539ちゃんと麦野には、おっと危ないネタばれだ2010/12/06(月) 03:13:58.26GDZo0ZIP (1/11)

運び込まれた簡易な病室

予め自らの体を傷つけておいた傷を治療してもらい、部屋に寝かされているのは自分のみ

治療を施した衛生兵も去っていった

エツ(本当に人員が不足しているようですね)

一人となった病室で彼はベッドから立ちあがる

エツ(少し傷を深くし過ぎたか?簡易な術式でも使えれば良いのですが、その暇も無い)

麻酔を多めに装備のポケットに突っ込んで、彼は堂々と部屋を出た

廊下は静かだった。余計な人員を裂けないのか、見周りも居ない

エツ(都合がよすぎて、怖いくらいだ。だが、ここでもし術式をコントロールしているなら、一般兵卒の軽率な行動で害がでる、と判断したのかもしれない)

構える銃は自衛のためであり、兵員の振りであり

もちろん彼の得物である、黒曜石のナイフはすぐに取り出せるところにしまってある

術式の原動力は、恐らくあのピックを持っているスキルアウト達の生命力なのだろう

学園都市のあらゆる方向から供給される魔力と言う名前であらわされるエネルギーが、このビルを中心に集まっている

確認する為に使用した簡易な術式で、分かったのは、術式の中心

漠然としたエネルギーの流れをぼやけて示しだす程度なので、規模の小さな術式ではまともに使えないが、200万人を超える人間を全員術式に取り込もうとする規模ならば、そのエネルギーは莫大である

エツ(最初からコレを使っておけば、いや、これだけの規模を行使できる相手に、下手な行動をとるのは軽率ですよね)

ここでこそ、馬鹿みたいにエネルギーが集まっている為に、ちょっとやそっとの魔力の動きは隠されてしまって見つからない

エツ(……あの軍事力規模を見た後にショチトルを呼ぶ気には、なりません)

エツ(少々危険ですが、ここは単独でせめてあの幻影を見せる術式だけでも)

エツ(魔力反応が集まっているのは、上の階か)


540以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 03:19:08.98GDZo0ZIP (2/11)

半蔵(ビルの中に入ってはみたが、なんだここは)

自分がわざわざ周囲に気を払って行動しているのが馬鹿馬鹿しくなるほど、中は静かだった

兵器や兵隊で充満している外とは対象的に、静寂

半蔵(人が少ない。恐ろしいほどに。本当に拠点か?)

気をつけて適当な部屋を覗くが、オフの事務所そのものだった

半蔵(守衛的な存在も居ないんじゃ、アイツ等はここに捕らわれてないってのか)

わざわざ必死で白い少女の跡を付けて来たというのに、これでは無駄足である

これで脱出に失敗して、捕まったりしてしまえば、下手をすれば仲間が更に殺されるだけだ

助けに来たのに殺されては、一体何がしたかったのか、ということになる

半蔵(だが、骨折り損にする気は無ぇ。この規模のビルだ、情報は絶対に有る)

次の部屋に忍び込む、やはり、人も無く目立つ物も無い

半蔵(人が少ないのはこうなりゃ逆に都合がいい。探らせてもらうぜ)

動きを、忍ぶ事から動く事へシフトする

粗方この階は探し終えた。得られるモノはなかった

半蔵(上か、地下か)

この階に無くとも、20階は有るであろうビルだ。まだまだ調べる場所は有る

半蔵(アイツ等がここに捕まっていないならば、地下の線は薄いよな)

半蔵(情報端末とか有るなら、ってかもともとは芸能事務所とかだった場所に軍事関連のものを詰め込むのに都合のいい地下空間を期待できるか?)

半蔵(入居者が結構な頻度で出入りする場所だからこそ、アメリカの連中は目をつけたって要素も有るはずだ)

少し動きを止めて考えを纏めると、彼は階段を駆け上がった

半蔵(総合すると、上の階だよな)



541以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 03:34:03.70GDZo0ZIP (3/11)

エツ(ここに、術式の中心が)

この階の間取りが示されているプラスティック製の壁にかかった板を見ながら、その場所を突き止める

10階当りの階は、録音スタジオか何かなのだろう。小スタジオ部屋が4つ集中している区画と、小スタジオ2つ分の大きさのある中スタジオ区画、そして区画そのものが大きなスタジオである区画の3つに、非常階段とエレベーターが集中している区画の計4つの区画が有る

偽海原改めエツァリが怪しいと判断したのは、その中で一番大きな大スタジオ

ビル内部は人が本格的に居ない上階へ行けば行くほど、照明は無く。8階以降は真っ暗と言えた

ビル外に展開しているアメリカ部隊のライトの光が僅かに入りこんでいるだけ

その明りを頼りに暗い道を進んで、特に問題無く彼は大スタジオの区画へ進んだ

実際に演奏する部屋と、それを録音・編集するたくさんのスイッチやタブが配置されている装置がある部屋。大スタジオのその二つはガラス張りの壁で区切られている

今は一兵隊の格好をしている。ならば仮に誰かに会った所で誤魔化せる

エツ(そしてその人物が術式を操作している人間ならば、隙を見て殺すなりの判断をすればいい)

大スタジオの入り口の扉を、そっと開く

スイッチがたくさん付いている音響装置のある部屋は、コレと言って目立つ所はない

ただ、その奥の、ガラス張りで区切られた、実際に楽器や声を演奏する部屋の方は、異様だった

部屋の中央に人が一人立っており、その人物の周りから壁に奔る様に直線や曲線、そして植物などが配置されている

起動している術式の陣から放たれる僅かな明りで、部屋の様子はうかがえた

エツ(ここで術式を大規模化していたのか。中央の陣はアメリカ先住民の文化的なシンボルですが、拡大させているのはバチカンやイギリス等の大陸様式ですね)

エツ(いわば、異文化術式のハイブリット。移民の国らしい合理的なやり方ですが)

部屋中央の人間、男はまだこちらの様子に気が付かない

エツ(アメリカは自国の魔術技術に加えて、西欧のモノまで把握していると言う事ですね。これでは――?!)

中央の男が、一瞬こちらを見たような気がした

だが、実際にはそこからピクリとも動いていない、ハズ

エツ(見つかった? いや、あの様子では、単にたまたま首を振っただけのようですね。この術式を破るには……)

中心の男から再び視線を移して、術式の把握に意識が捕らわれていた、その瞬間

彼の姿は消えた

エツ(な、居ない! やはり気付かれていた?)

視界の端では常に捉えるように意識していたのだが、消えた


542以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 03:34:53.64GDZo0ZIP (4/11)

「自分、なんでここに居るん?上には来るなって命令やったやろ?」

いつの間にか、自分の背後に立っていた。首を回して見えた範囲では、その男の髪の毛は青く、耳にピアスをしていることが分かった

エツ「い、いえ。少々探し物を。この辺りで無くしてしまったようでして。申し訳ありません」

「ふぅん。そーかい。ってことは物資の運び入れん時に落としたのかもしれへんな」

エツ「そ、そうかもしれません。しかし、ここにも無かったようで。直ぐに退散します」

エツァリは振り向いて、一度青髪の男と顔を合わせた後、その男を避けて大スタジオから出ようとした

扉に手を掛けた、その時

「待ちや」

エツ「な、何か?」

「コレ、落としたで?ホンマ君は良く落とし物するんやなぁ」

そう言って青髪がエツァリに見せたのは、黒曜石のナイフだった

仕舞っていたポケットを確認するように触れると、物が入っている感覚が無かった

落とすようなことは有り得ないのだが、まさか掏られたか

エツ「あ、ありがとうございます」

手を伸ばすと、青髪の男は素直にそれを渡した

エツ「では――」

「あのさ。君の探し物やけど、もしかしたらこの階の第一小スタジオにあるかもしれへんよ」

エツ「え、いや」

「ま、もしかしたら、やし。一応確認しといたらどうなん?」

エツ「了解。それでは」

蛇に睨まれた蛙の様な気分になりながら、彼は部屋を出る

青髪も止めることはなかった

エツ(探し物だと? 強いてあげるなら、アメリカに奪われた原典だが)

各区画を繋ぐ、吹き抜けの周りの通路を歩きながら、彼は考える

エツ(まさか、自分の存在に気付いている? 原典を指すならば、完全に罠だ。まさか本当に小スタジオにこの体の持ち主の遺失物があるわけではないでしょうし)

エツ(原典……いや、原典だと…?まさか!!)


543以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 03:35:30.03GDZo0ZIP (5/11)

嫌な予感がして、彼は廊下を駆ける。吹き抜けから下に少し足音が伝わるが、気にしない、気にならない

小スタジオが集中する区画へ、指定通りに『第1小スタ』と書かれた部屋に

中に入らなくとも分かる。扉の比較的大きなガラス越しで、中の様子はつかめた

そこには嫌な予感通り、褐色の肌の少女が居た。気を失っているのか動いていない

椅子に縛り付けられて、頭を垂らしている

エツ「ショチ、トル……」

「あぁ、やっぱり君やったんか」

そしてまた背後から、声がした

4つの小スタジオを十字の通路で区切るその中央に、こちらに視線を向けながら立つ先程の青い髪をした男

「エツァリ、いや、学園都市なら海原クンやったかな?」

エツ「……なぜ気付きましたか、私に」

青髪「前回僕の半身が君のお陰で一度窮地に立たされたからな。個人的には超要注意人物なんやわ。だから、君が単独でここに来るように、わざとミスを演じた訳やけど、上手く釣れた」

つまり、ショチトルを確実で簡単に確保する為に、エツァリと言う人間が居る事を知らない様に思わせる部隊行動をさせて、エツァリとショチトルを切り離したのだろう

エツ「前回……?何のことです。初対面ですね、あなたとは」

青髪「うん、僕らは初対面。それは間違いあらへんよ?」

エツ「ならば、どういうことで?」

青髪「うーん。それを今言ってもいいんやけど、それよりも取引せん?」

エツ「取引ですか。その子について、ですよね」

青髪「せや。僕個人としてはこんな可愛いコは渡したくないんやけど。素体が良いから着せ変えキャラ変いくらでも自由に出来そうやわ」

エツ「下司ですね。原典を内包した彼女が簡単にあなたの趣味に合わせてくれるとは思いませんが」

青髪「その原典は既に僕らが回収しとるから、もう彼女はただの肌の黒めな女の子。そんな残りカスなんて、いくらでも自由にできるけど、君はそんなん嫌やろ?」

エツ「彼女は自分の命を狙ってここへ潜り込んだようですから、私は特別な感情は持ち合わせてなど」

青髪「君はそうかもしれへんけど、この子は違うみたいやったな。知恵の浅い僕らが強引に原典を取り出す際に、エラいこと苦しんどったけど、その時お兄ちゃんお兄ちゃん言っとったわ。精神にも大きな負担を与える邪法やから、錯乱してしまってもしゃーないけど」

青髪「そのお兄ちゃん、って君の事やないの?ま、いいや。とにかく、そこで寝とる人質の為にやな――」


544以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 03:54:21.31GDZo0ZIP (6/11)

半蔵(上から、足音がする。この感じだと2階は上か)

半蔵(人間が居るってことは、そこに何かあるのかもしれねぇ。アメリカとここの芸能事務所との繋がりは分かったが、そんなモンは俺には不必要もいいところ)

半蔵(いらねぇ情報ばっかじゃ意味が無い。ここは、一気に上に行くのも手だよな)

吹き抜けから上階へ身軽に昇る

8階から10階まで慎重に昇るのに、時間はそれほどかかからなかった

半蔵(話し声?コッチからか)

声がした小スタジオ区画の中を窺う様に半身で覗くと、そこには青髪が誰かの方を向き会話をしていた

青髪「―――――――――そこで寝とる人質の為に僕らに協力してや」

半蔵(人質が、ここで寝ている? まさかウチの連中も?)

もし仮にここの部屋に捕まった仲間が居るのなら、どうにかして助け出したい

だがまずは、確認しなくては。本当に仲間がここに捕らわれているのかを

青髪の注意がこのまま誰かに向いていれば、近づく隙はあるか

「あなたは一つ大きなミスをしているとは思いませんか?」

青髪と話をしている誰かが言った。野太い声だった

青髪「へぇ、後学の為にどういうミスか教えて欲しいなぁ」

「今ここであなたを斃してしまえば、何もかも解決するという事ですよ!」

きっと、何かの能力を使ったのだろう。少なくとも半蔵にはそう見えた

言って、1秒くらい経った後。青髪の左腕が分解していく。それこそ、皮と肉と骨がそれぞれバラバラになっていくような形で

半蔵(なんだアレ?肉屋の解体能力かよ。どんな能力だ)

僅かな時間に分解は進む。腕全てがバラバラになって、体幹にまで及ぼうかという所

青髪の左腕が体から消えた。進んでいた分解をこれ以上進ませない為に、体から分離させるかのように綺麗サッパリと消し去った

青髪「やるやん……。さっきのナイフはそういう武器やったんやな」

切り離した肩と腕の接合部から、血が噴き出す


545以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 03:55:01.18GDZo0ZIP (7/11)

「トラウィスカルパンテクウトリの槍、日本人には少々読みにくい名前ですね。アメリカは私が元居た組織を潰したのだから、この魔術についても知っているはずだとは思いますが」

青髪「あぁ、ちゃんと対策のHow toが組まれとるよ。……今のが、その最終的な回避方法や」

「分解が拡がる僅かな間に腕を切り離す。そんなことが出来るなど、知り合いの中でも一人の空間移動能力者ぐらいしか思い浮かびませんね」

青髪「サラシ巻いて、後ろ髪を二つに、分けた娘やろ?」

肩で息をしながら青髪は言う

「ほう、彼女、結標淡希をご存じで?」

青髪「僕の、今もっとる能力は、あのかわええ子が、ベースやからな。もちろん、僕は会ったこと、ない、けど」

「座標移動を持っている?ならば、容赦はできませんね!」

一拍の間が有った。もちろん半蔵には何があったのか分からない

青髪「無駄やで。トラウィスカルバムフッ!、噛んだやんか。その槍の術式は、金星の光とやらが必要やっちゅーことはしっとるからなぁ。君の後ろの窓、蓋させて貰ったで」

「これも、How toという訳ですか」

青髪「そ。これで、その厄介な魔術は使えへん。まだやる?」

「トラウィスカルパンテクウトリの槍だけが、このナイフの攻撃手段ではありません!!」

少し強い声が聞こえた瞬間、半蔵の視界中央に立つ青髪のすぐそばにアメリカの装備を着た男が現れた

半蔵(アメリカ側内部での内紛か?)

「アステカで黒曜石のナイフが意味する神イツラコリウキは、霜の神です!それを用いれば、このように!」

男がナイフで的確に体を裂く為、隙なく振り回す

だが、空間移動能力を持っている以前に、巧みな体術を使う青髪には当らない

半蔵(このままいけば、いつか出血多量であの青髪は動きが、って何だと?!)

いつの間にか、緊急用の止血パッドが肩に付着していた。空間を弄る能力を使って、取ってきてそのまま貼ったのかもしれない

その上から追加で器用に包帯が巻かれていく。回避しながら青髪は簡易な治療をしているのだ。反撃しないのは、治療への集中の為か

アメリカ兵の方に有ったアドバンテージが失われる。それを理解していたからこそ、青髪と戦っている男はワンチャンスで敵を倒せる近接戦を選び、そしてフットワークで撹乱しているのだ

青髪「イツラコリウキの霜やろ?残念、それもどんな魔術か知っとる。確かに片腕が無くなって血が少なくなっとるときに、裂かれた幹部から体中の水分を凝結させる魔術を選ぶのは的確」



546以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 03:56:19.56GDZo0ZIP (8/11)

目の前でナイフを振り回してくる男を前に、体術で裁く

青髪「だけど、当らへんかったら、意味無いで?」

突きだされたナイフを残った右腕で払い、そのまま膝で腹部を狙う

「グッ、ンッ……!!だがまだ!!」

半蔵(体術スキルに差が有りすぎる、か)

そしてまた、アメリカ兵装の男の身が大きくくの字に曲がる。耐衝撃用のベストが有ってもなお体を曲げる程度の、恐ろしい威力

追撃の左足が、右手の黒曜石のナイフを叩き落とすように伸びていく

半蔵とは逆方向に、体が向いた

半蔵(今だな)

蹴られて飛んだナイフ。下手に拾いに行けば背後から追撃を食らう

兵装の腰に有ったナイフを引き抜いて、ダメージが蓄積した体で更に立ち上がる

青髪が畳掛けようと一気に間合いを詰めた瞬間、その体が止まった

青髪の後ろで、暗い空間に打根と呼ばれる武器の矢じりの先が、青髪の血を纏って怪しく光る

半蔵「やっと一矢報いさせて貰ったぜ。文字通り、一矢なぁ!」

青髪が背後に現れた半蔵の打根によって背中を貫かれ、倒れそうな所を踏みとどまる

そこへエツァリの持つ金属のナイフが刺さった

半蔵「コイツもくれてやれ!」

急に現れた半蔵からエツァリへ、転がっていた黒曜石のナイフが投げ渡される

受け取ったそのままの腕の動きで、エツァリはそのナイフを心臓部へ突き刺した

再度発動させたイツラコリウキの霜の効果で、心臓から血液が凝固していく

青髪「やる、やん」

倒れた青髪はそれ以上の言葉を放たなかった

半蔵「……くたばったか」

エツ「でしょうね。どなたか存じないですが、ありがとうございます」


547以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 03:56:55.06GDZo0ZIP (9/11)

半蔵「いや、俺もコイツに、人質とられて好き放題やられたからな。斃せて良かった。いい機会を作ってくれて、感謝するのはこっちだぜ」

エツ「人質、ですか。そうだ、ショチトル」

エツァリは振り返り、ショチトルが捕らわれていた小スタジオへ向かう

それを見て半蔵も、残りの小スタジオの中を覗きにかかる

エツ「居ない? 馬鹿な、さっきは確かに」

他の部屋を確かめようと、エツァリが第一小スタジオから出たところで、半蔵と目が有った

半蔵「駄目だぜ。他の小スタジオも、もぬけの殻だった」

その顔は先程と変わって沈んでいた

エツ「そうですか。あなたの方に何かあったのですか?顔色が」

半蔵「ここに人質が捕らわれてたのは確からしい。俺の仲間の人質も捕まってたみたいでな。ちょっと前に反逆した時の見せしめで殺された奴の死体が、転がってた。それだけだよ」

エツ「それは……心中お察しします」

半蔵「気にすんな。アイツが殺されたのは薄々気付いてたんだ。むしろ他の仲間の死体が無かったのは喜ばしい、な」

エツ「何も言えませんが、その人質の事です。先程あの青い髪の男と戦っている最中に連れ出された可能性があります」

半蔵「馬鹿言うなよ。青髪も含めてこの場所には俺ら3人しか居なかったんだぜ?誰がどうやって」

エツ「その青髪が、やったんですよ。戦いの最中にね」

半蔵「マジに空間移動能力者だったのか。なら確かにそうかもしれねぇけど。戦いながら治療と一緒に人質を外に出すとは、えらく器用な奴だ」

エツ「だから戦いの中では空間移動能力を使って攻撃しなかったのでしょう。ですがこれは」

半蔵「あぁ、不味いな。外の軍隊共に気付かれち―――」

瞬間、10階そのものの明るさが極端に大きくなった

外から強いライトの光が入ってくる。明らかに自分たちを狙い警告している光りだ

エツ「どうやらバレてしまったようですね」

半蔵「だな。くそ、これじゃまた仲間が殺されちまう。何とかしねぇと。……お前、名前は?」

半蔵が聞くと、アメリカ兵の顔だったエツァリの顔が剥がれ落ち、海原光貴の顔になる

半蔵「驚いたな。変身する能力者か」


548以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 03:57:26.86GDZo0ZIP (10/11)

エツ「厳密に言えば能力では無いのですが、今はその解釈で構いません。エツァリでも海原光貴でも、好きな方で呼んでくれて構いません」

半蔵「……じゃ、海原さんよ。この状況をどうする?」

ついでに煙草は?と聞きながら自分の煙草に青髪から貰ったライターで火を付ける

そのライターには、幻想術式を無効化するらしい印が刻まれていた

海原「いえ、要りません。そのライターは?」

半蔵「ん?あぁ、そこで死んでる青いのから貰ったんだよ。今日の任務とやらが始まる前にな」

海原「そうですか」

海原(おそらく、この人物の担っていた内容は、重要度が高かったらしいですね。幻想が邪魔にならない様に、ライターのプレゼントという形で渡したのでしょうが)

海原(幻影を見せる術式か)

海原(幻想術式を無効化し、原典を失ったショチトルを回収出来れば、敵は我々を狙う事も無くなる? 何かに備えている様な雰囲気ですから、原典を失った我々の優先度が下がれば、少なくともショチトルが狙われる事は無いでしょう)

海原(まだお兄ちゃんと呼んでくれるあの子の為に、ここは少し苦労することにしますか)

海原「目標は、私とあなたの人質を解放する事。これは我々の利害が一致するところですね」

半蔵「だな。だが、普通にノコノコ飛びだしたんじゃ、あのレベルの軍隊は相手にできないぜ? その上多分警戒されてるから、忍んで出ることも難しいだろうな」

海原「ええ。そしていずれ、ここまで兵が来るでしょう。それでは恐らくジリ貧だ。とにかく、何か役に立ちそうなものや、隠れる事が出来そうな場所を探しましょう」

半蔵「了解。簡易な罠でも作って足止め出来そうなものを探す」

海原「お願いします。なんなら、私が持っているライフルもどうぞ」

使わせてもらう。そう言って半蔵と言う男は去った

海原「さてまずは、あの幻想術式を無効化することから始めますか」



549本日分(ry2010/12/06(月) 03:58:13.96GDZo0ZIP (11/11)

郭(半蔵様は、あのビルへ入っていった)

少女は少し離れたビルの屋上から眺めている

郭(そして今、10階の部分だけ、ライトアップされている)

郭(どういう経緯か分からない。だが恐らく、半蔵様の存在が見つかってしまったと考えていい)

郭(あの兵員を相手には、私では相手にならない。警戒されている為に忍びこむことも不可能)

郭(この状況で、半蔵様をお助けするには)

郭(付いてくるなと言われたけれど、でも)

郭(とにかく、何か、どうにかして)

悩んでいる少女の横を、少女らしきものが横切った

その異様な光景に目を奪われる

空中を音速とまではいかないにせよ、結構な速さで飛んでいく

何よりも目を引いたのは、そのフォルムだ

人の、少女の形をしていて、恐らく黒色の髪色をしているのだが、体の各繋がりが非常に脆く、空気の振動で腕や足が千切れんばかりに震えていた

そして一瞬だけ見えたその表情は、笑っているように見えた

郭には、どうしてそんな身の状況で笑っていられるのか分からなかった

その明らかに異質な光景は、またおかしな幻想でも見てしまったと彼女を判断させるには十分だった




550以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 08:27:22.24LmeM6.SO (1/1)

最終個体佐天さんは頭を消し飛ばさない限り死なんのか


551以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/06(月) 19:43:45.42EQC3ncDO (1/1)

佐天さんはどうなってもいいからショチトルだけは…


552以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 00:12:13.19lWq/Q720 (1/1)

なんか最終個体佐天さんが最後まで残りそうな気がしてきた・・・頭痛がしてきた・・・


553以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 00:37:34.39vjK5Vmgo (1/1)

3週目は佐天さんにが主役になってハッピーに爆発します


554以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 07:19:54.02LrdwyDgP (1/9)

海原(二段構成、か。ピックをもった人間を動かし、その人間の配置で巨大な術式の陣を作り上げる)

大スタジオに拡がる術式陣を目の前にして、海原は考える

一民族的な術式に西洋のメジャーな術式を取り込んだその陣は、彼の知識でも十分に内容を把握できた

海原(そのバランスを崩す程度なら、ここのペヨーテをずらしたり各媒体・媒介の配置をずらせばそれで事足りる)

海原(だが、それでは意味が無い。元に戻されてはまた術式の再起動は可能なのだから)

海原(それは、ここの術式についても言える。この部屋全てを爆破した所で、新しい術式の祭壇を他の場所に作り上げれば良いだけの話。学園都市を支配している現状が再び現れるだけ)

海原(根本的にピックを持っている人間をどうにかしない限り、効果は無い)

海原(だが彼らは、強い催眠状態でしょうし。仮に自分がここで術式を操作して破壊命令を出した所で、それが素直にいくだろうか)

海原(どうにかして、一度幻想そのものを解除しなくては。それも、強引にバランスを崩すとか術式破壊などと言う方法で無いやり方で)

半蔵「ここに居たのか」

少し聞きなれた声がした

振り返ると薄暗い空間の中に、ボワッと人の顔がハッキリと浮かぶ

ライターの僅かな明りが、半蔵の顔を照らしている。その顔は、返り血が所どころに付着していた

半蔵の方を海原が向いて、その明りは消えた

海原「戦ったのですか?」

半蔵「上の方に潜んでた狙撃手の連中を何人か、な」

ホラよ。と拳銃を投げ渡した

半蔵「武器は多いに越したことは無いだろ?上には簡単なトラップも仕掛けておいた。3重の奴だから、もし上に生き残りが居て下りてきてもそれで気付ける」

海原「凄いお手並みですね」

半蔵「ま、餓鬼の頃にそうやって育てられてからな」

海原「深くは聞きませんが、面白い経歴のようで」


555以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 07:20:33.75LrdwyDgP (2/9)

半蔵「んー、そうだな聞いてくれるな。どうだっていいことだ。それで、海原さんよ、お前の方は何か収穫でもあったのか?このへんな雰囲気の中に突っ立ってさ」

海原「……質問を質問で返すようで良くないですが、あなたは幻影のようなものの攻撃を見ましたか?」

半蔵「幻影だ?いや、見てないな」

海原「ふむ、そうですか」

海原(恐らく、原因はあのライター)

半蔵「でもなんか、他の連中には見えてて俺には見えない何かってのはあったような気はするな」

海原「それですよ。学園都市の中を混乱に陥れた最大の要因」

半蔵「それがここに関係してるってのか?」

海原「簡単に言えばそういう能力者が居て、その力を増幅する為の設備であり装置なんですよ、ここは」

半蔵「怪しい話だな、そいつは。でもそれならよ、ぶっ壊しちまえばいいじゃねぇか」

海原「その方法が難しいのですよ」

半蔵「ふーん。ま、その道の事はそこまで詳しくはねぇから、俺には分からんな。何とかできるなら何とかしてくれ」

そう言って、また小さな明りがともる。半蔵は煙草に火を付けた

白い煙が薄暗い空間にぼんやりと浮き上がる

海原「美味しいですか、タバコ?」

半蔵「いーや、全然。癖で吸ってる様なもんだ。そこで死体になっちまったヤツから貰ったものだから、気分がな。趣味の悪い模様も入ってることだし」

海原「その模様は、あ、いえ。なんでもないです」

海原(魔術についての知識は期待できないし、知らないのであれば教えるわけにも。彼には気に食わないでしょうが、あのライターが有れば幻術は無効化される。無くさない限り)

海原(幻術の無効化、今だけは都合のいいアイテムですね。無効化、か。あのライター、使えるかもしれません)

海原「そのライター、借り受けても?」

半蔵「いいぜ。そろそろ最後の一本にしとこうと思っていたからな。こんなライターならいくらでもくれてやるよ」


556以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 07:21:06.79LrdwyDgP (3/9)

海原「それでは、そこへ置いてくれますか。あ、いやそこでは。その右の円の、はい、その植物の所です」

半蔵「なんだこれ?サボテン?」

海原「食べては駄目ですよ。幻覚幻聴作用が有りますから」

半蔵「そりゃ大量生産して売れば大儲けできそうだな」

海原「根本的に味が悪いですからね、売れませんよ。それに絶滅危惧種ですしね。それでは、少しガラスの向こうの部屋に行って頂けますか?」

半蔵「あいよ。なにするんだ?」

海原「ちょっとしたことです」

半蔵が実演部屋からガラス越しの編音部屋へ出る

少しだけ光っていた曲線や直線が一際大きく光った

何かに耐えきれなくなったのか、ライターが部屋の端で火に包まれて爆発した。そして、海原が膝を付く

半蔵「おいおい、大丈夫か?」

海原「大丈夫、です。思った以上に負担が大きかったので」

半蔵が脇から腕をまわし、海原を立ち上げさせた。僅かな時間であったのに、質の悪い汗が滲んでいる

半蔵「何したのか分かんねぇけど、頼むぜ? そろそろ敵が」

海原「私も、一応、プロですから、大丈――」

ズガンという爆発音と、小銃の掃射音が響いた

半蔵「……!! 下からだ。罠に引っ掛かったのか、それとも除去したのかは分からねぇけど」

半蔵の肩にかかっていた重量が消えた

海原「行きましょう。敵のアドバンテージは一つ失わせましたから」

そう言って、半蔵が渡した拳銃を握って走りだした


557以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 07:34:14.27LrdwyDgP (4/9)

「見せしめに人質を殺して、拡声器で脅せばいいんですよ、こんなもんは!!」

「いや、それでは駄目だ。殺してしまっては人質としての意味が無いだろう? 」

アメリカの兵装をした人間がとある白人の前に立って、質問した

名前は、ジョージ=キングダムという

もう何度目かのやりとりだった

その度に、彼らは衝突していた。最も、突っかかっているのはアメリカ人の兵隊だが

「……ここは、本来あなたが居る場所ではない、ジョージ・キングダム!!CIAではあなたの声に従うだろうが、軍とCIAは勝手が違うんだ。軍は軍のやり方でさせてもらう。戦って死ぬのは私の部下なのだからな!!」

「ならば君も、私の部下の一人だよ。そして私も有能な直属の部下を一人失ったのだ。その彼が人質を盾にせずに戦ったという事を尊重したい。それが結果として彼の最後の自由意思だったのだからね」

「ならばその自由意思とやらで、私は私の判断を使いたいだよ!」

「そうだな。確かにここの戦力はこんなところで消耗する為のものじゃない。私もそんなことの為に君たちをここに派遣させたわけではないのだから」

「……薄々怪しいとは思っていたが、お前は、まさか」

「君の疑問には、イェスと答えさせて貰う。そうだな、難敵を倒したいなら、あれを使うと良い」

そう言って、キングダムは指差した。刺した先に有るのは、アメリカ製大型駆動鎧

「駆動鎧を? 宜しいので? ビルごと大破の可能性もあります。ご自慢の魔術とやらも」

イエスという答えを聞いて、話しぶりが露骨に変わる

「いいんだ。もう使えなくなってしまったからね。このビルにはもう、完全に価値が無いのさ。その為に彼も人質を退避させたのだろうしな。本当に、良い部下だった」

「なにしろ、CIAの秘蔵っ子と聞いています。あの青いのは」

「あぁ。最初から工作員・諜報員・戦闘員として作られた狂気の双子。でも逆に、兄弟そろって優しかった。自分の行いと、一般人の振りをする為に植え込まれた一般倫理の狭間で、精神が歪んでしまうくらいにね」

「なんといっても、まだ子供ですからね。それも、思春期だ。郷里の息子を思い出させる」

「弟が私に従順で死んでしまった分、兄は相応しい人間に就いていったと思いたい。私には子供が出来ない分、特に。おっと、つい最近素直じゃない子供が出来たばかりだったかな」

「子育ては子育てで、大変ですよ。それでは、私は前線へ出ますので。……駆動鎧出すぞォォ!!用意しろォ!!!」



558以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 07:47:58.90LrdwyDgP (5/9)

半蔵「海原さんよぉ!お前の能力とかって使えねぇのかよ?!」

奪った手榴弾を階下へ投げ込み、半蔵は海原に聞く

海原「都合のいい人の皮があればいいのですが。しかし、恐らくは生命識別もしているはずです!敵には私が他人に化ける能力が有ると発覚しているでしょうから、死人に化けてもすぐにばれてしまいますよ!」

海原(それに、この煙幕では黒曜石のナイフを主体とした魔術は使えない。向こうは熱感知装備を持っているのでしょうね。反撃は的確な位置ばっかりだ。これでは半蔵と言う者の動きがいくら身軽でも接近戦まで持ち込めない。奇襲も厳しい)

爆発の直後を狙って突っ込んできそうな場所に向かい、拳銃を数発打ちこんで海原は応える

海原「それより、後退用の罠の方は?!」

拳銃の応射として連射された小銃の弾を階段の手すりの壁で受けつつ、次の手榴弾を投げ込んだ

半蔵「出来てるぜ!だけどな、後退ばっかりしてても埒があかねぇぞ!弾も限られてんだ!」

海原「13階まで下がれば、策があります!」

海原は恐らく、13階などに行ったことは無いハズなのだが

しかし、根拠も無しに言った気はしなかった

半蔵「その言葉、信じさせてもらうぜ、ぇ!!」

爆発、応戦、後退、爆発、後退、後退

一度抵抗する事を諦めれば、13階まで下がるのはあっという間だった

アメリカの部隊からすれば、それは弾切れから来る苦し紛れの後退劇にしか思えない

無論、それも敵を陥れる為の海原の策でもある

13階に着いてすぐ、海原は口を開く

海原「半蔵さん、接近戦で急襲する準備は?」

半蔵「いつでもイケるぜ」

海原「では、物陰に隠れて、そして目を瞑っていてください」

目をつぶれ?閃光弾か何かか?だが俺達にはそんな物は無いハズだがな


559以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 07:48:26.34LrdwyDgP (6/9)

だけど、ここまできたらコイツの策に従うしかない。半蔵はそう考えた

半蔵「……了解だ」

しばらく経って、駆けあがってくるアメリカの兵隊

装備は整っていて、更に練度も高く実戦経験も積んでいる

そして半蔵とエツァリという人間の行動能力を把握している為か、接近戦には警戒していた

故に、投げ込まれたスモーク弾。これで向こうは煙幕をもろに食らうが、こちらは特殊ゴーグルが有るのでアドバンテージが取れる

拡がる煙幕の中で、ゴーグル越しに見える彼らの視界の中央に、諸手を上げた標的が居た

誰もが知る降伏の印。しかし片手には得物が握られている。ナイフの様に見えた

「散々抵抗したが、観念したようだな!武器を捨てろ!」

声を出した男を中心に、5人のアメリカ兵が少しずつ空間の中を展開していく

海原「そんなに大声を出さなくとも。捨てますよ。その前に、すこし話を聞いて頂けますか?」

「命乞いか?そんn――――」

向こうの言葉を無視するように、海原は話しはじめる

海原「この階、13という数字は忌み数として有名ですが」

「なんの話だ!おま―――」

海原「メソアメリカ文明では13と言う数字は違う意味が有ります。それは、区切り」

海原「13日で一区切りなのです。区切りが終われば、新しい区切りに入る」

海原「次の区切り。それが意味するのは新しさ。新しさの象徴、それはなんでしょうか?」

「知るか!とっとと手のナイフを捨てろ」

海原「万国共通で新生を意味するのは目覚めの、朝。差し込む朝日は新しさの象徴だ

「だからなんだと言っている!」


560以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 07:49:11.34LrdwyDgP (7/9)

海原「そんな朝日を見たくは有りませんか?」

そして彼は手に握ったナイフを、上げた状態から地面に勢いよく突き刺した

刺さった瞬間、大きく周りが、13階の床から壁から天井から、一気に温かさを伴った強い光が放たれる

暗視と熱源を映し出す彼らのゴーグル内は強い光で満たされた

海原「半蔵!」

当然、彼にとってもこの状況はまぶしい

だが、散々彼には敵部隊の動きを伝える情報が示され続けていた。移動音である

海原を見つけそれに集中し、取り囲むように展開するその動きで、粗方の場所は読めている

ぼんやりとでも、少しでも見えていれば、十分だ

そばに居た3人を半蔵が昏倒もしくは殺害し、残り二人の首を海原が裂く

2秒もかからずに5人は全滅した

間髪いれず、彼らは階下へ走る。吹き抜けを飛び降りるのは、いざというときに全く身動きできない為選択しなかった

半蔵「やるじゃねぇか。どうやったんだよ?まさかこれも能力の一部、お前は光学系の能力者だったのか?」

海原「いえ。まぁ溜まっていたモノを吐きだしただけですよ」

海原(先程の幻想術式への干渉で体に入ってきてしまった余計な魔力を、ようやく放出できたか)

半蔵「そーかい。まぁ何でもいいけどy」

丁度彼らが5階まで駆け下りた時

明らかに今までとは質の異なる砲撃が、直上の階にぶち当たった


561以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 07:49:42.54LrdwyDgP (8/9)

振動が施設全体に伝わり、そして吹き抜けを通して落ちてくる上階の瓦礫

海原「今の風切り音!!そしてこの威力はッ!!」

御坂美琴を気に掛けてやまない彼には、聞きなれた音によく似ていた

電磁砲。それも一発では無い。着弾音は複数だった

半蔵「今のはなんだよ!? ってか、ビル自体がヤバいぞコイツは!!」

四の五の言っていられない。敵は仲間の生存反応が全て無くなったことで、ビルごと半蔵と海原を押しつぶそうとしている

海原「駆動鎧が持っていた、あの巨大なライフルなのか!?」

半蔵「駆動鎧だと? そいつは相手が悪いってレベルじゃないぞ」

崩れきる前に、更には自分たちが居る階を狙われる前に

早くここを脱出しなければ。出たところで、30を超える駆動鎧を相手にしなければならないが、押しつぶされて死ぬよりはマシだ。希望が有る

希望のある方向へ、彼らは駆けた


562本日分(ry そろそろ佐天さんにも見切りをt(ry2010/12/07(火) 07:55:20.85LrdwyDgP (9/9)

「あはは、みんな、こんな所に居たんだねー」

傷ついた固体を癒し、使われていない個体が休息と調整をしている

そして彼女らを守る為に彼女らが守っている、複数の大きなトレーラーが並んだ場所

ビルからは少し離れた場所であるが、距離はおよそ100mといったところだろうか

ビルの中に打ちこまれる大型駆動鎧の電磁砲の音が響き続ける、そんな場所

1対1ならその圧倒的な性能差で戦いにはならない

だが学園都市中に散らばっていたアメリカ派の全固体を集めた趨勢およそ70ならば、相手になるかもしれない

本来ならば約100は居た

そのうち30を消し去ったのはミッション中の殉職と突然現れた最終固体による虐殺

「あらら、この状況じゃ、飛んで火に入る夏の虫だなぁ」

「確かに御坂さんの攻撃を受け続けて、ボロボロの私は虫の息。虫繋がりだ。アハハ」

「だったら、虫じゃなければいいのか。アタシ天才かな?」

言って、グチャグチャと音を立てて体が再生していく

同時に体内に残った瓦礫や銃弾が音を立てて地面に落ちる

好機

体が完全に元に戻る前、10の量産固体が超電磁砲を放ち、10の同固体が最終固体の周辺の空気を圧縮し、10の固体が最終固体の体を動けない様に念動力で押さえつける

圧縮された空気に超電磁砲が引火し爆発を起こした

身動きできず、超電磁砲を食らい、さらに爆発による追撃。しかし声は返ってきた

「アタシが借りてる超能力をまた借りするなんて、酷いなぁ。せめて、一言ぐらい断ってくれてもよくないかなぁ」

「勝手に借りているのはあなたも同じでは?」

状況に驚愕しながら、一人の少女が応えた

「そうか、そうだね。学園都市で生き残ってる皆さん!!能力勝手に借りちゃいます!!って言うか借りてます!」

ふざけた様に言い放った

「で、今ので良いかな?アタシ達?」



563以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 08:06:15.23cv6O2HQo (1/1)

乙です
見切りを、なんていいながらも佐天さん絶好調なのが>>1クオリティwwww


564以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 08:30:08.86ZzSTmkAO (1/1)

久しぶりに来たがバイオレンスが加速してて良いな

ところで固体じゃなくて個体じゃないか?


565以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/07(火) 13:33:58.282KRwGoDO (1/1)

佐天「二期に出られなかった恨み、ここで晴らさせてもらいます!」


566以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 09:28:37.32NNnTAQDO (1/1)

最近このSSからシュタゲを想起する


567以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/08(水) 21:51:31.31NAHvJAMo (1/1)

上条「跳べよおおおおお!!」


568俺……シュタゲ知らないんだが面白いのかぬ?2010/12/09(木) 08:06:03.0943XnKqoP (1/12)

綺麗に壊れきったビルによって舞う埃の中へ、容赦ない電光を帯びた弾丸が駆け抜ける

人間の反射神経では、銃弾を回避できない。その点では極音速弾だろうが超音速弾が関係無かった

避けるには撃たれる前にその攻撃先を予測して身を動かすしかない

極音速弾の恐ろしいところは、それが近くを通過するだけで人間の肌や肉を裂くには充分な衝撃を与えられる事

例え壁に隠れようがその壁ごと簡単に貫ける事

御坂美琴の超電磁砲は消費される電位こそ大きいが、弾として撃ち出されるものがコインである為、空気摩擦で簡単に形を変形させてしまい、射程は驚くほどに短い

コインを使う事に全くのメリットはない。それは、彼女のLV5としての配慮なのだろう。威力を抑える為の配慮

そんな配慮はもちろん軍事兵器には無い

半蔵(こうなる事は分かってたが、厳しいってレベルじゃねぇ!!)

それでも、彼は傷つかない距離をとって回避していた。崩れ落ちたビルの中を器用に後退しながら

半蔵(奴らの駆動鎧にも当然、熱源探知が有るだろうな。この粉塵の中でも俺の動きが分かる。だからこそ逆に、敵の動きが読める)

自分の行動から、相手の行動を予測する。むしろ、誘導すると言えた

半蔵(ちょくちょく攻撃のリズムを変えてはいるが、この粉塵の中なら、ダミーの動きに引っ掛かってくれる)

半蔵(左ッ!! ……ッ、距離が短かったか。粉塵の中なら、ジリ貧だろうが、まだ何とか回避できる。問題は、それが無くなった時だ)

電磁砲では簡単に貫通してしまいそうな瓦礫へ逃げるふりをして、彼は敵の攻撃を誘導した

そこに、壁が有るという情報まで肉眼で確認できるほどに、身を隠す粉塵は少なくなって来ている

半蔵(バーカ、んな所には隠れねぇって。……電磁砲の衝撃である程度は巻き上がるが、それじゃ足りねぇ)

敵の駆動鎧の体が、所々で確認できる。薄くなってきた

半蔵(海原の方は、どう動くんだ?)


569以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 08:06:28.6943XnKqoP (2/12)

最初に攻撃を拡散させる為に二手に分かれてから今まで彼は視界には無かった

薄くなった粉塵の切れ目、海原を見つけた

半蔵(ッ、馬鹿野郎!!)

