彼が何か一つでも見出せたのなら、物語に意味はあったのだろう。


410VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 22:02:32.49JtPSIUAO (20/21)

 荒い息遣いを背にして梓は和の元へと戻ってゆく。

梓「…………」

 一つの意志をこの手で刈り取ってしまった。
それは途方もなく罪深く、愚かな行為なのかもしれない。

和「やれば出来るじゃない、とでも言っておこうかしら」

梓「私一人じゃあれは撃てませんでしたよ。意外と意地悪な人なんですね」

 妖しく微笑む彼女の雰囲気は、その小さな体躯とは正反対なものだった。
 梓は決意する。
 信頼する者の為ならどんな咎も背負おう。
 そして自分の物語が終わる時、そんな自分を盛大に誇ろうではないか。

 全ての『オチ』がつく頃に。


411VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 22:03:47.64JtPSIUAO (21/21)

和「その幻想をぶち殺す!」

後藤「吠えてんじゃねーぞ三下ァ!」

そんなノリ


412VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 22:51:05.288DAQA.AO (1/1)




413VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 23:01:38.38/FwyO..o (1/1)

梓「レールガンって知ってる?別名、超電磁砲」

そんなノリ


414VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/06(木) 23:54:59.6606Vq08oo (1/1)

あけましておめでとうございます!!
新年初投下乙です!
今年も宜しくお願いしますm(_ _)m

そして、まさかのそげぶwwwwwww

2万体の憂に期待www


415VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/07(金) 00:19:40.62.g38y.AO (1/2)

和の闘気を使って打ったって感じでおk?


416VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/07(金) 01:28:09.31Hj4KKmso (1/1)

>>415
あ、それ俺も最初わからなかったんだけど、よく読んだらアズにゃん風使いで空気弾を射出したみたいだよ!


417VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/07(金) 02:41:54.41.g38y.AO (2/2)

>>416 さんくす!
そして>>1乙!&あけましておめでとう。
今年も楽しましてもらいます。


418VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/07(金) 02:49:02.37tT8c5IDO (1/2)

>>1後藤の声が神奈延年で脳内再生された、
更に00の罠が流れ出しちまった、



最高でした。



419VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/07(金) 03:54:29.32jO7SKDM0 (1/1)




420VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/07(金) 10:14:51.20rzWj5m6o (1/1)

おお…



421VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/07(金) 10:14:56.50tT8c5IDO (2/2)

こちらフィグマ班、宣言通り狙い撃つ!!

http://imepita.jp/20110107/347910
http://imepita.jp/20110107/348320
http://imepita.jp/20110107/348690
http://imepita.jp/20110107/349070
http://imepita.jp/20110107/349560
http://imepita.jp/20110107/349850
http://imepita.jp/20110107/350240
カオス背景で砂ライなのは大分前に撮り貯めたやつなので許して、
後藤……惜しい奴を亡くしたな……良いキャラしてたのに……。


422VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/07(金) 11:45:22.01Gp478AAO (1/1)

後藤のキャラが良かっただけに、こんなに早くお亡くなりになったのは残念


423VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/08(土) 00:57:45.19O0wkGQAO (1/1)

ゴッドゥーザ様が死ぬなんてありえない


424VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/08(土) 09:58:02.78muKFgYAO (1/1)

フィグマの画像マジいらねぇ


425VIPにかわりましてGEPPERがお送りしますVID(Tes):2ocFn0DO2011/01/09(日) 16:34:21.25wZGS2ADO (1/1)

>>424
俺もそれ思ってた


426VIPにかわりましてGEPPERがお送りしますVID(Tes):bWw/rwGo2011/01/09(日) 16:38:24.64yD3f/kgo (1/1)

みんな気を遣って黙ってたのに


427VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/09(日) 18:17:32.87WLLo9GDDO (1/1)

一部にはウケてるみたいだし>>1も禁止してないから、温かい目で見てやると良いさ
まぁなかなか言い出しにくい事を言ってくれたのは嬉しい事だが変な議論で無駄に消化していくのは多くの人が避けたい事だろうし


428VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 16:59:48.72Tb15Mm0AO (1/17)

 地を穿つは漆黒の爪。
 天を裂くは破滅の咆哮。
 永久凍土に舞い降りた死を纏う龍は終焉の鎮魂歌を奏でていた。
 真っ白なステージの上で終焉の舞を踊るのは澪。
時に荒々しく、時に優雅に刻まれてゆく剣閃は人の域を越えた者にしか出せない閃きだ。

澪「……っ!」

 腹部に力を込めて唐竹割りを放つ。
刃はタナトスの尾の付根に衝突したかと思うと、暖簾を打ったかのようにぬるりと擦り抜けた。
 その瞬間を狙っていたかのように黒塗りの腕が澪の身体を薙ぎ払わんとする。

澪「滅陣──」

 水の輪が澪の身体を囲み、その中に無数の閃きが走る。
その一つ一つは澪の腕から放たれる神速の残撃。それは一粒の雨粒、空気中の僅かな塵の侵入すら許さない。


429VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:00:28.24Tb15Mm0AO (2/17)

澪「くっ……!」

 言わば難攻不落の要塞であるその領域の中に、タナトスの爪はあっさりと侵入してきた。
澪は咄嗟に刀を盾にし、それを中心に氷の壁を形成する。
だがそれでも澪の身体の数十倍はある爪の勢いは消えず、力任せに大きく押し出された。

澪「うっ……ぐうぅうっ……!」

 爪の表面は研磨された鑢のような質感になっており、数十メートルと押し出されてゆく間に澪の身体はずたずたに引き裂かれていった。
 運動エネルギーが減少していき、身体が静止すると澪はふらふらと刀を地に突き立てる。


430VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:01:05.04Tb15Mm0AO (3/17)

澪「はっ……はっ……」

 餌をねだる犬のような息遣いは次第にその声色を変える。

澪「ははっ……はははっ!」

 避けた服から覗く白い肌は血で汚れており、長めの横髪は俯いた表情を黒く覆っている。
傍から見れば気でも触れてしまったかのような狂乱具合だが、澪の心はまだ折れてなどいなかった。

澪「…………」

 胸元から滲み出た血を指で掬い取り、恍惚とした表情でそれを舐めた。
悩ましげに髪を掻き上げるその姿は一介の女子高生では決して出せない妖艶な雰囲気を醸し出している。

澪「……やっと確信が持てた」


431VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:01:44.20Tb15Mm0AO (4/17)

 地に突き立てた刀を引き抜き、タナトスにその切っ先を向ける。
タナトスはそれをじろりと見つめると、耳を劈く咆哮を上げた。

澪「負け犬の遠吠え、だな」

 喉を鳴らして笑うと澪は両目を細めた。
 死という残酷な運命を撒き散らす龍と対峙して全く気圧されていない。

澪「私が負ける運命ならそこを退け。私が通るからな」

 その瞬間、澪の身体は誰にも認識されない速度で移動を開始した。
 たちまち切り付けられてゆくタナトスの両腕。
だが言うまでもなくその残撃に効力など無い。

澪「よっと……」

 澪は腕から肩を駆け上がり、牙を乗り越えてタナトスの鼻先に足をかけた。


432VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:02:19.55Tb15Mm0AO (5/17)

 不安定な足場はタナトスの身震いによって更に不安定となる。
やがて呻き声を上げたタナトスは首を大きく震わせ、澪の身体を宙に投げ出した。
 赤い瞳が妖しく輝く。
 大きく開いた口からは巨大な砲台がせり上がってきた。

澪「…………」

 空中に投げ出された澪にそれを察知する事は出来ても、それから逃げる術は無い。
どれだけ鍛練を積んだところで、二段ジャンプが出来る人間など居る筈が無いのだ。
 それなのに……。

澪「……それを待っていた」

 澪が放った一言は、まるで自分がこのシチュエーションを作り上げたかのような発言だった。


433VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:02:58.46Tb15Mm0AO (6/17)

 その身に風を纏い、敵の牙城を駆け抜ける。
立花 姫子と佐伯 三花は順調にその歩を進めていた。

姫子「待って。そこは右に曲がって」

三花「うわっとと……」

 三花は突き抜けようとした三叉路を重心を傾けつつ右に曲がった。
後ろを走っていた姫子が自身の真横に到達すると、感心したように見上げる。

三花「初めて来た場所なのによく道が分かるね?」

姫子「来る前に地図貰ったじゃん。私じゃなくても分かるってば」

 地図の内容はおろか、それを貰った事すら忘れていた三花はほえー、と間抜けな息を漏らす。


434VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:05:35.79Tb15Mm0AO (7/17)