避けている。避けているが、裂けている、見えただけでも幾らかの箇所で。厚めの戦闘用のジャケットからは中身が見える

そして今彼の鈍った動きは、間違った方向だった。このままでは電磁砲の餌食となるだろう

ここで彼を失う訳にはいかない。彼の能力は何なのか分からないが、少なくとも、自分だけではこの状況は改善できない

走って押し飛ばした海原の体は思った以上に簡単に動いた。それだけ弱っていたのだろう

半蔵「おいおい、大丈夫かよ?!」

海原「すみません。足をやられました。腰にたんまりと麻酔が有るので、それを頼みます」

足だけでなく、腕もやられているのだろう。腕が生きていれば自分で麻酔を撃つ程度の事は出来るハズだ

それだけ聞いて、彼は持っていた全ての手榴弾を駆動鎧へ向けて投げる。数秒の時間稼ぎの為に

半蔵「任せろ。……さっきの壁とかが光る奴とか使えないのか?」

海原「ン、ッ、フゥー。ありがとうございます。あれは本来儀式用で、それも私一人で出来る規模じゃないんですよ」

半蔵「そうか。動けるな? お前にはまだまだ働いてもらう必要があるから、死なせねぇよ」

体に無理をさせることになるが、痛みが無ければ一時的に動きはマシになる

海原「厳しい人だ。……大丈夫です。ですが」

半蔵「あぁ、どうすりゃいいかな、コレは」

手榴弾の爆発など、敵の機械の塊には通用しなかった

そして彼らは、360度全方位をおよそ30の大きな駆動鎧に囲まれていた



570以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 08:08:42.4043XnKqoP (3/12)

結標「随分と沈んだ顔をしてるわね?」

移動中の車の中で、隣に座る青髪の男に問うた

青髪「あわきんには、兄弟姉妹はおるん?」

意外な質問だった

結標「あわきんって呼び方は止めて。そうね。いないわ、多分」

青髪「そうかぁ」

結標「……あなたには?」

青髪「ひとり、おったよ。たった一人の肉親やなぁ、知っとる限りでは」

結標「おったって、死んだの?」

青髪「さぁ? でも多分そうなんやろなぁ」

結標「何をしみったれてるのか分からないけど、あなたがそんなんじゃ困るのよ。私を炊き付けたのはあなたでしょ?」

青髪「大丈夫。役目はちゃんと果たす。僕を拾ってくれたあの人の、あー……」

結標「あー? 本当に大丈夫?」

青髪「いやー。あのさ、結局、僕は犬なんやろうな。弟も僕も、道は違えど誰かの命令に従い続ける存在でしかない」

青髪「そういう風に育てられたからって言ってしまえばそれだけなんやろうけど」

結標「……下手に他の情や考えが有るよりは、案外その方が楽よ」

青髪「そうなん? うーん、そうかもしれへんな」

結標「そ。それで多分、目的が無くなった私も同じ。人の言う事に従うしかやる事が無いのね」

青髪「なんだか無気力やな。 今から親玉の所へ行くんやで?」

結標「無気力過ぎて危ないかもね。でも、時間が経って考えてみれば、誰かに命令されないと、私もやる事が無いってわかったの。もちろん学園都市の連中を許す気はないけど」

青髪「同時に、それを引き起こした連中も?」

結標「そうね。あのまま安定していたら、学園都市が仲間を殺す事は無かったでしょう。でも、結果こうして私の目的が喪失してしまった。認めたく無くとも、その現実は変わらない。案外ストイックなのね、私は。簡単に受け入れてしまったわ」

結標「生き残ってしまった、目的も無くして。憎しみと言う薄い残り香で、私はここに居る。でも、所詮は残り香よ。自律的に香りを放つ線香やアロマキャンドルは燃え尽きた」

青髪「残り香か。じゃあその香りが霧散しきったら、どうするん?」

結標「さぁね。その時に、再び私へ火を灯そうとしている人に聞くしかないわ。それが私なのかあなたなのか、それとも違う他者なのか、分からないけど」

青髪「ふーん。なら、その残り香が拡がりきる前に、君がおらんと出来ひん事を終わらせなあかんな」


571以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 08:09:41.8343XnKqoP (4/12)

「もっと頑張りなって。応急処置も終わってるアタシも全員出しちゃってさ、派手にいこうよ!!」

崩れたビルの北西部に並べられていた待機・調整用のトレーラーを大きく変形させて吹き飛ばし、逃げ遅れた個体がその中で生命を終えた

残りは50人強。それでも、まだ拮抗していると言えた

外で戦っている量産個体の数自体は減っていないのだから

「アタシの頭は4つしかない!残ったあなた達は50以上いるんだよ?数の上ならすんごい分が良いんだよー?」

全裸のまま少女は、能力で強化した体を用いて、一人の個体に狙いを定めて跳躍した

狙われた個体は体の動きを封じるようにかけられた圧力によって、皮肉臓骨全てを一撃でえぐり取ろうとする拳を避けられない

しかしその個体はあきらめず、今度は空間移動で自らの体を移動させる

「そうそう。量産個体のアタシ達じゃ、借りてこれない場所に居る能力者の能力も使えるように、わざわざアタシが引っ張って来てるんだから、有効利用しないと」

移動した個体を追う様に最終固体も空間移動で現れる。まるで移動先があらかじめ分かっていたかのような早さだ

「読心能力?!」

「そうだよー」

迫る拳。演算が間に合わない。このままでは次の空間移動より先に体は四散してしまう

足や他の能力で足掻こうとするが、やはり身動きが取れない様に念動力で体を固められ、その個体は死を意識した

「ひっとーつ! って、アレ?」

狙われた量産個体が目を開くと、自分は違う場所に居た。他の個体が、自らを違う場所へ移動させたのだ

先程まで自分が居て、体をぐちゃぐちゃにされかねない拳が空を切った場所は、青白い炎が固まっていた

付近に転がっていたトレーラーの破片が、黄色い色に変色して変形してい

空気を集め送り込み続け、さらに高出力のエネルギーの塊を物質であるかのように圧縮し、固める

「チームワークか。さっすがぁ。みんな同じアタシだけあって、すごい統率力だなぁ」

青い炎の塊とは全く違う方向から、声がした


572以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 08:10:20.0943XnKqoP (5/12)

「いやー。さっきのは流石に貰っちゃうと、下手すればアタシだけ逝っちゃうからさ。受け止めてあげる訳にはいかなかったんだよね」

避けられた。いや、避けるしか無かったのだ。つまりこれは自分たちも、これだけ数が居れば最終個体を殺すのに十分な攻撃力を作り出せると言う事だ

同じ炎を声の方向へ向ける。今度は鞭のように伸びた

そして、一人が狙われても他の個体によって回避をサポートする

「うおっち! 楽しませてくれるねー。やっぱりこうじゃないと。みんなを痛みから解き放ったら、アタシも逝くわけだし。最期はこうじゃないと、盛り上がらないよねぇぇぇぇぇぇ!!」

適当な個体へ狙いを絞って、飛来する炎だの電気だのを無視して、直線的に高速で移動しながら拳を突き出した

狙われた個体の周りの個体達は巻き込まれまいと回避する為に距離をとる

一方で狙われた個体は強く最終個体の方へ引っ張られた

引っ張られた瞬間、同時に体のコントロールが止まる。避けなくては。安易な方法として、空間移動を選んだ

しかし発動しない

なぜ? と思った瞬間に、その個体は四散した

「アタシ達の能力は、どうしても他の能力者が居なければ使えない」

同じ手を使ってすぐそばに立っていた個体を固めて引き寄せ、最終個体の突きだした腕に胸部から突き刺さる。その個体は簡単に絶命した

「今、空間移動の能力が使えないのは、なぜでしょう?」

質問を返す個体はない。答えの代わりとして、最終個体の周辺を熱プラズマ化して固定させる

一瞬の熱核では燃え尽きず耐えられるかもしれないが、空間が持続的に高温なら耐えられない。それは、既に学んだ

念動力と磁力を使用し、さらに精神操作によって演算にジャミングをかけている。最終個体の体は動けない。当れば、如何に最終個体と言えども1秒も持たずに蒸発して、死ぬ

今は何故か空間移動が使えないのだから、最終個体には避ける術はない、ハズだった

「答えは簡単。どこかの空間移動能力者さんから借りてた能力をお返ししたからさー。返すといっても、別にその能力者さんの能力が使えなくなる訳じゃないんだけどね」

最終個体は空間移動を使って簡単に避けていた。そして今、その能力はまた使えない

「量産型の個体は借りれる能力の数は世代によって違うけど、借りれる範囲は狭い。でもアタシは、この学園都市全て位の範囲から借りれる。君達はアタシの借りた能力が借りられる範囲内にある能力だから、いろんな能力を借りることで今使う事が出来ているんですなー」



573以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 08:11:18.2843XnKqoP (6/12)

「だからアタシがその能力を返してしまえば、また借り状態の量産個体の君達には使えなくなる。アタシが使うときだけ借りて返せば、同時にしか能力は使えない」

「すごくアンフェアでしょ?で、コレを上手く使えばさー」

強力な力で周辺の4個体が最終個体へ引きつけられる。そして、大きく広げた両腕に串刺しにされていく

「はい、今アタシ達はみんな無能力者です!今のは初動の慣性を付けるときだけ一瞬能力を借りてやっりまっしたー」

あははと笑い、腕の量産個体を溶かして燃やし切り、命だけでなく形もこの世から消失させる

「うん。これじゃ、能力者の無能力者イジメと同じだよね。でも結局、アタシ達は無能力者っていう烙印からは逃げられないんだよ」

「借りものの能力、借り物の体。佐天涙子である必要性はどこにもない。特殊性も個性もない。都合が良かっただけの、無能力な被検体」

「だから弱いし、痛い思いをする。だからほら、死んじゃって早く楽になろうよ。もう影で馬鹿にされたり、いじめられたりしないんだよ?」

それでも、少女たちは立ち向かってくる。無能力状態ならば、接近戦で戦える。白の戦闘服によって筋力補強を受けている分、量産個体の方が近接戦能力は高いハズだ

10人の佐天涙子が佐天涙子をたこ殴り、というよりはたこ切りにする

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い………」

体が裂かれ、突かれ、噴き出す血

それでも最終個体は無抵抗でしばらく受け続けた。痛いという言葉を呟き続けながら、ずっと

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いからぁぁああああああああ!!だから終わらせてあげる!!アハッ!!!」

切りかかかっていた10人と、とりあえず目に付いた10人を空間移動させる。移動先は、先程少女たちが作り上げた熱プラズマ空間と同じ温度を持った空間

一瞬で、20人の個体が蒸発した

残り32人。これで半数以上が死亡した。これではこの後の本来の任務に差し支える

5人の少女が最終個体へ突っ込み、残りの27人が一斉に逆方向へ拡散するように逃げた

5人はいわゆる殿(しんがり)役だ。盾となって味方の撤退を確実にするための、犠牲

「逃がさないよー!!一人も絶対逃がさない!!それで、みんなで一緒に逝こう!!!アハハハッ」


574以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 08:12:30.9943XnKqoP (7/12)

粉塵が完全に落ち着いてきて、彼らは両手を上げるしか無かった

海原「すみません。私の為に」

半蔵「こうなっちまったらしゃーねぇ。とりあえず、この状況を好転させる事を考えようぜ。なんだか向こうは騒がしいし、上手すれば何とかなるかもしれないからな」

背中合わせの状態で、半蔵は親指でその方向を指した。200mほど先で、青い光やら爆発やら電光が瞬いていた

「何をたくらんでいるのか知らんが、お前らに手はない。ミンチになりたくないのなら、こちらに従え」

駆動鎧の巨大なライフルの先端がこちらを狙っている

大砲とも言えそうなそのライフルを掲げた肩の上、後方に見た事のある女が身を隠すように移動していた

半蔵(アイツは……付いてくるなって言ったんだけどな)

半蔵「へーへー」

トボトボと、出来るだけゆっくりと両手を上げて歩く

半蔵(さて、どうするかな)

前を歩く海原を見る。痛みは無いのだろうが、手足の動きが自然ではなかった。根本的に筋肉や骨に問題があるのだろう

対物兵装をしたロボットを相手にこの程度なのだらから、まだ良い状況と言える。自分も左腕から少々出血していた

半蔵(海原はこんなんだ、頼れねぇ)

「ボディチェックを受けてもらう。抵抗するなよ」

半蔵「ボディチェックって、こんなデカブツ目の前にして抵抗するなと言われてもな。流石にビビっちまうぜ?」

駆動鎧がその腕を半蔵の体にかざす。金属探知装置でも付いているのだろう

「刃物の類、全て落として貰おうか。ついでにその煙草もな」


575以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 08:12:57.7143XnKqoP (8/12)

半蔵「一服も許してくれねぇのかよ。ケチだな」

「刃物等の武器を全身に隠している奴の煙草が、本物の煙草だとは思えないんでな。保険だ。本物なら俺が有りがたく貰い受けてやるよ」

半蔵「あーそう。好きにしやがれ。全くケチ臭ぇな」

煙草の中の数本は、閃光を放ったりするような細工がしてあったのだが

半蔵(流石に敵もプロか。見逃しちゃくれねぇ)

「お前はなんだかよくわからんもの持っているな。とにかく、全て捨ててもらおう」

海原「よくわからんものとは、失礼ですね」

半蔵にも使用用途が不明な祭事用のアイテムのようなものを捨てていく

「そのナイフみたいなヤツもな」

黒曜石のナイフを示した

海原(私の主要な魔術の媒体も、か。困りましたね)

海原(いや、待てよ)

海原「この麻酔は残してほしいのですが。痛みが酷いので」

「あぁ? まぁ、良いだろう」

海原のぎこちない体の動きを見て、駆動鎧の中の男は許した

海原(よし、通った。これで、後は隙さえあれば…!!)

潔く、黒曜石のナイフを横向けにして堅そうな瓦礫に叩きつける。割れやすい黒曜石は、割れて大中小様々な小片となった

半蔵「また派手に壊したな。いいのかよ」

海原「いいのです、これで。あとは、なにか目を逸らすチャンスさえあれば」

半蔵「チャンス、か。もしかしたら、なんとかなるかもしれねぇぜ」


576以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 08:15:47.8443XnKqoP (9/12)

少女達が絶賛戦闘中のトレーラー群から崩れたビルを挟んで反対側の南東方向の大きな広場に設置された、同じようなトレーラー群

ただし中身は全く違う物だった。中身は駆動鎧や各兵のHMDに表示される情報を管理している。そして、ビルを囲っているサーチライトや各監視システムの電力供給から制御まで

そのトレーラー周辺の兵隊は倒れていた。半蔵と海原、そして佐天涙子達の戦いに人と兵装を割いているので、ここを守るのは一般的な兵装をした兵たち

複数の大きなトレーラー内の一つ。その扉が開いた

「これはこれは、会うのは二度目だね。くの一のお嬢さん」

郭が入って直ぐに目が合った男が、声をかける

郭「私は、あなたとは初対面だ」

銃を白人の男へ向けた。浜面という男にがっかりされてから使わないつもりでいたが、スタイルを気にしている場合では無い

「すまない。君との関連は3度目だった。原石のリストも含めてね」

郭「!?…… なぜそれを知っているのか分からないが、今は関係の無い事」

ズガン、と男が背にしているトレーラーの内壁に穴が空いた

郭「半蔵様達を解放して頂けますか?」

「怖いな。この体にはそういう物から身を守る特殊な能力は無いのだよ?」

郭「なら、ますます私の言う通りにしてもらいたいですね」

銃で脅す。だが男は首を横に振った

「残念ながら私はここの機械は分からないんだ。やるなら好きにやってくれ」

郭「……止めないのか?」

「周りの兵を急襲とはいえ全部伸してしまう相手では、私はどうしようもないよ」

郭「ならば、無用だな。でも」

銃弾が、綺麗に眉間を捉えた

郭「保証はない」

男がその衝撃で後ろに倒れたのを確認し、拳銃を捨て、転がっていたライフルに持ち替える

郭にも、この装置を動かす方法などわからない。恐らく操作する為にはセキュリティも突破しなくてはならないだろう。解除なんて出来るわけが無い。ならば、叩き壊してしまえばいいのだ

戦術情報共有が止まれば駆動鎧の部隊はその強力無比な電磁砲の使用を躊躇うだろう。味方に当れば被害は甚大だ。影響のある射線上の障害をここで管理しているハズ

仮にそうでなくとも、確実に影響は出る。一瞬の隙さえあれば、半蔵様なら何とかしてくれる

フルオートにして引き金を引いた。全てのモニターから表示が消え去ったのを確認して、止めに手榴弾を投げ入れて、彼女は次のトレーラー内の設備や装備の破壊に移った


577以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 08:16:43.1643XnKqoP (10/12)

「グダグダ喋って無いで、とっとと動け」

駆動鎧が促す。引き延ばすにしても時間切れか

半蔵「分かってるって、って痛ぇじゃねーか!その巨体で殴るなy―――」

言いきる前に辺りを照らしていたライトが消え去った。同時に、駆動鎧の動きが乱れる

「な、ライトはどうした?!」「知らん!」

「情報共有システムの停止エラーが出ているぞ?!」「センタートレーラーからの応答が無い」

半蔵「これで十分か?」

海原「ええ、十分すぎるほどですよ」

言って、残った麻酔の一本を割れたナイフへ投げつけた

液体が漏れだし、湿った破片が艶やかに色を反射させる

海原(あの幻想術式の応用をに必要なもの。儀式の祭壇、術式陣はコレで十分なはず)

海原(ペヨーテの代わりに麻酔を用いるなど、全てが全て代用品な上に、アステカの術式を織り交ぜる事になりますが)

海原(あの術式陣自体がハイブリットな術式である以上、問題はないでしょう。後は)

あらかじめ目を付けていたナイフの破片に飛び付く

本来ならこの時点で怪しいと判断され撃たれていただろうが、今ならば

拾って、そのまま手を握り締めた。隠し持っていた黒曜石のナイフの小さな欠片が手の平に食い込み、出血させる

手に持った小片から魔力が供給されることで、その術式は発動した

ペヨーテが見せる幻覚を対象全てにもたらし操った幻想術式。それを麻酔に置き換えただけの術式だが

発動すれば、周囲の駆動鎧は動かなくなった。まるで、全身麻酔を食らった様に

同時に半蔵も動かなくなる

倒れ込んだ半蔵の頬に海原の血で×印を付ける。ただそれだけで、目を開いて半蔵の動きは元に戻った

海原「半蔵さん、今のうちです」

半蔵「…ン。流石だな」

海原「あまり長くは持ちません。ひとまず隠れましょう」

半蔵「了解。そいつは俺の得意分野だな」



578やばいわー。前回以上に殺す手段が無いぞ、この佐天さん2010/12/09(木) 08:18:26.8643XnKqoP (11/12)

時間にしてみれば、およそ3、4分だった。麻酔術式によって倒れていた人間が、全員体の動きを取り戻す

「やられたな。あの二人はどこへ行きやがった?」

「少なくとも、見える範囲には居ないようだが」

「センタートレーラーはどうなったんだ? あのトレーラーの管理システムが働かないと、今アレが学園都市に来ても守れないぞ?」

彼らが居る場所は、情報管理・兵装設備使用許可機能を持ったセンタートレーラーから500mは離れている

行こうと思えば、ほんの一瞬で届く距離ではある。しかし何が有るとも分からない

「応答が無いままだな。隊長、万が一の事も有ります。一時的に情報共有のセンターを代替しては?」

「そうしよう。しかし、各監視システムやデータベースなどにはアクセスできないぞ。出来るのは各員が得た情報の共有のみだ」

「了解」

「それから、ひとまずの目標だ。センタートレーラー群の中には奴らの人質も居る。あそこの確認を最優先に―――」

駆動鎧部隊長の見ている駆動鎧の中のディスプレイに何かが入ってきた

「ぐぁああぁっ……」

彼らの目の前に、少女が飛ばされてきた。地面の上を滑った後が赤く染まっている

味方の特殊な能力者の量産型と、着ていた戦闘服と見た目から判断が付いた

視界の中で少女は駆動鎧の方へ助けを求めるように手を伸ばした

次の瞬間には、その腕は地面へボトりと音を立てて落ちた

力尽きたのではなく、体から千切れて落ちたのだった

殺ったのはその上に現れた裸の少女。その大きいとも力強い共言えないはずの足で踏み潰したらしい

Unknownに目の前で味方が殺された以上、この女は敵

もちろん応戦する。通常弾だが、巨大なライフルから高速で弾丸が飛び出した

全て直撃

複数の射線で30mm機関砲が当れば間違いなく人間は爆ぜる

しかし、現れた少女の体は少し変形した程度だった


579本日分(ry 個体と固体の間違いは読みなおしてもなかなか気付けませんです2010/12/09(木) 08:21:33.6743XnKqoP (12/12)

佐天「なんですかぁ?邪魔するんですか?」

歪な動きをしながらも、ハッキリと駆動鎧たちを睨んだ

返答だと言わんばかりに更に大型弾のシャワーをかける

佐天「邪魔するなら、容赦しないですよ?」

射線とは全く異なった方向から返答が有った。その上、体は完全に綺麗な裸体に戻っている

返答とほぼ同時に、炎が駆動鎧達を襲う

それに対して彼らは避けようともしない。駆動鎧内のディスプレイには問題なしの意味を表す文字の表示が光っていた

「射撃維持。ただし電磁砲は使うな」

「了解」

炎に対してビクともしない大型駆動鎧を見て、最終個体は攻撃を切り替える

先程の脅しの様な威力では無く、純粋に一撃でこの世から消し去れる威力で、電気であったり炎であったり風であったり。高エネルギー体へ昇華させたそれらは全て同じような見た目と破壊力を持っていた

「ッ、散開!」

一人のディスプレイに危険を表す表示がなされた

回避運動。アスファルトに窪みが出来る程度で地面を蹴り、高速で動く

「消えた?」

派手な攻撃を放った少女の姿が消えていた。逃がしたかのか

他の駆動鎧の情報を参照する

そこで気がついた。駆動鎧隊の一人から生命反応が無くなっている事に。その隊員の方向を見る

裸の少女が駆動鎧を中から割いて、現れた。ベッタリとした赤い色の液体と個体と共に

佐天「こんにちわ」

「う、やりやがったなこいつはぁぁあぁあぁァァ!!!!」

それを見ていた駆動鎧達が、一斉にライフルの引き金を引いた


580以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 09:15:44.30qY.hLeQ0 (1/1)

佐天さん魔人ブウみたいw


581以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 13:16:01.82XuDWdVwo (1/1)

なんでだろう…佐天さん全裸のはずなのに前々興奮しない


582以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/09(木) 20:06:29.53r2rBZ8I0 (1/1)

他人の能力を使う……超再生……クローン……
何だアークライト様か


583以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/10(金) 03:59:28.15igCGGd.o (1/1)

なんか違和感あると思ったら、こんにちはがこんにちわだった
まあこの佐天さんなら素で間違えそうだけど


584>>583も、もちろんわざとに、き、決まってるだろ!?2010/12/12(日) 16:22:05.07b4LGE0gP (1/18)

郭「……この人は、誰?」

トレーラーの内の装置を破壊し続けてきた彼女は、少し離れた所に半蔵や海原の人質が纏めて寝かされている車両を見つけた

半蔵の近辺に良く居た男達の姿であり、この人間達が恐らく、半蔵が汚い仕事を強いられている原因なのだろうと把握した

薬物を盛られているのか、軽く頬を叩いた程度では男たちは目を覚まさなかった。一応、動けるように拘束は解いてやったが

そしてその一番奥、ちょっとした仕切りの壁の奥に、椅子に縛り付けられた、意識の無い少女が居た

半蔵の近くでは見た事が無い少女だった。というか、彼に関わり合いのある女性については全て調べつくしてある。あの女性の警備員も、もちろん

郭(なにか、しぼんでる。見た目上はおかしいところなんて無いんだけど、何故?)

半蔵様と共に行動していた人に関わり合いのある女性だろうか

手首足首の金属製の拘束を少し強引に取り外し、そして体を押し付けていたゴム製のようなベルトをナイフで強引に切り裂いた

「ぅあ、う……お兄、ちゃ……」

何か呟いていたが、よく聞き取れなった

郭(体、冷たい。明らかに他の人質とは異なる。……この辺ではここが最後のトレーラー。もう私が破壊する物も無い。うん。軽そうだし、この人だけでも私が)

外から物音と、声がした

ここに配置されていたそこまで多くない部隊の7割程度は暗殺できた。それは、自分の行動音や行動そのものを隠すには、十分に大きな音や出来事がひっきりなしに起きたからであり

更には、学園都市に来てから、そういう働きに近い行動を幾らかして、経験が積み重なっていたこともある

その中で得られた結果として出来あがった直感は、このままここに居るのは不味いと吐いていた。如何な自分と言っても、狭く逃げ場のない空間で真面目に敵対しては確実にハチの巣になる

郭(時間的にも、半蔵様のご忠臣達を救い出すのは不可能。とにかく、この人だけでも)

自分は御世辞にも筋力の多い人間では無い。なので、先程切り裂いたゴム製のベルトを利用して腰のあたりでお互いの体を密着固定させて、褐色の少女をトレーラーから連れ出した

手榴弾を複数かなり適当に投げて、残り3割程度であろう動ける敵兵を誘導する

全ての明りの無い暗い空間ならば有効だろう

とにかく、少しでも遠くここから離れなくては

半蔵にあそこまで言われた以上、自分が人質になる訳にはいかないのだから


585以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:23:21.69b4LGE0gP (2/18)

頭部の無い巨大な駆動鎧の目の前に、空間移動によって裸で現れた少女

突然の登場に驚きながら、しかし、駆動鎧も負けていない

少女が伸ばした拳と同じ速さで後方に水平移動し、腕が伸び切った場所へ、巨大なライフルの口から30m機関砲が火を吹く

隊長機による情報共有によって、駆動鎧の隊員ほぼ全員の射撃が同時に少女の体へ集中した

殆ど目の前から銃口を突き付けていた、最終個体に狙われた駆動鎧の銃撃によって、突きだした拳のある腕が弾け飛ぶ

ライフルを撃ちながら更に後方へ下がりつつ、他の部隊員と合流してチームワークを再度編成した

「残弾、4分の1!!電磁砲の使用を提案!!」

既にやられた駆動鎧は3体

「センターからの許可が下りないのでは、システム上不可能だ。あきらめろ!」

「空間移動の反応、隊長機!」

通信の声が耳に伝わる前に、隊長機は動いていた。部下が駆動鎧内部から現れた少女に潰されているのだから、当然本体内への空間移動には細心の注意を払っている

少し幅の広い道路の真ん中に現れた少女の吹き飛んだ右腕の先は、再生する代わりに電子の塊が有った。それが隊長機目がけて水平方向に振り払われる

余裕の為か派手に壊したいのか分からないが、少女の大振りの光る腕には隙が有った

その巨体を使って体当たりし、よろけた所へライフルの接射をしながら後退する

「空間移動は口頭報告では間に合わん!各個に対応しrッ!!」

衝撃によって、彼の言葉が止まった

十分な距離を取ってボコボコのアスファルト上を後退していたが、少女は大口径の射撃を受けてボロボロの体でありながら電子の腕を隊長機へ伸ばしていた

パンチと言う意味では無く、純粋に電子の塊で構成された腕が、如意棒のように長く伸びたのだ

「隊長?!」


586以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:24:00.32b4LGE0gP (3/18)


一時的に膨大な電磁波が放出され、各機の情報共有に影響がでる

直接的には、隊員の機体のディスプレイには多少のチラつきとして現れた

「大丈夫だ。電子攻撃は我々の機体には通じない! あの光の塊は、戦術レベルのEMPで減衰出来る!!」

駆動鎧内のディスプレイに外装破損のエラーが光っていながらも、隊長機は応えた

彼らの駆動鎧は学園都市の防衛を目的に装備を改変されている

その想定敵故に、巨大なエネルギーの運用を想定されていて、高火力の電磁砲はその使い道の一つである

電磁砲は使えなくとも、その電力を電磁放射へ回す事は可能だ。それによって撹乱され固定電子の集束性が薄れれば、当然の帰結として威力も減衰する

完全に威力を殺しきる事は出来なかったが、まだまだ駆動鎧は問題無く働く。仮想敵が仮想敵だけに、ドーバーで使われた物よりも更に強化・バージョンアップしているのだ

佐天「へぇ、今のに耐えるんですか」

驚いた顔だった。その顔部は首から殆ど千切れかけたものを左手で支えながらだった

被弾率が上がり、再生ペースが鈍っている。それでも、効果が薄いと判断した電子の塊の腕は、すでに本物の肉体に置き換わっていた

少女は何度かその駆動鎧そのものを空間移動させようとしたが、通じなかった。同様に精神操作系も通らない

まるで中の人間を守る為の特別なプロテクトでもあるかのように

佐天「面倒だなぁ。でっかい割にすばしっこいし、なんか変な機能も有るし」

直ぐに片づける事が出来ると思っていたが、これでは量産個体を逃してしまう

各機体の動きから、統率をとっているのは先程狙っていた機体と判断できた

それを狙う

「しつこいな!!」

空間移動先を読まれて体をハチの巣にされながらも、それによって少し体の動きが悪くなりながらも、壊れたビルの瓦礫の丘に立つ隊長機を追った


587以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:24:45.37b4LGE0gP (4/18)


先程の様に距離が詰り、しかし先程よりも体は骨とむき出しの肉で再生と被弾によってグチャグチャと音を立てながら、彼女はその拳を駆動鎧へ向けた

当然、それに合わせて隊長機は下がる。この化け物相手では、当ればその威力は大小分からないのだから

伸びた拳は、腕ごと駆動鎧のディスプレイ上から消えた。現実的に佐天涙子の右腕は肘から先が消えていた

瞬間、隊長機のディスプレイ内に警告表示が現れる。モニターの右下の駆動鎧の小図には、腰部中央、丁度中に搭乗している彼の腹部のあたりのブロックが赤く表示されていた

ディスプレイから視線を下に移す。つまり、駆動鎧の内部。少女の、骨がむき出しの拳と腕であろう物が、外装内装を突き破ってそこに有った

何がしたいのか、一瞬分からなかった

外部、味方に接近され過ぎて引き金を引けない部隊員の駆動鎧の視界では、隊長機の腰部に少女の腕が刺さって、肘が突き出ているように見えた

そして少女は空間移動によって切り離した自らの腕を、そのまま肘の手前から先が無い腕の切断面と接続させる

結果だけ見れば、少女の腕が駆動鎧の外装甲を突き破って中の隊長に直接手を当てている状態だった

佐天「いくら鎧が固くてもぉ、中は所詮人ですもんね」

しまった、と思った時には遅かった

学園都市の第三位クラスの高圧な電撃が、直接彼を襲う

一瞬で体が焦げ絶命した隊長。同時に、内部からの高圧電力によって彼の駆動鎧は使い物にならなくなる

それによって、駆動鎧部隊の情報共有システムがダウンする

それは彼女が狙って行った訳ではなかったが、彼女がその場を離れるのには十分な隙を作った

一人の駆動鎧のサーチ範囲へ空間移動をしたが、その情報は共有されず、今までの様に駆動鎧の群が彼女を覆う様に行動する事は出来なくなっていた

隊長に続く階級の男の機体が情報共有ベースとして簡易な共有システムを再起動した時には、少女は追うには苦しい場所に行ってしまっていた



588以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:25:53.86b4LGE0gP (5/18)


半蔵「とりあえずはここで、一息付けそうだな」

崩壊したビルより真南300m程の場所に有る雑居ビルに逃げ込んだ彼ら

本来ならばそのまま人質を助け出したいところであったが、それは出来なかった

半蔵「さっきより悪化してんな。やっぱ不味いぜ、そのままで動くのは。麻酔で誤魔化すにしても、ここまで腫れちまったら」

電磁砲の射撃によって吹き飛ばされた瓦礫をもろに受けた海原の足は、麻酔でこれまで誤魔化してきたが、とうとう半蔵の肩を借りなくてはまともに移動するのにすら差し支えるようになっていた

海原「この様子では骨までいってますね。何か添え木になりそうなものはありますか?」

半蔵「奴らにカツアゲされる前にはいくらでもあったんだがな。待ってろ、探してくる」

海原「すみません」

半蔵は海原をソファに寝かせ、部屋の隅々を探した

適当な太さを持った観葉植物と格闘している

海原(魔術で回復しようにも、必要な物品は押収されてしまった)

海原(その上、根本的に魔術についてはガス欠ですね)

半蔵の方を見た。ナイフがありゃ楽なんだがなぁ、とボヤいている

海原(彼も彼で、有る程度傷を負っている)

海原(この状況で、またあの駆動鎧達を相手にするのは厳しい。組織の本拠地すら圧倒した性能と聞いていますし、非力な魔術師が一人二人居たところで)

半蔵「コレでいけるか? 合わないなら、時間をくれりゃリサイズするぜ」

海原「ありがとう、助かります」

海原の着込んでいるジャケットに引っ掛かったポーチには、包帯の代わりになるような帯状の物が入っていた

自らの足に添え木を巻きつけはじめた海原を見て、特にその行為への助けは要らないだろうと判断した半蔵は、窓際に姿が外から見えない様に立ち、外の様子を確認している

どうやら敵は近くに居ない。彼は知らないが監視システムも郭によって破壊されている

今のところ安全だ

半蔵「……その様子じゃお前、人質を助け出すのは無理だよな」

海原「残念ですが、否定できません」


589以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:26:23.52b4LGE0gP (6/18)


ギリ、と奥歯を噛み締めて言った

半蔵「OK、素直でいい。ここはしばらく安全、とは言い切れないが、今はマシだ。休んでおけよ」

海原「ええ。……あなたは?」

半蔵「行ってくる」

親指を立てて、背後へ向けて軽く振った

海原「まさか、あの駆動鎧達を一人で相手すると言うのですか?」

半蔵「そうならないようにはしたいけどな。心配な奴が居るんだよ」

海原「しかし、武器も無いんですよ?」

半蔵「調達するさ、その辺はな。お前の人質はどんなヤツなんだ?」

海原「褐色の肌をした女の子です、ですが」

身を起こそうとして、苦痛に顔をゆがめた海原

半蔵「麻酔も切れそうなんだろ。追加で打つのもいいが、効きも悪くなってくしな。じっとしてろ」

海原「……ッ、く」

半蔵「な。助け出せるかは分からねぇけど、無理して犬死はしないつもりだ。根本的に、不味い状況だからな。早く行かなけりゃ人質も殺されちまう」

行ってくるわ、と振り返り外へ向かう半蔵

海原「待って下さい。コレを」

呼びとめた海原は腰から麻酔を取り出す。引き金の付いた注入機も差し出した

海原「持っている限りで一番濃度が濃くて効果がキツイ奴です。一発限りですけど、武器代わりにはなるハズですよ」

半蔵「有り難いけどよ。これ持って行っちまったら、海原、お前が自分に打てないだろ」

海原「とりわけ危険が迫らない限り、ここで休みますから。あなたの言う様に、ここは回復、というより悪化させない方を選ぶべきだ」

半蔵「ん、それでいい。じゃ、有り難く使わせてもらうぜ」

笑顔を一瞬浮かべて、半蔵は去った



590以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:28:26.16b4LGE0gP (7/18)

郭「追いつかれた…ッ?!」

破壊したセンタートレーラーから更に南に400m程下った場所

大通りの十字路。もちろんド真ん中を走る訳では無く、最大限身を隠しながら、そこまで離れた彼女達の背後から来た銃弾が、足元で跳ねた

少女を縛り付けた自らの体を強引に動かして、右折して直ぐのビルの影に褐色の少女を置いた

そしてすぐに、背中にまわしていたライフルに持ち替え応戦しようと体を影から出す

郭「しまっ、た!!」

彼女自身が今やろうと思っていたのは、弾幕を張りつつ敵の場所を確認すること

その程度の事は、ハッキリ言ってアメリカ兵達にとっては教科書通りのテロリストの行動だった

彼女は忍びとしての経験は確かにあるが、小銃を使って大人数を戦う経験が有るわけでない

弾幕を作ろうとしたのも、自らの腕では瞬時に敵に当てることなど不可能だと分かっているからだ

対するアメリカ兵は便利な装備で身を守っていて、更には訓練も実戦経験も積んでいる

彼女が飛び出てきた時には、銃口は彼女の方を向けながら、自らは体をビルの柱やら街路樹の後ろやら花壇の影に身を隠していた

少し考え足らずに体を壁の無い場所に露出し過ぎた彼女は、瞬時に身を戻そうとしたが、遅かった

小銃を持っていた側の右肩を弾が通過し、左脹脛を掠って鮮血が飛ぶ

身を隠した後も大量の銃弾がその場所を通り過ぎた。この程度で済んで良かったと言える

小銃を逆の腕に持ち替えて、しかし利き腕で無い為命中精度は更に落ちるが、ビルを盾にして左腕だけ出して適当に掃射する

殆ど意味の無い時間稼ぎ。銃弾はあっという間に消耗するだろう

郭(最初から判断を間違えた。アサルトライフルに頼らずに、この子を囮にして、こちらに分がある急襲での一撃必殺に集中すべきだった)

郭(敵の数も場所も把握できずに、傷を負っただけ。最悪だッ!)

このままでは残り十数秒で敵がここに辿り着く。ここに居座って応戦などしたら、恐らく戦いにならない

ならば、手は一つ

この褐色の肌をした少女を囮にすればいい

トレーラー周辺の兵と同じ装備ならば、ゴーグルには暗視機能だの熱源探知だのが搭載されているはずだ



591以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:29:14.01b4LGE0gP (8/18)

その視界から出て、この意識の無い少女を囮にすれば敵はそちらへ集中してくれる

後は上手く死角を突くだけだ。幸い、足は掠っただけ。痛みは有るが

ライフルや重さのある武器全てを投げ捨て、彼女はビルを外壁から昇った

現代的にリメイクされ強度も軽さも機能も進化した忍び熊手を伝い、ビルの上階の壁にへばりつく

「もう一人は、どこへ行った」

兵たちの頭上で息をひそめる郭は、クナイを一本、明後日の方向に力の限り投げ飛ばした

兵たちから離れた所から、カツ、と言う音が響いた

「今の音、こりゃ逃げられたな」

「逃げただと。仲間を散々殺しておきながら、少し食らったぐらいでビビっちまったってのか」

「女には人間一人担いで逃げるのはキツイからな。だが、センタートレーラーを壊されたのは良くない。非常に」

「なぁに、本国から代わりが空輸される。問題はその間に仮想敵が現れるかどうかだ」

「どうだかな。簡単に換えが効くような物かどうか、俺らには不明だ。同じくらい不明なのが、その仮想敵だけどな」

「信じられないけど、ロサンゼルスの映像を見ただろ? 簡単に200万人を殺すような存在が有るんだよ、本当にな」

「洒落になんねぇが、そいつからこの学園都市を守らなきゃ世界が終るんだとさ。まったく、SFファンタジー顔負けだぜ」

郭(仮想敵って何の事? 世界が終わるって)

彼女が兵たちの会話を盗み聞きに意識を集中していた時だった

ピチャッ

一人の兵の頭、もちろんメットをかぶっているが、その頂点に液体が音を立てて滴り落ちた

「ん?」

手でその液体をふき取り、見てみると、血だった

「血? 上かr――」

郭(ッ、足からの血が垂れたか)

その視界へ郭の姿が完全に入る前に、上を向いた男は意識を永遠に失った



592以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:29:48.38b4LGE0gP (9/18)


背部、首と背中の境に体重をかけて深々と刺さった大きなクナイはそのままにして、郭は周辺に立っていた兵の顔に懐から取り出した次のクナイを次々と刺す

距離が近く、更に味方を撃つことになりえる為にライフルは使えず、更には限りなく装備を捨てた少女の方が動きが軽く、虚を突かれた兵たちでは、ディスアドバンテージが多過ぎた

郭(次、次、次だっ)

肩腕一本で、刺し・投げ・裂く

赤く染まった着物を着た少女は、舞っているかのようだ

瞬く間に周囲の4人の顔面には刃物が突き刺さることになった。だが、兵たちもただ殺られるばかりでは無い

郭(……ぅ、遠い!! )

残りは、接近攻撃主体の郭から離れようとする兵が1、更に20m程先の交差点中央からこちらを狙っているのが2

逃れようとする兵を、遠い2名の射撃を防ぐための盾のとなる角度から迫り、距離を詰める

盾となっている兵の銃口が、こちらを向こうとしている

反射的にクナイを顔面へ投げ、それが口に直撃した痛みでもがく兵が撃った銃撃は射線が郭から外れ、弾丸が明後日の方向へ向かった

更に距離を詰めて、刺さったクナイが更に奥へ深く刺さる様に、接近した勢いも込めて力を加えた

声にならない音をたて、びくびくと体を震えさせながら膝を落とす兵

上半身がガラ空きとなる

ただの街路でしか無いそこには、先の2名からの銃撃を防ぐ盾になりそうなものが無かった

郭(!!、ここまでなのか。すみません、半蔵様ッ)

もちろん、横方向へ逃れようと足を動かすが、間に合わない

銃声が響いた



593以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:32:23.18b4LGE0gP (10/18)

銃による痛みを待ったが、その時は来ない。目を開くと、自分を狙っていた男二人が倒れていた。そして彼らの近くに転がっている車の裏から、ぬっと黒い影が出てきた

半蔵「拳銃一つぐらいは、余分に持っておくべきだったな」

郭「半蔵様!!」

コツコツコツと足音を立てて、暗がりから近づく男の姿は、彼女が最も会いたかった男だった

半蔵「派手に銃の音がすると思って来てみれば、危ない危な―――って」

郭「半蔵、さまぁ」

少女の体が、グラリと崩れそうになる

慌てて半蔵は駆け寄って、それを受け止めた。そして肩の傷を見つける

半蔵「ッ、大丈夫か?」

腕に抱かれる形となってようやく、自分の足の力が抜けていたのに気が付いた

郭「しょ、少々気が抜けただけで、その、……助けて頂いてありがとうございます。そして、すみません」

半蔵「ん?」

半蔵は傷の深さを確認していた。気が抜けたというのも、失血によるものとも考えられたからだ

腕の中の女は自分の足で立ち直した

郭「やはり私はまだ未熟でした。付いてくるなと言われて、結局半蔵様に助けてもらって」

半蔵「……そうだな、未熟かもしれない。でも助かったのも事実だ。ライト消したり駆動鎧の動きを乱したのは、お前だろ?」

郭「は、はい」

半蔵「ありがとよ。お陰でミンチにならずに済んだ。こんなに返り血浴びて、怪我負って、無茶しやがって」

人差し指を少し曲げて、少女の頬の血を拭ってやる

郭「……ンッ…ぁ」

半蔵「お前、右肩以外には?」

郭「え、あ、左足に」

不意に左太腿の内側に半蔵の手が伸びた。怪我に触れると、内股からの痛みが郭の脳に伝わる

半蔵「ここだな。よし、ちょっと待ってろ」

転がっている死体のポーチから簡易治療に必要な止血パッドや包帯などを取り出し、手当てを始めた

自分でやろうとも考えたが、なんというか拒む気になれなかった


594以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:33:13.76b4LGE0gP (11/18)

テキパキとしているのは、時間をかけたくないからもあるだろう

郭「あの、半蔵様」

テーピングを巻いている半蔵におずおずと話しかけた

半蔵「どうした?他にも怪我してんのか?」

郭「いえ。……半蔵様の捕らわれたお友達のことです」

半蔵「お前、あいつらの場所を?」

郭「はい。奴らの機材を破壊していた時に、偶然。あちらで寝てる色黒の女の人と一緒に」

郭が手を伸ばして、肌の黒い少女が倒れている方向を指す

半蔵は作業を続けながら、その方向をみた

確かに肌が黒い。自分の探している仲間と同じ場所に居たということは、海原の言っていた人物であろう

半蔵「そうか、あの子が。……よし、これで応急処置にはなったろ」

郭「ありがとう、ございます」

半蔵「気にするな。お前にも死なれちゃ困るんだ。だけどかわりに頼みが有る」

郭「なんなりと」

半蔵「こっから西の、あの雑居ビルの3階にあの子を連れてって欲しい。そんな肩のお前に頼みたくは無かったが、ここでじっとしてるわけにもいかないし、待ってる奴がいるからな。頼んでいいか?」

郭「分かりました。しかし、半蔵様は」

半蔵「言うまでもねぇ、だろ? 場所はどこだ?」

郭「御一人で? 無茶です。捕まっている方を全員助け出すなんて、みんな意識も無いんですよ?」

半蔵「それでも、今ぐらいしかチャンスがねぇんだよ。お前が折角壊したシステムだって再設置されたり直されたら終わりだ。何より、このままじゃ確実にアイツら殺されちまう」

ズダンズダンと、少し離れた所から銃声や爆発音が聞こえる。アメリカの連中は、まだ誰かと戦っているのだ

それは大きな隙である。逃せない。それは実際にその隙を突いて戦った彼女にだって分かる

郭「……この道を、北に。少し広いスペースにトレーラーがたくさんありますので、その中に」

指で示した郭の先。到底真っ暗で見えなかったが、半蔵は頷いた

半蔵「ありがとよ。んじゃ、あの子を頼んだ」

そしてすぐ、半蔵は暗い空間へ消えて行った


595以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:34:59.18b4LGE0gP (12/18)

佐天「ひっとーつ、ふったーつ」

崩れたビルに二つの窪みと血のペイントを施して、少女は立っていた。逃げた個体は残り20人

既に殺した二つの死体の首だけをむしり取り、逆方向でこちらを見ている2人の方を向く

最終個体から見て90度の間隔を開けて立つそれぞれの個体へ向けて、片目それぞれがピントを合わせた

二人とひとまとめに言っても、二人の位置は直線距離で600m以上は離れているし、お互いが近くに居るとは思っていない

最終個体はむしり取った両手の生首、自分と同じ顔を視界内それぞれの量産個体へ投げつる

簡単な弾丸と化した首は、風圧でまるで笑っている様な顔をして、少女たちに迫った

当るわけにもいかず、当然今居るビルの裏路地の影へ体を向ける

そのまま飛来してきた顔面が壁に当り、若干の水分を感じさせるような音を交えて粉砕した

その粉砕は、派手な音。人の頭が壁に当った所で到底ならないような音だった

振り返ったら、恐らく最終個体が居る。そんなことで足を止めて生存確率を下げたくない

それが例え小数点以下のほんのわずかなパーセンテージであっても。量産個体はそう判断して、とにかくその場から走って逃げた

ビルとビルの間の細長い空間を走る量産個体の上、跳び越える存在があった

すたっと量産個体の目の前に着地して、振り向く

その手にはまた新しい首が有った。他の個体がこの僅かな時間で殺されてしまったのだ

佐天「よっつ」

量産個体の顔と、最終個体の手に持つ真新しい生首が、空間的に置き換わった

既に死んだ個体の生首に、生きていた個体胴体から血が巡っていく。置き換わった、生きていた個体の生首からは、逆に血が垂れた

佐天「やっぱり、死んじゃった人は生き返ったりしないよね」

手元にある、生きていた個体の生首を自分の目の前まで上げて、話しかけるように言った

一度死んだ細胞は復活したりしない。頭脳と言う司令塔が死体のソレに置き換わってしまった量産型はバランスを崩して、倒れた

置かれただけにすぎない既に死んだ個体の生首は、倒れた胴体から離れて、転がっていく

佐天「ずっと同じ顔ばっかり相手してたから、生き返ってるのかと錯覚しちゃったよ」

ありえないよねー、と、それからしばらく生首に言葉を投げかける

佐天「なんて、話しかけても言葉が返ってくるわけ無いんだけどさ」

興味を失った様に、生首を潰した


596以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:35:59.11b4LGE0gP (13/18)

アレイスター「本当に多い、今日は」

入口の無い空間に入ってきた人間を感じて、その人物はこぼした

青髪「先客もおるし、ご多忙なんやな」

アレイスター「そうだな。否定しない。彼の事は無視していて構わないよ」

先客の人間の方を向いていた男が、青髪たちの方を向く

青髪「りょーかい」

アレイスター「ふむ。てっきり2度目かと思ったが、別人の様だな」

青髪「へぇ、やっぱりあっちも接触してたんか」

アレイスター「肯定しよう。それで、君たちは何の用で来たのだ?」

青髪「多分、もう一人の方と表面的には同じやろな」

アレ「協力しろと言うのだな。彼と同じように」

青髪「そうや。でもその最終的な目的は、その彼を倒す為でもある」

アレ「ほぅ。その事を隣の君、結標淡希は承認しているのか。私は仲間の敵であろう? そんな相手と協力するなど」

結標「もちろん、事が終わったら学園都市の方にも復讐してやる気ではいるわよ」

アレ「それまでこの都市が残っていれば良いがね」

青髪「その為に僕らがいるんやけどな」

アレ「それは頼もしい。しかし、君の友人は残念な事になってしまったようだが、私にはどうしようもなかった事なのだよ」

結標「部下の独断だから仕方ないとでも言いたいの?」

アレ「君にとっては言い訳だろうな。しかし、彼らも彼らでマニュアルに従ったのだ。責められない」

結標「最初から人質とるような方法を、とは流石に言わないわ。でも、あなた達とアメリカの連中の対立が殺した事には変わりない」

アレ「否定はしない。そうだな、首を洗って待っておくことにしよう。それで、どんな協力を求めるのだ?」

青髪「アメリカの占領を妨害する。代わりにお前が管理してる学園都市機材の類の使用協力を求めたい」

アレ「ふむ。それで、最終的に彼の喉元へ食らいつくと言う訳だな」

青髪「その通り。協力してくれるか?」

アレ「いいだろう。だがその前に一つ質問だ」

青髪「なんやろーな?」


597以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:37:54.44b4LGE0gP (14/18)

半蔵「おい、おーい。……やっぱ駄目か」

崩落したビル南東部の情報センタートレーラー群の中で、彼は捕らわれていた仲間たちと遂に出会う事が出来た

頬を数回叩き、終いには軽くグーをお見舞いしたが、彼らの反応は返ってこなかった

半蔵(郭の言っていた通り、みんな気を失ってやがる)

適当に腕を持ち上げて、その肉の付き方を見る

半蔵(筋肉が萎えて、皮膚が少し下がってる。たるみもあるな)

半蔵(捕まってからずっと気を失ったままにされてたってことか?)

半蔵(だとすると、例え今意識を取り戻しても、まともに立つことも動くことも出来ねぇな)

半蔵(俺一人じゃとても4人全員を連れ出せない)

半蔵(車かなんかでとにかく連れ出してここを離れたいが、動ける車がねぇとな)

だが、彼の記憶の中では、ここに来るまでの経路には動けそうな車両は無かった。戦闘の盾となり武器となってしまっている

半蔵(あるとしたら、此処で死んでる兵隊さんの車両しかないが)

郭の急襲・暗殺にあって死んでいる兵たちを見る

半蔵(郭の戦い方や俺や海原の戦い方なら、流れ弾なんかで車両を破壊するような事はない)

半蔵(俺たちしかこいつらに喧嘩を売っていないなら、この周辺の車両は生きている。アメリカの連中が自らの足を壊すなんて愚行をしない限りは)

半蔵(だが、気になるのは今も断続的に聞こえるこの音だ。海原と切りぬけた時もそうだった)

半蔵(一体何と何が戦っている? 音の規模では、一般車なんて巻き込まれたら簡単に壊れてしまいそうだが)

トレーラーから降り、意識の無い仲間たちが入っているこのトレーラーの損傷具合をみる

大丈夫。ところどころ銃弾が当って凹んだりしているが、動くには全く問題ない

内部に全く情報共有システムの機材が無かった為に、郭が内部破壊をしなかったのが幸いした。もちろん半蔵の知り得る理由ではないが


598以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:38:59.66b4LGE0gP (15/18)

半蔵(気にはなるが、まずはトレーラー引っ張る車かこいつらを運べる大きさの車を見つけないとな)

トレーラーがこれだけあるんだから、ある程度近くに牽引車が有るはずだ

それを探そうと、少し動いた時だった

崩壊したビルの方から、ズザッという細かい瓦礫を足で擦る音が聞こえた

手頃な場所に有った、弾薬でも入っているであろう大きな箱が積み上がった物の影に、身を伏せる

人質が寝ているトレーラーのすぐそばを、腕を一本失って、その肩を押さえた少女が駆けていた

半蔵(あの女は、俺と一緒に戦った奴か? いや、残ってる右腕の拳は健在だし、足の動きもガタがあるわけじゃねぇ)

半蔵(ってことは他の、クローン、なのか。まるで逃げてるみたいだな)

暗がりであるが、目を凝らして見る光景

その少女の後ろから、腕が一本飛んできた。それは彼女の失った腕なのかもしれない

佐天「バージョンが新しいコは、やっぱりすごいね。一瞬でも隙があれば逃げるし、判断もすごい」

闇の中から、もう一人少女が出てきた。全裸である。その上同じ顔である

返り血なのか自らの血なのか、その体は生々しい赤に染まっていた

佐天「多分格闘能力とか、そういう能力はアタシよりもいいと思うなー。今生き残ってるのは、恐らくみんな新しい個体みたいだし」

残った腕で、飛んできた腕を払いのけた少女は、倒れていた兵のアサルトライフルに飛び付き、最終個体との距離を広げるように移動しながら、的確な射線で全裸の少女に銃弾の雨を降らせる

あっという間に弾倉の弾を撃ち切って、更に一発ライフルアタッチメントのグレネードをお見舞いした

半蔵(おいおい。そんな場所で殺り合わないでくれよな。近いんだよ)

距離を取った少女の銃口が向く標的は、半蔵が移動させたいトレーラーのそばに立っている

半蔵からすれば、気が気でない

全裸の少女一人相手にやりすぎと言えるほどの銃弾とグレネードが当るのを見て、流石に死んだと彼は思った


599以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:41:35.31b4LGE0gP (16/18)

全裸の少女は、それこそ頭頂から足先まで、全身から血を流していた

目から血涙、違う、眼球は潰れている。とにかく血だらけだった

外であれば、直撃しなければ対人用のグレネード弾は、当りどころが悪ければこんなものかもしれない

彼はそう思った。目を凝らしていた分、疲労した目を癒す為に少し長めの瞬きをした後

そこにはほとんど無傷になった全裸の少女が居た

半蔵(んな、どうなってやがる)

佐天「でもさー、どんなに強く作られてても、アタシを殺すには不十分なんだよ」

最終個体は、ペッ、と口に溜まった血を吐きだした

佐天「今生き残ってるアタシはみんな強いからさ、あんま時間かけらんないんだよね」

血まみれ肉片だらけでどこが乳首なのかもよくわからない全裸の少女は、片腕を胸元まで挙げた

次の瞬間には、40mは離れていただろう片腕の無い少女が、その挙げた腕に突き刺さっていた

しかし、腕の無い少女はまだ死んでいない。震えながら頭を挙げた

佐天「あれ、ズレちゃった? スペック高いなー。確かにアタシが能力を使う瞬間なら、同能力が使えるもんね。同じAIMを同じように使ってるわけだし、ジャミングも可能なわけか」

佐天「げ、ってことは」

「ぐ、フッ、…そう、です。今頃、生き、残ってる他の個体、は、こ、この瞬間を、あなたの能力を、利用して、最大限、あなたから離れていますよ」

裸の少女を蹴り上げて、刺さっていた腕を引き抜き、肝臓部分に大きな大穴を開けて、片腕の無い少女は地面に足を付けた

「だから、アタシは、ここで生ける限り、他の個体の為に、時間を稼ぎます。あなたの、無能の、証明なんかに、他の、個体ま、で、巻き込ませな、い……!!」

死力。強く地面を蹴る度に腹の大穴から血が噴き出すも、彼女は動く

距離を取った。瞬間、腕の無い少女へ、少し黒く焦げた大きな機材トレーラーが水平方向に突っ込んで行く

佐天「う る さ い よ」

言った瞬間、腕の無い少女にトレーラーが当る。否、僅かに角度がずれて当っていない。ジャミングだ

射線上に有ったビルに、そのままそのトレーラーは直撃した。それによって、そのビルは横たわる様に倒壊を始める

そして逆に、腕の無い少女の手には死んだアメリカ兵の銃が引き寄せられていた


600以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 16:43:30.24b4LGE0gP (17/18)

それこそ節分の豆まき程度にしか意味の無い銃撃であるが、苛立たせるには使える

最終個体が能力を瞬間的に借り受ける、その事によって、その目の前にいる腕の無い少女もその瞬間だけ同じ能力を使える

最終個体は念動力によって空中に浮かせた金属片を叩いた。そこから射出されるのは、最終個体の記憶にある御坂美琴の代名詞

彼女にとって、超電磁砲は強さの象徴なのかもしれない

しかしそれすら、腕の無い個体は凌いだ。同じように浮かせた超電磁砲による迎撃

簡単な話だ。最終個体の用いた金属片が大き過ぎたのである。ほんの少しでも射線をずらせば当らない

明確に最終個体の表情が濁る

佐天「弱っちい癖にぃ……アタシがわざわざ殺して楽にしてあげようっていうのにッ!! 手間ばっかりかけさせてさぁ……」

佐天「面倒なんだよ!!!!」

「それが、無能の証明だと、言うのです!!」

腕の無い個体の声は届いているか不明だが、最終個体は明確に焦って、苛立っている。半蔵にはそう見えた

半蔵の仲間が入っているトレーラーと他一台以外の、全てのトレーラーが振動して浮かび上がる

佐天「これなら、アヒッ、ど、どうしようもないよね!!」

浮かび上がったトレーラーをぶつける気なのだろう。確かに連続してそんな物が襲ってくれば、少々ずらした所で対応しきれない

半蔵(冗談じゃねぇ。もしあの腕無しがこれすら凌いだら、次はアイツ等の入ってるトレーラーまで弾丸として使っちまう。そうなりゃ永遠にオネンネだ)

半蔵(それに仮に直撃しても、あの盛り上がり様じゃ、生き死に関係無く追撃を繰り出す事だって考えられる。止めねぇと)

半蔵(でもどうすんだ? あの腕が無いのも十分に強いんだ。そいつが敵わない上に、ライフルもグレネードも効かない相手だぞ)

何か、と思って腰に手を回す。すぐに手に触れた拳銃やナイフでは話にならない

引き金の付いた、しかし拳銃とは全く違う形の物に触れた

それは、強力な麻酔がセットされた注入機

半蔵(これなら、いけるか……?)

宙に舞った大型トレーラーが、立て続けに腕の無い少女に飛来する

既に失血死寸前で、立っているのもやっとだったその個体は、それを全て防ぐ事はどころか、最初の一本目すら逸らす事が出来なかった

足から力が抜け、倒れこむ


601本日分(ry やっと佐天さんが、佐天さんが止まったぞー2010/12/12(日) 16:44:48.18b4LGE0gP (18/18)


それが、最終個体には回避行動を取ったように思えた

一撃で吹き飛び遥か後方で跳ねた、既に命は無くなっている腕の無い個体へ、最終個体は複数のトレーラーを巨大なハンマーのように用いて、何度も何度も叩きつけた

佐天「アヒッ、フヘヘヘッ、どうしたのさぁ? もっと時間を稼ぐんじゃなかったの? えぇ? なんか言えよ、言えよおおおおおおおおおお!!!」

一発ごとに轟音を立てながら、少女の体が粉砕され、更にハンマー代わりのトレーラーが変形していく

トレーラーが使い物にならない金属の塊になった所で、それでも、最終個体は飽きなかった

次のハンマーとして半蔵の仲間たちが入ったトレーラーが、ピクリと動き始める

半蔵(クソッ、やらせるかよ!!!)

気配を消して近づくのをやめて、半蔵は一気に全裸の少女との距離を縮め

そして麻酔を打ちこんだ

佐天「ンダアァァアッ?!!」

絶叫しつつ、満足にその方向を、半蔵を確認せず、彼女は腕で半蔵を薙ぎ払った

注入機から手を離し、瞬時に手をクロスさせてその攻撃を防ぐも、彼は遥か後方へ飛ばされる

衝撃を殺すような構えが少しでも遅れていたら、半蔵の両腕は確実に粉々に折れていただろう

30mは後ろの道路のアスファルトに叩きつけられ、数回バウンドした後、何とか受け身を取った

痺れる体で、首だけ起こして全裸の少女の方を見る

佐天「なぁんでぇすかぁ?!! てっきり他のアタシかと思ったら、誰なんですかぁ?」

一歩一歩、最終個体が喜とも怒とも取れない表情で半蔵に近づいていく

佐天「アタシの、邪魔をするならぁ、ころ、こッ……」

突然全裸の少女が倒れた

それを見て、半蔵は、ゥ、ハァー、と大きな音を立てて息を吐いた

半蔵「……ふ、ふざけんなよ。どんな馬鹿力してんだコイツは」

立ちあがって、震える腕で煙草を咥える。とにかく、生の実感が欲しかった

だが、彼には火種が無かった


602以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 17:07:38.59Uco/zago (1/1)


ここで佐天さん一時停止か……後々がものすごく怖いなww


603以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 18:01:04.66y9Ivytoo (1/1)

麻酔効くんだなww
一瞬で体再生するぐらいだから無効だと思ってた


604以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 18:11:51.52fwpeDg.o (1/1)

>>581
残念なパンチラみたいな感じか
俺は興奮するぞ 恐怖で


605以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 18:25:37.77Zd0o8.so (1/1)




よくよく考えたらフィアンマさんってまだ脱落してないんだよな……

>>1の書くフィアンマさんは指示語を使いまくって墓穴掘りまくるお間抜けさんじゃないと信じたいぜ


606以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/12(日) 21:10:35.61riueFqgo (1/1)

佐天さんまじバタ子さん!


607以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 01:10:12.81OHj52ugo (1/1)

この佐天さんをjpgでください
もちろんお持ち帰りで


608以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/13(月) 13:13:43.91OhuV/EDO (1/1)

首を入れ換えるなんてマジでバタ子さんだな。
佐天さんもうそのままパン工場行ってジャムおじさんのカキタレになっちゃえよ


609バタ子さんって最初意味が分からなかったわー2010/12/15(水) 02:17:13.73pTexKb6P (1/8)

14時のロンドン市街、オックスフォード・ストリート

年齢14にして必要悪の教会に所属し、イギリス圏内でも指折りの実力者である男は歩いていた

人通りの多いこの大通りで、しかも彼は若干目立ついつものローブ姿では無い

後ろで束ねられた髪、ブルゾンにカーゴパンツという格好、つまりどこにでも有り触れていそうな若者の格好である

つまり、変装

隠れて人に会うならば、"人払い"の術式を使いたいところだが、ロンドンでそんな術式を使えば立ちどころに見つかってしまう

騎士派にも、自らが所属する清教派にも見つかりたくないのだ


朝に倒れた禁書目録が時間をかけて安静を取り戻して、寝かされているベッドの脇に立っていたステイルは、その少女の手に紙切れが握られているのに気が付いた

どこかで書類でも掴んで、そのまま握り続けたのだろう

そう思って彼は、禁書目録の指を一本ずつ優しく動かして、その紙切れを手に取った

『Mr.ステイル オックスフォード キャヴンディッシュ・スクエア』

たった3つの単語の羅列、しかもなんの変哲もないただの公園を指しているものだったが、何を意味しているのか彼には分かった

唯一の遠隔制御霊装を握っているのはフィアンマである。そして禁書がこの紙切れを持っていると言う事は―――


紙切れに書かれた場所に着いた

オックスフォード通りを少し外れたところにある、御世辞にも広いとは言えない小公園、広場

×字に舗装された道の中央付近にあるベンチに、とある男が座っていた

どこかで見た顔。どこだ?いや、この男は

ステイル「……な、お前は!!」

「おやまぁ、あなたとは初対面なんです。いきなり"お前"とは少し失礼だとは思いませんかねー」

初対面。確かに初対面だ。ステイルがこの男を知っているのは、報告書に映った写真からである

その報告書とは、神の右席・左方のテッラの解剖解析結果

テッラ「まぁ、私を知っているなら話が早くて助かりますが」

特に表情も変えず、更に目立たない衣類のテッラ。ちょっとした霊装になっている魔術師らしい服装をしていないと言う事は、戦おうという気ではないのか

または、天草式のように、そういう目立たない特殊な意味を持つ衣類なのかもしれない


610ちなみにバタ子さんは人間じゃないんだぜ?2010/12/15(水) 02:18:48.34pTexKb6P (2/8)

誰もテッラの生足や生腕など見たくないし、更に季節がらあの様な薄い衣装では目立つので、そういう面では安心だ

ステイル「な、なぜ、生きている? お前は」

テッラ「死んだハズだ、とでもいいたいのでしょうねー。それは当然の疑問ですよ」

テッラ「その通り、私は死にました。同じ神の右席・アックアによってねー」

テッラ「そして、脳の一部はあの学園都市へ。それ以外はここ、ロンドンに送られた」

テッラ「なぜ学園都市に、誰が送ったのかは私も知りませんが、そんなことはどうでもいい」

テッラ「ここに死んだ私が居ること。こうしてあなたと話をしていること。それが一番の疑問でしょうねー」

テッラ「その説明をすることで、同時にあなたが誰に何故呼び出されたのかを知ることが出来るでしょう」

椅子に座ったまま、見上げるようにステイルを見るテッラ

どうも一戦交える様子は無いが、警戒しないわけにはいかない。最低限の戦闘準備はする。もちろん目の前に居るテッラには気付かれない様にだが

テッラ「おやおや、そんなまるで喧嘩をしに来たような素振りは止めてほしいですねー。確かにイギリス清教は気に食わないですが、それを潰しに来たわけではありませんから」

手の平を見せて、待って下さいな、と言わんばかりのジェスチャーを交えた

テッラ「ステイル・マグヌス。あなたとわざわざ話をする為に、ここまで来たんですよ」

神の右席のメンバーが、禁書目録の手を介して密会を求める。ということは

ステイル「……フィアンマの使い走りと言う訳だ」

テッラ「ええ。その通りですねー。それを否定するつもりはありません。それでは説明しましょう。私の復活は、本来ならば数日後のここでは無い場所で起きる予定でした」

ステイル(死者の復活、だと?)

テッラ「しかし、それは早められた。簡単な話です。予定通りの私の復活も、所詮は術式の一つでしかなかったのですからねー」

テッラ「神がそれをすることも、人間がそれをすることも、同じ形の同じ方法で同じ力があれば可能ということです」

ステイル「馬鹿な話だな。それではまるで神そのものじゃないか」

テッラ「いえいえ。そんなおこがましい事ではありません。神が出来る事の一部を、人間が研鑚を重ねた上で、部分的にできるということですからねー。魔術なんて全て神の奇跡の再現とも言えます」

テッラ「それゆえに私も不完全な存在にすぎない。ただ、彼にとって駒が必要だったから生みだされた物体ですからねー」

テッラ「考えてください。天使を降臨させるより、人間を一つ作りだす方が余程簡単であるとは思いませんか」

確かに話は分かる

ステイル「研鑚を重ねて得られた神の術式だと?」


611ジャムおじさんもな!どうでもいいね!2010/12/15(水) 02:19:38.60pTexKb6P (3/8)

テッラ「その通り。ここでいう人間の研鑚とは、人の生みだした魔術の塊。つまり原典です」

テッラ「原典10万3000冊を記憶する禁書目録、その現在の所有者はフィアンマ。私の復活を早めて執り行う事など彼ぐらいしかできないでしょうねー」

テッラ「部下として、そして一同僚として、彼の頼みであり命令でありを聞いて、ここであなたと会っているのです」

テッラ「私の意思としては、神の御業を汚すような彼の計画に協力する事などは反対なのですがねー。私の不完全さを補うために組み込まれた術式がそれを許してはくれない」

テッラ「神の意志に弓引かんとする行いなど、協力など全くしたくない。ですが、神は寛大で強き存在。弓引いた所で結果は見えていますねー」

テッラ「それに協力させられているのだから、私は復活予定日までにもう一度死ぬでしょう。なんならあなたが殺してくれても構わないですが、あなた程度では返り討でしょう」

ステイル「返り討に出来る様な相手に、わざわざ会いに来たのか。君たちの目的が全く読めないね」

テッラ「協力ですよ」

ステイル「なんだと?」

テッラ「フィアンマがあなたに協力してほしいと言っているのです」

ステイル「……フッ、ハハハ。何が目的かと思えば、敵の切り崩しか。フィアンマと言う男は、余程心配性らしいね」

笑うステイルに対して、目の前のテッラは表情を崩さない

テッラ「禁書目録の処分は避けられないでしょうねー」

ステイル「何?」

テッラ「聞こえませんでしたか。ならもう一度言いましょう。唯一の遠隔制御霊装を彼が持っている為、禁書目録の処分は避けられない。あなたの目と耳を通して得た情報です」

ステイル「僕の目と耳だと」

テッラ「捉え方によっては神の御業なのでしょうがねー。あなたとローラ・スチュアートの話、聞かせていただきました。このままでは禁書目録は殺される。そしてあなたはそれを防ぎたい」

テッラ「フィアンマはあなたと同じ意思を持っている、それは当然でしょうねー。殺されては、せっかく奪った遠隔制御霊装が役に立たない」

テッラ「彼の実力と禁書目録の原典を用いれば、彼女を強奪することも、そして奪還を防ぐために彼女に処置を、例えば脳だけを切り出したりなどして、完全に道具の様に扱う様にすることもできる」

テッラ「しかしそれは手間がかかる。手間に割く時間は無い。そしてあなたは、最大主教や騎士団長、更にはそれらが率いる全勢力に対抗できるはずもない」

テッラ「こういう条件下で、彼とあなたは共通利益があるのですねー」

立ちあがり、テッラはステイルの前に手を差し出した

テッラ「さぁ、ステイル・マグヌス。あなたはどういう判断を下しますか?」


612以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/15(水) 02:20:35.10pTexKb6P (4/8)

建宮「簡易なもんだが、これで許して欲しいのよな」

13体の棺が、術式的な炎に包まれて炭なっていくのを見て、彼は呟いた

合同葬儀。といっても彼ら天草式は、日本で成長した為独自の要素が混じった教義祭事があるので、他のイギリス清教徒達とは別の空間をあてがわれていた

建宮「女教皇を連れて来て、本格的なでっかいやつをやってやるから、待っといてくれ」

祭具を振って、教皇代理は僅かな時間で行った簡易な式典を終えた

振り返ると、出席している仲間たちの顔がこっちを見ていた

全員、体中に包帯を巻いていたり、松葉杖を突いていたり、車椅子に座っていたり

傷だらけだった

牛深「そのためにも、とっとと女教皇を取り戻さなけりゃならないですね」

対馬「死んでしまった香焼達も、このまま女教皇が操られたままなんて浮かばれないわ」

手前に居た二人が声をかける

建宮「ああ。とは言っても本当に操られているのかって証拠は」

その後ろに立っていた五和が口を開いた

五和「十分ですよ」

建宮「ん?」

五和「操られているって根拠が、建宮さんの直感だとしても、それだけで私達の希望にはなります」

五和「それにあれが女教皇の本意による行動だったとしても、その理由を聞きださないと」

建宮「……そうだな」

言って、頷いた


613以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/15(水) 02:21:43.68pTexKb6P (5/8)

対馬「それで、何か女教皇に繋がる情報は手に入ったの?」

建宮「厳しいところなのよな。だが、冷静に考えてみたが、ステイルやアックアなんていう優秀な魔術師を同時に相手にして、あそこまで一方的に戦える程の戦闘能力は女教皇には無いハズなのよな」

牛深「そうですね。あのアックアが本気で戦っていたかは不明ですけど」

対馬「言いたくは無いけど、私達をあの場から逃がそうとして、ひたすら守勢にまわっていたし」

五和「それでも、同時に魔術師100人近くを相手にずっと圧倒し続けるのは」

建宮「有り得ない。あのアックアってのも聖人らしい。その上神の右席のメンバーだってんだから、実際に俺達が戦った事が有るわけじゃないが、半端な攻撃をされて守勢に回り続けるなんて事は無いと考えるのが普通なのよな」

牛深「つまり、女教皇は操られるついでに何かの術式か霊装によって強化されていたと」

建宮「俺もその考えに辿り着いたのよ。裏も取ってある」

対馬「裏?」

建宮「非戦闘型のシスターが、ステイルと禁書目録のコンビネーションに翻弄されているのを見てたのよな」

五和「あの女教皇が?」

建宮「そうなのよな。そして、その後にアックアが来てからは、本当に防戦一方的になってたらしいのよ」

対馬「私達が駆け付けた時には、あれだけ一方的だったって言うのに?」

建宮「ああ。そのシスターの話だと、俺達が駆け付ける前にパワーバランスが大きく一転して、一気にステイルは行動不能に追い込まれたとさ」

牛深「ってことは、戦闘中に強くなったってことですか」

建宮「又は、なにかの術式に準備や条件が必要だったとか、強化するまでに時間がかかったって考えられるのよな」

五和「と言う事は、女教皇のバックに何かの組織や人物が居たりする可能性が」

建宮「そのとおりなのよな。そして怪しいのが、アメリカだ」

対馬「女教皇は、英仏海戦であそこの軍隊に救出されてから行方不明。当然の読みね」


614以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/15(水) 02:22:40.18pTexKb6P (6/8)

建宮「その英仏海戦でもアメリカが怪しいのよ」

牛深「確かに、大型駆動鎧は強力でした」

建宮「それもあるが、怪しいと言ったのはそこじゃない」

これを見て欲しいのよな、と言って出した写真

視線が集まった先に写されていたのは、一隻の軍艦だった

牛深「海峡上の例の陣から出た光線で沈んだアメリカの旗艦ですか? いや、すこしペイントが違うな。同型艦か」

建宮「こいつは戦いの後、イギリス方向からアメリカへ向けて大西洋上を単独で航行していたって写真だ」

対馬「沈んだ旗艦と同型艦が、単独でアメリカへ。怪しくないとは言えないわね」

建宮「だろう。あの戦いはどうもおかしな点が多いのよ」

牛深「確かに。あの海峡上の術式陣も結局何だったのか英仏両国で発生したテロで有耶無耶になってしまった」

建宮「バチカン、フィアンマの動きも気になるが、俺達の最大の問題は女教皇なのよな」

五和「ということは、建宮さん。アメリカに行く気ですか」

建宮「そのつもりなのよ。ただ、女教皇が今アメリカに居るのかも分からない。その上旅費も出ない。完全に自腹なのよ」

建宮「それでも、俺は行こうと思う。ここに居るのも怪我人だらけで、この場に出れない奴も、まだ意識すら回復して無い奴もいる」

建宮「だから、この行動は天草式って組織じゃなく、俺個人の判断だ。空振りってこともある。強いる訳にはいかない」

建宮「第一女教皇がアメリカでは無く、今はイギリスに潜伏している可能性もあるのよな。それにも対応する必要がある」

建宮「体調も万全じゃない。悪い条件ばっかりだが、それでも俺と一緒にアメリカに行くって奇特な奴が居れば、名乗り出て欲しいのよ」



615以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/15(水) 02:23:33.04pTexKb6P (7/8)

「はぁーっ、やれやれ。やっと着いたか」

着くなり、護衛の侍従を手の平で外へ出るように促して、彼女、エリザード女王は、女王らしくない言葉づかいで椅子にドカッと座った

胸元に指を突っ込んで、高いドレスを少々粗雑にパタパタと動かす

先に円卓に着いていた二人は、そんな彼女の言動はいつもの事だと理解している、無関心な最大主教と呆れた息を吐く騎士団長である

派手に壊れたバッキンガム宮殿では無く、彼女らはヒースロー空港からあまり離れていないホテルの一室に集合した

パパラッチ文化のある厄介な国故に存在する、完全に密室となれるように準備されたVIP部屋

王室派・騎士派・清教派の3トップが集合した部屋である時点で、魔術的防諜面も考慮されている

エリ「しかし、お前さんたち随分と手酷くやられたようだな」

片腕の無い最大主教と、首元から包帯が見え隠れする騎士団長

ローラ「こうして紅茶を飲むのすら、利き腕が使えないのは辛いものでありたるものよ」

とはいっても、当然カップを握って飲むくらいの事は問題無くやってのける

それでも、女王は心痛んだ目で見た

エリ「……私をわざわざ北アイルランドから呼び戻したのも、お前をそう傷つけた奴に関わる事なのだろう?」

最大主教はカップを置いて、頷いた

騎士団長「恐らくは、連絡が行っているとは思いますが」

エリ「神の右席筆頭フィアンマの強襲、ヴィリアンが緊急入院、王室の遠隔制御霊装が破壊、残った清教の遠隔制御霊装はそのフィアンマに奪われた事」

エリ「知っているのはこの程度だが、これ以外に何かあるなら言ってくれ」

団長「いえ、遜色無いかと」

ローラ「問題は唯一となってしまった遠隔制御霊装が奪われたりけること」

頭に手を当て、思い悩む女王

エリ「まさか、最大主教と騎士団長の2トップすら退けるとはなぁ。あぁ、もちろんお前たちの力不足だと言い付けたいんじゃ無いぞ」

それでも、騎士団長は顔をしかめた

団長「お恥ずかしい話、ずっと手の上で踊らされ続けられました」

最大主教は何も言わないが、恐らく同じ事を言いたいのだろう


616本日分(ry2010/12/15(水) 02:24:24.80pTexKb6P (8/8)

エリ「彼奴に踊らされた、か。だが終わってしまった結果は変えられない。私をわざわざ呼びつけということは、この事に対応する為に迅速に決定しておきたい事がある、というわけだ」

エリ「特にその遠隔制御霊装、禁書目録の処遇などといったところか」

ローラ「流石、話は早く終わりそうね」

団長「読み通り、禁書目録の事です。端的に言うと――」

エリ「処分か。ハァ……皆、考える事は同じなようだな」

気が進まないのだろう。そんな表情が見て取れた

エリ「仕方ない事として人一人を切り捨てると言うのは、過去に有ったヴィリアンの誘拐を思い出させる」

エリ「個人的な感情を押し殺して、国家としての判断を迫られるのは、胸が痛いな」

団長「お気持ちは察しますが、彼の者が禁書目録を用いて何をするつもりなのか読めない以上、イギリスにとっても国際社会にとっても危険であるかと」

団長「万が一他国へ被害が出た場合に、根源が我が国の不始末となれば。外交は門外漢ですが、影響が大きい事は分かります」

騎士団長の方を向いて、女王は頷いた。まだ額に手を置いて、思い悩んだままで

エリ「うーむ。一応、聞いておこうか。ローラよ、他に方法は無いんだな」

ローラ「膨大な時間をかければ、遠隔制御霊装に対するジャミングのようなものは出来たりけるわ。ただ、そこまで待ってくれると言う事はありえないでしょう」

もちろん、そんな対策をイギリスが取ってくる事をフィアンマが予測しないわけが無い。他に方法は無い

しばらく、沈黙が有った

エリ「……この時期、と言う事はフィアンマという奴も分かっているのだろうな」

ローラ「でしょうね」

間髪いれずに応えたローラ。女王は腰に有る剣に手を置いた

エリ「折角この剣も見つかったのにアイルランドの騒動が終わらないままでは、本来の力を発揮できない。セカンドだろうがオリジナルだろうがこれは同じ。この束縛がある限り例の天使崩れには対抗できない」

エリ「これだけでも大いに頭を悩ませると言うのに。禁書目録か。……残念だが」

円形の卓上、エリザードの目の前にある書類。そこには既に二つの署名が有り、残る欄は一つだった

騎士団長はじっと女王に焦点を置き、最大主教はカップに口を付けた

そして女王は、すらすらと書きなれた名前を記入する

禁書目録の処分がここに決定・発効した



617以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/15(水) 03:54:00.85N.GQBwAO (1/1)

さようならインストールさん


618以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/15(水) 06:52:02.457QC8vjAo (1/1)

よっしゃ!

久々のテッラさんとフィアンマさんのターンだ!


619以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/15(水) 10:50:31.973VJYgZgo (1/1)

ついに禁書さんブックオフ行きか


620以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/15(水) 13:24:17.27utavr1wo (1/1)

インさんは補正があるから何もしなくてもどうせ上条さんが助けるんだろ
そんなことより香焼が死んだことのほうがショックだ
禁書では貴重なショタなのに…


621以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/15(水) 14:38:16.11b8SDSMDO (1/1)

はいはい佐天は別よ


622流石に年末は忙しくなりますな2010/12/18(土) 06:41:49.12g4h665EP (1/15)


アメリカ時間の午前10時。テキサス州・フォートワース

某巨大軍事企業の生産工場があるだけでなく、隣接都市に大都市ダラスがあるなど、重要な都市である

都市中心部から北西に少し離れたカースウェル空軍基地に、輸送機が次々と着陸していく

ランウェイから少し離れた所からその様子を見ながら、垣根帝督は呟く

垣根「ここまでして、来なかったら笑えるぜ?」

彼の周りに人はいる、が、各員忙しそうに物資の搬入作業を行っている

特定の誰かが彼の話し相手になっている訳でも無い

その上、彼は日本語で言葉を発したので、周りに居る人間に語りかけたわけではないと分かる

(心配しなくとも、来る)

彼の頭に言葉が響いた

(わざわざ引き寄せる為に、彼らの餌になりそうなものを用意しているのだからね)

脳内で響く言葉に反応して、フン、と鼻で笑った

垣根「フォートワースだけでも100万以上の人間が居るってのに、都市を破壊しに来る敵をおびき寄せるなんぞ、正気のやり方じゃねぇな」

(だが、おびき寄せる事が出来れば、こうして迎え撃つ準備が出来るといことだ)

周りの者に若干奇異の目で見られ出したので、彼はポケットに手を突っ込んで、その場を離れようと空港外へ向けて歩き出す

垣根「ま、その通りっちゃその通りだが」



623以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:42:44.29g4h665EP (2/15)

(それに、今回のは一種のデモンストレーション・プレゼンテーションなのでね)

垣根「ハーン。天使崩れの連中を撃退できるって証明するビッグなショーなワケだ。いや、博打って見方もできるか」

(博打、か。確かに可能性的には失敗して、単にフォートワース市民を巻き込んだだけという結果も有りえるね。一種のギャンブルであることは間違いないな)

垣根「それに誘き寄せる事が出来んなら、わざわざ人間が集まってる所じゃなくてもいいじゃねぇか」

(それは君の言う通りだ。私も出来る事ならそうしたかったが、彼らの目的は人類を一度全て消し去る事だからね。人の居ない高原や砂漠を選べるならそうしたかった)

垣根「ふーん。仕方ねぇのかもしれねぇけど、人命を賭けるってやり方。特にお前が、一、人工知能が、決定してるってのが気にくわねー」

(ここはアメリカ合衆国だ。最終的には大統領が決めた事だが?)

垣根「お前が乗っ取ってたら、大統領だろうが国防長官だろうがCIA長官だろうが、ただの人形と変わらねぇだろうが」

(確かにやろうと思えば、私は彼らに対してそういう事が出来る様には用意してある。だが、最終的な決定は大統領が下したものだ。彼の自由な判断による決定でなければ、一体何の為の大統領制なのだ、と言う事になるからね)

(もちろん、私が望む結果になる様に情報と分析の結果を提示したのは事実だ。しかし、その情報もまた偽りない事実だよ)

軍施設内の自動販売機に紙幣を突っ込んで、スポーツドリンクを口にした

(私にとっても机上の空論のままでは困るからね。特に、これからは時間が無いんだ。少ないチャンスで確実な結果を出さなくてはならない。重要な拠点だけでも守る必要があるのだ)

垣根「ン…ン……ぷはー。学園都市に御大層な物まで持ち込ませたのもその為か?」

飲み残っている缶を窓の淵に乗せて、外を眺めながら垣根は尋ねた

(ああ。今あそこを失えない。例え、最も必要だった施設が使えなくなってしまったとしても、あの高水準の技術を持った生産能力を失う訳にはいかないのだよ)

(その為に今回は破壊が少なくなるようにあそこを占拠しようとしているんだ。本来なら彼との交渉で平和的に解決したかったが、彼には断られてしまったからね。ああいう手段を取らざるを得なかった)

垣根「大規模魔術の練習にもなった事だし、そう言いながら常に無駄なく動いてるやつが残念って言うのはどうかと思うぞ?」

(そう言うのは卑怯だろう?勿論犠牲を出したことへの報いは用意してある。防衛と言う形でね。学園都市にも近いうちに天使崩れか、もしかすると本格的な神格が来るかもしれない。それから守る為に制圧部隊には対策装置を持たせたし、それが本当に計算通りの効果をもたらすのか、ここフォートワースで調べなくてはならない)

垣根「だが、その対策装置とやらが今は使える状態じゃない。そうだろ? 知ってんだぜ?」

(調べていたのかい?)