姫子「……っ!」

 そうこうしている内に視界の奥で数名の人影が蠢き出した。
それぞれの手には重々しい銃器がある。

三花「卑怯だよねぇ。いたいけな女子高生に大の大人が武器持ち込むなんて」

 走る速度を上げ、姫子より前に躍り出た三花は両腕を広げた。
若干長い爪が飛躍的に成長して鋭利な刃物になるのは、銃弾の雨が降り注ぐのと同時だった。

三花「えいっ!」

 筋肉のバネを利用して床を蹴ると三花の身体は天井に向かう。
更に天井を蹴り、壁、床、壁、とまるで制御不能のバネ細工のような動きで銃弾の雨を掻い潜る。


435VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:06:39.48Tb15Mm0AO (8/17)

 怒号を上げてトリガーを絞る男達が一人、また一人と倒れてゆく。
鋭利な爪が貫くのは足、手の甲、どれも急所ではなく、しかし動きを抑制するには充分な箇所だった。

三花「しかも歯応え無いし──」

 無いしさ、と呟こうとした時、不意に何処からともなく断続的な電子音が鳴り響いた。
三花がそれが今し方倒れた男達から発せられている事に気付いた頃、姫子は脇目も振らずに三花に飛び掛かっていた。

三花「へ──?」

 直後にポップコーンが弾けたような小規模な爆発が巻き起こる。
大した威力こそ無いものの、それは周りにあるものを吹き飛ばす程度の威力はあった。


436VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:07:34.30Tb15Mm0AO (9/17)

 爆発音、男達の悲鳴、飛び散る血が阿鼻叫喚の地獄絵図を造り上げる。
 抱き合うように倒れ込んだ姫子と三花はその光景に思わず身震いした。

三花「なに……これ……」

姫子「…………」

 防衛に当たった男達が真っ向に闘って姫子達に傷を負わせる事など不可能だ。
ならば狙うのは意識の穴を突いた一撃。
警備に当たった者一人一人に小型の爆弾を埋め込み、何かの契機に発動させる。
恐らく本人達にも知らされていなかったのだろう。それは先程の悲鳴が物語っている。

姫子「人を将棋の駒とでも思ってんのかな……」

 姫子は奥歯をぎりぎりと噛み締めた。


437VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:08:27.92Tb15Mm0AO (10/17)

 大方本人達に知らされてなかったのは自爆ありきの特攻でそれを悟られないようにする為だろう。
 十個の歩兵で一個の金将を落とす。
姫子はまるで将棋盤の上に立たされているような感覚に陥った。

姫子「直ぐ此所から離れるよ」

三花「え? どうし──きゃっ!?」

 姫子は口を開こうとした三花の腕を掴み、来た道を引き返した。
次の瞬間更に大きな爆風が二人の背後に巻き起こる。

三花「…………」

 何で分かったのかと言いたげな顔をしている三花に姫子は答えた。

姫子「そりゃ二年とちょっと同じ学校に居たんだもん。それくらいは分かるよ」


438VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:09:16.75Tb15Mm0AO (11/17)

 相手がどのシチュエーションでどんな行動を取るか、いちごにはそれが全て分かっている。
 例えば桜高の全校生徒が購買を利用するとして、彼女にかかればその全員が何を買うかも分かるだろう。
極端な話、いちごは姫子達の眼球の動きすら把握出来るのだ。

姫子「胸糞悪過ぎるよ……!」

 姫子は奥歯をぎりぎりと噛み締めた。
 無残に爆ぜてゆく男達を見て足を止める事を予測、そしてその地点に本命の爆弾を仕掛ける。
戦いをゲーム感覚で楽しむ者がやりそうな事だ。

三花「でもどうするの? このままじゃまた入口に戻っちゃうよ」

姫子「…………」

 三花の言葉を無視し、姫子は三叉路で足を足を止めた。


439VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:10:06.76Tb15Mm0AO (12/17)

姫子「ねぇ、小銭かメダルとか持ってない?」

三花「小銭?」

 突然の問い掛けに三花は訝しげに首を傾げた。

姫子「いや、この際平たくて裏表があるものなら何でも良いや。何か無いかな?」

三花「んー……」

 眉を顰めつつも三花は一応ブレザーのポケットをまさぐってみた。
そして手に当たったものを見て思わず苦笑する。

三花「おやつに食べたクッキーの残りが……」

姫子「それで良いよ、貰うね」

 おずおずと袋に包まれたクッキーを差し出す三花。
姫子はやけに冷めた目で、特に感慨も無くそれを受け取った。


440VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:10:46.17Tb15Mm0AO (13/17)

三花「そんなので何するの?」

姫子「こうするんだよ」

 クッキーを壊れない程度に優しく指で弾き、手の甲で受け止める。

姫子「右に行くよ」

 クッキーに描かれた模様を確認すると姫子は即座に移動を開始した。
三花も慌ててそれに着いてゆく。
 それから姫子は道が別れる度に同じ事を繰り返した。
二回目にそれをした時には三花も姫子の意図に気付いたのだろう。
表情を曇らせながらもどこか納得したように頷いていた。
 こちらの意図が見透かされているなら自分の行動を天に任せれば良い。
そう思ってのコイントスならぬクッキートスだったのだ。


441VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:11:40.15Tb15Mm0AO (14/17)

 こちらの行動が全て見抜かれているのならばその動きを運否天賦に任せれば良い。
無論行く手全てに罠を仕掛けられている可能性もあるが、何もしないよりかはマシだろう。

姫子「良い目が出てると良いけどね……」

 クジ運が良いかと言われると自覚出来るほど良いとは言えない。しかしこのまま自分の意志に任せて進むにはあまりにも心許無かった。

三花「行き止まり……」

姫子「…………」

 最悪だった。
 数あるパターンの中で最も引きたくなかったのがこのパターンだった。

「おやお嬢さん方、こんなところでどうなさいましたか?」


442VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:12:16.29Tb15Mm0AO (15/17)

 二人の背後から大仰に背伸びしたような声が響いた。

姫子「……っ!」

 振り向くとそこに居たのは、眼鏡をかけた少し背の低い、初老の男だった。

「ふぅむ……。やはり良いものですねぇ現役の女子高生は」

 放たれた言葉はこの場にはあまりにも不釣り合いなものだった。

「お二方が履いているのはタイツですか。こうやって見るとなかなか良いものですねぇ、黒は脚線を美しく彩ってくれます。まぁ……私個人としては太股は露出してくれた方が嬉しいのですが」

 つらつらと語る男を尻目に三花と姫子は顔を見合わせ、ぽかんと口を開けた。


443VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:12:54.40Tb15Mm0AO (16/17)

「おっとそうだ、大事な事を聞き忘れていました。失礼ですが……お二方は処女ですか?」

姫子「~~っ!」

 三花は一瞬だけ顔を歪ませて一歩身を引いただけだったが、姫子はその問いに対して露骨に動揺した。

「ほぅ、なかなか遊んでいそうな容姿なのにそっちはまだですか。良いですね良いですねぇ、勃起に値しますよ。提案があるのですがどうでしょう、私の子を孕んでみてはどうですか?」

 姫子の頭の中で何かが切れる音がした。
そのまま男に飛び掛かろうとしたその時、男は片手を翳してそれを制する。

「申し遅れました。私は従者衆が一人、加藤と申します」

 英国紳士のような大仰なお辞儀をすると、加藤は醜く目を細めた。

加藤「以後お見知りおきを」


444VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:14:24.30Tb15Mm0AO (17/17)

姫子「今まで何人の女子高生を孕ませてきたんですか?」

加藤「良い質問ですねぇ!」

そんなノリ


445VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 17:43:08.67ImDJnpqmo (1/1)

頭の中で加藤さんの容姿が池上彰になってしまった


446VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 18:24:50.49r4oHDQEDO (1/1)

なんかまた凄いの出て来た!!
まさか二人目の変態とは、意表を突かれっぱなしだぜ、
純ちゃんの活躍を願い今まで繰り出した技で再現出来た物を投下する、
http://imepita.jp/20110110/637990 http://imepita.jp/20110110/637390

オマケ、叫ぶ和
http://imepita.jp/20110110/637990

>>424 >>425 >>426 >>427あんまり需要無いの分かってたけど良い機会だから次から自重するわ、
凄過ぎて再現出来ないシーンが増えそうだしな、
という訳でこれからはもう少し普通に>>1を応援するよ。



447VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 23:10:46.75+OcXD86AO (1/1)


陵辱シーンギリギリのやつお願いします


>>446
まあ結構楽しかったよ


448VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 23:50:27.18kyhIb0EHo (1/1)

登場早々なんですが、加藤さんのキャラが大好きです


449VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/11(火) 01:44:12.35f77aLfHk0 (1/1)

乙。
もしよければあずにゃんドMよりドSのが好みなんで
憂にゃんを攻めちゃってるのがえちぃの見てみたい。
とりあえず、100レス以内に、姫子がしにそう


450VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/11(火) 05:13:27.74841DEKUno (1/1)

>>1乙です。

加藤さーーーーんンンッ!!!!