垣根「快適性が良くねぇ軍用機じゃ、他にやる事が無かったからな」


624以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:43:13.40g4h665EP (3/15)

(純粋に仕事熱心なのか、なんだかんだで学園都市の事は気になるのか)

垣根「……アイツと会えたのも、あそこだからな」

(あぁ、そういう理由だったか。すまない、気が回らなかった)

垣根「気にすんな。んで、大丈夫なのか? 壊れたら不味いんだろ、あそこの生産能力とやらは」

(君の調べた通りだ。特別製の駆動鎧も必要数は足りないし、根本的に必要な制御系を可憐な現代版くの一に壊されてしまった)

垣根「なんだそりゃ?」

(見たままを言っただけさ。それに巻き込まれて、私が入りこめる素体が両方とも死んでしまった。とても問題無いとは答えられない状況。というより、一番最悪な状況かな)

垣根「おいおいどうすんだよ」

(もちろん追加を送った。だが、間に合うかどうか)

垣根「空輸なら、そんな時間は要らねぇんじゃねーのか」

(持っていくことは、ね。問題は修復しなければならない事さ。くの一の子に加えて核融合を食らっても死なない個体が散々暴れまわってくれたお陰で、随分と時間が必要になってしまった)

(私の姉君達や上条当麻が時間を稼いでくれると良いのだが、私達の味方ではない以上期待は出来ない。そんなリスクある行為に期待はしない)

缶に残ったドリンクを飲み干して、ゴミ箱に投げ入れた

垣根「あの幻想殺しなら、勝手に動くだろうさ。……後先を考えずにな」

(学園都市に居ればの話だよ、それは)

垣根「あーそりゃ確かに、学園都市に居ないなら無理だわ。…………お、さてと」

施設を丁度後にして、道路へ出た時だった

青空に強い光が瞬いて、昼も近いと言うのに太陽に負けないくらいにきらめく光点が現れた

(この話の続きは後回しにしようか。……間違っても市民を巻き込まないでくれるかい)

垣根「分かってる。最低限、病院だけは守ってやるさ」


625以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:44:02.41g4h665EP (4/15)

「ようやく御戻りになられましたかっ!!」

変装したローマ教皇がバチカンに戻ると、彼の代わりに振舞っていた影武者が震えた声で出迎えた

教皇「お、おぉ。そなた、よく耐えてくれた」

崩れそうな体をハグで支え、影が落ち着くのを待つ

「そ、それが私の役割ですから、問題ありません。……しかし」

言って、彼は教皇に山の様な書類の上澄みを手渡した

「最近の上奏文書や報告書です。我々は、ローマ正教はどうしたらいいのでしょう」

教皇「やはり、か」

ローマ正教圏の都市が天使崩れに襲われてたくさんの死者を出した事。天災によって大規模な被害が出た事

そして更に、決して一枚岩ではないローマ正教内での各勢力がお互いを崩しあったり吸収し合ったりと言った報告が上がっていた

要するに、支配上層部での内部分裂が始まっているのだ

「現正教内では、これを機と捉えるもの、原理主義に徹し受け入れようとするもの、そして惨状を目にし天へ弓引かんとするもの。これらで一枚岩ではありません」

教皇「日頃の薄かった対立が表面化してきているのだろうな」

「はい。今でこそ信徒達まで影響は出ておりませんが、上層部が割れているようでは、いずれ混乱を招くのは目に見えています」

教皇「ローマ20億と言えど、地方や民族によって文化も違う、戒律も違う。バチカンは結局それらを強引に抑えて束ねているだけにすぎなかった」

「目の当たりにしてお分かりになられたようだ。周遊は、無駄にならなかったと言う事ですね。良かった。私に意味は有った」

教皇「あぁ。君のお陰で、バチカンの頂点では見る事の出来ないものが見れた。如何にこの世界がまとまりを持たないのか、ということを」

「民とは移ろいます。貧困によっても、治安によっても、信仰によっても。私は難民の出自ですから、そういう光景は痛いほどに見てきました」

教皇「そして信仰も歴史とともに変化してきた。変わらない筈であった聖書も、教会が都合よく捻じ曲げて解釈を繰り返した」

教皇「変わらぬのは常に最下層の一般信徒達は、強いられるままと言う事だ。今回もまた然り」

「しかし今回は上もさることながら、下の、一般信徒たちからも直接的な問題を引き起こさせます」


626以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:44:35.80g4h665EP (5/15)

「いくら聖書に予言されていたものであっても、実際に降臨と破壊を目の当たりにして、それを受け入れる事が出来るほど、今の信徒たちは敬虔ではありません」

教皇「信仰が薄くなったのは科学のせい、と言いきってしまえば楽だ。しかしそれは現実逃避でしかない。それでは現状に対して全く対応できない」

「その科学サイド、学園都市も内部崩壊しているようですし、今はどの勢力もまとまりを欠いています。しかし」

書類の中で、影は一部を束ねたものを取り出し、見せる

教皇「時代遅れの巨人、新教徒国家そして移民国家のアメリカか」

「はい。どうやらあのドーバーでの海戦も、彼の国に仕組まれたようです。今は自壊させたようですが、軍事衛星のレーザーを用いたらしく」

教皇「結果だけみれば、奴らがカレーを焼き、英・ローマ双方の魔術組織へかなりの被害を与えたと言う訳だ」

「その上、彼らの持つ駆動鎧の高性能を世界に見せつける結果にもなりました。加えて、確証は取れていないですが、魔術の情報も入手し、聖人を一人獲得したという報告も」

教皇「また巨人に戻ろうと言う訳だ。しかも、科学・魔術両サイドの頂点として。我々が狙っている事と同じ事だな」

「その通りでしょう。これは既存のパワーバランスを大きく傾けるものです。聖下、ローマ正教の教皇としての意見を、願わくば一信徒の私に教えて頂きたいのですが」

教皇「なんだろうか」

「この神からの裁きについて、我々はどう行動するのか、指針を示して頂きたいのです」

懇願する顔を見せる影の肩へ手を置いて、マタイは口を開いた

教皇「裁きの後の復活は、約束されている。このまま襲ってくる天使達や天災を受け入れるのも一つの手である」

教皇「だが、復活の対象は敬虔な十字教徒のみとする要素が我が宗教内にも根強く存在し、どこからが敬虔でどこからが敬虔でないのかの線引きはあやふやだ」

教皇「まずは、その敬虔さの定義を決めなくては。私がここへ戻ってきたのは、その為でもある」

「その定義は、どのように?」

教皇「決まっている。ローマ正教徒として、洗礼を受けたもの全てだ」

「それでは、今まで天上での復活を目指し、厳しい戒律や法を守ってきた原理主義的な信徒達は、苦労し損ということにはなりませんか」

教皇「それを評価するのは私では無く、神だよ。そして広く多くの人間を救えずして、どうして信仰と言えようか」

教皇「確かに寄付や寄進などの行為は素晴らしく、厳しい戒律を守ってきたのも事実だ。しかしそれが出来るのは裕福な者であったりなど、特別な条件下に住む一握りの者たちだけ」



627以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:45:11.23g4h665EP (6/15)

教皇「多くの人民は、差別と戦い、貧困と格闘しながら、強く生きておる。そういう者達が我々と同じ神を信じ、最低限の信仰を持っているのだ。そんな彼らを救わずして、どうして人民の為の信仰と言えるだろうか」

教皇「この度、僅かな時間であったが、様々な立場の者たちの視点からローマ正教を、信仰を見てきた。そのような彼らの視線を、私は裏切れない。どうして頂点である教皇が、人選によって選ばれた私が裏切れようか」

教皇「そして他にも理由は有る。内部の対立をそのまま残すかのような定義では、ローマ正教そのものを――――」

パチパチパチ、と聖堂の中に手を叩く音が響き、教皇の口は止まった

「流石、人選により選ばれた教皇・マタイ=リース聖下。おっしゃる言葉は仁徳に溢れ、寛大だ」

柱の陰から、ヌッと人が一人現れる

「しかし、それでは満足しない勢力が出てくるでしょう。どうやって鎮めるおつもりだろうか」

教皇「枢機卿ペテロ=ヨグディスか。その答えは一つ。その勢力が鎮まり、納得するまでまで対話を続ける。それが主・イェスの取ったたった一つで明確な布教行動でもあるのだからな」

ペテロ「では聖下、その対話に必要なものはなんでしょうか」

教皇「私とその相手、そして時間さえあれば良い」

言いきった時バスッ、と、教皇の胸を叩くものが有った

影の手に握られたものが、教皇の胸を叩いたのだ

それは、とてもシンプルな形をした、長石で出来た槍の先とも短剣とも矢じりとも取れる様な、一言で言えばただとがった石だった

ペトロ「信仰の源は、もちろん信徒達だ。しかし信徒には質というものがある。一緒にされてはたまらんよ」

教皇を守り強化させるはずの術式が何重にもされ、簡単には教皇の体を貫く事が出来ないようになっている聖ピエトロ大聖堂

そのあらゆる術式を無視して傷ついた体。変装した彼の衣類が赤く染まる

最初は小さかった傷口が徐々に広がっていき、自らの胸から流れ出す血液に触れ、その温かさを感じながら、教皇は言葉を捻りだした

教皇「民の礫、神殺しの槍、か」

ペトロ「私も驚かされたものだ。こんなどこにでもある石ころで出来たものが、始原のロンギヌスの槍であったのだからな」

教皇「その霊装が示すのはお前の言った通り、信仰とは、宗教とは、信徒があってこそ、だということだ。そうでなければ、どうして、神の子であるイェスが死せるものか」

教皇「結局、主・イェスに死をもたらし、天上へ上がらせることを決心させたのは、磔にされた彼へ投げられた、どこにでもある石ころだった、のだ」



628以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:45:39.01g4h665EP (7/15)

教皇「力あるものに振り回され、その場の流れに流され、良い様に扱われる民の姿を、自分自身を貶すように投石する哀れな民の姿を見て、天上から救う必要がある、と。"神よなぜ私を見捨てたのか"という発言の後に、そういう神の意志を理解して、主は昇ったということだ」

教皇「故に、死を確かめた、確定させたロンギヌスが持っていた槍は、神を殺す事を確約させた槍でしか無い。本来の意味では、その石はロンギヌスの槍ではないのだ」

教皇「それは、純粋に神殺しの槍。同時に、神の意志を理解させる槍。本当に、神を殺したのは、民なのだ。じきに、お前も分かるだろう」

ペトロと言う名の枢機卿を向いて、本当に心から、マタイは笑顔を作った

教皇「ペトロよ、ありがたく先に逝かせて貰う。ローマ正教の事は、信徒たちの事は任せた。それが仮に、信徒の区別を図るものであっても」

教皇「だが、忘れる、な。信仰とは、信徒が……――――」

力無く倒れた、変装したローマ正教の頂点を見てペトロ=ヨグディスは笑みを浮かべる

ペトロ「マタイよ。お前が言った事は、全て正しいだろう。そしてその寛大で気高い心を認められ、必ず天上での復活を果たすであろうな」

ペトロ「だがお前の正しさでは、とても時間が足りないのだ」

ペトロ「言ったな、対話に必要なものは時間であると。なればその時間が無い時、その対話を成立させるのは何か」

ペトロ「それは、力にすぎない。権力・資金力・人力・欲力が決める。所詮人は、主・イェスが憐れんでしまう存在でしかないのだ」

ペトロ「それを使わないと決めた、お前ではローマ正教を纏める事は出来なかったのだ」

ペトロ「きっと神は、偶然この石ころをここの地下から見つけ出す事が出来たことで、私にローマ正教を任せるぞと言う意思を伝えたかったのだろうさ」

丁寧にマタイへ向けて十字を切って、ペトロはその視点を変えた

ペトロ「もう十分だ、マタイの影よ。だがその衣類と場所は私のものだ。譲って貰おうか。何、お前が求めていたモノは、家族も金もキチンと用意してある。誘拐などしてすまなかったな」

言うと、影武者の男は衣装を脱ぎ棄て、逃げるようにしてその場を去った

しばらく経って、ローマの市街の一角で小規模な爆発が起きる

現場から見つかったのは、1組の夫婦と息子や娘であった者達の死体

影は死んだ。権力欲しさに教皇を亡き者にし、自らの行いを悔いて逃げ出そうとした所を、たまたまそれを目撃していたペトロと言う名の枢機卿の放った追手によって、家族諸共殺されて、死んだ

そういう形で処理され、教皇・マタイの死を知るものは居なくなった

そして、次の教皇の座に座るものは、あらかじめ決まっていた


629以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:46:43.46g4h665EP (8/15)

教皇の暗殺と殆ど同時刻

最大主教とよばれる女性は空港そばのホテルのVIP部屋に残って、なれない左腕で紅茶を飲んでいた

円卓に座っていた者はその数を一人減らしている

女王がサインした証書を騎士団長は受け取り、「お任せを」と呟いて部屋を出た

今頃は傷ついた体で禁書目録の処分の為に部下へ命令を出しているところだろうか

残った二人の女性は静かな空気を作っていたが、最大主教はその空気を変えた

ローラ「北アイルランドの事は、もう宜しいのかしら?」

ようやく華咲いた会話。女王は表面的な笑みを浮かべる

女王「心配せずともあとは、私が居ようと居まいと、二人の娘が何とかする。最も、長女の方は今どこで何をしているのか全く掴めていないがな」

女王「だがこの状況で、女王である私がロンドンを長らく離れるわけにもいかないのだ」

ローラ「それはそうでありけるな。しかし忙しいとは思いたるけれど、ヴィリアン嬢の見舞もしてやるべきと思いたるわ」

女王「もちろん、そのつもりだとも」

ローラ「そう。ならば今から行けば良いのでは?」

女王「そうしたところだ。しかし何故だか、お前から目を離さない方が良い気がしてな」

少し視線を鋭くして、机に立てかけてある剣に、カーテナ=オリジナルに手を添えた

暗に、監視をしているぞ、と言う意味が伝わる

何をするつもりかは分からないが、下手な事はするべきでない、と。そういう脅しだ

ローラ「その様に見られてもな。文字通り片腕を失い、神裂という貴重な部下としての腕をも失った私では、なにもできぬよ」

女王「そうだと良いのだが。今だその少女のような容姿を保ち続ける人間が相手では」


630以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:47:28.46g4h665EP (9/15)

ローラ「信用できないと?」

女王「そうは言わない」

そう言いながら女王はカーテナにもう一度触れた

仕草としては、何気ない行動だが、意味は伝わる

もちろん、女王もそういう意味を伝えるべくして、自然に触れている

その様子をみて、最大主教は僅かに口元を、笑う方向へ動かした

ローラ「なれば、この後私と共にヴィリアンどのを見舞に行きたるのはどうかしら」

付かず離れず、常に女王が直々に監視し続けると言うことは出来ないことぐらい、ローラ=スチュアートは理解している

この厄介な女王は時間が経てば自分のそばから消えるのは分かっている

それでも、彼女は女王を促した

形式的にでも、示す必要があると考えたのだ。私はイギリスを裏切る気は無いと

これから訪れるであろう様々な問題の解決に協力するという最低限の印象を与える為に

彼女にとっては、まだ、イギリス清教とイギリスと言う国家が必要なのだから

もう一度カップに口を付ける

ローラ(フィアンマがあのような強引な行動を採って来た事は、想定外と言えば想定外だった)

ローラ(結果として、さまざまなコストを掛けてきた禁書目録の処分という事になったことも同じ)

ローラ(でも私とて、そして目の前のエリザードすらも、その事を、禁書目録を処分すると言う事を本来想定していなかった訳は無い)

ローラ(エリザード、あなたの意思はもちろん分かりけるわ)

ローラ(国の元首として、こうなった時に予想以上に落ち着いている私の動きが気になるのは当然)



631以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:47:59.58g4h665EP (10/15)

ローラ(特に、何時神の裁きが訪れるのか分かりたらん現状では、不安要素に対して機敏に反応しなくてはならないものね)

ローラ(でもそれで逆に視界が狭くなってしまわない事を祈りたるわ)

ローラ(禁書目録に二重の制御機構が有った様に、その知識も二重にできる)

ローラ(こうなった時の為に、あらかじめあの子から必要な知識を写しおき、他の場所へ保存したると言う方法で)

ローラ(そしてそれが今まで出来得たのは―――――あなたと私だけ)

「フフ」

思わず、最大主教は口元へ手を当てて、小さく笑った

女王「そんなに私の食べ方を笑うなよ。どうせ私達二人しか居ないんだ、間食ぐらい気軽にさせてくれ」

その笑みの意味を知らない女王は、少し乱雑なスタイルで菓子類を口にする自分を笑われたのだと思った

ローラ「あら、笑ったのはそこではなきけるわ」

女王「ん? それは見慣れているとでも言いたいのかな?」

ローラ「ええ、それについては同意したるわ。なれど私が笑ったのは、片腕が無い事でこれからどれだけ生活が面倒になるか想像して、少し打ちのめされける自分に対してよ」

女王「そりゃ、両腕があるときにはなかなか考えたりはしないだろう。腕を失うとは、その腕がどんな意味をするにしても、誰もが皆想定外の事だ。うん、この菓子も想定外だな」

ローラ(想定外、か)

ローラ(そうね。私にとって本当に想定外なのは、この失った腕の事ぐらいか)

「フフ」

そして少女の様な顔をした最大主教は、もう一度笑みを浮かべた


632以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:49:37.61g4h665EP (11/15)

騎士団長の命を受けた騎士たちが、とある病室の前に立っていた

その中の一人が部屋のスライドドアを開こうと触れた瞬間、その騎士は倒れた

触れることによって反応する、罠型の術式。有り触れた手であるが、それをこの部屋で寝ているハズの少女が施したと言う事は

自分たちが来ることが分かっていた?つまり、殺しに来るのを読んでいたということか

騎士たちも馬鹿では無い。恐らく罠は一つではないだろうし、この扉自体も開き難くなる様に、時間稼ぎをする為に他の術式が施されているだろう

だがその対象はドアそのものやその周辺であると予測される。ならば、手は一つ。本来の入り口から入らなければ良い

隣の病室の患者や設備を全て一時退避させ、魔術では無く爆薬で壁に大穴をあける

静かなハズの病院に音が鳴り響かないよう、音波の振動を吸収させる術式を使って、ほぼ無音のまま崩れ落ちた病室と病室の間の壁

その大穴から突入した時には、中はもぬけの殻だった

そして、案の定、本来の入り口であったスライドドアは罠となる術式が他にもたくさん盛られていた

「禁書目録の姿無し。空間移動の術式陣を確認」

部屋を探索していた騎士の一人が、襟元の通話用の霊装に向かって喋った

騎士団長『術式の型を挙げろ。ジャミングを用いるなどして術式の反応警戒を行う』

「了解。おい」

騎士が他の分析を行っていた騎士に通話を変える

「出先を指定するタイプと断定。反応を警戒したのか、出先は院内」

団長『分かった。どうやら冷静な頭脳は働いているようだ。意識朦朧とした魔術師が術式を暴発させない様に設けてある病院内の反対術式の存在を知っていたらしいな』

「そのようです。一般的な活動に差し支えない様に施されている反対術式の反応制限内での、小規模な使用で部屋を脱出したものかと」

団長『反対術式とは言わないにせよ、監視術式はこのロンドン中を指定している。如何な禁書目録と言っても、逃れる術を持たない。術式警戒域を最大に変更だ』

団長『良し、諸君らはそのまま禁書目録の追跡に当れ。だが、トラップは随所にあるものと仮定して、警戒を怠ることがないように』

「了解」

魔術による通信を終えた彼らがその部屋から出ていった後、ベッドの掛け布団の下に隠されていた術式が発動した

内容は、特定範囲で特定の行動が有った場合に信号を送るというもの。本来ならば罠の始点として設置されるものである

その信号は、つまり騎士団の、自らを殺しに来る連中が遂に病室まで踏み込んできたという事を知らしめる最低限の役割を、彼女に伝えた

しかし自動書記モードが立ち上がり、フィアンマの命令通りに病室を逃げ出した禁書目録は、正常では無かった


633以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:50:15.49g4h665EP (12/15)

禁書「………shi、信号をreceいved………予想さっ、reる脅威の接近maで残り――――」

上条当麻に破壊された首輪部分の術式が無い事で、唯でさえ不完全だった所に、反対する二重干渉による矛盾で負った脳負担

根本的に頭脳にある知識を媒介とする自動書記にも、当然ながら影響が出る

継ぎ接ぎだらけの歩く教会ですらない彼女の格好は、10月半ばでは寒すぎる薄い水色の院内の患者服

それをはたつかせ、とても風を切って走るとは言えない弱弱しい足取りで、禁書目録は時折派手に転びながら建物と建物の間の裏路地を移動する

禁書「………移動術式ni対するcounter-skiる、並びっ、に小規模術式mあdeの魔力監視術式範、囲強化を確二ん……」

禁書「対抗術式をけん゛さっ、く…………該当結果、た、多数……最tekiな術式は」

空間に術式陣が浮かび上がる、が

禁書「当ガイ空間の祭壇化に失pai。魔力不Ⅹ分によル、祭壇なしでの術式実行は不可と判ダッ、ン」

禁書「魔力不足factor、特定。自動書記二対する致命的えっろr。禁書目録個体自身の意識の遮断インコンプリート」

ビクッ、と体を痙攣させた少女には、一時的に表情が戻った

禁書「と、to、uma、……とうまぁ…」

強引に自動書記が意思を再び抑えつけて、禁書目録の顔から表情が消える

禁書「……………仮定脅威ofjectの接近wo確認」

振り返って、追っての騎士たちが来るであろう方向を向く

禁書「排除抵抗二障害無ク実行可能ナ術式ハ、強制詠唱及ビ詠唱改変GA該当」

「居たぞ!こっちだ!」「捕獲目的では無い、殺すんだ」

禁書を見つけてすぐに、騎士たちは殺すべく攻撃を開始する

魔術によって、彼らの投げた小剣が、精密誘導機能のあるミサイルの様な軌道を描いて禁書目録へ飛来する

既に発動してしまった術式であっても、自動追跡などの術者の意思から離れた術式ならば、強制詠唱で回避する事が出来る

禁書「対象を(T)太陽へ(S)」

暗号化された言葉を禁書目録が呟いただけで、その小剣達は天高く、しかも建物と建物の間では直接見えない太陽の方向へ飛んでいき、建物の壁にカカカッと刺さった

しかし、太陽へ向かった小剣は、飛来した全てでは無かった

強制詠唱で軌道がねじ曲がらなかった小剣が、禁書目録の方へまっすぐと飛んでくる

咄嗟に横方向、とはいっても狭い裏路地では横へ移動できる空間など限られるが、体を移動させる


634以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:50:45.79g4h665EP (13/15)

禁書「………回避二シッ敗」

唯でさえふらついていた体では、咄嗟の瞬発力も足りなかった

深深とナイフがその小さな体の腹部を貫く。血を吐きながら、更に血が噴き出すことが分かっていながら、彼女は小剣を引き抜いた

一気に出血が溢れる。それでも、騎士たちは気を抜かなかった

「甘かったな。同じイギリスに所属するものとして、強制詠唱を知らないわけがないだろう」

仕組みは簡単だった。自動追尾の小剣の中に交えて、彼らは体の筋肉によって投げたのだ、小剣を

それこそどこにでもいる不良が携帯していそうなナイフでは、なんの術式効果も無い研がれた金属の塊には、術式的に反応し様が無かった

「調子に乗って近づくなよ。禁書目録は竜王の殺息すら用いる。距離を取り回避マージンを確保しつつ戦うんだ」

「了解」

そして、騎士団員は次の小剣を構えようと手を伸ばす

傷ついた禁書目録に止めを刺すには、もはやフェイクなど要らない。直接彼女めがけて小剣を投げてくるだろう

禁書「……敵no術式、の準備をカク認。対策としてギリシャ神話『女傑伝』から抜粋、詠唱改変、即時実行します」

しかし、禁書目録、自動書記は出血しながらでも見抜いていた。彼らと自らの距離はそれなりに有って、人間の筋力だけではとても彼女の胸に深く刺さるには及ばないと言う事を

答えはシンプルだ。彼らは投げる前に、瞬発的に肉体を強化するような術式を発動させて、強化した体によって投げたナイフの殺傷力を高めているのだ

自動書記の読み通り、筋肉強化の術式を発動した瞬間だった

4人の騎士達は、まるで雷に打たれたかのように体を曲げて、そのまま倒れ込んだ

対象的に、禁書目録の腹部の傷は血を吐く事を止めてしまっている

無感情的に口元の血を拭い、少女は振り返っておぼつかない足で逃避行を再開した

彼女が行ったのは、詠唱改変による肉体強化術式の改変。彼らが使ったのは、肉体と生命力・魔力を媒体・媒介に自らの肉体を変化させると言う術式

媒介媒体をそのままに、自らの血肉を犠牲にして他者の回復を助けると言う、中世に魔女狩りの犠牲となった魔女と呼ばれた人々が、病気や怪我にあえぐ人々を救うのによく用いた魔術の現代改良版に、騎士たちの肉体強化の術式を差し替えたのだ

彼らの血肉や生命力が、瀕死の禁書目録の体へ流れ込み、その体を回復させる。反面、騎士達は急激に力を失って倒れるほかない

追加の騎士たちが駆け付けた時には、意識を失って倒れている男たちと、少し離れた所に禁書目録の血によって出来た血溜まりがあるだけだった



635以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 06:51:46.47g4h665EP (14/15)

ステイル「クソッ、遅かったか」

いつものローブ姿に着替え直した長身の14歳の視界には、派手に壊れた禁書目録の病室の壁があった

ステイル(ここの壁が壊れていると言う事は、禁書目録を処分する為の魔術師が強引に突入したという意味以外、どんなに楽観的な視点を持っても見いだせない)

ステイル(女王陛下がロンドンに戻ってきたという情報が入ったかと思えば、すぐにこれだ。早い。意思決定とステップワークが素早いのは国としては良い事なのだろうけど)

ッ、と小さく舌打ちをして、彼は部屋を出ようとした

そこに、深めの茶色で正装した、紳士服の騎士団長が現れる。その衣類は、女王と会見したときからそのままだ

騎士団長「ステイル=マグヌス、だな」

ステイル「これは、騎士団長殿。僕に何か用で?」

団長「……今までどこへ居たのだ?」

ステイルの質問を無視し、騎士団長は質問で返した

ステイル「いえ、私用で少々、オックスフォードの通りで生活雑貨の買い物を。何故そんなことを聞くのです?」

それをもう一度、質問し返す

団長「今朝の会話を盗み聞きしていた君は当然知っているだろうが、禁書目録の処分が正式に決まった。この通り、女王陛下の支持も取り付けてな」

騎士団長のサイン、最大主教のサイン、そして一番下に女王のサインが書かれた証書を騎士団長は見せた

ステイル「そうですか。……それは残念だ」

心の籠っていない声で、騎士団長は、私もそう思う、と応えたが、ステイルにとっては気休めどころろか挑発に思えた

団長「君も、自分の立場をよく理解しているはずだ。これから少々不自由になると思うが、行動を制限させて貰うぞ」

言って騎士団長は腰の剣に手を掛けた

抵抗すれば切る、という意思表示だ


636本日分(ry イカデックスさんがお強いです2010/12/18(土) 06:52:38.56g4h665EP (15/15)

ステイル「ッ、いくら騎士派の長とはいえ、清教派の僕を拘束する権利など」

望み薄だろうが、一応彼は抗弁する

団長「直接的に拘束するわけではない。そして当然最大主教からの許可は得ている」

ステイル(あの女。何が有っても禁書目録を殺すつもりか)

少し悔しそうな表情をしたステイルをじっと見る騎士団長

団長「大人しく従って貰おうか。彼女も私も、有能な君を失いたくは無いからな。少々、禁書目録の命が消えるまでの辛抱だ」

二人の騎士がステイルの後ろに立った

何も言い返さないステイルを見て、騎士団長は振り返り部屋を出て離れていく

代わりにステイルの正面に一人の騎士が来て、ステイルも合計3人の騎士に囲まれる形で禁書の部屋から離れていく

ステイル(このままだと、まず間違いなく魔術的な封印を施された空間へ連れて行かれる)

何も話さないが威圧感を出し続ける騎士達を見並べながら、ステイルは付いて歩いていく

ステイル(不完全な彼女では、何れ捕まってしまう。なんとしても直接助けに行かないと)

隙を窺う。というより、条件さえ合えば隙が無くとも強引に突破できそうだ

ステイル(その為にはまず、この厄介な現状を打破させてもらおうか)

ステイル(幸い、手錠だのと言った拘束はされていない。それはつまり最低限僕を信頼しているということを意味しているのだろうけど)

建物を出て、行く先には護送用の霊装となっている車両が有った

馬車では市街で無駄に目立ってしまう為、見た目はただの高級車だが、中身は所々に特別な装飾が施されている。入れば少なからず魔術の制約を受けるだろう

だが今は、厄介な実力者である騎士団長はもう近くに居ない

ステイル(まずはその信頼を、裏切らせてもらう)


637以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 07:56:14.15vJPQABko (1/1)

ステイルさんがダークサイドに……


638以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 11:08:55.888kRPyoDO (1/1)

佐天さんを行動不能にするのにあんだけ苦労したのに今度はインさんか…


639以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/18(土) 16:03:46.08nL/elUwo (1/1)

いい加減イカちゃんをインなんとか呼ばわりするのうぜぇ
イカちゃんはちゃんとお手伝いがんばってるし逆キレして噛み付いたりしない


640以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 08:00:09.61LjGrP3UP (1/1)

待ってるという奇特な人には申し訳ないが、次の投下が少し遅れます
空いた時間で少しずつ書き溜めして30レスぐらいの規模で投下する予定なのでお待ちくだされ

>>639
だが少し待ってほしい。ここで冷静にイカちゃんとインなんとかさんを比較してみた

厚かましさ:禁書>>>>>>>人としての最低限を有しない壁>>>>>>>烏賊
性格の良さ:烏賊>>>>>>>>10万3000冊の魔道書を持ってしても越えられない壁>>>>>>>>>>禁書
お手伝いの回数:烏賊>>>>>>>>>>>>>>>全き0の壁>禁書
同居人に対する扱い:烏賊>>>>>>>>居候の分際をわきまえている壁>>>>>>>>禁書
胸の大きさ:烏賊>禁書?(アニメに於ける胸部膨らみの有無により検証)
触手の有無:烏賊>>>>>>>>>>>>軟体動物頭足類鰓類の壁>>>>>>>>>禁書
ヒロインとしての扱われ方:烏賊>>>>>>>>>>登場回数の壁>>>>>>>>>>>>>禁書
新環境への適応性:烏賊>>>>>>>>万能触手を持たざる者の壁>>>>>>>禁書

上記の8項目へポイントを割り振ってグラフ化したものが以下である

   好感度
     |
      |              グラフで比較するとそれほど差はない
    8├              むしろ禁書の方が高く感じられる
      |  ┌┐1                     ┌┐7
      |  ││                       ││
   0.5├  ││   ┌────────────┘│
      |  ││   │┌────────────┘
      |  ││   ││
      └─────────
        禁書    イカ様 

以上より禁書と烏賊娘の読者好感度が拮抗している事が分かる

冗談抜きでインなんとかさんみたいなのがリアルな居候なら蹴り出さない方が異常


641以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 08:45:36.94zI4sb.SO (1/1)

そういう連絡してくれるとありがたいわ
気長に待ってる

インデックスは海外だと殺されかねないレベルだと思うんだ


642以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 10:40:00.96aJxyEwDO (1/1)

期待して気長に待ってますぜ。

かまちーはもっとインさんを魅力的に書くべきだと思う。


643以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 19:06:45.18exNRTbAo (1/1)

         ∧ ∧
       ヽ(・∀ ・)ノ   <お腹が空いたんだよ
       (( ノ(  )ヽ ))
         <  >



        `゙`・;`'  バチュン
         ノ(  )ヽ
         <  >


普通ならこうなるレベル


644以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/21(火) 19:28:13.21xk3cojco (1/1)

一巻の頃の悲劇のヒロイン像が崩れるほどの傍若無人っぷりを発揮してようが
特別な恋愛描写がなかろうがBOFだろうがメインヒロインには変わりないんだよ


645以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/22(水) 00:11:02.55OyVVrMco (1/1)

このスレのメインヒロインは佐天さんだけどな
爆散的な意味で


646Are you enjoying the time of eve?2010/12/24(クリスマスイブ) 12:59:42.08zrTAdWQo (1/1)

しかしここまで酷い状態からハッピーエンドにするとなると、
今までの出来事は樹形図の設計者かアメリカAIのシミュレーション内容に
すぎず、本番の大失敗を避けるために検討してました位しか思いつかない。
もしくは美琴たちが手に入れた平均的遺伝子から復元してレプリカの世界で
偽りの平和な生活とか。

先が全く読めないのが楽しい


647Are you enjoying the time of eve?2010/12/24(クリスマスイブ) 22:23:44.57.nW.qYAo (1/1)

佐天「なんだ夢か……」


648Are you enjoying the time of eve?2010/12/24(クリスマスイブ) 22:49:34.32P/KY3Kwo (1/1)

佐天「・・・というお話だったのサ」
孫「グランマその後はどうなったのー」
佐天「ふふふ・・・その次はまた明日ね、今日はおやすみなさい」


649Are you enjoying the time of eve?2010/12/24(クリスマスイブ) 23:13:18.75Nq2yTYgo (1/1)

>>646
ハッピーエンドだけが名作じゃないって、おばあちゃんが言ってた


650MerryChristmas!!(明石家サンタやってるよ!)2010/12/25(クリスマス) 12:07:15.70TcZZEHUo (1/1)

>>649
>>476の事を言ってるんでしょ


651クリスマス終了のお知らせ2010/12/26(日) 05:18:39.59SSmo7y.0 (1/1)

レス数よりKB数が多いぞ


652>>651 気にするな2010/12/26(日) 08:05:25.13JHlcOiUP (1/32)

垣根「一匹目だ」

履いていた軍靴を内側から引き裂くようにして現れた白く光る足で、地面を強く蹴って飛び上がり

フォートワースの空の10分の1を占める規模まで拡がった未元物質の大翼が、一つの人の形をした天使崩れを包む

まるで羽虫を両手で押しつぶすかのように圧縮するも、そのヒトガタは内側から包んだ翼を衝撃で弾き飛ばすように何度も抵抗した

その度に包む翼から羽根が振り落ち、逆に変に神秘的だった

この垣根提督の行動は、天使崩れが都市と人を破壊し殺す為に発する衝撃波から、それらを守り同時にエネルギー切れを誘う効率の良いやり方だった

しかしそれは敵が一体だけならばの話。ロサンゼルスの時、この方法を採っていれば結果は変わっていたかもしれない

だが、今回の天使崩れは捕獲した一体だけでは無かった

目視できるだけで他に4体は居る

垣根「餌で釣ったは良いんだが、大漁すぎるだろうが」

舌打ちをしながら、その天使崩れの攻撃から市街を守れる位置へと向かう

(きっと同時にダラスなんかも狙っているのだろうね。もしかするとサンアントニオやヒューストンまでも巻き込むつもいだったのかもしれない)

一匹を捕まえるのに集中している垣根帝督。だが残った四匹が市街を破壊するのを見過ごすわけにはいかない

振り落ちる羽根を残った4匹に集中して向かわせ、まとわりつかせる

どんなに逃げようとしても紐でつながっているかのように離れさせず、至近距離まで近づかせた所で、地表の建物には影響が無いように規模と方向を限定させてその羽根を次々と爆発させる

爆発衝撃の方向に指向性を付ける事で、天使崩れ達を地面から引き離し上空へ吹き飛ばす形で誘導していく

シンプルに市街を破壊し人を殺すようにプログラムされているだけの、言わばロボットの様な光る大小様々な人形たち

エネルギー切れ前に何としてもその目的を完遂させたい彼らは、まずは攻撃範囲からひたすら遠ざけようと働きかける垣根帝督を潰すべきと判断し、攻撃の矛先を彼に向ける

それは、都市を守りたい垣根にとっては好都合な展開だった

大翼の中心、翼に対して小さすぎて遠目からは点にしか見えない垣根提督本体目がけて、棒状に圧縮された衝撃の塊が複数飛来する

一方通行が見れば強引に固定されたベクトルの塊とでも分析するのであろう、その無色なエネルギーの塊は、太陽光を歪に捻じ曲げながら垣根帝督へ突き進んだ

垣根「ッ、やらせるかよ」

背中に目がある様にその塊の接近に気が付いた垣根は、既にある大翼よりはダウンサイジングした新しい翼を複数現出させ、その棒を翼で弾くいて本体を守ろうとする

それは捕獲した一匹目を確実に消滅させてから残る天使を、と狙うやり方から導かれる防御行動だった

棒状に固められた衝撃の塊が垣根の翼に触れた瞬間、垣根の体がグイッと大きくその方向へ引き寄せられる



653以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:06:40.07JHlcOiUP (2/32)

棒状に固められたエネルギーは、爆発するものではなく、逆に引き寄せるものだった

人間的な経験から垣根帝督は、その衝撃の塊は当れば体を四散させるようなものと判断していたのだが、逆を狙われた形となる

棒状のエネルギーの中心へ垣根の翼が圧縮されながら引き込まれ、それに繋がっている本体も引き寄せられる

そして一発や二発では無い。残った四匹が機関銃の如く垣根目がけてその攻撃を的確に連射し、彼を守るべく現出した未元物質の翼は上下左右に引っ張られ、垣根を空中で振り回し

最初の一匹を捉えていた巨大な翼もあらゆる方向に引っ張られてボロ雑巾のようになってしまった

それでも千切られた事によって生じるたくさんの小さな未元物質製の羽根が天使崩れ達を襲い、地面から引き離し

穴だらけとなった大翼もまだ捕獲した一匹目を逃さない

それが循環していき、舞台はフォートワース上空へと昇っていく。地面からは巨大な翼を操る天使と羽虫サイズの天使が戦っているように見えた

両者とも消耗していっているのだ

垣根の方は翼が付いている背中の接合部から、血の代わりに噴き出した白い液体状の未元物質が地面へと流れ落ちていく

それはつまり全ての未元物質を制御しきれていないという事を意味していた

直接的な痛みは無い。だが体の一部として定義されている翼やその接合部から、人間という概念で存在を固定している彼とっては、体の一部が千切られて出血するという経験から生まれた痛みが現れる

それは、垣根提督にとっては思い出したくない痛み。少女を失った、ロサンゼルスでのことを思い出すような痛みだった

苛立ちが、彼から集中力を奪っていく

この面倒臭い小バエ達を何とかして黙らせたい。簡単な方法は無いか。そう思った瞬間、ついに捕獲していた最初の一匹が大翼を吹き飛ばした

文字通り大翼は四散し、左右非対称となった垣根提督は上空5000mあたりで体のバランスを大きく崩してしまう

逃れた一匹は都市を破壊すべく急速降下し、垣根を狙っていた4匹はここぞとばかりに彼への攻撃を苛烈にしていく

垣根の体や翼を引き千切りながら徐々に4匹が囲む中心へ彼を誘導し、今度は逆に爆発する攻撃も入り混じって、彼の体は揉まれた

日常的・現代科学的には定義しきれない圧力と斥力と引力でもみくちゃになった垣根帝督の体からは、ますます未制御で形を為さない液体状の未元物質が流れ出す

そして相反する衝撃によって空気が揉まれ、垣根を中心として大きな雲が生まれた

当然垣根の視界は遮られ、白一色となる

見えないという事は不安を簡単に大きくするものである

彼には逃した一匹がすでに地表を破壊しつくす為の射程圏内に入ってしまったのではないかという不安が広がった

慌てて雲の下を突き抜けて現れた彼の体は、彼を消滅させようと遠慮なく小バエ達が撃ってくる圧縮衝撃によって既に人の形を成していなかったが、彼と言う意思は消え去ることは無く、ミサイルの様に追ってくる圧縮衝撃を無視しながら、最初の一匹を追って急降下していく

追って急速降下と言えば聞こえはいいが、翼として生じさせた未元物質が片っ端から壊されて、浮き上がる力を維持しきれないという現実も有った

浮かぶのとは逆に地面に向かって加速しようにも、彼の行動を阻害しようと上から追い打ちしてくる追撃の棒状圧縮衝撃がそれを許さないのだ


654以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:07:35.58JHlcOiUP (3/32)

そしてその棒状に圧縮された衝撃を仮に垣根が回避したとすれば、そのまま地表の都市まで向かい、地面を爆発するか圧縮するかの違いはあれど結果的に大きなクレーターを作る事となり、それだけで幾千の命が失われることになる

失われそうな命を救う病院も破壊されるかもしれない

そういう理由も有って、垣根は追撃を甘んじて受け止めるしか無かった

実質的に彼の能力は彼本体と、その下にある都市を守る為の防御膜としての役割しか果たせなかった

当然そんな事では、先に加速しつつ地面へ向かう取り逃がした一匹目を追うには不十分であり

垣根(……クッソが!これじゃ射程距離に入るまでに間に合わねえか)

そして垣根の目の前で、取り逃がした一匹目が自身を自壊させる勢いで大きく光を伴った爆発的な衝撃を生み、地面へ叩きつけた

爆発した高度は700m程度だろうか

畜生、ロサンゼルスの二の舞かよ、と垣根が思った時、頭の中にいつもの声が響く

(よく耐えてくれた。初めての事で時間がかかったが、こちらの展開は完了したよ)

垣根(んだと?)

(つまり都市の方は大丈夫と言う事さ。あくまでも、計算通りならね)

衝撃に対応して、逆にフォートワースの都市全体が強い光を放って、同じ規模の衝撃が打ち上げられる

都市の上空500mで同じ規模の力と力がぶつかり合って、逃げ場を無くした衝撃が水平方向へ暴風として流れていった

それは巨大なドーナツ状の暗雲を生んだ

(ふむ。もう少しこちらの威力が必要だったか。これでは周辺都市が大嵐になってしまう)

垣根(何をしやがった?)

自由落下を継続しながら、垣根は尋ねる

(何、簡単な事さ。この天使崩れ達は宗教と言う名の巨大な術式によって生まれたものにすぎない)

(敵が術式ならこちらも同じ術式、同じ魔術を使って対抗すればいい。アメリカらしいシンプルな解決法だとは思わないかい?)

垣根(アメリカらしいかどうかは知らねぇが、もう都市が壊される心配はしなくていいんだな?)

(あぁ。少なくとも今と同じか、それに近しい規模以下ならね)

先程の衝撃波で最期の力を出し切ったのか、垣根が取り逃がした天使崩れの一匹は霞んでいき、完全に消え去った

(よし、今度は彼らが恐怖する番にしよう。……最も、感情と言う物があるのかはわからないがね)


655以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:08:12.61JHlcOiUP (4/32)

病院の前に停車していた、ステイルを運ぶために用意された、魔術師用の護送車が炎を巻いて爆発し、大きな音がロンドン市街で響く

当然それは、少し前にその病院を離れた騎士団長にも聞こえた

騎士団長「……!! まさか、あの男」

移動車両の中で彼は呟いた。だが、引き返そうとは思わなかった

指揮官が行ったり引き返したりしてフラフラしている訳にはいかない、という判断である

騎士団長にとっては悩む要因が一つ増えた事になった

爆発現場の病院の駐車場では、炎の巨人が駆け付けた騎士たちをも焼き払い、焼死体が横たわっている

殺された彼らは当然このステイル=マグヌスという男の反逆行為を想定して、それ相応の霊装を装備していた

このロンドンは霧の街と言われるほどに水分が多い。それを利用した対炎術式や霊装は種類も多く、その効果はステイルにとっては致命的とはいえなくとも、格段に戦い難くするには十分なハズだったが

彼らの体は簡単に焼き払われた。その様な水による対火防衛術式など、まるで影響は無いかのように

一般騎士たちとステイルの間には、もともとの技量の差は有れど数の上で攻め、更には各個の連携によって対抗するつもりだった。だが、今のステイルを止めるには不十分だったようだ

ステイルが去った後には、焼死体だけが取り残されていた

そんな病院に、一台の公用車が接近する

騎士たちの焼死体達が片づけられる前に、ヴィリアンを見舞うためにその病院を訪れた女王と最大主教がその現場に着いてしまった

「女王陛下にお見せするようなものではない!早く片付けるんだ!」

当然こう言った怒号が現場で飛び交う

病院の入り口で、勿論第三王女の誘拐から大怪我を追った事は時勢的に公開できない為、非公式訪問の際に使われる専用車両が止まる

「しばしお待ちください」

耳のインカムから情報を聞いたドライバーは、理由を言わずそんな事を言った

それを聞いて、先程聞いた爆発音から大体予想が付いた女王は頷き、待つ

逆に同乗していた最大主教はドアに手を掛け、車を出た

女王が同じ事をすれば止めるだろうが、最大主教が車から出るのを運転手は止めない。これが良かれ悪しかれポジションの差という奴だ

現場では更に駆け付けた騎士達と警察などの治安組織の人間、王室派の黒服の男たちが協力してあくせく動いている

女王に次ぐ権威を持つ最大主教ではあるが、こういう場に足を伸ばす事は立場上無いわけでは無く

むしろ魔術の専門家として、院内に運び込まれた焼死体が安置されている部屋まで顔パスで入れた

死体の一つに最大主教は手を伸ばす


656以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:08:41.70JHlcOiUP (5/32)


下半身は肉が焼けていないままだが、上半身は丸焼け

炎の巨人の手で握られ、そのまま焼死したのだろう。その様に思わせる焼け跡が残っていた

ローラ(ステイルのものとみて、間違いないようであるの)

ローラ(しかし、焼け具合が少々度を過ぎたるように思えるわね)

ざらっとした黒くコゲた皮膚が最大主教の白い手に付着する

気にせず、そのままの手で皮膚と鎧が溶け混ざった上半身を探る

彼女が探しているものは鎧の下、恐らく首飾りとしてあるはずだ

だが、片腕しかない彼女ではその鎧をまさぐるには少々難が有った為、小難しそうな顔を近くに居た黒服へ向ける

意味を汲み取って、その少女が甘えるような表情に若干頬を染めた黒服は、両手に手袋を嵌めて強引に肌と焼けてくっ付いた鎧を引き剥がす

最大主教が欲したものは無かった

首飾り用の金属製のチェーンは微妙に形を変形させて肌と絡みついているが、そのネックレストップが存在しない

彼女が探しているのは、化学式ではSiO2として表される物。水晶である

広範な文明・文化的に水を意味するこの鉱物を加工することで、科学的にも融点が1610℃と高いという性質も有り、術式的な炎への強力な抵抗作用をもつ霊装として扱う事が出来る。日本では水剋火の概念だ

対炎術装備の基本としてあるはずのそれが無かった

ローラ「この者達の装備品のリストなるものはありけるの?」

鎧をめくるのはもう良い、と片手でジェスチャーし、黒く汚れた手の平を拭きつつ尋ねた

「お待ちを」

と言って見せられたリストには、やはり対炎術師用装備で固められ、水晶の首飾りもある

これだけは、例え装備した人間が耐えれず焼死しても形を残しているのが普通だった

ローラ(ステイル=マグヌス。彼のレベルならば、確かに融点を超える温度を与えることは可能。もちろん、炎術師として相手の水の護衛術式についての知識もありたろう)

ローラ(しかしこれだけ対炎術として水を意味させる霊装がありながら、ここまで一方的に焼け落ちたるとはの)

ローラ(数を量産する為に天然ものの水晶では無いとは言えど。……ステイル、一体何をした)

ローラ「良い」

そう言ってリストを返し、部屋を後にする

彼女がここに来た目的はそもそも検死では無い。そろそろ他の焼死体も片付いて女王も病院へ入っている頃合いだろうと、第三王女の病室へと足を向けた


657以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:09:13.68JHlcOiUP (6/32)


ステイル「さて、そろそろ僕もお尋ね者だろうね」

いつもの黒いローブを脱いで鞄に収納し、午前中に着ていた変装用の衣類に着替えて横を走り去る騎士たちをやり過ごす

圧倒的な強さを見せた彼は、実は非常に疲れていた

故に、禁書目録を探し出す為には変装せざるを得なかった

ステイル(これが彼の言う粗製のせいなのだろうね……)

ステイル(対炎術で身を固めた屈強な騎士たちすら焼き払う性能は素晴らしいと言えるが、消耗が激しい上に融通も利かない)

ステイル(それでも、僕が想定よりも強大だという事になれば、僕の追跡の為に想定よりも多くの騎士や魔術師を編成する必要が出てくる)

ステイル(禁書目録の処分の為に寡兵を大胆には割けなくなるのは、こちらとしても読み通りなんだがね)

疲労故に、すこし深く息を吐いた

彼の予想は逆に言えば、見つかれば彼一人には多すぎると言える騎士や魔術師を相手にする必要が出てくることになる

今彼に必要な行動は禁書目録を探す事と並んで、消耗した自らを回復させる事もあった

極力敵と戦わず、そして知的に効率よく禁書目録と落ち合わなければならない

ステイル(テッラが言うには、フィアンマが禁書目録を向かわせた先はセント・ポール大聖堂。テッラ自身もそこで待つというが、彼が当てになるかね)

ステイル(直線距離で禁書目録の居た病院から5km強程度。でも、当然堂々と大通りは歩けない。時間的に人気の少なそうな小路や見通しの悪い道、そして民家の庭を選んで進む事になる。体調も良いわけじゃないし、彼女一人で辿り着けるのか)

ステイル(勿論答えはNOだ。細かい経路は彼女自身の目前の状況から判断を下して進むから予測は難しい。でも考えられる大筋の経路はバッキンガム宮殿付近を通過する北ルートと、一度テムズ川を渡ってもう一度渡り直す南迂回ルートに絞られる)

大通りを自然に歩きながら、彼は記憶の中に有るロンドンの地図から彼女が動きそうなルートを予測する

ステイル(禁書目録は入院中、あの効果の無くなった歩く教会ではなくて普通の入院患者用の薄い服を着ていた。もしその衣類のまま橋を渡れば、間違いなく目立つ。南迂回ルートは有りえないか。いやこれは北ルートでも同じ事が考えられるけれど)

ステイル(でも僕の様に変装していれば話は別だ。どこか適当な民家に押し入れば、あの子の体格に合う衣類ぐらい)

追われる身の禁書目録にしてもステイルにしても、憲兵の多い宮殿付近の道を選ぶわけにはいかず、仕方なく彼は両ルートの真ん中とも言えるテムズ川沿いの道を一般の観光客の様にとりあえず歩く

このままテムズ川北沿いを進めば、結局憲兵が恒常的に多く配置されているウェストミンスター議会やビックベン、宮殿のある場所へ向かう事となる為、

いずれどちらかにルートを絞って回避しなくてはならない

そんな事を考えていると、遠目に騎士が立っているのが見える

仕方が無い、少し道を変えて身を隠すか、と思ったところで違う考えが彼には浮かんだ

そして彼は躊躇なく、監視をしている二人の騎士の方へ自ら進みだした


658以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:09:42.92JHlcOiUP (7/32)



垣根「自分と同じ能力を持った奴がたくさんいるって光景は気持ちのいいもんじゃないな」

(アイデンティティという奴だよ、それが)

被弾し過ぎて熱くなっていた彼は、主戦場から少し離れた場所で身を休めつつ、彼はその戦いを見ながら言った

彼の視界には、自分の能力に似た、というより成分的には全く同じ翼を生やした大型の駆動鎧がその翼で空を叩き高速で移動して、右手に持った巨大なライフルで攻撃することで残る4体の行動を拘束している

しかし、雷鳴の様に発射される電磁砲は見た目や音こそ凄いものであるが、結局のところ天使崩れ達の行動を止める程度にすぎなかった

(最初に我がアメリカに入ってきたのは君の能力だ。だから解析データは多く、こうしてハードウェアとして利用できる段階まで進んでいる。そしてそれは攻防更に移動能力まで備えた万能な能力で、学園都市でもその攻撃に耐え破る事が出来る能力者は一人しか居ない)

(利用しない手は無いだろう? 彼らに付いている翼は急造の模造品な為レベル4程度の未元物質と言った所なのだが、駆動鎧自身の出力でそれを若干強化させて使っている)

(あの電磁砲も本来は電撃使いの能力を付加させたモノで動いているのだが、君の能力は万能だ。翼が生えた駆動鎧は電撃能力無しでも翼が必要な電気を出力してくれる)

垣根「それでも、俺と同じ様なのがここまで居て、どうせあの駆動鎧の中身はおっさん達なわけだろ? 自分のメルヘンな姿を客観的に見せてるようなもんだぜ? 気持ち悪ぃってもんじゃねーな。まだのっぺりした駆動鎧だからマシだが」

(いやいや、全裸で体中からふさふさの羽根を生やした君はもっと気色わる……―――あぁ)

垣根の視界の中、一機の6m程度の翼を生やした駆動鎧が、天使崩れから出る衝撃の塊をその翼で防いだが守り切れず、空中で大破した

(いくら強化したとはいえ、未元物質使いでは最も高出力で高性能な君の大翼すら簡単に引き千切る敵が相手では、こうもなるか)

垣根「それじゃアイツ等犬死じゃねぇか?」

(いや、敵はまだ無限の出力を持つ個体では無いからね。駆動鎧部隊でも避けつつ攻撃を与え続ければ、燃料切れでいずれあの敵は消滅する)

垣根「あんま効率的とは言えないな」

(その通りさ。もちろんこの戦闘が終わって、更に学園都市の生産施設さえ手に入れば駆動鎧は大幅に強化出来る)

(スペック的には現時点で学園都市のものには負けることは無いが、あれだけ大型なのは純粋に小型な部品を作る生産技術が低い為でもある)

(いくら技術だけが高レベルであっても、量産段階では既存の生産能力で作るしかないからね。小型化して空いた空間を使って強化するプランはもう立ち上がっている)

垣根「駆動鎧の事は分かったけどよ、あーまた落ちちまった。下手すっとご自慢の駆動鎧は全滅しかねないぞ。まさか全滅した時は、あの天使崩れ共の自爆攻撃を全て地面からの衝撃放射で守って消滅まで耐えるってのか?」

(出来ない事ではないがね。それをすると、この都市以外の周辺都市への影響が馬鹿にならない。既にダラスではトルネードが発生して避難勧告を出してる)

垣根「ならアレは最終手段だな。……どうすんだよ?」

(その為の君であり、彼女だ)

彼女?と垣根が付点を頭に浮かべた時、駆動鎧の群の中で天使崩れに斬りかかる存在が示された

他の駆動鎧の3倍は有るであろう金属色の翼を6本備え、しかしその翼を構成しているのは鋼索で、羽ばたく度に振り落ちる羽根とワイヤーが特殊な造形や模様を作り出す


659以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:10:13.02JHlcOiUP (8/32)


手持ちの大型の日本刀を構えて、居合抜きから始まる斬撃の連携を天使崩れに与えている

反撃が無いわけではない。物質を粉々に吹き飛ばすような衝撃を度々身に受け、体が引き裂ける

しかし腕が千切れても足が千切れても体が原型を留め無くなっても、次の瞬間には体は元に戻り、斬撃の手は休まらない

とうとう耐えきれなくなって、その天使崩れは消滅を始めた。残りは3体

次の天使崩れの目の前に空間を割いて現れて、同様に斬りかかった

垣根「なんだあのバケモンは」

(必要悪の教会所属の聖人。彼女のお陰で魔術という物の理解が随分と進んだよ)

垣根「例の海戦で捕獲した聖人って奴か。つーか聖人ってのはみんなあんななのかよ? よくもまぁ捕まえられたな」

(もとからあんな性能をしていたら、彼女を捕獲する事は出来なかっただろう。彼女があんな能力を持っているのは特殊な性能を持たせたからさ)

垣根「特殊な性能?」

(完成した複脳計画の第二被験者。これはもともと魔術と超能力を共存させるために依頼していた研究だ)

(魔術師であり、制限されてはいるがLV5相当の未元物質の能力者であり、同レベルの肉体強化の能力者であり、肉体再生能力者であり、空間移動能力者であり)

垣根「どんなモンスターだよ。なんでもありだな」

(確かに強力だが、それでようやくあの程度だ。聖人というもともと強固な肉体を付加能力で底上げし、未元物質で構成された無限の擬似鋼索で作り上げる魔術で更に肉体強化して、ガチガチ肉体破壊に対策してやっとこのレベルに達する。これからより強力で消滅することのないタイプが現れた場合を考えると、不安が残るよ)

(その上未完成段階で無理やり戦線投入させた時に受けたショックで精神不安定でね。極端に自我を制限させないとあの能力で暴れまわりかねない)

(そのせいで本来魔術師として彼女に有った状況適応性が極端に下がってしまい、今彼女が使用できるのは肉体強化と再生補助の魔術だけになってしまった)

垣根「暴れまわるとか危険極まりないな、おい。んで今まで調整してて時間がかかっちゃいました、と」

(その通り。もし彼女が暴走し出したら君が何とかしてくれ)

垣根「こんだけボロボロな俺に良くも言ってくれるじゃねぇか」

(出来るだけそうはさせないつもりさ)

垣根「はいはい。信用してるよ。それじゃ、残った天使モドキを片づけますかね」

液体状の未元物質の出血も止まり、彼の翼はもとの凛々しい姿を取り戻す

天使崩れが駆動鎧の一体へ放った圧縮衝撃を包むようにいなし、垣根帝督は戦線に復帰した


660以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:10:42.30JHlcOiUP (9/32)


刀夜「やっぱり暑いね、ここは」

田中「そりゃアラブですからね汗も一瞬で乾いちゃうから代謝機能が連続発動して一瞬で干からびちゃうんで水分を常に窮しなけりゃ死にますよ。ってことで水買ってきます先輩の分も」

ドバイ国際空港に降り立った一機の国際線から降り立った二人の第一声はこれだった

刀夜「あ、ああ頼むよ」

ロビーに降りてすぐに後輩の田中が水を買いに消えた

残された上条刀夜はソファに腰掛け、じっと外を眺めている

そこへカンドーラというアラブの白い民族衣装を身にまとった男が隣に座った

旅掛「ロサンゼルスがやられたと聞いた時は、どうなったかと思いましたが、こうしてここまで来る事が出来るとは、流石ですね」

隣の男を見ると、日焼けした御坂旅掛だった

刀夜「……わざわざ変装する必要はあったのかい?」

旅掛「変装ってつもりじゃないですね。単にこっちのが行動しやすいからって」

刀夜「そういうのが変装というんじゃないかな」

旅掛「変装するときはもっとディープに化けますよ。仕事上、その場所になじむ必要がありましてね」

刀夜「ほぅ。その仕事はもう終わったのかい」

旅掛「ええ。アメリカへの石油資源の安定供給がまた少し進みましたよ」

刀夜「それは御苦労さまだ。……正直身軽に動ける君のポジションがうらやましいよ。任務の構造上、直接君へ外部からの支援も取り付けることが出来るしね。無論、組織の為、アメリカの為という大前提はあるんだけれども」

旅掛「フリーのって、制限がなければいい事尽くしですよ。田中君レベルでいいから信頼出来そうな部下が一人は欲しいですね」

刀夜「彼を馬鹿には出来ないよ。ああ見えて彼も相当な動きが出来るようになったんだ」

旅掛「安心できないのはあの口調ですかねー」

刀夜「はは、それは否定できないな。しかし私に割り当てられた権限も弱いし、唯でさえ少ない部下も、田中君以外の息がかかった部下は世界に飛んでいて、私が私の活動をする為には常に動きまわらなきゃならない」

旅掛「そんな制限されてるのも局長クラスでは無くなったからといって、組織内で上条さんが作った人脈的な繋がりを相当な脅威として向こうも捉えているんですよ」

刀夜「現代的じゃない、人情とかって古臭い繋がりだけれどもね」

旅掛「そういう古臭いの、嫌いじゃないですね。俺は、一度、逃げちゃいましたから。どうしても良い様に思われていない気がして」


661以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:11:12.15JHlcOiUP (10/32)

刀夜「あれは皆も認めてのことだったろう。気にしないで良いと思うけどね」

旅掛「それでも上条さんのチームが壊滅した一因は確実に俺達ですから、気にしますよ。多分上もそういうのを考慮に入れたから、フリーエージェントってポジションを与えたんでしょう」

旅掛「もしかしたら、俺がこうして孤立的になってしまうのまで見越して、あなたはあの時部隊から外すって判断をしたのかもしれない。俺がますます上条さんの派閥に依存するように、ってね。今になってふと思ったことですけど」

刀夜「さぁ、それはどうだろうね。でも君だってその立場のお陰で自分自身の力が及ぶ範囲は昔の比では無いハズだ」

旅掛「そういう見方を平然と本人の前でいうなんて、怖い人だ」

刀夜「組織の中で、人の群の中で強く在り続けるとはそういうことだよ。たまには本音を言って、相手の機先を制す必要もある」

旅掛「丸くなったのかと思えば……。流石にアメリカそのものを敵に回そうというだけはありますね」

刀夜「アメリカそのもの、なんてことになる前に何とかしたかったんだがね、知った時には既に遅かった」

これのせいでね、といって上から供給された、微小機械が入ったペンシルの形状をした注入機を懐から取り出す

旅掛「そのナノマシンのタイプは、特別製の方ですね」

刀夜「特別製?」

旅掛「国家の要所ポジションにいる人間に配られるタイプの方です。つまり」

刀夜「"彼"からの乗っ取りを食らう方か。すでに出世コースから離れて権限もさほど大きくない私に、随分な扱いをしてくれるものだ」

旅掛「機先を制したかったんでしょうよ」

はぁー、と息を吐いて使うあても無いそれを懐に戻す

旅掛の方が水を口にしていると、刀夜の目の前を通った女性のポケットから質のよさそうな布が落ちる

旅掛からしても、またかよと思う瞬間だった

刀夜「ミズ、落としましたよ」

「あら、ありがとう」

拾って手渡した時、やかましい後輩が水を抱えて帰ってきた

田中「ぐうううう少し目を放したらまぁた女性が側に居やがる。ハイこれミネラルウォーターです全く先輩って人は」

田中の言わんとしている気も分かったので、旅掛の方もそのことに対して口を開いた

旅掛「今のは西洋の人だから良いですけど、アラブの女性を口説いてはだめですよ? 誰かの奥さんだったら、下手するとその人殺されますからね。そういう文化なんですから」

刀夜「ただ落ちたハンカチを拾っただけなんだけどなぁ。分かった、気をつけるよ」



662以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:11:42.88JHlcOiUP (11/32)

田中「あー御坂さんだったんすか全然気がつきませんでしたってかなんでアラブ的な格好してるんすか日焼けもしてるし」

旅掛「ちょっと潜らなきゃならなくてな」

田中「その為にそこまで肌焼いたんすかーそいえば御坂さんの仕事って結構えぐいですよね。御坂さんのアドバイスをきっかけに自分の力で成功したと思わせておきながらそれがうまくいってのし上がったときに実は自分の成功があらかじめ既定路線のもので自分に都合の良い様に環境整備されてて裏切ったら今の自分のポジションすら簡単に崩されるという事に気づかせてCIAに逆らえない様にさせるなんて」

田中「みましたよーブラジルだったかな。廃棄基盤から貴金属を回収する会社作ってのし上がった女性つかまっちまいましたよね」

旅掛「良くあるやり方だ、こんなことは。特異なのはただちょっと規模がでかいってだけ。残念だけど彼女は裏切ってしまったからな。脱税でっち上げられて、牢屋行き。そのまま中で首を吊ったって話だが、多分消されたんだろうな。そしてその企業は米資本の巨大コングロに買収されちまった」

刀夜「日本に有る某都市が、突出した技術や圧倒的な資金を背景に貴金属を占有しているからね。先端機械には貴金属は必需品とは言え、それによって他の国々は確保に四苦八苦してるのさ。それこそ、広い宇宙に求めるほど。その分野でも学園都市は最先端をいくらしいが」

旅掛「一応資源を"持っている"国であるアメリカもその一つで、基盤からの回収システムを他国からも巻き込もうとした。彼女はその一人となったわけだ」

旅掛「しかしどうやらアメリカとの交渉で、彼女は得られた貴金属を国内の産業発展に向けると頑なに譲らなかったらしい。そしてその末路として」

田中「処分されちまったと怖い怖い。なんだか騙すみたいな方法ですよね」

旅掛「俺もそう思っていたが、知識や知恵のある人、つまり俺らからしたら操り難い人間ってのはいるもんでさ。最近じゃ俺がそういう人間と分かってて逆に向こうから接近してくる、なんてこともあるな」

田中「知らない間に祭り上げられてりゃ怖くなるけど知って突っ込んでくるのはビジネスチャンスってか。たくましいですねでもって御坂さんも組織から給料出るわコンサルで報酬出るわでウハウハと」

旅掛「家内に牛耳られて金が無いって前も言った気がするぞ」

田中「あれそうでしたっけ。ん、どしたんすか上条先輩水に異物でも入ってましたか?」

家内、という表現を聞いて上条刀夜の顔色が露骨に沈んでいた

刀夜「いや、そんなことはないよ。………御坂君、君は日本のニュースは見たかい?」

旅掛「いえ、仕事のせいでここ丸一日ぐらいは見てないですね。日本と言えば美鈴から電話が有ったぐらいかな」

刀夜「!!……そうか。彼女はなんと言っていたんだい?」

旅掛「こんな場所じゃ小っ恥ずかしくて言えないようなないようですかね」

少し口元が緩んだ旅掛とは対象的に、ますます刀夜の顔から表情は消える

刀夜「少し酷だろうけど、これを読むんだ」

鞄の中から一部の新聞を取り出して、刀夜は旅掛に手渡した


663以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:12:14.91JHlcOiUP (12/32)



「ご協力どうも。兄ちゃんみたいなタッパで赤髪の、黒いローブを身につけた男は見なかったか?」

偽造のフランスの免許証が返ってくる

ステイル「いや、見てな……あ、そう言えば」

「ん?」

若干わざとらしい表現を使い、指先を橋へ向けた

ステイル「さっきそんな人が居たような。橋を渡って行って、うん。多分そんな服を着てましたね」

「おおっ。それは本当か。ありがとう。おい」

対応していた騎士がもう一人に言葉で合図を送った

「OK、目撃者情報。魔術師はテムズ川南部へ向かった模様」

襟首に付いた通信用の霊装で、彼は言葉を送った

団長『了解。禁書目録を追っていったか合流しようとしているのだろう。そのまま君たちはそこの橋を渡って追ってくれ。随時指示を出す』

「了解。おい、行くぞ」

「あぁ。情報提供に感謝する。……大陸出身の人には少し物足りないかもしれないけど、コレ」

ステイル「……これは?」

「モデルハウスさ。俺の名前を出したらサービスしてくれるだろうぜ。すまんが規則で金品は渡せないから、そんなんで感謝の印にしたい。それじゃ」

ステイルに怪しい風俗店のアクセスが載っているメモを押しつけ、そのまま騎士たちは橋の上へ走り去っていった

残されたステイルは手にメモを持って、それを見守る

ステイル「こんな変装でも騙せるとは。大丈夫なのか不安になるねこの国の治安は」

離れていく騎士たちを見ながらそう呟いた

ステイル(あの声は騎士団長。禁書目録は南へ向かったのか)

ステイル(南、ということは川の北側に有る聖堂へ行くために、禁書目録はテムズ川をもう一度渡る必要が出てくる。都合よくいい情報が手に入ったものだな。運がいいのか)

ステイル(いや、幸運を祝うならあの子を助け出してからにしよう)

ステイル「しかし騎士が風俗を取り締まりどころか、逆に常連とはね。学園都市といい、どこの国も治安組織と違法風俗と言うのは繋がっているものだ」

ステイル(ま、ルーンを書くカード代わりにでもなるか)

そう言って鞄の中へ無造作にメモを押し込んだ


664以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:12:42.69JHlcOiUP (13/32)

『早かったな』

変えようがない特徴的な口周りを除いて目立たないように変装したテッラは、禁書目録が目指すセント・ポール大聖堂前の広場に居た

テッラ「戦いなどしなければ、移動には時間などかかりませんねー」

偽装の為に耳へ携帯電話を押し付けながら、霊装によって会話を始める

本来ならばこのような通信は傍受される可能性が有ったが、この場所ではとある理由で特別なラインが使える

フィアンマ『大嫌いなイギリス清教の施設を前にして、えらく落ち着いているじゃないか』

テッラ「見くびらないで欲しいですねー。ここは少し都合が異なるのですよ。勿論、あなたがここを指定している理由だって大体は読めているのですから」

フィアンマ『流石だな。つくづく右席の部下たちはよくできているよ。上に立つ者としては楽でいい』

テッラ「死んでも仕事を強いさせるなんて、部下としては最悪な上司と言えますねー」

フィアンマ『フッ、それは間違っちゃいないな。だが折角生き返ったんだ、この間にアックアへ復讐なんかをしてもいいんだぞ?』

テッラ「いえいえ、私は別に彼に殺された事自体は恨んだりしていませんよ」

フィアンマ『ほう』

テッラ「彼に私が殺される事まで全て、神が示す運命通りなのですからねー」

テッラ「ですが」

若干語気を荒くして言った

テッラ「彼が神を誤解しているかのような発言を私に投げかけた事。それは同じローマの徒として、同じ神の右席の者として正してやらないといけませんねー」

テッラを殺す際、アックアが投げかけた言葉はテッラを激しく憤らせた

―――お前のような者を神は選ばない―――



665以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:13:11.24JHlcOiUP (14/32)


テッラ「私がこうしてここへ蘇っていること、この事実が神によって選ばれた私の復活が確定している事の証明だというのに」

テッラ「仮に私が過ちを犯していたとしても、それを許すだけの寛大さを持っているのですからねー」

テッラ「誤解は邪教を生みます。そして邪教は悪魔を生む」

テッラ「誤解を持った彼はローマの敵になるかもしれないのですからねー。処分が必要かもしれません」

テッラ「この後、私の役割は?」

フィアンマ「あるぞあるぞ、たらふく用意してる」

テッラ「……そうですか、残念です」

フィアンマ「だが、あのステイルと禁書目録もこっちにくることが確定したのならば、お前が違う仕事をしても俺様の計画には支障は無い」

テッラ「計画に支障なし、ですか。少々崩れた方が私としても嬉しいのですけどもねー。あなたのしようとしている事は邪な教えそのものなのですから」

テッラ「しかし私にはあなたを止めることは構造的に不可能ですからねー。見過ごします。しかし、一度生き返った以上、私は神とローマへ協力したい」

フィアンマ「もし逆にアックアに返り討にあわされても、また復活させてやるぞ?」

テッラ「それは心強い言葉ですねー。しかしステイルという男の前では強がりを言いましたが、禁書目録の護衛すら満足にできないこの体では」

フィアンマ「安心しろ。アックアと対峙するというのなら俺様が生前よりも強くしてやる」

テッラ「分かりました。これで少しはこの仕事に対するモチベーションが上がりましたよ」

テッラはその口で、大きな笑みを浮かべた



666以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:13:39.07JHlcOiUP (15/32)


腹部を血で赤く染めてフラフラと歩く少女を見捨てるほど、この国の自称紳士な人々は薄情では無い

禁書目録が必死でチェルシー橋を渡っている所を、対岸の橋の近くの公園そばにキャブ(タクシー)を止めていたドライバーが見ていた

体調が万全でない禁書が橋を渡り切った所で、躓いて前のめりに倒れこみそうになった時、そのタクシードライバーは体が動いてしまう

初老の男性に抱き起こされ、そのまま禁書目録は一礼してそこを去ろうとしたが、男は手を離さなかった

「待った。どういう訳かは知らないがお嬢ちゃんよ、こんな格好で外を歩くもんじゃないぞ」

裸足に血で染まった患者服では目立つ。明らかにワケ有りな格好をしているにも関わらず、彼は躊躇なくそういう行動を採った

男が触れた少女の肌は寒さか何かで震えていた

「おっさんはただのドライバーで怪しいもんじゃない。う~ん、っても信じちゃくれないか。とりあえず服と靴ぐらいは用意できる」

指で自分の愛車を指して

「乗っていかないか。丁度客が無くて暇してたんだ。金は……持ってないみたいだし、タダにしとくぞ?」

と言った

禁書目録はその初老男性を、3,4秒無表情な顔で見つめ

コクリと頷いた

理由は3つ。魔術師的な要素が全く見受けられなかった事

そして仮にこの男が敵として襲いかかって来たところで、彼の中に有る魔力を用いて彼自身を止めることが出来ると判断した事

何よりもこの体の、この移動速度では折角今撒いたところだというのに、また騎士達に捕まってしまう。今度は殺されるかもしれない



667以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:14:11.78JHlcOiUP (16/32)


今までは何とか4,5人の騎士集団と魔術師集団を返り討にしてきたが、いつまでもつかわからない

この明らかな一般人を巻き込めば、移動速度上昇は勿論、いざとなった時に壁として一瞬の攻撃の躊躇が狙えるかもしれない

酷く冷酷な理由で、自動書記はその誘いに乗った

しかし当然のことであるが、明らかに見た目のおかしな少女がタクシーに乗り込むところは他の人間も見ていた

その目撃証言は簡単に騎士たちまで伝わることになる

少女を乗せたタクシーは簡単に捕捉されることになり、そのドライバーの身元まで瞬時に騎士団長の元に集められた

「これが、あのタクシーのドライバーです」

広い部屋の中心に、ロンドン市街を衛星写真のような視点でリアルタイムに見下ろす事が出来る術式が展開され、その中心には一台のキャブが普通の速度で走っている

その術式を見下ろす騎士団長の前に書類が渡された

騎士団長「ふむ。魔術などの影響もとも超科学の連中の影響も無い、善良な一市民か」

「強いて魔術などとの関係を挙げるなら、10年以上前の表向きはガス爆発で処理されたアイルランドの魔術師のテロに家族が巻き込まれたことぐらいですね」

騎士団長「……そうか」

騎士団長もそのテロについては知っている、と言うよりは当時騎士として現場へ向かったのだから知っていて当然だ

騎士団長「禁書目録もこの男にずっと付いていくつもりではないだろう。離れたところを狙え。一般市民に手をかけた場面を他の市民や記者共に見られる訳にはいかないからな」

「了解。追跡・監視は現状を維持します」

騎士団長「怖いのは造反した必要悪の教会のステイルだ。ロンドンを熟知し潜伏している。そんな彼がどう動くのかが、禁書目録処分の結果を左右しかねない」



668以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:14:42.58JHlcOiUP (17/32)


日本時間の深夜1時

学園都市の第15学区の一角で変形した複数の大型トレーラーが横たわる中、一人の全裸の少女が転がっていた

その周りを取り囲むのは、何体かの駆動鎧

隊長機を失って副隊長が取り仕切る指揮の下、サーチライトがその少女を照らす

「副長、こいつは」

「ああ。隊長を殺したガキだろう」

「生きてるんですかね?」

「さぁな。だが少なくとも、外傷は見当たらない。あれだけ我々が叩きこんだというのにな」

言って、副隊長の操る駆動鎧の右手に持たれた大型のライフルから、一発の大きな弾丸が飛びだした

肉体を簡単に貫通し、少女の体は二つになって飛び、グチャッ、ベチャッと二つの音を立ててビルの瓦礫に当った

内臓のらしき物体と体液が壁と地面に染みを作っている

人間ならまず間違いなく死んでいるだろうが

脳のある体の断片が這うミミズのような動きをし、気が付けば体が再生している

全裸の肉体が再びサーチライトに照らされた。体を真っ二つにしたというのに、反撃の素振りどころか動きもしない

どういう訳かは知らないが、この少女は意識が無いようだ

「おい、マック」「なんです?」

「俺を除くとこの隊で次に階級が高いのはお前だよな」「ええ」

「なら、俺に何かあったらお前が指揮を採るんだ。今から俺があのガキに近づいて様子を見るからな」「……了解」

もしもの事に備える様な指示を出して、部下が見守り、大型の頭部のない駆動鎧が一歩一歩慎重に少女の方へ進む

緊張が彼らを包む中、倒れ込んだ少女へ副長のアームが、少し伸ばせば届く距離まで問題無く近づいた



669以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:15:27.79JHlcOiUP (18/32)

巨大なライフルを持っていない方の手、指先から小さな針が飛びだし、少女に刺さる

針に繋がった細長いラインを通して、少女の現在のバイタルを示す数値が副長のディスプレイに映る

こんな化け物相手に果たして人間用のそういう装置が正しい結果を出すのかという不安は有ったが、そのディスプレイに文字が浮かんだ

【Unconscious】意識無し、とはっきり示された。その情報は他の駆動鎧にも共有される

どういう理由が有ってそうなったのか分からないが、意識が無い。しばらくは安全だ。そう、しばらくは

そのしばらくの時間が過ぎればどうなるだろうか。このしばらくの時間を使って不安要素は消し去りたい

しかし、何度ミンチになってもウゴウゴ動いて再生するこの相手をどう殺せばいいのか

殺さなくとも、無力化は出来るか?

そう考えた彼は、躊躇なく駆動鎧の剛腕でその少女を脇に抱える

その光景を見て少し離れた部下たちは驚いたが、少女からの反応はやはり無かった

「どうするんです?」「殺せない以上、無効化するしかないな」

「どうやって?」「知るか。俺は研究者じゃないからな。でも多分来る増援の中の学者様に頼ればどうにかしてくれるだろ」

「来る前に意識が戻ったらどうするんです?」「この駆動鎧が言うには、後最低10時間は目を覚まさないとよ。正確かどうかは分からんがな」

「つまり、賭けですね」「あぁそうだ、責めないでほしいね。仕方ないだろ。根本的に俺が現場判断を下す状況になるとは思ってなかったんだし」

「了解。一応その、量産個体によく似た少女、には常に監視を付けときましょう」

「あぁ。それでいい。しかし、量産個体によく似た少女って言うのは面倒臭いな。適当な名前を付けるか」

副長のモニターには仮目標として、Aという形で少女は示されていた

「んー、The Aでいいか」「……安易すぎません?」「適当なのが思いつかなかったんだよ。なにより、もしかしたら戦闘用量産個体みたいにコイツがたくさんいるかも知れないだろ?」

「それで最初を表すAですか。The BとかCとかが出てこないことを祈りますよ」「俺もだよ」

そう言って、ギリギリ入るか入らないか微妙なサイズの空の弾薬ケースに、少女の体を押し込んで蓋をした



670以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:16:12.47JHlcOiUP (19/32)

運がいい事に、禁書目録を乗せたタクシーが止まったのは、彼女が向かう先であるセント・ポール大聖堂に最も近い橋の近くだった

煉瓦の肌をした集合住宅の裏手に車を止め、運転手は周りを見回し、人が居ないことを確認した

少女の見た目では、どう考えてもすぐに通報されてしまう。周囲へ気を配ったのはそういう配慮だった

「よし、大丈夫だ。上がりな、嬢ちゃん」

言葉とジェスチャーで合図した彼に従って、禁書目録は集合住宅の一室に入った

その部屋の見た目から恐らく、彼が一人で暮らしているという事が分かる

しかし、中途半端に家族を匂わすような物が、そう、少し古ぼけた写真などが、所々に配置されている

「まさかここの服達に、もう一度袖が通る日が来るとはなぁ」

小声で呟いた彼は、そのまま振り返って禁書目録の方を向き、ドレッサーを叩いた

「少ないけど、ここにお嬢ちゃんぐらいに合うサイズの服がある。好きなのを着てくれ」

「おっと、俺は別にそういう趣味があるって訳じゃないからな。着替えてる間は出とくから、着たら扉を叩いてくれ。目的地まで連れてってやるからよ」

ドレッサーの引き出しを引くと、少し時代の潮流からは古い感じのする衣類が丁寧に仕舞われていた

禁書目録にはなぜこの男がこんな衣類を保存しているのか理由が見えなかったが、その理由は写真立てから予測する

死別したか、離婚した妻に付いて行った娘の衣類がメモリアルとして捨てられなかったのだ、等等

靴も有った。形を失わない様に詰め物までされて。予想は前者が濃厚だろうか

そこまで想像した所で、自動書記にとりわけ特別な感情が生まれるわけでもなかった

無機質な表情を浮かべたまま、特に時代が古くても目立ちそうに無い衣類を着込む

血まみれの病院服を少しだけ裂いて得られた布切れに部屋に有ったペンで少し複雑な模様を描き、それ以外をゴミ箱に突っ込んだところで、ふと窓の外に目を配った

騎士の姿が、チラリと見える

折角の変装を血で濡らしたくは無い。見つかる前に逃げるべきだ

幸いこの場所からならば、目的地まではすぐ。走っても行ける


671以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:16:43.18JHlcOiUP (20/32)


扉を叩くどころか飛びだして、驚いた男の手を引いて住居を出た

車の方へ行こうとする男を引っ張って止め、北へ、橋の方へ向かう

二人の関係性的に、その光景は孫に引っ張られる祖父という感じがした

「禁書目録を視認。しかし例の一般人と共に居る為に手が出せません」

少し離れた場所からその二人を監視する騎士数名

騎士団長『ふむ。ならば職質などで接触してみろ。もしかしたら向こうから動くかもしれない』

「了解」

明らかに先ほどまでの距離感を破って接近する騎士たちに警戒する自動書記

一方の男性は騎士達に対しては全幅の信頼がある

まさかこの少女が彼らに追われているとは思わない

「失礼、少々お時間を。身分証をお見せ頂けますか」

突然であるが、しかしその中年の男はその指示に従って免許証を提示した

「何かあったんですかい?」

当然の疑問に対して、目の前の二人の騎士に問う

「いや、殺人の重要参考人を探してるんだ。そう、丁度そこに居るお孫さんぐらいの少女が―――」

少女を睨みながら言いきる前に、初老男性の腰辺りにドン、という衝撃が伝わった

禁書目録がその男性を後ろから力の限り体重をかけて押し飛ばし、予想外の動きに、目の前の二人の騎士たちへ向けて倒れかかる運転手

ドミノ倒しの様に倒れるかどうかなど確認せずに、少女はそのまま後ろの角を曲がって北へ走る

もちろん、驚いたのは男性だ。バランスを崩してそのまま騎士を一人巻き込んで倒れる

男と一緒に倒れた騎士はもう一人の騎士に追えと手で合図を送り、それに従って禁書目録を追おうとした瞬間だった

男性の体の背中、禁書目録が押した腰の部分に、先程千切った布切れの模様が淡い光りを放ち


672以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:17:42.64JHlcOiUP (21/32)


腰に付着した布切れから起動した魔術によって男の体は爆裂した

音を立てて肉片となった男の体と血が周囲へ恣意的に飛び散り、それが更に大きな術式陣を描く

禁書を追う為に走った騎士が音に反応して思わず振り返り、血肉によって描かれた術式陣の中央でのろのろと立ち上がるもう同僚の騎士を見た

「これ、生贄の祭壇のッ……?!」

呟いた時には既に遅かった

十字教において生贄は羊などを犠牲にして行われる。目的は贖罪

悪いことをしたから許してもらう。この悪い事とは、悪魔に魅入られること

一般的には火災旋風と呼ばれる現象が起きた。中心に立っていた騎士と振り返った騎士は一瞬でその炎の渦に飲み込まれた

男たちを飲み込んだ後も炎は消える事無く、周りの木々や建物を燃やし続け、大火災となる

人々が飛びだし、集まり、周辺は騒然となった

その隙に、少女は走り、ひたすらに橋へ

禁書目録が行ったこの術式は、完全に邪法そのものである

あらかじめ生贄を捧げることで神から許しを得た上で、悪魔の化身である蛇を呼ぶ。形式上はそういう事になっている

かなり無茶苦茶な理論構成だが、十字教会はこの理論を否定できない。資金不足の為に教会が発行した免罪符がその典型である。免罪符を買うという行為が、あらかじめ神から許しを得ることが出来るという事となり、犯罪者から一般人にまで広く購買者が出る事となった

この場合の蛇とはとぐろを巻く蛇のように激しく動き回る炎の渦。つまり生贄を捧げることで作り出すタイプの火炎術式である

最初の超能力者では無い一般初老男性をその体内の魔力を利用して炸裂させて血肉で祭壇を作り、そしてその祭壇で生贄を捧げ、その生贄となった者の生命力を全て費やして魔力をブーストさせ、巨大で強力な炎の渦を呼ぶ

教会の名のもとに魔女狩りを行った時代、火炙りの刑を受けた魔術師たちが己を犠牲にした最期の抵抗として使った術に生贄や聖書の記述を織り交ぜて凶悪化したこの術式は、邪法としてバチカンの地下に保存されていたものだ

この運転手は禁書目録に対して特別な感情が働いて手を貸していたが、自動書記にとってすれば便利な男性でしか無く

最初からこうやって利用しようと考えていた。そこに、なんら特別な感情など無い。ましてや男の過去に涙を誘うような事件が有ったとしても、彼女にとっては術式の材料ぐらいにしか見えていなかった

その天まで伸びる派手な炎は、当然、禁書を探していた騎士たちにも、ステイルにも目撃される

味方への合図として、混乱を呼んで身を隠す方法として、騎士たちの目を自分以外に向ける的として、それは極めて多くの意味で彼女に味方した



673以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:18:11.96JHlcOiUP (22/32)


ステイル(あの炎が彼女のものだとすれば……。あの位置なら最寄の歩行者専用のミレニアム橋から殆ど直線で、セント・ポール大聖堂に辿り着く)

黒く蛇のようにうねる炎を遠目に見ながら、彼は走っていた

同時に考えていた。あの炎は誰の手による物なのか、ということを

ステイル(可能性としては勿論他の魔術師がテロでも起こしたってこともあり得るのだろうけども)

変装をしている以上あまり目に付くように走れない

実際、彼の視界内にもチラホラと騎士らしき者や、それらが扮した者、騎士団の指揮下にある警察組織など、彼の敵は多かった

そしてそんな存在が多くいる為に、思い切った行動が出来ないでいた

だがあの炎の渦が生まれたことで、彼らの視点はどうしてもそこへ集まった

チャンスである

ステイル(この状況では他に頼る情報も無いからね……!!)