唯ちゃんの拷問を優先しろと、いちご様が言ってましたよォォォ!!!!





451VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/11(火) 08:14:09.03gXzmYHDAO (1/1)

>>446乙 俺もフィギュア欲しくなってきた


加藤と聞いて加藤鷹さんを思い出した


452VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:39:38.11vdgOPfUAO (1/13)

 終末の舞はその幕を降ろそうとしていた。宙に投げ出された澪とそれを駆逐せんと最終兵器を以て対峙するタナトスは、その刹那の間見つめ合っていた。
 黒曜石とガーネットがきらりと瞬く。
 宙で逆さになった澪を受け止めるように、氷の礫が寄り合って足場を形成した。

澪「さて、と……」

 手の内で器用に刀を回しつつ、慣れた様子で氷に着地して受け身を取る。
空中に居る人間が二段で跳躍出来ないのならば、空中に足場を作れば良い。
そんな当たり前だが実現不可能な事を、澪は無感動にあっさりと実現してしまう。


453VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:40:10.33vdgOPfUAO (2/13)

 落ちゆく氷の足場からタナトスの砲台が完全にせり上がったのを確認すると、澪は良い頃合だと心中で呟いた。

澪「楽しかったよ。次に生まれる時はお互い普通だと良いな」

 澪はそのまま一気にタナトスの砲台へと跳躍した。
 死と対峙して澪は一つだけ気付いた事があった。
それはタナトスが完全な機械などではなく、何かをベースに造られた『生命体』だという事だ。
 赤く輝く瞳の色がまるで感情を持っているかのようにころころと変化している事がそれを証明している。
 ただ終焉を彩る為だけに生み出された運命がどれ程辛いのか。
間違った力を手にしてしまった澪には少なからずそれが分かった。


454VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:40:43.86vdgOPfUAO (3/13)

 能動的に力を手にしたのと受動的に力を手にしたのではその罪深さの度合いは比べるまでも無いのだが、『存在そのものが危うい』という点で共通しているタナトスを澪はひたすらに憐れんだ。

澪「お疲れ様」

 そんな在り来たりな労いの言葉をかけて、澪は目の前に迫る砲台の穴に刃を突き立てた。
それにおくれて砲台内部から眩い光が漏れ始める。
だがそれすらも包み込む青色が砲台の先から広がった。
 タナトスの呻き声が咆哮に変わり、そして悲鳴となる。


455VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:41:16.64vdgOPfUAO (4/13)

 全ての力をシャットアウトするアンチエネルギーフィールドの唯一の穴。
それは自身の体内で作り出したエネルギーの通り道となる砲台だったのだ。
 それが分かれば後は早い。
その穴からタナトスの内部へと、溢れんばかりの力を注いでやるだけだ。

澪「暴れるなったら! お前はもう終わってるんだよ……!」

 打ち上げられた魚のように暴れ狂うタナトスにしがみつき、澪はありったけの闘気を冷気に変えて注ぎ込む。
 そして遂に……。タナトスの身体が爆ぜた。
 肉片と化した胴から済し崩しに身体のパーツが爆ぜてゆく。


456VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:41:57.80vdgOPfUAO (5/13)

 崩れ落ちる肉片、飛び散る血、弾ける臓物。
目に映る全てのものが落下してゆく中で、澪は悲しい光を放つ紫を見た。

澪「唯……?」

 それは瞬きをする毎に目の前に近付いてきて、掛け替えの無い友の面影を映し出してゆく。
 薄く発光している掌がそっと澪の頬を撫でた。
澪は何となく、それの真似をして目の前の光に手を翳してみたが、血に塗れた手は虚しく宙を掴む。

「……アリガトウ、澪チャン」

 頭の中に直接語りかけてくるのは唯の声だった。
だがその言葉を覚えたばかりの赤児のような片言は、唯の声ではあるものの唯のものではない。

澪「唯……じゃない。お前まさか……!?」


457VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:42:34.65vdgOPfUAO (6/13)

 ふと下を見ると大地が迫って来るのが見えた。
澪は止まっていた時間が動きだしたかのような錯覚に陥る。

澪「おい待て! 待ってくれ!」

 冷静な思考能力が欠如してしまい、無駄だと分かっているのに身体を捩らせて足掻いてしまう。
無情にも光は遠ざかってゆき、吹雪と共に消えていった。
 澪がそれを見届けると同時に、地面に激突しかけた身体を水が受け止める。

澪「何で最期に、そんなこと言うんだよ……」

 決して理解などし合える筈が無いと思っていた。
それなのに、死を纏う龍は最期に告げたのだ。
まるで人の心を持ったかのように、ありがとうと。


458VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:43:09.95vdgOPfUAO (7/13)

 それなのに自分は歩み寄れた筈の存在を斬り捨ててしまった。

澪「ふざけるなよ……。感謝なんてされたって気分が悪いだけだ……!」

 言葉とは裏腹に、唯の姿を模した光を追う自分がもどかしかった。
 刀を手放し、両腕を空に翳す。
耐寒スーツの裂け目から入り込む冷気が身体を舐めても、澪は虚ろに空を仰ぐだけだった。

澪「…………」

 翳した手を覆う黒い生地の向こうで肌が透けて見えるのが、生きている実感を与えた……のだが。

澪「つっ……」

 ピンポイントに狙ったかのように、手首に細い針のようなものが突き刺さった。


459VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:43:47.89vdgOPfUAO (8/13)

 澪は首だけを針が飛んできた方に向ける。

江藤「初めまして」

 その豊富な起伏を持つ身体を包むにはやや窮屈な正装を身に纏った女が居た。
 従者衆が一人、江藤。
毒を以て実質しずかを死に追いやった張本人だ。

澪「一難去ってまた一難か……。まったく、一息入れる暇も無いな」

 気怠くも身体を起こそうとした。
そして澪は自分の身体を蝕む異変に気付く。

江藤「ふふっ、安心して。一息どころか何時間でも付き合ってあげるわよ、リラックスしてちょうだい」

 獲物を狙う蛇のように静かに、だが着々と江藤は澪に近寄ってゆく。


460VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:44:23.65vdgOPfUAO (9/13)

 澪の腹に跨がり、少しだけ腰を捩らせて衣越しに秘部を擦りつけると、江藤は澪の耳朶に舌を這わせて囁いた。

江藤「天国に連れてってあ げ る か ら」


 細い指で澪の顎を掬い取るように持ち上げ、妖艶な瞳で澪を居抜く。
それに対して澪の眼光は不気味なまでに冷たかった。

澪「参ったな……。身体が動かない、というか動かそうとするのも億劫だ」

江藤「あはっ、そーゆーお薬だからね。だってこうでもしないと皆素直にならないんだもの」

 澪は試しに目の前で卑しい笑みを浮かべている江藤の顔面に拳を捩じ込んでやろうと試みた。
腕は痙攣しながらも何とか自分の意志で動かせたが、それだけだった。


461VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:45:04.73vdgOPfUAO (10/13)

江藤「うふふっ、きれーな身体してるのにこんなに汚しちゃって。直ぐに綺麗にしてあげるわ」

 江藤は避けた衣服の胸の部分を大きく広げ、現れた豊満な双丘に滲む赤色に舌を這わせてゆく。

江藤「良いわ……。澪ちゃんの味とっても美味しいわよ」

澪「……どうして私の名前を?」

 普通ならば激しい嫌悪感に身を悶えさせるのだが、澪は自室で音楽を聴いている時のような落ち着きを払っていた。
それを見た江藤は僅かに苛立ちを覚えた。
そしてそれと同時に嗜虐本能をふつふつと駆り立てられる。

江藤「……そんな事どうだって良いじゃない。貴女はこれから死ぬまでの間ずっと私に犯され続けるんだから」


462VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:46:01.09vdgOPfUAO (11/13)