大通りから細い道へ入り、人目を気にせず一気に走る

全快とは言えないが、ある程度魔力も回復した

いざ見つかっても、戦える

ステイル(ミレニアム橋。唯でさえ身を隠すには向いていない橋の中でも、歩行者専用だから幅も狭く逃げ場が無い橋だ)

ステイル(あんな炎の術式を使えるという事は、一見魔術など全然遠慮なく使えるという風にも見えるが)

ステイル(本当にあの子なら、自動書記ならば、こんなリスクを広げる様な大胆な戦い方を採らずに、魔術捕捉術式にも見つからない様な術式を使って隠密行動を採るはずだ)

十字路に出て、太陽の位置からどっちに向かうべきか考える

同時に肩で息をしながら変装を解いた。いつもの黒いローブ姿に戻し、戦闘に備える

ステイル(なにより満足に魔術が使えるなら、あのフィアンマがテッラを遣わせてまで僕に手助けを求めたりしないだろうさ)

簡単な着替えが終わる

ステイル(よし、こっちだ。つまりあれは、他にどうしようもなく追いこまれて使わざるを得なかった術式と考えられる)

ステイル(防御用の結界すら満足に構成できないというのなら、あの橋を渡る際は騎士団の誇る狙撃術式・ロビンフットのいい的になるだろうね)

ステイル(なんとしても禁書目録が橋を渡り始める前に合流しないといけない)

彼はひたすら走った


674以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:18:50.09JHlcOiUP (23/32)

少女がフラフラと駆ける周囲では、自分の後ろ、つまり炎の渦を何事かと見守る人々ばかりだ

バラバラバラバラ、と上空ではヘリコプターすら飛んでいる。消火用か、それとも報道のものか

そろそろ生贄となった騎士の魔力を暴走させて起こした渦も消える頃だろう。しかし、それだけで終わらない。引火した炎が大規模な火災を引き起こしていた

石やコンクリートの塊であるロンドンの建物であっても、ガスにまで引火してしまっては、又は燃える家具やカーペットなどに引火してしまえば、そう簡単に消えはしない

結果的には集団火災として、彼女は数十人規模で人命を奪ったことになる。それでも平日16時前後で自らの家に居た人々が少なかったことが幸いしたのだが

他の何よりも優先して無事にセント・ポール大聖堂に辿り着くこと。これが彼女の今の至上命題である

次の魔術の生贄になりそうな人々は周囲にたくさんある。そういう状況で彼女はミレニアム橋まで辿り着いた

対岸からすでに目的地のセント・ポール大聖堂は見えている。橋を渡ってまっすぐ進むだけ

しかし彼女も分かっている。この身を隠す所が無い橋の上がもっとも危険であるという事ぐらいは

最初に橋を渡ってテムズ川の南に渡った時はまだ発見されていなかったが、今度は違う。はっきりと変装した自分の姿を騎士に見られてしまった

テムズ川より北側にあるセント・ポール大聖堂が彼女にはすこし遠く感じた

だがこんなところでじっとしているわけにもいかない。最低限目立たない様に歩くしかない

一度見つかったとはいえ、今の恰好はパーカーにミニスカートと可愛らしく、さして目立たない。年齢らしい格好だ

行ける。というより行くしかない

一歩一歩手すりになるべく近づいて、更には歩んだり火災を見る人々をなるべく盾にしながら少女は進む

200mと少々の長さの橋。その5分の1を渡った所で

少女の小さな体が飛ばされ、反対側の手すりに叩きつけられた

禁書「……ロビン、フット」

左肩に刺さって肩を満足に動かす事が出来なくなった少女はそのまま倒れたままで、手すりの外側に有るパイプの影に身を寄せる

周りに居た観光客やら野次馬やらが一斉に悲鳴を上げて、ある者は禁書に近づき、ある者は一斉に橋から逃げようとする

頭を狙われれば、即死だっただろう。しかしそのロビンフットを放った騎士が一撃で仕留めなかったのは、パーカーのフードを被った少女が本当に禁書目録であるのかどうかという疑問があった事がある

これで仮に何でもない少女だった場合、ただの殺人事件にすぎないのだから。そういう訳で、肩を狙った。これは撃った彼の判断である


675以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:19:27.79JHlcOiUP (24/32)

駆け寄ってきた者達は禁書目録の盾となった。人の壁によってフードから彼女の顔が出てきても、第一射を撃った騎士には追撃できず、他の場所から狙撃体制だった他の騎士からも狙えなかった

そして運悪く南側に、禁書目録が来た側へ逃げた人間は、彼女を回復させる為の術式の魔力源となる

彼女が震える体で肩の矢じりが付いた飛翔体を引き抜いた瞬間、あらかじめ南側に張り巡らされた紙切れによって構成された術式が起動し、逃げた人々が老若男女問わず意識を失って倒れた

それによって傷が癒えて立ちあがった禁書目録の姿に人々は驚嘆する。そして同時に南側の人間が倒れたことで上がった悲鳴が彼らを混乱させた

その様子を遠目から見ていた騎士達は一瞬何が起きたのか分からなかったが、それが間違いなく禁書目録の手によるものだと判断するのに時間はかからなかった

橋の上で混乱する人間の何人かが、つまり彼女の壁となっていた何名かが、その場所から逃げた

禁書目録を守る壁に穴が空いた。その時を逃すほど騎士たちは馬鹿では無い

空いた空間を縫って、禁書目録であると確信が持てた少女へとロビンフットを放つ

アウトレンジから来るこの攻撃は、来ると分かっていても今の彼女では防ぐことが出来ない

危機を察知して伏せた彼女の頭上を掠めて、手すりに飛翔体が激突する

それを見て、動揺していた市民が禁書目録の付近からますます離れる

結果、彼女を守るのは手すりのみ。しかしこの手すり、殆ど壁になる部分が無い

事実上橋のど真ん中で彼女を守る物は無くなった

そこへ容赦なくロビンフットの矢のようなものが飛来する。騎士達は殺したと確信していた

しかし、その飛翔物が禁書目録へ直撃する直前に炎が禁書目録の周りを覆う様に現れ、その炎がまるで固い金属の壁の様にロビンフットの飛翔物を弾く

その光景に騎士たちが一瞬呆けた僅かな時間に、その炎の渦の中へ飛び込む人間が居た

「どうやら無事なようだね」

渦の中に飛び入った男は後ろで束ねた髪を解きながら、禁書目録を見つつ、汗を拭う

禁書「……ステイル、ッマグヌス、制御者、に、ヨリ味方to既定されている為、Soの様に判断しま、す」

正常とは言えない口の動き方と足取り、そして癒えてはいるが肩周辺の血を見て、ステイルの表情はどうしても固くなる

フラッと倒れかかってきた少女を両腕で胸元へ抱きあげ、行く先へ目を向ける

目的の場所、セント・ポール大聖堂は目の前だ


676以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:19:57.25JHlcOiUP (25/32)


テッラ「これはまた随分と派手にやったものですねー」

1km程度向こうで上がっている炎を眺めている

このセント・ポール大聖堂のアン女王の像の前の広場には彼以外にも多くの人が居る

大抵は同じように上がっている炎と煙を見ている人々で、口周り以外特に目立つ格好では無いテッラへ興味を持った人間はいなかった

テッラ「さて、そろそろ準備をするべきではないですかねー?」

携帯電話に向けて話すと、言葉が返ってきた

フィアンマ『何をするのか分かっているのか?』

テッラ「ここへ禁書目録呼ぼうとしている時点で大体察しはつきますが、一応、確認ついでに聞いておきましょうか」

フィアンマ『分かった。なら説明しよう。ローマ以外を邪険に思ってるお前が気に入ってるそこの聖堂は、バチカンが推奨したバロック建築様式だ』

テッラ「バロック調は美しいですよねー。ドームといい、柱といい」

作業をしつつ、見上げた聖堂。彼は若干うっとりとした表情を作った

フィアンマ『お前の趣味はどうでもいいが、つまり言ってしまえばローマ正教の教会と変わらない。だがここを選んだのは根拠はそこではない』

テッラ「でしょうねー。それだけなら他の聖堂でも事足りる」

フィアンマ『そうだ。最大の要因はお前の目の前にある、アンという名の女王の像』

フィアンマ『スチュアート朝最後の王であるこいつの祖先は、もとをただせばフランス・ブルターニュの小貴族』

フィアンマ『ま、イギリス王家なんざ全部大陸貴族出身の血が混じってるものだ。だが、コイツがとりわけ都合がいいのは都合がいいのはこのアンの紋章が堂々とそこに刻まれている事』

フィアンア『大陸で生まれた建築様式の聖堂に、大陸を意味する獅子のシンボル、そしてフランス出身の血縁。これらを誇張して集合させ、移動術式を組み上げれば』

フィアンマ『今俺様が居る、ブルターニュ地方ナントにある、同じ名前を冠したサン・ポール大聖堂への移動術式の完成というわけだ』

テッラ「想像通りでしたねー。あなたと話しをしている間に、こちらの準備は出来てしまいましたよ」

フィアンマ『こっちの準備も出来てる。後は禁書目録とステイルとやらが来るまで待つばかりだ』

テッラ「それは良かった。来ましたよ、彼ら。たくさんのイギリス騎士共を連れて、ねー」

フィアンマ『そうか。不完全なお前は今戦える状態ではない。とっとと禁書目録達を連れてこっちへ来い』

テッラ「了解です」


677以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:20:28.00JHlcOiUP (26/32)

ステイル「優先する!!―――――水を下位に、炎を上位に!」

ステイルが身を守る為に周りに展開していた炎を消すべく、騎士たちはテムズ川の潤沢な水を使った水柱を水平に伸ばす

しかしそれは彼が叫んだ後、炎の盾を消すどころか弾き返され、コンクリートの壁に向けてバケツに入った水をぶちまけた様に辺りに散るばかりだ

逃げるステイルの方も、禁書目録を抱えて走っている事、粗製"光の処刑"によって普段の魔術では考えられないほどに魔力を消費して、消耗していた

それでも走りを止める訳にはいかない

膝から力が抜けて体のバランスを少し崩した所で、道角からヌッと人が現れる

テッラ「無茶は良くないですねー。あなたのそれは不完全もいいところなのですから」

身構えたステイルは、一応味方のテッラであることに安堵する

そして男二人と抱えられた少女は聖堂に向かって再び走りだした

テッラ「禁書目録を抱えるのは厳しそうですが、代わりましょうか」

そのテッラの発言には、厳しい顔で応えた

ステイル「お断りだ。僕は君たちを信頼している訳ではないからね。むしろ迎撃を手伝って欲しいところだ」

テッラ「それは残念ながら無理ですねー。不完全な私ですから、今は移動術式に特化しているのですよ」

ステイル「なら何をしに出迎えたんだお前は!?」

言いながらもステイルは炎で騎士たちの攻撃を防ぐために、光の処刑による優先順位の変更を使って消耗する

本来ローマ正教の神の右席の構成員となった者だけが扱う事が出来るこの術式を、あるトリックを使ってイギリス清教の聖人でも無い一魔術師が使用している訳だが

厳しい制約をすることで消費を抑えているとはいえ、それでも当然、それに使われる魔力と呼ばれるエネルギーの消費は彼の扱う炎の術式の比では無く

ステイル(不味いね。あと200mかそこらだっていうのに、そこまで僕では燃料的に守りきれそうにない。あと3回違う種類の術式が来たら)

一々防御対象を切り替えければならないという扱い難さを抱えたこの術式は、巨大な魔力消費とも相なって彼を追い詰める

水柱の攻撃をあきらめて、騎士団は違う魔術によって攻撃を切り替えた


678以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:20:57.00JHlcOiUP (27/32)


雷を防ぎ、追跡型の飛来する刃を防ぎ、ロビンフットの狙撃を防ぐ

ステイル(……ガス欠だっ)

ガクンと足の運ぶスピードが落ちたのを見て、テッラはそれに合わせる

ステイル「すまない。少し厳しくなった。もうじき周りの炎も消え失せる」

テッラ「見れば分かります。仕方が有りませんねー」

ポケットから袋を取り出すと、テッラはその中身をぶちまけた

その小麦が少し先の道路で術式陣を描く

テッラ「言ったでしょう?移動術式に特化したと。一般的な魔術を使うなんてとても久しぶりですが、どうせこのあともそれを使うんです。一度練習をさせてもらいますねー」

テッラの言葉を聞き、のろのろと進む。炎の障壁は消え去ってしまい、ここぞとばかりに騎士たちが放つ魔術が迫る

男二人が小麦によって描かれた陣の上に乗る

狙っていた矢じりやら水柱やらナイフやらが、目標を失って消えた彼らが居た場所の空を切った

ステイルとテッラが現れたのは、僅か100m弱程先のアン女王の像がある広場

急に現れた彼らに対して周辺の人間は驚いたが、そんなことは当の本人たちは気にしない

テッラ「ふむ。案外うまく行きましたねー」

ステイル「それで、目的の聖堂に付いたがどうするんだ?」

テッラ「ああ、言い忘れていましたねー。フランスへ行くんですよ」

ステイル「フランスに?聞いてないぞ」

テッラ「ですが、このままイギリスに潜伏出来る状態ではないでしょう?あなたも、その胸で抱いている小娘も」

後ろから、聖堂内から、周囲から騎士や魔術師がわらわらと現れる

ステイル「……そうだね。悩んでいる時間は無さそうだ」


679以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:21:26.77JHlcOiUP (28/32)


日本時間の深夜2時

フレンダ「この病院を襲う敵なんて誰も来ないわけよ」

病院の玄関そばの茂みに身を隠していたフレンダは呟いた

そして、ふわぁーと声を出してあくびをする

「眠そうね」

玄関から声がした。ゴーグルを外して見上げると、僅かな光源でも誰なのか判断できた

フレ「麦野? そりゃー眠くないって言ったらウソになるわけよ。ずっと監視しっぱなしだし、ここしばらくはおかしな輩も来ないし」

麦野「そ。眠いなら代わってあげようか?」

フレ「え、いいの?! 是非オッケーってか取り消しは聞かないわけよ?!」

麦野「別にいいわよ。私は今まで寝てたしね。どうせ敵も来ないんでしょ?」

フレ「うんうん来ない来ない。ってことでお任せ致しますです。やっと休憩だーっ」

言って、フレンダは左腕の麻酔銃が内臓されたガジェットアームを取り外しながら病院の玄関へ入っていった

麦野「お疲れさま、フレンダ」

完全に病院内に少女が入ったのを見届けて、麦野は呟いた

麦野(まだ帰ってこない第三位が気になって代わったとは言えないっての)

病院の玄関に有る段差に腰掛けて、持ってきた温かい飲料に口を付ける

麦野「…ん、ん……ぷは。ちょっと寒い。毛布でも引っ張ってくるべきだったかな」

麦野(そりゃ第三位の御坂美琴一人じゃ、どっかおかしい佐天涙子には勝てなかったかも知れないけどさー)

まだ生きているだろうか

麦野(もし朝まで帰ってこなかったら、死体が転がってるかも知れないし、あの理事員が居た施設に行ってみようか)

入っている液体を中でくるくる回すように缶を片手で何気なく振る

開始して10分も経ってないが、フレンダの言う通り誰かが来る様子も無い


680以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:21:56.23JHlcOiUP (29/32)


そんなことをしていたら、病院の中からコツコツと音が近づいて来た

振り返ると、一方通行が立っている

暗さの為か表情は良く見えなかった

麦野「目、覚めたんだ」

一方「ンあァ。ったくよォ、狙う相手を見極めろってあのフレンダとか言うのに言っといてくれよな」

麦野「そんなもの、あんたが直接言えばいいじゃない」

一方「言おうと思ったが、眠そうに目を擦ってるヤツに言うのはどうかと思ってなァ」

麦野「ふぅん。案外普通の事を言うんだ」

一方「お前、俺をなンだと思ってンだ」

麦野「研究の為とはいっても、ただひたすらに殺人を繰り返して1万人も殺した奴だからね。もっとイッちゃってると思ってたわ」

一方「………ァあ、そうかよ」

沈黙がしばらく流れる

麦野「そう言えば、なんでフレンダの麻酔弾なんて食らったの? 実弾なら死んでたわよ。気の抜きすぎにしても、第1位にしては酷いんじゃない?」

一方「そいつは……」

そして再び少し間が有った

一方「……第4位の麦野さンはよォ、無力を感じたことはねェのか?」

麦野「ハァ? いきなりね。無力かぁ。万能なベクトル操作なんて能力者の第一位が言うと嫌味に聞こえるんですけど?」

一方通行の方を見える。表情は暗くてよく見えないが、馬鹿にしたい訳ではないようだ

麦野「ハァー。無力を感じるなんて、良くあることよ。特にここ数日はそんなことの繰り返し。今日もそうだったし」

一方「そうか」

麦野「なにがあったのか知らないけど、あんたの能力がどんなに万能でも出来ないことはあるでしょ」

一方「まぁ、そうなンだけどよォ。……なァ、お前は」


681以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:22:26.44JHlcOiUP (30/32)


麦野「んー?」

一方「お前にはこれだけは譲れない、守り抜きたいって信念とかそういうの、あンのか」

麦野「そうね。あるって言えばあるし、無いって言えば無いかな」

一方「どういう事だ?」

麦野「つまりね、結局どんなにそれを守りたいと思う物やことが有っても、自分にできる範囲や限界を超えるようなことになったら出来ないじゃない」

麦野「それにしがみついたところで、その限界を超える事が出来るわけじゃないし。出来る範囲で考えて行動するしかできないでしょ」

麦野「それこそ、生まれ変わるとかしない限りね。勿論そんなことは人間には出来ない。結局、完全に自分を変えることなんて出来ないの」

麦野「私達が他の人間から見れば化け物であるのと同じでさ、馬鹿な奴は馬鹿だし、無能な奴はどうあっても無能。どんな奴でも出来る範囲の事をする事しかできない」

麦野「どんだけあんたが凄い能力持ってて凄い頭脳を持っててもそれは同じ。出来る範囲を変えることは出来ないのよ」

麦野(偉そうに言ってるけど、私も最近になって痛感してる事なんだけどね)

一方「どんなことが有っても、変われない、出来ないことは出来ないっていいたいンだな?」

麦野「そうよ。でもね、一人じゃ出来ないことでも、二人居れば出来るかも知れない。三人寄れば、なんて言葉が有るけど、あながち間違っちゃいないのよ。一人じゃ囮もできないし」

一方「その為の仲間ってか。でもンなもン裏切るかもしれねェだろ」

麦野「そうね。絹旗やフレンダだって裏切るかもしれない。でも裏切るまでは信用できるでしょ?」

一方「死ンだ後に気付かされちゃ意味無いだろォが」

麦野「あんたも馬鹿ね。裏切らせない様にするのが重要なのよ。裏切り目的で入ってきた奴が居ても、そいつを逆に取り込んじまえば裏切られたのは敵の方になる。もちろん、その時には拷問だの色仕掛けだのいろいろ方法が有るけど」

一方「そりゃ、そうだろうけどよ」

麦野「はぁー。あんたには居ないの?信頼とか信用とか出来る人間ってのは」

一方「……居ないわけじゃねェが、そいつは用があるとか言って、近くには居ない」

麦野「ふぅん。そう」

三度目の沈黙。しかし破ったのは一方通行だった

一方「お前も言った通り、1万人の妹達を殺したのは俺なンだ。誰かを守るとか守らないとか以前に、結局俺には殺す事しかできねェってのも分かっちまった」



682以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 08:22:56.56JHlcOiUP (31/32)


一方「そンな奴が誰かを守るには、裏切らないような関係の人間が必要なんだろ? だがンな奴は、俺には、少なくとも身近には居ねェンだよ」

一方「今更隠すつもりはねェけど、俺は打ち止めを達、生き残った妹達やそいつらを囲む奴らを守りてェって気持ちはある」

一方「だが俺には人を守るどころか、殺す事しか。黄泉川も打ち止めも守れず、生き残った妹達も守るどころか巻き込んで殺しちまった」

麦野はここで少し、ん? と疑問符が浮かんだ

一方「そンな絶望的な状況すらもアイツは、上条当麻は変えやがった。まるで時間を巻き戻したみたいな方法で」

一方「アイツだけは信用できる。いや、裏切られても信頼したいンだ。アイツさえいれば、俺に出来ない事を、やるべき事を示してくれる。そう思いたい」

一方「そんなアイツすら俺の側に居ない。ンでもって俺はさっき目の前で黄泉川が死ぬのをどうしようもなかった」

知らない人物の話は出るわ、ワケの分からない事を言うわで、麦野には言っている事が具体的には掴み切れなかった

ただそれが逆に、一方通行が一番伝えたいことを掴めさせた

一方「駄目なンだよ。俺は頼れる奴も信頼できるような奴もいない。そンな人間関係を作る方法も知らねェ」

一方「こういうとき、一体俺はどうすりゃいいンだ? 学園都市最強だろうが最高の頭脳があろうが、そンなことも、分からない」

体は外へ向けたまま階段に座ったままで、横で立っている一方通行の方を見ると、やっぱり弱弱しい。見た目が筋肉隆々としている訳でも無いことが、尚更今の彼を弱く見せた

そしてそれ以上は、最早彼が何を言っているのかも分からなかった

麦野「……はぁー。子供ね、あんた」

言って、麦野は立ちあがり、正面から一方通行を抱きしめた

それは、一方通行に目の前で死んだ黄泉川が冗談で抱きついてきた時を思い出させ、目を熱くさせる

麦野「ガキもガキ、小学生に入る前の幼稚園児よ。研究ばっかりでそういうトコが成長しなかったのね」

麦野「いい? 今のあんたの感情が、心細いとか、寂しいとか、不安とかって言うの」

少し抱きつく力を強くする麦野。一方通行の耳に直接ではなく、彼の背中、首筋に向かって優しく語りかけるように言った

麦野「ま、名前なんかどうでもいいわ。それを取り除くにはこうして、誰かに甘えればいいのよ。そうやって、少しでもいいからちょっとずつ自分を落ち着かせてあげるの」

麦野「あの打ち止めちゃんだってあんたにこうして抱きつくでしょ? 同じことなのよ。あの子はそれが分かっているだけ、あなたよりは大人ね」

麦野「何が言いたいのかよくわかんないけど、あんたがどうしようもなく気落ちしてるってのは分かった。そして、誰かに寄りかかりたいのにそれすら出来ないこともね」



683本日分(ry どうしてこうなった?2010/12/26(日) 08:23:29.47JHlcOiUP (32/32)


片手を一方通行の頭へ持っていき、撫でてやる

麦野「それを私に漏らした以上、見捨てるほど冷たくは無いわ。あんたに信頼できて甘える相手が居ないってんなら、私がその役をしてあげる」

麦野「……まだ10代の子供なんだから、年上に甘えていいのよ」

両者とも無言のまま、時間がしばらく流れて、そして一方通行の声を押し殺した呻き声は止まった

一方「……すまねェ。取り乱した」

麦野を引き離して、目元を手で擦る。赤かった目がますます赤くなったが、暗くて麦野には見えない

麦野「あら、もっと撫で撫でしてあげても全然良かったのよ?」

落ち着いたのが見て取れたので、麦野は口調をいつものように戻した

一方「そ、そンなに年も離れてねェのに大人ぶるなってンだよ」

麦野「少なくともあんたよりはお姉さん。それに私は少し寒いなーって思ってたところに丁度あんたが来たから、抱きついて少し熱を分けて貰っただけよ?」

一方「……ってことは、一時の暖の為にお前はあンなこと言ったのか」

麦野「フフッ、冗談。モチロン暖かい何かが欲しかったってのは有るけど………私だって少しは人肌に触れたい時ってあんの」

麦野「だから安心しなさい。あんたが甘えたいって言ったらちゃんと相手してあげるから」

余裕の笑みを浮かべる麦野に、気恥ずかしくて面と向かって顔を向けることが出来ない一方通行は

一方「し、妹達の様子を見てくる」

と言い残して病院内に戻った。こういうのは、人生経験というキャリアの差なのだろう

麦野「あーぁ、カイロ代わりが行っちゃった。って、毛布持ってきてって言えば良かったわ。面倒だけど、はぁ、自分で持ってくるか」

夜明けはまだ遠い


684以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 09:20:16.17r6zyw0.o (1/1)

あれ……上麦じゃなかった……


685以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 09:21:00.34XuVolqIo (1/1)

やっべえ・・・むぎのんに死亡フラグが立ったようにしか見えねえ・・・


686以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 11:00:30.93/RDCoREo (1/1)

最近SSのしずりんが多方面にわたって別の意味で天使化しまくってる


687以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 12:07:39.57VI1dlIDO (1/1)

つか美琴どうなったんだ?


688以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 21:52:24.00ge33CESO (1/1)

佐天さんが能力をコピー出来てるから死んではいないはず
生きてるとは言えない状態かもしれないけど


689以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/26(日) 22:33:06.88sdQmmc20 (1/1)

佐天さんに体ごと吸収されちゃったんじゃね?


690以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/27(月) 01:02:16.53jD8V2q.o (1/1)

マジで魔人ブウだな


691以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/27(月) 10:27:11.56GxhcTmEo (1/1)

最近この続きが以上に見たくなってる自分がいる


692以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 05:33:47.35rHC7QPUo (1/13)

ドバイ国際空港のロビーで刀夜が旅掛に渡した、若干変に皺が入った新聞には、世界各国でほぼ同時に起きる災害と、謎の人形物体による大規模破壊の記事が並んでいた

その中の一つに、日本のとある地方の記事も有る

そこは、刀夜や旅掛のパートナーが住む地名であり、その画像は御坂旅掛にショックを与えるには十分だった

提供に米政府と端に書かれたその画像は、彼女らが住む場所を含んだほぼ全てが核爆発でもあったかのような廃墟の山となっている

これに似たような写真を旅掛は既に見ている。それはロサンゼルスのものだったり、他の都市だったりであったが、それと殆ど同じような光景だった

記事に書かれた襲撃時間はまさに先日美鈴と会話をした時間

彼女が何故あのような電話をしたのか、その心情が伝わり、そして何より彼女を失ってしまった事実が、彼の心を真っ黒に染め広げていく

新聞のその記事から目をまるで動かさず、彼はソファの背もたれに身を預けた

刀夜は立ちあがって、手すりに身を預けてガラス張りの壁面からじっと屋外で離発着をする旅客機を眺め

それと殆ど似たような光景を、つまり上条刀夜がそうなっていたのを、一度見ている田中は刀夜からも旅掛からも視線を外して、立ちつくすばかり

痙攣するように僅かに震える旅掛の腕は、ある瞬間、グシャッと記事を新聞ごと強く握り潰す

刀夜から旅掛へ手渡された時、既におかしな皺が入っていたのは、過去に刀夜が一度同じ事をしたからだろうか

しばらく目を閉じたまま新聞を握りながら震えていた旅掛だったが

その心の中、黒く染まったその色から、激情や怒情そして温かさを表す赤銅色が抜けていく

残ったのは紫に近いマリンブルー、その一色

冷静さを取り戻し、表情はすこし硬さが残るが徐々に戻っていく

それが逆に田中の目には、寂しさや哀れさとして色濃く見えた

上条刀夜が機を見計らった様にゆっくり振り向くと、御坂旅掛が少し力が籠った目で刀夜を見ている

彼らが表に隠れて住まう世界は、元より親しい者が簡単に逝ってしまう業界だ

ただ、御坂旅掛はフリーエージェントとして単独行動時間が長く、上条刀夜もまた過去の事と、組織内での脅威を孕んだ視線の為に、形式上大きな抗争を扱う部署では無い所に長く居た

つまり両者にとって長らく忘れていた感覚ではあるが、しかし何度も立ち直った経験を持つ彼らは、特に御坂夫妻の件で両者ともに共通の同僚や部下を一度に多く失った共通の経験を持つ彼らは、自らを徹底的に管理する

本来とても悲しい事であり、比較的安全な部署に居る上条刀夜の下の若輩な田中には、その立ち直りの早さがとても特異に見えた

旅掛「……上条さん。ここじゃ多くを話せない。場所は用意してますから、そっちへ行きましょう」

刀夜「あぁ、そうだね」

田中は、静かに淡々と会話する二人の背中に付いて行くしかなかった


693以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 05:34:35.14rHC7QPUo (2/13)

フィアンマ「良く来たな、ステイル=マグヌス。俺様はお前を歓迎しよう」

イギリスとフランスの同盟教会を結ぶ空間移動術式によってサン・ポール大聖堂の聖堂内に現れたテッラ・ステイル・禁書目録の三人

そんな彼らを囲むように、恐らくローマ正教所属のシスターや魔術師が刃や杖などの霊装を向けている

ステイル「本当に大歓迎、だね。うんざりするよ」

ルーンの入ったカードを取り出して若干の抵抗の意思を見せるが、非常に消耗していることもあり、分が悪いというレベルではない

テッラは構わずにその包囲の中へ進み、他の部屋へ

禁書目録はフラフラと体を揺らしながら同じ様に包囲の中へ進むと、あらかじめ用意されていた特殊な装飾を施された可動式のベッドに乗せられて、回復専門の魔術を扱うであろう人間と共に聖堂を出ていった

残るのは当然、ステイル一人である

フィアンマ「俺様は歓迎しているのだがな、ローマの人間にとっては敵であることに変わりは無い」

ステイル「……役目を果たした僕はここで始末する、ということだね」

フィアンマ「急くなよ? 俺様は別にそうするつもりは無い。歓迎すると言っただろ?」

フィアンマ「ローマ正教流の形式儀礼みたいなものだ。お前の立場を簡潔に知らしめるためのな」

ステイル「そっちが何かしてこない限り、僕も抵抗するつもりは無い。……禁書目録が完全にそっちの手に有る以上ね」

フィアンマ「それでいい。良く分かっている様だ」

ステイルの正面、聖堂の最奥にある十字架の前に立つフィアンマが片手を小さく振って合図すると、取り囲んでいた魔術師たちは武器を下げた

それを見てステイルもルーンの入ったカードをしまう

一人の魔術師が近づいて、両手を差し出した。恐らく持っている荷物、変装に使った衣類などが入っている鞄を預かろうというのだろう

特別な何かが入っている訳ではないが、フィアンマ側からすれば特殊な霊装の一つでも入っているかもしれない

そのバッグがフィアンマの前に運ばれる

結局のところ武器は下ろしたが、警戒はされているのだ

場慣れしているステイルには、周りの人間がどういう思考を持っているのか簡単に想像できた

ステイル「屈辱だが、フィアンマ。お前が言うならば、僕はここでローマ正教の洗礼すら受けるさ」


694以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 05:35:20.62rHC7QPUo (3/13)

フィアンマ「ほう。折角の喜ばしい申し出と潔さだが、そこまでする必要は無い。もし仮にそんなことをしたらステイル、今のお前の性質である折角の神の薬(ラファエル)が失うことになるからな」

ステイル「扱いにくいコレが無くなることには、僕は別に何の未練も無いね」

フィアンマ「扱い難いのは仕方が無いことだ。粗製な上に急造なのだからな。本来なら天使の性質を付与させる術式はローマ正教の専売特許な上、その方法もローマ正教徒のみに限定されていたもの」

ステイル「歯がゆい事だけど、そのことについてはイギリス清教徒である僕も痛感していることだ。敵である君達のそれを脅威と認識したからこそ、模倣し弱点を調べる為に、テッラの死体を標本としていたのだからね」

フィアンマ「その解析の末に出来あがった、対策なのだろうな。この俺様を相手にする為にローマとイギリス、この両者の差を利用した術式を、ローラとか言ったか、あの女が俺様に使って追い詰めようとしてきたぞ」

ステイル「お前がこうしてここに居るという時点で、それが失敗に終わったのだと落胆させられるけどね」

フィアンマ「ま、俺様でなく、他の右席の連中なら詰んでいただろうな。その術式構成があんまりにも良くできていたから、利用してやった」

フィアンマ「それがお前だ、ステイル=マグヌス。あの女が組み込んだ宗派間の差を利用して、お前の、イギリス正教のラファエルの属性は火。お前にとってその方が都合はいいハズだ。何、元々属性には狂いが生じているから、術式行使には問題など無い」

ステイル「だが、粗製なんだろう? 負担ばかり強いられるよ、コレには」

自分の胸へ親指を向けて、数回叩いた。少し顔が歪む

フィアンマ「それはそうだ。元よりローマの代物だった内容を強引に書き換えて、更には、ズレが生じた属性をもう一度ズラしたのだからな。与えられる魔翌力補助も弱い上、光の処刑の使用条件として片側は炎でなければならない」

フィアンマ「ラファエルの性質を扱う分には不向きだが、しかし、悪事ばかりではないぞ。"原罪"に含まれる"知恵の果実"まで薄めて天使に近づける本来の天使性質付与では、一般魔術は使えなくなる。だが、不完全なお前の"ラファエルの奇形"はそこまで制限を加えない。結論だけ言えば、魔翌力の補助は得られない代わりに、知っている魔術を使えるということだ。その上、切り札として魔翌力消費が大きい代わりに強力な"光の処刑"も使える」

フィアンマ「これ以上の好待遇は無いと思うがな。ご当人はどう思う?」

ステイル「……フン。好待遇であればある程、より大きな見返りを求めているという魂胆も、簡単に透けて見えるということだ」

フィアンマ「わかっているなら、仕事の依頼に移って……ん?なんだこれは」

ステイルの変装用衣類が詰った鞄を物色していると、一枚のメモ。表面にはアダルトな印刷がなされ、そしてペンで英国人の名前などが書かれている

あの時捜査協力のお礼として貰った紙なのだが、ステイル自身、その存在を忘れていた

フィアンマ「これはこれは、イギリスの魔術師は甚く世俗的なのだな」

そのビラを右手でヒラヒラとさせると、ステイルの頬が若干染まる

敵とは言え、衆人環視の状況でのコレは恥ずかしいものだろう

フィアンマ「教会的には御法度だが、ま、悪いものではないだろうな」

フィアンマ「ん? そう言えば、お前は未成年だったよな? 背伸びしたい年頃なのだろうが、14歳には刺激が強過ぎると思うぞ」


695このレス会話が無いな2010/12/31(金) 05:36:31.69rHC7QPUo (4/13)

アメリカ時間の正午、日本時間では朝の4時である。世界中の報道機関を前にしてアメリカ大統領による声明が行われた

わざわざ神に対して内容に偽りがないということを宣誓して始まった会見なのだが

注目が集まった大統領の口から漏れた言葉は、明らかに異常事態を迎えている全世界を驚かせ、同時に仮初の説明を与えた

発表した声明は以下の点。現状が如何に絶望的であるのかを端的に示していた

1.世界中で大規模災害が頻発していること

それらは改善どころか悪化し、地殻レベルで地球が急速に変形を始めていること

2.人の形をした何かが人の住む場所に現れてはすべてを破壊していること

彼らは何の目的があってそんなことをしているのか不明であるということ

3.地球に恐竜を絶滅させた主因とされる隕石と同規模のものを含む大岩石群が近づきつつあると言うこと

その接近によってスペース[ピザ]リ迎撃性能を持つ衛星を含んだあらゆる衛星システムの大半が壊れるであろうと言うこと

このような大統領の口から出る絶望的な表現と内容は、記者の顔を青く染めていった

そして各種報道機関による映像・気象や海流、地殻変動に関するデータ・監視衛星による地球内外の様子が報道機関の前で発表され、そのデータが報道機関に配布される

その中身には、本来ならばたった一人の少女による人為的な行為の帰結である学園都市第一学区で起きた核炉心の暴走が、光と衝撃を放つ人形によるものとして分類され、半ば隠しきれていなかったそれは違う形で世界に漏れることになった

しかし、絶望的な映像はその学園都市の件から性格を変える

つまり、あの学園都市ですら守れなかった、ではなく

あの学園都市の技術があれば、ロサンゼルスのように人形に破壊された他の都市のようにはならず、あの程度のもので抑えることが出来たのだ、という印象を与えるように扱われていた

そして、それに比類し上回ると強調されたアメリカによって独自開発された駆動鎧が、フォートワースに現れた5つの人形の撃退に成功した動画が流される

圧倒的な高性能によって敵を制したという映像には、本来の立役者である垣根提督や神裂火織の姿は意図的に入っていなかった

大統領が提示した希望はそれだけではない

次に映されたのはCGによるシミュレーション映像だった

マントルとプレートが大きく変異を続け、その影響によって噴火を始めとするあらゆる方法で地形が変化し海流・気流にも影響を与え、未曾有の大災害となることが表示されていたが、その大変化の時期さえ乗り切ってしまえば、大地の落ち着きは戻ると示されていた

つまり、危険な場所を避けて非難をすることで、生き残ることが出来るということだ


696>>691 ほ、褒めても出るのは死人だけなんだからねっ……////2010/12/31(金) 05:38:18.31rHC7QPUo (5/13)

地球外部からの隕石群についても、核ミサイルをはじめとして地面を砕く為に使用されるミサイルや兵器を使用することですべて迎撃をすることが出来ると描かれていた

それには前提条件として、大国や諸地域連合の持つすべての戦略・戦術兵器を迎撃の為に拠出する必要があり、人類の存亡を賭けて"我がアメリカを中心に"世界がまとまらなくてはならないと強調されている

そのためには当然学園都市の技術も必要であり、すでに交渉中で、好感触であると大統領は明言した

大統領はもう一度大きく口を開いて宣言する

「あるのは絶望だけではありません。とてもわずかな希望であるが、世界が一丸となることで乗り切ることが出来るのです」

「今回の発表で絶望しきってしまい、気が触れて非科学的な運命論を述べる勢力もあるでしょう。しかし、我々に残された時間は短いのです」

「そのわずかな時間には、そのようなおかしな言葉に耳を傾ける暇などありません。わずかな時間を最大限利用して生き残る為に、統一された私の言葉の下にまとまる必要があります」

「私の声が、言葉が正しいと思う皆さんを守る為に、わがアメリカ合衆国はあらゆることをすると、ここに約束します!!」

まず最初の歓声が大きく漏れた

「そして、ここから少し、人類と言うものに対する私の考えを表明したい。人類、そう我々には神によって与えられた知恵があります」

「神が人類と言う種族にこのような知恵を与えた理由は、このような危機にすら自らの力によって打ち勝ち、生き残る為であると私は思います」

「人の知恵、人の理性は戦うことをももたらすかもしれない。しかし、共存の為に同じ目標の下に集合し、達成させることも出来ると私は確信しています」

「人種差別や宗教による隔たり、歴史による憎み合いは未だに存在します。しかしだからといって、この確信が完全否定されることになるでしょうか?! 人類の英知はそこまで底の浅いものなのでしょうか?!」

「否と!! 私は間違っていないと証明したい!!しかし、それは私一人で出来ることではありません。私の声を聞く人々の協力なしでは絵空事にすぎません。私はこのまま絵空事で終わらせたくはない!」

「皆さん、私は証明したいのです。それにはなんら難しい数式も専門用語も必要ありません。ただ生き残ればよいのです!」

「絶望に足掻き生き残り、私のこの確信が間違っていないことを、一つに集まった全人類の手によって証明しようではありませんか!!」

サクラの手によって端を発した大きな拍手が、記者らがメモを取ることすら忘れさせた

その熱い光景は、彼らの記事によって未だ局所的な絶望が世界中に拡散させることになるが、同時に小さく輝きながら現れた希望も拡がるだろう

熱い宣言を終えて大統領が下がっていく

激しい拍手が鳴り響く中で他の記者と遜色ないレベルのスーツを着た若い男も、表面的には同じような顔を浮かべ同じように拍手していた

ただ、その内面の顔は全く異なっている

垣根(たいした役者じゃねえか。こうなるように周到に準備されたもんだが、上出来の結果ってやつだろーな)


697>>695修正 スペース[ピザ]リ⇒スペースデブリ2010/12/31(金) 05:40:57.07rHC7QPUo (6/13)

(ああ。彼は時代のリーダーとして、歴史に名を残す名演説をしてくれた。だが君は少し不満があるようだね。そんなに自分の活躍をカットされたのが気に食わないのかな?)

垣根(ま、そりゃ確かにあんだけボロボロにされてようやく撃退できたってのに、そこが丸々無いってのは、すこしイラッとさせられる)

垣根(だが、んなことは吐き捨てる唾よりも価値がねぇよ。俺はそんなに小さくないぜ)

(ほう。ではどうしてだい?)

垣根(見え透いてるって言いてぇんだよ。内情を知ってるってことも関係してんだろうが)

垣根(まず第一に、学園都市と交渉してて良好だ、なんてのは学園都市勢を追い詰める為のブラフだろうからな。学園都市の連中が最初からこのことを知っているならば、何らかの対策を始動させてるだろう)

垣根(あの何を考えているのか分からないアレイスターは置いといても、その下の統括理事会の連中は保身の為にまず間違いなく動く。だが、それがないどころか、どっかの誰かさんが引き起こした内紛でそれどころじゃないってのが現状だ。こちら側の勢力を吹っかけるのは容易だろうが、とても学園都市全般として交渉できる状況じゃねえ)

垣根(あれは、維持に大量の輸入に頼ってる学園都市を国際的に孤立させたくなけりゃ、我がアメリカに従うことだって公式的な脅しに映るだろうさ)

(90%正解だな。そして先生から口ぞえをするなら、すでに未来化改修後の第7艦隊が学園都市実行支配をする為に進行中で、それを軍事的な脅威ではなくそういう協力交渉の下で送っているというメッセージでもある)

垣根(そんなところなんだろうな。だが、アメリカ中心主義に今更どうこう言うつもりもねぇし、根本的に信用できないシミュレーションは最初から眼中に無い。それよりもなぜ地球がおかしな動きをするのか、なぜあの天使崩れ共が襲ってくるのか理由を示しやしないのがな)

垣根(後者については宗教と魔術が絡んでくるから発表できないってのは分かるが、適当な理由付けは出来たんじゃねえのか? 怪しいぜ、その辺がよ)

(そうだね。脅威的な宇宙人が現れた、なんていったらSF好きは興奮するかもしれない。端的に言えば、メンツを立たせてあげたと言うべきかな)

垣根(メンツだぁ?)

(そうだよ、メンツだ。魔術サイド、つまりローマ正教なんかの人間達の為さ。こっちが先に宇宙人だなんていったものを、私達の信仰の天使です、なんて言い難いだろう?)

垣根(……あ? 何が言いてぇんだ? 宗教サイドが天使と言って肯定するなら、それを倒すなんて言う俺らは敵になるだろ。敵のメンツなんざむしろ汚してしまうべきじゃねえのか)

垣根(敵になるって分かっているから、大統領も時間が無いって言い訳して宗教家の話を聞くなって暗喩したんだろーし、矛盾するぜ?)

(いや、これで正しいのさ。宗教サイドに付くのか、我々アメリカサイドに付くのか人類すべてを篩にかけるという意味では、何ら間違ってはいないよ)

(彼の言ったとおり、我々には時間が無いからね。我々に協力し、守られたいと言う者しか手を伸ばせないのが現実だ。人類すべてを救えたら、それはとてもよいことだろうが、時間的にも規模的にも難しい。同じように、宗教に熱心ではない、裁きなんて真っ平ご免な人々を全員無条件に守れる状態でもない)

(だから宗教サイドは宗教サイドに任せるのだよ。もちろんそれで宗教サイドと我々が戦うことになるかもしれないが、それはそれだ。我々は、我々自身と我々が守る人々を、害を与えんとする宗教・神や天使の影響から守らなくてはならない)

(……結局、宗教と科学のどっちへ付くのか選択しろ。時間は無いぞ。それがこの声明の本音だよ)


698以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 05:41:57.95rHC7QPUo (7/13)

旅掛「どうやら俺が言いたかったことの半分は持ってかれちまいましたよ」

用意された高層ビルの一室では、上条刀夜率いる表部署・証券取引対策室のメンバーが専用回線を用いて世界各国から各画面上に顔を表した

一種のオンライン会議に、オブザーバーとして御坂旅掛を含んだ18人のリアルな顔とバーチャルな顔が揃っている

総勢29名のメンバーが、今まで先ほど発表されたアメリカ大統領の緊急声明と、その際に配布された動画・各データを視聴していた

会見に潜り込んでいた刀夜派がもたらした情報ではあるが、すでにほとんどのメンバーが一度以上すでに見ていた内容だった

「半分とは、どういうことだ?御坂君」

欧州にいる、刀夜より少し年上の白人の男が画面越しに訪ねた

旅掛「そのままの意味、ですね。Herr.ハウスナー。残りの半分は声明会見であえて伏せたのであろう内容です」

旅掛「皆さんもご存知の通り、突如現れたあの光る人形が人々の住む上空に現れては、その場所を人間ごと廃墟にしていきます。彼らが現れることをあらかじめ予見できていた組織や人間も居たようですが、我々は残念ながら気づけず、後手に回ることになった」

旅掛「その対策の為にも我々がこうして顔を集めているわけなのですが。ここに居る上条氏も、田中君と共に命からがらロサンゼルスに現れたこの人形の破壊から脱したことはすでにご存知の方も居るでしょうし、個人的な面では、日本に居る私の妻も巻き込まれ、目下のところ音信普通です。絶望的と、私は考えています」

淡々と述べる姿では有ったが、逆にそれが悲壮感を感じさせる

oh、と小声で本当に残念そうな声が数名から漏れた。旅掛と美鈴の件を知る、当時の刀夜チームの生き残り達からだった

旅掛「奴等について、アメリカからの公式な明言は無く、今のところはただ人類の敵として分類されています」

旅掛「今後どう出るのかはわかりませんが、あの場で明言しなかった以上、何か目的でもあるのでしょう。俺が言いたいのは、彼らが何者であるのか、ということです」

旅掛「先日接触したアラブの富豪により入手し調べ上げたことですが、端的にいえば、彼らはあらゆる宗教や神話に登場する裁きの使者と見て、まず間違いないということ」

旅掛「このことに対して、イスラム教内でも何らかの動きが見え隠れしていました」

旅掛「終末思想はいかなる宗教にも存在し、確実な形で定義されて居ます。少なくともイスラムの彼らはそれにのっとって行動しています」

旅掛「大統領の言った宗教サイドの行動も恐らく、聖書をなぞる形で行われるでしょう」

旅掛「私自身、宗教や魔術と言ったものに対して疑問視していましたが、今更になって把握しているその実力・影響力は大きく、間違いありません。アメリカを中心とした抵抗勢力と宗教サイドの終末受け入れに二分されるのでは、と言うのが見解です」

旅掛「それを踏まえて、ここへ集まった同志たちも行動しなくてはならないと思われますが、何かありますか?」

「Mr.御坂、君はアメリカサイドと宗教サイドの二分を述べたが、そんなに単純化できるものなのか」

間髪入れずに声が上がった。そして他の者もそれに続く

「我々も弱小とはいえ、アメリカサイド内の一派閥であり、そのアメリカサイド内での現体制を倒すべくして集まっているんだ。同じことが宗教サイドでもいえるのでは? 本当に一枚岩なれば、協力なんかも取り付けやすいと思うが、どうか」



699以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 05:42:33.82rHC7QPUo (8/13)

旅掛「そうですね。最近はアラブの、イスラム内の調査ばかりだったので、他宗教については言えませんが」

旅掛「少なくとも原理主義的な宗派と一般的な宗派の大別、さらには一般宗派内での各宗派によっては離合集散していると言えます。そして、必ずしも多数派が大きな力を持っているわけではない、ということもいえますね」

旅掛「その点は俺も気になってました。なので、逆に質問を返したい。バチカンやモスクワといった十字教の動きはどうなっているのです?」

「モスクワは、ロシア成教は今のところ静かなもの。ただ、政治の方に露骨なアメリカの介入が見受けられるわ」

「バチカンでは動きが有ったらしいぜ。教皇が死んだ」

パリの一室から参加している男が喋った

「こ、このタイミングで崩御だと……?!」

宗教サイドの事実上の頂点の思いがけない死に、複数から声が漏れた

多国籍な組織である上条刀夜の組織内にも世俗的程度に敬虔なカトリックがいる。漏れたのはそんな彼らからだ

「あぁ。確かな情報だ。どうやら長らく留守にしていたようで、その間に反現教皇派の工作があってな」

「死んだ教皇はこの神の裁きについて各宗教・宗派と会談をして協調路線をとろうと暗躍していたようだが、バチカンに帰ったときに暗殺されたってのが大筋だ」

「あらかじめ理由をつけて集まっていた枢機卿団が只今緊急でコンクラーベを実施中、出来レースだから明日の正午に崩御の知らせと共にサン・ピエトロから狼煙が上がって信徒に知らされるという流れになってる」

「そして選び出される新教皇はペトロ=ヨグディス。崩御なすった教皇の選出時に狼煙と共に鐘も鳴った。今回はそれを更に派手にするって話だが」

新教皇として浮かんだ名前に、先ほど言葉を漏らしたカトリックの刀夜派の一人が口を開いた

「ペトロ=ヨグディスと言ったな。Mr.上条、これは逆に都合がいいかもしれないですね」

刀夜「ほう、どうしてだい?」

「Mr.オベルトは今イタリアでしたよね」

「………っとと、ああ。運の良い事に今はたまたまローマだ。だが、市内でそんな噂は聞いてないぜ? 静かなもんだ」

「14番モニターでしたか。って後ろ、ベッド見えてますよ。裸の女性もね。あなたも変わらないですねーと言いたいですが、一応機密会議なんですよ、コレは」

助平心を持った男数名と苛立った表情をした女性がオベルトと呼ばれた男の顔が映っている画面に注目した

なるほど、女性の背中が彼の後方にある

刀夜「……オベルト君?」

チームリーダーとして、上条刀夜も流石に注意しないわけにはいかない


700以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 05:43:20.83rHC7QPUo (9/13)


「ちょ、ちょっとだけ時計がズレてたんすよ。じ、時差ぼけかなー?あは、アハハ……」

「でも大丈夫ですから、彼女は、多分。今も…」

モニター後方、映りこんだベッドの方へ向かった。どうやらその裸の女性の様子を見たようだ

残念なのはその彼の格好で、カメラに映る上半身を綺麗に着こなした彼の下半身はボクサーパンツのみだった。その光景に、刀夜を始め数名が呆れた様な息を漏らす

「……寝てましたし。素性も一応調べて、普通の一市民であるって裏も取ってますから」

刀夜「はぁー。わかった。このまま君のそういう性質を問い詰めてもラチがあかないだろうから、話を進めよう。とりあえずオベルト、君は何かズボンを下にはくんだ」

「あい。すんません」

「では話を戻しますね。新教皇ペトロ=ヨグディスは前のマタイ=リースに比べて何らかのイデオロギーによって言動が行われるタイプの人間ではありません」

「言ってしまえば単純な故・マタイに比べ、非常に利己的な野心家で策謀家。しかし、科学嫌いの傾向は大きく、少しは親和的な考えもあった故・マタイに比べてアメリカや学園都市を毛嫌いしている」

「先の海戦で見せ付けられたアメリカ科学戦力と、先ほどの会見中の映像に含まれた旧約聖書・神の軍勢(=天使崩れ=人形)ロサンゼルス級と命名しますが、それの迎撃成功も内心苦々しく思っているでしょう」

「そこに付け入るのです。我々も一応はアメリカサイドには分類されますが、現AI支配体制への対抗馬です。敵の敵は味方なんて簡単な考えですけど、恐らくペトロ=ヨグディスは乗ってくるでしょう」

「うまくいけば、我々がCIAを、そのままアメリカを牛耳ることが出来るようになれば、ローマ正教としてはアメリカ内に影響を及ぼしやすくなる、と考えるはずですからね。協力を取り付けることぐらいは出来るでかと」

刀夜「……ふむ。この場にはいない学園都市内の協力者一名と御坂君の電話交渉もあって得た学園都市統括理事長の協力に加えて、ローマ正教の協力も加われば、確かに我々の計画も進め易くなるだろうね」

「だが、本当に上手くいくのかね? 少々都合が良過ぎると思うがな」

ニューヨークとモニター左上に書かれた人物から、当然のように反対意見もでる。都合が良すぎる、という表現は的をかなり得ていた

「それは、そこで慌ててズボンを探してるMr.オベルトにかかっていると言えますが、問題なくいけると思いますね」

刀夜「よし。ローマ正教へのアクセスはオベルト君に任せるとして、御坂君から他にはあるかね?」

旅掛「いえ、アラブ・イスラム内情からは特にありませんが、一つ」

「何かあるのか」

旅掛と同じぐらいの年代の黒人系男性から声が上がった

旅掛「ああ。少し気がかりがあるという程度なんだが、この神の裁き自体が各宗教という術式によるものだというアメリカ内部の極秘説によれば、という大前提で話を進める。聖書によると二度のラッパが吹くことになっていますね?」

「うん。その通りだね」「……間違ってはいない」

十字教徒達から即座に返答が返ってきた。他の何名かも頷いている。聖書の内容は、比較的暗号などにも使われやすく、そういう知識を常識的に持っているからだろう


701以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 05:43:57.01rHC7QPUo (10/13)

旅掛「ありがとうございます。イスラムもユダヤも同じように描かれています。そして似たような記述がヒンズーにもあった」

旅掛「最初のラッパ=合図が破壊を呼び、最後目のラッパが神の計画の成就すなわち最後の審判を呼ぶと示されている」

旅掛「共通の旧約聖書による終末思想ゆえの共通性なのでしょうが、この第一のラッパに該当しそうなものが、まだ吹かれていない」

旅掛「今までのがお遊び程度で本格的な破壊をもたらす最初のラッパ、これはもしかすると明日の正午に行われるという新教皇選出の際にとどろく鐘や楽器なのではないか、と」

旅掛「アメリカが発表している隕石群の第一波の到来もバチカン時間の正午過ぎだから、これは偶然の合致なのかもしれないが。どう思われますか」

「偶然の合致であれば良いが」「いや、しかしここまで時間のタイミングが噛合うということは、あるいは」

刀夜「仮に本格化となれば、聖書なんかに銘を持った天使なども現れると?」

「肯定します。少なくともアメリカ内部はそれを予期しているようだ。僕の集めた手元のデータにも、仮想敵に聞いたことのある名前の天使があげられてる」

「同じくネイティブアメリカン諸宗教のシャーマンもそんなことを言っているわ。もっとも、彼らの言うことは門外漢からすればいつもそんな感じだけど。上条リーダーの指示で宗教・魔術について調べ始めたところだから、あまり多くは言えない」

「ま、それはここに居る人間の多くがそうだろうさ。魔術なんてただのオカルト程度に思っていたからな」

「ああ、否定できない。今分かるのはアメリカが裁きに対して対決姿勢を強めているということで、逆に宗教サイドの立場はまだ公表されているわけではない。恐らく、神の裁き自体を否定的なものとは捉えないだろうとは思うが」

「門外漢だった我々の予測はあてにならないぜ。安易な想像は良くない。少なくとも明日のローマ時間の正午には分かるだろうが、えっと、14時間後だな」

刀夜「14時間後、この時間が悠長に待てる時間がなのかも我々にはわからない。ただ、私達の真の目的はそれに直接左右されるわけではない」

刀夜「とりあえずこの議題の続きは、次の会議、バチカンでの発表とオベルト君の交渉結果が出た後に回そう」

刀夜「次の議題だ。南アフリカの―――」

日本時間の朝5時に始まったこの会議は、結局その後3時間経って終わった

会議の最初でCIA内・反AI主流上条刀夜派の指導者・上条刀夜から、バチカンのローマ正教にアメリカ現AI支配体制打破の為の支援を取り次ぐ交渉を頼まれたCIAエージェントのオベルトは情報をあらかた集め、フォーマルな衣類で身を固めた

同時に、シャワールームから女性が出てくる。モニターの背後で寝ていた、彼が抱いた女性だ

ローマの時間で深夜三時という時間なのだが

?「あら、あなたも出るの?」

「ちょっと用事が出来てね。"も"ってことは君もか? こんな時間に?」

?「ええ。ちょっと母が呼んでるのよ」


702適当にイタリア系の名前をつけた場合わせオリキャラのオベルト君はもうでてこないだろうなぁ2010/12/31(金) 05:45:58.08rHC7QPUo (11/13)

「君はイギリス人だったっけ? お母さんもかい? しかしこんな時間までよく起きてるな。向こうは今二時だろ?」

?「都市のわりには元気なの。歳には不相応な、らしくない趣味ばっかり持っているしね。今忙しいみたいなの」

「ふーん。すまない、ちょっと急いでるんだ、悪いけど君を送って行けそうにない。この部屋は向こう一週間ぐらい借りてるから、好きなタイミングで出て行ってくれ」

?「そうさせてもらうわ。行きずりの相手なんだから、私へそんなに気を払わなくていいのではなくて?」

「ただの行きずりの相手なら、ここまでしないさ。ただ、今みたいに君から自然に出る上品さとか気品が、君を大事に扱わないといけないように感じさせてね」

?「……だたのロンドンの町娘よ。そんなに持ち上げないで。なんだか恥ずかしいじゃない」

「果たして本当にただの町娘なんだか。その不思議と秘密が最高の武器だね、君の。おっと、君と話し出すと時間がいくら有っても足りない。それじゃ」

バスローブ姿で手を振って、男は部屋を出て行った

髪を拭きつつ、一人残された彼女は先ほどまで男が弄っていた端末を立ち上げる

?「魔術に対して門外漢というのは、本当のようね」

あらかじめ仕組んでおいた簡易な術式を発動させ、男がキーボードをどのタイミングでどのように叩いたのかという情報が彼女の頭に入ってくる

簡易な術式であり、少しでも魔術に関する知識があれば気づける罠だが、彼は気づかなかった

彼、オベルトと呼ばれるその男が彼女の正体に気づかなかったのとは対照的に、もっともそれは彼に流れるロマンスを求めるイタリア人気質があえて調べさせなかったというのもあるが、彼の正体が何であるか彼女は分かっていた

?「アメリカ内の、反体制組織。そんな便利そうなカードをローマだけに利用させる訳にはいかないの」

引っ張り出せそうな情報を片っ端から手持ちの記憶媒体に保存しながら、彼女は呟く

?「協力が欲しいなら、表立っては出来ないでしょうけど、私達イギリスも力を貸しましょう」

?「でもそれは、残念ながらあなたの為ではないのよ、オベルト。正体を見透かされかけたのには驚かされたけれど」

先ほどの町娘と言われても頷ける訛りを改め、ごく自然に上品で聞き取りやすいブリティッシュイングリッシュを呟く女性

データの保存と変装用の衣類の着付けが終わり、その女性は「またね」と書かれたカードを端末の横に置いて、部屋を出て行った

カードの裏には、CIAなら当然知っているイギリス諜報組織MI6の極秘回線のナンバーが記され、一人の女性の名前が記されている

それは、イギリス第一王女が持つ数多い偽名の一つだった


703以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 05:47:11.34rHC7QPUo (12/13)


ステイル「すこしは休ませてくれても良いんじゃないか、と言いたくなるよ」

少し豪華な馬車の中、とはいっても通常の馬車の10倍以上の速度を出している馬車であるが、その中にステイルは居た

大聖堂で囲まれながら会話をした後、すぐの行動だった。他に誰も乗っていない馬車で、彼は今ローマへ向けて進んでいる

魔術的な通信にも対応させるように術式を刻んだ携帯電話を耳に当てている

フィアンマ『そう言うな。俺様としても禁書目録がどうなってもいいのか、なんて小物臭のする安っぽい脅し言葉を使いたくはない』

ステイル「……それはほとんど言っているのと変わらないと思うがね」

フィアンマ『だったら文句を言うなということだ。しかし本来、今のお前の役目をするのはお前ではなくてテッラだった』

ステイル「ならなぜ僕なんだ? 別に彼が今動けないというわけではないのだろう」

フィアンマ『今のテッラはステイル、お前にも劣る。いざ戦闘となったとき不安だ。もう一つ理由はあるが、それが大きいな』

ステイル「へぇ、ロシアとローマは仲が良いと思っていたんだがね」

フィアンマ『もちろん、ローマ正教とロシア成教はイギリス清教よりは仲がいいといえる。しかし、お前も分かっているだろうが、"相対的に"仲が良い程度でしかない』

ステイル「力関係で言えば圧倒的にローマ。本当に仲が良いなら今頃はローマの完全傘下か」

フィアンマ『その通りだ。だから、そういうことも考えられる。あっちもあっちでローマと同じようにゴタゴタしているだろうからな』

フィアンマ『それに、俺様は神の右席の盟主ではあるが、ローマ教皇ではない。新教皇予定の男とは目的も異なるし、表面的な組織でもない以上、こうやって使いを出して直接的に交渉するという方法をとるしかないのだよ』

フィアンマ『俺様がどれだけお前を信用している、といっても俺様の特権で借り受けた体のローマ魔術師共がお前を信用しないのと同じでな』

"体"という単語が少し引っかかったが、ステイルは気にしなかった

ステイル「君が言う信用とやらは、禁書目録が手元にあるから故のものだろう?」



704時間の割りに短いが2010年分投下終了のお知らせ。まさか年を越そうとは2010/12/31(金) 05:48:33.76rHC7QPUo (13/13)


フィアンマ『否定はしない。だが、今バチカンに集まって偉そうな顔して会議をしている連中に、俺様は禁書目録の事をあえて伝えてはいない。当然、お前のこともな』

ステイル「へぇ、君の独断だと言うのかい」

フィアンマ『そういう権限があるんだよ、神の右席というものはな。まぁ、もうじきローマなんざどうでもよくなるのだが、新教皇のペトロという奴がなかなか面倒だということが本音だ』

フィアンマ『死んでしまったマタイなら扱いやすかったんだが、自称交渉上手なアイツはこだわってる主義主張があるわけではないからな。状況に合わせて切り替える。マタイよりも更に小物に過ぎないが、俺様が禁書目録を手に入れたと知れば何か干渉してくるのは目に見えている』

フィアンマ『勿論俺様の敵ではないが、禁書目録のことに集中したい以上、余計なちゃちゃを入れられるという懸念は払っておきたい。それに、ガチガチに必要悪の教会メンバーとして動いてきた経歴のあるお前も付いて来ました、なんて言ったらせっかくの俺様の駒を一つ失いかねない』

ステイル「そうかい。でも、僕を歓迎してくれたローマ正教徒の方々は、僕と同じように、君の腹心ってわけじゃないだろう? 彼らから漏れるかもしれない」

フィアンマ『それは大丈夫だ』

ステイル「それは一体どういう根拠で?」

フィアンマ『少し考えたら分かりそうだが、早い話、テッラと同じだから、と言えば分かるか』

ステイル「……つまり、君が呼び起こした死者とでも言うのか」

フィアンマ『宜しい。限りなく満点に近い回答だ』

ステイル「"近い"、か。満点の為にはもっと考えろといいたいと言いたいんだな?」

フィアンマ『そういうことだ。逐一指示を出せる状況なら良いが、そんなことでは駒としてのお前の価値も下がる上、非効率過ぎる』

ステイル「時間がない、君はよくよくこのフレーズを使いたそうだが、それではロシアの件は僕に全権を委任するなんてことになる。それでいいのか」

フィアンマ『ローマ正教ではなく、俺様に協力しろという内容で有ればいい。問題はお前という存在がロシアの田舎者なぞに舐められないことだ。お前は俺様の代理なのだからな』

ステイル「……フィアンマ、君が僕を信用しているようで嬉しいよ。勿論、極端に悪い意味で」


705以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 05:58:05.387.rB422o (1/1)

フィアンマの知略がカリスマでマッハ


706以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 09:06:50.756h62.Rwo (1/1)

もうこっちが本編でいいよ


707以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 19:04:24.39ldrdmIDO (1/1)

確かに読みごたえあるし良く出来た話だな


708以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 19:42:59.8654NuVYAO (1/1)

あれ、浜面どうなったんだ?


709以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 21:54:33.83vymxD4ko (1/1)

ぶっちゃけ今の俺の興味は美琴が無事なのかそれ以外の最悪の状態なのかしか無くて毎度更新のたびにざーっとスクロールしてるのみだ
美琴厨の俺氏ね


710以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします2010/12/31(金) 22:07:20.44tI/oqf.o (1/1)

スペース[ピザ]リにふいた


711あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/01(正月) 01:29:34.83rW9DscAO (1/1)

新年早々重いのを見てしまったな…だがそれがいい>>1乙


712あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/01(正月) 15:27:34.682HPD19Eo (1/1)

やっとここまで読めたぞ
天使崩れでDODのエンディングを思い出しちまった・・・


713あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/02(日) 00:56:05.20JDnWhTI0 (1/1)

うォォォォい 上条さんは本当に何をやってんだァ


714>>709 こんな文字ばかりの文章なんて、斜め読みで十分なんだぜ?2011/01/04(火) 16:42:49.63KPMY7nEo (1/15)

朝日が本気を出して昇る頃合

外部の天候・時間に関わらず明るいとはいえない空間でのこと

部屋の中央、ビーカー内で逆さに浮かぶ人間はじっと、そこから3m程離れた人間を見ていた

疾の昔に交渉に来ていた青髪達はこの空間から去って、交わされた約束を果たす為の準備へと向かっている

その交渉中もずっとその場に居てじっとしていた人間は、今ようやく動き出す

アレイスター「……十分だな?」

無表情の吊られた人間の言葉に対して、問いかけられた人間は頷いた

アレイスター「ならば、ここを去り、そして、見て回れ。君が知るべきと思ったことを」

アレイスター「だが、残念ながら時間は私の時よりも随分と短い」

アレイスター「その時間をどのように扱うかは君の自由。私の出した答えを待つもいい、特定のものを見守るもいい」

アレイスター「忘れてはならないのは、有象無象となった事後のこと。その時は」

表情を変えるようにして、否、顔そのものが移ろっている様なその人間は、しかし、意識をはっきりと感じさせる目でアレイスターを見返した

アレイスター「……その時は、君の出番になるかもしれない」

?「分かってる」

どちらかというと女性的な、少し幼いような顔となった口で、ここに来て始めての返答があった

そして、スッとその得意な屋内の空間から消えた

ビルの外に出たとき、その人間の視界に飛び込んできたのは、赤く染まったヒトであったもの

銃弾を受けてできた胸の穴からは、すでに漏れる血も無い

顔は完全にぐしゃぐしゃで、最早男か女かも分からないその屍は、下半身の衣類から、その人物が男性であったことが分かった

上半身を窓の無いビルの壁に預けて腰掛けるように在るその彼の前にしゃがみ込み、胸のまだ少し滑りのある血と体液が混じった液体に触れる

すると、その人間の女性的だった顔が、ほんの少し男性的に変化し、見た目の年齢がすこし上がった

そして立ち上がり、光を与える太陽の方をじっと見上げた


715あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 16:43:48.80KPMY7nEo (2/15)

毛布を身に巻いて入り口で寝ている女と、その横で代わりに辺りを警戒しているガタイがあまり良くない白い男がいる病院

男の傍らに立っている飲み干したコーヒー缶と同じ缶が、寝ている女の胸元に携帯カイロと共に巻いてある

何か暖かいものがあると寝ぼけながら感じて、女はそれを胸に抱いてる

缶コーヒーは冷めてしまうかもしれないが、冷め切る前に、彼女に降り注ぐ太陽光が先に彼女を起こすだろう

そう思って、男はあえて起こそうとは思わなかった

そんな男女が守る病院の周りには、フレンダという少女が眠らせた、様々な能力者や警備員から無能力者までが寝転がっている

その病院の一室で、一人の少女が外を見ていた

相変わらず全身を放射能を効率よく排出する為のパッドで覆われた少女、滝壺理后には正確には見えていない

ただ、差し込んだ太陽光が暖かく、そっちの方が外なのだと感じて向いているだけにすぎない

横に設置されている点滴のお陰か、それとも暖かな太陽光のお陰か、寝る前よりは気だるさが抜けた体は精神にも作用する

前向きと言って良い程であるかは否といえるが、それでも負の感情が弱まった精神はその暖かさを受けて、更に向上的になる

自分が今見ているであろう、そして浴びている同じ太陽の光、きっとどこかであの男は浴びている

もちろん、あの男、浜面仕上がどこか日のあたらない場所に居るかもしれないし、それ以前に死んでいる可能性もあるだろう

昨晩に時折聞こえた銃声や爆発音・衝撃音からして、外で間違いなく何かが起こっていることは想像に難しくなかった

それでも、少女には同じ光を浴びているんだろうな、という感覚は間違ってない気がした。まるで理由など無いのだが

滝壺(早く、治して、はまづらを迎えに行こう)

目も見えない口も開けない状態なのだから、物思いにふけるしか選択肢が無いのだが

今の彼女はそれに対して不満は無かった

今こうしてここで回復できるのも、恐らく彼のお陰なのだから



716あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 16:44:24.34KPMY7nEo (3/15)

太陽光によって目が覚めた

目を覚ますことが出来たという事は、死んではいないということ

日の光がもたらす僅かな暖かさによって、生かされたことを知った少女は、瓦礫の山の頂点に不自然に在る横長のソファの上で、ゆっくりと身を起こす

ご丁寧に、若干血が付いているものの、少し長めの白衣が毛布代わりに身に掛かっている。どこかの研究員の死体から奪ったものだろう

「私、殺されなかった……?」

最終個体と呼ばれる、見た目上は佐天涙子の手が伸びて、頭に触れた。そこまでは覚えている

そこでぱったりと意識が途絶えたことも同じ。ならばなぜ今こうして、不自然な場所で少し涙ぐんだ目を擦っているのだろうか

やたらすっきりしている頭脳で御坂美琴は考える

考えられる答えは一つしかない

佐天涙子が私の意識だけを刈り取って、施設の談話室なんかがあったであろう場所からソファを引っ張っり出して、その上に私を寝かせたのだ

寝冷え対策なのか、薄い白衣を何枚か上に掛けるまでの気遣いも加えながら

他に人も居ない、というより人の形を一部残した死体がいくつか視界内に、瓦礫の山から一部飛び出すように、転がっている

明らかに私だけが特別な置かれ方をしている。なれば、あの子しかないだろう。どういう形であれ、こっちから一方的に殺さんばかりの超電磁砲を数えられないぐらいに打ち込んでも、彼女は私を友達として特別扱いしたのだ

本当に友達であるというだけ理由なのか。この、昨日まであったハズの辛さや苦しみを感じさせない頭脳で彼女は考える

あの子は言った。「楽になりたいか」と

それが意味するのは、彼女の、彼女にそっくりなクローンへの行いから、殺害だと思った

そして私は殺されてもいいと思った。あまりにも辛かったから。あまりにも痛かったから

だが結果は違った。佐天涙子が言った言葉をもう一度思い出す

「私は御坂美琴じゃないから、御坂美琴の役割なんてできない」

私の質問が招いた言葉だが、私を生かしたのはそういうことなんだろうか

あの時見せた後生や悔いが、彼女が私を[ピーーー]のを躊躇わせたのだろうか

自分と同じ個体を[ピーーー]という明確な役割の為に生きている自分との背反になるから、役割を残して逃げるように死のうとする御坂が許せなかったのか

それとも、無能力者特有の、超能力者へ向ける無条件の憧れが崩れるのを、佐天自身が見たくなかったのか


717>>716のピーは両方とも"殺す"が入ります。sagaに変更するのめんどくせ。これだから実家は……2011/01/04(火) 16:47:07.95KPMY7nEo (4/15)

異常にすっきりとした頭脳でも答えは出なかった

射す光が暖かい。一層、自分の頭脳はすっきりはっきりしていく

昨日の、気を失うまでと今の違いを探す。表面的に体には異常が無い

コレでもかというまでに打ちつくした為に招いた電池切れ状態も回復している

そしてはっきりしすぎている頭脳。精査してみると、明らかな違いが有る

なるほど、"楽になる"とはそういうことか。確かに佐天涙子は殺すとは言ってない

佐天と最後の会話を交わしたとき、それまであった興奮ホルモンは完全に失せてしまい、代わりに莫大な量のストレスホルモンが溜まっていった

涙などでは到底排出しきれず、狂ったように増大していくそれ。もともと相当量あったその要素を、まるで無かったかのようにしていたのは、単純に異常な興奮状態にあったからだ

そういう負の要素があのような言動を招いたと言える。そこまでをあの子は見抜いたのだろうか。それとも単に、友人だから殺したくなかったのか

どういう理由かも分からないまま、御坂美琴は瓦礫の丘の上で立ち尽くす

ふと、右手に何かの感触があった。スカートのポケットからはみ出していたのは、携帯に付いたストラップ

どこかの馬鹿、彼女のストレスの一因である男と、お揃いで手に入れたソレ

(アイツは今、何をしてるんだろ)

勿論彼から連絡が入ることなど相当稀な事だが、なんとなく携帯を開く

自分に合わせてある程度の対策は施されているものの、アレだけ自分が電磁放射をしておきながら、それは普段と変わりなく操作できた

彼との連絡手段であるこれが壊れて欲しくなかったから、無意識に守っていたのかもしれない

電波は異様に弱く、右上に示されたアンテナはほとんど立っていない

やはりあの男からの連絡なんて全く入っていなかった

だが、メールが一件。母から


718あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 16:48:08.88KPMY7nEo (5/15)


同時刻、上条当麻は降下中だった

パラシュートを開き、緑一色の地面へ向かう

ザザザッと音を立てながら木に引っかかった自らの体とパラシュートを切り離し、ほとんど使用不可の右腕を使わず、片腕と両足で枝を伝って器用に地面へ降り立った


23学区の空港部、混乱に乗じて勝手に奪おうと思っていた極音速航空機だったが、その場所についてみれば使えといわんばかりに準備ができていた

警護していた者の銃弾によって生じた利用客の血で、レッドカーペットよろしく赤く染まったロビー

空港機能を完全に失ってしまったと分かるその場所から、複数在る滑走路の一本の中央に一機の、外見から高スペックを推察できるような小型極音速輸送機が放置されていた

これ幸いとランウェイに出て乗り込んでみれば、既にすべての準備が整っていた。自動操縦で場所は指定され、椅子には一組のパラシュート

あとはタッチスクリーン中央に浮かぶ"Airborne"に触れるだけ

上条「……用意周到ですね、アレイスター」

一言ポツリとこぼして、彼は離陸の衝撃に耐えた


降り立ったのは、マサチューセッツ州南部にある州立公園の森林部

アメリカ西海岸で既にレーダーに派手に映りこむこことなった為、もちろん既存の米空軍機では追いかけることなどできもしないが、人目につくのは避けるべきと判断した

レーダーには映り難い"空飛ぶゴミ箱"で飛んでくるのは負担的に不可能だった為に、こんな融通の利きそうに無い場所に降り立ってしまったが、目的地は一応この州の中に在る

ボストンにある、某有名理系大学の研究室の中で、彼女達は生まれた

言うなれば旧科学サイドの頂点で誕生した、上条の中の量子コンピュータの彼女という意思は、そのまま研究用に使われること無く、小型化という面に特化される個体となった

母性的女性的な彼女の誕生後、彼女から得られたデータを元に改良を加えられ生まれた、よりアメリカのイデオロギーに近しいものを身に付けた、男性的で力強く理性的な個体が、つまり彼女からすれば弟分にあたる存在が、彼女をその能力を発揮する前に小型化・人間頭脳結合の試験へ導いた



719あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 16:48:51.89KPMY7nEo (6/15)

それは、当初から導入者の脳へ負担を強いることが予見されており、CIA内で危険な力の筆頭になっていた上条刀夜の息子に押し付けるという、事実上の破棄だった

破棄、この言葉によって自らが居なくなるということへの恐怖が生まれる

予期されていた脳負担は、もう一つの彼女が入ってくることで一層悪化した

もしかすると、脳負担については最初から被験者の上条当麻には気づかれていたかもしれない

しかし彼は許し、彼女らはそれに甘えた。その結果が今の状況だった

別に、弟分が生まれたことが悪いわけではない。ただ、その存在がもたらすことが、自分達のために犠牲になってしまった上条当麻の心を痛めるのならば

今までは自己の存続と、上条当麻への純粋な心配から、躊躇っていた母国への明確な反逆を実行に移す

機内で確認した例の大統領会見から議会・政府・軍・諜報機関の足並みが、前回と明らかに異なって統一されているのが見受けられた

つまりそれは、軍とCIAの足並みが揃っていなかった"前"とは明らかに異なり、彼女らの"弟"の意思がアメリカ中央すべてを牛耳っているということだ

それは"前"との明らかな違いであるが、違いはそれだけでない

"前"は学園都市の占領問題を除いて比較的平穏であったこの地球という惑星全体だが、今回は至る所で破壊が襲っている

これにも恐らく何らかの形で、自分達含んだ上条当麻という人間が関わっているのだろう

あの"弟"はこのことすら利用して、世界をアメリカ中心にまとめようとしている

そのことが意味するのは、"弟"による世界の統一。まずは世界各国の軍や政府の纏め上げの意思が、あの演説から見通せた

自らの目的の為には、学園都市の未熟で無力な子供達すらにも犠牲を強いさせるやり方を厭わない"弟"である

そんな存在が世界を統べるなど、絶対に認めない

上に述べたような大儀のほかに、自分ではなく"弟"が選ばれたことによる僻みや妬みなどの人間臭い理由も含めて、上条当麻は森林の中を進んでいった



720イギリス国教会=新教 イギリス清教=旧教 バチカンとロシア正教も歴史的には対立関係。禁書の世界の歴史はどうなっているんだ2011/01/04(火) 16:50:09.58KPMY7nEo (7/15)

ロシア成教、世界3大十字教の一つ

言い切ってしまえば聞こえは良いが、ローマ正教と同じく、言ってしまえば東欧十字の寄せ集めの頂であるだけである

十字教を効率よく伝播させる為に、または生き残りの為に現地や外入の文化を織り交ぜつつ出来上がっている現代宗教というのは、たとえ元が同じものでも、地域によって・歴史によって差異がある

例えばイギリス清教会が旧教系に分類されるも、他カトリック宗派からすると歴史的な問題で新教としての側面が有ったりするように、概念的な区分けが定かではない

よって区分け=集合体ではなく、区分け=烏合の集というのが現実的な視点である

現代ロシア成教の内部を構成しているのも、歴史的な冷戦期東欧諸国のカトリック諸派となっている

母体としてのロシア成教が、諸派の頂となって指導しているというローマ正教と変わらない形式だ

比較的温暖な西欧などと違い、寒冷な東欧は根本的に人口が少ない。それで相対的に弱勢となる

魔術サイドの最大勢力でもあるローマ正教に比較的親和的なのも、そういう現実があるからこそ、だった

ステイル「とは言っても、カトリックの雄を自称するだけはある、か」

冷戦終結直前に再建されたロシア正教の頂点である、モスクワ・ダニーロフ修道院を囲う白い塀を右手に、街路を歩きながら彼は呟いた

今の彼の胸にはローマ正教式の十字がぶら下がっている

勿論交渉の為だが、公式的なものではないので、本当に観光客のような感覚で、いつもの黒いローブ姿で門をくぐり、敷地内へ入った

ちょうど拝礼でもあったのだろう。緑のドームのある聖堂の前に要人の侍従が立っている

ステイル(おっと、ここまで来て何だが、僕はロシア語を満足には……)

ステイル(こんな時代だ、英語である程度は通じるだろうが)

ステイル「やぁ、誰が中に居るんだい?」

取り立てて特別な表情を作らず、当然タバコなどは塀の外で吸い溜めしておき、侍従に尋ねた

「ローマの十字を持っていながら、英国英語を話すタバコ吸いなどには、答える必要は無いな」

侍従は両腕を組んで、付き返すような英語を返してきた



721あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 16:51:00.74KPMY7nEo (8/15)

ステイル(ああ、英語よりはフランス語を使うべきだったか)

ステイル「仏語よりは英語の方が一般的だと思ったんだが、こっちの方がいいかな?」

仏語で尋ねた

「ロシア語が使えないのならどっちでも構わん。それで、このロシア成教の主教座に何の用だ、魔術師」

見抜かれた。恐らくこの男も、魔術についての知識や力がある

ステイル「僕の身分が分かっているようなら、話が早そうだね」

一歩前に出る。身長ではステイルが侍従の男よりも高いので必然的に見下ろす形に

そんなことになれば、特に魔術師だということが独特の気配で分かっているならば、侍従の男も覚悟する

睨み返しつつ、片腕を腰の後ろへ回す。武器や霊装でもあるのだろう

ステイル「別に僕はここを焼き払う目的で来たんじゃないんだ」

後ろに回った腕のことなどまるで気にしないように、高圧的に言い下ろす

ステイル「君たちみたいのがここで出るのを待っている相手、総大主教とか有力な司教と少し話がしたいだけさ」

「ふん。お前がこの事態を狙った暗殺者ということもあるだろうが」

わざとらしく両手を広げて

ステイル「本当だとも」

ステイル「僕の胸にわざとらしく下がっている十字架が、何よりの証拠だろ?」

決して疑問が失せた訳ではないが、その胸のローマの正式な彫刻を見て、もう一度ステイルを侍従は見上げた

「……表立っての連絡も無く、連れの者も無し。よくも言うものだ」

「まぁ、その方が現状には相応しいのだろうな。……残念ながら私が仕えているのは最大主教様ではない」



722あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 16:51:49.08KPMY7nEo (9/15)

見上げた視線を落とし、目を伏せるように言った

「最大主教様そのものが、ここモスクワにはいらっしゃらないのだ」

ステイル「へぇ、この事態に主教座に最大主教が居ないとはね。お笑いだ」

「ローマも似たようなものだと思うがな?」

恐らく、教皇暗殺のことを言っているのだろう。こんなところにも広まっていたか

ステイル「それは否定できないね」

「こういう事態になれば、考えることはどこも同じ。最大主教様はここではなくセルギイ大修道院、セルギエフ・ポサード、ここモスクワ市の北100kmのところで幽閉なされている」

ステイル「……幽閉?」

「形式的には、あそこもモスクワなのだ。緊急時に指導者が要所に居るという面目は立つ。簡単に言えば、ロシア成教は闘争中なのだよ。まるで共産党時代の政権のようにな」

「崩御されたローマの教皇とは異なって、我々の最大主教様はお若い。覇権争いなどに巻き込まれれば、いや、既に巻き込まれてしまっているのだが、経験不足だ。今はご存命のようだが……」

それ以上は言わなかった

ステイル「なら、誰の侍従をしているんだ?この時期にこの総主教庁のあるモスクワの主教座に居るということは、その闘争とやらの最有力候補だと思うが」

「それは―――」

聖堂の大扉が開いた

更に二名の従者を連れて、明らかに位の高そうな衣類を身につけた男が出てくる

?「……この者は、何だ?」

ステイルを一瞥し、ステイルの前に居る従者に尋ねた

「これは、ニコライ司教。ローマからの使者だと言っているのですが」

ニコライ「ローマの……ほぅ」

ステイルの見た目と、胸に掛かったローマ式彫刻の入った十字架を観察する

ニコライ「ここでは満足に話もできない。奥へお通ししろ」


723よーし。禁書23巻が出る前に終わらせるぞー。何度この手の宣言が失敗に終わったことか……2011/01/04(火) 16:53:49.86KPMY7nEo (10/15)

フレンダ「ありゃ、まだ寝てる人多いんだ」

病院の自動ドアが起動し、そこから出てきたフレンダは、左腕には武装腕・頭にはゴーグルを装備している

麦野「おはよ、フレンダ。よく眠れた?」

フレンダ「お陰様で、元気回復ってワケよ」

麦野「はいはい。フレンダちゃんはいつも元気でうらやましいでちゅね」

簡単に小馬鹿にして、アレ、と言いながら指をさした。一方通行が両手に人の襟を持って、キャスターよろしく人間をズルズルと引っ張りながらこちらへ歩いている

麦野「あんたが昨日使ってた麻酔弾、少しでも体内に入れば意識をもってくような強いものだったらしくてさ。まだまだ目を覚まさないみたい」

麦野「いつまでもあのままじゃ、既に手遅れかもしれないけど、風邪引いちゃうでしょ? 起きるまで病院の空き部屋でいいからとにかく室内に寝かせろってあの先生がね」

フレ「へぇー。襲ってきたのまで面倒見るなんて、結局あの先生過労死する気らしいわね。それで、なんで一方通行が運送業者してるのさ?」

麦野「俺が能力使ってやりゃァ早いだろォ、とか頼んでも無いのに言ってきてねぇ。折角だから任せたわ」

目を凝らして一方通行を見るも、フレンダの目には同考えてもがんばって引っ張っているモヤシでしかなかった

フレ「……能力使って?」

麦野「いやさ、昨日あいつの体に触れるような機会があってね」

麦野「あ、別に期待してるようなことがあったわけじゃないわよ、フレンダ。だからその顔はヤメロ」

麦野「そいでさ、能力ばっかに頼って男の癖にヒョロ過ぎどうかと思うわ、的な事を言ったのよ」

フレンダ「……"的な"こと? それはオブラートに包んでやんわり伝えた的な? それとも逆にグサッと?」

麦野「逆ね」

フレンダ「それは、えと、まぁ予想通りなワケよ。頑張れ第一位」

引きずっている。ズルズルと。とても早くて効率が良いとは言えない見た目だが

それを毛布に包まったまま座って見ている麦野の表情には、とても手伝おうという意図は見えなかった

麦野「あれも馬鹿な奴よ、ほんと」



724あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 16:54:31.48KPMY7nEo (11/15)