 冷たく蹴落とすような物言いだった。
だがそれでも澪の瞳は冷めたままだ。

澪「…………」

 澪は特に感慨も無さげに閉口する。
このままではつまらないと判断したのだろう。
江藤はスカートのポケットから一本の注射器を取り出した。

江藤「ねぇ、これが何か分かる?」

 澪の眼に針先を突き付け、江藤は口角を醜く歪めた。

江藤「ふふっ、簡単に言えば超強力な媚薬なの。これ打つとね、どんなに強情な子でもすっごく可愛くなっちゃうのよ」

 猫撫で声で恐怖心を煽る。
だが澪は全く物怖じしない。それどころか深く溜め息を吐いて。

澪「だったらやってみろよ色情魔」

 不敵に微笑んでみせたのだった。


463VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:46:39.20vdgOPfUAO (12/13)

江藤「…………」

 江藤は驚きのあまり目を大きく見開いてしまっていた。
だがその驚きは数秒と待たずに憎悪へと変わっていく。

江藤「……後悔しても遅いわよ」

 そう言うと澪の首筋に針を刺し、中の液体を躊躇なく注ぎ込んだ。

澪「つっ……」

 澪は僅かな痛みの後に身体の中を何か得体の知れない物が駆け巡るのを感じた。
 瞼が重くなり、全身が蕩けてゆく。
下腹部がじんわりと疼き始め、まるで身体中を虫が這っているような気分だ。

江藤「どこからして欲しい? 壊れるまで責めてあげるわよ」

 大股を開いてよがり狂いたい気分であるにも関わらず、澪はそれでも声を潜めていた。
 そんな彼女の抵抗をそっと振りほどくように澪の口内に江藤の舌が潜り込んできた。
 塗り潰すように深く、深く──。


464VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 09:47:37.67vdgOPfUAO (13/13)

寝ますおやすみ


465VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 11:53:47.09/g2N38JRo (1/1)

こんな時間に珍しい!
乙です。

江藤はムギちゃんの百合師匠なの?

こんな護衛を側に置くなんてムギちゃんが食べられてないのか心配だwwww


466VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 17:35:20.89GW2dWBlAO (1/1)

え、どんなノリ?

>>465 んな事言ったら加藤のほうが恐いwwww


467VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/13(木) 19:03:28.58sPuD5olAO (1/1)



ムギの家の従者変なやつ大杉だなwwwwwwwwwwww



468VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/14(金) 17:07:49.465tM2lL8AO (1/1)

そんなノリ
なかったな


ところで移転するの?
SS・小説スレは移転しました
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ Mobile http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/




469真真真・スレッドムーバー移転 ()

この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)


470VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/15(土) 00:22:08.40IXd3gOqDO (1/1)

>>1移転乙です、

今回は再現出来たよ、

http://imepita.jp/20110115/004100 http://imepita.jp/20110115/004590
澪が真上に飛ばされてた場合、
http://imepita.jp/20110115/005120 http://imepita.jp/20110115/005420
>>451サンクス!

>>468多分限界だったんだろうな。


471VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/18(火) 03:22:29.10p2VfEvmAO (1/1)

まだか


472VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/20(木) 00:57:01.99DPyb3v/AO (1/1)

俺は寝る


473VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 02:03:49.76I/cm9DI60 (1/1)

報告
仕事が良い方向に急転しはじめたから糞忙しくなった
それに伴って投下ペースも極端に遅くなりそう。というわけで少し短い月刊誌でも見る気持ちで待っててくれたらありがたいです。
目処は立ってないからいつになるか分からないけど落ち着き次第元のペースに戻すよ。


474VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 09:26:52.55k6QDul+6o (1/1)

>報告乙
楽しみにしてるぜ
仕事もがんばれよー


475VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 10:49:35.42EAHPXNkSO (1/1)

このご時世に好転とは
うらやま
把握


476VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 15:44:49.05IKfnT1Zqo (1/1)

さぁ、みんなで>>1が暇になる呪いでもかけようか


477VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/21(金) 15:59:47.67Ml9s3GfAO (1/1)

わかりました。
忙しいうちはこのスレの事は気にせず、仕事がんばってください。


478VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/22(土) 00:21:12.03U0xCdW6DO (1/1)

>>1
了解。


479VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:30:46.94uD4DeO0AO (1/17)

律「うわああああっ! 無理無理ムリ!!」

 弾丸の雨を掻い潜り、斬撃の嵐を押し退ける。
無鉄砲に単独で突っ込んでいった律はまだ闘気をコントロール出来るまでに至っていない。
 律のスタイルが一対多数で相手を掻き乱す事に特化しているとはいえ、蟻のように群がる戦闘員を前にしては些か肝を冷やしていた。

律「やっべ──!」

 跳躍して着地したところで足を捻ってしまう。
刀を持った男がその隙を突いて切りかからんとした時、歪な体勢のまま盛大に吹き飛んだ。

紬「気持ちは分かるけど、ね?」

 紬は律の気持ちを鎮めるように微笑んだ。


480VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:31:21.96uD4DeO0AO (2/17)

 律の気持ちが急いてしまうのは嫉妬心、或いは焦燥感のせいだった。

純「さぁて、どうしたもんですかね」

 後ろから優雅に歩いてくるのは純だった。
道中で敵から奪った粗末な刀を玩具のようにくるくると弄びながら、溜め息混じりに敵達を見据える。
 自分達より一つ下の純が悟ったように落ち着いているのが律の負けん気を煽っていたのだ。

律「…………」

純「ああ、ちょっと避けてた方が良いですよ。こういうのは慣れないから巻き込んじゃうかも」

 律のそんな気も知らずに純は府抜けた声で呼び掛けた。
そして刀を腰の辺りで構え、居合いの要領で振り抜く。


481VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:32:08.21GPBmCbgqo (1/1)

きたwwwwww


482VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:32:09.90uD4DeO0AO (3/17)

純「七閃──!」

 刹那、爆風が螺旋状に吹き荒れた。
それをなぞるように七つの閃きが扇状に床を這う。
目にも鮮やかな淡い緑が駆け抜けた。

純「っと……」

 刀を振り抜いてから元に戻す頃にはずたずたに引き裂かれた再起不能の人間の山が築かれていた。

純「行きましょうか」

 純は何事も無かったかのように再び歩き出す。
その後ろを律が舌打ち混じりで不機嫌そうに追い、紬はそんな律を慮るように見据えていた。

紬「りっちゃん……」

律「分かってるよ。それくらい馬鹿な私でも分かる」

 恐らく純のペースに合わせる事が今出来る最善なのだろう。
しかしそんな理性と責めぎ合う感情があった。


483VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:32:49.42uD4DeO0AO (4/17)

律「でもよ──っ!」

 報われない自分の努力と、溢れる才覚を飄々とした言動で打ち消している純の態度が律の感情を煽り続ける。

律「お前さっきからやる気あんのかよ!? のうのうと歩いてる場合じゃないだろ!」

 目を険しく細めて純の背中を睨み付ける。
背後からの声にそっと振り向いた純はその眼圧を受けてなお、気怠そうに溜め息を吐いた。

純「ここまで来てまだ分かんないんですか?」

律「は?」

 純の諭すような口調は律の思考を一瞬だけ掻き乱した。
 律が本気で自分の意図、否和の意図を理解していない事に純は歯痒そうに頭を掻く。


484VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:33:46.47uD4DeO0AO (5/17)

純「あー……なんて言えば良いのかな。まぁ要は私達は遊撃隊みたいなもんなんですよ」

紬「遊撃?」

純「そう、遊撃です。あくまで私が勝手に先輩の意図を読んだ仮の話ですけどね」

 くるくる刀を回してそれを軽々しくナイフでも投げるように放った。
刃物が肉に刺さる鈍い音と共に律の背後で男が倒れる。

純「はなっから澪先輩ありきの潜入なんですよこれは。唯先輩を救出するのも此所を壊すのも、全部澪先輩に任せて私達は目の前の敵を相手にだらだらしてれば良いんです」

 律と紬には純の言い分に対する反論は幾らでも有った。
しかし彼女達は口を開かない。


485VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:34:21.33uD4DeO0AO (6/17)

純「そうですねぇ、現状は『沼』の罠も見越して迂闊にでしゃばらないようにってとこかなー」

律「でも澪は……」

純「あの化物に喰われたとでも? それは幾ら何でも今のあの人を見くびり過ぎですよ。ぶっちゃけると今の澪先輩は憂よりも怖いですから」

 純の言葉を聞いて律は思わず息を飲んだ。
 想像してしまう事すら罪深い平沢 憂という少女の羅刹のような力。
今の澪はそれすらも凌駕しているのだ。
 身に纏う闘気は森羅万象を凍て付かせ、放つ閃きは有象無象を虚構に還す。
 その彼女こそがこの戦いにおける桜高サイドの切札なのだ。
切札がナンバーカードに負ける事など断じて無い。


486VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:34:53.23uD4DeO0AO (7/17)

「なるほどな。彼女がそちら側の切札という事か」

紬「っ!?」

 背後から響いた声に紬は胸を跳ねさせた。
条件反射で振り向くもそんな事に意味などない。
それは振り返った先に居る者が視覚される前に姿を眩ましたとか、その容姿を隠す為に仮面を被っていたなどという小難しい理由じゃない。
ただ単純に、振り向く前に解ってしまったから。

紬「……斎藤」

 仮に他の従者衆全員と対峙する事になっても、彼とだけは戦いたくなかった。
 だがかつての従者、慕っていた男は紬から目を逸らさずに立ち尽くしている。


487VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:35:23.41uD4DeO0AO (8/17)

斎藤「しかしそれならば事を起こすにはあまりにも早過ぎたな。いや、遅過ぎたとも言えるか……」

 ぶつぶつと独り言を呟きながら、斎藤は一歩一歩踏み締めるように全身してゆく。

律「……先ずは中ボスか。やってやんよ!」

 自身を鼓舞し、勇んで地を蹴ったのは律だった。
力量の差は痛い程に理解していた。だが彼女には先陣を切らなければならない理由があったのだ。

斎藤「…………」

 律は真っ向から突っ込むような真似はせず、狭い廊下の壁や天井を使って縦横無尽に駆け巡った。
だが斎藤はそれを目の前を飛び交う蚊を見るような目で見ている。


488VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:35:54.12uD4DeO0AO (9/17)

 やはり子供騙しの生半可なスピードでは相手にならないのだろうか。律は心中で毒づきながら紬の方を見た。
 皆殺しにするとは言ったもののやはりかつて慕っていた男と対峙するには精神が幼過ぎたのだろう。
敵前であるにも拘らず、ただ拳を作って目を伏せていた。
ならば頼れるのは彼女しかいない──。

律「だぁらああああっ!」

 背後に回っての頸椎を狙った足刀が炸裂する。
意外にも斎藤はそれに対して何のリアクションも起こさなかった。
蹴りがクリーンヒットした時の心地良い痺れが律の足に伝わる。

律「やっちまえ!」

 だが律はあくまで布石でしかない。
見ると純が滑り込むように斎藤の懐に入っていた。


489VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:36:25.45uD4DeO0AO (10/17)

純「刹那──」

 二つの眼でしっかりと標的を捉え、錬磨した闘気から打ち出されるのは全てを打ち砕く打撃。

純「五月雨打ち──!」

 刃は零れ、斬る事よりも殴打する事に特化した刀からは幾千、幾万もの暴力が放たれる。

斎藤「甘い!」

 殴打の嵐を掻い潜るなどという女々しい策は使わない。
斎藤はただ力任せに純の鳩尾を殴りつけた。

純「んぐっ──!?」

 衝撃に耐えようと思ったのはほんの一瞬だった。
次の瞬間には既に得物は手から離れ、その身は宙に投げ出された。


490VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:37:00.90uD4DeO0AO (11/17)

斎藤「ふん、貴様クラスの者にでしゃばられると厄介なのでな。だから……」

 斎藤がそう呟いている内に純は空中で身を翻し、追撃を放たんとしていた。

斎藤「跪け」

 不屈の闘志を折ったのは、そのたった一言だった。

純「──っ!」

 斎藤が直接手を下すまでもなく純の身体は床に叩き付けられる。
まるで膨大な重力の力場が一瞬で発現したかのように、理不尽の鉄鎚が純を捉えた。

斎藤「……どれだけ鍛練を積んだところで人の域を外れる事など出来やしない。それはあの龍の片割れも、青の闘気の女も例外ではない」


491VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:37:31.19uD4DeO0AO (12/17)

 斎藤は床に吸いつけられている純をサングラス越しに冷淡な瞳で見下し、おもむろに片足を上げた。

斎藤「だがそれは恥ずべき事ではない。人の身から人の身を持って生まれたのなら、せめて人のまま死ね」

 斎藤の革靴の底が何故か純には大きく見えた。
このままいけばまるで熟れたトマトを踏みつぶすように、純の頭部は粉々に粉砕されるだろう。

律「ちっ……!」

 その傍ら、斎藤の背後で律は顔を引きつらせていた。
今動かなければ純は死ぬ。それはつまりここに居る三人のゲームオーバーを意味する。
頭では解っているのに、それでも律の身体は動かない。
 たとえどれだけ速く動ける身体を持っていても、零から一歩目を踏み出す速さには限界があるのだ。


492VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:38:06.93uD4DeO0AO (13/17)

 二人が半ば諦めていた時、絶望を照らすように彼女の金色の髪の毛が舞った。

紬「止めてっ!!」

 倒れ伏す純を横切り、紬は力任せに、単調に、握り締めた拳を斎藤の鳩尾に捩じ込んだ。

斎藤「ぐっ……」

 ただでさえ強烈な威力を持つ紬の拳を片足立ちの不安定な体勢で受けたのだ。
たとえ闘気を纏っていたとしても、その力は容易に緩和出来るものではない。
 一瞬だけ身を浮かせ、両の足でしっかり床を踏み締めるも、そのまま大きく後退してしまう。

律「余計な心配だったな……」

 のけ反る斎藤を背後で迎え撃つは律。
彼女は少し微笑みながらそう呟いた。


493VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:38:35.60uD4DeO0AO (14/17)

 斎藤と対峙した時、恐らく紬は使い物にならないだろうと律は踏んでいた。
 ならば先陣を切って低下した士気を底上げしてやるのが軽音部部長の自分の役目だろう。
先の特攻はそう思っての策だった。

律「さぁて、人の心配してる場合じゃないなっ──」

 腰を落とし、右腕を振りかぶる。
放たれるのは速さの限界を越えた一万の拳だ。

斎藤「っ──」

 振り返って衝撃に耐えようとした顔面が無理矢理押し返される。
サングラスは一瞬で粉微塵になり、斎藤の視界を遮った。

純「なーんか三日ぶりに身体動かす気分です。一瞬どうなるかと思いましたよ……」

 腰を落としつつ、斎藤の懐に潜り込む。
両腕は真横に広げており、平手を作っていた。


494VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:39:02.04uD4DeO0AO (15/17)

 軽音部対他の部活の抗争の際に彼女が颯爽と現れ、まるで大仰な顔見せのように放った技。
それの上位互換となる技が放たれんとしていた。

純「暴飲暴食──」

 一喰い─イーティング・ワン─。
 ただの平手打ちであるその技はそれ故に強い。
極限まで追及した単純動作は他の追随を許さない破壊力を持つのだ。
 そして暴飲暴食は一喰いを両の腕から放つ技。
何千トンもの圧力を持つ掌に挟まれると、赤児ならばその存在自体が消えて無くなる。
 だが暴飲暴食に対して斎藤が取った行動は、その場において最も適したものだった。


495VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:39:29.27uD4DeO0AO (16/17)

斎藤「ぐぅ……っ!」

 脇を固めて両腕を盾にし、暴飲暴食を真っ向から受け止める。

多大な衝撃を受けた手首からは噴水のように血が噴き出した。
 斎藤はそのまま力なく膝を折り、両手を床につける。

純「土下座したって許してあげませんよーだ!」

 純はサッカーボールを蹴り上げる要領で爪先を斎藤の頭に捩じ込もうとしていた。だが……。

純「うっ……?」

 斎藤は夥しい量の血を流す手でその蹴りを受け止めた。
そしてのっそりと立ち上がり、純達より頭二つ分程高い目線から言う。

斎藤「……これで満足か?」


496VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 01:41:57.42uD4DeO0AO (17/17)

斎藤「偉大なる俺と対峙する事を許そう」

純「これが言葉の重み…!」

そんなノリ


497VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 02:15:54.723oZ4UTxAO (1/1)




498VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 02:55:01.69ZS62MDdno (1/1)

切なさ乱れ打ちってそんな技だったか


499VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 04:52:37.08q0XdFyiko (1/1)

斉藤「俺は天の道を往き、総てを司る男」
純「おばあちゃんは言っていた…」

そんなノリ


500VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 06:05:46.720p4cjefAO (1/1)

斉藤さんかっけえな


501VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/24(月) 18:56:30.69aRWqUjpDO (1/1)

凄過ぎてもうフィグマじゃあ再現できねぇ。


502VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/25(火) 12:59:06.59SfSAEUVbo (1/1)

乙です!