フレンダ「……あ、止まった。両手膝においてハァハァしてる」

フレンダ「ああもう! こうなるのは目に見えてたと思うわけよ? 結局第一位は一見クールぶって挑発に乗りやすいんだから」

見ていられないと、一方通行を手伝おうと歩き出したフレンダ

ソレを止めるべく、麦野はフレンダの右足が踏まんとしている階段を原始崩しの電子砲で溶かす

当然、あるべきものが無くなったフレンダの体はバランスを崩し、前かがみに倒れそうになる

低い階段の段差を、何とか転げ落ちず地面に大股開きの蟹股で着地して、麦野を見た

フレンダ「うぉおおい! 私何かしたっけ?! してないよね?! 昨日監視変わったの根に持ってんの?!」

喚くフレンダを無視して、麦野は一方通行を見ていた

麦野「まったく、一人で無茶なときは頼れって言ったのに、結局一人でさ。ほんっと馬鹿よ」

と零す。恐らく一方通行のことを考えて言った言葉なのだが

フレンダ「馬鹿って私のことなワケ?! 仲間すら背を向けるときは信用するなと?!」

なお喚く。が、麦野は稀に見せる優しい目つきで、深く息を吐いている一方通行を見ていた

フレンダ「キタキタキター…。無視キマシタワヨー。はぁ、なんで私は朝からハイテンションで空回りしてるワケ? 芸人かっての」

朝の象徴、太陽を見た。完全に目が覚めている。麦野に任せて二度寝する気にもならない

そのまま何気なく周囲を見渡した

ちょうど麦野が見ている方向とは逆の場所から、見覚えのある制服

フレンダ「あ、第三位」


725あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 16:55:58.95KPMY7nEo (12/15)

青髪「あわきん、次も頼むでー」

警備員が使用している、兵員輸送用のLAV(軽装甲車)を運転しながら青髪は言った

次、というのは今通っている学園都市内の高速道路上にある、運転手の居なくなくなった自動車や無人バスである

LAVの少し大きい車体では、道路を封鎖しているそれらが邪魔で進み難い

座標移動の能力を使って、結標淡希はそれらを道路の端へ除去しているのだ

結標「……ねぇ、戦車とか無かったの?あれなら押しつぶしていけそうだけど」

馬力もあり、キャタピラを装備し、その上高火力な砲塔もある戦車ならば、彼女がこんなことをする必要は無いだろう

青髪「そうやなー。でも残念ながら学園都市も日本の土建業者が地面とか最初の基盤をつくっとるから、戦車なんかが入るにはアスファルトが軟らかすぎるって問題があるんや」

青髪「最近は戦車必須論も退潮気味やしなー。第一、戦車じゃこの人数をいっぺんに運送できんし、その点LAVなら――」

結標「ああーもう、もういい。要するに戦車じゃダメって事が分かったけど、いちいち道路上の壊れた車両が出るたびに能力使って障害除去するのも疲れるの」

隣で運転する青髪の方を向く

結標「これじゃ、着いても満足に戦えないわよ」

青髪「そうやなぁ。まぁ、着いたときの消耗具合次第かな」

青髪「僕はお敵さんの戦い方とかは熟知しとるし、それに応じてあわきん以外の後ろに乗ってる連中を動かすつもりやし」

結標(あわきん、ねぇ。そういえば、あのにゃーにゃー言う奴はどうなったのかしら)

結標「そう。そういえば、その後ろに乗ってる連中なんだけど、アレは何なの?」

青髪「人間ですけど何か?」

結標「あ、まー人間でしょうね。それはわかるわよ! いや、別に今更人造人間ですとか言われても驚かないけど」

青髪「次のあの黒いスポーツカーも頼むでー。うーんと、強いて言うならば、ミンチにされる前の人々ってトコやな」


726あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 16:56:43.76KPMY7nEo (13/15)

結標「ミンチにされる前?の人?」

青髪「"残骸"の一件に関わっとったあわきんなら知っとるやろうけど、樹形図の設計者はもう無いやろ」

結標「それは、知ってるわよ」

青髪「アレだけ高性能な演算装置が失われて、実験が止まった機関は膨大や」

青髪「特に研究熱心やって外部からの研究資金をつのっとったよーな研究機関は、結果を出す必要があるのに、アレがなくなったせいで外資に対して見返りを提供できひんようになってしもた」

青髪「なら、どうにかして樹形図の設計者並の能力の在る演算装置が必要になるやろ? それがミンチの人々ってわけ」

青髪「基本的には施設孤児出身の非攻撃的能力の大能力者とか、事故に見せかけて強引に拉致した家族のおるおらんに関わらず高性能な生徒を捕まえて、脳だけを抽出する」

青髪「その脳の感情なんかを司る部分なんかの、必要ない部分を薬物で機能停止させて、あとは"欠陥電気"を基にして得られたデータを参考にして作られたクローン技術で作った大量のクローン個体から摘出した脳ミソと、拉致って取り出したオリジナルの大能力者の脳ミソを並列に接続する」

青髪「それで簡単低コストに高能力の演算ユニットを作り出すことができんの。取り出された脳以外は、ミンチになってクローン作るときの肥料送りとかやろな。それでミンチの人々ってさー」

結標「私が言うのもなんだけど、反吐が出る方法ね」

青髪「せやろ? だからウチのボスはそれを助けるように指示出して、彼らはそのクローン。……オリジナルの方は手遅れやった」

青髪「脳を摘出されるだけの予定の個体やったから、つくりは粗雑でまともな意識もあらへんから」

結標「こうして兵隊として利用する、と。なによ、あなたのボスって、聞こえは良いことをしながら、やり方は結構エグいじゃない」

青髪「あるものを有効に利用する。資源の有効利用やと思うけどな」

結標「……リアリストで、いい指導者だと思っておくわ。少なくとも、私みたいに感情的要素でヘマするようでは無いって意味でね」

青髪「それはどうも。さて、まずは電力泥棒しようとしとる連中を片付けんとな」

高速を降りて、しばらくしてLAVは止まった

近くには、あえて生かされた電力供給管理代理機能を持った施設と、その周辺を囲うようにして展開されている米部隊がある


727あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 16:57:32.11KPMY7nEo (14/15)

フレンダが放った第三位という言葉に、最も早く反応したのは麦野だった

一方通行を眺めていた視線を一転して御坂美琴の方へ向け、見つけると駆け寄った

徐々に近づく姿は、昨日のように狂ったものではなく、しかし昨日よりも悲痛さが目立った

御坂自身、佐天涙子の手によってホルモン分泌をリフレッシュされていなければ、得られた更なる悲しみで、自らの脳内に致命的な神経操作を施して自殺していたかもしれない

病院に向かってとぼとぼと歩く御坂は、ずっと携帯の小さな画面を、真っ青な顔で覗いている

その御坂から1mも離れないように近づいた麦野は、なかなか言葉を掛けられなかった

麦野「……無事だったのね」

話しかけられて初めて、麦野という存在がそばに居ることを知り、携帯を閉じてポケットにしまった

御坂「…………うん。なんとか」

麦野「良かった。顔が青いけど、あなたがあのお友達、佐天涙子を殺したの?」

御坂「そっか、私、青い顔してるの」

頬に手を当てた。手が冷たい

御坂「違う。殺してなんか無いの。逆よ。よく分からないけど、生かされちゃったんだ」

麦野「殺されなかっただけ、ってこと?」

御坂「うん」

麦野「それで、顔色が悪いのは、あの日? 風邪でも引いた?」

御坂「ううん、体調がどうってわけじゃない。ただ」

ポケットにしまっていた携帯を取り出して、開いた。学園都市全域で電力供給が途絶えている為、携帯の基地局も作動していないらしく、圏外


728本日分(ry 新年早々、長々書いて全く進んでないでござる2011/01/04(火) 17:00:52.95KPMY7nEo (15/15)


朝目が覚めたときに電波があったのは、あの場所が学園都市を囲う隔壁に近く、学園都市圏外の電波を掴んでいた為だろうか

母親からのメールが入っていたのも、ちょっとした偶然、奇跡である

そんなことを考えていると、返答待ちの麦野が催促する

麦野「ただ?」

御坂「ただ、その。……今、学園都市外で何が起きてるか、わかるからない? テレビとか何かやってない?」

麦野「外のこと? 昨日から都市全域で停電してるみたいだし、そうなるとテレビも何も、殆どすべての電子機器は使えないでしょうね。いつもの飛行船すら飛んで無いし」

御坂「そっか、そうだよね」

歯切れが悪い。要領を得ない会話だ

それは御坂自身の疲労も原因であると、麦野は考えた

麦野「はぁ、なんだかよくわかんないけど、休んどきなさい。部屋の一つや二つ、空いてるでしょうし」

御坂「……アイツは居る?」

帰ってきた言葉もまた、言ってしまえば麦野の言葉を無視したものだった。それで怒るようなことは無いが

麦野「アイツ?」

御坂「上条、当麻」

麦野「あのツンツン頭なら、なんか用があるって、どっかに行っちまったらしいけど? 深くは知らないし、妹達に聞くといいわ」

御坂「……用、か」

ストラップをしならせ、思い出したようにまた携帯の画面を覗き込み、歩き出す

麦野はそのおかしな様子をしばらく見ていたが、一方通行に視線を戻した

彼の作業はもう直ぐ終わりそうだ


729あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 17:34:33.10erKG.Cco (1/1)

乙乙
しずりん二週目は一方ヒロインになりそうだな
ん?ってことは上条さんのヒロインはAI娘か?

>>717もういっそ、最初からsage saga進行にしとけばいいのさ


730あはっぴぃにゅうにゃぁ2011!2011/01/04(火) 18:40:50.24W3MslrUo (1/1)



上条さん復活マダー


731忘れたころに投下。それが俺のジャスティス2011/01/10(月) 13:10:12.22xIqxDYPDP (1/24)

半蔵「あー畜生。嫌んなるぜ。俺は浜面みたいに運転は得意じゃねぇっての」

慣れない大型車両の運転をしながらぼやいた

そのぼやきにナビシートに座る海原が反応する

海原「そうですね。これじゃ、歩くのと変わらない」

アメリカの軍用輸送車両をかっぱらい、人質となっていた意識の無いスキルアウトの仲間たちを乗せて、海原と合流したショチトル・郭を回収した

海原と郭は深手を負っていて、更にショチトルと仲間は意識が無いまま

これではどうしようもないという事で、海原が出した案はとてもシンプルだった

「病院に行きましょう」

彼曰く、第7学区の高名な医者が居る病院ならば、どんな訳有りでも全力を尽くしてくれるとのこと

勿論その場所は半蔵も良く知っていたし、何度か利用している。場所の把握は完璧だ

病院そのものが壊れている可能性もあるが、応急処置だけでは海原も郭も骨格が変形して治ってしまいかねない。適切な処置を受ける必要が有った

だが、問題は道中だった

昨日の夕暮れ以降の様に、堂々と警備員や能力者が戦い合っていたりするわけではないが、所々で戦闘音が響いている

そして昨日の戦闘によって、目に見える車両は大体壊され下道は殆ど通行止め状態

下道ほどではないだろうと高速を選んだものの、似たようなものだった

半蔵「車がでかいってのも有るが……」

車全体に衝撃が奔った。道路脇の廃車にバンパーの角が触れたのだ

海原「おおっと。……軍用の装甲車両ということもあって、多少の接触ではビクともしないのが救いですかね」

半蔵「すまねぇな。運転が下手で。お、動いてる車も有るじゃねぇか。アレは」

海原「ん?良く見てください。車の外装、助手席側のドアに例の模様が」

半蔵「ってことは、アレ、一般車両に見えるけどよ」



732最早各キャラの口調が分からん2011/01/10(月) 13:10:50.75xIqxDYPDP (2/24)


海原「ええ。アメリカ所属のものか、アメリカ側の勢力のものでしょうね」

半蔵「あっちからしたら、俺らが乗ってるこの車も仲間の車両だって思ってるだろーから、安心か」

反対側の車線を、その車両が横切った

クラクションの音が軽く鳴る。同胞への挨拶のつもりなのだろう

半蔵「勘違いしてて助かりますってか。あのマークはさ、例の幻想見せる能力者へのサインみたいなものなんだってな?」

海原「え、ええ、まぁそんなところですね。知り合いの空間移動能力者も、光る警棒みたいな物で座標設定の足がかりにしていましたし。そういうものなんですよ」

半蔵「へー。ま、無能力者には縁のない話だな」

海原(いちいち超能力に置き換えて、嘘の説明をするのも面倒だ。いっそ、魔術というものを教えてしまうのもアリでしょうか)

海原「ですが、学園都市全域を幻想で覆う為の増幅装置自体は昨日壊しました。今となっては、私達にとってアメリカ側なのかどうかを識別するサイン代わりですよ。あの模様は」

半蔵「ならよ、俺達の服とかにもデカデカと描き入れとくか?」

海原「それはいいかもしれませんね。恐らくアッチもそうやって見分けてるでしょうし」

海原が頷いた所で、さっきのアメリカ側の車が通った車線を、結構な勢いで警備員用のLAVが走り去っていく

邪魔になりそうな障害物を空間移動らしき能力で除去しながらだった

海原(とんでもないやり方ですね。今のは、まさか)

半蔵「いいねぇ、ああいうの。海原、お前出来ない?」

海原「ハハ、残念ながら出来ません。しかし、今のには例の模様、入ってませんでしたね」

半蔵「こんな状態でも警備員も忙しいんだろうぜ、きっと。何と何が戦ってんのか分からねぇが、そこいらで小競り合いは続いてるみたいだしな。御苦労サマだ」

海原「そうですね。若干気になりますが、最優先は治療です。あなたもかなり、特に腕なんか酷いですしね」

半蔵「そうだな。今だって結構、やせ我慢してんだぜ」

そんな会話をしながら、高速道路を有り得ない程の低速で彼らは走っていった



733マジで早く上条さん戻ってこないかな。切実に2011/01/10(月) 13:12:00.31xIqxDYPDP (3/24)


太陽の方向から方角を割り出し、森林地帯を一直線に北へ進むと、小路が有った

恐らく自然公園内の管理警備の為ものだろう

道に沿って左右を見ると、東側に一台の車が有った。車高が高く悪路でも問題なく進めそうなゴツいタイヤをはめたその見た目から、密猟警戒用の見周りに来た四駆だと分かる

なかなか新しそうなデザインの4WDで、中に人はいない

上条(私が降下した場所へ調査にでも行っているのでしょうか、これは好都合)

周辺を警戒しつつ近寄ると、更に運のいい事に鍵が空いている

という事は、中にセンサータイプの鍵は搭載されたままかもしれない

非常に好都合、と思いながらドライビングシート側のドアに手を掛けた時だった

「Don't move!!」

自分の背後から、英語が聞こえた

声がした方へ背を向けたまま、ドアの取っ手へ伸ばした手ともう片手をそのまま耳元まで挙げる

背中に手が触れる感覚。武器を探っているのだろう。持ってきていた拳銃が奪われた

「こんな木ばっかりの場所で、希少動物ではなく車泥棒とは、随分珍しい密猟者だな。顔を見せてもらおうか」

指示どおりに振り向くと、拳銃を構えていた

腰には密猟者と撃ち合った時の為のものか、ライフルも携えている

何より隙が無かった。余程密猟者とやり合った経験があるのか、はたまた軍人上がりなのか、実戦慣れしている感が強い

右腕は動かず、ほんの僅かなの対消滅すらもまともに出来ない状態で、この男性を打ち倒して車だけを奪えるはずが無い

「中国、いや、日本人? 黄色猿は若い見た目だが、ここまで若い成人ってことは無いだろうな」


734VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:13:07.17xIqxDYPDP (4/24)


上条をまじまじと見ながら

「ガキだろうが容赦しないぞ、密猟者。許可証も持たずにこんなトコに居るってことは、お前がさっきのパラシュートだな」

上条の眉間に定めた拳銃を少しもずらさずに、胸元にある無線を取り出した

「こちら管理局11B。先程パラシュートで降下したらしき男を発見した」

『了解。直ぐ戻る』

上条(最低でももう一人、来るようですね)

上条(今更一人二人増えた所で、状況は変わりません)

しばらく沈黙が続いたが、ガサッという音とともに、目の前の男と同じ制服をした男が二人森から現れた

無言で、銃を上条に向けている

「さて、お前には聞きたいことが山ほどあるが、それはム所で聞いてやる。とりあえず今は、背中をこっちに向けて、両手首を腰のあたりで重ねろ」

指示通りに動く為、まともに動かない右手首と左手首を強引にくっつけると、想像通り手錠がなされた

右手は肘から先が動かないので、こうなってしまうと左腕すらまともに動かせない

四駆の後部座席に押し込められ、両サイドに管理員が座る

上条(良い様に考えれば、このまま森林地帯を抜けて近郊の市街まで送ってくれると考えられますが)

上条(悪い様に考えれば、ム所暮らしの始まりと。そんな事をしている場合ではないのですが)

「……お前、後ろの経験はあるか?」

隣に座っていた男に、唐突そんなことを聞かれた

「その反応じゃ、無いみたいだな。とりあえずケツを良く拭かないことだ。そうすればもしかしたら、萎えて見逃すかもしれないからな」

とても嫌な予感が全身を駆け巡った


735VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:14:05.11xIqxDYPDP (5/24)


結標「あら、結構派手に壊されてるのね。大丈夫なの?」

止めたLAVから降りて、大通りに隣接したその場所を、身を隠そうともせずに堂々と彼女は見つめた

なるほど、何かがそのビル部分に当ったのだろう。高くそびえるビルの中腹が崩れて、屋内と鉄筋が剥き出しになっている

青髪「てっぺんのでっかいアンテナと、ビル部分の土台になっとる横長の3階までの部分さえあれば問題ないってな。むしろあれは好都合やで」

結標「ふぅん。施設と歩道を区切ってる壁が邪魔で良く見えないけど、あの壁の後ろ、壁と建物部分の間の庭になってそうな所にはアメリカの皆さんがさぞたくさん詰めてるんでしょうね。私、乱戦は苦手よ?」

青髪「ところがどっこいやなー。数はあんまりおらんと思う。んでもって、こっから見えるあの正門っぽいところは歩行者専用、もっぱら来客用やから襲撃するには勝手が良くないんや。上から丸見えにもなるし」

青髪「こっから見て奥側の、壁に有るシャッター。あっこから車両で入って、地下の駐車場から施設内へご案内。押し入るなら、こっちのが都合がいい。当然向こうも人を配置しとるやろうけどな。で、出口は手前の方のシャッターとなっております」

結標「へぇ。3mぐらいまでの車両なら入りそうだし、ここから見える壁の面だけ見ても200mはあるから、適当に計算しても4万㎡の地下空間が広がってることになるわね。何か隠すのにも丁度良いと」

結標「電気が無い今じゃあの大きなシャッターを開くのも難しそうだし。厄介じゃない?」

青髪「そんな時の為のあわきんやーん。あと、表面上はそうみえるけど、ここは数ある非常用電力管理代替機能をもっとる施設の一つで、豊富な地下空間もある。そして、アメリカの皆さんも当然電気は必要」

青髪「忘れがちやけど、今の停電は電力発電が止まったからやない。供給を管理してるところが軒並み破壊されたか、乗っ取られたかなんや。学園都市中の送電網自体は全然元気。ここを占拠しとることで、アメリカの連中は好き勝手に電力供給できる」

青髪「つまり、自分たちにだけ電気が使えるようにしてるってわけや。当然ここも通電しとるやろーな。一方で、学園都市側は電気が無いわ要所は抑えられたわで、組織的な反抗もできん。僕もボスらと連絡できへんから今外で何がおこっとるんか分からんし、流石のアレイスターもお手上げ」

青髪「んで、ここと同様に、アメリカ側に抑えられた重要施設は、今頃、表面上は停電を装いながら準備をしとるってわけやな」

結標「準備って、何のよ?」

青髪「アメリカ軍本体、ハワイから来る、海兵隊をたんまり乗せた第7艦隊の皆さんのスムーズな受入れ準備や」

結標「……本格的に制圧占領する気ね、学園都市を。例え私達が電力供給を再開させたところで、今更、占領を止めるのは難しいだろうし。要所を押さえられたまま制圧されたら、流石にあの統括理事長でも辛いんじゃない?」

青髪「うん、多分なー。だからアレイスターは僕らに、艦隊到着前に電力回復を頼んだんやろ」

結標「つまり、電力が回復すれば、制圧された要所も統括理事長の最上級権限でコントロールを奪えるというわけね」

青髪「そ。んで、あのビルは簡単に壊せへんから、米軍本体が学園都市を制圧しても、学園都市の施設を使うためには統括理事長と交渉する必要が出てくる。アレイスターの学園都市に対する影響力にあんまり変化は無い。旨い方法やわー」

結標「アレイスターからすれば、部下が統括理事員から米軍にすげ変わっただけになるのかしらね。でも、ならなんで昨日電力が残ってるうちにそういう事をしなかったのか、疑問が出来る」

青髪「さぁね。僕には全然わからへん。でも、ま、強引に予想を付ければ、僕らの前から居ったあの人が原因なんかもしれへんなぁ」


736 誰の体のどこの部分に怪我してるか覚えるのが大変なんだよ!!2011/01/10(月) 13:14:36.72xIqxDYPDP (6/24)



コンコン、と扉を叩く音が響いた

イギリス時間で、深夜3時を過ぎたごろだ。当然部屋の主は眠い。普通の人間ならば気付かずそのままだろう

だが、立場上いつ何時何が起きてもおかしくない彼女、ローラ=スチュアートはその音で目覚める

最も、直接的には音が彼女を起こしたのではなく、ノックが起動サインとなっている術式によって生じた刺激によるものだが

よって彼女の目覚めの言葉は「あだだっ?!」だった

ローラ「ふむぁー、はいはい、今開けますてよー」

呂律の回らない口で、扉の方へ進んだ

彼女の部屋は今、とてもグチャグチャだ。部下の炎を好んで使う魔術師が荒探しした為に、強盗が入った後の様に思える惨状となっている

左腕で目を擦りつつ開くと、黒の修道服の上に被ったローブのフードを深く被ったシスターが立っていた

口元しか見えないが、ここでは見慣れない顔だった。教会に所属している全員の顔を詳細に覚えている訳ではないが

いや、逆だ。ここでは見ないだけで、どこか普段見ないところでは見たことがある。そんな口元

ローラ「こんな夜更けに何用なのー?」

「リメエア様より、言伝が」

ローラ「女王じゃなくて娘の方? アレは部屋の奥で本ばっかり読んでそうなのに、わりと活動的なのだから」

リメエア。そう言えばこの口元、確か王室派のどこかで見たような気もする

「第一王女様はいくつもの顔を持っていらっしゃる方ですから。まぁ、顔、といっても特殊メイクや魔術などを用いるわけでもないですが」

「ローラ様がお知りなリメエア様の顔も、その中の一つということですよ」

ローラ「そうかもしれなきたれれぇ。女は普通の化粧で十分にいろんな化け方をしたるもの。ふぁあ、それで言伝とやらは―――――」

待て、なんで顔も覚えていないような重要度の低いシスターが第一王女の事を深く知っているのだろうか

咄嗟に右腕を動かして攻撃警戒用の術式を組み上げようとするも、彼女にはその腕は無かった



737VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:15:04.03xIqxDYPDP (7/24)


ローラ(利き腕を失うとは、この様なことなのね)

目の前のシスター風の女が「フフ」と声に出して笑った

「この時期に清教派の頂点がそんな様子では、困ります」

静かに言いながらフードを下ろす。片目にモノクル(単眼の眼鏡)を付けた女性、第一王女本人だった

ローラ「まさかご本人とは。呆れるほどに動きまわれるわね」

リメエア「性格上、おいそれと他人を信頼できませんので、まずは相手の程度を探る癖が有りまして」

ローラ「私を探った結果がどういったものなのか非常に気になるところで有りたるが、どうせ言いいたるつもりはないのでしょう?」

第一王女を部屋の中に招く。当然目に付くのは部屋の状況である

リメエア「ええ。っと、これは……入院中に賊にでも入られました?」

部屋の惨状を見て言った

ローラ「身内にやられたるよ。今頃はどこで何をしているのであらぬかのう」

身内、と聞いてリメエアの知る中でそれに該当する情報は一つだった。無論ステイルのことである

リメエア「子飼いの犬に噛まれるとは、らしくないのでは?」

ローラ「彼はちょっと純粋すぎけるの。だからこそ利用し易かった。そして敵に利用された。これでも、さんざん釘は撃ったのよ」

リメエアを大きいとは言えない丸いテーブルの座席へ促し、自分もその正面に座った

近くの燭台に明りがともり、十分な明るさが部屋を照らす

リメエア「組織の上に居て、部下を持つことは、難しいことですね」

ローラ「身一つで行動する王女殿には分からぬことよ。でも、あなたもMI6という組織の中にいるのでしょうに?」

リメエア「勿論、身を偽ってですがね。各国の政治や秘密交渉の情報を手に入れるには都合のよいい場所ですの」

ローラ「という事は、今日もそういうお話であるな?」


738VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:15:32.32xIqxDYPDP (8/24)



コポポ、と音を立てて紅茶が注がれたティーカップを第一王女の前に差し出したが、彼女は手を付けなかった

リメエア「そう言えますね。あ、紅茶は結構です。いつどこで毒を盛られるわかりませんから」

ローラ「そ、そう。相変わらずでありけるな」

代わりに、差し出したカップを自分の口へ運ぶ最大主教だった

リメエア「先程までCIAの方と臥所を共にしておりまして」

紅茶を思わず噴き出しそうになる

ローラ「い、イングランドの王室は代々ふしだらでありけるが、まさかあのリメエア嬢が、とは」

リメエア「いくつも顔を持つ、といいましたでしょう? もちろんMI6の一諜報活動としてですが」

リメエア「その際に得られた情報に面白いものが」

ローラ「……ほう」

リメエア「簡単に言えばCIA内の、アメリカ国内の内紛・権力闘争とでも言いましょうか」

ローラ「それはまるでどこかの後進国のようでありけるな」

国の内情など、先進国も後進国も変りませんと答え

リメエア「現在のアメリカ合衆国は、あの声明会見を行った大統領を始めとして、あらゆる権力がとある物の意思で動いているそうで」

ローラ「"物"? 人間ではなくて?」

日本語では"物"と"者"の音の別は分からないが、英語ではハッキリとでる

リメエア「はい。物で有りながら彼と称され、自ら名前も名乗っている。その正体は学園都市にも引けを取らない、異常なレベルの人工知能」

リメエア「その"物"がアメリカの科学水準を短期間で学園都市レベルまで引き上げ、先の海戦の原因であるフランス・カレー市攻撃を行った」



739VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:16:16.51xIqxDYPDP (9/24)

リメエア「もちろん、英仏の戦いを引き起こす為。そして戦いを必要とした理由は、現代魔術というものを観察するという目的成就」

リメエア「アメリカは、体裁的には我がイギリスの味方という形でしたが、嵌められた様なもの。目的の為なら何でもしかねないというスタンスは我々にとっても危険な存在」

リメエア「しかし、先程内紛と話したように、その"物"の現体制を打ち倒さんとしている勢力があります」

そこでようやく、話が見えてくる。とても単純な話だ

ローラ「つまり、それを支援しようといいたるか?」

リメエア「その通りです」

ローラ「派手な話よのう。なれど、リメエア殿の言う"体裁的"に英国は、アメリカ現体制を崩すような勢力に支援は出来ないのでしょう?」

リメエア「はい。だからこそ、私はここへ来ました。なんといっても、世界的一般では魔術というものは、今だにただのオカルト、気分転換の御まじない程度の認知なのですから」

ローラ「なるほど、表面的には現体制支持、一方で裏、つまり魔術サイドでは反逆勢力支援というわけでありたるな」

リメエア「その形式ならばどちらが勝っても、イギリスとそれに付随するイギリス清教にとっては利となります」

紅茶を口に含む

ローラ「……このことを、御母上には?」

リメエア「完璧な二面性を得る為、と言えばお分かりでしょうか?」

つまり、女王には知らせていないという事だ。もし失敗した時に、イギリス王家の責任を無にする為に

ローラ「トカゲの尻尾切りとも言い換えられけるよの」

リメエア「しかし上手くゆけば、見返りという形で新体制に直接影響を与えられるのは、清教派ということに」

ローラ「話に乗るには相応のリスクを、か。どうせその勢力とやらとの連絡手段の体系は第一王女サマ御用達のMI6で取り行っているのであろう? 美味しいポジションを得たものだ」

ローラ「成功すれば王室派内の協力者として、失敗すれば清教派とは無関係な顔をすればよきたると」

リメエア「如何します?」

ローラ「答えなど初めから分かっているからこそ、ここへ来たのであろう?」

リメエア「フフ。流石、我が国の最大主教様」

ローラ「もちろん私からも条件を出すわよ。でもそれはおいおい詰めるとして」

ローラ「先程"物"とやらが名前を名乗ったと言いたりけるが、なんと言う名なの?」

リメエア「ああ、言うのを忘れていましたか」

リメエア「"イェス"と。おこがましい事に自らをイェスと称して、アメリカという道具を使って世界を纏めようとしています」


740VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:17:00.71xIqxDYPDP (10/24)

寝心地が良かったわけではなかったが瓦礫の山のソファで十分な時間寝ていた為、少女は空いた病室のベッドで1時間も休めなかった

仕方が無いので、昨日麦野が渡したはずの遺伝子情報サンプルで初春や白井の容体がどうなるのかあの医者に尋ねたかったが、忙しいようで会えなかった

初春の部屋は相変わらず面会謝絶だったが、白井と絹旗という少女が寝かされた部屋には入れた

少なくとも、この病院に担ぎ込んだときよりは余程マシな表情になっている

白井でこの様子なら、初春も回復しているだろう。そう考えて、安堵の息を吐いた

しかし、御坂には彼女ら以外にも守りたいものがある。言ってしまえば、自分に関係がある限り全てのものだ

だが、とてもそんな全てを守ることなど出来ない

大きな恩義がある上条は常に自分の知らない所に居るし、妹達は原因不明の負担に時折悩まされている

初春も白井も自分に再び話しかけてくるにはまだ時間がかかるだろうし、佐天に至ってはどうなってしまったのか分からない

極めつけは、母のメールとその携帯の待ち受け画面に出るニュースのテロップで知った、母親の死

無力、非力

現在圏外と表示されている携帯のニューステロップは更新されることは無いが、逆に同じ内容、母の死を確定させるテロップが、延々と流れ続けることが彼女の心を揺さぶった

妹達が集められている部屋の前に来た。中から明るい会話の声が聞こえる

恐らく今日は彼女らの調子も良いのだ、分かる

御坂(今の私、絶対暗い顔してる。入ったら空気壊しちゃうかな)

そう思って、病室の扉から離れようとした時だった

御坂妹「どうしましたか?」

上条当麻が御坂妹と呼ぶ個体が、手に子供向けのジュースを持って、近くに立っていた

御坂「あ、いや。ちょっと様子を見よっかなーって思って来たんだけど。元気そう、……みたいだし」


741VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:17:43.99xIqxDYPDP (11/24)


無理に暗い表情を立て直してひねり出した声。妹達の彼女でも辛そうである事は分かる

御坂妹「そうですか。確かに本日の体長は悪くありません。ですが、微小機械のネットワークで繋がっているお姉さまには分かると思いますが、まだ時折負担はかかります」

御坂妹「しかし、これからそれも無くなるかもしれません、とミサカは希望を吐露します」

御坂「え、どうして?」

御坂妹「一方通行と麦野という方が、先程まで、この部屋に来ていました」

御坂「それで?」

御坂妹「あの人、上条当麻の持ってきた情報の場所へ行ってどうこうすれば、私達の負担を取り除くことが出来る、と」

御坂「ちょっと待って、二人だけで行ったの?」

御坂妹「麦野さんの言葉を借りれば、"今の第三位じゃ、多分、使い物にならないからねぇ"、だ、そうです」

御坂「……そっか」

あの人にも、そう思わせてしまった。私は、自分の守るべきものも、結局他人に任せてしまうのだ

御坂妹「そして、更に。"あの子は少し背負い過ぎなのよ。確かに他の人間には引けを取らないLV5かもしれないけど、ここにいる第一位だって私を頼ってんだから"」

御坂妹「"だからあの子が寝てる間に、優 し い お姉さんが、その悩みの一つを解決してあげようかなってね。面倒見るように言われてるし"」

御坂妹「"あの子ならそれで、逆に私の事まで背負いかねないでしょうけど、生憎私は第3位に守って貰わなきゃならないほど弱くない。強くも無いけどね。あの子が思ってるほど、あの子の周りは弱くは無いのにさ。強がっちゃって。また出来の悪い妹分が増えたみたいで頭が痛いわ。目の前には出来の悪い弟分も居るし"」

御坂妹「とのことでした、とミサカは覚えていたままをお伝えします」

強くもないけど、弱くもない

そんな考え方は、御坂には無かった

自分が何とかしなければ。自分の努力で解決しなければ。自分の力で守らなければ。自分、自分、自分

思い返してみれば、"自分が"という選択だけで行動してきて、そして解決できたことなど何もないのだ。自分一人だけでは、手の届かない範囲というものがある

その手の届かない範囲を考えるあまり、混乱して、傷ついて、苦しんで来た。同じ事の繰り返し。そして結局範囲内のことすら諦めようとした


742VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:18:35.87xIqxDYPDP (12/24)


御坂は無言でうなずいて、その場所を離れようとした

御坂妹「あの人の事ですが」

離れようとした御坂の足が止まる

御坂妹「具体的な行き先などは聞いている訳ではありません。ですが、少し思いつめたような顔をしていました、とミサカはその時を思い出しながら伝えます」

背を向けたまま聞き、尋ね返す

御坂「……誰かと一緒に行ったの?」

御坂妹「いいえ。ミサカの知る限りでは御一人だったかと、とミサカは曖昧な情報を報告します」

御坂「わかった。ありがと」

去っていくオリジナルに、これ以上伝える言葉など無かった

一方でオリジナルの方は麦野から間接的に伝えられた言葉と、上条の事がぐるぐる巡る

妹達の件については、何処へ行けばいいのかも分からない。今更追いつくこともできないだろう

任せるしかなかった

自分がさっきまで寝ようと試みていた部屋の前に付く

このまま自分は麦野の言葉に甘えて休んでいていいのだろうか

自分がどれだけ強くて、どう弱いのか。自分にできる事の範囲が御坂には分からなかった

自分の病室の前で携帯を開く。相変わらず家族が住む市街が大破壊を受けたというテロップが流れていて、圏外のままだ

母からのメールに書いてあったことは、お決まりのフレーズで始まる

"あなたがこのメールを読むときには、恐らく私はこの世に居ないでしょう"

何度読んでも心を打つものがあるが、本題はここでは無い


743VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:19:08.96xIqxDYPDP (13/24)


"本当は、お墓まで持っていくつもりだったんだけどね"

そして始まる内容

自分は結婚する前にCIAのエージェントをしていたということ

そこで御坂旅掛と出会ったこと。自分たちの恋路によって多くの同僚が死んでしまったこと

その時の直属の上司が、御坂美琴も出会ったことのある上条刀夜であったこと

息子の上条当麻も、幼い時からCIAに所属していたということ

その記憶も含んで、夏のある時からそれまで全ての記憶が失われていたということ

学園都市の現状がアメリカの介入によって引き起こされたものであるということ

そして今、父である御坂旅掛が上条刀夜の反アメリカ現体制勢力の下、行動を起こそうとしているということ

この母の死の原因を、母自体完全に把握している訳ではないが、アメリカ現体制が何か知っているということ

"これで、私が母親として最期にあなたにしてあげる事はこれぐらい。もう当麻君との関係で甘酸っぱいアドバイスはしてあげられないわね"

"添付してるのは、現CIAの情報プールのアクセス権限。これを使えば、大体の事は分かるはずよ。流石に上級の機密事項とまではいかないけど"

"本当はコレもね、パパが今何をしてるか知る為に手に入れたの。ホント、何が幸いして、何が災いとなるのかなんてわからないものね"

"だから、美琴ちゃん。あなたはあなたの考えるままに行動しなさい。善し悪しなんて、後で付いてくるし、変わりもする"

"同僚の中には親しかった友達も居た。そんな人達を失ってまであの人と逃げるように結婚したことは、当時かなり悩んだし、今でも良かったのか分からない"

"でもね、あなたという存在が生まれて、パパにいつ何が起きるかわからないにしても、暖かい家庭を築けたことは、絶対に悪い事じゃなかったって胸を張って言えるわ"

"最期にこうして伝えたいことも伝えられたし、これ以上の贅沢は要らないわ。ありがとう"



744VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:19:46.27xIqxDYPDP (14/24)


"それじゃ、天国で孫が生まれるのを楽しみに待っておきます"

文章の最後に、何気なく絵文字が使われていた

もう何度読み返したかわからないが、目頭が熱くなる

だが、この情報と行き先も知らせずに消えた上条当麻の行動を照らしだすと、大体読めてくるものがある

御坂(アイツが行ったのは、多分、アメリカ。父親の手助けをする為なのか、他の理由なのかは分からないけど)

御坂(でもアメリカのどこ? 政治の中心は東海岸だけど、最先端科学は南部アメリカ。西海岸にもロサンゼルスなんかの大都市は点在してる)

御坂(実家に居たお母さんが使ってたってことは、CIAの情報プールへのアクセスに特別な端末が必要って訳じゃない)

御坂(アイツがどこへ行ったのかコレで調べるには、電力が回復しない限り)

御坂(……って、私がアイツの事知って、どうするのよ)

御坂(それに、アイツがここ出たのは随分と前のこと。今更追いつけないじゃない)

ならば、この部屋で麦野に甘えて時間を過ごすだけでいいのか

「思いつめた顔をしていました」

先程の会話で、妹達の一人が言った言葉が蘇る

もしかしたら、彼にそんな表情を作らせたのは自分の言動も有るのかもしれない

言い方の正しさに問題は有るが、上条当麻を、私は見捨てて良いのだろうか

自分にあてがわれた病室の前で、携帯のストラップを見ながら立ちつくした



745VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:20:13.06xIqxDYPDP (15/24)


「煙草を吸うようだが、葉巻は?」

ニコライと呼ばれる司教が机の引き出しから葉巻を取り出し、ステイルの方へ向けた

しかし、ステイルは手の平を掲げて、「要らない」という意思を伝える

ニコライ「そうか。まぁ、ロシア製だからな」

ステイル「いや、僕は根本的に葉巻は苦手で」

ニコライ「そうか。私は一本貰おう。………フゥ。結局、今君の懐に入っているであろうシガレットも同じことなのだ」

ニコライ「我がロシアで出来たものでは、西欧で出来たものには到底及ばないという事だ」

ニコライ「民主化が進んだものの、旧東側で出来たものはまだまだ質が悪く、世界的な市場ではコスト・品質共に戦えない」

ニコライ「唯一対抗できるのは、既存のマーケットと長年のキャリアを持つ航空技術ぐらいのものだが、電子機器類は西欧・米国から入ってきた技術が無いと話にならない」

ニコライ「その航空技術すらも、学園都市製のものには到底及ばない」

ステイルは、何が言いたい、という顔を向けた

ニコライ「つまり、わが国には資源国としての価値しか今は無いという事だ。魔術も同様にな」

ニコライ「歴史的に研鑚を重ねた旧来の魔術体系によって、十字教カトリックの大勢力の一つであるという自負はある」

ニコライ「だが根本的に数が無い。優秀な魔術師も、つまらん抗争の道具として使い物にならなくなる。かく言う私も、その詰らん抗争で伸し上がって来たのだがな」

ニコライ「ローマからの使者、いや、フィアンマからの使者よ。君のボスとは何度か交渉をしてきた」

ニコライ「そして今、同じようにアメリカも我が国を味方につけようと、話を持ち込んできた」

ニコライ「恐らくだが、この度の終末についてだろうな。我々は一十字教徒として受け入れるつもりだ」

ニコライ「彼の国には、魔術も科学も有る。そして君のボスは神の右席として圧倒的な力を持ってローマを左右できる」

ニコライ「果たしてどうして、か弱き我がロシアの力が必要なのだね?」

葉巻の煙を吸って、ニコライという司教は吐いた

ステイル「虎視眈眈とローマの地位を得んとしていたロシア成教が、よくもそこまで自らを卑下するような言い方をするものだ」



746VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2011/01/10(月) 13:20:43.60xIqxDYPDP (16/24)


ステイル「今更その様な説明を受けなくとも、分かっていますよ。その上でフィアンマは僕を使わしている」

ステイル「フィアンマは新教皇と距離を置こうとしている。どうも折り合いがつきそうにないのでね」

ステイル「だが兵隊は欲しい。ということで、ロシア成教に白羽の矢が立ったということでは、その答えになりませんかね?」

ニコライ「ほう。だが、何の見返りも無く、という訳にはいかないことぐらい理解しているだろう?」

ステイル「何も一方的に駒を貸せ、と言っているわけじゃない。 協 力 を求めているのですよ」

ニコライ「協力だと?」

ステイル「十字教の教えは多岐に渡っていながら、実のところ信じている神は一つだ。一方で天使などの神の使いは宗派・教派で別れている」

ステイル「あなたは、十字教徒として受け入れると言ったが、果たしてそれが出来るかな?」

ニコライ「何が言いたいのだ?」

ステイル「自らの信じる信仰によって救済されるということは、自らの信ずる神の使いか、神の引き起こす天災に身を捧げなくてはならない」

ステイル「今現れている神の使い、天使モドキはどうやら共通の教典である旧約聖書からのご登場だから、その問題は無いが」

ステイル「これから出現すると思われる神の使いには、それぞれの天使が登場することになる」

ステイル「例えば、北欧神話に登場する神々と融合した北欧十字教の天使が、エジプト辺りのコプト十字教徒を巻き込めば、どうなるか」

ステイル「厄介なことに、別れた教えは、それぞれの地方をそれぞれの宗派の天使が襲うなんて記述はされてない。どこも一様に大地は割れ、神の使いが焼き払い、なんて書かれ方だ」

ステイル「終末の後に訪れる救済についても、描かれ方は千差万別。神は同じ一つでありながら、異なる内容。しかも救済される"敬虔な信徒"なんて全く定まったものじゃない」

ステイル「全て曖昧で不安定でどうなるのか分からないが、あなたの終わりの時は来てしまう。ローマの方はその強大な力を用いて、神の右席なんてものを作り出すほどですからね、他派の天使を撃ち払う術があるかもしれない。だが、ロシアはどうなのです? 他派の、ローマ正教の正天使を撃退する手段はありますか?」

ニコライ「……それは、厳しい話だな」

ステイル「フィアンマは違うアプローチで、この難題を解決しようとしている。そういう意味での協力だ」

ステイルの言葉を聞いて、事実上のロシア成教の指導者ニコライは押し黙った