何か斎藤さんがパワーアップしてる?


503VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/25(火) 13:39:56.20KXjpglero (1/1)

>>502
斉藤「斉藤を超えた斉藤を超えた斉藤…スーパー斉藤人3ってとこか…」
紬「問題です。今の一言に”斉藤”は何回言われたでしょう♪」

そんなノリ


504VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/25(火) 18:10:56.06yYVkNG9po (1/1)

斎藤さん、突如次元の裂け目から現れた憂さんにぬっ殺されそうな雰囲気…。


505VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/25(火) 22:29:20.20g4Tf1mjAO (1/1)

ていうか澪はマジで憂ほどの実力があるのだろうか
今の憂じゃないよな……今はもう存在してるだけで周りを塵と化すレベルだからな……


506VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 01:59:02.71xb8/4d5Q0 (1/1)

>>505
澪の実力は姫子対唯の時の憂と同じ。
作中で今の憂の実力を知ってる人が居ないから便宜上憂と同等と書いてるだけだね。


507VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:01:58.98uS/k1vIAO (1/2)

だよな
今の憂が動き出したら誰にも止められない


508VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:18:12.00Ja1kf7tAO (1/13)

 例えば人としての個体を持ちながらにして人の域を越えるとする。
この際の『人の域を越える』事の定義は曖昧なままで良い。
学問、武術、芸術。その他諸々において何か一つでも神域まで到達したとしよう。
 人という器に注がれた神の叡智はそれに収まる筈もない。
ならばキャパシティーの限界を越えて力を垂れ流し続けるその個体は、神を名乗ることなど出来るのだろうか。
或いは、人を名乗る事すらおこがましいのかもしれない。

斎藤「神の真似事をした事はあるか?」

 夥しい量の血を流し、傍から見れば既に満身創痍にしか見えない。
それでも斎藤ははっきりとそう口にした。


509VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:18:45.55Ja1kf7tAO (2/13)

 だが三人に斎藤の問いの意図など分かる筈も無い。
この世に存在しないものを理解する事など出来やしないのにそれの真似事と言われて明確な答など出せない。

斎藤「辛酸を舐め、血の雨を浴び、渇きで飢えを誤魔化したその先に見えるもの。私はそれこそが神の力だと信じていた」

 つらつらと語る斎藤を横目に純は舌打ちした。
たとえ相手が敵でなくとも、純はこの手の人間が嫌いだったのだ。

斎藤「肉親をこの手で屠り、修羅の時を駆け抜けてようやくそれを手にした私は罰を受けた」

 純の苛立ちを知ってか知らずか、斎藤は声色を変えずに語り続ける。


510VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:19:21.45Ja1kf7tAO (3/13)

斎藤「振り返った先には何も無かった、罪深い人生だったよ。手にした力は神を模した紛い物で、上ばかり見続けた私は何も掴めなかった」

純「で、何が言いたいんですか?」

 痺れを切らした純が遂に斎藤に食って掛かった。
逆にここまで何もせずに居ただけでも彼女にしては辛抱強かった方だろう。
相容れない思考を持つ人間と妥協しながら対話する事など純には出来ない。

斎藤「…………」

純「いろいろムカつくんですよね。そうやって悟ったみたいに自分が選んだ道を悲観する人って」

 愚か者だ、と純は腹の中で斎藤を一蹴した。 


511VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:20:01.80Ja1kf7tAO (4/13)

純「強くなるのに理由なんて要らないのに、カチカチの頭で自分の首を絞めて『私は苦労してきました』って言いたいんですか? そういうのって逃げでしかないと思うんですよね」

 片足で強く床を踏み付け、体内を流れる闘気の色を切り替える。
次の瞬間、舞い上がったのは赤色の闘気だった。

斎藤「逃げ、か……。確かにそうかもしれない。神域から逃げて紛い物の神の力を使う私は真の意味で人を辞めた者から見れば弱いのかもな」

 自嘲染みた笑みを浮かべると斎藤は純の闘気に合わせるように右手を翳した。


512VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:20:45.32Ja1kf7tAO (5/13)

斎藤「だがこれだけは覚えておけ。理由無き強さに意味など無い。人は誰かの為に闘う時、本当の意味で強くなれるのだ」

 斎藤は横目でかつての主人を一瞥し、厳かな口調で呟いた。

斎藤「修羅道──」

純「──っ!?」

 何の前触れもなく、純の身体の至るところから血が噴き出した。首から上の外気に触れる部分には無数の切り傷が出来ていることから、耐寒スーツの下の肌も引き裂かれているのが分かる。

純「なん……で……?」

 有り得る筈が無い。
斎藤の身体は指一本とて純に触れてはいなかった。
先の不可思議な圧力攻撃の事もあって彼女は斎藤の闘気の動きに目を光らせていた。それなのに──。


513VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:21:24.97Ja1kf7tAO (6/13)

 闘気の動きは一切観測していない。
つまりこんな不可思議な現象は起こせる筈が無いのだ。人間である限りは。
 純はまともに立つ事すらままならず、ふらふらと膝を折り、額から床に顔を伏せた。

純「が……はっ……!?」

 解らない。それがどれだけ恐ろしいかを純はこの時身を以て実感した。
傷口自体はそう深くはないものの、痛みは精神的苦痛も相俟って増大してゆく。
手足は震え、全身の毛穴からは嫌な汗が噴き出した。

斎藤「緑から赤……。闘気の色を塗り替えられるのか?」

 訝しげに目を細めつつ、斎藤は純の髪の毛を乱暴に掴み上げた。


514VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:22:20.04Ja1kf7tAO (7/13)

律「やめとけ」

 苦痛に歪む純の顔をしげしげと見つめていた斎藤。
その背後で怒気を含んだ律の声が鳴った。

律「そいつは確かにムカつくやつだけどよ。それでも唯を助ける為に来てくれた仲間を放っておくほど……」

 避けようと思えば楽に避けられた。
だが斎藤は静かにほくそ笑むだけでその場から動こうとしない。

律「人間出来ちゃいないんだよ──!!」

 渾身の力で拳を振り抜く。
たったそれだけの事を容易にはさせない空気を醸し出す斎藤の覇気を、律は見事越えて見せた。
 律の拳から腕を伝ってくる確かな手応えは、彼女の勇気の賜なのだろう。


515VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:23:26.75Ja1kf7tAO (8/13)

斎藤「良い拳だ」

 だが斎藤は崩れない。
 衝撃を受けて血が吹き出る側頭部を庇おうともせずに律の足首引っ掴み、身体を軽々しく振り回した後に頭から床に叩き付ける。

律「~~っ!?」

 律は悶絶するしかなかった。
しかし斎藤の追撃、破壊が目の前に迫って来ている。

斎藤「誰よりも正しくあれ。そうすれば自ずと力はつく」

 純の頭から手を離し、斎藤は律の足首に手を掛けた。

律「──おい! まさか……!?」

 自分の右脚に掛かる力の動きから律は斎藤が何をしようとしているのか悟った。
だがどうする事も出来ない。身体を動かそうにも足首を固定されているので抗う術など無かった。


516VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:24:03.82Ja1kf7tAO (9/13)

律「やめっ、止めろ──っ!!」

 ぼきり──。
 律だけでなくその場に居た全員にはっきりとその嫌な音が聞こえた。
それに遅れて声にならない悲鳴が斎藤の耳を劈く。

斎藤「今は邪魔だ。そのまま寝てろ」

律「はっ……はっ……」

 目に涙を滲ませ、右足を庇いながら這いずる律を見下し、斎藤は躊躇無く彼女の左足を踏み砕いた。
 律は短い悲鳴を上げると床に顔を埋め、静かに唸る。

斎藤「さて……。途中だったな」

 斎藤の目からは律への関心の色は消え失せており、視線は倒れ伏す純の方へと向かっていた。


517VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:24:43.52Ja1kf7tAO (10/13)

斎藤「さしずめマルチタイプと言ったところか……。確かに便利な力だが、容量を削ってやれば何と言うことも無いな」

 戦意を叩き折られて瞳を濁らせた純の頭を掴みあげ、眉間にそっと指を当てる。

斎藤「餓鬼道──」

 一瞬だけ純の身体は跳ね、そのまま動かなくなった。
目は虚ろ。口はだらしなく開かれており、涎が垂れている。
 少しふらつきながら立ち上がり、斎藤はスーツのポケットから煙草を取り出して火を点けた。

斎藤「威勢が良いのは最初だけですか? 紬お嬢様」

 紫煙を吐き出し、傍らで立ち尽くす紬の方を見る。


518VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:25:19.09Ja1kf7tAO (11/13)

紬「…………」

 紬は何も答えない。肩を震わせて俯き、斎藤と目を合わせようとすらしなかった。

斎藤「仲間の危機を目の当たりにしながら指を咥えるような子に育てた憶えはありませんがね……」

 斎藤は明らかな失望の色を隠そうともしなかった。
煙草の火はじりじりと葉を焦がしてゆく。

紬「……どうして貴方と闘わなきゃいけないの?」

斎藤「私は貴女の敵だからです」

 斎藤は紬が絞り出した言葉に被せるように即答する。
そして短くなった煙草を大きく吸い、指で弾いた。


519VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:26:26.96Ja1kf7tAO (12/13)

紬「解らない……。どれだけ憎んでも憎み足りないくらいなのに……」

 固く握り締めた拳からは血が滴り落ち、頬を伝った涙が顎先から床に吸い込まれてゆく。

紬「闘いたくないの……!」

 仲間を捻り潰された恨みと未だに根付く斎藤への敬愛の想いが紬の中で責めぎ合う。

斎藤「……及第点には達していませんでしたか。ならば致し方ありませんね」

 斎藤はスーツを脱ぎ捨て、詰襟のシャツの第一ボタンを外した。

斎藤「再教育です」

 袖をたくし上げ、露になった太い腕を二、三度回す。

紬「…………」

 紬はそれをただ虚ろな瞳で見つめていた。

斎藤「六回死になさい。六道を巡ればその府抜けた根性も少しはまともになるでしょう」

 かつて死の淵に力を見出し、六道を統べる力を手にした男がかつての主君に牙を剥く。


520VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 09:35:24.86Ja1kf7tAO (13/13)

忘れてた

斎藤「まずは君からだ。アルコバレーノ」

律「うがーっ! 幾らなんでもあんなに小さくねえよ!!」

そんなノリ


521VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 12:13:21.57uS/k1vIAO (2/2)

紬覚醒来るか!!


522VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 14:18:22.80dtvD6obgo (1/1)

乙です!何か忙しそうなのにありがとね!!

>>521待て、その前に律だろ!!
俺の律っちゃんがこんなに噛ませ犬な訳がないwww


523VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/26(水) 20:08:10.04HWD8OsAAO (1/1)

六ww道ww骸wwww



524VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/27(木) 09:40:23.35QY+kj8YAO (1/1)

>>522
特攻かけてからの活躍具合じゃ、ムギと律は同程度だしな
次に目醒めるとしたらどちらか……のハズ!


525VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/27(木) 14:38:16.11OjNOpGWvo (1/1)

紬「行くわよ…」
斉藤「これは…沢庵道奥義の構え…」

そんなノリ


526VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 19:56:03.45YRz+mxHAO (1/20)

加藤「良い攻撃ですねぇっ!」

 加藤は老いた見た目とは裏腹に機敏な動作で相手の技を捌いてゆく。
それだけでこの男がかなりの達人である事が解る。
何故ならば今現在加藤の相手をしているのが姫子だからだ。

姫子「苛々するなぁもう──っ!」

 加藤が少しは真面目に対峙していれば姫子はここまで苛立つ事も無かっただろう。
飄々とした態度とは裏腹に加藤の動きには一切の無駄、澱みがなく、その道に聡い者ならば数秒打ち合うだけで敬意を抱かせるほどの凄味があった。

加藤「なかなかどうしてしつこいですね。そろそろ無駄だという事に気付きませんか?」

姫子「うるさいっ!」


527VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 19:56:33.01YRz+mxHAO (2/20)

 姫子は加藤の態度が先の変態発言を抜きにしても気に食わなかった。
 力を持ちながらにして努力を怠る者、真面目に取り組まない人間こそが彼女が嫌悪する対象だからだ。
 初対面で純の事を嫌いだと言い切ったのもその根本からきている。

加藤「ふぅむ……。あまり強がらない方が自分の為だと思うんですがねぇ。その方が孕んだ後の自己嫌悪も少なくて済みますし」

 冗談じゃない。姫子は腹の中でそう毒づいた。

三花「ねぇ、やっぱり私も手伝った方が……」

姫子「駄目!」

 傍らで退屈そうに欠伸をする三花を一蹴し、姫子は更に眉間に皺を寄せた。
 汚ならしい小男に自身が努力と慎ましい生活からこつこつと培ってきたプライドを足蹴にされたと思うと、それだけで姫子の中から何か熱いものが込み上げてくるのだ。


528VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 19:57:05.51YRz+mxHAO (3/20)

姫子「この──っ!」

 軸足を捻り、腰の回転を乗せたしなやかかつ強靱なる上段回し蹴りを放つ。
それは加藤の首筋を打ち、一撃の元に沈める威力を持っていた、だが。

加藤「あぁ……たまりませんねぇ。この程よい肉付き、曲線。見ているだけでリビドーに呑まれてしまいそうだ」

 蹴りが来る事を予め予測していたかのように、それが放たれる頃には加藤の首筋には掌という盾が添えられていた。
言わずもがな姫子の足は加藤の手にがっしりと掴まれる羽目となった。

加藤「爪先から内腿まで丹念に垢を舐めてあげましょうか。ああ、もう想像しただけで──っ!」


529VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 19:57:36.40YRz+mxHAO (4/20)

 加藤は口を半開きにして身体を震わせた。
その身悶えは排尿の直後に来るそれとよく似ていた。

姫子「ひっ──!?」

 姫子は短い悲鳴を上げると、固定された足首を無理矢理振りほどいて大きく後退した。

加藤「ふふっ、これは失礼」

 加藤はインテリの貴婦人のような仕種で眼鏡をかけ直し、長い舌で唇を舐めた。

加藤「少々……。先走り過ぎたようですね」

 加藤の下腹部には服越しに見ても中の状態が直ぐに分かる膨みが出来ていた。
雄々しく聳え立つそれが、今の姫子の目にはこれ以上なく汚らわしいものに映る。


530VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 19:58:06.96YRz+mxHAO (5/20)

姫子「あの人……。気持ち悪過ぎだよ……」

 口元を抑え、込み上げる吐き気を堪える。
直接脳内に最悪のイメージを浮かばせる加藤の発言、言動は目には見え難いものの、確実に姫子の精神を摩耗させてゆく。

三花「だったら私が……」

姫子「それだけは駄目!」

 守らねばならない。
観点を変えれば只のエゴとも取れるその思いが姫子をつき動かしていた。
 人とは違う体質を持つというだけで蓋を開けてみれば闘気の扱いもままならない少女である三花をこの男とぶつけてはならない。
姫子の判断は理に適っていると言えば確かにそうなのだろう。


531VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 19:58:36.33YRz+mxHAO (6/20)

 先の打ち合いで観測した限りでも加藤は要所要所で闘気をコントロールしている節があった。
回避、防御に当てられている闘気は勿論攻めに転じる事も出来る。
そうなれば三花程度の実力者では歯が立たないだろう。

姫子「…………」

 そしてその先に待っている結末。
それは死すら生温いと思える地獄の折檻だ。
 姫子はがちがち震える奥歯を無理矢理噛み締める。
だが女にとって最も苦痛な仕打ちをイメージしてしまった姫子に最早自分を鼓舞する事は出来なかった。

加藤「怖いのなら逃げても構いませんよ?」

 姫子の胸の内を見透かすように加藤がほくそ笑む。


532VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 19:59:06.29YRz+mxHAO (7/20)

姫子「…………」

 そんな発想は最初から無かった。
無事生きて帰れる補償は無いと知りながらここまで来たのだ。逃げ出してしまえばそれこそ本末転倒な話だ。

加藤「イメージしましたね? 敗北、逃走、絶望。その他ネガティブな末路を」

 図星だった。
しかしそれは今姫子が最も見透かされたくなかった感情だ。
まるで取り繕うように姫子は目を細め、眉をつり上げて敵意をむき出しにする。

加藤「ふふっ、今更そうやって敵意を取り繕わなくてもよろしい。私には貴女の感情が手に取るように分かる、何故なら──」

 とん、と床を蹴る音と同時に加藤の姿が姫子の視界から消える。


533VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 19:59:36.39YRz+mxHAO (8/20)

加藤「私は貴女の全てを知っている」

 ぞわりと姫子の背筋に虫が這った。
傍らで棒立ちになっていた三花は勿論の事、背後に回り込まれていた姫子でさえも隙を突かれたと気付いたのは、なまめかしい手つきで胸を揉みしだかれてからだった。

姫子「────」

 思考回路が一瞬でショートする。
本能的に汚れた手を振り払おうと裏拳を放つが、それも鼻歌混じりで躱された。

三花「姫子──っ!」

 遅れて反応した三花が瞬時に爪を伸ばし、下卑た笑みを浮かべる加藤に飛び掛かる。

加藤「ちっ……!」

 今まで関与していなかった三花からの反撃に反応が遅れたのだろう。
加藤は咄嗟に腕を交差して腰を沈めた。


534VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 20:00:21.52YRz+mxHAO (9/20)

加藤「……興ざめですねぇ。『何も考えていない』女は嫌いなんですよ──!」

 深々と腕に食い込んだ爪は肉の繊維の一つ一つをずたずたに引き裂く。

加藤「この……! 離せ! 離せっ! 股座にゴキブリを詰めてやろうか!」

 加藤は執拗に三花の鳩尾に膝を捩じ込む。
だが三花の爪は抜けず、それどころか肉と骨、血管の壁を抉りながら暴れ狂う。
 流石にこれ以上は不味いと悟ったのか、加藤は無事な方の手に闘気を込めた。

三花「──っ!」

加藤「離せえぇぇええっ!!」

 加藤は闘気を込めた殺人的な握力を秘めた手で三花の手首を躊躇なく握り締めた。


535VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 20:00:50.43YRz+mxHAO (10/20)

 熟れたトマトを潰すかのように三花の手首から先が爆ぜた。
赤い花火が鳴り終えると同時に三花に襲いかかるのは気が遠くなるような痛み。
 右手から伝わる痛みに全身が痺れを以て応える地獄のような苦しみの中で、三花は悲鳴を上げるでもなく仲間を鼓舞した。

三花「立って、姫子!!」

 だが姫子は涙ぐみつつ、床に座り込んで胸を抑えている。

姫子「やだ……。やだ……」

 思考回路はパニックを起こしており、うわ言のように否定、拒絶の言葉を呟いている。
寒くもないのに姫子の身体の震えは止まらず、それどころか更に酷くなっていった。


536VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 20:01:21.19YRz+mxHAO (11/20)

 『貴女の全てを知っている』
 先のこの囁きが姫子の胸に纏わりついて離れなかった。
それだけ聞けばただの戯言染みたはったりにしか聞こえない言葉なのだが、姫子にはこの言葉が真実であるという確信があった。

姫子「やだ……。見ないで……!」

 実を言えば姫子はその少し前に猜疑心を抱えていた。
それは渾身の蹴りをぴしゃりと受け止められた時だ。
 たとえ闘気を発現させている者でも姫子の技を完璧に見切る事は難しい。
条件反射の助けを受けて漸く避ける事が出来る。姫子のスピードはそのレベルにまで昇華しているのだ。


537VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 20:02:02.86YRz+mxHAO (12/20)

 だが加藤は初撃を交えてから一度も被弾していない。それに加えてあの時の見切り。
 『加藤はもしかしたら自分の思考を読めるのではないか?』
 一度そう思ってしまってからの全てを知っているという発言。
言動の不気味さも相俟って姫子の心はあっさりと、硝子のように砕けてしまった。

姫子「触らないで……! 乱暴しないでよぅ……」

 加藤は今三花の方に意識を向けており、誰も姫子に干渉はしていない。
しかし姫子には見えていた。
泣きじゃくる無力な自分に舌を這わせ、暴力で身体を征服せんとする何かが。


538VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 20:02:35.29YRz+mxHAO (13/20)

加藤「ふふふっ……」

 盛大に壊れてゆく姫子を横目で見ると加藤は満足げに笑った。

三花「この……っ!」

 三花はそこにすかさず切り込んでゆくも、逆にがっちりと首筋を取られてしまう。

加藤「紳士の嗜みを邪魔するのは頂けませんなぁ」

 三花の鳩尾に掌底が捩じ込まれる。
直後に三花の身体に広がったのは痛みと、波だった。

三花「~~っ!?」

 波が痛みを乗せて身体中を無差別に犯し尽くす。
 三花には直接見る機会は無かったが、それは闘気を発現させたばかりの澪が純との小競り合いの際に放った技とよく似ていた。


539VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 20:03:06.29YRz+mxHAO (14/20)

加藤「どうですかぁ全身の血を掻き乱される感覚は!」

 三花の滲む視界に映る加藤の身には青色が纏わりついていた。
 これ以上は不味い、そう思いつつも三花は自分の身体が思うように動かない事に苛立ちを覚えた。
この痛みの種は分かっているのにそれに対応する気力は痛みに殺がれていたのだ。

三花「水流……操作……?」

加藤「よく出来ましたねぇ! ご褒美に後でたっぷりと注いで差し上げますよ!」

 駄目押しに更に一発。
再び襲い来る痛みの波に三花はとうとう床に伏せた。


540VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 20:03:43.43YRz+mxHAO (15/20)

 水流操作。それは青色の闘気を持つ者の大半が得意とする技術だ。
達人の域に立つ者ならば更に凝縮、気化といった水の状態変化を任意に起こす事も出来る。
 加藤はその域には達していないものの、打ち込む全ての技に水流操作を組み込むという事はそれだけで術者の戦闘能力を増幅させる事を意味する。

三花「かっ……はっ、はっ……」

 掌底を介して対象の中を巡る水、つまり血液を震わせてやる。
数発で生身の人間ならば致命的なダメージを負うだろう。
 一切の規律を乱す事無く動いている人間の身体はそれを乱されると悲しいほどに脆いものなのだ。


541VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 20:04:12.85YRz+mxHAO (16/20)

 姫子の精神を壊し、三花の肉体を壊した。
二つの征服感が加藤の汚れたリビドーをたぎらせる。

加藤「さて、後は私のモノが無ければ生きていけないように、じっくりと調教してあげましょうか」

 強者の悦び。今までそうして来たようにその余韻に浸ろうではないか。
加藤の脳内は今やメフィストフェレスと契約する際のファウストさながらに心躍らせていた。
 僅かに頬を紅潮させながら座り込む姫子に擦り寄ってゆく。

姫子「やだ……。何でもするから……中だけは……」

 うわ言のように呟き続ける姫子の頬は濡れており、瞳は最早黒以外映していなかった。


542VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 20:04:46.19YRz+mxHAO (17/20)

加藤「くくっ、気が早いですねぇ」

 爪先で軽く腹を蹴ってやると、姫子の身体は人形のように仰向けに倒れた。
すかさずそれに覆い被さると、女性特有の淡い香りが加藤の鼻孔を突き抜ける。

加藤「覚えておきなさい。『言葉』を軽んずる者の末路には崩壊しか待っていない事を」

 無秩序に無遠慮に無責任に、無我夢中で姫子の衣類を毟り取ってゆく。
ブレザーの釦は弾き飛び、ブラウスと耐寒スーツもぼろ切れのように引き裂かれ、下着に包まれた程よい膨みが露になった。

姫子「何で……? どうして意地悪するのぉ……?」

 呂律の回らない口調は姫子の壊れ具合を顕著に現していた。


543VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 20:05:19.75YRz+mxHAO (18/20)

加藤「ふふっ、言葉弄び『チープトリック』がここまで効いた方は貴女が初めてですよ。余程辛いものを抱えていたんでしょうねぇ……」

 加藤は栗色の長い髪を一束手に取り、咀嚼するように香りを楽しんだ。
 言葉弄り『チープトリック』
 その単語が何を意味するのか考える余裕など姫子には無い。
絶望のイメージによって自らが誇大化していった加藤の暴力に耐え、せめて行為が早く終わるように祈るばかりだ。

三花「姫子……」

 傍らには身体を壊された少女。
そして彼女もその精神を壊されるのだろうと予感していた。


544VIPにかわりましてNIPPERがお送りします2011/01/28(金) 20:05:56.20YRz+mxHAO (19/20)

加藤「私は女性の身体の部位で一番太股が好きでしてね。先ずは肉が蕩けるまでそのけしからん脚を頂きま──」

 加藤が下卑た笑みを浮かべて唾液を含んだ舌を垂らしていたその時、室内であるにも拘らず一際大きな風が吹く。

加藤「む?」

 事に不信感を抱いた加藤は顔を上げ、皺が刻まれた眉間を更に皺寄せた。
刹那、まるでそれを見計らったかのように鈍色の光が加藤の頬を掠めた。

加藤「な……何が──」

「動かないで」

 加藤の自分の顎の下、つまり首筋で冷たい金属音が鳴るのを聞いた。
頬に出来た真新しい傷口から血が滴り、汗と混じって床を濡らす。